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1964-02-18 第46回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十八日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       荒木萬壽夫君    小川 半次君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       野田 卯一君    古川 丈吉君       石野 久男君    岡田 春夫君       滝井 義高君    帆足  計君       山花 秀雄君    玉置 一徳君    兼務 横路 節雄君 兼務 受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第一部長)  山内 一夫君         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     谷盛  規君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         文部事務官         (調査局長)  天城  勲君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 宮地  茂君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   田辺 博通君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     村山 松雄君     ――――――――――――― 二月十八日  分科員河野密君及び吉川兼光委員辞任につき、  その補欠として滝井義高君及び玉置一徳君が委  員長指名分科員に選任された。 同日  分科員滝井義高君及び玉置一徳委員辞任につ  き、その補欠として帆足計君及び永末英一君が  委員指名分科員に選任された。 同日  分科員帆足計委員辞任につき、その補欠とし  て河野密君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第一分科員横路節雄君及び受田新吉君が本分科  兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算中外務省及び文部  省所管  昭和三十九年度特別会計予算文部省所管      ――――◇―――――
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算及び昭和三十九年度特別会計予算文部省所管を議題といたします。  この際分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、一応本務委員は一時間程度兼務委員もしくは交代して分科員になられた方は三十分程度にとどめることになっておりますので、右御協力を願います。  なお政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく、簡潔に行なわれますよう特に御注意申し上げます。  石野久男君。
  3. 石野久男

    石野分科員 文部大臣にお尋ねいたします。大臣文部行政を行なうにあたりまして、憲法の条章を実施するという心がまえを、どのようにお持ちになっておられるか、まずそれからお聞きしたい。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 憲法の精神にのっとりまして文部行政を行なうことは当然のことでございます。
  5. 石野久男

    石野分科員 憲法には義務教育の規定があって、それは義務教育を受ける権利を国民が持っておるし、それから義務教育はこれを無償で実施するということが書かれてあるわけです。この無償ということについての考え方は、先般総理からもお話がありましたが、大体いまの政府教科言無償にすること、授業料を無位にすること、それが無償のすべてであるという考え方であるようでありますけれども文部大臣はこの憲法無償という考え方を、そのように実施することが、完全に憲法を実施するというふうにお考えになっておられますか。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府といたしましては、憲法にいう義務教育無償ということは、義務教育をするにつきまして対価を取らない、こういう趣旨考えておるのであります。現実法制のもとにおきましては、国あるいは公共団体、いわゆる国公立義務教育学校においては授業料を取らない、これでもって憲法無償原則に従ったものと心得ておる次第であります。ただこれは法律解釈論と申しますか、現実にそのような考えをいたしておるわけでありますが、その心持ちをさらに、その趣旨をさらに押し広げると申しますか、そういうような意味におきまして、あるいは教科書無償というふうなことを取り上げて、実施いたしておるような次第でございます。
  7. 石野久男

    石野分科員 現行法律とかあるいは財政上の処置から、無償というものについては、授業料とか一部の教科書無償にするという程度にとどまっておるわけでありますけれども、本来的な意味で言えば、無償というものは、これは義務教育については完全に無償にするというふうにするのが趣旨であろうと思うのでありますけれども文部大臣はそういうことについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 法律的な議論といたしましては、私はただいまお答え申し上げたとおりと心得ておるのであります。しかしなるべく父兄負担軽減いたしまして、あるいは就学の機会を容易ならしめる、こういう趣旨をもっていろいろな施策を講じてまいるということについては、政府といたしましては、今後ともに努力していこう、かように考えておる次第でございます。
  9. 石野久男

    石野分科員 いま就学年齢に達している児童で、ほんとう義務教育就学できていない方は全然ないのでございましょうか。それともどの程度就学し得られない率になっておりますか。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 数字的なことは政府委員からお答え申し上げますが、御承知のように日本は、就学の率は世界の中でもきわめて高い国になっているかと思うのでありまして、原則として不就学児童がないはずでございますけれども、しかし現実に、私どもまことに残念に思いますことは、かなり長期欠席をする児童が若干おる、こういうふうな点は残念に存じておりますが、大体においてみんな就学はいたしておるものと考えております。
  11. 福田繁

    福田政府委員 大体〇・四%ないし〇・五%程度就学できないような事情にある数でございます。
  12. 石野久男

    石野分科員 学校教育を受けている児童義務教育の年限の中で中途退学するような方がございますか。
  13. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 退学ということはしていないと思いますが、事実上学校に出てこない子供が若干いるので、これを何とか就学させるようにという努力をいたしておるのであります。
  14. 石野久男

    石野分科員 義務教育でなく、学校大学にわたって中途退学者というものが相当出てくるような事情があるかと思いますが、そういう事情をお調べになっておりますか。
  15. 福田繁

    福田政府委員 義務教育につきまして中途退学ということは、大臣も申し上げましたように、たてまえとしてないわけでございますが、長期にわたって学校に来ないというような子供につきましては、調査いたしましたところ、小学校では約〇・五八%、中学校で一・二八%程度長期欠席になっております。
  16. 石野久男

    石野分科員 就学児童中途退学者が出るということは非常に不幸なことでありますが、この率が少ないということはあたりまえのことですし、またそれをゼロにすることが望ましいと思うのです。ただ高等学校大学等中途退学するものが出ておりますが、その中途退学者というのはほとんど七割までが、学資が困難なことによって出てきておるということになっております。学資が困難だということは、学校教育におけるところの家庭負担が非常に多いということからくるのだろうと思います。義務教育におけるところの父兄負担費が現在相当高いものになっていることは、先般の予算委員会でも文部大臣から仰せられたとおりですけれども文部大臣はこの父兄負担費というものについて、これを軽減させることについてどのような着意を持っておられますか。
  17. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 父兄負担軽減につきましては年来の問題でございます。文部省といたしましてもいままでいろいろな施策を講じてまいったわけでありますが、貧困のために就学が困難であるというふうな場合に、要保護児童はもちろんのこと、準要保証児童に対しましても国が補助の手を差し伸べているということも御承知だろうと思います。そのほか学校教材費でありますとか、こういうふうなものにつきましても、漸次地方に対する国の協力を進めてまいっておりまして、年々そういう方面の予算増額しつつあるというのが実情でございます。特にいま変わった考え方というものもございませんけれども、本来、公の費用をもって負担すべき経費につきましては、できるだけこれをその筋に沿って負担してもらうようにし、また、父兄負担となってくる大きな教材費等の問題につきましても、できるだけ地方を援助することによりまして負担軽減をはかってまいりたい、この線でもって今日まで進んでまいっておる次第でございます。詳細は政府委員からお答えいたさせます。
  18. 福田繁

    福田政府委員 いわゆる教育費の中で父兄負担等になっておりますと推定されますものを三十五年度、三十六年度の調査を通じましてみますと、三十五年度におきまして百六十七億、三十六年度におきまして百五十六億、総体におきましては約十一億減少いたしております。この中で職員の人件費、あるいはまた校舎の維持修繕費あるいは施設費教材費図書費といったようなものがおもなものでございますが、そういう父兄負担等になっておりますものがございますので、文部省といたしましては、国庫補助金増額、たとえば教材費国庫負担金の増を毎年いたしてまいりますとか、あるいは理科教育設備費補助をよくするとか、中学校技術家庭科補助金増額する、そういった設備等に対する国庫補助金増額、それからまた、教職員の旅費等のベースアップをいたしますとか、そういうことを年々はかってまいっております。また地方交付税積算基礎といたしまして、三十五年には三十四億程度交付税の中に算入してもらったわけでございますが、毎年逐次これを引き上げてまいりまして、三十八年度で九十四億円、明年度の三十九年度におきましては約百億円というようにふやしてまいっております。  それからまた低所得家庭児童生徒就学奨励金につきましても、対象率、いわゆる援助率を引き上げて七%に引き上げるとか、あるいは単価アップをいたしますとか、年々そういうことの努力をいたしまして、極力父兄負担軽減をはかっていくという措置を講じているわけでございます。
  19. 石野久男

    石野分科員 父兄負担費を少なくするというための努力を行なっても、なおやはり相当率高いものがありますが、文部大臣は、一般父兄子供教育のために占める負担費の率を生活の中ではどのくらいのところまで見ておればいいか、そういうことについて試算をなさっておりますか。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 まことに申しわけありませんけれども、そういう計算は私自身いたしたことはございません。ただ、ひとつお考えいただきたいと思いますことは、父兄教育費としてどの程度出しておるかというこの数字は、一画から見ますと、国民生活が向上し、内容が豊かになってまいりますと自然そちらのほうの経費が大きくなってくるということは当然あり得ることだと思うのであります。したがって、父兄教育費として出しました金額がふえてきておるということをもって、直ちに父兄負担が増大したというふうに考える必要もないかと思うのでございますが、いまお尋ねの問題につきましては、まことに申しわけありませんけれども、私はどの程度が適当であるかというようなことについての確たる考えは持っておりません。もし政府委員にわかっておりましたら、政府委員のほうからでもお答えいたします。
  21. 福田繁

    福田政府委員 御質問の趣旨と少し違うかもわかりませんが、私のほうといたしましては、個人の家庭収入別父兄負担教育費というものを見まして、それによって収入段階別に応じまして、大体中ぐらいのところの収入家庭で、学校教育費家庭教育費というものをバランスをとりながら考えるということはいたしておりますが、全体として何%でいいというところまで出していないのであります。
  22. 石野久男

    石野分科員 その試算されたところの率はどういうふうに見ておるのですか。
  23. 福田繁

    福田政府委員 大体収入段階別に分けますと、二十万未満の収入家庭では、大体中学校では九・七%くらいになっております。小学校ではそれが六・九%、それから二十万から四十万くらいの収入家庭では小学校が大体三・七%、中学校が五・二%、少し上がりまして六十万から八十万くらいの収入家庭では小学校で二・二%、中学校で二・九%、それから百万から百二十万くらいの家庭でございますと、小学校が一・五%、中学校が二・二%、それから百四十万以上になりますと、小学校で大体〇・六%、中学校で大体一%、こういうふうな数字になっておりますので、そういうものを参考にしながらいろいろ対策を考えるということでございます。
  24. 石野久男

    石野分科員 文部大臣にお尋ねしますが、ただいま文部省のほうで収入に見合う学校教育のために支出する額について、中学校小学校それぞれ試算されております。各収入のランクによりまして率は違うようでございますが、たとえば中学校生徒一人あるいは小学校生徒二人というような計算でいきましても、およそ四十万から六十万くらいの方でこれを見ますると、おおむね一〇%ないし一二%くらい教育費を出せるということが、いまの段階では文部省としては生活費に見合うものだ、こういうふうにごらんになっておるようでございます。しかし実際にはなかなかそういうところにはいってないようでございます。たとえばこれは「主婦の友」という雑誌でございます。きのう出されたものでございます。これで月収六万とかあるいは四万とかというような家庭を見ますると、ほとんどの家庭でも一割二分から三分というようなところにいっておりまするし、その上に、この御家庭ではどの御家庭でも御主人がおつとめになっておるほか、奥さんはやはり必ず内職をなさっておられる、それでようやく六万ないし四万五千くらいの収入を得ておられますから、そうしますると、六かといたしましても年間七十二万くらいでございます。普通でいきますと、四、五十万というところがほとんど一二、三%の支出をしている。そうなりますと、文部省考えている父兄負担額というものよりも、実質的にはみんな重い負担をして教育をしているということが、こういうようなごくわずかの例でございますけれども、それで出てくると思います。これはやはり文部省考えておるよりも一そうきびしく各家庭における教育に対する出費が多いということを示している、こう思われるわけでありますが、こういう問題について私はやはり文部省として何かの考え方をここに示しませんと、教育一般的に普遍的に進んでいかないのじゃないか、こういうように思うわけです。父兄負担費軽減するという問題については、もっと積極的な施策が行なわれなければいけないのじゃないかと思います。そういう意味で私は本年度予算の中に占める教育費にしましても、昨年度の教育費本年度教育費とを見ました場合に、絶対額では若干の前進はあることはよくわかります。けれども国家予算全体から見ます比率としましては、必ずしも前進はしていないし、他の各省の予算、特に私どもが常に教育と対比される問題として、国防予算とか、あるいは恩給等におけるところの面で、軍人恩給などというような古い形の恩給がございますが、そういうものと比較しての率から見ても、必ずしも私は前進しているとは思わない。私の計算が間違っていないとすれば、本年度予算におけるところの教育費関係予算、特に義務教育関係予算は、昨年度に比較して一一・三四%の増だ、こう思います。それに対して比較を防衛費にとってみますと、防衛費は一一・四何がしという率になっているわけでございまして、また恩給の面で旧軍人関係に対する比率から見ても一一・四というふうに、これは〇・七%の増でありますけれども、しかし全体予算から見ればずいぶん大きいものになってきます。したがって、文教に対する予算のとり方というものは非常に少ないというふうに私は思うのです。文部大臣はこういう問題についてどのようにお考えになっておられますか。
  25. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文教予算の問題について、私はただいまの御発言は大いに激励していただいたような気がするのであります。私は現在の文教予算がわれわれが欲する予算という点から見ますれば、かなり不満が多いのであります。どの面をとらえてみましても、これで十分だというところは癖直に申し上げまして私はないような心打ちがいたします。そういう意味におきましては、私はもっともっと文教予算が大きくあってほしいということを念願するものであります。  年来文部省といたしましては、文教予算増額について努力をしてまいったわけでありますが、私は文教予算の比較的な見方からいたしますならば、この数年間かなり伸びを示してきておるように思うのでありますけれども、しかし、それでもって満足はできない、もっともっとふやさなければなりませんが、残念ながら国の財政全体の都合からいたしましてこの程度に終わっておるわけであります。  なお、いま教育費伸び率についてのお話もございましたが、この点は初中局長からもう少しはっきりしたところをひとつお答え申し上げます。石野さんの見方よりは少し伸びておるのじゃなかろうかとども思っておるのでありますが、それをひとつお聞き取り願いたいと思います。
  26. 福田繁

    福田政府委員 いま御指摘になりました一一・三%という数字でございますが、私の計算では一応来年度義務教育費国庫負担金を入れましても約一四%伸びておると考えております。
  27. 石野久男

    石野分科員 伸び率比率についてはまたあとでこまかい計算をするといたしましても、いずれにしても教育費は非常に少ないと思うのです。教育費が前年度から本年度について少しは前進したということだけで教育の問題は満足すべきじゃない。むしろ子供を育て上げるについての親の教育食掛を少なくするということを、文部省義務教育無償であるというたてまえからして考えなければいけないのじゃないか。いま国の教育に対する着意というものが非常に積極的でないということのために、子供教育について私学等に出るところの金が非常に多くなってきております。子供を育て上げるについて、公立学校が非常に少ない関係から親御さんは全部私子へ持っていかなければならなくなる 私学のほうではその経営の上からいって非常に経費増が出てくる。国の補助も少ないという関係から当然授業料は高くなり、したがって学費が高くなってくるということになって、子供さんを幼稚園から大学まで出す場合に、これはほんとうに御家庭の御婦人方用に、別に政治的意図も何もないところに出ている数字であります。そういう数字を見ましても、幼稚園から大学までの経費は、私立へ行きますと二百二十万円くらいかかるだろうと計算されて、公立へ行きますと五十万円で終わるだろうと計算しております。もちろんこの中には、片方は大学の工科のほうを出しておりますから、やはり幾らかかさむといたしましても、その倍率は約四倍以上になっておるわけです。これだけ子供教育について親御さんの負担率が多くなってきているし、しかも数の上においても私学のほうが断然多いわけですから、こういうことでは国の教育が完全に行なわれているというふうには思われない、そういうふうにわれわれは考える。だからこういう問題をやはり文部大臣は――特にこの中で義務教育の問題だけをとりましても、私立の場合と公立を見ますと、公立は十七万円くらいで済むものが私立へ行きますと六十八万円くらいの数字が出ております。これは明らかに国が負担すべきものを私立のほうへ肩がわりさせているわけでございますから、こういうところを改めなければ文部行政というものは十分に行なわれたということは言えないのじゃないか、これに対する斬新的な方策というものを一つ考えなければいかぬじゃないか、こういうふうに私は思います。  文部大臣は、昨日上野文化会館で行なわれた教育委員会制度十五周年記念で、わが国の教育は非常に多くの問題があったけれども一つ一つみな問題の解決をして今日にきたという御趣旨の御演説をなさっているようでございますが、こういうような事態を一方に置きながら、文部大臣は、いろいろな困難な問題はあったけれども一つ一つ解決してきたというふうに言い切っておる。これは私どもから見て非常に自己満足じゃないかというに考えますけれども文部大臣はこういうような私立公立等関係における父兄学校教育に対する負担が非常に差がついているということについては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  28. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私学関係の問題は、いま一つ一つ解決と仰せになりましたが、解決せざる問題のうちの最も大きなものの一つだろうかと私は思うのであります。義務教育あるいは高等学校段階におきましては、まだ何と申しましても官公立学校が多いのであります。高等教育段階になりますと、御承知のように私学が今日非常に大きなウエートを占めてきておるわけでございます。学校の数におきましても、また、これに学ぶ学生の数におきましても私学が非常に多いのであります。しかもその私学関係における父兄教育費負担というものが、官公立に比較いたしまして非常に高い、これは明らかな事実でございます。この問題は、長い間の今日までの沿革と申しますか、私学私学でひとつ自由にやっていただく、国なり公立はそれでもってそれぞれ学校をつくってやっていく、こういうふうな形で今日まで進んでまいっております。それが結局いまのような状態になってきたと思うのでありますが、私学関係者からいえばだんだん経費がかさんでまいりますので、それを充足するためにいろいろなくふうをする、その経費の中でも授業料というふうなものが占める割合が非常に大きいのであります。したがってその財政的な問題を解決するために、父兄負担のほうにそれがかかってくるという事例が非常に多いわけであります。この問題はこれから何とかしなければならない大事な問題だと実は私考えておるわけであります。従来のような考え方でいきまして、私学私学でひとつおやりなさい、こういうふうな形で済まされなくなってきているのではなかろうか、つまり学校を経営する側からいいますと、必要な金は結局父兄からもらうよりしようがない、こういうことにもなろうかと思いますけれども、一面われわれといたしましては、学校子供さんを出す父兄の立場に立って考えなければならない。そういうふうな場合に、官公立に行く場合と私学に行く場合と非常に大きな負担上の差異がある。この問題はやはりわれわれとして行政上大事な問題として取り上げて検討すべき問題じゃないか。いまさら申し上げるまでもございませんけれども私学にはその独自性その自主、性というものを尊重するというたてまえで、国が私学の経営等に関与するというふうなことはほとんどなくて、今日までやってまいっておるわけであります。したがって、いまのような問題を取り上げようといたしまするならば、従来の独自性とか自主性というふうな問題とどこかかち合う問題が出てくる、そこらでいろいろ議論も出、問題もあるわけでありますが、私はこの私学に学ぶ学生の教育費負担がかなり喰いという問題に着眼いたしまして、何とかこの問題の緩和をはかっていかなければならない段階がきておるのではないかと思います。御承知のように、今日までも政府としましては、その方向においていろいろな施策を談じてまいりました。たとえば私学振興会の助成をふやして私学振興会に対する助成をはかってまいりますとか、あるいはまた教育研究等に対する税の軽減の措置を講じてまいりますとか、あるいはまた特定な目的を持った私学の研究設備等に対しましては、国が助成をするとか、こういう道を講じてまいりましたが、いまのような姿でこのままでよろしいのかという点について、私は文部省としましてもしっかりと取り組んで検討をすべき段階にある、こういう考え方をいたしておるわけであります。先ほど申しましたように、いろいろな議論もあり、いろいろな観点もあるわけでございますが、各方面の御意向等も十分承るところは承りまして検討してみたいと思っておるわけであります。何にいたしましても、今日あまりにも官公立学校私学との間に負担上のアンバランスがあり過ぎる、こういう点を私どもはこのまま放置するということはいかにもおかしい、こういう感じがいたしまして、まじめに真剣にこの問題と取り組んでみたい、このような考え方をいたしておるわけであります。もちろん従来やってまいりました方式につきましては、さらにこれを強化し、さらにこれを充実するということに変わりはないのでありますが、もっと突っ込んだ検討をひとつしてみたい、このように思っておるわけであります。
  29. 石野久男

    石野分科員 いまの私学との父兄の側におけるところの負担のアンバランスを是正するということは、突極的にはやはり私学に対して国が何らかの予算的措置における協力をしてやらなくちゃいけないということになるのじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。そういう点ではただ口で言うだけではどうにもなりませんから、具体的に政府はそのことを一向しなければならない。その実行というものを、本年度予算では若干は示されておりますけれども、まだこれは不満足でありますし、これを急速にそのアンバランスをなくするという努力を、少なくとも本年度から着実にそれを実行するということがなされなくてはいけません。そういうことについての大臣の腹がまえというものはどのようなものでございましょうか。その点をひとつ……。
  30. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私学に対する援助助成の問題は、昨年度に比較いたしまして今年度も相当増額をいたしたつもりではございます。またこのような方式はこのままもっともっと充実した形において進めてよろしい問題だと私は思うのでありますが、ただそういう方式だけでいいのかどうか、こういう点についてもっともっと突っ込んだ検討をしてみたいと思うのであります。いままでやっておりました方向における努力はもとより今後も継続して進んでいきたいと思います。
  31. 石野久男

    石野分科員 先ほど父兄負担額が非常に多いということの中に、その父兄負担費が、公費の分にまで相当食い込んでいるわけですね。公費の分を肩がわりして持っておる。その中にはたとえば先生方の給料の一部分になるものもありますし、旅費の一部分になるものもあるわけです。そういうふうなことのためにやはりずいぶんと無理が父兄の側にかかりあるいは地方自治体の側にかかっていくという事情がありますけれども、そういうものをなくするための努力は、結局予算をふやしていくよりほかにないわけですから、そういう意味で私は教科書無償になるということは非常にけっこうなことだと思うのです。ただしかし教科書無償になることで一番大きな私たちの懸念する点は、これをかつての国定教科書のような形にしていくということのもたらす弊害でございます。そういうことをおそれるわけですが、文部大臣にこの機会にはっきりとお聞きしておきたいのですけれども教科書無償給付という形は、そういうような意図を持っておられるものであるかどうか、そこのところをはっきりひとつ……。
  32. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は歴代の大臣の常に申しておることでございます。今度の教科件無償法の関係教科書国定の問題とは何も関係がない、私はそういう意図を持っておりません。
  33. 石野久男

    石野分科員 文部省は最近道徳教育の手引き書というものを出しておられるようであります。この手引き書の意図するもの、そういうものはどういうところにあるのですか。
  34. 福田繁

