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1964-06-11 第46回国会 参議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十一日(木曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   委員の異動  六月九日   辞任      補欠選任    徳永 正利君  天埜 良吉君  六月十一日   辞任      補欠選任    天埜 良吉君  徳永 正利君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     藤田藤太郎君    理事            亀井  光君            高野 一夫君            柳岡 秋夫君    委員            加藤 武徳君            紅露 みつ君            佐藤 芳男君            徳永 正利君            丸茂 重貞君            阿具根 登君            杉山善太郎君            小平 芳平君            村尾 重雄君            林   塩君   国務大臣    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    郵政省人事局長 曾山 克巳君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省労働基準    局労災補償部長 石黒 拓爾君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働災害防止に関する法律案(内  閣送付、予備審査) ○労働問題に関する調査  (金沢郵政管内における労働問題に  関する件)   —————————————
  2. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ただいまから開会いたします。  労働災害防止に関する法律案(閣法第六号)を議題にいたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は、どうぞ順次御発言を願います。
  3. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 産業災害が非常に国家的な損失、あるいは経済的な損失も大きいということは資料にも出ているわけでございますが、この産業災害の最近における傾向についてお伺いをしていきたいと思いますが、まず、労働省は三十三年に産業災害防止五カ年計画というものをつくりましてこの防止推進をしてまいったようでございまして、その結果、非常に労働省の評価としては、災害率と申しますか、そういうものが年々低下をしてきておる、こういう見方を一面ではしておるわけでございます。しかし、その内容を分析をいたしてまいりますと、たとえば事業規模別なり、あるいは年齢別なり、いわゆる就業構造別にこれを見ますると、もっと真剣に対策を立てなきゃならない面が多分にあるのではないかというふうに思うのでございます。そこで、まず、最近における傾向として、事業規模別災害発生率と申しますか、あるいは件数、そういうものについてまずお伺いしたいわけです。特に大企業五百人以上、あるいは百人以下というような規模別のそういうものをひとつお知らせ願いたいと思います。
  4. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 最近の傾向を、産業別企業別に分けまして、その概要を申し上げます。  全産業について休業八日以上の死傷件数を見ますると、昭和三十六年の四十八万一千六百八十六をピークにいたしまして、三十七年は四十六万六千百二十六、三十八年は推定でございますが四十万二百というように漸減いたしております。この全産業減少傾向に対応いたしまして、たとえば製造工業建設事業ども減少傾向にあります。遺憾ながら石炭関係を含む鉱業は、ほぼ横ばいという形でございますが、そのほかの産業につきましては漸減傾向にございます。特に従来、災害多発業種として見られておりました建設事業貨物取り扱い事業林業などにおきまして、いずれもわずかではありますが、減少傾向をたどっておりますことは喜ばしい現象であるというふうに考えております。しかしながら、減少したとはいえ、三十八年の死傷件数の全件数を見ますると、依然として七十五万近い件数に達しておりますので、傾向としては好ましい傾向が見られますが、依然として絶対数が多いという点からいたしまして、われわれといたしましては、今後さらに一そうの努力をする必要があることを痛感しているわけでございます。  次に、規模別に見ますると、労働省では、現在大まかに百人以上と百人未満の二つに分けまして死傷年千人率で見ているのでございますが、労働者百人以上の死傷年千人率は、これも漸減傾向をたどっております。昭和三十五年、六年は一八・八及び一八・七でございまして、ほぼ横ばいでございます。三十七年には一六・九、三十八年は、これも推定でございますが、一四・八というふうに、千人率もかなり低下してまいりました。これに対しまして、労働者百人未満規模におきましては、漸減傾向は認められますけれども死傷年千人率としては、百人以上に比較いたしますと倍近い率を示しているということが申し上げられます。すなわち、昭和三十五年におきましては四一・二、三十六年におきましては三一・一、三十七年におきましては三四・一、三十八年は推定でございますが、三二・一、かようになっております。先ほど申し上げましたように、百人以上は一四・八でございます。それに対しまして、百人未満は三二・一というように、死傷年千人率におきまして倍以上の比率を示しているということは、中小企業災害が多いということを端的に物語っているものでございまして、今後、行政重点中小零細規模事業に対して向けなければならぬということを痛感いたしている次第でございます。
  5. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私の入手した資料によりますと、ちょっと数字が違うのですが、労働省の「安全の指標」という中でちょっと調べたのによりますと、もっとこの数字が多くなっているのですけれども、まあこれは別といたしましても、この産業別災害の問題は、いまお話しのように、鉱業が一番多い、さらに貨物取り扱い業、あるいは林業建設業、まあこういう順序に非常に高い率を示しておるようでございますが、そのそれぞれの産業漸減傾向にあるということでございますけれども、私ども、常識的に毎日の新聞なりその他で感じられますことは、特に建設業等におきましては、オリンピック工事というような問題をめぐって、非常に突貫工事のため、あるいは労働強化等もありまして、私は、漸減というよりも、漸増しているのではないかというような感じを受けます。さらに、また、貨物取り扱い業につきましても、最近における特に交通戦争といわれるような自動車のはんらん、あるいは道路の狭隘、そういうものから見ますると、これも決していま言われている漸減しておるというよりは、漸増するのではないかというような感じを私は受けるのでございますけれども、そういう点についてどういうふうに見ておられますか。
  6. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 一般的な印象といたしましては、たとえば建設事業におきましては、オリンピック工事、あるいは高架道路、地下鉄といったような、特に危険度の高い作業を、しかも、急テンポで実施いたしておりますので災害が多いのではないかという印象が持たれておるということでございます。私どもも、そういう一般的な懸念、心配というものが正しいであろうという認識の上に立って格別の安全指導をしておるわけでございます。で、はたして多いのか少ないのかという点につきましては、実数で申し上げますと、建設業におきますところの三十七年一−十二月の死傷件数は十三万五千五百八十四でありますが、昭和三十八年の一−十二月の数字は十二万三千百三十四と、一万二千四百五十の減少を見ておるのでございます。この点は、死亡だけをみましても、三十七年の一−十二月が二千四百二十七、これが三十八年一−十二月では二千二百三十一というふうに、わずかではありますが、百九十六人の死亡減少と、こうなっておるわけでございます。これは統計数字の示すところでございまして、なお不十分ではありますが、改善傾向が認められるというふうに私どもは見ておる次第でございます。
  7. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 次に、就業構成から見た労働災害で、いわゆる年齢別にどういう発生状況にあるかということがわかりましたらお知らせ願います。
  8. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 実は、統計といたしまして年齢別統計をとっておりませんので、お答えができないのでありますが、一般的な傾向から見ますると、就業直後の災害発生率かなり高い。就業直後の労働者災害発生が全体の四八%を占めているということに相なっております。したがって、その中には新規学校卒業生、その他若年層の負傷、疾病が考えられるわけでございまして、そういった点から見まして、かなりの若い年齢層災害が含まれているということが言えるかと存じます。ただ、統計がございませんので、明確な御答弁ができないのを残念に存ずる次第でございます。
  9. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 先ほどの数字がちょっと私の調べたところと違っていましたので、私も手元に若干労災保険統計上から見た数字を持っておったので、ちょっと念のためにお聞きしたのですけれども、これは労災保険関係から見ますると、大体二十齢未満災害件数の全体の中で一四・六、それから二十歳から二十九歳が三四・八、三十歳から三十九歳が二四・六という形で、二十歳から三十九歳までの間が過半数を占めているというような傾向がこれでも大体うかがえるのじゃないかと、こういう気がいたします。そこで、先ほどの事業規模別労働災害、さらに、また、就業構成から見た労働災害、こういうものの傾向を見ますると、やはり今後の災害防止対策重点というものはどういうところに置かなければならないのかということも、ある程度うかがい知ることができるのではないかというふうに思います。政府は、この三十三年の産業災害防止五カ年計画に引き続きまして、三十八年から新しい産業災害防止五カ年計画というものをつくって、現在実施中でございます。こういう中でもそういう点を指摘をしておりますが、私の見るところではまだまだ不十分である。そういうことから、政府としても、今回抜本的な対策を立てるという形で諮問をされ、答申を出されたのではないかと思うのですが、先般の四月十七日のいわゆる公労協のストライキ中止に際しまして、池田総理太田総評議長との間の会談で、産業災害防止のための抜本的な対策を講ずるという一項目があるわけでありますが、この確約を労働省はどう受けとめてこれをやっていくのか、大臣からひとつ御所見を伺っておきたいと思います。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働災害防止につきましては、労働省といたしましては、労働基準監督の最重点事項といたしまして、かねてからこれに努力をいたしてまいっておったのでございまするが、特に昨年の秋に三池及び鶴見の二大災害発生をいたしまして、産業安全に対する基本的な考え方を新たにしなければならぬという世論が高まってまいったのでございます。労働省は、昨年の通常国会災害防止に関する法律案を提案いたしておりましたが、これが審議未了と相なっており、その後、この法案につきまして、いろいろ審議経過等を考えまして、内容改善をはかっておったのでございまするが、先ほど申し上げましたるごとく、二大事故の発生によりまして、国内で一そう災害防止重大性が認識されてまりましたので、この機会に従来からの産業安全についての対策を再検討いたしまして、根本的に検討をする必要があると考えておったのでございます。たまたま総評におきましてもこの世論に耳を傾けられまして、安全対策推進努力されることになってこられましたので、労働省総評でもいろいろ話し合いをいたしました結果、この機会産業安全対策を根本的に検討し、抜本的な対策を講じようということに相なりました。もとより安全対策推進は、役所、労働者のほかに、使用者が協力しなければならぬ事柄でございまするから、日経連にもその旨を話しましたところ、これももとより大賛成であったのでございます。そこで、労働省中心になりまして、今後の対策について検討すべき事項をいろいろ考えまして、これを総評並びに日経連等にお示しいたしまして、一応こういった事柄について関係者が集まって相談しようじゃないかということに相なりましたので、問題を中央労働審議会においてお取り上げ願うことにいたしたのであります。