運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-06-04 第46回国会 参議院 建設、農林水産委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月四日(木曜日)    午前十時二十分開会    ———————————  出席者は左のとおり。   建設委員    委員長     安田 敏雄君    理事            石井  桂君            稲浦 鹿藏君            増原 恵吉君            瀬谷 英行君    委員            小沢久太郎君            熊谷太三郎君            小柳  勇君            武内 五郎君            中尾 辰義君            田上 松衞君            村上 義一君   農林水産委員    委員長     青田源太郎君    理事            梶原 茂嘉君            森 八三一君            渡辺 勘吉君            北條 雋八君    委員            植垣弥一郎君            木島 義夫君            櫻井 志郎君            温水 三郎君            野知 浩之君            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            山崎  斉君            大河原一次君            大森 創造君            北村  暢君            小宮市太郎君            牛田  寛君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    建 設 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    建設省河川局長 畑谷 正実君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏雄君    常任委員会専門    員       中島  博君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○河川法案内閣提出衆議院送付) ○河川法施行法案内閣提出衆議院  送付)    ———————————   〔建設委員長安田敏雄委員長席に着く〕
  2. 安田敏雄

    委員長安田敏雄君) ただいまから建設農林水産委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が連合審査会委員長の職をつとめます。  それでは、河川法案河川法施行法案を議題といたします。  両案に対し質疑のある方は、 次御発言願います。
  3. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まず、建設大臣お尋ねをいたします。  現行河川法は官僚独善的な性格がきわめて濃厚な法律である、かように理解をいたすのでありますが、今回の新河川法改正案では、その点はいかような改善がなされておるか。地方自治体や地元住民立場なり、権利なんというものは、今回の法案の中には、どのような内容によって尊重されておるか、この点をまずお伺いをいたします。
  4. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、今回の改正法案におきましては、従来の水利権、これは全部既得のものにつきましては、そのとおりこれを尊重するというたてまえをとっておるわけであります。既存のものにつきましては、別にこれを改変するというような意思はございません。それはそのとおり見るべきものだというたてまえをとっております。
  5. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、少し具体的な内容に入って私の冒頭の質問を伺うことにいたしたいと思いますが、まず、今回の河川法案に対して要請されますところの水基本法的性格が欠除しておるのではないかという点をまずお尋ねをいたしたいのであります。  順序として宮澤経済企画庁長官お尋ねをいたしますが、水の総合開発なり、あるいは水の利用計画なり、水質保全等についての規定が、たとえば水資源開発促進法あるいは特定多目的ダム法公共用水域水質保全に関する法律等規定にゆだねられたままになっておって、現行河川法工事法なり監督法なり、調整法的性格を継承しておりますので、近時きわめて要請の強い総合開発ないし資源利用計画法的性格をもあわせ含めたところの水の基本法体系が完備されていないと考えるのであります。したがって、第一条の目的を達成するためには、新河川法案では何としても治水重点が置かれておるたてまえからいたしましても、不十分であるというそしりは免れないと考えるのであります。したがって、より次元の高い立場で、私のお尋ねをする水の基本法というようなものが、この際十分必要であり、政府としては考えらるべき問題ではないかということについて、経済企画庁長官からまずお伺いをいたしたいのであります。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御審議願っております河川法案は、必ずしも治水ばかりでなく利水についても、御案内のように、いろいろな考え方を示しておるわけであります。したがって、一方的に治水ばかり考えておるというふうには思っておりません。基本的に、ただいま渡辺委員の仰せられましたことは、十分考えられることであります。つまりエネルギーとしての水に関する総合的な、いわゆる基本法的なものを考えるべきではないかということは、これは原則論としてよく理解し得ることでありますが、ただいまの段階としては、やはり河川についての管理体系を一貫させるということはきわめて緊急なことであると思います。他方で水資源開発促進法でありますとか、あるいは水質保全でありますとか、多目的ダムでありますとか、ただいま仰せられましたようないろいろな現行法がございます。で、それらのさらに基本になる基本法というものは可能ではないか、必要ではないかと言われますそのお考え、そのものには決して異存はございませんけれども、そのこと自身が非常に抽象的な、あるいは総合的なものの考え方でありまして、さしずめ、どういうことをそれならばそういうところへ持っていって書くかということは、やはりこういう管理体系などが完備いたしましてあとで考えてもよろしいのではないか、こういうふうに思います。
  7. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ちょっと私から、この法案を直接提案いたしました私の立場から一言補足をいたしたいと思います。  私は、ただいまお話しになりましたような点についても、全然同感であります。しかしながら、何を申しますにも、現行河川法明治二十九年につくられましたもので、その後いろいろな角度から、いろいろなものを補足して水に関するものが立法されております。これを今日の立場において考えるならば、いまお話しのようなところまで進んでいくべきことは当然でございますけれども、何を申しますにも、その間の経過が非常に長い、非常に時限経過しておることと、その間にこの問題が非常に複雑に発展しておる。たとえて申しますれば、この法案でも、ただいまここで農林省との間に連合審査をいただき、午後は、自治省との間に連合審査をいただくというように、関係方面が非常に広く御審議いただかなければならぬ広範なものでございます。また、大蔵省関係につきましても、相当にいろいろな問題があります。でございますから、私といたしましては、まず、この二十九年を今年に一応引き上げてくる、将来のことよりもまずこの時限まで引き上げてくる、そして一番みんなが基礎にして考えられるところまで引き上げてまいりまして、そうしてこの状態において次の跳躍をしていくということを考えまして、しかも、なるべく摩擦の少ない意味において取りまとめをしなければ、これまでたびたび、いろいろな場合にお考えをいただきましたが、ついにまとまらない、ついにそれが実らないというようなことで今日まできました経緯等考えまして、そうして一応この程度ならば、まずまず大方の御了解が得られる、この程度までは必要の最小限度だというところに一応とどめまして今回御審議をいただいておる。したがいまして、いまお話しのように、ああいう点はどうか、こういう点はどうかということについて、むろん考えなければならぬことであることは、私も同感でございます。もう少し治水よりも利水を完ぺきにして、そして利水の裏に治水を片づけるというふうにすべきじゃないか、私もそう考えます。しかし、これには予算が十分整いまして、そして十二分にダムを整備し、さらに、ダムをつくるならば砂防の問題を十分にする、まず、砂防から十分にいたしまして次にダムを固めて、そうして水源に水を十分にたたえてそして一定量を川に流す、そうして水を十分に利用するというところまでいかなければならぬと思うのでございますが、そこまでまいりますには、まだ準備が相当に要るということを考えまして、一応現状におきましては、まず、水防ということを中心にして考えつつ、いま申し上げましたようなことを順次一方において積極的に整備をしてまいるというふうに考えてこの法律案をつくりまして御審議いただいておるということでございますので、その点ひとつ御了解いただきたいと思います。われわれの期待するものも、そういう意味で将来の点については十分考えておりますが、それは法案としては、この中にはまだ書き込みませんけれども、将来の理想理想として、これを予算の上において現実に実現してまいる。そうしてある時期が来たならばそれを改正する、こういうつもりで御審議いただいておるということを御理解いただきたい、こう思っております。
  8. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 御意見を申し上げる前に、同じこの問題について農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  9. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話しのように、水の問題を総合的に考えていかなければならぬということは、私もごもっともに考えます。でありますので、最近の傾向といたしましても、水の資源中心として、すなわち、水系別に水の問題を解決していこうという傾向が非常に強くなってきておりますので、総合的に水の問題を解決すべき時期が来ておるとは考えます、しかし、御承知のように、この問題につきましては、いま御指摘のいろいろの法律等もありまして、特定多目的ダムだとか、あるいは水資源開発促進法あるいは水質保全、こういうものでその方向調整をしつつきておるのも御指摘のとおりでございます。河川法につきましては、いま建設大臣お話し申し上げましたように、一気にということにはまいりませんが、やはりその方向に向かって、明治二十年代の法律を改めようということでございますので、私のほうといたしましても、総合性を失わない、また、方向が同じような方向で進んでおるということでありますならば、非常にこの改正は好ましいものだと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  10. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 三大臣からそれぞれの見解を伺いましたが、確かに歴史的な経過をたどれば、この段階での政府の提案というものも、わからないわけではないのでありますけれども、しかし、内容的には、各大臣が肯定されましたように、どうしても今回の法案だけでは水の基本的なあり方というものが総合的に位置づけられないことは、否定し得ざる現実であります。建設大臣の御意見は、かなり経過を経てこの改正段階に至っておるのであるから、これと現実に取っ組んで、さらに水基本法的な次元の高いものにジャンプをするのだと、その意図も明らかにされたのでありますが、これらを総括して企画し、これを実践庁にお示しになる立場に立つ経済企画庁長官としては、一体この新河川法を踏まえていかなる時点でこれらの総合的な水法ともいうべきものを企画され、これを国会に示される用意があるのか、その具体的な決意のほどを重ねてお尋ねをいたしたい。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 非常に率直に申しますと、私は、いま渡辺委員のおっしゃっていらっしゃいますことは、決して異存を持っておるわけではございません。ございませんが、非常に率直に申しますと、本来経済企画庁なるものが、水なりあるいは土地なり国土、そういったようなものの総合的な最も効率的な利用について、どれだけの仕事をなし得る能力が現実にあるかということになりますと、率直に申して、私は多少の疑問を持っておるわけでございます。今後経済企画庁というものが、そういう基本法をいろいろに考えていくべきものなのか、あるいはもっと直接にこの関係を持っておるところのよその、他省がすべきものであるのか、私どもは実ははっきりした定見を持っておらないわけでございます。現実には幾つかの役所の権限に関係いたしますために、調整といったような意味経済企画庁仕事をあずかるような形で水資源の問題などはしているわけでございますけれども、本来からいえば、強力な行政を行なおうとすれば、そういうことでなくて、直接に一番関係の深い役所が連絡をとっていく必要があるのではないか、問題を直接に処理したほうが本来ならば私は有効なのではないか、そういうことを考えている次第でございます。それは行政面の問題でございます。  しかし、基本的に国土なり水なりといったようなものの総合利用あるいは開発ということは、政府としてだれかが、いずれかの時期に考えなければならない。国土についてはややございますけれども、水については、こうして現行法律がとにかく現在の段階——アップ・ツー・デートなものになるというところから、ただいま言われたような問題を政府としては考えていくべきであろう、こう思っております。
  12. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうも私の期待が非常にはずれた感をいなめないのでありますが、私は素朴に、国民としては経済企画庁が総合的な企画をつかさどる官庁であり、決して現実の各実体を担当するそれぞれのセクションを調整するという消極的な機能だけではないという期待感のもとにお尋ねをいたしておるのであります。後ほど、いろいろ具体的な問題でお伺いをすればその期待する点が明らかになるはずでございますけれども、少なくとも内閣の中で、総括的に水の治水あるいは利水というものを長期の展望に立ってこれを企画し、これを具体的にはそれぞれの実務担当省に実施させるという総合性がないことが、いろいろ現地における混乱を惹起している現状から私はお尋ねをいたしたのであります。しかし、この問題をこれ以上お尋ねをいたしましても、農林水産委員会として連合審査をした肝心の問題の時間がいそがれますから、これ以上取り上げませんけれども、少なくとも、建設大臣自体ですら、といえば失礼ですけれども、従来の経過からいって、この治水重点を置いた法案でやむを得ない、これを実施するにもかなり予算その他の努力を要する、やがては大きな飛躍をして、私がお尋ねをした水の基本法的なものまで取り組むということでありますから、池田内閣としては、総合的にそれらの問題を、すみやかに基本的な方向を確立する政策が、私としては、ぜひ必要であるという観点からお尋ねをしたにほかならないわけであります。  時間の都合で具体的なお尋ねに入ります。まず私権制限についてお尋ねいたします。  新法案では、私権存在関係するところなく、そのまま河川に認定して公共用物としての制限が課されることになって、農林業に対しても、このような制限が拡大されるおそれが生ずると考えるのであります。流水についても、私権基本的に尊重されるものであるかどうか、この点をまず建設大臣お尋ねをいたします。
  13. 畑谷正実

