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1964-02-18 第46回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十八日(火曜日)    午前十時二十分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     黒川 武雄君    理事            井上 清一君            長谷川 仁君            加藤シヅエ君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            二宮 文造君            佐藤 尚武君            曾祢  益君            野坂 参三君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務政務次官  毛利 松平君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      齋藤 鎭男君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査国際情勢  に関する件) ○日本国アメリカ合衆国との間の領  事条約締結について承認を求める  の件(内閣提出) ○千九百六十二年の国際コーヒー協定  の締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○千九百六十二年の国際小麦協定の締  結について承認を求めるの件(内閣  提出)   —————————————
  2. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。前回に引き続きまして、当面の国際情勢について質疑を行なうことにいたします。  なお、外務大臣が、外交の用件で、午前十一時二十分には退席されますので、そのおつもりで御質問を願いたいと思います。  質問をしていただく順序は、長谷川委員佐藤委員岡田委員曾祢委員、それから野坂委員の五名の方でございます。それでは、長谷川委員
  3. 長谷川仁

    長谷川仁君 外務大臣にお伺いいたしますが、十二日の衆議院外務委員会で、中共国連の正当なメンバーとして祝福されるような事態になれば、わが国としても国交正常化を考えねばならないのは当然だと、こういうふうにおっしゃったのでございますが、これは新聞界はもちろんのこと、相当に反響を呼んでいるように私どもは見ているわけなのでございますが、これをもう少しふえん的に御説明を願いたいと思います。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国代表権問題につきましては、第十六回総会でございましたか、日本政府は、これは重要問題であるということで、一つ国連の問題として提案国の一員になっておるわけでございます。すなわち、国連という場におきまして世界平和の観点から取り上げて公正な解決が望ましいという主張をいたしておるわけでございます。さらに、私どもといたしましては、国連世界平和の維持機関といたしましてその機能を充実してまいるということは大切なことでございまするし、わが国外交方針もまた国連を育成するという方針のもとに、国連におきまして公正に去就をきめてまいるということを根本方針といたしておるわけでございます。したがいまして、中共国連メンバー国々によりまして祝福されて加盟されるというような事態は、これは歓迎すべきことでございまするし、そういうことになりますならば、当然国連外交というものにつきまして私どもがただいままでとってまいりました方針から申しまして、わが国といたしましても、この事実を踏まえた上で善処してまいらなければならぬということは、自然の成り行きじゃないかという意味のことを私は申し上げたつもりであります。
  5. 長谷川仁

    長谷川仁君 現在の情勢として、外務大臣が言われるような中共——まあ現在に至るまでは中共侵略国だという定義があるわけなんです。そういった現在の段階において、近い将来において祝福されて正当なメンバーになるというような可能性というものは、近い将来にあり得るでしょうか。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 世上中共につきましていろいろ見方があるようでございますが、私どもといたしましては、この最近の中共外交政策を拝見しておりますると、なるほど党活動といたしましてはたいへん戦闘的でもあるし、たいへん積極的でもございまして、みずからの信奉するドクトリンを掲げて果敢に活動されているように思いまするが、政府外交政策といたしましては、何と申しまするか、冒険的であるようには、どうも私どもは思えないのでございます。しかし、まあ、これはどういう基準議論するかの問題でございまして、いうところの好戦国などというのは、まあドクトリンで言うのか、実際的な行動で言うのか、私どもよく議論基準がわかりませんから、軽卒に議論すべきではないと思っております。
