○相澤重明君 四国班の
報告をいたします。
四国班は、本年一月十一日から十七日までの七日間、二木謙吾、奥むめお両
委員と私が参加して、香川県、徳島県、高知県下において
昭和三十六
年度を中心に大蔵、農林、運輸各省所管の
決算等の実情を調査いたしました。
第一に、農業構造
改善事業について申し上げます。
これは、申すまでもなく、
昭和三十六年に施行された農業
基本法に基づく事業でありまして、農業と他産業の間の格差を是正し、農業の発展をはかるため、それぞれの地域に適した基幹作目を選定して土地基盤整備及び経営
近代化を行なうものであります。
構造
改善事業は、
昭和三十六
年度以後約十カ年計画で全国約三千百の市町村を対象地域として実施せんとする遠大な構想を有し、このうち、
昭和三十八
年度現在において実施されている一般地域は四百三、また、別にパイロット地区として実施されているもの七十六を数えるのでありますが、今回調査の対象といたしましたのは三つのパイロット地区と一つの一般地域であります。パイロット地区は、香川県長尾地区、徳島県嵯峨地区及び高知県土佐山田西部地区を、また一般地域として高知県仁井田地区を選定いたしました。
パイロット地区は、本事業の展示的拠点として事業の早期実施をはかり、その成果を他の地域に波及させる使命をになうものでありますが、事業の進捗率は、たとえば米及び牛乳を基幹作目とする香川県長尾地区について見ますと、
昭和三十七
年度の
年度別進捗率において、土地基盤整備六九・九%、経営
近代化一〇〇%と、かなりの成績をおさめているものと認められますが、目標年次は三地区とも
昭和四十二年で、事業完成にはいずれも六、七年を要することとなっており、パイロット地区農業構造
改善事業促進対策実施要領にうたわれているパイロット地区の展示的拠点的性格並びに事業の実施期間はおおむね三年とするという趣旨に照らして、その期間はいささか長きに失するものと思われます。また、かかる例は全国にも相当数あると了解しておりますが、パイロット地区の事業の早期達成につきましては、特に一考を要するのではないかと感じました。
事業の成果につきましては、これが実施に移されて以後まだ日も浅い今日、軽々に論ずべきではないと思いますが、現地の状況は、香川県長尾地区においては、畜産関係として、アメリカからの最新技術の導入等による一人当たり生産性の九七%増、労働人員の一千六十人から八百二十八人への
減少等を目標として着々事業の実績をあげており、また、ミカンを基幹作目とする徳島県峨地区においては、ただいままでに共同防除施設、共同貯蔵庫、共同集荷所及び三車線の農道の一部を完成し、機械の導入と相まって、労働能率は著しい向上をみたが、今後も一そう意欲を燃やして事業を推進するとのことであり、牛乳を基幹作目とする高知県土佐山田西部地区においては、酪農経営の最難点であった子牛の預託育成と搾乳労働の
改善による多頭飼育によって、現在の四十五頭から百五十頭へと増産が
予定され、年間二千万円の生産性増大が見込まれている状態であります。
集約蔬菜を基幹作目とする仁井田の一般地域においては、れき耕ハウス、つまりザラメ状の特殊土壌を入れた温室の導入等により、連作による障害等を除き、飛躍的労力節減と収益増大を目ざしておりました。それは、普通の土耕栽培と比べて、労力節減五二%、生産性二三三%増及び単位所得二七六%増ということでありまして、厳冬の最中、ボタン一つで室内に展開している真夏の光景に接して、なるほどと思ったのであります。
しかしながら、事業の実績を顧みるとき、幾多の困難や障害があったことがこれらの地区において
指摘され、国に対する要望が出されました。これを要約して申し上げますと、
(1) 事業費及び補助額の増額
(2) 土地基盤整備事業の全額国庫負担
(3) 実施地区に対する国有林払下規準緩和の措置
(4) 経営
近代化施設に対する普通交付税の交付措置
