○国務大臣(田中
角榮君)
鉄道建設公団法がつくられた
趣旨は、
運輸大臣から十分御
説明があったと思います。これを運輸省から持ち込まれて、私
ども運輸大臣との間に合意に達してこの法律案を提案しようとした真意はどこにあるかということをこの際ちょっと申し上げておきたいと思いますが、鉄道に対しては、年々大きな
予算要求がありますけれ
ども、財投のワク等の関係上、なかなかそう思いどおりにもできない。鉄道というのは一体これでいいのかという
考え方に掘り下げてみたら、これでいいとはだれも思っておりません。
昭和二十七年から十年以上、道路整備五カ年計画は四回の改定が行なわれて、今度四兆一千億になっているというにかかわらず、鉄道というものに対しては、
予算の許す範囲内、と同時に、独立採算制が強く戦後
要求されているというわけで、鉄道の経営は非常に苦しいというわけであります。私たちが
運輸大臣との間に話をしましたときに、鉄道
新線建設審議会の
建議もありましたので、これらを十分検討しましたときに、やはり
日本は、道路、内国航路、それから鉄道、この三位一体になって
国鉄輸送網の強化ということを新しい観点から検討しないと、これはたいへんになる。特に、鉄道というものに対しては、鉄道会計から見ますと
赤字が出ますけれ
ども、道路は無料公開の原則でありますから、道路の投資後の
計算というものは出てこないわけであります。でありますから、道路は必要であるけれ
ども、鉄道は
赤字が出る。
赤字線は
政治路線だとすぐきめつけてしまう。これは、明治初年から九十年の鉄道の歴史を見ますと、
日本の鉄道の総延長が発展してきたのとほぼ並行して
日本の
経済が発展してきているわけであります。でありますから、時代も違ったし、いろいろな条件も違ったけれ
ども、本州のまん中に山岳地帯を持っている、狭いけれ
ども特殊な地形、地勢上、気候上の中にある
日本全体の交通網の整備を考えるときに、やはり鉄道というものは新しい立場で検討する必要がある。私はそのときにいろいろ考えて、一級、二級国道や、主要指定
地方道等五万キロまでは、これは
幹線として必要である、五万キロ以上の道路整備というものを考えるときに、鉄道と道路はやはり比較しなければいかぬ、道路の維持修繕費と、それから鉄道会計で出る
赤字というものはどういうふうに一体なるのか、財政当局としては当然
経済計画をすべきである、という
考え方に立っていろいろな面から検討した結果、鉄道も重要である。鉄道もあわせて検討すべきである。今度は
所得倍増計画の五カ年計画の、残余の五カ年分につきまして
経済審議会に諮問をしているわけであります。
でありますから、このときには、当然、
昭和四十五年を目標にした場合に、道路が幾ら、道路は四兆一千億ということでできました。なお、それに対して、港湾五カ年計画を少し待っておりますのは、三十九年度を起点にするけれ
ども、待ったのは、いい加減な状態できめたくない、やはり港湾で持つものは幾ら、道路はきまっておりますから、そうすると、残るものは鉄道輸送になるわけであります。でありますから、そういう
意味で、鉄道の五カ年計画もそこでできるものだと私は理解している。そのときに、鉄道に一般会計から入れたり、いろいろな借り入れが一体できるかというと、世銀の例もありますと一おり、どうもなかなかむずかしいのです。ですから、鉄道が負担しなければならないというふうに現行法で規定しております。いいも悪いもかかわらず鉄道が
新線建設をやれと言っておっても、過去において年間千キロも
新線建設が行なわれたものが、戦後一番悪いときには百キロ割っているというような状態も、
国有鉄道に
新線建設を行なわしめて、その上に公共負担も押しつけ、新設
建設もやらせるというのは不可能なことでありますから、全然
別個なものにしましょう、形を変えれば鉄道の分割案もあったわけでありますから、こういうものに対応して、
新線建設公団をつくって、改策目的
——地域
開発とか、産炭地振興とか、それから新産業都市
建設とか、港湾都市
建設法とか、こういう国土
開発計画に合わした鉄道
建設をやるには、どうしても他の事業的な事業団が必要だということで反対がありましたけれ
ども、
鉄道建設公団の設置に踏み切ったわけであります。
ですから、今度もそのくらいの勇気をもって踏み切ったならば、百億以下では不足だろうという議論でありますが、これは去年お通ししてくだされば、もう少し大きくなったと思うのですが、とにかく、去年の発足がことしになりましたので、二年分の金を使うということにもなりますし、
予算の上一では九十五億ということであります。去年のだったら七十五億。
法案を御
審議願ってるだけでも二十億よけいに出したわけでありますから。私は、これから七十五億や九十五億でやれるとは考えておりませんし、これは国民全体が、いまでも二十億ふやしても、
赤字の
政治路線につぎ込むのだという議論が多いときでありますので、あらゆる四囲の情勢を勘案しながら、財投、
出資あわせて二十億ということに踏み切ったわけです。これが道路と同じウエイトをもって、鉄道の
新線を九十年昔の先人が考えたのと同じ
考え方でやるべしということになれば、当然そこに年次計画ができるわけであります。でありますから、いまの九十五億ぐらいの、そこばかり見ておられないで、この
法案を一日も早く通してもらうことによってやれるのだ、こういうふうにひとつぜひお願いをしたいと思います。
それから、その鉄道に出しておる九億余の
新線建設費に対する補助でありますが、これは
昭和四十年で時限立法として廃止になるわけであります。私はその
意味において、議論の存するところでありますが、
鉄道建設公団の新設を契機にして、鉄道が出しておる七十五億に対するわずか十億弱の利子補給などというものは、きれいさっぱり私はやめてしまって、そして鉄道がいやでも応でも
建設しなければならぬものを、
新線建設公団が新しい視野、立場に立って
建設をして、それはだれが運営するのでもない、
日本国有鉄道が全部それを運営するわけでありますし、特に無償で貸しつけるという大きな制度を開いておりますので、私は、
政府がいま考えておりますように、
新線建設の出
資金として出す七十五億程度のものに対する一般会計からの補てんは打ち切りたい、打ち切るべきであるという
考え方を持っておるわけであります。