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1964-02-13 第46回国会 参議院 石炭対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十三日(木曜日)    午後一時十五分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     岸田 幸雄君    理事            亀井  光君            徳永 正利君            大矢  正君            牛田  寛君    委員            江藤  智君            川上 為治君            剱木 亨弘君            郡  祐一君            高野 一夫君            二木 謙吾君            堀  末治君            吉武 恵市君            阿具根 登君            阿部 竹松君            小宮市太郎君            小柳  勇君            柳岡 秋夫君            鈴木 一弘君            田畑 金光君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    通商政務次官  竹下  登君    通商産業省石炭    局長      新井 眞一君    通商産業省鉱山    保安局長    川原 英之君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○当面の石炭対策樹立に関する調査  (昭和三十九年度石炭対策及び予算  に関する件)  (三池炭鉱再開に関する件)     —————————————
  2. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) それでは、ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打合会協議事項について御報告いたします。  本日は、鈴木一弘君が理事辞任いたしたいとのことでございますので、その補欠再任をいたすこととし、次に、当面の石炭対策樹立に関する調査一環として、通商産業大臣から、石炭対策施策について所信を承り、あわせて同省から昭和三十九年度石炭関係予算について説明を求めることとなりましたので御了承をお願いいたします。     —————————————
  3. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) では、理事辞任及び補欠専任の件を議題といたします。  鈴木一弘君から、都合により理事辞任したい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、直ちにその補欠選挙を行ないたいと存じます。補選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事牛田寛君を指名いたします。     —————————————
  6. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 次に、当面の石炭対策樹立に関する調査議題といたします。  本調査一環として、通商産業大臣から石炭対策施策について所信を承ることとし、あわせて通商産業省当局から、昭和三十九年度石炭関係予算について説明を聴取いたします。  まず、福田通商産業大臣から施策について所信を承ります。福田通商産業大臣
  7. 福田一

    国務大臣福田一君) 第四十六回通常国会におきまして、石炭対策特別委員会の御審議をいただくにあたり、一言ごあいさつ申し上げます。  御承知のとおり、石炭鉱業は、いわゆるエネルギー革命の進展に伴い、今日多くの困難な問題に当面しております。  政府といたしましては、このような事態に対して、石炭工業調査団の答申及びこれに基づく「石炭対策大綱」に従って、抜本的な石炭対策を推進してまいりました。  「石炭対策大綱」の実施は、昭和三十八年度から、その緒につき始めましたが、今後は、その基本的な考え方の上に立って、総合的、体系的な施策の実効ある展開とその充実がぜひとも必要であります。  このため需要確保生産流通の各面にわたる近代化合理化技術振興資金確保産炭地域振興鉱害処理円滑化等について、従来からの施策を一そう強化促進するとともに、特に次のような施策重点を置いて実施することとしております。  第一に、石山灰需要確保については、電力、鉄鋼の大口需要業界との長期引き取り体制確立をはかるとともに、引き取り数量の増加に伴う負担増に対しては、従来からの関税還付制度に加えて、電源開発株式会社による石炭専焼火力発電所建設促進することといたしております。  第二に、石炭鉱業近代化については、近代化資金大幅増額をはかり、石炭坑近代化流通合理化を推進するほか、石炭技術振興に積極的な助成を講じることとしております。  第三に、産炭地域振興については、昨秋、産炭地域振興基本計画及びその実施計画を策定し、また、その具体的な実施については、産炭地域振興事業団による土地造成設備資金融資事業の飛躍的な拡充をはかるとともに、企業誘致促進工業用水調査等施策を推進することとしております。  第四に、鉱害対策については、鉱害処理抜本的拡充強化をはかるため、鉱害賠償基金に対する出資増加及び財政融資措置を講じ、また、無資力鉱害処理については、特にこれを促進し遺憾なきを期しております。  次に、石炭鉱山における保安については、従来から、保安確保合理化基盤と考え、その確保に努めてきたところでありますが、昨年三池炭鉱において大規模災害が発生したことは、まことに遺憾であり、今後、鉱山保安行政の一そうの強化をはかるため、監督強化鉱山保安法令整備保安融資拡充強化自主保安体制確立等の諸施策を強力に推進する所存であります。  ここで石炭鉱業の将来に思いをいたしますと、産業構造調査会総合エネルギー部会は、昭和四十七年までの総合エネルギー政策基本的方向を検討し、石炭鉱業国民経済的重要性をあらためて強調しております。  すなわち、石炭鉱業が近代的な生産体制確立し、高能率・高賃金の安定した産業として五千五百万トンの生産確保し、国民経済の均衡ある発展に資することは、総合エネルギー政策の見地からも必要とされているのであります。  しかしながら、石炭鉱業が高能率・高賃金の安定した近代的産業となり、その使命を達成するためには、前途、なおなすべきことが少なくありません。  われわれ石炭対策実施にかかわるものといたしましては、将来の石炭鉱業の目標となるべきビジョンを明確に描きながら、現実の政策を一歩一歩踏み固めて前進していきたいと思います。  本委員会におかれましても、今後とも一そうの御協力をお願いする次第であります。  なお、三池炭鉱については、保安について万全の措置を講じ、その生産再開を許可いたしました。この間の経緯につきましては、災害状況等とあわせまして、後刻、鉱山保安局長から御報告いたさせます。
  8. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 次に、通商産業省当局から、昭和三十九年度石炭関係予算について説明を求めます。新井石炭局長
  9. 新井眞一

