○小林英三君 今度提案されております独禁法の
改正案、これには事務局の機構を拡充する、そうして下請代金支払遅延防止法の
効果をあげたい、こういうことであります。この問題につきましては、後刻またよく
質問することにいたします。私は、これに関連いたしまして、下請代金の問題について
質問をいたしたいと思います。きょうは、予定といたしまして大臣もお見えになる、
中小企業庁長官もお見えになる、もちろん公取
委員長もお見えになるということであったから、三人がお見えになったところで一緒に御
質問申し上げることが一番私は能率的だと思っておったのですが、大臣のほうの衆議院における都合がございまして、たぶんもう少ししたらお見えになると思いますから、とりあえず、それではいま公取
委員長だけがお見えになっておりますから、公取
委員長に対する
質問をいたしまして、後刻大臣がお見えになりましたら、また並行して御
質問を申し上げたいと思います。
私
どもは、わが国の
中小企業というものが国民経済の上に占める位置というものが、ほかの国々に比べまして、わが国においては類例のないほど
中小企業の位置というものが高いのです。こういうことにかんがみまして、この経済政策の一翼をになっておりまする現在のわが国の
中小企業、その
中小企業の置かれておりまする立場を考えますというと、はたしてこれでよいであろうかということを感ずるのでありますが、たとえていえば、この下請代金の支払いの問題にいたしましても、
法律の
目的というものが、今日ある
程度までりっぱにうたわれておるのです。それは、申し上げるまでもなく下請代金の支払い遅延を防止するとともに、これによって親
企業の下請に対する取引を公正ならしめて、下請の利益を保護し、もって国民経済の健全な発達に寄与するということが、この防止法の
目的にうたわれておる。これは
目的としてはまことにりっぱなものであります。
それから、この
法律自体といたしましても、三十一年に制定されましてから、七月でありましたか、制定されましてから、三十七年のたしか四十国会におきまして、ある
程度これが強化されてまいりました。でありますから、これを見ますというと、一応整っているような感がいたすのであります。しかし、私は、現在行なわれておりまするところの下請代金の支払いに対する規制というものが、これによって下請業者の利益というものが保護されているかどうか、また、下請業者に対する取引が公正にいっているかどうか、国民経済の健全な発達がこれによってできておるかどうかということを考えますというと、私ははなはだ疑問だと思います。そこで、この四十国会で修正されました今日の防止法というものをかいつまんで私
どもが見てみますというと、親事業者に四つの義務がある。その
一つは、下請業者に注文のときに、注文の内容、それからその代金の額と、それから支払い期日をいつにするかということが、三条に示されておる。それから順守
事項というものを守る義務が親
企業に課せられておる。これが四条に、御承知のように、一号、二号、三号から七号まで設けられております。つまり不当な納品なり、不当な受領の拒否をしてはいかぬとか、あるいは支払いを遅延してはいかぬとか、不当な値引きをしてはいかぬ、あるいは不当な返品をしてはいかぬ、不当な
買いたたきをしてはいかぬ、それからまた、親工場の
確保しておるところの品物を強制的に購入さすということをしてはいかぬとか、また、報復手段をしてはいかぬとかいうようなことが四条の一号から七号までの間において規定されております。それからまた、その次の第三番目には、遅延利息の支払いの義務を負わしております。これは、
法律にありますのは、六十日以内に支払わなければいかぬとしておりまして、これより延びた場合には、延滞利息を払う。これは公取がきめておる日歩四銭を払うということになっております。それからもう
一つの四番目は、納入を受けてから支払い完了までの下請取引のてんまつを記載した書類を保存しておかなくちゃならぬ、これが第五条であります。
しかし、いま私が申し述べましたこれらの四つの義務 親事業者の四つの義務ということを
法律の上から考えてみますというと、第一の注文のときの書面を交付するという問題につきましては、これは制裁規定がないわけです。これは親
