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1964-02-25 第46回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十五日(火曜日)    午前十時九分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       荒木萬壽夫君    宇野 宗佑君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       古井 喜實君    古川 丈吉君       石野 久男君    岡田 春夫君       野原  覺君    山花 秀雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房長会         計課長)    谷  盛規君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君         外務事務官         (情報文化局         長)      曽野  明君         外務事務官         (移住局長)  白幡 友敬君  分科員外出席者         外務事務官         (欧亜局東欧課         長)      都倉 栄二君         通商産業事務官         (通商局輸出振         興部長)    谷敷  寛君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   石田  朗君     ――――――――――――― 二月二十五日  分科員古井喜實君及び河野密委員辞任につき、 その補欠として宇野宗佑君及び野原覺君が委員長  の指名分科員に選任された。 同日  分科員宇野宗佑君及び野原覺委員辞任につき、  その補欠として古井喜實君及び河野密委員長  の指名分科員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算外務省所管      ――――◇―――――
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  この際分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられた方は三十分程度にとどめることになっておりますので、特段の御協力を願います。  なお政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく、簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げておきます。  昭和三十九年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野分科員 大臣にお尋ねいたします。  新聞によりますと、これは昨日の新聞などでございますが、韓国のほうのいろいろな情報によりますれば、三月上旬までに日韓会談漁業交渉妥結させる、このようなことが伝えられておりますし、四月中旬まての間にその他のものもおよそ妥結させる。特に漁業交渉は三月上旬までに妥結に持ち込むということを、今度表義煥大使あたり帰りまして韓国政府連絡会議の中でそういうようにきめた、こういうふうにいわれておるわけです。三月上旬といいますと、もうすぐでございますが、おそらく韓国の側でそういうような話し合いができたということについては、およそこちらのほうでも、わが政府のほうでもそういうような話し合いの段取りがついてのことだろうと思いますけれども、こういう情報に対して、いま日韓会談の進みぐあいはどういうふうになっておるのでありましょうか。およそそういう事情についての最近の事態をひとつ大臣から御説明願いたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 御承知のように、いまの日韓会談漁業問題を話題として取り上げて、専門家レベルで話を鋭意詰めておる段階でございます。私どもといたしましては、内容が合理的でかつ妥当であれば、早いのにこしたことはないと考えておりますが、問題は内容にあると思って鋭意検討を進めておる次第でございます。三月上旬の問題等、そういう問題は私どもの関知しないところであります。
  5. 石野久男

    石野分科員 これはまあ韓国側情報でありますからですが、しかし向こう外務大臣記者会見での話によりますると、およそ漁業交渉は三月上旬までに妥結させる見通しがある、向こう情報ではこういっているわけです。それから残りの懸案、法的地位などは四月上旬、おそくとも中旬までに日韓問題全般の合意に達する、五月中旬までには調印に持ち込むというような、そういう見通しのもとに韓国側態度をきめた、こういうふうに出ておるわけです。しかし御承知のように漁業交渉双方ともにまだまだ問題点がたくさんあると思う。しかし韓国側がこういうような見通しを立てるについては、日本の側でもそういう態勢があるものと思われるので、いまひとつそういう問題についての政府考え方を聞かしていただきたい。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 いまは、先ほど申しましたように、専門家の間で鋭意問題を詰めておる段階でございます。韓国のほうで報道されるように妥結をお急ぎになっておるということでございますれば、先方から合理的な妥当な御提案があることを私どもは期待いたしておるわけでございます。私どもといたしましては、事柄が、内容が大事だと思っておりますので、妥当な内容のものに煮詰めたい、それもできるだけ早くいたしたいという気持ちに変わりはないわけでございますが、いまから先方の建設的な御提案を期待しておるという状況でございます。
  7. 石野久男

    石野分科員 漁業交渉の行き詰まっている原因は、およそ対島、済州地域におけるところの規制の問題あるいは基線引き方であるといわれているのですが、しかし情報によりますると、表義煥代表はそういう問題について日本の側での譲歩は期待されるというように新聞の報道はされておりますけれども政府にはそういうような用意を向こうのほうには内意を伝えておるのですか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、水域の設定という問題はひとり日韓だけの問題でなくて、第三国との関連も出てまいります。したがって、国際的な慣行というものを尊重するということで問題を処理いたしたいという基本方針に私どもは変わりはないわけでございます。いろいろ一々交渉の詳細の内容につきましては、ただいま交渉中でございますので、あれこれと申し上げるようなことは差し控えたいと思いますが、やはり基本方針はそういう方針を踏まえて鋭意詰めておるという段階であります。
  9. 石野久男

    石野分科員 基本方針を変えないということは、いわゆる専管水域の問題、あるいはまた共同規制地域におけるあるいは専管水域におけるところの法理的な問題、そしてまた線の引き方、こういうふうな問題、特に線の引き方の問題では、特にこれは日本漁労者に対しても非常に大きな影響が出てくるわけでございますから、そういう問題、あるいは漁獲量出漁隻数の問題について、向こう側言い分と当方の日本の側の言い分との食い違いがあるわけですが、そういう問題について日本の側で極力韓国側言い分を聞くというような、そういう態勢を持っておられるということなんですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、専管水域をどのようにきめるかとか、したがってまた共同規制水域をどうきめるかというような問題は、これはぞんざいにできないわけでございまして、国際慣行というものを踏まえて、第三国が見てもおかしくないということに相ならないといけないと私ども考えております。ただ、あなたが言われた後段の問題で、漁獲量とか隻数の問題とかいうような問題がございまするが、これは朝鮮水域における資源状況というものを見なければいけませんし、私どもいつも申し上げておるとおり、この資源状況を頭に置いて、そして日韓双方漁業者が長きにわたって最大限の利益を享受できるような仕組みを考えなければならぬのじゃないかというように考えておるわけでございまして、その点につきましてはお互いの十分の話し合いが必要であると考えておるわけでございます。
  11. 石野久男

    石野分科員 そういう問題について表義煥の、新聞情報によります新聞記者会見なんかで言っておりますことばでは、こういうふうに言っております。これは東京新聞ですが、「行き詰まりの原因となっている対馬、済州付近水域規制問題、基線引き方など双方が多少譲歩することで最終的には歩み寄りができる。」こういうふうに言っているわけですね。これは相当問題がある。そのことと、最近政府与党、特に与党の側で早期妥結の空気が非常に濃厚であるということも言われておって、政府のほうでは、むしろこの機会政治会談のほうに持ち込んでいく。専門家の協議ということよりも、むしろ政治会談段階でそれを解決しようというような意向があるやに聞いておりまするが、外務大臣はそういう意向を今日の段階でお持ちなのでございますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 予備交渉レベルで、これも正式な全面会談でございますけれども、しかし煮詰まらない問題がございますれば、いわゆるわれわれのレベル話し合いに持ち込んでくるということは考えられるわけでございますが、いま私のところへ持ち上がってきていないわけでございます。いつ持ち上がってくるかという問題は予備交渉のほうの担当の諸君考えることだと思うのでございます。  それから早期妥結政治会談の問題でございますが、たびたび申し上げておるように、政治会談であろうと予備会談であろうと、問題は内容が大事なわけでございますから、政治会談において、内容をぞんざいにきめていいなんということはちっともないわけでございます。予備会談におきまして煮詰まらない問題は当然そういうことになろうと思いますが、ただそういう段階がわれわれのほうにまだきていないということでございます。いつくるかという問題は、予備交渉の煮詰めようだと思います。
  13. 石野久男

    石野分科員 いまの外務大臣の回答は、下からそういうものが上がってくるまでは待つという意味ですか。私の聞いたことは、いまの段階で、韓国の側は非常に早期妥結を急いでおられるようですし、特に政治会談として双方農林大臣の会合なども考えておるというようなことも伝えられておりますが、そういうような時期に大平外務大臣がどういうような判断をなさるかということを私は聞いておるのですから、下から突き上げてくるとかなんとかでなしに、現在の段階でそういうことをどういうふうにお考えになっているかということを私は聞いておるわけです。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国早期妥結への積極的な姿勢が出てまいりますれば、予備交渉においての煮詰めも早いと思います。しかし、先ほど申しましたように、予備交渉で煮詰まらない問題は、高いレベルで話し合わなければならぬことは当然でございますが、まだその段階に立ち至っていないということでございます。
  15. 石野久男

    石野分科員 韓国の中でそういう早期妥結の機運が出てくれば、政治会談段階に入ってくるという意見は、現在の段階韓国事情を見ていると、特は漁業の問題についての線の引き方平和ラインというものを死守せよという声が韓国の内部では非常に強い。おそらくその線は、韓国の側もやはりその国民の声にこたえて出てくるものと予想されるし、会談内容ではそういうものは出ているものだと私は思うのです。そうすると、そういう時点を踏んまえて政治会談に入っていくという理解をしてよろしいのですか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、専管水域をどうきめるかとか、共同規制水域をどうきめるかというような問題は、国際慣行を踏まえてやるのだという原則に立っておるわけでございます。それはひとり日韓間の問題ばかりでないということはたびたび申し上げているとおりでございます。いまあなたが提起された平和ライン云々の問題というのは、私が申しました基本原則に照らして御判断いただきたいと思うのでございます。その問題との関連において政治会談が持たれるとか持たれないとかいう性質のものでは決してございません。
  17. 石野久男

    石野分科員 いま平和ライン李ラインというものについては、基本の観念に基づいてお考え願いたい、こう言うのですが、日本の側では李ラインというものは認めない、われわれの側では李ラインというものは認められないのだという立場をとっていると思うのです。だからそういう立場で折衝していくということになれば、やはりあそこの問題をもっともっと――特に私たちの立場からすれば、この漁業権問題は日韓会談内容というよりも、むしろ李ライン問題そのもの日韓会談と離して国連の舞台か国際司法裁判のほうで問題とすべきだという考え方をわれわれは持っております。しかし現在の政府が折衝している段階では、日韓会談内容としているのですから、日韓会談内容としている以上は、この問題を取り扱うにあたって、わがほうが韓国の側で一方的に引いているそのもの前提として話し会いを進められるということではないと私は思っているわけなんです。だから政府がどういうような考え方を持っていくのか、韓国の側では李ラインといい、あるいは平和ラインというものは絶対に引けないのだというふうにわれわれは聞き及んでいるのですが、そういうものについては全然それとは別個な形で線を引くというようなことを政府韓国の側では話し合いをしているということなのか、そこらのところをもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 専管水域の問題とかそのほかの水域における共同規制の問題が論議されているということから御判断いただければ、石野さんの疑問は解消されると思います。
  19. 石野久男

    石野分科員 その意味は、私に解釈しろというのは、私の解釈では、いまの外務大臣お話は、李ラインとか平和ラインというものは全然考慮しないで話し合いを進めている、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども日韓の間の漁業問題はひとり日韓の間の問題ばかりでなく、これは第三国が見ておるし、第三国との関連においても考えなければならぬから、国際慣行というものを尊重してやるのでございますということを申し上げているわけでございます。そういうラインに沿って問題をいま両当事者の間で話をしておるわけでございます。したがって私どもとしてはそういう問題としてやっておるわけなのでございますから、いまあなたが言われるような問題を公海自由の原則の上に立ち、そうして国際慣行を尊重してやろうと私が申し上げておるわけでございますから、その点は御信頼いただいてそれで見守っていただきたいと思うのでございます。私が申し上げたことから、あなたは頭のよい方でございますから、十分御理解いただけるのではないかと私は思います。
  21. 石野久男

    石野分科員 国際慣行に従ってやっているのだから信頼をしなさい、こういうお話ですけれども現実にはやはりその問題でいろいろなもんちゃくが起きているわけです。将来も起きる可能性があるし、しかも韓国のほうでは――向こう新聞をごらんになればおわかりになることですけれども、どの新聞にも平和ラインを死守せよということが書かれているわけです。これは国内の朴政権に対する野党の側あるいはその他の強い要求になって出ていると思います。ですから日本の側からすれば、その平和ラインというものについては、将来どういう話があるにしても、現在の平和ラインというものはとても受けることができないという態度でいかないと、日本の漁民の権益を守ることはできないのだろうと私は思うし、また国際慣行上からいってもそういうことは許されないのだというようにわれわれは理解しておるわけです。しかし現実には、向こうのほうはそれを強く要求し、向こうの代表はそれを日本政府に対して要求しているものと思います。だから私の賢明な頭をもって考えてみましても、なかなかそれを判断できない。だからこの問題については、政府はほんとうに日本国民をだましたり、あるいは朝鮮の方をだましたりするということでなくやらないといけないと思うのです。そういう意味で私は平和ライン問題というのは、日本の側は基本的にはどういうようなかまえで交渉に当たっているのか、政府考え方をもう一度聞かしていただきたい。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 国際慣行に照らし、そして朝鮮水域における資源状態も勘案し、日韓双方漁業者が長期にわたって最高限利益を享受できるように、そして安心して操業ができるように、そういう状況を確保しないと漁業問題の解決というものはできないと私は思うのです。それからも当然御理解いただけると思うのでございまして、私どもは根本の前提といたしまして、国民納得がいくような解決をいたすのでございますということを、国会を通じてたびたび申し上げておるわけでございまして、あなたが言われるようなことでございますれば、国民の御納得はいただけませんから、私どももそういう徒労を長い間エネルギーをしぼってやる必要はないじゃないですか。当然じゃございませんか。
  23. 石野久男

    石野分科員 私が心配しているようなことであるならば、それは国民納得を得られないのだということになりますと、やはり私どもが正しく主張するような線を政府がやっておる、こういうように私は理解いたします。平和ラインというものは日本側としてはどうしても認められない、そういう態度交渉しているものというように理解いたします。  先ほど大臣は、韓国の側で早期妥結のそういう態勢ができてくれば、こちらもそのようなふうに持っていきたいというようなお話でございましたけれども、実はわれわれの聞くところでは、政府特に与党の側では、今国会中にこれを批准するというような態勢が非常に強いようであります。新聞によりますと、当の自足党さんの四役会議では二月十四日に、今国会中に批准をするというようなことをおきめになったようですし、それからまたいわゆる党人派実力者会議は二月の十九日に、今国会中にぜひ批准の決意を総理にさせるのだ、こういうふうな情報を承っておるわけです。鈴木副幹事長は、三月五日までには大綱の妥結のめどをぜひつけたいというようなことも言っているようでございます。そういうような態勢は、むしろ向こうの側で早期妥結という態勢ができたらどうするというのじゃなくて、政府自民党の側で特にそういうような態勢づくりをしておるやに思われるのですが、やはりそういうふうに進められておるのでございましょうか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 自民党側では、私が憶測するに、今国会国会対策上、日韓会談の結果が国会で上程されることになるのかならないのかということを、早く見当つけたいという御希望だろうと思うのでございます。私はそのお気持ちはよくわかるわけでございますが、先ほど石野さんにもお答え申し上げましたように、これはもっとも内容次第でございまして、内容がよければ早ければ早いほどいいのでございます。しかし内容が煮詰まらない場合に、何ぼ早くやれといっても無理な話なんで、私のほうではできるだけ早く合理的な内容でというように鋭意努力をいたしておるわけでございます。いい内容であるという前提に立てば、早ければ早いほうがいいというように御了解いただきたいと思います。
  25. 石野久男

