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1964-05-12 第46回国会 参議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十二日(火曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————  委員の異動 五月八日  委員野村吉三郎君は逝去された。   —————————————  出席者は左のとおり。    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            佐多 忠隆君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            羽生 三七君            森 元治郎君            二宮 文造君            曾祢  益君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 藤崎 萬里君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    外務省経済局    国際機関課長  宮崎 弘道君    外務省条約局    国際協定課長  徳久  茂君    大蔵省関税局    関税調査官   宗  知武君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○関税協力理事会を設立する条約の締  結について承認を求めるの件(内閣  提出、衆議院送付) ○千九百六十一年の麻薬に関する単一  条約締結について承認を求めるの  件(内閣送付予備審査) ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)   —————————————   〔理事草葉隆圓委員長席に着く〕
  2. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) それでは、ただいまから外務委員会を開会いたします。  ただいまの理事会決定について御報告申し上げます。本日は、まず関税協力理事会設立条約質疑採決、それをいたしまして、次に麻薬条約提案理由説明を聴取し、それから当面の国際情勢について外務大臣質疑を行なう予定決定いたしましたから、御了承をいただきたいと存じます。なお、外務大臣は午前十一時から出席される予定でございます。  それでは、まず関税協力理事会を設立する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件については、すでに提案理由説明補足説明を聴取しております。ただいまから質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願いたいと存じます。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 この種の条約はほかにガットもあるし、それから、最近ではOECD日本加盟して、この種の問題はそれらの機関で十分協議できるはずであるのに、たとえばその内容が技術的といわれておるけれども、そういう相違はあるにしても、なおあらためてこれに加入しなければならないということと、もう一つは、これが存続することの意味、この条約が存続することの意味を少し詳しくお話しいただきたい。次から次へと新しい国際機関が同じようなものができて、どういう意味を持つのか。
  4. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) 御承知のように、ガットは主として貿易障壁の緩和、撤廃ということを目的といたしまして、たとえば関税水準の引き下げであるとか、あるいは輸入数量制限、いわゆるクォータでございますが、これの撤廃であるとか、こういうようなことを目的とした条約でございます。もちろんガットにはいろいろな条項がございまして、これに関連いたしまして、かなり技術的な問題にも及んでおりますけれども、主たる目的は、いま申し上げたとおりでございます。これに対しまして、OECDのほうは、これも御案内のとおり、資本やあるいはいわゆるインビジブルと申しますか、貿易外取引を含めまして、各国の間の政策協調、あるいはさらに経済政策全般協調ということを目的としているわけでございます。ところが、関税協力理事会設立条約は、経済政策もしくは貿易政策関税政策、こういったような大きな問題とは若干異なりまして、関税機構についての国際的統一または情報、資料の交換のための問題を主として取り上げているわけでございます。たとえば、この関税協力理事会を設立いたします条約傘下関税分類表に関します条約であるとか、あるいは簡易通関手続に関する条約であるとか、非常にたくさんの条約がつくられておりますけれども、これはいずれも関税行政上の事項を主として規定しているわけでございます。たとえば、わが国関税定率法改正いたしまして、いわゆるブラッセル関税分類表というようなものをすでに採用しているわけでございますが、このブラッセル関税表は、ただいま御審議を願っております関税協力理事会設立条約傘下と申しますか、それの傘下関税分類表統一に関します条約がございますが、こういったような条約で、分類のしかたであるとか、そういったような技術的な問題につきましての国際統一をはかるための規定をつくっておるわけでございますが、わが国はまだこの条約に参加いたしておりませんけれども、種々の便宜上、すでに国内法的にはこれを採用しているわけでございます。一口に申しますと、ただいま御審議を願っておりますこの条約は、もっぱら関税行政と申しますかの技術的な問題を規定しているわけでございまして、その意味におきまして、ガットOECDやその他の条約と非常に趣を異にしているというわけでございます。また、この条約に参加いたしますことによって得ます義務あるいは権利、こういったようなものもガットOECDと異なりまして、種々情報を得るとか、あるいは関税分類に関しましていろいろな問題が生じましたときにそこで討議をするとか、関税行政上の情報を交換するとか、そういったような技術的な問題が主となっているわけでございます。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 いまの御説明である程度わかりますけれども、それなら、ガットの中でこの種の部会みたいなものをつくってそこでやることも幾らでもできるのに、あえてこういう形をとっておるのはどういうことか。その辺が私理解できないのと、それから、アメリカソ連カナダ等も参加しておらぬそうですが、これは分類の形式が違うということでありますけれども、いずれにしても、そういう国も参加しておらぬのですから、特にいまの技術的な問題の取り扱いということはよくわかりますが、それをガットでそれに該当する部会とか何か専門委員会みたいなものをつくって、そこでやれば非常に単純化されるのではないかという気がするのですが、その辺はいかがですか。
  6. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) 御案内のように、ガットにおきましては、輸出入手続複雑化ということが貿易障壁となるという範囲におきまして、これをあまり複雑化しないようにいたしますために、関税評価に関します七条、輸出入手続簡素化に関します八条、原産地表示簡素化に関します九条、貿易規則の公表及び施行に関します第十条、こういったような条文が設けられているわけでございます。これらはいずれも主として貿易障壁を軽減するという見地からいろんなそういった制度簡素化し、公表するということが義務づけられているわけでございます。ところが、それ以上にわたりましてはガット規定がございません。現実問題といたしまして、ガットでいろんな作業部会を設けまして、若干こういったような問題も検討をするというようなことも行なわれておりますけれども、先ほども申しましたように、ガットの基本的な目的がこういうところにあるわけではございませんで、もっぱら貿易障壁とならぬようにいろんな制度ないし運用を改善していくということが目的でございますので、そのガット根拠条文からは、ちょっとここに関税協力理事会規定いたしておりますような事項まで論議することには無理がございます。で、アメリカカナダがこの条約に加入いたしておりません理由は、アメリカあるいはカナダの両国の関税体系が、いわゆるヨーロッパないしは日本と全く趣を異にいたしておりまして、たとえば日本ヨーロッパ各国CIF評価の基準といたしまして、CIFベース関税をかけますのに対しまして、米加はFOBを基礎にしておるというような違いがございます。また、関税分類体系が非常に違っておりまして、いわゆるブラッセル関税分類表米加ともに採用していないわけでございます。したがいまして、これら何国は関税協力理事会オブザーバーは派遣いたしておりますけれども、このメンバーとなって活動する実益にも乏しいわけでございますし、他方、これの関税協力理事会条約に入りましてその後に関税分類表の問題も議論することになりますと、いわゆる関税分類条約にも本来は参加したほうがさらにこの利益を十分得ることができるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、関税体系が違いますものでございますので、この条約に参加いたしておりません。それからまたソ連は、御承知のとおり、その貿易制度関税制度がだいぶ趣を異にいたしておりまして、関税の占めます役割りが非常に違っておるわけでございます。したがいまして、この条約に入るということはその見地から適当でないというふうに考えているんだろうと推測いたします。
  7. 井上清一

    井上清一君 この条約の中に「ブラッセルで署名のために開放された欧州関税同盟研究団に関する議定書」と、こういうのが書いてありますが、この議定書はこの案の中に入っておりませんが、どういうことなんですか。ちょっと説明を承りたい。
  8. 徳久茂

    説明員徳久茂君) いまの「欧州関税同盟研究団に関する議定書」でございますが、欧州関税同盟研究団と申しますのは、この現在御審議をお願いしております関税協力理事会ができます母体になったスタディー・グループでございます。その研究団経費が、研究団自体ベルギーにございました関係もございまして、ベルギー政府がその事務局の費用を持っていた、負担していたわけでございます。それで現在関税協力理事会の中に、この関税同盟研究団の仕事というものは吸収されておりまして、その経費は、関税協力理事会の各構成国で分担するということになっておりまして、この議定書自体がすでに失効——なくなっております。その関係がございまして、この議定書自体について御審議をお願いしていない。この議定書自体がすでになくなっているわけです。この議定書内容は、いま申しましたように、ベルギー政府が負担していた経費を、関税協力理事会の、原加盟国が分担するというので、日本関税協力理事会に入りましても、その経費を分担するということはもうすでになくなっているわけです。従来ベルギー政府が持っておりました経費を、関税協力理事会ができましたときの加盟国が分担するということの議定書であるわけです。
  9. 井上清一

    井上清一君 そうすると、この十四条というのは、日本にとっちゃ関係のない条文である、こういうことですか。
  10. 徳久茂

    説明員徳久茂君) さようでございます。
  11. 井上清一

    井上清一君 ちょっと伺いたいと思うのですが、この附属書の中に、法人格というのが書いてあるのですが、「理事会は、法人格を有し、次の能力を有する。」ということが書いてあるわけです。これは、法人格というのは、ブラッセルにおける法人格なんですか。国際法上の法人格を有し、ということを附属書なりあるいは議定書に特別に書くというのはどういう理由なんですか。
  12. 徳久茂

    説明員徳久茂君) ここで申しております法人格は、加盟国におきまして関税協力理事会法人格を持つということでございますけれども、実際上本部ブラッセルにございます関係上、その二条の第二項が働いていたのは、主としてブラッセルで働いていたわけでございます。ただ、かりに関税協力理事会日本で何か動産を収得するとかなんとかいうような事態がありますときには、もちろんこの条項に従いまして関税協力理事会法人格日本でも認めるという趣旨でございます。
  13. 井上清一

