○田中(織)
分科員 長官並びに
人事局長の
答弁では、本人があげてきておる六十一の事実については、これは当事者は、録音に出てきておる
関係で、その発言者がだれであるかということ、これは部隊の人でなければわからぬと思います。
最後は録音で
確認をしなければならぬようなことになるかもわかりませんが、私はやはり、
自衛隊の内部の情勢はわかりませんけれ
ども、
自衛隊の仕組みから見れば、この問題についての事実は出てこないのではないか、こういうことを私は心配するのであります。
二、三あげてみますと、一番
最初の事実は昨年の三月二十五、六日ごろ。本人は三十八年の三月十六日付で信太山連隊に配属されたものでございますが、「三月二十五、六日頃の事、昼休みに舎前にいた時、
情報小隊長藤井正年二尉に誰かが、何事かを囁いた。藤井二尉、私の方をチラッと見て、わからんもんじゃなあ、あゝ恐い恐い、」あと、
ことばが続いております。六十一の事実の一番書き出しがそれです。
二番目が四月です。日にちはわかりません。「二曹宮永幸徳、三曹徳永基次と私、衛生資材庫兼事務室に於て、徳永三曹、突然によんちゃん気にしだしたら、やれんなあ、宮永二曹と呼びかける。やれんなあ辞めたくなった。宮永二曹、面白くなくなるの、辞めよう、辞めようや、皆も辞るじゃろ、」この「よんちゃん」というのはいわゆる部落民のことで、いわゆる人間外の人間だということで、指四本を出して、やつは四つだということ、部落民だということの蔑称の
一つでありますが、そういうことが三つ目に書いてあります。
それから三番目が「四月衛生小隊の実務訓練の日」の問題でありますが、これには「治療室で沢村重男三曹、清弘士長、岡崎士長、永富三曹、藤沢技手らと消毒器の電熱器を囲んで雑談の際、沢村三曹の持出した話は八坂の話、八坂ええとこやで物は安いし親切やし、いやほんま、わしよっぽど八坂に家借りようかと思ったかわからへん、今の家みてみいボロやし穢いし家賃は高う取りやがるし、八坂に行けばな、一戸建が三軒あるやんけ新品やで、便所、炊事に畳の間が二間か家敷は広いしせんだいもあるで、家賃が二千五百円位い云うてるけどあれゃ四つやって聞いたら誰も入りよらせんぜ、」八坂も未解放部落なんです。「宮さん居らんな、宮さんの母ちゃんもエッタと違うか、うちの奴にきいたら何やら、らしいぜ、えらい激しいらしいわ、八坂のおばさん連中も勝てんらしいわ」これが三番目の事実です。それからあとずっと書いてあるのでありますが、中には、東
富士か何かで演習をしたときに、たまたま消毒薬の噴霧機がこわれた。それで、それを本人が、差別された畠中君が修理したようです。これは十一月の十日です。東
富士演習場で動力噴霧機が故障し、本人が時間をかけてやっと修理が終わったときのことです。ちょうどそのとき宮永さんと永富三曹がかわりの噴霧機を持ってきた。このときの
情報小隊長藤井二尉がかけてきて、「お前ら遅かった、四つ奴、とうとう直しよった」と言ったことに対し、隊員が「あまり大きな声で言うと聞こえますよ、」と注意したのに対し、「四つは四つやないか、お前等もう少し早く来てればな、お前みたいなもん間に合わんって頭から一発かましたる気でいたんや、文句ぬかしおったらやめちまえって言ってやる心算でな、」と声を一きわ大きくした。あまりのことに本人が抗議すると、大声で、何と言った、変な言いがかりをつけるなとどなりつけ、ものも言わせないけんまくであった。これはやはり十一月の十日ですね。東
富士の演習場のできごとなんです。しかも、ただ行き過ぎの問題ではなくて、本人が消毒薬を管理しているもので、取りにきたときに、たまたまその噴霧機がこわれているというので、本人が時間をかけて直したところが、ほかの者がかわりの噴霧機を取りに行って、もう新しく持ってきたものを使わなくてもよかったという具体的な事実の前にとりかわされた
