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参考人(
佐野為雄君) 朗読する前に、
一言感謝とおわびを申し上げたいと思います。
今回
参議院建設委員会の
先生方には、国政きわめて御多忙の中にも、
中央道の
重大性にかんがみまして、
実地踏査、
見聞をなしてい
ただきましたことを厚く
お礼を申し上げる次第でございます。
さらに、先般七日より本日に至るまで二泊三日間、大月、富士吉田、
下部町、早川町、さらに
韮崎、
長野県上
諏訪、
飯田方面にまで
実地御
見聞をい
ただきましたのでございますが、連絡不十分と申しますか、私
どもの
地元には何らの連絡もなかったわけでございまして、
新聞紙上で拝見するところによれば、南都留におき、あるいはまた
韮崎方面その他
長野県
方面におきましては、非常に歓迎の
態度をもち、しかも、御案内申し上げたように拝聞いたしておるにもかかわからず、わが
身延町におきましては、何らの御案内も申し上げることができず、また、つぶさに
現地を御説明できなかったことをはなはだ残念に存じておるわけでございます。
一応私
どもは、この
中央道の
重大性は、敗戦によりまして
国土がきわめて狭隘になった、どうかこの狭い
地域を
開発いたしまして、
山岳資源あるいは
地下資源、
山岳都市あるいは
農村振興、
観光方面に、国の
一大事業として
名実ともに
国土の
開発をするところに重大の生命があったのでございますが、最近に至りましてにわかに
路線の変更が持ち出されたことを聞きまして、まことに残念に思っておるわけでございます。
中央道の
路線を
諏訪市
北回りに変更せんとする一都五県の大多数の賛成者に対しまして、私
どもは、これを阻止せんとする
山梨県及び静岡県の
路線関係町村民は、わずかに十数万にすぎなくいたしまして、まことに九牛の一毛にも足りないという微細なものではありまするが、少なくとも国の政治は、真理を愛し、正義に生き、立法の精神を尊重いたしまして、しかも忠実に運営すべきを確信するものであります。ここに私はあえて
昭和三十五年七月二十五日
法律第百二十八号をもって公布の中央自動予定
路線を定める
法律をあくまでも堅持いたしまして、これが
実現を促進するのが当然と考える次第でございます。
申し上げるまでもなく、
国土開発縦貫自動車道建設法は、
国土の普遍的
開発をはかり、画期的な
産業の立地振興と国民生活領域の拡大を期するため、
昭和三十二年四月、国会議員四百三十名の超党派的共同提案によって制定されました。
昭和三十五年七月、この
法律に基づく、
中央自動車道の予定
路線を定める
法律が満場一致の賛成を得て制定され、
中央道は、
東京より富士吉田、さらに静岡県井川村付近、すなわち赤石山系を横断して小牧市に至る
路線が
法律化されまして、
実現への第一歩を踏み出したとき、
関係市
町村民はもとより、全国民がこの壮大なる
国土開発道路計画を絶賛し、歓呼いたしまして迎えたわけでございます。
しかるに、それより四カ年を経た今日、しかも、
中央自動車道は、
政府、国会並びに
関係各位の格別なる御尽力によりまして、
東京——富士吉田間が工事に着手されまして着々とその進捗をされつつあるときに、昨年五月十七日に虎の門会館におきまして開催の
中央自動車道建設推進
委員会の総会の議事の冒頭に、青木
委員長先生は、突如として、私は昨年九月、十月、二カ月にわたる欧米の
道路視察にかんがみ、
中央道は、投資の効率、経費節滅のために、
路線を
北回りに変更すべきであり、この問題は、何人より要求されたものでもなければ、また指示を受けたものでもない、と突然的に
発言をなされたのでありますが、これに対し、直ちに
北回り地域の
関係者より、すべて青木
委員長に一任の緊急動議が出され、無情にも大多数をもって決定されたのであります。私
どもは、かかる重大案件が何ら事前の暗示もなく、寝耳に水のごとく
発言の瞬間時において、この重大案件が採択されたことを見たときは、まことに推進