三月十三日に、基準審議会におきまして、これを素材として労働災害防止対策について審議会審議をするということが決定をいたしました。その後、引き続き検討をされておったわけなのでございます。こうしたときに、ちょうど四・一七のストが起こりました。そのストの処理のために池田総理太田総評議長との会談が行なわれました。この席上で、関連して災害防止の問題が話題に相なりまして、池田総理からは、この問題について検討しようという意向が表明されたわけなのでございます。労働省といたしましては、かねてからこの問題は重要なる問題点であると考え、政府としては当然考えなければならぬと思っておりましたし、総評並びに日経連との話し合いを通じまして、これを一日も早く具体化したいという考えのもとに、中央労働基準審議会で御検討を願っておる最中でございましたから、私どもといたしましては、この首脳会談内容を実現いたしまするためには、この審議会審議を促進し、その答申を基礎として、すみやかにこれを具体化していくということがこの会談内容を忠実に実施するゆえんである、かように考えておった次第なのでございます。幸いにいたしまして、五月二十日に労働基準審議会答申をされたのでございまして、この答申は、「災害防止に関する対策について」というものでございます。労働災害の現状を分析し、これに対する各般の対策を網羅されたものでございます。労働省といたしましては、この答申をすみやかに具体化いたしたいと考えておる次第でございます。もとより、答申は非常に広範にわたっておりまするので、答申それ自体実施いたしまするためには、各項目ごとにさらにこれを検討して、そうして具体化をはかっていかなければなりませんが、それには、ものによりましては行政措置で足るものもございまするが、多くは法律の改正、あるいは予算というようなものを必要といたすのでございまして、これらの事項につきましては、それぞれ事務当局検討の上、要すれば、さらに個々の項目ごと中央基準審議会において労使のお話し合いをいただきたい、そうして、できるものから来年度の国会において実現するようにしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この答申内容を拝見いたしますと、この産業災害防止についての主点と申しますか、一応大体網羅していると思います。しかし、一部やはり若干問題のあるところもあろうかと思いますが、それはいずれまた次に譲りたいと思いますが、やはりこの産業災害防止していくというためには、ここにも書いてありますように、何といっても人命尊重、そうして安全を優先させるということの、そういう基本的なやはり精神と申しますか、そういうものが大事でございますし、また、労使対等の立場に立った安全のための対策を立てていくというような問題、あるいは、さらに基本的な問題としては、先ほどの最近の傾向における中で見られますように、中小企業なり、あるいは未熟練労働者災害率が多いという点から見ましても、このことは、やはり労働条件の向上ということも防止のための対策として十分考えていかなけりゃならないことではないかというふうに私は思っております。いま大臣のほうから、今後この答申十分検討をして、そうして行政措置としてできるものは直ちにやり、あるいは法律の中できめていかなければならない予算上の問題等については、次の国会等においてこれを具体化していくという御方針をお聞きしたわけでございますが、この答申が出されたことによって、昨年から実施をしてまいっております新産業災害防止五カ年計画とはどういう関連を持ってくるのか、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  12. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 従来実施いたしてまいりました五カ年計画は、いわば目標設定中心でございまして、それを達成するための具体的な手段方法につきましては十分明らかにされていないといううらみがあったのでございます。しかるところ、この答申が出まして、その中で災害防止法案についても触れておるのでございますが、御審議いただいております法案が成立いたしましたならば、その中において労働大臣が五カ年間にわたる基本計画を策定すること及び毎年の具体的な実施計画を策定することが定められておるわけであります。それが今後具体化されますと、単に減少目標率設定のみならず、特に重点を置くべき重点産業であるとか、あるいは特に災害を多発する施設関係重点を定めるとか、いろいろ具体的な内容がその実施計画に明示されるわけでございます。そしてこれを一般に公表するというたてまえをとりまして、広く一般に呼びかけつつ、その具体的な重点産業重点事項等につきまして対策推進していく、かように相なるかと存じます。いわばワクだけで、中身が十分でないという五カ年計画に対しまして、今後は、さらに毎年毎年中身を明確にしてその実効性を担保する、こういう形に相なろうかと考えておる次第であります。そして、それは全体の形の問題でございますが、内容的には、この答申に盛られました各種の手段方法があるわけでございまして、これをただいま大臣が申し上げましたように、個別的内容具体化することによりまして、それが今後五カ年計画推進するにあたっての具体的な対策内容となるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  13. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 大体わかったのですが、そうしますと、もしこの法案が成立した場合に基本計画を立てられる、その基本計画と、この新産業災害防止五カ年計画とはどういう関係になりますか。
  14. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 現在の新産業災害防止五カ年計画は、昭和三十八年から四十二年までの間に達成すべき目標を明らかにしたものであります。ただいま申し上げましたように、御審議をいただいております法律案が成立した場合には、この法律に基づく五カ年計画というものが成立するわけでありますけれども、従来実施しておりました災害防止五カ年計画を、その目標を直ちに変更するという必要性はいまのところないように考えておりますので、すでに設定されました五カ年計画を前提にいたしまして、毎年毎年の年度ごと計画を明らかにして今後対策を進めていくというふうにさしあたり考えている次第でございます。
  15. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、いままでの昭和三十三年の災害防止五カ年計画の中では、目標として、五年後には災害件数を半減させるというような目標を立てたわけですね、災害件数という。ところが、新産業防止五カ年計画によりますと、それが今度は災害件数というよりも、災害率ということで今度は変わってきておるのですね。災害率ということになりますと、雇用者は年々どんどんふえていますし、それを半減させるというのが目標だということになりますと、件数の面では、先ほどの資料から見ましても、絶対数としてはふえておるような傾向でありまして、何かその辺に、ごまかすというと語弊がありますけれども目標設定にあたってちょっと納得のできない面があるのですが、これはどうしてこのように件数から災害率というふうに今度は変わったのか、その辺お聞きします。
  16. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、当初の五カ年計画におきましては、一般的にわかりやすいという目標設定しようという観点から、災害件数そのものの半減を目標設定いたしまして、そうして災害防止対策を展開してきたのでございます。しかしながら、その後におきますわが国の経済の発展に伴いまして、雇用労働者数が急激にふえてまいりました。すなわち、当初の計画の初年次であります三十三年におきましては、予定労働者が千四百万人台であったのでございますが、それが五年後の三十七年には二千二百万というように、急激な雇用労働者数増加を見ておるのでございます。そういたしますと、雇用労働者増加に伴いまして、かなり災害の実件数がふえてまいりますので、三十三年を初年次といたします計画かなりな無理がある、災害を半減するということ自体に非常に無理がある。かりに雇用労働者一定であり、かつ、産業活動の活発の程度が大体一定でありますならば実件数を半減するということも可能でありましょうけれども雇用労働者数がふえて、産業活動活発化も一そう促進されるというような経済的な基本条件の変更を無視して、単に災害件数のみをとらえて半減するということが、これはほとんど不可能に近いということが関係者に認識されまして、新しい五カ年計画、すなわち、三十八年を第一年次とする計画におきましては、死傷年千人率をもって目標設定すべきであるというふうに決定されたのであります。具体的には、産業災害防止対策審議会におきまして学識経験者の間でいろいろ検討されました結果、実件数によらずして、死傷年千人率をもって目標設定すべきであるというふうに定められたわけでございます。
  17. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 災害発生件数を半減させるということは非常に無理があり、不可能なので、災害率で今度はやることになったのだと、こういうことでございますが、しかし、前の防止計画実施する中で、そういう計画実施した中からこういうような結論が出されたというように思いますけれども、不可能だから、文句と申しますか、文章を書きかえなくちゃならぬということだけではちょっと納得ができないので、やはり絶対数を減らすということが私ども産業災害防止対策でなくてはならないわけで、率が幾ら半減しても、実際には労働者がどんどんふえているわけですから、絶対数としては減らない。そこが最近の産業災害に対する大きな問題となってきているのではないかというふうに思います。ですから、こういう点は、ひとつそういう絶対数を減らすというような意気込みでやはり具体的な対策を立てていくという、そういう心がまえと申しますか、気がまえはぜひ持っていただかなければならぬというふうに思います。単に災害率を半減させればいいのだということだけでは、何か消極的な感じを受けるわけでございます。したがって、三十八年度の労働省災害に関する予算、あるいは安全に関する予算等を見ましても、ことしは非常に微々たる予算しかとっておらない、こういうところからもそういう姿勢が私はうかがえるのじゃないかというふうに思うのでございますけれども、三十九年度における予算関係で、労働災害関係する予算は一体幾らとってありますか、また、安全関係に関する予算、そういうものがどのくらいあるか、もしおわかりでしたらお知らせを願いたいと思います。
  18. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働基準局関係予算は、一般会計労災保険特別会計と二つございますが、昭和三十九年度におきましては、合計しまして九百七十六億八千六百万円でございます。内訳は、特別会計が九百三十三億六千百万円、一般会計が四十三億二千五百万円でございます。この中で、いわゆる災害防止対策関係予算と見られますものは、人件費を除きまして、事業費的なものだけを見ますると六億七百万円となっております。参考までに三十八年度を申し上げますと三億六千六百万円、三十七年度は一億七千七百万円というふうになっておりまして、かなり率としては増加しておりますが、御指摘の全体の予算の中に占める割合を申し上げますと、三十九年度におきましては八・五四%、三十八年度には六・六五%、三十七年度は四・〇二%でございましたので、全体に占める比率は逐年ふえております。ふえておりますけれども、なお今後におきましては、先ほど来申し上げております中央労働基準審議会答申も出まして、これらの施策を具体化するということになりますると、相当な予算と人員を必要とするものと考えまするので、来年度の予算編成にあたりましては、相当大幅の予算増加をはかる必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  19. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まあ三十八年度の予算から比べますと、三十九年度はかなり大幅にふえておるようでございますが、しかし、これも三池の災害、あるいは鶴見の災害というような、ああいう非常に大災害があって非常に世論がわき立ってきたということ等も大きな原因があるんじゃないかというように思います。しかし、予算の中で、それでは基準監督官が一体どの程度増員されておるのかということを見ますると、非常に政府が積極的に産業災害防止していこうというかまえからすると、私どもとしてはあまりにも少な過ぎるのではないかというような感じを受けざるを得ません。たとえば現在の労働基準法の適用事業数が昨年で百七十二万と、こういわれておるわけでございますけれども労働基準監督官はわずかに二千三百名程度しかおらない。しかも、行政管理庁の監察結果を見ますると、そのうちの大体七百名というのが労災保険の業務を担当している監督官だ、こういうふうになっておりまして、実際に本来の監督に従事しておるという監督官はさらに減少する、したがって、同一の事業所の監督というものを十年かあるいは十二年に一回、こういうふうな全く非常識な実態が出ておるわけでございますけれども、こういうような実態をおそらく労働省は毎年毎年知っておられたはずだと思いますけれども、ことしはわずかに五十名程度ですか、しか増員をしておらないということで、はたしてほんとうに災害防止のための監督行政というものができるのかどうかという点に私は疑問を持つのでございますけれども、その点はいかがでございますか。
