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1964-02-17 第46回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和三十九年二月十五日(土曜日)委 員会において設置することに決した。 二月十五日  本分科員委員会において次の通り選任された。       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    江崎 真澄君       重政 誠之君    保科善四郎君       松澤 雄藏君    山本 勝市君       五島 虎雄君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    加藤  進君 同日  稻葉修君が委員会において主査に選任された。 ————————————————————— 昭和三十九年二月十七日(月曜日)    午前十時二十八分開議  出席分科員    主査 稻葉  修君       井村 重雄君    今松 治郎君       重政 誠之君    松澤 雄藏君       五島 虎雄君    阪上安太郎君       島上善五郎君    堂森 芳夫君       細谷 治嘉君    加藤  進君    兼務 山下 榮二君  出席国務大臣         自 治 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第一部長)  山内 一夫君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      大津 英男君         検    事         (刑事局長)  竹内 壽平君         運輸事務官         (自動車局長) 木村 睦男君         自治事務官         (大臣官房長) 松島 五郎君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤  弘君         自治事務官         (大臣官房会計         課長)     宮崎  剛君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         消防庁次長   川合  武君  分科員外出席者         警  視  長         (警察庁交通局         交通指導課長) 片岡  誠君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局物価政策課         長)      嶋崎  均君         大蔵事務官         (主計官)   松川 道哉君         厚生技官         (環境衛生局水         道課長)    大橋 文雄君     ————————————— 二月十七日  分科員中井徳次郎委員辞任につき、その補欠  として島上善五郎君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  分科員島上善五郎委員辞任につき、その補欠  として細谷治嘉君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員細谷治嘉委員辞任につき、その補欠と  して阪上安太郎君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員阪上安太郎委員辞任につき、その補欠  として中井徳次郎君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  第三分科員山下榮二君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算自治省所管  昭和三十九年度特別会計予算自治省所管      ————◇—————
  2. 稻葉修

    稻葉主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  私が第四分科会主査職務を行なうことになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本分科会は、昭和三十九年度一般会計予算運輸省郵政省建設省及び自治省所管昭和三十九年度特別会計予算運輸省郵政省建設省及び自治省所管昭和三十九年度政府関係機関予算中日本国有鉄道関係及び日本電信電話公社関係につきまして、審査を行なうことになっております。  なお、分科会審査の都合上、お手元に配付いたしてありますとおりの日程によりまして審査を進めることにいたし、各省所管事項説明は、各省審査の第一日の冒頭に聴取いたしますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、昭和三十九年度一般会計予算及び同特別会計予算自治省所管を議題といたします。  まず、自治省所管について説明を求めます。自治大臣早川崇君。
  3. 早川崇

    早川国務大臣 自治省関係昭和三十九年度歳出予算につきましてその概要を御説明いたします。  昭和三十九年度の自治省所管一般会計歳出予算は、六千二百八十九億二千四百万円でありまして、これを前年度の当初予算額五千四百七十億三千六百万円と比較し、八百十八億八千八百万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額五千九百十六億七百万円と比較し、三百七十三億一千七百万円の増額となっております。  この歳出予算額を、まず組織に大別いたしますと、自治本省六千二百七十九億三千五百万円、消防庁九億八千九百万円となっております。以下この歳出予算額のうち、おもなる事項につきましてその内容を御説明申し上げます。  まず、交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れに必要な経費であります。その総額は六千二百十四億八百万円でありまして、前年度当初予算額五千四百二億六千万円に比較して八百十一億四千八百万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額五千八百四十八億一千九百万円に比較して三百六十五億八千九百万円の増額となっております。  この経費は、昭和三十九年度における所得税法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の二十八・九に相当する額の合算額に、昭和三十七年度における地方交付税で、まだ交付していない額を加算した額を計上いたしたものでありまして、すべて交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れられるものであります。  次に、選挙の常時啓発費につきましては五億五千万円を計上いたしておりますが、この経費は、公明選挙運動を強力に推進し、国民政治常識及び選挙道義の向上をはかるため必要な経費でありまして、前年度に比し五千万円を増額しております。  次は、奄美群島振興事業関係経費であります。  まず、奄美群島振興事業費につきましては、十四億四千八百万円を計上いたしております。奄美群島復興計画は、昭和三十八年度をもって十カ年計画を終了いたしますが、奄美群昂の現状が、なお本土との間に相当生活水準の格差があることにかんがみまして、引き続き産業振興を重点とする積極的振興方策を推進するため、昭和三十九年度を初年度とする振興五カ年計画を策定し、この計画に基づく事業を実施するために必要な経費であります。  次に、奄美群島振興信用基金出資金につきましては、五千万円を計上いたしております。この経費は、奄美群島における産業振興に必要な金融円滑化をはかるため、奄美群島振興信用基金に対する追加出資に必要な経費であります。これにより同基金に対する昭和三十九年度末における政府出資総額は、四億二千万円となります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金につきましては十三億五千万円を計上いたしております。この経費は、いわゆる基地交付金でありますが、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する市町村交付するため必要な経費でありますが、前年度に比し、一億五千万円を増額しております。  次に、公共土木施設及び農地等の小災害地方債元利補給金につきましては十七億七千四百万円を計上いたしております。この経費は、昭和三十三年以降昭和三十八年までに発生した公共土木施設農地等の小災害にかかる地方債に対する本年度分元利償還金または利子に相当する額の全部または一部を当該地方公共団体交付するため必要な経費でありますが、前年度に比し四億一千五百万円の増額となっております。  次に、固定資産税特例債元利補給金につきましては三億六千四百万円を計上いたしておりますが、この経費は、固定資産税制限税率引き下げに伴う減収補てんのため発行されました地方債についての昭和三十九年度分の元利償還金相当額関係市町村交付するため必要な経費であります。  次に、市町村民税臨時減税補てん債元利補給金であります。市町村民税所得割につきまして、市町村間の負担の不均衡を是正することを目的として、二年度で課税方式を統一し、準拠税率標準税率に改めるよう地方税法の一部を改正いたすこととし、これに伴って生ずる市町村減収を補てんするための地方債のうち、国が元利補てんを行なうものについて昭和三十九年度分の元利償還金相当額関係市町村交付するため必要な経費であり、三億円を新しく計上いたしております。  以上のほか、住民台帳制度合理化調査会及び地方公営企業制度調査会設置に必要な経費として二百万円、住居表示制度整備に必要な経費として六千七百万円、地方財政再建促進に必要な経費として六千百万円等を計上いたしております。  なお、予算計上所管は異なっておりますが、当省の事務関係のある予算といたしまして、公営企業金融公庫に対する政府出資金増額するための経費一億円が別途大蔵省所管産業投資特別会計に計上されております。  以上が自治本省関係一般会計歳出予算概要であります。  次に消防庁予算概要を御説明申し上げます。  まず、消防施設等整備費補助に必要な経費につきましては七億一千六百万円を計上いたしております。この経費は、消防施設強化促進法に基づき、市町村消防ポンプ等消防施設費及び都道府県の消防学校設置費に対して補助するために必要なものであります。  次に、非常火災対策に必要な経費につきましては二千二百万円を計上しておりますが、この経費は、非常火災時における消火、避難及び救助等に関する方策などの調査研究に要するものであります。  次に、退職消防団員報償に必要な経費につきましては六千六百万円を計上しておりますが、この経費は、非常勤消防団員が、多年勤続して退職した場合に、その功労に報いるため国が報償を行なおうとするものであります。  次に、消防吏員及び消防団員に授与する賞じゅつ金につきましては一千万円を計上しております。この経費は、消防吏員及び消防団員が、職務を遂行したことにより、災害を受け、そのために死亡または不具廃疾となり、特別の功労があった場合に賞じゅつ金を授与し、その功績を賞揚しようとするものであります。  次に、消防団員等公務災害補償等共済基金に対する補助につきましては三千四百万円を計上いたしております。この経費消防団員等公務災害補償責任共済基金を改組し、従来、基金が取り扱っていた業務に加えて、昭和三十九年度から新しく創設される非常勤消防団員に対する退職報償制度業務を行なわせることとし、これらの業務に必要な事務費補助するものであり、前年度に比し一千三百万円を増額しております。  以上のほか、消防学校の校舎を増改築するため、別に一億円を建設省所管官庁営繕費に計上しております。  次に、特別会計予算概要を御説明申し上げます。  自治省関係特別会計といたしましては、大蔵省及び自治省所管交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、本会計歳入は六千六百七十三億九千四百万円、歳出は六千六百六十六億八千四百万円となっております。  歳入は、一般会計から地方交付税交付金の財源として受け入れられる収入地方道路税法及び特別とん税法規定に基づき徴収する租税収入及び交付税及び譲与税配付金特別会計法規定に基づき、前年度の決算上の剰余金見込み額本年度において受け入れる収入その他であります。  歳出は、地方交付税交付金地方道路譲与税譲与金、特別とん譲与税譲与金として各法律規定に基づいておのおの定められた地方公共団体に対して交付または譲与するために必要な経費その他となっております。  以上、昭和三十九年度の自治省関係一般会計歳出予算及び特別会計予算概要につきまして御説明いたしました。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 稻葉修

    稻葉主査 以上をもちまして自治大臣説明は終わりました。
  5. 稻葉修

    稻葉主査 これより質疑に入ります。  質疑の持ち時間は一応一時間程度にとどめていただきたいと存じます。  なお、質疑者が多数あることと思われますので、各位におかれましては、開会の時間、質疑時間を厳守されるよう特に御協力をお願いいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。島上善五郎君。
  6. 島上善五郎

    島上分科員 私は、自治大臣その他関係方面に、選挙違反の問題、選挙法改正の問題、アンバランスの是正の問題その他について、若干質問したいと思います。  まず最初に、私の見るところでは、過ぐる十一月の総選挙は、きわめて悪質違反の多い選挙である。公明選挙を唱えられること久しいけれども、選挙のつど悪質化している。金の選挙になっている。これはもう否定するにも否定しようのない事実です。そうして去年の十一月の選挙は、まさにその頂点といってもよろしかろうと思います。この選挙違反実態数字でもってまず御報告願いたいと思います。
  7. 早川崇

    早川国務大臣 選挙違反件数具体的数字警察庁関係でございますが、いま刑事局長を呼びますから、後ほど御答弁いたしたいと思います。
  8. 島上善五郎

    島上分科員 では刑事局長を呼んでください。
  9. 稻葉修

    稻葉主査 ただいま呼んでおります。
  10. 島上善五郎

    島上分科員 そこから入りたかったのですけれども、前後してもやむを得ませんが、あとでわかりますように非常に悪質違反が多い。買収供応利益誘導、こういうものを俗に悪質違反と言っておりますが、件数においても、比率においても、これが断然多いということは、あとで報告されるであろう数字で明らかです。  そこでまず大臣に伺いたいのですが、選挙実態にかんがみて、定数改正もさることながら、あるいは制度研究もさることながら、この遺憾な悪質違反選挙実態にかんがみて、法改正の必要がないかどうか。私は法改正だけでは事足りるものとは思いませんけれども、必要があると思うのです。この前、選挙制度審議会から答申がありました買収供応利益誘導等に対する峻厳なる取り締まり強化連座規定強化あるいは事前運動取り締まり強化等の方針は、御承知のように政府によって骨抜きにされました。政府によって骨抜きにされて、さらにこれが国会において骨抜きにされて、もう小骨まで抜かれてしまった状況ですから、この法律は何の役にも立たなかったわけです。そうしていま申しましたような悪質違反が行なわれた。私は、去年の選挙実態にかんがみて、どうしても法改正をする必要があると考えますが、大臣はどのようにお考えか。改正の必要があるとすれば、どういう点とどういう点が改正の要ありとお考えか、伺いたいと思います。
  11. 早川崇

    早川国務大臣 私は、日本選挙法ほどこまかい点を禁止し、また罰則規定につきましてもきびしい選挙法を知らないのであります。したがって、選挙法をどれだけいじりましても、必ずこの裏をくぐるような違反あとを断たない。そこで私は、選挙法改正よりも、むしろ選挙法を守る国民運動を起こしたい、そうして悪質な選挙違反をした人は、札がもらえないのだ、いわゆる公明選挙を守る会というものを国民の中で、少なくとも一千万人、純粋な一千万人公明運動というものを推進することが根本ではなかろうか、かく考えまして、この運動を推進いたしておりましたが、残念ながら、前の総選挙がその運動を起こした一カ月後に行なわれましたのが、十分な成果をおさめなかったのでありまするが、国民が悪質な選挙をした人には札を入れないのだ、落選するのだということになりますれば、いまの選挙法でも、国際的には非常にきびしい選挙法でありますから、公明化へ大きく前進するのではなかろうか、したがって、選挙法改正ということは、いま直ちには考えておらないのであります。
  12. 島上善五郎

    島上分科員 早川大臣は、かつて大臣でなかった時分には、選挙法改正に非常に熱心だったのですが、大臣になってから少し心境が変わったようで残念ですが、日本法律はこまかくきびしいということは私も認めます。こまかくきびしいけれども、不必要なととろにこまかくきびしくて必要なところはざる法なんですよ。私はそれを言っておるのです。私は言論や文書の運動なんていうものは、大まかに自由にしたらよろしいと思うのです。問題は金の運動です。金でもって投票を買う運動です。物量選挙というやつです。これが今後回を重ねるごとに勢いを増していったらどうなるか。選挙の選は選ぶの選ではなくて、銭の銭になってしまいますよ。現にいまそういう状態です。私が言わんとするのは、こまかいポスターの寸法がどうだとか、立て看板の寸法がどうだとか、どこへ張ってはいけないとか、いけるとか、そういう本来自由であるべきことをこまかくうるさく取り締まっておることは大いに緩和して、金の選挙悪質違反抜け穴を封ずる必要がある、こういうことを言いたいのです。そういう点も必要がないとおっしゃるのですか。私はせんだっての選挙実態もこまかく調べて知っておりますけれども、何か一時間とかいいますから、きょうは時間がありませんからまたの機会にしますけれども、この前の法改正で、後援会事前運動について、期日の定めのあるものは三カ月前、衆議院等解散の場合は解散の翌日からです。そうすると、衆議院の場合には解散の当日まで後援会買収ごちそう政策にまぎらわしい運動が公々然とやれるわけですよ。これは、答申は確かに期限をつけてなかったはずです。解散の翌日からということは、解散の当日まではよろしいということなのです。そういうことや、その他たくさんありますが、そういうような選挙を腐敗堕落せしめて政治に対する国民の不信を高めるような、また汚職疑獄の種をつくるような、そういう大事な点を封ずる法改正が必要でないか、こう言っておるのです。まだまだあります。法律を守る運動もよろしい。しかし私は、ここでは名前は一応差し控えておきますが、あなたの内閣大臣で、地方選挙に、前回の選挙で大きな違反を出して有名な男のところへ応援に行って、選挙違反などというものは、夏のにわか雨みたいなもので、さっときて、きたあとはさっぱりしてしまうんだ、こういうことを演説した人がおるのですよ。必要ならば名前と証拠を持ってきてもいいけれども、私に言わしてみれば、法律を守る運動なんというのは、要するに申しわけにすぎないのですよ。大臣みずからが、選挙違反なんというものは、にわか雨みたいなもので、さっときて、いったあとはもうさっぱりしてしまうんだ、こういう演説をしているのですから、効果があがらぬのは当然ですよ。そういうような法を守る運動などという申しわけではなくて——もちろんそれも徹底的にやるなら多少の効果があるかもしれませんけれども、大事な、悪質違反の道を封ずる法改正が必要でないか、せんだっての選挙実態にかんがみて、私どもは必要だと考えていますが、いま御答弁があったようですが、必要がないならないでよろしい、もう一ぺんはっきりとお答え願いたい。
  13. 早川崇

    早川国務大臣 島上委員も御指摘のように、私も大臣になる前から選挙には非常に関心を持っておるわけであります。なぜなれば、選挙が腐敗いたしますと、議会政治が滅びるからであります。戦争前の政党政治が滅びた前車の轍を踏むということは、政治家として最も深く考えなければならぬ問題である。ただ、私の申したいのは、一八八三年に英国——それ以前はいまの金にすると五千万円候補者が金を使い、腐敗選挙の極点に達しておった。ところが、一八八三年の腐敗行為防止法が出た後、急激に選挙違反が減ってまいりまして、現在のような理想的な選挙運動になったわけであります。その腐敗行為防止法と現在の日本選挙法を比較いたしてみますると、決して日本のほうが軽い選挙法ではございません。むしろ一部においては重い選挙法。ただ違う点は、法を守るという、もし法にひっかかったら、非常に破廉恥だ、そういう人は選挙には当選できないのだということが、国民自身がそういう意識を持っておる。ところが、わが国においては、残念なことですけれども、選挙違反相当犯した人でも、次の選挙にはけろっと忘れて国民投票を得られるというわけであります。ここに非常に大きい問題がある。したがって、単に法律改正するだけではこの問題は解決しない。もっと深く、しかも長期にわたってこの問題に取り組まなければ、いかに法律をいじりましても、かえってそれが憲法違反のような法律をつくって、角をためて牛を殺すという結果にもなりかねない。連座規定なんというのはその一つの例であります。したがって、私としては、むしろそういった根本の問題として、国民法律を守っていくという組織をつくっていくということが先決ではなかろうか。もう一つは現在の法律も非常にきびしいですから、法が迅速に執行される——三年もかかるというのではなくて、短期間に裁判が確定するということによって、抑制的効果というものの実をあげていくということがむしろ大事じゃないか、かく考えまして、現在の選挙法が決して十分だとは申しません。したがって、選挙制度審議会にはさらに具体的に御検討願うつもりでございますが、そういった点にむしろ問題があるのじゃないか、最近は与野党を問わず選挙違反に問われている。私はこういう事態にかんがみて申しておるのでありまして、決して現在の選挙法が完全だとは思っておりませんけれども、むしろ問題はもっと深いところにあるのじゃないか、かように考えておるわけでありまして、そういう意味で選挙法はいま直ちに改正する意思はないと申し上げたわけであります。
  14. 島上善五郎

    島上分科員 英国における腐敗行為防止法の例を引き合いに出されましたが、腐敗行為防止法の最も効果をあげたのは悪質違反をした場合には、その選挙区で七年ないし十年間立候補できない、こういう項目ですよ。候補者がその選挙区で立候補ができない、もしくは公民権を失うということは、これは候補者及び運動する中心の人たちにとって一番痛いことなんですよ。日本法律は、形の上ではそういうものはあるけれども、公民権を喪失した人がありますか。選挙最終判決が出るころには次の選挙がもう始まっているのです。あるいは次の選挙が終わっていると思うのです。法律を迅速に執行するといっても、それは口だけです。大規模な悪質違反であればあるほど、裁判に時間がかかるのですよ。ですから、連座制はあってなきがごとし、何の用もなしていないのです。そういう点が大きな抜け穴になっていますから、大臣がおっしゃるように、こまかくきびしくとも何の役にも立っていないということなんです。国民自身法律を守るということが先決だ、何か責任国民に転嫁するようなものの言い方をしておりますが、私は、国民に法を守ってもらおうということを呼びかける前に、政党自身候補者自身自粛反省の実を示すべきだと思うのです。この前の選挙の前の予算委員会で、私は総理大臣からこのことを聞いて、悪質違反をした者は次の選挙には公認しないという言質をとりましたが、悪質違反公認をしなかった者もほんの少しあるようです。しかし公認をした者もあるようです。私は同僚議員のことですから、ここでは名前を申し上げません。多分裁判が無罪になるだろうという想定を立てて裁判進行中に公認をした人もある。そういうことで、政党自身——いま選挙政党運動であり、さらに候補者個人運動であると言ってもよろしいのですが、そういう政党候補者法律を守るという実をはっきりと国民の前に示さないで、それであなたの言ったように、犯してもけろりとして次の選挙に立っておる、こういう状態国民に法を守れなんてお説教ができますか。そこから改革することが先決だと思うのです。まあこれは御答弁は要りません。  そこで、さっき伺いました十一月の選挙違反実態数字でもって御発表を願いたいと思います。
  15. 日原正雄

    ○日原政府委員 選挙違反の検挙状況でございますが、期日後三十日の集計、十二月二十一日の集計でございますが、総数で一万六千六百九十三件、三万三千百九十六名を検挙いたしております。その罪種別でございますが、買収が一万三千四百七十件、二万九千七百五十一名の検挙でございます。それから文書違反が千五百六件、千八百十六名の検挙でございます。それから個別訪問が千百六十件、千百四十三名、自由妨害が六十三件、七十五名、その他が四百九十四件、四百十一名、こういうことでございます。
  16. 島上善五郎

    島上分科員 これでもわかるように、件数においても被検挙者数においても買収が圧倒的ですね。これは何割になっていますか。いまちょっと計算しておりませんが、件数と人数の比率はどうなっていますか。
  17. 日原正雄

    ○日原政府委員 約八割ぐらいだと思います。
  18. 島上善五郎

    島上分科員 八割以上ですね。人数の上ではたしか九割、件数でも八割ちょっとこしていますね。このようにして買収が圧倒的に多いということですね。これは見のがすことのできない事実だと思うのです。買収ということは、言うまでもなく直接間接に投票を金で買うことなんですから、こういうような金で直接間接に投票を買うという傾向がだんだん助長されていくということは、法を守る運動をやっても、公明選挙運動をやっても、そういうものをしり目にかけてどんどんふえていっているという事実は、お説教や精神的な運動だけではだめだということを立証しておるのですよ。大臣法改正の熱意がなければ、大臣からこれ以上答弁を聞いてもしょうがないけれども、私は、当然あの選挙の直後に、あの選挙実態にかんがみて、法改正の必要がないかどうかということを選挙制度審議会に諮問すべきであったと思います。特に選挙のつど、一つか二つずつ新しい知能犯的な違反が起こってきている。いわゆる背番号候補などという、ああいうふざけたもの、あれは現行法ではどうにもならぬのですよ。背番号候補が今後また出てくる。にせ証紙が出てきて、それを取り締まろうとすれば、今度は背番号が出てくる。背番号を取り締まればまた次のやつが出てくるかもしれませんけれども、あの背番号候補の乱立に対しては、もし今後ああいうことが助長されましたならば、私は選挙民が投票すること自体に熱意を失ってしまうと思う。これはたいへんなことです。これに対して何か大臣は、防止するための法改正なりあるいは行政的措置なりを考えておりますか。
  19. 早川崇

    早川国務大臣 通称というものによる立候補は認められておるわけでありますが、はたして背番号というものが通称であるかどうかという解釈で、選挙中でございましたので、一々その関係者に、これは通称になっているかということを調べを選管の手続事務ができなかったのであります。したがって、一部の選管では、あれを押えたところもございます。おとぼけ正二郎ですか、そういう選管もございましたが、東京都は御承知のようにああいう処置になったわけであります。したがって、通称というものの解釈をどう確定するか、目下自治省で検討いたしておりますが、たとえば藤原あきさんという、本名でありませんけれども、通称として通っております。背番号の番号候補というものがはたして社会通念上認められるか、そういったものを行政的にできれば、もう別に法律を新たにつくる必要はございませんが、よく検討いたしまして、行政上できない場合には、何らかの制限する立法もやらなければならないと思っております。
  20. 島上善五郎

    島上分科員 時間がありませんから少しはしょりますけれども、こういうふうに選挙が悪質になり、特に直接間接に投票を金で買うというような憂うべき事態がだんだんふえているということは、一つには、政治資金についての規正があまりにもゆるやかであるというところにもあると思うのです。大臣も御承知のように、選挙制度審議会の前々回の答申には、この政治資金規正についての改正答申もあったはずです。理想的な案は今後さらに続けて検討するが、さしあたって国から財政投融資あるいは補助金、交付金、利子補給、そういう利益を与えられておる法人からは政党及び候補者は献金を受けてはならぬという程度の改正はすべきであると答申があった。しかしそれも政府によって採用されなかった。私は、国民の金ですから、その程度の——選挙に際しては、政府と請負その他特別の利益を伴う契約者からはいま禁止されていますけれども、国から財政投融資、交付金、補助金、利子補給、こういう形で利益を供与されている法人からは禁止されていないはずです。その程度の禁止の措置をとるのは、これは常識じゃないですか。国民はそんなものは当然のこととして禁止されていると思っているのですよ。どうでしょう、大臣
  21. 早川崇