    政府委員新井眞一君) あらかじめお手元に「昭和39年度石炭関係予算概要」というものをお届けしておりますので、お取り上げいただきたいと思います。その資料に即まして、概要を御説明申し上げます。  まず、一枚をめくっていただきまして、二枚目のところに総計が出ておりますので、ちょっとごらんいただきたいと思いますが、二枚目のやや中間より上のほうに総計が出ておりまして、三十八年度、本年度予算が百十七億——約百十八億でございます。来年度予算の原案といたしまして百二十億という形に一般会計関係が相なっております。さらに、その下のほうに財政投融資関係もあわせて御提示してございますが、この点につきましては同じく合計欄をごらんいただきますように、三十八年度、これは億円単位でございますが、百八十九億、当初予算でございます。これに対しまして電発その他、後ほど御説明申し上げますが、三十九年度予算二百三十八億という概況でございます。  もとへ戻っていただきまして、項目につきまして概要を御説明を申し上げたいと思います。まず、その前に御認識いただきたいと思いますことは、ようやく合理化関係の、スクラップ・アンド・ビルドでございますが、スクラップのほうが非常に大きな山を三十七年、三十八年とやってまいっております関係上、そういう面からいたしますると、スクラップ予算と申しますのは、当然数字的には減ってまいるわけでございます。しかし、反面、今後、まあビルドの問題、あるいは産炭地振興、あるいは鉱害の問題、こういったフォロー・アップの仕事が、かなり重点として取り上げられてまいらなければならないと思うのであります。その点、充ほど大臣説明のとおりでございます。  したがいまして、そういう面から申しますと当然減るものが——その資料にはございませんが、約十四億円くらいは減少に相なるかと思います。それであるにかかわりませず、先ほど申し上げましたように百二十億という形に相なっておる点をあらかじめ御了承いただきたいと思います。  そこで、最初のところから申し上げますが、第一項に炭鉱整理促進費と、これは交付金によりまして炭鉱整理をやってまいりますものでございます。これが五十億に対しまして三十九億、先ほど申しますとおり、かなり山が減ってまいります。買い上げをいたしまして山が減ってまいるわけでございます。  次に、保安不良炭鉱整理費保安の悪いものに対しまして勧告をいたしまして、交付金を出すというものでございます。これまた、同じく二億一千万円から一億七千万円、約四千万円ほど減少いたしておりますが、トン数でいきますと、三十八年度三十万トン、これに対しまして三十九年度二十万トンくらいであるということでやっております。  次に、合理化事業団への出資金でございますが、この関係四十三億八千万から四十八億九千万、約四十九億に相なっております。なお、この予算のほかに償還金といたしまして三十九年度に返ってまいります金が約五億ございますので、したがって、事業団としての運用の規模は、この四十九億に五億を足していただいた約五十四億という形になるわけでございます。右の備考の欄にございますように、近代化出資が三十三億、それから中小炭鉱の第二種としてのやはり同じく近代化のでございますが二値七千万、特に保安施設整理関係で、これは後ほど保安局長から御説明があろうかと思いますが、新しく約五億というものがついております。後ほどこの点は保安局長から御説明があるはずでございます。それから石炭専用船、これも非常に効果をあげておりまして、三十七年が三隻、ことしが九隻でございます。十二隻も作っていただいておりますが、さらに三十九年八隻ということで、流通関係費用は下げていきたいということでございます。現在約百五十六億円ばかり、流通経費減少効果をあげております。なお、配給基地関係、それから荷役施設等合理化問題、その他という形で約四十九億という形になっております。  それから四番目の電力用炭精算会社でございます。昨年はいろいろ御助力いただきまして一億の出資をいただいたわけで、これは去年の九月に発足をいたしておりますものでございますので、今年度減に相なるわけでございます。  次に、産炭地域振興対策でございますが、この点がかなり大幅に増額をいたしておるわけでございまして、十三億に対しまして二十億、さらにあとで申し上げます財投関係も合わせますと、右の備考の欄にございまするけれども、事業規模、すなわち産炭地域振興事業団事業規模といたしましては五十二億という形に相なるわけでございます。三十八年の本年度が三十二億でございますので、かなりしっかりやっていかなければならぬと考えておるわけでございます。その五十二億の中に、土地造成とかボタ山処理関係が二十五億、それから企業誘致して来る方にお金を貸してやってもらうというものが二十七億でございます。それからそのほか(ロ)に書いてございますように産炭地調査といたしまして工業用水——水の問題の実地調査にかかろうと考えておりますのがございますのと、その次に企業誘致促進費、これは額は一千万円でございますが、新しい予算でございまして企業誘致関連をいたしまして、大都市の商工会議所補助金を出しまして、大いに産炭地を見てもらいPRをやって企業誘致をはかってまいりたい、こういう考え方でございます。  なお、六番、七番、鉱害関係でございますが、上の六番の鉱害復旧事業費のほうは、復旧事業団関係でございまして、実際の臨鉱法関係のものでございますが、これが約一億七千万円から二億八千七百万円になっております。そのほか、備考にございますように、農林省あるいは建設省、そういう他省分といたしまして十四億あるわけでございます。全体、臨鉱法関係の、これからといたしましての来年度事業規模といたしましては、約三十億という想定をいたしております。本年度が二十五億でございます。  次の鉱害賠償基金でございますが、これも昨年三億出資をいただいたわけでございまするが、さらに一億の追加出資をいただくということに考えておるわけでございまして、これは、鉱業権者鉱害復旧をするときに負担をしなければならぬときに、金がないという場合に、この基金から金を貸してやる。そのためにあらかじめ積み立て金を取っておくというものでございますが、さらに一億の出資をお願いするわけでございます。この関係で実は法律問題がございます。鉱害担保臨時措置法というものがございますが、これが三億というふうに出資の額がきめられておるわけでございますが、一億の出資に伴いまして、その辺の形を変えていかなければならぬということ、いずれまた、御審議をお願い申し上げることに相なろうかと思います。  次の石炭技術振興対策費、これも非常に肝心な予算でございまして、本年度五千万円の増額をいたしまして、特に一般炭コークス化ということで需要確保の面の研究をやってまいりたいというものでございます。  一枚めくっていただきまして、原料炭炭田開発調査費の問題、それから次の十番といたしまして、産炭地域振興公共事業促進調整費というのがございますが、これが新規項目といたしまして三億、もっとも備考欄でごらんいただきますように、経済企画庁のほうに計上されておりますけれども、あくまでも産炭地域振興産業基盤のために一般公共事業関連をいたしまして産炭地事業とのつながりをつけていこう、この金で、そういう趣旨の新しい柱でございますが、経済企画庁と通産省とよく連係をとりまして効果をあげてまいりたいと考えております。  そういうふうなことでございまして、合計百二十億という形に相なるわけでございます。  御参考までに、三十七年から三十八年でございますが、この間非常な飛躍をいたしておりまして、三十七年度予算が五十八億でございますが、これが約百十八億になったわけであります。さらに百二十億ということに業団への融資、これは整備資金関係でございますが、今年度三十五億でございまして、三十八年度は、当相なっておるわけであります。  さらに財政投融資関係でございますが、石炭鉱業合理化事初六十億でございますが、御承知のように、後ほど追加をいただきまして八十億、四十五億と、追加のほうが多いのでございますが、百二十五億もらっております。しかし、当初予算に比べまして、今度は三十五億でございまして、おのずから人不足のときでもあり、過剰労力整理資金の金は激減をしていくという形に相なるわけでありますけれども、ただ、これも実態に合わせてまいらなければなりません関係上、もし不足の場合に、いろいろ考えていかなければ相ならぬかと考えております。  それから、その次の事業団への融資、これも先ほど御説明申し上げましたとおりでございます。  なお、開銀の百十億、それからその下の電源開発株式会社への投融資、これは石炭の特に四十二年におきます五玉五百万トンの確保のための大きな柱でございまして、石炭専焼火力電発建設を始める、三カ年計画でございますが、昭和四十二年度におきまする燃料消費量が二百五十万トン、これは長期取引でやっておりますので、上乗せで二百五十万トンと相なるわけでございますが、そのためには百二十八万キロワットの石炭専焼火力を三年計画でつくっていくというものでございます。本年度五十八億の財投をいただいたわけであります。したがいまして、二百三十八億円ということに相なったわけでございます。きわめて簡単でございますが、予算の内容の御説明を終わります。
  10. 岸田幸雄

