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1964-06-22 第46回国会 参議院 商工委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十二日(月曜日)    午前十一時十一分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     前田 久吉君    理事            赤間 文三君            上原 正吉君            近藤 信一君    委員            岸田 幸雄君            剱木 亨弘君            豊田 雅孝君            吉武 恵市君            大矢  正君            椿  繁夫君            藤田  進君            鈴木 一弘君            向井 長年君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    通商産業大臣  福田  一君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 赤澤 正道君   政府委員    内閣法制局長官 林  修三君    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業大臣官    房長      川出 千速君    通商産業省公益    事業局長    宮本  惇君    労働大臣官房労    働統計調査部長 大宮 五郎君    労働省労政局長 三治 重信君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○電気事業法案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告いたします。  本日は、電気事業法案について質疑を行なうことになりましたから、御承知を願います。     —————————————
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 電気事業法案を議題といたします。前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 藤田進

    藤田進君 労働大臣にお伺いいたしたいと思いますが、現在会期末を控えて、最重要だといわれて、総理所信表明にもあったとおり、ILO条約八十七号等批准並びに国内法の整備といったことが問題の焦点でございますが、いわばこういったILO条約批准すべきだという方向性については与野党一致しているわけで、こういう世界的あるいは国内的状況下における電気事業労働者の立場ということについて、若干の質疑をいたしたいと思います。  ILO条約については、念のためにお伺いいたしますが、この国会で与野党間の調整をはかり批准をするということについては、今日、大臣のお気持ちも変わりはないと思いますが、そのとおり認識してよろしゅうございますか。
  5. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいまILO八十七号条約批准問題につきましては、自民党、社会党間で国会対策委員長会談が引き続き持たれておるのでございまして、政府といたしましては、その結果に対して大きな期待をつないでおるところでございます。
  6. 藤田進

    藤田進君 そのような状況であるにかかわらず、かつて、終戦吉田内閣における労組法制定、自後、基準法ないし労調法創設ということになって、当時労調法そのもの憲法に抵触するしないの議論もあったような状態であったにかかわらず、その後同じ吉田内閣において、いわゆるスト規制法なるものが制定され、しかし、当時の議論としては、時限立法としてこれが創設をされたわけでありまして、その後恒久化されるということになったのですが、国際労働環境から見てもこのような民間産業私的資本私的企業労働者に対して、かようなストライキ手段を拘束するということは、これはILO条約批准精神からしてももとるのではないかと思われます。そこで、このILO条約スト規制法との関連について政府の御解釈なり今後の対処すべき方針をお伺いしたいと思います。なお私もすわって質疑いたしますから、すわられたままでけっこうです。
  7. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ILO条約八十七号につきましては、政府といたしましては、民間労働組合はいわゆる労働組合法によって規律をされておりまするので、いつ何どきでも批准可能の状態に相なっておるのでございます。ただ公共企業体並びに国家の職員の労働関係を、八十七号条約にあわせてその関連法規を改正する必要がある、こう考えておるわけでございます。したがいまして、この際民間関係労働法規につきまして、ILO条約八十七号の批准理由とする改正は、考えておらないわけでございます。
  8. 藤田進

    藤田進君 スト規制法制定せざるを得なかったという事情、これはどのように把握されているんでしょうか。
  9. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これはいろいろ事情はあったろうと思いまするが、まず当時の日本労働事情と申しますか、労使間の関係、これがまあ一つの大きな理由であったことは、疑いのないところだと思います。とし同時に、何といっても一番大切でありました点は、電気専業日本国内におきまする社会的な重要性、そのために噴気の供給が遮断されるようなことがありましたならば、国内においては社会生活が成り立たない、こういう点が着目されまして、憲法第二十八条の労働権公共福祉のために制限をするという趣旨で、このスト規制法ができたものと承知をいたしております。
  10. 藤田進

    藤田進君 いま例示された主要な事情が変更されている、その心配がないという事情に明確におかれる場合には、もはやスト規制法の必要を認めないということにも論理上なりますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  11. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) スト規制法は、憲法上認められておりまする勤労者労働権を制限するという趣旨立法でございまして、当然相応の理由かあってつくられたものでございまするから、その理由が全くなくなれば、その立法趣旨はなくなるわけでございまして、当然廃止されてしかるべきものということは、論理一的にそのとおりだと思います。
  12. 藤田進

    藤田進君 その議論は後に譲りまして、しからば、スト規制法下における関係労働者労働運動あるいは団体行動なり、といったようなことについて、どういう成果があったのか、スト規制法そのものが何らかの労働情勢というものを変革したかどうか、この点の分析についてお伺いをいたしたい。
  13. 三治重信

    政府委員三治重信君) これには見方によって違いがあるかと思いますが、このスト規制法によりまして、その前に停電行為が行なわれていたのがストップして、それ以後電気供給が完全に事故なく確保されているという事実はございます。それの有力なものは、またここにこういうような法律をつくる契機になって、組合内部におきましても、その前のいろいろな過激の労働運動というものが、組合自身の動きによって相当組合運動としても、われわれから見ても改善されたのも非常に大きな原因だというふうに思っております。
  14. 藤田進

    藤田進君 そうすれば、スト規制法によって公共福祉ないし企業資本というものは守られてきた、こう言えると思います。しからば、その規制法下における労働運動制約というものから、その当該労働者というものは、法の適用を受ける労働者労働条件、こういうものの推移を、スト規制法施行前と以後との動向についてひとつ御説明をいただきたい。
  15. 三治重信

    政府委員三治重信君) その統計的とか具体的な数字については、いまちょっと持ち合わせございませんが、先ほども申しましたように、はっきりスト規制法以後スト規制法の対象となるような労働運動はなかったことは事実でございます。したがってその法律の効果といたしましては、その以前に非常に公共の利益に反するような停電行為その他供給を害する障害行為が行なわれたのが困ったということでございます。それはまた、一面われわれのこのスト規制法制定精神は、争議行為としてもやはり許されない社会通念上当然のことを規定したということであります。それが確認された。その確認されたことを労働組合運動としても内部的に守って、そういう運動が起こって、労働組合自身の姿勢も直って非常な正常化をしたというのが具体的な事実だろうと思っております。
  16. 藤田進

    藤田進君 昭和二十二年以後二十七年当時のわが国の一般民間産業における基準賃金を含む各種労働条件と、その後におけるスト規制法下労働条件というものは、これを電気事業に取ってみる場合に、昭和三十七、八年の統計はすでに出ているはずです。どういう推移をたどっているか。相対的にいえば民間産業との割合、ひいては電気事業経理に占める人件費資本費、あるいはその他の経費の占める割合というものがどうなってきたか、これはお手元資料がなくちゃならぬはずです。説明をしていただきたい。
  17. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) まず、賃金について申し上げます。  賃金につきましては、昨年の産業全体の平均賃金は三万二千七百二十七円でございまして、それに対しまして電気業だけを取り上げてみますと、四万八千三百七十四円でございます。ただ、これは平均的な数字でございまして、年齢構成とかあるいは勤続年数別労働者構成とか、そういうものは電気事業のほうがはるかに高いわけでございますので、比較という点におきましてはいろいろ問題もあるところでございます。単純に平均賃金だけを見ますと、このようになっておるのであります。  推移といたしましては、三十年から三十八年までの上昇率を見てみますと、産業全体の賃金上昇率は七八・四%でございます。それに対しまして電気業賃金上昇率は七三・一%でございまして、若干電気業のほうが上昇率が小さくなっております。  なお企業経費等の中に占めます人件費割合について見ますと、昭和三十年の上期ごろは製造業合計数字で申し上げますと、売り上げ高、つまり総支出ということになりますが、企業の総支出の中に占めます人件費割合は一一・六二%、三十八年上期の人件費割合は一〇・〇五%というのが一般産業のほうの人件費割合動向でございます。電気業につきましての人件費割合はちょっと手持ちの資料がございませんので、また後刻調べ先生のほうへお届けしたいと思います。
  18. 藤田進

    藤田進君 いまの四万八千三百幾らというのはどういうものですか。基準賃金あるいは年間の総額を十二で割ったとかいうようなものですか。そして何年か。
  19. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) ただいまの四万八千三百七十四円という電気業平均賃金は、いわゆる定期的な給与のほかに賞与等特別給与も含めました現金給与の毎月の平均額でございます。それの昨年、三十八年中の平均数字でございます。
  20. 藤田進

    藤田進君 それはどこの統計です。
  21. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) これは労働省で毎月やっております毎月勤労統計という統計の結果から出したものでございます。
  22. 藤田進

    藤田進君 毎勤は事業者から取っている資料じゃないの。
  23. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) 毎月事業所から調査表を提出させまして、それを集計したものでございます。
  24. 藤田進

    藤田進君 われわれのほうに電気事業連合会調べとして提出されている資料によると、三十八年は基準賃金の金額において三万二百七十五円、それからいまあなたの言う総所得から見たものが四万六千百四十四円、三十七年が四万四千八百円。そうすると、二千幾らあなたのほうがサバを読んだことになる。これは突き合わしてもらいたい。
  25. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) これは賞与を含めました数字でございまして、賞与を除きまして定期的な給与だけについて見てみますと、われわれが三十六年で大きな調査をやっておりますが、そのときの電気業定期給与平均は二万九千百六十六円でございますので、昨年の分はまだできておりませんが、おそらく電気事業連合会のほうの数字程度にはなっておるのではないかと思いまして、そういう給与の範囲を限定してまいりますと、おそらくそういう数字になろうかとも思います。
  26. 藤田進

    藤田進君 これは時間がないので……。数字がまるきり違う。電気事業者が出している資料はたくさんあるのですよ、賞与幾らなり、初任給幾らなりと。それをスト規制法議論を出すと、これでいいのだということをいわぬばかりにやっているのだが、電気事業者が出していないのに、労働省が別に出していれば別だが、これは数字がこんなにふえるわけがない、月に二千幾らという……。これは総額なんです。いま言っているやつは。おかしいですよ、合計何とかというのは。至急にもっと的確のものを出してもらいたい。まあだれが何といっても、お盆なり年末なりのいわゆるボーナスというか臨時給与といったそれが、電気事業がその他の関連において最高になることはないでしょう。三万二千円と四万八千円と、こういうのでしょう。ほかの平均電気事業比較が何しろ一万六千円弱月額にして高いと。そんな資料どこにもないです。いま各地から資料をとっています。当該労働組合の出している資料もここにある。こんなばかげた資料——そんな考え方で統計をいじっているから労働大臣方針を誤らしめる。この点はひとつ通産省公益事業局長でもいい、そこへ出てきている資料はどうなるの、総額
  27. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 私のほうで、三十八年六月に中労委から発表されました資料に基づきますと、電気事業の、これは電力会社七つでございますが、平均は三万二千九百十三円、内賃金でございます。それで、全産業に比べまして、これはそのときは全産業のほかに製造業、パルプ、肥料、化学工業、製鉄、機械、電気機器云々、こういう中で、平均賃金といたしましては一一九・七%でございます。ただし、これをいろいろ男女構成、あるいは年齢勤続労働時間等を換算というようなことで修正をいたしますと、九一・四%という数字が、これは中央労働委員会から昭和三十八年六月に出たというのが私の手元にございます。
  28. 藤田進

    藤田進君 労働省は、労働者サービス省ということでまあ発足したわけですから、労働大臣はそのおつもりでおやりになっていると思う。だが、統計に関する限りは、とり方で表面いかようにでもなる。社長以下そういうものを含めてこれは統計をとるのか、あるいは管理職は別にするのかといったような、いろいろのものをとられてけっこうですが、表面に出される場合は、注釈がなくちゃならぬです。どう考えてみても、勤務年数なり、それから家族構成、あるいはその他の経験年数、したがって年齢等から見て、全産業ないし、製造業以下ずっと出ているわけですけれども、非常に低くなってきている。昭和二十五年、六年ごろ主として中労委調停案による解決、例外なくそれが解決案になっていたわけでしょう。当時の全経費に占める割合等から見ても、一時は中山伊知郎中労委調停委員長から、大体企業のコストの中に占める労働関係人件費というのは五〇%をこえてはならないという勧告が出たくらい、五〇%をこえていた時代もあった。しかし、これは終戦後のアブノーマルな時代と、ある程度私もそれは認めます。認めますが、その後生産性、これは設備産業でしょうから、生産性が上がるとすぐこれに対応して同じ比例で上がっていくということもいかがかと思いますが、それにしても今日全経費に対する人件費割合というものはどうなっていますか、最終的にたとえば昭和三十八年度でですね。
  29. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 三十七年度の数字手元にございますが、昭和二十九年度と三十七年度の対比をさしていただきますが、二十九年度は総支出が二千九十四億円でございます。人件費は五百三十億円、したがいまして約二六%でございます。ところが、三十七年度は総支出が六千三百十九億円、人件費が千五十億円、約一七%でございます。それから三十八年度の下期だけで見ますと、約十五%というふうに下がってはきておるわけでございます。ただ、先生御存じのように、ただいまおっしゃいましたように、電気事業は非常に何と申しますか、膨大な設備産業でございまして、資本費その他の割合が御承知のような電源開発その他のためにふくれ上がってまいりましたので、割合が下がってくるのはある程度——人件費と総支出との割合が下がるのは、中身自体は別といたしまして、ほかがふえるので、ある程度傾向としてやむを得ないのではないかと考えております。
  30. 藤田進

    藤田進君 そうすると、人員の異動従業員数異動、これはどういう傾向をたどっていますか。
  31. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 手元昭和三十七年度の統計がございますが、これは九電力合計で十四万三千二百六十一人、これは三十六年度に比べまして三十六年度末で十三万二千四百十八人でございますので、約一万一千人程度ふえている次第でございます。三十八年度の統計はただいま至急調べます。
  32. 藤田進

    藤田進君 これは電気事業者から出している調べで、昭和二十六年の五月が十三万九千五百四十九人なんです。そうして三十七年の九月になって十三万六千四百五十四人、ですから三千程度減っている。それから設備はどうなっているか。設備はふえているのか減っているのか。どのようにふえているのか。販売電力量でもいい、あるいは設備能力でもいい。
  33. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 発電設備で申し上げますと、九電力だけで申し上げますと、二十六年の五月一日が八百五十三万五千キロワットでございましたが、三十七年度で二千百三十三万八千キロワット、したがいまして、当時で約二倍半くらいにふえており、現在は約三倍近くになっております。
  34. 藤田進

    藤田進君 お話のように、設備はこれはもう三倍近くになっている。しかし、これはいわゆるオートメーションで、機械的にこれを言おうとは思いませんが、事業量がふえるということは間違いございませんし、それから生産性はしたがって上がっていることになる。同時に、従業員というのは逆に三千くらい減っている。そうして企業の中における人件費の占める割合というものは、終戦後二十四、五年ごろの少なくも五〇%程度から、公益事業局長は二十九年をとったが、それでも三六%の人件費の占める割合、それが三十七年の下期を見ると一五%に下がっておる。大体そういう傾向をたどっているわけです。総賃金と言われるけれども、これは夜間のいわゆる三交代勤務もあります。これは変発電所はそうです。三交代勤務ということになれば、基準法上、他の産業とは違って、総収入はこれはふえますね、昼間の労働だけじゃないのですから。と同時に、時間外勤務というものも当然相当出てくる。こう考えてくると、他の製造業等比較して、またその労働質的構成等を見たときに、労働省統計がいうように、他の産業平均よりも少なくとも二万三千円ないし五千円というような優位にあるということは、これは説明は別に、統計上、私はこの会期中に、審議中にいただきたいと思いますが、こういうことはあり得ない。そこで労働大臣御答弁の、創設当時スト規制法の必要というか、その動機をなしたものは、労使間の労働関係の特に事情にあった、労使間における労働組合状態というものを説明されたと思うのです。これはもう相対的なもので、資本労働のいずれが行き過ぎたとか、いいとか悪いとかいうことは、これはやはり相当深く掘り下げて検討してみなければなりません。そのときの政治事情等から労使間で解決のできない状態に間々逢着して、中労委なり、あるいは通産大臣なり、労働大臣なりというところまで問題が来なければ解決をしない、現在の公労法関係労働者、あるいは公務員法関係労働者と同じような状態が当時あったのか、なかったのか。こういうことも労使関係の紛争時には大きな問題として出てきます。それからもう一つ指摘されたのは、電力事情ということですね。しばしば停電するというようなことは、民生の安定なりあるいは産業の復興なり発展に対して阻害することがあったかもしれません。この二点を指摘されたわけです。しかも、その状態がその創設動機となった、二つ指摘されましたが、この事情がなくなれば、当然スト規制法というのは本来の姿に、憲法二十八条で労働権は保障されているのですから、少なくとも現行労働法並びに基準法労調法の線までは、つまりスト規制法はこれを廃止すべきだといわれたと思うのです。そうなってくると、現状認識と将来の展望について、特に電気事業関連してこれを論ずるならば、労使関係というものが現状どういう——スト規制法創設当時と違っているのかいないのか。あるいはいま、スト規制法を必要としないとかりに判断できても、近き将来なり、創設当時と同様な事態が発生すると見るのか、見ないのか。また第二の理由である電気事業における、特に電力の需給と客観的経済事情というものから見て、創設当時の要素と同様な事情にあるのか、ないのか。こういうことがスト規制法をこの際廃案にする、法の撤廃をするかどうかということに当然関連してくると思うのであります。この点について、スト規制法創設当時と現状との比較において、どういうふうに大臣の言われる二点についての現状分析、把握をせられているか、お伺いをいたします。
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まず労使間の関係でございまするが、私はスト規制法制定当時に比べまして、今日の電気事業における労使関係は最も堅実な関係になってきておるということを認識いたしておるのでございます。そういう意味におきまして、今日スト規制法撤廃ということ、特に電気事業関係労働組合の諸君から強く要望されていることも事実でございまして、労働関係だけから申しまするならば、非常に当時と実情が違ってきていると思うのでございますが、何ぶんにも今日国民生活におきまする電力供給事業の占めている重要な地位というものは、ますます大きくなっているのでございまして、電気供給が停止するというようなことに相なりますると、これは社会生活の大きな混乱を起こすことを否定できません。そういった意味から申しますると、やはり電気事業についてストライキというようなものはないことを希望するのが一般気持ちであろうかと思うのでございまして、この二つの点をにらみ合いながら憲法二十八条の労働基本権というものをいかに取り扱うべきか、これは今後の課題として労働省では慎重に研究しなければならぬ大切な問題であると思っております。
  36. 藤田進

