○
加藤(清)
委員 委員長のお許しを得まして、私は
日本社会党を代表いたしまして、
政府提案の
昭和三十九年度
一般会計予算、
特別会計予算及び
政府関係機関予算に反対をし、民社党の編成替えを求めるの動議に反対し、
社会党提出の
昭和三十九年度
予算につき撤回の上編成替えを求めるの動議、これに賛成する
立場から討論を行なおうとするものであります。
政府予算は、これを一言にして言えば、自民党の選挙公約とは似て非なる
予算、公約裏切り
予算であります。二つ目に、
国民のしあわせを求むるにあらず、一部大企業にのみ奉仕するの
予算でございます。第三番に、平和確立にあらず、わが国を国際破乱紛争に巻き込ませる危険性のある
予算でございます。第四に、自主独立にあらざる
経済外交
予算、これはアメリカ及び自由陣営の自由を拡大し、
日本の輸出の自由は制限させられるところの
予算であります。これが通過することは、
国民にとってきわめて不幸でございます。これは野党少数の今日の悲劇でございます。今日ほど野党少数の悲しさの身にしむ日はございません。にもかかわりませず、
政府案が通過するのでありましょう。通過の第一の
理由は原案がよいからではございません。野党少数というこの第一の
理由からでございます。第二は、野党が国会正常化に心から協力しているということでございます。第三は、
荒舩委員長の人格や腕のしからしむるゆえんでございます。
荒舩委員長と各
理事の名コンビは、もって国会正常化の範とするに足ると思うのでございます。
さて、私はこの
予算案を批判する前に、みずからのえりを正してみたいと存じます。同時に、身に振りかかる火の粉は払わしてもらいたい。ただいまも
社会党案を理想論とか、空論とかいう御批判がございました。その身に振りかかる火の粉を払わさしていただきます。すなわち、わが党に寄せられる世論の批判を正直に振り返った後、他を顧みるということが、政治家のとるべき正しい態度だと思うからでございます。
批判の第一は、
社会党は反対が多過ぎる、何でも反対する、こういう意見でございます。そこで実はほんとうは
総理にお尋ねしたいところでございまするが、おそらく
お答えがないのでございましょう。あったらぜひ
お答えしていただきたい。(
発言する者あり)それでも答えがあったらしていただきたいと言うておるんです。提出案件に対して野党の賛成、反対、この割合はどの程度ならばよろしゅうございますでしょうか。一党独裁が長期にわたりますると、必然的に守るも攻むるも一方のみ研究が積み重なり、その一方のみが得意わざとなる。その得意わざのみ宣伝されまするので、一方的偏向のように思われがちでございます。しこうして実態はそうではない。田中
大蔵大臣、あなたが一番よく御存じのはずでございます。かつてあなたは商工
委員長であらせられた。私はそのときに
理事をいたしておりました。あのときの提出案件は
一体幾つでございましたか、三十二件ございました。そのうち
一体幾つ私が反対したでしょう、
社会党が
一体幾つ反対したでしょう、たった一つでございます。それも最後は通過を許したのでございます。あたなの記憶に新たなところです。私はいまでも名
委員長だと思っております。ところで三十二分の一の反対、この歩どまりがまさに九七%以上でございます。わが党の反対は
総理、中小企業の倒産指数よりははるかに少ないのでございます。どうしてしからばあのときあのような賛成が行なわれたか。それは田中
委員長がわが党の意見をよく取り入れたからでございます。なぜ
社会党、野党が反対するか、反対意見を取り入れないからでございます。すなわち、与党に真の寛容と忍耐のないとき、反対は必然の結果として発生するものでございまして、これはまさに自然発生的であり、突然変異ではございません。君子豹変ではございません。
池田さんの台湾領土問題におけるように君子豹変するようなことは野党にはないのでございます。
批判の第二には、
社会党は
具体策がない、批判ばかりしているという点でございます。これは全くのぬれぎぬでございます。
質問という形で
