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1964-02-20 第46回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十日(木曜日)    午前十時二十四分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       愛知 揆一君    青木  正君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       水田三喜男君    井手 以誠君       石田 宥全君    田口 誠治君       辻原 弘市君    中村 重光君       武藤 山治君    横路 節雄君    兼務 田原 春次君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局参事         官         (第三部長)  吉國 一郎君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (大臣官房長) 谷村  裕君         大蔵事務官         (大臣官房会計         課長)     御代田市郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (管財局長)  江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君  分科員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    松井 直行君         大蔵事務官         (主計局総務課         長)      岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    川村博太郎君         大蔵事務官         (為替局投資第         二課長)    大蔵 公雄君         大蔵事務官         (国税庁長官官         房徴収部長)  小熊  清君         自治事務官         (税務局市町村         税課長)    森岡  敬君     ――――――――――――― 二月二十日  分科員石田宥全君及び横路節雄委員辞任につ  き、その補欠として田口誠治君及び武藤山治君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員武藤山治委員辞任につき、その補欠と  して中村重光君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  分科員田口誠治君及び中村重光委員辞任につ  き、その補欠として石田宥全君及び横路節雄君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  第二分科員田原春次君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算大蔵省所管  昭和三十九年度特別会計予算大蔵省所管  昭和三十九年度政府関係機関予算大蔵省所管      ――――◇―――――
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算大蔵省所管、同特別会計予算大蔵省所管、同政府関係機関予算大蔵省所管を議題といたします。  なお、大蔵省所管については質疑通告が多数にのぼっておりますので、質疑時間は、本務員については一時間、兼務員もしくは交代して分科員となられた方については三十分程度にお願いいたします。  これより順次質疑を許します。井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手分科員 本日は、揮発油税利子補てん債、外人の料飲税免税その他数点についてお伺いいたします。  揮発油税創設した理由は何であったか、それをお伺いいたします。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 揮発油税は、一般財源として設けておるわけであります。しかし、昭和二十七年に道路整備財源等に関する法律制定が行なわれ、同時に道路整備五カ年計画法制定せられたわけであります。この制定に伴いまして、当核年度における揮発油税相当額道路整備財源等に盛るというふうに法律上なったわけでありますが、揮発油税そのものにつきましては、一般財源として制定をせられたものであります。
  5. 井手以誠

    井手分科員 創設理由なり、ただいま大臣答弁にあったように、一般財源としてということでありますならば、租税力に応じた課税をしなくてはならぬ。祖税公平の原則から当然であると考えますが、いかがですか。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 分に応じて徴収すべきであることは御説のとおりであります。しかし、この揮発油税につきましては各国の例があるのでありまして、日本の今度一〇%引き上げた揮発油税税率も、なお先進諸国よりも多少低目であるというように理解しております。アメリカは別でありますが、その他の国との比較を申し上げたわけであります。
  7. 井手以誠

    井手分科員 外国のことは承っておりません。二十四年に創設したときの提案説明に、揮発油消費者担税力があるから財政需要に応ずることができるという説明があっておりますが、そのとおりですか。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 当時の状況制定当時はそのとおりだと思います。
  9. 井手以誠

    井手分科員 揮発油税については目的税的性格を持っておる、そういう御答弁でありましたが、地方路税目的税ですか。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 道路整備五カ年計画に伴いまして地方道整備も行なうわけでありまして、これが財源として使用せられておるものでありますから、目的税とはっきり申し上げるわけにはいかないと思いますけれども目的税に近いという解釈を従来やっておるわけであります。
  11. 井手以誠

    井手分科員 揮発油税目的税に近いものである、地方道路税ははっきりしておるじゃありませんか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 道路財源に使用することに限定をいたしております。
  13. 井手以誠

    井手分科員 目的税でありますならば、受益者負担ではありませんか。受益者負担するというたてまえに立つのが正しいのじゃございませんか。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 揮発油税目的税であるかどうかという問題に対しては、昭和二十七年から十年以上議論があるところであります。これは衆参両院において御発言と同じような議論が再三繰り返されておるわけでありますが、日本では目的税というふうに法制上明らかにはいたしておりませんが、いまの地方道路税につきましては、道路以外には使ってはならないというふうにしておりますので、この意味で、国が道路整備財源として考えておるものよりも目的税に近い、法制上の目的税式なものと理解をいたしております。
  15. 井手以誠

    井手分科員 私がお伺いしているのは、目的税であり、あるいは目的税に近い税金であるならば、受益者負担をするのがたてまえではないかと承っておるのです。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 そのとおりであります。
  17. 井手以誠

    井手分科員 それでは法制局にお伺いしますが、目的税である、揮発油税はそれに近いものである、これはいずれにしても同じことです。道路費用に充てるために揮発油税予算額全額が充てられる。地方道路税においては、道路費用に充てるために地方道路税創設された、これははっきりいたしております。その道路とはいかなるものですか。
  18. 林修三

    林政府委員 道路は、相対的観念でございまして、道路とは何ぞやということについては、別に法律上の一定の観念はないと思います。それぞれの法律定義をし、あるいは観念をつけていっていると思います。  いまの御質問の御趣旨でございますが、道路法道路ということについては、道路法に一応の観念が書いてあるわけであります。しかし、それ以外にも、いわゆる道と申しますか、そういうものもあるわけでございまして、一般の人が通行する場所普通道路といっている、さように考えます。一般の人というのは、もちろん人間だけではなくて、車馬等が通行する場所で公共的な用途に供せられておるものも、道路といっておると思います。しかし、御承知のように、私設の道路みたいなものもございますから、道路観念は、それぞれの法律趣旨によって解釈していくほかはございません。
  19. 井手以誠

    井手分科員 林さん、先の先まで考え答弁なさらぬでもいいのですよ。道路とは、高速道路から一級国道、二級国道都道府県道市町村道まで――里道は含まっておりますか、農道は含まっておりますか。
  20. 林修三

    林政府委員 いまの御質問趣旨が、どの道路に含まっておるかという御質問か、よくわからないのでございますが、道路法道路には、いまおっしゃった高速自動車道路と一級国道、二級国道都道府県道市町村道、これしか区別はないわけでございます。
  21. 井手以誠

    井手分科員 大臣にお伺いいたしますが、道路費用に充てるための目的税揮発油税道路税であるなら、里道たんぼの中に使われるものは目的外になるわけですね。それは該当しないことになりますね。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 これは道路法をつくりますときに非常に問題になった点であります。道路とは、道路法による道路もありますし、農道林道、それから里道、あらゆる道路があるわけであります。国が補助する対象ということになりますと、現在市町村道までは補助をいたしております。また、林道に対しても別途の法律によって補助をいたしております。農道に対しても今年から補助をするようになったわけでありまして、道路法上の道路に対しては、道路法に基づいて補助をするというだけでありますから、道路という観念に対しては、あらゆる道路が含まれる、こう解すべきだと思います。
  23. 井手以誠

    井手分科員 それじゃ、道路費用に充てる、あの法律に基づくものは、林道にも農道にも計画がございますか。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう御質問であれば、道路整備五カ年計画に基づく道路に限るべきだと思います。
  25. 井手以誠

    井手分科員 五カ年計画に限られておる。その目的費用に充てるため、そういう道路に使われない揮発油税金をかけることは、いいのか悪いのか、こう聞いておるのです。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 これは問題であります。道路整備財源に使うものであり、道路法に基づいて町村道まで区分をして補助をいたしておりますし、また、市町村単独事業につきましてもワクをきめておるわけでありますから、これ以外のものから特定財源を取るというものに対しては、悪いということではありませんが、議論があるところであります。
  27. 井手以誠

    井手分科員 農業具新潟選出田中さんにしてそういう答弁は聞こえません。悪いにきまっているのです。悪いのです。進法であるかどうかについて議論がある、こういうことなんです。  それでは、これはなかなか重大ですから――工業用原料ガソリン税免税になっておりますね、その免税した理由をお聞きしたい。
  28. 川村博太郎

    川村説明員 提案説明までは実は記憶しておりませんが、当時立法をする際の提案説明を現在は手持ちしておりませんので、趣旨を御説明申し上げますと、当時石油化学原料といたしまする揮発油につきましては、石油化学工業育成をはかるためにこれを免税といたしたわけでございます。
  29. 井手以誠

    井手分科員 昭和三十二年三月八日の提案説明に何と書いてある。揮発油税道路整備財源に充てている現状にかんがみ、工業用趣旨が違うということがはっきり書いてある。これは私は速記録を持ってきたんだ。道路には使わないから、また工業用は別途の用があるから、原料はこれと別の意味があるから免税にいたしますということがはっきり書いてある。その質疑応答を私は全部写してきたのがある。大臣、それを確認しておいてもらいたい。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 工業に使うもの、またその後漁業用のものに対しても免税をやっておるわけであります。これらは全部、その企業育成とその企業の持つ特殊性というものから、免税措置をとったわけでありまして、いま井手さんが言われた条項は、いまになってみますと非常に大きく浮かび上がってくるものでありますが、法律を提案した、いわゆる減免税を行なおうとした趣旨は、もちろん道路財源特定をされておるという考え方も相当ありますけれども、やはりその業種の持つ特殊性、国が相当力を入れなければならない、補助金を出さなければならないというような趣旨にも相当ウエートを置いてそういう措置がとられたということは事実であります。
  31. 井手以誠

    井手分科員 何といっても当時の提案説明の柱ですよ。大蔵大臣が何と言っておるか。道路整備財源に充てられるから免税にしますとはっきり書いてある。幾ら言い直したって、そんなことは――速記は消えませんよ。  それでは続いてお伺いしますが、林さん、軽油引取税目的税ですね。
  32. 林修三

    林政府委員 実は目的税ということば定義にいろいろあるわけでございまして、先ほどから大蔵大臣も御答弁になりましたが、揮発油税地方道路税も、あるいは軽油引取税も、ほんとう意味目的税ではないのだろうと思います。いわゆる道路整備に充てる、主として道路費用に充てるという趣旨で、その使途はそういふうになっておりますが、その取る目的徴収との関連が、普通の意味目的税ほど密接ではない、目的税に近いもの、こういうものだろうと思います。
  33. 井手以誠

    井手分科員 大蔵省にお伺いします。軽油引取税農林漁業その他について免税されておりますが、免税された理由は何でございましたか。大蔵省提案説明の中から御答弁いただきたい。いまの理屈じゃございません。
  34. 林修三

    林政府委員 私から御答弁いたします。  当時、自治大臣あるいは自治庁長官がどういう提案理由の御説明をされたか私は存じませんが、結局、一つ租税政策として、軽油引取税が主として道路費用に充てられるというところから、農業用とか、あるいはその他に充てられるようなものを免税にするというような方針がとられておると思います。これは一つ租税政策としてそういう方針がとられておるのだと思います。
  35. 井手以誠

    井手分科員 林さん、こういうふうに大臣説明をしておるのです。内閣ですから、法制局も同じ解釈だと思うんです。  軽油引取税免税措置をとったときの提案説明、本税は目的税であることから、道路との関連有無等を勘案して免税の範囲を定めております、こうなっております。間違いございませんでしょう。間違いないか、あるか、それだけでいい。
  36. 林修三

    林政府委員 先ほど私ちょっと揮発油税軽油引取税関係を誤解しておりました。軽油引取税は、御承知のように、地方税法目的税の中に入っております。いわゆる地方税法でいう目的税でございます。したがいまして、軽油引取税は、結局、その納税義務者と申しますか、実質の負担者でございますか、そういうものについて、この軽油引取税立法政策ということから、道路にあまり関係のない方面につきまして免税措置をとる、そういう方針がとられていると思います。
  37. 井手以誠

    井手分科員 大臣、以上で、地方道路税揮発油税は、消費者担税力があるから、財政需要に応ずるために創設されたものである。その後、道路整備緊急性にかんがみ、その全額道路整備費用に充てることになっております。すなわち、創設の当時は、担税力があるから一般財源としてとる。しかし、これは地方道路税においても軽油引取税においても目的税でありますから、本来ならば、目的税であれば、受益者負担するのがたてまえでありましょう。そういう意味も含めて、道路整備関係のないものについては、ほかにも理由がありましょうけれども、主としてそういう理由によって免税措置がとられておる、こういうことになってまいるわけであります。これはそうでないとは言えないはずです。  そこで農政局長にお伺いいたします。いまからあなたに農業所得担税力農業機械の内容についてお伺いいたします。農業白書からとってまいりますが、一人当たり最近の農業所得年間幾らですか。また、非農業に対して何%に当たっておりますか。
  38. 昌谷孝

    昌谷政府委員 いまちょっと手元に資料を持っておりませんので、正確な数字を忘れましたけれども農業所得の他産業に対する格差は、おおむね三〇%弱というところにいっております。農家所得としては約五十万円近く、農業所得はおおむね三十万円見当であったかと思います。
  39. 井手以誠

    井手分科員 昌谷さん、そんなでたらめなことを言ったらいかぬ。あなたはこの間十一万円と発表したじゃないですか。そんなことを、あなた、軽々に言うべきものじゃない。非農業に対して二九%に当たりますから、これでわかるでしょう。
  40. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先生の御指摘の所得は、おそらく、農業従事者一人当たり国民所得であろうと思います。そうであれば、おおむねその数字でございます。私は先ほど農家二戸当たりのことを申し上げたのでございます。農業所得であれば、先ほどの先生数字だろうと思います。十万円ちょっとこしたかと思います。
  41. 井手以誠

    井手分科員 非農業に対して三〇%弱という農業所得、これには、一般財源以外に特別にガソリン税負担する担税力があると思いますか。
  42. 昌谷孝

    昌谷政府委員 主として道路を走りません、圃場で使いますいわゆる農業用機械ガソリン税負担は、私どもが三十九年度について推測をいたしておったところによりますと、農業用でおおむね九十億円のガソリン税がかかっておりまして、これはおそらく税率変更等によりまして明年度はもう少しふえるかと思います。それが担税力の問題としてどうであろうかという点は、機械を持っておられる農家の個個の経営状況その他から判断をいたすわけでございますが、マクロでは、なかなかにわかにあるともないとも――どういう角度であるなしを判断するかによって、おのずから異なってこようかと思います。
  43. 井手以誠

    井手分科員 一人当たり農業所得年間十万円そこそこ、非農業に対して二九%、三〇%弱だとおっしゃる。そういう歴然たる事実の前に、あるとかないとかいうあいまいなことばは、私は少し考えていただきたいと思う。別に答弁は求めません。そのくらいの腰では農林省はとてもとても大蔵省に太刀打ちはできない。  そこで、続いてお伺いしますが、ガソリン動力源とした耕うん機などの農業機械は何台ですか。
  44. 昌谷孝

    昌谷政府委員 いわゆる小型トラクターと称しますものが、おおむねガソリン動力に使っておろうかと思います。それの最近での普及台数は、おおむね百五十万台をこえております。
  45. 井手以誠

    井手分科員 大臣にお伺いしますが、昭和三十六年の税制調査会の答申を私もよく読んでまいりました。担税力の問題です。一戸当たり八百円程度では大したことはないから、やむを得ないということになっておりますけれども、いま農林省調査によりますと、農村関係ガソリン税相当額は、ことしは九十億円をずっと上回るであろう。かりに百億円と計算いたしますと、百四十万台農業機械がある、それを割りますと、一戸当たり幾らになりますか。ばく大な金額になります。八百円、千円、二千円じゃございませんよ。もっと高いですよ。百億円の金を百四十万戸で割ってごらんなさい。七千円ぐらいになるはずです。非農業に対して二九%の所得しかない農家が、一般財源としてこんなにとられていいのですか。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 確かに、今年度農林関係からの税収見込みは九十億をこしまして、今度の税率引き上げ分が十億でありますから、大体百億になります。百億のうち、その百四十万台で割るわけにはいかないのです、この中でもって林業が使っておるものが相当ありますし、農業の一台当たり幾らになるかということは、農林省で計算すればわかると思います。必要があれば、計算さして申し上げます。
  47. 井手以誠

    井手分科員 大体わかるのですよ。百五十万台ですから、見当がつくのです。ほかに若干林業もあるかもしれませんが、主たるものは農業です。  農林省にもう一つお伺いします。農林省は、農業近代化機械化を非常に積極的に奨励をされ、近代化資金などで助成をされているはずです。それと矛盾はいたしませんか。結論だけおっしゃってください。
  48. 昌谷孝

    昌谷政府委員 私どもといたしましては、ガソリン税がそういう目的に主として充当されるということでありますれば、主として圃場で消費されるガソリンでございますから、それはできれば免税措置を応じていただいて、農家還元をするというような方途で進むのがしかるべきであろうというふうに思って、いろいろとここ数年来検討を続けております。問題はむしろ、何と申しますか、免税の技術的な困難さということがいつも問題になるわけでございます。私どもも、常にその問題について両事務当局で検討いたすわけでございますけれども、なかなか決定的ないい方法がございません。なお、初め、ガソリン税が出ましたころとは担税額もだいぶ変わってまいりましたから、私どもとしては、一そうこの問題を具体的に検討する必要があるということで、実はいろいろと、免税ができなければ、免税にかわる方法として何か還元方法はないものかということで、本年度予算編成にあたりましても御検討いただいたわけでございます。結論を得ませんので、問題の根本的解決明年度に持ち越したということになっております。
  49. 井手以誠

    井手分科員 大臣、きょうはひとつ結論を得たいと思うのですよ。高速道路耕うん機関係はどうなんでしょう。たんぼで使う耕うん機税金がたくさんかかるのですね。一年に何千円もかかるのですよ。たんぼに使う耕うん機にですよ。道路を走らない、たんぼに使う耕うん機に、ばく大なガソリン税地方税がかかっておる。一体、荷送道路などの道路整備と、たんぼに使う動力源ガソリンと、どういう関係がありますか。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま農林事務当局から申し上げましたように、三十九年度予算編成につきまして、農林大臣と私の間でこの問題に対して相当慎重に検討いたしたわけでございます。あなたのようなお考えと立場も私も十分理解できますし、私も特に米どころ新潟県の出身でございますので、これらの問題に対してはどうすべきであるかということを、深刻な問題として検討いたしました。けれども、実際問題として、徴税技術上非常にむずかしいということと、農協でもって一括やればできるじゃないかというお話もありましたけれども、御承知のように、税務署農村とは非常に遠いところにありますし、農民そのもの税務署との関係を持ちたくないというような気持ちもあるようでありまして、なかなかうまくいかないということで、それではひとつそれに該当する金額特別基金として農林省で何とか考えられないかという案もありましたが、まあそれよりも渡しきりというものが一番よかろうということで、農道新設改良に対して七十四億円、それに農業構造改善事業だと思いますが、それに対して二十億、計九十四億円、大体全額還元するというような精神で決定をいたしたわけであります。
  51. 井手以誠

    井手分科員 それでは、いまから詰めてあなたにお伺いいたします。  この揮発油税地方道路税、これは農家にばく大な、一戸当たり何千円という負担をかけることは矛盾であるということは大臣はお認めになりますね。矛盾しておる、目的税趣旨に反しておるということは……。租税公平の原則からお伺いいたします。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 法律上違法ではないのですが、妥当性の問題に対して議論の存するところだ、このように考えております。
  53. 井手以誠

    井手分科員 議論の存するところでございますから、大臣はどうお考えですかとお伺いしておるのです。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 精神的には井手さんの議論も十分理解できるのでありますが、徴税技術上とかその他いろいろな問題もありますので、私は、農民に、国が取り上げるだけではなく、事実国の施策においてそれ以上のものを還元し、より以上の積極施策をとることによって救済さるべき問題だ、こう思います。
  55. 井手以誠

    井手分科員 大臣、ひとつお考えを願いたいのです。租税原則は何であるか。それは公平でなくてはなりません。担税力がなくてはなりません。その目的が明確でなくてはなりません、明確の原則、公平の原則、応能の原則、この明確な原則があるのに、何ですか、農林省にほかのやつをやっております、そんな答弁がありますか。きょうはそんな答弁では私は承知いたしません。ほんとうにきょうは承知しませんよ。農村担税力があるとお考えですか。一般所得税は二十何万人しか農村は納めておりません。農業所得は先刻農林省答弁のとおり。この農村が、一般にはそういう揮発油税がかかっていないのに、ガソリン動力源とする耕うん機などに、農民が使っておるがゆえに一月当たり何千円の負担をしなくてはならぬ、その税金を納めなくてはならぬという、その担税力があるかどうか、大臣のお考えを承りたい。農村に特別の担税力があるかどうか、農村が特に裕福であるから担税力があるとお考えになるかどうか、予ての点だけです。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 農村が特に裕福であるとは思っておりません。思っておりませんし、農村からの税金はなるべくとりたくない。とりたくないという基本的な考え方に対しては私も同じ考えを持っております。でありますが、この軽油の問題や耕うん機の問題に対しては農林省と非常に話をしたのですが、これから農業の構造がだんだん変わってきまして、いま耕うん機でありますが、これから豚や鳥を運ぶために今度は小型自動車を使う、だんだんやりますと、なかなか区分がむずかしいのであります。でありますから、結局農林省と私と話をした、最終的にはこういうものからさえもとっておるのだから、この何倍かを返すような方向で将来とも農村政策にこたえよう、こういうことになったのでありますから、私は、この税の問題だけに局限してお考えになっていただかないで、他の広範な立場から農村政策に対して、国はできるだけの配慮をするという姿勢に対してひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  57. 井手以誠

    井手分科員 大臣、国全体の政策からということは、ひとつ遠慮してもらいたいのですよ。財政憲法に何と書いてあるか、租税というものはどうすべきかということはわかっているはずです。おまえのほうにはいろいろな補助金をやっているから、税金は幾らでも取っていいじゃないかと、そんなばかな話はないですよ。飛行機のガソリン工業用原料ガソリン、ゴム材料用のガソリン免税です。農村は因る。あなたのほうの池田内閣総理大臣は革命的農業政策を行なうためにとこうおっしゃっておる。航空機には免税、工場には免税して、所得の低い農村になぜかけなくちゃならぬですか。これは矛盾じゃございませんか。矛盾であるかないか、それだけでいいんです。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 飛行機会社等に対しておりますものは、徴税上も非常に数が限られておるということで、すぐ明確になりますし、同時に航空機産業というような非常におくれておるものに対する一つの援助の方法であるわけであります。農村はそれより以上だ、こういう議論農林大臣もしておられましたが、何ぶんにも非常に数が多いということで、一戸当たりでもってあれしますと、非常に徴税技術上はむずかしいのであります。そういう問題もありましたので、現行のままになったわけでありますが、基本的な考え方に対しては、農村政策を思い切ってやろうという考えであることは間違いありません。
  59. 井手以誠

    井手分科員 それじゃもう一つ聞きます。軽油引取税を農山漁村には免税をしておる。揮発油税地方道路税免税していない、その矛盾はございませんか。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 その面も相当議論になったわけであります。しかし、最終的には、これからの道路道路法に基づく道路を一級国道、二級国道、指定地方道、府県道、町村道里道というふうにやってきていると、たんぼの中にはいつまでも道がつかない。しかし、このごろは農道も幅を広げたり、交換分合によって四メートル以上の道路と同じようなものもできておるのでありますから、こういうものに対して道路法の適用を受けるか、農道式なものも道路法の適用を受けておる道路と同じように国は補助すべきだし、もっと高率補助をすることによって、農業経営の近代化がはかれるのだ、そういう方向で、道路というものは建設省の道路だけではないのだという考え方で、国は補助政策を考えなくてはいかぬという趨勢にありますので、ここで特別の財源がありますから、これを全部免税にすることも一つ方法であるが、道路政策の方向がたんぼの中、いわゆる農林漁業に必要な道路ということにも重点を置かなければならぬ。開発道路に戦後非常に重点を置かれたのと同じように、小規模規格の道路に対しても、新しい道路として取り上げなければいかぬという方向にあるのですから、そのような建設的な方向で検討しよう、こういう意味で今度のようにしたわけでありますから、あなたがいまお考えになり御発言になった問題も、農林大臣と私との間に非常に議論があったということだけは申し上げられると思います。
  61. 井手以誠