    早川国務大臣 島上君は少しお忘れになっておるのでありますが、昨年の選挙法改正におきましては、選挙に関してはそういうものはしてはいかぬということになっております。したがって、その点は誤解でございますから、申し添えておきたいと思います。  問題は、選挙に関してでなくて、政党献金の問題でございますが、これはもう十年来の議論のあるところでありまして、そういう関係を禁止したらどうかということに対して、今度は、国家から金をもらっておる官公労の組合から金をもらうのはおかしいじゃないかというような議論も出まして、いろいろ政党の利害関係がからみまして、いまだにこの問題は法律化されておらないわけであります。今後検討の問題だと思います。  なお、選挙制度審議会では、政治献金については、個人に限るべきじゃないか、法人とか労働組合というような団体の献金は禁止すべきである、こういう答申は出ておりますけれども、これまたいろいろ問題がありますので、いま直ちに立法化するという段階に至っておりません。今後の検討の課題として取り組んでまいりたいと思います。
  22. 島上善五郎

    島上分科員 ぼくも「選挙に関し」という五文字を付して改正したことを知っております。しかし、選挙に関してということは、裏から言えば、選挙に関しなければよろしいということなんですよ。これもどのようにでも抜け道があるのです。こんなものは何にもならぬですよ。選挙に関しようと関しまいとにかかわらず、国の財政投融資、補助金、交付金、利子補給を受けている団体からは政治献金をしないというのは、私は当然だと思うのです。こういう補助金、交付金、利子補給等を受けている団体が予算編成ごとにその増額を要求して運動する。そして成功すれば政党に献金する。こういう関係が存在してよろしいものでしょうか。私は、政治道義の上からいっても、これは当然禁止すべきものだと思う。官公労の組合の政治献金とそれとをこんがらかして論ずるということは、私は議論の次元が違うのではないかと思います。これは見解の相違だろうから、これ以上申しません。  そこで質問を進めますが、一体いま選挙制度審議会は何をしていらっしゃいますか。
  23. 早川崇

    早川国務大臣 御承知のように、昨年の十一月に期限が切れましたので、年度がわりの四月一日に新たな委員を任命いたしまして諮問をいたしたいというわけでございます。現在は存在しておりません。
  24. 島上善五郎

    島上分科員 それは法律違反じゃありませんか。法律があって存在してない、法律違反の疑いもあるし、かりに法律違反でないにしても、これは政府の大いなる怠慢です。政府選挙法なり選挙制度改正に対する熱意がないという証拠です。任期が切れて半年も、法律があってすぐできるはずのものを放任しておく、これははなはだしい怠慢です。  いまこれからだんだん伺いますが、定数改正問題でも、去年の答申は、去年の総選挙に間に合わせるように、理屈を言えば多少欠点はあるけれども、去年の選挙改正するようにという意味で、大急ぎで答申したはずです。いま政府では与党との間にやっさもっさやっておるようです。選挙制度審議会があったら選挙制度審議会に諮問したらいいじゃないですか。政府と与党との間でやっさもっさやればゲリマンダーになることは当然ですよ。それで提出がおくれておる。一体これは今度の国会で成立させようとする熱意があるのですかどうですか。私は選挙制度審議会が存在しておるべきものだし、存在させておいて、選挙制度審議会答申した答申のとおりに出すならば、問題はなかろうと思うけれども、去年の十一月の選挙に施行するようにという意味で答申したのだから、次の選挙にずれてしまったのだから、時点が変わったし、状況が変わったから、区割りはどうしよう、あるいは人口と議員の配分はあれでよろしいかどうかということ等についても、もう一ぺん諮問したらいいじゃないですか。諮問しないから、政府の間で大臣はたいへん熱心に努力しているようですけれども、大臣が努力したのが次から次へと掘りくずされてひっくり返されてしまうのです。一体いつごろ出して、今度の国会で成立させようとする熱意がおありかどうか、この機会にはっきりお聞かせ願いたいと思います。
  25. 早川崇

    早川国務大臣 選挙制度審議会が任期が切れて置いてないというのは、いろいろ技術的な問題もありますし、やはり答申が出た以上、一番大きい答申は定数是正ということ、一つ一つ片づけていかなければ、次から次へ幾ら諮問しましても区切りがつきませんので、現在活動しておらない点を御了承願いたいと思います。  定数の是正につきましては、総理大臣予算委員会で山花委員の御質問に対して、はっきり今国会で実現したいと答弁されております。また社会党の委員長名で定数是正を早急にやれという強い御要望が総理大臣自治大臣に参っておることも承知いたしております。したがって、選挙制度審議会答申の趣旨を生かしながら現在検討いたしておるわけでございまして、できるだけ早い機会に政府としての結論を得まして、おはかりを申し上げたい、かように思っておるわけであります。もちろん今国会で定数是正を成立さすつもりで成案を急いでおるわけでございます。
  26. 島上善五郎

    島上分科員 早川大臣のお考えは、現行選挙区はいわゆる中選挙区で三名ないし五名だから、六名以上のところは分区するというお考えのようですが、その案なるものも一部新聞に発表されました。六名以上分区されるという考えと、六名のところはそのまま据え置いて、八名のところだけ分区するという考えとあるようですが、私は、もし分区するならば、やはり六名以上を分区すべきであって、ここは分けにくいからやめておいて、八名のところだけ分区しよう——分けにくいということはありませんよ。党の現在当選している議員の思惑を考えたり、ゲリマンダーを考えるから分けにくいのですよ。分区は地理的条件と人口の配分だけを考えてやればよろしいのであって、それ以外のことを考えるから分けにくいのです。党に相談して、党はさらにその選挙区の議員と相談したら、できやしませんよ。少なくとも合理的なものはできませんよ。そういうやり方自体が間違っておるのです。もっと党略的な考えを抜きにして、純粋な立場から分区するならば、六名、八名を分区していく、合理的に地理的条件、行政的な区分、人口を考えて分区したらいいじゃありませんか。その点どうでしょう。
  27. 早川崇

    早川国務大臣 選挙制度審議会答申は分区をしないで出してきております。また中選挙区というものは三名ないし五名というように習慣的にそういわれておりますが、必ずしも法律上三名ないし五名というものでもありませんし、そこは弾力的に考えていいのではなかろうか。問題は、選挙区の区割りというものは、万人が納得するような線にいきませんが、与党も野党もこれでしょうがない、おのずから現職議員を中心というわけではありませんが、一般世論を見て納得する線であれば、選挙制度審議会にあらためてかけなくても、答申の趣旨は生かしたと思うわけであります。六人区の場合には、いまどうするかと検討中でございますが、たとえば島上さんの選挙区のあの東京六区のごときは、ちょうど荒川という天然の川にはさまれてきれいに二つに分けられる、だからそういうものは万人が認める、与野党のみならず、選挙民も、あの大きい川を渡っていくのに橋は幾つもないので、だからそういうものは、これは二つに割っても、別に選挙制度審議会の御審議をわずらわさなくても御賛成願える。問題は六人区です。この割り方は十重二十重に割れますので、ほんとうに社会党にも御協力いただいて、与野党のみならず、世論も納得できる線があれば、これは割って出したい。しかも世論も、与野党も、公平な線が出れば、これは何も選挙制度審議会にかけなくてもいいわけです。そこにいろいろ苦労している。それで選挙制度審議会答申は、御承知のように、定数是正ということが絶対のいまの世論の要望でありますから、これを重点に答申していく、区割りをどうするかということは第二義的な問題だと私は考えておるわけであります。
  28. 島上善五郎

    島上分科員 選挙制度審議会が六名、八名の例外を認めて、これをやりなさいという答申をした精神は、去年の十一月の選挙に間に合わせなさいということなんですよ。そのためには区割りをいろいろやったりしておると間に合わなくなるし、また選挙に混乱を起こすし、去年の十一月に間に合わせなさい、そういうものなんですよ。そこで、十一月に間に合わなくて、今度は来年か再来年か知りませんが、少なくとも二年くらいあるのですから、そういう意味において分区を考えるならば、考える理由もあると思うのです。しかし、与党、野党が納得をしている——いま与党だけと相談しているのではないですか。私の選挙区の例を出されましたが、私にとっては、まるでほんとうに好都合のありがたいようなかっこうになるようですが、私にとってありがたかろうがなかろうが、そういうことではなしに、与野党というなら、原案を出して国会の審議の中で与野党が話し合ってもいいじゃないですか。いまはもっぱら与党。それから荒川をはさんでというけれども、荒川をはさむと行政区が二分されるようになると思いますが、それはどうでもいいです。私は自分の選挙区のことについては聞きませんが、いずれにしても筋を通すべきですよ。最初の案をつくって、与党と話したら総務会でだめだと言われた。また第二次案をつくり直す、それもだめだ、こういう最初は一応筋を通したかのごとき政府の案をつくって、それをこわされて、やっさもっさやっておるかっこうというものは、国民から見たらどう思いますか。与党も野党もとおっしゃいますけれども、野党は少なくとも責任はありませんよ。何の相談も受けておりませんよ。与党も野党も国民も納得するというなら、答申のまま国会に出して、国会審議の過程で直していったらいいじゃないですか。少なくとも、いまの作業を進めている状態というものは、党利党略と申しますか、ゲリマンダーと申しますか、そういう印象しか国民に与えていません。そういう印象をぬぐい去って、早川自治大臣、この筋を通して、最初の考えを貫いたらどうですか。あれが筋が通っているとお考えになって案をつくったのでしょう。それが途中でグニャグニャになるようじゃしようがありません。もう一ぺん筋を通しなさいよ。この分科会で大いに野党の意見があったから筋を通すというお考えはどうですか。筋は曲がっても何でもという、そういうお考えなのか。筋を通してこそ野党も納得するであろうし、国民も納得すると思うのです。筋をグニャグニャに曲げて一体国民が納得しますか。野党が納得しますか。私ども納得しませんよ。筋を曲げたら、国会に出してきてから審議相当時間がかかり、いわば難航するであろうということを覚悟してかからなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  29. 早川崇

    早川国務大臣 自治省、政府案というのは実はできておらないわけです。新聞でたまたま早川個人の妥協案というような線で出ただけでございまして、最終的な政府案というのはきまっておりません。御承知のように、政党政治でありますから、事実上与党にいろいろ検討していただいておるにすぎないのでありまして、最終的に自治省案というものはきまっておりません。私はこの選挙区制の問題、割り方というものは、与野党を越えてほんとうに公平な線、万人が納得できるような線として国会に出したいという信念には断じて変わりはございませんので、その点は島上委員も、出てきたらひとつ御批判願うという、私の気持らを御了解願いたいと思います。
  30. 島上善五郎

    島上分科員 たいへん大みえを切りましたが、とにかく筋を通してください。筋が通ったものなら、われわれは審議に協力し、通すことに協力します。筋が曲がっておれば、その筋をまっすぐにするために国会の中で戦います。これはいまからはっきりさしておきます。  それから定数是正ですが、参議院の定数是正の問題は全然触れられず、問題にもされていないようですけれども、私は衆議院ばかりではなく、参議院の定数是正も少なくとも爼上にのせるべきものだ、このように考えております。いま私の手元には数字はありませんけれども、定員二名、四名、こういう区があります。二名区は改選が一名、四名区は改選が二名ですが、改選二名の選挙区よりも改選一名の選挙区のほうが人口が多いところがたくさんあります。こういう矛盾については、これは困難だから触れずにおこうというお考えか、それとも、これも取っ組んでみようというお考えか。来年参議院選挙です。取っ組んでみようというお考えならば、来年の参議院選挙に間に合わせるために取っ組んでいく考えがあるかどうか伺いたい。
  31. 早川崇

    早川国務大臣 御承知のように、選挙制度審議会答申の中には、参議院地方選出議員の定数不均衡是正という項目もございます。これによりますと、参議院議員定数不均衡の是正は地方選出議員についても同様であるので、本審議会は、参議院議員の定数不均衡是正措置についても今後において引き続き審議をいたしたいという答申が出ております。そういう意味におきまして、衆議院の定数是正というものが実現した後におきましては、当然検討の対象になるということを考えております。
  32. 島上善五郎

    島上分科員 そうしますと、審議会で引き続き審議中、私もそのことは知っておりますが、審議会が再開されますればその答申も秋ごろまでにはあると思いますが、来年の七月には参議院選挙です。来年度の七月の参議院選挙までに地方区の定数是正を間に合わせたいという考えなのか、来年はとうてい無理だから、その次からという考えなのか、その点をこの際はっきりしていただきたい。
  33. 早川崇

    早川国務大臣 これは審議会の御審議を得た後でなければなりませんので、この次の参議院の地方区に間に合うかどうかということは、いま予測できないところでございます。
  34. 島上善五郎

    島上分科員 審議会が次の通常国会前に答申されて、政府がその答申に手を加えたり何かすれば、これは間に合いません。政府の熱意いかんです。答申があったら、答申のまま国会に出して、来年の選挙に間に合わせたい、こういう熱意があれば間に合うし、いつ答申されるかわからぬし、また、その答申の内容もわからぬし、答申を見てからでなければ何とも言われませんという程度の熱意では、もう来年の参議院選挙は現行のまま、こういうことにならざるを得ません。これは各党とも、また党以外の人々も、そろそろ来年の参議院選挙の準備をしている段階ですから、そこで私伺っているわけですが、私の受けた印象からすれば、来年の参議院選挙には間に合わぬ、こういう強い印象を受けております。少なくともその熱意は政府にはなさそうです。熱意があるならば、答申を受けて国会が開会されましたならば答申のとおりに出して成立をはかる、こういう熱意があるならば来年に間に合うだろうし、いかがです。
  35. 早川崇

    早川国務大臣 衆議院と少し違うのでございます。御承知のように、参議院には全国区というものがございまして、全国区議員というものは、要するに、私の見るところでは、東京在住の人が非常に多いわけです。都市の代表の人が多いわけであります。そういう関係で、衆議院のように端的に定数是正というものにつきましては、若干審議会でも議論があるかと思います。ですから、そういう点もにらみ合わせまして、審議の経過から判断してまいりたいと思っておるわけでございます。
  36. 島上善五郎

    島上分科員 それから、例の議員提出で衆議院選挙の特例法として去年定められて、去年の総選挙に実行された法律があります。あの法律については多少非難もあるようですが、しかしよかった点も確かにあります。この特例法の恒久立法化という問題がいまあるわけですが、特例法の恒久立法化、そうしてあの特例法以外にも、たとえば執行経費の問題など、政府の側としても改正したいと思う点が若干あるのではないかと思う。大臣は、特例法とそれに政府が必要と考える若干の改正を今国会に提案する御意思がありますかどうですか。
  37. 早川崇

    早川国務大臣 問題は審議会との関係でございまして、特例法は御承知のように議員立法で、与野党相談の上できました。審議会の考え方と若干違う点もあるように聞いておりますので、もしそういう点がございましたら、今国会にあるいは政府提案として間に合わないかもしれませんが、そういった場合に与野党一致すれば、立法府は国権の最高機関でありますから、そういう方法もあろうし、なおよく検討いたしてまいりたいと思います。
  38. 島上善五郎

    島上分科員 それなら特例法の恒久立法化は政府提案としては出す御意思はない、こう見ていいわけですね。政府提案としては、四月から再開される審議会に諮問しても間に合いませんよ。片方の定数是正のほうは審議会の答申どおりやらぬし、分区については諮問しないのに、片方は若干審議会の考えと違いがあるからといって諮問するということも少しおかしいのですけれども、あの特例法以外にも執行経費等についてはどうしても改正しなければならぬ点があるんじゃないですか、どうでしょう。
  39. 早川崇

    早川国務大臣 政府提案をしないと言ったわけじゃないのでありまして、選挙制度審議会答申では平生の選挙前の演説とかあるいは文書図画とかパンフレットは幾ら出してもいいという答申なんですね。どんなに金をかけてもいいという。それは文書活動、たとえば早川崇国会報告とかあるいはそういうものを自由自在にやりなさい、そういうものは選挙が始まる前までは一切よろしい、そういう点が少し、文書図画あるいは公営掲示場にかけて考え方の多少違った面があるわけです。したがって、そういった面を少し調整しながら、根本的にアイデアが違わなければむろん政府提案として出します。  それから執行経費改正、これは当然政府提案でやらなければならぬ問題であると思います。そういった点をまだ調整しておりませんので、政府として出すとか出さぬとか、こういうことをはっきり申し上げられる段階に立ち至ってないという点で御了承願いたいと思います。
  40. 島上善五郎

    島上分科員 それから選挙制度審議会は四月から再開されるわけですが、その再開されます選挙制度審議会に、政府はどういうことを諮問されるお考えですか。
  41. 早川崇

    早川国務大臣 やはり一番の大きい諮問の課題は選挙区制だと考えております。
  42. 島上善五郎

    島上分科員 選挙区制、すなわち選挙制度の問題の根本に触れる、根本に入っていく、こういうことになると思うのですが、私さっき定数改正の問題を聞きましたのは、定数改正が今度の国会で成立しないと、この次の国会には選挙制度、区制そのものが議論される時期がくると思うのです。そうなると、選挙区制そのものを根本から改正しようという問題、成立するしないは別としまして、選挙制度審議会にまず第一に諮問するとする。諮問する以上は、秋ごろには答申があると見なければならぬ。通常国会には、選挙制度そのものを変えよう、区制そのものを変えようという答申があれば、アンバランスなどはその区制改正の中でおのずから解決していく問題ですから、今国会で定数改正が成立しなければ、次の国会では定数改正問題が区制問題の中に埋没して消えていってしまう、そういうおそれがあると思うのです。その点はどうでしょう。
  43. 早川崇

    早川国務大臣 定数是正は今国会でやると言っておるわけでありまして、これとはもう全然違うので、たとえばこういうことは予測できませんが、小選挙区制といたしましても、現在のような定数のままで一人一区に割るということは妥当ではないと思うのです。やはりアンバランスを直した定数是正の上の定員というものを中心に小選挙区を考えていくべきものだと思います。そういう意味では選挙区制というものと面が違う、全然ディメンションが違うわけでありますから、いずれにしても定数是正はそういう選挙区制の検討云々を離れて、今国会で成立させたいという気持ちを持っておるわけでございます。  なお、選挙区制の問題というものは御承知のようにいろいろ非常にむずかしい問題でありまして衆議院のみならず参議院、全般的な問題でありますが、これは今後検討をして諮問するわけでありまして、次の選挙までどうこうというようなことがいま直ちに見通せる段階ではないことを御了承願いたいと思います。
  44. 島上善五郎

    島上分科員 私も、区制を改正する問題と定数の問題とは別の問題であるから、すみやかに今国会で成立を期するように、政府が早く筋の通った合理的な案を出してもらいたいと思うわけです。しかし、違う問題ではあるけれども、今度の国会で成立しないで次の国会へいくと、一方では制度根本問題を検討する、一方では定数是正の問題をやるということになれば、定数是正の問題は根本問題を解決すればおのずから解決するのだからということになるおそれがあるのです。そこで私は、さっきから何度も繰り返して言っているように、そういうおそれがあるから、早く今国会で成立するように合理的な案を出しなさい、こう要求しておるわけなんです。選挙制度の問題については諮問されるわけで、ここで論議する段階ではないと思いますが、いまちょっと大臣のことばの中に、たとえば小選挙区制が実現するわけでもなかろうが、こう言っていましたが、何か区制について大臣のお考えがありましたら、大臣個人の考えでもいいが、この機会にお聞かせ願えますか。
  45. 早川崇

    早川国務大臣 大臣になる前の個人、代議士としての早川としては、いろいろ意見を持っていますけれども、自治大臣になりましたので、ちょっとそれは差し控えたいと思います。
  46. 島上善五郎

    島上分科員 では、もう時間を超過したから、これで遠慮しておきます。
  47. 稻葉修

  48. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、昨年行なわれました東京都の都政監査の問題と、第二に新産都市建設に関する主として財政面からの問題、第三に住民税の問題を中心といたしまして、御質問をいたしたいと思います。  まず第一番に、昨年行なわれました都政監査の問題でございますが、昨年九月の十三日から二週間、自治省の宮澤参事官を団長とする三十四名の方々が監査をいたしまして、昨年十一月二十九日に東京都の行財政調査報告という全文五百ページになんなんとする報告が出されております。その監査の根拠法令は、地方自治法の二百四十五条の三と二百四十六条に基づいて行なわれた。この都政の監査の問題は、今後の地方自治という基本的な問題にも触れるかと思いますので、以下この点について具体的に御質問をいたしたいと思います。  まずお尋ねしたい点は、この調査はどういう目的でどちらが先に手を出して行なわれたのか、この点をお尋ねしたい。
  49. 早川崇

    早川国務大臣 地方自治法による行政調査及び監査は、検察庁の非違剔抉とか会計検査院とかいうものと性質を異にいたしているものと考えます。自治体が健康に発達するためのいわば健康診断だ、私はこういうことを調査の前に申したわけであります。東京都に対して、都民がいろいろ不満もありましょうし、その他監督しておる信用組合その他で不正事件が続発するとか、いろいろ世論が出てまいりました。三十年来実施いたさなかった。従来は赤字の団体にやっておりましたけれども、こういう黒字の団体も、都民の税金がどう使われているか、うまくいっているか、第三者の診断を要望している、そういう世論を背景にいたしまして実施をいたしたわけでございまして、検察庁や会計検査院のように、あらさがし、非違剔抉ということは、おのずから目的を異にいたしておるわけでございます。今後いろいろ問題のあるような自治体に対しまして、行政調査、あるいは財政監査をやる場合にも、その基本的な自治法の趣旨はそういう点にあろうかと考えております。
  50. 細谷治嘉

    細谷分科員 行なったのは非違剔抉ということではなくて、健康診断、こういう趣旨で行なったというおことばでございますが、いまのおことばにもございましたように、当時都民ばかりではなく、全国的な問題として、都知事の選挙で東派が犯したにせ証紙の問題、あるいは都議会議長の汚職の問題、あるいは昼夜信用組合の不正事件の問題、こういう問題がございまして、都政が都民から非常に批判され、信頼を失いつつあった。むろんこの刑事責任をやるというのは自治省の役目じゃありませんけれども、そういうものが目的ではなかったんですか、お尋ねいたします。
  51. 早川崇

    早川国務大臣 そういった具体的ケースの不正摘発というものは検察庁、警察及び会計検査院の仕事でございまして、この自治法による行政調査及び監察というものは、行政のあり方、そういうものが起こったのはどういうところに欠陥があるのか、また財政がうまく運用されておるか、それにはこうされたほうが自治体としては健康に育つのではないか、こういうところに重点を置くべきものであるというのが私は自治法の法意だと思っております。従って、細谷委員の御指摘のように、検察庁的なことは一切やらなかったことを御了承願いたいと思います。
  52. 細谷治嘉

    細谷分科員 いろいろないまわしい問題が起こった、都政をすっきりしなければならぬ、これは自治省の役割りでありますから、そういうことでやったということでございますが、現実に行なわれましたものは、都の一般的な行政全般について監査をなされたようでございますが、そのとおりでございますか。
  53. 宮澤弘

    ○宮澤(弘)政府委員 いたしました結果は、都の組織運営全般につきまして調査をいたしたわけでございます。ただ、先ほど細谷委員も仰せのように、時間的な制約、それから調査に当たりました人員の制約もございまして、たとえば、都の行なっております事業としていろいろ議論のあります公営企業関係、こういうようなものは確かにいろいろ問題があろうと思うのでございますけれども、先ほども申しましたような時間的な制約、調査に当たりました人員の制約、そういう点から申しまして割愛せざるを得なかったわけでございます。ただいま申しましたような時間、人員の制約ということがございましたけれども、一応全般にわたって都の行財政の運営を調査いたした、こういうことでございます。
  54. 細谷治嘉

