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1964-02-18 第46回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十八日(火曜日)    午前十時二十五分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       青木  正君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       野呂 恭一君    水田三喜男君       井手 以誠君    坂本 泰良君       田中織之進君    田原 春次君       横路 節雄君    今澄  勇君    兼務 川俣 清音君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君  出席政府委員         法務政務次官  天埜 良吉君         検     事         (大臣官房経理         部長)     新谷 正夫君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君         検     事         (保護局長)  武内 孝之君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   秋吉 良雄君         最高裁判所事務         総長      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      岩野  徹君     ————————————— 二月十八日  分科員中曽根康弘君及び石田宥全君委員辞任に  つき、その補欠として野呂恭一君及び田原春次  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員野呂恭一君及び田原春次委員辞任につ  き、その補欠として中曽根康弘君及び坂本泰良  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員坂本泰良君及び今澄勇委員辞任につき、  その補欠として田中織之進君及び受田新吉君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員田中織之進君及び受田新吉委員辞任に  つき、その補欠として石田宥全君及び今澄勇君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  第三分科員川俣清音君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算中、裁判所法務  省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算裁判所及び法務省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。田原春次君。
  3. 田原春次

    田原分科員 主として人権擁護局長にお尋ねしたいと思っております。  最初に、人権擁護局はどういう手続事件を受け付けるか、受け付けた場合どういうふうな調査をし、裁定をするか、それをほかの省に関係のある事項だったらほかの省にも通告するのか、その場合ほかの省の弁明といいますか、疎明等をされるか、あるいは人権擁護局申請した者を呼んだり、それに関する参考人証人等手続をやっておられるか、擁護局自体仕事をちょっと承りたいと思います。
  4. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 人権擁護局長鈴木でございます。  一般的に事件をどういうふうにして受け付けるか、それに対してどういうような調査をいたし、またどういうような処理をするかというお尋ねでございますが、人権擁護局仕事、その第一線事務を担当いたす者といたしまして、全国八カ所の法務局人権擁護部、それから四十一カ所の地方法務局人権擁護課におきまして、まず第一に申告を受理いたします。そういたしまして、その内容に従いまして必要な調査をし、その結果によりまして、一番人権侵犯程度の高いものは刑事犯罪になるものもあるかと思われますので、これについては告発という処置をいたします。そのほかその内容に従いまして、あるいは侵犯事件の排除あるいは勧告等、いろいろ処置をいたします。  それからもう一つ方法といたしまして、全国の市町村に法務大臣の名前で人権擁護委員というのを任命してございますが、この人権擁護委員が、やはり同様に人権侵犯事件がありました場合にその申告を受けまして、あるいは自分でこれを処置し、また法務局の、ただいま申しました機関連絡し、同様な方法によって処置いたしております。
  5. 田原春次

    田原分科員 いまの御説明で大体わかりましたが、たとえば八カ所に分かれている法務局人権擁護部で受け付けて、ある種の裁定といいますか、決定をいたしますね、その裁定ないし決定に不服の場合は、ちょうど裁判でいう第二審みたいに法務省人権擁護局へ直接出せるのですか。擁護局の中の扱い方が一審で再審みたいになっているのですか。それをちょっとお尋ねしたい。
  6. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 人権擁護局で担当しておりますこの侵犯事件処理と申しますのは、裁判とは違いまして、やはり一種の法務大臣指揮のもとに行なわれます行政事務でございます。したがいまして、第一線の八カ所の法務局人権擁護部あるいは四十一カ所の地方法務局人権擁護課におきまして処理したものに対して、不服の申し立てがあり、第二審的に人権擁護局でこれをさらに取り消し、変更する、そういう制度ではないのでありまして、事案内容に応じまして、人権侵犯事件処理規程というのがございまして、これに基づきまして、事案内容によりまして、事前に、あるいは事後にそれぞれの段階に応じまして、すなわち地方法務局において担当いたします事件については、内容に応じてあるいは監督法務局指揮を受け、また内容に応じて人権擁護局指揮を受ける。それからまた事案によりましては、事前報告いたしましてその指揮を受ける。大体このようなやり方になっております。
  7. 田原春次

    田原分科員 国民としては人権擁護局に非常に期待していると思うのです。公平かつ親切に裁定してもらうということでありますが、申請した者から見て不満足な結果になっておる場合、あるいは非常に時間がかかってあいまいにいつまでも引っぱられておるというような場合、いま局長お話だと、その居住地あるいは事件発生地ごとの、九州とか北海道とか、地方局があるのでありましょうが、そこで話が片づかぬで、もしくは解決のしかたが不満な場合に、持っていきようがないということになりますと、主としてこれは刑事とか民事でなくて、行政官処置に対する、それが不当であったりした場合の救済機関だと思うのです。用語が適当でないかもしれませんが、一審で最終審みたいになっておりますと、きめ方が、おまえはがまんしろというようなかっこうになりますと、不平の持っていき場がないようになるのじゃないか。やはり人権擁護局をつくった趣旨からすれば、あくまで実情に即して、申請した者が満足して納得するような結論にいかなければならぬのじゃないかと思うのですが、全然救済機関というものはないのですか。どうしても地方擁護部なり擁護課なりでやったことに納得いかぬ場合に、いまの場合持っていき場がないのですか、お尋ねいたします。
  8. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 先ほど御説明いたしましたような方法によりまして、事案の軽重に従いまして、事前報告をするものもございますから、ただいま御質問のような御心配は、実際問題としてはほとんどないのではないかと思います。また、かりにそういったことがございました場合には、これは上級庁としてこれに対してさらに適当な措置をとるように命ずることができますことは当然である、かように考えております。
  9. 田原春次

    田原分科員 ここに具体的な例を一つ申し上げて、一般的な参考になる御回答を得たいと思うのです。  問題は、外務省関係であり、事件発生南米ボリビアであります。そちらの人権擁護局のほうには昭和三十八年九月十八日付でたしか書類申請がいっておると思うのであります。植田事件と普通われわれは言っております。この内容の詳細にわたっては担当されておる課で知っておると思いますから、御質問があれば私のほうから知っているだけ申し上げますが、こういうことなんです。  海外移住を奨励する外務省立場から、移住地におけるその地方の官憲との折衝役あるいは土地を購入する場合の法律上の契約書等を見る役、それから一国に一カ所ずつ大、公使館がありますが、大、公使館は主として首府にあるし、日本人移住地山間僻地にありますので、この移住地のいろんな希望を大使館との間に伝えたりする連絡役として日本海外協会連合会というのがあるわけです。これは全額国費職員を雇用いたし、そうして主要な南米各地には支部を持って、支部長以下相当の職員がおるわけです。ブラジルのごときは相当多数の者がおります。近来ボリビアパラグァイに新しく移住地ができましたために、またそれぞれのところにも支部長を置いておるわけですね。しかるところ、たまたまボリビア海外協会連合会  海協連と訳すのですが、海協連支部長若槻何がしが、二カ年在住の間に三家族を強制返還をしたわけです。そのうちの一つがこの植田事件というのです。植田はその送還に非常に憤慨をいたし、帰ってから方々陳情してみましたけれども、解決しませんので、人権擁護局書類として出しておるというのが本筋なんです。  このほか、人権擁護局等に出してはありませんが、植田のほかに白木というお医者さんで、やはり外務省の嘱託を受けてボリビアに赴任したのでありますが、若槻支部長げきりんに触れてこれも送還されておる。これは佐賀国立病院にいま勤務しておるのであります。もう一名、松岡というの商店を開いておったのでありますが、これまた若槻支部長げきりんに触れて事件をでっち上げられて強制送還されておる。しかしながら最後には、ついにその若槻自身精神異常者であるというので首になっておりますが、と同時に、海外協会連合会海外移住振興株式会社という、いずれも日本政府全額負担による現地在留同胞に対する機関がありますが、成績が悪いというので、これは二つとも廃止になりまして、昨年の七月からは海外移住事業団というものが発足しております。その前後のことでありますために、救済ができない。昔のことは知らぬというようなことになってしまった。そこで結局人権擁護局に出したものだと思うのです。  しかるところ、まず植田君は、これは香川県の男でありますが、同君の話によりますと、いまの局長の話から想像しますと、香川県のその町村の人権擁護委員であるかあるいはそのもっと上級の者であるか知りませんが、一つのもみ消しあるいは仲裁みたいな話をして、そんな書類までも出さぬでもいいじゃないかということで相当時間がかかったらしい。しかし本人としては、どうしてもひとつ法務省に聞いてもらいたいということでがんばっておりますが、いまだに最終的な御判断は得ておらぬらしいです。そこで今度は私ども海外移住関係国会議員が、衆参両院、自由民主党、社会党、民社党を通じて相当数おります。これは日本民族海外移住を奨励あっせんし、移住後の在留民のパイプ役でなるべくお手伝いしたいという立場の者が相当おるわけでありまして、自民党では田中龍夫君、社会党では私にその書類が回ってまいりまして、不当に南米から強制追放されたその不当をなじろうとして書類を出しておるが、外務省のほうが抑えつけるというか、もみ消すとかいうことはあり得るとしても、法務省がいつまでもこれを引っぱっているのはおかしいという話なんです。書類がそちらにいっておると思いますから、どこまで調査されておるか、参考人その他を呼ばれておるのか、もう結論が出ておるのかどうか、出ておらなければどの辺で結論が大体期待されるものかどうか、人権擁護局である種の決定をした場合に、不当送還等に対しては、損害賠償慰謝料等がとれるものかどうか、こういうことも一般論としてお尋ねしておきたい。
  10. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問の点につきましては、昨年の九月十三日に植田安夫氏から所轄の高松法務局人権擁護部申告がございました。そうして高松におきまして、申告人その他につきまして調査いたしました結果、問題を東京に移送しております。そういたしまして、これはその後、とにかく問題が外地における事件でございますので、私どものほうで直接調査するのは実際問題としてなかなか困難がございますが、現在東京法務局において調査中、こういうふうになっております。
  11. 田原春次

    田原分科員 四国法務局で受け付けたのが東京法務局へ移送されるというのは、どういう必要というか便宜、あるいは都合でなっておるのですか。
  12. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 申告者四国高松に居住しておりますが、先ほど御質問の中にありました関係者が、ほとんど東京に居住しておるというふうな関係で、東京においてこれらの関係者について調査するのが適当である、このように考えまして、東京事件が回付されたわけでございます。
  13. 田原春次

    田原分科員 この種事件は別に秘密を要すると思わぬのですが、いま御調査になっている経過ですね、どの程度まで調べられておるか。お話によると東京関係者がおるというけれども、その被害者四国なんですから、東京には参考人程度がおるのだと思うのです。移送されたことはたいして問題にいたしませんが、調査審議中間報告程度をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  14. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 東京法務局において調査中でございますが、その内容につきまして、現在まで手元に参っておりませんので、至急東京法務局に照会いたしまして、その結果をお答えいたしたいと思います。
  15. 田原春次