    井手分科員 将来農道を舖装するようなお話があった、そうするとたんぼも舗装なさるわけですか。あなたは国じゅう全部舗装してしまうつもりですか。そういう議論を発展させますと……。ガソリン税地方道路税には農民農業機械については受益関係はございません。そうでしょう。簡単に返事してください。あるかないか、受益関係はないでしょう。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 ないとは断言できません。これからだんだんと乾田化がはかられたり大規模になりますと……。
  63. 井手以誠

    井手分科員 現在……。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 現在もないことはありません。農地まで運ぶときに道路を通らないわけはありませんし、これはそういうふうに厳密にお考えになられないで、道路というものを、いまよりも拡張解釈をして、新しい農道農林漁業に必要な道路整備ということを重点的に考えなければいかぬ、そういう方向でありますから、私は全然関係ないというふうには考えておりません。
  65. 井手以誠

    井手分科員 直接に関係はないと最初はおっしゃいました。それではもう一つ聞きますが、農業はほかの非農業に比べて担税力は多いのですか、少ないのですか。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 相対的に見て担税力が低いということは事実であります。
  67. 井手以誠

    井手分科員 このガソリン税地方道路税が、租税公平の原則矛盾をしておることはお認めですか。少し譲歩しましょう。疑義があることはお認めですね。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 農家負担する揮発油税は、農家所得に対して一%ということが算出せられておるようであります。これは先ほどの答弁として申し上げておきます。  それから、いまのガソリン税目的税である、特に地方道路税目的税であるということから考えて、関係ないというわけではないけれども、直接道路の工事というものと比べては非常に縁遠いものじゃないかという議論はあります。ありますし私も承知をしております。しかしこれは揮発油税は必ずしも応益負担ということだけではなく、一般の間接税という面からも見なければならないわけであります。そういう面から見まして、違法性はもちろんないのですが、これからの問題としてあなたのいま御発言のもの等は、引き続いて前向きで検討すべき問題だとは思いますが、現在の段階で不合理なものだというふうには考えておりません。
  69. 井手以誠

    井手分科員 ガソリン税農業には受益関係がない、担税力は少ない、そして不公平である、租税公平の原則に反しておることはもう明らかです。英断をふるって田中大蔵大臣はこれを免税にする勇気はございませんか。あなたは苛斂誅求の鬼として、今後も引き続き徴税なさるおつもりであるか、お伺いしたい。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 私はもう苛斂誅求反対論者でありますから、そういうことは考えておりません。しかし、いまあなたの御質問に対して、私は近い将来そうなるでありましようと答えれば、非常にすっきりするのですが、私はなぜ慎重であったかといいますと、議論からいいますと、ガソリン税というものは間接税であったのですが、ある時期に目的税に変換されたので、間接税としての一般論と、目的税としての両方の調和点を見出すという議論になると思います。しかし私は、農道を含む農村里道、その他町村道もしかりでありますが、これらが全く現在の道路政策から見捨てられておる、圏外にある。これを百億のガソリン税を納めるために、農山漁村、農林漁業を中心にした道路政策というものに重点が置かれて、こういう面に対して年間何百億も投資が行なわれるとしたならば、私はその観点からも再び価値判断をすべきだと思いますので、いまの御発言等も含めまして早急にまた検討いたします。
  71. 井手以誠

    井手分科員 あんた憲法を知っておるでしょう。何を書いてあるか、財政法にもはっきり書いてある。税金を新たに徴収する場合は、あるいは変更する場合は、明確の原則を貫かなくてはいけませんよ。なぜ税金を取らなくてはならぬかということの国民の納得を得なくてはなりません。どこに納得を得られますか。工業用のものについては免税をしておる。道路関係のないたんぼで動かす耕うん機には税金をかける、軽油引取税については免税されているけれども揮発油税地方道路税免税されていない、これほど矛盾の多い農業に対するガソリン税が、なぜ免税できないのか。このくらい明らかなものはございませんよ。きょうはいつまででもやりますからな。あなたは先刻から税金を取るのがむずかしいからとおっしゃる。それは、税金を取るのがむずかしいというのは、あなたのほうの国税庁関係徴税技術じゃございませんか。やろうと思えばできるはずですよ。むずかしいから、どんな不公平な、むちゃな税金でも取っていいという理屈はどこにも立っておりません、簡単にそれはできます。大臣、教えてあげましょうか。簡単に農業だけは免税できるのですよ。教えますよ。あなたはいま陰の声でおっしゃった、切符制がある。それからもう一つは配給ルートを新たに創設すること、それは重油のほうでちゃんと実績があるのですよ。もとで押えれば農業の部分はちゃんと免税できるはずです。切符制にやればちゃんと農業用の用途別に配給できるはずです。それがあってどうして免税できないのか。大臣、ひとつここらで、農業に理解のある田中さんですから、新潟県産出ですから、特にあなたは理解があると思う。あなたもきょうはうかつな答弁はできないはずです。あなたもやったことがあるんだ。何と言われてもこれは免税しなくちゃなりませんよ。このくらい矛盾の多いものはございません。違法ではございませんが、九九%は違法に近いものですよ。一〇〇%違法であるとは申しません。これほど矛盾の多いものをなぜ免税できないのか。免税しようとすればできるはずです。ここまで論議されたのでは、あなたは農村には遊説もなかなか困難になりますよ。いまから善政を施すか、苛斂誅求を依然として続けるかどうか。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 同じことを私と赤城農林大臣との間にやったわけです。赤城さんも農政に対しては非常に献身的な人でありますし、私もそういう思想であります。でありますから、もうこれは事務当局は全部オミットして二人だけでじっくりと話をしましたが、結論的には角をためて牛を殺すというようなことばもあるから、ここまできておる制度の中で、もっとひとつ、これを逆用してうまくやる手はないかということを考えた。ただしかし、切符制の問題も考えましたし、いろいろやりましたけれども、配給制度というものに対するいやな感じもあるし、そのほかに対しては農林漁業関係者はなるべく税務署とは関係を持ちたくないという気持ちもあるし、またここで農協その他漁協等が入ると、その税金をまけてもらった以上に月給を払わなければならぬようになるし、いろいろな面から考えて、これを種にしてひとつ農道政策を確立しよう、こういう考え方になったわけです。ですから、今度御承知のとおり十億の増税をするのに、結局五十何億であった農道に対する補助金を七十四億にし、なお農業改善でもって二十億出し、九十四億円出す。これも来年また百何十億になるでしょう。そういうふうにうまくこれを使えば毒もまた薬になる、こういうところが私と赤城農林大臣結論でありますが、いませっかくの御質問もありますので、この問題に対しては、これはまけるところはまけて、出すべきところは国家財政の範囲で、もう七十億が五十億に減ってもこれは筋が通ればいいというお話もありますから、これらの問題に対してはまた近い将来の問題として誠意をもって検討いたします。
  73. 井手以誠

    井手分科員 近い将来じゃいけません、いま三十九年度の予算を審議しておるところですから。これは免税にするのがあたりまえですよ。どんなに考えても、どんな理屈をこねつけても、免税するのが当然です。工業用あるいは航空機用には免税しておる。農業になぜ免税できないのか、担税力のない農業になぜ免税できないのか、道路整備関係のない農業になぜ免税できないのか、それを明らかにしなくちゃ。どうしても取るとおっしゃるなら、国民が納得できる理由をおっしゃってください。農業政策全般で私は聞いておるわけじゃございません。税金で聞いているのですよ。税金は公平の原則、明確の原則というのがある。これをなぜこういう原則に反して取っておるのか。農業用機械に対して免税なさる意思はどうしてもないのですか。三十九年度の話です。将来の話じゃございません。あなたは将来総理大臣になられるかもしれません。いつまでも大蔵大臣でないかもしれぬから、いまの問題です。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 三十九年度はひとつ政府が考えたことでお許しを賜わりたいと思います。お話の切符制も検討してないのではないのです。切符制を検討しましたときに、切符の配付はきわめて煩瑣な事務手続を要するとか、農業用機械の消費量を確実に把握することができないとか、先ほど私が申し上げましたように、オートバイとか、これからだんだんと車を使うようになりますが、こういうものに対する流用の防止をすることが不可能だ、この第三点などは農業がそうなることによって真に改善ができるのだから、農家で使うものは何でもみな免税の対象にすべきだという議論さえもあったのでありまして、研究はしておるのですが、租税の公平の原則というと、じゃバイクに使うものはどれだけ削ろうか、なかなかむずかしい問題でありますので、徴税技術の上からもお互いにいまこうして申し上げるように検討しておるのでありますから、これは三十九年のいま御審議になっておるものをすぐ直せ、こう言ってもなかなかむずかしいことであるし、私のほうではそういう十億という税収をもとにして、それよりもはるかに多い農道政策をやろう、こういう前向きの姿勢でございますから、どうぞ御理解を賜わりたい、こう思います。
  75. 井手以誠

    井手分科員 そういう理解は断じてできません。これほど矛盾に満ちた税金をこのまま通すわけにはまいりません。こういう予算は通すわけにはまいりませんよ。軽油引取税道路整備のためのものだからと免税をしておる、これはそのとおりですよ。はっきりあなたのほうで本会議でも説明しておるじゃございませんか。当時の大蔵大臣がちゃんと説明しておる。道路整備関係がないから工業用免税にいたします。軽油引取税については、農業関係道路整備には関係がありませんから免税をいたしております、こういうのですよ。それなのになぜ揮発油税地方道路税農業に課税するのかと言って聞いているのです。これは免税にしなくちゃならぬじゃないですか。もしあなたがおっしゃるように徴税技術がむずかしいとおっしゃるなら、一ぺん免税にしてしまって、そうしてバイク用その他については、あらためて国県道を走るバイクについては課税なさってもいいじゃございませんか。かけてはならぬものになぜかけますか。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 井手さんの言われることは全くよくわかるのです。同じことを農林大臣との間にもっとやったわけであります。私もあなたと同じような考え方で検討したのであります。でありますが、これはひとつより高い立場でもう一ぺん御勘考願いたいのは、道路整備というものは都市が中心になっておる。それから都市効率というものを非常に強く要求しておるということで、農村は陸の孤島になっておる、こういうことではいつまでもだめなので、それは純農業の各般の政策に対してもいろいろな施策も必要であるが、とにかく農村と都市との交通網、農村農村との連絡道、また農道もひとつ林道と同じようにもっとウエートを上げなければいかぬ、こうすることによってより大きな農村振興の基盤をつくるということでもありまして、農村道路政策に無関心たり得ないのみならず、道路政策というものと農村振興とは密着しておる。でありますから、この税金一般財源として使われるならば別であるが、そのみずから住む地方道路の特別財源として徴収をされる場合には、議論は多いところであるが、別にそれと同じ以上の金を農道整備に出してくれるならば、それもまた一つ方法である、こういういろいろな血から検討した結果、到達した結論でありますので、あなたの税負担の公平論とか税理論から言えば、確かにいろいろな問題もありますし、現にそういう種類のものに対しては免税を行なっておる例もあるのですから、それに比べられてイエスかノーかと言われれば、答弁に窮するところでございますが、いずれにしても、非常に前向きでものに対処しておるんだということだけは理解していただきたい。
  77. 井手以誠

    井手分科員 大臣は、田中角榮さんは私と同感だとおっしゃった。同感であるならば、農林大臣とあなたとは意見は一致したはずですね。一致したはずのものがどうしてこれが免税にできないのですか。同感だとおっしゃった。農林大臣と自分は大いに議論を戦わした。農林大臣の意見は私の意見と同じです。三人とも同じ意見。農林大臣大蔵大臣、同じ意見の者が懇談して意見一致したならば、同じじゃございませんか、免税すべきじゃございませんか。それが一つ。  いま一つは、いまの答弁の中にあった、それではあなたが将来とおっしゃるが、将来は里道農道林道も全部道路整備五カ年計画にお入れになりますか。農地も入れられますか。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 その問題は、林道道路法に統一をしようという議論は長いことあります。あるのですが、なかなかできない。というのは農林省、建設省の所管が違いますし、全然別な理屈がある、こういうことでありますが、しかし地方単独事業八千億ということが今度議論になっておりますけれども地方単独事業というものの中には、いままで考えておった特殊な状態にある町村道は含めるけれども、それ以上のものに対しては全部府県道以上であるというような原則はいつまでも続くものじゃない。私は道路法上の問題も、これから新しい事態に対処して時代に対応する方向でいかなければならぬとは思います。しかし里道とか農道とか林道とか、これが全部五カ年計画に入るものであるというふうにはここで申し上げられません。しかし私は農道整備五カ年計画とか、林道五カ年計画とか、里道町村道五カ年計画というようなものは当然将来出てくる問題だと思いまして、先ほどからあなたに申し上げておるのは、赤城さんも、私も、あなたも大体同じような考えでやりましたが、ただ最終的な問題だけが違うのです。ここでもってあなたは、そこまでいったならば、免税してしまって、あとからとにかく取るべきものは取ればいいじゃないか、こう言うのですが、私たちはこれをひとつ種にしながら大いに農道補助金もふやそうし、またこれからの将来計画もしようしというような方向に決着をしたわけでありますから、そういう事情をひとつ十分理解をされて、少なくとも四十年度以降、このガソリン税の、地方道路譲与税の引き上げに伴う農林漁業の振興というものに対しては、前向きで政府は考えておるんだということだけひとつお考えいただきたい。
  79. 井手以誠

    井手分科員 きょうは前向きの議論は聞きません。きょうは財政法から私は聞きよるのです。そうすると、結論的に申しますと、理論はそのとおりである、理屈はそのとおりであるが、徴税技術がむずかしいからやむを得ぬとおっしゃるのですか。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 一問一答で突っ込んでこられるとなかなか答弁に窮するわけでありますが、率直に申し上げると、大体ものの考え方は、私も赤城農林大臣もあなたも共通するものがある。こういうことを申し上げておるのです。しかし実際の行政を行なう立場から考えますと、より合理的な方向が一体ないのかということで検討いたしました結果、十億円の増収をはかるためにこのような大きな問題をお互いが提起し合い、検討しておるのでありますから、せめて三十九年度においては大幅に農道予算を拡充をしてもらいたい。そして農林省に基金を置けとか、またこれを免税するとかいう問題は、ひとつ後にこの問題を移そう、こういうことで三十九年度の予算になったわけでありますので、その間の事情は十分御理解がいただけると思います。
  81. 井手以誠

    井手分科員 私がお伺いしておるのは、農業揮発油税をかけるのはよくない、おもしろくないけれども徴税技術上やむを得ないというお考えであるかどうかと聞いておるのです。結論だけでいいです。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 それは議論があるのです。しかし政治的な基本的な観念の上からは、かけるのが悪いということではありませんが、かけないで済むような状態になれば非常に好ましい、このように考えておるわけです。
  83. 井手以誠

    井手分科員 かけるのは悪くないとおっしゃるが、どういうふうに悪くないのですか。何回も同じことを聞きたくないのだが、あなたは担税力農業には少ないとおっしゃった。租税公平の原則にも矛盾するところがあるとおっしゃった。それで政府の提案説明にも、道路整備関係ないから工業用免税だ、軽油引取税においては、農業道路整備関係がないから免税だと言っておる。こういう矛盾を指摘したところが、同感だとおっしゃった。そうであるならば、なぜできないか、それは徴税技術の問題だというふうにおっしゃったから、念を押しておるのです。徴税技術でしょう。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから私がるる申し上げておることを全部つなぎ合わせていただくと、私の考え方がよくわかるわけであります。これは徴税技術の問題もあります、こういうことを申し上げたわけです。しかしこのガソリン税制定しました昭和二十四年当時の状況考えてみられるとわかるとおり、一般の間接税でございます。でありますから、今日まで間接税としての性格も持っており、途中において五カ年計画法制定され、地方道路譲与税の制度ができたのでありますから、やはり法律制定の当時の一般的な税の本質と、その後いろいろな新制度が開かれた目的税式なものとあわせて考えなければならないわけでありまして、先ほどからもその間の事情をるる申し上げておるわけであります。しかしいずれにしても、別に担税力のある、税金をもっと取ってもいい人もあるかもしれぬから、農林漁業等に対してはできるだけの配慮をしろという考え方はよくわかります、こう申し上げておるわけです。
  85. 井手以誠

    井手分科員 私は、憲法にわざわざ書いてあるこの租税の問題、財政法の問題から聞いておるのですよ。揮発油税創設したときには、間接税としてガソリン消費者担税力があるから税財源として適当であるとおっしゃっているのです。ところが、農業担税力がないでしょう。その後目内税に変わった。ところが、その目的税であるならば、農業は受益関係は全然ないのですから免税すべきではないですか。一般財源としても間接税としても、大臣農業には課すべきものではありません、現在では担税力がないから。しかも目的税であるならば、受益関係のない農業関係には課税すべきではないでしょう。はっきりしているじゃございませんか。だから免税の規定が軽油引取税にあるじゃございませんか。あるいは揮発油税にも、工業用道路整備とは関係がないという理由免税されておるじゃございませんか。なぜそれが農業について免税できないかと聞いているのです。なぜ免税しませんか。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 ここでこまかい御答弁を申し上げるつもりはございませんが、井手さんが、言われておる農業所得というものは、他の国民所得と比べて低いということは私もそのとおりだと考えておる。担税力がないのか。担税力も、他のいつでも税金を納められる人と農業を比べれば、それも低いし、担税力がないと見るべきでありましょう、こういうことでありますが、理屈の上で担税力がない、こういうふうには考えておりません。揮発油税は通常の消費税でありますから、この制度が設けられたときから今日まで、農業に対しては免税をしろ、免税できなければ減税しろというようないろいろな御議論があって今日に至っておるわけであります。ところが、この十億円ばかりの地方道路譲与税としてのガソリン税を引き上げるというところに、この問題が再燃してきておるわけであります。実はこういう御質疑もあることを前提として、政府部内においても十分な検討を行ないました結果、ガソリンもまけて、それから国が農道整備に対してもうんと金を出すということが一番好ましいことであるけれども、財政上の問題もありますので、まずガソリン税はいまのままにしておこう、そのかわりに、議論の多いところであるのだから、財政事情もあるだろうけれども農道整備には金をうんと出せ、こういう結論に達しまして七十四億円の農道整備費を計上し、なお二十億、計九十四億円、ガソリン税として徴収する全額に近いもの、しかも増税後の歳入にも見合う金額を出しておるのでありますから、この間の事情はひとつぜひ御理解を賜わりたいと思います。
  87. 井手以誠

    井手分科員 それは大臣がいかに答弁これつとめられても、私は絶対引き下がりません。これは免税してもらわなくちゃ困ります。ただ見解の相違じゃございませんよ。こういう担税力の少ない受益関係のない農業機械に、しかも工業部門あるいはほかの税目の軽油引取税においては免税措置がとられておるのに、この揮発油税地方道路譲与税には免税措置はとられていない。やろうと思えばできるはずです。切符制や配給ルートの新設などでできるはずです。それをやろうとしない。この揮発油税地方道路譲与税の矛盾に対しては、私はこの国会で徹底的に究明しなければならぬと思っております。きょうは分科会ですから、ここで議事をとめるとかということは考えておりません。しかしこの問題を解決してもらわなければ、予算を通すわけにはまいりません。まだ一般質問も総括質問も残っておりますから、この間外務大臣は鼓を鳴らしてアメリカに対して抗議するとおっしゃったが、私も免税されない限りは鼓を鳴らして糾弾しますよ。社会党は総力をあげて、この矛盾きわまりない苛斂誅求の農業に対する揮発油税免税について、徹底的に相争うことをここに約束しておきます。  それでは次に二、三点簡単にお伺いいたします。  これはちょっと途中ですが、外人の料飲税の免税をお伺いしたいのです。あなたのほうから出された地方財政計画、これは自治省が主管ですけれども、あなたのほうも関与なさっておるからお伺いいたしますが、地方財政計画の料理飲食等消費税四百三十五億円の中には、十八日の閣議で修正されたものはどういう関係になっておりますか。あの四百三十何億円というのは閣議で修正された以前のものであると思いますが、どうですか。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 検討の結果決定をいたしたものでありまして、閣議修正以前のものそのまま出しておると思います。
  89. 井手以誠

    井手分科員 閣議以前の数字ですね。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 そう思います。
  91. 井手以誠

    井手分科員 そうしますと、地方財政計画というものは、お出しになっておりますけれども、これは修正しなければなりませんね。閣議修正のとおりになりますと、そういうことでしょう。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 これは御承知のとおり、税目別に積み上げたものでございますけれども地方税の税収というものは相当な勢いで伸びておりますから――これは私が答弁しないほうがいいかもしれませんけれども、もし悪ければ取り消しますが、しかし料飲税の問題、ことに外人のことだと思いますが、これが十二月までであっても三月までであっても、数字にそう大きく狂いが生ずるということではないと思います。しかし、これは自治大臣が答えるほうが適当だと思います。
  93. 井手以誠

    井手分科員 三十億というとばく大な金額ですよ。あなたが答弁なさったように、積み上げで積算されたものが四百三十何億何千万円になっておりますから、三十億、五十億はどうにもなるような内容のものではないはずです。税収の見込みというものは一つの方式があって見通しを立てて出されたものです。そうしますと、これは国務大臣大蔵大臣としてお伺いいたしますが、それでは政府は、さきに国会に出された地方財政計画で今後国会の審議を願われるのですか、あるいは閣議修正に基づいて原案修正を行なわれる予定ですか、どちらですか。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 こまかい問題については自治大臣が御答弁申し上げるのが至当だと存じますが、しかし提出しております地方財政計画はそのまま御審議を賜わりたい、こういう考えです。  それから料飲税、特に外人の遊興飲食税の問題につきましては、これは政府は一応当分の間ということを閣議で決定いたしましたけれども、国会に提出をするまでには与党との調整もあるようでありますから、当分の間とは原案のように十二月三十一日までをいうのか、三月三十一日までを当分の間に含むのかという問題は、これからの国会審議で問題になることでありますので、地方財政計画がこれにより修正をされるという考え方には立っておりません。
  95. 井手以誠

    井手分科員 非常に問題が多いのです。きょうは私はそれの修正をねらいとしたものではありませんから、この程度にとどめますが、いまおっしゃったように大蔵大臣は、この提出した地方財政計画に基づいて御審議を願いたいということですから、その点は記憶しておきます。閣議決定のような修正は行なわないということであると私は理解いたしておきます。そうですね。そんなかってに税収見込みが閣議があったから三十億もふえたり減ったりすることはできぬはずですよ。十九日に出たこの印刷物はもっと前にできておったんですよ。一日か二日の違いで税収が三十億も五十億も伸びたり縮んだりするはずがないのですから、この問題はほかの委員会でも追及されましょうから、私はこれ以上申し上げませんが、ただ大臣がおっしゃった、国会は閣議で修正なさった以前のものの財政計画で御審議を願いたいということ、そうでございますね。それだけはっきり確認しておきたいと思います。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 財政計画につきましては、修正をするという考え方はございませんので、そのままお出しをしておるもので御審議をいただきたい、こういうことを申し上げておるわけであります。ところがいまの料飲税、地方税関係自治大臣が審議に当たるわけでありますので、その問題はひとつ自治大臣のほうにお願いいたします。
  97. 井手以誠

