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1964-06-02 第46回国会 参議院 社会労働委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二日(火曜日)    午前十時四十一分開会    ——————————    委員の異動  五月二十九日     辞任         補欠選任      亀井  光君     木島 義夫君  六月一日     辞任         補欠選任      木島 義夫君     亀井  光君    ——————————  出席者は左のとおり。    委員長         鈴木  強君    理 事                亀井  光君                高野 一夫君                柳岡 秋夫君    委 員                加藤 武徳君                紅露 みつ君                佐藤 芳男君                徳永 正利君                丸茂 重貞君                横山 フク君                杉山善太郎君                藤原 道子君                小平 芳平君                林   塩君   衆議院議員       発  議  者  吉田 賢一君   国務大臣       厚 生 大 臣  小林 武治君   政府委員       厚生大臣官房長  梅本 純正君       厚生省医務局長  尾崎 嘉篤君       厚生省薬務局長  熊崎 正夫君       厚生省児童局長  黒木 利克君   事務局側       常任委員会専門       員        増本 甲吉君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○母子福祉法案内閣提出衆議院送  付) ○母性保健及び母子世帯福祉に関  する法律案衆議院送付予備審査) ○母性福祉保障法案衆議院送付、予  備審査) ○社会保障制度に関する調査(輸血問  題に関する件)    ——————————
  2. 鈴木強

    委員長鈴木強君) ただいまより開会いたします。  理事補欠互選の件を議題といたします。  亀井光君の委員辞任に伴い、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠互選を行ないます。互選の方法は、投票によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 御異議ないと認めます。それでは、理事亀井光君を指名いたします。    ——————————
  4. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 母子福祉法案母性保健及び母子世帯福祉に関する法律案及び母性福祉保障法案一括議題といたします。  まず、母性福祉保障法案について発議者衆議院議員吉田賢一君から提案理由の説明を聴取いたします。
  5. 吉田賢一

    衆議院議員吉田賢一君) ただいま議題となりました母性福祉保障法案についてその提案理由を御説明申し上げます。  わが国憲法には、男女両性の本質的平等をうたい、労働基準法には同一賃金を規定する等、男女は法のもとに平等でなければならぬことを明記しています。しかし、女性は肉体的にも精神的にも男性と異なり、女性であるがゆえに、特に保護されなければならない面を多く有しています。たとえば、出産及び乳幼児保護と、これに伴う子女教育家事担当等女性に課せられた重大な使命であります。このように重要な使命をになわねばならない女性には、特に行き届いた配慮を払わねばならないことは、むしろ当然であると言わねばなりません。しかるに、現実は、労働基準法等女性保護規定されているにもかかわらず、なお不十分であります。こうした現行労働基準法の欠陥を是正するとともに、雇用されている婦人だけでなく、農村婦人一般家庭の主婦など、すべての婦人対象とした抜本的な母性保障を行なうことが必要であると考えて、この法案を提出いたしました次第です。  以下、この法律案概要について御説明申し上げます。  まず、第一に、母性とは、十五歳以上すべての女性といたしたことであります。労働基準法第五十六条において、満十五歳以下の児童を、労働者として使用してはいけないと規定が示していますように、この法案においても、一応、個人差はありますが、十五歳をもって、女性母性としての使命を果たすに達した年齢としてこのように定義いたした次第であります。  第二に、政府に、すみやかにこの施策を講ずるため、関係法案整備義務を課するとともに、国及び地方公共団体は、この施策を講ずるにつき、相協力するとともに、行政組織整備及び行政運営の改善の責務を課したことであります。  第三に、政府に、すべての女性人たるに値する生活を営み、妊婦、分べん乳幼児保育子女教育生理家事担当等女性に固有なる母性について、これを保障する義務を課したことであります。すなわち、国は次の各項目につき施策を講じねばならない義務を課すことにいたしました。  (イ) 国は、生理休暇有給休暇として与えられるよう必要な施策を講じること。  (ロ) 国は、妊産婦に対して無料の保健指導及び健康診査実施のため、必要な施策を講じること。  (ハ) 国は、医師の診断により、栄養補給を必要とする妊産婦に対しては、栄養補給のため、必要な施策を講ずること。  (ニ) 国は、妊産婦である労働者に対し、分べんの日の前後を通じて十四週間は有給休暇が与えられるよう必要な施策を講ずること等であります  第四に、政府に、母性福祉向上のため、保育施設を充実する義務を課したことであります。最近、婦人職場への進出は目ざましいものがあり、これによって婦人社会に対する関心が深まるのは喜ばなければなりません。しかし、それは、一方において両親不在の「かぎっ子」と呼ばれる児童の増加を招き、一つ社会問題となっています。婦人が安心して職場で働くことができるように、また、児童がすこやかに成長するためにも、保育所の充実は緊急の問題であります。この目的を遂行するため、政府にすみやかに必要な施策を講ずる義務を課することにしたことであります。  第五に、政府に、家庭相談所法律相談所、いこいの家等母性福祉施設整備拡充されるよう必要な施策を講ずる義務を課したことであります。  以上がこの法律案の主要な内容でありますが、その他、労働婦人に対する一般健康管理及び母性福祉のため租税負担の軽減をはかること等、政府は、各行政官庁間、また、地方公共団体と連絡し、協力し、これを実施することを責務として遂行しなければならないことにいたしました。  以上が母性福祉保障法案提案するに至った理由及びその概要でありますが、本法律案成立、施行されますならば、わが国における母性福祉向上にきわめて大であると信ずる次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。以上が、母性福祉保障法案提案理由であります。
  6. 鈴木強