    田原分科員 局長さんのところでおやりになるのは最終的にどういうことなんですか。たとえば東京法務局である種の結論が出ますね。その結論を統計的にただ人権擁護局に保存しておくだけなんですか。何か事件内容について指図するとか、それだけの調査では足らぬからもっと調査しろとかいうような、行政上の指揮命令というか、できるわけですか。
  16. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ただいま御質問のようなこういった重要事件、あるいは世間の耳目を聳動するような事件につき・ましては、必要に応じて第一線担当法務局あるいは地方法務局と常時連絡をいたしまして必要な指示をいたし、またその結論につきましても事前によく協議をいたしまして、適切妥当な結論を出す、このようにいたしております。
  17. 田原春次

    田原分科員 この若槻何がしは会計上の間違いも起こしておりまして、約二カ年間は会計検査院報告ができずにおるような使い込みもあったわけです。これは会計検査院に私のほうから出張調査方を要望いたしまして、たしか昨年の六、七月ごろに、会計検査院から課長級が二名、特にボリビアに出張いたしまして、約三万五千ドルにわたる不当流用事件というものを調査して帰っておる。これは、いま私は決算委員でございますから、決算委員会でその経過等を聞くことになっておるわけです。  それから、人権擁護の点については、終戦後できたりっぱな民主的な考え方で、非常にわれわれも期待しておるのですが、海外で遠いから調べに行けぬからというのではこれは納得できないと思うのです。そういうところにこそいろいろな中央にわからない問題が起こっておるのですから、必要とあらば予算的な措置を講じて調査に行くべきだと思うのです。それを遠いからだめだというようなことでは、東京付近の問題しか解決できぬことになってくると思うのです。必要とあらば奄美大島にも、必要とあらば相手の事件調査が必要なら台湾でも韓国でも、あるいは北米でも南米でも行くべきだと思うのですが、それを行けないというのは予算関係ですか、人員の関係ですか。
  18. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 非常に人権擁護に関する御理解のある御質問で、私どもも非常に喜んでおる次第でありますが、できるだけ御要望に沿うよう、手続面その他において研究いたしたいと思っております。
  19. 田原春次

    田原分科員 それでは事件場所の地図を持ってきておりますからお見せいたしますが、この赤の十字が日本人の入植しておるところで、ボリビアではこのサンタクルースとサンファン、この二カ所に日本人が入りつつある。ここに入るのは昔は太平洋岸からチリーのほうは入っておった。ところが新移住地はアンデス山脈の向こうにあるわけで、こっちからいっても鉄道も何もない。ブラジルのサンパウロに上陸して、約一週間かかる鉄道を通ってこちらに入っていく。外務省の人も少ないものだから、ラパス大使館があっても四人か五人しか日本から外交官が行っていない。万事、昔は海外協会連合会、いまは事業団支部長級にまかす。支部長は官吏ではないけれども何か非常に優越感を持って、おれの言うことを聞かなければ補助金をやらぬぞというような感情をまじえておる。そこで在留日本人は元来自分たち代弁者になってもらうべきものが、逆に一方的感情で押えつけられて戦々恐々としておる。それはアマゾンにもあるし、パラグァイにもある。ブラジルになりますと相当日本人がおるし、日本新聞社もあるからそれほど横暴とか不正なことはなくなってきておるが、人里離れたところにはある。言いにくいことだけれども人妻を姦するとか、人妻子供を産ませて平気でおる。数件起こっております。今度起こった事件人妻姦通事件ではないが、その若槻支部長は元来一種の村長的な、行政上の仕事をする支部長だが、同時に生活協同組合組合長を兼ねておる。そして日用品を仕入れて売るわけです。ところがお役所仕事でエクスペンシブなものだから非常に高くつく。そこで植田君というのは個人商店を開いたわけです。そうすると生活協同組合は役員ばかり多くて、毎晩酒ばかり飲んで高くつく、植田商店個人商店のほうが三割も安いから、日本人はそっちで買うわけですね。それでいろいろな妨害をしておる。こまかく書いてありますが、たとえば従来海外協会連合会、すなわち外務省関係で便宜上トラックを提供しておる。そのトラックによる植田商店の商品の積み込みをやめるとか、あるいはトラック道路を、植田商店の前を通るものをわざわざ通らぬように別の道をつくるとか、こまかく書いてあるので読んでみればわかります。最後に事をかまえて地元の警察とうまく話して、植田商店の主人だけを一人つかまえて、ラパスへ連れていっておる。ラパスボリビア政府が調べたところ、それは強制送還ほどの問題ではない。お前がサンファン地元でうまくいかなければ、ラパスの郊外で野菜をつくったらどうかということをボリビア政府は言っておる。一たん追っ払おうとした若槻一派大使館に話して植田君の細君、子供等は店におる。行ったときの旅行免状は一冊なんです。旅行免状がなくてそのままきて、今度は大使館に話して別の旅券を出して、そして日本送還する。送還されて羽田に着いたとき、法務省羽田入国管理局ですか、これは、別に君は強制送還じゃないじゃないか、普通の旅券だ。すなわち旅券の出し方は普通にして、かっこうだけ強制送還にしている。したがって植田君は非常に憤慨して外務大臣をぶち殺してしまおうと思って三べんも東京に来た。だんだん曜日がたつに従って日本政府救済機関があるならそれでやってもらおうと思って出したのがこれなんです。ところが植田君の解釈によると、あなたのほうから外務省に問い合わせたのじゃないかと彼は考えている。外務省ではそういう出先の、自分の直接の仕事じゃないけれども外務省で使っている外郭機関職員のやったことをかばう気持ちがあって、だんだん引き延ばしているんじゃないか、こういうふうに見ているわけです。そこで陳情がきた。したがって私たちはあなた方に期待するのだ。海外に行っておってもどこにおっても、当然日本人のことで問題が起こったことで、法務省人権擁護局調査対象になるものは、費用をかまわず、必要な場合は臨時に費用を出してでも調査をやる。現に会計検査院は行った。行った結果、不当なりと判定しておる。行かなかったら、それはいいかげんにごまかされていた。これは中南米各地に、約五十万人日本人がいるのですが、今後毎年出るのですから、一々こまかくうるさく干渉することは考えものといたしましても、事件が起こった場合にはやはり日本政府にたよるという気持ちがあるから、親切に、かつ明快に裁定して、行政上の措置にまずい点がある、あるいは行政官補助者としてのそういう団体の職員問題点があったら、これは一罰百戒できちっと反省させておかなければならぬと思うのだ、結論を申し上げれば。だからある意味においてはあなた方に非常に期待しておる。ほかに方法がなくてようやく気がついて法務省に出しているのであるが、法務省が訓育を東京に移して、続いては時間がかかっておるというので、またまたしてやられたかといって失望しているのです。事件内容そのものは御承知だと思いますから詳しくは申し上げませんが、こういうのが始終起こりますと、一面政府旅費などを貸して海外に出そうとしており、しかし行ってしまうとそこに悪代官みたいなのがおって、行政上の間違いを起こすのみならず、家庭も破壊する。四つ五つ事件が起こっておる。海外日本人はみんな知っておるのです。行っている移住者家庭に乗り込んでいって子供を産ませたやつなんかもあるのです。どこへ一体訴えていきますか。外国の政府にはみっともなくて訴えられない。泣きの涙というのがたくさんあるのです。これじゃ今後海外日本人を送るということができなくなる。そこで起こった事件に対してはひとつ明快な裁定を下して、被害者に対する慰謝なら慰謝方法を講ずる。そうして今後行く人に対しても、おれたちうしろには必要とあらば日本政府がついてきてくれるのだという安心感がなくちゃいかぬ。この点は議論ですけれども、これはあなたの決心を聞いて、それから事件の促進。私は決算委員ですから、いつでも何どきでも法務省関係の方にでもらいますが、あなたにも来てもらって、きょうはいい機会ですから、一言申し上げたいと思ったのです。これは質問の形にならぬけれども人権擁護局予算が足らぬで行けぬというような、そんなけちなことを言わぬで、第一前の法務大臣がいるんだから、必要とあらば集中的に二人か三人出すようにしてもらいたい。そうすると、非常に日本政府の公正な態度に安心期待をしてくると思うのです。どうです。あなたたちが、何か調査員を必要上出すというなら決意はできぬものでしょうか、どうでしょうか。
  20. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ただいま御質問のような辺境のほうの地におきましては、とかく人権侵犯ということが行なわれやすい状況にあるかと思います。まあ場所南米のしかも奥地という非常に調査困難な場所かと思いますが、外務省とも連結をいたしまして、また外務省関係調査されました結果がどうしても私ども人権擁護という立場から見ましても納得できません場合には、私どもの手でできるだけの調査をいたしまして、適当な措置をとりたい、かように考えております。  なお、現在の事件調査進行状況につきましては、先ほども申しましたように至急経過報告を徴しまして、できるだけ早い機会にお答えいたしたいと思います。
  21. 田原春次

    田原分科員 ただいまの御答弁で大体私は満足いたします。非常に大きな期待をかけておりますから、事件が起こり、申請ができましたならば、しろうとですから、書式等について不備な点もありましょうけれども、そういうことにこだわらず、むしろ指導していただいて、証拠の集め方あるいは参考人申請方等を指導していただきまして、よい結論を出していただくように希望申し上げまして、この事件はただいま進行中ですから、これ以上はあなた方の調査結論を待ってまた申し上げる機会もあると思いますから、一応これでおきます。  なお政務次官見えておりますか。——これを法務省立場から見た場合、こういう不当な行政措置に泣く者が国の内外を問わずあった場合、たとえば遠隔の地であったからといって、とても旅費がかかるから行けぬというようなけちなことを言わず、必要とあらば集中して予算等をおかけになるべきだと思いますが、法務省としてはどういうようにお考えになりますか。
  22. 天埜良吉

    天埜政府委員 お話のとおり、人権擁護ということはきわめて重大なことでございます。法務省といたしましては、必要とあらば海外であろうとどこであろうと、全力を尽くしてその裁定をしたいというふうに考えております。
  23. 田原春次

    田原分科員 それでは局長安心して、必要とあらば現地を調査してでも、とことんまで解決してやる、こういう決意でひとつ調査を進めていただきたいと希望申し上げまして、私の質問を終わります。
  24. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、坂本泰良君。
  25. 坂本泰良

    坂本分科員 裁判所関係について若干お伺いしたいと思います。  本年度の裁判所所管予算を見ますと、裁判費について相当の増額があっているようでありますが、この裁判費について、おもに支出をされるのはどういう関係か、大略でけっこうです。
  26. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 裁判費で支出しますのは、諸謝金及び委員等旅費、それから裁判一般の庁費等でございますが、裁判費をこまかく内訳を申し上げますと、まず諸謝命、職員旅費、それから委員等旅費、庁費、その他でございます。
  27. 坂本泰良