  20. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、適用事業数の急激な増加に対応いたしまして監督官の定員がふえておらないということは事実でございます。御指摘のように、監督官一人当たりの担当事業場数も千三百件ほどにのぼっておりますので、実際にこれを監督するということは相当な困難なことであるということも、これは事実でございます。しかしながら、労働省といたしまして、監督そのものについては、多年の経験によりまして、監督官の監督技術も向上しましたし、また、監督の対象につきましても、特に中小企業に問題があるわけでございますので、中小企業につきましては、個別事業場的な監督のほか、集団的に事業場の指導をする、特に特定商品のいわゆる産地に対しましては集団的な指導を行ない、かつ、労務管理面の指導も行なうというように、監督と指導を並行しつつ実績をあげるというふうに努力をいたしておるような次第でございます。また、職員の監督が便宜にまいりますように、自動車その他の機動力も増強しておるような次第でございます。しかし、何ぶんにも、それにしてもあまりに不足ではないかという御指摘、御批判は、私どもは率直にいただかなければならないというふうに考えまして、ごくわずかではございますが、三十九年度におきましては百二十九名の増員、その中で、いわゆる監督官は五十名というふうに予定しておるわけでございます。設置法の一部改正法案が成立いたしましたならば、さっそくにもその定員を充足いたしまして、監督体制の強化をはかりたいと存じております。しかし、今後におきましては、さらに一そうの定員の増加をはかりたい、これにつきましては、監督官は所定の研修を必要とする、こういうことになっておりますので、定員の増加と相関連しまして、十分なる研修を行ない、監督能力を十分に備えた者を育てていきたい、そうして訓練していきたいというふうに考える次第であります。
  21. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この監督官の監督行政について行政管理庁が、先ほど申しましたように、非常に問題がある、しかも、先ほど言ったように、十年か十二年に同一事業場は一回しかできない、こういうことであって、たとい監督をやっても形式的な監督しかできない、あるいは地域によっては一監督官というものが非常に過重な仕事を与えられておる、こういうようなことが行政監察の結果出ておるわけでございますが、この行政監察の報告なり、こういう結果を労働省としてどのようにとらえて三十九年度の増員というものを考えられたのか、その辺をひとつ教えていただきたいと思います。
  22. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 監督体制の整備という観点から申しますると二つの内容があると存じます。それは監督機構という面から、現在の監督署の数及び配置でいいかどうかという問題と、第二は、職員の数でございます。そこで、指摘されておりました第一の監督機構と申しますか、監督網の整備でございますが、この点につきましては、三十九年度予算で川崎と名古屋市に監督署の新設をそれぞれきめまして、二カ所の監督署を増加いたしたのでありますが、これは昭和二十二年に労働基準法が施行されて以来初めてのことでございますので、たった二カ所というような御印象かもしれませんが、労働基準行政として初めての画期的なことでございます。そういった形で労働基準監督機構の整備と申しますか、これが今後新産業都市の建設等、いろいろな産業立地条件の変化に対応して、実情に合うように整備していくということが必要であろうと存じまして、今後、監督機構と申しますか、組織網の整備につきましては一そう努力していきたいと思います。  それから、定員につきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、微々たるものではないかというような御批判がなおあるかと存ずるのでありますが、一方において監督署を整備することによって監督しやすくする、現地の実情に即応するというような、そういう物理的、場所的な配慮をいたしますと同時に、今後定員の増加をはかりまして、両々相まって一そう監督体制を整備していきたいと考えている次第でございます。行政管理庁の勧告は十分尊重いたしまして、そのような配慮をいたしたいと思う次第でございます。
  23. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私ども地方に参りまして監督署等に参って、監督官の皆さんといろいろ話なんかしておりますが、そういう中で出されることは、いま私が申しましたように、非常に数が足りなくて、本来の監督行政が、遺憾ながら、なかなか遂行できない、仕事も非常に多くて、非常にきついということをよく聞かされているわけです。ですから、今回の抜本的な対策を立てるにあたっては、やはりこの防止のための点検活動というものも一つの大きな要素でございますから、ひとつ思い切った監督官の増加、さらに、また、いま局長の言われた監督署の適切な配置という面もあわせて御検討を願っておきたいと思います。  あとはこの法案に対する問題点でございますので、この点については次の機会に譲りたいと思いますので、本日のところは、私はこれで質問を終わりたいと思います。
  24. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 ちょっと関連ということで、全然縁もゆかりもないことではないと思いますのでお伺いしておくわけでございますが、御承知だと思いますが、港湾労働の災害の率は、一般産業災害率の二位を下らない、この二位は好ましくない二位でありますが、二位を下っていない、漸増の方向にあると思います。御承知のように、かつて中央労働基準審議会といいますか、そういうものの議を経て、現在でもあると思いますけれども、港湾労働安全衛生会議というものがありますが、これはやはり労使対等の原則の上に形式の上では立って、やはり労働者使用者などでありますけれども、どうもその実があがっていないわけでありますが、しかし、いま提案されている法案が日の目を見てひとり歩きできるようになれば、当然、港湾労働、あるいは港湾産業は、この法案の中にうたわれている指定業種の対象になると思いますけれども、現状は、いま申し上げたように、そういう基準審議会の議を経て安全衛生会議などというものがあって動いているわけでありますけれども、なかなか成績が上がっていないのだ、したがって、さらにこういうものが出てくるという関連の中で、できた場合にどういうように位置づけになるか、現在あるものは、確かにないよりはましであるが、非常に遅々として、現に災害防止あるいは減少を目的とするにもかかわらず、全産業を通じて見ますというと、むしろ漸増の方向にあるということにあるわけでありまして、そういうようなことについてどういうふうにお考えになっているか、その辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。非常にうまくいっていない、何とかしてくれということの苦情を聞いておりますので、私自身その感度がとらえにくいので、ひとつ勉強しながら、この法案審議に便乗して、陰に触れ、陽に触れていろいろ困っている当事者の意見を聞き、悪い面を披瀝しながらやっていこう、こう思っているわけで、前段に意地の悪い質問を基礎にして、ちょびっとやっていこう、こう思います。
  25. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、全産業を通じましても、港湾荷役関係災害率は一番高うございまして、昭和三十七年が死傷年千人率で一二一・三〇、千人のうち百二十一人が死傷する、これは全産業で最高の部類に属するものでございます。それが三十八年は一一二丁七八というふうに若干減りましたものの、なおかつ、各産業の中で一番災害発生件数が高いのでございます。ただいま先生御指摘のように、これらの現状にかんがみまして、港湾労働安全衛生会議という会議の設置方を勧奨してまいったのでありますが、遺憾ながら、清水港とか関門港といったように、いわば理解のある、つくりやすい、できやすいところにできているというような形でございまして、このような情勢で推移しますならば、急速に災害減少をはかるということは非常に困難であるということを私どもも痛感しているような次第でございます。そこで、ただいま御審議いただいております法案が成立いたしましたならば、指定業種といたしまして、港湾荷役関係につきましては、当該業種のみの労働災害防止協会の設立を考えているわけでございます。御承知のように、港湾労働関係の業界団体を見ましても、現在三つあるような情勢でございます。今後、災害対策の問題につきましては、港湾労働災害防止協会を中心にいたしまして、労災保険特別会計からも事業費の補助を行ないまして、自主的な災害対策をさらに積極的に展開いたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  26. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大体方向づけと、そして今後の取り組みのかまえについては、いま基準局長からおおむね承ったわけでありますけれども、私思いまするに、港湾に働く立場の労働瀞の側に立ってみますというと、とにかくこういう港湾労働安全衛生会議ができまして、そして今後この法律がいずれ紆余曲折はあっても日の目をみて、ストライキをするような場合において、港湾産業関係の労働は指定業種であるというような形になっていくとは思いますけれども、それ以前の問題として、現行法そのものについて完全に実施をして、十分点検あるいは地ならし工作をやってもらわないと、たとえば現行港湾関係の法規と申しましては、やはりどうしても労働基準法であるとか、職業安定法であるとか、港湾事業法であるとか、労働組合法であるとか、こういったようなものが完全実施の方向で地ならし工作をされないというと、どんないい法律ができても、どうしても根っこからくずれていくと思うのです。今日これは具体的な例は申し上げませんけれども、六大港にいたしましても、それに準ずる十大港にいたしましても、労働基準法を厳にやっていただけば、いま港は、申し上げるまでもなく、海のとびらでありまして、文明の一つの窓口でありますけれども、これほど封建性の深い就業の状態が、やはり時間外労働の問題にいたしましても賃金の問題にいたしましても、非常に矛盾を包蔵している。そこで、非常に労働基準法にあるものを克明な形ではかっていただくならば、完全実施をする、それには予算上要員の不足であるというようなことが結局連鎖反応として出てくると思いますけれども、さらに港湾労働事業法の関連において、非常に多くの事業者が雨後のタケノコのごとくでき、企業の体質として、常用工を持っていないで臨時工的なもの、手持ち常用工も持っていないで未熟な臨時工でやる、これもやはり港湾事業法で申請すればすぐ認可をしてしまうというような、ある法律を完全実施をするというようなことが、まだ完全実施の地ならし工作が済んでいないということにも通ずると思うのです。それから、職業安定法についても、非常に門前募集であるとか何とかいうことが非常に多い。それから手配師であるとか、いろんなものが横行しているというような事実があります。それから、労働法にいたしましても、港湾の労働組合については、労働組合はまっこうから否定はいたしませんけれども、すぐ一つある組合というものを新会社をつくって二つにする、そういうような形でありますけれども、あるものを十分完全実施をしてもらうという手だてをしてもらわないと、こういう法律が次から次へとできることはいいのでありますけれども、いいものをつくるということにお互いが努力をすることは惜しみませんけれども、あるものを、ある限りにおいては完全実施をするという方向に港湾の場合には特に目を向けてもらわないと、浮き彫りにしてこの産業災害減少を目的とするこの問題を意図いたしましても、これらのからみ合っている法律を完全実施をしてもらわないと、しり抜けになってしまうというふうに考えるのでありまして、この機会ではだめであったのでありますけれども、次の機会には、いわゆる港湾労働審議会答申によって港湾労働法ができれば、それは一つの防波堤にも網にもなると思いますけれども、きょうはこういう意見めいた今後の質問の前段を申し上げておいてやめますが、その辺のところをひとつ大臣から、何か今後の所信についても、一応お聞かせいただきたいと思います。