○曾祢益君 私は民社党を代表いたしまして、本
条約に賛意を表したいと思うのであります。
民社党の綱領にこういうことを言っております。「現在の
世界の平和は、
世界の民衆の平和への熱望によることはもちろんのことであるが、東西両陣営の武力の均衡によってかろうじて維持されている事実は否定できない。この均衡を急激に変更することはかえって戦争の危機をまねくおそれがある。われわれは、究極において、武力によらない
世界平和の達成に努める。それにはまず、両陣営がおたがいに信頼感を回復するとともに、双方の歩みよりによって軍事的対立を同時かつ漸進的に解消するよう導くことが必要である。このため、双方の軍事力の増強を
停止し、
核兵器の
禁止はもとより完全な査察制度をともなう相互軍縮協定の成立につとめなければならない。それによって不必要となる経済力は、後進国の
開発に向けるべきである。」。私は、このような正しい平和へのかまえというものが、最近の国際
情勢によって完全に裏づけられたと思うのであります。一昨年の十月のキューバ危機において、
人類が
ほんとうに核戦争、
人類共滅の深淵に臨んだのでありますが、また、そのことは、第一には、
ソ連がキューバという地点において、急激に両陣営のバランスを根本的にくつがえすような核基地をキューバにつくろうとしたことによって直接にもたらされたものでありまするが、その深淵に臨んだ米ソ商陣営の最高首脳者が、そこに
核兵器のつり合いの上に保たれたかりそめの平和では、これは
ほんとうの戦争の危機は回避できないという認識に立ち、いま分析いたしましたような相互の信頼を回復しつつ、現状に即した漸進的な軍縮、
緊張緩和の道を選んだということは、まことに
ケネディ、フルシチョフ両首脳の勇気は、それぞれの陣営内における
反対をも克服しながらやっただけに、高く評価されなければならないと思うのであります。自後の
情勢が、いわゆるホット・ラインの設定等における両首脳直接の交渉によって、逐次信頼の回復が行なわれ、その結果が一昨年の十月のこの部分的核停
条約に結実したのであります。すなわち、このことは、私
どもの正しい平和へのかまえから見て、また、このことが戦後十八年続いた冷戦の大きな曲がりかどであることを
考えたときに、私
どもはこの
条約のできたことに最大の賛意を表する次第でございます。また、わが国において、長らくの間、正しい
核実験禁止協定成立の運動、
核兵器禁止運動、私
どもあるいは核禁
会議が提唱してまいりました、わが国は絶対に核武装しない、
核兵器の拡散は断じてさせてはならない、またこの二つのことを達成するためにも、
核兵器のまず
実験禁止協定をつくり、有効な査察制度を伴った
実験禁止協定をつくった上に、全面的な核
禁止、さらに軍縮に進まなきゃならないというこの運動が、いかに正しかったかを証明しておるものと思うのであります。
以上のような背景におきまして、この
条約を私
どもは評価していくのが正しいのではないかと思います。むろん、この
条約には、同僚各
委員から御
指摘があったようないろいろな欠点がございます。第一には
地下爆発実験を除外したこと。第二にはこの
条約そのものが、残念ながら中仏が入らないことによって大きなねらいを失っているということ。第三には、この
条約そのものからは、残念ながら
核兵器の拡散防止というところに至らない。こういうことさらには、異常な
事態が生じた場合に、各締約国が自国の至高の利益が害されたという理由によって三カ月の予告で脱退が自由である点。欠点をあげれば、私は限りないと思います。だがしかし、われわれは公正に
考えて、利点をも評価していかなければならないと思います。第一に、いままでの不安定な自発的な
実験停止というようなことでは、これは決して悪循環は
——核兵器の
実験による戦争の危機の増大とまた
大気汚染等の悪循環は、決してこれは断ち切れないということが明瞭になった。そのいわゆる自発的
停止なり野放しの
核実験に比べたならば、この
条約のもたらすところが非常に大きな
前進であることを、何ぴとといえ
ども断じて否定できないと思うのであります。この
条約が、先ほど申上げましたような冷戦の曲がりかどであり、少なくとも米ソの一種の、一つの平和共存
——初歩的であるけれ
ども、相互信頼へのあらわれであるけれ
ども、またこの
条約ができた結果、先ほど来
指摘されているように、その後国連総会において、
宇宙空間軌道に対する
核兵器その他の大量殺戮
兵器の打ち上げが
禁止され、またことしの四月に、これこそ、軍縮ではないけれ
ども、最近の
ことばで言うならば、軍備管理を米ソ両国が相談の上で少なくともやろうという一つのあらわれと見るべき、米ソそれぞれが核分裂物資の
生産能力を縮小するという、これまた画期的な進歩を見ていることは、この
条約がもたらした
事態の非常な利点だと言って差しつかえないと思うのであります。いわんや、わが国の最も望んでいる
大気の
汚染に対するストップをかけたという点からいいましても、この
条約が非常に大きな利点を持っていることは、もうちょうちょうの要はないと存ずるのであります。
最後に、この
条約の最大のねらいというものは、先ほど来申し上げました、この
条約が単に
地下爆発を除く
核実験の
禁止という段階にとどまるものであっては、歴史的使命を達成したことにならない。どういたしましても、この
条約によってもたらされた
緊張緩和への
事態がさらに一歩進むためには、
地下爆発を含む
核実験の全面的
禁止、また、そのために絶対に必要である双方が信頼し得る査察制度をしっかり発見する、それによって全面的な
核実験禁止協定を早くつくる、また、そのことによって初めて第五、第六の
核保有国の出現を阻止する、拡散防止をやる、こういうことが絶対に必要であると私
どもは信ずるのであります。その
意味で、われわれはまた正しい
核兵器禁止運動をその線に乗せながら進めておりますが、
政府においても、そういう
意味で、
日本のみずからの力によって、
日本が持っている原水爆の唯一の被害国であるという特殊の地位、
日本の
世界に誇る非武装憲法のこの背景を利用しつつ、国際連合、特に国際連合のもとにおける軍縮
会議等に、積極的に自分のりっぱなプランを持って参加することによって、いま申し上げたような、この
条約を足がかりとしての
核兵器全面禁止、軍縮への道を進んでいくことを強く要請いたしまして、私の
賛成討論を終わりたいと思います。