    井手分科員 これは揮発油税とは違って、それほどウエートをかけておりません。これは地方行政委員会その他で審議なさるでしょう。けれども、いまのあなたの御発言だけは、ほかの委員の方によく伝えておきます。  それから次にお伺いしますが、何か今度住民税を減税なさって特別利子補てん債というものを出されるそうです。政府が元利補給をなさるそうです。それは特別交付税なのか普通交付税なのか、まだ議論が分かれておるそうでありますが、なかなかあなたのほうでも甲論乙駁があって閣議決定がむずかしいようなことを聞いております。それはそれといたしまして、財政法と地方財政法のどこに減収によるいわゆる赤字公債を認められておりますか。条文をお示しいただきたい。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 財政法第十五条、国庫債務負担行為という条項を適用いたしまして、「法律に基くもの又は歳出予算の金額若しくは」云々という条項がありますが、法律を国会で御審議を願おうということであります。その法律のていさいは何によるかといいますと、地方財政法第五条の例外による特別法を制定しようということであります。
  99. 井手以誠

    井手分科員 ひとつ、その法律を見せていただきたい。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 可及的すみやかに閣議決定をしまして御提案を申し上げる予定であります。
  101. 井手以誠

    井手分科員 もう一回それじゃお伺いしますが、地方財政法の何条です。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 第五条です。
  103. 井手以誠

    井手分科員 第五条に例外規定を設けるというわけですか。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 そうです。
  105. 井手以誠

    井手分科員 それじゃ違反になりませんね、お出しになれば。いまは違反しておるけれども、三十九年度になれば、法律を多数でおきめになれば違反にはならない。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 補給をするということは、地方財政法の改正、十九日の閣議で決定をしまして提出をいたす予定でありますから、地方財政法は直ちに提出をいたします。それから国が補給をするという問題に対しては、特例法をもっていま審議中でありますので、近く提案をいたしますから、法律に基づくものとして、財政法及び地方財政法違反ではないという考え方であります。
  107. 井手以誠

    井手分科員 それなら財政法違反にはならない。それはお出しになるならば、私はそれ以上責めません。けれどもあなたに責めたいのは、赤字公債はやってはならぬという、これは財政法あるいは地方財政法の鉄則ですよ。この原則は、答弁技術をいかに使おうとも、これは曲げることはできません。田中大蔵大臣が赤字公債の先べんを開いたということであっては、私は、後世に悪名が残ることを非常に憂えております。建設公債あるいは災害復旧については認められておる。これは国民も承知するでしょう。しかし国の財政政策によって歳入が欠陥を生じ、赤字になったものに公債を認めるということは、これはいままでもそれに似たようなものはありましたけれども、名前まで同じようなものが出てくることは今回初めてです。こういう先例を開くことが、違反ではない、特例法を出すから違反ではないとおっしゃる。それはそうでしょう。けれどもそういうやり方が正しいかどうか。財政法、地方財政法のたてまえから考えて、公債は出さない。建設公債、災害復旧についてはやむを得ない。これはわかる。けれども赤字公債を出さないというたてまえなのに、特例法を出すから造反でないからいいじゃないかというお考えは、私はちょっといただけません。国が、年間百五十億の欠陥に対して百億補給してやろう。補給してやろうというなら、何で六千八百億円もの自然増収があるのに、そのくらいの金が出せないのですか。交付税の引き上げその他の方法でその金が出せないのですか。債券を発行させて、後日国の負担になるような、そういうやり方は慎むべきだと思う。やってはならぬと思う。私は、この問題についてあまり議論はいたしません。けれども私は本日は、赤字公債の先べんをつける田中大蔵大臣に対して警告を発しておきたいと思う。そういうことを次々にやられたのでは、財政法の柱がこわれてしまうのですよ。法律違反じゃない、特例法をつくるからいいんだという、そういう考え方はめったに起こすべきじゃありません。天災その他やむを得ない場合は、しようがないでしょう。けれども財政の欠陥を生じたから、国の政策においてそうなったから、公債を認めるという行き方は正すべきですよ。健全財政をたてまえとする財政法、あなたはいつも健全均衡財政を貫いたとおっしゃるが、どこも貫いていない。私はきょうはあと一答だけでいいですが、この公債政策を厳に戒めておる国家財政、地方財政のたてまえから、こういうこそくなやり方をなさったことに対して、大蔵大臣どうお考えにななっておるか。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 私もこういう制度はとりたくない、こういうことであります。将来もそのとおり考えております。今度は、一体どうしてとりたくないものをとったのか、こういうことでありますが、これは健全性を侵さない、健全性を守りながら、しかも事態に対処し、機に応じて適切なる施策をとるという考え方に立って、国が三分の二を補てんをするということにいたしたわけであります。これは赤字公債と言うのですが、赤字公債ではありません。これは明らかにいたしておきたいと思います。これは北海道の固定資産税を低減するときにもこのようなことをやりましたし、災害でどうにもならなかったときにもかかる処置をとったことがあります。しかし、その例があるからやろうというような安易な考え方に基づくものではない。あなたも先ほど言われたとおり、税負担のできないところに非常に過重な税がかかっておるものを何とかまけなければいかぬ、これは事実であります。そういう意味において、今度二カ年間で住民税の不均衡を是正しようということをやったわけです。しかもそれが非常に画期的な減税をやるわけでありますが、画期的な減税というと、これは性質は違いますけれども、災害みたいなものです。地方からすれば、政府が政策として減税をやろう、こういうことを一方的にやったわけでありますから、これは超過税率によって特別な財源を得ておるのは、やはり地方としてやむにやまれない理由があってやったわけでありますが、これを政府が二カ年間でもって標準税率まで戻そうとすれば、非常に大きな金額、約三百億という金額になるわけでありますから、これを二カ年間で減税をすることによって、地方財政に破綻がきてはならぬ。激変緩和の措置は当然とるべきである、こういう考え方に立ちまして、国が三分の二出してやろう、こういうことになったわけです。大蔵省の立場で言うと、全くこれは出してやるという考え方なんです。地方税の減税は当然地方財政の中でやるべきであるということで、国が補てんすべきでないという考え方をとっておった。私は将来ともそう思っております。しかし、これはもう激変緩和であり、災害と同じようなものでありますから、国が漸減方式によって激変緩和のために応分の分担をしよう、こういう考え方でありますので、私は、これをもって赤字公債であるというような考え方は、ひとつおやめいただきたい。これはやむにやまれない――ちょうど農村に対してまけろという議論がある揮発油税などがまけられなかったので、せめてこれだけのものはやらなければならない、こういう観点に立ったものであるということをひとつ理解をしていただきたい。これはもう私がるる申し上げるまでもなく、債務負担行為というような道が開かれておりますので、財政法十五条の規定によりまして特例法をつくろうというのであり、こういったことは将来やりたくないという考え方を持っておりますので、今度の場合は、事情やむを得ざるものとして御理解賜わりたいと思います。
  109. 井手以誠

    井手分科員 やむを得ざる事情だけで世の中が通せるものじゃございません。災害とかなんとかおっしゃるけれども、天災じゃなくて、それは人災ですよ。予算編成上の技術からきた災害ですよ。これは、健全財政を貫くために公債政策を避けるという、そういう考えはあくまで貫いてもらいたい。  そこで、もう一問簡単にお伺いしますが、それは先般大蔵委員会でもちょっと問題になっておりましたウジミナスの製鉄所の問題です。あなたはきのう大蔵委員会で、輸銀は商業ベースに乗るものについてやるとおっしゃった。それとウジミナスの関係は非常に矛盾をするようです。お伺いいたします。ウジミナスの製鉄所にわが国は輸出融資、出資融資など幾らの債権がございますか。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 政府委員をしてお答えいたさせます。
  111. 大蔵公雄

    大蔵説明員 ただいまウジミナスに対しまする出資並びに貸し付け、あるいは融資という御質問でございましたけれども、こまかい数字はただいまここに持参しておりませんのでお答えいたしかねますが、延べ払い輸出で約一億ドルを若干オーバーいたします。出資で約二千万ドル、貸し付け金で約二千万ドル、合計約四千万ドルを若干オーバーするものが貸し付け並びに出資としてウジミナスに出されております。
  112. 井手以誠

    井手分科員 それは輸銀の融資ですか。わが国の民間銀行のものも加えたものですか。これは、あなたのほうからもらった資料に基づいてお伺いしておるのです。
  113. 大蔵公雄

    大蔵説明員 民間の日本ウジミナスという会社に、輸銀が出資のための融資を行なっております部分がございます。それの部分が政府の出資とすれば、政府の直接出資の分はございません。輸銀を通した民間出資の分はございますが、政府が直接出資をいたしております分はございません。ウジミナスに対します日本の総債権残高は約一億八千四百万ドルになっております。そのうち出資の部分が二千六百九十万ドルありますけれども、これはすべて民間の出資によるものであって、この民間出資の中には輸銀が出資のための融資をしている部分がございます。
  114. 井手以誠

    井手分科員 私が聞いておるのは、残高総額は幾らか、そのうちに輸銀の関係は幾らかということです。
  115. 大蔵公雄

    大蔵説明員 輸銀関係につきましては、延べ払い輸出債権は一億三千九百万ドルございますが、これは機械その他によりまして若干輸銀の融資割合が個々に異なっております関係上、そのうち幾ら輸銀が……。
  116. 井手以誠

    井手分科員 数字を聞いておるのです。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 ウジミナス製鉄所への投融資及び輸銀の融資の状況につきまして申し上げますと、一九六三年十二月末現在で、延べ払い輸出債権として一億三千九百九十六万九千ドルであります。それから本邦側の出資といたしましては、同じく一九六三年の十二月末で四十八億五千二百万円、千三百四十七万八千ドル、それから輸銀の対ブラジル開発銀行への借款につきましては、一九六二年の十二月末現在で千七百五十四万七千ドルとなっております。
  118. 井手以誠

    井手分科員 どうも違うようですね。これはあなたのほうから出された資料ですから、確認しておきたいと思うのですが、わが国のウジミナスに対する債権は、延べ払い輸出債権が一億三千九百万ドル、出資が二千六百九十万ドル、それからブラジルの銀行借款が千七百五十四万七千ドル、合計一億八千四百四十七万一千ドル、間違いないですか。間違いないかどうか、それだけでいい。
  119. 田中角榮

    田中国務大臣 いま申されたとおり一億八千四百四十七万一千ドルでありまして、うち、貸し出し残高が三千六百万ドルばかり残っておるということであります。
  120. 井手以誠

    井手分科員 それは違う。もう一つ確認しておきます。わが国の貸し出し残高は一億八千四百四十七万一千ドル、これは間違いないですね。そのうちに輸銀の貸し出し残高は幾らかと聞いておりますが、これは一億二百万ドル、邦貨で三百六十七億五千五百万円、そうでしょう。
  121. 田中角榮

    田中国務大臣 数字の読み違えでまことに恐縮であります。総残高が一億八千四百四十七万一千ドル、このうち輸銀貸し出し残高は一億二百九万七千ドルというところであります。
  122. 井手以誠

    井手分科員 大臣はこういう数字まではなかなか詳細おわかりにならないかもしれませんが、このウジミナスに対する融資はたいへんですよ。だからお伺いしておる。これはどういう目的で出されたのですか。輸出関係でお出しになったのですか、経済協力でお出しになったのですか。
  123. 田中角榮

    田中国務大臣 機械の輸出一億ドル程度を予定しておったということと、それから製鉄所を建設することによって日伯経済交流をはかろうという経済協力的な立場で建設に着手したわけであります。経済協力基金からは出ておりません。
  124. 井手以誠

    井手分科員 大臣はきのう大蔵委員会で、いまのお話とは違った答弁をなさっております。輸銀は商業ベースに乗るもの、こういうふうに御答弁なさっております。輸銀はこういう原則があるのに、出資融資だとか借款、経済協力をどんどんやっていいのですか。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 きのう大蔵委員会でお答えをいたしましたのは、経済協力基金と輸銀との差異は一体どこにあるのかということでありましたから、総体的に申し上げまして、輸銀はコマーシャル・ベースによるものであります、それから経済協力基金は経済協力等外交的な立場から、より広い高い立場からのものを対象としたものであります、こういうふうに分けて申し上げたわけであります。でありますが、御承知のウジミナス等につきましては、これから御質問もあると思いますが、当初の計画が非常に大きくなり過ぎてしまって、一体この製鉄所に対する日本側の出資はどうなるんだという問題があるわけであります。でありますから、これらの問題等もありますので、輸銀と経済協力基金とは、相互に十分連絡をとりながら、プロジェクト別に、輸銀でやるものと経済協力基金でやるものとは、おのずから区分せらるべきでありましょう、こういうお答えをしておるわけであります。
  126. 井手以誠

    井手分科員 それで、もう申し込んできておりますか。まだ正式な議題にはなっておらぬと思いますが、向こうからは、工事を完成するために、どのくらいの資金を日本側に要求してまいっておりますか。五百億円くらいですか。六百億円くらいですか。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 現在、昨年末ブラジル・ウジミナスから日本ウジミナスに送付されてきた、いわゆる九号予算案というものがありますが、これによりますと、千六百四億クルゼイロ、約二億六千七百万ドルの資金不足を計上して、通知をしてきておるわけでありますが、この問題に対しては、日本はこの案をこのままのんでおるわけではありません。
  128. 井手以誠

    井手分科員 その二億六千方ドルのうちに、日本側の負担をどのくらい要請してまいっておりますか。
  129. 田中角榮

    田中国務大臣 少なくとも一億ドル、約半分くらい持ってもらえないか、こういうことでありますが、こういうものに対して、これを全部持とうなどという考えは持っておりません。
  130. 井手以誠

    井手分科員 輸銀は輸出奨励、延べ払い輸出に対して金をお貸しになった。ただいまの答弁によりますと、今後出資その他の、完成に要する日本側の出資を要請されておるものは、これは輸出奨励じゃないですね。そうすると、輸銀からは出せないですね。
  131. 田中角榮

    田中国務大臣 これはいままでは輸銀の対象業務としてやっておったことであります。今度輸銀では、また投資の条項も広げておるわけであります。まあ、日伯間でありますから、きのうきょうのつき合いではなく、もうとにかく日本人も何十万か行っておるという特殊な日伯間の問題でありますので、私は、やはり完成をするまで投資をすべきだろうと思います。完成をしてくれば、当初ウジミナスに対して投資をし、延べ払い輸出をしたという根本的な日伯友好関係、日伯経済協力、また輸出振興、それらがあわせて効果を出すものでありますから、輸銀業務として引き続き検討していくべきだろう、こういうふうに考えております。
  132. 井手以誠

    井手分科員 大臣、あなたの答弁は、一問ごとに違ってくるんですよ。輸銀は商業ベースに乗るものだ、輸出金融だといまおっしゃったばかりですよ。今後日本側に要請しておる一億ドル以上のものは、あるいは一億二千万ドルになるか、三千万ドルになるかわかりませんが、その分は、輸出金融じゃないんでしょう。輸出関係はないはずですよ。輸出関係でないものに輸銀がどうして出さねばならないのですかと聞いておるんです。
  133. 田中角榮

    田中国務大臣 これは筋として、きのうは、経済協力基金と輸銀との性格上、運営上、どうあるべきかという質問に対して、輸銀はコマーシャル・ベースにウエートを置くべきである、こういうふうにお答えをしておるわけであります。私もその筋を申し上げておるわけであります。しかしウジミナスの問題は、これは御承知の、日伯間でまだ話を詰めなければなりませんし、株主間同士のものもあります。そして現在までの融資は延べ払い輸出でありますし、また、出資に対しましては、輸銀が日本ウジミナスに出資資金を貸してやっておるのでありますから、輸銀の性格としてはコマーシャル・ベース・オンリーが好ましいということではありますが、輸銀の在来の業務の内容等見まして、ウジミナスを引き続いて輸銀が担当してやっても、輸銀法のたてまえ上おかしくはないし、もうここまできておる問題でありますから、当然輸銀が主になって片をつけるべきだとさえ考えております。
  134. 井手以誠

    井手分科員 輸銀の原資は国民の税金ですよ。銀行にいっているから銀行のものというわけじゃございませんよ。税金が産業投資特別会計を通じて輸銀の原資になっておるのですよ。そう簡単なものじゃございません。機械の延べ払い輸出一億ドルに対して金を貸された、この分はわかるのです。しかし一億ドルの機械輸出に対して、現在輸銀の残高が一億ドルをこえておるじゃございませんか。輸出総額をこえておるじゃございませんか。これはどこに輸出振興の必要があるのですか。出資とか借款であるなら、なぜ経済協力でお出しになりませんか。  それでは、これは問題がありますから少し聞きますが、そうしますと、ウジミナス製鉄所は、これはわが国の今後の貿易にどのくらい利益がございますか。向こうの製鉄所の第一次製品、第二次製品を日本はどれだけ日本の経済発展に必要となさっておるのですか。日本の製鉄所はまだ生産不足ですか。
  135. 田中角榮

    田中国務大臣 そう極端に一つずつ具体的な問題よりも、やはり日伯間でありますから、日本とブラジルというのは、世界におけるいろいろな国がありますけれども、これはもう兄弟のような長い歴史を持っておるのです。われわれの同胞も何十万か住んでおるのであります。こういう特別な間柄でありますし、日本がウジミナスに投資をすることによって、日本の利益が奨来確保されないというようなことではありません。私たちはそういう感じでおります。ウジミナスが初めよりも三倍もかかる、そんなにかかるのは新幹線だけじゃないというような議論がいま一部にあります。ウジミナスは新幹線よりももっとかかる、当初の予算よりも三倍かかる、こう言いますけれども、これはこちらの見込み違いじゃないのです。御承知のとおり、向こうの高度のインフレによってどうにもならなくなったということでありますが、ブラジルが持つ資源、こういうものと日本との友好関係から考えてみますと、まあこれを庁づけてしまう。中途半ぱにするわけにはいきません。そういうことをしても、これはどぶに捨てるようなものではなく、私は、将来必ず返ってくる。また、経済ベースとして……
  136. 井手以誠

    井手分科員 何が返りますか。
  137. 田中角榮

    田中国務大臣 日伯間の輸出貿易その他いろいろな面で返ってくる、こういう考えでおります。
  138. 井手以誠

    井手分科員 いや、これは結論的にいえば、どろ沼に金を投げ込むようなものだといわれておるのですよ。うしろに水田三喜男先生がいらしゃる。大蔵大臣のとき何とおっしゃったか。ここに私は速記録を持ってきておるのです。「輸銀が分担すべきものではありません。それは経済協力基金で出すのが本筋であります」とお答えになっておる「あまり泣きつかれたものだから、よくないと思ったけれども、しぶしぶ出しました」とお答えになっておるのです。それでは、日伯間の友好関係のためなら、なぜ経済協力基金からお出しになりませんか。輸出振興のために融資をなさった。それに付随して出資融資をなさった。あなたは答弁には自信を持っている。しかしその自信というのは、国民に納得せられない自信なんです。もしあなたがおっしゃるように、日本とブラジルの友好促進のためであるなら、なぜ国会の承認を得て、国民の名においてブラジル国民と友好関係を促進なさらないのですか。銀行の融資手続じゃないはずですよ。いま日本の国内の製鉄所は、設備過剰のためまだ減産しておる。ブラジルのウジミナスに製鉄所をつくって、何か日本に輸入関係がありますか。しかも、その建設の見通しは向こうは立たぬですよ。どんどんインフレは進行しているのですよ。今度は三百、四百億くらいの出資あるいは融資を要請してくるでしょう。いまでも日本の輸出入銀行だけで一億ドルをこえておる。三百六十七億和になっておるのですよ。それに同額ぐらいの融資を今度は要請してきておる。それでもまだ、完成するとはだれも保証しきれませんよ。かりに完成しても、その製鉄所でつくったものが日本の経済発展にどのくらいの利益があるか。ないですよ、これは。あるはずがないのですよ。そういうものを全然度外視して友好関係に必要だとおっしゃるなら、なぜ経済協力基金としてお出しになりませんか。国会の議決を経て、国民の名において、外交関係による協力関係を結んだほうが、もっと有効じゃございませんか、効果があるのじゃございませんか。筋違いです。
  139. 田中角榮

    田中国務大臣 いま言われれば、いろんな問題がありますけれども、先人がやったあとを私が受けておるわけであります。でありますから、このケースをずっとごらんになって、私よりも井手さんのほうがよく御存じでありますが、初めの出方が輸銀の一億ドルの輸出からきておるわけであります。延べ払いの輸出からきておるわけでありますから、これからの問題に対して、向こうの要求どおりそのままのむということでは絶対ありませんし、両株主間も、また両国間においても、いろいろな意見調整をしなければならないけれども、ここまできて、これはほうり出したほうがいいんだという議論にはならぬと思う。これは日伯間の将来百年、千年の利益を考えれば、私は少なくとも日本が投資をしたことに対しては、利益は確保されるという自信を持って、先人の遺業をひとつ完成させよう、こう考えておる。ただ将来の問題に対して、輸銀が手をつけたから、輸銀だけで全部やるのか、また、あなたがいま言われたように、経済協力基金というものとどの程度分担をしたほうがいいのかという問題は確かにあります。私もその意味できのう大蔵委員会では、いままで動かなかった経済協力基金でありますから輸銀に合併したほうがいいなどというような議論も一時考えましたけれども、このごろはよく相談をしながら応分に分担しながら、基金の持つ特殊性、輸銀の持つ特殊性を発揮しておりますので、当分合併の議論は起こらぬでしょう、こう私は御答弁申し上げておるのです。これからの問題は、いまあなたが御発言なされたような方向で、輸銀と経済協力基金もいろいろ検討すると思います。ですから結論的には、この仕事は両国のために完成をせしめていきたいという気持ちに対してひとつ御理解をいただきたい、こう思います。
  140. 井手以誠

    井手分科員 乗りかかった船だとおっしゃるけれども、どろ舟で、沈むようなものにいつまでも乗っておるべきものじゃございませんよ。かりにそうであっても、日伯間の友好関係にどうしても必要だとおっしゃるならば、これは経済協力薄金なんかの、輸銀以外のものでやるべきです。国民の血税をもってどろ沼に金を投げ込むような、こういうウジミナス製鉄所に対する輸銀の融資に対して、私どもは賛成しかねます。この点については、あなた方当局においては若干意見があるでしょうけれども、これは十分私どもは監視していかなければならぬと考えております。そんな金があるなら、大臣、なぜ最初に言ったように、ガソリン税免税しないのですか。見てごらんなさい。私はこれ以上は申し上げません。御答弁お困りでしょうから申し上げませんが、そんな矛盾のはなはだしいやり方は、私はけしからぬと思う。国民の血税ですから、ウジミナス製鉄所に対する融資については再検討してもらいたい。そして最初に申し上げたガソリン地方道路税農業関係免税は徹底して本国会で追及することを約束いたしまして、質問を終わります。
  141. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、武藤山治君。
  142. 武藤山治

    武藤分科員 私は大蔵大臣に、さらに直接監督をいたしておる銀行局にもお尋ねをしたいと思いますが、一月の十四日の朝日新聞でございましたか、他の新聞にも出ておりますが、新宿四谷にある不動信用金庫が支払いできなくなって、その背後関係を当局が不正貸し付けと断定をしてメスを入れる、こういう見出しでかなり詳しく信用金虚の倒産についての記事が報道されておるわけであります。  そこで、信用金庫は協同組織として、しかも国の法律で厳重に規定をされて誕生した金融機関であります。そういう金融機関がつぶれて預金者に多大の迷惑を与えるということは好ましくありませんし、また社会的な影響というものも甚大であろうと思います。そこで、不動信用金庫が支払い停止になるまでの状況をまず詳細にお知らせをいただいて、次に質問にだんだん入っていきたいと思います。
  143. 田中角榮