    井上清一君 そうすると何ですか、国内法というものは何もあれしないで、この議定書だけでこの関税理事会というのは日本国内において法人格を有し得るということですか。当然ありと認めてよろしいのですか。
  14. 徳久茂

    説明員徳久茂君) さようでございます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 それと関連して、この場合の理事会国というのですか、理事国というのは、加盟をしたものはみな理事になるわけですか。
  16. 徳久茂

    説明員徳久茂君) 関税協力理事会と申しておりますが、一つには機関名称として関税協力理事会というのがございまして、そこで言っている理事会というのが関税協力理事会という機関最高機関ということで、メンバーは、全加盟国からなるわけでございます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 その説明を聞くとわかるけれども、普通理事という場合には、通常のメンバーがあって、その中から選ばれて——互選されるか何か、そういうことで理事というものは出てくるわけですね。名称としては適当でないような気がいたしますね、これは。
  18. 井上清一

    井上清一君 それから、このブラッセル関税分類表というのは、これはいままであったわけなんですね。そこへまあ日本がどういりふうな形で——オブザーバーで入っていたのですか、ブラッセル関税表というものに対して、日本はいろいろ発言をしたり、これまでに、何というか、日本関税分類表にだんだん合わせるようにやっているわけですがね。それとの関係をもう少しはっきり御説明願いたいと思います。
  19. 宗知武

    説明員宗知武君) ブラッセル品目表につきましては、前にもいろいろ御審議をいただいたことがございますが、昭和三十六年に、ちょうど自由化に対処いたしまして関税表一般改正を行ないました際に、従来の日本関税分数表をいかに近代化するかという問題をずいぶん研究したわけでございます。その際、最有力候補としてのぼりましたのが、このブラッセル関税品目分類表であったわけでございます。これは、同じく「税関における品目表分類に関する条約」というのがございまして、それの附属書分類の表があるわけでございます。日本は、ずっと前から、理事会及びそれらの委員会から、開催のつど、オブザーバーの招請を受けておりまして、現地の大使館の方に出ていただいたり、あるいはわれわれのほうから一時行ったこともございますが、かねて、分類表近代性に着目して、それを研究していたわけでございます。たまたま三十六年の改正に際しまして、やはりこれを採用するのが日本としては一番いいのじゃないかということで、それに決定いたしまして、条約に入ることなしにその体系だけを拝借して、日本関税分類表体系をつくったわけでございます。それのもう一つでございますが、分類表条約は、関税協力理事会を設立する条約に入らなければはいれないという制約がございます。したがいまして、われわれといたしましては、今回、この理事会を設立する条約への加盟につきまして御承認をいただきました暁には、引き続き、この分類表条約その他に入る方向をもって目下研究を進めております。もちろん入るつもりでおります。
  20. 井上清一

    井上清一君 この理事会に入りますと分担金を仰せつかることになるわけなんですが、どの程度の分担金日本が負担することになるのですか。
  21. 宗知武

    説明員宗知武君) あの理事会分担金は、一応理事会の方針といたしまして、OECD分担金比率分担比率に基づいて算定することになっております。したがいまして、まだ最終決定はございませんが、事務局といろいろ打ち合わせました結果によりますと、わが国といたしましては、二つございますが、ワーキング・キャピタル・ファンド、すなわち運営基金といたしまして二十七万ベルギーフランでございます。それから、日本分担金、これは年次分担金でございますが、これが二百十六万ベルギーフラン、合計いたしますと、二百四十三万ベルギーフラン、邦貨換算いたしますと千七百四十九万六千円、これが一応今年度の分担金に相なるわけでございます。
  22. 井上清一

    井上清一君 日本は、とにかく一番貿易の重要なる相手国というのはアメリカなんですがね。アメリカは、この条約には入ってないですね。そうして、アメリカつまり関税制度なりいろいろな関税の技術とかいろいろな問題が、この条約アメリカが入ってないという関係で、日本アメリカとの貿易不都合を生ずる点がないですか。
  23. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) ただいまの御質問の問題は、主としてアメリカ日本との間に関税交渉を行ないます際に生じてくる可能性があるわけでございます。御承知のように、日本ガットに加入いたしまして以来、数回各国関税交渉いたしておりますし、アメリカとも交渉しているわけでございます。その場合に、日本関税分類と、アメリカ関税分類とが違っておりますために、お互い譲許と申しますか、お互い相手に与えます関税引き下げなり、関税据え置きの約束が、はたして等価値のものであるかどうかということを確定いたします際に、相当事務的に詰めた議論をしなければならないということは従来もあったわけでございます。この点につきましては、今回日本がこの条約に加入いたしましても、同様にやはり相当技術的な論議を戦わせなければならないという事情は、引き続き続くわけであります。他方日本欧州諸国やその他の国とも関税交渉をいたしておりますが、その場合に、この条約に入っておりますと、日本が受ける相手国からの譲許と、日本が与える譲許、この確定につきましては、この条約体系と申しますか、この解釈を利用できるわけでございますが、その点では便利になるわけでございます。他方米国との交渉に際しましても、日本米国に与えます関税譲許、与えるべき関税譲許、たとえば、ある品目関税をこの一定パーセンテージからというような日本譲許につきまして、米国からいろいろ質問があった際に、日本としましては、ブラッセルのこの条約関税体系でこういう解釈になっているからということを説明すれば足るわけでございますので、日本関税体系米側に理解させ、納得させるには、この条約に入っていたほうが便利です。他方米国関税体系日本が見ます場合には、これは従来と全く変わりないということに相なるわけであります。したがいまして、この条約に入ったため、日米関税交渉の問題で特に不利益とか、不都合を生ずるというわけでございませんで、幾らか、少なくとも日本側関税分類に関します限りは、説明が楽になり、米側関税分類に関します限り、従来と全く変わらないということになるわけでございます。
  24. 井上清一

    井上清一君 関税譲許の問題で、これまでいつも問題になる、たとえばオーストラリアも入っておりませんですね。入ってない。それでオーストラリアなりアメリカなりが、将来この関税協力理事会というものに対して入る意思があるのか。また、大体これ何ですか、これをどういうふうに考えているかというような点について伺いたい。
  25. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) オーストラリアはこの条約加盟いたしてございます。他方アメリカは、当分の間この条約加盟することはないんではなかろうかと推測いたしております。と申しますのは、先ほど説明申し上げましたように、米国関税体系が全く違っておりますので、いまのところこれに参加するということは予想されないわけであります。ただ、米国関税分類をこの間変更いたしまして、その変更いたしますときには、このブラッセル関税分類その他を参考にしたような形跡がございます。したがいまして、その意味では、先ほど来の関税交渉も、幾らか従来に比べましては楽になったわけでございますが、米国は、御承知のとおり、非常に特殊な関税制度と申しますか、を持っております。これを、国内法を変えるということには相当問題があるやに聞いておりますので、当分の間、この条約に入る、この条約自体に入るということは考えられません。ただ、この関税協力理事会に毎年オブザーバーを派遣いたしておりまして、その間、意思の疎通ははかっているわけであります。
  26. 井上清一

    井上清一君 それからもう一つ伺いたいのは、後進国——東南アジア国国とか、それから中南米あたりの国が、この関税協力理事会に対してどういう態度をとっているか、その点をお伺いしたい。
  27. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) 東南アジアの国の中で、インドネシア、それからパキスタン、その二カ国がこの条約加盟いたしております。そのほかの国は、現在のところ加入いたしておりません。ただ、東南アジア諸国関税行政と申しますか、それから関税制度、この問題につきましては、各国とも将来近代化していきたいという考えを持っているようでございまして、いろんな機会にいわゆる先進国関税制度なり運営研究いたしております。現在のところ、これらの国がどのくらい近い将来にこの条約加盟する意思を持っているかどうかははっきりいたしておりませんけれども、先ほど申し上げましたようなガット関税交渉その他の関係もございますし、現にガットには相当専門家を派遣いたしまして勉強もしておるわけでございますので、これらの国が次第にこういった方面につきまして研究を進めてきました暁には、何らかの形で、これらの国の関税体系関税制度あるいは運営を近代化していくということが行なわれるのではなかろうかというふうに考えております。その場合には、やはりこのブラッセル分類表あるいは関税条約関税協力理事会内容等にも注目してくるのではなかろうかと考えております。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連して。提案理由説明のときに、「最近においては、低開発国関税行政についても積極的な援助を行なっています。」、こういうふうに述べておりますが、どういうふうに援助しておりますか、具体的に御説明願いたい。
  29. 宗知武

    説明員宗知武君) これは一つの例は、南米のウルグァイがこのブラッセル関税分類体系を採用するに際しまして、CCCといたしまして——関税協力理事会といたしまして専門家を、これはたしかスペインの専門家だったと思いますが、それを委嘱いたしまして、ウルグァイに派遣して、関税表改正の手助けをさしております。そういうものが一つの例でございます。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それ以外には。
  31. 宗知武

