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1964-04-02 第46回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二日(木曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————   委員異動  三月二十六日   辞任      補欠選任    岩間 正男君  野坂 参三君  三月三十一日   辞任      補欠選任    二宮 文造君  柏原 ヤス君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            佐多 忠隆君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            森 元治郎君            曾祢  益君            野坂 参三君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君   政府委員    科学技術庁原子    力局長     島村 武久君    法務省入国管理    局次長     富田 正典君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    外務省国際連合    局長      齋藤 鎭男君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    原子力委員会委    員       兼重寛九郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○原子力の非軍事的利用に関する協力  のための日本国政府アメリカ合衆  国政府との間の協定を改正する議定  書の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○道路交通に関する条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出) ○自家用自動車の一時輸入に関する通  関条約締結について承認を求める  の件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ただいまから、外務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告申し上げます。去る三月二十六日付をもちまして、岩間正男委員辞任され、その補欠として野坂参委員が選任されました。また、三月三十一日付をもちまして、二宮文造委員辞任され、その補欠として柏原ヤス委員が選任されました。   —————————————
  3. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 本日は、原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより、質疑に入ります。政府側からは、外務省当局のほか、佐藤科学技術庁長官島村原子力局長兼重原子力委員会委員が出席されております。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 岡田宗司

    岡田宗司君 過日の委員会におきまして、私は兼重さんのほうに、原子力委員会において、アメリカ原子力潜水艦入港の問題について、その潜水艦からの第一次冷却水の排出の問題についての文書が出されたということを聞きましたので、それを要求しておきました。きょう配布されましたので、この点についてまず兼重さんにお伺いをして、次に、原子力委員会委員長佐藤長官にお伺いをしたいと思います。  そこで、まず兼重さんにお伺いしたいことは、この書類原子力委員会から国会提出されましたいきさつについてお伺いしたいと思います。
  5. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) お答え申し上げます。衆議院科学技術振興対策特別委員会岡議員から私どもに、かねて、こういうことに関係しました書類、私の記憶では、三種類ばかりの資料の御要求がございました。そのうち、提出をするように私ども考えましたのが、このたびお手元に届けましたものでございます。この前の当委員会におきまして、かねて当委員会でもそういう資料の御要求があったということを初めて伺ったのでございますが、それが外務省のほうに御要求があったために、私どものほうにそれが伝わらなかったことと思います。それで、これと同じものでよろしければ出せるわけでございますので、岡議員の御要求に対して出しましたそのままのものを、科学技術庁のほうから提出申し上げたわけでございます。
  6. 岡田宗司

    岡田宗司君 この文書について見ますと、アメリカ日本原子力潜水艦寄港を求めてまいります際の、その原子力潜水艦日本の港において排出する一次冷却水のその放射性物質濃度等についての許容基準と、それから、アメリカのほうの許容基準日本側許容基準との間に非常な食い違いがあるようでありますけれども、この点について、どうも私どもしろうとでよくわからないのでございますが、その基準食い違いについて具体的に御説明を願いたい。
  7. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) この資料にも書いておきましたのでございますが、ただいま私どもが入手できます資料といたしましては、いわゆるスキップジャック号で行なわれましたアメリカ両院合同委員会における公聴会記録でございます。これはたしか一九五九年のことだと思うのでございますが、その報告には非常に詳細に記録されております。それによりますと、米国側放射性廃棄物基準と申しますのは、それの投棄によりまして、環境内の放射性核種平均濃度が、米国標準局要覧第五十二号というのに掲げられましたそのときの最大許容濃度の十分の一以上増大しないようにするということを目標にいたしまして、投棄の手続をきめております。この米国標準局要覧の第五十二号に掲げました値といいますのは、そのころ国際的にこういう許容量として認められておりましたICRPの一九五三年の勧告に基づいておるものであります。ところが、わが国が昭和三十五年にきめましたいろいろな規制というのは、ICRPがその後一九五八年に出しました新しい勧告に準拠しておる、そういうのがおもな違いでございます。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもしろうとでよくわからないのでありますけれども、このICRPの一九五三年の勧告と、ICRPの一九五八年の勧告との間の許容量の比率が、これは具体的にいうとどの程度の開きになっておりますか。
  9. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) その違いは核種によりましていろいろございます。全般的に申しますと、あとのほうがいわゆるきびしいと申しますか、許容量が小さくなっておりますけれども、ものによってはかえって大きくなっておるものもございます。いま手元にありますその資料によりますと、これは先ほど申しましたスキップジャック号艦での公聴会のときの記録で、アメリカ原子力潜水艦から放出される冷却水の中に含まれておるというそういうものにつきまして、その当時一番問題になるといわれておりましたFe59というようなものは、あとのほうがむしろゆるくなっている。つまり五倍くらい甘くなっている、こういうわけでございます。ところが、ほかのものの中には、約五、六十分の一に——きびしさからいえば、五、六十倍もきびしくなったものもございまして、大体の印象あとのほうがきびしい、こういうふうにお考えになってけっこうだと思います。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本のほうは、そういうふうに一九五八年の勧告に準拠しておる、そういたしますというと、平均して非常にきびしい基準を持っておるわけであります。アメリカのほうの法律では、前のゆるいほうの基準をとっておるということでありますが、日本といたしましては、この放射性物質廃棄法律等についてきびしいのをとるということはこれは当然のことであるし、また、そういう方針でもっておやりになったことと思うのでありますけれども、もしアメリカ潜水艦日本入港する場合に、日本法律で定めた基準に従わない、アメリカ側基準をそのまま通そうということになりますというと、これは日本法律に従わないということになるのであります。そこで問題があるわけでありますけれども、この点は重大な問題なので、原子力委員長にお伺いしたいと思うのでありますが、もちろん回答を出されるのは外務大臣所管でございましょうが、しかし、この問題については、原子力委員会外務大臣から協議をされて、そしてそれについて外務大臣のほうに原子力委員会としての見解を述べ、それがもとになってアメリカ側回答されるやに聞いておるわけでありますが、原子力委員長といたしましては、このアメリカ潜水艦入港の際の冷却水の放出について、日本基準に従うかどうかということを確かめたかどうかお伺いしたいのであります。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま問題になっておりますように、国際機関勧告が二度出ておる、それで一九五三年と一九五八年、こういうことになっております。ただいままで私どもが入手し、入手することのできるアメリカ側基準というものは、一九五三年によってる。しかし、それはその当時のことでありまして、その後五八年の基準を採用はしてないだろうか、これが交渉の要点になっておる、私のほうが取り調べたい、そして、私のほうは、ただいまお話しのように、一九五八年の勧告によって基準をつくっておりますので、そのつくっておる基準が同一であるならば、たいした問題はないということで、その不明確な点を交渉しておる、こういう段階でございます。ただいまお話しのように、外国の軍艦に対してこの法律を適用するとかしないとかいうことは、なかなかむずかしいことでございます。私どもは、私どもの国の法律で定めた範囲内であるかどうか、そういう実情調査をする、そういう意味交渉しているわけです。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 このアメリカが一九五三年の基準に基づいてつくったのは法律でございますか、政府規則ですか。
  13. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) いま私どもが問題にしておりますのは、海軍できめました、日本で申しましたら省令のようなものでございましょうか、その中の取り扱い基準でございます。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本側のほうは法律でございますか。
  15. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 日本のほうは省令及び告示というようなものできめております。それはもちろん法律に根拠を置いてきめておるわけでございます。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、アメリカがこの五三年の基準を改めるという問題について何か回答がございましたか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまそれを明確に申し上げる段階に立ち至っておりませんし、ことに外交上のことでございますから、私のほうでそれを明らかにするわけにまいりません。これは外務省側交渉された結果に基づいて私どものほうが判断する、かような状況でございます。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはある種の仮定でございますけれども、もしアメリカ商船サバンナ号日本寄港するというようなことが起こりました際には、これは五八年の基準に基づく日本の定めによることになりますか。
  19. 島村武久

