運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-10-06 第46回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月六日(火曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 野田 卯一君 理事 松澤 雄藏君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    安藤  覺君       植木庚子郎君    大泉 寛三君       重政 誠之君    正示啓次郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       永田 亮一君    羽田武嗣郎君       古井 喜實君    古川 丈吉君       松野 頼三君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       石野 久男君    岡田 春夫君       加藤 清二君    五島 虎雄君       河野  密君    多賀谷真稔君       永井勝次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君     —————————————  委員外出席者         内閣官房長官  鈴木 善幸君         内閣法制局長官 林  修三君         人  事  官         (人事院総裁職         務代行)    神田 五雄君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  小熊  清君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 三輪 良雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   江上 龍彦君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         国税庁長官   木村 秀弘君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  久我 通武君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (食料庁総務部         長)      筒井 敬一君         水産庁次長   和田 正明君         通商産業事務官         (通商局次長) 大慈彌嘉久君         通商産業事務官         (通商局通商参         事官)     堀  新助君         中小企業庁長官 中野 正一君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      佐藤 光夫君         海上保安庁長官 今井 榮文君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         建 設 技 官         (河川局長)  上田  稔君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君         日本国有鉄道常         務理事     豊原廉次郎君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  今村 義夫君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十月六日  委員井村重雄君、仮谷忠男君、周東英雄君及び  保科善四郎辞任につき、その補欠として永田  亮一君、羽田武嗣郎君、田澤吉郎君及び大泉寛  三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大泉寛三君、永田亮一君、羽田武嗣郎君及  び永井勝次郎辞任につき、その補欠として保  科善四郎君、井村重雄君、仮谷忠男君及び堂森  芳夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 昨日に引き続き、予算実施について調査を進めます。  質疑の通告がありますので順次これを許します。  永末英一君。
  3. 永末英一

    永末委員 昨日の当予算委員会官房長官から、当面首相は入院しておるけれども政務には差しつかえない。しかし国会法第九条はあるけれども臨時首相代理を置く考えはないということを承りました。私どもも、池田首相が一日も早く療養の結果御全快されて、当国会にも臨み、また十分意を尽くした国政の運用に当たられんことを心から期待をし、またお祈りをしております。しかしながら、国政は渋滞していないと言われるけれども、やはり病院におられたらおられるだけ、池田首相の気性からいたしましても、なかなか意に沿わないところもあろうかと思うのです。そこでこの際官房長官に二、三点をただしておきたいと思うのですが、きのう、十一月下旬臨時国会召集をしたいという御意向のところを承りました。池田首相も同じような考えであるかどうかを伺いたい。
  4. 鈴木善幸

    鈴木説明員 永末さんから、丁重な池田首相に対するお見舞いをちょうだいいたしましたことを厚く御礼を申し上げます。  ただいま、臨時国会を十一月の下句ごろに開催予定をしておるという昨日の私の答弁に関連いたしまして、池田首相もそのように考えておるかというお尋ねでございますが、池田総理は、かねてから、臨時国会準備ができ次第できるだけ早く開催したい、こういう考えを持っておりまして、私は、補正予算の編成、その他当面の重要案件政府準備等々から考慮いたしまして、十一月の下旬ころには臨時国会召集ができる、こういうことを申し上げた次第でございます。
  5. 永末英一

    永末委員 池田首相施政方針の中で、人づくりということを言われ、特に社会生活における責任を感ずる、日本人がそれぞれの立場において責任を感ずる、この度合いの強くなることが人づくり基本である、こういうことを申されたと記憶いたしております。だといたしますと、いまの、当面の政務運営には支障がなくとも、臨時国会が開かれるという場合には、池田首相としては、この臨時国会に主席をして、国民の聞きたいところを体して意見を述べる、こういう心がまえでおられると解釈してよろしいか。
  6. 鈴木善幸

    鈴木説明員 池田総理は、病院におきまして政務を見ておりまして、当面国政運営には支障がない、このように考えております。ただいま永末さんから、臨時国会召集された場合に、総理はこれに出席をして答弁に当たられるか、こういうお尋ねでございますが、その後、療養状況も日増しに快方に向かっておりますので、臨時国会召集される時期には総理国会出席をいたしまして、政府所信、及び御質問に対して十分答弁ができるもの、このように考えております。
  7. 永末英一

    永末委員 池田首相のお人柄からして、そのように御決意なすっておられるというぐあいに私ども拝承するわけです。しかし、私ども病気はなおらなくても出席をせよと申し上げておるのではございません。人間の命のほうが日本政治運営よりも重要な面もございます。その意味合いで、いま官房長官の御発言は、これは池田首相意思を体して言われたものと聞きましたけれども、もし万が一いまのおことばと反して、臨時国会開催、これは期日からいたしまして、すぐに通常国会の始まる時節、すなわち日本政治としましては、日本政治構造総理大臣意向がどこにあるか、那辺にあるかということを知らなくてはならぬ重要な時期でありますから、もしこの出席が不可能だ、こういうようなお見通しがついたときには、池山内閣としては、重要な御決心があってしかるべきだとわれわれは考えます。このような御意向であるかどうかを伺いたい。
  8. 鈴木善幸

    鈴木説明員 永末さんから重ねて、もし万が一にも臨時国会召集された場合に、病気関係出席ができないような場合にはどうするか、こういうお尋ねでございますが、いまお話がございましたように、総理大臣として国会出席をいたしまして、政府所信を表明し、また御質問に答えるということは、内閣総理大臣として重要な職務の部分であると考えております。この重要な職責を果たすことが万が一できないような健康状態でございますれば、私どもその際、この総理大臣としての重要な職責を頭に置いて、そして適切な措置を考えたい。臨時首相代理の設置とか、いろいろの考え方があると思いますが、十分国会の御納得のいくように措置いたしたいと考えております。
  9. 永末英一

    永末委員 私は官房長官期待どおり臨時国会通常国会に、池田首相がみずから国会に臨まれる姿を期待しておりますが、もしそれが不可能、しかも病気が長期にわたる場合には、単に臨時首相代理等の問題ではなくて、池田内閣自体の問題としてお考えになる用意をとられることが、むしろ政治責任の姿勢を国民に明らかにする上において必要だと私は考えております。しかしこの問題は、お考えのほどを伺いましたので、この程度にとどめます。  次に、石田労働大臣に伺いたいのでありますが、石田労働大臣は過般ILOの対日実情調査調停委員会に臨まれて帰ってこられました。そこで、前国会から懸案になっておりましたILO八十七号条約批准についてどうするか、いろいろお考え中であると私ども承知をいたしております。そこで、いま官房長官が申しました来たるべき臨時国会において、このILO八十七号条約批准を求めるつもりで準備をしておられるかどうか、伺いたい。
  10. 石田博英

    石田国務大臣 仰せのとおりのつもりで準備をいたしております。
  11. 永末英一

    永末委員 これは条約批准案件でございますので、外務大臣も同様の考えであるかどうかを伺いたい。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 同様でございます。
  13. 永末英一

    永末委員 労働大臣に伺いたいのですが、早期批准をしなければならぬとあなたがお考えになっている理由の一番おもな点を伺いたい。
  14. 石田博英

    石田国務大臣 わが国の労使関係正常化のために、すでに数年前、日本政府ILO総会において批准方針を表示いたしてまいりました。それ以後年月日はかなり経過しておりますので、当然できるだけ早く批准すべきものと思っておるのでありますが、それだけでなくして、労使関係正常化という見地から考えましても、早期批准するのが適当と考えておる次第であります。
  15. 永末英一

    永末委員 われわれも、この案件早期解決をすべき問題だと主張してまいりました。ところが、前国会において、いろいろな各党努力にもかかわらず、この案件が流れたおもなる原因はどこにあるかと労働大臣は現在お考えか、伺いたい。
  16. 石田博英

    石田国務大臣 私は、最大の原因は、やはりまだ残念ながら労使関係について各方面に相互不信観念がある。その相互不信観念が、この案件の通過を延ばしておる、延ばさざるを得なくなっておる事情の背景だと思っております。
  17. 永末英一

    永末委員 基本的にいえば、労働大臣の言うとおり相互不信かもしれません。しかし相互不信の一つは、片方だけが不信であるというわけではないのであって、お互いお互いを疑っておる、ここに原因がございますが、しかし、そういう精神的な問題を背景にしながら、具体的にあらわれた論点について前国会ではいろいろ争われ、そうして、それが解決のつかないままに本件が流れたというぐあいにわれわれは了承しております。そこで、あなたが早期批准をしたいと思うならば、これらの問題点について、どうすれば一体早くこれらの問題の解決ができるかということについてはお考えだとわれわれは考えておる。  そこで、問題の二、三について伺いたいのでありますが、たとえば職員団体の目的について、どのようにすれば相互不信感が除かれるとお考えか、伺いたい。
  18. 石田博英

    石田国務大臣 この問題は、相互不信がなお残っております。しかし、われわれは相互不信を解消するのには相当の月日もかかり、努力も要ると思います。しかし、その月日努力を待って八十七号条約批准するというような時間的余裕はないと考えております。したがって、その相互不信背景とした中で打開点を見出していくわけであります。そこで、懸案になったいろいろな問題について、いまこの段階でいろいろあらかじめ議論をすることは、この問題を早期批准するということをいたしますために効果的な方法でないと思いますので、そういう個々の問題について、いまの段階お答えすることはお許しいただきたいと存じます。
  19. 永末英一

    永末委員 個々の問題に立ち入るまでに、臨時国会が十一月の下句開催されるという予定で、各党これに対して対策を考えてまいるとすれば、基本的な労働大臣のお考えだけはこの際伺っておきたいと思います。  そこで、私ども考えからすれば、いわゆる倉石案といわれたものについての取り扱いをめぐって、前国会、ついにまとまらずして、この案件が流れたとわれわれは見ております。そこで、いわゆる倉石案に執着をするならば、同じ結果があと一月たとうと二月たとうと生じてくるだろう、私どもはそういう推測をいたしておる。  そこで、労働大臣に伺いたいのは、いわゆる倉石修正案を白紙に戻し、全然別個の見地からこの問題の解決に当たられようとしておられるかどうか、この点を伺いたい。
  20. 石田博英

    石田国務大臣 世上伝えられております倉石修正案という、自由民主党社会党との代表による話し合いというものは、前国会においてその実現に自由民主党幹部努力をいたしましたけれども、御承知のような結果に相なりました。したがって、その結果になったことを相手方である社会党に報告をすると同時に、この問題については、これをもって一応終わったという意思表示をされたものと私は当時の幹事長から聞いております。そうして、それに対して、社会党不信任案をお出しになって、その不信任案は否決をされたのであります。しかしながら、倉石君と河野さんとが努力をされたいわゆる倉石修正案というものの内容、意義は消滅をいたしたものとは考えていないのでありまして、その件について前の特別国会で、私の前任者である大橋君がお答えになりました点については、私は責任を継承いたしていくつもりでございます。
  21. 永末英一

    永末委員 この案件早期批准しなければならぬという考えを筋として立てていかれるならば、当然ILO八十七号条約が、直接に日本公務員労務関係について要求しているところはおのずから明らかだとわれわれは考えております。そこでいまお話のように、一応倉石修正案なるものは終止符を打たれておるが、内容についてはまだ考えておる、こういうお考えのようでありますが、いま申しましたとおり、ILO八十七号条約が、直接に日本国内法期待しているものだけは、これは私は変えなくてはならぬ。こういう考え方に立てば、いわゆる倉石修正案に盛られた内容全部に留意することなく——あなたはいま、時間的余裕がないと言われた、時間的余裕がなければ、話を本筋に戻して、いわゆるILO八十七号条約案公労法地公労法、これに直接該当するものだけを臨時国会に出す、こういう準備をされるのがわれわれは至当だと考えますが、あなたはどうお考えか、伺いたい。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 これも、どうもこの案件具体的取り扱いにだいぶ入ってまいりますので、御意見はきわめて傾聴に値する御意見として拝聴いたしますけれども、私はそれについてお答えをすることは、現在の段階ではお許しをいただきたいと存じます。
  23. 永末英一

    永末委員 きょう答えられないというものを答えろというわけにもまいりますまい。しかしながら、臨時国会が始まったら、必ずやりたいと思っておるというお話でございますから、臨時国会召集されるまでにはこれらのことをぴしゃっときめてお臨みになる。これが労働大臣のお考え考えてよろしいか。
  24. 石田博英

    石田国務大臣 その場合は、政府としてやるべきことと、それからその政府としてやったことを、議会がどうお取り扱いになるかということとは別でございます。もとより臨時国会に提出するつもりで準備をいたしておりますから、提出しますときには、政府として提出すべきものは準備をするつもりでございます。
  25. 永末英一

    永末委員 ILO条約問題については、いまの準備を重ねていかれることをわが党としては期待いたしております。  次に、人事院勧告について、労働大臣期日を含めて人事院勧告完全実施をいたしたい、きのうそういうお考えでございました。大蔵大臣は、この点についてどうお考えか、伺いたい。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院勧告を尊重いたしたいという気持ちは、労働大臣が述べたとおりでございます。しかし、財政当局者といたしまして、国、特別会計地方公務員を通じまして五月実施ということは、千六百八十億という巨額の財源を必要といたしますので、現在の段階において、五月実施精神的には大いにやりたいという気持ち永末さんと同じでございますが、現実これに伴わず、こういうことでございます。
  27. 永末英一

    永末委員 予算は、数字でもって精神があらわれるのであって、数字の出ないものは精神がないと見なされても、大蔵大臣、これはしょうがないでしょう。あなたの精神があられるならあられるように、大蔵大臣としては数字をもってお話しになるべきだと思いますが、自治大臣は、この人事院勧告完全実施についてどうお考えか、伺いたい。
  28. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お答えを申し上げます。自治大臣といたしましても、人事院勧告は尊重いたしたいという気持ちは変わりません。ただ財源というものを見ませんと、ただ気持ちだけを申し上げましてもどうにもならないのでございますが、自治省として、地方関係を見ますると、五月実施にいたしましても、交付団体だけをとりましても、六百五十二億というものが要るわけであります。十月実施にいたしましても、三百八十六億というものが要るわけでございます。この点につきまして大蔵省とも折衝をしておるのでありますが、いまのところ大蔵大臣としては、財源として税収入は五百億ほどしか見込まれないというお話でございますから、それをとりますと、御承知のように、地方交付税といたしましては三税の二八・九%だけしかいただけないのでありますから、そうすると、五百億がかりに全部三税だといたしましても、二八・九%とすれば、百四十億しかございません。地方税自然増収をどれくらい見込まれるかと申しますと、交付団体としては六十億がせいぜいでございますから、それを合わせますと、二百億ほどしか財源がないのでございます。したがいまして、先ほど申しました五月実施にすれば、その差額四百五十二億というものをどこかから持ってこなければ払えない。これを従来のように十月実施にいたしましても百八十六億というものがまだ不足をするという状況でございますので、これはどうしても大蔵省のほうで、財源をもう少し努力を願えないかということで、昨日も六人委員会では大蔵大臣に相談をしているような状況でございます。
  29. 永末英一

    永末委員 努力をしておるが、大蔵大臣の先ほどの答弁ではもう金がなさそうな話でございますが、一体、毎年毎年人事院勧告をしなくちゃならぬ、しかも、そのした勧告もきのうの答弁によりますと、公務員賃金は一年おくれである、こういうことをお認めになる。主たる、原因一体どこにあるのか。私どもは現在の池田内閣のいわゆる高度経済成長政策なるものが原因であって、こういう政策をやめない限り、一般賃金経済膨張率よりもおくれ、公務員賃金一般労働者賃金よりもおくれる、こういうことが続くと思う。私どもはそう思っておりますが、労働大臣一体どうお考えか。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 私は、政策それ自身、その速度その他に変化がありましても、やはり国民生活水準を逐次上げていくということが共通の目標であるということは変わりないかと思います。そういう場合において、生産性賃金との関連において、民間が先に上がってくる。公務員の場合は、生産性のはかりようがありませんから、したがって、民間賃金の上がったのを見て、それに追いついていくという形は、これはある程度やむを得ないと思います。ただ、それが一年も一年半もという差であっては困るので、できるだけ早くそれに近づけていく努力は必要でありますけれども、たとえば高度成長政策をやめて、賃金を全部現在の段階にストップできるものではないのであり、そういうことであれば、やはり国民生活水準を上げていくということにならないわけでありますから、生産性賃金とがからみ合って、民間賃金が順次上がっていくということは好ましいことだ。そうすれば、それに公務員賃金が追い着いていくという形においては、幾らかおくれることは、これはしかたがないと思います。その幾らかおくれていくのを、できるだけ少なくする努力が必要であろうと考えております。
  31. 永末英一

    永末委員 幾らかおくれたり少しおくれておる、これならいろいろそんな摩擦は起こらぬと思う。ところが経済成長度合いに比例をして非常に賃金の上がり方が少なく、しかもまたそれに対して公務員の給料が非常におくれておる、ここに問題があるわけである。経済の問題は分量の問題でありますから、それを縮める努力をしなくちゃならない。人事院総裁は、一体この点、われわれの考え方に対してどうお考えか伺いたい。
  32. 神田五雄

    神田説明員 人事院といたしましては、公務員基本権が全然制限されておる状態でありまして、その代償として人事院が成立しているのであります。したがいまして、人事院といたしましては、これが完全に五月から実施されることを希望しておる次第であります。
  33. 永末英一

    永末委員 人事院総裁は、私の質問の趣旨が全然わからなかったらしいのでありますが、労働大臣にひとつ伺いたいのは、いまのように四月を調査の時期にして八月に勧告が出てくる。それでやっているとおくれるということは、もうきのうはっきりいたしました。これをおくらさない努力労働大臣としてはお考え願いたいと思う。その一つの方法としては、勧告時期を予算編成面前に行ない、そうして行なわれた勧告を完全に実施する、こういう手続がとられるならば、毎年起こっておるような、こういうようなごたごたは起こらない。少なくとも、ズレはあるかもしれませんが、当年度発足しましてからは一応ズレなしで出ていく、こういう形勢は出ると思う。春闘の結果がずれたら別です。こういう手続をとることが、いまのような制度の運用より私はいいと思うが、労働大臣はどうお考えか。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 これは私の所管と申しますよりは——人事院は私の所管でございません。人事院が、現実に公務員の給与を民間給与に近づける効果的な方法としてお考えをいただく範囲に属すると思います。  それから予算編成の難易の問題は、これは大蔵大臣の所管でございます。ただこれは、所管をはずれて考えますならば、次年度の予算に見込んだ繰り入れが行なわれれば、こういう財源問題等が起こらずに済むということは、私個人としては考えます。ただ、それにはもとよりいろいろな問題がございます。見込みでありますから、こんどは公務員の給与が先行する、という危険もあります。公務員の給与は、その性格上やはり先行すべきものではない。やはり生産性と合って上昇してまいりました賃金と見合っていくべきものでありますから、そういういろいろな難点がございますが、いま差を縮めようという努力が——五月にさかのぼって実施しろというのは、これは差を縮めようという努力の一つだと私は考えております。
  35. 永末英一

    永末委員 同じ問題を大蔵大臣に伺いたいのですが、いまのやり方で、労働大臣なり人事院は差を締めるためには、いまの方法でも五月にさかのぼれば、差は全部は縮まらないけれども、縮まる度合いが多い、こう考えている。ところが、大蔵大臣の頭の中には、片っ方に財源があって、その財源内で消化し得るものしかできぬのだ、こういうかまえであると、いかに人事院が五月一日実施勧告いたしましても、おくれて実施するということになります。だといたしますれば、私が先ほど申し上げたように、予算編成前に行なわれるということになれば、大蔵大臣予算を編成するについて、公務員給与の算定がもっと容易になり、年度内にもう一ぺん苦労しなくてもよくなる。こういうふうに思うのですが、あなたはどうお考えになるか。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 人事院勧告に対しては、三つの問題が考えられるわけであります。  一つは、現行法どおり——現行法どおりということになりますと、大蔵省としては非常に困ります。予算の編成がようやく終わって、御審議を願って、年度間予算の執行途中において、まだ財源の見通しも立たないときに勧告を受けて、さかのぼってこれを実施せよということは、これは私たちから厳密に考えますと、予算編成権、それから予算の審議権、こういうものまである意味においては拘束をするという性質のものであります。私は、そういう意味から、現行制度というものに対しては、政府は尊重いたしますという基本線は変わりませんし、財源の捻出に対しても、あらゆる努力を傾けるという姿勢には変わりはありませんけれども、現実問題として五月まで一体さかのぼり得るのかという数字上の問題からいきますと、なかなかむずかしい問題を含んでおるということでございます。  第二は、あなたが先ほど申されたとおり、あらかじめ来年度の予算編成のときに適切なものを組んでおけばいいということでございますが、公務員給与は、御承知のとおり民間の給与との差額が五%をこした場合勧告する、こういうことになっておりますので、来年度の物価の値上がりを想定いたしまして、そうして予測をした科目に対してあらかじめ予算を盛るということは、財政法上の疑義がございます。これは非常にむずかしい問題に、ぶつかるわけでございます。  第三の問題は、私が前にも申し上げましたが、これはなかなかむずかしい問題ではありますが、漸進的であり、もう少し財政当局や予算編成権ともマッチをしながら考えられないか。それは私が一案を申し上げれば、勧告をする、さかのぼらない、そうして来年度の予算編成を行なう場合、この勧告の基準に沿って公務員給与の算定をすべし、こういうことになれば、これは、非常に私たちとすれば問題はいまよりも前進をし合理的になる。しかし、いまでさえも年おくれであるものを、そうすれば二年おくれになるのか、こういうことになるのでございますが、私は必ずしもそう考えない。それは公務員と特別公務員、また政府関係機関、公社、五現業、民間の給与、こういうものについて、公務員としての制度上の特典というものを別に考えるとか、一体その一年間なら一年間を、ある時期にどこでもって補正するかというようなことが考え得るとしたならば一また仮定の問題でございますが、私は、いまよりも合理的になって、毎年毎年、一月実施、十月実施、五月実施ということで、絶えず大蔵大臣だけがいじめられるというようなこともなくなりまするし、もっともっと国政は前進をするんだ、こんな考え方を持っておりますが、いずれにしましても現行制度は現にあるわけでありますので、いまの段階においては、現行の状態において最強の努力をいたしたいという考えであります。
  37. 永末英一

    永末委員 人事院総裁勧告をするけれども、毎年完全には尊重をして承らえない、一体何のために人事院があるか、こういう反省をされていると思うのです。人事院がある限りにおいては、人事院の機能が政府機関の一つとして十分に機能することでなければ、ILOの問題についてもやはり問題が出てくる。人事院総裁は私が先ほど申し上げましたような案についてどうお考えか、ポイントをそらさずに簡単にお答え願いたい。
  38. 神田五雄

    神田説明員 先ほども申し上げましたように、公務員基本権が制限されております関係上、その代償として生まれた人事院といたしましては、あくまで公務員のために努力する考えであります。また今後も努力するつもりであります。また現に総裁をはじめ、われわれ一体となって十分の努力をやっているつもりでございます。
  39. 永末英一

    永末委員 人事院に希望しておきますが、聞いたことに答えてください。  次に移ります。このごろ中小企業の倒産が毎月毎月新記録ということをいわれて、非常にわれわれは憂慮をしておるのでありますが、これは単に中小企業にとどまらず、大企業におきましてもその利潤率の低下が著しく目立ってきたように思います。すなわち、産業界に不況のきざしがあらわれていると伝えられている。大蔵大臣は現在の産業界について、景気見通しをどのようにお考えで、来年度の予算編成に臨もうとしておられるか伺いたい。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 現在の時期において、さだかな数字を申し上げることは困難でございます。しかし御承知のとおり、今年度の当初の経済見通しは実質七%であり、名目九・七%でございます。これが大体どのくらいになるだろう、これは十一月にならなければ、また九月決算を見なければ、さだかな数字を申し上げられないわけでありますが、まあ大体考えて名目一〇%、この程度であろうということは想定されるわけであります。また来年度の予算編成に必要な経済成長率は、経済企画庁でいま中期経済五カ年計画というものを策定中でございます。これは四十三年を最終年度とする十カ年倍増計画の過程における計画でございますが、これはなかなか最終段階にならないとわからぬと思いますが、私は、その中期経済見通しの策定の過程にあって来年度の予算の査定を行なっておる段階から考えますと、実質七%ないし七・五%、名目九%ないし一〇%、こういう安定成長率で考えるべきだというふうに考えなければならないのじゃないかという状態でございます。
  41. 永末英一