    細谷分科員 発端は汚職問題等から出たのだけれども、調査にあたっては都政全般について調査したというおことばでございますが、この根拠法令の自治法二百四十五条あるいは六条、これは昭和二十七年の地方自治法の一部改正という際にできたものでございますが、当時、この問題については衆議院地方行政委員会等でも問題になり、質問された点でございます。その節地方自治に関連するような問題としてそういう全般的な問題を調査することは妥当かどうか、こういうことが議論されたはずでございますが、自治省としてはどういうふうに御理解になっておるかお尋ねいたします。
  55. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 お尋ねの立法当時の御審議の状況につきましては、正確にはただいま承知をいたしておりませんけれども、この二百四十五条の三の第一項の規定につきまして、これを運用をしてまいります場合には、当該地方公共団体地方自治権を侵害することのないように十分配慮をして当たらなければならないというのが、私ども従来からとってまいりました心がまえでございます。
  56. 細谷治嘉

    細谷分科員 地方自治を侵さないというたてまえでということでありますけれども、当時の衆議院地方行政委員会で議論になった点からいいますと、一般的な、全般的な行政監査ということについては、そこまで考えておらない、こういうふうに当局はお答えしておるようでありますが、そういうことでありませんか。
  57. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 当時の応答につきましては、ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんので、必要がございますれば、後刻調べました上で御答弁申し上げたいと存じます。
  58. 細谷治嘉

    細谷分科員 当時の法制定の際の精神、考え方というものは、きわめて今後にとっても重要でありますから、御調査の上、正確にお考えをいただきたい、こう思います。  次に、お尋ねいたしたいことは、東京都政の監査という問題から、先ほど大臣のおことばでは、従来は赤字の団体についての調査をやったのだけれども、東京都については赤字というおことばではなくて、先ほどのようなおことばでありました。  そこで、三十九年度において、どのような調査計画があるのか、これについてお尋ねしたいと思います。
  59. 早川崇

    早川国務大臣 健康診断としての行政調査をやってもらいたいという団体もかなり出ております。また自治省として調査をしたいような自治体も若干ございます。目下検討中でございます。
  60. 細谷治嘉

    細谷分科員 三十九年度においては、たとえば大阪とかあるいは福岡県とかそういう点を対象にして御調査をなさるといううわさを聞くのでありますが、そういう計画はございませんか。
  61. 早川崇

    早川国務大臣 まだ確定いたしておりませんので、いま申したように希望のところもありますし、こちらが考えているところもございますし、どの程度やるか、予算要求では二十数件というようなことも考えましたことは事実でありますが、とてもそんなにやる必要もございませんし、よく検討いたしまして、要するに自治体住民の福祉のために必要と考える自治体に自治法による助言、勧告をやるということが、自治省として、国民に信託された国務大臣として考えなければならぬ問題であります。
  62. 細谷治嘉

    細谷分科員 三十九年度の御計画なりあるいは予算等について具体的なお答えがございませんけれども、この点についての予算が三十九年度にどういうふうに計上されておるのか、お尋ねします。
  63. 松島五郎

    ○松島政府委員 地方財政の実地監査に要する経費といたしまして、職員旅費等で九十七万一千円計上してございます。
  64. 細谷治嘉

    細谷分科員 予算は九十七万ということでございますけれども、具体的な計画はまだきまっておらないということでありますので、次に移ります。  この調査報告書を読んでみますと、随所に助言または勧告、こういうものを自治体側から見ますと実質上それを越えたと見受けられる点があるように思うのでありますが、この点いかがでしょう。
  65. 宮澤弘

    ○宮澤(弘)政府委員 細谷委員の御指摘の具体的にどの点であるかということでございますけれども、私どもといたしましては、東京都の行財政を調査をいたしまして、その結果適当と認める助言なり勧告なりという限度において調査報告書も作成をしたつもりでございます。それ以上に出ていないと思っております。
  66. 細谷治嘉

    細谷分科員 助言、勧告の限度以上に出ておらないというおことばでございますけれども、報告書全体を読んでみますと、まず人件費か事業費かという自治体の非常に重要な基本的性格において、事業費に重点を置くべきだ、人件費は削れ、こういうような印象を受けるような報告と読み取ることができると思います。さらには、たとえばこの第二章の第二の服務規律の維持、あるいは第五の給与、こういう問題を見てみますと、職員団体というものについては労働組合がつくっておる連合体というものを否定するような書き方が書かれてございます。こういう点についてどうお考えなのか、お尋ねします。
  67. 宮澤弘

    ○宮澤(弘)政府委員 事業費に重点を置いて人件費を削れというような趣旨のものが見える、こういう御質問でございますが、一般的に、申し上げるまでもなく、やはり自治体の使命が住民の福祉を向上することを目的といたしておりますので、やはり重点的に建設的な事業費というものを逐年ふやしていくということは当然であろうと思うのでございます。しかし同時に、自治体をささえておりますものはまた自治体の職員でございますことも、これもまた申し上げるまでもないところでございます。やはり人件費につきましても職員が十分自治体の職員として勤務できるような水準を維持しなければならない。これも当然なことでございます。私どもの報告といたしましては、ただやみくもに人件費を削れというような意味、内容のことは申していないつもりでございます。その点はそういうふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから職員団体の問題につきましても、現在の法律のたてまえ、それから実際上行なわれております職員団体のあり方、両方に着目をいたしまして、断定的にこうであらなければならない、絶対にこうしなければならないというような言い方はしていないと思うのであります。法律考えておりますあり方というものと実態というものが多少そこにそごが見えておる、そういう点を指摘をしているというふうに私どもは考えているわけでございます。
  68. 細谷治嘉

    細谷分科員 いまの後段のお答えについて、この報告書を見ますと、「給与改訂、期末・勤勉手当等については、都労連との間で話し合いが行なわれ、文書も交換されているが、都労連傘下の職員団体又は労働組合は、それぞれ、その労働関係を定める法律規定に従い、正当な権限を有する当局と交渉を行なうよう改めるべきである。」この「改めるべきである」という断定は、やはり連合体というものを否定した、従来から行なわれておる都労連と当局との交渉というものを否定しておる。さらには、現在問題になっておりますILO八十七号条約に関連した地方公務員制度の問題で自治省なりあるいは政府当局が考えておる線からはずれておる、こういうふうに考えられるのですが、この点いかがですか。
  69. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 御指摘になりました点につきましては、都労連の傘下の組合には、地方公務員法によります職員団体と、地方公営企業労働関係法によります労働組合とあるわけでございます。地方公務員法の規定によりましても、権限のある当局と交渉をするたてまえになっておるわけでございますので、それぞれの法律規定に従いまして、その規定で定めております当局と交渉をする、こういうことが法律のたえまえであるという趣旨でございます。
  70. 細谷治嘉

    細谷分科員 都へつとめておる人たちが単一の労働組合をつくるか、あるいは都職なりあるいは現業なり分かれてつくるか、単一組合をつくってそれが連合体を組織するかということは、これは労働組合自体の自主的な結論にまかせらるべきである。都職の問題は都職だけだ、都労連の交渉は誤りだ、こういうふうにこの報告が書いてあることは、これはやはり連合体というものを否定した考えだと言わなければならぬわけであるが、いまのことばでは答弁にならないのじゃないかと私は思うのです。
  71. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 事実上の連合体をつくりますことは、法律の禁止をいたしておるところではございませんけれども、それが当局と交渉をいたしまして、公務員法で申しますれば、協定を結ぶというようなことにつきましては、それぞれの法律規定に従いまして交渉を行なわなければならないということでございまして、そこに至りません過程におきまして、事実上ある程度共同して行動するということはあり得ることだと思います。
  72. 細谷治嘉

    細谷分科員 この問題は非常に重要な問題でありまして、ILOに関連する問題としても、連合体というものは否定されておらない。しかしこの調査報告は否定的な立場に立っておるということは、私が先ほど読み上げた報告の文章からいきまして、それ以外にとれない問題だと思うのです。端的に言いますと、報告書は、政府なり自治省の方針と違ったことを書いておる、こう申し上げてよろしいわけでありますが、この点どう思いますか。
  73. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 報告書で申し上げておりますことも、先ほど私が申し上げましたことと同様な考え方に立っておると思います。
  74. 細谷治嘉

    細谷分科員 どういう答弁をなさったのか、いま一向私も納得できないのでありますけれども、私は特に自治大臣にお願いしたいのですけれども、こういう報告というのは地方団体にとっては非常に重要な、ある意味では金科玉条に値するようなものでございます。しかもいま私が指摘しましたように、報告書を読んでみますと、自治省の方針なりあるいは政府の方針、そういう問題と異なったような、その限界を越えたような、文章の書き方がいわゆる前向きではなくてうしろ向きの報告がなされておる。こういうことでは非常に困った問題であろうと思う。こういう点については、特に今後自治大臣において、そういうことのないようにひとつ御指導を願いたいと思います。  次にお尋ねしたい点は、九十万円程度の予算で今後やる方針のようでございますけれども、この監査という問題は、自治大臣が推進されております広域行政、あるいは府県連合、あるいは府県合併、こういう問題について非常に密接な関連を持ってくるかと思いますが、この点についての御見解をお尋ねいたします。
  75. 早川崇

    早川国務大臣 具体的にどうなるか知りませんが、それとは別個の問題と考えております。ただ自治体を行政調査した場合に、広域的に処理しないために住民に非常な不便を与えているとか、不利益を与えているというような調査結果が出ましたならば、こういうものは広域的に処理したほうがいいんじゃないかというような助言、勧告があるかもしれませんが、それは具体的なケース・バイ・ケースで、そういうものが出てくる可能性がありますけれども、それと結びつけて行政調査をするという考えでやっておるわけではもちろんございません。
  76. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういう問題と結びつけてやっておるわけではない、こういうお考えでございますので、次に移りますが、昨年の十二月二十七日に、地方制度調査会が「行政事務再配分に関する答申」というものを出しております。何か言いますと、答申を待ってから政府の態度をきめるというのが、どこに聞いても同じことばで答えられるわけであります。そこで私のお尋ねしたい点は、この調査会の答申の十四ぺ−ジに「地方公共団体に対する国の関与は、行政の均等性及び広域的調整の確保等の見地から必要な最小限度の範囲にとどめるべきである。」こういうことを指摘しております。引き続いて、次に、「現行の許認可その他の権力的関与については、整理すべきものが少くないので、これらについては思い切って廃止する方向で検討すべきである。」という答申が出ております。こういう答申から見ますと、調査を通じて実質的には権力的関与になり得る問題については十分慎重な取り扱いを必要とするのでありまして、私はこの都政の調査という問題もこの答申の線に沿っておらないのではないか、こういう見解を持っておりますが、大臣の所見をお尋ねしたいと思います。
  77. 早川崇

    早川国務大臣 それは細谷委員と根本的に見解を異にします。私は、日本政治というものは、非常におくれて維新革命がなされましたので、日本の国家のあり方は、中央政府が諸外国に追いつくために指導して進んでまいったわけであります。したがって、国の中央権力が日本では非常に強い。英米では自治体から民主的に発展してまいりましたので、逆であります。そこでわれわれとしては、民主主義というものを育てるためには、中央官庁、政府の権力をできるだけ地方にゆだねていくという基本方針を私は持っておる。それには自治体が健全に育たなければなりません。また中央官庁の権限を委譲される方向に民主化していくとするならば、それにふさわしい行政能力を持ったりっぱな自治体が育たなければならない。この考え方からはたしていまの自治体の姿はこれでいいか、かく考えますると、いろいろな国民の世論があるわけであります。第一、広域行政というものに即応した体制ではない。小さい自治体のエゴイズムで、国家的な資源の開発などが非常におくれておるではないか、これは世論でしょう。また府県にいたしましても、あまりにも乱脈をきわめているというような世論があったりするわけであります。これをほうっておきますと、国民は中央政府の権限強化に賛成するわけであります。能率的な有能な官僚の政府の中央集権化をむしろ望むようなことになって、道州制ができたり、地方庁ができたり、あるいは官憲の権力が伸びるという姿になりましたら、せっかく日本の明治維新の成り立ちが逆であったのを正しい民主国家にしようという意図がなくなるわけであります。さればこそ自治体を健康に育てるためには、自治体のサービス機関であります自治省としましては、健康診断もやり、ルーズな点に対する監査もやり、こうされてりっぱに育ってほしい、これが都政勧告の私の意図であり、また自治法の意図である。そういう意味で、今後自治法による行政調査をやる場合にもそういう意味でやろうというわけであります。あなたの御指摘のようなことは全く逆でございますが、その点はひとつ誤解ないようにお願いいたしたいと思います。
  78. 細谷治嘉

    細谷分科員 私と見解を異にするという冒頭のお答えでございますけれども、前段に大臣が申されましたように、できるだけ地方に権限をゆだねていくというおことば、これは私は賛成でございます。またそれは地方制度調査会が指摘しておるとおりでございます。ところが現実には地方が中央官庁のおるところにたよってくる。そういうことで道州制やあるいは府県連合という考えになってくるんだと、こうおっしゃっておりますが、いま大臣が推進しておる府県連合というものは、大臣のいまのおことばから拝察いたしますと、中央集権的な方向に進んでおる、こういうふうに理解されますが、それは前段で申された地方自治という点から逆行することになりますが、この点いかがですか。
  79. 早川崇

    早川国務大臣 府県連合が中央集権化の方向に進んでおると申したのではございません。そうではなくて、国民の時代的要請が広域行政——経済が高度発展しましたために広域行政、広域経済に即応しなきゃならぬという時代的要望があるわけであります。これを、自治体自身がそれにこたえる体制を育てていかなければ、国民の要請は、中央官庁が出てくるような機運になるんじゃないか。たとえば地方庁あるいは官選の道州制、それを私はおそれるわけであります。したがって、自治体みずからがそれにこたえるような姿に育ってもらいたい。それには小さい自治体のエゴイズムを越えて、広域的に自治体みずからがやっていくような姿に育てたいということを申しておるわけでございまして、中央集権化の方向にそれを近づけるということとは根本的に違うのでありまして、その点は私の意図を御了解願いたいと思います。
  80. 細谷治嘉

    細谷分科員 この問題は非常に重要な問題でございますけれども、時間がございませんのでこの程度にいたしますが、私は、地方自治が、大臣が期待するようないわゆる住民自治あるいは地方自治、真の自治というものがもたらされない、何かにつけて中央に陳情にこなければ問題が片づかないという根本的な原因の一つは、財政問題にあるかと思うのです。それで、今日都道府県の事務というものは三百になんなんとする委任事務等で、都道府県の事務はほとんど全部それで一ぱいという現況でございます。ところが地方自治体の収入というものを見ますと、地方制度調査会等も指摘しておりますように、徴収する財源というのは国税七割、地方税三割、そして実際の支出のほうを見ますと、交付税なりあるいは補助金等について見ますと、地方が現実に地方予算を通じてやるのは六割、国がやるのは四割だというふうにさか立ちをしております。こういうところに地方自治が確立しない、健全に育たない根本的な原因があるかと思うのですが、この点について大臣の所見をお尋ねしたいと思います。
  81. 早川崇

    早川国務大臣 お説のように府県によりましては自主財源が三割、多いところではもっと多いと思います。私は交付税六千億円というものは、これは法律でわれわれが手入れをしないでいい自治体もありますから、これを入れれば六割、七割自治というような議論も出てくるわけでありますが、お説のように、細谷さんの言うように各府県、自治体が自分の財源で一切まかなえるようになることが理想でございます。ところが残念なことに、四千の自治体、四十六の府県というのは全部経済力が違うわけですね。そこで自主財源に、たとえば所得税の配分を全部自治体にということになりますと、東京とか六大都市とかいうところはめちゃくちゃに豊かになっていく。そこで、後進県なり市町村というのは学校の先生の給料も払えぬような状態なのです。かく考えますと、はっきり申し上げますと名案がないんですね。そこで交付税という制度をとりまして、交付税の大きい財源は、東京とか名古屋とかいう富裕なところの法人税なり所得税なり酒税というものが大部分の財源になる。その富裕なほうは出しっぱなしで、今度は交付税のほうにきて八・九%が地方に流れていく。こういう仕組みにならざるを得ないところに悩みがあるので、これを今度は新産都市で十三の地方分散を行ないますが、これが十年後十三のブロックにそういう大きい経済力が出てくれば、その点に限っては若干改善されますけれども、それ以外は相変わらず後進県だ。ここにむずかしいところがあるので、ひとついい名案がありましたらお教え願いたい。これはなかなか名案がないのが悩みでございます。
  82. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は何もかにも地方の自主財源を一〇〇%にしろということを申し上げているわけじゃありません。確かに現実には府県の間、市町村の間の財政力の格差というものが非常に大きい。そういうものを地方交付税等で調整をしていくということは、これは必要性があります。またそうなければならぬでしょう。しかし現実にはいま申し上げたように行政は八割も委任事務である。そして財源というのは、国の徴収するものは七と三だ。一方支出のほうは、事業というのは逆に六、四だという姿が問題であると思う。やはり住民というのは自分が出した税金がどういうふうに返ってくるのか、フェア・リターンの原則がどういうふうに貫かれておるか、こういうところに問題がございます。したがってそういう点で行政事務を適正に、地方自治を育成するという大臣の趣旨に沿ってなさることが適当であろうと思うのですが、この点について大臣の所見をお尋ねいたします。
  83. 早川崇

    早川国務大臣 私は、地方制度調査会のようにできるだけ事務を県にまかせていく、具体的にまかせていく、これは大賛成でございます。推進いたしたいと思います。また補助金等合理化審議会におきまして、補助金というものを整理してその財源を自主財源として地方に流していく、これも方向としては大賛成。なぜなれば日本の中央集権の国家を地方分権のほうに向けていく、英米式に向けていくというほうが民主主義が育つからでございます。したがって、その方向に努力をいたしたいという点は細谷委員と全く同様でございます。基本的にこれをどうするかという問題はまだ結論は出ておりません。方向としてはそのように努力いたしたいと思います。ただ、ひとつお考えいただきたいのは、自治とは何ぞや、結局現在の国道をつくる、あるいはまた住宅をつくる、いろいろ国のほうから、建設省なんかからおりてくるわけでございます。ところがそれをやるかやらぬかをきめるのは、知事なり市町村みずからがきめられる。ここに自治の本領がある。ところがいまの自治体について見ますと、上からくるものは何でも受け入れて苦しい苦しいという考えに問題があるのであって——現在の知事さんあたりはもう三選、四選、五選と長くやっておられる。したがって、知事さんからは、財源が苦しいぞというお声は聞きますけれども、これは自治体ではないじゃないかというお声は聞きません。なぜなれば、ここへ道路をつけますというと、知事さんがノーといえば国がいかにこれをつけようと思ってもできないのですから、現在の府県の知事さんなり自治体というものは、そういう意味では何といいますか十分な自治権を持っておる、かく考えるわけでございまして、そういう自覚に立って——私は知事会なり市町村長に言うのですけれども、そういう選択権の上に立って何をなすべきか、新しい住民のための価値を創造すべきじゃないか。これは財源があるとかないとかいうことよりも、その選択をどう住民のために生かしていくかということにこそ自治体の長としてのほんとうの根本的な意味があるのではないか。その点はひとつ自治というものをよく御理解願いたい、こう申しておるわけでございます。ほんとうに自治をわきまえていない知事さんあたりが、三割自治とか、財源が苦しい苦しいというようなことばかり言われるのに対しましては、そうでないのだ。それはよくわかる、われわれもその方向に努力するが、自治の本旨というものは、いろいろな事業の選択権をみずから持つ、この自覚こそとうといのじゃないか、こう実は啓蒙しておるわけなんで、いま細谷分科員の御指摘のように、できるだけ仕事を自治体にまかしていく。補助金も整理してできるだけ財源を自治体に流していくという方向につきましては全く同感でございます。今後自治大臣といたしましては十分な努力をいたしたいと思います。
  84. 細谷治嘉

    細谷分科員 時間がございませんので次に移りますが、新産業都市建設の基本的な性格については幾多の議論がございますし、私もその基本的な性格については非常な疑義の念を持っておる一人でございますけれども、きょうは、これを財政面、地方財政という観点から眺めて質問をしてみたいと思います。  まず第一にお尋ねしたい点は、新産都市の区域は全国十三ございますけれども、その指定された地域における十四の府県のうち六つが赤字の府県でございます。町村もございますけれども、市は六十三ございますが、そのうち四十二市が赤字市でございます。これは三十七年度の決算でございます。一方、新産都市というものはばく大な地方財政の負担を必要とするわけでございまして、これに対して、地方負担の能力があるとお考えになっておるのかどうか、まずこれをお尋ねいたします。
  85. 早川崇

    早川国務大臣 十三の新産都市の府県、市町村では、大体年間一千億ぐらい金が要るのではないかという大きい話も出ておりまして、とてもそれではいまの公共事業費の地元負担率では追いつきません。したがって、われわれといたしましては、ある程度以上の負担——先行投資でありますから、その自治体は五年後、十年後、十分な固定資産税も入れば事業税も入る、あるいは法人割りも入るということで結局は自治体が豊かになるのですが、そのいわゆる先行投資、したがってそういった面においては起債というものも十分考える。しかしそれでも追いつかないある程度以上のものはどうするかということは、公共事業の国庫負担率を引き上げる方向で政府部内折衝中でございますが、目下結論を得ておりませんので、何らかの措置をしなければ、お説のとおり、ほんとうにでき上がるまでの間自治体は非常に財政上困難である。十分御趣旨の線で政府部内で検討中でございます。
  86. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、困難というよりも不可能なものじゃないかと思っておるのです。端的に申しますと、この指定された市の現在の税金を倍にしなければ公共事業の負担ができない。現在たとえば十億の税収がありますと、ほぼ二十億の税収ぐらいの負担というものが起こってまいります。これは表面上に出ただけの地元負担の数字であります。ところが表面上出た公共事業ばかりではなしに、現実にはその継ぎ足しというものが必ずございます。さらには地元負担というものも起こってまいります。公害対策もしなければならぬ、こういう問題でございまして、私は今日の地方財政の中においてはおそらく大部分がこの新産都市の地元負担というのは引き受けることができない、こういう現況にあると信じておるわけですが、重ねてこの点をお尋ねします。
  87. 柴田護

    ○柴田政府委員 私からお答え申し上げますが、新産業都市建設事業につきましては、御承知かと思いますが、現在経済企画庁が中心になりまして建設計画を実は検討いたしております。その建設基本方針がきまり、建設計画がきまってまいりますと、どういうような事業がどういう形で行なわれるかという内容がわかってくるだろうと思うのであります。私どもが実は心配いたしておりますのは、おっしゃるように、公共事業もたいへんなことになりますが、県が行ないます場合におきましては、後進地域のかさ上げに関する法律がある程度適用になる。問題は市町村の場合にどうなるか。事業の性格上市町村事業が多くなるかと思いますので、その点を非常に私ども心配をいたしておるわけでございます。市町村につきましては特例法等がございませんので、したがって負担がもろにかかってくる。それがどういう形で市町村財政にいろいろな影響を与えるか、これを心配いたしておるわけでございます。先ほど大臣がお答えいたしましたように、私どもといたしましてはそういうものの具体的なケースと傾向をにらみ合わせながら、同じような方向で検討いたしたいということで、目下具体的に検討しております。
  88. 細谷治嘉

    細谷分科員 具体的に検討中だというお答えでございますが、自治省では新産業都市建設事業にかかわる国の負担割合の特別措置に関する法律というものをつくるということで、その法律案を第四十六国会に出す方針だと伺っておるのでありますが、そういう方針であるかどうか。その法案の内容というものを一体どういうふうにお考えになっているのか。自治省のお考えをお聞きいたしたい。
  89. 柴田護

