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1964-02-19 第46回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十九日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席分科員   主査  植木庚子郎君       青木  正君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    井手 以誠君       石田 宥全君    田中織之進君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       二宮 武夫君    横路 節雄君    兼務 野原  覺君  出席国務大臣         国 務 大 臣 福田 篤泰君  出席政府委員         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官  志賀 清二君         防衛庁参事官         (長官官房長) 三輪 良雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (人事局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (経理局長)  上田 克郎君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部会計課長) 大浜 用正君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    鈴木  昇君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         運輸事務官         (航空局長)  栃内 一彦君  分科員外出席者         防衛庁事務官         (調達実施本部         長)      山上 信重君         大蔵事務官         (主計官)   秋吉 良雄君         大蔵事務官         (主計官)   渡部  信君         会計検査院事務         総長      上村 照昌君         会計検査院事務         官         (第一局長)  保川  遜君         会計検査院事務         官         (第二局長)  樺山 糾夫君     ————————————— 二月十九日  分科員横路節雄委員辞任につき、  その補欠として楢崎弥之助君が委員  長の指名分科員に選任された。 同日  分科員楢崎弥之助委員辞任につ  き、その補欠として二宮武夫君が委  員長指名分科員に選任された。 同日  分科員二宮武夫委員辞任につき、  その補欠として田中織之進君が委員  長の指名分科員に選任された。 同日  分科員田中織之進君委員辞任につ  き、その補欠として横路節雄君が委  員長指名分科員に選任された。 同日  第四分科員野原覺君が本分科兼務と  なつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算会計  検査院及び総理府所管防衛庁関  係)      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算会計検査院所管及び総理府所管のうち防衛庁関係を議題といたします。本日は一昨日に引き続き、会計検査院所管について横路節雄君の質疑を許し、そのあと直ちに防衛庁関係質疑に入ることといたします。  それでは、会計検査院所管について質疑を許します。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路分科員 一昨日私のほうから会計検査院に要求してありました、主として内閣官房報償費、それから外務省報償費、これは非常に金額が多うございますので、その内容について説明をぜひ承りたい、こう思いましたところ、詳細に調べてということでございましたので、きのうまる一日かかっておりますから、きょうは相当詳細にお答えできると思います。ひとつどんな状態だか明らかにしていただきたいと思います。
  4. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 一昨日、私から大体検査の態度といたしましては御説明をいたしたつもりでございますが、報償費関係検査につきまして申し上げますと、一般のものにつきましては、会計検査院で、支出原因とか、いろいろの内容のわかる書類を提出さして検査しておるわけでございますが、私のほうといたしまして、計算証明規則によりまして、それによりがたい場合には、私のほうから指定し、あるいは相手方の申し出を受けて承認の上、簡略な方法をとれるということになっておるわけでございますが、報償費の大部分につきましては、その事柄内容機密に属するので、詳細な書類は出しがたいということでございまして、取り扱い責任者領収書のみが一応われわれのほうには出てきまして、それで一応の書面上の検査をすると同時に、内容につきましては、実地検査におきまして、関係書類あるいは相手方説明等を聴取いたしまして、その使途が予算目的どおりに使われているかどうかという心証を得まして、決算の確認をしておるわけであります。このような関係でございまして、実地検査におきまして書類その他は提出さしておりませんので、昨日一日いろいろ相談いたしましたが、その結果は局長から答弁させますが、詳細な資料をとっておりませんので、内容も必ずしも御希望に沿うような形で申し上げかねるかと思いますが、検査といたしましては、実地検査において内容を十分見て、予算目的に沿っておるという心証を得て確認しておるわけでございます。さような関係上、内閣外務省、あるいは公安調査庁その他につきまして、多少申し上げることが、記憶等によって調査いたしました関係上、ちぐはぐになっておることもあろうかと思いますが、局長から答弁させることにいたします。
  5. 保川遜

    ○保川会計検査院説明員 一昨日横路先生からの御質疑がありまして、私非常に不調法で、何か、わかっておって隠しておるのではないかという御印象をあるいは与えたのじゃないかと思っているのですが、非常にその点申しわけないと思って、説明が不十分だったと思いますのでおわび申し上げます。本日これから説明いたします場合に、会計検査院計算証明あるいはその他の資料によって何がわかるか、何がわかっていないか、この点をはっきりさして御答弁さしていただきたいと思います。  内閣官房におきましては、ちょっとあるいは御質問の趣旨からそれるかと思いますが、情報調査委託費報償費と二つございます。情報調査委託費は、これは委託関係の詳細な証拠書類計算証明によりまして提出されております。したがいましてこの関係は、計算証明でわれわれははっきり、どの団体にどういうものがいっておるかということはわかります。これは概略申し上げますと……(横路分科員「それはよろしい、報償費のほうだけ」と呼ぶ)報償費関係では、いま総長からも申し上げましたように、計算証明でわかる点は、内閣最高責任者と申しますか、その責任者に月々幾ら渡されたかという証明が出ております。これは計算証明でわかるわけであります。その渡されたものがどういうぐあいに使われたかという点は、いま申し上げましたように、実地検査にまいりました際にそれぞれ、実地と申しますと、内閣でありますから内閣官房検査の場合に、その現場におきまして証拠書類を拝見して説明を聞いて、そこで確認する、こういう方法でやっておりまして、事柄性質上、詳細な資料あるいは記録というものは、これはとっておりません。そこでこの関係実地検査に行きました者の報告に基づきまして、内容概略は大体承知いたしておりますが、それを申し上げます。  内容といたしましては、謝金的な使用をされておるもの、それから情報収集整理といったような役務の対価として支払われているもの、あるいは懇談会会談等交際費的に使用されているもの、こういったものがその内容で、私が内閣官房経費内容としていまわかり得るのはその程度でございます。ひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。  外務省の場合も、ただいまの内閣官房とほぼ同じでございまして、やはり月々の計算証明で、その責任者にどのくらい渡されておるかという点はわかっております。その内容は、外務省本省実地検査におきまして証拠書類を拝見して、そこで確認をいたす、こういう方法でやっております。内容概略は、外交工作関係、それから外国使臣等接伴等の、そういう交際費的な経費がこの内容でございます。以上でございます。
  6. 横路節雄

    横路分科員 まる一日調べてもらったわけですが、ただいまの御答弁では詳細な資料がない、そういうことですね。結局、極端に言えば、架空の人物でもいいわけなんです。佐藤太郎、一、三百万円、判こさえ押してあればそれでも通るわけです。だから、いまの会計検査院は、私がこの前お話をしましたように、会計検査院法の第一条で、会計検査院内閣に対して独立の地位を有するというこの規定からいけば、いささか会計検査院としてはその職責を十分全うしてないではないか、こう私は思うわけです。それから、これは大蔵省所管で聞こうと思うのですが、この報償費の中に、いまあなたからお話しのように、懇談会会談の際におけるいろいろな費用ですね、接待をしたとか、せんじ詰めれば交際費的なもの、こうなっておる。これは明らかに、あなたお調べになる、とわかるけれども各省交際費というのはとってあるわけです。これは財政法その他からいって、いわゆる項目移流用ということは非常に問題があるのでしょう。一々大蔵大臣当該大臣との間で協議をして、大蔵大臣承認を得なければ移流用ができないようになっている。それであるのに、いまあなたの御説明では、報償費の中に一つ謝金——謝金というのはお礼金です。これも予算書を見てごらんなさい。諸謝金というのがありますよ。これも明らかに予算書には項目で諸謝金となって、これはきちっとお礼をするもの、こうなっておるわけです。交際費交際費として載っておるわけです。それをいまあなたのお話を聞くと、諸謝金もある、お礼金もある、情報提供者に対して月々渡すもの、一件幾らとして渡すものがある、懇談会会談に使うもの、交際費的なものもあるということになれば、わざわざ各省に諸謝金幾ら交際費幾ら報償費幾らと書いたその立て方が全くでたらめになるわけです。ほんとうは使うときには当該大臣大蔵大臣の話し合いをして、大蔵大臣承認を得なければ項目移流用はできないでしょう。検査院事務総長、そうでしょう。それを何でこんなルーズにやるのです。この点はあなたにお聞きします。
  7. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 ただいまの点はわれわれ検査していく場合になかなかむずかしい問題でございますが、内容的に接待費の点がございましても、たとえば外務省で申し上げますと、外務省外交関係をやるというような広い意味からいいますと、この接待費もあるいは外交工作上の接待費ということになるかもしれませんが、外務省報償費についていいますと、外交工作をやるために必要な報償費ということでありますので、そういう目的に沿っておるかどうかという点が主眼になるわけでございまして、内容的に、飲み食いしたから、同じだから交際費と同じでなければならぬということもどうであろうかというような気もいたしております。ただ、お話のように、報償費内容がなかなか観念しにくいものであるということはわれわれも考えてはおるわけでございますが、全体の判断といたしましては、報償費のあれはどういうふうな意味だということを考えまして、その間に飲み食いというようなものが、あるいはそのほかのものがありましても、そういう目的で使われておれば、まあ予算上いいんじゃないか、こういうふうに実は考えておるわけであります。
  8. 横路節雄

    横路分科員 最後一つだけお尋ねしておきますが、この報償費については会計検査院独自の立場で会計検査はできないということですね。相手方がこれ以上やめてくれと——本来からいえば、あなた方はこんなことで済むものじゃないでしょう。何のたれがしが一つ二百万円、何のたれがしが一つ三百万円とあるだけでほかの省は終わるものではないでしょう。ほかの省もそうやっているのですか。あなたがここに詳細な証明書がないのだということは、これは報償費に関してはいわゆる機密的な費用なんだから調べないでもらいたいということが、たとえば内閣官房なら官房長官外務省なら外務大臣、その他の大臣からあなたのほうにお話があって、あなたのほうはそれを了解してやっているわけですね。一般費用なら、こんなことはできないでしょう。その点はどうなんです。その点だけお聞きしておきたい。
  9. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 先ほど申し上げました計算証明関係で、簡略の取り扱いをしてくれということで、先ほど申し上げましたような商略な取り扱い方を私のほうでしておるわけございますが、その際書類等検査院には出さないが、実地検査のときは十分見てくれということでありまして、そういう意味承認しておるわけでございます。ただ実際検査する場合に、たとえば内閣報償費が相当高度の機密を要する、あるいはそのほかの捜査費関係におきまして、費途の最後まで追及するということが非常に困難であるというような点で、あるいはそういう点で検査院検査を放棄しておるじゃないか、こういう御意見もございますが、これは事柄性質上、そういう段階の検査心証を得て確認をしていく、こういうたてまえをとっておるわけであります。
  10. 横路節雄

    横路分科員 どうもはっきりしないから、もう一つお尋ねします。いまの、簡略な取り扱いをしてくれ、そういうことはこの会計検査院法の何条で了承されるのですか、ちょっと私も勉強のために教えてもらいたい。簡略な取り扱いをしてくれ、こういうふうに言われれば、それでいいのですか、何条にあるのですか。
  11. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 計算証明関係は、基本院法にあるわけであります。それから院法に基づきまして計算証明規則というものをつくっておるわけでありまして、その計算証明規則支出とか収入についてはこういう証明をしなければならぬということになっておりますが、その条文の十一条に、「特別の事情がある場合には、会計検査院の指定により、又はその承認を経て、この規則規定と異なる取扱をすることができる。」こういう条文があるわけであります。これに基づいて承認しておるわけであります。
  12. 横路節雄

    横路分科員 いまの問題については、各省ごとに諸謝金、それから交際費報償費情報調査委託費と、めいめいきちっと分れているわけです。しかし内閣官房については諸謝金お礼をする金、情報提供者に対する報償費、それから懇談会交際費的なもの、こうなっているのですから、これは私はあらためて大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。きょうは防衛庁がありますから。なお大蔵大臣にお尋ねするとき、もう一度事務総長にはおいでいただくかもしれませんから、主査を通じてあなたに重ねて出席要求をいたしたいと思います。主査あと大蔵省関係のときもう一ぺん聞きまして、防衛庁に移りたいと思います。よろしゅうございますか。
  13. 植木庚子郎

    植木主査 よろしゅうございます。  以上をもちまして、会計検査院所管に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  14. 植木庚子郎

    植木主査 これより昭和三十九年度一般会計予算中、防衛庁関係について質疑を許します。横路節雄君。
  15. 横路節雄

    横路分科員 最初長官にお尋ねをしますが、自衛隊諸君に対する教育方針ですね、どうも私はこの問題についてば、自衛隊思想教育をしているのではないか、こう思うのです。これは国家公務員でございますから、したがっていやしくもそういう思想教育は断じてあってはならない、こう思うのですが、どうも私どもいろいろ聞いて見るのに、今日の自衛隊諸君というのは、いわゆるその教育方針として明らかに思想教育を受けているので、非常にへんぱな思想を持っているのではないか、こういうふうに思うわけですが、その点について長官自衛隊の隊員に対する、あるいはそれぞれの学校生徒ですか、学生に対するいわゆる教育方針というのは、いま私が指摘したようなことがあるのではないか、こう私は思いますが、ひとつ長官のそれについての基本的な方針を承っておきたいと思います。
  16. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 自衛隊教育方針の問題になりますが、これは御案内のとおり、昭和三十六年五月に「自衛官の心がまえ」というパンフレットをつくりました。下部にまで徹底するように、四項目にわたりまして基本方針を明らかにいたしておるわけでございます。御指摘思想教育といいますか、片寄った教育という点は、私ども毛頭考えておりません。民主主義体制下におきまして、私どもといたしましては、各人思想は自由でございます。当然自衛官も、また自衛隊国民の協力なり、国民の手によって運営される、いわば一体となるべきものであるという信念を持っておりますので、そういう点は懸念がないものと考えております。
  17. 横路節雄

    横路分科員 私もそうであろうと思うのですが、しかし、これは前に私一度指摘をしたのですが、もう一度出してお話をしたいと思うのです。  おやめになった杉田陸幕長が、陸上自衛隊富士幹部学校校長であるときに、毎日生徒に、幹部になるべき諸君に訓示をした。それがずっとこの本に収録されているわけです。その中に「富士学校では学校創設以来新しい指揮官の道として次のことが強調されている。我々はこれを実行しているであろうか?」こういう断わり書きをつけまして——「指揮官への道」という題でありますが、最初のほうだけ読んでみたいと思う。「私は神に誓って自衛隊における立派な指揮官たることを深く期するものである。日本地位と国力並びに私の力量とその欠点とを自覚し、世論に惑わず、政治にかかわらず、常に徳操の涵養と自己の研鑽に邁進し、」ここまではいいのです。次なんです。「又確固たる反共精神を持しつつ、模範を衆に示し、課せられたる仕事はこれを熟知し、命令は直ちにこれを実行に移し、もってその目的精神の貫徹を期したい。」ここに「確固たる反共精神を持しつつ」こうなっておる。これは私は明らかに思想教育だと思う、この「指揮官への道」というのは。前に私はこの問題を一度取り上げたいと思いながら、夜中になりましてあまり時間がございませんでしたからお聞きする機会がございませんでしたので、あらためて伺いたい。  私はその後いろいろな人々に聞きますと、やはり自衛隊諸君は、ソ連の軍艦とか、そういうものに対して非常な敵がい心を持っておる。中共に対してはどうか知りませんが、実際にそれらのことをいろいろ聞かされることが多いが、一体その原因は何だろう、こう思ってみると、「反共精神を持しつつ」とある。これは杉田陸幕長富士幹部学校校長のときだけこれをやりになったのか。これを見ると、「学校創設以来新しい指揮官の道として次のことが強調されている。」ここに「指揮官への道」とあり、そうして一番最後に「富士学校の理想は私共日常の生活の中に具現せられ、私は母校の誇りを長く持ち続けん。」こうなっておるのですから、これはそのときだけで、いまなくなったというものではない。いまでもやっておる。この「反共精神を持しつつ」というのは、どういう意味なんでしょう。私が先ほど言った、自衛隊思想教育をやっているのではないかという私の考えは、実はここにあるわけです。私は非常に危険であると思うのです。この点ひとつ長官から伺いたい。私は思想教育だと思うのです。もしも長官が御答弁にならなかったら、教育局長でもいいですよ。
  18. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答え申し上げます。  いま横路先生が御提示になりました前陸幕長杉田さんの本を、私実は不勉強でまだ読んでおらないのでございますが、いま御指摘になりましたところから想像いたしますと、杉田さんが言われた反共精神というのは、おそらく自衛官任務一つになっております間接侵略に対処するために、自衛官任務を遂行し得るような能力をつける、そういうような意味ばく然反共精神とおっしゃったのではないだろうか、これは私の想像でございますけれども、そのように考えております。  なお、今日同じようなスローガンを掲げておるかどうか、私つまびらかにいたしておりませんが、はっきりそういう綱領を掲げておるということは聞いておりません。
  19. 横路節雄

    横路分科員 私いまの教育局長の御答弁にも問題があると思うのですよ。いま教育局長の御答弁には、自衛隊任務間接侵略に対処するため、そこで間接侵略に対処するということを遠回しに、反共精神に徹するのだ、こう言っておる。それでは、間接侵略をやるものは共産主義者だと肯うのですか。それとも共産党だと言うのですか。どういう意味なんですか。いまのことばは、私は非常に大事だと思うのです。自衛隊間接侵略に対抗するために、そこでそれを遠回しに言ったのだ。そうすると、あなたの精神からいえば、自衛隊というのは間接侵略をやるものは共産主義者なんだ、その団体を構成しておる共産党諸君なんだ、こういうことになるじゃありませんか。これはまたたいへんな問題ですよ。
  20. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答えを申し上げます。  自衛隊法の第七十八条でございますが、ここに「間接侵略その他の緊急事態に際し」云々ということばがございます。この緊急事態に際して自衛隊出動をする、その出動するときに備えるように自衛隊員を訓練するというのが、私ども任務になっております。したがって、これは想像でございますが、杉田富士学校長は、おそらくその任務ばく然反共精神というふうにおっしゃったのじゃないだろうか、そのように私は考えるわけでございます。
  21. 横路節雄

    横路分科員 いや局長、そういう御答弁だったら、私は分科会だけでなくて、あらためてここで——たいへんなことになると思うのですよ。いいですか。七十八条に、「命令による治安出動」「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」とある。この間接侵略をやるのは、あなたのお話だと、まるで共産主義者だ、その団体である共産党だ、こういうことになるのですよ。そういう規定でいいのですか。そういう規定であれば、これは自衛隊法ですから、もう一ぺん総理大臣にも出ていただいてしなければ、これはたいへんなことですよ。実は私これで前に自衛隊法のときに質問をちょっとしたら、夜中になりましたのでやめてしまった。きょうはぜひ、前々からお聞きしたいと思っておるところなんです。そんな答弁なら、これは保留しておいて——これはたいへんですよ。主査、そんな法律解釈はないですよ。
  22. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 元校長杉田君の「反共」という表現でありますが、私は適切でないと考えております。もちろん国会において御承認をいただきました自衛隊任務といたしましては、直接または間接侵略に対処する祖国防衛任務を与えられておるわけであります。しかし、御案内のとおり、現在自衛隊といたしましては、仮想敵国というものも考えておりません。したがって、一つの政党なり特定思想に対する敵対行為あるいはこれを仮想敵に考えるたてまえは、間違っておると考えております。ただ、いわば日本の安全と平和を乱すおそれのある、いわば国際共産勢力といいますか、活動と申しますか、破壊的なものに対してば当然われわれとしてはこれに対処する準備をする必要がございますが、共産党であるとか、あるいは特定思想特定の国ということを考えるのは、私は不適当であると考えているわけでございます。
  23. 横路節雄

    横路分科員 いまの長官の御答弁でだいぶわかりましたけれども長官、これは陸上自衛隊幹部学校である富士学校でやっているわけです。それではこの最後の「富士学校の理想は私共日常の生活の中に具現せられ、私は母校の誇りを長く持ち続けん」という中における「確固たる反共精神」ですから、これは富士学校校長に対して、国会で問題になった、明らかに思想教育、そういう疑いを持たれるから、したがって、ひとつこの「指揮官への道」はこれを削除して、新しい立場によってやるべきである、こういうことを、長官は責任を持って指示なさることができますか。
  24. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 すでに先般の国会において、この前校長の発言が問題にされました。私の受けている報告では、そのとき直ちに、今後校長の訓辞あるいはその他のあいさつ等につきましては、十分慎重に表現をすべきであると注意をしたそうであります。
  25. 横路節雄

    横路分科員 それでは、長官に私のほうから要求しますが、この富士幹部学校の「指揮官への道」というのは、あらためて長官のほうで、どんな内容のものであるか、お取りになって私のほうにお示しいただけますね。
  26. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは基本教育精神の問題でありますから、先ほど申し上げた「自衛官の心がまえ」がやはりよりどころであるべきであると考えます。したがいまして、関係の者を集めまして、慎重に検討の上で御連絡申し上げたいと思います。
  27. 横路節雄

    横路分科員 長官、私がお尋ねをしているのは、確かに長官の言うとおり、あるいは内局の諸君はそういう思想教育をやろうと考えているとは私は思わないのです。しかし、制服の諸君は、内局の諸君の言い分とは別に、おれらは光輝ある、伝統ある日本の軍隊なんだと、こういう立場に立って、いわゆる内局の諸君の言い分には耳をかさないで制服の諸君はやっているのではないか、こういう懸念を持ちますので、私は第一番目の点として指摘をしたわけです。これは長官からお示しいただけるそうですから、ぜひこの分科会が終わるまでに出していただきたいし、もしもそうでなければ、一般質問のときにさらに私からお尋ねをいたしたいと思うわけです。  第二番目の点は、いままでこの委員会における論議の中で、憲法九条と自衛隊との関係で、自衛隊が核武装をすることは憲法違反ですという私の主張に対して、防衛庁のほうでは、攻撃用の核兵器を持つことは憲法違反ですが、防御用の核兵器を持つことは憲法違反でありません、こう再三答弁をされております。防御用の核兵器は憲法違反でないというが、一体防御用の核兵器というのはどんなものなんですか。実は、私もそこまでの段階で質問が終わっておりまして、防御用の核兵器とは何かということを聞いていなかったものですから、たいへん恐縮なんですが、きょうあらためて、防衛庁は防御用の核兵器を持つことは憲法違反ではないと言うが、防御用の核兵器とは何かということについて、ひとつ防衛庁の具体的なお答えをいただきたいと思います。
  28. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 従来しばしば繰り返されます国会の審議等におきまして、私どもの考えております点は、理論的、法理的には防御的に核兵器を持ち得る、しかし、政策的並びに政治的に、特に政府の基本的な方針としては核装備はしない、こういう、いわば抽象的な法理論と現実論と、この二つに分けてお答えしたのではないかと考えております。  なお、防御的核兵器の内容につきましては、政府委員から答弁させます。
  29. 海原治

    ○海原政府委員 一つの兵器をつかまえまして、これが防御用か、攻撃用かということが非常にむずかしい問題であるということは、たしか先般の予算委員会でございましたか、その際におきまして、やはり横路先生から御提示になりました際にも、当時の大臣並びに専務当局から御説明いたした次第でございますが、たとえば、いま核兵器で一番小さいものは、ジープに載せまして二人でもって操作できるものがございます。これは現にヨーロッパに配置されておりますが、こういうジープに載せた、言うなれば昔の野砲程度の武器を攻撃用と見るか、防御用と見るかということは、結局その武器が使われますところの環境、条件によってきまってくる。先般この問題につきまして出ましたときの例を私思い起こしてみますと、たとえば、敵地に入って、敵の奥深く爆撃します爆撃機に積んでおりますものは、これは当然攻撃用になるだろう、しかし要撃戦闘機としてわがほうに入ってくるものを迎え撃つ、これに積んでおるものにつきましては、これは通常防御的と考えられるのじゃないか。あるいは、高射砲の例もそのとき出たと記憶しておりますが、高射砲というのは、本来わが国に入ってまいります敵機を防御するものでございますから、言うなれば、わがほうを侵略してくるものに対処するものである、したがって、これに使いますものは、いわば防御的である。こういうふうに、その武器の使われます目的、環境等によって決定すべきものであって、一つの武器が、本来的に、これは攻撃的である、これは防御的である、そういうことはきわめてむずかしいというふうに、当時関係当局から答弁いたしておりますが、私どもは今日でもそのように考えております。したがいまして、単一の武器体系をつかまえまして、これがあくまで攻撃的か防御的かということは、きわめて困難な定義になりますとともに、また、そういう定義をいたしますと、かえって誤解を生じまして、無用の混乱を起こす、こういうふうに考えておりますので、先ほど申しましたように、その武器の使われます目的、環境等に応じて判断していきたい。しかし、一般的に言いますと、たとえば高射砲のようなものは本来的に防御的な武器である、しかしこれが攻撃的にも使われることはもちろんあり得るわけであります。このように考えております点を御了承願いたいと思います。
  30. 横路節雄

    横路分科員 いまの防衛局長答弁によると、これはままます、防御用の核兵器、攻撃用の核兵器というものの差別はないということなんです。差別をつけ、定義をつけることは、問題が非常にめんどうです、こう言われる。一体攻撃用の核兵器、防御用の核兵器という、そういう差別があるわけはない。私もそう思う。差別のないものを、攻撃用の核兵器を使うことは憲法違反だが、防御用の核兵器を使うことは憲法違反でないと、なぜわざわざそう言うのですか。これはたれが言い出したかというと、防衛庁のどの長官かは知りませんが、西村氏であったか、たれか知りませんが言い出したから、私が聞いておる。これは、攻撃用とか防御用とかの差があるわけがない。どうして攻撃用なら憲法違反だし、防御用なら憲法違反でないのですか。差別のないものを、何で片一方は憲法違反だし、片一方は憲法違反でないと言われるのか。あなた自身、差別がないと言っているじゃないですか。そういう論理は、これはとにかく、どういうように言われてもわれわれは理解できない。あなた自身の答弁だって、理論的にはないと言う、ないものが、何で一体そういうことが言えるのですか。
  31. 海原治

    ○海原政府委員 私のお答えがはっきりいたしませんで申しわけないと存じますが、私が申し上げました点は、一般的にはそれが攻撃的なものであるか、防御的なものであるかという判断はございます。しかし、単一の武器をつかまえて、これが攻撃的武器である、防御的武器であると断定することは危険である、こう申し上げたわけです。当時も申し上げましたように、たとえばナイキのような地対空のミサイルは、これは侵入してまいります敵機を迎え撃つものでございますから、これは常識的に申しまして防御的なものである。当時のことを考えますと、さらにもう一つの要素といたしまして、たとえば相手方がそれを持つことによって脅威を感ずるかどうかというようなことも、攻撃的であるか防御的であるかということの判断の材料になるだろう、こういうことも当時出ております。私どもは、先ほど申しましたように、一つの武器をとってみました場合、それはいわゆる客観的に、常識的に攻撃的兵器、防御的兵器ということは一応は言えるだろう、しかし、だんだんと突き詰めてまいりますと、それが防御的であるか攻撃的であるかということをはっきりと断定することがむずかしい場合もあるからと、こういうことを御説明しているわけでございます。  さらに、もう一度申し上げますと、本来的に、先ほど申し上げましたような要撃戦闘機であるとか、あるいは高射砲であるとか、地対空のミサイルであるとか、こういうものは一般には防御的兵器、こういうふうに考えられております。この点ははっきりいたしておりますので、先ほどの私の御説明があいまいでございましたら、この際修正さしていただきます。
  32. 横路節雄

