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1964-09-30 第46回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年九月三十日(水曜日)    午前十時十五分開会   —————————————    委員異動  九月十七日   辞任      補欠選任    徳永 正利君  紅露 みつ君  九月十九日   辞任      補欠選任    鈴木  強君  千葉  信君  九月二十二日   辞任      補欠選任    千葉  信君  鈴木  強君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     藤田藤太郎君    理事            鹿島 俊雄君            亀井  光君            藤原 道子君            柳岡 秋夫君    委員            川野 三暁君            竹中 恒夫君            阿具根 登君            杉山善太郎君            鈴木  強君            村尾 重雄君            林   塩君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君    国 務 大 臣 増原 恵吉君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    大蔵政務次官  鍋島 直紹君    通商産業省繊維    局長      新井 真一君    通商産業省鉱山    局長      加藤 悌次君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働大臣官房会    計課長     鈴木 健二君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省労働基準    局労災補償部長 石黒 拓爾君    労働省職業安定    局失業対策部長 住  栄作君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (昭和四十年度労働省関係予算に関  する件)  (公務員給与に関する件)  (一般労働行政に関する件)  (激甚災害に対処するための特別の  財政援助等に関する法律の適用地域  における労働問題に関する件)   —————————————
  2. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ただいまから開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九月十七日、徳永正利君が委員辞任され、その補欠として紅露みつ君が選任されました。   —————————————
  3. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 労働問題に関する調査中、まず、昭和四十年度労働省関係予算に関する件を議題といたします。  政府の説明を聴取いたします。
  4. 鈴木健二

    ○説明員(鈴木健二君) 昭和四十年度労働省関係予算要求の概要について御説明申し上げます。  資料の第一ページでございますが、要求総額を掲げてございます。一般会計におきまして千五十五億九千二百万円を要求いたしております。これは前年度予算に比べまして二九%の増に当たる額でございます。労災保険特別会計歳入歳出規模は千六十億二千四百万円でございます。失業保険特別会計の歳入歳出の規模は千五百七十五億五千六百万円でございます。  以下、右の主要事項につきまして御説明申し上げたいと思います。  第二が、主要事項の概要でございまして、一が、積極的雇用政策の展開でございます。要求額といたしましては六百十億一千三百万円を掲げてございます。中身は、次に書いてございますように、労働力不足基調への移行と、その間に生ずる労働力需給面の不均衡に対処いたしまして、労働力の過度集中を避け、地域及び産業を通じ、均衡ある発展に寄与しつつ、雇用の安定をはかるために、地域別産業別雇用計画の樹立とか、労働力の有効活用、労働力の流動化の促進、労働市場近代化政策の推進、中小企業労働力確保対策等、数項目の事項をここにまとめて掲げてあるわけでございます。  その第一は、(一)に書いてございます地域別産業別雇用計画の策定と、これを推進するための雇用対策総合的実施でございまして、要求額といたしまして百三十一億四千八百万円を掲げております。その内訳は、イといたしまして、地域別産業別雇用計画に対応する都道府県雇用計画の策定及び推進でございまして、本年度産業別雇用計画の試案をつくりましたが、それをもとといたしまして地域別産業別雇用計画を策定いたしたいという予算でございます。  ロは、労働力流動化促進のための広域職業紹介活動の強化、移転就職者用宿舎の増設、雇用促進融資増額等対策の拡充でございまして、移転労働者用宿舎の建設につきましては、昨年どおり一万戸を要求いたしております。(ロ)の雇用促進融資は、昨年度六十億に対しまして、百二十億の要求をいたしております。その雇用促進融資の内訳は、住宅百億円、福祉施設二十億円でございます。  次のハは、地域開発のための雇用対策の推進でございまして、新産業都市を対象といたしまして雇用調整協議会を設置いたしまして、労働力需給の計画的な調整をはかろうとするものでございます。それとあわせまして、先ほど申しました移転就職者用宿舎とか、雇用促進融資を活用してまいろうという考え方でございます。  ニが、若年労働者及び技能労働者に関する求人秩序の確立でございまして、最近の労働市場を見てみますと、こういったものに対する求人秩序が乱れておりますので、学校に対する需給調整の指導とか、従業員の新規採用計画に対する指導、あるいは悪質な募集の取り締まりというようなことで求人秩序の確立をはかりたいとする予算でございます。  ホは、労働市場センターの整備拡充と業務実施体制の整備でございまして、昭和三十八年度におきまして労働市場センター構想が認められたわけでございまするが、これを大体三カ年で完成しようという考え方でございまして、昭和三十九年度におきましては、センターと五十四カ所の安定所を結びつけるという実施計画ができ上がっておるわけでございまするが、四十年度におきましては、さらにそれを二百十ヵ所の安定所と結びつけるという計画で実施をいたしたいという考え方でございます。  (二)が、農業就業構造の改善に伴う雇用対策でございます。金額といたしましては四億一千三百万円を要求いたしております。中身は、ここに書いてございますように、農業経営拡大計画の実施に伴って発生いたします転職者に対します就職援助措置の強化、たとえば職業訓練の実施等の就職援護措置の強化、出かせぎ労働者の雇用の安定をはかるための就労体制の整備、たとえば出かせぎ労働者が出てまいります場合に、全然労働に対する知識がない。したがいまして、その出かける前に講習会を開くとかというような事柄でございます。就労援護措置と申しますのは、たとえば就労の連絡相談所を設けるというようなこと、及び留守家族生活指導等の強化、こういったような内容のものでございます。  (三)が、港湾労働対策等の強化でございまして、これは港湾労働法の設置に関する事項でございます。なお、この問題につきましては、内容の概略は、イに書いてありますように、港湾労働者の確保と、その雇用の安定のための制度、指定港湾における雇用調整、雇用労働者の登録、登録日雇い労働者に対する職業訓練の実施及び手当の支給等でございまするが、概算要求いたします場合に、こまかく積み上げた積算ができませんので、新規といたしまして大体十億というふうに考えまして、ここに十三億二千六百万円の要求額を計上いたしておるわけでございます。  口が、建設業その他雇用の不安定な産業における雇用の正常化。これは(三)の港湾労働対策等の「等」に入るわけでございまするが、こうした建設業、その他雇用の不安定な産業におきまして臨時工等の問題がございまするので、これを常用化をするというための調査及び指導に充てる費用でございます。  (四)が、中高年齢層労働者対策の充実でございまして、六十七億二千八百万円を要求いたしております。  イは、中高年齢者の適職、中高年齢者のために留保すべき職種の指定並びに中高年齢者の優先採用ということに関する機運の醸成につとめるPR費等、現実に求人開拓をするための経費でございます。  ロは、就職指導、転職訓練等就職促進措置の推進でございまして、これは昨年度就職促進措置対象人員一カ月当たり一万人、年間十二万人という予算額が計上されてございまするが、それと同じ規模のものを来年度要求をいたしておるわけでございます。  ハは、中高年齢者を雇い入れる中小企業事業主等に対する雇用奨励金住宅確保奨励金等の援助措置の推進でございまして、これは新規の要求でございます。中高年齢者中小企業主が雇い入れた場合に、石炭の場合と同じように雇用奨励金を支給する、あるいは住宅確保奨励金を支給するという考え方でございます。石炭の場合を中高年齢者中小企業が雇い入れた場合に当てはめるという考え方でございます。  ニが、雇用情勢に対応する定年制度合理化等の指導でございまして、これは調査費でございます。  (五)の、炭鉱離職者の再就職促進のための諸施施策の実施でございまして、炭鉱離職者のための再就職促進のための諸施策は、三十八年度と実施項目は変わっておりません。新規のものをつけ加えておりませんが、従来やっているものを廃止するということもないわけでございまして、従来の施策をそのまま——若干規模等の変更、単価等の変更はございますが、そのまま実施していこうという予算でございまして、六十六億一千二百万円を要求いたしております。  (六)が、失業対策事業運営の適正化、失対就労者に対する雇用奨励制度の推進等、失業対策事業の改善ございます。この失対事業につきましては、統計資料その他まだ出ておりませんので、未確定要素が非常に多くて賃金等を決定するわけにいきませんので、一応昨年度の予算額をそのままで要求いたしております。ここに掲げてあります金額が若干変わっておりますのは、雇用奨励制度におきまして、補助率を若干変更要求をしておりますので金額が変わっておりますが、失業対策事業費といたしましては、一応昨年の要求額をそのまま要求額として掲げさせていただいているわけでございます。  (七)が、身体障害者の雇用促進のための雇用促進融資の活用、重度障害者採用のための援助でございまして、初めの雇用促進融資の活用につきましては昨年どおりでございますが、次の重度障害者採用のための援助は、昨年どおりと申しますか、三十八年度どおりでございますが、重度障害者の採用のための援助につきましては、これは新規でございまして、身体障害者を雇い入れた雇用主に対しまして、身体障害者作業補助費等の援助をしようという考え方でございます。  (八)が、以上の積極的労働市場政策の展開に対応する職業安定機構の再編強化及び機動的業務体制の整備で、金額といたしましては八億四千五百万円を要求いたしております。中身のおもなものは安定所の増設、マイクロバス等によります移動安定所の設置、増員等を中身といたしております。  二が、総合的中小企業労働対策の推進でございまして、百七十二億八千七百万円を要求いたしております。その中身は、ここに書いてございますように、経済の高度成長と産業構造の変化に伴いまして、労働力不足等中小企業の労働面に各種の問題が生じておりますので、このような現状に対処するために、中小企業労働対策を総合的、かつ、集中的に推進し、その労働条件の改善をはかり、所要労働力の確保を期することにあるわけでございます。  その(一)が、中小企業労働力確保対策の強化でございまして、百六十三億五千五百万円を要求いたしております。中身は、イが、中小企業技能労働者確保のための職業訓練の拡充でございますが、これは後ほど職業訓練の項と重複いたしておりますので、そこで御説明いたしたいと思います。  ロは、雇用促進融資の優先貸し付け、中高年齢層労働者雇用に対する雇用奨励金及び住宅確保奨励金の支給、これは先ほど中高年齢者のところで申しましたように、新規の事項でございますが、移転就職者用宿舎貸与等援護措置重点的活用並びにこれら諸措置についての指導、相談業務の推進のための、雇用サービスセンターの設置、これは新規でございます。  ハが、中小企業レクリエーションセンターの設置、これも新規でございます。大企業等につきましてはレクリエーションセンター等は自前でつくりますけれども、中小企業等につきましてはそうしたものはつくれませんので、保健施設といたしましてこうした施設をつくりたいという考えでございます。  (二)が、総合的中小企業労働対策推進のための中小企業準団に対する統一的指導援助でございまして、四億一千百万円を要求いたしております。この考え方は、労働力の確保とか、労働条件、人間関係の改善、福祉施設の設置等、労働諸施策を総合的に推進する中小企業集団を選び出しまして、この集団に対して補助をいたしますとともに、これらの集団に対しまして労働省として一元的、総合的な労働行政の指導を実施したいという考え方でございます。内容は、イが、中小企業集団に対する助成でございまして、集団に対する補助金でございます。  ロは、労働力確保労働条件の改善、労使関係の安定促進等についての行政指導の実施、  ハが、中小企業労働対策を総合的、計画的に実施するために都道府県中小企業労働対策協議会を設置しよう、この都道府県に中小企業労働対策協議会を設置いたしまして、総合的、計画的な指導を実施したい、こういう考え方でございます。  (三)の、中小企業退職金共済制度の普及、これは共済契約者等の増に伴います増加要求でございまして、要求といたしまして五億二千百万円を要求いたしております。  三が、技能労働力確保及び技能水準向上対策積極的推進でございまして、百二十四億九千五百万円を要求いたしております。  その(一)は、技能労働力確保対策の推進でございまして、要求額といたしまして百九億五千百万円を要求いたしております。その内容は、事業内職業訓練積極的促進でございまして、ここに掲げてあります系列企業事業内職業訓練の推進、公共職業訓練施設との連携の強化による産訓協同体制の確立、職業訓練を受講する中小企業関係訓練生に対して奨励金を支給する職業訓練奨励金制度の創設でございます。従来、事業内職業訓練の助成につきましては、共同施設を中心とする事業内訓練に助成いたしておったわけでございますが、明年度におきましては、新しく(イ)に書いてありますような系列企業事業内職業訓練の推進と申しまして、親企業の施設を利用して訓練をやる場合にこれを助成しようという考え方と、公共職業訓練の施設を利用して事業内訓練をやる場合に助成しようという、新しい二つのものを加えまして事業内職業訓練の拡充をはかってまいりたいという考え方でございます。と同時に、その場合に、訓練を受講するものはおのおのの場所へ通わなければならない、その間におきまして若干の雑費もかかりますので、訓練手当的なものを支給したいというのが考え方でございます。口に書いてあります公共職業訓練の拡充は、(イ)が、総合職業訓練所第二次建設計画の推進でございまして、御存じのとおり、地方総合訓練所は全国大体におきまして一県一カ所できましたけれども、その後の新しい情勢に対応するために第二次計画をつくりまして、総合訓練所の拡充をはかってまいりたいという考え方でございます。  (ロ)は、一般職業訓練所の新設拡充でございます。  (ハ)は、職業訓練施設の整備と訓練内容の充実、  (ニ)が、指導員の資質向上と待遇の改善、  (ホ)は、業務上災害による身体障害者を重点とする身体障害者職業訓練の拡充でございまして、金額のところに労災保険負担分が書いてございますが、これは(ホ)に充当する費用でございます。  (二)技能水準向上対策の推進でございますが、十一億一千五百万円を要求いたしております。内容は、イ、再訓練制度の確立が第一でございまして、従来なかったわけでございまするけれども、四十年度におきましては、技能検定等との連携を含めた再訓練コースの設定でございまして、通信講座等を設けまして再訓練を実施する。それを合格いたしたものにつきましては技能検定の学科試験を免除する、こういう制度を立てたいという考え方でございます。  (ロ)は、再訓練施設の整備、拡充でございまして、あとのほうで出てまいりますけれども、技能センターをつくりますが、この技能センターを利用いたしまして再訓練を行ないたいという考え方でございます。  ロが、技能競技大会の拡大及び技能センターの整備及び増設でございまして、技能競技大会というものを三十八年度から実施いたしておりますが、これを拡充いたしますと同時に、技能競技大会を実施し、あわせて再訓練施設整備をいたしまして、技能センターを整備並びに増設をいたしたいという予算でございます。  (三)が、職業訓練行政機能の強化でございまして、四億二千九百万円を要求いたしております。こういうふうに技能競技大会、その他検定種目がふえてまいりましたので、教材編集室の設置と、専門技能検定官を設置いたしたいということと、現在、中央職業訓練所がございまするが、これを充実いたしまして職業訓練大学校にいたしたいという予算でございます。  次のページに移りまして、四が、労働災害防止対策積極的展開労働条件近代化の推進でございまして、十八億一千五百万円を要求いたしております。  その(一)は、労働災害防止対策の推進でございまして、十四億六千八百万円を要求いたしております。その中身は、労働災害防止対策の計画的な推進と、労働災害多発業種等における自主的災害防止労働災害防止団体による自主的な災害防止の促進でございます。  ハが、石油化学等爆発危険性のある事業、特定有害物を取り扱う事業等に関する災害防止対策の推進でございまして、これは安全指導、安全監督の強化拡充の予算でございます。  ニが、国際的水準及び技術革新等に対応する安全衛生基準の設定のための法令の整備等に要する費用でございます。  ホが、以上の施策の的確な推進のための労働災害防止に関する行政機構の拡充強化でございまして、労働災害対策部を設置いたしたいということと、労働災害防止に従事する職員の増員をはかりたい、安全衛生研究機関の拡充をはかってまいりたい、こういう考え方でございます。  (二)が、労働条件近代化のための施策の推進でございまして、三億四千七百万円を計上いたしております。中身は、イが、最賃の実施に関する事項でございまして、その対象業種の選定、最低賃金額の目安の作成等による効率的推進をしてまいりたいという予算でございます。  ロが、生産方式の変化、労働力の流動化等に対応する賃金制度改善のための指導に要する経費でございます。  ハが、労働時間と生産性、賃金等との関係、その他労働時間問題に関する研究会を新たに設置いたしたい、及び時間外労働に関する指導基準作成とか、労働時間の実態把握のための予算であります。  ニが、産業社会の進展に即応する労働基準監督行政体制の整備充実でございまして、これは監督署の整備とか、監督官の充実に要する費用でございます。  五が、労働保険制度、労災保険及び失業保険でございますが、これの飛躍的拡充でありまして、(一)が、労働保険の全面適用で、結局五人未満の事業所に四十一年から適用しようということで、その準備体制を整えようという予算でございます。  十八ページに移りますが、(二)が、労災保険制度根本的改善労災保険法の改正に関する事柄でございます。  日が、失業保険給付の適正化等でございまして、給付の適正化をはかるための受給要件の検討及び窓口サービスの改善でありまして、予算で計上いたしておりますのは、この窓口サービスの改善に要する経費を予算で計上いたしております。  次に、六が、労働者の住宅対策の推進及び財産形成対策の展開でございまして、まず、(一)が、住宅建設計画への労働政策の反映でございまして、これは予算と直接関係はございませんけれども、建設省、その他各省の行ないます住宅建設計画へ労働福祉の観点から労働省の立場を反映させようと、これは予算と申しますより、一種の政策的なものでございます。  (二)が、労働力流動化のための住宅政策の拡充でございまして、先ほど申し上げました移転就職者用住宅とか、あるいは住宅確保奨励金雇用促進融資の増額等、先ほど申し上げましたものをまとめて住宅に関係あるものをここに計上いたしておるわけでございます。  第(三)が、労働者の財産形成促進のための措置といたしまして、予算といたしましては三千九百万円を要求いたしております。その中身は、調査費並びに各省連絡費並びにPR費でございます。  第七の、長期計画に基づく総合的労働政策の展開でございまして、労働行政が先ほどから申しますように、一種の転換期にきておりますので、今後の労働行政は、将来の長期的展望のもとに総合的な計画を立てて実施しなければならないということは申すまでもないことでございまするが、それのために、新しく機構といたしまして、二十一ページの初めの行に書いてありますが、総合企画局を創設いたしたいという考え方でございまして、ここに掲げておりまする予算は、この総合企画局設置に要する経費でございまして、ここに(一)、(二)、(三)、(四)と掲げておりますことは、この総合企画局が実施する事項を掲げておるわけでございます。  次が、八の、婦人、年少労働者対策の推進でございまして、三億六千四百万円を要求いたしております。中身につきましては、従来から実施してまいりましたものをさらに拡充していこうという予算でございます。そのおもなものは、(一)に書いておりまする婦人労働力有効活用対策の促進と、(四)に書いてありまする勤労青少年ホームの整備、それから、(五)の、産業カウンセリング制度の普及、導入等、年少労働者に対する勤労意欲の高揚、生活の健全対策等でございます。なお、(八)に書いてありまするが、農村婦人問題対策の強化は、先ほど出かせぎ労働者のところで申し上げましたような、出かせぎ労働者の留守家族の援護措置とあわせまして、この農村婦人問題の対策を強化しようという予算でございます。  九に移りますが、国際労働行政の充実強化で、九千万円を要求しております。その第(一)は、レーバー・アタッシェの増強でございまして、ジュネーブ、パリ、パリはOECDに関係するものでございますが、ジュネーブ、パリにレーバー・アタッシェを増員したい。  (二)は、わが国の労働事情等を正確に反映せしめるために海外広報を活発化いたしたい。  (三)が、日米両国間における職業訓練専門家の交流、ILO職業訓練セミナーの受け入れ、開発途上の諸国に対する職業訓練による援助等、国際技術協力の推進と労働関係者の海外派遣というのを合わせまして九千万円を要求いたしております。一〇は、労働委員会庁舎等の新営でございまして、以上一応金額のかさばりますものを「その他」といたしましてここに掲げてあるわけでございます。  以上、非常に概略でございますが、説明を終わらしていただきたいと思います。
  5. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 本件に対し質疑のある方は、順次御発言を願います——ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  6. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 速記を起こして。  別に御発言がございませんければ、本件に関する調査は、本日のところはこの程度にとどめておきます。  委員長から、労働省にお願いというか、希望を申し上げたいのでございます。この予算説明をいま受けたのでありますけれども、各項別に一、二、三、四というぐあいに大ざっぱに予算が出ております。しかし、この事業をやるにはどれだけの単価で何ヵ所をやって、そうして国の負担金が幾らで地方自治体がどれだけ持ってと、そういうことがないと、大ざっぱに一、二、三、四、五、六とか、イ、ロ、ハとか書いているだけでは、これを受けても一つ一つ質問をして明らかにしないと理解ができないと思う。ですから、これはこの裏づけ資料と申しましょうか、一つにしていただいたらよかったのですけれども、この順番にありまする項目別に、単価が幾らとか、一ヵ所にどれだけ要るとか、負担分がどうであって、どういう実行をしていくのだという裏づけ資料労働省として出していただかなければなかなか理解ができないと思う。よろしくお願いいたします。
  7. 和田勝美

