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1964-04-24 第46回国会 参議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十四日(金曜日)    午後一時四十五分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     前田 久吉君    理事            赤間 文三君            上原 正吉君            田畑 金光君    委員            大谷藤之助君            豊田 雅孝君            吉武 恵市君            大矢  正君            椿  繁夫君            藤田  進君            鈴木 一弘君            奥 むめお君   衆議院議員    発  議  者 松平 忠久君   国務大臣    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業大臣官    房参事官    宮澤 鉄藏君    通商産業省通商    局長      山本 重信君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    通商産業省通商    局輸出保険課長 矢野俊比古君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業者事業分野確保に関す  る法律案衆議院送付予備審査) ○官公需中小企業者に対する発注の  確保に関する法律案衆議院送付、  予備審査) ○輸出保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告いたします。  本日は、中小企業者事業分野確保に関する法律案官公需中小企業者に対する発注確保に関する法律案、以上両案の提案理由説明を聴取し、輸出保険法の一部を改正する法律案について補足説明を聴取した後、質疑を行なうことになりましたから、御承知願います。     —————————————
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 去る三月六日、予備審査のため本委員会に付託されました中小企業者事業分野確保に関する法律案官公需中小企業者に対する発注確保に関する法律案、以上両案を一括して議題といたします。  発議者松平忠久君から提案理由説明を聴取いたします。
  4. 松平忠久

    衆議院議員松平忠久君) ただいま議題となりました中小企業者事業分野確保に関する法律案提案理由を御説明いたします。  今日、中小企業経営がきわめて困難な状態に置かれている原因の主たるものは、対大企業との関係であります。大企業がその資本力にものをいわせて、従来の中小企業分野にまで、どんどん進出し、弱小中小企業を駆逐しつつあるのが、今日の実情であります。大企業中小企業分野進出するやり方には、大企業自身が直接行なうもののほか、既存の中小企業資本や役員を投入して、実質上の支配権を確立する方法があります。このような傾向を放置しますならば、中小企業は近き将来、その存立基盤までも奪われることとなるのであります。  わが党は、この事態を深く憂慮し、かねて中小企業者に適切な事業分野確保して、その経営の基礎をまず安定させなければならないと繰り返し強調し続けてまいったのであります。これに対して、政府自民党は、事業分野を定めてこれを中小企業者確保することは、憲法に違反するといって反対してきたのであります。しかしながら、事態の悪化は、違憲論をもって放置することを許さず、最近ではようやく政府自身でさえ、大企業中小企業との間の事業分野について、何らかの調整の必要を認めざるを得なくなっているようにうかがえるのであります。  この際、中小企業に適切な事業分野を明確にし、その分野への大企業者進出を規制することによって、中小企業者存立基盤確保することが何よりも緊急必要なことと存ずる次第であります。  これが本法律案を提出する理由であります。  次に、その内容概要を御説明いたします。まず第一に、本法律案中小企業者事業分野として確保すべき適切な業種を次の基準に基づいて政令指定することとしております。すなわち、製造業建設業またはサービス業に属する業種のうち、その業種に属する事業を営むものの総数のおおねむ五分の四以上が中小企業者であり。かつ、その業種の過去一年間の生産実績なり取り扱い量のおおむね三分の二以上が中小企業者によって占められ、経済的にも中小規模企業形態が適切であって、もしこの分野に大企業業進出する場合においては、中小企業者を著しく圧迫すると認められるものを中小企業事業分野として確保しようとするものであります。  第二に、指定業種を営むものはすべてこれを届け出させ、大企業者指定業種分野に新たに進出し、拡張することを制限し、これに違反するものには罰則をもって臨むことといたしたのであります。  第三に、大企業者がみずから行なわなくとも、資本的または人間関係において支配力を持つ中小企業者をして行なわしめる場合も、同様に規制の対象とし、主務大臣が大企業者に対してその違反行為を排除するための命令を出すことができるようにして、予想される脱法行為を未然に防止することとしたのであります。  第四に、かかる業種指定並びに大企業者進出制限脱法行為禁止等に関する政令を制定、改廃する場合、大企業者に対する命令を行なう場合は、とくに公正を期するため中小企業審議会に諮問することといたしたのであります。  以上が本法律案理由並びにその内容概要であります。     —————————————  次に、官公需中小企業者に対する発注確保に関する法律案提案理由を御説明いたします。  わが国経済が二重構造を持ち、大企業中小企業との間に非常な格差があることは、政府みずから常に指摘しているところであります。そしてこの経済の不合理を是正することが、今後の経済政策の基本でなければならないとされているのであります。それには、国の政策が大企業に偏重することを改め、おくれた中小企業にこそ政策の重点を置くべきであります。金融、税制、その他財政金融全般にわたる政策を、この政策方向に沿って抜本的に是正することなくして、中小企業振興近代化経済の二重構造の解消などは期し得ないのであります。  したがって、まず国・地方公共団体その他これに準ずる公的機関みずから率先してその範をたれるべきだと存ずるのであります。すなわち、たとえば最近中小企業庁が若干の中央官庁物品発注状況を調査したところによりますと、その発注対象は大企業に集中し、中小企業にはその総額の二割程度にしか及んでおりません。こうした現状を改善し、中小企業相当部分発注確保することこそ、まずさしあたって、国がなすべき最も手近な問題であります。これを国の機関にとどまらず、地方公共団体公社公団等公的機関に及ぼすならば、その発注量は莫大な額に達するでありましょう。すでに諸外国でもその例があります。中小企業問題が特に深刻なわが国において、このような施策がおくれていることはきわめて遺憾であります。ここにそのすみやかな実施を願ってやまないものであります。  これが本法律案を提出する理由であります。  次に、その内容の概略を御説明いたします。まず第一に、この法律案は、国、地方公共団体及び公社等が、物品または役務を調達するため請負、購入その他の契約をする場合において、中小企業者への一定割合発注確保することを目的としているのであります。そこで、その官公需契約を行なう対象となるべき製造業または建設業に属する業種については、別に政令指定することといたしております。  第二に、この発注が確実かつ適正に行なわれるため、中小企業審議会答申に基づき、内閣総理大臣が各公的機関当該年度における中小企業向け発注量を公表することといたし、この公表された割合を達成する義務をこれら機関の長に課しているのであります。  第三に、その施策完全実施をさらに裏打ちするために、その実績当該年度終了ごとに報告させることとしており、また、各上級機関の長がその所管の公的機関の長に向かって官公需契約に関して必要な勧告をすることができるよう考慮されているのであります。  以上が本法律案提案理由並びにその内容概要であります。  何とぞこの二案につきまして、御賛成くださるようお願いいたしまして、提案理由説明を終わります。
  5. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で両案の提案理由説明は終了いたしました。自後の審査はいずれも後日に譲ることといたします。
  6. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、輸出保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、本日は、まず政府委員から補足説明を聴取いたします。山本通商局長
  7. 山本重信