(5) 市町村の技術職員・特技改良普及員等の配置助成措置
(6) パイロット地区の展示的性格に伴う印刷費等の諸
経費に対する助成措置
(7) 一般地域のうち、実質上パイロット地区の性格を有するものに対する特別の措置
(8) コンバイン等大型未完成機械導入の国営事業化
(9) 融資ワクの拡大及び融資条件の緩和
(10) 補助金交付及び
資金貸し出しの迅速化
(11) 第二次及び第三次農業構造
改善事業の早期実施
(12) 流通、価格安定策等関連
施策の樹立推進等でありまして、政府においては、すでにこれらを充足すべく一歩を進めている面も見受けられますが、なお慎重に検討されて、これらの要望にこたえられるよう希望いたします。
このほか、われわれは現地の産品を試食いたしまして、品種の改良につき特段の配慮を行なう必要のあることを痛感いたしました。申すまでもなく、万一市場性のない産品を世に出すならば、営々として続けられたすべての努力は無に帰するからであります。
また、農業構造
改善対策費は、三十七
年度に多額の繰り越しを生じているのでありますが、中国四国農政局管内においては、主として土地基盤整備事業のおくれによるものであります。現地では、ブルトーザーが田のあぜ道を消しつつある光景も見えましたが、同局管内の一般的状況は本事業推進のむずかしさを物語っているのでありましてこれが迅速な推進にあたっては特に慎重な配慮を要すると考えられます。
最後に強調したいことは、農業
基本法に基づく
昭和三十八
年度農業の動向に関する年次
報告、いわゆる農業白書が、わが国農業の現状は他産業の発展に比して相対的に立ちおくれたとして、その格差是正の要を
指摘しているのでありまして、これは第二次、第三次構造
改善事業の早期実施の必要性を示すものにほかならないということであります。政府当局の格段の御配慮を促すものであります。
第二に、
昭和三十六
年度決算検査報告指摘事項第三七九号、
災害復旧事業費の査定額を減額させたものについて申し上げます。
本件は、都合上
説明聴取にとどめましたが、その
内容は、地方公共団体が施行する
昭和三十六年発生災害復旧
工事の査定が適切に行なわれていないので、検査院が是正させたものでありまして、三県下の状況は、徳島県三十七
工事、一千三百万円、香川県七十
工事、二千二百万円、高知県二十
工事、一千五百万円の
工事費減額是正の
指摘となっております。
指摘をうけた原因は、
(1) 査定官の人員不足
(2) 県技術者の人員不足
(3) 検査院の事前検査の査定との間の時間的ズレによる現地状況の変化
(4) 復旧計画の再度災害防止に関する判断について技術的見解の相違等でありまして、これらに関する防止対策はすでに進めららているとの
説明でありましたが、二重査定の防止については、特に関係各省の間で連絡を密にする必要があると感じました。災害査定に関連して注目すべき要望は、
(1) 事前検査は、被災状況が変化しないうちにできるだけ早期に実施していただきたい
(2) 再災害防止のための見解を拡大してほしい等であります。これらについては、実際的論理的理由による反論は可能であっても、いずれも現地の切実な声でありますので、関係当局の御考慮を望む次第であります。
第三に、漁港修築事業について申し上げます。
漁港修築事業は、申すまでもなく、漁港法に基づく漁港整備計画によって、
昭和二十六年以後実施されているものであります。今回調査いたしましたものは、香川県引田漁港、徳島県瀬戸漁港、高知県室戸岬漁港の三カ所でありますが、そもそも漁港法は、戦争により失われた漁船の戦後における立ち直りに比べて、漁港の整備がはなはだおくれているという状況のもとで、いわば両者の格差を解消し、水産業の発達をはかるために制定されておりますので、事業の進捗率については特に留意して調査いたしました。
昭和二十六
年度から二十九
年度に至る第一次整備計画及び三十