    坂本分科員 この国選弁護人の報酬とか、それから証人の費用、こういうのは裁判費には入らないのですか。
  28. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 国選弁護人の報酬は、裁判所費用の中に計上されております。
  29. 坂本泰良

    坂本分科員 昭和三十九年度の裁判所所管の予定経費要求額説明を先般法務委員会でもらいまして、それを見ますと、六が裁判費で、七が国選弁護人、調停委員等の待遇改善に必要な経費、こうあるわけですが、裁判費と、国選弁護人とか調停委員の費用、これは別になるのですか、どうですか。
  30. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 先般御説明申し上げました中の六の裁判費のうち、特に国選弁護人及び調停委員等の待遇改善に要する費用を抜き出しまして特別に説明したわけでございまして、裁判費の中に含まれているわけでございます。
  31. 坂本泰良

    坂本分科員 そこでお聞きしたいのは、九州にもあるかどうかわかりませんが、北海道へ参りますと、地方裁判所支部がありまして、その支部の管内に弁護士がいない。そうすると、他の管内から要弁護人事件については選任しなければならぬようになる。そういうような場合には、規定のほかにどういうような取り扱いをやっておられるか。
  32. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 それは委員等旅費の中から支出いたしております。北海道の例でございますけれども裁判官、検察官、弁護人の方々もみんな当該裁判所に出かけられて、そこで事件処理いたしている状況でございまして、事件裁判官のおられる庁に移送する等のことは一般にいたしておらないわけでございます。
  33. 坂本泰良

    坂本分科員 そうしますと、やはり雑費か何か、そういう名前で旅費なんかは支給しておる、こういうことになるのですか。
  34. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 それは、この前御説明申し上げました明細の中で、裁判費の中の委員等旅費というのがございます。その中から支出されておるわけでございます。
  35. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、普通の調停委員なんかの場合の旅費と、それから弁護人が国選弁護人に選任された場合の旅費の額、こういうのは区別があるのですか、一律にしておられるか、一律にしているなら、どういう標準にしておられるか、そこをお伺いしたいと思います。
  36. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 一律ということでは支出していないと思います。その委員等の方々の地位その他についての十分な、それに照応しますと申しては失礼でございますが、それぞれの、公務員なら公務員旅費等に照らし合わせて、相当と考えられる費用は支出しているはずでございます。
  37. 坂本泰良

    坂本分科員 それから今度はちょっと問題が変わりますが、地方裁判所支部甲号、乙号、それから簡易裁判所、ここに弁護人のいないところ、こういうのが全国に大体幾つくらいあるか。おおよそのことでけっこうでありますが、おわかりになったらお知らせ願いたい。
  38. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 ただいまその点はつまびらかにいたしておりませんが、甲号支部まではほぼ弁護人がおられますが、乙号支部及びその乙号支部より小さな都市にあります簡易裁判所では、ほとんど弁護人はおられない現況かと考えられます。甲号支部では、二、三名ないし十数名くらいのところはございますが、乙号支部となりますと、ほとんどないような状況でございます。
  39. 坂本泰良

    坂本分科員 甲号支部でも、北海道あたりに行けば、弁護士は一人くらいしかいないところがあると思うのですが、そういうところは全国にどれくらいあるか、そういう統計をとってみたことがあるかどうか、あったら、大体でけっこうです。
  40. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 ただいまこちらに持ってまいっておりませんが、例の臨時司法制度調査会におきまして、法律家の配置、全国分布状況について詳しく調べられておりますので、その関係調査表を後日お届けいたしたいと考えております。
  41. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで私がお聞きしたいのは、東京とか都会地、繁華なところは、十人とかあるいは五十人も、たくさんいるところから出張していくわけですね。ところが、非常に遠いところに弁護士がいて、その支部には一人しか弁護士がいない。そうすると、民事事件なんかは、まずそこの地元の弁護士を最初頼んだのが訴訟に勝ちというような結果になるのです。と申しますのは、その反対なのは遠くから弁護士を雇わなければならない。そうすると旅費、日当がかかるわけなんですが、その費用が持てない。そういうことで結局弁護士を頼めないというようなことになれば、そこで裁判の勝敗がきまるようなことで、実際の真実に基づくところの裁判はできぬのじゃないか、こういうところがあるわけなんです。そういうような場合についてどう打開したらいいか、考えられたことがありますかどうか。
  42. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 ただいまの設例、まことにごもっともな設例でございますが、日本では、その点、法律家、特に弁護士と申しますか、その数が非常に少ないこと、それからただいまおっしゃいますように、ある都市で一人でございますと、他のほうで法律上の擁護を受けられないという状況も生じてくるわけでございます。訴訟上は、遠隔地の弁護人を招聘いたしましても、それは訴訟費用には当然組み入れられませんし、そういう点でいまの例でおっしゃる被告の場合はかえって困るという状況にはなり得るわけでございます。その打開策といたしましては、全国にできるだけ多くの法律家が満ち——と申しますか、おられるように法曹を養成することが最大の急務だということを、特に臨時司法制度調査会においても取り上げられておるように伺っておるわけでございます。
  43. 坂本泰良

    坂本分科員 大臣が見えましたから、裁判所関係は、まだこれは法務委員会でいろいろお聞きすることがありますから、これで打ち切って、法務省関係に移りたいと思います。  実は私は考えておりました質問を申し上げる前に、ちょっとひとつお伺いする——というよりも、お願いしたいと思うのは、実は日韓祖国往来の問題できのう日韓の諸君たちが大会を開いて、きょう国会、外務省法務省その他に陳情する、そういうことになりまして、法務省関係は私に交渉してくれということでありましたから、きのうわざわざ法務省に参りまして、もちろん大臣は御病気でおられないし、政務次官もおられないから、秘書課のほうにお願いして、代表だから、そしてわれわれが責任を持って立ち会ってあれするから、ぜひひとつその陳情を聞いてもらいたい、そうすることによって、個別的に、名刺をくれとかいろいろ言ってきて、その者が法務省に出かけまして、一々そういう陳情を受ける、そういう繁雑も避ける意味で、われわれもそういうものの今後の陳情等についてはこれをサゼッチョンしまして、そうしてやったほうがいい、そう考えまして、けさ面会したい、大臣が御病気だから、政務次官でけっこうと思いますから、会ってもらいたい、こういうようなことを申し上げましたが、きのうは大臣も政務次官も、それは会えない、そういうことであった。けさになってまいりますと、外務省は、政務次官が会って陳情を受けられる、それから議長その他は、私こちらに参りましたから、具体的にどうなっておるかはわかりませんけれども、それぞれの社会党の代議士諸君が、外務委員会とか法務委員会とか、そういう向き向きの者が仲をとりましてやるようにしておったわけですが、けさになりますと、外務省のほうは外務政務次官が会われるということだから、法務省のほうも法務政務次官くらいはひとつぜひ会ってもらいたい、そうして朝から本省の秘書課に電話をかけますと、もう出かけたというし、国会に参りまして法務省政府委員室並びに秘書官室に電話で連絡をとりますけれども、まだ見えておらずに、結局会わないというところで私こっちの委員会に出てきたわけであります。もちろん、陳情には、気持ちのいい陳情と、そうでない陳情とありますけれども、こういう陳情に対しては、もちろん事務その他等に差しつかえないようにしなければならぬのですが、われわれも、そういうことがないように、大会により選ばれた代表者、その代表者の中でも、人数が多かったら——きょうは三百人おりますが、五人でも十人でもいいということでお願いをしたわけなんですが、法務省のほうは大臣も法務政務次官も一切会わない、こういうことですが、何か外務省その他とは特に違った考えを持っておられるかどうか、この在留朝鮮人の諸君にはどうして会われないか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  44. 植木庚子郎

    ○植木主査 この際申し上げます。  賀屋法務大臣は足首捻挫のため、自席からの答弁を認めたいと存じますので、御了承願います。
  45. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 答弁を申し上げます前に、一言おわびを申し上げたいと思います。  先日負傷いたしまして登院が不可能になりましたために、皆様方に御審議等につきまして非常に御迷惑をかけたことが多いと存じますが、まことに相すまぬ次第でございます。また、今日登院してまいりましても、当分こういうふうなはなはだふていさいな、失礼な状況でございますが、何とぞあしからずお許しをいただきまして、失礼の段は万々おわびを申し上げたいと存じます。  さて、ただいまの御質問でございますが、いまお話がございましたように、私は役所に来られるあの問題の陳情の方にはほとんどお会いをいたしておらないのでございます。と申しますのは、あの鮮人自由往来の運動の理由というものが一見非常に間違っておりまして、故意でございますか、あるいは御存じないためか、事実が非常に歪曲されております。昨年九月でございましたか、私ども政府では閣議でその問題を話し合いまして、あれに対する見解を一般に発表してございます。にもかかわりませず、その後の陳情というものは、同じく事実に非常に違った事柄のみを理由にして陳情がございまして、しかもその陳情というのは、きわめて多数の人が数次いわゆる波状的に押しかけてみえまして、これは政府の発表のものをごらんくだされば誤解の点は解けると思いますし、また御意見が違うならば、違う点を指摘してこうだからというお話ならいいが、依然として同じことを繰り返して不都合千万だというふうなあれでございました。それに始終会っておりましては役所の仕事も何もできせんから、私は、見えた方には政府の見解を書いた印刷物をあげろ、お読みを願って、その上で、私どもの見解が違っているなら違っている、見解が正しいなら正しい、しかしこうだからというようなお話でもございましたら、またお会いもし、何もしようと思っております。しかし、それは一般の陳情でございますから、議員の方からいろいろこういう議会のそれぞれの機関で御質疑がございましたら、またそのほか特にお話がございますれば、これはまた十分に伺いたい、かように存じておる次第でございますから、どうぞ御承知ください。
  46. 坂本泰良