    政府委員畑谷正実君) 私から答弁いたします。今度の法案では、私権につきましては、河川公共用物であるということで、流水については私権存在を認めておりませんが、敷地におきましては、従来の河川法と違いまして、河川敷内においては、土地私有権を一応認めております。
  14. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 流水については私権を認めないということですが、
  15. 畑谷正実

    政府委員畑谷正実君) そのとおりでございます。
  16. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これはたいへん基本的に問題のあるそれは政府の態度であると言わざるを得ません。具体的にさらに焦点をしぼって、これは大臣お尋ねをいたします。  まず、建設大臣お尋ねをいたしますが、農業慣行水利権を一体どう考えるかということであります。近時河川総合開発とか、あるいは農業水利権合理化ということで、従来の慣行水利権の整理ということが強調される傾向にあることはいなめないこれは現実であろうと思います。これに対して建設大臣は、水利権許可なり、水利調整にあたって、農業慣行水利権保護について、具体的にこの新法の運用にあたってどのようにお考えになっておられますか。
  17. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほどもお答え申し上げましたとおりに、既存水利権につきましては、そのままこれを尊重し、いやしくもこれを阻害するというようなことは毛頭考えておりません。具体的に申し上げますれば、農業水利権につきまして、届け出書によりまして水利権台帳をつくりまして、その台帳によりまして、その水利権は確認してまいるということをやってまいるというつもりでございまして、従来尊重されておりました既存水利権を阻害するということは毛頭考えておりません。
  18. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 従来の慣行水利権を尊重する、保護をするということは一当然である、決してそれらの既存権利を阻害することはないという御答弁でありますが、農林大臣は、この農業慣行水利権保護について、具体的にはどのようにお考えになっておられますか。
  19. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 慣行による水利権に、法律改正されてしわ寄せされるということはあってはならないと思います。その点につきましては、いま建設大臣答弁いたされましたように、慣行水利権を侵すということなくこれを尊重すると、こういうたてまえであります。そこで私のほうといたしましても、建設省と十分な協議を尽くして、農業水利と他の権利を持っている水利との調整につとめてもおりますが、これからも一そう強くその点を進めていく所存でございます。
  20. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 建設大臣は、慣行水利権届け出ということに触れましたが、今回の法案の八十八条に、慣行水利権届け出制ということがあります。この届け出制を画一的に、機械的に行政として実施する場合に、このめまぐるしい技術の進展なり、あるいは経済情勢の変貌というものに伴うところの水利用の変動というものに対して、どのようにこの届け出制の実施に弾力的に対応できるのでありますか、これを建設大臣にお伺いをいたします。
  21. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 弾力的にとおっしゃいますが、よく要頭を私はつかめないのですが、申し上げましたように、既存慣行水利権は全部届け出ていただく、そうしてそれを台帳にして、従来不備でございましたた河川台帳を明確にして一河川あり方を完全に把握してまいる、そうして水の利用度を将来高めるようにもいたしますということでございまして、なお、届け出を大体わかっておりますから、そういう届出を怠っている場合には、行政指導をいたしまして、各市町村長等を通じて十分これを要請をして、そうして整備してまいる、こういうふうに考えております。
  22. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣河川台帳のことにも触れて御答弁になっておりますが、この十二条に基づくところの河川台帳を調製する、こういう場合に、農業水利権慣行水利権をその十二条の規定圧縮をするという伏線になるのではないかという懸念があるわけであります。それは懸念であれば幸いでありますが、その点について、この台帳の作成に伴う運用基本的な考え方というものを承っておきたいわけであります。
  23. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 最初から申し上げますように、これをやることによって、台帳をつくることによって既存水利権圧縮しようとか何をしようとかという必要もなければ、そういう考えは毛頭持っていないのであります。あくまでもそれは尊重して、そうして間違いないようにしていこうということでございますから、水利権をなるべく落としてやろうとかという考え方でいまこの法律をつくっているのじゃございませんから、そういうことは考えていない、あくまでも尊重いたします。
  24. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあかなり明確な御答弁でありますから安心をしていいと思うのですが、念のため、第十二条の場合に、農林大臣の御意見はどうでありますか。
  25. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 慣行水利権届け出水利権内容といいますか、権利、これは別でございます。でございますから届け出慣行水利権内容である権利権利として、いま建設大臣が言われましたように、尊重されなければならない、こういうたてまえで私どもは臨んでおるわけでございます。
  26. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 尊重されなければならないことは当然でありますが、それがかなり圧縮をされるのではないかという懸念についていま申し上げましたが、両大臣とも、そういう懸念はとんでもない思い過ごしである、十分これらは行政指導の点からも、従来の農業水利権の、万全の権利保護のための台帳というような運用に善処をするという意味の御答弁でありますから、その御答弁で了解いたします。
  27. 北村暢