    説明員宗知武君) それ以外には、エカフェに関税協力理事会から専門家が出てまいりまして、評価に関するいろんな会議の指導その他をやっております。
  32. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  33. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 速記を始めて。  他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局いたしたものと認めて御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますので、討論は終局したものと認めて御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  本件全部を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  36. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 全会一致でございます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  38. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) それでは、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、提案理由説明を聴取いたします。大平外務大臣
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました千九百六十一年の麻薬に関する単一条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  麻薬国際統制に関しては、現在九条約が存在しておりますが、これらの諸条約は、相互に重複して複雑な体系を構成しているため、麻薬統一的な国際統制という見地から少なからざる不便が痛感されておりました。そこで、国際連合は、これらの諸条約を整理統合することによって、より実効的な国際統制制度を確立するために麻薬委員会をして単一条約を、作成するための検討を行なわせておりましたが、その結果として、一九六一年一月二十四日から三月二十五日までニューヨークで開催された国際連合会議において同年三月三十日に採択されたのが、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約であります。  この条約は、麻薬の医療上の使用が現状においてはなお不可欠である一方、麻薬の中毒が個人及び社会に重大な害悪を及ぼすことを認め、麻薬の乱用を防止する目的で、その使用を医療上及び学術上の目的にのみ制限するために所要の国際協力及び国際統制を行なうことを規定しております。  現行の諸条約との相違点としましては、麻薬国際統制機関として国際連合の経済社会理事会麻薬委員会のほか、新たに国際麻薬統制委員会を設置して既存のあへん常設中央委員会及び麻薬監督機関を廃止すること、ヘロイン等特に危険な薬品の取り締まりを強化するとともに、麻薬原料植物に対しても統制の範囲を広げること、麻薬中毒者の効果的な治療のために適当な施設を設けることを勧奨する趣旨の規定が設けられたこと等であります。わが国が従来から麻薬国際統制については深い関心を有しており、また、わが国における麻薬機関係事犯はもっぱら海外から密輸入される麻薬が原因となっている現状にかんがみましても、多数国の参加を目ざしたこの普遍的な単一条約が発効することによって麻薬国際統制が一そう普遍化することは、わが国にとっても非常に望ましいことであります。わが国、すでに麻薬取締法、あへん法及び大麻取締法に基づいて厳重な統制措置を実施しておりますが、この単一条約に参加することにより、麻薬の取り締まりについて必要な国際協力を確保し得ることとなるのであります。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  40. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 以上で説明は終了いたしましたが、本件質疑は後日に譲りたいと存じます。   —————————————
  41. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  42. 森元治郎

    ○森元治郎君 きのうアメリカ代理大使のエマーソン氏が外務大臣を訪問して、南ベトナムについての日本の援助を要請したということが言われております。また、国務長官のラスクも、世界の二十四カ国ぐらいの国々に、それぞれ応分のといいますか、しかるべき援助をお願いしていると、こういうことが伝えられておりまするが、これはベトナムの現状が非常な重大な危機、別なことばで言えば、アメリカ軍が今日まで南ベトナム軍と協力してベトコンとの戦いをやっておりましたが、もう追い詰められて非常な窮地に立ってきた。そこでアメリカの一部では、政府の中では、ちょうど朝鮮戦争のときのように、鴨緑江を越えて援助の根源を断つべしというあのマッカーサーの進言と同じような意見がいま出てきて、北ベトナムのほうまで、ベトコンの裏側のほうまでたたきのめさない限り、南ベトナムがあぶないというような意見が強くなってきたようでありますので、非常に極東の平和にとっても重大だと思うのです。そこで、まずエマーソン氏の外相への要請、どういうことか、その理由、それから事態が非常に極東の平和にも重大なところまで来ているという認識、この点について伺いたいのです。往復二十分でありますから、ひとつ整とんして要領よくお答えしていただきたい。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 四月二十七日にラスク国務長官から池田総理あてに書簡が参りまして、自由諸国家のベトナム援助の意義を強調されて、そうして、日本もベトナム援助に積極的にあってほしいという趣旨の書簡がありました。で、きのうエマーソン代理大使がそれを受けて、具体的には、アメリカとしてはその後二十五カ国に接触を持ちまして、各国の対ベトナム援助を要請いたしておりますということと、すでに日本は賠償を通じ、あるいはコロンボ・プランを通じましてベトナム援助をしていただいておることは重々承知いたしておりまするが、なお一段と援助をしていただくことになりますならば非常にしあわせだという前置きで、例示的な援助提案というものがございました。それには、商品援助と技術援助と資本援助と三つのカテゴリーに分けて、たとえばこういうものが望ましいという意味のことでございました。これに対して私は、よくお申し出の趣旨は政府部内で検討いたしましていたすことにしますと、日本といたしましては、自由国家の一員としてできるだけのことはいたしたいと思っておる、ただ、具体的によく検討してみないと、ただいまの段階で御返事を申し上げるわけにはまいるまいということでございました。きのうの代理大使のお申し出にも、いま森さんの御質問のベトナム情勢の重大性、そういった問題には別に触れておりませんでした。
  44. 森元治郎

    ○森元治郎君 ベトナムの事態の重大性、私がお尋ねした重大性についての外務大臣の御認識はどうですか。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、申すまでもなく深刻な段階にあるという認識を持っております。それでベトナム政策につきまして、アメリカといたしましてもいろいろ苦心しておるところでございましょうし、また、フランス等から新しい御提案もあったということは承知いたしております。現段階におきましては、アメリカとしては、北進をして援助のルートを断つというようなことは具体的に考えておるようには思っておりませんし、といって、ベトナムを引き揚げるというようなことも考えていない。既定の対ベトナム政策を続けていくというその基調を変えるという徴候はどこも見られていないと判断いたしております。私といたしましては、アメリカとしてそういう困難な局面に立って現在やっておる対べトコン作戦を援助していくという過程の中で、また、その過程を通じてのみ次の政策というものが生み出されてくるのではないかと思うのでございまして、大へん御苦労であると思っております。
  46. 森元治郎

    ○森元治郎君 四月二十七日、ラスク長官から池田総理に積極的であってほしいという申し出があって、いまそれが具体的に、例示的にそれを要請した。もう日にちが二週間もたっておりますから、すぐに諾否を明らかにした国も相当あると思う。そのうちで、西ドイツは拒否した、それからオランダのほうもこれを受ける、承諾するつもりはないという回答をしておるように新聞では早くも伝えている。私は、これはその間の事情が一つと、日本政府がはっきり断わるべきである。ということは、この申し出は、アメリカがSEATO内部でもどうもみんなが思うように動いてくれない、何か孤立感に陥っているので、たくさんの自由国家群の何かの形の応援を得て、一つアメリカの裏にはこれだけのたくさんの国が控えておるのだという形をとりたいのだと私は判断するのです。何となれば、いま戦争をやってアメリカが追い落とされそうになってサイゴンの近所のあたりもあぶない。マクナマラが歩こうとすれば橋の下に爆弾がしかけられており、航空母艦も水の中に沈んでしまうという非常事態の中で、資本だの技術の援助だの、商品の援助だのというのんきなことはでき得ない、あり得ない。しても、そういうことは、実らない。ただ援助を受けたという形をとりたいというのが私はアメリカだと思うのです。そこで、やはりこの段階に来ては、アメリカもメンツの段階ではなくて、根本的に解決する。すなわちドゴールが言う一つの中立化も一方でしょう。北ベトナムも交えて中立化というアメリカの一部の意見もありましょう。いずれにしても根本的に戦争をやめて、そして政治的な解決——具体的に言うならばアメリカは好ましくないかもしらぬが、一九五四年のジュネーブの協定——南ベトナムとアメリカとが入っていなかったようでありますが、ああいう精神に返って、そして事態収拾に動くように、政府はアジアの一員としてアメリカを大きく説得されることが、南ベトナムのため、日本のため、アメリカのためであり、極東の平和を樹立する一番のおそくて近い道だ。その時期に来たのじゃないか。NATOのあれほどの協力者のドイツでもそういうふうな態度である。フランスはもちろんオーケーとは言わないでしょう。これはもう日本がいまや手をとるべきいいチャンスに来た、こういうふうに感ずるのですが、大臣、お話を伺います。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカ各国に呼びかけている動機、それは森先生が御指摘されるように、心理的な効果を期待しているということは私はないとは言えぬと思います。エマーソン氏もそのことに触れておられました。それからまた、あなたが御指摘のように、NATO各国なんかの出方、これもまた私のほうとしても注目しておるところでございまして、正確に各国の反応を読み取る必要があることは当然だと思っております。ただ、西欧各国日本と事情が違うと思うのでございます。御案内のように、すでに南ベトナムに対しましてわが国は三千九百万ドルの賠償義務を負いまして、これはほとんど余すところわずかを残して、ダニムという水力発電に具体化いたしまして、すでに発電が始まっているという状況でございます。そのほかに、ただいままで百八十数名にのぼる研究生の受け入れもいたしております。現に日本国内には、農林、水産、畜産等を主体にした研修生を受け入れております。また現に、現地には日本の技術者、教師等を派遣しているわけでございます。で、われわれは、たびたび申し上げますように、アジアの諸国に対しまして、西欧各国と比べものにならないほど近しい関係にございますし、深い関心を持っておるアジアの日本といたしましては、西欧各国がこうであるから日本もこうするというぐあにはいかぬだろうと思います。私どもは可能な限りそれは受け入れる。受け入れる用意があり、日本にそれを供与する能力がございまするならば、できるだけお力になって差し上げるという基本的態度は変えるべきじゃない。ベトナムにおきましても、ベトナムも決してその例外ではないと思っておるわけでございます。したがって、アメリカからの呼びかけがあろうがなかろうが、そのような基本的な態度はちっとも変えるべきじゃないと思っておるわけでございます。たまたまそういう呼びかけがございましたので、この呼びかけも一つのデータとして十分検討いたしまして、そして、そのうちで可能なものにつきましては考慮してみたいということで考えておるわけでございます。  それから、アメリカのベトナム政策が行き詰まっておるから、その転換を求めるために日本としても積極的に動くべきじゃないかという御意見でございますが、一つの御提案として私どもも森さんのお気持ちはわかりますが、ただ、現にベトナムで汗をかいて一生懸命に事態の収拾に当たっておるアメリカに対しまして、局外者として、まあ涼しいことを申し上げるなどというのもこれはいかがなものかと思うのでございまして、先ほど私が申し上げましたように、現にアメリカがやられておるその実践の中から、私は次にとるべき政策が打ち出されてくるに違いないと思うわけでございまして、そういう意味で、アメリカを頭からディスカレッジするようなことをわれわれ友邦としてすべきではないのではないかというふうに私は考えております。
  48. 森元治郎