    石野分科員 韓国側情報によると、特に丁外務大臣などの記者会見で見ますと、漁業問題は三月上旬までには大体妥結できるけれども、その他の問題、特に法的地位に関する問題等については四月の上旬または四月の十五日くらいまでにというような談話が出ております。私ども聞いているところでは、もう法的地位問題等についてはすでに話し合いがついておって、そうして漁業問題だけがうまくいかないのだ、こういうふうに聞いておったわけですが、韓国情報では、むしろ法的地位の問題はずっとうしろにずらしていくようなニュースが出ておるわけですが、実際に法的地位の問題については煮詰まっておるのですか、双方の側の話し合いは。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 最終的に煮詰まったところまでまだまいっておりません。これは請求権の問題も同様でございます。こまかい点はまだ煮詰まっていない点もあるわけであります。  問題は、いろいろスケジュールの話が出るわけでございますが、これはあくまでも先ほど申しましたように、早ければ早いほうがよい、しかしこれはりっぱな内容のものが前提であるというように御理解いただきたいと思います。どうせ国会に出れば石野さんはじめ皆さんに御審議を願わなければいけないわけですから、それだけのりっぱな内容のものにしたいと思います。
  27. 石野久男

    石野分科員 情報によると法的地位問題等に対する話し合い内容に対して、特に在日本朝鮮人諸君から非常に強い反対が盛り上がっておるようです。これはおそらく政府もよく御承知のはずだと思います。私がここに持っておるのは、大韓民団諸君韓日会談における在日韓国人法的地位要求を貫徹させようというようなことで、いわゆる煮詰まっておるといわれる要綱に対する強い反対意思表示が出ております。私は、この法的地位問題等は、日本人と朝鮮人との問題として、本来ならば平和条約の中で出てくるいろいろな話し合いの中ではっきりと解決しなければならない問題になっておるだろうと思いますから、したがって日韓会談妥結される在日朝鮮人に対する法的地位の十二分の解決点というものは、やはり双方納得のいくものでなければならない、こういうふうに思っております。大臣のところまでこういうような韓国側の、あるいは在日朝鮮人の方々の強い反対要求、要望とかいうものは、交渉の過程の中でお耳に入っておるかどうかわかりませんが、そういう問題について大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど一般的に原則的に申しましたように、合理的な内容のものでなければならないと思うわけでございます。私ども無理なことはしようとは思わないのでありますが、合理的な内容のもので、あなたがおっしゃるように、その内容に沿って両方で御了解が得られることを私どもは希望するわけであります。ただ細目の点に至るまで、まだ最終の煮詰まりにまで至っていないという段階でございます。
  29. 石野久男

    石野分科員 私はこの機会外務大臣にお尋ねいたしますが、先般の予算委員会の本委員会のときに、私は池田総理に、ラスク氏が来たときにお会いになったろうと質問しました。池田総理は非常に色をなして怒りまして、おれは会っていない、こういうように言われた。大平外務大臣が会ったんだ、こういうようなお話でございました。大平外務大臣ラスク氏と、先般のラスク訪日の際にお会いになったときどういうような話があったか、この際ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 主として話はフランス中共承認という事態の直後でございましたので、この問題、こういう新しい動きが出てきた段階におけるアメリカの考え方というものを詳しく聴取いたしました。私どもはその時点考えておりますことを申し上げたというのが主たる内容でございます。これはたびたびもう委員会でも御報告申し上げたとおりでございます。
  31. 石野久男

    石野分科員 フランス中国承認の問題についていろいろラスク氏から話し合いがあって、それの状況を聞いた、こういうお話ですが、しかしラスク氏が韓国を訪問されてわずか六時間ぐらいの間に、朴・ラスク共同声明というものを出しております。そのときに、ちょうどラスク氏がソウルに着きますと、バーネット次官補記者会見で、記者諸君から、東京で何をやったんだ、こういうふうに聞かれたら、まっ先に日韓会談をやった、こういうことを強く記者会見で言っております。だからその日韓会談の問題を相当程度大平外務大臣ラスク氏との間には話し合いがあったものと予測されますが、フランス中共承認関連して、おそらく日韓会談の問題のお話し合いがあったろうと思いますので、その事情を少しお話しいただきたい。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 ラスクさんとは私は過去十四カ月に五回お目にかかっておりますが、お目にかかるたびごとに日本とアメリカとの共通の関心の問題はいろいろ話が出ます。日韓会談につきましても、どういう模様になっていますかという話はときおりございますが、これはこのように進んでおりますということを御報告申し上げただけでございます。今回の御訪問のときには、日韓会談は特に話題になった記憶は私にはありません。これは純然たる日韓の間の二国間交渉でございまして、私がたびたび本院でも申し上げておりますとおり、日韓の間で、二国間の間で片づけるべき性質のものでございます。アメリカはこれに介入、するとかなんとかいう意図も全然ございませんし、そういう事実も全然ございません。その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。
  33. 石野久男

    石野分科員 ラスク氏が日韓会談の問題についてはあんまり話をしなかった、それは日本韓国との話し合いだから、こういうようなお話ですが、しかし韓国で六時間ぐらいしかいない間に、朴氏との間には非常に大事な共同声明を出していっているわけです。相当やはり関心は高いと思いまするし、当然韓国の側に関心が高い限りにおいては、やはり日本に対してもアメリカの関心は強いのだ、こうわれわれは想像しますので、外務大臣話し合いをした記憶はないというように言っても、それはなかなか納得できないのです。やはり話し合いがあったと思わざるを得ない。だからここのところをこれは外務大臣話し合ったに違いない。おそらくないというようなことを言ったって、だれもそんなことはほんとうにしないのだから、あったことはあったで、どの程度の話があったかということを率直に申し述べてもらいたい。いま(一)度ひとつ……。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 過去に何回も会いましたが、日韓会談はいまこういう段階にありますということを簡単に申し上げただけでございまして、何ら向こうから御意見もありませんし、私は別にアメリカに助言を求めようと思いませんし、アメリカもまたこれに介入しようという意図もありませんし、これは純然たる日韓の二国間交渉と私は考えているのです。米韓共同声明が出ましたようですけれども、あれは米国と韓国の問題でありまして、私どもは別に関知していないわけであります。
  35. 石野久男

    石野分科員 この際一応参考までにお聞かせいただいたほうが非常にいいと思いますが、ちょうどフランスが中国を承認したことによる話し合いラスク氏と大平外務大臣との間にあったようでございますが、その際ラスク氏は、フランス中国承認に伴って生ずるアジアの情勢の変化というようなものをどういうふうに見ておられるのでしょうか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 これはあのときに日米商工会議所のポリシー・スピーチで詳しく新聞の一面を飾るくらいに出ましたが、あれで委曲は尽くされておると思います。それから私ども会談内容につきましては、これは国会でこういうお話をあなたと私との話をひとつ報告したいからということで、これは了承を得ないと、お互いの話ですからこれはできぬと思いますけれども、私が申し上げられますのは、フランス中共承認という新しい事態に処してのアメリカの考え方というものはどうかということを詳しく承りましたということで御了承いただきたい。アメリカの政策というものは当日行なわれたポリシー・スピーチで非常に詳しく出ておりますので、それで御理解いただけるのじゃないかと考えます。私はアメリカの代弁者でありませんから、アメリカの政策を国会で説明する資格はないわけでございますが、念のために、あれはポリシー・スピーチに出ておりますということだけ申し上げておきます。
  37. 石野久男

    石野分科員 大平外務大臣はアメリカの代弁者じゃないからという、その点はよくわかります。ただどういうことかということを実は参考までに聞きたかったのです。この際そういうような話し合いの中から、大平外務大臣フランス中国承認という問題によって起きるアジアの情勢の変化、特に朝鮮におけるこの問題の受けとめ方というものをどのように見ておられますか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 朝鮮における問題ばかりでなく、アメリカの政策は不変である、ちっとも変わっていない。フランス中共承認という事態によって何ら変化が見られぬという印象です。
  39. 石野久男

    石野分科員 私はいまアメリカのことはもう聞かないのです。これはもう代弁者じゃないの、だから、大平外務大臣に聞いてもいけませんから……。私の聞いているのは、フランスが中国を承認したことによってアジアに情勢の変化が出てきているとわれわれは見ているのです。そのアジアにおける情勢の変化の中で、朝鮮においてはどういうような変化が出てきておると日本外務大臣である大平さんはごらんになっておられるか、このことを聞いているのです。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 お尋ねの趣旨がアメリカの対朝鮮政策に変化があったかという趣旨であれば、アメリカのほうには何ら変わったことはないという印象でございます。
  41. 石野久男

    石野分科員 大平外務大臣は私よりも非常に賢明な頭を持っておられると思うので、私の質問はわかると思うのですが、私はいまアメリカがどうかということを聞いておるのではなくて、むしろ情勢の変化を大平外務大臣はどのようにつかんでおられるのか、見ておられるのかということを聞いておるのです。韓国では……。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 フランスの動きが投げた波紋を、私はまだいま注視しておる段階でございまして、これがどの地域にどういう影響を及ぼしてまいるかということを、自信を持って申し上げる段階ではないと思うのでございます。一般的に申し上げますならば、この新しいフランスの動きが、どの地域にどういう影響を及ぼすかということを見定めるには、まだ時期尚早であるし、材料も不足であると思います。
  43. 石野久男

    石野分科員 私は大臣は非常に無責任なような気がします。情勢は非常に変わっておるし、世界がこのために非常な動揺を来たしておると思うのです。特にアメリカなどは、中国をフランスが承認したということによって、むしろ周章ろうばいしているのではないかというふうに思われますし、政府はいま吉田茂氏を台湾に派遣して、それに関連する台湾との話し合いどもさしているはずです。だからそういう情勢の変化に対して、まだそれを見きわめるのには時期尚早であるとか、材料不足だというようなことでは、国会に対して外務大臣は非常に無責任な答弁なように思う。外務大臣としてはもう少しはっきりと、そういう情勢に対する考え方くらいは質問に対して答えるべきだと思うのです。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 それは石野さんと私全然逆でして、問題を十分見きわめないで国会で軽卒な答弁なんかしたら、私は非常に国会軽視になると思いますから、十分事情を注視した上で答えなければならぬ。ただせっかくのお求めでございますから、ただいままで、一体それではフランス中共承認朝鮮地域に影響があったかと申しますと、いままでのところそういう徴候は見えない。言いかえれば、フランスは中共を承認したが、北鮮は承認するつもりはないということを外電は伝えておりまするし、北鮮を認める国が多くなっておる気配も見えません。したがっていまのところ、私はフランスのドゴールが投げた問題は、もう少しかすに時日をもってしないと、軽卒に評価ができないと思うのです。アメリカはたいへんな騒ぎじゃないかと言うけれども、そんなに騒いでおるようにも思えませんし、もう少し国際情勢を息長くして見たいものだと思います。
  45. 石野久男

    石野分科員 ものの見方の違いがありまするから、これはもうやむを得ないものがあるかもしれませんが、実際は、政府はこの問題を中心にして吉田茂氏を台湾に派遣するという問題も出ておることですし、周知の事実ですから、大平さんがどんなにのんびりものを見ようとおっしゃられても、世の中はそうは見ていないということは言えると思うのです。ここで大事なことは他の諸外国がどうかということよりも、むしろ私のいま尋ねている日韓問題の当面の問題である韓国、あるいは朝鮮において、中国をフランスが承認したということによって出てくる韓国内の情勢は、どういうふうに動いているかということを、むしろわれわれは知りたいわけなんです。私どもの見ておる韓国内の事情を見ますると、むしろこの際中国を承認したフランスの行為から、南朝鮮のほうでは朝鮮の統一のほうが先だ、いまはもう何よりも統一のほうが先だという空気が非常に強く出てきておる。こういう情勢に私どもは目隠ししてはいかぬと思うのです。現実に南朝鮮国会の中ではその問題が大きく出ておりまして、特に徐珉濠氏を先頭に立てて、朝鮮の統一の問題は非常に強く論議をかもしておるわけでございます。外務大臣、そういう情報が全然入っていないわけでもございませんでしょうし、これはまたそれ以前と比べればずいぶん情勢の変化もあると思います。こういう事情は全然お耳に入っておりませんか。
  46. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 若干そういう方面の情報も入っておりまして、たとえば韓国国会議員に対して、あそこの有力新聞が、統一問題に対してアンケートをいたしましたときの結果が、特に興味深いものがあると思いますが、統一問題につきまして私の記憶する限り、武力統一を主張しておる者は一人もいない。それから、同時に無条件で南北統一の話し合いをするということに賛成しておる者も一人もいない。問題は、国連監視のもとにやるか、あるいはそれ以外の何か国際的な監視のもとに、統一に関する会議をやる、これについては与党の中にも賛成者も一、二あるように記憶しております。
  47. 石野久男

    石野分科員 いま後宮局長の御答弁のように、韓国では、中国をフランスが承認したということによって、情勢の変化が出てきているし、むしろ統一の声は非常に強くなっておる。韓国国会の中には、統一問題の研究をするための会合を、外務委員会の中に設ける空気もすでに出ております。また一般にこういう空気がある。ある日、突然に国連で中共が承認され、加盟されるような事態があったときに、そのときの、朝鮮の南北統一の問題について、何らかのかまえをしなくてはいけないという空気が非常に強く韓国側に出てきております。日韓会談問題どころではないんだ、この問題のほうがもっと強いんだという空気が非常に多く出ております。こういう事情は、日本外務大臣はよく見ておかなくてはいけないと思います。最近では共和党の宣伝部長は、北朝鮮の経済の実態を、近いうちに韓国韓国なりにつかんでこれを公表する。そして韓国国民各位に、北朝鮮の経済の事情はこうなっておるんだということまで公表しておることを聞いておるのです。こういう空気というもの、いわゆる南北の統一を要求する大衆の声は、どうしても押え切れないものが出てきておるという実情、これは外務大臣、よく外務大臣が見ておかなくてはいけないと思うのです。そういう問題について外務大臣は全然お耳に入っておらないのか、もう一ぺんお答えをひとつ外務大臣からお聞かせ願いたい。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国事情につきましては、御指摘されるまでもなく、できるだけ詳細に情報を入手し、それを背景にし、判断してまいることは当然必要なことでございます。がしかし、これをどう処理するかの問題は、韓国政府の問題でございまして、日韓交渉をどう進めてまいるかという問題も、韓国政府が当事者でみずからの判断を持っておやりになることでございます。私ども政府を相手にして懸案を煮詰めておるということでございます。
  49. 石野久男