    福田政府委員 昨年教育課程審議会の答申がございました。その答申によりますと、小中学校におきまして週一回の道徳の時間を特設して、道徳の教育について学校で十分力を入れるということになっておりますが、実際学校の現場におきましては、現在の学習指導要領を十分こなして、しかも学年別に教材の配当やあるいは具体的な教案の作成等について現場の先生が非常に困っておるというのが実情のようでございます。したがいましてそういう現状を受けまして、教育課程審議会ではできる限り現場の教師の参考になるように、いまの学習指導要領に準拠して、十分指導のできるような資料を提供することが、道徳教育を推進する上において適切であるというような考えで答申をいただいたわけでございます。したがって文部省としては道徳教育をさらに充実させるという観点から、その答申に基づきまして現場の先生方の参考になるような指導資料を提供をする、こういう趣旨でいま作成を急いでおるわけでございます。
  35. 石野久男

    石野分科員 いまの手引書はいままだ作成中なんですか。もうできたのですか。
  36. 福田繁

    福田政府委員 作成中でございます。
  37. 石野久男

    石野分科員 皆さんの要望があるから、その参考までにということでございますけれども、しかし、実質的にはこういう手引き書が出ました場合には、これを各学級担任の先生に一人ずつ全部渡して、それを読ませる、こういう考えで進められるのですか。
  38. 福田繁

    福田政府委員 もちろん現場の先生方の参考資料でございます。したがって、参考例などを十分取り入れたものになりますけれども、そういった資料が現場の先生になかなか手に入りにくいというのがいままでの実情でございます。したがって、現場の先生たちにみんな手に入れられるよう配布しよう、とこういうことであります。
  39. 石野久男

    石野分科員 要望にこたえてということですが、しかし、それは強制ではないわけですね。
  40. 福田繁

    福田政府委員 もちろん強制ではございません。
  41. 石野久男

    石野分科員 やはりこの手引き書というものを軸にして、現場におけるところの子供さんの教育についてのいわゆる副読本とかいうようなものができていく、こういうふうに文部省では考えておるのですか。
  42. 福田繁

    福田政府委員 必ずしもそのように考えておりません。これはあくまで教師用の参考資料でございます。副読本と申しますのは、これは文部省でつくるのではなくして、現在民間の会社などで数種頭出ておるようでございますが、そういうものが今後配列の仕方なり、あるいは教材の事例等について参考とすることはあるかもしれませんけれども、これはあくまで民間の自主的に編さんするものでございます。
  43. 石野久男

    石野分科員 教科書無償配布というものと、それから手引き書というものとの関連性の中で、先ほど文部大臣に、私は教科書がかつての国定教科書の方向を歩むようなことはないかということを尋ねました。そんなことはないというお話であったわけです。しかし、道徳教育という問題についての考え方、特に手引き書などというものが出てくるということから、私たちが一応やはり懸念する点は、先ほど来言っておりますように、これがやはり教員諸君に一つの指針として強制的なものになっていくというようなことがあってはいけないということなんです。そういうことになってまいりますれば、これは教科書無償給付というものが国定教科書につながるものと軌を一にする論が出てくる、というふうに私ども考えるわけなんです。こういう考え方について文部省はどういうふうにお考えになるか。また、われわれはそういうことを考えることは間違っているのかどうか、これをひとつ政務次官からお聞かせ願いたいと思います。
  44. 八木徹雄

    ○八木政府委員 先ほど申し上げておりますように、今回の手引き書は教科書ではなくて、あくまで先生の手引き書という形でございます。その意味で、その画一的な手引き書が出るということは、将来道徳教科書というものを画一的に出すのではないかという御懸念があるようでございますけれども、そういうことは先ほどお答えがありましたように、毛頭ございません。あくまでも参考書、手引き書という域を出ないわけでございます。あくまで道徳教育というものは先生が持っておる人格、これを生徒に移し植えるということに間違いはないわけでございまして、その場合に単に参考にするための手引き書だ、こういうふうにひとつ御理解いただきたいと思います。
  45. 石野久男

    石野分科員 道徳教育の問題は、他の面では、たとえば本年度予算の中で不良化防止対策費というものが千六百万円程度出ておるわけです。この額は昨年度の額に比較して約十倍くらいになっておると思うのです。そうしますと、これは文部省としては不良化防止のための着意がこういう予算の面に出てきたということは私はわかりますが、この不良化防止の千六百万円というものをどのように使って青少年の不良化を食いとめるというふうにお考えになっておるのでございましょうか。
  46. 福田繁

    福田政府委員 青少年の不良化問題につきましては、世間の関心を集めておるところでございますが、私どもとしてはできる限り学校生徒の指導の問題としてこれを取り上げていきたい、こういうような考え方で、特に最近は高等学校もさることながら、中学校段階におきまして生徒不良化の問題がいろいろ重要な問題となっておりますので、そういった観点から、三十九年度におきましては、各県あるいは六大都市等に生徒指導のためのいわゆる研究校というものを一校ずつ設定したい。また高等学校につきましては、各県に設けたいのでありますが、予算上の制約もございますので、ブロックに一つくらいの研究校を設けまして、具体的に生徒の進路指導等に応ずるような各種の問題等をとらえまして、生徒の指導の具体的な研究をしていきたい、こういうような考えでそのための設置費が約三百六十三万円ばかりでございます。それからそのほかは、生徒指導をいたしますについては、やはり先生がそういう専門的な分野について相当研究しておかなければならぬ問題がたくさんございます。いままでのような学校でただ教科を担任するということだけではなくして、生徒指導についてはあらゆる面を研究しておくということが必要でございますので、そういった点で生徒指導講座というもの、講習会を設けまして、できる限りそこで先生方の必要な指導についての講習会を実施していきたい。そういうものが約三百十万円でございます。そのほかに資料を作成するとかいうような経費もございます。これは各方面の権威者にそういうように具体的な指導資料について作成をお願いする。これをやはり先生方の手引き書として配布したい。こういうような経費になっておるわけでございます。  まず私どもは、三十九年度としては、一方において若干の教育委員会などにいわゆる生徒指導のためのカウンセルというものを置いていきたいと思っておりますが、それと並行しまして、いま申しましたような研究校の設置、あるいは生徒指導のための先生方の講習会というようなものを開設していきたい。こういうのが来年度予算の内容でございます。
  47. 石野久男

    石野分科員 道徳教育といい、あるいは不良化防止の対策といい、ここへ出ておる予算などは、たとえば各ブロックに高校では一校、中学校では各都道府県それから六大都市に置くということで、しかもそれは研究校ということですから、ほんの九牛の一毛にすぎないところにぽつっとできるわけです。  政務次官にお尋ねしますけれども、不良化の対策の基本的な問題点はどういうところにあるのですか。
  48. 八木徹雄

    ○八木政府委員 これはなかなかむずかしい問題だと思うのですけれども、もちろん本質的には社会のあり方が問題であると思いますが、たとえば週刊誌であるとか、あるいはテレビであるとかというようなものの影響もありますが、学校教育の場合に取り上げるためには、やはり教育全体がレベル・アップするということが必要であろうと思いますけれども、概していままで何と申しますか、学問を教えるということが中心であって、徳育という点に欠けるところのものがあったのではないか、戦後の教育一つの欠点の中にそういう面があったのではないか。その意味でこれから道徳教育ということで、ほんとう意味の常識、ほんとう意味のしつけ、そういうものを教えられる環境が生まれてくるということが大事である。われわれはその意味で、文部省として取り上げる課題はそのような徳育というものを教えられるようなそういう方向に持ってまいりたい。そのことが道徳教育という時間を設け、あるいは今回それに対する指導参考のための試案というものをつくり、あるいはいま言ったような講習会をやるといったようなことになってまいるわけでありますが、まだ始まったばかりでございますので、本年度ついております予算だけで十分だということではございません。これらの実践活動を通じてさらにそれが全国に及ぶような措置を講じてまいらなければならぬじゃないか、こういうふうに考えております。
  49. 石野久男

    石野分科員 戦後の教育の中で非常におくれておるものは徳育の問題だ。それは具体的にいいますと、たとえば義務教育の中では小学校中学校教育の場でおくれておるものといえば、生徒と先生との間の問題であろうと思います。生徒と先生との間でやはりそういうおくれという形は、日常の学科教程の中でどういう形であらわれてきておるのですか。
  50. 福田繁

    福田政府委員 これは小学校中学校の教科を通じましてすべての教科にわたりまして生徒の指導ということは第一義的に考えるべき事柄でございます。したがいましていまおあげになりましたような生徒と先生との関係、そういう問題についても、できる限り先生の言いつけを守るとか、それからまた先生に対しては尊敬を払うとか、それからまた先生は生徒に対して非常に愛情をもって教育するとか、そういうような事柄は、各教科を通じて取り上げられておる点でございますが、しかしながらそれがなかなかうまくまいらないのが現在の学校教育の現状でございます。そういった点からも、道徳教育を十分徹底して行なう必要があるのではないか。また生徒の将来の進路なりあるいはその生徒の個々の特性に応じた教育を施していこうということになりますと、どうしても徹底した指導が要るというようなことで、道徳教育の瞬間も特設されたのでございます。そういった点で必ずしも現状では十分ではございませんが、御指摘のありましたような事柄は、やはりそれぞれの教科を通じて指導すべきたてまえになっております。
  51. 石野久男

    石野分科員 いまのお話によると結局生徒が先生を尊敬し、あるいは先生の言うことを守る。あるいは先生はまた子供さんに対しては愛情をもって望む。それが十分に行なわれてないということが具体的にはやはり徳育のおくれておるというような現象としてあらわれておる。こういうお話でございます。私は先生を生徒が尊敬するとか、あるいは言いつけを守るとか、あるいは先生が生徒に対して愛情をもっていくというような問題、そういうようなことは学校の中でどういう環境をつくらなければならないかということで、非常に大事だろう、こう思っております。たとえばそのためには先生がやはり子供さんによく目の行き届くような情勢ができていなければ、これはとても愛情を示せといっても示すことはできませんでしょう。それからまた子供さんの側からすれば、いわゆる教育課程の中における先生の愛情を受けるような場を個々の人々が持つようにならなければいけない。徳育という問題は、昔のような、たとえば戦前のような修身科の教育、いわゆる道徳教育、精神教育といいますか、そういう面だけを意味しているならばともかくも、そうでなければ、私は先ほど申したように先生と生徒との間のつながりというものは常に日常生活の中で出てきてなくちゃいけないのだろう、こういうように思うのです。しかし文部省考えている徳育というのは、その精神教育の面を言っているのでしょうか、まずその点から先に……。
  52. 福田繁

    福田政府委員 御承知のように、小学校中学校におきましては、道徳教育の内容といたしまして、それぞれ小学校で三十六項目、中学校で二十一項目というものが大体きめられております。したがいまして、そういうきめられた項目を具体的に実践してまいりますには、生徒の日常活動を通じまして、実践を通じて生徒に体得させる、そういうような指導法をやっておりますので、したがいまして、いろいろ各教科におきましても、また道徳の瞬間におきましても、先化と生徒との人格的なつながりと申しますか、あるいは生徒指導における具体的な問題をとらえて先生が適切な指導をしていく、そういうような学校の湯における生徒と先生との接触ということを通じて、そういう道徳教育あるいは生活指導というものをやっていかれるようにしたいと思っております。
  53. 石野久男

    石野分科員 文部大臣がおいでになりましたからお尋ねしますが、徳育、道徳教育という問題について、そのあり方を、次官、局長さんからいろいろお話を承っておるのですが、私は、かつてのような精神教育をもって道徳教育であるのか、そうでなく、やはり生徒と先生が日常の教科課程の中で、行動の中で親しくつき合う、接触していく過程の中で道徳教育というものをやっていく、行動といいますか、そういう行ないの中で教育が行なわれていくというようなところをねらっているのかというようなことについて、いまお尋ねしました。文部大臣にお尋ねしますが、文部大臣考えておりまする道徳教育の基本的なあり方というものは、どういうことをねらっておられるのでしょうか。
  54. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 専門家でございませんので、お気に召すような御答弁ができるかどうかわかりませんが、私はやはり道徳教育というものを通じまして、学校に学ぶ子弟が、個人といたしましても、また社会人といたしましても、必要な事柄を身につけていくことが一番大切なことじゃないか。それをどういうふうにして身につけるようにするかというところは、教育の方法あるいは技術という問題になろうかと思うのであります。本人にただ道徳に関する知識を授けるということだけでは結局意味をなさない。それが個人としてどういうふうにあらねばならぬ、社会生活をする上においてどういうふうに行動しなければならぬというふうなことを自覚し、また身につけるということが、一番大切なことではないかと思うのであります。そのやり方の問題ということになりますれば、それは学者にもいろいろ議論のあるところだと思いますけれども、私はやはり学校におきましては先生の一挙一動すべてが道徳教育関係するものと考えております。またあらゆる学課を通じまして、その間においていま申し上げましたようなことが身につくようにしなければならぬものと思うのであります。御承知のように現在は道徳の時間というふうなものを設けております。これは要はそういう趣旨をさらに徹底して効果をあげるというところに目的があろうかと思うのであります。また今回、文部省がいま作業中の道徳教育資料として先生方にお配りしようというのも、やはりそういうことの目的を達するために必要な参考資料として配るということでありまして、問題はただ単にこれがどうとかこれが何だということで知識教育をするだけが目的じゃないと思います。どこまでも生徒がそういうことを自覚し、身につけるということが大切なことだ、そのねらいにおいて先生にうまくやっていただきたい、かように思っておるわけであります。
  55. 石野久男

    石野分科員 結局道徳教育というのは精神教育ではない、生徒が先生の行ないを見ながら、生徒自身が自覚し、そしてそういうことを先生から、いろいろな日常の接触の中で生徒が身につけていくようにしていく、こういうことでございます。そうなりますと、その責任はやはり先生が、道徳教育をする主体的な立場に立って自覚し、それだけのものを身につけていなくてはならないし、また常にそれだけのかまえを持たなくてはならないということになろうかと思います。そういうふうに、先生方は道徳教育に対する責任を持っていかなければならぬというふうに文部大臣はお考えになりますね。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はそうありたいものと念願しております。
  57. 石野久男

    石野分科員 そういうように文部大臣考えておられるとすれば、先生方がそういうように生徒に対して接触する場というものを確保するようなかまえがなくてはならないということになると思います。そうするとここで私は、学校教育における、他面におけるところの先生方に対する配慮が非常に大事になってこようかと思うのです。たとえば先生が生徒に対して完全ということができなくとも、まず文部省なり国が、まあ大体この辺ならばという道徳教育あるいは学科課程を子供さんたちに教え込んでいこうとするについては、おのずからやはり学級における人員の数も制限されてくるのでございましょうし、それから教室自体の環境というものも当然必要になってくるかと思います。そういう面で、現在学級数あるいはまた教室の設備なり、あるいは生徒に対するそれぞれの教室の数の関係というようなものは、もう十分行き届いておるというふうにお考えになっておりましょうかどうでしょうか。端的に申しますれば、それぞれの学級における生徒数は非常に多くて、すし詰めが多いということなんです。それからまた、たとえば二部制というものはなくとも、とにかく昼間と夜との関係というようなことからなにしまして、先生が生徒に対して非常に少ないということ、そういうようなことで先生方の労働過重が非常に出てきました場合に、そういうことができるかどうかという問題が出てくると思うのです。そういう問題は道徳教育をする前段の処置として、文部省が当然考え、またそういう悪条件をなるべく排除するように努力していきませんと、いま文部大臣が言われたように、先生に対する責任は非常に重いもの、それを期待するということになりますと、先生方は非常にたいへんな苦労をしなくてはならないのじゃないか、こういうように私は考えるわけです。そういう意味で、いま学校の先生方が日常の生活をしようとするのには、たとえばすし詰め学級一つ見ましても、これはもう異常なものがあるわけです。特に最近における高等学校なんかを見ますと、生徒が非常に多くなり過ぎまして、教室が狭くなってきている。教室が狭くなってきているから、教壇をはずしてしまって、そして机を一列だけよけい置くというような形をしてみたり、場所によりましては教壇を半分に切って、生徒の座席を多くする、机の並ぶ数を多くする、こういうことまでして、非常に窮屈な、もっと端的にいいますならば、黒板と先生の机との間は、先生がぐるっと回ることができないほど狭まってしまっているような、そういう中で指導をしなくてはならないというような事情に置かれておる。そういう状態の中で、教室は非常に窮屈になってきている上に、先生方はまた朝から晩まで休みなく稼働していかなくてはいけない、こういう事情がある。そういうようなものをどういうようにして排除するかということを考えないで、いま道徳教育に対する重責を先生方に課するということは非常に無理じゃなかろうかと思うのです。私が一人でしゃべっておっても何ですけれども、先生方の生活がいかに芳しいかということ、たとえば朝学校へ出てから夕方学校を終えて帰るまでの間に、小学校の過程でしますと、これは茨城県の教組の方々が書いている一つの事例でありますが、先生が朝出て授業が始まるまでの間にいろいろな打ち合わせをします。それからあと学科が始まっていろいろやっていく間に先生方のそれぞれの担任の時間を教え、その間にはたとえば給食費やあるいはPTAの会費を子供が持ってくると、その扱いをしなければならない。昼間になれば、給食の準備のためのミルクのバケツをひっくり返してはいかぬからというようなことで、そのめんどうを見なければならぬというようなことまでしておる。それから給食が終わって始業のベルが鳴る、あるいはまた授業が終わると、子供たちと一緒に教室や廊下の掃除をしなければいかぬというようなことになって、学級の反省会なり健康相談、課外活動の指導、そうして教材の調べ、あるいはまた明日のための原紙切りだ、こういうことになってきますから、筆耕から炊事当番までやらなければならぬということになります。私はいまの学校教育について、文部省考え方は、教育の合理化を――教室を、なるべく教師と生徒との関係を詰めるために教壇をはずして、生徒教育をする教壇をはずしておいて、倉庫ですよ、倉庫の中で生徒教育をする、あるいは教壇を半分に切って、短い中で、ちょうど生徒が鳥かごの中に入ったような形で教育をする、こういうことをやらしておいて、ほんとう子供さんたちに対して先生が徳育を施される人間的な扱いといいますか、そういうものを与えておるだろうかどうかということを非常に私は疑います。こういうような問題の処置をしないで、ただ道徳教育だけをいっておりますと、またどこかに矛盾が出てまいりまして、所期の目的を達することはできなくなるだろう、私はこう思うのです。こういうような点については、文部大臣は全然配慮をしませんですか。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育環境を整備するということは、これは教育行政をあずかる者の任務であります。したがいまして、文部省にいたしましても地方にいたしましても、この教育環境を改善するということについては今日まで鋭意努力してまいりましたところであります。義務教官の学校関係におきましてはだいぶその点が改善せられてきたかと思うのでありますが、いわゆるすし詰め学級もほとんど解消するという段階にまいったのであります。この方面の努力はもとより、教育行政関係する者としましては、今後ともに努力を継続してまいりまして、先生方の努力が十分実り多いものにしなければならぬことは、われわれは当然心がけなければならぬことと思っております。現在一番私どもが頭を痛めておりますのは、高等学校の問題でございます。いわゆるベビーブームの波がちょうど高等学校に押し寄せてきている形であります。その関係で、ずいぶん生徒の諸君にもまた教師の諸君にも御苦労をかけておる、かように思っておる次節であります。高等学校の拡充整備につきましても、ずいぶん地方努力していただきまして、その収容力を広げましたけれども、かなり無理な点があるように私ども思います。その問題は一両年のうちにはだんだんと解決してくる問題ではあろうと思いますけれども、現段階におきましてはかなり御苦労をかけておるということは私ども認めざるを得ない、この点についてはほんとうにお気の毒に思いますけれども、この際の問題としてひとつ忍んでしっかりと教育のことに励んでいただき、また勉強もしていただきたい、かように思っておる次第でございます。できるだけのことは、政府としても、地方公共団体といたしましても、今日までやってまいったつもりでおりますが、もちろん完全なことではございませんので、漸次改善の道に向かってさらに努力を続けていきたいと思います。
  59. 石野久男

    石野分科員 すし詰め学校は漸次解消されておるといっても、決してまだ解消されていないのですから、これは極力その定数をオーバーさせないようにしてもらいたい。  私はこの機会にひとつお尋ねしておきたいのですが、定時制の課程で教員数の最低保証が現行の八名ではどうしてもこれは少ないという事情が出てきておると思うのです。各地方事情を見ましても、昼間の授業を持って、夜また定時制の課程に入りますると、その学校によりましては、ところによりましては、定時制の学校を別に組まないで、昼間と夜と一つ学校のなににしているところもあります。そうしますと、昼間の授業をやって、夜へそのまま先生方が移行しなければならなくなってまいる。したがって非常なオーバー労働になることは言うまでもないのです。そこで、この定時制の教員数につきましては、これはもう現行の八名から十二名に増員してほしいという要望を、これは日教組のほうからもしばしば行なっておると思います。このことについては、いま荒木さんこちらにおられますけれども、日教組が言ったからとかなんとかいうことではなしに、事実上先生方が生徒さんの教育をするにあたって、からだがくたくたになっちゃって、どうにもならなくなってきたのでは、これはいい教育はできっこないのでございますから、何としても八名から十二名へ増員してくれというのは、決してむちゃな要求ではないと私は思う。そういう点で、これは実際に文部省としてこの問題を現在のままでほうりっぱなしにしておくのか、一日も早く最低限十二名ぐらいまでこれを増員するという態勢をとっていただけるか、この際ひとつ文部大臣の御所見を承っておきたい。
  60. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 定時制の高等学校についてのお尋ねでありますが、私どもは、この働きつつ学ぶ生徒を扱っております定時制高等学校の整備充実については、大きな関心を持っておるのであります。現在もその整備拡充等の問題につきまして、関係の審議機関に諮問をいたしまして、検討いたしておるわけでございます。いまお話しになりました定数はおそらく最低の基準を示しておるものと考えるのであります。この問題につきましては、ひとつなおよく検討させていただきたい。定時制の整備拡充ということについては、われわれとしても十分関心を持っておる問題であるということを申し上げて、お答えにいたしたいと思います。
  61. 石野久男

    石野分科員 通信教育を受けている方について、特にこれは文部省でこういうことがあるのです。ある公務員の投書でありますが、こういうふうにいっております。国立大学に勤務する一公務員ですが、大学の通信教育に入学した、大学の通信教育の夏季面接授業に出席するためには年四十日間の休暇が必要だ、それについては、官庁の年次休暇は年二十日ですから、二十日不足する、そのものについては、郵政省、建設省、自衛隊ではその分の特別休暇を慰めておるのに、文部省はこれを認めてない、こういう新聞の投書を私は見て、何て文部省は理解がないのだろうな、こういうふうに実は私は思っておるのですが、こういうような投書があるようでは、特に文部省としては教育をつかさどる官庁だからむしろ他の官庁に先がけてこうした配慮をすべきだということを、文部省の国立大学につとめておるある方が言っておる。こういうことについて、他の官庁ではめんどうを見てやっているのに文部省がめんどうを見てやれないというようなことはちょっとおかしいのだが、これはどういうことなのですか。
  62. 村山松雄

