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1964-02-28 第46回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十八日(金曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       山本 勝市君    亘  四郎君       石野 久男君    大原  亨君       加藤 清二君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    村山 喜一君       山田 長司君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇者       小平  忠君    玉置 一徳君       永末 英一君    加藤  進君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府総務副長         官       古屋  亨君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     大竹 民陟君         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      西田  剛君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (経理局長)  上田 克郎君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  鹿野 義夫君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (管財局長)  江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農政局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         運輸事務官         (航空局長)  栃内 一彦君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         運 輸 技 官         (航空局技術部         長)      大沢 信一君         会計検査院長  芥川  治君         会計検査院事務         総局次長    平松 誠一君         会計検査院事務         官         (第二局長)  樺山 糾夫君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十八日  委員稻葉修君、江崎真澄君及び松浦周太郎君辞  任につき、その補欠として亘四郎君、藤本孝雄  君及び橋本龍太郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員橋本龍太郎君、藤本孝雄君、亘四郎君、大  原亨君、村山喜一君、山田長司君及び玉置一徳  君辞任につき、その補欠として松浦周太郎君、  江崎真澄君、稻葉修君、横路節雄君、五島虎雄  君、多賀谷真稔君及び永末英一君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員永末英一辞任につき、その補欠として鈴  木一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  この際、辻原弘市君より、昨日の航空機事故の問題について緊急に質疑をいたしたいという申し出があります。この際、これを許すことに御了承願います。  その発言は、日本社会党委員山田君、村山君及び大原君の三名の一般質疑の持ち時間の範囲においてこれを許すことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。辻原弘市君。
  4. 辻原弘市

    辻原委員 すでに新聞に報道せられておりますように、昨日大分空港において富士航空鹿児島発コンベア240機が着陸寸前墜落事故によりまして乗客三十七名中二十名の死亡者を出すというきわめて遺憾な、しかも痛ましい航空事故が突発いたしております。私は最近の相次ぐ航空事故にかんがみましてきわめて遺憾であり、政府施策としても早急に対策を立てる必要のある重大な問題であると思いますので、党の決定に従いましてただいまから重要なこれらの諸点につきましてお尋ねをいたし、さらに政府の今後の真相究明、またそれに対する所要の対策経過を見まして、いずれまた機会をあらためてこれらの問題について徹底的に究明対策を樹立してまいる考えであります。  そこで、まず昨日起きました事故についての経過真相、こういったものを運輸省当局から詳細御説明を賜わりたいと思います。
  5. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は、本予算委員会がたまたま開かれておりますので、御質問のある前に出て、われわれが了知しておる作目富士航空事故について御報告いたそうと思っておったのでございますが、御質問でございますから、機会を失しまして恐縮でございますが、いま私どもが正式に察知し得ました事故状況をまず御報告申し上げます。 一、事故概要   富士航空株式会社所属コンベア 式CV−二四〇型(双発・四〇旅客座席)JA五〇九八は、昭和三十九年二月二十七日機長三島好美外三名が乗り組み、旅客三十七名及び同乗乗り組み員一名を乗せ、同社の九〇二便(鹿児島大分東京)として十四時四十六分鹿児島空港を離陸し、大分空港に向け飛行した。   同機は、十五時三十二分大分空港滑走路一二から着陸し、接地後の滑走に移ったが、機体が停止せず、滑走路延長上の堤防に激突し、裏川に転落し、大破炎上した。  この事故で、旅客十八名及び客室乗務員二名が死亡し、残りの二十二名が負傷した。負傷者は五カ所の病院に収容された。 二、航空機の要目及び経歴   発動機 二基 各二、四〇〇馬力   巡航速度 四三二キロ時   航続距離 二、八八〇キロ   耐空証明有効期間 昭和三十八年五月十四日より昭和三十九年五月十三日までに至る   製造年月日 一九四八年(昭和二十三年)三月二十八日   製造飛行時間 三一、四五〇時間   前回オーバーホール後の飛行時間一、五六七時間   前回点検後の飛行時間 六八時間三、機長及び副操縦士の略歴及び最近の飛行時間   機長 三島 好美 大正十四年三月十日生、昭和十九年三月米子航空機乗員養成所卒昭和三十七年二月富士航空株式会社入社、総飛行時間五、五六八時間(うち、旧陸軍、中華航空航空自衛隊における飛行時間四、四一六時間)、定期運送用操縦士第四九〇号(昭和三七、一〇、一九)   副操縦士 管野 辰雄 昭和三年五月二十四日生一、昭和三十七年十月富士航空株式会社入社、総飛行時間二、七四八時間(うち、旧陸軍海上自衛隊における飛行時間二、二六四時間)、定期運送用操縦士第五五四号(昭和三八、六、二八)四、気象昭和三十九年二月二十七日十五時現在)   概況 快晴   風向 北東   風速 一二ノット(六メートル)   視程 二〇マイル(三六キロメー      トル)   雲高 一二、〇〇〇フィート(約      四、〇〇〇メートル)   雲量 一〇分の一   気温 摂氏九度五、富士航空株式会社概要   創立年月日 昭和二十七年九月十三日   社長名 松嶋 喜作   資本金 十億八千万円   事業内容   路線    東京−高松−大分鹿児島    鹿児島種子島    鹿児島屋久島    種子島屋久島    新潟−佐渡島    大阪−新潟   免許業種 定期航空運送事業、    不定期航空運送送業及び航空    機使用事業  所有機材   コンベアCV−二四〇型 三機    (うち一機が今回の事故機)   D・Hヘロン      一機   ビーチクラフトCI−一八S               一機   パイパーアパッチ    一機   セスナ一七二      一機   ベル四七G       四機   シコルスキーS−六二——一機  所属航空従事者    操縦士 四十三名    整備士 二十二名六、措置   事故原因調査のため、運輸省航局事故の情報を入手した後直ちに係官三名を現地に派遣し、目下調査中である。  以上が事故概要でございます。  なお、この負傷者に対しましては慰問をし、なくなられた人に対しては最善の弔意の方法を尽くすという言明事業者より得ております。私も、このことに対しまして監督者として責任を痛感し、つつしんで国民の代表である諸君におわびをいたします。
  6. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまかなり詳しく報告があったのでありますが、考えてみますと、戦後から今日まで航空事故の大きいものは数え上げれば約十回にわたっております。先月は羽田空港において日東航空飛行機が、比較的不幸中の幸いで小さな事故でありましたけれども、二名の死者を出しておる。その前には八丈における藤田航空事故昭和二十七年のもく星号以来数え上げてみますと民間航空、特に国内線において事故頻発しておるということを、この際私は運輸大臣にも想起をしてもらわなければならぬと思います。今国会におきましても、陸上交通ラッシュあるいは交通事故対策が非常に大きな問題として取り上げられておるが、陸上だけではなくて海においても船の事故が相次いでいる。またまた空の事故もかくのごとく頻発をしておる。陸海空まことに好ましくない交通事故というのが、ここ数年来累増しているということを考えた場合に、何か歯車がどっかで抜けているような気がいたすのであります。したがって、この際政府としても従来の対策施策の上に手抜かりがないか、こういったことを根本的に究明してまいる必要があると私は思うが、まずそれらについての運輸大臣決意を承りたいと思います。
  7. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 海陸空事故頻発いたしますが、運輸行政を扱う者として遺憾にたえません。私は細心の注意を払いまして、事故の絶滅を期するよう努力いたしておりますが、微力、思うようにまいらぬことをはなはだ残念に存じます。
  8. 辻原弘市

    辻原委員 微力で何もできないならやめてもらう以外しかないのですが、そうではなくて、こういう事故頻発によってとうとい人命が失われているということは、池田さんのよく言う、いわゆる先進国家の仲間入りをした日本としては、これは対外的に考えてもまことにお恥ずかしき次第だ。また、国民に対しても相すまない次第だ。この際、異常な決意を持ってこれらの原因究明に当たり、しこうしてまたその対策に全力をあげるという、私はまず政府当局責任者言明がなければならぬと思う。ただ口先だけで、事故に対しては申しわけない、なくなられた方々なり国民におわびするといったような、おざなりのことでは相すまない。そのことを言っている。腹をくくって対策に乗り出してもらいたいということを言っている。いま一度お答えを願いたい。
  9. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 もちろんあなたのおっしゃるとおり、私は非常な決意を持って諸姉のなにをやっております。たとえば、航空事業につきましては、これはどうしても資本が希少であって、資力が十分でないということは、要員の訓練、機種の購入等々に不便であるからと考えまして、今後は飛行機の新免許事業というものは大体許さぬということに決意をいたして、実行しております。また、全日航ほか日航外航日航ですが、内航につきまして、既存六社というのがありますが、それが分立していることは、要するに企業内容が脆弱であると考えまして、就任後直ちに日航を除いての既存六社のそれぞれ合同もしくは業務提携を推進しております。この前事故を起こしました日東航空北日本航空富士航空は、来たる四月一日をもつ三二社合併することに、合併の調印ができております。東亜航空、中日につきましては、おのおの全日空なり日航なり業務提携をせしめて、やはり基盤強化をやっております。  それから鉄道事故につきましては、これまた資金が思うようにいかぬということもその一つと考えまして、極力予算獲得に努力いたしましたが、国家財政上今日の程度でやむを得ぬということになっておりますが、今後国鉄につきましては、基本問題調査会をやりまして、企業公共性企業性をいかに調和するか等を研究いたしまして、少なくとも財政の面において、いわゆる国鉄の金の面において不足のないように努力いたしております。  海難につきましては、同様いろいろな施策をやっております。海難のおもなことといたしましては、海の通路でございますから、港湾、それから水路等々のしゅんせつその他の新五カ年計画を立てまして、事故の起こらないように水路をよくし、同時に港をよくするように努力いたしてまいりたいと思っております。国家現状におきまして、財政現状におきまして、でき得る限りの予算獲得を目ざしまして、そうして施設の画に遺憾なきよう期してまいりたいと考えております。私はそういう考え方でございますから、どうか今後とも諸君の御支援を得まして、予算が十分とれるように御助力願いたいと思います。
  10. 辻原弘市

    辻原委員 そこで、事故原因について具体的にお尋ねをいたしてまいりたいと思いますが、第一に事故一般的に原因と考えられるものは、航四機の場合、一つは不測の天候異変が第一であろうと思います。第二には機体に問題がないか、第三に乗員その他の資質あるいは健康状態等に問題がないか、経営上無理がないか。まああげればその他にもあるでしょうが、大きな点は大体それらの四点に尽きるのではないかと私は思います。  そこで、まず第一の問題を考えてみますると、先刻運輸大臣から御報告のありましたように、また昨日のことですからこれはわれわれも知っておる。きのうは、新聞の報ずるところによりましても、大分空港では久しぶりの快晴であったといわれる。しかも、この飛行機は、羽田を出発し、大分を経由し、鹿児島に到着し、定時に折り返し大分空港に到着する予定で、その着陸寸前のできごとである。こう考えてみると、突発的な天候異変あるいは気象条件の、悪さということにおいて起きた事故でないというのが、一般的にいまの時点で観測されるところである。そうしますると、次の問題としては、一体機体がどうであるかということであります。いまの御報告によりますると、このコンベア機は一九四八年、昭和二十三年の製作に基づくものであり、飛行時間も相当たっておる、オーバーホールも一、二回やっておるようであります。そういたしますると、だれが考えても、この飛行機はもういわゆる中古機に属するのじゃないかというふうに考えられる。一体この種の飛行機は、はたして貴重な人命を運び、最も安全を確保しなければならない定期航空路航空事業に従事するに適当かどうかという疑問が何人にも、国民の間にも起きるだろうと私は思います。飛行機に対して信頼感がなければ乗る人はない。しかし、一般の人にそれがわからず、乗せて事故が起きるとなっては、これはたいへんな監督上の問題である、政策上の問題であると私は思う。したがって、一体この飛行機乗客を乗せるにふさわしい飛行機なのか。昭和二十二年製作といえば、すでに十六、七年という年月がたっている飛行機だ。こういう飛行機をいつまでも使うというような民間企業のあり方が、はたして適切であるのかどうか、私は運輸大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  11. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 飛行機の機能その他につきましては、専門的になりますから技術部長をして答弁させます。そして、しかる後に私がいまの経営の問題についてお答えします。
  12. 栃内一彦

    栃内政府委員 ただいま仰せられましたように、飛行機事故はいろいろの原因によって起こるものでございます。今回の場合、天候異変というようなことは一応考えられておりません。ただ、この事故機体の問題にあるのか、あるいは操縦士の過失にあるのか、あるいは両者が競合しておるのか、この点につきましては、現在航空局の専門の技術者調査に行っておりますので、生存者も多いことでございますから、あるいは目撃者も多いことでございますから、早晩事故原因究明されるものと思います。ただいまお尋ねの、今回事故を起こしましたコンベア240という飛行機でございますが、この飛行機は、現在国内で十四機使っております。それから、それではそういう古い飛行機で非常に不安ではないかというお話もございました。もちろんこの飛行機は、最新式飛行機ではございません。しかし、御承知のように、DC3というような——現在はあまり使われておりませんが、非常に優秀な飛行機は、かなり長い間第一線飛行機として使われたわけでございます。いま問題になっておりますコンベア240にしましても非常にいい飛行機であるということで、かなり広く使われたわけでございます。統計によりますと、出産されたのが全部で百七十六機というふうに「ジェーン」の年鑑に出ております。このうちICAOの統計によりますと、現在百十一機が世界じゅうで使用されておるということでございます。一番多く使用しておる会社は、私ども調査によりますと、アメリカン・エアラインの二十一機ということになっております。したがって、型は古い、あるいはこの飛行機お客に対する関係におきまして、機内において騒音がかなりある。すなわち、音の面からお客快適感を与えないというような欠点につきましては、指摘されておるようでございますが、現在相当まだ現役として使われておるという点から見まして、機材が旧型であるということで直ちにこの飛行機が技術的に見て不安であるというふうには考えられないと思います。また、オーバーホールにいたしましても、これは正規のオーバーホールをやっております。したがいまして、最終的にこの当該機材に何らかの欠陥があったのか、あるいは単に操縦士のミスであるのか、あるいは両者が競合しておるのかという原因究明は、まことに恐縮でございますが、若干の日時を拝借いたしたい、かように考えております。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 飛行機寿命というものは、安全性を確保する上において一体運輸当局としてはどの程度に考えられておるか、それを、飛行時間、製作型等をあげて、ひとつこの機会にお知らせを願いたいと思います。
  14. 大沢信一

    大沢説明員 寿命と一口に申しますけれども、数字的にきめた寿命はございません。何万時間、何千時間で寿命という基準はございません。ただ、疲労という問題が当然起こりますので、疲労試験——これは実際の飛行に似せた実験でございますが、こういうもので強度の低下がどの程度かということを調べる方法がございます。先ほど局長から申し上げましたDC3の中には、七万時間、八万時間に達しているのもたくさんございます。したがって、いまのコンベアが三万時間で寿命がきているということにはならないと思います。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 私は、ここが非常に大事な点だと思います。というのは、企業というのは、一機数億もするような飛行機を使っているのですから、たとえば富士航空の場合をあげてみても、資本金がわずか十億です。だから、企業としては、一機を購入するというこの購入費の負担は、経営採算面に大きな影響を与える。したがって、事故が起こらなければ、この型は、比較的外国で使われた実績から見て、よい飛行機だ、常識的にそう言われたならば、できるだけいつまでも使いたい、これが企業経営者立場だろうと思います。しかし、乗る乗客立場から考えてみたならば、そういう企業採算的な立場だけで航空事業が運営されておったのでは、これはたいへんなことである。少なくとも科学的、技術的に安全性ラインというものはこの辺にあるのだということは、監督当局にあってしかるべきだと私は思う。それが全然ないということは、これは重大な問題です。たとえば自動車を考えてごらんなさい。自動車だっておのずから常識がある。陸上を走ってこれは落っこちるものじゃない。横飛びに飛んでいくものではありませんよ。しかし、おおむね自動車寿命なら寿命というものは、機械の一番調子のよいのは、通例二万キロから四万キロくらいのところとされている。そうして、オーバーホールはせいぜい一回か、よくやって二回。しかし、それ以上のあれは。ポンコツです。飛行機だって常識があってしかるべきだと思う。コンベア機というのは評判がよいから、比較的性能がよいから幾ら古いものを使ってもよいという理屈にはならぬ。この際運輸大臣——基準がないなんということは、これは許されない問題だと思う。監督当局として基準なしに、それぞれ各社が適当な基準でかってに飛行機を認めていくということ、ただ性能、しかもその性能も、安全性というよりは、むしろ企業間の競争に耐え得る、速度とかあるいは室内の装飾とか、あるいは型とか、あるいは操縦が容易であるとか容易でないとかいったような面だけでもし考えられておるとするならば、これはゆゆしい問題ですから、運輸大臣として一体そういうことについて常日ごろ何らか検討、何らかの指示があったのかなかったのか、私はこの機会に承っておきたい。
  16. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は、安全を中心にして、監督を厳正にいたして今日までやってまいっております。技術的に十分検討いたしまして、しこうして、それが経営資本の過小その他で、そういうことに重一点を置かずに企業面のみでやってはいかぬという趣旨にかんがみまして、私は、民間航空、弱小航空事業の合同を推奨して、基盤強化につとめ、基盤強化の結果は、いま辻原委員が指摘されたような点も考えられると思いますので、その点に力を入れ、もちろん現在におきましても、いま申しましたように、ただ便利である、ただ古くてもよいというだけではやっておらないのでございます。検査を十分いたしまして、そうして、その性能をよく調査してみないと使わせないようにしておるのです。どうぞ御了承願います。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 了承できませんので、要求をいたします。それは、いま技術当局の話によれば、いわゆる技術上の安全基準というものについては、これは一応法律なり規則のあることは私も知っております。知っておるが、常識的にだれが考えてもこれは安心だということについては定まった見解がないようであります。もちろん時間により規制することもむずかしいでしょう。そういう時間によってじょうずに使っている、整備のうまくできている場合とできていない場合では違うでしょうが、おおむねの基準があってしかるべきである。その基準に到達した飛行機は、かりに使えても使わないくらいの巖密さがあってよいと思う。したがって、この際、それらの飛行機使用に対する基準というものを明らかにして、そうして、いま各群小民間企業のすべてにわたってそれぞれ使っている機種、時間数、整備状況等をあらためて点検をして、その基準に合致しないものは、当局としてそれぞれ各企業に対して勧告をするなりあるいは所要の相談に乗るなり、当然総ざらい点検をする必要があると思う。したがって、このことはあらためて私は要求をいたしたいと思うが、運輸大臣としてその御用意がございますか。
  18. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 基準を、ここでどの基準がいいかということはちょっとお答えいたしかねますが、なるべく御趣旨に沿うような資料を提出せしめます。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 資料の提出もけっこうですが、私の申し上げている真意は、いま直らにないと言ったのですから、いま直ちにここで言えということを私は申しておりません。早急に運輸当局で関係者を集めて、ないならばその基準がいかなるところが適切であるかを検討をして、その基準をひとつお示しを願いたい。そしてその上に立って、いま私が申しました各会社のそれぞれ使用している飛行機現状というものを再点検をした上で、その基準に合致しないものは、かりに使えると考えられてもあえてこれを使用せないという強硬態度まで踏み切っていただきたいということを要求しているのです。
  20. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 了承いたしました。
  21. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんので、まだいろいろ尋ねたいことがその点にもありますが、次の問題に移ります。  特に航空事故の場合にやかましく言われるのは、いわゆる整備、事前の点検に遺憾がなかったかどうかということであります。そこで、私もいろいろこれらの相次ぐ航空事故について非常に憂慮いたしましたので、若干常日ごろ調査もいたしてみました。そこでこの整備について考えられることは、ともかく飛行機を操縦するということと整備をするということのどちらに航空事業というものはウエートがあるかといえば、私はむしろ整備にあると申しても過言でないと思う。一体それほど重要な整備というものを、はたしてそれぞれの航空事業を行なう民間会社が完全な整備工場を独立して持ち、完全な整備が常日ごろ行なわれているかということに若干疑問を持つわけであります。一体各群小の民間航空会社の中で完全に自分の整備工場を持って整備を続けているという会社が何社ありますか。ここでお示しを願いたい。
  22. 大沢信一

    大沢説明員 今日完全な整備工場を持っておりますのは、日航一社でございます。
  23. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとほかに整備工場はないのですか、はっきり……。
  24. 大沢信一

    大沢説明員 全日空は発動機をよその、工場へ頼んでおります。それから、その他先ほど大臣の申しました六社は、程度の差はございますが、主として日本航空あるいは大阪の新明和工業等に依存している部分が相当ございます。
  25. 辻原弘市