    永末委員 経済企画庁長官はどのようなお見通しか、伺いたい。
  42. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 昨年の暮れに金融引き締めをいたしまして以来、国際収支も相当改善してまいりました。また、物価もある程度安定してまいりましたが、この引き締め下にもかかわらず、鉱工業生産の指数は、一月から八月までをとりますと、前年度比較において一九・五%ということに相なっておるのでございます。いわば相当高い水準にあるわけでございます。しかしながら、たとえばただいまも御指摘になりましたとおり、金融引き締めがだんだんと下部に浸透してまいりました情勢でございますので、ことに八月においては、前年度比較において一%下がっておるというような下降の傾向を示しておりますので、今後九月、十月等の情勢をよく見きわめた上で来年度の見通しを立てたい、それまでは軽々に来年度の見通しを立てるということは非常に危険だ、かように考えておる次第でございます。したがって、この段階、この時点において、はっきりした数字を申し上げることは、ちょっと、不適当かと存ずる次第でございます。
  43. 永末英一

    永末委員 大蔵大臣経済企画庁長官ともにこの時点でははっきりわからない、こういうようなお話でありますが、経済界にはその不況を身をもって体得をしておるために、これまで続けられてきた金融引き締め政策の手直しを要望する声が出ております。しかし、片やそれをやるということは、あとで論じますが、いろいろなものの価格の値上がりを予想せられておる現在において、早過ぎる、やってはならぬという議論もある。大蔵大臣は、このとってこられた金融引き締め政策を続けていかれるつもりかどうかをこの際伺いたい。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、昨年の十月から三月に至りまして、三つの調整政策を行なって今日に至っておるわけでございます。ただいま経済企画庁、長官から述べられましたように、調整政策を行なっておるにもかかわらず、生産水準は依然として高い、また輸入も高原横ばいの状態である、こういうことでございます。この調整を行なう前提となったものは三つございます。一つは国際収支の、長期安定、もう一つは物価の抑制、それから第三点は安定成長の確保、こういうことでございますので、現在直ちに引き締めを解除し得る段階にはない、こういうことを考えます。しかし、あくまでも棒締め画一、一律的な引き締めを行なおうという姿勢ではないのでありまして、一定の、安定成長を保ちながらひずみの解消をはかっていきたいという二兎を追っておるわけであります。でありますから、きめこまかい施策をその過程において行ないながら、アンバランスの面を是正するためにも、物価の安定、安定成長や国際収支の長期安定をはかるためにも、現在の段階において調整を緩和するという時期ではないという認識でございます。
  45. 永末英一

    永末委員 いま承りますと、いままでとってきた金融引き締め政策の基調はくずさない、こういうお考えでございますが、そのお考えに立って来年度予算の規模は大体どれぐらいにすべきだというお考えを伺いたい。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 経済成長率も、税収見通しもつかないという前提での御質問でございますから、少し正確を欠くと思いますが、いずれにいたしましても、いまでさえも不況感があるという考え方が一つございます。もう一つは、私のほうから見ますと、いまでさえも水準は高い、それから輸入も高原横ばいである、こういう事実がございます。でありますから、ひずみの面から見ますと、どうしても多少緩和をしなければならぬという議論が起こってくるわけです。しかし、それはできないという前提に立っておりますので、来年度の予算は、一般会計で一〇%ないし一二・三%というところだと思いますが、これはまだ非常にむずかしいものでございますが、少なくとも今年の一四・二%よりも相当程度姿勢を正したというものでなければならない、こう考えます。財政投融資は大体一五%と考えておるわけでございますが、一五%といいながら、一面民間資金を大幅に活用しなければならぬという要請もあるわけでございます。でありますから、一五%ないし少しその上、こういうところがおおよそのめどではないかというふうに考えます。
  47. 永末英一

    永末委員 過般発表されました中期経済政策大綱案の中で、財政規模をある程度増大させる必要がある、こういうような意見を述べております。これはもちろん所得倍増政策の手直しということを考えながら打ち出された大綱ではございましょうが、一体その財政を膨張させるという基本的な考えに立って財政を見ていく場合に、日本経済に及ぼしてきたひずみのあり方は、大蔵大臣御存じだと思う。あなたはこの考え方に賛成ですか、どうですか。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 財政を膨張させるということは、非常にむずかしい問題でございます。いまのままの状態で社会貸本の不足を補い、各種五カ年計画を改定し、また民間の設備投資、民間成長率を九%ないし一〇%と——私は先ほど全く想定数字でございますが、申し上げると、ますます公共投資と設備投資との間にアンバランスを生ずるわけでございます。でありますから、いまのままの状態をくずさないでこのまま進むということになりますと、一面において公共投資を含めた一般会計の規模をふくらまさなければ筋が合わんじゃないかという結論になります。が、しかしそんなことをすれば、また一面において超高度政策をとったと同じような現象があらわれるじゃないか。ひずみはますます拡大するということも言い得るわけであります。でありますから、その規模は総体的に押えながら、財政が景気を刺激するような要因を排除しながら、財政金融の一体的な運用をはかって対処してまいる、そうして一定の規模を守りながら内容的にそのひずみ解消の部分に向かう、こういうことになると、補助金の整理とか、いままでの既定経費の中から、いかに合理的、重点的に配置がえができるかという困難な問題ではありますが、やはりこれと取り組んでいかなければいかぬという考え方であります。財政の規模を二〇%も二二%もふやしていこうというような考えはありません。
  49. 永末英一

    永末委員 財政規模を急激に拡大する意思はないということを承りました。ところが、最近目立つことは、財政投融資計画がいわば国会の厳重な審査の外に置かれている関係かどうかは知りませんが、非常にこれがふくれてくる傾向がある。ことしの各省の予算要求を見ましても、すべてこの財政投融資で問題を解決しよう、こういう傾向があらわれている。しかも、財政投融資の中には、政府関係機関、公団、公社等がいろいろあって、これの監督等につきましても、いまは整理をし反省をする段階におるとわれわれは考えておりますが、ところが、なお新設の要求が出ておる。私は、財政投融資については、いままでいろいろな要求上組まれてきたと思いますが、この辺でやはりいろいろな原則を明らかにし、そしてあらわれてきた公社、公団、政府関係機関等も、それぞれの要に応じて調整をし、こういう段階だと思う。したがって、新規のものをつくるという段階ではないと思うが、大蔵大臣はどうお考えか。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 人員の抑制、機構の抑制及び公社、公団、政府関係機関等の新設は、巖にこれを抑制するという基本方針を閣議決定をいたしております。でありますから、この閣議決定の方針の線に沿って、あらゆる措置が行なわるべきことは当然でございます。しかし、ここでもって考えなきゃならないことは、いまの一般会計の三兆二千五百億と一兆三千億の財政投融資というものは、日本経済運営の実情によって、一体、これでいいのか。また、年間、民間資金としてふえるもの、いわゆる間接資本だけで御承知のとおり今年度は四兆三、四千億民間金融機関の貯蓄増がございます。これはしかし数字の上でございまして、歩積み両建て等を排除した、裸にした数字を見ますと、三兆円くらい伸びておるわけでございます。三兆円だけで民間資本がまかなえないで、ある意味においてはオーバーローンによってまかなっておるということも事実でございます。でありますから、金融の正常化を前提として民間資金が一体幾らであり、それから民間の設備投資がどのくらいであり、これを五カ年計画の中で財政でもってまかなっていくものが幾ら、それから財政投融資その他でまかなっていくものが幾らというバランスをとらなければ、ただ観念的な数字論争だけでこの問題が片づくわけではないのであります。でありますし、もう一つの第三の立場から申し上げますと、一般会計ですべてまかなうというのは、オーソドックスなものの見方からいうと、低開発国の場合は、どうしても税を財源とする一般会計で補助金とか国が負担をするとかいうことが多いのですが、だんだん高度になってまいりますと、自主的に行なうということにウエートが移っていくわけであります。同時に、国が手厚く財政の中で処理しなきゃならぬものは手厚くやる。どうもこのけじめがあまりついておらぬということは問題だろうと思います。そういうものを評して、ここらでもろてもう少し筋を立てて整理をして、財政で行なうもの、財政投融資で行なうもの、特別会計で行なうもの、政府関係機関で行なうもの、民間にウエートを移すべきもの等を整理をしたらどうかということを御指摘になっておるわけでございますが、御説のとおりであります。そういうものに対しては、将来のビジョンを描きながら、また国民の税負担というものの長期軽減もはかりながら考えることでございますので、おのずから制約はございますが、現状でいい、イージー・ゴーイングな気持ちでもって予算を組む、また、財政投融資は一五%で押えるんだという考え方では、合理性に欠けるという考えでございますので、これから四十年度予算編成までの間に、これらの問題を、正面から取り組んで、整理をすべきものは整理をしてまいりたい、こういうふうに考えます。
  51. 永末英一

    永末委員 先ほど大蔵大臣は、財政が窮屈になってきたので、民間資金の活用を考える、こういうことでございましたが、本年度予算においてもそういう傾向はすでにあらわれておる。すなわち、国債は発行しないけれども政府保証債をそれぞれの政府関係機関等につけてこの発行を許す。あるいはまた、今年度におきましても、新聞の伝えるところによれば、短期であるが、大蔵省債券を発行してつじつまを少し合わせよう、こういういろいろな考え方がある。短期のものは別としましても、政府保証債を大いに出していこうということになれば、この分だけ民間資金が吸収せられることになるわけである。民間資金は潤沢かといえば、民間資金もまた窮屈であるから、中小企業の倒産が相次いで行なわれておる。融通手形なるものが大いに行なわれているのである。したがって、政府の金の勘定からいえば、民間資金の活用ということになるかもしれないけれども、この運営については、非常に慎重に考えてもらわなくてはならぬとわれわれは考える。したがって、そういうかまえで政府保証債の発行に臨む。また、もう一つの点は、いろいろうわさされておりますが、公債の発行はやらぬというつもりで来年度予算に立ち向かわれるか、この点を伺いたい。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 内国債の発行は、やりたくないという考えは今日も変わっておりません。それから、民間資金の活用ということに対しては、おのずから限度があることでございます。昨年度は千八百億、今年度は二千五百億、ただ、民間の社債等で起債をされるものも千八百億ぐらいございますので、現在の状態民間資金を大いに圧迫しようなどという考え方はございません。これは民間資金も、ただ観念的には活用しますといって、財政投融資の中に入れれば二〇%も三〇%も越すわけでございますから、そういう制約もございます。じゃ、金融債でやるのかといっても、起債市場がそう拡大をせられておりませんから、これにも制約がある。ただ、考えなければいかぬことは、四十年度すぐやるということではございませんが、少し戦後苦しいときの状態、ノーマルな状態になった今日、またよりノーマルにならなければならない将来に対して、どうも画一的、一律的な考え方観念的な考え方が前提となっておるというところがございます。これはほかの国が全部民間資金でやっておる分野まで財政資金の対象になっておる。財政資金の対象よりも、これは資本不足だった戦後はどれ以外にしょうがなかったのです。しかし今日の状態においてもこれを踏襲しておる。これから当分の間も踏襲するということでは、前進がないわけですから、そういうものは、だんだんと民間資金が当然受け持つものに対してはウエートを移していくという前進的な努力をすべきだという考え方であります。
  53. 永末英一

    永末委員 予算の規模はそうふくらまさないと考えられても、物価が上がってくればそういうわけにはまいらぬということになる。それで、ことしは公共料金の一年間ストップということで物価水準は安定してきた。これは経済企画庁長官も述べておられましたが、いよいよ来年一月一日からこういうワクを一斉にはずそうといういろいろな動きが看取せられるわけであって、来年度予算の編成にあたって、これらの点について各省はどう考えておるかということをひとつ伺っておきたい。地方公共団体が経営しております水道並びに公営バス、交通機関等の問題について、自治大臣一体どう考えるか伺いたい。
  54. 吉武恵市

    吉武国務大臣 地方団体の公共事業について申し上げますと、今日、地方公営企業として累積赤字が約三百七十八億あるわけでございます。そのおもなるものは、交通関係病院関係と水道関係でございます。したがいまして、この問題につきましては、目下公営企業制度調査会というものを設けまして、そこでいま検討をしていただいて近く答申が出ることと思いますが、私は、いままでストップされておりまするバス料金あるいは水道料金等も、適当な機会に是正をしなければならないのではないかという感じがいたしますが、同時に、企業内部におきましても、合理化をひとつ思い切って、やらないというと、この赤字はなかなか解消しないと思います。しかしながら、金融面におきましてもできるだけの世話はいたさなければならないか三考えておりますが、いま申し上げました料金の問題、そうしてまた内部における合理化の問題、これは当然考えなければならぬ大きな問題ではないかと、こういうことで、目下調査会に諮問中でございます。
  55. 永末英一

    永末委員 昨日運輸大臣から、国鉄の運賃値上げについての運輸省の現段階における考え方を承りましたが、国鉄当局は一体どうお考えになっておるか、伺いたい。
  56. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 国鉄の常務理事がきておりますから、常務理事のほうから答弁させます。
  57. 豊原廉次郎

    ○豊原説明員 お答えいたします。  国鉄の運賃の問題につきましては、今後の国鉄の投資計画と非常に密接な関係がございますので、ただいま内閣におきまして国鉄の基本問題懇談会がこの問題を十数回にわたって検討されておりまして、近く中間的な結論がいただけるかという段階でございますけれども、まだ懇談会において御審議が続いておりますので、その結論をいただきませんと、国鉄としても何ともいまのところ申し上げかねるような次第でございます。
  58. 永末英一

    永末委員 国鉄はいまのところお答えできないというのですが、上げたいのですか、上げたくないのですか、それを聞きたい。
  59. 豊原廉次郎

    ○豊原説明員 国鉄として運賃を上げたいか上げたくないかという御質問でございますが、国鉄は、いまの設備ではいわゆる過密ダイヤでございまして、十分な輸送ができない。さらには安全という問題にも関係があるということから、設備を何とか増強させていただきたいというのが切なる念願でございますが、この所要資金をどういうふうに調達するかということにつきましては、借金による方法と自己資金による方法とがございまして、設備の増強という面からいきまして、どうしてもその中には自己資金によらなければならないような設備投資もございますけれども、財政投融資を主体といたします借り入れ金というものとの相対的な関係でございますので、そちらのほうの財政的な資金がどういうふうに得られるかということによってきまってまいるかと思います。もちろん運賃といたしましては、いいサービスをできる限り安い運賃で国民の皆様方に提供いたしたいというのが、国鉄の変わらない考え方でございます。
  60. 永末英一

    永末委員 料金問題とは少し角度が違うのでございますが、厚生大臣、来年度予算編成についてぜひ承っておかなくてはならぬ問題があなたの所管にございます。医療費の問題。この四月中央医療協が多数意見をもって八%以内医療単価を上げるように、こういう答申をいたしましたが、その後これが解決をせずにあなたが厚生大臣に御就任になった。御就任後、新聞の伝えるところによれば、一二%程度の医療単価の値上げということでもってこの問題を解決したい、こういう御意向努力をしておられると承っておりますが、この医療費の単価がはっきりしないために、いろいろな問題が国民健康上起きておるわけである。この問題は早期解決する必要があるとわれわれは考えておる。あなたはこの問題に対していつどういう形で解決したいとお考えかをこの際承っておきたい。
  61. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  医療費の問題につきましていまお尋ねのような議論が出ておりますこと、そのとおりでございます。御承知のように、四月の十八日でございますか、中医協から答申がございまして、現下の医療関係は緊急是正をする必要がある、こういう答申があったことは御承知のとおりでございます。そこで、この答申につきましては、相手方といいましょうか、一方の医師会から少数意見も出ておりまして、非常な反対をし、代案を申し出ていることも事実でございます。そこで、四月十八日答申を得たまま今日までその是正がおくれていることも、事実でございます。私といたしましては、このような事態のままで答申どおりに緊急是正をするということになりますと、相当の混乱と申しましょうか、好ましからざる事態も予想されますので、円満に実施したい。しかも答申の線は十分尊重いたしまして、まあ多少プラスアルファというような気持ちを持っております。いまお話しのございましたように、じゃ何%上積みするのかというようなことは、これは大蔵大臣その他と御相談申し上げなければならぬことでございまして、私といたしましてまだ数字を申し上げる段階には至っておりません。しかし、いつまでに解決するのか、こういうお尋ねでございますが、これは、内容そのものが緊急是正を迫られている事情も十分ございますので、できるだけすみやかに解決いたしたい、こういうふうに考えております。
  62. 永末英一

    永末委員 厚生大臣はなるべくすみやかにということですが、政治答弁としてなるべくすみやかにというのは、極限の形を想定すると、無限に延びることもあり得るのである。したがって、この問題が四月問題になりましたときに、たとえば上がったら予備費で払うとか払わぬとかいう問題すら現実の問題としてあった。しかも緊急是正といいながら、半年たってもまだ是正されていない。医療関係者も、また一般国民も、非常にこの点不審の念を抱いておると思う。そこでおそくとも来年度通常予算を提出のときまでには解決をする、こういうお覚悟があるかどうか、伺いたい。
  63. 神田博

    神田国務大臣 大体そのような時期までには解決する、こういう見通しでございます。
  64. 永末英一

    永末委員 経済企画庁長官と大蔵大臣とお二人に伺いたいのですが、きのうから消費者米価、電気料金、ガス料金、水道、公営軌道等の料金、それぞれ値上げムードに包まれておるわけです。経済企画庁長官は、来年度の物価の値上がりを四・二%とか三%でおさめたい、こういうことでしたが、一番の基幹になる、しかもそれぞれの地域において物価の水準を示すと思われるようなものが上がってくるということは、単に、たとえば消費者米価の二〇%上がってみたところでこれが物価に対する寄与率は一・四%というような問題ではない。物価値上げのむしろ心理的な要因のほうが大きく作用するとわれわれは考える。しかも各省の大臣は、それぞれ大体上がるというような考え方が頭の片すみにあるわけです。これは私は、この一年間公共料金の一年ストップをやってきたのは、その間やはり安定した価格帯をつくる、これが池田内閣の使命であったと思います。ところが、それが十分に行なわれていないときに、一年だから済んだんだ、こういうことで値上がりムードに包まれるならば、大蔵大臣が先ほど考えたような予算編成の規模自体もくずれてくるし、日本経済自体の中身もまた変わってくると思われる。一体経済企画庁長官は、こういうムードに対してどう対処しようとお考えか。大蔵大臣もひとつお考えを伺いたい。
  65. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 昨日もこの席でお答え申し上げましたように、公共料金の一年間ストップという措置は、非常の措置でございまして、やはりそのストップをされた相手方の企業に相当な無理がかかっていることは事実でございます。そういうふうな観点から、このストップをずっと続けていくということは、これはどうしてもなし得ないことでもあり、またなすべきことでもない、かように考えておる次第でございます。しかしながら、同時に、せっかく安定ムードが物価についてでき上がってまいってきておるこの過程においてこれをくずすということは、どうあってもなすべきではない、かような観点から、消費者米価または国鉄の運賃、その他各種公共料金につきましては、一年間のこのストップ令をずっと続けるという意思はございませんが、その時点その時点に立って一一についてケース・バイ・ケースに検討いたしまして、ただいま御指摘のありましたようないわゆる値上げムードを引き起こすというふうなおそれのないような方向で善処していきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、国鉄運賃は、昨日もお答え申しましたように、全体のウエートは〇・九八%でございますが、これがやはり私鉄に及びその他に及ぶ心理的な影響もございますので、また、消費者米価についても同様な影響が考えられますので、それを上げるか上げないか、また上げるといたしました場合におきましても、その程度、時期、その他については十分慎重な態度をもって臨んでいって、とにかく結果として、三十九年度におきましては、当初見通しとして予想いたしました四・二%の上昇率、これをぜひ確保いたしたい。また来年度におきましても、それを上回らぬ程度において物価の安定のムードを堅持していきたい。そのためには、単に公共料金を押えるとかなんとかという問題以外に、財政金融政策全般を通じて、何と申しますか、引き締めムードの基調のもとにこれを推進することが必要であり、その他の施策についても、やはり総合的な物価対策をやっていくということが必要であろうかと、かように考えておる次第でございます。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 公共料金及び物価の問題に対しては、いま経済企画庁長官が述べられた線と大体同じでございます。  ただ一つ私の立場で経済企画庁、長官よりも少し積極的な発言をしなければならぬとすれば、それは米価の問題でございます。米価問題に対しては、私は現段階において、また財政の責任者として、消費者米価は、経済企画庁長官が言われた程度よりも少し強く引き上げが必要ではないか、引き上げをお願いしたいという考え方でございます。また、消費者物価抑制の問題から考えまして、一月一日からせきをきったように、ダムが決壊したように一時ストップをはずすべきではないということは、十分考えておるわけでございます。  それからこの公共料金のストップも、物価抑制の有力な一つの手段ではありますが、これ以外にもまだまだやらなければならないこと、またやり得ること、これにかわるべきものもたくさんあるわけでございますので、そういう面に対しても、広範かつ総合的に物価抑制策を考えてまいりたいというふうに考ええます。
  67. 永末英一

    永末委員 ケース・バイ・ケースということは、もうやめた、正確に言えばそういうことになる。そうすると、池田内閣は一年にしてもう物価安定政策をやめた、こういうことになりますよ。こういう問題は池田首相じゃないとわからぬと思いますので、これは残念ながらきょうは池田首相おられませんから、慎重にやっていただかなければ、来年度は非常な経済の混乱を来たすと私は思う。  その中で大蔵大臣に一つ伺いたいのは、池田内閣以前からでありますけれども経済成長政策といわれていろいろな政策がとられましたが、非常に目につくのは日銀券の発券高が国民経済成長率よりも商い度合いで伸びてきておる。日銀券の発券高が伸びておるというのは、それに伴って手形等の各種の信用状がやはり出回ることになってきておる。現在は不換紙幣でありますから基準はないのでありますけれども、やはりこれはそれぞれの企業が各銀行に要求し、各銀行が親銀行の日銀に要求してくる信用創造の結果だと思う。したがって、いまのような値上がりムードが出てきておるときに、日本銀行がそういう発券の作用について十分配慮をし、つくられていかないという態度をとらなければ、やはり緩慢なインフレ作用に拍車がかけられると私どもは心配しておる。大蔵大臣はこれに対してどう対処されるか、伺いたい。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 発券高が必ずしも現在高いとは思いませんけれども、あなたがいま御指摘になったように無制限にこれを発行したり、ある時期に非常に大きく発行するというようなことは、避けなければならない。その避けるというためには、いろいろやらなければならぬ施策はございます。これは一つは、日銀とつながっておりますものが、手形交換じりを自動的に見る、こういうことが制度上ございます。これはどうも少し考えなければならないのじゃないかということを私は過去から考えておるわけであります。まあしかし、現在は調整過程においてクレジットラインをつくっておりますから、この問題は相当チェックされておりますけれども、現有及び将来に対しての中央銀行及び都市銀行との間の決済の問題に対しては、もう少し厳密に考える必要があるということを考えます。  もう一つは、経済を安定成長に導いてまいるということでございます。安定成長に導いて、資金も安定的な状態において必要とする、しかもそれは日銀にのみたよることなく、金融の正常化によりまして貯蓄の増強とか、また公社債市場の育成強化とか、直接資本市場の拡大強化というようなものを全部あわせて行なうということによってのみ解決ができる問題でございます。  もう一つは、非常に設備投資が高いといわれておりますが、この内容を見ますと、一体これでいいのかという問題もございます。百億の投資のうち、四十億は生産に必ずしも直給しないビルの建築である、こういうものを一体なぜ押えなかったか、こういうこともいわれると思いますが、金融はできるだけ自主的にという考えを持っておって、政府が面接統制しないという非常に民主的な考えでやっておったために、工場の設備費が倍増したというよりも、ビルが十倍増したということもあり得るわけであります。でありますから、こういう資金の内容をいかに合理化すかという問題も考えれば、この問題はだんだんと解決をして正常なものに移行するであろう、また移行させなければならぬという考え方でございます。
  69. 永末英一