    ○森元治郎君 汗かいていればおれも一緒になって汗かく必要は毛頭ないので、何んで汗かくかということが大事なんで、その点は大臣もよくお考えになってもらいたいことと、いま、アメリカの国務長官から総理、駐日代理大使から外務大臣にという、人が持ってきた案の内容として、技術だ、資本だ、それから商品だということは、これは日本は大使もあそこにおりますし、外務省も機関があるし、何を援助すべきか知っている。いまさら、言われて考えてみますなんというのんきなことはあり得ない、外務省は当然東南アジア開発国援助ということはきまっておる問題ですから。特にこれについて私は、汗かいたからという気持ちになる必要は毛頭ない。別個に片づける問題だ。これは南ベトナムの軍事情勢に関連をする日本の片棒かつぎ、こういうことに受けとられる問題でありまするから、はっきりと、それとこれとは別だと思うのですね。エマーソンが例示的に示したという三つの案などは、これはもう別個に当然日本は考えることで、むしろこの際そういうことを頼む前に、なぜそうなったかということをアメリカが考えるべきであろう、それについてはわれわれも十分隔意なく懇談したいという返事を出すことが先だ。いま大臣は、いまの段階ではできないが、自由主義国家の一員としては——一員であるということは隠れもない事実であるが、いまの段階では、検討するという以上には出ないとおっしゃっておりますが、正式な回答は出したのか出さないのか。正式にラスク長官からの申し入れに、エマーソンの申し入れに正式に出したのか、検討という段階であるのか、私は、その手続の内容とそれから、援助問題は、これは別個の問題である。軍事介入のおそれがある、やめるべきである。たとえ医療であり、あるいは肥料であり、技術屋の派遣というようなことを言われますけれども、しかも応分ということばが政府、外務省から出ているように聞いておりまするが、そういう応分と言う必要は毛頭ない。これは別個の問題である。それで、南ベトナム、インドシナ半島の平和については考えようではないか。ディスカレッジになるかどうかは知らぬが、正しい道はアメリカに十分日本がやるべきだ。こういうことをもう一ぺん重ねて承ります。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのう例示的な提案をちょうだいしたばかりで、これから検討するわけでございます。したがって、検討してからでないと返事ができないわけでございます。ですから、またそれを検討を終えてどのように日本が回答するかということについては、十分慎重に考慮の上やりたいと思っております。
  50. 森元治郎

    ○森元治郎君 いつのことでありましたか、南ベトナムに対するアメリカの認識の失敗は、日米間にときどき大使と外務大臣、あるいは太平洋軍司令官といいますか、責任者の会合があって、その席上たぶんフェルト大将であったと思うが、南ベトナムの情勢はもう簡単にわれわれの力によって片づけられるという報告があったのが去年だったと思うんですが、そんな全く白か黒くらい違うようなアメリカの認識を土台にして、この東南アジアの問題を一緒にやったらば、私は戦争の危機も出てくる、北をたたけという意見もあるんですから。ですから、私はよく検討しますじゃない、もう失敗していることは外務省も外務大臣も知っているはずなんだから、こういう問題が起きて、引き出しをあければこの処方せんはできているはずなんだ。これができてないということは残念だと思う。ところで、北をたたくんだといったようなこと、根を断つんだ。日本でいえば、ビルマ・ルートをたたくことが支那事変完遂の道だというわけで、だんだんたたいているうちに世界戦争になって逆にたたき返されてしまったけれども、私はこれは北ベトナムの戦争の発展も、デスペレートになれば、あり得るんではないかという心配があるんですが、これは絶対に押えるということを大臣はおっしゃいますか。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、アメリカとしては現在踏襲しておる政策を進めていくというようにわれわれは承知いたしておるわけでございます。これがまかり間違ってひょっと大きないくさになるというようなことは、これはたいへんなことでありまして、われわれとしてはそういうことにならないように事態が収拾されることを期待するものでございます。
  52. 森元治郎