    坂本分科員 われわれも、大ぜいの人がしょっちゅう法務省に押しかけて、まあそれは大臣のいまおっしゃったのとまた違うような考え方で言っているのかわかりませんが、非常に事務なんかに差しつかえるだろうと思って、今回のは、大会を開いて大会で選出された代表者、その代表者の中も、人数をわれわれが仲に入って打ち合わせをいたしまして、そして国会においでになれば国会でもいいし、また法務省に出かけてもいい、そうすることによってたくさんの人がまた波状的にいろいろ法務省その他に陳情に行くことをサゼッチョンすることもできる、そういうような考えで私もきのうからこの問題については初めてお願いに行ったわけなんですが、陳情の点なんかについては、それは見解の違う立場から考えますといろいろ違うだろうと思いますが、少なくともわれわれがいま申し上げたような趣旨と順序を明らかにいたしまして、そうしてなるたけそういう大臣その他の方々の職務にあまり差しつかえないようにしたい、こういう点からやっておる場合に、秘書官かあるいは秘書官の代理みたいな者から、それはだめだということを電話でなくて、大臣ができなければ、政務次官みずからでも電話ぐらいしてもらうのがしかるべきじゃないかと思うのです。そういうような点がありますから、この問題はまた今後法務委員会その他でもいたしたいと思いますが、そういうような本日の陳情の点については、私としてはやはり社会党の代表として、これは中央執行委員会でもきまったのでありまして、代表者として法務省関係を担当してやったようなわけですから、やはりこういうときは善処していただいて、われわれもその仲をとる以上は、面会の際におけるいろんなトラブルその他が起きないように、全力を尽くしてスムーズにやりたい、こういうふうに思っておりますから、ひとつ今後の問題として御要望申し上げまして、本論に入りたいと思います。
  47. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまお話、議員の方からお話がありましたら、むろん、こういう席でも、ほかの場合でも、次官と御相談いたしましてお目にかかるようにいたしましょう。どうぞ議員の方にお願いいたしたいのでございます。
  48. 坂本泰良

    坂本分科員 これは最初に私も予期していなかったことを申し上げるわけでありますが、先ほど裁判所の方に聞いたときにもちょっと出たわけですが、臨時司法制度調査会の問題です。これは八月中に答申を内閣にすることになっておるわけですが、もちろん、この中には、法科大学の問題、あるいは司法試験法の問題、司法研究所の問題から、基本的には、現在のキャリア制度の裁判等、いわゆる日本弁護士会あるいは日本法律家協会等が、法的三元として具体的な方針、要綱をきめまして、そうして具体的の方法を、条文をつくり、さらに弁護士法その他の改正まで準備いたしまして、それが参考になっていま調査会が審議を進めておるわけですが、しかしながら、いろいろとまた聞きますと、司法制度調査会というものがあって、盛んにそこで議論をしてきめても、結局は予算の問題であり、また大学関係は文部省関係であり、その他いろいろに関連するから、結局だめじゃないか、こういうふうなこともいわれておるわけでありますが、これは一昨年来池田内閣の重要方針としてきめられて発足をしているわけでありますが、中心はやはり法務省関係だと思うわけです。そこで、八月にそういう答申が出ましたならば、それについて、まだどういう答申が出るかわかりませんが、もしも司法一元の方針が打ち出されて、その中には経過の期間もあると思いますが、やはり何と申しましても法務省法務大臣が中心となって実施に移されなければならない問題と思うわけです。これについて大臣の所見を承っておきたいと思います。
  49. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 わが国の戦後におきます司法制度は、御承知のごとく、一大改革と申しますか、革新をしたわけでありますが、しかしそれにしても、制度及び実際面につきまして研究、実施を要することは非常に多いように承っております。そういう一環といたしまして、司法一元化とか、いろんな重要問題についての臨時司法制度調査会は審議機関でございまして、お示しのように八月に答申が出るわけでございます。重要問題に対する答申でございますから、その答申の実現ということにつきましては、いまもお話がございました、世間で一部思っておりますように、そう楽に簡単にすぐにばっとできるものばかりではもちろんないだろうと存じます。しかし、それだからといって、その奥行の重要性というものはまた一段とそこに意味のあるものが答申されることを私ども期待いたしておるわけでございますから、相当困難はございましても、尊重すべき、実現すべき答申と考えられますものにつきましては、私ども力を尽くしまして実現につとめたい、かように存じておる次第でございます。
  50. 坂本泰良

    坂本分科員 次に、刑務所における囚人の作業の問題ですが、本年度の予算におきましても、作業形態を紙細工等の低格作業から印刷、機械工等の有用作業に転換するため機械器具を更新し、作業付帯経費を充実するための経費の増額を請求してあるわけです。そこで、この点に関連して、先般大分刑務所の工場がガソリンの引火によって火災となりまして、わずか六カ月の短期のものが二人焼け死んでいるわけです。それについて、今後の機械工等の——刑務所の中も、機械化と申しますか、昔のように、こよりをよるとか、あるいは机とかその他のものを手工業的に作業したというようなときと違いまして、危険な工場で囚人が作業に従事しなければならぬということになる。この危険な作業につきましては、一般におきましては労働基準局が検査をするし、また、いろいろ化学機械あるいは毒物等の危険物も取り扱いますから、またガソリン等の引火するようなそういうものも非常に使いますから、厳格な検査と指導と監督が行なわれておるわけなんです。それについて聞きますと、何らそういうことが考えられていない。囚人は作業の自由は剥奪されておりますから、そこで仕事をしろと言われれば、しなければならない状態になっておるわけなんです。  そこで、一般的な問題について御所見をお伺いします前に、先般の法務委員会で、大分刑務所の火災並びに被害者関係についての調査をお願いしておきましたから、事務当局からその御報告を願って、その御報告の上に立って大臣に御質問を申し上げたいと存じます。
  51. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 大分刑務所におきまする本作業の実施につきましての安全管理関係者についての調査をいたしました。御報告申し上げますが、そのもとになりますのは、矯正局におきまして、刑務作業の安全作業心待、あるいは刑務作業安全管理要綱を定めまして、各所に通達し、それに基づいて各刑務所において実施いたしておるわけでございますが、大分刑務所の安全管理責任者は、作業保安の責任者であります管理部長、法務事務官が当たっておるわけであります。危害防止の主任者といたしましては、汽かん取り扱い主任者といたしまして法務技官を当てております。この者は、昭和三十三年に国家試験を受けた免許を持ったものであります。さらに、電気設備取り扱い主任者といたしまして法務技官一名を配置しておりまして、この者は、昭和二十九年四月一日に国家試験を受けた免許を有するものであります。さらに、危険物取り扱い主任者も法務事務官を当てております。この者も昭和三十七年に免許を受けておるのであります。その他、この作業の委託先であります明興金属工業株式会社から、指導員といたしまして、ガス溶接の免許を持った者、及び電気及び機械保安係員についての国家試験を合格した者が指導員として派遣せられ、これらの者が安全管理に当たっておるわけでございます。
  52. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、この作業の内容と、それから民間の会社とどういう関係でやっておられるか。それから、先日もお願いしたように、囚人がそういう特殊な作業に服した場合に、作業費等の問題がどうなっておるか、さらにまた、囚人に対しては、作業賞与金ですか、わずかな金を与えるだけですが、民間会社との間については、相当の原価計算によるところの利益その他の契約があると思うのです。その内容についてお伺いしたい。
  53. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 この明興金属との契約内容は、器材あるいは機械設備、副資材まで一切会社が提供しておりまして、そしてこちらがその原料に加工をする契約でございます。いわば加工の委託作業というような形でございまして、その原材料、機械設備あるいは副資材というものを会社が提供し、また、作業の実施につきまして必要な指導者を会社が派遣して、そして刑務所におきましては囚人がこれに委託加工する。したがいまして、委託加工の委託契約のような形になるわけであります。そしてその賃金計算につきましては、一個幾らという形ではございません。就業人員一人につき幾らという形の委託加工の契約でございます。刑務所が収得する賃金と申しますか、加工費が低い、一般との関係はどうなっておるかという御指摘でございますが、刑務所の受刑者特に大分刑務所は短期の者が多うございまして、また、刑務所におきましては無職の者が非常に多いのでございます。将来、さような金属工業あるいは溶接というような、社会に出まして需要の多い職種を訓練せしめるという意味でかような業種を取り入れたわけでございますので、これらの者に指導しましてある程度の技術を覚えさせて釈放していきたいというような考え方でございます。いわゆる一般経済界におきまする工場労務者と違いまして、技術は当初はゼロなんでございまして、それをそれぞれ指導いたしまして、どうにか仕事ができるようにしていく、そうしてそれがある程度熟練してまいりますと、その者は釈放されていくというような状況でございまして、技能の程度というものは、常に養成工を養成するというような程度の技能しかございません。したがいまして、一般賃金と比較しますと、きわめて低額にならざるを得ないというような状況でございます。また、本件のような場合、機械設備等を全部会社が設備をするというような点を考慮しまして、当初の賃金算定にあたりましては、原価計算等も向こうから提示せしめまして、刑務所当局としましては十分検討して、不当な利益を与えるというような計算にはなっておらないのであります。適当な利潤を得る程度の賃金算定をいたしまして当初契約をしたわけであります。その後受刑者の技能も進みましたので、負金の改定もいたしておるわけでございます。  なお、受刑者に対しまする作業賞与金というものが、これまたきわめて低額であることは……。
  54. 坂本泰良

    坂本分科員 そうでなくて、幾ら取っておるかということを言わないと……。
  55. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 当初の契約では、一人一日百円、その後改定いたしまして、現在百四十円ということになっております。それで、作業賞与金につきましては、その金額がきわめて低廉ではございますが、これは御承知のように、いわゆる賃金ではございませんので、刑務所におきまして、その者が勤労したことに対する報酬というもので、勤労精神というものを作興せしめるという精神的な意味合いで賞与金を出すわけであります。その金額をいかにするのが相当であるかということに相なりますと、大体刑務所におきます平均の在所期間が十五カ月でございますので、釈放になりました際に、少なくとも、その者が社会に出まして直ちに就職して働くということも不可能であろうと考えまして、一カ月分何とか生活できる程度のものを支給したいと考えておるわけでございます。ところが、その基準ということになりますと、幾らが相当かということはいろいろ議論もあることと思いますが、われわれとしましては、いわゆる社会保障の面の生活保護の一カ月分というものが一応の目安になるわけでございまして、現在それが三十八年度で四千八百円ということになっております。五千円程度支給できるというので、現在それを基準にいたしまして作業賞与金を支給しておるわけでございます。
  56. 坂本泰良

