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近藤信一君 第一班について御
報告を申し上げます。
派遣委員は、八木
委員と私で期間は二月六日から十日までの五日間でございました。
視察個所を日程順に申し上げますと、トヨタ自動車工業本社工場及び元町工場、尾張一宮市の野村毛織、尾西市の渡玉毛織、東海製鉄、中部電力尾鷲火力と東邦石油の建設現場、最後に、電源開発会社の熊野川の支流十津川水系の発電所とダムでございました。
なお、尾西毛織工業協同組合及び中部電力本社において、それぞれ関係者と懇談いたしました。
視察いたしました
事業所では、それぞれの業態に応じ、特振法案、繊維新法、電気関係法案、
中小企業関係法案等について
意見を交換し、要望を承ってまいりましたが、その詳細は検討の上、いずれ法案
審査の段階で申し上げることにいたしまして、ただいまは、視察中に受けました印象の概略を申し上げることにとどめたいと存じます。
トヨタ自動車工業は、
わが国第一の自動車
生産の
規模を持つものでありますが、ここでは、
開放経済体制に即応し、
国際競争力を強めるために、どのようにしてコストを下げ、良質低廉な
製品をつくるかということに腐心しておりました。これは、あげて
企業の
合理化に待たねばならないのでありますが、問題は、その
合理化の
方法でありまして、これには
下請中小企業の関係もあって、微妙な問題をかかえているようで、ございます。しかし、とにかく、販売会社や
下請協力工場等が一丸となって厳しい試練にたえていこうとしており、そのためには、
設備投資に対する
金融とか、自動車
輸出に対し、
政府の強力な
措置を期待するとともに、道路の開発
整備等についても、国の積極的な推進を望んでおりました。
なお、合併問題を中心とする
業界の新しいあり方には慎重な態度で臨もうとしているようであります。
東海製鉄は、富士製鉄及び地元財界並びに県と市の共同
出資により設立されたもので、私どもの参りましたときは、熱延、冷延、亜鉛メッキの
設備が稼働しているだけでございましたが、現在建設中の二千五百トン高炉が近く完成すれば、すでに
設置されております製鋼用の吹き上げ転炉とともに、
世界的レベルの
合理化された銑鋼一貫の製鉄所になるとのことでありました。
この
製品の主力である薄板は、トヨタでも自動車用として使用され、喜ばれておりますが、県、市、地元財界、さらには
下請中小企業の期待は、それぞれの立場からきわめて大きいのであります。こういう点から見ても、このような
企業が
設備投資を繰り延べたり、中止したりすることがあると、いろいろな問題が発生し、その影響するところが大きいのではないかと思いました。
次に、一宮・尾西地区の毛織物工業でありますが、この地区の毛織物工業の流通段階が複雑な構造を持っているだけに、
金融引き締めや紡績、
商社等の大
企業の
しわ寄せの影響がはなはだしく、特に織布専業の業者は、
暖冬異変も加わって、経営困難、
倒産が多いとのことでありました。このような状況を打開するために、まず、
政府と日銀とが景気の
見通しや
金融対策について思想統一し、その政策の基調を一本にしぼって、業者に
金融政策上の不安感を払拭させるようにしてもらいたい。また、手形サイトの長期化を防止する
対策や、
中小企業金融の量的質的拡大、税
負担の軽減等、一連の
中小企業対策を強力に
実施してもらいたいとの要望がありました。
その他、若年労務者の
確保のため職業安定所と中学校当局との連絡調整をうまくやってもらいたいとか、労務者宿舎や教育
施設等労働環境の
整備について
政府の援助を望んでおりました。
なお、繊維の
法律については、たとえば無登録機の取り締まりの徹底や、
中小企業団体法との調整等、運用面の適正化を要望しておりました。
次に、中部電力の尾鷲火力は、最大出力三十七万五千キロワットの重油専焼火力二基をG・E社から
技術導入し、第一期工事として建設中で、将来は同じ出力のものを二基国産でつくる予定であります。
東邦石油は、この火力に隣接して建設中でありまして、火力で使用する重油を一手に供給するために建設されるもので、いわゆる重油コンビナートを形成するわけでございます。したがって、東邦石油は重油をおもに
生産するようでございますが、これは、ほかの石油精製のように、各種石油
製品や石油化学原料のナフサの
生産まで行なうのと、当面その方向を異にするわけでございます。この点、今後に問題が残されるわけであります。会社側といたしましては、
出資者である中部電力、出光興産、三菱商事の三社と検討の上、将来のあり方を定めるようでありますが、コンビナートの方式として
一つの課題を提起していると言えましょう。
なお、尾鷲火力、東邦石油とも、石油使用に伴う硫黄分による公害について神経を使い、東邦石油では、硫黄分の少ない原油を使用するとともに、脱硫装置を研究し、火力のほうでは
わが国初めての四脚型集合煙突をつくり、煙の拡散的効果を高めようとしております。
この尾鷲地区は、電源開発会社の尾鷲第一、第二の水力発電所、中部電力の火力、さらには同社の原子力発電の予定地点にもあげられ、今後の中
地域の広域
運営の
一つの拠点になるようでございます。
広域
運営につきましては、新電気
事業法案にも
規定されているようであります、中部電力では、すでに予備供給力が
確保され、広域
運営が合理的に行なえると言っております。
なお、同社では、需要の
増大による電源開発のための建設費、特に資本費の高騰が会社経理を逼迫させ、二十九年に定められた料金との関係で苦慮しているようでございます。
電源開発会社の十津川水系の各発電所及びダムはすでに竣工し、営業運転に入っておりますが、この水系は、いわゆる熊野川開発全体
計画の一環として行なわれたものであります。この水系の発電所は、全部を合計いたしましても、奥只見、田子倉、御母衣の各発電所はもちろん、同じ熊野川の支流の北山川水系でただいま工事中の地原発電所よりもその出力が少ないのでありますが、十津川に限らず、熊野川の水は、年間を通じてみますと豊富にもかかわらず、季節的に片寄っているため、これを利用するためにはいろいろと困難があり、特に
経済的な開発ということになりますと、いまくらいの水の利用が限度だったようであります。
しかし、それまでほとんど利用されなかった水を電気エネルギーに変え、さらには、付帯工事でありましたが、新宮——五条間の道路を新設することによって、
地域開発に大きな貢献をしている点はきわめて印象が深かったのであります。
以上でございますが、今度の派遣にあたって、名古屋通産局及び視察先の各会社、
業界団体が寄せられた御協力に対し、この席をかりて感謝の意を表し、
報告を終わります。以上。