    ○村山説明員 通信教育に在学する学生は、規定によりまして年間規定のスクーリングに出席することになっております。そのスクーリングは通例学校でいえば夏休み期間に行なわれます。そこで、勤務を有しておる者は、学校は夏休みでありましても、職員につきましては必ずしも夏休みというものはないわけでございますので、休暇をとって出席するという関係になります。そこで、公務員関係では休暇を許可しておられる例が多いようでございます。国立大学の職員の事例のようでございますが、国立大学で個々にどのような措置をとっておるか私十分承知しておりませんけれども、職務の繁閑に応じまして、支障がない場合には休暇を許可する等便宜の処置を講じておるものと実は考えております。もし投書のような下上がありとすれば、職務の都合上どうしても休暇を与えることが不可能な場合はやむを得ぬかと思いますが、しからざる場合はなるべく休暇を与えるのが通信教育制度を認めておる趣旨に沿うゆえんかと思いますので、趣旨に沿うように指導いたしたいと思います。
  63. 石野久男

    石野分科員 そういうような問題は、他の官庁などではめんどうを見てやっているのに文部省でめんどうを見てやれないというのはおかしいのですから、できるだけこれは配慮してやってほしいと思います。  もう一つ最後に、先ほど文部大臣からもお話がございましたように、高等学校教育についてはベビーブームの関係なんかありましていろいろな面で非常に問題が多い。特に本年度の高校進学についての文部省考え方と実際の中学から高校への進学希望者ないしまた進学の実態というものはだいぶ開きがあるようであります。私は、進学率の見方については、最近親御さんはもうほとんど高等学校義務教育と同じような気持ちで見ておりまするから、ぐんと進学率が多くなってくると思うのです。本年度はその進学率は文部省が予定したのと実際とはどういうふうに違っておりますか、その点伺いたい。
  64. 福田繁

    福田政府委員 高校急増対策を政府で決定いたしますときに、政府計画といたしましてとりました進学率は六一・八%でございます。ところで、いま御指摘のように各地では高等学校に進学する希望者は非常に具体的には多いわけでございます。特に私立学校におきましてはかなり当初の計画を上回って収容したというような実績もありますので、そういう実績から見ますと六六・七%というような進学率に高まっております。これが現状でございます。
  65. 石野久男

    石野分科員 これはある程度いわゆるすし詰めのような形で入れたわけですね。そういう無理をしてここまできたわけです。それでもしかし今度実際に進学希望者から見れば、この率は非常に小さなものだと私は思うのです。進学希望の率から見たら非常に小さかろうと思います。たとえば東京都の場合に進学を希望した者と実際に進学をした者との比率はどういうふうになっておりますか。
  66. 福田繁

    福田政府委員 東京都の場合におきましては三十八年三月の卒業生について見ますと、高校進学者が十八万五千程度でございます。八四%強でございますが、東京都の場合は公私立を含めまして希望者のほとんどが入っておりますので、希望者の率も大体八四%程度だと考えております。
  67. 石野久男

    石野分科員 三十八年の三月と、今度は三十九年の三月とは一年ずれてきますが、ことしはもっと率が高くなっているはずです。実質的にことしの率は昨年度よりもまた相当程度高くなっていると私は思っております。現に中学卒業者で進学を希望している者はまず九六%ぐらいになっていると私は思うのです。東京都は学校も集中しておりますし、高校に行く希望者は地方からもずいぶん出てきているわけです。したがって地方のほうで進学希望を持っていながら実際には進学できなかった者の率を計算してきますれば、相当開きがあるものと見なければいけない。私はそういう意味では相当程度今後私立公立との関係、そしてまた国家が児童教育を高校教育から大学にわたっての経費負担の面で先ほど文部大臣にお尋ねしましたように、もっと積極的な体制づくりをしていただかなければならないように思います。  私は最後に文部大臣にお尋ねし、またその所信のほどをお聞きしておきたいのですが、生徒一人当たりの公教育費というものが、日本の場合は率直に申しまして、日本の教育相当進んでいるといわれましても他の諸先進国と比較して必ずしもいい率にはなっていないと私は思っているのです。先般も私は一九五六年度のこれは文部省の統計を使ったのでございましたけれども、そのとき生徒一人当たりの公教育費というのは、指数にしますると日本を一としてアメリカが六・八、イギリスが四・二、西ドイツが三、あるいはフランスが二・八、ソ連一・七、こういうふうになっているということ、そういうような実情は一日も早く解消されないというと、真に文化国家だ、いや教育が行き届いているというようなことは言えないと私は思うのです。特に政府の責任はそれで回避することはできないのでは、ないかと思いますので、これは文部大臣教育というのは結局精神的な問題よりも具体的には私は予算の問題だと思うのです。予算の面で父兄に対する負担を多くかけているようでは政府教育施策は十分だとはいえないと思います。あくまでも父兄負担額を少なくして国家がその大部分を持ってやるというときこそ、初めて国が教育に熱心であると言えるんだ、私はこう思うわけです。そういうような意味灘尾文部大臣にひとつ、非常に予算の規模も大きくなってきているし、実質的には子供さんを教育させようという親御さんの熱意は従来よりも増して強くなってきておる、こういう時期に国の側におけるところの予算面でも熱意がはっきり出てこなければいけないのじゃないかと思います。公教育費というものもできるだけ諸外国並みにする決意を明確にしていただきたいし、そうしてそういうことが具体的に父兄負担額を軽くするような処置を本年度予算の額の中においても何とか、予算項目の切りかえをしてもらうとか、各省の分担を切りかえさせるとか、予備費を流用させるとか補正を使ってでもいいからそれをやるような着想があるかどうか、そういう点をひとつ文部大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  68. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申しましたように、現在の予算でもって、決してわれわれがこれで十分であるとか、満足すべき状態であるとは考えておりません。できるだけ予算増額等につきましても努力をいたしたいと存じております。いまの予算をいじるということは困難だと思いますけれども、われわれとしてはさらに今後努力いたしまして、文教予算増額をはかってまいりたいと存じます。どうぞひとつ御協力をお願いしたいと思います。
  69. 石野久男

    石野分科員 一つだけ。きのう文部大臣地方教育委員会の制定十五周年記念の式場で、教育法の改正を示唆されたようでございます。その意図するところは、結局戦前の教育法のような形、なるべく中央へ集中化させるような、そういう教育法の改正を意図されたものでございますかどうか。その真意のほどをひとつお聞かせ願いたい。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ちょうどお尋ねをいただきまして、私もいい機会を与えていただいたと思うのでありますが、昨日都道府県の教育委員会の会がありました際に、私出席いたしましてごあいさつをしたわけであります。その中に、地力の教育委員会の――ことばははっきりいたしませんけれども地方教育委員会の現在の状況等についても検討を加えるべき時期じゃなかろうかということを申したのであります。これは別に他意あって申したのではございませんので、ちょうど教育委員会制度も創設以来十五年もたちますし、また昭和三十一年に制度が改革せられましてからも相当の年数もたっておることでありますので、この教育の運営あるいは地方教育行政等につきましてもいろいろ意見のあることでありますので、われわれも検討いたしますが、地方教育委員会の諸君もよく御検討願いたいというぐらいな心持ちで実は申したのであります。ところがあとで聞きますと、ちょうど教育委員会の結論といいますか、討議の中に、やはりそれに似たようなそういう問題に触れておるということで、新聞の記者諸君もここにいらしゃいますけれども、少しぴんとこられたのではなかろうかと思うのです。私はそういう心持ちで申したのではないのでありまして、久しぶりの大会でありますし、相当年数もたっておることだから、制度というものは常にやはり検討は怠らずにあるべきものだと思いますけれども、われわれも検討するが、皆さんのほうでもひとつ御検討願いたいというぐらいなつもりで実は申したわけであります。いまどうしようの、こうしようのというような考えを持って申したわけではございませんけれども、たいへん大きく新聞に取り上げられまして、実は私もちょっと反響が大きいのに驚いているようなわけであります。そのようなただ心持ちで申し上げただけのことでありますから、そういうふうにひとつ御了承願いたいと思います。いま教育行政の中央集権をはかるとか、こういうふうに持っていくとかいうようなことを持ってお話申し上げたわけではございません。しかし現在の地方教育行政につきましては、いろいろ議論もあることであります。そういう議論に対しまして、あるいは意見に対しましては、お互いによく検討しようじゃないかというぐらいな心持ちで申したのだというふうに御了承いただきたいと思うのであります。昨日来夕刊あるいは朝刊を見て、実は驚いておるようなわけであります。そういうことでございますので、御了承いただきたいと思います。
  71. 石野久男

    石野分科員 もうこの問題は非常に重要なのでありまして、私は時間的には約束もありますから、なるべく如くしますけれども、しかし文部大臣がいま話したように、自分は中央集権化をはかるつもりはないと言っておりましても、そういうふうに実行されてきますと、自然そういう形が出てくるわけです。先ほども道徳教育の実施について、文部大臣は先生方に対する責任の非常に重いくらいを期待すると言っておられましたが、私は、むしろ先生方には環境を与えないで責任だけを押しつけるということはよくないということを申し上げた。教育行政の問題でも、たとえば地方の教員の交流をするという場合に、各地域ごとにおけるところの教員の充足数が十二分に行き渡っていて、先生方に無理がない教育ができる環境がつくられておるときなら、交流ができてもそこには無理がなかろうと思いますけれども、現存のようにその地域において先生方が不足しておる、むしろ生徒に対しては非常に過少な形で過重労働がしいられておるような時期に、今度地方命令であっちにこっちに動かされたら、とても教育の民主化はできないと思うのです。私はそういう意味で、大臣の気持ちはそんなに深くはなかったと思いますけれども、やはり及す影響は大きいと思う。だから大臣としては、みんなが神経的にまで考えるようなそういう面を配慮して、こういう問題について誤りのないように配慮をしていただかなければならない。私は特にこのことを大臣に対して注意を促したいと思っておる。その点もう一度大臣から御答弁をいただきます。
  72. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 地方教育行政の改善をはかり、充実をはかっていくということは、常にわれわれが努力しなければならぬと思うのであります。これにつきまして、いろいろ意見があり、要望があるという問題につきましては、やはりわれわれとしましては検討しなければならぬと思うのであります。いまの御注意は御注意として十分承っておきます。
  73. 相川勝六

  74. 滝井義高

    滝井分科員 国立学校特別会計と教材費の問題とミルク給食の問題、三点について御質問をいたします。  まず第一に国立学校の特別会計の問題です。予算の編成期になって、予算の編成が困難になるというようなことになると、いつもその予算のしわというものは文教面、厚生面の予算の編成に寄ってくる。今後も予算の編成にあたって、ある日突如として国立学校特別会計というものがあらわれてきた。まさにこれはある日突如としてあらわれてきたという感じが濃厚なんです。そこで一体国立学校特別会計というものは、いかなる意図を持ってつくったものであるか。われわれが外から見ておっても、これはどうもある日突如としてあらわれた感じがしてよくわからない。その意図を御説明願いたいと思います。
  75. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の国立学校の特別会計設置の問題でございますが、法律の最初に書いてありますように、国立学校の充実をはかり、またその経理を明確にするというのが、その根本の趣旨でございます。
  76. 滝井義高

    滝井分科員 経理を明確にして、充実をはかるのが意図なんだそうですが、もう少し詳しく構想を説明してくれませんか。
  77. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 特別会計の目的でございますが、これはただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございます。やや具体的に申し上げたいと思いますが、利点の第一としましては、借り入れ金の制度が認められるということでございます。これは財政投融資から十億の借り入れを予定いたしまして、要員施設の整備に充てることになっております。それから医療費等の歳入を伴う歳出予算につきましては、弾力条項が認められております。それから第三といたしましては、不用財産を処分いたしました場合に、その収入をこの特別会計の収入といたしまして、その財源でもって国立学校の整備を促進をする。第四といたしましては、積み立て金制度を設けておりまして、歳入超加額を生じました場合にはこれを積み立て金とし、必要な場合にはこれを取りくずして施設の整備に充てるといったようなことを考えております。具体的な利点といたしましては大体そういうことでありまして、これらの点はいずれも一般会計では行なえないことでありまして、特別会計によって国立学校の充実に役立つというふうに考えております。
  78. 滝井義高

    滝井分科員 一応構想はわかりましたから、だんだん質問していきます。  そこでこういう特別会計を設置すべき意図というものはおよそわかってきたのですが、そうしますと、二十六年に教育制度審議会がやはり特別会計の設置を要望しておる。それから昭和二十九年ないし三十年に国立大学協会が、やはり特別会計の設置を要望しておる。三十八年の一月に中教審が大学教育の改善について答申をした中で、これは必ずしもすぐにつくりなさいとは言ってない、特別会計設置については慎重な検討をしなさいということをいっておるわけです。ところが民主的であるはずの文部省が、こういうようにそれぞれ二十六年以来の特別会計設置に関する諮問機関の歴史的な経過があるにもかかわらず、慎重に検討したかどうか。われわれが外から見ておってもよくわからないのですが、ぼくは文教行政はよく注意して見ておるのですが、突如として予算編成の中で大臣大臣が話し合って、ぼっと出てきたということになりますと、一般会計の予算が非常に大型化して――これは予算の規模にすると一千三百九十四億円になりますから相当なものですが、一般会計のワクの外に置く。大型化を防ぐためにという目的で出てきたような感じがするわけです。一体この間の経緯はどうなのかということです。二十六年以来のそれぞれの諮問機関の歴史的な経過もあるし、灘尾さんも五年たって文部省に帰ってきたところが、文部省予算の組み方が旧態依然、五年前とちっとも変わってないのに驚いたという発言もありましたが、やはりこういう経過というものは尊重しなければならぬと思うのです。御諮問について諮問機関からいろいろ意見が出てきておるわけですから、こういうものをやろうと思うのだが諮問機関はどうだということを、もう一ぺん聞くのがほんとうだ。ところがそういうことは調べてみたが、ないのです。この間の経緯をひとつ明らかにしていただきたい。
  79. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 二十六年来ただいまお話しのような経過があったことは事実でございます。当時の構想といたしましては、これはいずれも事業特別会計的な国立学校の特別会計を想定しておったわけであります。昨年の一月に中央教育審議会から答申がございました。大学財政に関する答申の中に含まれております特別会計の構想というものも、大体そういうものでありまして、したがってそういう構想の特別会計については、慎重に検討すべきであるという趣旨であるというふうに理解をいたしております。今回提案をいたしております特別会計は、必ずしも事業特別会計というものではないわけでありまして、むしろ一般会計と経理区分を分かつという意味におきまして、区分特別会計の性格を持っております。なお、一般会計の総ワクを減らすためにこれをはみ出したのではないかという点でございますが、この特別会計の歳入の約八二%強は一般会計からの繰り入れでございます。したがいましてかりにこれを一般会計の中に残したといたしましても、それによってふくれる一般会計の規模は千三百数十億ではなくて、約二百三、四十億ということでございます。
  80. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の特別会計を設置するのに至りました経緯について申し上げておきたいと思います。実は私はこの国立学校の施設の整備充実が非常におくれておると思うので、なるべく早く国立学校の整備充実をはかっていきたいというのが、年来の希望であったわけであります。その間、しろうと考えではございますけれども、もっと国立学校の、たとえば財産で特に必要がないというふうなものについては利用する道はないものか、こういうふうなことも考えておったこともあるのでございますが、このたびの予算のいろいろ折衝をいたします前に、大蔵省のほうから特別会計をつくったらどうであろうかというお話があったことは事実であります。私もそういうふうな気持ちがございましたので、大蔵省の考えておる特別会計というものは一体どんなものか、どういう趣旨のものをやろうとしておるのか、やればどうなるのかという問題について、いろいろ検討をしてもらったのであります。その検討の結果といたしまして、この特別会計の設置が国立学校の充実ということに意義がある、かように考えまして、私もこれに終局的に賛成をいたしましたようなわけでありまして、先ほど来沿革については会計課長から申し上げましたが、われわれとしましてはこの特別会計が、とても事業会計のようなものは成り立つはずがない、こういうふうに頭から考えて――もしそういう会計ならこれに同意するはずはないのでありまして、この会計のやり方によっては整備充実の促進に役立つ、こういうふうな考えになりましたものですから、私も同意した、賛成をいたしまして、協力してこの特別会計をつくった、こういうことでございます。
  81. 滝井義高

    滝井分科員 明治以来、過去において幾度か特別会計を設けられたことがあると思うのです。簡単に、いつ設けられていつ消えたか、ちょっとその経過を――わかるはずだと思う。
  82. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 特別会計が最初設けられましたのは、明治二十三年でございます。この当時は官立学校及び図書館会計法と申しておりまして、官立学校といたしましては東京帝国大学、京都帝国大学、図書館といたしましては帝国図書館、それに農商務省所管の東京農林学校、そういったものをこの特別会計の対象として扱っておったわけであります。明治四十年に至りまして、この中から帝国大学を抜き出しまして、帝国大学特別会計法というものを制定をいたしております。同時に学校及び図書館特別会計法というものを別個に制定をいたしておるわけであります。大正十年に至りまして、大学特別会計法というものを制定いたしております。帝国大学とその他の官立大学を一緒にいたしまして、大学特別会計法をつくっております。同時に学校及び図書館特別会計法というものを制定をいたしまして、旧制の高等学校、専門学校等をその対象に含めたわけであります。  大体以上のような経過をたどっておりますが、昭和十九年に至りまして、二つの特別会計を統合いたしまして、学校特別会計法ということにいたしております。図書館は、これは一般会計に移しているわけであります。二十二年に至りまして学校特別会計法は廃止になっております。
  83. 滝井義高

    滝井分科員 大臣御存じのとおり、明治以来うたかたのごとくできたり消えたりではないけれども、とにかくできたり消えたりしているわけです。そして昭和十九年にできたものが昭和二十二年に、これはシャウプ勧告で消えたのでしょう。
  84. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 シャウプ勧告だったかどうか、私ちょっと記憶いたしておりませんが、占領下におきまして、存続意義の薄い特別会計を整理するという一般的な方針がございまして、その中に含めて廃止されたと聞いております。
  85. 滝井義高

    滝井分科員 だから、存在の意義の薄いということで消えたものが、いままた突如としてあらわれてきたわけです。そして利点としては借り入れ金ができるとか、弾力条項ができるとか、不用財産の処分ができるとか、歳入超過のものは積み立て金ができるとかいうのは、こんなものはあまりにも意義が小さ過ぎると思うのです。そういうことで、ではいまの大学急増対策とか、あるいは科学技術を振興しなければならぬというような、二つの大きな使命を達成できるかというと、なかなかそのくらいの金では、いみじくもあなたが御指摘になったように、二百三十億か四十億、これもあとで問題になるところですが、そのくらいのことで、八割二分は一般会計からもらわなければならぬというのであるならば、何も特別会計にしなければならぬということはなさそうに思うのです。そこで調べてみると、過去において消えたり出たりという歴史を持っているわけですね。そうして二十二年に廃止をされて、日本が独立をしたから教育も独立をして、わが道を行く体制をつくるために、国立学校の特別会計をつくるのだということなら、また一つ意味があるかもしれぬけれども、それにしてはあまりにももはや戦後ではなくなったという時期になってから、それもはるかに過ぎたときに何かつくるというのも、ちょっと納得がいかないところがあるのです。  そこでそれはそれとして、それならば一体、国立学校の運営というものは、何か特別の審議会その他をつくっておやりになるのかどうかということです。明治時代における特別会計というのは、御存じのとおり帝国大学の総長が議長になっているのです。そうして主計局長やその他の役人も入って運営をしておったのです。ところがそれがいつの間にか、だんだんだめだということにどうしてなったかというと、調べてみますと、これは帝国大学の総長が忙しいために、議長の役がつとまらなくなってしまった。そしてだんだんそこでは役人が権限を強く持って、これはもうそんなことではとても納得できぬという形が出てきて、だめになってしまったのです。そういう経過があるのです。そうしますと、今度の国立大学の運営を大臣の言うように、国立大学の整備促進をやる、科学技術の需要を満たすため同時にベビー・ブームによって多くの志願者が来るのにたえ得る大学をつくっていく。そのためには、その運営というものはやはり民主的でなければならぬと思うのです。明治政府でさえもが、その運営をするために審議会というものをつくっておやりになったのですから、それぞれ今度は大学の財産を処分し、積み立て金のできたものは取りくずし等もできるということになれば、これは役所だけでやるのではなくて、まんべんなく目の届くような公平な審議会をつくってやる必要があると思うのですが、そういう点についての考え方はどうですか。
  86. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 戦前の特別会計と今回の特別会計の一番大きな違いは、学校資金という制度が戦前の特別会計にはあったわけです。今回の特別会計にはそれがないという点、これが一番大きい相違かと思います。戦前の特別会計におきましては、学校ごとに学校資金というものが設けられておりまして、不動産、動産、有価証券、現金の四者をもって、学校資金は構成されておったわけであります。年々政府から相当額の繰り入れ金を行なっておったわけでありますが、行く行くはその学校資金をもって、学校を独立させるという構想があったわけであります。したがいまして個々の学校が経理単位として、非常に大きな意味を持っておったわけでございます。そこでその個々の学校と申しますと、まあ財政的に申しますと、これは学校資金ということになるわけでありますが、その資金の管理、経理を行なうという意味におきまして、たとえば帝国大学経理委員会といったようなものが設けられておったわけであります。しかしながら今回の特別会計におきましては、そういった各学校ごとに資金あるいは積み立て金を設けるという構想を持っておりません。国立学校全体を通ずる積み立て金を設けるという構想でございますので、したがいまして各学校ごとに戦前のような経理委員会的なものを設けるという考えは持っておりません。ただこの会計の運営につきましては、もちろんこれは国立大学側の意向というものを十分考慮しなければならないわけでございます。そこのところは国立大学協会等とも十分連絡をとりながら、執行に当たってきたいというふうに考えております。
  87. 滝井義高