    説明員(和田勝美君) ただいま委員長からのお話でございますが、こういうように数字をまとめますには、もちろんその積算をいたしているわけでございます。ただ、何といいましても、政府部内におきましてただいまいろいろと話し合い、折衝を続けている点もございますし、しばらくの間、政府部内におきます折衝をごらんをいただいておりたいと、そういう意味で、決してずさんなものをつくっているわけではございませんけれども、政府部内全体としてなかなか議論のあるところもございますので、行政府から国会に御提出をいたします資料としては、まだ相当練らなければならないものがございます。それらのことを勘案をいたしまして適当な資料にさしていただきたいと思いますので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  8. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それじゃ、大かたその折衝がまとまってまいったら出していただくことにしたいと思います。厚生省はそういうぐあいにして単価も詳しく書いて出しておりますから、いますぐとは申しませんから、これを読んだら説明を受けなくてもわかるようなかっこうのものを出していただきたい。その時期のことは、いまもお話がありましたから、申し上げませんが、ぜひお願いしておきます。   —————————————
  9. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 次に、労働問題に関する調査を議題にいたします。まず、第一に、公務員給与に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 私は、ただいまより公務員給与に関して質問いたしたいと思いますが、増原給与担当大臣と大蔵大臣の出席を要求しておったわけでありますが、いまお見えになっているのは石田労働大臣だけですが、これはどうなりますか。あとから来ていただけますか。
  11. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 増原大臣はいま入ります。それから、大蔵政務次官と主計局の給与課長、大臣がどうしても出席できないので、政務次官でありますが、十一時にここへ出席する予定でございます。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 非常に重要な段階にきていると私は判断をしてきょう質問に立ったわけでありますから、大蔵大臣が見えないということは私は非常に困る。さらにひとつ大臣の出席方を委員長のほうから強力に要請していただきたいと思います。
  13. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) わかりました。さよう事務局をして処置をさせます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  14. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 速記を起こして。
  15. 鈴木強

    鈴木強君 石田労働大臣には、大臣就任以来、ILOの実情調査調停委員会等に御出席いただきまして、東奔西走、たいへん御苦労さんに存じます。まだ、お帰りになりましてお疲れのところだと思いますが、すでにお聞きとりかと存じますが、国家公務員の給与問題がきわめて重要段階にまいっておりますので、私は、特に国会共闘会議の議長として、また、社会党の国会対策委員長として、当面この問題の責任に当たっております関係上、きょう大臣にこの問題に対する御所信と、具体的な実施の方法についてお尋ねをしたいと存じます。  御承知のとおり、八月の十二日に人事院の勧告が出されまして、すでに国会でも内閣委員会、社会労働委員会等で人事院勧告の実施に対する政府のお考え方をただしてまいりました。それによりますと、まず、前段として六人委員会を設け、そこで意識統一をして閣議の決定に持ち込みたい。その時期は、当初九月一日と言い、石田労働大臣の外遊等の関係から——私もたまたま欧米を回っておりまして、八月の十三日に帰ってまいりました。そんな関係で、十九日の日に内閣委員会が持たれまして、私も委員を交代して、実はいまお見えになりました増原給与担当大臣とも質疑をかわしたのであります。その際、増原大臣のお話ですと、石田労働大臣が二十四日夜おそくも帰られるので、二十八日の月曜日には六人委員会を開きたい、そして、できるならば今月中に結論を出したい、こういう御返事でありました。私たちはそれを期待し、五月の実施時期を含めて、人事院勧告を尊重したいというこの政府当局の出方を大いに支持しておったのでありますが、今日六人委員会も持たれない様子でございますし、きのう、おとついの状況ですと、どうもオリンピック前に決定することは困難であろう、こういう状態にあるわけであります。  一方、公務員諸君は、オリンピックもございますから、その祭典を国民と一緒になって祝いたいと、こういうことでオリンピック開会前に結論を出していただきたい。特にことしの公務員共闘の態度は従来と違いまして、人事院勧告を完全に実施してもらいたい。内容的には不満がありますが、実施してもらいたい。それから、当然地方公務員の諸君も準じてもらいたい。それから、オリンピック前に片づけて、みんなでオリンピックを祝いたい、こういう三つの態度をきめておるわけです。それが、どうも今日の状況では相いれない事態になりまして、このままですと、オリンピックの開会中にいろいろオリンピックの外国選手の前で、あまり感心しないような状態が展開されるのではないかと私は憂えているのであります。したがって、まず、きょう労働大臣には、私、帰国後まだ初めてお目にかかるわけでありまして、御所信も伺っておりませんので、まず、労働大臣として人事院勧告に対する御所信、それから、一体六人委員会を含めて、どういうふうに処理していかれようとしておられるのか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  16. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) お答えを申し上げます。  内閣の改造の際に、御承知のごとく、私が給与担当を命ぜられたのでありますが、私はいままでたびたび労働省を担当しております経験から、その一貫した私の考え方としては、労働省は労使の間で常に中立、調整の任に当たるべきものであって、使用者的な立場である給与担当をなすべきでないという私の考えから辞退をいたして、そうして増原国務相にかわっていただいたわけであります。  で、労働行政を担当しておる者のたてまえから申しますと、国家公務員は、国家公務員であるという理由をもって労働権の制限を受けております。その労働権の制限の代償として人事院勧告があるのでありますから、その人事院勧告を完全に実施することが現行法制のたてまえであるという考え方を持っておるのでありまして、そのたてまえにのっとって私は努力をいたしたい、こう考えておる次第であります。  それから、六人委員会が私の帰朝を待って開会される、それが二十八日であるということを承知いたしておりまして、二十八日を私は心待ちに待っておりましたのでありますが、延期になりました。その延期になりました事情については、私は承知いたしておりません。承知いたしておりませんというと語弊がありますが、大蔵省からそういう御希望があったと聞いておりますので、その理由については、大蔵大臣その他にお開きいただきたいと存じます。人事院勧告についての私の考え及び態度は、以上申し上げたとおりであります。
  17. 鈴木強

    鈴木強君 順序がありますから、一応労働大臣の御所見はわかりました。  そこで、増原給与担当大臣がお見えになりましたので、お尋ねいたしますが、一昨日あなたとお目にかかりましたが、きのうの閣議の前に六人委員会を早急に持っていただいて、公務員共闘の諸君が期待をいたしておりますオリンピック前の完全実施をぜひやっていただきたい、こういうお話を閣議前にしていただくようにお願いしておきました。けさの新聞を見ますと、何か石田労働大臣の名前が出ておらなかったのですが、閣議のあとに何かそういう話があったかのように私は聞いておる、朝日新聞を私はちょっと見ましたが、一体それはどうなりましたのでしょうか、その点をまず伺います。
  18. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 二十八日に予定をしました六人委員会が、大蔵大臣のいろいろ準備の都合がまだ整わないので、二十八日の六人委員会は延期をしてもらいたいというお話がございまして、二十八日、月曜日の六人委員会は延期をいたしたわけであります。昨日の閣議で、閣議後に官房長官、総務長官と話をいたしまして、なるべくすみやかに六人委員会を開こうではないかという話し合いをしたのでございまするが、ちょうどもう石田労働大臣と吉武自治大臣は退席をされたところでありました。昨日は、いつ六人委員会を開くか、まだ決定できないで終わったというような状態でございます。
  19. 鈴木強