    田中国務大臣 不動信用金庫につきましては、昨年の九月ごろだと思いますが、急激に預金がふえてまいりました。ちょこちょっとしたうちに十億もふえたという話を聞きました。それによって十月に検査を実施しましたところ、その資産、負債の状況がきわめて悪化しておることが明らかになりました。よりまして、金庫役員に対してその事情を追及いたしましたところ、いわゆる導入預金取引と、これに関連する大口の情実不良融資が行なわれていることが判明をいたしたわけであります。これらの預金につきましては、その後金庫理事会がこれを導入預金として一括リストに載せて、その支払いを延期することを決議いたしておるわけであります。現在信用金庫業界では、大蔵省の指導によりまして全信協、東信協及び全信連の三団体支援のもとに、全信協会長金庫である中央信用金庫が中心となりまして、真剣に処理に当たっておるのであります。この結果、一般預金者につきましては、すでに中央信用金庫への肩がわりをほとんど完了して、その支払いに万全を期しております。現在残っておりますのは、導入預金としてリストに載っておるものだけでございます。この導入預金と認定されたものにつきましては、これら特定の預金者と不動信用金庫及び中央信用金庫との間で話し合いが現に行なわれておるのでありますが、まだ最終的に結論には達しておりません。導入預金の残高を申し上げますと、百八十五口、十二億八千五百万円であります。このうち後藤観光という不動産会社関係に貸し出しましたものが、検査時で十二億千四百万円というところでございます。その後中央信金への肩がわり預金は、昭和三十九年一月三十一日現在で申し上げますと、処理済みが三千六百十七口、三億七千三百万円であります。未処理のものが五十三件、五百万円でありまして、計三千六百七十口、三億七千八百万円が処理済みと考えておるのであります。不動信金の資産は約三億ないし五億、このように推定をせられるというのが、ただいまの時点までに私の手元まで報告をされた事実であります。
  144. 武藤山治

    武藤分科員 大臣には大きな観点からだけ見解を尋ねておきたいのでありますが、協同組織である金庫がこういう状態におちいったときには、これをつぶしてもいいという方向で監督指導するのか、それとも何とかつぶさずに、預金者保護や金融機関の信用というものを保持するために再建策を真剣に考えるという方向で指導監督をするのか、大臣は一体このケースの場合にはどういう方針で臨んでおりますか。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 非常にむずかしい問題でありまして、これを存続させていって、導入預金といえども預金者でありますから、この預金の保護をはかるほうがいいのか、つぶしてしまったほうがいいのかという二つに分かれるわけであります。ところが存続をせしめていこうと思いましても、引き受け手がないのであります。中には、導入預金として残っておる人たちでもって金庫をやろうか、こういうのですが、導入預金をするような人たちだけで金庫をやらすわけには、とても大蔵大臣としてはいきません。大蔵省からでも人を出してやろうか、こういうことも考えてみましたが、これも天下りでだめですと事務当局は反対であります。中央信金のような大きな業界が中心になって再建をはかってはどうかという案も考えてみたわけでありますが、これは全然縁もゆかりもない人々に対して、われわれは業界の名において四億近い金を払って、善良な預金者に対して迷惑をかけないという犠牲を払っておるのですから、この上になお導入預金の責めまではなかなか負っていけない、こういうことでありますので、再建するかつぶすかということに対しては、法律大蔵大臣の指揮監督権の面から見ましても、問題の存するところでありますけれども、現在の状態でこれが再建していけるという見通しは、なかなかないようであります。
  146. 武藤山治

    武藤分科員 そこで、財務局なり銀行局が検査をいたしたはずでありますが、信用金庫に対する検査というものはどの程度やっておるのか。また、検査の対象はどういうことを中心に検査をしておるのか。さらに不動信用金庫の場合、最終検査は何年何月に検査をして、そのときに発見をされた金庫の重大な経理状況の瑕疵というものは何であるか。そういう点の検査状況はどういう報告になっておりますか。
  147. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 信用金庫等の検査は、大体普通でありますと財務局で二年に一回ぐらいの周期で行なっておりますが、実際にはそれよりも短いものもございます。関東財務局の場合で申しますと、一年半足らずで検査を実行しております。それから非常に不良なものにつきましては、その周期を短縮しております。優良なものは二年よりも長く周期を置いております。この不動信金の場合ですと、前回の検査は三十七年の八月二十七日でございます。この当時は、不動信金から後藤観光に対する貸し出しも若干ございました。金額で申しますと、七千四百万ぐらいの程度でございます。ですから、これは当時の自己資本といいますか、会員勘定に比べまして一割を超過しております。そういう点で要注意でございましたけれども、当時後藤観光に対する貸し出しとしては、その事業の実態から申しまして、さほど危険なものとは判定されなかったわけでございます。今回それが十二億円をこえる――検査時点におきましてはちょっと違っておりますが、大体十二億円あるいはそれ以上ということになっております。そういうふうに急激に増大したのは、導入預金と密接な関係がある、こういうことになっております。
  148. 武藤山治

    武藤分科員 私は、大蔵省が検査をやる際に何か手抜かりがあって、あるいは指導上も特に不動信用の場合には、大蔵省のほうに手抜かりがあったような気がする。信用金庫がつぶれるまで行政指導が適切にできなかったという責任は重大ですよ。そういう点で、預金が三十七年三月末に七億一千六百万円、その年の十月には九億七千万円、さらに三十八年の十月には十一億三千万円というように非常に預金増加率が多い。他の機関と比較をした場合にも、非常に預金が急激にふえている。この責任はどこにあるかといえば、また原因はどこにあるかといえば、まあその理事長やその理事者が特に悪いということが一つ理由でありましょうが、同時に、今日の金融機関の過当競争と申しますか、預金獲得競争というものが非常に過当であるというところにも、一半の原因があると思うのです。そういう点を早くちまたのうわさなり協会や連合会の中からのうわさなりをキャッチして、銀行局は適正な指導をしなかったというところに、私は怠慢のそしりを免れるわけにまいらぬと思うのですが、銀行局はどう考えていますか。
  149. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 今回の検査は、今回といいますか三十八年でございますが、それまでは、途中までは増加はいたしましたが、比較的最近信用金庫等におきましては増加率も二十数%継続して毎年ふえておりますし、まあまあ小さな信用金庫でございましたから、まあ非常に成績がいいぐらいにしか認められない程度のものである。ところがその後急激に二、三カ月の間にべらぼうな増加率を示した。それを関東財務局の係官がバランスシートの推移を見まして、これは非常におかしいということで財務局のほうからその周期を短縮いたしまして、臨時的な意味で検査に入ったわけでございます。ですから、監督行政上手落ちがなかったかと言われますと、いろいろな後藤観光そのものに対する風評その他、これはまあしかし株式市場におきましても、後藤観光の株式、これは店頭株でございますが、わりあいに値も高かったようでございます。百何十円というような時期が続いておりまして、さほどその後藤観光があぶないんだというような風評を耳にするに至らなかった。もちろん、いろいろたくさんある信用金庫につきまして、すみからすみまで監督することは非常に不可能でございますが、そういうふうに今回の場合につきましては、関東財務局としては、私どもの目から見ると比較的早く立ち上がって検査に入った。二、三カ月の急激な変化に目をつけて入ったわけでございますので、まあやむを得なかったんではないかというふうに考えております。
  150. 武藤山治

    武藤分科員 それ以前に、後藤観光の社長が不動信用の理事長に選任をされたことがあったり――しかしそれは何年何月かはそちらでわかると思うのですが、さらに後藤観光の経理部長が専務理事に入っていく、こういうような動きを見ただけでも、大蔵省当局としては、これは何か疑問があるというような気がつかぬはずはないはずですね。そういう点で、私はまことに監督行政に手落ちがあるのじゃないかと思うのです。しかも、信用金庫法第一条に何と書いてありますか。信用金庫法というものは、もう大蔵省が完全にその金融機関を監督指導するという前提でできている法律ですよ。したがって、普通の監督官庁と信用金庫と銀行局との関係は、特別に私は責任が重いと思うのです、銀行法の趣旨からいっても。さらにもう一つ、後藤観光の実兄ですか、大蔵省につとめていたのは……。その人がやめて後藤観光の重役に戻っているということも知っていますか。そういうような関係で、特にこの不動信用をめぐって検査のほうが手ぬるく、見のがしたという感じがあるのではないかと思うのです。そこいらについてのいきさつ……。いまの三つの、後藤観光の社長が理事長に選任をされたけれども就任はできなかった、そういうようないきさつについてどういう報告を受けておるのですか。
  151. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 後藤観光の社長がこの理事には就任しておりますが、それは三十六年の五月でございます。これは理事ではございますけれども非常勤でございます。それから理事長がただいま経理部長だとおっしゃったのは、この最近の検査によりまして、実質的には後藤観光の経理といいますか資金部面を担当するような形に不動信金がなっておったという意味において、事実上関係が非常に深かった。理事長は、言ってみれば後藤観光の経理、資金担当者みたいなものであったということはわかったわけでございますが、それ以前におきましては、表面上は何ら役員関係ございません。その後藤観光の役員をしていないのです。表面上何のつながりもないことになっておる。それから前回の三十七年の検査におきまして七千四百万円の貸し出し、これを早く減額するようにという指示はいたしましたが、まあその程度金額でございますと、全体の資金量から比べてやや大きいと思いますけれども、後藤観光のしている事業等から見ましてさほど危険でない、過大なものでないというふうな判定でございました。でありますからして、いまの最後にお尋ねになりました大蔵省の云々という点は、私いまだにまだ何も存じないわけでございますが、いわば後藤観光の金融機関みたいに、導入関係からなってしまったという事実は、いまにおいては十分認められますけれども、それ以前におきましては、必ずしもその関係は明白でなかったというふうに考えております。
  152. 武藤山治

    武藤分科員 預金者に対して払い戻しを停止をしろ、とにかくもうどうにも手がつかぬ、こういう判断を不動金庫のほうで持った原因は何かというと、私はやはり監督官庁とどうしたらいいだろうかということを相談しておると思うのですよ。財務局長にはちゃんと相談をして支払いができないということを届け出をしたと思うのですが、その点どうですか。この信用金庫法施行規則の第十四条の規定に基づく届け出が行なわれたのが何月何日で、その理由はどういう理由で預金者に対する支払いができませんという理由になっておるのか。
  153. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この検査の結果、後藤観光に対する貸し出しが非常に多く、かつ担保も非常に不十分であるということで、これを自転車操業的にはやっていける、導入預金をどんどん入れればともかく、それをとめるとすれば支払い能力に大いに欠けるということでございまして、まず十一月七日に関東の財務局長から、銀行法を準用いたしますところの金庫法の条文によりまして命令をいたしまして、それは、後藤観光から早期に回収すること、貸し増しをしてはならぬ、それから債権保全措置を講じなければならぬ、つまり担保等のとれるものがあればとれという意味でございますが、そういう命令を発したわけでございます。不動信用金庫はこれに基づきまして後藤文二――後藤観光の社長でごさいますが、それがつくりましたリストによる預金を、これは百八十五口でございますが、実際の人員は推定も入りますが、いまおそらく三十八名でございます。それの預金を導入預金であると認定する、その支払いは延期する。それから第二点といたしまして、一般預金者への支払い資金融資を信用金庫関係の三団体に依頼する。それから三団体から業務管理をするための人物を派遣してもらいたい、こういうことを十一月七日に不動信用金庫の理事会で決定いたしております。もちろんこの間におきまして、こちらがそういう命令を発しておる関係もございます。不動信金のほうから十分相談があったことは事実でございます。
  154. 武藤山治

    武藤分科員 そこで大体十一月ごろには内容は明らかになってきて、なかなかこれはたいへんな経営状態だ、こういう指摘を受けて以来警視庁が手を入れるまで約二カ月間、この二カ月間にこれをつぶしてしまおうという指導方針に立ったのか、何とか金融機関のつぶれるのは防がなければいかぬという立場から指導方針を立てて監督をしてきたのか。皆さんのほうで金融機関に対する指導の態度というのは、一体どういう姿勢でこの問題に対処してきたのですか。
  155. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 先ほど大臣からも説明されましたように、およそ免許を受けている金融機関が倒産に至るということは極力避けなければならぬと思っております。この信用金庫の場合におきましては、預金がわずかの間に倍増したということからわかりまするように、導入預金の額が相対的に全体の中で占める割合があまりにも大きい。普通の一般預金者は、これは口数にいたしましては数千口ありますが、実際の人員は、この会員となっている者は千二百数十名であります。それらの一般預金者の支払いは、これは不動信用金庫から三団体に対し委嘱したものでありまして、これにより中央信用金庫が立てかえて支払いをしておる。もちろん預金に残っておるものも若干ございますが、立てかえ払いをしておるということがあるわけでございます。その一般の預金者の千二百数十名の善意の預金者には全然迷惑をかけない、そういう方針でまず処理に当たる、一般預金者に迷惑をかけることは信用金車協会のメンバーとして名誉にかかわる。信用を害することおびただしいということで、これらに対しては徹底的に支払いをしよう、しかし不動信金がみずから認めた、導入したと本人が認めた、あるいは理事長がそれを確認した、そういったものに対する支払いは、そこまでも信用金庫の名誉にかけて支払いをしなければならぬかどうかについて論議がございましたが、結局最後に、いまの段階におきましてはこれらの支払いをなさずとも、一般の善意の預金者に対する支払いを完全に行なえば名誉は保たれる、信用が保たれるというのが協会全員の意思であるということになりまして、私どもが行政指導したというよりは、こういう点につきましてはそれぞれの協会の信用の問題でございますから、なるべくそういった意思を尊重いたしまして処理に当たろう、こういうことで今日に至っておるわけでありまして、こちらのほうから強い行政指導を行なってそのような決定を行なったのではなく、民間の業界が自発的にそういう措置をとりたいという希望を強く持ちましたので、大蔵省といたしましてもそのような方針でやることはやむを得ない、したがって最後にはこれは金融機関としての実体を失っておりますから、解散に至るのもやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  156. 武藤山治

    武藤分科員 いまの局長の答弁は全く事実に反しますよ。三団体がこれを処理しようという意思統一はできていないのですよ。できていないところにこの処理の問題があるのです。そこで、時間が三十分ということですから、とてもこれは質問が終了しないと思いますから、あとの機会にこまかくいまの問題についてもまた質問をいたしますが、大臣にちょっとお尋ねしますが、十二月二日に全信協、全信連、東信協の幹部が大臣と会見をいたしております。十二月二日午後五時。そのときに大臣はこの不動信金についてどういう方針を指示されたのですか。どういう見解を述べられたのですか。
  157. 田中角榮

    田中国務大臣 その三団体の代表が来たかどうか、いま私はさだかに覚えておりません。覚えていないのですから、その不動信用金庫の問題等で話にきたのではないと思います。きっと信用金庫のいろいろな問題を聞きたいというようなことであったと思うのでありまして、いまさだかに覚えておりません。ただ、信用金庫の人に会ったときに、不動信用金庫のようにならないようにしなければだめですよ、不動信用金庫に対しても全信連等でもってめんどうを見て信用を維持されたいというようなことは、そのときかどうかわかりませんが、絶えず私は口にすることでありますので、そんなことを言ったと思いますけれども、この問題に対して正式にその諸君を招いて話をしたり、私がその諸君に何か言ったことはさだかに覚えておりません。しかし銀行局長にはそういうことを指示してあります。とにかく善良な預金者に対して十分な配慮ができるように万全の対策をとるべし、こういうことを言っております。
  158. 武藤山治

    武藤分科員 大臣大臣は全信協の会長の小野さんという方を御存じですか。
  159. 田中角榮

    田中国務大臣 私は比較的に人の名前は覚えないのですが、小野孝行さんは全信協の会長として知っております。
  160. 武藤山治

    武藤分科員 その小野さんがみずからつづった経過内容報告書の中に、あなたと会談をしたと書いてあるのですよ。特にこれは預金者に払い出しをするかしないかということをきめなければならぬ重大な段階の時期なんです。そのときにあなたに会っているのです。したがって当然大臣としては金庫がつぶれたらそれは社会的な信用問題になる。あるいは銀行局の監督の問題もある、したがってこうするほうがいいのじゃないだろうかというサゼスチョンを与えておるのではないですか。それを忘れてしまったですか。
  161. 田中角榮

    田中国務大臣 私はもう預金者保護一方という考え方でありまして、小野さんがそう言っておるならきっと言ったことがあるのでしょう。確かに銀行局長には、とにかく金融機関に対しては相当強い立場でもって臨まなければだめですぞ、しかも日本昼夜信用組合のあった直後でありますから、こういう問題が相次いで起こるというようなことになると銀行局もしゃんとしなければだめだ、こういうことを言って、特に不動信用につきましても、それから日本昼夜信用組合につきましても、できるだけ預金者保護に重点を置くべし、こういうことを何回か指示をしております。これは口ぐせのように私は言っております。小野さんが来られたときに何かそんなことを言ったような気もしますが、時期がいつだったかさだかでありません。とにかく私がいまあなたにそう言われておぼろに考えておりますのは、とにかく信用金庫の名誉にかけてあなた方も一つ大いにやってくださいよ、人の馬のころんだような話ではだめですぞ、こういうふうな意味のお話をしたかと思いますが、こまかく銀行局とも打ち合わせをしながら文書によって話をした、特別に来てもらったというようなことはないように記憶しております。
  162. 武藤山治

    武藤分科員 大臣がこれから参議院へ行くそうでありますが、この導入預金の判定についてもかなりの問題がある。この百八十五口が全部導入預金であるかどうかという判定についてもいろいろな問題があると思うのです。大臣のところへ自民党の国会議員の中で、こういう導入預金ときめつけられた中で導入でないからひとつはずすよう骨を折ってくれ、こういうような交渉に行っている代議士があるのじゃないですか。――あるでしょう。そういうような判定をする経過というものがこの場合いろいろ事情を調べてみると非常に不明瞭ですよ。銀行局としては、後藤観光の社長なりあるいは営業部長であったその金庫の理事長なりが提出したリストをそのままうのみにして、これは全部導入預金だときめつけておるのですか。個々の三十数名の人たち個人個人を全部当たってみて、その当時のいきさつを調査しておるのですか。もし調査しておるとしたらその内容をひとつ明らかにしてもらいたい。
  163. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 このリストというのがございますが、導入預金のリストというものはこれは御承知のようによくわかっておりますが、後藤観光がこの信用金庫を通じて自分の会社に資金を入れたものでございます。ですから関係者といたしましてこれらの問題によく通じておりますのは、資金を自分の会社に持っていった後藤観光の社長、それから金庫の理事長、先ほど武藤さんが経理部長じゃないかとおっしゃったその理事長です。これらが導入のあっせんをしておるということでございます。ですから事実その導入をあっせんして自分が借り受けた本人がリストをつくり、そしてこれを金庫の理事長が確認しておる。一回だけでなく重ねて確認をしております。そういう事情でありますので、これらがほんとうに導入預金に該当するかどうかということは非常にむずかしい問題でございます。これは協会といたしましても、協会のほうがそれぞれ導入預金をしたと称する人たちに直接接触しておりますが、私のほうとしてはそれらのリストを一応導入預金として認めてもいいのではないか。しかしその事実関係は、これが導入預金であるかないか、もし導入預金であれば、場合によってこれは刑事罰の対象にもなるわけでございますから、それらのことは事実の認定としてはとてもわれわれの判定だけでは困難でございます。やはり場合によったら裁判上の審査を経なければわからない問題ではないかと思いますが、関係しておる、導入をやった、媒介を行なった人が、これは導入預金であるというふうに認定しているので、相当な信憑性があると考えてよろしいのではないかと思います。
  164. 武藤山治

    武藤分科員 その後藤観光の社長なり理事長なりが、これは導入でございますと言った数字をそのままうのみにするというのは、私は監督官庁としては軽率だと思うのです。新聞の報ずるところによれば、とらの子の百万円を預金をした未亡人あるいは外人の牧師さん、こういうような人たちは、自分が預金をしないかと言われたときに預金をしたその気持ちは、利息が少し高いから、特利だからという理由で貯金をした。その金が後藤観光に貸し付けられるものなりということは知らなかった。そういう善意の第三者まで全部導入ときめつけて、そういう未亡人の預金も全部払い出ししないのですか。そういう個々の百八十五口の中身というものは、監督官庁としては当然十分検査をしてみて、特利という感覚だけで――あるいは特利というのはいけないことだ、いけないことではあるけれども、導入預金とは違うわけでしょう。虎ノ門金利なんて前に騒がれて、特利でけっこう預金を預かっておったなどということも新聞に出ていますよ。そういうようなものは払い出しをしてはいかぬということにはならぬのです。特利と導入預金との限界は非常にむずかしい。この場合にも導入預金と判定されている中で、おそらくそういう特利に目がくらんで預けた人がおるはずです。そういうものに対しては、銀行局としてはどうするのですか。やむを得ないというのですか。救済方法はないのですか。
  165. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 リストをそのまま信じたという点は、それ以外に導入の日にちとそれから後藤観光に対する貸し出しとの因果関係がどの程度密接であるかを調査したわけでございます。非常に密接な関係がある、場合によったらその日に受け入れた金の相当部分が、そのまま後藤観光に貸し出しされている、あるいは月別にこれを見ましても多少の出入りはございますが、大体総額としてはほぼ並行して導入が行なわれ、後藤観光に対する貸し出しが行なわれている、こういった実態から申しますと、いわゆる導入預金であることはほとんど疑いないであろう。ただその中に本人は後藤観光へ行くための資金だと思わなかったという例は確かにあると思います。ただ法律上の導入預金と称するものの中に、本人が金融機関に話をつけて、自分の指定するところの第三者にこれも話をつけてある、その三角関係でやる場合と、媒介をするものが中に立ちまして、預金をするほうはその事情は必ずしも知らないが、媒介をする者がよく事情を知って、第三者にあるいは自分に――後藤観光の場合は自分に媒介をしたことになります。預金者を語らってきて、おそらくは特利を約束したと思います。特利でつらなければ、あのようなまとまった資金が、あまり関係のないところから四谷の不動金庫に預け入れられるはずはないのであります。たとえば外人関係のごときで一億円をこえるようなものが、資金量わずか十数億のところに一億円をこえるような資金が入ってくるということはどう見てもあたりまえの預金ではない。必ず何かの暗黙の裏の約束があって、それが後藤観光に流れた、こういうものであろうと思います。個々の事情につきまして、私どもはまことにお気の毒だというふうな感じを持つものもございますが、しかし三十八名の預金者につきましては、協会を代表し半に当たっている中央信金、これを中心としてやっておりますが、何とも一部分だけを分離して特別扱いをするというだけの根処に乏しい。多少の事情の差異はあるにいたしましても、そのリストに載ったものを一、二の例外をつけて、それだけを救済するということになるのではまことに筋が通らないことになる。気の毒な事情もあろうけれども、やはり全体を一応導入預金として、一律に取り扱うほかはないのではないか、こういう意見が大勢を占めたわけでございまして、一々の事情につきましては、私どもなるほど仰せのごとく気の毒な、本人は後藤観光にいくことをあるいは知らなかったのではないかと思われるものも確かにあるように見受けます。
  166. 武藤山治

    武藤分科員 そういう善良なる第三者が救済されるという何らかの法制がないということは不備ですね。大体全国信用金庫連合会なり、全信協なり、東信協なりという団体があるのですから、そういう団体が常に危険負担というものを積み立てて、互いの信用金庫が倒産するというような場合には救済できるかどうかということの、ある程度の資金を蓄積しておく必要があるのではないですか。銀行局はそういう指導はしておらぬのですか。
  167. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 信用金庫協会としては、全国信用金庫連合会という、まあこれは一つの金融機関でございますが、そこに資金を相当預金しております。そういうことで、普通、不時の、たとえば信用金庫が支払いに困ったとかいうふうな場合の支払い準備的な性質を持つものは、百三十億くらいございます。しかしその損失――信用金庫が非常に大穴をあけてこの損失を補てんするという意味におきましては、約十億円ばかり全国の信用金庫が積み立てたものがございます。ですけれども、この場合におきまして、事実上導入預金に伴う後藤観光への貸し出しは、その大半が――大半といいますか、若干は担保もございますし回収可能でございますが、相当部分がトータル・ロスになるというふうな性質のものと思います。後藤観光はすでに破産をいたしまして、破産手続でやっておりますが、そういう状態をいろいろ勘案いたしまして、この中央信用金庫が預金の立てかえ払いをするというふうなことから、全信連からは四億円の金が中央信金に融資されております。そのうちから支払いとして善良なる預金者、千二百数十名の預金者に対しましては三億七千万円の支払い、これはもう貸し付け金があるものにつきましては貸し付け金と預金とを相殺いたしまして、ネットの預金額というものを支払うということで、三億七千万は従来の善意の預金者に全部支払いをしております。ごく一部残っておりますが、これもいつでも申し出れば支払う体制をとっております。五十何口残っております。しかしながらこれは何か債権者の所在がわからない、無記名定期になっておったりしましてとりにこないものがある、そういうものはまだ払っておりませんが、要するに払うたてまえには変わりありません。ただしこの導入預金分につきましては、信用金庫協会三団体――全国の信用金庫協会、東京信用金庫協会、それから全信連、この三者の合意、協議によりまして、残余財産のうちから支払いを行なうということになっております。
  168. 武藤山治