  11. 川原英之

    政府委員川原英之君) 私、先月付をもちまして、新しく鉱山保安局長を拝命いたしました川原と申す者でございます。未熟な者でございますが、何とぞよろしくお引き回しを願いたいと思います。  お手元に御配付申し上げております資料によりまして、鉱山保安関係の今年度予算案、それにつきまして御説明を申し上げます。鉱山保安関係予算といたしまして、まず鉱山保安対策及びボタ山災害防止対策保安施設整備のための融資並びに保安不良炭鉱整理費及び鉱山保安技術に関する特別研究費、大体、こういうような五つ項目を持っているわけでございますが、総額から申しまして、以上五つ項目を申し上げますと、三十八年度予算が五億八千四百七十八万九千円に対しまして三十九年度が十一億五千九百三十九万六千円、今年度におきまするこの五項目通算いたしましての比校は約五億七千四百万円の増額に相なっております。  次に、その内訳につきまして申し上げますと、まず鉱山保安対策費でございますが、これが具体的にはいろいろな鉱山保安監督に対しまする諸般の経費に相なるわけでございます。まず第一番に鉱山保安監督検査費、これは実際に鉱山保安監督局長監督官鉱山に参りまして、いろいろな種類検査をいたしますその旅費及び庁費でございますが、この関係は昨年度四千百九十九万五千円に対しまして、本年は四千八百十三万三千円、約六百万円の増額に相なっております。今年度の私どもの考えといたしまして、従来の巡回検査その他を通じまして、いろいろと検査をしてまいったのでございますが、今年度は、さらにこの巡回検査強化いたしますほかに、鉱山全体として一般的ないろいろな角度から、保安関係検査いたします総合検査を新しく強化いたしてまいりたいと存ずるわけであります。  次に保安教育強化拡充費、これは現在法律できめられております保安技術職員その他係員の教育あるいは監督官の研修というようなことに用います費用でございますが、三十八年度七百九十一万七千円に対しまして、三十九年度は八百二十万、これはごくわずかでございますが、二十八万五千円の増額に相なっております。三番目の鉱山保安監督上の技術基準作成費、これは主として炭じんの抑制のための技術基準作成本年度は行なう予定でございまして、昨年の三池の災害等にもかんがみまして、特にこの炭じんの問題を本年度は、特に重点をおいて技術基準作成してまいりたい、かように存じているわけでございます。  以下炭鉱合理化即応保安対策費、これは石炭鉱山保安技術懇談会という組織を通じて、従来急傾斜採炭あるいは岩石接着等落盤防止のための研究をいたしております懇談会でございますが、その研究費用に充てるものでございます。中小鉱山保安指導費でございますが、これは現在一種のコンサルタントを持っておりまして、このコンサルタントによる中小鉱山保安指導をいたす予定でございまして、指導員が現在三百六十九名おりますが、それは従来も、いろいろと活用方をはかっておりますが、なお、この指導員による指導を活発に行なってまいりたいと思っておるわけでございます。  次に、じん肺関係対策費でございますが、これは昨年同様の金額でございまして、主としてじん肺指導員によりまして、通気改善ということを目指しております。鉱山災害要因分析実施につきましては、災害のいろんな要因が直接、間接にございますが、その要因関係を具体的に究明して統計的に当たっていくというために設けておるのでございます。以下、鉱山保安国家試験実施費司法捜査費鉱害防止対策費鉱山保安協議会費鉱山保安試験審査会費、これらはいずれも現在の法律その他に基づきまして行なっておるものでございますが、大体、前年程度の仕事に相なるかと思います。なお、本年度新しく計上いたしてまいりましたものに、このボタ山災害防止対策費及び保安施設整備のための融資がございますので、これは資料二枚目、三枚目に少し詳しくしたためましたので、これによりまして御説明を申し上げたいと思います。  まず、ボタ山災害防止対策でございますが、昭和三十七年の七月に長崎県江迎で地すべりが起こりました。そのときの災害の事例にかんがみまして、こういうような種類災害を再び繰り返さないということで、佐賀、長崎両県にわたりますボタ山の中で、特に災害発生の危険があります六十五ボタ山につきまして、三十七、三十八に継続して、そのボーリング調査を行なってまいったわけであります。三十七年の調査の終りましたものの中から、特に緊急を要するもので鉱業権者その他におきまして負担能力がないというものにつきまして、本年度は六千八百九十五万八千円を計上いたしました。このボタ山の取りくずしその他災害予防のためのいろんな工事費の半額を補助をいたす。それで、このための費用といたしまして六千八百九十五万八千円を計上いたしました次第でございます。  次に保安融資でございますが、石炭鉱山におきます最近のいろいろな災害発生状況にかんがみまして、保安法規をきびしく適用いたしますと同時に、保安設備整備改善に必要な資金につきまして石炭鉱業合理化事業団から、保安融資として無利子融資を行なう。そのための資金でございます。この融資につきましては、実は三十六年から二億六千万だけの中小企業向け保安融資予算はあったのでございますが、今回は、これをさらに大手炭鉱にも貸し付けて、そうして保安設備の完璧を期したい。こういうことを考えておる次第でございます。その金額は、石炭鉱業合理化事業団により出しますものが、今年度の計上が四億九千六百万円でございますが、さらに従来の保安融資に対する償還金が三千七百万円見込まれますので、計五億三千三百万円がこの無利子融資に充てられるわけでございます。この融資は、合理化事業団から工事費の四〇%を貸し出しまして、残りの六〇%につきましては、大手につきましては開銀中小炭鉱につきましては中小企業金融公庫融資ワクの中から抱き合わせで融資をしていく、こういう方針でございますが、対象設備は、従来よりさらに広げたい予定でございますが、なお、これは目下折衝中でございます。  なお、従来これは、昨年もずっと引き続いておるようでございますが、石炭鉱山保安臨時措置法に基づきまして保安確保することが非常に困難と認められる石炭鉱山に対しましては、通産大臣が廃山を勧告することができることに相なっております。この勧告に従って鉱業を廃止いたしました場合に、これに対します整理交付金及び離職者給付金を交付いたすものでありまして、昨年度は三十万トン分二億一千百円であったのでございますが、今年度は一億七千百万円、二十万トン分にこれは減少をいたしております。  次に、これは新しい保安技術開発ということは、今後いろいろと採掘方法が進みますにつれまして、ますます必要となってまいります次第でございますが、この関係特別研究資源技術試験所におきまして、研究を続けてもらう目的でございまして、主として通気保安を自動制御する、あるいはハッパの保安技術特別研究をする、あるいはガス突出の予知技術を今後開発していくというような諸般の特別研究のために今年度におきまして五千五百万円を科学技術振興費に計上いたしまして保安技術改善に充ててまいりたいと存じておる次第でございます。
  12. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) ただいまの通商産業大臣所信表明並びに予算関係について御質疑がある方は順次御発言を願います。
  13. 大矢正

    ○大矢正君 先ほどの大臣所信表明、引き続いて行なわれた予算説明、これらにつきましては、各それぞれの分野において、いろいろ私ども意見がありますが、特に予算につきましては、予算委員会でも議論をされることと思いまするし、なお、当石炭委員会においても後日あらためて議論が行なわれることと思いますので、そういう点は一応省略をして、先ほどの大臣所信表明に対して二点だけ当面をする石炭対策についてお伺いをしておきたいと思うのであります。  その第一点は、石炭の需給関係の問題であります。御存じのとおり政府が予想していた以上の早いテンポで石炭産業合理化が行なわれましたために、出炭量が急速に低下をして、そのことのために、昨年の夏から、まあ現在も多少そういう傾向はありますが、むしろ石炭不足をしているのではないかという情勢すら一部にあったのであります。そこで石炭の経営者は、盛んに増産運動を展開をして、何とか需要に間に合わせようという態度で臨んできたようであります。しかし、現状をどうかということではなしに、これから半年後ないしは一年後の石炭の需要関係はどうなるのかということを見通して考えますと、どうもそう甘い状態ではなさそうであります。  そこで一般炭の問題については、電力用炭引き取りの問題であるとか、ないしは先ほど予算の中で説明がありましたが、電発による石炭專焼火力の建設等の措置がありますので、徐々にではありますが、方向が明らかになってまいりましたが、むしろ私は、ここで一つ心配なのは、原料炭の需給ということが将来問題になるのではないかという不安感を持っているのであります。それは申すまでもなく、原料炭は、もちろん今日主として引き取りをするのは鉄鋼でありまするから、鉄鋼のこれからの言うならば動向が、どうなるかということも、一つには問題があろうと思いまするし、同時にまた、鉄鋼が大量に海外から輸入をしている原料炭とのかね合いもあるわけであります。  そこでスクラップをする場合におきましても、非常に多いのは、やはり一般炭が今日までの経過でありまして、したがって、能率を高く上げていくということになりますと同時に、合理化をますます進めていくということになりますると、原料炭の出炭態勢というものは、徐々にではありまするが、大きくなっていくということは考えられるわけであります。私は一つには、一体この原料炭というものは、国内の不足の分だけを海外からの輸入に仰ぐ、こういうたてまえが実際の面で貫かれているのかどうかということが一つはあると思うのです。そうじゃなしに、外国から輸入をする、言うならば鉄鋼用の原料炭、鉄鋼だけじゃありませんが、鉄鋼を中心とした原料炭は、ある一定量は一年間にどうしても輸入をしなければしかたがないのだという前提で原料炭対策の需給問題をとらえていくということになりますと、かなりこれは、現状はもっとむずかしくなってくるわけであります。  そこで大臣として、一体この当面をする需給の問題、いや、これは当面だけではなくて、これから先の需給というものに対して、どういう判断をもっておられるのか、まずその点をお伺いしておきたいと思うのです。
  14. 福田一

    国務大臣福田一君) たいへん御心配をいただいて、まことにけっこうでございまして、また、われわれもあなたと同じような、また一つ別には、この何といいますか、国内資源をできるだけ使うことによって、外貨不足を補うというような面も別にもございますので、私たちとしては、今後できるだけやはり国内で生産ができるならば、原料炭を国内の分を使うようにしたい、こういうやり方で進めてまいりたいと思います。ただ、そう言いますと、それならば長期に契約しておるのがあるじゃないか、あるいは将来も、こういうところに入ってくるのじゃないかというお話、御質問もあろうかと存ずるのでありますが、しかしこれは日本の鉄鋼業は御案内のように、三十八年度は相当増産をいたしまして、三十九年度も引き続きこの増産態勢を続けていくことになる、相当やはりふえる予定であります。今後も日本の経済を順次伸ばして輸出額を百億近くまでもっていこうというような態勢になりますと、どうしてもこの鉄鋼業自体の伸びも考えていかなければならないので、将来私は、やはり鉄鋼業というものは、相当程度伸びていく一応の見通しに相なっておるのだ、そういう場合において、もちろん計画といたしましては、といって、それじゃそのときに急に足りなくなったらどうだ、原料炭が足りなくなって鉄鋼業がうまく運営できない、こういうようなことでも困りますので、ある程度は、やはり海外に依存していく形で見ていかなければなりませんが、基本的な腹がまえとしては、いまあなたがお話になったように、できるだけ国内炭を使うという気持で、今後よそとのそういう契約をしていく場合にも、それを腹の中に入れながら私はやっていくようにしたい、それにはしかし、また国内における原料炭が今後どの程度、どういうふうに出ていくか、計画は一応あります。しかし計画と実際とは、なかなかマッチしないものであります。事実をよく見ながら、予定は一応立てておくが、事実をよく見ながら、常に是正するというか、直しながら、方向としてはやはり国内の原料炭をできるだけ使うような方向で指導をしてまいりたい。かように思っておるわけであります。
  15. 大矢正