    政府委員山本重信君) 輸出保険法の一部を改正する法律案につきまして、補足して御説明申し上げます。  今回の改正点はさきに大臣提案理由説明で申し上げましたとおり、二点でございます。まず第一は、普通輸出保険増加費用保険に付することができる費用範囲を拡大することであります。従来この保険におきましては、航海または航路変更により新たに負担すべきこととなった海上の運賃及び保険料のみがてん補対象となっておりましたが、陸上運賃及び保険料につきましても、この保険を付することができるようにするものでございます。ちょうど昨年八月から十月にかけまして、シンガポールにおきまして、対日補償要求問題にからんで、港湾労務者日本船積載貨物陸揚げを拒否しようという動きがありました。その際、貨物をペナンで陸揚げをして、そこから陸送するということが考えられましたが、陸送に伴う増加費用につきましては、現行保険制度ではカバーされませんので、この点をぜひ改善してほしいという要望がありました。そこで政府部内で検討を加えました結果、今回この点についての改正提案することになったものでございます。  昭和二十七年にこの増加費用保険を創設します際に、特に参考といたしましたイギリス制度におきましても、連合王国外におきます航海または航路変更によって、輸出したあとに生じた追加的な輸送費または保険料でありまして、買い手から回収することが実際上不可能なものをてん補することになっておりまして、その際も、陸上運賃及び保険料につきましても保険対象になっておる次第でございます。  次に、第二の改正点といたしましては、普通輸出保険により担保される船積み前の信用危険の範囲を拡大することであります。言いかえますと、従来から担保されております輸出契約相手方の「破産」のほかに、新たに「これに準ずる」支払い不能によりまして輸出することができなくなることによって受ける損失もてん補するように改正するものでございます。この点につきましては、昭和三十六年九月の輸出保険審議会答申におきましても取り上げられておりますし、また、従来から関係各界の強い要望があった点でございます。この担保危険の範囲の拡大は、信用調査機能の拡充とにらみ合わせながら実施していく必要がございますので、昭和三十七年の法律改正に際しましては、とりあえず破産だけに限定しておいたわけでございます。その後、幸いにいたしまして信用調査機能も漸次整備されてまいりまして、昭和三十八年度末におきましては、海外バイヤー信用調査資料も六万三千件に達しているような状態でございまして、今回法律改正に踏み切ることにした次第でございます。イギリス及びアメリカにおきましても、相手方の支払い不能を担保危険としておりますが、日本といたしましても、この際輸出振興の観点から、この点の改正を行なうことが必要であると存ずる次第でございます。  今回の改正が行われますと、輸出業者は、船積み前に輸出契約相手方が支払い不能に陥ることによって受ける損失の不安から解放されまして、一そう積極的に市場開拓につとめることができ得るようになり、輸出振興の効果が期待できると考えております。  以上、今回改正案を提出しております二点は、いずれも輸出保険利用者から従来強く要望されておる点でございますので、どうかよろしく御審議いただきたいと思います。  なお御参考までに、資料といたしまして、現行輸出保険制度一覧表と、輸出保険運営実積、この二つを御配付申し上げておりますが、何とぞよろしくお願いいたします。
  8. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 以上で補足説明は終了いたしました。  それではこれより質疑に入ります。御質疑のおありの万は順次御発言を願います。
  9. 大矢正

    大矢正君 質問の具体的な中身に入る前に、その前提として、今日まで保険が行なわれてまいりましたその経過と実積等についてお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、最初お尋ねをしたいのは、昨年昭和三十八年度の保険契約の実積がどのようになっているのか、件数、それから金額等について御説明を願いたいと思いますし、あわせて三十九年度はどういう見通しを持っておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  10. 山本重信

    政府委員山本重信君) 御配付申し上げております輸出保険運営実積に詳細に数字があがっておりますが、要点だけこの資料につきまして申し上げたいと存じます。  二ページ目の下に、普通輸出保険の合計が出ております。その一番下の欄の第一行目引受件数がございますが、昭和三十八年度は四月から十二月までの計でございますが、件数にいたしまして二十二万一千三百十四件、保険金額は四千五十七億四千三百五十九万一千円という数字が出ております。これが第一の輸出普通保険数字でございます。
  11. 大矢正

    大矢正君 私が伺っているのは、この数字はだいぶ以前から見せていただいて勉強しているからわかるんですよ。私の申し上げておるのは、三十八年度において最終的にはどうなっているのかということなんです。
  12. 山本重信

    政府委員山本重信君) 三十八年度の数字は、まだ最終の締めが行なわれておりませんが一部推定が入っておりますけれども、一番新しい推定数字を申し上げますと、保険料が十六億七千四百六十三万八千円でございます。それから三十九年度は、予算を編成いたしましたときの数字で、保険料収入は二十億一千百万円になっております。
  13. 大矢正

    大矢正君 保険収入が幾らあるかということを聞いているんじゃないんですよ。契約をした契約高はどれだけで、そしてまた件数は何件あったのかということを聞いているんですよ。
  14. 山本重信

    政府委員山本重信君) 三十八年度の保険契約金額は六千二百十六億円でございまして、それから三十九年度の予定は七千四百四十一億円、約二〇%の増加になっております。
  15. 大矢正

    大矢正君 あなたの言っておられるのは、普通輸出保険だけの話じゃないんですか。全部のことを聞いているんですよ。そうじゃないですか。
  16. 山本重信

    政府委員山本重信君) 普通輸出保険以外のものも全部含めて、全体でございます。
  17. 大矢正

    大矢正君 三十九年度の契約限度額というのは七千四百四十一億にしかならないんですか。そうじゃないでしょう。予算総則に書いてあるじゃないですか。
  18. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいま申し上げましたのは、保険金額で、実際に契約される見込み数字でございまして、別途予算総則によりまして契約限度というのがきまっております。その限度額は、三十八年度七千六百八十一億円、三十九年度は一兆一千八十四億円になっております。
  19. 大矢正

    大矢正君 まあそれはあとから予算総則のことはお尋ねしますが、そこで昭和三十八年度と三十九年度、これはもちろん見込みも入りますが、保険契約高、あるいは件数件数はいま御説明なかったんですが、内容説明されたようでありますが、そこで、三十八年度のわが国輸出貿易総額というものが幾らあって、その総額の中で保険契約を実際にしたものはどの程度の比率を占めているのか。同様に三十九年もお答えをしてもらいたいと思うんです。
  20. 山本重信

    政府委員山本重信君) 三十八年度の輸出額は、まだ最終的な数字為替ベース数字が出ておりませんが、最近の状況から判断いたしまして、五十五億をかなり大幅に上回りまして、五十六億に近い数字ではないかと思われます。輸出保険に付保しております率は、輸出のうちのおおむね三割だと思います。この率は大体来年度も同じであろうというふうに考えております。
  21. 大矢正

    大矢正君 もっと具体的に説明願えないですかね。あなたの言われる五十五億というのは、これはドルのことでしょう。それから付保契約というものは、六千二百十六億円でしょう。だからそういうわかりづらい御答弁をいただかないで、五十五億ドル輸出をかりに見込んだ場合に、それが円貨に換算してどの程度になるのか、六千二百億という保険契約高というものは、したがって全輸出高のうちの何%ぐらいに当たるのかということを、あなた説明できないわけないじゃないですか。
  22. 山本重信

    政府委員山本重信君) 従来輸出のほうの数字はいつもドルで言っておりますので、円にただいま換算してみたのでございますが、五十六億といたしますと大体二兆円になります。それに対しまして、契約限度額が七千六百八十億でございますから、大体一応三〇%ということになります。
  23. 大矢正

    大矢正君 いま、あなた、契約限度額と言われているが、限度額じゃないでしょう。限度額というのは予算総則に盛られたことであって、契約実績限度額というのは違うんでしょう。
  24. 山本重信

    政府委員山本重信君) 契約限度額は、輸出保険を付保します場合に、予算総則によってそれ以上のものはできないという一つ限度でございまして、実際に保険契約をいたします金額は先ほど申し上げましたように、六千二百十六億という金額でございます。ちょうど三〇%ちょっとこえておるという数字でございます。
  25. 大矢正

    大矢正君 しかし、この六千二百十六億というのは、これは言うならば物の貿易という内容だけじゃないわけです。そうじゃなくて、資本の場合があるわけでしょう。全部含んで六千二百億なんでしょう。だから実際の物の面におけるものと比較してみなければわからないじゃないですか。資本輸出のものも含んで、結局やられた数字が六千二百億ですよ。それじゃ五十六億ドルというものとの貿易収支とのつり合いは比較にならない。だから資本輸出のものを除いて、実際の物の輸出、そしてそれにかかった、言うならば契約高というものはどういうふうになっているのでしょうか。
  26. 山本重信