    北村暢君 関連して。いま建設大臣も、慣行水利権は尊重すると、こういうことですが、尊重せられるその意思はいいんですが、一体今日の水行政をつかさどる上において、従来の慣行水利権をそのまま尊重するようなことで水利用合理化ということができるのかどうかということです。これは今日工業用水、上水道、並びにそういう水の利用度というものが非常に高まってきているわけです。したがって、この水利用ということからいけば、いまおっしゃられるような慣行水利権を尊重するというようなことで問題が解決するかしないか、これはたいへんな問題だと思うのです。私は、おっしゃるように慣行水利権は尊重してもらいたいと思う。しかしながら、その慣行水利権内容というものが今日の社会において許さるべき状態にあるのかどうか。たとえば農業慣行水利と称するものが非常にむだに水を使っておる。一体どのぐらいが必要で、どのぐらいあればいいのかというようなことも全然わからず、慣行水利権だからといってこれを認めるということについては、今日もうすでに許されない段階にきているのではないか、こう思うのです。したがって、この農業用水慣行水利権というものを守りながら、尊重しながら、いかに水を合理化して使っていくかということがたいへんな問題になっていると思うのですが、そういうことで、簡単にそういう答弁でいいのかどうなのか。  たとえば行政管理庁は、行政監察の結果、勧告をしているのであります。「農業水利権許可に際しては、時期別取水量を明示して、合理化促進に資すること。」となっております。この一つやっただけでも、慣行水利権内容というものについて再検討を加えなければならないということはもう明らかなんです。そういうことが、いまの答弁のような形で処理していいんでしょうか。しかも私は、国会——ここで答弁するだけでこの問題は解決しない。しからば慣行水利権なり農業水利実態というものが明確につかまれているかどうなのか。建設大臣はいま、届け出てない者は届け出てもらうのだ、こう言うのでありますが、その届け出ただけでは水の合理化にはならないわけです。もちろん、届け出てもらわなければどうなっておるかわからぬという点はあるのですけれども、今後一番重きいのは、やはり農業かんがい用水でありますから、そういう慣行水利権なるものの実態は、いまわからないの実情じゃないかと思う。たとえばかんがい用水で、「水利使用許可件数」というのを資料としていただきましたけれども熊本県の例を一つとってみますというと、これは非常に奇異な状態でございます。福岡県と熊本県を比べてみますと、かんがい用農業水利許可件数が、熊本の場合にはわずかに九件であります。ところが、福岡県は八百三十八件のかんがい用水許可しておる。熊本県はわずかに九件。この前、現地調査に行って現地意見を聞いたのでありますけれども熊本県は届け出ておるものはわずかに九件であるが、農業水利組合が四百からある。農業水利組合が四百あって、届け出ておるものは九件である。そういうことになれば、この農業慣行水利というものの行政的な面において、どれだけ農林省がこの慣行水利権なり、あるいはかんがいというものの行政をやっているかということについて非常に疑問を持たざるを得ないのであります。したがって、この農業水利権なり慣行水利権というものは、野放しの状態で今日実態がつかぬないでいるのが実情じゃないかと思うのです。そういう状態でいいのかどうか。そういうことで農業慣行水利権というものは尊重するということだけでこと足りるのかというふうに非常に疑問を持たざるを得ないわけです。まあ農林水産委員会の農民を守る立場からいえば、いまの答弁で満足だということになるのでしょうけれども、それではあまりにも——最近における水行政の問題について行政監察等も行なわれて、それに対する各省ごとの回答も出ておるわけでありますけれども、そういう単純なものではないのじゃないか、こういうふうに思いますが、いまの慣行水利権は尊重するということだけでいいのかどうか、この点もひとつはっきりしていただきたいと思います。
  28. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) でございますから、先ほどお答えいたしましたように、この法案を提出いたしましたゆえんのものは、現時限においてはこの程度までわれわれとしては引き上げていきたい。そうして一応ここで水についても台帳をつくって一そうしてどういう水がどういうふうに利用され、どういうふうに流れているかというものを一ぺん把握いたしたい。それで一応基礎的なものを十分つかみ、まず、今日の状態において河川行政をやる基礎になるべきものの法律をこの辺まで引き上げて、そうしてその上に立っていまお話しのように——一体、いまのお話でもわかりますように、熊本県は比較的に水が豊富でございます。福岡県は比較的に水が乏しゅうございます。そういう意味におきまして、しからば、水が楽に取れるところは一々やかましく水利権だとかなんだとか言わなくても、水はほっといても流れておるのでありますが、一方では無理して持ってこなければ流れないものもございます。それで同じ水でも非常にやかましい地方もあれば比較的ルーズな地方もある、それがそのままでありますことは適当でない。現にいま問題になっておりまする、いかにして熊本の水を福岡のほうに流そうかというようなことも、実は問題になっておるわけでございまして、そういうことに順次広域経済のもとに水の利用度を高めてまいろうということが、水の行政基本でなければならぬし、河川行政に対しましても、そういう方向に前進してまいらなければならぬものでございますから、一応私といたしまして、慣行水利権は尊重いたします。そしてその上に立って全部まとめまして、そして今度は一つ一つについて、どういうふうに御利用になっておるか一どれだけ水を——その水利権は一体利用しておられるかというようなものを、ケース・バイ・ケースでそれぞれ当たりまして、地方の水の利用というものをどういうふうにもっていくかということを定めなければならぬ。と同時に、その水をいまのように、大体使っている水がどのくらいで、使わずに海へ流す水がどのくらいうような問題もたくさんあるわけでありまして、こういうようなものについても、ダムをつくる、先ほど申しましたように、砂防の工事もやるというようなことから、山のもとから固めて順に海に至る過程において水を利用してまいるというところまで至らなければならぬというふうに考えますと、まず、予算において相当のものを使わなければならぬだろう、ただ法律ばかり先ばしったところで、行政のない、もしくは国民諸君の側から見れば、縛るほうだけ縛ったところで、何にも施策はないじゃないかということになりますから、並行してまいらなければならぬと思うのでございます。そういう意味において、その基礎になる限度までこ河川法改正において、明治時代からの行政を明き上げていきたい。そして一応この台帳をつくり、水の流れ方、川のあり方というものについてもつかむものをつかんで、水利権等についても調査を一応終わって、そしてさらに検討を加えて次の施策をしてまいりたい、こういうことでございますから、ただ、農林省の方が見えたから、水利権を尊重します、尊重します、このように答弁するようにとられるのははなはだ遺憾でございます。そうじゃない、それはそれで一応水利権は尊重して、そして安心していただいて、その中に立ってお話し合いをして、どの程度の水が入り用かということに入り、そしてその川の水はどの程度あればよろしいかというところに順次入っていくべきだと思うのでございます。したがって、水の利用をさらに考えるならば、多目的ダムをつくって水を利用して、いまお話しのように、工業用水その他のものは非常にたくさん入り用になってまいります。これはおのずから施策をして水を使うということでなければならぬと思いますので、従来のように工業用水と取り合いをして水を使うということは適当でないというふうに考えておるのでありまして、決してその場限りの答弁をしているというつもりはございません。
  29. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの渡辺さんの御質問は、慣行水利権届け出た場合に、届け出たよって慣行水利権内容を左右するとか、すなわち慣行水利権を縮小したり、しわ寄せをするのじゃないか、そういうことがあってはならないがどうか、こういう質問でございますから、届け出慣行水利権内容制限するということとは別で、制限さるべきものでなくて、慣行水利権は尊重さるべきものである、こういうふうに御答弁したのでございます。  その次のいまの御質問に対しても、私もそう考えます。慣行水利権は尊重できる、しかし、いつまでもそのままであってはいけないので、これを近代化するとか、あるいは合理化するとかいうことは、水利権を尊重された上にこれは考え、あるいは調整しなくちゃならぬ問題は含んでおると思います。でございますから、根本的には水資源開発ということもございます。あるいはまた、土地改良との関係で、土地改良が進むというようなことで、尊重された水利権内容においてまだいろいろ調整されるようなこともありまするし、近代化することもあります。こういうようなことは、いま建設大臣が御答弁申し上げましたように、慣行水利権を尊重された上において、その前提の上でいろいろ調整することはあり得る、お話しのように、たくさん届け出がないような面もいままであったのではないか、あるいは調査もしていないのではないかということでございますが、農林省といたしましては、ほとんど調査はいたしております。  それから水利組合と許可との関係でございますが、水利組合の中には、河川から水を引かない組合もございます。そういう場合には、許可ということがなかったんじゃないかと思います。そういう食い違いはあるかと思います。全体的に申し上げますならば、慣行水利権を尊重された上において、いろいろ近代化をはからなくちゃならない問題はあると思います。
  30. 安田敏雄

