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1964-02-21 第46回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十一日(金曜日)    午前十時二十四分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       荒木萬壽夫君    小川 半次君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       古川 丈吉君    石野 久男君       田口 誠治君    田原 春次君       中村 重光君    野原  覺君       華山 親義君    山田 耻目君       山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎮男君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     鈴木 健二君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金部長)    辻  英雄君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  榮作君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君  分科員外出席者         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局監察審         議官)     足立 正秋君         外務事務官         (国際連合局外         務参事官)   力石健次郎君         大蔵事務官         (銀行局総務課         長)      近藤 道生君         自治事務官         (税務局市町村         税課長)    森岡  敬君     ————————————— 二月二十一日  分科員石野久男君、岡田春夫君及び河野密君委  員辞任につき、その補欠として中村重光君、田  口誠治君及び山田耻目君委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員中村重光君及び山田耻目君委員辞任につ  き、その補欠として石野久男君及び華山親義君  が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員華山親義委員辞任につき、その補欠と  して田原春次君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田原春次委員辞任につき、その補欠と  して野原覺君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員田口誠治君及び野原覺委員辞任につき、  その補欠として岡田春夫君及び河野密君が委員  長の指名分科員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算労働省所管  昭和三十九年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられた方は二十分程度にとどめることになっておりますので、格段の御協力を願います。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁的確要領よく簡潔に行なわれまするよう特に御注意申し上げておきます。  昭和三十九年度一般会計予算及び昭和三十九年度特別会計予算労働省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。中村重光君。  なお、中村君に申し上げますが、質疑時間は三十分以内にとどめてもらいます。
  3. 中村重光

    中村(重)分科員 簡潔にお尋ねをいたします。  労働省が最近保安関係等に対しまして勧告を発する等熱意を示しておられることに敬意を表しておるわけであります。そういう面からいろいろお尋ねしたいことがありますけれども、三十分の時間でございますので、いずれまた石炭対策等におきましてお尋ねしたいと思っております。ここで労働省の直接の所管事項ではないといいますけれども、当然関心を払っていらっしゃいますことだろうと思うのでありますが、例の産炭地振興ボタ山整備事業をやっていることは、御承知のとおりであります。この事業中高年層炭鉱離職者を吸収するということが主眼になっておるわけであります。したがいまして、このことがどういう方向運営されておるかということに対しましては、もちろんこれは関心を持っていらっしゃる。大臣がいままで把握しておられるような点でうまくいっておると思っていらっしゃるかどうか、その点についてひとつお伺いしてみたいと思います。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ボタ山事業につきましては、通産省監督のもとに事業団がやっておることは御承知のとおりでございます。しかし、これには相当多数の炭鉱離職者を吸収していただくことになっておりまするし、またそれがこの事業目的になっておりまするので、労働省といたしましてもその実情につきましては十分に注意をいたしておるところでございます。大体予定より幾らか着手がおくれておるように聞いておるのでございますが、だんだんに予定どおり進行してもらえるもの、こういう考えのもとに全般の離職者対策運営いたしておる次第でございます。  詳しい状況につきましては政府委員から必要があればお答えいたしたいと思います。
  5. 中村重光

    中村(重)分科員 この炭鉱離職者ボタ山整備事業に従事する場合、有沢答申に基づきまして常用である、こういうことであったわけであります。私ども当該委員会におきましてこの点を強く主張いたしましたし、また関係大臣の御答弁を求めておりますが、そういうことで運営をしていきたい。ところが実際にいま私どもがいろいろと調査をしてみますと、必ずしもそういう方向ではない、しかもまた非常に低賃金で働かされておる、こういう実態があるわけであります。それらの点について調査をしていらしゃらないかどうか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは原則的に常用と心得ておりまするが、しかし請負がかなり多いということも聞いております。しかしいままでこの問題につきましては正直なところ私も十分に承知いたしておりませんので、今後実態を十分調査いたしまして、当初の事業目的にかんがみまして、その運用に注意するよう通産省にもよくお願いをいたしたいと存じます。
  7. 中村重光

    中村(重)分科員 ある府県で公社を設立をして、その公社でやる。その公社専務が十八万円の給料をとっておる。ところが労働者に対してはどうか。労働者に対しましては、通産省の示す予算の中からその公社が単価をきめておるわけです。ところが労働者にはそれをピンはねをする、こういうことになると思うわけでありますが、五百円内外の賃金、女の労働者は三百円を切れるというような状態です。そういうことで、労働者には安い賃金、あるいは請負で非常に不利な条件の中で働かす。それで公社専務というのはそういう十八万円といったような、その地域の県としては非常に高給に失すると私は思うのでありますが、そういうやり方を単に請負人じゃなくて、県がやっているということは、これは実に不都合千万だとさえ思うのであります。そういうことを労働大臣としては、どのようにお考えになりましょうか。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 長崎はたしか公社で経営をしておられるということは聞いております。その専務給料が十八万円というのは、いま初めて伺いました。賃金につきましては、大体八百円程度の支払いになっておるように一応報告されておるのでございますが、いまのお話によりますと、だいぶわれわれの承知しておるところと事実が違っておるようでございますから、さっそく調査をいたしまして、不適当な個所はすみやかに直してもらうようにいたしたいと思います。
  9. 中村重光

    中村(重)分科員 通産省監督下でございますので、この点に対しましては労働大臣をあまり追及するわけにはまいりません。ただ、当然関心を払っていただかなければならない。保安関係におきましても、通産省監督下ではあるけれども、特に勧告をされる等、熱意を示された。それに対しましては、もちろん人命尊重立場から先ほど申し上げましたように、これは敬意を表しておりまするし、さらに積極的に取り組んでいただきたいということを強く要望いたすわけでありますけれども、これらの問題も、炭鉱離職者にいかに安定した生活を確保させるかという点にボタ山整備事業等もあったわけでありますから、その趣旨を十分生かすように労働大臣はひとつ労働者生活向上、安定という立場から関心を持って配慮していただきたいということを強く要望いたすためにお尋ねしたわけであります。閣議等適当な機会がありますれば、それらのことにつきましては、特にひとつ関心を払うようにしていただきたい。  いま一つ、中小企業労働対策という面から考えられております産業労働者住宅の問題であります。これがほんとう労働者の福祉をはかっていくという面から遺憾なく運営されておるかどうか。労働者のためにといって建設された住宅労働者ほんとうに入っておるか。労働者が利用しておるであろうか。そのことに対しましては、もちろん関心を払っていらっしゃると思うのでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この融資につきましては、関係事業団融資を行なわせておりますので、私どもも当初の目的から考えて、労働者用住宅に現実に供されておるものと心得ます。私用身承知をいたしておりませんので、政府委員から申し上げさせていただきます。
  11. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先生が御指摘の点は産労住宅融資一般の問題だと思います。その点につきましては、融資の際に、地方の労働基準局長がその適否について意見を述べる、そういう制度になっております。そういう機会をとらえまして、できるだけ中小企業にも利用されるよう指導いたしておりますが、何ぶんにも金融でございますので、担保力その他の観点から、現状は遺憾ながら大企業が利用しておる率がかなり高いようでございます。そういった点、特に中小企業に対して産労住宅融資がもっとなされないかという御趣旨かと思いますが、現状はただいま申しましたように、担保力その他の点から、大企業に片寄っておるような傾向が認められております。御指摘の点は十分注意いたしまして、善処いたしてまいりたいと思います。
  12. 中村重光

    中村(重)分科員 三十九年度の予算の中で、建設省の方針として、中小企業労務供給というものを確保していく。こういう面から特に積極的に取り組んでいただきたい。現在やっておりますのも大企業が多いわけでありますけれども中小企業中小企業といいますか、そういう程度のものには利用されておるわけであります。ところが、もちろん私の申し上げることが例外であるかもしれませんが、私の知る範囲三つくらいあります。その住宅には当該企業で働いている労働者は入ってない。入っておっても親類か何かという特定の者だけが入っている。そうして一般に借家という形で利用されておるということがある。あるいはその他営業用にそれを使っておるというのがある。もっと極端なのは、社長室寝台のかっこうのように見せかけて、それをまくらにするような形で——まくらといえばまくらになるわけです。疲れたときに社長さんがすわって、頭が高くなる……。ところがそれはソファーだという。しかし基準局等から来て見てもらうときは寝台だという。したがって寝室だというけれども、それは社長室なんです。そういうやり方をやっておる。私どももそのいすにすわったことがありますから、自分の経験ですからこれは間違いはございません。聞いた話ではございません。こういう不都合なことが行われておる。この点どうでしょう。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働者住宅に用いるべき資金を他の用途に使ってしまったということになるわけでございまして、これは融資の本旨からいってもまことに不都合千万なことだと存じます。従来さような点まで役所も手が足りませんので、十分な調査は行き届いておらなかった点はまことに遺憾でございます。しかし貴重なる財政資金融通分でございますから、今後とも十分審査いたしまして、間違いのないように指導いたしたいと思います。
  14. 中村重光

    中村(重)分科員 その点は基準局長、十分ひとつ監督を厳重にしていただきたい。これは私の知った狭い範囲で三カ所くらいそういう事実を知っておりますから、これは案外全国には相当な悪用ですね、そういうことがあろうと思います。せっかく労働者のために、あるいは労働者供給が円滑に行なわれるように、相当高い目的考えられたことが趣旨に合わない、こういうことでありますから、特にひとつ御注意を喚起しておきたいと思います。  なお労働大臣中小企業労働対策というものは、これは深刻な問題になってまいりました。今日の中小企業にとっては金融、税制、労働者供給三つの柱と見られるような問題、これに対しましては労働大臣からいろいろ伺ったこともありますけれども、最近の状況からいたしまして全く深刻になってまいりました。若年労働者を雇い入れようといたしましても、寄らば大樹の陰ではなかなかそうは参りません。どうしても何か抜本的な対策を講じなくてはならないと思いますが、何か特に労働大臣として考慮していらっしゃる点はありますか。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 中小企業の雇用問題はまことに深刻であるということは私どもも十分に承知をいたしております。したがいまして中小企業につきましては、政府として事業の援助のためのいろいろな対策と並んで、どうしても労務対策が伴わなければならないと思うのでございます。そこで一般の大企業に比べまして、中小企業労働条件が劣っておるということが何といたしましても求人難を招いている大きな原因であると存じますので、中小企業現状から見まして、労働条件改善ということを十分に指導する必要があろうと考えるのでございます。そのためには、まず住宅の面につきましては、中小企業のために共同宿舎資金を融通いたしましたり、あるいはまた、住宅資金融通等においてもできるだけ中小企業を優先的に取り扱うようなことも考え、また人の募集にあたりましても集団募集方式というものによりまして、できるだけ募集に対して職業安定機関も意を用いるようにいたしてまいっておるのであります。  しかし、何と申しましても賃金の問題であるとか、労働時間の問題であるとか、あるいは安全の問題であるとか、こういった基本的労働条件について考えなければならぬと思うのでございまして、それにつきましては、まず労働時間の点でございますが、御承知のとおり労働時間につきましては、ILOの一号条約、すなわち一日八時間、一週四十八時間という労働時間でございますが、今日労働基準法におきましては、大幅な例外措置が講じられておるのであります。大企業においては企業労務管理についての見識並びに労働組合要求等によりまして、この例外措置も適当なところで制約を受けておるのでありますが、中小企業においてはかなり極端な長時間も存在しておるようであります。しかし、法規上は基準法自体がこれを認めておるようなことでございますので、まずこれを改善するには基準法改正ということを考えなければならぬと思うのでございますが、人手不足の今日、急に労働時間を短縮するということもなかなか現炎には困難な事態がございますので、近くこれにつきましては、基準審議会等で御検討を願いまして、二年あるいは三年後を予定いたしまして、漸進的に事態改善し、そして三年後なら三年後において法律改正によってILO条約一号の批准可能な制度にしていくということをただいま思いつきまして、事務当局でいろいろ研究をしておるのでありまして、近く審議会にも御相談をいたしたいと思っております。  なお、中小企業労働者退職金の問題につきましては、今回の国会に改正法案を提案いたしておりますが、これもやはり中小企業対策の一つと存ずるのであります。  なお、失業保険等につきましては、従来五人未満職場に対する保険制度適用は、事務的に非常な困難があるという理由で排除してあるのでございます。しかし、五人未満職場に対する失業保険法適用ということは、これはやはり必要であると考えまして、大体昭和四十一年を目途といたしまして、この強制適用に踏み切ることといたしまして、今年度の予算中にもその準備の経費をお願いしておるというような次第であります。  私どものいままで考えております中対企業労務対策としてはこれ一発というきめ手があるわけではございませんが、多角的に各方面からできるだけ努力をいたしてまいりたい。特に労働条件改善につきましては相当力を入れてまいりたい、かように存じております。
  16. 中村重光

    中村(重)分科員 御答弁を中心にしていろいろと質疑をしてみたいと思いますけれども、時間がございませんので、いずれまた適当な機会にお聞きすることにいたします。  次に、問題の失対二法と言われるものに関連をいたしましていろいろお尋ねしたいと思います。就職促進措置の問題でありますが、失業者就労事業あるいは老齢失業者就労事業というものが円滑に運営されておるかどうか、大きな問題点というのは起こっていないのか。時間の関係もありますので、簡単に、明快にお答えを願いたいと思います。
  17. 大橋武夫

    大橋国務大臣 大体新しい失対事業運営方式は昨年の十月から開始いたしたわけでございますが、昨年じゅうはまだ一般に徹底しておらなかったのでございます。しかし、今年一月以降急に伸びてまいりまして、大体この調子ならば円滑に運用できるだろうという見込みをつけております。
  18. 中村重光

    中村(重)分科員 長崎県の北松浦郡江迎職業安定所に二十三名の失業者人たち失業者就労事業手続をとった。これは旧法に基づいてやったのでありますが、この旧法新法との切りかえの問題等々から、相当県当局との間あるいは労働省との関係におきましても問題化したという事実があるようであります。その経緯についてお答え願いたいと思います。
  19. 有馬元治

    有馬政府委員 江迎の問題は、いま先生から御指摘がありましたような夏からのいろいろな経過がございまして、新法旧法の切りかえ時点をめぐって、旧法時代の失対適用申請手続をとった者が、県からの報告によりますと二十二名となっております。これは新法施行の直前でございましたので、県といたしましては新法による就職促進措置ペースにこれを乗せるのが当然の措置ではないかという考え方で、この二十二名についていろいろと検討し、具体的な指導措置を示しておるわけでございます。そのほかに百名ほど、全日自労さんのいろいろな勧誘によりまして新しい改正法のもとで申請手続がなされておるのでありますが、これも具体的に個々人のいろいろな事情を調べてみますと、新法による就職促進認定をする要件に合致しないというケースが相当ございます。すなわち家庭から離れられない、あるいは他に就職しているというようなことで、促進措置ペースに乗りにくいものが相当ございます。これらも具体的に本人に対してその旨を連絡措置をしておるのでございますが、この中で、認定要件に合致している者は若干名でございますが、認定をいたしまして、認定要件に合致していない者につきましては不認定措置をいたしまして、この不認定の分につきましては御承知かと思いますが、現在県知事のところで行政不服審査法手続に基づきまして、不服審査の事件として係属中でございます。これが約六十名ほどございました。私どもは現地の実情に即した問題の解決をするようにということで長崎県当局を指揮、指導しておりまするが、目下この不服審査要件として係属中のものについては、その審査の結果を待って善処したい、かように考えておるわけでございます。
  20. 中村重光

    中村(重)分科員 深く入りたいのですけれども、時間の関係で端的にお尋ねしますが、これは旧法によって、ただいま御答弁のとおりに二十二名のようでありますが、六月二十六日に失対事業登録申請を行なった。当該職安はこれを受け付けて、九月の十八日に二十二名、続いて八十一名が九月の二十三日に県に上申をしている。ところが県では十月一日から、これを施行するのであるから、一週間しかない、失業者就労事業に就労するためには二カ月間に十日間失対事業に就労していなければならない、こういうことからこれを拒否した。これから実は問題が起こっておるわけでありますが、六月二十六日に申請はやった。その間二カ月余になるわけですね、九月の十八日に県に上申をしたのですから。それは旧法に基づいて失対事業に就労せしめるいわゆる認定労働君であるということでやったわけであります。それが、十日ないんだ、一週間しかないからだめなんだということで一方的にこれを拒否するのが正しいかどうか。これが問題になるのは私は当然だと思うのでありますが、この点は大臣どうお考えになりますか。
  21. 有馬元治

    有馬政府委員 新法旧法の切りかえ時点のデリケートな時代でございましたが、手続きとしては御指摘のように旧法の最終の時期に手続をとって県の適格審査会申請がなされておったことは事実でございます。しかし県当局としましては十月一日からの改正法が目前に控えておりますので、改正法趣旨にのっとって実態的には処理をしようという考え方で、具体的に個別的に就職指導あるいは相談というようなことを実施いたしました。そこで旧法時代に間に合うように失対に入れておけば問題がなかったじゃないかというふうな御意見かと思います。私ども制度の切りかえの時点におきましては、やはり新制度の精神にのっとって具体的な個別指導をするようにという考え方は持っておりましたので、今回長崎県当局がとりました処置については、われわれとしては妥当であったというふうに判断しております。
  22. 中村重光

    中村(重)分科員 六月二十六日に出しているんですよ。それを三カ月間近くほったらかしておいて、そして過去二カ月間に十日間失対事業に就労しておらなければ自動的に切りかえることができないということがわかっておる。わかっておりながらこれを上申するということは、初めから新法による就労事業、新しい失対事業に就労させまいとする意識があるからこういう形になっていくのですよ。六月二十六日に出しておいてそのまま握っておいて、九月の十八日、これはまあ日にちが実はないわけですね。ないようになっているのですよ。そういうことでだめだ、そんなでたらめな話はないじゃないですか。そういうことでは答弁になりません。
  23. 有馬元治

    有馬政府委員 故意江迎ケースだけを引き延ばしたというふうには私ども考えておりませんので、ほかの事例につきましてもやはり旧法時代適格審査手続も二、三カ月かかっているわけです。これは従来から慎重に進めておりましたので、長崎江迎ケースだけについて故意に引き延ばしをはかったというふうには私ども考えておらないのであります。
  24. 中村重光

    中村(重)分科員 当該江迎職安所長が、県と失業者との間の板ばさみになって、辞表を出すという問題にまで発展したのですよ。それはそうでしょう。これは適格者として登録するということを県に上申したのですから、本人には安心を与えたのです。ところが長崎県の職安の池田課長は、これは十日間に達しないから、だめだと言ったのです。それで今度は就職促進措置にこれを回すかというと、これもなかなか回さなかった。ようやく最後に回す形式をとったのです。二十二名中二名だけが就職促進措置適格者である、こういうことで、あとはだめだといって却下してしまったのです。就職促進措置にこれを乗せるといったようなことでもおやりになれば別として、それもやらない。ですから、これは失対二法が問題となったときに、これは衆議院ではあのような状態でございましたが、参議院において相当議論された。ちょうどそのとおりあらわれてきたということです。労働大臣この点どうですか。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 不服審査の問題につきまして、一々直接私はタッチをしておるわけじゃございません。しかし、この江迎の問題につてましては、いやしくも国会の予算分科会におきましてただいまのような御発言を直接私が受けたわけでございます。至急に調査をいたしまして、誤った処置があったならば早急に是正さしていこうと思っております。
  26. 相川勝六

    相川主査 中村君、時間が参りましたから……。
  27. 中村重光

    中村(重)分科員 これでやめますが、この就職促進問題でも、常用労働就職する意思がない者はこの措置には乗せないのだ、こういうことを言っている。ところがこの調査失業者に対してどうですか。あなたはこういうところの就職場所があるんだから、これに就職しませんかとあっせんするところは、土建業であるとかなんとかいうきわめて条件の悪い、賃金も低いところですよ。そうなってくると、その失業者はどう言いますか。いやそれよりも失対事業に働かせてくださいと言いますよ。失対事業のほうが条件がいいということになるのです。それ以下のところですよ。勢い失対事業のほうに働かせてくださいと言うのは、これは人情ですよ。それをとらえて、常用労働に働く意思がなかったのだと一方的にきめつける。いわゆる誘導尋問みたいなかっこうですね。そういうことで書類をでっち上げていって、そしてこれは常用労働に働く意思がないのだから、就職措置に乗せられない、不適格である、こういうことできめつけていく、そういう一方的なやり方が行なわれてきているのですが、ただいま大臣から誠意ある御答弁がございましたから、それを信頼をいたします。早急に調査され、適切な措置をおとりになるように強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  28. 相川勝六