    ○大矢正君 石炭局長にちょっとお尋ねしますが、質料があるかどうか存じませんが、昭和三十八年度、すなわち現在の年度の国内の原料炭の産出量と、それから海外から輸入をする原料炭の量と、同時にこれは三十九年度の見込みもあわせて、もし資料があったらお答えをいただきたいと存じます。と同時に、これはあなたから御答弁をいただきたいと思うのでありますが、今日まで鉄鋼各社が海外から原料炭を買う場合において、当然のこととして、単年度で契約をするのでなくして長期にわたっての契約だと思うのであります。また、そうでなければある程度価格の話し合いというものは出てこないと思うのであります。そういう実際上の原料炭輸入の今日までの経過は、一体どういうふうに行なわれているのかということをお答えを願いたい。
  16. 新井眞一

    政府委員新井眞一君) まず、原料炭のことしの情勢でございますが、国内のほうで供給いたしておりますのが千百二十万トンでございます。これは鉄鋼、ガス等でございます。それから輸入でございますけれども、本年度まだいろいろ問題がございまするけれども、三十七年度の数字が、いま手元にございまするので申し上げますと、九百八十万トンでございます。それから契約の点でございまするが、石炭側といたしましては、きわめて供給の弾力性というふうな点もございませんし、できるだけ長期に契約をやっていくということが、私どもの願いでございまするので、電力側につきましては、御承知のような状況でやっておりますが、ただ、鉄のほうはいろいろ景気調整も受けまするので、この問において、向こうの都合もございます。そういう面で、いまのところ一年間通じての長期の取引ということには相なっておらないようでございまして、おおむね三カ月、ただ全般的に需要部門別は、これくらいを長期契約をしてくれということは、大臣のほうからいろいろ伺っておりましてやっておりまするけれども、実際の会社別の契約というものは、おおむね三カ月というような状況に相なっております。
  17. 大矢正

    ○大矢正君 今日までのわが国のこの原料炭の状況を見ますと、私はずっと調べてみても、ほぼ輸入炭とそれから国内の供給というものは五分五分という程度で上下やっておるわけですね。そこで、なるほどあなたは三カ月くらいの限度で輸入契約をされるというお話でありますが、ただ私なりに考えてみまして、実際的には、そういうことは長期に行なわれているし、それから国内炭の供給が優先になって、たとえば鉄鋼の不況の際に引き取り量が減った場合には、輸入炭を減らすというやり方ではなしに、輸入炭の一定量というものをまず概念的に計算をして、その上に立って、もし鉄鋼その他の不況による需要の減退が行なわれた際には、その分を国内産の取り引きを少なくするという方向で調節が行なわれてきたのではないかと私は見ておるので、その点はいかがです。
  18. 新井眞一

    政府委員新井眞一君) お話の点とは違っておりまして、こちらの供給量を見合いまして、その上で輸入の量をきめておるわけでございます。
  19. 大矢正

    ○大矢正君 あなたの言うことが、実際上措置としてとられておるということであれば、私はもうけっこうなことだと思うのであります。  そこで大臣に最終的にお答えをいただきたいことは、かりに鉄鋼の一時的な不況、操短等による原料炭の需要の減退が起こった際には、国内原料炭を、これを犠牲にすると申しましょうか、ある場合には、まあ貯炭融資も多少するでしょうが、そういう措置をするのではなくて、輸入炭のほうで調節する。もとより、輸入炭と国内炭を比較して、どうしても外国炭でなければ間に合わない分野もありますから、その点をどうこうというのじゃありませんが、一般的に言われる、国内においても供給可能な原料炭については、それを優先的に考えていくということをこの際、お約束できるかどうか。
  20. 福田一

    国務大臣福田一君) 行政指導のあり方としては、私はそうやってまいりたいと思います。ただ、しかし、それは、それじゃもう、それぞれの会社会社とやはり供給地との間で、また供給の相手方との間で、いろいろお約束しておったりして、どうにも動きのとれないという場合には、これはやはり商売のことでありますから、いまあなたのおっしゃったように非常に不況になったときということを想定してお答えをいたしておるのでありますが、私は、やはり原則としては、国内のものを優先させる、不況になったような場合でも、もちろんやはりできるだけ国内を優先させるということでなければいけないと思っております。ただ、そのときに、この分だけは、これは違うじゃないかというような具体的な問題になりますと、例外的になかなか指導がむずかしいことは起こり得ると思いますが、方針としては、御趣旨を体して措置をしてまいりたいと、かように考えます。
  21. 大矢正

    ○大矢正君 これはここで、幾ら大臣と議論してもしようがないことでありますから、ただ、通産省として、どういう判断を持ってもらえるかということだけでありまして、私は、いろいろな分析をしてみて、今日鉄鋼業というものは操短を緩和したり、ないしは操短を解除したりという形で、これから鉄鋼の需要ももちろん伸びるし、それから鉄鋼の生産量もふえるのではないかという、単純にそうは考えられないわけでありまして、はたして今日の原料炭の国内需要というものが、そのままの形で、ないしはそれ以上伸びていくかどうかということについて疑問がありまするし、同時に、合理化が一段落をつけつつある今日、安定した原料炭の供給ということが可能になってきた状態でありますので、必ず原料炭が、その際むしろ問題になるのではないか、遠からず。そういう心配があるので、いま大臣にお話をしたわけでありまして、その点ひとつ行政上、できる限り措置を講じてやっていただきたいと存じます。  その需要問題で関連をして、もう一つお尋ねをしたいのは、予算の中にもありますし、大臣所信表明の中にもありました、電源開発による石炭専焼火力建設についてでありますが、これは私どもいろいろ聞いておりますところによると、揚げ地発電ということで、北海道、九州というような産炭地での発電でないかのような印象を受けておるのでありますが、しかし、いろいろ電力需用の関係等もあって考えておられることだとは存じますけれども、われわれ考えてみて、九州、北海道における電力の需用量というものも、やはり年々伸びていっていることは事実でありまして、その際に、電力会社——北海道電力なり九州電力に設備をさせるべきか、ないしは電発がやるべきかという議論の分かれ道はあるといたしましても、石炭を東京や大阪まで運んで、そこで火力にするということよりも、やはり現地で火力発電を建設したほうが、実際の電力原価の上において私はぐっと違うと思うのであります。  ですから、いろいろとこれはまあ電力会社との関連の問題もあるでしょうけれども、私は、やはりこの際、思い切って産炭地発電ということを考えてみるべきではないのか。まあ大蔵省その他との話し合いもあることでありまするし、当面、ことしの予算の中にあります三基の分について、すぐ直ちに産炭地発電ができるかどうかは存じませんけれども、しかし、将来の計画があって、五基までつくろうという通産省の意欲がありといたしますれば、たとえそのうちの一基、一基でも九北につくって安い電力の供給をするという方向にあわせて、また、この産炭地振興のためにも資するという意味でやるべき必要性があるのじゃないか。私は中小炭鉱の肩を持つわけじゃありませんけれども、かりに揚げ地発電ということになりますると、力の弱い中小炭鉱は、炭を納めるということがおよそ不可能になるのじゃないかという一つの心配も持っております。まあこれが九北でありますれば、中小炭鉱の炭も、産炭地発電でありますから、これはまあ貨車輸送だけで間に合うのでやれるという面も出てまいりますけれども、東京・大阪まで運んでということになりますと、中小炭鉱では、なかなか手の届かない点が出てまいります。そういう面もありまするので、この際、ひとつ通産省も、そういう考え方を、まあいま直ちに実施をせいといっても無理でありましょうけれども、検討してみる必要性があるのではないかということを大臣に申し上げたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  22. 福田一

    国務大臣福田一君) まずお答えをいたしますことは、検討をしてみろということでございますから、これは検討さしてけっこうだと思っております。ただ、まあ九州の場合、送電線の関係もございまして、需用地との関係があるので、九州の場合は、送電線をどういうふうに措置するかということによって、かなりその問題は解決し得る余地がありますが、北海道になりますと、送電線等の関係からいって、そういうふうな電発のものでやらす、これはまあ電発が、またそこでやってくれればいいのですから、できないことはありませんが、いわゆる彼此流用するというようなことが困難な点に一つ問題が起きようかと思います。  ただ、しかしいまの御趣旨でございますれば、北海道電力自体、あるいはまた、そこいら辺にある産業が一緒になって自家発をやるというような場合も、一つの考え方となろうかと思うのでありまして、いわゆる石炭火力を現地において発電して、そうして安い電力として供給をし得る道がありといたしますならば、これはわれわれは十分、どういう方法であろうとも、これは電発であろうとも、北海道なら北海道の電力会社であろうと、あるいはまた、需用者だけが組合でもつくるなり会社をつくって別個にやろうと、そういうものは、ひとつ考慮してみていいのではないか、こういうふうな考えを持っております。
  23. 大矢正