    永末委員 各種物価が少しずつ値上がりムードに包まれており、しかも片一方国民の、勤労者の生活水準というものは、名目的な国民経済全体の成長に比べますと、実質的には同じ度合いで伸びていない。これは労働省の出しておる白書がそのとおり示しておるわけであります。そこへ持っていって所得者減税はやらぬとは言いませんが、所得者減税より企業減税のほうがまだ重点だと大蔵大臣はお考えのようだけれども、来年度は、承るところによれば、二千万人以上の人が所得税を払う、こういうことになってくる。すなわち、現在の税制がそうさせておるわけである。その段階においても、なおかつ大蔵大臣は所得者減税より企業減税を考えるべきだとお考えか。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 来年度において、納税者がこのままでいけば二千万人をこすであろうということは、事実でございます。これは税負担が重くて、重い状態において納税者がふえるということは好ましくないので、これは排除しなければならぬ。しかし、先進国経済になって、その課税最低限は非常に大幅に引き上げられたがという前提であるならば、国民すべからく納税者になるくらいなことこそ望ましい、こういうことにもなるわけでございます。しかし、現在の状態では必ずしもそうでないという事実に着目しながら、過去十年間大いなる所得税減税をやってまいりました。何か私が企業減税だけを考えておるので、所得税減税というのは全然削ることばかり考えておるというような間違った印象でございますので、この際明らかにいたしておきますが、私も大所得税減税論者であるということを明らかにいたしておきます。でありますから、昨年、一昨年の間行なわれた税制改正においても、五五%ないし六〇%に近いものは所得税減税を——私はこれをもって足れりと考えておるのではないのであります。しかし、所得税減税と企業減税は全く利害相反するという考え方は、首肯しないのであります。国際競争力に立ち向かいながら、やはりその所得の源泉というものをいかにして強化し、確保しなければならないかということでございます。しかも大蔵省は、御承知の立場でございますから、一ぺんに取ってしまって来年つぶしてしまうというような政策はとりません。これはやはり日本の企業が国際競争力に耐えてりっぱな企業になり、給与も上げていけるような、状態であれば、これは税の繰り延べであって、いつかの口にはいただくという、こういう考え方でございますので、いま苛斂誅求でつぶしてしまって、あとから長期税源を確保できないような施策は、とるべきでない、こういう考え方に基づきまして、所得税と企業減税のバランスをとった減税政策をあえて行なおうとしておることを明らかにいたしておきます。
  71. 永末英一

    永末委員 大蔵大臣は、所得税がそんなに負担になってないかのような印象でお考えのようです。ところが統計の示すところによれば、所得税が個人所得に対する割合は、国税だけをとりましても、年々逓増しておるわけである。逓増しておるというのは、重くなっておる。度合いが重くなっておるわけでありますから、重くなっておるわけであります。その重くなっておるのは、現行の税法が、免税点の点においても、また中堅層に対する税率の点においても、いわばほかの国に比べて下に重くなっておる。そういう点が個人所得税が所得に対する度合いが多くなり、そうしてまた課税人員の増加をもたらしておる。したがって、現在の問題点は、減税といえば所得者税減をどれだけやるかというところをまずきめてかかる、これが私は減税の本格的な態度であって、あなたの言われるように、これまた精神論で考えておるけれども、企業減税とバランスをとって——所得者減税と企業減税とは、バランスをとろうにも、日本経済に対する作用において私は相当性質は違うと思う。それをあたかも同じ性格のように考えておられるわけであります。私のようなかまえで所得者減税に対処せられるお気持ちはございませんか。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 大体あなたと同じ気持ちで対処しているのです。しかも、その上になお企業減税も必要だと考えておるにすぎないわけであります。
  73. 永末英一

    永末委員 気持ちは持っておっても、まずそれをやる——課税人員をふやすことはあたりまえだという考え方は、やはり頭から除いてもらわなければ、これは何といわれても所得者増税になっていく気配が濃厚である。その点をひとつお考え願いたいと思います。もっと所得税論争をやりたいのでありますが、時間が制限されておりますので、中小企業対策について通産大塩に伺いたい。  中小企業対策というのは、単に高度成長政策のひずみの問題ではなく、もっと構造的な問題が出てきておると思います。現在出ております各中小企業にあらわれておる激烈な倒産の現象がありますが、この倒産の原因はどこにあるとお考えか、通産大臣に伺いたい。
  74. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御指摘のように、八月に三百七十二件、九月に三百七十九件というように、戦後件数としては最高の倒産を示しておるのであります。これは詳細に検討いたしてみますと、金融引き締めの状況が浸透してきておる。したがって、件数がふえて、そして倒産の額が小口化しております。また、京阪神とかあるいは名古屋の地区とか東京周辺とか、こういうような都市よりも、むしろ地方のほうへずっと浸透しておるのでございまして、これは結局金融引き締めの結果であると、原因はさように見ております。
  75. 永末英一

    永末委員 通産大臣のような理解なら、金融引き締めの結果であるから金融をゆるめたら直るだろう、こういうことにならぬとも限らない。私はそうじゃないと思う。現在の金融構造にむしろ問題があると思う。したがって、時間がございませんから、問題点を指摘いたしますから、簡潔にお答え願いたい。  現在倒産をしておるこの中小企業に対して、さしあたり救済策として何をお考えか。  第二は、いわゆる融通手形によって連鎖的に倒産している実情があらわれておる。この融通手形をしておるのは、あなたの見解によれば、金融引き締めだというけれども、その内容にやはり問題があると思う。したがって、その内容に立ち至って手を差し延べなければ、救済にならない。どういう救済方法を考えておるか。  第三は、いよいよ年末が来ますが、私どもは中小企業の共同化を促進するたてまえからいって、商工中金に対する融資、出資というものを基本にしながら、中小企業金融公庫、国民金融公庫の年末手当を含めながら、こういうことに対する対策を考えるべきだと考えております。そのことに対するお考えを願いたい。  第四点は、現在零細企業者が各県市の信用保証協会に対して保証を求めておる。これがだんだん大口化しておる現象であるけれども、この貸し出しに対して現在制限があるので、非常に十分な保証が行なわれていない。これは信用保険公庫もあるわけでありますから、政府が最後には代位弁済するかまえであるならば、この制限をゆるめる覚悟があるかどうか。  以上の点について簡単にお答え願いたい。
  76. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど申し上げました原因は金融引き締めだと、これは当面の主たる原因を申しておるのでありまして、もちろんいろいろな原因があるということはいうまでもないのでございます。  そこで、御指摘の点でございますが、第一には、やはりこれは貸し出しワクを相当考えなければならないと思うのであります。そこで、政府の三機関に対しまして、明年度におきましては相当大幅に増加する考えでございます。  また、当面の問題といたしましては、七−九貸し出しワクを百億円増大するとか、あるいは水害地に対して特別に七十億円を追加するとかいうように、そういうふうに工夫をいたしておるわけでございます。この倒産の連鎖反応的なものもございますが、これに対しましては、御承知のように通産省は各地に出先の機関を持っております。福岡であるとか、あるいは広島であるとか、東京、大阪、北海道、みな通産局があるわけでございまして、この通産局を中心にいたしまして、市中銀行に対して協力を要請するとか、あるいは三機関に対して金融のあっせんを依頼するとか、あるいはいま御指摘のような信用保証制度を十分活用するとか、いろいろとくふうをいたしております。もとよりこれでは不十分でございますので、大企業などに対しまして、それぞれの企業に応ずるような発注をしてもらうというような協力態勢をお願いしておるわけでございます。御承知のように、政府の手の及ぶ範囲というものはなかなか限られておるのでございまして、何としても市中の金融機関であるとか、あるいは相当な企業が協力をしてもらうということが、いまの中小企業の倒産の状況を緩和する一つの方法ではないか、かように思うのでございます。  零細企業に対する信用保証の問題についてお取り上げでございました。現在信用保証協会が実際上は信用力のないものに対する補完制度としてあるのでございますが、間々ある程度の担保を預かるとか、また保証人を要求するとかというようなことで、その制度が十分活用されていない趣もございますので、昨日も申し上げましたように、信用保険公庫から、てん補率を引き上げて、そして無担保、無保証でも借りられるようにいたしたいと、せっかくいま立案中でございます。
  77. 永末英一

    永末委員 最後に一間。防衛庁長官、外務大臣、過般アメリカのラスク長官が中共の核武装が近いという発表をいたしました。日本政府は、これに対して何らの見解も明らかにいたしておりません。アメリカ政府の見込みではございましょうが、中共の核武装という問題は、アメリカに対してよりも、わが日本に対して直接に非常に大きな影響を及ぼす問題である。国民は、一体日本政府はこの点についてどういう観測を持ち、どういう対策を立てようとしておるかを聞きたがっておる。おりしも原子力潜水艦の寄港をこれに一月先立って認めるということをやったために、これらが相関連しながらいろいろな憶測も行なわれているのは事実であります。私はこの際、責任者である防衛庁長官と外務大臣に、ラスク長官が行ないました中共核爆発近しというこの声明に対して、日本政府はどのように考え、どうすればこの中共の核爆発から核兵器保有に至る道をやめさせるようにすることができるか、これを考えておられると思う。おられなくてはならぬ問題だと思う。この点についてお答えを願いたい。
  78. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 中共核爆発の問題につきましては、一九五〇年ごろからいろいろと予想がされておったところでございまして、九月のたしか二十九日でございましたか、ラスク国務長官の中共核爆発に対する見解の表明があったわけでございまして、それ以前に私どものほうとしては何ら的確な情報を得ておらないのであります。また、ラスク長官の言明が近い期間にかりに的中したといたしましても、これが核装備をいたすまでには数次にわたる実験を重ね、あるいは改良等を加えていかなければなりませんので、実際に中共が核兵器を保有するという段階には、相当の時間がある。その時間と申しましても、数年の時間がかかるのではないかと予想されるのであります。  これに関連いたしまして、日本としてどういう態度をとるべきかという御質問のようでございますが、元来、核兵器は戦争抑制力としての効用があるものとわれわれは考えており、日米共同防衛体制のもとにおいては、核兵器はアメリカに依存をして日本の国防をやっておるというのが、いままでのたてまえでございます。将来においても、かりに中共が核装備を完全に保有いたしましたあとといえども日本はこの精神とたてまえによって、これに対抗して核装備なんということを考える必要はないと考えておるわけでございます。
  79. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官は、日米安保条約があれば、中共の核武装があっても、そのほうの体制でよろしいという、こういう御見解です。しかし、安保条約のできた背景を見ました場合に、中共の核武装は、好むと好まざるとにかかわらず、日本と中共との周辺にあります各国の外交方針にいろいろな影響を及ぼす。日本がアジアの一国である限り、これらの各国の外交方針の変化とともに、日本の外交方針もまたいろいろ影響されることは当然であり、私どもは、そういう意味合いで、かたくなな、いままで安保条約があるから、これだけによってよろしいといってきたからいいのだというのではなく、もっと流動的に問題をとらえる必要がある。対中共に対して、経済はやるが政治は無関係だという態度ではなく、アジアの民族国家としては、同じアジアにおける大きな民族国家である中国に対して、もっと柔軟な態度、流動的な態度で対処していかなければ、この中共の核武装から生じてくるいろいろな圧迫に対して、アメリカの核のかさだけをたよりにしておっては、日本民族の安全は保たれないとわれわれは考えておる。これら変化に対してどのような準備をされておるか、外務大臣に伺いたい。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核実験の時期はいつかということは、いま防衛庁長官から申し上げたとおり、的確な判断はいたしかねる事情にあります。しかし、大体において一九六四年以降といわれておったのでありますから、今後は案外近いのではないかという予想がいたされるのであります。先般フルシチョフ・ソ連首相と藤山氏との会談が新聞に伝わっておりました。その新聞の情報によっても、いろいろな技術を置いてきたからやれるはずだ、こういうことを言っておりますから、いろいろな状況から判断いたしまして、わりあいに近いのではないかという考えを持たざるを得ない、そういう状況でありますから、ラスク声明というのもおそらく出たのだろうと思うのであります。しかし、いま防衛庁長官からお話がございましたとおり、設備をしてから実験するまで相当な準備が要る。実験から現実の核爆弾を装備して、そうしてこれを適当な距離に運搬をするというようなことは、これは容易な問題ではないのであって、数年あるいは十年かかるのではないかということをいわれておるのでございますが、ただいまの科学技術の段階では、少なくとも数年は、それも二、三年という短い数年じゃなくて、長いほうの数年を要するのではないか、こういうふうに考えるのであります。私は、もしかりに中共の核実験が行なわれるということになれば、その数年の間があるのでありますから、心理的な影響というものに対してどういうふうに対処するかということが、さしあたりの問題であると思うのであります。しかし、それも核爆弾を装備するということはまだ相当な段階があるということが漸次一般から理解されるに従って、その心理的影響というものはだんだん薄らいでまいるのではないか、かように考えるのでありまして、隣国の日本といたしましても、さようなPRをする必要が大いにあると思うのであります。それと同時に、昨年米ソの間で核実験の部分的停止条約ができて、そしてまずまず大気がこれによって汚染されることがないということは、世界のみんなが一安心をしておるという状況でございますので、中共がもしこの状況を無視して、あえて核実験を強行しようというような態度であるならば、これは十分に事前事後において大いにこの問題に対して抗議をしなければならぬ、さように考えております。ただいまのところはその程度であって、いよいよその核兵器の実力を握った場合どうするかというようなことは、今日の段階ではそう突き詰めて——考えるのはいいでしょうけれども、かような場所で申し上げる段階ではないと考える次第でございます。
  81. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 永末君、時間。
  82. 永末英一

    永末委員 私はこれで終わりますが、中国とともにアジアの平和を保っていくという考えに立って外交をお進め願いたい。抗議をしたらしまいだという問題ではございません。内閣の命は短いかもしれぬが、民族の命はずっと長い。そういうかまえで問題をお考えを願いたい。  質問を終わります。
  83. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  この際申し上げます。岡田春夫君の質疑は午後行なう予定でありましたが、防衛庁長官がイタリアの国防大臣と会見する関係もございまして、直ちに岡田春夫君の質疑に移りたいと思います。この件につきまして、先ほど来理事と協議の結果さようきまりましたので、御了承願います。  岡田春夫君。なお、岡田君に申し上げますが、持ち時間一時間十分でございます。多少のなには考慮いたしますが、そのつもりでひとつお願いいたします。
  84. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間がきわめて窮屈でございますので、要点だけを質問いたしてまいりますから、御答弁のほうもきわめて簡潔に要点だけ御答弁をいただきたいと思います。  まず第一点は、自衛権の乱用と極東戦争への危機という項目を中心に御質問をしたいと思うのですが、椎名外務大臣にお伺いをしたいことは、八月の末に日米安保協議委員会が行なわれました面後、椎名さんは共同会見を行ないまして、その際、協議の結果、南ベトナムの情勢はアメリカにとってきわめて有利に展開をしている、このように記者に対して回答されました。ところが、その後において南ベトナムの情勢はますます不安定な情勢に向かっていることは、御承知のとおりであります。労働者階級のゼネストがあり、あるいは未遂とはいえどもクーデターが行なわれる、山岳民族の反乱という問題も行なわれて、この情勢は、全体としてアメリカにとってきわめて悲観的な情勢であるとわれわれは考えておりますが、あなたがきわめて有利に展開をしているというようにお答えになったその根拠は、一体どこにあるのか、この点をまず伺いたいと思います。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 きわめて有利——きわめてということばを使ったかどうか私は記憶しておりませんが、とにかく現状より有利に展開しておるということを申しました。それは、実際に日本といたしましてはあの地方に諜報機関も持っておらない、そういうので、日米安保条約の相手方であるアメリカの主として情報によったのでございます。
  86. 岡田春夫

    ○岡田委員 きわめてということばはないけれども、有利である、こういうことでございますが、もう一点は、サイゴンにある日本大使館からの情報ではなくて、アメリカの大使館からの情報に基づいている、このようなお話でございますが、御存じのように、私は六月の下句から七月の初旬にかけまして、インドシナの各国を回ってまいりました。私が回ってまいりました、そうしてそこで調査いたしました限りにおいて、インドシナにおける情勢は、椎名外務大臣の御判断と全く正反対の情勢である。アメリカはもはや絶望的な情勢におちいっていることは、間違いがございません。こういう情勢であるだけに、私はもう一度念を押しておきたいと思うのですが、必ず今後有利に展開するという確信があるのかどうか、そういう点を具体的にお答えをいただきたいという点が第一点。  それから、日本の大使館からの情報によらないとお話しになったのでありますが、それならば、日本の大使館があっても、そういう情報は信用できないのか、日本の大使館からそういう情報が来ておらないのか、あるいはこういう点について信用ができないからアメリカの情報を主にしてお考えになったのか、こういう点をはっきりお伺いをいたしたいと思うのであります。  私も、確かにあなたのおっしゃるように、サイゴンにおける日本大使館の体制というものは、きわめて弱い、これはああいう情勢の中においてあの程度の大使館では問題にならない、こういう点は非常に強く感じたのでありますが、こういう点を含めてお答えをいただきたいと思います。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 主としてアメリカ側の情報によったものでございまして、わがほうの大使館からの情報は、特に見るべきものがなかったのでありまして、自分の大使館を信用しないというような気持ちはもちろんございません。  今後の見通しについてでございますが、あの事件において漸次有利になる形勢だということを、情報を信じましたのでさよう申しました。今後の見通しは、あなたのおっしゃるように、なかなかこれは容易な問題ではないと考えております。全くこれはほっておいていいものじゃない。いろいろ努力をして、そうしてどういうふうに進展をするかという問題でございまして、ここでその予想を的確に申し上げることができないのをはなはだ遺憾といたします。
  88. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点についてももうすこし質問をしたいのでありますが、省略をいたします。  ただ、アメリカの情報というものがいかに当てにならないかというのは、先ほどの共同記者会見の結果有利であると言ったのが、ただいまのご答弁のように、今日では決して有利ではないという御答弁を通じてみても、アメリカの情報が信頼するに足りないということが明らかであります。また、それのみならず、防衛庁の小谷秀二郎氏がことしの春ベトナムを調査に行っておりますが、この小谷秀二郎氏の情報にしても、きわめてでたらめであります。でたらめだということをはっきり申し上げておきます。それは、防衛庁の長官もはっきりお聞き願いたいのでありますが、小谷秀二郎氏は日本に帰られてから、毎日新聞に小谷氏の所見を発表しております。その中では、南ベトナムの戦線は第二ラウンドに入って、有利に展開するということを書いておる。これは全くでたらめである。こういう事実を考えても明らかであるということをこの際申し上げて、次の問題に入ります。  次の点は、トンキン湾の事件の問題でありますが、御承知のように、トンキン湾の事件が起こりました直後、すなわち八月の五日にアメリカは北ベトナムの領土、領域に対する公然たる攻撃を行ないました。あのときの直後でありますが、ライシャワー大使がこの五日の午後三時過ぎに池田首相を訪問して、事態の連絡をしたといわれておる。これについては外務委員会において大臣も答弁をされておりますが、この際に、ライシャワー大使はベトナムの攻撃に対してどのような説明を行なったのか、この点について具体的な御説明を願いたいと思います。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ライシャワー大使から、トンキン湾の公海において突如攻撃を受けた、それに対してこれを排除するために反撃をいたしました、こういう要点であります。
  90. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこら辺もう少し伺いたいのですが、ライシャワー大使の言われたのは、トンキン湾において攻撃を受けた。それは八月の二日、四口でありますね。北ベトナムをアメリカが攻撃いたしましたのは、その次の口の八月の五日でありますね。こういう点について具体的な御説明はございましたかどうですか。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その日のあと先、時間の状況までただいま記憶しておりませんが、何のために北ベトナムの魚雷艇の根拠地を、あるいは石油タンクを攻撃したかということにつきましては、報告を受けております。それは結局自衛権の範囲内である、こういう解釈のもとにこの攻撃を行なったということは聞いております。
  92. 岡田春夫

    ○岡田委員 椎名さん、困りますね。何日に攻撃を受けて、何日にこれに対してあれをしたかということは、重要なことです。そういうことも大臣わからなくちゃ困るのです。アメリカ局長来ているでしょう。アメリカ局長、はっきりしている点はっきりお答えください。
  93. 竹内春海

    ○竹内説明員 第一次トンキン湾事件と称しますものは八月の二日に起こりまして、第二次が四日に起こっております。アメリカが自衛措置をとって基地を攻撃いたしましたのが、八月の五日でございます。
  94. 岡田春夫

    ○岡田委員 最後の点はっきりしなかったのですが、竹内さん、八月の五日ですか、二日ですか。
  95. 竹内春海

    ○竹内説明員 五日でございます。
  96. 岡田春夫

    ○岡田委員 こういうようなライシャワー大使からの申し入れに対して、外務委員会においては、椎名さんは、第四条の後段の適用に該当する随時協議である、このように答弁をされておるのですが、これに対して、随時協議であるとするならば、この協議に対して日本側が意思表示をしなければならないはずだ。このアメリカの申し入れに対してイエスかノーかを言わなければならない。これに対して日本側としては、イエスと答えられたのか、ノーと答えられたのか。すなわち、こういう態度を是認すると答えられたのか、是認しないと答えられたのか、この点はどうでございますか。
  97. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これを了承したのであります。
  98. 岡田春夫

    ○岡田委員 了承というのは是認ということ、イエスということでございますか。ノーではないでしょう。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ノーじゃありません。了承をいたしました。
  100. 岡田春夫

    ○岡田委員 了承したというのはイエス、ノーではないということですから、それでは第四条の協議に該当して日本がイエスと言った、是認をした、了承をした。そうすると、トンキン湾事件に対する日本側の立場は、安保条約の適用を受けたことを意味するのだが、第四条の協議に従いまして、安保条約の措置は、どのような措置をおとりになったのか。たとえば第六条の適用をお認めになったのかどうか、この点をお答えいただきたい。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第六条は、必ずしもこの問題には関係ないのであります。
  102. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、私の伺ったのは、あなたは四条の適用を受けたのだとおっしゃるのならば、安保条約上いかなる措置をおとりになったのか。必ずしも関係はないとおっしゃるけれども、そこの場合を伺っておるのです。第六条の適用を発動することになったのか、ならなかったのか、この点を伺いたいと、こう言っておるのです。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第六条は事前協議の問題だと思います。(岡田委員「交換公文と六条と食い違っちゃだめですよ。条約局長来ているでしょう、教えてやりなさい。」と呼ぶ)第六条の問題を考えたかというお話は、どうもよくわかりませんが、もう少し的確に御質問を願います。
  104. 岡田春夫