    相川主査 山花秀雄君。
  29. 山花秀雄

    ○山花分科員 きょうはおもに駐留軍関係に働いておる労務者の労働行政について、労働大臣並びにきょうは施設庁長官もおいでになっておりますので、両省の方々にいろいろ承りたいと思います。時間が制限されておりますので、答弁をひとつ簡潔にお願いするものであります。  駐留軍の労働者の身辺に、首切りという大きな問題が起きておることは、すでに関係当局においても御承知のとおりと思いますが、駐留軍に働く労働者は、米軍の戦略戦術の都合でいつ首を切られるかわからないという不安にさらされております。軍事基地で働くという事情のもとに、常に他の労働者と違って、相当権利も制限されておることは御承知のとおりであります。戦後約三十万人くらいいたと思うのでありますが、ただいま六万人足らずというふうに減少しておることは明らかであります。最高時にはどの程度の労務者が、あるいは最低の今日どの程度の数になっておるか、これは防衛庁のほうが詳しいと思いますので、お聞かせ願いたい思います。
  30. 小野裕

    ○小野政府委員 最高時二十九万、約三十万ございます。ただいまは、お話しのように六万余でございます。
  31. 山花秀雄

    ○山花分科員 ずいぶん外交のかけ橋になって働いておりました労働者も、だんだん減ってきたことは、ただいまのお答えによっても明らかだと思うのであります。この駐留軍に働く労働者政府雇用、一般的には間接雇用と言われておりますが、雇用主は日本政府であるということははっきりしております。私は、この問題について、当局として駐留軍の雇用安定対策をどのように確立されておるか、今後またどのように具体的に確立されようとしておるかという労働行政政策をお尋ねしたいと思います。これは大橋労働大臣のほうからお答え願いたいと思います。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 駐留軍労務者の雇用問題は、御承知のとおり防衛施設庁において管理しておられるのであります。労働省といたしましては、この職場から離脱をいたしました労務者の再就職について万全を期するという仕事を受け持っております。
  33. 山花秀雄

    ○山花分科員 労働大臣の御答弁によりますと、身分の関係は防衛庁関係にあるが、首を切られた場合の後の離職対策については労働行政としてめんどうを見ておる。こういうお話でございますが、それでは現在雇用期間中の就職の安全、あるいは雇用の安全、あるいは雇用の労働条件の向上ということにつきまして、施設庁のほうではどういう措置をとられておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  34. 小野裕

    ○小野政府委員 防衛施設庁といたしましては、一方におきましては全駐労の組合のほうと折衝を持ち、一方においては米軍のほうと折衝をいたしまして、この間にありまして適正な労務管理あるいは給与状態の維持ということができるように調整をしております。
  35. 山花秀雄

    ○山花分科員 ただいま、労働者側の全駐労あるいは雇用の関係にある米軍と適当に折衝をしておる、こういうお話でございましたが、やはり雇用主が政府である関係上、ざっくばらんに申し上げまして、労働者のほうにはたいへんつらく当たって、米軍のほうには何かたいへん弱いような感じがするのであります。やはり雇用主であるという立場から、き然たる態度でこの両者の間を取り持つといいましょうか、仲立ちといいましょうか、雇用主の都合の悪いときには米軍に肩がわりをさせるという傾向が非常に強いというふうに考えておりますけれども、いかがなものでしょうか。
  36. 小野裕

    ○小野政府委員 私ども責任者といたしましては、いずれに対しましても誠意をもって、また信念を持って当たっておるわけでございますが、何分にも米軍の関係につきましては、いろいろ事情に通じないと申しますか、先方が日本の国内事情について十分に理解をしてくれない、しにくい事情もありそういうような関係もありまして、あるいはお説のような感じをお持ちになる向きもあるかと思うのでありますが、私どもとしては、あくまでも中正な立場から仕事を片づけてまいりたいこのように努力しております。
  37. 山花秀雄

    ○山花分科員 日本の一般の雇用関係だと当然不当労働行為に問われるような問題がしょっちゅうこの職場では起きております。そういうときには、日本の法律のたてまえから当然き然たる態度をとっていくというのが本来の姿ではないか、こう思うのです。例をあげれば、もうたくさんあります。山のようにあります。大体言わなくとももうおわかりだろうと思います。もしあげろと言えば列挙してみたいと思いますが、時間も制限されておりますし、またこれは言わなくても、関係当局はよくわかっていると思いますので、これらの問題につきましては、労働者に対してもっとあたたかく、思いやりを中心に、日本政府としてき然たる態度をもって米軍といろいろ折衝していただくことを要望しておきます。  昭和三十三年五月十七日に、駐留軍関係離職者等臨時措置法が施行されました。これは五年間の時限立法でありましたが、昨年五月にちょうどその時期がまいりましたので、さらに五年延長されたことは労働大臣、施設庁長官もよく御存じだろうと思います。この臨時措置法だけでは雇用安定に関する根本的な解決は望めないと思いますので、今国会に、私ども社会党といたしましては、駐留軍労働者の雇用安定に関する法律案を議員立法として提案いたしました。これは政府みずから立法するのが当然だと思いますが、労働大臣としては、この法律化に対してどうお考えになっておるか、所見の一端を承りたい。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働省といたしましては、この御提案の法案につきまして、労働大臣の権限を規定いたしておられる点を防衛施設においていかに考えておられるか私どもまだ承知をいたしておりませんので、政府として統一的な意見を申し上げる段階ではございません。御了承願います。
  39. 山花秀雄

    ○山花分科員 防衛のほうでどう考えておるかちょっとわからないのでいま的確に答弁できないというようなお話でございましたが、法案の内容はもうたぶん目を通して十分御承知だろうと思います。また、関係のある防衛施設庁のほうでもよく御存じだろうと思いますが、長官、いかがでありましょうか。
  40. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいま御提出になっております法案の、駐留軍関係の離職者の再就職を促進するというような御趣旨につきましては、これは異存はないのでございますが、私ども気にかかっております点は、解雇制限の条項でございます。この点につきまして十分に検討をいたさなければ、いまにわかに賛否と申しますか、意見を申し上げるわけにまいらない。いろいろ検討をいたしておるわけでございます。
  41. 山花秀雄

    ○山花分科員 趣旨は大体賛成であるけれども、内容の一、二について検討する余地があるので目下検討中、こういうような御答弁でありますが、私は、この問題は前に石炭産業に関係いたしまして、同じような内容の法律案が御案内のように国会を通過しておりまするが、そう甲乙ないと考えるのであります。これはこれから国会審議の過程において十分お察し願いたい。甲乙差別をつけることのない感覚からこの法律案の審議に十分なる誠意を示してもらいたいことを希望いたしておきます。さきの臨時措置法は、最初議員立法で出たことは御承知のとおりであります。それは内容が非常に重要なということで、話し合いの結果政府提出ということで国会を通過したのでありますが、今度の雇用安定に関する法律案につきましても、私は、内容は石炭産業のあと始末と同じように非常に重要と考えておりますが、これはひとつ思い切って、趣旨に賛成というのでございましたならば、政府立法にしてやる決意がおありであるかどうか、これは労働大臣にお伺いしたいと思います。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今後の駐留軍労働者の離職の状況がどういうふうに相なりますか、その辺も十分に調査いたしまして、この法案をこの際政府として提案しなければ駐留軍離職者の対策がやっていけないかどうか、その辺を勘案した上で検討いたしたいと思っております。
  43. 山花秀雄

    ○山花分科員 労働大臣のただいまの御答弁は、今後の推移ということでありますが、今後の推移は明白ではないかと思うのです。十二月三十一日のアメリカの声明によりましても、大量に首を切る、そして場合によれば、日本の防衛力が充実と認めたときには徹退をする、こう言っておるのですから、もう急角度に問題の焦点がやってくる、こう思うのであります。そこで昭和三十八年度、これは施設庁長官は十分に御承知と思いますが、この年度内において一月から十一二月現在の一年間、どの程度首切りあるいは退職があったか、数字が明らかになっておると思いますが、お示しを願いたいと思います。
  44. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまお尋ねがございました三十八年の一月から十二月と伺いましたが、ちょうど締めたものがございませんので、三十八年度の四月から十二月という数字、それから一月から三月の見通しを含む数字ということで御容赦いただきたいと思いますが、三十八年の四月−十二月は合計いたしまして八百六十三名、さらに一月から三月につきましては約八百名でございまして、合計千六百ないし千七百という数字を三十八年度の数字として一応考えております。
  45. 山花秀雄

    ○山花分科員 ただいまのは米軍の都合による首切りですか。私のいまのお尋ねしたのは、不安定でありますから、自己退職もずいぶん出ておるのですが、いわゆる駐留軍に働く労働者として総体でこの一年間にどのくらい減少したか。
  46. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまお示しのように、先ほど申し上げました数字は整理退職でございますが、そのほかに自己の便宜によりまして退職いたしました者は四千名ばかりでございます。
  47. 山花秀雄

    ○山花分科員 その四千名という数字は、昭和三十八年の四月から十二月までの数字ですか。
  48. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいま申し上げました四千名は、三十七年度の年間の数字でございます。
  49. 山花秀雄

    ○山花分科員 三十七年度といいますと、三十七年の四月から三十八年の三月まで、私はいま一月から八月、年度がちょっと違っておりますが、労働組合関係ではちゃんと調査をして私のところへ数字を持ってきておりますが、ざっと両方で九千五十九名、これは首切りと自己限職を含んでの数字が、MLCとIHAですか、この両者の関係で。こういう数字は労働組合のほうがなかなか熱心ですね。自分の身に降りかかる関係もあるかもわかりませんが、役所のほうは少し怠慢じゃないですかな。この程度答弁が答えられないというのはいかがなものでしょうか。もう少し真剣にこういう問題に取っ組んでいただきたいと思います。
  50. 小野裕

    ○小野政府委員 数字は役所のほうにはあるのでございますが、まとめ方がいろいろな形で、年度であるとかあるいは分数とかにつきましていま手元にないので失礼いたしましたが、数字といたしましてはただいま私が申し上げました数字はMLCの関係でございますから、そのほかにIHAも千名前後あるわけでございます。それからそうした成規の手続以外の臨時雇いのような形のものも別にあるわけでございます。この点については必ずしも正確な資料はいま持っておりませんけれども、そういう数字を入れますればお話しのような数字に近づくものと思います。
  51. 山花秀雄

    ○山花分科員 それではひとつ労働大臣にまたお尋ねしたいのであります。ただいまの一問一答のうちでも、概算といたしまして三十八年度——これは一月から十二月まででありますが、三十七年度にいたしましても、三十八年度の役所関係の年度で四月から十二月、こういうように計算いたしましても、去年一年において約九千名ほど人員が減少しておることは明らかなことです。これは首切り、自己退職もございますけれども。そしていまもう六万人の数字が切れておると思うのです。ところが十二月三十一日あるいは本年初頭において、アメリカの声明にもよりまして、早急に駐留軍を引き揚げる、こういっておりますから、早晩大量解雇あるいは離職というよりな問題が具体化すると思うのですが、そういう情勢が切迫しておる今日の段階において、石炭離職者同様のただいまの法律案が、なおも一つと検討の余地があるというようにお考えになるのですか。私はこれは重要な問題ですから単なる議員立法というような形でなくて政府提案にする誠意をひとつ示していただきたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 離職者対策に関して特別な法律を立てるというのは、従来からの労働省考え方といたしましては、一時に大量の離職者の発生が予想される、そしてその大量の離職者の再就職のために職業安定機関が忙殺される、しかも短時日にこれらの再就職を確保することが困難である、こういう事態が予想されました場合に、相当期間再就職を準備いたしまして、そして計画的に再就職の仕事を進めていく、そういう場合にいままでとるべき措置はとってまいったのでございます。  今回駐留軍の離職者が相当数出ることは予想されておるのでございますが、それについて、はたして炭鉱離職者あるいは鉱山離職者などと同様な法律上の措置を講ずることが必要かどうか、この点はなお研究の余地があると思います。いまの段階で直ちに必要だというお答えをいたすまでには参らないのであります。  特にただいま自分の意思による自由退職者のことを言われましたが、自由退職者に対する特別措置ということを法制化いたしたという例は、いままでのところはございません。
  53. 山花秀雄

    ○山花分科員 石炭の場合の平均年齢と駐留軍に働いておる方々の平均年齢は相当違っておると思います。石炭の場合でも若年労働者があまりいないことは、政府関係でもよく御承知だと思います。駐留軍労務者の平均年齢は四十三、四才というように承っておりますが、施設庁のほうでこういう平均年齢について調査なすったことがありましたら、ひとつお知らせ願いたい。
  54. 小野裕

    ○小野政府委員 私ども比較的最近の資料でつかんでおりますのは四十二・九歳でございます。
  55. 山花秀雄

    ○山花分科員 そうすると大体四十三歳というところですね。石炭関係はどのくらいの年齢ですか。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 石炭関係労働者全体の平均年齢は三十八、九歳くらいのところになっておるかと思います。しかし、現実に発生しておる離職者の平均年齢は、それより幾ぶん高いところの数字になっております。
  57. 山花秀雄

    ○山花分科員 三十八歳と四十三歳と、大体五年ほど年とっておる。そうなりますと、再就職が五年間だけ苦しくなるというのは、これは理屈の上ではそうなるのであります。そういう場合には、石炭関係よりも駐留軍の離職者のほうが再就職が苦しくなるという点だけでも、政府の直接雇用でありますから、民間でも相当力こぶを入れられたのでありますから、責任は政府にあるのですから、雇用者としてのもっと活発な離職者対策と、それに対する思いやりが、責任上石炭の労働者よりも一段と重いというふうに考えますが、当局いかがでしょうか。
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 確かに御意見には同感でございます。政府機関といたしましては、この駐留軍離職者の再就職の問題に対しましては、石炭離職者以上の責任を持っていたす覚悟がなければならぬことは申すまでもございません。そこで立法指貫が必要じゃないかという点になるのでございますが、御承知のとおり、昨年失対事業法の改正も行なわれまして、一般離職者に対する政府就職促進のための措置が非常に強化されてまいっておるのでございます。したがいまして、石炭離職者も一般の離職者も、あの法律以前の待遇の開きというものが、今日ではほとんどなくなってきておるような状態でございますので、私どもといたしましては、駐留軍労務者に対する、離職させなければならぬその人員整理の計画が具体化いたしましたならば、それに対しまして、現在許されたいろいろな再就職のための方途をずっと照らし合わせて検討いたしまして、再就職計画を立て、しかもそれでさらに政府措置が不十分だということが明らかになりましたならば、立法措置についても十分考えたいと思います。いまのところはまだその結論を得るに至っておりません。
  59. 山花秀雄

    ○山花分科員 労働大臣答弁を聞いておりましても、何か非常に安易な、手ぬるい感じがするのであります。自己退職はこれからはだんだん率的には減ると思うのです。いろいろ情勢判断をいたしますと、今度は首切りという形のほうがぐっとふえてくると思うのです。こういうときこそ政府の特別措置が必要になってくるのじゃないかと私は思いますが、特に特別給付金について若干お尋ねしたいと思います。  ことしの予算では若干給付金が上がっておるように承りましたが、どの程度予算措置をされておりますか、お伺いしたいのです。
  60. 小野裕

    ○小野政府委員 予算といたしましては四千数百万、昨年の倍でございますが、内容といたしましては、従来これは年数によりまして差がございましたが、それぞれ五千円ずつの増額で、一万五千円、二万円、こういう形になっております。
  61. 山花秀雄

    ○山花分科員 そうすると、大体五千円ずつ引き上げた——十年以上一万五千円を二万円、五年以上五千円を一万円に、こういうことですね。
  62. 小野裕

    ○小野政府委員 もう五年違うのでありまして、五年以上が一万円、十年以上が一万五千円、十五年以上が二万円であります。
  63. 山花秀雄

    ○山花分科員 私は、この改定案は特別給付金の性格からいたしましてもずいぶん低いのじゃないかと思うのです。現に政府が提案しておる電電公社の近代化に伴う合理化法案につきましても、五年未満の勤続者について六カ月分、平均二万円だと十二万円、五年以上の勤続者については八カ月分、平均二万五千円といたしましてもざっと二十万円の特別給付金を支給しておることは御案内のとおりであります。われわれはこの案が最善の案だといって賛成しておるわけではございません。これでもなお私どもは反対をしておるのであって、組合関係もおそらく反対をしておると思います。これに比べますと、あまりに低い状態ではないかと思うのです。約十分の一であります。少なくとも日本政府が雇用主で長年の間駐留軍に勤務していた労働者に対する給付金の措置としては、まことに親心のない冷たい措置であると思いますが、当局はどうお考えになりますか。やはり政策の関係で大ぜいの方が離職するのでありますから、せめては、私ども反対はしておるのだけれども、電電公社並みくらいのところに国家の親心ができないものであろうか。これは労働大臣でも施設庁長官でもどちらでもけっこうでありますが、できれば両方から御答弁願えればけっこうだと思います。
  64. 小野裕

    ○小野政府委員 決して十分な額だとは考えておりません。しかしながら、この特別給付金は政府側といたしましてのせめてものお見舞いというような形で発足いたしておる制度でございまして、私どもといたしまして、できればもっと差し上げたいのでございますが、諸般の状況考えまして、ただいまのところ、その程度の金額でごしんぼう願いたいというふうに考えております。
  65. 山花秀雄

    ○山花分科員 まことに僅少でお気の毒にたえないが、諸般の事情でやむを得ない、こういう御答弁でありましたが、諸般の事情とは、一体どういう事情ですか。明らかにしていただきたい。
  66. 小野裕

    ○小野政府委員 いろいろな対策と申しますか、いろいろな問題がございまして、その間で処理してまいりますためには、目下のところはこの程度でごしんぼういただきたい、こういうことでございます。
  67. 山花秀雄

    ○山花分科員 さようなことでは満足できません。諸般の事情というのは何かと言えば、いろいろな事情、答弁にならないじゃありませんか。もっと明快にひとつやっていただきたい。だてや冗談で問答しているのじゃありません。諸般の事情ならこういう事情、いろいろな事情ならこういういろいろな事情と、その事情をひとつ的確に答弁していただかないと、私は満足できません。
  68. 小野裕

    ○小野政府委員 数年前にこの制度が定められました場合に、いろいろ検討いたしまして、その金額が適当であろうということに考えられたわけでございます。さらにその後年数を経ておりますので、今回若干でございますが引き上げるということで適当ではないか、このように考えております。
  69. 山花秀雄

    ○山花分科員 数年前には妥当だというふうにお答えになりましたが、貨幣価値はずいぶん変わってきておるのです。池田内閣の所得倍増政策でずいぶん貨幣価値が変わってきているのです。これは長官もよく御存じだと思うのです。先ほどちょっと一例を引きました電電公社の整理に比べましても、十分の一なのです。同じ政府の雇用者なんです。特に電電公社に働いておる多くの労働者諸君は、日本人の中で働いておるのです。ここで働いておる多くの労働者は、御案内のように権利を狭められ、場合によれば、屈辱的観念でやむを得ないが、これは日米の一つの外交の柱だというような、そういう気苦労も多く持って働いておる労働者なんです。もう少し思いやりのある態度でこの問題の解決に努力するというのが、責任官庁の大きなつとめではないかと私は思います。改定する意思がありますか。それとも、これはやりっぱなしにする意思ですか。この点はっきり聞けばいいです。はっきり答弁してください。
  70. 小野裕

    ○小野政府委員 将来の問題として研究をしなければならないと考えております。
  71. 山花秀雄

    ○山花分科員 私は労働大臣に質問をしたい。いま私と長官とのやりとりをかたわらで十分お聞きになったと思うのです。駐留軍に働く労働者は、施設庁の関係ということになりますけれども労働大臣も閣僚の一員といたしまして、たいへん話のわかる人というふうに、私はあちこちから聞いておるのでありますが、特別給付金については、ひとつ親心のある措置を講じていただくよう——これは答弁は要りません、私は強く要望をいたしておきます。  次に、雇用奨励金についてお尋ねしたいと思いますが、雇用奨励金については、御承知のように炭鉱離職者と金属鉱山労働者、その他産業における再就職を容易ならしめる措置として、離職者に対する臨時措置法が成立して発足いたしました。この中で四十歳まで五千円、五十歳以上が六千円という雇用奨励金制度が設けられております。これは大臣も御承知のとおりでありますが、駐留軍労働者にも雇用奨励金制度を制定することが中高年齢層の再就職を容易にするものと思いますが、この点労働大臣はどうお考えになりますか。先ほど石炭関係は三十八歳程度、駐留軍関係は四十三歳程度ということになって、石炭関係より、あるいは金属鉱山関係よりも高い年齢の方々が多いのでありまして、この点どうお考えになっているかをお聞かせ願いたいのです。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 雇用奨励金制度につきましては、労働省としましても、駐留軍労務者についてはいろいろ検討いたしておるのでございます。さしあたりといたしましては、この雇用奨励金制度にかわるべき職場適応訓練の措置をとってまいりたい、こういう考えで、ただいまのところは雇用奨励金制度を採用しようという考えにはまだ固まっておりません。  なお職場適応訓練の内容につきましては、政府委員から御説明させます。
  73. 有馬元治

    有馬政府委員 雇用奨励金の内容につきましては、先生が御指摘のとおりでございますが、職適の内容につきましては、ただいま大臣からお話がございましたように、雇用主に対しましては、月額五千二百五十円、それから離職者御本人に対しましては、月額来年度から平均しまして一万三千三百円という訓練手当が支給されます。いろいろ制度の長短はございますが、かれこれ考えてみますと、その職適制度でもって対処するというほうが雇用奨励金制度よりもベターではないかというふうに私ども考えております。
  74. 山花秀雄