    横路分科員 私は、いまの防衛局長説明は、将来に非常な問題を残すと思う。どういう問題を残すかというと、相手の国から攻撃をしてきたものに対して、こちらが防御する、たとえばナイキについて防御する、これは攻撃ではなくて防御だということになれば、憲法第九条に基づいて、防御するための核兵器は憲法違反でない、そういうことを防衛庁の内局の諸君が言っている。あとで私は第三次防衛計画についてお尋ねしますが、制服の諸君はそうではないか、防衛庁幹部はそう言っているじゃないか。憲法第九条でも、防御用の核兵器は憲法違反でないと言っている。ただ、現在の内閣は政策的に持たないというだけであって、憲法上の解釈からすれば、防御用の核兵器を持つことは正しいではないか、だから、すでに生産中止になっているナイキ・アジャックスはやめて、もともと首都防衛のためのナイキ・アジャックスは、発射機はナイキ・ハーキュリーズを発射することができるのだから、この際ひとつ核弾頭を装備しているナイキ・ハーキュリーズにかえても、いわゆる憲法違反ではないではないか、こういう議論が当然起きてくるわけです。私はそこに明らかにいまの防衛庁諸君の憲法に対する考え方——攻撃用核兵器は憲法違反であるが、防御用の核兵器は憲法違反でないと言うから、制服の諸君は もうナイキ・アジャックスは生産中止ではないか、もともと発射機はナイキ・ハーキュリーズの発射機なのだから、したがって核弾頭つきのナイキ・ハーキュリーズを入れていいじゃないか、憲法違反ではないじゃないか、防衛庁がそう言っているじゃないか、こうなるのですよ。われわれの仄聞するところによれば、いわゆる制服の諸君は、第三次防衛計画の中で、もう生産中止のナイキ・アジャックスはやめだ、当然ナイキ・ハーキュリーズだ、そのために発射機は両方兼用のものを買ってきたのだ、こういうことになる。非常に私は危険な議論だと思うし、制服の諸君がいまうっせきしていて、そうしてその道は政策的だ。憲法違反ならやれないけれども、憲法違反ではないのだ、合憲的だ、それならやっていいじゃないか、こうなるのであります。そのいまの皆さんの議論からすれば、やがて防衛庁の第三次防衛計画のいわゆるナイキ・アジャックスは、制服の諸君から押されてナイキ・ハーキュリーズになる、そういう道を予想して、私は、防衛庁幹部諸君が憲法についてそういう解釈をしているのではないかと思うのです。この問題の議論は非常に大事なんです。長官、どうですか。
  33. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御案内のとおり、アジャックスとハーキュリーズの性能から申しますと、格段の相違がございます。戦術的な点から、純粋な立場から申しますならば、ハーキュリーズを使うことは威力を増すことで、当然だと思うのでありますが、先ほど申したとおり、憲法論あるいは法理論は別といたしまして、核装備をしないという大きなハイ・ポリシーもあり、また前提条件がありますので、第三次防云々というお話がございましたが、現在、第三次防の計測につきましては、関係部局で問題の所在点その他を検討し始めたばかりでございます。私どもはハーキュリーズを採用する考えは持っておりません。
  34. 横路節雄

    横路分科員 もう一ぺん長官にその点きちっとお尋ねしておきたいのです。これは一番問題なんです。第三次防衛計画ではナイキ・ハーキュリーズを採用する考えは全くないですね。その点だけはっきりしておきたい。あいまいだと問題ですよ。
  35. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま大臣がナイキ・ハーキュリーズとおっしゃいましたのは、先ほどから核兵器についてのお話が継続しておりますので、先生御存じのように、ナイキ・ハーキュリーズの核弾頭を持ったもの、こういうことでおっしゃっておる次第でございます。私どもは、先般来たびたびの機会に申し上げておりますように、先ほどまた大臣がおっしゃいましたように、憲法の解釈とは別にいたしまして、核装備はしない、これは総理大臣以下のはっきりした御方針でございます。ただ、先ほどから防御的兵器は何かという御質問がございましたので、その例としてナイキ・ハーキュリーズ等を出した次第でございまして、これも先般問題になりましたときに、憲法の解釈は別といたしましても、現在原子力基本法がございますから、直ちに核兵器を持つわけにはまいらないということも、はっきりとさきの西村大臣から御説明しております。私どもはあくまで核兵器というものは持たない、こういうことは国是として、私どもが防衛力を整備します前提として考えておる次第でございます。ただ、先般も機会がございましたときに申し上げましたように、ナイキ・ハーキュリーズというのは、御存じのように両用のものでございます。すなわち、同じ兵器で普通弾頭と核弾頭とこの両方が使えるものでございます。したがいまして、先ほど大臣がおっしゃいましたように、その普通弾頭のものは、旧式のアジャックスに比べましてはるかに性能がよろしゅうございますから、この普通弾頭のハーキュリーズというものは、これを装備することにつきましては法律上何ら問題はない、ただ、それが両用兵器でありますためにいろいろと政治的な問題が起こるので、ナイキを導入いたしますときも、あえてアジャックスのほうを入れた、こういう御説明をしている次第でございます。したがいまして、ただいま大臣からハーキュリーズは入れないとおっしゃいましたのは、核弾頭を持ちましたハーキュリーズは考えない、こういうことでございますので、そのように御了承願います。
  36. 横路節雄

    横路分科員 だんだん防衛庁のほんとうの考え方が出てきたではないですか。いま防衛庁長官は、ナイキ・ハーキュリーズは第三次防衛計画では入れない、こう言った。防衛局長はそれを訂正して、ナイキ・ハーキュリーズは核弾頭と普通火薬弾頭と両用だ、併用だ、私のほうは核弾頭のものは入れないけれども、第三次防衛計画では、ナイキ・ハーキュリーズは、いわゆる普通火薬を使用するものは入れる——入れると言わんばかりです。しかし、これは併用なんですよ。これでは、第三次防衛計画ではナイキ・ハーキュリーズを入れる用意がある、こういうように解釈されます。これは大問題です。これは併用なんですから。ナイキ・アジャックスとは全く性質が違うのです。これは私は第三次防衛計画の中の一つの中心課題だと思うのです。長官、どうなんですか。どうもいまの局長の話は聞いていて何かわけがわからない。あの話をずっと聞いていけば、ナイキ・ハーキュリーズは入れるという。長官、どうなんです。これは大問題ですよ。第三次防衛計画の中心ですもの。
  37. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先般私が第三次防衛計画の中にかりにハーキュリーズを採用すると言った場合には、核弾頭をつけたものは採用しない、防衛局長が言ったとおりでございまして、現在、それでもハーキュリーズを採用するかどうか、まだ決定いたしておりません。問題の所在点を掘り下げることを指示いたしておる過程でございます。
  38. 横路節雄

    横路分科員 うしろから入れ知恵をされて、長官最初答弁が変わりましたよ。そうすると、ナイキ・ハーキュリーズを入れる用意があるのですね。入れるために検討の用意はあるのですね。それでは、私は核弾頭とか何とか聞かない。ナイキ・ハーキュリーズについては、ナイキ・アジャックスを変えて、第三次防衛計画ではナイキ・ハーキュリーズを入れる用意がある、これが今日の防衛庁諸君の考え方ですか、それとも、絶対入れないというのか、その点、問題をきちっと移して聞きます。
  39. 海原治

    ○海原政府委員 第三次の計画につきましては、再々大臣からお答えしておるように、まだ各部局において基本的な問題点の検討をいたしておる段階でございます。したがいまして、いろいろな問題が一切大臣のお耳に御報告されておる次第でございませんので、私が事務的には取りまとめをする立場にございますので、私からお答えいたします。  第三次計画の中でナイキ・ハーキュリーズを導入する用意があるか、こういう御質問でございますが、私どもまだそこまでの検討は進んでおりません。用意があるかということは、入れたいということでございましょうが、これにつきましてはいろいろな考え方がございます。同じ地対空にいたしましても、たとえば将来性の問題等を考えますと、あるいはほかの武器体系を持ってきたほうがいいのではないかという意見もございます。ただ、一部には、これは先般も御説明いたしましたように、ハーキュリーズの普通弾頭を持ったものは、言うなればナイキ・アジャックスの進歩したものでございますから、一つの武器を採用しますときに、その進歩した、射程の長い新しいものを持ちたいと思うのは、その関係部局として当然の希望となりましょう。したがいまして、今後SAMを持ちます場合には、ナイキ・ハーキュリーズの普通弾頭のものであるならば、それは持たしてもらいたい、こういう希望が一部にあることは、これは事実でございます。しかし、それが三次計画の内容として取り入れられるかどうか、これにつきましては、今後なお相当な時間を費やしまして慎重に検討してまいりたい、このように現在考えております。
  40. 横路節雄

    横路分科員 私は、この問題の基本になっているのは、やはり防衛庁で、これは私は一方的な解釈だと思うが、攻撃用の核兵器を持つことは憲法違反だが、防御用の核兵器を持つことは憲法違反でない。私は、これからの第三次防衛計画で、いわゆる自衛隊の核武装化される根拠がそこに見出されてくるのではないかと非常に心配をするのです。私は核兵器を持つことは憲法違反だと思うのですよ。なぜ憲法違反であるか。昨年の十二月七日に東風地方裁判所で、原爆投下は国際法違反だ、こうなっておる。原爆投下は国際法違反なんです。原爆投下が国際法違反ならば、国際法を順守すべき義務を持っておる日本国憲法に違反するじゃありませんか。原爆投下、いわゆる核兵器を使用することは憲法違反ですよ。まず、その前段として、昨年の十二月七日に東京地方裁判所で判決を下しました、原爆投下は国際法違反だというのに対して、政府は控訴していませんからね。これを私は認めたと思うのです。この点、長官どうですか。何でしたら政府委員のほうで答弁してもいいですよ。私はここに判決の記録を持ってきておりますから……。
  41. 麻生茂

    ○麻生政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問は原爆ということでございましたので、政府のこれまでお答え申し上げておるところによりますと、原水爆のような攻撃的な性質のものであるならば、それは憲法の容認するところではないだろう、こういうぐあいにお答えをしておるわけでございます。
  42. 横路節雄

    横路分科員 何を言っていますか。広島型の原爆というのは、今日戦術用の核兵器になっているのですよ。あなた専門家で何をおっしゃるのです。広島型の原爆というのは、今日戦術用の核兵器じゃありませんか。戦術用の核兵器とは何か。それは防御用の核兵器のことをいう——防御用の核兵器なんて言っているのは防衛庁諸君だけですよ。一般には戦術用の核兵器と言っている。今日広島型の原爆は戦術用の核兵器ではありませんか。広島、長崎の原爆、これは国際法違反だという東京地裁の判決に対して、政府は間違いですと言っていないのだから、これは認めたのでしょう。そのうしろの方、あなた専門家だから——認めたのではないか。何で控訴しなかったか。
  43. 麻生茂

    ○麻生政府委員 これは私のほうから御答弁申し上げるよりも、むしろ外務省から御答弁申し上げる筋合いのことかと思うのでございます。
  44. 横路節雄

    横路分科員 何を言っていますか。冗談ではないですよ。いいですか。私から言いますが、攻撃用の核兵器は憲法違反だが、防御用の核兵器は憲法違反でないと言ったのはだれか。外務省ではないのですよ。外務大臣ではないのですよ。法務大臣でもないのですよ。防衛庁長官が言ったのです。それが今日何か定説的になっている。私どもはそうでないということを繰り返し言ったが、去年の十二月七日に、東京地裁で、広島、長崎の原爆投下は、これは国際法違反であるとはっきりした。私は注意をして見ていたのです。政府のほうで控訴するだろうな、そんなことになったらたいへんだから、控訴するだろうなと思ったら、控訴しない。控訴しないということは、東京地裁の、国際法違反だということを認めたのです。防御用の核兵器というのは、さっき言ったように、防衛庁が使っていることばなので、戦術用の核兵器です。広島型の原爆は、今日戦術用の核兵器になっているのです。私よりは専門家の皆さんのほうが詳しいのだから——そうすれば、憲法第九十八条の第二項に、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」となっている。この判決というのは実に詳細をきわめているのですよ。外務大臣が答えるでしょうなんて、とんでもない話です。どうしてもここでそういう御答弁になれば、あとで委員長のほうにお願いをしまして、分科会が終わってから全体会議で、いま防衛庁からそれは外務大臣から聞いてくれなんということになれば、外務大臣に聞かなければならぬ。そういう意味で、いまの答弁では納得できない。納得できないというよりは、もうすでに東京地裁の判決が下って、国際法違反だ、したがって憲法九十八条からする違反行為なんだ。よその国のアメリカが違反をやっているのを、今度は日本が違反しようなんて、そんなばかなことはない。私は、第三次防衛計画にどうもナイキ・ハーキュリーズを導入するのではないかという懸念があるから、このことを話している。——局長答弁しますか。
  45. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま先生のおっしゃっておられますおことばの前提としまして、広島、長崎の原爆等は現在すでに戦術用核兵器になっておるという前提で御質問が出ておりますが、その点につきましては、実は私どもは若干異なった解釈を持っております。と申しますことは、戦術用、戦略用核兵器という分類は非常にむずかしゅうございますけれども、一例を申し上げますと、一般の雑誌に出ておりますものが客観的な基準をあらわすかと考えますが、たとえばアメリカのUS・ニュース・ワールド・リポートに出ておりますのは、戦術用原子兵器として分数されておりますのは、その破壊力は、TNT爆弾で換算して大体一千トン程度のものでございます。広島、長崎型の原爆は、TNT爆薬に換算して二十キロトンのものであります。したがいまして、当時の広島、長崎級のものは今日すでに戦術的核兵器である、こういう前提でお話が進んでおりますが、これは非常に違っておりますというふうに私どもは解釈を実はしたいわけでございます。そこで、戦術川の核兵器、原水爆というものの分類はどうかということになりますと、これも先ほど来申しておりますように、非常にむずかしゅうございますが、この分類に従いますと、たとえば水爆であれば、約二十メガトン程度のものでございますし、あるいはミサイルを弾頭につけますものは五メガトンないし一メガトン、あるいは小型弾頭になってまいりますと、TNTの五十万トン程度のもの、その下に軽原爆、これは軽い原爆でございますが、これは爆撃機に搭載するもの、それから最後に戦術原子兵器、こういう分類になっております。したがいまして、先ほどお話がありました広島型爆弾程度は今日すでに戦術的核兵器であるというおことばは、私どもとしましてはそのように了解してない点をまず御了解願いたいと思います。  なお、先ほどの判決につきまして控訴するかしないか云々の問題は、これは少なくとも防衛庁の問題ではございませんので、そのようにこれも御了承願いたいと思います。
  46. 横路節雄

    横路分科員 ここに引用されているのは、あなたも御承知だと思いますが、この地方裁判所の判決では、一八六八年の、四百グラム以下の炸裂弾及び焼夷弾の禁止に関するセント・ペテルスブルグ宣言——四百グラム以下ですよ。いいですか。一八九九年の第一次ヘーグ平和会議において成立した陸戦の法規及び慣例に関する条約、並びにその付属書である陸戦の法規慣例に関する規則、その次、炸裂性の弾丸に関する宣言、いわゆるダムダム弾の禁止宣告、空中の気球から投下される投射物に関する宣言、空爆禁止宣言、その次が有毒性の毒ガス禁止宣言ですね。私のことばが適当でなかったかもしれないが、これらの毒ガスその他、炸裂弾あるいは焼夷弾、こういうもの、いま計った四百グラム以下、これらに比べたら、あなたのほうでどんなにいろいろ意見を言われても、いわゆる防御用の核兵器という規定は、私は防衛庁だけでないかと思うが、その防衛用の核兵器がどんなに小型になっても、これはいま東京地裁で引用しているこれらに対するところの国際法違反であることは間違いないじゃないですか。引用しているのは、四百グラム以下云々から始まって一連のいわゆる陸戦の法規その他に関して、それらの条文を比較した結果、これは国際法違反だ、こう言っておるのですよ。まだ何かありますか。長官、私がこの問題をなぜきょう取り上げたかというと、ほんとうは法務大臣に聞くのが適当だったかもしれないけれども、もともと、攻撃用核兵器とか防御用核兵器という新語を開いたのは前の防衛庁長官なんですから、どうしても皆さんに聞かないとわからぬ。しかし、いま専門家のほうから、外務大臣の言い分でしょう、こう言うのですから、私は委員長にお願いをして、法務大臣にも外務大臣にも全部出てきていただいた中でこの問題についてはお尋ねをしたい。私は、この広島原爆投下が国際法違反だと引用している根拠は、今日防衛庁が言っている防御用の核兵器——どういうことを言っておるのかわかりませんが、小型核兵器より以下のものですよ、それらを全部引用して国際法違反だ、こう言っておる。だから私は委員長にお願いをしたいことは、分科会が終わりました全体会議でこれはぜひやらしていただきたい、こう思うのです。それとも何か答弁あるのですか。
  47. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 原爆投下が国際法違反かどうか、私どもが受けた報告では、国際的にもまだ学説がまちまちでございます。しかし、これは別といたしまして、大切な問題でありますから、繰り返してはっきりいたしたい点は、いま三次防の計画につきまして、関係部局で問題の所在その他を検討を開始させておりますが、いかなる案ができましても、また草案の討議の過程におきましても、横路委員指摘されましたような、三次防に核装備をするのではないかという点だけは、明確に、断じてそういうことはない、これだけは申し上げておきたいと思います。
  48. 横路節雄

    横路分科員 それならば、もう一つ長官答弁しておいてもらいたい。  第三次防では、ナイキ・アジャックスにかえてナイキ・ハーキュリーズを持つことはない、こうきちっとされると——どもは、これは核と普通火薬弾頭との併用なんですから、いつ切りかえをやるかわからないので、 ナイキ・ハーキュリーズについては、第三次防ではわれわれは考えていない、こう答弁されれば、次の問題に移りたいのです。
  49. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ハーキュリーズの問題は、先ほどお答えいたしましたとおり、まだ採用するかしないかは決定いたしておりません。しかし、仮定の議論といたしまして、御指摘の点をお答えするならば、よしんばハーキュリーズを採用する場合でも、核兵器とみなされる核弾頭は絶対に使用しない、こういうことに相なろうかと考えます。
  50. 横路節雄

    横路分科員 いまの長官答弁は、非常に将来に問題を残すわけです。これは第三次防の中で核兵器を持ってくるおそれが十分あるわけです。しかし残念なことに、原爆投下、核兵器の使用は国際法違反であるという東京地裁の判決について一つも御意見がなかった。非常に私は残念ですけれども、これはあらためて外務大臣や法務大臣がみなそろったところでお聞きする以外にない、私は別な意見が出るかと思っておったのですが、出ないですから……。  そこで、これは長官でなくてもいいのですが、前に安保のときに、昭和三十五年の五月三日、当時の民社の受田君からの、自衛隊は一切の核攻撃を想定する演習もしなければ、核攻撃に対して一切の防衛武器も用いないとはっきり言えるか、こういう質問に対して、当時の赤城長官は、核攻撃に対してこれを排撃するようなことは考えていない、ただ核攻撃がもしもあった場合に、放射能に対する被害をどういうふうに最小限度にこれを除くかということについては検討している、こういう答弁です。そこで私は、だいぶ前からなんですが、去年の八月五日に出されている「自衛隊」という本を見ましたら、皆さんのほうでいまの点を裏づけする化学防護草案というものを出して詳細に検討しているということが、この私が買い求めました「自衛隊」という本に出ているわけです。  そこで、私は第一番目にお尋ねをしたいのは、これは教育局長でなくなるのかもしれませんが、一体防衛庁としては——私具体的に聞きますが、たとえば広島型の五百キロトンの原爆がもしも東京で炸裂したとしたら、どれだけの人が死に、どれだけの傷害者が増すか、そういう点について当然検討されていると思う。それからもう一つ、たとえばメガトン級の水爆が炸裂した場合にはどういう状態になるのかという点について、おそらく検討されていると思うのです。今日のこういう核戦争時代に対して、防衛庁としてはそれくらいの検討はしておると思うのです。それが私がいま指摘をしました昭和三十五年五月三日の受田委員質問のときの赤城長官答弁であり、その後いろいろ皆さんの資料が出ておる。この二つの問題、一つは、広島型の原爆が東京都内で炸裂した増合に、一体どれくらいの範囲でどれくらいの人が死に、どれくらいの人が傷つき、メガトン級の水爆の場合はどうか、そういうことについてお答えをいただきたい。
  51. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答え申し上げます。  具体的に学校でどういう教育をいたしておるか……
  52. 横路節雄

    横路分科員 最初に、かりに炸裂をした場合はどれくらいの被害を想定されているか。
  53. 堀田政孝

    堀田政府委員 それは学校教育しているかという……
  54. 横路節雄

    横路分科員 私は問題を二つに分けて、一つは、それが炸裂をした場合に想定される被害というのは一体どの程度の被害なのかということを、広島型の原爆ではどうか、メガトン級の水爆ではどうか、それが想定されて、それに対処する方法というものが生まれてくると思うのです。どの程度の被害が想定されているのかということなんです。そのことをまず第一番目にお聞きをして、その次に、そういう場合に対処するためにどうしているか、こう二つに分けてお答えいただきたい。
  55. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答えいたします。  被害の状況につきましては、それぞれ研究機関、たとえば技術研究本部もしくは防衛研修所等の研究機関がございますが、そこで担当者が研究をいたしております。どういう資料をまとめておるかは、きょう私持ってまいっておりませんので、申し上げかねますが、それぞれ調査はいたしております。
  56. 横路節雄

    横路分科員 たいへん恐縮ですが、どなたか連絡員のほうから御連絡をして、一体どの程度の被害になるものか、まだこの委員会では審議をしたことはございませんので、それはどういう被害の想定になっているか、私はまだもう少し第三次防衛計画について聞いていきますから、その中で、一番最後でいいからお答えいただきたいと思います。できませんか。
  57. 海原治

    ○海原政府委員 日本がもし核攻撃を受けた場合の被害の想定につきましては、実は組織としてはまだそういう研究をいたしておりません。先ほどCBR対策に関連してのお話でございますが、従来しばしばお答えいたしておりますように、私どもとしては、一応核戦争というものは現在の集団安全保障体制のもとにおいて避けられるであろうという前提がございます。まず自衛隊は、陸海空の三自衛隊が、第三次防衛整備計画で御説明いたしましたように、在来型兵器、すなわち通常兵器の使用による局地戦以下の侵略に対処するということを、この計画策定の際にはっきり目的方針を明記してございます。したがいまして、そういう通常兵器の使用による局地戦争に対処するということになりますと、いま先生の御質問にありましたような事態はございません。したがいまして、それの研究は組織的にはいたしておりません。ただ、各部局におきまして、言うなれば情報的と申しますか、調査的と申しますか、かりに十メガトンの攻撃があった場合はどうかというようなことは、個人的な資格においての調査はいたしておりますが、しかし組織としてのものはございません。広島、長崎原爆型は、御存じのように、死者十万、負傷者二十五万というようなことでございます。これは、東京に炸裂いたしましても、広島に炸裂いたしましても、ほぼ同じだと思います。さらに、二十五メガトン程度の水爆がもし炸裂した場合は、大体半径百マイル以内のものはまず全滅にひとしい、こういうこともいわれておりますので、この程度の数字でございますれば、後刻調査して御報告できると思いますが、詳細な、権威を持った数字というものは、先ほど私がお答えしましたような事情でございますので、防衛庁としての見積もりというものはございません点をひとつ御了承願いたいと思います。それならば、なぜCBR対策があるかということになりますれば、これは当時御説明いたしましたように、万々一放射能による被害があった場合に、それを極限的なところまで持っていくためにはどういう方法が必要か、こういうことを考えて研究しておるのでございまして、大規模な原水爆による攻撃のあった場合の放射能対策というものは、各学校におきましてもまだ研究はいたしておりません。
  58. 横路節雄

    横路分科員 防衛局長、いま通常兵器の局地戦争のみを考えて対処しているのだというやり方は、ちょっと納得できないですね。なぜならば、いまの段階において、たとえば去年のキューバの危機の際に見られるように、それは通常兵器のみを予想されないわけです。だから、当然防衛庁としては対処されているのだろうと思うのですが、これは赤城長官が国会で答弁もしているわけです。それから、すでに去年の三月出版されている本には出ているわけです。どういう経路で出ているかわからない。しかし、出ているわけです。これが国会で論議されないというのはおかしいですから、私のほうからお尋ねをしたいと思う。  あなたのほうで、標準原子兵器空中爆裂高度六百メートルの場合に、爆発の地点から千五十メートル以内は全員が初日に吐きけと嘔吐、約一〇〇%が死亡する、こうなっているわけです。それで私はあなたにお尋ねをしたいのは、その標準原子兵器というのはどれくらいの大きさのものであるか。高度六百メートルで炸裂をした場合には、千五十メートル以内の半径の円を描いて全員死亡する、こうなっているわけですから、標準原子兵器というのはどのくらいのものをいうのですか、そのことをお答えいただきたい。
  59. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答え申し上げます。  不勉強でまことに申しわけないのでございますが、実は化学防護草案について御質問があるという昨日御連絡がございまして、私昨晩実は勉強いたしたのでございます。この草案の三十二ページの、いま横路先生指摘の個所はどういう典拠で記述をしたのか、実は詰めてないものでございますから、後刻調べました上でお答え申し上げます。
  60. 横路節雄

    横路分科員 それではあとで御答弁いただきたいと思います。私ども現実に広島、長崎で原爆の洗礼を受けたわけですから、したがって、われわれとしては、いまのような問題についてまだ一度もこの国会で論議をしていないわけです。だから私はやはりこういう機会に明らかにしていただくことが大事だと思う。何かひた隠しに隠して、私たちのほうも聞かない、政府のほうも言わない、しかしどんどん外には出てくる、出てきたものは一般の市販になって出ているわけです。私はこれを全部読んでみたわけです。ですから、あとでけっこうですから、そういう点について、さらに広島型原爆、メガトン級の水爆について、一体想定される被害はどうなのかという点についても詳しくお話をしていただきたい、こう思っております。いいですね、あとで。そのことはやはりここで論議しておく必要があると思う。
  61. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いま御質問の個々の問題については、十分検討した資料に基づきまして御連絡申し上げたいと存じますが、これは核戦争と日本国民の問題でございます。非常に大きな本質的な問題であろうと考えております。したがって、この際、いわば核戦争に対するわれわれの考え方を一言申し上げておきたいと思います。  前または元長官もしばしば国会で申し上げているとおりでございまして、われわれの立場から申しますならば、国際通念として、たとえば米ソの間の奇襲防止の取りきめの話し合い、あるいは米ソ最高首脳者間の直接連絡の問題、その他いろんな国際的な動きを見ましても、おそらくは水爆ないしは原爆が日本へ投下されることを予想したような全面核戦争は起こらないものであるという私どもは国際的な分析をいたしておるわけでございます。したがいまして、全面戦争を考えられるわが国に対する原水爆投下という問題は私どもは考えておりません。ただ、いろいろの場合を想定し、いろいろの場合を仮定して、各関係あるいは専門の部局で研究し検討していることは事実であろうと思いますので、その点については後刻御報告いたしたいと思います。
  62. 横路節雄

    横路分科員 それでは、きょうは一日一ぱい防衛庁の時間になっていますから、午後でけっこうです、適出な時間にひとつぜひ発表していただきたい。  それから、先日ラスク国務長官が参りましたときに、池田総理との間に防衛の問題について論議をされたと聞くわけです。防衛の問題についてはぜひひとつこの際国民所得に対する比率を、いま一・三八ですか一・三九%を二%に上げてもらいたい、こういう強い要請があったとわれわれは聞いているわけです。この点について長官どうですか。
  63. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 総理また外務大臣に対しまして、ラスク長官との会談につきまして私どもも実は伺ったわけでありますが、パーセンテージの問題については私ども話を伺っておりません。
  64. 横路節雄

