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1964-10-01 第46回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月一日(木曜日)    午前十時十三分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     藤田藤太郎君    理事            鹿島 俊雄君            亀井  光君            柳岡 秋夫君    委員            川野 三暁君            竹中 恒夫君            山本  杉君            阿具根 登君            杉山善太郎君            鈴木  強君            小平 芳平君            村尾 重雄君            林   塩君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生政務次官  徳永 正利君    厚生大臣官房会    計課長     戸沢 政方君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省医務局長 尾崎 嘉篤君    厚生省保険局長 小山進太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査  (昭和四十年度厚生省関係予算に関  する件)  (一般厚生行政に関する件)  (看護行政に関する件)   —————————————
  2. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ただいまから開会いたします。  社会保障制度に関する調査中、まず、昭和四十年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。政府説明を聴取いたします。戸沢会計課長
  3. 戸沢政方

    ○説明員(戸沢政方君) それでは、私から来年度の厚生省の予算要求の概要につきまして、簡単に御説明申し上げたいと思います。  お手元に、資料といたしまして、来年度予算要求のおもな事項をあげまして、簡単に説明を付しておりますので、これを読みながら御説明を加えてまいりたいと思います。  まず、要求総額でございますが、総額は五千百八十六億六千九百万円でございまして、前年度予算額が三千九百八十九億、約四千億でございましたので、これに対する増額は一千百九十六億でございまして、増加率はちょうど三〇%いっぱいになってございます。四十年度の予算要求につきましては、前年度予算の三割増し内にとどめるという新しい閣議了解がなされましたので、この三割増しの中にぎりぎりの線でおさめてあるわけでございます。  次に、主要事項の概要を申し上げます。資料のカッコの中は三十九年度の予算額でございます。  第一は、国民医療対策の強化に関する諸施策でございまして、その一は、医療保険制度の充実、まず、その一つとしまして、国民健康保険制度の強化で、読み上げますと、「昭和三十九年度を初年度とする給付改善四カ年計画を強力に推進するとともに、事務費に対する国庫負担の増額を図る。」と、この分が約千百六十七億円の要求となってございます。その内容としましては、一つは、三十九年度を初年度としまして、四カ年計画をもって国保の世帯員に対して七割給付を実施するということでございまして、すでに今年度全体の二五%を実施する計画でおるわけでございます。来年度はその率を少しスピード・アップいたしまして、三〇%を対象にして、九百十五万人分を七割給付の対象にするということでもって組んでございます。その実施が四十一年の一月実施ということでございまして、それに対する療養給付特別補助金その他の国庫補助額でございます。  次に、もう一つはイの事務費の補助、これは現在国保実施主体になっております市町村あるいは組合等に対する事務費が非常に少なくて、実際にかかる経費の半分にも満たないといったような状況でございますので、この大幅の増額をはかってございます。被保険者一人当たり、市町村につきましては現行百五十円を二百五十九円、組合につきましては百四十円を二百十四円というわけでございます。  その次、(2)番目は、医療保険財政の健全化の問題でございます。「医療費の増大等に伴い健康保険等各種医療保険の財政の赤字が増大し、収支の著しい不均衡の傾向を示している実状にかんがみ、国庫負担の大幅な増額等の施策を実施し、健康保険制度及び日雇労働者健康保険制度の整備と財政の健全化を図る。」政管健保あるいは日雇健保の財政が非常な危機に立っておりまして、これに対する対策その他の問題につきましては、いずれ別途詳細に御審議願うことになると思いますが、このままに放置いたしますれば、政管健保におきましては、四十年度赤字見込みが約四百五十億、日雇健保につきましては二百二十億程度の赤字になるというような状況にかんがみまして、これに対する各種の対策を強化する必要があろうと思われるわけであります。それで、いろいろの対策を考えているわけでありますが、国庫補助につきましても従来以上の大幅な増額を必要とするというところから、健保、日雇、両方につきまして約百八十億の国庫補助を要求してございます。  次に、二番目は、医療関係者の確保及び医療体制の整備に関する諸問題でございまして、その(1)は保健所医師の充足対策で、「保健所医師の充足を図るため、待遇の改善、大学との技術提携体制の強化、公衆衛生修学生貸与金の増額、医学生の公衆衛生活動に対する助成等を行なう。」これが約六千万円、前年度が約二千万円でございました。内容といたしましては一待遇改善といたしまして研究調査費の増額、現行六万五千円を八万五千円に増額、それから、新しく医師等の公舎の整備について補助金を要求するというような内容でございます。  イは、公衆衛生修学生の貸与金で、現在やっております貸与制度をさらに増額いたしまして、学生については月額四千五百円を九千円、インターン生につきましては六千円を一万二千円に増額という要求でございます。  ウは、新規のものでありまして、保健所活動指導調査費補助、約一千万円でございますが、これは保健所活動について大学の医科教室との連携を密にいたしまして、その指導援助を仰ぐという意味から、大学の教授クラスの人に保健所活動についていろいろ指導調査をお願いしたいというための経費でございます。  次に、エは、医学生公衆衛生活動訓練費補助、これも新規のものでございますが、大学の医学生について公衆衛生活動に対する認識と理解を深めてもらうために、保健所に来てもらっていろいろ実習をし、勉強をしてもらうというための経費でございます。  あと、保健所の医者の外国派遣費の補助とか、図書の整備費の補助金でございます。  次に、(2)は、看護職員の確保、看護職員の不足の実情にかんがみ、養成施設に対する助成、修学貸与金制度に対する助成、看護職員研修所の設置等の対策を強化するということで、総額で約六億六千万円。内容としましては、看護婦等養成所整備費の補助、従来も長期計画に基づいて補助いたしておりまするが、さらにその新設、増改築等の整備を一段と促進したいというわけであります。  それから、次に、その養成所の運営が非常に困難な状況にかんがみまして、運営費の補助に一億八千万円要求しておるわけです。あとは、看護婦等貸費生貸与金の制度で、これは従来やっているものでありますが、新しく国立の看護職員の研修所を新設したいという計画を持っております。これは看護婦養成所指導職員を養成するというような趣旨のものでございます。  それから、次は、いろいろ問題も提起いたしましたインターン制度に関する改善でございます。医師実地修練施設における指導体制の強化及び指導内容の向上をはかるため、実地修練施設に対し指導医及び整備費等について助成を行なうもので、四億五千万円ほど要求してございます。内容としましては、結局そのインターン生を指導する施設に対するいろいろな指導員の謝金とか、あるいは施設の損料、あるいは実修生に対する被服費とか食糧費、そういったものの補助、そういった趣旨のものでございまして、指定病院三百二十四カ所、インターン生三千百人を対象としまして、三億九千万円要求してございます。それから、新しく実地修練教材整備費補助、これはインターン生を教育するためのいろいろなスーパースコープ、機械、教材の整備費に対して補助しようとするものであります。  次は、救急医療体制の確立、交通事故等、不慮の事故による傷病者に対する救急医療対策を強化するため、救急病院等救急医療に対する協力を促進するために必要な補助、救急医療担当医師に対する研修の実施、救急医療に関する研究費の助成、救急医療センター救急病院の整備を行なう、こういった経費としまして四億八千万円ほど要求してございます。内容としましては、一番大きいものが救急病院等協力促進費補助三億三千万円、これは救急指定病院になっております病院につきまして、夜中とか、あるいは明け方、あるいは休日等におきまして、救急患者がかつぎ込まれたときに、その医療に支障なからしめんために、救急病院につきましては、常に必要な医師、看護婦等を最小限度確保しておこうというための経費でございまして、それを指定病院について輪番制でもって義務づけまして、その待機をしておる者についての経費を半分国でもって補助しようという趣旨のものであります。内容としましては、したがって、医者等の超勤とか、いろいろ準備するための光熱費とか、そういったものに対する補助ということになるわけであります。あとは救急医療施設の医師研修の委託費とか、さらに何カ所か救急医療センターを整備しまして、救急医療についての治療に当たると同時に、連絡調整とか、研修とか、そういったものの中心にしたいという趣旨のものであります。  五番目は、医療機関の整備等に関する問題でありまして、国立病院及び国立療養所については、その施設の近代的整備改善を行なう必要があるので、一般会計による整備を行なうほか、資金運用部資金の借り入れをはかる。なお、国立療養所については、国立療養所整備特別会計を設ける。また、私的医療機関については、その整備に必要な資金の需要増加に応ずるため、医療金融公庫に対する出資金を増加する。また、国立医療技術研究所の設置、ガンの診断治療、リハビリテーション等の専門病院の整備を行なうというもので、まず、国立病院国立療養所の整備につきましては、六十八億七千万円ほど要求してございます。それから、国立療養所の整備、結核とか精神療養所とか、いろいろなものにつきましては、非常に古い施設が多くて、毎年少しずつの整備費をもって整備していくのでは非常に非効率的であるというところから、この国立療養所の整備を促進する意味合いにおきまして、整備のための特別会計を設けまして、これによって先行投資いたしまして、重点的に整備、あるいは精神療養所の増床をはかるというような趣旨のものでございまして、来年七十六億円要求してございます。特別会計による整備については、次のページに書いてありますが、計画としては八十三施設、三万六千三百床を対象にしまして、整備五カ年計画で、初年度三百五十億円をもって整備したいということになっております。  次に、(2)は、医療機関の整備で、一般の公的医療機関の整備につきましては五億五千万要求してございます。一般のベッドの少ない地区を重点的に対象にしまして公的の医療機関を整備する費用。それから、地方のがんセンター、そういった特殊病院の整備、さらに、新しいものとしまして、リハビリテーション施設の整備、あるいは救急医療センターの整備、そういった内容でございます。それから、医療金融公庫の出資につきましては、前年二十九億に対して三十八億円要求してございます。さらに、新しく国立医療技術研究所の設置を計画いたしまして、その要求をいたしてございます。これは電子工学その他新しい医療の技術の進歩に伴いまして、そういうものの研究をやはり公的な機関の手によって促進する必要があるというところから国立の研究機関を設けたいという趣旨のものであります。  三番目は、各種の疾病対策でありまして、(1)は、精神衛生対策の推進で、社会諸情勢の複雑化に伴い、ますます精神衛生の問題は重要となっているので、在宅患者に対する指導体制の整備、精神衛生相談所の拡充強化、精神病床の整備のほか、新たに外来患者に対する医療費公費負担制度及び職親制度を設け、その急速な解決をはかる。精神衛生対策の強化充実が非常に叫ばれておるおりから、各種の施策を強力に推進してまいりたいという趣旨で百六十六億四千万円ほど要求してございます。内容としましては、保健所の精神科嘱託医精神衛生相談員の設置、保健所については精神衛生の予防、相談事業を強化する意味におきまして必要な医療員の充実をいたしたいというものであります。それから、イは、措置入院費の補助でございます。これは現在やっております措置命令による入院患者の医療費でございます。次の、ウの、外来医療費の補助、これが新規の施策でありまして、これは措置入院させるほどではないけれども、在宅患者で必要な医療を必要とする者、あるいは非常な強い看護を必要とするというようなものにつきまして、その外来の医療費について公費でもって半分を負担してやろうという趣旨の新しい施策でございます。これに対して国が十分の八補助しまして、あと十分の二を県が持つという趣旨のものであります。来年度は七万二千九百人を対象にしまして、約四億七千万円要求してございます。  次のページにまいりまして、地方精神衛生センター、これは従来の精神衛生相談所を強化する趣旨のものでありますが、その整備費といたしまして約一億円。施設の整備とか、そのセンターの職員、医師、その他のケースワーカー、そういった職員を充足する趣旨のものであります。それから、オは、国立精神衛生研究所の整備、現在ございます精神衛生研究所をさらに増設、内容の充実をはかりたいという趣旨のものであります。