    政府委員島村武久君) もちろん日本国内法によりまして安全審査をいたします。向こうから必要な資料を全部出させまして、それに基づきまして安全性審査を行ないました上で入港をいたさせることになります。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 その商船の点はよくわかりましたが、もしアメリカ原子力潜水艦入港に際しまして、この点について、日本の定めた基準に従わない、アメリカ側の定めた基準に従うということになりますというと、たとえそれがアメリカ側がどう考えましょうと、日本側にとりましては非常な重大な問題だと思うのであります。というのは、これはやはり日本の定めた基準、それは日本の安全を守るために定められたもんだと思うのでありますが、それに非常な例外を認めることになる。それも一ぺんだけでなくて、原子力潜水艦がこれからしばしば入港するということが許されるようになりますというと、常に、日本の定めました省令なり何なりというものは破られるということになってくるわけであります。これは私は許されないことであると思うので、この点については、私どもとしては断じて、アメリカ側がたとえ横須賀なりあるいは佐世保なりに原子力潜水艦を入れる権利を持っておるといたしましても、この一点からでも私ども入港をいまのままではさせるべきではない、こういうふうに思うのですが、原子力委員長のその点のお考えはどうでございましょうか。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申し上げておりますように、私ども納得のいく方法でないと、これは軍艦であろうが、簡単に入港させるわけにはまいらないと思います。したがいまして、ただいまの折衝、それに全部をかけていると、こういう状況でございます。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ側日本佐世保及び横須賀原子力潜水艦入港を求めてまいりましたのは、昨年のたしか一月だと記憶しております。したがって、すでに一年三カ月を経ておるのでありますが、その間においてアメリカ側から何らこの点についての満足な回答がない。折衝内容を明らかにされないようでございますけれども、私はアメリカ側がにわかにアメリカ海軍自身のきめた省令を変えるとは考えられないのであります。そこで、まあこの問題についての決着は、なかなかつきにくいものと私は想像しておるのでありますが、こういうようなことからして、時間がたつにつれて、アメリカ側のほうの日本の港に原子力潜水艦を入れるということについての態度に何か変化が起こっておるのじゃないかと思うのでありますが、その点について、原子力委員長のほうでは御承知でありましょうか。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あまりその間の事情はつまびらかにしておりません。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば、昨年はアメリカ日本に申し入れ、そしてかなり強くその要望をしていたようでございますが、たとえばその後アメリカ側でそう急がなくてよろしい、あるいは日本に入れる必要がそうないのじゃないか、そうないというふうに考え方が変わってきたといたしましたならば、日本側としてもこの問題について、そう積極的に入れるというお考えは持つ必要もないことだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりだと思います。積極的に進める筋のものでもないと思います。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 実は、私どもアメリカ側日本原子力潜水艦を入れることについての熱意が変わってきたと、こう断定し得るのですが、それは選挙中のことなんです。アメリカ太平洋艦隊司令長官シャープ氏いまは太平洋統合司令官ですかになっておりますが、この人が十一月十七日に横須賀へ視察に来られた。そのときに記者会見をいたしまして、アメリカ原子力潜水艦入港問題についての見解を発表しておる。で、これは横須賀で行なわれたのと、たしか日本人の記者が入っておらなかったと思うので、したがって、日本新聞には出なかった。その当時のシャープ太平洋司令長官は、実は日本の港に入れることはそうたいして必要じゃないのだということをはっきり記者会見で言明しておるのであります。これは、私ここにそのことばを持っておるのでありますが、これはいまここで申し上げてもいいし、申し上げなくてもいいのでありますけれども、十分に御検討になっていただきたいと思うのであります。外務大臣にもかつてこのことを申し上げたんだけれども、これはひとつそのことばが相当詳しく載っております。これはアメリカのUPIの記者によって伝えられたものであって、その見出しにも、N−サブマリン・ヴィズィット・ヒヤ・ナット・アブソリュートリー・ヴァイタル、こういう見出しがついております。そうしてその中にはこういうことが書いてあります。とにかくわれわれはこのウェッポン・システム、つまり原子力潜水艦のシステムのフレキシビリティーを非常に誇っておる、そうして六十日間も表面に出ないで潜航できるような船を持っておるときには、日本のかれこれの港に寄るということはインポータントなことではない、こういうことをはっきり言っておるのです。そういたしますと、とにかくシャープ司令長官記者会見でこういうことを公表しておるということになりますと、これはアメリカ側日本に寄る必要ないのだ。そうすると、いままで政府の御答弁では、総理大臣もあるいは外務大臣も、いずれも安保条約に基づいてアメリカ要求すればこれを許さざるを得ないのだというお答えでもあり、また、かなり積極的な態度をお持ちになっておるようでございます。ところが、原子力潜水艦の配置されております第七艦隊といいますか、とにかく太平洋艦隊司令長官が、しかも現地の横須賀でそう言っているのですから、もうこれから総理大臣も、外務大臣も、あなたも、あまり国会で力んで一生懸命にアメリカ原子力潜水艦を入れるという積極的態度をおとりになる必要はなくなったと思うのですが、もしこのシャープ司令長官の言が、これは私はうそじゃないと思うのですけれども、真実であるとお考えになりましたならば、先ほどのあなたの御答弁のように、そう積極的にお進めにならない、こう解してよろしゅうございますか。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお読み上げになりました新聞の記事、その談話がどういうことを意味するのか、これはもう純然たる政治上の問題だろうと思います。私は科学技術庁長官といたしまして、科学技術のその立場から安全性は十分確認したい、かように思っております。向こうでその必要がないと言えば、これは非常にしあわせなことだと思いますし、私のほうはそういうことにはあまりこだわりなく、科学技術的に、その立場から納得のいくかいかないかということを検討する、こういう立場でお話をいたしております。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 おそらくアメリカ側としては、太平洋艦隊司令長官がこういう言明をしているとすれば、つまり五十三年のアメリカ側基準を改めてまで日本入港を求めない、日本側省令なり何なりに従うというつもりはないということで、積極的な回答もしてこないのじゃないか、私はそう想像しているのでありますが、最近向こう側からこれに対してそういう回答がありましたのはいつごろでございましたか。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただ、結論がちょっと違うように思うのですが、国際安全委員会、その中では、アメリカも有力なメンバーである、そういうふうに考えますと、五三年のときの勧告にも、アメリカはもちろん利害関係を持つというので発言をしているでしょうし、その後変わりました五八年にもそういう立場でこれに加入している、そういうことでございますので、その規定そのもの、あるいは規則そのものはなかなか明確にできない面があろうかと思いますが、この勧告と全然無関係に五三年だけの勧告アメリカが守っておる、これはちょっと私想像しかねるのです。そこで、いろいろアメリカ側折衝をする、それが五三年の基準だけによっておるか、五八年のものもそこらに加味されておるのではないだろうか、こういう意味で確かめておるのでございまして、どうもそこのところが、私ども折衝をしているその気持ちがちょっとわからないように思いますが、それはどこまでもこの国際安全機関メンバーであるアメリカ、こういう立場で古い勧告だけを守っているとは思えない。だから、その後何らかの措置をとっているだろう、しかしながら、そういうものがこれこれの内容だとはっきり言い得ないというのがいまの実情じゃないだろうかというので、いろいろ折衝をしているのが実情でございます。で、したがいまして、私は先ほど申しますように、相手は軍艦である。したがって、日本の国法そのままは適用できないであろうが、同じ基準に基づいておるものであって、その内容がもう少し明確になるならば、それによって、私ども納得がいくものであるか、あるいは納得がいかないか、そういう結論を出し得るのではないか。そういうところでいろいろ交渉をさしている、その交渉の衝に当たっているのは外務省でございますので、その報告は私のほうでできません、こういうことを実は申し上げておるのでございます。御了承願いたいと思います。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 今度兼垂さんにちょっとお伺いしたいのですが、この問題についての御意見を発表されるまでに、デンマークの場合のことをおそらく考慮され、あるいは調べられておったかと思います。一九五九年でございましたか、アメリカデンマーク政府に対しまして、原子力潜水艦、これはもちろん。ポラリス潜水艦ではございません。普通の原子力潜水艦ですが、それの入港を求めた際に、デンマーク政府原子力委員会意見を入れまして、アメリカ原子力潜水艦入港を拒否して今日までその関係が続いております。その際に、デンマークはどういう基準でこれを拒否されたのか。たとえば、アメリカはいま言ったように一九五三年の基準に基づいている、ところが、デンマークはすでに五八年の基準に基づいておるので拒否をされた、こういうことだろうか。その点について、原子力委員会でもしお調べになっておったとしたならば、お教え願いたい。