  7. 長谷川仁

    長谷川仁君 それに関連するのでございますけれども、私ども政府与党立場で、国民にやはり中共問題に対してよりよき理解を与えなければならぬ。そうすると、中共脅威という問題なんでございます。この中共脅威が、現在及び将来を含めて、軍事的な脅威を感ずるのか、あるいは経済的な脅威を感ずるのか、この点なんかも私どもはやはりはっきりしておかなければならない問題だと思うのであります。その点いかがですか。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中共政権が六〇年、六一年の非常な試練を克服されまして、そうして農業、軽工業を中心にやや安定を取り戻しつつあるという段階のように私ども思うのです。したがって、今日この政権わが国に対しましてたいへんな脅威である、経済的にも軍事的にも脅威であるように私どもは思いません。少なくとも、いまの時点で判断いたしますれば、そのように私どもには思えないのでございます。
  9. 長谷川仁

    長谷川仁君 この中国問題と申しますか、これは要するに、一党一派の問題、すなわち国論が分裂したり、あるいはこれにイデオロギーがからんだりすることは、私は非常にこれは誤っている、あくまでも、この間衆議院で私どもの同志が、第二次大戦というものを考えてみた場合に、結局は中国問題に失敗した、そうして日本はこういう結果になった。やはり私ども現在におきましても、この中国問題というものは、結局日本の歴史にまた大きな影響を与えることは、これはもう明らかなことなのでございますが、中共承認得失というものもわれわれとしては検討しなければならぬ。まあ新聞論調もそこを盛んに言っておるわけでございますが、中共承認した場合に、日本にとってプラスになるのか、またマイナス面はどこにあるのか、そういった動的な論議展開をしなければ国民は納得できない。そういった点において外務省はもうすでに着手しておるのでございますか、そういう動的論議といいますか、中共承認得失というような点につきまして。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、いまたびたび本院を通じて申し上げておりますとおり、ただいま中華民国政府と正規の外交関係を持っておるわけでございまして、中国大陸との間には、貿易その他文化交流面におきまして民間レベルで接触を事実上持っておるということでございまして、こういう基本的な姿勢をいまのところ変えるつもりはないということは、たびたび申し上げておるわけでございます。で、この中国問題は非常に奥行きの深い、またアジアの問題ばかりでなく、世界にとりましても重要な問題であるという認識は、私どもも人後に落ちず持っておるつもりでございます。したがいまして、私ども自身も、中国問題はそういう重要な問題として勉強せにゃならぬと思いまするし、同時に、世界がこの問題についてどのように反応してまいるかということにつきましても、注視を怠らないつもりでおるわけでございます。ただいまの私ども姿勢は、そういう域を出ないわけでございまして、既定の方針をただいま変えるというようなつもりは、毛頭持っておりません。動的な展開を考えるというように意図的な姿勢を持っておるわけじゃございません。
  11. 長谷川仁

    長谷川仁君 ソ連が一九一七年に革命しましてから三年目にトルコが承認しております。それからこのソ連承認は、日本が一九五二年、八年後に承認しておるわけです。アメリカはその倍の十六年後に承認しておるわけです。最近の新聞などを見ますると、外務省は、ゴルフで言えばボビー賞をねらっておるのだ、こういうような諷刺的なことを言っておるわけですが、日本としては、アメリカが何であろうが、あるいはよその国が何であろうが、とにかくわれわれは独自の立場で、最後になってもわれわれとしては自分たち立場でもってこれをきめる。あるいはこの自由主義諸国の大半が中共承認した場合にはわれわれは追随する。結局、世界世論をわれわれがつくるのか、あるいは世界世論にわれわれが追随していくのか、この点どうなんですか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の基本的な立場、基本的な利益というものは十分踏まえていなければならない。それを踏みはずすとたいへんなことでございます。あくまでも長谷川委員指摘のように、日本独自の自主的な判断に基づいて、日本外交は、ひとり中国問題のみでなく、展開していくべきものだと思うのです。ただ私は、そのことは日本独自の、よその国々協議しないでやっていいというものじゃないと思うのです。私ども世界の多くの国々外交関係を持っておりまするから、そういう国々と密接な情報交換協議を遂げることは、これは日本の自主的な立場と何ら矛盾しないわけでございます。また、日本が自主的な判断をする場合に、そういうことをやっておくことは、たいへん大事なことだと思うわけでございます。根本心がまえは、もう仰せのとおりに心得ています。
  13. 長谷川仁