    石野分科員 日韓会談は、日本日本立場で、韓国韓国立場でやるのですから、それはそれでよろしいのです。しかし日本が相手にする相手方である韓国の内情がどういうふうになっておるかということを、日本が正しくつかまないでは、交渉はすみやかにいかないわけです。先ほどから外務大臣は、外交交渉は急いではいけないんだ、十分な資料を綿密にとってということはたびたび言っておられますが、やはり正しく相手方の事情を知るということをしないで事を運んだのでは、たいへんあやまちを将来残すことになると思うのです。韓国内部にそういう問題があるということは、この際外務大臣とくと頭の中に入れていただきたいと私は思います。  最近朴政権は選挙のときには、確かに大統領選挙では勝ちました。勝ったけれども、実質的には三分の一しか支持がないということの苦しみがまざまざと政治の中に出てきておるのです。しかも経済的には、私が先般申し上げたように非常に悪い状態にあります。外貨事情も非常に悪いのです。しかも生活条件か非常に悪くて、もうかわき切ったような砂をかむような生活の実情であるために、朴政権自身が自分の権力をどういうふうにして守るかということで真剣に考えておるのだ、われわれはそう見ておるのです。そういう立場からこの日韓会談というものを非常に急いでおる。日韓会談を急いでおるというのは、結局現在の外貨事情が非常に悪いし、経済の事情も非常に逼迫しておるので、ここでは何としても日本からくる、大平さんと金鍾泌さんとの合意になりましたいわゆる無償、有償五億ドルというその金を経済の立ち上がりの基礎にしようという考え方でH韓会談を急いでおる、われわれはそう見ておるわけなんです。大平外務大臣はどういうふうに見ておるか知りませんが、それが実態だと私たちは思うわけです。しかもそういう形の中でいろいろな経済行為が出ておりますから、私は、外務大臣はこういう朴政権の現在置かれておるその政治的な安定度というものをどのように見ておるかということについて、この際一度大臣からお話を聞かしていただきたい。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 他国の政治の安定度を申し上げることは穏当でないと思います。あなたがせっかく御指摘でございましたが、日韓交渉というのはもうこれ十年余りずっとやっておるわけでございまして、各種の懸案を合理的にどう解決するかという問題に腐心いたしておるわけでございます。ときに政権の消長がございますけれども、それだから日韓の間の懸案がなくなるわけじゃ決してございません。したがってこういう懸案はできれば早く解決するということは、われわれ政府与党が長年考えてきた問題であります。時の政権の消長によって右顧左べんすべき性質のものではないと私は考えます。
  51. 石野久男

    石野分科員 他国の政権の安定度をとやかく言うべきでないというその謙虚な気持ちはよくわかるのです。わかるけれども、しかし相手の国が国内で非常に不安定な度合いであるということにまた目を隠すこともいけないと思うのです。これはやはり交渉するのですから、少なくともどういう形になるか知りませんが、金、大平合意書というものによって、もし三億ドルの無償、あるいは二億ドルの有償というものが出ていくとすれば、これはわれわれの血税をもっていろんな話し合いを進めていくわけです。そういうときに相手方の政権の安定度というものを十分に見ないで交渉するということは不見識だと思います。やはりそういう意味では、私はわれわれなりに日本政府韓国をどのように見ておるかということをはっきりしておかなければいかぬと思うわけです。そういう意味で私は聞いているのですから、決して大平外務大臣を意地悪くあれこれつきとめようというような意味ではないのです。この点はやはりはっきりと国民の前に、政府はいま朴政権をどのように見ているかということについては明示すべきだと思う。なぜそういうことを言うかというと、先般自民党の国会議員団の代表として、これは四年ほど前になりますか、野田使節団が出まして、帰ってまいりまして、当時の張勉政権をどのように見ているか、きわめて安定している、張勉政権の安定度はむしろ日本の政権よりも安定しているということを実はこの国会の中でちゃんと言っている。それから四日目に朴正煕のあのクーデターが起ったわけです。そういうようなことではわれわれよりどころがなくなってしまう。それは政府与党はまた違いますけれども、やはり政府の側では、少なくともわれわれの側では、もう非常に朴政権が不安定な状態の中で動揺しているのだ、そういう事態を正しくつかんで交渉に入らないと、その場合またおのずから交渉態度も違ってくると私は思いますから、そういう点で安定度はどういうようになっているかということを聞いている。いま一度大臣の所見を聞かせていただきたい。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、日韓の間の懸案は、いつかはだれかの手で解決せにゃならぬ。それで隣邦との間の互恵の繁栄を確保するように持ってまいらねばならぬというのが基本の観念でございます。そのために長い間の交渉が行なわれておるわけでございます。先ほど申しましたように、この交渉自体は、懸案を合理的に解決するにはどうするかということを一生懸命にやっておるわけでございます。もとより私どもといたしましては、石野さんが御指摘のように、外交をやる場合にその相手国の政情がどうであるか、経済がどうであるかということにつきまして、できるだけ可能な限り私ども承知しておらなければならぬことは、これはひとり日韓交渉ばかりでなく、すべての外交交渉において共通の基本的な要件でございまして、そういうことは御指摘をまつまでもなく、日本政府も十分心得てやっておるつもりでございます。ただ問題、相手国の政治の状況によりまして、今後交渉上手かげんをしてまいるということでなくて、私どもとしては最大限の誠意と情熱を傾けてこの長い懸案はなるべくすみやかに解決したいということで、鋭意努力いたしておる次第でございます。
  53. 石野久男

    石野分科員 長い間かかっているのだから早く片づけたいという気持ちはだれでもあるでしょうけれども、しかしやはりそれは、本質的に処理さるべき段階になっているのか、またそういう条件があるのかということによって処理されなければいかぬと思うのです。私は時間がありませんから先を急ぎますが、日韓会談がいま非常に急がれておる本質的なものは、先ほど私が申し述べたように、韓国の国内事情が非常に逼迫しておる、特に経済事情が非常に逼迫しておって、そういう中で日韓会談に期待するものが非常に大きいわけです。日韓会談に期待するものは何かと言えば、やはり五億ドルの有償無償の経済援助となる金なんです。それを中心にして話を急がれておると私は思います。最近日本韓国との貿易はどうなっているかということを、ひとつ聞かしてもらいたい。韓国との間にはまだ四千五百万ドルの焦げつきが十数年間にわたってあります。それにもかかわらず韓国との貿易はやはり相当進んでいると見られまするし、またそれらの進んでいる韓国との間の貿易事情が、実際の決済面においてはどういうようになっているかということを、これは簡単でよろしゅうございますからひとつ御答弁いただきたい。
  54. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 最近の数字で申し上げますと、一九六三年におきましては十一月までが一億二千万ドルというところにいっております。それから一九六二年は約一億三千七百万ドル、そういうことになっております。他方輸入のほうは六二年が前年比二六%増しの二千八百万ドル、六三年が、これは十一月までの数字でございますが、二千百万ドルとなっております。主要な輸出品といたしましては、化学肥料、機械類、繊維製品でございますけれども、輸入品のおもなものは鉄鋼石、無煙炭、魚介類、ノリでございます。こういうふうにわが国のほうが著しい出超となっております。特に一九六二年から始まりました韓国のほうの第一次経済開発五カ年計画の遂行のために韓国といたしましては韓国輸出の五〇%を占めております対日輸出の増進ということに一そうの期待をかけておりまして、機会ありますごとに農産物、ノリ、鮮魚等あるいは牛、豚等の畜産物あるいは無煙炭、タングステン等の鉱産物の増進もしくは増加買い付け等を要望しております。
  55. 石野久男

    石野分科員 そういう輸出超過になっておる日本の貿易じりの決済はどのようになっておりますか。
  56. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 日韓貿易のほうは、決済に関しましては、一九五〇年六月に署名されました日韓貿易協定及び日韓金融協定がございまして、ドル建てオープン勘定を通じて決済されるということを原則としておるのでございますけれども、実情はどうなっておるかと申しますと、輸入のほうはほとんどオープン勘定を通じて決済されておるのでございますけれども日本からの輸出のほうにつきましては、米国の援助資金による輸出、それから現金ベースによる輸出がかなりの部分を占めておりまして、先ほどのオープン勘定を通ずる輸出のほうは、大体全体の半分程度にとどまっておるというのが現状でございます。
  57. 相川勝六

    相川主査 石野君に申し上げますが、時間が経過しましたから、ひとつ結論を……。
  58. 石野久男

    石野分科員 非常にこれは大事なところなんで、半分くらいのあとはどのようになっておるか。特にアメリカの援助資金に基づいておるというのですけれども、たとえば最近アメリカのほうの援助もそう必ずしも多いわけじゃないのです。その上に今度はアメリカのほうの貿易を見ますると、韓国向けでは約一億千十九万五千ドルのアメリカの側の輸出超過になっておるわけです。ですから、おそらくアメリカの金を使うにしましても、なかなか決済じりというものはそう簡単にはいかないだろうと思うのです。こういう問題について、政府は何か、結局その輸出超過になった分の見合いを商社に対して補償しておるのですか、するのですか。そういう点を、もう時間がありませんから、私はこまか聞くきませんから、その点ひとつ……。
  59. 中川融

    ○中川政府委員 ただいまお尋ねの日韓の貿易の決済でございますが、アジア局長が申しましたとおり、日本から向こうに出した品物の決済は、一つは米国の援助資金によるもの、これは全部援助資金でございますから、米ドルで現金で支払いが行なわれるわけでございます。なお日本の通常置易、これのほうは、いわゆるオープン・アカウント、清算勘定で払われるわけでございますが、これは一九六一年韓国側と合意いたしまして、いままでの分は未決済で残っておりますが、それ以後の分は全部オープン勘定協定どおりに超過した分につきましては超過したごとに支払っておる、すべて現金で決済しておる、かようでございます。
  60. 石野久男

    石野分科員 オープン・アカウントの計算ができておるものはいいけれども、それで計算されてない半分があるわけでしょう。それはどういうふうになっておるのですか。
  61. 中川融

    ○中川政府委員 オープン・アカウントで計算されないものは米国の援助資金でございます。これはもともと初めから現金払いということになっております。
  62. 石野久男

    石野分科員 私は時間がないからまたあとのときにその問題をお聞きしたいのですが、いずれにしましても、貿易じりの決済という問題は非常に重要です。この決済の問題を、アメリカの援助資金でキャッシュでやるのだと言いますが、それじゃアメリカの援助資金は韓国に、そういう膨大な輸出超過、日本からの債権になりますね、その分に見合うだけの援助があるのですか、それが一つ。  それからただいま申しましたように、つい最近発表されておりますアメリカの六三年度アジア貿易におけるところの対韓国向け二億千十九万五千ドルというものがアメリカの黒字なんです。アメリカの黒字ですから、これはやはりアメリカの韓国からの取り分なんです。こういうようなものがありまするから、もちろん金の使い方はいろいろあるでしょうが、貸借の関係、特にドル防衛の関係からしまするならば、韓国の側にはそういうキャッシュで全部支払いするだけの余裕というものがあるように見受けられませんが、政府はそれをどのように見込んでおりますか。
  63. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 オープン勘定の決済につきまして協定ができまして、焦げつき債権四千五百万ドル余りを確認しましたあとは、オープン勘定の協定どおり、スイング額を超過いたしました分は現金決済をするということになっておりまして、これに関しまして韓国側は非常にきちんきちんと払っております。一九六一年二月分以降一九六三年十二月末までの韓国側現金支払い額は、累計約一億一千万ドルに達しております。韓国のほうは、その後の実情を見ておりますと、この自分のほうのさいふ、外貨事情、こういうところをにらみ合わせながら対日輸入のほうを統制するという政策をとっておるように見受けられるのであります。
  64. 石野久男

    石野分科員 ところが、延べ払いのものはいろいろあるわけです。これは、オープン・アカウントの関係は、その両国の間に無げつき債権の処理についての約束がありますから、それでやっていくわけで、その後やはり二百万ドルのスイングを置いて、それでやっていることは承知しております。しかしそのほかにいろいろの貿易があるわけですね。そういう問題について、相手勘定の基金は結局アメリカの援助資金だというのでしょう。その援助資金というものにそれだけの幅があると見込まれるのかどうかということを私は聞いているわけです。本年度一九六四年度は六千万ドルくらいしかアメリカは援助しないんじゃないかといわれておるわけですね。おそらく輸出超過一億ドルというのは、そこでは何億ドルかになってきますよ、例年ずっと累計しますと。見合いが出てこないのです。そういうものに対して、為替管理の面や何かから、外務省並びに大蔵省はこの貿易をどういうように管理なさっておるのか、その点をちょっとお尋ねしたい。
  65. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のような先方の外貨事情が急迫してきていることも反映いたしまして、先方からのいろいろな商談がこのごろみな延べ払いベースということを非常に言ってまいっております。またその条件も、頭金の問題その他につきましても非常に渋い線を出してきているわけです。しかし一方当方といたしましても、先方のそういう外貨事情もわかっておりますので、延べ払い等の許可につきましては非常に厳重な統制をしておりまして、いろいろ出ておりますけれども現実にいままで延べ払いが認められましたケースというのは、昭和二十九年、三十八年のおのおの一件ずつ小額のものがあるだけでございまして、いろいろ伝えられているところに反しまして、これが現実にはなかなかまとまっていないというのが実情でございます。
  66. 石野久男

    石野分科員 その三十八年の一件というものはどういうものですか。
  67. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 これはディーゼルカーでございます。
  68. 石野久男

    石野分科員 これはまたあとで岡田氏からもある、だろうが、新潟のディーゼルカーがあったのです。そのほかに昨年の十二月十六日に朝鮮紡績と伊藤忠との間に契約されております千五百万ドルの紡織機十万錘があるわけですね。この十万錘は二年間据え置き十年償還で入れる、そういう話し合いになっておるはずですが、そういうことはお認めになっておるのですか。
  69. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 私の承知します限りでは、まだそれは許可になっていないというふうに承知しております。
  70. 石野久男

    石野分科員 これは向こうでは、許可になっていないということですが、しかし商談はあるのですね。
  71. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 商談はいろいろございまして、たしかこれも含まれておったと存じます。
  72. 石野久男

    石野分科員 最近肥料の問題で約三千万トン近いものを出すというような話が進んでおるようですが、それはどういうふうな事情ですか。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 肥料、硫安は世界的に不足いたしておる、売り手市場の状況でございまして、韓国が要望されるような分量において、またデリバリの時期におきまして要望のとおりなかなかまいりませんが、せんだって肥料業界と三十万四千トンでしたか、七月までのデリバリで出そうというような話がついたと承知いたしております。
  74. 石野久男

    石野分科員 それはもう決定したのですか。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 そのようにきまったと承知いたしております。それで私はつけ加えて申し上げますけれども石野さんは帳じりのことをたいへん御心配されますが、韓国資源は何といっても人間なんでございまして、あれだけすぐれた労働力をどのように動員してまいるかということが韓国経済を左右する問題でございますし、また一方といたしましては農業経済でございますから、米作をはじめといたしまして農産物が豊作でなければならぬ、農産物の収穫が非常に経済を左右すると思うのでございます。そういう意味で、それだけの力がつきますと支払い能力も出てくるわけでございますので、問題は現実の為替収支ばかりでなく、長い目で見まして韓国経済というものが、安定充実の方向にいって支払える能力も出てくるという状況を招来するということは韓国政府も当然考えておるでございましょうし、また日本側のメーカー、商社等も諸般の事情をよく考えて私は処理されるべきものと思います。
  76. 石野久男

