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1964-02-20 第46回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十日(木曜日)     午前十時二十分開議  出席分科員    主査 松浦周太郎君       荒舩清十郎君    安藤  覺君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       櫻内 義雄君    周東 英雄君       淡谷 悠藏君    板川 正吾君       加藤 清二君    川俣 清音君       小林  進君    田中織之進君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       竹本 孫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         経済企画政務次         官       倉成  正君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     金井多喜男君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (企業局参事         官)      馬郡  巖君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (鉱山局長)  加藤 悌次君         特許庁長官   佐橋  滋君         中小企業庁長官 中野 正一君  分科員外出席者         外務事務官         (経済局東西通         商課長)    堀  新助君         通商産業事務官         (企業局次長) 乙竹 虔三君     ————————————— 二月二十日  分科員加藤清二君及び小平忠委員辞任につき、  その補欠として板川正吾君及び竹本孫一君が委  員長指名分科員選任された。 同日  分科員板川正吾君及び竹本孫一委員辞任につ  き、その補欠として小林進君及び小平忠君が委  員長指名分科員選任された。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て田中織之進君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田中織之進君委員辞任につき、その補欠  として田中武夫君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員田中武夫委員辞任につき、その補欠と  して加藤清二君が委員長指名分科員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算通商産業省所管  昭和三十九年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷主査代理 これより会議を開きます。  主査が所用のため少しおくれますので、指名によって私が主査の職務を代行いたします。  昭和三十九年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑通告順によってこれを許します。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川分科員 きょうは、私は、中小企業の政策の中で非常に重要な関係を持っております下請関係について質疑をいたしたいと思います。  まず第一に、最近下請取引改善について通産大臣公正取引委員会あるいは大蔵大臣あるいは経済企画庁長官、こういうまあ経済閣僚下請関係近代化ということについて発言をされておりますが、通産公取大蔵経済企画庁から、一応ひとつ下請改善考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  4. 福田一

    福田(一)国務大臣 下請代金が非常に遅延するということが中小企業に大きな影響を与えることは、われわれとしても非常に前視をいたしておりまして、この問題を解決することが、当面の中小企業問題を解決する一つの大きな措置であるという考え方から、かねてから——かねてと申しますのは、昨年の予算編成前後からこの問題についていろいろと研究を重ねておるところでありまして、それぞれの所管においてあらゆる角度からこの問題を検討することは望ましいことだと思うのでありますが、通産省といたしましても、中小企業担当省である関係もございまして、実はこの問題を慎重にただいま研究をいたしておるところでございまして、近くその結論を出したいと考えておるところでございます。
  5. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 公正取引委員会といたしましても、御承知のように、独占禁止法のいわば姉妹法である下請代金支払遅延等防止法の施行、それを担当している役所といたしまして、過去の実績、それから出てくる効果、いろいろなものをにらみ合わせながら対策としてどういう手を打っていくべきか、あるいは法改正までいくべきか、行政措置的なところでもっと強化する面はないか、こういった面を具体的にいま検討しております。同時に、やることに決定したことといたしましては、親会社のほうの資金繰り関係と言いますか、これが物を売ったときに一体どういう状況でもって金が回収になってくるか、それとうらはらとして、どういう状況で金を払っていくか、そういった面を一ペンアンケート的に調査してみよう、こういった意味調査、これは近く実行するつもりであります。
  6. 倉成正

    倉成政府委員 経済成長に伴いまして、低生産部門であります中小企業、農業、こういった面が、他の部門に比しまして生産性が必ずしも伴っていかない、格差が相当認められている点にかんがみまして、中小企業生産性の向上という点から考えまして、その一環として、下請企業代金遅延ということが大きな影響を及ぼしてくると考えられますので、この問題については強い関心を持っておったわけであります。現在下請代金支払い手形サイトその他についていろいろ問題があることにかんがみまして、この円滑なる実効があがるように関係当局に御要望しておる次第でございます。
  7. 板川正吾

    板川分科員 大蔵関係者を呼んだのですが来てないので、時間の関係もありますから、話を進めたいと思います。  下請取引改善ということに対して非常な関心を持っておることはいいです。しかし、いままで新聞等に報道されているものを総合しますと、下請関係で一番責任を持つべき通産省中小企業庁、あるいは公正取引委員会というところが、下請関係に実は非常に熱意を持たないようだ。かえって経済関係政府機関でも、経済企画庁とかあるいは大蔵大臣が、下請取引に対する改善に対して非常な具体的な考え方を打ち出している。これはどうもおかしいと思うのですが、たとえば例をあげてみますと、大蔵大臣は、二月三日ここで下請代金支払い現金化ということを明確にすべきだ、それから支払い期日はおそくとも九十日、まあ場合によっては百二十日程度までで決済ができるようにすべきだ、違反の事案については下請業者からの申告にまかせないで、官庁や公取が積極的に摘発するようにすべきだ、罰則、これは下請代金支払遅延等防止法ですか、この罰則を強化すべきだ、公取監督権を強化すべきだ、親会社下請取引関係記録を義務づけするようにすべきだ、こういうような問題点を六つあげて、そうしてこれが改善をすべきだということを具体的に言っておるのですね。それから経済企画庁長官は、三カ月以上の長期手形を発行した場合には毎月公正取引委員会に報告をさせろというようなことで改善の足がかりにしなさいというような意味のことを言っている。次に公取ですが、公取は一月十九日には、現行法運用でやりたいという意味のことを新聞では報道されておる。その後十二日、十三日ですか、ただいま公取委員長も言われたように、親会社の経理までさかのぼって調査をして、そうしてその結果必要があれば改正をしたい、こう考えている。しかし、基本的には現行法運用でやりたいという思想になっている。通産省は、改正は不要だという考え方で、運用強化で問題の解決をはかりたい、しかし二十日ころまでに何とかはっきりした考え方を持つという意味のことが、新聞に報道されています。きょうの新聞によりますと、通産省の意向としては、やはりこの法の運用を強化して、下請代金及び下請取引に関する近代化適正化をやっていこうというやに見える。こういうように、各省の考え方を出しますと、一瞬責任を持つ通産省公取がどうもあいまい、特に公取委員長は歩積み、両建て問題や各方面で非常な活躍をしておるのですが、この下請関係に関しては非常に公取は消極的です。これは一体どこに原因があるかというと、この問題は、大蔵大臣最初記者会見で具体的な案を出した、大蔵大臣が、銀行、金融行政監督者立場から下請代金支払い方法に関して具体的な発言をしたから、どうも自分の領分を先に向こう発言されたからということじゃないか、そういうのじゃないかと思う。本来ならば、通産省中小企業庁長官公正取引委員会などの下請代金支払遅延等防止法監督を実際にする機関がもっと熱心に考えなくちゃならぬことを、どうもいまの答弁を見ても、新聞の報道を見ても、あまり積極的に考えておらない、こういうふうに考えるのですが、これは大蔵大臣が先に言ったからという気持ちで消極的なんですか。
  8. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私のほうに特にお話がありましたから、通産大臣の御答弁は別としまして、私のほうの意見だけを申し上げます。別に大蔵大臣が先に言ったから、それで私のほうが消極的であるとかなんとかいう考え方は全然持っておりません。それから、いま板川委員は、親企業資金繰りを見た上で法改正の必要がありやいなやを検討するのだというふうにわれわれのほうで考えておるとおっしゃいましたが、その問題と、それから下請法改正する必要がありいやなやという問題とは私は別だと思っております。向こう調査ができるということと、下請法改正の必要がありやなしや、改正するとすればどう改正するかという結論を出すということとは、これは別だと思います。それから大蔵大臣がどういう御発言をなさったか、これは私も聞いておりますが、私のほうも、大蔵省のどこの部でもってそういうことを担当しているのか、まだよくわかりません。したがって、一ぺん大蔵省によく意見を聞いてみたい。ただ、私のほうで非常に慎重にやって考えているとすれば、現実にこの問題にまともに取っ組んでおりまして、そうして問題が非常にむずかしい。したがって、どこのポイントをついたら一番有効であるかという点を、むしろ現実に取っ組んで仕事をしているだけに慎重に考えているというふうに私は御理解願いたいと思います。
  9. 福田一

    福田(一)国務大臣 私も、実はただいま最後公取委員長がおっしゃったことばでありますが、現実に担当している立場から見ますと、その与える影響等を十分考慮しながら慎重にやる必要がある。しかし、きめたらばこれは実行しなければならぬ。私のほうは実行機関でございます。大蔵大臣が先に言われ、企画庁長官が言われる、これは、私は、非常にけっこうなことだと思うのであります。それぞれのお考えをお述べになることはけっこうでありますが、政府としての方針を最後にきめるのは、やはりしかるべき場所においてきめる、そして、これを実行に移していく。こういうことであるべきかと存じておるのであります。そこで、なぜわれわれがほんとうに慎重になるかということになれば、やはり経済の中において占める中小企業の位置というものは非常に重要でございます。しかも、中小企業と大企業が結びついて日本産業というものを形づくっておるのでありますから、そこで私は、この金融問題一つを取り上げてみても、大蔵大臣がよく発言されるのも、企画庁長官発言されるのも、経済全体を運営するという立場企画庁が見られた場合には、どうしても中小企業の問題は目につくと思います。また金融問題を頭の中に入れながら大蔵大臣がいろいろの問題を処理されておりますと、どうしても中小企業の問題が目につく。そういう意味でいろいろと御発言があり、むしろそちらからいろいろ教えてもらうと言いますか、そういう意見を述べてもらうことは、われわれの歓迎すべきことであると思います。  ただし、今度は実際にこれをやるという場合になりますと、われわれとしては、これが及ぼす影響等々を十分考えながらやりませんと誤りをおかすおそれがある。こういう意味で慎重になっておるわけでございまして、取り組み方の意欲という面ではどこにも負けておらないつもりでございます。
  10. 板川正吾

    板川分科員 公取通産省、特に中小企業庁では、現実下請関係監督しておるところだから慎重にやらなくちゃならない、しかし私は、法の不備やあるいはどういうところを改善しなくちゃならぬかということは、実際に扱っておるところだからわかるのではないかと思います。これは非常に慎重にしなくちゃならないというのだけれども、いまの下請代金支払い状況から見れば、こんな不公正な取引がいまの社会に、しかもそれが当然の商慣習として行なわれておるということは、ちょっと頭を社会的な正義と言いましょうか、そういうことにポイントを置くならば、こんなばかげた商取引なり支払い条件というようなことは許さるべきではないと思うのです。たとえば大企業親会社から中小企業下請に注文が出る。下請会社ではその代金が二百十日とかいうものもある、たいへん長いのもある。ところが、下請会社ではその労働者賃金は毎月現金払いでやっておる。電力代水道代も、そのほかそういった付帯的な材料等、あるいは費用は現金払いで、税金も払っておるのです。しかし、その親会社支払いが、十カ月目でなければ金にならないというような支払いのしかたをしておる、片や現金で払っておる。労働者が働いて、その賃金を半年後に、二百十日後に払うということを社会は許しておかないと思うのです。だから、むずかしい、むずかしいと言うけれども政府中小企業立場に立って、あるいは社会正義と言いましょうか、大資本だけに片寄らない、そうして公正なる見方をするならば、こんな取引関係改善することは当然であるし、改善しようと思えば、現在の下請代金支払遅延等防止法なるものはざる法であって、これは根本的に改正しなくちゃならぬということになるのがあたりまえであって、それは、通産省公取が一番最初そういうことを真剣に主張すべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  11. 福田一

    福田(一)国務大臣 法律の内容、それから実際それがどういうふうに動いておるかということをいま十分調べておるところでありまして、したがって、板川さんの先ほどおっしゃったように、一両日中にでも結論を出したい、こう言っておるわけであります。板川さんのおっしゃる、こういうものを置いて下請企業を大いに助けてやるべきであるという実行方法をいまやっておるわけであります。ただし、それが非常におくれておるという意味でおしかりを受けておることは、まことに恐縮でございますが、御趣旨を体してできるだけすみやかにこれを実行に移すように努力をいたしたいと思っております。
  12. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 公取といたしましても、過去における実績をずっと見てまいりまして、一体どこのポイントをどうしていくのが一番実効があがるかという点を中心として検討しているわけでございます。近く結論を出すつもりでおります。
  13. 板川正吾

    板川分科員 通産大臣がいないから中小企業庁長官に伺いますが、この下請代金支払い税金をもって六十日以内、そして六十日以後の支払いをする場合には手形割引料なりあるいは利子なりは、これは親会社負担、そしてどんな状態があっても三カ月以上にわたって支払いを遅延することがあってはならないという考え方、ですから利子を支払うとしても一カ月分ぐらいの利子しか支払うべきじゃない、こういう原則が現在の下請代金支払遅延等防止法によって完全に守られますか。きょうの新聞等によると、この下請代金支払遅延等防止法運用によって六十日現金利子支払いというような、この下請代金がうたってあるような方向が実際に運用できますか。
  14. 中野正一

    中野政府委員 けさの新聞に出ておることはどういうことか私はよく知りませんが、いま板川委員から御質問のあましたことは、遅延防止法の第二条の二の解釈の問題ではないかと思います。この点につきましては、いま先生のお持ちになっていただいております「下請法の話」という公正取引委員会のほうで出したものでありますが、ここにも書いてあるわけでありまして、この解釈相当私ははっきりしているんじゃないか。ただ世間で、これがはっきりしないじゃないかという議論もありますので、その点はもう少しはっきり公権的解釈と言いますか、そういうものをはっきりしたほうが今後の運用に便利じゃないかということは言えるんじゃないかというふうに感じております。ここに書いてありますように、下請代金支払い期日は、親事業者下請事業者給付下請仕事をしたその品物を受け取った日から六十日の期間内のできるだけ短い期間で定めて、しかも六十日以内の期間をきめれば、その間に支払いなさいということが第四条の第二号ですね。下請代金をその支払い期日の経過後なお支払わないというような行為をしてはいけないよ、親企業はそれをかりに過ぎて払わなかった場合は、第四条の二で公取委員会規則に定める率、これはたしか日歩四銭でございましたが、きまっているようですが、これを遅延利息として払わなければならぬ。ただ、ざる法じゃないかと言われるゆえんがあるとすれば、四条の二の遅延利息を払わなければならぬということはきめてありますが、これは罰則もなければ、これに反した場合の公取勧告もありません。実際は子供のほうが親企業に説教をする、どうしても支払わない場合は裁判所に訴える以外にないということで、弱い立場下請事業者が親に向かって実際問題としてそういうことは言えないということで、いままでもこの四条の二が動いたということは私は聞いておりません、その意味はあると思うのですが……。しかし、第二条の二の六十日以内に支払うという意味はどういう意味かということは、これは現金あるいは税金に準ずるもの、したがって手形で渡す場合は六十日以内に渡して、しかもその間に社会的、常識的に見て現金化され得る、したがって公取委員長のおっしゃっているように、通常の金融機関で割り引けるような性質の手形でなければいかぬということになりますので、そうなると、現在の社会経済上の通念としては、普通の金融機関に持っていってすぐ割り引いてもらえるような手形ということになると、大体九日以内、ただ、これは商工中金あたりでは、御承知のように下請協同組合をつくっておりまして、それに対して百五十日ぐらいの手形を親が出した場合は、親がそれを保証するということをやって、商工中金が割り引くということで、商中では、百五十日まで金さえあれば割り引いておるというような状況ですが、その点は、そう問題はないんじゃないか、もうちょっと解釈をはっきりすべきではないかということはあると思います。   〔仮谷主査代理退席主査着席
  15. 板川正吾

    板川分科員 この第三条の二では支払い期日はうたっていますが、現金でという解釈が明確じゃないのです。だから、それは利子を払えということもあるから、したがって現金だという解釈も立つが、しかし明確でない上に、実際に下請取引の七〇%ほどは手形で払われておる。企業によって、産業によっては九〇%の手形支払いをしておって、そのうち百二十口以上というのが半分以上あるのですから、実際に二条の二の場合には現金で払うといういまの趣旨をもっと明確にしたほうが間違いないのじゃないか、こう思うのです。  それから三条の書面の交付といっても、この書面記載事項に「支払期日を記載した書面下請事業者に交付しなければならない。」というけれども、しかし支払い条件については触れていません。現金で払う、あるいは手形で払う、こういう条件については明確でないのですね。だから、こういう点をもっと明確にしてやるべきじゃないか、こう思う。  それから親会社順守事項といっても、この順守事項を破った場合に一体どういうことになるのですか。この勧告を聞かなかった場合には、特にいま言った遅延利息を払うという場合には裁判所に持っていかなくちゃ遅延利息を取れない。そんな関係が、いま下請親会社関係で、裁判所に行って遅延利子を取るというような関係ならば、下請代金支払遅延等防止法は必要ないくらいなので、これは下請親会社関係じゃないのですね。それで下請業者を守ってやろうというならば、もっと明確に、遅延利子の取り立てに関する規定というのも整備すべきじゃないでしょうか。この点どうお考えですか。
  16. 中野正一

    中野政府委員 第二条の二の解釈の問題につきましては、ここにわざわざ現金と書かなくても、支払い期日につきましては、先ほど来申し上げているように、現金かあるいは税金に準ずるものということで、六十日以内に現金化されるという意味ですから、たとえば下請の受けた日にすぐ手形を出したということになると、六十日持っておって、九十日のものは市中の金融機関に割り引いてもらえるものですから、親会社給付を受けたあくる日にすぐ手形を渡すとすれば、百五十日のものでも、これは現金化されるわけですから、そういう解釈は、私はそう疑いの余地はないのじゃないか、なお、これは公取なり法制局と相談をしまして、きょうじゅうにでもこの解釈は明確にしたいと思っております。したがって、もちろん法改正の要があるかどうかということは、大臣がおっしゃったように研究しおてりますが、結論を出しておるわけじゃありませんが、現在の法制でもはっきり読めるのじゃないかというふうに考えております。  それから、この法律効果があまりないじゃないかというような議論があるようでありますが、私の見るところでは、いままでのところでは相当効果が上っている。ということは、親企業をずっと調べてみましても、この法律の適用になる下請業者に対しては、相当この規定に違反しないように非常に気をつけております。それで、かりにこれに違反したような事例が起こった場合に、公取で過去において相当何度も勧告しておりまして、この勧告に対しては相当これを順守してやっておる業績もございます。ただ問題は、最近は、御承知のような企業間信用が昨年一年間で非常に膨張いたしまして、親企業そのものが非常に売り掛け金が長くなっておるわけですね。そのしわが、今度は下請のほうにだんだんしわ寄せされていく、そこにさらに金融引き締めというようなかけ声がかかって、手形サイトが延びて、私どもも非常に心配しております。この事態に対してどうするか、その法律運用をどうするか、あるいは改正をしたらいいのではないかという、こういう問題だと私は考えておるわけであります。
  17. 板川正吾

    板川分科員 公取に伺いますが、遅延利息を払った、あるいは親会社が払い、下請会社遅延利息を取ったという例は、どの程度の割合までありますか。
  18. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現在までのところ、私どものところの調査に入ってきたものとしては、そういう事例はありません。
  19. 板川正吾

    板川分科員 公正取引委員会は、この公取独占禁止法姉妹法である本法の実施については最も熱心にやらなければならないはずでありますが、遅延利息を払うように法律改正になりましたね。そして公取が指定する日歩四銭、あとで規則として定められました日歩四銭の利息を払えということになった。その前は、下請代金支払遅延等防止法第五条の規定による書類の作成及び保存に関する規則というのが、昭和三十一年六月二日に制定されておるのです。本来ならこの規則の中に、下請代金支払いの年月日、支払いの額、支払いの手段あるいは遅延利息を払った場合の記録を、当然記載しておくように改正すべきじゃないですか。これはまあ親会社はこういう書類をつくっておけということになっておる。その中に遅延利息を払った場合はそのことも明確に書いておくように、この日歩四銭を規則として制定するときに、規則のほうに手を入れたほうがよかったのではないですか。この中にはそういう遅延利息を払った場合に記録をとっておくようにきまっていないのですか。
  20. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 遅延利息の問題につきましては、現在勧告の対象として法律にあがっていないということもありまして、やはりなかなか実行はできていないのではないかというふうに思っております。遅延利息を払ったら、払った事実をその下請のあれに明記しておけということの改正、これは考えていいわけですけれども、しかし、それ以前の問題がむしろあるのではないだろうかというふうなことも考えられます。いろいろ聞いてみまして、どうもあまり遅延利息を払った事実がないようですから、ないというなら、もちろんそれは書かせるようにしておいてもいいのですけれども、結局なければ書けないですから、それ以前の問題が少しあるように思いますので、われわれのほうとしては、法改正の必要があるかないかという問題も込めて、いま検討しているというわけでございます。
  21. 板川正吾

    板川分科員 公取のほうとしては、前の委員長のときですか、法律が変わってもざる法なんだということで、実際は遅延利息を払えば、あるいは割引料を払えば、たとえおくれたとしても中小企業の負担というものは相当改善される。しかし実際はあまり熱心でなかったと思うのです。だから、そういう点で法の整備、規則の整備というのもおくれておったと思うので、私はこういう実態の上から考えて、法律改正すべきかいなかも含めて考慮中だというのは、どうも渡邊公正取引委員長としてはまことになまぬるい態度ではないかと思う。これは明らかに法の不備はありますよ。だから検討します、こういうことの公約を私はここで発言してもいいと思う。しかし、まあいいでしょう。  これは通産大臣公取委員長と両方に伺いますが、いまの親会社、子会社、下請会社関係で、法律で宣言的な規定を置いたというだけではなかなか法律は守らない。しかし、こういうものに一々刑事罰とかというやつで、罰則罰則で追っかけていっても、なかなかこれもそういうものではないだろうと思うのです。そこで、この下請関係の抜本的な改正考え方というのは、たとえば支払い代金を遅延したりした場合には、その親会社社会的な、あるいは制度的な不利をこうむるということになれば、親会社もそれは一生懸命払います。しかしいまは、銀行へ行ったって、あなたのところは下請代金を十分に払っているから金は貸しません、こういう基準さえ実際に銀行にはあるのですよ。下請代金がうんとたまっていれば、ああ、あなたのところは相当詰まっているから金を貸しましょう、こういう考え方なんです。だから結局は、下請代金を延ばすようなことであれば、その会社の社会的な信用が失墜するような制度というものをつくっておけば、中小企業庁公取が毎日毎日立ち入り検査しなくても、自動的にそういう悪い慣習というものはなくなってくると思うのです。そのためには下請代金支払い状況を考課状に記載をする。特に遅延の状況を考課状に報告事項とする。そうすればその会社は、考課状は一般に発表されますから、下請代金がだんだん長くなれば、これは会社の経理が悪くなるというので社会的な評価をされて、親会社が不利になる。もう一つは、下請会社支払いをどんどん延ばしていって、それで親会社が配当をしておる。こんなばかな話もないと思うのです。労働者賃金を払わないでいて、親会社の重役がゴルフに行ったり、自分かってな遊びをしている。これは社会の批判になりますよ。ですから、下請代金支払い状況によっては、公取が配当制限をする、勧告をする。勧告事項の中にそういったことまで加えれば、私は相当のきき目があろうと思うのです。こういう考え方について大臣公取委員長のお考えを伺いたい。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、仕事をしていく上では信用が一番大事だと思います。実際に事業をやってみましても、あそこのうちは手形は一切使わない、現金だということになると、非常に信用がついてくる。ところが、それが手形が多いとか、また手形期日が非常に長いということになると、確かにそれだけで仕事がやりにくくなってくる、ほんとうのことを言うと。だから、いまあなたのおっしゃったように、そういう面が何らかの形においてあらわれることを考慮する、それによって防止をする、それは私は一つ考え方であると思います。ただ、いまの問題は、下請代金支払いもございますが、すべてを含めて信用がいま非常に膨張しておるという段階であります。そこで、この段階においてどのようにしてこれ以上信用の膨張がないようにしながら、しかも下請代金を順次正常な姿に戻すか、こういうふうな考え方現実の姿に合っているのじゃないか、こう私は考えております。究極の考え方としては、私はあなたの御意見の筋には賛成します。手段はいろいろあるでしょう。これはいろいろ研究してみなければなりません。しかし、あなたのおっしゃる意味はよくわかるので、そういうことも含めて、実はいま私のほうで具体的にどうしようかということを研究をしておる、こう申し上げておるのであります。
  23. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 下請代金につきまして、いろいろ改善するにはどうしたらいいかという点については、私も、法改正の問題をも込め検討しております。いま御例示になりました幾つかの千段というのは、一つのやり方であるというふうには思いますが、はたしてそれが所期する目的とどういうふうに結びつくか、あるいは公取仕事とどう結びつくかという点については、いろいろ問題がございますし、お話しのような点も込めまして、私のほうとしては検討していきたい、こう考えます。
  24. 板川正吾