    ○森元治郎君 じゃ、あと一つだけ簡単に。あなたが大臣になってから一つ変わったことが、衆議院だったと思うんですが、間違ったら取り消しますが、南ベトナムはいわゆる安保条約で言う極東の範囲に入るんだという答弁があったように記憶するんです。従来藤山さんが安保条約説明のときにさんざん質問された結果では、南はフィリピンの北、その辺までが極東の範囲だということを言ったんですが、いつの間にかだんだん南ベトナムまで入っていっちゃったんですが、この点がどうかということ。
  53. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私はこの二、三年のことは存じませんが、現在の安保条約審議された当時の国会において政府が答弁した御趣旨は、ベトナムは極東そのものの中には入らない、ベトナム自体としては。しかし、ベトナムにおける事態が、極東の平和、安全に影響を及ぼすことはあり得る、こういう趣旨だったと記憶しております。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどの御答弁の中に、ベトナム問題は、日本としては西欧と同じに、同列に考えるわけにはいかないということで、ベトナム賠償のことを事例にあげられましたが、実はこのベトナム賠償問題が、今日のような事態にも将来発展し、関連を持つということも含めて、当外務委員会ではベトナム賠償問題の審議の際には異例の何週間という長時間を費やしたわけです。だからそのときの展望とほぼ同じようにいまなっておるわけですね、事態が。でありますから、そういう意味で言うならば、ベトナム賠償の関係国であるから西欧と同列ではないというお話は筋が違うし、また、いま提起されておる問題とそれは直接の関連性はないと思います。でありますから、むしろ問題は、それは森委員が指摘されたように、私はこの場合たとえそれが資本財であれあるいは技術であれ、商業物資であれ、いずれにしてもアメリカの要請でいまの事態に関連して援助をやることはやめたほうがいいと思います。これは絶対にやめるべきだと思います。というのは、もし正当な商業関係ならば、普通のコマーシャル・ベースでやればよろしい、このアメリカの要請と関係なしに。それから、医療関係ならば、国連等が正当な機関を通じて要請があったときにやればよろしい。資本財の場合はかなり広範囲になりますが、これはかなり直接戦闘に関連するものが出てきます。でありますから、私はいずれの角度から見ても、今度アメリカの要請でこの種援助を日本が受諾することは絶対避けるべきだと思います。そうでない普通の援助——と言うより、通常の経済交流なり、それから国家間の借款とかいうことになれば、これはまた全く別の、アメリカの援助とは別の形でそういう事態が起こる場合はまた別の問題であります。しかし、今日のアメリカの要請によるそういうことは、絶対避けるべきだと思います。  それからもう一つ、私は、いま最後に森委員が触れられた極東の範囲という問題なんですが、その解釈は私はいずれでもよいと思います。いやよくないが、ここで問題にするわけじゃありません。そうすると、問題は、極東の範囲という安保条約にあるそういう問題との関連でアメリカは援助を要請してきているのかどうか、それが一つであります。どういう意味でそれを要請しているのかどうか。アメリカの側からいえば、どういう立場で要請しているのであろうか。それから、もし日本が極東の範囲のいかんにかかわらずこの種の要請を受け入れた場合、アメリカの要請に基づいてそれを実行した場合、これは極東の諸国に与える、少なくともいまの南ベトナムについては中立を保っておる諸国に対して、私は日本として悪い影響を与えると思います。そういうこともあるので、私はこの際重ねて申し上げますが、アメリカの要請による南ベトナム援助というものは、はっきりこれはお断わりになったほうがいいんではないかと思います。それからもう一つは、こういう種類のアメリカの要請、二十五カ国間に出されたようでありますが、喜んでみんな協力するような情勢にないということは、そもそも一体何であるかというこの問題であります。おそらくアメリカが、正当な条件を持ったベトナム紛争であったならば、私はアメリカの要請がなくとも諸外国がきん然として南ベトナムを援助するだろうと思う。それが回状を回さなければ、要請状を回さなければ諸外国が参加しないということ自体、この問題が非常に無理だということを証明しておる。その片棒を日本がかつぐ必要は毛頭なかろうと思います。  それから、アメリカが一生懸命やっておるときに横で涼しい顔をしておるのもどうかと言われますが、先ほど委員も触れられましたが、あの種のことに汗をかいていまのような形でアメリカがやることが、はたして問題の終局的解決になるのかどうか。それが正しいことかどうか。そう考えた場合に、私はやはり汗をかくにもかき方があると思う。もっとほかのやり方があると思う。ですから、いまのような形ではいよいよ私はどろ沼に入っていくんじゃないかと考えるので、むしろ日本としては、前にも一度私申し上げたことが、予算委員会のときですか、あると思いますが、重ねて申し上げることになるけれども、やはりアジアの将来の世界平和という大きな展望に立って、アメリカにむしろ政策転換を求める。それじゃ、その結果何かうまい解決策があるかということになれば、やはりこの種のことは、先ほど、これも森委員が触れられましたが、ジェネーブ協定に関連したようなああいう形でもう一度問題を正当な国際間の間で解決するような方式を考えるべきじゃないか。そういうことに日本が全力をあげるべき時期なのに、いまアメリカの側から重ねて要請があったからといって、御検討中というとこでありますが、私は、むしろはっきりこの際日本としては断わるということで態度を表明されたほうが適当ではないか、こう思うわけであります。たぶん森委員と相当ダブった点もあるかと思いますが、重ねて御意見を承りたい。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一に、ベトナムに賠償義務を負っておるから、西欧各国と立場が違うと、そういうことを申し上げたつもりはないのでございます。日本のアジア諸国に対する間柄は、西洋諸国のアジア諸国に対するそれとは違うということを申し上げておるわけでございまして、西洋諸国は都合が悪くなればアジアから引き揚げることも可能でございますけれども、日本はそういうわけにはまいらない。われわれの永遠の課題である。そういう意味で、アジア政策というのはわれわれとしては非常に深刻な問題である。そういう認識が基底にございますと、したがって、ベトナム援助の問題も、西洋諸国の行き方と日本のそれとは違った日本の立場があるのでございます。こういうことを申し上げたわけでございまして、ベトナム賠償があるからそうなんだというように私は申し上げたわけではないわけでございます。  それから第二点といたしまして、今度のアメリカ側の要請は、安保条約との関連において要請があったかというと、そうではないようでございまして、アメリカとしては、事実上何らの前提なく、ベトナムに対する援助というものを、二十五カ国にいま接触を持っているが、日本もいろいろやってくれておるけれども、さらにもっと考えていただけないかという意味の要請でございまして、安保条約との関連というようなものではございません。その証拠に、日本以外の各国にも接触を持っておるわけでございます。  それから、今度の援助をやるかやらぬかという問題につきましての羽生先生、さらに森先生の御意見は、とくと拝聴いたしたつもりでございますが、これは私どもは提案されたものをよく検討さしていただきますし、また、日本が援助に応ずるか応じないかという政策問題もあわせ検討しまして、それで処理いたしたいと考えておるわけでございまして、あなた方の御意見は御意見として十分拝聴したつもりでございます。  それから、ベトナム政策一般につきましては、先ほど森先生の御質問にもお答え申し上げましたわけでございますが、アメリカが現に南ベトナムを援助していまああいう姿にあるわけでございまして、これに対して世界の各国が文句なしにあったかい支援を送るという空気にないことも御指摘のとおりだと思うのでございます。それだけに問題がむずかしい問題であると思うわけでございます。ただ私が申し上げたいのは、現にベトナムを援助して苦しい戦いを戦っている現状なんです。それで私が先ほど申し上げましたように、この問題の解決というのは、どっか卒然として天から降ってくるわけのものではないだろうと思います。やはり、いま現に進行中の事態の中から分別が出てくるのではないかと思うのでございまして、現に鋭意毎日の実戦を通じて苦心しておるアメリカ側の評価アメリカ側の考え方というものにも十分敬意を表し、そして、その実戦の中から英知が出てくるという性質のものじゃなかろうか。これを局外者が、もう行き詰まってだめじゃないかと投げてしまうというような態度は、はたしてこの事態の建設的な打開というものに役立つかどうかという点をむしろ憂えるのでございます。問題のこのインドシナ半島の問題は、軍事問題よりも政治問題のウエートが多いということは、アメリカ自身が承知しておることでございまして、軍事的な手段で解決が可能であるとアメリカが信じておるわけでも何でもない。しからば政治的な解決というものはどういう段階でどういう方法において出てくるかということについては、いま進行中の過程の中から出てこなければいけないんじゃないかという意味のことを私は申し上げておるにすぎないわけでございます。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 解決の策が、現に進行しておる事態の中から生まれるという場合、それは砲煙弾雨の中から生まれるのではない。そういう過程に、別個に外交というものが進められて解決の糸口を見つけていくのが筋道だろうと思う。しかし、これは議論ですから……。  もう一点だけお伺いしたいことは、援助は私たち反対、アメリカの要請に基づく今回の援助はこれは私はお断わりになったほうがいいというこの基本的立場を前提にして申し上げるわけですが、いま政府が検討されているという場合には、どういう形のことが考えられるのか。たとえば、先ほど申し上げたように、純粋な意味の医療活動というようなものならば、国連から正式なあれがあって、南だけじゃない、北だっていいことになる。赤十字を通じてやればいい。そうでないことなら、通常の商業援助でといいますか、取引で、商業ベースで幾らでもやり得ることがあり得る。そういうものでもないとすると、具体的には一体何を検討なさるのか。それはだから、回答をいつ出すとかなんとかいうことでなしに、少なくとも軍事援助に介入をしないという形でもし日本が援助ということを考えるなら、一体どういうことがあり得るのか。少なくもそれが軍事的に必ず結びつく危険性を持っておるのでやめたがいいという前提でありますけれども、もし完全に結びつかない何かほかに方法があるというのならば、何を一体検討されておるのかその辺をお伺いしたい。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 森先生の御質問にも、あなたの御質問にも私が申し上げましたとおり、日本には日本の立場がある、西欧諸国と違った立場があるということを申し上げたのは、そのことを思い起こしていただきたいためであります。私どもは、アメリカの軍事要請があろうがなかろうが、つまり、アジアの事態について日本の立場において何をなすべきかということは、しょっちゅう考えておかなければいかぬことと思うのでございます。国連の要請があれば動いたらいいじゃないかというより、もっと積極的に考えておかなければいかぬじゃないかと思うわけでございます。現にアジアに対して技術協力、経済協力をやるのも、国連の慫慂があってやっておるわけじゃなくて、日本自体の発意によってやっておるわけでございまして、そういう立場は、アメリカの要請のあるなしにかかわらず、あるということを申し上げておるわけでございまして、それの線を延長してまいりますと、今日ベトナムの事態に対して日本はどうすべきか。現に去年も安保協議会のときに、非常にお医者さんが足らぬので何か日本が考えてくれないかという要請があったことは事実でございますが、実は、現地政府からその後何ら要請がなかったわけなんでございます。それで動きようもなかったわけでございますが、私どもはこういう立場で、要請の有無にかかわらず考えなければならぬ立場にあるということをひとつお考えいただきたいということが一点でございます。  それから第二点として、しからば何を考えるのだということでございまするが、もとより、軍事援助になるというような性質の援助は考えるべきじゃないと思うのでございます。私どもは、アジアの友だちとして、日本のユニークな立場において何を考えるのがいま一番親切か、また、それは何が可能かということについてきめこまかくひとつ検討してみたいということを腹案に持ちまして、具体的な検討に入ろうとしておるところでございます。もっと検討が進まないと、具体的に御提示申し上げるわけにはまいりませんけれども、考え方としてはそういう含みでおるわけであります。
  58. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの問題について若干お伺いしたいのですが、いま大平外務大臣が、これは安保条約に基づくものでない、こういうふうに言われておったわけでありますが、二十五カ国に対してアメリカが要請をしたというその二十五カ国は、NATOに加盟しておる国、あるいはアメリカと相互防衛条約を結んでおる国、あるいは日本のようにアメリカとの間に安全保障条約を結んでおる国、いわゆる自由主義国全般ではない。そうしてみるというと、アメリカが要請しておる国というのは、アメリカと軍事的な提携をしておる国ということに限られておるということから見ると、この要請が一体いかなる意味を持っておるかということは明白だと思います。ただいま大平外務大臣が言われましたことは、単に二十五カ国としてあげておるのですけれども、私どもは単なる二十五カ国ではないと思う。その点はいかがでございますか。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、二十五カ国の一々国名を聞きただしておりませんけれども、NATO諸国、SEATO諸国は全部含まれておると承知いたしております。だからといって、それが集団安全機構のワク内にある友邦だから、その関連において援助を要請するのだという、そこまで立ち入って思いをめぐらされなくてもいいのじゃないか。これは事実上そんなに岡田さんがおっしゃるようにパーパスリーなものではないと私は思います。向こうからのお申し出をそのまますなおに受け取って検討しておるところでございます。
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そう言われますけれども、いまNATOとかSEATOの国がみな入っているのだということを言われた。何らアメリカと軍事的な提携関係のない国でアメリカから要請された国があるとしたらどこか。事務当局で御存じならばそれをあげていただきたい。
  61. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) まだ承知しておりません。
  62. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 二十五カ国に申し込まれたと言って、そういう国の数がわかっていて、まだ承知しておりませんという答えができるですか。その点ははっきりどこの国に申し込まれたということぐらいおわかりになっていていいのじゃないか。
  63. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 昨日の会談のときに、二十五カ国、そうしてその中でSEATO、NATOの国、両方合わせて二十一カ国になるのですが、申し入れたということがございました。あとの四カ国については特に聞きただしてありませんが、そういう状況であります。
  64. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あとの四カ国、そのうち日本一つであろうから、あとどこですか。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 取り調べまして御報告いたします。
  66. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういうふうに、アメリカと軍事提携を結んでいる国に申し入れたということは、それはいまあなた方からお答えをいただかなくても明白です。そうすれば、これが単なる人道的な援助、困っているから援助をしてやれということではないことぐらいはもう明らかじゃないですか。だから、森委員にしても羽生委員にしても反対の意向を表明された。私も、もちろんそういう観点からして、いまアメリカの要請でもってさような援助をすべきでない、かように考えます。それと同時に、これらの二十五カ国の中ですでに難色を示している国があるわけです。喜んで受諾をして応援の態度をきめた国は何カ国でございますか。
  67. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) きのう先方からの連絡では、いまのところはっきり原則的にオーケーを言ってきているのはフィリピン、まだ公電ではございませんが、新聞情報では、さっきの森委員のあれと私の了解とは違うかもしれませんが、ドイツのほうは、積極的に考えるという意向を表明してきております。その他のところは、まだ情報が来ておりません。
  68. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかく私は、今度の申し入れは、いまのベトナムの軍事的、政治的情勢に関連しているというふうに認められるし、先ほど、森委員の指摘されたのに対して大平外務大臣からのお答えもあったとおり、アメリカの何か一つの心理的効果をねらう問題もあったろうと思います。そうすると、われわれはこの問題に入っていくことは非常に危険だと思います。たとえそれが普通の意味では軍事的とは思われないような医療の援助であるにいたしましても、あるいは単なる技術名の派遣にいたしましても、それ自体としてはたとえ問題はなくても、アメリカが意図しているところから考えるというと、われわれは軽々に応ずべきでない、こういうふうに考えなければならないと思います。  それから第二に、日本はアジアにおいて特殊な事態にある、情勢にある、したがって、ヨーロッパ諸国とは違うのだということでありますが、それゆえにこそ、私どもはなおこの問題に慎重でなければならぬと思うのです。今度アメリカが南ベトナムで手をやいておることは、これも世界中で公知の事実です。そうして、これからも手をやきそうな形勢にあること、さらにそれがひどくなることは、これまたアメリカ自身も認めておるところです。そういたしますと、われわれがいまこの際アメリカの要請に応じてそういうようなものに加わっていくということは、これも明らかにわれわれ自身も火中のクリを拾うために人に頼まれて横からちょっかいを出すようなものでありまして、われわれとしてはこういうものははっきりお断わりになるという態度をもって臨んでいただきたいと思うわけであります。これは私の意見でありますから、別にお答えを求めませんけれども、しかし、もし政府が、それにもかかわらず、アメリカの要請に応ずるということになってまいりますれば、これは私どもとしては今後もなおさら追及しなければならぬ、こういうことになりますので、そこいらを十分にお考えをいただきたいと思うし、こういうような形で行なわれる南べトナムヘの援助なるものは、国民の間にも非常に疑惑を起こすということもお考えいただきたいと思うのです。  次に、これは南ベトナムの問題でなくて、若干日中関係の問題についてお伺いしたいのです。
  69. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっとその前に関連して。  南ベトナムの現存の段階になってアメリカがあらためて二十四カ国か二十五カ国に援助を特別に要請をし出したという背後の事情は、どういうふうに御判断になりますか。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはラスク長官がSEATO会議に出られて、それからベトナムを視察して帰られてからとられたアクションだと承知いたしております。SEATO会議でいろいろ論議があって、フランスを除くメンバー各国からアメリカの対ベトナム政策の支持を得た経緯から出発されたのではなかろうかと想像するのでございますが、アメリカの意図するところは那辺にあるのか、そのあたりは私どもで詳しいことはわかりません。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 現在の段階において特に世界二十四カ国に呼びかけたという背後には、非常に深刻な事態があると思うのです。だから、その点をもう少し徹底的に究明されて日本の態度をきめるということが必要なんじゃないか。それから、SEATOの会議で一応論議してそこできめればいいはずのものを、どうもSEATOの会議ではこの問題がうまくいかなかったのじゃないか。フランスはもちろん中立化を提唱しておりますし、それから西ドイツも、いまお話しでしたが、新聞電報によると、これを受諾したという報道と、いやフランスとの関係を考慮して拒否したという報道と両方ありますから、その真偽のほどをもう少し直接に確かめていただきたい。それから、どうも新聞情報その他によりますと、イギリスもあまり色よい積極的な態度を示していない。それらのことを考えると、アメリカの南ベトナムに対する軍事政策が完全に破綻をしてしまったということ以外の何ものでもないと思う。それで、アメリカの内部においても、フルブライトなんかでも、あらためて南ベトナムの政策は根本的に再検討しなければならない段階に来ている、こういうふうに言っていると思うのです。そういう時期でありますから、日本としても、ただ単に向こうから要請があったから何らかの形で寄与するような努力をしようという安易な考え方でなしに、むしろ根本的にこの問題を検討をする。そして私たちの希望は、軍事政策が完全に行き詰まったのだから——軍事政策は幾らやられても、一、二の独裁将軍が——南ベトナムでは独裁将軍がやっているだけで、南ベトナムの国民自体も何らこれに積極的に協力をしてない。ここに問題があると思うのです。そうだとすると、問題は軍事的な政策で解決されるべき問題ではなくて、政治的な政策によって問題を解決しなければならないという政策換転の時期に来ている。その政策をどう転換するかということは、アメリカだけでは問題が片づきませんから、やはりこの際は利害関係国が集まってあらためて根本的にこの問題を検討をする。同時に、いろいろ伝えられるところによれば、あるいは中共が、あるいはソ連が背後で支持をしている等々の問題も考えられておりますから、むしろこれらの諸国も加えた利害関係国の特別な協議、討議によってこの南ベトナムの問題を解決する方法を論議していく。そういう方向でアメリカ政策を転換をさせるために、むしろ日本がイニシアチブをとるべきだ。アジアに最も利害関係の深い、最も関心を強く持っているとおっしゃる日本であればこそ、そういうき然たる態度で、ほんとうにアジアの国らしい態度でイニシアチブをとられることがこの際絶対に必要なんじゃないか。こういうふうに考えますが、大臣はどうお考えですか。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカから要請を受けた国々の要請に対する反応という点については、御指摘のように、わが国としても十分調べてみる必要があると承知いたしております。それから、ベトナム政策についての転換契機を国際的な問題として取り上げるような糸口をつかんで日本としてもひとつ考えてみたらどうかという御提言でございますが、ただいまの段階は、この問題を国際的な問題として国際会議というような舞台において取り上げるというにはまだ時期が熟していないと思います。先ほど私が申し上げましたように、現在進行中の事態の中で、この帰趨によりましてそこに新たな政策の契機がつかみ得るのじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、われわれといたしましては、この事態が大きな動乱の禍根になることがないように十分注意をして対処しなければならぬ問題であると思います。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっといまの問題に関連して一問だけ。全く仮定の質問でありますが、もしかりにベトナム問題が悪い方向へ発展して、アメリカが安保条約を援用して日本に何らかの行動を求めてきたような場合には日本はどうするのですか。これは全く仮定の質問だから、仮定の答弁でもけっこうです。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう事態を予想いたしておりません。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 おらない。
  76. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、日中問題について若干お聞きいたします。というのは、松村さんがお帰りになってから、いわゆるLT貿易の問題についていろいろ総理にもあなたにもお話しになったと思いますが、相互に貿易関係の事務所、あれを開く問題について松村さんが向こうで調印もされてきたし、これを開くようにということを首相にも進言されておるんですが、外務省はなかなか渋っておるということでございますが、外務大臣としてはどういう方向でこれを処理されようとしておるのか、その点をまずお伺いしたい。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 松村ミッションが先方とお話し合いされたことは御報告を承りましたので、入国の問題でございますとか、入りました人の警備の問題でございますとか、政府としてタッチする局面も出てまいりますので、いま関係各省の間で御報告を聞きまして、どのように対処していったらいいかいま協議中のところでございまして、そういう関係各省の意見がそろったところで、私どものレベルで相談してみようと思っております。
  78. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 外務省の中には、中国側は政府貿易をやっているんだと、したがって、こっちは民間の事務所だといったところで、これは向こうのほうから見れば国家の出先機関になる、だからこれは認めがたいという意見、つまり国府側に対して遠慮というものがたいへんあるように聞いておるんですが、外務大臣もその意見をおとりになっておるんですかどうか。いまそういうふうに、あの事務所はそういう性質のものだというふうにお考えかどうか、その点をお聞きします。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ私のところまで上がってきておりませんので、意見を申し上げる段階ではないわけで、せっかく各省で打ち合わせ中でございます。しばらくお待ちになっていただきたいと思います。
  80. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 第二の点ですが、新聞記者の交換の問題も、これは八名という数ですでに両方で合意ができたようですが、この問題について、外務大臣のほうはこれを認められてそして入国を許すという方向に進めていくお考えですか。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一般的な問題として本委員会で私が御答弁申し上げましたように、客観的公正な報道が行なわれるということは、相互の理.解を進める上において有益だと考えております。具体的になりますと入国の問題になりますので、入国の問題につきましては、これは法務省が担当いたしておりますので、そういう具体的な問題について私が先ばしって申し上げないほうが穏当じゃないかと思います。
  82. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 手続の問題等はこれは法務省の管轄かもしれぬけれども、入れるか入れないかというような問題は、これは内閣の問題であり、特に外務大臣の所管に大きく関係する問題だと思うんで、したがって、私はあなたの御意見を聞いたわけなんですが、前の委員会では、大体相互理解を深めるために入れたほうがいいという御見解だったと思うのです。ひとつすみやかに外務大臣としては積極的にそういう方向をとっていただきたい、こう思うんですが、いかがですか。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 入国管理当局のほうでいろいろ吟味いたしまして、これがいろいろな事務上の手続があるんでございましょうから、 そういった点がクリアーされますとけっこうじゃないかと思っております。
  84. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 第三に、例のビニロン・プラントの問題ですけれども、これも国府側から横やりが入り、さらにアメリカのほうから、中国に対して延べ払いを認めることは中国を援助することになるからいかぬという意向も示されておる。そうして、大体認めそうだったのがたいへんもたついておるようでございます。ところが、ビニロン・プラントに関係のある会社の社長から、それは倉敷のビニロン・プラントのときと同じころから始まったので、あっちだけ許してこっちを許さないのはおかしいじゃないかというような抗議も出ております。さらにまた、外務省のほうで窮余の一策として考え出したのかどうか知りませんけれども、民間の融資でもって何とか延べ払いができるようにしようというような話も伝えられておりますが、けさの新聞に、たとえばイギリス系の銀行が、チャータード銀行と香港上海銀行だと思いますが、それが、何だったら金を貸してもいいじゃないかというようなことも出ております。この問題について私は政府がいつまでも態度を決しかねておるのではまことにおかしいと思う。それはやはりアメリカと国府のほうから牽制されていると思うんですが、こんな牽制は私どもはどうも当を得ない牽制であると思うので、したがって、もう外務大臣としてもここらではっきり態度をきめて早急にこの問題の解決に乗り出して、前に出しましたものと同じ条件でこれを許すつもりがあるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 少し岡田さんは誤解されておると思うのですが、現実に案件が政府に出てまいりまして、許可、不許可という段階になってきてからの問題なんでございまして、まだ案件が出てきていない段階で政府がもたもたしているというようなことは若干勘違いされているんじゃなかろうかと思うのでございます。ただ、あの考え方の問題として、延べ払い金融の方法につきまして政府機関を通ずるか通じないかというテクニカルな問題は前々からあったわけでございまして、そういった点については検討をするにやぶさかでございませんけれども、私どもがどっかの国から圧力を受けて、案件が出ておるのにその処理が渋滞しているという、そんなことは毛頭ないんでございますから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  86. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そう言われるけれども、台湾のほうでこれを取り上げて、そうしていろいろ外務省のほうへも抗議を申し込んできている。また、吉田さんが行かれたときにも、毛利さんが行かれたときにも、この問題が問題になったということはこれは事実なんです。そういう事実はないんですか。それはもう新聞でも伝えられているところで、私は明らかにあったと思う。そうすれば、なるほど許可手続というような手続上のことでもって案件として出ていないかもしれぬけれども、政策上の問題としてはもう前々からちゃんと出ていることなんです。それだからこそ、アメリカも延べ払い云々というようなことで、日本が中国に対して延べ払いで物を出しちゃいかぬの何のということを言うんです。だから案件としてすでにこれは国際政治上の、あるいは国際貿易の問題の一つの案件とし出ているので、それで私はお伺いしているのです。私は単なる技術的な、テクニックの問題として、その案件を許可するかしないかの書類上の問題として出ているか出ていないかということでお伺いしているのじゃないのです。そういう点から、いまその国府なりあるいはアメリカのほうから何も言われていない、そういう圧力はないのだと言うけれども、現にアメリカでもそのことを問題にしておるし、台湾政府でもそのことを問題にしているという事実はお認めになりますかどうか。
  87. 羽生三七