    石野分科員 この延べ払いの問題は、いま韓国に全然外貨がないときに政府がそれを認めていくということについては非常に重要な問題があるのです。私はその問題に入る前に肥料の問題を一つ聞きますが、肥料の問題では、一九六一年から三年の間日本の側は非常に不振であった。六三年に約四十七万二千二百トンというものを出しております。この出したものは大体ことしの三月で決済になるはずだと思います。これの総額は大体千七百万ドルだ。このときの未回収がまだ三百五十万ドルほどあって、金利約五十万ドルを入れると四百万ドルになる。そしてこの三月三十一日が最終期日になっておるやに聞いておるのですが、この契約をしたときの見返りと申しますか、契約条項での決済についての条項はどういうふうな取りきめになっておりましたか。
  77. 相川勝六

    相川主査 時間がございませんから、政府側もなるべく簡潔に御答弁願います。
  78. 石田朗

    ○石田説明員 いま御質問ございましたが、韓国には毎年三十万トンないし四十万トン程度の肥料が輸出されております。昨年には若干それを上回った輸出があったわけでございますが、この決済はキャツシュ・ベースでございます。
  79. 相川勝六

    相川主査 石野君時間がはるかに経過しましたから、もうこの辺でおやめになったらどうですか。
  80. 石野久男

    石野分科員 協力しますけれども、もう少し……。一九六三年の第一次で三十九万四千二百トン、それから第二次で七万八千トン、締めて四十七万トンのものが出ておるわけです。一九六一年に三井と伊藤忠それから住友あたりが約一万トンを先輸出のバーターで見返りをノリでやりましたね。六二年のときには三井が単独で硫安の十万トンをやって、その見返りは鮮魚あるいは乾魚、かんてんそれに将来獲得されるであろう玄界灘の魚が入っているはずですね。そういう取りきめをなさっておるでしょう。そういうような取りきめについては皆さんは全然御承知ないのですか。
  81. 石田朗

    ○石田説明員 先ほど来後宮局長からもお話ございましたように、ただいままで肥料関係では標準外決済の許可をいたしておるものはございます。
  82. 相川勝六

    相川主査 石野君もういいでしょう。はるかに時間が経過しました。
  83. 石野久男

    石野分科員 この問題は、ここでは時間の関係がありますから多くを述べないで、この次にまた本委員会でやらしていただきますが、いずれにしましても、この肥料の輸出にしましてもあるいはその他の輸出にしても、ずいぶんいま向こうには外貨がないのに延べ払いをやっておるのです。そのことで日本の商社と韓国側との間にいろいろとトラブルが起きております。先ほど私が申しました伊藤忠を中心として出ておりまするところの紡織機の問題は、向こうではいまものすごい不正事件として問題になっているのです。先ほど後宮局長が、この問題については許可もしていないとかなんとか言っておりますけれども、実際には向こうでは与野党の間で、産業開発に対する日本資本の不正導入だというような書き出しでこれは大問題になっている。これは私は他日やはり問題にしなければならないと思っております。きょうはもう時間がないので申し述べませんが、いずれにしましても、韓国に金がないのに日本政府が簡単に延べ払いの輸出を許しておるということについては、何らかの見合いを予定しなければならない。その見合いは、先ほど外務大臣は、韓国ではやはり人的資源がある、農産物が出てくる、農産物の問題と人的資源を両方かね合わせてそれが見合いだと言いますけれども、しかしそういう見合いで解決するくらいなら、四千五百万ドルのこげつきの債権がいまもってまだ処理されないでおるということなんかは理不尽です。これはあまりにもおかしなことになる。私はやはり、全然見合いのないものに対する輸出許可をする、あるいはまたそういうものを暗黙のうちに認めておるということの中に、日韓会談におけるところの五億ドルの金が一応見合いとされているということを、われわれとしてははっきり考えざるを得なくなってくる。韓国新聞などによりますと、そういう問題についてはすでに日韓会談の五億ドルの先食いをしている、こうまでいわれているのです。そういうようなことではよくないと思うのです。この点に対しては政府及び大蔵省あるいは外務省、通産省は真剣に取り締まりをしなくちゃならぬと思うのだが、そういう点について、外務大臣、大蔵当局あるいは通産省あたりの所見をひとつ聞かしていただいて、私の質問は一応終わります。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 それは対韓関係ばかりでなく、すべての為替収支の問題は厳正に処理しなければならぬことは当然であります。
  85. 谷敷寛

    谷敷説明員 先ほど先生が御質問になりました肥料の輸出について延べ払いはやっておりません。またいろいろプラント類の延べ払いにつきましては、案件はたくさんございますが、許可されましたものは、先ほど後宮局長が申されましたように、ディーゼル機関車一件だけで、いま懸案のものにつきましては先生の御質問のような問題がございますので、政府関係部内で慎重に検討いたしておりまして、どんどん、許可をするということは全然ございません。
  86. 相川勝六

    相川主査 川崎秀二君。三十分以内にお願いします。
  87. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 在外職員の住宅事槽というものはたいへん悪いように聞いておるのですが、これは予算措置をどういうふうにされておられますか。
  88. 高野藤吉

    ○高野政府委員 御説明申し上げます。在外職員の住宅事情が、御説のとおり非常に悪いところもございます。たとえば最近都市がずいぶん膨張いたしまして、各国から外交官が来ておるところに住宅がない。あっても非常に高いということで、東南アジア、アフリカ等で非常に困難しております。そこで外務省といたしましては、国費をもってある程度の家を建てまして、それに安い家賃で入れるように努力いたしておりまして、現在におきましても、カンボジア、ベトナム・マレーシア、インドネシア、ラオス、オーストラリア、インド等に、全部ではございませんが、家を建てましてこれに入れております。三十九年度の予算におきましても、ナイジェリアに五戸、新しいものを建てまして、これでやっていきたい。今後とも大いに住宅事情の緩和のために努力いたしたいと考えております。
  89. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 外地にいる外交官が本領を発揮するにあたって居所が不安定であるということは一番の問題なんで、外務省の予算というのは、大平さん、考えてみるとずいぶん少ないものですね、二百十億というのですから、問題にならぬですね、アメリカやソ連の外交ほどのことはなくても、これから最も重要な役割りをしなければならぬ日本の外交官の在外活動というものが不活発だということになれば、非常に大きな問題になるので、ことしはこれでがまんをしても、ぜひ来年度からはもう少し企画的に、そして遠慮なく注文していただいたらよいのじゃないか、こう思うのです。   〔主査退席、古川主査代理着席〕 そういう意味での、住宅の長期計画というものもないけれども、恥ずかしくないていさいを保ってやるためには相当累増していかなければならぬ、そういう年次計画みたいなものはありますか。
  90. 高野藤吉

    ○高野政府委員 お説のとおり住宅事情が悪いようでございまして、東南アジア、アフリカを中心といたしましてこれの増設を考えておるわけでございます。現在のところまだどこにどれだけというはっきりしたきめたものはございませんけれども、主として東南アジア、アフリカを中心にやっていきたい、来年度はもっと活発にやっていきたいと思っております。
  91. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 次は、この在外職員の休暇制度という問題について伺いたいと思うのです。  いまは二年以上たたなければ帰国休暇というものはない。大体いま外交官の交代は三年半くらいですが、途中で一ぺんあるいは二へんくらいは帰ってきて本国の政治情勢あるいは慣習というものに慣熟する必要があるのではないかと考えられるのですが、これは諸外国の事情とにらみ合わせての御答弁をいただきたいと思います。
  92. 高野藤吉

    ○高野政府委員 御指摘のように、現在在外公館に勤務しておりまする館員が日本へ帰れますのは、健康地につきましては二年、不健康地につきましては四年でございます。  それで外国の例も申し上げますと、イギリスは大体一年たてば四十日、それを使わなかった場合にはその次の年に加算される。すなわち八十日、それで三年目、百二十日までためて使える。しかしそれ以上は加算しない。したがいまして三年間休暇帰国いたしませんと百二十日、四カ月休めるという制度になっております。それから米国は一年に六十日、すなわち二カ月、これも三年加算で百八十日、三年やっていれば約半年休める、そういう制度になっておりまして、日本はその点ちょっと見劣りがするわけでございますが、これも二年と四年ということでなく、今後期間を短縮して、もっと休養なり士気を向上するということにいたしたいと考えております。これは予算の関係がございますので、なかなか外務省の思うとおりはまいりませんが、外務省といたしましてはそういう方向で努力いたしたいと思っております。
  93. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 公館長会議などというものがしばしば東京あるいはヨーロッパの中心部、アメリカというようなところではあって、帰国する機会もあり、外へ出ていくときもあるでしょうけれども、一般に休暇帰国制度というものは非常に低い。これはやはり各国から比べて相当おくれているように思うので、できる限り計画的にふやしていく、時目を短縮する、そういうことについては大蔵省はもとより、自民党の政調会などは十分理解もあると思いますので、今後なるべく前広に、予算が成立した後、来年の節季に詰まって要求するというのではなしに、ふだんから理解を持ってもらうやり方をやったらいいのではないかというふうに、外務省にこれは忠告を申し上げておきます。  それから近ごろ海外移住者というものがだんだん減少しておる。これはドミニカの失敗などの例もあって、出ていってひどい目にあうんじゃあというような懸念が国民一般にあることも事実です。しかしどうも国内PRというものも相当欠けておるのじゃないか、そういう点でどういう対策を立てておるのか伺いたいと思います。
  94. 白幡友敬

    ○白幡政府委員 御説のとおり、昨年度及び今年度も移住者が従来よりも減少いたしております。これはいろいろな問題もございまして、特に従来の移住事業を実施いたします体制に問題点があるということから、御承知のように昨年米国内体制の立て面しと申しますかをいたしまして、新たに移住事業団をつくり、それからまた来会計年度には、この移住事業団の地方支部をつくろうというようなことで、この国内体制の変革、変動というものから、実際に移住をいたしまする事業の面で、若干の手違いと申しますか、あるいは手薄な点ができております。こういうものがいろいろ関係をしておりまして、移住者が減っておると思いますが、私どもは決してこれが恒久的な現象であるとは思いません。国内体制が整いますと、また移住者がふえてまいると思います。ただ、ただいま御指摘のように、移住を希望する人たちを外に出していきますからには、移住に関する知識であるとか、あるいは移住先に関する知識であるとかいうものをよく宣伝いたしまして知識を与える、これが大切な仕事であると思っております。この点では、来会計年度におきましては、大体移住事業団及びその支部に対しまする交付金として、大体二千万程度の提供を認めております。これ以外にいろいろ別な形でもって若干経費も入っておりまするので、ある程度広報宣伝をあげていかれると思います。しかし、特に大切なことは、何ぶんにも移住希望者は地方の人が多いものでありますから、われわれ中央の機関であるとかあるいはその支部あたりのみの努力では足りないわけでありまして、この点地方自治体にも特にお願いしておりまして、地方自治体と移住事業団との協力関係、あるいは外務省と地方自治体との協力関係によりまして、大いに知識を普及いたしまして、またそれに対しまして、われわれも十分外地の正確な知識を得る、情報を得るように努力いたしたいと思います。   〔古川主査代理退席、主査着席〕
  95. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 各県の移住協会というもののPRは非常に不活発である。それから、地方自治団体が海外移住協会というものをどう取り扱っているかということも問題のようです。私は二、三の県を、海外移住協会というのはどういうところにあるかと思って歩いてみたら、全く吉良上野介が炭部屋にのがれたようなところに、県庁の一番きたないようなところにおる。あれではなかなか移住なんかするわけはないですよ。これが実情です。よく勉強しておいてください。そういう点を注意を喚起しておきたいと思います。  それから、これは大平外務大臣に、実際は私の専門のことですから、二、三日前にワシントンハイツにある選手村のあとを何に使うか文部大臣に聞いたのです。多少資料も提供しておいて、うまいこと青少年のために使うという線が出たんです。あれはみんなねらっておるのです。選手村のあとは、大体木造建築は全部ぶっこわして、森林公園をやろう。高橋読売新聞副社長、これが自然公園審議会の委員ですが、パリのブーローニュみたいにしたいというえらい確信をされておるのです。NHKがテレビセンターを建てた、あるいは体育協会がオリンピック記念会館を建て、だんだん狭くなってきたので、たいがいのものは森林公園に利用されることになる。ところが、鉄筋の建物が四つばかり残る。これまたこの青少年のために使う。鉄筋コンクリートの残った建物を何に使うかということで、非常に運動があるんですよ。それで思いつきなどで出てくるのは、修学旅行に使うというのが、一番自民党の政調会なんかでも多い。多いのですが、これは泊まる数がきまっておるでしょう。したがって、泊まらない者のほうが多いじゃないかというような議論も出てあと回しになり、いろいろ考えた後に一番強い線として出てきたのは、国際青少年の交歓センターにしよう。これは自民党の青少年部会で満場一致、政調会でも優先第一ということになって、この間文部大臣の答弁にも出てきたのです。外国と日本の各青年団体がばらばらに行く。教育の機会がない。向こう事情についての的確な知識、あるいは英語の二、三もしゃべれるというような訓育をするところがないので、それに充てたらどうか。それから外国、たとえばアメリカにしてもドイツにしても、フランスにしても、青少年が東京へ来るのですけれども、これをヒルトン・ホテルへ泊めたり、帝国ホテルへ泊めると青少年の訓練にはならないのです。そこで、そういうことが一番強く言われてきたので、外務省もそれに着目してくれれば、もうこれで大体選手村は国際青少年センター、つまり交流のためのセンターになるということにきまるのです。そういうようなふうに政府部内を誘致していただきたいと思いますが、お考えを承りたい。大体あなたの答弁次第できまるのです。ここできまるも同じです。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん耳寄りな着想を承りまして、私どもとしも鞭撻されるわけでございますが、文部当局とよく相談いたしまして、そういう問題について善処いたしたいと思います。
  97. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 近ごろ日中飛行機の交換ということが非常に言われて、汽車交換なども言われておるのですが、それよりも忘れられておるのは、それより先に国交の回復をした日ソの航空協定の問題であろうと思う。これはいろいろと今日まで問題はありましたが、だんだん具現化の可能性がある。そこで、最近の具体的な一つの例といたしまして、オリンピック大会のときに、ヨーロッパから青年あるいは中小企業の方でしょう、そう旅行に余裕がないというような人々が、航空機によってパリあるいはロンドンから飛来するということでなしに、シベリアを通ってくる。そうすると費用にして二十万円くらいは違うようなことで、これを当て込んでか、非常にけっこうな話ですが、ソビエト・ロシヤのツーリスト局が日本にあっせんをして、すでに五千人以上の者がシベリア経由で来る。それは鉄道だけれども、ウラジオからは今度は飛行機で羽田へ来る。いま募集しておるのはそういう経路になっておるようです。そうすると、オリンピックの期間だけでも羽田へ何機かは入ってくるという形になるので、それを恒常化すれば、日ソ航空というものはこれを機会に定例的に乗り入れができるようなきっかけになるのじゃないかという動きがあるわけですが、こういうようなことについてあなたのお考えはいかがですか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 私の伺ったのはちょっと話が違うのです。ナホトカまで列車で来る、それからソ連の船で来るというように聞いておりますので、航空機と関係がないように聞いておりますが、なおよく調べてみます。
  99. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 全部船を……。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように聞いております。
  101. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 航空協定のほうは今後どうです。それは中国とやるなら、先にやったらどうか。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 これは前々からお話をずっとやっておりまするし、技術官をソ連に派遣して、離着陸の状況も調べたりなんかしておりますわけです。ただ、私どもとしては、レシプロシティの原則を貫きたい。ただ、ソ連がシベリアの空を閉鎖いたしておりますので、そうすると、どうも文字どおりレシプロシティを貫くわけにまいらない、その場合にどうするかというので、いろいろ技術的なくふうもこらしまして、いまいろいろ双方で話し合っておる段階です。最近の状況はどうなっておりますかは、私まだ伺っておりませんけれども、一案を当方から出しまして、先方話し合い中と承知いたしております。
  103. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 どなたかもっと詳しい事情を知っておられる方、おりませんか。簡単でいいです。
  104. 都倉栄二