    滝井分科員 いま事務当局から、大臣、答弁がございましたけれども、私はそれでは満足できないと思います。今後それぞれの大学に財産を処分させたりなんかしようとするならば、やはり大学の意向というものを相当聞かなければならぬと思うのです。そうしないと、どういう問題が出てくるかというと、御存じのとおり、いままでは国立学校というものは、まあ予算を取っていただくということで、非常にあなた方に頭が上がらなかったわけだ。歳入面で頭が上がらなかった。今度は、自分の財産を売ったときには、たとえば一億で売れる、そうするとおまえの学校は五千万円使ってよろしい。そうするとあとの五千万円がどうなるかが、学校ではたいへんなんですよ。ところがこの五千万円は他の学校に行くのだということになると、この五千万円をできるだけ学校に残してもらいたいという歳出面に対して陳情をする。つまり歳入でも押えられるだけではなくて、歳出でも押えられて、もはや学校はあなた方に平身低頭ですよ。あなた方に一切頭が上がらなくなる。こういう問題が出てくる。これは本質ですよ。私は、そういうことのないように、少なくともここに民主的な大臣の諮問機関をつくって、その二百三十億くらいの出てくる収入、特にその中における演習林の収入とか、あるいは財産を売った収入というようなものは、どういうぐあいに民主的に使うかということは、諮問機関で公平にやらなければいかぬと思うのです。  イギリスにも大学補助金委員会というものがあります。イギリスには、イギリスは御存じのとおり大学私学ですから……。ところが国がこの私学に対して大体七割くらい補助しています。そうして大蔵省にその委員会を置いて、これは役人は入っていないのです。大学と民間人が入っておる。そうしてやっておるのですよ。だから日本の国立大学の通常を民主的にやろうとすれば、特に特別会計で、事業会計でなくて区分会計であるにしても、あなた方が言うように、いろいろの利点がある。借り入れ金をやったり、この不用財産を処分をして使うということになれば、ますます私はそういうことが必要だと思うのです。少なくともそういう行政委員会的な権限を持たなくても、大臣の諮問機関くらいは私はつくってやる必要があると思うのですが、これは民主的な灘尾さん、どうですか。諮問機関をつくってやるのは常識ですよ。諮問機関をつくって意見を聞きながら配分をするということにならなければ、歳出の面からも歳入の面からも、あなた方に一々お百度を踏まなければ、大学の財産を使えない、自分の財産を売ったものまでも使うことができぬかということになればたいへんですよ。
  88. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この特別会計の運用にあたりましては、十分気をつけていかなければならぬことは御指摘のとおりだろうと思います。たとえば東京大学の持っております財産を文部省が一方的に処分してしまう、その処分した金をよそへ使ってしまうとか、こういうふうな運用ではとうていこの特別会計は運営できないと思います。したがって現に財産を持っております大学については、やはりよく相談をいたしまして、この財産をどういうように使っていくかというふうなことについて、納得のいかない線でやっていこうというつもりは毛頭ないのであります。文部省にしましても大蔵省にしましても、また大学側との間におきましても、十分に連絡協議を遂げた上で具体的な仕事は進めていきたい、かように考えておる次第であります。そのようにひとつ御了承願いたいと思います。私は現状を大きく変更しようとかいうふうな考え方ではない。たとえば北海道大学相当な山を持っておるというような場合に、北海道大学の設備の改善充実のためにまずその財産を使わせる、こういうふうな方向でもって運営していくべきではないかと思うのであります。その間文部省が独断で一方的にかってな措置をするというような考えはさらさらございません。
  89. 滝井義高

    滝井分科員 いまのような理論になってくると、大学間の格差はますます拡大することになる。どうしてかというと、御存じのとおり旧帝国大学というものは、戦前から土地建物等において非常に豊かなんです。それから演習林がありますよ。今度は農場収入があるのですよ。そういうところは病院の規模も大きいですよ。かつ付属研究所等もあるでしょう。したがって産業界との結びつきが非常に強いので、特別の指定研究費の寄付があるわけです。そうすると今度は駅弁大学といわれた新制大学というのは、多く分校をかかえておるわけでしょう。そうしてその分校の統合というのが、いままで財政的な裏づけをしてくれないために、統合が十分に行なわれていないわけです。これから統合段階に入ろうかというわけですよ。たとえば福岡の学芸大学のように、たまたま出光さんみたいな人が金を出してくれると統合ができるが、ああいう人がいないと統合できないのですよ。そうすると校舎も貧弱、研究施設も非常に脆弱である。収入や寄付も少ない。これをこのままにしておけば、大学の格差はそのままです。  そうすると必然的に――いま北海道大学の例が出ましたけれども、北海道大学がたとえば土地を売る、あるいは演習林を売った。そこでその金が相当出てきたというと、北海道大学に使わせて、そうしてその残りはプールにしないと、さいぜん言った歳入超過分は積み立て金にして使うのですということになると、その大学だけのものになれば、特別会計の意義はなくなってしまうわけです。ここなんです。だからそういう点をカバーするためには――北海道大学の名前が出て恐縮ですが、北海道大学の意見を聞くということは、同心に一般大学の意見を聞くということで、少なくとも大臣の下に諮問機関くらい置いて、この運営をやってもらわぬことには、いま言ったような新制の大学と旧財産を持っておる大学、社会的な信用と声価の高い大学との間の格差というものは、縮まらないわけです。ですからプール資金の構想になる、これが特別会計の収用だ、こういうことならばある程度話はわかってくる。だからそこを大臣、どうですか。いまのように全部北海道大学で使ってよろしいということになると、はなはだもって――一般会計の入るものは全部旧大学には行かぬのだ、これは新制大学に行くのだということになれば、今度は旧大学がむくれてくる。これは大臣がサンドイッチになって、どうにも身動きがならぬようになるから、この際諮問機関をつくって、最後の決断は大臣が下すということが一答いいと思うのですが、その点は大臣、どうですか。
  90. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私のことばが不十分であったかと思うのでありますが、ある大学が持っておる財産はその大学限りで使わせてしまうということを申したつもりではなかったのです。ただある大学の意向を無視して、それを取り上げてしまうというふうなことでなしに、お互いによく相談をして、納得ずくで話を進めていこうというのが本旨でございます。  いま持てる大学とか持たざる大学とかいうことばが、近ごろあるようであります。御心配の点もありましたが、むしろ現に自分が財産を持っておって、しかもそれが直接いま教育の用には必要ではないというふうなものは、だんだんとそれを処分することによって、大学の施設整備の費用の中に入れる。北海道が出ましたが、かりに北海道大学にそういうものがあって、そして北海道大学の整備充実のためにある程度それに金を向けていくということになれば、言いかえれば逆にいままで北海道大学に分けなければならなかった金を分けないで、ほかへ回すことができるのではないか、それだけ財源は大きくなってくる、こういうふうな考え方をいたしておるわけでありますので、そういう意味におきましては持たざる大学のほうにむしろ有利になってくる。またそういうふうな予算の取り方をしなければなるまい、かように考えておる次第でございます。いずれにしましてもこの財産の処分ということは、そう簡単なことではございません、お互いの連絡協議、これが十分に行なわれなければならぬことでありますので、その点については私は遺憾のないような運営をやってまいりたい、こういう考え方をいたしておるわけでございます。
  91. 滝井義高

    滝井分科員 そこを大臣が遺憾のない運常をするためには、まず第一のクッションとして、大臣の諮問機関のようなものをおつくりになったらどうだというのが、私の趣旨になるわけです。大体そこまでは意見の一致を見たわけです。だからある程度プール的な思想が入ってきたわけです。これは意見の一致を見たから、しからばそれを具体的に実施する段階で、どの程度プールにするのか、どの程度、AならAの大学からプールに出してもらおうかということになると、これはやはり文部省が一存でやると、文部省に三拝九拝をして、今度は、さいぜん私が指摘したように、歳出の面における根元、首元を押えられる、こういうことになる。歳入ばかりじゃない、歳出が抑えられてくると、これはたいへんだ。もう文部省王国になってしまう。国立大学はそれではいかぬのじゃないか。少なくとも教育というものはそういう役人が支配するとか、特定の政党が支配するということではなくて、やはり民生的な形で運営をしておったほうがいい。特に金の問題であるし、しかも自分の身を切って、伝統的にずっと受け継いできた大学の財産を処分をするという、その残った金なんか特にそうなんだ。そういう運営については、大臣、諮問機関をおつくりになってもいいでしょう。別におつくりになって悪いことはない。その砥児を聞いて、その上で処分をいたしましょう、こういうことなら運営は非常に民主的にいくわけですね。どうですか。
  92. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その特別会計法の運営にあたりましては、いろいろ相談をしたり、協議をしたり、そういうふうな仕組みがほしいということは、大学側からも言われておったことであります。したがいまして私としましても、この運営にあたっては、先ほど遺憾のないようにいたしたいと申しましたが、大蔵省あるいは大学等ともよく相談をいたしまして、そうして何か相談機関とでもいいますか、そういったふうな仕組みについては考えてみたい、かような考えをいたしておるわけであります。いま滝井さん、諮問機関をつくらぬかという、だいぶ大上段からのお話でありますが、私は大学側の希望も取り入れまして、相互の間にそごのないように、協調して進むことができますように、運営上の仕組みについてはいろいろ考究してみたい、かように考えておるわけであります。
  93. 滝井義高

    滝井分科員 それでよろしいです。ほんとう法律にそういうものを入れてもらいたいと思いますが、まあきょうはその程度にして、……。  次は、ことしの予算書を見ると、文部省所管国立大学で、三十九年度に契約を結ぶものとして東京大学、電子計算機の借り入れ九億一千八百三十四万七千円、これは四十年と四十一年で国庫負担となることになっている。それから病院施設整備三十五億、これは三十九年と四十年で国庫負担となることになっている。それから鳥取大学の施設収得七億二千三百万円、これは四十一年度の国庫債務負担になっている。そうするとこれは全部で四十七、八億ぐらいが、国庫債務負担になるわけですね。特に鳥取大学については土地、建物を処分をして、そうして大学の移転の経費に充てることになっている。そこで現金を得たら、その現金を七億二千万円の範囲で負担行為をやってもよろしい、こういうことになっておるわけですね。そうしますとあとの鳥取大学の問題は、七億二千三百万円以上に土地、建物が処分できれば、これはもううまくいってしまう。そうして残りはいま言ったような形でプールするかどうするか、相談になるわけですね。そうするとこの土地を処分したものは、もう一般会計からは入ってこないことになる。そうしますとあとの東京大学と病院施設整備の分は、一般会計から入れてくれることになるのですか。
  94. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 歳入予算は全体といたしまして、一般会計から幾ら、借り入れ金が幾ら、業務収入が幾らということでございまして、どの歳出科目の歳出がどの歳入であるという関係にはならないわけでございます。
  95. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、国立学校特別会計全体でプールして、そうして一般会計から入ってくるものと、それから病院収入とか、演習林の収入とか、財産処分の収入とかいうものが、総額千三百何がしか出てきたら、その中から東京大学の借り入れの経費を出していく、こういうことで全然債務負担行為は一般会計とは関係ない、こういうことですか。
  96. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま申し上げましたとおり直接の関係はございませんが、ただ施設の整備の面につきましては、財産の処分の見返りということで、実費的な関連があるものはございましょう。しかし歳入歳出の形式的な関連という点から申しますと、関連は全くないわけでございます。
  97. 滝井義高

    滝井分科員 時間がだんだんきておりますから、いずれこれは法案のときにでもやるとして、いま大体国立学校関係の国有財産は、総額どのくらい持っておりますか。
  98. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 約二千百億円ばかりでございます。これは台帳価額でございます。
  99. 滝井義高

    滝井分科員 その中で一体処分できそうな――ことしの予算書を見ますと財産の処分が十五億ですね。これは処分できそうなものといったら、どの程度あるのですか。
  100. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 どの程度処分できるかということは、非常にむずかしい問題でございます。これから個々に当たりまして検討したいと考えております。が、十五億は、これは処分が確実なものであるということで、明年度予算の歳入に計上してあるわけでございます。
  101. 滝井義高

    滝井分科員 特別会計をつくる一つの重要な利点の中に、財産を処分をするのだということが出てきているわけです。そうしてその金は自由に使え、そうして研究設備ができるようになり、設備の整備の促進ができるということになっておりますから、したがって二千百億程度の財産があれば――これから三、四年間というものは高校卒業生が大学に殺到してくるわけですから、そうすると一般会計から、過去の慣例からいうと、八割かそこらは入ってくる。あとの二割は病院の収入や財産処分や借り入れ金等でまかなわなければならぬということになりますから、やはりここ二、三年間の財産を処分できるおよその目途ぐらいは立てておかないと、これはたいへんだと思うのです。  私がどうしてそういう心配をするかというと、私過去をちょっと調べてみたのです。この歳入の動きをずっと調べてみたら、たとえば付属病院の収入、これなんかは三十九年は三十八年に比べて非常によけい見積もってきている。医療費が地域差撤廃その他等で幾分上がってきたからでもあるけれども、しかし三十八年の百二十八億に比べて今年は百七十何ぼ、五十億以上よけいに見積もっている。それから例年に比べて授業料が二十一億が二十五億円余、これは検定料を除いてであります。それから農場及び演習林収入が七億九千万円が九億円余、億クラスで大きいところはそういうところです。それでそれらのものを合わせると、あなたの言ったように二百三、四十億の金が一般会計以外で、いわゆる自前で収入を得るものとして出てきている。したがってこれは、ずっと例年の動きを見ますと、三十九年が飛躍的に増加をしてきているのです。ここらに一つ問題が出てきていると思うのです。  これは私はいろいろのものを調べてみているのですが、たとえば典型的にあらわれているのは、労働福祉事業団の労災病院です。労災病院は本来どういう目的でつくられたかというと、これは脊髄骨折とかあるいは大腿部の骨折とか、こういう非常にむずかしい労働災害の疾患について長期の研究もやるし、それから治療にも当たるということでやっているわけです。ところがこういう患者ばかりを入れておるとベッドが固定をして、そして病院は研究もやらなければならぬ、それから補装具等がよけいに要るのですから、収入が上がらないのです。そこで最近、病院のこういう労働福祉専業団ができて、それぞれの病院が企業会計の中で独立採算的な傾向が出てきた。幸い、これは企業会計ではないのですけれども、なってきて、そして一般患者をどんどんとり始めて、労災病院が労災病院としての形態をとらなくなってきた。そこで私が心配するのは、御存じのとおり大学の病院というのは、治療と教育と研究という三足のわらじをはいているわけです。そうすると、これを今度はこういう形で――いまあなたはいみじくも大学の借り入れ金が十億財投からあった、こう言われた。国立病院も、それを去年からやらし始めた。借り入れ金をやれば、これは大学が払わなければならない。病院の収入を三十二年から全部私は調べてみますと、大体大学病院は二割程度の赤字です。そうすると、二割程度の赤字の大学病院、三足のわらじをはいている大学病院が、今度は国立大学の会計に入れられて、そして借り入れ金までやるとすれば、この借り入れ金はその大学が払わなければならぬ。その病院が払わなければならぬ。そうすると一体どういうことになるか。これは研究がおろそかになる。指導がおろそかになる。本来、インターンの学生というものは八十人かそこらしか、一つの医科大学から卒業しないでしょう。その八十人から百二、三十人卒業する連中を、インターンで大学の病院がかかえることができないという実態です。演習林についても同じです。拠金作物をつくってうんと売らなければだめだ、こういうことになる。教育は二になる。指導は二になって、よけいに売れる作物をつくる、よけい金のとれる病人を見る、こういう形になってあらわれてくる。これは日本の農業教育なり、医学教育なり、あるいは一般の工学部でも同じことになってくる。それぞれ特定の何かの会社の、よけいに寄付をくれるところの研究はしてやるけれども、そうでないものはやらぬ、こういうことになる。必ずなる。よほどこれは注意してもらわないといかぬ。私は三十二年から調べてみたけれども、病院は二割以上の赤字です。その上、借り入れ金をしたりして赤字を解消する。それから借り入れ金の元利償還で必ず苦しむことになる。灘尾さんは大臣として厚生省におられたから、実態はよくおわかりだと思う。これは三十二年以来、三十七年一二一%、それ以前でも二割以上の赤字ですからね。当然、研究機関だから。こういう点について、あなた方は一体どう対策を考えておるのか。
  102. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 歳入の見積もりが過大ではないかというのがお尋ねの第一点でございますが、病院の収入について申し上げますと、ただいまの御指摘のとおり、大体二割ぐらいの赤字と申しますか、要するに項、大半附属病院の歳出予算と、それから歳入科目の大学附属病院の歳入額とを比較いたしますと、その比率が約八割ということになるわけでございます。この比率は大体近年動いてないわけでありますが、三十八年度と三十九年度を出校いたしますと、そこのところが急に上がっておるではないかというような点をまず御指摘になったわけでございます。三十八年度のこの比率でございますが、これは当初予算に計上いたしております歳出予算と、それからその歳入予算の比較で申しますと、御指摘のような関係になるわけでありますが、この点につきましては予備費をもって約八億の歳出の増加をいたしております。これと同町に相当額の歳入増も見込まれるわけでありますから、したがいまして決算の見込み額といたしましては従来と変わりなく、約八〇%程度の歳入があるというふうに考えております。三十九年度の歳入見積もりを特に多く見込んだという関係にはならないというふうに考えております。  それから農場、演習林につきましても同様でございまして、過去の収入実績において勘案をいたしまして、それぞれ歳入予算を計上いたしておるわけでありますが、対応いたしまする歳出予算とこの歳入予算を比較していただきますと、その比率はほとんど動いてないわけであります。むしろその歳入の割合がやや減少するような傾向になっておるわけであります。  それから大学病院はいわゆる赤字であるから、したがって借り入れ金の償還ができないではないかという点が第二のお尋ねの点かと思いますが、御指摘のように三足のわらじと申しますか、大学病院は教育、研究の機関であると同時に診療機関であるわけであります。教育、研究の面につきましては、これは赤字と申しますか、持ち出しになることは当然でございます。そこで大学病院の性格を、診療機関という面と、それから教育、研究機関という面にかりに分けて考えたといたしますと、診療機関という面につきましては国立病院とほぼ同様、大体収支相償うという、そういう言い方が可能ではないかと思います。したがいまして国立病院におきまして借り入れ金が行なわれ、その償還が行なわれておると同様、大学病院につきましてもその部分をとってみれば、償還は可能であるというふうに考えております。
  103. 滝井義高

    滝井分科員 この議論はいずれ機会をあらためてやります。  特別会計はそのくらいにして、次は、あと二つありますから、時間がございませんから簡単にいきます。  まず第一に、初等中等局長、この一般教材費ですね。この一般教材費父兄負担というものの占める割合というのは、法律では義務教育においては教材費を二分の一国が負担するということになっておるわけですが、これは父兄負担というのが相当ある。これは一体実態はどうなっているのか、それをちょっと説明してみてくれませんか。教材費負担区分ですね。三十九年度は一体どうするつもりなのか。
  104. 福田繁

    福田政府委員 毎年度の国庫負担金によります教材費は、漸次金額もふえてまいっておりますが、昨年は単価を約一〇%程度引き上げまして、同時にまた教材費の配当基準と申しますか、小規模学校に有利なように若干の基準の改定をいたしたわけでございますが、その上に三十九年度としては昨年の予算に比べましてさらに一億一千五百万ばかりの増になっております。ところで実際上は生徒児童が三十九年度は三十八年度に比べて相当数減りますので、したがってその生徒減を考えますと、実質は一億六千万ぐらいの増になろうかと考えております。これはもちろん理科設備を除いた一般教材費でございます。小中学校、盲学校、ろう学校に対する一般教材につきましてはこれは二分の一負担でございますから、国庫負担金で見ました二十三億円、それに対して半額は交付税等で裏打ちをするわけでございます。そのほかに理科設備がございますので、理科設備が約九億ございますが、両方合わせますと大体三十三億ぐらいになりますが、そういう金額に予算としてはなっております。その理科設備も二分の一でございますから、三十三億に見合うものとしては、それ以上の額が交付税で積算されるというのがいままでのやり方でございます。ところで少し古いのでございますが、三十七年度の教材費関係のいま御指摘のありました頂相区分を大体申し上げますと、三十七年度では教材関係が合計百三十七億でございます。この中で国、地方公共団体負担しておりますのが百十一億ぐらいでありますから、八一%ぐらいになるわけであります。残りの二十六億円、約一九%に相当しますが、これが大体父兄負担というような実績になっております。これは三十七年度であります。以上であります。
  105. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、それを一人当たりの学童について、国と都道府県と父兄と分けると幾らになるのですか。
  106. 福田繁

    福田政府委員 ちょっと計算しておりませんので、後ほど計算をいたしましてお答えいたします。
  107. 滝井義高

    滝井分科員 問題はそこにあると思う。そうするとこの百十一億の中で、国の負担する分というのは、去年のあれを見ても二十二億円ですね。理科教育その他を加えても三十億そこそこしかならないわけでしょう。そうしますと百十一億のうち、たとえば仮定で三十億見たとしても、国の持つ分というのは四分の一か五分の一にしかならぬわけですよ。無償ということは、地方自治体も加えて義務教育無償だ、それで半額を見るのだということも言えるかもしれぬけれども、私はもう少し国の持ち分をよけいにする必要があるのではないかと思うのです。これは全国の教育会議その他の一致した要望です。そういう計算になるわけでしょう。
  108. 福田繁

    福田政府委員 御指摘のように一般教材費につきましては、大体国が二四、五%という勘定になろうかと思います。
  109. 滝井義高

    滝井分科員 灘尾大臣、お聞きのように、理科教育その他を入れてだんだん父兄負担分というのが減るどころでなくて、ふえてきつつあるわけです。特に最近の十カ年間における義務教育父兄負担の状態を見ますと、これは倍増していますよ。池田さんの所得が倍増する前に、教育父兄負担が倍増しておる。そして、荒木さんがお隣にいらっしゃるけれども、去年も私ここで指摘したのですが、低所得階層の教育費が非常にふえてきておるのです。所得二十万円以下というのは、国民健康保険を見ても、被保険者の約七割を占めている。そして教育においても所得二十万円以下の負担というのは一割でしょう。一割が義務教育父兄負担になっていますよ。だんだん所得が上がるにつれて、五%、四%とずっと減っています。百万円以上になると、収入が多いですから、一%かそこらになる。ところが低所得階層の子弟に対する父兄負担というものは一割ですよ。そうすると二十万かそこらしか取っておらないのに、一万何千円とか二万円近くの義務教育費を払うということは、これは家庭にとってはたいへんなことなんです。特にその中で教材費とか給食の金というのは、非常に大きな比重を占めてくるわけです。だから私は低所得階層中心のこういう経費軽減をやるとすれば、この教材とかあるいは給食とかいうような毎月金を持っていかなければならないものに、政策の重点を置いてしかるべきだと思う。そうでないと、特にわれわれの炭田地帯のような貧しい子供が多くいるところになると、教師がその金を自分で立てかえなければならぬ。理科その他図工をやるにしても、材料を持ってこなければ教育はできないわけですからね。こういう点について何かほんとうに革新的な低所得階層対策――特にこれは農業と中小企業あるいは一部勤労者というようなものに多いわけですから、農業、中小企業の革命的な近代化をはかろうとするならば、教育における二重構造に対して何か前進的な施策をとる必要があると思うのですが、どうですか。
  110. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育費についての父兄負担を合理的に、また軽減をしていくということは、私もきわめて大切なことだと思います。政府も年来この方面に努力はしてまいってきておるわけでありますが、決してこれで足れりというわけにはまいらないと思います。さらに努力を続けまして、父兄負担をもっと合理的にし、かつまた軽減をしていく方向に向かって前進いたしたいと思います。
  111. 滝井義高