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 港湾労働の問題につきましては、私どもも、労働条件の点からいっても、また、雇用対策といたしましても、いま非常に重大な時期に差しかかっておると考えておるのでございます。幸いにいたしまして、港湾労働審議会におきまして対策についての答申がございました。この中でうたわれておりまする港湾労働法の実施ということは、日本の港湾労働の実情から見ますると、なかなか困難な点もあろうとは思いまするが、しかし、これを実施することの必要性は今日痛感されておるのでございまして、労働省といたしましても、できるだけすみやかにこれを立法するようにお願いいたしたい。つきましては、ことしの春以来、係官を外国の港湾視察等に出しまして、目下外国における港湾労働の管理についていろいろ資料を集めておるのでございまして、できるだけすみやかに港湾労働法の実施に向かって進みたいと考えておる次第でございます。それにいたしましても、さしあたって現在の労働基準法、その他現行法規の厳格なる適用の御要望がございましたが、これはまことに同感でございまして、御趣旨に沿いまするよう、万全の努力をいたしたいと存じます。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣が御用がございますそうですから、一、二点質問いたします。  この労働災害防止に関する法律案、これを見てみましても、何か災害のあとを追っかけておるというような感じがするわけなんです。それから、もう一つは、もちろん企業をやる人、まあその人の責任ではあるが、政府が責任を非常にのがれて、そして関係する人に対する責任を非常に押しつけておるというような感じが一つするのです。それから、一つは、こういう災害資料を見てみましても、減ったとはいえ、七十四万五千人からの人がけがをしておる、六千四、五百人の人が死んでおるということになるならば、一日約二十人近くの人が死んでおる、そして、また、二千数百人の人がけがをしておる、こういう実態を直視しながら、これが何にもならぬというのではありませんが、労働災害の一つの部分を受け持つものだということはわかるんだけれども、何か大きなこの問題に対する責任の所在が薄れておるような気がする。まだこれだけの災害が出る。六千四百人の人がいまここで一ぺんに死んだとするなら、政府はおそらくこれは崩壊すると思う。それが一年間でちょびちょび一日二十人ずつ死んでいくからこういう問題が残されておるんですね。そうするならば、政府の中に非常に強力なこういうやつができて、それからその下に下部組織としていろいろなやつが出てくればいいけれども、何かその間の関係がはっきりしておらないような気がする。それを一体どう考えておられるかという問題。  それから、もう一点は、人命の尊重ということになって、これが基本になっておりますが、人命の尊重が基本になっておるなら、たとえばある人が自動車事故で死んだ、わずか慰謝料三十万、ある人は坑内事故で死んだ、慰謝料が六十万円だった、こういうことは一体だれがきめるべきか、こういうことまでみんな加害者と言っては言い過ぎかもしれませんが、加害者のほうできめるようになっておるから、私は人命尊重じゃないと思う。こういうのは第三者機関がぴしっとあって、それがその人の年齢、家族構成、あるいは仕事の範囲等で、一律にはいかないけれども、人間が死んだ場合には最低どのくらいはこれは当然みなければならぬ、金で解決する問題ではないけれども、残った人たちがどんなに苦労しておるかという場合に、これを業者にまかせておる今日のあり方というのは、私は政府が逃げておると思う。もちろん労災で千日分というのはさまっておる。千日分が今日いいかどうかという問題もまた解決されておらないような気がする。かてて加えて、労災に入っておらない人はどうなるかという問題から、一つの基準というものを、やはり第三者的な人が基本的人命尊重の立場に立って、そうして人が災害あるいはその他で死んだ場合にはこのくらいの慰謝料は要るんだ、あるいは遣族補償が要るんだというものを、もう一回私は検討すべきときにきておりゃせぬか、ただ労災の千日分だけでいいのかということを考える場合、何かただ業者の責任を追及する、業者に災害のないようにするにはどうするか研究せい、そのときには金を出すということだけでは、私は災害が減るとは思わない。その点について、大臣にひとつその二点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) どうもこの法案の出し方などを見ておると、とかく災害防止対策がおくればせであって、災害のあとから追っかけていくというような感じがすると言われましたが、この点はあるいは無理からぬ見方であると恐縮いたす次第でございます。もちろんこのたび提出いたしておりまする法案は、昨年の通常国会に提案いたしたものでございまして、これ自体、昨年の災害のあとから追っかけて出たわけでないので、一応先へ出ておったものではありまするが、しかし、昨年の大災害にぶち当たってみますると、この法案だけで災害対策が事足れりとするわけにはいかない。根本的に再検討をしなければならないということに相なりまして、その結果、中央労働基準審議会で御相談をいただいたような次第でございまするから、災害対策全般については、率直にいって、昨年の大災害によってわれわれが考え直す必要があるということを痛感いたしたのでございまするから、災害のあとを追っかけておるということに見られましても返すおことばはないと、こう存ずるのでございます。で、この法案につきまして、何らか政府全体として災害防止に取り組む中心的なものが欠けておるような感じがすると言われておりまするが、御承知のように、今日、災害に対する対策につきましては、労働省ばかりでなく、通産省における鉱山保安であるとか、あるいは運輸省における鉄道の仕事であるとか、こういった問題がいろいろ散らばっておりまするので、労働省として中心に当たるという機構に必ずしもなっていないのでございます。しかし、災害の大部分が労働省の責任のもと発生しておることは事実でございまするから、私どもといたしましては、災害防止運動の中心になって進まなければならぬという意気込みは持っておるのでございまするが、同時に、この意気込みを政府自体の心がまえにしてもらいまするために、ただいま総理府の設置法の改正におきまして、災害防止対策審議会の継続をお願いいたしておるわけでございます。この審議会の今後の推進にあたりまして、形式的には内閣の所管でございまするが、実質的には労働省が自分の仕事であるという考えで進まなければならぬと思っております。  最後に、災害補償、ことに死亡者に対する賠償、見舞い金の査定基準等について再検討してはどうかということでございます。私も、御意見はまことに同感に存じまして、労働省といたしまして、労災保険審議会にただいま検討をお願いいたしておりまするが、さらに役所自体といたしましても、今後検討を進めたいと存じます。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣は、衆議院のほうで採決があるそうですから、けっこうです。  そこで、局長にお尋ねしますが、労災保険審議会答申をお願いしておる、こう言われるんですが、先ほど申し上げましたように、毎日私らがここで論争しておるいまの時間でも何人かが死んでおるわけなんですね、二十何人死んでるんですから。大体一時間に一人死んでるわけなんです。そうして、その人間の生命に対する尊重というのが基本になっておるのならば、人間が死んだ場合はどれだけの賠償をすべきだということをまず打ち出さなければ、私はこれはおそいと思うんです。それは業者がやるべきじゃない。業者だったら、自分の経営内容によってこれくらいしか払えないといえば、人間の命は経営の内容によって変わってくるということになるわけなんです。だから、そういうものじゃないんです。人間が死んだ場合は、これは最低はどれくらいだと、こういうことをまずきめつけて、その上において、今度は業者がその責任においてそれに見合うような賠償をしなければならぬ、補償をしなきゃならぬと思うんです。石黒さんがお見えですから、資料があったらここで発表してもらいたいし、なかったらあとでいただきますが、諸外国の先進国の死亡者に対する賠償はどうなっているか。私この前もここで申し上げましたが、ハワイで自動車に乗ったときに自動車の運転手が言っておったのは、人間一人殺したらその人の家庭を私が補償しなければなりません、もちろん保険には入っている、しかし、一生その負担で追われるから、私はどんなにおそくてもしんぼうしてもらわなければならない、こういうことを言ってるんですよ。日本では千日で事足りるというようなことで、まだ一つも千日分で不足だということが当局から聞けないわけなんです。千日だって、賃金の段階がありますから、だから私が言っておるのは、産業による、あるいは経営の規模によって人間の生命の価値が変わってくるのか、そこを質問してるんです。もしもそうじゃないとするなら、どういう産業であろうと、船に乗っておろうと炭鉱におろうと、汽車で死のうとバスで死のうと、一定のその人の家族の補償、あるいは最低の子供が何歳になるまでの補償というやつはできるはずですね。そういうのを基準にしてなぜできないか。それが千日分に見合うものだったらそれはけっこうでしょう。ですが、千日分以下であったら、当然千日分というのを変えにゃいかぬ。人命尊重を基調にすると言われているが、人命尊重が基調にされておらない。いかに災害をなくするかということなのです。そのために業者がうんと考えて、災害のないようにしなさいということなのです。しかし、それも五カ年計画で五〇%減らすということなのです。そうすると、うまくまるまるいっても一年に三千人が死んでいるわけです。そういう人たちの人命の尊重ということを考えていない、だから逆になっているとぼくは思う。災害がこれでなくなるならいい、なくならないならば、起きた場合どうするんだぞということをまずきめなければならぬ。それから、起こさないためにどうするのだ、こうしなければ、起きている人たちはずっと泣き寝入りなのです。だから、私のいまの考え方が間違っているかどうか、外国の例はどうであるか、その点を局長なり部長なりにお尋ねしたい。
  31. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) たいへん基本的な非常に重要な問題であろうかと存じます。先生御承知のとおりでありますが、一般の損害賠償という制度のワク内で考えました場合に、司法手続きでその金額が明確になるわけでございます。その点につきましても、自動車事故等による損害賠償額が低いじゃないかということで、現在法曹界におきましても、非常に大きな問題として取り上げられているということを私ども仄聞いたしているのでございまして、適正な補償額を支払わにやならぬということは一般的な世論であるというふうに私どもも理解いたしているのでございます。しかしながら、具体的な損害賠償額なり補償額の算定につきましてはどういう基準をとるかという点につきましては、非常にむずかしい問題があるわけでございます。一般の原則でございますと、災害なり損害の発生時点をとらえまして賠償額ないし補償額の算定を行なうのでありますが、特に労働災害におきましては、当該労働者が得ておったところの経済的な利益というものを基礎にして補償額を考える。アーニング・キャパシティー、稼得能力というものを基礎にして計算するという制度がとられていると理解いたすのでございます。そういったものを捨象いたしまして、全然別の抽象的な基準を設定するということになりますと、非常に問題はむずかしいのではなかろうかというふうに存ずるのでございます。しかしながら、そういった一般原則論は別にして、現在の労働者災害補償の額が千日分でいいのかどうかという点については、確かに批判の余地があるわけでございます。先ほど大臣が申し上げましたように、特に遺族補償の問題につきまして現行制度でいいかどうかという点につきましては問題があるということをわれわれみずから問題点指摘いたしまして審議を願っているような次第でございます。その方向につきましては、ただいま結論的なことを申し上げることはできませんが、一応小委員会で一つの試案を基礎にいたしまして検討しているような次第でございまして、御質問にございました、外国の制度はどうなっているか、今後どういうふうに検討していくかという点につきましては、労災補償部長からお答え申し上げたいと思います。