    長谷川仁君 この秋の国連総会において、わが国としては、もしも中共代表権の問題が出てきた場合には、重要事項指定という線に沿って、わが国は行なっていくということを伺ったのでございますが、この重要事項指定に成功するといいますか、あるいは重要事項指定になり得る可能性は多うございますか、現在の段階において。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ことしの秋の総会の姿を頭に浮かべることは、私どもとしてはまだできない状況でございまして、ずいぶんまだ間があることでございまするし、これから展開されるであろう各国の動向をよく見きわめた上で、日本としての独自の国連対策なるものをつくり上げなければならぬと思っております。いまのところ、重要事項指定云々とかなんとかいう具体的な姿において国連対策を頭に置いておるわけじゃございません。
  15. 長谷川仁

    長谷川仁君 最近また、もしも重要事項指定に失敗した場合には、アメリカとしては、一時持ち上げましたところの継承国家方式というようなものを取り上げるということを言っておるわけですね。結局、国府に対しては原加盟国として総会安保理事会議席を与える、そうして中共には総会議席を与える、こういう継承国家方式をとる、それに何か新味を加えたところの対策アメリカ検討中であるというようなワシントンの情報を伺っておりますが、どうですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもはそういう情報の真否を確かめることをいたしておりませんが、アメリカといえども、まだ別に国連政策を具体的に練り上げていくほどの材料を私は持っていないと思います。先ほど申しましたように、これからまだずいぶん時日のあることでございまするし、まだ未確定な要素がたくさんあるわけでございまするから、いまおっしゃったような具体的な姿において国連対策をお持ちになって各国協議を始めておるような事実は、私どもはキャッチしておりませんし、そういうことは、私はちょっと考えられないと思います。
  17. 長谷川仁

    長谷川仁君 それから最近は、中国問題は何もアメリカドゴールの言うことを聞かなくても、歴史的にも日本には中国問題の権威者というものが民間にも相当多い。したがいまして、外務省のお役人ばかりでなく、新聞界文化界、ありとあらゆる方面で、三十年、四十年と生涯をかけて研究しておるような人たちを網羅して、そこに左右、イデオロギー、そういうものを乗り越えて、ほんとう国家百年の大計を樹立するところの何らかの組織なり、研究団体なり、研究グループなりというものを動員して、そうして国策というものをはっきりきめたらどうだというような声もあるんですが、政府としてはそういうお考えはございませんか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもといたしましては、中国問題につきまして日本人は感覚的に理解しやすい感受性を持っておる民族であると思います。ただ、ずいぶん戦争のために中断いたしまして、日本中国研究も不幸にいたしまして戦後十分実りが豊かであったというようにも思いません。朝野におきまして中国問題の検討が活発に行なわれることはたいへん歓迎すべきことでございますし、また、私ども政府にあるものといたしましても、そういう民間の有識者の御意見を十分虚心に拝聴してまいることは、当然考えなければならぬと思うのです。ただ、その一つ政府機構として、何かの調査会をつくるとか審議会をつくるとかいうようなこと、そういうことはいかがなことかと思うのでございます。いつも柔軟な気持で、各方面権威者の意向をも十分に拝聴するという心がまえでありたいと、またそのように努力しなければならぬと思っております。私の前任者外交問題懇談会というものをつくって、一堂に集めていろいろ御意見を聞いたこともあったのでございますが、それが国会に取り上げられてずいぶん問題になりました。私はこういうことはせぬほうがいいと思っておるのです。こちらの心がまえの問題ですから、できるだけ広く御意見を拝聴するようにいたしたいと思っております。
  19. 長谷川仁

    長谷川仁君 これはちょっと余談になりますけれども日本一般の風潮としてもそうなんですが、たとえばフランスに行ってきて、こじきをやっていてもパリ帰りということでめしが食える。それからアメリカ、イギリスあるいはソ連へ行っている連中が、非常に生活が——洋行といいますか、外国帰りということで食っていける。ところが、外務省あたりにおいても、従来から私ども見ておると、シナ屋というものは非常に冷やめしを食わされている、そういった傾向がある。欧米屋が非常によくて出世街道を歩くのに、シナ屋はだめだ。そういうような定義が今日でも生きているように私は思うのです。こういう重要な中国問題はやはり人材を抜てきして、ほんとう中国問題に情熱を注いでいるというような人を私は今後どんどん外務省においても起用すべきじゃないかというふうに考えるわけです。  