具体策を述べているのが宣伝されないだけで、取り上げられないだけであって、われわれの
一体質問とは何であるか、知っておって聞くということであります。聞くという形をとってあなたたちを動
かすことでございます。知らぬから
質問するなどと思う人がもしあったとすれば、それは学生、生徒のなせるわざであって、国会の
質問ではございません。せっかく
社会党が提唱した
具体策を与党が多数によって名前だけ取り上げてしまう。この常套手段のおかげで、わが党案は与党とんびにさらわれてしまうということが繰り返されてきているのでございます。すなわち、中小企業に例をとりますれば、中小企業金融公庫法、下請代金支払促進法、百貨店法、中小企業団体法――組織法、中小企業基本法、ともにわが党が先によりよき原案を提出しているのでございます。それを与党が握りつぶした。しかし世論がこれに賛成しついてきた。そこで与党が、名前は同じで中身を骨抜きにして
政府提案と称して通したのが前述の法律でございます。歩み寄った結果は、結局名前は同じだが、骨抜きとなってしまい、下請代金支払促進法が支払遅延
防止法と名前まで塗りかえられ、罰則と団体交渉権は骨抜きにされ、その結果が、それ、いまあらわれている六十日と規定してあるにもかかわらず、台風、お産の手形で、中小企業が法律施行後もなお苦しんでいるのが今日の実態でございます。全く
政府の
責任と言わなければなりません。
社会党に政策がない、
具体策がないというのは、具体的事実を故意に曲げたか、悪口せんがための悪口か、しからずんば、知らざるがゆえに発表された群盲象をなでるところの漫画風景でございます。中共貿易またしかりです。教科書無償法もしかりでございます。やがてこうなることでございましょう。この
意味において、わが党は決して空理空論ではない。
理事さん、わが党こそが与党の先達をつとめているのでございます。
次に、私は
政府予算の誤謬をえぐり出すために、中小企業に実例をとってみたいと思うのでございます。
総理、特に聞いていただきたい。二月の倒産実態はいかがでございます。まさに野党が指摘したとおりの結果を露呈いたしております。件数にして二百三十八件、金額にして三百五十一億円、不渡り枚数は七万七千余枚でございます。これは一日平均にいたしますと、二月は一日約八件になります。そうでしょう。同時に、金額にして一日十一億余でございます。これを前年同月との比率をいたしますと、二七%増と相なっておるのではございませんか。去年の十一月から記録は更新され続けでございます。戦後最高でございます。
世界最大でございます。
政府の打ちました緊急な施策は焼け石に水と言わなければなりません。事態はまさに深刻と言わねばなりません。
一体、この
予算を通すことのみにきゅうきゅうとしていて、まさに倒れていくその中小企業に対していかなる手を打とうとなされるのでございましょうか。まことに遺憾と言わなければなりません。私は本案に賛成できないところのその
理由を次のようにえぐってみたいと存じます。
すなわち、中小企業の倒産につきまして、これは意見の相違でなくて、
総理、あなたはその事実の誤認を押しつけていらっしゃるのでございます。
原因は、いわく思惑である、こうおっしゃる。しかし、これは全くの
責任転嫁もはなはだしいと言わなければならない。もしそれ、あなたのおっしゃるとおり思惑がありとするならば、それは零細、中小企業にあらずして、あなたが許可をしていらっしゃるところのデパートにあり、あなたが許していらっしゃるところの三品市場にこそ毎日思惑とギャンブルが行なわれているのでございます。この最大の
原因は
一体どこにあるかといえば、
日本の
経済の本質をながめてみなければなりません。それは
世界でまれに見る金利が高くして賃金が安いということでございます。ところで、金利はますます高きを望むのが人情でございます。水は高きより低きにつきますが、金は金利の低きより高きにつく。人間また賃金の低きより高きを追うていく遊牧の民である。(笑声)ところで、まことに残念なことに、
世界一高いという金利よりもなお高いものがある。それが