    板川分科員 公取委員長に伺いますが、下請代金支払遅延等防止法の六条に、中小企業庁長官は、親会社が、これこれのやってはいけないということをしたりしているかどうかということを調査し、「その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律規定に従い適当な措置を取るべきことを求めることができる。」とありますが、中小企業庁長官から、この適当な措置を求められたことはどのくらいありますか。
  25. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 この法律規定によりまして、中小企業庁長官から正式に措置を求められたという事例はございません。ただ、そこまで形式張らないで、それで中小企業庁のほうから私のほうへ連絡がありまして、措置をとってよろしい……。
  26. 板川正吾

    板川分科員 それはどのくらいですか。
  27. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 年間十数件という程度だそうです。
  28. 板川正吾

    板川分科員 大臣に伺いますが、この下請関係改善というのは、主として中小企業庁長官が実態調査をして、悪かった場合には改善方を公取にまかせる。公取は、この下請取引に関する報告をとって、場合によっちゃ立ち入り検査ができる。この報告をとり、立ち入り検査ができるというのは、中小企業片長官もできる、主務大臣もできる、こういう形になっております。ですから公取には報告をさせ、場合によっちゃ立ち入り検査。しかし、中小企業庁長官は、常時調査をして、これを監視して、下請関係適正化するという任務を持っておる。しかし実際は、この下請関係が、親会社が九千軒、小会社が何万軒もありますね。そこで、一年のうちにこの法律によらざることで措置を求めたことが十数件だ、法律によったのは一件もないというのです。それでいいですよ、そういう法の発動がなくても現実下請代金というのがスムーズに支払われておればいい。しかし今日、どこでも下請代金がスムーズに支払われているという形はない。政府自身もそれを認めて、何らかの対策を打たなくちゃいかぬということが経済閣僚会議でも議題となっておる。そういう状態となっておりながら、一審担当である中小企業庁のほうでは、あまりそういった実態の問題を掘り起こしてないのです。どうもこれは運用が不十分じゃないでしょうかな、通産大臣としてどうお考えですか。
  29. 福田一

    福田(一)国務大臣 まあ、従来のあれで運用が不十分ではないかということでございますれば、これは、確かにいささか運用面において不十分であった面があると思います。そこで、そういうことのないように、今度は厳重に運用をいたそう。さて、運用するについては、どういうふうにやるかということをいまやっておるわけなんであります。それで、あなたのおっしゃるように、常時中小企業庁としてこれを見ていく必要があります。私は、これは横の関係において、中小企業庁があらゆる業種について全部調べていなくちゃいかぬ。同時に縦の関係から、重工業とか軽工業とか、これも全部やはり見ていかなくちゃいかぬ。これは、通産省としては、姿からいえば、確かに担当は中小企業庁ということにはなっておりますけれども、しかし私は、実際面では各局が、やはり自分の関係産業やそういう関係がどうなっておるかということをよく調べさせる必要がある。実はそういう意味で、もうすでに相当前から実態の把握をいまさしておるところなんです。そうして、もうまさにあなたのおっしゃるような方向へいま具的体に案をつくろうという段階にきておるわけであります。非常にいい御質問をいただいておるわけでありますが、われわれもその意味では同意見でございます。
  30. 板川正吾

    板川分科員 中小企業庁の実態の調査というのが、あるいは監視というのが、実は大臣も認めたように、不十分です。しかし、中小企業庁がいまの人員で、いまの機構で、日本全国にばらまかれておる親会社、子会社の関係の実態調査を全部するというのはなかなかむずかしい。そこで、少なくとも各県の段階に下請関係適正化公取やあるいは中小企業庁に協力をする機関をつくって、そこで、ひとつその地方的な問題を掘り起こしていく、監視を強化する、こういうことも必要じゃないかと思うのですが、この点についてお考ええは、どうです。
  31. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまは、おっしゃるように中小企業庁のいまの人員だけではもちろんむずかしゅうございますから、各地には、あなたも御承知のように、通産局がございます、通産局をして実はそういう実態を十分把握させる努力をいまいたしております。これで人員その他全部十分であるかどうかは別といたしましても、そういう意味運用してまいりたい。それから、通産局がたいてい四県とか五県を所管するのでありますが、その各県内の仕事産業の実態、それから、その下請関係はどうなっているかというようなことをやはり十分注意をして、中小企業庁にすぐ連絡をさせる。そうして、それを総合しながら、中央としては、この中小企業問題の解決を急速に進めていく、こういう仕組みにいたしてまいりたい。いままでもそれをやっておりましたが、これをもっと積極的に実現をいたすようにいたしたいこう考えております。
  32. 板川正吾

    板川分科員 各県の段階は。
  33. 福田一

    福田(一)国務大臣 各県は各県にございますが、私は、これは通産局が連絡をとればとれるようになっております。大体各県の経済部長と通産局長というのはいつも緊密な連絡をとっておりますので、それは県の協力も得たほうがいいと思います。私は、そういう仕組みもけっこうだと思いますが、そこに委員会とかなんとか、そういう形をとるがいいか、あるいはいままでとは違って、もっと密接に会合をするとか、あるいは定時に一応報告を受けるとか、何らかのいま言ったような緊密な連絡をとるということは、非常にけっこうなことだと思っております。
  34. 板川正吾

    板川分科員 それではひとつ最後に要望をいたしておきますが、下請関係改善というのは、これはまあ常識的に考えても、いまの状態をいつまでもこのままでいいというわけにはいかないと思うのです。そうしますと、下請代金支払遅延等防止法という法律がありますが、この法律ははなはだ不十分のものがあると思う。実は、私ども法改正を準備しておるのですが、法制局のほうが詰まっておってなかなか成文ができないで困っているのだけれども下請関係支払い改善について、これは私はこの法律改正する必要がある。こう考える。そこで公取通産省では、どうもいまのところ改正する意思がなくて、運用でやっていくようなふうにわれわれには聞こえておるものですから、それではこれは改正になりません。たとえば歩積み、何建ての問題でいかに大蔵省の銀行局が通達を出しても、十年もこのかた歩積み、両建てが実際は改善されないで、いまやや改善されつつあるというのは、公取が特殊指定をして防止しようというその決意があるから、向こうもやむを得ず歩積み、両建てをできるだけなくします、こういう自粛申し合わせをしておる。だからこれも私は、何も罰則ばかりを強化して親会社を縛っていけという意味じゃないのです。しかし第一には、制度的に、親会社がこんな不公正な取引をして、下請の犠牲において自分が繁栄するような考え方、制度というものをなくすようなものを一つやり、しかもそれできかない場合には罰則をもって罰する、こういう形にやっていくべきじゃないか、こう思うのです。そういう意味で、この下請代金支払遅延等防止法は私はざる法だと思うので、ひとつ早急に政府側も検討して、改正方を考慮してもらいたい、こう思います。大臣公取の見解を伺います。
  35. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、板川委員の御意見一つのりっぱな御意見であると拝聴いたしております。ただ、こういう問題はいかにして効果的にやるかということであります。どんないい薬でも、たくさん飲めば下痢を起こすことがあります。すべて政治をやります場合においては、その薬をどういうふうに使っていくかということも大事な——薬はきくということだけではいけない、その薬をうまくきかせるということが一番大事だと私は思っておるのであります。こういう意味におきまして、私たちは、この法律自体をよく運用していくことも一つ考え方であるというたてまえをとっておるわけであります。
  36. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 下請関係改善につきましては、私どものほうも大きな関心を持っております。御趣旨の点も十分に考えまして早急に結論を出したいと思います。
  37. 松浦周太郎

    ○松浦主査 板川君の質疑は終わりました。次に小林進君。
  38. 小林進

    小林分科員 限られた時間でございますので、かいつまんで御質問を申し上げますので、政府側も要領よく御答弁をお願いいたしたいと思います。  私は共産圏貿易について若干御質問申し上げたいと思うのであります。さしあたり対中華人民共和国との貿易についてまずお尋ねをいたしたいのでありますが、LT協定が結ばれて以来今日に至る中華人民共和国との貿易の状況はどんなぐあいになっておりますか、御報告を願いたいと思います。
  39. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 お答えいたします。従来は、中共との貿易は、御承知のように、いわゆる友好商社を通ずる取引だけでございましたが、LT協定ができましてから、そのルートを通ずる貿易がかなり盛んになってまいっておりまして、金額で申し上げましても、一九六一年は通関で輸出入合計で四千七百万ドルでございましたものが、六十二年には八千四百万ドルにふえております。一九六三年は一億三千七百万ドルというふうに画期的に増加を見ておるのが実情でございます。
  40. 小林進

    小林分科員 この一九六三年の一億三千七百万ドル、これは友好商社の分も、LT協定に基づくものも、全部含めての総合計でございますな。
  41. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 さようでございます。
  42. 小林進

    小林分科員 六四年度の予定数はどのくらいになっておりますでしょうか。
  43. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 特に国別に来年度の貿易がどのくらいになるかという正確な数字ははじいておりませんけれども、いままでの趨勢から判断いたしますと、おそらく一億五千万ドルをこえる金額になるのではないかという推定をいたしております。小林分科員 中華人民共和国と六四年度の貿易の行き来は、大体総合計一億五千万ドルと推定いたしまして、次にソ連との貿易の輸出入がどの程度になっていますか。一九六三年二月五日に署名された議定書、それ以後の状況を概算でよろしゅうございますからお聞かせ願いたいと思うのであります。
  44. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ソ連との貿易は、一九六三年の数字は、為替ベースの数字しかいまここにございませんが、一月から十月までで輸出が九千六百万ドル、輸入が一億一千七百万ドルになっております。
  45. 小林進

    小林分科員 そういたしますと、通関ベースと為替ベースで若干の違いは出てまいりますけれでも、中華人民共和国との貿易額とソ連との貿易額は、概算ソ連との三分の二、半分以上が中国との貿易高になるということ、こういうふうに判断してもよろしゅうございますな。いかがでありましょう。
  46. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 比較いたします便宜から同じベースで申し上げますと、一九六三年一月から十月までのソ連との貿易は、ただいま申し上げましたように、輸出が九千六百万ドル、輸入が一億一千七百万ドルでございますが、それに対しまして中共との貿易は、同じ一月から十月まで、為替ベースで輸出が三千九百万ドル、輸入が六千百万ドルとなっております。
  47. 小林進

    小林分科員 大体の数字はそれで了承をいたしたのでございますが、なお将来の見通し等をつけますと、中華人民共和国に対する貿易は、ソ連の貿易も伸びましょうが、中国との貿易も伸びていかなければならないと思うのでありますが、こういう実情の中にあって、現存の対中国との貿易機構と言いますか、政府のあり方がこれで一体よろしいとお考えになっているかどうか。もっと具体的に言えば、政府は政経分離などということを盛んに主張をせられまして、政治と貿易は対中国に関する限りは別だ、貿易は民間ベースでいって、政治は関与しないというわかったようなわからぬような主張を掲げておいでになるのでありまするが、そういうような形で駐在員を置かない、通商代表部も置かない、政府の窓口をお互いの国と国との間に置かないこのままの形で、しかも貿易額はこのとおりです。正式に大公使を置いている二流、三流どころの国よりもずっと貿易額は上がっている。この実情の中で、こういうような形で、将来この貿易行政をこのままの形で放任しておいていいものかどうか、通産大臣からひとつ対中国貿易の所見を承りたいと思います。
  48. 福田一

    福田(一)国務大臣 この問題は、いろいろの考慮を要する問題であると思うのでございますが、私は、いまの政府がとっておりまする方針で推移していってもそれほど日本のいわゆる輸出貿易、あるいは経済の運行に対して大きな支障があるとは考えておりません。
  49. 小林進

    小林分科員 最近、中国のアジア・アフリカ平和委員会の主査であり、LT協約の片一方の責任者でありまする廖承志氏がこの両国の貿易の問題に関係をいたしまして、お互いの国に長期のこの貿易の事務を処理するために長期の駐在員を交換してみたらどうか、こういうような提案というまでにいきませんけれども、非公式な話し合いがあったということが伝えられているのであります。こうした貿易の事務を処理していきまするために、お互いの国の駐在員を交換をするというこの問題について、通産大臣はいかようにお考えになっておりまするか、御所見を承りたいと思います。
  50. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは、フランスの中共との国交回復等々の事態もございまして、世の中は相当動いておるように思われるところでありますが、しかし、日本の場合におきましては、まだ中国との間には政治関係はないわけであります。そういうものがないのに、ここでいわゆる政府政府との話し合いに基づくような代表部の設置というようなことは、私はもとのほうから解決しないうちにはなかなか困難であろうと思っております。ただし、いまでも民間は貿易をいたしております。向こうはもちろん国でありますが、こちらは民間であります。その民間貿易の必要に基づいて駐在員を置くというようなことについては、これはいまの日本の方針と相反するものではないという見地から、差しつかえないという見解をとっておる次第であります。
  51. 小林進

    小林分科員 そうすると、駐在貝の性格の問題でございまするが、日本の民間貿易団体が置く長期の北京駐在員は、政府の関与するところじゃない、自由だ、こうおっしゃるのかどうか伺っておきたいのであります。
  52. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、貿易の関係においてさよう心得ます。ただし入出国等の問題もありまするから、その問題は別途に考慮さるべきだろうと思いますが、貿易関係においては、私は差しつかえないと考えております。
  53. 小林進

    小林分科員 次に、私は、これはひとつ通産大臣のやや進歩した前向きな御答弁をちょうだいいたしましょう。しかし、いまのあなたのおことばのあげ足をとるわけではありませんけれども、民間の駐在員を置くことは一向差しつかえないとおっしゃっているけれども、その前提になる入出国等の問題については、やはり政府の許可を受けなければならない。政府がこんなのをやめさせようと思えば、ここで首を絞めればできなくなるのであります。ぼくは、こういうところにあなた方のおっしゃる政経分離ということばが実に甘やかしな、世間をごまかすの考え方であるということが明らかになったものと思わなければならない。事実上政経分離などということは存在いたしません。やはり政府の了解を得なければ、一片の民間貿易なんかできるわけのものではない。これは、私が言わなくても通産大臣はよくおわかりでございましょう。政府のほうで了承しなければ、一つの品物だって民間ベースに乗って国家対質易なんかできません。あらゆる面で政治が介入してくるのでありますから。そこにおいて、私は、政経分離などというものは実際の面にあり得ないと思いますけれども、この政経分離が事実上あり得るとお考えになるかどうか、通産大臣の御所見を承っておきたいと思うのであります。
  54. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、国と国との間で、異常な姿であるかもしれませんが、政経分離という姿はあると心得ております。そして、そういう場合においても、度合いというものはいろいろあろうと思っております。
  55. 小林進

    小林分科員 時間がありませんから、ここで議論することはやめますけれども通産大臣は自民党閣僚の一員として、そう言わなくてはならない御苦衷のほどはよくわかりますから、その程度で追及はやめておきます。  そこで、現在中国政府に対する第一次のブラント輸出が完成をいたしまして、第二次のプラント輸出の交渉が進められているやに聞いておりますけれども、この条件等をひとつお聞かせを願いたいと思います。  なお、時間がありませんから、あわせて追加しますけれども、自由諸国に対するプラント輸出の条件と差がないかどうか。それは、個々のケースでありますから、一様には比較はできませんけれども、共産圏なるがゆえに特に過酷な条件をつけたり、過酷ないやがらせをしたりするような傾向がないかどうか、お聞かせおきを願いたいと思うのであります。
  56. 福田一

    福田(一)国務大臣 第二次の倉敷のビニロンプラントの輸出がきまりましたが、そのあとの問題について条件その他はどうなっているかというお話でありますが、私の了承いたしておるところでは、何か日東紡との関係において向こうから関係者が来て、いろいろ日東紡との間で話を進めておるようであります。この場合においてその条件が相互に整いますと、われわれのほうへ一応相談があるわけでありまして、相談があるというのは、輸出入銀行との関係において相談があるわけでありまして、これを使うか使わないかでありますが、まだ私のところにそういうような申し出はないわけでございます。  なお、諸外国との関係においていわゆる中共に不利なような条件を付しているかということでありますが、そのようなことは一切いたしておりません。平等でございます。
  57. 小林進

    小林(進)分科員 いまのプラント輸出について、政府のほうは干渉はしておらない。前の第一次のプラント輸出に対しても、政府は干渉しておらない。完全に当の貿易団体との話し合いででき上がったものであると大臣はおっしゃるのかどうか、いま一度お聞かせを願いたいと思います。
  58. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、さように心得ております。ということは、その過程において延べ払いというような問題がありますが、一体諸外国はどのくらい、どういう延べ払いをしていますかということについて、おそらく事務のほうへ連絡をして聞いておるようなことはあるでありましょう。しかし、政府がこの何年でなければいかぬというようなことは申しておりません。ただ問題は、輸出入銀行を使います場合には別であります。これは、一応みんなと平等な姿においてやる、こういう方針をとっておるのでございます。
  59. 小林進

    小林分科員 そういたしますと、中共との貿易に関する限りは政府はなるべく干渉をしない、介入をしない、両方の民間ベースでまとまった話を支持していく、こういう原則に厳格に立っておられるのかどうか、いままでのお話のぐあいではそのようにも受け取れますが、これをいま一度再確認したいと思いますが、いかがなものでございまか。
  60. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりでございます。
  61. 小林進

    小林分科員 まことに明快なおことばをちょうだいしまして、感謝にたえません。将来ともそのようにお願いいたしたいと思います。さしあたり貿易問題に関係いたしまする日本における中国見本市の開催の問題がございます。東京、大阪、加うるに北九州の見本市に対しましては、通産大臣とされましてはどういうような御意見を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  62. 福田一

    福田(一)国務大臣 見本市を相互に開きますことは、世界各国でやっておるところであります。ソビエトとの間でも、ソビエトで一回開けば日本で一回開く、こういうふうにやっております。中共の場合におきまして、去年、上海と北京、二カ所で開きましたので、今度は中共が日本でお開きになる。東京と大阪でおやりになることはけっこうだと思います。これをもう一カ所開かしてもらいたいというような御希望もあるようでありますが、これをレシプロカルにやる、相互的にやる、二カ所なら二カ所、こういうふうにやっていくことのほうが将来とも問題がない。どこの国ともそういうふうにしていく、そういうふうにあるべきじゃないかと思います。
  63. 小林進

    小林分科員 それでは申し上げますけれども、あなたはいまも言うように、貿易に関する限りは民間団体の自由意思にまかせるとおっしゃる。この九州の見本市の関係はいまおっしゃるとおりです。日本は北京と上海に二カ所設けておる、だから中共側は、今度は日本に二カ所、東京と大阪でいいじゃないか、こうおっしゃるかもしれないが、それは法規でもなければ規約でもない、単なるいままでの慣行、前例を述べたにすぎない。この問題に関しては日本の商社、あるいは地方団体、民間団体等が、この機会に一つ北九州にも追加をして見本市を開かしてもらいたいということで、正式に相手国の貿易を担当する側に申し入れたら、折衝の結果、よろしいでしょう、それじゃお引き受けいたしましょう、こういうことで、両者の間でしごく円満に話が進んでいる。あるいはもう計画もでき上がった、見とり図もでき上がった。その準備に来る相手国の人員まできまって、もういよいよその北九州市の見本市をつくる作業に入るために出発をしようというまぎわに、日本政府関係団体のほうで、それは相ならぬ、それは中止させようじゃないか、こういうふうな故障が政府側から入っておる。これは、あなたのおっしゃる、民間ベースは自由におやりください、貿易、経済の問題は御自由にとおっしゃったことばとは実にまことに食い違いのやり方じゃないか。不当なる政府の干渉であると思いますけれども通産大臣はどうお考えになりますか。
  64. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は政治、経済というものは、そういう意味でやはり貿易——実際の物の売り買いの問題、たとえば鉄鉱を幾ら買って石炭を向こうから幾ら買うというような話し合いについて、われわれはそういうことに条件を付するという考えは毛頭ないということをさっき申し上げたのであります。しかし、見本市というような問題は、相互に国同士で、たとえばアメリカとかイギリスとかほうぼうの国と見本市をやって、日本でもまた向こうから来て見本市をやっておられる、そういうときには、国際慣行といたしまして、今までは相互主義ということが建前になっておるわけであります。この場合、まだ政経分離というような姿における中共との間の場合において、特にそれを数をふやすというようなことは、私はそういう意味では好ましくないというような解釈を持っておるわけであります。
  65. 小林進

    小林分科員 貿易という概念の中に、大臣のおっしゃるように物を買ったり売ったりするという狭い範囲の売買だけが貿易だという、そういう解釈のしかたには、私は残念ながら賛成するわけにはいきません。これは、やはり大臣、間違いでしょう。これは、理論を追及していけば間違いになりますよ。けれども、貿易という概念の中にはそうした見本市を開催するとか、あるいは見本の展示会をやるとか、あるいはその他もろもろの経済貿易に関する問題をまず含ませるのが、私は広義の意味における貿易だと考えております。けれども政経分離の建前上、それは入国の問題もありましょう。警備の問題もありましょう。滞在の問題もありましょう。いろいろ問題がありまするから、通産大臣が、貿易だけの問題で、それは処理できないとおっしゃるならば、そういう点においては私はやむを得ないと思いますけれども、しかし、通産大臣の貿易を主管しておられる立場からは、こういう両国の民間団体で円満に話ができ上がって、そしてなごやかに進められている話を政府が介入してこわすなどということは、私は、いかにもその間に日本側に不純な点があるとだれもが考えざるを得ないのであります。だから、政府は、これを台湾政府に対する言いわけの材料にしている、あるいはアメリカ政府に対する言いわけなんだ。ちょっとチェックしておいて、まあ台湾政府に対する一つの申しわけでもつくっておこうというような狭い、腰のない、腹のない、そういう考え方でこれを実行し、しかもその理由はいわずもがな。相互何とかの原則に基づいて、向こうが二つならこっちは二つ、向こうが三つならこっちも三つの原則にのっとっている。こんなのは子供だましの理屈ですよ、大臣。そういう理屈は、閣僚間では、わが日本の尊敬すべき、あわれむべき閣僚の間では通用することばかもしれませんけれども、世論はそういう理屈には納得はいたしません。残念ながらいたしません。けれども、私は、そういうことはやはり腹をきめて、国際信義や、特に善隣外交で、お隣の中国とはこれから貿易を進展する重大なときなのでありますから、特に私は腹をきめて、——しかも北九州一帯は世論がみんな固まっているのです。ぜひともやらしてくれと言っているのです。国内の世論も高まっている。そういうようなものを一挙にそういうような理屈で押しつけるなどということは、どうかひとつ閣僚の中で反省をしていただきたい。特に私の尊敬する通産大臣でありますから、頑迷なる他の大臣の啓蒙運動にひとつ御努力を願いたいと思うのでございます。  時間もありませんから、中共の問題は私はこれくらいにいたしまして、次に、ソ連貿易の問題でもいろいろの心配ごとがございますので、若干お尋ねをいたしておきたいと思います。二月の十日ですかにソ連貿易の協定付属品目表の六四年分が外務省で調印をせられたようでありまして、それによれば、一九六四年は輸出がFOBで一億四千二百万ドル、輸入が一億三千万ドル、これは昨年の実績に比較して輸出が一六%、輸入が一三%増の約束ができ上がった。こういうことが報道せられておるのでありますが、この二、三年来の日本とソ連との輸出貿易に対して、非常に日本側が、これは政府のほうがこの貿易に介入をせられて、何か自由圏貿易とは異なった非常に意地の悪い、あるいは約束を履行しないとか、途中で契約を破棄するとか、国際信義に反するようなことを繰り返していらっしゃる、こういうことが伝えられているのでございまするが、通産省としてそういう事実がございませんかどうか、率直にひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  66. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ソ連との間は、幸いにしまして、通商に関する三カ年間の長期協定ができております。その協定に基づいて運用いたしておりますので、そのワクといいますか、基本方針のもとにおきましては、ほかの国と何ら特別な区別はいたしておりません。全くほかの国と同じような取り扱いをいたしております。
  67. 小林進

    小林分科員 その三年協定というのは、一九六三年二月五日に協定をせられた、六三年度から六五年度までの三年間の協定でございますね。
  68. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 そのとおりでございます。
  69. 小林進

    小林分科員 その協定が結ばれた以後に、あなたは何らの差別を設けておられぬと言うが、これは新聞紙上にもすっかり報道せられて、だれもが知っている問題であります。それは昨年の、正確な期日は忘れましたが、四月か五月ですか、八幡製鉄がソ連側との話し合いで大型の油送鋼管二万トンの契約を結んだ。それを政府側が故障をお入れになって、途中でやめさせるとか、やめさせたとか、そういうような問題があったはずでありますけれども、その経緯をここで承りたい。同時に、その後の結果は一体どういうふうに仕上げられたのか、あわせてお聞かせを願いたいと思います。
  70. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまお話しにございました鋼管の契約につきましては、実はこれは、日本政府としては直接干渉をいたした事実はございません。会社のほうでやはりいろいろ得意先の関係がございますので、アメリカのほうの得意先とソ連の得意先といろいろ彼此勘案しました結果、アメリカ側のほうの意向をくみまして、この際はソ連との取引をやめたほうが会社としてよろしい、こういう判断で契約を途中で中断した、こういう経緯でございます。
  71. 小林進