最後一つお伺いしたいのでございますが、私は多年新聞社特派員なんかも経験しておりまして、中共にも参りましたけれども、このような事態になりまして私どもとしてお伺いいたしたいことは、たとえば今回の、ドゴール問題につきましても、パリあるいは各地の日本人特派員から新聞社の電報がどんどん入ってきて情勢分析ができるのですが、北京からの要するに日本人特派員の打電は一本もない。すなわち一人もいないのです。私は好むと好まざるとにかかわらず、北京情勢というものを東京においてどうしてもつかむという意味合いにおきまして、日本新聞界で一番期待していることは日中記者交換問題です。これがどういうわけか存じませんけれども、私も当時は七社を代表いたしまして交渉したのでございますが、北京政府の言い分でございますが、北京政府は、われわれはやりたいのだけれども日本側が許さないのだ、日本側のどこが許さないのだというと、それがわからないという状態なんです。新聞界の一番熱望し、国民もまた日中記者交換ということは通商代表部より何より私は先がけて行なわなければならぬ問題じゃないかと思うのでございますが、きょうはたまたま廖承志がそういった発言をしておりますが、外務大臣としていかがでございますか、日中記者交換
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、それぞれの相手国につきまして、ひとりそれは中共ばかりじゃございませんが、公正、客観的な報道が行なわれるということは、相互理解の上から申しまして、非常に大切な前提条件だと思っております。いま日本政府としては、中国大陸のほうに参る記者については別にとめていないのです。ただ、先方からこちらへ参られる場合、相互にレシプロシティーと申しますか、同数の交換ということになりますと、向こうとこっちと報道体制が違いまして、こっちでは有力紙が幾つと数がありますが、NHK、共同とかいうのがありまして、こっちと向こうの数とうまくミートしないのです。それですから、うまいこと技術的に向こうとちょうど合うように考えていただければ、そんなにむずかしい問題じゃないと思うのでございますけれども、この問題が案外、この技術的な問題というのが案外やっかいな問題なんでございまして、新聞協会のほうもなかなか苦心されて、この対北京の問題じゃなくて、ほかのケースで非常に苦心されたケースもあるようでございます。これはむしろ政府と申しますよりは、報道界のほうで向こうとうまくレシプロカルにいくようなぐあいに考えていただければ、問題は前進するのじゃないかと思っております。これは入国云々という問題よりも、むしろそれより前の問題で、前の段階で問題があるように私は理解しておるのです。
  21. 長谷川仁

    長谷川仁君 最後にもう一度念を押しますが、日中記者交換に関しては、要するに、外務大臣としては、決して反対ではないということでございますか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようでございます。
  23. 長谷川仁

    長谷川仁君 わかりました。
  24. 黒川武雄

  25. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 最近のフランス中共承認というものは、各方面にえらい波紋を投げたわけでありますが、日本としては、その受けた影響が非常に大きいように思うのでありますが、それは、日本中華民国政府——国府との間は特別な関係があるから日本に対しての影響が大きいわけで、フランス立場から言えば、そういう点は深い関係はなかったというふうに思われる国府に対して、フランスが別に特別の義務をしょっているわけでもなし、なるほどそれは国交は持続しておりましたけれども、しかし、日本のような深い関係にあったわけではないのでありまするからして、国府の最もいやがっておる中共に対して承認を与えたというようなことが比較的簡単にできたわけだろうと思うのですよ。日本はなかなかそうはいかないのでありまして、フランス国交を回復したそのおもな理由としてあげられているのは、何しろ七億もの大きな人口をかかえておる中共を度外視してそして世界の平和はあり得ないじゃないかということが一つ。それから、十四年もの長い間フランス国交を断絶しておった。だから、これを回復するということは当然な話なんだというふうなことが土台になって、そうして今度の承認に踏み切ったように思われるのですが、なるほどそれは七億もの大きな人口をかかえた中国を控えていることでありまするからして、それとの国交を回復せずに世界の平和を論ずるわけにはいかない、そういう考え方にはむろん私たちも異存はない、同感を表し得るわけでありますが、しかしながら、この強大国、つまり大きな、何と言いますか、強大とは、言えないかもしれませんけれども、巨大な国が、はたして平和愛好国であるかどうかということが非常な問題であって、平和愛好国でない政府を簡単に自分たちの仲間に引き入れるということが、はたして世界平和のために貢献するゆえんであるかどうかということについては、私は大きな疑問を持つわけなんですが、近年来の中国の出方を見てみますると、いまもお話が一部あったように伺いましたが、何しろチベット問題、それから引き続いての中印国境のあの進撃の問題、あれなどだけをとってみましても、手放しに中共平和国家だとは言えないような気がするので、そこにはよほど用心してかからなければならぬ点があるように思うのです。