    委員長安田敏雄君) 北村さん、いいですか。
  31. 北村暢

    北村暢君 その場合、慣行水利権を尊重するということにやはりその基本方針がはっきりしているというと、今後慣行水利権へ影響する問題が出てくる。たとえば、従来まあ何百年という間ずうっと水が来ておった、ところが、その下流において砂利を採取した、砂利を採取して河床が低くなったために、いままでの取水口から水が来なくなってしまった、こういった場合に、慣行水利権を尊重するということになれば、これは砂利を取らなければ水は来ていたわけです。砂利を取ったために水が来なくなってしまったということが起こり得るわけですね。その場合に、それじゃ慣行水利権というものを尊重するということになれば、その取水の施設を改めたり何なりするということになれば、そのものの負担というものなしに、慣行水利権が尊重されれば、その費用負担というものについては、だれが一体持つのか、慣行水利権を尊重するということになれば、私は、だれかが、これは受益者に負担をかけないでやらなければならない、こういうことも出てくる。そういう問題との関連なんですが、砂利を取ったから水は来なくなった、その取水口のつけかえをやるといった場合に、工事費の負担をしたということになれば、これは慣行水利権が尊重されたということにはならなくなってくる可能性が、これはもう至るところにこういう問題は出てくるのであります。したがって、簡単に慣行水利権は尊重すると言うが、そういうところまではたして補償するのかしないのか、補償の問題とも関連してくるのでありまして、そういうところまで考慮されて慣行水利権というものが尊重されるのか。もちろん耕作のために必要な水でありますから、合理化意味において、不必要な水はこれは整理されても権利は守られると思うのですが、いまのように全然水が来なくなったということになれば、これはもう権利が守られないわけでありますから、不必要な水はこれは合理化されるのはいいとして、そういうところまで含めてその慣行水利権というものが尊重せられるのかどうなのか、この点をひとつはっきりさしておいていただきたい。
  32. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 北村さんの御指摘のように、私たちも、かねてそういう点について、はなはだ遺憾に考えておったのでございますが、たとえば私は神奈川県で、北村さんも東京の近在でございますが、非常に神奈川県から砂利をたくさん東京に持ってくる、そのために神奈川県下の河川が非常に河床が下がって、農業用水その他が非常に下便を来たしておるという現状でございます。再三知事に向かって、砂利の採掘について勧告いたしましたが、知事の砂利採掘業に対しての取り締まりのなかなか威令が行なわれないのが現実でございます。それを今回はこの法律によりまして、管理は建設大臣に移します。したがって、建設大臣は、不適当な砂利採掘に対しては直ちにこれを停止いたします。そうして、そういうふうに河床の下がる前、過度に砂利の採取は許さぬということにいたします。しかし、そうは申しましても、下がるものにつきましては、現に農林省において、もしくは県当局において、これら農業用水にこと欠かないように、ごらんのように、川に水を誘導するために適当な河床に工作いたしまして、水の取り入れをいたしております。こういうふうな工作につきましては、むろん農林省のほうで、もしくは県の施設等において、現に行なわれておることは御承知のとおりであります。したがって、そういうことが今後もますますひどくなることがいいか悪いかという問題は残りますが、少なくとも、この法律によりまして、それらの問題の管理を建設大臣においていたすことになりますれば、建設省で地方を指導監督するということは、管理するということは、しやすいことでございます。したがって、そういうことのないように、事前に砂利の取り過ぎというようなことがないようにして既存水利権を守るということにしてまいる所存でございます。したがって、万一それが非常に減っておるものについては、農林省において従来も工作物を設置して、その費用負担については、水利組合、県、政府等において出し合って水の誘導をしておられる現実があるわけでございます。しかし、今後はなるべくそういうことのないように、建設省におきましては、砂利採掘の過度にわたらないように指導してまいりたい、こう考えております。
  33. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまお話しのように、砂利採取等によって、せっかく水利権はありながらそれが効用を発揮しないという事例はあると思います。しかし、いま砂利採取なら砂利採取によって水が来なくなったといっても、私は権利はあると思います。水利権はあると思います。その水利権が効力を発揮しないと、こういうことでございますから、かりに水が来ないということになっても、水利権はあるんだ、水利権が侵害されたという状況で水利権があるのでございます。あるのでございますから、その水利権は尊重されなくてはならぬ、尊重するためには、損害があった場合は、これを復旧するとか、こういう方法を講じなければならぬと思います。たとえば砂利採取の場合に、砂利採取のために水が全然来なくなったという原因が明らかでありますならば、砂利採取に対しての損害賠償の請求権も生ずると思います。いずれにいたしましても、慣行水利権権利というものは尊重され、その権利が侵害された場合において、それを復旧する場合にどういうふうにするかということにつきましては、いまのような、建設大臣お話しのように、国あるいは県、水利組合等においてその権利を復旧——侵害されました場合にもとへ戻すというような方法もありましょう。あるいは砂利等の採取で非常に侵害されたという場合の損害賠償の問題もあるかと思います。いずれにいたしましても、その水利権保護されねばならないということを建設大臣も言っておりますから、私はそのとおりだと考えております。
  34. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 具体的な慣行水利権の尊重ということに関連して、関連質問の問題が出ましたので、勢い私も多少これにまた触れざるを得なくなったわけでありますが、大体この慣行水利権というのは、あるいは利水行政立場からいくと、水系ごとのこれは水利の状況を把握して利水現況を確認した上でやっていかなきゃならない、そういうたてまえであるにもかかわらず、実態把握というものがなされていない、ここに問題の基本があるわけであります。昨年の三月に行管が農業用水について勧告を出しておる中にも、この点に触れて、農林大臣は、農業用水実態把握は十分やっておるという答弁でありますが、しかし、この行管の報告を見ますと、農林省農業水利実態調査では、関東を除いては一六%にすぎない。なお、行管の抽出河川では一四・二%にしかなっていない、そういう指摘をやっておる。そうして基本的な水利権、みなし水利権というようなものの実態把握ということが、まず基本として政府としてはなされなければならない問題であるという提起をしておる。その提起の中に、行管では、これがそうはいっても、それを法的に裏づけるものがないから、各省ばらばらで思い思いの、相互連絡協調もなしに部分的にお茶を濁したり調査に日を送っている実態である、こういうことは行管から勧告を受けておるはずであります。そこで私は、冒頭に、この河川法を審議する前提として、もっと基本的な水の法律とでもいうべきものがまずあって、その中で農業水利の従来の慣行というものを権利として具体的に現実的に尊重するという姿勢がなければならぬということで、私は冒頭に、水基本法とでもいうべきものが政府としてはまず先行して確立されなければならないというお考えがないかということをお尋ねしたゆえんもここにあるのであります。やっとこれで私の冒頭に質問した意味がおわかりになったと思うのでありますが、そういう現状把握がきわめてばらばらに、しかも、部分的に行なわれておるという中で、抽象的に慣行水利権を尊重するということは、私はそれですなおに了解いたしますが、そのことを現実行政の中に貫いていくということはきわめて困難な事態が惹起するということも、これはこの機会にはっきりとしておかなければならない問題である。そこで、私が先ほど伺った点でも、届け出制、八十八条でこれを画一的にやっても、将来いろいろな河川利用というようなことに水利用の変化というものが出てくる、そういうものを一体弾力的にどう処置するかということも、そういう内容を踏まえて伺ったはずであります。ひとつこういう、きわめて実態が明らかにされないままに従来の水利権、みなし水利権というものを完全に尊重する、これは単にきょうの連合審査でその場限りの答弁と私は伺いません。両大臣がそれぞれ責任のある内容を踏まえて国会でその姿勢を明らかにしたものと理解しております。したがって、そういう内容現実に踏まえて、その答弁に狂いのないような今後の具体的な施策を強くこれは要請をいたしておきます。  それから次に、水利調整の点について若干伺いますが、提案されました河川法によりますところの水利権許可にあたって、許可の要件としての四十条一号にあるところの公益性、ここに掲げる公益性というものが農業水利に対する圧迫となるのではないかという不安を抱くのであります。一応許可にあたっては、利害関係者の協議を必要とする場合には、補償裁定というようなこともうたっておりますけれども、実際の運用では、絶えず資本主義経済社会においては、経済的弱者が圧迫を受けるのが、これが通常の道筋であります。たとえば公益性ということをこれを深く検討して許可をする場合に、農業水利の公益性というものについて、建設大臣はいかように理解をされて許可をする所存でありますか。
  35. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほど来申し上げますように、既存水利権が、どういう場合にも侵害されることはないというたてまえを強く堅持して、ここに規定いたしておりますもの等につきましても、行政を指導してまいるということで御了解いただきたいと思います。
  36. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの四十条の適用に関しましては、具体的にその審査といいますか、具体的な問題に当てはめて行なっていくという方針であると思います。
  37. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうもわかったようなわからぬような答弁としか受け取れないのでありますが、非常にこの四十条一号の解釈ということが私は問題だと思うのであります。農業水利というものも、これは公益性の高い立場に立っておるということは申し上げるまでもないことであります。そこで、許可をする場合に、いわゆる公益性というものの中に、農業水利の公益性というものをどう理解して許可をされるのかという、もっと具体的なことを伺っておるのでありますから、もう一ぺんもう少し具体的に御答弁を願いたい。
  38. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 具体的に御質問くださると具体的に答えられるのですが、私は、先ほど総括的に申し上げましたが、どういう公益性を持ったもので、たとえば水道に水を使うのだから、農業用水の分を押えて水道のほうに水を優先的に回す、そういうことはやむを得ませんということを申し上げたのです。どうしてもそれが必要ならば賠償をするとか補償をするとか、当然その権利を償ってやるべきであって、審議会にかけて、農業用水よりもこっちのほうが重大だからこっちに水を回しなさいと、黙って持っていくようなことはいたしませんという意味で御答弁申し上げたのであります。
  39. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私といたしましても、公共性が著しく大きい場合には、必ずしも関係河川利用者の同意がなくても許可することができると、こういう規定でございますので、具体的な問題は、河川審議会等におきまして公益性の啓蒙ということもあると思いますし、そういう点で具体的に当たってみなければ、私ちょっといま、具体的な御質問でありまするならば、これは具体的に審議会等において考えていかなければ、いまここでこういう例ということを申し上げるのには、ちょっと私の勉強も足らぬと、こういうふうに思って答弁したわけであります。
  40. 北村暢