  31. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) デンマークコペンハーゲンへの寄港を承諾しなかったという事実のあることは、同様に存じております。しかし、そのときの理由が何であったかということは、私どもの手で調べられる範囲ではわかっておりません。よく言われておりますことは、デンマーク原子力委員会が、コペンハーゲンの港が非常に狭い、あるいはふくそうしておるために入港が適当でないと言ったというようなことも伝わっておりますけれども、この放射性廃棄物のゆえであったかどうかというようなことは、わかっておりません。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、まあ原子力潜水艦入港問題というのはいろいろかように問題になり、かつ、デンマークのようなNATOに所属している国でさえ拒否しておるということでございますから、相当重要な先例になるのでございます。やはり原子力委員会としては、その点についてできるだけ調査をしていただきたいと希望いたしますが、ただいま兼重さんが指摘されました、コペンハーゲンの港が非常に狭いのでということは、これは私も向こうに参りましたときに得ました情報でもあるし、また、そういう印象も受けたわけでございます。しかし、ちょうど私が去年の十月でございますか。十月の初めにコペンハーゲンに参りましたが、確か佐藤大臣もそのころコペンハーゲンを訪れられたと思うんですが、あのコペンハーゲンの港が狭いといたしますならば、東京港に入りまして横須賀に入るというところも非常に狭いし、船のふくそうも同じような状況なんです。したがいまして、そういう観点からもひとつこれは原子力委員会、単に放射性物質廃棄だけでなくて、一体船の航行の安全とその原子力潜水艦のようなものとの関係ということも、ひとつ原子力委員会で十分に御調査を願いたい、こう思うんです。その点について、いずれ原子力委員会のほうで調査されました結果、こういう狭い港、そしてこういう人口の密集しておるところは危険だという御判定が出ましたならば、これはやはり断わる理由にもなろうかと思う。特に港が狭い、人口が非常に稠密しているところでは危険だということは、アメリカの水爆の父であるテラー博士でさえアメリカの下院の委員会で証言しているところでございますから、ひとつそれらの点についても原子力委員会としてはやはり十分にお調べを願いたい、こう思うわけです。この問題につきましては、これは所管は本来外務大臣のほうでございますから、この点でとどめておきますが、私は最後に申し上げるけれども、こういうふうに基準も違い、しかも相当不安を与える問題については、たとえ日米安保条約がありましょうとも、そういう点については日本側基準を守ることを要求——軍艦につきましては、まあそれについて甘いということでは日本の国民に納得を与え得ないものでございまするが、十分に原子力委員長といたしましてもその点の御配慮を願いたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 私は、非常に重大なところへ来た、すなわち、日米間に話し合いがつきそうになってきたという感じが深い。その前にこまかいことを聞きますが、ただいまいただいたこの文章の一番下から三行目、「その後米側の排出の仕方が新勧告の線にそって改められ、」の「その後」というのはいつですかということ、具体的な日取り。それから、改めたのは、いわゆる艦船局の訓令——いま兼重さんがおっしゃった省令ということと同じかと思うのですが、この艦船局の訓令によって直した。それから、「排出の仕方が」というのは、そこらの町のだんな方がつかうことばですが、科学者の表現としてはもう少しわかりやすく、「仕方」というような、これの御説明を願いたいことと、「新勧告の線にそって改められ」たというのは、古い五三年を全部捨てて、そうして五八年の勧告案にアメリカが全面的に同調したのか、一部は古いもので一部は新しいものか、こういう点をまず伺いたい。
  34. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) ただいまの御質問の「その後」と申しますのは、私どもが現在までに入手し得る資料というのが一九五九年のスキップジャック号の艦上での公聴会資料でございますから、それから以後という意味でございます。  それから、先ほど省令に当たると申しましたのは、いまおっしゃいましたように、米国海軍の艦船局の訓令と訳されているそれでございますが、そのものが改められたかどうかというようなことまで聞くことは、場合によっては不可能かとも思いますけれども、とにかく、日本側の定める基準範囲内にできるかどうかということを確かめたいということで、いま外務省を通じて折衝してもらっているわけでございます。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 その他のこまかい前提として、大臣に聞く前に前提をはっきりしなければならぬが、アメリカでは、いま外務省発表の潜水艦に対する外務大臣の談話を見ても、艦船局訓令ではという文字を引用しているのですね、いわゆる準拠する法律的基礎といいますか、ところが、これが聞けるか聞けないかというのは、兼重さんおかしいのじゃないですか、これはちゃんと向こうで、あなた方政府は引用してしゃべっているのに、この問題をはっきり聞くことは当然じゃないかと思う。これはちっとも政治的ではないと思うのですが、どうですか。
  36. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 私ども得ておりますのは、スキップジャック号アメリカ両院合同委員会公聴会記録でございますから、公表された資料でございます。で、その艦船局の訓令というのが公表資料であれば、もちろんそれは知らせてくれると思います。私どもはもちろん聞ければ聞きますけれども、それが訓令がどうであるかということが聞けなければわからぬというような意味までいっていないということを申し上げたわけであります。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 そんなあやふやな、向こうの準拠するものは質問はできないのだというのは、ちょっと納得できないのだがね、どうです。大臣しっかりしなければ駄目ですよ、交渉にならぬ、何を基礎にして話し合いしているのか。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、当方のきめたものがありますが……。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 当方は告示……。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その告示の範囲であるかどうかということを、一応確かめることが先なんであります。それで向こう側のほうでどういうふうにきめたか、向こうのきめ方があまり問題じゃなくて、こちらのほうの基準にそれが合致するかどうかということが問題だ、こういう意味のことをただいまお答えしたのだと思います。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 この点はどうも、やはり話し合うときは、お互いに政府機関を通じてしゃべっているので、私が向こうへ行ってよた飛ばしているのとは違うのだから、これはやはり正式な法律的な裏づけがあって、その上で話をしなければ話が進まないと思うのですよ。この点、私は時間もないですから納得しないままにおきますが、これはやはりはっきりしなくちゃいかぬと思うのです。艦船局の訓令になっておるのかどうか。そうしなければ、何ぼ質問したって、向こう法律に準拠しなければ、答えは千も万も幾らも出てくると思うのです。それが一つ。  それからもう一つは、岡田さんの質問に対して大臣は、積極的じゃないようなことを言っているが、だんだん私は接近してきたと思う。この文章でもそういうものがくみ取れるのです。日本側の定める基準の範山内でできるかどうかの点について折衝している。やさしいことばで言うと、われわれは低い、きびしい基準向こうは甘い基準だ。上限下限といいますか、しかし、ものは同じなんだ。写真をとるときは、佐藤さんを写すときには、佐藤さんは被写体というのですね——写される客体、そうすると、こうやってみてレンズは合っていない、ピントが、すうっと佐藤さん見えるのだが、よくやってみれば同じじゃないか、こういうことを、あなた方が科学的にインチキをやりはせんかという心配を私はしているわけです。(笑声)どうもそうなってきたね。そんな感じを兼重さん受けるのですよ。絶対に基準が合わないのだというので、われわれが思っているうちに、近ごろは範囲内にできるかどうかというふうにおりてくる。向こう法律的な裏づけがないけれども向こうも新しい五八年基準におりてきた。どうもあまり差がない。こういうことで私はオーケーする空気になってきたと判断するのです。私は間違いないと思う。大臣、どうですか。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも科学技術庁がインチキをするのじゃないか、こういうことで信用されないことは、まことに私は遺憾に思いますが、私どもは、先ほど来岡田さんにもお答えいたしましたように、科学技術立場でこの安全を十分審査いたします。したがって、私のほうで安全だ、こういう折り紙をつけないことには外務省も進むわけではございません。だから、その点は明確にいたしておきます。また、これは私ども信用されないことをまことに残念に思いますが、ほんとうに真剣にその衝に当たっておる者は、そういう意味の安全を確認したい、こういうことであらゆる努力をしておる。これをひとつ御了承いただきたいと思います。
  43. 森元治郎

