○野坂参三君 時間もだいぶたちましたので、簡単に
一つの問題だけ聞いておきたいと思うのです。
いま
OECD加盟の問題は、
日本の
経済全体に対し、特に
日本経済の自主的な発展にとって深刻な、また長期にわたる
影響があると思うのです。それから、むろん工業、農業、それから労働者や農民、中小業者、こうした者の生活にも面接間接、深刻な
影響を与えるものだと思いますし、まあ、衆議院、参議院を通じてのいろいろの問答をお伺いしまして、問題はたくさんありますけれ
ども、私は
一つの問題、言いかえれば、
政府側の御発言が、先ほど曾祢君が申しましたように、安易な考え方に立っておられないかということ。まあ、池田総理の発言なんか見ますと、
OECD加盟によって万事がうまくいくのだと、こういうふうな印象をわれわれに与えておられるようです。それから、ここに提出されました
政府側の説明書などでも、国際的協調による繁栄をわれわれは求めるということ、これが中心目的のようになっておる。はたしてそうだろうか。
政府側では、いままでのような個別的な
各国との交渉ではなくて、集団的な
OECD加盟二十一カ国との集団的討議によって問題を論議し、ここから
日本の繁栄をはかる、こういうふうに言ってバラ色に描かれておると思うのです。これを私見たときにすぐ思い出したのは、四年前に池田内閣ができて、
高度成長政策、所得倍増
政策、あれを打ち出されたときに、非常に楽観的なバラ色で描かれて、また多くの国民もそれにだまされたと思うのです。ところが、四年たった今日見ますと、いろいろな破綻ができております。
政府自身でもアフター・ケアー病気を直すあとの始末をやる。こういうことを考えたときに、いま
OECDに対する考え方と、四年前のあの
高度成長政策、所得倍増
政策における考え方と同じような楽観的な、あるいは軽率なこういう考えから生まれていないかということを私たち非常に不安に感ずるし、また、いろいろな問答を通じて、具体的にやっぱりそうだと、同じような轍を踏むのじゃないかと、こういう印象を私たちは受けるのです。あの
高度成長政策の問題にしましても、また、今度の
OECDの問題にしましても、それ自体が問題であると同時に、客観的な条件、たとえば国際
経済情勢のこれの正しい認識のもとで、はたして
高度成長政策を打ち出されたか、あるいは
OECD加盟を決意されたかという点については、私たちとしては、
政府は非常にこの点において大きな誤りをおかしたのじゃないかというふうに考えておるのです。
つまり、今度のこの問題にしましても、池田総理やあるいは外相なんかの申されることを見ますと、
OECDのこの文書から出発されておりますけれ
ども、いま問題は文書ではなくて、文書はむろん問題ですけれ
ども、しかし、いまの
日本を取り巻く客観的条件、あるいは
日本の
経済力自体がどうであるかという
現実から問題を出発して加盟する、しないを決定すべきだと、これは私は
日本の将来をになうものとしては深刻にこの点は考えるべきじゃないか、こういう点を私たちはまず申し上げて、それでは、いまの
現実の問題を見たときに、この
OECDに
関連して三つの問題があるように思っているのです。
この第一は、
OECD内部の、矛盾あるいはたががどうなっているかという問題、これが
一つ。それから、この
OECDの
一つの主要な目的である低開発国に対する態度、これが
OECDあるいは加盟諸国に対する反発態度とこういう仮開発国の問題、それから第三が、ソ連、中国その他の社会主義国の最近における動き、こういうふうな問題からこの
OECD加盟の問題を判断すべきであって、われわれの考えでは、事態は、
OECDやあるいはEECができたあの当時よりは非常に大きな変化が来ている、あるいは根本的な変化が来ておるのじゃないか。したがって、
OECDの目的とか機能とか運営も、当然前とは違った状態になってきている。ここからわれわれは出発しなければならない。こういうふうに考えるのです。
まず第一の問題にしますと、御存じのように、
OECD内部では、いままでは以前のような、たとえばEEC等等と、あの時代より
アメリカの支配というものが非常に弱くなってきている。それから、加盟している
各国が独自な
政策を持ち、また独自な動きをとってきているということ、これの一番代表的なものは、先ほどの
質問にもありましたように、フランスの態度だと思います。フランスは、御存じのように、EECにイギリスが加盟すると、間接にはそのうしろにいる
アメリカの
影響を払いのけたいと、こういう態度をとってきております。それから、東南アジアの中立化といまの南ベトナム等との問題と
関連して、さらに中国の
承認をやってきている。それから、関税一括引き下げについても反対してきておる。これは
OECDに直接
関係はない問題もありますけれ
ども、このいわゆる西欧側における
経済的な団結とか、結束とかというものは昔のようではなくて、ここに大きな破綻が来ている。