    武藤分科員 三者の協議の上で導入預金の判定をしたという説明でありますが、いつ幾日三者がそういう判定を下したのですか。私の調べによると、導入預金の判定は、本人、後藤観光の社長と不動金庫の理事長だけの意見で、個々の人たちの意見というものを完全に掌握をしていないのではないですか。しかも三団体の足並みがばらばらで、三団体でこの金庫の問題を処理しようなんという意思統一は一度もなされていないのじゃないか。もしそれがなされているとしたならば、何月何日どういう会議をやってどういう結論になったか、ひとつ聞かしてもらいたい。
  169. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この解放といいますか、導入預金に対しては格別に立てかえ払いはしないということは、いまお話がございましたが、大体三団体ともそういう方針を確認してやっているものと私は思っておりますし、それに間違いはございません。ごく最近でございますが、それらによる損失を立てかえ払いをしましたが、これは全信連の金は出しっぱなしで埋めないというのではなくて、東京所在の有力な信用金庫がこの管理に伴う損失を分担するということもきめておりまして、また近い将来にこの信用金庫の解散をするという方針もきめております。
  170. 武藤山治

    武藤分科員 今度は協議ということばを使わずに、確認をしていると言い抜けたのですね。三団体が導入順金としてこれを確認するということで言い抜けておる。さっきは協議ですね。三団体が完全に集まって、この与件は、なるべく信用を失墜しないように、こういう処理をしよう、ああいう処理をしようという協議などは、意見が分かれていてできないですよ。早く言えば、会長同士の仲の悪い人がおって、処理について誠意をもって一致した見解が出せなかったのです。そこに問題があるのです。私が言いたいのは、そういうような団体の責任者をなぜ銀行局はもっと親切に処理の方向についての協議に指導をしなかったのかということなんです。確認ということは、ばらばらに、もうしようがない、どこかがやるだろう、いいや、それでけっこうですというのが確認ですよ。この処理は、一人の会長がほかの団体にいろいろ呼びかけて、しぶしぶ、あとでできたことを、やむを得ないといって承認をしているようなかっこうですよ。そこで、では何ゆえに、一般預金者に対して四億円の払い戻しをする場合に、全信協なり、東京信用金庫協会なり、あるいは連合会なりがその処理をしないで、中央信用金庫が処理をしたか。三団体がやらずに、何ゆえに中央信用金庫が四億円の金を代位払い出ししたのか。それはどうなんですか。三団体がやったらいいじゃないですか。特定一つの信用金庫が四億円出す必要はないじゃありませんか。
  171. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 当初は、不動信金の依頼もありまして、三団体の代表を出すということでやっておったわけでございます。しかしながら、三団体の代表ということになりましても、具体的には特定の人が責任者になり、それが何人かの部下を逃れて業務管理をするということでございますが、これは非常に能率が悪い。何しろ三団体の代表ということでございますから、本人が感恩決定をするのに、そのつど三団体に相談しなければ非常にこまかいことまできめられないというふうな問題がございます。そこで三団体といたしましては、これでは始末が非常に手間どる。善意の預金者に対する預金の立てかえ払い等も、これはたいへんなことになるから、中央信金に全責任を持って処理に当たってもらおう。このほうがよろしい。それらの重要な事項については、中央信金の理事長は協会に相談いたしますが、これに実行の面で非常に便宜をはかるために中央信金に業務管理を委嘱した、こういうことになっておりまして、それによって昨年中に、大半の預金者あてに文書も出せば、直接勧誘もするということで、とにかく支払いを申し出るように、早く預金の立てかえ払いを受けるようにということでやりました。そういう点につきましては、一つの信用金庫がこれに当たったほうが預金者のためにもはるかに能率的である。そうでありませんと、いたずらに日時を要しますと、ますますこれは事態が悪化するおそれがある。一般の預金者が動揺してもいかぬ。そういうことで能率をあげるために協会としては中央信金に一任した、こういうことになっております。
  172. 武藤山治

    武藤分科員 銀行局長はこの実態をまだ部下からよく聞いておらぬのですよ。いまの答弁はまるで事実に反するのです。というのは、中央信用金庫の理事長の小野さん――全信協の会長ですね。自分のところで払う責任も何もない四億円の金を払ってくれたその理事長ですね。この人みずからはこう言っておるじゃないですか。中央信金が不動信金の据え置きを引き受けたという既定の事実に反する流布をされた。さらにもう一つ、東信側の会長は、中央信用金庫が引き受けるからというでたらめを事前に新聞記者発表をしてしまった。小野さんはだいぶ憤慨をしているのです。ですから本人が引き受ける意思も何もなかったのを、会長同士の仲間割れから中央信用金庫が、おまえが引き受けるのだということを事前に流布されてしまって、引っ込みがつかなくなった。その日に財務局長のところへ小町さんはたずねていっているのです。それでは財務局長のところでどういう指示をしたのか。中央信用金庫が四億円を引き受けるということにされてしまったからしようがない、おまえのところで出せという指示をしたのか、財務局としてはどういういきさつで中央信用金庫に四億円の金を支払いさせたのか。しかも信用金庫法あるいは定款からいくならば、自分の金庫に預金をしていない、よその銀行の預金を四億円も、しかも借金をして払う理由はどこにあるのですか。そういう行為というものは組合員から言わせるならば背任行為じゃないですか。中央信用金庫のやった行為は背任になりませんか。
  173. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 申すまでもないことでございますが、中央信用金庫がこの業務を管理するといたしましても、もちろん後藤観光に対する貸し出しを停止し、担保を保全するということはやるといたしましても、預金の支払いということでは不動信金の資産その他を肩がわりする、そっくりそのまま債権債務の譲渡を引き受けるというようなものじゃないのです。善意の預金者が不動信金に対する預金帳を持って参りますと、もし本人が希望すればそれと同額の中央信用金庫の預金帳を引き渡す。そのかわり不動信金に対する預金の債権を譲るという形になっております。それから現金で支払いを欲する場合には現金で払い、現金で払ったときに預金帳をいただく。ですから中央信用金庫は不動信用金庫に対して預金債権を現在でも持っておるたてまえになっております。これはたてまえでございますから、はたしてその請求権を行使するかしないかは別問題でございますが、そういう形で肩がわりをしたということになっております。いまのお話のとおり、全然支払いの債務を持たない中央信金が第三者のために支払いをするのは、中央信金自身の会員のために背任行為にならぬかという点につきましては、これは私ども法制局の見解も十分ただしてございます。しかるところ、これを有力な信用金庫――五つか六つかありますけれども、それが分担することになっておりますが、これらの行為は、特に東京には金庫がたくさんございますが、それらの信用に影響する問題である、もし一般の預金者に対して預金を切り捨てるというようなことになった場合には、信用金庫というものは当てにならぬものであるということで、金庫全体としての今後の金融の業務上重大なる影響を受ける、それを避けるために、つまり名誉保持、信用保持のために行なうものであるとすれば、もちろんこれは会員の同意は要するでしょうけれども、何ら背任行為には該当しない、そういう解釈で統一されておるのでございます。
  174. 武藤山治

    武藤分科員 それは会員の同意を得ればという前提があるのですよ。あくまで事務を委任せられた者として会員から、これはけしからぬ、この銀行に預金をしていない人たちに代位弁済をすることはけしからぬという意見が出てきたら、これは背任になりますよ。したがって、そういう処理のしかたではなくて、銀行局としてはもっと全体の連合会三つのものを合同させて処理案というものがあるはずだ。たとえば今日全信連にある振興資金というものは総額幾らありますか。
  175. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 信用金庫の損失てん補に充てるための基金は先ほど申し上げました十億、大体それで間違いないと思いますが、そういうふうに全国の信用金庫から徴求した共同の資金をもって、損失てん補に充てれば確かに問題はないと思います。信用金庫の数は五百三十余りございまして、たとえば東京においてはこの問題については非常に近く起こった事件でありますからその影響を身近に感ずる。しかし非常に遠隔の土地でございますと、さほど影響を感じないかのようなものもあるわけであります。そこで東京信用協会の有力メンバーが、そういうものを全国の基金から支払うということを主張するよりも、自分たちの負担において片づけたい、こういう意思を持ったわけであります。これについて、いいか悪いか判定はございますが、会員の同意を得ればと私申しましたが、かりに会員の中にこれは背任であるといって訴えて出る者がありましても、いまのところ、おそらく裁判上背任行為にはならないという見解が法制局のほうからも示されておりますので、これは義侠心といってはおかしいのでありますが、全体で相談して、分担をこまかく分けておると非常にめんどうなことにもなる、それよりは率先して東京にある信用金庫の資力の豊かな金庫が数名相寄ってその損失を負担しよう、こういうふうにきめられたことは、むしろある意味ではけっこうなことではないか。理論上は分担させるのが正しいと思いますが、実際問題でありますからそういうふうな解決法もあっていいのではないかというふうに思っております。
  176. 武藤山治

    武藤分科員 まだ質問の途中でありますが、一時でやめろという通告でありますので詳しくは質問できませんが、一問だけ。あとの機会に大蔵委員会ででも質問を続けたいと思いますが、銀行局長にも一点だけ確認しておきたいのは、それでは不動信用金庫はつぶしてしまうのだ、解散させるのだ、こういう観点で指導監督をいまいたしておるというわけですか。
  177. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 業界の意向が、解散やむを得ない、もはや金融機関としての実体を全く失っておる、これを再建しようにも無から有を生ずるようなもので、そういう導入預金のような非常に大きな穴をかかえたものを再建しようとしても実情としては全く不可能に近い、そういう見解に到達いたしました。私どももそういう情勢を見まして、好ましいことではございませんがやむを得ないというふうに考えております。
  178. 武藤山治

    武藤分科員 資料をちょっと要求しておきたい。百八十五口の導入預金の内訳、名前を書くのは、もし秘密事項に属するとすれば名前をあげなくてもいいから、ABCDというようにして、金額を入れて、導入預金であるという判定の基準、それを資料として出してもらいたい。
  179. 植木庚子郎

    ○植木主査 午後は二時十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十六分開議
  180. 植木庚子郎

    ○植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について引き続き質疑を行ないます。田口誠治君。
  181. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がありませんので、単刀直入に質問申し上げますから、答弁のほうもあまり雄弁をふるわぬように、わかればいいですから回答を願いたいと思います。  いま、大蔵省のほうでは二重課税を防止するということで、中南米諸国と租税条約締結の準備作業を進めているということを聞いておるわけなんですが、それは事実ですか。
  182. 田中角榮

    田中国務大臣 お説のとおり、中南米諸国との間に租税条約を締結したいと考えておりますけれども、先方側の税制上の問題もございますので、いろいろな問題を検討いたしておるわけでございます。
  183. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこでいずれにいたしましても準備をしておるということになれば、いつかの時期には条約締結ということに相なるわけでございますが、そこでお聞きをいたしておきたいと思いますことは、現在日本政府が締結した国は、どことどこの国であるか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  184. 田中角榮

    田中国務大臣 十二カ国でございまして、アメリカ合衆国、北欧三国、パキスタン、インド、シンガポール、オーストリア、イギリス、ニュージーランド、タイ及びマラヤ等であります。
  185. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこでお聞きをいたしたいことは、そういう問題を取り上げる場合には、十分認識として一つの知識を持っておらなければならないと思いまするが、中南米の現地法人の経営状況はどういうようになっておるか、わかっておる範囲でお聞かせをいただきたいと思います。
  186. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  中南米は本邦企業が進出いたしておりまするのは、昨年九月末現在におきまして百八の現地法人ができております。そのほかに支店が三つ、これはいずれも東京銀行の支店でございます。そのほか駐在員が百三十二名駐在いたしております。その経営の状況でございますが、現地の法人のほうは概して利益を上げましても配当を行ないませず、現地で再投資を行なっているのが多いようでございます。再投資を行なって配当をいたしておりません限りは、日本で課税を生ずる問題はございませんので、その限りでは二重課税の問題は起きないのでございます。ただ中南米諸国との間で問題でございますのは、わが国の船舶が向こうへ参りまして積み荷を積み取ってまいります。そういたしますと、船舶所得に対する国際二重課税の問題が生ずるのでございます。その関係からいたしまして、早く租税条約を締結いたしまして、船舶所得に対する国際二重課税の発生を防ぎたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  187. 田口誠治

    田口(誠)分科員 中南米諸国と申しましても、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンを中心としたものでございまするが、日系企業の現地法人が相次いで設立されておるわけですが、あまり先のことはわかりませんけれども、いま条約を結ぼうという考え方で作業を進めておるということになれば、ここ二、三年か、数年間企業の進出見通しというようなものもあらなければならないと思うのですが、これは今日まで進出した経緯と、それからいろいろ貿易自由化というようなことも幾分は加味されると思いまするが、そういうような点を勘案して、どの程度今後の企業の進出見通しを持っておられるのか。この点についてもわかる範囲ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  188. 泉美之松

    ○泉政府委員 中南米諸国に対しましては、ここ数年間に急激に本邦法人が進出してまいるといったような態勢になったのでございまして、最近二、三年間の実績によりますと、年間約二千万ドルくらいの出資が行なわれておるようでございます。
  189. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは全く私はわからないのですが、現在のところでは、課税方法については全然取りきめというものはないのですか。何も結んでいないのですか、全然手放しかどうかということです。
  190. 泉美之松

    ○泉政府委員 さようでございます。一番問題がございますのは、先ほど申し上げました船舶の所得に対する二重課税の問題でございます。それ以外の現地法人が配当しました場合は、国際二重課税の問題が生ずるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、最近進出したばかりでございまして、まだ現地法人が配当するという段階には至っておりません。その限りにおきましては二重課税の問題は生じておりません。
  191. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いま結ぼうとされておる諸国の税制とか、徴税方法というようなものも、これは把握しておかなくちゃならないと思うのですが、その点をどういうように政府はつかんでおられるか、この点についてもお聞かせ願いたいと思います。
  192. 泉美之松

    ○泉政府委員 私どもといたしましては、そういった中南米諸国と租税条約を結びたいという意向をもって、現在その準備態勢にあるわけでございまして、各地の税制も古いところはわかっておるのでございますが、最近の状態がわかりかねております。そのために、できますれば、ことしの夏に現地に人をやりまして中南米各国の税制の状態を調査いたしたい、かように存じておるのであります。実は私どものほうに国際租税課が一昨年六月にできまして、当初わが国としましては東南アジア諸国を中心にまず租税条約を締結したいという考え方をもちまして、昨年までに東陶アジア諸国につきましては毎年人を出しまして、各国の税制の状況調査いたしたのでございます。東南アジア方面は、そういう意味で一応調査を行なうことができておりますが、中南米諸国につきましては、これから実は最近の税制の状態を調べたい、かように存じておるわけでございます。
  193. 田口誠治

    田口(誠)分科員 昔のことはわかるけれども、最近のことはわからない。しかし何とか二毛課税を防止するために条約を締結するようにしたい、こういうことでございますが、実際に現在の相手国の税制なり、実際の徴税方法というものをつかんでないということになると、今後それによっての利害採算というようなものがなかなかつかめないし、計画が立たないというのが筋なんですが、そうしますとこれは相当作業は進めておられてもおくれるということなんですね。いままでの回答の経過から私が察しますと、相当将来のものというように判断できるのですが、何かめどを置いて作業を進めておられるのかどうかということがちょっとここに疑問になりましたので、その点をひとつ説明願いたいと思います。
  194. 泉美之松

    ○泉政府委員 何ぶん国際二重課税防止の協定を結びますためには、相手国の態度の問題もあるわけでございまして、わが国といたしましては、少なくともわが国企業が相当進出いたしておりますブラジルとか、メキシコ、それから海運所得の特に問題のありますチリ、こういったところとは早急に交渉をいたしたいという考えを持っておりますが、先方の意向もまだはっきり確かめておりませんので、お話のように、今後私どものほうとして早急に進めたいと思いましても、なお二、三年を要するようなことになるかもしれません。私どもとしましてはできるだけ早く交渉いたしたいと思っております。  なお利害得失の問題でございますが、国際間の二重保税防止の条約を結びます際には、それぞれの国がお互いの利害を主張いたし合いまして、ある程度のところで妥協せざるを得ないのが現実でございます。したがって、その妥協し得る範囲であるかどうかということによってきまってくることでございます。しかし私どもといたしましては、わが国ができるだけ有利な状態でそういった交渉ができるようにつとめたいと思っておるわけでございます。
  195. 田口誠治

    田口(誠)分科員 できるだけ早くという希望は持っておられますけれども、いまの回答からいきますと、三年くらい先になるかもわからぬ、こういう答弁なんですがこれは、いままでの質問応答の過程から、そういうようなところに結局追い込まれたような形になったんですが、事実そういうゆっくりしたものですか。
  196. 泉美之松

    ○泉政府委員 国際間の二重課税防止のための協定を結びます際には、概して一同の話し合いで話がつくことはほとんどないのでございまして、現在わが国が交渉いたしておりまして、ある程度実質的な合意に達しましたフランスの場合におきましても約三年かかっておるのでございます。そういった点から考えますと、中南米諸国とこれから交渉を始めるにいたしましても、やはり一回の会合ですぐに話がつかないだろうと思いますので、かなりの日数を要するのではないかというふうに感じておるのでございます。しかし、私どもとしましては、さようにゆっくりやっていくつもりはないのでございまして、できるだけ早くやりたいのでありますが、相手国側の事情もあることでございますので私どもの意向どおりに早く結べるわけには、なかなかまいりかねるだろうという予測をいたしておるわけでございます。
  197. 田口誠治

    田口(誠)分科員 交渉を始めてから二年なり三年なりかかった例がある、こういうことでございます。それはそうかもわかりませんが、私のお聞きしておるのも、一回交渉してそれですぐ条約調印ということは、そんなにこういう問題は考えておりませんけれども、いま準備されておることは、大体いつを目途に交渉開始というようなことになるのかどうかということを含めての質問でございますから、ひとつそのように認識をしていただいて答弁をお願いしたいと思います。
  198. 泉美之松

    ○泉政府委員 現在わが国が国際二重課税防止のために協定をつくろうと思って交渉いたしておりますのは、先ほど申し上げましたフランスが一つございますが、これは実質的に合意に達しました。近く交渉を開始する予定になっておりますのが、カナダ、西ドイツ、それからオーストラリア、こういった国でございまして、なお、目下アラブ迎合及びセイロンとはある程度交渉を進めておりまして、これは、ほどなく実質的合意に達するだろうと思います。こういったふうに交渉を進めておりますので、中南米諸国につきましても、ことしの夏調査をいたしましたならば、できるだけことしじゅうぐらいに先方にアプローチいたしまして、先方がそういった交渉についての用意があるかどうか、用意があれば、いつごろから交渉に入るかということのめどを立てたいと思っております。
  199. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これはどうなんですか。相手国の税制とかあるいは実際に税徴収方法がまだつかめておらない、こういうことになりますと、今後条約を結んだ後の税引きの利益採算というものが、まず進出しようとする業者としては一番頭へくるわけなんで、それで、こういう問題が表へ出た限り、早くそういうものをつかんで、そしてそうした方面への専門的な知識を持っている業者が大体の計画の立てられるような措置をとらせなくてはならないと思うので、いまのように、まだ何もつかんでおらないが、ことしの秋あたりに派遣をして、そして調査をいたして内容をつかんでみたい、こういうことなんですが、そういう計画なら、それはいけない、悪いと言ってみてもしようはありませんので、その計画でおやりになってもいいと思いますけれども、いずれにいたしましても、東南アジアの場合は、これはどちらかといえば、日本のほうは、利害からいくと損のほうですからね。だから、中南米の場合は、若干そういう点が期待のかけられる面があろうと思うわけでございますので、私といたしましては、やはり早く担当官を該当国へ派遣するという措置をとる必要があると思うのです。こういう問題が出ておらなければよろしいけれども、そうであった場合にはそういう方法をとらなければならないのじゃないか。いま二月ですが、それがこの九月だ、十月だということになっては、これはおそいのじゃないかと思いますが、こういうような点について、大臣も静かにお聞きになってみえますが、この係官の派遣云々という点については、やはり大臣としても気を配っていただかなくちゃならない点があろうと思いますので、ひとつ大臣のほうからも、こういう点についての考え方を述べていただきたいと思います。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 租税条約を締結したいという考え方は、先ほどから申し上げておるとおりでありますので、できるだけ早く外国の税制その他の調査もいたしたいという考え方であります。早ければ七月ごろ人を出したいという考え方でおります。
  201. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そういうことでこれを進めていただくということになろうと思いますが、これに伴って、商用で短期間向こうへ行っている滞在者とか学者など、こういう人に対しましても、やはり税の対象にはしない、こういうものなんですか。私この方面は実際わからないから聞くんですが、私はそこまでいくべきだと思うのですけれども、どうなんですか。
  202. 泉美之松

    ○泉政府委員 従来わが国が各国と締結いたしました国際間の二兎保税防止条約におきましては、そういった交換教授あるいは技術修習生等の場合にもお互いに非課税にするという協定が入っているのが多うございます。中南米諸国との間におきましても、これは向こうから学生が来る場合もありましょうし、また日本から教授が行くという場合もあろうかと思いますが、そういった場合にお互いに課税をしないようにしようということで交渉したいと思っておるのでございます。ただ、国によりましては、外国から来ました者が短期滞在者である場合におきましては、国内法におきまして課税しないという措置を講じておる場合もございます。そういたしますと、そういった短期滞在者の場合には、条約を待たずして、国内法で課税にならないという場合がございます。それは外国の事例でございますと、大体半年くらいの短期滞在者というのが普通でございますので、それをこえるということになりますと、やはり租税条約がないと課税を受けるということになるわけでございます。
  203. 田口誠治

    田口(誠)分科員 課税対象企業についての関係ですけれども、向こうに支店なり工場なりを置きますと、これはほぼ永久施設ということになりますが、こういう新設したものもやはりその該当になるのかどうか。
  204. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のとおり、現地に支店を設けますと、それがパーマネントエスタブリッシメント、いわゆるPEと申しておりまして、日本語では恒久的施設と訳しておるのでございますが、そういうことになりますと、向こうがそれに対して課税するのが多うございます。わが国も外国法人が日本にそういった支店を設けておりますれば、外国法人として課税しているわけでございますが、大体各国ともそういった課税をやっておりますので、そういったパーマネントエスタブリッシメントにつきましては現地で課税される、その課税の範囲を明確にする、そうして、その課税されたものがわが国に本社がございまして、その本社の所得に対してわが国の法人税を課税するという場合におきまして、現地で課税された税額を外国税額として控除する、こういう制度をとることになるわけでございます。
  205. 田口誠治