  32. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 労災補償の点に限りましてお答え申し上げます。労災補償は、いずれの国におきましても、社会補償と全く一体になっている国では、いずれも賃金を基礎として補償を決定しておるわけでございまして、絶対額で幾らというような決定をいたしておるようなところはないように聞いております。その補償の方法は、日本のような千日分という形をとっております国は非常にわずかでございまして、いずれの国でも年金制度を主体といたしております。年金額が、あるいは年金が、本人が生きて働いておったときの賃金の何%が年金として払われているのかということは、これはもちろん各国まちまちでございますし、また、家族構成、年齢等によって当然違うわけでございます。ILO百二号条約というのがわれわれの場合一応の基準になっております。百二号条約におきましては、生前の賃金の四〇%を標準家族に対して支給するような年金にするのが望ましいというふうに考えております。標準家族と申しますのは妻一人に子二人であります。最近日本におきましては、ほかの賠償におきましてホフマン方式型が取り入れられております。労災の千日分の補償は、法制定当時におきましては、そう安きに失するということもなかったのじゃないかと思いますが、今日の状態におきましては、これは私の私見でございますが、千日分というのは安過ぎるという感じを持っております。最も合理的な遺族補償の方式と申しますのは、これはいかなる場合でも十分なる補償ということは不可能と存じますけれども、不可能と申しますのは、金でかえられる問題じゃないと存じますけれども、一律千日よりはホフマン方式、ホフマン方式よりは年金が遺族の実態に即応して合理的なのではなかろうかというふうに考えております。昨日、労災保険審議会の小委員会の席上で、小委員長から議論の基礎としての試案を提示されました。その中では、遺族補償は原則として年金にすべきであるというふうに提示されました。私どもも、審議会の多数の御同意が得られるならば年金にいたしたいと考えております。年金にいたしました場合には、正確に年金の額がどのくらいということがまだ出ておりませんので、どのくらいふえるということはわかりませんけれども、しかし、百二号条約に適合するということを目標としていたしました場合には、もちろん年金になりますと、現在の受給権者が早く死ぬかおそく死ぬか、あるいは年齢等で非常に個人差が出るわけでございます。平均いたしまして遺族が将来にもらう年金の額というものは今日に数倍することは当然考えております。また、その線で努力いたしたいと考えております。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 考え方については私も賛成ですが、百二号条約で四〇%であるのが基準と言われたのですが、これはもちろん最低の基準ですから、実際現在の共済組織、あるいは年金制度、恩給等を考えてみましても、大体七〇%とか、あるいは六〇%以上が基準になっておると思う。ところが、死んでしまって四〇%というのは一だから四〇%のILOの百二号条約の基準にはあまり拘泥されないで年金にされるのはけっこうです。だから、ひとっこれをもう少し人間の命というものはこれだけ尊いものだ、人間を一人殺せばこれだけみな苦労するのだということを業者自身がほんとうに肝に銘ずるようにしなければならぬと私は思う。で、先般、坑内の保安法の問題でも言ったのですが、大体、政府大臣の皆さんが考えておるのは、人間の生命を尊重するということじゃないのです。そこで聞いてみますと、たとえば坑内等で死んだ場合、原因がわからない、何十人死んだと、あるいは国鉄等で、原因ははっきりしないが、何百人死んだそのときに、総裁や社長が涙を流して拝んで何になりますか。それだけの事故が起こったら、まず辞表を出すべきです、陳謝すべきです、そうしてあとの補償をすべきなんです。ところが、責任問題ということになってくると、やめるのが責任をとったことであるかというようなことで、何百人死んでも何十人死んでも、責任者はのほほんとしておる。私は、そういうところに人間の生命の尊重なんかといっておるのがおかしいのです。それはいずれにしても、まず自分の責任を感じるべきなんです。何千人、何万人という人の生命を預かって、その最高責任者であるならば、私は当然だと思う。ところが、責任者が上になればなるほど、そういう責任を感じておらないのが現実なんです。だから、それを追及しても、責任をとるのは、やめるのが責任をとったのだということにならないというような人たちにこんな話をしてもこれはつまらぬから、だから、人が死んだならば、その人たちの家族は永久にみなきゃならぬのだということをぴちっとつけるわけです。この労災法の千日分というものは、たしか十年間の補償が基礎になってできたものと私は考えております、その当時ですね。死んだそのあと十年たてば、一応子供も大きくなるだろうというような基礎からできたのがいまの千日分なんです。そういう考え方からできておるそのものが、もうすでに現実になってみれば、これは事態に即応しない。だから、まあ三人おったならば、一番下の子供が二十歳なら二十歳になるまで生活のできるだけの補償をなぜやらないか、そういうような基本的な問題が一応最低にあって、それからその企業の状態なりで上積みされるのはけっこうだと思うのです。それまでいけないような会社だったら、これは保険法を改正するなりなんなりして、そうして、そういう場合はそれだけの金が出せるようにしなきゃならぬ。だから、そこがどうも私にはあとから追っかけていっているような気がする。だから、現在二十何人死んでおるのだから、この際、補償部長が言われました年金の問題につきましては私も賛成です。これは異論のある方もあると思うのですけれども、私個人にとってみれば、年金で将来補償すべきだと私は思うのです。ひとつそういう点で進んでもらいたいと思うのと、もう少し外国の事情、実際の数字をひとつ資料としていただきたいのです。私が聞いてきた範囲内では、だいぶ違うのです。だから、死んだ人に対する諸外国の補償はどうなっているか、諸手当はどうなっているか、こういう問題につきましてひとつやってもらいたい。  それから、局長さんは、裁判でやっておると、そのことは弁護士の非常なりっぱな方々がやっておられるので、これはありがたいと思うのですけれども、弁護士の人たちがやっておるのは、裁判にかかっても金がかかるし、時間がかかるから、だから、裁判にもかかられない人がおるということが基本になっておるのです。裁判で金の高低がどうだというものが基本になっておるのじゃないかと私は思うのです。だから、もっと基準監督署としては、こういう考え方でいくならばどうだという点を、私が言ったような人命尊重というものは金では買えないけれども、しかし、あとの遺族はこういうふうに補償するべきだという線を打ち出してくれば、私は千日の線はくずれてしまうと思うのです。そういう点でひとつ諮問をしていただくようにお願いをして私は質問をやめますが、これに対するお考えがあったらばお述べ願います。
  34. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先生の御指摘なさいます精神は、私どもも十分御理解申し上げ、かつ、同感でございますが、問題は、補償額の算定という問題になりますれば、いろいろ問題があるということを先ほど申し上げたようなわけでございます。そして御承知のように、使用者の責任という観点から、これを労働基準法という個別使用者の責任という観点からその災害補償額をはっきりさすのか、あるいは労災保険という保険制度の中において補償するのかという、その補償実現の手段という観点から考えました場合にもいろいろ問題があろうかと存ずるわけでございます。労働基準法の中で個別使用者の責任である補償額を増加する、それによって災害を起こした場合の痛さを身をもって知らされるという形を貫くといたしましても、その補償額を支払えない場合が問題になるわけでございまして、結局労災保険制度の中に吸収して、保険という、いわば使用者にとっては、保険料を納めれば、それによって労働者が保険管掌責任者である政府から保険を直接もらう、こういう形に転換せざるを得ない。そういたしますと、どうも直接使用者に払わして痛さを身をもって知らしてやるという制度が、精神的にはわかるのでございますけれども、保険制度の中に化体してそのほうに転換した場合には、そういう趣旨が必ずしも貫徹できない。保険料が上がるという形でのみ痛さが知れる、こういうような問題もございまして、そこら辺はわれわれとしましても十分検討すべき問題であろうと思うのでございますが、ただ、人命尊重という問題が、一つは使用者の立場からの人命尊重の問題と、社会一般における人命軽視の風潮というような問題と、幾つかの観点から同じ問題が論ぜられると思うのでございますが、労働基準審議会からちょうだいしました答申の中にも、一般的な社会風潮としての人命尊重観念の欠除について、今後さらに義務教育課程においても専門教育課程においても、あるいは就職時、職業訓練の場においても、もっともっと徹底さす必要があるという御指摘を受けておるわけでございまして、しからば、どういう内容を教育すべきかという教育内容につきましても、今後研究所等を中心にいたしましてその原案をつくっていきたい、こう考えております。そして、一方、使用者人命尊重観念と申しますか、安全意識の高揚という点につきましては、この審議会答申の中でも数カ所強調されておるところでありまして、人命尊重観念を生産に優先させることこそ新しい経営理念であるという思想をもっと徹底すべきである。そして事業内の安全管理体制につきましても、一番最重点は、最高責任者の安全意識の高揚にあるということを明確に指摘しておるわけでございます。一方においては、経済的損失と申しますか、補償負担によるところの痛さをどうして味わすと申しますか、感じさせるかという問題と、一方においては、本来の安全問題に対する使用者の取り組み方をどうするかという問題があろうかと思うのでございます。いろいろ労働省としてもやってまいりましたけれども、やはり安全対策は社長からという根本指導の面において欠けるところがあったのではないかというふうに反省をしておるような次第でございます。これをどうするかという点につきましては、たとえば御審議いただいております法案が成立しましたならば、たとえば港湾荷役の労働災害防止協会というものができますれば、そういう団体を中心にいたしまして、まずトップ・マネージメントの安全教育から教育を展開したい、このような方法を考えておる次第でございます。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと勘違いされているようですが、私は人命尊重の基本線でものを言っているのであって、会社が金を出し切るとか出し切らないとか、そういうのは問題じゃないのです。どんな小さい会社だろうが、大きな会社であろうが、個人であろうが、そういうものは一ぺん全部御破算にしてしまうのです。そんなものじゃない。それでやるなら、人間の生命というのが中小企業の場合は三十万円だった、大企業の場合は三百万円だったとか、同じ人間の命が金で換算されるわけです。そんな私は人間の生命じゃないと思う。出し切ろうが出し切るまいが、それは別として、たとえば子供が二十歳になるなら二十歳になるまで現在の物価で当然補償しなければならぬのなら補償しなければならぬという、この線を打ち出しなさいと言うのです。それによって小委員会なり審議会は、そういう点は中小企業はどうするか、保険でいこうかどうするかという問題はその人たちが考えて、そうしてそれを答申にもっていくべきなんだ。基本線というのは、どんな企業であろうと、どんな個人企業であろうと、人間の生命においては変わりはないのだから、だから、これだけは支払わなければならぬ、補償しなければならぬというやつをまずきめれば、支払うやつがどうするかは次の問題です。そうすれば中小企業は払えないだろうとか、大企業ならちっとは痛いだろうというのは枝葉末節で、次の問題です。だから、まず、それはおいて置いて、そうして人間が死んだ場合、子供が標準家族で二人おった場合、三十歳であった場合は大体いまの物価でどのくらいかかるか。それが二十歳なら二十歳になるまではこれは補償すべきだという基本線で諮問しなければ、やっぱり下部ではそれをどうするかこうするかということで、あなた方がいま言われるような、いつまでたっても答申になってこない。だから、それが今度は一つの基本になって、弁護士さんが言っているような、あるいは非常に弁護料も足らないから裁判もできないとか、あるいは泣く泣く安い金で目をつぶっているというようなことができないことになる、同じ人間だから。だから、どのくらいだというちゃんと一つの基礎ができてくるから、いやでもおうでもそれを払わなければならぬ。裁判なんかせぬでももらわなければならぬ。裁判にかければ当然だという結論が出てくるわけです。だから、人間尊重、人間が死んだら家族はどうするのかという基本線を一ぺん労働省が腹をきめてくれれば、あとはそれによって保険制度なり何んなりを考えなければいかぬ。私はそれを言っている。で、人間の生命の尊重は金で買えないけれども、年年これだけたくさんの人が死んでいるんだから、こうあるべきだということだけをひとつ腹に持っていただきたいと思うのです。  以上で終わります。