    横路分科員 次に、ことしの一月二十七日にアメリカの下院軍事委員会におけるマクナマラ国防長官の発言なんですが、これを向こうの証言について、ここに記録があるわけですが、「今後数年で、スペインおよび日本で現在米軍が担当している防空責任の若干を、両国の部隊に移管し、その結果、米軍の一部が帰還できるようになることを希望している。」そして最後に、「例えば、日本の場合、同国防空部隊の能力増大によって米国の同国に対する貢献を減少することが可能となった。」こう言っているわけです。そこで、いま時間もあまりないという御指摘がございましたから、私一つ聞いておきたいことは、一体長官はいまのF104Jの二百機生産で打ち切るのか、それとも増産を希望しているのか、いや二百機で打ち切ってやはりF102をアメリカで買ってくれというから買おうじゃないか、そこでF104Jのほうはサイドワインダー、これはうしろからでなければ撃てない、そこでF102のほうのファルコンは前から、真正面から撃てる、こういうのでいろいろとこれは取りざたされているわけです。私はこの際長官としてのこれに対する態度をお聞きをしたい。もう一度お尋ねします。まず第一点は、104J二百機にさらに増産をやるのか、そうではなくて、二百機で打ち切って、そうして102について買い入れるのか。特に買い入れる内容はファルコンについて絶対に必要だから……。こういうことでいくのか、その点ひとつここで長官としての態度を明らかにしていただきたい。
  65. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 104Jの生産の機数並びに継続生産に関する問題でありますが、昨年度以来二十回近い検討の場を持ちまして、十分各角度から掘り下げました。その結果得た結論では、昭和四十六年度ごろには104Jの七スコードロンを保持いたすのが適切である、それには減耗補充として約五十機が継続生産として考えられる、これが私どもの今日の考え方であります。また102の問題でありますが、これに対してアメリカからある種の申し入れがあったことは事実でございます。ただ先方の希望といたしまして、日米間で話し合いがきまるまでは公表を差し控えてくれという話がございましたので、具体的内容は発表いたしかねますが、この102を一体買うかどうか、また買わないかというような、本質の問題がまずございますし、さらにいま申し上げた104Jの関連もあり、さらにはまた本年度中には決定しなければならない第三次防にも関連する防空態勢の問題にも関連がございますので、この点については各部局で検討させておる最中でございます。
  66. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、まずあとのほうのF102について買う点については、最終的にいつごろ買うか買わないかは結論が出るのですか。
  67. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 この問題はこれからの作業の進捗によってきまると思いますが、大体めどから考えましてことしの秋ごろまでには方針を決定する必要があろうかと考えております。
  68. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、F104Jについては、損耗率を考えて五十機の増産をするということは、防衛庁として既定の計画なんですね。それでは装備局長に聞きたいのですが、この継続生産にいった場合のF104Jの一機当たりの生産高と、これが一ぺん消えて来年昭和四十年、こうなると継続生産でないわけですね。そこがきっと皆さんのほうで問題にしていると思うのです。継続生産でなくて新規生産ということになった場合においては、一体一機当たりの価格はどれだけになるのか、これが継続生産でいった場合の一機当たりの価格はどうなるのですか。その点の違いはどうなっておるのですか。
  69. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 継続生産を行ないます場合に最も経済的にやろうとしますと、現行の生産を大体月産四機程度にスローダウンをしまして、そうしますと三十九年度予算で五十機の予算がついておるという場合には、これがそのまま次の生産に継続いたします。したがって、その場合には現行の価格に比べまして若干高くなる程度でございます。現在104Jにつきまして当初の予算の積算の価格は一機平均四億八百万円でございますが、スローダウンをしまして継続生産をした場合には、一機当たり四億五千万円程度になるであろうという推算をいたしております。これは機体関係、エンジン関係は若干値下がりをいたしますが、搭載します電信関係、これはある程度国産化率を上げたいということで考えましてそういう面の値上がりはございます。そういうので継続生産をスローダウンをして、切れ目をなしに継続生産をしても一割程度値上がりをするわけでございます。それをさらに先ほど横路委員の言われますように、四十年度予算に五十機が延びた場合にどうなるかということになりますと、当然空白ができるわけでございます。現行の生産をスローダウンしなければ四十年の初めには二百機完納されると考えますので、その後一年以上二年近くの空白時間ができるだろうと思います。そうした場合に一機当たりどのくらいになるかという点でございますが、相当先のことでございますので、はっきりした予想はつきかねるわけでございます。大体考えまして値下がりする要素よりも値上がりする要因のほうが多いのではないかというふうに考えておりますが、四十年度予算にする場合において、一体幾らになるかということはいまの段階で数字を持って申し上げることはできませんので、御了承願いたいと思います。
  70. 横路節雄

    横路分科員 F102についてはここに一機当たり幾ら、それには搭載しているミサイルについても含めて言っているのですか。それとも機体だけは一機幾ら、こう言って搭載しているミサイルについては別に幾ら、こうなっているのですか。そこら辺のことを装備局長ですか、具体的に答弁してください。
  71. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど大臣からお答えいたしましたように、あまり具体的なことは申し上げる自由は持ちませんが、先方の考え方としましてはスコードロン単位で考えておるわけであります。したがいまして、スコードロンで、しかもそれは一年とか二年の間のある程度の部品も含めまして、さらには地上の支援機材等も含んでの値段、こういうふうに私承っておりますが、それ以上のことは実は詳細に存じておりません。
  72. 横路節雄

    横路分科員 幾らですか。
  73. 海原治

    ○海原政府委員 その値段はひとつ御容赦願いたいと思います。
  74. 横路節雄

    横路分科員 その場合に、ミサイルを積んでおるファルコンは幾らとなっておりますか。
  75. 海原治

    ○海原政府委員 関連機材ということで私は情報を聞いておりまして、もしこちらがそれを受け入れる用意があるならばさらに詳細なことは教えてやろう、こういうのが向こうの態度のように聞いておりますので、まず私どもといたしましては、いろいろ先ほど先生御質疑のありましたような問題もございますので、102の部隊をどう考えるかということの問題が先でございまして、正直に申しましてファルコンが入っておる値段かどうかということは存じません。しかし、先方が言っておりますという値段の中には、先ほど申しましたようにスペア・パーツの一年間とか二年間のものが入っておるということでございますから、それから類推いたしますとミサイルの値段も入っておるのではないか、こういうふうに考えております。
  76. 横路節雄

    横路分科員 私、これで終りたいのですが、防衛局長でもよろしいのですけれども、先ほどナイキ・ハーキュリーズでだいぶ議論したわけです。この間ラスク国務長官が来て、日本の防衛費はぜひひとつ国民所得の二%にしてくれということもあるようですし、特に一月二十七日の下院軍事委員会におけるマクナマラ国防長官の発言もございまして、相当日本の、とりわけ防空部隊の能力増強という点について要求されてくるのではないか、こう思うわけです。  そこで、最後にお尋ねしたいのは、一体第三次防衛計画の主力になるのは何か。まず一つは、一体いまの二%というものについてどう考えていらっしゃるのか、それから第三次防衛計画の主力はどこに置くのか、こういう点についてお尋ねしておきたいと思います。
  77. 海原治

    ○海原政府委員 先ほどお答えいたしましたように、三次計画につきましては各部局におきまして現在問題点を検討する段階でございます。と申しますことは、現在第二次計画の第三年目にかかろうとしておるわけでございますけれども、各自衛隊にそれぞれの問題をかかえておりますので、これの具体的な意味を十分検討しまして、それから三次計画をどう持っていこうかということを検討しておる段階でございますので、一体、その際の防衛費がどうなるかというようなことについてはまだ何も目安を立てておりません。ただ、感じといたしましては、いろいろな客観的な情勢から、第二次計画におきまして私どもが与えられました国民総生産に対しましての一・一五七%程度という基準はもう少し上げていただきたい、こういう感じを持っております。しかしそれが国民所得に対しまして一・五%になるのか、または二%になるのかということは、現実の自衛隊の建設の問題とも関連いたしますので、具体的にまだどの程度という数字は持ち合わせておりません。これはむしろ私どものいろいろな検討の方面からもまいりますけれども、もっと大きな政治面の御配慮によってきまる要素もございますので、私どもとしましては今後十分いろいろと私ども事務当局の立場を検討していきたい、こう考えておる次第でございます。  次に、重点は何かということでございますが、これは陸海空それぞれに問題点をかかえておりますので、私どもとしましては空に重点があるとか、あるいは海に重点があるとかいうことは申し上げられないと存じます。陸海空それぞれに現在の体制上問題をかかえております点を全部これを是正しまして、三自衛隊としましてりっぱな姿に持っていきたい、こういう抽象的な感じだけでございますので、具体的に重出がどこかということにつきましては、いましばらく御猶予を願いたい、このように感ずる次第でございます。
  78. 横路節雄

    横路分科員 先ほど私のほうから要求いたしました長官に対しての要求の一つは、富士幹部学校に対する「指揮官への道」というのが、長官の言うとおり、反共精神という問題が明らかに他のことばにかえられた思想教育ではないというようになっておるのかどうかという点について資料をお出しいただきたい。  それから教育局長その他には先ほどお話がございました化学防護草案ですか、それらとの関係において、長官はそういう核攻撃その他については毛頭考えてないということだけれども、しかしやはり国会の論議としては、たとえば広島型の原爆が東京に落ちた場合にどう、あるいはメガトン級の水爆が落ちたときの被害はどうということについては、防衛庁のどっかの部局では検討されておるのが至当だと私は思うので先ほどのお話で、なお先ほど標準原子兵器に対する高度六百メートルで爆発した場合に、千五十メートル以内の地点における人は全部死ぬ、こういうこともございますので、標準原子兵器とは一体どういうものなのか、そういうものにつきましても、きょうの夕方までの適当な時間でよろしゅうございますから、ひとつここで御説明をしていただきたいと思います。  以上でございます。
  79. 植木庚子郎

    植木主査 防衛庁当局に申し上げます。  ただいまの二点、付属の点もありますが、あわせてなるべく簡潔に早くお取りまとめを願います。  この際申し上げます。質疑通告が多数にのぼりますので、質疑時間は本務員については一時間、兼務員もしくは交代分科員になられた方については三十分程度にお願いいたしたいと思います。  引き続き質疑を許します。楢崎弥之助君。
  80. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は板付基地からの米軍用機の引き揚げに伴う諸問題について、以下御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず最初に、板付基地関係の米軍の移動の状態について御説明を承りたいと思います。
  81. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 板付基地の米空軍の移動の問題でありますが、これは楢崎委員もよく御案内のとおり、十二月の三十一日の日米合同の声明並びに一月末におきますところの声明、この二つで大体御了解いただけると思いますが、現在板付にある102飛行隊を米本土に引き揚げる。ただし104Jの要撃機の編成が新田原のわが自衛隊におきまして大体三月末に終わります。しかしその他地形の慣熟その他の訓練で実際に役立つまでには大体半年間かかりますので、十月まで穴のあく面については、それを補うために横田基地から数機板付に参りまして、防空のスクランブルの緊急発進の準備をする。これが大体の板付における米空軍の移動の模様でございます。
  82. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、F105は六月末までに横田に、それからF102は板付の場合は、第六十八要撃戦闘飛行隊といわれておりますが、これは七月一日までに米国に配置転換になる。そうして七月一日以降九月末日まではスクランブルのために横田基地のF102が暫時六機ないし七機板付に臨時に駐留する、こういうことでございますか。
  83. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 そのとおりであります。
  84. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、大体F102は七月一日以降は日本の配置状態はどんなふうになるのですか。
  85. 海原治

    ○海原政府委員 三沢と横田にそれぞれ一飛行隊が残留すると承っております。
  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうするとF105は横田に移駐するわけですが、このF105の日本からの引き揚げ見通しというものは今後あるのでしょうか。
  87. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 当分日本におる見通しでございます。
  88. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと十月一日以阪板付に米軍の飛行機とヘリコプター、あるいは練習機でもいいのですが、何機かおることになるのでしょうか。それとも全然米軍用機は一機もいないようになるのでしょうか。
  89. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 米国が発表しておりますように、リデューストということばを使っておりますが、全然なくなるわけではございません。先ほど申しましたとおり、横田基地からも数機絶えずスクランブルのために参りますし、さらにまた西部方面の防空のために一時使用することもあるし、また訓練のためにも板付基地を考えておるようでありますし、また台風の場合の避難も考える。こういうふうな状況を考えますと、板付基地に全然米軍の軍用機がなくなるということは、いまのところは考えられません。
  90. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、十月一日以降は板付基地というのは常時使用の基地ではなしに、一時的あるいは臨時的に使用される基地、そういうふうに性格が変わってまいると理解していいでしょうか。
  91. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 一部の新聞報道では中継というようなことばを使っておりますが、正確に申しますと、オペレーショナル・ベースといって米軍も発表していますが、私どもの得ている情報ないし報告では随時使用するという形が適切でございます。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、十月一日以降の板付基地に対する米軍の使用度と申しますか、利用度と申しますか、そういう見通しは明確に出ておりましょうか。
  93. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 使用度とかフリークエンシイは、先ほど申したように西部方面の防空の演習だとか、あるいは防空の訓練、あるいは台風の避難、まあいろんな要素がございますので、正確な頻度とかあるいは使用度というものはちょっと計算しにくいと思います。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、利用度ないし頻度について全然わからないということですね。米軍にそれは全部まかせて、全然日本側としては把握できないということですか。
  95. 小野裕

    ○小野政府委員 今後の板付飛行場の保持に関連していろいろ連絡をしておるわけでありますが、十月以降の使用状況といいますか、見通しと申しますか、はっきりしたところはまだつかんでおりません。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、福田長官のお答えによれば、西部方面の基地から随時訓練ないし補給に飛んでくるということですが、西部方面と言われましたが、それは在日駐留米軍、在日空軍と申しますか、通常在日空軍に限られるのですか。それとも米軍一般になるのでしょうか。
  97. 麻生茂

    ○麻生政府委員 お答えいたします。  先ほど大臣からお答えありました板付基地は今後リデュースト・オポレイティング・ステイタスという、すなわち機能を縮小した状態に置かれるわけでございますが、このために随時飛行機が飛来するわけでございますが、その飛来する目的の中には航法の訓練みたいなのもあるわけでございます。したがいまして、場合によりましてはほかの基地から飛来してくるということも、あるいは日本以外の基地から飛来してくるということもあり得るというふうに考えます。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この際確認をしておきたいのですが、沖繩の米軍は在日空軍に入っておるのでしょうか、解釈として。
  99. 麻生茂

    ○麻生政府委員 沖繩の航空師団は第五空軍の隷下に入っておるわけでございます。ただ、在日米軍と申しますのは文字どおり日本におきまして、日本の基地を使用している米軍のことを申すわけでありまして、いわゆる在日空軍には該当しない。あるいは在日空軍ということば自身がきまっているわけではございませんので、御質問の趣旨が日本によって日本の基地を使用する米軍ということであれば、日本に来ている間はそれは在日米軍、こう申すことができるかもしれませんが、沖繩にいる間は在日米軍ということはいえない、こういうことです。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 日本に駐留する軍隊と解していいかどうか。
  101. 麻生茂

    ○麻生政府委員 駐留するという意味でございますが、継続的にそこにおるという意味でありますならば、それは駐留しておる軍隊とはいえないということでございます。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっとあいまいです。駐留する米軍なのかどうかを聞いているのです。日本に駐留する米軍の範疇に沖繩の米軍は入るかどうか。駐留をこういうように解釈すればこうなるというようなことではないのです。文字どおり文章に出てくる日本に駐留する軍隊の中に入るかどうか、文章には日本に駐留するということがよく使ってあるですから……。
  103. 麻生茂

    ○麻生政府委員 米軍が日本に参りまして、日本の施設、区域を使用する限りにおきましては、いわゆる安保条約あるいは地位協定の適用を受けておるわけであります。そういう適用を受けるという意味でありますならば、それは駐留、こういうことがいえるかもしれませんが、別に条約とかあるいは地位協定には駐留軍ということばはないわけでございます。俗語で駐留ということばをただ使っておるというだけのことだと思います。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その点はあとで触れますから、先に進みますが、そうすると十月一日以降、板付基地の管理権は一体どうなるんでしょうか。それと航空管制はどういうふうになるんでしょうか。
  105. 小野裕

    ○小野政府委員 十月一日以降におきまする板付基地の管理権は従来どおり米軍側に残ります。したがいまして管制権も残るわけであります。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 次に、一時使用の基地になるのですが、随時といっても一時使用になるわけですが、一時使用の基地になるわけですから、現在の板付基地の場内及び場外の諸施設のうち、この引き揚げに伴ってずいぶん不用になる施設あるいは利用度が非常に少なくなる施設があると思います。どの程度その検討が進められておるか、施設庁長官
  107. 小野裕

    ○小野政府委員 現在板付におります米軍の飛行機の部隊の移動ははっきりしておるのでありますが、そこに勤務しておる軍人、軍属あるいは家族、こうしたものの移動の状況はつまびらかになっておりません。そういう点から相当大幅に縮小されるということはわかっておりますけれども、どの程度に、あるいはどういう数字で縮小されるかということがはっきりしておりませんので、今日のところでは、現在の飛行場内あるいはそれに付属しました米軍が現在使っておる施設がどの程度あくかということについては、正確にはお答えいたしかねる段階でございます。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 当然、不用の地域あるいは施設もしくは利用度の非常に少ない施設が出てくると思うのです。その際には、不用になった施設、区域については直ちに返還を求められる用意があるかどうか。
  109. 小野裕

    ○小野政府委員 お話のように、使用度の落ちる施設、あるいは場合によっては遊休状態になる施設が出るかと思うのでありますが、現在のところでは、あの飛行場の機能は一応現状のままで維持する、具体的に申しますならば、飛行場の管理あるいは補給支援という態勢は現在のまま続けていくというたてまえになっておりますので、全体の飛行機が減り、あるいは人員が減った割合には不用の部分とか、あるいは遊休状態の部分というものは出てこないのじゃないか、このように考えております。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 板付基地を維持管理するについての年間の維持管理費の概算がわかりましたら、お知らせをいただきたい。
  111. 小野裕

    ○小野政府委員 板付基地並びにこれに付属して不可分の関係にあります春日原の施設でございますが、この関係で現在日本の国費でまかなっておりますものは、飛行場を提供しておるために民公有地を借り上げております。その民公有地の借料は日本側の費用で出ておりますが、これが年間約七、八千万円であったと思います。  それからそのほかの飛行場の維持管理あるいは各種施設の維持管理は、提供区域内の仕事はすべて米軍側の負担でございまして、この金額は私どもわかりません。その中間にありますものは、わが方から提供しております基地の従業員、労務者の関係がございますが、この関係にいたしましても、この経費は一応調達資金のほうから日本側の手を通じて払いますけれども、その所要資金は全部ドルで返済になるのでありまして、これも米側の負担でございます。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 詳細にわからないということであればやむを得ませんが、今度の米軍の移動というのは、米国のドル防衛策から出てきておるのです。したがって、ドルを倹約するという見地から移動したはずですから、米軍としては当然板付を引き払ったためにずいぶん倹約できることになると思うのです。したがって、そういうドル防衛という見地から考えますと、飛行機はいなくなった、しかしいままでの機能は残すということになると、やはりドルを食うじゃありませんか。とするならば、米軍としては、引き揚げた以上、ドル防衛の意味からも、当然板付の米軍基地は撤廃したい、また撤廃すべきである、そういう意向を持っておると私は思うのです。こういう点について十月以降の米軍の——いまは使うと言っているけれども、そういう点と関連をして、米軍の今後の動きについて、防衛庁長官の見通しはどうですか。
  113. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いままで常駐しておりました部隊が、一つの飛行隊として本国へ引き揚げれば非常なドル節約になることは御案内のとおりであります。ただこれをすぐ撤廃してやれば、なるほど純経済的な意味から言えばドル防衛には役立つと思いますが、先ほど来申し上げますとおり、各種の任務がまだ残り、またいろいろな用途も米軍は考えておる。したがいまして、私は、全部撤退するということはあり得ないと考えております。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、米軍がドル防衛の観点から板付を引き揚げた、そうすれば防衛庁長官としては、宮崎には新田原の航空自衛隊の基地も整備されつつありますから、当然これは撤廃をしてくださいという要望をなすべきであろうと思いますが、その点はどうでしょうか。
  115. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 私どもは、絶えず日米安保体制という確固たる体制のもとに日本の空の守りをやっておるわけでございます。したがいまして、単なるドル防衛によりましてあるいは純経済的な観点からのみものを考えて撤退を要求するというようなことは私どもは考えておりません。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 しかし、米軍は引き揚げるのですよ。一時的に使用する基地にしかならない。それにあれだけの膨大な土地をなお必要としますか。米軍はもう板付基地を見捨てていくのです。おってくださいと頼んでおるのは日本側じゃありませんか。スクランブルができないから、少なくとも七月から九月末日まで三カ月間F102におってくださいと頼んだのじゃないですか。新田原のF104Jが十月からしか発動できないから頼んでおるのでしょう。米軍はもうあすこを見捨てておるのですよ。私は、日本側の強い残してくれという意思が当然動いておるものと思いますが、その点はどうですか。
  117. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 私どもは、あくまで日米安保体制の基盤のもとに日米が共同して日本の防空態勢についておるわけであります。したがいまして、新田原に、われわれの自衛隊の104要撃機の訓練が終わり、十分スクランブルの自信がつくまではいてもらいたい、これは私どもの当然の申し入れであり要望であろうと思います。したがって、十月以降でもまだいてくれということは少しも印しておりません。今後いろいろな全般的な——局部的な問題だけでなくて、全般的な日本の防空態勢という観点から、私どもこれからもものを考え、また処濁してまいりたいと考えております。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 十月一日以降は米軍はもう便宜的に一時的にしか使わぬですね。私は、これは利用だと思う。置いておいて利用する。長官、ひとつこの際だから、使用と利用とどう違うか、ちょっと長官のお考えを聞いておきたいと思います。
  119. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 使用と利用と、これはなかなかむずかしい使い分けでありますが、御質問の趣旨はよくわかります。しかし、先ほど来繰り返し申し上げておりますとおり、全部撤退してしまった場合には非常な支障が出てくるわけであります。訓練にしましても、また随時使用するいろいろな要件、また状態を考えますと、なるほど面積その他については私どもはいろいろ検討をする要素が出てくると思います。この程度は不要になるじゃないかとか、この程度は少し節約できるのじゃないかとか、そういう問題は出ますが、基地全体としてもう要らないのだとか、米軍は帰ってもらえばいいじゃないかというのは、いささか乱暴な議論になるのじゃないかと考えております。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 乱暴であるのは国側のほうです。もう米軍がいなくなるのでしょう。ちょっと飛んでいって油をさすなりあるいは訓練のために寄る程度でしょう。本来の板付基地を米軍が使用しておる目的と大いに違ってまいっておるはずです。それでもなおあの基地が必要だと言うのですか。私は、米軍は当然あの基地は撤廃したいのだと思う。撤廃してくれるなと頼んでおるのは防衛庁でしょう。私は資料を持っておりますよ。日本側が頼んでおるのでしょう。米軍は、ドル防衛のために、必要ないのだから撤廃したいのだ。日本側が頼んでおるのでしょうが。長官どうですか。
  121. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 日本側として要喫した期限は、十月までのいわば穴のあく点についての体制問題であります。全般的に日本側が、向こうが全部引き揚げたいのをいてくれというようなことは少しも申しておりません。事実に反します。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、いてくれという気持ちがないならば、撤廃してもらいたいという意思表示ができますか。新協定の二条の三項にあるように、あるいは旧協定の二条の三項にあるように、もう米軍が必要としなくなったら日本軍に返還しなければならないとなっておるでしょう。地位協定でも、昔の行政協定でも、当然日本側はそれを要請すべきです。もしおってくれという気持ちがないのだったら、そのまま置いてくれという気持ちがないのだったら、当然日本側としては返還を要求すべきです。
  123. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 兵器の発達あるいは戦術の転換、各般の要素によりまして、ある場合には基地の返還を要求する、またある場合には基地を縮小する、これはもうずっと占領が終結して以来続けられております。占領直後の大体米軍の使用しておる国内の総坪数は御承知のとおり四億坪であります。現在は四分の一、一億坪に減少しておる点から見ましても、大体その推移はおわかりいただけると思います。ただ、あなたのおっしゃったように、いま直ちに板付はアメリカは引き揚げたいんだというのは事実に反する話であります。アメリカ側の要望でございますいろいろな、先ほど申したとおりの任務も残っておるからあれは使わしてもらいたい、これは私ども当然だろうと思いまして、承諾いたしたわけであります。
  124. 植木庚子郎

    植木主査 楢崎君に申し上げます。栃内航空局長が来ておりますが、第四分科会でも出席を要求されておりますので、航空局長に対する質疑をお願いいたします。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは航空局長にお伺いいたします。実はいま進めておる質問をずっと続けないことには、本来ならば、関連性の点においてたいへん困るのですけれども、いぬられるというから一応聞いておきます、非常に断続的になりますけれども。  いま日本航空が板付基地の一部を使っております。民間航空会社が板付基地を使っておる法的な根拠についてお伺いしておきたいと思います。
  126. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 現在の板付の飛行場のうち、エプロン地域は二条第四項(a)でもって使用しております。それから滑走路につきましては、現在はだいぶ古いものでございますが、当時の航空庁長官から出されました文書に対しまして先方から返事がきておる、こういう形で国際線は使っておるわけでございます。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっとわかりかねますがね。米軍から借りていらっしゃるのですか。
  128. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 現在米軍の了承を得て使っておる、こういうことになっております。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それじゃ米軍から、何か契約でも結んで借りていらっしゃるのですか、米軍の了解を得てということは。
  130. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 米軍との間の文書の往復によって借りております。使っております。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私が聞いておる点に答えてください。米軍と契約をして米軍から賃貸借で借りていらっしゃるのですかと聞いておるんです。
  132. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 賃貸借契約で借りておるわけではございません。米軍との契約によって借りておるわけでございます。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、米軍との貸借契約で借りていらっしゃる。
  134. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 使用を許すということで借りております。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それじゃその契約上はどうなるのでしょうか。
  136. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 米軍の了承のもとにこれを使用しておる、こういう形になると思います。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは米軍から使用さしてもらっていらっしゃるのですか、契約なしに。
  138. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 米軍の了承を得て使用しておる、こういうことでございます。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ、米軍から使用さしてもらっていらっしゃるのでしょう。つまり借りていらっしゃるのでしょう。そうじゃないですか。
  140. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 米軍から賃貸借によって借りておるというわけではございません。
  141. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ、賃じゃなくて貸りておるだけなんですか。
  142. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 使用を許されておる、こういうことでございます。
  143. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 使用を許されておるということと借りておるということは、どう違うのでしょうか。
  144. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 借りておる場合には、米軍との間で、米軍の財産を賃貸借するというようなのが米軍から借りておるということであろうと思います。
  145. 小野裕

    ○小野政府委員 航空局長へのお尋ねでございますけれども地位協定の関係がございますので、私からふえんして説明さしていただきます。  いま民間機が板付飛行場を使用しておるのは、地位協定の三条によりまして、米軍司令官の許可を受けて使っておる、こういう関係でございます。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは使用料はどうなっておるでしょうか。
  147. 小野裕