それから、精神病床の整備につきましては、これも年次計画的に実施しておりますが、来年度は三千四百床、六億円の予算要求をしております。内容としましては、一般の精神病床の整備のほか、社会復帰病床、病院を退院しましてから社会に復帰するまでの間これを保護する病床を新しく整備してまいりたいという趣旨のものを出しておるわけでございます。  それから、その他、国立結核療養所の結核病床を精神病床に転換するとか、それから職親制度の新設、精神病患者の治療策の一環としまして、職業訓練による治療促進を考えまして、新しく職親制度というものを設けたいという趣旨のものであります。  二番目は、原爆被爆者の対策で、原爆被爆者健康管理の強化、医療手当の増額をはかるほか、原爆病院の増床、特別養護老人ホームの設置、被爆者福祉センターの拡充をはかる、このための経費として総額十四億九千万円であります。原爆被爆者対策につきましては、いろいろ各方面から御要望を受けておりますが、その御要望に沿えるものをほとんど網羅したつもりでございまして、健康管理の強化、定期外の健康診断の新設とか、交通費交付金を拡充するとか、次のページにまいりまして、医療手当交付金につきましても、その限度額の引き上げをそこに書いてありますようなふうに引き上げる、所得制限の緩和も行ないたい。それから、新しくエとしまして、原爆病院の増床も、広島、長崎、それぞれ五十床、三十床ずつしたい。それから、さらに、被爆者のだんだん老齢化していく実情にかんがみまして、特別養護老人ホームをほしいという要望がございますので、これを広島と長崎に一カ所ずつつくりたい。それから、さらに、健康管理センターを設けまして、絶えず人間ドック的な健康管理の充実をはかりたいというような施設整備費でございます。  それから、あとは、三番以下は大体従来の対策を推進していきたいという趣旨のものでありますが、三番は結核対策、四番は成人病対策、それから、五番は性病対策でございます。  次のページの六番に予防接種対策としまして、従来定期の予防接種につきましては、その経費は本人負担という扱いになっておりますが、これを定期の予防接種につきましても、そのうちワクチンの経費につきましては、これを全額公費で負担する措置をとりたいという趣旨で要求してございます。予防接種の被接種者の負担の軽減をはかり、実施率の向上を期するため、定期予防接種に必要なワクチンの経費を全額公費で負担する等の措置を講ずる、このために三億円要求してございます。それから、インフルエンザ特別対策、これは数年来やっております乳幼児とか学童等に対するインフルエンザ予防接種でございます。  四番の、血液及び麻薬対策の強化は、従来の施策を一段と推進してまいりたいという趣旨のものであります。  次に、大きい項目としまして、第二の、生活環境の整備、その一つは環境衛生施設の整備等でありまして、生活環境施設整備緊急措置法に基づく整備五カ年計画の実行を強力に推進するとともに、簡易水道の普及、水資源に関する調査を行なう。そこからアからオまで各種の環境施設の整備費の補助金要求が書いてございます。これは、し尿処理につきましては、昨年緊急措置法の計画に基づきまして非常に予算も倍加され、また、軌道に乗ってまいりましたが、ごみその他の施設につきましても一段と推進してまいりたいという趣旨でございます。それから、水飢饉問題等にかんがみまして、水資源の開発調査、そういったものにも一段と力を入れたいという趣旨のものでございます。  二番目は、公害対策の推進で、ばい煙防止対策の強化、騒音、自動車排ガス等規制外公害の実態調査、大気汚染測定網の整備、地域開発に当たっての事前調査指導を行なうほか、国立公害衛生研究所を設置するとともに、社会開発事業団により公害防止施設の設置を促進する、このための経費としまして約三億九千万円要求してございます。調査費、指導費的なものがずらっと並んでおります。カにまいりまして、国立公害衛生研究所の設置を要求してございます。これは主として医学的、衛生的見地から、公害の人体に及ぼす医学的な影響とか、あるいはまた公害の具体的な影響というものを技術的に測定するといったような仕事をねらいといたしたものであります。この公害の対策につきましては、通産省とか文部省その他関係のある省、いろいろございますが、お互いに提携いたしまして、厚生省のほうでは主としてそういう公害の医学的な影響、あるいは技術的な測定、そういったものを中心に実施していく。そして、その各企業の公害防止設備というものにつきましては、通産省等で主として対策を講ずるというような調整のもとに公害対策を総合的に進めるということで話し合いをいたしております。  次のキの、社会開発事業団も、同じ趣旨からこの公害の防止対策を促進したいという趣旨のものでありまして、これは新産都市とか工業整備地域等につきましては、先ごろの三島、沼津問題等にかんがみましても、だんだんと企業と地域社会におけるトラブルというものが問題化してまいりましたので、その間の摩擦を解消し、また、必要な施設を公的な機関によって整備いたしたいという趣旨のもとに、事業団を設置して必要な施策を進めたいという趣旨のものでありまして、この事業団の事業の内容といたしましては、そういう工業都市の周辺に共通的な緩衝地帯、グリーンベルト的な緩衝地帯を整備して、そこに必要な保健福祉施設とか、運動場とか、文化施設とか、そういった施設を設けるとかいう事業と、もう一つ各企業に対する公害の防除施設融資をここで行ないたいという内容からなっております。これは通産省と共同提案のかっこうになりまして進めていく予定で話し合いを進めております。ここには六千万円、これは事務費でございまして、別に資金計画としまして来年度は百億の事業費を要求してございます。  三番は、僻地対策で、これは従来の各種の僻地対策を一段と進めたいというものでありまして、僻地、離島における保健福祉の向上をはかるため、僻地診療所の整備等により医療水準を引き上げるとともに、僻地保育所等を整備するために七億四千万円ほど要求してございます。内容は、大体そこに書いてありますような、従来やっておるような内容のものでございます。  それから、四番の、環境衛生関係営業に対する指導ですが、環境衛生関係営業者等に対する経営指導の強化等を行ない、その近代化、合理化をはかるために約一億二千万円、これは浴場とか興業施設とか、そういった環境衛生関係に対する非常に非近代的な経営のものが多いわけでございますが、これに対する経営指導を行なってその合理化をはかるとともに、環境衛生の弊害をなくしたいという趣旨のものでありまして、関係の団体の指導助成費とか、あるいは指導員を置いて必要な企業診断、指導を行なうというような趣旨のものでございます。  それから、大きい第三の柱としまして、国立公園等の整備、その一は国立公園施設整備事業団の新設で、国立公園施設整備事業団を新設し、レクリエーションのための道路、駐車場、レストハウス等の施設を整備する、そのための政府出資として二億円要求してございますが、このほかに財投に二十億の要求を来年度いたしております。これは国立公園の整備を従来細々とやっておるわけでありますが、だんだんとこれが企業化され、国立公園の風致その他自然環境が非常に害されるというところから、この整備をやはり強力にまた促進する必要があるという趣旨から、これも先行投資によって整備を大々的に促進したいという趣旨のものであります。それで、事業団によってこの整備を行ないまして、大体ある程度の収益を予定されるものにつきましてはこの事業団をもって整備をする。小さい整備は一般会計の整備費でもって従来どおりやっていくという構想でございます。そのあとの二番以下は従来やっておるような各種の整備でございます。これは省略さしていただきます。  次のページの第四の柱としましては、社会福祉施策及び児童家庭対策の強化、その一は生活保護制度の改善で千百四十二億円、これにつきましては、今回は例年の要求のしかたを改めまして、一応前年度の保護費の三割増しに近い額をワクとして要求してございます。それで、基準を何%上げるかというようなことは、ただいま社会福祉審議会のほうで生活保護の基準のあり方といったものにつきまして御審議を願っておりますので、その答申等を待ちまして予算編成までにきめたいという所存でおります。  二は、老人福祉対策の強化で、老人の健康診査の拡充、家庭奉仕員の増員及び老人クラブの増設等をはかるということで、従来の老人福祉法に基づく各種の施策を一段と進めたいという趣旨のものでありまして、全体として七十五億八千万円ほど要求してございます。  三番は、世帯更生資金の充実等でございまして、世帯更生資金の資金量の増額、内容の改善を行なうといたしまして、そこに書いてありますとおり、新しく修学資金とか小口の貸し付け資金を設けるとか、あるいは従来の資金の引き上げを計画しております。  次のページへまいりまして、四番は、母子保健対策の強化で、妊産婦、乳幼児に対する健康管理の体制を強化するとともに、低所得世帯の妊産婦に対しミルク等の栄養食品を無料または低額で配付する等の措置を行なうというもので、これも大体従来の対策でございますが、未熟児、妊産中毒症、そのほかに妊産婦に対しまして、その栄養強化の意味でミルクの無料配付を計画しております。  五番は、家庭児童の福祉の強化で、家庭児童相談室の整備をはかるほか、野外活動の促進等、児童の健全育成対策を推進するというもので、児童の積極的な健全育成対策としまして、そこに書いてあります各種の従来のやっております施策を一段と推進したいというものであります。  六番は、母子福祉対策の強化で、これも従来大体やっておるものでありますが、母子福祉貸し付け金の資金量の増額、母子福祉センター及び母子休養ホームの増設をはかるための経費としまして六億五千万円要求してございます。  それから、次のページの七番は、要保護児童対策の拡充で、施設収容児童の処遇の改善をはかるほか、心身障害児に対する施策の拡充をはかるというもので、児童福祉法に基づく保護措置のほか、結核あるいは身障児、あるいは重症心身障害児に対する療育援護のための経費でございます。  八番は、児童扶養手当及び重度精神薄弱児扶養手当の改善で、児童扶養手当につきましては三十三億七千万円、それから、重度精神薄弱児扶養手当につきましては、これは前年度初めてできた制度でございますが、さらにその手当額の引き上げとか所得制限の緩和、そういった改善を行なうために四億要求してございます。  それから、九番は、社会福祉施設及び児童福祉施設の整備で、社会福祉施設及び児童福祉施設の整備のために前年約二十五億の予算でございましたが、三十億に増額要求をしてございます。  十番は、社会事業施設職員の処遇改善で、これは保育所とか、各種の収容施設の職員の処遇が一般に比べまして低いという現状から、いろいろな対策を例年講じておるわけでありますが、来年度はこの給与のベースアップを行ないたいという趣旨で、二十億八千万円を要求してございます。それから、また、職員の増員保母とか職業指導員とか、そういった職員についての増員をはかりたいという趣旨のものでございます。  次の柱は、児童手当制度の準備で、この児童手当制度の実施につきまして、この促進方が要望されておりますが、来年度はこのための準備の組織を設ける、創設準備室といったようなものを設けて、制度の検討、それから必要な調査等を行なうというような費用、それから、さらに、各界の識者を集めまして、児童手当制度調査会を設けて御審議を願うための費用でございます。  次の第六の柱は年金保険制度の充実でございまして、その第一は、厚生年金保険制度については、一万円年金の円滑な実施をはかる、これは次の臨時国会に提出いたすべく考えておるわけでございます。  次の二番目は、福祉年金の改善でございまして、国民年金制度については、福祉年金の年金額の引き上げ、所得制限の緩和、支給対象の拡大等、その改善をはかるというもので、総額といたしまして、福祉年金の給付費が四百三十四億、うち、改善分が七十三億、改善の内容としましては、年金額を月三百円引き上げたい、現在老齢年金月千百円でございますが、これを千四百円にいたしたい。その他の障害年金等につきましても三百円ずつ上げていきたいという趣旨のものであります。それから、所得制限の緩和につきましても、第一子、第二子以降の所得制限の額を引き上げたい。それから、あと扶養義務者の所得制限の緩和とか、配偶者の所得制限は撤廃したい、夫婦受給制限も撤廃したい。それから、支給範囲の拡大、これは二十歳以下の重度精薄者につきましては、先ほどの重度精薄者扶養手当が支給されますので、二十歳以上のおとなの重度精薄者については、福祉年金をもってカバーいたしたいという趣旨のものであります。それから、最後は、併給限度額の引き上げでございまして、公務扶助料等の受給者で、年金額が八万円に満たない者につきまして、従来福祉年金の併給を認めておりましたが、今度福祉年金の額を月三百円上げるに基づきまして、従来の既得権を保護する意味で、併給の限度額を八万円から八万三千六百円に引き上げたいという趣旨のものであります。  第七は、戦傷病者、戦没者遺族等に対する援護の拡充で、これも例年いろいろ改善を加えておりますが、来年度におきましても、若干の改正をいたしたい。戦傷病者、戦没者遺族等につきましては、事変中の死亡、障害に対する額の引き上げとか、準軍属にかかる遺族一時金の支給の引き上げとか、その他の改正をいたしたい。また、戦傷病者特別援護費につきましても、そこに書いておりますような、かねて要望されておるような各種の改正をいたしたいという趣旨のものであります。  以上、簡単に御説明申し上げましたが、来年度予算要求のおもなるものについて御説明を終わりたいと思います。
  4. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 本件に対し、質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 阿具根登

