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説明員(
石原米彦君) もう少し詳しく御
説明申し上げます。
まず最初に申し上げますのは、これは、さいぜん申しましたように、
組合と
折衝中の段階でございます。もちろん、
当局といたしましても、
人命の尊重をはじめとしまして、安全を守ることにつきましては絶対に最
重点を置いております。また、
組合としましても、この安全の問題につきましては、
組合とか
国鉄当局とかいう差別なしに、ともに最
重点の問題だということを十分に
考えておりますので、その観点に立ちまして
折衝することになります。したがいまして、これは
当局案でございますので、
最終決定ではございませんわけでございます。
次に、一人
乗務と二人
乗務という問題になりますと、現在一人
乗務と二人
乗務と申しますのは、たとえば
横須賀線の
電車あるいは
通勤電車といったようなものは一人
乗務ですでに長年
——横須賀線の
電車などはどのくらいになりますか、二十数年やっております。特に一人
乗務なるがゆえに、あるいは二人
乗務なるがゆえに、
事故が多い少ないという問題は、きわ立ってはおりません。要するに、
作業的に一人でやれるか二人でやれるかということが主体になると思います。
それから、
新幹線につきまして、現在の
電車輸送との大きな差異について申し上げますと、従来
乗務員の責めに帰します
事故が生じますのに、やっぱり
最大の問題は
衝突事故が起こるということが、これが何といいましても一番
心配の大きな問題でございますが、これは前々から御
説明をいたしましたように、
自動列車制御装置が全部のもとになっておりますので、この制動に関しましては、たてまえといたしまして、
列車の
停止位置をきめるところ以外は
乗務員は
ブレーキ・ハンドルを平常扱わなくてもよろしいたてまえになっております。そういうふうな点からいたしまして、
作業上特に二人おりませんと
仕事にならぬ、あるいは危険であるという問題は、これは全くございません。
それから、現在の
列車運行上
最大の弱点になっておりますのは
踏切でございます。また、
信号が
地上信号になっておりますので、
天候条件の悪いとき、たとえば霧がかかるとか、豪雨が降るとか、雪であるとかいうときに、
信号が十分に見えない、あるいは見違えるというような問題がございます。しかし、それらがすべて
地上信号が
車内信号になりまして、
運転室内に表示されることになっておりますので、これも見違えることがございません。
もう
一つ、従来の
鉄道の
運転士、
機関士の
仕事で一番大きな問題は、完全に独立しておりまして、駅に着く以外には何らの打ち合わせができないという点が非常に問題だったわけでございますが、今度は各
運転室内に
中央指令所との
直通電話がついておりまして、たとえば
運転士の疑義であるとか、あるいは指示を仰ぐ問題とか、あるいは
気分が悪いといったようなことももちろん入ると思いますが、これは
スイッチを
一つ押しますと直ちに
運転室が呼び出されるわけでございます。そして、
中央指令室には、
運行上の
専門家ばかりでなくて、たとえば
車両についての
専門家、そういうほうの
指導官なんかもありまして、直ちにそれに対して、たとえば
車両のこういう
故障らしいものが起こったというときには、それはこういうふうにしてみろというようなことの
指導ができるようになっております。そういう
設備的な問題は、たとえて申しますれば、ちょうど隣の部屋に
専門家がついているのと実は同じような形になっているのでございます。
さらに、これらの
保安設備につきましても、これはまだ御
説明しておりませんでしたか、従来の
保安設備に対しまして、非常に高度の
安全度を保つように、つまり
保安設備自身が
故障を起こさないように、従来とはけたの違う考慮をしておるのでございます。たとえば、
一つ一つの
機器に
十分注意をいたしますとともに、特に重要な
継電器——リレーなどにつきましては、これは事前に検査をすることが困難でございますので、重要な部分は全部
二つ取りつけまして、一方が
故障を起こしますと、
〔
理事谷口慶吉君
退席、
委員長着席〕
自動的に切りかわるというようなことになっております。これは送るほうの
リレーについてそういうことになっておりますが。今度は
信号を受けるほうの
リレーにつきましては、
故障があって受けられないのか向こうから
電波がこなくて受けられないのかわからないことになりますので、これは
専門語で申しますとツー、アウト・オブ・スリーと申しますか、
三つのうちの
二つという
方式を用いまして、
リレーを
三つつけておりまして、受けました
電波が
二つ同じものを受けたものを採択してこちらに取り入れるという
方式をとっております。つまり、
二つの
リレーが同時に同じ
故障を起こす以外には間違いが起こらない。ふだんは
三つが
三つとも同じ
動作をしておりますが、
一つが間違った
動作をしておりましても、他の
二つが正しい
動作をしておりますれば、それに合わさって
二つのほうを選択するという、ツー・アウト・オブ・スリーという操作をいたしております。これは
安全設備といたしましては最も厳格な