    委員長鈴木強君) これより母子福祉法案外二件に対する質疑に入ります。質疑のある方は、どうぞ順次御発言願います。
  7. 藤原道子

    藤原道子君 私は、ただいま御提案がありました母子福祉法案、さらに、母性保健及び母子世帯福祉に関する法律案、そして、ただいまの母性福祉保障法案、この三件について御質問を申し上げたいと思います。  まず、第一にお伺いいたしたいことは、母子福祉原理、この点についてお伺いしたいと思います。
  8. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 御承知のように、昭和二十七年に母子福祉資金貸付等に関する法律議員立法として成立をいたしておりますが、その後の事情等の変化にかんがみまして、この際、新しく母子福祉法案を立案をすることにいたしたのでありますが、この法案におきまして、ただいま御質問母子福祉の基本的な考え方というものを国民の前に明らかにする必要があるという意味で、母子福祉原理という条章を置いたのでございます。これは、従来、母子家庭に対する救済措置と申しますか、母子家庭が持っているハンディキャップを国なり公共団体責任において埋めて母子更生をはかるというような意味であったのでありますが、今回の法案における母子福祉原理は、福祉国家理念に基づきまして、つまり憲法規定に基づきまして、母子福祉を国なり公共団体責任保障するというような前向きの姿勢で原理規定いたしたのでありまして、従来の救済的な原理でなしに、福祉国家理念に基づく原理だというふうに考えております。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 この政府提案母子福祉法の中で、「この法律において「母子福祉団体」とは、配偶者のない女子であって民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条の規定により現に児童を扶養しているもの」ということが述べられております。私は、いろいろこの法律を読んだのでございますが、よく理解がつかない。私どもは、母子ということが母子家庭に限られるということに理解がいかない。母性はひとしく生命の泉として尊重されなければならない。したがって、また、これに対しましては、いろいろ国施策をもって保護していかなきゃならないということは論をまたないのでございますのに、ただここに母子世帯のみを母子と呼ぶということに私は理解がいかないわけです。しかも、読んでみますと、明治二十九年の法律規定されておるわけです。非常に狭いと思うのでございます。社会一般は、母子といえば、すべての母と子供が守られるというふうに理解しておる。それをただ母子未亡人世帯とのみ限定されたというところに非常に幅が狭いと感ずるのですが、それについてどういうふうにお考えですか。
  10. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 御説のように、母子世帯とか、あるいは母子福祉という場合には、従来、配偶者のない女子子女を養育しているもの、あるいはその世帯をさしておるのでありまして、母子保健母子衛生という場合には、未亡人のみならず、一般母性も広く包含をしておるわけでありますが、そこで、従来の母子福祉資金貸付等に関する法律は、先ほど申しましたように、配偶者のない女子と、それが扶養しておる子女一つ母子世帯と見まして、その更生をはかるための立法措置でありましたが、今回の母子福祉法案も従来の貸付法を継承しておるのでありまして、未亡人母子だけに限定をしておるのであります。なぜ一般母子をも対象にしなかったかと申しますと、従来、一般母子につきましては、保健衛生施策におきましては、母子家庭のみならず、一般母子をも対象にいたしておりまして、これは最近厚生大臣から中央児童福祉審議会に、母子福祉施策総合化体系化について諮問をいたしましたが、この答申をまちまして母子福祉関係の単独立法というものを考慮したいと考えておるのでありますが、その他の一般母子といわゆる未亡人母子に対しましては、従来の行政も分かれておりまするし、かつ、一般母子対象にいたしますというと、未亡人母子に対する国の施策一般母子対策の中に包含されますというと広く浅くならざるを得ない。やはり未亡人家庭というものが特殊な状態にありますために、特に手厚くその福祉措置をはからなくちゃならないというような意図から、福祉に関しましては未亡人母子一般母子とを分けているような次第でございまして、なお、母子衛生までこの法案の中に入れるといたしますと、一方は配偶者があるのでありますから、妊娠とかあるいは出産とか、そういう可能性があるわけでありますが、未亡人につきましては、配偶者がないために、そういうことが考えられません。したがいまして、衛生の面につきましては、母子保健というような従来のやり方を踏襲するといたしましても、母子福祉関係につきましては、いろいろ立法根拠等にいたしましても、特別に未亡人母子世帯福祉をはかるという意味で初めて手厚い措置ができるのでありまして、一般母子に伸ばしますと、どうも内容が薄くならざるを得ないというような、立法上の、あるいは行政上の対策から一般母子をこの母子福祉法対象にしなかったのでございます。
  11. 藤原道子