    鈴木強君 どうも切実な公務員給与改善に対する政府の熱意について私は疑わざるを得ない。一体皆さんは、労働大臣もおっしゃっておるように、昭和二十三年のたしか七月三十一日に国家公務員法が改正になって、ストライキ権、団体交渉権が剥奪され、その代償としてストライキ権にかわるものとしての人事院が設置され、人事院の勧告については、これを尊重し、実施するということは、これは当然の法を守るものの立場からいって政府の義務だと私は思う。ところが、いままでの経緯を見ましても、人事院勧告が完全に実施されたためしはない。特にいろいろ問題になりまして、五年前から実施の時期まで人事院は結論を出して、いつから実施してもらいたいということまで勧告の中にうたっている。ところが、依然として五月から実施してもらいたいというものが十月からになっております。ことし五回目でありますが、そういうふうな立場にいま国家公務員諸君が置かれているわけでありまして、さっき私が申し上げましたように、ことしこそひとつ時期を値切らないで、オリンピック前に地方公務員の諸君も含めて、ぜひやってもらいたい、こういう切実な要求が出され、しかも、きのう、おとといも、あの豪雨をついて全国から二万五千名の公務員諸君が東京に集まってきている、そして各方面に陳情をし、切実な要求が訴えられている。これは私は、政府があえてみずから守らなければならない人事院勧告というものを、法律というものを守らないから出てきている現象ではないかと私は思うのです。それにもかかわらず、そういう諸君が出てくると、私も現場で見ましたが、警察官がたくさん出てきて、何にもしていないのにこれを排除していく。一体法律を守るのはだれかということを言いたい。だから、そういう事態にあることをほんとうに閣僚諸君が身をもってはだで感ずるならば、私は、この人事院勧告をどうしたら公務員諸君の要求に沿ってできるのかと、最高首脳部の方も知恵を働かせてもらって、英知を集めてもらって、真剣に取り組んでもらわなければならぬと思うのですが、まあ給与担当大臣も参議院から出ておられるのだし、あなたの人格もよく知っておりますが、だから、あなた一人を責めようとは思いませんが、もう少し内閣全体としてのこの問題に対する関心を深めていただいて、早急に解決するという態度をきめてもらわなければ、これは一体オリンピック前にきまらないじゃないですか。大蔵省の事務当局が出してくる計数をもとにしてやれば、これは当然できないということになるでしょう。問題は、人事院勧告をやらなければならぬという態度になるなら、そういう趣旨を政府でまずきめて、その予算措置というものをいろいろくふうするのが筋道じゃないのですか。私は非常に熱意を疑います。一体、増原さん、あなたはオリンピック前になおきめたいという気持ちはあるのでございましょう。そうであるならば、石田労働大臣も帰ってこられたことであるし、官房長官等もおられるし、総務長官もおられるし、六人委員会を早急に開いてそういう態度をきめて、大蔵当局に対しては、その趣旨に沿った財政措置を考えさせるようにしたらどうですか。そういうことをやらなければ一向にこれは進まぬと思うのです。これはひとつ増原給与担当大臣の決意のほどを私はもう一回聞きたいのです。
  20. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 私の所存は前々申し上げておるとおりでございます。人事院勧告はこれを尊重いたしまして、実施時期を含めて、勧告のとおり実施したい、そういう努力をいたすことを皆さんに繰り返して申し上げておるところでございます。しかし、現在の事柄をきめる段取りは、六人委員会でこれを審議をし、決定をするという第一段階を通らなければならないのでございまして、なるべく早急に六人委員会を開き、次いで閣議決定に持ち込む。私は、なるべくすみやかに、もとよりオリンピック開会前ということを目途として、なるべくすみやかに決定を見たいということで努力をいたしておるわけでございます。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 私は、少しなまいきのようですけれども、ことばを大きくして言うのは、やっぱり誠意がないから私は言うのですよ。というのは、さっき申したように、八月十二日に勧告が出たあと、政府はすみやかに態度をきめると、こうおっしゃった。具体的に九月一日ということもおっしゃった。しかし、石田労働大臣がILOの会議に出るので、大臣が帰ってからのほうがいいということで、私たちはだんだん延ばされてきた。しかし、確かに労働大臣がおられないところできめることはまずいから、六人委員会のメンバーになって入っているからには、労働大臣がお帰りになってからのほうがいいということで二十八日の会議に期待し、二十八日に第一回目の会合が開かれると思って信じていたのです。それがまた大蔵省から何か知らぬが財政上の問題で話があったら、それで二十八日にやれない。しからばいつ開けるのかといってもわからない。ばく然と、なるべく早くオリンピック前に開きたい、こういうことでは、一体いままで五回も五月実施を十月に延ばされてがまんにがまんを続けてきた国政に携わる国家公務員、あるいは地方公務員の諸君の立場はどうなるのですか。物価はどんどん上がってまいりましょう。特に公労協の諸君が四月のベース・アップを池田総理の出馬によって四月から実施されておる。なぜ国家公務員だけが——人事院勧告もおかしいですよ。それで一応五月というのを尊重するという立場をとっても、それでも一カ月間はズレておる。それを承知の上で国家公務員諸君は五月からの実施を完全にやってもらいたいというところまで人事院勧告を尊重する態度を出しておるじゃないですか。だから、皆さんが一回言うなら私はそんなに言いませんけれども、一回も二回もだまされてしまっておる。何か理屈をつけてはあとへあとへ延ばす。ずるずるいってオリンピックあと、あるいは十一月ごろになるのじゃないですか。新聞情報では十月はむずかしい、一月ということになってきますと、これはオリンピックを前にして国家公務員諸君が幾らおとなしいといっても、私は黙っておられないと思う。一体手足をもいでしまって何にもできない国家公務員諸君を頭からなめておるじゃないですか。何かやらなければ言うことを聞かぬという態度でしょう。私はそんな労働運動はないと思う。だから、もう少し具体的にどういう理由でできないのか明確に答えていただいて、なるほど政府も一生懸命やってくれてきたのだけれども、かくかくの理由によっておれたちはそれまで待たなければならないということを公務員諸君やわれわれが納得すれば、国家公務員に向かって説明いたします。しかし、私は、いままでの政府当局との変渉の中では自信が持てない。どうぞひとつオリンピックを円満に全世界国家的な祭典として終わらせるためにも、政府の勇断を促します。どうかわれわれの納得できるような答弁をしてください、給与担当大臣。
  22. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) なるべくすみやかに決定したいということを繰り返して申し上げるほかないのでありますが、実施の重要な要素として財源の問題があることは申すまでもないわけでございます。大蔵大臣がこれに積極的に関与をしてくれませんと事柄がきまらぬわけであります。大蔵大臣が、準備の都合その他で、しばらく六人委員会を開くことを待ってくれといま言っておる段階でございますので、ここで無理やり大蔵大臣を引っぱり出すというわけにはまいりません。しかし、大蔵大臣にはすみやかに委員会に参加をしてもらうよう要請をしておるわけでございまして、すみやかに六人委員会を開いて相談をすることをきめるということにいたす所存でございます。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 池田総理大臣が不幸にして病気でいま入院中でございまして、内閣の柱がいまのところないわけじゃないのだけれども、ちょっと隠れておるような状態なので、そのことが原因になって六人委員会が開けないとは私は思われない。ですから、どう理屈をつけても、結局大蔵省の事務当局から出されておる財源というものによって振り回されてしまっておるということになると思う。そこで、私は、きょう大蔵大臣にぜひ出席を求めて、大蔵大臣の率直な気持ちを聞きたかったと思うのでありますが、出てこられない。鍋島政務次官が見えておられますから、大臣にかわって私は答弁をしていただきたいと思いますが、その前に、労働大臣にも少し伺っておきたいのですが、いまお聞きのとおり、実際ひどいのです。うそばかり言って、いつまで待っていてもわからぬというような、そんな無責任な態度は、私は労働問題を解決する場合にはとるべき態度じゃないと思う。ことにあなたは今度の実情調査調停委員会にお出になって、公労委の仲裁裁定、それから人事院勧告の完全実施の問題について、やはり追及をされたように私たちは聞いているんです。詳細な報告は聞いておりませんが、それは問題になりますよ、これは。私も、まあヨーロッパも見てきましたけれども、やっぱり公務員諸君にだってストライキ権を与えている——アメリカは別ですけれどもね。だから、きのう臨時行政調査会の佐藤さんの答申を見ても、基本権をやっぱり公務員に与えるべきである、そうして労使協議会というものを持って、もっと問題を煮詰めていくべきである、と同時に、現業公務員にストライキ権を与えていい、こういう答申があるわけですね。これは私はもっともなことだと思うのですね。ですから、ストライキ権、団体交渉権を取り上げているんですから、そうであるならば、人事院勧告というものは完全実施していく、そうして公務員諸君に納得してもらうのならわかるんだが、二十三年七月三十一日の公務員法の改正以来、一ぺんだって人事院勧告が完全実施されたことはないじゃないですか。そういうことをしておってストライキ権や団体交渉権を押えていくことは、これはおかしいのであって、歴代政府は大きな矛盾を来たしている。その点について、私は、おそらく日本の労働大臣として、これは党派なんということは抜きにして、大蔵大臣にずいぶん私は苦境に立たされたと思うんですね。ですから、そういうふうな客観的に見ましても、人事院勧告というものを尊重しようということは当然であるし、国家公務員諸君も長い間の運動の中から、ことしはひとつ人事院勧告を尊重していこうという態度をきめるには、私は相当勇気があったと思うんですね。昨年のように五千円とか七千円とかということを、人事院勧告が出てもなおかつ要求することなくして——内容的には、私たちが見てもこれも不満があります。不満があるが、当面この人事院勧告を完全に五月から実施してもらおうという態度をとったということは、公務員諸君の労働運動というものが、かなり成長している。この姿をいまここでつもうとするのかどうなのか。これは政治家としても、政府としても、日本によき労働慣行を、労使慣行を確立する上にも、私は、こういう労働者諸君もその気になったときに、ほんとうに政府があたたかい労働者に対する情熱を傾けてもらって、いい慣行いい慣行へと持っていくことが私は賢明な措置だと思う。そういう意味において、五月から実施するということは、どんな理屈をつけてみても私は正しいことである、これを否定するものは労働運動を知らぬものだと思うのです。そういう意味で、やはり、いまのような情勢ですから、どうしても、当面の解決には労働大臣がひとつ奮起していただいて、人事院勧告は実施すべきだ、そういう態度をきめて、それから田中さんにもひとつ無理を言って、いろいろわれわれも財政措置の問題についてはわかります。わかりますから、それを解決していくのが政治でありますから、まずその態度をきめるということが、実施する態度をきめることが先ですよ。それを大蔵省の計数によって、時間をかせいで、十月になるか一月になるかわからぬという不安の中で当面公務員諸君がオリンピックを迎えるなんということは、また、生活を送るなんということは、私はあまりにも気の毒だと思うのですね。ですから、そういう意味で、ひとつ労働大臣として、さっきの御趣旨もわかりますが、具体的にこの六人委員会を早急に開いて、オリンピック前にぜひ結論を出していただきたいと私は願うのですが、その点いかがでございましょうか。
  24. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) ILOの調査委員会の審問の内容は、これは秘密会の約束でありますので、それには触れたくはありませんけれども、しかし、先ほど申しましたように、労働権の制限の代償として設けられた措置は、これは尊重し、順守すべきだというのが私の基本的な考え方でありましても公労協の場合においては、私はその信念に基づいて行動したことは御承知のとおりであると思います。法律のたてまえから見ますと、人事院勧告については「尊重」ということばが使ってありますが、用語の相違は別問題といたしまして、あるいは法律上違法であるか違法でないかという議論は別問題といたしまして、労働権の制限の代償として設けられたものは守るべきだというのが私の信念でありまして、こういう信念に基づいて六人委員会において私の主張を貫くよう努力をいたしてまいりたいと、こう考えておる次第であります。私は二十八日が延期された事情をつまびらかにしておりません。しかし、私は、それを残念に思って、遺憾に思っております。できるだけすみやかに開かれるよう、増原国務大臣をお助けして努力をしたいと思っております。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 たたみかけるようで恐縮ですけれども、わかりました。その信念はわかりましたが、やはりオリンピックが十日からでございますから、そのオリンピック前にぜひ解決をしていただきたいというのが私たちの願いであるわけです。その点はいかがです。
  26. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私もオリンピック前に解決すべきものと思っております。ただ、むろん基本方針を閣議できめて、そうして大蔵事務当局はそのきまった方針に基づいて財源捻出をするのが当然であります。しかしながら、まるっきりやみくもにやるわけにもいかない。われわれが方針をきめる場合に、一定のめどをつかんだ上でやっぱり考えなければなりません。私は、労働大臣になると同時に、国務大臣でありますから、そういうわけでありますから計数上の基礎がまだできない、もう少し待てばできるのだ、こういうことを全然無視するわけにもいかないのでありますが、ただ、私は、二十八日どういう理由で延びたか、直接その理由を聞いておりません。間接には聞いておりますけれども、直接聞いておりません。このことは遺憾だと思います。できるだけ早く、私の聞いたうわさで——聞いたうわさというとおかしいが、報告されてきた範囲によりますと、九月決算のまとまるのを待てば税収等の一応予想ができるからというお話でありますが、そういうことの確実なこまかい計算は必要でないのでありまして、大ざっぱなことはつかめるはずでありますから、できるだけ早くやって、オリンピックという、日本にとってはわれわれの世代には再びこない大きな事業を、こういう懸案を残さずに迎えたいという非常に熱心な希望を持っておることを申し添えておきたいと思います。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 鍋島政務次官、私はきょうはあなたから数字がどうでこうでできないということは聞きたくないのです。そういう質問をすると、おそらく数字を持ってきて、できないという結論のほうをあなたは強調されるでしょうから、私はそれは質問しませんけれども、いま労働大臣からもお話があったように、九月の第二・四期の決算を見て税収の伸びがどの程度あるかということをつかもうとしても、それが十日になるか十五日になるか、金がどうなるか、私はそれは質問しませんけれども、一体九月の決算期を待って税収がどうなるかという伸びをつかんで、見通しとしては五百億とか何ぼとか私たち聞いておるのですけれども、その結論が出たら公務員ベースに対してどうするという六人委員会が開かれるということについて、私はちょっと納得できないから聞きたいのですが、早い話が、来年の三月三十一日に、それは昭和三十九年度の自然増収がどのくらいあったかということをぴちっとつかんで、一千億なら一千億残った、よし、それは公務員ベースに回そうという単純な頭で考えてみても、そういうことならわかるのですが、九月というのは第二・四半期の終わりでしょう。四、五、六、七、八、九ですから、あと二・四半期残っておるわけです第三第四と。一体その自然増収がどの程度あるかということは、これは神さまでないとわからぬでしょうね、おそらく。だから、九月十五日にその集計ができて結論を出そうというふうなことが私にはわからない。それまでやったって同じですよ、それは。国家公務員の場合は、これは二百七十一億だそうですね。人事院の勧告を見ますと、所要経費が、私たちが聞いているところでは、五月から実施して、地方公務員も含めて千七百億、千六百億ぐらいですか、平年度が千七百億といっておりますから。ですから、そういうものが九月の帳じりによってやるかやらないかという判断がつかぬと私は思うのです。それは要するに皆さんのほうの言いのがれであって、あとへあとへ延ばしていくための一つの口実であって、はたして人事院勧告というものを尊重していく立場を大蔵省がきちっときめていただくならば、よし、おれたちにまかしておけ、十一月の臨時国会には完全実施してやる、こういうことをはっきり言ってもらえれば、私たちは何もオリンピック前に開けということを言わないのです。私は、どう考えてみても、九月十五日に計数がわかるからそれまで待ってくれということがわからぬ。待ってきめるということがわからぬ。待ったって結論は出ませんよ。だから、やるかやらないかは一つの政策としてきめて、大蔵省のほうにひとつそれぞれの財源措置を願う、また、それでできない場合には政治的にまたいろいろ考えることもあるでしょう。それは政府としておやりになればよろしいのであって、どうも財源措置財源措置ということを言われるのですけれども、よくわかりませんから、鍋島さんは尊重するということは十九日の内閣委員会でも増原給与担当大臣と同じようにおっしゃっている、大蔵大臣も御同様ですから、それまで待ったら完全実施していただけますか。それなら私はそれでもけっこうです。待ったらできるという私が納得できる理由、九月十五日まで計数を待ってもらいたい、それまで六人委員会を開いてもらっても話がまとまらないということを言っている理由を明らかにしていただきたいと思います。
  28. 鍋島直紹

    説明員(鍋島直紹君) ただいまの鈴木委員の御質問でございますが、大臣といたしまして、現在大蔵省で鋭意財源の算定をいたしております。その目的は、御承知のとおり、補正予算をどうするか、その大きな要素として人事院の勧告による給与の問題があるわけでございます。ただいま言われますように、五月実施といたしまして、一般会計、特別会計合わせて約八百億、それから地方公共団体合わせて八百七十九億、大ざっぱに言いまして八百八十億、大体千六百八十億ぐらいの財源を必要といたすわけでございます。よく言われておりますように、現在八月末前後の税収の伸びというものからいえば、それに充当すベき財源として五百億前後一応見込まれ、したがって、補正予算財源といたしますと、そのほかに社会保障の問題があり、あるいは特に災害の問題がございます。したがって、災害は二十号台風もまいりましたし、北海道の冷害等があるというようなことで、実はこの積算といいますか、算定が今日までまだ十分できておりません。それらのことを財源的に大蔵大臣としては考えあわせて、さらに税収の伸びなり何なり的確な、できるだけ事務的に申し上げまして、でき得る限り将来における財源がどの程度伸びるか、あるいはどの程度のものであるかということを見通しをできるだけつけたいという意味において、そういう財源の面において発言をしたことが一つと、それから、さらに、先ほど申し上げましたように、補正予算財源として当然支出すべきものが相当ある、しかしながら、それに充当すべき税収というものが十分でないというよりか、相当不足しておる、こういう点につきましての苦しみの中から、いわば二十八日の六人委員会の決定を暫時お待ち願いたいということを申し上げたわけでございまして、ほかに他意はないと存じます。したがって、実際実行する場合において、この財源のみが決定の要素じゃなくて、六人委員会、あるいは閣議の決定によって大蔵事務当局にくだってきた場合、さらにこれを受けて立つべき立場があるわけでございますが、大臣としては、そういう慎重なる態度によって、他の補正財源ともあわせて補正予算を円満に組んで国会に御提出したい、こういう意味から以上のような点に慎重を期しているわけでございまして、ほかに他意はないと存じます。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 さっぱりわからないです。一体九月の末まで帳じりが明確になるまで待ってもらいたいということがどういう理由か。要するに国家公務員の給与ベースをよりよくしてやるというためにそういうふうにするのだということが私にはわからんです。一体そこまで待ったらどういういい条件が出てきて、公務員諸君が期待するような方向に一歩でも近づいていくのかということの理由がわからないから伺ったのですがね。
  30. 鍋島直紹

    説明員(鍋島直紹君) 事務的にいいまして、いまの財源では、端的にいって五百億前後の税収見通ししか出てこないというのが現実でございます。その場合に、それを材料にしていろいろ各上層部において御論議される場合、その結果というものは、財源はどうなるかという一つの大きな要素でございまして、これが全部の要素ではないと思います。しかしながら、給与の時期等を決定するときの大きな要素になることは事実だと思います。したがって、そういう要素よりも、さらに九月決算期におけるもっと的確な、あるいは将来の見通しをよりよくつかんで、そうしてそれを材料として六人委員会なり、あるいは政府の決定の材料にしたいというのにほかならないと考えております。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 鍋島政務次官、ちょっとぼくは頭が少し悪いのかもわかりませんけれども、私のお答えにならないように思うのです。それはあなたのいわれることもわかります。わかりますけれども、私の聞いているのは、九月の末になると税収の伸びがわかるとおっしゃるなら、一体そういう科学的な根拠があるのですか。九月にどう伸びていけば第三・四半期にはどう伸びて、第四・四半期はどう伸びて、どの程度の自然増収が出てくるということが判定できる電子計算機のようなものがあっていわれるのですか。私はそうではないと思う。そういう根拠があったら示してもらいたいと思うのです。要するに、およその見当をつけることであって、それが税収がかなり伸びて、勧告を五月からやろうということにならんと思うのです。ですから、これがいまちょうど三月末の会計年度末を二十日後に控えている、したがって、それが最終的につかめるのはあと十五日待てばつかめるから、そうすると一年間の年間の決算に等しいような税収になるわけですから、われわれにもわかるのです。なるほどそれなら一年待ってやろう、大蔵省に計数をつかんでもらって、どの程度伸びがあって、どの程度公務員ベースの財源に回るか、はっきりしますから、私は待とうというのです、それなら。しかし、まだ半年あるじゃないですか。九月の十五日まで待っても、必ずしも公務員諸君の人事院勧告を有利に解決してやろうという財源にならんじゃないか。それが一つの理屈じゃないか。補正予算を当面組むために保留になっているという意味ですか、大蔵省から見れば。私はそうじゃなくて、どっちにしても半年あることですから、税の自然増収というのは二千億になるか三千億になるか、私たちもいままでの大蔵省の予算の編成というのが、池田内閣ことしになってから特に財源をかなりはたいてきておりますから、その点理解しています。私も四年間予算委員をやりましたから、かなり隠し財源については追及した一人ですから、池田内閣になってかなり思い切ってはたいていますから、税収の伸びが少ないということは理解しているのです。理解しているのだけれども、待つということについては別ですから、だから、そういう九月十五日まで待てばいいという理由がわかれば、私も公務員諸君を納得させますけれども、いまの答弁ではさっぱりわからない。なにか電子計算機でもあって、三月三十一日までつかまえて、そうしてうまくいくという自信があったらいいのですが、その点どうですか。
  32. 鍋島直紹