    藤田進君 労使間の関係はわかりましたが、当時の電気事情、特に電力事情というものについて、スト規制法創設動機一つとしてあげられたわけですが、現在と当時とでは相当変わってきているように思います。スト規制法を必要とするという状態かどうか。たとえばストライキを決行するという場合には労調法というものを残す以上、これに制約があるわけです。同時にスト規制法の内容の理解次第ですが、私が見ますと、スト規制法なるものはこれは違憲立法ですから、何もおそれることもないと思います。しかし、ある以上、悪法であっても、できるだけ法は守るという気持ちの人が多いから、何らかの障害になっていると私は思うので、廃止論を出すわけですけれども、これでもって労働条件を低下するならば、相対的にですね、他の産業から比較してみて、ストライキという手段は当然電気事業に支障を来たす、やっちゃならぬということになれば、一種のこれは強制労働です。それはやめていけば別ですけれども、かなり電気事業では長年勤務した人たちが定年を待たずにやめていく傾向が強いのです。それからこの間木川田参考人に対しても申し上げたが、案外電気事業に優秀な新規学卒が集まってきにくい状態にある。これは何を物語るかというと、結局諸般の事情労働条件等を中心に魅力がないということ。したがって、私は電気事業をそれほど重要な国の基幹産業として扱う以上、それ相当の労働者に対する待遇は考えてしかるべきものだ。特に内部保留も漸次充実してくる。償却についても相当な前進である。電気料金の値上げということはわれわれも賛成いたしませんが、それを待つまでもなく、労働条件に回し得るものは回す必要があるが、依然として合理化を進められるけれども、労働条件に回ってこないということから見れば、現在労使間もまことに健全であるということであり、かつ将来を展望するときにそれほど心配もない。電力事情はすでに供給余剰設備も持ってきたことであれば、当然ILO批准ということの精神においても、財産権を公共福祉云々によって制約するということとは違って、労働基本権である憲法二十八条の制約ということを意味する以上、この際廃止することか適当ではないか、こう思うわけであります。一面の労使関係の健全性はいま御答弁になりましたが、その他の事情についていまだスト規制法を存続すべき理由があるのかないのかの御説明をいただきたい。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御承知のように、この法案が当初時限立法でありましたのを恒久立法に改められたのでございます。しかし、それにいたしましても、労働立法、ことに憲法に保障されておりまする労働基本権を制限するというような法律の問題でございまするから、労働省といたしましては、常に社会の情勢の推移を検討いたしまして、この法律が現在の社会にとって真に必要やむを得ざるものであるかどうかということは、常に確かめていくのが当然であると思っておるのでございます。現在の段階におきましては、私どもといたしまして、ストライキを制限せられておりまする電気事業関係労働者労働条件の維持改善に対する措置というものを常に検討し、それとのにらみ合いにおきまして、このスト規制法の措置も考えていく必要があると思っておるのでございます。何分にも電気そのものの社会的な重要さというものから考えまして、電気供給途絶ということによる一般社会生活の混乱を考えまするとき、今日なおこれが撤廃に踏み切るという決意をつけかねておるような状況にございます。
  38. 向井長年

    ○向井長年君 関連して。いま藤田君から質問の問題につきましては、他の委員会で私は労働大臣にいろいろ質問をいたしました。今後撤廃への方向を持ちつつ、労働省としても検討したい、こういう答弁を他の委員会で伺っているわけです。ただ問題は、いま藤田委員からもいろいろあらゆる角度から質問されましたが、私はこの問題は総理が出られるときに質問をしたいと思っておりますが、特に池田内閣は、常にいわゆる東西の緊張あるいは平和というものは、武力の均衡の上にこれが保たれておる、こう言っているのです。したがって、先ほどの労働大臣の答弁から考えるならば、いわゆる現状においては、現状認識はそういうものを必要としない電気労働者の現在の実情である、こういうことが言われている。一方においては、法律論的には憲法二十八条なりあるいは労調法の三十七条、三十八条の精神から考えるならば、これはいま申しました問題としては法律論からいっても疑義がある。しからば、この問題について当初時限立法であるというゆえんのものは、やはりそういうところに起因があったと思う。正常な労使関係を保つために一時的にこういう制限をしようじゃないか、こういう精神に基づいて時限立法されて、そういう現状認識なりその他の状況がなくなれば、一日も早くこれを撤廃への道をやるべきである。したがって、ただいま自民党の労働部会の方々に伺うと、どういうことを言うかと言えば、しからばこの法律撤廃した場合に、ほんとうに停電ストライキ等をやるのか、そういうことは現在の常識の中でこれはおそらくそういうものはやり得るという問題ではなくて、やはり労働基本権としてそれを持つ、会社は経営権なり、そういう形においてやはり労働権というものは、ただ団結したところで何ら力がないわけなんですから、それに対する行動がなければ力の発揮ができない。したがって、これは一つの平和的にあらゆる労使問題を解決するための一つ手段としてあるべきである。こういう立場から考えるならば、本来あることによって労使慣行がいわゆる力の均衡を持ちつつ諸問題を平和的に解決するという形になってくると思う。そういう問題をやはり労働大臣は十分考えて、現実的な実情の上に立って、これを早くなくする。ストライキやられぬものだったらば要らぬじゃないかというような極端な議論じゃなくて、現状やはりいい労使関係をつくるためには、いま申しました労働基本権としてあるものを付与し、経営者はその上に立って、いろいろと平和的に諸問題を解決するという立場に立たなければならぬのじゃないか。そういう意味において私は先般他の委員会において大橋労働大臣の最終的な、いわゆる労働省において検討をいたしましょう。こういうことは、おそらく与党の中においても、政府部内で将来こういう悪法をなくしていこうという立場に立っておるというように、私はとりまして一応満足はいたしておるわけなんですが、そういうことを私はこの委員会でもあわせて労働大臣に再度御確認をいただきたい。伺います。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は考え方といたしましては、今日社会生活を考えまするというと、電気供給は一日もこれなくしては成り立たないということは事実でございます。その社会生活を擁護するという立場から電力供給の確保ということを考えなければならないことも当然なのでございまするが、その方法といたしまして、スト規制というような方法にのみたよるということがはたして適当かどうか。このことは基本的に私は疑問を持っておる点でございまして、電力供給については、必要最小限度の供給政府として確保すべき何らかの他の措置を考えるべきではなかろうか。そうして、憲法上の基本的な権利でありまする労働権については、すみやかにこれを労働者の手に回復させるべきではないか。こういうふうに考えておるのでございまするので、まだ具体的な考え方として申し上げるところまでかたまっておりませんことを、まことに残念に存ずる次第でございます。
  40. 藤田進

    藤田進君 資料を要求しておきますが、明日の午前中——きょうと言いたいところだけれども、きょうは無理かもしれないので。労働省統計について、電気事業労働者の、これは九社別並びに全体の平均値、これはすでに出たので、これに対して、つまりその中では初任給、これは学卒別に。それから基準賃金賞与その他を含めた総額の月割り。それから、家族構成、勤務年数といったような平均値、これに対応して製造業では食品、綿紡、化繊、パルプ、石油、鉄鋼、機械、電気機器、建設、銀行、保険、海運、ガス、新聞、これに金融、化学産業、肥料その他、こういったものと対応した、政府としてのこれだというものを出していただきたい。われわれは持っていますけれども、ばらばらでは議論になりません。お出しいただきたいと思います。
  41. 大宮五郎

    政府委員大宮五郎君) できるだけ資料の作成には努力をいたします。私の知っている限りでは、ちょっと家族構成などにつきましては資料がまだ集まらないのじゃないかと思いますが、できるだけひとつ先生の御要望に合うような資料を鋭意まとめたいと思います。
  42. 藤田進

    藤田進君 それがないというのは、まことにもってのほかで、それぞれの勤務年数なり、家族構成はどうだとか、経験、能力その他はどうだとか、そういういろいろなファクターに立って給与というものは最近資本主義のもとではきめられているわけですから、そういうもののファクターが全然ないというのでは困る。しかし、まあないものをいま出せといっても無理ならば、あるものだけを出していただいて、あすの午前中までにお願いいたしたい。  労働大臣につきましては約束の十二時ということですから、これをもって  一応本日のところ終わります。
  43. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後は一時再開することとし、これにて暫時休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時三十六分開会
  44. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き、電気事業法案を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  45. 藤田進

    藤田進君 自治、通産両相にお伺いをいたしたいのですが、まず最初に電気税についてお伺いをいたします。  まず、税の原則というのは、これはもう一般化し、定説化しているわけですが、負担の公平というか、この面から見て、電気料金そのものが地域的にアンバランスがある、これは電力、電灯を通じてあるわけです。で、そういういわば家庭等の一般電灯電力については、今日、米あるいは水にひとしい不可欠の生活の物資になってきている。こういうものに租税をかけるということはこれはいかがなものであろうか、まあ戦前以来いろいろ変革を遂げてきておりますが、いわば悪税の一つである。したがって、これをすみやかに撤廃するということが最も正しいのであり、それが地方財政に及ぼす影響については、別途公平の原則なりあるいは徴税上のいろいろな原則を満たすべきものをもって補てんする必要があると思うのです。まあ同時に免税になっているものも現在百十九品目あるようであります。これが非課税対象になっている。これは全体の三割程度になる、こういわれている。したがいまして、税率は逐年若干ずつの低減をされてきましたが、この際電気ガス税を撤廃するということについて、ぜひともひとつお約束いただきたいと思うのであります。この点について、両相からお伺いいたします。
  46. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私も全く同感でございまして、電気ガス税なるものは、一日も早くやめるべきであるという考え方に立っているものでございますが、実際中に入ってみますと、かわり財源のことで、なかなかむずかしい面もあるわけです。しかしながら、御案内のとおりに毎年たった一%ずつでも、とにかく漸減していこうという方向をたどっております。できれば一挙に廃止したいというふうに考えている次第でございます。
  47. 福田一

    国務大臣(福田一君) この問題は、もう私は就任をいたしましてから、二度予算編成にぶつかっております。毎回強くその点は主張いたしておるのでありますが、地方の財源の関係その他からなかなかまだ実現を見ておらないというのが実情でございます。
  48. 藤田進

    藤田進君 その地方財源、かわり財源について問題はどこにあるのです。大蔵省、大蔵大臣のところにこれがネックとして残されているのか。自治省とされて今後解決するそのことは、即かわり財源を見つけることだということになるとすれば、これは大蔵省、大蔵大臣に問題があるのだと解してよろしゅうございますか。
  49. 福田一

    国務大臣(福田一君) いままでの予算編成の経緯等を見てみますと、大蔵省の主張は、電気ガス税は廃止すべきである、そのかわり財源は全然見ないというわけではない、おもな部分は地方でもって見てもらいたい、こういう意図のようであります。大蔵省は。それから自治省のほうは、これは絶対に見てもらわない限りは財源が不足だからこれはやめるわけにいきません、こういうことでございまして、実際問題として見ますというと、一%ずつ減らしておるということ、ふえる量が一%以上あるからちっとも財源的には減っちゃいない。ただ漸増するやつがふえていないというだけで、こういう結果になっておるわけであります。
  50. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 自治省当局といたしましては、御案内のとおりに地方財源が非常に乏しいわけでございまして、いわゆる地方財源をささえる主税の一つにこの電気ガス税が数えられているのが実情でございます。この柱を一つはずされますと事実困るわけですが、御案内のとおりに、たばこ消費税を見合いとして一%ずつ減らしているわけです。しかし大蔵省のほうで、専売納付金やその他の財源をうんと縮めてもいいからそれを上げてやろうという考えなら、これは一ぺんに解決がついてしまうということも考えられますが、ただ、残る問題は、これまた御承知のとおりに電気ガスを大量に消費する工場の所在市町村はかなりこれによって潤っているわけです。たばこ消費税の場合には、全国でもってかりに同額の財源になりましても、やはりそこのいままで大量に電気ガス税が落ちておった町村は非常に不満なわけでございます。しかしながら、こういう特殊な町村に対してまた特別の見合いの配慮をするという案がいまのところ急にはございませんし、どういたしましても問題は残るわけでございますけれども、冒頭に申しましたように、やはりこういう性質の消費税は一日も早く廃止すべきものである、かように私どもは考えておりますし、大蔵当局のほうにも始終かわるべき財源につきましていろいろ交渉はいたしております。しかし、いままでのところ決定打というものはないわけでございますので、われわれとしてもたいへん悩んでいるわけでございます。
  51. 藤田進

    藤田進君 通産大臣、大まかな数字というか、言われているのですけれども、三十六年度が電気ガス税は三百七十七億、逐年ふえて、三十八年が四百四十一億、三十九年度見込みが五百七億と、それは税率は減りましても、絶対金額というものは御承知のように六十億余りずつふえているわけであります。ですから、この税をとるということは、なるほど電気料金と抱き合わせでとっておりますから、まことに徴税としてもイージーでしょう。けれども、非常に電気料金そのものに差額があるということと同時に、絶対最低生活をしていく上にもこういうものは悪税としてかわり財源を必要とするならば、国家財政、地方財政から見ればそれほど大きな金額でもないのだし、これは電気事業法の創設を契機に早急にひとつ関係各省で調整をとられて、撤廃するように御努力をいただきたいと思います。両大臣ともこれが撤廃については基本的に御賛成のようでございますから、この問題についてはこれでとどめます。
  52. 向井長年

    ○向井長年君 関連して。いま藤田さんから言われました地方税の電気ガス税の問題ですが、いま両大臣からも言われましたように、事実上の減税じゃなくて、いわゆる需要が伸びる形の六十億程度を減税をしておる。ただ基礎は、財源の関係でありますけれども、全然変わらない、こういうかっこうになっているんですが、一面これは税の公平から考えた場合に、ただ負担、いわゆる地方財源だけではなくて、税の公平から考えた場合に、これは非常に不合理な悪税だということがいえると思うんですね。ということは、一般産業の中で重要産業については、これは免税をしております。特定な産業は免税をしておる。しかも一般家庭に一〇%というものを過去においてかけてきた。それを今回三%程度減税をした。こういう形になっているんですが、いまもとより撤廃すべく努力しておられることは当然ですが、その前に毎年六十億あるいは五十何億程度これがふえてきておる。これをいま三%の減税を財源に直しますと、約百五、六十億だと思います。したがって本来家庭用——これはいろいろと平均をとってみますと、額に直しますと、約千円程度だと思います。したがってある程度の文化生活、こういう程度まではあくまでもこれをかけてはいけない。したがって現状においてただ三%の減税方式を、できるならば暫定的にこういう中で基礎控除方式という形をとってはどうか。そうして一般家庭用は約千円程度までは税金はかけない、千円以上使用した場合においては若干の、七%なら七%の税金が賦課される、こういう形が、将来撤廃するという形をとりながら、いまの段階において一応税のある程度の公平を持つと思うんです。こういう点について、若干それは地方税ですから、地方のでこぼこ修正はしなければならぬけれども、この点でやはり税の公平から考えれば、まずそういうことも考えるべきだと思うんですが、この点自治大臣はどうお考えになりますか。
  53. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私はそのこともあわせて申しておるわけでございまして、家庭用で消費する電力というものは、これはほんとうに乏しい家庭もあれば、豊かな家庭もありますが、やはり乏しい家庭のためには基礎控除あるいは免除点の引き上げ、あらゆることを考えて、負担というものをなくするというのが私は正しいと思っております。いまでもそういう措置は、御案内のとおりとられております。それから産業用の電力の場合は、今回もまた若干の免税品目を加えたわけでございますが、ただそれも輸出関連ということが主体になっておることは御案内のとおりでございます。ただ電力は、大なり小なりやはりものをつくる過程ではコストの中に当然入ってくるわけでございまして、ただいま公平を欠くと仰せられたことは、産業によっては重点産業で免税である、あるいはこれがほとんど似たものをつくっておるのに電気ガス税を払っておる、そういうことで不公平ではないか、という御趣旨じゃないかと私は感じたわけでございますが、その点は私は確かにあると思います。ですから一日も早くこういう税金というものはなくするという方向へ進むのが正しいのでありまして、ただいま御指摘になりまするとおり、家庭でも、電灯さえ行っていない未点灯の部落さえあるわけですが、やはり三灯とか四灯つけておられる家庭、こういった向きには全然電気ガス税というものについて税金の心配がないというふうに一日も早くいたさなければならぬ、かように考えております。
  54. 向井長年

    ○向井長年君 電灯の二灯、三灯というところは、三百円の免税で若干カバーされておると思うのです。しかしながら、いま言った生活に最も必要であるという、いわゆる水と一緒だというくらいに生活に必要であるというならば、これはやはり本年は一%減税になりましたけれども、来年度は再び需用の伸びる五十億、六十億程度の財源を約一%程度やるのじゃないか、こういうふうに毎年々々一%程度の減税をすれば、これは事足りるのじゃないかという考え方であるやにわれわれ感じるわけであります。しかし、両大臣からも言われるように、これは一日も早くなくしなければならぬ悪税である、必要悪の税金だ、こういう考え方の上に立つならば——しかしながら来年それを全部撤廃できるかと言えば、なかなかそうはいかない、こういうことになってくると思うのです。したがって、そういう過程であるから少しでも税の公平を考えるならば、いまいったような生活に必要な平均値までは免税をする、それ以上はまあいまの段階で一応がまんをしてもらう、こういう方式をやはり自治省なんかは直剣に現在の段階で考えるべきじゃないかと思う。したがって、撤廃しなければならぬとは言っても、しからばいつ撤廃しますか、来年はそうしますと、何ぼ減税するのかということを尋ねれば、おそらく明快に答弁できないのじゃないか、撤廃の方向に努力するという以外に言えないのじゃないか。私はいま言うように、いわゆる税の基礎控除あるいは免税点といいますか、こういう方式をひとつこの際採用する方向で検討されたらどうか、こういうことを私は言っておるわけなんです。
  55. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 免税点は、御案内のとおりいま三百円ですけれども、しかし、これは毎期この免税点の引き上げということについてはもちろん努力はいたしておるわけでございます。同時に電気ガス税撤廃のことにつきまして、絶えず議論はしておるわけでありますが、ただ、私かねてこのことはしつこく主張しております。ただ、私はガスを自分の仕事としてやっておるものですから、特に痛感をするわけです。電気ガス税あわせてですが、ただこれは自治省としては税金はなかなか取りにくいものだけれども、電気ガス税というのはきわめて便利だ、ちゃんと電力会社、ガス会社で税金を集めて、そして、はい集まりましたと言って持ってくるわけでございまするから、なるほど捨てがたい魅力があって、それでしがみついておるのじゃないかという私は実は誤解をしておったわけであります。しかし、事実これを全部取りはずしてしまいますと、当面財源として相当ありますものが消えるわけでございますけれども、やはり役所に入ってみますと、思うようにはいかぬ面もある。ただ、毎年一%ずつ減らしておるのは、なるほどわずかずつで御不満もよくわかります。今後とも少なくとも一%ずつは漸減はしていくわけですが、じゃ来年一挙にこれをなくするかとおっしゃいますと、私としてはちょっといまの状態では確信あることが申せませんけれども、少なくとも電気ガス税につきまして、いま藤田委員がお尋ねになりました方向で、私どもずいぶん努力しておりますので、そう遠くなくこれはなくなる。それからいま御指摘になりました免税点の引き上げの問題についても、毎年努力はいたしておりまするので、御指摘になりましたことにつきましては、遠からず解決いたします。かように考えておるわけでございます。
  56. 藤田進