    藤原道子君 私は、黒木さんのおことばとも思えない。一般を入れると広く浅くなる、これはおかしいと思う。母子世帯においては、まあ夫婦そろっておりましてもなかなか暮らしにくいいまの世の中に、母子世帯は、まあ片羽をもがれた片羽鳥と同じなんです。その残された片方の羽に愛児を抱いて生き抜くことがいかに困難か、よく承知いたしております。したがって、母子世帯を手厚く保護することに絶対に私は反対しているわけじゃない。当然まだ足りないと思う。だから、さらに手厚くしろということを今後の御質問で申し上げるわけでございますけれども、この母子理念ですね、母子というところのそれが私には理解ができない。もしあなたのおっしゃるようなことでございましたならば、母子家庭福祉法ということなら理解ができる、母子家庭福祉ならばもっと手厚く手厚くやってよろしい。けれども、いままで母子福祉資金貸付法というのがあったのをそっくり持ってきて、それをここに母子福祉法とした、そのやり方が私はおかしいと思う。私は、母子福祉法としないで、母子家庭福祉法ということならば、私はそれでそのものずばりで納得いく。ただ、母子考え方が非常に狭義ではないか、こういうふうに私は考える。さらに、母子保健とか衛生とかいうようなことを入れると浅くなる、そういう考えだからいまの社会における相次ぐ悲劇が起こるんじゃないでしょうか。たとえて言えば、いまあなたが例にあげられましたように、妊娠する場合もあり得る、それは当然です。妊娠しなかったら人類は絶えてしまう、命の泉です。けれども、その母性保護されていないためにどれだけの悲劇が起きているか、いずれまあ当委員会の問題になりますけれども、脳性小児麻痺等の親子がどんなに苦労しているかということは、局長は御案内だと思う。しかも、その出生の原因が胎生期に多くある、あるいは出産及びその周辺にあるということはもう明らかであって、ところが、いまの母性はどういう状態に放置されているかというと、健康管理も野放しでございます。諸外国へ参りますと、三十になりますと、女性の検診が行なわれる。ガンの早期発見だとか、あるいは結核の早期発見だとか、あるいは妊娠した人には特別の保護が与えられる、妊娠手当も与えられる、あるいは栄養も与えられる、出産施設で行なわれるとか、休養が十分されておる、こういうことはすでに御承知のとおりなんです。ですから、私たち、もし母子福祉法と銘打つならば、一般母子をも入れてそういう点までやってほしい、そういうことが私の願いなんです。ですから、これは母子家庭福祉法というほうが私は妥当であると考えますが、どういうふうにお考えですか。
  12. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 従来、母子福祉とか、あるいは母子家庭とかいう場合には、行政的には、未亡人とその養育しておる子女家庭福祉のことをいってきたわけでございまして、母子福祉資金貸付に関する法律もそういうような内面規定をいたしておるわけであります。特に私たち今回母子福祉法案政府提案にいたします場合に、いろいろ問題がございまして、なかなか各省理解が得られなかったのでありますが、結局は未亡人母子世帯というものが低所得に属しておる人たちが多い。また、配偶者がないために、いろいろ社会的にも精神的にもハンディキャップがある。そういうような状態にあるという特殊性に目をつけまして、国なり地方公共団体責任において、そして、また、母子世帯自立においてその福祉をはかっていくという必要があるというような明文でようやくその法案各省協力を得られたような次第でございまして、さらにそれを広げて、先生のおっしゃるように、一般母子、これは日本の総人口のうちで、子供を持った母親というのが六一%もあるのですから、国民の非常に多くの部分を対象にする立法になりますというと、個々世帯なり、個々母子につきましての施策というものはやはり手薄くなる。かつ、また、いろいろ立法根拠についても各省協力が必ずしも得られないというような事情がありましたのと、もう一つは、未亡人団体というものから、従来の貸付法母子福祉総合法的なものにしてほしいというような要望がございまして、その要望を取り入れる、そして母子家庭福祉をはかっていく、また、激励していく、自立の助長をはかっていくというような趣旨から今回の立法考えたわけでございまして、先生のおっしゃるように、一般母子も含めて母子福祉法をつくることも確かに一案かと思いますけれども、現在のところでは、そういうことではなかなか立法理由なり、あるいは各省協力が得られそうになかったというような事情でございます。
  13. 藤原道子

    藤原道子君 それでは局長にお伺いしますが、あなたのお考えとしては、この法案母子家庭福祉法としたほうが妥当なりと私は考えますが、そのお考えをまず聞かしてほしいと思います。
  14. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 確かに一つのお考えではあると思いますが、従来、母子福祉資金貸付等に関する法律というのがございまして、母子福祉ということばがすでに十数年使われておりまして、国民にもだいぶ周知いたしておりますから、従来の母子福祉の概念をそのまま、あるいはことばをそのままこの法案に出したのであります。また、未亡人団体の御要望も、母子福祉法案、あるいは母子福祉総合法案というのでございますから、そういう団体の御要望を取り入れてこういうことにいたしたのでありまして、必ずしも母子家庭福祉法案とする必要はないかと思います。
  15. 藤原道子

    藤原道子君 局長は、しばしば従来従来ということばを使われる。行政的にはそういうことばを使ってきたとおっしゃるんですけれども、私は、時代が進んでいるんですから、古い習慣に何も縛られることはない。私は、母性全般の問題をもっと真剣に考えると同時に、未亡人団体から母子総合福祉法ですか、にしてほしいという御要望があったとするならば、それにしても内容が貧弱だ。総合的なものにするには広く薄くなるから、だからこれにしたんだと、それならそれを受けて立ちましょう。ところが、それにしてはあまりにも内容が貧弱じゃないかと私は不満を持っているわけです。私が最初に申し上げましたように、母子世帯保護し、これを育成し、激励してまいりますことはどれだけやってもまだ足らないと思う。けれども、そういう意味考えても内容が貧弱である。特に母子福祉というように銘を打つ以上は、一般母性をも含むべきであって、結局妊産婦死亡率にしても、日本政治が非常におくれていると思うのです。それは戦前の昭和十五年には、日本妊産婦死亡率は、先進国に比べても、むしろ成績がよかったわけですね、二百三十九人くらい十万単位で死んでおる。ところが、外国では四百人くらい死んでおる。それがいまでは二けたに下がっているのですね。二けたも半数以下、四十何人、非常に成績のいいところで三十何人、これだけ減っているけれども、日本はいまだに百三十人近く死んでおります。これは母性というものに対して政治上の手厚い考え方が行き渡っていないからで、諸外国では、戦後競って母性保護母子福祉ということが大きく取り上げられてきておりますことは、あなたのお書きになった本にもあらわれていると思うのです。でございますから、大臣にお尋ねしておきますが、今後ほんとうに命の泉である母性全体の福祉のための御配慮を特に私は要求いたしておきます。  そこで、未亡人団体の御要望でできた母子福祉法ということにいたしますと、私は内容が貧弱だということを申し上げたいわけでございますが、その第一といたしまして、私は、母子福祉資金貸付法からこれになったので、それを吸収した、全部吸収したと言っても過言でないように思うのです。そこで、その中で私が最初にお伺いしたいと思いますのは、今日社会的に非常に所得倍増を謳歌する反面、非常に生活費がかかるようにった。特に子供を持つ家庭が、子供入学のときにどれだけ費用がかかるか、泣く泣く進学できないというような例もたくさん耳にいたしております。ところが、これに対しまして、せめてあたたかい愛情があるならば、入学支度金、こういうものがこの貸し付けの中へ挿入されてもいいんじゃないか、こう思うのでございますが、これに対してはどうお考えになっておりますか。
  16. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 先生の御質問の問題は、衆議院大臣大蔵省主計局次長から答弁を申し上げまして、一応の解決をみたのでありますが、その内容は、来年の三月から入学支度金というものをこの母子福祉法の運用上認めるということであります。法律的には「(資金貸付け)」という第十条の規定がございますが、その第四号に「児童福祉のために必要な資金であって政令で定めるもの」ということで、政令資金の種類をきめる規定がございますが、この政令の中に入学支度金規定を入れるということについて大蔵省の了解を得ましたので、来年三月から実施をすることにいたしたいと思います。
  17. 藤原道子