    北村暢君 公益性の問題ですが、流水については私権を認めないというのが原則なわけですね。したがって、流水については私権を認めないということであれば、慣行水利権なるものが非常に私権に近いものもある。非常に公共性の高い農業水利にしても、用水等で公共性が非常に強いというものもあるし、非常に規模の小さいものは私権に近くなってぐる、そういう面からいって原則的に流水についての私権は認めないということなんでありますから、したがって、農業用水というものの公共性の認識がはっきりしていないというと、慣行水利権というものが無視されていくということが起こってくるのですよ。そういう点について、農林省は一がいに慣行水利権というものを尊重すると、こうおっしゃられますから、そこら辺で非常に突き詰めて打っていかなけりゃならない点があるんじゃないか、こう思うのですが、慣行水利権内容が、先ほど言っているように非常にまちまちでありまして、実態がわからないというところに大きな問題があると思うのですけれども、この公共性というもの、農業用水に対する公共性というものをどういうふうに判断するかということが一やはり非常に重要な問題でないか、許可の点についてですね。そういう面からひとつお答えいただきたい。
  41. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は、大体の考えといたしましては、農業水利権というものは、これは公益性があると思います。水利権として認められての私権の対象というのはごくまれじゃないかと、いままで大体においてはこういうふうに……。他の水利権と競合する場合、同じく公益性があるような場合——水道とかいろいろそういうことをおっしゃいましたが、そういう場合には、先ほどから申し上げましたように、具体的にどちらのほうを同じ公益性があるとしても見るかということは、河川審議会等においてきめるよりほかないと思います。一方において、侵害されるといいますか、損害の賠償とか、あるいは損害の補償とか、そういう問題が残ると思います。農業水利については、公益性があるほかのものと競合した場合には、具体的に審議会等においてこれは判断を待つよりほかない、こういうふうに考えます。
  42. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、先ほど北村委員が取り上げた砂利の採取と関連したことでお伺いしますが、河川工事に伴って、河床なり水位というものが低下をする、そういうことによって従来の農業利水、あるいは耕地などの受ける被害というものは、最近は非常に顕著になってきておる。この場合、その河川工事者が事前に地元関係者と協議をする必要があるのでありますけれども、そういうことを今度の法案には何ら取り上げていないように、私は不勉強で、あるいはあればけっこうでありますが、そういう規定が今度の法案にはないように見受けるのでありますが、これは法の不備ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  43. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御質問でございますが、工事の実施計画を立てるときに、御指摘のようなこと自体があってならないということは当然であります。したがって、もしそういう事態が起これば、それは当然事後において埋め戻しをするとか、そういう被害が起こらぬようにするとかいうことは当然やるのでございまして、工事をやることによって被害を、他人に迷惑を及ぼすというような工事の実施計画は認可されるものではございません。そういう計画は建設省においてやるほかございません。
  44. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 流水といいますか、水利権を、効用を失うような許可のしかたは私はできないと思います。また、そういうことをしないように、慎重に許可をする場合にやってもらわなくちゃならぬと思います。しかし、そういう慎重にやりましても、いまのお話しのように、砂利の採取が非常に量が多くして河床が下がってきて水が入らなくなったというようなことで復旧工事をしなければならぬというような場合がないとも限りません。そういう場合に、砂利の採取等によるということがはっきり明らかになっておるような場合等におきましては、そういうものに負担を要求するということもあり得ると思います。いずれにいたしましても、損害のないような慎重な調査の上で許可をされると私は思います。しかし、許可をした上においてのそういう事態も考えないわけにはまいらぬこともあると思います。そういう場合には、いま申しましたような対処方法を講ずべきではないか、こう考えます。
  45. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私の伺っているのは、その河川工事者が計画を立てた、そういう場合に、前もってそれらの水利権利用者である関係者と協議をするということが法律の上でも明文化をすべきじゃないかということを伺っている。
  46. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私がお答えいたしましたのは、水利権者に迷惑をかけるような工事の施行命令もしくは施行の許可はいたしません。そういう事態は私はありません。したがって、法律に書くというような事態を考えておりません。こういう意味でお答え申し上げた。
  47. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は現地実態を踏まえて質問しているので、現実に工事というものが、従来のそれらの利用者とは無関係河川工事が進められて、そのために河床なりあるいは水位の低下というものが起こって、そうしてこの農業用水というものがピンチに立っているという幾多の事例を踏まえて、少なくとも新法としては、そういうことは事前にそれらの了解、協議を経なければこれらの工事というものが進まないという取り上げ方が、法的にも規制されなければ、抽象的に伺った従来の慣行水利権の尊重ということは、非常は空文になるような一つの要素として私は指摘をいたしておるのであります。だから、河野大臣は、非常に次元の高いところでものを考えておるから、断じてないと勇ましく言い切っておりますけれども、現にそういう事態が起こって紛争が各地に続出していることは、行管の勧告の中にも出ておる。建設大臣に勧告をしている。そういう事態をなぜ新法で規制をする措置をとらないかということであります。どうでありますか。
  48. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私は建設大臣をいたしておりますけれども、そういう事態が起こって各地から苦情があるとは、いま初めて伺ったのであって、建設委員会等で委員の皆さん等から、どこの川でおまえの工事のやり方が悪いからこういう迷惑をかけておるじゃないかということを、全部の委員さんから一言も伺ったことはないのであります。私自身、地建の局長からも、どこからもそういうことは聞いたことはない。たとえば、はなはだ御無礼な申し分ですけれども河川の改修をやるとか堤防の工事をやるとかというときに、地元の市町村長さんから、早くやれ、早くやれ、やってくれ、やってくれとおっしゃらずに、こっちがかってに一方的にやるような金の余裕もございませんし、御承知のとおり、方々からやるように言われてこっちがやるのが実態でございます。したがって、話をすることがないとか言っても、話はし過ぎるほどして、そうして地元から皆さんがおいでになって、早くやれ、早くやれとおっしゃって、追っかけておくれながら、申しわけないけれども、じゃ、今度やりましょうというようなことでやるのが実態でございます。地元で何も知らぬうちにこっちが抜き打ちにやって工事をやるというようなことは、全国にその例がないと思います。しいて申せば、用地の買収とか河川の改修、いろいろなことで地元とはあらゆる面において連絡があります。あらゆる面において話し合いがあります。したがって、水利権者に一言の話もしないでやるなんということは、関係なしに工事をやるなんということはそれは私はないのじゃないかと思う。もしそういう例がございましたら、私の責任におきまして、いかようにも、もう遅滞なく善処いたします。私はいままでの経験において、そういうことはたまたまありません。それは県でやっておる小さな工事とかなんとかというのでそうことがあるか、それはわかりませんけれども、それにしても、少なくとも河川の改修、堤防の工事等で、ほかのことで河川の河床が下がったとか、ほかのことで水が漏れたとかということは、これは、先ほども申しましたように、砂利を取り過ぎるとかなんとかということは、それはあります。しかし、堤防の工事をやるとか河川の改修をやるとかということでそういう事態が起こって地元に非常に迷惑をかけておるというようなことは、まあ地元に黙ってかってにやっちゃって困るじゃないかと。われわれが現実行政をやっております者の立場で、いまのお話はちょっと合わぬものですから、地方でそういうことがあるとすれば法律に書かなければならぬということがあるかもしれませんが、そういうことにぶつかりませんものですから、先ほどああいうように申し上げたので、いまもなお私はそういうふうに思っております。具体的に何県のどこの何川でこういうようになってこういうことがあるじゃないかという御指摘をいただけば、直ちに調査をいたしまして善処いたします。また、将来にそういう事例が多いとすれば、それはまた法律に書かなければなりません。また、法律以前の問題で、そういうような行政あり方では建設大臣としてはいかぬということは、私は前提だと思います。
  49. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は堤防とかそういう問題に触れて言うたのではなくして、河川工事によって河床と水位が低下をしておる、そういうことによって既存農業水利や耕地というものに大きな影響をこうむっておる、しかし、その権利を主張する、慣行水利権なり、あるいはみなし水利権というものは、権利とはいえども、なかなか認知されないままに放置されておる実態にあって、それが泣き寝入りになっておる事態というものが随所に行なわれておるわけであります。いずれここでさらに具体的な事例を取り上げるまでもないこれは現実の事態でありますので、そういう事態があれば、建設大臣としては善処をするということでありますから、まあせっかく法律がここまで出て、それを踏まえた明文化は、なかなかここで勇気をもって挿入をする意思もないようでありますから、問題点だけを指摘しておきたいと思います。  それから、だんだんに質疑をもって明らかになってきたことは、いろいろなその具体的な問題を処理する場合には、河川審議会というものにかなりのウエートを置いて考えておられるようであります。その河川審議会は、この法律の八十一条ですか、見ますと、審議会の性格は別といたしまして、「委員三十人以内で組織する。」となっておる。で、従来も委員三十名で、この現行法では審議会が運用されておるのでありますが、ここで私は現行河川法——この新しい改正される法案ではなしに、現行河川法は、かなり官僚独善的であるということを申し上げたのでありますが、いまの審議会の運営の中で、私はそのメンバーに非常に意見を持つのであります。この三十人の現行河川法に基づく審議会のメンバーのうち、各省の次官クラスが何名委員として任命されておりますか。
  50. 畑谷正実