    坂本分科員 いろいろ検討した結果が現在一人一日百四十円というわけですね。大体そんな安い賃金が一般にありますか。普通、自由労務者でも、これは都会地といなか地は違いますけれども、少なくとも一日三百円でしょう。そんな安価な賃金でやった会社はえらいべらぼうなもうけをしておるのじゃないですか。こういうガソリンが引火して危険になる、いすかなんかつくっておるということをこの前言われたと思うのですけれども、そういうのは少なくとも一日千円ぐらい賃金を出さなければいま来ないと思うのです。これは一般会社と刑務所との契約ですから、百円ないし百四十円ときめられた根拠はどこにあるか。これは大臣も御参考にぜひひとつ聞いてもらいたいと思います。
  57. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 先ほども申し上げましたように、見習い工の養成のようないわゆる職業訓練を兼ねたような作業でございます。一般民間でございますと、養成工に相当命をかけましても、将来それが熟練者となって相当生産性の向上もはかれるわけでございます。刑務所におきましては、ある程度じょうずになれば刑期が満了して出ていくので、常に指導訓練ということが必要になるわけでございます。それと、この工場を大分に誘致いたしましたのは、大分刑務所の所在地が、いわゆる商業関係の立地条件といたしましてはきわめて不利な場所でございます。われわれといたしまして、従来は、竹細工とかあるいはわら工とか、さような将来本人の更生に効力の少ない作業しかございませんでしたから、現在社会に需要の多い溶接工であるとか、あるいは旋盤工であるとか、さような近代産業に適した業種の導入をはかりまして、ようやくこの明興金属会社をお願いしたわけでございます。一般に会社といたしまして刑務所にその作業を持ち込むということにつきましては、相当の理解のある会社でないとできませんし、なおかつ、これは本社は大阪でございますが、大阪からわざわざ機械器具を運んで設置する。また製品にしましても、販路が九州のみに限らない、主としてやはり大阪中心ということになりますので、製造工業といたしましては、そこに原材料の輸送、また製品の輸送に対する諸経費も相当かかることと思われるのでありまして、その点を考慮いたしまして、大分刑務所では、さような原価計算等の上、大体当初は百円という契約をしたわけでございます。
  58. 坂本泰良

    坂本分科員 どうもやはり局長は専門家でないからあれでしょうが、この前もお願いしておきましたように、原価計算と言われる以上は、原価計算の基礎があるわけなんです。それは、本日は時間もありませんから、またあとで資料を提供していただきますけれども、いかに見習い工といえども一日百四十円という賃金はないはずですよ。ですから、大阪からわざわざ来て機械設備をするというのだけれども、ただみたようにして一般に売れるところの製品ができるから、ばく大な利益を受けるわけです。だから来ておるわけでしょう。それは今後の資料によって、あるいはそんなことはやっていないかもわからない。やっていないならば、その資料によって検討すればわかりますから、その際に譲りまして、少なくとも現在百四十円くらいの賃金の計算によってその製品を渡すようなことは、これはべらぼうに利益を得さしておるということになりますから、十分な注意をしなければならぬと思うのであります。  御参考までに申しますけれども、大分刑務所のガソリン引火によって死亡した者は、熊本県の者が一人と鹿児島県の者が一人です。鹿児島県の者に対しては川崎代議士がいろいろ事情を聞いておりますから、あらためてまた法務委員会等で質問すると思いますが、熊本県の者は、そんな刑務所内で技術なんか教えてもらうような家庭ではありません。わずかな税金、これもやはり県税であります。県税の関係で、いわゆる執行法に基づいて県の吏員が差し押えをした。その差し押えに来た場合に、執行吏等の差し押えなんかとは違って簡単にやるから、そのときの感情上の関係でそれに少しさわった。そのさわったということが公称執行妨害罪ということになった。しかしながら、その人間も、そうしたからというので、弁護人もつけないで裁判が行なわれた。弁護人がつきその内容等にもほんとうの審理が進められたら、これは前科もありませんし、まじめな商売人の家庭ですから、必ず執行猶予になるはずのものなんです。しかし、それが六カ月ならば、やはりあのときけんかしたのが——熊本のことばでいえば、けんかしたのが悪かったから、それじゃ六カ月だからつとめてこいということで刑務所に入ったのです。その兄弟は全部大学に入っております。この焼け死んだ本人は大学に行っておりませんけれども、うちの職業のあとを継ぐということで行っていないのでありまして、わずか三カ月か四カ月で何も技術を覚えて帰らなければならぬような家庭でもなかった。それが四カ月間まじめにやって、そうしてそのあとでこの不幸にあっておるわけです。ですから、われわれは、行刑の面からいたしましても、囚人に対して労働を与えるというのは、労働は神聖である、労働によって改過遷善をして真人間になって帰るということが日本刑法の目的でもあるし、行刑の本旨でもあるわけですが、そういう点から考えますと、弾制労働をしいるのにあたって見習いをやらせる。覚えたころには出ていくから、外に出てためになるだろうというのは一つの口実であって、ある特定の民間会社にばく大な利益を与えるために、囚人という自由を奪われたる者に対して強制的にやらせておるというふうにも考えられまして、親兄弟、親戚としては、泣くに泣かれない状態にあるわけです。  こういうような状態にあるのに対して、会社からわずか十万円の見舞金で、そのまま放任してある。あるいはあとで訴訟を起こして国家賠償のところでやったらいいだろうというのかもしれぬが、私はこういうものではないと思うのであります。  そこで、大臣にお聞きいたしたいのは、このような具体的な問題が起きておりますが、これに対してわずか十万円ぐらいの見舞金です。一般会社でこういう問題が起きたらば、三百万、五百万は出さなければならぬと思うが、それを十万円程度でもう六カ月以上、八カ月も経過いたしておりますが、法務省は、いかに囚人といえどもそれでよろしいかどうか、この点をお聞きしたいのが第一です。  第二は、このような刑務所の機械工の作業状態になりましたならば、これはその就業させる点についても、さらにまた、民間会社との契約をする場合においても、さらには、この予算の説明にもありまするように、印刷機械二等の有用作業に転換する、こういうことになったならば、その前提として、それに就業させる者が危険な状態におちいって、不幸な状態になったならばどうするか。それから、一般工場のような労働基準法に基づくところの方法について十分考えねばならぬ。ただ、役所のやる仕事だからそれでいいということではないと思うのであります。こういう点について、この刑務所の工場が機械工等に発展するについてこの予算の実施と、それから、すでにこういう機械工が大分刑務所以外にもあると思いますから、それに対してどういうふうな措置をするか。新たな工場設備等をやる場合にどういうふうにやるか、というようなことについての御所見を、二つに分けてお伺いしておきたいと思います。
  59. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お答え申し上げます。  この刑務所の作業につきまして、刑務所の収入の単価と申しますか、計算が安過ぎはしないかというおことばがございましたが、矯正局長から申し上げましたが、普通の作業と違いまして、設備を特殊にしなければならぬ、製品、原料の運搬が特殊である。刑務所でございますから、作業場に関係者の出入りを自由にやるわけにもなかなかいかないというふうな制約もございます。また、技術指導員を出さなければならぬ。それから、矯正局長が申し上げましたように、受刑者の熟練度がたいへん低うございますし、普通の計算方法ではちょっと事情が違うかと存ずるのでございます。刑務所におきましても、安過ぎてもいかず高過ぎてもいかず、いろんな角度から従来も各方面から御意見が出るところでありまして、公正を期してやっております。  なお、御要求でございますれば、どういうふうな計算の基礎でいまの百円、また百四十円に増しましたか、これはまた資料を提供いたしましてお考えを願いたい、かように思う次第でございます。  それから、刑務所の作業も時世とともに種類が転換するのもまたやむを得ないことでございまして、手工業時代の、私どもが刑務所の予算なんかを大蔵省でやりました時代から見ましても、いまよほど転換をいたしておりますが、これは出てから役に立つ、収容者が出獄しまして後に生活のために役に立つという面から申しますと、時世が変わりまして昔ながらのものをやっているというわけにはまいりませんので、だんだん一般が機械化すれば機械的なものを使うとか、多少化学的なものも入る。また、それにいかないと役に立ちませんので、そういうふうに転換をしてまいるということもやむを書ないこととも考えられるのでございます。  刑務所として一番考えますのは、収容者の安全ということと取り締まり——普通の場所と違いますから、身柄の確保、この二点は非常に力を入れて考えます。普通の労使関係でございません、一つの懲罰の意味でございますから、労働基準法等の適用はむろんございませんが、しかし、安全とか、危害を予防するという点につきましては、基準法の精神などはもちろん、危害予防ということにつきまして十分心を配り、設備をしてまいる次第でございます。  従来もそういう意味で安全操業につきまして十分な指導、指針、指示をいたしておるわけでございますが、お示しの昨年の大分の事故等にかんがみまして、特にあの刑務所につきましては、いろいろ消火の点、各方面からの専門知識の人の視察、検討も経まして、設備の改善すべきものは十分に改善する。ほかの刑務所につきましても、いたしておるわけであります。  それで、なお二人の犠牲者が出ましたことは、その方や家族の方にはまことにお気の毒な次第でございます。しかし、私の言いました受刑者にしましても、あるいは家庭の事情はさようでございましょうが、一般の収容者としましては、つまり手に一定の職がついていない、堅実な生計を営む道を持てないということが共通の、大多数の弱点でございます。刑務所の作業は、お話のように、仕事をするということを通して身体を、特に精神の鍛練をする、人間の改過遷善に役立つということがむろん主眼でございますが、同時に再犯の予防、当人の出獄後のことを考えまして、まあ腕に覚えの職をつけさしておくということもまた一般に大事なことでございます。中には、受刑者の個々の事情によりましてさほど必要のない人もあるかもしれませんが、これは一般にそういうふうにしなければならぬ状態でございますので、やはりこれはまだ、大体一律にその方面の仕事をするようにという方針でいっている次第でございます。  なお、あの際には十二万円を支給いたしました。というのは、こまかいことはまた矯正局長が申し上げましょうが、死亡の前から全く重体でございますので、釈放の処置をとりました。それで、死亡の場合は最高十万円、それからそういう場合は全身傷害でございますから、最高十二万円というのが現在の規定でございます。その十二万円のほうを支給したことに相なっております。なお、会社側が十万円とか、刑務所の職員の団体におきまして二万円の弔慰金を出したということに相なっております。  私は、率直に申し上げまして、就任以来こういうふうな弔慰の金額を読んでおりませんので、最近読みまして、いかにも金額の少ないことに驚いておるのでございます。聞きますと、それもやっと昨年から、従来最高三万円であったものを非常に努力して一躍三倍以上の十万円に上げたという話でございます。十万円は少ないかと存じます。しかし、いまのように、何とか適当ななにをつけたいというので努力しまして、一躍三倍の弔慰金にしたようなことでございます。これでよろしいかとお話しになれば、十分でございますと申されませんが、ただいまのところの処置としましては、あの程度以上にやり方もなかったわけでございます。  なお、これがいろいろ取り調べの結果、国のほうに過失があるということになりますれば、その問題については別問題でございますが、それが判明するまでは、いままでとしてはできる限り最大限の処置をとったということでございます。  なお、この金額につきましては、いろいろ他の面の、全く同じ種類の給与というものもございませんでしょうが、いろいろ比較、参考にすべきものを参考資料にしまして、なおこの金額の増加ということにつきまして一そう努力をいたしたいと思います。  それから、作業につきましては、いまのように決して会社に——右申しますように、作業をやるということが、刑務所に収容しました者に対する国の施設として必要なわけでございますから、その意味でやっておりますので、会社をもうけさせるとかもうけさせぬとか、それはそういう観点には全然立っておりません。こういう請負でも加工でも、また製造でも販売でも、これが安過ぎて他の競争業者が困りますとか、また高過ぎては、多少のハンディキャップがありませんと、刑務所の製品なんというものははけにくい点もございますので、そういう点を考えまして公平適切にということを念としてやっている次第でございますが、なおそれにつきましては今後も十分に注意をしてまいりたい、かように考えます。
  60. 坂本泰良