    羽生三七君 それと関連して一緒に答えてください。  吉田元総理が、いまの問題に関連して台湾に書簡を送ったというのですが、何か私たち外から見ておって、ほんとうは外務省がやるべきことを、ああいう大局的な理解を求めるとか求めないということは、事のよしあしは別として、わからぬわけではないのですが、ビニロン・プラントの延べ払い形式まで吉田元総理が台湾へ書簡を送るというようなことはどういうことなのか。それを外務省はいいとお考えになっているのか。一緒にひとつお答え願いたい。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 延べ払い輸出の問題と延べ払い金融の問題とこれはまた別なんでございまして、国民政府が、筋として延べ払い金融に政府機関がタッチしているということを快く思っていないことは岡田さん御指摘のとおりでございます。そういうことを、国民政府がそういう見解を持っているわけで、それをとめるわけにまいりません、外国がそういうふうに思っているというのでございますから、それで、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、具体的イッシューが出てまいりましたら、政府としてちゃんと処理してまいりたいと思っているわけでございます。そのときになってももたつくようでございましたら、また御批判を仰ぎたいと思います。  それから、吉田書簡の問題ですが、それは吉田さん個人の問題でございまして、私どもの関知するところではございません。
  89. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いま三つの問題を私は取り上げましたけれども、とにかく第一の貿易事務所の開設につきましても、少なくとも池田総理と十分に話し合いをされていって、そうして向こうと合意に達してきたのですから、松村さんのやりましたことに対して、政府としてもやはり十分に理解をしてすみやかに開設に踏み切られんことを望むし、それからまた、第二の点については、大平外務大臣賛成をされておるようでありますから、手続上の問題をすみやかに片づけて早くこの問題を処理されることを望む。また第三の問題については、手続上は出ておらぬけれども、政府の方針というものはもうきめてもいいと思うので、政府の方針がきまれば手続の問題もすぐ片づくのですから、だから政府としてはあちこち右顧左べんしないで、そうして、もうすでに前例はあるのですから、その前例に従ってやられたらいいと思うのです。ことにイギリス側が民間金融ならよろしいということでもってイギリスの金融を受けるというようなことじゃ、これはまことに日本としてお恥ずかしい次第で、幾ら大平外務大臣アメリカや台湾から責め立てられて苦しまぎれに民間金融で何とかこの問題を乗り切ろうとされても、イギリス系の銀行からの金融で乗り切られるというようなことは考えておられないと私は思うのですが、早く日本側で処理されることを望みたいわけであります。これをもって私の質問は終わります。
  90. 曾禰益

