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説明員(川原英之君) ただいま
相澤先生から御
指摘のございました鉱山保安対策につきまして御
説明を申し上げます。ただいまお話がございましたように、昨年三池の非常に大きな事故を起こしました。まことに私どもといたしまして遺憾に存じておる次第でございますが、その後も今年に入りまして一月より今日まで、鉱山——特に
石炭鉱山について申し上げますと、昨年同期から今年一月−十月までの間におきまして、死亡が昨年三百五十六、ことしが二百八十五というような、絶対数におきましてはやや
減少いたしております。昨年より二割少ない状態でございますが、しかしながらこういう災害が、死傷者が出るということ自身、私どもとしましては絶対にこれを防ぎたいと、かように念願いたしておるものでございまして、昨年の事故以来、三池の災害の体験を
中心にいたしまして、まず本年の当初に
石炭鉱山保安の緊急対策を実施いたしました。これによりまして、とりあえず最も
重点を置いて行なうべきところを推進いたしました次第でございますが、特に今
年度より始めました、先ほど御
指摘のございました保安融資あるいは鉱山の保安教育、こういう点に特に
重点を置いて指導いたしました。そしてことにいろいろな作業につきましての保安の教育あるいは待避訓練、救護隊の問題というような点を特に融資いたしたわけでありますが、なお現在におきましても、罹災率といたしまして、全体の鉱山労働者数が漸減いたしておりまする関係もありまして、なおまた坑外の分離された問題もありまして、率といたしまして、昨年同期よりは減っておりますけれども、なお絶えないということは、まことに私どもといたしまして遺憾に存じておる次第でございます。その間
石炭鉱山の緊急対策を実施いたしますと同時に、この前の国会におきまして鉱山保安法の一部改正をお願いいたしまして、これによりまして、これは三池の事故にかんがみました点もございますが、鉱山のいわば保安確保体制と申しますか、鉱山の保安についての体制を整えるという意味が主眼でございまして、鉱山長を保安の統轄者にいたしますと同時に、鉱山労働者の意見が十分に達するようにするという意味で、鉱山労働者の中から、鉱山労働者の推薦する保安監督補佐員という制度を新たに設けまして、これが幸いに御賛同を得まして、七月以降現在こまかい省令をいろいろと検討いたしておるところであります。なおこういうふうな検討にあたりましては、三者構成になります中立労使双方から同数をもって構成されております鉱山保安協議会というものがございまして、この保安協議会にすべて御相談を申し上げて、その一致した意見によって実施をしていくという体制を、鉱山保安法に基づきましてとっております。保安状況全般につきましては、ただいま申しましたようにやや減っておりますけれども、これを私どもとしましては、今後なくしていきたいという念願に燃えておるわけであります。具体的にその方向として、まずことし、ただいま申し上げましたような法規の改正及び実際上、行政指導をまじえまして、保安教育の徹底あるいは保安融資の推進というような点に
重点を置いてまいったのでありますが、現在のいろいろの災害の中身を見ますと、ことしに入りましてから特に目立ちますのは、いわゆる頻発災害でございます。非常に多数の負傷者が一度に出るという重大災害は減っておりますけれども、頻発災害、特に毎日各個所におきまして出てまいります。たとえば落盤でございますとか、あるいは坑内のいろいろ機材が非常に重量化してきたということに伴う機材運搬による——これはけがが多うございますが、負傷というような種類の災害が目立っております。こういうふうな点は、いろいろ今後坑内がだんだんに深くなってまいりますことに伴いまして、いろいろわれわれといたしましては、十分注意を要する点であろうかと考えておる次第でございます。
まず保安行政の基本的な持っていき方といたしまして、私どもがいま進めつつあります点を、ごくかいつまんで御
説明申し上げたいと思います。
まず、これは三池の災害の際に、いろいろと御
指摘をいただいたのでございますが、最初に何と申しましても、今度こういうふうな非常に
石炭自体も若しい状態でありますが、こういう状態におきまして保安を確保していくというためには、保安監督
検査ないし保安監督機構を十分に
充実したものにしてまいりたい。現在もちろん各現場におきましては、監督官がこれは非常に一生懸命やっておるわけでありますが、なお、われわれとしましては、たとえば監督の密度を強化する、あるいはさらに全体的な保安、その山ごとの全体的な保安