  36. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、他に御発言がなければ、本案に対する質疑は、本日のところ、この程度にとどめておきます。  これにて休憩いたします。午後は一時半から再開をいたします。    午後零時十八分休憩    ————・————    午後一時五十五分開会
  37. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ただいまより、午前に引き続き、社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑の通告がございますので、順次これを許します。柳岡君。
  38. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 前の委員会でも問題になったのでございますが、金沢郵政局管内で発生をいたしております、特定局長会というよりも、むしろ郵政省当局の全逓組織に対する不当な干渉について再度質問をいたしまして、善処を願いたいというふうに考えるわけでございます。  そこで、先般の委員会で私どもがいろいろ指摘をいたしました問題につきまして郵政省が調査をし、そして、その御報告をいただいたわけでございますけれども、その調査は一体どういう方法でなされたのか、そして、また、その報告の内容は、どういう調査をやってどうしてつくられたのか、そういうひとつ経過についてまずお聞きしたいと思うのです。
  39. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 最初に、私、郵政省の人事局長でございますが、せんだってこちらに参りました増森人事局長の後任といたしまして、約十日ほど前に着任いたしたばかりでございますので、何とぞよろしくお願いいたしたいと存じます。  ただいま柳岡先生から御質問のございました、金沢郵政局管内におきますところの事件につきましては、どういう調査方法をとったかということでございますけれども、調査につきましては、郵政局を通じて行なわしめることが最も当を得たものと存じまして、郵政局の係官を現地に派遣して調査をいたしましたり、さらには、現地の管理者を郵政局に呼びまして調査をいたした次第でございます。なお、郵政局からは担当課長を郵政省に呼びまして事情聴取をいたしました。そのほか、どういう気がまえで調査をしたかというようなお話でございますが、私どもといたしましては、いろいろ他の機関等を通じまして調べることにつきましても考慮をした次第でございますけれども、やはり郵政局を通じて調査することが最も妥当と考えまして、先ほど申し上げましたような手続きで調査をいたした次第でございます。
  40. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まだかわられたばかりで、いままでの経過等について十分御景気ないかもしれませんけれども、しかし、それぞれ引き継ぎ等もあったと思いますので、ある程度御認識をいただいているという前提に立ちまして質問をしてまいりたいた思いますが、この報告の中で、そういう事実はない、全般的にそういう報告になっているわけです。しかし、ここにも述べられておりますけれども、たとえば局長のご夫人が、全特定の役員を案内して局員の自宅を訪問し、そうして脱退届けに強引に捺印をさせていたということはこの報告の中にもあるわけでございますけれども、先ほどのお話ですと、局長自身ではなくて、局長の夫人であるから、夫人は何も知らないで、ただ道案内をしただけだ、こういうことになっておるわけです。しかし、実際問題として、特定局のように、局長の自宅と局舎というものが一緒になっておるというような職場にあっては、常に局長の奥さんと局員との接触というものは非常に密接であろうかと思います。ですから、たとい局長自身ではなくても、局長さんの奥さんだということであっても、奥さんがそばにいて、そして一言もしゃべらないとしても、やはり局長の何か意向がそこにあるんではないか。いわゆるここで拒否をするということは、やはり局長からあとで何か言われるんではないだろうかと、こういうふうなやはり心理が局員の中には働くんではないかというように思うんです。しかも、組合側の調査によりますと、この押水の局長の奥さんだけではございませんで、富山地区における栴檀野局というものがあるのでございますけれども、その栴檀野局の局長の奥さんも、この押水の局長の奥さんと同じようなことをやっておるわけですね。で、この栴檀野局長の奥さんの場合は、押水の局長夫人よりは、より積極的に局員の自宅をみずから訪問をし、そして、自分の主人は特定局長会の役員をやっておるんで、割り当てられた人数だけ脱退をさせないと役員としての面目が立たない、だから、ひとつぜひ脱退届けに捺印をしてくれと、こういうことで局員の自宅を歩いているわけです。こういうものを考えますと、単に一局の奥さんだけでなくて、ほかにもこういう例があるということになりますると、報告の中で、何も知らないで、単に全特定の役員の人が道案内をしてくれと言ったから歩いたんだということは表面的な理由であって、その実は、やはり局長さんと同じような考えを持って、そして全逓の組織を切りくずしていくという、そういう一役を奥さん自身が買っていたんではないか、私はこういうふうに思うんですけれども、そういう点、郵政当局としてどういふうに見ておられますか、お伺いしたいわけです。
  41. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 局長夫人が全特定の組合員を案内いたしまして、いわゆるオルグに歩いた、その道案内をした、また、さらに、栴檀野局長夫人におきましては、きわめて積極的に慫慂をしたというお話でございますが、第一の、押水局長夫人におきましては、事実といたしまして、郵便局舎と局長自宅とは別でございまして、御指摘のような点がないわけでございます。ただ、私ども省といたしましては、かつてございましたところのいわゆる特定局の請負制度といった残滓を完全に払拭しますべく、あらゆる点に着目いたしまして努力しておるのでございまして、いわゆる局長の夫人なるがゆえに、局員に対して身分的な、あるいは心理的な圧迫を加えるというようなことにつきましては、極力これを作用いたさないように努力いたしております。したがって、先生御懸念のようなことはないかと存ずるのでございますが、押水局長夫人におきましても、私どもの受けておる報告によりますと、頼まれましたので、局長も不在でございましたので、ただ道案内をしたにすぎない。しかも、相手のところに参りましても、みずから積極的な慫慂の言を吐いたことはない、こういう報告が参っております。  さらに、第二の、栴檀野の局長夫人でございますが、先生の御指摘になりましたように、割り当てがあるから、これを主人が達成すべく努力しておるので応援してほしいというお話は、私どもといたしましては、そういう報告は受けておりませんし、また、局長夫人としてそういう行為をするとは私は考えないのでございます。
  42. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 単なる道案内であれば、夜中の午前一時や二時ごろまでそこに一緒にいて、そして捺印が終わるまで待っておるというようなことは、私は少なくとも考えられないと思うのです。まあその晩四、五軒歩いたというようなことでございますけれども、午前一時か二時ごろになって、それから先また歩くということはおそらくないので、一時か二時ごろまでいるというのは一番最後の家だろうと思うのです。道案内であれば、局長さんの奥さんは、当然その家に案内すれば、あとは自宅に先に帰っておやすみになって私はいいのではないか。それを最後まで一緒になって捺印するまでおったということは、やはり奥さん自身が全特定の役員と同じような考え方でいたんではないか、こういうふうに私は推測をされますし、また、だれが考えてもそういうことが成り立つのではないか、こういうふうに思うのです。しかも、もう一つ重要なことは、報告では、局長会自身がそういう行為はしておらないと、こういう全般的な報告でございますけれども、しかし、この富山地区における、あるいは金沢地区における全逓の地区本部の三役と、それから石丸さんですか、郵政局長との間で会見をした際に、郵政局長は、この特定局長の不当労働行為については認めておるわけですね。しかも、認めて、この問題について、これからは私の責任において即刻中止をさせます、こういうことをはっきりと明言しておるわけです。ですから、そういう石丸郵政局長の言を借りれば、やはりこういうような行為が現実に特定局長のほうでは——下のほうではやられておった、こういうことになるのでありまして、この点、先ほど一番最初に、どういう調査をされたかということを私はお聞きしたのでございますけれども、その調査の中に不十分な点があるのではないか、こういうふうに思うのでございます。この郵政局長と全逓地区本部の役員との間に取りかわされたいま申し上げましたようなことについて、本省として把握しておるかどうか、その点お聞きしたい。
  43. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 石丸金沢郵政局長が、全逓の北陸地区の三役と不当労働行為を認め合ったという先生のお話でございますが、私どもといたしましては、さような報告は受けておりません。ただ、私もつい最近まで地方の郵政局長をいたしておりまして、東京におきましても、東京の郵政局長をいたしておりましたが、さような抗議めいた話を受けたことはございます。そういう場合に、私どもといたしましては、不当労働行為は絶対にいたしておらないし、また、組合の中で若干の意見、あるいは批判を持った人たちがいろんな行動をするということにつきましては、これは私どもは介入すべきではないというようなことを申しておりましたので、石丸局長も、あるいはさようなことを申しまして、そういうことが不当労働行為をあるいは認め合ったというぐあいに誤解されたのかと思います。さような事実はないと報告を受けております。
  44. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 一月の二十七、八日、東京で郵政、監察電波の三局長会議が開かれたというふうに聞いておるんですけれども、このときの議題として、「年末闘争の総括と春闘対策」、こういうことでやられたということについては御承知でございますか。
  45. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 承知しております。
  46. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そのとき、その石丸郵政局長が、まあこれは会議の席上での話であったかどうかはちょっと正確でございませんけれども、長野の郵政局管内ではいろいろと問題が起きておる、そういうことで長野だけを孤立させてはならない、春闘には一生懸命やると、まあこういうことを石丸郵政局長は言ったということを聞いております。そこで、そういう発言から見られますように、石丸郵政局長はそういう考えのもとに帰りまして、そして特定局長会の和倉の局長さんですか、この立川さんという方と会って、そして石丸郵政局長の意を受けて、金沢出身の局長であるから、石丸さんをひとつみんなで助けてやろうと、こういうことになって、局長会がこれで動き出したという経緯を私どもは聞いておるわけでございますが、まあそういうことから見ても、私は、単に特定局長会だけの意思でこういう不当労働行為をやってるのではなくて、いわゆる郵政局長の指示が多分にあったのではないか、こういうふうに思います。で、そういう考えを持っておる当事者にこの不当労働行為の調査を命じても、決して私はいい報告がなされるはずはないと、こういうふうに思うんですが、どうお考えになりますか。
  47. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) その会議には私も同席しておったわけでございますが、石丸郵政局長が先ほど先生のおっしゃったようなことを会議の席上で申した事実は記憶いたしておりませんし、また、さようなことを席上で申すはずはないと思います。  なお、石丸局長が現地に帰りまして、特定局長に対しまして不当労働行為を加えるような何らかの心理的な圧迫を加えたということにつきましては、私どもに対しましてさような事実はないという報告がきておりますので、さようのとおり、ないと思います。  なお、それにつきまして、当局としての考えはどうかということでございますが、私どもといたしましては、当時、地方の局長としまして、絶えず本省から、決して両者、つまり全逓側に対しましても、また、全特定側に対しましても、不当労働行為はしてはならぬというような的確な指導を受けたのでございます。さよう御承知願います。