    辻原委員 バス会社でも、かなりのバス会社になりますと自分のところで使っている自動車については自分のところで完全に整備するという体制をとっておる。それでこそどんな緊急な場合、どんなに車が繁雑をいたしまして整備にいろいろ追われているときであっても、自社のものだけは、独立しておりますから、完全にできるという体制の上に完全な安全操業が続けられておるのです。ましてや整備が生命であるという航空事業において、自社の中で整備がやられないというこの民間企業のあり方に私は非常に問題があるのじゃないか。もちろん資本金あるいは経営規模、そういうところからこれは根本的な問題があるであろうと思うが、乗せていただく乗客立場から考えてみれば何となく不安を感ずるのは当然だと思う。現在たくさんあるが、日航だけしか整備工場がない、私も知っております。なぜ一体そういうことを前向きの姿勢で、前進させるような指導を今日までやってきておらぬか。整備のミスといったところでこれではなかなか調べようがないでしょう。問題はここにある。これらを解決するために何か具体、案を持っておられますか。また、企業はそれぞれ一体今後どうしようと考えられておるか、この点についてひとつお考えを賜わりたい。
  26. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 日航は、ただいま申しましたように、日本で唯一の整備工場を整備した会社でございますが、全日空その他はみな日航と連絡をとりまして、その大きなと申しますか、その会社自体多少の整備工場と申しますか、整備員は持っておりますが、それに余るようなもの、判断のつかぬようなものは、みな発見次第日航の整備工場で、連絡をとってやらしております。がしかし、御指摘のように、資本が小さいためにそういう点に欠くるところがあるということを考えまして、私は日航その他全日空にも、また既存の六社に対しましても、資本の充実をやって、そういうことのないようにひとつつとめていきたい、かように考えて合同さしておる次第でございます。
  27. 辻原弘市

    辻原委員 それぞれ合併を促進され、四月一日から、事故を起こした富士航空も三社合併に出発をされるようであるが、その企業合同の際に、完全な日航のような体制には至らぬでも、少なくともそれぞれの自社で整備工場が持てるというような経営のあり方であなた方は認可をされておるのかどうか、その点を承っておきたい。
  28. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私はそういうことによって資本を充実して、そしてそういう整備工場を十分させるようなつもりでやっております。全日航についても、ややもすれば営業中心のあり方では危険であるからというので、技術員を強化するように指導してまいっております。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 運輸大臣盛んに資本充実、資本充実とおっしゃいますが、一体各企業資本充実はとういう具体的な方向で進んでおられますか。その点について承っておきたい。
  30. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 増資その他資本を大きくすれば——同時に資本充実は、経済機構に従ってできるようにやっております。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵大臣、この機会に承っておきたいと思うのでありますが、航空事業というものはもう私が申すまでもなく、実に膨大な資本がかかる。しかも人命を預かる。しかも、危険性は少ないけれども、一たび事故が起これば非常に大きな事故を起こす、そういう性格のものです。とするならば、その経営、またその操業については徹底的な安全性というものを確保していかなければならぬが、それが運輸大臣の説によりますと、いずれも資本金の過小、経営採算面の悪さ、こういう点からなかなか思うようなことができないと言われる。とするならば、国において何らかの方法を考える必要があるのじゃないかということも一つの問題として出るわけでありますが、大蔵当局としては何か具体案がありますか。
  32. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日本航空に対しては、国がいろいろ援助をいたしておるわけでありますが、国内航空の問題については、民間企業が全日空とかいま問題になっております富士航空日東航空、いろいろなものがあるわけでありまして、国内航空そのものに国が補助するというような考え方よりも、ローカル飛行場の整備その他国が補助をしながらやらなければならないという問題がありますので、そのほうに重点を置くべきだと思います。航空会社の小さいものがたくさんできるということは事実不可能でありまして、運輸省がこういうことをだんだん整備していこうという方針で免許されたのだと思いますが、アメリカのような大きなところは別でありますが、日本のような狭い国においては、私は少数な、しかも内容の充実をした精鋭の会社に統合さるべきだ、こういう考え方が一番大きな問題だと思います。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 いま大蔵大臣のお話しになったようにそのことができれば、私は現在のような大小いろいろな形による事故というものはかなり防げるのじゃないかと思うので、合併の方向はわれわれも大いにこれは賛成であります。同時に、大蔵大臣もいま言われた在来のこの航空事業に対する国の一つの力こぶの入れ方というものも、もう一歩前向きで検討する必要があるのじゃなかろうか。もちろんそういうことに和なりますと企業努力といいますか、企業間における努力というものがやや低下するというようなきらいもありますから、一がいに言えませんけれども、このままではいけない。だから将来本格的に公共事業として、しかも新しい機種その他を購入していく上に何としてもいまの経営ではどうにもならぬという事態であれば、これは一たび免許したのでありますから、もしそういう事態になれば免許を取り消すか、しからざる別途の方法でする以外にこれは安全性を確保することはできないわけでありますから、この点はひとつ大蔵大臣も十分検討していただきたいと私は思うのであります。  次に、第二の問題について私は伺いたいが、それは、はたして今日の乗員の資質というものが十分であるのか、同町に、それに関連をして乗員の養成に遺憾はないのか、、確保に遺憾はないのか、この点を承りたい。どうでありますか。
  34. 栃内一彦

    栃内政府委員 ただいま乗員の問題についてのお尋ねでございますが、現在におきまして乗員の不足ということは事実でございます。この点は、数年前から非常な問題となりまして、いろいろな対策をやっておりますが、現在に至るまでまだ乗員不足ということは解消しておりません。今後も引き続き乗員養成に努力をしていく、また一定のレベルに達しました乗員をさらにレベル・アップしておくというような施策を通じまして、乗員の充実、また安全運航ということにつとめていきたい、かように考えております。現在具体的には、民間のパイロットの養成機関としましては運輸省で所管しております航空大学校一つのみでございます。そのほか養成の機関としましては、自衛隊の学校のほうに民間会社から委託をしておるというような措置も講じております。なお、現在自衛隊のパイロットで相当の経験のある人、この人を民間に導入いたしまして、訓練を施して民間で使用しておる。これは各社とも相当の数になっております。以上のようなことでやっておりますが、御指摘のように乗員の数というものは現在も足りない、こういう現状でございます。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 今度の平政を考えてみると、羽田を出発して鹿児島からまたすぐさまトンボ返りをやっている。ちょうど陸上でいえばよく問題になった砂利トラックと同じ方式なんです。こういうような企業の運航に無理がないのか。同時に、乗員が足りない、しかも乗員をトンボ返りでやって無理をさせるというようなところに——まあ原因はまだ究明しなければわかりませんが、快晴の日に着陸寸前にオーバー・ラインをやって失速をするというような、まあまあだれが考えても操縦上のミスではないかと思われるような乗員のミスが起きているのではないかと私どもは考える。こういうような操業の無理がどこに原因があって起きるのか。いまお話しのような乗員不足、こういう点にあるのか、それとも、いまたまたまさっきから問題の出ておる、四月一日からの三社合併を控えていろいろ言われておりますが、それぞれの三社が合併までにできるだけかせいでおこう、かせげるだけかせいでおこう。それは私は真相かどうか知りません。そういうことがあるのかどうか知りませんが、主導権を持つためにかせいでおったほうがいい、こういうことから無理な操業をやらしているのではないかというようなことも言われている。そこで一体、そういう無理が免じておるんじゃないかということについて、監督官庁としてはどう見ているか、私はこの点についてひとつお考えを承りたい。
  36. 栃内一彦

    栃内政府委員 ただいま乗員不足の問題につきまして御答弁いたしました。ただいま申し上げましたのは、一般的な問題について申し上げたわけでございます。今度事故を起こしました富士航空の当該乗り組み員というものにつきまして、事故後さっそく資料を見ました。一番先に私はこの資料を見たわけでございます。きめられた時間をオーバーして飛んではいないかという点を見ました。この点は制限の範囲内、非常に余裕のある時間というものが出ております。したがいまして、制限時間ぎりぎりまで当該操縦士が飛んでおったということはございません。それから今回は三名の操縦士が乗っておった。二名が配置についておりまして、一名は客室におった。このことは、客室におった操縦士は、決して単に一地点から一地点に移動するために乗っておったのではなく、いわば交代要員として乗っておった、こういうことでございますので、オーバーロードというような点は、私は今回のこの事件については考えられない。操縦士一般に不足しておるという点は率直に認めます。今回の事故は決して操縦士のオーバーロードによるものであるというふうには数字が示しておりません。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんからそろそろ結論に入りたいと思いますが、航空事業は免許制であるが、よく言われるのですが、政府の免許制によってやらせる事業というのは、免許まではこれはてんやわんやいろいろなことをやって、そして免許ということになるが、免許後は存外その企業に対しては関心を持たない、ということばは適切じゃないかもしれないけれども、法律その他によってきめられておる検査等についても比較的なおざりじゃないかという批判がある。私は航空事業については、そういうことがあったならばたいへんなことだと思うので、一体免許後それらの企業に対する定期的な検査、立ち入り検査等厳密に厳格に行なわれてくるかということをこの際承っておきたい。
  38. 栃内一彦

    栃内政府委員 ただいまの御質問の、免許後はルーズになるのではないかというお話でございますが、免許前におきましてはもちろん十分に審査いたします。その後におきましても、定時の点検検査というものは法令の示すところに従いましてやっております。それから法令に示す最低限度以上に、むしろ私どもの検査官等の能力の許す範囲内におきまして法令に許すぎりぎり以上に、できるだけ安全性の向上のための指導ということは、従来ともやっておる次第でございます。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 最後に私は、ただいままでお伺いをいたしてまいりまして、時間がございませんのでわれわれの具体的な要求、要望というものをすべて申し上げるわけにはいきませんでしたが、とにもかくにも、幸い今回の事故については、不幸なできごとではありましたけれども、その中で生存者がおられるわけである。特に操縦乗務員が三名とも比存しておられるわけであります。したがって、事故究明は容易である。えてして航空機による事故というものは、全員死亡ということでその原因究明が中途はんぱに終わっているというのが実情でございます。幸い今回は究明できるのでありますから、徹底的に究明して、今後この種の事故頻発するようなことのなきよう万全を期していただきたいということを要望いたしますとともに、なくなられた二十名の方並びに負傷せられた方々に対しては心から弔意と同情を表しますと同時に、先刻運輸大臣も申されましたが、政府としても十分指導いたしまして、これらのなくなられた方に対する弔慰あるいはけがをせられた方々に対する慰謝等の方法につきましては、ひとつ万全を期していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  40. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて辻原君の緊急質疑は終了いたしました。  次に玉置一徳君。
  41. 玉置一徳

    玉置委員 ただいまの航空事故に関連いたしまして、一言運輸大臣にお伺いをいたしたいと思います。  先ほどお話がございましたが、一九四八年、十六年前のかような古い飛行機をどこでも使っておるのかどうか、日本航空、全日空及びその他の航空会社に分けまして、事務当局でけっこうですから御説明をいただきたいと思います。
  42. 栃内一彦

    栃内政府委員 今度の事故を起こしましたコンベア240これは現在国内で十四機使っております。会社別に申しますと、北日本で五機、それから日東が二機、東亜が四機、ただいまの富士航空が三機、この三機のうちの一機が今度事故を起こした、こういうことになっております。
  43. 玉置一徳

    玉置委員 日本航空その他全日空なんかはどのくらいの年数のものを使っておるのか、お伺いしたいと思います。
  44. 大沢信一

    大沢説明員 日本航空が持っておりますDC4というのがございます。先般まで国内線に使っておりましたが、これには数万時間というような相当古いのがございますが、全日本空輸のバイカウントに圧倒されまして、現存使用しておりません。したがって日本航空の使用機はDC6Bクラス以上のものでございまして、比較的新しいものばかりでございます。全日本空輸は、先ほども話が出ましたDC3をまだ一部使っております。このDC3の中には、おそらく七万時間近いのがあるのじゃないかと思います。
  45. 玉置一徳

    玉置委員 航空機の整備検査はどういうようにおやりになっているのか、事務的にお願いします。
  46. 大沢信一

    大沢説明員 航空機に対しましては、法規で滞空検査という制度がございます。この検査に合格いたしますと滞空証明書というものを交付いたしまして、これがなければ航空の用に供せないという制度になっております。この有効期間は一年でございます。したがって、さっきのコンベアが、滞空証明の交付年月日を大臣が申されましたが、検査に合格いたしますと、一年たってまた同じ検査を受けるわけでございます。そのほかに、立ち入り検査の一種でございますが、年に一回は安全性向上検査ということで、これは飛行機そのものの整備のみならず、会社の整備組織から施設全般にわたりまして綿密な検査を行なっております。
  47. 玉置一徳

    玉置委員 その検査は整備工場のある日航の整備工場でおやりになっておるのですか。   〔委員長退席、松津委員長代理着席〕
  48. 大沢信一

    大沢説明員 日航の場合はもちろん日航でございます。それから全日空の場合は、発動機はよそに依存しておりますが、あと機体関係は大部分目礼でやっておりますので、全日空の工場でやります。その他の六社につきましては、いわゆる時間点検と申します二百時間ごとに繰り返すような整備、これはほとんど自社でやっておりますので、これらについてはそれぞれの整備基地でやっております。
  49. 玉置一徳

    玉置委員 もう一つ事務的にお伺いしたいのですが、保険は乗客がかける保険だけが普通に行なわれているのであって、自動車のような保険というものは行なわれていないのかどうか。
  50. 栃内一彦

    栃内政府委員 航空会社の場合には、通例運送約款で保険をやっておりますが、大体いまの限度は、死亡の場合三百万円というふうに聞いております。
  51. 玉置一徳

    玉置委員 そこで運輸大臣にお伺いしたいのですが、先ほども御答弁ありましたこのような小会社を三つ近く統合するようにお骨折りをいただいた、大蔵大臣も好ましいことだ、こういうお話がありますが、整備工場そのものが日航しかないという現実から見まして、同じような小会社が三つ寄りまして統合いたしましても、その目的を完全に速成することは無理じゃないか、まして、いわんやこういう事故頻発することを考えますと、公共性を帯びました航空事業というようなものは半ば国家の直接の指導と監督ができ得るような組織にならなければ無理じゃないか、したがってただいまこういうような統合は行なわれますが、今次の災害にかんがみまして、日本航空あるいは全日空、こういうものを中心にさらに大きな合併に持ち込むことを御考慮されたらどうか、かように存じますが、所見を一お伺いしたいと思います。
  52. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 直ちに合併ということは、あるいは双方困難かもわかりませんが、業務提携、あるいは整備工場の流用等々によりまして、現実的には合併と同様の効果をあげるように、企業基盤を強くする方途を考えてまいりたいと思っております。
  53. 玉置一徳

    玉置委員 辻原委員から特に十分な注文がありましたので、私はこれでおいておきたいと思いますが、ただ、この問題と別個ではなはだ恐縮でありますが、この機会にお伺いしておきたいのは、先般新聞でも御承知のとおり、中共との航空機の乗り入れを大風は御承知になるように承っておりますが、それはいつごろからお始めになり、大体どこへ基地を置く考えであるか、率直にお伺いを申し上げたいと思います。
  54. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は、当委員会ではございませんが、運輸委員会で同様の質問を受けまして、そのときに答えましたことは、いまも変わりがありません。それは、国家間で協定をいたすというようなことは、現時点においては中共が国交回復をしておりませんから困難であります。それからまた、具体的にとこからどうするということを日航にも政府にも申し出がありません。世上いろいろな話があるが、それについては、私どもとしてはあらゆる場合を想定して目下検討を続けております。
  55. 玉置一徳

    玉置委員 重ねて、先方から申し出がありました場合にはこれを受諾される御意思があるかどうか。
  56. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 具体的にどういう申し込みをされるか、申し込みの内容によっても違いますし、その具体的の問題につきましては、具体的の申し出があった場合に考慮いたしてもおそくはないと考えております。
  57. 玉置一徳

    玉置委員 運輸大臣に対する質問は終わりました。大蔵大臣に移ります。  大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。本年度の国際収支の見通しでございますが、一月中の外国為替収支は非常に悪化しております。戦後最高になりまして、一月末までの累計で約五億九千百万ドル、このままでまいりますと、赤字が八億ドルをこえるんじゃないかということも伝えられております。昨年末政府が修正されました年間赤字六億六千万ドルの予想を一億四千万ドルも上回っておるわけであります。三十八年度の国際収支は、政府が実績を織り込んで見込みを改定されました場合には、そのつどまた赤字が大幅に出てくるわけでありますが、このように大幅に狂ってまいりました原因は一体どこにあるのか。なお、年度当初の見通しで経常収支の赤字が一億二千万ドルと考えておいでになりましたのですが、ここまで狂ってまいりました原因を御説明いただきたいと思います。
  58. 田中角榮

    ○田中国務大臣 年度初め来一月までに貿易収支は二億六千四百万ドルの赤字でございます。これに貿易外収支の赤字三億二千七百万ドルを加えた経常収支は五億九千百万ドルの赤字となっておるわけであります。年度間では政府見通しによる経常収支の赤字六億六千百万ドルを若干上回るということは避けられないと存じます。しかし、年度初め来一月末までの資本収支は六千五百万ドル余の黒字でありまして、今後もインパクト・ローンを中心に順調な流入を期待されるので、年度間では政府見通しによる資本収支の黒字六千七百万ドルをある程度上回るものと見込まれますので、本年度の国際収支は一億ドル前後の赤字にとどまり、政府見通しの線に落ちつくものと考えられるわけでございます。  なぜ、当初三十八年一月の経常収支の赤字一億二千万ドル、三十九年一月の改定年間赤字六億六千万ドル、これを上回るような状態になったかということでありますが、御承知の輸出五十二億ドルが五十五億ドルと三億ドル余伸びておりますが、輸入につきましては、五十億ドルが五十七億五千万ドル余に大幅に伸びておるということが大きな原因でございます。また、輸入の伸び、輸出の増等によりまして、貿易外の港湾経費その他の赤字が当初見通しよりも大きくなっておるということがこの数字になっておるのであります。なお、この中にはことしの長雨被害によります麦等の輸入がございます。もう一つは、砂糖その他国際価格が暴騰した関係がありますので、これらを含めて当初三十八年一月よりも大幅に見通しが変わっておるというのが実際でございます。
  59. 玉置一徳

    玉置委員 砂糖の腐植の相当量の輸入は別にいたしまして、食糧並びにパルプ、木材、あるいは繊維原料、石油というような原材料もかなり平均して輸入の増になっております。こういう日本の産業の構造からまいります輸入増はにわかに押え得ない、こういうものがかなり続くのではないか、かように思われます。また一方、輸出の伸びも、アメリカに向いております繊維その他あまり先方で好まれないような状況もありまして、これの伸びというものもにわかに期待することはでき得ない。ただ一つ東南アジアのほうがやや明るい見通しはありましょうけれども、とれとても外貨準備のほとんど手持ちがないところでありますから、あまり大きな伸びは期待し得ない。  こういうように見てまいりますと、貿易外収支の現況から考えましても、どうしても輸出の振興というところに全力を上げなければならないわけでございますが、ここ三月以後の近い将来の貿易の見通しは一体どういうようにお考えになるか。  また、先ほど申しました輸出の振興対策につきまして、思い切った施策を施さなければならないと思いますが、これについてのお考えがありましたら、御答弁をいただきたい。  なお、ついでにもう一つでありますが、国際収支の赤字が非常に大幅に増大してまいります。貿易商でもそれのてこ入ればむずかしい、国際貿易外の収支もまた非常にこれを圧縮することがむずかしいことになりますと、結局資本輸入でまかなっていかなければならないようなことになるわけであります。そうすれば日本の経済の成長水準が高いのじゃないかということにまで考え至るわけでありますが、これをまた圧縮するお考えがあるかどうか。  この三点にわたって御答弁をいただきたいと思います。
  60. 田中角榮

    ○田中国務大臣 確かに経済成長率も三十八年度下期も予想よりも商い関係で、原材料の輸入がふえたために輸入五十億ドルが五十七億五千万ドルに大幅に伸びておるということが一つの要因であることは、御指摘のとおりであります。三十九年度の貿易の見通しは、御承知のとおり、輸入、輸出とも六十二億ドルでバランスをすることに考えておるわけであります。私は、六十二億ドルの輸出は十分達成できる、これは過去の例から考えましても十分見通せると考えるわけであります。ただいまアメリカのお話等もございましたけれども、アメリカは再億ドル余に上る減税を実施いたしまして、国内成長率をうんと上げよう、こういう状態にございますので、対米貿易に対しては非常に明るいというふうに判断していいと思います。それからなお、OECDへの加盟等によりまして、近来急速に伸びておりますヨーロッパに対する貿易も伸びるという見通しでありますので、輸出の六十二億ドルは、大体国内の意見でも達成はできる、できればこれ以上輸出ができるだろうという考え方に立っておるわけでございます。輸入の問題については、なかなか政府が考えておりますような、急激にこれが下がるというような状態にありません。でありますので、経済成長率を九・七%に名目で押えたいということをいま考えておりますので、三十八年度に比べて三十九年度の成長率は横ばい、もしくはこれよりも多少低めになるというような考え方でございまして、輸入に対しては六十二億ドルで何とか抑えるように正常な経済成長をはかってまいりたい、このように考えておるのであります。  それから、輸出振興の問題につきましては、これはもう日本は貿易依存の国でありまして、国内でもってあらゆることをやろうと思いましても、貿易の伸長による外貨が一番重要な裏づけになるわけでありますので、貿易の伸長なくして、また国際収支の安定拡大なくして、国内政策は遂行できないわけであります。そういう意味から、輸出最優先主義をとっておるわけであります。今度三月三十一日で期限の到来する輸出所得控除制度等につきましても、海運収入等の問題にならないものに対しましては、そのまま引き続いて税制上の特例を延長することにいたしておりますが、これに加え、輸出振興の税制の上では各般の処置をとりまして、大体三十九年度二百四、五十億にのぼる減税を行なっておるわけであります。また、輸出入銀行等の資金につきましては、今度の補正でもお願いをしましたように、三十八年度に引き続きまして、これが資金量の確保をほかっているわけであります。  なお、貿易外収支の問題等につきましても、外航船六十四万二千トンの運輸省の要求どおり、今年度は五十万トンでございますが、これを全額認めて建造をし、同時にこれから長期の見通しを立てまして、船腹の増強をはかりながら、また国内船による積み取り比率も急速にこれを引き上げてまいりまして、貿易外収支の改善をはかってまいりたいというふうに考えております。  なお、もう一つの問題である観光の面につきましては、観光対策に本腰を入れて、このオリンピックを契機にしまして、イタリア等では年間七億ドル余の外貨収入を観光においてはかっておるということでありますので、これらの施策もあわせて行なうことによって、長期的な国際収支の安定をはかろうという考えでございます。  いずれにしましても優良な外資を導入しておりますので、この外資を運用することによって日本の経済基盤の強化拡充をはかりまして、要は輸出の振興に資さなければ経常収支の赤字がなくなるような体制にはならないのでありますから、できるだけ短い時間に経常収支の黒字をはかるような施策を引き続いて強力に進めてまいりたい、このように考えておるわけであります。
  61. 玉置一徳