    ○山花分科員 職場適応訓練手当制度は雇用の予約を前提として行なわれますが、この訓練期間が終了したときに雇用契約が直ちに締結されるという保証は、この制度には何もございません。この制度は、あくまでも予約ではないでしょうか。事業主の都合によって雇用されなくてもやむを得ないという仕組みになっていると思いますが、駐留軍労働者の大部分は現在技能を持っております。だから職場適応訓練手当制度による方法よりも、炭鉱労働者適用されている雇用奨励金制度を当てはめることにより直ちに雇用契約を結べるような仕組みのほうが再就職を容易にする最も適切な措置であると私は思っておりますが、その点再度労働大臣のお考えをお聞きしたい。
  75. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘のように職適の場合の雇用制度でありますが、実際の運用上、また私ども指導としましても、この雇用予約は必ず本採用に切りかえるという指導をしておりますので、その点で実際上は石炭の雇用奨励金制度と差ができてくるということはないように指導してまいっているわけであります。
  76. 山花秀雄

    ○山花分科員 いままで雇用の約束が破談になったという例はございませんか。
  77. 有馬元治

    有馬政府委員 現在までのところは報告は受けておりません。
  78. 山花秀雄

    ○山花分科員 前の通常国会のときに、同僚議員の河野正君が衆議院の社会労働委員会においてこの問題を質問したときに、労働大臣は雇用奨励金制度適用については本年度は予算が組んでないので、来年度について考慮いたしますと答弁されております。大臣自身も、その当時は雇用奨励金制度適用しようとする考えがあったのではないかと思いますが、予算編成期になって、当時の大臣の御答弁のことが何ら措置されてないのですが、これはどういうことになるのですか。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 確かにさような御答弁を昨年は申し上げておったと存じますが、この職場適応訓練の予算単価も相当引き上げられました。それで先ほど政府委員から申し上げましたごとく、実際的には雇用奨励金制度よりもこの新しい職場適応訓練制度のほうが御本人にも有利であろう、かように判断をいたしておるわけでございまして、ただいまのところはさように考えております。
  80. 山花秀雄

    ○山花分科員 ただいまの労働大臣答弁によりますと、去年は言った。けれども今度は制度のいいのをつくったのだからそのほうがいいのじゃないか、こっちのほうが親心だ、私はこういうように答弁が受け取れたのですが、さようでございましたならば、はたしていいか悪いかということは、大臣自身の主観的な考え方だけではなかなか通用するかどうか、相手のある問題でありますから、駐留軍労働者もりっぱな組合をつくっておりまして、たびたび労働省のほうにも足しげく通っておると思いますが、これはひとつ駐留軍労働者組合のほうで、大臣のおっしゃるとおり大臣考えていることがいい、こう言われるのだったら事円満に運びますけれども、これは一応また駐留軍労働者のほうから話し合いに行くと思いますから、いいか悪いかはその辺になってみないと私もここで判断がつきません。だからこの問題につきまして駐労の諸君が行きましたときには、心よく門戸を開いて、胸襟を開いてひとつ話し合いをしてもらいたいということをこの際私は要望しておきます。  それからもう一つ、これは特に防衛庁関係についてでありますが、駐留軍労働者の退職手当についてこの際お伺いしたいと思います。この退職手当については、昭和三十二年六月二十二日岸・アイク声明のときに若干の割し増し率の改正がなされましたが、その後七カ年経過しております。退職手当の計算基礎になる勤続年数も現在もうすでに十年をこえておると思うのでありますが、長期勤続者に対する割り増し率の増率について、昨年末より対軍折衝を当局はされておると聞いておりますが、その折衝経過はどうなっておりますか。まずお伺いいたします。
  81. 小野裕

    ○小野政府委員 お尋ねの件につきましては、長い間懸案でございましたが、特に三十七年の秋からの大きな問題といたしまして対米折衝をしてきたわけでございますが、三十七年におきましても、また三十八年度におきましても、この交渉は成果をあげずにまいっております。まことに残念でございますが、そういう状況でございます。特に昨年は今回の在日米空軍の配置調整に伴う話し合いがございました際に、この問題を日米両国政府の問題として解決したいということで、こちらから申し入れをいたしまして、これに対しましては昨年の暮れになりまして、米国政府からただいまのところ改正する意思はないということを言ってまいりまして、私どもといたしましては同意いたしかねる、回答に承服いたしかねる、引き続きこの問題の解決に努力したい、考慮してほしいということを正式に申し入れをいたしまして、なおその交渉を継続いたしておるわけでございますが、この当面の重点になっております点は、ただいま先生が御指摘になりました十年以上長期勤続の方に対する割り増しということを中心に交渉を続けておる次第でございます。
  82. 山花秀雄

    ○山花分科員 ただいまの御答弁によりますと、折衝の結果は米軍側から拒否に近い回答があった。その拒否された理由の真意はどういうところにあるのですか。御承知のように、日本の民間のいろいろな雇用関係におきましても、長期勤続の方はだんだんよくなってきております。それは貨幣価値の変動にもよりまして、労働条件、特に賃金退職金というのはずっとふえてきておるのですが、駐留軍だけふえないということになりますと、働いておるのはアメリカの軍の施設の中で働いておりましても、やはり雇用主は政府でありますから、もう少ししっかりした態度で折衝されたらいかがかと思いますが、その拒否する理由は一体アメリカはどういう点で拒否しておるか、この際承っておきたいと思います。
  83. 小野裕

    ○小野政府委員 アメリカ側といたしましては、現在の駐留軍従業員に対する給与、手当というような制度はこれで妥当である。現在の制度で適当であって、いま改正をする必要はない、こういう理由になっております。
  84. 山花秀雄

    ○山花分科員 大体アメリカというのは退職手当がないのですよ。本給一本でやっておるのですから賞与もないのです。夏季手当も越年資金もない。ところがこれは日本で雇用しておるのですから、その辺は日本の習慣、日本の制度に従ってもらわなければならぬと私は思う。そのくらいのことはアメリカだって言えばわかると私は思うのですが、どれだけ突っぱられて折衝されておるかわかりませんけれども、私は冒頭に申し上げましたように、もう少し腹のある、性根をもって日本の労使関係のありきたりの立場からひとつ折衝していただきたい。これは本給を週給で最低賃金一ドル二十五セントくらいのところでやっていただくのだったら退職手当なんか要りませんよ。夏季手当も越年資金も要りませんよ。こういう点は少しアメリカの目をさますために、日本の労働条件、労使関係というものをもう少し誠意をもって説明されたらいかがかと思いますが、どういう折衝をされていたのですか。ただいまの御答弁を聞いておりますと向こうの言いなりではありませんか。もう一回、折衝の過程をもう少し承りたいのです。
  85. 小野裕

    ○小野政府委員 折衝の内容といたしましては当方から要求をいたしておるのでありますが、これについて説明資料と申しますか、関連資料の要求は先方からはございます。それについて用意をして準備をいたします。全体としましていまの駐留軍従業員の給与関係が十分でないから直してくれということになるのでありますが、個々の問題を取り上げますと、個々の給与を考えますと、いろいろ事情が変わった点がございます。たてまえと申しますか、大体公務員の給与に準ずるという態勢にはなりましたけれども、その仕組みの一つ一つについてそのたてまえが違っておりますために、日本の公務員あるいは民間、こうしたものの給与とのずばりの比較ができないのでございます。この辺のところに総合的にいろいろ考慮しており、全体総合しましたところ、いまの給与体系、給与状態でこれを手直しする必要はないと向こうは言うわけです。こちらでは足りない。一つ一つ比較いたしますと、こちらが有利なものもあるのであります。しかしながら全体を総合して足りないから、この点で手直ししようじゃないか、こういう折衝をしておるのでありますが、総合いたしますと、どっちがいいか悪いかということはどうしても水かけ論になるというようなことがございまして、なかなか先方の納得が得られない、こういう状況であります。
  86. 山花秀雄

    ○山花分科員 これは間違っておるかどうかは別問題といたしまして、私の察するところによりますと、板付基地に米軍の戦闘機一個中隊の配置を日本政府側として要請をして、その際米軍から戦闘機一個中隊の配置に伴う駐留経費として年間百万ドル、三億六千万円の負担を日本側に要求してきた。ところがその経費を日本政府側が拒否したので、米軍側はこの一個中隊の配置を取り消したといういきさつを聞いております。そのような事情がありますから、米軍側としては退職手当の増額を拒否してきたのではないだろうかと思うのであります。その辺その真意はどうなんですか。ざっくばらんにひとつお聞かせを願いたいと思います。
  87. 小野裕

    ○小野政府委員 在日米空軍の配置調整ということにつきましては、板付におります戦闘爆撃機部隊が横田へ移駐をする、また要撃機部隊がアメリカ本国に帰る、こういう申し入れが最初にあったわけでございます。その中に板付の付近におきましては防空警戒能力が整う時期まで若干の部隊を——これは要撃部隊のごく若干でございますが、一個中隊というような数ではございません。むしろ数機でございます。数機をしばらく、数カ月間板付に残こしておいてくれぬかということを申し入れたことはございます。それに対して米軍としては、それは別として、ほかの申し入れもあったわけでありますが、その点を私からは申し上げるのを差し控えたいと思いますけれども、ほかの申し入れもございまして、ただいまお話のありましたようなことに関連のある申し入れもございました。その点については、こちらではそれに対しては応諾をいたしません。最終的には最初のこちらの申し入れのように、若干の戦闘機をほかの基地から分駐させる、これはもちろん米軍の負担でございますが、そういうことで解決したわけでございます。決して取引といいますか、こちらが米軍機を買うとか買わないとか、それを断わったから退職手当を断った、こういう筋ではございません。
  88. 山花秀雄

    ○山花分科員 私の判断が当たっていたとすれば、このいきさつから見て、米軍側にたよっていたのではとても解決しないような、そういういろいろないきさつが生じてくるのじゃないかと思うのです。雇用主である日本政府みずからが親心を持って、長年日米の間にあって労務を提供してきた駐留軍労働者退職金の支給の措置を急速にとっていただくように、これは直接の関係である施設庁長官にも十分心していただきたいと思います。  そこで、最後にこの問題についてお尋ねしたいのだが、退職金は五年以上というようなことが規定されております。一般でも一年、二年くらいのところは見舞金、三年目からは退職金、あるいはできるところは一年から退職金を規定しておりますが、現在の駐留軍労務者については何年目からいわゆる制度としての退職金を差し上げることになっておるのでしょうか。
  89. 小野裕

    ○小野政府委員 六カ月以上勤続して退職した者から支給しております。
  90. 山花秀雄

    ○山花分科員 最低六カ月、かりに六カ月から一年はどの程度の率になっておるのでしょうか。
  91. 小野裕

    ○小野政府委員 一年の例をとりますと、二カ月分であります。
  92. 山花秀雄

    ○山花分科員 特別給付金については、五年以下はやらないことになっておるのでしょうか。
  93. 小野裕

    ○小野政府委員 そのとおりであります。
  94. 山花秀雄

    ○山花分科員 一日の違いで与えられるのと与えられないのとが現存あるのですが、この辺について何か特別のお考えはないのでしょうか。
  95. 小野裕

    ○小野政府委員 いまそれらの問題を総合いたしましてあれこれと研究はいたしております。ただ、ここでどういうことで進めるかということにつきましては、何とも申し上げられませんけれども、そうしたようなことは組合からも申し入れがありますし、あるいは国会での御質問もございますから、こういう点について研究は続けております。
  96. 山花秀雄

    ○山花分科員 研究があまり長く続くと何もやらないことになるのであって、私は一日の違いでその恩典がはずれるというようなことは、これが半年か一年で一日の違いというのならまだ了承できますが、五年働いて一日の違いで恩典がはずれるということは、残酷物語の一つになるだろうと思います。この点は研究でなしに善処するようにひとつ一段の努力をお願いいたします。  時間もきておりますので、残余の問題につきましては、同僚議員からまた予算委員会の一般質問において、この問題専門に質問をするだろうと思いますが、最後にお尋ねしたいことは、御承知のとおり立川基地においてはC124、通称グローブ・マスターといっておる輸送機が引き揚げるという状況にあり、これに伴って大幅の人員整理が予想されておりますが、立川基地にはそういう動きがあるのかないのか、あるいは米国会の会計年度は六月末ということになっておりますので、人員整理は六月末にやるのか、それとも会計年度以後においてやるのかどうか、これはもう施設庁長官のほうにはよくおわかりになっておると思いますが、いかがなものでしょうか。
  97. 小野裕

    ○小野政府委員 立川基地におります輸送部隊の一飛行隊が引き揚げるということは、お話のように予定されております。これに関連いたしまして、労務者の整理計画は、はっきりしたものはまだつかんでおりませんけれども、大体ことしの上半期と申しますか、一月から六月までの間におよそ四百人くらい整理になるのではないか。そのうち三月までに予定されておるものは六、七十名でありますが、そのほかは四月から大体六月、ずれても七月、八月、その間に約四百名くらい、こういうふうに見込んでおります。
  98. 山花秀雄

    ○山花分科員 ただいまのお話によりますと、大体アメリカの会計年度前くらいに四百名くらいの整理がある、こういう見通しでございますか。
  99. 小野裕

    ○小野政府委員 そうでございます。引き揚げる部隊の移動が六月一ぱいということになっております。それに関連したものが主でございますので、そのころの時期だと考えております。
  100. 山花秀雄

    ○山花分科員 横田基地で105の飛行機の問題でたいへん大きな騒ぎを起こしておると思いますが、あの辺の基地の人員関係の移動は別にただいまのところございませんか。
  101. 小野裕

    ○小野政府委員 横田の基地につきましては、御承知のようにB57が引き揚げますが、かわりに入ります105は、大体似たような数字でございまして、特に米軍部隊の人員の引き揚げ等大きな出入りというものは差し引きないと考えております。
  102. 山花秀雄

    ○山花分科員 ただいまの御答弁によりますと、飛行機の入れかえがあるのは、人員の入れかえは差し引きそうたいした影響はない、こう承ってよろしゅうございますか。——いろいろ承りたい点がたくさんございますが、ちょうど時間がまいりましたので、私の質問は時間厳守でこれで終わりますが、最後に施設庁長官におかれましても、労働大臣におかれましても、たびたび口がすっぱくなるほど申し上げておる次第でありますが、長年の間日米両国間の外交上の橋渡しもかねて働いてまいりました駐留軍の労働者に対して、なお、一段の御尽力をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  103. 相川勝六

    相川主査 田口誠治君。  田口君にお願いいたしますが、ぜひ三十分以内にひとつ……。
  104. 田口誠治

    田口(誠)分科員 なるべく協力いたします。  大橋労働大臣に宿題がございまするので、まずその宿題を解いてもらいたいと思います。それと申しまするのは、御承知のとおり憲法第十四条には、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」という点が明確にされておりまして、国民の平等の原則が打ち立てられておるわけであります。ところが、労働組合の規範的部分であるいわゆる労働組合の憲法ともいわれる規約の中には、現在の労働組合法の五条四条の中には、「何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われない」という程度のことが書いてあるわけです。したがって問題は、政治信条ということが労働組合法の五条四号には明記されておらないわけです。したがってこれは規範的部分でございますので、この五条四号のこの号だけは、法内組合としての労働組合を結成する場合には、規約の中にぜひとも入れなければならない内容であるわけなんです。ところが一番重要な政治信条ということが書いてないわけでございます。したがって労働組合の規約の中には、政治信条ということはうたわなくてもよろしいということなんです。裏を返しますれば、政治信条ということにおいては差別をしてもいいということになります。具体的に申し上げますなれば、労働組合によっては、極左寄りの共産党へ入党しておる者は労働組合へ入れない——労働組合というのは大体労使対等で労働条件を自主的に解決する団体でございますから、どちらかといえば社会党寄りのものでございますから、資本家を擁護するところの自民党に入っておる労働者は入ってきてもらっては困るのだ、こういうことを言っても、これは労働組合法の違反にはならないということになるのです。しかしこれは国民の平等の原則である憲法十四条の違反になるということでございますので、これを研究をして変えてもらいたい、労働組合法を改正してもらいたいということを昨年申し上げまして、法律に明るい大橋労働大臣だから、その点については率直にうなずいて、了解されて、検討するということを約束されておるわけでありますけれども、こういう重要な問題がいまだに改正案として出されておりませんし、実際において労働組合の中では、労働組合といっても左から右までございますので、やはり意識的にこの労働組合法の五条四号の規範的部分を規約の中に入れて——差別的な待遇をしようとし、また今後されんとすることも憂慮されるわけでございますので、この点が昨年あなたと約束をしたわけなんです。その後どういうように研究されて、この問題をどう処理されようとするか、まず宿題からひとつ解いていただきたいと思います。
  105. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その問題はさっそく事務当局に検討を進めさせております。その状況につきましては政府委員から申し上げます。
  106. 三治重信

    ○三治政府委員 昨年御質問がありまして、ただいま大臣から申し上げましたように検討を命ぜられ、労使関係法研究会においてもこの問題を研究していただいたわけでありますが、まだ最終的なまとめまでには至っておりませんが、この点についての検討では五条の資格審査制度そのものについてさらに検討をする問題があるし、こういう資格審査として、労働組合がこういうふうな問題について必ず書かなくてはならぬというふうなことについては、消極的な意見が非常に多かった、こういうことでございます。まだ最終的結論までは至っておりませんが、そういうことでございます。それからなお、この問題につきましていろいろ先生のおっしゃるようなことが君われるわけでございますが、その点については十四条の法の前の平等ということについては、国が立法する、一般国民に対しての法の規制としてやる分についての、国が取り扱う分の法律の規制は、確かにそういうことについて差別的な法律を規定するのはおかしいわけですが、ここの条項は組合員の資格ということなので、それは結社の自由の問題ということからいって、法の前の平等とは違う観点に立っているのではなかろうかというふうに、われわれは考えておるわけでございます。なおその問題について立法上入れたほうがいいか悪いかという問題につきましは、これはそのときの立法の趣旨の問題で、ここで法律上憲法の十四条と関連はないというのが結論でございます。
  107. 田口誠治

    田口(誠)分科員 まあ団体というのはいろいろな団体があるわけですが、私は何といっても戦後できた団体の中では、労働組合というのは一番民主的に運営をしなければならないし、それから差別待遇をしてはならない団体だと思うのです。この労働組合の民主的な、差別をしてはならないという団体の規範的部分として明記されておる五条四号が、ただいまのような答弁の筋があったとしましても、これは当然私は政治信条ということも入れるべきでないか、こういうように考えておるわけなんです。大体労働組合というものの性格は、どういうような御認識でございますか。これを入れたから別に経営者が損するの、だれが損するのということではないわけなんです。労働組合に入りたい人は、社会党の党員であろうと、自民党の党員であろうと、共産党の党員であろうと、創価学会の信徒であろうと、組合に入りたい人は当然自由に入り、自由に出られるというのが、労働組合の一番の特権であるわけなんですから、その特権から何か法律で逸脱したようなことをしておることは、私は好ましくないと思うのですが、憲法の解釈そのものとは別に、労働問題を取り扱っておられる労働省として、特に労政局長として、専門家としてこの問題をどういうようにお考えになるか、これをお伺いいたしたいと思うのです。一年かかっておっても、まだぐずぐずやっておるわけなんですが、おかしいじゃないですか。
  108. 三治重信

    ○三治政府委員 われわれの立場は、これは立法のときの問題であって、そこに入れる入れぬという問題についての御検討については、先ほど申し上げましたように労使関係法研究会の諸先生方は、この規定の問題は、ぜひそれがなければ組合の民主性、団結の自由が阻害されるというふうには、それほど思わないという批判的な空気が非常に強く、われわれもこれについて昨年検討というふうに申し上げたわけなんですけれども労働組合法をそのために、先生の御趣旨のように緊急に変えなければならない問題とは考えておりません。
  109. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますれば、労働組合法に規範的部分として、規約の中にこれとこれは入れなければならないという理屈は立たないと思うのです。規範的部分があるということは、ぜひ必要だから規約の中にこの条項だけは入れて、民生的に自由に組合の運営ができるようにしなさいということで、規範的部分というものが規定されておるのですから、そういうところから考えてみますれば、あなたのいまの答弁はちょっとおかしいじゃないですか、どうです。
  110. 三治重信

    ○三治政府委員 先ほど申し上げましたように、これが一つ抜けているという問題がおかしいという問題と、それからこういうふうなことを組合の資格審査要件としてここに書いてあることそのことがはたして必要かどうかという問題について、研究会で御議論を願った場合に、この四号の条項の「何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われないこと。」こういうことが組合の資格審査要件として、労働組合として必ず規定をしなければならない条項にふさわしいかどうかという問題については非常に消極的な、立法する場合においてはそういう条項はむしろ要らないくらいじゃないかというのが、労働法研究会の御意見でした、こういうことを申し上げておるわけなんで、ここで一つ抜けているから、それをぜひ入れるのが正しいとか正しくないとか、入れたほうが望ましいという御意見よりも、むしろこういう四号を資格審査要件として入れなくても、組合としては当然それぞれ団結の自由で規定すべき問題として義務にしておいていいのではないかという御意見が強くありましたので、こう申し上げたわけです。したがいまして労働省といたしましても、現在のところにおいては緊急にこの条項を改正しなければならないという問題だとは考えておりません、こう申し上げたのであります。
  111. 田口誠治