  48. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まあ私は、その調査のやり方が非常に妥当ではないような気もいたしますし、また、事実いろんな事件が現地においてはあるということから、例を一つ一つ申し上げてまいりたいと思うんですけれども、石丸局長と人事部長等が中心になって、そしていま申し上げましたような特定局長会の会議の中で全逓脱退の割り当てを指示して、そして行なったということは、これはこれから申し上げる数々の事例からしてもうかがえるわけです。  報告によりますと、局長会の会合では全然そういうことは会議の議題にはならなかった、単に年末首繁忙の対策とか、あるいは貯金、保険の募集の推進とか、そういう問題についてのみやったのだと、ただ、春闘対策ということで、組合の春闘に対する一応の対策も話し合われたということになっておりますけれども、決して全逓組織の切りくずしというようなことについては会議の話題にはならなかった、こう言っておりますけれども、二月の一日、二日、能登地区のこれは特定局推進連絡会議というのですか、正式な名前はいまちょっとわかりませんが、この会議の中で、具体的に全逓組合に対する脱退の申し合わせをしているわけですね。その一つとしては、「無集配局は全員を全逓から脱退させ全特定に加入させる。」、二つ目としては、「とりあえず二〇名以下の集配局の切り崩しを行う。」、三としては、「その上で二〇名以上の局にも波及させる。」、こういう方針をこの二月一日、二日の会議の中では申し合わせをいたしております。そうして、さらに二月六日には、今度は下部の部会がそれぞれ開かれまして、そうして次のような申し合わせをやっております。それはどういう申し合わせかと申しますと、一つには「無集配局は四月まで完全に落す。」、それから、「穴水局は他に比して世帯が大きいので、一応あとまわしにするが、情勢のいかんによっては行動を起す。」、それから、三番目としては、「能登、柳田の両局は、局長の健康上の事もあり、一応手をつけない。」、四つ目としては、「諸橋局は局長が表面にでるのはまずいので、まず洲川主事を落してしもう。この工作は、穴水、鵜川両局の局長が行う。」、五番目としては、「鵜川は最も落し易い局だが、局長が表面にでないようにして行う。」、六は、「全逓の脱退届を出す場合、隣接局と連絡を密にして、同時提出すれば、全逓の力を分散できる。」、七は、「全逓は、不当労働行為として追及するだろうがシラを切れ。」、八番目としては、「全逓脱退を形式的にも正当化させるため、全特定のオルグを各局に派遣する。」、九番目としては、「以上の計画を実行し集約する期日を三月一五日頃にする。」、こういう非常に悪質なと申しますか、もう歴然と不当労働行為と見られるような申し合わせが二月の一、二日さらに六日と行なわれて、そうしてそれに符牒を合わすかのように、松波局というのですか、あるいは瑞穂局、鵜川局の脱退の問題が二月十日ごろから出てきているわけです。この申し合わせの中にも、「全逓脱退を形式的にも正当化させるため、全特定のオルグを各局に派遣する。」、この一つを見ても、私は、先ほど局長さんの奥さんが全特定の役員の方を案内して、そうして局員の自宅を訪問し、脱退届けに捺印をさせたということは、こういう申し合わせからきているのだというふうに私は推測せざるを得ないです。こういうことについて事実がないということは、私は、あまりにも隠蔽した報告ではないかと思いますが、その点をお伺いしたい。
  49. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) ただいま先生御指摘の数々は、私といたしましては全く初耳でございまして、また、郵政局からもさような調査報告は全然まいっておりません。ただ、御承知のように、特定局推進連絡会というものが各地で開かれましたあと、局長たちが私的に相寄りまして何かそういったことをした事実があるかどうか、これは調査してみればわかることでございますので、調査してみてもけっこうでございます。私どもは、公の会議でさようなことを議論したり、また、実行に移すようなことは厳に慎ませておりますし、また、私的の会議におきましても、私どもは介入をすることは全然いたしておりません。
  50. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それでは、今後まあさらに事実を確認する意味において申し上げて、郵政省当局の調査の資料にしていただきたいのですけれども、いま申し上げましたように、二月の十日を期して行動が開始をされまして、具体的には、先ほど申し上げました鵜川局長さんは組合員一人一人を呼んで、そうして脱退するよう説得した。そのために、二月中旬ごろには全員が脱退届けを書いておりますが、この局は局長さんとの血縁関係の人が非常に多いそうですが、そういうことでございます。さらにこの松波局ですか、松波局におきましても同じようなことがなされております。これは大体この石川地区における一、二の例でございますが、先ほど申し上げました局長さんの奥さんが案内をした問題もこの石川地区の中にはあるわけでございます。それから、富山地区におきましても同じような事例がたくさんあるわけでございますが、この中で、私どもが特に注意をして注目をしなければならない問題は、全逓脱退の工作費として一人一万円、最低でも一局一万円の工作費が出されておるということです。こういうことについて、これがほんとうであるとすれば、私は非常に重大な問題だと思うのですけれども、この点は御承知ございませんか。
  51. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) さような事実につきましては、全然存じておりません。
  52. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 先ほど申し上げましたこの栴檀野局長さんの不当労働行為の問題でございますが、結局、押水の局長さんの場合と同じように、この場合は局長さんは表面に立たずに、奥さんがもっぱらその主役を演じておるわけです。たとえば四月の二十三日に、組合員である二交換手に対しまして、脱退をするならば、子供が局に入りたいというならいつでも入れてやるとか、あるいは四月の二十六日ですか、組合員の自宅に参りまして、そうして先ほど申しました、うちの主人は局長会の役員をしているので、一人も全逓から脱退させないではちょっと問題がある、うちの人を助けると思って脱退してくれ、こういうようなことを言って脱退届けを置いていく、さらに、また、同じ二十六日には、さらにもう一人の組合員のところにも参りまして、同様のことを言って脱退届けを置いていって、二十八日には脱退届けを取りに来た、こういうことがはっきりしているわけでございます。こういうことが各特定局で行なわれているわけです。ですから、どうも私は、全然そういう事実はありませんということの報告ではどうしても納得ができない。全然局長会がそういうことをやっておらないということであれば、このように各局で問題が起きるというようなことは私はないと思うんです。一、二の局では、それは局長さんによっては問題の起こるところもあるかもしれませんが、全局にわたって同じような手口といえば語弊がありますが、同じような手段で行なわれておるということは、やはり一カ所で共謀と申しますか、一カ所で相はかって、そうして責任を持たせてやっておるからこういうふうに全局にわたっての行動が出てくるのではないか、こういうふうに思うんですがね。ですから、そういう点をどういう調査をしてそういう事実はございませんというこの報告になったのか。少し私どもの調査に対する疑いに対して、何か形式的な報告ではないのか。あのときも藤田先生からいろいろ実例をあげられまして、そしてこういう問題について実際にあるのかどうか、調査をして報告してくれ、こういうことだったんですから、もっとわれわれがほんとうに納得するような形での報告がなされてしかるべきじゃなかったか、こういうふうに思います。郵政局を通じて、郵政局がそれぞれの係官を派遣し、あるいは特定局長を呼んで調査をした、こういうことでございますから、そこから出てくる答えはもう明らかでございまして、もっと何か違った調査のしかたですね、たとえばこれは郵政本省が直接現地に行って調査をするなり、あるいは一番私がいいと思いますのは、本省の方と全逓の役員の方と現地に行って、そうして事実確認をして、もしお互いに悪い面があればこれを直していくということが、私は、単に全逓の組織を守るとか、大きく強くするとかいうことだけでなしに、郵政事業全体の推進のためにこれはどれだけ大きな力になるかわからない、こういうように思うので、調査のしかたについてもう少し検討してみる必要はないかどうか、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  53. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 調査のしかたがいかにも形式的であって、事実あるはずのが事実としてあがってきておらぬじじゃないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、不当労働行為に類するようなことは、こうもやってはいかぬということを管理者に絶えず申しておるわけでございますし、したがって、管理者が組織としまして責任を持ってそういうことをやるということは信じられないのでございます。  なお、先生御指摘のように、組合側と省側とが共同調査の形をとったらという御提案もございますが、いままでそういうことをやったこともございませんし、また、所管の課なり係もあることでございますから、私どもその向きを督励いたしまして十分な調査をさせたつもりでございます。したがって、そういう調査の結果、それがなお信用ならぬという先生の御指摘を受けましても、私のほうといたしましては、その筋を通じての調査以外に信用の方法はないわけでございまして、お答えになったかどうか存じませんが、御了承を願いたいと思います。
  54. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 くどいようでございますが、一番最初に申し上げましたように、石丸郵政局長自身が長野郵政局と張り合って、そして全逓の切りくずしの先頭に立っておる、そういう郵政局なわけですから、そういう郵政局に、こういうことがあったんではないか、あったかどうかということを聞いても、決してそうでございますという返事はあるはずはない。ですから、もっと違った調査のしかたをしなければ真実はつかめないのではないかというふうに私は思うのです。労使と申しますか、本省と全逓の本部が調査に行くということについては、これは国労、国鉄、公社ではそういう例があるのです。やはり国会で問題になりまして、国鉄の本社と国労の本部の役員が現地に出向きまして、そしてその事実を正確に把握をして労使の円満な解決をはかった、こういうことがございますので、私どもとしては、できれば郵政省としてもそういうことを考えていただいて、一日も早くこういう事態が解消されるようにお願いをしたいわけです。先般、社会党の藤田先生、野上先生がこの能登地区等に参りまして、問題等を調査をしてまいったのでございますが、それ以来、やはり国会でも二度ほど取り上げましたので、おそらく郵政局におきましても、ある程度局長会に対しまして、慎重にしろというような指示を私は出したのではないかと思うのですが、現地の報告によりますと、非常に会うことをきらうとか、何かいままでのように局長が組合の役員とすなおに話をするということがなくなってきたと、こういう報告を受けております。それからというものは、それだけやり方と申しますか、行動が、いままでは積極的に表面的にやっておったのが、今度はうちにこもって何か非常にさらに暗い形でやられておるのではないか、こういうふうにも思います。そういうことは、やはり郵政事業を遂行していく上に非常にマイナスではないか、わずか三人か五人、あるいは多くても十人というような小さい特定局の中にあって、局長と一、二の局員の間に、何か心と心の間のつながりがなくて、お互いに疑心暗鬼、お互いに不信感を持って仕事をするということがいかに仕事の上にマイナスになるかということは、私も過去にそういう仕事をやってきた経験からしても、十分うかがえるわけでございまして、この点、そういう職場の雰囲気というものを一日も早く直すためにも、早急に正確な調査をして、そして、お互いに相手の立場を認め合って、そして、そのいわゆる正常な形での労使関係というものを打ち立てる、こういう方向をぜひとってもらいたいと思うのですが、この報告はひとつ白紙に返して、そして、さらに私どもに報告をしていただきたい、こう思うのでございますが、いかがですか。