日本の物価の値上がりでございます。
日本の物価の値上がりが銀行預金金利に上回ることは、やがて
国民の預金意欲を喪失することを
総理がよく御存じでございましょう。預金していくよりは買ったほうがよろしい。
ところで、利回りを求めて、この金は金融市場から証券市場へと流れていきました。すなわち、銀行よさようなら、証券さんよ今日はでございます。ところが、証券市場に流れましたところのその金が、見ると聞くとでは大違いの証券市場、貿易の自由化の危険と、頼みにしておりましたところのアメリカ市場からの資金、すなわちこれが利子平衡税で一とんざを来たし、結局ここに思惑を生じ、やがて証券市場に流れた金が三品市場へ、三品市場へと殺到したのでございます。すなわち、糸へん、雑穀、特に大豆、小豆のごときは赤
ダイヤという小説まで生んだのでございます。つなぎの場はかくして、ギャンブルの場となり、つなぎの場はやがて射幸の場とかわったのでございます。まさにあなたたちの
責任でございます。生産のための原料のつなぎの場であったところの三品市場がギャンブルの場、思惑の場と変わっていったのでございます。そのために人波を食らって溺死、倒産したのが中小企業といわねばなりません。生き残ったものも、なお値ぎめのときに高くて製品を納めるときに安くなる、いわゆる原料市場の相場に左右されまして、原料高の製品安と、買いたたかれていったのでございます。これが中小企業の倒れる最大の
原因と言わなければなりません。
このことは内地に悪影響を及ぼすのみならず、やがて輸出にも悪影響を及ぼしてきました。貿易収支の赤字の
原因の一つがここに存すると言わねばなりません。すなわち、外国のバイヤーやインポーターは、
日本製品はコストが不安定である、動揺する、短
期間に動揺が激しい、安く買った予定の品もなお次の期には安くなって損をする、これが彼らのことばでございます。大量とか長期契約には不適当である。しかもその結果はスポット買いと相なり、輸出の伸び悩みの
原因、時に
ラッシュの
原因と相なっていることを知らなければなりません。はたして、この
予算にこれを解決するところの方針が盛り込まれていると言えるのでございましょうか。あったらお示し願いたい。貿易の自由化は、輸入だけは増加いたします。ところが帳じりは赤でございます。金融引き締めも、この金融市場におけるところの資金の流れも、ともに悪循環を繰り返しているのが今日の実態でございましょう。
そこで
池田さん、ぜひあなたにやってもらいたいことがある。しかし、はたしてやれるかやれないかを尋ねてみぬとわからぬから、尋ねてみます。
池田さんは二十八日の商工
委員会において、わが党の
質問に答えて、中小企業向け融資量の拡大のために次のように述べておられる。すなわち商工中金、中小企業金融公庫等の金融債を大幅に拡大して、市中でその資金を調達する。二番目に、
政府は、無利子貸し付けにかかわるところの中小企業近代化資金は、これをだんだんに改めて、長期にして低利融資に切りかえる、すなわち、言うなれば、これは金融ベースに乗るものを対象とするという
意味でございましょう。ところが問題は、自民党の中小企業
対策特別
委員会にございます。なぜかならば、特別
委員会の骨子は零細企業擁護でございます。金融ベースに来るものではございません。
政府資金の減少ではなくして、
政府資金の大量投入でございます。意見がまっこうから対立しているのではございませんか。通産省、
一体これをとってどうするつもりでございましょうか。実現は非常に困難と相なると存じます。なぜかならば、今日、商工中金の金融債の発行右利回りを引き上げれば、
総理の言うごとく、つまり金融ベースに乗せれば、貸し出しの金利を下げるという目的が不可能になるのでございます。一番目に、金融債を市中売りする場合、今日では皆さん御存じのとおり、ほとんどが銀行、金融機関がこれを引き受けておってくれるのでございます。ところで、市中銀行が資金難の今日、なお金融債を仰せのとおり引き受けたとするならば、