    田口(誠)分科員 主査、これは大体時間励行ですか。
  206. 植木庚子郎

    ○植木主査 なるべく時間励行をお願いします。
  207. 田口誠治

    田口(誠)分科員 もう六分しかありません。まあ時間の関係でこれについて、こまかい面についてもう少しお聞きしいたと思いましたけれども、この辺でやめたいと思います。いずれにいたしましても、政府がこの際中南米諸国に対しても、二重課税を防止するために、条約締結の準備を進めておるということになりますれば、この作業はスローモーションでなしに、早く明確に進めてもらって、そして進出企業もそれぞれの計画の立てられるような、そういう配慮をもって進めていただく必要があろうと思いますので、その点は私の意見として申し上げて、この項に対しての質問は終わります。  それから、これは地方自治関係だと思いますが、国税には全然関係ないかということを私伺いたいと思うのですが、オリンピックのときに外国からのお客さんに対するあらゆる面に対して免税という点については、これは国税関係は全然ありませんですか。
  208. 田中角榮

    田中国務大臣 地方税でいま宿泊、遊興飲食等に対して免税をしようということを考えておりますが、国税に関してはいま考えておりません。
  209. 泉美之松

    ○泉政府委員 ちょっと補足して申し上げておきますが、物品税におきましては、外国の旅行者が参りまして、トラベラーズ・チェックで購入いたしました場合には、たとえば日本のカメラであるとかいったようなものを買っていくという場合におきましては、免税措置がとれるようになっておりまして、今回のオリンピックの際には相当外国からお客がおいでになると思いますが、その際にはわが国の優秀なカメラ等をぜひ買って帰ってもらいたい。その際にはもちろん免税措置をとるわけでございます。そういう考えは持っておりますが、これは特別の法律を用いなくて、現在物品税法でそういう制度がとられておりますので、それで十分まかなえるわけでございます。
  210. 田口誠治

    田口(誠)分科員 もう時間がありませんので、あまり次から次とふっかける質問は、してもだめだと思いますので、簡単に打ち切れる問題で伺いたいと思いますが、これも大蔵省直接のものでなく、やはり自治省との関連のあるものでございますけれども、しかし、当然相互調整という面から大蔵省でも関係を持ち、大蔵省が自治省と同時に起案をする必要もあり、検討する必要もあるわけでございますから、ちょっとこの場で短い時間で伺いたいと思います。  ここ一年前ぐらいから、特に昨年の総選挙のときには、市町村民税の課税方式を本文方式に改めるのだというような、これは政府の方針であったかなかったかわかりませんけれども、そういうような演説がぶたれて、地方自治体ではそういう感覚でおるわけなんです。そういうように受け取っておるわけなんです。したがって、この間ちょっと新聞で見たわけなんですが、一気には本文方式には持っていけないけれども扶養控除という面だけはひとつ取り入れてやりたい、こういうようなことが大蔵省の、これは談話だったか大蔵省で検討中というぐあいだったか、いずれにしても大蔵省の名前の入ったもので私見たわけなんです。これは直接には自治省の関係でございますけれども、相互調整の面で大蔵省に大いに、交付金の関係関連がございますので、この点どうするのか、これをやはりはっきりしてもらわないと、地方自治体のほうでも、また選挙等でいろいろ立ち会い演説会などで話を受けたり、またいろいろと宣伝に乗った人たちは、本文方式になって今度は市町村民税が安くなるのだ、こういう感覚でおりますから、その点ひとつ明確にしてもらいたいと思います。全然そういう意思がないのならない、あるならある、そうしてことしはやれぬが来年からやる考えだとか、また、ただいま申しましたように、移行するワン・ステップとして扶養控除という面だけ採用するのだというような、これは特別の方式だろうと思いますけれども、そういうものをおやりになるのか、この点わかりましたら説明願いたいと思います。
  211. 泉美之松

    ○泉政府委員 市町村民税の改正につきましては、お話のとおり、昭和四十年度におきまして本文方式に完全統合したい、しかし三十九年度におきましてはその中間的な措置をとって、二年計画で本文方式に統合したいという考えで話が進んでおるわけでございまして、一昨日閣議決定になりました地方税法の改正案におきましては、三十九年度におきましてはただし書き方式をとっておる市町村におきましては、扶養親族のうち最初の一人につきまして四万円を控除する、それ以外の扶養親族につきましては一人当たり三万円を控除するという所得控除方式を取り入れまして、四十年におきましてはその控除額をさらに本文方式の額まで引き上げまして、そうして統合をはかるというように予定いたしておるのでございます。
  212. 田口誠治

    田口(誠)分科員 わかりました。もう一問だけ。四十年度から本文方式に切りかえるということで、今年はワン・ステップということで扶養控除という面を取り入れる、これはわかりましたが、私ここで本文方式をとるということになった場合に、完全にこれが統一して市町村民税が安くなるかどうかという点について疑問を持っておりますることは、準拠税率のとり方において、やはり現在本文方式をとっておるところでもまちまちな税金を取っておるわけなんです。こういうことになりますと、せっかく切りかえても地域住民の要望にこたえられぬということになりますから、こういうものは金額的に最高を押えるとか、こういうようなことは法律でできるものかできぬものか。現在のような準拠税率の方式をとっても、これは手放しでおくのかどうか。これも、やはりこういう問題をきめるときに検討しなくてはならないし、この問題の結論も出してかからなくてはならないと思うのですが、その点についてひとつお考えを承りたいと思います。
  213. 泉美之松

    ○泉政府委員 今回の地方税法の改正におきましては、お話のとおり、従来市町村民税の税率は準拠税率になっておりましたので、必ずしも市町村がそれを守らなくてもいいということになっておったわけでございますが、今度はこれを四十年におきまして本文方式に完全統合いたしました際におきましては、標準税率方式に改めるわけでございます。そうして制限税率というのを設けまして、その制限税率は標準税率の五割増しまで、たとえば標準税率が二%の税率になっておりますれば、その五割増しの三%までは税率を設けることができるが、それをこえた税率を設けることはできないというふうに制限を設ける予定になっておるわけでございます。
  214. 田口誠治

    田口(誠)分科員 まだ質問したいのですけれども、時間励行いたします。これで私の質問を終わります。
  215. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、中村重光君。
  216. 中村重光

    中村(重)分科員 中小企業の金融問題に対して大蔵大臣に具体的な質問をいたしたいと思いますが、その前に予算審議に応ずる姿勢について大臣考え方をお伺いしてみたいと思います。  いろいろと政府・与党折衝されて予算案を提案しておるわけであります。そして総括質問一般質問、こうして分科会と、熱心に質疑が続けられるわけでありますけれども、結局終着駅は政府原案をそのまま通すということが慣例として行なわれております。私は、こうした審議がそれなりに効果があるということはもちろん理解をいたしておりますけれども、やはりこうしたいろいろな質疑の中に、大臣として確かに社会党の議員の質問が当三十九年度の予算の中に生かされてこなければならない、やはり修正の必要もあるんだというような考えが出てこないはずはないと思うわけであります。しかし傾聴に値する意見があったとしてもそれは単に聞くにとどまって、その年度においては生かされていかない、こういうことになるわけであります。そのことは民主議会のあり方として好ましくない、間違った行き方であると私は思うのでありますが、そうした慣例に対して大臣としてはどのようにお考えになっておられるのか、まず考え方をひとつ伺いたい。
  217. 田中角榮

    田中国務大臣 政府は予算案を提出いたしておりますから、この予算案をぜひ通していただきたい、こういう立場をとっておるわけであります。しかしこの予算の修正権、審議権等については統一見解も出ておりまして、予算は国会における御審議の過程で組みかえ動議その他いろいろなものが出るわけでありますが、結論としては、いままではできるだけ政府原案で通していただくようにということをお願いし、また政府原案で通っております。皆さんの御意見が聞きっぱなしになるじゃないかということでありますが、そうではないのです。これはやはり国会においてお話を承りましたときに、私たちが来年度以降の予算編成に対して十分取り入れなければならないという問題に対しては配慮をいたしておりますし、なお予算執行、国政全般、行政の面に対しての御意見もありますし、また政府もその問題に対してお答えをいたしておりますので、政府のやっておることだけが正しいのであって国会における議論は尊重すべきでないなどという考えは絶対に持っておりません。これまでの予算審議の過程において、また各法律案審議の過程において、拝聴する貴重な御意見に対しましては、予算に対しては来年度とか補正でどうするとかいろんな問題がございますけれども一般の行政の運営面につきましては、国会における御議論はできるだけしんしゃくをして国政にこれを反映せしめたいというような考え方でおることを御理解願いたいと思います。
  218. 中村重光

    中村(重)分科員 大蔵大臣としては、予算の原案をつくられる際に、これは最善なりと思っておつくりになるはずであります。ところが与党との政治折衝あるいはまた各種圧力団体の要求等において、大蔵省原案が改められて政府原案という形で出るわけです。その例でわかるように、こうした議会における予算審議の中においては、いろいろ予算執行の面において、あるいは総括的な予算をきめてまいりますからその中において、具体的な問題では操作する面が出てくるということはわかりますけれども、やはりその増減ということにおいても改めなければならぬという面が出てくると私は思う。ところが予算に関する限りは、野党のそうした要求は全然受け入れないということが従来の態度であるわけなんです。法律案の審議、これもまた政府は責任を持って提案をいたしますけれども、最近の傾向といたしましては私ども社会党といたしましても、対案を出してそのことが入れられない場合は、できるだけ政府原案を修正してよりよき法律案としてこれを成立せしめるという努力をいたしておりますが、与党といたしましてもその点は政府と十分折衝の上、社会党の要求に応じてこれを修正するという前向きの姿勢があらわれつつあるわけであります。そのことは非常に好ましいことだと思うのでありますが、私はこの予算の面においてこそ、それらの法律案等に見られる態度というものが生かされてこなければならないと思うわけであります。いま一度大臣考え方を聞かしていただきたい。
  219. 田中角榮

    田中国務大臣 政府は予算及び予算関係法律案を提出して御審議をいただいておりますから、できるだけ原案で通していただきたいという立場をとっておりますが、国会において共同修正等が行なわれた場合には、当然法律的義務を政府が負っておりますから、これに対しましては法律を十分に順守してまいっておるわけであります。なお、いままで社会党の方々や民社党の方々から、いろいろな御意見で石炭手当の問題とか、政府・与党との間にいろいろ御議論がありましたし、協調的態度に出られておるものもございまして、財政上許すものに対しては私たちも次の機会に補正予算等の措置をとったこともありますし、なお次の年度の予算に対しては十分配慮をいたしておる、こういう事情をひとつ御了解いただきまして、いま出しておる法律案をすぐ直せ、いま出しておる予算を直すべきだということも御意見としてはわかりますけれども、できるだけ予算は単年度主義をとっておりまして、予算というものは永久に国会で御審議を願うわけであります。そういう意味で私たちも真剣な気持ちで皆さんの御意見を拝承しておるのでありますから、皆さんも短兵急にこの法律を直さなければ絶対にいけないということでなくて、悠久なお考えのもとに御協力を賜わりたいと思います。
  220. 中村重光

    中村(重)分科員 まだこの問題に対して相当突っ込んで議論をしてみたいと思いますけれども、時間がございませんので、それ以上の答弁をいま求めるということは、とうてい不可能と思いますので、具体的の問題に対してお尋ねをいたしますが、金融の引き締めによっていろいろな弊害があらわれつつあるわけであります。公定歩合の問題はいまなお実行いたしておりませんけれども、預金準備率の引き上げとか、窓口操作、そうしたいろいろな面から中小企業に対するしわ寄せというものが非常に強く出ておる。倒産続出というような形において年度末、いわゆる三月危機というものが非常に強く叫ばれておる。これに対して最近いろいろな措置が講ぜられたようであります。金融の面、税制の面について措置が講ぜられたようでありますが、税の減免の措置あるいは延納の措置に対しましては、国税庁長官の通達をもってお出しになったようでありますが、具体的にどういうことなのか明らかでありません。かつて鉄鋼不況にあたって北九州地区の中小企業者に延納あるいは減免の措置を講ぜられたのでありますが、今回は特殊な企業あるいは特殊な地域に限っていない。全体の中小企業に対するしわ寄せというものが非常に強く出ておると私は思うのでありますが、今回のそういう減免、延納の措置は具体的にはどのようになさるのか、まず伺ってみたいと思います。
  221. 田中角榮

    田中国務大臣 確かに近ごろ倒産もございます。私たちもこの倒産の内容に対して十分な調べをいたしております。御必要であれば私の手元まで報告を出しておるものに対して御報告を申し上げてもよろしいわけでありますが、私も非常に慎重にこれら個々のケースにわたって内容を調べておるのであります。しかしこれが昨年の十二月からとられた各種の金融引き締め、金融調整的な手段によるものであるというふうにはいま考えておらないわけであります。私たちが考えますのは、金融引き締め、調整等において中小企業にしわが寄ってはならない、こういうことを非常に重点的に考えております。そして金融が少し正常化されておらないというような面も見られますので、金融を正常化していくために、中小企業が期末金融に窮して三月の年度末等に、非常に決算期に無理になるというようなことが起きてはならないという考え方に立ちまして、相当思い切ったいろいろな措置をいたしておるわけであります。政府関係三機関の資金をふやしましたり、また買いオペレーションをやりましたり、銀行局長通達を出して特別金融的に中小企業に対して配慮をするようにといいましたり、日銀総裁にも意思を通じまして、全金融機関に対して異例の談話を発表していただいたり、また今度三月行なうという千億の買いオペに対しましても、これがなるべく中小金融機関に資金が流れるようにというようなことを十分配慮をいたしておりますし、同時に黒字倒産というような連鎖反応による倒産を起こしてはならないので、地方財務局長会議にも指示をして、地方の金融機関が、自分の貸し出し先である中小企業が黒字でありながらも、親企業が倒産したために連鎖的に倒産が起こるというような場合に、いままでのように画一、一律的なものの考え方ではなく、慎重に配慮をしながらできるだけてこ入れをしてもらうようにという、相当いままでから考えると異例なこともやっております。同時にまた国税庁にも指示をしまして、現行制度の許す範囲内、国税通則法でもってきめられておりますもので、少し拡大解釈ではないかとさえいわれたものを、過去に北九州とか産炭地とかいろいろなところにやっているわけであります。また、昨年末から一月にかけての年末の相当強い指示もやっておるわけでありますから、これらの問題を全部ひっくるめまして中小企業の三月対策に対しては可能な限り、最善一ぱい努力をするようにということを私の意思も通じてあります。それに向かいまして国税庁長官通達を出しまして、各税務署がその気になって、こういうような特例があるんです、通則法によってはこれだけ延納もできるのです、また還付の手続も早くやりますからというようなことを周知徹底せしめて、民間と税務署との間に、少なくとも事情がよくわからなかったためにその恩恵を得られないというようなことのないように、細心の注意を払っておるわけであります。
  222. 中村重光

    中村(重)分科員 内容が明らかでなければ、国税庁長官の通達の内容がどういうことになっているのか、それによって見なければわからないのです。いま大臣答弁されたような判断はそれではだれがやるのか、その判断というものは、通達の内容いかんによっては狭くも解されるし広くも解されるという形になるわけでありますから、通達の内容を具体的にひとつ伺ってみたいと思います。
  223. 田中角榮

    田中国務大臣 いま国税庁を呼んでおりますから後刻申し上げますが、まず政府側としてやらなければならないものに対しては、お返しをするものに対しては、還付できるものは直ちに還付をするということを命じてあります。それからもう一つは延納ができる、分納もできます、これは当然できるのじゃないかというようなことではなく、税務署のほうからも各企業に対して、窓口だけではなく、出かけるとかいろいろな手段を講じまして、こういうような制度が開かれておりますし、またいろいろ過去にやりました相当非常的な処置もありますので、これらの問題に対しては税務署長が税務署員を督励しながら、企業家、国民各位に便宜を十分使っていただくというような、ほんとうに積極的な立場で配慮するように通達を行なっておるわけであります。  こまかい具体的な問題に対しては、国税庁長官が来ましても、通達の文書はたいしたことはないのです。問題は十二月にやりました措置に対しては非常に国民各位から喜ばれておるわけであります。産炭地等に対しまして行なった処置も大蔵省としてはよくやった、こういうようないろいろな問題がありますし、過去に北九州等にとった例もありますので、災害のときにとった例もあります。災害のときは特別立法を行なったという面もありますが、とにかく現行の通則法で解釈できるもの、きのうの大蔵委員会では、拡大解釈をしてもやれということでありましたが、いままでやったものの中にもすでに拡大解釈じゃないかというようなものもあるわけでありますが、そういうものも過去にやったもの、妥当と見られ、必要であると見られる処置に対しては可能な限りすべてやる、こういう立場に立っておるわけであります。
  224. 中村重光

    中村(重)分科員 北九州の例だとか、あるいは産炭地の問題だとか、あるいは災害、それらにはっきりしているのですね。ところが今回の場合は特定の地域であるとか特定の業種に限らない、全体の中小企業に及ぶということになってくると、これはなかなか判断がむずかしいのじゃないか、こう思うわけです。その還付するのはわかる。とり過ぎた税金でありますからこれは返すという形になりますから、その点ははっきりしているわけですね。ところが金融引き締めによって非常に当面中小企業が困っておる、倒産の状態にある、そういう判断は非常にむずかしいと思うわけであります。したがいまして、それらの点については具体的な考え方というものが私はあるのじゃないかというように思うのであります。またそれでなければ実際の効果というものはあまりたいして期待できないのじゃないかという感じがいたしますので実はお尋ねをしておるわけであります。
  225. 田中角榮

    田中国務大臣 いままで税務署というところは御承知のとおり法律で国民から税金をいただく、こういう立場に立っておるわけでありますから、やはり徴収するということに対して熱意を持っておるわけであります。ところが今度は中小企業の現状ということを十分考えてかかる異例の通達を出したり、いろいろな措置をしようというのでありますから、税務署自体が、国民各位が税務署に御相談になるということに対しては、ケースを問わずいろいろな問題に対して御相談に応じます、そうして税務署自体が納税者の便宜をはかるという立場でできる限りのことをしようというのでありますから、こういう措置をしたあとというものは非常に税務署は徴税不足を生じるくらいによくやるのでありますから、そういう意味で過去にいろいろな措置をしたことに対しては、地元の方々や中小企業の方々にも納得をいただいておるわけであります。そういう立場で通達をし、地方の国税局長にも指示をいたしておるのでありますから、税制上の猶予とか納税者の便宜は具体的に十分はかれるという考え方を持っておるわけであります。  なお、産炭地などは特殊なところであるから、その地域だけを限定してやれば非常にやりやすいけれども、全国的な中小企業に対する配慮ということになると、なかなかものさしを使いにくいというようなお感じがあるかもわかりませんが、国税庁でいままでやったものに対しては具体的な例示がたくさんありますので、そういうものに対してここまではやれるのだ、こういうケースに対してはこう処理できるのだということに対しては、十分勉強もしておりますから、特別な配慮をすべし、こういう通達に対しては税務署は十分こたえるという考え方でおるわけであります。
  226. 中村重光

    中村(重)分科員 全般的に延納するといったような態度、減免をやるのだという、やはり原則的な方針というものをきめていくということですね。そういうことでなければ私はほんとう措置にはならないというように思うわけです。その点に対してどうですか。従来やってきたことはわかっているのです。今回の措置というものは、従来のような取り組みからいうと一歩前進をしていって、原則的には延納してやる、減免の措置も講ずるといったような態度がなければ、なかなか第一線で、いま大臣考えておられるようなことが実行されるということはむずかしいのではないか、そういう感じがいたしますからお尋ねをしているわけです。
  227. 田中角榮

    田中国務大臣 国税通則法に明文がございます。この問題に対してもできるだけ狭義に解釈しているのではないかというようなことさえいわれてまいりましたが、過去の産炭地や災害やいろいろな例がありますので、また年末にやったことに対しては、非常に喜ばれておるというような前例がたくさんありますので、そういう趣旨を十分徹底してやろうということでありますから、まあ御心配はないようにやれる、こういうふうに考えます。通則法の条文は別にして、激甚災害のときのように特例法を出してやれというようなお考えの御質問であれば、特例法を出さなくても、三月の中小企業の実態に対しては、いまの通則法の条文の範囲内でこちらも積極的になり、納税者の立場になっていろいろなことを考えてあげるという立場でありますので、十分対処できるという考えに立っておるわけであります。
  228. 中村重光

    中村(重)分科員 税制の措置にいたしましても、あるいは金融措置にいたしましても、政府の施策の中から非常な混乱が起こってきている。金融をゆるめたかと思えば直ちに引き締めなければならぬ。従来は周期的に、大体四年ごとにそうした状態があらわれておったのですけれども、今回は全く金融をゆるめた時期というものは一年程度だった、こういう状態です。ですから、やはり国税通則法の問題、あるいは従来やってきたいろいろな措置というものをその範囲でやるというようなことでは中小企業の危機は打開されない、こう思いますから、さらに積極的な取り組みをやっていただきたいということを、徴税措置の面に対しては強く要望いたしておきたいと思います。  融資の問題ですが、買いオペ百億を含めて二百二十億ですか、そういう措置をされたようでありますが、その中の約七十億は自己資金という形ですね。それを期待しておられるようであります。そのことにも私は問題があると思うのでありますが、大体資金需要というものが三月にどの程度あるのか。今度二百二十億を決定されたということに対しては、資金需要の関連で出されたと思うのでありますが、その程度でこの三月危機が打開されるのだろうか、私は非常なむずかしい問題だと思うのでありますが、その点どうでしょうか。
  229. 田中角榮

    田中国務大臣 これも三機関だけでもってやるのではなく、市中金融機関その他各般の金融機関で見ておるわけであります。特に政府関係三機関につきましては年度別のいろいろな経過もありますので、どの程度政府が張り込んでいるのかということをお考えになっていただけば、わかるのではないかと思います。今度は三十八年度第四・四半期、すなわち一月から三月までの間に、三機関に対して百二十億の融資ワクをふやすことと、百億円の買いオペレーションを考えましたが、その前に第四・四半期に対する特別な措置として、第四・四半期に対しては財政資金三百億、それから自己資金百億、買いオペレーション二百五十億、こういうことをやっておるわけであります。でありますから、その前の措置だけで対前年度比幾らかというと、二七%ふえておるのであります。それに対してなお百二十億の財政措置の融資ワクを広げますと、三〇%に近い対前年度比の伸びになりますから、この数字を見ても、政府はこの三月に対処して、一-三月で三機関だけでも非常に前向きで対処しているのだということはおわかりになると思うのであります。私は、このように、日銀総裁までが談話を発表するように、非常に積極的にやっておることは過去にもなかったと思うのです。今度は、大蔵省も日銀も都市銀行も地方銀行も、また相互銀行や信用金庫も、また政府三機関も、そういう意味では十分な配慮をしようという体制になっておりますので、金融上は私はそんなに無理な状態ではないというふうに考えておるわけであります。
  230. 中村重光

    中村(重)分科員 どうも大臣少し楽観しておられるのじゃないかと思うのです。最近の都市銀行の動向を見てみましても、これは御承知のとおりいま二五%程度ですね。ところが都市銀行は、中小企業の金融はするけれども、この中小企業の金融は、成長性の非常に商い企業をさらに積極的に育成していくのだ、こういう態度であるわけです。そうしてみると、成長性の高い企業ということになってまいりますと、金融面に対しても、系列融資等保護されてまいりますから、私は、そう詰まらない、金融的に詰まってくるということは少ないのじゃないかと思いますけれども、金融機関からも非常に冷淡な態度をとられる、あるいは系列融資の面におきましてもあまり待遇されないというような一般の中小企業が、この三月危機という面において非常に深刻な状態に追い込まれるということが考えられる。そうなると、大臣がいま答弁されたような、大臣が期待しておられるような形にはならないのじゃないか、そういう感じがいたします。大臣がいま答弁されたようなことが現実に行なわれてくると、これを実行しようということになってまいりますれば、都市銀行が従来二五%程度であったならば、どうしてもこれを三五%程度まで、実は中小企業に対する貸し出し率を引き上げていくというような行政指導がなければ、とうてい私は不可能であると思うのでありますが、具体的にそれらの点に対してはどうでしょう。
  231. 田中角榮