    玉置委員 ただいまお話しの貿易外収支でありますが、これはなかなかやっかいなものではないか。昭和三十五年の赤字の七千三百万ドルから、毎年ほぼ倍、倍に上がってまいりました。池田総理がよく本会議で、経済の成長の間はやむを得ぬのだというお話もありますが、これに注目することがほんとうはおそ過ぎたのではないか。それで、いまもお話がありましたが、そのうちの一番大きな海運収入であります。六十五万トンとかいうようなお話がございましたが、新聞を見ますと一千万トンを三カ年に船腹拡充しなければとんとんに追いつくまでにいかないように伺っております。なかなか言うべくして行なわれがたいむずかしい問題であります。  パテントの特許料の問題にいたしましても、ますますふえてまいる一方だと思います。これにつきましては、日本の商社が一緒に競合しながら、過当競争しているような実態を見受けられるわけでありますが、こういうことにつきましては何らかの規制の措置がないか、自粛を要望する方法がないか。  あるいはまた、いままでとんとんでありました先ほどの観光収入は、ことしは約一千五百万ドルか八百万ドル近く赤字が出るやに推定されている向きもたくさんございます。今度いよいよ渡航の自由化が行なわれるわけでありますが、五百ドルという規制だけで、はたして済んでいくかどうか、若干心もとないような感じがするわけでありますが、こういう点につきましてはどういうような措置を考えられておりますか。
  62. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知の貿易外の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、船腹量の拡充に対しては思い切った設置をとらなければなりません。また政府もとるつもりでございます。  それから、特許料その他の問題につきましては、確かに技術導入が非常に大きい。とれが大きいのは、それによって日本の経済が刺激され、日本の技術革新が達成せられて、輸出が大いに伸びてくるのでありますから、これが必要なことは言うをまたないわけでありますが、確かに商社間において、また業者間において非常に競争が激しいということは、これはもう御指摘のとおりであります。同じ会社であって、あの会社がアメリカから技術を入れるならば、わしは西ドイツから入れる、わしはフランスから入れる。これは技術屋の持つ、少し激しいかもわかりませんが、一つの偏狭性もあると思う。どうも妥協性がない。こういう問題に対しては、これからほんとうに大いに考えていかなければならない問題でありますが、確かに現状は御指摘のとおりであります。こういう問題に対しては、何とか業界同士が協調をはかりながら、合理的な技術の導入ということは必要でありまして、通産当局とも十分話をしながら、業界においてかかる問題に対しては交通整理をしてもらいたい、こういう考え方をいたしておるわけであります。  第三点の観光の問題につきましては、三十七年度は大体百万ドル程度の受け取り超過、今年度は大体九百万ドルないし一千万ドルぐらいの支払い超過だと思いますが、四月一日から五百ドル制限で渡航の自由化に踏み切るわけであります。これは、戦前戦後を通じ約三十年間、一般国民の観光というものに対しては門戸を閉じておったわけでありますので、とにかく外国へ行ってみたい、行ってくれば何かのプラスになる、こういう風潮がありますことは御指摘のとおりでありまして、ことしは相当こちらのほうから持ち出しが多くなるだろうという見通しをとって、私があえて出国税をとろうと言ったのもその理由に基づくものでございます。なお、五百ドル制限にやむを得ずいたしましたのもそういう理由に基づくのであります。しかし、ことしは、IMFの総会もございますし、また十月以降にはオリンピックもございますので、幾らかの観光収入もあるわけでありますので、来年度は日本人が持ち出すもののふくれ上がりとこの二つの国際行事の収入というものでバランスがとれるだろうというふうには考えておりますが、オリンピックやIMFの総会は毎年ないのであります。でありますから、やはり国民全体が、外貨というものを消費することによって、これは理由はあります、確かにプラスはあるでありましょうが、やはり当面する問題としては、外貨をなるべく使わないことによってお互いの生活がよくなるのでありますから、かかる問題に対しては、国民各位の自覚に訴えて、政府も大いにPRをしながらやっていきたい。今度円戸を開放しますと、再び締めないのでありますから、これから永久に出られるのだから急ぐことはない。急ぐ前に、まず日本の国をよく観光してもらいたい。外国へ行ってきて、外国はたいへんすばらしい機械を持っておると言う人がございますが、日本にはその何倍もすばらしい機械のあることを御存じなくて外国へ行ってこられる人も間々あるようでありますので、機会をとらえて国内をよく見るようにして、できるだけ外貨の持ち出しは御遠慮願いたいということを国民の皆さんに訴えたい、このように考えております。
  63. 玉置一徳

    玉置委員 先ほどのお話の、来年度六十二億ドルの貿易収支のお見通しは、私は、輸出に関しては大臣のおっしゃるようにできる可能性が多いと思いますが、輸入が六十二億ドルでおさまるかどうか。ましていわんや貿易外収支の問題はなかなか圧縮がむずかしいんじゃないか。横ばいでいける程度になれば非常にしあわせなほうじゃないかという感じがするわけであります。こういうふうにいたしますと、IMFやOEODの関係で貿易の収支を合わすことも非常な努力が要るわけでありますし、また資本勘定で収支を合わしていかなければいかぬような形になってまいります。こういうことを常に続けておりますと、最後は資本勘定の利子払いのためにまた資本勘定の繰り入れをやらなければならない羽目に追いやられてくるんじゃないかということを非常に心配します。したがって、経常収支はどこまでも経常収支でとんとんに合わしていくんだという努力目標を持ちながら、短期ではできませんでしょうが、長期にわたって御努力をいただかなければならないと思うわけでありますが、こういうものの限界というものは、一体どういうようにお考えになっておるのか、またどういうような御努力をなされるか、御答弁をいただきたいと思います。
  64. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日本が戦後わずか十八、九年の間にここまで大きく伸びてきたという一つの理由は、間違いなく外資の導入であることは事実であります。これは、外資の導入をやらなかった、やれなかったソ連や中共の状況を考えてみればおわかりになるとおり、日本もまたそれなくしては貿易ができなかった、外資を導入することができなかった二十四、五年までのわれわれの生活が一体どのような状態であったか、日本の産業がどのような状況を起点にして今日の復興段階に入ったかということは、これは一にかかって資本にあるのでありますから、外資導入の持つ功罪を論ずる場合には、少なくともその功のほうが非常に大きいということは事実であります。  しかし、国内においても、自己資本比率が戦前の六一%余からうんと下がりまして、現在二五%を割るような状況にある。それで、だれでもオーバー・ローンの解消、オバー・ボローイングの解消、自己資本の充実ということを叫んでおりますときに、また国自体も外国に対していつまででも外資導入だけをたよりまして自転車操業を続けていくということは、これは限度があることは言うまでもないわけであります。今年度は、大体元利の支払いで二億ドルをこすというような状態になるわけでありますから、そういうことから考えましても、やはりできるだけ、先ほど申し上げるように経常収支でもって黒字になり、資本収支によりまして経常収支の赤字を穴埋めしなければならないようなところから脱却するように努力するわけであります。  その努力する一つ方法として、やはり長期、良質な外貨を入れなければいかぬということと、国内産業の体質改善はそれによってやらなければいかぬ、こういう状態であることも御承知のとおりでありますので、輸出の振興、貿易外の改善と合わせまして、できるだけある時期においては貿易が黒字になり、貿易外も黒字になるようにしたい。大体四十五年くらいまでにはそのようなめどをつけて、こまかい配慮をしながら政策を進めていけば戦前の日本以上には必ずなり得る、私はこういう考え方に立つのであります。
  65. 玉置一徳

    玉置委員 外貨準備は、年度末に大体どのくらいになると御推定されるか。  それから、外貨準備の大体最低限度というものはどのくらいと判断されるか、お伺いします。
  66. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今年の一月に発表いたしました年度末の見通しは十七億六千四百万ドルであります。この数字を割るようなことはない、こういう見通しであります。私はこの前の予算委員会で十八億ドルを割りたくない、こういう考え方を申しましたが、まあ十七億七千万ドルか、十八億ドル、案外十八億ドルを割らないというようなこともあり得ると思いますが、政府が当初見通した十七億六千四百万ドル以上の線は確保できるであろうというような考え方でおるわけであります。
  67. 玉置一徳

    玉置委員 外貨準備の最低限度……。
  68. 田中角榮

    ○田中国務大臣 それはいつも出るのですが、外貨準備というのは、これは御承知のように、貿易をやっていきます日本がその代金を支払えるということでありますし、もう一つは、借りた勘定の支払い期が来たときにはこれを償還していける、また外債その他の元利償還に対しても支障がない、いわゆる日本が海外経済活動を続けていくために必要な限度、こういうのでありますから、多いにこしたことはないのです。多いにこしたことはないが、これは借金をして利息のつく金をたくさん置いても問題になりませんし、また、外貨準備が相当減っても、いつでも借り得る信用というものがあって、どこからでも持ってこれるのだ、こういう状態であれば、外貨準備を厚くしておくということよりもまだ効力があるわけでありますし、一がいには言えませんけれども、十五、六億ドル以上はほしい。学者の言によりますと、十三、四億ドルを割っては困るんだ、こういう説がありますけれども、輸出、輸入貿易量が非常にふえておりますし、大きくなっておるのでありますから、できるだけ多いにこしたことはない。私は持てれば三十億ドルもほしいなという考えをしみじみ持っておるのでありますが、しかし、これは外貨が十七億ドルなり、十五、六億ドルになっても、まだまだ日本はいつでも借り得る体制にありますし、資金の需要に対しては対処できるだけの信用もある、そういう立場にもあります。いまの十八億五千五百万ドルの外貨準備は、これは全く不拘束でありまして、拘束しておるものはないのでありますから、十八億五千五百万ドルは全部いつでも使える、こういうことでありますので、心配の限度は幾らかということは申し上げられませんが、必要な限度は常に確保しておる、このように申し上げたいと思います。
  69. 玉置一徳

    玉置委員 来年度の国際収支の見通しもその楽観を許し得ないというので、日銀当局は一月から三月末までのあの引き締めの形をさらに延長していくというように報じております。そういたしますと、年末の中小企業のいわゆる三月危機に対処されまして、財投の思い切ったつぎ込みをされたわけでありますが、そのことは金融引き締めがさらにきびしく延長されるわけでありますので、六月にそれを持ち越したということになるのじゃないかと思いますし、なおさらに若干の慢性化された形で延びていくんじゃないか、かように思います。そこで、もちろん業界そのものの経営の合理化その他が必要でありますけれども政府とされましても、これにどういうような対処のしかたをやっていって中小企業の困難を救っておいでになるか、お伺いをいたしたい。
  70. 田中角榮

    ○田中国務大臣 十二月から日銀は、窓口調整を含めて金融の正常化をはかりつつあることは御承知のとおりでございます。しかし、政府も、昨年末から昭和三十八年度第四・四半期にかけまして、第一次に財政資金から三百億、それから手持ち資金の融資ワクを百億、計四百億、あわせて財政資金による買いオペレーションを二百五十億決定をいたしたわけでございます。合計すると六百五十億になるわけであります。それになお、このたび財政資金及び自己資金をもって政府三機関に対して百二十億の第二次追加を行なったわけであります。同時に財政資金をもって市中の買いオペレーションを百億追加をいたしたわけであります。でありますから八百七十億、こういう大きな措置をやっておるわけであります。なお、第四・四半期の三機関の貸し出し計画は、前年度同期の実績に対して二七%増であったのでありますが、それになお百二十億余を追加いたしたわけであります。また、特に日銀も、市中金融機関に対しまして、三月までの中小問題に対しましては市中金融機関はあげて協力体制に入るようにという日銀総裁の談話も発表いたしておりますし、また、私たちも銀行局長通達を出しまして、三月に対しては十分な配慮をいたしておるわけであります。ですから、私は、三月の期末に対してはそう問題は起きないだろう。ただ、十二月が三月になり、三月が五月、六月にまたサイトを延ばしておるというような問題、これは全部ではなく、三月に決済のできない少数のものだと思いますけれども、これらに対しても、十分実態に即応しながら、画一、一律的な引き締めをしないのは、そのような事実を十分配慮しておるからであります。こういう業界の事情、中小企業の実態等十分に把握しながら、適切なる金融政策をとってまいりたいと思います。  ただ、中小企業も、また一般の業界もそうでありますが、政府が何とかめんどうを見るだろうということで、いつまでも悪循環を断ち切らないでおられると、ここで画一、一律的な引き締めに入らざるを得ない、こういうことになるわけでございます。なぜ私がこんなことを申し上げるかというと、いままでのような正常な状態ではなく、過去わずか三カ年間で企業間信用が倍にもなっておる、これは異常であります。一体、融通手形というものは、それは出さなければやっていけないから、こういう事情もわかりますけれども、市中においていろいろ紛争も起こしておりますし、国会においてさえも、融通手形もやむを得ぬのだというような議論が現にあるほどの状態であることは事実でありますので、やはり金融の正常化というものは十分考えなければいかぬし、政府が、日銀が幾らでも金を出す、中小企業にまでいわゆるオーバー・ローンをやるということではなく、企業家自体もオーバー・ボローイングを十分考え、自己資本の充実もあわせて考えていってもらう、それまでの間は十分事態に対処して、金融でつないでいくという考え方をとっておるわけであります。
  71. 玉置一徳

    玉置委員 いろいろとお伺いしたいのですが、ほかに聞く時間もございますので、最後に一点。  ただいままで申し上げましたとおり、国際収支は、貿易の上からも、貿易外の上からも、なかなか困難を越えていかなければならない。かようになってまいりますと、先ほどのとおり思い切った貿易の伸長をはからなければならないわけでありますが、これは政府だけの力でできるものじゃない。この貿易の自由化をされる時期にあたりまして、国民全部の、ことに経済界の協力がなかったら、このことは容易に達し得ることができないのじゃないか、かように思いますが、これにつきまして大蔵大臣の御所見を承って、大蔵大臣に対する質疑を終わりたいと思います。
  72. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常に前向きな御発言をいただいて、ありがとうございます。確かに輸出の伸長というのは、政府だけでやってできるものではないのであります。不景気になると輸出が伸びる、こういうようなことが事実でありますが、日本は輸出をしなければ、また輸出をすることによって外貨を獲得し、しかも経常収支が黒字を続けていくようにならなければ、われわれ民族の将来というものはないのでありますから、その事実に着目をせられる場合、政府はもちろんあらゆる施策をとるべきであります。これは、ある場合においてはバランス論等を乗り越えても、ある時期積極的な施策をすべきであるという考えに立っておりますが、要はやはり国民各位、業界の各位が、輸出をすることによって敗戦の傷をいやし、将来の飛躍に備えるのだという考え方に徹していただかないと、輸出は伸びないわけであります。  もう一つは、輸出もさることながら、国民自体が、日本にある品物よりも悪い品物を、高い関税を払ったものでも、ハイカラといいますか舶来品といいますか、こういうことばがいまなお通用していることは悲しい事実であります。やはり日本人がお互いに外国の品物を使わないで、ほんとうにわれわれがつくったものを使いながら、それを批判し、だんだんとよくしていくという努力に目ざめて御協力賜われば、私は日本の国際収支というものは、貿易の体制というものは、これは確固たる基盤ができる、こう思いますので、政府ももちろんあらゆる措置をいたしますと同時に、国民各位の絶大な御協力をこいねがいたい、このような態度でおります。
  73. 玉置一徳

    玉置委員 次は、ILOにつきまして労働大臣に御質疑をしたいと思います。ILO八十七号条約批准を非常に政府が遅延をいたしております責任をひとつお伺いをいたしたいと思います。  この条約の批准は、昨年の六月一日までに十四回にわたって批准促進勧告を受けておるわけでありまして、最後の六月一日には、六月二十四日までに批准をせられたいというような、国際的に実に不名誉きわまるような勧告を受けたのは御承知のとおりであります。今回はさらに対日調査委員会ができて、この秋には同調査団が来日するというので、調査団派遣の受諾を求められておるわけであります。こういう事態に追い込まれてまいったのでありますが、このことは、昨日の新聞に、国会の両院社労委員会の懇談会に青木大使が出席されまして説明をされておる文面から考えましても、労働問題につきまして日本の国際的な信用が非常に落ちておる。日本はいまでもチープレーバーのそしりを受けた当時のおもかげを残しておるのじゃないかというように各国から見られておるわけであります。せっかく経済の成長で信用を博しながら、片一方でこの批准が遅延する、ばかりに非常な信用を落としております。この問題につきまして、これは批准をここまでおくらしてまいりました政府——実に六年にわたりまして、三十五年岸内閣におきまして国会に提案されましてから、池田第一次、第二次、第三次内閣、ずっときょうまで提案され、ほとんど審議せず、はなはだしきは委員会への付託すら行なわれずに、じんぜんきょうまで持ち越したわけであります。これにつきましては、一体政府は、主管大臣であります大橋労働大臣は、どういうようにお考えになっているか、御答弁をいただきたいと思います。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、たびたび申し上げておりますごとく、このILO八十七号条約の批准はできるだけすみやかにいたしたい、かように考えておりまして、通常国会のたびごとに、また、ときとしては臨時国会におきましても、関係の案件を国会に提案いたしておる次第でございます。これにつきまして、今まで国会の議決を得ることができず、批准が遷延いたしておりますことは、申すまでもなくまことに遺憾千万なことでございますが、この国会におきましては、ぜひとも批准の運びにこぎつけたい、かように考えまして、せっかく努力をいたしておる次第でございます。
  75. 玉置一徳

    玉置委員 ただいまの、今国会でどうしても批准していただきたいという御言明でありますが、このことは岸内閣以来同じようにずっと言われてきたことであります。そういう気持ちでありながら、なぜ今日まで批准ができず、しかも、それは先ほど申しましたとおり、国会に提案したまま委員会への付託すら行なわれないでやってきたかということが問題だと思います。したがって、今日まで批准ができなかった原因は一体どこにあるかということにつきまして、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 申すまでもなく、批准についての国会の議決が得られないからなのでございまするが、その批准についての国会の議決が得られずにまいっておるということは、この批准に伴いまする国内法の改正の問題につきまして国会の各党間の御意向が合致しない点がある、そこに根本の原因があると思ってあります。
  77. 玉置一徳

    玉置委員 今日の状態では、自民党党内事情によりまして委員会への付託ができないんだということに一般国民にもなっておると思うのでありますが、それにつきまして大臣はどうお考えになりますか。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 さような話もあるかもしれませんが、政府といたしましては、自民党に対しましては、与党のことでございまするので、すみやかに審議をお進めいただくようあらゆる機会にお願いいたしておるところでございます。
  79. 玉置一徳

    玉置委員 先ほど御答弁になりましたが、政府が国会に提案されて、それから委員会に付託する方法について各党の意見が一致しないから今日に至った、こういうお話ですが、提案をされて委員会に付託するまでは政府責任か、議長責任か、どちらですか。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 純粋に形式的に申し上げますると、これは国会内部の手続の問題ではないかと存じます。
  81. 玉置一徳