    政府委員山本重信君) 仰せのように私たちが計算しております輸出金額は、為替ベースでございまして、これまた実際の物の動きとは違って、金の動きで押えているわけでございます。それから保険の場合は、これまた御指摘のように物だけでございませんで、投資等もこの中に入っておりますので、厳密にはこれは比較すべきものでないかもしれないのでございます。ただ、投資保険関係はいろんな事情もございまして、金額としては、たいした金額でございませんので、率としてそう大きく変わってまいらないと思います。
  27. 大矢正

    大矢正君 同じく三十八年度、それから三十九年度の輸出保険事業実績概況等について、また、事業収支、それらについてひとつ御説明願いたい。
  28. 山本重信

    政府委員山本重信君) 三十八年度の収支でございますが、保険料収入が十八億六千二百万円、回収金が二億九千八百万円、利子収入が六億四千三百万円、前年度繰り越し支払い備金が二十一億一千八百万円、前年度繰り越しの末経過保険料が三十一億九千五百万円、以上合計いたしまして八十一億二千万円、こういう数字でございます。それに対しまして損失のほうでございますが、保険金が十七億九百万円、事務取り扱い費が一億七千五百万円、次年度繰り越し支払い備金が二十三億百万円、次年度繰り越しの末経過保険料が三十六億六千二百万円、異常危険準備金が一億七千四百万円、三十八年度の利益としては九千六百万円、以上合計いたしまして八十一億二千万円、これが三十八年度の推定を含めました数字でございます。  それから三十九年度を申し上げます。利益のほうから申し上げますと、保険料が二十億千二百万円、回収金が二億九千六百万円、利子収入が六億八千八百万円、雑収入が百万円、前年度繰り越し支払い備金が二十三億百万円、前年度繰り越しの未経過保険料が三十六億六千二百万円、以上合計いたしまして八十九億六千二百万円と相なっております。それに対します損失勘定のほうは、保険金が十九億八百万円払い戻し金が二百万円、事務取り扱い費が一億七千五百万円、次年度繰り議し支払い備金が二十五億八千四百万円、次年度繰り越し経過保険料が四十億四千百万円、異常危険準備金繰り入れが、一億四千七百万円、本年度利益が一億二百万円、合計いたしまして八十九億六千二百万円と相なっております。
  29. 大矢正

    大矢正君 次に、この資本金の推移についてお尋ねをしますが、昭和二十五年に発足したとき、五億円で出発をしたこの保険制度でありますが、現在三十億。で、この五億円から三十億に増資をされた年次別経過、これをひとつ御説明願いたい。
  30. 山本重信

    政府委員山本重信君) 当初五億円で発足いたしまして、その後二十五年の六月に五億円さらに増資いたしまして、資本金が十億円になりました。二十七年の一月にさらに十億円増資をいたしまして、二十億円になりました。それから二十七年の四月に、さらに十億円の増資が行なわれまして、現在の資本金三十億円になっております。
  31. 大矢正

    大矢正君 そうすると、増資をした最終年次というのは、二十七年だということになるのですか。
  32. 山本重信

    政府委員山本重信君) さようでございます。
  33. 大矢正

    大矢正君 そこで大臣お尋ねをしたいのですが、いまの御説明によると、昭和二十五年に発足をして、二十七年までは急速にこの資本金をふやした、すなわち増資をしたのだが、昭和二十七年から今日まで増資がないということは、約十年以上増資がないということになる。これはあとから具体的に説明も受けたいし、それから質問もしますが、これは一体どういう考え方に基づいて増資をしないのか。というのは裏を返して言えば、その三十億の範囲内でやるのだからかまわないといえばそれまでの話だが、増資が少ないということは、とりもなおさず保険率にも関係があることなんですがね、十年以上も増資一つもしないで、したがって保険料率も下げることができないということでは、私はそれこそ貿易を拡大するという方針に合わないのじゃないかという気がするのだが、まず最初大臣から、この際お考えを承っておきたい。
  34. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおり二十七年から今日まで増資をいたしておりません。いままでの保険料率によってやっておれば、赤字が出ることもなかったわけでございまして、その点においていききか、もう少し保険料率を下げるために増資を積極的にやるべきではなかったかと、こういうお考え方かと思うのでありますが、確かに私はそういうくふうも、ときどきには話をしたこともあるのでありますが、今日までそれが実現を見ておらなかったという実情であると思うのであります。したがって、今後といたしましては、できるだけ保険料率が下げられるように努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  35. 大矢正

    大矢正君 まあ、こまかい話はあとからしますから、その議論は後ほどに譲るといたしまして、引き続いてお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、大体保険というものは、その対象となる商社なり生産者なりに喜んで受け入れられるということが、本来必要なことだと私思うのであります。政府としてももちろんのこと、この受け入れられるためにはどうすべきかということを考えて、それぞれ対策は立てられておられることと思うのでありますが、一説には、政府みずからが特別会計を設けて保険制度を行なうのではなくて、公社なりあるいはまたもっと極端にいえば民間なりという意見も一部にはあるわけであります。政府みずからがこの保険制度実施しなければならないという理由のその大きなものは何々でしょう。
  36. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいま輸出保険でカバーしております危険は、一部の信用危険のほか、おもなものはいわゆる非常危険でございまして、これが起こります場合には普通の採算ベースにはとうてい乗らないような場合が予想されるのでございます。したがいまして、やはりいざという場合には政府が最後のしり拭いということが必要なわけでありまして、普通の民間の保険会社では、そういうカバーが事実上むずかしいのが基本的な点であろうかと思います。それからなおこうした制度は外国にもございますが、いずれも国が直接やりますか、あるいはお話のように公社のようなものをつくり、あるいは民間の保険会社に業務を頼みましても、それは政府が委託してやる、いわゆる政府の勘定ですが、実務だけを民間の保険会社に委託しておる、こういうようなケースでございまして、最終的な危険負担はやはり国がするという体制をとっております。そういう点からいたしましても、日本の現在の制度は国際的に見ても大体共通の一つ制度、あり方であるというふうに考えておる次第でございます。
  37. 大矢正

    大矢正君 昭和二十五年に保険制度ができてから今日までの各年度ごとの事業収支経過でありますが、もちろん事業収支ということになりますと、いろいろ要素が加わってまいりますが、一番わかりやすい意味で考えてみますると、保険料収入というものが幾らあって、支払います保険金が幾らであったかということだと思うのであります。もちろん事務費やその他いろいろありますが、事業収支の中でも特に関心を持たなければならぬ問題はそこにありますが、そこで、昭和二十五年以降三十八年度までの事業収支のうちの、特にいま私が申し上げました保険料収入とそれに対しての保険金の支払い額の推移は一体どうなっておるのですか。赤字になったという年度があるのかどうか、そういう経過について御説明を願いたい。
  38. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいまお尋ねの点でございますが、まず数字について申し上げますと、昭和二十五年度から昭和三十八年の十二月までの累計で申し上げますと、保険料収入が百三億七千百万円でございます。それに対しまして支払い保険金は五十九億六千五百万円になっております。年次別動きを申し上げますと、おおむね保険料収入が支払い保険金よりも多いのでございますが、年によりましては支払い保険金のほうが多くなっておる年もございます。たとえば昭和二十六年でございますが、保険料が七千万円でございましたのに対して、支払い保険金は二億七千四百万円になっております。それからもう一つ申し上げたい点は、昭和三十六年、七年二回にわたりまして大幅に保険料の引き下げをいたしました。三十六年の引き下げ前を一〇〇といたしますと、二回の引き下げ後は五四%、ほとんど半分近くにまで下げたのでございます。それは一つにはできるだけサービスをよくするという基本的な考え方と、それからもう一つは、動向から見てそういう引き下げをするだけの余裕がありそうだということから踏み切った次第でございます。そういたしました結果、三十六年は保険料が十九億に対しまして支払い保険金は七億六千万円でございましたが、昭和三十七年度には保険料が十六億九千万に対して支払い保険金は十五億五千六百万円と非常に接近をいたし、三十八年に入りましても同じような傾向でございまして、従来見られましたような保険料が非常にたくさん入って支払い保険金がはるかにそれを下回っているという状態は大体なくなってまいっております。
  39. 大矢正