    説明員(鍋島直紹君) ただいまの御質問でございますが、当然九月末の決算期の様子がわかって、全部確実に将来において的確にわかるということではないと思います。ただ、七月前後、あるいは八月末の見通しで将来の税収等を勘案するよりも、御承知のとおり、九月決算期という一つの大きな経済上のいわば区切りと申しますか、中間的区切りでもございますから、その決算期を待てば、よりよく将来あと半年における経済状況の動き、見通し等がつかめる。したがって、税収の伸び等も、ただいま申し上げるような段階よりも、さらにいわば的確にわからないにしても、将来における税収の伸びなり何なりの数字的な面がつかめる、こういう見通しのもとに、九月決算期の状態を見て、そうして財源の算定をしてもそれを材料にひとつ御検討願いたい。したがいまして、大蔵省としては、公務員給与ももちろんであります。その他災害、そのほかの補正予算の財源としてこれを考えていくわけでございます。それをどう振り分けるかは、これは政府自身のいわば上層部のお考えによるわけでございましょうが、そういう意味でのいわば九月決算期の状況を見てという大蔵大臣の発言は以上のような意味だと私は考えております。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 日本のお役所でやっておる地方からのいろいろな調査の集約というのは、これは大蔵省だけじゃないのですけれども、非常に私はおそいように思うのです。ですから、今度の臨時行政調査会でも行政事務の能率化ということをうたっておるのですけれども、きょうは三十日ですから、あしたから十月になっていく。一体これはいまのような状況ですから、馬力をかけて帳じりを早く掌握するという仕事を、事務的なことでたいへん恐縮ですけれども、何か促進するようなこともお考えになっていますか。これは公務員諸君のオリンピック前ということもよくわかるのですから、ほんとうにあなた方がその気になってあらゆる角度から検討していただいているならば、当然通常の場合ですと十五日になるかもしらんが、この際、ひとつ給与ベースの改善も早急にひとつスピードアップしてやるというようなことはお考えになって、そういう通達は出しましたか。
  34. 鍋島直紹

    説明員(鍋島直紹君) できるだけ早くその財源の見通しをつけるように通達を出したかということでございますが、その点について私まだつまびらかにはいたしません。ただいまのようなわけで、補正予算の時期も迫っております。特に給与関係等の六人委員会、あるいは閣議等も、できるだけ大臣各位急いでおいでになるというような状況でございますので、私、大蔵大臣に申し上げまして、できるだけその算定を急ぐように、あるいはその見通しをできるだけつけるように最善の努力をいたしたいと考えております。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、このことを一つ聞いてみても、私がさっきから言っているように、誠意の点が疑わしいのです。もう少しわれわれしろうとが考えても、ほんとうに公務員の給与ベースを早くきめてやろうという気持ちになれば、尽くせる手段が幾らでもある。特に私は不満に思うのは、二十八日に六人委員会を開くということをきめておきながら、いま石田労働大臣に聞いてみれば、そういう連絡すらも労働大臣にいってない。
  36. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 連絡はもらいました、やめるという連絡は。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 やめるという連絡はいったそうだが、どういう理由で延ばすかという、その内容労働大臣には知らしてないというのだ。これは田中さんがいまおらぬから、鍋島政務次官に文句言ってもしようがないけれども、あなたは代理で来ているわけだから、田中さんにも言ってください。やってやろうという気持ちを彼も持っておると思うのです、ぼくらの前で言うのだから。そうであれば、具体的にわれわれが納得できるような行動をしてもらいたい。いまいった一つの事務的な問題もさることながら、大事な六人委員会の推進ということも、これはやはり開いて、何が何でも開いて、大蔵大臣から、実はこれこれこういうわけでおれはこうしたのだということをその六人委員会の中で話さなければならぬと私は思う。せっかく六人委員会を開いて閣議決定の前段としての意見調整をするということが一つも生かされていない。ですから、われわれが各大臣に会って聞いてみても、大蔵大臣の言うことがはっきり伝わっていない。また、われわれが質問しても明確な答弁がもらえない、いま聞いてみたって、よくわかった、そのできないことが。だから、もう少し大蔵当局がほんとうにやってやるのだという気持ちを持ってもらいたい。先だっても陳情団が総理官邸のところに、これは鈴木善幸さんとか増原大臣と会ったし、臼井長官と会ったのだが、大蔵省に行ったら、大蔵省の門の中に入れないで、門の前で、警官が来て押し返されたということを聞いた。一番大蔵省がものを聞いてくれぬといってみんな怒っておった。もっと公務員のいまの気持ちを率直につかんでいただいて、誠意のある態度を示してもらいたいのですよ。増原長官も、臨時行政調査会の閉会式があるということで、十一時四十分に退席するという通知があるということでありまして、これは一つの行事でありますから、たいへん不満ですが、やむを得ないのですが、そういうことで現在の公務員のほんとうの気持ちをつかんでいないということが明らかになりました。これはひとつどこへ持っていっていいかわからないが、当面、石田労働大臣はこの委員会の責任者でございますから、ひとつあなたはハッパをかけてもらって、そうしてさっきの御所信を一日も早く実現できるように具体的な行動の中でお示しいただきたい。そうでないと、私は非常に案じられる事態が起こることを憂えるのであります。ぜひひとつ六人委員会の中で、増原給与担当大臣もおられておりますから、力を合わせて大蔵当局に向かっても、人事院勧告の尊重という態度を明確にきめていただいた上で財源措置をお願いするという筋にいたしませんと、いまの鍋島政務次官のおっしゃるように、いつになったらきまるのか、私はオリンピックの前に大蔵省の言うことを聞いておったのじゃきまらない、へたすると十一月初めごろになる気がいたしますが、これではとてもがまんできない。だからオリンピック前という方針に基づいて、絶大なる皆さんの協力をお願いしたいと思います。時間もありませんから、きょうはこの程度にとどめます。なお、また機会を見て皆さんの進行状況によっては、ここへ来ていただいて私もまた聞きたいと思いますから、決意を新たにしてひとつ御検討いただきたいと思います。そのことを強く要望しておきます。
  38. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 増原大臣が時間の関係で出られるそうでありますので、関連して一つだけ質問しておきたいと思います。  増原大臣は、この前の社労の委員会におきましても、一カ月以上になる段階において、いまだにこの勧告がどういうふうに処理されるのかをきめておらぬというのは実は遺憾であり、自分としては実施時期を含めて、そうしてこの勧告を尊重するように努力していきたい、こういう答弁をされているのです。しかし、いま大臣の答弁なり、あるいは大蔵政務次官の答弁を聞いておりますと、財源のめどがつかなければ六人委員会が開かれない、こういう感じを受けるのです。それは非常に本末転倒でおかしいと思う。増原長官は努力するといっても、はたしてそれはどういう努力をしているかということを聞きたい。財源のめどがつくのは、大蔵省の財源の計算が終わらなければ何ともならないというのでは、一体いままで大蔵省に対して、あるいは政府その他閣僚に対して、責任大臣としてどういう働きかけをしてきたのか、お伺いしたいのであります。これは大蔵政務次官もいろいろ言われましたけれども、金があればやれるなんというのは、これは子供でもできる、政治ではないと思います。金がなくても、罷業権を奪った代償としてこの勧告を尊重されなければならぬという立場にあれば、それを推進していくのが私は政治家の責任であると思います。それがほとんどいままでの答弁ではそういう感じが受けられない、何の一体努力をしてきたのか、その点だけお聞きいたしたいと思うわけであります。
  39. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 実施時期を含めて、人事院の勧告は尊重する、その実現に努力すると申したのは、手続の段階はなるべく早く六人委員会を開いて、そこで論議をし、実施をさせるように努力するという意味でございます。そうして六人委員会は、申し上げたような経過で、たいへん残念ですが、まだ開かれていないというのが現状でございます。なるべくすみやかに六人委員会を開きまして実現に努力をする。申されましたように、財源があればやるし、なければやらぬというふうな簡単な問題であれば六人委員会もくそもないわけでございまして、そう簡単な心持ちで事を処理しようとする心がまえではございません。しかしながら、財源について措置をする責任大臣はやはり大蔵省でございますから、大蔵大臣を疎外した形ではものは運ばないわけでございます。大蔵大臣が九月決算を見るということが一つ、そういう自分の所管の事柄として九月決算を見るということをやりたいからという意味合いを含めて、二十八日は延ばしてくれと言われて延ばしたのでありますが、これはなるべくすみやかに六人委員会を開いて、実施時期を含めて、人事院勧告を尊重する線で実現をしたい、そういうふうに努力していくつもりでございます。
  40. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日のところこの程度にしておきたいと思います。   —————————————
  41. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 次に、一般労働行政に関する件を議題にいたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  42. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働大臣は、この前ジュネーブに行かれる前に、社労委員会でILO問題で私が御質問申し上げましたところが、国際会議に出る前でもあるので、国際的に非常に微妙な関係もあるし、党内の微妙な関係もあるので、臨時国会においてこれを解決するということだけで答弁はかんべんしてくれ、こういう話であった。だから、今度お帰りになりましたので、一体どういうお考えなのか。新聞等で見ますと、あるいは池田総理の病気のためにこれを臨時国会を一週間か二週間程度に開いて通常国会に回す、あるいは自民党内で批准と国内法は切り離すんだというような、前通常国会で非常な問題になりましたことがまた繰り返されておるようなことが新聞でいわれておる。ところが、双方ジュネーブ調査会で相当突っ込んだ質問もされて、政府も非常に痛いところを突かれたというようなことを私たちは承知している。詳細のことは、これは今後聞かなければわかりません。そういう立場に立って労働大臣自身がこのILO問題をどういう形で、どの時期で解決していきたいと思っておられるか、この点をお聞きしたいと思います。
  43. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 先ほどもちょっと申しましたように、ドライヤー委員会の審問の内容は、これは秘密会でありますので、その内容については表に出さないということになっております。ただ、詳細、私自身も参加をし、報告をしたところによりますと、私としては、その審問の進行状況その他についておおむね満足いたしておりまして、苦境に立つとか立たないとかいうような種類の感じを全般的には持っておらないことを申し上げておきたいと思います。ただ、こんなことはここの議場で議論することではないと思います。  それから、もう一つ、この前の委員会で、この問題の処理の具体的な方法については申し述べないほうがいいということを申しましたのは、ジュネーブへ参る前だからという前提のもとではないのでありまして、それ一切を含めて、あまり早い時期にいろいろのことを申すことは、この問題の処理のためにいい方法ではないので、ごかんべんいただきたいということを申し上げたのでありまして、その立場は今日も変わっておりません。したがって、私は、ILOの八十七号条約の批准は臨時国会で行なうように全力をあげてまいりたいと思っております。総理の病気の結果、臨時国会の期日が短くなるのではなかろうか、これは現在の段階では推測の域を出ないのであります。病院等の発表によりますると、私はそういうことはないと思っております。したがって、前の国会のこの委員会で申し上げましたように、その臨時国会で八十七号条約の批准をひとつ行ないたいということを熱心に考えておるということでお許しいただきたいと思います。
  44. 阿具根登

    ○阿具根登君 中身の問題もここでお聞きしようといっておるわけじゃないのです。しかし、いまの大臣の発言を聞いておりますと、それだったら四十六国会でとうに終わっておるのです。八十七号条約だけを批准するのだ、こうなるならば、何もわざわざジュネーブまで行って、そうして労使がよその方々にお互いのことを言い合って調査をしてもらうというようなことでなくても、その前でもできておったのです。それが国内法と一括審議で自民党と社会党の間で約束がされておる、それを一括してきめなければならぬということで今日までなっておるのじゃないか。そうすると、大臣の話を聞いておりますと、自民党の中で言われておるように、批准だけを先にしてしまうのだ、あとの国内法は次の国会だと、こういうふうに聞こえますが、そうなると、これはまた大きな問題になると思うのですが、そういうように担当大臣の石田さんが考えておられるのかどうか、そう受け取っていいのかどうか、その点をお聞きしたい。
  45. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) そういう意味で申し上げておるのではありません。それから、ドライヤー委員会に出席をいたしましたのは、この条約の批准ということを日本国内で促進するという立場から行ったわけではないので、ドライヤー委員会が開催され、それに日本政府が応じた、それに応じた以上は、日本政府としてこのILO八十七号条約についてのいままで、あるいはこれからの考え方を申し述べることは適当だろうと思って行ったのでありまして、私どもが八十七号条約を批准しなければならないということは、ドライヤー委員会が進行しておるか、あるいはその結論がどう出るかというようなことによって左右されるものではなくして、日本政府の独自の判断で、批准することが適当と考えてこの推進に当たっておるわけであります。
  46. 阿具根登

    ○阿具根登君 ILO委員会からは十数回の勧告を受けておるのです。だから、行くのは当然だと思うのですけれども、これだけでは八十七号条約の批准だけが問題になっておるわけじゃないわけなんです。だから、批准だけをすれば国際的にこれで一応勧告の線に従ったということでなくて、そのためには国内法の改正ということを政府は執拗に言ってきたわけなんです。それが自社両党の話し合いによって一括して審議をし、その結論まできめておったわけです。だから、その線を考えておられるのか、それは一切白紙になっておるということにして、国内法は別個だというようなことを自民党の中でいわれておるかのごとく新聞でも見るし、また、新聞ではニュアンスの違った石田労働大臣の発言もあっておるようでございますので、だから、党内事情ということでなくて、大臣の考え方として、八十七号条約は、これは速急に批准しなければならぬ。しかし、前からの約束もあるし、審議された条件もあるので、これも一緒にやるべきであるという考えなのか、どちらかということを聞いておるわけです、私の質問は。
  47. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 政府は、先般ILO八十七号条約批准に関連をいたします国内法の改正案を一括して提出いたしました。その後、いわゆる倉石修正案これが政府原案と一緒に特別委員会の審議が行なわれ、それについて私の前任者である大橋君がいろいろ答弁をされております。その答弁をされた部分、つまり政府原案にこだわらないで、倉石修正案でもいいという答弁をされた部分、その部分については当然私は責任を継承いたします。したがって、その継承した点に関連して政府原案を準備いたしております。そうしてその政府原案を提出するつもりでございます。政府部内、あるいは与党の中で、これを分離して条約だけ批准したらいいじゃないかという議論が新聞紙上へのぼっておることは新聞で知っております。しかし、当の責任者である私は承知しておりません。もとよりそのこれから提出されるであろう政府原案の取り扱いその他についてはいろいろの予想はございますが、予想はもちろん私もしておりますけれども、それをいま微細にわたって議論をし、予想を語ることは、これをまとめるために適当でないと私は考えますので、これ以上の御答弁はひとつごかんべんをいただきたい、こう思います。
  48. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も前回は大臣に非常に期待をして、その答弁で私は了解したわけなんです。ところが、これ以上の答弁はしないほうがいいのだというようなことを言われる前に答弁されておるのだな、それは倉石修正案がそのまま出るということではなくて、さらにそれを手直した政府原案を持っておるというように聞こえるわけなんです。そうすると、それでは与野党間で約束をしたものが一切これは白紙になるじゃないか、それではわれわれとしては了解できない。だから、そういう意味にとれる答弁で、そのあとを聞くなとおっしゃるのは、何かそうなるぞと暗示をされているようで、聞く人は倉石案を手直しをして石田案で出すのだな、政府案で出すのだな、こういうふうになるのです。その点どうか。手直して出すのか出さないのか、当然お互いに公党間で責任のある人が約束したのだから、それは守るべきだという考えなのかどうかということを聞いているのです。
  49. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私は、河野、倉石両氏の間で行なわれました話し合い、それは政府及び与党はその実現に努力をいたしました。しかし、不幸にして御承知のような結果になったことを政府、与党から社会党に通告をいたしまして、それに基づいて、それを今度契機として、ただそれを理由として内閣不信任案が提出された、それが否決をみました。したがって、あの話し合いというものはそれで終わったものと私は解釈しております。しかしながら、前の特別委員会において私の前任者が倉石修正案について答弁をした部分については、最小限度私は責任を継承するのであります。それが全部だとか、それで終わりだとかということを申し上げているわけではないのであります。
  50. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間もありませんから、この問題は十分今後討論する場所があると思いますが、しかし、いまの石田さんの答弁を聞いておれば、少なくとも労働行政のベテランであり、三度目の労働大臣だから、おそらくみんなが期待しておるようなことを考えておられるものということを私は一般勤労者も考えている、一般国民も考えておる、かように思っておったわけですが、いまの答弁においては、私はその期待が裏切られたような感じがいたしますが、いずれ臨時国会等が開かれましたならば、もう少し御質問申し上げたいと思います。  次に、先ほど予算要求説明をされましたし、それに関連して四、五項目質問を申し上げたいと思うのですが、その前に、大臣が就任されて、直ちに労働力の流動、中高年齢者の就職あっせん、こういうことを出されまして、私どもは長年つとめた人を首切って、そうして今度は高い金をかけて訓練をする、安い賃金で仕事をさせるということになってくると、中高年齢層の就職ということについては、これは非常にけっこうなことでありますけれども、体系そのものから見れば、これは賃金のダウンである、いわゆる年功序列で非常に高くなった賃金の人を合理化で首を切っておいて、そうしてその人を政府が幾ばくかの金を出して職業訓練させる、なれた職場を追い出して、なれた土地を追い出して、広域職業紹介で他県に就職させるという結果になるんじゃないかということを言っておったんですが、それをやるのも、現在出ている中高年齢層に対しては一つの方策だと思う。その前に、まず定年制の延長ということを考えねばならないんじゃないかということを言っておりましたが、たまたまそれから一カ月足らずの間に、労働大臣は関西の財界の方々を集めて、五十歳の人間の平均寿命のときに五十五歳の定年だから、いま七十歳だから、七十五歳まで使える定年制をしいたらどうか、こういう意見を述べられたというようなことが新聞に出ていて、その七十五歳というのがいろいろ波紋を描いているようでございますが、実際、大臣は、新聞で見たんだから、おれは知らないとおっしゃればそれまでですが、私らはそういう会合に出るわけはございませんので、新聞で承知する以外にはございませんが、七十五歳までの定年ということを考えておられるかどうか、これをお伺いいたします。
  51. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) あの新聞の記事は全くうそではありませんけれども、正確ではないのでありまして、正確に申し上げたことを言っておきたいと思います。それは現在の五十五歳定年というのは、人間の寿命が五十歳未満であるときにできた制度であった、いまは人間の寿命は男子でも六十八歳、七十歳近くになったんじゃないか、その割合でいけば七十五歳まで伸ばしてもいいはずだ。しかし、実際問題として、にわかにそうはいくまいが、これが入っておるわけです、にわかにそうはいくまいというのが入っているのですが、それが省略されている。しかし、定年制というものは人道的な見地からむろんでございます。労働経済という面から見ても真剣に検討していくべき時期にきたんだ、こういうことを申し上げました。そういう意味においてはいまでも変わっておりません。
  52. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、七十五歳というのは一つの話のついでに出たやつであって、七十五歳までせよということではないけれども、五十五歳の定年というのは若過ぎる、だから定年制を延長せよというのが大臣の気持ちだと思う。そうしますと、政府所管の官庁のお役人さんなんかはあまり定年制度がないようですけれども、その他の所管のものに対しては、六十五歳なら六十五歳までの定年制をしくお考えなのかどうか、民間にしく前に、こういった政府関係のものについてそういうお考えがあるかどうか、まずその点からお伺いいたします。
  53. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 政府関係には別に定年制というものはございません。ですけれども、やはりできるだけ長く働いてもらうようにしていただく、するのが当然だと思っております。それについて中高年齢層の雇用促進とあわせまして、まず中高年齢層で十分間に合う職種については青少年を使わないように、若年労働者を使わないように、それは政府及び政府関係機関が率先して行なうように強く行政指導をいたしております。
  54. 阿具根登

