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石原幹市郎君 私は、秋山
委員とともに、去る二月六日から五日間、福島、宮城の両県下で現地
調査を行なってまいりました。
調査は、両県とも県庁において、
県選挙管理委員会並びに
警察当局より、資料に基づく説明並びに
意見を聞くほか、
言論、労使、
婦人、青年、
公明選挙推進、地方議会、
市町村選挙管理委員会等の
各界代表より
意見を聞き、また、福島、仙台の両市にも立ち寄り、市
選挙管理委員会、市議会代表の
意見をも聴取する
方法で進めてまいったのでありますが、以下その
概要について御
報告いたします。
第一は、昨年十一月に行なわれた
衆議院議員の総
選挙についてであります。
まず
投票率について見ますと、福島県は、男子八三・四八%、女子八一・三六%、平均八二・三四%でありまして、
前回に比し、男子二・一七%、女子一・二五%、平均一・六九%のそれぞれ減となっておりますが、全国平均に比べますると、なお男子一一・一二%、女子一一・三四%、平均一一・二〇%の高率を示し、島根、山形、山梨、福井の各県に次ぐ全国第五位の
投票率であります。また、男女
投票率の差は、二・二四%だけ女子が低く、これは、男女差の全国平均二・三四%より差が少なく、
前回と同じくらいの開きであります。
宮城県につきましては、
投票率は、男子七四・六三%、女子七一・五〇%、平均七二・九八%で、福島県と同様に、
前回に比して、男子二・五五%、女子〇・三七%、平均一・四一%のそれぞれ減となっており、全国平均に比し、男子二・二七%、女子一・四八%、平均一・八四%と上回っており、男女
投票率の差は三・二二%で、全国平均より開きがあります。また、仙台市における
投票率を見ますると、男子六五・八〇%、女子六二・四一%、平均六四・〇六%で、県全体の
投票率に比し、ここでも都市部の
投票率が低いことが注目されます。
次に、
選挙違反検挙
状況を見ますと、福島県では、総
件数二百六十四件、総人員六百四十六人のうち、
買収供応が、二百三十一件で全体の八八・四%、人員六百十五人、九六・三%と、圧倒的に多く、以下、
文書図画二十件、三十一人、
戸別訪問七件、八人となっており、
前回の
違反総
件数三百七十三件、総人員千二百四十人、うち
買収供応三百五十五件、千二百十八人、
文書図画九件、十一人、
戸別訪問七件、八人に比し、
買収供応
件数は、百二十四件の減、人員は六百三人の減で、その他の罪種も減少しておるのであります。
宮城県におきましても、今回の
違反総
件数が百八十二件、二百五十二人、
買収供応が百四十六件、八〇・〇二%、人員が二百二十三人、八八・四九%、
文書図画二十二件、十一人、
戸別訪問十四件、八人であり、同じく
前回総
選挙の
違反総
件数七百七件、総人員千三百九十人、うち
買収供応五百八十五件、人員千二百八十人、
文書図画六十二件、五十六人、
戸別訪問五十四件、四十五人に比して、
買収供応が三百三十九件の減、人員が千五十七人の減少であります。
両県当局の説明によりますと、福島県においては、第三区で今回特に競争が激しくなかった。それからまた宮城県では、
前回に新人候補が出て、特に無理をした等の事情もあるようでしたが、全国的な特質の
一つとして、
違反検挙
件数の増加があげられているときに、両県における前述の
傾向は、けっこうなことであったと思われたのであります。
第二に、
衆議院議員総
選挙の
臨時特例法について申し上げますると、
投票時間の二時間
延長は、遠距離通勤者の少ない当地方においては、特にその必要は認められず、また、
選挙管理関係者の労働過重となり、開票事務にも支障を来たす等の理由から、
現行の
選挙管理委員会による繰り上げまたは繰り下げの
措置で十分であるという
意見、それから、
連呼行為の