OECD自身の一角がくずれつつあるのだ、こう言っていいのではないか。さらに政治面、軍事面を見ましても、フランスは独自の核兵器の開発をやろうとしているし、また、ポラリス潜水艦を拒否するとか、フランス以外に
OECDに加盟しているオランダも、やはりポラリスを拒否するという態度をとっている。私が申し上げたいのは、こういうふうにして
OECD自身の内部が、昔のような
アメリカの直接、間接の指導下において団結するということが、もう乱れてきている、瓦解しつつある。ことに、またイギリスの問題を見ましても、たとえば中国なんかに対しても、十年間の延べ払いをやっております。これは
OECDの一応の約束によれば、五年間であります。
日本はやはり五年間に縛られている。ところが、イギリスなどは、これは十年間、それから、たとえばココムにしましても、イギリスなどはココムを破っていろいろのことをやっている。中国に飛行機を
輸出したり、あるいはソビエトに石油のパイプを
輸出をしております。
アメリカは反対したけれ
ども、イギリスは独自の立場でこういうことをやっている。こういう例でもはっきりしているのは、
日本にも話し合いがあったそうですけれ
ども、
日本がこの取引を結局やめざるを得なかったのは、
アメリカの強要だといわれております。しかしながら、イギリスにおいては、こういうところに、拘束されずに独自の態度をとっているのです。また、西ドイツにしても、いまではココムの
範囲を越えていろいろのいわゆる社会主義国との
貿易の発展を考えているといわれております。こういうことを考えてみますと、
OECDの加盟国自体の間に矛盾が以前とは比べものにならないほど深刻になってきており、
日本だけがここではばかを見るのではないだろうか、こういう不安を私たちは非常に身をもって感ぜざるを得ないと思っております。これが第一の問題。
それから、第二の問題としましては、
OECDの重要な役割りでおるところの後進国へのいわゆる援助の問題です。この問題でも、
一つの例としましては、御存じのように、国連で最近
世界貿易開発会議が開かれました。で、そこではどういう事態が起こったかといえば、ここでも
OECD加盟国が、この会議を開く前に、内部の統一というものがとうとう実現することができないで、
日本の新聞でも四分五裂の状態だ。こういうふうなこともいわれております。あそこで、結局後進国に対するいわゆる大国の援助というものが、大国の利益のように、大国の望むように、
アメリカその他が望むような方向で京とめられたのではなくて、低開発国自身の反発、自分自身の新しい道を歩んでいこうとする——前のように帝国主義の援助や、帝国主義基盤のもとでやるのではなくて、低開発国自身が帝国主義国のただ単なる資源の供給国だ、こういう立場ではなくて、自主的な発展をやろう、こういう態度で出てきて、結局、
OECDにおける後進国援助の問題も、いわゆる大国の思うようにはいかなかった。こういう事態が起こっております。
それから、その次に第三には、いわゆる社会主義国の問題ですが、これについては多くは申しません。これはソビエト、中国その他の国々にしても、最近の情勢を見ますると、いろいろ問題もおりますけれ
ども、
経済的な発展は着々と進んでいると思います。しかも、こういう国がいわゆる東西
貿易、さらには低開発国に対する援助、こういうものがかつてない大きな勢いで進出していると思うのです。こういう私は三つの状態を新しい問題として考慮して、そこで
OECD加盟の問題が決定されなければならないと思います。したがって、私たちは、
政府の考え方は、結局これはこうした
現実の相当これは
日本にとってはマイナスの現象だと思います。これを深刻に考えて決定すべきであって、ただこういうものが出された、
アメリカから強要があった等々というのではなくて、自主的な立場で、こういう問題は決定すべきではないだろうか。いまの事態を見ますると、
OECDに加盟しながら、実は加盟諸国の間におけるいろいろの市場の争奪戦、
競争だけが私は激烈になるのではないか。協調の機関ではなくて、あるいは
競争の機関になるのかもしれません。ことに、私たちは
OECDに新規に加盟すると、
日本が新しく加盟すると、その結果として、
自由化に関する御存じの二つの規約、あれをおそらく
日本に対して強要してくることは、これは明らかだと思うのです。で、イギリスとかその他、つまり以前に、古くからEEC、
OECDに加盟しておる国と、おくれて加盟する国とでは、大きな差が出てきていると思うのです。イギリスなどは、もうすでに、先ほど申し上げましたように、
OECDやココムというものを飛び越えて先に進んでおる。
日本は、これからこの規約どおりに忠実にやらされねばならないと、こういう事態におちいっていると思うのです。こういうことを考えますと、私は、共産党としては、この
OECD加盟はやるべきではない、こういう立場をとっております。私はこうした三つの点をあげて、私たちの大きな疑問を外相に申し上げて、こうした問題についてのお考えが聞きたいと思います。