    ○岡田委員 きっと外務大臣は何度言ってもわからないと思いますね。なぜならば、あなたは六条を知らないから。これ以上的確には言いようがないのです。条約局長とよく御相談なさい。条約局長答弁さしたらいいでしょう。
  105. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 藤崎条約局長。しっかり答弁願います。
  106. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 第六条の趣旨は、御存じのとおり、日本の安全、極東の平和、安全に寄与するために、簡単に言えば、米軍に駐留を認めるという趣旨の規定でございまして、これは、トンキン湾事件にあたって特に第六条が発動するというような性質の規定じゃないわけでございます。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点については条約局長ともう少しいろいろ議論をいたしてまいりたいと思っていますが、小泉防衛庁長はお急ぎのようでございますから、そちらのほうを先にやってまいりたいと思います。  そこで、いまの藤崎さんの問題にも関連をして防衛庁長官に伺いたいのでございますが トンキン湾の事件が発生をした際に、日本におりますアメリカの第五空軍、板付その他の米軍基地では、トンキン湾の情勢に応じて警戒態勢に入ったはずであります。これは私たちが知っておる限りでは、アラート・ナンバー・スリーのはずであります。この点はどうですか。
  108. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 岡田委員が仰せになりましたとおり、警戒態勢に入ったという情報は受けております。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではアラート・ナンバー・スリーという事実も、お認めになるわけでございますね。
  110. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 さようでございます。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、安保条約第四条の協議に基づいて、藤崎さん、お聞きのように、第六条の行動が発動しておる。いいですか。それでアラート・スリーという警戒態勢に入ったのだが、日本の自衛隊はどういう警戒態勢に入ったか。小泉さんがもし御存じなければ、海原さんでもけっこうですが、その点を伺いたいと思います。
  112. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 この点につきましては、アメリカ側から空幕を通じて私は情報を聞きました。また、防衛庁当局といたしましては、これはアメリカ側の単なるこちらに対する連絡的な情報である、日本の側としては何らこれに対する特別の措置をとる必要はないという報告を受けておりまして、私もさように了承をいたしております。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、これは、小泉さんも大臣に御就任になったから当然御研究だろうと思いますが、昭和三十六年に国防会議で正式に決定をいたしました第二次防衛整備計画の国防基本方針によると、その基本方針としては、全面戦争は抑制されるけれども、局地武力戦争の発生には対応しなければならない。特に極東において局地戦争の発生の可能性があるという趣旨に基づいて、自衛隊の整備方針がきめられた。そうすると、当然自衛隊は、このトンキン湾事件において在日米軍がアラート・スリーに入っておるとするならば、日本の自衛隊もアラート・スリーと同じ段階に該当すべき行為に入っていなければならないと思うのだが、これはどうなんでありますか。
  114. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 当時の状況においては、日本側として何ら措置する必要はないという判定をいたしたような次第であります。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、これは小泉さんは御存じないかもしれない。というのは、就任以前の問題ですから。むしろこれは海原さんに伺ったほうがいいと思うのですが、キューバ事件の際、一九六二年十月二十三日、ライシャワー大使が非常に朝早く信濃町の池田私邸を訪問いたしまして、キューバ事件についての連絡をいたしました。それに基づいて、アラート・ナンバー・フォーという警戒体制に日本の自衛隊が入ったはずであります。これは海原さんははっきりお答えいただきたいと思うのでありますが、その入った証拠に、全国二十四のレーダーサイト、並びに千歳、小牧、新田原、小松、松島、これの日本航空自衛隊の戦闘部隊が警戒態勢に入ったのは事実である。それは二十三日の朝、防衛庁において緊急幹部会が行なわれて、その幹部会が行なわれて、その幹部会の直後海原さんが新聞記者から質問を受けまして、この事実、こういう警戒態勢に入ったという事実を記者会見で話されておるはずであります。こういう点をひとつお答えいただきたいと思います。
  116. 海原治

    ○海原説明員 キューバ事件に際しましての航空自衛隊の警戒準備態勢についての御質問でございますが、ただいま岡田先生のおっしゃいました事実と当時の自衛隊のとった態度とは相当な開きがございます。で、このときにも、当時衆参両院のいろいろな委員会で、このキューバ事件に際しての防衛庁、特に航空自衛隊の態勢についての御質問がございまして、当時の防衛庁長官志賀大臣からもこの点ははっきりと御説明してございますが、簡単に申し上げますと、航空自衛隊としては特別の措置をとっておりません。ただ、当時の情勢におきまして万一のことが発生するということもおそれられましたために、念のために、各部隊、特に航空自衛隊のレーダー・サイト等に勤務しております勤務員を対象にいたしまして、念のために注意をするようにということの口頭の幕僚長からの注意を連絡した。このことは私が防衛庁の記者クラブの会見におきましてもそのように御説明したのでございますが、一部特別の命令が出されたような報道もございました。それに対しまして、当時私は二、三の放送並びにテレビを通じまして、その後誤りであることもお知らせしてございます。簡単に申しますと、キューバ事件に際しまして航空自衛隊は別に先生のおっしゃいましたアラート態勢はとっておりません。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 海原さんはこの前からそういうようにおっしゃっておられるし、閣議にわざわざ志賀さんが印刷したものを持っていって、実はアラート態勢に入ったのじゃないのだというようなことも言われたようなことも知っておりますが、しかし、二十四のレーダー・サイトと先ほど申し上げた六つの航空基地に対する警戒態勢は事実でございましょう。
  118. 海原治

    ○海原説明員 先生も御存じのように、航空自衛隊のレーダー関係の勤務部隊は二十四時間常時待機の態勢でございます。したがいまして、どこで何が起こりましても、特別に新たに態勢を強化するという必要はございません。そこで、先ほど申しましたように、念のためにという、特にこの際であるから注意をしろ、こういう注意を出しますことは、当時志賀大臣からも申しましたように、火の用心をしろということは何回繰り返してもいいじゃないか、こういう御説明が実は国会のほうにもございました。  そういうことで実施しましたことでございますと同町に、アラート態勢ということばをお使いになってございますが、これは若干誤解を招きます。私どものほうはあくまで警戒準備の態勢でございます。これは五段階ございまして、平生の状態がナンバー・ファイブでございます。これから逐次五、四、三、二、一と上がってまいりますが、それは具体的に申しますと、スクランブル待機の飛行場におきまして、たとえば五分待機の飛行機が二機あるといたします。その背後には一時間待機の飛行機がまた二機ある。こういう場合に、五分待機の飛行機の数がふえるとか、あるいは一時間待機のものが三十分待機に繰り上がるとか、そういう程度のことが段階ごとに刻まれております。これは米軍も同じでございます。したがいまして、アラートということになりますと、いかにも直ちに発進というような感じをお持ちになりますが、これはあくまで直ちに発進をすることがあることを予想しての準備態勢を強化しなさいという意味のものでございますので、そのようにひとつ御了解願います。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は実は、海原さん、その点をもっと詳しく伺いたかったわけなんです。アラートという内容をもう少し具体的に御説明を願いたい。われわれの知っている限りでは、一〇一事態とか、二〇一事態、あるいは三〇一事態、四〇一事態、五〇一事態というような事態を想定して、国防会議で第二次防衛計画の基本方針の基礎になるべきものをきめた。いまの空軍の場合には、アラート・ファイブまでの、そういう態勢をおきめになったという話があるわけでありますが、いわゆる日本の自衛隊がどういう形の警戒態勢を持っているのか、その警戒態勢の内容をもう少し詳しく、五段階に分かれているという点はお認めになったわけでございますが、この点はひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  120. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待ってください。岡田君に申し上げますが、防衛大臣は実はイタリアの国防大胆と十二時から面会するのを、あなたの御質問のために向こうへ通告をしましてわざわざ二十分延ばしたのですから、防衛大臣にひとつ先に、時間もありませんから質問をしていただいて、順次海原防衛局長お尋ねを願いたいと思います。もしあなたが御質問がなければ、防衛大臣を退場させますが、いかがでしょう。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたがたいへん長々とお時間をお使いになるものですから、時間がなくなりますので……。
  122. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 使いません。二十秒。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 十分心得ております。
  124. 海原治

    ○海原説明員 準備態勢の五段階から一段階までの区分でございますが、これは、具体的な、特に米軍につきましては、これは軍の行動でございますので、こういう席では申し上げられません。さらにまた、航空自衛隊につきましても、公の席上で申し上げるべき事態ではございませんので、ただ、一般的に申しまして、先ほど申しましたように、待機をしております飛行機の数がふえるとか、あるいは燃料の積み込みの準備をするとか、ないしは隊員の外出等についての制限をするとか、こういうことが準備段階に応じて逐次整えられていく、こういうものにひとつ御承知願いたいと思います。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 では防衛庁長官に伺いますが、これはもう常識上の問題ですから、海原さんに私聞きません。いまお話があったように五段階に分かれたアラートの態勢がある。警戒態勢です。これはその警戒態勢に基づいてその情勢においては自衛隊が出動するという問題が起こってくるわけです。この五段階内容をもう少し詳しくお答えいただきたい。
  126. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ただいま防衛局長からお話し申し上げましたとおり、五段階の詳しい内容については、軍の機密にも関連をいたしますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと、大臣になられたばかりですが、穏当でないような御答弁がございます。軍でございますね。防衛庁という自衛隊の軍が機密に関することをおやりになっているわけですね。しかし、あなたお隠しになっても、私はもうここに持っているんです。持っているんですし、安藤さんは御存じないかもしれないが、ここに大臣をした人はたくさんいるんです。これは全部知っているんです。
  128. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 余分なことはやめてください。質問をしてください。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 それで、一〇一事態、二〇一事態というような警戒分けをしているんですが、これについて私もう少し伺っておきたい点は、こういう警戒態勢の基礎になっている点、それは仮想敵国というものを想定して——仮想敵国とは書いていませんよ。それは対象勢力という名目を使っています。対象勢力の可能行動というものを想定しているはずだ。いわゆる仮想敵国からどういうように出動してきた場合にはどうするということを想定しているはずです。これは事実でございましょう。どうですか。
  130. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 先ほどの軍ということばは私の誤りでございまして、自衛隊の機密事項とでも訂正をさせていただきます。  ただいまの想定に関するお話がございましたが、これはやはり自衛隊が国防のためにいろいろな訓練をいたします上に、図上の演習等においていろいろな事態を想定をしてこれに対する研究をするということは当然のことでございまして、こういう研究は幕僚監部で年々歳々やっておることと承知いたしております。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 その場合の想定はどの国に置いておられますか。
  132. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 いわゆる文字どおり想定でございまするので、あらゆる場面を想定をして演練・研究をいたすものと存じ、ここに明白にそれを申し上げることもできないし、また、申し上げても、それはあくまでも演習のための想定にすぎません。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 想定というのは、作戦想定といって、これは前の日本の陸軍、海軍にもこういう場合があるんですよ。その場合は、仮想敵国を明確につくって、そういう形で想定をして、幾つかの段階においてやられているんです。それは古いほうです。新しいほうをいまこれから言うんです。正示君、聞きなさい。それは正示君もよく御勉強を願いたいのだが、昭和三十六年七月の国防会議で新しいやつがきまっているんです。そういう基本方針の中に明らかに仮想勢力というものが明確になっている。いいですか。極東ソ連は三十個師団、約四十万潜水艦百隻と見られるが、実際には可能行動のものは三分の一である、それから、中国、北朝鮮は自国内の問題で追われて余裕がない、こういう趣旨のことが明確に書かれているんです。これはお認めになるでしょう、防衛庁長官。——いや、長官のほうがお答えください。長官のほうで先にお答えください。
  134. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 岡田委員には、どういうところからそういう情報を御入手になったか存じませんが、さようなことはございません。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、対象勢力の可能行動として国内対象勢力と国外対象勢力というものを分けた一覧表が出ておりますが、これは御存じでございますか。
  136. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 存じておりません。
  137. 岡田春夫

    ○岡田委員 防衛庁長官がそれを御存じないならば、第二次防衛計画は進められませんですよ。そういう事実はないんですか、海原さん。
  138. 海原治

    ○海原説明員 第二次防衛力整備計画を国防会議において御審議願いましたときに、私は防衛庁の事務担当者として常時出ておりましたが、いま先生のおっしゃいましたような文書についての審議はございません。
  139. 岡田春夫

    ○岡田委員 そのこと自体は審議しなくてもいいのです。その基本になる基礎資料なんですから。こういう資料はあったでしょう。
  140. 海原治

    ○海原説明員 国防会議に基礎資料の提出はしてございません。
  141. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、海原さん、こういうのは防衛庁にあるでしょう。
  142. 海原治

    ○海原説明員 防衛庁とおっしゃいますことばの意味でございますが、私、防衛庁の防衛局長でございまして、いま問題になっております問題につきましての事務的な責任者でございます。そういう数字は私承知いたしておりません。ただ、対象国ということはでございますが、御存じのように、自衛隊は日本の防衛のために存在してございます。何に対して防衛するかということにつきましても、従来国会においてもたびたび御審議がございました。したがいまして、部隊としましては外部からの侵略があった場合に対して準備をすることは、これは当然でございます。その場合の予想さるべき、あるいはそういうことがあり得べき対象というものは当然なくては、いろんな計画ができません。この場合に、その侵略する勢力となるであろうと思うもののことを対象国の勢力と表現することは、これは当然の常識だと存じます。
  143. 岡田春夫

    ○岡田委員 だんだん時間がなくなってまいりました。もう少し伺いますが、五段階に分けましたね。この五段階数字だけで言うから一般にはわからないんです。抽象的に聞こえるんです。先ほど海原さんもおっしゃいましたね。アラート一段階ナンバ一と、それから五まである。これについては、当然、冷戦段階においてはどれ、間接侵略段階においてはどれ、直接侵略段階においてはどれというものがアラートの基礎になっているわけですね。そういうことでございましょう。これは、防衛庁長官、こういうことは御存じないと困るので、もし何なら海原さんと御相談の上でもいいですから……。それのほうがよろしいでしょう、防衛庁長官は帰るのですから。防衛庁長官ひとつそういうことでお答えください。
  144. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 アラートが五つあります問題は、これはアメリカのことでございまして、日本の自衛隊においてはただアメリカの問題で通報を受けたとさっきも申し上げ、アラート一から五までの問題はアメリカの空軍の問題であるということを申し上げておきます。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 先ほどの御答弁とだいぶ違うじゃないですか。先ほど日本の自衛隊の警戒態勢に幾つか警戒態勢があるんだ、それは発表できないんだ、こうおっしゃったじゃないですか。そういう警戒態勢については日本にはないんだとおっしゃるのですか。
  146. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 正確を期するために防衛局長から答弁させます。
  147. 海原治

    ○海原説明員 先ほど御説明申し上げましたように、警戒準備の態勢は五段階ございます。これは米空軍におきましてもわが航空自衛隊におきましても五つの段階を持っていることは事実であります。ただ、大臣から先ほど米軍のということをお答えございましたのは、岡田先生がアラートということばをお使いになり、その前には米軍のことを引用しておられますので、その意味で大臣は米軍の態勢だということをお答えしたものでございます。  航空自衛隊の五段階でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、五という段階は平生の状態でございます。これが逐次、先ほども申しましたように、飛行機の待機の状況が上がってまいりますに従って四、三、二、一となるわけでございますが、先生のおっしゃいますように間接侵略であるとか直接侵略であるということに対処しての区分ではございません。これはそういう区分には絶対になっておりません。
  148. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、何が基礎になっているのですか。
  149. 海原治

    ○海原説明員 警戒準備態勢を用意いたしますことが必要になりましたそのときそのときの状況に従いまして、防衛庁長官の御判断によって発令されるわけでございます。
  150. 岡田春夫

    ○岡田委員 防衛庁長官に伺いますが、そういう御判断の基礎になっていることですね、その基礎は何もあなた秘密にされることはないじゃありませんか、そんなことなら。それじゃひとつぜひどういう場合にはどういうふうに出動するという五段階内容を御説明願いたい。
  151. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 五段階の基礎は秘密ではないと仰せられますが、私どものほうではこの基礎こそはむしろ秘密の基礎である、こう考えております。
  152. 岡田春夫

    ○岡田委員 だからくさいんですよ。それを秘密にしておるから、私のさっき言ったような、いわゆる対象勢力の可能行動というものが基礎になっているんだ、仮想敵国あるいは日本国内における仮想勢力、これを前提としているんだというのが明らかであります。しかも、先ほどから空軍空軍とお話しになりますが、陸上自衛隊、海上自衛隊にもあるはずなんです。これは五段階じゃないかもしれないけれども、あるんですよ。そういうものを明らかにしてもらわなければ、第二次防備計画、二次防、これをわれわれとしても審議もできないし、そういう点は何も心配がないんだとおっしゃるけれども、そういった秘密になっている点がむしろくさいんじゃありませんか。こういう内容をもう一度お答えいただきたいと思います。
  153. 海原治

    ○海原説明員 ただいま岡田先生から、陸上自衛隊及び海上自衛隊についても同様のものがあるはずだ、あるんだ、こういうことでございますが、これはございません。と申しますことは、先ほどから御説明いたしておりますように、航空自衛隊というものは、その本来の任務から申しまして、二十四時間常時勤務態勢にあるレーダー・サイトとの関連において動くものでございます。飛行機はすぐおいそれとは出るものではございませんので、特に航空自衛隊につきましては警戒準備のための態勢というものを定めておりますが、陸、海につきましては、そのつどそのつど長官からの命令によって準備なり出動なりの行動が律されてまいりますので、航空自衛隊におきますような五段階に分けての態勢というものは、いまだかつて用意したことはございません。
  154. 岡田春夫

    ○岡田委員 二十分に出発されるそうですから、私はこれ以上進めませんけれども、私ははっきり申し上げておきます。自衛隊の二次防の基礎になったいわゆる対象勢力の可能行動というのが、これは付属資料になるのか参考資料になるのかわからないが、そういうものがあって、その場合に幾つかの先ほどの警戒態勢としての段階分けがあった。その段階分けは、冷戦工作すなわち平常の段階、間接侵略の段階、直接侵略の段階、こういうように分けて幾つかの警戒態勢の内容ができている。しかも、その警戒態勢の場合において、可能行動としては、外国からのいわゆる外国勢対象力といいますか、これがどのような可能行動をやるか、それに基づいて国内における対象勢力がどのように動くか、こういう段階分けがすでにつくられている。これは作戦想定である。こういうものがすでに日本の自衛隊にできているという事実だけは私明らかにしておきたいと思います。もしこの点について防衛庁長官が御答弁する必要があるとお考えになるならば御答弁になってもけっこうですけれども、私は次の質問に入ってまいりますから、どうですか。
  155. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次の質問に移ってください。
  156. 岡田春夫

    ○岡田委員 おそらく答弁されると困ることがあるだろうからだろうと思いますし、これ以上私は言いませんが……。
  157. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 防衛庁長官の退席を許します。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 いずれ適当な機会に私のほうで発表いたしますから。  そこで、話がどうもたいへん前後してしまったので、話が進めにくいのでありますけれども、トンキン湾の事件について、アメリカ側の発表を見ていると非常に不審な点が多い。こういう点について椎名外務大臣は何かお感じにならなかったか。具体的に言うと、八月四日の事件は、アメリカの現地当局は、アメリカ駆逐艦マドックス及びターナージョイの両号は国籍不明の魚雷艇と交戦をしたが、当夜はきわめて荒天の暗夜であったために魚雷艇の隻数及び国籍の確認はできなかった、このように発表している。ところが、その後間もなく、まあ直後でありますけれども、ジョンソン大統領は、この点について、国籍不明と現地で称されているものに対して、北ベトナムの魚雷艇と交戦したと発表している。それのみならず、交戦相手の魚雷艇の隻数が判明しないのに、撃沈破した魚雷艇の数は三隻であったと発表している。こういう点でも非常にあいまいである。八月二日の事件については、アメリカは、北ベトナムから五十キロ離れた公海上の地点において装備の弱い魚雷艇三隻が何の護衛もなく二時間半も駆逐艦と飛行機を相手にして交戦したというように言っているが、二時間半も魚雷艇が飛行機と駆逐艦を相手にして交戦したなどということは、常識として考えられない。こういう点を考えた場合、このアメリカの発表はきわめてでたらめである、盧溝橋事件のようなでっち上げである、こう言わざるを得ない。こういう点について、外務大臣はアメリカの情報しかわからないとおっしゃるのだが、こういう点について何らかの疑問を感じなかったかどうか、この点を伺いたいと思う。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 突発のできごとでございますから、人によっていろいろなことを言うのが常でございます。しかし、われわれは、アメリカの責任ある当局のことばを第一に信じたい、かように考えた次第であります。
  160. 岡田春夫

    ○岡田委員 突発のことであっても、あとで判断するのはだれだってやれることでしょう。それは外務大臣としてやはり冷静に判断してもらわなければ、日本人の命を守っているのですから。  そこで、もう一つ事実がある。これはもうあなたは否定できないと思うのだが、あなたの最も信用するアメリカ大使館の公文書が私のところに来ている。これは八月五日の国連の安保理事会に正式に提出したスチブンソン・アメリカ国連大使の声明全文です。これによっても、最初に発砲をしたのはアメリカであるということが明らかになっている。この二日の事件を通じて、アメリカには何らの損害が与えられておらない。この事実は否定できないのだと思うが、この点はどうですか。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカの責任ある当局からの日本に対する通告は、それと違います。
  162. 岡田春夫

    ○岡田委員 安保理事会に提案をした文書はまだごらんになっておりませんか。私はこれが手に入っているのですが。郵送してきている。
  163. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまお話しの文書は手元に持っておりません。あとで調べます。
  164. 岡田春夫

    ○岡田委員 困りますね。委員長、御注意願いたいと思う。日本政府は国連尊重ということをたてまえにしているのでしょう。それなのに、国連の資料ぐらいがないということでは問題にならぬじゃありませんか。これはわれわれ議員全体に配付している大使館の公文書ですよ。その事実はお認めにならないのですか。手元になくったって、あなた、そんなことは常識としてわかっているじゃないですか。あなたはトンキン湾事件の問題を私が取り上げることはわかっておるじゃありませんか。きのうから外務省の人が何度も聞きにきたじゃないの。そんなこともわからないじゃ話にならぬじゃないの。
  165. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの発言は、委員長責任ではございません。
  166. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカ局長、国連局長、来ているのでしょう。そんなことわからないじゃ話になりませんよ。常識以前ですよ。資料がもしないなら上げましょうか。
  167. 竹内春海

    ○竹内説明員 ただいま御指摘の点は八月二日の事件であると思いますが、国防省の発表によりますと、マドックス号は三隻の高速魚雷艇に攻撃されつつある、こういう報告をいたしてきた、そこで、三発の警告日発砲を行なっても魚雷艇の速力をゆるめさせることができなかった、そこで五インチ砲をもって発砲をした、こういうふうに発表をいたしております。
  168. 岡田春夫

    ○岡田委員 それ見なさい。警告であろうが何であろうが、発砲したのはアメリカじゃないですか。それは事実でしょう。アメリカ局長、それは事実でしょう。あなたの言われたとおりだ。警告であろうが何であろうが、発砲したのはアメリカですね。
  169. 竹内春海

    ○竹内説明員 このPTボートが明らかにマドックス号を追跡して攻撃の意図を持っておる、こういうふうに判断したものと思われまして、警告発砲をいたしたのは確かにアメリカの駆逐艦が最初でございます。
  170. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうなんですよ。それじゃ、椎名さん、ともかく発砲したのは事実なんです。これは、だれも警告でございますなんといって先にラジオで言ってから発砲するのではないですからね。警告発砲なんというのは、そういう理由は成り立たない。発砲という武力行使を行なったのはアメリカなんです。しかもアメリカ自身は損害を受けていない。ところが、この事件を口実にして次の日になってから北ベトナムを攻撃しておる。これが侵略行動であることは明らかなんです。この行動について外務省としては是認したわけだ。是認したのはどういう観点に立って是認したのか国連憲章との関連において、どの点に基づいてやったのか、これを伺いたい。
  171. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 魚雷艇から現実に攻撃を受けたか受けないか書いてありませんが、とにかく、用もないのに追跡するということは明らかに攻撃の意図を持っておるのだということで、いわゆるこれを予防の意味において発砲をしたのならば、私は、やはり自衛行為である、かように考えざるを得ないのであります。
  172. 岡田春夫