    玉置委員 それではお伺いしますが、対日調査団の派遣を受諾されるかどうか。御承知のとおり、きのうの青木大使の言明によりましても、これを受諾しなければ非常に信用を失墜する。池田総理並びに、ただいまも大橋労働大臣は、今国会にはぜひとも批准をしていただきたいんだ、先日は池田総理からは、この国会の会期を延長してでもこれを通したい、こういうように言明をされているわけであります。そうすれば、そこまで決意があるのならば、なぜ早く受諾をせられないのか。同じするのならば、早く受諾したほうが感じはいいんじゃないか。もし、じんぜんこれ目を送っておりますと、批准する批准すると言いながら、真意はやはりそうじゃないんだ、きょうまで批准するということは何十回ということ、言われているわけでありますから、やはり真意はそうじゃないんだという誤解を招くおそれがあると思うのです。そういう観点から、この受諾をいつごろ御回答になるか、お答えをいただきたいと思います。
  82. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 すでにILO事務局長からは、日本政府の外務大臣あてに、日本に関する事項を結社の自由に関する調査調停委員会に付託することについて承諾を与えるよう要請が参っておるのであります。しこうして、この調査調停委員会は五月の初めにジュネーブに会合いたしまして、自後の調査についての手続を協議されることに和なっておるのでございまするから、日本政府といたしましては、もとよりその第一回の会合に必要な準備期間を頭に置きまして、この会合の開かれるのに間に合うような時期までに回答を出すべきものだし、また必ず出したい、かように存じておるのでございます。なお、事務局の私的な意向といたしましては、願わくば四月の中旬ごろまでには回答を得たいというような意向もひそかに伝えられておるのでございますが、これらの意向をも頭に置きまして、適当なる時期までに必ず回答いたしたいと思っております。
  83. 玉置一徳

    玉置委員 先ほど、これが五カ年、六カ年にわたりまして審議にも入らず、委員会への付託もほとんど行なわれないで今日まできた原因はというお伺いをしたわけでありますが、私はもう一つ、本案件がきょうまでじんぜん日を送りました原因一つは、いわゆる公労法と地公労法の関係のある法案合わせまして三件を一括して審議して、自余のものをはずしてそれはそれで個別にやるということでなくて、一緒に、いわゆる私たちが申しております国内法の改悪を同時にやろうと思うところに、三党間の意見が合わずにきょうまで来たというのが一番大きな、原因だったと思います。このことは大臣も率直にお認めになると思うのであります。今回も、今日すでに対日調査団の派遣も決定され、いよいよ時間を争うところまで追い込まれたわけであります。  したがって、私はこの際、どの党にも異論のない本案件と公労法、地方公労法の関係部分を改正する法律案を一括してお出しになる、そうすれば直ちにこの批准はできると思うのです。そうして、もし万一自民党のほうで国内法をぜひとも出すというのであらば、堂々と、それはそれで別にお出しになって、三百名の絶対多数を擁しておいでになるんだから、議会主義に徹して堂々とおやりになることがこの問題解決の一番早道だと思うのでありますが、所管大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、批准案件のほか国内法の四法律の改正案をあわせて提案いたしておりますことは御承知のとおりでございます。これをなぜ一括して提案いたしたかと申しますると、公労法並びに地方公労法につきましては、ただいま御指摘になりましたるごとく、直接ILO条約八十七号に矛盾いたしまする規定がございまするので、したがって、批准のためにはぜひこの矛盾条項を修正する必要があるわけでございます。しこうして、この矛盾条項を修正するにあたりまして、今日の日本の公務員制度並びに公務員関係の労働運動の実勢から見まして、その前提として国家公務員法並びに地方公務員法をあわせて改正することが必要だ、かように存じて提案をいたしたのでございまして、この政府の考え方は一応御承知願っておると思うのでございます。  ところで、それについての国会のお取り扱いの問題でございまするが、この政府の提出しておりまする四法について、公労法、地公労法のみをこの際取り上げるか、あるいは政府の希望するごとく一括してお取り上げをいただくか、これは国会におきまして十分御審議の上御処置いただきたいと考えるのでございます。
  85. 玉置一徳

    玉置委員 国会においてというお話でありますが、議長、副議長、常任委員長の選任におきましても明らかなとおり、国会の運営は与党自民党が全責任を持ってやっておいでになるのでありますから、政府と国会と申しましても、そのことは政府と自民党ということになるわけでありますから、私の申し上げていることを、大臣が御了承いただかぬでも、自民党の方々で心ある方々が思い直して、そういうようにやろうじゃないかということをおやりになるように希望するものであります。  最後に、倉石修正案というものにつきまして、どういうようにお考えになっておるかをお伺いをしたいと思います。  労働大臣も御承知のとおり、前の国会は、会期末に至りましてちょっと付議されましたけれども、それまでは付託されずに長らく議長の手元にあったまま、最後にお流れになったわけであります。議会主義というものは、私がえらそうなことを言わないでも、御承知のとおりでありますが、国会の審議のプロセスを通じて国民に国政を知らしめる、これがなければ国会も何もかもあったものじゃないと思うのです。自民党の方々でも大部分の方々が御存じないうちに、ましていわんや国会の審議では一切関係がないままにできました倉石修正案、これを基礎にものをおやりになるのだったら、国会も民主主義もあったものじゃないと思うのです。議会主義を守ることを約束された池田総理がまさかこういうことをされるとは思いませんけれども、一体倉石修正案というものは今度の国会審議につきましてどのような存在にあるのか。これをお認めになるのかお認めにならぬのか。所管大臣として御答弁をいただきたいと思います。
  86. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、すでに提案いたしておりまする国内法の改正案につきまして、政府みずから撤回して修正して出すという考えは毛頭ございません。したがって、お述べになりました修正についてのいろいろな問題点というものは、これは国会の審議の過程において各党間でお話し合いがある問題であろう、かように考えておるのでございます。しこうして、これらの問題が具体的に委員会等におきまして修正案という形をとり、あるいは形をとる前に、これに関する政府の意向を正式に審議の御過程でお尋ねがありましたならば、そのときには政府といたしましても、これについての政府の考え方というものは申し上げるべき時期があろうかと存じますが、ただいまの段階では、倉石修正案というようなものは私どもは承知をいたしておりませんし、またこれについて政府として意見を述べるべき時期ではない、かように存じておるのでございまして、政府といたしましては、ひたすら審議が促進されることを願っておる次第でございます。
  87. 玉置一徳

    玉置委員 最後に、つけ加えまして申し上げますが、ただいま、倉石修正案を審議の基礎にしろということでげたを預けられて、自民党が混乱をしておる。まことに失礼な言い方でありますが、下火だと思います。審議の過程においてそういうことがもしもあったのならばよかったのに、あまりにも先ばしり過ぎたためにげたを預けられて苦しんでおいでになるのが現在の姿だと思います。一日も早く先ほどのお話のように振り出しに戻って、堂々と議会の中で審議を重ね、すみやかにこれが批准をできるようにされることを望んで、労働大臣に対します質疑を終わりたいと思います。  沖繩問題につきまして、総理府長官に御質疑をいたしたいと思います。  沖繩タイムスの十二月三十一日の記事を見ますと、「米兵がタクシー強盗」「運転手をなぐりつけ」タクシーを盗んだというのが出ております。十二月二十六日の新聞には、「暴行や窃盗事件などコザの町、昨夜も大荒れ」「クリスマス・イブに引きつづき二十五日から二十六日あさにかけても各地で、外人事件が相つぎ、五歳になる幼女を外人がつれだして暴行しようとした未遂事件や暴行、窃盗事件などが続発した。」同じく二十五日の新聞には、「米兵のタクシー強盗」「那覇署管内でも二件」、「脅迫して乗車」「米兵タクシー乗り逃げ」、同じく二十五日には、「白人兵が強盗傷人」「嘉手納で二十五ドル奪い捕まる」。  こういうように、ちょっとの新聞の日時だけでもこの程度米兵による暴行事件が頻発しております。これを、政府当局、総理府長官は御承知であるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  88. 野田武夫

    野田政府委員 ただいま沖繩の新聞記事をお読みになりましたが、実は私どもといたしましても、このいわゆる公表された統計がないものですから、現実にどのくらいの件数起こっているかはお答えできませんが、大体新聞によく出ておりますから、承知しております。そこで、まことにこれは遺憾に思っている次第でございます。
  89. 玉置一徳

    玉置委員 沖繩におけるこの種の人権侵害問題は、ちょうどわれわれ占領下にありました当時より以上の数と大きさをもって行なわれておるわけであります。  沖繩における人権侵害問題は、まず類型として区別いたしますと、妻子を置き去って帰国する、妻子を放置して何らの保障を与えない、この事件であります。二番目に、先ほど読みましたような米兵等の一連の犯罪行為であります。三つ目には、沖繩県民と申しますか、沖繩の方々が内地その他に渡航するときに、不当な資格審査をつけられるということであります。四つ目には、賃金に対するきわめて不当な差別、こういうように多岐にわたっております。そうして、沖繩住民がこの種犯罪を受けておるのは一日平均二・五件に上っておるわけであります。警察はとらまえますけれども、これを引き渡さなければなりませんから、その補償はおろか、加害者に対する当然の制裁すらも、帰米されてしまったあとは、MPに引き渡されてしまったあとは、全く不明のままに放置されておるのがほとんどの事例であります。このことを政府当局は御存じであるかどうか、お伺いを申し上げます。
  90. 野田武夫

    野田政府委員 一々の事件は、御承知のとおり軍法会議に付されて裁判が行なわれているようでございまするから、内容的に一々わかりませんが、大体おもなる事件と申しますか、事件によって必ずしもお話のとおり全部泣き寝入りというのではなくて、金銭的な賠償の措置は相当講ぜられている例が多いようでございます。
  91. 玉置一徳

    玉置委員 事務当局でけっこうでありますが、数年前、由美子ちゃん事件というものが発生しまして、この事件は、六歳になる少女が米兵に強姦され、死に至らしめられ、その死体は浜に遺棄せられた。加害者は軍法会議に付せられましたけれども、連邦裁判所への提訴権限があることを理由にいたしまして本国送還になった。その後、処罰された形跡が全くないのでありますが、その結果を御承知であるかどうか。
  92. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 数年前にそういう事件がありましたことは記憶に残っております。そういう問題が当時の新聞をにぎわしたことも聞いておりますが、最終的にどういう結果になりましたか、はっきりしたことをいま記憶をいたしておりません。ただ沖繩におきましても、先ほど総務長官から申しましたように、アメリカの兵隊はやはり軍法に従っておるわけでございます。これはアメリカの兵隊が日本に来ております場合も、あるいはそのほかの地域におります場合も、同じ軍法でございます。特に沖繩であるからそれをやわらげておるというようなことはないわけでございまして、沖繩におきましても、当然同じ軍法の手続に従いまして取り扱いを受けたというふうに考えます。
  93. 玉置一徳

    玉置委員 もう一つ聞きましょう。一昨年、国場君事件が発生しまして、中学二年生になる男の子が、一号線横断歩道で青信号の中を歩いている最中に、演習帰りの米軍トラックにひき殺された。この兵隊は、裁判の結果、無罪となり釈放されたわけです。しかも、殺された被害者に対する補償は、いまだに放置されております事実を御存じかどうか。
  94. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 当時の運転しておりましたアメリカの兵隊は、お話のように無罪になったと記憶いたしております。賠償につきましては、その後当事者間で話が進みまして、昨年の暮れでございましたか、約三千二百ドル程度だと記憶いたしておりますが、その程度の賠償が支払われて、問題は決着しておるというふうに聞いております。
  95. 玉置一徳

    玉置委員 もう一つ、昨年五月、バーの女性が二十一才になる米軍マリーン兵に殺された、死後強姦されたが、これまた本国に送還されたまま不明となって、補償はそのままになっておる事実を御存じかどうか。
  96. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 その問題につきましては存じておりません。
  97. 玉置一徳

    玉置委員 米軍の軍法会議に付されているのは、日本内地におきまして占領当時あったのと同じだ、こういう答弁でしたが、私はいかに軍の占領下にありましても、戦争後実にもう二十年にもなっているのに、こういうことが日常茶飯事で行なわれておる、日本の領土であり日本人である沖繩の皆さんが、こういう目にあわされておるのにかかわらず、日本でありましたときの米軍の同じ軍法によって律せられております、そういう答弁をするような人間が局長なんかをしておるから何にもこういうことにめんどうも見られぬと思うんですよ。日本人をどうしてめんどうを見ないのか、何のために南方連絡事務所があるのか、総理府にこういう責任がないとは言えないと思いますが、長官の御答弁を願います。
  98. 野田武夫

    野田政府委員 御承知のように、沖繩はアメリカの施政権下にある、それから軍人の犯罪は軍法会議でやる、いろいろ客観的の情勢が、日本といたしましても容喙できない点があることは御了承願えると思っております。しかし政府といたしましては、ただそうだといって、指をくわえて見ておるということは妥当じゃない。たとえば昨年二月に起こりました中学生の米軍トラックの轢殺事件、これは、御承知のとおり交差点で起こったので、米軍法会議ではその轢殺した兵隊は過失ではないというので無罪になりました。そこでこれに対しまして、そうかといって、先ほど申しましたとおり、これはやむを得ないということではいけない、こういうことが続いて起こるということは何といってもわが同胞の沖繩住民に対してわれわれは無関心でおれないというので、その後の措置といたしましては、直ちに米政府に対しまして、軍法会議の裁判記録を見せてもらいたいという要求をいたしました。ところが、やはりこれはひとり沖繩だけでなくて、軍法会議というものはアメリカの軍法によってやっておりますので、一切裁判記録は出せないという返事がありました。したがって、それはアメリカの法律でそうなっているならやむを得ないが、今後ひとつこれらについてアメリカ政府に注意を喚起したいというので、直ちに外務省を通じまして、まず今後こういうような事態が起こらないようにできるだけの予防措置をしてもらいたい、つまり配慮を願いたいというのが一つ。第二は、この軍法会議の裁判の経過というものが全然わからないということは、被害者、関係者にもまことに済まぬことであるから、今後できるならば琉球政府の役人を立ち会わしてもらいたい、あるいは被害者、関係者を傍聴さしてもらいたい、つまり裁判の内容を理解できるような措置をしてもらいたい。それから第三には、できるだけ十分これに対する損害の賠償をしてもらいたい、こういう点を申し入れました。その後、米政府からはこれに対してはっきりした返事はございませんが、最後の賠償問題につきましては、何ら過失もなく無罪になったものであるけれども、これは一応お気の港であるからというので、賠償を行なうというので、昨年賠償だけは行なわれたのでございますが、私どもは決して無関心でやむを得ないという態度はとっておりませんが、いま申し上げましたとおり、アメリカが施政権を持っております。軍人軍属の裁判は、全部アメリカの軍法に基づく軍法会議でやっている、こういうような状態でございますから、まことに遺憾ながら、できるだけ今後もこれらについて、アメリカ側の態度に対しましてひとつ注意を喚起したい、こういう考え方を持っております。
  99. 玉置一徳

    玉置委員 おやりいただいておるような気配もわかるのでありますけれども、あまりにも日々頻発しておる。私は別にいろいろな意図を持って言うのじゃございません。施政権返還運動とかいろいろなことがありましょうけれども、わが同胞が日々こういう目にあわされておるということは、ほんとうに人道上の問題だと思うのです。施政権がどちらにあろうとも、なくとも、むちゃをしていいということは絶対あり得ない、人を殺して補償しなくてもいいということもあり得ないのです。私は、施政権の問題じゃなしに、人道上の問題として当然これが履行され、こういうことが根絶されるように、政府は強腰でこれは当たっていただかなければいかぬと思います。先般、高等弁務官が東京に来られたわけであります。ああいう機会をもちまして、こういう問題をぜひとも根絶するような形に、なおアメリカの中央政府にも強硬に申し入れて、一日も早くこういう問題が二度と起こらないようにやっていただきたいと思いますが、ひとつ決意の御表明をいただきたいと思います。
  100. 野田武夫

    野田政府委員 玉置さんの御意見、全く同感でございます。御承知のとおり、大統領の行政命令にも沖繩問題は出ております。これは時間がかかりますから読みませんけれども、あくまでも沖繩住民の人権を尊重するということを基本として大統領の行政命令が出ております。また、高等弁務官は歴代にわたりまして、帰するところは沖繩住民の安寧と福祉を増進したい、こう言っております。私どもも全くお話のとおり、決してこれらについて、先ほど申しましたとおりやむを得ないという態度ではございません。できるだけ沖繩住民の人権を尊重して、そうして福祉の向上をはかりたいという熱意は持っております。また、いま前段に申しましたとおり、アメリカ政府の方針がそうなっておりますのですから、これはわれわれの希望するのは当然のことと思っています。今後とも、私、玉置さんのお話はよくわかりますし、機会あるごとに、こういう問題につきましてわれわれはひとつできるだけアメリカ政府並びに沖繩におります高等弁務官に対しましてもこの希望を述べて、これらについての処置をやはりお互いに考えるように、いまのようないろいろな事例がございますから、こういうものがなるべくないようにつとめたいと思うのでございます。   〔松澤委員長代理退席、委員長着   席〕
  101. 玉置一徳

    玉置委員 最後に、お願いをいたしておきたいと思います。  先ほども申しましたが、内地渡航される方々の渡航許可をするときに、資格審査がありまして、思想上の問題だと思いますが、非常にきびしい手続を要する向きもあるやに聞いております。こういう問題も、先ほど申しました一連の人権の問題にやはり抵触することのないよう御配慮をいただきたい。  なお、先ほども申しましたが、米人、フィリピン人、内地人、現地人と申しますか沖繩人、この人種別に賃金の差があまりにもひど過ぎるというのが現地の方々の訴えでございます。なお、向こうの風習かも存じませんけれども、四十五日なら四十五日の予告期間を置きまして、首切りと申しますか、解雇が年じゅう行なわれておることも事実らしいのであります。こういう点も、ぜひともこれに対する対処のしかたを政府当局もお考えいただきたいし、米軍当局へも善処方を一緒にお申し出をいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、敗戦のために祖国の内地から離れて米軍の基地になって、復帰の一日も早からんことを望みながら、あの狭いところで少ない人数で、われわれが敗戦当時いろいろと困難をみましたものを、いま多数の事例にあげましたとおり、非常に苦労しておる沖繩の方々に対して、こういう事例の一日もすみやかに絶滅できるように御努力を心からお願い申し上げたいと思いますが、これにつきまして御所見を伺いまして、時間がまいりましたので、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 野田武夫

    野田政府委員 沖繩住民に対する御心情に対しましては、私ほんとうに敬意を表します。私どもその係の者といたしましては、十分心程なくてはならぬことと思っております。私は、昨年沖繩を訪問いたしました際にも、いまのキャラウェー高等弁務官にも、また民政官にも、特に社会保障制度を早く確立してくれないか、一番人権のもとである健康の問題でも、まだ向こうに健康保険がないということは、われわれ日本人としては非常に残念であるというようなことを強く主張いたしました。ことし、キャラウェーの立法院に対するメッセージの中には、社会保障をやろうというようなことをいっておるようでございますし、先ごろ来日しまして私会いましたときにも、重ねて実現方を懇請しておきました。  また、ただいまの渡航の問題、あるいは各国別の賃金問題、いろいろ私も承知しております。しかし、漸次これは緩和してまいりましたし、だいぶ近づきつつあると思っておりますが、まだまだもちろん御指摘のとおりのところがあると存じておりますから、私としてはできるだけ熱意を持ってこれらに対しまして、改善するように努力したいということを申し上げておきます。
  103. 玉置一徳

    玉置委員 終わります。
  104. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて玉置一徳君の質疑は終了いたしました。午後は一時四十分から再開することといたします。  なお、午後の質疑者は山田長司君、村山喜一君、大原亨君であります。  山田君の出席要求大臣は大蔵大臣、法務大臣、防衛庁長官及び経済企画庁長官であります。  村山君の出席要求大臣は大蔵大臣、文部大臣、労働大臣及び自治大臣であります。  大原君の出席要求大臣は法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣及び防衛庁長官であります。  委員会休憩後直ちに理事会を開きますから、理事の方は常任委員長室に御参集願います。  暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後一時五十一分開議
  105. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度総予算三案を一括して議題といたします。  この際、おはかりをいたします。明二十九日午前の一般質疑の際、海外移住事業団理事長広岡謙二君またはその代理者を参考人として本委員会に出席を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
  107. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  山田長司君。
  108. 山田長司

    山田(長)委員 ちょっと、官房長官呼んでから……。   〔「休憩」と呼ぶ者あり〕
  109. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩はいたしません。——山田長司君に申し上げます。たいへんお待たせいたしまして申しわけがございません。委員長の不手ぎわでございますから、遺憾の意を表します。  これより質疑に入ります。山田長司君。
  110. 山田長司