    政府委員畑谷正実君) 現在の河川審議会の中で、次官の人で出てもらっております数を申し上げますと、八人でございます。
  51. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 三十人のうち八人も各省の事務次官が審議会の委員として名を連ねておる。これが現行法の大きな私は問題点の象徴の一つだと思う。いろいろ役所の中で総合調整をしなきゃならないというものを、所管大臣がこれらの機能を、審議会のメンバーに八人も加わることによってそれらの機能を期待する、私はこれは非常に問題があると思う。そこで、古いことはもうこれ以上問いません。新しく提案されたこの八十条、八十一条、この審議会の運営を——事務次官が定例次官会議を持っておる、必要ならばこれらの河川についてのお互いの意思の疎通、総合機能を発揮するために河川何とか次官会議というのを持ってもいいでしょう。閣僚だって、全体の定例閣僚会議のほかに経済閣僚懇談会を持つというような弾力的な措置をとっておる。そういう場合に、これらの重要な審議会のメンバーに、役所の人間が八人も占めておるということは、私は新河川法の審議会の運営としては認めがたい意見を持つものであります。従来の長い歴史の上に新しい法律が提案されたこの機会に、一体三十人のメンバーが、それぞれ政令その他で準備をされた服案がおありだと思うのでありますが、私は何も具体的な人の名前なんかを聞くつもりは毛頭ないのであります。少なくとも新法に基づく河川審議会のメンバーは、いままでの質疑によって明らかなとおり、かなり重要な任務を負荷されておる、そういう場合に、まず第一に私のお尋ねしたいのは、従来のごとき事務次官を、三十人のうち八名をこれに連ねるというようなことをお考えによもやなっていないと思うが、建設大臣の腹のほどをまず伺っておきたい。
  52. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) この法律が道路法と違いまして、先ほどから御質問がありますとおりに、経済企画庁も非常に重大な関係がある、大蔵省も非常に関係がある、通産省は工業用水などの関係がある、厚生省は下水その他水道の関係で、農林省は御存じのとおり農業用水関係がある、そして建設省を加えまして、自治省、これだけ指折りましても七本になります。これをこの中でどの次官はしないでよろしいということは、それこそなかなか取りまとめもつきませんし、それぞれの所管の業界が、自分たちの業種を代表する所管の役所は一体河川法に対する発言をしなくてもよろしいのかということになります。これらはいずれもただ単に役所の代表として入るという意味じゃなくて、大幅にそれぞれの役所があらゆる意味において代表されるわけであります。これはもっと人数がふえてまいりますれば、たとえば厚生省にしましても上水道、下水道というようなことにもなるでございましょう。また、自治省にしても、市の立場、県の立場、もしくは水を利用する県というようなことで、一つの省が必ずしも一役だけするわけじゃございませんので、それをそれぞれ分けて運営とするだけの人数がございません。そういたしますと、どうしても代表してこれらの事務次官を委員にするということが、他のあらゆる委員会がそういう構成になっておりますので、私といたしましては、いまお話でございますけれども、この委員を任命する際に、事務次官はこれは半分に減らすといいましたところで、どれとどれを残すというようなことは、なかなかまとまりにくいというふうに考えまして、やむを得ず六、七人の人数は入れなければならないのではなかろうか。そのほかに、ここにもありますとおりに、地方の府県知事さんもある程度——水を利用する県の知事さん、水源地のある知事さんというような場合があると思います。大都市の知事さん、純農村の知事さんというような意味合いにおきまして、知事さんもある程度入れなければいかぬ。それから東京とか大阪とかいうような水を非常に利用される首長さんも入れなければならぬだろうというように考えまして、これらの地方自治に関係しておる人は、ある程度は入れなければならないだろう。それに学界の権威者も入れなければならないだろう。それに多量の水を利用される水源を開発される電気関係の人とか、もしくは水を利用される化学工業の人とかいうような面も入れる必要があるだろう。まあしいて申せばそれらのほかに、学識経験者という意味で、一般大衆の代表というような意味において、どういう人を入れるかということは問題になってくるだろう。なるべく各方面の御意見を承って、ひとついままでの審議会にとらわれずに——いままでの審議会と多少性格も違ってまいりますから、ひとつ御期待に沿うことができるように任命して、審議会を公正にひとつ活用してまいりたい、こういうふうに考えております。
  53. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私、時間もないようでありますから、あまり繰り返してはお尋ねしませんが、私は、いまの審議会のメンバー三十人のうち八人も各省の次官を任命しておる、それを何人に減らされたらどうですかということをお尋ねしておるのじゃなくて、これらは審議会の下に、たとえばその水利調整部会とかいうようなものも設置をして、そういう専門委員として役所の代表者がそれぞれの立場から参画をすればこと足りるのであって、あくまでもこの構成は、学識経験者あるいは地方公共団体、これはいま大臣指摘したとおりそういうもので構成し、繰り返しますが、事務次官の担当者は、これは専門委員としてそれぞれ起草その他調整の事務的な作業に重点を置かせるのが、この審議会の機能を持っていく上の正しい姿勢ではないかという意見を申し上げたわけであります。  もう少し突っ込んで伺いますと、学識経験者のうちに、従来も農林漁業関係者を入れておられたが、これはわれわれ農業水利立場から申しましても、当然これらの代表者も学識経験者の中にこれは十分考えてもらわなければならないということでありますが、それを一体建設大臣はどういうふうにお考えになっておられるのか。  それから第二点は、学識経験者のうち、国会議員をこの中に入れるということでこの新しい法律の審議会の運営を持っていく、こういうお考えがたしかあるだろうと思うのであります。  その二点についてひとつ御答弁を願いまして、私の質問をこれで終わります。
  54. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 農業関係の代表者の方に委員に入っていただくことは、当然考えなければいかぬと思っております。  次の、国会議員の方の代表に入っていただくという考え方は、いま持っておりません。従来もそうなっておりますし、これからもこれは入っていただくという考えは持っておりません。
  55. 北村暢