    小林分科員 八幡製鉄が二万トンの大型の油送鋼管をソ連側に売るという契約を結んだんですよ。その結んだあとにそれをやめろ、好ましくないという申し入れがアメリカ政府からありましたね、その実情をひとつあなたの口から詳しくお聞かせを願いたいと思います。
  72. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 NATOにおきまして、共産圏向けの一定の規格以上の鋼管は売らないようにしよう、こういう申し合わせがありまして、日本にもそういう事実を通知をしてまいりました。しかし日本は、NATOのメンバーでもございませんし、また日本が全然関係していないところで決定したことにつきまして、日本が拘束を受けるという筋合いではございませんので、これは、事実は事実としてただ聞いたにとどまっております。
  73. 小林進

    小林分科員 通産大臣にお伺いいたしまするけれども、そういうNATOの申し合わせによってアメリカ政府から、八幡製鉄が二万トンの大型鋼管を売ることは好ましくないという通知が日本政府にきたことは、あなたは御存じになっていらっしゃいますか。それに対していま通商局長は、日本はNATOに入っていないから、そのいわゆるNATOの決定に従う必要はないから、政府は干渉しなかったとおっしゃる、その答弁は正しいですか。私は資料を持っているのですよ。正しいですか。
  74. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、NATOに入っていないからNATOの決定に従う実務はないということは、正しいと思っております。ただし、その間の事情は、アメリカのほうから外務省を通じまして、NATOではこういうような決定があったということをわれわれも事務局から聞いております。そういう場合に、商売をします場合には、あらゆる条件、あらゆる事態というものを関係の各社に知らせるというのは、これは通産省仕事であります。商売をするには、やはりどこがどういうことを望んでいる、どこはどういうことをいやだと言っておるかというようなことを知らせることは、これは私は商売、いわゆる貿易をどんどんやらせるという意味では必要なことだと思います。そういう意味で連絡をしておったと思います。しかし、連絡だけでございまして、そのとおりやれなんて言ったことは全然ございませんし、またそういうことを言う意図もございませんでした。
  75. 小林進

    小林分科員 この問題は、そこまでいけばもう事態は明らかですから、私は追及をいたしませんけれども、それはあなたたちのほうが、いかに干渉しないで、八幡製鉄が自由に契約したものを自由にやめたんだ、そう言いのがれをしようとしても、そんなことはだれも了承する理屈ではない。アメリカの圧力の前に日本政府は屈服をして、結局八幡製鉄の二万トンの契約を解除せしめた。これは相手方のソ連だけではありません。世界の国々はみんなそう思っております。日本の国民みんなそう思っている。ただ、ここであなた方が言っているのは、牽強付会の言を弄していられるだけの話です。そこは中国とソ連は違いましょう。政経分離は中国だけの原則でありましょうから、ソ連とは違いまするけれども、そういうところにまだわが日本の貿易の独立できない、いわゆる貿易の実態があるではないか。私は、それらの問題は新聞にも報道せられて明らかな事実でありまするから、これはこの程度にします。そのほかにまだ幾つもの自主的に行なわれていない貿易の例がある。一九六三年、同じくソ連との貿易において、たしかスフ綿二万五千トンの協定に基づく約束をされた。これも通産省は、民間貿易だからおれは知らぬとおっしゃるかもしれませんが、二万五千トンのスフ綿の輸出契約の品物がいまどれだけソ連側に売り込まれておりますか。
  76. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 スフ綿につきましては、協定に二万五千トンという数字が掲上されておることは事実でございますが、実際の契約がどのように履行されておりますか、ただいま手元に資料がございません。
  77. 小林進

    小林分科員 これも私ども調査によれば、二万五千トンのスフ綿の契約も、いわゆる経済以外の事情、政治的圧力に基づいて一万八千トンの契約しか履行できないようにされてしまった、そうしむけられた、こういう情報が入っております。いま調査中とおっしゃるならば、その調査の結果をお聞かせを願いたいと思います。  次にお伺いいたしますけれども、同じく一九六三年の貿易協定によって、苛性ソーダ一万五千トンをソ連に輸出をするという約束ができ上がっております。どれだけ実施されておりますか。
  78. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 具体的な品目につきましての履行状況を、ただいま手元に資料がございませんので申し上げかねる次第でございますが、ただ、スフ綿、苛性ソーダを初めといたしまして協定に掲上されました品目につきましては、数字は一応拘束力はないのでございますけれども、契約ができさえすれば、その数量の範囲内では、もちろん政府としては特に干渉して押えるというようなことはしない方針でございます。
  79. 小林進

    小林分科員 ソ連側は必要でないものを契約するわけじゃない。必要に迫られてそれだけの契約を結ぶと同時に、その実行をしばしば督促をしている。あらゆる手でそれを要求している。けれども、その中間にいろいろの要素が介入をして、そしてそれを実行しない、こういう事実があるのであります。あるかないか、あなた調査して下さい。あなたは資料がないというが、それだからきのうも私は電話をよこして、共産圏貿易について御質問しますと言ってあんなに詳しくあなた方ときめたのじゃないか。それをここへ来て、資料がないの、調査がないのと言う。それで、言いわけがましく契約が何のかんのというのは言語道断ですよ。私をごまかすのですか。私はそんなことを言うとおこりますよ。まじめになって質問しているのに、何ですか。夜店のバナナのたたき売りみたいに、ここのところだけちょっとうまくごまかしておけばなんということで、なめてはいけませんよ。
  80. 松浦周太郎

    ○松浦主査 山本通商局長、真剣に答えてください。
  81. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 個々の品目について詳細な御質問があるようには承知しておりませんでしたので、手持ち資料の不足でたいへん恐縮に存じます。ただ、ソ連との貿易につきましては、政府としましては、協定に掲上された品目につきましてはできるだけ忠実にそれが実現されることを念願しておりまして、中には、価格とか銘柄等で業者との間に話がつかないために、実現できないものはございますけれども政府が何か政治的な意図をもってそれをチェックするというようなことはいたしていないことだけははっきり申し上げられると思います。
  82. 小林進

    小林分科員 それでは具体的にお尋ねいたしますけれども、船の問題、いわゆる船を売ることについての問題はどうですか。会社の名前をあげましょう。日立造船その他の会社が誠実をもってソ連との貿易交渉をしてきながら、これには先ほども通産大臣が言われた延べ払いの問題がある。そのときに造船会社とソ連側との関係で六年間の延べ払いの契約が成立をした。それが成立するまでには、会社のほうでは四六町中政府側の意向をただしながら、これでよかろうということで六年間の契約を結んだ。それを、政府のいわゆる干渉で、六年はだめだ、五年半の延べ払いにしろといって契約の更改を指示せられたことは間違いありませんでしょう。こういう事実はありませんか。その内容をひとつ承りたい。
  83. 福田一

    福田(一)国務大臣 造船業界が向こうとの話し合いを進める過程におきまして——延べ払いを六年にするという話がきまってからではございません。話を進める過程において、六年でやらしてもらいたいがどうか、そうして輸出入銀行の金を使わせてもらいたという話がございましたから、それは困ると言った事実はございますが、向こうと話がきまったあとではございません。その話し合いの途中であります。でありますから、そう長い期限を認めることは、日本の経済力の関係から見て、またよそとの関係から見て、できるだけ船も輸出はしたいけれども、まあそういうふうでなければよそとの均衡がとれない。こういう意味で、実はそこは歩み滞りで、むしろソビエトのほうも、ほんとうに買いたいのだから、できるなら売るようにしてあげたいということで、ほんとうは五年ということを言っておったのですが、まあ、しかたがないから五年半、こういうことにしたわけであります。
  84. 小林進

    小林分科員 契約の済んだあとか、契約の過程かというのは水かけ論ですが、あなたのほうとしては、契約ができ上がったあとに故障を入れて五年半にしたと言っては、さっきも申し上げます政府が政治的な介入をしたことになりますから、そう言わざるを得ないだろうと思う。けれども、私どもの知っている資料では、若干その内容は異なっているようでありますが、時間がないから、これはまた後日の楽しみにいたしておきまして、これはこれで押えますけれども、世界的に船を日本から買っている国の序列をここでお聞かせ願いたいと思います。——私ども調査によれば、ソ連は日本に対する船の買い入れ国としては二番目ですよ。それくらい大口の買い主の国であると私は考えている。その国に対する六年の延べ払いに対して、政府は五年半の延べ払いだという故障を入れて問題が困難になった。しかるに日本の政府は、他の自由主義国家にはどういう売り方をしておりますか。みんな五年半でいっておりますか。それは国々の信用やいろいろな関係がございましょうが、ノルウエー、デンマーク、スエーデン等々に船はやはり民間ベースでいっておりますか。政府のおっしゃる輸出入銀行の金を利用しながら延べ払いでいっているか。そういう国々の延べ払いは一体何年で契約をされておりますか。
  85. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 御質問の船舶の輸出の国別の順位は、一九六二年で多いほうから申し上げますと、リベリアが第一位でございます。次いでイギリスで、ソ連は第三位という順序になっております。それから船舶の延べ払いの条件につきましては、ケース・バイ・ケースで若干違う点もございますけれども、一般的に申し上げまして、ソ連向けの輸出とそれ以外の国と特に区別して扱っておりません。
  86. 小林進

    小林分科員 八年という契約の延べ払いもありますでしょう。
  87. 福田一

    福田(一)国務大臣 私たちは西欧並みにやるという貿易のしかたをいたしておるのであります。そこで、イギリスとかアメリカは、共産圏に対して延べ払いをいたします場合と、それからそうでない自由主義国家群に対していたします場合とは大体差別ができております。したがって、七年、八年というのもあるでございましょう。そういうのはあると思います。ただ、そういう意味で、共産圏に対しては大体五年というのが限度なんです。それを、実をいうと五年半にあのときはしたわけでありまして、これは、どういうわけでそういうことをしておるのかといいますと、イギリスでもアメリカでも、やはり支払いの能力とか、あるいは信用の度合いとかいう、日本の場合も同じでありますが、そういうことを考えたわけであります。ただし日本としては、英米並みにすべてこれを処理する、こういうやり方をしておりますので、それはいま小林さんのおっしゃったとおり、年限の違ったのがあります。
  88. 小林進

    小林分科員 私の言いたいことはそこなんです。あなた方は、やはりソ連圏に対する貿易は西欧並みとおっしゃって、アメリカのそういう貿易に追随していらっしゃる。やはり自主性がないじゃないかと言っているのです。そして、それが西欧並みとおっしゃる。ノルウエーとかデンマークとか、国力においても、日本の船を買い付ける能力においても一ずっと下位にあるそういうような国々まで、いままで六年か何かで延べ払いしたのを延ばして、七年にしたり八年にした。そういう売り方をしておきながら、片一方の共産圏に対して六年ができないといって五年半にしておられる。そういう貿易の姿勢が、今後日本の経済が発展していく途上において、それが一体正しいかどうかと言っている。そういう自主性のないやり方じゃ、とても日本の経済は、貿易で生きていく日本の国のあり方としては持ちませんよ。もうそういう姿勢は、ここで改めるべきじゃないかというのであります。どうかお答え願いたい。
  89. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、そこはひとつ御理解を賜わりたいと思うのでありますが、私たちは、自主性でやっているつもりであります。すべて貿易というのは、やはり相手国の信用とか、金をどれくらい持っているとか、支払いがいいか悪いか、こういうことで条件が異なってくるのは当然でございまして、そういうことを自主的に判断しながらやっておる。それがたまたま英米と一致しただけでありまして、何もわれわれは、そう特別に自主性をなくしてやっているわけではありません。どうか、ひとつそこのところは御理解賜わりたいと思います。
  90. 小林進

    小林分科員 大臣の御答弁はもう変わっておる。先ほど英米にならってこういうことをやると言ったが、いまは、たまたまわれわれが自主性でやったのが、英米と偶然一致したと言う。この答弁は実に開きがありまして、これまたその自主性のないことをみずから証明したものと言わなければならぬのでありますが、もうこういう問題は別にしまして、次に、時間がありませんから、二点だけでやめますが、次には、木材の輸入に対する問題と沿岸貿易の問題、この二点だけをお聞きしておきたいと思うのであります。  ソ連木材の輸入について、こういう提案があったということを私どもは資料を得たわけです。それは、ソ連は極東、シベリアにおいてはあり余る木材、無限の木材がある。しかし、ソ連国内では木材は要らない。それは、モスクワとかレニングラードとかは、木材は北のほうから持ってくればいいので、あんなに遠い極東のシベリアの木材を持っていく必要はない。しかし、日本は木材が不足しておるじゃないか、だからこの木材を日本にやろうじゃないか、しかし、それも一時の売買契約ではなくて、まあ二十年とかいう長期契約でひとつ日本と契約を結ぼうじゃないか、その反対給付としては、日本からたとえば伐採に使用する資材だとか、あるいは製材する機械だとか、そういうものを現物で出資してくれるか、さもなければ投資の形でそういうものを出してくれ、あるいはクレジットの形にするか、いずれにしてもそういう形でソ連は安い木材を長期に提供する、日本は、そのために資金なり資材を出す、こういう申し入れがソ連側からあった。これに対して日本政府のほうからはどういう回答をお出しになったのか、そういう申し入れが事実上あったのか、まずそこらからお聞かせを願いたいと思います。
  91. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまのお話は、実はつい最近にソ連と本年の貿易についての話し合いをしたのありますが、その席でも全然先方から話がございません。私たち承知いたしておりません。
  92. 小林進

    小林分科員 最近のお話とおっしゃいましたが、私がこの情報といいますか、これを取りましたのは的確な筋です。これは風評とは私は申し上げません。的確な筋から、それもことしではありません。一九六三年以前の話にこういう申し入れがある。もっとあなたたちより上の、ハイクラスからその申し入れが出てきた、通産大臣、御存じありませんか。
  93. 福田一

    福田(一)国務大臣 木材の問題になりますと、これは実は農林関係が非常に関係してくるのでありまして、私のほうは直接ではございませんが、しかし、もちろん紙のパルプとかの原料でございますから、関係があります。ただし、いまあなたのおっしゃったような意味の話があったことを漏れ聞いております。しかし、なぜできなかったか、私はあなたのおっしゃった意味のことはいいことだと思うのです。それから、向こうから商工大臣が来たことがあります。それで、私は昼食を食べまして、どうもあなたのほうの木材を出してくれるというが——出し方の問題ですね、値段の問題とか、どういうふうにして持ってくるかとか、いかだで組んでくるのか、ばらで来るのか、そういうことがこっちの材木関係と話をしてなかなかうまく具体的にまとまらなかったというのが事実のようであります。値段が相当高かったように私は聞いております。でありますから、これは純然たる商売の話としてやってみて、機械を売るのはこっちから言えば非常にけっこうです。ただし、買ったものをこっちの木材商がさばかにゃいけません。あまり高くては買えないのですね。そこらの話がうまくつかなかった。私は向こうの商工大臣に、あなたのほうはもう小し安く出すようにしたらいいじゃないかという話をしたら、いや、あそこらは気候の関係なんかでいろいろむずかしい面もあるのだというような弁明をちょっとされておるのを覚えております。しかし、所管が私のところじゃなかったので、それ以上突っ込んで話をしませんでした。
  94. 小林進

    小林分科員 大臣の御存じのことはその程度であるかもしれませんが、所管がお違いになるということなら、私の質問はまたその所管のところで申し上げたいと思います。私は、いま少し的確な話を知っております。いずれにいたしましても、同じ木材がアメリカとソ連では運賃がちょうど半分でございましょう。ナホトカなりウラジオストックから日本へ持ってくると半分になる。そういうような問題も含めておるのでありますけれども、やはり先ほども言われる政治問題がそこにからんでこの問題が成立しないやに聞いておりますけれども所管が違うとおっしゃれば、私はここで言うのはやめますけれども、そういう問題も……。
  95. 松浦周太郎

    ○松浦主査 小林君、結論をお急ぎください。
  96. 小林進

    小林分科員 問題も日本のしあわせの問題でありますから、十分御考慮いただきたいと思います。  最後の一問でございますが、沿岸貿易の問題でございます。特に、これは私どもの新潟だとか裏日本には重大な問題でありますから、通産大臣にお聞かせを願いたと思いますが、今年度の付属書の中にも沿岸貿易の問題がきまっている。六三年あたりは三百万ルーブルから四百万ルーブルの範囲内で沿岸貿易が行なわれておるはずであります。その昨年度における沿岸貿易の実績と、今年度どれだけのワクを一体付属書の中におつくりになったのか、その中の品目は一体どんなぐあいになっておるのか。昨年度の実績、今年度の総額のワク、それからその中に盛られる品目、これをお聞かせ願いたいと思います。
  97. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 沿岸貿易につきましては、一九六三年のワクは、輸出が三十万ドル、輸入が九十万ドルでございまして、現在までの実行状況は、ただいま資料がございませんのでちょっと……。  それから本年度は、今回の話し合いによりまして、さらにこれを拡大するということだけ言っておりまして、特に数字ははっきりあげておりません。  それから品目は、昨年どおりでございます。
  98. 小林進

    小林分科員 どうも通商局が昨年度の実績を、何も資料をお持ちにならぬということでは、質問ができないのであります。沿岸貿易も、野菜や魚類や、そういうものから始めたのが、最近には雑貨まで入ったり、木材が入ったりだんだん拡大をせられていくような形でありまするけれども、この沿岸貿易の問題について、大臣は、これをさらに拡大していくのが好ましいとお考えなのか——好ましくないとは、まさかお考えになっていないと思いまするけども、これに対して、いま少し大臣から具体的に——私はもっと力を入れて大いにやっていただきたいという気持ちがあるのでございまするけれども、いかがでございましょうか。
  99. 福田一

    福田(一)国務大臣 沿岸貿易は、私は非常にけっこうだと思っております。ただ問題は、これは支払い条件とか値段のきめ方ということで、向こうとこちらとの間でうまく意見が一致しませんと、金額だけきめても実際には行なわれないものであります。私は、そういう問題をできるだけ相互が理解し合いながら貿易の額をふやしていくことは非常にけっこうだと思います。
  100. 小林進

    小林分科員 通産省の中で、この沿岸貿易の問題をお扱いになっております窓口は、一体どこでございましょうか。
  101. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ソ連との貿易は、ソ連も含めまして共産圏全部を市場第三課が担当いたしております。
  102. 小林進

    小林分科員 通商局長考えなければ出てこないような、そういう形だから日本の生きた貿易ができないのです。いまあの枯れた裏日本の海岸は、あげて沿岸貿易に非常に期待しておるのでありますから、通産大臣、どうか一つ早急に、課までは置かなくてもよろしいけれども、その市場第三課に専門の課長補佐くらいは置きまして、この沿岸貿易にいま少し力を入れていただきたいと思うのであります。これを特にお願いをいたしまして、まだ質問はたくさんありますし、私もほんのさわった程度で、気持ちがまことに落ちつかないのでありますが、時間の関係がありますから、残念ながら私の質問を一応終わりますが、これで終わったわけではございません、留保しておいて、またひとつ場所をかえて今度はきめのこまかい質問をやらしていただきたいと思います。
  103. 松浦周太郎

    ○松浦主査 これにて小林進君の質問は終わりました。  午後は一時二十分より開会をいたすことにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後一時三十二分開議
  104. 松浦周太郎

    ○松浦主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省に対する質疑を続行いたします。  田中織之進君。
  105. 田中織之進

    田中(織)分科員 時間の制約もありますので、問題を輸出振興の問題にしぼってお伺いをいたしたいと思います。  特に、いま池田内閣がとっている経済の高度成長政策はいよいよ中期の段階に入ってまいったのでありますが、国際収支の均衡というか、むしろ輸出振興によりまして外貨事情をよくすることが、次の段階の為替自由化の問題に備えて非常に緊要な問題ではないかと思うのであります。その意味で、総理の施政演説等におきましても、輸出振興の対策のために積極的に手を打つということは言われておるのでありますけれども、どうも具体的な施薬においてはいささか中身が乏しいという感じを持っておるのであります。具体的な問題について伺う前に、通産大臣から、特に輸出産業の振興の問題、具体的にやはり輸出を伸ばすということについて、面接的にどういう手を三十九年度において打たれようとしておるのか、まずこの点について伺いたいと思います。
  106. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、輸出振興は当面の一番大きな課題でありまして、日本産業をますます伸ばし、ひいては国民生活を安定充実していくという意味から言っても、一番大事な方途は輸出振興以外にない、私はさように考えておるわけであります。  そこで、輸出振興をする場合にどういう基本策を考えるかといえば、国内の関係と国外と二つに分けられると思います。国外の問題を見てみますと、いわゆる先進諸国といいますか、工業関係の先進諸国と、そうでない低開発国、こう二つに分けられると思うのであります。その場合において、世界の貿易の姿から見ても、これから日本が貿易量をますますふやすにはどうしても重化学工業部門に力を入れなければいけない。イギリスでもアメリカでも、そういうような先進工業国は、常に輸出の中に占めておる重化学工業の比率が七〇%前後にのぼっておる、日本の場合はこれが工〇%前後であるという状況から見ましても、こういう点がまず構造上の問題として考えられるわけであります。そして、同時にまた、軽工業品の場合におきましても、後進国がどんどん追いついてきて、日本がいままで得意としていた分野にまで食い込んできておるという状況も見られますので、これをもう一そう精密高度化していくということも考えていかなければならないわけでありまして、この点から、振り返って日本の国内漁業をもう一ぺん育成強化していく、こういう点が出てくるわけであります。同時にまた今度は、いわゆる差別的な待遇をしております面は、対外折衝の面で順次これを是正していくことを今後も大いに続けていかなければなりません。ただ、そういう場合でも、貿易のことでありまして、貿易の場合、向こうが喜んで買うものもあるが、あまり入ってくると、向こうの国の産業に大きな影響があるとか、あるいはその他の事情によって好ましくないというような問題がしばしば起きまして、これは話し合いで問題を処置していくというようなことも起きておることは事実でありますが、いずれにしても、相互がよく理解をし合いながら貿易額をふやすということが必要になると思います。また、商品別に見ても、たとえば鉄鋼ならばどこへ売れるとか、あるいは織物ならばどこ、織物の中でも絹はどこへ、化繊はどう、人絹はどう、いろいろ仕向け先があります。そういう意味で、品物別に見て日本の輸出をどういうふうに進めていくか、この品物をあそこへ売るにはどういう品質のものをどういうふうに生産していかなければならぬかというように、品物から見てだんだんとこの改善くふうをこらすことも必要であれば、また、国別に見ますと、いままでは国別に大体ものを見ておりましたが、国の中でも、たとえばアメリカなんかとってみましても、シカゴならシカゴという場合と南部のほうとではまた事情が変わってまいります。その市場別にまたこまかい施策といいますか、PRその他宣伝の方法もとらなければいけません。私がいままで見たところでは、まだ日本の品物なんというのは、われわれは日本におっては日本の品物は非常にいいものであると思っているけれども向こうに行ってみると、そんなものがあるのですかというような状況にある部分がある。たとえば、アメリカの例をとっても、シカゴでは知っているけれども、シカゴから五十キロ離れたところでは日本品なんて知らないというような状況のようであります。そういうところが多い。こういうところをもっと是正していくという、いわゆるきめのこまかい手段も考えていかなければなりません。  一方、今度は、目を国内的にやるということになれば、何といってもよい品物を安くつくるということが輸出を伸ばす方法でありますが、よい品物を安くつくるには産業をよく育て上げなければなりません。そこで、それぞれの分野における、鉄鋼なら鉄鋼、あるいはまた繊維なら繊維、あるいは機械工業なら機械工業というようなおのおのの分野において、それぞれそれに適した施策をしながら日本の産業を伸ばしていく、こういう意味から考えると、今度は金融、税制というようなものが非常に大きな柱になってくるわけであります。同時にまた、そういうような分野におきましても、親企業下請との関係、こういうもの、もういまは、親企業関係はかなり整備されておりますが、下請のほうが整備されておらないために、産業自体としてまだ完全でないというか、世界と太刀打ちできるところまで来ていないものもままあるのでありまして、そういうものは下請にやはりうんと力を入れて伸ばしてやることが、その産業自体を大きく伸ばすゆえんである。こういうような意味合いにおいて、いわゆる下請関係の充実をはかる、こういうことも考えなければなりません。  いずれにいたしましても、名分野において多岐多様な面があるわけでございますが、これは具体的に詳細に申せよとおっしゃれば、これは事務から御説明申し上げてもけっこうでございますが、予算においてどういうことを計上したという意味でございますれば、事務のほうからお話をさせるようにいたしたいと思います。
  107. 田中織之進