    藤田進君 電気事業公営復元について過去広範に問題が提起され、電気事業法案国会に提出する時期を失したというか、おくれたという一つ理由になっているわけです。現在なお若干地域について復元問題が未解決のまま残されておるのであります。この公営復元ということは、そのまま往時の電気設備をもとに返せと、これが復元だろうと思うけれども、必ずしもそうではなくて、これにかわるべき補償をくれというのがどうも本音のように伺うのであります。これはどういういきさつでどうなって、現在どのように当局としては処理されようとしているのか、農地補償のようなものなのか、どういうものなのか、まず実態から御説明をいただきたい。
  57. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 復元問題でございますが、まず経過をちょっと申し上げたいと思います。  御承知のように、昭和二十七年の講和条約発効と同時にポツダム政令がなくなりまして、新しい電気事業法というものをつくろうという機運ができたわけでございますが、その際、ただいま御指摘のように、戦時中に無理やりにと申しますか、国家の命令で日発へ合併されたものを返せという動きが出てまいったわけでございます。第十三通常国会におきまして、議員立法電気設備等の復元に関する法律案というふうなものが出たわけでございますが、これも審議未了になったわけでございます。その後、しばしば復元問題が特に与党側から出まして、その都度廃案あるいは審議未了という形でまいりまして、昭和三十二年の五月ごろまで続きまして、結局昭和三十二年の五月に当時の自民党の党三役のごあっせんによりまして、復元問題は、それから先は各電力会社と地方公共団体との自主的な協議にゆだねられることになったわけでございます。その当時残りましたのがたしか十四件くらいでございましたが、漸次片づきまして、現在は四つ残っておる次第でございます。東電の管内が二つ、東京都と都留市、それから東北電力と宮城県、それから山口県と中国電力、こういうのが残って、現在は通産省自体といたしまして、なるべく円満に解決するようにという勧奨はいたしております。  藤田先生御指摘の、じゃどういう性質かということでございますが、これはいわば何と申しますか、権利として主張できるか、法律的には一応片づいておるわけでございますので、何と申しますか、どう表現していいかちょっとむずかしいのでございますが、結局電力会社が経済協力をすることによって——過去におきますそういう問題を、形としては電力会社が自主的に経済協力と申しますか、協力をすることによってこの問題を片づけようというような性質じゃないか、これは法律的にどういうことになるのかちょっと私も見当つきませんが、そんな実情でございます。
  58. 藤田進

    藤田進君 自治大臣が来るまで経過だけ詰めておきたいと思うのです。一般的にはむずかしいと思う、個々の特殊なケースもあるから。いま一番大きい問題として残されているうちでは、大きいものとしては山口と中国電力の間のものがあろうかと思う。これは県議会においては、私ども知事からも陣情を受けました、山口に行った際早くということで。何でも三十億補償してくれということの要求が出たようであります。ところが、これは主として配電設備であって、電気会社そのものが私企業としてかつての山口県営電気であったがために、県へお払いになるということは、一般の住民として、消費者としてそれほど関心はないけれども、しかし今日の私企業、特に電気料金というものは認可制になり、原価主義にもなっておるという事実に徴してみれば、なるほど山口県民は、あるいは県当局は、三十億の財源ができるということは魅力でしょう。けれども、自余の広島、岡山、島根、鳥取という消費者というものはこれは承知できない。これは膨大なものです。いやしくも、これはつぶさに見ると、山口は配電線を中心にかつて統合されたというようです。その配電線などというものは、戦時中を通じてもうおそらくすべては回収済みだろうと思うのです。同時に山口管内というものは、全五県の中では赤字経営をやっている。単独にこれを見れば、赤字の県に三十億でよろしゅうございますか。そうしてもうかっている県のほうが十億。消費者としては、それなら電気代を安くしてくれ、そんなにもうかっているのなら。これは当該企業的にも問題があるし、電気料金の点にも問題があるので、総括原価だ。しからば電発はどうだ。電発は水系別原価じゃないのでしたかね。こういうようなことで、赤字になっているところを黒字だと称して、つまり言いかえれば、電気料金を高く払っているところが赤字、つまり原価からいえば、赤字の県にさらに三十億を山口県以外の県民需用家は負担しなければならぬということが出てくるわけですね。なぜなら、出さなければそれだけ料金を下げてもらいたい、こういう矛盾があるが、どうも無理やり法令によって強制的に取った、しかも時価を無視して取ったというようなことなのか。あるいは各地で公営復元——ぼくは、山口県が当時の設備を復元してくれとおっしゃるならば、電気会社は返せと言いたい。返して経営してもらえばいいじゃないかと言いたいところだが、これは全体の電気の公益性から見てもそうもいかないでしょうけれども、一体どういう歴史的なものがあり、ここに要求する権利というものが生じてきたのか。そうして経過を見ていると、各地とも結局需用家がばかをみたかっこうになっている。それぞれ従来県知事に水利権というものがあり、水利権をたてに一つの権力による解決ということが否定できない状態が高知県を皮切りに各地で、宮崎その他で出てきておる。これでは非常に筋の通らない解決になっているように思うのです。いきさつ並びに現状、見通し等についてお伺いをし、自治大臣に対しましては、こういうことをしなければ地方財源に困る、非常に筋道がどうも通らないように思うのです。しかも、膨大な要求であるし、黒字、つまり原価より高く支払っている需用家がこれを負担しなければならないという結果になる。そういうことで地方自治行政というものがあっていいものだろうかという私は疑問を持つわけです。御所見を伺いたいと思います。
  59. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 電力のことは通産省の所管でございますので、当局のほうで詳しいお答えがあると思いますが、私は自治大臣としていわゆる電気を公営企業でやるかどうか、これが適切かどうかということについては非常に疑問を持っておる者でございまして、いまの小水力発電に至りましては千をもって数えるほど、とにかく川さえ見れば何かそこで電気を起こしたり、そうして起債を要求をされます。しかし、こういう事業は公営でやって必ずいい成果があがるとも考えておりませんし、ほかのガスやそれから公営交通、あるいはその他水道、病院などと違って電気比較的安定はしておりますが、ただ名目は地内の電力を一部まかなう。たとえば農協の脱穀機なんかを運転するためには、やはりここに電源があるのだからこれでやりたいというようなことが主体になりまして、いろいろ御要求があるわけでございます。余る電力電力会社に売電をして、そしてキロワットアワー幾らということで契約をして、そして取ってもらう。これにつきましては、やはり電力会社のほうでも、買い手市場になりますので、なかなか町村が希望しておられる価格で買い入れもいたしませんし、なかなかトラブルも起こっております。ですから、私どもはやっぱりこういう川さえ見れば何か電力を出して、そしてそれを地方財政の財源に充てていくという考え方は、私はむしろ正しくないのじゃないか、こういう川のある町村ばかりではありませんから。ですから、やはり地方団体の財源は、やっぱりこれは他に求むべきであって、たまたまここで有利な電源というものがありましても、できればこれは、電力会社と申しますか民営でやるものはやる。投下資本がなかなか相当多額であって、民営でやるということがたえがたいという場合には公営ということも考えられなくはないと思いますけれども、しかし、全体といたしましては、私は非常に疑問を持っております。ですから、せっかく出発することになっております地方公営企業制度調査会で、私はこの問題もあわせて公営企業のあり方並びに経営、また将来の問題点につきましても検討をしていただきたいと、かように考えておる次第でございます。
  60. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 山口県につきましては、ただいま先生のお話にございました三十億円というのは当初の要求でございまして、現在は電力会社との間にだいぶ差が縮まってまいりまして、県側の要求は十億円というようなところまで下がってきております。ただ御指摘のように、われわれ自身といたしましても、こういう十億なら十億という金は、これはやはり総括原価の中に入るわけでございますので、そういうのをどういう形で出すかというような問題は確かにございます。しかしながら、過去からのいきさつで、それはもちろん十億円についても一ぺんに払うわけじゃなくて、ある程度の年賦で長くというような形で、会社全体の経理自体にもそう影響を与えない程度には何とか薄めまして、そして過去からのいきさつ上やむを得ないものとして処理をさしておる、こういうふうなのがいままでの現状でございます。したがいまして、確かにすでに本質的には一応片づいたはずのものがこういう形でいろいろ出てまいりまして、それにつきましても、できるだけ総括原価その他に影響がないようなしかたで、できればなるべく少なくしてもらいたい、こう考えておる次第でございます。
  61. 藤田進

    藤田進君 法律的に解決しているが、それも結局は電気会社経理といえども需用家の負担になるわけです。それだけサービスの強化をしたらよろしいのです。そのサービスがそれだけは少なくとも低下する。三十億要求して折衝したら十億でいいという。また折衝すると三億でいいかもしれないが、一体こういう地方行政のあり方でいいのだろうかという私は疑問を持つ。赤澤自治大臣に求めたのは、特にこの点です。そしてこれには舞台裏ではこれは当該県では与野党も何もないのだ、取りさえすればいいということになって。そうでない県は表向き反対ともいえず、それが組織化されるわけでもないし、これはもうまことに筋の通らない話です。どうしても出さなければならないというその理由がないのに、ただ政治的な解決で出すというのは、この問題山口県についてはたまたま出身地でもあるし、いま御承知のいろいろな焦点に立っておられる佐藤通産大臣のときに私は申し上げたことがある。そのことは、いまいろいろ重要な問題の前ですから、ここで触れませんが、御答弁等は触れませんが、これはまあ大まかに言えば私と同じ意見でした。ところが、元は、前総理をやったとかなんとかという人とか、そんなような人を使ったり、いろいろなことをやっている。だから、その人にも私は会いました。この事件としてはもうがまんできない、全体として問題を提起すると、こう申し上げたわけですが、従業員自身も合理化合理化でたいへんなものですよ、職場では。新聞でも全部とっていないような状態です。最近では。従業員一人にすれば、約二十万です。一人二十万円です。あそこでいえば。それがゆえなしに——水利権が何かに関連して出さなければ、その辺に響いてくるとか、何だかんだに響いてくる。政界のほうが舞台裏で動いたりするというようなことであってはならないんじゃないか。これは自治大臣としても、所管大臣である通産大臣としても、出すべきことは、出させる必要があるものは行政指導をされてもいい。原価主義でいこう、原価の査定をして料金を許している以上、そこに監督指導される当然の立場があろうと思う、通産大臣なり自治大臣としては。単にそういうところにまかして、合理的であればいいけれども、そうでない場合にはアジャストされる必要があるのじゃないだろうかと思うのです。  そこで、まず第一の、どうしてこういうものを出さなければならないのかという、その権利というもののひとつ根源から説明していただきたい。
  62. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 法的な問題に限りまして経過を申し上げますと、御承知のように昭和十六年に配電統制令が出、九電力会社にいろいろな配電線その他が合併されましたときに、配電統制令の第二条または第二十六条の規定によりまして、配電会社に対しまして出資または譲渡された設備につきましては、株券とか社債等によりまして、配電会社と出資者または譲渡者との間に決済が行なわれたわけでございます。したがいまして、配電会社とそういう人の間には、補償等の問題は残らなかったわけでございますが、配電統制令の三十四条で、地方公共団体及び電気、鉄道業者に対し、配電会社がその設立の日から十年間一定金額を支払うべきことを定めたわけでございます。これがいわゆる公納金というものでございまして、その公納金制度はできましたんですが、昭和二十七年以降は実際は支払われておりません。と申しますのは、なぜかと申しますと、この公納金を払う場合というのは、要するに出資をいたしまして、電力会社から一割の配当をもらっても、さらに、初め出資したときに、利益が一割より多かったという場合に払われるんですが、その後毎年必ず一割の配当額がくる、あるいは増資がくるというようなことで、その後は実際問題として払われておらないわけでございます。  またもう一つは、その場合に、配電会社に対しまして法人税の減免措置というようなことがこれの見合いに行なわれておったわけでございます。そういう規定があったわけでございますが、御承知のポツダム政令の公益事業令ができましたときに、公益事業令の附則でその公納金の制度が形だけ残っておるわけでございます。しかしながら、その場合に、先ほど申し上げましたように、出資をした人も当時の損失を十分に償うだけの利益を受けておりました関係上、実際問題としては公納金は全然支払われておらないわけでございます。したがいまして、法的なつながりと申せば、そういう制度が公益事業令の附則にもありましたけれども、現実に動いておらない。したがいまして、電気事業法に移りますときに、この規定はやめてしまったという——形は、法律的なつながりは多少残っておりますが、現実には何と申しましょうか、絵にかいたもちと申しますか、現実には山口なら山口の、これはおそらく中国電力の相当な株主だということで現在おられるわけでございますが、すでに一割配当——必ず配当がいくというようなことで、配電統制令当時の関係という——関係と申しますか、損失は完全に償われているという形で法律的には今日までまいりまして、したがいまして、電気事業法をつくりますときには、この公益事業令にありましたこの配電統制令の規定はもうとらないで、完全にこれからは新しくそういうこととは関係なくスタートしたという形になっております。
  63. 藤田進

    藤田進君 だから、聞いておられる委員の皆さんもちょっとおわかりになっていないと思う。私にもわからないのは、公納金の滞納分相当額を元利計算の結果何億と、これを返せというようにも聞こえるし、いま例示した山口県の場合も、全体の資本金から見ればごく一部だけれども、当時株式を保有して、現在までに増資増資でやはり至っているわけです。あるいは役員を出すとかいろいろなことがある。したがって、その辺が、権限は一体どこらにあるのだろうかということを私はずばり聞きたい。公納金の滞納分というのが、それはあとのほうが否定されているように、八分ないし一割の自後の配当、あるいは株主としての権利を共有したとか、通産当局としてはこの種問題は一般的にはむずかしいだろうから、四つ残っているので、いま山口を出したわけです。山口についてはその義務があると行政解釈をしているのか、そうではない、法的根拠も義務もないということなのか。
  64. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) われわれといたしましては、法的義務も根拠もないと思います。ただ、過去の政治的ないきさつで、まあやむを得ずと申しますか、今日までだんだん片づいてまいりましたので、残りの四県についても、昭和三十二年五月以来、電力会社と地方公共団体との間の自主的な協議にゆだねるという態度をとってやむを得ないという判断に立っているわけでございます。ただ、御指摘のように、それが非常に膨大な金額で、一般需用者に圧迫をかけてくるということのないように指導はいたしておりますが、したがいまして、法律的にはこれは何も権利も義務もないのだというふうに解釈をいたしております。
  65. 向井長年

    ○向井長年君 同じことを重複して聞くのはどうかと思いますので、藤田委員関連で聞くのですが、特にいま宮本局長からそういうお答えがあったのですが、これは昭和十六年の統制令に基づいてのいわゆる何と申しますか、これは公納金、いわゆる公租公課、こういう形で十年間これを補償するという形でこれはきている。十年たてばこれは消滅するものである、したがって、何らそれは納める必要はない、こういうようにわれわれは解釈するわけなんです。そうすれば、いまそういう問題が起きて、ここで提起することは、そのときの契約単価といいますか、公納金がその当時のことですから非常に少ない。したがって、現状においては、いわゆる権利の復元という立場から、いわゆる農地報償的な形の要求であるのか、あるいはまた十年間の中で、先ほど藤田委員の言われたように、納めるやつが滞納して、納めない。したがって、いまそれを要求しておると、こう言っておるのか、この点だけ明確にしてもらう必要があるかと思うのです。
  66. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) もう当時の単価からいえば、完全に債権債務はなくなっておるわけでございます。ただ当時、いわば往々にしてこれは公営、県ばかりではなくて、個人でも当時は無理やりに国の意思でやられたのだから、当然もとに返せというような御議論があると同様に、やはり当時本来は国の意思から強制的に合併させられたのだからという、ちょっと先ほど先生御指摘のような農地報償的なセンスからこれは要求が出ているのじゃないか。これはいろいろ政治的に問題が過去にございまして、そうして先ほど申し上げましたように、その後は電力会社も自主的に協力するという形で、何とかおさめようということでここまでまいりました。したがいまして、法律的にいえば何ら権利義務、たとえば電力会社がそれを払う義務はないと思います。
  67. 藤田進

    藤田進君 自治大臣、いかがでしょう。いまのようないきさつなんですね、これは戦時中必要があっていろいろ法令に基づいて買い上げたといったようなことを、一々農地報償したりしていくというようなことをするならば、まだまだもっと重要な問題がある。たとえば引き揚げ者に対する手当てをどうする、国策に従がって外地に行っていた、まる腰で帰ってこなければならぬ、あるいは徴用令、学徒動員といったようなことで出ていった、それがついに死んでしまった、徴兵令はむろんのことですね、あるいは負傷したとか、負傷しなくても、そのためにいろいろ人生将来に大きなおくれを来たしたとかいうことをやるならば、内閣としては全体を一応出して、その緩急に従って処理をするという基本方針のもとにおやりになるならばわかる。公営復元の場合は、個々の団体の間でよしなに解決しろということになる。農地報償については一歩譲ったとしても、何ら農地の売買に関係しないものが税負担で一千億だ何だといわれておりますが、農地解放で小作人が、東京周辺などは特にいま何億という財を積んでいると伺った人もあるし、いまから売っても坪が五万円だ、十万円だ、二十万円だというような状態ならば、これも電気の公営復元の流儀を適用するならば、当時の地主と小作人の間で解決しなさいということと同じなんですね。ただ公営復元に関する限りは現物出資の形になったのでしょうから、相当な株を持っております。相当といっても一割もないでしょうけれどもね。そのことが一つと、水利権の問題、政治権力ということで、結局へたをすると。がんばっていると次の役員なり社長にもなれず、飛ばされるかもしれないという基本的な問題があるものだから、いつの間にやら高知だとか宮崎だとか、逐次解決したといえば非常に美しいですが、まことに不当なことですよ、これは。これが許されているのです。しかも、電気事業法を出すについては、これらが問題にもなるだろうと思ったのが、大体解決をして四、五カ所になってきたということを見はからって、この電気事業法を出してきたとも言える。電気事業法のおくれた理由の中にそれが一つ当局としての説明がある。まことに許しがたい。まだ解決しないところもあるわけですが、山口県の場合をとれば、それほど地方財政に困窮しているのか。もうしゃにむに理屈も筋もない。こんなところにでも取りついていかなければやっていけないということなのかどうか、私は疑問に思うのです。自治大臣、行政指導の面においてもいかなる指導の方針でこれに対処されるのか、お伺いしたい。
  68. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 電力行政自体につきましては、私もいろいろ問題があると思っております。私も似たような仕事を長年タッチしておりますので、個人の意見はございますが、申し上げるのは避けたいと思いますけれども、たとえば電気料金の問題にしても、電源地帯である北陸と大消費地域東京、この問題についていろいろ議論があることは御承知のとおり、九州では北九州と南九州でやはり同じ問題があるし、藤田委員がおっしゃる中国地方でも山陰方面にいろいろ問題がありますし、ここにはまあ水力関係のなかなか重要な役割りを果たされた委員の方もいらっしゃる。藤田委員のように電気に非常にお詳しい方もいらっしゃるわけですが、やはり水力と今度の新鋭火力のコストはわかった、それですからこれが一体山陰地方にはどういう形で安い電気が流れてくるか、こんなことにつきましても、やはりいろいろ消費者としては関心を持っているわけでございます。しかし、こういうことはまあ通産の所管でもありますし、申し上げませんが、ただ山口県の電力の復元の問題については消極的なお答えしかできない、と申しますのは、山口県自体は御指摘のとおり、いまこういう問題があってもなくてもそう県財政が赤字になると考えておりませんし、このこと自体がこの県財政に大きな影響はないはずでございます。また今度の電気事業法の改正につきましても、自治省側といたしましては、何も格別意見をつけてはいないわけでございます。ただ私どもの立場といたしましては、やはりこの地方自治、つまり言葉を変えれば住民自治でございますけれども、一々中央で山口県はどう、高知県はどうというふうに指導するわけにはいかないわけでございまして、それは各県、各市町村ともそれぞれ事情があって、先ほど超党派でやっているがというお話ございましたが、やはりここには超党派になるにはなるだけのまた理由もあるのではないかと、ただそれをどういうわけで超党派でこれだけ取り上げて要求するのかということにつきましては、自治省といたしましては、特にそれがいいとか悪いとかいう現在立場でもございませんので、差し控えているわけでございます。
  69. 藤田進