    北村暢君 いまの大臣河川審議会のメンバーに、各省の次官を入れるということについて、意見をよく聞くのだと、こうおっしゃるのですが、最近の臨時行政調査会の報告並びに行管の勧告等を見ましても、高度な水行政としての法案ではないと、河川治水が主たる法案である、こういう当初のお話なんですが、それについて、水利計画等については総合的な立場に立って水行政協議会というようなものを制度化して、水の行政を総合行政としてやっていくんだ、これは経済企画庁がそういうことを行管の勧告に対して答弁をしているわけですよ。したがって、いま申した関連する通産、農林、厚生、そういうすべてを網羅したところの総合的な水行政については、水行政協議会というものを制度化していく、そういう考え方でいくんだ、こういうふうに答弁されているのです。それだったならば、これは行政関係ですから、水行政協議会に各省次官なり何なりが出て協議をする、これはいいと思うのですがね。河川審議会というのはそうではなしに、渡辺委員がいま主張されておるように、そういう利水計画全体についての総合的な高度の計画、こういうものをやるのではないので、こういうものに基づく事業計画という点についてやるのではないか、こういうふうに思います。したがって行政の、いまの大臣のおっしるようなことだというと、水利計画についての相当高い次元水利用の計画というものなり、何なりというものの、立案なり何なりというものを河川審議会がやるということになると、看板は治水中心河川法であり、審議会は広範な水行政の審議会である、こういう感じを受けるのです、大臣の説明を聞いていると。したがって、それではちょっと河川法という看板と合致しないんじゃないか、こう思う。しかも、きのうの日経の新聞等によるというと、河川管理法というようなものをつくる構想があるというようなことがでかでかと第一面に出ているわけですね。河川管理法という、河川を管理していくことの大きな具体的な——手続的な法律法律として、工事の法律でなく、河川管理をする法律、こういうものを考えているというようなことが新聞に出ておるわけです。そういうような点からいって、私は、いまの大臣答弁ではどうもしっくりしないものがあるので、水行政協議会というようなものを企画庁が考えているようですが、一体建設大臣はどういうふうに考えているのか、それとの関係における河川審議会というものをどういうふうに考えているのか、これをお伺いしたい。
  56. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいまお話し河川管理云々という日経の記事につきましては、私は全然知りません。いま河川局長に何かそういうことがあるのかと聞きましたならば、河川局におきましても、そういうことは全然ございません、こういうことでございますから、何かの間違いだと思いますから、そういう意味で御理解いただきたいと思います。  第二に、水というものの考え方でございます。河川法にいう河川審議会との関係でございます。この河川法によるところの河川審議会の扱いますものは、御承知のとおり、この河川法規定いたしておりまするように、国で任命いたしまする河川審議会は、第一に、どの程度のものを一級河川として国が管理するかということをきめます。きめた一級河川、国が管理する河川の問題について、その水系について御相談をいただくということになります。全国の水ということになりません。その下には、県に県の河川審議会ができて、県内のことはその審議会のほうにおいて扱います。したがって、この河川審議会に、ここにいわれるところの河川審議会は、最初の年に五十水系を対象にする、幾つ——百をするかということは、これからの予算との関係において適当な数字をわれわれが考えたい。その場合に、予算で何水系をどうするかという場合に、予算の範囲内において、審議会において、それならばどことどこの川をやるようにしたらよかろう、どこの川を直轄してどこの川をあと回しにしたらよかろうというようなことを審議御決定願うと同時に、次の段階においては、その水を利用する川の水防その他について審議会の御審議をいただく、こういう順序になると心得ております。したがって、その関係は御理解いただけると思います。
  57. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 国会議員については、考えがないと、いともはっきりした答弁でありますが、私は、この審議会の運営の上から、他の例もないと言うけれども国会議員が審議会委員になっておる審議会がたくさんあり過ぎるほどある、これを尊重すべきだという意見だけを申し上げておきます。  それから、先ほどの河床なり水位の低下による河川工事の問題で、私は全然聞かないということを言いましたが、行管でこのことをはっきりと取り上げておる。私はこのことをはっきりここで大臣に紹介しておかなければならない。行政管理庁が昨年の三月に、建設大臣その他に出した勧告の中に、水利紛争事例及び目下未解決の事案百六十九件の調査結果から見ると、紛争の原因は、主として新需要の発生、河床変化、水温低下等の状況変化、または用水不足によるものだということで、この行管がキャッチしただけでも、非常に多くの水利紛争があるわけです。これを大臣が知らないとは情けないのにもほどがある。認識を改めてもらいたい。  終わります。
  58. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) だから最初から、あなたの御指摘になりましたように、砂利採取その他によって河床が沈下して、それのために水が行かなくなった問題がある、それについてはこうしております、ああしておりますということをお答え申し上げましたが、政府自身堤防の修理をするとか、もしくは河川の改修をやるとかということのために紛争が起こっておるという例があれば、はなはだ遺憾なことであります。直ちにそれの解決に努力したいということでございますから、御指摘いただきますれば、即刻私はこれについての解決を命令すると申し上げたのでありまして、砂利は、いま御承知のように、各府県知事が管理いたしておりまして、そういうことでございますから、府県知事がたびたび告訴をいたしておりますけれども、これがうまくいっていないがために紛争があることはしばしばある。現に、先ほど申し上げましたように、神奈川県下等においては、河床が下がってしまっておる。水が入らなくなってしまって、両側の堤防があって、川のまん中に堤防を築いて水を上に上げて引っぱっている場所が二個所もあるということを申し上げたのでありまして、御指摘の点と私は多少違う、こう思っております。
  59. 牛田寛

    ○牛田寛君 時間もだいぶなくなったようでございますから、また、いままでだいぶ問題が出ておりますので、重複を避けまして、一、二問題を簡単に伺います。  これまでの水利用は、多く農業関係かんがい用水に使われておったのが、最近において非常に多角的な高度な利用面に発展してきたわけで、そこにいろいろと水資源の問題が出てきたと思うのですが、本日は少くとも、いままで既得権として持たれておった農業用水関係権利が、これからのいろいろな水利用の発展のために不当に侵害されることのないという、そのような立場で一、二お伺いしたいと思います。  それで、先ほどから問題になっております慣行水利権に関連する問題ですが、水利台帳ということも新しい法律で設けられるわけです。この水利台帳は、どのような目的でどのような用途に使われるか、これをまずお聞きしたい。
  60. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 河川実態をつかみたいという、こういうことでございます。
  61. 牛田寛