一体どういう結果が生ずるか。銀行は、いままで中小企業に向けて貸し付けていたものを金融債に振り向けるだけであって、絶対量にこれがつながるということはきわめて疑問と相なるのでございます。タコが自分の足を食って生きているに似たやり方でございまして、まさに称してこれをタコ足
経済と言わなければなりません。専門家の
池田さんのはずでございます。どこかに間違いがあることと存じます。こんなことで中小企業の倒産がはたして救えるでございましょうか。党の意見と
総理の発表が食い違う。そこで事務当局は
安心して働けるでございましょうか。実現したとしても、タコ足不安がある上、その方法が対立している以上、どうしてよい案と言うことができるでございましょうか。その場限りの言いのがれであると言わなければなりません。いままさに中小企業は倒れんとしておる。倒れつつある。私がものを言うているこのときにも倒れているのです。そんなときに、こんなゆうちょうなことを言うておられて、それで助かるでございましょうか。助からないと言わなければならない。したがって、そんな
予算はずさんな
予算といわなければならぬわけです。
池田さん、あなたの余命は幾ばくあるかは私は存じません。しかし、市の通るところ、毎日死傷者の発生が絶えておりません。運輸大臣御存じのとおりです。産業の営まれるところ、毎日中小企業の倒産が続出していることは明らかな事実であると同時に、厳粛なる事実でございます。
国民の不安、識者の憤りもまた、この事件の増大とともに伸びております。その不安のピークは、やがて中小企業倒産は五、六月、交通
事故はオリンピックのころと識者の意見が一致しているようでございます。にもかかわりませず、大臣は、成長面をのみ高く大きくうたいあげて、倒れゆくものは顧みもしない。大企業は語り合い、話し合い、その恩恵に浴すれ
ども、中小企業や労働者は、大会が行なわれ、会合が行なわれても、顔は一度も見ることができない。いわんや恩恵をや。アフターケアは公約のことばのみに終わっているようでございます。経企庁の長官、ただ一度、
国民、中小企業等の店の主婦が
総理の笑顔に迎えられ、やさしのことばを聞く
機会がございます。それは選挙演説のときだけのようでございます。これでもなお民主政治と言うことができるでございましょうか。賛成できない
理由の一つでございます。
中小企業は倒れ、農村青年がその夢と希望を喪失するような
予算には、遺憾ながら良識ある者の賛成できないところでございます。資本蓄積の美名に隠れ、毎年繰り返されていくところの、その蓄積された資本は、
一体だれのものとなることでございましょうか。「ミンナニイイヨ」のキャッチフレーズのもと、集められました膨大な
予算、それは、ことしもまた大企業中心は投入されていくのでございます。ただ
国民はそのおこぼれをいただくのみ、こんな政治をなおよいということは、
総理を取り巻く一部の人か、ないしはおせじを言わねば首のあぶない人人か、それともあなたの政治によって得をする一部の企業家のみでございましょう。
池田さん、いまはあなたのことばが通用するが、はたして後世に通用するでございましょうか。いまは知らず、歴史は
あとに残った者が書く。後世の歴史家は必ずや、
池田は、
日本経済復興を急ぐのあまり、大企業家をして中小企業者のしかばねを乗り越えさせ、
国民をいけにえにした。米国との交わりの深きにおそれ、中国との貿易におくれをとったと書くでございましょう。そんな
予算には反対することが愛国者の
責任と言わなければなりません。
人つくりを言われる
池田さん、あなたの人の範疇は何でございましょうか。
池田総理、あなたの人の範疇は何でございましょうか。あなたは、演説にあたっては最大級の形容詞をもってし、
質問に答えるに臨んでは、時にいたけだかをもってせられるようでございます。心は、自己のものが最高だ、それを人に押しつけるということだろうと思います。あなたのモットー、寛容と忍耐とはどんな関係があるでございましょうか。寛容、忍耐とは、人の意見をしんぼうして聞いているときの