    ○阿具根登君 これはきのうの委員会でも言われたように、これだけでは全部に質問があります。だから、これの細部にわたってどうなるか、詳細に資料を出してもらわないと、これは一日かかっても二日かかっても、みんな質問がありますよ。この詳細な資料をつけてもらって、それから質問するようにしたいと思います。
  6. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) いまの発言のとおりだと思うのです。
  7. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 ちょっと関連して。たとえば社会事業施設職員の処遇改善ということで、給与改善二十億、それから、職員の増員ということがありましたが、こうした個々の内容についても御説明をひとつしてもらいたいと思うのです。
  8. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ちょっと政務次官に要望があるのですが、いま各委員からも、内容の詳細に関する資料といいますが、これの全資料というと非常に膨大になるので、ある程度重点的なものでやられるのですか。ある程度重点的な資料で全款項目に関する資料提出というふうにとられるのか、ちょっと……。
  9. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  10. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 速記を起こして。
  11. 戸沢政方

    説明員戸沢政方君) 本日時間の制限もございましたので、ごくアウト・ラインの御説明しかいたさなかったわけでございますが、御要求のありますおもな事項についての資料、できるだけのものをととのえて提出いたしたいと思いますが、中には内容がまだ固まらないために、ワク要求みたいなかっこうでもって出しておるようなものも、先ほどの保険対策その他ございますので、十分具体的にならないものもございますが、できるだけのところで提出するようにいたしたいと思います。
  12. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは九日に、この問題を特に取り上げて議論するわけでは予定をしておりませんけれども、この次は九日に委員会がありますから、それまでに何とか出してもらいたい。よろしゅうございますか。
  13. 戸沢政方

    説明員戸沢政方君) このきょう掲げました資料の項目全部についてでございますか。それとも、特にいまおあげになったような問題、その他問題になるような事項でよろしゅうございますか。
  14. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 私たちがこれを見て、この項目の内容が、特にこまかいものを書かぬでもわかる項目もあります。しかし、裏づけの積算という、くわしいということはありませんけれども、項目的に個数とか単価とか、来年はどう変化するかということがわからなければ、棒読みに読んだってわからぬ項がある。これを読めば大体理解ができるという程度の裏づけを出してもらいたい、こういうことです。
  15. 戸沢政方