    山田(長)委員 委員長からたいへん陳謝の意を表されましたけれども、ほかの皆さんにもたいへん御迷惑をかけましたが、実は、質問に入る以前の問題で、官房長官に伺っておかなければならなかったものですから。これは本来ならば、官房長官でなくて総理に伺うつもりであったのですけれども、きょうは総理が出ないというので、官房長官にお伺いしておきたいと思います。  実は、二十六日の午後五時十五分ごろ、私の部屋に大蔵省の証券検査課長の岸本さんという方が見えました。それで発頭私に、資料の提出はできません。これが最初のあいさつでありました。そこで私は、国政の審議をする上において支障を来たしまするので、一体こういうことでいいのかということで、昨日の決算委員会に実は証券部長及び証券課長の出席を求めまして、前後の事情をただしました。そうしましたら、証券課長から言われて、証券部長もこの問題についてはお答えしなくてもよいという意味の答弁をしたらしいのです。調査資料を出さなくてもよいという答弁をしたらしいのです。私からあらためて申し上げるまでもなく、憲法六十二条で国政調査というものについては当然記録の提出を要求することができる。国会法においても、質問をする以上これについての権限を与えられておると思います。しかるに証券課長は、これは私が一人でここで申し上げるのではなくて、私の部屋には決算の調査員もおりましたし、そのほか、私が調査している関係上、その問題についての話をしている三人のところへきてもそういうあいさつであります。それはあなたの答えか、どういうわけで答えられないのかと聞いたところが、国家公務員として答えられぬということの答弁でした。それから上司と相談したかと言うと、部長と話して、部長からの答えだと言う。一体これは、これからいろいろ質問申し上げようとする資料のために私は資料要求をしたわけだったのでありますが、これは国家公務員法に基づきますと、職員は職務上知り得た秘密については知らしてはならないという規定があるが、一体、国会の国政調査にあたって、こういう深長、部長クラスの人たちで——さらに私はそのときもつけ加えて言ったのでありますが、そのほかの上司と相談したかと言ったところが、だれにも相談しなかったと言う。私もこれが秘密に属するものであるということは知らないわけじゃない。だが旧来も、秘密に属するものであっても、符号で知らせ合うとか、あるいは相対で知らせ合うとか、かなりわれわれが知り得た情報でありまする以上、いろいろ聞いているうらには、公務員がしゃべらなくても、われわれに大体の見当はついてくるわけですけれども、それが一切資料の提出はできませんといって入ってきた。こんなふざけた態度で言ってくるということは私はけしからぬと思うんです。これは私一人でなくて、同時に二人の証人もいることでありますから、私以外におったので、上司とも相談したのかということも聞いたし、それから国家公務員として答えられぬというならば、答えられないといっても何かの方法があるだろう、私はかなり詳細にわたって、こういう問題、こういう問題、こういう問題について知りたいのだということを言ってあるのです。それが答えられませんというに至りましては、これは本来ならば総理に聞くべきなんですが、あなたに伺っておきたいのです。一体、秘密の基準は各省にどんなことが出ているのです。最初に一応このことを聞いておきたい。
  111. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 直接の監督責任者はここに大蔵大臣おられますので、私どもから申し上げるのはいかがかと思いますが、公務員として皆さまに対する応対その他については、これは国会議員だけに限らず、いろいろ注意しておりますが、ときおり行き違い等がございまして、はなはだ恐縮に存じます。まず、この点を御了解願いたいと思います。  私ども、いまおっしゃるように、国会に調査権がある、これは憲法に保障されており、国会法にも規定がある、また一方におきましては、公務員法で公務員は機密を守るべき義務がある、この両方の調整につきましていろいろ苦慮をいたすところでございますが、いまお話しのことを承っておりますと、その当該事件につきましては、実は私いま初めて伺うので知りませんけれども、上司といえば、特に国会の調査権の問題でございますから、すぐ上の上司という意味でなく、もう少し政治的に配慮を加えて、そうしていろいろ意見を聞いた上でお答え申すのが常識のように存じます。個々の問題につきまして、どこまでが機密であり、どこまでが機密でないかと申しますことは、やはり具体的な問題でありまして、一がいに申すわけにはまいりませんが、そのときどきに各省の最高の政治責任をもってきめていただく以外にないかと思っております。
  112. 山田長司

    山田(長)委員 実は昨日以前に大蔵政務次官に、やはり秘密のことに関する答弁をするかしないかということで質問をいたしましたところが、国会の質問に対しましてはお答えをいたします、こういう答弁をしている。こういう答弁をしているものを、これは聞いていなかったのか知らないのかわからないけれども、そういう答弁を政務次官がしているにかかわらず、課長と部長で話し合って、資料の提出はできませんということを、部屋に入ってきて抜き打ち的に言っているのです。私はこういう態度はけしからぬと思うのです。  それでさらに私が申し上げておくのは、いま基準ということを言ったが、憲法第六十二条には、国政に関する調査を行なうことのできる規定があるわけです。この規定に従って資料の要求をした場合には、できないのじゃなくて、やはり私はやってもらわなければならぬ筋のものだと思うのです。それが、何か基準を設けてでもいて答弁ができぬというようなことであるとすれば、一体どうすれば明らかにすることができるのですか。これは全然秘密にしてしまうということのできる筋合いのものではないと私は思うのですが、いかようにすれば明らかにすることができますか。
  113. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 いまお話ございましたように、憲法第六十二条は、一般的に調査の権能が書いてございますし、また国会法の第百四条にも、審査または調査のため報告を求めることができるし、求めたときにはこれに応じなければならないと、非常に包括的に書いてございます。しかし、また他方におきましては、やはり公務員につきまして、職務上知り得たことを全部が全部出すわけにもまいらぬというおのずからの限界がございます。この調査のほうについて直接に規定したものはございませんが、たとえば議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりますと、やはり上司に一応尋ねて、上司の許可が得られなければ発言できないという限界があろうと思います。また、上司がどうしてもこれは困ると申します場合には、第五条の三項で、受諾ができないという場合には、その証言または書類の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす、こういうことを申せば免責ができる。逆に申しましたか。失礼しました。第二項でもって、承認を拒むときには、この理由を疎明しなければならない。これこれこういう理由でお答え申し得ない、こう申し上げる。それに対して国会側のほう、議院あるいは委員会のほうでもって、そういうことは理由にならない、こうお考えになりますときには、そういう証言、書類の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす、だから出せないのだという内閣側の声明を要求することができる。そういう声明を政府側がいたしました場合に、初めて証言または書類の提出をすることが免責されておる、こういうふうになっておりますので、直接に調査権とすぐこれが結びつくわけでないかもしれませんが、まあこのあたりが両方の、公務員の秘密を守る義務と調査の権限、この間の妥協点といいますか、両方の接点ではあるまいか、かように考えております。
  114. 山田長司

    山田(長)委員 国会法第七十四条にも質問権は認められておると思うのであります。ただいまの答弁によりまして、なお私は不可解に思いますのは、それでは国家公務員法第百条の規定と国会法及び憲法のこれらの条文とで、どれが優先するのですか。
  115. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 法律論までまいりますと、私よりも法制局長官からお答えしたほうがいいかと思うのでありまして、多少法律的に構成がまずいかと思いますが、憲法では調査権があるようにはっきり書いてございますが、やはり憲法の規定の調査権を実行する場合におきまして、一方においては、公務員は公務員としての秘密を守る義務があるものでございますから、その妥協点をどこかに求めなければならない。その妥協点を求めます場合に、いま申し上げたように、国家の利益に重大な利害関係があるということを政府として申しあげれば、国会なり委員会としておきめ願ったことに対しても抗弁できる、免責さしていただくことができる。具体的にどういう事項が国家の重大な利害に関係するかということは、そのときどき、またその内容によって具体的にきめなければならぬと思いますが、そういうところに妥協点を見出しておるのではあるまいか、われわれそう考えておるのであります。
  116. 山田長司

    山田(長)委員 私はかつて決算委員会で造船疑獄の問題を扱ったことがございます。そのときには決算委員会で一応委員長及び理事会で承認を求めて資料の要求をいたしました。そして議長がこれを握っておりましたが、議長にさらに要求をいたしましたらば、時の総理にその書類を手渡すということがございました。それで資料の要求は出さずして、解散をいたしました。こういう事例が前にあるのでありますけれども、それほど大きな内容を今度の場合に私は持っているとは思わないのです。しかるに資料の提出はできませんと言う。こういうことではなくて、もっと何らかの返事のしかたが私はあったろうと思うのです。昨日もこれに対しては、証券課長も証券部長も話し合ったという関係もありましょうが、資料の提出はできないということであった。こういうことで私はいまこれから質問をするにあたりまして、もしこのことが、資料の提出を要求してあるのだから、資料が出ておったならば、もっと明確化して質問ができる、こういう内容を持っておるわけなんです。そこでいまあなたに伺ったわけなんです。そうしますると、法制局でこれの区別をつけなければ、あなたはこれについて、どちらが優先するかということについてはお答えできぬ、ということになるのですね。
  117. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 法制局でなければお答えできないと申したわけでもございませんので、どうも法制局のほうが適当かと存じますが、とかように申し上げたわけであります。いま申し上げたように、憲法の規定の調査権とそのもとにあります国会法の調査権、これも別に制限規定が何も書いてないわけでありますが、制限規定がないけれども、しかし、ほかのほうには公務員の制限規定もあるものでありますから、そこに妥協点をいま申し上げたようなところでお認め願えないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  118. 山田長司

    山田(長)委員 国会法の七十四条、七十五条をひとつごらんになってみてください。文書で請求しても答弁は延びる場合があるけれども、その理由を付さなければならない。付して答えを出さなければならぬということが書いてあると思うんですよ。
  119. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 ただいまのは文書で御質問があったときの規定で、「質問しようとするときは、議長の承認を要する。」それからそれを七十五条で、転送する。内閣のほうにおきましては、七日以内に答弁をしなければならない。できないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示することをしなければいけない。これといまの調査権とはちょっと違って、私どもは実は百四条でございますか、百四条の報告、記録を提出する権限、こちらのほうを考えておったようなわけでございます。
  120. 山田長司

    山田(長)委員 そうしますると、答弁のしかたが——それは文書でもことばでもいいですけれども、七十四条の規定で文書をもってすれば、答えられるものは答えていただけることになると思いますが、いかがですか。
  121. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 これはどちらも、院議あるいは委員会の議決を経てお求めになりましたものに対しては、お答えすることはもう当然であり、お答えしなければならぬ。ただ、お答えいたしました場合に、いま申し上げたような公務員のまた一つの義務と抵触する場合があるものでありますから、その場合に一体どこに妥協点を求めるのが一番穏当なことであろうか、たまたま私は、すぐに適用があるわけではございませんが、証人の宣誓あるいは証言に関する法律がございまして、もちろん御承知でありますが、その中に、出頭しました証人が公務員である場合等におきまして、その職務上の秘密に関する妥協と申しますか、手続規定があるものでありますから、まあこのあたりのところを類推適用するのが穏当ではありますまいか、こういうことを申し上げておりますわけでありまして、その点で実際問題歩み寄りができないものか、こんなふうに考えておるわけでございます。  なお、具体的ないまの問題につきましては、これはむしろなぜ悪いのか、どこまで相談があったかということは、これは私どもも具体的につまびらかにしておりませんが、ただ承っておる限りにおきましては、あまり穏当でなかったように思いますので、以後気をつけさせます。
  122. 山田長司

    山田(長)委員 しっかりした基準がないと、何でもかでも秘密々々と言われると、国政の審議に差しつかえると思うのです。しばしばこんなものは秘密に属するものじゃないかという場合でも、平気で資料が出てくる場合だってあるのですから、この基準が明確になっていなければ都合が悪かったり、虫の居どころが悪かったりした場合には、感情的にも資料を出さぬと言う場合もあり得ると思うのです。こういう資料基準が明確になっていないと、国政の審議に支障を来たすと思うのですが、これについて秘密の限界というものは、ひとつどういう点であるかということの明確さを——これは総理に聞こうと思ったのですけれども、よく総理に話して、ひとつこれから研究してもらいたいと思う。  それから法制局などとも相談をして、その明文化を願いたいと思う。  それでは、この問題はこれでいいですから、次にお願いしたいことは、政府の方針として、予算政府施策が強く打ち出されて組まれることは私が申し上げるまでもないことだと思うのです。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕 ところが予算については、かなりみんなが真剣になって予算ぶんどりの競争が行なわれるけれども、一たび予算が各省にわたり執行されてしまいますると、そのあとというものは、ややもいたしますると、必ずしも予算をとるときほどの情熱がなくて、いろいろな問題が起こってきていると思うのです。そとで、私は長い問決算の仕事をしてみて痛切に感じますことは、会計検査院がもう少し人員をふやすこともその一つになるでありましょうけれども予算を消費した部門について決算が、あるいは会計が、これを予算と同じようにやはり議案として取り扱う筋のものだと私は思うのです。もし議案として取り扱うならば、政府の方針に違いがあるような予算の消費のされ方がありとすれば、これは決算は、そうやすやすと通らぬ結果が止まれてくると思うのです。この点、私は議案として取り扱うべき筋のものと考えるのです。いまのような報告の承認という形では了承ができないのですが、この点はどうお考えになりますか。
  123. 田中角榮

    ○田中国務大臣 会計検査院の検査報告を、議案として議決を要するものにしたほうがいいという議論は、在来から御主張はよく知っております。当時も、政府側からも意見の開陳をいたしておりますが、予算は国会の議決を経なければ執行ができないのであります。しかし決算は、国会の議決を経た予算の執行をいたしました結果の数字を国会に報告するわけであります。しかもこれは、時期的には一年後になるわけであります。でありますから、この決算を国会の議決案件にするという場合と現在の報告案件であるということとは、もう執行してしまったものでありますから、方法としては全然効果は同じなわけであります。ただ、議決案件にした場合、国会がこれを議決しないような場合は、行政府が重大な責任を負わなければならないというような問題が起きてくるわけでありますが、その救済については、会計検査院が国会に、不当の事項に対しては批難報告をするということになっておりますので、もうすでに支出をせられた決算報告は、現在のとおり報告案件とするほうが、形としても実際の問題としても適当である、このように政府は考えておるのであります。
  124. 山田長司

    山田(長)委員 会計検査院が批難報告をし、それを承認するということを申されますが、実は私が決算を長くやってみた結果、会計検査院にできないような事態が最近起こってきておるのです。たとえば防衛庁の飛行機のごときに至りましては、その飛行機の性能、これがたとえば二マッハの速度で飛行機が上昇して飛ぶというような場合に、あるいはそのエンジンの機能において、これは会計検査院にはなかなか検査できない事態になってきておるのです。たとえば原子力の問題もそうであります。旧来の、土木工事やあるいはまた地方の役所の建物の会計検査であるというような場合は、いままでの会計検査でもできるのです。ところが原子力発電所の炉の検査を会計検査院にやれと言った場合に、なかなか会計検査院にそれだけの知のうを持っておる人がいないのです。実は昨日の私の質問に、会計検査院の局長は正確に答えた。とても今日の状態ではできない、そう言っておる。こうなると、防衛庁の戦闘機は、戦闘機自体を出してきて、会計検査院はその戦闘機はわからないでうのみにして、そのまま処理するというような場合もあり得ると思うのです。これでは近代科学の飛躍の状態に、会計検査の衝に当たる人たちがよほどの知のうを持っておっても、なかなかあれもこれも、全部検査ができる筋合いのものじゃないのです。きょうも会計検査院長がお見えになっておられますが、会計検査の衝に当たる人、この機構自体にも、やはり旧来の形ではだめなところに来ておると思うのです。それは学者を擁するとか、あるいはまたその道の大家を擁するとかいたしまして、嘱託制度にするとかあるいは特殊な委員会制度をつくるとかして、これがいろいろ調へる仕組みをつくり出さなければ、これは私はできぬと思うのです。この問題についても、実は総理大臣に、一体いまの機構で会計検査院が会計検査ができるものと思うかどうかを聞きたかったのです。この点についてどうお考えになられるか、一応伺っておきたいと思うのです。これは会計検査院長に伺っておきたいのです。
  125. 田中角榮

    ○田中国務大臣 財政当局としましては、財政の執行に対しましては、より適切を期していただきたいということは申すまでもないわけであります。現行制度の上で、会計検査院が、非常に予算の内容が複雑多岐になってまいりますし、いま申されたように全く技術的に高度のものになってまいりますので、会計検査院の機能が在来のようであるならば、適切な検査が行なわれない事態が起こっておるということも想定されるわけであります。大蔵省などでも、昔は大体法科、経済の諸君が主計局で仕事ができたわけでありますが、その後非常に技術的なむずかしい問題も出てまいりますので、現在は技術、工科出身の諸君もみな主計官になっているわけであります。そういうふうに、時代の変遷に伴ってこれに対応するように陣容、組織を整備しなければならぬということは、御説のとおりであります。そういう意味で会計検査院もだんだん機構を拡充するときに、そのように専門家も配して会計検査院の機能が十分果たされるようにしなければならないということは、御説のとおり了解できます。
  126. 芥川治

    ○芥川会計検査院長 ただいまお話しのとおり、会計検査院の機構、人員の拡充強化をいたしまして検査の徹底をはかるように、毎年度予算折衝の際に要求を行なってまいっております。幸いにして今年度は、非常に大蔵大臣より御理解ある措置をとっていただきまして、例年にない増員ができる予定になっているわけであります。内容をかいつまんで申し上げますと、参事官一名、上席調査官五名、そのうち二名は振りかえによる増であります。調査官は二十三名、そのうち七名は振りかえによる増の措置で、予算が通過しました暁には充実をされる予定になっておるわけであります。なお今後とも、私どもといたしましては充実した検査を行なうことができるように、十分努力してまいりたいと思うのであります。  そこで、先ほど科学、技術が非常に発展しておる段階において、検査院はそのほうの措置を一体どうしておるか、こういう御質問だと承るのでありますが、旧憲法時分以来におきましては、たとえば冶金とか機械とか、あるいは電気、建築、土木、これは大体において顧問として学者にお願いいたしまして、検査の場合に支障のないようにいたしておったわけであります。それだけでは不十分でありますので、新憲法、新院法になりましてからは、先ほど大蔵大臣からお話がありましたように、私どもといたしましても、増強の際に専門の技術者を採用することにいたしております。現在土木、電気、造兵、造船、電気通信、精密学科、あるいは機械、鉱山、化学、光学、物理、金属、冶金等に、約三十三名の技術者調査方面に使っておるわけであります。御質問は、それだけでは足らないじゃないか、こういうお話だろうと思うのであります。今後、検査に必要の場合にはやはり顧問としてほんとうの専門家をお願いする、こういうことも検討してまいりまして、御要望に沿うように努力してまいりたいと存ずる次第であります。
  127. 山田長司

    山田(長)委員 今日のごとく科学が進歩してきておりまするが、会計検査の衝に当たるのに機構はなかった。これはきのうも局長が言っておったのです。これでは私はいけないと思うのです。そこで、いまの会計検査院長の答弁では、旧来なかったということについて、いまおっしゃったことでは明確さが実は欠けておると思うのです。やはりこれは、原子炉にいたしましても、あるいは今度は原子力の事業団なんというものができる。こういうものができてくる前に、やはりもう原子力の世の中になりかかっているときなんですから、いまある原子力研究所の問題でもいろいろ問題があります。きょう私は、そのことについて質問する時間がありませんのでやりませんけれども、そういう非難の声がありまするとき、会計検査院の人が行っても、実はわからずに帰ってきているということがわれわれ耳に入っているので、これではいけないと思う。同時に、飛行機の場合だって、会計検査院には、やはり飛行機に乗ってみられるような人でも何でもいなければいかぬのです。そういう人が検査の衝に当たらなければ、防衛庁で品物を持ってこられたら、そのままこれを受け入れてしまうというような状態ではいかぬと思うのです。でありまするので、やはり予算がことしふえたというときであるならば、幸いにして顧問制度みたいなものをこしらえて、おくれざる科学の状態を検査する機能をすみやかにつくったほうがいいということを、私は申し上げているのです。この点どうなんですか。
  128. 芥川治

    ○芥川会計検査院長 御承知のように、新院法になりましてから検査院が増強されましたのは、山田委員よく御承知のように、補助金の適正化法が適用になりました際に、人員では一番多かった六十名の増員になったわけでございます。質的には今回の二十名の増員が最高であるわけでありますが、いまお話しのように、まだ顧問を置いて原子力等の新しい学問を持った人を包容するというところまでは参っておりませんのでありまして、逐次検査の必要に応じて、そういう点も加味して、必要があれば今後も委嘱する。私もだいぶその方面の学者は知っております。ただ、ただいまのところはまだ置くところまでいっておりませんが、たいへん傾聴すべき御意見でありますので、十分検討してまいりたいと思います。
  129. 山田長司

    山田(長)委員 会計検査院長は必要に応じて設置するなんて言うから、これは言わないつもりでいたのですが、言わざるを得ないわけですけれども、必要に迫られているのです。これは毎回違った炉を何十億も出して設けて、しかもそれが非能率的なものである、こういう事態がもう発生しているのです。ですから、すみやかにこれは設けなければならぬと思いますので申し上げておるわけです。どうぞその点、ひとつ考慮してすみやかな措置のとり方を要望いたします。  次に、これは池田総理に伺うつもりでおったのですが、池田さんはお見えになっておらないので、これも官房長官に文書でお答え願いたいです。これは秘密事項に属しないことですから、文書でお答え願いたいのです。  実は、寄り寄り問題になっておりまして、昨年から法務委員会で問題になっておりまする政治献金の問題であります。それは、当時近江絹絲の社長でありました丹波秀伯という方が、告発人の文書の内容によりますと、一億二千万の横領をしたということです。ところがたまたま大阪地検でこれを調べているうちに、本人から五千八百万の横領であるということが陳述されました。この五千八百万は、政界の人に四、五十人に金がばらまかれてあるのでこれは問題にならないのだ、こういうことを言っておるというのです。これは私が言うのではなくて、一時新聞にも出ておりましたので、この機会に明らかにしておくわけですが、こういう点がもし事実であるとするならば、私ゆゆしい問題と思うのです。政界の明朗化のためにも、やはり明らかにしなければならない筋の問題であります。この点について、領収書の偽造なども会社に出ておるやに伺うのであります。それで大阪地検の特捜部及び担任の竿山という検事、この方に私は会いました。五千八百万円の政治献金は認めたということであります。そこで、さらに政治献金以外に労働ボスにもこれが適当に配付されてあるというのです。そうしますと、政界の明朗化のためばかりでなしに、日本の労働運動の明朗化のためにも、これは明らかにしなければならない筋のものであります。  そこで、丹波という人と池田さんはお会いになったことがあるのかないのか、これはやはり明らかにする必要があると思いますので、私は伺うわけです。これは会ったことがあるかないか、文書でひとつ——きょう本人が出ていないですから、あなたからでけっこうですから、文書で、会ったことがあるのかないのかを出してもらいたいのであります。  さらに、竹内刑事局長の私の質問に対する法務委員会の答弁では、タコ配が二億四千万あることもわかった、このことについては目下調べ中でありまするから、この際お答えすることは差し控えるということであった。しかし、もうすでにそれからかなりの歳月がたっているわけです。ですから、どうしてもこの点は明らかにしてもらわなければならないと思うのです。どうかその点、ひとつこの席であなたから確約を願いたいのですが、どうですか。
  130. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 文書によるかどうか別にいたしまして、いずれ調べました上で御返事申し上げたいと思います。
  131. 山田長司