    田中(織)分科員 輸出貿易は相手のあることでありますから、大臣が御答弁になりましたように、国外の相手国に対しての施策の問題と、輸出する側の国内の輸出産業の育成、こういう二面性を持っているという御答弁は、私もそのとおりだと思うのであります。そこで、予算価では、大臣が言われる国外的な相手国に対する関係の日本備品のPRの問題であるとか、あるいは市場開拓の問題であるとか、ジェトロを通じての施策に重点を置かれているようでありますけれども、そういう面の予算措置というものは、これは予算書の中にもあらわれておりますので、ジェトロの具体的な業務の運営という点につきましては、私も再三海外に参りまして、外務省の出先と、それからジェトロの海外の出先との関係等がはたして血が通っておるかどうかというような点には幾多の疑問を持っておるのでございますけれども、対外的な関係の処置については、一応政府がやられておるという点は、一口に言えばきわめて不十分だ、こういうように私は評価をしておる。それを強化してもらいたいという点に尽きるので、時間の制約もありますし、主として国内関係で輸出産業の育成、あるいは具体的な輸出振興の方策ということにしぼってきょうは伺いたいと思います。  そこで、大臣は、いまその点については一番大きな問題として金融の関係と税制の関係の問題をあげられておるのでありますが、輸出産業育成のためにやられておる金融対策の具体的な内容、あるいは予算に基づいて当然それのほうの数字等を出していただくことを一番希望するところでありますが、この問題についてお示しをいただきたいと思います。
  108. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 輸出金融につきましては、当面非常に重要な項目といたしましては、延べ払い輸出の場合の金融でございます。現有輸出入銀行がその仕事を担当いたしておるわけでございまして、三十九年度におきましては、出資も二百二十五億円ふやしました。そして、貸し出し規模としましては千六百億円程度の、かなり大きな輸出に対する貸し出し規模を想定いたしておりまして、なおこれでも不足な場合にはまた必要な手を打つということにつきまして、大蔵省当局とも話をいたしております。  それから、延べ払い金融に関連いたしまして、輸出入銀行から出ます金に市中銀行が協調融資をいたしますので、その点につきましては、いままでのところ一応円滑にまいっておりますけれども、なおさらにその改善をはかっていく必要があろうかと思いまして、せっかく検討中でございます。
  109. 田中織之進

    田中(織)分科員 輸銀の関係については、この予算説明によりましても、本年度より三百億ふやした千六百億の貸し出しワクを設定しているということも私ども承知をいたしております。しかし、通商局長及び大臣も御承知のように、輸銀にいろいろ世話してもらえない、やっかいになれないところの輸出関係業者、これはメーカーもありましょうし、貿易業者もあると思うのであります。そういう関係については、現実には市中銀行一本にたよっているわけなんですが、何かこれも輸銀の資料があればお答えをいただきたいと思うのでありますが、輸銀の貸し出しの対象になっておるのは、たとえば資本金で言えばどの程度までの会社が輸銀の貸し出しを受ける対象になっているかという点を明らかにしていただければわかると思うのでありますけれども、これは必ずしも輸出の下請ということではなくて、雑貨あるいはその他のトランジスターなどもあるいはそういう意味から見ればその範疇に入るのかもわかりませんけれども、メーカーで同時に輸出一本でやっている、こういうような関係のところがございますが、LCの関係から申しまして、そう輸銀の対象になるような長期の関係のものではございませんので、結局市中の金融機関にあらゆる金融をたよらざるを得ないような状況にあるんじゃないかと私は思うのです。そういう面については、あるいは中小の輸出荒業というか、あるいは輸出業者というか、そういうような関係に対する金融についてはどのようにお考えになっていますか。
  110. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 お説のように、中小の輸出業者あるいはそのメーカーに対します金融制度は、率直に申しまして必ずしも現在十分でないと思います。輸銀の貸し出し先を調べてみますと、かなり大きな企業に集中しておりますが、これは決して中小を排除する意味ではございません。プラント輸出が輸銀の貸し出しの対象になりますが、プラント輸出の場合は、おおむねメーカーも大きいところ、商社も大きいところがどうしてもその主体になります関係で、そのような結果になっております。しかし、中小のものにも、割合は比較的少ないのではございますが、貸し出しをいたしております。それから、一般的に中小企業金融が非常に重要でございますので、中小企業金融全般についていろいろな制度をやっておりますが、その際に特に輸出には重点を置いた考え方で施策をしておる実情でございます。
  111. 田中織之進

    田中(織)分科員 私のお伺いしている点にぴったりお答えをいただけないのでありますが、私は、やはり輸出入銀行ということになりますと、貸し出し対象が、その点から見まして、かなり大きな部分でなければ貸し出しを受けられないような仕組みになっていると思うのです。私は決算委員も兼ねておりまするので、その点は当面審議の対象になっている三十七年度の関係で輸出入銀行からも資料をいただいて、目下検討をいたしておる段階でありますけれども、私はもう一つ伺いたいと思いますのは、輸銀の貸し出し対象にならないようなそれ以下の業者に対する金融について、あるいはこれは輸銀の窓口にそういうものに対する一定のワクを設定いたしまして、輸銀で貸し出しをやる。ところが、これは、先ほど通商局長答弁されましたように、市中金融機関との協調融資というような関係にありますから、結局、輸銀直接の窓口というよりは、やはりそういうような市中金融機関が窓口になって扱うということになろうかと思うのでありますけれども、それも一つの方法だろうと思います。さらには、中小企業金融公庫であるとか、あるいは商工組合金融の場合には商工中金というようなものも考えられるわけでありますけれども、特に輸出の振興のためにはこれらの関連産業の金融の問題が一番重要だということを先ほども大臣が述べられたということになりますれば、やはり中小企業金融公庫あるいは商工中金の中においても、輸出関係というものについての特別なワクの設定なりあるいはそういう一定の資金量を確保することが必要ではないか。もちろん、大きな輸出産業下請関係等につきましては、たとえば、手形支払いが行なわれておるのでありますけれども、今日九十日あるいは百日以内の手形なんというのはほとんど見たくとも見られない。納品をして一カ月経過する、それから社内検収の関係で一カ月、まあ三カ月目にようやく支払いを受けるときには手形で三分の一だ。これは極端な例だとあるいは当局はお答えになるかもしれませんけれども、そういうような状況で見まするならば、やはりそういうほんとうの輸出振興の基盤になっているところが、大企業の金融の肩がわりをさせられる。最近手元へ送ってまいりました中政連新聞等によりますと、輸出の下請をやっているところに対する利子の補給の問題もやはり考えなければならぬと、これは与党の井村議員がそういうことを何かの会合あるいは国会の委員会で大臣に、中小企業基本法に関連した法案の問題で、与党質問の形で出されている問題ではないかと思うのです。そういう必要すらあるところの中小の輸出産業あるいは企業者に対する金融については、従来と違った新しい構想をもって進まなければ、結局、そういうところがつぶれてしまえば、輸出を伸ばそうとしても伸びなくなるのではないか、こういうふうに考えるのであります。この点については、現状のままでいいとは決して大臣も局長もお考えになっていないと思うのでありますが、現状のままではいけないということになれば、これをどうすればいいかということについて、積極的に打開をしていく考えがあるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  112. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 先ほど抽象的に申し上げましたが、若干具体的に申し上げますと、中小企業の特に輸出に関連した特別な制度といたしまして、一つは特定中小企業輸出振興融資制度というものを三年ほど前からいたしております。これは、信用保証協会が為替銀行に一定の資金を預託いたしまして、それを元にいたしまして中小企業のほうに融資ができるようにいたしておる制度でございます。それから、もう一つは、この中小企業金融公庫の中に特別のワクをつくりまして、金額は三十八年度三十億というまだ少ない額でございますが、これは、特定輸出産業で長期の輸出契約をとったものに対しまして、その設備資金を供給するための仕組みでございまして、いま申し上げましたような制度は、新しい構想に基づきまして発足いたしたものでございますが、こういう制度をさらに今後も拡充をしますとともに、そのほかの制度もいろいろ研究をしていきたいというふうに考えております、
  113. 福田一

    福田(一)国務大臣 田中委員の御心配になっているところは非常にごもっともなところでございまして、大きい輸出企業あるいは商社の場合には、直接輸出入銀行との関係で融資ができますが、その下請関係になっているようなところがそういう運転資金、あるいは設備資金等を得ようとするときは、なかなか困難な問題がございます。ところが、大企業の場合には法的にも保護されていて、しかも中小企業の場合にはそれができないというようなことは、これは非常に遺憾でございまして、そういう面で、ただいま局長からも申し上げましたが、二、三の制度も実はやっております。また、信用保証関係においても、この中小企業の輸出振興特別保証制度というようなものも実施をいたしまして、ますますそれを拡充強化をいたしておる段階でありますが、しかし、やはり民間銀行あるいはまた政府関係機関等におきましても何かそういう方法がないかということは、かねがねわれわれが考えておるところでございます。ただ、国民金融公庫は、御案内のような、ほんとうの別途の意味を持った金融機関でございますし、それから中小企業金融公庫は、長期資金の貸し付けということでありますから、輸出振興における設備資金ということでこれは十分活用をさせるようにというので、実際問題として貸し付けもいたしております。また、輸出関係はわりあいに重点を置いて貸し付けをいたしております。また、商工中金の場合も、輸出でありますればできるだけ努力をいたしておりますが、今度、これとは直接関係があるかといえば、それだけの金融的な効果があるかどうかは別といたしまして、商工中金にも外国為替の取り扱いをやらせるということをようやく踏み切りまして、今度法律改正をさしていただいておるのでありまして、今後、田中委員のおっしゃるような方向に金融制度もできるだけ充実をというか、改善をいたしまして、そうして中小企業者の輸出振興にもっと積極的に施策ができるように努力いたしてまいりたい、かように考えるのであります。
  114. 田中織之進

    田中(織)分科員 特に商工中金にもいわゆる為替取り扱いを認めるというような形で、勢い融資対象になっておる業界に為替関係からまいりまする金融措置の道も開かれるということは、私は非常にけっこうなことだと思うのです。時間の関係もありますから、これは後ほど資料でけっこうでございますが、先ほど山本局長がお述べになりました特定輸出産業に対する輸出保証制度の適用を受けておるいわゆる特定廃業というものはどういうものがあるか、そういうことと、この制度で融資の対象になっておる関係企業状況等、それから、第二番目の、中小企業金融公庫の特定輸出産業への設備資金の貸し出しが、具体的な会社名まであげていただかないでけっこうでありますけれども、どういうような業種に出ておるか、できれば大体一件当たりの融資金額、三十八年度全体で三十億というワクでございまするから、限定されてくると思うのでありますが、そういうようなものをひとつ資料で出していただきたいと思うのであります。  そこで、次の質問に移りますが、これは輸出入取引法できめておるのだろうと思うのでありますけれども、特に過当競争防止という関係から、輸出についてもある程度の規制を行なっておるというのが私は実情だと思うのでありますが、これは今日の貿易自由化の中で輸入にいろいろな規制を加えるということも漸次できなくなってきつつある反面でありますけれども、もちろん、あくまで国内的な理由からでありましょうけれども、輸出の過当競争を防止するという点は絶えずこれは忘れてはならないことではありますけれども、規制を加えておる。特定の産業については、輸出規制を加えるということは、私は輸出を伸ばすという点から見ていかがかと思うのでありますが、現在、輸出について、過当競争防止という観点だろうと思うのでありますが、そういう規制を加えておるその関係の業種というものは、大体どのくらいあるのでしょうか。その場合にまたそういうたてまえの中で、輸出について行政措置で輸出の特ワクというか、そういうものがある種の産業については設けられておると思うのでありますが、その輸出特ワクというようなものが現在設けられておる産業、業種は大体どのくらいありますか。あるいは輸出特ワクを設けるときの一定の条件というものが私はあると思うのでありますが、そういう条件が、これは一般的に言っていただいてけっこうでありますけれども、どういうようになっておるかというようなことについてお答えをいただきたいと思います。
  115. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 輸出につきまして現在規制いたしておりますのは、ただいま田中分科員のおっしゃいました取引法に基づきますものと、それから貿易管理令によりますものと、二種類ございます。輸出入取引法によりますものは、業者の協定によって行なっておりまして、必要な場合にアウトサイダー規制を政府がかけるというやり方でございまして、品目の数は二百五になっております。この中に、数量規制をいたしておりますものと、数量は規制しないでも、価格とかその他の取引条件を規制しておりますものとか、いろいろ入っておるのでございまして、価格についての協定の行われておりますのが七十七件、数量協定の行われておりますのが百四件、品質についての協定の行われておりますのが三十六件、デザインについての協定の行われておりますのが十四件、それから決済方法、これは主としてLC取引というようなことが主体でございますが、決済方法についての協定の行われておりますのが四十八件、その他それ以外のものも若干ございます。
  116. 田中織之進

    田中(織)分科員 この点についても、いま申し上げた数字あるいは業種等については、資料でけっこうですから、出していただきたいと思います。  それから、二番目にいまお伺いをいたしましたその規制措置から生まれた関係でありますけれども、輸出についての特ワクというものが認められているのかどうか、そういうような業種がございますかどうか。  それから、特ワクを認める場合には一定の条件があるように聞いておるのでありますが、そういう点はどういうふうになっておりましょうか。
  117. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 輸出の特ワクということでございますが、質問の御趣旨は何でございましょうか、国内で生産協定等をいたしております場合に、輸出だけは例外として別に認める、こういう趣旨のお尋ねでございましょうか。
  118. 田中織之進

    田中(織)分科員 一つの対象としては、たとえば具体的にはトランジスターの輸出について特ワクというような制度があるのかどうか、こういうふうに申し上げればおわかりだろうと思うのです。
  119. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 トランジスターにつきましては、数量を協定によって定めておりまして、そのワクの中で輸出ができるというふうになっております。お尋ねの趣旨の特ワクというのがどういう意味か、ちょっとはっきりいたさないのでございますが……。
  120. 田中織之進

    田中(織)分科員 トランジスターについては数量についての協定ができておるということになりますと、たとえば、月間日本から、——これはアメリカその他東南アジア等広範な地域にわたっておると思うのでありますが、それは仕向け地別に数量規制が行われておりますかどうか。そういうようなものが、輸出関係業者へのその数量の割り当てというか、そういうような関係は一体どうなっているのですか。通産省自体でやっておられるのか。あるいは関係の組合、トランジスターについてそういう組合があるようにも聞いておらないのでありますけれども、そういう点はどうですか。この点は歴史的な関係もおありだと思うのであります。かなり出まして、ことにアメリカ向けなどでダンピングなどをやりました関係から数量規制に発展をしてまいったのではないか、こういうように思うのでありますが、その点はいかがですか。
  121. 松浦周太郎

    ○松浦主査 田中さん、そろそろ結論へ入ってください。
  122. 田中織之進

    田中(織)分科員 もうこの問題で終わるわけです。
  123. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 トランジスターにつきましては、これは貿管令を発動いたしておりまして、政府が直接輸出数量を各輸出業者別に決定いたしております。その場合には、過去の一定の基準期間実績をベースにいたしまして、おおむねそれに比例して配分する、全体のワクは、あらかじめ前年度からの増加はどのくらいというように大体のワクを最初にきめまして、それをあと各業者の実績別で割り当てる、こういう方式でいたしております。
  124. 田中織之進

    田中(織)分科員 この点は通産省が直接やっている、このように理解していいわけですね。その場合にもちろん過去の輸出実績というものが土台になるということはわかるわけですけれども、そういう場合の数量の通産省の割り当てが、関係業者にわかるようになっておるのですか。その点はどうなんですか。
  125. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 その基準は公表いたしておりますので、業者は自分の過去の実績からどれだけの割り当てがもらえるかということはわかるようになっております。
  126. 田中織之進

    田中(織)分科員 その場合に、私が聞いたのですが、たしかB級の特ワクとかいうような形で、先ほど通商局長が述べられた過去の実績に基づいて公表している割り当てのほかに、特定の業者については何か特ワクというものの数量割り当てがございませんか。
  127. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 トランジスターの品質によりまして、品質の比較的優秀なものはA級ということで、特にアメリカ市場等で過当競争を起こしませんものですから、販売のルートだけを規制いたしまして、混乱を防止する最小限度の規制をいたしております。それからB級、C級のほうは、まさにアメリカで市場撹乱の問題を起こしたことがございますので、数量割り当てをいたしております。その場合に、過去の一定期間実績により配分をいたしておるのでございますが、そのほかに特に特ワクという制度をやっておりますかどうですか、ちょっとここに直接の担当の者がおりませんものですからはっきりいたしませんが、さっそく調べてお答えいたします。
  128. 田中織之進

    田中(織)分科員 私もこの問題だけで質問を終わるわけでありますが、この特ワクというものがB級についてあるやに私聞いておる。したがって、それはもちろん過去の実績にもよることは当然でありますけれども、同時に、やはり優良な商社——これはメーカー、それから商社、バイヤー、三つの系列で出されておるようでございます。ところが、これはいずれ別の機会にただしたいと思いますけれども、他の面で最近わかったことでありますけれども、必ずしも健全なやり方をしていない、そういうような業者がかなりの特ワクを受けている。そういうところに、これはある意味から見れば綱紀問題にまで発展するかもしれないというような事実、これは私も目下調査中の段階でありますからそれ以上申し上げませんけれども、そういう問題も起こっておるやに聞くわけです。最近の新聞によりますと香港山場には中国大陸、いわば中共出のトランジスター製品が出てまいりまして、価格の点では日本のものよりも安いというようなことで、日本のトランジスターのメーカーとしては非常に注目しているというような新聞の報道もございました。それから、最近は、アメリカその他の市場へ出ているトランジスターとしては、いわゆる香港メードのものが小型のものについてはかなり大きな部分を占めていると私も聞くのであります。ところが、香港でそういうトランジスターの部品等が相当大量に生産されているというようなことは、私もたびたび香港等に参りますけれども聞かない。これは、ある意味から見れば、部品の形で日本から香港へ輸出をされて、香港で組み立てたものが香港メードとしてアメリカなどで大手を振って活躍している。勢いこれは小型のもののようです。最近は、やはり日本の国内のメーカーとしては、新しい型のどちらかといえば大型のFM何石というようなものにだんだん転換しつつあるようにも聞いておるので、そういう実情にあるときに、いま申しますように、数量規制は過去の過当競争防止という観点からやられたのでありますけれども、そのワク、いわゆる数量規制の問題にも一つのやはり抜け穴というか、そういうものができておるのではないか、こういうことが業界でもいま問題になっております。この点は、面接数量規制をやられておる担当者がおらないということでありますが、いずれ具体的な事実がもう少しはっきりしてまいりますれば、あるいはこういう場でなくて局長なり大臣に伺うことになるかもわかりませんけれども、これはひとつお調べをいただきたい。  それから、同時に、最初の問題に戻りますけれども、特にメーカーで国内に販売しないで輸出一本で製品を出しておるというようなところが、やはり新しい品種のものをつくる、あるいは新しいものをつくるというような場合の設備資金の貸し出しの問題については、先ほど述べられました既存の制度以上に、設備資金ということになりますと勢い相当な額に上りますし、資金の量もその意味で大きくなるばかりでなく、償還が長期にわたることになると思いますので、その点のお考えをひとついただきたい。  それから、大臣中小企業に対する金融の問題について非常に関心を持っておられると思うのでありますけれども、やはり、そういう中小の市中銀行のやっておるところのLCの買い取りその他の問題で、最近本会議でも問題になりました歩積みの問題、この問題が出てきておる。LCを銀行が買い取るときには、すでに船積みをしておるわけなんです。いわゆる銀行としても担保というようなものは十分押えられておる。海上輸送の関係になりますものについては、これは飛行機の場合でもそうでありますけれども、それぞれ保険もついておる。そういう中に、やはりLCの買い取りにあたりましても国内の円での歩積みを金融機関が強要しているような面がある点は、これは早急に輸出を伸ばすという点から見れば、それでなくても金融が困っている人たちの問題でありますから、ひとつ特段の配慮をいただきたい、これを要望申し上げて、私の質問を終わります。
  129. 福田一

    福田(一)国務大臣 この輸出関係企業育成、また輸出振興の意味での金融問題については、御趣旨を体して十分ひとつ努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  130. 松浦周太郎

    ○松浦主査 田中織之進君の質疑は終わりました。  次は、竹本孫一君。大体協定は三十分になっておりますから、なるだけ三十分にまとめるようにお願いいたします。
  131. 竹本孫一

    竹本分科員 私は消費者を守るという立場から一、二の質問をしたいと思います。  消費者は王さまであるということが言われておりますけれでも、実は今日消費者ほど国の法によってその立場を守られていないものはないと思うのであります。   〔主査退席、淡谷主査代理着席〕 私どもは、今日政府でも福祉国家の建設ということを言っておられますけれども、その福祉国家を建設する過程において一番最初に注意をしなければならぬものは、一番守られていない消費者を守るということだろうと思います。あるいは一般庶民を守ると言ってもよろしゅございますけれども、この法によって守られていない裸の王さま、あるいは裸の主権者、これをいかに守っていくかということは、福祉国家建設の最大の課題であるというふうに思うのであります。  そういう意味におきまして、今回通産省で消費経済課をお考えになり、企画庁では国民生活局をお考えになっておるというようなお話を承りまして、これは行政の一歩前進であるというふうに考えておるのでありますが、私どもの民社党といたしましても、実はこの国会には消費者基本法というものを提案いたしております。さらに公害防止というものも提案をいたしまして、ばい煙に、あるいは汚水や廃液に、あるいは悪臭によって悩まされておるところの市民をいかにして守るかということを真剣に考えておるつもりでございます。そうした意味におきまして、今回消費経済課ができるということは、私ども歓迎すべきことだと思うのであります。  まず大臣にお伺いいたしたいのでございますけれども、福祉国家建設の一番大きな課題は、こういう守られていない庶民また消費者を守るということが大事ではないかという点であります。この点についての大臣のお考えを承りたい。  さらに、これに関連いたしますけれども、消費経済課をつくる、あるいは国民生活局をつくるというけれども、そこで役所をつくりまして何をやるかということを考えます場合に、私はやはり、たとえばわが党で提案いたしましたような消費者基本法といったような、これからの行政の基準を示す根本の姿勢をまず整えるということのほうが役所をつくるよりも先決問題ではないか。すなわち、この点につきましては、消費経済課ができるということ自体はけっこうなことでございますけれども、できて何をするかという点になりますと、消費者基本法でもつくるということのほうが先でなければならぬではないか、順序がちょっと逆になっておるではないかという点でお尋ねしたいと思います。
  132. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれ政治をやる者といたしましては、何といっても消費者を第一義に置いてものを考えていかなければならないということについては、竹本委員と全く同意見でございまして、そういうふうにいたさねばなりません。また、うちで課を新設したり、企画庁で局を新設したりする、それより先に大事なことは、消費者基本法というようなものをつくるべきではないか、こういう御質問でございますが、実を言いますと、そういうようなものをつくるデータを集めたり、どういう、状況になっているかということの基礎調査をいたしまして、その上に立ってやはり施策をやっていかなければならない、その基礎調査をやる意味合いにおきまして課をつくる、また、その基礎調査に基づいて、法律に基づかないでもできる面があればすぐこれを実行に移す、どうしても法律をつくらねばいけないということであれば法律をつくる、こういうふうに行政をやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  133. 竹本孫一

    竹本分科員 ただいまの大臣の御説明ですと、ちょっと納得しかねる点がございます。基礎調査をやるために部課をつくるということでございますけれども、確かに専管の部課はございませんけれどもいままで通産省の行政のどの部局かにおいてこの大事な消費者擁護の問題について十分に基礎調査はできておるのではないか、また、できていなければおかしいのではないかという点、私どもは非常に疑問に思うのでございます。  さらに、今度の消費経済課と国民生活局で一体役人さんは何人ふえることになっておるのでしょうか、それも伺いたいと思います。  ついでに、池田内閣ができまして、昭和三十五年以来企業の利潤の伸びと国民一般の消費水準の伸びというものはどのくらいの違いになっておるか、これも数字でわかればお教え願いたいと思います。
  134. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいま御質問の第一の点だけ、私ども所管でございますので、お答えいたします。  消費経済課ができました場合に、定員がどのくらいふえるかという御質問でございますが、私のほうといたしましては、新規の定員増はございません。従来ございました定員を転用いたしましてやっていきたいというふうに考えております。大体十三、四名くらいの陣容になると思います。
  135. 福田一

    福田(一)国務大臣 私に対する御質問は、いままでに調査ができておるはずではないか、こういう御質問だと思います。調査はある程度やっております。しかし、御案内のように、重工業局とかその他いろいろな分野にわたっての何千という業種でございまして、そういうものを総合的に一カ所に集めてやるというような、——ほんとうはなければ官房がやらなければならなかったことであります。そういうものをどこかに集めてやる、こういうことをすることによって一そう積極的にいわゆる消費者擁護をはかっていく、こういう意味でございます。
  136. 竹本孫一