    大矢正君 大臣お尋ねしますが、昭和二十七年以来今日までこの会計に対しての増資が行なわれていない。そのことを私は具体的に申し上げたのですが、次に保険料収入と支払い保険金経過を見ると、いま局長説明いたしましたように、百三億の保険料収入があるにもかかわらず五十九億しか支払っていない、約半分程度しか現実には支払われていないということになっているわけです。資本金の面とそれからこの保険料対支払い保険金との面から見ても、保険料というものはまだまだ、しかもすみやかに下げなければならない、下げるまた理由もある、こういうように私は思うのでありますが、その点について大臣いかがですか。
  40. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、保険料率を下げる方法は、出資をもっとふやしまして、そして場合によってはこれは保険の問題は赤字になってもいいのじゃないか、赤字になってもいいから料率をうんと下げる、こういう考え方もあるのでありまして、そういう意味から言うと、出資をもっとふやすことによって若干の赤字を覚悟しながら保険料率を下げていくという方法もあるので、そういうことも考えてみるべきではないかと私は思っておる。なお、いまの御質問は、百三億の収入があるのに五十九億しか支出していない、四十何億も金がもうかっている、何もこの保険で金もうけをする必要がないじゃないか、もっと料率を下げたらいいじゃないかというお話だと思うのです。ごもっともなお考えでございますが、御案内のように、今後われわれといたしましては、ますます低開発国向けの輸出をふやしていかなければならないということに相なります。そうしますと、先進国の場合はわりあいに貸し倒れなどというようなこともなしに済むのでありますが、そういう危険率からいうと、やはり低開発国のほうが多いと思われるのでありまして、そういう意味から言えば、保険料率を最近下げましたから二カ年くらいはあまり収入もふえておりませんが、今後しばらくの間、この一両年推移を見ながらその上で保険料率に手をつけるというのも現実に運営をしていく、いわゆる保険業でもやるという考え方からいうと、そういうものの考え方も成り立つわけであります。しかし、これは損をしてもいいから保険料率を下げるほうがいいのだというようなお考えもあるだろうと思うのであります。われわれといたしましては、一応この限度にいたしまして、将来推移を見ながらこれに対処していきたい、こういう考え方で今回の法案を出して御審議を願っておるわけでございます。
  41. 大矢正

    大矢正君 この保険料保険支払い金の面、それから出資の面、これらを眺めてみて考えられることは、この保険制度政府みずからがやっていることについて疑義が出てくるわけです。政府がなぜやらなければならないかということになってまいりますれば、ある場合にはかなりの赤字を予測してもやらなければならぬ民間ベースじゃ赤字のことはやらないということになると、なかなか輸出の面に果たす保険制度の役割りというものが生きてこないということだと思うのであります。したがって、この際政府は、ある場合には赤字になってもやはりできる限り多くの貨物に対して、また海外の投資に対して保険をかけてもらうような体制をつくることが、やはり考え方の基本だと思うのであります。にもかかわらず、出資もなければ、保険料と支払い保険金との大きな差があるにもかかわらず、料率の引き下げが行なわれないということは、政府みずから行なう保険制度はもう意味がないというように解釈されてもしかたがないのじゃないか、政府が行なっていることの最大の意味は、多少の危険があっても安い料率で保険制度というものを普及させようということが私は中心的なねらいじゃないかと思うのであります。それを抜きにして政府みずからがやらなければならぬという理由は私はないと思うのであります。にもかかわらずそれが一切とられないで、普通の民間ベースにおける保険会社よりはまだまだこれは内容的には充実したものですよ。大蔵省は積極的にこの保険会社に対して、たとえばテーブル・ファイアのように火事がなかったのにあったように見せかけて保険料率を高くすることはけしからぬといって、民間の保険会社に対しては指摘をしておるじゃないですか。ところが、政府はこれだけの黒字を出し、しかも十年以上も一つも出資をしないでおいて反対に保険料をいじる気配がないということは、私は本来国の行なう保際制度ではないと解釈されてもしかたがないと思いますが、どうですか。
  42. 山本重信

    政府委員山本重信君) 政府事業といたしましては、収益をあげる必要はないことはお説のとおりでございまして、ただ法律によりまして収支相償うという一つの原則がございます。それで一応いままでのところでは、かなり余裕が出ているかのごとくに見えるのでございますけれども、実は普通の商業保険と違いまして、ここで対象としております保険の中にはプラントとか、機械の延べ払いというふうなものもございまして、非常に長期なものもございます。そういうものを含めまして、昨年十月末の数字でございますが、保険の責任残高が一兆一千五百二十六億円ございます。これがすべて順調に経過いたしまして、保険金の支払いを必要としないで済めばまことにいいのでございますけれども、時と場合によって、そのうちのどこかがぼこっと一つ穴があきますと、たちまちにして相当巨額の支払いをしなければいけない事態も予想されるのでございます。ただいまそうした事態に備えますために、会計の上におきましても支払い備金、未経過保険料異常危険準備金というようなものをつくりまして、それに備えておるわけでございまして、それにいたしましても、たかだか数十億という程度のものでございまして、責任残高一兆をこえるような金額に比べますれば、決してこれで常に万全であるというふうにもあるいは申し上げかねるかもしれないのでございます。幸いにしていまのところは非常に順調に推移をしておりまして、今後もそういうことを希望するわけでございますけれども、やはり制度としては、いざという場合のことも考えておかなければならないと、こういうように考えております。
  43. 大矢正

    大矢正君 この支払いに備えての金、すなわち支払い備金、それから異常な危険に備えての準備金、こういうものを出す場合の一つのめどというのは一体どこにあるのですか。これはたとえば、このこととは別でありますが、開発銀行なり中小企業金融公庫なりというものは、法律や政令その他に基づいて何%の準備金を持たなければならぬということになっていますから、その限度額まではもちろん国庫に対しての納付ということもやらないということになっておるのでありますが、この場合は一体どういうようなことになっておりますか。
  44. 山本重信

    政府委員山本重信君) 末経過保険料というのがございますが、これは、保険料はほとんどの場合保険契約のときに全額徴収いたします。ところが、その保険対象は年度をまたがって何年かになることがございます。それで各年度の末に特別会計を締め切ります場合に、すでに徴収しました保険料の中でまだそのときまでに保険責任が終わっていない部分がございます。それを一応想定いたしまして、その部分を末経過保険料ということにして次年度に繰り越すようにいたしております。これが末経過保険料でございます。  それから支払い備金のほうでございますが、これはすでに保険事故が発生した、発生したという通知がございまして、中にはさらに進んで支払いの請求まできておるものもございますし、まだそこまでいっていないものもございますが、そういうことのために次年度になって支払いをしなければいけないということが見込まれるものを支払い備金というかっこうで計上いたしております。  それからさらに異常危険準備金というのがございますが、これは前の二つに比べると金額も比較的まだ少ないのでございますけれども、これは特別会計全体として純益が相当出ました場合に、その一部を将来に備えて積んでおこうということで計上しております。
  45. 大矢正