    田口(誠)分科員 あなたは学校を出て官庁でずっとこういう方面をやっておられるので、あまりぴんとこないと思いますが、実際に労働組合をつくって労働組合運営しようとしたときに、労働組合をつくれば規約の中には、この条項とこの条項は必ず入れなさいという規範的部分があって、そして一番重要な平等の原則というものを入れる場合に、何人もいかなる場合においても差別をしない、こういうように明確に端的にいうてあれば、いまあなたの言われることが通ると思いますけれども、そうでなしに「人種、宗教、性別、門地又は身分」というようなぐあいに個個名称がつけられておって、政治信条だけ抜いてあるということに問題があるわけなんです。私はただこれが何人もいかなる場合においても差別しない、こういうようになっておればそれで明確になると思いますけれども、あえて個々名称があげてあって、憲法でも保障されておる重要な個所が抜いてあるから、労働組合の中では、規約の中に労働組合法の五条四号に書いてあることを規範的部分として入れればいいということになって、そう解釈した場合には、自民党のきらいな組合があれば、あれは自民党に入っておるのだから、自分らは資本主義と対決するのだから、自民党の党員は入れないのだ、共産党はいやなんだ、こういうことになってはいけないから——いかなる人といえども、どういう政党に入っておっても、どういう宗教を信じておっても、男も女も、そういう身分には関係なしに、意思があれば労働組合に入ったり出たりすることができるのだというものを労働組合の規約に明記しておくことで、民主的な労働組合としての姿勢ができるわけでございます。私があえてこの点を主張しておるのは、実際に現場において労働組合をつくって、長いこと労働組合運営した経験者として、この項が私はやはり気になりますし、憲法に保障されておる平等の原則を、一番民主的でなければならない労働組合の中において、差別をすることができるようになっておるということは問題が大きいから、これは改正をしてもらいたいのだ、こういう注文を昨年しておいたわけであります。したがって、政治信条を入れたとて、別段損にも得にもならないのじゃないですか。これは何か関係があるのですか。これを入れたら悪いということがあるのですか。
  112. 三治重信

    ○三治政府委員 その点については、先生の御意見はそういう御意見で昨年来聞いておりますが、大臣の指令で検討をお願いし、そうして先ほど申し上げましたように研究会にその意見を求めたところ、最終的な報告書というふうな形にはなっておりませんが、その問題については、政治的信条、また先ほど読みましたようなことを労働組合の資格として必ず記入しなければならないとか、さらにそういう平等の扱いを厳重にするということまで必要だとは、必ずしも考えておられない先生が大多数でありました。したがって労働省におきましても、これが先生のおっしゃるように緊急に改正すべき問題だというふうには考えておらないということでございまして、それでは先生のおっしゃるように、現在の組合員の中でそういう政治信条の問題で非常に問題になっていて、組合の組織なり団結に相当支障を来たしておるという事例がはたしてあるかというふうに考えてみましたところ、そういう実害もそうわれわれのほうとしてはないのではないかというのが、現在の立場であります。
  113. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それはあります。あった場合には、私がその例をあげたらあなたはどうしますか。差別待遇を労働組合がやっておった場合にはどうしますか。
  114. 三治重信

    ○三治政府委員 それは組合の団結の目的関係の規約でございまして、はたしてそれが社会的の問題として、この法律の労働組合目的趣旨に反するような現象であるかどうかということで判断すべきだと思います。
  115. 田口誠治

    田口(誠)分科員 団結の目的ならば、あなたの言われるように、自民党員の人は入れないほうが、団結は場合によってはよけいするかもしれません。だからそういうことを考慮してこれを抜いてあるということなら、私はまた別の角度からこういうものは考えなくちゃならぬと思いますけれども、やはりこれは憲法の平等の原則の十四条と関連があるものとして、また実際に労働組合は団体において一番民主的でなければならない。だから団体としては一番多くできておる。こういう団体が、加入しておる政党の内容によって、その人を組合員に入れる入れないというようなことができてはたいへんだと思うので申し上げておるのであって、そういうことがあってもよいということなら、私はまた別の問題としてこれは考えてみたいと思います。その点をはっきりしておいてください。
  116. 三治重信

    ○三治政府委員 現在のところ、先生のただいま後段で言われたようなことになるわけでございまして、決してそれが望ましいということではない、それがしては絶対的にいけないというふうな資格審査要件としては、それに入れるまでには規定してないからない、こういうふうに解釈さるべきでありまして、その規定そのものにおきましても、労働組合として国の規定する労働委員会への救済、その他、法の規定する労働組合の権利の行使についての救済の資格を持つべきかどうかという要件であって、これはそういうふうにしたことによって労働組合であるかないかということは何ら関係がない問題でございますので、その点はこれを入れないと、労働組合目的というものから非常に疎外される労働組合が多数できるというふうには解釈いたさない、われわれのほうとしては理解できないというふうに考えます。
  117. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこがあなたと私の感覚のズレですが、あなたのほうは法内組合としての資格を取る条件としてのこれは条項であって、組合の運営その他平等云々ということはそんなに考えておらない、こういうことなんです。それは資格を取る条件として基本的部分を何カ条かつくっておくことは、それだけ入れておけば資格は取れます。取れますが、実際に組合を運営して何人といえども、どんな職業についておっても、どんな政党に入っておっても、どんな宗教を信じておっても、労働組合に入りたい者は自由にはいれる、脱退したいときは自由に脱退できる、これが労働組合の一番いい特徴なんです。そういう画から考えて私は申し上げておるのです。だからあなたにお聞きをいたしたいと思いまするが、労働組合法というのは憲法の何条と何条と何条を基調としてできておるのかということを明確にして下さい。それによって私はあなたに教えてあげますから。わかり切った二十八条なんか言わぬでもよろしいですよ。
  118. 三治重信

    ○三治政府委員 憲法二十八条に基本的な条項があります。そのほか、憲法の話規定のうちで一般国民としての権利が保障される条項は守られていかなければならぬ、このように思います。
  119. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大臣にお伺いを申し上げますが、ただいま労働組合法というのは、憲法の何条と何条を基調にしてできているということは明確になっておるのですよ。労政局長はそれをすぐあげられないというのが実態なんです。不勉強なんですよ。だからもうこれ以上この問題をきよう質疑応答しておっても、らちがあきませんから、もう少し労働省では担当官に勉強してもらって、そうして労働問題懇談会に出すのでも、そういうような点をテーマとして出して、そしてこの問題を検討してもらいたい。来年の分科会、あるいは私の委員会に労働省設置法のかかったときにまたお伺いをいたしたいと思いますが、特に私は昨年期待をいたしておったのは、ほかの労働大臣と違って、大橋さんの場合は法の通なんだから、こういう点の指導は十分なされておると期待しておったので、非常に期待はずれで遺憾ですけれども、きょうこれ以上不勉強の者とやっておってもしようがないからやめますけれども、宿題にしておきます。それについてちょっと……。
  120. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題は昨年以来検討をお約束いたしておった問題でございまして、事務当局には研究を指示しておいたのでございますが、事務当局といたしましても、労働組合の根本に関する重大な問題でございますので、役所だけの一方的な考え方でなく、学識経験者の方々の御意向を十分参酌したい、こういう意味で労働問題懇談会に御相談をしておるわけでございます。懇談会といたしましても、まだ最終的の結論をお出しになったわけではございませんが、いままで中間的にあらわれておる諸先生の御発言等の趣旨を、局長から簡単に申し上げたわけでございます。私もその後この懇談会の状況を詳しく承知いたしておりません。いずれ懇談会で結論を出されます前には、私も直接先生方にお目にかかりまして、十分なまの御意見を伺って、一緒に御相談をいたした上で、最終的な結論を得るようにしたい、こう思っております。  なお役所の者の不勉強な点がありましたのは、今後は十分に御期待に沿うような勉強をいたしますように、厳重に注意をいたします。
  121. 田口誠治

    田口(誠)分科員 五、六分でこの問題は回答を得られると思ったが、二十分ちょっと過ぎましたので、次に移りたいと思いますが、ただここでお願いをしておきますが、いつの労働問題懇談会へこの問題をかけられて、そしてどういうような経過になっておるかということは、これはあとでよろしいから私のほうへ文書でください。
  122. 相川勝六

    相川主査 田口君、結論をお急ぎください。
  123. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それではもう一問もちょっぴりしかできませんが、ここで労働運動として非常に憂慮すべき問題がありますのは、最近労働組合に非常に弾圧があり、あるいは干渉があり、不当労働行為式のものがあるわけなんです。ところが民間の労働組合の場合には、これはいわゆる労働組合法、労働基準法労働関係調整法の適用を受けておる労働組合は、そういう問題があれば地労委へ提訴して、そしてここで結論を出してもらうのだからこれはよろしいし、公労協の場合でも仲裁委員会がありますからよろしいが、ただ公務員の労働組合が不当労働行為のあった場合には、労働大臣のタッチできる権限というものが十分でないと思うのです。労働組合法とか労働基準法労働関係調整法の適用を受ける労働組合には、責任を持って答弁したりいろいろできるでしようけれども、公務員の組合に対しましては、これは意見として言うだけで、徹底的にこれがいいとか悪いとかいうようなこともなかなか答弁しにくいと思うのですが、こういう公務員の組合の不当労働行為のあったような場合に、現在の場合には裁判をするよりしょうがない。だからこれは何とか勘考してもらわなければならないと思うのですが、何か名案がございまするか。それともそれほど不自由に思っていないのか、ひとつこの点について、今後労働大臣として、こういう問題があるのだからこれをどうするのだということを御答弁いただきたいのであります。
  124. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お話のように、公務員の労働組合につきましては、いわゆる不当労働行為の制度が採用されておりません。したがって法的に処理する行政上の手続は規定されていないわけであります。しかしながらさような事実がございましたならば、やはりこれは政府として当然是正すべき事柄だろうと存ずるのでございます。そういった仕事について、窓口となるべき役所は制度的にできておりません。ただいまのところ、いわゆる公務員担当の国務大臣ということで私がその命を受けておるわけでございますので、できるだけ窓口となって、いろいろ事実について組合側のお話を伺って、そして当該官庁との間に立ちまして、是正に努力をいたしておるのであります。しかし何と言っても法律的な権限というものは全然ございませんので、まことにぐあいが悪いと思っております。幸いに、今国会にILOの関連法の一つとして提出されておりまする国家公務員法におきましては、いわゆる人事局の設置が規定されておりますので、これが将来当然そういう法的な機関として、政府部内において権限に基づいて調整に当たるという仕組みに相なるだろうと思います。ただいまのところでは、どうもできるだけ気をつけて骨を折るという以外に、権限として動くわけにはまいりません。
  125. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がございませんので、またいつか社労のほうでいろいろ伺ってやりたいと思いまするが、いまの人事局でやる云々という御答弁は、これは名答じゃないと思います。しかしその内容が明確でありませんので、この際私のいま申し上げた質問に対する答弁としては明確でないと思いまするが、いずれにいたしましても不当労働行為のあった場合には、やはり法的に処置のできるようなことを公務員の場合もつくっておかなければならない。労働大臣が仲裁役のような関係で甲に聞いて、乙に聞いて、ああ、やらない、やったというようなことで、日にちがたってしまっては何にもならないし、いままでそういうような成果はございません。だからこれは労働大臣として全体的な労働問題として、今後考えておいてもらいたいと思います。  時間がきましたので、私の質問を終わります。
  126. 相川勝六

    相川主査 山田君に申し上げますが、時間は三十分以内でやってください。  山田耻目君
  127. 山田耻目

    山田(耻)分科員 時間がございませんので、国際労働関係、特にILOの問題は、社労の委員会でじっくりお伺いすることにしまして、きょうはOECDの問題について少し伺いたいと思います。総理が本会議でお答えになって、OECDに加盟が確定をしたら、積極的にOECDの各委員会の分野で発言をして、日本の正常なる状態を十二分に認識させるのだということをおっしゃっておりますが、労働省の所管となるべき委員会があると思います。どういう委員会がございますでしょうか。
  128. 和田勝美

    ○和田政府委員 OECD加盟後におきましては、労働力社会委員会というのが、労働省の所管委員会になるではないかと思います。
  129. 山田耻目

    山田(耻)分科員 人口資源社会問題委員会の間違いではございませんか。
  130. 和田勝美

    ○和田政府委員 英語ではマン・パワーということばを使っておりますので、労働力とも訳せますし、労働資源とも言えるのではないかと思います。
  131. 山田耻目

    山田(耻)分科員 労働組合委員会というのがサブ委員会として存置されていると思いますが、いかがでございますか。
  132. 和田勝美

    ○和田政府委員 いわゆるTUACというのがございまして、これは日本語に訳しますと、労働組合諮問委員会というふうに訳せるのではないかと思いますが、これはOECDに労働組合側の民間諮問機関として一九二六年の四月の理事会で承認されております。
  133. 山田耻目

    山田(耻)分科員 この二つの委員会がおおむね労働省の所管となさるべき委員会だと思いますが、一体この委員会はどういう目的を持って、どういう内容のものを審議したり、討議したりするであろうか、そのことと日本の今日の事情との関連について伺いたいと思います。
  134. 和田勝美

    ○和田政府委員 この労働組合諮問委員会は、労働組合立場からOECDと共通の問題について協議を行なうことを目的といたしております。具体的には、この諮問委員会は、OECDの連絡委員会との間で九カ月に一回くらいの割合で現在まで会議を開催いたしておりまして、いままでの会議の議題といたしましては、経済成長及び物価安定、開発援助、造船問題、こういうことについて協議を行なっております。またその他のOECDの各委員会及び事務局が個別事項につきまして、非公式にこの諮問委員会の意見を聞いたり、あるいは少数のエキスパートと行動したりするようなことがたびたびあるようでございます。またOECDは、専務総長が適当と認める場合には、OECDの情報並びに文書等をこの諮問委員会に配付をしておる、こういうのが現在までの活動状態でございます。日本が正式にこのOECDに加盟するということになりますと、その労働組合諮問委員会にもわが国の組合代表が参加することになるだろうと考えておりますが、詳細につきましては、ただいま私のほうの職員がパリに参りまして、活動問題について調査研究をいたしておりますので、それが帰りました暁には、さらに詳細なことが判明すると考えております。
  135. 山田耻目

    山田(耻)分科員 本会議に加盟決議を求められる段階になっていながら、内容がまだ調査中では、所管の省として非常に怠慢ではないかと思います。  そこで、私の調べたことについて若干お聞きしたいと思います。あなたのいま御答弁になりましたのは、若干ポイントがはずれているように思いまして、人口資源社会問題委員会の任務としては、人的資源の利用、機動性、季節変動の研究、二つ目が技術進歩、オートメ化による経済変化に対する早急な調整、三番目が市場政策、再編成、発展途上の援助、四番目が加盟国の労働面の法令、政策の調査労働関係の統計、年報の作成こういうふうになっておるのでありますが、こういうふうな中身を持った委員会に、主管省として労働省も出られ、オブザーバーなり顧問として労働組合の代表も出席をするようになっておるのでありますが、OECDに参加をなさろうとなさる日本の立場というものは、それぞれについて賛否の意見はあるにいたしましても、いまの日本の労働者の状態、雇用の状態、賃金労働条件の問題、あるいは時間の問題、それと同時に、基本的にありますILO条約関係のする労働者の基本権の問題が、いまだ十分確立をされていない段階でこういう委員会に御参加なさる労働省の所信というものは一体何だろうか。特に条約八十七号の問題とからめて、ひとつこの立場を御説明願いたいというのが一つと、いま一つは、OECDに加盟をしております二十カ国、日本を入れて二十カ国になっていると思いますが、ILO条約一号の批准、あるいは八十七号条約批准、未批准国の数を、この中でどのようにながめておられるか、ひとつあわせて御答弁を願いたいと思います。
  136. 和田勝美

    ○和田政府委員 先ほど申し上げましたのは、労働組合諮問委員会の使命について申し上げまして、御質問の点を多少不足をしておりましたことについておわびを申し上げますが、労働力及び社会問題に関する委員会は、OECDの中の一つの委員会でございます。それに対しまして労働組合諮問委員会は、OECD全体の労働組合側の諮問委員会でございまして、この委員会とは、直接的には結びつきはないのでございます。この労働力及び社会問題に関する委員会は、いま御指摘のように、労働力の移動の円滑化をはかるというようなこととか、加盟国内の労働力事情の情報交換を行なうとか。あるいは労働力統計に関する標準化を行なうとか、こういったようなことを中身として主として行なっておりまして、大体先生の御指摘のような事項でございます。  OECDの加盟国の中で、どのくらいが八十七号あるいは工業的企業に関する条約を批准しておる国があるかという点につきましては、ただいま資料を調べておりますので、しばらくお待ちをいただきたいと思いますが、大部分のものが批准をいたしております。わが国はこれらの条約について批准をしておらないわけでありますが、ただ八十七号条約につきましては、政府としては、すでに国会に関係案件を提出をいたしまして、これが早期に批准されることをお願いをしておるようなわけでございます。私どもとしては、すみやかに条約批准ができるような状態になることをお願いをいたしたいと思っております。工業的企業につきましては、先ほど大臣から他の委員の御質問に灯してお答えを申し上げたようなわけでございまして、できるだけ環境を整備しまして、適当な機会までに批准できるような状態に持っていきたい、かように考えておるようなわけでございます。
  137. 山田耻目

    山田(耻)分科員 技術革新、オートメ化に伴いまして、労働者の雇用を安定させるために、時間短縮をしたいということは、日本国内の労働川団体でも全く考えを一つにしまして、長年にわたって大臣のほうに強く要請をいたしてきておるところであります。特に中村委員に対しまして大臣のほうから、条約一号の批准についても検討しなくもやならぬというふうな御答弁をなさったように伺っておりますが、特に今日の基準法四十八条などを見ますと、いまだ日本には六十時間労働というのがあります。現実に国鉄の中にもあるのであります。国営企業の中にもあります。こういうふうな状態と現状を持続しながら、OECDに御加盟なさって、しかも労働問題委員会に御出席になって、日本のデータをお示しになって、それではたして日本の国力を海外に十二分に認識してもらえると労働省はお考えになっているのであろうか。第二番目に、大臣がさっき一号の批准についても検討したいということについては、大事なことでありますから、ここで正確に、これからの批准への手順と申しますか、おおむねの見通しと申しますか、これらについてもひとつしっかりした答弁を願っておきたいと思います。
  138. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一号条約批准の見通しにつきましては、ただいまできるだけ早い機会に批准ができるように準備を進めようということでございまして、ここではっきりした見通しを申し上げることはただいまのところできません。というのは、この条約の批准をいたしまするためには、これに先立って、御承知のように基準法における労働時間関係例外規定の改正が必要でございます。この改正につきましては、やはり労働基準に関する審議会におきまして、労使双方から十分にお話し合いを願った上、改正方向及び内容、それから時期等を御相談いただきたいと思っておるのであります。政府といたしましては、その答申に基づきまして、これを具体化するために行政上の準備を進め、また立法の手続を進める、こういうことに相なるわけでございまして、ただいま私、事務当局に対しましては、基準審議会においてすみやかにこの問題を取り上げて、そしていま申し上げましたような御相談をお進め願うように指示をいたしておる段階でございまして、具体的な見通しは、なるべく早い機会につけて、そして着々とそのスケジュールに従って進みたいと思いますから、もうしばらくお待ちをいただきたいと思います。
  139. 山田耻目

    山田(耻)分科員 結論としては、一号条約を批准するのは、前提として基準審議会を開いて、基準法改正の手だてを終わって、それからだ、こういうふうになっていくのでございますか。そこで、そういうふうにおっしゃったとお聞きしたのでありますが、問題は、基準審議会に審議のことをお命じになったということで、その作業は緒についたと思うのでありますが、おおむね審議会が結論を出すことをいつごろの時期にお求めになっておるのか。その結論を求められて一号条約の批准という段階にお入りになるので、大体できるだけ早くということでなくて、十一月からOECDに正式に加盟なさろうとしておるのですから、具体的な構想、動かない目標というものをお定めになって、それに向かって総体的な作業をお進めになることがいいと思いますので、いま一度、審議会の審議の日程とおおむねの時期と、そうして条約批准に立ち向かっていかれる時期、おおむねの目標というものについて重ねてお聞きしたいと思います。
  140. 大橋武夫

    大橋国務大臣 審議会は来月になってから開催されることになっております。その審議会におきましてこの問題を御検討いただきたいと思っております。私の考えといたしましては、何ぶん労働時間を一号条約の基準内に制限いたしまする基準法改正ということに相なりますると、法律を制定して、制定後やはり実施までに相当の準備期間が必要ではないか。その準備期間等をどのくらい必要かということも、審議会で御検討願う最も大きな問題の一つだと思うのでございます。したがいまして、時期についてはっきりしたことは、審議会がある程度進行してみませんと、具体的にお答えできないような実情にあるわけでございます。
  141. 山田耻目