    藤田進君 地方自治体が何をきめようともおれの知ったことじゃないということですか。重ねてお伺いしておきます。
  70. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 違法なことをやろうとされた場合は、もちろん私どものほうとしては注意もし、勧告もするわけでございます。しかし、その限界がどこにあるかということはなかなかむずかしいことでございまして、いま問題になっております点などは、まず通産省のほうでいろいろお考えもありましょうし、たとえば、例として事業主体、電気のごときは消費者というものはその行政区域とは別に広がっているわけでございますので、その間どう調整をするかなどということはやはり大きな問題でございますが、やはり所管は通産省、公益事業局のほうでいろいろお考えもあるでございましょうし、自治省のほうからこれを指導することは差し控えている次第でございます。
  71. 藤田進

    藤田進君 現在まあ四カ所だというのなら——それほど各地に思い出したように出てきた。議員立法でこれが復元法なんて出すというので。これはさっきの説明のように審議未了になったわけですね。しかし、最近においては、議員の歳費についても地方自治体がお手盛りだ何だといわれても、違法ではない。けれども国家統治全体から見てもそうはいかないということで、行政指導というか、立法を差し控えて、かなり強い行政指導によって、たとえば審議会を設けろとかおやりになったんです。この問題についてはおやりにならない。数が少なくなったといえばそうでしょうが、かなりかっては多かった。何ら手をこまねいて、むしろ舞台裏の動きなんというのは見るに忍びないものがあったのです。もうこれは当該与野党を通じて一致してというのは、これはまたその県としては県民の代表ですから、できるだけ多くのものを取るにしかず、県の財政も楽になるでしょう。他の県なり需用家がどうなるかということはその次になる。これもやむを得ないことでしょう。したがって、理論的根拠、科学的、物理的根拠の上に積み重ねられた三十億というのであるならば、いまの説明のように一挙にして今度十億になる、こういうこともあり得ないはずですね。最終的な訴訟になるか、あるいは通産大臣にひとつ調停を求めてくるとかというものなんですが、事の性質上いまのような状態なんです。これは中国に詳しい赤澤自治大臣にしても、鳥取は水力の電源地帯とも言われている。かといって、山元だからといって料金が安いわけでもない、鳥取県民は。山口のほうへも料金は安くしない。あるいは、サービスの強化に回るべきものがとられていったのだということを知れば、これは議員の歳費のお手盛り以上に問題が出てきますよ。問題が出てくる。こういうことは行政指導上も十分考えられる必要がありはしないだろうかと思う。原価計算の基準経費の中にこれは織り込まれているのですか。いるとすれば、幾ら織り込まれているのか、お伺いしておきたい。
  72. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 御承知のように、中国電力昭和二十九年当時の値上げ以降料金は改定いたしておりません。したがいまして、その当時の料金算定の基準には復元費というものはおそらく織り込まれておらないと思いますが、その後の多少の余裕とか、そういうところから回さざるを得ないのじゃないか、もし支払うとすれば。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、われわれとしてはなるべくそういう支出を少なくするという意味でおるわけでございます。また、一ぺんに払うというのじゃなくて、その影響を薄めて一般のほかの需用者には御迷惑をかけないようにいたしたい——いいとは思っておりませんが、いきさつ上こうなってしまいました関係上、一般への影響をなるべく薄めたいと、こう考えておる次第でございます。
  73. 藤田進

    藤田進君 通産大臣にお伺いしますが、以上質疑応答でおわかりのように、単なる政治的なものなんです。これは。したがって、政治力のあるところ、あるいは制裁する材料、駒の多いところほど多くのものをせしめることができる。公益事業で、しかも、私は先般の本法案に関連して参考人の意見聴取のときにも質疑で申し上げたのですが、電力会社としてはまだまだ公共のためにやらせなければならないものが多いです。特に最近は、いろいろあるけれども、時間の都合で一例を言いますと、道路だって狭いところに、片や電話の柱があり、相向かいには電気会社の柱があり、どの電柱でも、路地に入ってごらんなさい、電柱がそれぞれ自動車にすられてだんだん損傷して、摩擦というか、ぶつかったというか、電柱のほうが大きくめり込んでいますが、ぼくは言うのです。電柱はあれで済むかもしれないが、通っている自動車とか、あるいはその間に人間でもいたなら、とても危険です。ああいうものは、通産、あるいは郵政、場所によっては国鉄も関係するところがあるでしょう。相談をして、行政指導もされて、一部にはやっているようだから、電話線、それから送電線、配電線について共架して、同じ柱に電話の線をつけてやっていらっしゃるのですから、場所によっては。そういうものを逐次整理していく。また、そんなに金があるならば、欧米諸国のように、アメリカへ行けば、ワシントンでそんなに道路の角まで電柱が見えますか。みなケーブルで地下だ。都市で電柱が見えるというのは、前近代的です。こういうものが近代化していく、配電線に至るまでちゃんと地下に入れていくとか一もう諸外国は進んだところはそうやっているのですから、そういうことをしていくことによって交通事故をなくし、交通の緩和をはかる、その他まだまだこれから技術の進歩に従ってやっていかなければならないことが多いのです。それをやってまだ金が余るならば、理屈の通らないところへ出す必要はない、料金を下げたらよろしい。したがって、通産大臣は所管大臣でありますから、過去の間違った事例、先例、前例を踏襲するのでなくて、合理的に解決するべく私は指導される必要があるのじゃないか。片や弱いもの、片や権力という強いものとの勝負では、これは勝負になりませんよ、結局。ましてや、所管大臣がどちらにつくかということによって大きくこれは影響する。佐藤榮作通産大臣のときにも私は聞きましたが、現大臣についてもひとつ御所信と今後の具体的方策についてお伺いをいたしたいと思います。
  74. 福田一

    国務大臣(福田一君) 先ほど来の質問応答で問題の焦点も明らかになり、理論的な根拠も明らかになっておると私は考えておるのでありますが、まあ世の中のことは、法律的にはそうであるということであっても、また事実問題として良識の範囲でこれは解決をしておこうではないかというような問題もなきにしもあらずと私は考えております。したがいまして、これが、良識の範囲がどういうところにあるのか、私は当事者間の話し合い等もよく見聞きしなければわかりませんが、話の過程において相談があれば、そういうことにも触れてまいりたいと思いますが、いまここで私が方針を述べたり、あるいはまたこうでなければならないというようなことを言うことは、私はむしろ差し控えたほうがいいのではないか。私は、藤田委員のおっしゃっている気持ちは十分に理解をいたしますが、しかし、何らかの問題について感情的にも何かおもしろくない、われわれの感情的にあるいはまた過去の経緯から見て何とかこれはしてもらいたいんだという気持ちがある。その気持ちまでも全部なくしてしまえというわけにも、われわれとしては言えないと思う。また、そういういわゆる争いがあることが、将来全体の運営の問題からいってまたマイナスになる面もあるとも思われるのであります。たとえば送電線を引くような場合に、あれが解決しなければそれは絶対いかぬというようなことを言う。法理的には何も理由がないじゃないかと言っても、それを感情的にがんばっているというようなことも起こり得ないとは言えない。そういうようなことをいろいろ考えてみますというと、いわば過大な要求をしておったということについて、あくまでもその主張を通そうというときには、これはもう問題になりませんが、それは両者の間で話し合いで、まあまあここら辺でひとつ手を打とうという気持ちになっているのではないか。絶対それは出してはいけませんよと、こういう私は指導はむしろ控えたほうがいい。ただし、それも、われわれが考えてみて法外である、少しそれは無理じゃないかというようなことがあれば、その相談の過程においても、どうせそういうことが進んでおれば逐一われわれのほうへは入ってくると思いますので、あまり無理は通らぬようにしていく、こういうことは考えていいと思いますけれども、あらかじめこう、絶対にこれはいけませんとか、絶対こうあるべきですと、法律論だけでこの問題の解決ができるかどうかということになると、なかなかむずかしいだろうと思いますので、はっきりこれはノーと、そういうことはしてはいけません、またさせませんと、こういうような答弁は差し控えさしていただきたいと思っております。
  75. 藤田進

    藤田進君 相変わらず福田ひょうたんなまず答弁で、まことに不満足ですよ。そういう考え方は、それは御指摘のとおりなんだ。いや水利権がどう、いや鉄塔、送電線、そんなものはあかん、あっちこっちでごてて、結局、出す必要がないのだけれども、しょうがない、泣く子と地頭に勝てない、何らか出さなきゃならぬだろう、そんなようなことなんですよ。しかし、それは感情として否定することができないとおっしゃるならば、われわれこうして審議しているけれども、ILO条約なんかというものは、倉石、河野間で、公党の間で話は済んでいる。それが与党のほうで、ああでもない、こうでもない。この国会でも批准ができるかどうか。きょう三時過ぎから国対委員長の会談があるそうだけれども、それがうまくいかないようだったら、われわれ電気事業法なんか満足に、まじめに審議する気持ちはない。それはそれ、これはこれで解決していかなければならないのじゃないですか、すべて世の中というものはいろいろ感情があっても。どうもILOというものがそんなことを言うならば、これは水利権じゃない、電気事業法だ、もうだめだ、熱心に、まじめに審議する、そんな勇気が出てこない、あすあたりからはどうしようかというようなことも、これはまた人情としてやむを得ないと通産大臣は答弁なさいますか、どうでしょう。これはまた別問題ですか。
  76. 福田一

    国務大臣(福田一君) どうもILOの問題になりますと、私実は事情をあまりつまびらかにいたしておりませんので、お答えを申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、これは理屈を言うわけじゃありませんが、社会党のほうでおっしゃっておられる気持ちと自民党のほうでおっしゃっておる気持ちとはいささか相違をしておるようでございます。だから、私は、こういうことは、何が決定の要素になっておるか、公党間の約束とは何ぞやということでございまして、こういうことからまず考えていかにゃ問題はもうむずかしくなってくるのであります。どうも藤田さんとその問題をお話し申し上げておっても、これは際限がないと思うのであります。ただ、私はひょうたんなまずだと、確かに私は……。しかし、世の中のことはひょうたんなまずもときに必要だと私は実は思っております。実を言うと、それはもうみんな一から十まで完全に割り切って行動ができるということになれば、これはまた世の中非常にやりいいのでありますが、これは私個人の生活の中におきましても、矛盾を感じておるときでもがまんをしていくときもあるし、いろいろやはりそういう場合もあり得るのであります。そういうことがあることによって、また世の中も平和にいく場合もある。われわれからいいますというと、そういう意味からいって、公的には何らあれがないということであっても、まあ両当事者の間で話し合いがつくのなら、これをもう、そんなことは絶対させない、こういうことでいくよりは、あまり無理がないなら、話がつくなら、いままでもそうしておったのだからこれからもそうしたらどうだろうか、こういう感じでございまして、これはもうこれ以上は、いくらおしかりを受けましても、どうもはっきりとノー、そういうことはさせませんというようなところまでは申し上げかねると思います。
  77. 藤田進

    藤田進君 最終段階、ある段階で通産大臣のひとつ調停なりあっせんなりを求めてくる場合があり得るので、過去の通産大臣の態度は、私はその場合どうするか聞きましたが、おそらく通産行政については、今後さらに重大な時期でもあるし、かりに内閣改造になっても福田大臣は残られると私は解しますので、今後そういう時期があった場合に、やはり両者の自主的解決におまかせになるのか、居中調停の用意かおありになるのか、お伺いしておきます。
  78. 福田一

    国務大臣(福田一君) 自主的な解決で、まあわれわれが見てあまり無理がないということであれば、できるなら自主的解決が望ましい。しかし、どう考えてみても無理があるというような場合は居中調停の必要も起こり得る、かように考えております。
  79. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣、いまの問題は法的には十年間の何で消滅をしておる。したがって、自主的にそういう問題を円満に解決、良識的にやればいいじゃないか、こういう意見ですが、この今度の法案の九十一条に、毎年電気事業者の業務及び経理の監査をすることになっておるのですよ。これはあとですよね。そうしますと、いま言うように三十億を要求した、それがたまたま十億というかっこうで解決したとする、これは正常として監査の場合認めるのかどうかということですよ、問題は。おそらくその負担はいわゆる原価に入れられることであるし、あるいは消費者にもそういう形でしわ寄せになる、働く労働者にもしわ寄せになる、こういう結果になる。したがって、やはり通産省としては経理監査をするという一つの責任がある。そこの責任の段階で若干衆議院でもいろいろ批評が出ておるというような実績もありましたし、電気事業者、一公営企業に対してそういうようなばく大な金が政治的に支払われた、こういうことは不当であるか、常識であるか、これはあとにならなければわからない。あとになって、もし十億なり三十億というものを払ったとする場合は、これはほんとうにけしからぬというかっこうで、通産省、監督官庁としてどういう形でこれを処理しようとするか、これはやはり起きてくる問題ですからね。この点を私はお伺いしておきたい。
  80. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は、自主的解決になる場合において、居中調停をした場合は、もちろん私どもが関係をしておりますから、その場合はこれは認めるということになる。自主的な場合においても、われわれのほうに何らの連絡なしに、特に電気事業のほうから何らの連絡なしにこれをきめるということはないだろうと思っております。一応の経過の報告はあるだろうと思う。その間において、まあまあ無理がないのではないか、乗り出さなくてもそこら辺で片がつくというところならば、それはまあきまっておったとしても、それはあとで認めざるを得ない、かように私は考えておるわけでございます。
  81. 向井長年

    ○向井長年君 それであれば、いま藤田委員が言われたように、現実に山口の問題については、三十億を要求し、あるいはまたいま十億で折衝しておる。そういうことであるならば、やはり通産大臣はその中でそれに対する適応した形の行政指導というものが必要じゃないか。ただ単に、両者自主的にやればいいじゃないか、聞いてくればこっちはそのときにちょっとものを言う、これはやはり行政指導上無責任な状態ではなかろうかと思うのですよ。その点いかがですか。
  82. 福田一

    国務大臣(福田一君) いま両者が全額をあげて話し合いをいたしておる段階であります。そのとき私たちがいま入るのがいいのか、あるいは半年後に入るのがいいのか、二月後に入るのがいいのか、これはやはり行政の問題でございますから、これはひとつわれわれとしてはわれわれにおまかせを願うよりいたし方ないかと思うのであります。いずれにしても、県が言うのをそのまま認めるというようなことは、私たちとしては好ましくないとは思っております。しかし、それがどこがいいのかということになりますと、これは両者が話し合いをしている——話し合いというのは、まあずいぶん長い話し合いなんでございまして、十年以上もかかっておることでありますから、ここでまた一年くらい延びても、まあまあまだたいした——それでもうすっかり電気は消してしまうといったわけでもなければ、そんなもの買わないということにもならないわけで、そこいらは気を長くして処理解決をする。そしてまあだんだんと……。私は両方ががんばるには意味があると思う。電力会社からいえば、もう法的にはあれがないのに、ほかの人たちに迷惑をかけたりあるいは自分のところの経理に迷惑を及ぼしたりあるいは従業員に影響を与えるようなことはあまりしたくありませんと言っておると思う。一方県のほうからいえば、法的にはそうであるけれども、いま時価のほうからいえば相当高いものをかようにやっておるじゃないか、それだけは利益があるじゃないか。法律的には売ってしまったんだから、あるいは法律的にはまあもらうものはもらったんだから、そのあとで値が上がったからといって要求を出すというのはそれは無理かもしれないが、しかし事実問題として、ほかの県の人も利益を受けておるのだし、したがって会社も利益を受けておる。事実問題としてそうなんだけれども、まあこれくらいはいいじゃないか、こう思っておる。それの突っぱり合いなんですから、いまのところは。これが、われわれがうっかり入って、ああでもないこうでもないというようなことを言わないことのほうが、まあいまの段階においてはいいんではないか。ですから、私は、たとえば山口県に例をとっていただけば、いますぐに介入するというか、調停に入ろうとは思いません。しかし、そうは言っても、順次、そういうようにすると、県のほうにおいてもまた県庁が、ずいぶんがんばってここまできたんだから、ここら辺で考えて手を打たざるを得ないんじゃないかという感じが出てくるかもしれないし、まあ業界、会社のほうからいえば、これはこれ以上は絶対無理なんだから、少しはあるいはしなければいかぬが、しかしという考えになるか、あるいは、これ以上は絶対出せない、こう言って突っぱるか、そこら辺のところはもう少し日をかけていただいたほうがいいのではないか、かように考えております。
  83. 藤田進