    ○阿具根登君 官庁関係に定年制がしかれておらないのは知っているんです。しかし、先般から問題になりました日雇い労働者の高年者の社会保障切りかえ、いわゆる首切りというのは一体それじゃどういうことになるか。そういういわゆる吹きだまりの人に対して石田労働大臣のそういう考え方ならば、もちろんこれは担当高年齢まで認めなければならないと、こう思うわけなんですが、いかがですか。
  55. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) これはちょっと誤解があるのじゃないかと思います。首切りというような措置を日雇い労働者にしておるわけじゃございません。六十歳以上の人について、その年齢にふさわしい労働、これをできるだけさがしてあげたい、そういう措置であります。年は幾つとっても、若いときと同じような仕事をそのままやれというわけじゃない。年齢に沿うた、体力に沿うた仕事に移ってもらい、それをやっていただくのがご本人のためにもなる、こういう考えでおるわけでございます。
  56. 阿具根登

    ○阿具根登君 一般の場合にはそう言えると思うんです、一般の場合は。しかし、先ほど申し上げましたように、吹きだまりなんです。一般のそういう仕事がほとんど可能でない人たちが私はあるんじゃないかと思います。私は今日もずっと見てまいりましたが、そういう一般産業ですら定年延長を叫ばねばならないときに、そういう吹きだまりで六十歳から以上は就職をさがしてあげるとか、社会保障で食えるようにしてあげますというのは、言うべくしてなかなかできない。そういう能力のないというのか、そういう体力もない方々が、かろうじて最後の職としてやっておる。これを最後の職とみるかみないかは法的の疑問があります。法的の疑問がありますけれども、現実問題としては、そこまで追い込まれている方々に対して、いまのような考え方ならば、もっとあたたかい手を伸ばすべきじゃないか、そういう考え方なんです。
  57. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 六十歳以上の人にふさわしい職種をさがしてあげるというのであって、そこに行かなければならないという強制をしておるわけじゃないんです。いやならいままでどおりおやりになっていいわけです。
  58. 阿具根登

    ○阿具根登君 私が言っておりますように、職を変わることを望み、また、それだけの能力のある人ならばどんどん変わるはずなんです。六十歳になって、そうしてあらゆる仕事をしてきて、仕事のない人が大部分なんです。だから、そういう点についても、他に定年延長ということが考えられるならば、労働省の所管でございますので、ひとつ考えを直していただきたい、こういう考え方です。  それから、時間があまりないので、質問がちょっと多いので進みますが、これは局長さんのほうからでも、大臣から考え方だけ述べてもらいたいんですが、石炭の合理化で緊急就労を御承知のように七千名きめた、そうしてそれが約一割引かれて、現在六千六百名だったかと思うんです。こういうことになっておる。だから、地方によってはワクが非常に少なくて、ワク以上の人を雇うために十九日ぐらいの就労日数になってくる。ワクは少ないが、減らすわけにいかないので、人数で予算を割っていく。そうすると、わずか十九日しか働けない、こういう実情ができている。さらには、この緊就というものは時限立法で、十二月の十七日に切れる。そういうことで非常な不安を感じておるわけなんです。だから、それに対しまして、今度の予算で緊急就労予算はどのくらい考えられておるのか。また、石炭合理化もまだ進んでおらぬ、第二次調査団まで出て、そうして非常に深刻な問題が起こっておる今日に、これを延長する法改正を出す考えがあるかどうか。もしも閣議等でやられるとするならば、非常な心配がその人たちにあると思うので、野党のほうから修正案を出してもやるべきだと、かように思っておりますが、それに対する大臣の考え方をお伺いいたします。
  59. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 緊急就労事業については、できるだけ実情に合ったようにこれをとり行なうべきものだと思っておりますが、詳細は事務当局からお答えをいたします。  それから、いまの時限立法が切れる問題でありますが、それは閣議決定で、予算措置で現状に沿うように実施する方針であります。
  60. 住栄作

    説明員(住栄作君) 緊就の本年度の事業計画につきましては、御承知のように、六千四百人の事業規模実施することにいたしております。事業でございますので、年度当初に計画を立てまして、現在の緊急就労者がその他の常用就職ができるように、安定機関をあげて職業紹介に努力いたしているのでございますが、そういうことも考えあわせまして緊急就労実施いたしているわけでございますので、ちょうど現在のところは下半期に入りまして、年度当初の計画見込みを十月各県相談いたしまして、修正することにいたしております。いまのような考え方でございますので、各地の雇用情勢によって他に転職していかれる方が多いところ、少ないところ、でこぼこがあるわけでございまして、必ずしも年度当初の計画が実情にそぐわないというようなことも起きてまいっております。そういう点につきましては各県と相談しまして、大臣からいま御答弁がございましたように、実情に即して計画の修正を相談中でございますので、御了承いただきたいと思います。
  61. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、その趣旨はわかるのですよ、その趣旨は。この前減らされたとき、そういうことでおそらく調整はできているものと思っておった。ところが、今度回ってみますと、荒尾等からも陳情書が出ておりますが、定員は百十名になっている。ところが、どうしても百三十二名というワクは減らせない、だから削るわけです。その七千名のうち、一割なら一割の人が他に転職されるということになれば、それはけっこうなのです。ところが、各県はやはり失業者をうんとかかえているので、減らすことについてはみな反対なのです。だから、現実問題としては、頭割りで一割なら一割引かれている。だから非常なひずみができている。だから、中央で考えられているように各県はうまくいかない。結局各県で相談する場合には、頭割り一割総額で引いた場合、一割引くということになりまして、十九日しか働けないというような実情が生まれてきている。それで、今度も六千四百名なら六千四百名で予算を組んでおられるとするならば、またこれが一年間そのまま踏襲されていく。おそらく、たとえばよその県で、私のところは緊就を減らしてよろしゅうございますという県はどこにもあろうはずはないと思います。どこも、私のところは緊就は、いっぱいほしいと言うに違いない。そうすると、頭割り一割なら一割の今日の線が踏襲されていくということになると思う。私は、現在の緊就六千四百名のうち、九州が五千七、八百名ぐらいでしょう。それでやっているかやっておらないかという問題を考えれば、いまのようなひずみができているので、この一割を引くということは矛盾じゃないかということを考えるわけです。その点どうなのですか。
  62. 住栄作

    説明員(住栄作君) 年度当初の計画を立てるにあたりまして、各県の雇用情勢等も検討いたしまして立てたつもりでございます。福岡等につきましては、一律一割というようなことではなくて、福岡の広域職業紹介計画等ともにらみ合わせまして、実情を配慮して計画を立てておるつもりでございますが、先ほども申し上げましたように、たとえば大牟田等については、当初計画とは相当違ったような情勢も出ておりますので、この点につきましては、十月早々の調整で実情に即した配慮をしてまいりたい、こういうように考えております。
  63. 阿具根登

    ○阿具根登君 先般も福岡のある地方の問題で住部長にお願いして、確かに二十二日に上がったことはございます。しかし、こういうものが、たとえば福岡でそれを上げてもらえば熊本にそのしわ寄せがいく。だから、今度は熊本は百十名で百三十二名を雇わなきゃいかぬ、こういうことになっておりますので、この問題は、あとで個人的にも御相談にまいってそのひずみを直したいと思うのです。大臣が一時に帰らなきゃいかぬそうですし、ほかの人の質問もあるそうですから、私は次の質問に移っていきますが、この点については大臣にもお願いしておきますが、まだまだ失業者は出てきておるのです。もうそれよりも、炭鉱がいやになって全部出て行きよる。これもあとで質問しますけれども、そういう実情でありますから、緊就のワクを減らすということは当分見合わしてもらいたいと思うのですが、そういうことをお願いして次に移りますが、職業病の件で、これは大臣あまり御存じじゃないかもしれませんが、だから御存じないところは局長さんにお答え願いたいのですが、まず、第一点は、御心配されました三池の爆発で、まだ六百七十六人の中毒患者がおるわけです。そして、そのうちの半数が入院、半数が通院、そういうことになって、まだちっともなおらないわけです。なおるという見通しも立たないわけです。まあ今日まで質問した中においては、一年間だけはひとつ病状を見さしてくれというようなお答えもあったのですが、私が担当のお医者さんに聞いたところでは、とても労働能力を回復するということはむずかしい方が多数あります——数まではっきり言っておりませんが、自分たち専門家として見てみて、労働能力を回復して、そして現場に復帰するということの非常に困難な方が多いですということを専門医師が言っておられるわけです。そうなりますと、これは職業病としては特別な中毒患者と、また、このほかにも中毒患者がありますから、こういう法律を考えられるかどうかという問題が一点と、それから、最近化学が非常に進歩いたしまして、そして非常に中毒患者がふえてきている。たとえば姫路の日触ですね、日本触媒化学、そういうところではニトロ中毒症という中毒によって、本人が知らない間に途中でぶっ倒れてしまう。それをお医者はてんかん症状だと、こう言っているわけです。そうしますと、本人は一ぺん倒れたなら、終生その恐怖につきまとわれる。いつ倒れるかわからぬ。倒れる前の症状がないので、だから、たとえば炭車に乗っておった、炭車に乗ってそのままぶっ倒れたら死んでしまうじゃないか。道を歩いておった、いつ倒れるかわからぬ、そういうことで非常に恐怖心を持っておる。私は、そういろてんかん症状ということならば、確かにそういう恐怖心を持つものだと思うのです。ところが、それが労使間で非常に紛争になっておるが、やはり会社はそれを徹底的な究明をせずに作業を再開しようとしている。こういう点から考えて、この種の中毒患者に対してどういう対策をお考えになるか。もしも御存じじゃなかったならば、そういうことであったならば、それが専門的に解明されるまでその作業を一たん中止させるというような措置がとれるかどうか。これは通産省の関係になるかもしれませんが、いずれにしても、労働者がそういう中毒で思いもよらずに思わぬ場所でてんかん症状を引き起こすというのが出てきておりますので、その点をひとつ考えてもらいたいということと、それから、もう一つは、これは北海道のイトムカ鉱業ですが、水銀中毒で、まるでアル中のようになってしまう。これは水銀中毒は世界でたった一カ所だそうです。掘っておる山に水銀が出てくるというのはたった一カ所だそうです。だから、掘っておる人がその水銀中毒にかかっておる。まあこういうふうなことですが、これはじん肺法の適用を受けておらない、こういうこともございますので、ひとつこの三点についてお答えを願いたいと思います。
  64. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 三池の爆発の犠牲者の方々で労働能力を持たない人々、そういう人々の将来については、でき得る限り生活の安定、保障を得られるような処置をとらせたい方針であります。  他の二件につきましても、労働者の生命の安全保護という立場から処置をしてまいりたいと思っておるのでありますが、具体的なことについては労災部長からお答えをいたしたいと思います。
  65. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) お答え申し上げます。  最初に、三池の一酸化炭素中毒患者に対する措置、なかんずく特別立法の問題でありますが、非常に回復がむずかしい患者がおりますことは御指摘のとおりで、そういう長期患者に対する問題を含めまして、労災補償制度としてなし得る限度におきましては、現行法の範囲内におきましても最大限の運用をはかっておりまして、労災の使命の範囲内におきましては、ほぼ必要な給付ができるものと考えておりますが、なお、今回御承知のごとく、労災保険法の改正を現在検討中でございまして、特別立法云々という御注文のうち、労災の分野に属するものにつきましては、あえて三池の一酸化炭素中毒患者に限らず、そういったものは特別立法をするまでもなく、労災として必要な補償給付ができるような法体系に整備いたしたいと考えます。  それから、フタロジニトリル中毒の件でございますが、この薬品は、御承知のごとく、日本でつくっております工場は非常に少のうございまして、昭和三十二年から四年にかけまして、神奈川県の三光化学におきまして同様のてんかん症状が発生いたしました。これはわれわれとして扱った最初の事例でございますが、直ちに調査をいたし、そして必要な予防措置を命じ、かつ、全国に注意を喚起したわけでございます。その後、三光化学におきましては予防措置が講ぜられまして、以後、同様な症状は出ておらないと承知しております。したがいまして、日本触媒の事件につきましては、これはことしの春ですかから、ごく最近操業を始めました。基準局といたしましては、八月に組合からの申告があって事態を承知したということでございますが、現在御承知のごとく、操業を停止して、労使の間で話し合いも進められており、われわれのほうで調査も進められております三光化学の経験がございますので、これにつきましては、すみやかに必要な予防措置を講ずることによりまして今後の続発は防げるのじゃなかろうかというふうに考えております。  なお、被災者につきましての補償は、もちろんできるだけのことをいたすつもりでおります。  イトムカの水銀につきましては、これは先生十分御承知のとおりの、世界に一つしかないところでございます。従来とも、基準局と通産省の鉱山保安局とが協力いたしましていろいろな措置を講じております。それによって中毒患者の数は減っておりますけれども、いまだ絶滅に至らないのが非常に遺憾であると思います。これはガスマスク等をつけることによって相当程度防げますけれども、御承知のごとく、水銀のしずくが天井から落ちてくる。それが着物についたらすぐふき落としても、液体でございますから、しみがつく、それで坑内から上がってマスクをはずしてストーブにあたるとその水銀の空気を吸うということで、非常に完全な予防がむずかしいものでございます。従来からとってまいりました措置、これはどんどん研究のできましたものから予防措置を逐次強化してまいっております。しかしながら、遺憾ながら、それでも一〇〇%防げるという段階に至っておりませんが、現在も鉱山保安局と協力いたしまして、できる限りの予防措置を講じておるという実情でございます。
  66. 阿具根登