    坂本分科員 これで終わります。  そこで、刑務所の機械化の問題については十分の検討を要すると思うのです。これは前回の法務委員会でも、大臣は経済通でもあられるから、またいろいろの考えもあるだろうということで、今後の問題だと思いますが、問題はわずか六カ月ぐらいの短期自由刑の者をこういう危険な作業に従事さしたというところに誤りがあると思うのです。  さらにまた、新聞では「ガソリン火を吹く、受刑者六人が重傷」というふうに大きく出ておりますが、家族としましては、この責任者に対しては、やはり刑務所の中であり、役所同士のことであるから、もみ消しをするだろう、そうして責任がないようにするだろうということも聞きますから、私なんか、そういうことはない、十分法務省のほうにも話をしてやりたい、そういうふうに言っているわけです。この具体的の問題について善処をしてもらうことと、刑務所の機械化の向上の問題、これについては重大な問題だと思いますから、技術を教えるなんというならば、一年か二年以上の者でないと、六カ月くらいの者にやらせるというところが、これはちょっと考えが違うのじゃないかと思いますし、そういう点については、せっかく予算がここに組まれておりますから、今後の予算の実施において、実施する前にやはりこれは大臣にお願いして、刑務所の運営方法等については、いままでの考えを捨てて、そうして新しい考え方の上に立って進まなければならぬと思います。どうぞそういう点について、これはわれわれも十分検討して意見を申し上げ、また法務省としても早急にこういう問題は解決していただきたい。こういうふうに存じます。  時間も参りましたから、その御要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  61. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、川俣清音君。
  62. 川俣清音

    川俣分科員 法務大臣が健康を害しておられる不快なときに質問を申し上げることは、少し恐縮に存じますけれども、一点だけお尋ねしたい。それは、法務大臣賀屋さんであればこそお尋ねをしたいのでございます。  昭和二十九年十一月二十六日に法制局総発第八十九号で、今後国民生活に関係のある法令用語について統一していこうという研究がなされまして、閣議を経まして、法令用語改善実施要領なるものが発表されております。これは、いまでも法務省としてはこの決定を尊重してやろうというお考えでおられますか、これは不十分だというような見解でおられますか、この点をお尋ねしたいと思うのです。
  63. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 いまお示しのような決定がございまして、まだそれは存続いたしております次第です。
  64. 川俣清音

    川俣分科員 そうだと思います。これは相当長い間、御承知のとおり、二十九年三月十五日国語審議会でさらに分科会を設けまして、法律公用文部会の研究の結果に基づいて総理大臣に建議いたしまして、内閣は法令用語改善実施要領というものを各省に通達をいたしたのでありますから、法務省もおそらくこの実施要領を尊重されておると思うのです。  そこで、賀屋さんにぜひお聞きしたいのです。いま旧地主補償の問題が大きく取り上げられておる。池田総理大臣は、何らかの報償を行なわなければならないであろうということを国会でも言っておられます。この法律用語例によりますると、「ホウショウ」の「ショウ」は、償う「償」と奨励の「奨」と二つあるわけですが、まぎらわしいので、今後は「奨励」という用語を用いるということになってきております。そうすると、旧地主への報償は奨励をするということばに置きかえられるわけですね。旧地主に奨励をするということが、どうも今度は理解できなくなるのじゃないか。あなたが政調会におられた時代に何らかの報償をするということになったので、当時の報償は補償にかわる報償であったでしょうが、この用語例によりますと、これは奨励をするという意味に解釈されることになるわけですが、いかがなものかと思うのです。旧地主を奨励するというのは、どういうことになるのか。補償でなくて報償、何らかの報償をする。それが今度は用語例によると奨励ということになる。どうもこの用語例と総理の使っておる報償では、いまでは大きな矛盾を来たすといいますか、誤解を招くような結果になりまするので、この際、法務省の見解を明らかにしておいていただきたい。これだけなんです。健康を害しておられるときにはなはだ失礼ですけれども、ほかの方ではちょっと聞きにくいので、賀屋さんなら前の関係もおありになると思いまして、お尋ねしたわけです。
  65. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お答え申します。  いまいわゆる農地報償の問題が起こっておりますが、それがどういう文字を用いることになりますか、またその意味がどうでありますかということは、いま私がお答え申し上げることは不適当かと思うのでございます。  ただ、いま私が政調会長時代に起こった問題だからどう考えるかという仰せがございますから、率直にそのときの私の気持ちだけ申し上げさしていただきます。  そのときには、別にそうことばの意味も正確に考えるという状況でもございませんでして、補償ということが前によくいわれておりましたが、国がお金を旧地主に払わなければならぬという法律的の義務は正確に言えばないのだということが一般の気持ちだったようでございます。それでは、何で出すかというと、まあ奨励ということになるだろうというお話がいまございましたが、そういう気持ちはなかったのでございます。というのは、そういうことが再び行なわれる、農地の買収のようなことが再び行なわれるということを予想もいたしませんし、いわんやそういうような場合にお金をまた出すんだ、そしてどんどんそういうことが遂行されるように奨励をするのだというようなことは、おそらく私は毛頭、頭にございませんでしたが、ほかの人もなかったんじゃないかと思うのでございます。まあその点は、文字の意味のせんさくが足りなかったという御批評はあるいは受ける余地があるかもしれません。それで、つまりそのときの気持ちは、大へん気の毒であった、財産的に非常に旧地主が損害を受けているということも大体認めなければならぬのが事実である。それもほかの山林の所有者とか宅地の所有者に比べて非常に気の毒であった。と同時にまた、これは、まあ全部の方がどう考えておるか知れませんが、相当多数の人に、あのいわゆる農地改革と申しますか、農地の買収ということが、戦後の日本の社会及び経済、ことに食糧の供給等の上において結果的に非常に功績があったじゃないかというような面からも、とにかく気の毒でもあるし、たいへん役に立ったことじゃないかというような気持ちで、結局それが報償というようなことばになったんじゃないかというような、ばく然たる気持ちの上で用いておった次第でございます。率直に気持ちだけを申し上げておきます。
  66. 川俣清音