つまり、中共平和愛好国であるというレッテルが張られるに至って初めてわれわれは中共との関係正常化し得るわけでありましょうが、それなくして、フランスのように一足飛びに承認してしまうなどということは、日本としては考えられないことのように思いますが、これは外務大臣同感だろうと思いまするけれども、一応念のために伺っておきたいと思います。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 衆議院外務委員会におきましても私の感じ方を申し上げたと思うのですが、つまり、平和ということばも、ことば自体がどうもまちまちにつかわれておるわけでございまして、東西再陣営の間で、一体平和とは何ぞやという問題について帰一した見解があるかというと、どうも私の感じでは、ないのではないかという感じがするのでございます。特定の秩序に乗った平和ということを両陣営とも考えておるわけでございまするから、その平和愛好国云々議論をする前に、まず、平和とは何ぞやという基本観念につきましてちゃんと一致していただかないと、もう議論の土俵ができないのではないかというような感じが実はするのでございます。しかし、そういうアカデミックな議論をしておっても、実際外交の問題としてお役に立たないかもしれませんが、しかし、たとえば中印の問題にいたしましても、いまおあげになりました問題にいたしましても、私どもファースト・ハンドな材料を事実この目で見てとっておりませんから、日本政府としてとやかく見解を申し上げることは差し控えておるわけでございます。ただ、国会で申し上げておりますのは、世界には、いま佐藤先生がおあげになりましたような中共に対しての見解があるようでありますということは申し上げておるわけでございますが、これこれの事実を検証した上で、日本政府としてはこういう見解であるということを申し上げるには、私どもは直接材料を持っておりませんから、そこまで申し上げるのはいかがかとこう思うので、御遠慮申し上げておるのです。しかし、さきにも、根本的に言えば、平和ということばとか、平和共存とかいうことば自体がどうもぞんざいにつかわれ過ぎておるのでございまして、これがうまく一致すると、世界の戦後の平和というようなことがほんとうに実のある論議ができるような感じがするのでございますが、遺憾ながらいまの段階においては、思い思いにおつかいになっておるのじゃないかというような印象をぬぐい切れないと私は思います。
  27. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 時間の関係で、はしょって御質問申し上げなければなりませんが、ドゴール大統領考え方には、承認に引き続いて仏印三国に中立関係を設定する、つまり仏印三国を中立の制度の機構の中に入れて、そうして平和を保っていこう、また中立が唯一の平和維持方策であるというふうに考えておられるように見受けられるのでありますけれども、しかし、なるほど三国が中立を守って安全に暮らしていくことができれば、これはそれに越したことはないのはもちろんの話でありますけれども、その中立というものは、強固な裏づけがない中立は、なるほど見たところ、聞いたところたいへん美しくは見えまするけれども、その実は絵にかいたもちみたいなことになってしまうのであります。その裏づけというのは何かと言えば、もちろん関係国の間で強固な約束ができて、そしてその中立をどこまでも守り通してやるという、そういったような裏づけが最も必要であり、ことに関係国の中でも、強国の間のそういったかたい契約が伴わなければ、私は意味をなさぬものであると、そういうふうに思うのであります。ところが、現在のこの国際情勢の中で、はたして関係国の中、ことに強国の間でもって仏印中立をどこまでも尊重し、かつこれを保護してやるというような協定が成り立ち得るかどうかということにつきましては、私はほとんどそれは不可能な話だというふうに考えざるを得ないのであります。もし、そういうふうにして強国協定が成り立たないとしまするならば、この中立というものはかえって非常な危険を招くことになろうかと思うのであります。つまり、表看板は美しいりっぱなものでありましても、その強国の中で、もしこの中立を尊重しないで、そうしてゲリラ活動なりあるいはその他のいろいろな、表面平和的な手段であっても、その実は平和を乱す、中立を侵害するというような手段をとってきた場合に、これを防止する何らの施設がない、協定もないというようなことでありましたならば、表面中立であるがゆえにだれも手を出さない。そのうちにいまの破壊活動がどんどん遠慮会釈なく進んでいくという可能性ができてくるわけでありまして、したがって、私は裏づけのない中立というものは非常な危険な話であるというふうに考えざるを得ないと思うのでありますが、その点、外務大臣どういうふうにお考えになりますか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も全然同感に存じます。