    ○都倉説明員 ただいま大臣お話しのように、当方から案を出しまして、現在先方からの具体的な回答を待っておる段階です。
  105. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 そのあなたのほうの内容的なものは言えないかどうか。
  106. 都倉栄二

    ○都倉説明員 これは新聞にもある程度発表されたわけでございます。
  107. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 それでは次の問題に移ります。これは実は全然新しい問題なんですけれども、私は、ニューギニア開発というものは、日本は全然民間ベースでもタッチしてないのだと思っておったのです。ところが、西イリアン諸島の開発に日本の民間会社もぼちぼち参加をしておる。これがだんだん大きな規模になっていけば、将来日本にとって、労働力、技術力、科学というもののはけ口として、また進出路として、非常に有望な問題であるように思うのですが、この件に関して、最近の情報、それから将来どういう態度に出るか、外務大臣に伺いたい。――むずかしくてわからなければ、時間のあれもあるので、時間短縮の意味で、いろいろ問題を提起してみます。きょうは、問題提起質問である。  この前予算の総括質問の際に、国連警察軍の常設部隊というものについて私は言及しました。が、これは大体池田総理並びに大平外務大臣お話では、将来の問題だろうと言われましたのですが、二、三日前の新聞によると、バトラー外相は、ジュネーブの軍縮委員会でこれを提案し、相当数の各国の賛成を得る見込みだという情報がある。これはキプロス紛争あるいはその他について非常に各国が手を焼いてきて、やはり臨時部隊だけじゃなしに、国連の常設警察部隊として置くことが望ましい。応急の場合にも対処し得る。こういうことになっていくと、国連の強化になり、やがて大きな世界平和恒久体制の権威になってくると思うのですが、国連警察軍というものの構想に対しては、あなたは賛成ですか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 それは国連旗化の問題として、一方において軍縮が着実に行なわれて、そして国連に並行して、警察軍が設けられるということはけっこうなことだと思います。ただ、この前に川崎先生とのやりとりで、私、申し上げましたように、国連の経常費は、国連財政の面から申しまして、そう大した金ではないのでございますけれども、たとえばコンゴ派遣軍の経費というふうなものは、たいへんな経常費の何倍もの金になるわけでございまして、それの調達が御承知のようにままならぬ状態でございます。したがって、国連の側から申しますと、国連財政の確立という基礎固めができないと、容易ならぬ問題じゃないかという心配が一つあるのと、それから、日本側はその場合にどうするかという、これは日本のいまのたてまえから申しまして、参加についていろいろな問題があるということ、こういう問題はしたがって、そういういろいろな角度から地道に検討に値する問題だけれども、いま早急にこうだという気前のいいことはなかかなか言えないのじゃないか、私は、そういう意味の感じ方であなたにお答えしたわけでございます。
  109. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 それはそれでわかりました。ところが、この国連警察常設部隊がもしてきたら――これは仮定の質問でまことに恐縮ですが、まあできる可能性も非常に多くなったものだから、そうすると、自衛隊を派遣すべきだという――日本からも軍隊を出してくれ、こういう要求があったときの問題は、すでに国会で何べんも答弁が、岡崎大臣と社会党の諸君との間に相当あったと私は思っておるので、それは憲法違反であるとか、あるいは出す考えはないということ。私は、いま一つ質問をしておきますが、将来国連警察部隊ができたときに、日本からは、自衛隊は要らないけれども、個人として出てもらいたい、自衛隊を抜けるとか、あるいは自衛隊に入らないとか、そういうようなものの場合はどうなりましょうかな。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 宿題としてひとつ検討さしていただきます。
  111. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 まあ御勉強をぼちぼちお願いいたします。  それから、この間の質問の中で、私は、あなたに質問をしたかったのを、銀行の問題だというので田中大蔵大臣が答えた、アジア開発銀行という問題なんです。あのときに私は、アジア開発銀行と太平洋経済機構と二つ一ぺんに出して、時間がないから双方答えてほしいと言ったら、田中大蔵大臣はごっちゃにして、アジア方面のことだけを答えたわけです。それも、経済会議と間違えたらしい。私があのときに言うたのは、将来、日本とアメリカだけの経済会議じゃなしに、日本とカナダの間にも閣僚会議をやっておるのだから、したがって、豪州、ニュージーランドあるいは相当文化程度、民度の高い、太平洋経済機構というものを考えたらどうかということを一方でいい、もう一つは、アジアにいるところの十数カ国並びに中近東のうちアジアに近い諸国、これら開発度の低い国には、アジア開発銀行というものをつくって、日本も援助国の中心になる考えはないか、こういう二つの質問をごっちゃにして田中大蔵大臣は答えたものですから、あの人はあんまり深い問題でいきなり出すと面くらう感じを私はあのときに見たのですがね。きょう聞いておるのは、テヘランで今度各国の銀行家協会を中心にして四月二十何日かに集まりがある。その際に、東京銀行の堀江頭取から提案が出ておって――イランの銀行のほうが提案をしようということになって、それに賛成意見をすでに通告しておる、財界はあげてこれを支持しておるので、この間の田中言明みたいなことになると困るということを盛んに今日いうてきておるわけです。これはあの当時ほかの質問のほうが大きかったものだからあまり報道されなかったのですが、やはりたんねんに速記録や銀行関係のニュースを知っておる者もいると見えて、あれでは困るというてきておる。外務省としては、そういうことがあった場合に――アジア開発銀行のほうは民間ベースの話ですから、決して政府としてどうこうということじゃないけれども、やがては何ぼかの金を日本も出し、アメリカからも誘引して、中南米にできた機構と同じようなものをつくろうというのがアジア開発銀行の構想なんですけれども、それについてはどうお考えでしょうか。少し時間をかけて後に御答弁いただいてもいいです。反対ということでは困るという民間側の非常に強い意思表示がありますので、もしお答えにくければ、お考えおきを願いたい。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 そのテヘランの会議でのイランの御提案内容、そういうものを一ぺん私のほうで取り寄せまして、よく調べた上で御返事したほうがいいと思いますので、問題点をはっきりさせてからのほうがいいと思いますから、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  113. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 一分間で簡単に言えば、いままでの各国の援助のやり方では、アジアの低開発国は十分に開発されない、統一あるやり方も中には必要だという考え方から、銀行を置こう、こういうことだろうと私も思っております。項目が二十項目か載っておって、非常に細密なものですから、ぜひ御研究を願っておきたいと思います。  それでは、もう時間もなんですから二問だけ伺いたいのですが、吉田元首相が非常な高齢をもって御努力をなすっておられる最中でございます。したがって私は日台問題等につきましてこの席上で、ことに具体的な事務問題が中心の分科会でございますから、深くお尋ねはいたしませんが、もしあの高次元の折衝が行なわれた後に、日華の当面の関係を具体的に打破するために、大平外務大臣の渡台を要望する声が高くなるということになれば、あなたは近く行かれる予定がございますか。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、日華間の国交の改善という問題は重大な問題だと思っております。そしてそれは政府の仕事でありますということもはっきりいたしておるわけでございます。したがって私どもの責任で処理しなければならぬと思っておりますので、政府レベルでこの問題をどう取り扱ってまいりますかということにつきましては、私どもとしては慎重に考えてまいらなければなりませんし、要すれば私の訪台も含めてこの問題を検討してまいらなければならぬものと思います。
  115. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 それ以上御質問申し上げません。  二Cに韓問題については、私は大平外務大臣の多年の御努力に非常に敬意を表するものであります。そして日韓問題は大体胸つき八丁にきたのではないか、こう思われるのです。先ほど来石野さんとあなたの問答を非常に興味深く伺っておりました。これは全く立場が違いますので、平行線であったわけですけれども、やはり日韓問題は日韓問題として今日解決をしなければならぬ、さらに中国問題はその後において、大きく世界情勢とにらみ合わしつつ、国連の舞台で解決を前向きにしていかなければならぬということは私どもの持論でございますので、どうかひとつ日韓問題を早く解決していただきたいと思いますが、けさほど各新聞などの報じておるのでは、首相は日韓問題はできれば今国会中――今国会はILO問題でも相当長期にわたると思うのですけれども国会中に結末をつけたいという意思があるように聞いていますが、あなたはどういうお考えであるか。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私も一日も早く妥結が望ましいと思っておるわけでございます。問題は内容でございまして、内容を、大方の国民の御納得がいくような合理的なものでありたい、妥当な内容にいたしたいということでやっておるわけでございます。漸次両当事国間の理解も進んでおりますので、私といたしましてはただいまのところこの問題が非常に困難であるというように悲観的に見ておりません。鋭意やってまいるつもりです。
  117. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 できれば今国会中に終結したいと思っておりますか。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 できればそういたしたいと思っております。
  119. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 大平外務大臣の非常な御努力に対して、ことに日韓問題では終始取り組まれてきて、その途中には幾多の事件もあったのですが、私はあなたの政治家としての人生途上における非常な大問題であると思うのです。そしてぜひあなたの手によって、外務大臣在任中に解決してもらうことが望ましい。人には大体その人にまかされた課題というものが出てくるのです。はなはだ失礼だけれども、昔陸軍省の廊下を歩いていると、石原莞爾が歩いていると、ああ陸軍省が歩いてきたというたものだ、国会の廊下を戦争中に斉藤隆夫氏が歩いていると、あれはネズミの殿様といって小さかったけれども、議会政治を守るやつが歩いてきた、議会政治の番人が歩いてきた、このごろ国会の廊下であなたに会うと、ああ日韓問題が歩いてきた、政治家としてのスケールもちょうど日韓問題を解決するのに適当な人です、ぜひともやってもらいたいと思いますから激励をしておきます。
  120. 相川勝六

    相川主査 野原君。――野原君に申し上げますが、三十分程度にお願いします。
  121. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は本日は分科会でもございますから、日韓問題の主として漁業問題にしぼってお尋ねをしたいと思いますか、その前に大臣にお伺いしたいことは、吉田首相が台湾に行かれまして、けさの新聞によりますと、あなたの国会答弁とは食い違ったような発言をされておるようにも思うのです。吉田さんは個人の資格で行かれたとは申しますものの、台湾問題がきわめて微妙な重要な段階で、しかも元首相といわれるような大ものが台湾に行かれて、一国の外務大臣と違った発言をされるということは、私はいかかなものかと思うのですが、この点について大臣の御所見を承っておきたい。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 どういうお話をされたのか存じませんので、私の発言内容とどんなに関連があるのかも究明しないでお答えするわけにはまいらぬと思います。
  123. 野原覺

    野原(覺)分科員 吉田さんの台湾における言動につきましては、政府はどの程度責任を負われるのですか。これは全然個人の資格だから別だ、何をお話ししようとそれはかまわぬのだ、こういうお考えでございますか。いかがでしょう。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 全然政府から御注文申し上げてございません。
  125. 野原覺

    野原(覺)分科員 古田さんを台湾に行っていただいたのは池田総理ではないかと私は仄聞をしておる。池田総理がすすめた限りにおいては、政治道義の上からいっても政府は全然これは関知しないでは私は相済まぬことだと思いますが、この点はいかがですか。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 政府といたしましては古田先生の御声望、御識見から申しまして、今回訪台されることはたいへんけっこうなことである、そう存じておるところでございます。
  127. 野原覺

    野原(覺)分科員 それは政府としてはそうでしょう。けっこうなことだから行っていただいたのだと思う。行っていただかれた以上は吉田さんの台湾における言動、蒋介石との会見の中身については――たとえば蒋介石総統にどういうことを話すのだということについては、あなたとは全然打ち合わせなしに台湾に行かれておるわけですか。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、吉田先生に政府として何ら御注文を申し上げてないわけです。
  129. 野原覺

    野原(覺)分科員 池田総理の親書を携行して行っていただいておるのでしょう。手渡した親書の範囲においては責任は負われますね。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 これはたびたび申し上げておるように、よくある外交礼譲でございまして、こういう幸便がございますので、元首に対して敬意を表するのは当然のことと思います。
  131. 野原覺

    野原(覺)分科員 この問題は漸次新聞もその中身を明らかにしていただけるかと思います。とにかくあなたの国会において答弁されたことと違ったことを、言っておる。これは私は日本の外交上マイナスではないかと思うのです。この問題は事実が明らかになった上で私どもしかるべき機会に追及をしてまいりたいと思うのであります。  そこで日韓問題に入りますが、時間の関係もあるので大事な点だけをお尋ねしたいと思う。その前にお伺いしたいことは、石野委員が日韓交渉における韓国内の世論は一体どうなんだという質問をされておったように私も聞きました。これは私はきわめて重要な点だと思うのです。日本韓国と国交正常化を進めていく上において政府間で交渉をするのだ、こうは申しますものの、相手の国がどういう世論、どういう考え方を持っておるかということを見きわめないで国交の正常化を進めるわけにはいくまいと私は思う。あなたの答弁を承っておりますと、こういうことを言っておる。日韓懸案はいつかはだれかの手で解決しなければならぬ。私はこれを認めるといたしましても、だれかの手で解決しなければならぬといたしましても、相手国の世論の動向というものを見きわめて解決しなければならぬのじゃないか、私はこう考える。この点はいかがですか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 外交をやります場合にその相手国の世論の動向、経済の状況、その他でき得る限り相手国の事情に精通しておらなければならぬことは当然の要件であるということは、石野さんに私申し上げたわけでございます。ただそのことをどう処理されるかは、その相手国の政府の責任であるということも私申し上げておるわけでございまして私どもといたしまして、交渉の相手はあくまでも相手国の政府であるという立場をいつも鮮明に申し上げておるつもりでございます。あなたが言われるように、そういういろいろの事情についてよく承知しておれということにつきましてはおっしゃるとおりだと思います。
  133. 野原覺