    滝井分科員 次の給食の問題に移ります。昨年荒木さんが文部大臣のときに、教科書無償配付と学校のミルク給食を打ち出していただいて、昨年の文教政策における二大支柱として、非常にいわば大衆受けしたわけです。ことしは灘尾さん、人柄がじみだから、文教行政にまんべんなく予算が取れたという形になっておるわけです。しかし政治は連続し、続いております。そこで私は昨年ミルク給食の御質問を申し上げて、これは三十八年六月には全国必ず実施するのだということを、体育局長がおっしゃったわけです。一体現状はそういうことになったのかどうか。それから荒木さんがここにおられますが、私大きい声を出してお願いして約束してくれた低所得階層は、ほんとうに無料でやられておるのかどうか。どうもことしの予算を見ると、そういう給食の経費が低所得のところを見てもはっきりしない。したがって第一に、実施はほんとうに全国的にうまく行なわれたか、その一番の問題はミルク給食をやる施設――これは金を出さずに交付税でやった。そのために自治体は交付税で金をもらっておるのかもらわないのかわからぬで、ぐずぐず文句を言っておった。それがどう解決したか。それからいま言ったように低所得階層はほんとうに無料で飲ませられておるのかどうか。あのときは中学校が二十円前後で小学校が十五、六円、一カ月その程度でやりますというお話だったと思うのですが、そこらの三点について御説明願いたい。
  112. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 現在までどのくらいミルク給食が普及しておるかということでございますが、現在までのところを申し上げますと、十一月末で全国の統計をとって全部プラスした統計でございますが、それによりますと、小学校につきましては学校数で申しますと八七・一%、児童の数で申しますと九三・七%、中学校につきましては学校数で見まして七二・三%、生徒数にしまして七一・八%でございます。これは現在実施しておりますものと年度内に実施するというものを加えた数字でございます。  次にミルク給食の金額でございますが、金額は昨年申し上げた学校渡し、小学校につきましては六十一銭でありまして、いろいろ調理をして最後に子供が飲む、それが大体一円十一銭程度でまかなっておる実情でございます。したがってこれを十七日とすれば約二十円、月によっていろいろ違いますが、二十円前後と言ってよろしいかと思うのでございます。  それからミルク給食を進行させております途上におきまして、なま牛乳を大いに使う、こういう問題が起きてきまして、混合してこれを使っていくというやり方をとったわけでございます。したがいまして混合いたしますと、学校で消毒等の問題もありまして、現在までのところはすぐそう簡単にできなかったものでございますし、速急にその年に始めたわけでございますので、そういうのは委託をいたしました。そういうような委託をしたことを許したわけでございますが、こういうものは少しく高くなりまして、四円前後というような学校もございます。  それから最後の問題といたしまして、低所得者に対する対策ということで、前大臣のときに先生からのお話がございまして、お約束いたしましたことにつきましては、昨年の五月全国に通牒を出しまして、ミルク給食に対する準要保護児童の手当てはいたしました。そして来年度につきましては、それももちろん、それからなま牛乳についても手当てをして計数を出しております。
  113. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、なま牛乳を混合して使うというのが、予算書を見ますと七が六千二百十六トン、そのうち牛乳使用一万百四十トン、こうなっておるわけです。七万六千のところに一万ぐらい牛乳を使うわけです。そうしますと牛乳を使うところ、使わない、混合するところとしないところがあるわけでしょうか。月二十円くらいのミルクの給食費が、牛乳を混入をしたときには一体幾らくらいになるのでしょうか。
  114. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 学校で調理をいたします場合と、それからいまも申し上げましたように急にやりましたものでございますので、学校の希望によりましては、業者に委託をいたしましてやりましたものがございます。業者に委託いたしましたものにつきましては、おおむね四円前後でございます。四円前後でございますが、町村によりましてこれを補助をいたしまして、画一的に五十銭補助とか、あるいは一円補助とか、まあ二円補助という土地もございます。したがいまして、そういたしますと、四円から二円を引けば残り二円、こういうことになるわけでございまして、町村によりまして相当迷いがございます。しかし補助なしといえば四円前後、委託費の場合はそういう例がございます。
  115. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと一日四円ですね。月二十四円となることになるのですか。それとも牛乳が入るときは一日四円だけ増加をしていくということになるのですか。
  116. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 一日四円でございます。牛乳を飲まないから四円という意味だけではございません。委託制度によってプラントに頼んだ。学校でミキサーでかき回して、それになま牛乳を入れるという方式は、なかなか実際上衛生上むずかしいものでございますから、それをプラントに頼むわけでございます。そうするとプラントに粉を持っていってかき回して、それになま牛乳を加えて、そうしてびん送いたしまして、そしていわゆる普通の牛乳と同じようなかっこうの牛乳びんに入れて、そして学校へ運んでくる、そういう方式も急場にやりましたので、許可いたしたわけでございますが、そういう場合には四円くらいのものもございます。
  117. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、脱脂粉乳となま牛乳をまぜたものは四円になるので、一カ月にしたら児童負担する分は十七日かける四で六十八円になる、こう了解していいですか。
  118. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 さようでございます。
  119. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、この義務教育学校におけるミルクの給食助成で、脱脂粉乳については百グラムについて四円の国庫補助金があるわけです。その場合に牛乳については補助金がないわけですね。これはいまのように市町村がやるから……。そうすると、ここに不合理が起こってくるわけですよ。したがって私は小さいことを言うようであるけれども、大事なことです。食いものの話は詰めておかぬといかぬですから……。だからこれはやはりこの予算書で脱脂粉乳だけではなくて、この前私が言ったのを繰り返すわけではないけれども、完全給食ができないところの学校に、いわゆる貧しいところの学校にやるわけです。これはこの前からその理論になってきているわけです。そこで荒木さんが英断をもって、当時の賀屋政調会長さんと組んで、約四十億の金をお取りになってやったのですから……。そうしてこれを貧しいところにやるということになれば、脱脂粉乳だけでは栄養がない。アメリカでは牛や馬が食っている。何で日本のかわいい子供に牛や馬の食べるものを食わせられるのだ。それではなま牛乳を加えて栄養を添加しようということになった。したがって当然予算を組むときには、あれだけ世論が起こっているのだから、やはり牛乳について何ぼかの割り当てを考えるのが筋ですよ。ところが予算書を見ると組んでいない。一体これをあなた方はどう見るか、伺いたい。
  120. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 なま牛乳の問題に移ったわけでございますが、なま牛乳は従来ともやっておりまして、本年度二十二万石をやりました。来年度小中学校については三十九が石、高等学校について一万石、合わせて四十万石使用いたす計画でございます。そのなま牛乳分を先ほどお話にございました一万トン相当の三十九万石、その一万トン相当は脱脂粉乳の輸入を減らした、こういうわけでございまして、そこでそれに対する補助の問題でございますが、これは農林省の予算に組まれておりまして、なお牛乳は従来一合について三円七十銭ずつ補助があったわけでございます。それを三十九年度につきましては、一合について四円五十銭ずつ補助をいたすことになっております。これは農林省の予算に組まれておりまして、農林省から補助金として支出するわけでございます。こちらからまたそれに対して追いかけの補助をするということになりますると、国の補助が同じものに対して二重の補助になるわけでありまして、したがいまして私どもは農林省の補助金でもって児童は安く飲める、こういう考え方を持っているわけでございます。
  121. 滝井義高

    滝井分科員 わかりました。そうしますと、この一万トンにはすでに農林省から補助金がついておるので、脱脂粉乳だけの百グラム四円をやったのだ、こういうことですね。そうしますと、今度は低所得階層の児童が混合脱脂粉乳を飲む場合には、当然その牛乳分だけはついたから出さぬというわけにはいかぬから、これはやはり出してくれるのでしょうね。
  122. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 なま牛乳の分に対する低所得者層である準要保護児童に対する手当ては、三十九万石分に対して入っております。
  123. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、少なくとも生活保護はもちろんだけれども、低所得階層のあの七%か何か見ていますね。あの学童は全部無料だ、こういうことになるわけですね。
  124. 前田充明

    ○前田(充)政府委員 さようでございます。それでこれは数字的に申しますと、五円三十銭の父兄負担、これは牛乳の値段でございまして、必ずしも一年じゅう絶対同じであるということには相なっておりませんですが、五円三十銭の父兄負担でございますれば、従来より、従来でも五円三十銭の父兄負担でございますが、今度三円七十銭のほうが四円五十銭の補助になりますと、その分だけ同じ価格であれば父兄負担は減るわけでございます。準要保護児童については、もちろんそういうものも全部国の角抵でございます。そういうことでございます。
  125. 滝井義高

    滝井分科員 無料になりますね。はい、わかりました。それでけっこうです。ありがとうございました。
  126. 相川勝六

    相川主査 午前の質疑はこの程度にとどめ、来たる二十日、文部省所管質疑を続行することといたします。  午後は本会議散会直後再開し、外務省所管質疑を行なうこととし、暫時休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十五分開議
  127. 相川勝六

    相川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。横路節雄君。
  128. 横路節雄

    横路分科員 外務大臣にお尋ねをしますが、原子力潜水艦の寄港問題について、暮れまでの国会ではわりに論議されましたし、政府のほうからもいろいろ経過について御答弁がございましたが、通常国会になりましてからあまり論議されておりません。その後の外交交渉は一体どうなっているのか、その点についてまだ通常国会でお尋ねをしておりませんので、この際あらためてお尋ねしたい、こう思う次第です。
  129. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中間報告を国会へ御提出申し上げて以後、なお究明を要する点が若干ございますので、その点をアメリカ側と接触を持ちまして、究明中であるというのが今日の段階でございます。いずれこれは明らかになりますれば、政府部内で科学技術庁の方面とも相談いたしまして、政府として処理をするつもりでおりまするけれども、まだその段階に立ち至っておりません。
  130. 横路節雄

    横路分科員 いま外務大臣から御答弁がございまして、究明する点が若干ある、こういうお話ですが、その究明する点が若干あるというのは、どういう点ですか。その点それだけでは私どもよくわかりませんので、何が究明する点なのか、その点をひとつお答え願いたい。
  131. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いずれこれは国会にも御報告する段階があろうと思いますが、いまの段階では、どういう点についてどうやっておるかということは、この席上で申しかねるわけです。先方の返事がはっきりいたしまして、政府でそれを検討を終えて、それからさしていただきたいと思います。
  132. 横路節雄

    横路分科員 しかし、いまの外務大臣お話で、原子力潜水艦寄港問題というのは、国民に与える影響というのは非常に大きいわけです。この国会に入ってから十分審議されておりませんから私がお尋ねしているんですが、究明する点が若干ある、しかしそれはいま報告する段階ではないというお話ですが、国民に疑惑を与えないという政府の立場からすれば、何が究明する点なのか、この点はこの国会の審議を通じて外務大臣は明らかにする責任があると私は思う。いまおっしゃっていなければいいんですよ。しかしいま究明する点が若干あるんだ、それが問題になっておるんだ、こうおっしゃるんですから、この際究明する点とは何なのか、この点についてひとつお聞かせいただきたい。
  133. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私も明らかにしないとは言っていないのです。いずれ国会を通じて国民にはっきり御報告する機会があろうと思います。いまの段階はアメリカと折衝中でございますので、しばらく差し控えさしていただきたいと申し上げておるだけです。
  134. 横路節雄

    横路分科員 何が若干の問題点なのか、これから私は具体的な問題でお尋ねします。その前に、私も外務委員会その他の速記録を読んでみたのですが、はっきりしない点がありますからお尋ねをするのですが、原子力潜水艦が来るというのですが、どの原子力潜水艦が来るのですか。この点は、私国会の速記を読んでみましたが、どの原子力潜水艦が来るということは、まだ一度も外務大臣から言われてないわけです。どの原子力潜水艦が来るのですか。
  135. 大平正芳

    ○大平国務大臣 原子力を推進力として動く潜水艦のことでございまして、そしてこの潜水艦は原子兵器というものを搭載していない潜水艦になるという趣旨のことはたびたび申し上げてあるはずだと思います。
  136. 横路節雄

    横路分科員 それは何型の原子力潜水艦なんですか、何型の。ただいまお話のように原子力兵器を積んでない潜水艦だ。そういうことを言えば一あなたはどういう意味のことを言っているのかわかりませんが、何型の原子力潜水艦が来るとアメリカは言っているのですか。
  137. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私も兵器学者ではございませんので、私ども承知しておるところでは、いわゆるノーチラス型というように聞いておりますが、私どもが関心を持っておりますのは、この原子力潜水艦が原子兵器を搭載しておるかどうかという点が関心事でございまするが、そういうものではないんだということで承知いたしております。
  138. 横路節雄

    横路分科員 それでは外務大臣にお尋ねしますが、いま外務大臣はノーテラス型原子力潜水艦が来るんだ。それはアメリカ側からそういう通告があったのですか。ノーチラス型原子力潜水艦を日本に寄港させたい、こういうお話ですか。
  139. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは去年の一月九日にアメリカからの話があったわけでございますから、そのときの書類をよく調べてみないと――私、いま手元に持っていませんが、なおよく調べてみますが、私が了解しておるところでは、いま申し上げたように、単に原子力を推進力としておるにすぎない潜水艦であるというように承知いたしております。
  140. 横路節雄

    横路分科員 いや、いま外務大臣がノーチラス型原子力潜水艦である、こういうふうに御答弁なすったから聞いているのです。何型とは言ってないのですか。言っているのでしょう。国会では一般的にノーチラス型、ノーチラス型と言っているんだから、私はあらためて聞いているのです。私はこの問題について外務大臣にお尋ねするのは初めてなんですが、私も別に専門家ではありませんから、ひとつぜひ何型が来るのか、アメリカからどう言ってきたのか……。
  141. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 米国が寄港を希望いたしておりますのは、いわゆるノーチラス型潜水艦であります。現在のアメリカの原子力潜水艦の分け方にはいろいろございますけれども、大別して、いわゆるノーチラス型潜水艦及びポラリス型潜水艦、そういう二つに大別いたしますと、いわゆるノーチラス型潜水艦を寄港させたい、こういう申し出でございます。
  142. 横路節雄

    横路分科員 どうもいまのお話は違いますね。ノーチラス型原子力潜水艦というのは一つしかないのですよ。これは一九五四年の一月に進水して、一九五四年の九月に就役したのがノーチラス型原子力潜水艦第一号艦、これだけですよ、ノーチラス型というのは。いまあなたが言うのは違うですよ。原子力潜水艦を二つに分けて、ノーチラス型原子力潜水艦とポラリス型原子力潜水艦、そういう分け方はないですよ。私の手元に資料があるのですよ。第一号艦から全部ここに資料を持っているのですよ。そういう分け方はないのです。  そうするとあれですか、ノーチラス型原子力潜水艦が来るということになれば一号艦だけですね。あらためて私のほうからお尋ねしておきますが、一九五四年の一月に進水をして、一九五四年の九月に就役をしたノーチラス型原子力潜水艦、いわゆる第一号艦、これだけが来るのですね。あとは絶対来ないのですね。
  143. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 これは昨年衆議員の外務委員会に資料として提出いたしました原子力潜水艦の装備についてというものを見ていただきますとそれによりますと、私どもは通常の原子力潜水艦、レギュラス搭載の原子力潜水艦並びにポラリス搭載の原子力潜水艦、この三つに分けております。ところが、レギュラス搭載の原子力潜水艦は一隻でございますので、アメリカの原子力潜水艦を大別いたしますと、私どもが申しておりまする、いわゆるノーチラス型潜水艦、これとポラリス潜水艦、こういうふうに分けているわけでございます。したがいまして、私どもがノーチラス型潜水艦と申します場合には、ポラリス型潜水艦以外の原子力潜水艦全部を申しておる、こういうふうに御了解をいただきたいと思います。
  144. 横路節雄

    横路分科員 たいへん恐縮ですが、これは私、資料は政府関係からいただいたのですよ、これは防衛の専門家からいただいたのですよ。ここで読んでみますから……。  わが国では、ノーチラス型、ポラリス型という呼び方をする向きもあるが、ノーチラス型という呼び方でポラリス搭載艦以外のものを総称することは妥当ではないと思われる。こういうふうに言っている。だからあなたのほうで――これは私、政府機関に要求してもらったのですよ。だから私が何が来るのかと速記を調べてみると、ノーチラス型だ――ノーチラス型というのは一つしかない。第一号艦しかない。したがって私は、いまだかつて聞いていないのだから、おかしいじゃないか、何が来るのか聞いてみたい、こう思いまして、同じ政府機関のほうに要求をしてとりましたら、そうではない、妥当ではないと書いてある。あなたのほうでノーチラス型ということになれば、第一号艦一つになる。これは政府機関からいただいた資料ですよ。一号艦だけ来るのですか、一号艦だけよこしたいといったのですか、何をいってきているのです。
  145. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 いわゆるノーチラス型と申しますのは通俗的な分け方でございまして、もちろんアメリカとしてノーチラス号そのもの一隻だけをよこす、こういう意味ではないわけでございます。アメリカ海軍が分けております分け方によりますと、いわゆるSSNというのがございます。それからSSBN、それからSSGN、こういうのがございまして、いわゆる私どもがノーチラス型と申しておりますのはこのSSN型、こういうふうに言うわけでございます。ただSSNということだけではあまり了解が得られませんので、いわゆる本質においてノーチラス号とあまりその性能、装備において相違がない、そういうものを全部ひっくるめて、いわゆるノーチラス型、こう申しておるわけでございます。
  146. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、あなたの説明からすれば、この原子力潜水艦はポラリス型原子力潜水艦以外の攻撃型原子力潜水艦総体を言っているわけですね。一番最初のあなたの説明はそうだったでしょう。あなたの一番最初の説明は、私忘れませんが、ノーチラス型とポラリス型だ、ポラリス型以外だということになると、ノーチラス型というのは一号艦しかないのだ。一号艦しかないのだからノーチラス型第一号艦。そうすると、ポラリス型原子力潜水艦以外の攻撃型原子力潜水艦、一般的には攻撃型原子力潜水艦という呼び名が正しいわけだ。そうすると、これはポラリス型以外の攻撃型原子力潜水艦全体をいっているのだ、こういうように解釈してよろしいですね。あなた、それをはっきりしてください。
  147. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 そのとおりでございます。アメリカがいわゆる攻撃用原子力潜水艦といっておるのがそれでございますけれども、厳密には、先ほどいわゆるノーチラス型及びポラリス型に大別いたしましたが、もう一つだけレギュラス搭載の潜水艦がございます。そういうものを含めていわゆるノーチラス型と申してはおりますけれども、専門的な用語ではアメリカ海軍では攻撃用潜水艦といっておるのが主たるものでございます。
  148. 横路節雄

    横路分科員 それでだいぶはっきりしてきたわけです。ポラリス型原子力潜水艦以外の攻撃型原子力潜水艦全体を政府のほうでは一般的にノーチラス型原子力潜水艦、こういっておる。厳密に言えばノーチラス型原子力潜水艦というのは第一号艦だけしかない。この問題はあとでまたお尋ねをします。  次に外務大臣にお尋ねしたいのですが、これは安保条約との関係がありますからお尋ねをしたいのですけれども、これは佐世保、横須賀に寄港させたいというのですか、それとも安保条約に基づいて寄港させたいのか。どうもそこら辺が私委員会の速記録を読んでも――私ここに実は去年の外交、防衛に関して全部を収録した速記録を持ってきているわけです。どうもその点がはっきりしませんので、もう一ぺんお尋ねをしたいのですが、原子力潜水艦はアメリカからどこに寄港させたい、こういうお申し出があったのですか。
  149. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいままでアメリカから申し出があったのは横須賀と佐世保です。
  150. 横路節雄

    横路分科員 外務大臣、私はその点についてお尋ねをしたいのですが、この間衆議院の本会議で池田総理は安保条約に基づくアメリカの権利である、こういうように答弁しておりますね。河野密氏の直間に答えて、安保条約に基づくアメリカの当然の権利である、こう言っている。アメリカの当然の権利であれば、第五条にいうところの日本がアメリカに提供している施設、区域を利用して、また合意議事録によって日本のあらゆる港に入れるわけです。この間私が、御承知のようにその点を南ベトナムとの関係で聞いたら、そのとき私はいわゆる開港、貿易港だけいうのだ、施設区域を提供しているほかに貿易港だけをいうのかと思ったら、日本のあらゆる港にアメリカは入る権利がある、こう言っていますね。そうすると、安保条約に基づくアメリカの権利として日本のどこの港にも入れてください、入りますよ、こう言ってきたのか。原子力潜水艦には何か特別な事情があるから、安保条約ではなくて、横須賀、佐世保だけに入りたい、こう言ってきたのか。その点なかなかはっきりしない。安保条約について詳細に議論した私たち当時の委員の立場からすれば、その点が明確でないわけです。どっちなんです。安保条約に基づく当然の権利であれば、第五条にいう施設、区域を提供したあらゆる港に入ってくる。おまけに合意議事録で貿易港にも入る。そればかりではなくて、この間の政府の説明によると、貿易港以外にも入るのだ、こうなっておる。これはどうなんですか。原子力潜水艦が横須賀、佐世保だけに入りたいですというのは、安保条約にいうアメリカの権利として要求してきたのか、それともそうでなくて、安保条約と関係なしで、すまないが――何か別なので、外交上の慣例で言ってきておるのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  151. 大平正芳

    ○大平国務大臣 安保条約の解釈といたしましては、たびたび申し上げておりますように、原子力潜水艦といえどもアメリカの軍艦でございますから、アメリカの軍艦として安保条約上日本の施設の中に入る権利を与えられておると思います。したがいまして、この原子力潜水艦の問題は、安保条約上の協議をいまやっておるというのではなくて、本来条約の解釈から申しますと、日本側と別にことさらこの寄港云々の問題を協議する必要はないわけでございましょうが、これは高度の政治判断といたしまして、日本側の感触をアメリカ側が日本政府に聞いてきたということでございまして、いま現にやりとりをしておるのは、そういう政治判断に基づいて事実上やっておる照会と私どもは心得ておるわけでございます。そして佐世保、横須賀に寄港したいというのは、さしあたりこちらが一体入るとすればどういうところをあなた方は考えられておるかと尋ねたら、先方が横須賀、佐世保を希望しておる、こういうことでございます。
  152. 横路節雄