    藤田進君 自治大臣にお伺いいたしますが、最近水力の開発というのが漸次下火になって、火力へと移行してまいりました。これが大きな要素としては、何といってもキロワット当たりの建設費がかさんでくる、また工事期間も比較的火力に比較して長いとかいったような経済性的見地から、水力というものが漸次火力へということになったと解するのが正しいと思う。だから、その水力のコスト高というものの大きな部分としては私は補償問題があると思います。その他の資本費、金利等もございますがね。そこで、この補償費の中でも、特に公共補償、自治体関係を中心とする補償というものが、これまた非常に公営復元に共通点を持ったものがある。これは、全体の制度として料金なら料金で変えなければならないものは変えるとか、あるいは水利使用料の問題であるとか、固定資産税であるとか、そういう筋の通ったものでそれぞれ解決がなされるべきであって、まあ非常な法外な要求になってくる。極端なところは、水没ならいざ知らず、関係のないようなところの学校も建てかえなければならないとか、町役場も新しく建てかえなければならないとか、水没地域でも何でもないのに、その辺に道路もさしてなかったタヌキ道が前後相当ダム・アップすれば長い道路を取りつけていくとかといったものがそれぞれ開発のコスト・オンリーに入ってくるということは、これはいかがなものだろうかと思われるのです。これは本格的審議としては、通産大臣あるいは建設大臣等にも今後の方針をお伺いするつもりですが、自治大臣の所掌である地方自治体を中心とする公共補償についていかにお考えでございますか。
  84. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 地方団体の財政の収支状態から見ますと、まあとにかく御案内のとおりにたいへん不如意でございまして、ですから、先ほど山口県の話が出たわけでございますが、ここだって財政的には恵まれた県ではないわけでして、なるほど明治維新からなかなか偉い人が輩出しておりまして、現在でもなかなか政界でも有為の人が出ておられますが、また工場だってりっぱなものがあってなかなかいんしんの状態に見受けられますけれども、自治省の窓口から見ますと、年間六十億円も追い足さなければどうにもならぬ県には間違いないわけでございます。そういたしますと、いまの超党派の話もありましたが、やはりこういう横っちょから金が入るというなら、多ければ多いほどいいと考えるのは、これは人情の自然であると思います。ただ、われわれはそれを応援しておるわけでは決してありませんが、何かとられるということだと私どもやかましく申しますけれども、まあまあとにかく、そういう補償か何か知りませんけれども、もらうという財源が見つかって、けっこう努力をしておられるようですが、私ども何も聞いてもおりませんし、ただ国会で承っておるにすぎぬわけでございます。しかし、これも何らか、やはり電力会社をそれでどうにもならぬ事態に追い込むような事態はわれわれとしても常識的に避けるべきだとは考えまするけれども、   〔委員長退席、理事赤間文三君着席〕 ただ、いまやはり交渉の段階だと存じますので、成り行きを見守っておるわけでございます。直接山口県からどうという依頼があったわけではございません。  そこで、公共事業に対しましていろいろな補償を要求するという件ですが、これはあまりいいこととは申しませんが、最近流通時代になって、何か補償を要求しなければ損だ。相手が国あるいは都道府県、公共団体である場合には特にそうです。また、電力会社なんていう多分に特殊な立場にあるものに対しましては、それぞれの要求が出てくる。あるいは、民間だって大きな工場なんかが誘致されます。誘致されて、喜んで来てみると、さあ腰を据えると、今度は漁業補償だ何だ、違うことが出てくるわけでございます。当節みな補償補償ということになっていることは、御承知のとおりでございます。ただいまおっしゃったことばの中に、公共団体が補償を要求しておる云云ということがございましたが、私は寡聞にいして地方公共団体が補償を要求するということは聞いてはおりませんけれども、先ほど申しましたような実情でございまするので、まあひとつ学校を建てるから寄付をしてくれとか、あるいは道路をどうしてくれとか要求があることは、よく耳にするところでございます。この間衆議院でも問題になりましたが、例の「まぼろし部隊」などというものがあらわれて、もう大体地点が明確になるとすぐにバラックか何か建てて、しかも補償目当てでやるのだ。ふしぎな部隊ができる。新聞にも出ておりましたが、こういうのは、やはり何らかの形でこれをとめなければ、そういうことをする人はそれはいいかもわかりませんけれども、これはやはり電力でもコストにも響いてくるわけでございますから、こういう目に余ることは何らかの法的な措置を講ずるのが私も妥当だと思いますし、そういった意味のお答えもいたしたわけでございます。しかしながら、こういう特殊な、特に作為的に何がしかもらうことが目的でこういうことをやるという者の存在というものは私は許せないと思いますが、補償補償という、補償をもらう人は多くは非常に貧乏な人が多いものですから、私どもも、あまりよくないと思って見のがしがちになるわけでございます。しかし、少なくとも、公共団体などがそういう誘致をしたる工場、あるいはこういうまあ電力会社であれ、電源開発の場合にそれを目当てに何らかねだるということは私はよくないと思います。しかし、それは程度問題だと思う。しかし、地方財政の状況現状でございまするので、まあある程度のことは話しかけるということは、これは私は、それはいかぬじゃないか——すぐにいかぬじゃないかと言えば、かわりの金を出してくれと必ずわれわれのほうに言ってくるにきまっておりまするので、それで、まあ甘く見ておるわけではありませんけれども、そういうことがあちこちで起こっていることは私ども承知はいたしております。しかし、それは究極は、あまり無理を言うことはやはりよくない、お互い同士の話し合いできめるべきことだと思っております。
  85. 藤田進

    藤田進君 まあ長々と御説明いただいたのですが、したがって、行政指導なり、あるいは地方財政計画なり、そういったものに徴して、悪きは正していくという態度がありませんと、まあ貧乏人は物をほしがるのだからやむを得ぬとおっしゃるけれども、必ずしもそうではないのですよ。山を持ち、たんぼを持ち、あるいは漁業権を持ち、その他の水利権を持ち、鉱業権を持ちというような人たちが、なかなかおさまらないのですね。ですから、必ずしも貧乏人だけでもないのです。いま問題になっている下筌ダムですか、あれも必ずしも貧乏人でもなさそうに私は聞いているのですね。あの一帯を持っているのだということなんで、したがって、そこらの適正な補償というものはむろん必要ですけれども、こえていくということは、しょせん水力を、水の資源をむだに放流していく、水資源の開発、すなわち水力の開発というものが結局捨てられていくということが現実にあらわれてきている、この点を私は指摘するわけであります。これは、公共事業については、直接的担当の国務大臣、所管大臣ともこれから審議を続けていきたいと思います。その他自治大臣にお伺いしたい点もありますが、本日は総理の御出席をお願いしておりますので、とりあえず本日は、赤澤大臣御苦労さまでございますが、以上で本日のところ自治大臣に関する限りは終わりたいと思います。  引き続きまして、通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。  現在、水関係あるいは電力関連する法規がかなり複雑になってきたと思います。公益事業令なり旧電気事業法が、今度これが議了ということになれば、電気事業法に一括されますが、そのほかに、水資源公団関係であるとか、あるいは原子力は基本法はじめ、その他御承知のように。ここら辺でひとつ、まあ電気事業法はとりあえず成立させるといたしましても、自後、電源開発促進法とか、電源開発株式会社法とか、いろいろ法もあるわけで、これが関係法の調整をはかる時期が遠からずくるんじゃないだろうかと思われる点が多々あるのであります。これらの点について、あるときには必要に応じて逐次法の創設はあるけれども、ある段階になるとこれは統合するなり調整するなりということは当然あってしかるべきものだと思うものであります。したがいまして、これらの点について今後の御措置はどうお考えなのか、お伺いしておきたい。
  86. 福田一

    国務大臣(福田一君) 御指摘のように、水資源公団法とか、あるいはその他、ダムをつくりますときに、いろいろの県営のいわゆる災害対策を含めて何かやるとか、同時に発電を考えるというようなこと等に関連をする場合、いろいろ、私は、法律的にも問題があるし、事実問題としてもやはり考えていかなければならないことは相当あると思っております。したがいまして、私たちとしては、一応この法案をできるだけ通していただきまして、さらに引き続き、こういう問題、あるいはまた、この法案ではいわゆる九分割というものを一応たてまえとしては肯定した形で法案ができておりますけれども、しかし、今後の運営の方法で、広域運営というものはこれだけでやっていけるかどうか、そういうようないろいろの問題もございますから、こういうものを含めて順次研究をいたしつつ、御指摘のような問題の解決に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  87. 藤田進

    藤田進君 これと関連して次の点ですが、各国、特に第二次大戦後、産業構造の変革といったようなこと、急速に第二次産業の発展といったことから、勢い基幹産業である電気事業についても、その企業形態において、あるいは管理運営の形態において、産業の民主化といったような風潮にも伴い、漸次変わってきたように思われるのであります。これは、衆議院の段階における質疑応答を私おおむね全期間を通じて読んでまいりましたが、この場においても触れられているところですが、各国の電気事業動向というものから見ますと、わが国における電気事業においてもかなり成熟しているものがあるのじゃないだろうかと思われるのであります。それは、特に最近、保守政党の与党を持つ政府としては、公団、事業団、あるいは公社とか、特殊会社といったものが、もうおよそ四十近いと思います。こういう考え方が、やはり池田内閣で言えば、資本主義、自由主義の政策と言われているこのカテゴリーの中から、これほど多くの公社、公団、事業団といったものが生まれてきたということは、これは言われる自由主義政策という中に一つの変わったものが出てきている。これは特徴だと私は思う。こういう考えがあるとすれば、これ自体が社会化であるとか社会主義政策のあらわれだと言う人もあるし、あるいは資本主義、自由主義の倒れんとする突っかい棒だと言う人もあるし、いずれもなるほどと思われる私は説だと思うのです。  いずれとしても、そういう動向下にあって、基幹産業である電気事業が、歴史上、非常に数多くのものが漸次、あるいは戦争目的の必要性というか、いろいろそれは客観事情は変わっても、今日九電力、これに、大きくは電源開発株式会社が福田通産大臣等の肝いりでできたわけです。十年余り前に。こういう実態からするならば、かなり電気事業企業形態というものについては一考を要する時期に来ているんじゃないか。電気事業審議会の答申を読んで見ますと、これは集約された答申案ですから、内容の議論の速記録まで読んでおりませんが、要するに企業形態論についてそれぞれの討論がなされ、その帰結としては、現行体制がまず比較的合理的である、ただし至らざるところは広域運営というものでこれを補っていく、こういうところにある。ブロック別ないしここで一社化していくといったような議論に対する対抗意見としては、能率の低下だ、どうもこれ以外になかったように思うのですね。しかし、能率そのものが、あらゆる角度から見て能率というものは論じられなければなりません。現在の国鉄あるいは電話ですね——電電公社等等、全国を一貫して運営しておるものも現実にある。もし基幹産業である、重要産業である電気事業が、九電力一電発という形が至上なり、広域運営をプラスすることによってこれが最善なりとするならば、むしろ、国鉄にしろ、電電にしろ、その規模において、これは当然私企業化され、あるいは九ブロックに分けるなり、もうちゅうちょせずにこれに着手される必要が私はあると思う。幸いに電気というものは、ここからここまでというものではない。国鉄のレールと同様に、北海道を除いてはみんなつながっている。なるほどサイクル別の境界はありましょう。けれども、こういう時期において、各国の電気事業そのものの動向、そしてわが国の池田内閣までの保守政権というものの公社、公団等の思想から考えてみて、どうも納得するものがないのであります。  この点について、どのように現状を是なりと認識されているのか、具体的にひとつお伺いしたい。
  88. 福田一

    国務大臣(福田一君) まず、御指摘の、海外における電気事業の姿から見て、日本電気事業もある一定の大きな変革をすべきあるいは改革をすべき段階に来ているのじゃないか、こういうことでございますが、私は、産業の姿というものは、世界のどの国もみんな、地理的条件、あるいは従来の歴史的条件、あるいはいままでのいわゆる仲よくしていた国との関係、あるいは植民地を持っておったかいなかというようなことで、いろいろ変わっておると思います。そうしてその産業自体がみな変わっており、またその貿易の姿もいずれもその国その国によって違ったフェースを持っておるわけでありますが、したがって、電気事業につきましてもいろいろの姿があり得るわけでありまして、今日までしからば電気についてはみな一定の姿であったかというと、必ずしもそうではない。しかし、電気が持っておるところのスピードといいますか、速く遠隔の地域へ送電できるということと、もう一つはなかなかたくわえられないという性質と、この二つの特質から考えてみて、これに応ずるような仕組みはやっておりますが、それだからといってみんな一社化というような形にいっておるとは私は聞いてもおりません。これはおのおのの国によってその事情が違うと思っております。  それから、今度は国内の問題でございますが、鉄道は国有鉄道があるではないか、そういうふうにしてやってもふしぎはないじゃないか、電信電話またしかりである、こういうお説でありますが、それは私は、電信電話にはそれぞれの理由があり、また国鉄にはいままでのいろいろの経緯もあったと思います。しかし、もしどうしても鉄道というものは全部国有ということにするならば、私鉄も全部合わせなきゃいけない、あるいは、今日のようにバスあるいは自動車というもののいわゆる輸送力が国鉄にほとんど匹敵してくるというような段階においては、これも統合を考えねばならないというようなことはあるだろうと思います。しかし、それだからといって、これを全部統合しなければならない、したほうが能率が上がるというわけでもなかろうと思っております。だから、いま私が申し上げたいと思うことは、電気事業というものが今日までどういう過程を経て、どういう経緯によって今日の事態が生まれてきたか、その生まれてきたものは、方向としては電気の先ほど言った特性を十分把握しながら合理的に解決をしていくよりほかにしかたがないということでありますけれども、そういう場合において、私たちといたしましては、今度のように、九つに分割し、さらにこれに電発が加わった、十のいわゆる電気業者があるわけでありますが、これに対してブロック的な広域運営、さらには全国的な広域運営というようなものまで発展させるようにしてこれをやってみても、どうしてもいわゆる電気の特質を生かした合理性が貫かれないということであれば、今後もその問題を研究いたすべきである、かようにまあ考えておるわけでございまして、一挙にそういう統合とかあるいは一社化というようなところへ持っていくにはまだ十分なる結論も得ておらない。これにはいろいろ理由もございますけれど、たとえば電気料金の問題がみんな違っておるというようなこと。まあ電気料金が違っておる場合に、これを一社化すれば、安いほうへ統合しなければなりません。安いほうへ統合した場合には、今度は非常な赤字が出てくる。今度は値上げの問題が出てくる。——こういうことも国で補助金を出さない限りは必要になるでしょう。こういうことをいろいろ考えてみると、具体的な問題として考えてみたときに、一社化ということはなかなか私は急に実現することは、むしろ混乱を起こしても実際の効果のほうは薄いのではないか、まあこういう考え方に立ってこの法律を出しておると、こういうわけでございます。
  89. 藤田進

    藤田進君 衆議院でも同じようなことを言われています。平準化するのには安い電気料金のほうを上げるんだと。むしろ需用家から言えば、高いものを何とか合理的運営なり経営によって下げて、だんだんと水のごとく低きにやはりついていってもらいたいというんだが、大臣のほうは、全国の経営の格差なり料金の格差をなくするためには、安いところはだんだん上げて、大体同じように、格差のないようにしたいという方針ですから、まるで需用家の希望しているものとは逆なんですね。したがって、いま料金も違うんだからとおっしゃるが、これは私どもも、さあ一社になったからすぐ——新しい法人になるか、公企体になるか、発足しますと、いきなり料金も画一だとか……、そういうものは漸次解決がなされていいと思うのです。昔から言うように、日本は非常に、東西というか、南北というか、細長い島でありまして、中央に山脈があって、片や日本海に、片や太平洋に流れている、きわめてこの河川においても流域も狭いし、その川の長さにおいても短いものですね。したがって急流である。だからまあ、鉄砲水というか、すぐ水が出てしまう。ここに貯水池を必要とする。しかも、雪国もあれば、あの高原が貯水池に相当する東北地域のように、五月、六月になり雪解けになれば洪水がくるというところもあり、あるいはそうでない九州のような、十月ともなれば風水害常襲地帯といったような状態なのでありますから、したがって、豊水期、渇水期のズレもあるのですね。あるところでは、極端にいえば水を捨てている。あるところでは渇水で困っている。こういうものは、若干のロスがあっても、送電線でつないでいって、国家資源、水資源というものをむだに使わないようにするとか、もう今度は融通だけでなしに、開発も広域運営の中に入れるとか、いろいろ言われているようで、これは広域運営のところで申し上げますが、いずれにしても、広域運営がうまくいかなければ再検討する時期があると言われるその底には、必ずしも現行体制が十分ではないということがあるからではないかと思うのであります。  日本は広いから全国が一社といえば末端神経が届かないとおっしゃるかもしれないけれども、わが国に非常な影響を持っているアメリカの場合を見ても、御承知のように、カリフォルニア州は、これは日本の全土よりもまだ面積は一万二千平方マイルぐらい広いでしょう。これはやはり日本とよく似たように、かなり水力を持っていますね。これが、太平洋電気ガス株式会社という形で、一貫運営じゃありませんか。電気だけではない、ガスも兼業という状態。大体これに似たように、日本の場合もだんだんと、サービス・ステーション、散宿所といったような点は逐次整理統合して、そうしていまの機動化していくというふうに、よく運営も似てきている。ですから、こういう点を考えてみると、どうも理由に乏しいように思うわけであります。企業形態を変革したからといって、料金なり何なりというものを急激に変える必要はないという、私どもは一つの経過措置なりゆとりを持ってものを考えている。以上のような私ども考えを持っているわけですけれども、なお料金問題ということで、一つの例示ではございましたが、困難性という理由にされるわけですか。
  90. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま御指摘がありましたカリフォルニアは、ちょっとまた日本の場合と事情が違う。あそこは、人口の関係からいいましても、よほど日本とは数字が違っておりますし、またあそこの工業の関係、いままでの成り立ち等々を見てみましても、あそこでは一社化されるべき筋合いで開発が行なわれてきているわけでございます。日本は、この狭いところに約一億の人がおって、そうして今度は産業を工業——軽工業、重化学工業化をしようというような段階にきておりまして、そこいら辺の産業構造が違っていると思うのでありまして、しかもその産業構造に対して、一応いまの電気事業電気を豊富に供給する、また一応安く供給する、その形を整えてやっているわけでありまして、急にいまそれをやることがはたして日本産業経済のためにいいかどうかということになりますと、私たちとしては、それは急にそういうことを考える必要はない、いまのやり方でやって。しかし、一番大事ないわゆる電気の特質を生かす広域運営ということを十分にやれば、一方においては能率の低下ということを防ぎ、一方においてはやはり自分の会社を愛するという——いわゆる親方は日の丸だという考えではなくて、自分の会社をよくするという一つの創意くふうも働いてくることによっていい結果も出てくるのではないか、こういう考え方から、いまのような法案でもってしばらくやってみる必要がある。それでうまくいけば、私は何もあえて一社化をしなければならないとは思っておりません。しかし、どうしてもそれではいけないという結果が出てくれば、そのときに、どうしたらいいか、どういう形でもっていったらいいかということに踏み切ってもおそくはない、こういう考え方であります。   〔理事赤間文三君退席、委員長着席〕
  91. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  92. 前田久吉

    委員長前田久吉君) では速記をつけてください。
  93. 藤田進

    藤田進君 当参議院の商工委員会といたしましては、非常に提案のおくれた、そうして衆議院段階で時間をとりまして、まあようやく本月の十一日でしたか、当院に送付されてきた電気事業法の審議をいまやっているところであります。まあしかし、会期あとわずかに残しまして、従来、終戦後、大蔵大臣として、あるいは通産大臣として、また現在総理大臣として、全く文字どおり電気事業については詳しい総理の御出席をいただいて、基本的問題について若干お尋ねをいたしまして、あとわずかであり、審議いささか不十分の感はありますが、所要の意思を明確にしながら、できることならこの国会で成立をさせるように努力をいたしたいということで、委員長以下いろいろ現在審議を進めている現状でございます。しかし、どうもこの国会は、客観的にもそうでありますように、国会内部におきましても、あらゆる重要法案が、本来そうあっていいか悪いかは別として、ILO条約批准関係を持つというように感情的にはなっていると思われるのであります。幸いに先週土曜日ころから両党国対委員長会議等も熱心に持たれたりいたしまして、昨日の国会討論会におけるいろいろな御発言等から見ても、本日月曜日に三時からということでしたが、両党国対委員長会議等を持って、何とか一つの妥結点を設けて、この国会成立をしたいという意欲には燃えておるということを受け取るのであります。しかし、これはあげて、党総裁であり、内閣総理大臣である池田さんのその熱意というものが大きくこの段階になりますれば影響を持つと思います。先般の予算委員会におきまして、私の、この際総理、総裁として裁断を下される時期ではないだろうかというお尋ねに対して、その時期にあらずということで、私はそれ以上、当時の状況なり時間的事情から見て、重ねてのお伺いをいたしませんでしたが、全体の院の運営なり委員会の法案審議にも影響を現実の問題として持つ可能性が強いので、私は、この際特段のILO条約の成立に御努力をいただくとともに、総理、総裁とされての立場から、この際どういうお気持ちなり具体的方策を立てようとせられるのか、まず冒頭にお伺いいたしたいと思います。
  94. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ILO条約批准につきましては、関係法案とともに今国会での通過を熱望しておるのであります。そういう意味におきましては、お話のとおり、先般来国会対策委員長の間で検討を加え、いろいろ折衝を続けておる状態でございます。したがいまして、いまここで私がどうこうと申し上げることは、かえってその折衝に支障を来たすようなことがあってはいかぬと思います。いまは控えたいと思います。
  95. 藤田進