計画というものを
中心にいたしまして、これを十分しっかりしたものにしながら総合的に見ていく、いわゆる総合
検査というようなやり方を今後十分
充実をしてまいりたい。で、もちろん人命の尊重は至上命令でございますので、このためにこれは今度の
石炭調査団で参りましたときにも、現地においていろいろと御要望があったのでありますが、事後監督ということから、さらに指導的な監督、予防的な監督ということにわれわれとしては力こぶを入れていきたい、かように存じておるわけであります。
第二に、先ほどお話のございました保安融資でございます。この保安融資につきましては、これは
石炭鉱業合理化事業団からのいわゆる
近代化融資の一環といたしまして、三十九
年度から創設をいたしたものでございます。この
内容は、先生つとに御高承のことと存じますが、四割を融資で出しまして、あとの六割を開銀あるいは
中小企業金融公庫の融資ワクから出すということでございます。で、三十九
年度におきましては、予算額といたしまして約四億九千万、それにその前の
中小企業炭鉱関係の
近代化融資の返済金を加えまして、いわゆる無利子融資分が五億三千万、したがいまして、
貸し付けの総工事額は十三億五千万という規模でございます。これにつきまして本
年度さらに、何と申しましてもこの保安融資——保安
設備に対する融資を
充実するということが一番基本的に保安につながる問題でございますので、われわれといたしましては、さらにこれを拡充いたしたいと、かように存じまして、現在お願いしておるわけであります。
第三の問題といたしまして、保安
技術の問題がございます。先生御高承のように、だんだんいろいろと新しい
合理化機械が入ってまいりますし、新しい保安上の問題、あるいは
石炭採掘
技術上の問題が出てまいるわけでありますが、この新しい
合理化の
技術に並行、あるいはさらに先行して、その保安
技術を開発していくという問題が、これはじみな仕事でございますけれども、実は非常に基本的な大事な問題であると私どもは考えております。で、これは私どもとしましては、現在資源
技術試験所、その他工業
技術院傘下の各試験所、あるいは
石炭技術研究所、こういう機関がございまして、ここでいろいろと具体的な問題につきましての検討を続けておるわけでありますが、たとえば落盤でありますとか、ガス突出の問題であるとか、あるいは急傾斜採炭の問題であるとか、それぞれの項目につきまして究明をいたしておりますが、今後深部に移行いたします——これは全部の炭鉱が同一の傾向でございますが、深部に移行いたしますこと、あるいは大型機械が導入されるというようなことから考えまして、この
技術の進歩に先手を打って開発していくというような体制をとりたい、こういう意味でこの保安
技術の開発研究につきまして今後特に
重点を置いてまいりたい、かように存じておるわけであります。
なおそのほかに、いろいろこれは直接
石炭鉱業内部の問題、いわゆる
石炭鉱山労働者にかかわる問題と少しはずれますけれども、いわゆる三十六年に九州におきまして、ボタ山が崩壊いたしました。この危険ボタ山はことしからその除去にかかっておりますが、いろいろの問題をなお今後も持っておりますので、この危険ボタ山の崩壊によって、これはむしろ一般の方に災害を及ぼすというようなことがございませんように、われわれとしましては、この危険ボタ山の除去についての予防を特にやってまいりたい。もちろんこういうふうな保安の問題は、いま申し上げましたような監督の強化、あるいは保安融資によって保安施設を十分にする、たとえば昨年来これは各鉱山に事故救命具を
相当備えつけましたが、こういうことが非常に具体的に有効でありますので、そういうふうな施設、組織をいたしますと同時に、なおこれは何と申しましても、やはりみんながこれを意識して、真剣にやっていかなければ、なかなか所期の目的をあげ得ないという意味もありまして、われわれのことばでは自主保安体制ということを申しております。この自主保安体制を強化してまいりますために、今
年度、これは十月に設立いたしましたのでありますが、鉱山労働災害防止協会という協会を設立いたしました。これによってたとえば具体的な指導員による巡回指導、あるいは保安
技術についての講習でありますとか、あるいはもっと進んだ保安教育を徹底的にやる、こういう問題を推進してまいりたい、こういうことで現在着々準備をいたしている次第でございます。