    森元治郎君 私はインチキと申し上げたのは、これはあくまで大臣のおっしゃるように、科学技術的な見解から論議を進めていくべき問題であるのを、政治的な配慮をそこに加えてはいけない、加えそうだ——というのは、非常に差があったはずなんです、いままでの政府答弁では。ところが、最近になっては、差がだんだんと縮まってきているんですね。兼重さんどうですか。科学者としてそういう印象——論議の焦点がずっとしぼられてきて、よく見れば数字は違うけれども、実体は同じだというような、私は頭が悪いからその程度しかわかないけれども、そんなような解釈のしかた、法制局長官が、政府が何を間違ってもこれに理屈をつけるように、そういうふうな感じを受けるのです。非常に似ているんですよ、交渉内容調べたら。これは国民の不安を代表していると思うのです。どうです、この点は。
  44. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 私ども申しておりますのは、数字はどうでもいいということではございませんで、やはり問題は数字であると考えるわけでございます。先ほども申しましたように、五三年のICRP勧告と五八年の新勧告といわれているもののおもな違いは数字でございます。その違いを問題にしているというのは、数字を問題にしているということであります。ただ、ぼんやり見え方が似ている、そういうことではございません。
  45. 森元治郎

    森元治郎君 その違いというのは、以前よりはだいぶお互い——お互いといいますか、アメリカ側立場内容は了解が進んできて、差が縮まってきたような感じを私は受けるのですが、どうですか。
  46. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 焦点がしぼられてきたという意味では、はっきりしてきたという印象をお受けになるのはごもっともと思います。しかし、それだけに問題ははっきりしただけで、縮まったわけでも何でもないと思います。
  47. 森元治郎

    森元治郎君 それでは大臣に、この点はわがほうの基準範囲内にできるものかどうかという点ですが、見通しとして、科学的立場から話し合いがつきそうにお考えになりますか。非常にむずかしい並行線だ、そんなふうにお考えになりますか。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) むずかしい並行線ともまだ思いませんが、ただいまのところ折衝中でございますので、まだ明確になっておらない。したがって、見通しをいまつけることは私はできない。ただいまのお話のように、だんだん近づいているじゃないかという見方もありますし、また、こちらのほうで数字を持って話をしておりますので、それは並行線じゃないか、こういう見方もありますが、ただいまのところ、まだ見通しを申し上げるという段階ではございません。
  49. 森元治郎

    森元治郎君 いま私らの質問しているのは、排出される放射能の許容濃度の問題について日米折衝をやっているわけです。一体、いままでやっているのは何と何ですか、大きく分けて。残る問題。
  50. 島村武久

    政府委員島村武久君) 私どものほうは、原子力潜水艦安全性全般につきまして外務省の御相談に応じているわけでございます。どういうことを外務省からアメリカに聞いていただくことにしたか、また、それに対してどういうような返事が、いつどういうふうにしてもたらされたかというようなことは、実は私どものほうでは申しかねることであります。外務省に伺っていますところによりますと、その後ずっと交渉を継続しておられるように伺っておりますけれども、その中で外務省とされましては、私どものほうに参考になるようなことの御連絡をいただいているだけでございます。したがいまして、どの点とどの点を聞いているのかというようなことにつきましては、私のほうから申しかねるわけでございます。
  51. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、いま放射能関係の問題は、潜水艦冷却水の問題と、もう一つはイオン交換樹脂の海洋投棄という、この二つが焦点ですね。それはお認めになりますね。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ええ。
  53. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、このイオン交換樹脂の海洋投棄という問題は、これは問題ない。アメリカの言うとおりでこれは承諾して、残る問題が、いまやっている潜水艦のオーバーフローする放射能許容濃度を話しているのですか。これは片づいたのですか。
  54. 島村武久

    政府委員島村武久君) ただいま御指摘のございましたように、イオン交換樹脂の海中投棄の問題も、原子力委員会で非常に関心を持っておられるところでございますけれども、この点についてはもう片づいて、第一次冷却水の問題だけが残っている、そういうようなものではございません。原子力委員会といたしましては、すべての点についてまだ何らの決定的な意見というものを——部分的に一つずつ片づけていくというようなことをいたしております。全般にわたりまして考えておられるという段階でございます。
  55. 森元治郎

    森元治郎君 全然白紙ですか。大臣、このイオン交換樹脂のほうはこれで大体……。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは全然白紙ではございません。いま申し上げましたように、あれやこれやといろいろのものを考えて、外務省にもお知らせしているわけでございます。
  57. 森元治郎