    ○柴田政府委員 私どもといたしましては、さような法案が要るであろうということで、いろいろ具体的に検討いたしております。また、うまく関係方面と話がつき、まとまりますならば、政府案として提案をいたすような方向で進めてまいりたい、こういうつもりで作業をいたしております。ただ、先ほど来大臣がお答えされ、私が申し上げましたのは、政府部内といたしましては目下検討中の段階でございますので、先ほど来お答え申し上げましたような形で申し上げたのでございます。
  90. 細谷治嘉

    細谷分科員 具体的にお漏らしいただけなくてたいへん残念でありますけれども、この点について自治省と大蔵省の間にかなりの見解の差がある、こういうふうに承っております。これについて大蔵省のほうにお尋ねしたいのでありますが、大蔵省考え方というのは、第一に、新産都市建設事業というのは、指定地域の関係自治団体の財政力の範囲内でやりなさい、第二は、先行投資に対しては特別に国庫負担を引き上げることは他の地域の自治体との均衡を失する問題があるのでやれない、第三には、先ほどのおことばにありました、都道府県についてはすでに後進地域の国庫負担の特例措置があるので必要ないのだ、こういうお考えに立っておるようでございますが、これは新産都市の建設という問題あるいは地方財政の実態というものをお考えにならない、あるいは新産都市というものが政府の重点施策としてきめられておるにかかわらず、これに対しては国は何らかまってやらない、財政力の範囲内でおやりなさいという、こういう考えに立っておるようでございますが、そういうお考えなのかどうか、まずお尋ねしたい。
  91. 松川道哉

    ○松川説明員 ただいま細谷分科員の御指摘になりました大蔵省考え方、一部当たっておるところもございますが、私どもの真意を伝えてないところもございますので、せっかくの機会でございますから、私どもの考え方を述べさせていただきたいと思います。  細谷分科員御案内のように、ただいま新産業都市建設促進法というものが昭和三十七年に制定されまして現在効力を有しております。この法案をつくりますときにも、新産都市に指定になりましたときに財政的にどういうふうにするかということが非常に問題になった、私、記録の上で承知いたしております。しかし、いろいろ議論がございましたあげく、ただいま現行法にきめられておりますのは、財政的には国の予算を重点的に配分するんだということ、また地方債の許可につきましても配慮するんだ、それからまた地方税の減免措置をした場合に、それを交付税で見るのだ、こういったようなことが法律で定められております。具体的にただいま問題になっております補助率をかさ上げするかどうかということは、これはやめになったと申しますか、一応見送られたと申しますか、法律上には規定がないわけでございます。法律が施行になりましていままでかかりましたが、一月の末に御案内のように地域の基本方針の指示というものが生まれたわけでございます。そういたしまして五つの地域につきまして基本方針が指示されましたので、この指示は一体地方の財政的な負担がどうなるのか、それから地方の財政力でそれができないのか、その辺具体的な数字がまだ遺憾ながら確定いたさないわけでございます。その段階でこのかさ上げの問題をどう扱うかということになりますと、法案の審議のときにもいろいろ議論がございました。ただいま先生御指摘の先行投資の点は、先行投資であるからアンバランスになるという意味ではなくて、先行投資であるから適債事業であり、起債で処理するのが筋ではないか、このように思います。  それからバランスとおっしゃいましたのは、新産都市の指定になりましたところは、日本全体から見ますと、どちらかと言いますと財政力が中位のところにございます。低開発地域であるとか僻地であるとかもっと下位のところもございます。こういったところをいろいろ手当をするに先立って、その新産都市にかかる公共事業についていろいろかさ上げをするのがいいかどうか、ここにバランスの問題があるのじゃないか、こういったことが問題になったわけでございます。それからこの法律ができましたあと、これも細谷先生御案内と存じますが、交付税の運用にあたりましても、事業補正ということをいたしまして、公共事業が国のほうから予算が参りますと、その裏負担ができるように交付税の上でも相当の配慮をして、三十七、三十八と今日に至っておる次第でございます。したがいまして、現在新産都市の指定になっていろいろな事業を進めるときにどのくらいの負担があるか、その負担が交付税で見ましたもの、これがいろいろ補正でやってまいりますから、個々の市町村をつかまえますと、いろいろ出入りがあるかと存じます。全体としては無理がないように、新産都市によって公共事業がよけい参りましても、その裏負担が地方財政を圧迫するようにはならないように配慮はいたしておりますが、個々の市町村について見た場合に、はたしてそれがうまくいっておるかどうか、その辺の検討もいたさなければならないだろう、このように存じております。したがって私ども、まだ具体的な問題が固まらないうちに、現在ある法律のその部分だけを抜き出していろいろここで特例をつくるのは時期的におかしいし、当初の制定の経緯から見ましても、まだその段階には至っていないのではないか、このように考えまして、自治省のほうと具体的な数字について検討いたしておる次第でございます。
  92. 細谷治嘉

    細谷分科員 かさ上げというおことばがございましたが、せんだって新産都市関係の協議会が開かれたのでありますけれども、新産都市に指定されたそこの協議会でも、自治省がお考えになっているかさ上げというものでも不可能だ、その程度でも追いつかぬ、もっと必要な国の措置として全額国でやるべきだ、そういう部分もたくさんある、こういう指摘でございます。一部私の言ったことは正しく、一部はそうではないというおことばでございますけれども、自治省自体の考え方でも新産都市の建設はできない。財政の負担ができない。ところが大蔵省はまた、自分の財政力の範囲内でやれというような原則では、これはもう新産都市の指定というのは全く空文になるという現況でありますから、この点はひとつ地方財政という観点に立って十分に大蔵省もお考えをいただきたい、こういうように思います。  それからお尋ねしたい点は、こういう財政力負担の問題がございますので、新産都市の指定がされて、これから地方負担がふえるぞ、だから給与を下げたほうがいいじゃないかという意味の意見を、自治省のある調査員がその調査の結果として発表した例がございますが、自治省はそういうお考えですか。
  93. 柴田護

    ○柴田政府委員 私は、さようなことは聞くのはいま初めてでございます。われわれといたしましては、給与は御承知のような方針で指導してまいっておりますし、事業につきましては、これまた御承知のような方針で事業費の充実ということを指導してまいっておるわけでございます。
  94. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういう例がないということでございますけれども、いろいろ問題点があるようでありますが、先ほど申し上げましたように、受益者負担とか税外負担とか、あるいは生活環境の悪化とか、あるいは職員の労働条件の問題が、地方負担ができないというところからしぼられてきて、実際の住民福祉という問題が第二の問題、第三の問題、第四の問題になるということが、四日市の例からいっても問題が起こってきておる。こういう点からいって、地方自治を守る、あるいは民生の安定福祉を増進する、こういう点でそれが切り捨てられないように十分な配慮が特に自治省では必要であろうと思う。こういう点についてひとつ特段の御配慮をお願いしておきたいと思います。時間がございませんので、次に住民税の問題について若干お尋ねしたいと思います。  二月七日の予算委員会で、自治大臣が有馬委員の質問に対してこういうようにお答えしている。「五年間で補てんがなくなりますので、その間に自主財源の増収、自然増収、あるいは交付税の増収が期待されます。それによって、五年後は補てんなくして自立できるような見通しで、期限を五年といたしたわけであります。それから、全額国でという御説でございますが、大蔵省との折衝で、三分の一は地方財政の負担で補てんしていく、こういうことになったわけであります。」こういうふうにお答えをいたしております。大臣の、自主資源の増収、交付税の増収で五年後に補てんできる見通しだというお答えでありますが、具体的にひとつ御説明願いたいと思います。
  95. 早川崇

    早川国務大臣 今回提案を申し上げておる交付税法の改正でも、基準税収入を七〇%から八〇%に見、七五%に見るというような法律は、どちらかと言えば、ただし書き町村の貧弱な財政の町村にとりましてはむしろ傾斜的に有利になっていく税法改正でございます。また五年後具体的にどういうことになるか、なかなか予測できませんが、年々交付税は八百億をこえる増収をいたしておるわけでございまして、また自主財源は来年度二千二百億円の増収が見込まれております。そういう大きい地方財政全体として考えました場合に、一挙にこの三分の一の地方負担を市町村に負わすとなりますと、これは大きい問題でありますけれども、五カ年間で二割ずつ漸減していく方法によりまして、りっぱに消化できるという見通しで、五カ年間という期限で全部補てんがなくなるというように考えたわけであります。
  96. 細谷治嘉

    細谷分科員 大蔵省との折衝の過程で、早川自治大臣の努力は評価できるわけでございますけれども、この有馬委員の質問に対して、五年後にはりっぱにできるんだというおことばでございますが、お答えは抽象の域を出ません。具体的に例を申し上げますと、ある市で、たとえばいままでの方式でいきますと一億円自然増収がある、ところが、この方式を変えることによって、今年は七千万円、来年はやはり約七千万円くらい、合計一億三千五百万円くらいの減収になる。合計いたしますと、一億円ふえるべきものが一億三千五百万円減るわけですから、二億三千五百万円の税の減収というものが住民税に起こってまいります。一般的に言いますと、二年後には三〇%から四二、三%くらいにこの住民税が減ってまいるわけであります。激減ということばを通り越したものだろうと思うのです。それを、これはおそらく、いまのようなインフレ下における水増しの増収だけでも十年はかかるだろう、こういうふうにいわれております。ですから、大臣は五年後にはもう税の減収交付税で埋まるのだというおことばでありますけれども、これは絶対埋まらぬと私は考えております。重ねて、五年後には埋まるんだ、こういうお見通しのようでありますが、はたしてそうなるか、私はそうならないということを例をあげて申し上げたのですが、重ねてお尋ねします。
  97. 早川崇

    早川国務大臣 技術的な問題は政府委員に答弁させますが、私は、細谷委員の言われる中で、自治体の市町村長の考え方について、少し別の考えを持っています。と申しますのは、地方自治の重要なことは事業をやることだけではない、住民が幸福になるということである。住民が幸福になるためにはいまのような本文方式の二倍、三倍の税金をその自治体の住民が納めているということは、地方自治体の長としては、これは好まないところだと思う。だから、保健所をつくったり、福祉事務所や母子寮をつくったりと同じような意味で、その自治体の事業として住民の税金が安くなるのだというお考えに立ってもらいたい。そういうことからいうと、減税ということは自治体の仕事の一つであります。それで、この五カ年間で二割ずつ減ってまいるわけでありますが、理屈からいえば減収補てんはしなくてもいいという考え方も、理論的には正しいと思う。なぜならば、減税するということは自治体の仕事ですから。ただし、それには、ただし書き町村はどちらかといえば貧弱町村でありますから、国並びに地方行政全体のワクで、初年度一〇〇%、次は八割、六割、四割と減らしていく、激減の方法を緩和したわけでありまして、その間、いま申しましたように傾斜配分もやりますし、また交付税その他、特別交付税、起債、いろいろな面で、五カ年間であればただし書き町村が自治運営に支障のないように、大きい財政のワクならできる。大臣としてはこういう大きいことしかわかりませんが、事務当局もそのくらいの見通しで五カ年としたわけで、財政局長からお答えさせます。
  98. 柴田護

    ○柴田政府委員 技術的な点につきまして私からお答え申し上げます。個々の市町村にとっては、まことに御指摘のとおり非常に大きな痛手を受けるわけでございますので、また、それでございますから、経過的に減収補てん債を認めるという措置がとられたわけでございます。ただ、それも逐年減少していくわけでございますので、その減少した部分につきましては基準財政需要額に将来織り込んで吸収していく、こういう形をとってまいりたいと考えておるわけでございます。もちろん基準財政需要額の計算でございますから、ぴしゃっといかぬ場合も出てまいるかと思います。さようなものは、これは特別交付税を配分いたします場合に、その間の些少のでこぼこは調整していく、こういう方針で進めてまいりたい、現在のところさように考えております。ただそういうことができるかという御質問かと思いますが、個々の市町村にとっては確かに御指摘のような非常に大きな痛手でございますが、総額からいいますならば全部で三百億ぐらい、したがって個々に減ってまいります額は二割といたしましても、三百億の二割といたしましても六十億程度でございます。したがって、今日の地方交付税の持ちます範囲でいたしますならば、その程度のものは基準財政需要額の増加を通じて措置することが可能ではないか、かように考えておるわけでございます。
  99. 細谷治嘉

    細谷分科員 いまの大臣のおことば、あるいは本会議における大蔵大臣のおことばを聞きますと、今度の本文方式に統一するということについて、従来すでに地方交付税で見ておったんだから、これは本文方式で見ておったんだから、理論的には見る必要はないのだ、こういうおことばでございましたが、私はなぜただし書き方式をとったのか、市町村でも好んで増税をしておるわけじゃありません。最低限の行政水準を守るためにやむにやまれず、本文方式では困りますので、ただし書き方式をとっておった、こういうことからいって、いままで本文方式で交付税を見ておったんだからもう理論的に必要ないのだ、こういうことであれば、地方交付税もその財政力の格差によって、それに応じて交付をする、そういうことになれば地方交付税もみんな平均にやらなければいかぬ、傾斜配分はおかしいということになります。私は、本文とただし書き方式があった以上、本文方式でやっておった、しかし今度は国の方式で統一するということになれば、これは理論的にはその穴埋めは市町村も負わなければなりませんが、しかし大部分は国が負うてやるのが理論であり、筋だろう、こういうふうに思うんですけれども、残念ながら大蔵大臣ばかりと思ったところが、自治大臣まで理論的にはそういう根拠があるんだと言うことを私はたいへん遺憾に思います。  ところで、時間がありませんから最後に聞きますが、そういう問題について二〇%ずつ減らして、将来は基準財政収入額の中に織り込んでいくということでございますが、それならば現在の二八・九というのは、そういう統一をやらないときのものとして二八・九というのが設けられた。それを今度はそういう方針で入れるのを、二八・九の中に入れるというのは、これはまた理論的におかしいと思う。それならば、かつてあったように、昨年の地方交付税と国税三税の総額は二兆一千九百億、一%で二百二十億ある、三百億円はわずかだ、こういうふうに局長さんのおことばでありますから、そういうものを設けて、そうして財政の再配分が行なわれるまでの臨時的な措置として臨時地方交付税というものを設けて、基準財政収入額に繰り入れていくというのが私は筋であり、理論であり、またそうすべきであると、地方財政の税の現状からいって訴えるのですが、その点についてひとつお考えをお尋ねします。
  100. 柴田護

    ○柴田政府委員 現在ただし書き方式をとっております市町村の、ただし書き方式によってまかなわれております財政需要が、すべて必要財政需要であるという前提に立てば、お説のようなことが成り立つかと思うのでありますが、ただ実際問題といたしましては、確かにただし書き方式を採用しております市町村におきまして、何も無用な仕事をやっておるわけじゃないので、みな必要だから仕事をやっておるにはきまっておるわけでございますが、ただその仕事の中には繰り上げ施行的なものもございますし、あるいは場所によっては、多少お話にもございましたが、惰性にわたるようなものもなきにしもあらず。そこで、いま細谷委員のおことばに従ってこれを考えてまいりますと、これは地方財源全般を洗い直してどうするかという問題につながるかと思うのでございます。私どもは現在の地方交付税の配分方式が絶対正しいものだとは考えておりません。したがって、ただし書き方式をとっておる原因の一つも、あるいは地方交付税の配分方式にもあるかもしれない。また逐年態容補正係数の割り落としをゆるめてまいったわけでございます。また基準財政収入の算定方式を七〇%から七五%に上げようとしておるのも、そういうことの反省のあらわれかと考えておるわけでございます。なぜ補てん措置をとったのかということになろうかと思うのでございますが、これはともかく個々の市町村にとっては非常に大きな痛手になるわけでございます。いわば病気でいいますならば、非常に大きな手術をするという形になるわけでございます。したがって、その痛手を緩和するためには、どうしても軽減措置をとる必要がある、こういう観点に立って住民税の補てん問題を扱ってきたわけでございます。したがいまして、私どもは、地方にも市町村にも問題があり、われわれの地方交付税の従来からの算定方法にも問題がある。そういう認識の上に立って、なおかつ住民の負担の合理化という点から本文方式に統一するということに踏み切った以上は、出血をできるだけ少なくする、こういう協力をしてまいるつもりでございます。
  101. 細谷治嘉

    細谷分科員 もう時間がありませんから要望だけにとどめますが、市町村実態は、ただし書き方式をとっておっても、農林災害が起こりますと、国庫半分で、市町村は持ちません。ただし書きをとっておる市町村は持たぬで受益者負担で農民に負担さじている。持つのは道路ぐらいの公共事業であって、あとは国庫をもらって全部住民負担。学校を建てるのは、特別教室です。国庫をもらったならば残りの半分は住民負担、こういう現況でございます。したがって、全部を補てんする必要はないんだ、ただし書き方式で——そういうおことばですが、そういうのは市町村実態を御存じでそういうことをおっしゃっているんじゃないと思います。もっと実態に即した措置をやっていただきたいと思います。  最後に一、二要望申し上げたいわけでありますけれども、先ほど都道府県については特例措置を講じておる、低開発地へ特例措置を講じておるというおことばがございました。今日の産炭地の事情からいって、これは単に低開発の都道府県ばかりじゃなく、産炭地の府県についても、やはりこれを適用するような実態にあるんではないかと思いますので、こういう点について御配慮をいただきたいということ。  もう一つは、新産都市建設で市町村の財政力指数が幾ら以下でなくちゃいかぬ、地方税の不均一課税に伴う特例措置は認めぬということでございますが、現実に七二%をこしておる市町村は非常に少ない。したがって、そういうものは特例措置はできたけれども、特例措置にほとんどひっかからぬという実態でございます。そういうふうにならぬように十分にひとつ具体的な御配慮をお願いしたいと思います。  重ねていろいろ御質問したいのでございますが、時間がございませんので私の質問を終わります。
  102. 稻葉修

    稻葉主査 午後は正二時から時間どおり再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  103. 稻葉修

    稻葉主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  自治省所管に対する質疑を続行いたします。阪上安太郎君。
  104. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 私は、きょうは三つの問題点について質問いたしたいと思います。  その一つは、府県自治体において行なわれております公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例が出ておりますので、この問題について一点。それから最近東京都等におきまして、タクシー料金を値上げしたにもかかわらず乗車拒否が依然としてあとを断たない、こういう状態でありますので、この乗車拒否対策問題。それからこれは前々国会から持ち越しになっておりますが、刑事警察の強化の問題。この三点にしぼって質問いたします。  そこで最初に小暴力防止条例の問題でございますけれども、私は率直に言って、この条例というものは、条例を制定することそれ自体は違憲だとは考えておりません。そしてまた、小暴力防止に関する何らかの条例は必要である、かように考えております。しかしながらいま制定されております府県の小暴力防止に関する条例、その内容におきまして非常に違憲の疑いがあるのじゃなかろうか、かように考えますので、非常に重要視いたしております。  そこでまず最初に、公安条例と本条例との関係はどういう関係にあるかお聞きいたしたいと思います。大臣というほどのこともありませんので、どなたかお答え願いたい。
  105. 大津英男

    ○大津政府委員 ただいま御質問がございましたが、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、これは公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為を防止するということで、いわゆるぐれん隊等の行為によりまして市民生活の秩序を破る、こういうことを防止するために設けられた条例でございます。したがいましてこの条例において取り上げております点は、たとえばダフヤ行為あるいはショバヤ行為あるいはパチンコ等の景品買いの行為を禁止する、あるいはぐれん隊行為、粗暴行為、こういうような行為によって一般の交通機関その他公共の場所におきまして、他人に著しく迷惑をかけるような行為をする者、あるいは押し売り行為、あるいは不当な客引きをする、こういうような一般の市民生活に対して非常な迷惑を及ぼすところの行為を取り締まる。しかもその内容といたしまして、このねらっておりますところは、こういうぐれん隊行為が行なわれることによりまして、いままでいろいろな法律を用いまして取り締まりを行なってまいったのでございますが、法律の不備のために、現在のこういう行為をいろいろな法規を活用してやっておりましても、その実効を期しがたいということから、地方自治法に基づきまして、こういう地方の特殊性に応じまして、それぞれの行為を規制する条例をつくっておる、こういうようなことでございまして、公安条例とは全くその内容においても、目的とするところも異なっておるということが言えると思うのでございます。現在では大体二十四の府県において制定をするということになってきておるわけでございますが、その目的に沿いまして運用されまして、いままでにおきましても公安条例のような運用というものは一つもあったということもありませんし、また公安条例のような運用をすることもできる内容ではございません。そういう点を御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  106. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 公安条例とは非常に性格が違うのだ、こういうことでありますが、大体了といたします。  そこでお伺いしたいのは、この条例を見ますと——私は七つしか見ておりませんが、全部条文の構成その他みな同じことになっております。こういった条例をつくる場合には、どこかがモデルになりまして、そういう形をとることも私よく知っております。おそらくそういうことであったと思います。必ずしも警察庁がこれに対して一定の指示をしたのではないという説もありますけれども、私はそうはとらない。そういうことでありますが、したがってその内容がほぼ同じであり、罰則規定におきましても同じであるかというと、そこまでいくとそうでもないというような結果になっております。しかも制定された範囲がまだきわめてわずかな範囲であり、半数程度であるということでありますならば、これを適用していないところと適用しているところとの間に非常な不平等が出てくるのではないか。これは公安条例の場合でも言えることなのであります。そうしますと、在来から問題になっておりました憲法十四条の、法のもとに平等であるという、この基本的な憲法の考え方にこの条例は違反するのではなかろうか、こう思うのでありますが、こういった点について大臣の意見を聞きたいと思います。
  107. 早川崇

    早川国務大臣 法のもとに平等であるという点と公安条例との関係でございますが、法律技術的になりますので、法制局のほうからお答えさせていただきます。
  108. 山内一夫

    ○山内政府委員 この問題は、私の記憶いたしますところによれば、公安条例のある県、それからある県では公安条例を制定していない、こういう観点から、憲法十四条に違反するのではないかという御質問が、たしか阪上先生であったか、かつて出たことがあります。その際も、法制局のほうから、これは十四条違反ではないのだということを申し上げております。おっしゃるように、ある県ではある行為が処罰され、ある県ではされないということからいいますと、そこに差別待遇があるのではないかという考え方が一応出てまいりますけれども、憲法は地方自活というたてまえをとっておりまして、各地方公共団体のそれぞれの自主性に応じまして、ある規律をするということを憲法の地方自治の章で考える。その観点からいいますと、各地方公共団体の判断によりまして、日本国の意思の通じておりますところに一種の差別が出るということは当然予想しておるのではないか、こういうふうに考えられるのであります。たしか最高裁でも、法律で売春の取締法ができます前に、条例で、ある県では売春を処罰する、ある県では売春を処罰しないという事態は十四条違反の問題ではないか、そういう被告人の側の抗弁に対しまして、いま申し上げましたような理由で違憲ではないのだという判例をたしか出しておったと思います。そういった観点から見まして、この公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、これがいま二十四の府県にある、その他の府県にはないという事態におきましても、それをもって違憲であると考えなくてもよいのではないかというふうに私どもも存じておる次第でございます。
  109. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そうしますと、あなたは憲法十四条の前段の、一項の解釈はどういうふうに解釈していらっしゃるのですか。単なるプログラム規定だというふうに考えておるのですか。
  110. 山内一夫

    ○山内政府委員 いわゆるプログラム規定だとは私は考えておりません。この十四条に違反すれば、その法の規定は無効であるというふうに私は考えます。しかし憲法の中に例外を当然予想している部分があるわけでございます。たとえば文民でなければ国務大臣になれないという規定がございます。そういう規定が憲法になければ、もし法律で文民でなければ国務大臣にできないというような規定を設けますと、これは違憲になりますが、そういった差別待遇を憲法は当然予想しているという場合には、十四条はその限りでそのことを認めているんだ、こういうふうに解釈をいたしておるわけでございます。
  111. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 これは条例制定権との関連性を持つのでありますから、そういたしますと、憲法九十四条で条例制定権が与えられておる。それとの関連は一体どういうふうにお考えになるのですか。
  112. 山内一夫