    藤原道子君 これは大臣に御答弁願いたいと思うのですが、それは衆議院で御答弁になっておりますけれども、ここでさらに確認してよろしいわけですか。
  18. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいま児童局長が申したように、来年三月からその実現をいたすことに衆議院答弁をいたし、この際、そのことを確認いたしておきます。
  19. 藤原道子

    藤原道子君 そこまで踏み切っていただきましたことはたいへんけっこうだと思うのですが、さらに関連いたしまして、配偶者のない女子が扶養している児童の就学に必要な資産ですね、これは従来支給されているんですが、非常にここに問題が起こっているわけです。入学試験に失敗した場合、一年浪人して、次に受験して合格いたした。ところが、そのときには打ち切られて、もう支給されないんですね。せっかく入学試験に合格しながら学校へ行けないという悲劇が起こっているのでございますが、これは育英資金だってそうですものね、継続して資金の貸与がされてしかるべきだと考えますが、これに対してのお考えを伺いたい。
  20. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 確かに問題点一つだと思いますが、この法律によりますというと、母子世帯児童というのは、いわゆる児童福祉法における児童でございまして、児童成年になりますとこの法律対象にはならないのでございます。ただ、児童の段階で何らかのこの資金を受けまして継続をする場合には、成年になりましても一定の条件で継続をいたしますが、たまたま入学試験に落ちて、あらためて入学したときが児童でなかった、成年であったという場合には、残念ながらこの法律では対象になし得ないのでございます。
  21. 藤原道子

    藤原道子君 なっていないことは承知しているのですが、これをならせなければならないのです、私は。それも一回や二回や三回失敗するのはこのごろ常識になっているのですよ。ところが、一般の人は育英資金で借りられる。厚生省では、それは育英資金にいけというようなことを福祉事務所あたりではおっしゃるのですけれども、それではこの法律趣旨にはずれると思う。せっかくいままで貸付法社会子供と同じように勉学ができた、希望に燃えていたが、たまたま失敗した。しかし、その次には受験ができないんだということになれば、これがほかの問題に金を貸すというわけじゃないので、やはり勉強という点においては一貫している。それなのに打ち切られて上にいけないということは、せっかく母子福祉法に御熱心な当局としておかしいと思う。私は、これはぜひ入れてもらいたいと思いますが、何とか大臣なりませんか、首振らないで。
  22. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのたてまえとしては非常な無理があるように申しておりますが、しかし、お話のことも私は理屈が合うと、こう思っております。ひとつぜひ検討したいと思います。
  23. 藤原道子

    藤原道子君 前向きで御検討願いまして、これは未亡人の悲願でございますから、もうほんとうに祈る気持ちで大臣の御処置を願っておるわけでございますので、ぜひせっかく努力した子供の向学心に報いることのできまするようにお願いしたいと思います。社会党といたしましては、この母性保健及び母子世帯福祉に関する法律案という中でうたっておりますのは、これは無利子で貸し付けるべきなんです、ほんとうならば。母性を守ろうといたしますならば、貸し付け制度そのものに問題があるのですけれども、それはしばらくおくとして、無利子でやはり勉強が続けられるような費用を貸し付け与えるのが私は妥当だと思うのです。私のほうではすべてが無利子です。貸し付けも、この母子福祉資金貸付法案のときの審議でも、私たちは、母子世帯から利子を取るのはおかしい、すべてこれは無利子で貸与すべきものであるということを主張しておりました。ところが、先ほど来の局長答弁にいたしましては、この入学資金継続ですね、これに対して愛情が足りないように思いますので、ぜひともこの問題が実現できて、母子世帯子供が安心して教育を受けられるような御配慮を繰り返して私は要望いたします。大臣が幸い検討いたしますということでございましたから、その大臣の御理解に信頼して、私はいいほうに解釈して実現方を待っております。  それから、もう一つは、母子福祉法でありながら、いま非常に住宅が問題になっておりますときに、母子寮をこの法案の中に入れなかったことも納得のできない問題でございますが、どうしてこの中に入らなかったか。未亡人世帯のみが入る母子寮がございますから、その母子寮ならば、母子福祉法ができた以上は、これに吸収してしかるべきだと、こう考えますが、いかがですか。
  24. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 実は二つの理由がございまして、一つは技術的な理由でございますが、この母子福祉法案政府提案いたしましたときは、すでに予算の各目明細書が国会に提出をされておりました。母子寮は児童福祉法の項目の中で規定をしてあったのでございます。そこで、この母子福祉法関係の項目に改めればよかったのでありますが、予算の組みかえが当時は無理だったというような事情で、残念ながら予算技術的な操作のために母子寮の規定が入れられなかったというのが一つ理由であります。  それから、もう一つは、実は社会局で所管をいたしておりますいわゆる浮浪母子寮、これは保護施設でございますが、これをこの際この母子福祉法の中に取り入れる、これも社会局との話がついたのでございますが、しかし、取り入れるにいたしましても、従来の母子寮というようなものを従来のままで運営したがいいか、あるいは社会局の浮浪母子寮を取り入れた機会に、母子寮のもう一度再編成、あるいは母子住宅対策の再編成というようなことを考える必要があるのではないかというようなことで、研究もまだする必要があるというようなことで、今回は見送った次第でございますが、次回の改正には必ずこれを取り入れたいと考えております。
  25. 藤原道子