    藤田進君 見るところで、私ども十何年議会にいまして、大体ああでもないこうでもないとこう言っているうちに会期末、二十六日がくることは、だれも否定できないので、大体そんなところじゃないだろうかと言われていますが、総理の期待としてはそうではないということですが、とすれば、実態というものは、両党間に話し合いをつけてと言いながらも、刻々時間は迫ってきている、そして対立もかなり深刻なようであります。問題はそう簡単ではないようであります。したがって、非常な熱意はありながらも、この国会は話し合いということで、この問題は結局時間が解決する、流れてしまうということを私は非常に心配をするわけでありますが、そのようになっても、これはしかたがないとは言わないにしても、この際みずからの意思表示なり何らかのまとめる方向においての行動なりということはあくまでもおとりにならないのかどうか。もうあと二十六日もわずかに迫ってきておるわけであります。最後までそれじゃ話し合いということで、出先で話すということで、やむを得ないというお気持ちなのかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  96. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 両党間で話し合い、そしてそれの実現方に努力する、こういうことでせっかくいま努力をいたしておるのであります。何と申しましても、やはり民主主義でございますから、党内のいろいろの意見を十分頭に置いていかないと、そういう裁断とか何とかいって非民主的なことはできませんので、党内の意向を見ながら、また社会党さんのほうともその意向を伝えながら、折衝をいたしておる段階でございます。したがいまして、これに対しての私の考えをいま申し上げることは、先ほど申しましたごとく、適当でないと考えております。
  97. 藤田進

    藤田進君 二十二日よりも明二十三日といったように迫ってきますので、いまはそうであっても、適当な時を得られるならば総理としても十分ひとつこの問題のまとめについては御関心と御努力をいただきたいことを要望いたしておきます。  電気事業法につきましては、短時間ではありますが、いままで若干の審議を重ねてまいりました。このうち、先ほども自治大臣、通産大臣の御出席をいただきましてお尋ねいたしました中に、この電気税の問題が、これは年々一%程度率は下げてまいられましたが、使用料等が飛躍的に増大してまいりましたので、年間その電気ガス税の総額においては問題にならないほど増額されております。三十八年度が四百四十一億に対して、三十九年度見込みは五百七億というふうに、要するにこれは所管大臣である通産大臣も悪税であるとか撤廃すべきだという御主張であります。また、赤澤自治大臣におきましても、先ほど、撤廃すべきである、ただかわり財源について問題があるというにすぎない。とすれば、大蔵の関係もございましょう。しかし、これだけではないが、この電気料金の非常な格差のあるときに、しかも約百二十品目については非課税になっているという、きわめてアンバランスを生じているこの問題については、総理大臣として、各省間の調整がいまだとれていないというときにあたりまして、どういうお考え、所信を持ってこれに対処せられるのか、お伺いいたしたい。
  98. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 電気ガス税は、一口に申しますと悪税でございます。私はその立案の当事者であった——すなわち大東亜戦争の戦時体制時代の非常手段でございます。私は、税の上からいって、電気ガス税というものは悪税である、やめるべきだと考えておるのであります。しかし、よく世の中に申しますごとく、悪税でもずっとなれた税金はいい税金だという学説もある。悪税もずっとやっていけば良税だという説もありますが、しかし、日本のいまの場合において、私はこれは撤廃すべきものだと考えて、たびたびその説を——閣議でもそういう説が多数ございますが、党に参りますと、一ぺんにやめられぬ、だから漸次税率を軽減しよう、こういうことでいま進んでおるわけであります。われわれはなるべく早い機会に全廃したいという気持ちを持っておるのであります。したがいまして、いまお話しの非課税業種もございます。ことに私は、輸出産業なんかにつきましては、この電気ガス税というものは、これはもう課税すべきでないし、もし課税したとすれば戻税すべきだ、こういう気持ちがあるのであります。これはあくまでも消費税でございます。消費税体系に属するものでございますから、私は輸出産業について免税しておる。そうして、その業種が国内消費の分については他の業種間の関係で変えられないとすれば、輸出に対する分だけは私は電気ガス税の払い戻しをすべきだ、こういう気持ちを持っております。しかし、いずれにいたしましても、いい税金ではございません。世界にまれに見る税金でございます。だから私は、これは一日も早くやめるべきだ。かわり財源ということが言われますが、何と申しましても、この電気ガス税というのは国民生活の上昇に伴いまして伸び率のいい税金でございますから、これがかわり財源というので、伸び率のいいかわり財源という要求があるようでございます。そういう点から考えまして、私は将来もっとくふうをこらしてこの税金の全廃に向かって進んでいきたいと考えております。いろいろな事情で、御承知のとおり、累年税率の軽減はいたしております。今後も少なくとも逓減をし、そうしてできればこの税を廃止したいという気持ちを持っております。
  99. 藤田進

    藤田進君 さらに大きい問題といたしまして総理の御決断をお伺いしたいのは、今日開放経済下にあり、かつ南北問題等わが国の経済にもいろいろ問題を控えているときでありますが、国内政策としても、電気事業電力に関する政策はかなり大きな部分を占めなきゃならないと思います。本法案によりますと、結局現体制——電力、これに一電源開発会社、さらに自家発を認め、地方公営企業ということで、一貫的、統一的方向性というものは見出せないわけであります。自家発は重油ボイラー規制法等によって案外コスト安であるということで、自家発もかなり最近設備されるようでございますが、勢い二重投資にもなりかねない。そこで、私どもは、この国会でこの法案審議にあたって、全国を再々編成、企業統合をするとかいうことは、時間的その他若干無理ではないだろうか。現実的政策として考えますときに、少なくとも、衆議院で議決を見ましたように、内閣のもとに、エネルギー関係全般を論じ、かつ結論を出し、世界の競争にたえ得る一環としてのエネルギー政策を打ち立てたい。その中には、あるいは再々編成を必要とするかしないかの議論も当然出てよろしゅうございますしいたすわけで、まあすみやかにこの調査会法といったような法的措置を講じまして、これが検討に入り、結論を導き出して、所要の立法なり措置を講ずべきであると思っているところであります。これにつきまして、総理といたしましての御見解を承りたいと思います。
  100. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この電気事業の体制につきましては、戦前から戦争当時一会社で、たぶん昭和二十四年の三月ころではなかったかと思います。私が大蔵大臣をしており、そして通産大臣を兼務したとき、九分割案を私がやったわけであります。もちろん司令部の指示もあったわけでございますが、九分割でまいりまして、私は、いままでの経過から申しますと、かなりうまくいったと考えております。中に、あるいは九分割では多過ぎるからある程度の合併をしたらどうかという議論も聞いております。聞いておりますが、全体として私は電気事業法は、九分割によりまして、おのおの民間会社が合理化をし、そうしてその他方に適切な開発もやっていって、大体うまくいっている。ただ、九分割の関係で、いろいろ全体から見て合理的でないあるいは格差その他の発生等が出てまいりましたので、今回御審議願っておるような広域運営、こういう制度を加味していくならば、大体私はいまの状態で適正なやり方ではないかと考えております。なお、電気事業ばかりでなしにエネルギー全体の問題として検討したらどうかという御議論は、いつの国会にも出てまいっております。また、去る六月一日に、衆議院におきましては、エネルギーの総合調整についての決議がございます。われわれは、この決議の趣旨を体しまして、いままで通産省の産業構造調査会のエネルギー部会として、電気、石炭、あるいは石油、三審議会でいろいろ検討しておりましたが、決議の趣旨に沿いまして前向きにエネルギー全体の状況についてひとつ考えていきたい。聞くところによりますと、臨時行政調査会におきましても、この問題についての行政機構をいま検討中のようでございます。あわせまして、われわれも検討を続けていきたいと思います。また、昨日帰られた、通産省から行かれた有沢君の帰朝談につきましても、そういう気持ちの帰朝談があり、いずれ答申が出てくることと思っております。そういう点とにらみ合わせまして、非常に産業の基本をなし、国民生活の向上に非常な関係のある電気事業につきましては、他の面とともに検討していかなければならない。ただ、ここで申し上げておきたいことは、私は、原子力に対する熱意が、当初は非常な熱意がございましたが、ただいま中だるみの状態でございます。この原子力開発につきましては、私は民間のほうにも言っておるのですが、当初のような熱意を持ってそうして各国の状況調べ、将来性のある原子力発電についての検討をもっと積極的にやっていくことがこのエネルギー総合対策としても非常に必要なことじゃないかということを考えておるのであります。
  101. 藤田進

    藤田進君 その点は、私ども総理の御所信に沿って今後の具体的措置を期待するわけでございますが、林法制局長官にこの辺で一つ伺いしてみたいと思います。  この事業法案もかなり慎重に法制局においても検討されたと聞くのですが、企業の統合といったような場合に、それらしきものが見当たりません。これはいまの九電力をブロック別に一緒にしろという場合も将来あるかもしれませんが、あるいはそうでなしに、二重投資になるべきものをどうするのかという、もっと小型のものも起こり得るでしょう。さて、その条文等がないということは、現行憲法——憲法二十九条ですか、いわゆる財産権等の考慮からないのか、あるいはこの種公益事業においては整理統合しろということが憲法上何ら抵触しないと言い切れるのか、法律をもって定めれば、憲法にいう財産権は、これは公共福祉とか何とかということの解釈でもって企業統合というものはできるのかどうか——それは憲法に反する、所有権の侵害であるという説も出ているようでありますので、政府の統一見解として、電気事業の再々編成というか、企業統合といったことが法律によってなした場合憲法上いかなるものかということをお伺いしたいと思います。
  102. 林修三

    政府委員(林修三君) この法案の審査の過程においては、実は原案からそういう問題は入っておりません。そういう問題についての考え方は含まれておりませんでしたので、そういう点については、実は私どもの内部でこの法案をめぐって議論したことはないわけでございます。ないわけでございますが、一般問題として考えてみればということになります。で、御承知のように、いろんな法律を見ましても、場合によっては合併命令、たとえば企業の譲渡命令、事業施設の譲渡命令等の規定を置いているものもあるわけでございます。したがいまして、憲法との関係でいえば、憲法は、御承知のように、財産権は公共福祉の範囲においてその内容がきまる、やはり公共福祉というワクは相当強くかぶっているという考え方が、いまの憲法の考え方でございます。したがいまして、さような公共福祉上の要請あるいは合理的な理由があれば、必ずしも一がいに憲法違反ということは、これはなかろうと思います。特に電気事業の場合は、御承知のように、これは許可事業でございますし、学者もいろいろ議論がございますが、あるいは特許事業だという説もございますし、いろいろな考え方もあるわけでございます。何にいたしましても、地域独占的な性質も持っている事業でございます。そういう事業であれば、やはり公共福祉上の要請というものは相当強くかぶるものだというふうに考えていいものだと思います。問題は、主として立法政策論に帰着するのじゃなかろうか。それだけの必要性があればそういうことも必ずしも憲法違反だということは直ちに言えないのじゃなかろうか、かように考えます。
  103. 藤田進

    藤田進君 そこで、これは総理の御出席のときにぜひ一点だけこれに関連してお伺いしたいのですが、当初案にはその条項があったとか何とかいうので、われわれの知る由もないことですけれども、そういうものが消えたということのようであります。この法案によりますれば、しばしば福田通産大臣も答えられますように、広域運営によっていろいろな不合理を是正していきたい、企業統合に相当する成果をあげていきたい、この様子を見て、あるいは再々編成ということも当然考えなければならないが、当面広域運営でやっていきたい、こういうことでございましたし、総理の本会議における御答弁におきましても、広域運営でやっていく。やった上でいかぬのであれば、そのときにまた検討をしていこうという趣旨の、速記を見ますと、御答弁になっておるわけで、とするならば、広域運営が絶対是なり、間違いはないという確信もさることながら、それでどうもうまくいかないという場合には、全国一社にするか、あるいはブロックにするかは別として、何らかの企業統合なり、あるいは、逆に言えば分離なり、そういうものが予想されるとすれば、法の中にはその条文はあってしかるべきじゃなかったろうかと思うのですが、この点は、その事態に立ち至った場合に、別に単独に立法をしていこうとされるのか。また、そういう予定でこの条文の中に入れられていないのか。答弁と出されている法案との関係において、いささか私ども矛盾を感ずるわけであります。広域運営をやってみてうまくいかないということであれば、再編成、統合ということも当然考えなければならないとするならば、それに備えるべき条文が必要ではなかったろうか。いや、それはそのときに別の法律を用意したいという御方針なのか、この点をお伺いしたいのであります。
  104. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほどお答えのうちにも触れたと思いますが、九電力会社のうちで合併ということも一部関係者の間に議論があるように、私は二、三年前に聞いております。しかし、これはあくまで民主的に企業体がきめるべき問題である。政府法律でどうこうしようという考えは、ただいまのところございません。それはなぜかと申しますと、いまの状態で、広域運営を加味しながらやっていくことによって目的を大体達し得る、こういう考え方であるのであります。したがって、広域運営をやってもどうしてもいかぬというようなことは、私はいま想像いたしておりません。この法案でできるだけうまくやっていくようにしようとするのであります。だから、広域運営がうまくいかぬときに再編成を考えるということは、これはもう議論にギャップがある。現実の問題としては、私は考えておりません。しかし、実際問題として立法はいたしませんが、各企業体で、各企業のほうから自分らのほうは合併したほうがいいのだという気持ちで合併されると、私らは、その合併がよくない場合には、政府として指導はいたします。あくまで民主的に取り扱うべきであって、法律でいま合併とか分割とかいうことを、私は考えていないのであります。
  105. 藤田進

    藤田進君 この点のやはり弊害というものが、非常に民主的であり、かつ円満であるように見えましても、行政指導なり内々の話し合いでということは、それなりにいいようでありますが、しかし、過去における実情、あるいは現状におきまして、注文になっても、電気事業に携わるものとしては、かなり政治権力による脅威といいますか、先般の衆議院段階における通産大臣の答弁でも、経営についてどうもおもしろくないので東北電力の社長以下やめさせました、というような調子なんですね。ですから、案外、民主主義的であると言うが、法をもって議会という国民の代表の審議も経て、そして、これが是か非かということをきめることのほうが、現在の議会主義政治というたてまえから見ても妥当ではないだろうか。これが舞台裏においてやめろといえば、私企業であり、株主総会できめられていても、通産大臣のツルの一声でやめていく、これが一般公共福祉、公益性に直接関係するものである場合はまだしものことです。いろいろ過去においても、九州電力の人事において一通産政務次官がどういたしたとか、こういたしたとかいったようなことで必ずしも明朗でない事態が起きたりしてまいりましたので、やはりルールとしては、そういう場合は、こういう大きな私権に関する場合には、法をもって規制していくということがむしろ民主的であるように私は思うのであります。  まあこれに対する再答弁は求めませんが、次に総理の御決断をいただかなければなかなか前進しない問題の一つとして、水力の開発というものが、御承知のように、わが国はもう過去長い間水主火従、水力が六割ぐらい、当初の段階では一〇〇%でしたでしょうが、これがわが国の特徴として、小学校の昔は読本にも出ていたくらいに特徴とされていたわけでございます。水資源の活用ということは。それが漸次今日逆転をしてまいりました。これは結局、水力の開発というのは、その建設費において、あるいはキロワット・アワーの単価において非常にコスト高である、あるいは開発を急速にいたしますので、時間的に間に合わないといったような点が大きな理由になっていると思います。しかし、水力が、言うように、減価償却が水路は、堰堤は何十年といったようなことは、これは資本の効率から見れば必要でしょうけれども、実際は百年でもあるいはそれ以上もつわけで、ましてや、治山、水利あるいは水害の復旧といったような関係から見ましても、かなり電力の開発以外に多目的利用というものがあるわけであります。これは最近、池田内閣におかれましても、特に最近は、水力というものについてもっと拡大していこうという方向が出てまいりましたことは、まことに私はけっこうだと思うんですが、ただ風潮だけではまいりませんのは、何といっても水力に対しては、諸般の補償関係がうまくいっていない。衆議院におきましても、先般朝日新聞が六月三日に取り上げた「まぼろし部落」と称する、これを中心に議論されております。しかし、これは、こういう記事が出るのはまだまだおそきに失して、もうすでに数年も前から電源開発が確定する、すなわち、水利権の許可がありますと、もういち早くここには用地交渉なんかよりも早く、鉱業権の設定がなされる。私もずっと以前に商工委員会調査団として参りました個所もありますが、鉱業権の設定は、ダムのサイトに横穴を掘って、二、三人でモッコを下げて掘っている。これに三億出せと、こう言うんです。堰堤の上流を見ますとね、この「まぼろし部落」に出ているのは数年前ですけれども、ちゃんとパネルで組み立てるようにして、そうして、いや分家だとかなんとか言って、ときどき煙が出てくる、煙突から。それにまた電気会社は電気をつけているんです。これは供給規程なんかでつけないわけにいかないんでしょうが、こういうことがあるわけなんですね。そうして当時——いまはもっと上がっていましょうが、大体どこの場合も、どこどこの建物を持ってきて、あすこが十万円もらっているから、その後物価も上がっているから十五万円くれなければ立ちのかぬ、これが五戸や十戸じゃないんです。この場合、七十五戸ぐらいだと思いますが、こんなことが結局は許される結果になる、ごね得という。私は、先祖伝来の土地なりその他の財産について不当に取り上げるということはいけないと思います。電源開発として国家目的に沿う以上は、十分の補償をすべきだとは思いますが、みだりに収用法で云々すべきじゃないと思うけれども、こういう明らかに補償目的というものに対する一つの措置というものがなくては、水力を遠ざかるということは、これは自然だと思う。この点について、通産大臣においても、建設大臣においても、その他、どうしようもないというのが結論であります。どうしようもない、どうしようもないでこれからおいきになる方針だろうかと私は言わざるを得ない。しかし、総理は決してそういうことではないと私は思って特に御出席をいただき、この点についてのお考え、対処すべき方策についてただしたいと思うわけであります。またこれと関連して、いわゆるこね得、補償——「まぼろし部落」と同様とは申し上げませんが、公共補償ですね。これまたどうも非常に不当なものがあります。具体的にいえば、水没地域でも何でもないところに、学校を建てかえなければならぬとか、あるいは町役場を全然新しく建てかえなければならぬ、それを寄付しなければならぬとか、あるいは全体の交通事情から必要がないにかかわらず、相当幅員の大きいものを長距離にわたって町村道をつけていくとか、そういった客観的に見て適当と思われないような、いわば公共補償というものも大きな水力を遠ざかる原因になっております。また、今日調べてみますと、人件費は、先ほどの調査では一五%くらいになっておりますが、六割以上が資本費、つまり、金利の非常に高いこと、これは水力に関する限りは、補償その他で大きな部分を占めるに至っております。そこで金利は、低金利政策と言われておりますが、この点は予算委員会その他でも伺っておりますので、第一点の補償関係についての、どうにもしようがないということでは私はならないと思います。日本の経済の大きな部分を占める電気事業について、コスト安の電源を、そして良質な、豊富なという三条件を満たすためには、逐次所要の施策を講じられる必要があると思いますので、この点を総理からお答えをいただきたいと思います。
  106. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ごもっともなお話でございまして、われわれは国内の資源の開発には十分の熱意を持って進んでいかなければなりません。水力が火力にかわってくる状態は、安価ということからくるのであって、低廉というところからきておるのであります。国内でも低廉な電気がこれ以上供給されるようにいろんなくふうをこらすべきだと考えております。
  107. 藤田進