  29. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 一九五四年かのジュネーブ協定でもって三国からの撤兵が協定されたりなどしまして、三国の主権はほぼそれできまったように見えますけれども、それであのジュネーブ協定でさえも守られないで今日のような混乱を来たしておるのでありまして、これにつけ加えまして、いまの中立問題などを持ち出して、そうしてこういう情勢のもとで何がしかの裏づけのない中立制度をおこしらえになるなどということは、私としてはこれは非常に危険なことであって、したがって、政府も十分にその点注意をされましてこれに対処されることが必要かと思うのでありまするが、いまの外務大臣の御説明、御同感のようでございますので、たいへん私はそれに満足を表するわけでございます。  私は、一九五九年のあの有名な北京での浅沼声明がありました当時から、あるいは本会議の場所において、あるいは委員会において、再三私自身の考え方を述べておいたのは、日本国民政府との関係でございます。今度フランス中共承認問題を中心としまして国民政府との関係もまた新たに見直さなければならぬというような状況に達しましたので、この機会にまた私の考えを申し述べまして、大臣のお考えを伺いたいと思うのでありますが、私の考え方は、一九五九年当時から一つも変わっていないのでございます。それは、何といいましても、あの終戦当時蒋介石総統のとったあの寛容な態度、そのおかげでもって、日本人は軍隊を込めて少なくとも二百万人もの人たちが無事に引き揚げてきたということは、これはたいしたことでなければならぬと思うのでありますが、私は、目の子勘定でおよそ二百万人の日本人が引き揚げたというふうに感じておりましたが、今度周鴻慶の問題で国民政府側から新聞に発表したところによりますと、やっぱし二百万と言っているようでございます。軍隊が百五十万、一般人が五十万、この合計二百万の人たちが無事に日本に帰れたではないかと言って向こうからしっペい返しを受けてきたようなまずいいきさつがございましたが、それはきょうは論ずることを避けまして、ただ、二百万人もの日本人があの際引き揚げることができたということを指摘したいと思うのでございます。もしそうでなくして、スターリンがとったような態度を蒋介石総統があの当時とったとしましたならば、この二百万というものは中国に残ったままで、そしてシベリアで抑留邦人の約半分が死んでしまったと同じように、二百万人の少なくとも半分の人たちがあの外地——中国でもって命を落としたというようなことになり得たでありましょうし、それなくして済んだということは、これはたいしたわれわれとしては恩義をこうむっておるわけでございます。それに、蒋介石総統は日本に対しての賠償を放棄しておる。およそ今度の大東亜戦争でもって一番大きな損害を受けたのは、何といっても中国に相違はございません。もし蒋介石総統があの際賠償を——当然請求することのできた賠償を請求したとしたならば、それはインドネシア、ビルマ、シャム、フィリピン、あるいはマレーシア等に対して払っておる日本の賠償の何十倍もの大きな損害賠償をしなければならないことになったろうと思うのでありますが、それを日本は免除されておるということ、これはえらいことでなければなりません。その上に、中国自身、あの終戦後日本中国軍を進駐させることを拒否したということ、これもまた大きな結果をもたらした問題であります。そうしてまた、カイロ宣言のときでごさいましたろう、蒋介石総統は、日本の終戦にあたって、天皇制を維持するということが、日本の平和を維持するゆえんであるということを力説したということ、これもまたわれわれとしては忘れることのできない大きな中国側から得たサービスでなければならないと思うのであります。そういうふうにして考えていきますというと、日本としては、この蒋介石総統に負っているところの恩義というものを忘れることができないはずと思うのであります。これは、私は一九五九年以来、機会あるごとに主張してまいった点でございます。  ところが、一部の考え方では、なるほどこうむった恩義は恩義だ。しかし、国としてのあり方からいうならば、その恩義ばかりに拘泥しているわけにいかない、現実の情勢に従ってこの国の方針をきめていかなければならないのだというような、そういう議論があるということも御承知のとおりであります。しかし、そういうような考え方に対しまして私は非常に反抗を感ずるのでありまして、恩義は単にこれを忘れてしまったというならば、まだ恩義を忘却したという汚名を着るだけでありますが、その上に、蒋介石政権の最も苦痛とするところ、最も嫌悪している問題をとらえて、そうして日本が平然とある手段をとるというようなことがありましたならば、それはまるで恩義を忘却するどころではない、恩をあだでもって返すということになるわけでありまして、それは日本としてはたいへんなことだと思うのであります。