    竹本分科員 池田内閣になりまして、最近の流行のことばにアフターケアというのがございますけれども、私はこれは非常にけしからぬことばだと思うのでございます。いま申しております消費者を守るといったような問題、消費者の立場というものは特に福祉国家建設の第一の課題でございますので、これからは、忘れておったからあとで思いついたという意味でのアフターケアでなくて、ファーストケアを、ひとつ消費者の立場を守るということに重点を置いてやっていただきたいと思うのであります。  そういうことに関連をいたしますけれども、第二の問題といたしまして、誇大な広告の問題について二、三伺いたいと思います。消費者を啓蒙するといったような広告というよりも、いかに消費意欲をあおるかということに広告の重点が移ってきているように思います。そのためにまた消費者としてはとんだ迷惑を受けておるという場合が非常に多いと思うのでございますけれども、お伺いしたい点は最近における広告費というものは、二千数百億円ぐらいになっておると思いますが、これが去年あたりどのくらいになっておるか。また、この伸び率というものは、売り上げ総額の伸びよりもぐっと多いのではないかと思っておりますけれども、その売り上げの総額の伸びと、それから広告費の伸びとさらに、これに関連いたしまして、一般の管理販売費の中で広告費というものはいまどれくらいのパーセンテージを占めておるか、お示し願いたいと思います。
  137. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいま資料を持っておりませんので、ただいま御質問の点は後刻資料をもちまして提出させていただきたいと思います。
  138. 竹本孫一

    竹本分科員 それでは、広告が誇大になり過ぎて、消費者を守るという立場から、行政の立場において問題になるということもこれからいろいろ考えられると思いますけれども現行法の中で消費者を守るための誇大なあるいは過大な広告というものを取り締まる部局があるとすればどこか。また、それを取り締まる根拠法があるとすればどういうものがあるか。また、さらに、取り締まりの目標は、品質について、計量について、その他過大広告というようなものはどういう基準で考えられることになっておるものか。これらの点をお伺いいたします。
  139. 乙竹虔三

    乙竹説明員 一般的に、過大広告の取り締まりにつきましては、公正取引委員会が所掌いたしておると思います。ただ、広告業になりますと、広告業の健全な発達をはかるということと、また消費者サイドからただいま御指摘のような広告につきましての指導をいたしておりますのは、通産省企業局の商務課が担当いたしております。
  140. 竹本孫一

    竹本分科員 次に、本論に入りまして、きょうは特に私は前払い式の割賦販売について、いわゆる予約販売について、消費者を守る立場で二、三重要な問題をお伺いいたしたいと思いますけれども、とりあえず予約販売をやっておるミシンとか、その他いろいろあると思いますが、お手元にある資料でけっこうでございますから、いまどの程度の予約販売が実際行なわれておるのか、予約契約の現状について、おもな品目だけでけっこうですが、品目別、金額別にお示しを願いたいと思います。
  141. 乙竹虔三

    乙竹説明員 完備した資料は、時間の関係上そろえることができなかったのでございまするが、前払い式の割賦販売の対象商品はミシン、手編み機械、そのほかに電気器具でございますとか、楽器類、家庭におきますオルガン、こういうのがあるようでございます。通産省では、前払い式割賦販売業者については、法律によりまして登録を受けるということになっておりまして、現在登録されております件数が三十九年の二月二十日現在で百七十九件ということになっております。その中で、ミシンが圧倒的に多くなっておりまして、ミシンは百十六件ということになっております。もっとも、これはミシンの銘柄が百十六あるという意味では決してございません。前払い式割賦販売業者の数が百十六ということでございます。ミシンメーカーは多数ございますが、大手のメーカーが国内販売を主としてやっておるというような状態のようでございます。それから手編み機械でございますが、手編み機械につきましては、登録件数が百十一件ということになっております。登録件数総数で百七十九件中ミシンが百十六、手編みが百十一、おかしいではないかという御疑問があるかと思うのでございますけれども、これはミシンのメーカー、手編み機のメーカーが共通しておりますように、販売業者も大体共通しておりますので、こういう数字になっておるようでございます。なおミシンと手編み機械につきまして、若干調査をいたしたのでございまするが、ミシンにつきましては、ただいま御指摘の前払い式の割賦販売によるものが非常に多くて、これは正確な調査ではございませんが、大体七割程度はこの方式によって売られているということを聞いております。残りが現金売りと普通の割賦で、大体半々ということのようでございます。それから手編み機につきましては、前払い式のものが約三割、残りの七割を普通の割賦のものと現金売りが約半々——若干割賦のほうが多いようでございます。それで、前払い式の割賦販売は、御高承のように、まず毎月一定金額を定めまして、ミシンにつきましては五百円で三十六回払いだとか、四十四回払いでございますとか、五百円くらいが毎月の掛け金で、三十六回ないし四十四回消費者が払い込みまして、そして全部払い込みが終わったら現品を消費者に渡すという方式、これは手編み機においても大体同様のようでございます。
  142. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで消費者擁護の立場からの質問になるわけでございますが、いま一般的に一つのミシン会社で七割までは予約契約でやっておるというお話でございますが、承るところによりますと、ある会社のごときは一つの会社で二百万件以上の予約をとっておる。そして予約によって集めた金が八十億をこえておるというような話を聞いておりますが、そういう例がございますか。
  143. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいま御指摘の数字につきましては、私のほうでまだ調査をしておりませんが、相当多額なものにのぼるであろうということは、先ほどの数字から見て推定できます。
  144. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで大臣にお伺いいたしたいのですが、まだ数字が手元にないというお研でございますから私のほうから申し上げますが、たとえばある会社が二百十万口のミシンの予約をとって、八十億円からの金を預かっておるということでありますが、消費者なり予約者を守る立場から考えた場合に、今日の割賦販売法を見ますと、第十七条で営業保証はせいぜい百万円ということが限度になっている。八十億円金を集めて預かっておいて、営業保証金は百万円である。一体これでバランスがとれるかどうかという問題です。
  145. 福田一

    福田(一)国務大臣 ミシンの場合ずいぶん割賦販売が行なわれておるようでありまして、お説のように相当多額の金額を前払い金として取る、しかもまだ現物は渡ってないというような事態、しかも、その金がもし変な方面に流用でもされてその会社がつぶされたような場合には、消費者に非常に大きな迷惑をかけるのではないかということが御質問の趣旨だと思います。この場合、御説明のとおり、法律におきましてはわずかな金額しか保証金として出ておりませんので、法は本来消費者を守るのだというたてまえからいきますと、はたしてこれで十分であるかどうかということは疑問があると思うのでありまして、十分今後研究をさしていただきたいと思います。
  146. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣、御研究をいただくということでございますけれども、私の考えでは、後ほどにもいろいろとこの矛盾を指摘いたしたいと思いますけれども、法の改正が当然必要じゃないかという考え方に立っておるわけでございますが、これは後にもいろいろ指摘をいたしました上で、割賦販売法が消費者を守るという立場から見て緊急に改正せらるべきであるという点についての最終の御意見を、最後にお伺いいたしたいと思います。  そこで、いまの百万円の問題でございますけれども、これは本来ならばなぜ百万円になっているかという立法過程の事情を考えてみますと、割賦販売というものは中小の業者にやらせるという意味で問題が取り上げられたのだと思います。したがいまして、百貨店やメーカーには、そういう予約販売というものは原則としてやらせるべきでないというたてまえに立ちまして、法の第十五条では場合によってはその登録を拒否することができるということがあったと思いますが、そういう拒否をされた例があるかどうかということもひとつ伺いたいし、さらに今日は大きなメーカーがみんなかってなといいますか、特別な販売会社をつくって、実はこの第十五条は現実にはすっかり抜け穴ができて役に立っていない。法の本来は、中小企業を守る立場に立って考えられたようでございますけれども、それがためにまた百万円ということも、当時としてある程度意味があったわけでございますけれども、今日の事情においては、大メーカーがみなそれぞれ別働隊としての月賦販売会社をつくっておるんじゃないか、そうしてそこへ抜け穴ができまして、大きな金を集めておるんじゃないかということでございますが、この点の現実に対する当局の認識を伺いたいと思います。
  147. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいまの御指摘の前に、先ほど大臣の答えられましたものを事務的に若干補足させていただきたいと思います。  消費者保護の立場から保証金を積ませるという規定は十七条にございます。確かに御指摘のように、百万円という問題がございますが、そのほかに月賦販売業者の資産が健全であるならば相当消費者保護になるという立場から、第十五条、これも御高承のとおりでございますが、第十五条には、読んでみますると、「通商産業大臣は、第十二条第一項の申請書を提出した者が」これは前払い式割賦販売の申請でございます。「次の各号の一に該当するとき、又は当該申請書若しくはその添附書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければない。」ということがございまして、まず法人でない者はいけません。これが第一号。それから第二号に「資本又は出資の額が購入者を保護するため必要かつ適当であると認められる金額で政令で定めるものに満たない法人」という条項がございます。さらに第三号に「資産の合計額から負債の合計額を控除した額が資本又は出資の額の百分の九十に相当する額に満たない法人」こういう条項がございまして資産の十分でない者は、販売業者として登録の申請をしてまいりましても、拒否しなければならないという義務が通産大臣に課せられているわけであります。  第二に御指摘の、それでは一体拒否した例があるかという御質問でございまするが、私のほうで調査いたしましたところ、法律的に申請を拒否した例はただいまはございません。ただ、事実上申請前に行政指導で、それは資産が不十分ではないですかといろいろな行政指導をやっておりまして、申請書の出てくる前にそういうふうな法律の必要条項を充足するように指導をいたしておる次第であります。
  148. 竹本孫一

    竹本分科員 いま十五条についての御説明がございましたけれども、実は立法の当時には今日のように予約販売が発展するということは、おそらく考えてなかったと思うのです。そういう意味で、この規定にもかかわらず、また資産の問題いろいろありますけれども、たとえばいま申しましたように、八十億円の金をもらっておる、こういう現実に対して、この十五条のそれぞれの規定というものは、一体どれだけささえの柱になるかということは、やはり大きな疑問だろうと思います。しかし、この問題は、時間もございませんので次に移ってまいりたいと思います。  次は、解約手数料の問題でございますが、これは普通の場合には、消費者は予約をするという場合は、一応解約ができるかという程度の話を聞いて予約するわけでございますけれども、一体数料はどれくらい引かれるものかほとんど考えていない、あとでびっくりする程度じゃないかと思うのです。  そこで、お伺いをいたしたい点の一つは、通常要する経費、通常要する費用といったものを控除することになるわけでございますが、その通常要する経費、費用というものは各社によってあまりにも違う、三倍になっているところがある。こういう点で、やはり通常要するというのは一体どの辺に基準を置いて考えるかということになりますと、各社あまりにも違い過ぎる。この点について行政当局はどういうお考えを持っておいでになるかということが一つ。  それから、さらに解約手数料というものは、大体このくらいは引かれるのだということを、最初に予約申し込みを受けるときに言ってやるのが消費者を守る立場からあたりまえの話ではないか。さらに解約をしましてもその金を一体いつ返すかということについて、今日消費者を、予約者をどの程度守ることになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
  149. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいまの解約手数料のことでございまするが、条文から申しますると、第六条に関係条文がございます。御高承のとおりでございますが、契約の解除に伴う損害賠償等の額の制限というところで、「割賦販売業者は、指定商品に係る割賦販売の契約が解除された場合には、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に掲げる額とこれに対する法定利率による遅延損害金の額とを加算した金額をこえる額の金銭の支払を購入者に対して請求することができない。」という規定でございまして、ただいまの前払式割賦販売につきましては第三号が該当するかと思うのでございますが、第三号によりますと、「当該契約の解除が当該商品の引渡し前である場合」これだと思うのでありますが、これによりますと「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」というふうになっております。ただいま御指摘のございました通常要する費用の額は何かという仰せは、おそらく号の解釈ないし運用の実際、及び通産当局はこれに対してどういう態度ないし指導をしておるかという御質問かと思うのでございますが、この通常要する費用の額ということは、契約の締結ということでございまするので、こまかなことでは契約書の紙代であるとか印紙代、これは非常にささいなものでございまするが、それ以外にセールスマンが契約をとるために相当努力をするという場合の経費、なお契約が締結されましてから後に集金が要るわけでございます。そういうふうな経費、それから、さらに履行のため通常要する費用の額というのがございまするが、これは立法当時予想いたしましたのは、前払い式の場合には、注文をとりましてからそれを生産に移すわけでございますので、生産の準備をせねばいかぬ、生産を開始せねばいかぬ。それが途中で解除された場合に、生産者側も損害を受けるというふうなことを考えて、こういうふうな字句もあったかと思うのでございますが、解釈はそういうことではなかろうか。  それから、なお現実の実情でございまするが、これはまだ全部調査はできておりませんけれども、この契約解除に伴います手数料と申しますか、販売業者が差し引く手数料、お得意が金を積みまして、その金を返すわけでございますが、その場合に、ただいま読みました条文による費用の額、それを手数料として引くわけでございますが、その手数料は、ミシンの例でございますと、これは各社によって違うようでございますけれども、一応一例といたしましては、五百円の毎月払いで五回積み立てるというふうな場合、消費者と申しますか、お得意は、二千五百円の金を積み立てたわけでございますが、それに対しまして手数料として大体二千円程度を引いて五百円しか返さぬというふうな、調査して実はいささかあれしたのでございますが、比較的高額の手数料を取っておるようでございます。この辺につきまして、通産事務当局とたいしましては、法律上特にこれを指導する義務ありやいなやは若干問題はございますけれども、この辺につきましては、今後相当指導を要するのではないかというふうに考えております。
  150. 竹本孫一

    竹本分科員 いま御説明のありました必要な通常要する経費についての項目については、もちろん問題ありませんが、私が特に問題にするのは、いまお話しのように通常要する経費というのが、各社によって実は非常にばらばらなんです。それがために国民の常識では、初めから全然知らされていないし、あとで差っ引かれてみてびっくりするというようなことになっておるのでは問題にならぬじゃないか。千円引いているところもあります。二千円引いているところもあります。三千円以上引いているところもある。こういう乱暴な解約手数料によって、実はだれがもうけるかという問題にもまたなるわけなんです。消費者を守るという立場に立って考えた場合に、これは重大な問題でありますし、さらに問題になりますのは、その解約手数料をとるというか、あるいはこれが今度は切りかえられて、月賦販売に切りかわる、そういったような関係において、これは会社経営の一つの秘密のかぎになっておるという点が問題なのでありますが、時間がありませんので、それは後の問題と関連をさせて論ずることにいたします。こういう問題はちょっと法律自身が——重要な問題でごさいますが、みんながあまり注意をいたしておりませんけれども、消費者保護という問題がこういうふうに大きく取り上げられるときに、ぜひこれはまじめに考えていただきたいと思うのであります。  その意味でもう一つお伺いいたしたい点は、いまの予約の問題でございますけれども、大体承りますと、いま多いところは月産能力の三十倍から四十倍の予約をとっていると思うのでございますけれども、一体何倍まででもとらせるつもりであるか、あるいはまた、これは法によって予約の一定の限度というものを、ある基準で取り締まるべきじゃないか。小さな会社が何十倍でも予約をとって、それで資金繰りをやっておる。要するにこれは会社の資金繰りの具に供せられておるということでございますので、私がお伺いいたしたい点は、その月産能力を中心に考えました場合に、その何倍くらいまでかで押える御意思はないのか、幾らでもとらせるつもりでおられるのかどうか。さらにこれが、調べてみますと大体七割くらいは、予約でとっておいて途中から月賦に切りかえさせるということで、会社の経営のいろいろのやりくりをしておるわけでございますが、いま二回なら二回とっておる、それが七割もぐるっと変わっていった場合は、一体何カ月後に品物が入るか、全然見通しがつかない、こういうような実情にございますから、切りかえのほうはもちろん制限するわけにいきませんので、予約そのものを一体どの辺に制限することが妥当と考えられるのか、あるいは制限はしないで野放しにしておかれるつもりであるか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  151. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、現行法によりますと、そのような制限をせねばならない、ないしは制限ができるという法律上の根拠規定はございません。なお先ほど御指摘ございましたように、前払い式の割賦販売業者はメーカーでございませんので、メーカーと別働隊、完全なる別の商人である場合があり、ないしは先ほど御指摘のございましたように、一応メーカーの子供と申しますか、系統ではあるが、法律的には別法人というかっこうの、独立商人のかっこうになっておるわけでございます。したがいまして、メーカーの生産数量と各商人、そういう月賦販売をやる販売業者の販売予約数量とどういう関連を持たせて今後ものを考えるのがいいか、今後の勉強課題かと存ずるわけでございますが、ただ幸いに、最初にちょっと触れましたが、現在までのところは、ミシンの例におきましては、国内に販売されておりますのは大メーカーがつくっておる比較的かたい——大きいからかたいというわけでは決してございませんけれども、比較的、経理、資産内容のかたい生産業者の製品が出回っておるというふうな関係もございまして、あまり大きな問題は起きてないようでございます。しかし、御指摘の点は勉強させていただきたいと思います。
  152. 竹本孫一

    竹本分科員 別働隊でありましても、あるいは同じメーカーが販売をやっておる場合でも、私は問題の本質にはあまり関係ないと思うのです。私が伺っている点は、たとえば二百万なら二百万の予約を受けておって、それの七割、八割がかりに月賦に切りかわる、そういった場合に、ものを納める責任が持てるのかということでございますが、一体持てるとお考えになりますか。
  153. 乙竹虔三

    乙竹説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、私法上と申しますか、経済取引の一般原則というものが強く働く問題でございます。ただ、消費者を保護するという必要性が非常に強いという場合には、何らかそこに規制をせねばいかぬということでございますので、今後研究をしてまいりたいというふうに思います。
  154. 竹本孫一

    竹本分科員 消費者に品物が渡らないという問題でいま論じたわけでありますが、もう一つ重大な問題は、資金の問題でございます。時間もございませんのでこの問題に最後に入りたいと思います。  バランスシートなんかを見ますと、売り掛け金と予約前受け金というものは、各社において大体バランスをとっておるようであります。ということは、裏から申しますと、予約で集めた金で、月賦で納めた売り掛け金資金を埋め合わしておる、これがいま予約販売をやっておるいろいろの会社の資金繰りの実態ではないかと思うのです。そこで問題は、それがうまく続いていく間はけっこうでございますけれども、ある段階に入りまして予約分は伸びがとまった、しかしまだ月賦へ切りかえが多い、あるいは解約が多くなったといった場合に、そのバランスが破れた場合に、会社のほうは、それを埋め合わせる方法としては借り入れ金によるか増資によるかしか方法はありません。ところが御承知のように、その増資もなかなかできないという実情の中で、インチキと申しますか何と申しますか、未実現の利益をいたずらに計上してみたり、費用の繰り延べをやってみたりして、いろいろのメーキャップをして税務署からしかられた例もあるようであります。そういう実態の悪い会社が数多くこれから出てくるだろうと心配をするのでございますが、そうした場合に、一体だれがどういう責任を持つのか、またどういうふうにして消費者を保護されるかということについて、これは特に重大な問題であります生産能力の問題から見ても、月の生産能力の三十倍、四十倍といったような予約をとる、それに対して何らの規制もない。いまのお話では、前向きでひとつ規制を検討しようということばでございますから、それで了承いたしますけれども、これに規制がないということは全く了解できません。さらにそれを規制をするということにいたしましても、それはこれからの問題でございますが、経営の面から見た場合に、この売り掛け金と予約前受け金とのバランスが破れて、会社が経営上非常に重大な危機に立った場合に、最後は予約者というものは保護されないということになる心配がありはしないか、この点について。
  155. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘になりましたいろいろの点でございますが、確かに法全体を通じてみて、あなたのおっしゃるように問題点が多いようでございます。したがって、事務からもいろいろ御答弁を申し上げておりますが、十分ひとつ研究をさせていただきたいと思います。
  156. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで最後に、預けた予約の金の問題でございますが、この金が実は先ほども申しましたように月賦で売って品物を渡す、その品物をつくる生産資金その他に回されておるじゃないかという私は心配をしておるわけであります。しかも、生産がうまくいっている間はいいんだけれども、いかなくなった場合、あるいは今度の景気調整で会社が参った場合、予約者は一体どういう保護をされるかということになりますと、虚偽の申告とかなんとかいったような問題でなくて、予約者は最後にはとんでもない目にあうのじゃないか。それを事前に守るために、一体どういう監督をすべきかという問題であります。そこで私は、この予約前受け金といったようなものは、いわば一つの目的貯金であると思うのです。預かった金は一体だれの責任でどういうふうに運用するかという問題について、今日どういう法的な規制がございますか。
  157. 乙竹虔三

    乙竹説明員 結論から申し上げますと、ただいま預かった金につきましては法的規制はございません。販売業者が自己の責任におきまして運用をいたしておるわけであります。ただ法律といたしましては、消費者保護について全然その辺考えてないというわけではもちろんございませんので、そもそも先ほど御指摘ございましたように、割賦販売法そのものが、一面には割賦方式によります流通の確保、拡充とともに消費者保護をねらった法律でございますので、割賦販売業者の登録につきまして、先ほど御披露いたしましたようないろいろな法律の規制をしておるという次第でございます。
  158. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣にお伺いいたしますけれども、いま申しましたように、八十億円、六十億円という金を預かっておる。それに対して業者の自主的な、良心的な運営にまかせるということで、消費者経済の重要性がいわれておるときに、この予約者を十分守ることができるというふうにお考えになりますか。あるいはこれは予約販売がここまで時代の流行になっておるのでございますから、割賦販売法を修正をして、その資産の運用という問題について、政府当局がもう少し責任のある監督や指導をやるべきであるというふうにお考えになりますか。この点非常に重要な問題でございますので、大胆のお考えを承りたいと思います。
  159. 福田一

    福田(一)国務大臣 一般論で申しますれば、何らかの方途を考える必要があるのではないか、こう存ずるのであります。法改正その他を含めまして、そういう点を十分研究する必要はあると思いますが、具体的には、必ずしも全部が全部不安視されるかどうか、その場合に、非常に資産がある人で、たとえば銀行にも信用がある、預金も十分持っておるというようなことであれば、必ずしも全部が全部そうなるとは思いませんが、しかし、中にはそういう資産が非常に弱く、しかもたくさん金を前払いの形で取っておるというようなことでありましたならば、非常に危険があるではないかというお考えは、われわれもごもっともな御意見だと思っております。
  160. 竹本孫一

    竹本分科員 いまお話にありました一般論としては、私も多くの会社の良心的な運営に期待をして信頼してよろしいと思いますけれども、問題は最後の一人の消費者を守るというところにございますので、何十億という金を預かって、そのままそれを生産資金に回わして、それがまた見込み違いでつぶれても、その資産の運用について何らのコントロールがない。そのために会社がつぶれた、ものは渡せない、取られた金はどうにも保護されないというところが非常に問題なんでございまして、一般論としては会社の運営に信頼するといたしましても、やはり法のたてまえ、行政のたてまえから申しますと、万一の場合について、消費者をどこまで親切に見てやるかということが問題だろうと思います。いま大臣の御答弁の中にも、そういうふうに受け取れる節がありましたけれども、どうしてもこれは再検討していただいて、割賦販売法というものは、これだけ発展をした時代に即応いたしまして、何とかしなければ万一の場合予約者は全く保護されない立場に立っておるということを、強く私は指摘いたしたいと思うのであります。  これと関連をいたしますけれども、一体金を預かって、その資産の運用について野放しになっておるという例は、ほかにあまりありません。これはこれだけ金が集まるということを予想しなかったから、そういう規定がないのです。ところが実際はいま申しましたように、二百が人もの者が一つの会社に予約をして、そうして六十億とか八十億の金が一つのところに集まってくるということになりましても、なおかつそれを守る、監督する法がないということは、ほかの場合を考えてみましてもバランスがとれません。時間もありませんので簡単に申し上げますけれども、たとえば貯蓄銀行法というようなものを見ましても、これは資金運用の制限をいたしておりますし、また支払い準備のことも一規定いたしております。相互銀行法も同じであります。信託業法につきましても、その十一条で資金運用の制限をいたしております。無尽業法においても、十条において資金運用の制限をいたしておる。保険業法も同じだ。要するに庶民から大事な金を預かっておるという問題につきましては、そこで何らかの資産運用の制限を受けていないところはないのであります。そういう意味で資産運用について公債、社債を買うか、不動産の買い入れをやるか、銀行に預けるか、その内容は別といたしまして、とにかく一般の原則としてこれだけの金を預かっておいて、しかもその資産運用について全然コントロールがないということ自体は重大な問題でございまして、やはり通産大臣においてどうしても割賦販売法にその面からの——資金運用の面だけから見ましても法改正をして、そうして予約者を守る全部集めればおそらく何百億という金になると思いますが、これだけの金を、だれもどういう規制もないということはどうしても了解ができない。もう一回大臣のお考えを承りたいと思います。
  161. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説の点、実は私もお伺いしておってよくわかるのでありまして、確かにそういう御指摘のような欠陥もあると思います。したがって、今後行政面あるいは立法面において十分考慮をしてまいりたい、かように考えます。
  162. 竹本孫一