    ○大矢正君 いま需給関係の問題で大臣に質問をしたのでありますが、もう一つ、石炭産業の当面する大きな問題は、雇用の確保であります。これは申すまでもなく、合理化の急速な実施によって、あらゆる座業が人手不足というような状態に逆になってきております。人手と申しましても、坑外で働く人とか、ないしはお年寄りは比較的多いのでありますが、実際に石炭を出すための坑内作業員というものが不足をしている。しかも若年労務者が不足をしているということがこれからの石炭産業にとっては非常に重大な問題になっているのであります。  そこで私どもとしてはこれをこのまま見過ごしますと、人的な面で石炭産業は立ち行かなくなる。たとえば最近の石炭産業の平均年齢というものは、もう四十歳をこえているのであります。四十歳をこえる平均年齢なんという産業は、およそ私はないと思うのであります。そこまで炭鉱というものは追い詰められてきております。平均年齢が高いということは、家族構成が高いということであり、家族構成が高いということは、とりもなれさず生活する上におきまして、高貸金をとらなければ生活が不可能だということにも通じていくわけであります。  そこで、最近経営者の中では、鉱山学校をつくって中学校卒業生をまずその学校に引き込んで、二年間なら二年間の教育を経て坑内作業員として、これを使用するという考え方をもってやられておる向きもあるようでありまするが、これだけの措置でもって、今日必要な炭鉱の多くの坑内員及び若年労務者を雇用することは、もう不可能なことであります。そこで、根本的にどうすればよいかということになりますれば、私は大臣もこの所信表明の中でうたっておりますように、高能率賃金というその体制が今日の石炭産業の中でつくり得るものがどうかということが一つあると思うのであります。  これは厚生施設を含めた給与の内容が、あまりにも他産業と比較をして落ちておるというこの現状が、一つには雇用問題で深刻な問題を起こしておると私は思います。単にこれは深刻なというだけじゃなしに、もっとひどいのは、企業と企業との間に人間の、労務者の奪い合い合戦をやっているわけです。引き抜き合戦をやっておる。いま、その一番しわ寄せを受けておるのは中小炭鉱であります。中小炭鉱における坑内の、しかも、技術のある能力のある者を、金を出して、これを引き抜きに、お互い各社が歩いておるのが別状なんです。そのために、ここ手年か一年のうちに中小炭鉱で、採算の上では合っても人的な面で石炭産業を、石炭企業を継続していくことができないという深刻な事態が起こるのではないかとすらいわれておるのが今日の実態なんであります。こういう事態をなくするためにどうするかということでありますが、私は根本的には、いまの炭鉱に働く多くの人々に、どうやって一体よい給与を与えるか、あらゆる意味を含めた給与という意味で申し上げますと、よい給与を与えるかということがあると思います。これはもちろん政府施策も必要でありまするし、政府石炭産業に対する。また個々の企業に対する行政的な措置も必要でありまするが、経営者の考え方に、大部分よるところが大きいと思いますので、そういう分野におきましては、十分ひとつやらせるような方向でいかなければならぬと思うのでありますが、私自身考えてみて、国自身の中においても、でき得べき数々のことがあるのじゃないか。たとえばこの全体的な作業をする人々の作業条件をよくするということが目標なのでありまして、賃金さえ高ければ、それでいいというものでは私はないと思うのであります。  たとえばこの間の三池の爆発のときに、阿具根委員から本会議で指摘があったとおり、坑内でガス爆発のために亡くなった方、殉職された方のいわゆる労災保険というものは、わずかに四十万円をこえる程度であるというような、こんな状態、四十万円でかえられるというような状態、四十万円の金では、家族が一年さえも生活ができないじゃないかと私は思うのであります。坑内作業員が考えてみて、自分がもしガスで死んだ場合に四十万円しかもらえないのだ、こうなったら、だれも炭鉱で働くという人はありません。そういうところに大きな欠陥があるのではなかろうかと私は思います。もちろん雇用確保の面でも、中心的な役割を果たすのは通産省でありますから、もちろん具体的な面については、労働省とも関連がありますが、やはり一つには、そういう万一事故の場合には、家族も安心していけるのだという体制を作ってやらない限り、人間を残しておくことは私は困難だと思います。あるいはまた、それだけじゃなしに、たとえばきょうも要望があったのでありますけれども、いま炭鉱の健康保険組合というものは、赤字でもってどうにもならない。それで法律上は、標準報酬月額の六割を、これを病気のために休んでおる期間は支給しなければならぬということになっておるのに、その法律すら実施できないで、四割しか払っていないという現状がある。こんな条件の中で炭鉱に働く人々が、長くいるわけはないのでありまして、そういう、あらゆる問題で、どうやって、一体作業員の意欲を高めるか、作業員が残って、おれは炭鉱でやるんだという気持を抱かせるかという点になってきますと、政府としても、いろいろな私は措置があるだろうと思うのであります。ですから、給与の問題はもとよりのこと、そういう万一の場合の事故の対策、かりに労災が、そういうことになってふっても、特別の給付をもらえるんだ、そうすれば、おれが万一そういう結果になっても、家族は困らないんだという体制を作ってやるとか、あるいは炭鉱の健康保険組合が赤字のためにどうにもならない、しかし国からこういう助成がある、その助成があれば、自分が病気をしても六割の給付——六割の給付じゃない、ほかの産業は七割も八割も実際はもらっておる、そこまでいけるような体制を作ってやることによって労務者が安心をして、万一自分が病気でもしたときには、治療に専念できる、そういうような体制を作ってやるとか、そういうことがなされない限り、いまの日本の石炭産業の雇用の解決はないと私は思うのであります。  そこで私は大臣に、これはひとつ私からの要望として申し上げておきますが、そういう労務者個々の問題、あるいは企業それ自身の問題、それぞれの問題について、通産省が中心となり、厚生省なり労働省なりその他関係諸官庁と寄り寄り協議の上に、雇用対策が万全に立てられるような措置をやってもらえるかどうか、このことをお伺いしたいと思うのであります。
  24. 福田一

    国務大臣福田一君) いままで、述べられましたお気持のことはよくわかるのでありまして、通産省としても、できる限りのことはいたしたいと存じております。ただ、長い目で見ましては、やはり高能率賃金といいますか、石炭産業自体が自立できて、そうしてちゃんとりっぱな給料も払えるし、厚生施設も福利施設もできるという産業に育て上げるということでなければならないし、またその目的に向かって、いま前進いたしておると私は信じております。こういう過渡的な時代におきましては、いま仰せになったような問題は、なかなか一挙に解決できないことがありまして、私は労務者のお方に非常な御迷惑をかけておることを非常に遺憾に思っておるのでありますが、それだけに何か、いまお話になったような労働意欲を高め、また、鉱山に就職することを希望するような方法が、現段階の情勢においてできることがありますならば、できるだけお骨折りをしてみたいと思っております。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も大臣所信表明について、一、二点御質問申し上げます。  まず第一に、「総合エネルギー政策基本的方向を検討し」云々ということが主張されておりますが、一体総合エネルギー政策考え方基本的方向、四十七年までの対策というものがあったら、詳細に承りたいと思います。
  26. 新井眞一