    説明員戸沢政方君) わかりました。そういう趣旨で判断してつくります。
  16. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、本日のところは、四十年度予算要求案に対する質疑はこの程度にとどめておきたいと思います。   —————————————
  17. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 次に、一般厚生行政に関する件を議題にいたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 きょうは大臣を要請しておりましたが、何か緊急な用事でお見えにならないようですから、医療費問題について質問があまりできないわけなんですが、一点だけ質問しておきたいと思いますのは、現在、有沢さんのほうから答申が出ております。その答申に対して神田構想なるものが打ち出されておる、こういうことなんですが、それは神田さん個人の政治的発言なのか、厚生省の事務当局がつくったものなのか、その点だけを明らかにしておいてもらいたい。厚生省の事務当局は何も知らないのだ、ただ神田さんが政治的な立場から発言をしたんだというものなのか、厚生省の事務当局が、この答申に対して、厚生省としてはかくあるべきであるというような考えを出したのか、その点を明らかにしておいてもらいたいと思います。
  19. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) 世上いわゆる神田構想として伝えられておりまするものの内容は、一つは、去る四月十八日に中央社会保険医療協議会から答申されました答申の中で、予定をしておった引き上げ率八%というものにプラスアルファをするという、つまり引き上げの率を八%よりも高いものにするということが一つ。それから、もう一つは、初診料を思い切って引き上げると同時に、診療の期間が一カ月をこえるというようなことになった場合には、一カ月を経過したあと、またほぼ初診料に相当するような、いわば基礎診察料とでもいうべきものが取れるようにすると、およそこういう二点を基本にして医療報酬の改定問題を処理することにしたい、こういうような内容であったのであります。これはいまの大臣が就任いたしましてから、いろいろ内外の情勢を慎重に検討された結果、とにかく事をおさめるということから考えてみるというと、答申を尊重することはもちろんであるけれども、ややそこに幅を持たせるという含みで事態を解決することが必要である、これは一種の政治論でございます。そういった、いわば一つの高度の政治的な発想からいたしまして、こういうようなことをもとにしてやってみるとしたならばどういうようなものができ上がるか、これをひとつつくってみろ、こういう指示を私ども事務当局にされたわけでございます。されたのと前後いたしまして、そのことを記者会見の際において発表された、こういう次第でございます。昨日衆議院の社会労働委員会がございまして、先生がおっしゃったいまの問題とやや逆の角度から非常に質問なさっておられまして、世上伝えられる神田構想というものは、あれは厚生省の事務当局の案に乗っかって神田厚生大臣が言っているというふうに一部では伝えているけれども、どうなんだ、こういう質問がございまして、これに対して神田厚生大臣は、そういうことは全然ない、あれは文字どおり自分の真意である、自分としては、ぜひああいうことをやりたい。やるについては、いまのところまだ発想なんだから、それに手足をつけたならばどうなるかということをいませっかく事務当局に検討させておる、こういうように答えておられますが、事実はそういうような内容でございます。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 わかりましたが、神田さんが政治的にその実際の内容もまあ熟知されておらなかったと思うのですが、この保険医療協議会というものには公益委員というのがあって、非常に高度な立場から、非常に公正な立場から出されておるそれをも否定して、政治的な立場から何とかおさめようというような、まるで昔の政治家がやるようなやり方でおさめようというようなことでは、これはとんでもないことだと思うのだけれども、まあ大臣がいないのだから、あなたにやかましく言ってもしようがない。大臣がそれを考えたというならば、大臣のひとつ政治節操というものについても少し私は質問してみたいと思っているのですが、これは九日にいたしますが、いま質問のありましたこの予算概要ですが、これはその前のやっと思うのですが、もしも神田構想でいくなら一体どうなるか、これは神田構想が事務当局にこういう考え方でやれと言われておるならば、この要求でそれが間に合うかどうか、一体どうなるか。
  21. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) 先ほど会計課長が御説明を申し上げましたいろいろな施策の中に組まれている医療費の中には、ただいまおっしゃいました神田構想なるものに基づくものも、また、いままで幾たびかいわれておりまする中医協の答申がおおむね予定しておるという八%の引き上げの分もこれは入れておりません。これはいずれにしても、事がきまってから追加して大蔵省に要求をするという、まあ要求の留保をいたしまして、大蔵当局も、事の性質上当然でありましょう、おそらくそれが要求されるときになれば、まずさしあたり今年度の予算の補正が必要なわけでございます。それから、それとともに、来年度今度追加してどれだけと、こういうふうなことで処理をしよう、こういうことになっておりますので、すべてそれがきまってから追加して計上する措置をとると、こういうことになっております。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、先ほどの説明の中で、日雇健康保険、政府管掌保険が来年度は四百五十億から二百二十億の赤字になるということだったのです。それに百八十億の予算要求をしておると言っておられる。もしも神田構想なるものが出たならば、それは幾らの赤字になるか、どのくらいふくらむか、それを教えてもらいたい。
  23. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) いわゆる神田構想なるものは八%にプラス・アルファをすると、こういうことは発想の一つの要点としてはっきりしているのでありますが、どの程度にするかということは、大臣自身もいまだかつて一度も明言したことはないのでございます。昨日もお尋ねがありまして、それは自分はどこにも明言したことはないし、まだ最終的にはきめていない、こういうことでございますので、どの程度かということは申しかねますが、かりに八%引き上げをされた場合にどうなるか、こういう前提で申し上げますと、八%引き上げをされますというと、来年度政府管掌健康保険においては、保険料の負担がさらに百九十一億ふえることになっております。したがって、全然いまのままの状態でいくということになりますというと、先ほど申し上げました赤字にこの分だけがさらにつけ加わる、言いかえれば、来年度において解散すべき赤字の中には、これを加えたものが当然考慮の中に入ってこなければならぬ、こういうことになるわけであります。それから、日雇健康保険につきましては、いまの分に当たるのがちょうど十一億足らずになります。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、大体政府管掌、あるいは日雇健康保険について、たとえば日雇健康保険等では非常な大きな赤字が出るから、この日雇健康保険というものは解消すべきである、いわゆる国民健康保険か何かに入れるべきである、あるいはそれに類似した処置をとるべきである、こういうことが言われておるのだが、実はこの考え方を一体どういうふうに私たちは解釈したらいいのか、八%上がったとして二百三十七億円の赤字が出てまいる、それに政府要求はこれに対して八十億でしょう、あと赤字は一体どうするのか、おそらく個人の率を上げるとか言われると思うんだが、そういうことなのか、その点をひとつ御説明願います。
  25. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) まず、問題を理解していただくために、前提として誤解されていることを解きたいと思いますけれども、今年の三月の中旬ごろであったと思いますが、ある一つの日刊紙に、日雇労働者の健康保険の解体が、あたかもまともに厚生省内において検討されているような報道がございまして、だいぶこれは世の中に誤解を与えたようでございます。これは先生方よく御存じのように、もしそういったようなことがほんとうに検討されており、しかも、ある程度の方法でそれが示されたものであるならば、新聞一つに出るということはないはずなんでありまして、こういったいわばショッキングな内容を持つものは、当然日刊紙全部に出るはずでございますが、一紙しか出ない、しかも、その記事は一回限りで、あとは出なくなった、こういうことでございますが、ただ、事が事だけに、非常に関係者は憂慮したようでございますが、そういうことはいまのところ厚生省内においては全然考えられておりません。したがって日雇労働者の健康保険問題については、非常に財政状況は苦しくはあっても、日雇労働者を日雇労働者の制度のままとして何とか立て直し発展をさせていく、こういうようなことを考えているわけであります。  それで、先ほど申し上げました予算要求の基礎になっておりまする考えをごく大まかに申し上げますというと、いままでの累積赤字というものは一応全部長期の金に借りかえる、これが一つであります。そうして、まず過去の赤字から切り離された形において日雇労働者の健康保険制度の問題を考えていく、制度の性質上、過去において生じた赤字の解消というものをこの制度の受益者に求めることはそれは無理でございますから、これはやはりしかるべく分割しつつ、国のほうがこれを解消するための金を入れて解消していくということを考える、こういうことになるわけであります。新しく一応そういう過去の負債と切り離された日雇労働者の健康保険については、これを立て直しするためにどうするかということをいろいろ検討したのでありますが、どうもやはりこの制度政府管掌健康保険と比べましても、いろいろと収支が合わなくなる要因を幾つか持っているのであります。たとえば収入の面においては、収入がならして一般の常用労働者よりも低いというようなこと、それから、支出の面におきましては逆にこれは高いのであります。高いのは当然だという実態なのであります。平均年齢を調べてみますというと、日雇労働者健康保険の被保険者の平均年齢は四十二歳程度になっております。ちょうど政府管掌健康保険の被保険者と比べて十歳程度上なんであります。その点から見ましても、そろそろ同じ状態であっても、いわゆる成人病といわれるような病気によるいろいろの支出がふえていく時期にも当たりますし、それに加えて、従来必ずしも楽でなかった生活をしてきた人でありまするから、非常に支出が多くなる要因を持っております。また、もう一つ、あまり気づかれないことなんでありますが、この制度には保険料を納めないで、利益だけを——利益というと悪いんですが、給付だけを受けるという人の割合が非常に多いのであります。政府管掌の健康保険でそういうような立場にあります人は、いわゆる継続給付といわれている人々でありまして、いままで保険料を納めておったが被保険者でなくなった、そのときまでに病気であれば、病気の治療を受け始めてから五年間は、被保険者でなくなっても、いわばただで受けられる、その費用は被保険者なり事業主全体として負っているわけでありますが、全体との割合でいえば非常にわずかなものであります。ところが、日雇労働者の健康保険のほうは、二カ月間納めると三カ月目から受けられる、事の性質上、病気にかかって期間がちょっと長くなると、もうそこで保険料を納めないということになる、しかし、受ける期間は二年間、こういうことになっているわけであります。事のよしあしをいっているんでなくて、制度の仕組みから見て、保険料を納めないで給付だけを受けるというものの割合が非常に多い、大体二割強になっているようであります。こういうような要因をあげて数量化してみますというと、政府管掌健康保険に、かりに一文の国庫補助を入れないとしても、この制度には六割強入れないというと収支が合わぬはずだという大体の基礎的な条件がこの制度にはあるわけであります。そういうようなことを考慮いたしまして、いままで三割五分であった国の負担を、この際、六割五分に引き上げる、こういうことを一つのてこといたしまして、一方、保険料も、いまの状態ではこれは低過ぎます、政府管掌に比べて。政府管掌が千分の六十三であるのに、これは千分の三十二、三程度しかいま実際に受け取っている所得との関係では納めていない仕組みになっておりますので、これもある程度奮発をしてもらう、そういうようなことで手直しをしたい、こういうことでございます。  たいへん長らく申し上げましたが、そういうことで手直しをしていくところに、もう一ついまの医療費引き上げによる増というのが入ってくるわけでありますが、これは私どもの考え方としては、この制度と国民健康保険の二つだけは、これは何といっても低所得の人々の制度でございますから、少なくとも医療費引き上げたことによって保険料をまた上げにゃならぬということは避ける必要がある、そのためには、その分だけ国が臨時的に補助金を入れて衝撃をゆるめていくという必要がある、かように考えておりますので、原則的には引き上げられた分だけ国の臨時的な補助金を入れることによって解決をして、医療費引き上げ問題とこの制度とが直接にからみ合うことは避けるようにしていこう、こういうような考えでございます。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、端的に聞くとこういうことですか、いままでの赤字はたな上げをしておいて、分割をして国が支払っていく、それで今後は三割五分、三五%のやつを六五%政府補助をしていく、しかし、被保険者もいま非常に少ないので、幾ぶん上げてもらう、その率はあとで聞きますが、そうして、さらに今度の答申案による是正がなされてもそれは国の負担だ、こういうことになるわけですね。そうすると、いまの保険料を払っておらなくて、受けるものだけ受けるというのは、これは五十五条だったと思うんですが、これは炭鉱にもあらわれているんです。非常に急激な合理化をやった、だからばく大な人がやめていった、多くの人が大体十八万からおったのが十二万になってしまった、六万からの人がやめてしまった、そうすると、言われたとおり、その当時病気だった人は全部治療を受けられる、非常な赤字だ、で、いま一番赤字を受けているのは日雇労働者と炭鉱の健康保険だこういうふうに思っているんですが、その日雇労働者の健康保険に対する考え方が、即、炭鉱の健康保険組合にも適用される、こう考えていいんですか。
  27. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) 私どもは、原則的にはそうすべきものと思っております。一口に組合健康保険といいますと、いま何だか非常に豊かな組合だけを考えるようでありますけれども、先生が言われたような組合もたくさんあるわけであります。しかも、そういう組合というものも、あと数年このつらい時期をしのいでいけば、りっぱにこれは自立できる組合になるわけでありまして、つらいからといって、それなら政府管掌に入りなさいといって片づく性質のものではあるまいと思っております。そうだとすれば、やはり先生がいまおあげになったようなことに対応した組合であっても、そういう組合に対して何らかのてこ入れを考えていくということが必要であろうと思う。そういう意味合いで、来年度の要求組合関係補助金要求をしておりますし、また、医療報酬の引き上げが行なわれるならば、それに対応してやはりそういうどうにもならぬと思われる組合に対するてこ入れのものは臨時的な補助金として組むべきであろう、かように考えているわけであります。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 炭鉱の問題は、おそらくこの料率を最高にかけていると思う。そうすると、これ以上は率を上げることはできない。そうした場合は、やはり日雇健康保険のように赤字をたな上げする、分割して政府が払う、これはちょっと立場は違ってきますので、そう一がいに割り切れないでしょう。しかし、その場合、料率を上げることはもう不可能な最高まで上がっている。こういう場合、一体どうするかということなのです。
  29. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) おっしゃるように、千分の八十というのは法律できまった最高の料率でございまして、そこまできている組合が若干ございます。その組合については、おっしゃるような事情があり得ると思います。したがって、そういう組合については、個々別々によく実態を見きわめまして、たとえば一時的に赤字が出るようであっても二、三年赤字をたな上げして置くなり、しかるべき方法で処理する。切り抜けられるものについては、従来は赤字予算組合が組むことを認めておりませんけれども、過渡的にそういうことも考えるとか、あるいは先ほど申し上げたように、臨時補助金なり、あるいは普通の給付補助金によって八十をこえないで済むようにする、こういうようなことをいろいろきめこまかく考えたいと思っております。ただ、先生もおっしゃったように、過去の収支面のマイナスというものを全部国が持つというのは、組合についてはちょっとできかねますけれども、気持ちとしてはおっしゃったような気持ちでこういう組合は考えていくべきものと考えております。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、日雇健康保険の千分の三十くらいのものをどのくらい引き上げるつもりですか。
  31. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) まだいまのところなかなかきめかねているわけであります。ただ、気持ちなり考え方としましては、低所得の人々の本人の負担というものはなるべく上げないで済ましていくようにしたい。しかし、現実にやはり日雇労働者の健康保険の対象の中でも、所得のうんとふえている人もいることはいるのであります。そういう人々からはやはり納めてもらう。それから、事業主について言うならば、これは低い人を雇っておろうと高い人を雇っておろうと、事業主の負担にそう差をつけなければならぬという実態はないはずでありますから、事業主の分については、やはり収支を合わすために必要な分だけは確実に出してもらうようにと、大体そんなことを基本にしましていろいろいじくっているわけでございますが、先ほど会計課長が申し上げたように、まだそういう細部の点で固まりませんので、非常に大まかなワク要求みたいなことで要求しているわけでございます。
  32. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) いま私聞いておりまして、小山さん、政府管掌はいま千分の六十三ですか、で、組合管掌は千分の三十から千分の八十、その中でやるわけですが、千分の七十以上は使用者が一方的に負担をする、こういうことになっておって、いま阿具根さんの言われていることは、炭鉱のたくさん首切りがあって、千分の八十でも組合管掌の健康保険組合がもたないという議論が私はされているんだと思うのです。これはやはり歴史的に健保をくずしてしまったらゼロになるわけですから、何とかそこを守っていく処置というのは、炭鉱の、特に組合管掌の健康保険組合に特別な処置をいまおとりにならなければ、炭鉱の健康保険、組合管掌の健康保険はほんとうに窮地に立っているという、私はそういうぐあいに見ている。ここを阿具根さんも言われていると思うのだが、炭鉱の健康保険に対して援護処置というものを厚生省が考えているのかどうかということをもうちょっと明らかにしてもらいたい。私は質疑を聞いておりまして、そういうことを明らかにしてもらいたいという気持ちになっているのですがね。
  33. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) 先ほどひとまとめにして申し上げましたけれども、その措置を健康保険組合に対する給付補助金でやっていくと、こういうことを申し上げたわけであります。今年度の予算でいえば二億円計上されております。これは弱小健康保険組合に対する給付補助金でございますが、この補助金の使い方において、ほとんど全部を炭鉱に集中をしてそういうふうな処置をとっていこうと、こうしているわけであります。それから、また、もう一口と申し上げたのは、それとは別に、今度は医療報酬の引き上げがあれば、それはそれでやはりいまのような状態のところには、ちょうど国民健康保険について保険料を上げないで済むようにするための臨時の補助的に出すと同じように考えなくちゃいかぬと思いますと、こういうことを申し上げたわけであります。
  34. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 私のお尋ねしたいのは、組合管掌の健康保険組合に二億円ぐらいの補助金では、いまの炭鉱の組合管掌健康保険はとてもどうにもならぬというのがずっと長く炭鉱の組合から言われているのです。ということに対して抜本的な処置をお考えにならないかということを聞いているのです。
  35. 小山進次郎