    竹本分科員 最後にもう一つ、これに関連をいたしますが、やはり同じような問題が、これは通産省の管轄ではない問題になるかもしれませんが、土地家屋の問題、あるいは不動産屋というかそういった問題、あるいは旅行会といったようなもので、これと同じような意味で人の金をどんどん預かる。そしてたくさんな金をたくさんの人から預かって、その資金の運用、資産の運用について全然制限がない、あるいは監督規定がないといったものがたくさんあると思います。この問題は政府において当然消費者を守り、庶民を守る立場において考えていただきたいと思います。  私は、時間がまいりましたので、これで質問を終わりますけれども、先ほど申しましたように、無制限に予約をとるということについて全然監督規定がないということ、それから資産の運用、たいへんな人々からたくさんの金を預かっていて、その運用について少なくとも貯蓄銀行法や無尽業法等に書いてある程度監督規定というものは当然なければならぬ。それをぜひひとつお考えになることを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  163. 淡谷悠藏

    ○淡谷主査代理 これで竹本孫一君の質問は終わりました。田中武夫君。
  164. 田中武夫

    田中(武)分科員 いろいろと通産省関係の行政についてお伺いをいたしたいのですが、何ぶん制約せられた時間の中で多くを伺いたいと思いますので、単発的になろうと思いますが、答弁者のほうもそのつもりで御答弁願いたと思います。  まず、中小企業の問題についてお伺いいたしますが、御承知のように、中小企業基末法が昨年の通常国会でとにもかくにも成立いたしました。したがって、本年度の予算の編成あるいは中小企業に対する施策は、この基本法にのっとってやらるべきだろう、このように考えますが、まず中小企業基本法第一条の政策の目標と照らし合わせて、どのようなことを考え、どの程度の予算を考えておるか。簡単でよろしいですから……。
  165. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘がありました基本法第一条の政策の目標に即しまして、通産省といたしましては、来年度の一般会計予算、財政投融資、税制、各方面にわたりましてこの政策目標に即した政策を打ち出していこう、また、それの裏づけとなる予算、税制、財投ということを考えております。また法律につきましても、すでに本国会に六本の法律案、関連法規を出しております。予算につきましては、御存じのように総額約百六十六億円でありまして、前年度に比べまして約四〇%増の予算を確保しております。財政投融資につきましては、約二七%増の千六百十七億円の財政投融資を確保いたしておる。それから税制面につきましては、御承知と思いますが、まず第一に、小規模事業対策といたしまして、家族専従者控除を、ほかの扶養控除と違いまして、まあこれは大幅と私が申し上げては言い過ぎかと思いますが、相当の控除の引き上げをやっております。なお、資本蓄積のためには、同族会社の留保金の課税の軽減、また中小企業の設備近代化を促進いたしまするために、合理化機械を設置したときには三年間固定資産税を半減する。また輸出振興のためには、商工組合等に中小企業者が輸出のために積み立てをした金を非課税にする。これは売り上げ金の二・五%——一般に個人で積む場合は一・五%でございますが、組合の場合には二・五%ということで、輸出振興税制につきましても相当な配慮をするというようなことで、まあまあ一般会計、財政投融資、税制、三つを含めて見ていただければ、革新的といえるかどうかというのは私も非常に疑問を持っておりますが、まあ画期的な政策の前進ということは言い得るんじゃないかというふうに考えております。
  166. 田中武夫

    田中(武)分科員 とにかく基本法ができたんだから、それにのっとって前向きの施策なり予算を考えていく、そういうことで、昨年に比べて若干予算等も出ておることはわれわれも認めますが、この第一条、及び第三条の国の施策、いろいろあげてあります。しかし、私は、その中心はいわゆる格差是正だと思うんです。この基本法の審議過程におきまして、いわゆる大企業中小企業が二重構造なりや、あるいはひずみであるかというようなことをだいぶ論争いたしました。われわれは、体質的な違い、経済の二面構造、こういうことを主張いたしまして、二重構造の解消、こういうことばを使いました。しかし、政府のほうでは、中小企業、大企業といえどもこれは別個の問題でなく、一つ産業における傾斜である、こういうようなことでありましたが、いずれにいたしましても、中小企業基本法の一番の眼目は、格差是正、格差解消にあろうと思うのです。その格差解消につきまして、あるいは格差是正——政府は格差解消ということばをきらうようですが、格差是正について、一体どのような施策と予算を持っていますか。
  167. 中野正一

    中野政府委員 格差是正のために行なうべき国の施策として、第三条に、第一条の目的を達成するため次のようなことを国としては総合的にやるべきであるということをいっておるわけでありますが、この各項目にしたがいまして予算をそれぞれ——格差是正について非常に十分かといわれますと、私としてはまだ十分とは言い切れないと思いますが、それぞれの項目につきまして、新しく、あるいは従来の制度の拡充という方面につきまして、それぞれ考えております、たとえば設備の近代化につきましても、百十四億円の貸し付けベースを百四十数億円というように、これは主として中小企業の中で規模の小さい業者に対する設備の近代化でございますが、そういう点は配慮いたしております。それから次の技術の向上につきましても、新しく開放研究室の創設とか、あるいは中小企業者の庭先に行って指呼をしますところの巡回指導、あるいは中央にありまする中小企業の指導センターに対して中小企業に高等研修をやるという施設なり制度を設けるというふうなことをして、いろいろ考えております。特に次の四番日の中小企業の高度化あるいは小売り商業の経営の近代化というような、いわゆる中小企業の構造の高度化として考えておること等につきましても、相当大幅な予算を確保する。同時に、これは金融面も大事でございますので、こういう点には重点を置いて考えておるわけであります。ただ、こういうふうな、いま申し上げました設備の近代化、技術の向上、経営の合理化、あるいは中小企業構造の高度化、共同化等々を通ずる中小企業構造の高度化というようなことは、いわゆる物的生産性の向上というための施策でございまして、これとあわせて、どうしても中小企業を取り巻く環境を整備する。いわゆる中小企業者が置かれておる環境から、価値実現性といいますか、価値実現力といいますか、つくった品物の価値がそのとおりの値段で売られるようにやらなければならぬ。この点が中小企業対策としては非常にむずかしい点でありまして、一般的にいっていわゆる中小企業者というものは、非常な過当競争によりまして価値がそのとおりに実現できにくいような環境にある。また、最近問題になっておりまする下請関係等について見ましても、どうしても親企業から便宜主義によってしわを寄せられやすい。そのために過当に品物が売れないというような問題がありまして、今後はむしろ予算面にあらわれてないそういう面に力を入れていかなければいかぬのじゃないかというふうに考えられます。  さらに十九条のいわゆる事業活動の機会の適正な確保という問題につきましても、先般の中小企業政策審議会におきまして、大企業中小企業の分野調整等の問題につきましていろいろ議論がございますが、政策審議会としては、一応の結論を得られたようでありますので、こういうものに基づきまして今後各省と折衝して、法案をさらに追加して出したいというようなことで、要するに今後の中小企業対策の柱は、体質改善と環境整備、言うなれば物内生産性向上と価値実現力の弱いところを是正する、この二つになるわけでございますので、そういう全般にわたって——さらに、最後に労働対策でありますが、最近は、御承知のように労働需給の関係がすっかり変わりまして、この意味では、いわゆる二重構造が解消する契機をもたらしつつあるということは、私も認めるわけでありまして、そういう点につきまして、基本法の示すところに従って全般的に中小企業対策を大きく前進させていきたいというのが、われわれの願望でございます。
  168. 田中武夫

    田中(武)分科員 いまいわゆる二重構造と——二重構造と言ってはだめなんですよ、絶対に。基本法審議のときには、大臣は二重構造ということばを使わなかった極力避けた。それはそれとして、大体並べられたことだと思うんです。特にいま問題は、格差是正のために、まず近代化だとか技術向上が必要です。しかし、一番いま急いでおることは、やっぱり労働問題、労働対策だと思うのです。きょうは労働省関係が来てもらっていないので、あまり深くお伺いしてもどうかと思いますが、要は、いま中小企業に人が集まらない、ことに若い人が集まらない、こういうことなんですね。これは立ち寄らば大樹の陰という、大企業を崇拝するような気持ちもあろうと思います。しかし、賃金なり厚生福祉施設ということも問題だと思いますが、中小企業庁として中小企業の労働力確保にどのような手を考えておるか、あるいは打っておるか。もう一つは、やはり中小企業の市場確保だと思うのです。あなたは、私お伺いしようと思っておったところ、あなたのほうから十九条をお持ち出しになったのですが、これは適正だと言って逃げておる。私は、中小企業の市場確保ということは、適正な云々というようなことではなく、明確に中小企業の事業分野を確立する必要があろうと思うのです。そういう点について、労働問題と市場確保についてお伺いします。
  169. 中野正一

    中野政府委員 確かに最近の中小企業の問題の大きな一つの視点としては、必要な労働力が確保できなくなっておる、またその確保した労働の価値というものが非常に上がってきて、中小企業の人件費が非常に上がっておるということで問題を起こしております。中小企業庁といたしましても、中小企業の労働関係適正化、あるいは従業員の福祉向上というようなことには今後ともさらに力をいたしていきたいということで、実は私は着任をいたしましてから、さっそく関係者、特に労働問題ということになりますと、中小企業庁だけではできませんので、労働省、厚生省、建設省、自治省等の関係の局長にお集まり願いまして、今度、実は来年度から、ささやかでございますが、予算もいただきまして、労務対策の連絡協議会というものを持ちまして、関係省の中小企業の労働関係の従業員の福祉向上、あるいは労働力確保等について、いろいろ私のほうから希望を出しましてやっております。それからまた、今度予算を取る際にも、この機関が非常に働いてくれまして、相当大蔵省でも認めてくれたというようなこともございまして、ぜひこういう機構を活用しながら、中小企業庁としても努力いたしますが、関係省の協力を得まして、中小企業の労働関係の問題の解決をはかっていきたいというふうに考えております。  それから第二の御指摘の問題につきましては、これはあらためて中小企業団体組織法の一部改正ということでやりたいと考えておりますが、調停審議会の機能も拡充したいと思っておりますが、中小企業がいままでやっておるプロパーの分野に今後絶対に入ってきちゃいかぬというふうなやり方については、これはわれわれも経済発展のために好ましくないと考えております。先般来の政策審議会におきましてもずいぶん議論がありましたが、結局皆様方の御意見で、そういううしろ向きの対策でなくて、前向きの、中小企業の骨格を強める。しかし、そういうことをやる間に、大企業のほうが急激に出てきたために混乱を起こすというようなことがあってはいかぬので、ことばは悪いかもしれませんが、緊急避難的な意味合いにおける何らかの調整措置というものは要るじゃないかというような御結論でございまして、いままだどういう法案になるかわかりませんが、この審議会の結論に即しまして、関係省と相談をいたしまして法案を提出したいと考えております。
  170. 田中武夫

    田中(武)分科員 長管なかなかべらべらとうまくしゃべっておりますが、具体的に手を打ちましたということ、たとえば労働対策に対して、いま中小企業が本年度卒業する中卒あるいは高卒採用についてどの程度希望がかなっておるかといったら、全然かなっていない、むしろ大企業の要求を満たすだけで新しい卒業生は一ぱいだというような事態なんですね。だから、卒業生のうち——これは統制とか、そういうことはどうかと思うのだが、中小企業に何%向けるんだというようなことは、これは企業庁ではできないと思う。しかし、労働省に対して、中小企業庁中小企業立場から、労働力確保のために、そういう作文的な審議会を設けるとかあるいは打ち合わせ会をするとかいうことでなく、ぴしりと、町制くらいは確保してもらいたい、あるいはそのためにはこういう方法も必要であるとかいうようなことを申し入れることは考えておりませんか。あるいは労働省、ことに職業安定所関係に対して、中小企業の労働力確保のために的確なひとつ申し入れをする、こういうようなことはいかがでしょうか。
  171. 中野正一

    中野政府委員 中小企業に適正な、そして必要な労働力を確保するというためには、やはり根本は中小企業体の合理化、近代化というものを中心に進めていくということが基本であります。しかし、最近のような労働需給の状況でございますので、さらにいま言った近代化意味合いの中には、福利厚生施設を十分するとか、そういう方面におきましては、予算あるいは財投等について相当確保ができるというふうに見ております。ただ、いま先生の御指摘のような、中小企業へ何人くらい人をよこせ、そういうことで労働省と交渉するというような性格の仕事では、適当でないかと思います。ただ、今後さらに長期にわたってこの問題というものはどんどん深刻化してくるのじゃないかと私ども考えておりますので、さらに勉強いたしまして、適切な手を打ちたいというふうに考えております。
  172. 田中武夫

    田中(武)分科員 福祉厚生、賃金というような、あすの中小企業として考えないで、現在いまこの段階において人が足らないのをどうするかということです。ことに、いまの職業安定所の扱いを見ると、高卒以上は自由にやっていますが、中卒は一応職業安定川を通らなければ就職をさせないというような、やはり一種の干渉行政をやっているわけなのです。そうならば、ある程度中小企業向けの労働力確保ということもできるのじゃないか。昔の戦時中ほどではありませんが、中卒だけは、いまでも一応いずれにしろ職業安定所の窓口をくぐって、就職しているのですよ。その点についてどうです。もう少し強く要望するような気持ちはないかどうか。  もう一つは、福祉厚生施設に関連するのですが、たとえば厚生年金の還元融資等々につきましても、まずある規模以上のところは、借りやすくなっている。ところが、ほんとうの小さいところは借りられないわけです。そこで、その小さなとこが数社寄って、そして一つの寄宿舎なりクラブなり、そういうものをつくる、そういうことに対して、これもあなたのほうだけの権限じゃどうかと思いますが、厚生年金の還元融資ができる、あるいは還元融資の条件として耐火建築で坪何ぼとかいうようなことがありますが、そういうのを中小企業あるいは零細企業向けに基準を下げて、還元融資がはかれるような方法をあなたのほうとしては厚生省なりに申し入れる用意がありますか。
  173. 中野正一

    中野政府委員 中小企業に必要な労働力の確保のために、いままでのようなやり方でなくて、さらに労働省との関係におきまして強力に働きかけたほうがいいじゃないかということは、ごもっともでございますので、その方向で研究したいと思います。  それから厚生年金の還元融資でございます。これにつきましては、個々の問題としてはいろいろ中小企業庁のほうでお世話を申し上げてやっておることはございますが、いま御指摘のあった、特に零細な方面の共同施設的なものに対する補助のやり方が、現在の制度、運用で十分そういうところまで活用ができにくいというような事情にあろうかと思います。その点も、調査をいたしまして善処いたしたいと思います。
  174. 田中武夫

    田中(武)分科員 たとえば貸し付けの条件に、耐火建築で九十坪以上とかなんとかいうのがあるのですね。そういうのなら、小さいところでは手が出ぬのですよ。だから、それを三十坪に減らすとか、特に零細といいますか、この法律でいえば小規模事業者に対して、特別な基準を設けて還元融資させるような方法を、これはあなたのほうがやらなければ、厚生省はやりません。大蔵省もやりません。もう一度お伺いしますが、そういうことについて具体的に、たとえば九十坪とあるのを三十坪に直すとか、貸し付け基準を小規模事業者に対しては緩和をする、そういうことをぴしっと申し込む用意がありますか。
  175. 中野正一

    中野政府委員 至急研究いたしまして、必要があれば、基準の改正等についても交渉いたしたいと思います。
  176. 田中武夫

    田中(武)分科員 二時間くらいやれるのだと思ってたくさん来てもらったのですが、時間が三十分だそうで、そこであまりやっておると、せっかく来てもらった人に聞かずに終わりますので、簡単にいきますから、中小企業基本法をちょっと見てください。  第七条の調査の結果を公表しなければならない。これはまだ公表していませんね。それについてどういうようにするのか。  八条の年次報告、これは農業基本法によるものは先日報告がありましたが、中小企業基本法にのっとるものは、まだ出てきませんね。それはいつぐらいに国会に年次報告ができるのか。それから八条には一項と二項とあって、過去の報告と将来に対する施策を明らかにしなければいけない。だから、いわゆる八条の年次報告について、どのような内容のものをいつ出す運びになっておるのか、それをお伺いいたします。  それから飛ばしまして、十八条の下請取引適正化です。これは明確にうたってあります。しかし、現在の下請関係といえば、下請代金支払遅延等防止法があって、公取が若干目を光らしておるといいますが、これも手が回らない。しかもこれははっきり言うと、どうもにらまれるから、泣き寝入りが多い。そこで下請関係法律を整備するというようなことも、大臣等からちょっと聞いたこともあるのですが、どのように整備しようとしておるのか。  もう一つは、先ほどあなたが言いました十九条に関連してですが、調整機関、紛争処刑、こういうものにつきまして、今度中小企業団体組織法で改正しようとしていますね。そうするなら、中小企業団体組織法の適用を受けるいわゆる商工組合はできる。どういうように改正するのか知りませんが、基本法でいうところの紛争処理とかなんとかが、若干はきくわけです。しかし、他の団体はどうか。たとえば小売りについては、小売商業調整特別措置法の十五条の知事のあっせんまたは調停があるが、これでは単発的な調整機関にしかならないわけです。したがって、中小企業基本法は、中小企業全般にわたって紛争処理あるいは調整をやろうというわけなんです。それなら団体法の改正のみではだめだと思う。単独法をつくる必要があると思うのですが、それについて大臣、いまはさしあたり団体法だけでもやろうということは、一歩のというか、半歩の前進だと思うのですけれども、それではほんとうの基本法の精神に合わないわけです。それについて、やはり中小企業全般に行き渡るところの単独法が必要だと思う。その点について長官と、最後に立法問題については下請関係と紛争調整、このことについて大臣にお伺いいたします。
  177. 中野正一

    中野政府委員 最初の七条の調査でございますが、これは、中小企業政策審議会の意見を聞いて定期的に調査報告を公表せい、こういうことになっておりまして、いま政策審議会で調査委員会を赴きましていろいろ調査をやっておりますが、この第七条によってどの程度の公表をすべきかをいま研究しておりますので、なるべく早く公表できるようにいたしたいと思います。  八条の年次報告でありますが、これは先般政策審議会の意見を聞きました。第二項のほうの来年度講じようとする施策につきましては、意見を聞いて御了承を得ましたので、今度閣議に出しまして国会に提出します。  それから第一項の年次報告、これにつきましても、これは政策審議会の意見は聞く必要はございません。聞くようにはなっておりませんが、これも一応審議会で御審議願いまして、いまの予定では、今月の二十八日に閣議に大臣から報告をして御了解を得て、即刻国会に提出する運びにいたしております。
  178. 福田一

    福田(一)国務大臣 下請代金支払い遅延その他の問題につきましては、実は近く通産省として態度をどういうふうにするかきめまして——ただこれは関係各省いろいろございます。御案内のように大蔵省企画庁あるいは公正取引委員会等々ありますので、それらとも調整しながら、政府としての態度を近く決定いたしたいと思います。   〔淡谷主査代理退席、主査着席〕 いずれにいたしましても、遅延防止に実効のあがるように、しかも経済にあまり急激な悪影響が加わらないような方途を講じながら、われわれとしてはやってまいりたい、こう思っております。  それから第十九条の問題でございますが、団体組織法その他についてはいまおっしゃったとおりでありますけれども、一般的にいって、そういうものをつくらなければいけないのではないかという御趣旨でありますが、これらについては、十分研究させていただきたいと思います。
  179. 田中武夫

    田中(武)分科員 中小企業庁長官の年次報告というものは、一項と二項とで過去一年の実績の報告と将来の施策ですね。したがって少なくとも予算と並んで出すべきだと思う。ということは、二項のものは、当然来年度予算と関連があると思うのです。本年は初めてだからおくれていると思うけれども、やはりこれは予算と同時に出すことが望ましいと思います。そこで、そのことについてはあとで一言だけ伺っておきたいと思います。  それから大臣に申し上げたいのですが、十八条は代金のことだけじゃないのです。下請関係適正化ということは、まず下請と親との間の隷属的関係、これを断ち切って、下請が自主独立といいますか、自主的にやっていけるような方法を訓じなければならぬと思います。したがって、代金の問題等もありますが、それよりか、できれば基盤の確保といいますか、そういうことが必要だと思います。これは今国会は間に合いますかどうか。  それから十九条の調整機関あるいは紛争処理機関、こういうことにつきましては、いま中小企業団体法の改正が出ておるから、直ちに単独法をこの国会に出せというても無理かと思いますが、私は、あくまで団体法の改正は暫定的なものである、これは単独法でなければいけないと思うので、あえて要望を二ついたしておきます。
  180. 福田一

    福田(一)国務大臣 年次報告につきましては、お説のとおり来年からいたしたいと存じます。  それから下請関係につきましては、私は支払い遅延のほうだけを申し上げましたが、その他のいわゆる独立してなるべくやれるようにということでございますが、これはいま審議会において研究をいたして、なるべくすみやかに立法化を考えたいと思いますが、今国会に間に合うかどうかは、ちょっといまここで言明いたしかねます。
  181. 田中武夫

    田中(武)分科員 中小企業庁長官はけっこうです。——せっかく来てもらったのだから、一言ずつお答え願います。  次は、企業局、それと鉱山局長、もう時間がないですから、一言お伺いします。実は公害についてですが、産業が発達し、技術が進歩すればするほど、一般大衆に対する産業の害と言いますか、これが大きくなると思います。そこで、現在の法律を見ますと、まず排水について規制法があります。それからばい煙について規制法があります。しかし、これはあくまで規制ということであって、公害に対処するという態度じゃないですね。もう一つ今度は、いわゆる山の鉱害、鉱山の鉱害については、鉱業法の第六章に、特に「鉱害の賠償」という章あげて明確に規定があります。しかもその百九条は、これは無過失賠償責任を認めた規定であろうと解釈いたします。したがって、煙の規制、あるいは水の規制、排水の規制、こういうことだけが単独法にあって、しかもこれはあくまで消極的である。そこで、こういうものをまとめて、いわゆる公の害を防止する規制並びにそれに対する損害賠償について、無過失責任の上に立って明確な賠償規定をもってそのような立法をする用意があるかどうか。時間がありませんからこまかく言いませんが、水と煙につきましてはあっても、これは出すやつを規制しようとする、あるいは適用地域が政令指定になっておるので、これまた十分な働きをしていない。そこで、もう煙や水や別々でなく、公の害をひっくるめた、いわゆる産業公害、これについて単独法を必要とし、そうして無過失責任の上に立っての立法が必要であろうと思いますが、いかがでしょう。
  182. 馬郡巖

    ○馬郡政府委員 公害につきまして、現在、御指摘のとおりばい煙規制法なり、工場排水規制法というような法律がございますが、これらの法律につきまして、公害基本法というような説もいろいろいまお伺いしたわけでございますが、現在のところ、このほかに考えられます公害といたしましては、騒音、震動、悪臭等の公害もあろうかと思います。これらにつきましては、非常に発生の原因が多様でございまして、必ずしも一様でございませんし、統一的な基準を設けて規制をするというようなことも、技術的に非常に困難でございますので、個々の公害につきまして、それぞれ技術的な研究をいたしまして、それぞれの規制をいたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。なお、この公害によります賠償につきまして、無過失責任の点につきましては、公害の発生とその受けます被害との因果関係というのが非常に多様でございまして、たとえば煙からどこがどういうふうになったというような因果関係が非常にむずかしゅうございまして、無過失責任としたほうがいいかどうかという点につきましては、法制局等の意見を聞きましても非常にむずかしい問題があるようでございます。なお引き続き研究をしてまいりたいというふうに考えております。
  183. 田中武夫

    田中(武)分科員 鉱山局長、鉱業法の百九条は無過失賠償責任規定の上だと言っていますが、それでいいですか。
  184. 加藤悌次

    加藤政府委員 私どもはそういうふうに理解をいたしております
  185. 田中武夫

    田中(武)分科員 いま企業局のほうから答弁があったように、過去の産業災害と現に起こった災害との因果関係、これがむずかしいので直ちに無過失責任賠償という上に立ってはきめにくい。これは因果関係の問題だと思います。しかし、立法の精神としては、もうこれだけ複雑なというか、多種多様の産業があり、いろいろの鉱害あるいは公害があることはもうわかっておる。ことにコンビナートの地区においては、たとえば四日中ぜんそくというようなものがあるわけです。これは一つ産業だけでなしに、そのコンビナート地区全体として責任があると思うのです。そこで、大臣、公告基本法というか、そんな単発的な、しかも消極的な、水はこうして規制する、ばい煙はこうして規制する、こういうようなことではなく、産業公害から一般国民、ことにそれらの人たちの財産及び健康を守るために、もう無過失責任の上に立っての総括的な立法がぜひ必要だと思うのです。これは通産省だけでできるかどうか知りませんが、大臣研究せられる用意がありますか、どうですか。
  186. 福田一