    ○小野政府委員 直接米軍に対しましては、米軍の使用上支障のないというところで借りておるわけでありまして、これは使用料はございません。ただ実際問題として滑走路等国有の施設——これは日本の国有の施設になる。あるいは米軍が補修するものもございますが、もともと日本側で提供した滑走路でございますが、その滑走路を使用する、たとえばその損傷の補修というような意味も含めまして、大蔵省財務局のほうで弁償金のような形で、事実上は使用料になりますが、名目は弁償金のような形で徴収をいたしております。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 契約がないのに使用料をどういう根拠で国に払っておるのですか。
  149. 小野裕

    ○小野政府委員 この飛行場は、日本政府が米軍に提供しておるわけであります。それを米軍司令官の許可によって民間航空が使用しておるわけでありますが、実際上そのために、たとえば滑走路に、まあ破損というと少し話が大きいのでありますが、この滑走路の修理維持をする費用が要るわけであります。それの分担金のような形で、賠償金という名前だと私は承知しておりますが、そういう形で、大蔵省のほうで御徴収になっております。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その点は議論になるから、私は全然法的な根拠はない、このように思うわけですが、時間がありませんから先に進みます。  四月一日から日本国と大韓航空の間に、乗り入れの民間同士の契約をして、それが実現するわけですが、その間の事情をちょっと御説明願いたい。
  151. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 大韓航空と日本航空との間の会社間の相談によりまして、相互に乗り入れをするということはきまりました。これに対して、韓国の政府も日本の政府も了承を与えております。現在の具体的なスケジュールといたしましては、東京とソウル間を日本航空が行なう、それから大阪とソウルの間を大韓航空が行なう、それから福岡−プーサン間を同じく大韓航空が行なうということになっておりますが、最後の福岡−プーサンの問題につきましては、現在のところ具体的にいつから始めるということはきまっておりません。東京−ソウル間の日本航空の分につきましては、四月一日を目途に準備を進めております。なお大阪−ソウル間の大韓航空の分につきましても、おそらくそのころにはできるかあるいは前後するか、その辺は先方の事情も詳細わかっておりませんので、いつからということを日本航空についてほど正確には申し上げかねます。ただ福岡−プーサンにつきましては、いつからやるということは、まだ全然情報を得ておりません。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ごく最近日本と中国の国交正常化の前の段階として、通商代表部の相互間の設置、あるいは新聞記者の交換、あるいは航空機の相互乗り入れということがいわれておりますが、いろいろな政治的な観点も含めまして、現在長崎——上海間の航路はあるのですし、航空機の乗り入れの場合に、上海——福岡間の航路というのは、非常に有望になろうと思うのですが、これらの板付の乗り入れについての将来性について、検討されておりますれば御説明いただきたいと思います。
  153. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 ただいま日本と中国間の航空路開設の問題についての御質問でございますが、この問題につきましては、現在私どもは、日本と中国間におきまして、航空協定を締結するということは全然考えておりません。そのほか、あるいはそれならば韓国との間にやったように、民間間の、会社間の協定はどうかという問題もあるかとも存じますが、これにつきましても、現在のところ、定期航空便を開設するということにつきましては、まだ何とも検討もいたしておらないという段階でございます。ただ臨時便というような問題につきまして、これは今後絶対にないというようなことまでは蓄えないと思います。ただこれもケース・バイ・ケースの問題でございまして、必ず認めるというようなわけには参らぬ。しかし絶対に臨時便一機も飛ばさないかと言われると、場合によっては飛ばせることもあるという程度でございまして、現在、具体的に日本の飛行場と先方の飛行場との間を、どうするというようなところまでは考えておりませんし、また、先方におけるいろいろな情報というものも、まだ全然入手しておらない、かような段階でございます。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではよろしゅうございます。  防衛庁に対する質問は、時間がありませんから、なるたけ答弁のほうも要領よくひとつお願いしたいと思うのです。  旧安保と新安保は非常に違ってきておるわけですが、そのうち特に日本の土地を使用する米軍については、旧安保では日本に駐留するアメリカの軍隊、あるいはその周辺と申しますか、近傍に配備された米軍になっております。新安保では御承知のとおり、米軍一般になってまいりました。米軍一般日本の土地を使用できる。ところが新安保発効後における民有地土地所有者と国との契約書は、地位協定を実施するために「日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)の用に供する」目的をもってとなっておりますが、この契約書は間違いありませんか。
  155. 小野裕

    ○小野政府委員 米軍に提供するために民間からお借り上げした土地、その借り上げの契約の条項だと思いますが、そういう趣旨でお約束をいただいております。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、新安保条約では米軍一般が土地を借りられるけれども、実際に日本人の土地を国が借りる場合の土地建物等賃貸借契約書は駐留軍に限られておる。この契約書は間違いありませんか。
  157. 小野裕

    ○小野政府委員 お説のとおりでございまして、駐留軍に提供しておる土地の借り上げ契約、賃貸借契約には、そういう条項が入っております。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 先ほど御答弁になりましたが、実際に土地を使用する場合には、米軍一般じゃなしに、日本に駐留するとここに使ってあるのですよ。あなた、さっき使ってないと答弁なさっておるけれども、使っておる。文章の上では、「日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)」——そうすると、実際土地を使用できるのは在日駐留米軍ということになりますね。さっきの御答弁とどうでしょうか。
  159. 麻生茂

    ○麻生政府委員 これは施設庁がやっておる契約でございまして、私から答えるのは少し行き過ぎかと存じますが、安保条約との関係で御答弁申し上げたいと思います。  御承知のように、新安保条約は、極東の平和と安全の維持のため及び日本の安全の維持のために、日本の施設、区域の使用を米軍に許す、こう規定しているわけでございます。したがいまして、右の二つの目的のために、米軍は日本の施設、区域を使用できるわけでございます。したがって、その使用できる米軍に使わせるという意味でその契約はあるいはできておるのじゃないかというふうに私は考えますが、具体的にどういう意味で契約をしたかは、これは施設庁のほうから御答弁していただくほうが、直接契約の当事者でありますので、正しい御回答をなし得るのじゃないかと思います。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 先ほどの施設庁長官の御答弁は、在日基地は、米軍一般でなしに、日本に駐留する米国軍隊に限る、そういうふうに御答弁になったものと確認をしておきたいと思います。  次に、旧安保の時代と新安保の時代と、いま申しましたように使用主体である米軍の性格が変わってまいりました。それからまた使用の態様も、旧安保のときには一時的に使用しておった契約が、——全部そうなっておる。ところが新安保では、少なくとも十年間という安保条約の期間はそのまま使用されるのではないかというように、使用の態様も変わってきておる。したがって、旧安保のときの契約書と新安保のときの契約書が一緒であるとするならば、現在の契約が無効だと思うが、いかがでしょう。
  161. 小野裕

    ○小野政府委員 無効とおっしゃいましたが、前提になります在日米軍と駐留軍あるいは米軍、このことばの定義、使い方、先ほどから議論がございまして、非常にむずかしい、こまかい議論になるのでございますが、私ども日本におる米軍は駐留軍、こういうふうに考えております。そこで、従来の旧安保時代と新安保時代と同じ契約条項、つまり旧行政協定を現在の地位協定と同じような条項ではおかしいじゃないか、こういうお話でございますが、この賃貸借契約は、実は毎年度更新をいたしております。いろいろ地元の方の御要望等もございますけれども、お願いをいたしまして、毎年度更新しておりますので、古いものは形はそのまま残っておりましても、その内容については、新しくまた御了承いただいて使わしていただく、こういう形に考えております。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 現在の契約も、私は無効性が非常に強いと思うのですが、それはしばらくおくとしまして、少なくとも十月一日以降はいままでの板付の性格と変わってまいります。なぜかというと、使用する米軍も常時駐留ではなしに、防衛庁長官お話しになったように、一時使用、訓練用の使用、そういうふうに変わってくるし、また、ほかの基地の配属機が飛んでくるだけで、板付独特の配属機はないということになる。それから使用の態様もたいへん変化してまいると思います。ということは、いま申しましたように、使用の内容が常時使用ではなしに一時使用です。それからまた十月一日以降——これは防衛庁長官がお答えになったとおりです。十月一日以降さしあたっては米軍はそのまま残したいと言っているが、しかし一体どうなるのか、見通しは全然つかないというお答え、それからまた航空の管制権も、米軍がいなくなるのに航空の管制をそのまま米軍が今後ともずっととるかどうかについて、私は大きな疑問があると思う。あるいは自衛隊が肩がわりする可能性も十分あると思うのです。そういう使用態様が変化してきた。第三点は使用の期間がこれまた非常に不明確になってまいりますね。もし米軍がもうやめたと言えばそれでストップですから、全然見通しをお持ちにならぬのだから、したがって使用の主体、使用の態様が変わってまいります。それから期間が非常に不安定になってきたということで、少なくとも板付基地の性格は全く変わりますから、土地所有者にこの際新しくその内容説明して契約を更新する必要があると私は思う。新しく土地所有者の同意を得る必要があると思う。形式上は三月三十一日が期限になっておりますから、この際そういう基地の性格の変化の説明を土地所有者に十分して、そして同意を得た上で、契約の再更新をする必要があると私は思いますが、その点について防衛庁長官と施設庁長官の御見解を承っておきたい。
  163. 小野裕

    ○小野政府委員 十月一日以降の米軍の板付飛行場使用の形態が変わるということはお説のとおりでございます。しかしながら日本側といたしましては、作戦部隊あるいは実戦部隊、これがおるかおらないかということは大きな違いではありますけれども、根本的にはあの飛行場施設を提供するということにおいては同じでございます。ここに現に飛行機がいるかいないか、その点につきまして、楢崎先生はそういう使い方の少ないものはもう返さしたらいいじゃないかというお考えもあるかと思いますけれども、また米軍としてはいろいろな用途のために、目的のために今後引き続き保有したい、こういう強い考えでございます。私どもとしては、その必要ありと認めまして、引き続き提供を続けるわけであります。米軍に提供するという点については同じでございますから、その意味においてはいま土地を借り上げされでおる方々に対して、あらためて契約を変えるという必要はない。ただ新しい年度の契約更新をするときには、そういう事情はもちろんお話しいたします。また御承知でございますけれども、いろいろお話はいたしますが、そのゆえにここですぐに切りかえなければならない、こういうことは考えておりません。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、これは当然全土地所有者を集めて事情の変化を説明し、契約を完全に更新しなければこの契約は無効であると思う。またこの新しい状態を前にして、土地所有者が全部この契約に応ずるかどうかはわかりません。もし応じない土地所有者が出てきたときにはどういう措置をとられる考えですか。特別措置法を適用されますか。
  165. 小野裕

    ○小野政府委員 一方では条約上の一つの義務と申しますか、立場から提供しておるわけでございます。一方では地元の方の私有地をお借りしておるわけでありまして、その間に食い違いが出ますと、まことに困るわけであります。私どもとしてはひたすら誠意を尽くしまして地元の御了解をいただいて、継続して使わしていただけるようにお願いをしたい、こう考えております。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もし拒否した場合はどうされますかと聞いているのです。鋭意その任意契約でやられるつもりでしょうが、もし拒否される土地所有者があらわれたときにはどうしますかと聞いているのです。
  167. 小野裕

    ○小野政府委員 非常にむずかしい問題でございますが、私どもの考え方といたしましては、もともと最初にお願いをいたしましたときに、米軍の施設として使用するために貸していただくのだということでお願いをしておるわけであります。そのことが土地所有者の方々については相当長いある期間というものは御了承をいただいておる……。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 質問に答えてください、時間がないから。
  169. 小野裕

    ○小野政府委員 そういうことで、私どもは年々契約を更新いたしますけれども、これは、はっきり率直に申しますならば、形式的なことでもあろうかと、もともと……。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 質問に答えてください。
  171. 小野裕

    ○小野政府委員 ですから引き続き使用さしていただく、こういうことであります。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 一番最後のところわかりかねたところです。
  173. 小野裕

    ○小野政府委員 米軍に提供している間は引き続きお貸ししていただく、こういうことに考えております。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 拒否されたらどうするかと聞いているのですよ。質問に答えてください。もし拒否する土地所有者があればどうするのだと聞いているのです。
  175. 小野裕

    ○小野政府委員 引き続き使用させていただくということで、お答えになっていると思います。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 契約を拒否したらどうしますかと聞いているのです。
  177. 小野裕

    ○小野政府委員 引き続き使わしていただきたい。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ということは特別措置法を適用するということですか。
  179. 小野裕

    ○小野政府委員 そのまま使わしていただく。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃどうしてそんなに言わないんです。
  181. 小野裕

    ○小野政府委員 いやそう言いました。引き続き使わしていただく……。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 特別措置法を適用して強制使用するということでしょう。そう理解していいですね。
  183. 小野裕

    ○小野政府委員 そのようには申し上げておりません。従来の契約をそのまま生かしていただくと考えております。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その契約を拒否したら生きようがないじゃないですか。
  185. 小野裕

    ○小野政府委員 最初に申し上げましたように非常にむずかしい問題でございますが……。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 むずかしくないですよ。簡単ですよ。
  187. 小野裕

    ○小野政府委員 これは最初にお願いをしたときに、こういうような長期提供の施設に貸していただくということで御了承をいただいたのでありますから、その効力は続いておると私どもは考えておるわけであります。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 冗談じゃないです。だから私が言っているのです。基地の性格の内容が変わったのだから、これは当然契約をし直すべきだ。いままでの契約がずっと生きておる、前に契約したものがずっと今後も安保条約のある間、十年間生きるなんてだれも考えていませんよ。しかも板付基地の内容はこういうふうに変わってきたのでしょうか。いままでは常時あそこにおったからやむを得ぬと思っておった土地所有者があるかもしれぬ。しかしながらもう米軍機はいない、ときどき飛んできて使うくらいのことにこれだけの土地は使わせないという土地所有者があらわれるかもしれませんよ、変わってきたのだから。もし契約を拒否する土地所有者があらわれても、国側の見解は、契約は生きておることとしてずっと使うという意味ですか。そうですか。無契約無期限で使うという意味ですか。
  189. 小野裕

    ○小野政府委員 つとめてよくお話をいたしまして、円満に使わしていただくように努力はいたします。努力はいたしますが、どうしてもお聞きにならないという場合でも、一方の関係からいたしまして、従来の御提供の関係は継続しておるというように私どもは考えております。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは重大な発言です。そうすると特別措置法の必要はないではないか。いままで結んでおった契約が、拒否されてもそのまま生きるなんというのは統一見解ですか。それはどうですか、防衛庁長官日本人の土地を借り上げておって、しかも使用者の内容が変わってきた場合に、あるいは使い方が変わってきた場合でも、そのまま契約がずっと新安保条約のある間は生きるなどという見解ですか。これは大問題ですよ。そういう見解なら大問題です。では、契約をする必要はないじゃないか。
  191. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 板付基地から米軍が撤退し、しかもその後全然使わないという場合には、当然これは返還問題が起こり、いま御議論の問題も起こり得ないのでございます。しかし、先ほど来しばしば申し上げましたように、米軍としては重要な基地として使うという申し出がありますし、また私たちもその必要を認めておりますから、性格が変わってくるとも局部的には考えられますが、全面的にはやはり米軍基地としての重要性は変わらない、私はそう考えております。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの長官答弁は私のいま質問しておることの内容と全然違うわけです。無契約、無権限でも、安保条約がある間は使えるという。条約は国と国との権利義務を規定しておるのでしょう。条約があるからといってそれがそのまま国民に対して権利義務をしいることにならぬじゃないですか。条約ができればもし国民の権利義務に何らかの影響を与える問題が起こるとすれば、当然その条約に基づく国内法をちゃんとつくらなければいかぬじゃないですか。そうしないでいいですか。条約がありさえすれば、そんな国内法なんかどうでもいいということでしょうか。そうなりましょう。いまの施設庁長官の御答弁をずっと詰めていけばそうなりますよ。条約は形式的だから、一ぺん借りるという意思があれば、それはずっと借りたも同然だというような、そういう御答弁だったら私どもはこれは納得できません。そんなばかな話がありますか。しかも新安保条約では日米対等ではないですか。占領と違うのですよ。それでもまだ占領下のような関係で、あなた方は日本人の土地を米軍に強制使用せしめておるのですか。いまの答弁は私は全然納得しません。
  193. 小野裕

    ○小野政府委員 あくまでも地主の方とお話し合いをいたしまして、御納得をいただいて使わしていただくように努力を続けてまいる、こういうふうに考えております。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういうことを私は聞いていないのです。問題をぼかしたり、はずしたりしないでください。それで、私の持ち時間はすでに尽きております。しかし、問題は残っておりますから、次会の二十二日にまた機会を与えていただきたいと思いますが、最後に一点だけ、いまの問題と関連してお伺いしておきますが、私はアメリカ大使館の一大使館員のお答えでは、アメリカ軍としては板付基地は撤廃したいんだ、しかし日本自衛隊が、防衛庁がぜひいまのままで置いておってくれというから、一時使用基地として残すんだということを答えております。長官のお答えと全然違います。逆です。日本側のほうがそのまま残してくれと言っておる。米軍はもうドル防衛の観点から、そのために引き揚げたんだからあそこは撤廃したいのだと言っておる。全然あなたの言っておることは逆です。うそです。したがって私はこの際、もう板付基地は米軍が使う必要性はなくなったと思う。新田原に航空自衛隊の基地もあるではないですか。それでもなお日本のほうからあれを残してくれという意図があることは、将来いつの日か航空自衛隊があそこに来るということだ。その意図があるからそのまま置いておいてください、いま急に航空自衛隊が行くとたいへんなことになるから、いつの日か使おうという下心があるからだと私は思う。もしそうでないならば、防衛庁長官は、日米合同委員会に、もう板付を米軍があの程度のことで使用なさるということは、——特別措置法の三条にもありましょう、適正かつ合理的ではないという観点から意見を出すべきだと私は思う。土地所有者に返してください、そういう意見を出すのが日本防衛庁長官であり、施設庁長官の態度であろうと思う。米軍が必要としていないんだ、単に訓練用か、あるいは補給基地としてか考えていないんだ、それだったらあれだけの膨大な土地を米軍の用に供せしめることが適正かつ合理的であるかどうか、こういう観点からも日米合同委員会に長官は早く返してくださいという折衝なり、意見を出すべきであろうと私は思いますが、どうでしょう。
  195. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いま御質疑の中に、アメリカの大使館員の話、これがほんとうであって、私は国務大臣防衛庁長官としてお答えしておるのに、お前うそである、これは私は重大な問題であると思います。私は在日米軍最高司令官のプレストン中将あるいは外交のルートとしてのライシャワー大使、そういう方々と責任ある話し合いをしておる。無責任な一館員の言をとらえて私の答弁はうそということは、私としてまことに不本意であります。はっきり申し上げますが、新田原の104自衛隊の戦闘任務、また作戦任務が十分作動できるまで、十月まで米軍の費用で一部置いてもらいたい、いわば問題は穴を埋めるという防空態勢の関連問題でありますが、それは大使に申し入れたことは事実であります。それをアメリカが承諾したことも事実。その後も全部われわれは撤退したいのだが、日本側がぜひいてくれといったようなことは絶対にございません。これだけはっきり申し上げます。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは先ほどの契約上の問題は、私ももう少し詰めたい点もありますし、御答弁についても不満であります。あの御答弁でずっといいのかどうか、もう一ぺん再考を促しまして次回の機会を委員長にぜひ与えていただきたい。これで終わります。
  197. 植木庚子郎

    植木主査 善処いたします。  午後は一時四十充分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  198. 植木庚子郎

    植木主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算中、防衛庁関係について引き続き質疑を行ないます。  この際、福田防衛庁長官より発言を求められております。福田防衛庁長官
  199. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 午前中の本委員会における、いわゆる思想教育の問題でございますが、杉田校長の「指揮官への道」という印刷物につきまして、この資料は、杉田校長一代限りのものでございまして、再度印刷配付はいたしておりません。現在の教育方針は、先般申し上げたとおり、「自衛官の心がまえ」、これを中心として進めておる次第でございます。
  200. 横路節雄

    横路分科員 一括してひとつ……。
  201. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答え申し上げます。化学防護草案の三二ページ以降にございます標準原子武器の意味でございますが、これはTNT二十キロトン相当の爆発力を持つものというふうになっております。ここであげられております草案にございます各種の数字は、米軍のものの翻訳でございます。
  202. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど御質問のございました、かりに十メガトンの水爆が爆発した場合には、どういう効果があるかということにつきまして、先般申し上げましたように、防衛庁といたしましてはこういった問題に取り組んでおりません。ただ、部内におきましていろいろと検討しております一つの例を御参考までに申し上げてみますと、東京都の人口を九百九十五万と仮定いたします。水爆が爆発しました時期を午後の四時。時間によりましていろいろ都民のおる動態が違いますので、一応午後四時と想定いたしまして、この場合には人口の二〇%が屋外におる、ないしは屋外におると同様である、五〇%は木造の家屋内におる、三〇%は鉄筋のビル内におる。こういう仮定でありまして、天気が晴れておって、西の微風が吹いておるという状況のもとで仮に試算いたしますと、合計いたしまして死亡はおおむね四百一万から四百三十六万程度であろう、重傷が二百二十二万から二百三十四万程度であろう、軽傷が二十五万から六十万程度であろう、こういう数字が出てまいりました。総合しましてと申しましたのは、水爆が爆発いたしますと、それの及ぼす殺傷の効果は爆風、すなわち爆圧とも申しますが、爆風によるもの、それから熱放射線によるもの、さらには放射線によるもので、これも初期の放射線によるものと、いわゆるフォールアウトによるものと、こういうふうに分かれるわけであります。こういうふうな効果を総合して計算いたしますと、先ほど申し上げましたような数字が出てまいります。これはあくまでも一つの算術でございますので、この数字の答えが客観的に妥当かどうかということについてはまだ検討いたしておりません。  なお、広島、長崎型二十キロトンの場合に、先ほど死者十万、負傷者二十五万ということを一応申し上げましたが、現実に広島の場合には死者が六万八千人、血傷者は七万六千人、長崎の場合は死者が三万八千人、負傷者が二万一千人、こういう数字に相なっております。  再度お答えいたしますが、先ほど申し上げました十メガトンの効果というものは、あくまで部内の一部局におきまして試算をいたしました数字でありますことを御了承願いたいと思います。
  203. 植木庚子郎

    植木主査 質疑を許します。横路節雄君。
  204. 横路節雄

    横路分科員 長官のほうに私のほうから要望しておきますが、午前中質問いたしました富士幹部学校における「指揮官への道」の、確固たる反共精神を持しつつというのは、杉田校長のときだけのことであって、現在はそうではない。現在は「自衛官の心がまえ」としてのものを配布しているということですが、恐縮ですが、一つあとで私たちに書面で、「自衛官の心がまえ」としてどんなものを出されているのか、読んでみないとわかりませんので、もしも持っていらっしゃれば……。お持ちですか。それではひとつそれを読んでください。
  205. 堀田政孝

    堀田政府委員 これを差し上げます。
  206. 横路節雄

    横路分科員 それではちょっとお尋ねしますが、「自衛官の心がまえ」というのは、富士幹部学校も含めて全部これでやっておるという意味ですか。「指揮官への道」というのは、もうああいうものはないという意味ですか。全部一括してやっておるわけですか。その点ちょっと御答弁いただきたい。
  207. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  208. 横路節雄

    横路分科員 それから教育局長、先ほど終わったことですけれども、先ほど、自衛隊法の何条でしたか、引用されて、間接侵略のことで、それが一般的には反共精神というのだろう、あれは間違いなら間違いだとはっきりしておいたほうが、あとあとこの国会で論議するときにいいと思いますので、間違いであれば間違いである、こういうふうにはっきりここで御訂正いただければ、御訂正していただきたい。
  209. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答えいたします。長官のお答えが正確な答えでございます。
  210. 横路節雄

    横路分科員 それでは、次に教育局長にお尋ねをします。実は化学防護——これは草案ということになっていますが、外部に出ている雑誌にも、単行本にも詳しく出ているわけです。ひとつこれは聞いておきたいのですが、先ほどちょっとお話があったと思いますが、この化学防護草案というのは、前の安保国会のときには飛島田君から指摘されたのですが、「近代戦に不可欠なC・B・R戦の対策の一環として講じられているのである。Cとは化学戦、つまり毒ガスとか焼夷剤対策である。Bとは生物戦、つまり細菌とか、それよりも小さい微生物(ウィルス、リケッチャーなど)兵器対策である。Rとは放射能戦、つまり原水爆とか死の灰対策などである。」だから、そういう意味防衛庁としてというか、自衛隊としては一応対策は講じているわけですね。その点、ちょっとお話ししていただきたい。
  211. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答え申し上げます。この放射能兵器について申し上げますと、その放射能の性能は一体どういうものであるか。それを測定いたしますのにはどういう手段方法があるか。それから、個々の自衛官がもしそういうものを受けたときはどういうふうにすればいいのかということを研究し、教育いたしておるわけであります。
  212. 横路節雄

    横路分科員 防衛局長、この被害について、いまあなたのほうからお話があり、教育局長からもお話があり、その対策があったのですが、これは相手の国から攻撃をされてきたときにはこれだけの被害を受ける、そしてそれに対して対策をやるけれども、防御核兵器であるというので味方がぽんとやったときには、空中で炸裂するのですが、それはわれわれには絶対被害を与えないものでしょうか。相手の国から核兵器で攻撃された、そのときの用意にこれをやっている。しかも、これは相手の国に対してやるときは憲法違反だけれども、相手からやってくるものに対して味方が防御の核兵器をやった。それは幸いなことにだれにも被害を及ぼさない。相手の国の軍人にも及ぼさなければ、味方の自衛官にも及ぼさなければ、日本国民にもだれ一人及ぼさないというものなんでしょうか。これは大へんしろうとの考えですけれども、どうもそんなうまい味方の防御川の核兵器というものはあり得るはずはないと思うのです。やはり一般的には、その地域一帯にはどれだけのものがどれだけの高さで、防御の核兵器であっても、それが炸裂した場合にはその及ぼす範囲はどう、放射能によって汚染される範囲はどう、何はどうということは当然ではないでしょうか。これはどうなんです。
  213. 海原治

    ○海原政府委員 私、その方面の専門的な知識を持ち合わしておりませんので、的確なお答えになるかどうかわかりませんが、先ほども引例いたしましたように、ヨーロッパに現に配置されておりますデービー・クロケットという原子砲なんかは、具体的に戦場で使われるわけであります。いま先生が御指摘になりましたような問題は、必然それに伴ってまいります。  この点につきましては、かつていわゆるきれいな原爆、きたない原爆、こういうことばで表現されまして、直接敵を殺傷するという効果以外には、付随的な放射能その他による害はなるべく与えない、いわゆるきれいな原爆というものをつくりたいということで、米国やソ連も研究をしてきたわけでございます。完全にきれいになったかどうかわかりませんけれども、比較的きれいな、いわゆるダーティボンブと申しましてきたない原爆に比べましてきれいなものができた、それがいわゆる戦場に使う戦術兵器に発展した、こういうふうに一般的にはいわれております。したがいまして、具体的な数値等は私は存じませんけれども、戦場において味方兵士が自分の撃った原子的兵器による影響を受けることなしに、敵を殺傷するためにのみ使い得る効果が非常に大きくなったものが現にできておる、こういうふうに私は推論いたしております。具体的にどういう数字になっておるかということの数値は持ち合わせございません。したがいまして、どういう兵器がどのような状況において使われるかということ、これによりまして一般的な直接の殺傷力以外の効果というものがどういうようになるかということは、個々について検討せねばわからない問題でございます。  以上、はなはだ不十分でございますが、私の知識はその程度のものでございます。
  214. 横路節雄