    説明員(小山進次郎君) 抜本的と申しましても、やはり未来永劫いまの状態が続いていくんだとすれば、これはやはりある時期に政府管掌と一緒になってもらうことを考えていただかにゃならぬわけでございます。むしろそれが原則で、それぞれ特別の事情があって自立してやっていくというものについて組合をつくっているわけでありますから、ただ、先ほど来のお話のように、私もいまの炭鉱の組合が置かれている状態というのは過渡的な状態だと思います。一つは継続給付の割合が非常に高くなっているというようなこと、そういうようなことなんかは過渡的なことだと思いますので、そういうような過渡的に出てきている非常に苦しい状態については、いまの給付補助金で処置をする。二億円の問題は、おっしゃるように、私ももっと多くしたいと思っておるのでありますが、ただ、毎年予算折衝の過程において思うようにとれないで、そのあたりにおさまっている。実情を申し上げますと、その程度でさえ、とかくどうも冷たい空気が流れておりまして、組合といえば、もう補助金なんかとんでもないと、こういうふうに言いたがる空気がありますので、私は、そうじゃないのだ、組合でもこういうような組合があるので、それに対しては何とかして助成しなけりゃいかぬのだ、こういうことをある方面に対しては非常に苦戦をしておりますのでそういう妙な言い方をしたわけでありますが、金は全体としてもっとふやしたいと私は思っております。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで、まあ大臣の代理をして政務次官が見えておりますので、政務次官の考え方をひとつ聞いておきたいと思うのです。  実は、いままで論議してまいりました日雇健康保険とか炭鉱の組合保険とかというものは、いわゆる社会の一番底辺で働いておる人が、いわゆる年齢からいっても日雇いで四十二歳とおっしゃっている。炭鉱は三十九歳、しかも、非常に作業環境が悪くて、そして少しの病気でもなかなか医者にかからなければできないし、休まなければできない。たとえば炭鉱でいえば、ちょっと下痢しても坑内には便所はありません。そういう関係で、これは休まなくちゃいかぬ。水虫ができても、なかなか坑内じゃうまくいかぬ。また、日雇い労働者でいえば年寄りの女の方が多い。また、年寄りの男の方が多い。夏は炎天のもとで、冬は雪空で土方仕事をしなきゃならぬのですね。そういう環境にあるので、当然私はこういうところは赤字になるのだと思うのです。たとえば背広を着て暖房の中で働き、冷房の中で働き、土曜は半日で休んで、祭日は休み、日曜日も休み、山に行く、ゴルフをする、川に行く、舟遊びをする、そういうレジャーを楽しんで健康を維持するところは私はそう心配することはないと思うのだ、極端に言えば。それよりも、こういう一番底辺で働いておる人は、わずかの保険料でも、上がったことについて非常に生活に響く、まあこういうことでございますので、ひとつ特にこういう気の毒な労働者層に対しましては、こういう社会保障的な考え方が多分にある健康保険等については、国が積極的に応援をしてやる。そして、わずかな日給で、極端なことをいえば、生活保護以下の給料をもらっておる人がおるのが現実なんです。そういう人たちに対する自己の負担を上げるということを極力避けて、国の政策によってこれをひとつカバーしていってもらいたい、こう思うのですが、徳永政務次官のお考えをお聞きしておきます。
  37. 徳永正利

    説明員(徳永正利君) ただいま阿具根委員のお説のように、年齢的にも、また、作業環境の面におきましても収入の面におきましても、非常に他の方々よりふしあわせな面にいらっしゃいます問題につきましては、先ほど保険局長が申しましたように、十分政府といたしましてもこれをカバーするように懸命の努力をいたしたいと存じております。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 次に、きょうの予算要求説明をお聞きしますと、いろいろ非常にいいことばかり書いてあるようです。確かに考え方としては、これはガンの問題、精神病の問題、結核の問題、その他いろいろ出ておりますが、ハンセン氏病に対しては何の予算要求していないようだが、一体どういう考えなのか、ハンセン氏病に対してどういうお考えを持っておられるか、この点をお聞きしたい。
  39. 徳永正利

    説明員(徳永正利君) ハンセン氏病につきましては、非常なふしあわせな病気にあられるわけでございまして、私も就任いたしましてから、これは一番気の毒な方だと思って療養所を視察にまいりました。いろいろ御意見も拝聴いたしましたが、この予算書の中には大まかなものしか書いていないためにそういう項目があがっておりませんが、詳細につきましては医務局長から説明をいたさせます。
  40. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) らいの関係予算でございますが、これにつきましては私のほうのらい療養所の経営、それから公衆衛生局のほうの一般のらい行政に対しての予算と、二つに分かれておりますが、まず、医務局のほうの予算を私から申し上げますと、らい療養所の経営費は昨年が二十五億、それを二十九億に増額して要求しております。その内容は、人の経費などが非常に多く、本年度要求は九千五百万で、総額は十三億ということになっております。これは単価増等でございますが、特に療養所の関係では、患者さんからの要求が強く行なわれております患者付き添いを切りかえまして、専任付き添いにするというふうな問題、これに対しましては百五十名の増員を要求しております。  それから、その他大きな問題を申し上げますと、医療費関係、これも一人当たり一日十八円だったものを二十二円四十七銭に増額要求しておりますし、金額といたしましては、総額は七百九十五万円を二千六十三万円に要求してございます。それから、患者さんの関心の深い日用品費につきましても、一人当たりこれは月千三百七十五円のものを千八百二十七円に増額する。また、不自由者慰安金等につきましても、それぞれ特に外国人の障害者、これがだいぶ患者さんのほうの要求が強うございますので、年金等の動きともからみ合わせまして増額要求してございます。  次に、食糧費でございますが、これは一般食百二十六円、これを百四十二円に増額要求してございますが、これはしかし、もう少しあとでほかの食糧費の動きと比べ合わせまして補正するかもしれませんが、いまのところそうやっております。特別食は百五十八円六十銭を百七十九円にしております。患者関係の費用、生活物品費とか、被服、寝具というものにつきましても、単価を上げまして要求をしておるわけでございます。こういうふうにいたしまして、できるだけ患者さんのお気持ち、要求しておられるものを一〇〇%ではございませんが、それに沿うように要求をし、なお、療養所の運営費と、いまの初めに申し上げました費用とは別に、整備費といたしましては、昨年は一億の整備費だったと思いますが、それを三億五千万だったかと思いますが、それくらいに増額をして要求するようにいたしております。大体そういうふうな状態で、患者さんの要求をできるだけ取り入れて要求するようにいま努力しております。
  41. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) 国立らい療養所以外の分については公衆衛生局が担当いたしておりまして、療養所の生活以外の分といたしまして、療養所に入所しております患者の家族が生活に困っておるということを援護する、この援護は生活保護法の線でやっておりますけれども、患者の秘密保持等の関係から、生活保護法とは別に、都道府県のらい担当者が直接これを実施いたしております。その人数が現在約一千世帯でございまして、この生活援護の費用が一億七千万ほどございます。これにつきましては、生活保護法の基準等が上がりますと、それにスライドいたしまして自動的に上がる仕組みになっておりますので、金額については生活保護法と同調いたすことになります。  なお、そのほかに、らい療養所を退所いたしました患者が社会に復帰するために就労助成等をやっていかなければならないということで、就労助成金というものを本年度から設けておりますが、これも人数、単価等を上げたいということ、退所されました患者につきましてもなお治療を要する、もちろん菌がございませんから、伝染のおそれ等はございませんが、治療を続けたほうがいいというものは民間の医療機関、民間といいますか、療養所以外の医療機関でも、将来民間に帰ってから治療が続けられるということにいたしたい。また、現在在宅の患者が八百名ほどございますが、この中にも治療を必要とする者があれば、それは治療をさせてやりたいということで、在宅患者治療費というものを来年度から新設したいということで、その費用を若干組んでおる。約五百万程度でございますが、これは来年度は試験的な形になろうと思いますが、そういうことでやりたいということで新たな予算要求をいたしております。
  42. 阿具根登

    ○阿具根登君 いまの問題について質問しますが、患者の家族に対して、生活保護でなくて援護法でやっておられるから、この家族が病気になった場合、これは自分の主人といいますか、働く人がハンセン氏病だということを証明しなければ医療保護を受けられないわけです。だから、家族としてはそれを明らかにすることが一番苦しいのです。自分の家の主人がらい病で入院しておるのだという証明がなければ医療保護を受けられないというのです。だから、泣く泣く自分たちのわずかな金で医者にかかったり、あるいは金がないから医者にかけない、こういう現状であります、生活保護であればですね。生活保護の家族は医療費援護を受けられるわけなんです。ところが、この援護費にしてあったからわざわざこの家族の治療が困難になってきていると、こういう実情です。それはどういうふうに考えておられるのですか。
  43. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) お話のように、現在家族が、らいであるということをできるだけ秘密にしておきたいということのために、生活援護それ自体も別に取り扱っているわけでございます。もしも生活援護それ自体が予防法によらずに生活保護法によりますと、生活保護を受けることそれ自体が、この家族が、らい療養所に入っていて生活ができないということを村役場に対して公表いたしませんと生活保護を受けられないという実情でございますが、その村役場、あるいは福祉事務所というような、非常に身近なところにそのことを暴露するということが非常につらい、せいぜいその県の担当官一人であれば、これはまだ秘密の保持が非常に楽であると思う。したがって、県の担当官というものは、その届け出その他は保健所も何も通じないで、直接衛生部長に報告をし、そして担当官だけが処理をするという方式をとっているわけでございます。もしも生活保護を受ける段階においても、町役場、村役場、あるいは福祉事務所なりにその旨を公表して生活保護を受けるということになっていますと、いまの問題は生活保護を受ける段階ですでに公表されますから、医療扶助を受ける場合にもそのまま漏れるわけでございます。しかし、それが非常につらいということで、せめて経常的な生活援護だけはそういうふうに秘密にやろう、もしそのほかに医療扶助が出てきた場合ならば、担当官のところへ知らしていただけば、担当官が秘密のうちに福祉事務所その他と連絡し、その手配をしましょうというふうな制度になっておりますので、もし将来そういうことがいやであって、ある程度ハンセン氏病といえども、もうそうおそろしい病気、忌まわしい病気ではないのだ、したがって、普通の結核やその他と同じような扱いをしてくれというような声もございますので、そういうような段階になれば、いまのような秘密主義はむしろ撤廃いたしまして、普通の生活保護と同じ取り扱いをする、したがって、医療扶助も普通のこの一般国民と全く同じように扱うという段階になると思うのであります。いまのところ、まだそこまで割り切っておりませんのでこのような若干の不便が出ておるという状態でございます。
  44. 阿具根登