設備にいたしております。
もう
一つ、
信号保安の原則といたしまして、これは現在の
信号でも同じでございますが、すべてフェイル・セーフという
専門語を使っておりますが、「間違いは
安全側」とでも申しますか、その間違いは
安全側というのは全部の
保安設備につきまして厳格に使っております。つまり、これは
機器でございますから、間違いが絶対にないということは期し得られないのでありますが、間違いが起こった場合には必ず
安全側のほうの間違いということでございまして、たとえば
信号が青になるべきときに
故障が起こって赤になることはあっても、赤になるべきときに間違いがあって青になることは絶対にないということでございます。これは場合によりましては
一つの
信号のお値段が五倍、十倍になるようなこともあるのでありますが、しかし安全にはかえられませんので、非常に厳格に、いま申しました
二つの
リレーの切りかえ、あるいは
三つのうちの
二つとか、あるいはいまの「間違いは
安全側」といったようなのを厳格に使った
設備にしておるのでございます。
それで、それならば
ロボットを使えばいいじゃないかというお話でございますが、これはまだ少し極端になるのでございまして。
人間と
機械とを比べてみますと、平常同じいつものことをやっておりますのには、率直に申しまして
機械のほうが
信頼性があるのでございます。これは、ただいま申しましたような安全的な配慮を講じましたもので、
保安設備でございますと、平常の
作業につきましては、これは率直に申しまして
機械のほうが
信頼性があるのでございまして、これは間違いというものがほとんど起こり得ないようにつくりまして、しかも間違いがあれば
安全側が間違いである。ところが、人というのはその点、三百六十五日働いておりますときに、たとえば青のものを見ましても、ちょっと赤だと間違える、あるいは
ブレーキをかけてこのぐらいがよろしいと思ったけれ
どもそれは
ブレーキが違ったのだということがあり得るのでございますが、
信号はさいぜん申しましたようなことで見違えるということは絶対ございませんし、もし間違いが起これば、それは青を赤と間違えることしか起こり得ないことになっております。それらの点から
考えますと、それは率直に申しまして、人よりも、平常
作業につきましては、
機械のほうが
信頼性が強いわけでございます。しかし、それじゃ
人間は要らないのかということになりますと、これは実は極端なことでありまして、何か異常の事態があったというような場合には、これはやはり
機械ではいけませんわけで、何らか異例の事象につきましては、これは
人間の
判断が要りますし、また、たとえば
故障が起こったとか、どうしようかというような場合に、
機関士自身の
判断だけではなかなかむずかしいし、
駅間距離が平均五十キロメートル以上ございますので、駅と打ち合わせることもできませんので、さいぜんも申しましたように、
中央指令とは直ちにつながるということになります。これは、
スイッチ一つ押せば直ちに
運転指令が出てまいります。そうしてさらに、
運転指令を通じまして必要なら駅であるとか
保線係員とも
連絡をとることができます。逆に申しまして、
保線係員あるいは
電力係員が線路上を警備いたしておりまして、問題がありますときには、五百メートルおきに
電話ボックスを置いておりまして、それによって直ちにこれも
スイッチ一つで
中央指令が出ます。その
中央指令を介しまして必要な
運転士とも打ち合わせることができるのでございます。なお、
車内につきましても、
運転士と
車掌室とは
電話で常に
連絡がとれるような
状態になっております。それで、
ロボットでよろしいということでは決してないのでございますが、日常のきまった
作業は極力
機械にまかせて、人の
判断ではやらないようにする。これは航空機の最近の趨勢な
ども、大体そういう方向に進んでおると思います。それから、
人間は
人間でなければ
判断のできない異常の
状態その他につきまして
考えるということでございまして、すでに、
前回も申し上げたと存じますが、一昨年の六月からモデル線におきまして二百キロ
運転をやっておりまして、
乗務員をそのときから養成をして、養成した
乗務員は一応現場に帰す。これは
運転士も
車掌も保守要員も同様でございますが、そして開業になりますれば、開業間近になりまして
車両がそろってまいりますと、また
新幹線のほうに戻してくるという形にしておりまして、
乗務員も十分にこの
車両に対する
経験も認識もできておるわけでございます。その認識の上におきまして、はたして一人
乗務では、いろいろな場合を想定いたしまして、絶対安全を確保するという点について抜かりのあるものがあるかないかということは、これは
当局側も、御指摘もございますように、何をおいても最
重点を置いて
考えなければならないものであると存じますし、これは労働
組合においても全く同様だと存じます。その十分な認識の上におきまして、安全を
最大の使命と
考えまして、十分に
折衝を重ねてこの
乗務員問題並びに勤務条件というものはきめることになっておりますので、これがただいま
折衝中の段階でございますので、御
心配になりますような欠陥ということは絶対にないようにいたす所存であります。