    横路分科員 いま外務大臣お話のように、安保条約にいうアメリカの権利ですね。そうすると、横須賀、佐世保ばかりでなくて、第五条にいう施設、区域を提供しておるところには入ろうと思えば全部入れますね。それから一般の貿易港にも入れますね。それからこの間の、合意議事録によって、私はそうでないと思ったが、皆さんのほうで、貿易港以外でも入れますね。その点はどうなんです。原子力潜水艦はあらゆる港に全部入れるのですね。これは非常に大きな問題です。その点政府としては当然入る権利がある、こういうようにお認めになるのかどうなのか。
  153. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は原子力潜水艦もアメリカの普通の軍艦と安保条約上の取り扱いはちっとも変わらぬと思います。
  154. 横路節雄

    横路分科員 わかりました。これもいま明らかになったことですが、いままでの国会の論議は、原子力潜水艦についてはアメリカが横須賀、佐世保にだけ寄港を希望しておる、だから政府はそれだけに限定しておるのかと思ったら、いまの御答弁で安保条約にいうアメリカの権利だから、第五条にいう施設、区域を提供しておる港に全部入れる。そればかりではない。合意議事録にいうところの貿易港にも入れる。そればかりではない。私はそうでないと思ったが、この間の衆議院の予算委員会では、皆さんのほうで貿易港以外にも入れる。そうすると、原子力潜水艦は安保条約にいう施設、区域を提供しておる佐世保、横須賀それから貿易港、その他、貿易港以外、アメリカが入ろうと思えば入れるのですね。その点だけ明らかにしてもらいたい。
  155. 大平正芳

    ○大平国務大臣 安保条約上は可能でございます。
  156. 横路節雄

    横路分科員 次に私はお尋ねしたいのですが、施設区域を提供しておる横須賀、佐世保その他については、安保条約第五条でいうには通報の義務はないわけですね。入って出られるわけです。全然通報の義務はない。これは同様に通報の義務はないわけですね、施設、区域を提供しておるところには。貿易港にはありますよ。その点はどうなんです。
  157. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、いま原子力潜水艦の寄港問題は高度の政治問題としてやっておるわけでございまして、権利義務というような観念からでなく取り扱っておるわけです。
  158. 横路節雄

    横路分科員 どうも私の質問に、いまあなたはそういうように――私も時間の制限があってお聞きをするのです。そういうように一ぺん答弁をしたのをもとに戻していただいては困るわけです。私はもう一ぺんお尋ねします。私がいまお尋ねしたことについてあなたは答えてないわけです。私はもう一度前の段階で聞きます。安保条約にいうアメリカの権利だから、高度の政治判断云々といっても、アメリカの権利だからと本会議で総理が答弁をしている。そうすれば第五条にいう施設区域を提供しているいわゆる軍港といいますか、そのほかに合意議事録でいう貿易港、おまけに私はないと思ったが、合意議事録にいう貿易港以外にも入ろうと思えば入れるんですね、と聞いたんです。あなたはそうですと答えた。そうですよね。その点は入ろうと思えば入れるんですね。その点ははっきりしてください。何かもとに一々戻されては時間が倍になるのです。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 だから普通の軍艦と全然同じですと先ほど申し上げたとおりであります。
  160. 横路節雄

    横路分科員 そこでもう一度お尋ねしたいのですが、そうすると普通の軍艦と同じですから、横須賀、佐世保に入ってくるときも通報の義務はないですね。すっと入ってまた二、三日いて外へ出ていく、その点どうですか、普通の軍艦と同じだから。
  161. 大平正芳

    ○大平国務大臣 条約としてはありません。
  162. 横路節雄

    横路分科員 そうすると私はまことにこれはおかしいと思うのですが、参議院の外務委員会で去年の二月の二十一日です、岡田宗司委員の質問に答えて、竹内さんというのはいまの方ですか、あなたはこう答えているじゃないですか。原子力潜水艦については横須賀、佐世保に入る場合には日本側に通報あると承知している、これはどういうことなんです。私は実はこれを詳細に読んだんです。全部読んだところが、あなたはそういう答弁をしている。いま安保条約にいうところの権利であるならばそんなことはないのに、どうもあなたたちの答弁というのは、その場をいかにしてごまかすかということではないでしょうか。これは間違いなら一まあ三十八年二月二十一日参議院外務委員会における岡田宗司委員の質問に答えて、あなたは間違ってましたら間違ってましたとすなおに言ってもらいたい。
  163. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 昨年参議院の外務委員会でお答えしたとおりでございまして、条約上は通報の義務はございませんけれども、アメリカ側の意向としましては、入港にあたりましては原子力潜水艦に限って特に日本側に通報いたしますと、こう申しております。したがいましてアメリカの原子力潜水艦はほかの軍艦と同じように、施設区域はもちろん日本の港にも出入する権利はありますけれども、それにもかかわらず日本の横須賀、佐世保に入港することについてアメリカ側から日本側の意向を聞いてきておる、こういう状況でございます。したがいまして現在中間報告にも報告しておきましたけれども、アメリカ側が考えておりますのは、佐世保、横須賀にのみ寄港したい、こういう申し入れでございます。
  164. 横路節雄

    横路分科員 あなたはそういうことを言っても、安保条約はそうなってないですよ。安保条約はどうなっているんです。いいですか、安保条約はこうなっているんです。それは施設区域を提供しているところには通報の義務はない。しかも一般貿易港についても緊急やむを得ざる場合においては通報しなくてもいいんです。しかもこの間の議論で貿易港以外にまで入れることになっている。これはアメリカ側の判断なんですよ、緊急やむを得ざる事態というのは日本の判断ではないんです。アメリカ側が判断すれば、緊急やむを得ざる事態と思えば一般貿易港にだって入れるんです。いま外務大臣は、安保条約にいう原子力潜水艦というのは一般軍艦と同じなんだ、何も変わりがないんだ。だからおっしゃるとおりどこにも入れます、こう言っているのです。私はこの問題についてはもっとお尋ねしたいのですが、たくさん問題がありますから次に移りますが、いまの外務大臣の御答弁とあなたの答弁とは違うですよ。  次に私がお尋ねしたいのは、先ほど外務大臣から若干の究明する問題点がある、こう言うたのですが、この若干の問題点の中の一つだと思うのですが、原子力潜水艦による放射性廃棄物の海洋投棄の基準、この問題ですね。この問題はアメリカのいわゆる原子力潜水艦による放射性廃棄物の海洋投棄の基準は米国標準局要覧五十二号についている。そうですね。この基準は古い基準なんです。そうしてこれは国際放射線防護委員会、これできめているが、アメリカのは一番古い基準で、日本のいわゆる原子力研究所その他における原子炉からする廃棄物については廃棄、海洋投棄に関しては、これは日本は二回目なんですね。この点はおそらく皆さんのほうで外交交渉をやっていらっしゃるでしょう。やっているでしょう。去年の八月十一日の日曜日に私はテレビを見ていた。午後七時のいわゆるニュース解説でやっている。外務省はアメリカに対して、アメリカの海軍に対して日本と同じような基準でやってくれ、こういうように申し出をしたら、何をおっしゃいますか、日本だけにやれば世界各国にやらなければならぬから、そういうことはできません。私はいまでも記憶新たなんです。そこでこの間、この資料も皆さんのほうの政府関係機関からいただいたのです。この点はどうなっているのです、大平さん、私は何もほかの資料でやるのではない。政府のほうからいただいた資料でやらなければ、あなたたちそんなものうそだということを言うにきまっている。これは政府のほうの機関からいただいた資料です。この点についてはいまどうなっているか、これが一つの問題点です。どうなっている。現に向こうから断わられているじゃありませんか。
  165. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 ただいま横路委員が引用されましたアメリカ海軍の放射物の基準というものはスキップジャック号上の公聴会の記録についているものであると思います。それは御指摘のとおりアメリカの標準局のハンドブックの古いハンドブックについているものであります、ただそれがその後わが国におきましては新しい国際放射能防護委員会の基準に従いまして改正されましたので、それとの関係につきまして、そういう問題を含めまして、目下アメリカ側といろいろ照会を行なっておるのでございます。
  166. 横路節雄

    横路分科員 いま何ですか、はっきりしなかった。行なっているようですというのですか、行なっているというのですか。
  167. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 行なっているところであります。
  168. 横路節雄

    横路分科員 この点が一つの問題点だと思う。先ほど外務大臣が言った究明する点の若干の問題点があるという。これは一つなんです。これがアメリカは五十二号の古い基準だし、日本の六十九号との差の食い違いがある、これはどうなんですか。いままで何回交渉をやったのです。この問題について何回交渉したのですか。
  169. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 何回やりましたか記憶いたしておりませんけれども、あまり活発ではありませんけれども、随時行なっております。
  170. 横路節雄

    横路分科員 どうもこの点については断わられっぱなしになっているじゃないですか。わずか二回やっただけでしょう。二同やっただけ、その後何も合議に達していないじゃないですか、これはアメリカ局長、いつごろ合議に達する見込みなんですか。
  171. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 これは専門的なことで私自身もはっきりいたしませんけれども、なお若干の時間を要すると思います。
  172. 横路節雄

    横路分科員 どれくらいですか、なお若干というのは、一週間とか、十日とか、二十日とか一月とか、二月とか、若干にいろいろあるのですが、大体どれくらいなんですか。
  173. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 ただいまどのくらいと申し上げることは困難でございます。
  174. 横路節雄

    横路分科員 この問題は、あと一つだけ聞いておきますが、日本は六十九号でやっているのだから、これは日本がやっている六十九号の基準に合わなければ承諾しないのですね。この点だけはっきりしておきたい。
  175. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま鋭意折衝中でございまして、われわれのほうでデータを得ましたら、政府部内の専門家の意見も聞きまして、善処したいと思っております。問題は安全性の解明でございます。安全性につきまして、政府が責任を持てるという自信を得るか得ないかの問題だろうと思うのでございまして、自信が得られたら処理いたしたいと思っております。
  176. 横路節雄

    横路分科員 先ほどのアメリカ局長の御答弁で、日本に来る原子力潜水艦はポラリス型原子力潜水艦ではない攻撃型原子力潜水艦が入るのだ。ノーチラス型原子力潜水艦は一号艦だけなんだ。そこで私が外務大臣にぜひお尋ねしたいのは、「朝雲」という新聞で――「朝雲」の編集室は防衛庁の一号館にある。ここにいわゆる対潜水中ミサイル・サブロックについて――これは本会議で河野委員も質問しましたが、十二月四日「米海軍では数年前から研究、開発を進めてきた潜水艦に装備する対潜ロケットサブロックが作戦使用段階に入った」ということを言っている。そうすると――ここへ写真を持ってきておりますが、先ほどアメリカ局長の答弁で、これはポラリス川原子力潜水艦ではない、攻撃型原子力潜水艦である。そうすると、このサブロックをつけるのはポラリス型原子力潜水艦ではないのだから、攻撃型原子力潜水艦に対していよいよ実用の段階に入った、こう言っている。これは決してうそでない。そうすると日本に来る原子力潜水艦は、いま申し上げたように攻撃型原子力潜水艦で、いよいよ十二月四日アメリカ海軍ではサブロック――これは御承知のようにいわゆる核弾頭がついている。いよいよ攻撃型原子力潜水艦にサブロックをつけて、これが実用段階に入った、こう言っている。そうすると、皆さん方のほうで、原子力潜水艦はいわゆる原子力兵器ではない、核兵器を積んでないからだいじょうぶなのだということは、この十二月四日のアメリカ海軍省のこれで基本的にくずれているじゃないですか。この点はどうなんですか。
  177. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 昨年十二月四日の国防省の発表は、サブロックは実用段階に近づきつつあると言っておりまして、実用になっておるとは申しておりません。  それから確かにこの発表にはその弾頭といたしまして、核という記述がございます。しかしながら、この点につきましては、従来からサブロックは核と非核と両用である、こういうことでございましたので、私どものほうでアメリカ側に確認いたしましたところ、これは主として核弾頭を考えておるけれども、必ずしも全部がそうであるとは言われない、こういうことでございました。
  178. 横路節雄

    横路分科員 サブロックについては核弾頭がついておる。しかしついてないものもある。しかし、どうも私は、外務省のやり方を見ていると、核兵器の日本に対する持ち込みに対してはなはだ無関心だと思うのです。あなたたち全然肝前協議をやっていないでしょう。私はひとつ外務大臣にお目にかけますけれども、これは日本の港、横須賀に十一月十八日から三十日まで入ったアメリカの第七艦隊の誘導弾巡洋艦ガルベストン、一万四千六百トン、それに積んであるタロスです。これは明らかに核弾頭つきです。あなたたち、そういうことを全然考えてないじゃないですか。お調べになったことがありますか。しかも入っておるのですよ。私は、もっと詳しく言えば、入った日にちは何日と全部ここに記録がある。どうですか。一万四千六百トンの第七艦隊誘導弾巡洋艦のガルベストンにはついておるじゃないですか。見てごらんなさい。これはどうなんですか。
  179. 竹内春海

    ○竹内(春)政府委員 タロスにつきましては、前の国会で問題になったことがございますけれども、防衛庁の専門家からは、タロスが核、非核両用であるという説明があったと思います。したがいまして、タロスを積んでおるから、必ず核弾頭を持っておるということは言えないと思います。
  180. 横路節雄

    横路分科員 これを見てごらんなさい。この写真は誘導弾巡洋艦のガルベストンです。これは私は専門家に見てもらった。これは何だと言ったら、これは核弾頭つきだ。核弾頭がついておるじゃありませんか。もう一つ指摘しましょうか。この間、私が十一月一日の南ベトナムのクーデターのときに、横須賀、佐世保にはアメリカの第七艦隊は一隻もおらぬ、全部出ておる、こういう指摘をしました。その中心は攻撃空母コーラルシー、これは新聞にも載っておる。六万三千四百トン。それからもう一つは対潜支援空母キアサージ、三万八千五百トン。この写真がこれに積んでおる飛行機です。これはグラマン・ホークアイ。これをこの空母に積載しておる。そしてこれはどこに核弾頭を積んでおるかというと、ここに核弾頭を積んでおる、核兵器を積んでおる。それを引き伸ばしたのがこの写真です。これが核の爆雷弾のルルというのです。みんな積んでおるじゃないですか。あなたたち積んでない、積んでないと言うのは何を言うのですか。積んでいるじゃないですか。しかも、いま申し上げたようにコーラルシーにしてもキアサージにしてもちゃんと入っているじゃありませんか。ベトナムのクーデターが終わったら全部帰ってきて入っているじゃないですか。これでも積んでないと言うのですか。積んでるじゃないですか。あなたたち、積んでることについて全然聞いたことないでしょう。安保条約が国会を通って批准が終わってから、どうもおかしいということで、アメリカに、積んでるじゃないか、国会で指摘されるが、第七艦隊の誘導弾巡洋艦のガルベストンにはタロスを積んでるじゃないか。これは専門家が見ても核弾頭だと言っておる。この点については、いま言ったようにグラマン・ホークアイというのもちゃんと写真に載っておる。これを引き伸ばしたのがこれだ。一体聞いたことがあるのですかね。どうもおかしい、国会でこれだけ論議されて――私はいま初めて言っているのではない、節七艦隊の航空母艦で艦上攻撃機にいわゆる核兵器が搭載してないなんというのは笑いごとですよ。令部搭載しておる。一体聞いたことがあるのですか。私はこれだけ写真を出して皆さんに指摘しておる。聞いたことがあるのですかね。
  181. 大平正芳

    ○大平国務大臣 核兵器の持ち込みにつきましては、御承知のように安保条約上気前協議事項になっております。ただいままで先方から事前協議の申し入れを受けたことはございません。私どもはわが国とアメリカがおごそかに署名し合った条約に、アメリカが違反するということは寸毫も考えておりません。条約の締結もとより大事でございますが、この条約の締結それからその運用ということは、これは当嘱国の深い信頼の上に立たなければ、私は円滑な運用はできないと思うのでございます。したがって、私どもは一方の当下国であるアメリカが、その必要があれば、こちらに事前協議の申し入れがあるはずでございますけれども、いままで一回も受けたことがございませんし、また日本に核兵器を持ち込むという意図を先方も持っていないと承知いたしておるわけでございます。いろいろ例をあげての御質問でございますが、私どもは厘毫もそのようなことを信じておりません。
  182. 横路節雄

    横路分科員 外在大臣、第七艦隊は事前協議の対象にならないのでしょう、なりますか。第七艦隊がどれだけ航空母艦あるいは誘導弾巡洋艦、駆逐艦、こういうのを全部そろえて、機動隊が何ぼ入ってきても――外務大臣、いいですか、私は皆さんの記録を丹念に読んで来ているのですよ。これは一週間とか十日入って、つっつ出ていく場合には、どんなにこれが一機動隊、二機動隊、三機動隊、五機動隊であっても、ハワイから横須賀、佐世保に来て、一週間ないし十日いて、南ベトナムに出ていって、南ベトナムの作戦が終わって、日本に来て、一週間か十日いて、また二、三日海面を遊よくして帰っていく、これは常時その軍事基地を使用して、長期にわたっていない限りは、事前協議の対象にならないのでしょう。
  183. 中川融

    ○中川政府委員 御指摘のとおりでありまして、第七艦隊がただ単に日本に寄港するということだけでは、やはり事前協議の対象である配置における重要な変更にはならない。やはり相当期間日本を根拠にして、要するにそこに配置されたという状態になるということが必要であるというのが従来からの解釈でございます。
  184. 横路節雄

    横路分科員 私もそのとおり解釈しています。そのとおりだろう。だから、第七艦隊というのは全然平前協議の対象になっていない。肝前協議の対象になっていないんだから、そのときに何を積んできたって、初めから事前協議の対象になっていないのは、核兵器を積んでこようと、何を積んでこようと、二日間で出ていく、一週間で出ていく、十日で出ていく、それは長期にわたって港にいることにはならないから、事前協議の対象にはならない。どんなに第七艦隊の兵力が増強されてもならない。積んでいるものは何でなりますか。そこに配置になるものがどんなに一機動隊、二機動隊、三機動隊、五機動隊と来ても、初めから一週間や十日や――一月はどうか知らぬが、これから条約局長に聞いてみなければならぬが、一体長期というのは何日か。大体作戦が終われば十日か二週間で帰っていく、初めから事前協議の対象にならぬのじゃないですか。  外務大臣、日本のほうから向こうに、お前のほうは核兵器を積んでおる心配があるから、ひとつ事前協議をやろうじゃないかと申し込む権利はありますか。安保条約では向こうのほうから、おれのほうは作戦行動上必要があるから核兵器を積んでいるが、事前協議をしたいという向こうの申し入れでやるんじゃないですか。そうじゃありませんか。もしもこれだけ指摘されて疑念があるならば、日本からできるだけやるべきですよ。あるのですか。日本のほうからありますか。初めから一週間や十日入るものは、第七艦隊に対して事前協議の対象にはならない。一体お前のほうはどういう装備をしているかという事前協議ができますか、できないじゃないですか。できますか外務大臣、これは外務大臣にお尋ねします。
  185. 大平正芳

    ○大平国務大臣 事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。
  186. 横路節雄

    横路分科員 しかし条約局長が言ったように、一週間とか十日とか二週間、ハワイから来て日本に寄港していく、作戦行動を終えて帰ってきた、この場合は二機動隊でも、三機動隊でも、五機勤隊でも日本に対する重要な配備の変更にならないから、したがって安保条約第六条にいう事前協議の対象にならないのだ、そういう答弁をしている。ならないなら積んでいるものもならないじゃないですか。配備されたものが事前協議の対象にならないのに、何で積んでいるものだけがなりますか。初めからここにあるものが積んでいるというのはこの上に積んでいるのでしょうけれども、これはどんな大きなものが入ってきても事前協議の対象にならないという答弁しているのに、何で積んであるのが対象になりますか。
  187. 中川融

    ○中川政府委員 事前協議の対象にならないと申し上げましたのは、要するに配置における重要なる変更に該当しない、その意味で事前協議の対象にならないということを申し上げたのでございます。しかしながら、たとえばその入ってくる軍艦がいわゆる核装備をしておるということであれば、これは装備における重要な変更に該当するわけでございまして、たとえ短期間入るものでも核兵器を積んでおれば、それは装備における重要な変更として当然事前協議の対象になるわけでございます。  また、事前協議を日本側からできるかできないかというお話につきましては、これは事前協議――協議の対象にするということでありますから、協議は双方とも言い出すことができることは当然でございまして、日本側から言い出して協議をするということも当然あり得るわけであります。
  188. 横路節雄

    横路分科員 それならばなぜしないのです。なぜしないのです。私から事実を指摘されたではありませんか。待ってください。何もこれはこればかりではないのですよ。第七艦隊の航空母艦にあるのはこれだけではとどまらないのです。全部そうじゃないですか。ダグラス・スカイウォリアは艦載機中最も強力な攻撃爆撃機、これは核爆弾と機雷を積んでいる。第七艦隊には、全部航空母艦には積んでいる。  そこで私は外務大臣にお尋ねしたい。これだけ指摘されたなら、あなたのほうでもアメリカを信頼する、信頼するだけでは――国会の審議を通じて国民の前にこうやって問題になっている疑惑の点を明らかにする必要があるのだから、どうですか、アメリカ大使に会ってやれるのじゃないですか。国会で指摘された、第七艦隊は積んでいるじゃないか、誘導弾巡洋艦ガルベストンには積んである点が写真まで示された、しかもここにありますように、この艦載攻撃機のグラマン・ホークアイに積んでいるじゃないか、こう言われたのだが、どうもそういうことでは私たち困る、どうなっているのですか。こういうことについては事前協議になるかならないかしらぬが、アメリカ側にその点は疑念を晴らすという意味で、あなたは外務大臣として当然この点について国民の前に疑義を晴らすために明らかにする責任があると私は思う。どうですか。これまで指摘されても、いやそんなことはない、ただ信頼しています。(「だれが写真をとったんだ」と呼ぶ者あり)だれが写真をとったかの問題でない。何を言っている。
  189. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども先方から事前協議の申し入れを受けておりません。またそういう事実を私は信じておりませんので、そういう事前協議をこちらから申し出るという意思を持っておりません。
  190. 横路節雄