蒋介石総統が最も忌みきらっている、そうしてまた最も苦痛を感じている問題は何であるかといえば、日本中共との関係の改善、つまり、承認問題ということでなければならぬと思うのであります。もし日本がこのフランスのしり馬に乗って中共をこの際承認するというところまでいくとしまするならば、これはまさにいま私が申しまするとおりに、恩をあだで返すということになると思うのでありまして、日本としては十分に腹をきめてかからなければならぬ問題、つまり、そういう問題に対しては、慎重な態度をもって臨まなければならない問題だと私は思うのでございますが、大臣、この点もう一度お確かめくださればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、るるお話がございましたように、国民政府が終戦時、また終戦後、わが国に対してとられた寛大な措置、そのことに対する恩義というものは瞬時も忘れるべきではないと思います。それは御指摘のとおりでございます。それで、これを外交的に見ますと、中国本土と日本がどういう関係を持つかということにおいて、先方もこちらも、この問題に対する現実の措置に対する評価が行なわれるわけでございます。ただいままで、不幸にいたしまして、若干の問題につきまして、先方の評価と日本の評価が違っておった。そのために国府日本との間の国交が気まずい関係になっておりますることも、御案内のとおりでございます。  したがいまして、私といたしましては、この中国大陸日本との関係をどう取り結んでまいるかということを考えてみます場合に、現実にいま日本政府がとっておるような政経分離の原則によりまして、貿易その他の事実上の関係民間レベルで結ばれておる、行なわれておるということは、先方もよく承知されておることでございます。しかし、それがどの水位まで行けばがまんならぬかということに具体的にはなってまいるわけでございます。したがって、これはあくまで両政府の間におきまして十分の理解がなければならぬことでございます。この理解は、終局において一々帰一するところがないかもしれませんけれども、しかし、少なくとも十分意見を戦わし、理解を深める努力をぎりぎりまでいたしまして、お互いの立場を尊重し、お互いが敬愛の念を持って行なうという、そういう基本的な理解に狂いがなければ、現実の措置において、あるいは両国の間に若干の評価の差等がないとは言えぬ場合が起こり得るかもしれませんが、その差等がある場合におきましても、これは相互立場を尊重し、相互に敬愛の念を踏みはずさないという前提の上において行なわれる限りにおいては、許されるべきことではないかと感じておるわけでございます。たいへんむずかしい問題でございますけれども、いま先生が御指摘されたように、われわれは決して忘恩の徒ではないわけでございまして、十分慎重に諸般のことは考えてまいるつもりでございますが、具体的な外交的施策の、外交的措置の領域に入ってまいりますと、基本的な理解と尊重、敬愛という基調の上にありまして十分の理解をぎりぎりまで達成すべく努力をいたしてまいるということは大事なことではないかと思っているわけでございます。
  31. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 私の質問、これで終わりますが、とにかくですね、日本の一部にこの際中共に対する態度をきめなければバスに乗りおくれるというような世論を持つ人たちがおります。それは情勢はまだまだ受動的で変化をするものだと思いますので、バスに乗りおくれるということもこれは一つ日本政府としての態度であらねばならぬのであります。また、政府がバスに乗りおくれるのだ、このバスには乗らないのだということをおきめになったとしたならば、き然として乗りおくれられるように、ひとつお願いをしたいと思うので、私の質問、これで終わります。
  32. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  33. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 速記を始めて。それではきょうの質疑はこれで終わります。   —————————————
  34. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 次に、日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件  千九百六十二年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件  千九百六十二年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件  以上三件を一括議題といたします。政務次官の御説明を願います。
  35. 毛利松平