    ○曾祢益君 南ベトナムに対する援助についていろいろ御意見があったのですが、私も、アメリカからそういう問題があろうがなかろうが、日本としていやしくも軍事的な性格の援助をしないということは、あるいはしちゃいけないということは、これは明瞭だと思うのです。そういう意味で、時節柄アメリカからこういうことを言われたのは政府も国民もいささか迷惑だというところが現状じゃないかと思うのです。したがって、アメリカであろうがなかろうが、軍事的な性格にとらわれるような援助はしない。これは断わり方のテクニックは別として、これは既定方針だと思うのです。ただ問題は、しからばベトナムの事態をどう考えるか。これもいろいろ御意見がありましたが、私はどうも一方だけを責めているような感じがしてならない。やはり鐘が先か撞木が先か知りませんけれども、ジュネーブ会議で予想したよりも事態が悪くなった。やはりアメリカの軍事援助のステップ・アップと、それからベトコンのゲリラが強いということに、少なくともベトミンといいますか、北ベトナムあるいはさらに中共のバック・アップがあることは明瞭であります。そういう事態に対してわれわれは、少なくとも日本としては、友好政府である南ベトナムを、なし得る限りの、むろん軍事的でない、経済技術援助等をやって、その安定に資することは、私は当然だと思う。したがって、そういう基本方針をアメリカが言ってきたからといって、曲げる必要は毛頭ないと私は思う。それから、そういう事態に対して、われわれもむろんアメリカの中にも意見があるでしょうけれども、これは軍事方式だけではだめなのです。軍事方式だけではだめだということは、したがってアメリカの従来の行き方に批判を持っておることは事実です。それは、批判は批判としてどんどん言ったらいい。しかし、しからば南まで共産圏になって差しつかえないのかというと、私は、それでもいいじゃないか、戦争さえ終わればいいという考えと、少なくとも現在の世界の情勢が両陣営のバランスの上に立っておる現状からいえば、南ベトナムが完全に共産化され、ラオスはどうなる、その次にはタイはどうなるのだ等々を考えれば、日本が完全に南ベトナムの事態に無関心であっていいということにはならない。そうなってくると、やはりわれわれとしても、ただ軍事方式をやめて、いきなり政治方式で会議を開けばいいというふうに簡単にいかないのではないか。かりに中立方式といっても、確かに南ベトナムだけかりに中立した場合に、北からの圧力に対して完全に独立が守れるのかどうかということも、いわゆる中共なり北ベトナムの政治的進出等に対していかなるギャランティーがあるのか、このことも考えずに、いきなり南ベトナムの中立だけでいいのか。これはやはりフランスでも現状におけるSEATO会議でいろいろアメリカとの見解の違いがはっきりしました。前々からもそうでしょうけれども、現状における南ベトナムの軍事行動そのものに反対しているのではないらしい。将来の方法としては、軍事方式だけでやっちゃいけない。だれもが考えているように、北ベトナムに作戦を延長するなんというばかなことは、これは世界の袋だたきになることは事実です。そういうことを考えると、いきなり国際会議云々ということも現実には私は可能性が薄いのじゃないか。そういうふうに考えてくると、やはりわれわれこの事態に対して、政府がこういう東南アジアの問題、ベトナムの問題、ラオス問題等に対してきちんとした国策をきめて、アメリカが来たからそのときになって考えますというのじゃなくて、日本の方針はこうでござる、あまりよけいなことは言わぬほうがいいということも含めて、そういうやっぱりき然たる態度をつくってもらいたい。ただ、あそこを投げ出してもいい、戦争が終わればいいのだ、共産陣営がふえていけばいいのだという考え方には、われわれ賛成できない。そういう、後進国における共産陣営の進出に対しては、軍事方式一点ばりでなく、国連を通ずる経済援助、技術援助をステップ・アップするとか、清潔な、廉潔な民主的な政府を、ぜひともつくるというようなことを重点的にやろうというようなりっぱな政府の案を、態度というものを示すべきじゃないか、こう思うのです。お考えを伺いたい。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 南ベトナムの事態の解決は軍事力だけではだめだということは、先ほども申し上げましたように、当のアメリカ自体もそう言っておりまするし、南ベトナム政府自体が、民心の安定、民生の安定に施策の重点を置いておるところから見ましてもうかがえるところでございまして、何としても根本的には政治的解決がなければならぬと思います。それをどういうタイミングで、どういうきっかけで考えるかということがいまの時点における国際政治の課題になっておると思うのでございます。しかしながら、いま御指摘のように、ある事態に戦火がおさまれば能事終われりということで事態の収拾を考えるという投げやりな態度をとるべきでないことも、また御指摘のとおりだと思うのでございます。事態は南ベトナムだけに限局されておるわけでなくて、その周辺全体が相互に微妙な依存関係にありまするし、アジアの平和にとりまして、このハンドリングをあやまれば非常に重大な事態になるということも十分読み取っておかなければならぬと思うのでございまして、仰せのことは、私も全く同感に存ずるのであります。  そこで、わが国としてちゃんとした姿勢をもって臨めということでございますが、先ほども申しましたように、わが国はアジアに位する国として、また先進工業国としてユニークな立場を持っておると思うのでございます。この日本の独自の立場というものは、あらゆる場合に堅持して進まなければららぬと思うのでございます。今度のベトナム援助の要請があろうがなかろうが、そのことにかかわりなく、この立場は、先ほども繰り返し申し上げましたように、あくまで堅持して、そこにわれわれの施策の基調を置いてまいるつもりでございます。ただ、私が先ほどから歯切れの悪いことを申し上げておるわけでございますけれども、(笑声)これは現にあそこを軍事的にも経済的にもバック・アップしているアメリカの勢力というものを無視して、ただそれを非難し痛めつけるだけで問題の解決になるかのようなことでは、どうも解決が軌道に乗らないのではないかと思うからでございまして、現に苦心をいたしておりまする今日の事態の認識、評価、それからこれに対処する対策、これはだれよりも関係国としてはアメリカが一番苦心をしておるところだと思うわけでございます。その点につきましては、アメリカの見解についても非常な敬意を払って十分の友情を持っていかなければならぬと思うわけでございます。そのあたりがどうもちょっと若干お気に召さぬようであります。それだから今度の援助をそれにすぐひっつけて考えているわけじゃ決してございません。今度の援助は日本の立場において、援助の要請があるなしにかかわらず、どうあるべきかということを基調にして、十分精査の上日本としてきちんとした打ち出し方をしていきたいと考えておりますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  92. 曾禰益