    横路分科員 この意味は、外務大臣はやはりアメリカ大使に対してその程度のことは疑念を晴らすという意味でお尋ねになって何でもないんじゃないですか。そうではないですか。あなたが安保条約第六条に言う交換公文による事前協議としてやるのが、どうも条約上信頼性云々の問題で欠けるところがあるというならば、これだけ国会で問題になったのだから、あなたがアメリカ大使に対して節七艦隊がそういうことがあるといって社会党の議員から指摘をされたが、その点はひとつ疑義を明らかにしてもらいたい。これくらい言うのが何が悪いのです。全然日本に通告のない軍艦まで佐世保、横須賀に入っているじゃないですか。その程度のことは、国会の再議を通じて疑義、疑惑の点を明らかにするという意味からいっても、私はそうなさるのが至当だとも思うのです。どうです外務大臣。あなたが第六条にいう交換公文の事前協議ということが、どうしてもそんなことはできないというなら、アメリカ大使に対して国会で指摘をされたが、そういう事実はないのかとお尋ねする、当然行政府として、しかもあなたは責任者じゃないですか。第六条の事前協議に片や大平外務大臣片やライシャワーアメリカ大使、こうなっているのですからお聞きしたっていいじゃないですか。私はこれで質問をやめるのです、やめるのですからあなたもそのくらいのことはないないと言わないで、それくらいお尋ねします。こうなって初めて国会で審議される、こういう状態だと思います、そうじゃないですか。
  191. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私といたしましては一方の当肝国であるアメリカが安保条約に誠実かつ忠実であると信じておりますし、私どもはいまあなたが御指摘のような事実がもしありとすれば、先方から申し出があるはずだと思うのでございます。ない以上そういうことはないと確信をいたしております。
  192. 横路節雄

    横路分科員 私はこれで質問を終わりたいと思いますが、しかしこの問題はここだけでとどまらないのです。きょうは分科会ですし、他の委員の方もおりますからこれでやめますが、こういう問題についてこれだけ私たちから疑惑の点を指摘されたら、あなたもやはりここで、自分としては第六条にいう肝前協議の対象になるとは思わないが、国民の疑惑を晴らす意味からいって、私はお尋ねをして、その経過について発表いたしたい。これくらいのことができないで何で国会の審議なんでしょう、どうですか大平外務大臣、これだけ尋ねます。私はあなたがそういう良識を持っていらっしゃる方だ、こう思いますので、ひとつ重ねて。これはあなたの答弁いかんではまた予算委員会一般質問その他にまたこれが持ち越されますから、ここでその程度の答弁だけはしておいていただきたいと私は思います。
  193. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへんしつこいようでありますけれども、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
  194. 横路節雄

    横路分科員 私はこれで終わりますが、外務大臣それでは国会の審議にならないのです。しかもこれだけ私たちから資料を出して具体的に指摘をしているのですから。ただここで明らかになりましたことは、原子力潜水艦はあらゆる港に入ろうと思ったら入れる、この点が明らかになりました。それからノーチラス型ノーチラス型と言っておったが、そうじゃなくてポラリス型原子力潜水艦を除く一般的攻撃型原子力潜水艦が入るのだ、こういう点が明らかになった。疑惑の点については私が一つだけ指摘をして、まだほかにたくさんあると思いますので、私は時間が過ぎましたから以上で終わります。
  195. 相川勝六

  196. 帆足計

    帆足分科員 私は外務委員の一員でありますから、大方の問題は外務委員会で大臣から直接伺えるのでありまして、きょうはむしろこの分科会の意味上、予算の問題に触れたことについて御要望いたしたいと思っておるわけです。ただ、問題の緊急の点が二、三ありますから、緊急の点を二、三先に伺いまして、あと予算問題について御要望いたしたいと思います。  緊急の点と申しますと沖繩のことでございますが、最近、国会において定員改正の問題がありまして、四名の議席を沖繩のために確保しておくという意見が出ておりますが、それに対しまして政府は、アメリカの意図に考慮をいたしまして、沖繩に対して潜在主権を持っておるから潜在議席を置くことは当然ではないか、これは選挙制度改正委員会の意見もそうですし、大方の新聞、世論もそれは当然のことであろうと認めておりますのを、ことさらに遠慮して、そうして議席は、ただ衆議院の議席の建築構造において考慮する。これは建築学的議席でありまして、物理的な問題であります。われわれとしては、政治的、社会的にやはり潜在的議席を置いておくことが至当であると思う。しかるに外務省は、アメリカ側がそれを好まないから、こういう意見が新聞に伝えられておりますが、外務省のどなたが一体どういうふうにアメリカ側と交渉して、そういうくだらぬ意見を持ち込まれたのか、ひとつ伺っておきたい。
  197. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう問題でアメリカと交渉した覚えはありません。
  198. 帆足計

    帆足分科員 どういうことですか。
  199. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その問題でアメリカと交渉したことはありません。
  200. 帆足計

    帆足分科員 それでよくわかりました。それでは、一体どういう理由でその潜在議席をわざわざ引っ込めることになったのでしょうか。外務省は全然これにタッチしておりませんか。
  201. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうお話政府・与党でありましたことは、私も聞きました。私どもといたしましては、ただいまの沖繩政策は日米協力で福祉の向上を中心に鋭意やっておる段階でございますので、この政策の本筋に従いましてやってまいることが妥当だと思いまして、そのことにつきましては賛意を表しかねました。
  202. 帆足計

    帆足分科員 なきケネディ大統領は、沖繩にとにかく日本国民の主権がある、日本国の主権があるということを認め、当面潜在主権であるけれども、やがて自治権を日本に戻す日もある、問題はその適当な時期とスケジュールである、こういう意味の発言を国務省はしておる。しかるにわれわれのほうで、潜在議席をまでわざわざ外務省が否定するということは、結局潜在主権も無意味なことであるということにまで、論理が逆に影響するということをわれわれ心配するのですが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  203. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、沖繩政策が大事だと思うからでございます。沖繩政策は、いま帆足さんのおっしゃったとおり、わが国に潜在主権を認め、そしてわが国に復帰する場合の困難をできるだけ少なくするという大きな筋において行なわれておるわけでございまして、沖繩問題の最終的な解決を円滑にやりたいために、私どもは政策の本筋に従って鋭意努力すべきが至当だと考えております。
  204. 帆足計

    帆足分科員 それでは、外務大臣のただいまの御答弁と、日本政府が潜在議席四席を表に出さないことにしたという意見との間に、私は矛盾があるように思います。国会はすでに、沖繩の住民の自治権祖国復帰を満場一致で決議しておりますし、琉球立法府も満場一致決議しております。今日、サンフランシスコ条約があるとはいえ、その場所の住民並びに領土が他国の支配を受け、自治権を完全に剥奪されているという例は、私は世界に類例のないことであると思っております。沖繩のような国際法無視の状況に置かれておる、しかもその国の政府が自治権を早く戻してくれ、また住民もそれを主張しておるときに、それに対してがえんじないというような例が今日他の国にあるでしょうか、並びに、これが国連憲章違反とお考えにならないでしょうか、お伺いしたいと思います。
  205. 大平正芳

    ○大平国務大臣 平和条約によりまして、施政権はアメリカが掌握するところとなったわけでございまして、これがいいか悪いかの議論はいろいろあると思いますが、私どもは、そういう決定がなされて、その前提に立って沖繩政策をやっておるわけでございまして、私が先ほど申し上げましたような趣旨で沖繩政策は鋭意努力、展開してまいるべきものと思うのでございます。私が賛意を表しかねたのは、そういう趣旨でございます。しかし、議席を持つ持たぬの問題は国会の問題でございまして、外務省といたしましてはそういう見解をお伝えしたということでございます。
  206. 帆足計

    帆足分科員 軍事基地の問題につきましては、また別な機会にその今日の段階の適否を論ずるでありましょうが、九十万の人口が施政権を奪われ、そして治外法権となり、他国の支配下に呻吟しているということは、国連憲章違反でないでしょうか。また、国連の植民地解放宣言の趣旨にも違反しておる。また、その国の政府が施政権だけは返還してくれということに対して、返還をがえんじないということは、国連憲章の趣旨に違反するというふうに外務大臣はお考えになりませんか。アメリカは、日本の国会の決議に従って、それはもっともである、施政権だけは返そうというのが、国連憲章から見て当然の今日の文明国の義務でないでしょうか。もしわれわれがカリフォルニアを何らかの機会において支配しておって、そしてそこの娘が暴行を受けようと、少年がジープにひかれようと、その裁判はわれわれが握る、なんじらに発言権はない、なんじらに自治権もない、こう言うたとしたならばそれは不当でしょう。その逆のことが行なわれておって、それはいけない、したがって、少なくともまだ実施に移されておらなくても、論理において不正、不当なことが沖繩において行なわれておるということは、国際連合の趣旨から見て、今日の世界の常識と論理に反することが行なわれておる、こう思いますが、外務大臣はそういう確信に立っておられないのでしょうか。
  207. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカは、ケネディ声明にもありましたように、沖繩政策を天下に問うておるわけでございまして、その線に浴って鋭意沖繩の福祉向上に努力いたしておるわけでございます。最近とみに沖繩の方々の福祉水準も向上いたしまして、一九五五年から見ますと、倍を越えておるという非常に顕著な改善を見ておるわけでございます。私どもといたしまして帆足さんのおっしゃるような見解には同調いたしかねます。
  208. 帆足計

    帆足分科員 外務大臣の言われることは、私は前後矛盾していると思います。  さらに、それと連関してお尋ねしますが、日本政府は、歴代、アジアの一員であること、自由主義諸国の陣営の一員であること並びに国連精神を尊重すること、この三原則を外交の原則としてこられました。私は、そのことばどおりであるならばけっこうでありますけれども現実に行なわれておりますことは、国連を尊重するということは国連の結論にただ追随することであって、国連憲章を尊重することという意味であるかどうか疑問に思う次第です。もし国連憲章を尊重するということであるならば、国連憲章違反の事件が起こったときは、違反している人たちに対してそれに抵抗する側の立場に立たねばならぬ。たとえば沖繩は、明らかに国連憲章の精神に違反しておる。ゴア、西イタリアンの解放のときも、これは国連憲章に違反しておるから多くの国がそれを認めた。パナマの問題にも、スエズの問題にもそういう要素があることも御承知のとおりです。したがって、国連主義という政府の意見は、国連の精神を尊重するという意味か、また決定したあとに天下の大勢にただ引きずられて、国連の言うことならばあとへついていこうという意味か、それを伺いたいと思います。どちらでしょうか。
  209. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもは、たびたび申し上げておりますように、国連に加盟しておる一国といたしまして、国連で公正なメンバーとしての役割りを完遂することを通じて、国連が平和に維持機関としての機能を強化してまいるという方向に協力したいということでございます。手をこまねいて国連の決定を待つ、こういうようなことは毛頭考えておりません。
  210. 帆足計

    帆足分科員 当然そうあるべきでありますが、それならば、国会の決議によって、沖繩の自治権は当然沖繩の市民に与えるべきである。天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらずというのは、これは民主主義のイロハです、あの沖繩の同胞九十万が、ジープにひかれても、自分を自分の力で、自治権で裁判する力も与えられていない。政府は、国会の決議に従って沖繩の同胞に自治権を与えよう、祖国に復帰させようということを、正式に幾たび、アメリカと交渉をなさったですか。
  211. 大平正芳

    ○大平国務大臣 沖繩の方々、日本の国民、全部が沖繩の一日も早い復帰をこいねがっていることは自然のことでございまするし、そのことを政府首脳は、施政権著たるアメリカに機会あるごとに伝えていることは事実でございます。問題は、この日本国民の非願でありまする沖繩の施政権が返ってくるということを、いかにすれば具現できるかということになってくるわけでございまして、私どもとしては、こういう復帰の状態を招来する一番近道は、あくまでも日米協力いたしまして、そうして沖繩の福利水準を上げるということと、そうしてこの日米間の協力、信頼というものが実ってまいりまして、もう沖繩はアメリカが施政権を持つ必要はないんだという状態にまでなること、そういう状態をつくり上げることが、沖繩の復帰を考える一番近道ではないかと思うのでございます。あなたが言われるお気持ちはわかりますけれども、いかにしてこれを具現するかということが実際政治の問題じゃないかと思っています。
  212. 帆足計

    帆足分科員 フランスの軍事専門家は、最近におけるロケットの発展、それからフランスと中国との国交回復等を通じて極東に大きな戦略上の変化が起こる、当然それは沖繩に及ぶであろう、そうして沖繩の日本復帰に有利な状況が生まれるであろうと論じております。私は、この問題はしさいに検討すべき問題だと思っておりますが、アメリカの国会の軍事委員会の速記録「希有なる沖繩の戦略的価値」という書物を読みますと、日本政府は一度も沖繩の自治権返還について国会の決議に従って交渉をしていない、交渉を受けたことはいまだ聞かぬという答弁をアメリカの政府当局はしておりますが、外務大臣はこの速記録の片りんでも目を通したことがあられるか、またアメリカ政府に対して、沖繩の自治権回復を正式に交渉し、要求されたことがあられるか、それをお伺いしたい。
  213. 大平正芳

    ○大平国務大臣 交渉という字句の解釈だろうと思うのですが、一つのアゼンダを設けてネゴシエートする、そういう形のものではなかったと思います。日本国民の願望を先方に伝えるということにおいて懈怠はしていないということでございます。
  214. 帆足計

    帆足分科員 外務大臣は、この「希有なる沖繩の戦略的価値」という驚くべき速記録を御記憶になっておられますか、そういう速記録のあることを御承知ですか。
  215. 大平正芳

    ○大平国務大臣 寡聞にして承知しておりません。
  216. 帆足計

    帆足分科員 まことに残念なことで、前回もお尋ねしますと、対華白書にしろ、またトルーマンがマッカーサーを罷免したときの事情の文献にしろ、いつも外務大臣は目を通していない。御多忙のためやむを得ないことであろうかと思いますが、たいへん残念に思う次第です。忙しいのはお互いさまですから、こういう重要な文献は、補弼の任に当たる条約局長やその他の局長が、もう少し外務大臣に資料を差し上げる必要があろうと私は思います。ですから、ドゴール政権が中国を承認することを、前夜まで知らなかったというような情けない状態にある。李承晩大統領が倒れる前夜に、韓国の政局の安定今日ほど静かなときはないというようなことを、座談会で放送をやっていた外務大臣はびっくりして座談会中止、こういうばからしいことになるのではないかと思います。  そこで、政府は国連精神の尊重といいながら、ほんとうに国連精神でいこうとしておるかどうか、われわれに疑問を起こさせる。自由世界との協調、アジアの一員といいながら、自由世界との協洲でなくてアメリカに追随して、アジアその他のファッショ政権に追随している。たとえば李承晩政権、あれが自由世界でしょうか、台湾が自由世界でしょうか、またはゴ・ジンジェムの非常に不幸なる南ベトナムが自由世界でしょうか、ちょっと感想の一端でも承って参考にしたいと思います。また、バチスタ時代のキューバが自由世界だったでしょうか、メンデレスのトルコが自由世界だったでしょうか、まことに世にもふしぎな物語です。それを自由世界と言うならば、アメリカに追随して反共でさえあればファッショ政権とでも深入りした、そういうことでは困ると思うのですが、どうでしょうか。
  217. 大平正芳

    ○大平国務大臣 自由世界といい、自由陣営といい、どういう解釈に立脚して分数してまいるかという修辞学上の議論は別にいたしまして、一応通俗的に自由陣営に属する国というように私どもも韓国の場合は受け取って、そのように理解してまいっておることは事実でございます。
  218. 帆足計

    帆足分科員 外務大臣の答弁の苦しい気持ちは、われわれもヒューマニストですからわかりますけれども、李承晩、ゴ・ジンジェム、メンデレス、バチスタ君を自由主義者と言うのは、赤尾敏先生を自由主義者と言うようなものであって、山口二矢君を自由主義者と言うようなものであって、ちょっと都合が悪いと思います。なるべく外交にはそういう通俗的概念はお使いにならないで、ひとつ正確に――私はこれ以上のことは外務委員会で論じます。というのは、大平さんは慎重なお人柄であって敬愛すべき方でありますけれども、やはり外務委員会、国会議員がしっかりしていて、政府のやり方に対して監視し、忠言しなければ、現状では心もとないということを私は言いたかったわけです。たとえば沖繩にどういう種類の潜水艦が出入しておるか、沖繩にどういう種類のロケットが、いましつらえられているか、これは非常に重要な問題です。安保、安保と言いますけれども、安保条約などというものはそれほどのものではありません。アメリカの軍平専門家は、これを不完全条約と言っております。沖繩を結んですなわち安保条約が画竜点睛になるわけであって、安保は休火山、沖繩は活火山、安保を扇子にたとえれば沖繩は扇子のかなめ、安保を台風にたとえれば台風の目は沖繩です。したがいまして、国防をまじめにお考えになる外務大臣として、沖繩にどういう種数の潜水艦がいま出没しているか御存じでしょうか、御存じでしたらそれもひとつ、通俗的でけっこうですから御答弁いただきたい。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 よく承知しておりません。
  220. 帆足計

    帆足分科員 それすら承知していない外務大臣ならば、お人柄はいかになつかしく感じようとも、私はやはり祖国のために危険を感ぜざるを得ない。したがって、われわれ野党の者はいよいよ自重自戒、勉強してそして政府に苦言を呈しなければならない、こら思う次第です。先日これらのことを申しましたら、調査費が足らないという嘆きのことばを伺いました。  私は少年時代に外交官にあこがれておりまして、実は一身上のことにわたって恐縮ですが、家内も英語のできる妻をもらいました。ところが、当時喀血をしまして、健康を害しましてついに外交官試験をあきらめて、そのとき外交官になっていたならば、おそらく外務大臣と莫逆の友になっていたであろうものを残念に思います。  そこで、その後外務委員として世界各国をほとんど歩きました。私は、外交官の生活は魅力に富むものと思っていました。ところが、ちょっと議員の生活に似ておりまして、まず家族と離れ離れに住む、始終動く、それから子供たちの教育の問題、家庭は留守宅との二重生活、住宅難、これらのことを思いまして、在外公館におる外務省の職員、従業員諸君、幹部諸君の御苦労のほどをいろいろ知りまして、私は外交官にならずによかったとつくづく思いました、そういうような状況のもとに外務省の職員諸君を置いておくのは、ほんとうにお気の毒だと思います。したがいまして、予算を審議する分科会におきまして、大蔵省の方、ひとつよく聞いておいていただきたい。  外務省の方々の生活は、一般の国内でじっとしている役人の方々と非常に違う生活をしているわけです。いつ辞令が来て海外のどこへ行くかわからぬ。アルゼンチンへ行くかと思えば、パリに行くと思えばパキスタンに、そして私は、当然在外手当というものは十分にあると思っていましたところが、この物価の高い時代に一五%か二〇%、幾ばくもないということも伺いました。移転料は十分出ると思いましたら、旅費はわずかしか出ていない。当然住宅はあると思いましたら、住宅はかってにさがせ。家財道具は、移転するたびにちゃんと規格のある程度とれたものが備わっていると思ったら、かってに買ってしつらえろ。子供たちの教育はどうなるかと思っていましたら、英語教育、その外地の教育、日本語の教育、まことに困っている状態です。しかも適当な年になれば、日本に帰して日本の学校に入れねばならぬ。そうすると日本語の学力がおくれる。大学に入れるのも容易なことではない。それらの苦労に対して十分な措置が総合的になされているかといえば、ほとんどの措置がなされていない。私は、これは大蔵省の怠慢だと思います。一体、大蔵省の外務省予算を査定している主計宮殿は鬼か蛇かとすら、私は思うものであります。遠く異境の土地にあり、そして病気のときはどうするか、子供を、妻を本土に帰して、やもめ暮らしをしている方もおありでしょう。人間にとって一番の楽しみは、一家団らんということです。その子供を遠く離さなければならぬ。しかも給料は、驚くなかれドイツの三分の一ぐらいでしょう。また外交官補などは、アメリカに比べて、私は四分の一ぐらいじゃなかろうかと思います。あるアメリカの大学卒業生に聞きますと、日本人の外交官の、やはり何倍かの給料をもらっております。  昔、私が青年時代に経団連におりましたときに、経済使節団が来まして、さすがに英国とアメリカからの経済使節団には、われわれは一目置きました。しかし、イタリアからの経済使節団、文化使節団が来ましたときは、われわれは対等の資格で交際することができました。やがてスペインから代表団が来ましたときは、まああまりわれわれよりもそう高くないように思いまして、ダンスパーティーに出ましても、平服でよかろうくらいに気楽な気持ちで出席いたしました。いまは、そのイタリーに比べまして、国力は劣っておりませんのに、外交官の待遇は非常に悪いのです。貧すれば鈍するということで、こういうことになるのかと思いますから、外交官としてしかるべき待遇を、それから職員としてしかるべき社会保障を――そして一般の国内の官吏と違う。すなわち始終移転し、時としては妻子と離れ、住宅もなく、家財道具の取りまとめもたいへんなことです。しかも各国の各種の激動する社会情勢を正確に把握し、勉強もしておかねばならぬ。その上次々に国内の議員さんたちがやってくれば、まるでツーリストビューローみたいにお供をして、時にはキャバレーまで御案内しなければならぬ。そういうような激務の中に働いておられる外務省の職員に対して、私は大蔵省の主計官の査定はどうも冷酷であって、一ぺん体温をはかってみる必要がある、こう思っておるくらいです。したがいまして、大蔵省の方に言うておきますが、議員はお手盛りで八万円の歳費を上げることができました。町にはそれは相当の理由のあることであって、週刊現代を読めばそのことはよくわかります。というのは、二つの家族に分かれているから、議員の生活は苦しいわけです。したがいまして、家族がばらばらになっておる、始終任地が動くということ、それから比較的生活水準の高い外国人と対等の資格で交際せなければならぬということ、外交官の諸君に貧しさのためにさもしい思いをさせたくないというわれわれの気持ちもお察しくださって、大蔵省当局においてはもう少し深く考えていただきたい。私は外務委員の一員として、それを強く国民を代表して要求します。  以上について外務大臣の御感想を、それから大蔵省当局の答弁をお願いしたい。事と次第によっては、私は諸君をつかまえて体温をはかる必要があると思います。体温が三十七度をこしておるか、三十四、五度であるか。
  221. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外務省の職員の生活の実態に即して御同情ある御見解の御表明がありまして、私ばかりでなく、この席において外務省の諸君もたいへん感激したことと思います。厚く御礼を申し上げます。  在勤俸の問題は、私の前任者時代の、国会の御理解を得まして若干の改定をしていただきまして、やや人並みのことになったという感じもいたしております。その後、この改定問題は、大蔵省にお願いするというところまで、まだ私も今度の予算要求では踏み切っていないのでございます。ただ、家族が離れ離れになって子女の教育に支障を来たす、あるいは世帯が二つに分かれての出費ということは、帆足さんの御指摘のとおりでございまして、これには例外なくたいへん苦労をいたしております。このことは、ひとり外務省の職員ばかりではなくて、海外につとめております商社、銀行その他の方々もあわせ、日本として、全体としてやはり海外との交流が多くなればなるほど、その子女の組織的な教育につきまして、父兄が心配をしなくてもいいような制度的な用意を考えて差し上げる必要があるのではないか、これは確かに御指摘のように大きな課題であると思います。  それから、東京を離れて海外におりますから、内地の状況を十分くんで、それを体して任地で働かなければいけませんが、いまの状況では、東京へ定期的に仕事の連絡でお帰り願うというような旅費的な余裕はございません。したがって、一つの制度として、そういう東京との連絡ということを、在外勤務の皆さんが定期的にできるようなことを考えなければならぬのではないかということで、これは毎年予算の要求をいたしておりますけれども、まだ大蔵省のいれるところとなっていないわけでございます。徐々に御心配はしていただいておりますけれども、まだ満足すべき状況にはなっておりません。しかし、いま御指摘があったような点につきましては、私どもといたしましても、いろいろ配属をしてまいらなければいけない点が多々ありますので、今後御支援によりまして努力いたしたいと思います。
  222. 帆足計