緩和については、一部、騒音防止上または
街頭演説が少なくなり、
言論による
選挙運動拡充の観点から、やや消極的な
意見もありましたが、大勢としては、
選挙気運を盛り上げる
効果があり、やむを得ないのではないか。さらに、
街頭演説の
場所においてする連呼とまぎらわしいので、
禁止時間を同一にすべきであるとの
意見も出ておりました。
公営ポスター掲示場の設置は、町の美観上から概して好評でありましたが、農山村地方においては、
有権者の利便を考えて、
投票区を多く設けており、一
投票区に十世帯くらいのところもありますので、一律に三ないし五カ所というように法定することは、設置
管理に当たる
選管委員会の陣容から見ても無理があり、恒久化するとすれば、
選管委員会が地方の
実情に即して
場所数を定め得るよう、さらに柔軟性を持たせられたい。また、電電公社、電力会社の電柱に一定枚数
掲示することを認めよとの
意見も出ておりました。
個人演説会場の
公営立て札の増加は、特にその必要が認められず、
選管委員会の事務能力、
開催周知用としての
効果が少ない等の理由から、むしろ
公営立て札を廃止して、各
候補者の作成に移すこととすべきである。また、
選挙運動用ポスターが
公営掲示場以外は
掲示できなくなったことに伴い、
個人演説会開催周知の
方法がないので、周知用の
ポスターを
選挙の種類に応じて一定枚数を認め、撤去費用を
候補者から前納することとしたらどうか等の
意見が開陳されましたが、いずれも検討すべき問題と思われたのであります。
第三は、
公職選挙法についてでありまするが、同一
市町村内において他の
投票区に往所を移した場合、新
投票区における
投票を認めないことは、合併により市町町の
区域が広域化した現在においては不合理である。それから、同一氏名等の
候補者に対する
投票を各
候補者の有効
投票数に応じて案分する公選法第六十八条の二の規定は、
選挙争訟のもととなるので廃止すべきである。
立候補届出
期間を大幅に短縮し、
選挙公営のための
管理事務の能率化をはかるべきである。
昨年の
統一選挙による仙台市議
会議員の
選挙に関し、現在当選無効の訴願が提起されているが、
公職選挙法施行令第九十三条第二項により、全員の
候補者百人につき
供託金の返還が留保されているが、個々の事例に即して、当選の結果に
異動の及ぶ範囲に限って留保の
措置をとれば足りうるのではないか。また、
公務員の
地位利用による
選挙運動の
禁止について、「
地位利用」の意義を明確化すること。
立会演説会は低調なところが多く、将来は、テレビによる
立会演説会の実況放送ないしは新聞、ラジオ、テレビ等による
公営選挙運動に移行するのがよい。
戸別訪問は、
選挙本来の姿であり、
候補者と
選挙民との結びつきを強め、明るい
選挙気運を盛り上げる等の理由から、自由とすべきであるとの
意見もありましたが、また逆に、
選挙民の高い
政治意識、
買収供応が行なわれないという前提条件がない限り、軽々に認めるべきではないとするのが大勢のようでございました。
新聞、雑誌の報道及び評論の自由について、公選法にいう「通常の
方法」は、実際にあたって解釈がむずかしいので、具体的な例示規定を設けられたい。また、法定条件を具備しない新聞、雑誌については、
選挙期間中のみならず、
告示前においても一定
期間規制すべきである。
街頭演説場所の
確保の規定は、
確保した
場所があまり活用されていない
現状から、廃止すべきである。
選挙運動に関する収入及び支出の公表は、提出される
報告書自体が法定費用額をはるかに下回っているのが
実情であり、公表をしても、かえって
選挙民の嘲笑を買うだけで、意味がないのではないか。後援
団体が
選挙区内の
選挙人に対する寄付、後援
団体の総会等における供応、接待、金銭物品の供与及び
候補者の後援
団体に対する寄付などを
選挙期日前一定