    藤原道子君 私は、急いだからという、こういうことは答弁にならないと思うのです。老人福祉法だって、あらゆるものを吸収したのですよ。母子福祉法内容があまりにも貧弱なんだから、これにせめて母子寮でも入れば少しはまだよかった、一番目を逃がしておいて、しかも、母子世帯がいま一番困っておりますのは住宅の問題です。それなのに、これと切り離して考えられない母子寮、しかも、その母子寮が子供成年に達したために追い立てられているおかあさん方がたくさんあるのです。ところが、一方には住宅が足りない、そういうときに、やはり一つ法律の中でこれを操作してまいりますことは当然過ぎるくらい当然だと私は思うのです。したがって、それがこの法案に入らなかったということは非常に遺憾でございますと同時に、母子寮の現状についてお聞かせ願いたい。
  26. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 先ほど技術的な理由を申し上げたわけでありますが、大臣から、母子住宅につきましては、老人の住宅も含めまして、建設省との今後の調整、あるいは、むしろ厚生省で積極的にやるべきじゃないかというような御意向がございまして、いろいろ検討を命ぜられております。そういうような事情で、母子住宅対策というものをもっと根本的に再検討する必要があるというので、今回はこの法案に入れないで、検討した上で、前向きの姿勢で次回の改正に間に合わしたいというようなことがおもなる理由であります。  それから、母子住宅の現況でございますが、先ほど申しましたように、これにはいまのところ二つの分類ができるのであります。一つは、いわゆる浮浪母子寮と称しまして、社会局で所管しておりまする保護施設であります。更生施設、あるいは宿所提供施設というような種類に相当するものでございますが、これは住所がなくて、いわゆる浮浪しておる母子を収容保護いたしまして、いわゆる何と申しますか、更生の基礎的な措置に当たる、更生のための準備をここでさせるというような意味施設でございます。それから、児童局で、児童福祉法で従来所管いたしておりました母子寮は、いわゆる母子住宅プラス児童福祉、あるいはいろいろ相談助言というような福祉的な措置をいささか加えまして運営をいたしておるのであります。それから、そこを出まして社会復帰ができる、更生できたという場合には、いわゆる公営住宅が低家賃で運営されておるわけでありますが、これは第二種公営住宅を建設省と相談しましてワクをもらいまして、社会復帰の可能な者はこの第二種公営住宅でこの住宅問題の解決に当たるというようなことであります。なお、このために、従来の母子福祉資金貸付等に関する法律では、転宅の資金——母子寮から第二種公営住宅等に入りますときの転宅資金等の貸し付けの制度もいまあるわけでございまして、こういうような三つの方法によって主として母子住宅対策を現在はやっておるのでございます。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 御答弁になったことは私はよく知っているのです。ですけれども、母子寮のいまの運営と、それから、いま何といいますか、成年に達した者が出ていくときには第二種住宅、ところが、それができておれば問題はないが、できていなくて、退所は迫まられるし、家はないし、それで住宅のことは、きょうは時間がございませんので、大事なことは次回に譲るわけでございますけれども、入る家がない、それで割り当てられた住宅だって三分の二くらいしか建っていないんでしょう。ここに数字も私持っておりますけれども、これがいまの実情じゃございませんか。それから、浮浪母子寮は論をまたないひどいものでございますけれども、児童福祉法によるところの母子寮も、かなりこのごろいたんだところが多いように思う。そういう場合に、住宅がないのに無理に出て行けというようなことで、私は、かけ込み相談をいま受けているわけなんです。そういう場合に一体どうしたらいいのか。母子寮の数が足りない、せっかく割り当てのワクを取った住宅もできない、それで未亡人の収入には限度がある、こういう場合には一体どうしろというんですか。
  28. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) 先ほども申しましたように、母子住宅につきましては、従来確かにマンネリズムのきらいがございましたから、大臣の御指示もありまして、本格的な対策をやりたいということで、いま検討をしておる最中でございますが、先ほどお話に出ました第二種公営住宅の、せっかく建設省と交渉しまして毎年千五百カ所の割り当てを受けておるのでありますが、なかなかこれが消化できない。確かに千カ所ぐらいしか消化できないのであります。それで建設省ともいろいろ相談をしまして、これが対策を検討いたしておるのでありますが、結局、母子世帯の働く職場に近い所でなくちゃならないという住宅の建設地の立地問題がございまして、そのための土地の入手難ということが最大の原因であるということがわかったのでございますが、これに対して、従来は、補助なり、その他融資の対象にいたしかねておりますので、今後は年金融資その他を活用いたしましてこういうような問題の解決に当たりたい。なお、社会局の所管しておりまする、いわゆる浮浪母子寮につきましては、厚生省児童局で明年度引き受けるからには、りっぱに整備をしてほしいというようなことで条件をつけまして、目下優先的に浮浪母子寮の建物の再建整備をやっておるのでありまして、これは明年度われわれが引き受けるまでにはほとんどが整備されるという予定でございます。それから、私のほうの所管しておりまする母子寮につきましても、その再建整備の予算措置が講ぜられておりますから、優先順位を高くいたしまして再建整備に当たっておるわけでございますが、いずれにしても、お話のように、確かに不足をしておるのであります。ただ、母子寮に入りたいという希望者も地区によっては非常に多いのでありますが、そういう場合には子供が、特に男子が成年に達した場合にはいろいろ問題もございますので、未成年子女を扶養しておる母子に交代をしてもらうというようなことは、これは母子寮という公の施設でありますから、その運営上やむを得ないことかと思いますが、しかし、そう無理をして追い出しておるわけではございませんで、実情に合うようにその運営を指導してまいりたいと思います。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 いつでも厚生省のほうの御答弁を議会で伺うときには、そういう無理はいたしておりません、実例に合うように指導いたしているとおっしゃる。しかし、末端にいきますと、それが必ずしも実行されていない。そのためにどれだけ多くの母子が泣いているかわからない。こういうことを御調査になったことはございませんか。それから、また、地方へ指示なさいますときの通達等でもございましたらお聞かせを願いたいと思います。
  30. 黒木利克