    森元治郎君 ここで問題になるのは、いわゆる向こう側から見て沿岸から十二マイル以内ではいかぬとか、十二マイルの外とか、領海とか、あるいはすでにわかっている漁区外でなければ海洋投棄してはならない、そういうような、すでにわかっている漁区というのは、一体日本はどういうふうに向こう折衝しておるのか。日本は沿岸全部が漁区になるのだろうと私たちは考えますが、こういう問題はまだそこまで入っていないのですか。
  58. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこまで入っていないと見たほうがいいように思います。
  59. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、現在のところは潜水艦冷却水の問題、これは基準のとり方の問題が一番の難関だと、こういうふうに了解していいのですか。全部難関だけれども、その中でも一番……。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま一番皆さん方が問題にしていらっしゃるのがその濃度の問題だと、かように思いますし、また、私どもも、それが人体に影響を及ぼすかいなかと、そういう意味立場において、科学的にこれは問題があり得ると、かように考えていろいろ折衝しております。
  61. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ほかに御発言がございませんければ、本件に関する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これから討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  63. 野坂參三

    野坂参三君 私は、簡単に私たちの立場を申し上げてこの議案に反対します。  第一点は、本改正議定書は、現協定第五条A項のただし書きの数量的制限を撤廃するものでありまして、その結果、ウランやプルトニウム等の量の増大をもたらすことは明らかであります。また、そのための措置でもあります。しかも、アメリカから現協定に基づいて提供される原料物質、特殊核物質については、現協定第九条によって、アメリカの査察があり、また、その研究に対するアメリカの介入が許されております。したがって、本改定議定書によって原子力研究がますますアメリカの下請化され、日本の自主的運営と科学者の研究の自由が一そう制限されることにならざるを得ません。現実にそうなっております。それが原子力平和利用の管理機構の不備と相まって、原子力基本法第二条の原子力平和利用の三原則、すなわち、民主、自主、公開、この三原則を破壊し、原子力軍事利用への道を開くことになると考えます。これが第一の反対理由であります。  第二には、注目しなければならないことは、使用済み核燃料の問題であります。使用済み燃料は、現在アメリカに引き取られていますが、アメリカの国内でもその安全性の保証がないので、輸送船舶の乗り組み員がなく、また、港湾及び貯蔵場の設置に対する反対運動も高まっております。動力炉、発電施設の導入とあわせて、日本では使用済み核燃料の大規模な再処理工場設置を行なおうとしております。使用済み核燃料の再処理によってつくられるプルトニウムが、原子爆弾の原料となるものであることは、周知の事実であります。すでに三井物産の水上達三氏は、こう言っておられます。「原子力発電のコストを下げるため使用済み核燃料を使って日本でも原子爆弾をつくってもいいではないか」、こう言っております。しかも、政府は核武装は違憲ではないと言い、防衛庁では現に第三次防衛計画の作成作業の中で、核・非核両用兵器の採用を検討しております。こうしたことを考えれば、本協定改定は、日本の核武装化に通ずるものであると考えざるを得ません。したがって、わが党は、この現協定の改定に反対することはもちろん、協定そのものをもわれわれは破棄することを要求し、この意味から私たちはこれに反対するものであります。
  64. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) ほかに御意見もございませんようですが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  本件全部を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  66. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 多数と認めます。よって、本件は、多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  68. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 次に、去る三月三十日に当委員会に付託されました、道路交通に関する条約締結について承認を求めるの件、及び自家用自動車の一時輸入に関する通関条約締結について承認を求めるの件の二件を一括して議題といたします。いずれも本院先議でございます。本日は、提案理由説明を聴取いたします。大平外務大臣
  69. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま議題となりました、道路交通に関する条約締結について承認を求めるの件及び自家用自動車の一時輸入に関する通関条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案の理由を一括して御説明いたします。  道路交通に関する条約は、一九四九年八月二十三日から九月十九日までジュネーブで開催された、道路輸送及び自動車輸送に関する国際連合会議において作成された条約でありまして、その前文に述べられておりますように、国際道路交通の発達及び安全を促進するために統一規則を定めたものであります。すなわち、この条約は、自家用自動車の一瞬輸入について与えられることがある通関上の便宜について規定するとともに、これらの自動車については新規の登録を免除し、運転者については国際運転免許証の効力を認め、同時に国際交通の安全を確保する見地から締約国の道路交通規則を一定の基準に合致させることをその内容とするものであります。  また、自家用自動車の一時輸入に関する通関条約は、道路交通に関する条約を補完する目的をもって、一九五四年五月十一日からニューヨークで開催された、自家用自動車の一時輸入及び観光旅行のための通関手続に関する国際連合会議において、わが国がすでに抵准した、観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約及びその追加議定書とともに作成されたものであります。この条約は、この条約に基づく一時輸入書類と称する税関用の書類の使用により所定の条件を備えた一時旅行者が持ち込む自家用自動車について再輸出を条件として免税一時輸入を認めること、そのための手続を国際的に統一することを内容としております。  この二つの条約の参加国は、道路交通条約については、七十カ国、一時通関条約については、四十七カ国を数えておりまして、わが国も、一時通関条約につきましては、一九五四年十二月二日に署名を行なっております。  わが国がこれら二条約に参加いたしますと、わが国から他の締約国へ旅行する者のみならず、わが国を訪問する外国人旅行者も自家用自動車の通関手続の簡易化及び新規登録の免除、国際運転免許証の使用等これら二つの条約に基づく便宜を与えられることになる次第であります。このことは、国際間における人的交流を促進するという面において国際協力及び国際親善の増進に資するのはもちろんのことでありますが、さらに、オリンピックの本邦開催を控えている現在、わが国の観光政策の振興にも寄与するところが大きいものと思われます。  よって、ここにこれら二つの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  70. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 以上で両件の説明を終了いたしました。   —————————————
  71. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  本日は、当面の国際情勢について質疑を行ないます。  大臣の出席は十二時まででございますから、その点をお含みの上、質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  72. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、この間本会議で御答弁をいただいたのだが、はっきりしないからもう一回、大きな問題ですから……。たった一問しか聞きませんから、詳しくひとつ御答弁をいただきたい。  例の三十八度線の問題ですがね。北緯三十八度線以北に一つのオーソリティーがあるというようなことは、かねがねおっしゃっておった。ところが、よく見ると、なるほど北緯三十八度線はあるけれども、政治的なあるいは領土の区別、国境線というような感じの三十八度線というようなものは考えられないと思うのです。この間申し上げたのは、三十八度線というのはおかしいではないか、すでにこれはなくなっているのだ。終戦のときに、アメリカ軍は朝鮮における日本軍の降伏を受け取るために、接収するためにそれに向かった。三十八度線以北はソ連軍が日本軍の降伏を受理しよう、受理するということで、両方が進駐したのですね。接収を受けたときに三十八度線はありましたけれども、後に米ソは撤退してしまった。撤退後朝鮮動乱が起きて、押しつ押されつしつつ、休戦のために線がきまった。その間に非武装地帯ができて、韓国——ROKの軍隊がそこのふちまで行っておるし、北鮮の軍隊もその線の北側に駐とん——ステーションしているわけですね。ですから、現に支配する地域という場合の地域というのは、北限、北側ですね。地理上の北側は三十八度線云々というのはおかしいのではないか。三十八度線がいいというならば、その右端、東北のほうですね、そこはだいぶ三十九度ぐらいまで行っておるのです。ですから、私が伺いたいのは、三十八度線というものはなくなったと思うのだが、現に支配する地域の北限はどういうところか、休戦協定ラインが北限なのか、あるいはその他の大平さんが考え出した線があるのか、そういうことを伺いたい。
  73. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 現に支配する地域の限界という観点から見ますれば、森さんがいまおっしゃったように、三十八度線という表現は正確ではないと思っています。休戦協定ラインというものが実質に合っていると思うのです。
  74. 森元治郎