年度から三十七
年度に至る第二次整備計画における事業の進捗率は、引田、瀬戸両漁港において同率の八三%でありまして、これは香川県下八港の平均進捗率七九・四%及びこれと同率の徳島県下八港の平均進捗率を上回る成績を示しておりました。さらに、これを全国平均進捗率七二%と比べますと、両漁港の事業成果はほめてよろしいと思います。
しかし、これはいずれも漁港としては未完成でありまして、防波堤、物揚げ場、船揚げ場等の
工事を三十八
年度以後の第三次整備計画にゆだねている状況であって、たとえば全長四百メーターの物揚げ場や船揚げ場となるべき場所に、天然の砂浜がなだらかなスロープで海に落ち込んでいるところがありました。高知県下では、第二次整備計画までに完成したものは十一港中わずかに三港に過ぎず、やはり漁港整備は、漁港としての
工事を完了しなければ十分な
経済効果を期待することは無理ではないかということを痛感いたしました。
地元関係者の間では、事業の早期達成ないし計画年次自体の短縮を望む声が強く、
(1) 事業
予算の増額
(2) 国庫補助率の引き上げ等についての要望が出されました。
現地を訪れたときは、風速三ないし十メーター程度の天候でしたが、堤防を越える波を見受けました。高知県下で
工事が難航しているのは、激浪のためということで、外洋に突き出している室戸岬漁港の
工事進捗率は一一・五%で、県下平均の一四・八%を下回っていたことは、特殊事情に対する配慮の必要性を示すものと考えます。
それから、徳島県伊島漁港の修築事業に関し、
昭和三十六
年度の検査院の
指摘がありましたので事情を聴取いたしました。本件第三五二号の詳細は
検査報告に譲りますが、要するに、漁港防波堤延長二百六十三メーターを県が新設するにあたり、計画に相違した粗悪な
工事を施工したため、結局国庫補助金相当額一千万円を除外すべき旨の
指摘を受けたものでありまして、これについて農林省は、徳島県に対し五百七十万円で手直し
工事をさせ、
昭和三十七
年度以後国庫補助金を五百六十万円減額する措置を講じております。かかる
指摘を受けたおもな原因は、本
工事現場が洋上の小島にあり、気象、交通等の条件が悪く、請負業者に対する監督が不十分であったこと、その上請負業者も適当でなかったこと等があげられ、これに対処する方策はすでに遺憾なきよう進められているとのことでありましたが、残念ながら、気象等の条件はこのことを現地において確かめることをはばみました。
会計検査院は、漁港修築事業に関して、
工事の著しい遅延、漁家の
減少等事情の変動に即応しない
工事の施行等の事例が見受けられるので、この種事業に対する国庫補助金の
効率的使用について当事者の注意を喚起しております。漁港の適正な整備は、漁船の避難、安全操業の観点からも、また漁業の振興を期する上からもきわめて重要であることは申すまでもありません。幸い、三十八
年度からは従来の整備計画の実績に関する反省の上に立つた第三次整備計画が発足し、また、これと歩調を合わせて漁港改修事業も実施されることとなったのでありますから、政府は、これら事業の推進にあたっては特に運用の妙を発揮して充実した成果をあげるように望みます。
第四に、漁船安全操業対策について申し上げます。
昭和三十八年五月、海上保安庁発行の海上保安の現況によりますと、三十七年の遠洋における海難船舶六十三隻中漁船は実に六十一隻の多数を占め、水産庁の資料は漁船の海難のうち、カツオ・マグロ漁船のそれが圧倒的に多いことを示しております。カツオ・マグロ漁船の近年におけるトン数別海難統計は、四十トンないし百トン級に最も多く、二十トンないし四十トン級がこれに次ぐ状態でありますが、最近、三十九トン型カツオ・マグロ漁船の海難のニュースがしきりに伝えられ、世上の関心は同型漁船の海難を中心とする安全操業対策の間頭に集中した観があります。すでに私は、昨年十二月十三日、本