    ○岡田委員 その自衛行為というのは、国連憲章の何条に該当するのですか。
  173. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 国連憲章第五十一条の規定によるものでございます。
  174. 岡田春夫

    ○岡田委員 じゃ、藤崎さん、伺います。五十一条の条章は武力行為の発生した場合の規定でございますね。
  175. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 武力攻撃の発生した場合という規定になっております。
  176. 岡田春夫

    ○岡田委員 武力攻撃というのは、先ほどからアメリカ局長の言われたとおりに、警告であろうが何であろうが、武力攻撃をやったのはアメリカが先である。追跡したというのは、これは武力行為ではない。発砲したというのが武力行動の第一歩である。そうすれば、この点はアメリカ自身が認めているんだが、ベトナムが自衛の正当性があった、ベトナムの側に。これに対してたとえば反撃をした、たとえば五日の場合反撃をした、これは自衛行動ですよ。アメリカのほうが先に攻撃したんですから。こういう点はお認めになるのでしょう。防衛に対して、いわゆる自衛に対する自衛行動というのはあり得ないんですからね。そういうことになりませんか。
  177. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 四日の夜の行動についてまず申し上げますが、私も何か公式の文書で読んだことを記憶しておりますけれども、魚雷艇が三隻あるフォーメーションをとって進んできた、そういうフォーメーションをとって進んでくる場合には、これはもう攻撃の意図明瞭である、海軍における常識である、そういう事実に基づいて警告の発砲をしたわけでございまして、したがいまして、発砲がどっちが先であるかという点のみでその点は結論は出し得ないものであると思います。それから、五日のまあ攻撃でございますが、これは二日に同じような攻撃を受けた、それで、今後こういうことをしちゃならぬぞということを警告した、にもかかわらず四日にまたやってきたので、それじゃその場で火の粉を振り払うような応答のしかただけじゃ不十分、こういうふうに認めてああいう行動をとったものだろうと思います。
  178. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣もよくお聞きいただきたいんですが、二日並びに四日はそれぞれアメリカのほうも砲撃をして武力行使をやっているわけですね。しかも、そういう武力行使をやって、アメリカ自身に何ら損害が起こらなくて、そのあとで次の日になってから大規模な北ベトナム本土に対する——これは報復行動ではないんですよ。復仇ですよ。あだ討ちですよ。国際法上言っても、これは報復ではないです。復仇行動を相手国の主権下に行なったことは、自衛権の行使では説明できないはずです。これは明らかに過剰防衛です。国連懸賞違反であると同時に、国際法違反です。(「過剰質問」と呼ぶ者あり)安藤君、静かに。そういう冗談を言っちゃいけません。いいですか、国内の場合に適用したってわかるじゃありませんか。甲が乙に対して脅迫をした。ところが、乙がこの脅迫に対して甲をなぐった。それでも済まなくて、次の日になって乙は甲のうちに押しかけていって、そのうちをぶち破った。これは何ですか。正当防衛と言えますか、あなた。正当防衛じゃないんですよ、これは。町のダニのいわゆるお礼回り、脅迫行動ですよ。これが国際的にアメリカのとった行動なんですよ。国際的に暴力取り締まり法が必要なんですよ。国連憲章というものに違法している。このアメリカに対して暴力の取り締まりをやらなくちゃいけないですよ。これは明らかに国連憲章違反だし、過剰防衛だと思う。この点はどうですか。
  179. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 御意見でございますが、政府としてはそういうふうに考えておらないわけでございます。
  180. 岡田春夫

    ○岡田委員 藤崎さん、あなたは八月の十日の外務委員会で、正当防衛の問題について、ここに資料がございますが、こう言っていますね。正当防衛は「現実のまたは急迫した武力攻撃が起こった場合に、それに対してこれを排除し国の利益を守るために必要な最小限度の実力行使をするということは、一般的な武力行使または武力による行為の禁止にもかかわらず、国際連合憲章上もこれが合法であると認められる、これが自衛権の根本の法理でございます。」、またその先に、「とられる措置というものは必要最小限度にとどめなければならないというのは仰せのとおりでございます。」と言っている。五日の行動は最小限度ですか、あなた。必要最小限度というのは、四日の口において行なわれたアメリカの攻撃、二日の日に行なわれた攻撃、これが必要最小限度なんです。必要最小限度の攻撃があって、次の日になってまた必要最小限度の攻撃なんかあるのですか。あなたの答弁では説明ができないじゃありませんか。椎名さん、答えなさいよ。椎名さんはこれを是認すると言ったのですから、どういう法的論拠があるのですか、これをお答えなさい。
  181. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この二日、四日、五日の一連のいきさつを見ても、十分にこれは自衛権の範囲内だと思うのでありますが、このほかに、一体北ベトナムはいままで何をしておったか。南北ベトナムの休戦を約しながら、ほとんどベトコンを投入してあらゆる撹乱工作をやっておるというようなことも考えなければならぬと思うのであります。しかし、こういうことを考えることが自衛権構成の要素であると私は言うのではありませんけれども、なお条件をいろいろ拾ってみるとこういうような条件もあるのでありまして、やはり、そういったようなことを考えるにつけましても、かような公海上突然侵略の態勢をとるというようなことがたびたび起こってはいかぬというので、自衛権の範囲内において適当なる必要措置をとったものと解釈いたします。
  182. 岡田春夫

    ○岡田委員 椎名さん、重大なことを言われたんですが、北ベトナムからベトコンを送っているということをお話しになったのですが、何か根拠があるのですか。私は現地に行ってきたんだが、あなた現地に行かれたかどうか知らないが、根拠あるならはっきりひとつお答えいただきたい。どういう根拠がある。
  183. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういうことはもうほとんど世間周知の事実でございまして、私がわざわざ行ってみなくても、これはもう大かたの皆さんがよく御承知のところでございます。
  184. 岡田春夫

    ○岡田委員 周知の事実といって、だれも知りませんよ、そういうことは。少なくとも外務大臣ともあろうものがそういうことを言ったら、きわめて重大なんだが、そこの点は明確にしてもらいたい。周知の事実であったとしても、外務省としての公式見解として明らかにしてもらいたい、はっきりしてください。
  185. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 「ベトナムの治安が悪化してベトナム問題が重大化したのは、一九五四年ジュネーブ協定を侵犯して北ベトナムから指揮され、補給を受けている共産分子が南ベトナム政府の覆滅を目的として行なっているゲリラ活動に基づくものである」と、六二年六月の国際休戦監視委員会の特別報告はかように言っておるのであります。
  186. 岡田春夫

    ○岡田委員 後宮さん、その資料を出しましたが、それは国際監視委員会で正式にきまったものですか。国際監視委員会というのは、御承知のように、カナダとポーランドとインドと三国が決定をしない限りきめられないでしょう。そういう報告があったという事実はあります。南ベトナムの政府からそういう提訴があったという事実はあります。しかし、同時に、アメリカが侵略をしているという事実も北ベトナムから出されておる。それが正式に決定したものではない、報告があったというにすぎないのですよ、あなた。そんなことで私はごまかされはしませんよ。
  187. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 答えないでもいいですか。
  188. 岡田春夫

    ○岡田委員 答えるなら答えてください。
  189. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 仰せのとおり、監視委員会はいわゆるトロイカシステムで、各国が拒否権を持っておりますから、ポーランドの拒否権のために正式の報告書としては採択されなかったことは事実でございますが、いま大臣のおっしゃいました意味は、この監視委員会の多数意見としてこれが表明された、そういう意味でございます。
  190. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたはジュネーブ協定を読まなければだめですよ。ジュネーブ協定に多数意見の採決なんかないですよ。冗談じゃないですよ。まあそんな点言っていたら時間がなくなって原潜に入れないから、次に進みますが、現地南ベトナムに軍事協力を日本がいかにやっているか。この事実は私具体的にあとでやります。きょうはやりません。総理大臣がいないときにやったってつまらぬです。椎名さんなんかに言ってみても始まらぬです。  そこで、先ほど北ベトナムに対して米軍が領土、領域を侵犯して攻撃したことを是認したということを御答弁になりましたね。それならば、かりに公海上でアメリカの軍隊とA国が武力衝突をした場合に、A国がアメリカの日本にある軍事基地を報復攻撃した場合には一体どうすることになるのですか。アメリカの報復攻撃を是認する以上、他国の同様の攻撃を日本は甘んじて認めなければならないということになる。それは日本が戦場になることだ。これは仮定ではありません。この間W・バンディがあのような侵略的な発育を日本で行なっている。戦域拡大についての侵略的な発言があり、あるいはジョンソン大統領が飛行機に対して追撃命令を行なおうとしている。十一月の乾季以降のインドシナの情勢は非常に危険な情勢です。私は、そういう警告的な意味で、日本の国が戦場に巻き込まれるという点でこの点は明確にしておいてもらわなければならない。この点、椎名さんお答えをいただきたいと思う。
  191. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 仮定の御質問でございますが、最初にアメリカ軍に攻撃したのは違法な武力行使でありまして、かりにそれが日本にまで拡大されるとすれば、法律的に申せば、それは違法な武力行使の拡大にほかならない、こういうことだろうと思います。
  192. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんなことは話にならない。条約局長の話は全然前提をごまかしているのです。八月二日、四日の行動、アメリカの武力行使というのは正当だと言ったのでしょう。それを認めるならば、そして八月五日の北ベトナムに対する攻撃を正当だと言うならば、それと同じ事態をさかさまにした場合、日本がこれを是認したということになれば、日本が攻撃を受けても、これは甘んじなければならないという状態になるじゃありませんか。外務大臣、はっきりしてください。条約局長は前提をまず第一にごまかしているのです。
  193. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうも仮定の御質問でよくわかりません。
  194. 岡田春夫

    ○岡田委員 仮定のことだから答弁できないとおっしゃるのですか。これは重大な問題ですよ。具体的にあり得る問題です。アメリカの軍隊とある国とが公海上で衝突をした、ある国が日本のアメリカの基地に対して報復行動を行なった、その場合、北ベトナムに対する基地行動を正当防衛だとするならば、相手の国の攻撃を日本に受けた場合に、これは甘んじて受けなければならないでしょう。仮定といっても、これは限度がありますよ。こういう問題が起こり得るのです。その場合に、日本の国が戦争の中に巻き込まれるということですよ。こういうことについて仮定だけでは済まされません。はっきり御答弁願います。
  195. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうもあなたのおっしゃることはよくわかりませんな。
  196. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務大臣はもう少し御勉強願います。よくわからないらしいです。御勉強願わなければ、日本の国はたいへんなことです。  それでは次に進みますが、第二の点核兵器の持ち込みに対して事前協議があるということを盛んにあなたはおっしゃる。私は、核兵器の持ち込みは通報も協議も、しかもこれは事前にも事後にも絶対にあり得ない、こういう論拠を具体的にしたいと思います。  アメリカの世界戦略は、社会主義陣営を包囲する核兵器の戦略態勢である。特に最近の場合には、モルゲンシュタインなんかも言っているように、従来のいわゆるミサイル基地、たとえばトルコにおけるIRBMのジュピターの基地にかわってポラリスを配置する、こういう配置態勢で、核兵器搭載の原子力潜水艦の包囲態勢というものが非常に戦略の基本になってきた。これはあらためて言う必要もないのですが、そこで、極東におけるその一環としての中国包囲態勢、ポラリスばかりではございません。核兵器を搭載する原子力潜水艦の包囲態勢というものが現実に進んでおるわけですが、たとえば沖繩においてはポラリスが昭和三十六年の七月に入港しておる。アジア全局面においてこういうようなSSBNまたはSSNにおける包囲態勢というものがどういう形で進んでおるか、この点を伺いたいと思う。
  197. 海原治

    ○海原説明員 アメリカの全世界的な意味における戦略態勢ということになりますと、私、従来勉強しておる以外のことでございます。従来、私どもとしましては特に極東というものについてどうかということを勉強いたしておりますので、その点についてのお答えでお許しをいただきたいと思いますが、アメリカの戦略態勢としましては、従来しばしば御説明申し上げておりますように、核の報復力、これは結局三つございまして、アメリカ大陸に展開しておりますところの戦略爆撃隊、すなわちB52、この一部のものは常時米本土上空を哨戒しております。それからICBM、すなわちアトラス、タイタン、ミニットマン、この大陸弾道弾、現在その数は七百近くになると思いますが、これは常時弾頭をつけて基地に配備されております。このほかに、ポラリス潜水艦というものが常時ポラリス・ミサイルをつけて哨戒している。この三本立てであることは、これは一般の通説として認められております。特に太平洋においてどうかということになりますと、いままで太平洋にはまだ。ポラリス潜水艦の配備はございません。しかし、今年末か来年初めには合計七隊からなるところのポラリス潜水艦部隊が配備される、こういう予定であるように私ども承知しております。特に一定の国というものを前提としての包囲態勢というような形においての展開というものは、私どもはそのように了解いたしておりません。
  198. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点については海原さんの見解とちょっと私は見解を異にいたします。しかし、時間がありませんから進めます。  参議院外務委員会の九月三日、椎名さんはこのように説明をされています。「米国は将来ノーテラス型潜水艦に核魚雷を発射し得るサブロックを装備する計画を持っていることは事実である」、原子力潜水艦にサブロックを搭載する、もちろんSSBNの場合には。ポラリスですが、SSNに対してサブロックを搭載するというのは一般的な趨勢、この点は椎名さんのおっしゃるとおりだ。ところが、サブロックをどんどん搭載していくという基本戦略に従うならば、日本の国はサブロックを搭載したものを認めないというわけですから、日本の国には原子力潜水艦はだんだん入らなくなってくる、こういう論理的な帰結になるわけですが、そういうことでございますか。
  199. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もしサブロックを搭載しているならば、これは絶対に認めませんし、また、アメリカもそういうような不信行為をして日米安保体制を根底からくつがえすというような、そういうばかなことはしないだろうと思う。それでもし積んで来るならば、これは入らないことになると思います。
  200. 岡田春夫

    ○岡田委員 原子力潜水艦SSN、これはサブロックを積むのがだんだんふえているのですよ。しまいには全部になるのですよ。そうしたら、それは日本に来ない、こういうことになるのですね。
  201. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはそういうことになると思います。ただ、積まなければ入ってくる。
  202. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことになると思いますというのは、非常に重大ですよ。これは今後の言質としてわれわれは伺っておきますよ。いいですね。積まないか積んでおるかというのは事前協議の対象だ、こうおっしゃるのでしょう。それはあとこれから私やりますから、その前提として伺いますが、まず、国会に正式に配付されたエード・メモワールというのがある。これは条約局長ですか、アメリカ局長ですか、これはどなたか知らぬが、このエード・メモワールについて伺いたいのだが、このエード・メモワールというのは、これは正式の正文を複写されたものですか。どういうものですか。要約をお出しになったのですか。これをひとつ伺いたい。
  203. 竹内春海

    ○竹内説明員 米側から受領しました文書そのものでございます。
  204. 岡田春夫

    ○岡田委員 エード・メモワールのことを伺いますが、これはどうも初めて見るような英語があるので、それこそ舌をかむような英語が随所にあるわけでございます。GOJというのは何ですか。ツー・ディスカス・ジス・マター・ウイズ・ザ・GOJ、これは一体何ですか。
  205. 竹内春海

    ○竹内説明員 これは日本政府でございまして、日本語のほうにはたしか日本政府と訳してあると思います。
  206. 岡田春夫

    ○岡田委員 こういう例がございますか。GOJといって日本政府、ガバメント・オブ・ジャパン。こういう例がはたしてありますか。それからまた、英文の中に外務省というローマ字がある。これは一体何ですか。USというのは、USにポイントを打たないでUS。こんないいかげんな、でたらめな英文で、エード・メモワールを公文書としてもらって日本の外務省は恥ずかしくないのですか。これこそ恥辱外交ですよ。こんなになめられているのです。なぜガバメント・オブ・ジャパンと書かないのですか。GOJとは何ですか。こんなばかにした公文書をもらっていい気になって、これをオーケーと言った椎名外務大臣気持ちを、私はほんとうに恥ずかしくてしようがないですよ。こんな資料を日本の外務省がもらって、今後注意なさい。こういうものをもらっておいて、冗談じゃないですよ。  そこで、このエード・メモワールの、日本の安全保障に関する諸取りきめの権利と同一の権利をSSNは享有する。そうするならば、安保条約と同じ権利、権限を行使するならば、安保条約に基づく施設地位協定の第五条に基づいて、原子力潜水鑑の寄港は横須賀、佐世保に限られない、あわゆる開港に寄港することになる。これは椎名さん、この間の答弁は間違っていますから、この際訂正しなさい。椎名さん、この間の外務委員会では、横須賀、佐世保しかないのです、こう言った。それは間違っているのです。第五条では、アメリカが要求する限りいかなる開港にもはいれる。この点ははっきりお認めになるほうがいいです。
  207. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはアメリカのほうで、佐世保、横須賀に寄港したい、ということは、他の港には寄港しないということなんであります。それで両者の間に合意されたのです。本来は地位協定の五条によって寄港し得る権利を持っておるのでありますが、この原子力潜水艦の問題は特殊の関係もございますので、それで佐世保横須賀に限って寄港したいという申し入れがありましたので、よろしい、こう言ったのです。その裏には、ほかのところには寄港しない、こういう、いわゆる自由意思によっての両国の合意がそこにあるのでありますから、ただいまのところはほかの港に寄港する懸念はございません。
  208. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君、時間が過ぎておりますから、結論に入ってください。
  209. 岡田春夫

    ○岡田委員 椎名さん、それでは安保条約の第五条の適用は、原子力潜水艦については受けないということですか。
  210. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうのほうでこの二港以外には寄港しない、こういう申し出をしておるのであります。でありますから、それを認めたわけであります。
  211. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、それでは安保条約、地位協定の五条は適用しないのですか、どうなんですか。私はそれを聞いているのですよ。
  212. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 本来その条約上の権利はありますけれども、しかし、権利はあるが、あるけれどもやらない、二港に限って寄港いたします、こういう申し入れであります。だから、その範囲において両国の間に合意ができたなら、やはりそれが優先するわけであります。御了承願います。
  213. 岡田春夫

    ○岡田委員 その答弁じゃ答弁になりません。それは現在はという前提があるのですよ。現在はなしに、あとあとまではそういうことはあり得ない、それは権利があるのだから。それじゃ伺いますが、第七艦隊は在日米軍ですか、どうなんですか。
  214. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 在日米軍ということばは二つの意味によく使われるようでございますが、いずれにしても協定上の用語じゃございませんので、慣用にすぎないわけでございます。第一には常住日本に駐留しておる軍隊という意味であります。第二には、そう時間的に長くいるわけじゃなくても、ちょっと日本に入港するとか着陸する、いずれにしても日本の施設、区域を使用するすべてをさしていう場合と、両方ございます。
  215. 岡田春夫

    ○岡田委員 在日米軍というものは、条約上にはないにしても、これは安保条約の審議の中には在日米軍という概念はあるということになっています。いいですか、あなたは、統一見解は求めませんから、よく覚えておいてください。あなた、そのころいなかったのだから。「藤山国務大臣 日本の基地と施設を使いまして、そして日本に配置されている軍隊、それは在日米軍というわけです。」はっきり言っている。あなたの答弁は違うのです。在日米軍はあるのです。施設だってあるじゃないですか。在日米軍司令部ってあるじゃないですか。あなたはないとおっしゃるが、あるじゃないですか、現実に。在日米軍司令部があるじゃないですか。これはないですか、あるでしょう。
  216. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私は、在日米軍という表現が協定に使われてないということを申し上げたわけであります。それで、いまの藤山前外相の答弁はあるかもわかりませんが、私が先ほど申し上げたような趣旨の答弁もあるはずでございまして、そっちのほうが法律的には正しいわけでございます。
  217. 岡田春夫

    ○岡田委員 いまのこれ、非常に重要な答弁をされているのですから……。私は時間がありませんから追及しませんが、二つの答弁があって、あなたの言ったほうが正しいのだということを言いましたね。これは留保しておきます。法律的に正しいのだ、こうおっしゃたのだが、それはどういう根拠であるかということは、この次の外務委員会か何かで必ず伺います。在日米軍でなくて、通過する軍隊が第七艦隊ですね。
  218. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 在日米軍というのを狭い意味にお使いになると、そういうことが言えるかと思います。しかし、在日米軍ということばが普通に使われるときには、そういう意味に必ず全部の人が使っているわけじゃなくて、もっと広い意味にも使われておるのであります。広い意味に使うと、その場合は、入ってきている期間内においては第七艦隊は在日米軍である。したがって、地位協定上の適用を受け義務を守らなければならないということになるわけでございます。
  219. 岡田春夫

    ○岡田委員 椎名さんに伺いたいのですが、あなたの好きな第六条の交換公文の問題、事前協議の問題、——事前協議の対象として、日本国に配置されているその配置の重要な変更、装備の重要な変更、これは事前協議の対象になりますね。それから、ミリタリー・コンバット・オペレーション、戦闘作戦行動も事前協議になりますね。ところが、これについては藤山外務大臣はこのときの答弁では、いいですか、在日米軍に対しては配置の重要な変更、装備の重要な変更、戦闘作戦行動、この三つは事前協議の対象になる。在日米軍でない第七艦隊の場合には、配置されている軍隊でないから、配置の重要な変更、装備の重要な変更は対象にならない、戦闘作戦行動だけが対象になる。原子力潜水艦は第七艦隊の所属であるから、装備の変更については事前協議の対象にならないと言っている。どうなんです。事前協議の対象にならないですよ、藤山さんが言っているのだから。どうですか外務大臣、これは重要な点です。
  220. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 第七艦隊というのは日本だけにおらないわけでございまして、ハワイに本拠を有するかどうか知りませんが、それの装備の変更はすべて日本の事前協議の対象になるわけじゃないわけであります。ただ、第七艦隊が日本の港に入ってくるについては、その入ってきた限りの第七艦隊の艦船の装備というものは事前協議の対象になるわけであります。
  221. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げますが、あと五分間だけ特に質疑を許します。
  222. 岡田春夫

    ○岡田委員 いまの解釈は全く間違いです。安保委員会の資料をもう一度お読み直しなさい。それは間違っています。私は時間がないからこれ以上言いませんが、そればかりじゃないのです。いいですか、これは松浦さんにももっと聞きたかった黒い潜水艦についての質問もあるが、時間がなくなっちゃったのです。  安保条約、その交換公文、岸・アイク共同コミュニケ、このいずれにも核兵器の持ち込みについての一切のことが書かれていない。それから今度の原潜寄港に関する日米諸文書にも全く核兵器に関することは書かれていない。しかも、この核兵器の問題というのは明文上の合意がないとはっきり言っている。これはこの間の外務委員会で兼松参事官が言っている。したがって法的な拘束力はない。これは明らかでしょう。これは外務大臣、あるのですか。
  223. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 いまの重要な装備の変更というのが核兵器の持ち込みを意味しているのだということは日米間で明確に了解されております。(岡田委員「明文上ないでしょう。」と呼ぶ)明文がなければ法律上何もないと同じことになるという性質のものじゃないわけでございます。
  224. 岡田春夫