    森元治郎君 それが北限だ、こういうふうに了解してよろしいですね。そうすると話はわかるのですが。あまり大ざっぱな三十八度線では……。地図はよく見てしゃべっていただきたい。それならばその問題はよろしゅうございます。  外務省にお願いいたしたいのは、これなかなかあっちこっちないのですが、休戦協定第一条第二項に、別に地図を付してあるとしていますから、ひとつ簡略な地図を書いて線を引っぱったものを資料としてちょうだいしたいのです。
  75. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 承知いたしました。
  76. 岡田宗司

    岡田宗司君 昨日の衆議院外務委員会におきまして、社会党の成田書記長が日韓問題について質問されました。その際に、成田君は大平・金メモというものについての質問をされたのですが、その際外務大臣は、そういう外交文書はないというようにお答えになっているのですが、大平・金メモといいますか、そういうものの性質についてお伺いしたい。
  77. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういうメモはないわけでございますから、その性質を申し上げようもないと思います。
  78. 岡田宗司

    岡田宗司君 メモ自体がないのですか。そうすると、朴大統領が学生に示したと称するものはこれはにせもの、偽造、こういうことになろうかと思うのですが、これについて、実はけさの新聞に、「韓国大統領秘書室長は一日いわゆる「金・大平メモ」の〃公開事件〃について次のように語った。「金・大平メモ」は公開したわけでなく、外務部が数人の学生にたいし秘密を絶対に守るとの約束のもとに提示しただけだ。もちろん、学生にこれを提示するに当たっては、相手国の外交的副作用を防止する措置を講じた。」、云々とあるのです。どうも朴大統領の秘書室長がこう言っているのに、そういうものはない、こう言われるのはどうも私ども解しかねる。韓国側が大平・金会談メモを偽造した、あるいは全然ないものをあったと言ったと発表した、こういうことでございますか。
  79. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御指摘のとおり、秘書室長がそういう趣旨の発表をしていることも——発表しているように伝えられております。一方、外交部のほうといたしましては正式に声明を発表いたしまして、そういう金・大平メモというようなものを学生に見せた事実はない、単にあのときの交渉の経緯を説明しただけだという正式の声明をプレス・リリースとして四月一日に発表しておりますし、一方、韓国の代表部のほうからも当方に対して、そういう事実はなかった旨を公式に通報してきている状況であります。
  80. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、これは大平さんにお伺いしたいのですが、この新聞記事はでたらめであって、そうして、朴大統領は韓国の学生をだました、こういうふうにお考えになりますか。
  81. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) つまり、事柄を正確に把握するためには、大平・金メモとは何ぞやということからはっきりさせなければいかぬと思うのであります。何を一体金・大平メモと言っておるのか、それをはっきりさせないと議論にならぬと私は思うのでございます。私に関する限り、金さんと私とでメモをつくって署名をしたと、そういうことはないのでございまして、一体何を金・大平メモと言っておるのか私には了解がつかないのでございます。だから、先方で学生に示したと言われるものの実体というものをよく見まして、一体それが何なのか、それが私に判明しないとお答えようがないと思います。
  82. 岡田宗司

    岡田宗司君 昔から火のないところに煙は立たぬと、こういうことわざもございますが、一国の大統領がとにかく大平・金メモというものがあると、そういうふうに考えて、少なくとも国内の重大問題になっておる学生の反対運動の指導者にそれを示したと、しかも、それを大統領室長まで確認したということになりますというと、あなたが幾ら否認されても何かあったというように考えざるを得ないのであります。そこで、いまあなたが、それはどういう文章であるかわからない、だから確認のしようがないというようなお話でございますけれども、何か大平・金会談の結果合意に達したものがあった、そしてそれをしるしたものが両方で確認されて、当時金鍾泌氏は朴議長の特使としてたしか来ておったと思うので、それが朴議長に提出されておったのだろうと思うのですが、何かそういうものがあったと推定されるのでありますが、そういうものは全然もう一片のものもなかったのか、そこをお伺いしたい。
  83. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きのう成田さんの御質問に対してもお答え申し上げましたように、金さんと私とで請求権問題を論議したことは事実でございます。私どもの会談におきまして、双方の見解が相当の開きがあったことも事実でございます。したがって、双方両国政府に持ち帰りまして、政府部内で調整をいたしまして、そして予備交渉に問題を移しまして、大綱を合意いたしました点、それから合意しない点、そういった点を明確にいたしまして、予備交渉でお互いに確認をいたしてある文書はございます。しかし、それ以外は一切ないわけでございます。
  84. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、あなたと金鍾泌氏とが交渉をされて、その交渉の議事録のようなもの、それから合意に達した旨を記載した文章というものはあるわけでございますね。
  85. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 両国の予備交渉の代表がちゃんと保存いたしておりますが、これは、御承知のように、一括解決の方針で臨んでおりますので、一応暫定的に合意をいたしたものはそういう形で整理いたしてあるというものでございます。
  86. 岡田宗司

    岡田宗司君 その整理した文章には、大平外務大臣、金鍾泌氏の署名がございますか。
  87. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それはまだ私どもの署名はいたしておりません。
  88. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、そういう議事録ないしは合意に達した場合の覚え書きはあるということは、これは事実でございますね。そうすると、それを示したのかもしれませんが、いずれにいたしましても、あなたと金鍾泌氏との間の交渉は文章になってある。それが大統領の手元提出させておったか、あるいは韓国外務省にあったものが今回の事件で朴大統領の手元提出されたか、いずれかだろうと思うのでありますが、いずれにいたしましても、これはまあ外交交渉の最中にあっては異例なことだと思うのであります。こういうような異例なことがかなり軽々しく行なわれるということは、今後の日韓の外交交渉につきましても、これはいろいろむずかしい問題が起こってくる前例にもなると思うのですが、との点について大平外務大臣は、そういうものが大統領から学生に示されたことについて、どういうふうにお考えになっておりますか。
  89. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) その実体を見ないと何とも申し上げられないのですが、新聞に報道された範囲で私が受けた感じといたしましては、交渉の経過とおぼしきものを示されたように思うのでございます。で、交渉の経過というのは、まあ外交交渉で、交渉の途中において一方の当事者がこれを外部に発表するということは、まあ穏当で私はないと思います。
  90. 岡田宗司

    岡田宗司君 交渉の最中にこういう穏当ではない措置を韓国側の最高責任者がされたということは、これは日本側としては交渉をこれから続けていく上にやはり重大な一つの問題だろうと思うのですが、この点について外務大臣は今後の交渉にあたって韓国側にどういう態度をもって臨まれるのか。反省を求めるか。これについての責任をとるように要求されるか。その点をお伺いしたい。
  91. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まあ外交交渉はお互いに信頼と礼儀を持ってやらなけりゃいかぬことは第一でございますし、また、外交ルートというものを堅持して公明に展開していかなきゃいかぬと思うのでございます。で、そういう意味におきまして、私どもといたしましては、先方もそういう趣旨を御理解いただいて今後の会談を進めてまいりたいと思っております。
  92. 岡田宗司