    ○山内政府委員 先ほど申し上げましたように、十四条で条例制定権がある、その背景に地方自治がある、地方自治というのは、それぞれの公共団体が住民の意思によってある行動をする裁量を与えられておる、そういうふうな考え方でございますから、ただいま申し上げましたようなことに相なると思います。
  113. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そうしますと法のもとに平等であるという法は、どういうふうにあなたは解釈するのですか。
  114. 山内一夫

    ○山内政府委員 この法と申し上げるのは、先生おそらくお考えであると思いますけれども、単に法律だけではございません。条例も当然含まれますし、政令も含まれると思います。あるいは極端にいえば告示等のそういう一般的なものも含まれると思いますが、条例と十四条との関係においては、当該の地方公共団体で、条例上適用のある人々に対して差別待遇をすれば、これは十四条違反の問題は起こりますけれども、甲の地方公共団体の条例と乙の地方公共団体の条例との関係でそこに差別があるということからは、十四条の違反は当然生じない、こういうふうに思っております。
  115. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そうしますと、地方公共団体においてはいかなる——これはもちろん、自治法は「法令に違反しない限り」とか、あるいは憲法は「法律の範囲内」というようなことばを使っております。これは同義語だと私は思うのですが、そうすればまちまちのものをつくる——その範囲のものならば何をつくってもいい、そういう考え方になるのでしょうか。
  116. 山内一夫

    ○山内政府委員 何をつくってもいいかということになりますが、これはいま先生もおっしゃいました法律の制約あるいは憲法の基本的人権その他の条章の制約がありますから、実際問題として、片方では非常に人権を制約し、片方ではそうではないのだ、そういう事態に非常に野方図な差別ができてくるということには相なりませんけれども、その憲法なり法律のワク内における裁量の問題としては、段差が出てくるのは、これはやむを得ないと考えております。
  117. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 国家公安委員長にお伺いしますが、いまああいったような答弁なんですが、別にこの暴力取り締まり条例というものを制定すること自体が違反だとは私は何ら言っていないのだ。しかし実際問題として運用をしてまいりますときに、こういった条例が特定の府県にのみ存在しておる。それから同時にその内容において、罰則等において非常な差がある。同じ事犯に対して、同じ罪に対して非常に差異があるというような条例の内容を持っておるものに対して、そういったものでも、それは地方自治の本旨に基づいて、自治体としては自治体の自主立法として、当然そういったものがあっていいのだという解釈を向こうはやっておるのですが、それに対してあなたはどういうふうにお考えになりますか。
  118. 早川崇

    早川国務大臣 なかなかむずかしい問題で、自治体にバラエティーがある。その実情によりて、自治という面からいうと大いに条例制定権を活用して、個性のある条例をつくっていただくということは望むところであります。一方国全体として、たとえばぐれん隊防止条例には刑罰がございます。ところが軽犯罪法には拘留までよりございません。まあそういう面をどう調整するかという問題もあろうかと思うのでありまして、私としましては、刑法あるいはその他の重要な法律というところまで条例で制定できるか、そういう重要なところまで重い刑罰を課し得るかということは、よほど慎重に考慮すべき問題だと思うのでありまして、現在のぐれん隊防止条例程度のものであれば、全国的に統一した法律によらなくても、かえって自治体の実情に即してバラエティーがあるほうがいいのじゃなかろうか、かように思っております。
  119. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 一応そういう御答弁をされなければならぬと思いますが、しかし実際問題としてこの条例制定団体の各条例をながめてみますと、科料、罰金、懲役等におきまして、あまりにもバラエティーに富み過ぎておる。一つのぐれん隊の行為が単純な行為であっても、これは処罰されていくのでありますけれども、それが東京都と埼玉県では非常に違ってくる。こういうことでは、憲法の法のもとに平等であるという解釈のいかんにかかわらず、あまりにもそういう状態は好ましくないのじゃないかということになるわけなんです。たとえば、東京都でこの条例違反に対しましては拘留、それから科料、罰金等が考えられておりますが、東京都では、その違反した場合は三千円以下の科料、罰金だ。そうして常習犯に対しましては懲役は三カ月以下で罰金が一万円以下、こういうことになっております。ところが愛知県へ行きますと、これも科料、罰金が、普通の場合においては、初犯と申しますか、それでは一万円以下、懲役においては、これは常習犯の場合は六カ月以下、それから三万円以下、こういうふうになっておる。それから神奈川県の場合には、ほかのところとみな同じでありますが、常習犯の罰金二万円以下、それから富山県におきましては、初犯の場合には五千円以下の罰金であって、常習の場合には、やはり他と同じである。福岡県がいまこの問題と取り組んでいるようでありますけれども、もうできたかどうか、私はいまの段階で承知しておりませんけれども、これはまた常習犯の罰金においては五万円以下というような規定をしている。以下だからそれでいいじゃないか、こういうふうにあなた方は言われるかもしれないけれども、それだけでは済まされない問題が私はあると思う。こういったバラエティーが現実に出てきている、この問題について、それは地方自治体できめるべきことであるので、われわれの干渉すべき範囲でない。先ほどからも、午前中は干渉の問題が出ておったのですが、しかし、事と次第によりけりでありまして、こういった問題について何も放置しておく必要はないと私は思う。ですから、警察庁長官でも何でもいいから、ひとつ答えてください。
  120. 大津英男

    ○大津政府委員 ただいま御質問がありましたように、各府県の条例によりまして、罰則がやや異なっておるという点は御指摘のとおりでございます。この点につきましては、東京都において、一昨年の十月に条例の制定をいたしまして、その後の運用の状況等から、他の府県におきまして、いろいろ東京都の実情、警視庁の状況等を研究いたしました結果、やはり罰則についてはもっと高いほうがいいのだ、こういうような結論をそれぞれの府県において得まして、それぞれ地方自治法の範囲内においての罰則を考えて、各府県の条例として議決をしていただいておる、こういうようなことでございます。したがいまして私どもが、そういう面について、どれだけの罰金が適当であるとか、あるいは体刑についてはどのようにすべきかということについていろいろ意見を聞かれますならば、申し上げることはあるのでございますけれども、   〔主査退席、井村主査代理着席〕 各府県のそういう状況に応じまして、罰則についてもいろいろバラエティーが出てくるということを、私どもが積極的にこれをこうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとかいうようなことについては、現在そういうことをやっておらない、こういう実情でございまして、御指摘のようなことがある、こういうことでございます。
  121. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 やっておらないということではいけないのであって、こういった問題についてなぜやらないかということを私は言っている。やれないのですか。そういう権限を持てないのですか。
  122. 大津英男

    ○大津政府委員 警察庁といたしましては、こういう条例につきまして、どういう罰則が適当であるか、あるいはどういう規定法律に抵触するから条例として適当でないということについて、もちろん検討もいたすのでございますけれども、各府県の罰則のそれぞれにつきまして、お前の県ではこれくらいがいいだろうとか、お前の県はこれくらい以内とか、あるいは全国統一してこうでなければならないということは、これは法律そのものではございませんので、私どももそういうやり方をとっておりません。同時にまた、そういうことについて指揮監督をするというような権限は警察庁には与えられておらない、かように考えておるわけでございます。
  123. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 警察庁は、警察法に基づいて、そういった調整をする権限を持っているのじゃないですか。
  124. 大津英男

    ○大津政府委員 警察庁といたしましては、調整をする権限を持っておるのでございますが、各府県の条例におきましてそういうことを定める場合において、どういうふうにやったらいいかということについて、私どもに相談があります限りにおきましては、こういうことが適当であるという答えをするのでございますが、こういう条例をつくることが必要である、あるいはこういう罰則を設けることが必要である、ということで指揮命令をしてまでやらせるというようなことは考えておらないし、そうするのは適当でない、かように考えておるわけでございます。
  125. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 しかし、現行の法令によって取り締まることができないというようなものを対象として、この条例できめておる、さっきこういうことだったのです。そういたしますと、したがってそういうことであるので、それはばらばらであっていい、こういう結論になるわけです。何をやってもいいのですか。
  126. 大津英男

    ○大津政府委員 先ほど申し上げましたように、条例につきましては、地方自治法の規定に基づきまして、十万円以下の罰金あるいは二年以下の懲役の範囲内におきましての罰則を設けることができるという地方自治法上の制約がございますので、したがいまして、地方自治の精神に従いまして、各府県の理事者が考え、各府県の議会がそれを妥当とするという考え方で、そういう条例の原案を作成する、これは各府県のそれぞれの実情にもよる点がありますので、そういうことについては全国統一的であることが望ましいということは私どもは考えておるのでございますけれども、それを一々、先ほど申し上げましたように、指揮命令をして、みな同じようにつくらせるというようなことは、私どもの権限としてはできない、かように考えておるわけであります。
  127. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そうしますと、制定しようとする地方自治体があなたのほうへ相談に来れば、あなたのほうでは、そういったものについては当然妥当であるというような行政指導をやる。しかしながらあなたのほうで、そういった基礎になるところの、どの辺が妥当であるかというものを持っていない。持っていないでどう指導するのですか。
  128. 大津英男

    ○大津政府委員 それは、現在のぐれん隊防止条例を制定したいきさつ等にかんがみてみますと、現在こういう条例がない府県におきましては、あるいは軽犯罪法を活用し、あるいは道路交通取締法に違反するというようなことで活用し、その他いろいろな苦心をしてそういった小暴力に対処する取り締まりを行なっておったわけでありますが、そういう府県におきまして最も困っておりましたことは、やはり逮捕することができない。逮捕の要件としての五百円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪を犯したものである場合においては、住所、氏名あるいは住居不定、こういうような点で、はっきりしないというようなものでなければ逮捕することができない。そういうために警察取り締まりの上においても非常に困難を感じておったわけでございます。したがいまして、このぐれん隊防止条例を一番最初につくりましたのが東京都でございますが、東京都におきましては、先ほど御指摘がございましたように、罰則は三千円以下の罰金または拘留、科料、常習者につきましては三カ月以下の懲役または一万円以下の罰金、こういう罰則を設けまして、いままでの法の不備といいますものを、この条例の制定によりまして、相当こういうぐれん隊行為の取り締まりに成果を上げるということになっていたのでございますが、実際にはまだまだこういう罰則では低い、こういう批判がいろいろなほうから起きてきておった、こういういきさつもございまして、各府県においては、先ほどお話がございましたように、罰則を引き上げておる、こういう実情が見られるのでございます。地方自治法の範囲内におきまして、大体この辺が適当であるという考えで、各府県がやっておるのでございますが、私どもは、東京が一番最初につくりました当時におきましては、やはりそういう判断でものをやった。しかし、その後の運用を見て、各府県において条例制定権に基づいて条例を制定する場合においては、やはりそれぞれこれを引き上げるということも当然あってしかるべきことである、かように考えておるわけでございまして、それじゃ三千円がいいのか、五千円がいいのか、一万円がいいのかということでございますが、現在つくられておりますところで、一番高いのは一万円以下というところもございます。したがいまして、一万円以下でもいいという考えを私どもは持っておる次第でございます。
  129. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そういう考え方で条例の制定権というものが——条例で制定すれば、法に違反しない限り野方図に、何をやってもいいんだ、こういうような考え方で条例制定権というものが与えられておるという考え方、これはまた一面において地方自治を非常に尊重したものの考え方に立っておるということも事実です。先ほど法律じゃないと言われたが、そういった意味においては、あるいは法と同じような権限を持ったところの地方自治体の自立法であると考えてもいい。そういう考え方からすれば、もう無軌道に何をやろうとそれはかまわない、いろいろばらばらな、たとえば一つの同じ犯罪を犯しても、ある県に行ったならば、それは五千円以下になる、ある県に行けば三万円かけられる、こういうようなことで、これほど不平等なことが、平等である、正しいのだ、憲法十四条の精神によるところの法のもとの平等ということは、そういうことを含めて言っているのか。なるほど男と女の区別をしろとか、子供とおとなの区別をしろというようなことについては、学説はほぼ一定しております。差しつかえないという考え方を持っておる。しかしいまの場合はそれとケースが違うでしょう。そういった場合にばらばらであっていいということを言い切るには、あまりにも、憲法十四条の精神と関連して、言い過ぎじゃないかと私は思うのです。ましてや、ある県に行けば、いわゆる現行の法律に基づいて取り締まりをやっておる、あるいは犯罪の捜査をやっておるというところ、しかもその法律では把握できないところの問題を制定した県は取り上げて、これを事案にしてやっている。極端に言うならば、小暴力については条例を制定していないところは、これは全然問題にならぬのだ、取り締まりができないのだ、したがって、そこはいかなる小暴力が発生したとしたって、これは法によってどうにもすることができない。ところがある県ではそれがやれる。こういったアンバランスは、条例制定権の手前からそのままでいいのだと言い切ってしまうには、私はあまりにも冒険じゃないかと思うのです。大臣、この問題はどうですか。重大な問題で慎重を期さなければならぬということで、いつまでもほうっておいてはいけないのじゃないですか。
  130. 早川崇

    早川国務大臣 非常に基本的な問題に触れておるようでございます。私は一般論からお答えするよりほかはないのであります。技術的には法制局なり事務当局から御答弁させたいと思います。  私はぐれん隊防止条例をのけて一般論をいえば、日本の自治体はあまりにも個性がなくなってきたと思います。アメリカあたりでは、ある州へ行けば禁酒法がある、ところが片一方では酒は飲みほうだい。テキサスなんか禁酒法がある。そういう意味で、現在の自治体はあまりにも中央集権化して、画一的過ぎる。ところが各府県自治体というものは、人情、風俗、地勢、経済、すべてバラエティーがあるわけです。そういう意味からいえば、もっともっと憲法による条例制定権を大いに活用して、百家争鳴、百花繚乱という形のほうが望ましい。しかしそれにはおのずから限界があるので、先ほど法制局からお答えがありましたように、基本的な憲法あるいは法律等とあまりひどい相違がないような限度内における条例制定の自由、というものをフルに活用するということが限度だろうと私は思うわけであります。  御指摘のぐれん隊防止条例の問題につきましても、たとえば刑法でいう刑罰以上のものを、あるいは刑法で本来やるべきところまで強く人権を押えるような刑罰ということになりますと問題になるかと思うのですが、その間のけじめといいますか、限界というものは良識によっておのずから決すべきであって、私は現在のぐれん隊防止条例くらいの刑罰その他の範囲内であるならば、条例で定め得る限度だろうという気持ちがいたしておるのでございます。  なお、法律技術上、法制局あたりで御意見がありましたら、法制局から答弁させていただきたいと思います。
  131. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 憲法三十一条に、罪刑法定主義ということが憲法の精神としてうたわれておる。そういうものから考えたときに、およそ考えている憲法のそういった罪刑法定主義をさらに逸脱して、しかもそれが自治体の条例によってばらばらに行なわれるというこの問題について、法制局あたりでは見解はどうなんですか。
  132. 山内一夫

    ○山内政府委員 御指摘のように、罪刑法定主義というものは三十一条から当然出てくる考え方であろうと思います。そのときの罪刑法定主義といわれる法というのは、国会を通過したところの法律である、これも学説は一致しているところだと思います。そこで先生の御疑問というか、御質問の要点というものは、条例はいわゆる国会を通過した法律ではないのではないか、その条例が罰則をつくるということは三十一条違反の問題ではないか、それとあわせて十四条との関係を見れば、いまのぐれん隊防止に関する条例の不統一というものは非常に問題があるのではないかということだろうと思います。しかしこの罪刑法定主義といわれますところのその法律に条例が含まれるというのは、大体の学説が一致して認めておるところじゃないかと思います。原則は法律でありますけれども、条例も含まれるのではないか。ただその条例というのは、何といっても国会で成立した法律ではありませんから、それに無制限に罰則を委任するという考え方は問題があろうけれども、ある限定された科刑を委任するということは違憲ではないというのは、これは大体学説の認めるところでありますし、最高裁判所もその見解をとっていると私は思うのであります。その根拠は、いまいった基本的な地方自治という問題もありますし、ことに条例というものは住民の代表機関でありますところの地方議会を通じて制定される、地方議会というものは大体国会と同じような国民の代表者である、そういう制定機関の実態に着目しまして、条例で罰則を設けることを法律がある限度において委任するということは憲法違反ではないというのは、学説、判例で大体支持している考え方ではないか、かように思っておるわけであります。
  133. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 憲法七十三条に、例の法によって委任されないところの政令、省令等、これは制定することができないということが明確に記せられております。それと関連して、憲法九十四条の法の範囲内で条例が制定されなければならぬ、何か同じような関係を持っているのではないかと私は思うのです。それがきわめて任意に、法と全く無関係にこういった条例をつくるということ、しかもこれは法によって委任された何ものでもないと思うのであります。条例をつくるということについては、九十四条その他によって明確になっておるのであります。法律そのものはあります。しかしそのこと自体に対しては、そういった法から何ら委任を受けていないという形をとっているわけであります。七十三条では明確にそういったことが規定されておる。そこで、私はそういった関係からも、こういった任意条例——これは明らかに任意条例ですね、どこからも委任されていないのだから……。そういったものをやたらに何でもつくっていいのだ、あるいは内容がどうアンバランスであってもいいのだ、行政区域の区域を一歩出ることによって、非常に違っても何ら差しつかえない、地方自治はもっとバラエティーを持たさなければならぬということを大臣はさっき言っているけれども、それと違った解釈が出てくるのじゃないかと私は思うのです。そういった七十三条あるいは三十一条あるいは十四条というような関係は一体どうなるのですか。
  134. 山内一夫

    ○山内政府委員 最初に七十三条の六号でございまするが、これについてただし書きに、法律に委任があれば政令には罰則を設けることができる、消極的に反対解釈すると、そう読めるわけです。条例については、なるほど先生がおっしゃるように、条例に罰則を委任することができるということは、憲法のどこにも確かに書いてないわけです。だけれども、そこあたりは結局解釈論になるわけでございます。この解釈論といたしましては、やはり地方自治の自主性という点から、あるいは法律をつくりましても、それを担保する罰則がなければ、これは全くの死文とは申しませんけれども、実行性が非常に薄くなる。そこでどうしても罰則の必要がありまするから、その罰則をどの限度まで規定できるか、こういう問題に私なってくるだろうと思う。そこで、条例について罰則を委任することができるかというのは、憲法の明文から直接出てくる問題ではありませんけれども、解釈論として許されるというのが、いまの学会なり、学説なり、判例なりのとっている考え方でございまするから、私はそのように申し上げたわけであります。  それで、いまのぐれん隊防止という事務は、おっしゃるように、法律が特に委任した地方公共団体事務ではなくて、地方自治法の十四条でございますか、これの行政事務に大体該当する、そういう条例、いわゆる行政事務条例といわれているものだと思います。ですから、そういう意味で、ぐれん隊防止条例についてこういう規定をすることができる、その罰則についてはこういう罰則を設けることができる、こういう個別の委任ではございませんけれども、仰せの条例の根拠は、いまの地方自治法十四条の一般的な規定の中にあるわけでございます。そこで、その罰則のほうは、地方自治法の十四条の五項で限度が書いてございまして、これは行政事務条例のどの罰則にもつけ得る、あるいは行政事務条例ではなくてもつけ得ると思われまするが、行政事務条例についても、この限度の罰則は設けることができる、こういうふうになっております。だから、現行の法律に関する限りでは罰則の委任を予想しておるわけであります。この規定自身が憲法に違反するかどうかというのは、憲法の解釈問題としては残っているわけでございますけれども、この解釈問題につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。
  135. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 条例でもって罰則を設けることは、罪刑法定主義から非常にいけないんじゃないかという議論は前々からありまして、おっしゃるとおりなんです。そこで、そういうごちゃごちゃした問題が出てきておるのですから、私が言いたいのは、この場合、しかも警察が統一して指導することができないような状態だとあなたがおっしゃるならば、そういったごたごたの問題を払拭するために、憲法にさかのぼって、そうして憲法学者の意見を一々聞いているということでは、そうなかなか簡単に片づかぬと私は思うので、こういう場合こそ、現行法律改正によってこういった問題を解決できるのではないかという考え方を私は持つわけです。たとえば警察官職務執行法でもってこれをどうこうするというわけにはちょっといくまいと思う。そうすれば軽犯罪法になるのですが、先ほど公安委員長は軽犯罪法には罰則がないということを言っておられたが、これは私はおかしいと思うのです。それは間違いだと私は思うのですけれども、こういった軽犯罪法でもってさらにこれを改正することによって処理できないかどうか。この条例の中にあるような交通の禁止、交通の妨害等についてのいろいろな規定が軽犯罪法にもあるのです。あるのだから、これによって処理することができないはずはないと私は思う。それからまた、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止に関する法律というものが、去年かおととし婦人議員のやかましい要請によってできたのでありますが、この中にもこの条例の条文と重なるような問題がかなり含まれておると私は思う。それから「暴力行為等処罰ニ関スル法律」、これは大正十五年四月十日のものですが、いま自治大臣が非常に執念を持っているものとは違うものだと思いますけれども、この中にもやはり考えていいものがあるのじゃないかと私は思う。しかし、これは集団暴行を規制しておるのですから別かもしれぬが……。それから刑法の中において、たとえば二百二十二条の脅迫、二百二十三条の強制ですか、あるいはまた十一章においては特に章を設けて「往来ヲ妨害スル罪」というものが明確に規定されておるわけなのです。そして、一方この条例を見ますと、そういったことが重なって、しかも拡大解釈できるような内容を持っておるというようなことをやっておるのでありますけれども、こういった実定法があるにかかわらず、その実定法の適用は小暴力には適用できないのだと断定してしまうところに、私は問題があると思うのだけれども、同時に、地方自治体の条例にまかせておけば、いま言ったようなアンバランスが生ずるおそれが十二分にあるということがわかっておる、それは好ましいことではない。自治大臣は、もっとバラエティーを持たせたらいい、こう言っておられるけれども、私は好ましいことではないと思う。そういった場合に、しかも、一方においてまだ制定していない県もある。アンバランスもそこまで容認するようになれば、これはもう実に無秩序なかっこうになってしまう。そこで、現在の法律で、あるいはそれを改正することによって、この問題を解決することができると私は思うのですが、あなた方のほうでそういった考え方を持つようになりませんか。
  136. 早川崇