    ○阿具根登君 いや、その逆のほうでね、生活保護でみてくれというのではないのです。まだそこまで言っておらないんですよ。その援護法で保護してもらっておる家族が病気になったときに、そういう係官に手続きをして、ハンセン氏病であるという報告をすることが耐えられないというのですよ。だから医者にもかかれません、こう言っているから、援護法でこういう特殊な人を保護しておるならば、その人が病気になった場合は、要するに生活保護を受けておる人が病気になった場合は医療保護が受けられるように、なぜそういう手続きをせぬでも医療保護を受けられるようにしないかと、こういうことを言っているわけです。せっかく秘密にして援護法というのでかばってくれておるなら、病気になったときになぞそれをかばってくれないかということをぼくは言っておるのですよ。あなたの場合は、そのくらいはと言うけれども、実際私は今度こういう病院を回ってきたんですけれども、実際その人たちが言っているのはそのことなんです。だから、ここまで秘密にしてくれるならば、やっぱり病気になったときには特に秘密にしてあげられるように、援護法の適用を受けておるならば、医療保護もそのまま受けられますよということになぜできないかということを聞いているわけです。
  45. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) 私は、もし、らい予防法で生活援護をやっていると同じように医療扶助をやるといたしますと、らい予防法による医療扶助ということが行なわれるわけであります。そういたしますと、医療機関にかかった場合に、その医療費の請求法は、らい予防法による医療扶助の請求ということが出てくるわけでございます。これまた非常に多方面にらい予防法の請求というものが出てくるわけでございますから、らい予防法の医療扶助の請求というものが出てきますと、さらに広い範囲にこれが知れわたる。むしろ府県のらい担当官が福祉事務所と話し合って、その段階でできるだけ秘密を少なくしながら一般医療扶助にかければ、医療費の請求その他も一般医療扶助としてやれる。したがって、秘密が人に漏れなくて済むということでございますので、もしも医療扶助までらい予防法でやりますと、若干秘密の漏れが大きくなると思います。たぶんそこら辺のところをお考えになって——ただおそらく手続が若干都道府県の担当職員を通じるというような不便があるために、その点を強く押し出されると思いますけれども、もしも、らい予防法でやったら、さらに大きな秘密の漏洩、あるいは公表という事態が起こることをもう一度お考えをいただきたいと私は思います。
  46. 阿具根登

    ○阿具根登君 悪いように悪いようにとあなたとって弁解をしておられるけれども、らい予防法で受けろなんて言っているわけじゃないんです、私言っているのは。あなたはだんだん解釈を大きくして、これは悪いあれは悪いとおっしゃっているけれども、援護法で受けているならば、援護法の中にこれはらいの家族だということがわかっているはずだ、援護法を適用している人は。そうしたら援護法を受けている者、その家族であれば、わざわざその手続をして持って回らぬでもなぜその医療扶助ができないかということを言っているんです。あなたはそうじゃなくて、らい予防法でやらなければいかぬとか、これはらい予防法でやる必要はない。生活保護だったら、生活保護を受けている人たちは、これは医療保護を受けられるようになっているんです、そのまま。だからそれと同じように、らいの家族を生活保護でやるというなら、らい患があるから援護法でやりますよと言って援護法でやっているのだから、その援護法でやるときに、この家族は医療の保護もみてやるべきだという措置がなぜとれないかということを言っているわけです。
  47. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) いま援護法ということばをお使いいただきましたけれども、援護法というものはないので、らい予防法の中で全部生活援護をいたしております。したがって、全部らい予防法でやっているのでございます。いまおっしゃいました線は、確かに私の答えが少しはずれておりましたが、要するに、らい予防法で生活援護をしている者は福祉事務所その他へ、一括この者は生活援護を受けているのだということを教えておく、そうすれば、その者が医療扶助を申請した場合にも、すぐこの者は生活援護を受けているそういう階層であるということがわかる。したがって、自動的に収入認定等を省いてやれるということになるわけでございますから、そういうためには、この患者の家族で、らい予防法による生活援護を受けている者については、あらかじめ担当の福祉事務所に一括してその旨を届けておく。そうすれば、その担当官をわずらわさずに、自動的にすぐそれが証明されるということになるわけでございますが、そういう方法が望ましければそういう方法をとってもいいと思います。
  48. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうでなくて、私がわからぬのは、あなたが故意にそう言われているのかもしらぬけれども、らい予防法による援護を受けているならば当然わかっているでしょう。それはわからないんですか。らい予防法による援護を受けているということはだれがわかっているんですか。
  49. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) 原則的には、これは本人と援護を受けている家族と、らい担当者しかわからないことになっております。ただ、年金その他のいろいろな問題が出てまいりますので、そういう場合に、市町村の年金その他の係に個別的に連絡することはございます。そのほか一切わからないというたてまえになっております。
  50. 阿具根登

    ○阿具根登君 それで、その範囲内で担当官は、らい予防法による援護を受けているということを知っているわけですね。ご本人も知っているわけです。その範囲内でなぜ医療保護が受けられないかと言っているわけです。なぜそうしていただけないかということを言っているわけです、私が言っているのは。担当官は、らい予防法による援護をこの家族は受けていると知っているんでしょう。知っているならば、その範囲内で医療保護が受けられるようになぜできないかということを言っているわけです。
  51. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) ですから、もしも、らい担当官と援護を受けておる本人の間だけで話をつけようとすれば、らい担当官が生活援護をしていると同じような医療扶助をしなければならぬことになる。医療扶助をするとすれば、その医療機関に委託をしてやることになります。したがって、らい担当官が、この者は、らい予防法による医療扶助を受けるのだということを医療機関に通知して、その請求はまた別のルートでしなければいかぬ。それがさっき申し上げましたように、医療機関にも、あるいはその支払いを委託する支払いの機関にも、みんな、らい予防法の医療扶助の申請ということがわかってしまう。それが適当でないので、一般医療扶助のルートでやりたい。その一般医療扶助のルートでやるためには、らい担当官が直接福祉事務所等とできるけだ内密に話をしてそういうことをやるということで、現在のところ、私どもの考えとしては、一番秘密の少ない、しかも、若干の手数はかかりますけれども、一番簡略な方法でやっているということだと私ども考えております。
  52. 阿具根登

    ○阿具根登君 そのらい担当官がそんなら病院へ行って、これはらい患者の家族であるということはいずれにしても言うのでしょう。あなたの言う場合は、何にも言わぬが、医療の請求はどこにくるのですか。やはりそっちへくるのでしょう。結局同じことじゃありませんか。あなたのおっしゃる場合は、わざわざ書類をつくって、そして私はらい病者の家族でありますというようなやつをそれに一札入れて持っていかなければいかぬということは苦しいのですということを言っているのです。結局私が言っているのは、それを持っていってその担当官にやって、その担当官が今度は保険医なら保険医のほうに、これはらい患者の家族じゃからこっちのほうに回してくれと、どっちにしてもそれを言うのでしょう。あなたは、こっちはもっと広がりますと言うけれども、その場合は一切ただその人だけで、医療費はその場で払うか何かするのですか。どっちにしても同じでしょう。同じなら、ちゃんと医療担当官もその家族はわかっているのだからいいじゃないかということを言っておるわけなんですよ。
  53. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) ですから、現在の方法でやりますと、医療担当官と家族しかわからぬわけです。それ以外の方法をとりますと、それ以外の医療機関とか支払い事務者が全部わかってくることになるわけです。したがって、いまのところは、らい担当官が福祉事務所と話し合って、らい患者の家族であるということは、その福祉事務所の医療券を出す担当者にはあるいは場合によっては話すことがありますけれども、そこを過ぎれば、もう一般医療券でございますから、もう医療機関においては、らい予防であるか家族であるかということは全くわからぬようになっている。それをもし別のルートでやるとすると、どうしても支払いから何から全部別のルートをつくって、したがって、医療機関も、この人がらい患者家族であるということはわからざるを得ない。そうなってきますと、結局らい患者家族も、おそらく医療機関もいやがってくる。そういうようなことで非常にぐあいが悪いので、一切わからぬようにしてやるのが実情でございます。
  54. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ似たようなことを言っておるようですから、これはもう一回よく私も調べてみますが、あなたがおっしゃるように秘密になっておらないからみんながこういう陳情をしてくるわけなのです。私が行ったところにおいては、らい病患者の家族だということがわかって医者にもかかれませんと言って、泣いて陳情しておるわけです。だから、あなたがおっしゃるほど秘密が守られておらない。そういう病気になりましたという手続をする場合に、非常に何かそういうらい病の家族だということがわかって、とても病院に行けませんということを訴えておりますから、あなたの言うようにはいってない、私はそう思う。私も調べてみます。  それから、こっちの問題ですが、治療費が二十一円のやつをいま三十円ぐらいするとおっしゃったのですけれども、これはお医者の方々からも聞いたり、院長からも聞いてきたのですが、医者の立場から見ても、四十円というのはどうしても要ります、こういうことを言っているわけです。その四十円というのが要求にもなっておらないということは一体何なのか、それから、もう一つは、この患者の付き添いですね、これは三十五年に五カ年計画で患者の付き添いは一切廃止すると厚生省がおっしゃっている。これは全然廃止の気配がない。だから、約束されたように来年度は全部廃止されるかどうか。廃止されなかった場合に、らい患者の軽症者が重症者の手当てをしているわけなんですよ、付き添いをしているわけです。それに平均が五十円から七十円の手当なんですね。あまりにもらい患者を人間扱いにしていないと思うのです。いまじぶんに五十円の手当で何ができますか、あまりにもむちゃじゃありませんか。五十円ですよ、重症患者で八十円ぐらいですよ、私の調べてきたのでは。それではあんまりむちゃくちゃですよ。一般の健康な人を付き添いにつけたら、おそらく千円以下じゃ来ないでしょう、私はそう思う。それは、らい患者なるがゆえに付き添いをやらしておいて五十円とは何ですか、大体。それでなかったら、お約束があったように、三十五年から五カ年計画で、病人に病人の看護をさせるということはできないのだから、これはやりませんという約束をされているなら、今度の予算では、どういうことがあっても、全部の軽患者の付き添いをやめさせなければならん。それは一体どういうことですか。
  55. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) 第一点の医療費の問題でございますが、確かに患者さんのほうからは一人当たり一日四十円という要求が出ておりますが、これまでの実際の実績、それの伸びというようなものを考え、また、病院側のほうとも担当官がいろいろ打ち合わせしましたので、二十四円四十七銭というぐらいの金額でやっていける、こういうふうな考え方を持っておるわけでございまして、実は昔、少し余裕がございまして、医療費関係で薬を買い込み過ぎて二年間もストックを持っておったりしたことがありまして、いろいろ検討している実情でございますが、医療機関でございますので、必要な医療費は十分確保するようにわれわれも努力していきたいと思っております。  第二の、付き添い切りかえの問題でございますが、確かに重症な不自由者に対しましての付き添いを一般の方の職員の手によってやろうという計画を立てまして、五カ年計画で二百五十名の職員を入れたわけでございます。それは予定どおり全部二百五十名が予算は取れたわけでございますが、ところが、初めの不自由者の数の認定等につきまして、いろいろ施設によっての差もあった。さらに、やはり一般職員に付き添いをやってもらいますと、なかなかうまくいったものでございますので、患者さんのほうの要求も大きくなった。さらに言えば、できるだけその範囲を拡大しようという動きもあり、また、一方、年齢の高進等によりまして、不自由者の数も事実多くなってきておると思います。そういうようなことで、初めに予定いたしました二百五十人の職員ではこの切りかえがうまくいかなかったのでございます。それで、第二次計画を立てまして、あと五年間で付き添いを全部切りかえるというふうな考え方をやったのでございますが、今年ですか、いろいろ騒ぎもあって、今度の大臣等におきまして、今度はもう少し強力にやれということで、いま百名の増員を要求をしようと思っておったのを、百五十名にふやして要求しておるような状況でございまして、一挙にあと必要なものを全部要求すればいいじゃないかという御意見もあると思いますが、これはやはり建物の整備をできるだけ職員によりまして能率的に介抱ができますような設備をやはり整えるというような、切りかえの順序というような問題もございますので、一挙に全部というようなところまではちょっとわれわれとしてはやれなかったわけでございます。  なお、現在、患者同士で付き添いをやっているという問題でございますが、これは私はできるだけお互いが助け合う、国民の負担が少なくて済むものはやってやるといったような考え方は全般的に考えていただきたいと思いますが、しかし、この重症者の付き添いは、お話がありましたように、何とか一般職員によってやるように切りかえていくという方針は、これは取り続けておるわけでありますが、その重症者に対しての付き添いの費用でございますが、謝金といたしましていま五十円というお話がございましたが、これは少し数字が違っておるのではないかと思いまして、一回いま予算では百三十四円に付き添いがなっております。それから特別作業が百円、一般作業が四十五円と、こういうふうになっておると思います。付き添いの関係は、やはり相当御苦労も多いということで、余分に計上しております。それを百九十円にふやしたい、付き添い関係を百三十四円を百九十円にふやしたいということに要求はしておるわけであります。これはただ一般の労働者の労賃に比べておかしいじゃないかというお話があると思いますが、患者さんに住宅、衣食住等の全体の保障ができておりますので、労働という問題では同じかもしれませんが、やはりその労賃はほかのものとちょっと考え方を変えてわれわれとしては従来から考えておる次第でございまして、できるだけこの点も増額をいま暫定的にすると同時に、切りかえをしていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  56. 阿具根登