    山田(長)委員 法務大臣が来ておりますか。——法務大臣は見えておらないですね。それでは後刻見えたら法務大臣に質問することにいたしますが、その金が、十二月の衆議院の総選挙中に、どういう名目で返したかわかりませんけれども、返されておるのであります。いまの政治献金をしたという金が返されておるのであります。これはいずれ調べまして、どういう名目で返されておるかは、いずれ明らかにしたいと思います。  法務大臣が見えておりませんので、これで法務関係質問は終わりますが、次に、今度は大蔵大臣に伺いたいのです。接収貴金属のダイヤモンドの処理状況について伺いたいのであります。  御承知のように、占領軍が占領している直後に日本に返された貴金属の中にダイヤモンドがございます。このダイヤモンドは、ポツダム政令の公布によってこれが調査に当たり、そうして占領軍がこれを日本政府に戻したわけでありますが、実はこのダイヤモンドを、過日日銀の地下室へ調査に行きました。それで、日銀の地下室に調査に行きますと、私がかつて持っておる書類とだいぶその内容が違ってきているという点です。この点についてまず伺っておきたいのですが、これは事務的なことになるので大臣にお答えできるかどうかわかりませんけれども、この点が、当時の占領軍が出した数量と最近大蔵当局が発表している数量とでは、だいぶ違うのです。こういうことがあるのですけれども、これは事務的なことで大臣にはなかなかわからぬと思うのですけれども、この点、一応大臣からお答え願いたい。
  132. 田中角榮

    ○田中国務大臣 連合国占領軍が日本政府に引き継ぎました数量、これはダイヤモンドでありますが、十六万一千二百八十三カラット七五ということでございまして、引き継ぎ後、大蔵省において現品調査及び分類整理を行なったのでありますが、品質はもとより、数量は相違をいたしておらないという報告であります。
  133. 山田長司

    山田(長)委員 当時分けられた品位というものは、五十種類くらいに分けられております。それで、占領軍が番よいと称されているダイヤは四百八十一個、これは大蔵当局の発表と数字に間違いがありません。ところが占領軍が第二番目によいといわれているダイヤは、五百一個あるといって発表している。ところが大蔵当局の発表は、第二位が五千百九十六個になっておる。どういうわけで第二位のダイヤの数がこんなに急にふえたのか。これは優秀なダイヤを悪いほうに回し、そしてあまりよくないダイヤを、小粒なものを数のほうに回している、こういうことがいわれている。この点どうなんです。
  134. 田中角榮

    ○田中国務大臣 どうもただいまあなたの御発言になられた内容ではないようであります。一部整理がえを行なっておるということでございますが、五百一が五千百九十六になったというのは、五百一の中には、数だけではなく袋が数になっておったものもありますので、その袋の中にあった数を全部大蔵省がこまかく厳密に調査いたしました結果、五千百九十六になった、こういうことでございます。
  135. 山田長司

    山田(長)委員 それでは、何のためにこのダイヤの鑑定人が三回も鑑定をする必要があるのですか。私は、一昨年行なったダイヤの鑑定人の経歴を要求します。これは調査の人にひとつ頼みますが、経歴を要求します。それから、二十七年度に行なったダイヤの鑑定人の場合におきましても、どうも鑑定人に対しては、一応疑義が私はあります。さらにこの間日銀の地下室へ行ってみますと、金額にいたしてみて、このダイヤの数というのは、当時でさえも三百二十二億ですよ。いまはこんな金額じゃない。もっとはるかに大きな金額になるわけですけれども、そのダイヤが、どういうわけでこの鑑定人を次々とかえたのか、これが理解できない点です。  それから貴金属の部長がこの間言うのに、私たちはダイヤモンドなんて手にしたくても手にできないが、これは吹けば飛ぶようなダイヤだから数がわからないと言っておる。私、ずいぶん不見識だと思う。ダイヤモンドの数というのは一つ一つ全部わかっているのだと思ったところが、袋から出してきたダイヤは、あまり数が多いのでこの数はわからないと言った。数がわからないというならば、過去において、なぜ、こういう数字がはっきりしたものを出しているかということです。
  136. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いずれにいたしましても、まず大前提として申し上げますことは、占領軍から引き受けまして日銀の地下室へ入れてからは、絶対に持ち出してもおりませんということだけは、率直に申し上げておきます。誤解があったり疑惑が起きたら因るので、これは絶対にいたしておりません、こういうことだけ申し上げておきます。  それから何回も鑑定人をかえたということでございますが、これは、占領軍から引き継ぎましたものに対して、全部これを詳細に調査をして、一品別に改めてまたその中で整理をする、いいものの中にも悪いものもあるし、悪いものの中にもいいものもあるということで、全部整理をするということで何回かそういうことをやった、慎重を期したということであります。  それから、いま貴金属部長がお答えをしまして、何ぶんにも数が多いのでどうも数えられない、こういうことと、吹けば飛ぶようなということでございますが、これは、私は、どういうことだとあれしましたら、ダイヤには、御承知のパウダーダイヤで顕微鏡で見なければわからぬようなものもあるわけであります。そういうものは一袋幾らということになっておるのでして、これはダイヤの性質上、粉のようになっているものもありますから一これは実際にそうです。非常に小さいものが、御婦人の飾りなどにはほとんどわからないような小さなものが入っているわけでありまして、そういうものもありますので、総体の数をほんとうに全部調べるということは不可能だということをお答えしたようでありますが、その事実は、私ども全く見たことはございませんが、山田さんはごらんになられておるわけでありますから、事情は御理解いただけると思います。いずれにしても、これを持ち出したり交換したりしたということはありません。分類が変わったのは、その中における分類が精査の結果変わっておるということだけであります。
  137. 山田長司

    山田(長)委員 どうも大臣は日銀地下室に行って見てないようだ。それは確かに吹けば飛ぶようなというけれども、顕微鏡で見るというような筋のものじゃない。ダイヤモンドはさん然たる光を放っているのですから、そんな筋合いのものじゃないです。  それから、これはついでにちょっと伺いますが、会計検査院は、会計検査の衝に当たって、このダイヤを調べたことがありますか。
  138. 芥川治

    ○芥川会計検査院長 会計検査院は、物品といたしまして、三十五年、三十七年に実地に参りまして検査をいたしております。大蔵省が責任を持って保管されておるわけでありまして、これがその後外に出るという事態がございませんので、その二回で、その後は検査いたしておりません。
  139. 山田長司

    山田(長)委員 何で私が力を入れてこの問題を言うかというと、日銀地下室から去年の六月になくなった百万円の札の行くえは、いまだにわかってないじゃないですか。同じような場所に——ダイヤの場合は、私がいまから七年ほど前に見たときには木の箱に入れられていたが、その後小さな金庫に入れられてあった。この間行って見たときに金庫に入れられてあった。ところが、会計検査院がどういうことでどういう調査をしているかわかりませんけれども、この間われわれが調べに行ったときに、日銀総裁が出なかった。それで理事が出てきて、答弁するということから質問してみれば、この百万円の行くえについては、これは普通の人じゃ考えられないことです。あの地下二階の金庫の中から百万円が紛失しているのですから、これはだれが考えてみても常識では判断できないところから、とにかく百万円なくなっているのですよ。だれが、ダイヤが一個もなくなっていないということを断言できますか。あなたは断言なんかできるはずはないのだ。大体、マーレーという大佐がダイヤを日銀の地下室から盗んで行って、サンフランシスコで上陸しながら、ポケットからダイヤがこぼれ出して、横浜で軍事裁判を受けている。これは日本政府が引き継ぐ前のことであるかもしれないけれども、その後日銀の地下室から百万円が紛失しているのですから、こういうことを見たときに、数がわからぬということを部長から聞いて、非常にふしぎな感じを抱いた。だれが考えたって、一個何万円から何十万円もするものがあるのですから、数を調べてないということは、あなたはこれは明確に言っておるけれども、理解はできないのです。何で幾日かかってもこのダイヤの数を調べないのですか。
  140. 田中角榮

    ○田中国務大臣 占領軍の問題は、日本政府が引き継ぐ前であります。その後百万円なくなっておるということでございますが、確かに、そう言われれば、それは神ならぬ身でありますから、なかなか絶対ということはないと思いますが、少なくとも官でこれを管理するために必要な最高限の配慮を払っておるということだけは事実であります。しかも、この問題はもう十四、五年前から問題になっておる問題でありますから、大蔵省も非常に細心の注意を払っております。細心の注意を払っておりますので、こまかいものなどは数えない、こういうことをやっておるのであります。なぜかといいますと、これは、山田さん、まじめな話ですから聞いていただきたいのですが、小さいものは、袋から出しますと、ピンセットで一つちょっとやってもぴんと飛んでしまうくらい小さなものがあるんです。実際吹けばふうっと飛ぶようなものがあるんだそうです。ですから、そういうものは一つの目方ではかりまして、これは、銀貨とか、いまの補助貨幣の勘定なんか目方ではかっておるのですが、そういう意味で、一つの容積を抽出をしまして、それでそれだけのもので数えて、そうして全部のダイヤの総重量をこれで割りまして、それで大体幾らというのが百四十九万八千個、こういうのです。ダイヤなどというものは一カラットの単位で話をするものだと思いましたら、十何トンもあるというのですし、個数にしては百四十九万八千個、こういうのでありまして、占領軍からは十五万六千三百五個ということで引き継いだわけでございますが、これをできる限り安全な状態で検査をしまして、個々に袋を出したり、大きなものは数える、小さなものに対してはそういう絶対安全な方法でもって合理的な推定をやりまして、百四十九万八千、こういうことになったわけであります。この十五万六千三百五という、袋も含めての占領軍からのものは、全部調べてない、大体の推定であるというただし書きで日本政府が引き取ったわけであります。
  141. 山田長司

    山田(長)委員 日本政府が引き取って、しかももう何十年もの歳月がたっておるわけです。引き取った月日は、昭和二十六年六月二十一日に覚え書きをもって大蔵省が現物引き渡しを受けておる。それが今日に至っても数量が調べてないから問題なんですよ。それで、吹けば飛ぶよなと言っておるんだから、あぶなくてしようがない。当時の金額で貴金属が全部で千二百九十七億円の見込みだったのです。ところが、これらの金額が、いずれも池田内閣の政策による物価高でみんな値上がりをしておる。それだのに、大蔵省で出している貴金属の関係法令集の中に、印刷物で、一カラットのダイヤが、加工してちゃんとりっぱになっておるものが千九百七十八円、加工してないものが千五百三十六円になっておる。ダイヤモンドの値打ちがそうなっている。一体、こんな法令集を出して、こういうふうにダイヤの価格を下げて、それで販売するのではないかということが言われているんだ。一体この点はどうなんです。
  142. 田中角榮

    ○田中国務大臣 そういう魂胆などは絶対ございません。間違いなく申し上げておきます。これは売るときには時価で売ることになるのでありますから、そのようなことは許されるはずは絶対にありません。しかも、ダイヤなどは、これは国際価格があって、非常に安定した価格でありますから、そのような考えは絶対にないことを申し上げたいと思います。いまおっしゃった価格は、戦時中に交易営団が国民から買い取ったときの値段をそのまま計上しておる、こういうことであります。
  143. 山田長司

    山田(長)委員 買い取った値段と言うけれども、どういう人が供出したかわかってくるのかしれないけれども、世の中がだいぶ変わり、保管はだいぶ長くかかって保管してやって、戦後世の中が物騒なときに、ダイヤなど持ってくるとあぶなかった世の中のときにこれを全部保管してやっていて、貴金属をこれらのときの価格で返しているじゃないですか。
  144. 田中角榮

    ○田中国務大臣 そこにも間違いがあるようでございます。これは、戦時中に供出をした人にその値段で売ったのではないのであります。それは、交易営団から国が引き取るときに、交易営団が国民から買った値段を交付をして、そして国の帰属にした、こういうことでありまして、交易営団と国との間の問題でありますから、これはもう戦時中の値段で供出した者に安い値段で返してやった、縁故払い下げをしたというようなものでは絶対にないのであります。
  145. 山田長司

    山田(長)委員 これは私が調べ始めた当初から言わなければいかぬと思うのですが、私は昭和二十七年の十月に初当選をして国会に出てまいりました。二十七年にすでに、出てきて間もなくこのことが議題になっておりまして、まだ調査の過程の中に私は飛び込みました。その飛び込んだとき、一体返すべきであるか、返すのをやめるべきであるかということはかなり論議されておったのですが、これがたまたま返す方向に向きました。当時十六国会でありましたが、この貴金属は、戦争の犠牲者と、それから、さらに気の毒な家庭の社会保障のために使うべきではないかということで、法律がほとんどできかかっておったのです。ところが、ばかやろう解散で、そのできかかっていた法律が、あと一回くらい審議すればできる大蔵委員会が、その一回の審議ができなかったためについにこれはそのままになってしまった。そのままになってしまってはいるけれども、私は、時効というものが世の中にある以上、そうむやみに返すべきではない、こう思っておったらば、たまたま選挙のときに、宝舟であるとか、あるいは大判、小判であるとか、金の茶がまであるとかいうものを供出させられた人たちが、ボスにこの品物を返すための運動をしたということを耳にした。政治ボスに返すようにしろということの運動をしたことを聞いた。ついにこれは返されてしまったわけでありますが、一体、零細な国民のネクタイピンであるとか、あるいは金側時計であるとか、あるいはバックルであるとか、婦人のかんざしであるとかいうようなものはみんな延べ棒にされてしまっているが、金のある階級の宝物に匹敵するようなものはちっとも延べ棒にしなかったのです。そういう契約がしてあったというのです。一体、そういう契約がしてあっても、これは本来ならば時効にかかつらやったんだ。十五年も二十年近くもたっているのですから。ですから、本来ならば、それはもとの所有者を探すごときことをして返さなくてもほんとうはよかったのだ。それを返す体制をして返してしまったものもあるわけなんですが、これは何としても質問するたびにダイヤの価格やら貴金属の価格が下がるから、これはそのままにしておくのだと言うけれども、私はダイヤモンドの値段が下がっても国民生活には影響ないと思う。一応早くこのダイヤを処分して有益な方向に使うことのほうが、日銀の地下室で寝せておくより意義があると思うのだが、その点大臣どう思いますか。
  146. 田中角榮

    ○田中国務大臣 金は、日銀が買いましたときには、日銀の分だけは売り戻し条件がついておったということで売り戻したそうでありますが、ダイヤとか国が持っておるものに対しては、これを縁故者に返すというような考え方はないわけであります。  それから、いまダイヤ等ばく大もない財源が眠っておるのだからこれをひとつ払い下げてしまえ、そして、より有効に使えという考え方はよくわかります。ことしは一部の人から予算のときに、財源がないので日銀のダイヤを売るのじゃないですかというような冗談が私にもありましたけれども、時期的に見まして、今年は健全財政を貫かなければならないというようなときでもありましたので、今日三十九年度の財源というようなことにしてこれを売り払わなければならぬというような状態になかったわけであります。しかし、これはいつの日にか換金せられるか、せられてより有効に使わるべきであるということに対しては同感であります。
  147. 山田長司

    山田(長)委員 日銀の地下室を信用しなくなってしまった私は、このダイヤの問題につきましても大蔵大臣にこれから遺憾のないようにさらに一そうの保管方を要請するものであります。  次に大臣に伺いたいのは、証券業者の指導監督の問題であります。  最近の証券業界の実情を見ますと、株の大衆化ということで、最近まで、株を大衆に持たせて経済を安定化していく、こういう意味で、国民もこれに対してたいへん期待を持っておったと思うのです。ところが、投資信託のごときに至りましては、最近では五千円のものが三千二、三百円になってしまっておる。これは、最初行って投資信託を買おうとする場合には、この信託を扱っている会社は、いずれも、専門家にまかせておけ、こういうことをことば巧みに言われるわけであります。ですから、株の知識のない大衆というものは、この証券会社の窓口で折衝する人、あるいは勧誘の衝に当たる人たちに対しましては、それはほんとうにそのとおりだと、こう思わせられてしまうわけです。そう思い込んで買ってくると、それが最近は少しも上がる状態になっていかない。こういうことで、国民の間で投資信託に対する希望というものももう失いかけておるという状態に今日変わってきていると私は思うのです。これらについて大蔵当局の指導というものはどんな指導のしかたをしているのか、一応最初に伺っておきたいと思うのです。
  148. 田中角榮

    ○田中国務大臣 投信は、御承知のとおり、額面割れをしておるものも相当ございます。これらに対しては、国民としては非常にいいときはたいへんな利益をあげたわけでありますが、このごろは御説のとおりであります。こういう問題は、国民の自発的意思に基づいて選別をせられ投資をせられたということ以外に、勧誘員のことば巧みな勧誘態度によって国民を勧誘したんだということになりますと、いろいろ問題もありますので、大蔵省といたしましては、行き過ぎた勧誘態度をとってはならない、そうして、やはりまじめな立場で、日本資本市場育成という立場国民の協力・共感を得るのでありますから、事実をもととしてまじめな立場で勧誘をするようにということを証券業者にも強く要求をし、また、業者も、これが勧誘員の資質の向上その他に対しては格段の措置をいたしておるわけであります。一時投信に対する熱も相当下降ぎみでございましたが、その後、昨年の末及び今年に入ってから各社で新しく設定をして募集をいたしておりますが、まあその成績は、大体落ちついた正常な状態に戻りつつあるというふうに考えられるわけであります。
  149. 山田長司

    山田(長)委員 最近五億の横領事実を新聞に指摘されて大和証券が困っておる。野村証券も上野方面の店が十億の穴があいて困っておるやに聞いておるのです。そこで、大蔵当局は現在七、八人の事務官を派遣してこれが調査にかかっているそうです。これはかかっておりますか、おりませんか。
  150. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま四大証券には定期検査を行なっております。定期検査の過程においてかかる問題は解明せられるものだ、このように考えております。それから、大和証券だったと思いますが、どこかの支店で五億に近いものが事故が起きたということでござます。一体かかる事故が起きるような仕組みになっているのか、こういう問題に対して証券業者は姿勢を正さなければいかぬ、こういうことをまず私からも強く言っております。しかし、このような事故があったからといって大衆投資家に迷惑をかけてはならない。この事態に対しては強く業者に反省を求めております。
  151. 山田長司

    山田(長)委員 定期検査を行なっていることは知っているのですが、実は、定期検査をどのくらい行なっているかということについてこの間質問をしているのです。ところが、本来ならば一年か一年半でやっていべきものを、三年も四年もやってないというんだ。そとに問題があるのです。もしそういう形でなかったらば、おそらくこういうことはなかったろうと私は思うのです。まして、大和の五億の横領の問題につきましては、二十七年も二十八年も検査に行っているのです。検査に行っているにかかわらず、この事実があがらなかった。これは私は検査の衝に当たる人たちがどういう態度で臨んでおったのか知らぬけれども、とうに発見されればこんなことは起こらなかったのです。ですから、定期検査なるものは大きな証券会社に対しては正確にやられていないらしい。この点において私はもっと明確に大臣は部下に指導をしなければいけないのではないかと思うのですが、この点どうですか。
  152. 田中角榮