    ○阿具根登君 部長よく御存じのことですから、これ以上申し上げませんが、このニトリル中毒につきましては、そういう例もありますならば、その例によって安心して働けるまで作業を中止して、そして万全の措置を講じてもらいたいと思います。  さらに、もう一点、労災法が改正されるということなんですが、職業病で長い間入院しておる人が生活保護を受けておる人よりも低い待遇を受けておるという現実もございます。そして、これも改正される場合に最低医療費というのを決定されるやに聞いておりますが、もしもそうだとすれば、その基準をどこに置くかという問題が一点。  それから、これは厚生省所管にもなりますが、結核で入院して回復期にある方の職業訓練を考える場合、これは今日のこの予算要求の中にもその他の問題で出ておりますが、こういう人たちにその病院病院に訓練所を設けるということはきわめて困難であります。だから、その周辺の職業訓練所にそういう人たちも訓練できる施設を設けて、何がしかの訓練手当をやって訓練したということになれば非常に効果はあがるんじゃないかと、これはこう思うんですが、この問題はひとつ大臣からお答えを願いたいと思います。
  67. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 労災補償を受けている入院患者が生活保護よりも低いというようなことのないように考えたいと思っております。  それから、いまの第二の問題も、できるだけそういう措置をとれるようにいたしたいと思っておりますが、いま法案を検討中であります。法案がもう少しまとまりましたときにお答えを申し上げたいと思います。
  68. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう一点でやめます。いま法案の検討中でございますから、その考え方について、なおひとつ労相の気持ちを私は聞きたいと思うんです。それは三池で四百五十八名死んだ、さらに、そのあとで東京周辺で化学製品の爆発があって消防署の方々が十九名もおなくなりになった、そういう問題に関連して大橋労働大臣に質問をいたしまして、大橋労働大臣の回答はいただいておりますが、その数百名の人がなくなった、労災補償が千日分だけ出る、そうしますと、中小企業でたとえばそういう災害にあった、あるいは会社に入って年功が浅い人がそういう災害にあった。そうすれば同じ千日分で四十数万円ですね、ところが、消防署の方々がなくなられた、これは人間の生命は金ではかるわけにはいきません。しかし、それには非常な同情が起きて、見舞い金として数百万円、新聞がそれは正しいかどうかわかりませんよ、しかし、七百万円から一千万円の見舞い金が出た、それが多いとか少ないとかということを論じるのじゃございません。そうじゃなくて、人間の生命が、中小企業で雇われておったならば非常に安いのだ、年をとって新しい会社に行ったならば賃金が安いから非常に安いのだというふうに、企業の利潤において人間の生命の価値を判断できるかということが私の質問の要旨です。そうすれば中小企業はやっていけぬじゃないかという意見もありました。しかし、それこそ保険制度であり、社会保障の精神からいうならば、残された方の生活をどう保護していくかというのが主眼点にならねばならんじゃないかという論争をやったわけなんです。そこで、まあ大臣としてのお考えで、私が何を言おうとしているか、おわかりくださると思うのですけれども、人間の生命というものは、その会社の利益によって左右されるものじゃない。だから、ある一定の線以上は、人間が死んだならば、必ず遺族に渡さなければならん、こういう考え方を持っているべきなんです。ところが、年金制ということがいまいわれております。私も年金制に反対ではありません。しかし、そうする場合にも、まず考えねばならないことは、年金、恩給その他のものの考え方というものは、夫婦というものを一に考えていると私は思うのです。そうして、その半分がなくなった場合は五割を支給しておるのが現実だと思うのです。年金の場合でも恩給の場合でも、主人がなくなった場合には、その半分が妻に終生いくものだと思っている。とすれば、それは一つの年金の考え方ということが肯定できるかと思う。さらに、子供が三人なら三人、平均三人ですが、三人という場合に、子供、たとえば一割なら一割ということで、満二十歳になるまでこれを保障するのだ、こういうような考えで労災の改正を考えられておるのかどうか、その点をひとつお伺いしたいのです。
  69. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) なくなった場合の千日分の金額というものが、それまでの働いておるときの賃金によって非常に懸隔ができる。これが人間の生命を金ではかるような結果となり、また、遺族の生活保障というものに大きな支障を来たす、そこで、そういうことでは困りますので、年金制というものにしたいというようなこともありますが、そのなくなったときの賃金が著しく低い場合、それを適正な価額に特別措置をもって直し得るように、訂正し得るような措置をとりたいと思っておる次第であります。  それから、年金に伴ないます本人が死んだ場合その他の処置についても、年金にかえるということは、長い間の本人並びに遺族の生活を保障するということはたてまえなんでありますから、そういうたてまえに沿った処置をとっていきたい、そう思ってる次第であります。
  70. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 年金の額につきましては、もちろん目下検討中でございますし、各種審議会もこれからやらねばならん、現在公務員のいわゆる恩給につきましては、本人の恩給の、はっきり覚えておりませんが、たしか半額が妻に引き渡される、本人の休業補償なり障害補償なり、半額が妻にいくという程度のことは、今回の労災の改正につきましてもできるのじゃなかろうかと考えております。
  71. 阿具根登

    ○阿具根登君 考えの中に一つのものがひそんでおるような気がするわけです。たとえば保険制度というものは六割が常識だ、だから六割をこえない程度でこれをきめるというようになれば、そういう不時の災害でなくなったというその人に対する考え方と違ってくると私は思うのです。だから、六割ということにこだわらずに、今度十年ぶりに労災法がかわるのですから、この際はそういういままでの考え方にこだわらずに、基本的な考え方を、私が申し上げましたように、その企業とかもあるいはその財政面とかいうことでなくて、私は、これは抜本的な考え方をしてもらいたい、そうしなければ、一番苦しんで働いておる人が一番災害が多い、そして、いい着物を着て働いておる人が災害が少なくて、事、災害が起こった場合には一番優遇されるという傾向が非常にある。だから、その点十分ひとつ大臣のヒューマニストにもこたえまして、この点は今度の改正は十年目ですから、ほんとうにそういう点へひとつ力を入れて改正してもらいたいかように思います。時間がないそうですから、私の質問はこれで終わります。
  72. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私は、激甚災害法の適用地域における、いわゆる震災に便乗した企業の合理化に伴う労使問題等を含めて、大臣は時間がないというお話でありますので、石田労働大臣にことば少なく、単刀直入に御質問を申し上げまするが、それだけに、ひとつ簡明直截にコクのある、新味のあるお答えをいただきたい、こう思うのであります。ただし、これだけのことはやはり頭の中に置いていただいて、どんな手なれた大臣であってもお答えいただかなければ、これは観念論じゃありませんので、申し上げておきますが、大臣御承知のように、去る六月十六日に発生した新潟地震における、いわゆる震災に便乗した人間軽視の思想、人間の価値をもっと尊重することが必要でありますけれども、私の言う場合は、人間軽視の思想と、労働者無視のきわめて露骨な、言うなれば資本家本位の、労働者とその家族を犠牲にした首切り再建合理化の強行というものが、いわゆる因となり果となって新潟地方において年末を控えて深刻な労使紛争がかもし出されようとしているのであります。たとえば九月七日北越製紙では、今度の震災に便乗して、一挙に、しかも急速に合理化を促進しようとして、千二百名の労働者のうち、三百三名の解雇問題が現に出ておって紛争中であります。さらに、昭和石油新潟工場の閉鎖問題が起きております。この工場が閉鎖されたとしまするならば、四百六十名と、その下請関係の家族を含めても無慮一万人のやはり関係者が路頭に迷う、こういうことになっております。そのほか、小野鉄工の百五十二名のうち、六十八名の解雇問題が出てきておるわけであります。さらに、荒川鋳造の全員解雇問題も出てきているわけであります。さらに、杉治商会四十二名の全員解雇問題の意思表示が出ておる。さらに、これは労働大臣に克明にひとつ頭の中に置いて、そしてひとつの政治力で生かしてもらいたい点は、御承知のように、激甚法の二十五条に基づく失業保険金の給付に関する適用期間が、やはりその期間切れを転機といたしまして、十月以降は中小企業の倒産ともあわせて、相当に中小企業労働者の解雇が激増してくるという状態にあるのであります。さらに、かてて加えて、御承知のように、新潟地方が雪の地域でありますので、被災労働者住宅の問題もあるいは中高年労働者の離職の問題や、いろいろの物価の騰貴とあわせて、いまや一連の社会不安がかもし出されようとしておる。こういう現状認識についていろいろ把握しておられるかどうかという問題は、一応私、掌握しておられる、おそらく労政局長さんあたりは、かりそめに把握しておられると思いますが、しかし、前段申し上げたようなことを、一応あるかないかという論では、具体的な問題になりますから、これを前提に赴いて、ひとつ以下、どうしてもこの時点で大臣に御所見を伺っていきたいということであります。  言うならば、震災による災害復旧が、公共事業の分野においても、あるいは民間企業の分野においても、まだ本格的な復興が、緒についていない現在であります。しかし、一面において深刻な労使紛争が起こっております。これに伴う労働不安が増大してきております。さらに、これに関連して、一まつの社会不安がかもし出されようとしおるという、こういうことは、要するに、私、考えまするに、激甚災害法の適用地域における、たとえば公共団体といいますか、自治体といいますか、自治体の長及び当該地の企業経営者が、かりそめにも、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の精神をどのように受けとめておるか、さらに、また、被災地の資本家や企業家が、企業経営の社会的、道義的精神をどのように身につけておるかということに問題があるかと思うのであります。さらに、歯にきぬを着せず、端的に極論いたしますれば、たとえば当該地域の自治体の長は、新潟震災による災害復旧予算をより多く取れば事足れりとし、また、当該被災地域の資本家や企業経営者は、激甚災害法に便乗して、政府関係金融機関からより多くの融資を得たい、あるいは伊勢湾台風にもあった事例にかんがみまして、税の減免措置等の運動に、率直にいって、うき身をやつしておるわけであります。したがいまして、すべての生産の原動力というものが人と物と財力との総合関係から成り立つというならば、経営の根本的基調というものを忘却してしまって、そこから人間軽視、労働者無視の首切り、再建合理化というものを強行しようとするところに問題の根っこがあると、こういうふうに私考えるのであります。この点にかんがみまして、ひとつ閣議の構成員であり、しかも、それらの問題について十分指導的な役割りを果たしていただきたい労働大臣から、ひとつコクのある所信をお伺いしたい、こういうわけであります。他に二、三点ありますけれども、この点がかなめでありますので、どうぞお答えいただきたいと思います。
  73. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 具体的な事例並びに具体的な事例に対処いたしております労働省の態度については、それぞれ関係政府委員から御説明をいたしたいと思いますが、御指摘のように、新潟震災を受けた被害地において、各企業の合理化計画、あるいは閉鎖等が行なわれておる、それに伴って配置転換、あるいは休職、退職等の勧奨があるという事実を承知いたしております。震災の被害を復旧するという根本は、その土地を直すとか建物を建て直すということではなくして、そこに住んでおる人々が、できるだけすみやかに被害を受ける前の事態の生活が保てるようにすることが主眼なんでありまして、労働行政の目的は、言うまでもなく人間にございます。この基本的態度に沿って措置をいたされておるのでありますが、しかし、各企業の中においてやむを得ない場合、あるいはその企業が生き抜くためにどうしてもとらなければならない場合においては、少なくとも労働基準法の規定に反しないような処置をいたされますと同時に、その企業はむろんのこと、労働省といたしましても、その人が新しい他の職業が見出し得られるように最善の努力をいたすつもりでございます。具体的な問題については、先ほど申しましたように、事務当局からお答え申し上げます。
  74. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 要するに、客観的に申し上げまして、被災地における企業経営者の企業再建に関するものの考え方は、そしてもののとらえ方は、しかも、一般論として言えることは、こういうふうに私考えるわけでありますので、これもぜひ大臣からお考えを伺っておく必要があると思いますので、お答えをいただきたいと思いまするが、案ずるに、申し上げるまでもないことだと思いますけれども、やはりすべての会社、これは被災地における相当多くの会社の全体の基本的な共通の考え方というふうに御理解いただいてちっとも差しつかえないと思いますが、やはりすべての被災企業の資本家、経営者のものの考え方は、まず第一番に、会社の将来性というものと、必要以上に株主への配慮というものを第一義的に考えておるようであります。第二番目には、企業の収益率の上昇という問題について、こうまで資本主義経済構造の中では、いわゆる利潤追求主義でなければ一体能ある経営者として評価が見劣りするのかどうかというほどに、企業の収益率の上昇というものにやはり終始しておるのであります。  もう一つは、他社との過当競争にどうして勝つことができるか。同じ企業陣営の中でも、やはりみんなが足を引っぱり合って、激じん災害法の適用地域という、そういう法の精神というものを忘却してしまったような関係で、この三つについて非常に争っているという事実が見えるわけであります。すなわち、以上のような考え方が基調となって、言うならば人間軽視、労働者無視の震災に便乗したいわゆる首切り、再建合理化が強行されようとしているということは前段申し上げたとおりでありまするが、しかも、これは私の判断するところによれば、明らかに資本家本位の独善的な解雇権の乱用であるというふうに私は受けとめているわけであります。これに対して労働者側の利益代表であるところの労働組合は、やはり完全雇用労働条件の維持を基調とした再建案を具体的に提示して戦っておるのが現状であります。ただ完全雇用や、あるいは労働条件の維持ということを、スローガン的な、政治的な把握でなくて、こうしたような震災というものは、もちろんかりに人災であり天災である、こういう受けとめ方をしても、現象面で職場がこわれておるというならば、こういう形でわれわれは再建案を持っておるのだ、そう言っておるのであります。したがって、一例をあげますれば、これは北越製紙の組合で話し合っておる完全雇用の具体的な案に関する労働組合側の基本構想の一部でありまするけれども、きわめて重要でありまするから、ちょっとお耳を拝借いたしたいと思いますが、こう言っております。「私たちは地震に便乗した首切り合理化にはあくまで反対して戦っていきます。それは会社の考え方の中には、まず企業の将来性、収益性等、企業競争に勝つための計算をする。次にそのための金融や設備規制等を考える。これからそろばんをはじいた結果、従業員に何人剰余人員が出るか、そしてこれらの人員の整理が必要だという順序でものをとらえ、ものを考えてくる。こういう考え方に問題があるのです。したがって、まずこの考え方を、もっと人間を大切にするという、すなわち、従業員の身分保障を優先するものに変えさせ、企業者としての社会的な責任を追及していかなければ、どんなに私たちがよい案を示してもむだと考えます。したがいまして、組合は本部に合理化対策委員会、支部に支部合理化対策委員会という機関を設け、技術者、活動家、役員が合体して企業のあり方やその他を検討する態勢で常に会社の姿勢をただして来た実績があります。中闘の方針では、これらの合理化対策委員会を活用し、また、一般組合員の切実な要求なり声を吸い上げる中で完全雇用の具体策をつくる態勢を考慮しています。しかし、この前提となるものは人間軽視、労働者無視の、いわゆる資本優先の独善的なものの考え方を変えさせなければならないと判断し、首切り反対のストライキ権を行使して戦っているのです。」と、こういうふうに言っておるわけであります。私、考えまするに、しかも労働組合側は、憲法で保障されておる労働権、生存権に基づいた、いわば生活防衛の戦いであると私は判断するのであります。したがって、いやしくも震災に便乗して首を切って、そうしてその家族を不安と動揺の中にたたき込んだような再建合理化による人員整理のごときは一切撤回させるべき、強力な行政指導を行なうべきではないか。それが時勢に即した労使の調整のやはり本務ではないかと、こういうふうに私は私なりに考えておりますが、大臣の所見を、あるいは見解を伺っておきたいと、こういうふうに考えます。
  75. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 現在、新潟の地震の被災地域の経営者が具体的にどういう考えを全体として共通に持っているかということについての批判は差し控えたいと思うのでありますが、私の経営者の社会的責任というものについての認識を申し上げておきたいと思います。  経営者の社会的責任は、私は、何よりも、その企業を取り巻く人々の生活の安定と向上を第一に考えるべきもので、そのために会社の将来を考えるべきであり、そのために収益性を考えるべきものであって、収益性や会社の将来性のために企業を取り巻く人間を犠牲にするということは誤りであると思っております。したがって、そういうもし御指摘のような傾向が見えるならば、それは反省をしていただかなければならないと思うのであります。ただ、完全雇用ということを考えます場合に、その完全雇用は、その現在まで働いておったところに、あるいは働いておった職種にいつまでも同じようにいなければならないということではなくて、産業界や経済の進歩、変遷に伴いまして雇用の変動が起こることは、これはやむを得ない。ただし、その変動の起こった場合は、その企業も、あるいは国家も、その変動の犠牲になった人々に対しては、従来に劣らない新しい仕事を世話をしていく、新しい仕事を見つけていくということが必要であろうと思っておる次第であります。再建案についての労使間の話し合いに期待をいたしますと同時に、ただいままでに申しましたような考え方に基づいて行政指導をしてまいりたいと思っておる次第であります。同じように、天災を受けました事例を考えてみましても、伊勢湾台風の場合には比較的そういう問題が起こらなかったのであります。もとより伊勢湾台風と新潟地震とは、性質は違うでありましょうけれども、考え方、ものの取り扱い方によっては、この種のようなことが円満に処理せられる方途があろうかと思うのであります。そういう考えでやってまいりたいと思っておる次第であります。
  76. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もちろん大臣が一時まででどうしてもということを了承して、頭の中に置いてお尋ねいたしたのですが、もう一、二これはどうしても大臣の考え方の中に入れて政治力を発揮していただかなければならぬ問題があると思いますから、さらに質問を続けますが、具体的な問題として、失業保険金の支給の特例措置を激甚法二十五条によって運用されておるようでありますが、昨日閣議が開かれまして、たとえば新潟市や黒崎市には、六月の十七日に始まって九月三十日、きょう現在で適用期間が切れてしまうので、それは心配ないよ、二カ月、三カ月新潟市や県、あらゆるものが陳情して、延ばすことにきまっているよと言われれば別でありますが、もしこれが期限切れになってしまって効力を失効しているとすれば、新潟市、あるいは新潟県の復興計画は遅々として進まず、大体十一月に——だからそれを頼りに中小、たとえば大きな企業としては北越製紙であるとか、昭和石油であるとか、あるいは新潟鉄工であるとか、あるいはいろいろありますけれども、その下請をしている系列企業は、それはしょせん失業保険の先食いであって、当然金ぐりの都合上、これが生活の柱になるということで、たとえば九月の県議会における知事の答弁、その他についても、そういった点について一体どうなっているか。一応知事の主観あるいは希望もあるでしょうが、それは大体県の再建計画の成る二カ月ないし三カ月ぐらいは延びるはずのような大体確約のある陳情をしているのだ、こういうふうに言っておりますが、もしそうなっているならばけっこうでありますが、そうなっていないとするならば、いまからでもおそくない。これはどうしても石田労働大臣の政治力で、何も財政計画の問題は、私はしろうとじゃないと思う、ちょっとした大臣の差し金のやりくりでつくと思う問題でありますが、この問題はどうなっておりますか、この点をひとり。
  77. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) そうなっております。昨日の閣議で、十二月十五日まで延長措置をとっております。
  78. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一点お尋ねをしておくわけでありますが、それはなかなかけっこうなことで、非常にありがたいことだと思いますが、もう一つあります。これは六月十六日新潟地震の発生した前後においては、私の記憶しているところでは、まだ石田労働大臣は労働大臣の位置にはいなかったと思いますが、しかし、今日では私どもはやはりヒューマニストとして閣議の中でひとつリードしてもらうというような点でこういうことを申し上げるわけでありますが、これは新潟地方のローカル新聞はもちろんでありますけれども、かりそめにも新産業都市指定を受けながら、やがて百万都市に背伸びをしようとする都市のあらゆる新聞も一致して、中央紙、地方紙がこういうことをいっておる。被災現状視察に来新された池田総理をはじめ、各大臣は、それぞれ被災現地において復興再建につき、責任をもって法の欠陥はその運用で、また、必要な諸施策は立法措置を行ない、被災再建には万全を期す旨を確約して、客観的にすべての新聞は明らかにこれに例外なく共通した報道をしておるわけであります。ほかの大臣は、大蔵大臣はじめ、例外なく来ておられます。そこで私はこういうふうに申し上げたいのであります。政府は、この際、激甚災害法の成立過程と、成立の際の衆参両院における附帯決議の内容及び立法の精神にかんがみ、激甚法の適用地域における労使紛争の原因を排除するための必要な行政措置を講じ、災害復旧に万遺憾なきを期すべきと思うので、政府の所信を伺いたい。これは所信を聞いても聞かなくてもいいのでありますけれども、要するに、参議院の場で附帯決議が八項目になっておりまするけれども、その中の主文にはこういうことがあげられております。「地方財政負担の緩和と被災者の助成に万遺憾なきを期すべきである、」こういうことがありまするので、八項目内容は申しませんけれども、要するに法の不利なところは運用で、どうしてもつかない法的な措置は法的な措置として、大臣はみんな共通語を言っておられますので、それから百日ぐらいたった今日、前段申し上げたような、このまま政治によきを符なければ労働不安の状態と社会不安の混乱が起きてくるぞと、こういっておるわけでありまするので、こういった問題についても激甚災害法というものについて、あるいはまた、労使紛争の根源は、確かにやはりこの地方自治体の長や、被災地における企業経営者の姿勢の問題、このもののとらえ方の問題に問題があるのじゃないか、こういうふうに考えますので、この点に関連しても、ひとつ閣議の中でいろいろ今後問題が発生するんじゃないかと思いますので、これから新潟の再建復興の問題は、そういう点についてもやはり所信を若干お聞かせいただければ幸いと存じます。
  79. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私はあらゆる機会に申しておるのでありますが、労働行政の根本は人を目的として、そうしてその人の豊かさと安定とを求めていくことにあるのであります。また、経営者の社会的責任については、先ほど申し上げたとおりの考え方を持っているのでありまして、いささかなりとも不幸な震災という事件に便乗するようなことのないように行政指導をやってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  80. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 時間がきましたけれども、もう一点政府委員の方にちょっとお尋ねしたいことがありますので、労働大臣がお帰りになりましても、関連をして……。
  81. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  82. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 速記を起こして。
  83. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大蔵政務次官も来てお見えになると思いますので、これは非常に質閲するほうの側でも、がさがさになっても要領が悪くなりますので、浮き彫りにしてどうしても一つお答えをいただきたい点を質問しておきますが、問題は、やはり具体的な問題の中身の一部になりますけれども、北越製紙には、たとえば前段申し上げたように、三百三名の首切り問題がいま係争中であります。したがいまして、地方再建の段階では、身分保全の仮処分という関係で、非常に問題が長期に大きくなっておるわけでありまするが、これはこれといたしまして、大体私どもが了承しておる限りにおいては、やはり北越製紙は大体十数億の実被害を震災で受けておるという、そういう関連の中で、これを復旧するという方向づけで三十数億の金をぜひほしいと、こういうような形で、私のお伺いするところによりますれば、北海道開発銀行、東北開発金融公庫、関銀、それから地方銀行であるところの地元銀行の第四銀行から、それぞれ込みで三十数億の金を調達しようと、そういったような点で、これは激甚災害法に直接間接にあやかって、ともあれそういう調達のめどは明かるいやに聞いております。したがって、そういう再建途上にあるにもかかわらず、しかも、いま北越製紙に限らず、すべての企業というものは、大体今日的な時点においては、第一次の合理化、第二次の合理化、こういうかっこうで、技術革新その他の関係もこれあってやっておるわけでありますが、この六月十六日以前に第一次の合理化計画、相当の抵抗はあったけれども、無理なこの首切りの問題についても、労働組合を唯一無二の相手として、それなりに解決はついたわけでありますが、問題は、第二次の合理化計画というものは、およそ昭和四十年度以降の大体計画の青図ができておったのであります。その計画を急遽この震災に便乗して繰り上げてきたところに大きな、いわゆる再建は首切りをやって合理化するということになるわけでありまするから、私どもが勘ぐれば、これこれこれの金を一応調達融資はするが、やはりというようなかっこうで、これは市銀や地銀であるやはり営業を目的とするところの銀行は別といたしましても、政府関係機関の融資という問題については、こういろ時点、こういう状態においては、やはり人と物と財力との総合関係から再建復興が成り立つということが常識的な原則であり、基本であるならば、当然大蔵省はそういう行政指導は今日ではできるできないの問題ではなくて、今日の状態では、少なくとも再建復旧までは無理な人員整理、そうして社会問題を派生するがごときような措置はすべきではないという行政指導をやはり行政の面、金融の面でやられてしかるべきではないか、そういうふうに思うわけでありますが、その辺のところを、大蔵大臣を代理されるという、そういう一つの立場で御見解をお聞かせいただければ、まあほかのことはまだ関係政府委員のほうからお尋ねしたいことはたくさんあるわけですが、その点をひとつ克明にお聞かせいただきたいと、こう思うわけであります。
  84. 鍋島直紹