    川俣分科員 もうそれ以上ここで賀屋さんと論争しようとは思いませんけれども、私はあえてこういうことを持ち出したのは、ときどき総理並びに閣僚が思いつきなことばで、かえって世間に誤解を招くようなことが非常に多くなってきておるという点を懸念をいたしまして申し上げるのでございます。この法令用語辞典によりますると、報償は、「一般に、役務の提供や施設の利用などによって受けた利益に対する代償を意味する。現行法令においては、用いられた例は、比較的少いが、旧憲法に「報償ニ属スル行政上ノ手数料及其ノ他ノ収納金」という場合の「報償」は、この意味に用いられた適例であろう。」こういう説明が加えられておるわけですね。ですから、問題が起こってその場限りの対策としてことばを使うことは、かえって問題を混乱させることになるということを指摘をしたいのであります。一番関係の深いのはやはり法務省だと思います。すべての裁判にいたしましても、この用語が非常に重要なものですから。したがって、こういうものについては相当注意をしていかなければならぬじゃないかということを指摘し、法務省もこの点については特に関心を持ってほしいということなのでございます。賀屋さんが当時おられたときの気持ちが、奨励なんかする意味ではなかったろう、こう思うんですね。旧地主を奨励するというのはどういうことか、意味が通じなくなってくる。しかし、用語とすれば、そういうふうにいまの子供たちは最近の日本語を使いまするから、したがって誤解を受けることになる。政府は今度は旧地主を奨励するそうだというように解釈されますると、何のことだかわからなくなるということになるだろうと思います。ことばは必ず進化しまするけれども、いまの時代はいまの時代らしい評価をする。その評価によると、奨励だ。こういうことになりますると、何のための——報償といったって、自分だけはいいつもりでおりますけれども、一般の国民は理解しない。しかも、これからの青年にはますます不解な、理解できないのを、ひとりよがりでお使いになったということになるおそれもありまするので、あえて賀屋さんに指摘をいたしまして、今後の閣議決定等につきましても、不用意な用語は法務省としても関心を持つという態度をとってほしいものだ、こういうことだけでございます。簡単に見解を述べてください。
  67. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 よく拝承いたしております。
  68. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、田中織之進君。
  69. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 法務省の三十九年度の予算に関連して、三、四のきわめて重要な問題だけに限定してお伺いいたしたいと思います。時間の制約もございまするので、私も簡潔に伺いまするから、大臣の御答弁も簡潔にお願いしたいと思います。  まず、予算の問題であります。特に破壊活動防止のための調査活動を強化するために公安調査関係予算が本年相当増額をされておるのであります。特に公安調調査官の二百名の増員という問題は、法務省関係で人員の増加約六百名の三分の一を公安調査関係で占めるのでありますが、これは一体いかなる理由によるものでありますか。  もちろん、治安関係あるいは破壊活動というような問題は、治安関係が非常に悪くなっているというような一般的な情勢のもとでありまするならば、それが破壊活動へ向いて進展しないとも限りませんので、そういう点から考えて、この機能を強化しなければならぬということは理解できないではないと思います。しかし、池田内閣の成立以来のいわゆる経済の高度成長によりまして、全般的に国民生活の向上が、アンバランスはありますけれども、伸びておるということを盛んに強調せられておる内閣のたてまえといたしまして、これは私どもちょっと理解ができないのであります。一体これを二百名も一挙に増員をしなければならぬという根拠はどこにあるのか。  同時に、この二百名は主として左翼関係調査機能を強化しようというのでありますけれども、むしろ破壊活動は先々国会に晦ました暴力行為等処罰に関する法律等の問題からいたしまして、右翼の組織的ないわゆる暴力というようなものが相当問題ではないかと思うのであります。右翼、左翼の関係は二百名の公安調査官の増員にあたってどういうふうに考えておられるか、まずこの点を伺いたいと思います。
  70. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 経済の全体が、GNPも非常に増加いたしまして、国民各層の生活の状況も一般的に非常によくなってまいりました。したがって、犯罪の方面におきましても、犯罪は非常に増加するといわれますが、これは主として自動車交通の増加に伴う交通違反でございまして、窃盗とか横領とか詐欺とかいうふうな、いわゆる財物犯はむしろ戦前より三〇%も減っておる。その点にはそういういい反映が出ておりますことは事実でございます。それから、これは公安調査庁の活動のすぐ対象ではございませんが、それにもかかわらず、暴力犯的なものが、相当にまたこれが増加しているという現象も起こしておる次第でございます。それで、ただいまお示しの問題につきましては、左翼方面の破壊活動に関する調査の対象も、人員等も非常に増加をいたしておる状況でございます。また、特に右翼と申しますか、こういう方面の組織的の破壊活動というおそれのあるものも増加している。むろん数はそのほうが少ないと思いますけれども、増加の割合はなかなかこのほうが、比較的割合としては多いのじゃないかと思います。そういうような意味で増員を計画いたしまして、増員中の六割は大体左翼活動の方面に従事しますが、四割は右翼活動の調査に向ける方針でございまして、これは在来の人員の向け方から申しますと、右翼の活動方面によほどよけい向けている、こういう割合になっております。ですから二百人のうちで百二十人が左翼方面で、八十人が右翼方面、かようになっておる次第でございます。
  71. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、その左翼関係というのは、たとえば政党関係あるいは労働組合関係あるいは平和運動、民主運動の関係というような関係に分かたれると思うのでありますが、公安調査庁、法務省としては、特に最近の労働組合運動というものはそういう意味で公安調査庁の活動、いわゆる破壊活動防止の調査対象というふうに考えておられるのか。特に百二十名も一挙に左翼関係について増員をしなければならぬというような情勢が、どこから生まれているのでしょうか。
  72. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 大体左翼関係といたしまして日本共産党、在日朝鮮人総連合、全日本学生自治会総迎合、これは全学連でございます。それから日本社会主義学生同盟いわゆる社学同、共産主義者同盟、国際共産勢力の働きかけ、大体こういうのが左翼のほうの調査対象でございます。
  73. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、公安調査庁としては、現存の段階では労働組合の運動、もちろん全部ではないでありましょうけれども、そういうものは破壊活動防止の観点から調査対象とはしておらない、このように了解してよろしいのでしょうか。
  74. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 労働組合運動そのものは、合法的に行なわれる場合にはもちろん破防法の対象にはならないと思うのでございます。ただ、ある運動にいま申しました破壊活動のような分子が入るか入らぬかということは、これは具体的のそのケース・バイ・ケースの問題でございます。労働運動は入るかという仰せになりますと、これは入らぬと思います。しかし具体的に運動がありました場合に、一部の共産党などの破壊運動がまじるかまじらぬかというのは、これはそのときの状況であります。労働運動そのものは、別に破壊活動として調査してどうするという考えはない次第であります。
  75. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 公安調査庁の活動の問題については、あらためて法務委員会等で伺うことにいたしたいと思いますが、今度の予算にあらわれてまいりました調査官の大量増員というような問題は、破壊活動防止の名において、やはり思想警察とか、昔の特高警察的な機能を強化したものだ、このような印象を受けるのは私一人ではないだろうと思うのであります。私はそういう観点からいたしまして、右翼関係においては、先年の三無会事件でありますか、これは現在公判が進行中でありますけれども、問題がございましたが、その後にこういうような計画的な犯罪というものは、公安調査庁の活動過程においても指摘をされておらないように私は思うのでありまして、比率から申しまして勢い左翼、共産主義の活動という、ものに重点を指向しておるようでありますけれども、あくまでやはり共産主義は一つの思想なのでありますから、思想には思想をもって対抗していくべきが国としての基本的なかまえでなければならぬと私は思うのです。それを公安調査庁の機能を強化したからということによりまして、——国民の中に共産主義を信奉し、あるいは共産主義活動に従事する者がふえていくことは、これは先ほど私が指摘しましたように、一般的に経済情勢がよくなったからといって、やはりいろいろな一面において格差の問題、アンバランスの問題が出ておる限りにおきましては、勢いそうならざるを得ないのでありまして、それは別途に高い立場において考えるべき問題だ。そういう意味で、この公安調査庁の非常な強化というものには私ども賛成できかねるという点を申し上げて、いずれその具体的な点につきましては、法務委員会等において検討したいと思うのであります。  そこで次に、これも予算の問題でございまするが、こういう面の予算は増加しておるのでありますけれども、たとえばいわゆる刑余者の保護更生等に当たります保護司の活動に対する政府からの費用弁償、あるいは手当というようなものについては、保護司の全国大会等において、毎回政府に要望なり決議なりがなされておるのでありますが、明年度におきましても、これらの要望はほとんどいれられていないように感ずるのであります。保護司、いわゆる刑余者の更生とそれから犯罪の予防、いわゆる再発を防止するというような活動の面に国民から協力を得る点に対しては、賀屋大臣として今後特に費用弁償その他の点において格段の配慮を願わなければならぬと思うのでありますが、三十九年度予算は見るべきものがないと思うのでありますが、この点はいかがですか。
  76. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまのお話のうち、前段にございました労働運動と破壊活動と実際において見分けにくい面もおりおり出たかと思いますが、私はこれは厳に区分してまいりたい。人権の尊重ということは非常に重大に考えておりますので、健全なる労働運動の発達ということはほんとうに願わしいものと思っておるのでございます。したがいまして、そういうほうを弾圧する、昔の警察と申しますか、そういう考え方がないのみならず、厳にそういうことを区分してまいりたい。またその点につきまして、世間一般にも十分な御理解をいただいて、誤解がないようにということをしんから考えておりまして、ことに破壊運動が思想の面か活動の面かという、これはなかなか具体問題でわかりにくい点もあるかもしれませんが、やはり考え方としては、活動そのものに重点を置くといいますか、目的を置きまして、思想面の対策が、いまいろいろ御意見もございましたが、これは思想に対しては思想をもってする、そうあるべきものであると考えておる次第でございます。  なお保護司の面につきましては、私も相当関心を持っておりまして、予算を検討してみますと、現在実費弁償額が月二百二十円——まあ何もアメリカを標準にする必要はありませんが、いわゆる三百六十円、一ドルにも足りない金額であります。調べてみますと、これは昨年、三十八年度予算で四十円上げているという話であります。せめて五百円に、一挙千円にもしたいのですけれども、そうもまいりませんので五百円にしたいと思っておりましたが、四百円までにいたしました。もっともこれは四百円でもあまり少ないのではないかというお説も多いと思いますが、なかなか四百円にするのも骨が折れた次第でございまして、それで一部の、全部ではないかもしれませんが、相当多数の保護司の方も、満足はしないが、努力はしていてくれるという点は認めていただいた面もあると思っております。もちろんこれでよろしいと思っておる次第ではございませんが、大蔵省のほうも、同じ立場ではございませんが、民間の方にいろいろ広い意味の公の社会事業とかいうことで協力を願っておる委員というふうな方も、ずいぶんあるようでございまして、これらのバランスその他から、なかなか上げる面も母が折れる。私ども歯がゆいと思いながら、そういう点もあるようでありまして、はなはだ不十分ではございますが、昨年四十円、今年は八十円上げまして四百円にいたしたというような次第でございます。
  77. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点は若干ずつ、特に費用弁償の点では増額を見ておるということでありますけれども、やはりこれは役人ではできない仕事を民間に協力を願うのでありまして、もちろん名誉職、あるいは経済的にゆとりのあるような人でなければ、こういう仕事の手伝いができないわけでありますけれども、最近のように一人、多い場合には七、八名も担当して、日常の問題であるとか、あるいはそういう者になりますと、いよいよ服役満期あるいは仮釈放等で帰って願いります前には、刑務所の面会等にもたびたび行っておるようでございますので、これらの点について、せめて費用の面だけにおいても政府としても補いをつけていくというような点について、今後格段の配慮を願いたい。これは希望を申し上げておきます。  それから、私の時間ももうありませんので、あと一、二点伺っておきたいと思うのでありますが、いま公安調査庁の活動に関連いたしまして、人権擁護という点に主眼を置いてやっておられる。確かに法務省の中には人権擁護局というものができておるのでありますけれども、どうも法務省の中のやっかい者とは申しませんけれども、あまり重点を置いたセクションとして従来とも考えておらないような感じを実は私持つのであります。  そこで一つ具体的な問題として、最近奈良県で問題になったのでありますが、人権擁護局の民間の協力団体というか、人権擁護委員の制度がございます。人権擁護に関するいろいろな問題を具体的に、擁護局地方法務局人権擁護部のいわば下部組織というか、手足となって活動しておる諸君でありますが、この人権擁護委員の諸君について法務省では、最近特に問題になっておりまする同和問題について、人権擁護委員の諸君がどう考えておるかということを調査されたように何っておるのでありますが、全国的にこれはやられたのでありますか、やられた結果は人権擁護局としてまとまっておるやに聞くのでありますが、そういうようなものはできておるのでございましょうか。
  78. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 お答えいたします。  北海道を除きまして、全国人権擁護委員につきまして、ただいま御質問のような趣旨の調査をいたしました。調査の結果の概要を申しますと、まず同和地区の地区数、これは全国で三千百七十二カ所になっております。それから戸数は二十二万四千五百二十八、人口は百十二万三千二百二十七、こういうふうになっております。
  79. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 私も実は、問題になりました奈良の法務局が、本年の一月の二十六日でありましたか、内閣の同和対策審議会の教官部会が奈良県へ出まして、同和教育の問題について民間団体との懇談会をやりましたときに、奈良地方法務局から出された資料を実は手元に持っておりまするので、それに基づいて実は伺っておるわけでありますが、それによりますと、いま言うように、同和地区の数の問題は、いまお読みになったように書いております。私も実は部落関係の部落民の自主的な団体である部落解放同盟の書記長をいたしておりまして、ほとんど全国の部落を歩いておりますが、部落の数、人口というものについては、きわめて実情よりも少ない数字を押えておられるので、この調査がどこまで正確であるかということに疑問を持つ者の一人でありますが、当局のほうでは御承知のように、二番目に「同和地区の人が日常社会生活を営むうえで差別を受けているようなことがあると思うか」という質問に対して、実に、あると思うという回答をよこした者が五一・二%に当たるんです。次に、そういう差別を受けていることが「あるとすれば主としてどのような面で差別されているか」という質問に対して結婚、就職、日常生活、その他ということで、調査人員九百八名中ほとんどの人たちが結婚、就職、日常生活その他において差別されている事実があるということを申されております。それからさらに、「同和地区の人から差別問題について相談を受けたことがあるか」という質問に対しては、一二・二%の人があるという。ないというのが八五・九%で非常に多いのでありますが、そういうような調査をなされておるのであります。奈良地方法務局から出した「その他参考となること」として、この調査の総括のようなものをなされておるのでありますが、これが私非常に問題だと思うのであります。  それによりますと、「同和地区は、それぞれ集団で居住しており、自己防衛の手段としている場合が多く、集団の威力を対外的に表示し、又地区外の人は、それに恐怖をもち、益々差別を深くしている現状であり、何らかの措置をもって、これらの集団を徐々に分散し、地区外との混住交流をすることにより大きく変化し、近くの将来にはそうした差別もなくなると思う。」こういう点が書かれておるのでありますが、先ほど私が申し上げましたように結婚、就職、その他あらゆる面に差別があるということを認められている人が、何がゆえに差別があるかということの理解の点においては、「集団で居住しており、自己防衛の手段としている場合が多く集団の威力を対外的に表示し、又地区外の人は、それに恐怖をもち、益々差別を深くしている」という。これはあたかも、未開放部落というものを暴力団か何かのような感じで受け取っておるということを、私はあらわしたものだと思うのです。一体人権擁護局なり法務省というものは未開放部落、同和問題というものを、部落民が自分たちで好んで集団をつくって、対外的に相手に恐怖心を与えるようなことをやっておるから、部落民が差別されておる、このようにお考えになっておるのですかどうですか。これはきわめて私は重大な問題だと思う。
  80. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 ただいまの文書は、過日同和対策審議会の一部の方々が奈良県に事実調査に行かれました際に、奈良地方法務局から出した一つの資料でありまして、これは先ほど来御質問のありました人権擁護委員につきまして、この同和問題についてどう考えるかというふうな数項目をあげましてアンケートをとったわけであります。その質問事項の最後に、その他参考となるものがあれば書いてもらいたいという欄に書かれたことの一部でありまして、私どもの意見とは全く別のものである、このように御了承を願いたいと思うのであります。ただいまお読みになりましたように私どもが考えておるわけでは決してないのであります。そのように御了承願いたいと思います。
  81. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 アンケートの最後に意見を求めたということで、これは法務省あるいは人権擁護局の考えではないというお答えでありますけれども、部落問題について人権擁護委員がこのように部落を見ておるということは、はたして適正だと皆さん方はお考えになりますか。
  82. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 いまいろいろお話がございましたが、事実としていまだ全国的に何がしかの差別感が、全然払拭されたというところまではいっていないかと思います。これはいわゆる部落以外に、もうちょっと昔の話でございますが、私ども地方でも、犬神党とか藤原党とかいろいろな考え方、それから部落とまでいかなくても、ひのえうま説とかございますし、ああいうような、どこから起こったのかということはいろいろ考えられますが、一種の区別感みたいなものが社会に存在しておるのはおもしろくないことですけれども、これは日本のみならず、どこの国にもある次第で、非常に私どもは遺憾なことだと思っております。お話のように、差別感がかりにありましても、それは理由のないことで、そういう差別をすべきものじゃない。ことに人権という上からは、全然そういう区別があるべきものでないということは申し上げるまでもないのですから、法務省人権擁護局におきまして、そういう考え方でものをやっていくという点は毛頭ございません。実はいまお話の点、私きわめてうかがって驚いたのです。六十年も七十年春前の、われわれ子供のときには、われわれの地方でも多少そういう見方がございましたが、もう現在では、そんなふうな差別感が、あるいは結婚なんかで残っておるにしましても、いまお話のような意味の差別感というものはもうわれわれもないんじゃないかと思っておった次第で、むしろ驚いたくらいでありますが、法務省人権擁護局としましては、差別感が現実にあっても、もう差別すべきものじゃないんだ、そういうふうにすべてのたてまえを持っていきたいという考えで、むしろその方針に従って忠実にやっておる次第でございます。
  83. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 もう時間がまいっておるようでありますから、この問題だけで私の質問を終わりますが、大臣御承知のように、現行憲法の十四条には法の前に国民はすべて平等で、門地、家柄、身分等によって差別をしてはならないという規定がある。それにもかかわらず、現実には深刻な差別問題がある。大臣の御出身の広島県におきましても、いまなおこの問題があとを断たない。結婚差別の問題から自殺をしたという問題も、三年前でありますが、広島市に起こっておるのであります。毎年私ども解放同盟の本部にそういう報告をされてくる事件が、三件も四件もございます。さらに、これも昨年法務委員会が取り上げたのでありますけれども香川県の金子知事は、失対打ち切り反対闘争で県へ交渉に参りました部落解放同盟と全日自労、いわゆる日雇い労働者、部落民と日雇いは県庁へ入れない、こういうことで県庁を二日間にわたって閉鎖をして、警察官が出動して一々誰何をした、こういう事件がある。これは香川法務局関係者調査いたしまして、すでにその聞き取り書が調査という形で人権擁護局へ上がってきているはずです。香川県庁において金子知事が、部落民と日雇いは県庁へ入れない。南ア連邦でもこういうことはやっていませんよ。そういうことが現実に行なわれてきている。したがって、この問題を人権擁護局の活動の重要な問題として取り上げてもらいたいということ。私は具体的な事件が起こるたびに、この問題を当局へ要請してきておるのであります。いつのときにも、問題が国会で取り上げられましても、それがどういうように処理されたということが国会へ報告されたためしがない。私の手元にもプリントして香川県の場合の調査報告もきています。だから、それは人権擁護委員のアンケートを集約したものであるにいたしましても、人権擁護局立場から見ますならば、部落民が好んで集団をなして対外的な、部落以外の人に恐怖心を与えるような日常活動をやっておる、そういうふうに見るというようなこと自体が、私はほかの何も知らない市民であるとか、無頼の徒があるいはそういうふうに曲解をしているという向きはわかりませんけれども、少なくとも人権擁護委員としてこの問題に取り組まなければならぬ人が、部落問題をそういうふうに認識するということは、私はゆゆしい問題だと思うのであります。したがって、これは人権擁護委員のアンケートをそのまま集約したので、法務省の考えではございません、人権擁護局は毛頭そういう考えを持っておらぬと言うても、人権擁護局の手足となって活動してもらわなければならぬ人です。今度の奈良法務局から同和問題審議会の奈良の調査のときに提出されたような資料、これは奈良の法務局だけの問題じゃないでしょう。アンケートとして集約したものが、あるいは全国人権擁護委員に配られる、そういう形で、これも内閣の審議会のほうへ、参加した当日資料として出されたところから私どもの問題になってきたのであります。これはやはり人権擁護委員諸君に根本的に認識を変えてもらわなければならぬ、人権擁護局として当面なさたければならぬ重要な問題を提起しているものだと私は思うのです。その意味で、大臣は年配でありますから、何十年前には相当あったけれども、今日たおそれがあとを断たないのは非常に遺憾だと言われるのであります。今日内閣には同和対策審議会というものができて、国の政治の中でこの問題を取り上げなければならぬところまで発展してきているのですよ。しかもそれを直接的に扱わなければならぬ人権擁護局の下部の委員諸君の中に、特にこういうような者がいる。しかも刺激をあとに与えないように、ほうっておいたらこの問題はなくなるのだ——これは別にあすこの同じ主査分科会に防衛庁の関係が出ますけれども、防衛庁の中で、信太山の部隊の中に部落民に対する非常に悪質なる差別事件が起こって、いま大きな政治問題に発展しようとしておる。信太山の自衛隊の中の差別事件というものも、解放同盟なり和歌山県の同和委員会なりが取り上げておりますが、人権擁護局はこの問題は御存じですか。  それと、前段に私が伺いました、アンケートにあらわれた人権擁護委員の部落問題に対する把握というものが、これでいいということにはならないと私は思います。これは重大な問題だということになりますならば、人権擁護局長としてあるいは法務大臣として、この問題を人権擁護委員の諸君なり人権擁護局としてどういうように是正していく積極的な考えを持っておるか、伺いたいと思います。
  84. 鈴木信次郎