    早川国務大臣 実は、軽犯罪法の改正ということも、私が治安対策委員長をやっているころ法務、警察両当局と相談したことがございます。この中には、私は先ほど罰金がないと言ったので、罰則がないと言ったのじゃありません、拘留、科料があるわけであります。この軽犯罪法はあまりにこまかいことを書いておりまして、つばを吐いたり、立ち小便をしたりしてはいけないというようなことが書いてあるわけであります。ところが、紳士諸君が街路で小便をしている例もずいぶん見るし、つばを吐くということもあるわけであります。これは文明国として、ここまで軽犯罪法で、拘留、科料と書かねばならぬか、もうぼつぼつこういう項目は自主的な公衆道徳によってまかせたほうがいいのではないか、そういったいろいろな面で、率直に申しまして、改正をすべき内容は多々あろうかと思います。そこで、これは法務省の所管でございますので、いろいろ実態に即して軽犯罪法を直す、そもそも軽犯罪という名前が、いかにも犯罪に軽い、重いがあるようなので、これを直すべきではないかという法務当局の意見すらあったわけでありまして、それとぐれん隊防止条例と統一的に考えていったらどうかという御指摘、これは検討の価値ある問題でございますが、いろいろ法の立て方、法のねらいが違っておりますので、なお検討の余地があろうかと存じます。  なお、この委員会という公の席でございますから、保安局長の言われるとおりなんで、警察庁が自治体の条例にとやかく言えないというのは、この答弁よりほかはできない。ただ御承知のように、実際的には警察本部長は国家公安委員会の任命であります。そうして条例制定のそういう治安関係につきましては、各県の本部がどうせ事務的には立案する衝に当たるわけであります。御指摘の趣旨は、権限はありませんけれども、実際的にそういうことを相談しながら、今後なるべく刑罰その他罰金等につきましては妥当なように、できるだけバランスをとっていくということは、十分今後考慮していい問題じゃなかろうか、かように考えております。現在におきましては、軽犯罪法その他はわれわれの所管ではございませんので、改正する、せぬということはちょっと御答弁を差し控えたいと思います。
  137. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 先ほど自治大臣も言っておられたですが、バラエティーを持たせなければいかぬ、しかしよく考えてみると、アメリカにしろ、その他の国でも、いわゆる先進国といわれているところでは連邦制をとっていることは御存じのとおりだと思うのです。そしてその州なりそういった自治体が立法、司法、行政の三権をやはり握っておるという前提があれらにはあるわけなんでありまして、そういったところとわが国の地方自治の憲法九十二条以下に保障されているところの状態とはかなり違っておる。そういった司法権を持っていないところにおけるこういった問題なんでありまして、この点についてはよくお考えおき願わぬと、やたらに自治体に何もかもやらしていいんだという考え方だけでは、私はむしろこの問題については疑問があるんじゃないか、こういうふうに思うのであります。時間もだいぶ迫ってまいりましたので次の問題に移りたいと思いますが、こういった国柄であるがゆえに、地方自治もまだ完全な、何ものにも侵されないような地方自治権というのが確立してないわが国の状態でありますので、そういった関係からも、こういったアンバランスをもたらすような、しかも司法関係の問題につきましては、日本の国柄として、現状においてはやはり国でもって現行の法律で救済できるような法改正をやっていくという方向を考えられて、全国一律であっても私は差しつかえない、こういうふうに考えますので、ひとつその点は御検討願いたいと思います。  これはこのくらいにしまして、次に東京都で当面一番問題になっております乗車拒否問題について若干の質問をしてみたいと思うのです。  乗車拒否でございますけれども、これは本年一月にタクシー料金が上げられまして、われわれはこの上げたことについては相当問題を持っておるのでありますけれども、都民はこれでもって乗車拒否が解消するであろうという期待を持っておった。業者のほうでも、この料金を値上げしていただくことによってひとつサービスを非常によくして、そういった乗車拒否等をなくしていく方向に持っていきたいという確約もしておる。にもかかわらず、今日依然として乗車拒否はふえる一方である、こういう状態であります。私はこれを非常に遺憾に思っております。そこで何とかこれに対して対策を持たなければならぬというふうに考えるのでありますが、そういった対策を引き出すためにも若干の質問をいたしたいと思いますが、いま拒否件数はどのくらいになっておりますか、何かデータがありましたらそれをお知らせ願いたい。それから拒否の類型はどういう形において拒否されておるか、この二つの点についてお答え願いたい。
  138. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 先ごろ改定いたしました東京都内のタクシーの運賃と乗車拒否との関係でございますが、先般改正いたしましたタクシーの運賃は、実は十年以上にわたって東京都のタクシーの運賃は改正していなかったのでございます。その間、状況の非常にいいときもございましたが、昭和三十六年ごろから開放経済あるいは所得倍増といった経済的な影響も受けまして、賃金はもちろん、いろいろな費用も上がりまして、だんだんタクシー事業におきましても経営が悪くなったのでございます。ごく最近の例で見ますと、赤字の出た会社、それから赤字は出ないが法人として企業を維持するための配当が全然できない、こういったものを含めますと、東京に法人のタクシーが約四百ぐらいございますが、七割から八割がこれらに該当するという状況になってまいりまして、企業としての健全経営ということが非常に困難になりました。そこで、タクシー事業というものは公共事業であります関係上、健全な経営のもとに企業の永続性あるいはサービスの向上というものが基本的にははかられるという性質のものでございますので、適正な原価と適正な利潤を償うものが運賃であるという法律規定によりまして、一昨年運賃改定の申請がありましたものを慎重に検討いたしまして、昨年の暮れに陸運局長におきましてこの運賃改定を認可したわけであります。  そこで、運賃改正のいきさつは以上申し上げたようなことでございますが、もちろん運賃改正によりまして今後企業の健全化がはかられ、これを基礎にいたしましてサービスの向上等に大いにつとめるように、目下陸運局といたしましては業界の指導に当たっております。したがいまして、いま東京のタクシーが特に利用者の都民から非難を受けております一番大きいものは乗車拒否でございますが、運賃を改正いたしましたからといって、あすの日から直ちに乗車拒否が直るというものではないわけでございまして、乗車拒否は乗車拒否といたしましていろいろ対策を講じておるわけでございます。乗車拒否の原因もいろいろございまして……。
  139. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 ぼくが聞いたことだけ答えて下さい。拒否件数はどのくらいあるか、拒否の類型はどうなっておるかということをぼくは聞いているのだ。
  140. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 乗車拒否の件数を申し上げます。昭和三十八年暦年一年を通じまして、乗車拒否につきまして苦情の申し出がありましたものが九百二十四件、一カ月平均大体七十七件でございます。それからことしの一月でございますが、一月一ぱいで乗車拒否の申告がございましたものが十件ございます。  なお、乗車拒否の態様でございますが、いろいろございまして、行く先によりまして気に食わないと乗せないというのが一番多い。それから、運賃はメーターによって収受することになっておりますけれども、中には悪質な運転手がございまして、メーター以上に幾らか出してくれなければ行かぬ、これがおもでございます。
  141. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そこで乗車拒否の取り締まり状況についてお伺いしたいと思うのですが、警察による取り締まりはどういうふうにやっておるか、それから陸運局による取り締まりというものは、一体どういうふうにしてやっておるか、同時に、法にいう雇用者、事業主といいますか、これがやっているところの取り締まりといいますか、乗車拒否取り締まりはどういうふうにやっておるか、それから、同時に、これはきょうはおいでになっておりませんので、陸運局からお伺いいたしたいのですが、自動車運送協議会というのがありますね、この運送協議会というものは、そういったことをやる一つの機関であると私は思っておるんですが、これが一体どういう取り締まりをやっておるか、この四点についてそれぞれお答え願いたいと思います。
  142. 早川崇

    早川国務大臣 三十八年暦年度で、取り締まり件数は七百三十一件ございます。それから取り締まりは、特に乗車拒否というのが世論の反感を買っておりますので、重点的に強化をいたしておるわけであります。
  143. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 その場合、送検されますが、これは法務の関係と言ってもいいと思いますが、どういった処罰が行なわれておりましょうか。
  144. 片岡誠

    ○片岡説明員 道路運送法の十五条違反で罰金刑に科せられております。
  145. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 これは運転者に及ぶのですか。道路運送法によると、この対象になっておるのは運転者じゃないと私は思うんですが、どうなんですか。
  146. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 運輸省所管に関連する面もございますので、一応運輸省所管に関連して申し上げます。  道路運送法によりますこういった乗車拒否の処分といたしましては、一番きついものから申し上げますと、施設の使用停止、つまり車両の使用停止でございます。その他は一般の警告、これは文書あるいは口頭による警告もございます。これらはいずれも事業者に対する措置でございます。
  147. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 当然そうあるべきだと思うのでありますが、その事業者に対する措置は、どういう判決がいままで出ておりますか。
  148. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 先ほど申し上げましたように、三十八年度に乗車拒否の苦情の申し出が九百二十四件ございまして、これらを一つ一つ調べまして、確実なものにつきまして、その程度によって処分をいたしております。処分いたしましたものが九百二十四件のうち六百六十四件ございまして、一番きつい車の使用停止処分をいたしたものが百五十二件、それから文書による警告を発しましたものが四十三件、それから口頭による警告を発しましたものが四百六十九件でございます。これらの警告を発しましたものが、その後重ねて乗車拒否等をいたしました場合には、さらに使用停止をいたすというふうなやり方でやっております。なお、処分をいたしておりませんものが残りの二百三十五件ございますが、これは申し出がありまして、事実を調べます場合に、申し出の方の協力その他によりまして、事実を確認いたしかねるものですから、やむを得ずこういうことになったという状況でございます。
  149. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 警察にお伺いいたしますが、警察の取り締まり件数はわかりました。どんな取り締まりをやっておるのですか。
  150. 片岡誠

    ○片岡説明員 主として乗車拒否が行なわれる可能性の多い地域に、警察官を原則として三人一組にして私服でやらしております。制服で行きますと、警戒という形で事実上乗車拒否の回数を減らすことは可能だと思いますが、検挙いたそうと思いますときは、私服で行っております。三人いますわけです。といいますのは、一人が乗客を参考人として確保する、一人が運転手を確保する。それで乗客に拒否された状況を参考人の供述調書としてその場でとる、それから運転手のほうから拒否した正当の理由があるかどうかについての取り調べを現場でいたすわけでございます。もう一人、それを監督いたしておりまして、その場にやじ馬が集まらないようにとか、その他の交通の整理をしておる、こういう状況でございます。
  151. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そういうように伺うと、非常に取り締まりの困難な問題だということです。パトロールをやってみたって、なかなかその効果があがらぬということだと思う。むしろこういった問題は、警察の取り締まりでもって解決すべき方向というものは非常に少ないのではないか、かように考えるわけです。そこでやはりこういった問題の解決は、運輸当局が何らかの方途を見出してやらなければならぬと思う。あなたのほうでどんなことをやっておるのですか。件数はわかりましたが、どんな取り締まりをやっておるか、そういう権限はないのですか。
  152. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 乗車拒否の取り締まりのほうは、ただいま警察からもお話がございましたが、乗車拒否という行為は非常に瞬間的な行為です。取締官が幾ら街頭に立ってみましても、そう簡単にはわからない。そこで利用者の申告が唯一のたよりでありまして、それによりまして取り締まりをやっておりますが、いま御質問の趣旨は、取り締まり以前の対策のことでございましょうか。
  153. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 措置です。
  154. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 拒否後の措置でありますか、乗車拒否を起こすようになる前の対策でありますか。
  155. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そうじゃなくて、乗車拒否の現行犯については、警察のほうでやるからいいとして、あなたのほうではやはり事業体を握っておるでしょう。それから、先ほど言った自動車運送協議会というのがあるでしょう。それらによっていろんな自主的な取り締まりというか、措置を講じていかなければ、この問題は解決できないと思う。その具体的な何かをやっておるかということを私は聞いておる。
  156. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 最初に、自動車運送協議会の話が出ましたが、自動車運送協議会は自動車行政に関しまする基本的な事項について、陸運局長の諮問を受けて答申をすることになっておりまして、たとえば運賃の基本問題、あるいはその他自動車行政の基本的な問題でございますので、こういう乗車拒否という問題ももちろん基本的な問題でございますが、いままではこの自動車運送協議会に相談することなく、陸運局長みずからいろいろな措置を講じておるわけであります。  対策といたしましては、乗車拒否の原因からまず考えなければならぬと思いますが、乗車拒否の原因もいろいろございます。まず第一には、需要供給のバランスがとれていないということです。そこで、車の増車を活発に行なうという措置を講じております。これは昨年、東京都におきましては約四千両の増車をいたしまして、さらにことしに入りましてオリンピックの時期ごろまでに約六千両を増車する計画で現在準備を進めております。一方、乗車拒否の一つの原因といたしまして、運転手が足りない、したがって、従来であれば悪質な者で、雇っても会社としても困るというような者は雇わなかったのでありますが、やむを得ずこういう者も雇っておる。運転手の質の向上という問題がございますので、これは車の増車とまた関連をしております。車をふやせばさらに運転手の不足が激化される、そうすると、運転手の質が下がるというぐるぐる回りの問題でございます。運転手の増加につきましては、運転免許等の問題につきましては、現在、警察、労働、運輸三省で会議を持ちましていま検討いたしております。それから運転手の養成につきましては、タクシー業界その他で養成機関を設けまして養成に当たっております。年間たしか千人から二千人の養成者を出して養成をいたしておりますが、なお足らないというふうな状況で、さらにこれが督励をいたしておるようなわけであります。  それからもう一点は、労務管理を適正化する、運転者の環境をよくして少しでもいい運転手が集まるようにしようということで、特にその中で問題になりますのは歩合給の問題でございます。ひところよりだいぶ改善されてまいりましたが、東京都内のタクシー運転者の給与の歩合給の率は、平均いたしまして固定給が大体六割強、歩合給が三割弱というところまでこぎつけてまいりました。これをさらに今後固定給の比率を高くするということで、たとえば車を増車いたします場合には、固定給の率の高い事業者により多くの配車をしてやるというふうなことで、側面的にこの固定給の比率を上げる方法を講じております。それから増車の場合に、乗務員の休養施設その他につきましても、よりよい施設を持っておる者に点数制度でより多くの車をやるというふうな措置も講じてまいっております。  ほかにもいろいろありますが、大体申し上げて以上のようなことであります。
  157. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 あなた、いまぼくの質問に答えて、自動車運送協議会というもの、これは陸運局長の諮問機関なんですね。そしてその諮問項目の中に従業員の服務及び養成に関することということがうたわれておりますね。諮問されたことがあるのですか。この協議会に対して、こういう事態が発生しているときに、陸運局長は諮問したのかどうか。諮問したら、その諮問したものに対する答申案をちょっとここへ持ってきてください。
  158. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 自動車運送協議会に対しまして御指摘のような点を諮問した事実はございません。ただ資料その他の提供でいろいろ議論はしてもらっております。
  159. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 時間がありませんからあまり言いませんけれども、これほど大騒ぎしているときに、やっぱりそういった機関を十分に使って、そうして十二分に諮問して、その意見を聞くというようなところから始めないと、いま言ったような施策を運輸省だけで考えておったって、なかなかそう簡単にはいかぬと私は思う。諮問するかしないかは局長の権限だろうから、やらぬでもいいとこう局長がおっしゃっておるならば、これはやむを得ないです。しかし、それじゃあまりにもこの事態を軽視しておるのじゃなかろうか。こういったときにこそ、こういう諮問が行なわれてしかるべきじゃないだろうかと私は思うのです。これはよく伝えておいてください。  そこで、いま伺ってみると、別に業者に対してたいした指導もしていないというようなことではないかと思うのです。もっと業者に対して指導もし、ことにいま言われたような、運転者に対する給与上の問題が理由としては非常に大きくいま浮かび上がってきております。そこで、固定給がいま四〇%とおっしゃったですね。それから歩合が六〇ですか。(木村(睦)政府委員「逆です」と呼ぶ)逆になっておる。その逆になっておる四〇の歩合、これがまだ、しかし実際は多過ぎるのじゃないかという感じがするわけです。もっともっとこれを減らすような指導というものをしなければいけないのじゃないか。そうして賃金構造というものを他の労働者並みに安定させていかなければ、先行きが不安でもってどうにもしようがないというようなかっこうから、行き先拒否をやってみたり、遠距離なら応じるけれども、そうでないところは行かないのだ、あるいはいわゆる雲助タクシー料金みたいなものを要求するとかいうかっこうになってきたのではないかと私は思う。そこで、その中で特に問題になるのは、退職金の問題だといまいわれております。あなたのほうで調査していないからちっともそういう答えが出てこない。大手筋でいま退職金は大ざっぱに言ってどのくらいのものが与えられておるか、その他の中小零細企業においてはどのくらいのものが与えられておるか、これをひとつお答え願いたい。
  160. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 いま手元に資料を持っておりませんが、私の記憶では、退職金制度の確立につきましても陸運局長が指導いたしております。大手の業者につきましては、よほど以前から退職金制度がありますが、これを全業者に及ぼすように指導いたしております。退職金の額につきましては、一般の会社に比べますと、まだ非常に少額になっております。この点も上げるように陸運局長が指導いたしております。
  161. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 私の聞いたところによると、退職金は大体大手でもって、いいところでもって二十年で六十万円程度だ。他の零細中小企業においては、これは驚くべき低さなのです。一年大体一万円と見たらいいとこういわれておる。だから、もう先がまっ暗だ、こう言っておる。しかも臨時退職する場合には四万五千円くらいくれるから、転々としてタクシー会社を渡り歩いておる。こういう実態が実は出てきておるわけです。こういったことを考えていくと、そういったものに手を打たない限り、いわゆる労務管理あるいは労働条件、あるいはまた賃金構造というようなものにもっともっと手を打たない限りは、私は乗車拒否はなくならぬだろうと思う。こういった根本的な問題についてもっと運輸省は力を入れるべきではないか。いままで聞いた範囲でも、全然やってないとは私は言いませんけれども、やり方が非常に手ぬるいのじゃないか、もっと思い切った措置が講じられてしかるべきではないか、こういうように思うわけです。この点は要求しておきます。  それからいま一つは、先ほどもそれを解消していく一つの方法として増車ということなのであります。ところが、増車する場合に、オリンピック等を目当てとしましても、約六千台を増車しなければならぬ、こうおっしゃっております。そうすれば、運転手は二万人近く要るということでありますが、それがなかなか入手できない、そういうようなことであります。そこで、増車もけっこうですが、同時に、新聞その他世論がもうすでにそこまできておるのですが、思い切ってバスの運行を深夜運行等をもっと考慮すべきじゃないか。それから一般の陸上交通、たとえば鉄道等においても、もっと深夜運転を考えるべきではないかという考え方が一つあるわけなのです。一々一問一答でやっておると時間がたちますので……。それからさらに個人タクシーというものをもっとふやしたらどうかという考え方が一つあるわけなのです。ついでに伺っておきますが、こういった行き詰まりの状態の中で、地方公共団体のタクシー経営ということができないかどうかという問題があります。運輸省のやっておるだけの手段でもなかなかそう簡単にいかないと思いますので、それほど困っておるならば、思い切ってバスだけは地方公共団体がやるのだという考え方でなくして、むしろ地方公共団体でもってタクシーの経営をやったらどうかという考え方を私は持っておるのです。そういったことについて大臣のほうからでもひとつお答え願いたいと思います。それから先ほどのは運輸省のほうからお答え願いたいと思う。
  162. 早川崇

    早川国務大臣 実は六大都市のバスで手を焼いておるわけでございまして、さらに自治体でタクシー経営をやるという考えは現在持っておりません。ただ、乗車拒否に対しましては、大阪で北と南にタクシー・ベイというものをつくりまして、非常にこれが好評でございまして、そこへちょっと歩きさえすれば、乗車拒否がなくてどんどんタクシーに乗れておるわけであります。東京においては宮城横の大橋のところにタクシー・ベイをつくって、これまた好評でございますので、こういったことは、警察庁としても、運輸省と相談いたしまして、乗車拒否の非常に多いところというのは大体見当がついておりますので、そういった方法を講じて、少しでも市民の足の便宜に供したい、かように思っておる次第でございます。
  163. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 地方公共団体にタクシーをやらせたらどうかという御意見でありますが、法のたてまえから言いますと、別にどうということはないと思います。ただ、いま御指摘のように、乗車拒否等の弊害を、地方公共団体がタクシー事業をやることによって除去し、解消できるかどうかというところに問題があろうかと思います。この点はわれわれもよく研究をいたしたいと思います。乗車拒否等の問題につきましては、原因もいろいろあるようでございますが、根気よくきめのこまかい対策を講じ、今後陸運局においても指導いたしましてこういう事態の解消をはかりたい、かように考えております。
  164. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 大体終わりますが、先ほど言ったように六千台もふやさなければならぬ、ところが運転者が手に入らない。手に入らない原因はいろいろあるけれども、結論は、現在のタクシー運転者の賃金構造からいって、そこに問題点がある。率直に言って、あなた方も注意はしているでしょうけれども、なかなか業者も改めない。依然として歩合の占めている幅というものがかなり大きな部分を占めている。こういう不安定な状態の中に置かれているのだ、それならば地方公共団体において公営企業としてやったっていいじゃないか、私はこう言っておるのです。あなたの言うように、民間でやれないものは地方公共団体でできないのだというような考え方でなくて、いま言ったような原因をずっと追及していくとそういうことが考えられる。ぼんやりしておるが、法的に問題がないのだから、地方公共団体でやろうと思えばやれるのですよ。これはもう少し運輸省のほうでも指導を的確にしてもらわないといかぬと思う。  それからいま一つ、これは私が次に質問しようと思ったら、大臣のほうから先に言ってしまったのですが、流しタクシーのことです。こんなことをやっている国は世界の例でどこにありますか。日本以外にやっておるところがありますか。あるいは東南アジアその他ではやっておるか知りませんけれども、私が見た目では、世界で流しタクシーのようなことをやっている、そんな運営状態というものはないと思っている。この点で、あなたのほうで何か調べたものがありますか。
  165. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 流しタクシーをやっておる例はございます。たとえばロンドンあたりもさようでございます。世界じゅうに全然ないことはないと思います。
  166. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 ロンドンのどこでやっていますか。大体ロンドンを歩いてみたって、ホテルの前であるとか、ターミナルであるとかいうようなところにタクシーの駐車場を設けて、流しなんかやらずに、そこへとまっておりますよ。そういうのを各所につくってあって乗客はそこまで歩いていって、そこで拾うのが大体普通の形であります。もちろん電話で呼びつけるということはできます。ロンドンのどこでやっているか。私が見た目では、ロンドンでは流しなんかやっていない。あれはお客さんを乗せて走っている。ガソリンはこのごろかなり出回っているらしいから問題はないかもしれぬけれども、諸外国でもああいうばかげた方式をやっているのは私は珍しいと思う。あんなものが結局乗車拒否とかなんとかいう忌まわしい不愉快な事件をもたらす原因になる。からだもえらいだろうし、金にもならぬのに走り回っている。一体、この流しタクシーというものについて運輸省あたりはもっと真剣に考えてみたらいいと思う。あなた方がちっとも真剣に考えていないから、ちっともいい策が出てこないのですよ。流しタクシーを廃止するだけの勇気はないですか。また廃止するとどういう支障を来たすのですか。一方において、運転者の売り上げが少なくなって、ふところぐあいが悪くなってくるというような問題が出ると普通には考えられるでしょう。ところが決してそうじゃない。それならばそれで歩合と固定給との間の調整をすれば、そんな問題は解決するのです。こういうぶざまなことをやっておるのは私は日本だけだと思っておる。流しタクシーを廃止する勇気はありますか。
  167. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 流しタクシーをやめて、タクシー・ベイを方々につくって、そこで客待ちをするということは非常にいいことでございまして、現在その点につきましても、陸運局のほうでいろいろ研究をいたしております。ただ、いままで流しタクシーというものをやってまいっておりましたので、準備その他もよほど慎重にやりませんと、これを廃止することは困難でございますので、その点につきましては、御指摘のように路傍駐車場といいますか、路上駐車場といいますか、そういう施設もたくさんつくりまして、利用者に不便にならないようにしながら逐次そういう方向にしていくことが交通の混雑緩和にもなりますし、その点は御指摘のとおり陸運局のほうにおきましても、その方向で目下検討いたしております。
  168. 井村重雄

    井村主査代理 阪上委員にちょっと申し上げますが、二十五分過ぎましたので、どうぞよろしく。
  169. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 わかりました。  そこでいま言われたように交通緩和の問題から見ても、もし流しタクシーを廃止したならば私は相当な緩和がもたらされると思うので、そういった点もあわせて警察庁、公安委員会等でも御検討願って、政府部内でこういった問題を真剣に取り上げていただくことが必要だと思います。  あと刑事警察強化要綱について質問したいと思っておりましたが、時間がありませんので、この程度にとどめます。
  170. 井村重雄