    政府委員黒木利克君) これはいろいろ調査をいたしておりまして、また本年度こういう家庭の調査をいたしますが、先生のような御意見があればこそ、例の転宅資金というようなものを新しく母子福祉の貸し付け資金の事業の内容に取り入れまして、母子寮から一般の住宅に転宅がしやすいような措置をいたしておるのでありまして、母子寮の増設についてもいろいろ努力をいたしておるのでありますが、やはり限度がありますからには、一般の未成年子女を持った母子に譲ってもらわなくちゃならないということは、これは避けられないのでございまして、ただ、こういうようなことをいいかげんにやりますというと、母子寮の、何といいますか、存在の意義といいますか、あるいはこれに対する国としての整備の予算措置等についてもいろいろ支障がございますから、そういう点はそういう御不便も忍んで、未成年子女を持った母子世帯のために譲っていただくというような指導をいたしておるのでございます。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 住宅問題については問題がたくさんございますので、さらに次回に譲りたいと思うのです。まあいろいろ検討しているとか、あるいは計画も立てているとかいうようなことにつきましても、次回で十分納得のいくような御説明を願いたい。  本日の母子福祉に対する質問はこの程度にして、次回に譲りたいと思います。
  32. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 他に御発言もなければ、本日は、以上三案に対する質疑はこの程度にとどめておきます。    ——————————
  33. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 社会保障制度に関する調査を議題といたします。質疑の通告がございますので、これを許します。藤原道子君。
  34. 藤原道子

    藤原道子君 私は、大臣にお伺いをいたしたいと思います。私は、このごろ毎日の新聞を見るたびに胸の痛む思いでおります。大臣もおそらくごらんになっていると思うのでございます。私は、かつて当委員会において、売血制度によって梅毒に感染した人が相次いで起こりましたときに、本委員会でこの輸血に対する対策、あるいはその方法、それから、病気になった場合の国の責任、こういうことについて御質問したことがございます。その当時、この問題は重要でございますので、こういうことが再び起こらないように努力をいたしますと、こういう御答弁でございました。ところが、最近非常に売血が問題になっておる。私いろいろ調査してみましたけれども、これで一体いいんだろうか、日本の厚生行政がはたしてこれでいいんだろうかというふうな、非常に怒りに似たものを持つものでございます。新聞の報ずるところのみならず、実際に血清肝炎にかかって泣いておる人を私は身近に持っておりますが、この供血制度と申しましょうか、輸血の制度に対して厚生省は一体どのような対策を立てておいでになるか、現状は一体どうなのかということについて、まず最初にお聞かせを願いたいと思います。
  35. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題は、私率直に申して、厚生省行政一つの弱点であると、こういうふうに思っております。従来のような、多くを売血にたよっておるという制度は適当でない。したがって、こういう行き方を改めて、そして、少しでも世間が安心できるような制度に移行させなければならぬ、こういうふうに原則的に考えております。現状とか、これらのいろいろのやり方等につきましては、局長から御説明申し上げますが、私どもとしては、これが大きな改革をしなきゃならぬ問題だと、こういうふうに考えております。
  36. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 現在の日本の血液の需要供給の状況が、藤原先生御指摘のように、その大部分がいわゆる固定化されました売血者からの血を求めるというふうな現状になっておりますることは御指摘のとおりでございます。これはやはり近代の医学技術の進歩に伴いまして、手術の際に輸血を実施するという件数が非常にふえてまいりました。年次別に申し上げますと、非常に目ざましい需要になってきておりまして、現在のところ、大体六十万リットル程度の需要というものが見られるわけでございます。ところが、その血液の需要に応ずる供給のほうがとてもまかないきれないというふうなことでもって、新聞紙上で取り上げられておりますように、特定の供血者層から血を求めるというふうな形にまでなってまいりまして、いわゆる特定層じゃない一般の、通常の方々から血液を、献血なり、あるいは預血という形で出していただくという運動が日赤を中心に行なわれておりますけれども、その伸びがなかなか円滑にまいっておりませんで、非常に供給量としては少ないパーセントを示しておるわけでございます。こういう現状につきまして、私どもとしては何とか是正をしたいということで、日赤の献血運動につきましては、毎年献血運動の促進計画を進めておりまするけれども、何と申しましても、予算的な面、あるいは人員の面で制約がございまして、予算上は昭和三十七年度から日本赤十字社に対しまして移動採血車の国庫補助金を認めるという形で推進してまいっておりますが、現在のところ、まだわずかに全国で二十二台、三十九年度の五台分を含めまして、二十二台の移動採血車の国庫補助金が出てまいった程度でございまして、まだまだこの方面の伸びは微々たるものでございます。したがいまして、私どもとしましては、一応現在ではこういう売血制度というものを何とか改めていきたいという考え方のもとに年次計画を立てて、行く行くは売血を大体五〇%、それから献血、預血を五〇%、フィフティー・フィフティーぐらいのところまではぜひ近い将来にその方向まで持っていくということで努力をいたす覚悟でございます。各国の状況におきましても、売血制度が全然行なわれておらないということではございませんで、アメリカあたりにおきましても、やはり売血という形は二、三〇%は残っておるわけでございますが、わが国におきましては、なるべく売血を押えて、献血、預血の方向に持っていくという形で今後積極的に努力をいたすつもりでございます。ただ、一挙に売血制度をこの際全部やめてしまうということは、片一方におきまして貴重な人命の問題にもつながることでございますので、一挙にこういう問題を解決するということはなかなかむずかしい問題でございますから、逐次そういう方向で努力をいたす覚悟でございます。
  37. 藤原道子