    藤田進君 長く申し上げてつかみにくかったと思いますが、要するに、いまのような「まぼろし部落」とかなんとかいう、こういうものについて何か政策として、あるいは立法措置なりとしてお考えになっていないでしょうか、具体的にお伺いしたい。
  108. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この点は、水力発電ばかりでなしに、いわゆる公共事業につきましては常につきものであるのであります。したがいまして、土地収用法その他につきまして改善を加えて、そういうごね得のないようにしていかなければならぬということは、水力発電ということに限らず、全体について非常な問題だと考えて、逐次その方向に向かって進んでおる次第でございます。
  109. 藤田進

    藤田進君 その中に入っていると解すればそれで満足するのですが、これはまた、電気事業というのは、私は、電気会社がどうこうという意味じゃないのです。需用家が結局それだけの割り高のものをかぶることになる。私は午前中も指摘したのですが、電気事業についてももっとサービスの改善なり、公共事業としての施策を要求したい。それには金もかかるでしょう。そういうときに、一般の道路でしたら、先般も私のほうの選挙区である広島から、二級国道を前後はつけた、おれだけがんばって土地を売らないのだ、何とかひとつ——前後は反当たりが三十万幾らとか言っておりました。これは安浦ですが、今度通られたら見てください。道路が一カ所だけつかずにいる。それは無理だと、前後が折れ合っているのに、君一人だけがそれ以上の単価で買えというのはいかぬと、だれかやっていただくところにお行きなさいということで帰ってもらいましたが、これなどもほうっておいて、全体が開通するまでほうっておけばいい、そうして地域社会においてどうもあそこががんばっているからあそこは広くならないとか、家が立ちのかないとかどうとかという先例を設けさせることになるし、案外土地収用法なり何なりの手段もございますから。しかし、なぜ、このように電源開発に関する限りこういうものが出てくるかと言えば、資本費を少々十万なら十万、三十万なら三十万、五十万なら五十万出したほうが、これの立ちのきについて四の五の言っているよりも、早く湛水をして発電したほうが、事業の設備投資が大きいものですから、いやおうなしに出して発電を開始したほうがいい、こういう弱みがあるから、一般公共事業と同様にはまいりませんが、この点十分にお考えいただきたい。  そこで最近、外資導入ということで発電機その他導入されて、これが資本調達の一環にもなっているわけですね。これは現在、国産品の愛用とかいろいろ言われていて、この間、総理官邸でも国産品愛用の会が持たれたように、もう少し国家施策によって外資導入にかわるべき発電機とかその他の輸入ということは、これはここらでひとつ総理も考えられる時期ではないだろかと思うのです。この点について、国の方針としてどういう手を打とうとされるのか。現在のように、今度電発のほうで法律の改正をされて外資導入という手はずになるようでございます。金利その他から言えば、これも魅力でございます。しかし、国策としては必ずしも適当でないように思われるわけです。総理大臣にこの点お伺いいたしたいと思います。
  110. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 外資によって外国の機械を輸入するということは、いま問題の発電機について例を申しますと、十年ばかり前でございましたか、日本には七万五千キロの発電機しかできなかった。私は、外資によって十五万キロの発電機械を輸入することを認めました。業界は非常に反対をした例がございます。それで十五万キロの発電機を一台輸入することにより、そうしてまた、二十五万キロの発電機を一台輸入することにより、日本の火力発電事業は急速な進歩をしたのでございます。いまは四十五万キロの分も、一部のものを輸入すれば日本でできる、こういうわけでございますから、一がいに日本産業を圧迫するといいましても、戦争中おくれた日本のいわゆる技術推進のためには、日本的に合った程度のものを入れることは必要である。だから、いまは二十五万キロ程度の発電機なら、世界のどこの国にも負けない。これは結局、日本的な機械を輸入した効果であります。したがいまして、反対した方々にいまでも申しますと、あのときには間違ったと言っておりまして、この方針でいっております。日本産業の復興が大切でございますから、必要最小限度の日本的のものは入れますが、単に金利が安いとかなんとかということで考えるべき筋合いのものじゃないと思う。だから、私は、ここ一年半くらい前でございますか、そういう議論がありまして、これはやっぱりそういうものにつきまして、金利を安く、長くつけてやるくふうをしたらどうかということを言っておるのであります。これは発電機で申しましたが、ほかの機械におきましてもそういう事例が起きてきておりますので、今後も起こるでしょう。方針としては、日本産業を育成するためにどうやったらいいかということが第一の問題であります。金利とか外貨関係ということは二の次、三の次に考えることであります。
  111. 藤田進

    藤田進君 この点は、当初、そういう熱効率がきわめて優秀であった。しかし最近は、新しくサンプルとして入れなければならないという技術的格差はない。ですから、この点は十分ひとつ御認識いただきたいと思うのであります。
  112. 向井長年

    ○向井長年君 総理が非常に時間を気にしておられるようですが、実は三点ほどばかり、長期開発計画の問題とか、あるいは料金制度の問題、あるいは原子力発電の開発の問題、いろいろお聞きしたいと思いましたが、時間がございませんので、これは通産大臣に適当な時期にお聞きしたい。  一点だけどうしても総理にはっきりしておかなければならぬ問題があります。これは午前中も労働大臣に質問いたしましたし、それに対して一つの回答を得ております。先般私が本会議で総理に質問したことでございますが、特に今回の電気事業法案なるものが、大体要点を申しますと、御承知のごとく、需用者の利益の確保、あるいは安全性の確保、あるいはまたサービスの強化、こういう問題が非常に中心になった法案であるわけであります。これを実行するためには、やはり少なくとも電気経営者が主体となって、その精神に基づいてやらなければならぬ。同時に、その中で働くところの電気労働者、これもあわせてこの法案の趣旨に従って、サービス向上のために、あるいは電気需用者の利益確保のためにやらなければならぬ、こういう責務を持っている。したがって、それに対する労使関係というものは、やはりいい労使慣行をつくっていかなければならぬということが基本であるわけです。  そこで、実は先般も質問いたしましたが、特にスト規制法の問題について、総理はそれを撤廃する考えは持っておりませんと、そう実はあっさりと本会議場で答弁されている。これにつきまして労働大臣は、前向きの姿勢で撤廃の方向の検討を始めなければならぬと、こう言っている。したがって、総理労働大臣の間に、それに対する考え方の若干の相違があると思うのです。こういう点をこの際、明確にただしておきたい、こう思うわけです。  これは卸承知のごとく、昭和二十八年だったと思いますが、時限立法としてこれは出された。これは当時、労使慣行が非常にまずい傾向にある、電力不足もあわせて。あるいはまた、労使慣行が非常に悪い傾向の中で、言うならば、組合のほうも一部の誤った指導者のあり方ということも原因になったかと思いますが、とにかく、そういう形で三年間の時限立法を出されて、その後三年たって恒久立法にされた。こういう経緯があるわけです。当時、倉石労働大臣だったと思いますが、このときには、労使慣行が正常に戻るならばこれは撤廃するということを明言されておるのであります。したがって、一つは、法律論から考えて、憲法二十八条にいうところの、いわゆる労働基本権の問題、あるいはまた、公益事業に対するところの一つの、労働関係調整法の中で三十七条、三十八条という規定がございます。これはあくまでも、こういう公益事業で緊急調整的な、いわゆる六十日間という——三十七条と三十八条を合わせますと六十日間という一つの期間をもって平和的に解決しよう、こういう一つ法律があるわけです。したがって、そういう意味から考えて、法律的にも、これは現在の情勢の中で、必要でない一つ法律である。また、実態的に考えましても、当時の労使慣行が現在そういうかっこうで進んでいるかといえば、決してそうではない。公益事業に従事する一つ労働者としての責務をわきまえつつ生産向上に努力している。こういう二面から考えて、一日も早くこういう悪法は撤廃すべきである、こういう考え方をもって先般も質問いたしましたところが、総理は、そういう考えは持っておりませんと、あっさりと答えられたのですが、この点、いまなお、そういう考え方を持っておられますか。その点、労働大臣との食い違いがございますので、明確にただしておきたいと思います。
  113. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 電気事業とか石炭鉱業とかという重要産業で、しかも全部がストをした場合におきまして、回復すべからざる打撃を与えるようなことが、もし万一起こったとしたらたいへんで、いままではそういうことございませんが、国民の安心感から申しまして、いまのような特例を設けておる次第でございます。もちろん、労働関係は非常にうまくいっておりますが、私はただいまのところ、直ちにスト規制法を廃止するという考え方は持っておりません。しかし、こういうものにつきましては、これは政治の要諦として、前向きにいろいろ考えなければならぬ。だから、労働大臣が研究はすると申しましたかもしれませんが、しかし、労働大臣にいたしましても、いま直ちにこれを廃止するということは答えていないはずと思います。私はそういう点は、われわれお互いに、こういう法は要らぬというりっぱな国にしたい。しかし、いまの現状では、直ちにこれが廃止できませんと、こう言っておるのであります。何も、労働関係法なんかでも、ほんとうに労使がうまくいって、あんな法律はなくてもいけるような時代が望ましいことでございます。しかし、やはり国民の安心感、いろいろな点から申しまして、私は本会議で申しましたように、いま直ちにこれを廃止するという気持ちはございません。労働大臣も同じだと私は考えております。
  114. 向井長年

    ○向井長年君 その、いま直ちに廃止するとか、そういう意味じゃなくて、立法上から考えましても、この労調法の三十七条というのがあって、突如としてそういうストライキはできないのです。十日間の一つの規定があって、あるいはまた、場合によれば緊急調整ということで五十日できないことになるのです。こういう調整法が現在あるわけです。現状では、いわゆる法律から考えて、そういう一つの予備期間があると同時に、一方、現実の問題としては、労使慣行は正常に戻りつつある、そういう過程において、労働基本権というものをそういう形で縛っておくことは、かえって労使慣行はうまくいかない。これはなぜかというと、午前中もちょっと申しましたが、池田総理が常に言うように、すなわち、いわゆる東西の緊張緩和というものは、あるいは平和が保たれることは、やはり武力の均衡の上に立って初めて平和が保たれるのだ、こういうことを常に言われるわけです。いま経営者は一つの経営権を持っていろいろと問題を出している。労働者はそれに対して、やはり少なくとも団結権、その上に立った団体行動権というものがあってこそ、平和的にものごとの解決が進められるわけなんです。それがいまの場合は非常に片手落ちだということから、かえって一方的に不公平な形で泣き寝入りをしなければならぬということは、やはりどこかに不満が生じてきて、この法律が施行されても十分なるサービスの強化というものが非常に困難な情勢が起こるのではないか。そういう立場から、いま直ちにこれを撤廃せよということよりも、今後そういう事態の上に立って十分検討し、いわゆる前向きの姿勢でこれを廃止するような方向でやっていこうというのが、労働大臣の考え方なんです。そういう点に池田総理は賛成されるのか、いや、それではいかぬと言われるのか、この点を再度私、聞きたいと思います。
  115. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 労働関係法の緊急調整その他についても知っております。あれは昭和二十七年だったと思います。当時の労働大臣の、いま幹事長をしておられる吉武君と相談してやった。しかし、そのこととこのことはだいぶ違うわけです。このことはやっぱり重要産業で、緊急調整のような問題でなしに、その産業にも回復すべからざる影響を与えるというのでございますから、緊急調整とはちょっと観念が違う。これはやっぱり労働慣行ということと同時に、国民の安心感ということもあるのでございまして、私は繰り返して申し上げますが、いろんな規制の法律はないにこしたことはない。しかし、法治国というものは、やっぱり国民に安心感を与える一つ手段であるということもお考えになりますと、まだ、いまのところ、私はこういう規制の法律をすぐやめる——方向としてはないにこしたことはない、もともとなかったわけです。あの混乱をした状態のときにもなかった。昭和二十八年に三年の時限立法でやった。それもなかなか困難だった。しかし、これを延ばすときにはわりにスムーズに三十一年にいったわけなんです。ですから、やはり労働関係がよくなったということは、これを廃止する一つの方向でございますが、片方で安心感という、国民全体の安心感という面も考えなければならぬ。そういうことで、私は、なきにこしたことはありませんが、いまの現状では、いま直ちにと——では将来はどうか、なきにこしたことはございません、将来は。そういう方向で国民全部が、その業に携わっている直接の方のみならず、国民全部が安心するような方向でいかなければならぬと思います。
  116. 向井長年

    ○向井長年君 そこで、いま総理の御意見は、なくなったほうがいいんだという立場で考えられておると思うんですが、そうなれば、今後、いま言ったいろいろな事実の上に立って、労働大臣が言われるように検討をするということに対しましては、これは反対じゃないと思うんですが、いかがでしょう。
  117. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 検討ということは、これは何もみんな検討しなければならぬわけでございまして……。
  118. 向井長年

    ○向井長年君 いや、前向きにですよ。
  119. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 前向きにです。法はないにこしたことはない。しかし、無理にせかずということが政治の根本でございますから、そういう意味において検討していくということに反対ではございません。
  120. 藤田進

    藤田進君 いま総理質疑をいたしましたことに関連して、所管大臣からお伺いをしておきたいと思います。  再編成論については、総理はお聞きのとおり、いまそれを考えてどうこうということでなしに、広域運営云々とおっしゃるんですが、通産大臣は広域運営がいまうまくいかなければ、その際、再編成もあり得るという衆議院の段階における答弁で、これは立法論としてはどういう形でその際はおやりになろうとするのか。法制局長官の言をかりれば、立法上違憲ではない、法律によって統合するという、再編成するということは違憲解釈をとっていないということのようであります。通産大臣の言う、広域運営がうまくいかない暁における措置としては、あらためて立法ということになるのか、あるいは現行法の範疇でできるのか。できるとすれば、どの条項であるか、お伺いしたいと思います。
  121. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は、この法律はうまくいかないということで何もこの法律を出しているのではなく、この法律をやってみる、やってみてだめならどうする、そのときは考えます。そのときには、いわゆる合併とか統合とかということを考える、それは一つの方法だろうと思う、こういう意味で申し上げておるのであります。私は、具体的にうまくいかなくなったときには、その段階において研究もし、もちろん、この問題はエネルギー問題と関連しますから、全部ずっと研究は続けていきますが、しかし、いわゆる統合とか、あるいはまた合併とかというような問題については、そのときに私たちは、どういうふうにしたらいいか、うまくいかなかった時点において考えてみていいのではないか、かように思っておりますので、ただいまの御質疑にはお答えをいたしかねます。
  122. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、内閣法制局長官の答弁は、総理も否定しなかったわけで、法令、法律による企業統合等については憲法違反でないということは、通産大臣もそのようにお考えでございましょうか。
  123. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は法律によってやっても差しつかえないと思っておりますが、憲法違反だとは考えておりません。
  124. 藤田進

    藤田進君 次に、補償関係についてですが、先ほど来申し上げておるように、あるいは自治大臣にも申し上げておるように、現在、これらの社会悪についてはどうも措置が法制上ない、適当な実効をあげるものはないと言われているわけであります。しかし、先ほども指摘したように、他の事業と違って、あるいは道路であるとか、どうもほうっておいては進まなくなってしまう。そこのところに補償問題——「まぼろし部落」も出てくる。そうするならば、行政指導の限界をこえているということであるならば、これは司法当局あるいは公安関係においても手のつけようがないんだ、むしろ国会の審議を通じて、ああいうことはもう法的にいかんともしがたいんだという宣伝を一生懸命にこの国会がやったことになる。次の段階からは大いにふえてくるように思う。これを業となす者がふえてくる、だんだんふえている、こういうやり方が。とすれば、そこで所管大臣としては、どうするかということはお考えにならなければならぬのじゃなかろうかと思うんです。具体案はありませんか。
  125. 福田一

    国務大臣(福田一君) 先ほど総理からもお答えありましたように、内閣としては、いわゆる公用の土地の収用に関する法律がございますので、この法律を何か強化するような考え方をもってしていってはどうかと、こういう意味で前向きで解決をいたしたいと考えております。ただ、お説のように、こういうことでまだ実際できぬじゃないか、したがって、まるでそういうことを宣伝していることになってふえるんじゃないかという御質問でありますが、そういうふうに弊害がきわまれば、実は事はまた解決しやすくなる。どうしてもこの法律はこういうふうにしなければいかぬ、こういうような意見も出てくるわけであります。確かにいまのところ、弊害の度合いがだんだんふえてきておるということは認めておりますが、それだからここですぐ、たとえば電源開発についてそういうような法律をつくってはどうかというところまでは、なかなかほかとの関係においてもむずかしい。と言いますことは、電源開発の場合には、ダムをつくったけれどもそれが使えないとか、あるいはまた、相当な公共投資をしたのにそれを使えないのでやむを得ずやるという意味で、非常に困るということがあります。道路の場合でも、あるいは橋梁をつくる場合でも、一軒が立ちのかないので何もできない。どうしても一年も二年もその道路を使えない、また、つくれないという例がしばしばある。これなどは、それは歩く人が迷惑をしているだけだからがまんしていればそれで済むけれども、投下資本その他から見れば問題がある。その場合、どれだけの差があるかということになると私は問題だと思う。やはりこの種の公共的な仕事について土地の収用ができるような法制というようなものをわれわれとしては考えていくのが、一番姿としては正しいのではないかと、こういうふうに考えております。
  126. 藤田進

    藤田進君 そうすれば、これは道路は建設大臣、あるいは電源等については通産大臣、多目的ダム等では農林大臣だというので、キャッチボールであっちこっちでどっかやるだろうというのでは、これは解決しない問題なんであります。一番問題の大きいのは、やはり電源開発に伴う問題です。道路は、私も建設委員会にいて、青山の郵便局がなかなかあそこを撤去しない、しかし、その前後は既定方針どおりどんどん工事を進めている。また、ぶつかればそこだけ残して前後をやっていく。そこはまた利用もされていくということで、案外、世論というものがその間に起きてきまして、御承知のように、新聞などに出まして、ここだけが立ちのかないといったようなことになるとたまらないことになるし、なかなか行政当局にとっては便利がいいのですが、電源に関する限りは、これはもう二百億だの何だの、最近では三百億投じて、わずか百万や一千万のことでごたごたしたのでは発電開始がおくれるということで非常に弱みがある。ですから、収用法もへちまもない。これがだんだん悪いくせをつけている電気事業者にも問題があると思う。これは十分ひとつ今後検討していただきたい。  それから——先ほどに関連して補償の問題になりましたが——私は、今後の開発としては、水力の開発というものをもっと奨励され、あるいは水系によりましては、旧発電所の小発電所等は水没させても、ここで画期的な開発を進めていくことが、良質低廉な電力をコンスタントに送ることができると思うのです。減価償却等の関係で案外コスト高と言うけれども、長い目で見れば、あるいは国家的目的から見れば、水力というものは火力にまさると私は思う。ある水力開発の専門家が試算をしているものを私は見ました。これが社会主義経済であれば当然水力を中心に開発されるということになるし、確信を持つわけですけれども、石炭対策その他の関係もありましょうが、今後の重油中心の火力というものは、水力へ振り向ける。そのために、減価償却等からコスト高になるとすれば、治山治水なり水害復旧なりということから考えても、ある程度国家助成がなされてもしかるべきものではないだろうかと思われますので、この点そのように、今後特に水力の開発について重点的に政策を御考慮いただきたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  127. 福田一