    田中国務大臣 都市銀行の中小企業向けの金融がいま二五%程度に落ちておるということも一つの問題であります。できるだけ三〇%に近づけるように努力を願いたいというような措置はしておりますが、これは貸し出しのワクが非常にふえておる、どうも少しふえ過ぎておるというところもあります。私はそういう意味で金融機関自体の融資がどうも少しふえておるのじゃないかというふうにも考えますが、しかしふえておるというのは事実でありますから、これを急に正常化しようとすれば、引き締めによる非常に強い影響があるわけでありますので、十分配慮をしながらやっておるわけであります。とにかく二五%もさることながら、三月の中小企業に対して一番必要なのは、いままで日銀が千億の買いオペをやりますときの配慮のしかた、中小企業に金が回るような対象に重点を置いて買いオペをやるということになれば、資金量も非常にふえるわけであります。でありますから、こういうことに対しては、銀行局と日銀との間にも話をするようにということもやっております。また都市銀行に対しても、二五%というような中小企業向けの貸し出し比率は、先ほどあなたもお触れになりましたように、都市銀行の対象である大企業の下請に対して急激に引き締めがきかないように、影響がいかないようにという配慮もやっておりますし、またそれもやらなければならぬわけであります。でありますから、二五%よりも――国会でも議論がありますし、事実三月の中小企業の金融対策に対しては、都市銀行も可能な限り努力はしてほしい、こういうことを申し入れてありますから、その比率がいますぐに二八%になり、三〇%になるということよりも、都市銀行も前向きで三月を迎える中小企業金融対策に本腰を入れておるということ等を十分考えていただければ、三月の中小企業金融対策には十分対処できる、このように考えます。
  232. 中村重光

    中村(重)分科員 従来買いオペの際に全般の中小企業に対して資金が効率的に流れていく、こういうことから保証協会の保証つきということが行なわれてきておった。ところがそれを数回実行してみた結果は、必ずしも実効があがっていないということのようでありますが、今回はどうなさるおつもりなのか、保証協会の保証つきというような措置をおとりになるのかどうか、その点どうですか。
  233. 田中角榮

    田中国務大臣 御説のとおりやりたい、このように考えております。
  234. 中村重光

    中村(重)分科員 そうすると大臣、問題が一つ出てくるのですよ。保証協会の保証つきということになってくると、信用保険公庫に対するところの資金がその買いオペと同じく投入されていかなければ、これはそういう制度をおとりになりましても、実際の効果はあがらない、こういうことになってくるわけですね。いわゆる弱い中小企業に対する信用力を強めていくということ、これが必要になってくるわけでしょう。そうすると、買いオペはやったけれども、保証協会の保証はつけるのだけれども、肝心の保険公庫に対する投資がなされその投資によって保証協会に貸し付けが行なわれなければ、今度は信用補完をする能力というものがないわけです。ですから、あわせてそれらの措置も講じられなければ何らの効果もないということになってまいりますから、その点に対してはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  235. 田中角榮

    田中国務大臣 保険の問題に対しては、十分のワクが現在あるということであります。それから数字的なものまで御質問があればお答えをいたさせます。
  236. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 お答えいたします。三十八年の十二月末の限度額は三千七百三十八億円余りとなりますので、現在におきましても、約八百億円近くの保証余力がございます。
  237. 中村重光

    中村(重)分科員 信用保証協会の保証をつけるという問題が実効があがらなかった、こういうことで最近は買いオペの場合に保証協会の保証をつけていない。今度はそれをやるということになってくると、その点が明らかにならなければいけないのですね。ですから実効があがらなかった点をどのような方策をもって実効をあがらせるようにしようとなさるのか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  238. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 従来実効があがらなかったとおっしゃいますが、実績をそれぞれの金融機関から徴しておりまして、保証による中小企業融資の実績がかなりあがっている樹もございます。ただし全体が円滑にいっているかというと、そうではございませんので、そこでこの買い取りました債権を売り戻す際に差別を付しております。あまり中小金融に有効に使わなかったと見られるものに対しては早く売り戻す、それから成績の比較的いいものはその期間をもっと延ばす、あとから売り戻しをするというふうなことによりまして、奨励的な意味と懲罰的な意味とを兼ねまして、そのようなことをやっておるわけであります。
  239. 中村重光

    中村(重)分科員 私どもは窓口に行きまして、いろいろ実情を調査してみる、あるいは中小企業の人たちと懇談をいたしておるわけでありますが、そういう中からはどうもただいまの御答弁の形では従来実効があがらなかった点が是正されるという期待はできないように私は思う。しかし、きょうは時間の制約がありますから、この点に対しましてはこれ以上突っ込んでお尋ねいたしませんが、十分ひとつ研究をしていただきたいと思います。保証協会の保証は信用力の弱い中小企業に対して信用を強めていくわけでありますから、それ自体は私は好ましいことであるとは思っております。しかしこうした金融が非常に手詰まりになったという場合の危機を打開する緊急の措置としておとりになるような場合に対しての信用補完の措置をおとりになる場合は、やはり信用力の弱い中小企業の保証協会に対してそれを強めていくということが同時に行なわれてこなければだめだということですね。それから技術的ないろいろの方法も、私は私なりにいろいろ研究したものを持っておりますけれども、十分ひとつ御研究を願いたいということを要望しておきます。  さらに手形の割引の関係でありますが、これは大臣調査されてよく御承知になっていらっしゃると思いますけれども、銀行が選別融資をやってきた、そのために信用力の弱い中小企業の手形というものはなかなか割ってくれない。最近は町の金融機関のところに飛び込んでおるのです。しかも手形割引料というのはものすごく上がっておる。御調査になった結果はいまどのようになっておりましょうか。
  240. 田中角榮

    田中国務大臣 いまあなたが言われておるような、手形がどの程度町の金融機関に入っておるかというような調査はいたしておりません。いたしておりませんが、地方財務局長等に申しつけておりますことは、いままでのような画一、一律的な考え方で倒産に追い込むというようなことをしてはならないということで十分金融機関とも連絡をとるように、なお不渡りが出ておる、その不渡りのケースに対して、なぜ一体不渡りが出たのか企業の状態まで検討しながら、十分調査するようにということを言っておるわけであります。いま私の手元にありますのは、倒産をしました会社の状態等が報告をされておりますが、もう一歩進めて、一体手形サイトはどのくらい伸びておるのか、どういうことで一体こういうことになったのかという面からの検討を手形の問題に対してはいたしております。その他の問題に対して、こまかく集計をしたり調査をした結果はいまわかっておりません。
  241. 中村重光

    中村(重)分科員 最近の町の金融機関の手形の貸し出しの伸びは五千億。その中で手形割引が三千億という数字を示しておるようであります。また金利にいたしましても、日歩十銭程度であったのが今度は十五銭から二十銭というぐあいにものすごく金利が上がっておる。これでは中小企業というのはばたばた倒れていくのは当然なんです。ですから今回緊急な措置をおとりになるにあたっては、これらの実情を十分把握して、きめのこまかい融資の措置をおとりにならなければどうにもならない、こう思うわけです。そういうことでお尋ねをしておるのですが、その点はどのようにお考えになりますか。
  242. 田中角榮

    田中国務大臣 手形の問題につきましては、いま日銀当局に、手形の流通や割引の状態また市中金融に走っておるというようなものに対してまで十分配慮してもらうようにということを言っておりますから、日銀も今度そのような態勢で調査をして、機に応じて日銀総裁も言われておりますようにこれで十分だとは思いますが、しかし現時点におけることでありますので、事態の推移をつまびらかに十分検討しながら適切な措置をとるつもりであります。こういうことを言っておるわけでありますので、日銀当局が十分調査を行なっておると思います。それから市中金融機関というものに入っておるものは一体どのくらいあるかということに対しては、なかなかこれはよくわからないのです。わからないのでありますが、大体市中金融機関の金をどのくらい使っておるのか、まあ三千億という人もありますし、四千億という人もあるし、五千億という人もあります。大体日本においては四千億くらい使っておるじゃないかということが、いままで言われておるわけであります。しかし、こういうことがあることは好ましいことではありませんから、これは正常な金融になるべく吸収をしていくべきだということで、現在まで金融の正常化をはかっておるわけであります。
  243. 中村重光

    中村(重)分科員 都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫等々これらの市中金融機関に対しては、歩積み、両建ての問題等々規制の措置を講ぜられるということは明らかにされておるわけです。町の金融機関の弱みにつけ込み、高い金利を取るということは、これは何らかの措置を講じられなければ、これを野放しにはもちろんしておられないと思いますけれども、何らかもっと強い態度でお臨みになるということが、私は必要ではないかと思いますが、この点に対してはどうでしょう。
  244. 田中角榮

    田中国務大臣 市中金融機関に対してましては、法律で金利の限度をきめておるわけであります。その金利も非常に、最高限であるというけれども非常に高いということであります。なるべくそのような市中の金融業者の門をくぐらないように、金融を正常化することが必要であるのでありますが、手形のサイトが非常に延びたり、もう一つ、これは私は非常に言いにくい話でありますが、実際、国民各位がもう少し考えてもらわなければならないことだと思いますので、勇気をもって申し上げますが、その手形の内容がいまよくつかめないのですよ。これはいろいろ統計から私もやったのですけれども、金融量というのが非常に大きくなっている。融通手形ということがあることは御承知のとおりでありますが、融通手形が一体どのくらいあるんだろうか。私は、私の郷里や知った人たちを集めて、大蔵大臣だとは思わぬで、個人田中角榮だと思ってひとつ話してくれということで二、三日前にお話を聞きました。極端な例だと思いますけれども、融通手形はもう常識なんだ。融通手形は自分で出せるので、その融通手形を出すことによって金融をつないでおるのです。ですから、融通手形を徹底的に排除をしても、それはわれわれもたいへんなんです。しかし、君たちの言うように融通手形が相当量出回っておって、それが金融の状況としては普通なんだということであればたいへんなことだ。ですから、やはり資本でいえば、大体年間の売り上げというものは、水揚げ量からいえば、資本金の二十倍という常識的な線もありますし、それから年に何回回転するのかということが業種別できちんとわかるわけでありますし、何か正常な事業を行なっておるときの金融というもののベースからはずれて金融が幾らか回っているんじゃないかとさえ思われるふしもあるのであります。でありますから、金融の正常化ということは、われわれがいままで考えておるようなオーバー・ローンの解消とか、オーバー・ボローイングの解消とか、そういう考え方よりも、現実的な金融の動き、こういうものの正常化をはからなければならぬ。それにはやはり、五千万円の資本金で年間の商売が幾らあるものに対しては、正常な金融の限度というものは大体このくらいなんだというようなことを、お互いが少し考えていかないと、いまのままでただ足らぬ、足らぬでもってそのまま措置をしていくと、全く自転車操業的になってしまうのじゃないか。私はそこに、現時点における金融というものに対しては、相当お互いが前向きで対処しなければいかぬだろう。これも、水ぶくれがあるんだからと、一ぺんに正常のワクをかけてしぼってしまったら、これはもうたいへんなことになる。でありますから、一律、画一的な引き締めというようなことを日銀がおやりにならないで、一つずつのケースに慎重に配慮をしながら、各金融機関の窓口で十分企業の業態を見ながらやっていこう、こういう慎重な配慮をとったのはそういう問題もあるのではないか。いずれにしましてもひとつ国民各位、企業者がいつまででも自転車操業をやるのだというような考え方を正常に戻していくということに対しては、政府も国民自体も相協力しながら、正常な金融状態、正常な経済状態に、やはりできるだけ早い機会に返してやらなければならないのではないか、資金的な統計でいろいろな説明を聞きますと、経済成長率とか、いままでの回ってきておる金融の量がありますから、まあ一四、五%増し、少なくとも一七、八%増しであれば十分だというものに対して、二七%も三機関でもって金を出しておる。また、それに対して追加もしなければいかぬ。しかし二月も末になって、三月あぶないときには日銀はもっと考えます、こういうような体制をしいておるのですから、政府や日銀は非常に前向きであるということはひとつお考えになっていただきたい。ですから私たちも現実を十分見ながら、理想論だけで押しておるとか、画一、一律的なものの考え方で金融の正常化をはかろうというようなことをやっておるのではなく、徐々に正常なものにしていこうという考え方に立っておるわけでありまして、私はまあいまの状態ではだいじょうぶだ、こういうふうな考え方。なぜかといいますと、いま私のところに報告が来ております倒産したものの内訳が出ておりますが、まだほんとうに金融の引き締めによって、普通だったら十分乗り越えていけるものが参ってしまったというような例はないようであります。
  245. 中村重光

    中村(重)分科員 ただいま御懇切な御答弁をいただいたのだけれども、時間がそのためにたってしまってまことに残念なんですが、融通手形の問題も、これは何も中小企業者が好んで融通手形を出すのではありませんよ。これは、銀行に行ってもなかなか割ってもらえない、ですから甲が融通手形を出したら、今度は乙にまた融通手形を出させるということで、そういうようなことをやらなければもう生き伸びられないという現実ですよ。ですからいま大臣答弁されたようなことを実際ほんとうに実にするならば、政府の政策の転換をおやりにならぬ限りだめだということです。大いにそれらの点に対しての議論もしたいのだけれども、残念ながら時間が参りましたので、一点だけ。  大臣が明らかにされた手形の不渡りに対して刑罰を課することを研究する、この点は研究を進めておられますか。総理大臣はそういう刑罰なんていうようなことは考えられないことだということを、たしか新聞か何かで談話として、他の問題とこれは一緒であったと記憶いたしますが、お話しになったことがありますが、その点どうでありますか。
  246. 田中角榮

    田中国務大臣 手形法等は法務省所管でありますので、法務省等に申し入れまして検討していただいております。また、大蔵省でも検討いたしております。これは総理はどう言ったか、総理は専門家ですから、そう言ったのではないと思います。私と逆のことを総理が言ったようでありますが、それは総理のことばのほうが寸足らずだと思うのです。いや、寸足らずではなく、舌足らずの発言がそうなったんだろうと思います。これは、検討さえもしないで野放しにしておけばいいのだということでは、これは考え方がはげしいと言われるかもわかりませんが、銀行券を偽造すれば、これはたいへんなことなんです。ところが流通貨幣と同じ効力を持つものが無制限に発行されても、何年間も裁判で争わなければならない、そのうちに中小企業はつぶれてしまう。私はやはり、開放経済に向かって円というものが非常に国際通貨としての信用を維持していかなければならないのですから、こんなときには真剣に考えるべきだと思う。これからはアメリカ式に、家庭の主婦がみなチェックを使う。これは銀行は盛んにやっております。これが全部千円積んで一万円のチェックを出して、裁判されたら、これはたまったものではない。ほんとうにまじめな問題として私はやはり考えなければならない問題だ、こういう意味で新聞記者会見か何かで、いろいろなことを突っつかれますので、こういうこともやはり前向きで検討しなければなりませんよ、こう言って、うちに帰ってよく考えてみたら、これこそやるべきである、こういう考えになって、大蔵委員会かどこかで質問があったときに、私も、そういうこともやはり検討しなければ、いつまでもそんなきれいごとばかり言っておって金融の正常化やそういうものができるものじゃありません、こういうことを申し上げたのですが、いま、今度やるかやらぬか、次の国会に出すか、この国会に出すかというようなことは申し上げられません。これはやはり国民各位の中には私の発言に対して反対だという人もあります。きっと、不渡り手形を出した人は反対だと言うと思うのです。ほんとうにまじめにやって不渡り手形をつかまされる中小企業から見れば、ほんとうにそうあるべきだというまじめな議論があると思う。ですからこういうことは、やはり国民の意向を十分そんたくしながら、時期が来ればさっと前向きに対処する、こういう姿勢をとっておるのであります。
  247. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣が言われたように、計画倒産というようなことでやるとか、倒産することがわかっておって手形を割引をする、手形を発行するというような全く詐欺的な行為というものは、これは現実にあるわけですね。いろいろ問題点はあると思いますが、手形の不渡りというものは、大企業の場合は不渡りはないですね。不渡りは中小企業ですよ。ですから、これは政府の政策の中からそういう問題も生まれてくる。率直に言って、政治の貧困がかもし出した結果である、こう申し上げなければならぬわけで、検討は十分なさらなければならぬわけであります。非常に重要な問題でありますだけに、慎重な、さらに深い検討が望ましいと思いますが、先ほど総理大臣が言われたことばは舌足らずだ、こういうことで、新聞に出たのと大臣にお話になったのと違ったようなことのように伺ったのでありますが、総理大臣はどういう考え方でいるのですか。
  248. 田中角榮

    田中国務大臣 総理大臣は、財政金融の問題に対しては、大蔵省に何十年もつとめてこられ、日本の当代一流の財政経済通をもって任じておれる方であります。でありますから、法律でもっていろいろ制約をするよりも、自然の中でお互いが前向きに対処しながらいけば、経済罰則なんというものは、だんだんだんだんと解決をしていくのだから、法制整備も必要であるかもしらぬが、やはりそれよりも国民的な人つくり国づくりによって、人間がそういうふらちな行為をしないような政治をやることが先だ、そういう面に対してウエートを置いて、アクセントをつけて発言をされたのだと思うのです。これがもとで融通手形ばかりになってしまう。とにかく日本人の出す手形というものは通用しない手形であるということになったら、これはたいへんなことであります。でありますから、私はそういう総理の発言が、どこでどういうふうにお話しになったかわかりませんが、私が言っておる――税法において、税金を納めなかった人は過酷な課徴金を取られ、その上なお体罰を受ける。そして自分がかってに暮夜ひそかに書いた手形を持っていって割り引かして、現金を持って、それを消費してしまって逃げてしまう、それを受け取った人は裁判をやらなければ取れないというような、また裁判をやっても取れない、こういうことをそのままにしておいてはならないという私の考え方と相反する立場にはない。私はそう考えておるのであります。ですから、きょうの御発言もありますから、私は総理に私の考え方を近く申し上げて、ひとつ賛成を得るようにいたします。
  249. 中村重光

    中村(重)分科員 これで終わりますが、企業間信用のことについてお尋ねをしておきたいと思います。  企業間信用は、最近膨張の一途をたどっておるということのようでありますが、金融がゆるんでくると企業間信用は取りくずしにならなければならないのだけれども、どうも最近の企業間信用はゆるめても大きくなる、引き締めても大きくなる。これは非常な影響を各方面に及ぼしてくるということになるわけでありますが、その企業間信用に対する最近の動向、さらにまた、大臣のこれに対する考え方をひとつ聞かしていただきたい。どう対処されようとされるのか。
  250. 田中角榮

    田中国務大臣 企業間信用が非常に膨張しておることは、御承知のとおりであります。また、数字的の問題があれば銀行局長から答弁させます。  とにかく分冊とか延べ払いとか、これが国外に対する延べ払いではなく、国内、国民間においていろいろな契約書と、それから手形と小切手というものが、ほとんど同一に考えられてきておる。そこへもってきて、あなたの先ほどの融通手形の必要性、やむを得ざる処置として出すんだということも、私もよくわかります。私も昔、融通手形をつかまされたこともあります、出したことはないですが、つかまされたこともありますので、そういう事実はよく知っております。そういういろいろな要素が加わりまして、企業間信用は非常に膨張しております。特に製品などは、もう十月ごろになっても扇風機を売る場合には、来年でもいいとか、自動車も、とにかく何千円というような小さなものに対しても全部分割払いにする。分割にするかわりに、そのつど集金に行くのでなく、初めのうちにもう先付小切手、手形を書かせる。これは銀行が一括して取り立てをする、こういうように、われわれの考え方ではできなかったようにテンポが速く、内容が変わってきております。でありますから、企業間信用は確かに数字の上では膨張しておりますが、実際の経済の動きと数字にあらわれておる企業間信用の膨張というものに対しては、これは的確な判断はいまできない状態にあります。だから私はこういう問題を、日銀さんや銀行協会の方々と会うときに言うのです。企業間信用が膨張しておるが、一体どこまで縮められるのか、どこまでが正常なのか、そういうことをあなた方が、とにかく専門家なんだから、あなた方自身が手形を割り引き、その口座を持って、毎日それで商売をしておるのだから、そのくらいのことをひとつ大蔵大臣に答えてくださいよ、こう言っておるのですが、なかなかどうも頭取の皆さんでは、私に的確に答えられないようであります。銀行局長は私に数字を教えますけれども銀行局長の判断もそうしっかりしたものではないと私は思っているのです。ですから、金融の正常化を行なうという問題に対しては、時間はかかりますけれども、掘り下げて、ほんとうに健全なものにしなければならぬだろうというふうに考えております。
  251. 中村重光

    中村(重)分科員 それでは、これで終わります。
  252. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、田原春次員。
  253. 田原春次

    田原分科員 二月十六日の東京新聞の「東京論壇」に、作家の石川達三氏が「税金の事はわかりません」という題で、六項目ばかりの疑問を出しております。これは一般国民もこの程度の疑問を持っておると思いますから、私が要点を読みまして、これに対する回答をそれぞれ明らかにしていただいたほうが親切と思うのであります。  まず、疑問の第一は、「会計検査院は毎年官庁の支出を検査して、何十億という乱費不正使用を指摘するが、指摘するばかりであって、そのためにだれが責任をとり、だれが処罰されたという発表は聞いたことがない。」これは古いのですが、会計検査院から「予算は正しく使われたか」という題のが毎年出ております。われわれも全く同感に感じておる。   〔主査退席、田澤主査代理着席〕 たとえば農林省が何千億、建設省が何千億という予算を請求するときは、来年度の予算に対してのみ査定をしておるのであって、農林省や建設省は前年度の予算執行の際にどれだけの不正や不注意があったかは、ちっともその数字の上で勘案されていない。これでは毎年毎年やはり不正使用があり、それが摘発され、そしてうやむやになり、翌年度の予算には少しもそれがあらわれてこぬということになるじゃないか。これが石川さんの疑問であり、またわれわれも同様に感ずるのであります。したがって、先ほどの質問の中の御回答の一部にありましたような処罰、官庁間の処罰ということはあり得ぬけれども、おまえのほうの省はこれだけ要求しておるが、去年これだけ不正があったから、その不正額がかりに一億とすれば、その二十倍分は削るというぐらいの戒告的な新予算の査定がされるべきであると思う。これはしろうと考えですが、いまの疑問の第一に対してどういうように大臣は石川さんに答えようとされるか。
  254. 田中角榮

    田中国務大臣 遺憾ながら、御指摘のとおり、会計検査院から非違、批難事項として指摘をせられることがあとを絶たないことに対しては、まことに申しわけない次第だと考えます。予算が非常に大きくなりますので、予算執行に対しては非常に強く、国民の税金を使うのである、効率的に合理的な投資を行なうべきである、支出に対しては万全を期すべきだということをお互い考えておるのでありますが、毎年毎年国会に対して非違、批難事項が報告をせられることはほんとうに申しわけないことであります。ただ、一時のようにとんでもない悪いものというものは、これは私は減っておると思います。いま建設省とか農林省の工事の中で批難されて国会報告になっておりますものの中には、設計変更が行なわれた、行なわれたけれども、書類やその決裁ということに対してははっきりした道を通っておらなかったというようなことで、原設計書、原仕様書との関係において批難されておる。これは会計検査院でも、金額は非常に小さい、何百億円、何百万円の中で十万円ぐらい原設計書、原仕様書との間に誤差がある、こういうところまで批難事項として批難されておりますから、私は、やはり会計検査院が指摘された事項に対しては、内容的には、件数は減らないというようなことでありますが、予算が大きくなっておるということに比べて、非常にやはり内容はよくなり、批難されている事項もだんだんと小さくなってきておるということが申し上げられると思うのです。しかし、一件でもかかることがあってはならないのでありますから、これからも特に財政支出につきましては遺憾なきを期してまいりたいと考えます。
  255. 田原春次

