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河野国務大臣 私は御承知のように
建設大臣になります前に、
農林大臣をたびたびやりまして、新
農村の建設運動とか、農業改善運動とかいうような運動に挺身をいたしました。当時はこの
自分の
考えを、来たるべき
農村の再編成、
農村の将来のあり方として絶対自信を持って当たっておりました。ところが、
建設大臣になりましてから、最近
考えさせられますことは、抜けてるものが
一つあったということであります。といいますは、いま
山本さんがお話しになりますように、
日本の
農村は、
自分で
計画して、
自分で設計して、
自分の
責任において一切をやっておる。ところが、それがただ単に新
農村運動とか
構造改善運動とかいうことでいけるかというと、いけない時代がまいりました。それは大きく
経済の、何と申しますか、このごろのことばで公開
経済といいますか、世界
経済の中に
日本の
経済が溶け込んでいくようになった。そのために、どうしても、この大きな
経済の中になるべく近寄って、そうしてこの
影響をなるべく受けていくことのほうがより暮らしやすい
社会があるということのために、
日本の人口が大幅に移動をしてきた。これがいま
山本さんのおっしゃる
農村の人口がだんだん減ってきて、都会にだんだん流れてくるようになった大きな
一つの原因だろうと思います。それはただ単に
所得の倍増でもなければ何でもない。そういう大きな
経済上の変化、世界的な変化というものから、すべての人がなるべく
経済に一番便利なところに立ってやるほうがよろしい。さらに、また、これをよりよく消化するためには、大資本のもとに、大工場のもとにこれに取り組むほうがより便利であるということのために、大工場ができ、大企業がますます育成されて、小さなものはだんだん衰微してくるというような時代に入ってきた、これが現在の
日本の姿ではないかと思うのであります。これをこのままこれでけっこうだということで推進してまいりますれば、確かにいまあなたのおっしゃるような世の中になって、私は好ましい世の中とは
考えておりません。
しからば、どこに一番欠点があるかと申しますと、たとえば都会における物価高、私はおそらくわれわれが政治に
関係いたしましてからでも
——都会の野菜ものが暴落したから
農村の野菜ものが暴落する、
農村の野菜ものが高いから都会の野菜ものが高い、その
程度も違います。しかし、最近のように、都会では野菜ものが高いといわれながら、あなたの選挙区、わずか東京から十里、十五里離れたところに参ると、大根が一本二円、三円、トラック賃にも足りるか足りないかというような姿は、いままでの
日本の
社会にはなかった現象だと思うのであります。これは一体何だ。もっと大きな例をとって申しますれば、私は最近神戸に参りましたが、神戸で使っておる野菜の中には、台湾からニンジンが入っておる。
日本人が台湾でつくったニンジンを食べておるということにまで変わってきておるわけでございますから、いかに
日本の
農村が
自分の設計によって立っていこうとしても、立っていかれなくなってきておるというこの姿でございます。これを見るときに、何としても最も優先的にやらなければならないことは、全国的な輸送、
道路の整備、完備である。そして生産条件をすみやかに整えることである。今日の時世に
日本国土全体が生産条件を整えて、世界
経済の中に国内
経済が大きく寄与できるように生産条件を整えてやるべきである。先ほどの竹谷さんのお話しのように、東北方面の野菜ものが簡単に東京の市場に入ってくるようにすることだ、早くて、安く入るようにすることだ。そういう条件のもとに、東北の
農民諸君はそれぞれの設計をされることだ。まず
自分が従来の計算で設計を立てれば、みなこれは成り立ちません。それを、新しい時代に即応して運賃の計算をし、時間の計算をし、そうしてそこにどういう農業が適するか、どういう設計でやれば成り立つかということを、公共投資を優先して、国全体の産業のあり方をどういうふうに条件を整えてやるか、その整えられた条件のもとに、大多数の
国民諸君、
農民諸君、もしくは中小商工業者の諸君が、この条件に合うようにみずからのくふう設計において独立した産業に従事することのできるようにして差し上げることが基本的な根本的な政治の要諦であると第一に
考えます。
第二には、いまお話のありましたように、百万
都市は大き過ぎる、東京のようなものは困るじゃないか、私も同感でございます。がしかし、それら百万
都市といわず何
都市といわず、しいて申せば、私は関東全域にわたってきめのこまかな職場をそれぞれ持てるようにして差し上げることだ。それには
道路、下水、交通その他すべての
生活条件に合致するようなものを、順次、きめのこまかなものを関東全域に広げて、関東全体が世界の
一つの産業の基盤として、これが十分に利用できるようにして差し上げることだ。そうして安い土地に中小工場ができ、その中小工場から横浜なり東京なりに簡単に物資の、原料の輸送、製品の輸送ができるようにすることだ、そういうふうにして差し上げるようにして、そこに
中小企業者の発達、
生活の基盤も与えるということにして差し上げることが、将来の
日本がこの公開
経済のもと、世界
経済の中にあって、民族の生々発展に寄与する根本である。これをやることによって、私はいま御心配になるような点がある
程度考えられるんじゃないか、これだけは絶対にやらなければいかぬと思っております。その
意味におきまして、
建設大臣になりましてから後は、
道路、河川、
住宅というものに専念いたしておるのはこのゆえんでございまして、ぜひこれをやりたい、こう
考えております。もちろんほかにもいろいろございましょうが、これだけはどうしてもして差し上げることが、あなたが多年、企業の自由、本人のくふうというものの上に立って資本主義を主張される基盤、その基盤を与えるということが政治としてはすべてに優先してやらなければいかぬことだということを、私も同じ
立場に立って
考えております。