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政府委員(
佐橋滋君) 先般、当
委員会に
提案をいたしております
特許法等の一部を
改正する
法律案の
提案理由につきまして、さらに若干の
補足説明をさせていただきます。
御
承知のように、
特許の
出願は、九−十一年のベースで大体九万件
程度でございましたが、戦後
特許制度といいますか、
工業所有権制度に対します社会的の関心が逐次高まってまいりまして、三十四年から三十六年には
年間十七万件という
出願件数に達したわけでございますが、まあそのころはそれでやや安定をいたしたのでありますが、それが
自由化の
影響を受けまして、三十七年の後半から急激な増勢を示しまして、三十七年には
出願件数が二十一万件に達し、三十八年には二十六万件という非常に大きな
数字になったわけでございます。ところで、この
出願件数の
増加が、いわゆる
特許の
審査の遅延を来たしておるというばかりではございませんで、従来、すでに能力の限界にまできておりました
出願の受理をする
事務だとか、あるいは
審査の
補助事務、
書類の
進達発送の
事務、あるいは
公報の
発行事務、
登録の
事務というようなものに非常に深刻な
影響を与えまして、従来こういったことに誤りといいますか、
過誤はほとんどなかったのでございますが、非常に仕事に追われるようになりまして、若干こういう問題につきましても
過誤を生ずるような状態に立ち至って、
特許庁全体の
事務の
能率の低下を来たしておるわけでございます。この対策といたしまして、どういうことが考えられるかということでございますが、
人員の
増加をはかることがまず一つ考えられるわけでございますが、御
承知のように
特許の
審査審判を
処理をいたしますために絶対に必要な
審査、
審判官というものの
増員を相当今後大幅に考えなければなりませんので、こういった
事務処理に対します
人員の
増加はできるだけ最小限に切り詰める必要がある、こういうふうにわれわれは考えまして、いろいろ検討を加えました結果、
電子計算機組織を導入しまして、これを
周度に利用することによりまして、従来の
出願、
登録等の
事務処理を画期的に改善いたしまして、所要の
人員の
増加をできるだけ小幅にとどめたい、こういうふうに考えたわけでございます。
そこで、今度の
予算で
電子計算機組織を導入するための
予算がついたわけでございます。この
電子計算機を入れることによりまして、従来
人間が
帳簿に手で
記載しておりました
事項を
電子計算機に記憶させまして、
帳簿に基づいて
事務を
処理いたしますかわりに、
電子計算機によりまして照合、外部への
通知書の
作成、
統計表の
作成あるいは画一的な処分、
通知書の
作成というようなことを全部
機械の手でやろうというのが今度の
考え方でございます。いまひとつ
電子計算機を導入いたしますのについて大きなねらいといたしましては、現在
世界の
各国とも
特許の
事務が錯綜いたしまして、いかに
事務処理を
迅速化すかということについては
各国ともいろいろと
研究をいたしておりますが、われわれのほうといたしましても、この
電子計算機の余分の力を利用いたしまして、
資料の
整備をいたしまして、これを
電子計算機に記憶させることによりまして、
審査官がいろいろの
書類、
資料を渉猟いたして調べるわけでございますが、そのいわゆる
機械検索の一助にいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。ところで、この
電子計算機を導入いたしますと、従来
登録事項は
原簿に
記載をしたわけでございますが、
原簿に
記載をするということがなくなりまして、
磁気テープに覚えさせるということになるわけでございます。現在の
特許法、
実用新案法、
意匠法、
商標法それぞれ
特許法の二十七条、
あとは同文でございますが、いわゆる
特許権についての
重要事項は
原簿に
登録するということになっておるわけでございます。ところで、
原簿に
登録するのではなくて
磁気テープに覚え込ませる、いわゆる
磁気テープが
原簿の
概念に相当するかどうかということにつきましては、いろいろ
議論を重ねましたが、現在の
社会通念では少し無理であろうということでございまして、今回
法律を
改正して、
磁気テープを
原簿にかえるといいますか、
原簿の代用をさせるという