委員会の席上この問題を取り上げ、今回特にこの問題に関連の深い高知県室戸岬漁港における現地調査を行なった次第であります。
漁船海難原因の最上位は、運航の誤り、次いで機関取り扱い、材料衰耗、気象・海象等、つまり主因は人災によるものであります。これに対する安全操業対策としては、関係当局の
施策をはじめ、海上人命条約改正会議の勧告、漁業法一部改正の際の
国会の附帯決議等衆知が集められているのでありまして、もちろん、現地におきましても、関係者が一体となって努力を傾けておられました。すなわち、人災防止のための各種の啓蒙活動や船舶の検査等がそれでありまして、たとえば、四国海運局による船舶検査の三十八年の実績は、臨検回数三千百四十四回、隻数七百九十六隻にのぼり、これは高知県の三十九トン型カツオ・マグロ漁船総数の約七〇%を網羅する等、これらの努力は海難
減少の成果をあげているのが認められました。
室戸岬漁港における会合、及び高知県庁における会議は、盛会のうちに終了いたしまして、関係当局並びに漁業協同組合、カツオ・マグロ船主組合、船員同志会等現地の関係者から次の要望が出されました。
(1) 近海許可漁業トン数規制上限の引き上げと企業統合による漁船大型化の認可
(2) 海上保安本部を主体とした救難対策
委員会に対する助成措置
(3) 海外港湾への緊急避難に関する外交措置または中継基地の整備
(4) 漁港整備は漁船安全操業の基盤であるので、これが早期完成のための方策の実施
(5) 漁船運航技術研修等講習会補助金の増額
(6) 四国海運局への海技試験官の増員等であります。
四国海運局への海技試験官の増員の必要性につきましては、昨年十二月十三日の本
委員会において、私は特に漁船安全操業の問題と関連して強調いたしておいたとおりでありますが、同海運局管内の海技従事者の国家試験受験者数の増勢を客観的に見ますと、前述第六項の要望が出されたわけが首肯できるのでありまして、三十九
年度において認められた増員の配分方に関しましては当局の適正な措置を要望いたします。
すでに、われわれが四国現地調査から戻りましてからも、南方洋上にある、カツオ・マグロ漁船からSOSの発信が続いているというニュースが伝えられております。カツオ・マグロ漁船の海難頻発と、これを中心とする安全操業対策の問題は、所管の当局が多岐にわたる上に、終局的には日本漁業の
基本問題にもつながる複雑な問題でありますことは、あらためて申すまでもありません。関係当局におかれましては、今後とも緊密な連絡のもとに、漁船安全操業の実をあげていかれるよう希望してやみません。
第五に、高松
国税局における三十六、七両年慶の租税徴収不足に関する
会計検査院の
指摘事項について同局より
説明を聴取いたしました。
指摘の
内容及びこれに対する措置については、いずれも
検査報告並びに
説明書によって御承知のとおりでありましたが、租税徴収不足の解消を促進するために、
(1) 租税特別措置法により非課税とされている再建整備法人の整備終了状況について、政府内部の連絡による周知徹底措置及び
(2) 一定額以上の官公庁関係資料、たとえば山林伐採資料、土地
購入資料、
工事代金支払資料等を
会計検査院に対すると同様、
国税庁にも提出することの措置を講ぜられたい旨の要望がありましたので、関係当局の御配慮を促す次第であります。
以上のほか、われわれは、香川県において、沿岸漁業構造
改善の中核とも言うべきクルマエビ及びハマチ養殖施設並びに栽培漁業センターを、また、徳島県阿南市において十二万五千キロワットの出力を有する四国電力の重油専焼火力発電所を視察いたしましたが、これらについて述べることは割愛いたします。
なお、上述の現地関係者から寄せられました要望等、調査
内容の詳細につきましては、調査室に資料を保管してありますので、これによって御承知願いたいと思います。
以上をもちまして、四国班の
報告を終わります。