    藤原道子君 一昨年、国際輸血会議が日本で開かれたときに、日本ではまだ売血制度をとっておるのかと指摘されて、国際的に恥をかいたはずなんです。いまあなたは、アメリカでも相当残っておるとおっしゃますが、アメリカでは約一〇%売血は残っておるけれども、その売血に対する基準は非常にきびしいものがある。ドイツは終戦後は日本と同じように売血でございましたけれども、これは非常に弊害が多い。ドイツではこの病気に戻ってくるということばがあるそうでございますね。そういうことで非常な努力で切りかえまして、同じ敗戦国であるドイツでほとんど売血制度はないということを私は資料で承知いたしました。イギリスでも国の責任でやっております。あるいはフランス、オランダ、スイス、スエーデン、フィンランド、オーストラリア、ほとんど理想的に運営されておる。売血が残っておるのはアジア・アフリカ地区とかイタリアに残っておる。私、敗戦国であるドイツで、終戦後は日本と同じ売血であったのが、今日それがもう献血、供血に切りかえられて、売血はあとを断ったということを聞きますときに、政府が努力すればできるのだということを私は感じております。日本の場合は、アメリカだって残っておるというけれども、アメリカに残っておるのは一〇%、しかも、売血の基準がきびしくて、それは日本の比ではないのです。アメリカに残っておるから日本に残ってもいいというわけにはまいりません。  それから、この問題は長い懸案でございましたのに、ことしの三十九年度分の五台を含めて全国で二十二台、あまりに政府施策は貧弱だと思う。しかも、私はここに容易ならざることを新聞記事で承知いたしまして、まさかと思って聞きましたら、そのとおりなんです。売血制度は禁止すべきだと数年前から声を大きくして恐怖を訴えたかったのだけれども、厚生省が、何とかするから不安を起こさないようにしてもらいたい、赤十字は赤十字の道を静かに歩いてくれ、そういうようなことであったから一般に訴えなかったと村上さんが言っている。輸血も大事です。けれども、入院患者さんたちが、輸血して手術で病気はなおったけれども、血清肝炎のためにいつなおるかわからない、三カ月も五カ月も六カ月も入院しておる人があるじゃございませんか。にもかかわらず、不安を与えるからといって、PRして危険を訴えることは押えておって、そうして一方においては何らの措置も講ぜられていない。二口目にはいま予算がと、こう言うのですが、大臣、幾ら経済が高められても、結局は国民の健康が失われたら何にもならないじゃないですか。予算にしばられて大事な輸血の問題すら解決ができないということで相済むでございましょうか。大臣にお考えを聞きたいと思います。
  38. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはお話のとおり、厚生省も十分反省をして、いまのお話のようなことを推進することにつとめなければならぬ、かように考えます。
  39. 藤原道子