状態を言うのだけではなくして、良薬は日に苦くとも、これを取り入れて消化し実行することだと思うのでございまするが、あなたの忍耐は聞くだけ、答えるだけでございましょうか。人の意見、反対派の意見を取り入れることは決してその人の恥ではないと存じます。私は、拝啓
池田総理大臣殿と書いたあの作家水上氏の意見を取り入れられたところのあなたの行為はりっぱだと思っております。なぜ野党の意地は正しくとも取り入れられないのでございましょうか。寛容ではなく狭量という、またのことばは、そういう態度をイン・テイ・ズブというようでございます。訳していんぎん、丁寧、ず太いというのでございます。あなたはいずれをとられるのでございましょうか。
それにつけても惜しまれるのは高碕達之助先生でございます。あの方こそ当代一流の政治家、
世界的な実業家というべきでございましょう。すなわち、人の意見を取り入れるにあたっては、人種、派閥の区別によらず、その人の誠意とその人の意見の本質によられたのでございます。たとえば私の思い出の中にもその一例がございます。
日本、アメリカ、インドネシアの三角貿易によるところの
日本繊維製品の輸出振興策がそれでございます。エジプトヘのプラント輸出方式がそれでございます。アメリカヘの繊維及び雑貨の輸出
対策をはじめ十指に余るのでございます。その人の死後なおこのことは行なわれているのでございます。思い起こすも心あたたまる問題でございます。
日本経済とともに相手国の
発展にも効果の多いことでございます。統計の示すところ、高碕
経済企画庁長官、高碕通産大臣のおりは、中小企業の倒産の例も少ないのでございます。中小企業者にとって、国際収支にとって、時の氏神と言うても過言でないと思います。
社会党は反対のための反対はしたことはございません。
政府の施策がよければよいと申します。
政府の施策が誤謬に満ち、その
予算がわが党の
質問によってずたずたにされる、それでもなお取り入れられれば私
どもは賛成にやぶさかでないのでございます。
しかし
総理、もう一つ具体的な問題を申し上げまして結論にしたいと存じます。道路の速度制限が四十キロだ、そこで八十キロ、百二十キロのスピードを出した。直ちに罰金、免許状褫奪でざいましょう、運輸大臣そうでしょう。ところが、手形発行については六十日という規定があるにもかかわりませず、その三倍、四倍の台風、お産、七夕が横行しても
政府は何ら手を打とうといたしません。その罪、及ぼすところ、前者より後者がより大きいにもかかわらず、前者は罰せられ、後者はその罪を問われないのは
一体なぜでございましょう。前者は貧しき労働者、中小企業が多く、手形発行者には政治献金元の大企業家が多いからではないかと思いたくなるのも常です。弱き者は罪を問われ、強き者は罪を問われない、これが
池田政策でございます。どうしてそんな政策に賛成することができるでございましょう。
政府も中小企業
対策について反省はされたようでございます。問題は実行が伴うかどうかということでございます。
大蔵大臣は、手形に関する本
委員会の私の
質問に対しても、体罰をもって臨むと言われました。そう答弁がありました。その実行ははなはだ疑問が多いと言わねばなりません。なぜか、もし実行するとするならば、それはいつの日、いかなる方法によって行なわれんとされるのか。つまびらかでございません。もしそれを行なうとするならば、いまここでやらねばならない問題があることを申し上げたい。すなわち小切手不正発行は
一体放置されたままではございませんか、なぜかならば、この規定は三十年以前からあるにもかかわらず、犯例は多くあれ
どもこの小切手法の適用された前例を見たことがないのでございます。すなわち小切手法第三条に規定する過振りは、担保、預金以上の振り出し発行者であり、不渡り小切手の元凶であるわけ、これは信用取引の手形を過当に発行した不渡り手形と軌を一にするものでございます。
大蔵大臣よくおわかりのとおりでございます。
総理もその道の専門家ですからよくおわかりでございましょう。同法七十一条では、この過振りに対して金五千円の罰則を規定しているのでございます。三十年前の五千円は今日のまさに五十万円といわなければなりません。これはこの罪を重要視した証拠でございます。にもかかわりませず、現行小切手法の