    鈴木(信)政府委員 人権擁護委員の同和問題に対する考えをどのように思うかという御質問でありますが、人権擁護委員全国に八千九百何ぼ、約九千名近くおりまして、このアンケートに出ておりますのも、人権擁護委員全部の意見ではもちろんないのであります。一部にこのような意見がアンケートとして結果的に出てまいったわけでございますが、人権擁護委員の教育と申しますか、研修のしかたと申しますか、これにつきましてもなお十分に努力いたしたい、かように考えております。  それから、そのほか具体的な高松あるいは大阪の件について御質問がございましたが、これはいずれも事実を現在調査中でございまして、結論が出るのには若干の日時を要するかと思いますので、それだけお答えしておきたいと思います。
  85. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これで質問を終わりますが、私が取り上げて法務委員会等から人権擁護局の活動を要請しておる懸案だけでも、相当件数あるわけです。たとえば、これは部落問題ではございませんけれども、横浜の警察病院での、手術のあやまちによって婦人を死に至らしめたという事件、これはその後検察庁のほうで関係者の調べが行なわれておるようであります。行政解剖したのですけれども行政解剖の結果がいまだに報告されない。場所が警察病院、警察病院の権威のためにも人権擁護局として調べていただきたいということについても、その後何らの報告がないのです。高松の問題につきましても、すでにあなたのほうの現場がとられた調書は、私らの手元に来ております。それに基づいてこの問題について——香川県知事ということになれば、香川県では一番の権力者かもわかりませんけれども人権擁護局は、こういう国会で取り上げられた問題について調査をされたら、中間報告にしても、調査の結果人権擁護局としてどういう結論に達したか、報告しなければいかぬと私は思う。報告してこそ初めて、人権擁護局のこの問題の活動に対する成果というものがあがってくるのです。たまたまアンケートをやられたことはけっこうでありますけれども、その結果出てきたものを、人権擁護委員の部落問題に対する無知をさらけ出すようなものをそのまま、何らの批判も加えずに外部に出すという軽率なことを、とにかくあなたたちがやっておる。それは、人権擁護委員は一万近くあるかもしれません。おそらく全員にアンケートを出しておられるだろうと思うのですけれども、回答は、知らないとか、そんなことでは人権擁護委員の資格はありませんよ。こういう点を人権擁護局が積極的に取り上げていただかなければならぬ。そういう点から見て、最初に申し上げましたように、何か法務省の中のやっかい者の一つのセクションのような考え方で、予算の増額等もほとんどやられないということは、これはひとつ賀屋大臣、先ほどあなたが公安調査庁の活動に関連しても、人権尊重という点を大いに考えなければならぬということを申されたのでありますが、擁護局予算についても格段の御配慮を願うと同時に、擁護局の活動の状況等については、あなたのような実力大臣のもとにおいて、あらゆる人権問題が法務省の手にかかってさばかれていく、一段と前進していく、こういう体制をつくり出すように格段の配慮を願いたいことを申し上げて、私の質問を終わります。
  86. 植木庚子郎

    ○植木主査 以上をもちまして、通告のありました質疑は全部終了いたしました。よって、昭和三十九年度一般会計予算裁判所法務省所管に対する質疑は終了いたしました。  明日は午前十時より開会し、昭和三十九年度一般会計予算会計検査院所管及び防衛庁関係について質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三分散会