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賀屋国務大臣 お答え申し上げます。
この刑務所の作業につきまして、刑務所の収入の単価と申しますか、計算が安過ぎはしないかというおことばがございましたが、
矯正局長から申し上げましたが、普通の作業と違いまして、設備を特殊にしなければならぬ、製品、原料の運搬が特殊である。刑務所でございますから、作業場に
関係者の出入りを自由にやるわけにもなかなかいかないというふうな制約もございます。また、技術指導員を出さなければならぬ。それから、
矯正局長が申し上げましたように、受刑者の熟練度がたいへん低うございますし、普通の計算
方法ではちょっと事情が違うかと存ずるのでございます。刑務所におきましても、安過ぎてもいかず高過ぎてもいかず、いろんな角度から従来も各方面から御意見が出るところでありまして、公正を期してやっております。
なお、御要求でございますれば、どういうふうな計算の基礎でいまの百円、また百四十円に増しましたか、これはまた資料を提供いたしましてお考えを願いたい、かように思う次第でございます。
それから、刑務所の作業も時世とともに種類が転換するのもまたやむを得ないことでございまして、手工業時代の、私
どもが刑務所の
予算なんかを大蔵省でやりました時代から見ましても、いまよほど転換をいたしておりますが、これは出てから役に立つ、収容者が出獄しまして後に生活のために役に立つという面から申しますと、時世が変わりまして昔ながらのものをやっているというわけにはまいりませんので、だんだん一般が機械化すれば機械的なものを使うとか、多少化学的なものも入る。また、それにいかないと役に立ちませんので、そういうふうに転換をしてまいるということもやむを書ないこととも考えられるのでございます。
刑務所として一番考えますのは、収容者の安全ということと取り締まり——普通の
場所と違いますから、身柄の確保、この二点は非常に力を入れて考えます。普通の労使
関係でございません、
一つの懲罰の意味でございますから、労働基準法等の適用はむろんございませんが、しかし、安全とか、危害を予防するという点につきましては、基準法の精神などはもちろん、危害予防ということにつきまして十分心を配り、設備をしてまいる次第でございます。
従来もそういう意味で安全操業につきまして十分な指導、指針、指示をいたしておるわけでございますが、お示しの昨年の大分の事故等にかんがみまして、特にあの刑務所につきましては、いろいろ消火の点、各方面からの専門知識の人の視察、検討も経まして、設備の改善すべきものは十分に改善する。ほかの刑務所につきましても、いたしておるわけであります。
それで、なお二人の犠牲者が出ましたことは、その方や家族の方にはまことにお気の毒な次第でございます。しかし、私の言いました受刑者にしましても、あるいは
家庭の事情はさようでございましょうが、一般の収容者としましては、つまり手に一定の職がついていない、堅実な生計を営む道を持てないということが共通の、大多数の弱点でございます。刑務所の作業は、
お話のように、
仕事をするということを通して身体を、特に精神の鍛練をする、人間の改過遷善に役立つということがむろん主眼でございますが、同時に再犯の予防、当人の出獄後のことを考えまして、まあ腕に覚えの職をつけさしておくということもまた一般に大事なことでございます。中には、受刑者の個々の事情によりましてさほど必要のない人もあるかもしれませんが、これは一般にそういうふうにしなければならぬ状態でございますので、やはりこれはまだ、大体一律にその方面の
仕事をするようにという方針でいっている次第でございます。
なお、あの際には十二万円を支給いたしました。というのは、こまかいことはまた
矯正局長が申し上げましょうが、死亡の前から全く重体でございますので、釈放の
処置をとりました。それで、死亡の場合は最高十万円、それからそういう場合は全身傷害でございますから、最高十二万円というのが現在の規定でございます。その十二万円のほうを支給したことに相なっております。なお、会社側が十万円とか、刑務所の
職員の団体におきまして二万円の弔慰金を出したということに相なっております。
私は、率直に申し上げまして、就任以来こういうふうな弔慰の金額を読んでおりませんので、最近読みまして、いかにも金額の少ないことに驚いておるのでございます。聞きますと、それもやっと昨年から、従来最高三万円であったものを非常に努力して一躍三倍以上の十万円に上げたという話でございます。十万円は少ないかと存じます。しかし、いまのように、何とか適当ななにをつけたいというので努力しまして、一躍三倍の弔慰金にしたようなことでございます。これでよろしいかと
お話しになれば、十分でございますと申されませんが、ただいまのところの
処置としましては、あの
程度以上にやり方もなかったわけでございます。
なお、これがいろいろ取り調べの結果、国のほうに過失があるということになりますれば、その問題については別問題でございますが、それが判明するまでは、いままでとしてはできる限り最大限の
処置をとったということでございます。
なお、この金額につきましては、いろいろ他の面の、全く同じ種類の給与というものもございませんでしょうが、いろいろ比較、
参考にすべきものを
参考資料にしまして、なおこの金額の増加ということにつきまして一そう努力をいたしたいと思います。
それから、作業につきましては、いまのように決して会社に——右申しますように、作業をやるということが、刑務所に収容しました者に対する国の施設として必要なわけでございますから、その意味でやっておりますので、会社をもうけさせるとかもうけさせぬとか、それはそういう観点には全然立っておりません。こういう請負でも加工でも、また製造でも販売でも、これが安過ぎて他の競争業者が困りますとか、また高過ぎては、多少のハンディキャップがありませんと、刑務所の製品なんというものははけにくい点もございますので、そういう点を考えまして公平適切にということを念としてやっている次第でございますが、なおそれにつきましては今後も十分に注意をしてまいりたい、かように考えます。