昭和九年一月施行以来、この適用が一回も行なわれていないのでございます。
一体どうしたことでございましょうか。当局において方法論さえ一致していないのが今日の実態でございます。
大蔵大臣、御存じのとおりです。放置されたままでございます。一方受け取り手形を、今度は、銀行で割った後にこれが不渡りになった場合、発行者でなくて割った中小企業に対してはどうなるか、これがたいへんだ。当座取引と貸し出し取引が三年間停止、もちろん融資取引も停止でございます。過酷な罰が課せられていると言わなければなりません。まさにこれは閉門仰せつけと言わなければなりません。与えるものは上に厚く下に薄い、罰則は上に甘く下にきびしい。これでは百年河清を待っても、とうてい中小企業の業界は正常化することはできないと言わなければなりません。正常化する
予算が組まれていないから反対でございます。手形、小切手の
期間は、リセッションのたびごとに、金融引き締めのたびごとに、それがきっかけとなって
期間の延長の一途をたどっているのでございます。大臣、しわの集積が延長となり、
政府の
経済政策が
期間延長の
原因となっているのでございます。
池田さん、町に声がある。
池田勇人鬼よりこわい、にっこり笑って税を取る。その税は一日の待ったなしでございます。延長すれば高金利を召し上げられるのでございます。大企業の手形及び小切手の延長は黙って見ておきながら、
国民の納税延長は絶対に許さないというのがいまの
政府であり、
予算の組み方でございます。こんな
予算編成には、
日本国民である以上、納税者である以上は賛成できないと思うのでございます。もしこのまま放置するならば、
政府はみずから
責任を負うべきであり、その証拠としてやれることを申し上げてみます。納税の場合に手形や先付小切手による納税を許すべきであり、その用意があるかないかと尋ねたいのでございますが、おそらくこれも答えができぬのでございましょう。それもなし得ないならば、せめて手形発行者に発行日記入を義務づけることが、せめて今日の
政府になし得るわざだと思います。口に
期間短縮や刑罰を言いながら、発行者に発行期日の記入義務を免除しておって、どうしてそれができるでしょう。だからこそ、発行日の記入された手形は一枚もないのでございますよ。そんなことをして発行日の期日なくしてどうして六十日以上ということを規定することができるでございましょう。何をもって規定し、何をもって罰則を当てはめるでございましょうか。少なくとも期日記入の義務には、税金もかからなければ、
予算も要らぬのでございます。あなたの腹一つでできるのでございます。刑罰を科するという勇気があるならば、まず前にこれをなすべきだと思うのでございます。しからずんば、かご抜け法と相なること、また火を見るより明らかであります。
かくて中小企業への革命的施策、企業庁長官の言うところのアフターサービスは美辞麗句と終わり、
国民の夢と消え去っていったのでございます。うそを言ったことがない、うそを言わないというその
総理は、この
予算を通過させることによって、うそを言いましたという結果に相なるのでございます。かかる
予算には私は絶対賛成できないのでございます。
これに引きかえ、わが党案のよさはいかがでございましょう。第一から第四に至るまでずらりと並べてございまするが、私はそれをいまここで申し上げることは避けます。ただ、
日本社会党のこの組み替え
予算が実行に移されるならば、農民、中小企業が生業に安んずることができる。農村青年は失うた夢、希望を取り戻すことができる。労働者が
安心して弄んで働ける
予算でございます。イギリスのごとく、アメリカとも中ソとも自由に貿易して貿易収支を黒字で埋めるということのできる
予算でございます。まさにこの
予算が通過することを祈念するゆえんでございます。
以上、
政府案に反対、民社党案に反対、わが党案に大賛成、皆さんの賛成を求めて討論を終わるものでございます。ありがとうございました。(拍手)