    岡田宗司君 本日ですか、丁一権外務大臣が来日されますが、丁一権外務大臣と大平外務大臣との間に、いま続けられております日韓交渉についてさらに続けられる予定でございますか。
  93. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今晩東京に立ち寄られるそうでございまして、明日私に表敬訪問をいたしたいという通知がございました。先方もただいまの段階におきましては表敬訪問をしたいという申し出がある以上のことを私は伺っておりません。
  94. 岡田宗司

    岡田宗司君 丁一権外務大臣の表敬訪問の申し入れがあったことは新聞にも伝えられておりましたが、外務省のほうには、丁一権外務大臣はいつまで日本に滞在される予定かおわかりだろうと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  95. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 今晩着かれまして明後日の朝出発というふうに連絡を受けております。
  96. 岡田宗司

    岡田宗司君 今晩来日されまして明後日の朝出発ということになりますというと、実質的には明日一日で、したがって、実質的な交渉というものは、大平外務大臣と丁一権外務大臣との間に行なわれない、こう理解してよろしゅうございますか。
  97. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、先方の私どもに対するアプローチは表敬訪問いたしたいということでございます。それ以上のことは伺っておりません。
  98. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、韓国側から伝えられるところ、また日本側新聞の報道しておるところによりますというと、元農林部長官ですか、これが帰国を命ぜられたということでございますが、もし早急に帰国されるということになりますというと、いままで行なわれておりました赤城農相との間のいわゆる農相会談なるものは、それによって中断されることになる、そう了解してよろしゅうございますか。
  99. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) けさの新聞に出ておりました元長官帰国命令が来たという記事につきましては、代表部のほうが、これは推測記事だと、公式に否定してまいりました。
  100. 岡田宗司

    岡田宗司君 農林大臣同士の交渉というものはいままで数回行なわれました。しかしながら、合意に達しておらない。そうして、農林大臣交渉でなされております各種の問題については、いまだ相当意見の開きがあるということは、農林大臣も外務大臣国会答弁をされておるところであります。で、しかも、韓国におきましてああいう学生運動が起こり、そうして大統領が、大平・金会談のメモなるものを学生に示して了解をとらなければならなかった、あるいはまた、大統領自身が日本に出しておる日韓交渉の代表の顔ぶれをかえるということまで言っておるといたしますれば、従来続けてまいりました状況とは非常に変わった状況が出てきたと思うのです。こういうふうな状況になったことは何に一番大きな原因があったか、どういうふうにお考えになりますか。
  101. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 長い二国間交渉でございまして、いろいろ曲折があり、断続的に続けられてまいりました困難な外交交渉でございまして、今回の韓国内の国情は、報道されているように、一つの試練に遭遇しておるということは、私どもも感じるわけでございます。私どもといたしましては、外交交渉の本体はやはりお互いの信頼と理解の度合いがきめていくことでございまして、いろいろな場面に遭遇し、いろいろな試練を踏み越えてお互いの理解と信頼が増していくことが望ましいと思うのでございます。で、事実いろいろな曲折はございましたが、両当事者の理解と信頼の度合いはだんだんと高まってきておるように私は判断いたしておるわけでございます。先方が会談に対する熱意を持たれる限り、われわれといたしましては、ちっとも態度を変えるつもりはないわけでございます。
  102. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもその点が私たちにはよくわからんのですけれども、赤城・元農務長官の会談というものが、最初は事務当局の会談から政治会談へ移さなければならないということで、赤城・元会談となったと思うのですが、そのときのいきさつを見ましても、どうもまだそういう政治会談に移すべき時期でないのにかかわらず、事務的なレベルから取り上げて、政治会談に移された。そうして、非常に高次の政治会談が行なわれるのだろうと思ってわれわれが見ていたのにかかわらず、その後やられたことは、再び事務レベルの問題、そこの煮詰め方の問題をいたずらに両長官でやっているにすぎないという印象を持たざるを得ないのですね。そういう意味で、向こう側のイニシアティブのもとに向う側に振り回され、それに追随をしているという印象がわれわれには非常に深いのです。今度の赤城農相と、元農務長官との会談打ち切りの問題でも、向こうからもう打ち切らなければならぬというようなことが言われておる。いま否定はされましたけれども、農相に対する帰国訓令まで来ているというようなことがうわさされる状況で、また、向こうから打ち切りを宣言されるというようなことに結果的にはなるのではないか、こう思うのですね。だから、そういうふうに向こうに振り回されることなしに、むしろ、こちらがき然として、したがって、赤城・元会談なんかについては、いままでのいきさつ今後の見通しから見て、これは打ち切る時期、段階に来ていると思う。き然としてそういう態度日本はとるべきだ、むしろ、こっちから主導権をとるべきだ、こう思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  103. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど岡田さんの御質疑にお答えいたしましたとおり、先方が会談に対して熱意を示しました限りにおきまして、当方といたしましては誠意と熱意を持って当たっていくという既定方針に変わりないつもりであります。
  104. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 といって、あしたぐらいから打ち切りになるのではないか、いままでの経緯から見て。まさにそのとおりじゃないですか。
  105. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この交渉はいろいろの曲折があったのです。そういう曲折を踏み越えてきておるわけでありまして、一つ一つに当たって交渉のペースを変えていくというようなことはすべきではないと私は思っております。
  106. 岡田宗司

    岡田宗司君 最近の情勢から見まするというと、日韓会談は、総理大臣なり大平外務大臣が希望し期待しているような方向に進んでおらない。いまあなたの言われました曲折がまた出てきたように思うのです。そこで、私は先ほどその曲折の原因についてお伺いしたのですが、どうも具体的なお答えはなかったが、今回ここである曲折が起こったということについては、私は韓国における学生運動が直接には相当大きな影響を持ったと思うのです。その学生運動が超きる原因につきましてはいろいろございましょうが、いまここで私はそれについては申し上げませんが、この学生運動について、昨日の衆議院外務委員会における総理大臣の御答弁によりますというと、これはごく一部のことである、そうして、これは韓国政府で処理して片づけ得る問題であろうというので、まことに少さく見ておられる。これがいまのあなたのもとで行なわれている、あなた方によって行なわれている日韓交渉にあまり重大な影響のないような評価をされているようでありますけれども、これは私は非常に誤りだと思うのであのますが、この韓国の学生運動に対する評価をどうお考えになりますか。
  107. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 大きな外交的な問題でございますので、それぞれの国内におきましていろいろの論議がいろいろな形で展開されてまいるだろうということは、想像にかたくないことでございまして、そういう過程を通じまして、日韓交渉というものに対する国民の評価というものがだんだんと定まってくると思うのでございます。で、今度の事件もそういう意味で、一つの事件であったと思います。問題はこれの評価でございますが、この事件を契機といたしまして、日韓関係というのはどうあるべきか、日韓交渉というものはどうあるべきかということの理解が進んだかどうかということが問題の一番根本でないかと思うのでございます。それに断案を下すには、まだ時日も十分たっておりませんし、私も正確に断案を下す自信がないのでございまするが、今度の運動が報道されたところから見てみると、まず第一の性格といたしましては、学生中心の運動であったということが一つの性格として出てくると思うのでございます。それから第二点といたしまして、対日外交に対する姿勢についての彼らの不満が表明されたということ、この二点が非常により特徴的に出ておるという感じをいたしております。しかし、問題の本質は、こういうことを通じまして、日韓交渉はどうあるべきか、日韓関係のあり方はどうあるべきかという理解が前進したか後退したかということにつきましては、冒頭に申しましたように、断案を下すにはまだ時期尚早であると思っております。
  108. 岡田宗司