  55. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 先生仰せのとおり、私どものような、人を主体とします仕事におきましては、省と組合の、つまり労使関係の相互信頼という依存関係というものがいかに大事であるかにつきましては、私も先生と全く意見を同じくするものでございます。省といたしましても、従来ともそういう指導をいたしまして、お互いがお互いの組織を誹謗したり、あるいは、いわんや行動的にこれを切りくずしたりというようなことにつきましては、しないということにいたしておるわけでございますが、今後もそういう方針にのっとりまして、さらに明かるい労使関係というものの建設に尽くしていきたいと思います。  なお、白紙に返してもう一ぺん調査をしろというお話でございますが、私どもといたしましては、さらに調査を命じはいたしますけれども、いままであがってきておりますところのいろいろな調査の結果につきましては、いままで報告したとおりでございますので、その点も御了承いただきまして、なお追加すべき報告事項がございましたらば、もちろん報告いたそうと存じます。
  56. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、調査の方法等について先ほど申し上げましたのでございますが、この際、郵政省は、ひとつ全逓本部とこの地区における不当労働行為の調査の問題について話し合ってやっていく、こういう気持ちと申しますか、そういうことをひとつ考えていただきたいと思うのですが、そういう点いかがですか。
  57. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) このような問題につきまして、先ほども申し上げましたが、組合側と省側が共同の調査をする、あるいは調査のしかたにつきまして話し合いをするというふうな例は、先ほど国鉄にあるとおっしゃいましたが、私どもの省におきましては例がございませんので、ただいまのところ、さような方法によらないで、むしろ、なお報告を漏らしたような事項、あるいは調査が未熟であったというふうな事項につきまして徹底をさせました上で御報告をいたしたいと存じます。
  58. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうことですと、私は、また組合は組合で同じような資料と申しますか、事実の確認をしてくる、省側は省側で、あまり先ほどの報告と変わらないような報告が上がってくるということで、いつまでたってもこの問題の解決にはならないと思うのです。しかも、これは自民党の先生方おられますけれども、来年は参議院選挙を控えておりますね。そうしますと、全特定という局長会は、私もずいぶん耳にしておるのですけれども、自民党を支持する大きな組織になっておるということは聞いておるのです。しかも、全特定というのは、これはまた全労系なんですね。そうしますと、来年の参議院選挙を目ざしてお互いに組織の拡大をはかるというような動きが、この全逓という労働運動の組織を切りくずすという面から一歩進んで、選挙のために今度は組織の拡大だと、こういうことも考えられないではないですよ。そうすると、いまのままでこれはいつまでもほうっておきますと、ますますこういう問題が出てくるような気がしてならないので、やはり私は、できるだけ早く正確な事実をつかんでもらいたい。正確な事実をつかむには、どうしても一方的な調査ではなくして、これは決して組合がどうこうしたからといって、組合が省に対してその不当を追及するというだけではなくして、やはり組合は組合として、正常な組合運動の姿に労使の間をつくっていく、こういう立場でのことを考えているわけでございますから、ですから、両者が行って話し合ったほうが現地での解決というのができますし、私は一番いいのではないか、こういうふうに思うのですよ。ですから、ひとつ郵政省ではまだやっておらないので、今回は郵政本省独自の考えで調査をしますというふうなことではなくして、ひとつもう一回検討していただいて、そうしてできるだけ申し上げたような形での調査団というものをつくっていただいたほうがいいのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  59. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 全特定が全労系の組合であり、全逓が総評系の組合でありまして、次の選挙の際にそれぞれの推薦議員の方々を推されるというような懸念があるというお話でございましたが、先生御承知のように、私どもの従業員は国家公務員でございまして、したがって、国家公務員法の定めるところによりまして、政治的行為の実施は当然禁止されておるのでございます。したがって、選挙運動等につきましてはもちろんできないわけでございまして、さような懸念は今後もございませんし、従来とも、そういう場合がございましたら、法の命ずるところに従いましてそれぞれ処置しておるところでございます。  なお、はなはだ越権的なことを申しますが、先生がおっしゃっておりますような共同調査という形よりも、現在、全逓におきましては、公共企業体等労働委員会に不当労働行為の申し立てをいたしておるわけでございますし、そこにおきましては、やがて事実審理というような過程もあろうかと思いますので、むしろ公正な第三者機関の事実審理におまかせしたほうがよろしいのではないかと、さように考える次第でございます。
  60. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まあそれはお互いの法律に従って第三者の判定を待つということも一つの方法ではあろうかと思いますが、しかし、そういう形式ばったと申しますか、何か格式ばった解決よりも、私は、お互いに話し合って、そしてそういうものをなくしていくというほうが、かえってあとあとのためには非常にいいのじゃないかと、こういうふうに思います。もしそれが解決されれば、全逓としても、おそらくいまの公労委に対する提訴も取り下げるということもやぶさかではないと思いますので、そういう点は、ひとつあまり格式ばらずに全逓本部と話し合ってみたらどうかと、こういうふうに私は思うのです。ひとつそういった点を検討していただいて、私どもとしては、いまここでどうしようということも言えませんが、私どもは、何とかして近代的な労使関係の確立をはかって、そしてお互いに立場を認めつつ労働者の地位の向上なり経済的な向上をはかっていこうという、そういうことを念願しておるわけですから、使用者である本省としては、私どもより以上に、そういう点は直接の仕事を扱っておる担当者として当然なことでございますから、ぜひ私たちが要望しておるような形で解決をはかられるようお願いをしたいと思うのです。
  61. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 先生のただいまおっしゃいました点につきましては、十分検討さしていただきたいと存じます。
  62. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それじゃ速記を始めて。
  64. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 郵政省の特定局長会なり、あるいは特定局長に対する労務管理の指導ですね、こういう点はどういうふうになっておりますか。一般の普通局と同じようにやっておられるのか、特別にしておるのか、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
  65. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 数年前から管理者に対しまして管理者訓練、なかんづく、正常な労使関係はいかにあるべきかという問題につきましての労務管理を訓練いたしておる次第でございます。これは毎年、ある年は三千名、ことしは四千名ぐらいということで、相当な管理者を入れておるわけでございますが、中に特定局長のいわゆる交渉代表局長と申しますか、そういった絶えず組合のほうと団体交渉をいたしますような責任者の局長を主にいたしまして、いろいろ交渉のルールとか、あるいは先ほど申しました、あるべき労使関係の姿とかというものにつきまして訓練をいたしておる次第でございます。したがって、数千名の中に特定局長と普通局の幹部と分けて、何か特定局長だけに特別に訓練を施しておるというような事実はございません。同一にやっておるわけでございます。
  66. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 最近は、特定局長の任用にあたって、いままでのような世襲的な任用というものはだんだんなくなってきているかもしれませんが、しかし、大部分の局長さんは、やはり町の素封家とか資産家とか、いわゆる非常にそういう方が多いと思うのです。そうした方々の近代的な労務管理に対する考え方というのは、私は、やはりどちらかというと、まだまだできていないんではないかというふうに思うのです、これは失礼かもしれませんけれども。しかも、職場の従業員の労働者の立場というのは、どちらかというと、先ほどちょっと申し上げましたように、血縁関係の方が多いとか、あるいは正式に公務員試験を受けて入ったという人よりも、手づるで入る人が多いとか、そういう方が多い職場もあるのではないか。そうしますと、勢い、一方では全逓の近代的な考え方に対する労働運動の教育が行なわれる、一方では前近代的な考え方による労働者に対する対策がとられる、こういうことになって、私は、非常にこの特定局問題が過去何年間、全逓労働組合が特定局制度の問題について運動方針で掲げてから、これはもう組合発足以来の運動になっていると思うのですね。で、これがいまだなかなか解決もされず、しかも、普通局にはあまり見られないこういう組織に対する不当な介入が特定局のほうにきておるということで、やはりそこに何らかそういう問題が起きる要素があるのではないかと、こういうように私は思うのです。したがって、同一に管理者教育をしておると、まあこういうことでございますが、私は、個人的な考え方としては、やはりもっとこの普通局の管理者以上に、こういう特定局の管理者に対してはやる必要があるのではないかというふうに考えるわけです。これはひとつ個人的な意見ですから、本省としても十分こういう点今後検討していただきたいと思うのですが、そこで、先ほどの労使による調査によって、現地でなり、あるいは全逓本部との間で円満に話し合いをつけていただけるならば、私どもはこれ以上郵政当局に対して追及をしていくということは差し控えたいと思うのですが、もしそれができない、いままでどおり郵政省独自の調査によってやっていくのだということになりますると、これはやはりもう一回この報告書をこの国会に提出をしてもらいたいと、こういうふうに思うのですが、国会もあと会期が二週間ほどしかございませんので、非常に切迫しているのですが、もしそういう場合には、できるだけこの会期中に報告書をいただきたいと、思うのですけれども、いつごろそういう報告をいただけますか、お伺いします。
  67. 曾山克巳

    政府委員(曾山克巳君) 先生御指摘の、先生の御意見とおっしゃいましたが、それにつきまして若干述べさしていただきたいと思います。  労働条件、つまり、特に全逓、全特定を問わず、一般従業員の労働条件の確保につきまして、特定局分野におきまして必ずしも十分でない点があったことは事実でございます。そういった点にかんがみまして、私ども、積極的に組合員の従業員の労働条件確保のための、いわゆる勤務条件確保のための講習会と申しますか、服務講習会という名前で呼んでおりますが、特定局長だけを集めまして、再三再四訓練を続けてまいっております。そういった意味では、むしろ先生御指摘のように、普通局の管理者よりも、より手厚い訓練をしているということは申せるかと思います。しかし、これは労務管理という立場からよりも、もっとその基本をなしますところの組合員のいわば勤務条件確保という点からでございますから、先ほど申しましたところの労務管理者訓練というものは、若干意味合いが違うわけでございます。  なお、第二点の、もう一ぺん報告をとるとすればいつごろかということでございますが、私ども、現地の管理者と十分相談いたしまして、さらに的確な、より詳細な調査をして、なお従来よりも補足する点があれば至急出せという指示をいたしたいと思いますが、その日取りにつきましては、いまいつまでとは申し上げられませんが、少なくとも、会期の終末までのできるだけ早い機会に出すことをお約束いたします。
  68. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 他に御発言もなければ、本件に関する調査は、本日のところ、この程度にとどめておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十九分散会