    福田(一)国務大臣 四日市の場合も、実はようやく厚生省で今度予算をとりましてそして、この四月から研究に入って、実際煙の害でこういうことになっているかどうか。ということを調べることになっているが、まだ事実はわかっておりません。ただ、しかし、いまあなたのおっしゃるように、研究をするということについては賛成でありますが、はたしてその上でうまい一つの統一的な法律ができるかどうかということについては、まだ私自信を持っておりません。なかなかむずかしい。そういうことでありますと、もう新産都市なんか全部取り消してしまったほうがよいという卑屈も出てくるかもしれぬ。工場なんかつくるときには、やはり全部抑えなければいかぬじゃないかという、一つの工場からくる弊害を全部無過失で持っていた場合、国が責任を持つということになりますと、国が病気もみんな見なければいかぬという問題もあると思います。私は、お気持ちはわかります、そういうふうにしていただければ一番よいことだと思います。しかし、はたして研究の結果どうなるかということでございますれば、いまのところまだ結論を得ていない、こう申し上げざるを得ないと思います。
  187. 田中武夫

    田中(武)分科員 この問題だけでも少し突き進んでやりたいのですが、時間もないようです。それでは、せっかく佐橋長官に来ていただいておりますから、久しぶりにひとつ。  それでは一言だけ。三十四年でしたかに特許法の大幅改正をいたしましたね。そのときの審議過程において、審査に手間がかかるというような問題、あるいはそれと関連をいたしまして、特許審査に対する手数料といいますか、これを上げた。ところが、予算の歳出と手数料の収入を見ますと、収入のほうが多いのですね。そこで、私、当時、特許行政はもうける行政だ、こういうことを言ったことがあるのですが、改正から、四年、今日改正当時から見まして、審査に対する手数といいますか、期間、これがどのように改善をせられておるか。それから、改正後、特許庁の特許料による収入といいますか、手数料の収入と、特許庁の要する予算、これがどのようになっておるのか。もうける行政であってはならない、こう思います。それのためには特許庁の予算をふやし、人員を確保する。しかも給料が安いせいですか、ともかく優秀な者は大きな会社等へ行き、特許庁へ来るのは、失礼ですが、二流である。そのために審査がおくれているということが、実情じゃないかと思うのです。その辺のことは、時間もありませんから、またあらためて、特許法の改正も出るそうですから、ゆっくりやりますが、その点だけを御答弁願いたいと思います。
  188. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 三十四年の改正以降、特許庁の滞貨は逐次増加しておりまして、いわゆる審査終了までの期間改正当時よりも現在は延びておる状況であります。まことに遺憾だと考えております。  今度は予算と歳出の問題でございますが、ただいま御指摘のように、歳入のほうが歳出より年々多いという状況でございまして、三十九年の見通しは、大体十六億円の歳入がある予定でございます。これに対しまして、今回は各方面の認識も非常に深まりまして、歳出をたくさんつけていただきまして十三億五千万円でございます。これでもまだ歳入には及ばない状況でございますが、まあまあ人員の増加も大幅に認められましたので、逐次処理能力は改善する、こういうふうに考えております。
  189. 田中武夫

    田中(武)分科員 四年前に特許十法案をわれわれは審議をして、そのときにいろいろといま申しましたようなことについて附帯決議なり注文をつけました。ところが、遺憾ながらいまの御答弁によるとそのときよりか審査になお期間を要するようになっておる。これは申請件数がふえたせいもあるかもしれませんが、いわゆる人的構成の問題なんです。それは結局は定員と予算の問題なんです。しかも来年度の予算を見ましても、十六億円と十三億五千万円、まだ特許行政はもうかる行政である、こう言わざるを得ない。まさか政府は特許行政でもうけようとは思っていないだろうが、こういうことであってはならぬと思うのです。これは大臣どうでしょうね。特許庁が手数料で取る収入のほうが多くて、予算のほうが少ないのですね。政府は特許行政でもうけるつもりですか。それと、その審査期間の縮小についてこの二つ。
  190. 福田一

    福田(一)国務大臣 実はそういう附帯決議もありますので、予算の審議等にあたりましても、その点を十分考慮しながらやっておるのでありますが、今日のごとく件数が増加いたしましたのは二つ原因があると思います。それは特許に対する関心が深まりまして、技術に対する研究が深まりまして、その件数、いわゆる申請の件数がふえたということが一つ。もう一つは、定員をふやしましても、実際に採用できるかどうかという問題がいままではあったわけであります。そういうことがありまして、十分に定員をふやしても実際に人がとれないというような関係もありまして定員がふやせなかったということが原因であったと思うのであります。そういうことはありますけれども、ひとつできるだけ、この申請件数がふえようとも、処理能力のほうをどんどんふやして、これを減らすように努力いたしたいと思います。  それから最後の御質問でございますが、もうけるつもりかどうか。もうけるつもりは全然ございません。結果でもうかっておるわけでございまして、御了承願いたいと思います。
  191. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃもう一つだけどんぴしゃりでお伺いしておきます。鉱山局長、日本は乏しい地下資源の中でも、硫黄だけは豊富にあると思うのです。ところが硫黄を採掘して製品にする過程において、一過程、二過程と、たとえばカナダよりかよけいかかるために、価格の問題が出てくるわけです。そこで自由化をやればこれはひとたまりもない、こういうことで五年間自由化をおくらすといいますか、やらないということになっておるのですが、近く緊急輸入をやる、こういうことのようです。その原因は何かといえば、需要のほうが供給を上回った、こういうことのようですが、実際はそうじゃないのですよ。それは在庫等についても相当違うだろうし、もう一つは春闘で山がとまるかもわからぬから買うておけ、こういう思惑買いがあるわけだ。また輸入につきましては、いわゆる裸輸入の問題、これが港湾荷役の労働者とのいろいろな問題がありますが、これを一々伺っておりますと相当時間もかかります。私はきょうはピンチヒッターのピンチヒッターでありまして、三十分を費やせばいいのでこれだけ伺いますが、緊急輸入について再考する余地はありませんか。
  192. 加藤悌次

    加藤政府委員 硫黄の不足は、主として最近における化学繊維、並びに化学繊維にも関係がございますが、パルプ関係産業、これらの需要が非常に多くなっておるところに原因があると思います。御承知のように、すでに本年度上期、下期においても三次にわたりまして輸入の外割をし、それが現に入りつつあります。それがさらに来年度も続くかどうかということは、特に来年度の上半期につきまして、国内の生産見通し並びに需要の見通しの作業をやっておるわけでありますが、現在まで私が聞いております作業の結果によりますと、やはり国内産では十分間に合いかねるというような数字が出ておりまして、少なくともそういった作業の結果、不足なものは——需要家に御迷惑をかけるということは、これは考えなければいけませんので、来年度上期につきましては、その不足分については輸入するということで進むべきでなかろうかと考えております。ただどれだけ輸入するかという問題につきましては、実は商工委員会の沢田先生のほうからも御質問がございまして、現在のところはまだいろいろの資料、あるいは山元側の事情等も伺いまして、需要供給とも慎重に数字を検討しておる、こういう段階であります。
  193. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣最後に御答弁願うわけですが、時間もないので一緒に答えていただきたいと思うのです。いま申しましたように緊急輸入と言っておりますが、どうやら在庫等を調べることについて、若干需要者側のほうが高姿勢だ、こういうことが一つある、それからもう一つは、春闘等を見越して、山がとまった場合にということもあって、思惑買いがあると思うのです。それからいざ輸入がやむを得ないとしたときでも、最小限度の数量で、しかも港湾荷役の関係で裸輸入はやらない。もう一つ問題は、石油精製過程に出てくる硫黄、これは現在二万五千か二万トンぐらいですが、現存の石油精製の規模からいえば八万トンぐらい出るらしい。そうすると、これが硫黄鉱山に対して大きな影響を与えると言いますか、壊滅的な影響を与えるのです。それやこれや考えますと、何らか特別の措置が必要だと思うのです。昨年、金属鉱業についていろいろと問題があるので、自由化に当面したところの金属鉱業の対策として、金属鉱業等安定臨時措置法というものができました。これと同じような法律を別につくれと言ったって無理かもしれぬが、金属鉱業等安定臨時措置法を硫黄をも対象にするような用意が将来できますかどうか。大臣、一緒にお答え願いたい。
  194. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、硫黄の問題は、いまあなたのおっしゃったようにいろいろな問題があると思います。大体二十五万トンぐらいつくっており、いま言われたように石油精製の立場から一万五千から一万八千ということも事実であります。いろいろ私が聞いているので、あるいは間違っておるかもしれませんが、いままでは山がみんな過当競争をしまして分裂しておる。そして供給者が需要者にしてやられておったというのが突如ではなかったかと思うのです。こういうことでは、実を言うと、山をほんとうに守ってやり、また、山で働く人をほんとうにかわいがるということにはならない。そこで、私は硫黄業者のほうでももう少し反省すべき面があるんじゃないか、そういうふうに考えております。そうして、こういう点がうまくいくようになれば、たとえば供給は必ずできるというような形になれば、これはまたいろいろ手はあると思うのですが、いまの段階では、先ほど鉱山局長が言ったように、まだそこまで来ておらない。私はその点実は非常に遺憾に思っておるので、将来あなたも、そういう御質問をなさる以上は硫黄問題についてもよくおわかりだと思うのですが、ひとつ十分そういう点で業界あたりも指導をしてもらえれば非常にけっこうだと思うのです。それから、その法律云々の問題でありますが、そういうこともにらみ合わせながら態度をきめてまいりたいと思います。
  195. 田中武夫

    田中(武)分科員 最後に要望だけしておきます。いろいろ数字等については、需要者側と供給者側では数字も違うだろうし、あると思いますが、私は、少なくとも、日本で自給自足のできる地下資源とは硫黄くらいなものだと思うのです。これだけくらいは輸入せずにやっていかねばならない。こういう上に立って、緊急第二次の硫黄の輸入については再検討が望ましいと同時に、その安定のために金属鉱業安定臨時措置法のような措置が望ましいということだけを希望いたしておきまして、終わりたいと思います。
  196. 松浦周太郎

    ○松浦主査 これにて田中武夫君の質疑は終了いたしました。  次は、川俣清音君。
  197. 川俣清音

    ○川俣分科員 私はできるだけ与えられた時間内に質疑を終了いたしたいと存じますが、お尋ねいたしたい点をあらかじめ申し上げておきたいと存じます。第一は肥料の問題でございます。第二は地域開発に対する通産省の態度につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。  そこで、第一の肥料の問題についてお尋ねいたします。  御承知のように、農林省及び通産省の共管になっておりまする肥料二法がございます。これが今年をもって、時限立法でございまするので、この法律の期限が来るわけでございますが、立法当時から、十年くらいを要するのではないかという議論が国会においても激しく行なわれたのでございますが、その後の様子を見てさらに改正をすることも起こるであろうから、あえて時限立法にしておこうということで、期間が五年であったわけでございます。また、時限立法の場合は、そう五年以上にするということは先例から見て無理だということで、五年の期限つきの立法になっておるわけでございますが、この二法ができましたために、日本の国内肥料が飛躍的な発展を遂げたし、また、この二法の精神に基づいて、政府の合理化資金がかなり肥料業界に支出されたわけでございます。そのための合理化が非常に進捗いたしましたことは、通産行政としては珍しい好成績をあげたものと見なければならぬと思うのであります。これほど成績のあがったのはおそらくないと通産省がうぬぼれてもいいんじゃないか、もっとも、通産省がうぬぼれるのか、立法府が先見の明があったということになるのか、これは別といたしまして、直接の関係の深い通産省といたしましてはかなりの成績をあげたと言っていいんじゃないか。いままでは、やや国際価格と競争できるほどに、完全ではありませんけれども、かなりの飛躍を遂げたということは、何人も認める点だと思います。そこで、今後この期限切れになる肥料二法に対して、どのような措置をなさろうといたしておりますか、大臣にお聞きしたいと思います。  私はまんざら知らぬわけではございませんけれども、なかなか両省の間でまだ意見の調整ができておらないようで、これを通産省にだけお聞きするのはちょっと酷な感じもいたしますけれども、なかなか分科会ではあなたのほうと農林省のほうと一緒に同じ分科会ではあるけれども並べてくれませんので、この機会に御意見を承るよりほかに手がないのであります。そこで、承りまして、また同じこの席上でありますけれども、もちろん農林省にも意見を伺ってみる、また、そればかりでなく、調整官庁であるところの企画庁意見も聞かなければなりませんけれども、まず、通産省としては、肥料メーカーは日本の化学工業の大宗でもありまするし、現在ではそうでもないでしょうけれども、これから化学工業のあの設備を活用いたしましてさらに化学工業の発展をする余地のあるものでございます。期待のかけられた設備でございますだけに、大臣の見解を承っておきたい、こう思います。
  198. 福田一

    福田(一)国務大臣 川俣委員は肥料の問題については特に専門であられるのでありますから、私が意見を申し上げるというのはかえってどうかとも思うのです。しかし、政府としての立場におりますから意見を申し述べさしていただきたいと思いますが、御案内のように、ことしの八月で二法が失効いたします。この二法というものは、できた経緯を見てみますというと、ちょうど肥料が、生産が足りない、国内の生産が十分確保できない、しかも肥料の値段が非常に高い、こういうことでは困るではないかというのが、立法の必要性をもたらしまして立法されたことは、御案内のとおりであります。ところが、今日は、事情が変わってまいりまして、国内の需要に応ずるだけの生産量はもちろんのこと、相当量を輸出し得る能力を持ってまいりました。また、肥料の値段も累年下がってまいりまして、今日では、八百五、六十円しておったものが、もう七百三十何円というところまで下がっておるという事情になっております。が、しからば、今後この八月で切れる法律をどうしたらいいかということになりますというと、やはり、肥料というものは農家にとって非常に大事なものであります。日本の経済を運行していく場合において、もちろん産業界のことも考えなければいけませんが、農業というものを無視して政治をやってはいけない。その農家がこの肥料を必要としておるときに、私は、やはり農家に不安を与えることはあまりおもしろくない。そこで、あまり高いというか、これ以上に高い値段になることは極力私は防ぎたい。特に合理化資金をずいぶん出しておりますから、硫安に関する限りにおいては、私は、値段をそう上げるべき筋ではない、こう思っております。同時にまた、十分な量を確保するということができるようにして安心をさせる。いわゆる低廉で豊富な硫安を供給してあげられますということだけは確保していくのが政治の姿ではないかと、こういう私は観点を持っております。しかし、ここに至りますまでについては、実は私もいろいろ勉強もしましたが、われわれ政治の立場からこれを見るだけではなくて、公平な第三者にひとつ御意見を伺う必要があるのではないかというので、実は懇談会、——これは正式な委員会ではございません。われわれが委嘱いたしまして、六人のお方にお願いをいたしたのでありますが、公平な第三者に御意見を承ってみたいと思いまして、実はこういうような感じでおりますが、いかがでございましょうかというようなことで御意見を聞いたわけであります。結果は、やはりわれわれと大体その点において意見が一致されておるようであります。大体において大筋で一致いたしておる、こういうことであります。ただ私たちから言いますと、これについてはまたいろいろそうではないという御意見もあり、いろいろありますが、まあまあ私としては懇談会の御意見、われわれの意見、大体一致いたしております。そういう意味で、形からいうと何か懇談会の意見をそのままいれたような感じになるかもしれませんが、いまの通産省立場から見ますと、大体そういう感じで今後に対処してまいりたい、新しい立法をつくったほうがいい、こういう感じでおります。その点については大体農林、企画庁とも事務的には話を順次詰めておる値段でありますが、なお党その他との関係、またそのほか各方面の御意見も十分承りまして、遺憾のないように措置をいたしてまいりたい、こういうふうに存じておる次第であります。
  199. 川俣清音

    ○川俣分科員 大臣なかなか慎重な御答弁であったわけですが、続いてお尋ねしたいと思うのですけれども、先にちょっと総論的な意見を述べて、しかる後に私の立場を明らかにして質問を続けていきたいと存じます。  この二法によって国の合理化資金等がつぎ込まれまして今日のように生産が上がってきたことは、大臣の御指摘のとおりでございます。また、戦後あらゆる産業が大きな痛手を受けましたときに、一番早く復活をいたしまして、日本産業の上に気を吐いたのもまた肥料工業であったわけです。なぜかというと、食糧難に対する緊急を要する施策として政府がいろいろ処置を講じましたために、早く廃業として活発な活動をいたしましたのが農業でございます。これは工場のように設備が比較的破壊されていない、もちろん交通とか、そういうものは打撃を受けましたけれども、土地そのものの戦災は軽微でありましたために、農業が他の国民生活の要請のしからも早く生産を開始した。その生産に必要な肥料というものも、戦前と比較いたしまして非常に旺盛な需要を示しまして、農村の資金が肥料メーカーに大きな購買力となって刺激を与えましたために、肥料工業が息づいてまいりましたことは御承知のとおりです。したがいまして、政府の援助の前に、これを買う購買者である農民の資金的な援助——資金的ということばはあれですが、購買力の援助によって戦後いち早く復興いたしたということも、これはいなめない事実だと思います。したがいまして、肥料工業が自力で今日に至ったのではなくして、政府の手厚い援護及び購買者であるところの農民の深い援護によって隆盛になったと見なければならないでしょう。なぜかというならば、農民の支出の中に占める肥料の負担は非常に大きいわけでございますから、収入の非常に大きな部分を肥料につぎ込んでおるのでございますから、ときには生活を低めてまでも肥料に執着をいたしまして肥料業界を刺激してまいったことは、何人も否定できないと思います。したがって、今日の肥料業界は、自分だけの力で今日の隆盛を来たしたのではなくして、全く政府及び購買者である農民の援助、援助ということばがいいかどうかわかりませんけれども、その支持によって発展してきたことはいなめないと思います。それだけに単に農業から見るばかりでなく、今日までの歴史的な経過から見ても、購買者であるところの農民の意向というものを無視できない立場にあると思うのでございます。これは無視することはできないであろう、そういう立場に立ってこの二法についてお尋ねしたいと思うのでございます。  いま大臣は、肥料二法について各界の意見を十分求められたということでございますが、その答申であるか意見であるかわかりませんが、取りまとめられた意見通産省からいただいておるわけでございますが、私は、この点についてあらゆる角度から疑問を持って実は見ておるわけでございます。どうもわれわれの常識と申しますか、われわれと見解をずいぶん異にするばかりではなくて、おそろしくうぬぼれたと申しますか、これを拝見しますと、学識経験者の意見か非常識者の意見かわからぬような感じがするのであります。批評することはまことに恐縮ですけれども、そういう感じがする。なぜかというと、これは個々の意見を求められたようであります。おそらく有識者の個々の意見を求められたのであろうと思う。というのは、これは正式の協議体でもなければ審議会でもございませんから、おのおのの委員の個人の意見を聞くという形で発足されたように伺っておるのでございます。そうすると、協議体でなければ、個々の人々の意見が出てこなければならぬはずだと思うのであります。ところが、あたかも諮問されたように、協議を受けたように取りまとめて全体の意見が出てきております。これは、責任を回避するためにこうした形式をとったのかどうかわかりませんが、おそらく求められたものが、個々の意見を求めるということで、あえて公式な協議会とか審議会というかっこうをとらなかったのだろう、私はそう理解する、従来の政府の取り扱い方からして。また、意見を求めるということでございますから、協議体には意見を求めるという例はございません。協議会については議に付するとかという形をとっておりまして、議決を求めるとか、あるいはある程度その協議会の意見政府が拘束されるような形で総体の意見を求める、意見というよりも、こういうふうなことを会議に付するという立場をとっておられるが、個々の意見をあえて求められておるのでありますから、個々の意見が出てきて、その個々の意見の集約は通産省がなさるべきだと思うのでありますが、あたかも団体で意見を求められたように、会議に付するような答申が出ておりますのは、うぬぼれもはなはだしいものだというのが、私のこれを拝見しての直観でございます。おまえひがみだ、どうも野党ですから、ひがみが多いかもしれませんけれども、そういうふうに私は理解をいたします。  もう一つは、はなはだ越権だと私思いますのは、現在の肥料二法はこういうところに欠陥があるのではないかという指摘をされるならば、これは意見を求められることは適当だと思いますが、最終的な意見として出てきますのはどういう点かというと、法律改正する必要があるなんというような意見です。これは立法府があるのですから、改正意見は立法府の関係です。民間があたかも立法府の権限を与えられたかのごとき答申的な、協議体的な形で出てくることは——個々なら別ですよ。個々なら法律に対するいろいろな見解があってもいいでしょうが、協議体として、これは団体ですからね。取りまとめて改正する必要があるかないかということは立法府の問題です。こういう協議体の問題ではないと思うのです。おそろしくこれは行き過ぎだと思う。うぬぼれが過ぎると私は判断しますが、大臣はどのような見解をお持ちか、お聞きしたいと思うのです。
  200. 福田一

    福田(一)国務大臣 どうも先生の御意図がどういう御意味か私にもよく理解できないので、あるいは答弁が間違うかもしれませんが、実はそういう人たちに、肥料二法は来年の八月で、来年というのはことしでございますが、八月でなくなりますが、今後肥料行政の姿はどうしたらよろしいでしょうかと、質問的に、お話を聞かしてもらいたい、こう言って出しましたところ、いろいろお話し合いをされた上で、全員いろいろお話しをされたのでありますが、結果としてみんながこういう気持ちであるという意味で、そういうような項目別に御意見を述べられた。こういうわけでござまして、決してそうあったからといって、その答申に政府自体も束縛されません。ましていわんや立法府がこんなことで束縛されるということは、私はないと考えておるわけでございます。
  201. 川俣清音

    ○川俣分科員 私のお尋ねしたのは、立法府を制約するということではなしに、立法府の立場というものがあるにかかわらず、あたかも自分自身が立法府の権限を付与されたような形の答申に対して、立法府を侮辱しておるという感じがするのでございます。立法府がやるべきようなことを、みずから権限があると誤認をして意見を出されたように思うのです。これが個人であれば、法に対する批判をすることは自由ですから、私は申しませんが、団体という場合になりますると、統合した意見というものになりますると、これは行き過ぎであるというふうに理解をする。個人が、この法律はあったほうがいい、ないほうがいい、変えたほうがいいという意見を出されることは、私はこれは差しつかえないと思うのです、おのおの自由な意思の発表でありますから。しかし、事団体として、協議体として発表するとすれば、それは行き過ぎじゃないか。これは確かに法律の条文からいえば、失効するのですけれども、失効することについて立法府はどう考えるかということは、立法府の問題ですね。失効はするけれども、続けていくか、いままでの時限立法で引き続いたものもたくさんあるわけです。延長したものもあるわけです。したがって、こういう立法府の権限に属することにまで容喙されるということは、私は行き過ぎじゃないか、こう申し上げたのであります。立法府を制約するなんと思いません。このくらいなわからない答申をされて制約を受けるほど立法府は貧弱でもないと思っております。そんなことで制約を受けるとも思いません。だから、個々の意見を求められた場合は、これは自由な意思を発表することは当然だと思う。団体の場合、協議体の場合は行き過ぎになるのじゃないかというのが私の見解なのでございまして、これ以上大臣にこの点を聞くことは、これは通産大臣だけの関係法案ではございませんだけに、遠慮したいと思います。  いよいよ今度本論に入りますが、一体この法律の特徴と、時効になるのを機会に失効させなければならないかどうかという問題でございますが、この法律の欠陥として指摘されておるのは法律ではないようでございます。メーカーとか各方面から失効を機会に廃止したほうがいいのだという意見がかなり出ておりますのを承知しておりますが、それは、この二法についてのものではないようでございます。私の見るところでは二法じゃない。むしろあるとすれば、この法律に基づくところの——臨時肥料需給安定法、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の二法でございますけれども、問題としてあげられておりまするのは臨時肥料需給安定法ではなくして、臨時肥料需給安定法施行令のほうの、いわゆるバルクライン方式をとっておる計算について非常にメーカーから議論が出ておるということはよく理解しております。何もこういう価格決定は、需給安定法にあるのじゃないですよ。これは御承知のとおりです。臨時肥料需給安定法は、肥料の需給計画を定めるということが大きな目的になっておりますし、二は生産業者に対して生産を指示するという問題であります。次に保管団体に対する規定がある。あとは問題があるとすれば硫安輸出会社の規定がある。この硫安輸出会社の規定があるいは問題かとも思いますが、日本の肥料業としてはむしろこれは本質的な問題ではなしに、硫安業界のためにあえて同情的につくったのが、いまではそのお仕着せはやっかいだというだけでありまして、本来は赤字をたな上げさしてやろうということで、硫安協会の強い要望に基づいてできたものでありまして、いま一人前になったからこれはやっかいだということでありましょうが、それも認めないわけじゃない、認めてもいいでしょう。これは強い業界の要望に基づいてできたものなんで、いまでは一人前になったからそういう援助は要らないのだ、むしろやっかいだということは言えないことはないでしょう。またはこれによって大いに硫安業界が助かったのでなく、むしろ税法からいうと、赤字をしょったような形になってやっかいだということも言えないわけじゃないでしょうと思いまするけれども、問題があるとすれば、むしろ硫安輸出会社のほうでございます。その他の問題では、臨時肥料需給安定法の全体から見まして、メーカーにとりましても、または農民にとっても困るという、失効させなければならないというような要件は何もないと思う。あれば硫安輸出会社の問題と、むしろそうではなくして、この施行令のほうが非常に問題になっておるということは言える。施行令は変えればいいわけです。これは法律でも何でもない。問題になっているのは施行令のほうなんですね。役所の非常に得意とする施行令のほうがやっかいだといわれておるだけでありまして、法律の問題ではない。もちろんこの法律を受けてということになっております。受けて施行令ができておるでしょうけれども、施行令を廃止したからといいましても、法律は別に廃止する必要はないので、したがいまして、二法の問題があるとすれば、硫安輸出会社の問題と施行令の問題です。輸出会社の問題にいたしましても、これは私は取り扱いのぐあいによってなお生かしておいてもよいのではないか。しかし、もしここに問題があるとすればどこにあるかというと、当時は最高価格をきめることになっておりますが、今日では、むしろこの法律趣旨でありまする肥料需給の安定と価格の安定を願うとすれば、必ず最高価格を押えることが必要なのか、あるいは安定ということになると、安定価格を求めることのほうが妥当ではないかという時世の変化はあると思います。最高価格を押えなければならないのではなくて、法律の本来の姿は、安定価格を求めておるのが法律趣旨でありますから、その趣旨に基づいて最高価格をきめるという点を直していきまするならば、この本来の立法の趣旨は何も変える必要はないではないか。本来の趣旨は、この法律にもありますように、肥料の需給と安定をさせよう、農民にとりましても、生産者にとりましても、安定価格が必要だ。今年農民がどんなに安く買いましても、来年また高く買うということでは農業生産上非常に支障を来たすから、毎年肥料というものは大体この程度だという目安をつけて農業計画をする必要があるというところから安定価格を求めておるのだ。またメーカーにとりましても、ことし安くても来年高くなったり、高くなるときはいいでしょうけれども、また安くなるというと非常に業界にとっても不安定だから、ある程度の幅のところにおさまるようなものでなければ業界もやれないということは、私は理解できる。こういう点では、消費者である農民も、生産者である肥料界も同じものでなければならない。そういう趣旨で、いわゆる安定価格を求めることがこの立法の精神でありまするから、この精神というものはいまだに必要なものでないかと思う。私はそう理解するのですが、大臣、どうですか。ここまで私の意見を述べて大臣に聞くならば、大臣もそう答弁にお困りにならないと思うのですが。
  202. 福田一