    横路分科員 これはいわゆる三次防との関係がありますので、ぜひともお尋ねしておきたい。どうしてかというと、先ほどから防御用の核兵器を持つことは憲法違反でないという。私は憲法違反だと思う。しかも、明らかに核兵器は、これは東京地裁で去年の十二月七日に国際法違反だとされ、憲法九十八条では国際法を守る義務をちゃんと規定されているわけです。  そこでまず、いま防衛局長から大砲といいますか、小銃といいますか、野砲程度のお話がございましたが、第三次防の中心になってくるのはナイキ・ハーキュリーズです。これは先ほど議論したように、核弾頭と普通火薬との併用ですから、そこで私は、政策的に使わないということでなくて、使うことは憲法違反だと考える。そこで、それならばナイキ・ハーキュリーズに核弾頭をつけてやった。これは相手の爆撃機が来るのに対抗する。撃った。そこであたった、あたらぬ。炸裂した。放射能は一円に広がるわけですね。何もその場合においては、これは特定自衛隊諸君だけではない。国民一般に及ぼすわけです。これを相手の国が使用しようと、こっちが使用しようと、これは一般国民に与える被露なんです。その場合に、これは一般国民に与えないで済むのだ、そういうことが言えるでしょうか。これは言えないのではないでしょうか。  これは今度は教育局長に伺いますが、私は言えないと思うんですよ。一般国民にだって影響を与えるじゃないですか。私はそういう意味では、東京地裁が判決を下しているように、これは明らかに国際法違反である。われわれとしては憲法九十八条にいういわゆる国際法を守る義務がある。憲法違反ですよ。私はそういう観点で聞いているのだが、その炸裂したとき、その炸裂したものに対して、一般国民は影響を受けないなどということを言えますか。相手の国からやってきたものだけ影響を受けて、味方でやった核兵器については、炸裂しても、放射能その他の影響を受けないということが言えましょうか。教育局長、そういう議論は成り立ちますか。
  215. 堀田政孝

    堀田政府委員 お答えいたします。頭の上で爆弾が破裂いたしますと、それは敵味方に関係なく、やはり下にいる者には影響があると思います。しかし、防衛庁教育をしておりますのは、当方が核兵器を使用する、そういうときにどうするかという教育はいたしておりません。受けたときにどうするかという教育をしております。
  216. 横路節雄

    横路分科員 いま教育局長の言うように、頭の上で炸裂すれば、それは敵も味方も、一般国民も放射能の影響を受けることは明らかなんです。その影響を受けることは明らかなのに、何でそれが憲法違反でないのですか。相手の国の人間に対して殺傷を与えることは憲法違反だという。しかし、自衛隊が使った自分の核兵器でもって一般国民が放射能の影響を受けて、やっぱり死ぬ者も出てくるし、重傷を負う者も出てくる、それは憲法違反でない、相手の国をやっつけるのだけに使うのが憲法違反だが、日本国民で放射能の影響を受ける者に対しては、それは憲法違反ではない、ただ政策的には使いません、そんなことは言えないですよ。どうしてそういう議論が成り立つのですか。教育局長、どうですか、そんな議論が成り立ちますか。  私がこの問題をなぜしつこく聞いているかというと、時間がだいぶ過ぎて主査にはたいへん恐縮なんですが、この前も長官は、ここで、いわゆる中共の核実験について語っているわけです。私が中共の核実験を非常におそれるところは、それを口実に日本のいわゆる自衛隊の核武装に踏み切ってくるのではないか。そこで、私は、それがないようにするためには、憲法第九条で核兵器を持つことは憲法違反だ。自衛隊の核武装は憲法違反だという点がきちっとされていなければならぬのに、皆さんのいままでの議論はそうではなくて、相手の国を攻撃して、相手の国民をやっつけることは憲法違反である。だが味方のほうにかぶって、味方の国民が放射能で倒れ、爆風で倒れても、それは憲法違反でないなんという議論は成り立たないですよ。長官は、おそらくいままでの防衛庁長官が言っていたから、局長に言われて、ここでしかたなしに言っているのだろうと思う。いまのこれだけの議論を聞いたら、長官だっておかしいと思いませんか。長官、どうですか。これはおかしいですよ。こんな議論は成り立たないですよ。
  217. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 横路委員のいまの御質問でありますが、もし自衛隊が核兵器を使った場合、あるいはハーキュリーズに核弾頭をつけた場合に、その議論は正当性があるし、また、その場合には、憲法違反かどうかという第二の問題も展開されると思いますが、先ほど申したとおり、いかに憲法的あるいは法理的に許されるものであったにしても、私どもは核装備は絶対にしない。したがいまして、核装備した場合の仮定した御議論につきましては、私ども見解が相違するわけでございます。
  218. 横路節雄

    横路分科員 長官、いまあなたの議論を聞いていると、核兵器を持つのは憲法違反でない。核兵器を使用することは憲法違反である、こんなことば成り立たない。こんなことが成り立ちますか。私は、政策論議でない、一番大裏な憲法論議をしておる。核兵器を持つ段階までは憲法違反ではない、核兵器を使用することは憲法違反だ、だから、持つことは持っても、使用しなければ憲法違反でない。こんなことは成り立たないですよ。核兵器を持つことは憲法違反です。そう思いませんか。この持つまでの段階は憲法違反でなくて、持ったあと使用したら憲法違反だ、こういうことは私は成り立たないと思う。どうですか、もう一ぺん。
  219. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 従来、国会におきましても、この点はしばしば論争せられました。核兵器を持つことが憲法違反であって、使用することは違反でないとか、またその逆の場合もありますが、それは私は理論的に矛盾していると思います。もし核兵器を持つことが許されるならば、使用も許される、これが正しい道であろうと思いますが、先ほど申したとおり、法理的、憲法的にたとえこれが合憲性があるとしても、私どもは核装備は絶対にしてはならないし、また、しないつもりでおります。
  220. 横路節雄

    横路分科員 いま長官の議論を聞いていますと、持つことが憲法違反でなければ使用しても憲法違反ではない、使用することが憲法違反ならば持つことも憲法違反だ、いま、あなたはそういう議論の立て方をしたわけです。もう一度言いますよ。使用することが憲法違反でなければ持つことも憲法違反ではない、持つことが憲法違反でなければ使用することも憲法違反ではない。  しかし、いま私がここで議論として言いましたことは、攻撃用の核兵器を使用することが憲法違反だ。それは、相手の国民に対して核兵器を使用した。そうして相手の兵士はもちろん、相手の人民に対しても大きな死傷を与えた。これは憲法違反である。しかし、自衛隊か持って——私も法理論で言っている。憲法解釈で言っているのです。——それを持って、そうして教育局長の言うように、味方の上空で炸裂させた。その炸裂させたものは、どういうことになるかというと、いわゆる自衛隊の隊員の諸君を含んで一般国民に大きな被害を与える。これだって、相手の国民に与えることは憲法違反だが、こちらの国民に与えることは憲法違反ではない。だから、持ってもいいのだ。しかし、政策的には持たない、こういう議論が成り立ちますか。だから、私は、ここで、いままでの、防衛庁で議論として展開していた、いわゆる攻撃用の核兵器を持つことは憲法違反だが、防御用の核兵器を持つことは憲法違反ではないが政策的には持たないという、これは基本的な誤りなんですから、これはぜひ、自衛隊が核兵器を持つことは憲法違反ですと、こういうようにはっきりとしなければならないと思うのです。主査、たいへん時間が延びて恐縮ですが、同僚の諸君質問もありますから、私は最後長官答弁を聞いて終わりますが、ぜひこれは、主査もお聞きのように、こういう具体的な問題で、しかも化学防護草案というのも初めて——しかし実際にはつくられたのは三十二年なんですが、一般に市販している本に出ておりましたので、私らのほうで要求してやっと出していただいたわけなんですが、いまの議論から見ても、ただ単にこれは分科会防衛庁長官とやって終わるだけの問題ではないと私は思うのです。これは内閣全体の問題だ、こう思うわけです。だから、時間もあれですから、長官から最後のお答えをいただいて、あとはひとつぜひ主査のほうでも、これだけ議論して主査自身もお聞きになられてちょっとおかしいとお思いになるだろうと思いますので、できればひとつ主査のほうから、分科会の報告のときに報告の中に入れていただいて、一般質問なりあとの総括的な質問の中で再度この問題だけはぜひひとつ取り上げて、やはり国民の前に疑義を解明するようにさせていただきたい、こう思います。
  221. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 核兵器と憲法との問題につきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、従来の政府の考え方を私どもは持っております。ただ、いろいろ御指摘の点は、十分御意見として承っておきます。
  222. 横路節雄

    横路分科員 主査、お願いします。
  223. 植木庚子郎

    植木主査 了承いたします。  次に、二宮武夫君。
  224. 二宮武夫

    二宮分科員 私は、局地的な問題ですが、大分県の日出生台の自衛隊が演習をしておる地域に沖繩の米軍が上がって演習をしようというこの構想に対して、数点にわたってお尋ねをいたしたいと思うのです。したがって、問題はごく簡単な問題でございますから、明快な御答弁で、あまり時間を長引かせないようにひとつお願いを申し上げたいと思うのです。  これは数年来問題になっていることでございますが、まずひとつ長官確認をしていただきたいことがあります。たしか西村さんが防衛庁長官をしておったときだと思いますけれども、北富士に沖繩米軍が上がって演習をしようとして、猛列な地元の反対に会った。そこで、やむを得ず、時期的に考えてこれはちょうど沖繩と九州との関係上、自衛隊の使っている日出生台を使うことが便宜であろう、言いかえますと、北富士の見返りとして日出生台が選ばれたのではないかという質問をいたしたわけでございますけれども、それはそういう問題ではない、こういう御答弁があったわけでございますが、その点、御確認がいただけますか。
  225. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 日出生台の問題は、補償の不均衡の問題でありますとか、いま御指摘富士の問題、なかなか複雑な経緯があるようでございますので、政府委員から答弁いたさせます。
  226. 志賀清二

    ○志賀政府委員 ただいまのお話の件は、日出生台は富士演習場の関連において代替として使用するようになったのではないかというお話だと思いますが、そうではございません。
  227. 二宮武夫

    二宮分科員 そうではないという答弁があったから、それをもう一度確認したわけなんですが、確認ができたわけでございます。  暫時私はもう一つ質問をいたしました。これには、着弾地に近いところに、五十戸ないし六十戸の部落があるわけなんです。これは着弾地から約千メートル離れた地域にありまして、非常に危険を帯びておる部落でございます。したがって、この部落は、演習をすることに対しましては、非常に心配をしておる状況であるわけでございます。いままでの経緯を申し上げますと、実は明治二十三年に私有地を買い上げて陸軍のものは使って、それが戦争の終局と同時に米軍がここに進駐をして演習を始めて、それが自衛隊に引き継がれて、この地域の人はここ七十年来戦争が終わったという感覚を持っておらない。そういう気持ちの部落の方々がおられるわけでございます。そこで、私がお尋ねいたしましたことは、当時の防衛庁関係者から、この小さい部落の中に、たとえ一戸でも二戸でも、着弾地に非常に近い危険個所にある部落の方々が納得をするまで説得をして、それができるまではこの問題は強行しない、こういうことをはっきり当時お約束をいただいたわけでございますけれども、そういうものの考え方については変っておりませんか、どうですか。
  228. 志賀清二

    ○志賀政府委員 ただいまのは中須部落のことだと思いますが、おっしゃるような危険感の問題につきましては、先般射方向を少し振らすということでとりあえず措置をいたしまして、その後中須の部落の方々と移転についてお話をしている最中でございまして、われわれとしましても部落の皆さんのお気持ちもよくわかりますので、できるだけ早期に移転をお願いして処置をしたい、こう考えておるわけであります。
  229. 二宮武夫

    二宮分科員 射撃方向を変えてもらいたいということは、前々から希望しておった問題ですけれども、技術的にこの射撃方向を変えるということ自体が困難であるという答弁を何回もいただいておるわけなんです。どの方向にどのように変えるという話がついたんですか。それは技術的に話ができますか。
  230. 志賀清二

    ○志賀政府委員 射撃方向を変える話は、反対側に変える話はむずかしゅうございます。それで、そういう話ではなくて、あの射撃方向を少し横へずらす、こういうことをいたしたわけであります。
  231. 二宮武夫

    二宮分科員 その程度の問題では、この地域の方々が持っておる非常な危険感というものはこれはぬぐうことはできないのです。これは現地に行って見られたらわかりますが、どの程度どういう方向にずらすのかわかりませんけれども、私は現地に行って現地の方々とも話し合いをし、実地も見ておりますけれども、射撃方向を変えること自体が非常に困難な地域情勢にあるわけなんです。したがって、この問題はなかなかできないということで、多少ずらすということになりますと、今度は他の部落に影響がある。あるいはバスが通っている路線があるわけでございまして、そういうところへも影響が起こってくる。これはいまの個所が、他の部落への影響を考えますと、着弾地としては最も影響は少ない地域でございまして、これを多少でもずらしますと、他の方向に対する非常な範囲の広い被害状況というものが起こってくる、危険感が他の方向に拡大をされるという状況にあるわけです。したがって、簡単にその射撃方向を変えて、それでよかろうということには私はならないというように、実地の状況から推察いたしまして考えております。  ただ、問題になりますのは、近ごろになって、この射撃方向を変えるという問題は別といたしまして、この地域を防衛施設庁のほうで全部買い上げようというお話が出ておるようでございますけれども、これにつきましては、地元の新聞等ではおおよそ一億五千万のお金を準備して、全部立ちのきをさせようということで話を進めておるということでございます。しかし、私はこの補償の問題につきましては、米軍が進駐して演習をしておりました際には、この部落にはくつをはいたまま米軍の諸君が上がってきて、非常に暴行ざたも起こっておるわけです。あるいは人の生命に及ぶような事件も起こっておるわけでございます。それらの補償の問題、それから自衛隊が使うような段階になりましてから後の、射撃によるところの被害、あるいはそれが及ぼすところの河川あるいは堤防、そのほかに関するところの補償の問題、こういう問題と同時に、この契約をいたしまして射撃区域内における耕作の権限が与えられておりますので、この離作補償の問題も中には入っておるわけであります。これらを含めまして、同時に中須の部落を全部数十戸立ちのかして営農をやらせるということになりますと、相当広い範囲の農地も必要でございましょうし、適当な土地を見つけるためにはずいぶんむずかしい問題も私は伴ってくるのじゃないかと思うわけでございますけれども、これらの問題に対して二億五千万という経費を出して現在の立ちのき、それから従来の補償あるいは離作補償あるいは採草権の問題等について、非常にきめこまやかな補償の問題等が具体的に進められておるのかどうか。あるいはその場合に、その二億五千万という金額は妥当であるのかどうか。中須の部落が納得のいくような営農のできるような立地条件の場所がはたして見つかるのかどうか。こういう問題について、私は現地を見まして非常にむずかしい問題じゃないかというふうに考えるのですが、その辺についての折衝の状況をひとつお伺いをいたしたいと思います。
  232. 志賀清二

    ○志賀政府委員 ただいまのお話で二億五千万円という数字は、私どもよくわかりませんですが、日出生台につきましてはいろいろの問題がございます。お話のように、中の耕作をいたしておるのを離作するという問題もありますし、それからいろいろ河川の修理をしてくれという問題もあります。それから道路を直してくれという問題もございます。それからまた、いま先ほどお話ししましたような中須の部落の危険感に伴う移転の問題等ございます。  それで、そのうちでまあ中須の部落の移転につきましては、これは地元のほうの要望もございまして、大体五十一戸くらいでございますが、それを一括してどこかへ移転するようにはかってもらいたいという要望を私ども承っております。県ともいろいろい相談をいたしておりまして、それじゃ現実にどの辺まで買収してやったらいいかということは現在調査中でございます。したがって、確定的な数字というものはまだ出ておりません。  それから、離作につきましても、これまたいろいろお話をしております。中須に限らず、あの向かい側の小野原でございますか、そこの辺の方々もたくさん耕作しておりますので、われわれといたしましては場内の耕作をしておる者全体を対象に考えまして、どういふうに離作をしていただくか、現地ともよく相談をしておる最中でございます。したがって、そういうふうな面で、どの範囲でどの程度経費がかかるかということも、まだはっきりつかんではおりません。そういう事情であることを御了承願いたいと思います。
  233. 二宮武夫

    二宮分科員 地元の新聞によりますと、和田という自衛隊の西部関係のある責任者が米軍の——沖繩におる米軍ですね、この部隊がこの地域における演習は三十九年には行なわれないであろう、こういう発表をいたしておるわけでございますけれども、私はこれは三十九年といっても、三十八年度の終わりの三十九年三月末までの話であって、三十九年の四月一日以降の問題にこの問題は触れておらないのじゃないかというように考えるわけですけれども、新聞の報道そのほかを聞きますと、地元の人は、ああこれでほっとしたというような気持ちを現在、実のところ持っておるわけなんです。こういう報道関係そのほかにつきましての、責任のある御答弁をひとついただきたいと思います。
  234. 小野裕

    ○小野政府委員 米軍が日出生台の演習場を使用いたします場合には、三カ月前に通告をしてくるという約束になっております。私ども、最近演習するという通告を受けておりません。しかし、三カ月後ということになりますれば、まだ本年中、先もありますので、どうなるかわかりません。
  235. 二宮武夫

    二宮分科員 本年ということは、三十九年ですか、本年度という意味ですか。
  236. 小野裕

    ○小野政府委員 三十九暦年でございます。三カ月前に予告がございますから……。
  237. 二宮武夫

    二宮分科員 地元としては、移転の問題もございますけれども、やはり以前から、先ほど申しましたように、全く戦争が終わった、平和になったという印象を持たないような危険な感情をずっと持ち続けておる状況でございまして、米軍もひとつ自衛隊と一緒になってここで演習をするという理由はどうしても納得できないということで、まことに強い反対の運動もあるわけでございます。  実はそういうことにいろいろ折衝をしております段階の中で、別府の海岸にすでに船の着くような工事が始まっている。それに関連をして、日出生台に至るところの自動車の道路がすでに完成をしておる。これはおそらく別府市に対して施設庁その他が連絡をとって、その工事をやったものだというふうに考えますけれども、これらは別府市独自でやったものではないということを、私ははっきりそう思っておるわけでございますけれども、そういう問題については、おそらく米軍の演習を予期して、それらがいろいろと支障を来たさないように、それの準備をすでに完全にやっておる、このように解釈をしていいのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  238. 小野裕

    ○小野政府委員 米軍が日出生台の十文字原の演習場を再度使うということになりましたのは、一昨年、三十七年の十月に再提起したわけでございます。その後、その演習場に至ります途中の上陸点、進入路、このことにつきまして、昨年の夏であったかと思いますが、春だったかもしれませんが、昨年になりまして、別府市その他関係のところと御相談をいたしまして、関の江海岸という別府市の海岸を上陸地点にお願いをする、その地先の水面は停泊区域ということでお願いする。さらに演習場に入る道につきまして、私のほうでお手伝いをして市道を改修していただく、こういうことになりまして、その準備は済んでおるはずでございます。
  239. 二宮武夫

    二宮分科員 おっしゃるとおりに全部準備は終わっておるわけでございます。ただ問題は、先ほどの危険感がなお去らないということと、同時に、いまいろいろな補償やあるいは立ちのき、その他の折衝は具体的に進められておるということでございますから、これはひとつ慎重に、先ほど申し上げましたように、たとえ一戸であろうとも、自分の権利が侵される、こういう状況でその問題を強引に多数決で押し切ったり、無理なことをするということのないような話し合いをぜひしてもらいたい。それができない限りは、その問題についてはなかなか話を進めるわけには、決着をつけるわけにはいかぬだろう。そういうことになりますると、これに対する県あげての非常に強い抵抗があるということを、ひとつ十分腹の中に入れて今後の問題を進めてもらうように、ひとつ要望いたしておきたいと思います。
  240. 植木庚子郎

    植木主査 次に、田中織之進君。
  241. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 時間の制約がありますので、いろいろ尋ねたいことがありまするが、大きく分けまして二つの問題について伺いたいと思います。  最初に、実は自衛隊の中で、古い封建時代の身分差別の問題が再燃してきておる問題についてお伺いしたいと思うのであります。私もはっきり記憶いたさないのでありますが、いまから七、八年前に、実は群馬県のある未解放部落の青年が自衛隊を志願いたしましたところ、その青年の兄さんが私が全国書記長をいたしております部落解放同盟の役員をしておりました。差別は今日の時代にきわめて不都合な人権侵害の問題であるということで、日本人としてどこに違いがあるかという立場に立ちまして、私ども憲法で保障された国民平等の考えを貫く運動をやっておるわけでありますが、その群馬のある地区の役員をしておるということで、その青年が結局自衛隊へ採用にならなかったという問題がございます。私これも国会で、たしか法務委員会だったと思うのですが、一度取り上げたことがあるのでありますが、その後実はしばらくそういう問題を聞かなかったので、ここに教育局長もおられるようでありますが、われわれはこれは軍隊と変わりのないものだと考えておりますけれども、そういう問題は今日の新しい部隊の中では十分取り上げられておるものだというふうに理解をいたしておったのであります。たまたま昨年の十一月の末だったと思うのでありますが、和歌山県の出身の信太山の連隊の二等陸曹でありますが、名前も申し上げていいと思いますが、舟中菊雄君というのが夜分私を突然たずねてまいりまして、ここに持ってきておりますけれども、原稿用紙約五十枚にわたりまして、六十一件にわたる部隊内における差別言動の問題を取り上げて私に、こういうことで実に不愉快な思いをしているだけでなくて、ある意味から見れば、中隊長以下この問題が出てまいりましてから自分に自衛隊をやめろと言わぬばかりの、俗にいう村八分というか、そういうような仕打ちをいたしておるのだ、こういうことの要請があったわけであります。ところがこのことにつきましては、本人はかなり悩んでおったわけでありますけれども、同時に、これは隠しマイクというと問題になりますけれども、携帯用の録音機で、これは自分にひどい差別が行なわれているということに気づいたときからの録音を、テープでその大部分のものをいたしました。私ごく最近まで持っておったのでありますが、先月の末に本人がそれを師団のほうへ出したいということでございましたので、これを本人に返還をしておるわけであります。同時にまず連隊本部に対して、こういうことが行なわれておるが不都合ではないかということで、自衛隊の隊員の服務に関する規則に基づいて上申書も出した。ところが部隊の中ではかばかしくないので、提出をした日時はわかりませんが、十二月の末には師団の監察のほうにも、この問題の報告をあげておるようです。本人がそういうことで部隊内部でこの問題を取り上げるということについての手順を追うておるというので、実はこの問題については部落解放同盟の本部に、言うてみれば提訴のような形で出てまいったのでありますが、成り行きを私の立場で実は見守っておったわけです。そういたしますと、このことがたまたま、和歌山県の中に同和委員会という部落問題を取り上げる、県に直属するところの機関がございますが、そこが入手をいたしまして連隊と交渉を始める、そういうようなことから外部に漏れてまいりましたので、一月二十日過ぎであったと思うのでありますが、福田長官にまで、こういう問題が起こっておる、しかも部隊内部の問題を外に出したということで、本人を自衛隊からやめさせる、こういうような動きがあるやにも聞いておるのでありますが、こういう問題で、部隊内の問題を外に出したということでもし自衛隊をやめさせるというような問題になれば、それこそ重大な政治問題になるということも付言いたしまして、この事件の申し入れを長官にいたしておいたのであります。その後陸幕長を通じましてお調べになっておるということの連絡はございましたし、私が付言をいたしました、本人をこの問題をうやむやにして自衛隊をやめさせるということはいたしませんという確約は、長官からいただいてきておりますが、地元の部落解放同盟の支部も取り上げまして、また信太山連隊の所在地の町も、これは部落の関係の町でございまするが、隊員の中には町全体に差別的な考えを持っておる。この事実は私のところに持ってまいりました報告書の中にもございますけれども、かなりひどい。間借りがほかの地区より安いのだ、安いはずなんだ、町全体がこれはいわゆる米解放部落だ、こういうことで、ああいうところに間借りができるか、こういうようなこともありますので、この町自体もこの問題を取り上げまして、いまそれぞれの関係団体で真相調査等に乗り出しておるのであります。具体的な事実は時間を省略する意味で申し上げることを差し控えたいと思うのでありますが、この問題について防衛庁当局として調べられて現在どのような報告が出ておるのか、これをどういうように処理される考えであるか、まずその点を伺いたいと思います。
  242. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ただいまお話のありました信太山の普通科連隊の問題でありますが、昨年の十二月十四日に第三師団司令部に文書で本人から異議の申し立てがありまして、さらに大阪府の和泉市の人権擁護委員会にも文書をもって異議の申し立てをしたようでございます。先月の下旬に田中委員からのお話もございまして、さっそくその日に防衛庁に帰りまして陸幕長を呼び、もしそのようなことがあればゆゆしい問題だ、直ちに真相を調査して報告するように命令いたした次第であります。その調査の報告を聞きますと、いろいろ数十の項目を本人はあげておられるのでありますが、具体的に明瞭な差別待遇をしたという画然たる事実はなかなかないというような報告であります。ただ本人と隊員との間のトラブルの結果、何だか差別待遇したような印象なり誤解を与える点は確かにあった、私はそういうこまかい文書をもっての報告を最近受け取りまして、とりあえず田中委員に対しましては、いまお話のとおり、外部に申し立てをしたからといって、本人を処罰的な処分に付するとか、あるいは自衛隊をやめさせる、そういうことは全く私ども考えておりませんし、幕僚長を通じまして連隊長に十分注意をして、この点ははっきりした返事を得て、とりあえず御返事申し上げた次第でございます。このことは、自衛隊精神から申しましても、またいまの憲法下の民主的な自衛隊のあり方からいっても、各自衛隊員の人格の尊厳あるいは団結、融和が、自衛隊員としての一番大事な問題でありますが、これに欠くるような言動がもし一部にある場合には、ゆゆしい問題である、今後慎重に、また厳密に各隊員に徹底せしめるように、口頭では不徹底でございますので、具体的に詳細な文書をもって陸幕長から現地部隊に警告し、訓辞をするという考えをもちまして、案もできましたので、一両日中にこの文書を現地の部隊長あてに発送する手はずに相なっております。
  243. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それでは、長官いかがですか、本人は私の手元にも六十一の項目にわたりまして、大体の日付を入れまして、それから関係者の名前もそれぞれ入れて、事実をあげてきておるのでありますが、これらの問題について、現在まで陸幕長を通じて調べられました関係から見て、本人と隊員との間のトラブルから、何かそういうふうに思われる、あるいはとられる本人がとるような言動があったかもしれない、そういうような実情だと、長官なり自衛隊の上層部は見ておられるのか。本人から私のところにまいりましたものにつきましても、住所、生年月日まで入れまして、ごらんのように本人の捺印をいたしまして持ってきておるものでございます。私どもは、この本人の申し立てが現実に信太山の連隊で事実としてあった問題だ、このように考えて、したがいまして、陸幕長からどういうことを下部へ通達をされるか、それは後ほどでも伺いますけれども、そういうことの前に、こういう本人が申し立てるような事実があったかどうかということの確認の上に立たなければ、この問題が隊員の人権侵害の不都合な問題だ、憲法に違反する問題だ、そういうものを隊員が、意識、無意識の点は別として、行なっているのだという事実認識の上に立たないことには、私は今後この種の問題の絶滅を期するという方策は生まれてこないと思うのでありますが、事実の認定の点についてはいかがなものですか。
  244. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 六十一項目と申しますか、各点にわたる具体的な事実につきまして、現地の部隊も連隊長を中心に、陸幕長からの命令でございますので、詳細に実は回答をよこしております。その報告を見ますと、先ほど申したとおり、本人の思い違いも相当含んでおる、ないしは誤解も確かにあるようでございます。しかしこれは文書による報告でありまして、御指摘のようなことは絶無だということは、私は言い切れないと思います。先ほども申したとおり、苦情が出たこと自体が私は重大である、したがって、むしろこれを転機とし、今後徹底的に、こういうような封建的な、いまの時代に考えられないようなこと、同時に、自衛隊としての基本的な教育方針にも背反する問題でございますので、文書をもって十分徹底さしていきたい、こう考えております。  なお、細部につきましては、政府委員から報告いたさせます。
  245. 小幡久男