    ○岡田委員 どういう性質が同じじゃないのですか、その性質を伺いたい。法的拘束力があるという、明文がなくてもあるというその性質を聞かしてください。
  225. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 重要な装備の変更ということばは抽象的な表現でありますから、一体何が重要かということが問題になり得るわけであります。幾らにでも広げようと思えば広げられるかもしれません。しかし、ここで意味しているのは実は核兵器のことなんであります。核兵器を持つとか持たぬとかいうことが装備の変更として重要なことであることは常識でもわかることだろうと思うのでありまして、それが日米間ではっきり了解されておる、文字でわかることが日米間でさらにはっきり了解されておるということでございます。
  226. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務大臣に伺いますが、核兵器を持ち込まないということについては信頼の問題であるということを再三お話しになりましたが、そうですね。
  227. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 普通の原子力を推進力とするだけの潜水艦にかりにサブロックを積んでくるということになりますと、他国の軍艦でございますから、その内部を検査することは国際法上許されないのでございます。そこで、黙って積んできてこっそりと入るということはどうしてわかるか、こういう御質問があるのでありますが、これは両国の信頼関係である。いやしくも日米安全保障条約を締結いたしまして、そうしてお互いのこの極東の安全、平和というものに利害関係を持っておるその両国が、かような緊密な条約を結んだ以上は、お互いことごとに猜疑心を働かしておったならば、この協約体制というものは一朝にしてくずれる、そう考えるのであります。
  228. 岡田春夫

    ○岡田委員 椎名さん、信頼の問題だ、信頼、信頼とおっしゃるけれども、それは神頼みなんですよ。あなたの頼みは神頼みというやつですよ。何ぼ信頼しても、アメリカとしては通報、を事前事後においても行なうことができないのです。それはアメリカの国内法によってできないのです。いいですか、アメリカの国内法といったら一九五四年合衆国原子力法、この法律によってできないのです。事前通報も事前協議も絶対にありません。いいですか、この米原子力法の十一条の機密資料は百四十四条に基づいて、百二十三条に基づく協定がない限りは通報することができない。もし通報する場合には、これを協定なしに通報する場合には二百二十四条によって死刑または無期懲役になる。だから通報できないのです。先ほどから何の協定も文書もないと言ったですね、藤崎さん。協定もないということは、したがって事前通報、協議というのは絶対にあり得ない。原子力法によってこれはあり得ないのです。もしあなたが事前協議の通報があるのだとおっしゃるならば、百二十三条に基づく協定があるはずだ、秘密協定があるはずだ、国会に公表してないのだから秘密協定なんです。そのどっちかなんです。あなたがあくまでも事前協議ができる、アメリカが事前に通報するのだとおっしゃるならば、百二十三条に基づく秘密協定があるはずだからそれをお出しください。ないんだとおっしゃるのならば、もしこれで協定がないのに通報をしたとするならば、アメリカ一原子力法の二百二十四条によってアメリカ側の通報した人は死刑になる。できないのです。ことばをかえて言うならば、アメリカの国内法の規制によって、核兵器の持ち込みの通報は絶対にあり得ないのです。これは愛知さん、あなたのところのやつだ。あなたのほうはいろいろ研究しているはずだ。私の解釈は間違いない。確定解釈である。違うとおっしゃるなら違うと御答弁なさい。だれでもいいんです。椎名さんはわからぬ人だからほかの局長でもだれでもいい、答弁なさい。できるわけない。
  229. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカのいま御提示になりました条文は、私も勉強しておりませんが、とにかく来なければいいんですから。入ってこなければいいんです。通報しても日本が絶対にこれを拒否するということがわかっておるのでありますから、入ってこないのであります。入ってこないということを信頼しているのであります。
  230. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことはごまかしです。それは答弁になりません。事前協議や通報はあり得ないのです。アメリカの国内法によってやれないのです。やったら死刑になるんです。事前通報は絶対にあり得ない。したがって、事前通報をしないで秘密に核兵器は持ち込まれる。これは間違いない。事前通報したならば、これは死刑になる。これは明らかです。私は、これ以上もうやりませんけれども、あなたはよく勉強してください。あなたは、その点は知りませんと、いま正直に言ったから、これから勉強したほうがいいですよ。愛知さんとよく相談して勉強してください。こういう国内法上の措置によって、事前協議によって核兵器の持ち込みというのは絶対にあり得ない。だから原子力潜水艦がサブロックを搭載して入った場合においても、これは事前協議がない。したがって、日本の国に秘密裏に核装備を搭載した原子力潜水艦が間もなく入ってくることは間違いない。それははっきり申し上げておきます。  そのほか松浦さんに待ってもらって申しわけなかったのですが、黒い潜水艦が全国に七隻入ってきておる、七回。その点だけを申し上げておきます。一九六一年の四月十七日に横須賀にサーゴ、一九六三年の六月二十三日午前六時五十分に佐世保、一九六三年七月二十六日午前九時五十五分佐世保、一九六三年七月五日神戸、一九六四年五月十三日午前十時ごろ小樽、一九六四年五月二十七日横、須賀、一九六四年八月一日熱海、合計七回です。これ全部入っております。それから、これは艦船番号念のほうは全部知っております。写真も持っております。これはひとつ松浦さんお答えになるならお答えになってください。
  231. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 私のほうには番号も名前もあります。
  232. 岡田春夫

    ○岡田委員 じゃ全部言ってください。
  233. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 まず最初に小樽の話を申し上げます。五月十三日五隻というお話でありますが、米潜水艦は五月十三日まさに小樽に入港いたしました。そのほか小樽港に三十八年九月十四日に「ポーンフレット」という潜水艦が、さらに本年八月六日「スターレット」という潜水艦が入港いたしております。小樽港長に連絡した結果、これ以外のものは入港いたしておりません。それからこの十三日入った船の目的は何であったか、これは十三日の午前二時十分、米海軍より当庁に潜水艦「ボーンフィッシュ」が小樽に入港し、負傷した乗り組み員を陸上させたいという旨の通報がありました。同艦は五月十三日午前九時四十分小樽港口和山の灯台東南約四海里の地点で米軍医を、来せた小樽海上保安部の巡視艇「ひなげし」と合同し、同艦艇の誘導によりまして十時四十分小樽港第二埠頭の突端に係留し、負傷者と関係者を引き渡した後、十一時四十分出港いたしました。同艦が……。
  234. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 簡単に願います。
  235. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 「ボーンフィッシュ」であるという点は艦長から確認いたしております。米潜水艦は、米国の一般軍艦と同様の手配によってわが国に入港しております。すなわち、日米安保条約に基づく地位の協定第五条第三項の規定に基づき在日米海軍より海上保安庁に対しあらかじめ船舶の名称、時日等の入港の通告がなされます。ただし横須賀、佐世保両港の入港は、両港が提供水域であるために一般軍艦と同様に取り扱われております。潜水艦の横須賀、佐世保以外の入港の実績は、昭和三十七年十隻、昭和三十八年十五隻、昭和三十九年九月までに十二隻となっております。以上が入ってきた状況であります。  名前とトン数がわかったら、事務官から知らせます。
  236. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 藤崎条約局長から先ほどの質問に対してお答えいたさせます。   〔岡田委員「いや、それは待ってください」と呼ぶ〕
  237. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 委員長が発言を許します。藤崎条約局長。   〔岡田委員「では議事進行、議事進行」と呼ぶ〕
  238. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君の発言はこれを停止いたします。議事進行をいたしません。   〔岡田委員「それでは私の発言を許してください。意味ないよ。私は聞いてないですよ。そういうことはだめですよ。」と呼ぶ〕
  239. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 藤崎条約局長
  240. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 アメリカの原子力法によって守られております核兵器に関する秘密の情報というのは、技術情報でございます。したがいまして、ある日本の港に入ろうとする艦船が核装備をしておるかどうかという問題とは関係がないのでございまして、これは原子力法の第十一条の定義で明らかでございます。
  241. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは一問だけ……。
  242. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 一問だけ許します。
  243. 岡田春夫

    ○岡田委員 藤崎さん、もっと勉強してください。十一条には、秘密資料の中に、ここにありますが、あなたはもっとよく勉強してもらいたいのですが、一として、原子兵器の設計、製造もしくは利用とあるのです。これなのですよ。利用なのです。兵器の設計、製造はもちろんのことですよ。それに基づく機密の貸与というのは全部あるのです。あなたにはさっき私は時間がなかったから言わなかったけれども、百二十三条ばかりではないのです。百二十四条もあるのです。国防情報の問題もあるのです。この次、外務委員会でやりますからよく勉強しておいてください。  それよりも黒い潜水艦というのをなぜ私が問題にするか。それはこの写真にもありますが、どれも原子力潜水艦と同様に司令塔に水平舵がついておる。これです。これが一点。第二の点、排気孔がない。ディーゼルエンジンの機関の場合には排気孔がつかなければならない。これがついていない。第三点、これには番号も何も書いてない。だから黒い潜水艦という。黒い潜水艦というのは原子力潜水艦を、かつてディーゼル機関であった潜水艦を原子力潜水艦に改装している疑いが非常に濃厚なんです。これを私は聞きたかった。だから、たとえばあなたは、小樽のあれは、あなたのは間違っております。SS−五八二「ボーンフィシュ」です。これはことしの五月に小樽の市会で問題になって、海上保安部がそういうように答弁したのだから間違いないです。それ以外に神戸の場合には「ブルーバック」です。「ブルーバック」はSS−五八一です。横須賀のことしの五月二十七日に入ったのは「ダルター」といって、SS−五七六です。全部番号がありますが……。(「番号はないと言ったぞ」と呼ぶ者あり)これは調べたらわかるのです。船についていないのです、船についてないということです。
  244. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 政府質問してください。
  245. 岡田春夫

    ○岡田委員 船についていないということです。こういう点から言っても、これは明らかに原子力潜水艦の疑いが濃厚である。この点については松浦さんも今後十分御研究を願いたいと思います。これ以上私は申しません。
  246. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この答弁は、外務委員会あるいは適当な委員会お答えを願います。時間が超過しております。  これにて岡田君の質疑は終了いたしました。午後は、IOCの関係もございまして、四時三十分より再開することといたします。  午後の質疑者は永井勝次郎君でございます。永井君の出席要求大臣は、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、運輸大臣、自治大臣、北海道開発庁長官、総務長官であります。  この際、暫時休憩いたします。   午後一時十九分休憩      ————◇—————   午後四時四十二分開議
  247. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 それでは休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  永井勝次郎君。
  248. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は災害関係の諸問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  本年の災害は東北、北関東の凍霜害を皮切りにいたしまして、新潟の地震あるいは九州の豪雨、山陰、北陸の豪雨など、それぞれ大きな災害があったわけでありますが、これらの災害についてはそれぞれ措置されまして、いま軌道に乗っておるように見受けられます。ただ、台風十四号、二十号が最近起こったために、これらに対する対策がまだ十分になされておりません。緊急の措置もまた手が届いていないようでありますが、この台風十四号、二十号における災害融資法あるいは激甚災害法等の適用の指定はどのように運ばれるのか、その時期等について関係当局から御答弁をわずらわしたいと思います。
  249. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 このたびの北海道の冷害につきましては目下統計調査部で被害額及び被害態様について取りまとめ中でありますが、被害の模様が非常に大きいので、天災融資法を発動することとしてその準備を進めております。また、激甚災害法の適用につきましても同様に考えておりますので、被害額の確定を待って具体的に検討していきたい、こういう準備をいたしております。
  250. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうしますと、台風十四号についてはどの地域をその指定対象に考えておられるのか、あるいは台風二十号においては、鹿児島、宮崎等の九州地方あるいは大阪、兵庫等の近畿地方あるいは岐阜、長野等の中部地方等、台風二十号が通った地域については相当被害が多いのでありますが、この地域において激甚災害の指定が行なわれるのかどうか、そういう対象として認められるのかどうか、その地域を明確にしていただきたいと思います。
  251. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 台風二十号につきましては、天災融資法の発動を私のほうで考えておりますが、地区の指定等につきましては、総理府のほうで追って決定する予定でございます。
  252. 永井勝次郎

    ○永井委員 台風二十号の災害の事後処理については十分に緊急措置も行なわれてないようであります。昨晩のテレビニュースなどにおきましても、九州では学校がまだ再開されておらない。住宅のない、吹き飛ばされてしまった家庭が何千軒と雨露にさらされておるというような、緊急措置が少しも手が伸びておらないという現地の不満が相当伝えられております。これらについては、すみやかに措置をしますとともに、特別財政需要に対しては、国庫の補助金、特別交付税あるいは起債等の措置を至急に進められるとともに、住宅対策については直ちに措置してもらわなければならないし、また被災の中小企業等に対しましては、融資措置が必要であろうと存じます。それぞれの関係大臣において、これらに対する緊急措置及び激甚災害、天災法等の指定がありました場合における措置等について、簡単でよろしいですから決意を表明してもらいたいと思います。
  253. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 天災融資法の適用、政令の制定までの緊急の資金の需要につきましては、すでにつなぎ融資方につきまして関係機関に対して依頼をしております。
  254. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 通産省の出先であります、たとえば北海道でございますれば札幌通産局、また九州でございますれば福岡通産局に、被害の状況を至急に集計をするように命じておりますが、まだその詳細が出てまいりませんので、はっきりしたことが申し上げられませんが、かりに激甚地等の指定ができませんでも、お話のように政府の三金融機関に対してできるだけの措置をするようにいたしたい、かように考えております。
  255. 田中角榮

    田中国務大臣 まだ被害が判明せざるものがございますが、十四号におきましては施設関係二十七億円、二十号におきましては六十七億円という概算数字が報告をされております。また農林水産物関係におきましては、十四号において四十八億、それから農林等において三百億秘匿の報告がございますが、集計及びいま査定をいたしておりますので、査定を急がせまして、この冬空に向かっておりますので、可及的すみやかに調査を終わり、被災者に対しまして、安心ができるような万全の態勢をとりたい、このように考えます。
  256. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私のほうも被害の状況がまだはっきりいたしませんので、被害に応じまして適当な処置をともつもりでございます。
  257. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっとあれしますが、ただいま申し上げました数字は農林関係のみについて申し上げたわけであります。念のため。
  258. 永井勝次郎

    ○永井委員 日本の災害は毎年のように大きくなっておるのではないかと思います。台風がやってくる、豪雨がやってくる、必ずそれに災害が伴う。昭和二十八年からの統計を見ましても、人命の損傷だけで、死者が多いときは五千六百名から少ないときにおきましても百名前後、ほとんど二千名から数千名の間の死者を出しておるという状況、あるいは田畑の流失損害がほとんど数万町歩あるいは数十町歩というような累年の被害の状況であります。このことは、政府が災害に取り組んでいくところの姿勢の問題ではないか。原状復旧を主にいたしまして金のかからない復旧工事をやる、そして年次で延ばしていく、つけ焼き刃をやっていく。でありますから、ちょっとした台風が来ると、すぐ災害が出る。豪雨が来ると、すぐ田畑が流失する。こういう関係にあるのではないかと思うのでありますが、論より証拠、災害の事実がこれを証明していると思います。これらについて、財政をあずかる大蔵大臣において、今後災害に取り組む姿勢、そのかまえについて、明確にこれを克服する前進の姿勢を示していただきたいと思うのであります。
  259. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどに引き続きまして、公共土木施設等の被害額を申し上げますと、十四号において百十六億、台風二十号において百八十五億、計三百一億。それに先ほど申し上げました農林水産物の被害三百五十一億が加算されるわけでございます。毎年毎年災害が起きますので、この災害復旧に対して原形復旧のみを主にしておるので災害があとを絶たないのではないかという御指摘でございますが、必ずしもそうではないということは永井さんも御承知だと思います。戦後一番多いときには年間二千億、年間を通じて平均千億程度の災害があることは、戦前戦後を通じましてもおわかりになるとおりでございます。これが台風災守を防ぐために、いわゆる防災事業を行ない、また原形復旧にとどまらず、災害復旧におきまして改良復旧を主としておるということを考えても、年々の災害で被害額は非常に小さくなったということは事実でございます。北海道においても、風害等があります場合には相当大きなものになるわけでありますが、北海道耐寒住宅法などができまして、だんだんと不燃建築になるというようなことで、台風被害が小さくなっておるという事実、また狩野川のように、あの大災害が狩野川の改修、改良復旧によって、その後の同じような規模のものに対しても耐え得るというような状態、また堤防のかさ上げなどによって、堤防の工事が非常に大がかりなものに転化されつつあるということによって、一時に比べてたいへん被害が少なくなっておるということは事実でございます。しかし、これからも、永井さんの御指摘のように原形復旧ということはもう全く災害の前に返るというだけであって、何も国はプラスにならないのでありますから、災い転じて福となすということであるならば、災害を契機にして改良復旧に重点を置くということはけだし当然だと思います。しかし、三、五、二という三年間完全復旧という原則がございますので、財政上の制約もございますけれども、方向はただいま申したように努力をしてまいりたい、このように考えます。ただ住宅などでも、どうも量よりも質に転化しなければならぬにもかかわらず、やはり目先のことを考えながら、量も質もと、こういうことになると、量に重点が置かれるというところに災害は毎年毎年ということになるわけでありまして、やはり、お互いにこれから災害があったところには、質をよくする、災害に耐えるということをやはり前提にして考えていただきたい。財政当局としても、政府全体としても、そのような方針で対処してまいりたいと考えます。
  260. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に、北海道の冷害凶作を中心にいたしましてお尋ねを進めてまいりたいと思います。新聞やニュースで御承知のように、北海道ではクマの被害が頻発しております。これは山に食いものがないからであります。また、災害地におきましては、凶作の実態に頂けて、親子心中等が二つ、三つの例ではなく、あっちこっちに起こっておるようであります。ただでさえ、暗い北海道の農村において、実りのない秋を迎え、これから寒くなる冬の寒さにおののきながら、どのような気持ちでいま過ごしておるか、しのぶだに同情にたえないところであります。この災害は未曽有の深刻なものでありますが、これは単に天候のせいだということで、メーファーズで過ごせるものではないと思います。また、手厚い同情のことばを寄せて、やっているうちに時が解決するのだという、ほおかぶりは許されないと思います。やはり今日の北海道の冷害凶作の実態の原因を明確につかんで、そして再びこのような災害がないように、災いを福に転ずるという、このかまえで取っ組み、また前進的な対策を確立しなければならないと思うのでありますが、これらについては、主として農業災害であります関係上、農林大臣の所見と、これの対策の裏づけをなす財政当局の大蔵大臣から、北海道の冷害凶作に対するかまえの問題として御答弁をわずらわしておきたいと思うのであります。
  261. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御指摘のように、今回の北海道の冷害は非常に大きいものでございます。水稲、はかりでなく、畑作物にも甚大な被害を及ぼしております。しかも、被害各地がほぼ全道にわたっておるということでございます。冷害が北海道の農家経済に及ぼす影響は非常に大きいものと考えられますので、応急の対策に遺憾のないように努力いたしたいと思います。それは当然でございますが、恒久対策として、やはり試験研究機関による品種、農法の改良等の試験研究を強化することといたしたいと思います。従来もそういう研究を進めておったのですが、まだまだ十分ではございません。研究を強化する。あるいはまた土地基盤の整備が、相当力を入れてはきましたが、十分じゃございません。これが作物に対する力を与える点につきましても、重要なことでございますので、生産の基礎条件である基盤の整備をはかる、全体として寒地農業の確立がまだできておりませんから、寒地農業の確立をはかるという方向において種々の対策を講じていきたい、こう考えております。
  262. 田中角榮

    田中国務大臣 北海道の冷害に対しましては、北海道庁の報告は四百二十八億の被害総額があるということでございますが、本件につきましては、農林省の総計調査部においていま集計中でございますので、それの集計を待ちながら早急に諸般の対策を立ててまいりたいと考えます。いろいろな施策があるわけでございますが、御承知の天災融資法の問題とか、また農林漁業公庫から貸し付けられたものに対する償還期限の延長とか、税制は農業所得が生でございますから、年に一回ちょうど十一月一日の査定になりますので、この場合の減免を考えるとか、いろいろ問題に対してできる限りの措置を行ない、冷害によって被害を受けた道民が心身ともに安心をしていただけるようにひとつ考えてまいりたいと考ます。北海道は冷害地がだんだんとよくなってまいっておるわけであります。政府も全力を尽くしてやっておるのですが、いま農林大臣が申されたとおり、農作物等の種類を選択する場合でも、北海道のように何年間に一回必ず冷害が来るという特殊な地帯においてどのような作物が最も適するのか、冷害がきた場合にはそれにどう対処するものがあるのかというような技術的な面に対しても十分検討が必要だと思いますし、政府自体も、そのような施策を進めるために政府は財政上どうあるべきかというような問題もあるわけでございますので、各般の情勢を考えながら応急対策及び恒久対策を立ててまいりたいと考えます。
  263. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいま農林大臣、大蔵大臣から御答弁があり、総括的な所見については一応輪郭を伺うことができたわけでありますが、これからその中身についていろいろお尋ねをしていきたいと思います。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕  ことしの冷害凶作の対策を立てる上に、その基礎となる冷害凶作の実態の把握のしかた、これが基礎になると思うのであります。そこで、その診断を確定した上で対策の是非の問題を進めてまいりたいと思うのでありますが、私は、ことしの冷害凶作の気象上の特徴があると思うのです。従来の冷害とは違った気象上の問題があると思うのです。北海道の冷害といえば通常の場合気温が低いということでありますが、ことしはこれに長雨が加わっておる。雨の少ない北海道の地帯で平年の二倍ないし三倍の雨が降っておる。雨が降るということは日照時数が少ないということであって、冷害に加えて長雨災害が加わったんだ。こういうふうに気象上の特徴としてわれわれは考えておるのでありますが、農林大臣はこの点について御理解をいただいておるかどうか伺います。
  264. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話しのとおりな状況下に冷害が出てきたと、こういうふうに私も理解しております。
  265. 永井勝次郎

    ○永井委員 気象上の特徴をそういうふうに御理解をいただいているとすれば、そこから起こる農作物被害の特徴が出ている。例年冷害でありますと、北海道の場合、米がとれないというのが代表された姿であります。ところがことしは——そのかわり冷害の場合は麦であるとか燕麦であるとか、そういう夏作物がわりあいにいい。あるいはバレイショであるとかビートであるとか、こういう根菜類がかえっていい。こういうようないいものもあったわけでありますが、ことしは冷害によって米その他の秋作物は一様に被害を受けた。さらに例年冷害の年にいいはずであった夏作物の麦、燕麦、こういうものは長雨のためにみんなほとんど芽がはえて用をなさなくなってしまった。あるいは牧草はカビがはえて腐ってしまった。また雨が例年の二倍、三倍でありますから、土地改良の十分できていないところはイモも腐るし、ビートも腐る。こういうことで、冷害と長雨との気象上の特徴は、北海道農作物の全面にわたって被害を加えた。これがことしの北海道における農業災害の特徴的なものであります。また、広さにおいて深さにおいて深刻をきわめる一つの原因になっておるのだ。こう思うのでありますが、この点についてはいかがでありますか。
  266. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その点も御指摘のとおりだと私も考えております。
  267. 永井勝次郎