    ○阿具根登君 いまおっしゃったとおりなんですよ。だから、平均すれば七十円、あるいは五十何円になるわけなんです。それは私がさっき言いましたように、重症者の付き添いについては幾分みてあるけれども、その他の作業員はこれは四十何円。そうすると、おしなべていけば五十何円の平均だと、こうなるわけですね。おっしゃるように、それは生活も何もみておられるけれども、あの人たちはあれだけの社会なんです。あれから出れないのです、どこにも出れないのです。そして十軒くらいの長屋になっておりますね。一間に夫婦の人たちが入っている、そこが自分の永久の住みかである、こういう極端な気の毒な家庭の人であるから、だから、それは食事を運ぶとか、あるいは掃除をするとかいう、そういう人たちが四十五円でいいじゃないかということはあまりに私は冷たいと思うのです。それから、重症患者に付き添っておる人が百三十何がしから百九十円でいいじゃないかというのも私はどうかと思うのです。やはりそういうのを全部職員でやってしまえばどのくらいの金が要るか、また、その職員がすぐにそろうかというて、そろわぬならばそろわないで、そのかわり軽症者の方がこういうことをやっていくということについては、それは職員のための金をやれということは私は言いません。あなたがおっしゃるように、いわば気の毒な病気をしているのだから助け合うという気持ちで、それは差があってもいいと思うのですよ。しかし、かりに私が職員でそこに雇われるとするならば、相当な高額を要求します、私は。それであったならば、その人がまだ足らないとするならば、その代理をしておる人たちにもっとあたたかい手を伸ばしていいんじゃないか。要求だって百九十円どころじゃなくて、少なくとも三百円の要求をしてやってもいいんじゃないですか。また、作業をしておるなら、少なくとも百五十円なり二百円の手当をやっていいんじゃないでしょうか。これを実際それならどれだけの予算になるか、私が調べた範囲内では、全国十三カ所に一万一千人です。違っておるかもしれません。それはあなたのほうが詳しい資料を持っておられる。私は二、三カ所回ってきて聞いたんですが、十三カ所、それから私立が三カ所かありますね、全部で一万一千人と聞いております。その一万一千人の中の重症者を残して、そして軽症者の一部の人がそういう仕事をしておるとするなら、もう少しぐらいみてやって喜んで看護もしてくれるように、逆に軽作業ならわれわれにやらしてくれというくらいにやったほうが、私は国の経済から見ても人間的に見てもいいんじゃなかろうか、こう思うのです。いかがなものでしょう、これは。
  57. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) このいまの作業賞与金と申しましょうか、の問題につきましては、いろいろ単価につきまして問題がございまして、また、一日の働かれる実際の時間の作業量というふうな問題も考えてみたりしておるのでありますが、実際には、たとえば一般の軽作業というのでは、一日に働かれる時間が比較的少ないのであります。それで、ほかの一般の方の一日の労賃というものとの比較は必ずしもできないと思いますし、先ほど申しました衣食住の全体の保障ができておる方と、その労賃によって生活をされる方の差はあると思いますが、いずれにいたしましても、この賞与金はわれわれはふやしたいというので、先ほど申しましたように、一番問題になっております付き添いの賞与金は百三十四円を百九十円、また、特別の重作業になりますものは百円を百四十二円と、こういうふうにふやして要求しておるわけでございます。ただ、一般の作業が、これは比較的時間がわりあい少ない、またも軽いというふうなところで、単価を四十五円そのままにことし、来年と据え置いて要求しておるところにいまおしかりがあると思いますが、さらに検討さしていただきます。
  58. 阿具根登

    ○阿具根登君 それから、外国人の問題については、先ほどちょっとお触れになりましたが、これは差は撤廃される考えですね。  それから、日用品の問題については、千八百二十円要求されておるとおっしゃっておるのは、結核患者や生活保護者と同じ考え方ですね。結核患者等が千八百二十円、日用品を計算しているとそれと同じだと、同じように今後も待遇されるのだと受け取っていいですか。
  59. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) そういうふうな線で努力していきたいと思います。
  60. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、ほかに本件に対する質疑がなければ、本日の本件に関する審議はこの程度にとどめたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ひとつ公衆衛生局長委員長からお願いしておきますが、最近梅毒症がだいぶ蔓延しているということをわれわれは耳にしているわけであります。これは、これが家庭に入ってくるということになるとたいへんなことになりますから、きょう質疑はいたしませんから、社会労働委員会としてこれは非常に浮き彫りにして国民に訴えなければならぬ問題だと、こう思っているわけでございますので、できるだけ学問的、また、実態的、また、対策の問題を含めた資料を各委員に配付していただいて、その上に立ってここで問題を明らかにしたい、こう考えますので、そういう準備をひとつお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  62. 若松栄一

    説明員(若松栄一君) できるだけ早く資料を準備いたします。   —————————————
  63. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、次に看護行政に関する件を議題にいたします。
  64. 林塩

    ○林塩君 看護行政につきまして若干お伺いしておきたいと思います。看護関係者、すなわち、看護婦、准看護婦、保健婦、助産婦という数がたいへん不足して、助産婦の問題は別個といたしましても、非常に不足しているという問題が社会の問題になっております。このことは前国会以来、当委員会におきましてもたびたび私発言をいたしまして、当局のそれに対するいろいろな施策についていろいろ要望をしてまいりましたのでございますが、それと関連しまして、なお続けて質問をいたします。きょうはそのうちの一、二点にとどめたいと思うのでございますが、最近医療費問題と関連いたしまして、まあ一般にいいますと、医療費の不足が看護の方面にしわ寄せされて、そうして、それであるので看護関係の給料が上がらない。これは上がらない理由はよくわかりますけれども、医療費医療費といっておりましても、看護関係にそういうものが非常にしわ寄せられておる現状というものがよくわかるわけでございます。それで、具体的に申しますと、将来看護関係の法律を改正しようとするときに、厚生当局は、そういうことを加味しまして、そしていわゆる安上がりの看護をしていこうという傾向がある、こういうふうに考えられるということでございますが、そういうことを一体考えているのかどうか、それについて当局の看護行政に対する態度を伺いたいと思います。
  65. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) 安上がり看護とよく言われるようでありますが、医療をできるだけ合理的にというふうな考え方はもちろん一方にはありますが、同時に、われわれといたしましては、よい医療確保するというのがわれわれの仕事だと存じております。したがいまして、よい看護、これには看護関係職員の質の向上と数の確保という点でものを考えておるわけでございまして、決して安上がり看護というふうにいまの状態を落としていくという考え方は持っていないわけでございます。よく看護関係の方々の中からわれわれにも、たとえば看護婦さん准看護婦さんのほかに、看護補助者を使うという考え方を厚生省はしておるようだが、それは安上がりな考え方ではないかというふうな御質問がございます。われわれは、いまの日本の医療向上、また、生活の向上によりましての看護の需要の増大、必要性の増大という立場からいまの看護要員の数をふやさなければいけないというので、看護婦さん、准看護婦さんの現在の比率はいまより落ちるということでなく、少なくとも現状を維持するとかふやしていく、それにプラスの補助者というような立場で私たちはものを考えていままで言っておるわけでございまして、そのためには看護婦さん、准看護婦さんの数をふやさねばならないというので、その養成の増大に努力をし、なお、さらに根本問題といたしまして、労働条件とか待遇改善を努力をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございまして、いまのお話のお伺いとは逆の方向にわれわれは考えを持っておるわけでございます。そういうような立場で、看護法の改正に直接関係するかどうか、ちょっと問題がございますが、全体の姿勢としてはそういうふうな姿勢でおるわけでございます。
  66. 林塩