    大矢正君 これは予算書にはあなたの言われるのは書いてあるのですよ。私の聞いているのは、そういうことを聞いているのではなくて、そういうものを積立てる場合のものの考え方はどこにあるのかということを聞いているのですよ。内容的にそういうものがあるということは予算書にあるからわかる。そういうものじゃなしに、かりに異常危険準備金を積み立てる場合には、こういう考え方に基づいてこの程度金額までは積み立てるとか、積み立てたいとかいう考え方があるわけでしょう。ただ何にもなしに収支決算をやってみて金が余ったからこっちのほうにやるという、そういうものじゃないでしょう。それが明らかにならなければ、保険料を下げられるか、下げられないかという問題は出てこないのですよ。だから、それを聞いている。
  46. 山本重信

    政府委員山本重信君) 支払い備金と末経過保険料については、いま申し上げましたように、それぞれ片方の場合は、すでに保険事由が発生しているという場合に、それに大体見合った、それは必要だと思われる金額推定して出しております。したがいまして、これは、特に幾らまで積めとかという限度もございませんで、そのときそのときの具体的な保険事由の発生の状況によって計算をして出しております。それから末経過保険料のほうは、保険料で徴収したものの中で保険責任が終わっていない部分に相当するものを、これも計算して出しております。  それから異常危険準備金でございますが、これはいろいろな考え方があり得ると思うのでございます。ただいまのところでは、一つの目安といたしまして、前年度の保険料収入に大体見合う程度のものを目安にして積んでおります。
  47. 大矢正

    大矢正君 具体的にはさっぱりわからぬがね。たとえば支払い備金のこの昭和三十九年度末予定額というのは二十五億八千四百八十二万円ですか、貸借対照表に出ているわけですがね。これは根拠は何もないのですか、保険料収入は三十九年度は二十億はあるというふうに損益計算書には出ている。そうすると、保険料収入二十億から二十五億円くらい準備金を持っておればいいのだろうという、単なる勘や何かでこれは出していい数字なんですか。何か根拠があるでしょう、これだけのものは持ちたいとか、持たなければならぬとかという。契約高が幾らあるからこれだけのものは持ちたいとか、持たなければならぬとかという根拠があると思うのですよ。ただ、前年度は幾らぐらいだとか、あるいはことしの支払い金はどのくらいだからどの程度というようなものじゃないのじゃないですか。
  48. 山本重信

    政府委員山本重信君) 計算の方法につきましては、私も必ずしも専門家でございませんので、恐縮でございますが、担当の輸出保険課長から説明いたさせます。
  49. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 三つの計算方式、それから基礎と申しますかがございます。末経過保険料につきましては、これはもう現実にその積み上げ、いわゆる代金保険でございますと、七年の延べ払いでございます。そうすると、その年の一年が計上されまして、残りが全部末経過に入るということで、全く積み上げで具体的にやっております。  それから、支払い保険金でございますが、これはその年は各保険種別、過去のそういう保険事故から発生がありまして、具体的に請求する。その間にまた落ちるものもございます。ということで、大体過去の実績をベースに率をかけまして、たとえば手形保険というようなことでございますと、その保険料収入なら収入に対しまして一・四だとかというような率をつくります。その率をかけて、この基礎計算を、基礎をそれぞれ出しまして、それを合計して二十九億とか二十五億という数字に押えるわけです。ですから、これは御要求がございますれば、別にそういう基礎の積算のデータ、どういう率をかけているかということで、別途保険種別にデータをお示ししたいということにさせていただきたいと思います。考え方はそういうことでやっております。実績をベースとしてやる。  それから、異常保険準備金につきましては、先ほど局長が御説明申し上げましたように、三十七年度からこの制度ができたわけでございます。これは、積む際に大蔵大臣と協議をしてきめることになっております。協議のいまの現状は、先ほど申し上げましたように、その年のいわゆる保険料収入、純保険料収入、要するに回収金を除きました保険料、これと同額という考え方で積むことになっております。したがって、たとえばことしの十億という保険料があれば、その十億が三十七年できまりまして、次がたとえば二億ふえれば、その二億をそこに加算する、こういう形で現在運営することとなっております。それは全部大蔵大臣との協議ということで毎年毎年決算期に相談をいたしまして積む、こういう形でございます。
  50. 大矢正

    大矢正君 この未経過保険料というのは、保険料の収入の部分を積んであるのか、そうじゃなくて契約高との関係で積んでいるのか。計算の基礎ですね。と申しますことは、かりに次年度に繰り越す、たとえばまあプラントならプラントの輸出に伴っての保険契約高というものがあるのですね、五年なり三年なりというものがありますね、その契約高に見合って積んでいるのか。その契約高に対して保険料収入がありますが、その保険料収入の部分についてその個々に積んでいるのか。そういう点について御説明願いたい。
  51. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 保険料収入に対しまして、結局最初保険契約に基づきまして、輸出契約に基づきまして保険料徴収をいたしますが、保険料収入に基づいて保険料を積むことになっております。
  52. 大矢正

    大矢正君 そこで、一つわからぬのは支払い保険金の問題なんですがね。かりにこの支払い保険金というものは確定的な根拠があり、しかも曲げることのできない、言うならば理由があって毎年毎年ある一定の基準に基づいて量的にふやしていくと、こういうことになりますと、実際問題として増資をする以外には保険料率を下げることができないということになるわけです。その点はいかがですか。
  53. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) これは先ほど御説明しましたように実績できておりますので、いわゆる保険事故が非常にふえて、それが全部請求に回るというものが非常に多くなりますと、どうしても積む率が高くなるわけです。ただ、そういう実績が、逆に一応事故の通知がありましても、その年、いわゆる今度実際請求に入ってこないというケースが多くなりますと、これは下げられる。実は二十七年度の料率引き下げを資本金の増額がないにもかかわらずやりました際に、支払い保険金実績を全部洗い返しました。十年前に……。そうしてそれまで積んでいたのが、早くいえば過大であったということで率を下げた。それによって、それと繰り越し利益の原資を合わせまして、今後の保険料率を三十六年九月に比べて半分に下げても一応やっていける、こういうことで処理をした。したがいまして、考え方はいま言った実績の上で動きますから、ただ現在の時点ですと、一応そこで最近実績が上がっております。その後は二年、三十八年は一年と押えております。いまのところは変えるわけにはまいりません。今後料率を大幅に下げるということにいたしますれば、資本金の増額という議論は当然出てくるのではないかと考えております。
  54. 大矢正

    大矢正君 次に最近の貿易の動向を見ますと、信用状を開設しての取引というものが漸次総体的な規模においては減ってきているのではないかと私は見ているのですが、私の考えが間違いかもしれませんが、この比率においては、どうも最近は信用状を付しての貿易上の取引というものの比率の減少傾向というものが漸次出てきていると。そこでこの保険契約付保契約の中における信用状のついた取引の比率というものはどのくらいあるのですか。
  55. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 最近いわゆる手形取引、DAEP取引というものが相当活発になりまして、過去から見ればやはり比率としても上がっていると思います。ただ私どもいわゆる信用状取引とDAEP取引というものとの数字をはっきり明らかにしておりませんが、大体全体の輸出取引のうちの一割くらいがこれがいわゆるDAEP手形取引ということで、最近欧州あたりもDAEP取引がふえているということが、これは保険から見ますとそういう感じがしますが、ふえているが、全体の率として大幅に二〇%になるということにはなっておらないと思います。大体一〇%台で逐次だんだんふえているという感じを私たちは保険の面からしております。  それからいわゆるそれに対しての付保の状況でございますが、これはだんだんと手形取引につきましても、保険制度の充実ということでございますか、御理解をいただいてふえつつありますが、ただ現在では輸出認承統計から比率を見ますと、手形取引は大体六四%という数字が出ております。ただ、それは大体昨年の傾向でございます。その前が五八%でございますから、その意味では六%、保険を付しての量がふえておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  56. 大矢正

