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田中国務大臣 市中金融機関に対してましては、
法律で金利の限度をきめておるわけであります。その金利も非常に、最高限であるというけれ
ども非常に高いということであります。なるべくそのような市中の金融業者の門をくぐらないように、金融を正常化することが必要であるのでありますが、手形のサイトが非常に延びたり、もう
一つ、これは私は非常に言いにくい話でありますが、実際、国民各位がもう少し
考えてもらわなければならないことだと思いますので、勇気をもって申し上げますが、その手形の内容がいまよくつかめないのですよ。これはいろいろ統計から私もやったのですけれ
ども、金融量というのが非常に大きくなっている。融通手形ということがあることは御
承知のとおりでありますが、融通手形が一体どのくらいあるんだろうか。私は、私の郷里や知った人たちを集めて、
大蔵大臣だとは思わぬで、個人
田中角榮だと思ってひとつ話してくれということで二、三日前にお話を聞きました。極端な例だと思いますけれ
ども、融通手形はもう常識なんだ。融通手形は自分で出せるので、その融通手形を出すことによって金融をつないでおるのです。ですから、融通手形を徹底的に排除をしても、それはわれわれもたいへんなんです。しかし、君たちの言うように融通手形が相当量出回っておって、それが金融の
状況としては普通なんだということであればたいへんなことだ。ですから、やはり資本でいえば、大体
年間の売り上げというものは、水揚げ量からいえば、資本金の二十倍という常識的な線もありますし、それから年に何回回転するのかということが業種別できちんとわかるわけでありますし、何か正常な事業を行なっておるときの金融というもののベースからはずれて金融が幾らか回っているんじゃないかとさえ思われるふしもあるのであります。でありますから、金融の正常化ということは、われわれがいままで
考えておるようなオーバー・ローンの解消とか、オーバー・ボローイングの解消とか、そういう
考え方よりも、現実的な金融の動き、こういうものの正常化をはからなければならぬ。それにはやはり、五千万円の資本金で
年間の商売が幾らあるものに対しては、正常な金融の限度というものは大体このくらいなんだというようなことを、お互いが少し
考えていかないと、いまのままでただ足らぬ、足らぬでもってそのまま
措置をしていくと、全く自転車操業的になってしまうのじゃないか。私はそこに、現時点における金融というものに対しては、相当お互いが前向きで対処しなければいかぬだろう。これも、水ぶくれがあるんだからと、一ぺんに正常のワクをかけてしぼってしまったら、これはもうたいへんなことになる。でありますから、一律、画一的な引き締めというようなことを日銀がおやりにならないで、
一つずつのケースに慎重に配慮をしながら、各金融機関の窓口で十分
企業の業態を見ながらやっていこう、こういう慎重な配慮をとったのはそういう問題もあるのではないか。いずれにしましてもひとつ国民各位、
企業者がいつまででも自転車操業をやるのだというような
考え方を正常に戻していくということに対しては、政府も国民自体も相協力しながら、正常な金融状態、正常な経済状態に、やはりできるだけ早い機会に返してやらなければならないのではないか、資金的な統計でいろいろな
説明を聞きますと、経済成長率とか、いままでの回ってきておる金融の量がありますから、まあ一四、五%増し、少なくとも一七、八%増しであれば十分だというものに対して、二七%も三機関でもって金を出しておる。また、それに対して追加もしなければいかぬ。しかし二月も末になって、三月あぶないときには日銀はもっと
考えます、こういうような体制をしいておるのですから、政府や日銀は非常に前向きであるということはひとつお
考えになっていただきたい。ですから私たちも現実を十分見ながら、理想論だけで押しておるとか、画一、一律的なものの
考え方で金融の正常化をはかろうというようなことをやっておるのではなく、徐々に正常なものにしていこうという
考え方に立っておるわけでありまして、私はまあいまの状態ではだいじょうぶだ、こういうふうな
考え方。なぜかといいますと、いま私のところに報告が来ております倒産したものの内訳が出ておりますが、まだ
ほんとうに金融の引き締めによって、普通だったら十分乗り越えていけるものが参ってしまったというような例はないようであります。