    説明員(鍋島直紹君) ただいまの御質問につきましてお答えをいたすわけでございますが、北越製紙の問題のみならず、激甚地に指定されておりますところの企業をあらゆる面から援助をいたしまして、特に担当としては、金融の面から援助をいたしまして、りっぱにこれを育てていくというのがやはり国としての責務であると思います。したがいまして、このいまの具体的な例として、第一次の合理化計画は済んで、第二次に入ろうとするときに災害が起きた。しかも、相当の被害があるわけでありますから、それを立て直らせるということのために非常に無理な合理化計画が第二次にできて、まあいわばそれに便乗するように指導してと言っちゃ悪いのでありますが、そういう形をとりながら政府機関の金融の融資をしていくというようなことがもしございますれば、これは政府の激甚地災害に対する方針としては間違いであって、やはり災害復旧ということを重点に置きながら金融関係指導をしていくのが本旨であると考えます。したがいまして、その便乗というような形じゃなくして、少なくとも政府機関においては、その企業が、激甚地にある被害を受けたものが立ち直るためにどれほど必要であるか、どうやって融資をしていくかという点に重点を置いて考えるべきであろうと私は考えますし、そのように指導するようにいたしたいと考える次第でございます。
  85. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もののとらえ方としてわかりました。  それで、関連をして労働省関係その他のほうからお伺いいたしたいわけでありますが、大体お聞き及びのように、また、大臣に私がお伺いをいたしましたこれこれのことは大臣は頭の中にとにかく入れておいて、そうしてそれを前段として御所信を表明いただかないといわゆる観念論になってしまうのだということで、大体これから年末を控えて不安が起こりつつある、あるいは労働不安や社会不安が起ころうとしている。それについてはこれこれの大問題が続出しておるのだということを申し上げたわけでありますが、具体的な問題の段階に入って、たとえば北越製紙の問題については、御承知のように、百七十四名の個人に対する解雇通知と、百二十九名の休業通告を出しております。これはやはり北越製紙はいま新潟で大会をやっておりますが、この大会が済むまでひとつ個人通告という酷なことはやめてほしい、そういうことを言っておったのでありますが、二十四日に個人通告を出してしまった。だとすれば、それを受け取って身分保障の仮処分をひとつ法廷で争う、こういうことになっておるわけでありますが、少なくとも通産省にいたしましても、あるいは労働省にいたしましても、これだけの問題が派生しておるわけでありますから、会社にしても、営業担当の重役であるとか労務担当の重役は、それなりに縁のつるをたどっていろいろ陳情なりに行っておられると思いますが、私は、少なくとも政治の立場ではとうしろでありますが、労働運動の立場では三十数年この道に精進してまいりました。そういう感覚からいって、どうしてもこの三百三名を解雇しなければならないという道理はどうしてもわからない。しかし、もしわかるとしますれば、ひとつその辺のところを労政局長なり職安局長なり、あるいは通産省あたりでも、いや、あれは第二次計画を繰り上げたのじゃないのだ、やむにやまれずこうなっておるのだ、そういう点は全然関知されないのかどうか、その辺のところをひとつわかるように御説明いただきたいということを申し上げておきます。
  86. 新井真一

    説明員(新井真一君) ただいま北越製紙の問題につきまして、私ども聞いております範囲におきましては、被害の損失が先ほどおっしゃいましたように、約十一億でございます。ただ、非常に古い設備でございますので、したがいまして、簿価からいいましても、約六億くらいの機械の設備がその中に入っております。今回の復元の計画、こまかにまだ聞いておりませんけれども、大体従来どおりの能力を持ってまいります。しかし、簿価よりは新しくやりますためにそれだけの金が要るわけでございまして、ただ従前どおりのものじゃなく、あくまでもやはり便乗という形と申しまするよりも、これによりましてやはり新しい設備にせっかくやる以上は変えていく、こういう考え方で出しておるようでありまして、したがいまして、人員の余剰という問題はそういう点から出てくるのじゃないかというふうに想像はいたすわけでございます。
  87. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一つ大蔵政務次官にどうしてもおられる間に聞いておきたいことでありますが、関連をして、ぜひひとつ関係の政府委員の方、労働省あるいは通産省にもお伺いをしたいのでありまするが、これは昭和石油新潟工場の閉鎖問題についてでありまするが、新聞の報道するところによりまするというと、昭和石油の新潟製油所の再建復興は、実は十一月まで延び延びになっておる、こういう報道をしております。しかし、客観的には十一月といえば来月じゃないかということが言えますが、実は地元では九月あるいは十月の末までには何とか——これには御承知のように、イギリス資本のシェルという外国資本が入ってきておりまするのですが、しかし、問題は、その昭和石油の社長も、あるいは商工会議所の会頭、あるいは知事も、十一月には何とか新潟で再建をするか、あるいは表日本のほうに行くかということについては何とかということでありますが、結局ほおかむり主義で、いまだ自分のことが自分でこの取り扱いをきめかねておる、こういうような実情であるわけであります。これに対して一体通産省はどういうような判断をしておられるのか。なぜ一体昭和石油社長やいわゆる経営陣、首脳部はこういう問題をなぜこれをはっきりと答えることができないか、そういうような点というものをひとつ考えていただきたいのでありますが、それから、大体この昭和石油の製油所は四百六十名の組合員でありますが、非組合員その他を含めれば相当になりますけれども、もしこれが製油所が閉鎖をしてしまうということになれば、先ほど申し上げましたとおり、下請関係の家族を含めて、非常にたいへんなことになると思います。今日のやはり社会経済構造の中で、かりに一〇〇%完全雇用といってもなかなかそれなりにむずかしい問題があるということはさることとして頭の中に置くといたしましても、実際こういったような問題に対して新潟製油所を廃止してしまう。特に外国資本であるシェルがとにかくそういう意向を持っている。新潟をやはり廃止して、具体的には表の西日本に持って行こう、こういう意見を持っているのだ、こういうふうに聞いておるのであります。したがいまして、昭石の労働組合は八月二十九日の組合大会でこう言っておるわけであります。「もし新潟再建を断念し一部に云われている西日本に移転することになれば、通産省の認可、土地の確保などのために生産開始まで早くても三年はかかるものとみなければなりません。この間、会社側は現在の四六〇名の人員をそのままにしておくとは考えられません。さらに再建しないことになれば必然的に転出不可能者である組合員、および下請、関連企業に働く労働者、その家族約一万名の死活問題につながります。  天災により失った私達の職場の再建を要請し確保することは、きわめて当然のことであります。また新潟災害を契機として、外資(シェル)の昭和石油に対する発言力が増大されることが予想されます。私たちはこのことがさきに述べた、会社側が準備している合理化と新潟再建と私たちの労働条件と無関係のものでないことをはっきりと認識しなければなりません。さきに中央委員会の決議によって、外資の不当介入に反対する声明をだしましたが、いまこの声明の内容を再確認する必要があります。私たちは、私たちの権利と生活を守るために新潟製油所再建を要請し、外資の不当介入に断固反対することを第三四回全国大会の名において決議いたします。」、こう言っておるのであります。  そこで、私がお伺いしたいことは、昭和石油の移転問題に関して、通産省の石油関係当局者や大蔵省の外資関係に関する窓口では一体どういうふうな見解を持っておられるか、そういうふうにひとつうかがい知りたいわけであります。  労働省関係におきましては、一体それが移転してしまうしまわないということについては、いろいろ市も県も、あるいは町ぐるみで、せっかくここでこれだけの念を押して申し上げたものを、いまさら表へ出してもらっては困るということで訴えているわけでありますので、以上私の言わんとするそういうところをくみとっていただいて、もうじきにやめますが、ひとつ御解明をいただきたい、こう思うのであります。
  88. 鍋島直紹