    ○田中国務大臣 あなたと同じような気持ちで、理財局長及び証券部長に対しては強い指示をいたしております。ただ、証券取引法の精神はもう御承知のとおりでありますが、大蔵省が証券業者に対して検査をいたすということは、投資大衆に迷惑を絶対にかけないことと、それから、正常な証券企業を育成しなければいかぬ、こういう観点から検査を行なっておるわけでありまして、財務諸表等に対しては相当こまかく検査をやっております。そしてまた、いろいろな架空の数字がないか、またバランスに出ておるものの実際価値が一体そのように存するのか、その掛け目が一体どういうのかというような問題に対しては、相当こまかく適切な検査を行なっております。その結果、本省において審問して営業停止を行なったり、いまいろいろ強い態度を行なっているわけであります。しかも、この大企業、いわゆる証券四社に対しては手ぬるい、少し手かげんしているんじゃないかと言われますが、そんなことは絶対ありません。証券四社に対しては特に手きびしくやるように言っておるのですが、何分にも、そういう事件が起きるのは支店でありますし、特に日々活動しておる銘柄別のものまでこちらで全部調べるというようなことよりも、いわゆる財務関係に対して、その企業が、その証券会社がより健全であるべきだという考え方で検査を行なっておりますので、見落としたといえば、重点がそこになかったということも言い得ると思います。何しろ、かかるものは会社の支店長や重役も全く毎日毎日伝票整理をしながら、決裁印を押しながらもわからなかったほどの巧妙なものでありますので、われわれも検査の過程においてこれを見つけることができなかったのだと思いますが、こういうことが、投資大衆に対しては絶対に迷惑をかけないという会社の態度であっても、証券市場の育成、証券業者の育成という大きな面から多大の支障になるので、以後十分気をつけるように、こういうことを言っておりますので、大証券会社四社も非常に前向きで積極的に事故のないようにいたしておりますし、われわれも手かげん等は以後も絶対いたすつもりはありません。
  153. 山田長司

    山田(長)委員 これは、一株式の問題ではなくて、やはり、これからの大会社の資金調達という面においても、株が大衆化しなければなかなか私は資本を累積することは困難だと思うのです。そういう点で、大蔵当局のこうした証券関係に対するところの調査というものはよほどしっかりやっていただかなければならぬと思うのです。何か聞くところによると、証券局ができるので、証券課の人たちはさっぱりその方面に力がいま入れられないのだという話を聞く。そういうことはないだろうと思うのですけれども、そういうことがちまたに流布されておる。第一、今度政府がつくった共同証券会社というのは、つくるという話が出たらば株がかなり上昇してきましたが、内容が二十五億の資本だということがわかってさましたら、最近ではまた平出に戻ってしまって、戻るばかりでなくて、だいぶ下がってしまった。一体この証券会社はどこの株を買おうとしているのか。それが公的な内容を持ってきているだけに、買おうとする内容によってはずいぶん変わってくると思うのですけれども、一体この共同証券会社なるものはどういう株を買おうとしているのか、これは全く不明確なのでありますが、何かこの際言い得るものならば明らかにしてもらいたいと思います。
  154. 田中角榮

    ○田中国務大臣 共同証券は証券取引法に基づく一般の証券会社でありまして、政府がこれに関与しておるようなものではありません。この共同証券は、今度倍額増資をして五十億になり、また各銀行も百億ばかり融資を決定したようであります。こういう持ち株会社的なものができることは、必ずしも私は市場の自由闊達な発展の意味から申し上げまして好ましいことだとも思っておらなかったわけでありますが、金融界、証券界、その他各産業人もこれからあらゆる投資機関が参加をして相当大きなものになる、こういうことを報告を受けておりますので、これが持ち株会社のようになって、安いときに買い込んでおって、高くなったらこれを逆に市場に放出することによって市場を混乱せしむるような経営態度ではなく、つくられたときに、市場の健全な育成を主眼として半公共的な精神をもって設立せられたことに徴しまして、できるだけ市場の発展のために、また市場と大衆との結びつきに大いに貢献されればはなはだ好ましい、こういうことだけ、私は設立後役員諸君があいさつにまいりましたときに私の考え方を申し述べておいたにすぎないのでありまして、この会社の運営は全くこの会社の諸君がやることでありまして、どの株をどのような時期にどうして買おうか、また、いつこれを売り出すというようなことは、一切自主的に行なわれておるわけであります。
  155. 山田長司

    山田(長)委員 どうもいまの御答弁では明確な点をくみ取ることができないのですが、中堅の証券会社の人たちの話を聞きますと、証券会社の中には、投資信託等で五年の歳月が来て返済をしなければならない時期、それからまた途中で解約するような場合えらい損をする、こういうことについては大蔵当局はどう考えておるかということ、それから、もう一つは、この証券会社の状態はだんだんじり貧になっている、こういうことを言っている。ちょうど、これは、かつて伊藤斗福という人が保全経済会というものをつくったことがありますが、それと同じように、だんだん次の段階でこれを買い上げるときにろくに利益がないからやめてしまうというようなことで、募集はどんどんふえるけれども、やめる人が出てくるというようなことでじり貧になっていく。こういう状態では先々まことに心細いことだ。そういう点はどうなんですか。
  156. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日本の株式は、ある一定の期間を限ってみますと、確かに去年の後半から今年初頭にかけては、株式は低迷状況を続けておりますが、これは新聞にもまた議論にも言われておりますように、国際収支の見通しが不安定であるとか、また四月からの八条国移行に対して相当大きな自由化の波が来るのではないかとか、そういう長期な見通しを民間で立てて、まあいろいろ株に手を出さない、しかも、一時のように一年に三割も五割ももうからないということで買わないというような考え方から言うと、どうもこのごろ半年や一年間は持たなくてはならぬな、これでは銀行預金とあまり変わらぬじゃないかというような考え方が支配的になって、株式市場の低迷が続けられておると判断せられるわけでありますが、これは、しかし、将来の日本企業の状態は一体どうなるのかという見通しをつければ、よその国の将来を見てよその国の株を買うのではないのであります。自分の国の、われわれが住んでおる、われわれが生活をしておる、その基盤になっておる産業に資本投資をするのでありますから、日本はだめになるのだ、こういう考えになれば、これはもう悲観的だと思いますが、私は、大蔵大臣の立場で、株が上がるとか下がるとか、そんなことを申すべきではないのでありますから、そんなことは絶対に申し上げませんが、国民の一人として考えれば、政府もこのぐらい国際競争力をつけて、このぐらいたくましく成長してき、また将来も安定的に拡大成長を続けていこうというのですし、私は資本というものが戦前の自己資本六一%からいま二五%を割っている、こういうことから考えますと、資本市場も確かに小さいけれども、将来こんなものでいいなどと考えておりませんし、将来相当大きくなるであろう、将来の日本の経済というものは必ずよくなる、こういう考えに立って考える場合、もう一つは、ただもうかるとか、上がり下がりがおもしろいとかいうのではなく、日本人の生活基盤をゆだねている日本の産業でありますから、やはり資本参加をすることによって国際競争力もつけなければいかぬ、外国から借金政策をしているものをやめる、そして日本人が西ドイツのように自己資本でもって自分の産業を守り立てるということに踏み切らなければ、もうどうにもならないわけであります。そういう事態を総合的に勘案するときに、将来の資本市場は明るい、これは絶対に何人でもそう考えていると私は思うのであります。ですから、やはり株式というものは、一カ月たったらすぐ売る、半年たったらすぐ換金するというよりも、一部は貯金をしながら、一部は資本参加をするという考え方でいくならば、私は、いま低迷状況にある投資信託その他も、将来というものはそう悲観すべきものではない、また、悲観すべきものであってはならないというふうに考えておりますし、大蔵省も、そういう意味でしさいに検討しながら、業者の自粛も求めながら、国民と密着をする資本市場の育成に努力いたしておるわけであります。
  157. 山田長司

    山田(長)委員 まだたくさん質問することがあるのですが、大臣の甘い説明を聞いたのでは、なお私は悲観せざるを得ないのです。  次に、大蔵大臣ではなくて、今度は防衛長官にお伺いいたします。  ロッキードが先般墜落いたしましたが、そのパイロットの死んだ原因は明らかになりましたか。それだけを御答え願いたい。
  158. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 政府委員より答弁させたいと思います。
  159. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  スロットルレバーの故障から事故が起きたものでございます。
  160. 山田長司

    山田(長)委員 そうしますと、そのロッキードの故障原因というものが明らかになったわけですから、これから生産される機械についてもその部分は改良された形で進められるものと思われますが、その点はどういうふうな進め方をしておりますか。
  161. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 当然二度と事故が起こらないような配慮を加えて生産をいたしております。
  162. 山田長司

    山田(長)委員 聞くところによると、ロッキードの発注については、上昇の速度、それから行動の半径、全天候、納期等、これが条件とよほど異なっているという話でありますが、性能等は完全であるのかどうか、これも伺っておきます。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  163. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 F104の性能につきましては、当方で出しております要求性能を完全に充足いたしております。これは、米国における飛行審査でも確認をいたしたものでございますが、さらに、昨年の八月から十一月にわがほうでやりましたカテゴリースリーの運用の試験でございますが、これもいたしまして、要求性能を十分満たしておるということを確認いたしております。
  164. 山田長司

    山田(長)委員 このジェット機の納期についてははなはだしく遅延しているが、これで国防上に支障はないのかということです。それから、遅延の状況、その原因、これを明らかにしていただきたいのです。
  165. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 現在までに領収いたしましたのは、一月末現在で104J六十八機、DJが十八機、合計八十六機でございます。で、当初の計画に対しまして、二、三カ月程度のおくれであろというふうに見ております。  このおくれの原因でございますが、当初新三菱重工でこれを製作するにつきまして、輸入の部品がおくれたこと、あるいは、こういう高速の新しい飛行機でございますので、作業にふなれがあったというようなこと、さらに、昨年の四、五月ごろは非常に天候が悪いために、社内飛行、領収飛行というのが十分にできなかったというような原因からおくれたわけでございますが、現在のところ、九月以降は非常に順調に進んでおりまして、毎月予定どおりの機数を生産しております。したがいまして、今後こういう状況が続きますれば、納期にそうおくれることはないのではなかろうか。われわれとしましては、所定の納期までに完納させるように極力努力を続けていきたいと考えております。  国防に関する問題でございますが、そういうわけで若干のおくれがあります。したがって、パイロットの養成も多少おくれておりますけれども、パイロットの養成も四十年度中には予定のとおりになるのではなかろうかというふうに見られておりますので、若干おくれてはおりますけれども、そういうことが国防等に非常に大きな悪い影響を及ぼすというようなことはないと考えております。
  166. 山田長司

    山田(長)委員 私は、数年前決算委員会でロッキード、グラマンの問題のときにこの審査に当たりまして、特に関心を持っている一人でございますが、ただいまの御報告によりましても明らかなようでありますけれども、ただいま飛行機のできている状態を詳細に言われたのではなくて、機数だけを言われましたので、参考までに申し上げておきますが、三十七年度の四月には一機できるはずだったものができなかった。三十七年の五月には一機できるはずだったものができなかった。六月に一機できるはずのものができなかった。七月に二機できるはずのものができなかった。八月に二機できるはずのものができなかった。九月に二機できるはずのものが一機できた。十月に三機できるのが二機しかできなかった。十一月に三機のものが四機できた。十二月に三機のものが一機しかできなかった。一月に四機が四機できた。二月に四機が五機できた。三月に五機が六機できた。合計三十一機に対しまして二十三機。それから、三十八年度の四月に七機できるものが一機もできなかった。五月に七機できるものが一機しかできなかった。六月に七機できるはずのものができなかった。七月に七機できるものが五機しかできなかった。八月に七機できるものが四機しかできなかった。九月に八機のものが五機であった。十月に八機のものが八機できた。十一月に七機のものが七機できた。十二月に七機のものが七機できたという状態であります。それで、本年一月に七機ができました。こういうわけで、八十六機のところ四十四機で、いわゆる四十二機の不足であります。速度において二マッハ、要するに一秒を争うような機械の問題につきまして、実際に五十機近くも不足しておりまして、これで国防計画変更はないのかどうか、防衛庁長官にこれはちゃんと伺っておきます。
  167. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 F104ジェット戦闘機でありますが、これは、山田委員御案内のとおり、第二次防衛計画の目標である二百機、これを目標に生産を続けているわけでございます。初期におきましては、ただいま装備局長からお答え申し上げましたとおりに、各般の悪条件が重なりまして、確かに予定どおりいかなかったことは事実であります。しかし、最近、いわゆる不ぐあい事項、URの問題が逐次改善解決されまして、予定どおり生産があがっております。昨日の業務会談におきましても、二月にはFが七機、Jが七機、DJが一機という報告を受けておる次第でございまして、目標である昭和四十年には私どもの生産目標二百機はほぼ達成の見込み、おくれましてもわずか二、三カ月というのが大体専門家筋のはじいた数字であります。私も心配いたしまして、昨年夏就任以来二回ばかり千歳の現地に参りました。パイロットの話も聞き、また整備員の状況も調べまして、半年前は確かに部分品の問題、あるいはブラック・ボックスのとも食い、あるいは整備ふなれ、各般の事情もあったようであります。しかし、新しい機種を生産し、また軌道に乗るまでには、いろいろとURの問題が出、むずかしい条件と取り組まなければならぬことは、わが国のみならず世界共通の問題でございまして、この点は、私ども将来の生産目標に対しては自信を持っておる次第でございます。
  168. 山田長司

    山田(長)委員 納期の遅延につきましては、当時私たちが国会で審議の衝に当たったときに、一機欠けても国防にはならぬと時の岸さんはわれわれに答弁をいたしました。これは国防会議議長という立場で答弁をしたのだと思っております。ところが、この納入状態を見ますと、まことに遅々として進まない納入状態であったと思います。なおその納期が来ても納められずにいる状態であります。この状態で、この契約は一体どういう条件であったのか、絶対におくれぬことが条件になっていたはずだと思うのでありますが、この点はどうなんですか。
  169. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 契約上の納期は四十年の一月でございます。その間各年度ごとの数量は努力目標として示すということになっておりまして、各年度ごとにおくれたからどうこうということにはなっておりません。最終の四十年一月におくれた場合、契約上では、その遅延が会社の責めに帰すべきものである場合には履行遅滞金を徴するというふうになっております。
  170. 山田長司

    山田(長)委員 それでは伺いますが、この価格はJが四億八百六十九万円、DJが三億五千六百二十四万二千円、これが二百機の総額は九百六十八億円になっておる。それで、この支払いの状況は、前払いが三十七年に二百二十八億二千八百二十八万円されている。そのほかに概算払いが二百二十六億九千百五十二万円してある。一体、予定どおりの数が入らないのにかくのごとき支払いをどうしてしたのですか。こんな契約が最初からできておるのですか。この点、大臣、どうなんです。
  171. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 機体、エンジン関係につきましては、契約額の七五%を概算払いするということになっておりますが、七五%を五カ年に分けまして支払いをいたしておるわけでございます。飛行機の生産に着手します場合には、実際の生産に入ります前に相当な資金を必要とするわけでございます。輸入品あるいは設備の問題、ベンダーに対する発注というようなことで会社のほうで資金を必要とするということから、七五%の概算払いを認められたわけでございます。これを全部初年度に払うということではございませんで、五年間に分けて七五%を支払いをするというふうになっております。
  172. 山田長司

    山田(長)委員 どうもこの支払い等にも私には不可解な点があるわけですが、時間の関係で……。  当時の防衛庁にこの契約の衝に当たった人たちもおそらく残っているだろうと思うのでありますが、私は、当時決算でこの問題を扱った関係上、当時どうしてロッキードにきまったのかということをいまさらのごとく想起いたしまして、この予算の審議にあたって申し上げるわけですが、当時グラマンとロッキードが選定されるときに、ロッキードの完成までには十四カ月かかると言った。それから、グラマンは二十八カ月かかると言った。そこで、日本の国防上から言ってもこの点はまずロッキードにきむべきであるということが当時言われたのであります。ところが、実際それが履行される段になって、注文をとってしまったらどういうことになったか。この飛行機の内容については全天候であるということも一つの理由でなければならぬことになっております。それから安全性、長期使用に耐えるもの、訓練の容易なるもの、整備の容易なるもの、多目的にも使えるもの、その他上昇力、速度、行動半径等十数項目にわたってロッキードのほうが優秀であるということが当時の防衛庁の人たちのわれわれに対する説明だったのであります。ところが、いまこの予算を審議するにあたって、私は、痛切に感じますことは、これらのことは全く注文を取るための方便でしかなかったような印象を持つわけです。いまだに、さっきも申し上げますように、順調に進むはずのものが五十機も不足している。五十機も不足しておって、できる状態がなかなかできないでおって、パイロットの育成というものは当然思ったようにできるはずがない。それで国防上から考えてみても、いまだに五十機もできずにあって、当時は十四カ月たてば緒についてこれは完成すると言っておった。それが、当時グラマンのほうは二十八カ月かかるというので、倍かかるからこれはやむべきだということでやめた。ところが、いまだに注文を取ったほうのロッキードのほうの製品はでき上がらずにおる。これでは、はたして国防上に支障がないのかどうか、これは防衛庁長官にこの際明確にお答え願いたいと思います。
  173. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 グラマンまたはロッキードの機種決定のいきさつにつきましてはつまびらかにいたしません。ただ、先ほど申し上げましたとおり、最初の過程におきましてはいろいろなURの問題が出まして遅延いたしたことは、まことに残念に思っております。ただ、幸い、その後鋭意くふうをいたしました結果、あらゆる欠点はほとんど除去されました。たとえば小川元二佐の週刊誌あたりに発表いたしました十六項目のいわば欠点を列記いたしましたあれも、実際調べますと、わずか六点だけが事実に合っている。この点もすでにすべて解決いたしまして、難点は解決されております。山田委員も御案内のとおり、現在、NATO諸国、西ドイツ、 ベルギー、オランダ、イタリア、それからカナダ、日本、台湾、これら全部F104を採用いたしまして、ことしの一月三十一日の現生産高の総計は九百六十四機という相当の額に達しております。目標も二千一機をこしておりますが、わが国も、最初のいろいろな問題、あるいは原因から来る遅延ないし出産のおくれは確かに残念でございますが、先ほどお答えいたしたとおり、あらゆる欠点はもう除去されまして、大体私どもの第二次防達成目標の二百機はなし得る。その間における防衛体制の問題でありますが、完全といいますか、いはば予定どおり行なわれるよりもおくれたことは、確かに欠点といえば欠点であります。弱点でございます。しかし、それによって直ちに日米安保体制のもとにおける日本の防空体制がゆらぐとか、あるいは大きな穴があくという御懸念はないものと考えております。   〔「時間が経過しているよ」と呼ぶ者あり〕
  174. 山田長司

    山田(長)委員 時間が経過して申しわけありませんが、最初の様子をあなたが知っていれば、そのことがわかるわけです。もう一点だけ申し上げて、それから法務大臣にも一点だけ伺ってやめますから。  ただいまの答弁を伺って、これは当時の実情をやっぱり福田大臣は知らなかったと思うのです。私は、当時この衝に当たったものですから、予算とにらみ合わせまして、一体そのできる歳月間違いないかということまで念を押したととろが、絶対に間違いないとまで当時言ったのです。しかるにいま、数年の歳月がたってみますと、五十機の不足を生じておるから、私は、当時を想起して、大臣はかわっておるけれども、ここに明らかにしなければならないので、明らかにしておるわけなんです。ですから、これは選定基準に誤りがあったということがわかると思います。アメリカでは当時、この会社はいままさにつぶれかかっておった。そのつぶれかかっておった会社が、日本の注文によって息を吹き返した。当時の川島さんは、ハワイヘぜんそくなおしに行ったと言った。当時、年数は忘れましたが、ハワイへ行ったのは、奥さんを連れて行っておったので、私はそうだと思っておったが、ホテルまで全部調べた。ハワイにいたのは七月十五日から十八日までしかいないで、向こうに渡ったのです。ですから、ロッキードとグラマンの問題については、これらの機種、内容を、飛行機をそろえておってきめられたものということについては、残念でありますけれどもただいまの大臣の答弁には私は不満足でございます。この点は明らかにしておきます。  次に、法務大臣に一言だけ伺っておきます。御病気であることを伺って、きょうの出席を求めてたいへん恐縮なんでありますが、どうぞひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。  それは近江絹糸の問題でありまして、五千八百万円の政治献金をした、及び労働ボスに対する献金をしたという、大阪の地検の特捜部で扱っている問題でございます。法務委員会で、昨年も、さらにことしの一月も、これを問題にいたしまして詰問したのでありますが、竹内刑事局長からの御答弁もありましたけれども、五千八百万円の問題につきましては、被告人が年配者でありますので、これを拘置して調べることができないので、いまだに結論が出ないけれども、タコ配の問題等もありますので、鋭意これが取り調べをするという御答弁をいただきました。しかるに、その後かなりの歳月がたっております。その間に地方選挙あり、衆議院の選挙等がありまして、検察当局の労をわずらわしたこともあったかと思うのでありますけれども、政界の人たちに献金がなされたということでありますし、労働関係の人たちにも、労働ボスに懐柔費が出たという話もあるし、それから法案審議にあたって、一部の人たちに金が出たといううわさもあるわけです。これが検察当局の取り調べの結果、五千八百万円の政治献金をしたということは事実であるということの結論が出ました。しかるに、その後これが進展をちっとも見ていないやにわれわれは察するのであります。この点について、大臣といたしまして、政界の明朗化あるいは労働運動の明朗化のためにも、進展をすみやかならしめるために何らかの方途をお示しいただければ幸いだと存じます。どうぞ御答弁をお願いいたします。たいへん恐縮です、足の悪いところを。
  175. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまの近江絹糸の事件に対する御質問でございますが、まだ捜査継続中でございまして、その捜査の結果が判明いたしておるまでに参っておりません。どういうふうになっているかということは、捜査中の段階でございますから、ただいまは申し上げかねる次第でございます。事件につきましては、なるべく早く捜査を完了して結末がつけ縛るように、時々指示をいたしておるところでございます。
  176. 山田長司