    井村主査代理 五島虎雄君。
  171. 五島虎雄

    五島分科員 さっき自治大臣は、タクシーの問題に関連されまして、地方のバス経営に手をやいておるというようなことを言われました。私は阪上君の質問に関連して質問をすればよかったわけですけれども、私が関連して質問をすると阪上君の質問時間を食ってしまうので差し控えておりましたが、あらためて質問をしておきたいと思うわけであります。  私は五点について質問をしようと思いましたけれども、あと山下委員が朝から出席されて待っておられますので、これをできるだけ二点に集約して質問をいたしてみたいと思います。  ことしの、三十九年度の経済の見通しは、九・七%の経済成長率だといっております。そうして物価の上昇は四・二%だと見通しではうたっております。ところが、私はそういうようなぐあいにはいかないのではなかろうかと思う。これは三十九年度の経済の中に、予算のあり方だとか組み立て方だとかいろいろな要素が相交錯をいたしまして、緊縮ムードと膨張ムードの相交錯の中に、どうしても物価は累年増大してきておりまするけれども、物価を抑制することはなかなか困難ではなかろうかと私は考えておるわけです。ところが政府が経済閣僚会議において、一年間公共料金をストップするということをうたわれました。そうしてこの予算審議が始まりまするや、堂森委員の質問に答えて、公共料金すなわちバス料金の改定は、自信と確信をもって行なわないのだ。その他の公共料金についても同様である。それはムードとして、物価問題を抑制することがすなわち物価の抑制になるのだと、こういうようなことを答弁をされたわけであります。しかしつらつら考えるに、ただ単にムードとして物価を押えるということだけで、はたして現実具体的に物価を押えることができるか、抑制することができるかということは、はなはだ疑問に属するということを私は考えておるわけです。ところがさいぜんも木村自動車局長が言われましたように、タクシーの料金はこの間上がり、そうしていろいろ問題が惹起されました。そうしてその理由としては、数年間値上げをしないで経営に困っているから値上げをしたのだと、こういうようなことをいわれる。ところが値上げをしていないというその姿は、各都市バスの料金においてもそうじゃないですか。十年間もバスの料金は改定されておりません。私がこういうことを言うと、バスの料金の改正をせいということに直結するように考えられては困るわけです。私は公共料金というものは、これをストップすることによっていろいろの施策を講じなければならぬと考えておるわけです。ところが何か聞くところによると、東京都を中心としたところの六大都市のバスの経営というものは、昭和三十九年度の予算も組み立てることのできないような赤字の累増であるということを聞いておるわけです。そこで、物価の抑制というものは、われわれこれはもうストップしなければならないと、こういうことになっておる。しかも赤字は現実に進行しつつあるということです。そこで木村自動車局長にもお聞きしたいと思いますけれども、こういうように赤字が累増すればするほど地方財政というものは逼迫してくるわけであります。自治大臣が手をやいているということばに集約されるんじゃないかと思うのです。そこで、一年間公共料金をストップするということは、来年度は値上げをするのかということを伺わなきゃたらぬと思うのです。来年度は一体どうするのだ。しかし来年のことをいうと鬼が笑いますから、したがって、ことしは物価、料金は値上げしないということが確実に池田総理から回答されておるわけですが、しからば現実に進んでいるところのこの赤字の累増という問題、そうして予算も組み立てることができないのだ、市中銀行からも融資ができないんだというようなことを自治省はどういうように把握され、これをいかに運転するように配慮が行なわれるのかということについて聞いておきたいと思うのです。特に予算説明の中を読んでみますと、今回公共企業体の地方公営企業制度調査会設置のために、住民台帳制度合理化調査会とともに、その経費として二百万円——予算上には非常に少ないわけですけれども二百万円を投ずる。しかし、こういうような調査会が始まりまして結論が出るまでには半年あるいは一年——一年以上かかるでしょう。しかし現実に赤字という問題は進行している。三十九年度も、もう間もなく地方予算がそれぞれ組まれなきやなりません。そういうような差し迫った現実において、その問題をどういうように把握されているかということについてお尋ねしておきたいと思います。
  172. 早川崇

    早川国務大臣 公営企業の赤字は二百五十億円ありまして、そのうち交通関係は百七十億円ですか累積赤字がある。六大都市に例をとりますと、現在のままでは三十八年一月から一年間に四十八億円の赤字を生じるということが、少なくとも現在の賃金ベース、現在のままの経営ということでいきますと起こるわけでございます。他方、物価抑制のために、政府といたしましては一年間公共料金のストップをすることになりました。したがって、その間の何といいますか善後処置を考えるということで、目下関係省と折衝中でございます。
  173. 五島虎雄

    五島分科員 地方財政法あるいは地方公営企業法などを見ますと、繰り入れ金の措置というものは明らかになっております。それは特別会計において処理すべきである、そして公営企業の歳出は当該企業の経営に伴う収入及び地方債から収入したものをもってこれに充てなければならない、こういうことになっている。そして今度は剰余金が生じた場合には、その二分の一を下らない額を積み立てあるいはその地方債の返還に充てなければならない、こういうようなことになっております。そうすると法は、もうけるときのことばかりしかうたっていないようであります。赤字損失を起こしたときの防衛のためには、そのときの処置のためには、法は少しもうたっておりません。そうすると大都市あたりでは、都市合併等々がこの数年来ずいぶん行なわれてきました。そして地域も非常に広くなってきました。そうすると、農村地区等々周辺地区に合併するならば、必ず電車あるいは自動車、バス等々の路線は、合併条件としてこれが敷設されなければならない。そういうようなことであるならば、これが受益者負担の原則をとったときには、ここに矛盾が生じてきやしないかと私は考えます。そうすると、こういうような公営企業が経営するのには、ただ単に収入一点ばりですから、収入が落ちたときにはどうもこうもしようがなくなるということに相なります。ところがその繰り入れの場合は、災害あるいはその他緊急やむを得ざる場合に一般会計から繰り入れることができる、ただし翌年度以降においてこの一般繰り入れば返さなければならぬ、こういうことになっているわけです。ところが、一方には非常に人口の少ないところにバスの政治的路線を設定いたしますと、赤字になることはもちろんのことであります。したがいまして、大きな都市合併等々によって赤字になったものは一体だれが責任を持つべきかというような疑惑さえ生じてこなくてはなりません。そうすると、何か受益者負担の原則一点ばりに押しつけて、それからまた特別会計だから収入だけでまかなえというようなこと自体が、大体おかしくなってきやしないかと私はかねて考えるのであります。だから、その特別な緊急やむを得ない事態というようなものは、こういうやむを得ない事態があるのだから一般会計からこれを繰り入れるというようなこと、これを大臣はどういうように考えられておりますか。
  174. 早川崇

    早川国務大臣 まことに基本的な問題でございますが、たとえば地下鉄のように一千億円の投下資本を要するという問題は、これはとても受益者負担では間に合いませんので、補助金を出しておるわけであります。バスのようなものは、やはり受益者負担で独立採算ができるという性質の公営企業でありますので、従来独立採算制でいっておりまして、ある時期におきましては、東京都の場合にはたいへんもうかった時期がございます。今日は御承知のように非常に赤字が出てまいりました。しかし私は、やはりこれは受益者負担という原則はあくまで独立採算として守っていくべきものだと思うのであります。バスへ乗らない人にまで負担をかけていくということはいかがなものかと思いますし、また簡単に一般会計から繰り入れるといたしますと、経営の合理化の努力もいたされません。また公営企業は、御承知のように固定資産税も納めなければ事業税、法人税、あらゆる税金を免除されておる。ですから、そういうことを考えますと、あくまで独立採算ということで進むべきではなかろうか。したがって、われわれといたしましては、四月から経営の合理化のための公営企業制度調査会を発足させますし、またそれだけの赤字は、どうしても無理なときには、結論が出ましたら、一年間ストップいたしますけれども、一年後には経済原則に沿った料金というものも検討しなければならないのではなかろうか。御指摘の質問は、この一年間押えたということが緊急事態というものに当てはまるかどうかという問題になろうかと思います。これに対してはいろいろ検討をいたしておりまして、関係各省間とこの一年間の経過措置について結論を得べく目下せっかく努力中でございます。
  175. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、これは具体的に今度は資金繰りの困難な企業に対して政府資金の融通を行ないますか。それも検討中ですか。
  176. 早川崇

    早川国務大臣 そういうことも含めて検討中でございます。
  177. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、私は具体的に以下五つばかりやらなければならぬのじゃないか、こういうことを考えております。だから一つ一つ伺いたいと思いますけれども、時間がございません。それで早川大臣が答弁されることは、これから検討するだろう、検討中だということを答弁せられるだろうと思うのですが、この企業債償還金の激増する企業に対して、企業債償還期限の繰り延べ措置または経営の困難な企業ないし業種に対して、支払い利息の免除ないし利子補給等の措置を講ずるかどうか。それから政府資金起債ワクを増大するとともに公営企業金融公庫政府出資金を大幅に増額し、融資ワクの増大とともに貸し付け利率の引き下げ及び据え置き期間の延長をはかるかどうか。それから公共料金抑制措置期間中の損失補てんを行なうかどうか。そうして次は、この次の事態まで、行政的に抑制されたところの措置における地方の赤字の累増ということについて、国は責任をもってこれに何らかの対策を講じられるかどうか。こういうことが実現しなければ、地方の公営企業というものは非常に困難になるだろう。その困難になるよってきたるところの原因等々は今後いろいろ調査されるでしょうし、いろいろ原因はあるだろうと思うのです。いま述べたところの具体的な考え方は、私たちの社会党としても、こういうことは政府にやってもらわなければならないのじゃないか、こういうことをやりますと、相当の金額というものが必要になってきましょうから予算に大きな影響があるであろう、こういうように考えるわけであります。したがって、大臣の一括した御答弁をお願いするとともに、これは自治省のみならず、運輸省としての指導、運輸省としての考え方も聞かなければならないわけです。きょうは特に自動車局長だけが来ておられますから——公営企業はいろいろあります。あるいは水道の問題で毛ありますけれども、これは山下栄二先生がこれから水道の問題等々については質問されるだろうと思いますから、特にバスの現実の赤字の問題について運輸省はどう対処されるか、こういうようなことをあわせて聞いておきたいと思うわけです。
  178. 早川崇

    早川国務大臣 いま御指摘の数点について、全部含めて目下検討中でございます。
  179. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 運輸行政の立場からいいますと、必要な運賃は改定して企業の健全化をはかるたてまえでございますが、今回の公共料金の一年間据え置きは、政府の高い経済政策から生まれたもので、御指摘のようなそれに伴う、そのかわりになる分につきましては、関係するところも多いわけでございまして、いま自治大臣の答弁のごとく、今後検討をしていきたいと思います。
  180. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、検討するということの検討というものは、地方公共企業体の予算編成ぐらいまでには検討してその結論が出るということですか。その検討というものの時期的な問題をちょっと……。
  181. 早川崇

    早川国務大臣 できるだけ早く検討するという意味でありまして、予算編成までできるかできないか、これは技術的な問題で、十分できるように検討いたします。
  182. 五島虎雄

    五島分科員 何だかたよりないことですけれども、それは金がなくたって予算編成は数字の上からできるだろうと思います。できるだけ早くということは、やはりすみやかにこの結論を出されて、そうして一般会計の問題、あるいは受益者負担の問題、いろいろあるでしょう、そういうことを検討されるように要望しておきたいと思います。  それから、もう時間がございません、あと五分間お願いしますが、先日、日本弁護士連合会において、車掌の身体検査は違憲であるという結論を出されたようであります。そうしていろいろ関係者を呼んで検討したところ、憲法三十一条及び十三条違反の疑いが濃厚である、こういうようになったわけであります。ところが、その後この問題は、神戸市のバスの車掌さんが金を着服したという疑いから数時間調べられて、身の潔白を明かすためということで、国鉄に投身自殺をされたわけであります。それからずっと弁護士協会が調べたところによると、公営企業におきましても、あるいは交通関係の民間企業においても、やはり身体検査等々を行なっているところ、あるいはそのまま就業規則に残っているところ、現実にやっているところ、それが数百社に及んでいるという現実が日弁連の調査によると明らかとなった、こういうことです。しかし政府としましては、地方行政委員会におきましても、あるいは運輸委員会におきましても、人権擁護局の意見等々についても先般の国会でいろいろ論じられたことであります。その後、人権擁護局としては勧告あるいは通達が各地域に発送されたと聞いておるわけですけれども、しかしながら、これは一片の勧告でいいのかどうか。憲法違反の疑いがあると弁護士連合会が言っておるのに、いまなお各企業体においては規約等々に残存しておる。東京都バス、東京都交通局においては、もうそういうような身体検査等々は廃止をした、こういうように新聞には載っておるわけですけれども、あと数百社全国において身体検査の制度が残っているという。したがって問題を起こした神戸事件——新聞には神戸事件と書いてある。神戸事件の神戸交通局長は、あれは身体検査をしているのじゃない、身体検査をしているのじゃなくて所持品を調べているのだ、だから憲法違反であるかどうかということは慎重に検討した上で、こういうことになっておるわけですけれども、しかし地方行政の問題としても、あるいは運輸の問題としても、この指導的な役割をどういうふうに果たしているか。憲法違反、これは終戦以来労働組合ができて、そして各労働組合は——終戦前まではこの身体検査が交通などにはありました。ありましたけれども、民主的な団体交渉の上に、基本的人権を阻害するものなりとして、その後多くの事業所においては、身体検査の制度というものが廃止されておるわけであります。いまなおこれが都市公共企業体等々に残っておるということは、労働法の後進的な問題ではなかろうかと考えます。したがって運輸省も法務省もあるいは自治省も、こういうような規約、規定等々はすみやかに廃止されるような勧告あるいは措置をされてしかるべきだと思いますけれども、この点について両省の考え方を聞いておきたいと思います。これで終わります。
  183. 早川崇

    早川国務大臣 本件は法務省の問題であり、運輸省の問題でありますので、そちらのほうから……。
  184. 木村睦男

    ○木村(睦)政府委員 昨年六月に神戸で気の毒な事件が起こりましてから、人権擁護局のほうからも、人権擁護の立場から連絡がございまして、直ちに各陸運局を通じまして、身体検査の程度あるいは方法等について、そういうおそれのないようにという指導をいたしております。さらに八月にも重ねて正式に人権擁護局から、神戸の具体的な事件につきまして詳細これに関連して連絡がございましたので、あらためてさらに陸運局、それから全バスの業者に対しまして同じような通達をおろしまして、この問題について慎重に取り扱うように指導をいたしました。問題は、今回の弁護士会のほうで憲法違反のおそれがあるという意見が出ましたのも、やはりその方法、程度が問題であろうかと思います。したがいまして、もちろん人権擁護の立場から、あるいは、いわんや憲法に触れるようなことがあってはいけない、今後とも十分その点につきましては、さらに指導を徹底いたしたい、かように考えております。
  185. 井村重雄

    井村主査代理 山下榮二君。  山下分科員にお願いを申し上げます。自治大臣は四時十分から三十分まで暫時中座をいたしたいそうでございますので、どうぞ御理解の上、それが済めばこちらへまた見えられますから、そのつもりでよろしくお願いいたします。
  186. 山下榮二

    山下分科員 それでは大臣のおられる間に大臣にお伺い申し上げてみたいと思うのであります。  先ほども問題になっておりましたが、公共料金の値上げストップが一カ年間行なわれるということが閣議で決定をされたのでありますが、先ほどもバス料金その他交通料金に対してのいろいろ御議論があったのでありまするが、地方自治体で行なっている水道料金の値上げ抑制もともに行なわれておることは、御承知のとおりであります。先ほども問題になっておりましたように、これら地方公共団体の企業が非常に苦しい企業体になり、赤字が累積されつつあるということも大臣は御承知であろうと思うのであります。もし一カ年間ストップをして、一カ年後にはどうなるという見通しを立ててこういう措置をおとりになっておるのか、その辺のことが明瞭でない。一カ年間赤字が累積されて、さらに苦しくなるばかりであろうかと思われるのでありますが、それらに対する行政的な指導をどうお考えになっておるのか、大臣の所見を伺っておきたいと思うのであります。
  187. 早川崇

    早川国務大臣 一カ年後どうなるかという問題でございますが、必要最小限度の値上げが必要な事業もあろうかと思います。またそうでない、合理化によってあるいは需要者がふえて料金を納める人が多くなっていけるような事業もあろうかと思います。これにつきましてはケース・バイ・ケースで一年後検討されるものと考えております。
  188. 山下榮二

    山下分科員 公共料金が値上げになりますと諸物価にはね返り、諸物価の値上げになることは理の当然でありまして、公共料金の値上げ抑制という処置は私はなかなか当を得た措置であり、また国民生活安定という面から考えて当然必要な処置であると思うのであります。しかるに、いま大臣がお答えになったのでありますけれども、公共企業体の経営そのものの考え方が、やはり当局としてなければならぬはずであると思うのであります。それらが具体的にあらわれずに、ただ単にストップだけを行なわれたというところに、私たちは納得のいきにくいものがあるのであります。こういうことに対しましては、一体大臣はいかようにお考えになっているか、伺っておきたいと思うのであります。
  189. 早川崇

    早川国務大臣 六大都市の場合には、バス料金一割五分は最小限上げなければ、それ以外の合理化というものはなかなか困難であって、骨と皮だけより残らない、したがって閣僚懇談会でも一割五分の値上げを私は強く要望したわけでございます。  水道料金につきましては、現在四十億ほどの赤字ですけれども、これは業種が非常に多様多様でございまして、ケース、ケースによってその事業実態を見きわめて、どうしても値上げせなければならぬものは一年後にしなければなりません。そうでないと事業もございますので、よく検討して、一年後の情勢を見て処理いたしたいと思うのであります。一年間ただほっておくか、そういうことはいたしません。われわれといたしましては、一年間政府の権限による公共料金のストップでありますから、納得のいく程度のものについては、何らかつなぎの経過措置をどうしても考えなければならぬというのが私の気持ちでございます。
  190. 山下榮二

    山下分科員 私が伺っておるのは上水道の問題でありまして、御承知のとおり人間が生きていくためには、やはり水と空気と日光がなければ生活はできないのであります。原則的に言えば水とお日さんと空気、これはただで生活ができるようにあってほしいのであります。しかし人間生活がだんだん文化が向上するに従いまして、なかなかそうはまいらないこともある。水道といえどもなかなか相当な料金がかさんでくることは当然であります。しかしここでふしぎなのは、工業用水に対しましては政府は国庫補助を行なっております。簡易水道に対しましても行なっております。しかしひとり上水道に対しましては、何らの国庫の補助の手段が行なわれていないのであります。私は一カ年間ストップをするということを考え、あるいはさらに将来にわたってより安い水を市民に供給するためには、それらの処置もあわせて考えられるべきではなかろうかと思うのでありまするが、上水道等に対する政府の将来にわたる方針を伺っておきたい、こう思うのであります。
  191. 大橋文雄

    ○大橋説明員 ただいまの山下先生の御質問でございますが、簡易水道や工業用水には政府補助金が出ているが、上水道にはない、それは御指摘のとおりでございます。上水道は一応独立採算制をもとにいたしまして、その拡張とか、いろいろな財源はおもに地方債によるという現状でございまして、それはまた先ほどの水道料金の抑制問題とも関連いたしますが、こういうような問題に関しましては、今後関係方面、と申しますと自治省あるいは大蔵省のほうとよく協議いたしまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  192. 山下榮二

    山下分科員 大臣が出ていかれましたからちょっと伺いにくいのでありますけれども、政府は昨年の九月にすでに経済閣僚懇談会等を開かれまして公共料金値上げ抑制の方針を定められたことは、皆さん御承知のとおりだと思うのであります。しかるに口には抑制を唱えながら、そのあとからあとからとだんだん値上げが行なわれてまいっておるのであります。ことに昨年の暮れに経済閣僚懇談会等の席上で値上げ抑制が決定された直後に、千葉県上水道の値上げが行なわれておるのでありまするが、今度の閣議決定というものは、これは将来一カ年間、いかなることがあっても動かすことのできないかたい決意のものかどうか伺いたいと思うのであります。
  193. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 お答えいたします。政府が公共料金の抑制の方針をきめましてから幾つか公共料金として値上げをしたものがあることは、事実でございます。しかしながら、過去の例を見ますと、公共料金の範囲をどの程度に考えるかということで、いろいろありましょうけれども、最も狭い意味の公共料金といいますか、すなわち、地域的に独占的な企業であって、それらの料金について認可を受けなければならぬというような性格のもの、たとえば電気代とかガス代とか交通関係の運賃であるとかというようなものの消費者物価に占めるウエートは約七%ちょっとでございますけれども、三十五年からいままでの数字を見ますと、やはり抑制の方針に沿っておりますので、全体としては、去年の七月までしか私のほうで計算した数字はありませんけれども、それまで約二二%くらい総合の指数で上がっております。それに対して公共料金のほうは約五・五%程度の上昇にとどまっておる。これは消費者物価の内容を満たす。さらに公共料金の範囲をもう少し広くしまして、たとえば消費者米価といったような、政府が抑制できる料金なり価格のすべてというようなものでこれを見ますと、消費者米価の値上げがありました関係上、やはり三十五年を一〇〇としまして、三十八年の七月では一〇・四%の値上げになっております。これは消費者米価の値上げが非常に大きく響いております。しかしながら、これを上昇の寄与率というのですか、上がったもののどれだけの割合が公共料金の値上げによるものかという数字を出してみますと、前者の公共料金で見まして約一・八%、後者の最も広い意味での公共料金で見まして九・五%、約一〇%程度、全体のものが二〇%上がっているわけですから、その二〇%のうらの一〇%、実際の数字で見ますと二〇%程度、こういうものが上がったという計算になっております。したがって、そういう線から見ましてもいろいろの問題がありましょうけれども、公共料金を抑制してきた効果というものは、諸物価、いわゆる抑制の手段を持ってないものから比べますと、相当落ちついているということが言えるのではなかろうかと思うのであります。  ところで御質問の公共料金の抑制の取り扱いでございますけれども、確かに前々から極力これを抑制する方針で臨んできておりますが、非常に経営が困難になるといったようなものについて、例外的にこれを認めるという例外を割合よけい認めてきたわけであります。昨年の十二月二十日でございますか、経済関係閣僚懇談会できめた線というのは、今後一年間極力上げないのだという線できめておりまして、例外的に上げるものがどれだけあるかというようなことにつきましても、その公共料金の値上げがほとんど消費者物価に関係ないものであるとか、あるいは中小企業等にかかるものであって、その中小企業の経営が非常に困難になるということで上げざるを得ないというようなものについては、上げる道は開いておりますけれども、具体的に上げるかどうかということについて、一々経済閣僚懇談会の議を経て上げるというぐらいに、非常に厳格に取り扱おうという決定をした次第でございます。  それからもう一点、水道料金の問題でございますが、水道の料金につきましてはすでに御承知のとおりだと思いますが、これは公営企業の経営にかかるものにつきまして、届け出の料金ということになっておるわけでございます。したがって政府が直接規制することが非常に困難な問題でございますので、一月の二十四日に閣議了解をいただきました物価の当面行なうべき具体策の中では、自治省のほうから関係の自治団体に対して、政府がこういう気持ちでともかく一年間値上げを抑制したいということを決定したについては、地方の自治団体のほうにおいても自粛をお願いしたいという通達を出すようにお願いをし、出されておるように聞いておるわけでございます。しかしそういう性格のものですから、千葉県の問題につきましては、いずれ水道課長のほうからお答えを願ったほうがいいかもしれませんが、その決定をした時分にはもうすでに公報にも載り、現に十二月一日から上げて料金徴収を一月から二月にやるというようなケースでございまして、どうにも抑制の手段がなかった、やむを得ないと言わざるを得ない状態にあったと聞いておる次第でございます。
  194. 山下榮二

    山下分科員 政府は局長通達か課長通達等で、地方公共団体に対して値上げ抑制の通達を出した、こういまおっしゃるのでありますが、通達を出して抑制したということになってまいりますと、先ほども話がございました、あるいは市営その他のバス等の公共料金、水道、こういうもの等の赤字が累積してくる企業体に対しましては、何らかのそれじゃ赤字解消に対する責任政府みずからとるべきである、こう考えるのでありますが、そういうことは絶対おかまいなしで、ただ通達だけを出せばいい、こういう単なる考え方でおやりになるというところに、地方公共企業体の困る原因があると思うのでありますが、それらに対しましては、将来何らかの救済の道を考えておいでになるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  195. 柴田護