    野原(覺)分科員 じゃずばりお尋ねしますが、韓国の世論はどうなっているのですか。日韓交渉に対する韓国の世論その内容についてもひとつ御説明願いたいと思うのです。どういう世論なんですか。あなたはどういう受け取り方をしておりますか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国も民政移管になりまして、韓国にとりまして重要な案件でありまするので、与野党の間におきましても、また国民各層におきましても、日韓問題につきましていろんな論議がわいておりますことも事実でございまするし、これの条件について論議もわいておるし、会談自体についての評価につきましてもいろいろな御意見があることを私ども承知いたしております。これは韓国として当然あり得べきことでございまして、わが国におきましても与野党の間に非常な軒輊があることはあなたも御承知のとおりだと思います。
  135. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは外務大臣、大統預選挙を見ましても朴正煕の獲得した票は三三・三%です。そうして国会の選挙におきましては野党が、とにかく朴正煕の与党反対する側のほうが多数を獲得しておる。しかもその野党は朴大統領の日韓交渉に対しては今日非常な批判をしておるのですね。こういう点から見ても私は、先ほどの川崎分科員の質問に対してできるだけ今国会批准したいとか――基本問題を何一つ解決しないでおって、これは漸次私は質問の中で明らかにしてまいりますが、できるだけ今国会批准したい、あるいは高級政治会談を――どういう会談か知りませんが、持ちたいというようなことはいかがなものかと思うのです。  時間もございませんから本論に入りたいと思う。まず韓国の領海についてお聞きしたいと思います。この領海の問題は、漁業専管の水域の問題ないしは共同規制水域の問題とも関連してまいります。領海の問題が解決しないで漁業問題が解決するわけはないのですから、私はこの問題が漁業問題の最も基本じゃないかと思う。そこで一体韓国は、国際法でいう領海制定方式はどういう方式をとって今日主張しておるのですか、お聞きしたい。
  136. 中川融

    ○中川政府委員 いまの日韓間の漁業交渉におきましては、領海問題には直接触れることなく、いわば漁業の専管区域あるいは共同規制、区域、こういうかっこうで交渉しておるのでございます。したがって交渉がもし妥結いたしました暁におきましても、直接領海問題についてはおのおのいままでとっている考え方をそのまま踏襲する、それには直接触れない、こういうかっこうで協定ができることになろうかと考えております。
  137. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは驚くべき御答弁ですね。それでは条約局長お尋ねしますが、領海と漁業専管水域の法的な中身の違いをおっしゃってください。つまり領海といえば領土と同じように、裁判管轄から何から一切のものを排しておるわけですね、御承知のように。漁業専管水域は領海とどう違うのです。共同規制区域はそれじゃどう違うか。そういうことをはっきりしないで何が一体漁業問題の解決になりますか。一体韓国との間の話し合いにおいてはこの中身の違いはどうなのですか。
  138. 中川融

    ○中川政府委員 領海はいわばその国の完全な主権のもとにある水域でございます。したがってそこにおきましては沿岸国が行政権を完全に行使するわけでございまして、そこにおける裁判管轄権も当然に沿岸国に属するということになるわけでございます。いわゆる漁業専管区域と申しますこれは、漁業についてだけ沿岸国のいわば管轄権と申しますか、監督権と申しますか、平たく言えばコントロールの権利を認めるわけでございまして、漁業以外の問題につきましての権限とは関係がないわけでございます。その意味でいわゆる領海よりは漁業専管区域のほうが沿岸国のコントロールの色彩が弱いわけでございます。  それでは無をとる問題については、領海と全然同じかと申しますと、これにもいわゆる第三国と申しますか、沿岸国以外の国の既得権を認めるという問題もあるのでございまして、その限度では、第三国の沿岸国以外の国のいままでの権利を、ある程度は尊重するという観念も、漁業専管区域の中には含まれております。さらに裁判管轄につきましては、これは国際の慣行が必ずしもまだはっきりきまったとは言えないのでございまして、ある種類の協定におきましては、沿岸国の裁判権を認めている例もございます。また沿岸国の裁判権を認めないで、いわゆる第三国が入り会い権等に基づきまして入りました際の監督、その結果としての裁判管轄につきましては、その船が属しておる国のほうの権利を認める、こういう例もございます。したがってそういうような点で、必ずしもまだ一致した慣行というものがないようでございます。いずれにせよ領海の場合とは違いまして、漁業専管区域のほうは、沿岸国の監督の色彩が弱い、かようなことが言えると思います。
  139. 野原覺

    野原(覺)分科員 中身ははっきり違う。大臣にお尋ねします。漁業専管水域お話をされておるそうですが、漁業専管水域というものは領海から計算するのじゃないですか。これはどうですか大臣。海岸からやるのですか、漁業専管水域何海里と――あなたは起算する場合にどこから計算するのですか。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 原則として低潮線から起算するわけです。しかし叫喚が入り組んでおる場合は、直接基線方式をとるということに国際慣行上なっております。
  141. 野原覺

    野原(覺)分科員 低潮線といっても、領海と漁業専管水域は、法の中身が違うといま条約局長は答弁されておる。低潮線からというのは、これは国際法でいうところの低潮線一般方式だ。だから漁業専管水域と領海とは違うという限りにおいては、どこからどこまて――漁業専管水域といえば領海から計算する以外にないじゃないですか。そうなると、領海というものがきまらない限り、漁業専管水域はきまらぬじゃありませんか。ごっちゃにしてしまうのですか。そういうごまかしをやるのですか。
  142. 中川融

    ○中川政府委員 慣例的に整理いたしますれば、御指摘のとおり、たとえば十二海里の漁業専管区域と俗に申しておりますが、その中に沿岸に近いところに領海があるわけでございまして、漁業専管区域そのものは、いわば領海の境から沿岸十二海里の線までが漁業専管区域、こういうことになるわけでございます。
  143. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうすると、沿岸から十二海里までが漁業専管水域だ。その中に領海があるわけですか。
  144. 中川融

    ○中川政府委員 そういうことになります。
  145. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうなれば、その中の境界線はどうするのです。裁判管轄権は漁業専管水域にはないのだから、どこからどこまでが裁判管轄権があるのかないのか、その境界はどこに引くのだ、それを聞いておる。
  146. 中川融

    ○中川政府委員 いわゆる十二海里の漁業専管区域を認めました場合に、裁判管轄を、つまり領海外の部分についての裁判管轄権をどうするかということは、その交渉の当事国の合意で結局きめることになると思います。したがってそのきめ方は、日韓間につきましては、今後交渉の対象になるわけでございます。
  147. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと領海というものについては、やはり日韓間で話し合いをしないにことはいけない、こういうことになるわけでしょうね。
  148. 中川融

    ○中川政府委員 結局領海が何海里であるかということは頭の中に置いておかなければ――すべての交渉に関係してくるわけでございますので、頭の中に置いておかなければいけないわけでございますが、しかし同時に日韓が、今度の漁業協定でお互いの了解で範囲が幾らであるかというふうにきめるということは、いま考えていないのでございます。領海は領海、それを含めましていわゆる漁業専管区域あるいは共同規制区域、これをどういう内容のものにするかということを交渉できめようというのが現在の交渉内容考え方でございます。
  149. 野原覺

    野原(覺)分科員 大臣、これはどう考えても、ここにあなた方の大きな漁業問題のごまかしがあるのです。領海をというものを確定しないで、どうして漁業専管水域がきまるのです。沿岸から十二海里が漁業専管水域だというけれども漁業専管水域というものと領海は違うのです。領海は国際法で完全に領土と同じものです。漁業専管水域は違うのだ。そこの明確な線を引かないで、あなたのほうはこれから交渉をやろうという、それで交渉をやっておるのだという、これはたいへんなことですよ。しかもいろいろお尋ねしますと、頭の中に入れてある、こう言う。一体領海は日本がかってに頭の中に入れて、韓国が主張する六海里だと頭の中に入れておかれても、領海を主張するのは相手の国じゃありませんか。沿岸国じゃありませんか。沿岸国が領海を主張する権限があるのだ、そこに領海の意味がある。領海についてははっきりしていない。ところが、これは予算委員会で井手君があなたに質問をしているのです。私ここに速記を持ってまいりましたが、外務大砲はこう答えておる。井手君は質問する前に、一九六〇年の第二次ジュネーヴ海洋法会議の問答を中川条約局長と繰り返したあとで、こう言っておる。日本態度は六海里プラス六海里、それは第二次ジュネーヴ海洋法会議で、米加の漁業問題でこれが出たという意見を井手君と中川局長がお互いに話しかわしたあとで、「日本態度は六海里プラス六海里、韓国もこれに賛成をした。そうであるならば、漁業協定の範囲というのも、大体この範囲に限定されるわけですね。」とあなたに聞いておる。そうしたら大平外務大臣は、「漁業協定の範囲と申しますか、専管水域はそれを尊重してきめるべきものと思います。」こう答えておる。それを尊重してきめるべきということは、六海里プラス六海里の、このジュネーヴ海洋法会議で出たそれを尊重してきめるのだ、こういうことを言っておるところから見れば、私は井手君の質問に対する大平外務大臣の答弁は、韓国は自国の領海の範囲を六海里と主張しておるのだ、こう受け取った。これは外務大臣、領海については韓国は何も主張していないし、何も聞こうと思ってないのだ、そう受け取ってよろしゅうございますか。つまりほんとうに裁判管轄権は行使されるかどうかという限界、それを漁業専管水域でごまかしてしまって、わけのわからぬようにしてしまって話をしておるのだ、そう受け取っていいのですか、大平さん。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 われわれが申し上げておる意味は、今度の日韓交渉で領海をお互いにきめるという交渉をしておるわけではないのでございます。すなわち、漁業専管水域をどのようにきめるか、また共同規制水域をどのようにきめるか、そこでの共同規制方法をどうきめるかという魚をとる場合のやり方につきまして、お互いに合意に達すべく努力をいたしておるわけでございまして、領海の問題について討議をしておるという性質の話し合いをやっておるわけじゃないのでございまして、領海は領海としてちゃんとあるわけでございます。私ども漁業に関しての取りきめをいまやっておるわけでございますから、専管水域、その外の共同規制区域、共同規制方法、そういうものをいま論議しておるわけです。
  151. 野原覺

    野原(覺)分科員 領海は領海としてちゃんとあるわけだ。それは当然でしょう。なかったらたいへんだと私は思うからお尋ねしておる。それでは韓国の領海はどれだけだとあなたはお考えですか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 これは三海里と私ども考えております。日本韓国も三海里説によっておると思います。
  153. 野原覺

    野原(覺)分科員 日本は三海里ですね。韓国も領海は三海里だと考えておる、こうとっていいのですね。そういたしますと、漁業専管水域は沿岸から三海里の線から起算されるものだ、漁業専管水域というものは三海里までは領海だ、これは領海ですから問題外です。そう受け取っていいのですか。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど私が申し上げたように、専管水域をどのような点から起算するかは海洋法会議でも御承知のとおり、原則は低潮線だ、それでただ島嶼がたくさんあります場合は状況によって直線基線を引きまして、それから十二海里ということも、国際慣行として認められておるというように私は承知しておるということをお答えいたしたわけであります。そのようにして確定された専管水域の中に領海があるということでございまして、先ほど条約局長が言われましたように、裁判の管轄権とか何か、領海というのはちゃんとしたコントロールが及ぶわけでありまして、私どもはいまそれを問題にしているのではなくて、無をとる場合の規制のやり方を問題にしているわけでございます。
  155. 野原覺

    野原(覺)分科員 低潮線から漁業専管水域考える。そういたしますと漁業専管水域は低潮線から十二海里という主張で、いま日本はやっておるわけですね。そう受け取っていいですね。
  156. 大平正芳

    大平国務大臣 原則は低潮線から十二海里ということでございます。ただ沿岸に島嶼がたくさんあります場合には低潮線によらずに、一定の直線基線方式をとっておることも国際的には慣行化しておる。したがって私はそういうものを含めて国際慣行を尊重してやりたいということを申し上げたわけでございまして、漁業専門家諸君はそういう基本方針で相談いたしておると承知いたしております。
  157. 野原覺

    野原(覺)分科員 原則としては低潮線方式をとる、それから例外としては直線基線方式をとるということですが、それではどの部分をとるのですか。これは大事な点だ。どの部分を直線基線方式をとって、どの部分が低潮線方式ですか。
  158. 大平正芳

    大平国務大臣 どの部分をとるか、具体的にいま申し上げる段階ではございませんが、私は、島嶼が沿岸に多いという場合には直線基線を引いて、そこを起点にする場合も国際的には認められておるということを申し上げておるわけでございます。そういうことを踏まえた上で、その線の引き方について御相談いたしておる投降でございます。いま国会で地図を持ってきて、このようにいま相談しておりますというようなことを申し上げる段階ではございません。
  159. 野原覺

    野原(覺)分科員 交渉中だから申し上げる段階でないのだろうと思いますけれども、しかしながら国会ですから、今日日本が主張しておる点はやはり明らかにしてもらいたいですね。日本はどういう考えでいっておるのだ。いまあなたの御答弁を聞きますと、沿岸から三海里まで原則として韓国の領海だ、そうすると原則論でいきましょう。基線方式を省いて、低潮線から漁業専管水域をとるのだ、そうすると、漁業専管水域は、あなたの国会における答弁を調べてみますと、十二海里と  いうことになります。距岸十二海里、距岸で受け取っていいのですね。私はこの十二海里というのは、領海プラス漁業専管水域で、そういう場合にはこの十二海里は領海から起算するもの、こう誤解しておったらしいです。これは私の誤解ですか。
  160. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、あなたが誤解しておったのではないかと思います。
  161. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、条約局長にお尋ねねしますが、あなたは昭和三十八年二月十九日に、田中織之進委員のこの第二分科会の質問に、この領海問題でこう答えておる。「韓国は、理論的には領海は日本と同じ三海里説をとっておると承知しております。しかし現実にはいわゆる李ラインというものを設定しておりますから、広範な公海の部分に自分の専轄管轄区域を主張しておりますから、領海は実効的には李ラインと同じものになっているわけであります。」このあなたの答弁は、今日どこか修正、しなければならぬ個所がありはしませんか、どうですか。
  162. 中川融

    ○中川政府委員 前後の関係を、私速記録を覚えておりませんので、どういういきさつのときにそういうお答えをいたしたか知りませんが、おそらく日本の漁船が韓国李ラインの中で拿捕されて向こうに抑留され、処罰されておる、こういうような事態関連での御質問の際ではないかと思いますが、私は、そういう前後の関係であるならば、韓国側が一方的に国内法でつくりました李ライン、そこに専属的な管轄権を主張しておるのでありますから、領海と実質的に同じ作用をしておると現在でも考えておるわけであります。
  163. 野原覺

    野原(覺)分科員 外務大臣韓国は領海侵犯をやはり今後も主張してくると思う。領海がきまらないで領海侵犯はあり得ないと思う。沿岸国としては当然沿岸海域というものを規定しておるわけですから、その点を確認しないで漁業専管水域だ、規制水域だと言っても、私は意味をなさないと思う。だから領海については、やはり明確にしなければならぬと思いますが、あなたは、領海はあいまいのままで、とにかく漁業専管水域共同規制水域、それだけをきめたらいいのだ、領海というものはどうでもいいのだ、こういうお考えで今後もお臨みになる御方針ですか。
  164. 大平正芳