    政府委員(毛利松平君) ただいま議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、第四十三回通常国会及び第四十四回臨時国会提出されましたが、いずれにおいても審議未了となったものであります。  わが国は、アメリカ合衆国との間に領事に関する事項を規定するための領事条約締結につき交渉を行ないました結果、昭和三十八年三月二十二日に東京で、大平外務大臣とライシャワー駐日米国大使との間でこの条約の署名が行なわれた次第であります。  この条約は、本文二十七カ条からなり、これに条約と不可分の議定書が付属しております。その内容は、派遣国が接受国において領事館について享有する特権免除、領事が接受国内で享有する特権免除、領事館において事務的、技術的職務を行なう領事館職員の特権免除、接受国国民である領事及び領事館職員の特権免除等についての規定のほか、領事館の設置、領事の任命、これらの通報、領事の職務範囲、認可状交付の手続等に関する事項についての規定を設けております。  日米間のように領事関係が複雑多岐にわたるような場合には、その領事関係を一般の国際法及び国際慣行によってのみ律することとせずに、二国間において領事館及び領事の特権を各事項について具体的に取りきめておくことは、相互に利益となるものと考えられます。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百六十二年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  コーヒーの生産は一九五〇年代の半ばごろより世界的に過剰傾向が顕著となり、その国際価格も一九五四年以降下落の一途をたどっております。かかる事態に対処するため一九六二年七月から九月にかけて開催された国際連合コーヒー会議で採択されたのが本件国際コーヒー協定であります。  この協定の骨子は、コーヒー輸出国に対し輸出割り当てを課すことにより、国際流通面において供給を需要にできる限り近づけ、その価格を安定させようという点にありますが、輸出国はさらに生産及び在庫についても規制を受けることとなっております。他方、輸入国は、輸入量及び輸入価格について具体約に制約を受けることとはありませんが、原産地証明書及び再輸出証明書制度の実施、及び一般的にコーヒーの取引に対する障害をできる限り除去するよう努力すること等によって協定の目的の達成に協力することとなっております。  この協定わが国のコーヒーの貿易に直接に影響するところは必ずしも多いとは言えないのでありますが、わが国の参加は、世界的に急務となりつつある貿易を通ずる低開発国の援助及び一次産品問題の解決についてのわが国の積極的態度を明らかにするゆえんであると考える次第であります。この協定は、ブラジル、コロンビア、グァテマラ等二十六の輸出国及び英、米、独、仏等十五の輸入国の受諾を得、一九六三年十二月二十七日に効力を生じました。なお、本件は、去る第四十三回通常国会におきまして、先議の参議院を通過いたし、衆議院におきまして審議未了となったものであります。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、「千九百六十二年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国は、一九四九年の国際小麦協定以来、累次修正、更新されてきた小麦協定に、継続して加盟してまいりましたが、一九五九年協定は一九六二年七月三十一日に失効いたしますので、これにかわるものとして一九六二年の国連小麦会議で作成され、同年七月に効力を生じましたのが、この一九六二年の国際小麦協定であります。  協定の骨子は、小麦について一定の価格帯を定め、加盟輸出国は小麦の相場が高騰しても協定の定める一定数量までは最高価格で加盟輸入国に売り渡す義務を負い、他方、加盟輸入国は、自国の小麦必要量のうち協定の定める一定の割合だけは加盟輸出国から価格帯内の価格で買い入れる義務を負い、かようにして、加盟国の間において小麦の取引価格の安定と需給の調節とをはかろうとするものであります。  この協定は、一九五九年の協定をほとんどそのまま踏襲したものでありますが、改正点のうち、主たるものは、価格帯が十二・五%引き上げられたこと、加盟輸出国から加盟輸入国が買い入れなければならない小麦の右輸入国の小麦輸入総量に対する割合が変更され、わが国については、一九五九年協定のときの五〇%が八五%に引き上げられたことであります。  わが国は、この協定に加盟することによりまして、安定した小麦の供給を確保するとともに、さらに、小麦の国際貿易の安定した拡大にも寄与し得る次第であります。なお、この協定は、去る第四十三回通常国会におきまして、先議の参議院の承認を得たのでありますが、衆議院において審議未了となったものであります。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  以上三件について、何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  36. 黒川武雄

    委員長黒川武雄君) 以上で説明は終りました。  本件の質疑は、後日これを行なうことにいたします。  それでは、本日はこれをもって散会いたします。    午前十一時二十四分散会    ————————