ことばがこれなんです。この六十一の事実の一番
最後に、本人が「十一月二十五日に休暇を申し出た。中隊長に呼ばれた。中隊長は頭から、退職を前提としている者にはそのようにしているが、どうなんだ。五日からあいばの野営がある」こういうことで、これは本人にとれば、いわば本人が休暇をとるということは、もうお前は隊にいたたまれなくてやめれという
意味なのか。いや、五日の野営までに帰ります、ということで本人は休暇をとったということで、「右のとおり、事実に相違ありません。
昭和三十八年十一月二十五日」と、ちゃんと部隊のことを書いて、本人が捺印して、先ほどお見せしたように書いてきているのです。したがいまして、私はテープの録音は聞いてはおりません。しかし、後半の事実はほとんど録音テープにおさまっていると思うのです。したがいまして、上級機関からの調査では、そういうことを言ったということでなしに、多勢に無勢ですから、結局やはり畠中の思い違いで本人がそういうように受け取っているのではないか
——私
ども何十年この運動をやってきておりますけれ
ども、多くの場合、結局そういうことで水かけ論になるのです。しかし、そういうことのために、結婚して子供ができておっても、その婦人の出身地が部落であったということで嫁いじめのひどい扱いを受けましたために、子供を置いて、あるいは子供と一緒に自殺したというような悲惨な事実が、近年においても毎年二、三件出てきているのです。そういう
意味で、たまたま本人は結婚するときに、部落の出身であるということをはっきり所属長に、これは北海道の部隊におったときだそうでありますけれ
ども、申し上げているそうです。その
意味で、やはりたれかが不注意に、畠中は部落の出身だというようなことを漏らしたことが、結局隊員の間に伝わって、あたかもそれがまるっきり異民族か人間外の人間のような扱いを部隊員の中で受けるような結果になったと思うのであります。せっかく
答弁がありましたけれ
ども、
人事局長や
長官の下部から上がってきている報告を私は信用するわけにはまいらない。この問題は、きょうは
予算に関連してですが、これは部隊の団結にも
——今後
自衛隊の隊員の中にもやはり部落出身者が当然入っていくことだと思うのです。そういうことで、
自衛隊の構成にも響く問題です。もしそういうことで、この点について明確な
方針が出されないということになりますれば、少なくとも私
どもの
関係している
団体から、
自衛隊に入ることはやめようじゃないか、こういうことをわれわれの
団体が提唱して、そういうような空気が出てまいりますれば、それでなくても定員を確保することが困難な状態の中で、一体
長官、どうされますか。私はこの問題だけを伺う考えではございません。こういう封建的な身分差別についてどうお考えになっているかということからお伺いしなければならぬと思いますけれ
ども、この点、下部から上がってまいりました調査報告は私信用することができない。やはり畠中君の申し立てている事実はさもありなん、こういう考え方の上に立っているのでありますが、その状況をさらに徹底的に調査されるお考えがあるかどうか。聞くところによれば、師団の隊員
諸君は御存じないかもしれませんが、部隊の中に何人かの新しいというか、師団司令部
関係の者を相当長期にわたって居住させて、隊員の実際の言動を調査されておるやにも聞いておるのでありますが、これはゆゆしい問題だと思うのであります。今後の
自衛隊の存立の上にも大きく響いてくる問題だと思うのでありますが、事実をやはり、本人の思い過ごしかもわからぬ、あるいは何か本人にトラブルがあって、そのときたまたま出た言動だ、こういうふうに見ておられたんでは、今後こういう問題の絶滅を期するということの対策が生まれてこない、こういうふうに考えるのでありますが、徹底的に事実をお調べになるお考えがありますかどうか、重ねてお伺いをしたいと思います。