    ○曾祢益君 一つだけ、別の問題ですけれども、きょうたまたま新聞を見ていて気がついたのですが、ワシントン・ポストの日本駐在員のスタンバーグ氏が、沖繩に対するアメリカのやり方について、かなり日本側の気分をよくわかってくれたような、批判的なといいますか、アメリカのですね、少なくとも軍政当局に対する意見がワシントン・ポストに書いてあったのを見ました。きょうもそれを見たらその続きに、同じワシントン・ポストで、アメリカの陸軍長官のスチーブン・エールズという人が、自己のペンタゴンの立場の援護みたいなことを書いているのですが、一々それをあげつらいしてみてもしようがないと思いますが、なかなかこれは、やはりいかに軍政当局の頭が悪いかということの標本みたいな感じがするのです。たとえば、沖繩に対するアメリカのいろいろな援助といいますか、その他の金を持ってきて、沖繩は現在においては一人当たり三百十四ドルの収入だ、これはアジアにおける最高のうちに入るのだというようなことから、けっこうずくめであって、最後には、むろん沖繩人が日本に復帰したいという気持ちのあることを認め、また、アメリカの最終的な政策そのものが沖繩の日本に返還になることを認めながらも、しかし自分の個人的な信念としては、アメリカの軍事施設を直ちに撤去するようなことが伴うような場合には、沖繩の県民の気持ちとしては、日本に復帰の気持ちは薄いのじゃないかということまで——よけいなことまで言ったものだと思うのですけれども、そういうことまで言っておるようなわけでありまして、こういうことに対する外務大臣のお考えと——実はそれに対する反駁だけじゃ済まないのであって、四月の二十七日だったかと思いますが、私のほうから政府に対しまして四点にわたる要求を出したわけです。これはちょうど二つの委員会ができますので、こういう委員会ができたからといって、やむを得ずかもしれませんが、日米委員会においては、沖繩の祖国復帰の問題あるいは沖繩の自治権拡大の問題等が結局落とした形になっておるが、その当否は別として、そういうものはもっとハイ・レベルにおいて続けて日米間で交渉をしてもらいたい。  それから第二には、日米委員会は、何だか日本側が向こうに援助するときだけ審査されて、一方交通のような感じがするのですが、アメリカ側の援助についても日本側意見を言い得るような、一方交通でない運営内容でいかなければいかぬのじゃないか。  第三は、やはり沖繩のまだ祖国に復帰せざることを記念する意味の沖繩デーというものを四月の二十八日に設定すべきじゃないか。これは外務省だけのあれじゃないかもしれませんが。  それから第四には、沖繩における潜在議席というものは、やはり国会においてつくっておくべきで、選挙はむろん帰ってこなければできませんけれども、少なくとも潜在議席というものをシンボルとして両院に置くべきだというわれわれの政府に対する要請を出したのですが、そういう観点も含めて、たまたまアメリカの陸軍長官の意見がございましたので、外務大臣の所信を伺わしていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 沖繩政策は四月二十八日の講和発効記念日を契機といたしまして、東京におきましても、現地におきましても、各種の行事が行なわれたことは曾祢さんも御承知のとおりでございまするし、衆参両院におきましても、緊急質問の形で追及がされたのでございまして、で、その際私も申し上げておけたのでございますが、私は沖繩政策の基本は、やはり日米の理解と協力の上に進めてまいるのが妥当でもあるし、一番近道である、そう心得ておるわけでございます。今日のアメリカの理解が十分であるとは申しません。が、しかしながら、一昨年のケネディ声明が行なわれて以来、いろいろの曲折はございましたけれども、政策の基本は前進いたしておりますし、自治権も徐々に拡大の方向をとっておるわけでございまするし、実態的に沖繩の経済、沖繩の方々の生活、そういった面にも実態的な前進が見られておるわけでございますので、この基本の基調をじみちに伸ばしていくということを進めてまいらなければならぬと思っておるわけでございます。しかしながら、御指摘のように、沖繩の方々の祖国復帰の悲願というものは、われわれ内地でぬくぬく暮らしておる者の想像を絶したものがあるということ、これは最近の四月二十八日に行なわれた行事の様相を見ましても、われわれの肺肝をつくものがあるわけでございます。したがって、この問題は、単なる協議委員会や技術委員会の協議のアジェンダとして取り上げるというのには、あまりに大きな問題ではないかと考えるわけでございます。御指摘のように、日米間の最高度の政治の問題として厳としてあるというわけでありまして、当初私どもは協議委員会の席で議論ができるようにいたしたいという気持ちを持って当たっておったわけでございますが、むしろ今日の段階ではそうしないほうがよかったと思っておるわけでございまして、これはそういうテクニカルな問題としてでなくて、ず太い政治の問題として当たる決意を持って対処しなければならぬと存じているわけでございます。  それから、今度設けられました二つの委員会、これはこれから運営してみて、そのメリットを評価していただかなければいけないわけでございますけれども、日本の沖繩政策というものが日米間の外交問題——最後は外交問題になるということで処理されておったのでございますが、そうでなくて、日常のこういうメカニズムとしても、外交ルートを通ぜずに処理できるというパイプをつくったことに意味があると思っているわけでございまして、もっと効率的に、能率的に、いままでもたもたしておった事案が処理できやしないか、そう思っているわけでございます。それから、これが日本側の援助対沖繩援助というものを対象にしてアメリカの沖繩施策の殿堂にまで入っていないじゃないかという御指摘でございますが、これは施政権が向こうにあります以上、どうしてもそこは踏み越えることができない限界でございますが、しかし、経済は一つでございますし、民生も一つでございまして、私どもはこのメカニズムを通しての接触を通じまして、沖繩経済を一つとして認識し、分析し、対処していくわけでございまするから、この討議を通じまして沖繩政策を全体として見るということが可能であると考えているわけでございます。  なお、日常の事案としていろいろ不愉快な事件、不幸な事件が起こりまして、そしてそれが非常に喧伝されてわれわれの心を痛めているわけでございます。これはまあ、普通行政にありがちの行政運営の問題がありまして、制度の問題以外に、十分きめこまかく配慮してまいらなければならぬ問題であろうと思うのでございまして、そういった点につきましても、十分気を配って当たってまいりたいと念願しているわけでございまして、この上とも御鞭撻をいただきまして、もう一段前進をいたしたいものだと考えています。
  94. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がありませんから、近くわが党の視察団が沖繩へ参りますから、帰りましてからまた御質問さしていただきます。
  95. 草葉隆圓

    理事草葉隆圓君) 本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十六分散会