    ○永井委員 第二点は、ことしの災害は異常な冷温、長雨であったにもかかわらず、水稲がわりあいにいいのではないか。いつもならばほとんどとれないといっていいような被害を受けるのでありますが、水稲は農林当局その他の試験機関等において耐冷性の品種が改良された、耕種肥培技術が向上したということで、ことしのような寒冷の年においても、ある程度の実りを持った。こういう点において私は画期的な経験であった、こう思うのです。この意味において、ことしのような年でさえこれだけのところにいったのであるから、北海道における水稲というものは、これはもう安定作物である、こういうふうに言えると思うのです。そうしてその反面、耐冷性に強いといわれた畑作が案外その弱点を示しまして、全面的な打撃を受けた。水稲は相当の試験機関への投資と長い間の技術の改良、向上等によって、寒さを克服して耐冷性に強い品種を育成してでき上がってきた、安定作物まで仕上がってきた。畑のほうは、ほったらかしにされていたために、ことしの冷害と長雨の被害をもろに受けて、その打撃は深刻である。こういうふうに水稲と畑作とを分数して、ことしの特徴的な災のあらわれ方としてわれわれはつかまえておるわけでありますが、この点については農林大臣はいかがに理解しておられるか承りたい。
  268. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かに稲作につきましては北海道に適した品種、たとえば「福雪」「ユウカラ」等、こういうようなものを育成しまして、相当安定してきたというふうに私も考えています。しかし、稲作の限界地帯である北見とか十勝地方等については 冷害に対する稲作技術というものは必ずしも十分ではないのでなかったか、今後冷害克服のための試験研究を一層強化していきたい、こう考えております。  それから稲作農は一応安定はしておったのですが、いまのような状況でございますが、畑作につきましては、どうしても北海道畑作農業というところに主力を向けていくべきではないかというふうに六、七年前から考えて力を尽くしてきたのでございますが、稲作に比較いたしますると、劣っておると言いますか、十分その方面の施策ができておりません。試験研究の結果もかなり効果をあげたと言いながら、いまのようなお話でございます。たとえばバレイショ等につきましては主席地でありますので、試験場等におきましても国庫補助によって相当冷害を回避するわせ品種等を育成中でありますが、これがまだ十分でない。また大豆等につきましても、北海道の農業試験場の十勝支場等に国庫補助によって指定試験地を設けまして、早熟多肥な品種を育成しております。トウモロコシ等につきましても、栽培改善の試験研究を推進してきていますが、なお耐寒わせ品種の育成を強化するために、昭和三十六年から指定試験地を設けて品種の研究を推進いたしております。てん菜等につきましても、御承知のようにいろいろ品種改良その他をやっておるわけであります。  以上いろいろございますが、いまのお話のように、稲作は相当の歴史を持ちまして、一応技術の方面においては、まだ十分とは言えませんが、品種等につきましては安定的な品種もできておるというのに、畑作のほうはどうしてもおくれておるというような関係で、したがって、災害、冷害等につきましても、ことしの冷害が稲作ばかりでなく畑作の方面に全面的に起こってきたということでございますので、畑作農業を確立する、寒地農業の中でも畑作のほうを特に力を入れていかなければならぬということを痛感いたしておるわけでございます。
  269. 永井勝次郎

    ○永井委員 赤城農林大臣の御意見、われわれも賛成であります。賛成でありますが、水稲と畑作とを比較した場合、単に耕作技術、品種改良の面の問題だけではなくて、私はやはりここに農政の片寄ったあり方、偏向している姿がよく出ていると思うのであります。たとえば北海道の場合、女満別という町があります。ここは水稲を一千町歩つくっておる。ことしはほとんど収穫皆無であります。収穫皆無でありましても、共済制度がありますために、一反当たり二万八千五百円の共済の補償があります。でありますから、一千町歩といたしますと、一億八千五百万円、水田に一粒も米がとれないでも、共済制度によってそういう収入が確保されるわけであります。ところが畑のほうはどうかといえば、たとえば大豆が一反に三俵とれるとする。三俵ということは、これは平年作以上であります。相当よくできて三俵、三俵とれた場合の一反歩の収入がどのくらいになるかというと、大豆一俵が三千三百円でありますから、一万円にならないのであります。水稲の場合は一粒もとれないで一反一万八千五百円の収入になり、畑の場合は豊作で一万円にならない。とれなかった場合は一銭にもならない。こういう米中心の農業政策の欠陥が、北海道という米の限界生産地帯において願書に出てきておる。これだけの収入になりますから、水稲に対する耐寒性の技術の向上というものを真剣になって農家がやれる。また試験場も、米をやっていれば、試験機関における主流でありますから、予算もたくさんくるからそこでやる。畑のほうは、これだけ苦労して一生懸命やりながら、政府からほったらかしにされてこういうみじめな状態に置かれている。これはやはり農業政策の欠陥です。ですから、やはりことしのように、農業災害が畑と水稲とこうはっきり出てきた場合において、これはうそごまかしなくこれらの事実を分析して、問題がどこにあるかということをつかむ必要がある、こういうふうに思うのです。  それから、ことしの災害の特徴は、従来北海道は三十一年に災害がありましてから、幸いにしてずっと、部分的な災害はありましたけれども、全道的な、全面的な災害は、いままでほとんどなかったわけであります。三十一年当時と比べて、本年のこの農業災害は、農村のよって立つ背景の基盤が、私はだいぶ違っておると思う。この違いを明確につかんで対策を立てませんと、間違いを起こすと思うのでありますが、農村における経済的、社会的背景が、その環境が、私はたいへんな違いだと思う。今日北海道の農村においては、この高度成長政策の中でどんどん追い込まれて、離農がどんどん起こっておることは大臣御承知のとおりです。当時から比べまして、北海道においては、世帯において三万戸、人口おいて三十万、しかもその三十万は若年労働の若手であります。でありますから、農村には年寄りと婦人だけが残って、若手の者はどんどん外へ出てしまう。世帯においてもどんどん減って、現在三万戸である。これは三十七年度の統計しかございませんから、三十八年度、三十九年度とますます離農にドライブがかかってきておるのでありますから、もっともっと離農者が多くなっておると思うのであります。そういうように腰がすわらないで、もうやめようかどうしようかというような浮き足立っておる状態が今日の北海道の農村の実情だと思うのであります。そういうところへことしのような災害でどかんとやられますと、従来経験したようなものではなくて、精神的な打撃、経済的な打撃、それから社会不安、こういうものが深刻に広く広がるのではないかということをおそれておるわけでありますが、そういう点について、従来と違った凶作災害の背景、その基盤が違うのだということを大臣に正確に認識していただかなければならないと思うのであります。この点について御理解をいただけるかどうか、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  270. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまお話しのように、非常に農村の労働力が外へ出ている。これは全国的にもそういう傾向が非常に顕著でございますが、北海道におきましてそういう事態のもとに冷害がきている、こういうふうな実態であるということは私もよく承知しておるわけでございます。全国的にもこういうような状態でございますから、離農の対策も講じ、それからまた経営規模の拡大あるいは共同化ということによって農村の基盤を強めていきたい、こう考えていますが、北海道等におきましても、私はそれは同様だと思います。特に畑作農業と言いますか、畑地帯においては水田地帯よりも現実面で経営規模の拡大ということがやりいいのではないか。稲作は相当機械を入れましてもなかなか進みませんが、畑のほうは、経営規模の拡大というようなことで労力の、不足に対処していくということがより進みいいのじゃないかというふうに考えています。そういう点で、北海道の現在は非常にお気の毒でございますが、将来につきましては、日本の農業としても畑作の方面にも相当力を入れられるし、経営規模をやりようによっては拡大もできて、安定的な方向へ持っていけるのじゃないか、またそういうふうに持っていくべきじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  271. 永井勝次郎

    ○永井委員 そこで、離農の問題が出ましたから、あえて農林大臣にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、私は、離農の問題については、一般農家については、今回の災害を機会として離農を促進するという政策をとるべきではない、こういうふうに考えるわけです。農林省の中では、農地管理の事業団をつくって離農を促進させよう、こういう一貫した考えがあるようであります。そういうような点からいえば、ことしのように災害を受けてどうしようかと迷っておる者に、さっさとやめていけ、こう離農を促進するにはいい経済的な条件ではないかと思います。しかし、相手方の農民にとっては、これはノーマルな状態ではない。でありますから、一般農家については、農業の分野において救農対策を立てる、凶作対策を立てる、そうして本人にノーマルな状態において離農するかどうかを決定させる、私はこういう態度で臨むべきだと思います。それから開拓の関係については離農を促進すべきだ、こう思うのであります。御承知のように、三類開拓農家として認定されておる農家の戸数は、北海道の場合残っておるのが千三百戸あります。ところが、これはもう農民としておまえはだめなのだ、やめなければだめなのだと指定されながら、国のほうの離農に対する予算がつかないから、ことしは三百戸だ、来年は四百戸だ、生き殺しみたいにだめだというところへ野ざらしにしているわけです。こういうひどいやり方というものはないのでありまして、ことしのような災害を受けた機会に、特に三類農家として、おまえはもう農家として成り立つ条件はないのだという農家に対しては、千三百戸あるわけでありますから、これは一人四十五万円ですか五十万円ですか、離農のための転貸資金、こういうものの予算をつけて一挙にできるだけ早く離農を促進すべきだ、こういうふうに考えます。たとえば干戸ことしやるにいたしましても、一人四十五万円といたしましても四千五百万ですか、四千五百万あれば、その人たちがこれから転進して新しい方向に第一歩を踏み出せるわけでありますから、私は、開拓の関係については離農を促進すべきだ、こう思います。これらについて農林大臣と、その予算措置について大蔵大臣答弁をわずらわしたいと思います。
  272. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話がありましたが、農林省といたしましても、離農を促進しているということは実はないのでございます。離農という現実がありますので、これをできるだけ食いとめたいとは思いますけれども、食いとめ得ない面が相当ございます。そういうことでありますならば、受け入れ態勢をよくして、ある程度出る者はそのほうに出てもらってもいい、しいて促進をするというような形で進めておるわけではございませんから、その点御了承願いたいと思います。  それから開拓農家に対しましては、いま永井さんは、むしろはっきりさしたほうがいいんじゃないか、もう農家としてとどまり得ないようなものになっている者は外へ出て、そして外のほうで安定して仕事ができるようにしたほうがいいじゃないか、これは私もごもっともだと思います。もう長い間の経験で、開拓に入って実績もわかっておりますから。そこで、ことしは全国で千三百戸ばかり離農の対策を講じようということで、四十五万ずつ出そうということで、北海道の分は五百戸ですか、予定いたしております。いま大体これは予算で使い切りぐらいのところまではいっておりまして、いまの時点においてこれを増額するということは非常に困難でございますけれども、いまのその五百戸等につきましては、なお至急これをはっきりさしていきたい、こう考えております。
  273. 田中角榮

    田中国務大臣 離農が必要であるという方針がきまっておって、ただ予算上の制約によってだけなま殺しになっておるという事実がありとすれば、これらの問題に対してはより前向きに対処すべきであるということは、よく理解できます。千戸といえば四十五万円で四億五千万円ということでございますが、そう大きな金でもないようでありますし、これらは実情を十分調査の上、所管省である農林省の意向を尊重しながら措置をしてまいりたい、こう思います。
  274. 永井勝次郎

    ○永井委員 開拓農家の三類農家についての離農促進については、本人も相当希望しておるようであります。早くやめてどっかへ就職したい、しかし、離農資金が予算がなくてもらえないというので、しかたなくここにいるのだというなま殺しになっておるわけでありますから、いま大蔵大臣より力強い答弁を得ましたので、ひとつその点については、この際はっきりと促進するようにしていただきたい。  先ほど来、本年の北海道冷害凶作の特徴としてあらわれた畑作の災害の大きいこと、その大きいということには、畑作に対する農業技術上のいろいろな諸欠陥があらわれたのだというふうに理解されておることについては、敬意を表します。したがって、今後における本年の北海道の凶作対策に対する中心課題は、畑作振興対策を確立する、これが災いを転じて福とする一つの大きな課題だ、こう思うのであります。その意味において、私は、これから畑作振興についての諸問題について二、三尋ねたいと思うのですが、わが国としてどうしても農産物の関係で輸入をしなければならないものが相当あります。ことに北海道の畑作の生産にまって自給度を高めていく、そのことによって輸入量を減らしていく、こういう一つの対策がこの中にあって、単に農家個人の経営だけの問題でなくて、国の政策として大きな政策の視点からこれらの問題を把握していかなければならない問題がたくさんあると思うのです。たとえば小麦でありますが、小麦は昨年輸入が主面十七万トン、金額にして七百八十一億、それからトウモロコシが二百六十四万トンの輸入、そうしてこの金額が 五百六十九億、砂糖でありますが、これが百四十七万トン、この金額が八百六十億、大豆が百五十四万トン輸入、この金額が六百 五億、こういうふうに輸入関係だけでも膨大な外貨を要するわけであります。これらの問題は、畑作経営の北海道における凶作対策として、もし冷害を克服し、そうして畑作が新しい生産の態勢に入って、品種の改良もでき、反収も多くなる、こういう方向にいくならば、この小麦、トウモロコシ、砂糖、大豆、こういうものの輸入量を相当程度削減することができる。こういうふうに考えるのであります。その意味から申しましても、これは畑作関係の取っ組まなければならない重要課題がひそんでおると思います。そこで一番大きな外貨を要しております砂糖の関係は、八百六十億使っているわけでありますから——砂糖関係は農林大臣、大蔵大臣等においてもいろいろ進められておりますが、これは議会ごとに私がいままで言ってまいりましたように、政府のやっていることが焦点が間違っているのです、増産のてこの入れどころが間違っていたために、もう何年という間おかしくひん曲がってしまって、そうしてこねくり回されて、ようやく昨年あたりからむだな工場のなには整理する、そうして九つの工場を残してここで生産体制に入るという態勢に入って一応軌道に乗ってきたようでありますが、まだまだ工場が持っておる能力の七割くらいより操業しておりません。コストが高くなっています。でありますから、これはどう冷害しても原料をもっと増産する態勢をつくらなければならぬと思う。さらに砂糖の国際価格が今日のように下がってキロ百十円を割っておるという、こういうときにあたりましては、ことしの砂糖の価格というのは、原料ビートがトン七千二百円という、こういう価格を基礎に生産されておるわけでありますから、これをまかなうような価格でなければならぬ。社会党といたしましては、砂糖については別個な一つの一貫した政策を持っておるわけでありますが、現在当面の問題としては全量買い上げということが要求されておる。これはそういうわれわれの政策のほうへも一歩近づいてくるわけでありますが、やはり今後の原料ビートの増産をはかっていく、安定さしていく、工場のコストを下げていく、そうして経営を確立していくというためには、いまの段階ではどうしても私は全量買い上げなり、赤字を出さない補償というものが必要である、こう思うのですが、この点について農林大臣はどういうふうにお考えになりますか。また、これらの買い上げについての財源措置について、大蔵大臣はどういうふうにお考えになるか。また、これらの品種改良の面におきましても、GW系でこの導入系のものとか、三倍体系のポリラーベとかAJポリだとか、あるいはポリベーターだとか、あるいはE六号だとか、こういうような品種改良あるいは単粒種子の問題、こういうものが外国から比べたら非常におくれております。農事試験場等あるいは振興会でいろいろやっておるのでありますが、もう少しここに予算措置をして、そうしてこういう新しい品種の育成、こういう三倍体の品種をつくるというような国際的な水準にまで高めていく措置を急速にやる必要がある。これは畑作振興の一つの主要な課題であると思うのでありますが、これらについていかがでありますか。
  275. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のように甘味資源法が通りましたので、それに基づいて政策を施していくことに相なっております。そこで国際糖価が非常に下がっておる。甘味資源法を提案するころと事態が相当違っております。初めは全面買い入れというようなことではないような事態のもとであの法律を出しましたが、ことしの状況等におきましては、買い入れはいまの法律に基づいて全面的にせざるを得ない、こういうふうな状況でございます。その価格等につきましては、法律によりますと、最低価格ということで、取引価格ではないのでございますが、こういう面につきましてどういうふうにしていくかということにつきましては、なお検討を要する問題が多いと思います。お話しのように、製糖会社、ビート会社等においても合理化をし、また生産もふやし、そうしてコストを低下いたしませんと、いまの国際的な競争力の中になかなか立ち行かない。糖業界も非常に弱っておる状況であると思いますので、これにつきましても、なお万全の策を私のほうでも講じていきたい、こう考えております。  財政等につきましては、大蔵大臣のほうから答弁いたします。
  276. 田中角榮

    田中国務大臣 国際糖価が非常に昨年上がり、今年は急激に下がっておるということ、全く一年間の間に大きな変動があったわけでございます。しかし、これらの問題に対しては、いままで一番高い砂糖を国民になめさせておったということもございますので、砂糖は国民に安く、しかも国内的なてん菜糖その他甘庶とかいろいろなものがございますが、こういうものは育成していかなければいかぬという二つの問題に対処しなければならぬわけであります。でございますが、現在北海道も十一工場、十八万トンのもの冷害が十一万トンに操業度が下がっておる。これはいますぐ半年や一年でもってビートの大増産を行なうことも、なかなかできません。ですから、暖地ビートといいながら南のビートはあまりうまくなかった、なぜ一体北のほうに主力を置かなかったのか、いまになっていろいろなことが考えられておるわけでございますが、やはり当面する問題としては、操業度を上げるということで、ある工場というものを吸収するか、買い取るか。吸収をする場合に吸収補償をどうするかというような問題があるわけでありますので、業界、農林省の積極的な施策をまちまして、ちょうど御承知の海運の問題等も、集約をしたためにこんなによくなるかと思ったくらいによくなっているものもあるのでございますから、こういうものも十分算に入れながら、財政的に必要があれば、あえて財政上の困難ということでこの問題から逃げようというような考えはございません。ですから、政府も業界も、また生産者も一体になって、より合理的な道を早急に見出すべきだというふうに考えます。私たち、いま農林大臣が言われたとおり、黒糖とか再製糖とか、いろいろな小さなたくさんある精製業者とか、こういうものを現状のままにしておって、すべてのものを財政で見ろ、こう言ってもなかなか可能なものではないわけでございますので、やはりある程度の見通しをつけながら、これらの問題は、お互いが自己責任ということも前提にしながら、また政府も前向きでじんぜん日をむなしゅうするようなことがないようにして、対処すべきだという考えでございます。  農作物のいわゆる適地適作というものに対する研究、研究の補助というようなことをおっしゃっておられますが、研究所もあるわけでありますので、必要があれば、これらのものはやはりその地方、その農民だけでまかして片づくものではありませんので、何らかの措置をとる必要があるということは理解できるわけであります。
  277. 永井勝次郎

    ○永井委員 砂糖一般の問題についてはいろいろ私も意見がありますが、時間がありませんからこれを省略しますが、これは絶対に輸入しなければならぬ性質のものですから、国で生産するということは、それだけ輸入を削限するということとも見合いまして、おくれている水準を上げるということは、これは当然凶作対策として特にやっていただかなければならぬ点である。  その次にはバレイショでありますが、バレイショも、これはビートと並んで寒地農業確立の上の主要作物で、現在九万町歩の作付がありますが、もっとこれは進むのではないか。最近これがバイラス等の被害を受けて、相当蔓延しております。これらについては、種の確保、それから病虫害に対する防除の技術的な問題等、いろいろあると思います。耕作上の問題もなお開発すべき点があろうと思います。それにいたしましても、いま問題になっていますのがでん粉価格の問題です。まず第一に生イモで処理する、そうしてその余ったものをでん粉処理してこれを製品にする、こういう二つの方法があるのでありますが、生イモについては、種イモを本州に送ります。それから生イモをできるだけ本州に送って、こちらで処理しなければならぬ。これが輸送の問題にからんできて、松浦運輸大臣にお尋ねしますが、毎年凍るような時期になると、輸送ができない。一定の限られた期間の中で生イモを送らなければならない。そうしますと、青函連絡がネックになって送れない。こういう関係で毎年積み残しになる。ことしは凶作で、換金作物が農家にないのである。売れるもの、金にかえられるものはイモであります。唯一の拠金作物としてのイモをできるだけ生イモで本州に送って処理する、一にかかってこれは輸送の問題でありますので、この点について特に運輸大臣の配慮を願いたいと思う。  次にでん粉価格でありますが、でん粉価格の決定については、いま農林省、大蔵省等にいろいろ現地から陳情その他がいっていると思うのでありますが、一体この価格をどういうところできめようとしておるのか、農林大臣及び大蔵大臣から答弁をわずらわしたいと思う。また、一部に聞くところによりますと、大蔵省のある主計官が、ことしのでん粉の価格は勇断をもって大幅に下げる、こういうふうに宣言されているそうでありますが、この凶作にあえいでいる北海道の農民の唯一の収穫であるイモ、その製品のでん粉に対して両びんたを張り飛ばすような大幅引き下げの勇断というのは、勇気はあっていいかもしらぬけれども、それは蛮勇であり、事情を知らないやり方だとうのですが、大蔵省としてはそういう一つの方針を持っておられるのかどうか。あわせてでん粉価格の問題、それから輸送の問題、価格をいつどのようにおきめになる考えであるか、これらについてお尋ねをいたします。
  278. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 でん粉の価格決定は、法律、政令によりますと十月の末になっていますけれども、できるだけ早い機会に、この上旬にきめていきたい、こういうふうにいま作業をいたしておるわけであります。価格をどれくらいにするかということにつきましては、いま財政当局等とも私のほうの案を提示しながら折衝中でございますので、いま幾らということは申し上げかねますけれども、事情をよく勘案しまして、あるいは経済事情等も勘案してきめていきたい、こういうふうに作業を進めておる次第でございます。
  279. 田中角榮

    田中国務大臣 イモにつきましては、早急にこれをきめたほうがいいという考え方で陳情がございます。私たちは、いろいろ諸般の情報もございますので、関係するいろいろなものと一緒にきめたいというような考えもございましたが、値下がりもひどいようでありますし、こういう問題はできるだけ早く、できればオリンピックが始まる前にきめてくれないかという陳情がございました。しかし、かかるものをいつまでもじんぜん日を送るということもどうかと思いますので、タイミングを見ながら実情に長も合った方法できめてまいりいたいという考えでございます。農林省の意向を十分そんたくしながら、農林省の意向に沿ってきめてまいりたいという考えです。しかし、いまお話がございましたように、勇断をもって大幅に下げる、こういうことでございますが、何もそう勇断をもって大幅に下げるという考えではございません。しかし、増産がされて、また高くなったときでも、大幅に上げてきておるのでありますから、ある時期には下げるということもあり得るわけであります。ですから、今度は下がる方向にあるということは事実でございますが、これを大幅に下げるというような考えではありません。ただ第三点目に、あなたが冷害で困っておる、不作で困っておるということでございますから、この上なお下げられれば往復びんたになるということでございますが、しかし、これは増産がされているのではなく、減産がされている場合、価格を据え置きにする、引き上げるというようなことで被害農家の実質収入が上がるのかというと、必ずしもそうではない。まあ、いろいろの問題があるようでございますので、大蔵省は血も涙もなく勇断をもって半分にするのだという考えはございませんから、農林省の意見も十分聞きながら、また現地の状況もしんしゃくをしながら、適切妥当という線で考えてまいりたいということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  280. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お答えいたします。  お答えをいたします前に、同じ北海道におります者でございますから、ただいままで永井議員の御提唱せられました凶作に対する問題に対しましては、先ほども大蔵大臣が、道庁の報告は四百二十七億という声明をされておりますが、実態調査はもっと悪くなると思っております。なぜならば、いままでの一番ひどい凶作は、北海道の歴史といたしましては昭和七年が一番ひどかった。その次は昭和三十一年がひどかったのです。そのときには、九月の月に零下五度ということはないのです。今度は零下五度が二十八日の日にきたのです。そのために全部、入熟のものがほとんどやられてしまったのでありますから、米はとれましたけれども、ほとんど青米なんです。また、その他の農作物、畑作物もいまおっしゃるとおりでございますから、これはもう永井さんのおっしゃるとおりなんです。私は党を超越して、永井さんのおっしゃる北海道の凶作対策の御要求並びにこれに対する提案に対しましては、賛成するものであります。  そこで私は、自分の関係の役所といたしまして、これを将来克服していくためにはどうしたらいいかということを一言申し上げたいと思うのです。  それは北見に測候所がありますが、農業測候所がないのです。それで、しかもああいう低温地帯なんです。それで、試験場もないのです。永山に農業測候所があって、試験場があるのです。でございますから——昭和七年には永山もとれなかったのです。しかし、そのときは二十八口に零下五度にならなかった。しかし、今度はそういうところになっても永山はとれているのです。だから、端野や九州や北見や、あるいはその他のほとんどヨシの穂のようになっておる現状のところでも、そういう施設をして研究して品種の改良をすればとれぬことはないと思うのです。現に永山はとれているのですから。ということでございますから、私のほうの予算として大蔵大臣に提案いたしたいことは……(笑声)これは笑いごとじゃないです。北見に畑地農業及び水田農業というものを解決する基本問題としては、農業測候所をつくるべきである、同時に、これに対する試験場をつくるべきである。そうでなければ、三十万町歩もあるところへ、そのままにしておくほうが悪いのです、ほんとうは。私はそのことをつけ加えて御質問に対する答弁をいたします。  今度新鋭船が二隻できまして、津軽海峡の輸送量が非常にふえました。でございますから、今年度は十月、十一月、十二月で、でん粉とバレイショは十一万九千トン送る計画を立てて、着々進んでおります。これは需要量の八〇%であります。あとの二〇%はどうするかということでございますが、これは船便によるつもりでございます。しかし、船便は運賃が高いではないかということになるのでございますが、これはコンテナの利用その他によって、まあ二〇%を処理していきたい。しかし、お話のように、今年はイモとビートしかもう北海道は依存するものがないのですから、なるたけほかのものの貨物を遠慮してもらっても、待ってもらっても、二十七万戸の農家の生活をささえるために農産物を優先的に送りたいということを局長によく申し上げておりますから、そのように努力をいたしたいと思います。今年の十二月から来年の九月までにはさらに新鋭船が四隻でき上がります。そうなれば、来年の輸送量については御心配はないと思いますが、今年のところは十二月一ぱいに需要量の八〇%しか送れない状況なんですが、これはいまの計画なんです。けれども、出てくる量がはたして——去年とこれは同じ数字なんです。去年と同様であるかどうかということは問題ですが、できるだけ凶作農民の要求に応ずるように努力をいたすことをお誓いいたします。
  281. 永井勝次郎