    政府委員新井眞一君) 総合エネルギー政策については、御承知と思いますが、昨年の十二月十六日に答申が出ておるわけでございまして、その内容を概要申し上げますと、昭和四十二年までの前川と、四十七年までの後期にかかれておりますが、四十二年までの考え方、あるいは政策の進め方につきましては、三十七年秋にございました調査団の、あるいは閣議決定によります石炭対策大綱、この線で工夫をしながら進めてまいりますが、後期の問題につきましては、五千五百万トンという生産規模というものは、やはり国のエネルギー政策上必要であるというようなことで考えられておりまして、まあそのための対策といたしましては、いま答申に出ておりますラインは、長期取引といいますか、需要確保の問題、これは考えなければ相ならぬというような形で出ておるわけでございます。詳細は答申案にございますので、ごく概略を申し上げますと、以上のとおりでございます。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 いや、それじゃなくて、総合エネルギー対策としての御質問を申し上げたわけなんです。たとえば総合エネルギー対策があっておりながら、油の問題では出光興産が出るの出ぬのと、通産省が盛んに仲に入って規制をしておるようです。ところがその規制に応じない、一方ではどんどん新規事業を申請されておる、油業界は非常な混乱を起こしておる。  そういう状態の中で石炭産業は、予定された今日までの計画よりもずっと進んでおる。だからまず、このエネルギー対策そのものがふらふらしているから、そうでなかったならば、石炭企業がこれだけ合理化が進んでおるならば、もっと状態は変わってこなければならぬ。合理化だけが先に進んで、あとが全部おくれてしまっておる、こういうことになるわけなんです。  だから一体、電力を何年にどのくらい、油をどのくらいと、そうすると、その油業者に対しては、どういう規制の措置があるのか、そういうことができるのか、できないのか、そういうことがわからないから、私はエネルギー政策というのが乱れてしまっていると思うんです。どこの業界でも、お互い自由競争だからけっこうなことでありますけれども、必ずこのあと破綻がくると思うんです。だから、その基本的な問題、エネルギー総合対策をお聞きしておるわけなんです。
  28. 福田一

    国務大臣福田一君) 私はそのお答えをするにあたって、エネルギーの対策でどういうふうにやっていくのかということになると、電気は電気、油は油、石炭石炭、個々に濃淡の度、あるいはやり方はみな、それぞれ違っておると思います。これが国で管理でもいたしてやる場合には、これはこういうふうにする、このほうはあれを目的にして、何年でこうしていくという政策というか、予定表というものは立てられると思います。はっきりした予定表は、なかなかそうでないところに、いろいろのいま言われたような相互の間における、ある意味においては矛盾というか、ある意味において、片一方にはきつくて、片一方には弱いじゃないかというような問題もあり得ると思います。しかし、それが起こり得る理由は、また、その業界自体が持っておる、内蔵している特質にもよるかと私は思っておるのであります。  そこで、いまお話がありましたから、油の問題でございますが、油は、石油に関する法律、業法がございまして、そして設備の新増設については、これは国がこれを認可する、許可する、こういう法律があるわけであります。そうして、同時にまた、各油の会社が、どれくらいの規模生産していくかということについては、通産省に届け出をする。通産省は、必要があった場合には、あまり需要よりよけいしたような場合には勧告する。たとえば、十万バレル毎月つくるところを十二万バレルつくったら、そういうことをしてはいけませんよ、やっぱり十万バレルということにしておいてもらいたい、こういうことを言うことができる、こういう程度の法律、概略言えば、そういう趣旨のものでございます。  ところが、この間うち、出光の問題が出ましたのは、まあ詳しく言っておると、これは際限がないんでありますけれどもが、要するに、出光が、去年の二月に新しい工場ができまして、設備能力があるものができたわけです。できたところが、いまの現実の状態では、油が必要とする量に対して設備は一三〇%あった。一〇〇%に対して、三〇%。新しくできたものにあまり製造をさせない。それはもう余っているのだから、あとから出てきたものが、そうむやみにやる必要はないんじゃないか、こういうことで、業界内でいろいろ問題があって、あまりその設備を使わせないという形があった。一部、君は理屈があったと思うのであります。そこで出光は、そういう業界から飛び出して自分は自分でやるのだ、こういうことでしょう。自分でやるのだけれども、やったところの姿を見るというと、この出光自身が、われわれのところへ届け出ておったものよりか、いささか増産をしているということがあるわけであります。そういうことからみて、それでは困るじゃないかと、今後、そういうことをされるなら、やっぱりわれわれとしては、はっきり勧告をするがどうだと、こういうことから、いやそれは、まあそういうことをもうしないことにします。で、今後は業法の精神に従ってやっていきたい、こういうことでありますから、まあそれならけっこうだと、こういうことで、あの問題は解決しておるのでありまして、じゃなぜ、そういう出光問題が起きたかということは、石油業法を作ったとき、これは私どものときでないので、その善悪を言うことはできませんけれども、かけ込み訴えといいますか、そのとき業法ができて、新増設が、今度許可制になるから、いまのうちに早くつくっておけということで、どっとばかしに押し寄せた新増設があったわけです。これは認めるということで、石油業法をつくるときに、大体そういうことで、あの業法ができたものですから、これは許可しないわけにいかない。それを許可したから、設備が一〇〇%の分に対して、需要一〇〇%に対して一三〇%の設備ができた。それをそのままに野放しにしたら混乱をするから、大体その設備を今後しばらくの間、相当、まあ二年かかるか三年かかるか、油の伸びにもよりますからわかりませんけれども、それの間は、やっぱり通産省がそれを監督していくというようなふうにしよう、こういうことにしたわけでございます。これは詳しく申し上げていると油のことになってしまえますから……。  また電気は、御案内のような姿においてやっております。  そこで、石炭の場合におきましては、これはまあ、いわゆる有澤調査団の答申に基づいた一つのやり方で、この際、根本的に石炭事業というものを合理化して立て直していくということで始めたのであります。確かにあなたのおっしゃったようなふうに、思ったよりは早く進んだ。合理化のほうが先に進んだ面がありますと同時に、人手不足というようなこと、あるいはまた、将来の石炭産業に対する見込みがよくないということやらで、自発的にやめる人があったりしたために、非常に大きな、一つの根本的な大きな問題を起こしたこともあなたのよく御承知のとおりであります。将来といたしましては、やはり私は、先ほど大矢委員から言われましたように、これが高能率賃金産業に、できるだけ早く近づける努力をわれわれとしてはしなければならない。それをすることによって、初めて人が得られるのだ、まあそういうことをするのに鉱山、大きい山などでは、学校まで作ってやろう、これは石炭だけがやったわけじゃありません。われわれのところは織物の関係もありますが、織物では、前から高等学校を、特殊な高等学校をつくって、そのかわり三年で卒業するのを四年あるいは五年かかって卒業するというやり方で、特殊のそういうものを作ってやっているところもあります。  これは、産業が、そういうふうに非常に人を必要としながら、しかも非常に不況であるときによく起きる現象であります。私は、こういうことも一つの方法だと思いますが、そういうことをして、いまやっていくということも大事だと思いますが、いずれにしても、しかし根本は、その仕事自体が有望にならなければならない。有望であるということは、非常に能率も上がり利益も上がる、したがって、従業員の待遇もよいというところにこなければいけない。また福利施設も十分であるというところにこなければいけないと思うのでありまして、そういう意味合いで、それぞれのエネルギー関係の、油にしてもあるいは電気にしましても、石炭にいたしましても、どの部門においても、それぞれの分野において、いま言ったような高能率であり、生産性も高まり、非常に利益の上がるように、したがって、将来有望なような産業に仕上げていくというのが、いわゆる政策の根本に相なるわけでございまして、その根本から出て、それぞれの業種に応じて必要な施策をわれわれとしてはやっていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣考え方は非常にけっこうだと思いますが、一〇〇%の油なら油の需要に対する施設に、一三〇%なり、一五〇%なりそれ以上も、政府が許可をしているということは、これは業界が混乱をするということなんです。この問題は、大臣が時間がないそうだから、いずれ予算委員会でじっくりお尋ねするといたしますが、そういう基本的な問題がくずれておるから、石炭合理化が進んでしまって、有澤調査団以上の合理化が進んでおっても、石炭労働者の待遇というものは変わっておらない。あなたがおっしゃるような高能率賃金というならば、調査団が出したときは十六トンから十八トンの月産能率です。それがいま三井、三菱、古河、住友で五千トンをこしております。十六トンから十八トンくらいというのが五十トンをこしている。三倍になって賃金が上がりましたか。こんなばかなことがどこにある。能率は三倍になっている。賃金は先ほど大矢委員も言ったように、炭鉱だけは据え置きです。坑内に下がって、そうして危険な場所で働いて、賃金は据え置き、能率は三倍。現にその能率が上がっているのだから、生産性がそれだけ上がっているのだから、賃金もこれだけ上がったということになれば、魅力もわいてくるわけです。ところが賃金は上がらずに能率はうんと上がる、災害は大きくなる。人が減るのがあたりまえです。また、心配いたしますのは、それで、こういうことは、相当のまた投資も今度やられるようですが、そういうことをやって、少ない人間で五千五百万トンも、十分確保することになるころには、今度は先ほど申しました油その他のやつで、またまた炭鉱というものはひどい目にあうのだ、こういうように感じるわけです。  だから、いま私が申し上げましたように、新聞で突いておりましたから、これを読んでもいいのですが、時間がないから読みませんけれども、三井にしましても、五十一トンとか五十七トン出しておる。そうするならば、魅力を持たせるならば、現在能率がこのくらいだから、このくらいまで上がったならば、あなた方の賃金はどのくらいになりますよというくらいのことでなければならないと思う。会社には、一切がっさいの合理化資金から負い上げ資金まで全部貸してやる、あるいは融資してやる、出資してやる、そうしておいて、労働者の優遇に対しては、何もふれておらない。高貸金とおっしゃるならば、これだけの能率になったのだから、諸費金にならなければならぬが、なっておらない。その点が一点。  それからもう一点は、今度二十万トン、また不良炭鉱を買い上げていただくのですが、これは不良で買い上げてもらわなければならぬと思うのですが、そうなりますと、私が心配いたしますのは、ことし二十万トンの中に、おれの炭鉱は入っておるという業者はわかるわけです。おれの炭鉱も買い上げられる。そうするとその業者は、あらゆる設備はそのままにしておいて、一トンでも多く掘るという状態に私はなってくると思う。どうせ自分の炭鉱は買い上げられるのだ、どうせ保要設備をしてもつぶされる。つぶされるところに、金をかける人はだれもない。そうするとむちゃくちゃに人を使ってきて、また大きな災害が起こりはせぬかと私は思うのですが、そういう点について、どういうふうなお考えか、お尋ねいたしたいと思います。  第三点は、産炭地振興に合わしての企業の誘致でございますが、この誘致される方々の意見を聞いてみますと、非常に優遇されておるけれども、開発銀行からのあっせんで利子は八分ですか、九分ですか、高いのを支払わされておる。これじゃ産炭地振興といって、せっかく融資に手を差し伸べてもらったけれども、産炭地特別する必要は何もないじゃないか、こういう意見が出ておるわけなんです。資金の限度ワクがありますから、これは全部が全部といかないかもしれぬけれども、少し有望な産業がきょうとすれば、資金がたくさんいる。そうするとその資金は、開発銀行からの高い利子で借りなければならぬ。だから、金のあまりかからない女やあるいは年寄りが仕事するような産業しか持ってこれない。せっかく産炭地に事業を持ってきても、中高年齢の方々とか、あるいは血気盛んな男の方々とかというものは雇わない。全部女の方々、そういう産業になりつつある。  それからもう一つは、ボタ山処理にいたしましても、いろいろ聞いてみますと、ボタ山処理なんていうものは、最もいい作業じゃないか、人も炭鉱も、そのまま使えるし、ボタ山はなくなるし、悪いところは埋まるし、最もいいじゃないかということで一生懸命馬力かけて、相談してみますと、採算が合うか合わないか、土地の値段が幾らでどうなるのだ、企業がくるかこないかというようなことで事業にならないというわけです。だから、そういう利潤を目的としてボ夕山はやるのじゃなくて、遊ばして四百五十円なり幾らなりの金をあげるよりも、仕事してもらったほうがいいんで、しかもそれが、少しでも開発のために役立つのじゃないかということでやっておるのを、採算をベースに考えて、採算が合わないという点からだめだということで、まだ一カ所も手をつけられていない。  これじゃ、絵にかいたもちじゃないか、こういうふうに考えるのですが、まだ二、三点ありますけれども、予算委員会へいかれるそうですから、私、これで一応質問やめますが、以上三点について御説明願います。
  30. 福田一