    ○柴田政府委員 水道料金の問題につきましては、その水道料金の性格上、政府として直接規制手段を持たないわけでございますが、政府全体として、公共料金についてその引き上げを抑制する、こういう基本方針が打ち立てられましたので、地方自治団体に対しましてもできるだけこれに協力してもらうという意味合いから自粛方を事務次官名を持ちまして通達をいたしております。しかし、先ほど来いろいろお話がありましたように、私どもといたしまして自粛をして可及的に押えてくれ、むしろこの際値上げを待ってくれ、こういうことを言っております以上は、決して手ぶらでそのまま自粛要請だけでとめようという気持ちはございません。現に御指摘のように、水道につきましては、いろいろ赤字がございます。交通につきましては、非常に危殆に瀕しておるような状態でもございますので、当然何らかの措置を考えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。したがって、大臣からお答え申し上げましたように、現在関係各省間におきまして、こういった問題についての措置につきまして、早急に打ち合わせをして結論を出すべく交渉をしておる次第でございます。水道等につきましては、公営企業、これらの料金の抑制というものに伴う公営企業の経営に及ぼす問題というものと、また公営企業自体にまつわる問題、経営困難の問題と、二つの問題があろうかと思うのであります。私どもは、この問題を実は二つの問題に分けて考えておりまして、当面の措置として、公共料金の引き上げ抑制ということに関しまして、企業が受けますところのいろいろな打撃に対してどう対処するか、これは早急にひとつ処置しなければならない問題でございます。同時にまた、最近の地方公営企業の状況からいいますと、このまま放置しておくわけには、どうしてもいかない状態になってまいっておりますので、これらにつきましては、別に抜本的な対策を講じたい、こういうことで、先ほどだれでございましたか、お尋ねがございましたように、早急に地方公営企業制度調査会というものを発足させて、基本的に公営企業のあり方、経営の仕方等々の問題につきまして、御検討をわずらわして基本方針をきめたい、こういう感じを持っておるわけでございます。  若干ふえんさしていただきますと、交通問題等につきましては、交通事業というものを取り巻いております環境がいろいろ変わってまいっております。現に東京都——大阪でもそうでございますが、バス事業というものの運転は、運転能率が非常に低下いたしております。しかも、地下鉄は出血覚悟で建設しておる。都電は半身不随の状況にある。こういう状況のもとに、こういった交通問題をどう考えるかという問題がございます。  水道につきましては、先ほど来もお話がございましたが、単に企業経営という観点からだけで水道というものを考えていいのか。古く建設した水道というものについては、だんだん償却が進んでまいりますと安い水で済む。しかし最近新しく建設いたしますところの水道については、建設費が非常に高くつきますので、勢い企業採算という立場からのみ見てまいりますと料金は高くなる、こんなアンバランスをそのままにしておいていいのかという問題もございます。そうなってまいりますと、公営企業というものの経営の基本的な考え方、それから公営企業というものの活動すべき分野、限度と申しますか、そういう問題、それから公営企業を経営いたします場合の経営のあり方といったような、まことに広範多岐な問題にわたっていく。これはやはりそういう基本問題の基本方向を、学識経験者を中心とする調査会の御審議をわずらわして、大体方針をきめて、その方針に従って、これらの企業の根本的な再建方策というものを打ち立てるべきじゃないか、実はこういうふうに考えておるわけでございます。結局両方とも一つの問題になるのかもしれませんけれども、われわれといたしましては、やはり時点を分けて考えていかなければならぬのじゃないか。で、基本問題につきましては若干時間を要するかもしれません。しかし、料金引き上げに伴う影響等をどう緩和するかという問題は早急に措置をしなければならぬ。先ほど来の予算に間に合うか合わぬかという問題になると、われわれといたしましては間に合わすべく極力努力する、こういうつもりでやっております。
  196. 山下榮二

    山下分科員 地方公営企業法が昨年は改正されまして、独立採算制が法律の上から確立されておることは御承知だろうと思うのであります。すなわち第十七条に「地方公営企業の経理は、第二条第一項に掲げる事業ごとに特別会計を設けて行い、その経費は、当該事業の経営に伴う収入をもって充てなければならない。」こう規定をされてまいってきておるのであります。かようなことが、いま答弁にございましたように、新規施設の水道あるいは古くからある上水道等の価格の格差がここにできてきてまいっておる、こう思うのであります。私は統計をとってみたのでありまするが、塩釜市が一番高いようでございますが、安いところと高いところとでは水道料金が倍以上も高い、こういうところ等もあるのであります。こういうこと等は、行政の任にある政府が、できるだけ水というものは全国統一した価格にすべきじゃないか。それが、いわゆるいろいろな価格の差を縮める、格差をなくする、こう政府が言っておることに沿うのではないか。そうするためには、政府がこれらに対する資金その他の道を講ずべきではないか、こういう考え方を持っておるのですが、そういうことに対する政府としての何らかのお考えがあるかどうか。これはもうやむを得ない、格差があることはその地方の事情だということでただ放任されていくのでありますか。できればそういうことのないように格差を是正していかなければならぬという指導方針をお持ちになっておるのであるか、その辺のことをお伺いいたしたいと思うのであります。
  197. 柴田護

    ○柴田政府委員 基本的には厚生省の問題かもしれません。しれませんが、私どものほうといたしましては、従来から公営企業の経営というものを中心にものを見ております。公営企業の経営というものを中心にものを見てまいりますと、おっしゃるように非常にでこぼこを生じてやむを得ぬという結論になってしまう。しかし、私どもはそういう見方を少し変えなきゃならぬのじゃないか、昔のように住民が川の水を飲んでおってもよかった時代であればそういうことでよかったかもしれませんけれども、今日のような、福祉国家ということがやかましくいわれまして、どこでも住民は清浄な水を飲むようにしなければならぬということになってまいりますと、御意見のような考え方を取り入れていかなきゃならぬのじゃないかと思っております。そうなってまいりますと、まず一番初めに考えなきゃならぬことは、減価償却費というものが非常に経営を圧迫しておる。この減価償却費が経営を圧迫しておるものをどうして解消していくか、これが、独立採算制を維持しながら料金の妙なアンバランスをなくする、つまり最近の施設でもできるだけ安い水を供給するように持っていく一番大きな根本問題だと私は思うのでございます。と申しますのは、水道は御承知のようにあまり人手は要りません。問題は償却費なり、あるいはその新設設備に伴う金利負担が経理を圧迫して、これをどうするかという問題があるわけでございます。したがって、おいおいにはそういう問題に手を染めていかなければならぬと思うのですが、しかし、何分にも金融ということになると、金融面からのいろいろの問題も出てまいります。その辺をどう調整するかという問題がおのずから出てまいると思うのでありまして、方向といたしましては山下委員の御発言のような方向、水道料金のアンバランスをなくするという方向でものを考えていかなければならぬと思うのでありますけれども、その具体的手段になってまいりますといろいろむずかしい問題があるんじゃないか。その辺のところは、逃げ口上じゃございませんけれども調査会の意見も聞き、そうして、あり方の基本をきめていきたい、こういうつもりでございます。
  198. 山下榮二

    山下分科員 ただ、いま行なっておられる政府の指導といいますか、企業体の経営といいますか、矛盾の多いことは、水道事業の耐用年数は大体五十年と規定をして報告が出ております。ところが、国の起債の償還は大体二十五年であります。企業体の国庫の償還は十八年であります。十八年、二十五年という償還年限を持って、耐用年数は五十年だという、ここにもそもそも価格に対する矛盾が出てきておる、私はこう思うのであります。この辺の調整等が根本的に行なわれない限り、ここに価格の差が出てくる、でこぼこが出てくるということは当然ではなかろうかと思うのであります。また、赤字が累積してくるというところの原因もここにあるんじゃなかろうか、こう思うのですが、こういうこと等を政府が御存じでないはずはないのでありまするが、こういうところの根本的なことからこれらを解決をしていかなければならぬ、こう考えておるのですが、こういうことにはどうお考えになっておりますか。
  199. 柴田護

    ○柴田政府委員 私は御意見のとおりだと思います。思いますが、なぜそうなっておるかといいますと、要するに、長期間かかって償還をしていくような、安定した長期の資金が得られないというところに原因があると思います。私どもも山下委員と同じような感覚でものを見てまいりましたし、現に資金の償還年限につきましても、急速ではございませんけれども、年を追って延ばしていっているわけでございます。現状におきまして、資金需給の現状をにらみ合わしながら、できるだけ、大体御発言のような方向でものを考えようとして、今日までやってまいりました。しかし結果は、もちろんまだまだ不十分でございます。しかし、私はその基本原因は、先ほどちょっと申し上げましたが、水道事業だけを考えれば、それでいいけれども、一方また資金をどうしてつくるんだという面になってまいりますと、資金面からのいろいろな制約が出てくる。その辺の両方のぶち当たりが今日のような状況になっておる、こう思っておるわけであります。しかし、これで決して満足しているわけではございませんので、さらに努力をしなければなりません。それが長い時間をかけなければ解決しない問題だというようなことが明らかになれば、では、それだけでも、そういう時間をかけてもゆっくり解決すればいいんだということと、いや、それは待てない、もっと早く水道料金の不均衡を是正しなければならぬということになってまいりますれば、また別の手段を考えなければならぬというように考えております。
  200. 山下榮二

    山下分科員 私はここでちょっと調べてみますると、三十八年度中に水道料金の値上げになったところは、名古屋、横浜、神戸、尼崎、芦屋等十一市の大都市が、すでに二割ないし、ひどいところでは三割等の値上げをもう決定しておるのであります。さらにそのほかに、値上げを申請しているところが相当あると、こう私は聞いておるのですが、先ほども申し上げましたように、値上げが実行されたところはやや赤字が解消していくかわかりませんが、申請しているところは、やはり閣議決定に基づいてストップされたのでございましょうから、これは赤字が累増するばかりであろうと思うのであります。こういうこと等について、後ほど大臣がお帰りになりましたら大臣に伺いたいと思いますので、いまここでお答えをいただこうとは思いません。  次に私は、明年度の水道事業事業債のことについてちょっと伺ってみたいと思っておるのであります。明年度は、本年度より百五十億増額されて七百五十億円と、こう私は伺っておるのですが、これの起債のワク、継続事業と新規事業等の区別がわかりましたら、お知らせいただきたいと思います。
  201. 柴田護

    ○柴田政府委員 来年度の上水道の起債でございますが、お話のように上水道のワクは、本年度の六百億に対しまして七百五十億円、百五十億円の増加、増加率は二五%でございますが、大部分は——新規と継続の区分、ちょっと資料を持ち合わしておりませんが、大部分は継続事業でございます。新規事業はこく些少しか——私の記憶では二、三十億だと思います。
  202. 山下榮二

    山下分科員 それでは、私は次に、水道料金と事業計画に対する政府の今後の見通しを伺いたいと思っておるのですが、大臣がまだお帰りになりませんから、おわかりでしたら、ひとついまお見えになっている政府委員のほうでお知らせいただきたいと思うのです。工業用水が、ことし国庫補助相当増額になってまいっておるのであります。たとえばいままで国庫補助が二〇%であったものが二五%に引き上げられ、あるいは三〇%、財政の貧弱な都市については三五%と、それぞれ国庫補助額というのが相当増額されてまいっておるのであります。しかるに冒頭に申し上げましたように、上水道に対しましては、これらに対して何らの処置がとられていない、こういうことになっておりますので、私といたしましては、ぜひ政府としては上水道に対しましても国庫補助を行なうようにお考えをいただかなければならぬのではなかろうかと思うのであります。そこで私の考え方としては、公共料金の抑制処置に伴う収支上の損失については、抑制期間中その損失を政府が補てん、補償すべきではなかろうか、こう思うのですが、それに対して一体補償するというお考えがあるかどうか。  その次に申し上げたいと思うのは、先ほども申し上げましたように、耐用年数と償還年数とのアンバランス、いろいろなことがございますが、水道事業に対して国庫補助ができぬと、こういうことをおっしゃるのであれば、せめて利子補給を行なうべきではなかろうか、こう思うのであります。たとえば計画造船につきましては、御承知のとおりそれぞれ利子補給を行なっておるのであります。計画造船以上に上水道というのは公共的なものであり、しかも人間の生命に関する問題であるから、これはぜひそういう処置をとられるべきではなかろうかと思うのですが、そういうことに対してどういうお考えをお持ちであるか伺いたいと思うのであります。  いま大臣がお見えになったようでありますから大臣に伺いたいと思うのですが、あらためて申し上げますが留守の間にそれぞれ政府当局に対しましていろいろなことを伺ったのですが、繰り返して申し上げますると、水道事業の耐用年数は大体五十年ということに報告書に書かれておるようであります。水道の起債償還に対しましては、政府の資金に対しましては二十五年の償還になっている。公共企業体の融資によりますると、これは十八年の償還になっておるようであります。ここには非常なアンバランスがあると思うのであります。したがいまして、そういうこともあって水道料金というものが個々別々である。ここに私は統計をとってみたのですが、一番安いのが横浜市でありまして、トン当たり百三十円、一番高いところは仙台の向こうの塩釜市が三百九十円、これが一番高い水道料のようでございます。全国的に見まして水道料金というものは非常に格差がひどいのであります。政府は絶えず事あるごとに格差の是正ということを言っておられます。先ほども申し上げて、委員長は笑っておられましたが、私は、人間が生きていくためには、水と空気と日光がなければ人間は生きていけないのであるから、その三つの要素はただで人間が恩沢に浴すべきものだ、こう考えておるのですけれども、何を申し上げましても、文化の発展とともに水といえどもそうは参らなくなりました。あるいはひょっとすると空気といえどももっと料金がかかるようになるでしょう。町のまん中では自動車の排気ガスその他で空気が悪くなって、日曜あるいはその他の休みには山の奥へいい空気を吸いに行く、文化生活というものはおそらくこういうことに追いやられてまいるのではなかろうか、こう考えておるのであります。さようになってまいりますると、水というものはきわめて重要なものでございますから、全国一律の統一した水道料金というものに持っていくことが、政府がかねて唱えている格差是正の唯一の道ではなかろうか、こう私は思うのですが、そういうことに対して、一体早川自治大臣はどういうお考えをお持ちであるか、伺いたいと思うのであります。
  203. 早川崇

    早川国務大臣 御指摘の点は、政府資金は二十五年、公営企業債は十八年ですが、そういうところに問題があろうかと思いますし、また金利の面でも、政府の起債のほうは六分五厘ですか、公営企業債はそれより高いという点で問題があろうと思いますが、御承知のように公営企業金融公庫は債券を発行しておりまして、多少コスト高になるのはやむを得ない点がございます。そういう関係で期限が短く、金利も高いと考えるわけでありますけれども、今後十八年をざらに延長するためにはどうすればいいか、それには今回公営企業金融公庫に対する政府出資も若干増額いたしました。そういったいろいろな方法を講じまして長期化をはかってまいりたいと考えておりますので、今後の検討をお約束いたしたいと存じます。
  204. 山下榮二

    山下分科員 それでは検討を願うということにいたしまして、次に申し上げてみたいと思うのは、これまた先ほど申し上げておったのですが、政府計画造船に対しましては利子補給をいたしているのであります。水道というものは、先ほども申し上げますように、人間生活に欠くことのできない重要な問題であるから、よろしくこれには政府は国庫補助を行なうべきではないか、こう私は思うのですが、工業用水にも補助を行なっているのであります。これは、地方行政の指導の任にあられる早川大臣としては一体いかようにお考えでしょうか。
  205. 早川崇

    早川国務大臣 目下のところ、水道料金は独立採算制としてやっていきたいと思っておりますので、補助金を与えるという考えは持っておりません。
  206. 山下榮二

    山下分科員 それじゃ伺いますけれども、公共企業体の経理原則というものが昨年の国会で法律改正が行なわれて、独立採算制が法規上確立してまいってきているのであります。ここで政府補助する意図がない、こういうふうにきっぱり言われるならば、企業体を独立採算制を法律規定しておいて補助も行なわない、さりとて値上げもさせない、こういうことになりますならば、一体公共企業体水道経営というものは、地方はどうしてやっていったらいいというふうにお考えになっておりますか。
  207. 早川崇

    早川国務大臣 たびたびお答えいたしましたように、一年間公営企業の料金ストップをいたしましたので、その間のいろいろな経営上の困難につきましては、目下関係各省と相談をいたしまして、できるだけ支障のないように目下検討中でございます。
  208. 山下榮二

    山下分科員 検討中である検討中であるということでは私は納得いたさないのであります。政府が腹をきめて一カ年間ストップを通達をされた限り、企業体にはそれぞれ赤字が出ていることは御承知のとおりであります。もしそうだといたしますならば、一カ年間という期限を切られた、その期限に対しましては、政府はその赤字の補償を行なうべきが当然ではないか、こう私は思うのであります。そのほうはノーコメントで、政府責任がない、しかし一カ年間はストップだ、これでは少し無謀なやり方であると言わなければならぬのではないかと思うのであります。そうなってまいりますと、必然一カ年後には、水道料値上げというものが二割の値上げであったものが今度は三割の値上げとなってあらわれるであろうと想像しなければならぬのであります。そういう点を政府は、もう少し住民の側に立っておもんばかりがなければならぬのではなかろうか、こう思うのですが、一体大臣いかようにお考えですか。
  209. 早川崇

    早川国務大臣 必ず一年後三割値上げしなければならぬという事態になるかどうか、それぞれ水道事業にはペイしている事業もございます。御指摘の町村のように赤字が非常に多いのもあるでしょう。いろいろその自治体によって、ケース・バイ・ケースで判断しなければならない。ただ、私の申すのは、一年間というものはとにかく赤字の経営困難なところも値上げせぬでおいてくれということでありますから、その間のつなぎについては目下どうすればいいか、なるべく自治体に負担が多くならないように処置いたしたい、こういうわけでありまして、その後の値上げ率が三割になるとか、あるいは二割になるとかいうことはまた別個の問題で、ケース・バイ・ケースで一年後に考慮いたしたいと思います。
  210. 山下榮二

    山下分科員 二割になるか三割になるかは別といたしまして、一カ年間据え置かれたということの事態に対しましては、それだけ地方財政というものは、地方企業体というものは、値上げができないのでありますから困ることは当然である。したがいまして、それに対しましては、政府のほうで何らかの処置をとってもらうということが私は当然過ぎるほど当然なことでなければならぬと思っておるのであります。大臣は国庫補助はできないと言われたのですが、先ほども申し上げかけておったのですが、造船には御承知のごとく計画造船に対して利子補給が行なわれる。工業用水にはそれぞれ国庫補助が行なわれて、ことしはそれぞれ国庫補助増額をされておる。上水道にそれらが行なわれないということは私は納得いきかねるのであります。国庫補助はできぬとおっしゃったのでありますが、せめて利子補給の方法をお考えになることはできないですか、ちょっと伺いたい。
  211. 早川崇

    早川国務大臣 一年間値上げストップによる赤字といいますか、そういうものについては利子補給ということも、その間のつなぎ資金の利子補給も含めまして目下検討中でございます。いずれきまりましたら、御回答いたしたいと思います。
  212. 山下榮二

    山下分科員 ちょっとことばが足らなかったと思うのですが、利子補給ということは、一年間ストップということではなくして、上水道経営ということそれ自体に対しまして恒久的に政府はものを考えて一いま政府融資に対しましては六分五厘の金利であります。公庫債のほうは御承知のごとく七分三厘であります。これに対しまして利子補給の道をお考えになることはできないか。これを一カ年間のストップに合わせて考える、こういうことでありますけれども、恒久的な立場に立ってお考えをいただくのでなければならぬのではなかろうかと思うのであります。たとえば造船に対しましては、三分五厘以上の金利に対しましては利子補給をするとかいう規定等があるようでありますが、私は工業用水等とあわせ考えまして、産業政策もさることながら、人間の生命に関することでございますから、これは人づくりをやかましく言われる池田内閣としては、当然考えられなければならぬ問題ではなかろうかと思うのですが、何とかこれが実現するようにひとつ大臣のほうでお考えいただきたいと思うのでありますが、努力がいただけるものでしょうか、伺っておきたいと思います。
  213. 早川崇

    早川国務大臣 造船とか工業用水とか、産業用の融資に利子補給なり補助金をやっておるというのは、これは産業政策でありますから、この産業が国際競争力で外国に負けるようでは日本国全体としての福祉発展に影響がありますから、産業政策上やっておる。水道料金につきましては、そういう産業の面とちょっと違う面がございますので、御承知のように独立採算でやっておるわけでございます。  なお利子補給という問題と含めまして、何といっても水道の一番大きいのは、長期融資の利子でございます。したがってこの期限の延長と利子の軽減につきましてはどうしても考えなければならない。そういう面で、さしあたっての問題とともに長期的な問題といたしまして、この問題と真剣に取り組んでいきたいと思うのでございまして、ただいまこの席で、どういう方法でやるかという点につきましては、まだ関係各省との折衝が終わっておりませんので、どうか御了承願いたいと思います。
  214. 山下榮二

    山下分科員 もう時間も参ったようでありますから、最後にもう一つだけ伺っておきたいと思うのであります。  午前中島上議員が選挙法についていろいろお伺いをされておったのでありまするが、聞き落としたかどうかわからぬと思いますので、ダブりましたらひとつお許しをいただきたいと思うのですが、早川自治大臣は、日にちは忘れましたが、新聞で拝見いたしたのでありますが、沖縄に対しまして日本衆議院議員の割り当てをいたしたい、こういう発言をされた記事を拝見いたしたのでありまして、まことに沖縄の人たちにとりましては感激のことばであったろうと想像をいたすのであります。これに対しまして、早川自治大臣のお考えのほどを伺わせていただきたいと思います。
  215. 早川崇

    早川国務大臣 選挙制度審議会答申によりますと、国内の衆議院定数の是正と一緒に、沖縄の潜在議席を設けるという御答申でございます。この趣旨をくんで、法律に書くか書かぬかは別問題でございますが、何らかの意味でわれわれの気持ちというものを生かす方途について、目下検討中でございます。
  216. 山下榮二

    山下分科員 先ほどから目下研究中が多いので、私としては戸惑うのですが、もし新聞の報ずるところによるように、今期国会で衆議院議員の定数改正が上程をされ、その審議が行なわれるということになってまいりますれば、当然いま申されました沖縄の議員定数ということもその中に加味することができるのですかどうですか、その点を伺いたいと思います。
  217. 早川崇

    早川国務大臣 これは法律に書く書かぬの問題ではなくて、われわれ日本人の伝統として、夫が戦地に行ったときには妻は陰ぜんというものを設けて、夫との精神的な気持ちのつながりを表明しておるというよき伝統がございます。そういう意味におきまして、施政権が返還され、沖縄の人たち日本にほんとうの国会議員を送り込むという日の一日も早いことを待望する点におきましては、私は山下委員と軌を一にするわけであります。ただ、御承知のように施政権はいまアメリカにあるわけであります。そういう関係で外交折衝の問題もあるわけでございます。法律に書くということがいいのか、あるいは実質上そういう定数是正が皆さんの御協力によって成立いたしましたら議場を拡張しなければなりませんが、そういうときに、法律で四議席というのは、向こうの人口調査もできておりませんから、これもほんとうを言うとはっきりした定数も言えないわけでありますから、事実上そういう空席のままで議席を増設しておいて、われわれが同胞に対する、ちょうど夫に対する妻の陰ぜんのような、りっぱな日本の伝統という意味の気持ちを表明するということも一つの方法であろうかと思います。したがってそういう気持ちは日本人すべてが持っておると思う。いずれ定数是正の法律を出しました場合に、そういう問題につきまして、私の政府としての考えも表明いたしたいと思います。
  218. 山下榮二

    山下分科員 早川自治大臣のお考えのほどを深く私は感謝いたしたいと存じます。できることならば、外交上の問題もございましょうが、ぜひ定数是正のおりに何らかのかっこうで沖縄に国会議員の議席の割り当てが行なわれることのできるように御配慮がいただきたい、かように考えてやまない次第でございます。  いろいろまだ申し上げたいこともございますけれども、お約束の時間がちょうど参ったようでございますから、以上をもちまして私の質問を終わります。
  219. 井村重雄

    井村主査代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十八日午前十時から開会し、自治省所管について質疑を続行いたします。  散会いたします。    午後五時一分散会