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参考人(
鈴木隆夫君) 私のほうの
科学技術関係資料の収集と
利用がどういうふうになっておるかということについて主として御説明申し上げたいと思っております。
申し上げるまでもなく、
国立国会図書館は、内外の諸
文献を広く集めまして、国会はじめ行政及び司法の各
部門はもちろんのこと、一般公衆の
利用に供することを使命として設けられ、これがために内外の資料の納入とか購入とか寄贈とか交換とか寄託等の方法によって、つとめて網羅的に収集し、その収集資料の効果的
利用のために目録とか索引の作製につとめてまいっておるわけでございます。
また
調査研究に必要なあらゆる
情報を収集し、職員みずからもまた常に
専門的知識の涵養につとめまして、国会並びにその他の
利用者の
調査研究に資することをもって創設以来今日までの最大の任務といたしておるわけでございます。したがいまして、
科学技術資料の整備につきましても、この線に沿って努力をいたしてまいったのでありますが、昭和二十七年の六月に、衆参両院の図書館運営
委員会におきまして「産業
技術上における有用性が
世界的に認められているPBリポートを
国立国会図書館において整備し、一般の
利用に供するようにし、政府もまたこれに必要な
予算上の措置を講ずることを
要望する」というような決議が行なわれました。そこで当館といたしましては、PBリポートの整備につとめますとともに、
国内における
科学技術資料の画期的収集をはかり、また、その
利用を促進するために
雑誌記事索引の刊行を試み、さらに海外における
科学技術関係の資料の収集に必要な
調査をも実施してまいってきております。
次いで、
科学技術の
振興ということが国策として重視されるに及びまして、行政各省庁間においてもこれに伴う諸計画が進められるようになりましたが、
科学技術に関する
情報の提供について、
関係各機関の業務の調整の必要が生じまして、ことに、ただいまここに議題になっております
科学技術情報センターの設立をめぐってこのことが痛感され、
関係各機関当局の間で協議決定された点は、「将来設置される
情報センターは、
科学技術に関する図書、
雑誌については
国立国会図書館のものを
利用し、やむを得ないものを除いて収集の重複を避ける」ということでありました。また、昭和三十二年の一月には衆議院の議院運営
委員会におきまして「
科学技術関係文献整備に関する決議が行なわれましたが、その要点は、「一、
科学技術関係文献は、
国立国会図書館に集中統一的に収集し、各省庁及び
関係研究機関はこれを
利用すること。二、
国立国会図書館は、右の使命を達成するために必要なる
文献を収集し、これが活用に必要なすべての措置を講じ、わが国の
科学技術振興の目的完遂につとめること。」ということでございました。また、同年四月参議院の商工
委員会及び同年五月の参議院議院運営
委員会におきましては、
科学技術関係資料の収集及び
利用について、わが国のとるべき方針並びにその体制等について熱心な討議が行なわれまして、
国立国会図書館に対しましては、「内外の
科学技術関係資料並びにこれに関する
情報をつとめて網羅的に収集し、その
利用については、
研究機関、
研究者を初め広く一般国民を対象として迅速適確を期するように」との御
要望があったのであります。また、同年に制定されました
日本科学技術情報センター法の第二十四条には「
情報センターは、その業務を行うに際しては、できる限り、
国立国会図書館その他
関係機関の
文献及び資料の
利用を図るほか、
関係機関と緊密に協力しなければならない。」という規定も設けられております。
右のような経過を経まして、当館では国会の強力な御
要望と御支援のもとに、大蔵省と
予算の折衝をいたしました結果、昭和三十六年度を初年度とする
科学技術関係資料整備三カ年計画が認められまして、昭和三十六年度に八千七百五十万円、三十七年度に一億一千五百万円、三十八年度に一億二千万円の
科学技術関係資料購入費が計上され、さらにこの間、人員につきましても六十名の増強が行なわれたのでありました。当館では、この
予算的裏づけによりまして、現在次のような種類の外国資料を保有するに至っております。
その概要は、
関係分野の基本的
文献及び
参考図書等のほかに、PB及びADリポートが十七万件、航空宇宙
関係資料が一万三千件、外国官庁の出版物が四千件、主要外国の学位論文一万四千件、ソ連圏
文献英訳リポート五千件、特許
抄録が五種、それから工業規格が五種、それから
科学技術関係の
雑誌が一万種、その他各国原子力
関係資料が八万件でございますが、これがおもなものでありまするが、これらのものは購入によるほか、アメリカの原子力
委員会、国際原子力機関、あるいはカナダ政府、
世界保健機構、ランド・コーポレーション、国際連合、ヨーロッパ共同体等の寄贈または寄託によるものが多量にのぼっております。これらの収集資料の迅速適確な活用をはかるため、書誌類としては「原子力資料月報」、「
技術文献ニュース」等の月間
速報を初め、各種の目録を刊行して全般的広報につとめ、これらを学界、産業界等に配付いたしております。
このような目録や書誌類の刊行、広報等によって、
利用は逐年増大いたしまして、
雑誌を除き、PBリポート、ADリポート等の特殊資料の
複写が、現在では年間約百十万ページ、閲覧者が一万五千人、貸し出しが一万六千件にのぼっております。
複写の件数のごときは、十年前においては年間約十万ページにすぎませんでしたが、これに比べますと、今日では約十倍余りに増加しているわけでございます。また、地方における
科学技術資料の
利用、ひいては産業開発に貢献するために、全国十カ所に地区
科学技術資料館を設けまして、当館から
複写資料を貸与いたしております。
昭和二十七年から本年度末までに
科学技術資料の整備及び
利用のために充て得ました
経費は六億九千百三十四万円で、これに三十九年度の一億一千二百九十六万円を加えますと、全体では八億円をこえ、七十八名の職員が二の業務に現在は従事しておるわけでございます。
利用につきましては、さきに述べましたように「
研究者及び一般公衆に対して公開によって広くかつ迅速適確な奉仕をすること」をモットーといたしており、この点、
専門家ないしは事業体等を対象とした有料制による
情報の提供を主とする他の機関あるいは一機関
関係者のみの
利用を原則とする奉仕体制とは大きな違いがあるわけでございます。したがいまして、この
分野の
活動におきまして、他の機関との間に、ことに
情報センターとの間にむだな重複や摩擦は起こらないものと考えております。しかし、周知のように
科学技術の
進歩が著しく、
関係資料の増加は量、質ともに驚くべき勢いであり、これらのうちから有効なものを集め、迅速な
利用に供することはきわめて困難なことでありますので、私は
科学技術資料整備審議会を設けまして、これは茅
先生を初め、
大学、
研究機関、事業体等の
——ここにおられます丹羽
先生にもお願いいたしておるわけでございますが
——権威者から資料の収集、
利用について種々御
意見を求めるとともに、この
分野の
専門的知識や経験の深い職員の確保にもつとめてまいっておる次第でございます。
なお、迅速正確な資料の検索の
重要性については、さきに参議院の商工
委員会でも指摘されたところであり、また、さきの審議会からの答申にもあったのでありまするが、外国ではすでに機械検索が部分的には実用化されておる状態でございますので、私はこれらの事情を考慮いたしまして、資料の機械検索ということを、今後における大きな目標としてその方法を
研究し、必要な措置を講じまして、資料の収集と相まって、その
利用に万全を期してまいりたいと考えておる次第でございます。