    大平国務大臣 いま漁業問題を問題にしておるわけでございまして、あの海域における日韓双方漁業の操業というものが、両方の合意による協定によりまして安全にかつ持続的に、双方利益のために行なわれる状況を保障するために、いまやっておるわけでございまして、そういうことをやってもむだではないかということは、これは先方がそれを守らなかったらだめではないかと言われたらそれは、協定を結ぶこと自体がむだな話であって、私どもは相互の信頼によりまして、そういう安全操業の状況を保障するために、鋭意苦心いたしておるわけでございます。つまり漁業以外の問題で公海の上で、あるいは日本の船舶が拿捕されるとか、臨検を受けるとかというようなことが起きますと、それはまた別な問題になりまして、それに対しまして、日本政府としてそれ相応の処置をしなくてはいけなくなると思いますけれども、いま私ども問題にいたしますのは、漁業の安全操業という状況をどうつくり出すかという点、両当事者ともそのために一生懸命苦労しておるわけでございます。そういうことが行なわれないような、安全操業を阻害するような事態がないようにやろうというわけですから、その点ひとつ御了解いただきたいと思います。
  165. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、まあ今日いまの段階では、領海については話し合いをしていないけれども交渉妥結するにあたっては、韓国の領海は何海里だ。これは三海里説をとっておる国もあれば、六海中説をとっておる国もある。あるいは十二海里までは可能だというような意見もあるようです。その点を明確にしない限り、将来韓国が主権国家として領海侵犯を主張してくるようなこともあるでしょうから、領海は、行政権、司法権というようなものが、大臣、御承知のようにあるわけです。ところが領海外は、これはそういう権利なしに、船は通行できるわけですから、この点はやはりはっきりしておかないと、今後問題を起こすから、日韓交渉妥結にあたっては、領海というものについては、これはやはり明確にしておかなければならぬ。韓国の主張というものを明確に聞いておかなければならぬ、こういうことはお考えでしょう。いかがですか。
  166. 大平正芳

    大平国務大臣 でございますから、先ほど条約局長もお答えいたしましたとおり、専管水域の中に領海というものがあるわけでございますから、専管水域の裁判管轄権をきめる場合には、当然あなたの言われたような問題があると思います。しかしそういうような点は、ちゃんとしておかなければならぬということは当然なことだと思います。
  167. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、ちゃんとしておかなければいかぬけれども、いまの時点では、韓国は三海里という説をとっておるのだということになれば、井手君に対する六海里というものは、あなたは予算委員会の答弁を修正してもらわなければなりませんね。今度はまた、総括の予算委員会もあるわけですから、二月十日のあなたの御答弁は、これは修正してもらわねばならぬと思うのです。
  168. 大平正芳

    大平国務大臣 六海里、六海里のその六海里というのを、領海という意味でお使いになったのではないと私は思います。
  169. 野原覺

    野原(覺)分科員 いや、これはそうじゃないですよ。速記を見てください。六海里プラス六海里、六海里は領海だ、プラス六海里は漁業専管水域だ、こういう議論で発展をして聞いておるわけですからね。ですから、あなたはそうすべきであると思いますと、こう言っておる限りは、それはまだきまっていないのだ、いまお話を聞いてみますと。これはあなたのほうから進んで予算委員で修正をしないと、この速記は間違いということになりますよ、私の質問に対する答弁と食い違っていますから。いかがですか。
  170. 大平正芳

    大平国務大臣 もっとくだいて申しますと、十二海里の専管水域の最初の六海里というと、その次の六海里という中には、多少入り合い権などの取り扱いが違う場合があるということで、最初の六海里というのを即領海であるというように了解して答えたわけでは私はないのであります。ですからその点は間違いないと私は思うのです。問題は、私は冒頭に申しましたように、いま領海論議をやっておるのではないということなんで、漁業協定をつくるべく努力いたしておるわけでございます。ですから、最初の問題に返りまして御判断いただけば、井手さんもあなたもおわかりいただけると思います。
  171. 野原覺

    野原(覺)分科員 同じことを無し返しますけれども、井手君には大海里と言って、そして私に対するいまの答弁では、あるいは去年の二月田中識之進委員に対する答弁の速記を見ましても三海里と、こう出ておる。だから韓国は、一体どっちを主張しておるのだということです。なるほど領海については確定はしてないかもしれないか、いまの時点で、韓国は領海は河海里だ、こういう考え方であなた方は臨んでおるのかということを聞いておる。これはもう全然韓国は何海里だということについては聞こうともしないし、そういうことはもう不問に付しておる、こういうことですか。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 いまの日韓交渉というのは、領海を確定するために交渉しているのではないということです。漁業協定をどういうふうにつくるかということをやっておるというわけでございます。したがって、専管水域を、どうするかとか、共同規制水域をどうするとかという問題をやっておるわけで、いろいろ漁船の安全操業を確保する、保障するために、苦心してやっておるわけであります。領海を直接の問題にしておるわけではないのでございますが、あなたが御親切に御指摘になりましたように、領海には完全に沿岸国の行政権、心法権が及ぶわけでございますから、だから専管水域の中における裁判管轄権等を具体的に規定する場合には、その問題はちゃんと頭に置いておかなければならぬという、そこに関連が出てくるということでございます。
  173. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは条約局長、あなたが去年こう言われた。「管轄区域を主張しておりますから、領海は実効的には李ラインと同じものになっているわけであります。」今日ただいま韓国の領海は、「李ラインと同じものになっているわけであります。」この答弁はもういささかも修正する必要はないですか。
  174. 中川融

    ○中川政府委員 それは実質においてということで言っておるのでございまして、韓国側はいわゆる李ラインを領海として主張しているのではございませんから、領海ではないわけでございます。それではいわゆる李ラインは何であるかといえば、李ラインであるというほかないわけでございますが、要するにその内容は、日本の漁船等に及ぼしておるその実際のいわば不便、支障というようなことから見れば、領海と同じことを韓国はしておる、こういうことを申したわけでございます。
  175. 野原覺

    野原(覺)分科員 実質においては李ラインと同じように今日韓国は主張しておる。実効的にはというのはそういう意味でしょう。それでは日本はこれは認めないのでしょう。李ラインというものは日本は不承認ですね。日本は認めない。ところがあなたの答弁は、「領海は実効的には李ラインと同じものになっているわけであります。」あたかも認めたかのような答弁をしておる。李ラインというのはあれは領海ではありませんね。領海の線ではありませんね。大臣、この点はいかがですか。
  176. 大平正芳

    大平国務大臣 私も、いま条約局長が言われたとおりに了解いたしております。すなわち李ラインを認めるなら、もう漁業協定なんか相談する必要はないと思う。初めから漁業話し合いをする必要はないと思いますよ。そういうことでなくて、国際慣行にのっとって、公正な漁船の安全操業を両方が合意し合って保障することを、どうしたらできるかという点をいま苦心しておるのでございます。それで条約局長の言われた趣旨は、李ラインという不当不法なもので、領海的な作用をいままでやっておられた。そういうことは、これはたびたび申しておるように不当不法なことでございますから、こういうのはやめてもらわなければ困るので、それをやめないというなら、初めからこの漁業協定なんか成り立たないわけでございます。専管水域をきめ、共同規制水域をきめるという交渉をいま日韓の間でやっておるということから、私どもの意思のあるところは十分おくみ取りいただきたいと思うのです。そういう話に韓国も沿って、いま一緒にやっておるということでございますから、善意を持って御理解いただきたいと思います。
  177. 野原覺

    野原(覺)分科員 李ラインが領海でないなら、では韓国の領海はどこかということです。李ラインは領海じゃない。断然だ。こんなばかな領海があるわけはないですからね。これは国際法の常識からいっても、李ラインは領海ではないのです。ないなら、韓国の領海はどこだ。
  178. 大平正芳

    大平国務大臣 それは先ほど申し上げましたように、私どもは三海里だと了解しております。
  179. 野原覺

    野原(覺)分科員 それであるならば、井手君の質問の答弁とあなたの答弁は食い違っておりますから、これは後日速記録を慎重に調査した上で、私ども予算委員会で問題にしていかなければならぬ、このように思うのです。
  180. 相川勝六

    相川主査 野原君に申し上げます。時間がだいぶ経過しておりますから、もう結論を出してください。
  181. 野原覺

    野原(覺)分科員 できるだけ簡潔にいたしましょう。  そこでお尋ねいたしたいことは、この漁業専管水域の問題です。これは先ほどの質問で何海里を主張しておるかと言ったら、低潮線から十二海里だ、こういう御答弁でございましたが、これは間違いございませんね、低潮線から十二海里というのは。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおりそれが原則でございまして、島嶼の多いところ等は例外といたしまして直線基線を起点にする場合があるということでございます。
  183. 野原覺

    野原(覺)分科員 直線基線方式をとるということになれば、その直線を引いたところから十二海里、こう計算をするわけでしょう。その直線はどこから引くのか、これを明確にしないと、私はその距岸の距離が膨大になると思うのです。直線基線方式でその基線の内側は内水ということになるでしょう。その基線から十二海里起算をするのだ、そうなるとこれはたいへんなことなんです。低潮線から十二海里というならば、これは了解できましょう。そうしてその三海里が領海だと、こう私は受け取ったわけですが、それなら了解できます。しかし直線基線方式、どういう直線を引くのかということをあなたが答弁できなかったら、条約局長答弁しなさい。これはたいへんなことなんだ。たとえば済州島という島があるわけだ。それからまた済州島よりも遠いところに、また東南のほうに何か小さな島もある。ああいうところに直線を引っぱってそれから十二海里だといったら、これはもう日本漁業権というものは非常に侵害を受けると思う。そこのところを明確にしてください。
  184. 大平正芳

    大平国務大臣 それは野原さんの御指摘を受けるまでもなく、私どももそれは十分考えておかなければいかぬことでございまして、私が今日の段階において申し上げられることは、低潮線を起点にいたしまして、そうして十二海里を原則といたします。
  185. 相川勝六

    相川主査 静粛に願います。
  186. 大平正芳

    大平国務大臣 島嶼等がありまして入り組んだところでは、直線基線を起点とする場合があります。国際的な慣行として認められておるケースもございます。したがって日韓の間でどのような直線基線引き方をするかという問題は、あなたから御指摘がございましたように確かにこれは大きな問題でございまして、国際慣行に照らしまして、また水域の実態に即して、両専門家の間でせっかくいま議論を戦わしている段階でございます。いずれ協定ができましたら、国会で十分御審議いただくわけでございますので、いまの交渉中の段階におきましてどこをどうというようなことは、まあかんべんしていただきたいと思います。
  187. 野原覺

    野原(覺)分科員 この問題はあなたはきまってから聞けと言いますけれども、やはりこれは国会審議ですから、一体日本政府がどういう主張をしておるのであるか、いま外務大臣として、それは直線基線方式、その基線をどういうふうに引こうとしておるか、あなたのいまの考えを聞いておるわけですから、あなたはそれを答弁できないと思えば、私どもの国政審議はできません。あなたは国会では答弁の義務があるわけです。あなたは百も御承知だ。国会議員から質問されたら答弁の義務がある。だから直線基線方式が問題なんだ。直線基線基線から漁業規制区域、今度は共同規制水域というのがまたあるわけですから、そうなると今日の李ラインの線まではこないけれども、私どもは膨大な距離に持っていかれる。そういうことになるとこれはたいへんなことだと考えておるので、これは交渉中ではありますけれども、あなたの直線基線方式、外務当局か主張しておる直線基線方式の基線はどの方向に引くのだ、どの島と岬を結ぶのだ、そういうことを明らかにしてください。そんなことが明らかにできないはずはありません。
  188. 大平正芳

    大平国務大臣 国会のせっかくの御質問でございますから、原則はこう、例外はこうという基本的な方針をお答えいたしておるわけでございます。それからは交渉中のことでごいますから、政府におまかせをいただきたいと思います。
  189. 野原覺

    野原(覺)分科員 政府委員から答弁もらいましょう。
  190. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま大臣の言われましたとおりであるわけでございますが、この第一次海洋会議でできました領海に関する条約というのがございます。その中にいわゆる直線基線方式というのが規定があるのでございます。第四条というのに書いてあるのでございます。それによれば一応領海、この場合は領海の範囲の起算の方法でございますが、一応は低潮線から出発するわけでございますが、沿岸が深く切り込んでおる、あるいは沿岸に沿って一連の島嶼がある、こういうような場合には、その深く切り込んだ場所あるいは沿岸の島嶼等におきまして、適当な地点を選んで直線基線を引くことができる。その直線基線から領海の範囲を起算することができる、こういう規定があるわけでございます。原則は実はそれだけでございまして、それ以上のことは何も規定がございません。ジュネーブの第一次海洋会議委員会等でいろいろ起草の段階で議論がありましたが、きまったところはこれだけでございます。このジュネーブの第一次海洋会議の領海に関する条約の第四条の規定を、これは日韓双方とも同意している規定でございますので、これをもとにいたしまして、これをどう具体的に韓国沿岸に当てはめるかという問題が出てくるわけでございます。それは目下双方交渉中である。さようなことでございます。
  191. 相川勝六

    相川主査 野原君、もういいでしょう。
  192. 野原覺

    野原(覺)分科員 この点をあいまいにしては困るということです。この問題をはっきりしておきたいと思う。一九五八年の海洋海議の採択したこのあなたの言う第四条二項、前記の基線は沿岸の一般方向からあまり離れて引いてはならず、そう書いてある。またその線の内側にある水域は内水制度に服させる、こうあるわけです。内水なんです。そうすると、こう基線を引きますと、基線の内側、内水だと、これは低潮線からいったら、一体場合によっては相当な奥行きはありますよ、この内水は。この基線から今度は領海をはかるのだ、その領海はいままで三海里と理解しておりますけれども、何海軍になるやらわけがわかりませんという、たよりない御答弁、全くたよりないですよ。そこでその基線から領海をはかって、今度は領海から漁業専管水域をはかる、漁業専管水域から今度は共同規制水域をはかる、そういう方向をもこれはとるわけでしょう。ですから、私はこの基線を問題にしておるのですよ。やはり基線を、そういう方向をあなた方がとるということであれば、どういう線を引くのか、それによって日本漁業権の問題その他も起こってくるわけなんです。だからその点を明確にしないと、国会では私ども漁業問題の審議というものが困難ではないですか。だからそういうように基線から領海をはかり、領海から専管水域をはかり、共同規制水域をはかる、こういうような考え方をしておるのですか、それははっきり聞いておきましょう。
  193. 大平正芳

    大平国務大臣 当然そうでございます。
  194. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、この問題は私何回も指摘したように、これはたいへんなことになると思う。  そこでもう時間もありませんから終わりますけれども漁業専管水域とか、共同規制水域というものは、これは日韓交渉妥結する場合にはどういうことになるのですかね。年限を切るのですか。それとも恒久的なものにこれはなるわけですか。半永久的なものになるわけですか。暫定的なことを考えておるのかどうか。いかがですか。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 それはまだ最終的にきめておりませんで、目下鋭意検討中でございます。
  196. 野原覺