    ○牛田寛君 当然そうだと思いますが、その実態の掌握に問題があると思いますね。特に慣行水利権の問題は、先ほどから出ておりますが、その実態をつかんでそれをどのようにお使いになるのか。私が申し上げますのは、一時は、届け出がなくて、いわゆる水利台帳に記載のないものは、何年かの後には水利権を失うというような考え方もあったかのように聞いておりますが、権利関係についてはどうか。また、その水利台帳をもととしてその水利台帳をどのような目的のために使われるのか、その点についてもう少し明確にお伺いしたい。
  62. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほど申し上げましたように、届け出を待ち、次には行政機関を指導いたしまして、地方自治体を指導いたしまして完ぺきを期するように善処する。それでもなおかつ落ちるものがあるかもしれませんが、それは先ほど農林大臣からお答えがありましたとおり、これは台帳に落ちたからといって水利権が抹殺されるということにならない、そういうふうに考えますが、そういうことのないようにひとつ勉強をして完ぺきな台帳をつくりたいと、こう考えております。  第二には、台帳によりまして、紛争が起こった場合には、明確に分析する判断の基礎にいたしまして、さらに積極的には、この台帳によりまして、先ほどお話がありましたとおりに、現在水がどの程度利用されるのか、水の利用度を的確に把握いたしたい。そうしてその利用によりましてどの程度の水をこの川に流せばよろしいのだ、適量であるか、流水の適量を把握したい。それを把握した上で、上流にダム建設して、そうして水利用の完ぺきを期するということに積極的に水の利用度を高めていきます場合に、これを基礎にして水行政基本を打ち立てていきたいと考えております。
  63. 牛田寛

    ○牛田寛君 先ほどから問題になっております慣行水利権でございますが、この内容が非常に複雑であり、かつ、あいまいであるように思います。特に明治二十九年以来の問題でありまして、水利権と一口に言いましても、その内容また利用の形態が複雑であり、かなり変化しております。それを近代的な形で、ただいま大臣があっしゃったように、水利用あり方の一つの資料として把握なさるためにどのような形で調査なさり、この台帳に記載なさるのか。また、その点について問題があるのかないのか、これをお伺いしたい。
  64. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 川の問題は非常にめんどうでございまして、きょうは御質問が出ませんけれども河川敷における所有権の問題、河川敷に現に私有地がたくさんございます。今後そういうものが出てきます、そういうものをどう処置していかというようなことも出てきます。これらについても、なるべく順次買収して、いやしくも河川敷には私有地をなくしてまいりたいというつもりでございますが、これとても一気には解決はできません。しかし、現状よりも少なくとも前進して改善されてまいるということを私はねらっております。同様に、水利権の問題につきましても、現にお話しのような状態にあるのでございますから、これを一応台帳をつくって、わからないものはわからないもの、むずかしいものはむずかしいものなりに一応つかまえて、そうしてそれを順次一応調べ上げてみなければ、どういう事態が起こって、どういうものがあるかも実は明瞭でございません。したがって、それを一応ふるい上げてみて、そうしてその上で、こういうふうなめんどうなものがある、ああいうわからぬものがあるというようなものが出てきた上で、これを解決していくということよりしかたがないかと思います。非常に複雑なものがある。これは小作法その他、農村におけるいろいろな慣行はみなそうだと思います。したがって、そういうものをただ単にここで一がいにやりとりをしてみたいところで、それは問題にならぬのじゃないかと思いまして、私はまず出てきたものを一応整理して、整理した上でこれらにどう対処したらよろしいかということを第二段にこの問題の解決法を考えていきたい、こう考えております。
  65. 牛田寛

    ○牛田寛君 この問題はもっと早く手をつけるべき問題でなかったか。放任し過ぎていたものだと私は思います。それだけに水利権内容実態把握というものは急いでいただかなければならないと思います。  先ほど大臣言明なさいましたが、水利台帳を整備する。慣行水利権というものを掌握するというその立場で、慣行水利権というものを守っていくという言明があったのでございますが、一体どれくらいの期間の計画でその整備をなさるか。その御計画を現在お持ちであるか。あるいは、なければいつまでに立てられるのか、その辺をお伺いしておきたい。
  66. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、しばしば河川法改正政府内部において企画されております。ところが、なかなか複雑で、従来これが完成しなかった。せっかく国会に出ても、なかなか一ぺんで通らぬというくらいめんどうなものでございます。でございまから、今日までおくれたのも、私はゆえあると思うのでございますが、したがって、これを一応この程度法律現状を把握する、実態を調査する。出てきたものについては、一体どういう計画でどうやるかということになりますと、一応の方向は持っていないわけじゃございません。別にあります。河川法のほかにも河川法施行法というものによりまして、順次なるべく早く実態をつかまえて、そして次の段階に進んでいかなければならぬ。少なくとも、おくれておることはお話しのとおりでございますから、やっていきたいと思っております。ただ、いかんせん、非常に金がかかる。河川の改修にしましても、それからこれを完ぺきにしてまいります上におきましては、現在の予算程度をもってしましては、とうてい河川にしましても、おそらく私はいま一級河川に該当するものは、少なくとも百十か百二十くらいはどうしてもしなければいかぬだろうと思いますが、現在の予算をもってしては三十河川くらいの予算しかないのじゃないかと思います。したがって、これを何年計画で百十幾つの河川について、これを一級河川について、全部管理するということをどういうふうな計画でやっていくか、そのこと自体でも相当の金がかかるということでございますから、予算面と相見合わして、いたずらに一方ばかりでも、先ほど申し上げたとおり、予算の伴わない行政をむやみに進めることもどうかと思いますから、そういう意味において十分調査を進めつつ、一方において予算をふやして完ぺきを期していきたい。少なくとも今後十カ年計画くらいで、百十河川について全部これを管理するということにしたいくらいに私は考えておるのでございます。
  67. 牛田寛

    ○牛田寛君 河川の整備については、大臣の言われるようにできるだけすみやかにやっていただきたいと思います。私がいま申し上げておりますのは、いわゆる水利権の掌握についての問題、いまのお話ですと、まだその掌握が非常に困難である、それについても予算がかかる、はっきりした見通しがおありでないようでございますけれども、そうなりますと、先ほどの水利権を守っていくといった言明が裏づけがないように私どもは思うわけであります。その点について、既得権を守るという立場であれば、やはりそのようなはっきりした資料をつくるための努力がなされなければならない、このように思うわけであります。その点について、すみやかな対策を要望しておきます。  実際問題として、ことしの田植えの時期でも非常に水が足りなくて、田植えに困った地方がだいぶあるようであります。水が豊富な場合はよろしいわけでありますが、水が少なくなったとき、わゆる水利用の時期的な変化から水需要の変態がございます。それに慣行水利権の問題がからんでくる。そうなりますと、水需要というもの数量的実態把握というものがなければ、河川審議会がどんな調整をやりましても、それは結局公平な結論が出てこない、必ずそこに紛争が起こってくる、そういうことになるので、やはり河川実態というものについての把握、調査の見通しというものがはっきり立たなければ、幾ら法律をつくられましても、あるいは審議会のメンバーをおそろえになっても、結局はそこに紛争があとに残るのではないか。そうなると結局は、力の弱いものが被害を受けるのである、そのように私どもは危倶を持つわけであります。特に、先ほどからもその点についての質問があったようでありますが、ダムができるとか、あるいは上水道を建設するとか、そういう面での水需要が非常に多くなってくれば、いままで水の絶対量が多かったために問題にならなかった慣行水利権なり、非常にあいまいであった水利権の内蔵された問題が表面に浮かび上がってくるということは当然考えられるので、そういう立場からも、政府がこのような水利用実態把握というものを急速にやらなければならないのではないか、それについての大臣のお考えと御計画を決意をお伺いしたいわけであります。
  68. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話は一々ごもっともでございますが、いまも聞きますと、利根川だけでも三千件か八千件か水利権があるだろう——帳面書くだけなら簡単でございますけれども、それが一々内容が違い、一々これを具体的に調べなければいかぬということになりますと、これは全国的に水利権実態調査をするということは、なかなか容易なことでは私はないと思います。しかし、水がないといって、この法律ができるには、それが一番大事なことでございますから、その方面に全力をあげて調査を進め、台帳を完ぺきにするということは、ぜひやらなければならぬと思っております。いませっかく御要望いただきますように、ある計画を立てまして法律が制定されますれば、明年度から直ちに最短年限の間に完ぺきを期するように調査をするということに善処いたしたいと思います。
  69. 安田敏雄

    委員長安田敏雄君) 他に御質疑はございませんか。——御質疑もなければ、本連合審査会は、これにて終了することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 安田敏雄

    委員長安田敏雄君) 御異議ないと認めます。よって連合審査会は終了することに決定いたしました。  これにて散会いたします。    午後零時十三分散会