    山田(耻)分科員 それでは大臣のお気持ちとしては、条約一号は批准をする、その前提の作業の中でいろいろと準備等があるので、明確な期日はまだ目標として言えない、こういうこととして承ってよろしゅうございますね。
  142. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まだ何ぶん遠いことでございますから、いまから批准をするというお答えを申し上げるわけにはいきませんが、批准をすべく努力しなければならぬ、そして批准には当然基準法改正が必要であるから、それについて準備を進めたい、こういうことでございます。
  143. 山田耻目

    山田(耻)分科員 大臣は、できるだけ早い時期に批准をしたいということから、だんだんと遠のいていってしまって、いつかわからなくなってしまうという御答弁になってしまったのでは、所管の大臣として何か確信がないというふうに私は受け取れてかなわぬのです。ですから、手続としては、基準法改正等もあるので、審議会等にかけて十分審議をしてもらったあと、整備をして批准の段階に立ち向かっていく。だからこれを裏側からいえば、批准をしなくてはならない、そのために審議会などを通して法改正をなさっていかなくちゃならぬ、その期間がかなりかかるので、期日については目測はできない、予定はできない、はっきり言うことはできない、こういうふうに受けとめているわけなんですけれども、そのことに間違いがあるということになりますといけませんから、そのことについて重ねて御答弁いただきたいと思います。
  144. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま山田委員のお述べになりましたのは、全く私の考えと一致いたしております。
  145. 和田勝美

    ○和田政府委員 先ほど御答弁を保留させていただきました数でございますが、一号条約は九カ国でございます。八十七号条約は十四カ国が批准をいたしておりません。
  146. 山田耻目

    山田(耻)分科員 批准をしていません国々は、それぞれの条約の基準を下回っておる国は、どこの国があるとお思いになりますか。たとえば八十七号条約等に関する結社の自由を認めていない国、あるいは一号条約等の労働時間を、六十時間も六十二時間も働かしておる国が一体どこにあるか。二十カ国の中であれば、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  147. 和田勝美

    ○和田政府委員 詳細はまだ調べておりませんので、調べて申し上げたいと思います。
  148. 山田耻目

    山田(耻)分科員 私は一昨年アメリカに行きましたときに——アメリカがまだ八十七号条約を批准いたしていません。日本の政府と非常に緊密な関係の中にありますアメリカが条約八十七号を批准していないから、日本も批准をしなくていい、こういうふうな実情を御存じない意見というものが、ときに新聞などに載っていたことがございます。そういう立場でアメリカのAFL・CIOのミーニー会長なり、あるいはシュニッツラー書記長に会いまして、そういう立場を述べる中で、ゴールドバーグ長官がそれはいけない、そういうことならアメリカも批准をしていいのだけれども、アメリカはそれを批准することによって何一つ得るものがない。すでに完全に実施をしておるこういう未批准の国があるわけなんです。しかし日本のように、いま大臣から御答弁いただきましたように、一号条約も批准されていない、結社の自由の八十七号も批准をされてない、しかもその内容は明らかに国際基準に抵触をしておる、下回っておる、こういう国が二十カ国の中にありとすれば、日本だけではないかと私は思っているのです。こういう条件を解決なさらずにOECDに参加をなすって、しかも人的資源社会問題委員会に出席なさって、その国の法令、労働事情、労働統計というものをお示しになるときに、恥ずかしくはないかということを私は非常に心配するのです。少なくとも国際信用がより高められていくという目的をもって、この種の国際機関には御参加なさるはずのものなのが、ますます国際信用を低下をしていくことになるのでいないかということを懸念しておりますので、これらの見解を大臣から伺いたいと思います。
  149. 大橋武夫

    大橋国務大臣 わが国の労働情勢が先進国に比べましてなおなお相当の距離のあることは、まことに残念であります。OECDに加盟いたします以上は、やはりできるだけ早くいろいろな労働関係の事情も、OECDの加盟諸国に追いついていくようにすることが一番必要であると思います。そういう意味で、今後労働省のしなければならない役割りというものは、非常に重大であるということを自覚いたしております。おくればせではございますが、今後いろいろな面で努力をいたしたいと思います。
  150. 山田耻目

    山田(耻)分科員 OECDに関する労働省予算を見ますと、ほんのわずか、三百万くらいではなかったかと思いますけれども、組まれております。私は、労働省の責任者の方がこの会議に御出席なさることが、この委員会の構成の中でうたわれておるのでございますが、一体これくらいの予算で、いま日本の社会問題等でかかえておる幾つかの指摘される条件をもって、国際会議に出ていろいろとお仕事をなさるのには、あまりにも予算が少ないという気が一つはしておるのです。それからいま一つは、日本の問題をお持ち出しになるときには、どれ一つとして労働者と経営者と政府との間に意見が完全に一致するというふうな問題はあまりないのです。この委員会の中で規定いたしておりますように、労働者側の代表などを顧問として出席させることができるというふうに書いてありますから、当然この種の問題については、労働者側代表もともに出席をさせられるような配慮が、政府としてもなされておると私は思うのでありますが、予算との関係、そういう労働者代表等をともに出席をさせるという気持ちについてどういうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  151. 和田勝美

    ○和田政府委員 三十九年度の予算につきましては、とりあえず約三百万の予算でございます。これの中身は、労働省といたしましては、先ほど申し上げましたOECDの労働力及び社会問題に関する委員会の日本からの出席関係経費、三回くらい出席するような経費が計上いたしてございます。本来ならは、向こうに駐在をいたしまして、常時向こうの状況を見ながら出席をしていくというのが、最も当を得たことかとは存じますが、初年度というようなことも考え合わせまして、一応明年度におきましてはいまのような予算を計上をいたしておるわけでございます。それ以外に、先ほど申しました労働組合諮問委員会があるわけでございますが、これは国際自由労連と国際キリスト教組合がほとんど主体になって運営をされております。そういうようなことでわが国の組合の代表の方が、当然そちらのほうに御出席になると思うのですが、それらの経費その他については今後検討させていただきたい、かように考えます。
  152. 山田耻目

    山田(耻)分科員 たしか労働組合委員会には、国際自由労連とキリスト教労連が入っております。ただ労働力社会問題委員会にも労働組合関係が顧問として出席できるような仕組みになっているはずでございます。私は昨年ILO四十七回総会に出席をしまして、日本の八十七号条約の問題について、モース事務総長なりジェンクス副事務総長にお会いいたしまして、青木大使もいらしたはずですが、そのときに日本のILO八十七号条約批准につきまして、アメリカの代表、イギリスの代表、フランスの代表、政府代表でございますが、政府代表が連名で池田総理に対して、すみやかに条約の批准をするようにという私信と申しますか、その国の気持ちを伝えたという連絡がございました。その真否についてお伺いしたいと思うのでありますが、そのことに関連はしていないのですが、OECDに近く日本が加盟しようとしている。OECDの人的資源社会問題委員会——労働資源でもけっこうでごさいますが、この社会問題委員会で日本の労働者が条約八十七号に示す国際基準というものを守らせるべく諸活動を行なうことができるので、好来OECDに日本が加盟したときでも、その場でひとつ御努力をなさるということも可能なのだという意向が述べられております。この点については国際自由労連のベクー書記長の意向も出ておりましたが、これはむしろ後者の労働委員会のほうを指さしているのだと思いますが、そこらあたりは私の誤解なのか、あなた方が御調査なさっておる人的資源社会問題委員会の内容はそういうものでないのか、お伺いいたしたいと思います。
  153. 和田勝美

    ○和田政府委員 私ども承知しておる限りでは、昨年の九月十三日付でOECEの諮問委員会のメンバーであります国際自由労連の欧州事務局長から、OECDの事務局次長に対して手紙を出しまして、日本がOECDに加盟の希望があるが、ILO八十七号条約のような重要な国際的協定の批准をしていないようでは、加盟は困るという趣旨の手紙が出されたように承知いたしております。しかしわが国といたしましては、ただいま国会に批准をお願いしておるような状況でございますので、これらのものがすみやかに国会で成立をいたしまして、OECD加盟に際してILO八十七号条約の批准ができるような状態になることを特に期待いたしております。
  154. 山田耻目

    山田(耻)分科員 時間がございませんので、ILO関係については社労でやりたいと思いますが、最後にいまの人的資源社会問題委員会の構成の中に、代表者は労働省及び援助機関における上級役員となっております。そうして第二項に、必要なときには労働者代表を随員、顧問として出席させることが可能である、こういうふうになっていると私は記憶をいたしておりますので、一度御調査いただきまして、そうして人的資源社会問題委員会の労働者の代表を排除することのないように、かなり重要な内容が中では審議をされなければならぬのでありますから、排除することのないように、調査の結果そういう構成になっておりましたら、ひとつそのような配慮を願いたいと思います。これはあらためて社労のほうででも大臣のほうから御答弁をいただきたいと思います。これで終わります。
  155. 相川勝六

    相川主査 午前の会議はこの程度にとどめます。  午後は、本会議散会後直ちに再開して、労働省所管に対する質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午後一時六分休憩      ————◇—————    午後三時四十一分開議
  156. 相川勝六

    相川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算及び昭和三十九年度特別会計予算中、労働省所管に対する質疑を続行いたします。  華山親義君。華山君にお願いしますが、三十分以内にお願いします。
  157. 華山親義

    華山分科員 われわれは出かせぎ者と言っておりますが、いわゆる季節労務者のことにつきましてお尋ねをして、希望を述べたいと思います。  現在、本問題はあまり論議されておりませんが、社会に巣くうところの、非常な病的とは申しかねても、異常な現象だと私は存じております。労働省の御所管ばかりではございませんけれども労働省でも当然大きな関心を持っておられると思いますので、こまかなことは別でございますが、全国的に何人程度の季節労務者がどういうふうな趨勢で多くなっているか、その総数だけでも前提として伺いたい。
  158. 有馬元治

    有馬政府委員 季節的な労務者あるいは出かせぎ労務者というのは実態はなかなかとらえにくいのでございますが、私どもが失業保険の観点からとらえておりまする季節的失業者実態から申しますと、最近非常にその数がふえておりまして、三十一年当時は九万七千というふうな数字で十万を割っておったのですが、ことしの実績推定ではこれが四十二万にはね上がっております。これは失業保険の受納者数でございますが、これから推定いたしましても、季節的な労務者が非常にふえてきておる。また、出かせぎ的な労務者が非常にふえてきておるということがうかがえるのじゃないかと思います。
  159. 華山親義

    華山分科員 それだけの季節労務者が出ておりまして、その状況は非常に心配すべき状況だと私は思います。なぜ、こういうふうな状況ができたか、その政治的な問題等につきまして、私にも考えがございますが、きょうはその追及等のことはやめます。ただ、どういうふうな状態であるかというふうなことを申し上げまして、大臣の御参考にいたしたいと思います。  私は山形火のものでございますので、山形県の実態を申し上げたいと思いますが、大体山形県からの出かせぎ者数は昭和二十九年におきまして六千人、三十四年に一万一千、三十六年に二万、三十七年に三万、三十八年は四万と推定されておるわけであります。しかし、先ほどの四十二万という数は、これは失業統計ですか、失業保険の受給者から推定したものであって、失業保険の受納をするということになりますと、約六カ月間でございますが、そういう人は山形県の実態からいいましてそう多くはございません。そういたしますならば、私は、山形県の現在の四万ということ、また受納者が四十二万というふうなことから考えますと、おそらく百万をこすところの人が出てくるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。それで、そういうふうな出かせぎ者が出た、季節労務者が出たということになりますと、どういうふうな実態がその農村に起きるか、こういうことでございますが、山形県におきまして大体四万人と推定されておりますのが、農家の主人または長男でございます。ほとんど若い人、次三男はもう都会に吸収されておりますので、そういう状態でございますが、大体山形県の農家戸数は十二万戸でございますから、三軒について一人という状態でございます。それで都会の近郊のところあるいは酪農をやっているところ、そういうところは出てもまいりませんので、ほんとうの貧農地帯に参りますと、軒並みといってよろしい状態でございます。その結果どういうことが起きますか。大体農業それ自体が粗漏になってまいります。これが産業上の次点でございます。  それから消防等はほとんどもはや無力といってよろしい。農山村地帯における消防力はもはや無力といってよろしい状態でございます。  それから青年が出てまいりますが、これは私のほんとうに経験いたしているところでございますけれども、一月十五日の成年式はやりません。出かせぎの前に繰り上げてやるか、出かせぎから帰ってきた四月か五月にやるか、そういうふうな異常の状態でございまして、成年もまた未成年者も出ております。そういうふうなことで、これらが都会の悪風と申しますか、たばこをのまないで済んでいた者がたばこをのむようになる、酒も飲まないでいた者が酒を飲むようになるというような失態は幾らもあるわけでございます。  それから家庭におけるところの子女の教育が弱化する、これは当然なことでございまして、ややもしますると、ああいう小さないなかでございますから、留守宅の婦女子の問題も、これは真実ではないでしょうけれども、とかくのうわさがある。留守家族の奥さん方はそういう状態であって、私はほんとうにこれは社会問題として重視すべき問題ではないか、とにかく池田内閣は人つくりということを申されますけれども、これは人つくりなどという問題ではございません。そういうふうなことでございますので、政府といたしましては、この問題につきまして深い認識を持っておられると思いますが、このことにつきまして、本年度の予算に何らかの予算を計上し、またはこれに対する処置等を具体的にお立てになっておりましょうか、お尋ねいたします。
  160. 有馬元治

    有馬政府委員 農村からの出かせぎの問題につきましては、従来から職安の業務としては非常に重点を置きまして、安定協力員の協力のもとに極力安定所を通じて公正な雇用条件のもとに農村から都市場へ出かせぎに行くというルートを確立いたしまして、年間、三十七年の実績でございますが、二十万五千人程度労働力が職安の窓口を通して出かせぎに出ております。おそらくことしの実績はもっと多くなると思います。そういうふうな状態で、私どもとしましてはその間に不都合なことのないようにということでせっかく努力をしておるわけでございます。
  161. 華山親義

    華山分科員 この問題は単に労働省または労働省職業安定局だけで処置のできる問題じゃございません。国の社会的な病的の状態だと私は思います。先ほど簡単でございますが、るる、どういうような状態に農村がなっておるかということを申し上げたわけであります。この問題につきましては国務大臣にお伺いいたしたいのでございますが、大臣は国務大臣としてこの問題につきましてどういうふうな認識を持っておられるか、あるいはこの問題を閣議においていろいろと考えられたことがあるか、予算等として計上されていることがあるか、その三点についてお伺いいたしたい。
  162. 大橋武夫

    大橋国務大臣 閣議においてはいままでこの問題が特に具体的に取り上げられたという記憶は私にはございません。しかしお話を伺っておりますと、最近の農村の実情から見てまことにさようであろうと存じまして、これは労働省の仕事ではございませんが、このままでは農村も大いに退廃してまいるのではないか、これに対していろいろ社会上また農村対策としても考えなければならぬことだというふうに存ずる次第でございます。今後他の責任大臣といろいろな機会に話し合いまして、できるだけの措置考えるようにいたしたいと思います。
  163. 華山親義

    華山分科員 私は根本的な問題に触れませんけれども、その問題が解決されない限りこの状態は継続するものではないか、こういうふうに考えます。いままで閣議で問題になったことがない、予算の計上もないというふうなことははなはだ不満でございますから、ひとつこの点について最大の御努力を願いたい。何もかも都会に出て仕事をしなくちゃいけないということはないはずです。十月から十二月末までは雪国といえども仕事ができます。二月を過ぎますれば仕事ができます。農村地帯におきまして農業基盤等の問題、道路等の問題もございますので、その方面にも——たとえば山形県で四万人と申しましたが、四万人の収容ができなくても、地場においても働くことができるのじゃないか、そういうふうないろいろな問題がございます。この点は農林大臣にもお聞きいたしますけれども、そういうふうなことでひとつ大きな社会問題として御認識になって、ここに対する政府の統一したところの処置、そういうものを閣議にでも、どこの所管か存じませんが、提出されまして、御決定になっていただきたい。大臣の御努力を切にお願いを申し上げます。  次に、この問題の労働省所管のことについてお尋ねいたします。またお願いいたしますが、いま安定局長からお話がございましたその前提として申し上げますが、大体この四万人のうちで職安を通して京浜地区に出てまいったというものは三〇%にすぎません。あとは職安を通しておりません。職安を通さないのは本人の責任ではないかと言われればそれだけのことでございますけれども、そういう実態でございます。それで、来た者はどういうふうな状態かと申しますと、昨年におきまして——山形県だけのことでございますが、死んだ者が三十人ございます。大体土木に来ておるわけでございますが、死んだ者が三十人ございます。この点から推定いたしますと、不明でございますが、けがをした者は相当な数に上るのじゃないかということが推定されるわけでございます。それから賃金の不払いが多い。大体山形県で調べたところでわかっているだけで、件数にして四百件、金額にして五百万円に上がっております。それはどういう実態か、私はそういう問題のあるときにいろいろ聞いてみたことがございますけれども、こういう職場に行かないかといって誘いにいくのは友人、知人でございます。それじゃ行こうかといってくる。そのときの話がやれ何々組、やれ何々組という第一流の会社の名前を言うわけでございます。本人がこちらに来てみますと、その組には関係がございましょうけれども三つも四つも下の下請けのところです。私は下請けがあるたびにその中におきまして中間のピンはねがあって、賃金も安くなっているのではないかというふうに考えますけれども、その不払いが起きるわけでございます。実例を申し上げますならば、とにかく季節労務者でございますから、農繁期には——これは保険をもらっている人は別でございましょうが、帰らなければいけない。それで上野から切符を買う。そうしますと西郷さんの銅像の前で待っていろ、そのときに持っていくからと言う。西郷さんの銅像の前に待っていると、きょうは払えないからと言ってくる。もう切符を買っているから帰ってしまう。それで不払いになる。彼らには何らそういう団結権もなければ交渉する力もございません。驚くべきことに彼らが雇い主に言うことばは一様に親方ということばを使う。これは封建的な昔の労働体制にいるわけでございます。住居なんかにいたしましても、保安施設にいたしましても、またけがや死んだ場合や、あとのことにいたしましてもほとんど放置されている状態でございます。私はこういうふうなことはどうしても労働省において極力防いでいただきたいと思う次第でございます。具体的なことをあげますならば、悪質なもぐりの周旋屋というものを徹底的に取り締まっていただきたい。それから府県でもまたやっているようではございます。地方の職業安定課等でも座談会等開いて一生懸命にやっているようでございますが、職業安定局はそういうもののあっせんを通すことに徹底的な宣伝をしていただきたい。それから職場職場につきましてはときどき巡回でもいたしまして、どんな状態かをひとつ調べていただきたい。そうして東京の要所要所に彼らが困ったときに相談を受けるところの相談所、そういうものをつくって、そして出発するところの地、それからこちらの職場、そういうところに困ったことがあったならばここに相談に来いというふうな趣旨を徹底していただきたい。  それから消防の問題、留守家族の問題、そういうようなことにつきましてはここでは御所管ではございませんので、別な機会に別なところで申したいと思います。  それから、若い青年でございます。この若い青年につきましては、特に集団して就職ができる集団就労のことを強力に労働省考えていただきたい。そうすることによって監督もできまするし、それから悪化も防がれますし、青年学校の教育もできると思います。そういう点につきまして、青年についての集団就労ということをお考えいただきたい。  それからもう一つは、段階的な雇用制度——これは建設省の御所管かもしれませんが、建設省にも強硬にお話になって、三階も四階も下の下請業者との契約になる。もう人入れ稼業以外の何ものでも一ないようなものとの契約が、自分がそう意識しないにもかかわらず、出発するときはそうでないのにかかわらず、そういう結果に陥るようなことは極力避けまして、契約はやはり何々組ならば何々組の仕事というものはあるわけでございます。その下請でございますから、その大もとの組と契約する。また大もとと契約することが困難である場合には、事故があった場合には必ずその大もとまでさかのぼって賃金の支払いをする、そういう制度をひとつこの出かせぎ労働者については符に御配慮を願いたいと思うのでございます。  なお、御参考までに申し上げますが、労働時間は大体八時間ないし十時間でございます。ただし残業が非常に多いようでございます。賃金は一日五百円ないし千円というのが実態のようでございます。就労時期は大体におきまして十月の末に始まりまして三カ月前後というのが多いようでございます。そういうふうなことでございます。  ほんとうに一番熱心なのは地元の市町村で、地元の市町村ではまことに涙ぐましいような話でございますけれども、留守宅の奥さんや子供さんの声をテープレコーダーにとって、こちらの出かせぎ労働者に聞かせているというふうな、まことに何とも申しかねるような心配や努力をいたしております。府県でも心配はいたしておりますが、いまのところ一番この問題に関心を持っていないのは国ではないか、こんなふうにも考えられますので、今後ひとついろいろな仕事の関係のございます建設省、農林省、労働省はもちろんでございますが、関係の省におきまして強力な機関をつくられまして、そして統一的な政策、そういうものを立てていただけますようにお願いしたいと思いますが、大臣の御所見を伺いたい。
  164. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま華山委員のお活を伺いましたが、御意見につきましてはことごとく同感に存ずるところでございます。従来労働省といたしましては、地方からの就職者については、春の学校卒業者、これにつきましてはかなり徹底した指導もし、またそれについては基準監督署とも連絡をとって、自後の世話に万全を尽し、相当成果を上げてまいったのであります。これに比べますると同じ農村からの出かせぎでありましても、ただいまお話の季節労働者というものにつきましては、われわれが十分に手を尽すところまでいっておらなかったかと思います。ことにいわゆる職業紹介という部分につきましては、できるだけ職業安定所も乗り出し、またそれに協力する職業安定協力員の援助も得ておったのでございますが、何ぶんにも農村方面は職業安定所の機構が手薄でございまして、十分に徹底しなかったうらみもございまして、職業安定所を通じない出かせぎ就職者がはるかに多くなっておるのでございます。今後はこれにつきましてお話のございました集団方式等新しい方式も十分に研究いたしまして、できるだけ出かせぎは職業安定所が責任を持てるような形で行なうようにつとめまするとともに、出かせぎ先の労働条件につきましては、一段と監督を強化いたしまして、できるだけの保護を講ずるようにさっそく検討をいたしますつもりでございます。
  165. 華山親義