企業の同意と、それからまた、下請業者の申し出といいますかね……。それから第二番目の順守
事項を守る義務ということにつきましては、これは四条の一号から七号までありますが、これは要するに、公取その他の
中小企業庁にいたしましても、こういうことを、違反したことをした場合には、改善の勧告をする、そうしてそれでも聞かぬ場合には、これを公表する、こういうことでありまして、これも別に罰則はないわけであります。それから三番目の遅延利息を払う義務という問題につきましては、これはやはり同意と下請業者の声を聞くということになっております。つまりこういうことを、払ってくれないからということを公取に申し出なければ取り上げられないということであります。最後の四番目の支払い完了までの下請取引のてんまつを記載した書類を保存しておくという問題、これは第五条でありますが、十条に罰金ということが設けてあります。これが今日の下請代金の遅延防止法に対する
法律の内容であります。
そこで私は、実は下請業者の鋳物に関する全国
団体の会長をしております。鋳物
工業会というものの会長をいたしておりまして、この私
どもの
関係いたしておりまする銑鉄という鋳物、つまりズク鋳物、これが、私は三十八年の一月から十二月までの一カ年の
生産額を調べてみますと、千六百七十億何がしという額に達しております。それから可鍛鋳鉄という鋳物、これが大体二百四十七億、それからはがね鋳物
——鋳鋼、これが七十億八千万、アルミ鋳物、これが二百六億、銅合金鋳物、これが三百二十億、ダイカスト鋳物、これが三百十億でありまして、大体におきまして、一カ年間に三千五百四十億円
程度の
生産をあげております。そこで私は
——これはほとんど下請であります
——この下請に対してどういうふうな状況になっているかということを、最近私は調べたのであります。この銑鉄鋳物
——ズク鋳物の代表的の
工業地帯である川口について、私は調べてみた。これはどうしてかといいますと、川口には、私の知っている人も非常にたくさんおりますし、また、組合
団体の
理事長とか、あるいは銀行
関係その他が、みな非常に遠慮なく調査ができるという
関係から、川口について調べてみた。それがいまお手元にお配りしておりますところのAとBの
資料であります。で、これは詳しく御説明申し上げるというとひまがかかりますから、ほんとうに簡単にその一例を申し上げたいのでありますが、このAというほうの
——公取
委員長もごらん願えればわかりますが、Aというほうの
資料というものは、川口信用金庫というのがありまして、これは預金が約八十六億円、本支店が五つばかりあるところであります。この川口信用金庫の中で
——これは庶民金融をしておりますから、この中で取り扱った二百四十件の工場に対しまして、代金の決済条件、それから回収代金に占める手形の割合というものを寄せてみたのであります。これは二百四十件の工場に対して、寄せてみたのであります。ところが、そこにありますように、九十日以内のものが一割四分、これは三十九年一月現在で一〇〇%の中に占めるものが一四%
——二割四分、九十日から百二十日までの手形が二〇%、百二十日から百五十日までが五四%、百五十日をこえるものが一二%になっております。このほかに、納入いたしましてもその月全部払ってもらえないで、そのうちの一部分が次に持ち越されるものがもちろんあるわけであります。それから、回にあります「回収代金に占める手形の割合」でありますが、これはその表にもございますように、手形が三〇%、現金が七〇%というようなものは、わずかに四%
——一〇〇のうち四%。三〇%から五〇%のものが五%。でありますから、五〇%以上七〇%、それから七〇%から八〇%、八〇%超と、この三つのものを合計いたしますと九割一分、つまり五〇%以上八〇%をこえるものまで合計しますと九一%で、手形が少なくて現金の多いものは、わずかに九%であるという結論になっておるのであります。