    岡田宗司君 では、韓国の学生運動がいまの日韓会談に影響を与えたという点はお認めになりますか、私これ具体的にお伺いしたいですが、第一には、外交交渉の最中に大統領が、少なくともいわゆる大平・金メモなるもの、これはあなた否定しておりますけれども、予備交渉の議事録か何かであったといたしましても、そういうものを学生の代表に示したということ、これはやはり外交交渉の上には影響を与えたことだと思います。  第二に、金鍾泌氏が日本に来て、いわゆる側面交渉をやった。これは外務大臣は表敬的訪問を受けた、総理大臣には自民党の総裁の資格で会ったと言われておりますけれども、いわゆる実力者でありまして、日韓交渉に相当重要な実質的な働きをする人である。それが学生運動の要求によって急遽召還されたということは、韓国側の対日交渉の上に、やはり一つの大きな影響を与えるものだと思うのであります。  それからさらに朴大統領は、学生に対してその日本に出しておる代表部の顔ぶれをかえるということも言われておるのであります。そういたしますと、これまた学生運動が日韓交渉の韓国側に対して大きな影響を与えたことだと思うのであります。そういたしますと、それらのことが行なわれると、どう考えたって日韓交渉は、ここで韓国側が学生運動の影響を受けて変わりつつある、この態度が変わりつつある、姿勢が変わりつつある、あるいはまた交渉のやり方が変わりつつある、こういうことになると思うのでありますが、学生運動が韓国側に影響を与えて、日韓交渉の上にさらに影響が起こりつつあると、そういうふうにお考えになりますかどうか、その点を明確にお答え願いたいと思います。
  109. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは、客観的に今度の学生運動は日韓交渉に影響がなかったなどと私は思っておりません。ただ、私が申し上げるのは、今度の学生運動が、日韓の間の理解を深めていく上におきましてプラスであったか、マイナスであったかという評価について断定を下すにはまだ早いと、こう申し上げたわけであります。それが対日交渉にどのような形で結晶してくるかということは、私どもは農相会談と正式会談と、二つの場面を、両国の間で折衝場面を持っておるわけでございまして、そこにどのように出てくるかを見守らないといかぬわけです。私どもといたしましては、それを注視いたしておるわけでございます。日本側としては態度をひとつも変えてない。
  110. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、客観的には影響を与えているということはお認めになりますか。私は三点具体的な事例をあげたんでありますが、この三点が、韓国側に事実的に影響を与えているということはお認めになりますか。
  111. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 影響を与えなかったとは思いませんが、私が申し上げているように、私どもに関する限り、日韓の間に交渉の場を持っておりますので、それが日韓交渉にどのように影響してまいるかということは、その交渉の場でそれがどのように結晶してまいるかということを見なければならない、こう思います。
  112. 岡田宗司

    岡田宗司君 予定されておりました大平・丁会談ですか、これも表敬的訪問で、丁外務長官が一日で帰る、あるいはまた、今後元農務長官が帰国を訓令されるということになりますと、これは実質的に、スケジュールもそれから交渉の相手もかわることになるし、それからあと直ちに人が任命されないということになってまいりますと、実際に影響を与えてくると思う。とにかくこういう事実はあなたもお認めになったほうがいいのではないかと思うのですが、そこで私は、もしそういうふうな事実があるということであるならば、これはこの際、日韓交渉日本側としても続ける、続けると言っておらないで、この際出直したほうが賢明ではないかと思うのです。また、客観的に見てそうならざるを得ないだろうと思うのでありますが、かような異例な外交的な措置を韓国側でとると、あるいはまた突如として学生運動の影響で交渉相手がかわるというような事態でありましたならば、日本側としては、やはりこの際日韓交渉は一応この場で中断するということが至当ではないかと思うのでありますが、外務大臣はその点どうお考えになりますか。
  113. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 交渉の場面にどのように韓国側が出てくるかまだわかりませんので、予測いたしかねるわけでございます。私どもといたしましては、交渉を中断いたしましても、日韓の間にある問題は片づかぬわけで、いろんな曲折がございますけれども、日韓の間の問題を片づけてまいらなければならぬということは依然としてあるわけでございますから、先方が熱意を持って交渉に臨まれる限り、私どもとしてはちっとも態度を変えるつもりはないのでございます。
  114. 岡田宗司

    岡田宗司君 よく言われておりますスケジュールによると、三月一ぱいくらいで会談が終わって、そしてその後、条約等の整理に当たって、これを五月十七日の国会終了のころまでには調印されるというスケジュールがあったようであります。で、韓国側におきましても、日本の今国会の会期中に調印の行なわれることはまずあるまいというような推測が行なわれております。いまのような状況ですと、どうも今国会中にそういう段取りになるとは思えませんが、大平外務大臣としては、今国会中にこの日韓交渉がまとまった結果の条約なり何なりを提出できると思いますか、それともそれよりはるかにおくれることになるだろう、そういうふうにお考えになりますか、その点を明らかにしていただきたい。
  115. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) その点はスケジュールをあらかじめ組みまして、そこへ交渉を無理やりに閉じ込めていこうなんというような、そういうような考えは毛頭ないわけでございまして、一番大事なことは、お互いの信頼、理解というものがないといけないわけでございますし、また、交渉いたしまして妥結いたしました内容が、国民の納得いくものでなければいけないわけでございまして、スケジュールより何よりは、その内容が大事でございますし、お互いの信頼と理解が大事でございます。そういう点をしょっちゅう念頭に置いて当たっているつもりでございます。したがって、スケジュール云々というようなことにつきまして、責任がある私として、申し上げたことは一つもないのでございます。したがって、いつごろまでにどうするというようなことを申し上げる自信はございません。
  116. 岡田宗司

    岡田宗司君 過日、金鍾泌氏がこちらに参りまして、あなたのところを表敬訪問された際に、いろいろお話があって、金鍾泌氏とあなたの間に、四月の上旬には合意に達しようということが確認されたということが新聞で伝えられておるのであります。この点から見ますというと、やはりきちっとしたスケジュールはなくても、ある種のスケジュールはあった、こういうことになりまして、もし四月の上旬ということがかようにくずれてまいりますというと、これは事実上、技術的な面からいたしましても、今国会で日韓の条約なり何なりが提出されることは事実上できないことになろうかと思いますが、その点はいかがですか。
  117. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) どのように発表されたかについての御質疑でございますが、私は日韓交渉の責任者でございまして、常に早期妥結のために最大限の努力をしなければならぬ立場におるわけでございます。どなたが参りましても、私は早期妥結の希望を表明いたしておりまするし、そのための努力を約しておるわけでございます。金鍾泌さんが参りましたときも、漁業問題につきましては、大綱を三月一ぱいにはまとめたいものだと、こういう希望の表明がございまして、そういう方向で努力しましょうということを申し上げたのは当然のことだと私は思います。
  118. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 次回は四月七日午前十時より開会することとし、本日は、この程度で散会いたします。    午後零時五分散会    ————————