    国務大臣(福田一君) まず第一に、水系別の古い発電所をもっと有効に、つぶしてもいいから水を有効に利用するということは、確かに、そういうような必要があるだろうと私は思っております。したがって、水系別にそういう問題を考えていくということも今後は研究をいたしたいと思います。  それから、いまの水力の問題でございますが、いままだ水力は千八百万キロくらいあるわけであります。だんだんといわゆるコストが高くなってきておることは事実であります。しかし、特にコストが高いと言いながらも、いわゆるピーク時の発電——電力を急にたくさん起こすという意味からいえば、やはりダム式の発電所というものが、今後ますますその必要性が出てまいる。火力ができればできるほど、それに応じた水力ができるということは、常時そういう電力が必要であるし、同時にまた、それに伴って、ある程度の家庭用電力というようなものがふえてまいるだろうから、どうしてもピーク時の発電というものが必要になってくる。したがって、いまお説のように、水力開発について、われわれはある程度今後も力を入れてまいりたいと思います。また、それがどうしても高価で、いわゆる計算の基礎が成り立たないというような場合において、国がこれに対して何らかの措置を講ずるということも、十分今後は考え得る問題であるし、われわれとしては考えていっていいのではないか。これが、ひいてはいわゆる生活の安定をもたらすゆえんでもあるし、また、産業を育てていくという意味においても必要性が起こり得ると考えられますので、御趣旨のような方向で問題を見てまいりたいと思っております。
  128. 藤田進

    藤田進君 同時に、わが国の水力技術というものは諸外国に比してかなり——むしろ群を抜いておるというか、優秀なものがあると思います。しかるに、現状は、ビルマその他賠償に関連するところは若干の国内技術の輸出というか、やっておるように思われますが、しかし、自余については、単なるコンサルタント程度のものが若干行なわれておるにすぎない。これはもっと海外の水力開発について、特に東南アジア等あるいは南米等、国の施策のレールに乗せて海外への技術進出ということ、そうして、できれば、測量、設計といったことだけでなくて、わが国の発電機材あるいは土木工事といったことについても、十分国の施策において進出ができるようにするべきではないだろうか。現在、海外技術協力関係の団体はありますけれども、まだまだ諸外国に比べて十分ではないと思われるわけであります。現状と今後の方策についてお伺いいたしたいと思います。
  129. 福田一

    国務大臣(福田一君) お説のとおりでございまして、日本電力開発技術というものは世界的にも認められております。したがいまして、今後はコンサルティングの仕事についても、もっと積極的にやれるような措置を講じたいと考えておりますし、さらにまた、日本の技術を海外にどんどん出す、特に東南アジア等においては、そういうようなことも十分考えてまいりたいと思っております。
  130. 藤田進

    藤田進君 それには、具体的に行財政の上でどういたしますか、三十九年度については、もう予算も成立したわけですけれども。
  131. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は、さしあたりは、いままでに海外進出のための、そういう公団式なものも、会社式のものもできておりますが、こういうものを強化するなり、また、電発などもこれをうまく利用するくふうがないかどうかということも私は考えております。  それからコンサルティングの技術を売っていくような場合に、日本人が設計その他をやれば、こちらが進出する場合にも非常に便利であるし、有利でありますから、こういう仕事にもできるだけ力を入れたいと、かように考えております。  同時に、これは非常に大事なことなんですが、日本の技術のすぐれておることをもりと低開発国の人たちに知らせるというPRも大事だと思います。こういうことは案外欠けておる。したがって、向こうの人たちをこちらに呼んで日本の技術を見せるということも必要であれば、そういうPRということにもっと力を入れて、外交関係、特に外務省の公館の大使館、公使館その他、そういうようなところにおいても、そういう意味でもっと力を入れてもらうように努力をいたしたいと思っております。
  132. 藤田進

    藤田進君 どうも具体性に欠けて不満足ですが、しかし、今後の大臣の実際に行なわれるその状態を監視していきたいと思います。  次に、本法によりますと、保安関係については、説明によれば、公益法人をつくって云々ということのようであります。これの実態についてもう少し詳しくお述べをいただきたいと思うのでありますが、どういうものをつくって、どのように運営され、どういう資本をもっておつくりになるといったような全貌を伺いたい。
  133. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) ただいま御指摘のように、この法律では、指定調査機関というものをつくりまして、そうして、いわゆる電気事業者が、一般電気工作物が通産省で定める技術基準に合っているかどうかを調べなければならないということで、その調査義務をこの指定調査機関に委託できるというたてまえをとっております。したがいまして、ただ、実際現在われわれ考えておりますことは、法律ができたらすぐそういうものをつくって渡してしまうというつもりではございません。何分にも、現在まで電力会社にずっと一応調査をしてもらっておるわけでございます。ただ、現在のところは、御承知のように、昔は電力会社がたとえば屋内配線の所有権を持っておったわけでございますが、御承知のように、終戦後、ほとんどそれがそれぞれの個人の所有権に渡ってしまった。で、現在は所有権はないけれども、責任だけ負わされておるという形になっておるわけでございます。それを一応はっきりさせるという意味におきまして、そのかわりに、電力会社に調査義務を課すと、こういう形をとっておるわけでございます。ただ、電力会社がやるのがいいか、場合によっては、そういう専門的な、それ専門のそういうものをつくってやったらどうかということで、もしそれがうまくいくならば、そういうところにまかせるということで、この法律ができて、あしたからその指定調査機関がすぐ動きだすというものではございません。したがいまして、どのくらいの規模でどのくらいの人員でとか、あるいは、どういうことでということは、まだ今日におきましてはっきりはいたしておりません。たとえば、この法律にも書いてございますように、まず地域を調査機関が調査いたします。調査機関の受け持つべき区域というものがあるわけで、初めはいわば実験的に、ある小規模の区域から始めてそれをだんだん全国に及ぼしていこうということでございます。したがいまして、いきなり九電力会社の区域内で全部一ぺんにできるというわけのものでもございません。現在は、大体少なくとも東電が一番熱心でございまして、まず東電がそういうものをつくってみる、そうしてうまくいけばというような考え方でございます。  また、その費用その他でございますが、御承知のように、電気料金の認可の際に、そういう調査の費用というものは電力会社のいわゆる総括原価の中に見ておりますので、その分は、もしそういうものができるならばこちらに移すということで、いきなり初めから完全なものができるとは思っておらないわけでございます。ただ、いやしくも、そういうものができた場合には、通産大臣が指定をするに際しては、調査業務を的確に遂行ができる経理的、技術的基礎が要るということでございますので、その点は、できましたからには万全の監督をいたしたい。したがいまして、いま、どの程度のものができるかという目安と申しますか、これはもう少し研究をさしていただいて、しかも、実情に合ったようなものをつくってだんだん及ぼしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  134. 藤田進

    藤田進君 そのように、これは政令、省令等にゆだね、かつ実態を把握できないものが法文に出てまいりますので、今後のこれらのあり方が非常に重要になってまいります。これらの省令等については、補足説明等から聞きますと、新しく法文上にあらわれてきた衆議院修正になる、電気事業審議会の諮問に付するということでございましたが、そういうことになりますか。
  135. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) おっしゃるとおりでございまして、われわれといたしましては、先般も藤田先生の御質問にお答えいたしましたように、実際的にはこの政・省令できちっときめることによって、ほんとうにこの法律が生きてくるわけでございますので、そういうものはただ役人がつくるということではなくて、それぞれの専門の方あるいは一般の方にお集まりを願った審議会で御審議を得て、そうして、しかる後に公布をするほうがよろしいと思いまして、電気事業審議会で政・省会はすべて御審議をいただくというつもりでおります。
  136. 藤田進

    藤田進君 通産大臣にお伺いしますが、とすれば、非常に重要な、通産大臣をあるいは補佐し、あるいは、ものを言う電気事業審議会になるわけであります。これは電気事業法に関する限り初めての例であります。この委員は、衆議院修正によれば二十人以内ということになっております。この法律が施行され、とりあえずは、これが実施になるわけでありますが、その際に、委員については法の最大限である二十人程度なのか、以内ということになっておりますので、どの程度をお考えであるのか、まず委員の数についてお伺いをいたします。
  137. 福田一

    国務大臣(福田一君) 二十人以内となっておりますが、二十人認めようかと私は考えております。
  138. 藤田進

    藤田進君 その際には、私ども、これほど重要であれば、それにふさわしい人をもって構成すべきだと思う。特に生産者に片寄ったり、あるいは特定の消費者でもまいりませんので、消費者は消費者のいろいろな層があるし、あるいは労働関係人たちも広くいるでしょうし、こういったことで私どもとしても、こういう人ならばどうかということについては、その意見があるわけであります。おりに触れてこれらの意見を持ち込む場合もあろうかと思います。そういう際は、十分これをしんしゃくして通産大臣の裁定を仰ぎたいと思うわけでありますから、これら構成に対する態度としてお伺いをいたしておきます。
  139. 福田一

    国務大臣(福田一君) お説のとおり、これは重要な審議会でもございますし、生産者だけの味方であってもいけないし、一部消費者だけの味方であってもいけない。また、労務関係等の面も考えなければいけないと考えております。したがいまして、いよいよこの人選に当たるような場合においても、皆さん方の御意見を十分また聞かせていただいて裁定をいたしたいと思っております。
  140. 藤田進

    藤田進君 それから衆議院本会議における決議でも、調査会法の所要の措置を講ぜよということでございました。これはもとより議員提出でありますが、いまお伺いするのは無理かとも思いますけれども、電気事業審議会——電気事業法の中における審議会とは別個に、エネルギー総合対策を打ち立てるという意味で、かなり広範かつ奥行きの深い審議をいたし結論を出すこの調査会は、どういう構想が、人的構成において、あるいは法的位置においていいものか、構想があればお聞かせをいただきたい。
  141. 福田一

    国務大臣(福田一君) 御案内のように、これは議員提出として議決を得ておるのでありますが、趣旨においてわれわれは賛成をいたしておりますので、これは設置をいたしたいと考えておりますが、その構成あるいは運営等の問題については、まだ具体的には案は持っておりません。しかし、先ほど来、電気事業審議会の場において御発言があったような御意見は、当然またこういうエネルギーの問題についてもあるはずであるし、われわれとしてもまたそういうような立場からこの問題を十分研究してまいりたいと思っております。
  142. 藤田進

    藤田進君 次に、現在所々で問題になっていますうちで、衆議院でも取り上げられました奄美大島の、非常にコスト高である、よって九州電力に統合してもらいたいという運動が、われわれの手元にもなされております。これに対する、通産大臣として、本法が成立いたしますれば、何らかの措置が講じ得ると思います。どういう解決策をお持ちであるか、お伺いしておきます。
  143. 福田一

    国務大臣(福田一君) まずさしあたり、われわれといたしましては、何らかの善後措置を講じてあげなければいけないと思っておりますが、これはただいま研究中であります。ただし、将来の目標といたしましては、これは九州電力に統合するという形において問題の解決をいたしてまいりたい。すぐにこれができますかどうか、まだ問題はありますので、その間、中間の期間においてどうするか、それから最終的には、私が申し上げたように、九州電力に統合する、こういう形でもっていきたいと考えております。
  144. 藤田進

    藤田進君 これはまあ消費電力量とか、経理の状況とか、いろいろ問題はありましょう。が、確かに、奄美大島が日本に復帰して、過去の電気事業歴史の経緯にかんがみますると、統合されることが望ましいと思います。ただ、その際に、経理にどの程度響くか、これはまたいろいろ問題もありましょう。その際は、統合する方針の中には、そのときに全体の原価による供給規程というようなことにまで触れて統合というお考えなのか、供給規程、まあ端的に言えば、電気料金の改定を伴わないという状態において統合という時期をお考えになるのか、これは非常に問題があるところだろうと思うのであります。
  145. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は、統合する以上は、やはり同じような電気料金に持っていくということでなければならないと思います。統合という形に持っていくときには。ただ、いまの状態を聞いてみますというと、いろいろまだ問題があるようでありまして、実際の使用した電気に対するだけの支払いがされておるかどうかというような問題もあるようであります。なかなか具体的になりますと、必ずしも理論だけでいかない面が残っておりますので、こういう問題からまず解決をしていく必要もあるかと思っております。
  146. 藤田進

    藤田進君 私が申し上げるのは、むろん統合するということになれば、九州電力供給規程を奄美大島に適用する、これは当然だと思うのです。それがなきゃ統合の意義もないんでしょうが、奄美大島の消費者としては、それは最終的目的はそこにあると思う。そこで、かなり赤字経営である、あるいはロス率も非常に高いと聞いているわけですが、こういう赤字財源を持ち込んだようなことになるんでしょうが、そのことが九州電力全体の料金改定に触れなければならないという段階では統合というものはできない、九州電力がかなり運営のよろしきを得て、より黒字転化して、奄美大島統合が経理上さしたる影響はないという段階に、統合ということを通産大臣はお考えなすっているんだろうかどうだろうかということなんです。
  147. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は、奄美大島を統合することによって、それが九州電力のいわゆる会社の経営状態を根本的に悪くするというような、それほどの問題ではないと思います。したがって、時期が来れば私はできるものだと考えております。
  148. 藤田進

    藤田進君 だとすれば、比較的すみやかな時期に統合ということが言い切れますか。経理問題がなければ、これは別にことばとか技術的に問題があるわけじゃありませんし、要望をすみやかに入れ得ると思う。しかし、それが簡単にいかないように聞いている。これはとりあえず経理上の問題じゃないのでしょうか。
  149. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 実は、奄美大鳥をいまの時点ですぐ統合するかどうかといったことになりますと、確かに御指摘のように、それがすぐ九州電力全体の経理に響いてくるという可能性も現在ではございます。しかしながら、九州電力もその後、将来にわたりましては比較的安定的な経理もできるという見通しも立っておりますので、その辺の経理状況とにらみ合わせてやりたいと考えておるようでございます。ただ、御承知のように、九州電力の場合は、たとえば長崎その他に相当離島がございます。奄美大島をするからには、やはりほかのほうとのバランスもございまして、その辺の全体のバランスも考えました上で、それは九州電力といたしましても、前向きにできるだけ早くということは考えておるようでございます。ただ、大臣がおっしゃいましたように、奄美大島電力と申しますか、奄美大島の人たちのやはり姿勢は正していただきたいという希望はあるようでございます。その辺をすみやかに解決した上で、できるだけ早い機会に、九州電力の希望でもあり、また、通産省としてもできるだけ早い機会に、そういう、いま申し上げましたような問題を御解決いたした上で、できるだけすみやかに、こういうふうに考えておる次第でございます。
  150. 藤田進

    藤田進君 奄美大島の住民の皆さんの意見も十分ひとつしんしゃくした上で、ひとつすみやかに御処理を願いたいと思います。  次に、問題となっておりますものに、いわゆる線下補償あるいは電柱敷地料というものがございます。現在われわれの手元に来ているものも若干ありますが、北海道等においては、電信電話あるいは国鉄公社といったものとの単価の比較においてかなり懸隔があるという不満があります。当該北海道の中における同一地域において、しかも電柱敷地料の単価に大きな開きがあるという不満があります。それから高圧送電線下の繰下補償について、同様要求が来ております。そこで、これは北海道という原野における場合と、都市周辺の場合とは、おおむね事情が異なるので、画一的に単価を確定することは、これは無理だと思う。しかし、いやしくも、国鉄公社あるいは電電公社等との関連において、行政当局とされては一つの補償基準というものが必要ではないだろうか。そのことがむしろ問題を惹起しているし、地域住民にとっては利害が、非常に格差がついているわけでありますが、これが将来の解決の方策について、具体的にお伺いしておきたいと思います。
  151. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 御指摘の、北海道の線下補償あるいは電柱敷地の問題につきましては、衆議院でもいろいろ御注意がございまして、確かに、われわれといたしましても、実は御承知のように、たとえば電話の柱を立てる場合の敷地、あるいはその他国鉄の場合、これは全国一律ではございますが、たとえば電電公社の場合には、二十八年、三十三年、三十七年というふうに、それぞれ値上げをしております。ところが、北海道電力だけは、実は昭和二十九年当時から全然しておりません。ほかの電力会社はやはりこういう電電公社あるいは国鉄の値上がりと大体合わせておりますが、北海道だけ据え置きということで、これは確かにおかしいのではないかということで、われわれのほうからさっそく指示をいたしまして、現在、北海道電力はその値上げを検討中でございます。ただ、北海道の場合、御存じのように、非常に敷地が広いというようなことで、ほか並みにできるかどうかはちょっとわかりませんが、しかし、少なくとも、あまりにも現在差が多いので、その点は十分北海道の農民連盟ともお話し合いの上、できるだけすみやかに、ある程度の値上げはしたらどうかということで、現在、北海道電力自身と折衝いたしまして、北海道電力が値上げ案を検討しておるというのが、現在の実情でございます。
  152. 藤田進

    藤田進君 で、これはどうします。今後の解決ですがね。これはまあ国鉄の場合に、三十七年度、たんぼの場合八十円、電電公社の場合も八十円、畑の場合は五十円、電電公社も五十円の協定をしているようです。これに対応する電気会社のほうを見ると、木柱の場合、田が三十円、畑は二十円、こういう状態なんですね。まあ、そのほか種類によって違いますが、これでは問題があるように思うのです。なるほど電柱は立てて提供する、電線も持ちましょう、そのかわり、電気はぜひつけてもらいたいという、未点灯部落等の要望は当初あったでしょう。これは電話の場合でもよくあることですが、しかし、一たん、これらの工事が済み、何年かたつと、やはり他の電電なり国鉄なりと同様の措置を願いたいというのが、これは人情ですよ。これをどのように、今後、通産省とせられては指導されるのか、さらに具体的にお伺いしておきたいと思うのです。
  153. 宮本惇

    政府委員宮本惇君) 電柱敷地の場合は、やはりわれわれといたしましては、国鉄あるいは電電公社と連絡いたしまして、横並みに見てもあまりアンバランスがないようにいたしたい。ただ、御承知のように、やはりそれぞれの地方によりまして、必ずしも電柱一本八十円が全国的にいいかどうかという問題も逆にございます。したがいまして、その点は実質的にはバランスをとるように、われわれのほうでも指導していきたい、こう考えておる次第でございます。
  154. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二分散会      —————・—————