    ○林塩君 それで、よくわかったのですけれども、とかくそういうような態度があるということをよく言います。医療費の少ないためにそのしわ寄せがきておりまして、いま局長の言われました、例の看護関係者の待遇が上がらない、それだけではないのだということもございますが、制度的にも上がらないようになっているということもわかりますが、しかし、要は医療費の問題が大いに影響しているだろう、こういうふうに思います。  ところで、看護制度に関する意見要旨というのが厚生省から八月三十一日に発表されております。これは当時いろいろ論議がございまして、それにつきまして厚生省は、この方針でおそらく将来看護制度を改正するだろう、一部看護制度の改正ということが昨年来懸案になっております。次の国会にはそういうものが出されるであろう。それから、また、医師会からの強い要望がありまして、准看護婦を看護婦のように持っていく、その持っていき方に問題があると思いますが、日本の看護制度は中学卒業して二年の教育、とうとい人命を預かるはずである看護関係者の教育を社会的に考えてみましても、そのくらいにしてよいかということは、これは厚生行政として、してはならないと考えるのでございますけれども、数の問題と、それから、医療費関係、そういうものと関連いたしましてそこへもっていくであろうというようなことをしきりに言っておりますので、これはいまおっしゃいましたのでよくわかりましたが、そういう意図はないんだということでございますが、それと関連いたしまして、中間報告として出ております意見書の中には、専門的に考えてみましても、いままで四年かかっていたという、この補助看の教育を三年に切り詰めて、したがって、そういうことにすることによって量を上げるのだというふうなことが書いてございます。この意見書については厚生当局はどういうふうにお考えになっておりますか、それについて伺いたいと思います。
  67. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) 一応いまお話がございました中間的な意見要旨でございまして、さらに有識者の方々から看護制度全般についての御検討を願い、最終的なお考えをいただけるものだと、こういうふうに思っておりますので、この中間報告は中間報告としてわれわれ一応いただいておる、さらに、また、関係方面のいろいろ御意見も聞くものだと思いますので、そういうようなことを考えあわせまして法律を変えるならば変えるというような立場をとっていくわけでございます。その他正看というものがいいかどうかわかりませんが、看護婦さんが高等学校を卒業いたしまして三年、その上に保健婦さんなり助産婦さんになられます場合には半年以上の教育が必要とせられておる。それを両方合わせれば四年、実際には半年以上というものが一年ぐらいになっておりますから、五年というべきかもしれませんが、それを今度はこの中間報告では、総合教育で三年でいろいろカリキュラムを変えてやったらやれるのじゃないかというふうな考え方、そのことは質の向上とおまえは言っておったけれども、低下になるじゃないか、こういうふうな御質問かと思います。これに対しましては、一応機械的な見方からいたしますとそういうふうな見方もできるかと思いますが、この問題はいろいろ教育に御経験の多い方々も委員の方でまじって中におられまして、カリキュラムを十分検討していけば、いままでの三年の看護婦さんのコース、また、保健婦さん、助産婦さんの半年以上のコースの中には相当ダブったものもある。そうして総合的なやはりコンプリヘンシブな看護というような考え方からすれば、そういうふうなものをできるだけ基調にうまくまとめて教育することが将来の看護関係職員の方々の養成に必要であり、また、それが三年間で十分カリキュラムの中に入るというようなお話でございまして、ただ、多少実習の時間が少なくなるので、そういうふうな実習を、保健婦とか助産婦の方方は、適当な認定した施設においてやっていただければ、そういうふうなことで、あと資格を与えても決して資質の低下にはならないのだというふうな考え方が漏らされたように私は存じておりますが、そういうふうな考え方が専門家の中から言われておりますとなれば、われわれとしても、はなはだ新しいけっこうな方向だと思いますが、実際にこれを実施いたします責任をとります行政当局といわしましては、さらに実際にカリキュラムがふえるものかどうかというふうな点、また、施設整備の問題というふうな点も考えまして、これを法案としてもし出すようなことがございます場合には、十分検討してからにする必要があると、こういうふうに思うのでございます。
  68. 林塩

    ○林塩君 それでは、いまの学識経験者の集まりであるという会自体がそういうものを出されたから、それで実際には技術的に考えてみましたらそういうこともあり得るという話し合いの段階でありますのを、それをそういうふうにもっていって、そうして、そういうことだから実情は考えない、実際においては考えません、多くの看護関係並びに世論がそうでないのに、ただそれだけをもって法律改正にもっていこうとする御意図はあるのですか、伺いたいのです。
  69. 尾崎嘉篤

    説明員(尾崎嘉篤君) いまから、現在の看護婦さんの養成所、また、保健婦、助産婦さんなどの養成施設というふうなものとの、この影響と申しますか、というふうな問題もございますし、また、いまのお話のようなカリキュラムの編成とかというふうなことにつきましても、われわれといたしまして、慎重に検討してでないと、ちょっとここですぐやるかやらぬかというふうなことまで申し上げる段階になっていないのであります。一応こういうふうな御報告をいただきまして、こういうふうな考えに対しまして、十分尊重してわれわれとしてはその実施の方向にも努力をしてみる、検討してみるというふうな立場にあると思います。
  70. 林塩

    ○林塩君 よくわかりました。一そうこのことは非常に重要な問題でございますので、医療制度調査会におきまして、医療制度全般についての改善基本方策に対する答申というのが出ております。その答申の中に、質、量ともの拡充をはかることが、国民の健康保持、増進の上に大事だと、医療制度医療の概念の拡大、したがって、近来のこういう国民の要望にこたえるためにはということがちゃんと出ておりますので、その答申というのを順奉して厚生当局が一応策をお練りになろうとは思うのでございますけれども、今回なされましたことは、非常にそういう全般のことを考えないで何かされたような感じがするわけです。それでまあ学識経験者ということは、これは一つ出ておりますけれども、しかし、これは個人の会でありまして、看護制度自体は非常に大事な問題でございますので、やはりそれに関連する各団体の意見が聞き入れられて、経済の問題もございましょう、数の問題、施設の問題、実際に働いております人たちのいろいろな意見というものも入れられて、それできめられるべきであろうと思うのでございますが、厚生当局はそれに対して非常に消極的な態度をおとりになり、われわれもそれに対して意見をすっかり入れて、できるだけよい厚生行政、その中で非常に大事な問題を持っておると考えております看護関係の意見というものを大きく取り上げてもらいたいという意味でそういう要望を出したのでございましたが、厚生省当局は、さっき申し上げましたように、非常に大きな団体で、医療は自分たちだけだというふうな考え方を持っておられるところの医師会の考え方については非常に重要視されて、それには団体に入らないか、その中に入らないかという要請をされておるにもかかわらず、われわれのほうは、そういう意見におきまして、医師会も労働組合も、すべて国民の健康に関するものであるので、そういう意味でそういうところで何かきめて、話し合いの場をつくってみんなの意見を聞いて、法律改正をするならばそういうふうにしてもらいたいという要望があったのです。そういう要望を入れられなかった厚生省当局のそういう、何といいますか、厚生行政の中の非常に大事と考えております、ことに看護関係が足りませんために起こってきております問題があるわけです。さっきも言われました精神病院にいたしましても、あるいは、らい療養所にいたしましても、至るところで看護関係者の数が不足をしておりますために起こってきておりますのがたくさんあるのでございまして、そういう問題の解決のときに看護関係というものを重要視されていないというような態度に対しまして、これは非常に重要だと思うのです。これは必ずしも量だけではなく、ことに医療近代化に伴います医療概念の拡大ということで、医療関係者すべてそれに参加していかなければならない、将来の法律はそういうふうにつくられるべきであると思いますが、そういう感覚において、ただ、これは医療費問題が大きな問題になっておりますので、それだけのことで、医療全般というものに対してのお考えが非常に狭いように考えます。そこから労働問題も起こってまいります。それから病院の状態も起こってまいります。ひいては医療を受ける国民一般の人たちへのいろいろな対策が重点的に、それこそ福祉国家の要望に沿わないようなことになってくるのではないかということを考えますので、数が非常にほしい、数だけではなくて、これはもう質が非常に大事だと思います。さっきも言われましたように、重点的政策という意味におきまして、何も全部看護教育を受け、あるいはものができる技術者である看護関係だけでなくても、やはり補助者も入れてよろしいことでございますので、そういう意味拡充をしていかなければなりませんが、ただ、看護関係を単なるそういうふうに数だけにしぼっていこうとする態度は、将来医療を非常に前進させないのではないかと思います。医師会の力が強いから、それで、そういう意味でそこばかりにどうも重点が置かれているような考えがあるわけです。政務次官もいらっしゃいますので、それについて特に意見を十分に入れて、ひとつ法律改正がなされるならば、妥当な線でなされるような方策をとっていただきたいと要望したいわけでございます。  それから、もう一つそれと関連いたしまして、今度臨時行政調査会から出ております許認可の問題にいたしましても、看護関係につきましては、非常にそういう監督は要らないのだ、指導は要らないのだというようなことが出ております。なぜ看護関係者に国家試験が必要であるか、あるいはそれについて統制が必要であるかというようなことにつきまして、もう少し厚生省自体も、看護自体をよく把握されて、そしてそれについてどう対策を組んでいくかというようなことがわかっておりますれば、そういうような調査会が出しましたような意見については、もう少し何らかの確とした対策ができてよろしいかと思うのですが、それについてひとつ当局の御意見を伺っておきたいと思います。
  71. 徳永正利

    説明員(徳永正利君) ただいま林先生からいろいろお話がございましたように、お説まことにごもっともと存じます。特に人員の不足等については、これはもう各方面から憂慮されているところでございまして、その対策等につきましては、先ほど医務局長が御説明申し上げましたその拡充をはかっていきたい、かように考えております。  なお、看護婦さんのことにつきましては、量ばかりではなくて、質の面においても確保がなされなければならないわけでございます。いろいろ御意見もございましたが、厚生省は非常に看護婦さんのことについて消極的だというお話でございましたが、かりにそういうことがございましたならば、今後改めてまいらなければならぬと思いますし、いままでにおきましても、私の承知しております範囲におきましては、そういう面に欠けておったとは思わないのでございます。十分反省してまいりたいと思います。なお、また、今後内容の検討につきましては、十分各方面の御意見を拝聴いたしまして、全きを期したいと思っております。  なお、臨時行政調査会の答申については、まだ出たばかりでございます。いろいろ各方面の御意見もあろうと思います。また、私どもといたしましてもまだ検討の段階でございまして、十分検討いたしまして結論を出したいと思っております。
  72. 林塩

    ○林塩君 そういう御答弁でございますので、一応きょうはこれだけにしておきまして、これはこのままだけの問題ではなくて、非常に大切な問題を相当含んでおりますので、引き続きいろいろなことにつきまして質問したいと思います。  それから、予算要求につきましても次の機会に聞いてみたいと思いますが、代々の厚生当局は、その看護問題については、前向きの姿勢で、きめこまかくとしょっちゅう言っておられますが、常に前向きでないということを考えます。ぜひ前向きの姿勢で、きめこまかくしていただきませんと、きめのこまかいところに持っていきませんとこれは向上しないわけでございます。うしろ向きの姿勢で、きめ荒くならないように、ぜひ来年度につきましては施策をお願いいたしたいと思います。  以上、簡単でございますが……。
  73. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 他に御発言がなければ、本件に関する審議はこの程度にとどめておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、本日はこれにて散会をいたします。    午後零時四十一分散会