    野原(覺)分科員 時間もありませんからこれで終わりますが、おおよそ漁業問題に対する外務大臣考え方が、私にもはっきりしたようです。領海はあいまいにして、直線基線方式をとって、その中は内水と認めさせて、そして今度その基線から領海をはかり、専管水域をはかり、そして専管水域から今度は共同規制水域――共同規制水域にもたいへんな問題があると思う。何を規制するのか。これはおそらく日本の水産業の規制を受ける部面が大きく出てくるのではないか。まあこういうことで朴正煕の顔を立てて、そうしてこの漁業問題で話をつけようというおおよそのねらいだけは、私にはわかりました。しかし本日は時間がありませんから、これは外務委員会その他の機会で、なお掘り下げてお伺いしたいと思います。  以上で終わります。
  197. 相川勝六

    相川主査 午前の会議はこの程度にとどめます。午後は本会議散会直後に再開して、外務省所管に対する質疑を続行いたします。これにて休憩いたします。      午後一時二分休憩      ――――◇―――――      午後三時八分開議
  198. 相川勝六

    相川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算外務省所管に対する質疑を続行いたします。宇野宗佑君。
  199. 宇野宗佑

    宇野分科員 私は、今回の予算に計上されております海外協力奉仕隊の問題につきまして、外務大臣の御所見をこの際伺っておきたいと思うのであります。  さきの施政方針において、総理大臣も、わが国の青少年を、技術を身につけた人を海外に派遣して、大いに新興国家の交流のために役立たしめたいという方針をお述べになりました。全く御同感しごくと思うものであります。特に最近、低開発の国々は、資本的な援助あるいは技術的な援助を先進国に求めていることは明らかであり、このことに対しては、自由主義国家群といえ、あるいはまた共産主義国家群といえ、いずれを問わず、何らかの方法において相当な援助をなしておるのが現状であります。わが国といたしましても、すでにいろいろな方途によりまして、あるいはコロンボ計画等のような国際機関を通じての間接協力、あるいはまたインド、パキスタン、セイロン等々につくられました漁業センター、農業センター、工業センター等々によるところの直接協力、この二つの方法をもって今日までそうした新興国家には技術援助をなしてきたわけでありますが、いずれにいたしましても、私は、わが国の外交方針としてもう少しくパンチのきいた政策が実現されたほうがいいのではないかと考えておつたのであります。特に日本立場から申しますならば、すでに再三総理も言っておられるとおり、わが国は自由主義国家群の中における三本の柱のうちの一本であるその自党、また同時に、アジアの一員であるという自覚、同時に、アジアの中においても工業国であるという自覚、同時に、過去百年の間において、わが国が、先進文明国の文化というもの、経済体系というものを十二分に同化して、今日独自の国家を形成したという経験国としても、当然、われわれは、さらに強いアピールをする何らかの政策を持ってグループに報いなければならないと思っている次第であります。  そこで、今回、そうした意味合いにおいて、外務大臣が率先してここに海外協力奉仕隊というものの調査費をおつけになったと思いますが、従来のわが国のこの奉仕隊に関しますところのいわゆる呼称は、日本版平和部隊というふうに言われてきたのであります。もちろん、アメリカにおいてはケネディが平和部隊を編成しまして、すでに相当な効果をあげておる。また世界もこれを認め、アメリカ国内においても、平和部隊に関しましては、特に青少年が異常なる関心を持って、みずから率先してやっていきたいという気風を示しておる。まことに私はけっこうだと思います。けっこうだとは思いまするけれども、しかし、やはり相手先がいわゆるAAグループであるということを考えました場合に、どういたしましても、そこには民族的な問題もありましょうし、あるいは地域的な問題もありましょうから、この海外協力奉仕隊というものは、いわゆる日本版平和部隊ではなくして、日本独自の構想に基づき、日本独自のイデオロギーを持って、そうした国々に技術提携をなし、援助をなす、こういうふうに私は考えたいと思うのでございまするが、その点、今回御提案になっておりまするところの海外協力奉仕隊に関する性格はいかなるものであるかということに関して、外務大臣の御所信のほどを承っておきたいと思います。
  200. 大平正芳

    大平国務大臣 農業、工業等に関する技術を身につけました青年を東南アジア、その他新興国に派遣いたしまして、相手国の青年と生活を共にし、その国の開発に協力して、その協力を通じて、その生活を通じて、相互の理解を深めるということが、一応いま私ども考えておりまする海外協力奉仕隊の構想でございますが、いま宇野先生の御指摘のように、この問題には、民族的な問題もあれば、地域的な問題もございまするし、受け入れ国側の要請事情等いろいろありましょうし、すでに平和部隊という構想のもとに先進国がやっておる事例もあります。そこで、私といたしましては、この海外協力奉仕隊にどういう性格を持たすか、日本独自のものでなければならぬことは全く賛成でございますが、日本独自のものとしてどういう性格を持たしていくかということは、本年度とりあえず先進国の様子も勉強し、また国の内外におきまして、この問題をいろいろ調査し、意見も承りまして、より充実した内容のものに仕上げるのはこれからだと思うのでございます。予算要求その他一応の考え方として、私が冒頭に申し上げましたような考え方でありますけれども、しかし、これはいまから研さんを通じ、調査を通じ、またこれからの実践経験を通じてよりりっばなものに仕上げていくように努力すべきでないかと思っておりますから、これにとらわれずに考えていくべきものと考えます。
  201. 宇野宗佑

    宇野分科員 日本版平和部隊にあらずして、日本独自の構想に基づく奉仕隊であるという考え方に対しては、外務大臣もそのような気持ちで今後推しはかっていきたいとお答えになりましたので、私もそのほうがいいと思います。ただし、ここで考えておかなくちゃならぬことがあると思うのでありますが、わが国は、すでに先ほども申し述べましたとおり、各国にセンターをつくりまして、相当高級な技術者を派遣しております。したがいまして、その俸給面からながめますと、最高が七百ドルくらい、最低で三百ドルくらいということになっておるわけであります。私も技術の問題としてあちらこちら見学させてもらいましたが、非常に成績をあげておる。また、受け入れ国においても、それを非常に好感を持って迎えております。ところが、昨三十八年度の予算において計上されておりました、いわゆる海外協力事業団から派遣される十名の予定者の給料が二百ドルということになっておりまして、これに対しては、仄聞するところでは、左外公館等を通じて、いままでは日本の相当ハイランクの技術者が来てくれておったが、二百ドルというと、何かあまりにも落ちたんではないかというような考えが非常に濃厚だったということを聞いております。したがって、これから相当な技術者がどんどん派遣されることでありましょうし、すでに二十九年から昨年末日までには六百九十七名くらいの人がそうした国々に専門技術者として派遣をされておりますけれども、平和部隊の模倣ではないが、しかし、海外協力奉仕隊というものは、あえて俸給を論ぜず、そういう気持ちで出かけていく青年たちであるというアピールさえあるならば、海外協力事業団から二百ドルで派遣される技師ではございませんよという一つの限界が、はっきりと相手国に示されるべきではないかと考える次第であります。したがいまして、そういう面におきましても、わが国独自の構想でありつつ、やはり国際的にはピース・コアという一般名が用いられ、その面に対する関心が深いようでありますので、この点に対しても、やはり国際的には、いろいろな面においてそうした諸外国に対する関連も持っていかなければならないと思いますが、現実に、このピース・コアに関しましては、カナダ、ニュージーランドあるいはその他の国々も相当関係を示しておりますし、先般も西独の首相エアハルトみずからが平和部隊を近く派遣するのだということを言っておりますし、あるいはまたつい先般も、本月の中旬ですが、オランダのヘーグにおいてこの会議がなされたということを聞いておりますが、幸い局長が出ていらっしゃいますから、その会議内容はいかがであったかということに関しまして、この際御報告を願っておきたいと思います。
  202. 西山昭

    ○西山政府委員 本月の十七、十八日に、ハーグでいわゆるピース・コア・インターナショナル・ワークショップというものの会議がございまして、私のほうから係官を派遣いたしまして、オブザーバーとして出席いたさせました。中間的にごく簡単に会議の模様は報告が参っておりますけれども、詳細な点はその係官が帰って報告いたすことになっておりまして、近日のうちにこの係官が帰ってきまして、詳細御説明申し上げることができると思います。  現在までわかりました点は、中間的に報告が参りました点は、インターナショナル・ワークショップというものの性格が必ずしもはっきりしていないわけでございます。それからまた、これを存続せしめるかどうかという点も必ずしもはっきりしていなかったわけでございますが、会議の報告によりますと、この機構をとりあえず存続するということにきまったようでございます。  それからもう一つの点は、もともとアメリカが主張しましてこの機構ができたわけでございますが、これに対する各国の分担金と申しますか、そういうものについての話し合いがあったようでございます。日本は現在オブザーバーとして参加しておりまして、この辺の模様につきましては、係官の報告を待ってさらに詳細に検討したい、こう思っております。
  203. 宇野宗佑

    宇野分科員 いわゆるピース・コア・インターナショナル・ワークショップ、これに参加しているのが今日四十三カ国と聞いていますし、また日本同様アドヴァイザリー・コミッティというのは十九カ国と聞いております。したがいまして、今回調査をされます場合は、こうした国際機関との連携というものも必要だと思いますが、外務大臣、ひとつ東南アジアだけを対象とせずに、やはりわが国の将来の外交路線というものを考えてみましても、いわゆるAAグループというものは無視できない存在だと思います。したがいまして、この調査団の派遣先というものは、大体今日のところ、われわれといたしましては、アフリカをも含める、あるいは中近東も含める、あるいは東南アジアを主体とするといったようなことでなされたほうが、何か日本の外交も相当積極的にパンチのきいた政策をやり出したというふうな強い印象を与えるのではないかと思いまするが、せっかく調査団を派遣されまする以上は、当然――いろいろな事情はありましょうけれども、派遣先としてはどのようなところをお考えになっておるか、この際承っておきたいと思います。
  204. 大平正芳

    大平国務大臣 局長から答弁させます。
  205. 西山昭

    ○西山政府委員 現在千五百万円の予算を御審議願っておりますが、何しろ千五百万円と申しますのは、金額もたいしたことございません。しかし、先生御指摘のとおりに、最も有効にこの調査団を活用したいと思いますので、関係の向きとの間で内々具体的な案を御相談申し上げておりますが、現在のところ、必ずしも東南アジアに限らず、アフリカも含める構想で検討いたしております。
  206. 宇野宗佑

    宇野分科員 その場合に、これは続く問題をひとつ外務大臣にお尋ねをいたしておきたいと思いますが、こうした奉仕隊を海外に派遣しようと一たん決意をなした以上は、当然その調査の結果、すみやかにおれのところの国にもそうした優秀な青年技術者を送ってくれないかという要請があるものだろうと私は推定いたしております。現にわれわれが海外に参りました際にも、某国におきましては、日本の農業技術はたいしたものである、それを青年諸君がやっておるが、その青年諸君の努力に私たちは期待するところが大である、こういう声を再三耳にいたしておりますが、たとえば直ちによこしてくれないかという要請があった場合に、こうした問題に関しましては、本年度の予算にはその派遣費が計上されておらないから昭和四十年度の予算まで待ってくれぬかというようなことでは、せっかくここに調査費をおつけになったゆえんがないだろうと私は思うのであります。したがいまして、そうした場面が調査の結果起こった場合には、はたして出し得られるものであろうかどうかということに関しまして、この際御所見を承っておきたいと思うのであります。
  207. 西山昭

    ○西山政府委員 こまかい予算の面に関係がありますから、私から答弁させていただきます。  昨年党のほうにも御連絡いたしまして、十名の青年技術者の予算が認められまして、これを昨年末に実施したものもございますが、本年早々これを全般にわたりまして実施する予定になっております。いま先生が御指摘になりましたように、受け入れ国のほうから早急にこの種の派遣を希望する向きがございますれば、その規模にもよりますけれども、本年の予算におきまして十名新たに認められておりますので、十名の範囲におきましては事務的に予算の範囲でその御要望に沿うことができるのじゃないかと思っております。
  208. 宇野宗佑

    宇野分科員 この問題は、当然対外的にもいま申したようなことを観点として、慎重に事を運んでいかなくちゃならないと思いますが、また国内的にもいろいろとそうした人材をピックアップするということに関しても大いに留意しなくちゃならないと思います。そこで、私は、対外経済協力審議会というものが総理府にございますから、外務大臣もその一員でございますが、そうしたところにおいて、わが国のこういう新しい政策に関しては今後御審議があってしかるべきだと思うのであります。今日までは基金等の問題に関しまして年に三回ほどおやりになっておる程度のものであるとしか承っておりません。やはりこうしたところにおいて、本格的に日本はやっていくのだというふうな姿勢を示さんがためには、外務省も在外公館を通じていろいろ対外的な調査もなされましょうし、より一段高いところからその審議を進めるべきであると私は思うのでございます。なぜかならば、先ほど申したとおり、たとえ一人の青年技術者でも、アメリカにおいては大体週給十五ドルでございますから、月給にいたしまして約五十ドル、そのくらいの程度で彼らは三年間不毛の地に行って大いに人類のために貢献したということが私どもの耳に入っておりますが、たとえば百ドルあるいは二百ドルというような程度において出ていく青年たちであるといたしましても、私は相当な基金を必要とするのじゃないかということを考えております。したがいまして、調査の結果どのような規模になるのか、今日あるところの海外協力事業団をその主体とされるのか、あるいは総理府にヘッド・クォーターをお置きになるのか、これは今後いろいろ御検討なさらなくちゃならない問題だろうと思いますが、まあ大平外交のときにこうした新しい政策が生み出されたのでございますから、ひとつ外務大臣が委員をなさっておる対外経済協力審議会において、特別委員会をつくるとか小委員会をつくるとか、いろいろな方法があろうかと存ぜられますが、そうした高い次元でこの問題は検討すべきであると思います。今日までややもしますると、いろいろな専門技術者を派遣いたす場合におきまして、これは農林省の縄張りである、これは通産省の縄張りであるといったようなわが国の官僚システムのセクト主義が、時として火花を散らせて、いろいろな問題で支障を来たすことも、十二分に大臣は御存じだと思います。こうした青年を対象としたピュアな政策につきましては、私は、高い次元に立って、こうした審議会を十二分に活用されて、その審議会で百年の大計をお立てになったほうがいいのじゃないかと思います。したがって、千五百万円の調査費のみならず、審議会におきましても外務大臣が率先せられまして今後そうした問題をやっていただかなければならぬと私は思っておりまするが、これに対する大臣の御所見を最後に承りまして、私の質問を閉じさせていただきます。
  209. 大平正芳

    大平国務大臣 全く同感でございます。ことしは一応調査費がつきましたので、外向きの調査をやらせていただき、そうしてデータを在外公館等を通じて別途またとりまして、そしてデータを十二分に取りそろえた上で、いまの御指摘の、審議会におはかりして、大所高所から御判断をいただくというように取り運びたいと思います。
  210. 宇野宗佑

    宇野分科員 終わります。
  211. 相川勝六

    相川主査 これにて昭和三十九年度一般会計予算外務省所管に対する質疑は終了いたします。  次会は明二十六日午前十時より開会して、労働省所管に対する質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会