    ○小幡政府委員 部隊の本件に関する調査の経緯を申し上げたいと思います。  十二月十四日に第三師団の監察官あて申し立てがございまして、師団長から連隊長に対しまして、事が重大であるので、指揮系統を通じて深甚なる配慮をもって調査するようにという指示がありました。連隊長はそれを受けまして、まず所属の中隊長、小隊長を呼びまして事情を精査しております。なお、連隊長はみずからも、御本人の要求によりまして親族会議の席へもあがりまして、自分が聴取した状況あるいは部隊内でそういう差別があったかどうかという点につきまして説明を申し上げております。  それからなお、先ほどお話がありましたように、本人からは六十一件、人数にいたしまして六十三名の名前が出ておりますが、これにつきましても指揮系統を通じましていろいろ精査をしておりまして、現在までのところ、先ほど長官からもお話がありましたように、書面にあらわれたところでは明白なことはないようであるという中間報告を受けておりますが、先ほど長官のおことばにありましたように、そういった誤解を与えるような言動がそれでは絶無であったかどうかという点につきましては、われわれも一まつの不安を持っておりますので、この点は十分今後注意いたしまして、いささかもそういうことのないように指導していきたいと思っております。
  246. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 長官並びに人事局長答弁では、本人があげてきておる六十一の事実については、これは当事者は、録音に出てきておる関係で、その発言者がだれであるかということ、これは部隊の人でなければわからぬと思います。最後は録音で確認をしなければならぬようなことになるかもわかりませんが、私はやはり、自衛隊の内部の情勢はわかりませんけれども自衛隊の仕組みから見れば、この問題についての事実は出てこないのではないか、こういうことを私は心配するのであります。  二、三あげてみますと、一番最初の事実は昨年の三月二十五、六日ごろ。本人は三十八年の三月十六日付で信太山連隊に配属されたものでございますが、「三月二十五、六日頃の事、昼休みに舎前にいた時、情報小隊長藤井正年二尉に誰かが、何事かを囁いた。藤井二尉、私の方をチラッと見て、わからんもんじゃなあ、あゝ恐い恐い、」あと、ことばが続いております。六十一の事実の一番書き出しがそれです。  二番目が四月です。日にちはわかりません。「二曹宮永幸徳、三曹徳永基次と私、衛生資材庫兼事務室に於て、徳永三曹、突然によんちゃん気にしだしたら、やれんなあ、宮永二曹と呼びかける。やれんなあ辞めたくなった。宮永二曹、面白くなくなるの、辞めよう、辞めようや、皆も辞るじゃろ、」この「よんちゃん」というのはいわゆる部落民のことで、いわゆる人間外の人間だということで、指四本を出して、やつは四つだということ、部落民だということの蔑称の一つでありますが、そういうことが三つ目に書いてあります。  それから三番目が「四月衛生小隊の実務訓練の日」の問題でありますが、これには「治療室で沢村重男三曹、清弘士長、岡崎士長、永富三曹、藤沢技手らと消毒器の電熱器を囲んで雑談の際、沢村三曹の持出した話は八坂の話、八坂ええとこやで物は安いし親切やし、いやほんま、わしよっぽど八坂に家借りようかと思ったかわからへん、今の家みてみいボロやし穢いし家賃は高う取りやがるし、八坂に行けばな、一戸建が三軒あるやんけ新品やで、便所、炊事に畳の間が二間か家敷は広いしせんだいもあるで、家賃が二千五百円位い云うてるけどあれゃ四つやって聞いたら誰も入りよらせんぜ、」八坂も未解放部落なんです。「宮さん居らんな、宮さんの母ちゃんもエッタと違うか、うちの奴にきいたら何やら、らしいぜ、えらい激しいらしいわ、八坂のおばさん連中も勝てんらしいわ」これが三番目の事実です。それからあとずっと書いてあるのでありますが、中には、東富士か何かで演習をしたときに、たまたま消毒薬の噴霧機がこわれた。それで、それを本人が、差別された畠中君が修理したようです。これは十一月の十日です。東富士演習場で動力噴霧機が故障し、本人が時間をかけてやっと修理が終わったときのことです。ちょうどそのとき宮永さんと永富三曹がかわりの噴霧機を持ってきた。このときの情報小隊長藤井二尉がかけてきて、「お前ら遅かった、四つ奴、とうとう直しよった」と言ったことに対し、隊員が「あまり大きな声で言うと聞こえますよ、」と注意したのに対し、「四つは四つやないか、お前等もう少し早く来てればな、お前みたいなもん間に合わんって頭から一発かましたる気でいたんや、文句ぬかしおったらやめちまえって言ってやる心算でな、」と声を一きわ大きくした。あまりのことに本人が抗議すると、大声で、何と言った、変な言いがかりをつけるなとどなりつけ、ものも言わせないけんまくであった。これはやはり十一月の十日ですね。東富士の演習場のできごとなんです。しかも、ただ行き過ぎの問題ではなくて、本人が消毒薬を管理しているもので、取りにきたときに、たまたまその噴霧機がこわれているというので、本人が時間をかけて直したところが、ほかの者がかわりの噴霧機を取りに行って、もう新しく持ってきたものを使わなくてもよかったという具体的な事実の前にとりかわされたことばがこれなんです。この六十一の事実の一番最後に、本人が「十一月二十五日に休暇を申し出た。中隊長に呼ばれた。中隊長は頭から、退職を前提としている者にはそのようにしているが、どうなんだ。五日からあいばの野営がある」こういうことで、これは本人にとれば、いわば本人が休暇をとるということは、もうお前は隊にいたたまれなくてやめれという意味なのか。いや、五日の野営までに帰ります、ということで本人は休暇をとったということで、「右のとおり、事実に相違ありません。昭和三十八年十一月二十五日」と、ちゃんと部隊のことを書いて、本人が捺印して、先ほどお見せしたように書いてきているのです。したがいまして、私はテープの録音は聞いてはおりません。しかし、後半の事実はほとんど録音テープにおさまっていると思うのです。したがいまして、上級機関からの調査では、そういうことを言ったということでなしに、多勢に無勢ですから、結局やはり畠中の思い違いで本人がそういうように受け取っているのではないか——ども何十年この運動をやってきておりますけれども、多くの場合、結局そういうことで水かけ論になるのです。しかし、そういうことのために、結婚して子供ができておっても、その婦人の出身地が部落であったということで嫁いじめのひどい扱いを受けましたために、子供を置いて、あるいは子供と一緒に自殺したというような悲惨な事実が、近年においても毎年二、三件出てきているのです。そういう意味で、たまたま本人は結婚するときに、部落の出身であるということをはっきり所属長に、これは北海道の部隊におったときだそうでありますけれども、申し上げているそうです。その意味で、やはりたれかが不注意に、畠中は部落の出身だというようなことを漏らしたことが、結局隊員の間に伝わって、あたかもそれがまるっきり異民族か人間外の人間のような扱いを部隊員の中で受けるような結果になったと思うのであります。せっかく答弁がありましたけれども人事局長長官の下部から上がってきている報告を私は信用するわけにはまいらない。この問題は、きょうは予算に関連してですが、これは部隊の団結にも——今後自衛隊の隊員の中にもやはり部落出身者が当然入っていくことだと思うのです。そういうことで、自衛隊の構成にも響く問題です。もしそういうことで、この点について明確な方針が出されないということになりますれば、少なくとも私ども関係している団体から、自衛隊に入ることはやめようじゃないか、こういうことをわれわれの団体が提唱して、そういうような空気が出てまいりますれば、それでなくても定員を確保することが困難な状態の中で、一体長官、どうされますか。私はこの問題だけを伺う考えではございません。こういう封建的な身分差別についてどうお考えになっているかということからお伺いしなければならぬと思いますけれども、この点、下部から上がってまいりました調査報告は私信用することができない。やはり畠中君の申し立てている事実はさもありなん、こういう考え方の上に立っているのでありますが、その状況をさらに徹底的に調査されるお考えがあるかどうか。聞くところによれば、師団の隊員諸君は御存じないかもしれませんが、部隊の中に何人かの新しいというか、師団司令部関係の者を相当長期にわたって居住させて、隊員の実際の言動を調査されておるやにも聞いておるのでありますが、これはゆゆしい問題だと思うのであります。今後の自衛隊の存立の上にも大きく響いてくる問題だと思うのでありますが、事実をやはり、本人の思い過ごしかもわからぬ、あるいは何か本人にトラブルがあって、そのときたまたま出た言動だ、こういうふうに見ておられたんでは、今後こういう問題の絶滅を期するということの対策が生まれてこない、こういうふうに考えるのでありますが、徹底的に事実をお調べになるお考えがありますかどうか、重ねてお伺いをしたいと思います。
  247. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 最初にお答えいたしましたとおり、あるものはいわば誤解に基づくものも十分考えられます。しかし絶無とは言い切れないので、私自身が現場におりませんし、報告でございますので、御指摘のとおりの点もあるいは残念ながらあるかもしれぬ、そういう場合はゆゆしい問題であると考えます。自衛官の心がまえは四つの柱を基幹といたしておりますが、そのうちの一つの柱は、人格の尊重と団結融和の問題、精強な部隊をつくるためにも、まず融和し団結することが最大の前提でございます、そういう場合に、現在考えられもしないようなそういうばかばかしいことが一部でもあるとするならば、私はとうていこれは等閑視し得ない問題であろうと思います。せっかくの御指摘で、具体的な例もおあげになりましたが、さらに本日具体的に再調査と申しますか、十分によく調べ、むしろ私はこれをよい機会に、先ほど申したとおり、そういう封建的な、時代錯誤的な考えを一掃せしめなければならぬ。そこで、口頭でなく、文書で全連隊長あてに陸幕長からも出すように手配をしたということは、先ほどお答えしたとおりであります。今後も、苦情が出たということ自体非常に残念な、遺憾なことでありまして、むしろこれを逆に活用し、転機として、今後こういうようなとうてい考えられないばかばかしいことを一切起こさないように十分戒めまして、今後とも注意し、教育いたしてまいりたいと考えております。
  248. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 いま長官が再調査を約束されたので、調査の結果を私期待いたしたいと思うのでありますが、私はこの際事実を認められて、その部隊はもちろんのこと、全国の自衛隊員に今度の問題の真相をやはり上部から積極的に流すべきだと思うのです。隊員の中にはもちろん、かつてそういうことを言われた部隊の出身者も多少おるかもわからぬ。しかしそれは間違った過去の制度の所産であって、今日、民主憲法のもとにおいて、そういうことはあり得べからざることだ。たまたま起こった問題を契機といたしまして——私はこの問題は、そっとしておいてなくなる問題ではないと思うのです。きのうもこの分科会で、法務局の人権擁護委員諸君がやはり、そっとしておいたほうがいいだろうと言った。きのうの速記録をごらんになったらわかると思うのでありますが、部落というものは、部落民が自分らが差別されるようなものを内包しているから、対外的に何か団結して、相手に恐怖感を与える形でやっている、したがって、この際部落を幾つかに分散させる以外に差別問題はなくならないのだということを言われる。法務局の下部で仕事をやっておられる人権擁護委員諸君に、たまたま同和問題についてのアンケートを求めたら、そういう意見が出た。それを法務局がそのまま外部に発表したために、私はここで取り上げたのであります。したがいまして、私は隊員の中には、まだこういう問題についての理解の十分でない者も私はおると思う。こういう問題を契機として、それはかつての誤れる社会の遺産が今日でも受け継がれているのだ、しかしそれは断じて許さるべきものではないんだという立場に立って、私は隊員のお互いの自覚と友愛心を呼び起こすような処置を積極的にとること以外に、この問題の解決はないという考え方の上に立っておるのであります。陸幕長から各師団、連隊に出される通達がどういう内容のものであるかは、後ほどできればそれを見せていただきたいと思いまするが、今後の対策の問題といたしましては、そういう御処置を積極的にとっていただかなければならぬ。これはまた、先ほど横路委員からたまたま化学兵器の扱いの問題で、教育局長あるいは前の杉田校長方針で、非常に反共的なそういう形に自衛隊を訓練し教育することの基本方針をつかれた問題が出ておりまするが、私は、長官がいま言われるような自衛隊の存立のためにあなた方が貫いていかれようとする教育方針の中には、この問題を位置づけていかなければならないと考えるのであります。この点は念を押すようでありますが、再調査をやられて事実をはっきりとらまえた上に立って、私が申し上げたようなことも、今後の絶滅を期するための一つの方策ではないかと思うのでありますが、この点についての長官の所見を伺いたいと思います。
  249. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先ほどお答えいたしましたとおり、むしろこれを契機として、好機として、そういう不祥事と申しますか、とうていいまの時代では考えられもしないようなばかばかしいことの起こらぬように、今後も十分教育方面を徹底さしたいと考えます。  なお、陸幕長から発出いたしまする文書につきましては、写しをさっそく田中委員にお届け申し上げます。
  250. 植木庚子郎

    植木主査 ただいままで田中委員の取り扱われました問題に関連しての質疑を許します。辻原弘市君。
  251. 辻原弘市

    ○辻原分科員 ただいまの問題につきまして、私も事が自衛隊の内部で起こった問題だけに、これは非常に重要な問題だと考えて、あえてただいま田中委員質問に関連をいたしまして、二、三お尋ねをいたしておきたいし、また意見も申し上げたいと思うのであります。  特に私は、ただいままでの自衛隊としてのこの問題に対する処理のしかたについて、かなり詳しく現地なり関係者から聞いております範囲から見て、非常に不満に思っておるのであります。たとえば一つの問題は、大体これは旧軍でもそうでありますが、自衛隊という組織の中の社会というものは、一般社会とは違って特殊なものがあろうと思う。指揮命令系統からいうと、師団が一つの単位でありましょう。旧軍であれば、その師団内で起きたことは最終的にはおそらく師団長の責任、こういうことに発展をして、いわゆる責任のための処置をみずからとらなければならぬ。こういうことになっておったと思う。現在の自衛隊の組織からいきましても、指揮命令系統から推せば、やはり最終的には私はそういうことになるのじゃないかと思う。あげてその内部でこの問題を処理しておるということになれば、勢い問題は外に出すな、くさいものにはふたをしろ、なるべくそれぞれの長が責任を回避するような方向に問題の処理が向かうことは、客観的に見れば常識です。長官のただいまの御答弁によれば、相当認識を持たれて、事は重大であり、この問題の処理は慎重にやりたいし、将来絶滅を期したいとおっしゃられておるならば、何で当該師団だけに問題をまかして、事実の調査あるいはそれに対する問題の取り扱い等を今日までほうっておいたかという問題がここに残ると思う。単に命令という指示によってその調査を命じたという形でなくて、直接陸幕なら陸幕からこの問題についての客観的な調査をやらなかったかということが、私は一つの問題だと思う。もうすでに調査の結果にあらわれておりますが、本人の手記あるいは本人の録音、これはすべて本人の意思によって本人が書いたものでありますから、第三者が見れば、あるいはその中に名前の出ておる当事者が見れば、あるいは記憶の薄れておる問題があるかもしれぬが、しかし私は、こういう問題の場合には、本人の申し立てというものはおおむね正確だという従来の経験を持っておる。そういう意味から推して、ほとんどそれらしき事実がないなどという調査が出てくること自体に、問題があると考えておる。こうした問題は、部隊教育の重要な問題ではありませんか。長官もさっき言われた。なれば、何で所管をされておる教育局なら教育局がこれについて、今後の教育に対して是正をしていかなければならぬ重要な問題として、直接の調査をやらなかったか、まことに私は遺憾だと思う。それについてまずお伺いをいたしたい。
  252. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先ほどお答えしましたとおり、この事件を知りましたのは一月の下旬でございます。田中委員からそういう御指摘がありまして実は驚いたわけでありまして、さっそくその日に幕僚長その他にそういう事実はあるかと聞いたところ、実はそういうことはございますということで、さっそく調査をして報告を出すようにと言ったわけでありまして、決して放任しておったわけではない。特にまた田中委員からも御注意がありまして、外部に苦情を申し立てたからといってこれをやめさすとか、あるいは処罰する、そういうことは絶対困るという点も明らかにいたしまして、これは直ちに報告がございまして、そういうことは断じていたしません。むしろ、いづらいとか、いろいろの点でもし本人が希望するならば、ほかの部隊への転属も喜んでお世話したいというところまで実は話をしたわけであります。決してほうっておいたわけではなし、同時にまた、先ほど来繰り返し申し上げましたとおり、今後はこれを契機として、徹底的な教育といいますか、本来あるべき自衛隊教育方針にそむかないように厳重に注意いたしたいと考えております。
  253. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私がお尋ねをしたのは、なぜ本部として直接の調査をおやりにならなかったかということを申し上げたわけです。だから、長官お話なさったことは、問題を聞いたのは一月だったから、それ以後はできるだけの処置をしたということなんだけれども、私の聞く範囲によると、それは師団内部におけるいわゆる事実確認の調査であって、本部としてこの問題を直接処理しようというような形には動いておらない。そこに私は一つの問題があると言っておる。だから、その調査というものは、なるべく問題が広がらないように、なるべくふたをしてこれを公の問題にしないようにという方向で処理されつつあるということが、関係者一同を憤激せしめている原因であります。それだからこそ問題は刻々広がり、あくまでこれにふたをしていこうという態度であるならば、徹底的にこの問題を追及しなければならぬ、こういうことで、問題は、起きた信太山の内部だけの問題ではなくて、居住地に発展をし、さらに信太山の周辺にまで広がり、場合によると全国的な問題にもこの問題は発展しかねない形勢に今日ある。はたして一体師団のそれぞれの責任者あるいは陸幕の責任者の方々がそれほどの認識を持ってこの問題に対処されているかということを私は疑う。だから、あえて本部としての直接の調査ということを私は申し上げた。その点は一体教育局長どうなっておりますか。おやりなすったのですか。
  254. 小幡久男

    ○小幡政府委員 お答えいたします。  ただいま長官からも申し上げましたとおり、陸上幕僚長に直接長官から指示せられまして、陸上幕僚長はそれを受けましてある種の指示をしております。調査を厳重にやれ、また教育もこういうふうにやれという指示もすでにしております。なお、方面総監という、師団長よりもう一つ上の方もおりまして、方面総監と連絡をとりながら師団長はやっておりますし、幕僚長は十分事の成り行きをトレースしながらこの調査が行なわれております。また、今週の金曜日には師団長が上京してまいりまして、幕僚長に直接その結果を報告することになっておりますので、事態は事実上は幕僚長がみずからトレースしながら調査をしておるというような特殊な措置をとっておる次第でございます。
  255. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私は、そういう形においてどういう措置をとられても不十分だと言っておるのです。部隊のそれぞれの責任とは問題を切り離した形において客観的な調査をおやりにならないと正当な結論は出ないと申し上げておる。だから、これはどこの所管かは知りませんけれども、少なくともそういう問題が起きておるのですから——たとえばそれが師団長であろうが、方面隊の指揮官であろうが、最高責任者であろうが、やはり自分の隷下部隊の中で起きた問題については徹底的にそれを究明していくという方向をとらないじゃないか、現在そういう動きがあるのです。だから、そことは切り離した形において本部で直接これに対する調査をやりなさい。そうしなければ、おそらくこれは納得のできる結論は出ないと思うのです。おやりになる御意思がありますかどうか、長官にお伺いをいたします。
  256. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは自衛隊としてやはり指揮系統、組織の問題もありますから、従来のいろいろなやり方もあろうと思います。ただ、御指摘の、単なる隊内の規律問題ではないという御意見に私は同感でございますから、場合によりましては、この方面に対する権威と申しますか、よくわかった者を中央から出、張さして現地を見る、あるいは調査する、客観的な立場から見ることも確かに一つ方法であろうと思います。検討させていただきます。
  257. 辻原弘市

    ○辻原分科員 検討をし、そういう方向で調査をおやりになるということでありますから、ぜひお願いしたいと思います。それはあとに指示、通達を出すとおっしゃっておるが、こういうような一つの部落差別、いわゆる人権差別という問題について十分な認識を持たれなければ、事後の処理はできない。だから、そのためには、本部で指示を起案される方々、問題の処理に当られる方々が、まず問題の全貌を、単に知るということでなくて、深く認識をした上に立って今後の事の処理を進めていただかないと意味がないということを私は申し上げておるのです。先ほど田中委員から、まず事実の確認だということのお話がありました。まさにこの問題としては事実の確認が前提でしょう。しかし、長官もおっしゃられたように、もはや、あのときにこう言ったじゃないか、このときにこうはおれは言ってないというふうな話ではなくて、そういう雰囲気の中にあったことはもう間違いもない事実なんです。そのことが根本的に問題なんです。だから、そういう本人がいたたまれないような感情にかり立てられるという雰囲気を払拭するためにどうするかということが、これからの問題の処理なんです。往々誤まれることは、差別言辞を弄した、うっかり言ったというたならば徹底的に糾弾されるぞ、それがこわさにひた隠しにする、それが内攻して人権差別というものが温存される、これが一番いけないのです。そうでなしに、言ったことは言った、おれの内部にそういう差別的な気分があったことは、おれの人権に対するものの考え方が誤まっていたのだという、自分みずからの心を改造するという教育にこれが発展しないと、単に通達を出す、単に、言ったことはけしからぬ、そういった形式的な処罰とか形式的な譴責とかということで事済む問題でないところに、事の深刻さをわれわれは考えておる。だからここでお願いしたいことは、通達を出されることもけっこうでありますが、同時に、今後の教育の中にこれをどう取り入れられていくか、このことを私は承ってみたい。ただああいう問題があって、それについてはかくかくの処置をしたという、その場限りの処置をもしおとりになるということならば、私はそれによって今後の効果を期待することはできない。だから、大きな自衛隊としての教育の中に、かかるいわれなき差別、いわれなき不当な人権侵害というものをなからしめるための教育というものがやはり必要であろうと思います。いろいろ数十年にわたって運動が続けられ、教育の面においても、同和教育あるいは責善教育、あるいは融和教育、いろいろな名前で呼ばれてきましたけれども、とにもかくにもそれらに対する認識、それらを自衛隊の中においても積極的に取り上げて——今日ある人は、寝た子を起こすようなことをしてはいかぬ、こういうことを言っておりますが、それが長い歴史の過程の中に依然として温存されるような原因をつくっておる。そうではなくて、積極的に問題を解明していく、そしてそれぞれの隊員の心の中を改造していくという積極的な教育を取り上げないと、これが本質的な解決にならないわけでありますから、通達を出されることもけっこうであるが、同時に、今後のこの問題に対する教育方針というものを明らかにしてもらいたいと私は考えます。幸いさっき横路君の質問の中にも、自衛隊指揮官の心がまえ——同時にこれは隊員としての心がまえということもあるであろうと思う。そういう中にこの種の問題に対する徹底した教育というものを具体化して取り入れるということでなければ、問題の処理はできない。究極のところはそれなんです。だから、今日この問題に関係する関係地区の方々は、憤激すると同時に、最後的な要求としては、このことを自衛隊の中で取り入れて、そしてみずからの心の中を改造することによってかかる不祥事の発生の絶滅を期する、これを期待しておる。問題の認識について、把握のしかたをお間違いのないように私はしていただきたいと思います。いま即刻ここでどういうぐあいに取り入れるということはお答えになれないかもしれません。しかし私は、本部の調査ということを申し上げ、同時に、いまこのことを申し上げているゆえんのものは、この問題を契機として自衛隊内部に具体的なものを確立していただきたいために申し上げておるわけなのです。ひとつ長官あるいは所管の局長からこれについてお答えを願いたいと思います。
  258. 小幡久男

    ○小幡政府委員 ただいまのお話は非常に感銘深くお伺いいたしました。自衛隊は、御承知のように生死をともにする団体でございますので、当然、そういう面からいいましても、同志的結合ということがまず何よりも必要な場所でございます。いまおっしゃいましたように、問題を隠さずに表現に出して積極的に教育するということが妥当であるならば、またそういうことで検討したいと思っております。
  259. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私の申し上げたもう一点は、いまのお答えではちょっと不十分であります。それはやはり問題が起きておるのですから、今後なからしめるためには、この問題があったからけしからぬ、こういうことを引き起こさないようにと口先で言うただけでは、絶滅を期せられる問題ではないと言っている。だから自衛隊教育方針自衛隊のいわゆる具体的な教育方法の中にいかようにこれを取り入れていくか、いかようにこれを扱っていくかということが、今後の私たちの注目している点なんです。だから、そういう心がまえをお持ちになっておるかどうかということをお尋ねしておる。
  260. 小幡久男

    ○小幡政府委員 先ほど申し上げました意味は、そういう意味で申し上げたのでございますが、少しことばが足りませんので、補足したいと思います。  たとえば、人権の教育というふうなものを徹底的に推し進めて、隊員相互間に何のわだかまりもないという境地をつくることが、同志的結合の基本であると思っておりますので、そういう中にそういう問題も具体的にはめていって、それが妥当であるならばそういうふうにしたいということを申し上げたわけであります。
  261. 辻原弘市