    国務大臣福田一君) まずもって、油のことで御理解をたまわっていただきたいと思うのですが、通産省が許可するというのも、大体二年先を目標にして許可する。私がやっても、去年許可いたしました。しかし、それは来年を考え、その時分になれば、そのくらいのことが必要であろうということを認定してやっておる。大体、それに応じております。ただしかし、最初のときの法案のできる前後のときにかけこみ訴えした分は、ふくらみになっている。これを二年か三年の間に、うまく調整をして、許可をあまりしないで、許可を少なくしながら、それじゃ全然しないでいいかというと、許可をしなくちゃ間に合わない。それに間に合わせるように、いまやっている、そういう意味でありますから、それをまず御理解をいただきたいと思うのです。  いま賃金の問題が出まして、能率が上がったのなら、すぐ賃金を上げてやるべきだ、こういうお話であります。これは私は、それぞれの経営者の考え方の問題もあろうと思います。また銀行から言うと、金を貸す場合の問題もあると思います。それは非常な負債を持っている。非常なたいへんな負債を持っている。ほんとうから言えば、銀行から言えば金は貸せないのだけれども、一定の年限がたてば、これは返せるのだ、それだから、ひとつ金を貸しましょう。これは私は、石炭国営ということになれば、いまおっしゃった理論はすぐ通ってくると思うのでありますが、そこいら辺は、あなたよく御存知だと思いますけれども、一つはなかなかむずかしい、能率があがった、能率があがった分でどんどん前のマイナスをある程度カバーして、あるいは利息の支払いが遅延しておるのをカバーしていくというようなことがあります。しかし、そういう能率のあがったのを全部そっちに回していいかどうかということになると、これは……。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう極端な議論じゃないのです。三倍になったなら、銀行に払うのは、その半分でもいいでしょう。三分の二払ってもいいでしょう。しかしあがったから、三分の一程度はあなた方にもやるのだ、かえすというのがあたりまえじゃないですか。
  32. 福田一

    国務大臣福田一君) だから、そういうことは三分の一になるのがいいのか、四分の一になるのがいいか、どうしたらいいかということは、私はそれぞれの炭鉱において、それぞれの経営者と労務者の間のお話し合いできまっていくのじゃないか、政府として、その場合、あがったら、あがった分の何分の一は労務者へやれとか、そういうことまでは、これは国営にしない限りにおいては、そこまでは触れられない。また、そういうことをする場合、経営者としては、労務者だけを相手にはやれないので、やはり銀行とか、その他株主とかいうような、いろんな人との関係もにらみ合わせてやらなければならない。これはいまの経済の時々、動かし方が、そうなっておるからむずかしいと思います。あなたの言われる、少しは何かそっちのほうへも、労賃のほうにも還元したらいいじゃないかというお考えは、私は一つのお考えだと思っておると、こう申し上げておるのであります。具体的に政府がどうせいということは、なかなか言いかねると、こう申し上げておるのであります。  それから、不良炭鉱の問題でございますが、これは二十万トン予定しておりますが、まだ何もきめてはおりません。しかし、あなたのように、おれのところは、どうもだめらしいということを感じておるところがないとは言えないと思うのであります。いずれにしてもいまのところ、この間の三池事件以来、非常に今度局長もかわりましたが、現場等においても、保安ということに非常にいま注意をいたしておりまして、一生懸命いま努力をしておることは、あなたよくおわかりを願っておると思うのでありまして、われわれとしては、できるだけそういうことのないように努力をいたしてまいりたい。かように考えておるわけでございます。  それから、産炭地振興の問題でございますが、これは仰せのとおり、なかなか石炭を掘ることをやめた方、石炭事業に関係していた人で離職した人を使う事業があれば、一番いいのでありますが、なかなかそれはむずかしい面がありまして、仰せのように女や子供を雇う仕事のほうが先にいくということも事実でございますが、しかし、これもお前のところは、あそこへ行って仕事をせいというわけにもいきません。金はできるだけ融資してあげましょう、こういうことはやっておるのであります。普通の仕事でございますと、全然仕事がないのに、具体的に仕事がない、今からやろうというのに金を貸すというのは、民間の銀行であれば、もちろんございますけれども、政府関係金融機関では、なかなかこれはいたさないということにしている。産炭地振興の場合においては、新しくそこへ持っていって仕事をするという場合でも、これを認めて貸すというところに、一つの特徴があるわけで、やはりそういう意味で、政府としてはできるだけやはり、仕事がそっちへ回るようにというつもりでやらしていただいておるつもりでございますが、それが十分いっておらないということでございますが、ことしは予算も、去年十四億が三十九年度には二十七億、約倍にいたしまして、そのほうは予算を倍つけておる、こういうことでございます。  それから、ボタ山の問題でございますが、これは仰せのとおり、非常に最初から議論の分かれておるところでございまして、われわれとしてあまり、そういう利益があがるというようなところへ重点を置いてやりたいとは思っておらないのでありますが、会計法上の問題やら、いろいろのことで、なかなか問題が解決をしておらないことは遺憾であります。しかし、将来は、こういう問題もおいおいひとつ解決の方向に持っていきたいと私は考えて、今までも努力をいたしておるつもりであります。まだ、そこまでいかないのは、まことに遺憾だと存じておるところであります。いずれにいたしましてもいいところをひとつ、できるだけさがして、ボタ山処理等ももっと進めたい。  特に私はあなたのおっしゃったボタ山鉱害、いつか江迎でしたか、あそこで起きたときにもほんとうに一挙両得の案じゃないかと思って、実は私が、大いにこれは推奨してやっておるのでありますが、遺憾ながら、そこまでいっておらないのは非常に残念に考えておるところであります。
  33. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  34. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) それでは速記を始めて。  他に御発言もなければ、通産大臣所信表明並びに予算関係についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  35. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 次に、通商産業省当局から、三池炭鉱災害について発言を求められておりますので、これを許可いたします。川原鉱山保安局長
  36. 川原英之