    藤原道子君 大臣は当時の大臣ではないから、あなたを責めると気の毒だと思うけれども、厚生行政ですからね、事は重大だと思うのです。しかも、売血の方法が問題なんです。売血の方法に問題がある。関東は、ほとんど東京が四〇何%みんな山谷その他の、何といいますか、人たちなんです。それから関西の一〇何%というのは、これは釜ケ崎です。あるいは関東というのは横浜と、いずれも底辺の人が血を売っている。ついには血が黄色い血になって、血球のないような血が売られている、これでいいんでしょうか。私は、これはほんとうにこのままでは済まされないと、心からの怒りを持っているのです。ところが、ある人は、日赤のほうでは肝硬変、血清肝炎ですか、これは一〇%から四、五%、三、四〇%。ところが、これが自衛隊の中央病院あたりでも六〇%ぐらい、自衛隊ですよ。それから伝研の先生のおっしゃるのも六〇%、百人輸血して六十人もこうした異変におかされておるということをいままでよく私は看過してきたと思う。食えないから血を売る。それで一日に、ひどいのになると、きょうもおれは八本目を抜いてきた、こういう人もいるのです。私は直接血を売っておる人に会ってまいりました。血を売る人にも会えば、こういう名前の出た人の御意見もそれぞれ聞いてみて身ぶるいがいたしました。その売血する場所でも、腕だけ出せばいいのですから、寝かされて窓から腕を出して、ここに許可になった判こを見せれば、そのまま顔色も何にも見ずにやっている、こういう制度でいいのでしょうか。こういう現状をごらんになったことがあるかどうか。  さらに、医務局長ありますね。こういう血清肝炎が相次いで起こっておるというような危険な血を輸出するのをきょうまでなぜ知っていて見過ごしておいでになったのですか。命を預かる責任者として許されないと思う。これらについてのお考えを伺いたい。
  40. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 藤原先生御指摘の点、血清肝炎の問題でございますけれども、血清肝炎の問題につきましては、実は確かに学者の方々の御意見の中にも、やはり現在の血液製剤といいますものが、非常に固定化しました売血者群から血液をとっておる、それによって血清肝炎がふえておるのではなかろうかという御意見を発表されておられる先生もおられますけれども、血清肝炎というものがどうして起こるのかという学問的な研究につきましては、これは世界各国を通じまして、やはりまだ全然未確定といいますか、わからないという形になっておるわけでございまして、やはり血液を供給する場合に、病原体保持者から採血するということでもって起こるだろうということはわかりますけれども、血清肝炎をそれじゃいかにして事前に防ぐかという検査方法その他につきましては、的確なものが現在のところ全然確立されてないわけでございます。これにつきましては、私どもとしては、的確な診断方法、あるいは予防対策、治療方法等のために、今後とも積極的に学界の先生方に協力を呼びかけまして、その内容の確立につとめる所存でございますけれども、しかし、一部のほんの少しのデーターではございますけれども、献血輸血によった場合と、それから売血制度によった場合の血液製剤を比べてみますと、確かに血清肝炎の発生率が売血によった血液製剤による場合のほうが多いという一部のデーターは出ております。しかし、原因につきましては、これはまだ究明ができておらないというふうな形でございます。それで、血清肝炎の発生状況につきましても、各病院によってそれぞれデーターは違っておりますけれども、私どもが学界の先生方に聞きましたところでは、大体一五%から二〇%くらいの血清肝炎の発生率はあるのではなかろうか、こういうふうなことを申しておる学者もおるわけでございます。  それで、問題は、血清肝炎を防止する方法というものがなかなか見つからないということでございますけれども、ただ、先生御指摘のように、現在採血をする場合に何ら消毒も何もなしに、非常な不潔な場所で行なわれるというふうな点は、これは私どもとしては絶対にそういうことのないように、各都道府県を督励をいたしまして、一般血液銀行の監視は積極的に強化するように指示いたしておるわけでございまして、私もその現場を薬務局長になりましてから見に参りましたけれども、ただ、こちらのほうでこういう場合には採血をしてはいけないという基準を十分に守るように厳重に指示いたしております。藤原先生よく御存じでございますが、厚生省令でもって採血をしない場合の基準というものがございまして、少なくとも月に一回以上は採血してはならないとか、あるいは比重が一・〇五二未満のものはだめだとか、あるいは妊娠をしておる場合はだめだとか、いろいろな基準がございます。この基準を厳重に守らせるように、各都道府県を通じて、監視の強化を訴えておるわけでございますけれども、ままその間、十分取り締まりが厳重でないために、あるいは先生御指摘のような場合がなきにしもあらずということも考えられますので、この点は厚生省令に基づきます基準を十分守るように今後とも努力をしてまいりますと同時に、やはり先生御指摘のように、現在の売血制度にたよる血液製剤の入手方法といいますものは、私ども決していいということを申し上げておるわけじゃございませんので、これをすみやかに今後改革していくということであらゆる知能をしぼりまして、今後とも改善の方向に進めるように努力してまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  41. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 血清肝炎が輸血をいたしました患者さんに起こるという問題は大きな問題としておりまして、決してわれわれも無関心でおるわけではございませんで、実は、私の親類でも一人ガンの手術をしましたあと、血清肝炎でなくなったというのがおりますので、私も十分この問題は関心を持っておる問題でございます。また、学者におきましても、いま薬務局長から話がありましたように、各国とも一生懸命になって研究をしておるところでございます。国立病院におきましても、国立病院で血清肝炎研究班というようなのをつくりまして研究もしたということがあるくらいでございまして、われわれもこの実体の把握とか対策にはいろいろ頭を悩ましておるところでございます。いま血清肝炎のパーセントでいろいろの話がございましたが、黄疸が出まして典型的な肝炎の症状をあらわしておりますものをつかまえますと一%とか二%とかというくらいの数字が出ますが、今度は少し黄疸の出ないものも肝炎を起こしてないかというふうに、積極的に血液を調べる、たとえばGOTとかGPTとかいうような方法で調べるとか、また肝臓に対してバイオプシーをやるということで調べますと三〇とか五〇にふえてくる。だから潜在的に肝炎を起こしておるものがかなり多いということでございます。したがって、いろいろ数字が学者によりまして違っておる状態でございます。国立病院の共同研究班の数字では、七千四百六十三例調べましたうち、血清肝炎を起こしたものは五・二プロというような状態でございます。非黄疸性のものを含めますと三〇%ないし五〇%にこれが上がってまいっております。なお、これにつきましては、先ほど薬務局長が申しておりますように、世界各国とも対策がなくて困っておるのでございまして、売血をあまりやってないというような先生から御指摘がありましたアメリカにおきまして、アメリカ陸軍のデータでございますが、これでも全血輸血でも一・五プロ、プール性の輸血と申しますから、これは保存血と思いますが、これでは十一プロ、こういうようなことでございます。したがいまして、売血でなくとも、献血輸血の制度におきましてもこの黄疸はいま防ぎ得ないのでございまして、これははなはだ残念なことで、いまから研究を大いにせねばならない問題でございます。なお、保存血、売血に多いじゃないかというデータが、いまのアメリカの陸軍のほうでも保存血のほうに多いというようなのは、どうも私、実は合点がいかないのでございますが、肝炎があるというようなことがわかっておる患者からとらないはずでございますし、そうしますと、同じチャンスで血清肝炎が起こるはずではないか、まあ考えれば、患者があまり正直に自分の前歴を、血清肝炎だということを言わぬとか、注射針の汚染によりまして、たびたび注射針を入れますので、それによって肝炎を起こす可能性があるということも考えられるかもしれません。それと、保存血を使いました場合に、たくさん血液を使っておるので、そういうような関係からその数字が多いんじゃないかということを考えまして、その点、私どものほうもいまいろいろ研究し、議論しているところでございますが、ちょっといま理由がわからないという状態でございます。いずれにいたしましても、この血清肝炎の問題は、われわれといたしまして何とか不安をなくさねば、これは患者さんにも申しわけないですが、医者のほうでも治療上に不安であり、こういうことは至急なくなるように努力をしていかなければならぬということで、努力しているわけでございます。
  42. 藤原道子

    藤原道子君 時間がないのでやめますが、ヨーロッパよりもアメリカのほうが多いんですよ。そのデータもすっかり私は持っております。けれども、きょうは時間がないそうでありますから、私は委員長にも御相談申し上げまして、この問題では参考人を呼びたいと思います。徹底的に私はこれをやらなければ、このままでは納得できません。ことに病気のある者からとらぬはずだと言うけれども、そんなことしちゃいませんよ、日本の場合はめちゃくゃですよ。一日二〇〇CCぐらいをというのに、牛乳びんに八本もとられてそのまま済んでいるのがいまの現状です。これは何といっても厚生省の怠慢だと思います。きょうは与党の関係もありますので、質問はこの次に譲りまして、お互に国民の健康を守るにはどしたらいいか。ヨーロッパ諸国は〇・〇三%ぐらい。ところが、かりにあなたの言う一〇%か一五%としても、百人やったら十五人はそういう病気になるんですよ。一五%ぐらいということで済ませる問題じゃないと思います。次回に譲りまして、きょうは答弁は要りません。次に採血の方法とか、いろいろの御質問をしたい。
  43. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題は非常に重要な問題でありまして、私も十分この問題について職責を果たしたとは思っておりません。したがいまして、ただいまいろいろ御注意もありますし、厚生省としては、いまの制度を厳重に励行させるだけでも大きな仕事でありますし、それから献血、預血等につきましては、非常に大きなPRの問題も必要でありますから、これらの問題につきましては、私としては、厚生省として至急にひとつ対策を立てさせて、そうしてこれをまた発表する。予算的にも法規的にもいろいろな問題があろうと思いますから、さような措置をさせたいと、かように考えております。
  44. 鈴木強

    委員長鈴木強君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日のところ、この程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会    ————・————