期間禁止しているが、これらの
禁止を免れるため、特定
候補者を推薦、支持している者の後援
団体が特定
候補者との間にこれらの行為をなしているので、
規制の対象とすべきである。特定の
候補者を推薦、支持している
団体が
政治団体でない場合には、わずかに
文書図画の頒布、
掲示につき
禁止を免れる行為として
制限規定を置いているにすぎないが、かかる法の盲点をついて、特定
候補者と同一スローガンで街頭
署名運動やデモ行進などをし、
選挙運動と同一
効果をねらっている事例があるので、
規制する必要がある。
政治活動用立看板については、現在何ら
制限がないため、盛んに利用されているが、その記載内容が
選挙運動とまぎらわしく、また、交通安全上障害を来たす等の弊害が見受けられるので、立看板の
掲示については
規制の必要がある。
候補者を誹謗する悪質
文書違反に対しては、
一般の
文書違反と区別して、
厳罰主義で臨むべきである。
衆議院議員の
選挙区の
改正について、福島県第二区は、中央に奥羽山脈が縦走し、会津地区と県南地区とが全く二分されており、相互間の交通の便も悪く、地形的、社会的に同一
選挙区としての形態をなしていないので、これを二分割すべきであるとの
意見のほか、
一般的な問題としては、第二次
選挙制度審議会の
答申の早期
実現を望むとの
意見が述べられ、いずれも検討に値する問題点であると思われたのであります。
第四は、
公明選挙推進の
状況並びに
選管委員会の事務機構の
強化についてであります。
公明選挙の
推進状況は、両県とも公明
選挙運動推進要綱に基づいて、平時においては、
公明選挙モデル
市町村の指定、特別委託
市町村の指定、
話し合い助言者の養成、
話し合い資料の作成、
政治教室の
開催、
ポスターコンクール、マスコミの利用、
啓発映画フィルム、スライド等の資料の提供、講師のあっせん等を行ない、また、
選挙時には、
買収供応追放大
講演会の
開催、同
話し合い実施指導者打ち合わせ会、広報車巡回、マスコミによる
啓発その他の事業を行なって、着々成果をあげつつありますが、常時
啓発費が、
選挙時には多いが、平常時には全く閑却視される
傾向がありますので、平常時においても必要なる予算
措置を講じ、あわせて自主
財源の
確保をも法律に明記すべきである。
選管委員会の事務機構について、福島市における専任職員は、
書記長一、主任一、
書記一、雇一の計五名が置かれ、ほかに支所十六、出張所一、連絡所一に兼任
書記二十二名を配置してあり、仙台市においては、
事務局長一、課長一、係長三、主事三、主事補七、作業員一、計十六名の専任職員が置かれているのでありますが、大部分の
市町村においては、兼任の職員が多い
実情であり、逐年高度化し、また複雑化している
選挙事務の
管理、
執行に対処するとともに、公明
選挙運動の常時
啓発活動を一そう
推進するためには、県、
市町村とも、
選管委員会
事務局機構の
強化拡充をはかる必要があり、立法的、財政的
措置を講ずべきであるとの
意見がありましたが、これらは、いずれも検討を要する問題であると思われたのであります。
第五に、
国会議員の
選挙の
執行経費については、
特例法によって必要
経費はおおむね
確保されたようであり、仙台市では、三十七年の参議院議員
選挙に際し、約百万円の持ち出しがありましたが、今次総
選挙においては、持ち出しなく、とんとんだとのことであり、各所で恒久化を
要望しておりました。
以上のほか、
高級公務員の
立候補制限、
連座制の
強化、
違反者に対する公民権の長期停止、
選挙違反事件の迅速裁判、
政治資金の規正、小
選挙区制の
実施等につき、多くの
意見が述べられましたが、本日は時間の
関係もありますので、これらについての
報告を省略し、後日、
委員会審議の過程で、適宜政府の見解をただしたいと思います。
以上で
報告を終わります。