    田原分科員 具体的にはどういうふうに遺憾なきを期するか。主計局で握っておる各省別の予算の具体的な毎月毎月の監督を厳重にするとかやっても、あなたのおっしゃるように、毎年必ず出てくる。出てきたのは遺憾であるというだけではいかぬと思うのですが、具体的にはどうして根絶するか。金額は少ないからどうでもいいというのでは、石川さんのように、われわれは苦労して税金を納めてもそれを軽視されたのでは困るという感じ、これは新聞に毎年必ず会計検査院からの報告が出て、そのつど至るところの国民が言うわけであります。具体的に根絶の対策ですね、何か大蔵大臣として考えておくべきじゃないかと思うのですが……。
  256. 田中角榮

    田中国務大臣 昔から決算委員会で常に指摘をせられて、各大臣が頭を下げて、以後いたしません、こういうことを言っておきながら、さっぱり、いたすじゃないかという議論に対して、いろいろいままでも考えたのです。支出行為責任名をつくりましたり、それから占領中は大蔵省でもって四半期別にこまかく認承したり、また件名別に、款項別にタッチしたこともあります。そういうものがあまりによくないということで、とにかく予算が国会を通った以上、支出は支出行為責任者がやるべきであるということになっておるわけであります。いろいろな問題に対して公開入札を行なえとか、それからはっきりと入札最低限をきめろとか、いろいろなことをやっておるわけです。ですから、そういう問題に対しては、場合によっては局長決裁にしなければいかぬとか、官房長決裁にしたほうがいいとか、事後承諾であっても大臣決裁まで持ち込むとか、いろいろなことを考えておりますが、私の関係する税の問題などは、これは取り足らない、国損を来たした、こういうことでありますが、これは初めからまけてやろうと思ってまけたものではないようであります。いろいろな問題があってやむを得ずまけたというようなもの、人がかわって、おるうちに取れなくなってしまったというような、時効にかかったというようなものがありますが、これはみな批難事項になっておるわけであります。こういう問題に対しては、やはりこれを支出をする人々の心がまえ、綱紀の粛正、こういうところにかかっておるわけでありますが、これはあまりあれしますと、だれでもおっかながって支出をしない、非常に長くかかってしまって、これは行政の渋滞になる。でありますから、だんだんと委任をする、委任をすると問題が起きる、こういう悪循環を続けておるわけでありますので、これらの問題に対しては、ひとつ行政審議会や財政制度審議会の御検討も願いながら、国民に対してサービスをしながら批難、非違事項を起こさないようにということを十分考えていきたいと思います。
  257. 田原春次

    田原分科員 やはりことばはなかなかいいようでありますが、実際は具体的な案がちっとも出ておらぬようですが、たとえば補助金を一切これを廃止する。各省の補助金ですよ。そして融資あるいは起債に回してしまうという手もあると思うのです。ただし、この会計検査院の報告の中には、たとえば罰金を検察庁の職員が着服したというような問題がよく出ますが、こう思うものは刑事罰がいく。行政官の身分の問題であり、刑法上の問題になると思うのですが、それ以外の問題を小さくするには――補助金整理法なんて一ころやったが、いつの間にかまた補助金がふえておる。したがって、政府としては一切補助金を出さぬようなことにしたら、幾らかこれが使い過ぎはなくなるのではないか。この点はどうでしょう。
  258. 田中角榮

    田中国務大臣 田原さんも御承知の上で御質問しておられるわけでありますが、補助金など出さなくてもいいような日本の国情にしたいのです。ところがなかなかそうはいかないのです。非常に複雑多岐な面にわたっていま補助金が出ておりまして、補助金等合理化審議会ではこれを早急に整理統合するようにということで、今度の予算でも七、八十件の整理を行なったわけでありますが、戦後の日本の状態は非常に国内にアンバランスがありますので、やはり補助金でやっていかなければならぬ面もどうしても出てくるのであります。補助金はやめてしまえという御議論がこの新聞配下にあるようでありますけれども、そこまで行くことは好ましいことでありますが、そこまで行くために補助金を出さなければいかぬ、こういう悪循環でありますので、その間の事情はひとつ御了解いただきたいと思います。
  259. 田原春次

    田原分科員 これは議論ですから、それはその程度にしておきましょう。  疑問の第二は、累進高率課税の問題であります。ナショナルの社長の松下幸之助氏は、年間四億何千万の個人収入のうち、三億何千万が所得税でとられておるということに対する――別に大ブルジョアを擁護するわけではないがということばをつけまして、これらの区別、限度を越えたものについて疑問を持っておるのです。いま累進課税は最高がどのくらいになっておりますか。その率くらいをひとつ発表してもらっておいたらどうかと思うのです。
  260. 田中角榮

    田中国務大臣 この疑問の二にある松下幸之助氏の率が一番高い、大体最高の率だ、こういうふうに考えます。
  261. 田原春次

    田原分科員 次は、疑問の第三です。たとえば三百円の本を買った場合、この三百円の中にどれだけ税金が入っておるだろうかという疑問です。本の定価をきめるのに、出版社が払う税金、印刷会社が払う税金、製本屋、インキ会社、製紙会社、運送会社、それらのところで払う税金、またそれらの事業場に働く人の所得税の問題等がさっぱり自分たちにはわからないが、おそらく定価三百円ならば、このうち二百円までが各種の税金の総合ではあるまいか、こういう疑問を出しておられるわけです。したがって、厳密に言って、所得税以外に私たちの支出の六、七割は税金になってしまうのじゃないだろうか、国家はそれほどまでに人民から、こういうごく少額な収入の人々からも税金を取らなければならぬかという疑問なのです。
  262. 田中角榮

    田中国務大臣 確かにいまあなたが御発言になられたとおり、国家はこれほどまでにして人民から税金を取り立てることが正当であろうか、徴税部門を持っております大蔵省としては、この問題に対しては真剣に検討すべきであることはもちろんであります。しかし、税金というものは――これは釈迦に説法でありますが、確かに石川達三さんのように、御自分でペンを持たれて、人が寝ておるときさえも仕事をしておられて、相当税金を納められておりますから、こういうお立場でこのような議論が生まれると思いますけれども税金は取りたくて取るのではなく、国家が税金を納められる方々から税金をいただいて、これによって、歳出形式をとって、国家国民のため、将来のために合理的な投資を行なっておるのでありますから、これでもなお課税最低限が少ない、所得税の減税が少ない、もっと高率累進にしろというような議論もあるわけでありまして、三百円の本が二百円までが各種の税金であるということは、計算してみなければわかりませんけれども、確かにわれわれの生活の中で税金が多いということは、観念的には考えられます。しかし、その税金そのものが、必要なこととして、どこの国に住んでも税金があるのでありますし、日本税金も、私たちの立場から見ますと、必ずしも聞くないという考え方をとっておりますので、納める側ではそういうお気持ちもせられると思いますが、なるべくひとつ納税の義務は果たしていただきたい、このように考えます。
  263. 田原春次

    田原分科員 それも議論ですから、一応議論のお答えだけとして承っておきます。  疑問の第四点は、不動産取得税と土地の再評価税の問題です。自分たちが一生懸命原稿を書いて、それ自身の税金を納めながら、少し余裕ができたので土地を買い、そして家を建てる、すると家に対しても、土地に対しても税金がかかる。しかも土地のごときは、自然に値上がりしたというので再評価税がかかってくるが、これではあまりひどいじゃないか。人間の希望、夢として、家を持って静かに暮らしたいと思うのに、あまりに税金を取り過ぎるじゃないかという税金そのものに対する、特に土地より住宅の場合に対しての問題ですが、対策としては何かそこに余裕を持ってやれるか、限度をきめてやれるかということだろうと思うのです。
  264. 田中角榮

    田中国務大臣 不動産の取得税及び不動産売買による所得の税問題に対して触れておりますが、私たちも大蔵省に入りますときには、こんな考えも持ったことがあります。親が子供に残してくれたものである、親から子供に来るときにもう相続税を納めておる、しかもその相続税を納める前に、源泉所得税を納めておる。それをまた売った時には税金がかかる。しかも売るときは、売らなければならないような状態だから売るのだ。中には、保証したためにその会社の債務を負わされて不動産を処分するときに、それも税の対象になる。また現行でもそうですが、相続税を納めるために売っても、売買利得の税がかかる。これはおかしいじゃないかということを考えたことがあります。大蔵省へ入ってから、国民の立場としてこういう考えを持ったことがあるのだがどうだということで、主税局や徴税当局の意見を十分聞いてみたら、やはり向こうのほうに理屈があるようであります。それはこういうことなのです。帳簿価格百万円のものが、千万円で売れた。この場合に、現行の税法では、この簿価に実質的な支出、仲介手数料とかいろいろなものを含めて、それを足したものをまず引きます。そうすると百万円のものが二百万円になる。そうしますと、千万円から二百万円を控除した残余の八百万円を、ちょうど半分に割るわけです。半分に割りまして、四百万円に対しておおむね七〇%ないし七五%の――これは高率課税でありますが、高率課税をしておるわけです。こういうことでは土地を売らなくて、いつまでもきたないうちが建っておったり、無人住家ができるじゃないか、こういうことに対しては、東京都内から、また大阪のようなところから地方に出る場合には圧縮記帳を認めるという制度を去年とったわけであります。そうして今度は逆に、研究都市いわゆる学園都市をつくろうとすると、そこをさっと買い占めてしまってどうにもならない。今度新幹線の問題で、新幹線が通りそうだというところを買い占めてしまって、ばく大もない利益をあげておる。こういうものに対してどうするかというので、ことしの税制改正でもって減税をたくさんしておりながら、一つ増税をやっておるのがある。それは売買を目的としておるような、個人が買っておいて短い時間にそれを転売することによって巨利を得た者に対しては、二分の一の特例は認めない、全額税の対象にする、こういうことにしたわけであります。そういうわけでありまして、だんだんとそういう問題に対しては実態に即するような方法をとっておりますが、これはまあ石川達三さんの言うこともわかります。何回も何回も税金を取られて、最後に家を売るときさえも税金を取られるということもわかりますし、同町に、こういう不動産を持たない大多数の国民、非常に多い国民の立場にも立って、できるだけ国内不均衡を直したいというための税制でありますので、こういうものに対しても大蔵省も検討いたしておりますので、そういうことで御了解をいただきたいと思います。
  265. 田原春次

    田原分科員 お答えの中の前段の、単に地価を引き上げて利益を得るため土地ブローカーに対する措置は、確かに適切なものだと思います。  問題は、しし営々としてためておる者が、せっかく一生の願いとして家を建てた場合に、あなたの言うように控除するものもありますけれども、そのパーセンテージの引き下げのいかんであろうと思います。これは社会政策的意味も加えて、一戸建ての家を建てる者に対する課税の基準を、もう少し引き下げてやったらこういう不平はなくなるだろうと思いますが……。
  266. 田中角榮

    田中国務大臣 もう一つ、これはどうも、法律でもってきちんときまっておるのですが、なかなか国民大衆に徹底しておらぬようでありますが、いまは土地を売って一カ年以内に土地を買った場合、土地を売りましてそのまま現金にして持っておると税金の対象になりますけれども、土地を売ったもので工場をつくったり、不動産や機械やいろいろなものに投資をした場合には、そのまま敷地として認めるという画期的なことをやったわけであります。現行もうすでにやっておるわけであります。ですから、金を持っておられる方には税金はかかりますけれども、より合理的なものに振りかえたという場合には、不動産同士で交換をした場合には、税金がかからぬと同じような特別措置をとっております。こういうものは、一年間たたないうちに、国民に周知徹底しないうちに期日が過ぎてしまうといううらみもあるようでありますから、こういう特例法ができたときにはやはり周知徹底するような方法をとらなければいかぬだろうというふうにも考えております。
  267. 田原春次

    田原分科員 いまのは私の質問した以外の問題なんで、私の言うのは、せいぜい百坪くらいの土地を獲得して、そこに家を建てた場合の、勤労者で自己住宅を建てた者に対する課税の率に対しての不平だと思うので、いまおっしゃるのは土地を売って金をもうけて、それから他に建てた場合のことですが、これも議論ですからいいでしょう。問題はそこの手かげんなり、社会政策的な意味を加えた税率の問題が考えらるべきだということを申し上げておきます。  それから疑問の第五は、どうも税金を取りやすいところから取るような気持ちがしてならない。つまり原稿を書く人たちは、ぴしっと原稿料はきまっております。たとえば私も去年、ソ連に柔道選手を連れて行ったわけです。そうして日刊スポーツに二回か頼まれて書いたのですが、別に原稿料をもらおうとは思わなかったのだけれども、二回で九千何百円だか来た。そうすると、議員としての収入にそれだけ入りますと、税金がそれだけで七千幾らか取られて結局原稿料をもらわぬほうがいいくらいになってくるわけです。われわれは内職か趣味でやるのですけれども、石川さんや作家協会の人のように、苦労して頭を使って、夜通しかかって原稿を書いている人に対しては、一枚幾らだから幾らだといって取りやすい。ところが、差しさわりもありますけれども、たとえばここに出ているトルコぶろとか、あるいは銭湯、あるいは飲食店、いけ花、踊りの家元等は収入額をつかむのがなかなかむずかしいのではないか。そういうものはわりかた――それは国税もあれは地方税もありますけれども――どうも作家から見ると、不公平なようにとられるわけだね。したがって、これの対策としては、いますでに税務署でやっておりますように、必要経費の引き方によるわけですね。一流の文士ならざる人で、年間にあまり収入のない人に対しては必要経費を五割くらいは引くようになっている。だから、引き方によるんだろうと思いますけれども……。非常にこまかくなりますけれども、疑問ですから、疑問にお答え願いたいと思うわけです。
  268. 田中角榮

    田中国務大臣 確かに捕捉しがたいものよりも捕捉しやすい――われわれの歳費もそうでありますが、また勤労者の源泉徴収も、まさに一銭の猶予もなくぴしゃっと源泉徴収されるという面から見ましても、表に明らかに出ておりますものに対しては税法の適用が非常に簡単であるし、税法どおり適用されるということはあり得ることであります。  この石川達三さんのように文筆を業としておられる方々には、実際の収入から必要経費として相当額を控除しておるわけであります。これは前には四割とか五割とかいう案もありましたし、現在三割にするか四割にするか、また在来どおり五割でいいのかという面もありますが、これは定額控除というわけになかなかいかないので、税法のたてまえから考えますと、やはり実費清算的、実際にかかったものを控除する、そうでないと勤労者等と比べて非常に不公平になるという議論もありまして、そういうところは実情に合うように徴税の場合考えて配慮しながらやっております。これが三割ではだめだ、四割でいいんだ、いや五割でもだめで六割必要なのか、そこがなかなかむずかしい問題であります。特に、われわれが映画を見たり、踊りを見たり、いろいろすることは、これは個人的消費でありますが、文筆家などはそういう雰囲気に浸らなければいい知恵がわかないのでありますから、そういう意味からいって、飲むのも銀座を歩くのも、いろいろな意味からそれも必要経費であるということが考えられるわけです。私もそういうことに対しては理解があるんです。そういう意味で、とにかく文筆家だけではなく、演劇家その他に対しましても、できるだけ合理的な必要経費は認めたい、また認めることがほんとうだ、こういう考え方でやっておりますので、この文章に書いてあることもわからなくはありませんが、徴税上不当に圧迫をしておるとか、血も涙もないようなやり方は絶対にやっておりません。個々のケースで申し上げればよく御理解になると思いますが、とにかくできるだけの配慮はいたしております。
  269. 田原春次

    田原分科員 大臣は浪花節に非常な理解がありますから、村田英雄とか三波春夫等はさだめし必要経費等の計算について満足のいくような査定もあり得ると思うのです。やはり文句を言うこういう作家のような文章を書く人に対しても、同様な必要経費は――むしろ非常に世界的な大作品でも出れば日本民族の誇りでもありますから――十分余裕を与えてやってもらったらいいと思うのです。これは私の希望であります。  最後に、疑問の第六は、著作権の相続の問題です。たとえば吉川英治大先生のごとき、著作権で相当のものを書いておる。そうすると、その遺族は将来このくらいの収入があるだろうからということでかけられておる、こういうふうに私はこの文章を理解いたします。しかし、それはそれだけの収入が現実に入った場合と――入るであろうということで査定されては困るというような意味になっておるようでありますが、あとのほうは多少意見でありまして、オリンピックその他のことですから、これはここに読み上げませんが、この際、いつも大蔵委員会で問題になります租税特別措置法が、一部の所得税、法人税あるいは相続税、財産税等を軽減し、もしくは免除するというような問題と、それが大企業あるいは大資本家にのみかかってくるのであって、こういう頭脳労働者あるいは芸能人というような、要するに自分の才能を生かしてやっておる行に対する減免等を、むしろそっちも加えてやってもらうべきものじゃないか。私どもの党としては租税特別措置法を廃止すべきものと長年主張しておりますけれども、あるならば公平に措置すべきものである。大企業にのみやっているのはおかしいと思うのです。最後の著作権の相続、それに対する課税の問題等に対する御答弁を願いたい。
  270. 田中角榮

    田中国務大臣 現行では御承知のとおり、著作権も客観的価値ある財産権であるというたてまえに立ちまして、他の財産と同様に相続の時点において課税をするという立場をとっておるわけであります。しかし、その評価は大体かためにしておるわけであります。なお、直ちに納税ができないときには、五年ないし十年の延納の制度を設けておるわけであります。しかし、この著作権に対してはなかなか問題があるのであります。現行制度はこうでありますが、いずれにしても、実際に収入が生じたときに課税をすべきであるということもありますが、相続税法そのものの問題もありますので、実情に合うように、またこれが国民の理解が得られるような状態で慎重に検討いたしておるわけであります。  租税特別措置法が大企業偏重だという議論はいつでもあるのですが、これは田原さんも十分御承知のとおり、今度の税制改正でも中小企業に対して六百億以上の減税をしておるということから考えましても、中小企業に対してだんだん手厚い税制上の措置考えておるのでありまして、一般の大企業中心というような考え方では絶対ありません。ただ、国際競争力をつけ、日本の重要な基礎産業が大きくなることによって生産コストも下がり、物価も下がり、国民自体が恩恵を受けるのでありますし、これが輸出に響けば外貨を獲得し、それによってわれわれの生活が安定をするということでありますので、いまの日本で何か特定なものに対してだけ恩恵を与えるというようなことはなかなかないのです。これはやはり何らかの形でもってわれわれの生活と密接しておる。一昨年の暮れでありますが、中小企業――さっき中村さんも中小企業問題に対して非常に御熱心な御発言がありましたが、これと同じように、一昨年の暮れには造船、肥料、重電に対して金を入れたわけでありますが、そのときはなぜかというと、中小企業対策もさることながら、造船をこのままにしておくと約二百万人が参ってしまう、こういう問題がございまして、結局金融梗塞を解くためには上から金を流そう、こういうことで思い切って流したわけでありますから、やはり日本のいまの社会制度の中で見るときには、われわれと無関係なものはない。しかも、大企業そのものが特例によっていろいろな恩恵を受けておっても、これはその企業が永久にもうけるのではなく、税金が納められるようになってまた特例がとれるような状態になれば、当然国家が税金としてちょうだいをするのであります。そういう意味で、特例法については十分な配慮をいたしますけれども、必要やむを得ざる処置としてとっておるのでありまして、中小企業その他にも十分配慮いたしておるということをひとつ考えていただきたい。  それから、著作権とか、こういう頭脳労働者に対しても特別な特例をやるべきではないかという考え方は、よくわかります。それで、演劇とかその他に対しての入場税を免除したり、いろいろなことをやっておるわけでありまして、いまの御発言に対しては、これからの税制上の問題として十分検討してまいりたいと思います。
  271. 田原春次

    田原分科員 以上で石川さんの御疑問の点は、不満足ながら大体答弁は得たと思うのであります。この件で石川さんの奥さんと電話で話しているうちに、私が一つの疑問が出た。それは、石川夫人が三十年前に結婚されて、結婚記念に郵便年金に入られたそうです。まあ幾らかの年金を納めておった。いよいよ年金の期限が切れましてから、いま年令をもらっているのだけれども、一年に七十円もらうという約束で三十年前に契約しているらしいですね。毎年確かに年金はくれるけれども、七十円くれるのだそうです。これを受け取りに行くのにタクシーに乗ると三十円の損になるということです。したがって、奥さんの御疑問は、土地が自然に値上がりしたというので、家を建てると土地の再評価ということになるが、郵便年金のようなもので、三十年前に契約したものは、黙っておるといつまでも七十円でございましょうか、こういうものに対しても年金の再評価のごときものはございませんでしょうかという疑問であります。私がお答えしましたのは、恩給であるとか、またわれわれ議員の歳費であるとかは時の物価によってだんだん上がってきておるから、それは郵政省の所管のごとく見えるけれども、たまたま元郵政大臣であり、現大蔵大臣である将来有望な田中角榮という人が大蔵大臣になっているから、きょうあなたの御主人の問題を六問申し上げて、最後に奥さんの御疑問を申し上げましょう、必ずお答えするでありましょう、と私は約束したわけであります。これに対するお答えをお願いしたいと思います。
  272. 田中角榮

    田中国務大臣 最後の御質問で、あまりいいお答えができないことをはなはだ遺憾といたしてます。財産再評価税は現在ございません。これは前に財産税としてやったことでございまして、現在はございません。  この年金の問題に対しては、いろいろな請願もありますし、戦後ずっと議論があります。いまから三十年ぐらい前に一万円の金といえば、子供を大学にやれた金だ、そういう金を納めながら現在受けるのは百円未満の金だ、どうするのだ、これもまた確かに議論があります。しかし、現実問題として取り上げるときには、普通の給与のベースアップというようなものとはちょっと違いまして、これは、昔銀行から借りた金も一万円は一万円であります。また、郵便貯金等に加入せられたものも、現在まだ朝鮮等におられる方々に対しては支払いが未済になっておる郵便貯金がありますが、こういうものも三十年前の郵便貯金千円は現在千円なのであります。とにかく戦後のインフレ的な通貨が、一ドル対二円、一ドル対四円というものが、一ドル対三百六十円になってしまった。こういうようなことから考えまして、相当な苦痛をお感じになっておると思います。これは事情は十分わかるのでありますが、何ぶんにも法制上の問題でありまして、これをどの程度まで引き上げるかということを仮定いたしましても非常にむずかしい、線の引きようがないのであります。そういう実態でありますので、いま貯金をしても、物価が上がれば利息よりも実際が下がるんじゃないかというような議論さえも生まれるのでありまして、まことに申しわけない話でありますけれども、現行の制度の上で現在の政府としてはいかんともなしがたい、こういうことをひとつ御回答いただければ幸いだと思います。
  273. 田原春次

    田原分科員 大臣は現在までの説明でありまして、これが対策についてははなはだ慎重なことばであるようであります。やはり事実そういう矛盾があるのでありますから、これは郵政当局、大蔵省が話され、また法律の改正が必要ならば、私ども各党寄りまして相談して一種のプロポーショナルといいますか、比例あるいはスライドするか、読みかえをするか何かせぬことには、将来郵便貯金や年金をしなくなるという点も考慮しなければなりません。しかし、これは私の議論であります。  本日は、一応、一般国民が抱いておるような税金に対する六つの疑問と、郵便年金に対する支払いのあまりにもおかしい問題を話題として置いておきまして、御検討願いたいと思います。  一応これで質問を終わります。
  274. 田澤吉郎

    ○田澤主査代理 明二十一日は午前十時より開会いたしまして、まず総理府所管のうち科学技術庁関係についての質疑に入り、そのあと引き続き内閣所管及び防衛庁関係、科学技術庁関係を除く本分科会所管の総理府所管についての質疑に入ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会