    ○永井委員 いま運輸大臣から、北海道の実情を知っておられるだけに、実情の深刻さを反映いたしまして、切実な答弁をいただきました。これはやはり予算委員会答弁をいただくとともに、予算審議の閣議等においてはさらに強力にやっていただいて、いまの答弁以外にいろいろな問題があろうと思いますが、今回は北海道の凶作を、災いを福に転ずるのだというよき機会としてひとつがんばっていただきたいと思います。  なお、畑作関係については、でん粉の問題で大蔵大臣に言いますが、でん粉が今日下がりしたのは、これはやはり政府責任あると思うのです。実は八月十一日に、政府は手持ちのでん粉を三千七百七十二トン、価格千二百六十円、これは市場価格より非常に安い。こういう価格で——市場価格より百三十円安くこれを放出したのです。これから新しいでん粉が出ようという出ばなに、こういう市場価格をたたくようなことを政府みずからやったのですから、今日のでん粉の値下りについては、政府が手持ちを放出したという立場において、私はやはり責任をとってもらわなければいかぬし、ただそういうように安くしておいて、安くなったのだからこうするという、こういう市場操作は、政府のやり方としてはわれわれは了承し得ないところでありますから、この点も考慮に入れて善処していただきたいと思います。  大豆の問題も、これは主要な輸入でありますが、大豆に続いて、いま一般には、雑豆輸入の動きが国内に相当あるようであります。大豆のほかに小豆その他にかわるべき豆を輸入しようとする動きがあるようでありますが、農林大臣に伺います。どのくらいことしは雑豆を輸入する予定にしておられるのか、その見通しをひとつ伺いたいと思います。
  282. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 実はいまその予定を私事務当局からも聞いておりませんので、お答えはちょっとできかねますが、いつか機会を得てお答えしたいと思います。
  283. 永井勝次郎

    ○永井委員 大豆なんかは、これは十勝が主産地でありますが、これは非常に打撃を受けております。特に十勝がひどい。というのは、やはり大豆の作付を、連作するのです。大豆ばかりやる。でありますから、地力が消耗する。地力が消耗するから、こういうときに災害には一番抵抗力が弱い、こういう形になって、病気関係でも、核菌病、炭疽病、褐斑病、細菌病、こういうようなものがだあっと出て、これに対する対応の対策ができていないのですから、でえっといってしまう。こういう状態です。私は札幌農事試験場を視察しました。札幌の農事試験場では、大豆の冷害試験をことし初めてやった。ことし初めてである。何十年という間大豆を北海道でつくっていながら、試験を始めたのはことしが初めてである。その試験の結果から見ると大豆の開花時期の十日前、ここで冷害の障害を受けたらこの大豆はだめなんです。開花したあとに冷害を受けても育ちますし、さやがついてきます。大豆の花が聞く十日前に冷害を受けたら一生だめだ、こういうような試験がことし初めてできた。ですから金さえ与えて、そして試験のなにをすれば、これは反収三俵なんて、こんなばかなことはない。外国のように五俵、十俵の品種を育成することができるし、こういう病虫害に対しても抵抗力の強いものがつくられるし、それから冷害に対しても品種を強くしていくことができる、こういうことができるのだ。米をちゃんとつくったじゃないかと試験場はいばるわけです。確かに米は、その点においては耐冷性のものができておるわけですが、畑作については赤城農林大臣から先ほど来御理解のあるいろいろな御答弁をいただいたわけでありますが、もっとそういう点で私は努力をしていただきたいと思います。ことに北海道は気象が悪いのだ、気象が悪いから特別な農業経営なり技術を確立しなければいけないのだ、もしそういうふうな考えを前提にして農林大臣がお考えであるとするならば、その誤りを私は正してもらわなければならぬ。北海道はヨーロッパその他に比べて気象的には非常にすぐれております。すぐれておるのでありますが、そのすぐれている気候に適応した作物、適応した技術、適応した耕種肥培、こういうものができないために、ちぐはぐだから、この気象の優位性を正しく作物の上に生かされないのだ。それだからそれが冷害としてこういう天刑を受けているのだ、天罰を受けているのだ、こういうことが言えると思う。北海道は北に偏しています。でありますから、春から秋までは日が長いのであります。日中は朝は四時ころ明るくなり、晩は八時ころまで明るい。それだけ太陽が輝いているのですから、その点においては日照時数の上からいっても非常に優位であるということが言えるのです。それから気温の点からいっても夜と昼とが格差があります。でありますから、昼の間に大いに同化作用をやって、夜は同化作用を休んで呼吸をやります。でありますから、夏の間蓄積した養分を、合水炭素を消耗しないでちゃんと翌日に備えていく、こういうことでありますから、この夜と昼との気温の格差が大きいということは、これは非常に有利な条件である。また気温が低いと言いますが、気温が低いということは人工的に幾らでも高くすることができるのです。防風林を設けることによって、試験結果においては二度接地気温を高くすることができる。また排水をする。暗渠排水あるいは水田におけるかんがい水、そういうものもタコつぼによって、環流することによって技術的に幾らでも水温を高めることができる。土地の気温の低いということは、人為的に二度なり三度上げることはできるのです。それだけのことをやらない。だから土地改良、土壌改良ということをやっていないから、ことしのような長雨には一ぺんにやっつけられるわけであります。あるいは大気の湿度のあること、あるいは風のあること、降水量が少ないこと、これはみな北海道の気象の優位性がはっきりとしておるわけであります。この優位性を優位性として使わないところに日本農業の、畑作農業の欠陥がある、日本農政の誤りがある、われわれはこう思います。その点について、農林大臣は、北海道は特殊な気象地帯だというふうにお考えなのか、こういう優位性のあるところを正しく仲ばさなければいけないのだ、伸ばさなかったのは農政上の欠陥なんだ、こういうふうにお考えなのか、その出発点を明確にしていただきたい。
  284. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 世界的に見ましても、北海道の緯度等に位している諸国が農業が繁栄しておるということから見ましても、北海道はいまのお話のとおりな農業に対してのいい条件を備えておると私は思います。ただ御承知のように、日本は稲作農業が相当進んできておりましたので、稲作は熱帯的な植物であったので、北海道が稲作になかなか適当していない。しかし品種を改良してだんだん稲作も北海道に普及していった、こういう先入主がありますので、何か北海道は僻地で農業に不適のような感じを幾ぶん持ったかに思いますけれども、私は全然永井さんのお話のとおりに思っております。非常な適地だ。ことに畑作方面、畜産方面等に有望なところでございますし、条件は非常に整っておる。ですからやりようだ。やりようが悪ければ伸びていきませんけれども、やりようがよければ非常に伸びる基盤を持っておる、こういうふうに考えておりますので、北海道につきましては、私は希望を持ちながら農業政策を進めていきたい、こう思っております。
  285. 永井勝次郎

    ○永井委員 畑作振興の諸問題については土壌の問題、種子改良の問題、あるいは病虫害防除の問題、あるいは機械化の問題等々たくさんございますが、時間がありませんから、先ほど来お話し申し上げ、また農林大臣、大蔵大臣等から答弁のありました決意に対して私は非常な期待をかけ、その期待が口先だけのものではない、具体的に来年度の予算に、作物として凶作で実らなかったけれども、そのために予算として大きな実りをかちとることができたという実りを期待しまして、畑作の問題はその程度にして次に進みたいと思います。  先ほど私が、米よりも畑作のほうの被害が甚大だ、こう比較をして申し上げたので、だからといって米作が非常にいいんだということではございません。ここに青米がございます。これは北海道の中心米作地帯である空知の長沼の米でありますが、これが一つのものです。これを農林省規格の米選機にかけまして、ふるいにかけました。これが政府規格の賢い上げ米、これは賢い上げに該当しない米、こういうふうに振り分けられたわけであります。これは相当に検査机格を落としたものです。それでもわずかな実りの中で、政府買い上げ米はこれだけです。これは買い上げにならない。そういたしますと、この関係は統計上はこれも実ったことになっておるのですが、これは共済制度の中の対象になりません。これを除いたあとが対象になる、こういうことでありますので、この米をどうしてくれるかという問題です。これはやはりもう一度ふるいにかけますと、半分くらい残ります。その半分を政府で規格を落として買い上げてもらいたい。そしてその残りは政府がさらに規格を落としてこれを買い上げるか、もし買い上げないならば、これを共済の一つの保険金の対象として金を払ってもらいたい。こういうふうな凶作にあえぐ農民の切実な要望でありますが、青米の評価上の取り扱いの問題ですが、これをどういうふうに農林大臣お扱いいただけるか、ひとつ伺いたいと思います。
  286. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 新たに青米に等級をつくって買い上げるということは、全国的の例もありますので困難であると思います。しかし、検査等におきまして、相当事情をしんしゃくして検査をするというふうには指事いたしております。  それから食糧としての買い上げがいかがかと思いますが、そのほかにおいて買い上げをするような方向は考えられると思います。  それから買い上げない場合に共済の対象にするか、こういう点もいろいろ勘案してできるだけ災害を受けた人の立場に立ってものを考えていく、こういうふうにいたしたいと思います。  それから先ほど雑豆の輸入等についてどれくらい予定しているかということでございますが、雑豆の輸入割り当て量は、三十九年度においては十二万、五千トンでございます。大豆の輸入実績は、三十九年度見込みでちょうど百六十五万三千トン、こういうふうに全体としての見込みは持っております。
  287. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に、三十九年産米の予約概算金返納の特例、これは十二月末まで返納を延期してもらいたい。そしてその間の金利を免除する特例措置をしていただきたい。これはいかがでありますか。  それから時期別格差適用期間の延長でありますが、十月十日のものは十月三十日に、あるいはその次の第三期は十月二十日を十一月十日までに、これは二十日それぞれ延長の措置を講じていただきたい。これはいかがでありますか。  それからいまの青米の検査の買い上げ共済金の問題でありますが、これは非常に技術的な問題もありますし、予算委員会等で直ちに即答をいただくという筋合いは無理であろうと思いますから、なおこれらの問題は事務的に折衝するということで、先ほどの大臣の答弁はそのまま了承はいたしません。なお御研究を願いたいということで進んでまいりたいと思います。御了承いただきたいと思います。いまお尋ねしました点について御返答願います。
  288. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 時期別格差の時期の期限を延長したらどうかということでございます。第一期の時期別格差はこの間全国で四県でしたか、ちょっと延ばしましたが これはあまり例がなかったのでございます。大体時期別格差の時期を延ばすのは、最終の三回目のときには延ばす例がございますので、そのときになってそういうことを考えてみたいとは思っていますが、いま言い切るわけにはまいりません。十分考慮いたしたいと思います。  それから前渡しの金でございますが、これは一たん、返したような形にして延ばすというような手続はいままでもとったように私は記憶しておりますので、適当に措置していきたい、こう思っております。
  289. 永井勝次郎

    ○永井委員 その次に種子の購入についての国庫補助でありますが、これは米の場合も、畑作の場合も、災害を受けた部分においては種がございません。これは購入しなければなりませんので、従来もその措置が講じられていましたが、今回もそのように運んでいただきたい。これは大蔵大臣も聞いておいていただきたいのですが、種もみについては二分の一の補助があります。雑穀の種については従来三分の一の補助でありますが、これは実情から言って逆ではないか。種もみの場合は、共済制度があって金が入るのです。雑穀の場合は共済制度がないから、災害を受けたものはオールマイナスです。オールマイナスのほうにわずかな補助、共済制度のある、現金収入が相当にあるこの種もみに対して二分の一、これは並であって、種もみの二分の一はけっこうですが、雑穀種子については三分の二の補助が適当である、こういうふうに思うのでありますが、そういうような措置がとられないかどうか。  それから越冬用の家畜飼料が非常に不足しております。牧草なんか一回刈って、刈った牧草がくさってしまうと、二回は刈れない、こういう実情にありますので、大豆かす、あるいは低質小麦の払い下げ、トレンチ・サイロ用のビニール購入費の補助、こういうものは従来からもあったのですが、これらについての本年凶作に対する措置についてお答えをいただきたいと思います。
  290. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 従来いろいろ行なってきました冷害対策等につきましては、ぜひとも従来どおりに踏襲してやっていきたいと考えております。  種の補助の点につきましても、できるだけ御要望にこたえる方向において検討をいたしてみたい、こう考えております。
  291. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に、金融対策でありますが、本年償還を要すべきものが、天災資金で九億二千万円、これは被害者については償還延期、金利の減免を措置していただきたい。農林漁業資金関係については二十四億三千万円、これは本年償還を要するものであります。これも同様の措置。近代化資金、改良資金、負債整理資金等が二十三億、五千万円あります。これらについても同様の措置。こういうことが得られるかどうか。それから負債整理の対策については、制度金融借り入れ金が三百四十億円、プロパー資金が六百六十億円、これらがあります。これらは連年の災害であり、今日農村がしわ寄せを食って、非常に追い詰められている経済的な基盤の弱い現状にかんがみまして、三十年以上の長期低利資金に借りかえが願われないか。これは大蔵大臣からひとつ答弁をいただきたいと思います。
  292. 田中角榮

    田中国務大臣 過去に行ないました実績等も見まして、また実情に即応しまして、可能な限り措置いたしたい、こう考えます。
  293. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に、自治大臣お尋ねをいたしますが、税の減免であります。三十一年度の場合は、道費負担関係で八億六千万円、市町村負担関係で十二億四千万円、合計二十一億、三十九年度の場合は二十五億くらいの税の減免を要するのではないかと思います。これらについて、これの財政補完の措置を講じていただきたい。そうしてこの市町村税の減免措置については、軽減率が、従来は十万円以下のものに対して十割、十五万円以下のものに対して八割、こういうことになっておりますが、いま年収十万円以下なんて、そういう実情というものはございません。これは絵にかいたぼたもちで、年収十万円で一家の経営が立つものではございません。こういう人をばかにしたような——これは二十八年の制定でありますから、昭和二十八年はそれでよかったかもしれませんが、現状には合いません。それで従来は、それぞれの時期に自治大臣の通牒をもってこれを手直ししてきておるのであります。そういうような実情から、軽減率については、二十五万円以下は十割、四十万円以下七・五割、六十万円以下五側、百万円以下二・五割、こういうように軽減率を改正していただきたい。大臣の通牒によってそういうように改正をしていただきたい。  それから対象者については、現在は減収率四割以上のものにと、こういうことでありますが、これは三割以上のもの、三割と四割といろいろございますが、基準の問題で統計が非常に動くわけでありますから、三割という、こういう実情に即した措置を講ずべきではないかと思いますので、この軽減率対象者に対する通用条件、そういうものの緩和等、御答弁をわずらわしたいと思います。それが一つ。  もう一つは、同定資産税の徴収猶予であります。農村の実情からいいますと、市町村民税といったって知れたものです。大きいのは固定資産税ですが、この固定資産税の徴収を猶予していただきたい。そうして徴税欠陥はつなぎ融資でまかなってもらう。その間の利子補給は国庫でやってもらう。非常に虫がいいようでありますが、払えないという農村の実情に照らしまして、このことは特別な配慮をわずらわしたいと思います。  それから起債の問題でありますが、救農土木事業をとりあえずやらなければなりません。たとえば市町村等における財政需要は急激にふくれてまいるわけでありまして、それに対する、さしあたって北海道の場合、十億くらいの起債が必要ではないか、こう思われるので、これらに対しての措置。さらに特別交付税、税の減免、災害、これらに対して御配慮いただきたい。いろいろな問題を、肥料の問題、あるいは病害に対する農薬の補助等も何でもかんでも特交で見る、特交で見る、こう特交にしわせをしておるようでありますが、特交はそんな手品つかいのようなことはできないのでありますから、きまった財源の中で、北海道の災害に全国配分の中で、正しく、もっともだと納得のいくような配分の措置を願いたい、こう思うのであります。これらについて自治大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  294. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お答えをいたします。  第一の租税の減免の関係でございますが、お話のように今日市町村民税及び画定資産税等につきましての減免は一定の基準がございまして、御承知のように、各府県大体同じ率でもってやっておるのでございます。これにつきまして、将来検討を加えたらどうかという御意見につきましては、私ども十分検討をいたすつもりでございますが、北海道の災害につきましては、お市のように札当被害もひどいようでございますので、この点につきましては、被害の状況を見まして、ひとつ考えてまいりたいと思っております。  なお、これら租税の減免をした場合についての利子補給等あるいはつなぎ資金等を考えておるかどうかというお話でございますが、必要に応じましてはつなぎ融資のあっせんもいたすつもりでございます。利子補給ということは考えておりませんが、しかし必要な、災害における補てんの方法といたしましては、特別交付税の制度がございますので、これによって見ていきたい、かように存じております。  なお、冷害地における救農土木事業に対する起債の点でございますが、これも必要に応じまして認めていく考えでございます。
  295. 永井勝次郎

    ○永井委員 開発庁長官にお尋ねいたしますが、開発庁長官は先般北海道を視察されまして、災害の実態を把握されておられると思います。実情に即応した対策をお立てになっておられると思いますが、十勝でありましたか、災害地において長官は、いままでの北海道の作付しておるものが間違っていたのだ、だからこの作付を今後は転換しなければいけないというような発言が新聞に載っておりました。私は、農業は農業の線でいろいろあり、開発庁は長官としてもいろいろ御配慮をいただいておるわけでありますが、農業経営のこまかい内容にわたって、場当たりでいろいろ発言されることは、現地を泥乱させると思うのであります。いま北海道における作物傾向を見ますと、大豆などは非常に減ってきています。なぜ減るかというと、農安法で政府が安い価格に押えてしまうからで、これはつくってもばかばかしいからどんどん減っていく、つくれと言たってだれもつくりはしません。しかし小豆などは、まかり間違えば高い値段で一発勝負やれるというので、小豆はすすめられなくてもふえてまいります。価格の関係もあります。適地通産の問題もあります。また、北海道におけるビートあるいはバレイショを中心として作付してまいるにいたしましても、輪作形態の中で、それと抱き合わせて回転していかなければならない相手方の作物があります。そういうようなことで、単に見たところでこれはこうすべきだと、机上で簡単に言うようなわけにはいかないと思うのでありますが、作物の転換についての御発言は、農業技術上のどういう根拠によって御発言されたのか、その点をひとつ。  それからもう一つは、開発庁長官の関係で公共事業の関係には非常に力を入れるのでありますが、農業関係、開拓関係などには力が相当に弱いのではないか。最近は、草地改良等相当力を入れておられるようでありますが、畑作農業における基本的なかまえは、やはり土壌の問題だと思うのであります。土地改良等は相当強力にやらなければならない、こういうように考えるのでありますが、そういった一連の北海道の節二期開発計画がようやく発足して、ルートに乗ったところでありますが、第二期計画もあのようなものでは私はだめだと思います。そこで開発庁長官は、現地を視察され、その最初に手がけた仕事が凶作対策、北海道のいろいろな欠陥がはっきりと出たところで対処されるわけでありますから、将来にわたり適切な修正が行なわれるよき機会である。こう考えるわけでありまして、その点について、北海道第二期開発計画の内部の点と、修正点があるとすれば、どの点に力点を置くのか。そして畑作農業確立の一つの発足の機会として、この問題を生かしていただくように願いたい。それらの諸点について御答弁をいただきたい。
  296. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 先般北海道にまいりまして、ちょうど冷害の特にひどい地方で実情を見せてもらったわけでございます。その際、十勝で作物転換をすることがいいというふうに私が言ったと新聞に出ておったそうでありますが、これは陳情をされました方々の要望として、やはり適地適作という意味の考慮をなすべきものであるという陳情の際のお訴えに対して、やはり当然冷害に強い作物をやる、いわゆる北海道における適地適作をなすべきものであるという意味で答えたのでありまして、現在やっているどういうものを転換をするというような意味で申したのではございません。  本日は細部にわたって御研究の結果の御質疑がございまして、承っておりましてたいへんありがたく感じたのでございます。この北海道における第二期計画の中では、やはり第二種産業、鉱工業の伸展ということが目につきやすいのでございますが、やはり北海道という土地柄は、第一種産業、農業、林業、漁業、特に農業を第二期計画においても力点を入れるべきものであるというふうに私は考えておるわけでございます。そしてそれは、ただいま申されましたように、北海道というものはいわゆる寒冷の地方であるとは常識的に申されておりますけれども、すぐれた気象条件も仰せのとおりあるわけであります。これはやはり適地適作をやるべきものである。一つの早急に取り上げるべき問題は、やはり酪農を振興するための草地開発をするという点を、特にただいまの問題として来年度から国営をもって大規模草地を開発をしようということを一つ考えておるわけでございまするが、これも北海道における立地にかんがみましての農業の振興ということでございます。そうして、今度の冷害を見ましても、今度のあれは、気温の低いことと、おっしゃいましたように雨が降った、日照が少なかった、特に二十九年、三十一年の冷害に比べまして大きく目につくことは、九月における日照が非常に少なかったということなどがあるわけでございまするが、そうした状況のもとで、やはり農地の改良、暗渠、明渠の排水なり、心土破砕などの行なわれておるところ、あるいは客土の行なわれておるところは被害が少なかったという現実もありますので、これは、御指摘になりましたように、農地改良の面はさらに一そうの経費も投入をしてこれをやらなければならない。一般の公共事業に比べて農業関係が少ないのではないかという仰せでございますが、これは必ずしもそうであるとは思いませんが、しかし、一そう農地の改良という面については経費を投入をしてまいりたい。  目前の救農土木の問題についてもお話がございましたが、ただいま救農土木の希望を道で取りました集計は、約十二億五千万円程度の希望があるようでございます。これは、現在持っておりまする各種の事業と、道及び市町村で約五億程度の、これは起債によるべきものと思いますが、それでおおよその操作ができるという状況のようでございます。しかし、これは、最近の霜の害が早く来たということに関連をしまして、さらに若干増加をするのではないかという考えでございまして、増加せられる分については、さらにこれに応急の対処すべき方途は十分講じていくつもりであるし、いける見込みであるというふうな状況であるわけでございます。
  297. 永井勝次郎

    ○永井委員 北海道の凶作で実りがなかった、そのかわり来年度予算において実りを見たという結果になりますように、大蔵大臣の見識と農林大臣、開発庁長官その他関係閣僚の特段の御努力期待いたしまして、質問を終わります。
  298. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 これにて永井君の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会