それから、お手元に差し上げてございませんが、私が、川口市内におきまする金融機関全体について、最長期のサイドの手形はどのくらいあるだろうかということで全部調査をいたしましたところが、埼玉銀行が八カ月であります。それから、同じ埼玉銀行の駅前支店が九カ月、武蔵野銀行川口支店が九カ月、川日信用金庫が十カ月、富士銀行川口支店が七カ月、第一銀行川口支店が十カ月、協和銀行川口支店が六カ月、
日本相互銀行川口支店が七カ月、大光相互銀行川口支店が九カ月と、こういう状況になっておるのであります。
そこで、このBの
資料に基づきますと、これは、a、b、c、dとずっとなっておりますが、これは個々の工場について、比較的信用のある、うそを言わないだろうという個々の工場について、これは川口の鋳物
工業組合を通して
理事長から直接に聞かせたのがこの表でございます。これは手形の支払い期日が、一番最初のaというやつは、百五十日以上、そうして支払いは、手形の場合百五十日以上でありまして、これは全額を支払っておる。つまり、その翌月に何十%かまで送らないで、請求したものを全部手形で払う、しかも、手形の期日は大体百五十日であるというのがaである。
それから三番目のcは、現金と手形の比率というものが、手形が八五%でありまして、現金が一五%になっている。しかも、右側に書いてあります。〇%というのは、三〇%は翌月回し、七〇%のうちで手形が八五%で、現金が一五%、こういう
意味で、
あとはずっと表をごらん願えればわかると思うのであります。そこで、かように今日
——先ほど川口市全部の金融機関について、私が調査しましたように、非常に今日手形のサイドが延びているということは、これは事実でございます。
そこで、私が公取の
委員長にお伺いいたしたいと思いますことは、現在公取といたしましては、給付を第七条によりまして、四条の一号、二号あるいは七号によってそういう行為をしている、親工場がしていると認めたときには、公取は、それに対して、給付を受領さすとか、あるいは代金を支払わすとか、不利益な取り扱いをやめさせるとかいうことをするし、そういう勧告をやる。そうして七条の二項によりまして、四条の三から六までのいわゆる支払い代金を無理に少なく払ったとか、あるいは故意にこれを納付を拒否したとか、あるいは代金の額を減じたとか、あるいは親工場の持っている原材料をむやみに引き取らしたというようなことに対しましては、それはやはり公取のほうで勧告をして、そうしてそういうことをしてはいかぬというので、それぞれ行政措置をすることになっている。七条の三項によりましても、やはりそれに従わない者は、これを公表するということが七条の三項に載っておりますが、勧告をして聞かない者は、公表するのだということになっておりますが、しかし、また第九条によりまして、公取は、親
企業や下請工場に対して、取引に関する報告をさす、または職員に立ち入り検査をさせる、こういう仕事を公取はしていらっしゃいます。これは
中小企業庁もそうでありますし、主務大臣としても大体同じようなことをすることになっておりますが、そこで、私は公取に承りたいと思いますことは、この立ち入り検査とか、あるいは勧告だとか、あるいはそれを聞かなければ公表するというような、いろいろな行政措置をされる場合に、法文について、どういう解釈で今まで何年間もやっておられるかということであります。
その第一の
質問といたしまして、第三条に、親
企業者は、下請事業者に対して下請をさせるときには、下請事業者の給付の内容、下請代金の額、それから支払い期日を記載した書面を下請事業者に交付するということを第三条にうたっておるのでありますが、この中には、支払い条件というものは書いてないのです。書けとはいってない。そこで、支払い条件を書けということをいってないということは、これすなわち、私は、現金で支払うのがたてまえである、こういう
考え方でこの
法律の第三条の親工場から下請事業者に交付するところのその書類というものに、特にこの支払い条件というものは入っていない、期日と金額と給付の内容は書いてあるけれ
ども、支払い条件はどうかということは書いてないが、これは現金で支払うのがたてまえだから特に入れてないと解釈してよいのか。特に重要な問題ですから承りたいのです。はっきりと支払い条件が書いてないのは、これは当然現金で払うのであるから書かないのだ、こういうことであるかどうかということを御答弁を願いたいと思います。