    華山分科員 念のために申し上げますが、出かせぎ者はほんとにやむにやまれぬような境遇で出てまいっております。それで私も役所におりましたし、お役所のことを悪く言うわけではありませんが、お役所の仕事をなさいますときに監督ばかりが厳重になって、かえって出かせぎに出たい者が就職口が狭くなるような結果になりがちでございます。その点は重々ひとつ気をつけておやりになっていただきたいと思うのでございます。  これで終わりたいと思ったのでありますが、時間がちょっとございますので、他の問題についてちょっとお伺いいたしますが、私も山形県庁におりましていろいろな仕事をしてまいりましたが、一番気の毒だと思うことは、先ほどお話になりました中学校の卒業生、それが集団就職となりまして家を出発する際でございます。まことにこれも政治上の欠陥等のことにつきましては、いまここでは申しませんけれども、それは非常にかわいそうであります。それで池田さんが今度の所得倍増計画をお立てになって、その直後選挙がありまして山形においでになった際、私は池田さんに申し上げた。今後農村からは若い子供がどんどん東京に出るようになる、だろう、おそらく中学生十人のうち現在七人は出ておるのではないでしょうか、これらは非常にかわいそうだ、少なくとも上年間できなければ半年でもいいから、職業訓練の仕事をさせてから出したい。それについては政府の金が足りなければ、それを雇えるところの大企業等に政府が協力を求めることだって、思わしくはないことでありますけれども、やむを得ざる方法としては可能なのじゃないか、ひとつそういう点はぜひ御実行願いたいということを、私は池田さんにお願いいたしました。池田さんはもっともだという顔をしておりましたが、どうも思うようにはいっていないようでございます。それから局長さんが山形においでになったときもそのことをお願いしたような気持ちもいたします。私はこの点職業訓練につきましては、一年でなくてもよろしい、半年でもよろしい、一応の経験、つこうとする職場がきまっておるわけでございますから、それに対するところの一応の訓練を与えていただきたい。東京弁だけでもひとつ勉強さしてやっていただきたい。そして出てまいりますれば、すぐに役に立つことでもございますから、私は国家的に見て損失ではないと思う。そういう方面に一段の御研究を願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  166. 大橋武夫

    大橋国務大臣 理想といたしましては、確かにお話のような訓練を郷土において施して、それから就職先に送り出すということにこしたことはないと思います。現在でも、不十分ながら東京へ出かけようというような者を集めまして、簡単なる指導はいたしておるのでございますが、本格的な訓練を三月、半年という長期にわたってやるに至っておりません。何ぶんにも全国的に非常に労働力が逼迫いたしておりまするので、就職先へ送りつけましても、そこで必ずしもどこへ行っても訓練が受けられるというわけでもないようでございます。恵まれたる大企業におきましては、三月、半年の長期の訓練を行なった上で職場へつけるという措置もとっておられるようでございますが、一般的にそうであるとは参っておりません。いよいよ労働力も逼迫いたしてまいりますし、したがって若手の工員というものも、できれば就職をしながら中卒の者がさらに高卒の勉強をしたい、あるいはそういう資格を得たいというような向きもございまするので、今後受け入れ先における訓練というものは、一段と力を入れるようになりましょうし、またそれが必要な工員を充足する上からいってもやらなければならぬようにだんだんなることと存じますが、労働省といたしましては、訓練の問題につきまして、いろいろ研究をし、現在でもすでに民間の共同訓練施設等に対しましては、指導援助をいたしておるのであります。今後はますますそういった方面に力を入れるようにいたしたいと思います。ただお話のような、郷土の親元におりながら相当長期の訓練を施すということは、はたして実行可能かどうか、少し研究をさしていただきたいと思います。
  167. 華山親義

    華山委員 時間が参りましたので、もっと申し上げたいことがありますが、これで打ち切りますが、私は決して無理なお願いをしておるのじゃないと思うのです。別に党略とか党利とか、そういうことで言っておるのではございません。誠意を持って、私にお答えになったことを御実行願いたいと思います。終わります。
  168. 相川勝六

    相川主査 田原春次君。田原君にお願いしますが、三十分程度にひとつ……。
  169. 田原春次

    田原委員 お尋ねしますが、失業保険に参加している労働者の概数はどのくらいでございますか。あわせて失業手当受納中の者がほぼどのくらいか、その比例ですね。
  170. 有馬元治

    有馬政府委員 三十八年度の、これは見込みも入っておりますが、被保険者の概数は、千六百七十七万九千人と予定しております。それからその次の問題は、月平均で申しますと、受給の実人員が同じく三十八年度で六十三万五千人でございます。
  171. 田原春次

    田原分科員 そうしますと、割合からいきますと、ある時期、三十八年度で、千六百七十七万に対して、六十三万ですから、割合からいけばどのくらいになりますか。大体でいいです。
  172. 有馬元治

    有馬政府委員 三十七年度の実績でございますが、三・〇%でございます。ことしは、これを判るとちょっと出るかと思いますが、三%前後というのが受納率でございます。
  173. 田原春次

    田原分科員 これは二、三の東京都内の労働者の人からぜひ聞いてくれということで、それを取り次ぐわけでありますが、失業して失業不当をもらっているうちに都民税と国民健康保険料を請求されてきたわけですね。これは確かに前年度の収入に比例してでありましょうから、くるわけですが、本人にとってみれば、前年度のまだ会社に在職中の収入は大体手から口というような生活で、そう残らぬわけです。定年あるいはその他の事故、会社の倒産等によって失業手当をもらうわけです。失業手当の割合もいろいろありましょうけれども、大体五割から六割である。しかるに、ちょうどそのときに都民税と国民健康保険料を納めなければならぬ、これは矛盾しているじゃないかというのが、しろうとの労働者考え方なんです。いろいろ私も説明はいたしました。都民税その他は、前年度君が在職中の収入に比例してかかっておるのだ。それはわかるというのです。わかるけれども、いま自分は失業しているのだ、それをどうしてくれるのかということで、それでは、わが最も尊敬する大橋労働大臣がきょうの予算分科会で答弁に立つわけだから、自治省の都民税関係の方も来ていただいて、何か政治上の調整策はないか——法規上はなかなかないと思うのです。したがって、こういう数字で見ると、失業保険を納めている割合からいくと失業手当をもらっているのはわずか三%、多くても五%を出ない、この出ない者に対して規則どおりに都民税その他を課するのではなくて、他に就職するまで猶予するとか、減免の措置が政治的に講ぜられぬものか。これはおそらく自治省のほうでは規則どおりいただきたいと、言うにきまっておる。問題は、労働省の政策上のやり方がないかどうかということでございます。こういう例が出た場合に、いままでどういうふうに扱っておったか、それをこの機会に明らかにしてもらいたい。
  174. 森岡敬

    ○森岡説明員 自治省といたしまして、見解をお答え申し上げます。お話にございましたように、都民税及び国民健康保険税は、前年の所得に比例して税額がきまるというたてまえになっております。しかし、お話のようなひずみがございますので、私ども、地方税法の三百二十三条に、特別の事情が納税者にあります場合には減免ができるという規定がございますので、その規定を活用するように指導、通達はしております。  内容を簡単に申し上げますが、前年に所得があった者でありましてもその年の所得がたとえば皆無になった、あるいは著しく減少した、そのために生活が著しく困難であると認められる場合におきましては、その状況に応じまして減免するようにしてほしい、こういう通達を出しておるわけでございます。失業者と申しましても、これは個個に人々によりまして若干状況が違うかと思います。今後実態に応じて減免をするように指導していきたいと思います。
  175. 田原春次

    田原分科員 具体的な例でもう一度お尋ねいたしますが、甲という労働者が失業して失業手当をもらっている最中に、国民健康保険料と都民税が滞っておるというので差し押えの催告状が来たらしい。それでびっくりしてその居住地の区役所に行きまして窓口で話したら、そういう事情ならば払わぬでもいいです、こう言うんだそうです。そのことばが二通りに解釈されて、払わなければ払わないであとで差し押えるというふうにもとれるし、払わなければ何とかあきらめてやるというふうにもとれる。それでますます心配して帰ってきたわけです。いまの地方税法三百二十三条の減免規定を言うておるのか、言うていないのかわからない。なぜ一体そう言うのですかと聞いても、払わなければ払わぬでいいと言うのです。何条に基づいて減免するからとか、あるいはそれに基づいて必要な減免申請をしろとか、ちっとも言わないらしい。あなた方のほうがそういう取り扱い方を指令しておるのに、もうちょっと親切が足らぬのじゃないか。減免するという規定があるよと言うだけでなくて、個々のケースを見て、現に失業手当をもらってようやく食っていて、次の仕事をさがしておる者に対しては一年間猶予するとか、減額するとか、免除するとかいうことを言いなさいと言えばいいんだけれども、差し押えの催告が来たのを取り消してやるとか、こういう点はどうでしょうか。自治省でそういう扱いをするか、失業手当受給中の者は、他の仕事をさがすまでは待ってやれという労働省通達でも出してもらうかしなければ困る。両省御答弁を願いたいと思います。
  176. 森岡敬

    ○森岡説明員 お話のありました実例につきましての考え方を申し上げたいと思います。  区役所の職員が、若干応対に不十分であった点は私どももあろうかと思います。その点はまことに遺憾に思います。ただ、減免の手続といたしまして、納税者から減免申請というものを出していただく、こういうことに実はなっておるのであります。区役所の応接に当たりました者が、減免申請を出すようにという趣旨で申したのだ、私はそういうふうに考えておりますけれども、そういう手続をとることになっておりますので、納税者が個々にそういう実態申請していただくことによって初めて減免の手続がとれる、こういうことでございます。  それからあとのほうでお話のありました点につきましては、労働省としてもいろいろ御意見があろうと思いますが、私ども地方税を所管しておる者の立場といたしまして、失業保険受給中であるという事実だけで、直ちに一律に減免措置、減額措置をとるというのは若干いかがか。やはり個別にその人たちの担税力を、地方税でございますので個々の地方団体が認定いたしましてきめていく、こういうたてまえをとるのがむしろ妥当ではなかろうか、こう考えております。
  177. 大橋武夫

    大橋国務大臣 地方税のことでありますので、これは自治省でおやりになるわけでございまして、徴税当局に対しては自治省から適当に指示していただくべきだと思います。もし労働省からそれについて何か達しを出すといたしましたならば、失業者のお世話を取り扱っておりまする職業安定所に対しまして、失業中の者に対しては地方税においてかような減免の措置をとられる場合があるから、そういう必要の際には減免の申請を出すように、念のため失業打に対して指導しろ、こういうようなことを、しいて言えば安定所の係員に知らせておく程度かと存じますが、しかしこれにつきましては事務的なことになりますので、また適当な機会に自治省の係の方とよく相談をした上で処置させたいと存じます。
  178. 田原春次

    田原分科員 労働省の扱い方は大体それでいいと思うのですが、それならむしろ一歩進めて、各職安に対して失業保険をもらいに来た第一回のときに、収入が激減したために地方税を納められぬ場合もあろうから、そういう場合には遅滞なく手続してやるからこういう順序でしなさいという、一般論でなくて具体的に、最初に教えておく必要があるのではないかと思います。至急自治省と労働省の間で相談を進めていただいて、その結果は、自治省のほうは区役所の窓口まで徹底するようにし、それから労働省のほうは職安の窓口まで徹底するようにしていただきたいと思いますが、異存ありませんか。
  179. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さように取り計らわせます。
  180. 田原春次

    田原分科員 次に、今度は労働省だけに対してひとつお尋ね申し上げたい。  それは、昨年海外移住基本法というものが出ることになりました。日本人の海外移住に関して基本的な方針をきめるということでしたので、私どもは多大な期待を持って待っておったわけでありますが、ついに昨年の国会に出ずじまいになったわけであります。当時、公式の話ではありませんが、うわさといたしましては、技術者の海外における職業紹介等が労働省の所管であるということで、各省間の話し合いができないから出なかったということを聞いておったわけであります。一昨日、今度は海外移住法というものにして出すということが東京新聞に出ました。見ておりますと、ほかの新聞には出ておりません。私は外務委員でありますから、外務委員会に出ておるかと思ったが、まだ出ておりません。外務省に対して聞いてみたわけです。素案のままで出したらどうか、そうして審議の過程で労働省の担任する部門、あるいはその他話し合いをしてみたらどうだ、いずれにしてもすでに海外移住は年々進めておるが、昨年のごときは非常に成績が悪いのです。それはいろいろな理由を並べておりますが、ともかく成績が悪いのです。したがって新しく海外移住事業団というものができたことであるから、農業移民のほかに労働移民、技術移民等も当然出ることであるので、基本法をつくるならば早く出しなさいと言っておったのですが、いまだにこれが具体的に出ておらぬ。新聞に載っておるだけです。労働省では、国内の労働者の配分等についての基本的な問題のほかに、海外移住を希望する労働移民あるいは技術移民等に対しても、労働省本来の扱いからすれば当然だと思うのだけれども、外国だとちょっと事情が違うので、国内の職業安定所法だけをそのまま、なまのままで延長することはいかがなものであろうかと思うのです。問題は、行きたい者だけやればいいのですから、そのことについて話し合いがあったのか、どの辺が難点で海外移住法が出ないでいるのか、この辺をこの際ひとつ明らかにしておいていただきたい。
  181. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘の問題は二つあったと思います。昨年の海外移住事業団で、発足当時の技術移民の扱いの問題について、なわ張り的ないきさつがあったような御指摘ですが、その後のわれわれの考え方といたしましては、決してなわ張り的な考え方でこの問題を扱っておりませんで、事業団に対しまして全面的に安定機関は技術移民の送り出しに協力いたしております。結局この二月現在で、六百九十名ほど技術移民を送り出しておる実績がございます。  それから、さらにこれから問題になると思われます海外移住法の問題についてでございますが、これは目下外務省のほうで原案を立案中でございまして、つい昨日、事務的に私どものほうへ原案を送付してまいりました。これに対して私どもは現在検討中でございます。中で問題になりますのは、先生指摘のように有料、無料の移住あっせんの問題と移住者の募集の条項でございますが、これは国内全体の労働力の需給調整という問題もございますので、ぜひ外務省と協力をして、海外移住の問題が円滑にいくような法制をつくっていただきたい、かような見地から外務省のほうにも御協力を申し上げたいと思っております。
  182. 田原春次

    田原分科員 ここ数年、海外移住は、労働、農民、技術を加えて大体予定どおりの数にいっておりません。年々減少の傾向にあるわけです。しかしながら、国内は人口がふえておるわけでありますから、人口問題からいたしましても、海外に移住しておる先輩の後続部隊として出す意味においても、どうしても移住がしやすいようにしなければならぬ。国立大学のほうは移住に関する特殊な科目はありませんが、私立大学数校については、農業拓殖科その他の拓殖関係の科目も持ち、相当の学生もおる。卒業して海外、特に中南米なりアメリカ各地に就職しておる者もありますから、どうか前向きに、行きたい者が行けるように協力をしてもらうようにしなければならぬ。そういう原則的な立場について、労働大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  183. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本の状況から言いまして、なるほど労働力が逼迫いたしておりまするが、しかし海外発展ということは、革に国内の労働需給の問題とはまた関係のない、非常に重大な問題だと私も存じております。これにつきまして、労働省としても協力できる面はできるだけ協力しなければならぬと存ずるのであります。ただ、御承知のように職業紹介のことにつきましてはいろいろ国際条約等もございまして、制度をどうするかという面になりますと、これらの国際条約等の関係もございまして、必ずしも便宜をはかるというわけにはいかない面もございます。しかし、それについても特に労働省としては、労働省の既得のなわ張りを守るというような考え方ではなしに、国際条約を尊重しながら、できるだけ目的のために協力するという立場で今後もつとめたいと存じております。
  184. 田原春次

    田原分科員 労働大臣の非常にりっぱな考え方を、しばらく実績の上で拝見することにして、質問はこれで終わります。
  185. 相川勝六

    相川主査 町原覧君。
  186. 野原覺

    野原(覺)分科員 ILO八十七号条約の批准に関しましては、国連局長がまだお見えでございませんからあとに回しまして、労働基準行政について若干お尋ねしたいと思うのであります。  まず第一にお聞きしたいことは、諸外国に比べて、日本の労働基準法は必ずしもその程度が描くないにかかわらず、守られる比率が少ないのであります。つまり順守されていない。どこに欠点があるのか、この点を大臣から御答弁願いたい。
  187. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働基準法の実施につきましては、いろいろな点から検討すべき点があると思うのであります。まず、この基準法が制定されました当時のことを振り返ってみますると、従来の工場法その他の工場監督の法規に比べまして、基準法が単に工業ばかりでなく全産業にわたる労働基準、しかもその全産業にわたる労働基準を、ほとんど一律にきめておったという点が非常な特徴と相なっておったのであります。したがって、従来労働基準につきまして法的規制を受けておらなかったいろいろな産業が、急に基準法を順守しなければならないということになりましたにつきましては、相当使用者の側かは文句が出てまいったという事実もあるのでございます。さらにまた、基準法の内容自体が、従来の工場法に比べましても非常に斬新なる規定を多く持っておりまして、そのために、いままでよりも非常に基準がやかましくなった。この点は、一般工業の使用者も非常に混乱したというようなことがあるのであります。かような事柄から、どうも基準法は日本の産業の現状に合わないのではないか、これを厳重にやられてはたまらないというような空気が産業界に相当強くなりまして、労働省といたしましても、それをなだめるためにいろいろ苦慮いたしてまいったような次第でございますが、特に労働基準の監督は、たくさんの事業場があることでございますから、監督官の人手をたくさんに必要とする。工場がふえるに従いまして基準監督官の増員等をいろいろな機会に計画いたしたのでございますが、基準法はあまり厳重に実行されてはたまらぬという空気がありましたために、行政整理による減員はきちっきちっと行なわれまするが、増員は全く見送られてきておったというような次第でございます。したがって今日の実情は、基準行政といたしましては、非常に人員の面において不足しておるということを指摘せざるを得ないと思うのでございます。これらの事情がいろいろ重なりまして、基準法の順守を励行するという面においては多少の行き届かない面が残っておるかと思うのでございますが、しかし御承知のとおり、最近政府もOECDに加盟いたし、日本の労働基準につきましても、やはりこれを漸次国際基準に近づけるという努力を払わなければならぬ時期に相なりました。来年度の予算におきましては、基準法ができてから初めてと言っていいと思うのでございますが、相当数の監督の増員も認められた次第でございます。労働省といたしましては、労働基準法の内容の一そうの整備充実、また現在の法規の厳重な実施のための監督の励行、こういう時期が来たもので、大いに今後は努力しまして、できるだけ基準法の内容もよくし、またその実行の成果もあげていきたい、こう考えておる次第でございます。
  188. 野原覺

    野原(覺)分科員 時間がございませんので、私も簡単に、簡潔にお尋ねいたしますが、ひとつ御答弁も簡潔にお願いしたい。お尋ねしたいことがたくさんありますので……。  次にお聞きいたしますが、日本には、いま大臣の御答弁によりますと中小零細企業がたくさんある。その中小零細企業実情からいって、労働基準法というものは少しレベルが高いのではないかといったニュアンスの御答弁のようにも承ったのです。そこで労働省は、そういう実情にかんがみて、是正基準というものを設けてきておられます。この是正基準はいつから設けてきたのか、その理由はどこにあるのか、これをひとつお述べ願いたい。
  189. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ちょっと念のために申し上げておきますが、労働基準法のレベルが高過ぎるのじゃないかという評判があったというのは、それは制定直後数年間の問題でございまして、現在において私はさようには考えておりません。一部そういう意見のお方もあるかもしれませんが、大勢としてそういうふうには考えておりません。
  190. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 いわゆる是正基準と申しますのは、重点的、段階な監督を行なうように、いわば監督の効率的実施という観点から、昭和三十一年に運営方針として実施したといういきさつがございます。しかしながら、最近社会経済的な情勢の変化によりまして、労働基準法に定められた法を適確に順守せしめるというような情勢が非常に成熟してまいりましたので、私どもは、法定基準を厳格に実施するという方針で行政を運営しているような次第でございます。
  191. 野原覺

