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政府委員(
磯野太郎君) 基本的な感じから申し上げますと、どうも
紡績業というものは、従来は、いわゆる規模の利益というものがほとんどなかった
産業ではなかろうかと思います。これはまあいろいろ
理由があろうかとは思いますけれ
ども、まあ何といっても原料代が全体のコストの中で五〇%
程度占めておりまして、あとの五〇%の半分が賃金であるというふうな、非常に典型的な
労働集約産業でございますので、そういう点からいって、たとえば自動車でございますとか、
機械工業、石油化学のような、規模がある
程度大きくなければ
企業としての経済力がつかないというふうな、規模の利益に非常になじまない業種であったと思います。それで今後そういう点がどうなるかということでありますけれ
ども、非常に御
指摘のとおり、今
労働力の確保という問題から、
繊維工業全体として
一つの転換期に入っておると思いますが、それでその
労働力の問題につきまして、これをまあ労働節約をやるという
立場から
紡績設備等の
近代化を推し進めなければならないということになろうかと思いますが、そこのところでどうも
繊維工業あるいは
紡績業につきまして、若干ある
程度の経済単位的な
考え方、あるいはそういう行き方が、現在及び将来の問題として出てきたのではないかというような感じでございます。御
承知のように、
紡績では糸を巻く工程で非常に多くの人間を雇うわけでございますが、その巻き糸段階での労働節約をはかりますために、たとえば自動ワインダーを備えます場合には、
一つの糸の品種につきまして一万
錘程度でなければ自動ワインダーを経済的に使えないというような
状況でございます。そういう点で非常に典型的な
労働集約産業で、規模の利益あるいは経済単位という概念に非常に遠く離れておった
紡績業につきまして、そろそろ経済単位あるいは規模の利益を
考えるような段階に日本の
紡績業は当面しつつあると思います。そういう点からいきますと、今御
指摘になりましたような
零細企業を将来どういうふうにもっていくかという問題でございますが、これはどうも現実の
見通しといたしましては、こういう零細的な
企業が品質のいい、良質な若年労働者の
充足に困難をいたしました場合に、中高年齢層に移っていくということが
考えられます。そういうことが
考えられますが、これはまああり得べき姿といたしましては、そういうような転換期でございますから、ただいまの
時点でこういう零細的な
企業が将来生きていく
かっこうとしては、やはりある
程度の規模を持たなければいけないというふうに
考えております。そういうふうな方向で指導いたしたいということを
考えております。