    ○辻原分科員 最後に、ここで私が私の具体的な意見を申し上げる段階でもまだなかろうと思いますから、それは差し控えますが、いまあなたがお答えになった、また長官がお答えになりました点は私もしかと覚えておいて、そうして今後この問題の処理、この事件の処理だけではない、こうした人権差別の問題に対する自衛隊の処理方針ということについて私はしばらく推移を見てあらためてお伺いをしたいし、また意見も申し上げたいと思います。どうぞ、先刻長官が田中委員並びに私にお約束をされましたことは、事件処理のためにも、また自衛隊のためにも、同時にまた、多くのいわれなき差別のために苦しんでいる人たちのためにも、十分問題を認識していただいて、そうして具体的なことについては実行していただきたいと思います。そのことを最後に要望いたしまして、私の関連質問を終わります。
  262. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 最初にお断わりしましたように、もう一つの問題について伺いたいと思います。これは艦船のうちでも特に潜水艦に限って伺いたいと思うのです。  最初に伺いますが、現在海上自衛隊で持っておりまする潜水艦は何隻ございますか。先ほどちょっと伺いますと、就航しておるのが六隻ということでございますが、それは何トン程度のものかということ、それから本年度の予算にも、三十九年度の潜水艦建造関係として、初年度の六億六千六百五十三万六千円の予算計上がございますが、このように建造中のもののトン数と隻数をまずお答えをしていただきたいと思います。
  263. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 現在海上自衛隊で就役しております潜水艦は六隻でございます。そのうちの一隻が米国より貸与を受けたものでございまして、千五百二十五トンであります。次は「おやしお」型千百トン一隻、「はやしお」型七百五十トン二隻、「なつしお」型七百八十トン二隻、以上が就役をいたしております。現在建造中のものは、三十六年度の千五百トンのものでございます。これは四十年三月竣工の予定であります。それから次は三十八年度千六百トン一隻、これは現在相手方と契約価格について折衝中でございます。それから三十九年度予算要求中のものとしましては、千六百トンのものが一隻ございます。
  264. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、私も予算説明で集めた数字なんですが、三十五年度の関係は、これはもう就航しておるのでございましょうか。三十八年度の予算で五億四千八百十九万円ついて、これは総額で三十五億九千八百八十一万円余になっていると思うのですが、これは一隻分ですか、二隻分でしょうか。
  265. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 三十五年度は二隻でございます。予算が三十五億九千四百万、これはもうすでに就役をいたしております。  なお、先ほど申し落としましたが、三十九年度の千六百トンのものの予算は、総額で三十九億七千百万円でございます。
  266. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そうしますと、三十九年度に十二億九百七十八万円ですか、ついておる関係は、総額で三十三億余りになりますが、これは何トンのもの何隻分でしょうか。
  267. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 大体潜水艦は四年間の継続費で予算を計上いたしております。したがいまして、いま田中委員の言われたのは、三十九年度のほかに、三十八年度、三十六年度の継続費の三十九年度分が入った金額になるわけでございます。
  268. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これは先ほど述べられた千五百トン型一隻で四十年三月にでき上がる予定だと御説明された分ですか、これは「おやしお」型ですか、型はいかがでしょう。
  269. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 三十六年度千五百トン、それから三十八年度艦が千六百トン、三十九年度艦が千六百トンということでございまして、これはまだ名前をつけておりません。何型ということではございませんが、前の「おやしお」は千百トンでございますので、これより大きい、別の新しい型の潜水艦になるわけでございます。
  270. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そこで、最近のものは、ただいまの御答弁によりますと、やはり三十五億あるいは三十三億というように、相当多額の経費が要っておるのでありますが、私最近入手いたしました新しい原理の水中輸送船という、これは佐藤五郎さんという、戦時中、これは一般には知られなかったそうでありますが、海竜という小型潜水艦の設計を担当した方だそうでありますが、その方が日本国内に発表いたしました、いわゆる翼のある潜水艦の考え方なのでありますが、それによりますと、これは学者というか、そういう設計技術等の専門家で、技術者でありまするから、やはり自分の考え方に相当自信を持っておるわけでありますが、それによりますと、一九五四年に、このいわゆる翼のある潜水艦というものが、小型で出力もよく、搭載力も十分にある、ことに建設費は、大体いま海上自衛隊が建造中の「おやしお」あるいはそれに類する潜水艦の建造費の半分くらいで上がるのではないかということで、計画案を防衛庁へ提出したのだが、ついに今日まで取り上げられていない、こういうことがこの書物の中に発表されておるのでありますが、こういう佐藤五郎氏からの潜水艦建造についての提案を受けたことがあるかどうか、この間の経緯について、あれば、その後それがどういうようになっておるか。防衛庁予算がふえてまいりまするたびに国民からいろいろな意味で批判を受けておるのでありまして、そういう観点から見れば、建造費が現在の約五〇%で上がるのではないかというようなことは、かりに自衛隊の存続を認める立場においても、なぜそれが取り上げられないのかということを疑問に思うのでありますが、この点はいかがですか。
  271. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 お答えいたします。  佐藤五郎氏が提案をされましたのは、昭和三十年から三十二年ごろまでのことでございまして、その間、防衛庁当局に対して、構想についていろいろ説明があったわけでございます。その説明を聴取いたしましたところ、内容について具体的な資料が整いつつあるということでありましたので、防衛庁としましては、三十二年度に二十万円の委託費を出しまして、その構想の取りまとめを委託しております。佐藤氏の提案されました小型有翼潜水艦、これは従来の、いわゆる一般の技術常識を越えた性能をいろいろ述べておるものでございまして、もしこういうような船ができるということになれば、将来非常に参考になるという見地から、いま申しましたように三十二年度で調査委託をしたわけでございます。その後、提出されました資料を検討いたしましたところ、内容は非常に技術的でございますが、おもな点を申し上げますと、第一に、この潜水艦の着想は従来のものとは変わっておりますけれども、本質的には一般の潜水艦と同様であると考えられる。すなわち、特徴としてあげられるものは、浮力と重力とのつり合いでありますが、これは従来の潜水艦と同様にポジティブである、プラスである。また、水中翼の作用についても、従来の潜舵あるいは中舵と同じでありまして、ただ使用法が異なるだけである。それから第二に、この潜水艦の装備品には相当無理がある、提出資料のままで所期の性能を発揮することはむずかしいのではないか。現在技術的に成立している装備品を搭載して従来と同等の安全性を持たせ、実用的に改善したと仮定いたしますと、現在計画中の潜水艦と結局大差のないものになるという結論を持ったのでございます。これは、単にその報告資料につきまして書面審査をしただけではなくて、三十三年度、三十四年度にわたりまして、実際に風洞試験とか、水中の運動性能の試験とか、こういうものを行ないまして、その研究費として約四百万円近くのものを技術研究本部で使用いたしております。そういうような経緯を経まして、現在のところ、防衛庁の潜水艦として採用する予定はいたしておりません。  なお、この佐藤五郎氏は、海竜の設計の補助者だったそうでございます。海竜は、御承知のように旧海軍の特攻兵器として建造されたものでございますが、当時の終戦直前の状況でございまして、実際に動くには至らなかったというふうに聞いております。
  272. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 私が入手いたしました佐藤さんの「新しい原理の水中輸送船」、これは十何年か前にまずアメリカその他二十カ国で発表いたしまして、三十七年に日本で発表いたしたのでありますが、これを「日本に発表するに際し」という序文の中に、こういうことを書いておるのです。原理は私よくわかりませんが、三次元運動体の潜水艦だ、こういうようにいっております。これを日本防衛に最適と思い、一九五四年にその計画案を防衛庁に提出したところ、防衛庁では、実際と反対の実験結果、すなわち有翼潜水艦は抵抗も安定も悪い、こういうように発表して現在の「おやしお」の建造に取りかかったこと、さらに一九五六年にNATOの武器相互援助計画長官のマリス少将が来日した際、佐藤プリンシプルの有翼潜水艦の試作に全額援助をしてもよいと——全額というのは四百万ドルのことであります。言明した際にも、海幕は普通小型潜水艦のかえ玉を提出し、発見され、同時に提出した他の十三種目の研究——これは新しい兵器でありますが、援助申請も一緒に断わられるなどの、全く非常識な前例から、へたに日本に発表すれば、言いわけや反対策動を起こすだけで何らの効果がないと考え、まず諸外国への発表の結果を見てからにしようと思った、こういうことがこの本の二ページに書いてあるのでありますが、こういうような事実があったのかどうか、もしこういうような事実がないのに、たとえ権威のある方であろうと、述べておるということになりますれば、私はやはりこれは多額の国民の血税を建設に振り向けておる立場から、あるいはこの潜水艦の乗り組み員等の海上自衛隊員の生命その他にも影響する問題でもありまするので、これはゆゆしい問題だと思うのでありますが、そういうような事実があったのかどうか。  それから、福田防衛庁長官はまだその当時には長官ではないのでありますが、海上自衛隊の潜水艦建造についてはこういうような経緯があったということをいままでに御存じであったかどうか、この点は長官からお答えをいただきたいと思います。
  273. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 お話の点につきましては、きょう初めて伺った次第であります。
  274. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 この考案の評価につきましては、先ほど申しましたように、技本が中心になって相当の予算をかけて実施をしたものでございまして、その間故意に事実を曲げてやったというような事実はないと承知いたしております。  なお、MWDPの関係でございますが、当時来日したマリス空軍大佐が個人的にどういう興味を持っておったか、これはわかりませんが、公的には、MWDPの項目に加えられるためには、防衛庁サイドを技術的に十分納得させることが必要であるという態度をとっております。これは当然のことでございまして、MWDPが成立しますれば、これは政府対政府の交渉でございますので、そういう態度をとるのは当然なことと思います。なお、MWDPは、結局日米間には締結されておりません。これは相当前から米側から、こういう武器相互援助計画というようなものの締結をしたいという非公式の申し出はあったのでございますが、日本側の受け入れの態勢等につきましていろいろ問題がございまして、締結に至らなかった。そのうちに、アメリカとしましては、ドル防衛という見地もあったと思いますが、新しくMWDPの協定は結ばないということを、一昨年の秋でありましたか、そういうふうに申しております。それで、この右翼潜水艦のためにMWDP自体がだめになった、そういうようなことはございません。  それから三次元運動体理論、これについて本人が特許の出願をしておるようでありますが、これに対して新三菱重工と川崎重工、この二社から異議の申し立てをいたしまして、目下係争中でございます。この両社の異議申し立ての理由というのは、著者の出願の内容は、幾つかの既成事実に照らし何ら事新しいものではなく、特許の価値がない、いわゆる公知の事実であるという点で反駁をしておるようでございます。  以上でございます。
  275. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 時間がまいっておりまするので、あと二点ばかりで私の質問を終わることにいたします。  いま伊藤さんから、特に本人が三次元運動の原理による潜水艦の特許を申請しているようだけれども、新三菱その他から異議の申し立てが出てきておる。私、佐藤氏に、私の大学の先輩でありました半田先生とともに一度お会いしただけで、その後詳しい話は伺っておらないのでありますけれども、やはりそういう新三菱その他現在の潜水艦の建造を担当しておるところと、端的に申し上げるならば、海幕との深いつながりから、この計画が日の目を見ないのだ、こういうところにやはり彼が一つの正義感というか、義憤を覚えて、あえてこの原理を、また防衛庁の潜水艦建造に提案をしたけれども、いれられなかったといういきさつを公にしたのだと思うのであります。私の聞かないその点まで触れられるところに、私はどうも佐藤さんが私をたずねてみえられたときに、やはりこういうものが取り上げられないということについて、いわゆる艦船製造業者ということになりますれば、直接利害関係がありますから、私はそういうようなものが取り上げられない動機になっているのではないかということを考えると、これはゆゆしき問題だということで、私もすでに一年以上も前にこの本をいただいたのであるし、実はこうしたことを国会の場で明らかにすべきかどうかということについて慎重に考えたのでありますけれども、やはり本年度の予算にも新しい潜水艦の建造予算というものが要求せられるということになりますれば、特に私は専門家ではありませんからわかりませんけれども、建造費の面でも五〇%の節約ができるということになれば、なぜこれをとにかく取り上げないかということに大きな疑問を持ったから、あえてこれを取り上げておるのであります。このMWDP、いわゆる武器相互開発援助計画長官のマリス少将、いま伊藤さんのお話では空軍大佐であったということでありますが、そのときには防衛庁のほうでは十四種の新兵器の研究試作援助を申請した、佐藤さんはそういうように述べている。その中に、いわゆるスモール・ウイングド・サブマリーン、有翼潜水艦船を申請するようにこのマリス少将からそういう示唆があった。さらに、MAAG、いわゆる軍事顧問団の海軍部長のジョージ・W・アシフォード少将、この方も、佐藤プリンシプルのスモール・ウイングド・サブマリーンに対してMWDPが一〇〇%の援助をしてもよいと言明されたけれども、海幕は普通型三百トンの小型潜水艦の代案を提出し、これが佐藤君の構想になるいわゆる有翼潜水艦船の計画とは似ても似つかぬものだ、平たいことばで言えばかえ玉であることが発見されて、同時に防衛庁から提案をした十三の新兵器に関する研究試作援助というものもキャンセルされたのだ、こういうようなことが公刊された書物の中に、堂々と署名された中に出ておるのです。しかもこのことはただ単に佐藤さんの一方的な言い分ということではなくて、佐藤さんは非常にこの点を残念がっています。日本でこの新しい原理の潜水艦試作のチャンスを失ったことは、日本として技術的にも経済的にもばく大な損失である。その後アメリカの新しい潜水艦には翼がつき、司令塔も、つくるたびに小さく、自分のプリンシプルが生かされている。この点は、海幕が現在つくりつつあるものの中にも取り入れられつつあるように聞いておるのでありますが、その次にこういう一センテンスがあるのです。「一九六〇年になり、日本防衛庁においても、加藤陽三防衛庁官房長」これは現在の次官であろうと思います。「の理解と支持により、佐藤提案の実験を新しい有能なスタッフの下にはじめたところ、前発表の実験結果と逆のよい結果が得られ、またいままで得られなかった有益な結果が出てきたので、その実験はつづけられている。」この文章にはそういうように書いているのでありますが、先ほど伊藤さんが述べられた点から見て、現に加藤さんは次官としておられると思いますが、きょうは加藤次官がお見えになっていないと思いますけれども、次官と佐藤さんとのそういう折衝過程があったのかどうか、その点は伊藤さんいかがですか。
  276. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 技術研究本部で検討いたしましたのは、先ほど申しましたように三十三年、三十四年を中心にやっておりまして、三十五年度に結果を取りまとめたというふうに承知をいたしております。その後引き続き検討しておるということはないと思いますが、そういう公刊の書物に書いてあることでありますれば、さらに調査をいたしたいと思います。  なお、先ほど私が三次元の理論に関する特許の問題を申しましたのは、御質問の中に三次元のことに触れておられましたので、特許の関係を申したわけでございます。  それからMWDPにつきましては、先ほど御説明申し上げましたように、この問題が発端となって取りやめになったということではございません。先ほど先生言われましたように、もしもほんとうに安くていい船ができるということであれば、われわれこれを採用するのに何らちゅうちょはいたさないわけであります。でありますが、先ほど申しましたように、すでに三十三年、四年と四百万円近くを投じまして得られた結果が思わしくないということで、この方式を採用しなかったわけでございます。ただ、全然これが悪いということではございませんで、中舵及びそのエルロン効果というようなことにつきましては、特定の場合に大いに役に立つであろうというような結論も得ております。そういう点も取り入れていきたいと考えております。  なお、先ほど船の型を申しますときに、三十六年度間はまだ名前がついておらぬと申しましたが、これは私の誤りでございまして、三十六年度は「おおしお」という名前が命名されております。訂正いたします。
  277. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これで私の質問を終わりますが、長官お聞きのとおり、現在まだ防衛庁の次官をやられておる人の名前も出て、あるいは長官がこの書物を御存じなければ、限定出版だったかもわかりませんから私お貸ししてもよろしいと思うのですけれども、原理として書かれている点は私にはよくわかりません。わかりませんけれども、いわゆる「海竜」というのは特殊潜航艇であるということも私は聞いております。終戦時の海軍省担当の新聞記者であった関係もありますので、多少のことは私もなにしておるのでありますが、これはたぶん真珠湾に参りましたのもこれではないかということが推察されるのでありますが、アメリカの海軍では沈んでおるのを引き揚げられて盛んに研究をされた。それが、きょうは質問をいたしませんけれども、たまたまいま問題になっておる原子力潜水艦の原理にも多分に取り入れられているところがあるのじゃないかというのが、設計補助者でありましたか佐藤さんなどの考え方のようです。この書物の表には、そういうアメリカの新しい、特にポラリスあるいは原子力潜水艦の船型のそれぞれの名称が入っておるわけです。  それともう一つの問題は、これはやはり相当な潜航力というか、そういうものにひいでておる。今日、関西のほうには水中翼船というようなものがございますが、いわゆる一般の輸送にも、燃料その他別に原子力を利用しなくともやれる特性がある。そういう点で、ある意味から見れば、これは私賛成するから申し上げるのではありませんけれども日本にはまだほんとうの原子力潜水艦というものがないわけでありますから、そういうようなものがかりに日本の沿岸に近づくというような場合にも、そういう潜水艦が近づくというようなことを、この型の潜水艦によって十分察知する道も開かれるのではないか、ある意味から見れば、おそろしい破壊力を持つ原子力潜水艦というものの対抗的な潜水艦としての機能をも果たし得るのではないか、こういうことをやはり佐藤さんが申されていたと私は思います。私必ずしも、原子力潜水艦に反対する立場にある者がそれに対抗するものを奨励する意味で申し上げておるのではありませんけれども、やはりそういうようなものの存在を、日本の海上自衛隊として研究を進めるということが、これはすでに外国に発表されて、たしか西ドイツでありましたか、この原理が西ドイツの海軍で取り上げられておるやのお話も伺ったのであります。そういう点から見て、これは使い方によりますれば、そういう破局的な戦争への一つの手段として考えられないこともないと私は思うのであります。たまたまそういう意味で旧海軍の関係者から佐藤さんがこの書物を公刊された点は、一般の輸送船というか、そういうものに活用することにしたらどうか、こういう観点からこの書物の記述が行なわれておるようでありますから、そういう意味合いがありますので、それは多少佐藤さんも感情的になった従来のいきさつもあるかもしれませんけれども、私ども多年の予算審議の過程から見まして、防衛庁予算の実施過程から、飛行機の問題にいたしましてもそうです。艦船の問題にいたしましても、やはりそれぞれのいわゆる産業との間の特殊関係というものが結局防衛予算の膨張の一つの理由になっておるのではないか、こういう点を多年の予算審議の過程から痛感するものであります。たまたまこの本を寄贈されたので、読んだ結果、これは私は明らかにしなければならぬというので取り上げたわけでありますから、特に最後に申し上げた一九六〇年に、当時の加藤陽三官房長の関係から、まだ海上自衛隊の海幕の中でこれの研究が進められているんだ。そのあとには軍事用の有翼の潜水艦の設計を発表し、普通潜水艦「おやしお」と比較すれば、この原理の潜水艦と普通潜水艦との理論の差と優劣が一そう明確になるけれども、内外への影響を考慮してその点までは触れないという学者的な、技術者らしい抑制もこの文章の中から見受けられるわけです。その意味で、福田長官はこの間の事情についてもう少し部内の状況なり経過なりそういうものを十分調査せられて、もし取り上げられる点があるといたしまするならば、これこそはやはり国家経済の見地からも伸ばしていくべき問題ではないか、このようにも考えますので、この点は特に福田長官の御考慮をわずらわしたいと思うのでありますが、いかがなものでしょう。
  278. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 装備局あるいは海幕その他各専門家の意見も聞きまして、御趣旨に沿って検討さしていただきたいと思います。
  279. 植木庚子郎

    植木主査 次に、野原覺君。
  280. 野原覺

    野原(覺)分科員 日本防衛庁ぐらい国民の税金をむだづかいしておるところはないと私は思う。福田長官は御承知だろうと思いますが、まぼろしのロケット事件といってこの予算委員会でもごくわずかでありましたが触れられたスタッキーニ社の問題があるわけですが、最近出されました会計検査院の報告を拝見いたしましても、またまた防衛庁のむだづかいが出ておる。会計検査院が決算報告を出すたびに出てくるのですね。私は、三十二年の会計検査院の決算報告でこのスタッキーニ社が出されて、決算委員会なりあるいは内閣委員会なり予算委員会等で徹底的に論議されなかったうらみはありますけれども防衛庁としては自粛自戒をしなければならぬ。それなのにいつの場合も決算報告に防衛庁の問題がやり玉に上がっておるわけです。一体国民の血税を何と心得ておるのか。そこで、私はこのスタッキーニ社の問題はいろいろ審議された記録も見ましたけれども、非常に徹底を欠いているうらみがございまするから、この問題はこの際掘り下げてどうしてこういうことになったのか、どうするつもりなのか、防衛庁の心がまえというのは一体どこにあるのか、私はきょうはひとつ十分掘り下げてお伺いをしてみたいと思うのであります。  防衛庁長官御承知のように、昭和三十二年の三月であったと思いますが、記録によりますと、日本防衛庁がイタリアのスタッキーニ会社と、株式会社ですが、これと航空機搭載用の八センチメートル・ロケット弾及び発射装置一式について契約した。その契約の金額は約四千七百三十五万円。そこでこのロケットを買い込むために前渡し金をその半額二千二百七十三万円渡してしまった。ところがロケットはこない。前渡し金も返ってこない。こないどころか、会社ば破産してしまっておる。そこで防衛庁は矢もたてもたまらずにまっさおになって、イタリアの裁判所に持ち出した。ところがイタリアの裁判所では昨年の五月十八日に請求が棄却されて、つまり敗訴になっておる。そこでどうして一体こういうばかなことになったのかと思っていろいろ経過を調べてみると、実に私どもとしては不可解千万な、許すことのできない点をたくさん発見するわけなんです。  そこで私は防衛庁長官にひとつお伺いいたします。あなたはいまの長官ですが、おれは昔のことは知らぬとは言わさない。責任者でございますから、その事件がきわめて重大な事件であるだけに私はあなたから事の経過を聞きたい。あなたが詳細に知らなければ施設庁の長官でもけっこうですが、ひとつ責任のある防衛庁から、この公的な予算委員会においてそのてんまつ、いきさつ等を詳細に事実を述べていただきたい。その上でいろいろお尋ねをしたいと思うのであります。
  281. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 スタッキーニの問題は、私も長官に就任しましてから報告を受けたうちの一つでございます。昭和三十二年に契約し、翌年にスタッキーニ会社で長期ストライキが起こって、ついに破産をいたしました。同年直ちに防衛庁から、契約金の半額を渡したわけでございますが、その返還を要求いたしました。保険会社にも保険金の支払い方を裁判にかけまして、二つの問題が出たわけでございます。御指摘のとおり会社側のほうではその後和議が成立いたしまして二五%を支払う、第一回分は昨年の夏に納入済みでございまして、第二回目は今月末入るという報告を受けております。一方、保険会社のほうは契約期間の問題があって棄却になりました。しかしその後、幸いわがほうに有利な資料が出まして、会社側から保険会社側に支払った保険金額、保険料の新しい事実が見出されました。ただいま在ローマ日本大使館の顧問弁護士を通じまして、この問題は控訴すべきかどうか検討中でございます。実は数日前に私も在イタリア日本大使館に——代理大使でありますが、私信をもちましてクーリエで詳細に再びこの経過を書きまして、控訴を勝たすような資料収集について格段の依頼をいたしたばかりでございます。五月二十七日が控訴期間が切れる日だと報告を受けておりますが、これがもし勝てば国庫に対して損失を与えないで済むという見通しも立ちます。これからの問題は証拠の新しい事実裏づけが一番のかぎのようでございます。在イ大使館の協力を得て十分あらゆる立場から、法務省とも連絡をいたしておるわけでございます。  詳細につきましては、政府委員から報告をいたさせます。
  282. 山上信重

    ○山上説明員 私からスタッキーニの問題についての経緯を詳細に御報告申し上げます。  ただいま長官から概略説明ありましたので、少し詳しくなりますが、詳細にというお話でございますから私から申し上げます。  このスタッキーニ会社に対しますところのロケット弾及び発射装置の契約は、昭和三十二年の三月二十九日でございまして、防衛庁調達実施本部とそれからイタリア国ローマ市に所在をいたしますところのスタッキーニ会社、これからただいま申し上げました航空機搭載用の八センチロケット弾及び発射装置一式ということで契約いたしたのであります。金額につきましては、契約金額はただいまお話のありましたように、四万六千六百七十五ポンドというポンド建ての契約になっております。これは邦貨に換算いたしまして四千七百三十四万六千三百六十八円、こういうことになっております。この契約に際しまして、この代金の約二分の一に当たりますところの二万二千五百ポンド、すなわち邦貨換算二千二百七十三万円余りでありまするが、これを前払い金といたしまして銀行保証状と引きかえに払いましょうということで、最初契約いたしておったのでございます。それからなお物件の引き渡しの開始は、前払い金の受領後七カ月以内にするということもあわせて契約いたしております。ところがその後スタッキーニ社が契約所定の銀行保証状をとることが非常にむずかしいということでございましたので、イタリアのボケラ市にありますオルトリポー保険会社、これから発行するところの保険証券でひとつかえてくれないかということでありましたので、昭和三十二年の十月の十五日に契約を更改いたしまして、保険会社の保険証券と引きかえに十月の十八日に前払い金をスタッキーニ社に支払っておるのでございます。ところがその後スタッキーニ社にはいろいろ経済事情あるいはストライキその他の経済困難が続きまして、これが三十三年の十二月に破産宣告ということになったのでございます。よって当庁は、スタッキーニ社に対しまして、破産債権の届け出及び前払い金の返還請求の訴えを起こした、それからまたオルトリポー社に対しましては、保険金の支払い請求の訴えを起こした、こういうのが事の始まりになっております。そういたしましたところ、その後訴訟と同時に三十四年の二月でございまするが、破産債権の届け出を裁判所にいたしまして、その結果訴訟が終了いたしまして、三十七年の三月十二日付の判決で、三十七年の四月一日からの適用ということで和議がスタッキーニ社に対して成立いたした、こういうことになっております。その結果破産債権の二五%が三十八年の二月から四カ年間にわたって返済されるということになった次第でございます。一方また、前払い金の返還訴訟につきましては、その後訴訟が続いてまいりましたが、先ほど長官の御説明のありましたように、昭和三十八年の五月二十八日付をもちまして、いわゆる敗訴というようなことに第一審でなったのでございます。当方といたしましては、イタリア民法の解釈上、前払い金に対する保証の保険は、単なる保険ではなくて、これは保証債務の性質から、主たる債務の存続する限り保証債権も当然存続しているんだという主張をいたしまして、保険の期限が昭和三十三年の三月三十一日で切れているという理由をもってするところの抗弁に対抗したのでありますが、裁判所といたしましては保険証券の期限が昭和三十三年の三月三十一日で切れているじゃないか、当方の保険は、品物の引き渡し開始が前金の支払い後七カ月ということになっているから、結果的には昭和三十三年五月の十七日、このときまで当然発生しない、だからすでに保険の期限が切れておる、だからそういう保険をやったのは過失ではないか、手落ちではないかということで、第一審敗訴になった次第でございます。これは経過でございます。  しかしながら、当方の弁護士であるところのイタリアに在住する、日本の大使館の顧問弁護士ダンテという弁護士の意見では、なおこれは十分勝ち得る見込みもある、同時にスタッキーニ社が当時保証保険期間を延期するための金の支払いをいたした小切手を振り出したという証拠も確かに自分としては記憶しておる、こういうことでございまして、これらの資料が実際に破産に際しましていろいろな資料の中からスタッキーニ社からあちこちに持ち去られたり何かしておるために、戻ってきましてまだ間もないので、この中から十分さがしまして資料を入手する可能性がある、この資料を手に入れれば十分また控訴し得る余地がある、こういうような報告もございました。当方といたしましては、それが法理論並びにただいまも申し上げました新しい事実ということもかみ合わせまして、今後控訴し得るかどうかということを十分検討した上で、控訴期間であるところの判決後一カ年、この以内に控訴するかどうかをきめねばなりませんので、目下慎重に検討いたしておる、かような次第でございます。  以上、やや長くなりましたが、経過を申し上げたわけであります。
  283. 野原覺

    野原(覺)分科員 いま長官とそれから本部長から承りましたが、お話を聞いておりましても、いまだに控訴するのかどうかという態度も決定していないわけです。もし控訴しないということであれば敗訴のままで終わる。なるほど二五%の約五百万円に近い金はスタッキーニ会社の社長の個人財産を処分して和解ということに裁判でなったようでございますけれども、はたしてその五百万円がそのまま入るかどうかということもあぶないし、かりに入ったといたしましても二千数百万円から五百万円を差し引いた残りはこれはたいへんな欠損であります。しかもイタリアの弁護士団を雇っておるのですから、弁護料というものがあるでしょう。あるいはそのほかの諸雑費というものもかかるでしょう。それやこれやを考えてまいりますと、防衛庁のふしだらのために実はたいへんな事態になっていくわけです。  そこで私は具体的にお尋ねをいたします。ただいま長官の御答弁によりますと、これは大臣でございましたか、防衛庁がスタッキーニ会社とロケットの契約をしたのは三十二年の三月二十九日だ、こう言った。一体その二千数百万円の半額の前渡金を振り出したのはいつですか。それは何日でございますか。
  284. 山上信重