    野原(覺)分科員 いつからこれは設けてきたのですか。そしてその設けてきた中身——労働基準法にもいろいろあるわけです。たとえば就業時間もあれば、深夜業もあれば、休日もある。どういう中身の是正基準であったか、そしていつから設けてきたかということをお述べ願いたい。
  192. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点、たとえば労働時間とか女子年少者の問題等、幾つかの問題がございます。ただいま申し上げましたとおり、三十一年からそのような考え方をとってきたのであります。しかしながら、最近におきましては、ただいま申し上げましたように法廷基準を厳守さすという方向で行政を運用するというような形に、漸次強まっておるということを先ほど申し上げました。
  193. 野原覺

    野原(覺)分科員 大臣にお伺いしますが、労働基準法は、御承知のように法律なんです。ところがその法律のレベルに到達しない、それよりもっと低い基準を設けて労働基準の監督をするということは、つまり行政措置なんです。法律を行措政置で手直しをするという、この是正基準の考え方、これは間違ってはいませんか。これは大臣の率直な御答弁をお願いしたいと思います。
  194. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法律を実施いたします場合におきまして、いかにしたらすみやかに実施の効果をあげ得るか、これについては、やはり責任者としてはいろいろくふうが必要であると思います。先ほど来、局長の説明をかたわらで聞いておりましたが、おそらく是正基準なるものは、できるだけ早く国内の全産業について労働基準法を厳守さすようにしたい。しかし現状においては、いま直ちに励行するということは無理がありはしないか。そこで、ことしは労働時間のどういう問題を重点的に監督するか、来年はどういうふうにどういう点に力を入れていくか、すなわち労働基準法の内容につきまして、事柄の軽重に従って漸を追うて監督の重点をきめて、そしてそれぞれについて完全励行の実績をあげていこうという、基準法を励行するための段取り、手段をきめたものがこの是正基準だというふうに私は了解いたします。しかし、局長の申しましたように、是正基準をもって一部分に重点を置いて法を順守させるというような前期はもはや終わりまして、基準法を全面的に全作業について実施させるような時期が現在すでにまいっておる、こう思うのでございまして、現在では、是正基準なるものは、もはやその使命を達成して不要になったと思っております。
  195. 野原覺

    野原(覺)分科員 是正基準というのは、基準法を是正しているのですよ。八時間の時間が九時間に是正されているのでしょう。それは、基準法を徹底させるために重点を置いて段階的にということでありませんね。基準法に最低の労働条件が規定されている。それをいま直ちにこのまま実施することは、たとえば繊維廃業では困難だからというので是正してきた。その中身を、あなたのほうは秘密の通牒で、基準局長に今日まで昭和三十一年から出してきた。なかなかこれを公表しない。国会でも公表しないということであったが、これが大臣の言うようなことならば、公表したらいいと思う。それをマル秘の通牒で基準局長に流して、そして基準法の実質的な是正をやってきておられる。だからその中身をひとつ述べてください。これは明確に述べてもらわぬと困る。
  196. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 いわゆる是正基準と申しますのは、法律の線を引き下げるという趣旨のものではなくして、大臣もお述べになりましたように、労働条件を法定の線まで引き上げるにはどうしたらいいかという観点から考えておるものでございます。そしてこの監督手段というものは、これは事柄の性質上、一般に公表いたしますと監督に非常に支障を来たしますので、この監督方針というものは従来外部に発表しないでいたといういきさつがございます。これは御承知のごとく、監督の性格上、いわば手の内を事前に知らすというのはいかがかという問題もございましたので、監督方針は従来通牒でも公開しない、こういうことにいたしておるようでございます。そのような性格のものでございますが、この内容につきましては、産業ごとにそれぞれ重点が多少異なるわけでございます。先生十分御承知かと思いますが、繊維炭業の零細企業におきまして深夜業を行なっておるというものにつきましては、そういう当該産業につきましては深夜業の是正を重点にするといったように、それぞれの業態の特殊性に応じまして重点を定めまして指導をし、引き上げていく、こういうような内容のものでございます。
  197. 野原覺

    野原(覺)分科員 零細な繊維産業において基準法の就業基準がどういうように是正されてきたのか、深夜業がどういうように是正され、基準を示してきたのか、そこの中身をお述べ願いたい。
  198. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 特定地区の零細繊維産業につきましては、再三の監督実施にもかかわりませずまた法違反の顕著なるものにつきましては、しばしば送検いたしまして、件数を申し上げますと、昭和三十七年の年間では、繊維産業につきましては百四十七件という送検の数字になっておりますが、法違反があり、これを送検するというような最終的な行政措置をとりましてもおなかつ是正に至らない、こういうものがあるわけでございます。これらのものにつきましては、個々の業者だけではなかなか是正しないというので、集団的な改善指導を必要とする面もございますので、特に昭和三十七年から労務管理近代化という、法律とは別な角度からの指導を加えるというふうにいたしまして指導監督をいたし、悪質なものは送検する、こういった可能な限りの手段を講じまして、労働基準法を順守させるというふうにいたしておるところでございます。
  199. 野原覺

    野原(覺)分科員 どうもくつの上からかくような御答弁で、何回も同じことを繰り返して相すまぬのですが、あなたの御答弁がどうもはっきりしない。たとえば大阪の泉州地帯の繊維産業においては、基準法がどう是正されて監督されてきたか、それをひとつ述べてください。
  200. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 泉州の具体的な例につきましては、ただいま資料は手元にございませんが、法違反につきましては、先ほども申し上げましたように、悪質なるものは送検するというような千段を用いまして措置しておるわけであります。にもかかわらずまだ是正をしない、こういう悪質なるものが少なくございませんので、重点的な監督を実施しておるわけでございます。この点につきましては、基準法上すべての事項が違反だ、こういうわけではございませんで、たとえば深夜業が特に問題だ。これはかなり是正されてきてはおりますけれども、なお悪質なるものがあとを断たない、こういう形になっておりますので、はなはだ遺憾でございますけれども、泉州につきましても法違反は完全に是正されたというような段階に至っておりません。
  201. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたの御答弁ではどうもはっきりしませんのが、やはり基準法の基準を緩和しておることは事実ですね。幾らか緩和して監督をしてきている。それを公表するとまずいから、たとえば泉州の繊維地帯においては就業時間、深夜業はこの程度に緩和して監督をしなさい。これは業態の実情によって、基準法どおりにやるとつぶれてしまうし、なかなか容易じゃないからということでやってきたのでしょう。はっきり言うたっていいじゃないですか。
  202. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実はまことに申しわけない次第でございますが、是正基準なるものは、私、ただいま御質問の中で承りまして、初めて承知をいたしたのであります。実は私は、そういうものがあったことは、今日ただいままで全然知らずにおりました。いろいろ局長のほうから説明があるように思いますから、一度私もその説明の内容を十分聞きまして、そうしてそういうものがありとすれば今後どう処置するか、それらのことをも決定の上、適当な機会にまたお答えをさせていただくことにいたしまして、本日はこの程度で、この問題はお許しをいただいたらたいへん都合がよろしいと思います。
  203. 野原覺

    野原(覺)分科員 大臣の率直な御答弁に私は敬意を表します。なぜ私がこういうことを問題にするかといえば、基準法があるのですね。ところがその基準法があるにかかわらず、行政措置で是正をする、こういう手直しをするということは、私はとんでもないことだと思う。この点は憲法違反だ、法律の無視だと思うのです。労働省もそういう公式的なことはよく御承知なんです。日本の中小零細企業実情からいって、今日の基準法を完全に適用することは困難だ、こういう考え方で、私はやむにやまれずそういう手を打たれた苦衷のほどはわかります。その苦しみを脱却するために近く是正基準を撤廃するということですが、中小零細企業に対する対策は、大橋さんも御承知のように別の角度で、経済政策で講ずべきなんだ、政治の問題なんだ。そのしわをなぜ労働省がかぶらなければならぬのか、なぜ基準行政がかぶらなければならぬのか。基準行政としては、法律で与えられたとおりに監督指導をやっていったらいいと私は思う。この点は私は問題にしたいわけなんです。労働行政は非常に弱い。その点を私は指摘したいので、実はいま申し上げたわけであります。  そこで、次にお尋ねしますが、労働基準監督年報というものがILOに出されるわけですね。これはILOの憲章と、それから日本がすでに批准いたしました八十一号条約に基づいてこの年報が出されるわけでございますが、これは規定どおり遅滞なく今日出しておりますかどうか、承っておきたい。
  204. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先生のしばしばの御指摘もございましたので、本年は目下印刷に付しておりまして、三月に入りましたら印刷は完了いたしまして、ILOの条約に定めるところの十二九月以内に公表し、公表後三カ月以内にはILOに送付できるものと考えております。
  205. 野原覺

    野原(覺)分科員 労働大臣は是正基準はしばらくおけということでありますが、一点だけ私は労働大臣に申し上げでおきます。  この基準監督年報のILOに対する報告の一五四ページを見ますと、定期監督実施状況が表になって出ているのであります。そこのところで、男子、女子の就業時間の違反件数があがっております。この違反件数は、国際的な報告で、たとえば男子の場合には二万六十七件、女子の場合には一万九千八十件、こういうように件数があげられているわけですが、私はこの件数も間違いである。是正基準で監督指導しているんですから、労働基準法違反だとしてこれは報告しなければならぬわけです。ILOは、日本の労働基準法を国際的な規範として記録にとどめております。その労働基準法違反として報告している数字は、実はもっと多くなければならぬ。局長、是正基準については臨検ができないのですよ。是正基準はあなたのほうが認めているわけですから、臨検も監督もしないわけです。だから実際は、基準法でいけばこの件数はもっと多くなければならぬ。そうなると、これは国際的な報告文書としては正確を欠いているじゃないか、こういうことになるんです。これを私は申し上げておきます。これはいまさら、すでに過ぎたことを是正しろと言ってもなんでございますから、ただ最後に一点この問題でお伺いしたいことは、近く廃止をするそうですが、三十九年四月から労働基準法の完全適用、是正基準はもう絶対使わないという方針を明確にとられているのかどうかこれをお聞きしておきます。
  206. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 三十九年度の行政運用方針につきましては、目下検討いたしております。その考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、経法的、社会的な客観情勢が熟してまいりまして、特に労働力不足のおりから、基準法を守らぬような事業場はなかなか必要な労働力も得がたいというような事態になっておりますので、基準法を厳正に実施するという考え方を示したいというふうな態度で、行政の基本方針を目下検討しております。
  207. 野原覺

    野原(覺)分科員 次に、ILOの八十七号条約でお尋ねいたしますが、きょうは外務省を代表して力石さんがここにお見えであります。力石国連局参事官は、青木さんを羽田に出迎えられて、青木大使から、大平外務大臣に対するモース事務総長の手紙、それから正式の文書を手渡されたそうでございます。そこであなたにお聞きしたいことは、八十七号条約というのは、私ども労働大臣に対してばかり質問してまいっておりますけれども、これは御承知のように、八十七号条約は条約の批准でございますから、責任担当省は外務省なんです。そこで外務省としては青木大使の報告をどう受けとめておるのか、青木大使は大平外務大臣にどのような報告をされたのか、はっきりひとつここでおっしゃっていただきたい。
  208. 力石健次郎

    ○力石説明員 青木大使が大平大臣に報告された席には私はおりませんので、その場でどうであったということを申し上げることはできないわけでございますが、外務省といたしましては、先般大平大臣が申されましたとおり、この問題の批准というものは国際的に非常な影響があると思われますので、批准を促進することが望ましいというふうに考えておるものと考えております。
  209. 野原覺

    野原(覺)分科員 国連当局の責任者として当委員会に参りましたあなたが、青木大使の報告について答弁をしないというならば、外務大臣を至急に呼んでもらいたい。これは当面の最も大きな問題だから呼んでください。
  210. 相川勝六

    相川主査 いま連絡しますから、ほかのほうの質問をやってください。時間が措しいから。
  211. 野原覺

    野原(覺)分科員 時間の関係もありますし、同僚議員に御迷惑をかけてはどうかと思いますから、私は他の労働問題でお尋ねいたします。ILOの問題は、外務大臣が参ってから大平外務大臣、それから大橋労働大臣にお尋ねすることにいたします。  まず第一点は、行政管理庁から参っております監察審議官にお尋ねいたします。あなたのほうは、労働行政に関して昭和三十七年の十二月に監禁報告を出しております。その中に、労働省の外郭団体に対する所見が、その報告を見てみると載っておるわけです。行管にお聞きしたいことは、今日労働省関係のある外郭団体は全国で幾つあるのか、及びその外郭団体に対する行管の所見はどういう所見を持っておるか、どういう問題点が外郭団体にはあるのか、この点をお述べ願いたい。
  212. 足立正秋

    ○足立説明員 お尋ねの点でございますけれども、私ども一昨々年、労働安全の問題につきまして監察を実施したわけでございますけれども、お話の外郭団体の関係で見ました点は、ボイラーあるいは耐圧検査、こういったものを現存は基準局系統で原則的にやっておりますけれども、いろいろ仕事の関係でむしろこれは相当部分を外郭団体のほうに移したらどうか、こういった所見を出しておるわけでございまして、その他一般的に労働省関係の外郭団体につきまして、この監察では別に言っておらないわけでございます。その点を御了承いただきたいと思います。
  213. 野原覺

    野原(覺)分科員 基準協会というのがあるわけですね。安全協会もあるわけですね。それから何か災害対策防止協会とか、それから業種別の、あるいは業態別の協会というものがたくさんできておる。それが四十六都道府県の地方の労働省の出先と一かたまりになって、労働行政をやっておるわけです。労働省に言わせると、これは労働行政を浸透理解させるためにつくった外郭団体だと言うけれども、あちこちで次から次へとこの外郭団体が問題を起こしてきておるわけです。そういう外郭団体は、合計いたしますと全国で幾つありますか。あなたは行管だから監察しておるはずだ。
  214. 足立正秋

    ○足立説明員 お尋ねの外郭団体の数の問題でございますけれども、これにつきましては、今度の監察につきましてはそういった外郭団体一般として見ておりませんので、ただいま数字等につきましては申し上げる資料を持ってまいっておりません。
  215. 野原覺

    野原(覺)分科員 大臣、あなたのほうは数を持っていらっしゃる。あなたに数を言えと言うのは無理かもしれぬですが、責任者でございますから、これは幾つございますか。
  216. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先生の御指摘の外郭団体の範囲でございますけれども、いわゆる全安連と称しまするような全国安全連合会といったようなもの、あるいは衛生協会といったようなもの、それから労働基準協会といったようなもの、全部の正確な数字はちょっと把握しておりませんが、御質問の中心になる問題は、いわゆる労働基準協会的なものかと存じまするが、いわゆる労働基準協会に類似した名称の団体は約二百ぐらいあるのではなかろうかというふうに考えております。これは地方の労働基準局あるいは監督署ごとに置かれているものであって、法人あるいは事実上の団体、合わせますとそのくらいではなかろうかと推定いたしております。この事実上のものになりますと数の把握が必ずしも容易でありませんので、約二百くらいというふうに私ども考えております。
  217. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は定款をあちこち拾ってきたのです。私がいまここに集めたものだけでも、職業安全連合会というのがありますし、労働衛生協会というのがありますし、これはみな労働省の各機関の外郭団体でしょう。職安協会というのもあるわけだ。だから全国に基準局が二十六あるのではないかと思いますが、私の調査では、基準局に基準協会があると同時に、監督署にもまた協会ができておる。それをずっとトータルをとってみますと千七百ある。これは行管は直ちに調査をして、最終日の二十六日に労働行政の質問が許されておるわけだから、明日私までにこの書類を出してもらいたい。こまかいものを拾うと千七百ある。二百とは一体何ですか。だからその数字をあなたの方で知らなければ、千七百あるからこれはさがして調べてもらいたい。  そこで、これは大橋さん、昨年の九月、新潟に三条職業安定所というのがある、これが問題を起こしたのです。この問題というのは、三条職安がちょっと建築をいたしまして建物を建てた、その資金を、職安協会にひとつ寄付をしてくれというので百五十五万円集めさせておるのです。これをNHKが探知をしまして、政府の機関がこのような協会をつくってこういった金集めをやるということは行政の筋を曲げるではないか、皆さんどう思いますかといったような批判的な放送をやったのです。そこで職安、労働省はこれにどぎも一を抜かれてまっさおになって、その金をもらっちゃいかぬ、一ぺん集めておった金でございますけれども、四十万円の金を労働省は三条職安に渡して、この四十万円をもって職安協八八に返済をしてくれ、こういう事実があると思いますが、これは全くのつくり話でございますか。こういう事実はありませんか。
  218. 有馬元治

    有馬政府委員 三条職安の新営をめぐってのお話でございますが、そういう経過がございまして、私どもは、民間から寄付を募るということは一切お断わりせよということで返済をいたしまして、直接国費でもって七十万ほど不足分を補いまして、新しく安定所の建設をやった次第でございます。
  219. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは三条職安の一例でございますが、労働大臣、基準協会というところは何をするのか。私は定款を読んでみましたらなかなかいいことを書いておりますけれども、先ほど私が申し上げましたように、労働基準監督署、労働基準局労働基準法について監督をするのです。その監督をされる事業場が集まりまして協会をつくって金を集めて、たとえば局長が栄転をするときには送別会の金をそこから負担をする、あるいは基準法についての啓蒙の講演会でも持つというと基準協会におんぶして会場費を出してもらう、こういうことで監督ができますか。監督する者が監督される者に金を出させて、どうして適確な労働基準行政ができますか。やっておるんですよ、それがないと言うなら次から次へと事実をあげます。やっておる。だからこの点が私は労働行政では非常に問題だ。これが千七百もあって、どうしてこれで適確な基準行政ができますか。何のために基準法があるか。これでは私はほんとうの行政はできない。そこで前の基準局長の大高氏が、外郭団体三原則というものを——実はこれは労働省の正式決定かどうか知りませんけれども、打ち立てた。その外郭団体の三原則は、労働省の出先機関はこれらの外郭団体の役員となるな、これが第一原則。第二は、金に絶対タッチをするな。第三は、事業場を庁舎の中に置くな、疑惑を持たれるから。この三原則には私は非常に敬意を表する。この三原則でいくならば——ある意味において私は外郭団体が絶対不必要であるとは申しません。しかしながら、もう三条職安だけじゃない。私はここでは名前ははばかりますけれども、これはあるのです。監督署長が転勤をする。もちろん学校にはPTAというのがあって、国の財政負担が少ないからPTAが持っておりますけれども、このPTAのごときは、監督される団体じゃないのだから問題はそうないだろう。事業場を監督して違反があったら摘発しなければならぬその基準局長が、監督署長が協会におんぶして、協会のメンバーはみんな業者なんです。それが金を集めて、定款を見てみると、たとえば百人までの事業場は年額幾ら、五百人以上は幾ら、千人以上が幾らといってみな負担がきめられて、それには全部が参加をする。これに参加しないと労働基準監督局からにらまれるということなんです、心理的に。私はこういうような行政ではどうにもならぬと思う。そこでこの三原則に対する大臣所見、並びにこの三原則というもの、役職員となるな、金にタッチするな、事業場を庁舎外に置くこと、この三つの原則は守られなければならぬと思うのですが、大臣いかがお考えですか。
  220. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いま三原則を承りますと、いずれも大切な事柄でございまして、これは外郭団体ではぜひ守っていただきたいし、また関係官庁も当然守っていかなければならぬと思います。
  221. 野原覺

    野原(覺)分科員 ところが労働大臣、役職員となっておるのです、ほとんど。一体、大島三原則というのは何も実践されていない。なっていませんか、なっておるのですよ。ほとんどなっておる。会長にはならぬけれども、顧問、参与になっておる。名前をもらっておる。これは役職員です、顧問であっても、参与であっても。金にタッチするなというけれども、これは私が先ほど述べたとおり、送別会、それから会場費、みなおんぶしています。講演会の会場費なんかみな出させておる。それから事業場を庁舎外に置くことというけれども、ほとんど庁舎の中に置いていますね。私は大阪だから大阪の基準局に行くのだが、やっぱり協会があるじゃないですか。だからして、これはひとつ大橋労働大臣労働行政の折り目を正すという考えで、この三原則は私は非常にいい原則だと思いますので、ぜひこの点は実行に移してもらいたい。そうして労働行政がいいかげんな、国民から疑惑を受けることがないようにしてやっていただくことを私はお願いいたします。
  222. 相川勝六