    福田(一)国務大臣 川俣委員のただいまの安定帯価格の御意見でございますが、私は一つの見識であると思っております。ただ、いままでに出ております意見は、もちろんそういう先生の気持ちもくんでありますが、できるだけ自由な立場において需要者と供給者が値段をきめるようにしてはどうだろうかという意見がいま出たわけでございます。その場合にも、ワクが全然きまってないかというと、そうではない。われわれの考えでは、たとえそういう形にしても、私はこれ以上硫安の値段を上げさしたくないということは、実は国会でも答弁いたしておりますし、いまでも実はそういう気持ちを持っておる。ということになると、先生の意見と私の意見は、先生はある一定の幅を持たせてきめたらどうかという、私はもうこれ以上上げない、下のほうはどうなるか、これもしかしどうするか知りませんが、お互いで話をきめたらいいじゃないか、上を抑えておいて、下をお互いで話し合ったらいいじゃないか、これくらいの感触ですから、これはどうも先生の御意見に反対する理由は毛頭ないわけでありまして、一つの見識であると、こうお答えをせざるを得ないと思います。ただし、それをどういう法律の姿に直すかということになりますと、前のような法律をそのまま残すのがいいのか、これは立法技術の問題になるのであります。ただ要は、農村に対しても、いま先生が仰せになったように、安心感を与える、また供給者であるところの肥料会社もあまり損をしない、今後は、メリットがあった場合には、そのメリットが生きてくるようにする、こういうことによってこれも安心感が得られるというところで、ひとつこの問題の解決がはかれないだろうか、こういうところにあるわけでございますから、これはそういう意味でいろいろと研究をいたしておる。先生のような御意見もございますし、またそうでない、もう全部やめてしまえという意見もあれば、いや、やはり何かつくっておけという意見もあれば、中には、極端なお方は、あのままで何が悪いのだ、こういう意見も聞くのであります。しかし、私は大体において先生の御意見と非常に似通った意見を持っておる。ただ、私いま結論を出しておりませんから、考え方として似通っておるのであるが、結論はまだ出ていないから、どうするとはここで申し上げませんけれども、さようお答えしておきたいと存じます。
  203. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは、私とあなたの見解が近いのでなくて、これが常識なんです。私とあなたがたまたま一致しているんじゃなくて、これがほんとうの姿なんです。それを無理な姿に持っていこうとするところに無理があるのです。私だって大臣だって、そう専門家じゃないはずなんです。専門家でない者の意見が一致するということは、大体その辺のところが常識的と申しますか、世間並みな考え方で、最も中庸な案だということになるから一致するのだと思う。極端な案ならなかなか一致するわけがない。たまたま一致したということは、大体両方とも中庸な案だ、無理がない案だということを示唆しているものと思う。そうすると、この臨時肥料需給安定法は、肥料の需給の調整及び価格の安定をはかることを目的としてつくられておるのでありまするから、そういう趣旨であれば、これは部分的な改正ということになるだろう。趣旨は変えないということになるだろうということになる。私はそれでいいのじゃないかと思う。問題は、無理に最高価格を求めたり、非常におそれをなした用心的な法律は要らないんじゃないか、もっと常識的な法律にしておくことが、生産業者についても、消費者である農民にとっても大切ではないか、これ以上農民が望むことも無理だし、それ以上有利にメーカーが考えることも無理ではないか、こういうところにあるのじゃないかということの結論でございますが、そういうことになると、調整が困難なわけはない。たとえば、御承知のとおり、硫安業界の中でも、法律を野放しにすることについては、いまなお不安を持っておるメーカーもあるわけです。いや、もう大体体制は整ったんだから、どんな荒波がきても大丈夫だというところまで発展している業界もあるであろうと思います。しかしながら、肥料業界全体としては、製品もまた価格によって操業度合いを変えるようなことができる設備をして合理化してまいったのでありまするから、また副生硫安等が旺盛になりましたのも、価格が安定するということで、副生硫安等が出てまいったのでありますが、不同だということになってまいりますると、肥料の設備などについても、投機的な、山師的な生産をされるということを非常に恐怖を持って感ずるわけでございます。やはり何と言いましても、日本の化学工業の今日の隆盛を来たした中に、アンモニアを中心として、あるいは硫酸を中心として今日までの発展を遂げたという状態を見まして、もう少し日本の肥料化学工業、肥料業界がになうべき任務は非常に大きいのじゃないか。特に今後は、ことしの農産物の事情を見ましても、世界的に肥料にたよらなければならない度合いが増してきております。ソ連におきましても中共におきましても、広大な面積を持ちながら農産物の生産が不安定というのは、肥料の施策が行き渡らざる結果起きてくるところの政治的な欠陥であるわけでございまして、そういう意味で、日本の肥料業界が世界の農産物に与える力というものを軽視してはならない。需要というものはもっと旺盛になってくるのじゃないか、そういう場合に、開放経済に入って飛躍しなければならぬときに、いたずらに窓を締めて狭い視野の中で会社の安定をはかるというようなけちなことをしたならば、次の飛躍の機会を失うのではないか、私はそう思うのであります。単に農民的感覚だけではなしに、日本の肥料業界のためにも、需給と価格の安定をはかることにいたしまして、目は海外に向けて、そして生産の合理化をしていくという方向にいかなければならぬ。こういう法律をなくしてうまくやっていこうなんというような考え方は、国際的感覚が非常ににぶいのだというふうに私は思うのです。ほんとうにそう思うのですよ。農民のためばかりではなくして、今後飛躍すべき肥料業界がこんなけちな考え方をして、この法律がなければうまくいくのだという考え方をしないで、開放経済の中における日本の肥料業界の占める重要さというものを認識させるには、やはりこういう法律があるほうが便宜だと考えていかなければ、野方図に業者協定をやってうまくいくなんという考え方はおそらく私はできないのじゃないか。そういうと、やはり法律があって、独禁法に触れないような援護をしてもらえれば非常にいい、そういうことばかり考えているのは間違いだ。そうじゃなく、本来の正しい姿というものを描いて、それにはこの法律趣旨は生かしながら、非常に障害となるべきものは変えていかなければならぬことは、それはいなめません。それはあったってしかるべきだ、時代にそぐわないような傾向のあるものは、それはしかたがない。しかし、この趣旨を変えてはならないという理由はないのじゃないか。条文そのものじゃない、このできた立法の趣旨というものはなお依然として残さなければならないというのが私の見解でありますが、私の見解を押しつけるわけじゃございません。押しつけるわけじゃございませんが、通産省もそのくらいの考え方をするならば、農林省との協定も決して困難ではない、妥結の道がある。私はむしろ仲裁案を出している形ですが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  204. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほば申し上げましたように、私は肥料というものを十分に、しかも安く農民に供給するという大きな目的は実行されたと思うのです。今日においても、私はその要請は変わっておらないと思います。ただ、しかし、それをやる方法はいろいろあると思うのでありまして、私は何も法律をつくってはいかぬ、このまま法律を廃止してしまおうという意見を申し上げておるのではありません。一部にはそういう意見もあります。私はそうではない。しかし、その場合においても、前の法律をそのまま残しておくのがいいのか、あるいは目的にかなう法律を新しくやったほうがいいのか、いろいろ立法技術の問題があると申し上げておるのであります。だから、方向的にはあなたと意見は一致しておりますが、しかし、手段においては私はまだ態度をきめておりませんからここで申し上げられない。しかし、あなたの御意見一つの見識である、こう言って申し上げておるのでございますから、これ以上は私といたしましてはお答えをいたしかねます。
  205. 川俣清音

    ○川俣分科員 現実におきましては、大臣、そのとおりなんです。しかし、国会も実はそう期間もございませんので、失効に対する処置ということになりますと、おおよそ目安をつけておかなければならない国会の情勢だということは、大臣、議員としてよく御存じのとおりであります。まだまだということになるというと、時間が切れてしまいまして失効するということになる。失効が望ましくて失効するなら別ですが、考えがまとまらぬうちに失効するというようなことを私は憂えての質問なわけです。したがいまして、改正するならばもうすでに用意をしなければならぬのではないか。また、失効を願う方便として答弁されているとは私は思わない。それだけに質問をしているということなんです。失効してそれで責任をのがれたいというひきょうな態度でないことは、私はほんとうに信頼します。あなたにそういうことがあるわけはないと思いますが、しかしながら、これは役人はやりかねない手段なんです。あなたも十分御存じのとおりに、どうも時間切れになってしまってやむを得なかったというような、あとの答弁の口実を求めるようなこともないわけじゃないんですから。そこで、わざわざ事務当局に剛かないであなたにお聞きしたというのも、その点にあることを強くひとつ御理解願って対処願いたい、こう思います。これはどうしても失効しなければならぬという積極的な意義があるんならば別ですよ。どうもそうでもなさそうです。それならばどういう法律をつくられるか、私どももここで申し上げてもいいのですが、これは硫安業界及び農民の立場に立ってりっぱなものに改正していく。そうたいしてりっぱなものにしないでもいい。問題になるのはいま指摘したようなところであります。手続はそうむずかしくない。これから十分その法律改正を——ごくわずかな改正ですから、不可能ではないのであります。これを根本的に変えるということになると、いまの国会の情勢では時間切れになって、失効ということもできてくるおそれもありますので、そういう点について大臣のお考えをお伺いしたいというのが私の結論です。もう大体わかりましたから、答弁は要らないですが、そういう意味なんです。どうぞ、そういう意味でお聞き取り願いたいと思います。農林省などの見解を見ましても、ただ意見が合ないということで、それじゃ失効さしてもいいのかというと、それでも困る。それじゃ何とか案をまとめだらどうか、いやまとまらないというかっこうでは、私は無責任だと思うのであります。積極的に失効させなければならぬ理由があるならばそれでいい。そうではない。現実的に失効になるというようなことは、無責任だということでございます。その意味において早くまとまることを期待するのであります。こういう案でいけばまとまらないというわけはないと思う。もっとも二人の常識的な意見が一致して、もっと専門である両方の役所がまとまらないなんということはおかしいですよ。そんな不見識だったら、みなやめたほうがいいですよ。このしろうとですらまとまるのが、くろうとにまとまらぬなんてばかな話がどこにありますか。極端でありますけれどもそう思います。私はあなたと非常に見解の相違があるような問題は別にして、大体常識的な問題であれば一致する。そんなことがまとまらないというのはふしぎじゃないか。むずかしいむずかしいと言いながら、しろうと談義でまとまるものをくろうと談義でまとまらないなんというのは、これは意味をなさない。そういう立場に立ってひとつ施策を願いたいこういうことがこの肥料問題に対する私の質疑の大要であります。ひとつ最後に申し上げておきます。
  206. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど、事務のほうで少しのんびりしているんじゃないかというようなお話でございましたが、うちの事務も農林の事務も、やはり意見は、大体先生のおっしゃるように失効をさして、何もしないで野放しでいいという考えではございません。何とかまとめていこうと、むしろ私よりはやきもきして、ここへ出てきていま一生懸命やっておるわけなのであります。これはひとつ御信頼を願いたいと思います。ただ、いまでもなおかついろいろの意見がある。私とあなたとは大体の方向では一致した。一致しない人もあるわけです。これが現実でございますから、私とあなたとできめるのならば案外早くきまるかもしれないけれども現実的にはまだそういう面もございますので、というてあまり時期がおくれるといわゆる野放しになりはしないかという心配もあります。なるべく早くひとつ調整をとりたい、かようにとって提案をいたしたい、かように考えておる次第でありますから御了承を願いたいと思います。
  207. 川俣清音

    ○川俣分科員 大臣の態度は了承して、肥料の問題に関する限りはそれで了承をしてまいりたいと思いますが、十分ここで質疑したことを有効にお持ち帰りになることをおすすめいたしたいと存じます。  次に、地方開発の問題について大臣に質問しておきたいと思いまするのは、東北振興のために大正十一年以来内閣に東北局を設けたりいたしまして、あるいはわざわざ国会の決議をしまして、地域開発の問題について政府にその実行を迫りました結果、東北開発三法というものができ上がって今日運営されておるわけでございますが、その一つ法律でありまする東北開発会社が最近赤字で非常に悩んでおりまして、再建計画等が立てられております。この会社の赤字につきましては、企画庁以上に通産省責任のある問題があるわけでございます。時間がないので、簡単に意見を質問の形で先に申し上げまして、大臣答弁を受けたほうがわかりいいと思いますので、そういう方式をとりますが、日本の木材の中で一番未利用でありました広葉樹が東北に散在をする、これを活用しなければならない、利用しなければならない。それによって東北の開発もさらに前進するであろうというところから、この比較的未利用になっておりまする広葉樹をハード・ボードに利用しようという計画がありまして計画ができた。当時ハード・ボード計画というのは、民間からもしきりに今後有望な事業として脚光を浴びておったときでございます。そういう競争をするならば、いかに濶葉樹といえども原木に不足を来たすのではないかといって憂えられておったときでございますが、問題は、さらに東北の資源開発のためからあえて東北会社がこれを引き受けるということになった。ところがこの許可、認可にあたりまして、いろいろ制約が加えられたのは通産省からであります。これは、日本のハード・ボードの規格は三尺に六尺の規格が日本の建築に合う規格であります。三尺に六尺のものならば日本の機械製造業者も、ハード・ボードの機械設備は可能なものでございます。ところが、ハード・ボードの計画をした民間業者は、政府の援助を受けて同じような規格のものをつくって競争させられるならば民間企業が圧迫されるというところから、日本規格に合わない四尺に九尺という異常な規格でなければ許可しないということを言い出したのは、当時の通産省でございます。私どもは、そういう規格ならば外国から機械を買ってこなければならぬであろうし、しかも、できた製品が日本規格に合わないということになると販売にも影響するのではないかということを指摘したのでありまするけれども通産省は、あえてこれでなければいかぬということでだいぶん制約を加えまして、結局つくられたのが、外国の機械を買ってやるということになった。そうすると、特許権は買ってこなければならぬ、できた製品は四尺に九尺というと、これからの団地がそこまで進めばいいですけれども、今日までは、四尺に九尺ということになりますと、国内では使用にたえないというところから、せっかくできたものを、しかも特許権を買った機械でつくったものを、また裁断しなければならないという結果、東北開発会社の成績があがらないということです。製品をもう一ぺん切り直さなければならない。しかも、機械はばく大な特許権を買ってそういうものをつくらして、それでいま赤字だからけしからぬなんということを言うのでありますけれども通産省が、これは民間企業と競争しないように、日本のハード・ボードの発展のために、特殊会社だから犠牲になれということでやらしたのならば、それはそれなりに意味があると思う。今後日本のものは外国並みの建物の規格になるのであろうから、民間では損するであろうけれども、特殊会社だから損をしてもやれということで、ハード・ボード工場をやらせるのならそれでもいい。いや、株式会社だから赤字は出したらだめだといまごろ言われましても、初めから赤字が出ることは予想されておったことなのです。規格外のものをつくり、外国から機械を買わなければならないという制肘を受けるのですから、赤字が出ることはあたりまえのことなのです。殊特会社であるから、率先して企業の発展のために、少しぐらい犠牲を払えということでやられるのならば、私はそれも一つの方法だろうと思います。それならば、あまり赤字を問題にせずに、よく犠牲を払ってハード・ボード工業のために役立ったとほめてやるべきで、赤字だからやめたらどうだなんということは、赤字になることは初めからわかったことなのです。  もう一つ、セメントもそうです。民間のセメント工業は非常に黒字になって隆盛になったときに、東北開発会社のセメントはいまだに赤字を出しておりますが、これも同様に、当時のセメント業界は、そういう特殊会社がセメントをやられると安いセメントができるという。そんなものはできっこないのです。役所が指導してやることで、安いようにいくなんということはあるはずがないことですけれども、安いセメントができては困るというところから、これもまた、わざわざ外国から特許権を買ったようなものでなれけばだめだ、そうでなければ許可しないということで、これまた特許権を買わしてやらしたために、コストダウンできないで四苦八苦している。一般民間のセメント工業はみな黒字なのに、一体どうして特殊会社だけが赤字なのかということで責められておるわけですが、これもみな採算が合わないような条件をつけられてやったら合わないのであって、これは企業者が下手だということではない。条件をつけられた、通産省が民間企業を守ろうというところから、正直に制約をした結果なのです。ですから、初めから新しい方式でセメントをつくるならば、日本のセメント業界のために非常に役立つであろう、それには民間ではできないだろうから、外国から機械を買ってテストケースでやるならどうだということで試験的にやらせるということならば、赤字は問題にしないという意味であるならば意味があると思うのですよ。けれども、赤字は出してはならないということです。つくるものは模範的なものをつくって大いに寄与しろということでやらしておいて、いや赤字だからと言うが、これは好んで出した赤字ではないのです。赤字になるようにせしめられた赤字なのです。通産省は特にこの点は自戒していただきたい。民間企業と競争するような事業を特殊会社がやる場合には、初めから既存の業界と競争しないならば、赤字が出ることもやむを得ない。また、それは日本の産業界のために必要だということなら、それなりに指導されていくべきだと思うのです。そういう立場で既存の業界の意見を聞くということはいいと思うのです。そうでもない、どっちでもない、中途半ぱにしておくことは好ましくないのじゃないか。これからも起こってくる問題だと思いますので、大臣に所見を伺っておきたいと思います。
  208. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまのお話でございますが、私は実はその当時の事情をつまびらかにいたしておりません。したがって、いまここに事務当局がおりますから、そのときのことを申し上げさせますが、実を言うと、その前のハード・ボードのほうは、いささかわれわれのほうも関係があったように聞いておりますけれども、セメントのほうはわれわれは反対した。そんなものをつくっては高くなるからだめだと言ったのでありますが、そういうものをつくったらしいという話をいま聞いたのであります。事情はこちらから聞いていただきたいと思います。しかし、いずれにいたしましても、東北開発というようなものは、やはり順調に東北の発展のために仕事が伸びるようにわれわれとしては努力をいたさなければなりません。過去は過去といたしましても、現時点からひとついろいろな問題についてよく勉強いたしまして、そうして東北開発のこの会社が発展するように努力いたしたい。ただ所管は、御案内のように、あなたももうよくおわかりですが、これは経済企画庁でございまして、私のほうの直接の所管ではございません。今度その種の仕事でもするような場合においては、十分われわれもひとついまあなたのおっしゃったような気持ちでいろいろ助言なり、あるいはまた応援なりするようにいたしたいと存ずる次第であります。
  209. 松浦周太郎

    ○松浦主査 一言申し上げますが、経済企画庁のときも同じ質問をされたのですから、よくその当時の話をしてください。
  210. 倉八正

    ○倉八政府委員 私はこの質問が出ないと思って、いま何も書類を持ってきませんでしたが、川俣先生の御指摘のセメントの問題は、たまたま私が当時の担当課長をしておりましたので知っておりますが、いまの御事情は、私はまるで反対だと思います。当時シャフト・キルンを二基つくりたい、それで、たしか十八億で済むところが、ロング・キルンだということで二十三億、五億よけいにかかるから、シャフト・キルンにしてくれということで、東北開発は私のほうに執ように要求してきたわけであります。それで、当時宇部興産のシャフト・キルン一基というのを、ドイツだかデンマークだか、ちょっと忘れましたが、技術的にほんとうにやっていけるかということで、通産省が、たしか当時私のところで二カ月か三カ月かそれを検討させまして、通産省は、当時それに対して踏み切り切れなかったのでございまして、通産省がシャフト・キルンをやらせたということは毛頭ございません。たまたま私がそのときの担当課長でございましたから、私が生き証人だろうと思います。  それからもう一つのハード・ボードの問題は、私はその事情についていまつまびらかにここに持っておりませんが、当時の担当官の話を聞けば、新しくいま先生の御指摘の機械がスエーデンかデンマークにできたのであるから、それを利用すれば能率的であるという申請に基づいて通産省は許可したということが記憶に残っておりますから、念のために申し添えておきます。
  211. 松浦周太郎

    ○松浦主査 川俣さんに申し上げますが、もう正規の時間がまいりましたから、結論を急いでください。
  212. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは、所管経済企画庁ですが、事業をするのには同意を通産省に求めなければならぬ。ハード・ボードについては農林省に同意を求めているわけです。ただ、こういう専業について、ほんとうの意味のアドバイスをするのは別にして、既存業者のやはり擁護をしなければならぬ使命を通産省が持っているのですから、私は、そのこと自体は決して悪くはないと思う。しかし、そういう場合には、もちろん既存業者の擁護をしなければならぬけれども、単に反対するのではなしに、いい意味の日本全体の産業のためになるということで許可をするのなら、いつまでもその考え方を持続すべきだと思う。  それで、私は倉八君が課長時代に一ぺん行きまして、その記憶がたしかありますが、結論だけ申し上げておきますが、当時はあんな場所に持っていくことについて確かに問題がありました。できた製品を販売市場にまで運ぶということは、コストが上がるだろう、こういうことは予測されておった。ところが、御承知のように、日本の石灰石は無尽蔵に近いということであり、その無尽蔵に近いというのならば、工場というものは製品の販売しやすい工場がいいだろうというのが当時の業界の考え方の大宗であった。ところが、無尽蔵だと言われていた石灰石が、今日ではいずれもセメント業界は原石を確保するために非常に苦慮して、もしもセメント業界が今後不況に陥るならば、原石確保のために非常な努力を払わなければならぬ、そのためには業界も整備をしなければならぬというところまで原石の不足が影響してきているわけです。ですから、あの東北にセンメト工場をつくったということは、確かにいまになって意義が出てきた、原石の量を確保しているのは、いまはおそらく東北開発くらいだろうと思う。そういうことで、当時反対もあったでしょうが、いまではできたほうがよかったということになるわけです。たとえ少し赤字を出しても、あれだけの原石を確保したという役割は非常に大きい。そういう意味で、今後の指導のあり方についても、反対なら反対、賛成なら賛成と、その目安というものに政府責任を負わなければならぬ、こういうことです。そういう意味で、大臣のことですから、間違いがないと思いますが、特に一言加えておきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  213. 松浦周太郎

    ○松浦主査 これにて川俣清音君の質問は終わりました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明二十一日午前十時三十分より開会し、農林省に対する質疑を行なうことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会