    ○山上説明員 お答え申し上げます。  前金を振り出しましたのは、T/T送金といういわゆる電信送金によりまして、三十二年の四月二日に振り出しております。そしてイタリアの銀行にとめ置いてございます。
  285. 野原覺

    野原(覺)分科員 会計検査院参っていますか。
  286. 植木庚子郎

    植木主査 来ております。
  287. 野原覺

    野原(覺)分科員 では会計検査院にお尋ねしますが、あなたのほうで検査をされた結果、防衛庁の振り出した日付はただいまの長官の御説明で間違いございませんか。
  288. 樺山糾夫

    ○樺山会計検査院説明員 お答えいたします。  支払いになりました小切手が切られましたのは、三十二年の四月でございまして、これは先ほど御説明がありましたように、東京銀行を通じまして、イタリアの取引銀行に送金されております。そして三十三年三月三十一日を有効保証期限とする保険証書と引きかえに、三十二年の十月十八日にスタッキーニ会社に支払われておるわけでございます。
  289. 野原覺

    野原(覺)分科員 ちょっと大臣にお尋ねしますが、これはスタッキーニ会社といえば、外国の株式会社です。三月の二十九日に契約をされたわけですから、契約をする前にこのスタッキーニ会社はどういう会社であるか、その内部情勢はどうなっておるのかということを、当然国費をもって外国に注文する場合には、慎重に調査をされなければならぬと私は思う。どういう調査をしたのか、だれがどんな調査をしたのか、どういう確信を持ったのか、その辺を御答弁願いたい。
  290. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 長期のストライキで破産するまでは相当の会社だったそうでありまして、アメリカも相田分量を発注して商いをいたしておるという報告を受けております。細部にわたりましては、政府委員からお答えさせます。
  291. 山上信重

    ○山上説明員 お答えいたします。  スタッキーニのアイローネを購入しようといういきさつの前には、われわれ調達実施本部で契約いたす前に、これは技術研究本部が研究用に調達要求をいたしたものでございまするので、その前年に技術研究本部の高山というのが、現在将補でございますが、当時二佐だったのですが、イタリアに参りまして、この会社も見、そしてこのアイローネというたまの説明も聞き、そして性能その他について中央に書面で報告いたしております。これに基づきまして、当時の技術研究本部にGM委員会というのがあったのでございまして、ここでこれを採用することを決定いたしました。そして調達の要求をしております。それによりまして、このスタッキーニという会社のかかる製品を調達いたすべしという要求を受けまして、購入をいたしたような次第でございます。
  292. 野原覺

    野原(覺)分科員 技術研究本部の技術研究員が向こうに行って調査をした、その調査の結果を信頼したといいますけれども、労働者のストライキくらいでつぶれるような会社なんです。それは実にずさんな調査だ。ストライキくらいでつぶれるような会社であるということ自体から考えても、私はその調査は必ずしも適当でないと思う。この辺が防衛庁のやり方のずさんきわまりないところなんです、ここら辺のやり方が。これは私仄聞いたすのですが、日本の貿易商が中に介在をしておる。米井商店というのがこのスタッキーニ社の商品をあなたのほうに売り込んできたんです。そういう事実はございませんか。最初の話なんですよ。一番最初は、この米井商店というのにはイタリア人がつとめておったようですが、これが防衛庁にロケットが優秀だというので売り込んできております。その辺のいきさつを御説明願いたい。
  293. 山上信重

    ○山上説明員 米井商店というのは、先ほどのスタッキーニと契約いたすときに、スタッキーニ社の契約の署名の代理をいたしております。その前にもスタッキーニの商品について、始終防衛庁説明しておったことと思います。
  294. 野原覺

    野原(覺)分科員 米井商店が売り込んでまいったけれども、米井商店を介在しないで、防衛庁としてはこのスタッキーニ会社と直接契約をしたということになる。この直接契約の代理店が米井商店だ。これがスタッキーニ会社を代理して捺印をしたのでしょう。そういうことであろうかと思いますが、私はここで疑問に思うのは、三月二十九日に契約をして四月二日に小切手を送金するんだが、この期間が早過ぎやしないか。しかも、このスタッキーニ会社の調査も、技術研究所の技師が向こうに行って調べたというけれども、その調べ方にもやはり問題がありはしないか。ここら辺の慎重さを欠いた点が私は一点あると思う。契約をしてでも、いやしくも小切手を振り出す限りは、金を支払うことなんですから、なるほどイタリアの銀行にその金がとめ個かれるのだ、こういたしましても、一たん自分の手でこれが振り出されていけば、向こうにその金がいくわけでありますから、一番最初の、客観的なスタッキーニ会社の資産状態、会社の内部状態というものの調査が私は必ずしも十分でなかったと思う。この点大臣はどう考えますか。
  295. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 私の受けております報告では、スタッキーニ会社は、資本額におきましても、また外国との貿易におきましても、相当信頼できるものであると判定したようであります。資本金が二億四千万リラ、信用調査も、創立が一八七九年、創立後七十六年という長い歴史を持っておるということで、イタリアにおきます二大火薬会社であったそうであります。その後長期のストライキで破産をしたという報告を受けております。
  296. 野原覺

    野原(覺)分科員 その長期のストライキというのは、いつから始まっていつに終わったのか、それをお聞かせ願いたい。
  297. 山上信重

    ○山上説明員 ただいま長官の御答弁のありましたように、契約の当初におきましては、この会社は当時といたしましては非常に著名な会社であり、歴史も相当に古く、資本もしっかりしておるということであり、かつあらゆる点からこのアイローネを購入しようということになったわけでありますが、われわれの承知いたしましたところでは、その翌年の二月初旬ごろにわれわれは承知いたしたのでありまするが、スタッキーニがその時分二カ月前からストライキが発生した、したがって一月ごろから発生し、そしてストライキが続いた、こういうことに承知しております。
  298. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、二千数百万円の前渡金保証裏書きですが、イタリアの銀行はその保証を断わっておる。そこで保険会社が保証をしておる。この辺のいきさつはどうですか。東京銀行はイタリアの銀行に送ってやった。ところが、イタリアの銀行はそれを断わっておる。そういう事実はございませんか。
  299. 山上信重

    ○山上説明員 銀行の保証が困難であるということを申してまいったのは事実でございます。これは、そういうようなことが間々外国には——日本の国内では銀行保証ということが当時から行なわれておりましたが、アメリカ等の例でも、銀行保証を得られないで、保険によるというような例もあるやに聞いておりました。ただこの場合、イタリアにおいては銀行保証が困難だということを申してきたのは事実でございます。
  300. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、銀行保証が困難だというので保険会社に契約を更改したのはいつですか。
  301. 山上信重

    ○山上説明員 三十二年の十月十五日でございます。
  302. 野原覺

    野原(覺)分科員 三十二年の十月十五日に契約を更改した、その時点で、銀行が保証をしないということに、まず第二の疑惑を持たなければならぬと思うのです。第一に調査が、これはどういったって不十分だ。調査が十分であれば、こんなふしだらな結果は引き起こしませんよ。しかも銀行が保証を断わるなんて、これは外国に間々あるとあなたはおっしゃいますけれども、しっかりした会社であるならば——しかも日本の政府を相手にした取引において、イタリアの銀行が断わる。もうすでにこの時点、三十二年の十月十五日の時点に、この会社はおかしかったのです。だからイタリアの銀行は、その保証を断わったのです。断わった時点であなたのほうは一体どういう調査をいたしましたか。断わったので、直ちに保険会社に乗りかえたわけですか、いかがですか。   〔主査退席、田澤主査代理着席〕
  303. 山上信重

    ○山上説明員 私のほうが乗りかえたのでなくて、銀行が断わったので、スタッキーニとしてはオルトリポーという保険会社の保険をひとつやってもらいたい、こういうことを申してまいりました。したがって、私のほうといたしましては、出方の取引銀行を通じまして、オルトリポーの会社の信用状況を調査いたしましたところ、これはしっかりした保険会社であるという報告を受けましたので、これの保険を認めた、こういうことになっております。
  304. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで契約の内容になりますが、前渡金を向こうに納めてから何カ月の後に船積みをするといったような契約の中身について、一体どこから船積みするという契約になっておったのか、その辺をひとつ詳細に御報告願いたい。
  305. 山上信重

    ○山上説明員 契約によりますると、前渡金を支払った後七カ月以内に船積みを開始する、こういうことになっております。
  306. 野原覺

    野原(覺)分科員 七カ月以内といえば、それは三十三年の何日になりますか。あなたが前渡金を支払ったのは、小切手を振り出したのは四月二日だけれども、前渡金が保険会社に入手された、つまりスタッキーニ社の手に前渡金が入った、それから七カ月以内といえば、それはいつになるのですか。
  307. 山上信重

    ○山上説明員 三十三年の五月十七日ということになっております。
  308. 野原覺

    野原(覺)分科員 ところがこの保険会社の有効保証期限は三十三年の三月三十一日、船積み期限が三十三年の五月十七日。有効保証期限が三十三年の三月三十一日だ、これはどう考えてもおかしいですね。この三十三年三月三十一日の有効保証期限をたてにとられて今度は敗訴になったわけです。これは私はどう考えてもおかしいと思う。これはどうしてこういうことになったのですか。少なくとも船積みをするときまでの保証じゃございませんか。船積みをしてない先に、二カ月前にその保険会社の保証が切れるなんというような契約、そんなばかな契約がどこにありますか。これはどうしてこういうことをしたのです。大臣、これはおかしいと思いませんか、大臣の所見をお聞きしたい。おかしくなければおかしくないでけっこうです。あなたは防衛庁長官として、こういう契約をこれはおかしくないとして今後もやられるなら、それでいいですよ。大臣の所見を私は聞いておきたい。
  309. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いまお話の点だけを取り上げますと、私も筋が通らぬと思いますが、政府委員からその間の事情を答弁させます。
  310. 山上信重

    ○山上説明員 私その当時担当いたしておりませんので、必ずしもその当時の心境について申し上げるのは正確でないかもしれませんが、いろいろ伺いましたところ、やはりこの納期をなるべく早くいたしたい、なるべく早く納入させるようにしたい。これは契約上は、前払い金を払ってから七カ月以内に引き渡す、こういうことになっておりましたが、そもそもの最初から、銀行信用状の開設期間は三十二年の十一月の半ばというようなことを第一次に協定いたしておりますように、出時の調本といたしましては、できるだけ早く納めてほしい、できれば年度内にどうしても納めてほしいという希望がございましたので、三十二年度、三十三年の三月末までに保証ということで、まあこれで入り得るのではなかろうか、こういうふうに考えたと承知いたしております。少しおかしい点はおかしいと私も感じます。ただ、当時の事情といたしましては、そういうようなことで三月三十一日までにぜひとも入ってほしい、すでに三十二年の十一月にLCが切れるはずである、したがってそれを引き延ばすとしても年度内にいたしたいということで、事実その後のLCの開設期間も三十三年三月三十一日までの期限にいたしておるような状況でございます。
  311. 野原覺

    野原(覺)分科員 会計検査院にお聞きいたします。会計検査院はこの点をどうお考えになりますか。
  312. 樺山糾夫

    ○樺山会計検査院説明員 こういうような結果になりました直接の原因は、先生おっしゃいましたように、前払い金を保証いたします保険証券の有効期限が積み込み時期まで保証していなかったという点でございます。ただいろいろ事情はございましょうが、三十三年三月三十一日までに見込みがないということであれば、その間保険会社等と連絡して何らかの手を打つ余裕があったのではないかというようなことを私どもは考えております。また一般的に申しまして、外国との取引でございますので、いろいろな契約前の調査——もちろん防衛庁は在外機関を持っておらないのでございますが、大使館等を通じていろいろな調査も若干不十分ではなかったか、そういうようなことを私どもは考えておる次第でございます。
  313. 野原覺

    野原(覺)分科員 大臣会計検査院は明確にあの点を指摘しております。船積みが三十三年五月十七日、船に積まれない先にその保証期限が切れるというばかなことはどう考えてもない。そういう契約の更改を平然として防衛庁がやっておる。ここなんですよ。だからあなた方が私の発言に対して慣慨されるなら大いに憤慨してもらいたい。国民の税金を何と考えておるのだ。実にでたらめではありませんか。船積み期限より先に、保険会社の保証期限が二カ月も先に切れるなんという、そういう契約更改を平然としてするとは一体何事ですか。軽率もはなはだしいですよ。  そこで、次にお尋ねいたしますが、いまダンテとかいう顧問弁護士を弁護人としてずっと訴訟をやってきておりますが、このダンテさんに支払った弁護料、この訴訟のために支払ったお金はどれだけですか。支払った期限とその金額を出してもらいたい。
  314. 山上信重

    ○山上説明員 ダンテ氏に対する弁護料といたしましては、いままでに支払ったものは六十三万三千円でございます。なお、ダンテ氏との間の約束で、弁護料として今後支払わなければならないものを加えますと百三十八万円でございます。
  315. 野原覺

    野原(覺)分科員 私はできるだけ正確に尋ねておるわけです。だから六十三万三千円ということだけじゃなしに、いつ何の名目で金を払ったか。たとえば訴訟をすれば登記料も要るでしょう。これは単に弁護料だけじゃなしに、訴訟のための経費一切をお尋ねしておりますから、あなたのほうは記録を持っておるはずです。記録なしに金をやっておるのですか。なければこれは一ぺん調べて、正確にお答え願いたい。
  316. 山上信重

    ○山上説明員 第一回に支出いたしましたのは三十三年の十一月に五万七千七百二十六円、第二回は三十八年の六月十四日、五十七万六千円を弁護料として払っております。なお、訴訟の費用といたしましては、第一回は三十三年十一月に八万七千七百四十七円を支払っております。第二回といたしまして、三十五年二月十九日に九十八万五千二百七十一円を払いましたが、これはその後一万二千二百九十二円が返納になっております。したがいまして、訴訟費用といたしましては、合計いたしまして百六万七百二十六円を支払ったことになっております。
  317. 野原覺

    野原(覺)分科員 その合計はおかしいね。ただいまその期日で幾らになるのか述べてもらいたい。三十三年の十一月には弁護料も出しておるし、それから出張旅費等も出しておるに違いない。これは当然弁護士ですから出しておる。三十五年の二月ということをあなたは指摘されましたが、三十五年の二月には、裁判のための登記料、これは出しておるのでしょう。それから三十八年の六月には諸雑費、これはいろいろなものを出しておるでしょう。いまあなたは期日を三つ言ったので、その期日のトータルで金額を出してもらいたい。合計幾ら出しておるのか。
  318. 山上信重

    ○山上説明員 十一月には五万七千七百二十六円と八万七千七百四十七円と二口出しております。
  319. 野原覺

    野原(覺)分科員 合計幾らです。
  320. 山上信重

    ○山上説明員 後ほど計算いたして申し上げたいと思います。
  321. 野原覺

    野原(覺)分科員 三十五年の二月。
  322. 山上信重

    ○山上説明員 三十五年の二月は九十八万五千二百七十一円でございます。
  323. 野原覺

    野原(覺)分科員 三十八年の六月。
  324. 山上信重

    ○山上説明員 三十八年の六月は五十七万六千円でございます。
  325. 野原覺

    野原(覺)分科員 その合計は約百七十万六千七百円、百七十万七千円ぐらいになりますね、いかがですか。
  326. 山上信重

    ○山上説明員 そうでございます。
  327. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、前渡金は二千三百万円、それに訴訟のために支払った金額、これだけが損失金額だと、こう仮定いたしますと、向こうの会社の社長の個人財産を処分したことによって、いわゆる破産財団ということ、これは調査してみると三千人の債権者があったらしい。この会社には債権者が三千人もおったというのですよ。だから単なるストライキで会社はつぶれはしないのです。実に脆弱な会社である。そういう資産状況が実になっていない会社であったのです。なるほど製品は優秀であったかもしれない。そこら辺の調査が実はできておりませんが。そういたしますと、いま大臣でしたか、先ほど申しましたね、和解をした結果二五%の金が入る。二五%といえばざっと五百万円になりますが、現在防衛庁に入った金は幾らですか。
  328. 山上信重

    ○山上説明員 二五%というのは約五百七十六万円くらいになります。それから現在までに入りましたのは、昨年の九月二十日に七十二万六千円ばかり、それから本年の二月一日付で受け取りましたのは、まだ円価換算が済んでおりませんが、二千四ドルであります。
  329. 野原覺

    野原(覺)分科員 日本の金で幾らですか。
  330. 山上信重

    ○山上説明員 約七十二万強でございます。
  331. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうなりますと、この五百万円がはたして全額入ってくるかどうかも今後の推移を見なければわからない。まだこれが入らないためにまた裁判をやるということになれば裁判の費用も要る。控訴をするかどうかについてもまだきめてないようでありますけれども、いやしくも控訴をするということであれば、よほど勝訴に対する、訴訟に勝つことに対する確信がなければならぬ。その確信がないから、まだ防衛庁は態度をきめかねておるのでございましょう。  そこで次にお尋ねをしたいのは、これは大臣にお聞きしたいと思います。これが結局こういうことになったのはどこに欠陥があるのかという反省をあなたはお持ちになりますか。どうして、どういう点がまずかったからこういうことになってしまったのだという大臣の反省されておる点をひとつお聞きしておきたい。
  332. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 事件の契約以来七年を経過しておりますが、国会におきましても、衆参両院で、主として決算委員会、過去十三回いろいろ質疑応答がかわされた。この議事録を読みましても、昭和三十三年の十二月に、会計検査院が不当事項として指定して国会に報告しておるわけであります。これは確かに手続なり、先ほど来いろいろ話が出ておりまする保険金額、保険契約の期間の問題、こういう点について不当の事項があったと私どもは感じており、今後こういう点につきましては十分慎重にやるべきであるという感じを受けております。
  333. 野原覺

    野原(覺)分科員 約二千万円に近い金額を浪費する結果になりかねないわけでありまして、この金を取り返すことは、私はおおよそこれは容易でないと思う。全くこれは防衛庁のやり方のずさんさからこういう結果になってしまった。そうなってまいりますと、防衛庁当局としてはこの責任を一体どうなさるか、私はこの点が一番重要な点だと思う。そういうことになったからしようがないのじゃ済まぬと思う。この責任については、一体どう処断をしようと大臣はお考えになりますか。
  334. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 処分の問題につきましては、本委員会でもちょっと申し上げたことがあるわけでございますが、先ほど申したとおり、五月二十七日の期限までにぜひとも勝ち得る何らか的確な——具体的に申しますと、小切手の発見の問題でありますが、これを獲得し入手しまして控訴をして勝ちたい。勝てば国庫にも損害を与えないで済むわけでありますから。そこで先ほども申したとおり、つい最近も私信を書きまして、在ローマ日本大使館あてにも、特別に督促といいますか依頼を申し上げたわけであります。したがって、現在まだ勝訴し得る見込みはある。勝てるとは私は申しません。勝訴する方向に向かって私は全努力をあげるべきである、こう考えておりますので、この段階において処分云々は私は適当でないと考えております。
  335. 野原覺

    野原(覺)分科員 つまり裁判の結果を見てから責任の問題は考えていきたい、こういうことでございますか。
  336. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 そういうことでございます。
  337. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういうことであれば、一体だれがこれは責任をとるのでしょう。あなたはこのことも仮定だと私は言わさない。これは明確になっておると思うのです。この種のことが責任問題として起こってくるとするならば、だれが一体どういう責任をとるのが至当だとお考えになりますか。
  338. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 近く何らかの確証を得て控訴して勝とうとする段階におきまして、あたかも初めから勝ち得ないという断定のもとに処分問題を論ずることは、私は国のためにとらないと考えます。
  339. 野原覺

    野原(覺)分科員 それではお尋ねしますが、この当時は調達本部であった、この契約をしたときの調達本部長はどなたでした。及びその担当の課長はどなたでしたか。これをお述べいただきたい。
  340. 山上信重

    ○山上説明員 最初の契約のときの本部長は武内征平でございます。契約をいたしました担当官は石井由太郎であります。その補佐の課長は安藤という契約第一課長でございます。大体最初はそういうことでございます。
  341. 野原覺

    野原(覺)分科員 契約に一つ問題がありますね。もう一つは、イタリアの銀行が保証を受け付けないで、保険会社に保証を持っていった契約更改、その契約更改の担当官並びに課長、これはだれになっていますか。
  342. 山上信重

    ○山上説明員 そのときの本部長はやはり同じように武内征平、担当官は武内征平でございます。なおその際の補助者は塚本副本部長及び若林輸入課長でございます。
  343. 野原覺

    野原(覺)分科員 その若林さんという方は、最近新聞紙上をにぎわした方で、通産省の炭政課長をしておって、大阪の通産局の総務部長時代に百貨店汚職をやっておる。一体この若林さんは当時、いつ防衛庁から通産局に転出されおりますか。
  344. 山上信重

    ○山上説明員 三十三年の七月末に転出いたしております。
  345. 野原覺

    野原(覺)分科員 三十三年の七月末といえば、スタッキーニ社の弁償は不可能だと判定された直後ですね。この弁償不可能だと判断したその時点は何年の何月でした。防衛庁、まずそれを聞いておきましょう。
  346. 山上信重

    ○山上説明員 契約の履行に関連いたしまして、三十三年六月十三日にスタッキーニ社並びにオルトリポー社に対して手紙を送っております。このときに判断いたしております。
  347. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは大臣に申し上げておきますが、いまお聞きのとおりなんですね。弁償不可能だという判断をしたそのときには課長はおったわけです。その課長は防衛庁から栄転をさしておる。私は弁償不可能だという時点がきて、あなたは裁判で勝てばよいと言いますけれども、大体こういうことで裁判をしなければならぬ、といったってただじゃないでしょう。なるほど裁判をすればその訴訟費用というものは先方に負担させることになるかもしれない。あるいはそれが普通ではありますけれども、しかしそのためにそのわずらわしい手数を要して、どれだけ庁の能率を下げておるかわからない。こういう事件を起こしたこと自体が責任問題なんです。裁判の結果を見なければならぬといったようなそういう防衛庁長官の考え方で、どうして綱紀の粛正ができますか。だから見てみなさい。今度の三十七年度の会計検査院の報告を見ても、またまた防衛大学の点がやり玉に上がったでしょう。しかも、このようにして何らの必罰、何らの懲戒も何らの訓示も説諭も受けない。若林君は通産局に行って何をやったか、百貨店法に違反して汚職をやってのけたじゃありませんか。一体防衛庁というのは昔の陸海軍省に当たるのか当たらぬのか知らぬけれども、最近自民党では国防省昇格論さえ出てきておる。こういう時点に一体何ということをやるのだ、私は自衛隊諸君がこういうふしだらな事件を知って、これでは自衛隊諸君の士気は高揚いたしませんよ。しかも大臣はのうのうと国会で、裁判の結果を見なければ私はわからぬ、勝ったらいいのだ、そういうことではならぬと私は思う。こういう問題を起こしたこと自体がこれは責任問題です。昔の軍隊というものはそのくらい規律を厳正にやってきたのではございませんか、私も軍人でありましたが。そこでこの三十七年度の決算報告を見ておりますと、防衛大学がまたまた指摘されておりますね。これをひとつ御説明を願いたい。どういうことでこうなったのか、まず会計検査院にお尋ねいたします。
  348. 樺山糾夫

    ○樺山会計検査院説明員 御説明いたします。  これは防衛大学校で実験に使います機械を購入いたします際に、年度末の三月三十日を納期といたしまして契約をいたしましたが、その期間までに実際に品物が入らなかったのにこれを年度内に納入されたこととしまして代金を支出いたしております。そうしてこの契約は、実際に納入された場合の輸入価格が、C&F価格が契約の場合と変動があった場合にはこれを減額して代金を支払う、こういう特別な条項が付せられておるわけでございますが、そのように書類を作為して四月に代金を支出しました関係上、この小切手を実際に納入になりました六月まで持っておりまして、六月に会社に交付いたしたのでございますが、契約によるC&F価格の変動の精算処理をいたさないで会計実地検査の際までそのままとなっていたという事態でございます。
  349. 田澤吉郎

    ○田澤主査代理 野原君に申し上げますが、予定の時間を相当経過しておりますので、そろそろ結論をお願いいたします。
  350. 野原覺

    野原(覺)分科員 簡単に終わります。  これは大臣に……。日綿実業株式会社東京支社から百九十一万三千円で購入をしておるレフレクティング・モノクロメーターです。これが全部物が入ってきていないのに金を払って、実に平然たるものですね。これは会社と何かありますね。物が入らぬのに金を渡しておる。私は、時間がないから、この点の追及は後日に譲りますが、どうしてこういうことをやるのですか。物が入らぬのに百九十一万円金をやってしまった。そうして会計検査院から指摘されたのですね。八十八万六千百四十五円の過払いじゃないかと指摘されたのでしょう。指摘されてから、日綿実業から金を取り返せと言われて取り返したと、この決算報告に書いておりますよ。この決算報告は間違いですか。
  351. 上田克郎

    ○上田政府委員 先ほど会計検査院から御説明ございましたように、実際に金を渡しますときは物の大部分は入っております。ごく一部が入らなかったということはございます。
  352. 野原覺

    野原(覺)分科員 その大部分入った物の値段は、それでは幾らでしたか。
  353. 上田克郎

    ○上田政府委員 こまかい計算をいまやっておりますが、とりあえず御報告申し上げます。  これは御承知だと思いますが、いろいろなプリズムを取りかえるようになっているようでございますので、その中のプリズムの一つ、七万四千二百三十一円分が欠品になっておる、そういうことでございます。
  354. 野原覺

    野原(覺)分科員 それじゃ会計検査院にお尋ねしますが、あなたのほうでこの報告に八十八万六千百四十五円の過払いと書いておるが、この過払いというのはどういうことなんですか。
  355. 樺山糾夫

    ○樺山会計検査院説明員 先ほど御説明いたしましたように、国の支払いとしては四月に小切手を切って決算に立っておるわけでございますが、それが品物が入りませんために、その小切手を実際に入ってきた六月まで防衛大学で保管いたしておったということになっております。ただいま経理局長が御説明になりましたのは、六月にその代金を会社に交付したときになお若干の未納品があった、その金額でございまして、検査報告に八十八万六千百四十五円の過払いと申しますのは、先ほど御説明いたしましたC&F価格の変動分とその未納分とを加えた金額、こういうことに相なっております。
  356. 野原覺

    野原(覺)分科員 七万四千二百三十一円というのが未納分らしいのですが、たとえ七万円であろうと一万円であろうと、物が入らないのに金を渡す、しかもその価格の変動ということを考えて当然こういった国の金というのは支払うべきものです。このような会計検査院指摘が決算報告が出るたびに出されておりますが、このことに対して防衛庁長官の御所見を承って私は質問を終わりたいと思う。なお私は申し上げておきますが、この種の問題は他日適当な機会にもう少し掘り下げてお尋ねをしたいと思うのです。これはほんの一部分だけです。きょうはこの程度で終わりますけれども大臣の御所見だけ最後に承っておきます。
  357. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 会計検査院から不当事項として指摘されるとか、あるいはそういう金額だとかそういう内容でなく、不始末があるということは、私はまことに遺憾にたえない事実であろうと考えます。今後そういう遺憾なことが起こらぬように厳重に注意し、いろいろ処置してまいりたいと考えております。
  358. 野原覺

    野原(覺)分科員 終わります。
  359. 田澤吉郎

    ○田澤主査代理 明日は午前十時より開会し、大蔵省関係について質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十四分散会