    大矢正君 信用状すなわちLCによる輸出貿易というものの比重が下がってきて、手形による貿易というものの額が総体的にふえてくるということになりますと、それだけ当然のこととして保険契約がふえる傾向になってくると私は思うのですね。危険がそれだけ高くなりますからね。そういう面に対する対処策というものがおありになるのですか。
  57. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 御指摘のように、手形保険の引き受け件数も三十五年の六万件から三十六年度の六万一千件、また三十七年度六万七千件というふうにふえております。私どもは実は手形保険だけを見ますと、ここでも書いてございますように、三十六年度の保険料収入が三億二千万に対しまして、支払い保険金が六億四千万、三十七年度におきましては四億二千万の保険料収入に対しまして十億九千万、約十一億、今年度もこの傾向は変わっておりませんで、この四月から十二月までの動きを見ましても、四億の保険料に対して七億五千万で、完全な赤字保険でございます。しかし私たちは全体の輸出振興という面からこういうものだけを見れば引き上げだとか何だとかは、別途資本金問題とからめて考えていかなければならぬと思いますが、全体の保険収入から見てこれだけ赤であるということで、私たち料率はいま引き上げは考えてございませんし、それから支払い保険金はやはり中南米、中近東のような地区に非常に多く集中している。この点については、もちろんいろいろ根本的な対外経済政策ということは別としまして保険の上で、それならばこの保険金支払いのワクをつくって押えるということは一切考えておりません。三十九年度——本年度の予算におきましても、大体十二億までに保険金支払いがあってもよいというくらいな態度で臨んでおりまして、損発の状況からいいますと、必ずしもそこまでまいるとは思っておりません。大体今年度も十億台でおさまるのじゃないかと思っておりますが、予算的なワクとしましてはそれまで示して、決して、そういう危険があって、われわれ保険をストップして支払いを押えるということは考えておりません。
  58. 大矢正

    大矢正君 そこで、八つの種類の保険があります。この八つの種類の保険料率というものはそれぞれみな違うわけですね、各その種類別の保険によって。そうなると、私はわからないのは、事業収支が全体として運営をされることは当然のことではありますが、保険料率が八つの種類の保険それぞれによって違うということは、その保険一つの中において収支をバランスさせるとか、ないしは均衡がとれるとかいう前提で考えられて、そこで保険料率ということが出てくるのじゃないかという気がするのですがね。ところが、そうじゃなくて、いまあなたの言われたとおり、手形保険のほうは膨大な赤字が出る。しかし、保険料率はそのままで依然として据え置いているということになると、それはどこかでカバーしているのですね、しかも多額の黒字をあげているのですから。こうなると、話がどうも一貫しないというきらいがあって、そういう危険度の高い手形保険でありますれば、その手形保険の料率というものは当然のこととして上がるべきものでありますが、そういうものがあるために保険料率が下げられないということもある意味では言えるのじゃないですが。だとすると、事業収支の中全体においての問題は解決したとしても、各種保険のそれぞれの分野においては問題が解決していないということ、それはどうですか。
  59. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 大矢先生御指摘のとおり、この問題はございます。で、当初この保険法の発足のときには、各保険種別ごと、いわゆる八種類のそれぞれの保険ごとにやはり独立採算をとるべしという考えで運営します関係で、そこでまずその保険料率がどうもきまったように私ども聞いております。ところが、その後やはり輸出振興というような面もございまして、いわゆる保険会計という収支で相償えばよろしいという考えになりまして、その点で結果的には現在はその全体の上でのバランスをとるというふうな、逆に言いますと、確かに手形保険だけ見れば、上げていいのじゃないかということがありましても、結果的に、ほかのところも今度は逆にまたそれぞれ下げればいいということもありますけれども、大体要請としては輸出振興の体制からいえば、料率の引き下げということが望ましいわけであります。極力上げるべきものはむしろ上げないように、逆に言いますと、そういうものがあるから他を下げられないのじゃないかという御指摘でございますが、これは三十三年九月から三十七年の十一月の二回の料率改正にいたしましても、手形は結局据え置きまして、そうしていま言った個別のやり方と全体のやり方とをそういうところで妥協したような形なんですが、そうして代金だとか、投資とか包括保険といったいわゆる輸出振興に大きく黒字を出している、これを下げるということにいたしました。
  60. 大矢正

    大矢正君 同じことばかり質問してもしょうがないからこの辺でやめますが、この保険を利用している業態についてちょっとお尋ねをしたいのですが、大手の貿易商社、それから概念的ですが、中小と呼ばれる貿易商社あるいはメーカーが直接海外と取引をするという場合もあるわけですが、いろいろケースはあると思うのでありますが、大手と呼ばれる企業保険契約の中でどの程度占め、中小と呼ばれる商社なりメーカーというものはどの程度の比率を占めているのか。その点資料があったら御説明願いたいと思います。
  61. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 大手と中小の占める割合ということを実は具体的に数字をつかんでございません。ただ現在普通輸出保険は、包括保険組合包括を推進しております。組合に入っている組合員は全部極力この保険にかかるわけでございます。これは決して強制ではございませんが、組合ということで全員が加入する、こうなりますと、中小の場合もみなそれを通じて入っております。そういう点で、いわゆるアウトサイダーの中小の部分がそれぞれの組合でどれだけあるかということでの比率になる。大手の場合にはほとんど包括輸出保険にまず全部入っておりますというふうに御理解いただいたらよろしいと思います。  なお、メーカーとの関係というお話でございますが、メーカーの場合は代金保険にかかっております。この場合にはまた輸銀融資というものもからんでおります。現在代金保険はほとんどいわゆる延べ払いの許可がありますと、九九%は全部加入している、こういう状態になっております。
  62. 大矢正

    大矢正君 私ももちろん数字の持ち合わせばありませんから、具体的な数字の裏づけはあなたに質問をすることができないのは残念ですが、考えてみますと、この保険制度というものには、中小のかりに貿易商社あるいは中小といわれるメーカーが組合を経由して包括保険で入るなどということは多いんですが、大きな貿易商社なり、大きなメーカーというものは、この保険制度にはあまり関心を持たない。言うならば加入しない、契約を結ばないというような傾向があるのではないか。裏を返していうと、それはどういうことかといえば、大きな会社なり、大きな貿易商社というものは、あまりその保険をしなければならないほど危険なところと貿易をしないという問題もあるだろうし、多少のことがあっても心配がないというところから、保険料を払うのはばかくさいという面もあるのではないかと思うのでありますが、どうも私判断をしてみて、この保険に実際に入り契約を結んでいるのは中小が主になるのではないか。大手はあまり積極性がないのではないかというような感じがしますが、その点はいかがですか。
  63. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 普通輸出保険、それから申し上げました代金保険というようなところにつきましては、これは大手、中小というあまり区別は考えられないと思います。ただ先生御指摘の点で、私どももいろいろ考えていかなければならないと思いますのは、手形保険でございます。手形保険は銀行包括でございますので、輸出者がその裏にある。そういたしますと、いわゆる大企業の場合に、取引がいわゆる安定した取引先をつかむという場合には、これが加入の保険料を払ってまでという気持ちで出てまいらないだろうと思います。これは私どものほうも極力業界をいま指導いたしまして、いわゆる輸出保険と申しますか、輸出のときには必ずかけてもらうという運動を、組合なり協会とかそういうルートを通じましていろいろやっております。なお十分これを充実させていろいろ指導していきたい、こう考えております。
  64. 大矢正