    説明員(鍋島直紹君) 昭和石油の問題につきまして、大蔵省の関係しておる点と、また、いきさつを申し上げてみたいと思います。  昭和石油は、新潟の震災によります地震によりまして約三十億の損害を受けたと聞いております。したがって、相当会社の経営が困難になりましたので、同社の提携先でありますただいま御指摘のありましたシェルから原油を輸入しておるのでありますが、その輸入代金の支払いの猶予をしてもらうべく、通産省を通じまして大蔵省両省に対しまして、いわば大体四カ月ぐらいの支払い決算を二年間ぐらい延ばしてくれというようなことで申請してまいったわけでございます。これによりまして大蔵省は通産省と協議いたしまして、この特殊な事情によりまして、この約三十億の範囲におきまして支払い猶予二年間というものをいわば了承した次第でございます。ところが、その後になりまして、八月の中旬、昭和石油に聞いてみますというと、シェルに対しましていろいろ協議をしたところが、会社の再建の見通しとの関係で、すぐには了承できないというような通告になったようでありまして、この点については、まあいわば外資が昭和石油の内部にそういった面から多少の発言権を持ってきたというような状態になっております。現在大蔵省が関係しておりますのは、いまの決済の支払い猶予を二年間延長したという点だけでございますが、したがって、昭和石油としてはシェルにさらに支払い延期をしてもろうべく交渉をしておる。シェルのほうはあるいは会社の合理化計画等も検討をしたいというようなこともいっておるやに聞いております。これは昭和石油内部のいわば問題でございまして、その間に強力にタッチするわけにはまいらないような状態でございますけれども、現在昭和石油においては再建計画をさらに検討しておるやに聞いております。なお、この点は通産省から御答弁があるかと思います。根本的に申しまして、でき得る限り外資のそういった発言権というものはなくして、昭和石油独自の立場において再建計画を立て、復興していただくことを、これは僣越かもわかりませんが、私の立場としては望むわけでございますが、以上のような状態になっておりますことは率直に申し上げておきたいと思います。
  89. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 まあ大体言わんとせられることはわからぬわけじゃありませんけれども、私が問わんとすることをもう一度申し上げておきますが、再度お答えをいただく必要はありませんが、要するに経営の自由の原則というものについては、これは保障せられなければなりません、労使のいずれの立場に立ちましても。しかし、かりに開放経済体制の中で外資が入ってくる、そのことについて私は主観やイデオロギーをここで申す必要はないと思いますし、申すべきでないと思いますけれども、かりにも昭和石油株式会社というものは民族資本であり、その株主構成が経営の特殊性や方針というものを生かすべきでありまして、外資が入ってきて、昭石の中で一つの企業経営の金庫の中に入ってしまう。それを介入させるというようなことは、やはり大蔵省としては、日本が独立国であるならば、厳に排除する識見を持たないということになれば、少なくともほんとうにこれは変なものになっちゃうんだということで、これは決して経営自由の原則や、そういうものに対するいわゆる行政の内政干渉じゃありませんよ。そういうものをやはり指導していただかないとだめだ。資本主義経済構造の中では、何といっても先立つものは金なんですよ。そういう点については、はっきりやっぱり腹をきめて取り組んでもらわなければ困ると、こういうことを申し上げておるわけであります。まあ政務次官はそれでようございます。そう言っておったということを、私も新潟選出ですから、田中大蔵大臣はよく知っておりますが、そういうふうに力んでおるのだというふうに言ってください。  それから、通産省でありますけれども、あなたのところはすべてのこのやはりプラントに対する認可ですね。そういったもののやはり行政権を持っておられるわけでありまするが、大体この新潟地震にかんがみましても、あの昭和石油程度のいわゆる新潟工場の設備でもあれだけの爆発を起こして大きな被害を起こしておるわけであります。そういった面からいきましても、やはりこの安全性といったような面からいってももあるいは保安というような面からいっても、たとえばこのいま外資のシェルの意見が強まって、そうしてこういうことではどうもそろばんに合わぬから表に行ってしまおうというような形になって、問題はプラントのことになって、あなたのほうの問題になってまいりますから、私どもの立場から言うならば、やはり労働組合も県民も市民も、ここにおってください、こう言っておるのでありまするが、厳密な意味からいって、太平洋あるいは西日本におきましてもどこにおきましても、ベルト地帯には相当に石油精製所やコンビナートの密度が集中して過密度になっております。そこで昭和石油が、かりに今度新潟工場をやめて表に行くということになれば、十万バーレルの新しい施設をつくるのだということを聞いておりますが、その辺の事情はさることながら、一体この新潟工場は新潟の土地で再建するような方向に行政指導するということを——これは内政干渉することはできないということになるかどうかは別としても、こういうことは差しつかえない限界の範囲でこの場でお聞かせ願いたい、こう思うのであります。
  90. 加藤悌次

    説明員(加藤悌次君) 御承知のように、昭和石油は新潟に二つの工場——旧工場は小さいやつでございまして、大体一日の処理量七千バーレルくらいでございますが、その後、昨年秋に最も近代的な四万バーレルの新工場が完成をいたしました。稼働開始後一年たたないうちに不幸災厄にあいまして、ほとんど壊滅的状況に相なったわけでございますが、先生御指摘のように、これを再建する場合に、法律的には当然石油業法の規定によりまして政府の許可を要するわけでございます。そういった関係で、この再建をどういうかっこうで考えるかということにつきまして、私たちのほうにも会社の首脳部のほうからいろいろと御相談があるわけでありますが、先ほど御指摘のように、地元を中心とする関係方面から非常に強い現地での復旧についての御要望があるわけであります。この点私どもといたしましてももっともなことであるというふうに考えておるわけでございまして、あの地域におきまして、相当いわゆる社会経済的な面においての役割りを昭和石油の工場が果たしてきた。労働者はもとよりでございますが、これに関連する下請の中小企業等も多数あるわけでございます。こういったいままで地域社会経済の面において地域社会に貢献してきた役割りというものを、やはり再建をどうするかということを御決定になる場合に十分に考慮していただく必要があるのではないか。ざっくばらんに申し上げますというと、相当重要な要素としてこの問題をお考えになる必要があるだろうというふうに実は申し上げておるわけでございます。ただ、会社の内部におきましてそういった点ももちろん考慮の対象になるかと思いますが、先ほど大蔵政務次官からもお答えがございましたように、相当な損害を受けておるわけでございます。会社のいわば運命を左右すると言っても過言ではなかろうかと思います。そういう非常に重大な時期にいま際会いたしておりまして、この再建をいかにして早く行なうかということは、やはり会社の首脳部としては当然真剣にお考えになってしかるべきであろうという感じがいたすわけであります。私が聞いておりますところによりますというと、やはり現在までまだ現地に再建すべきだという議論と、それから、同じ設備をするのであれば、いまお話のございましたように、表日本のほうに新しく設備をつくるべきではないかという議論が社内の——これは外資のシェルの意見ということではなくて、社内の重役の間にもそういう二つの論があるやに承っております。そういう関係で、非常に会社自体としては慎重にいま御検討になっておられる最中でございまして、まだいまの段階におきましては、結論的にどういう方向にきまるかということにつきましては、私たちにもわからないわけでございますが、現地再建が非常に地域に対する関係から望ましいという言い方をいたしますと同時に、現地に復旧するために必要な復旧の資金につきましては、北海道東北開発公庫その他の政府関係の金融機関からできるだけ資金面の援助もいたすつもりでおるということまで述べておるわけであります。
  91. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 時間がありませんので、はしょってもう一、二点視角を変えて関連の質問を進めますけれども、はなはだ遺憾だと思います。しかし、いま遺憾だと言っても、この場で、この時点でどうにもならないと思いまするが、やはり不日に質問を譲りますけれども、この点だけは通産省、労働省からひとつお伺いをしておく必要が今日的な時点であると思いますので、お伺いをいたしたいと思います。と申しますのは、今回の新潟地震から学びとった教訓について、専門家はこう言っております。つまり昭石の被災状況から見て、保安面積としてプラトンと同程度の土地を保有することが必要である。つまりいかなる場合においてもプラントの倍の敷地内においてやはり一つの事業を操業する必要がある、そうしないと非常に危険だ、もう一つは、石油製造の場所と貯蔵の場所とを区別してプラント全体に保安のバランスをとることが必要だ、こういうふうに、どの専門家に聞いても、共通の意見としてそう言っておるわけであります。したがって、昭和石油新潟製油所の復旧が本ぎまりになってくる前に——ぼくは本ぎまりになるべきことであり、本ぎまりになることを期待しております。時間の問題だとしております。そういう前に、基準としまして行政指導をする必要があると思います。いま結局県や市や商工会議所は、ノー・ズロースのような状態でもって、おってさえもらえばいい、そういう問題については頭を使ってないところに非常に問題があると思うのであります。したがいまして、私どもは、再建するのがあたりまえなんだ、国土開発の原則からいっても、あるいは災害の集中性や危険性からいっても、あるものを何も既往の中に持っていく必要がないのだ、自然の推移によって、たとえば十万バーレル、二十万バーレルつくることはかってだけれども、それについてはそういう方向もない。実際に一つもない。保安基準というものを示さないとおってやらないというようなかっこうで、そういうように見せかけて、実はいろいろの条件の、融資の面だとか、いろいろと災害全部にかかってくるやつよりも保安をやろうというふうに、私ども足もとを見すかされておるわけですよ、実際として。まだ私は社長や首脳部には会っておりませんけれども、近い将来に会おうと思っておる。そして、要するに私は私なりに会って十分話し合う必要があるのだというふうに思っておるわけでありまするが、そういう観点から、たとえば通産省におかれましては、やはりこのことは、単にいま申し上げたようなことばのやりとりではなくして、しかも、このことはやはり防災問題だというふうな問題だけではなくて、やはり産業災害の多発のおそれのある昨今において、復旧を急ぐのあまり、また、ここにおってもらいたいといろ足どめ策だけに終始してしまって、保安がおろそかになったり怠ってしまうというと、そういうところから労働災害の多発のおそれがあるのではないか、こう思うのであります。でありまするから、やはり行政指導の面では、どこからどこまでは行政でやって、これ以上は発言力を持つことは内政干渉でだめだ、そういうのが従来のやり方だったのです。自今はやはり改めていかなければ、単に開発審議会とかいろいろな審議会の答申があったって何にもならないのだ、こういうふうに考えますので、非常にはしょっているので質問がやりにくいのでありますけれども、皆さん方でひとつ私の言わんとするところを受けとめていただいてお答えいただきたいと、こう思うのですが、これは労働省の基準関係とか、そういうような関係もあると思うのでありますが、通産省のほうもそういうことも用意しておられるかどうか、そういう点について、ひとつことば少なくてもいいんですが、はっきりしたところをお答えいただきたいと思います。
  92. 加藤悌次

    説明員(加藤悌次君) 通産省といたしましては、今回の新潟地震によります貴重な体験にかんがみまして、今後の保安対策をさらに一そう強化する必要があるということで、保安対策会議、これは大学の先生方等の学識経験者、それから現場の技術者、そういった関係の方に委嘱をいたしまして、保安対策会議というものをさっそく結成いたしたのであります。そこでいろいろと今度の火災の原因なり、また、今回の経験に徴しまして、そういうものについての設備の面、あるいは防災活動、あるいは今後の工場配置の面、こういった面をどういう方向へ持っていくべきかという議論を実はしていただいたわけでございまして、最近その結論がようやくまとまったわけであります。ただそれだけではまだ不十分でございまして、さらに石油連盟という業界の団体がございますが、その中に技術的な委員会を設けまして細部の検討を続けてまいりたい、この答申につきましては、さっそく関係の通産局長に指示いたしますと同時に、石油精製会社に対してもこれを流しまして、今後の保安の確保について十分留意してやっていただくように注意を喚起をいたした次第でございます。  なお、法的な面のチェックにつきましては、御承知のように、ただいまお話の労働基準法に基づく省令、あるいは高圧ガス取締法、あるいは消防法、こういったいろいろな法的な規制があるわけであります。こういった面を、今度の経験に徴しての改正については、十分慎重に、しかも、なるべく早く関係の方面とも連絡をいたしまして政府としての方策を定めたいと、こういうふうに思うわけであります。
  93. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 基準局長のほうからも何とかひとつ。
  94. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 先生御指摘の点につきましては、私どもも全く同様に考えておりまして、特に昭石の場合におきましては、単に石油のいわゆる火災という問題のみならず、石油精製に関連いたしまして、かなりの有毒物も扱うという関係がございます。したがって、可燃爆発物に対する処理のみならず、有毒物の管理措置といった問題もあるわけでございます。工場再建問題につきましては、ただいま鉱山局長から申し上げたとおりでありますが、いまも申しました、単に石油可燃物の問題のみならず、それに付帯いたします有毒物の取り扱い等、いろいろございますので、通産省その他関係機関と連絡を密にいたしまして、工場そのものの再建という場合に、そういった保安対策、これは労働災害防止対策の面から遺憾なきを期したい、かように考えている次第であります。
  95. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一点だけで、これでやめますが、これはひとつ労政局長から御答弁いただければしあわせかと思いますが、前段大臣がILOの会議に行っておられたりなどして、総評とか紙パであるとか、新潟県評であるとか、そういうところから労働大臣を窓口として、もっぱら労政局長を通していろいろと抗議なり陳情なりがきているはずなんです。で、大臣に御答弁いただくにしても、観念的な答弁だけじゃこれは問題は解けませんので、これこれの労働不安や社会不安がいま新潟地方で起きておろう、これをやはりどのように掌握しておられるのだ、どのように対処していかれるのだということを、実は実際にいろいろの情報網その他を通して掌握しておられるでしょうから、ひとつ政府の窓口というような立場で、この時点では労政局長から、いや、それはおさまって、そんなことはないのか、あるいは真剣にやっておられるのか、その辺のことも込めて、あるいはまた北越製紙はやはりこう言っております、首は切ったのだけれども、心配しなくてもおれのほうで十分ひとつ職を、おれのほうの責任で云々と言ったって、そんなことはできもしませんでしょう、実際問題は。だから、そういう関連の中で、私は、職安局長のほうもからみ合わせてひとつ御答弁をいただいて、これでもう終わります。
  96. 三治重信

    説明員(三治重信君) 大臣、次官不在の間に数回労使双方お会いいたしまして、それぞれ意見や事情を申し上げ、聞いておるわけでございます。北越製紙の問題、その他下請企業のそういう解雇の問題というような問題がなかなか解決困難な状態にあるとともに、新潟のほうの計画が十一月というふうないろいろの事情やなんかもお聞きしまして、そうして職安局長とも連絡をとって、先ほど御答弁がありましたように、災害失業保険の適用を十二月まで延長した、これが第一点でございます。  それから、会社側に対しては、やはり会社の再建計画というものについて、ただ余剰人員だから解雇もやむを得ないというだけではまずいので、先ほど大臣が申し上げたように、やはり失業者を出さぬように、配置転換、再就職という問題をついて会社のほうにも万全をとってもらうように勧告をしてございます。会社のほうは、それは最大限のことはいたしますということであります。  それから、もう一つは、やはり労使双方が直接解決について、やはりおれはこうだ、こちらはこうだということでなくて、逐次問題を煮詰めてもらいたいというふうに話をして、相当団体交渉も行なって協議も行なわれておるというふうに思います。ただ、遺憾に思いますのは、会社のほうが、団交をやりながらも、そういうふうな解雇通達を相当やって、いま非常な衝突寸前までにきておりますが、さらに会社のほうにも、ひとつ会社の措置措置として、やはり問題を円満に解決する努力は十分とらせるように勧告をしていきたいというふうに考えております。  その他、中小企業、昭石の問題は、私はまだ労使双方とも聞いておりませんし、具体的な問題を持ってきておられませんが、その他中小企業の問題につきましては、現地の商工労働部長には十分連絡をするように、また、その問題についてできるだけの援助をするように指示をしておる次第でございます。
  97. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 一点だけ、これは御答弁いただかなくてもけっこうです。これは遺憾な真実でありますけれども、こういう通告の内容の中に、百七十四名もの人々が、この通告を受けた限り、十月一日には会社の門の中には入っていけません、こういうことはこれはけしからぬですよ、実際問題として。私どもはどうこうとこの場で労働組合側の意見を代弁はしませんけれども、今日この近代的な労使慣行の中では、少なくとも震災で千二百五十名の中から九百九十八世帯が被害を受けて、そうして寝食を忘れて片づけものをしているのに、中高年齢層以上の首を切って、しかも十月一日からは工場へ入ってはなりませんという、こういうことは、少なくとも労働行政労働省がある限りにおいては、こういうことを大手を振って通らせることはよくないことだ、こういうふうに思いますので、きょうの段階においては、やはり将来いわゆる激甚災害法の適用地域における労使関係がうまくいけるように、あらゆる角度からとらえて労働運動がうまくいくように念願して、きょうはたいへんおそくなりましたけれども、これで質問を終わります。
  98. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ほかに御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日のところこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会をいたします。    午後一時三十五分散会