意味で
法律を
改正しようというわけでございます。
ここで、
磁気テープを
原簿に置きかえますのにつきまして若干の問題がございますが、これを簡単に申し上げますと、従来のいわゆる
原簿に
登録する
事務に
比較しまして、これは比べものにならないぐらい
能率がよくなり
事務が
迅速化するわけでございますが、若干の問題がございまして、
磁気テープに覚え込ませるということがはたして正確さの問題についてどうであろうかという点でございますが、
電子計算機が間違いをおかすということは絶無でございまして、間違いが発生するという場合には、
電子計算機に覚え込ませる場合、つまり
電子計算機に
登録いたします場合に
文字をカードまたは紙
テープにパンチングをいたすわけでございますが、ここでいわゆる間違いが発生するわけでございますが、これにつきましても、もう一度完全にチェックをいたしますので、従来
帳簿に
記載しておりますが、ここにもまあ間違いは発生するわけでございますが、それに
比較して決してまさるとも劣らないものであるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。いまひとつの
問題点は、
登録されましたものを今度は引き出す場合でございますが、それが
かな文字でプリント・アウトされるわけでございまして、これが若干読みにくくなるということが考えられるわけでございますが、
登録の文章は一つの型にはまってございまして、たとえば
登録の年月日というような場合は、
昭和何年何月というのはあらかじめ印刷をしておきまして、その間へ
数字を打ち込んでいくというようなことになりますので、特に不便を感ずることもないのではないかと考えておるわけでございます。
次に、
登録の
内容が従来の
原簿と違いまして、直接目に見えないということでございますが、これも
命令を与えますれば、即時に
文字でその結果があらわれてくるということでございますので、この点もいささかも問題はないのではないかと考えておるわけでございます。
次に、この
記録が永年保存できるかどうかということでございます。
機械操作のミスによって
磁気テープに
記録させたものが消えるというようなことがあるかないかというようなことでございますが、これも現在では技術的に検討され尽くしておりまして、不安はないものと考えておるわけでございます。で、今回、こういった
電子計算機を導入いたしますにつきましては、数年来からこの
準備室を設けまして、
出願登録事務をどういうふうに
電子計算機にアプライするかということにつきましては、十分に
実験をいたしておりまして、その
実験の結果、満足すべきものを得ておるわけでございます。
次に、そのいわゆる
特許の
重要事項を
登録いたします二十七条を受けまして、百八十六条に、いわゆる
一般国民はこの
原簿を閲覧することができ、かつ
謄本の
請求ができるという規定があるわけでございます。ところが、ただいままで御
説明申しましたように、
原簿でなく
磁気テープになりますので、いわゆる閲覧とか、あるいは
謄本とかいう
概念が非常に不明確になってまいりますので、その条項に追加をいたしまして、
原簿のうち
磁気テープをもって調製した部分に
記録されている
事項を
記載した
書類を
請求する、または
交付を求めることができると、つまり
磁気テープから打ち出した
書類を
交付する、それを
請求することができるというふうに法を
改正しようとするわけでございます。さらに、これにつきまして、従来まあ
特許原簿を閲覧いたしますと、一回四十円、それから
謄本を
請求をいたします場合には一枚につきまして八十円という料金が公定されておるわけでございます。
磁気テープになりまして、
書類の
交付をいたしますにつきまして、この
最高限をきめる必要がございましたので、今回は一件について八十円というふうに変えたわけでございます。この一件八十円といいますのは、ただいま申しましたように、従来まあ一枚八十円でございましたのが、二枚になれば百六十円でございますが、長さを問題にせず、一件八十円ということにいたしまして、従来のまあ
国民の負担というものに変化が来たさないように考えたわけでございます。われわれのほうの
原価計算上も八十円で十分まあペイするというふうに考えておるわけでございます。
以上が本法案を提出いたしました
改正の要点でございますので、よろしく御審議の上お定めくださるようお願いいたします。