    大矢正君 この海外に対しての投資については、元本やあるいは利益に対しての保険というものがありますね。しかし、この日本の国の銀行なり、ないしは業者なりというものが海外に融資をする場合については、保険制度というものはないわけでしょう。そこでいかがですか、これは課長さんにお伺いするのはちょっと恐縮ですが、大臣でも、局長でも御答弁いただきたいのですが、やはりこれだけ日本の国が海外に対して融資をするということになってまいりますと、当然のこととして、投資保険はいまあるのですが、さらにそれを乗り越えて、融資に対しても保険制度はつくらなければならない必要性が今日あると思いますが、その点についてはいかがですか。
  65. 山本重信

    政府委員山本重信君) 御指摘のように、ただいまの投資保険は、投資元本保険、投資利益保険というふうに限定しております。貸し付け金債権にも同じような保険が必要ではないかという意見も業界からも出ておりまして、今後の問題として検討いたしたいと思います。外国でも実はそういう貸し付け金債権を対象にした保険制度ができておりますので、その辺よく勉強いたしまして検討していきたいと思っております。
  66. 大矢正

    大矢正君 勉強してもらうことはけっこうだけれども、そういうことをやる気があるかどうかということですね。大臣はお出かけになるそうですから、二つだけ重ねて聞いておきたいのですが、一つは、先ほど来保険料率の問題を議論をいたしましたが、三十九年度内には下げたいという気持はあるけれども、下げることは困難だとお考えになっておられるのかどうか、これが一点ですね。料率の問題。それからいま融資に対して、貸し付けに対して、新たに保険制度をつくるということについても、三十九年度内においては困難だということになるのかどうか。もちろんここに予算書が出されて、予算総則もきまっておりますから、できないという理屈も出てくるかもしれませんけれども、予算総則それ自身についてはしばっているわけではないように思われるので、その点はいかがですか。
  67. 福田一

    国務大臣福田一君) 三十九年度内に保険料率を下げる意思はないかということでございますが、私は適当な時期があれば、下げることもけっこうだと思うのであります。それから融資保険をしてはどうか、こういう御説でございますが、これは研究をさしていただきたいと思います。
  68. 大矢正

    大矢正君 輸出入銀行が金を貸すというような場合については、保険制度との関係はどうなりますか。
  69. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) たてまえとしては別に保険とは関係はできておりません。現実問題としまして、輸出入銀行がメーカーあるいはサプライアー融資をいたします際に、結局債権保全のたてまえから、早くいえばその保険にかけてもらえば、その保険金を質権設定でいわゆる担保として確保できるということから、そういう私どものほうに保険がかかりますと、輸出入銀行からこれにいわゆる民法によります質権設定承諾書ということが出てきて現実的にそういうことになりますと、大体輸銀融資がありますものはほとんど保険申請がございまして、輸銀融資をいたします以上は、支払い条件が相当はっきりしていますから、私どもの保険のほうから見ますと、引き受けろ、そういう形で引き受けております。
  70. 大矢正

    大矢正君 海外経済協力基金というものがあります。これは私の記憶に間違いがなければ、投資、借款、すなわち融資です。両方あると思うのでありますが、この場合にはあなたとの保険制度、特に海外保険投資保険との関係はどういうことになりますか。
  71. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 海外経済協力基金におきましても、輸銀の場合と同様でございます。と申しますのは、海外経済協力基金と輸銀との業務調整によりまして、現在やはり低開発国、東南アジアを中心とした低開発国への協力基金というものは、これは輸銀以上に非常に政策的なものだという考えでござますけれども、やはりその採算ベースその他ということもやはり踏まえてはおるようでございます。したがって、たとえば、例を申しますと、カリマンタンの森林開発というのには海外経済協力基金から融資をいたしまして、私どもやはり保険付保を申し込んでおります。現に保険をかけております。ただ量としましては、まだ海外経済協力基金の案件は非常に少のうございます。
  72. 大矢正

    大矢正君 世界各国の中で保険を認めない国があるのかどうか。
  73. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 保険制度をしいておりますのは大体二十二、三カ国でございます。しかし、まあ非常に先進国が中心でござますが、まあインドとかこういった国でも実は保険制度は出ておるのでございます。それ以外の国で保険制度を認めないかという御質問でございますけれども、これはその国の必要性で保険制度をつくっていないということでございまして、そういう必要が出ればやはり保険制度をだんだんやはり拡充していくのじゃないか、こういう見通しを持っております。
  74. 大矢正

    大矢正君 いやそういうことではなしに、たとえばこの国に対しては保険契約は結びませんというような国があるか、どうかと聞いているのです。
  75. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいまの御質問でございますが、われわれのところの輸出保険の運用といたしましては、特別な事故がありまして、引き受け停止をするというごく例外的な場合はございますけれども、それ以外は国による差別は一切いたしておりません。
  76. 大矢正

    大矢正君 韓国との間の貿易についても保険契約というものはできるのですか。それからやっておられるのですか。
  77. 山本重信

    政府委員山本重信君) 同様でございます。
  78. 大矢正

    大矢正君 事実上においてやっておられるのですか。最も近い年度で韓国との間に保険契約を結んだ契約高というのはどの程度あるのですか。
  79. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 国別に整理をしたデータでございますが、いますぐに調べますが、韓国には普通輸出保険がかかっているものと思いますが、いまの韓国の量をちょっと時間をいただいて調べます。——とりあえず申し上げますと、普通輸出保険につきまして、韓国の本年十一月分まででございますが、累計二十件でございます。金額といたしまして約四億九千万、これは保険契約金額でございます。四億九千万という数字が出ております。
  80. 大矢正

    大矢正君 韓国とわが国との間の貿易については以前に焦げつきがかなりありましたね。いまそれは日韓会談の一つの大きな問題点になっておるわけですが、あの焦げつき債権というものについては保険契約というものは結んでいなかったのですか。そういうのは一件もなかったのかどうか。
  81. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 例の焦げつき債権はいわゆるバーターと申しますか、オープン勘定で政府間勘定でございましたと思います。したがいまして、そのときにはその政府に結局最後にしりがくるという保証があったわけでございますから、保険契約には入ってきていないと思います。現在のオープン勘定の残高でございません。焦げつき残高の——貿易では入っていないと思います。
  82. 藤田進

    ○藤田進君 インドネシアとか、まあ他にもあるわけでときには南米等にもあるとか、特に顕著ないまの日韓関係もあることだし、南朝鮮——韓国ですね、付随してインドネシアのその後の事情、これが輸出保険との関係がどういうふうに処理されているのかどうか、もっとはっきり私も聞きたいと思っていたところなんだ。はっきりとしたデータをお調べになってお答えいただきたい。
  83. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) 御指示によりまして、データを調べてまいります。
  84. 大矢正

    大矢正君 それではあまり長い時間これはやっていてもなんですから、最後に一点お尋ねしておきたいと思うのですが、それはこの新しく法律の改正で、破産ということに対して「これに準ずる」という新たなことばを挿入するわけですが、破産に準ずるというのは具体的にはどんな場合、そうしてどんな事態のことを言うことになるのか。
  85. 山本重信

    政府委員山本重信君) 相手のバイヤーが破産に準ずる状態になるということでございますので、それぞれの国の制度によりましていろいろ取り扱いが違うと思います。かりに日本の法制に当てはめて考えてみますと、たとえば破産宣告は受けるところまでいっていませんけれども、会社更生法の適用を受ける状態、それから商法によりまして清算開始命令が出る場合等々でございまして、おそらくまあ各国それぞれ法制が違いますので、一律の基準は立てられないと思いますけれども、実態に即しまして、なるべく均衡のとれた運営をしていく必要があるかと考えております。
  86. 大矢正