    相川主査 野原君に申し上げます。外務大臣はいまフランス大使と談話中で、国連局長が代理で来ることになっております。しばらくお待ちください。
  223. 野原覺

    野原(覺)分科員 それでは国連局長が出席してから、ILOについてはお伺いいたします。  次にお尋ねいたしますのは、社内預金の問題です。これは基準局長が高橋銀行局長と連名で、一月二十五日に社内預金についての自粛の通達をお出しになっておられます。これはきわめて当然のことであります。そこで私は、社内預金というのが今日どれだけの金額を持っておるのか、どれだけ社内預金をやっておるのか、人数、そういったごく大事な点だけでよろしゅうございますから、実情をひとつ御発表願いたい。それから同時に、その調査されたことは、どのようにしてその実態調査がなされたかについてもひとつあわせお述べ願いたい。
  224. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働基準法の十八条に基づきます貯蓄金管理契約につきまして調査をいたしましたが、これは十分の一の抽出調査でございまして、これをもとにして推定した数字でございます。そういう前提で大体を申し上げますが、まず第一に、貯蓄金額は四千七百四十二億一千八百九十一万四千円といった推定をいたしております。労働者の数は四百十三万四千九百十六人、それから事業場の数でございますが、三万三千九十八、ただし、これは企業とは異なりまして労働基準法適用事業の計算になりますから、同じ会社でも本店と支店が分かれておりますと、それは別々に計算するということになっております。
  225. 野原覺

    野原(覺)分科員 金利はどうなんですか。
  226. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 金利の状態は、これは産業別に見ましてもまちまちでございまして、たとえば金融保険業はその大部分が六分から八分の間にあり、それから鉱業は八分から一割、それから製造業、卸小売り、運輸通信といったような事業は九分から一割が多いというような分布になっております。
  227. 野原覺

    野原(覺)分科員 きょうは銀行局長がお見えだと思いますからお尋ねしますが、この社内預金に対する大蔵当局の見解を述べていただきたい。
  228. 近藤道生

    ○近藤説明員 私からお答え申し上げます。  大蔵省といたしましては、社内預金につきましては、あまり好ましいものというふうには考えておりません。したがいまして、今回の通牒におきましても、いろいろと金額、金利等につきまして制限的な規定を設けてあるわけでございます。
  229. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは銀行局長と基準局長の連名で通達を出されたのですが、その通達の内容及び通達を出した理由、これはひとつ基準局長から御答弁いただきます。
  230. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 いわゆる社内預金につきましては、労働省としては、基準法第十八条第二項によるところの制度であるというふうに理解しておるのでございますが、運用の面におきまして、たとえば預金者の範囲を見ましても、労働者以外に家族とかあるいは使用者側と認められるような者が含まれておるという趨勢になってまいっておりますし、金利などにつきましても、例外的でありますが、非常に高いものも出てきておる。はたしてそういう金利を支払い得るのかどうかという点に問題があるというような例も認められるようになってきたわけでございます。そういう点からしまして、この際労働基準法上の貯蓄金管理契約のあり方はどうあるべきかということにつきまして、反省を加える必要があるというふうに感じておりましたが、たまたま大蔵省の銀行局といたしましても、御承知の出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の解釈、運用と関連いたしまして、いろいろ問題があるということを検討されておったのであります。そういう観点から、労働基準法第十八条に規定する貯蓄金管理制度を正したいということで通牒を出したわけでございます。  その内容とするところは、まず第一に、労働者及び使用者の範囲はどうであるかという点を、若干の具体的な例も掲げまして、示したのであります、第二点は貯蓄金の利率について、その利率が市中金利の水準を大幅に上回ることは、この制度の健全な運用の見地から好ましくないという考え方を示したこと、第三点は貯蓄金の範囲につきまして、不当に多額にわたるものについては好ましくないという趣旨を明らかにしたことでございます。
  231. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういう趣旨を明らかにした通達を出されて、その通達違反の取り締まりができますか。たとえば、具体的にお尋ねしますが、預金をする者は従業員に限るのだ——私も労働基準法の第十八条を読んでみましたが、「労働者」とあるわけです。その労働者とは退職者は入らない、家族は入らない、それから社内の親睦団体は入らない、この労働者とは従業員に限定するのだ。ところが、実はその五千億円近いところの金額が——これは先ほど四千七百億円ばかりと述べておりますけれども、この調査だってきわめてずさんだと思います。各事業場は社内預金を隠すのです。これは監督署のほうから出しなさいといって集めたデータだろうと思いますがね。だから隠された金額というものはもっとある。私の推定では五千億円をはかるにこして、おると思う。五千億といえば、これは大した金融機関ですね。先ほど昭和三十八年三月で事業場が三万三千九十八、こういう御報告でございました。しかもこれに加入して預金をしておる者が四百十三万四千九百十六人、約四百十四万人だ。一人の平均が十一万円、こういうように見てきますと、これは日本の金融政策上からも問題がございますから、銀行局長が通達を出すのは当然でありますが、問題は預金をする者は従業員に限るという解釈をあなたのほうでお示しなられて、その解釈に従わない事業場があった場合にはどうされますか。それは単なる解釈を下すだけのことであって、それに従わない、家族が金を預けておる、そういう場合には何かそれを規制する法的なものがあるのですか、これをお尋ねしたいと思います。
  232. 近藤道生

    ○近藤説明員 出資の受け入れの法律によりまして、三年以下の懲役もしくは三十万円以下の罰金ということになっております。
  233. 相川勝六

    相川主査 野原君に申し上げます。  国連局長が参りましたから、御質問を願います。  それから持ち時間をはるかに超過しておりますから、結論をお急ぎ願います。
  234. 野原覺

    野原(覺)分科員 主査に申し上げます。  質問の順序がこういう事態になったのは、答弁者の答弁が十分できないからなんです。ですから、私は時間を守ることに努力しておりますから、あなたの御指示どおりできるだけ簡潔に質問を続けてまいりたいと思います。しかし、大事な質問で、いま社内預金に入っておるのですから……。そういたしますと、事業場が家族に預金をさしておる場合には、その罰則の適用ということになるわけですか。
  235. 近藤道生

    ○近藤説明員 そのとおりでございます。
  236. 野原覺

    野原(覺)分科員 それから使用者でございますが、社内預金の管理契約ができるのは労基法第十条の事業主に限る、こういう解釈を出されたようでありますが、事業主でない者が預金を受け入れておる場合には、やはりその罰則を適用するのかどうか、これも承りたい。
  237. 近藤道生

    ○近藤説明員 そのとおりでございまして、事業生以外の者が受け入れれば罰則の適用がございます。
  238. 野原覺

    野原(覺)分科員 預金の利子を調べてみますと、一割八分の金利で金を集めている会社もあるわけです。一番低いのが六分一厘です。六分一厘から六分九厘が二〇・一%、九分から九分九厘が一六・八%、七分から七分九厘が五・二%、一割から一割一分の金利で金を集めておるのが一〇・七%。非常に高い金利で金を集めますから、こうなると社員はこれにつられてどんどん会社に金を預けようということになります。市中金利の水準を上回ったようなこういう金利で預金集めをした場合にはどういう罰則がございますか。
  239. 近藤道生

    ○近藤説明員 その点につきましては罰則がございません。ただ、御指摘のように、労働基準法のそもそものたてまえから申しまして、最低の金利を法律上設けておるわけでありまして、金利の高いほうにつきましては、ただいまおっしゃいましたとおりの関係でとかく乱に流れるおそれがございますので、その点につきまして今回の通牒が出されたわけでございます。
  240. 野原覺

    野原(覺)分科員 その次にお尋ねしたいことは、一人当たりの預金額が所得に比べて不当に多額にわたっておるから、これは好ましくないという、銀行局長と基準局長の通達になっておるわけです。そこで一人当たりの預金額は所得に比べてどの程度の基準のものならばよいという御見解を持たれておるに違いない。それを一つお述べ願いたい。
  241. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 通牒では、不当に多額にわたるものは好ましくない、こういうことを述べておりますが、個別的なケースは別といたしまして、平均で申しますと百人以上の規模の事業場では三千六百二万九千円、三十人から九十九人までの規模の事業場では五百八十一万六千円、それから一人から二十九人までは三百六十七万二千円という規模別の金額に相なっております。  規模別にはそうなっておりますけれども、個々人につきまして多額の金という場合には、金額もございますけれども、いわゆる賃金にあらざるものを、何と申しますか別途のものをたくさん預金して、いわゆる貯蓄金管理契約の趣旨を逸脱するというようなものについてはいかがであろうかという趣旨を通達で出しておるわけでございます。
  242. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、私時間もありませんから、関連質問もあるようでありますが、この社内預金で私が申し上げたいことは、かつて昭和三十六年でございましたか、大正炭鉱が倒産をいたしましたために、その社内預金の半分がたな上げになって、大騒ぎになったわけなんです。つまり、会社がつぶれますと、企業と銀行が一緒につぶれたようなことでございますから、社内預金に対する規制というものは、高額の利率で社員をつって金を集めて、そうしてなかなか市中銀行から金の融通がつかないものだから、そういうことで企業のまかないをする。そうすると、そういう商い利率でございますから、なかなかその利息も払うことはできない、退職する場合にはその金額も返済することができない、こういうことであって、金を預けた預金者を保護するのに今日の法律では不十分だと私は思うわけです。これは銀行局はどうお考えでしょうか。今日の法律で社内預金の預金者を保護するに十分なりとお考えになりますか。
  243. 近藤道生

    ○近藤説明員 ただいまは、社内預金の保護につきまして特別の法律というものは、会社更生法の場合だけでございまして、御指摘のように、きわめて保護に十分でない面もあるわけでございます。そこで、昨年の衆議院の委員会におきまして、大蔵大臣が、原則として好ましくないのでできるだけ保護を徹底するような方向で研究をいたしたいという御答弁をいたしておりますが、その趣旨に沿いましてこのたびの通達が出されたわけでございまして、このたびの通達の実施の状況その他を十分見てまいりまして、その上で将来できるだけ前向きの検討をいたしたい、かように考えております。
  244. 石野久男

    石野分科員 関連して。社内預金について一つだけお聞きしておきたいのですが、いま社内預金がいろいろ問題になっておりますし、また金融を管理する大蔵省の立場からしてもいろいろ問題があると思いますが、この際、社内預金が相当多額になっているものがある。それは労働者の余裕のある金で社内預金している場合は、まだそれはその人の意思が幾らか入っているからいいのですが、そうでなく、たとえはボーナス時期なんかになりますと、会社で天引きで、何万円かのボーナスのうちの一万円だけは手渡しするけれども、あとは強制的に社内預金に入れていくという形が各社で見受けられる。こういう点は、やはり労働省としての監督の上からいきましても、また金融面における大蔵省の監督の面からいきましても、問題があろうかと思いますが、こういう問題をそのまま見のがしておいてよろしいかどうか。この点ひとつ大蔵省と労働省の御見解、特に労働大臣の御見解をお聞きしたい。
  245. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ボーナスなどもやはり給与でございまして、いわゆる帳準法上の賃金でございます。したがって、賃金は現金をもって支払わなければならないわけでございますが、本人の意思に反して一部天引きをして強制的に社内預金に繰り入れてしまうというような措置は、これは労働者の承諾を得ない限りは、基準法に違反した事件だと思います。
  246. 近藤道生

    ○近藤説明員 ただいま労働大臣からおっしゃいましたことと全く同趣旨でございます。
  247. 野原覺

    野原(覺)分科員 社内預金については、私は今日の法律では預金者を保護するに不十分だ、これは大蔵当局も認めておるわけでありまして、したがって労働法の定めるところによってこの預金がなされておる限り、労働省と大蔵省はすみやかにひとつ御相談をされて、大正炭鉱の二の舞いが出ないように——中小企業の倒産が次から次と出ている百人未満企業の社内預金の総額は一千億円を越しておるのです。これが倒産をしてみなさい。いままで一人で何十万、何百万と預けた社員もある。これはたいへんな社会問題でありまするから、この辺に対する対策というものをすみやかに政府は講じてもらうことを要望いたしておきます。  そこで、実はILOの八十七号条約の問題でお尋ねいたしますが、まず国連局長にお尋ねいたします。ILO関係のことはあなたの所管であります。したがって、青木大使がお帰りになられたわけでございますから、国連局長は八十七号条約の批准の問題について青木大使から詳細な御報告を受けておるに逢いないのでありますから、八十七号条約の批准について、ILO理事会その他諸外国の動向等をひとつ、どういうお話でございましたか、お述べいただきたい。
  248. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 大臣、ただいま外交上の都合のために、私にかわってお答えするようにという御指示がありましたのでお答えいたします。  青木大使は一昨日お帰りになりまして、昨日午前中私に会い、そのあと大臣にお会いになりました。私が主として青木大使からお伺いいたしましたことは、今期理事会すなわち百五十七回理事会における本問題の取り扱いに関して御報告を受けました。内容につきましては、すでに新聞紙上等に発表をされていることと大差ございません。そのあと大臣のところに行かれまして、大臣に御面会になりました。
  249. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは公的な委員会でございますから、新聞発表でと、こうあなたはおっしゃいますけれども、私ども新聞発表を信頼してお尋ねいたしますと、それは新聞の書き間違いだというような御答弁がありますから、これはひとつ大事な点でございますから……。対日調査団の問題などや実情調査調停委員会の問題、そういうことについて青木大使が御自身のお考えを述べられたに違いない。これはひとつ御報告願いたい。
  250. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 先ほど申し上げましたように、昨日の朝でございまして、私は参議院の外務委員会から招請を受けておりまして、早くまいりましたので詳細な報告は受けておりません、ただ理事会における経過につきましては時間のある限り、約十分間は報告を受けました。理事会における経過につきましては、御承知のように南ア問題が真剣に取り扱われまして非常に論議を招いたために、日本問題の扱いはややおくれたのでございますが、南ア問題の取り扱いの間適当な時期を議長が選びまして本問題を取り上げ、議長が取り上げました問題の内容は私の手元にございますが、理事会において事務局長が日本政府、名あては外務大臣でございますが、それにあてました手紙の内容になっております。委員会の構成、すなわち三人の委員からなること及び日本にまいりましてからの仕事の内容、これの詳細はいずれ書面でお渡しいたしますけれども、それについて議事が行なわれました。これに対して青木大使から、日本政府としては鋭意批准に努力しておるが、委員会の受諾に関する回答については、適宜日本政府で正式に返事をするはずであるという趣旨の発言をされまして、理事会の会合は日本問題に関する限りたいした論議もなく簡単に終わったという報告を受けました。
  251. 野原覺

    野原(覺)分科員 実情調査調停委員会、いわゆる三人委員会でございますが、この三人委員会の第一回会合は五月にやりたい、そういう強い希望がILO全体にある。したがっつて、この会合のあるまで、少なくともこの会合が五月の初めに持たればその何日か前——新聞発表によりますと、四月半ばまでに日本政府の回答がぜひほしいものだ、こういうILOの希望である、こういうお話がございましたか。
  252. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 理事会の席上においてはございません。したがって、その報告は受けておりません。また今回の青木大使から私に対する発言の中にはそういう点はございませんでしたが、今日までの間におきまして、青木大使が収集されました情報として、五月に会合を持つためにはおそくも四月十五日までには返事を得たいという事務局側の希望を表明した報告を受けております。
  253. 野原覺

    野原(覺)分科員 労働大臣にお尋ねしますが、あなたは昨日の夕方五時でございますか、新聞によりますと、青木大使とお会いになられたようでありますが、青木大使から労働大臣に対して、もし最悪の場合五月のこの会合が持たれるまでに批准かできない場合には、対日調査団の調査に対してはイエスと言わなければならぬのではないか、こういう出先大使の所見があなたに述べられたやに私どもは仄聞いたします。その辺はいかがですか。
  254. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この国会において批准の見込みがないというような事情でありますると、この調停委員会は実質的な活動に入らなければならないわけでございます。したがって、政府といたしましては、明白にこれを受諾するか拒否するか、どちらかの道を選ばなければならぬのでございまして、いずれ政府としては適当な時期に返事をしなければなりませんので、私といたしましては個人の参考として青木大使のそれについての感想を質問いたしたわけでございまして、それについては青木大使はイエスという回答をされることが出先における自分の立場としてはまことにありがたい、こういう趣旨意見を表明されました。
  255. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、八十七号条約が批准されることはこれは与野党を通じて国民全体が今日望んでいる。ただこれに関連する国内法の問題で意見の食い違い、衝突があるわけできわめて私ども遺憾にたえないのでありますが、五月に会合が持たれるわけでございますから、諾否の態度決定をする時期は、労働大臣としては少なくとも外国のことでもあるし正式文書で報告しなければならないだろうと思いますので、そのめどは大体いつごろに置かれますか。
  256. 大橋武夫

    大橋国務大臣 五月上旬に実情調査調停委員会が第一回の会合をジュネーブで持たれまして、その席上において証人喚問並びに日本に対する実地調査、そういう日程を相談されますはずでございます。したがってその第一回会合に間に合うようにおそくとも回答をしなければならぬであろう、こういう質問を青木大使にいたしましたら、青木大使といたしましてもそういうふうにしてもらうことは自分としても望ましいと思うという回答でございました。
  257. 野原覺

    野原(覺)分科員 最悪の事態、それまでに批准ができないという事態にはいままでの経過から見てノーというわけにはいかない。それから国際的なこれだけの大問題になっている点からみてノーというわけにいかない、イエスと言わなければならない。きわめて残念だけれども最悪の場合にはこの調査団の来日を受けなければならない。その決意は労働大臣お持ちだろうと思います。これは当然だろうと私は思う。いかがですか。
  258. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まだ回答を出すべき時期まで相当期間がございますので、ただいま私の立場といたしまして政府の諾否の回答の内容はいかにあるべきかということをこの席で申し上げるべき段階ではないと心得ます。
  259. 野原覺

    野原(覺)分科員 新聞によりますと前尾幹事長は倉石修正案を若干手直しして国内法の改正についてはそうして臨みたい、こういうことを言っておりますが、これはやはり労働大臣の所管に関することですし、しかも与党の幹事長、あなたは政府労働大臣、与党の幹事長が堂々と新聞記者発表をする、そういうことについてあなたは全然関知しないということはないと私は思う。関知しないとすればこれは全く党と政府は分裂状態にあるとわれわれは思わざるを得ません。労働大臣にはああいうような党の責任者が八十七号条約について所見を述べる場合には何かあなたにもお話があってなされているのですか、それとも全然あなたには御相談がないお話がない、どちらでございますか。
  260. 大橋武夫

    大橋国務大臣 それらしき話は前に聞いておったことがございます。
  261. 野原覺

    野原(覺)分科員 それらしき話があって、幹事長が自信を持って発表するところを見れば、幹事長の発表されることについては労働大臣はイエス、これを承知した、あるいは黙示の承諾でもよろしい、了解をした、こういうことになると私ども受け取ってよろしゅうございますか。
  262. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私はただいま政府の一員といたしまして国会に政府原案を提出いたしておるのでございます。これに対して党において提出された法案を国会審議の過程でいかに処理されるか、その方針を御相談中でございますので、それに対して、私のほうからかれこれイエスとかノーとかいうことを言うべき時期ではないのでございまして、私どもといたしましては、政府立場でございまするから、国会に現実に修正の案があらわれて、そしてその委員会において政府意見を求められた際に、初めて政府としての見解を表明すべきだと存じます。したがいまして、幹事長のお話につきましては、私はただそれを承ったのみでございます。
  263. 野原覺

    野原(覺)分科員 時間がありませんから、残念ですが、この問題はきわめて重要ですので、これは後日にまた質問しなければならぬかと思う。ただ大橋さんにも似合わない見識のない御答弁だと失礼ながら私は思います。ただいまの御答弁は、あまりにも足をさらわれてはいかぬという慎重なあまりになされておられる。八十七号条約がどうきまるかということは、今日の時点における労働大臣の責任なのです。最も大きな労働行政、しかも国際的な問題に発展してきておる、それを自分は閣僚なんだ、党がどうしようと知ったことではない、それは社会党と自民党で、あるいは国会でどうでもきめてください、これじゃ見識があまりないじゃございませんか。少なくとも倉石修正案がどうだこうだと、こういう議論がなされるときには、むしろ積極的に行って、これはこうあるべきだとあなたがリードしなければならぬ。それをもう前尾さん、どうでもよろしい、あなた方がきめたとおりにやってもらいましょう、こういうような受け取り方を残念ながら、私はただいまの御答弁に対してはせざるを得ない。これはきわめて遺憾しごくでありまして、実はこれはあなたはそうではないのだけれども、たいへんなことになってはいかぬからというので慎重な御発言だろうと思うのです。しかしこれはいずれ私ども日をあらためてお尋ねしたいと思います。  どちらにしても、倉石修正案なるものは、社会党の書記長成田氏と自民党の幹事長前尾氏がそれの実現のために約束している。このことは労働大臣も銘記されて、党にまかせるにしても、公党が約束していることでありますから、八十七号条約の批准の審査にあなたとしても当たってもらわなければならぬと思うのであります。  以上申し上げまして、質問を終わります。
  264. 相川勝六

    相川主査 本日の議事はこの程度にとどめます。労働省所管に対する残りの質疑は、来たる二十六日午前中行なうことといたします。  次会は明二十二日午前十時より開会し、文部省所管に対する質疑を行ないます。本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十三分散会