○丸茂重貞君 関連。いまの
労働時間の問題は、これはいま、
医療機関にとってたいへん深刻な問題です。基準法は確かに守られなければならない。ところが、先ほど来問題になってるように、
看護人員が非常に
不足しておる、
不足しておる中で
労働基準法を守ってやっていこうとすると、その人員がやりくりつかない。ほかの企業ならば、休んでも守る方法もあると思うが、とにかく生命に直結している職種でありますので、みすみすそういうことを承知しながらも、
夜勤等、その他をやってもらわなければならないというつらい面が確かにあるんです。これは、確かに
労働基準法を守らなくちゃいかぬ、
労働三法を守らなくちゃいかぬというのは筋ですが、一方、
看護人員が
不足している、この
不足につきましては、先ほど来やりとりがありましたように、遅々としてその
対策が進まないから、一向にふえない。この二つの矛盾点が、どこへ集約されるかといいますと、
医療機関の経営といいますか、実施の面に全部集約される。この監督は
厚生省と
労働省の両方が、ことばが過ぎるかもしれませんが、それぞれ独立の
立場、かってな
立場から、それぞれの要求を出すということで、一番弱い
医療機関が、その集約化を受ける。
労働省からしかられる、進退谷まっておるというのが現実の
実態なんです。
そこで、先ほどからの
労働時間の問題も、
労働基準法違反の問題も、
医療機関におけるところの
看護人員の増員
対策に全部かかってくるわけです、結局するところは。もし、これが順調にふえてまいりまして、十分な
看護人員を確保することができるならば、これはそういう問題も、全部解消するだろうと私は思われる。私も実際、
病院を経営しておりまして、その嘆きは非常に痛切であります。
そこで、先ほど来の
藤原議員の御質問まことにごもっともです。ところが、これに対しまする
厚生省の
看護婦の増給
対策は、私から言わしむるならば、きわめて隔靴掻痒の感がある。なぜかといいますならば、なぜ今日、
看護婦に限らず
看護人員が
不足しているかという根本の原因の探求が非常にあいまいじゃないか、こういうふうに思われる。先ほど
藤原議員の、原因の真因に触れる表現として、
看護婦さんにとっていまの
職場は
魅力がないから、
なり手がなくなるんだということばがあった。私はこれがほんとうの真因だろうと思う。
それじゃ
一体、
魅力がないということは、どういうところから出てくるか、先ほど
お話がありましたように、
待遇が悪いということ。それじゃ、
待遇の悪いということはどういうことだ。この
待遇が悪いということには、私は、物心両面があると思う。物的にいえば、もちろん、これはいわゆる経済的な報酬がきわめて低い、粗悪であるということでありますし、もう
一つは、いまの
看護体制をささえておりまするものは、いわゆる
看護婦と
准看護婦がありますが、ほぼこの割合は大体七対三か六対四くらいに当たるだろうと思う。その最も大きな部分を占めておりまするところの
准看護婦諸公の不平不満たるや、経済的な
待遇に対する不平不満と身分上の不平不満が非常に横たわっておるということを私は痛切に知っておる。どういうことかといいますると、いまの
准看護婦さんというのは、永久に
准看護婦さんなんだ。もちろん、保健婦助産婦
看護婦法には、
准看護婦が
看護婦になる道が開いてありますが、これには少なくも二年間は職種を離れて
自分の費用で勉強しなければならないというような、きわめて働く
人たちに不利な条件が付せられておる。恵まれた方々であるならば、
准看護婦になって一生懸命働いておられるという方々も非常に少ないだろう。そういう環境にないために、
准看護婦さんになって一生懸命やっておるんだという人に対して、一生
准看護婦で「准」がとれないのだという精神的なコンプレックスが、私は、今日の
准看護婦さんが非常に少ない
理由の大きなものだろう、こういうふうに
考えるのです。
そこで、
一つの物的な
待遇と申しまするか、これの原因探求が、まだまだ浅いだろうと思う。どういうことか。私は、本来の雇用関係からすれば、
看護婦さんが
魅力があるならば、修学手当等を与えなくとも、どしどし希望者があると思う。逆に、いかに修学手当を与えて、とにかく仕上がるまでは何とかめんどうをみますよと言っても、仕上がったあとの
職場で
待遇が不十分ならば、これは希望者がなくなるのはあたりまえのことですよ。だれだって、仕上げてもらいましたが、仕上げたあとで行く
職場が、きわめて
待遇が悪いということでは、二の足を踏むのは当然のことです。そこで、どうしても
待遇の問題を根本的に
考えるならば、
看護婦さんが資格を取ってから働く場所の
待遇をよくしてやるように
考えなくちゃいかぬ。ところが、正常な雇用関係からすれば、この
看護婦さんの経済的な
待遇というのは、どこから出るか。当然、
病院の人件費から出なくちゃならぬわけです。その
病院の人件費の
実態探求を、まあまあほっておいて、
看護婦の増給
対策はあり得ない。なぜなら、
待遇の問題に直結するからです。私は、いまは正確な資料をちょっと覚えておりませんが、おそらく全国官公立の
病院の平均の人件費は四六%ぐらいだろうと思う。間違っていたら、あとで訂正してもらいたい。もちろん、
病院経営というのは企業じゃありませんが、通常の企業で人件費が四六%をこしたならば、これはどういう
状態かといえば、これは破産です。ところが、
病院については四六%が人件費だというふうな破産的な操業を続けさしておる。その中から、いかに
看護婦さんをほしいからといって、
看護婦さんが十分社会的に満足できるような経済的
待遇が与えられるかどうかということは、火を見るよりも明らかです。この点に対して、従来十年間叫ばれておると
藤原先生おっしゃった。おっしゃいましたが、その探求が、私をして言わしむるならば、真因に触れなかったために、いつまでたっても、同じような、焼け石に水的な、びほう的なことしかできなかった。それがために、今日のように、いつまでたっても、
看護婦増給
対策が満足なことができなかった、私は、これが第一番の原因だろうと思う。
そこで、まず第一番目には、何としても
病院の経営費の中から十分な人件費が出せるような
体制を医務局は全責任をもってやるべきだ、あるいは
厚生大臣は、全責任をもってやるべきだろうと思う。ところが、いま、
病院経営の
実態を見ますると、
国民皆保険なんだ。
病院収入のほとんど九七%は保険収入であるべきだ、また、
実態は当然そうある。そうすると、
一体、この
病院経営の一番の大黒柱の収入が、全部
社会保険収入だということは、これはだれも曲げられない事実です。今日、
病院経営が、さような自転車操業よりももっとひどいびっこ操業をやっておる真の原因は、収入と支出のバランスが少しもとれておらないからであるということに対しては、だれも反対者はないと思う。これが
看護婦問題を今日の深刻さにおとしいれた第一の深刻な原因だろうと思う。
一体、これに対して
厚生大臣は、どういうふうな認識を持っておられるか、あるいはこの問題を
看護婦不足の問題と結びつけられるには、今後、どういうような
対策を講ぜられようとしておられるか、この問題をまず、第一に私はお伺いいたしたい。続いて第二をお伺いします。