    大矢正君 破産もしくは破産に準じた状態ということは、契約を結ぶ以前の信用調査にも関係してきますがね。信用調査が確実であればそんなような事態はないと見てもいいのだが、信用調査というものが不完全なものであれば当然のこととしてそういう事態が出てくる。そこで一番必要なのは信用の調査だということになると思うのでありますが、現在のあなたのほうの能力をもってして、海外すべての国々のバイヤー等の信用調査というものが正確に、しかも確実にどうやってできるのか、ちょっと実は心配があるのですがね。自信があるからおまかせくださいと言われればそれまでなんですが、一国の調査だったらまあ簡単でありますが、世界のいずれの国との場合にも認めるという前提があるとすれば、相手の貿易商社の、いうならば信用を調査するということは非常にこれは重要な問題ですし、容易なことじゃないのです。その点は何か特別お考えを持っておられるのですか。
  87. 山本重信

    政府委員山本重信君) 御指摘のように、その点は今回の改正の運用にあたりまして、非常に重要なポイントでございます。いままでも信用調査の拡充につきましては努力をしてまいりまして、発足当時は最初四千件程度のバイヤーの資料しかできませんでしたが、この三月には六万三千件というところまで拡大してまいりました。しかし、これでまだ必ずしも十分とは言えないのでございまして、たとえばイギリスの場合は十五万件からの調査ができておるようでございます。したがいまして、今後もできるだけ信用調査の機能は拡充をしていく必要があろうかと思っております。
  88. 大矢正

    大矢正君 これは保険契約を受ける当事者として考えてみれば、かりに破産宣告を受ける、そこまで待たされるのじゃかなわぬという気持ちは当然起こすであろうと思いますから、以上のような立場で考えれば、この法律の内容というものは非常にありがたいことになると思うのです。がしかし、この破産に準ずるというような表現というものは、これはまあ現実的にはなかなかむずかしいものがあると思うのですね。会社はつぶれないで残ってはいるけれども、金は払ってくれないという場合もあり得るわけですね。その場合にどうなるかというと、その場合に適用されるのか適用されないのかという問題もある。「準ずる」という場合に、会社が破産宣告を受ける場合、受けなくてもつぶれている場合、つぶれそうになっている場合、いろいろこれは種類が多いと思うのですが、これはどういう点で限度を設けようとされておるのか、私どもわからないのです。実例としては具体的にどの程度のことまでやりたいとお考えになっておられるのですか。
  89. 山本重信

    政府委員山本重信君) お説のように、先方が支払いしょうと思えばできる余地があるのに支払わないでいるという場合は、やはり今度の対象にはできないことになります。具体的なその認定の方法といたしましては、これはさらに今後細目にわたって検討をするつもりでございますけれども、一応相手方の属する国の公的な機関で支払い不能という実態を明らかにして証明してもらいまして、さらにそれをそこにあります日本の公的な機関に確認をしてもらうという手続をとって、その認定をしてまいりたいと思っております。その場合の基準につきましては、外国の例等もいろいろございますので、その辺参照いたしまして、なるべく実情に即したものを作りたい。  このように考えております。
  90. 大矢正

    大矢正君 この破産宣告をされたということになれば、明らかにこれは法律にもはっきりしてくるのですけれども、そうじゃなくて、この支払い能力がないということを法律的にあなた認めた場合にという話なんだが、それはどんな方法があるのですか。支払い能力がないということを法律的に認めるというのは、具体的にどういう形でそれが認められるか。
  91. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) これはイギリスでも一つの基準を持っております。これをまず御紹介いたしますと、バイヤーが破産宣告を受けた場合、これは当然です。それから一般的に債権者のために譲渡、和解その他の取りきめをバイヤーがした場合、それからバイヤーの財産を管理するために現在破産管財人というものがありますが、いわゆる財産の管財人、こういうものが指定されておる場合、それから商法で言います強制解散命令が出る場合、あるいは任意解散のために有効な手続が通過した場合、これは日本で言えば会社更生法に近いような場合、そういうようなことで大体運営をしておりますので、私たちもその国々によりましていろいろいま破産法、商法、いろいろ各国でそれぞれ違っております。たとえば台湾では商工会議所がそういう命令を出せるようになっております。それぞれの法制を実は私ども全部整理をしておりまして、その整理でその国に合う形で処理をするということで基準を作るつもりでおります。
  92. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの大矢さんの質問に関連してでございますけれども、「これに準ずる事由」、「準ずる」ですが、政令のほうで定めてはっきり出させるのか、いまのようにはっきりと確認できた場合ということでございますから、支払いのほうが、そういうことのいろいろなケースというのは規則にくるのか政令にくるのかということですが、そこら辺はどうなんですか。
  93. 矢野俊比古

    説明員矢野俊比古君) これは約款できめることにいたしております。約款できめて、それの具体的な基準は別途その約款の取り扱い規則のようなことでございます。いわゆる約款のベースできめる、こういう考えでおります。
  94. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それからこの法律の今度改正になる点ですね。まあ先ほどの説明では、海上の場合は、海上という字を取って運賃と直したのは、例のシンガポールのこと以来のことでございますけれども、そのほかにもそういうような実際困った例があるわけですか。
  95. 山本重信

    政府委員山本重信君) 過去の例はあまりございませんけれども、だいぶ前に昭和三十二年でございますか、スエズの問題が起きましたときに、わずかでございますが、この案件がございました。二件付保された件がございます。
  96. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その具体的な増加費用の額なんかはわかりますですか。
  97. 山本重信

    政府委員山本重信君) スエズのときは金額は非常にわずかでございまして、付保全額は六十万八千円でございましたが、支払い保険金は五万円でございました。それからシンガポールの場合でございますが、付保された件数が百九十二件、保険金額が千三百七十七万円でございました。
  98. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この場合、これが海上の運賃の海上ということがとられたわけでありますけれども、そうなりますと、航海もしくは航路変更によってまあ陸上で輸送する場合もありましようが、空路を使う場合も考えられなければならない。そうすると、説明では陸上ということであったわけでありますけれども、空路を使って費用増加したこういう場合も適用されるということですね。
  99. 山本重信

    政府委員山本重信君) そのとおりでございます。
  100. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  101. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記つけて下さい。
  102. 山本重信

    政府委員山本重信君) 先ほどお尋ねございましたオープーン・アカウントの決済方式をとっております場合には、輸出保険との関係はどうなっているかという御質問でございます。ただいま調査いたしましたので結果を御報告申し上げますと、保険にかける請求は全然出ておりません。これはオープン・アカウントで決済いたします場合には、輸出業者輸出すると同時に日本側で代金を受け取ってしまいます。で、先方との間は政府間のあとの清算勘定に残るわけでございまして、業者の危険負担はございませんので、もともと保険にかける必要はない制度になっております。実際にも付保した例はございません。
  103. 大矢正

    大矢正君 中国との場合には、いま言ったようなこととは違いますね。中国との貿易の場合における保険契約というものは、これはどうなんですか。
  104. 山本重信

    政府委員山本重信君) 中国との場合は、政府間のオープン・アカウント協定に基づく取引はございませんので、やはり業者間でそれぞれ危険を自分が負担をしなければなりません。したがいまして、やはり保険にかける必要が出てまいっております。
  105. 大矢正

    大矢正君 だから、二十七日に私がもう一回質問するまでに、中国との関係保険契約はどうなっているか、数字を具体的にそのとき説明してもらいたいと、こういうことなんです。
  106. 山本重信

    政府委員山本重信君) 承知しました。
  107. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時二十六分散会      —————・—————