委員会の真意を疑い、断じて納得ができなかったのであります。したがいまして、わが
身延町は臨時議会を招集いたしまして、議会の
決議(別紙にございます)をもって、
関係方面に
路線変更反対の
陳情を続けてまいりましたが、このたびあえて、この
法律を改正なされようとされておることはまことに遺憾のきわみでございます。
そもそも本
中央道の使命、目的、その性格は、未
開発の広大なる
国土中央部を最短距離によりまして縦貫し、膨大なる自然、観光、
産業、
地下資源に日の目を当て、一大
開発を目ざすべきこの
中央道路線が、既定
路線に沿って六十余キロも迂回する
諏訪経由に
路線を変更し、単なる
一級国道的なものに取ってかえられたことは、この
中央道にかけられた国民の希望を奪うものであり、立法の趣旨に反するものとして、特に
現行法によるところの通過地点にある
関係町村民は、断じて承服しがたいものがあります。
変更論の根拠としては、工事費の増大、技術的困難等が掲げられておりまするが、赤石山系の長大トンネル工事による施行の困難性と工事費一千億円の超過工事費を要すると申しますが、全国まれに見る地質の悪条件下にある国鉄新幹線の丹那トンネルの工
事例から見ましても、現在の長足な進歩をした
日本の土木技術をもってすれば、長距離トンネルの
建設は憂慮する必要はなく、変更
路線の工事に比し、一千億円の巨費がかさむことはないことがわかっておるのでございます。
長大トンネルのために排気ガスによって空気が混濁すると申しますが、モンブラントンネル(延長十一・六キロ)、その他外国の例を見ても、わが国の長大トンネルの例を見ましても、換気設備をすることによって、空気混濁による交通不能は絶対ないことがわかるのでございます。
標高一千メートルに近い路面においては冬季氷雪害による交通途絶の憂いがあり、技術的に高速
道路としての性格を失うと申しますが、富士山麓を通過する
国道百三十九号線には、標高一千メートルの通過地点があり、中部電力株式会社が
建設した畑薙ダムの
建設道路には標高九百八十メートルの通過地点があり、また、その他の
事例から見ましても冬季間の交通には支障のないことがわかるのであります。
なお、
北回り線は、既定
路線より六十余キロの延長になることがわかります。
既定
路線の
建設は、
北回り路線によって経費の軽減をはかることより、最も資源に富み、かつ
経済価値も高く、国家的にも最も有利とされるわけでありまして、これらのことは、
法律制定前にも十分調査、審議を遂げられて、去る
昭和二十九年八月第五回
国土開発中央道審議会(会長、
建設大臣)におきまして、当時の菊地
建設技監の結論どおり、技術的にも可能なものとして、この
路線法の決定を見たと信じておりますが、幾多の困難はあるとしても、これを克服して、この雄大なる
国土開発を
実現することこそ国家百年の大計であるとして、全国会議員が賛成し、この画期的法案が制定されたものと確信するものであります。
第二十二回国会における内海
建設委員長の法案審査報告によりましても、「
国土を縦貫する高速幹線自動車道を開設し、これを幹線とし、これに接続する培養
路線約二千五百キロの
整備を促進し、その組み合わせにより、
国土開発、
道路網を形成して、
国土の普遍的
開発、画期的
産業の立地振興及び国民生活領域の拡大をはかることが、この
法律の目的である」と説明されているとおりで、実に六十キロ延長し迂回する
北回り路線に変更するがごときは、幹線と培養線との性格を誤るものであると考えるのであります。
長野県の
諏訪・
松本地区が新
産業都市の
指定を受けた
関係などにより、高速
産業道路を必要とするならば、
中央道のバイパスとして別途に
建設すべきであろうと思うものであります。
国土開発という立法の精神を堅持せられまして、南アルプス山系の
開発によりもたらされるところのばく大な恩恵とわが国の繁栄に思いをいたしまして、
中央道既定
路線は、あくまでも変更することなく、
現行法どおりの
建設を促進せられんことを衷心よりお願いするものでございます。