    帆足分科員 大蔵省の御所見はどうですか。
  223. 田辺博通

    ○田辺説明員 帆足先生の御意見非常によくわかりますし、われわれとしましては、十分配慮しなければならぬところであると思います。もちろん、在勤俸の問題にいたしましても、それから子弟の教育の問題とか税制の問題とか、そういうこと全般におきまして、現在すぐに十分なところまでいくということは、やはりなかなかむずかしい問題がございます。在外に勤務せられる外交官の方々の待遇という問題も、やはりわが国におきますところの公務員の待遇というものと、ある程度のバランスがなければならないという問題もございますので、一挙に理想的なところまでにはなかなかまいらないと思いますけれども、先ほど外務大臣からも御答弁がございましたが、本年度におきましては、在勤俸の改定はありませんでしたが、在外子弟の教育のための経費、あるいは在外公館に、特に医療関係の不便なところに医務官という制度を設置するというようなことも考えているわけでございます。  また東京との間の連絡という点につきましても旅費の点につきまして、従前どおりの休暇帰国の制度あるいは新たに転勤等の過程におきまして、その国から他国に赴任される場合になるべくならば東京に立ち寄って、そして国情をよくごらんになった上でまた転勤されるというような形の旅費も考えた次第でございます。今後とも大いに勉強してまいらなければならぬと思います。
  224. 帆足計

    帆足分科員 これで最後で、一分間で結論です。  それでは、ただいま外務省の職員諸君の生活が、内外ともに非常に特殊性があるということをお考えくださいまして、住宅、手当それから家財道具、これは私は互いに融通し合うような制度をつくったらどうかと思います。一度売ってしまって、また新たに買うということはばからしいことであります。それから移転の手当、留守家族の問題に対する配慮、教育に対する配慮、病気に対する配慮、それから青年外交官諸君は、自動車の運転くらいできるようになっていないと生活できないでしょう。カナダなどに行って、てくてく歩いたりバスに乗ったりしたのでは間に合いませんから、自動車に対する特別の配慮、それから文部省の当局に、これは速記録を送りますが、外務省関係の御子弟が国内に来て入学するときに、国内の者ですら高校入学難で困っておりますのに、語学の力がおくれている外務省関係の子弟の諸君に対しては、特別の配慮を研究していただきたい。これらのことをまじめに研究して――予算がないなどと言ったって、予算なんというのは、会計検査院のむだづかいのほうを節約すればひねり出すことができると思いますから、むだづかいの分をこちらのほうに回していただく。とにかく真剣に研究していただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  225. 相川勝六

  226. 受田新吉

    ○受田分科員 大臣お急ぎのようですから、私のお尋ねすることにずばりと簡明にお答えを願って、お引き下がりを願いたいと思います。  私、実はこの機会に、外務省及び日本国政府の見解としてはっきりしていただきたいことは、原子爆弾の投下ということはたいへんな国際法違反であるという、昨年の末に行なわれた東京地裁の判決理由書というもの、この司法機関の決定に対して政府自身も同様の考えを持つかどうか、お答えを願いたいと思うのであります。外務大臣から御答弁を願います。あなたにずばりとお答えを願いたい。
  227. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外務省の見解といたしましては、はなはだ遺憾なこととは存じますが、国際法違反であるとはっきり断案を下してしまうというまでには至っておりません。
  228. 受田新吉

    ○受田分科員 政府自身が、今度この国会に核停条約の御承認を求めておられますね。核実験を停止することさえも非常に重大な条約として御承認を願いたいというのに、原子爆弾を投下して、陸戦法規等で無差別爆撃をやり、不必要な苦痛を日本国民に与えて、たいへんな被害を与えているこの問題に対して、国際法の違反であるという断定も下さずして、何をもって唯一の被爆国家である日本国民の正義の訴えを全世界にしようとするのか、自信がなさ過ぎますね。はっきりと国際法違反の定義を下して全世界に平和への強い訴えから核の被害を訴えて、これを禁止することを日本国が提唱することが、わが国に与えられた唯一の光栄ではないでしょうか。勇気を持ってその英断をふるわれて、全世界に対して原爆投下はまさしく国際法違反である、かかることの繰り返されないような正義の訴えをするというのがあなた御自身の責任ではないでしょうか。勇気をお持ちなさい。
  229. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは勇気があるない、自信があるないの問題ではなくて、条約違反かどうかということをあなたが聞かれるから、そういうことには断定できないということをお答えしたまでです。あなたの言われる核停条約というのは、今国会にわがほうも批准を求めることになっておりますが、これが批准されましても、これは実験を一定範囲において禁止するということでございまして、原子爆弾自体の使用、運搬、貯蔵等を規制するものじゃないのでございます。そういう条約はないのでございます。したがって、受田さんのお気持ちはわかりますけれども、条約論といたしましては、そういうように断定できないのではないかと思います。
  230. 受田新吉

    ○受田分科員 大平さん、裁判官の判決理由吾を読むと、これは単なる学者の個人的の意見などとは迷うのですね。やはり司法機関の尊厳という立場からは、単なる一個人の学名の愚見などと同じようにこれを片づける問題ではないと思うのです。立法、司法、行政、三権分立の形態において、司法機関の決定に対して行政機関が十分尊重するというたてまえをとるのが、あなた方現政府の方々の責任ではないでしょうか。その点もひとつ……。
  231. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ですから、そういう条約論というのではなくて、政策論として、原爆の実験ばかりでなく、全体の全面的な軍縮達成といろ大きな目的に対しまして、私どもといたしましても、あなたのおっしゃるとおり精力的に努力してまいることが当然の任務だと思います。
  232. 受田新吉

    ○受田分科員 あなたは高等弁務官との御会談が迫っておりますので、私は引き延ばし作戦をとりません、これで、お答えをいただいたら終わります。  あなたの、ただ政策的に、原爆の大きな被害に対する、被害の大きかった日本国民として全世界の平和を提唱したいという、その気持ちだけでは済まぬ問題です。それをやろうとする根底に、やはり陸戦法規の違反等につながる重大な国際法違反をやった原爆投下であるということをはっきり前提として、割り切った立場で世界への呼びかけをなさるのが、唯一の被爆国である日本政府のとるべき態度ではないか、こう思うのです。その点をひとつ、政策論争の前に、国際法違反という前提を考慮して、割り切った立場で世界に呼びかけられることが日本政府の責任ではないか。これはたいへん大事なことですからひとつ……。
  233. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたのお気持ちはよくわかりますが、答えとしては、先ほどもお答え申し上げたとおりでございます。
  234. 受田新吉

    ○受田分科員 どうぞお出かけください。条約局長法制局、それから政務次官がかわって副大臣として責任のある答弁を順いたい。よろしゅうございますね。  私は、この問題は、もっと政府の態度を確かめておきたい。あの判決理由書というものは、これは決して一裁判官の個人の見解などといって片づけるべき問題ではありません。判決はつい昨年の暮れに行なわれたばかりでございますから、なまなましく国民の耳に響いている。被爆者御臣身も、この判決理由書に非常な敬意を払っている。条約局長、あなたにお答えを願いたいのは、あの終戦時における悲惨な原爆投下は、何をもって国際法違反でないと断定できるのか、お答え願います。
  235. 中川融

    ○中川政府委員 終戦時におきます広島、長崎の原爆投下、これが国際法違反であると断定すべきであるという東京地方裁判所の判決が、十二月の初めにあったわけでございます。もちろん、この裁判所がそういう断定を下されたことには、判決文を読みましてもいろいろと理由が書いてあるのでございまして、われわれはもちろんそのことを尊重するわけでございます。   〔主査退席、古川主査代理若席〕 しかし、行政府といたしましての政府当局に対する御輿間として、やはりあの当時においてあれが国際法違反であったかどうかという、いわば冷厳なお尋ねであれば、いまから振り返ってみますと、あの当時すでにあれを禁止する国際実定法があったという断定はむずかしいのではなかろうか、この事態は非常に遺憾なことであり、不都合なことであるけれども、国際法というものの性質から見て、必ずしもいけないことが全部国際法で禁止されているわけでもないのでありまして、そういう実定的な条約なり慣習国際法があったかということになりますと、そうは断定はむずかしいのではないかというのが、ただいまの大平大臣の言われたお答えの趣旨だったと思います。
  236. 受田新吉

    ○受田分科員 そうすると、裁判官一個人の見解というものは別にたいした問題ではない、実定法というものの立場から見て当時としては造反になっていない、こういうことですか。司法機関の判決に対する見解は、どうおとりになっておられますか。
  237. 中川融

    ○中川政府委員 国際法の法源でございますが、やはり国際法の法源といたしましては、条約という成文の法源と慣習国際法、つまり法規範としてまで成長した慣習というもの、この二つであると思うわけでございますが、実定的な条約で原爆それ自体を禁止したというものは、もちろん原爆が新兵器でありますから、ないわけでございます。それから慣習も、要するに原爆が新しい事態でございますので、これもない。したがって、国際法違反としては、まだ規範のない、要するに全くの新兵器が落とされたわけでありますので、したがって将来国際法で、この国際法で許せない行為であるというふうにきめることは必要であるわけでございますが、あの当時にそういう国際法があったという断定はむずかしいのではないか。  なお、裁判との関係でございますが、結局国際慣習法というものが成立するためには、各国の政府の態度あるいは国際司法裁判所の判決、あるいはさらに優秀な国際法学者の説、こういうようなものがたくさん重なって、世界の大多数の国々が、やはりこれが国際法であるのだという認識が出てくれば、そこでその慣習としての国際規範ができるわけでございます。日本の裁判所がそういう判決をしたということは、非常に有力な資料の一つになるわけでございます。こういう判決がたくさん重なって各国で出てくる、国際司法裁判所もそういう判決をするという事態になれば、これは慣習国際法が成立することになるわけであります。非常に有意義な判決であるというふうに考えております。
  238. 受田新吉

    ○受田分科員 前進するための非常に有意義な判決であるという政府の御見解を承ったわけです。ところが、もう一つ、もっと大きな立場で、政府みずからが、この悲惨が原爆投下に対する実定法の問題、関係などからいろいろと議論されるとするならば、割り切った立場で政府自身が国際法廷に呼びかけて、あるいは国際法制定にみずからスクリューとなって動くという立場をおとりになるべきではないですか。政府の見解としていかがですか。そういうことを努力されておるかどうか、あるいは事実過去においてそういう提唱をされておるかどうか、お答え願います。
  239. 中川融

    ○中川政府委員 これは、政府としては、もとより世界的な軍縮の一環として核兵器が禁止されるということを非常に衷心希望しておるわけでございます。これはいろいろな機会に、日本政府のその意向は表明いたしまして、また日本もできれば、いまジュネーブでやっております軍縮十八カ国委員会の中に入って、それでこの全面的な軍縮、それに伴う核兵器の禁止ということに協力したいのでございますが、いろいろな事情から日本は十八カ国の中に入っておりませんけれども、いろいろな意味で、間接ではございますが、その十八カ国の政府に日本の希望は申し伝えて、いろいろいま言ったような方向で、できるだけ早く国際条約ができることを努力しておるわけでございます。
  240. 受田新吉

    ○受田分科員 あなた方は実定法の問題を盛んに持ち出されておるけれども、陸戦法規の規定から見ても、すなおに解釈すれば、はっきり非武装地帯、施設、人間に不必要な苦痛を与える点、どこから見てもりっぱな法規違反じゃないですか。もっとすなおに国際法を解釈する形をとって、すなおな立場で全世界に宣言をされる、日本の立場はこういう結論を出した、その前提のもとに全世界への呼びかけられ、国際法制定にスクリューとなっている、こういう形をおとりになられる、そのくらいの熱意が私はほしいと思うのです。十八カ国の個々に当たっておるという御努力をいま承ったけれども、もっと大きな線で全世界に呼びかける唯一の資格のあるのは日本だと思うのですね。お答え願います。
  241. 中川融

    ○中川政府委員 広島、長崎の原爆がいろいろな意味で遺憾であった、場合によってはヘーグの陸戦法規――武装してない都市は攻撃してはいけない、あるいは不必要な苦痛を与えるような兵器は使用してはいけない、こういうそのときまでありました条約等を援用いたしまして、これにまさしく該当するという結論を、日本政府を含めましてある政府がするということは、これは可能でございましょう。現にあの当時、日本はスイス国を通じまして、これは国際法で許されない行為であるということで厳重な抗議をアメリカ政府にした、これは戦争中でありますが、しておるのでございます。そういう解釈をある政府がとろうとすれば、それはできないことはないでございましょう。それは、その政府がそういう解釈をとったということは、さっきの裁判と同じでありまして、一つの貴重な事実になるわけでございます。だからといって、一、二の政府がとったからといって、国際法がすぐできるわけではないのでございます。ただいまその当時と違う解釈を政府が言っておりますのは、客観的立場に立って、国際法があるかというお尋ねでございますので、そうは断定がむずかしいのじゃないかということで言っておるような次第でございます。事自体が非常によくないことであり、これは国際法違反であるという、そのことについては、いまも政府は変わっているのではないのであります。そういうことで、できるだけの機会を使って努力したい、かつ今後とも努力するということは、御指摘のとおりでございます。   〔古川主査代理退席、主査着席〕
  242. 受田新吉

    ○受田分科員 はなはだなまぬるいお考えです。いま被爆者の方々の犠牲は、引き続き多くの人々の相次ぐ死亡となってあらわれておるわけです。これらの方々に対する保障は、単なる医療関係法律をつくるだけで、本質的な、本格的な法案がまだ出ておらない。非常に冷酷であることは、判決理由書の中にもうたってあります。政治の貧困ということばをもって、戦後十数年の経済の繁栄の陰にこの人々を取り残しておることについての痛烈な一矢が報いてあります。そういう人々の気持ちを十分くんで、政府施策をとっておらなければならぬ。政務次官、この判決理由書の中にある政治の貧困に対する被爆者の保障という問題を、あなたは国務大臣にかわって御答弁願います。
  243. 毛利松平

    ○毛利政府委員 法律的解釈や国際法のことは、専門家のほうに答弁させます。気持ちの上では、過去もつとめておることながら、この問題は最も重要視して、政府はさらに考えるべき問題だと私は考えております。
  244. 受田新吉

    ○受田分科員 そうしますと、医療関係法律以外に、被爆者の援護に関係した基本的な法案も当然用意すべきだというお考えですか。
  245. 毛利松平

    ○毛利政府委員 法案までは結論を出せないのですけれども、可能な限り、当然検討する余地があると考えます。
  246. 受田新吉

    ○受田分科員 法案でもっていかなければ、行政措置では救われないのです。この判決理由書に非常に敬意を表しておられる、非常に前進する見解として、貴重な判決であったといま条約局長政府の見解を述べられました。この点は、従来の政府の見解を一歩前進しますね。したがって、それに伴う裏づけとして、被爆者を基本的に守ってあげるという法律をつくってあげる、これはそういう形をとるのが、筋としては次官も御賛成ですね。法律をつくることは反対か賛成か、はっきりしてください。
  247. 毛利松平

    ○毛利政府委員 法律をつくるかつくらぬか、私はいまここで回答できないのですが、できる限りの被害者に対する考え方を持つべきだと思います。
  248. 受田新吉

    ○受田分科員 よろしい。政務次官としてはそれでいいです。  それで、きょう法制局からおいでになっておられますから、法制局の見解をただしてみたいのです。第一部長さんは、すなおな気持ちで、この司法機関の判決理由の中に掲げられてある国際法違反とうたってあるこのことに、どういう御見解を法制局としてはお持ちになっておられるか、御答弁願います。
  249. 山内一夫

    ○山内政府委員 この司法裁判所の判決の趣旨自身については、確かに傾聴する論点が多々あると思います。ただ、原爆投下の非人道性については、これは何人も疑いないことであると私どもも思っておりまするが、法制局といたしましても、先ほど条約局長がお答えになりましたように、これが原爆投下の時点において、完全な意味において国際法違反であるかというお尋ねがありますれば、違反であるというふうにちゅうちょなく断言することはいたしかねるのであります。国際法のものの考え方が、何といっても主権の自由ということを前提としながら、それをいろいろな条約なり国際慣行で抑えていく、そういうような形をとっておると私は思うわけでございます。ですから、国家の行為が進法であるという意味におきましては、やはりその条約の成文にはっきり書いてあるとか、それからその解釈が国際社会において支配的な通念になっておるかどうか、そういうところからきめていかなければならないと思いますし、そういう条約上の成文の明文なり支配的な考え方としてこれは違法であるという、そういう点がかくまれておりませんと、これは国家の違法行為であるときめつけるのは、何といってもちゅうちょされるわけであります。国際法の考え方というものも時代とともに逐次固まりつつあると思いまするし、そういった意味で、いままでの既存のいろいろな兵器使用の条約がそういうふうに解釈されていくということが、国際社会の通念になるということは今後あり得ることだと思いますが、先ほど条約局長も仰せになりましたとおり、原爆投下の時点、昭和二十年の時点においてこれが違法であったと言うのはどうしてもちゅちょされる、こういう気持ちで法制局もおるわけでございます。
  250. 受田新吉

    ○受田分科員 どうもはっきりしないのですが、国際法違反ではない、しかし国際法に合致するとも言えない、つまり国際法の考え方から見てどうもあいまいもこだという解釈ですか、そこがどうもはっきりしないのですが、完全な国際法違反とは言えないけれども、ある程度これに近いものであるという解釈ですか、部長さん。
  251. 山内一夫

    ○山内政府委員 はっきり言えば国際法違反とは言えない、こういう気持ちでおります。ただ、いままでの兵器使用のもろもろの条約の精神から見て、原爆投下というものが望ましくない、こういうことは言えますけれども法律的に見た場合に違法であるというふうには言えない、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  252. 受田新吉

    ○受田分科員 この議論はこれでおきます。私、いまの時点でこの問題ははっきり日本が割り切って、国際法の解釈をもっと積極的に解釈して、違法行為であるということをみずから進んで提唱し、またこれを国際法規に織り込むようにもっと積極的に――先ほどから御努力されている経緯はちょっと伺ったのですが、そんななまぬるい御努力ではなくて、陣頭に立たれてこれを世界に訴えるということを要求しておきます。  それでもう一つ、ここに条約に関係する問題を提起したいのです。それは犯罪人引き渡し条約、これは日本はアメリカとしか結んでおりません。昨年の暮れにはドイツの犯人が二人日本へ逃亡しておる、また日本の詐欺犯がスイスから護送されておる、こういう事件がどんどん起こっておる。昔の船なら別ですけれども、こうして全世界が空路で瞬間にして交通ができるような時代になってくると、巧みに犯人が世界をかけ回るというような事態が起こってくるわけです。そのときに、アメリカ一国とだけ特定の条約を結んでいるこの日本の現状を見たときに、犯人の逮捕から引き渡しに至るまでそういうはっきりした手続を明記して、適当な国々との間における引き渡し条約を結んで、その間にスムーズに国際的な処理ができるように努力される段階が来ておるのではないか。非常に進歩した交通機関の発達しているこの際に、そこへ踏み切って各国と引き渡し条約をお結びになる用意があるかないか、お答え願います。
  253. 中川融

    ○中川政府委員 犯罪人引き渡し条約は、御指摘のとおり明治も相当初めのほう、明治十何年代でございますかにアメリカと結んだのが唯一の例でございます。その後、日本はどの国とも犯罪人引き渡し条約を結んでいないのでございます。一方、国内法といたしましては逃亡罪人引渡法という法律が、これも明治の年間にできておるのでございます。その法律によりますと、この条約、相互犯人引き渡し条約がある国から要求があった場合にのみ、日本が逮捕して引き渡せるという規定になっておるのでございます。まさしく法的に非常に不備な点があるわけでございます。御指摘のドイツから逃げてきた犯人をつかまえて渡すというのも、非常に法的にはむずかしい点があったのを、実際上の問題として解決したわけでございますが、なかなかそういう不備があることを痛感いたしておりますので、各国の例をも調べまして、必要ならばさらに引き渡し条約を必要な国と結ぶということも検討したいと思っております。なお一方、いまの国内法自体も、この条約がある国に対してだけ引き渡せるというのは狭過ぎますので、あるいは国内法のほうを改正して、要求のある国からは、条約の有無にかかわらず相互主義を前提といたしまして引き渡しに応ずることができる、その程度は国内において強権を用いることができるというふうに改正したらいいのじゃないかということで、このほうも法務当局と御相談しております。したがって、近いうちに何らかの意味で法的措置をそろそろ整備したいというふうに考えております。
  254. 受田新吉

    ○受田分科員 なかなかはっきりした答えが出たわけです。これは私非常に必要性を感じており、特に香港、タイ、ベトナム等の東南アジアから麻薬がどんどん持ち込まれてきているわけです。麻薬犯人という、特定のはっきりした対象を一つ申し上げるわけですが、こんな麻薬犯人などがどんどん日本に逃亡してくる、あるいはこちらからもそういうやつが行く、こういうような事態が現実に起こる可能性が非常に多くなってきておる。こういう意味で特定の、たとえば例を麻薬にとりましても、こういうものを対象にした犯人というものについては、もう具体的にすぐ取りきめができると思うのです。これは相手方でも、もうすぐ賛成すると思う。こういう目的をはっきりした立場もおとりになる必要はないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  255. 中川融

    ○中川政府委員 そういうこともよく考えまして、先ほど申しましたように、できるだけ早く法的に整備をはかりたいと考えております。
  256. 受田新吉

    ○受田分科員 時間がちょうど来た関係で私質問を終わりますが、このあとで移住事業団関係予算問題について触れたいと思ったのですが、時間が迫ったからあとにします。きょうは一応これで終わります。
  257. 相川勝六

    相川主査 本日の質疑はこの程度にとどめ、外務省所管についての質疑は、来たる二十五日午前十時より続行することといたします。明日は午前十時より開会し、厚生省所管について質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会