    政府委員川原英之君) 御高承のように、昨年の十一月九日三池炭鉱におきまして非常に希有の大災害を起こしまして、非常に世間さまを騒がし、かつ諸先生にも非常な御心労をおかけいたしましたことを深く遺憾に思っております。今日までの経過につきまして、担当といたしまして御報告を申し上げておきたいと思います。  お手元に「三池炭鉱爆発災害について」という資料を差し上げてございますので、恐縮でございますが、ごらん願いたいと思います。  災害は、昭和三十八年十一月九日十五時十二分ごろ、三川坑の第一斜坑におきまして起きたものでございますが、罹災者は千二百名にのぼるまことに悲惨なできごとでございました。死亡者の内訳は、すでにこれまでも御高承でございますが、爆発の直撃によりますのが二十名、一酸化炭素中毒によりまして四百三十名の方がなくなられ、かつ、入院後死亡された方が八名でございます。職員と鉱員別に申し上げますと、直轄職員が二十五名、直轄鉱員が四百五名、請負の紀夫が二十八名ということになっております。その後、患者の入院をされた、あるいは通院をされております方々の状態は、これは日々若干の変動がございますが、一月二十六日現在におきましては、入院患者二百六十二名、通院患者四百十名ということに相なっております。  この災害につきましては、災害の直後十一月十二日の閣議におきまして、臨時三池災害対策本部を設置いたしますと同時に、これは技術調査団、俗に山田調査団と呼んでおりますが、九大の山田教授を団長といたします技術調査団が現地に参りまして、原因の調査に当たったわけでございます。現在までに報告を受けております技術調査団の報告によりますれば、第一斜坑におきまして、巻き上げ中の列車のうちの八箱の列車が逸走いたしまして、堆積炭じんを浮遊させ、この炭じんに引火して起こった炭じん爆発であると考えられておるわけであります。炭車逸走の原因は、巻き上げ中の列車のうちいずれかの車両が脱線いたし、これをさらに巻き上げたため大きな荷重がかかり、車両のリングが坑口から約千百八十メートル付近で切断したために起こったものでありまして、このリングが材質不良のために荷重にたえなかったというように推定をされております。なお着火の原因につきましては、これはいろいろな原因が当初推定をされたのでありますが、山田調査団としては、いろいろ実験等を経まして、一応車両と鉄ワク、あるいはベルトコンベヤーのフレーム等が触れ合って出た摩擦熱か、あるいは直接電球が破壊いたしましたフィラメントの火、そのいずれかであろうというふうに推定をいたしておりますけれども、この点につきましては、なお調査研究を進めていくことを期待するという報告に相なっておるわけでございます。なお、これら原因につきましては、別途福岡鉱山保安監督局におきまして、以上の点も含めまして、現在まで調査を続行いたしておりますが、最終的な結論を完全に得るには、まだ至っておりません。  災害発生後、臨時三池災害対策本部を設置いたしまして、いろいろの対策を中央において講じたのでございますが、一応この対策本部は、十二月二十七日に解散をいたしたわけであります。なお、いま現地におきまして、福岡通産局に設けました臨時三池災害対策本部地方連絡協議会は、本部が廃止しまして後も、なお引き続いて続いておりまして、医療対策その他のことに当たっておる次第でございます。先ほど申し上げました山田調査団は、十一月十三日から調査を開始いたしまして十二月二十五日に、一応最終の調査を終了いたしました。十二月二十六日に報告書が提出されておりますが、この報告書は、先般委員会のほうに御提出申し上げたものであります。  で、本災害の発生にかんがみまして、通産大臣から石炭各会社に対して厳重に警告を発しますほか、それぞれの監督部局に対しましても、災害防止のための緊急措置を指令したわけであります。十一月の二十六日また別途中央鉱山保安協議会を開催いたしまして、この協議会から三池炭鉱災害視察班を、これは中野教授を中心にいたします中野調査団といわれれますが、この視察班は、三池の災害等にかんがみて、石炭鉱山保安に関する一般の基本問題を検討するという目的で、現地視察を行ないました。これについての建議書が出されております。この建議書につきましては、現在いろいろその中に、法律あるいは規則の改正等を要しますもの、あるいは行政指導強化してまいりますもの、いろいろなものが含まれておりますので、それぞれにつきまして、目下、あるいは実際に施策に移し、あるいは慎重に検討をいたしておる段階でございます。  三池炭鉱災害発生後、操業を停止しておったのでありますが、私どもといたしましては、坑内の安全と、それから今後とも保安を維持する態勢が十分整っているかどうかということが確認された上でなければ、生産再開は認めないということを基本方針といたしまして、今日まで参ったわけでございますが、まず宮浦、四山の両坑につきまして、会社側から保安整備計画書が提出されたのであります。この整備計画書の内容は、炭じん対策、車道、巻き上げ設備、ケーブル等のいろいろな施設の整備をはじめといたしまして、保安要員訓練や保安管理者その他を含めます保安管理機構の強化等を内容とするものでございまして、これに対して、数度にわたりまして鉱山保安監督局におきまして、整備計画自身をいろいろと修正をし、最終的な整備計画が成りました後、昨年の十二月三日から七日まで、鉱山保安監督局による一斉検査実施いたしました。特に、ガス、炭じん、落盤、運搬、自然発火及び機電関係について、特に重点的な検査を行ないました。その検査の過程におきまして、種々現場におきまして改善措置いたしました。手直しをいたさせておるのであります。  なお、この災害が非常に大きな災害でございまして、いろいろな不安もございましたので、さらに念には念を入れるという意味もございまして、佐山調査団を現地に派遣いたしまして、坑内の保安状況の調査をしていただいたわけであります。  この鉱山保安監督局及び保安状況調査団の調査結果を受けまして、富浦、四山に関しては、生産を再開する態勢が保安的な観点からは整備されたというふうに認めまして、十二月二十日にこの旨を通知いたした次第であります。この二十日から二十六日までは、現地におきまして、いろいろな訓練その他の準備をいたしまして、十二月二十六日から富浦、四山が再開に相なったわけでございます。  次に、三川坑でございますが、まず最初に、四山からの揚炭を運びます第一ベルト斜坑についての整備計画書が出てまいりました。これも四山坑、富浦坑と同様に、それぞれ相当数の訂正を行ない、かつ現場におきまして検査の結果手直しをいたしました。そうして、たとえばコンベアの設継個所にはビニールでカバーいたしますとか、あるいは撒水コックを増設いたしますとか、動力用のケーブルを第二斜坑に移設いたしますとか、その他相当の数の条項につきまして改造をいたしました。これらの状況の確認を一月十六日にいたしまして、一月十六日から第一ベルト斜坑の運転をまず許可いたしたわけでございます。三川の坑内全般につきましては、これはその後、なお引き続きまして、いろいろな点についての検査実施いたした。特に、岩粉散布の強化、逸走防止設備の増強等、種種の改善実施いたしました。特に人員配置の問題につきまして、災害により間接夫関係に被害が多かったことにもかんがみまして、その人員のバランスをとることに特に重点を置きました関係上、全面再開でなくて、その人員の均衡ある配置に見合った限度で生産を再開し、今後、人員補充が実現いたすにつれまして、逐次、次に移っていくというような趣旨をもちまして、三川坑を一月二十一日に部分的に、かつ段階的な再開を認めたのでございます。この間、いろいろと先生方に御心労をわずらわしまして、まことに恐縮に存じます。
  37. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 本日は、これにて散会いたします。   午後二時五十五分散会      —————・—————