    山田(長)委員 だいぶ時間も過ぎましたから、これで私の質問を終わりますが、どうぞただいまの大臣の御答弁どおり、すみやかにこれが政界の明朗化のためにも明確になりまするようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  177. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて山田長司君の質疑は終了いたしました。  この際、宮澤経済企画庁長官より、昨日の足鹿覺君の質疑に対し答弁を保留されておりました点につきまして、発言を求められております。これを許します。宮澤経済企画庁長官。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日の足鹿委員の御質問につきまして、簡単に報告を申し上げます。  御質問の趣旨は、社団法人日本経済研究所の根津理事長という人が、経済企画庁の委託によって山陰の中海地区の干拓淡水化について調査をしたが、その結果を新聞記者会見でいろいろに発表をして地元にいろんな反響を呼んでおる、こういう趣旨のことでございます。調査をいたしましたところ、今日根津氏が出勤次第私どものほうへ来訪願うように連絡をしてございますが、昼現在でまだ来訪がございません。したがって、御自身の説明をまだ聞き得ないわけでございますが、土地の新聞等々を調査いたしますと、そういう新聞記者会見をしておられるようであります。しかも、新聞の報道するところでは、昨日足鹿委員の御指摘になったようなことを言っておるようであります。この日本経済研究所は、経済調査につきましてはかなりの力を持っておるようでありまして、各官庁、会社などがいろいろ仕事を委託しております。経済企画庁でも、昭和三十三年ごろから数度にわたっていろいろな調査を委託いたしております。そこで、今回の場合は、私どもにまだ委託の調査報告がございません。昨年の八月から六カ月間の調査をしておられるわけでありますから、ぼつぼつ報告があるところでございますが、この御本人は公務員ではございませんから、そういう意見発表をされる自由は一般的には持っておられると思いますが、委託者の同意を得ずに受託者が、しかも委託者に報告をする前に意見を発表するということは、私ははなはだ穏当なことでないというふうに考えます。御本人から弁明を聞きまして、十分もっともだと思う理由がかりにございますればともかくでございますが、しからざる場合には、これに適応した処置をとるつもりでございます。なお足鹿委員から、そういう新聞発表の結果、地元に不必要な御迷惑をかけておるというようなことも伺いました。もとより一私人の発言によって従来からの政府の方針に変更を来たすものではございませんから、その趣旨を今日関係知事にお伝えをいたしておきました。
  179. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、村山喜一君の発言を許します。村山喜一君。
  180. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、高等学校の全入運動の問題について、まずお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  今日、科学技術革新の時代を迎えまして、父兄の中から、高等学校にはせめてやりたい。また現実に実社会に出てまいりましてから、高等学校の教育を受けた程度の学力を持っていなければ、今後の生活を保障することも不可能に近いという現実的な必要性が生まれておるわけでございまして、そういうようなところから、最近高等学校に対しまして、応募者が非常に多く集まってまいりました。昨年も、一昨年も、ベビー・ブームの時期に生まれました子供たちのために、政府におきましてもそれぞれ急増対策をおきめを願ったのでございますが、昨年の政府の計画によりますと、改定計画をいたしましたもので六一・八%の進学率である。そして収容人員は、百五十六万人を収容するという計画が立てられたのであります。ところが、実際ふたをあけてみた結果は、六六・五%という進学者の数でありました。そして予定を上回りまして、百六十六万人が入学をするという結果が出てまいりました。その間に十万人の誤差が出てまいったのであります。これらの問題につきましては、公立で約三万、私立で七万のすし詰めをやった結果、このようになったんだ。その結果、高等学校に入学をしたいという希望を持っている者の数のうち九七・六%は進学はできたのであるからという報告が、当時の荒木文部大臣のほうから閣議に報告がございました。閣議はこれを了承されたわけでありますが、この問題が、ことしさらに二百四十三万人の中学卒業生を迎えまして、いま高等学校の入学試験が始まり、これからまた試験は行なわれようといたしているわけでございます。きのうまで、全国のこういう進学率が上昇をしていく中で、ことしの予算は昨年よりも二十五億減らされて百八十七億になっておるわけでございますので、そのようなところから、高等学校に入学ができないのではないかという心配をされている全国のおかあさんたちをはじめとする運動が、三日間にわたって行なわれました。文部大臣にもお会いをいたしましたので、その実情はよくお聞きをいただいたわけでございますが、まだ十分に皆さんが納得をしておりません。そして今日、自分たちの子供を高等学校に入れたいという父母の要求というものは、非常に根強いものがあります。それに対しまして、今日まで文部省は、全入運動というのは間違いだ、全入運動というのはこれはけしからぬ考え方だという考え方が、一面においては確かにありました。  そこで、まず私は、文部大臣に、この全入運動に対するところの認識をどのようにお持ちになっていらっしゃるかということからお尋ねをしたいと思うのであります。
  181. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答え申し上げます。  高等学校は、高等学校教育の普及及びその機会均等の精神にのっとりまして、高等学校に入学することを志望いたしております者はなるべく多数入学させることが、一般的に望ましいと考えるわけでございます。しかし、一方席等学校の教育課程は、御承知のようにかなり専門化されてまいっております、また分化されてまいっておりまして、一定の水準を要求されていることでございますから、当該高等学校の教育課程を履修できる見込みのない者まで入学さぜるということはいかがであろうかと思うのでありまして、高等学校を出ます者は、あるいは社会に直ちに入りまして、いわば中堅的な地位におって活動してもらう人でありますし、あるいはまた大学に進学する人たちでありますので、やはり高等学校の教育内容というものは、相当な水準は維持してまいらなければなるまいと思う次第であります。したがって、その履修の見込みがおぼつかないというふうな人まで入れますことは、かえって御本人のためにもしあわせではないのではなかろうかと思う次第であります。したがって、私は、なるべく多数の者を高等学校に入学せしめるということは、一般的には望ましいことでありますけれども、しかし、高等学校全入というような考え方は必ずしも適当でない、このように考えておる次第であります。
  182. 村山喜一

    村山(喜)委員 なるべく多数を入れる、しかし全入という考え方は正しくない、こういう考え方でございますが、現在学校教育法の四十七条には、高等学校に入学できるのは、中学校を卒業した者またはこれに準ずる学校を卒業した者と書いてある。そして同じく七十五条には、小学校、中学校、高等学校には、特殊学級を置くことができる。特殊学級は、精薄児をはじめ、さらに身体障害者、そういうような者まで収容をするのだということになっております。それを受けまして学校教育法施行規則におきましては、御承知のように五十九条で、今日までは、募集定員に満たない場合には試験はしないで入れるのだという考え方がありました。ところが、それをごく最近になりましてからこの施行規則だけを改正して、応募者の数が定員に満たない場合でも試験をやれるように改正をされた。これはやはりいま文部大臣が言われた思想に基づいて改正をされたものだと思う。ところがここに若干古い資料でありますが「日本における教育改革の進展」文部時報の八百八十号に、次のようなことばが出されております。「高等学校は、その前身である旧制中学校が、選ばれた者のための教育機関という性格を脱しきれなかったのに対して、米国教育使節団の報告書にもあるように、「希望者はだれでも入学できる。」門戸解放と機会均等とを根本理念として設置され、義務教育ではないが、いわばこれに準ずる性格を与えられて発足したのである。」こういうようなのをお出しになっているし、さらに今日においては「財政上の理由から希望者のすべてを高等学校に収容することのできない県もある。そして、これが、中学校の教育に悪い影響を与えていることは見のがせない。」これは文部省が出されたところの正式の見解であります。こういう見解はいつからお捨てになったのか。さらにまた、新制高等学校の実施について都道府県知事あての通達等も出ているわけでありますが、これによりましても、新制高校にその入学志願者はすべて収容するだけの数と施設とを準備することがはなはだ望ましいことであるがと、こう書いてあるわけです。こういうような考え方からいきますと、いま文部大臣が言われたように、このような当初の考え方というものは、途中で変化をしてきた。そうして今日の時点においては、能力がなければ高等学校には入れないのだ、高等学校を履修するだけの能力によって選んでいかなければならないのだという選別の考え方、これが基本的な考え方であると思うのですが、いつからこういうような考え方に変えられたのか、その点を明らかにしていただきたい。
  183. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いわゆる六・三・三・四の学校制度は、アメリカの学校制度を範としたもののようでございます。高等学校もまたアメリカの制度にならいまして、希望者はできるだけこれを入学させることを目標といたしまして、その普及が行なわれてまいったものであります。御承知のように、当初は約四割に満たなかった高等学校への進学率が、産業の発達、国民生活の向上に伴いまして逐年増加してまいりまして、今日のように全国平均約七割に近い進学率を示すところまで普及をいたしてまいったのでございますが、先ほど申しましたように、高等学校は高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とするものでありまして、産業構造や国民生活の高度化に対応して、高等学校教育がある程度専門化され、分化されまして、ある程度の水準が要求せられるということは、当然考えなければならないところであろうと思うのであります。今日の事情におきましても、高等学校への進学希望者をできるだけ幅広く収容していくという心持ちに変わりはございません。しかしまた、高等学校の普及とともに、その専門化に対応して、希望者がその能力に適した高等学校へ進学し得るように必要な措置を講ずることも、また必要ではないかと思うのでありまして、先般入学者の選考についての規定を改正いたしましたことは、村上さんのよく御承知のことであります。従来の規定を改めまして、選考するということをたてまえといたしました趣旨も、このような意味において行なったのでございまして、従来からの高等学校への進学についての基本的な心持ちを変えようというものではございません。また、現実に村山さんも御承知のように、今日高等学校に入学を志望する者のほとんど全部と申し上げていいほど多くの者が入学していることは、今日の実情でありますが、しかし、やはりたてまえといたしまして、中学校においても相当な学力を持って高等学校に入るようにしてもらいたいと思いますし、また高等学校も相当な学力をつけて上級の学校に進学するなり、社会に出て活動するようにしてもらいたい、こういう心持ちをもちまして選抜制度をとることにいたしましたわけであります。
  184. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣の答弁は、的確ではないのです。私は、大臣にお尋ねしたのは、できるだけ多数入れるという思想ではなくて、希望者はだれでも入学できる、こういうことを初めに言ったのは、私たち国民の側ではなくて、文部省がこれを言ったのです。だれでも入学ができる、これは全入です。この全入を口に出したのは、文部省なんです。そしてそういう通達を流して指導をやったことも事実なんです。それがいつから変わったかという質問に対しては、学校教育法施行規則を改正したときから始まったのじゃない。もうその前から始まっていることは事実なんです。だから、いつからそういうふうにお変えになったのか、それは人つくり政策とどのように関係があるのかということをお尋ねしたわけです。その点はどうですか。
  185. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 何年何月から変わったということは、実は私もよく承知いたしておりません。しかし、高等学校の普及の状況並びに国民生活の状況からいたしまして、地方においてそれぞれ選抜制度をとるようになってきたことはそのとおりでありまして、先般制度を改めまして、選抜制度をたてまえとすることにいたしましたのも、この現実の上に立っての制度の改正であったわけでありますから、だいぶ前から選抜制度は行なわれてきておるわけであります。
  186. 村山喜一

    村山(喜)委員 既成事実をもとにして、なしくずしにそういうふうなことをされたということになるわけでありますが、ここで大臣に明らかに伺っておきたいことは、三十九年の四月に入学をする、その収容見込みについて、いままで九七・六%という線は確保するように努力するということも、いつも言明をされておいでになりましたが、この点はだいじょうぶですか。
  187. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本年三月に卒業いたします中学校の卒業者のうら、どれだけ高校入学を志願し、またどれだけ入学するかは、現在、御承知のように募集中ないしは試験中でありまして、的確な見込みを立てるということは困難であろうと思うのでありますが、私どものほうであらかじめ地方の状況を調査したところによりますと、入学志願者数は大体百七十六万、これに対する募集見込み数は、公私立合わせまして百七十一万、こういうことになっておりまして、これらの数字によって計算いたしますれば、入学率は大体本年と同じように見てよろしいのではないか、かように考えておる次第でありますo
  188. 村山喜一

    村山(喜)委員 労働大臣にお尋ねいたしますが、五月に労働省のほうで労働需給調査をされた。これは労働省の職安局を通じて全国の窓口で調査を進めておるわけでありますが、その数字によりますと、ことしの卒業生二百四十張万七千人のうち七一・九%が進学をするであろうという見込みを立てておいでになるようでありますが、その数はどうでございますか。
  189. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今年三月の卒業見込み者につきまして、昨年の十月に調査いたした結果を申し上げますと、卒業見込み者数は、中学、高校で三百二十七万人でございます。このうち公共職業安定所への求職者の数は七十一万人であり、またこれに対しまする求人数は二百六十七万人でありまして、求人の倍率は三・七倍と相なっております。この数字は、昨年度同期の求人倍率二・五倍を大幅に上回る状況でございます。
  190. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、労働需給調査の実態についてお尋ねしているのではなくして、職安の窓口を通じてお調べになったうち、この中学の新規卒業者二百四十三万七千名のうち、七一・九%を進学と推定をされておる。それは府県ごとに調査のパーセンテージの資料があります。それは事実であるかどうかということだけをお尋ねしておるわけです。
  191. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 いまの数字を申し上げますると、中学の卒業見込み数は二百四十一万人、このうち進学の予定の者は百七十七万人、就職希望の者が五十六万人であります。
  192. 村山喜一

    村山(喜)委員 労働省の調査で百七十七万人、文部省の調査で百七十六万人、大体合っているようであります。入れものは百五十五万人だと思いますが、その点間違いございませんか。
  193. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府の計画といたしましては、そのとおりでございます。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  194. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、先ほど百七十一万人は収容できる、募集見込みは百七十一万人だ。ところが、政府財政計画上の数字は百五十五万人であります。だから、その間に約十六万人の誤差があります。これはすし詰めでやっていくということになると思うのでありますが、昨年は十万人、ことしは十六万人もすし詰めをすることが、教育上はたしてできるかできないかという問題ですが、この点については、百七十一万人公私立合わせたら募集できるという根拠は、どこから出てきておるわけですか。
  195. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本年度の実績を見ました場合に、政府が公立学校に対する計画として昨年策定いたしたものは、実績と大差はないように思うのであります。したがって、その計画を改めるほどの必要はないのではないか、かように考えておる次第でありますが、実際入学しました者の数は、その計画より上回っておりましたことは御指摘のとおりであります。今回もまた、既存の施設を活用することによりまして何とかしのいでまいりたい、かように考えておるのであります。
  196. 村山喜一

    村山(喜)委員 昨年は、私立の場合には、一クラスに七十名も八十名も、はなはだしいところでは百名も入れている。そして教育が行なわれておるわけです。その中でベビー・ブームのときに生まれた子供たちは、一生涯そういうような格差をつけられながら学校教育を受けなければならない。そして今回もすし詰めをやらなければならない。こういうことになったのは、結局緊急措置が十分に国のほうでなされなかったところに原因があるのではないかと思うのですが、この政府が立てました急増計画、二百十二億という昨年の計画が、ことしの四月に入学をする子供たちの入れものとして完備されなければならないわけでありますが、そうなってまいりますと、政府の計画では、六三・五%の百五十五万人を収容する建物しかない。ところが、現実には百七十一万人を入れる、こういうことになりますと、ことし以上に、今度の四月に入ります子供たちは、非常なすし詰めの中でぎゅうぎゅういわされて教育を受けなければならないということになる。これはきわめて遺憾な状況に相なると思うのでありますが、そういうような急増計画を立てられた二百十二億の昨年の消化状況と、現実に都道府県が措置をいたしました計画との間には、どれほどのずれがあったのか、自治大臣からお答えを願いたいと思うのです。
  197. 早川崇

    ○早川国務大臣 お答えいたします。計画と実績とは若干の開きがあると思いますけれども、実際県が立てました中には、すでにある校舎の老朽の施設を改良するとかいうようなものもあるわけであります。そういう関係で若干の開きが出たわけであります。
  198. 村山喜一

    村山(喜)委員 この前自治省の財政局長の話をお聞きしますと、二百十二億という急増計画が立てられた、大体三百億を上回る事業がなされたように考えられる、こういう答弁がありました。ということは、国の急増計画がそれだけ狂ってきて、各都道府県なり市町村へそれだけしわ寄せがされたということになるのではありませんか。そういう財源措置がないがために、昨年一年の間に九十億円という地元の市町村の負担やあるいは父兄の負担、これによって急増計画がカバーされているということが言えるのではありませんか。その点はどうでありましょう。
  199. 早川崇

    ○早川国務大臣 御指摘のとおり、九十億という税外負担というのは聞いておりませんが、急増対策に伴う単価の問題、あるいは整地費の問題等につきまして、少なくとも私の計算では三、四十億の税外負担を父兄がしたと見積もっております。
  200. 村山喜一

    村山(喜)委員 その三、四十億というのは、地方交付税法の改正を今度おやりになり、これは地財法の改正によりまして、地元の市町村から負担を県立の分についてとることができなくなった。その金額が三十五億、それを三十六億ほど財源措置をしようということで今回はお出しになっておる。そのほかに、父兄の負担というのがあるのです。いろいろな入学金であるとか、符付金であるとか、そういうようなものが、総額入れまして九十億円という税外負担になっているということを私言っているのです。  そこで自治大臣にお尋ねをいたしますが、そういう寄付金の解消をはかっていくということは、私たちも賛成であります。そして地方交付税法の改正の中で、基準財政需要額を増額して措置をされたということに対しましても、敬意を表します。しかしながら、ここでそれだけの措置をしたけれども、結局基準財政需要額の中で計算基礎の小に入れましたが、現実には各府県にお尋ねをいたしてみますと、地財法の改正によって整備計画上には狂いがきたということを言われているのです。この事実はやはりお認めにならなければならないかと思うのでありますが、それと同時に、授業料を一人月額二百円ずつ上げて、一年間に二千四百円ずつ上げた場合には、全国で約三十億の財源が出てくる。その財源をもってこれからの措置をしようと考えておった。ところが、公共料金の値上げ抑制の方針として、授業料の値上げはしないように行政指導をされた。その分だけの財源は、これは見込まれないということになってまいりました。最近の公共事業の伸び等によりまして、地方の一般財源は非常に窮屈になっていく状況にあります。そうなってまいりますと、やはり高等学校の急増計画の上に、あるいは整備計画の上に、狂いがくるのではないかということが、現実に心配をされているところであります。そういうような問題について、ことし財源措置をされましたのは百八十七億円でありますが、その百八十七億円で今後の対策としては十分やっていけるのだ、こういうお考えでありますかどうか、自治大臣からお答え願いたいと思います。
  201. 早川崇

    ○早川国務大臣 従来、県のほうで高校その他について市町村なりあるいは父兄にしわ寄せしておるというのを調べてみますと、県自体がいろいろ事業をやりたいというようなことで、本来、県立でありますから県がまかなわなければならないのを、市町村あるいは父兄に負わせておるという例が多数見受けられるのであります。今度は財政法の改正で、高校につきましては、法律によって税外負担をしてはいけないということをはっきり三十九年度から明記をいたしまして、交付税で三十六億円増額をいたしたわけでありますし、なお、先ほど御指摘の、授業料の値上げを押えたというものがしわ寄せにならないかという御質問でありますが、三十九年度の交付税の高校関係財政需要の中には、授業料を本年度並みに抑えるということで計算をして事業をいたしておるわけであります。そういう関係で、単独事業もふえてまいりますし、計画の実施に支障はないものと考えております。
  202. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、地方の財源需要から考えまして、非常にこの点はしわ寄せを受けるのではないかということを心配をしております。ということは、私のほうで実態調査をいたしてみました。そこで各都道府県に問いただしまして、地方財政法の改正の影響についてどのように考えているのかという報告書を各都道府県の教育委員会からもらいました。それによりますと、相当な心配をいたしていることは事実であります。そういう中からこの際大蔵大臣にお尋ねいたしたいのは、高等学校の建築等に要する経費について、工業高校については、国の政策として科学技術者の養成という立場から今日まで補助をされてまいっておいでになりますが、普通科その他につきましては、全然補助をされずに、設置者負担主義の原則を堅持しておいでになるわけであります。いまお話し申し上げましたように、各都道府県の実情やあるいは急増対策の整備状況等を見てまいりますと、非常に大きな問題があるようでございますが、社会党から先日、高等学校の建築費等の臨時措置法案を提案いたしました。これについて大蔵大臣はどのようなお考えをお持ちになるか、明らかにしていただきたいのであります。  それと同時に、いますし詰め教育が行なわれようとしている。昨年は十万人のすし詰めが行なわれた。いま文部大臣からお話をお聞きいたしますと、今度は十六万人のすし詰めになる。そういう状況の中にありまして、一体これで正しい高等学校の教育ができるかということになりますと、非常に問題であります。したがいまして、この際、小中学校の場合には、御承知のように、一学級の学級生徒あるいは児童を減少して四十五名まで持っていこうという計画が出されて、定数法が通過して予算措置をされました。ところが、高等学校は一割すし詰めが可能であるということになりまして、普通科五十五名、実業科は四十四名、こういうところで教育が行なわれますと、からだの大きな高等学校の生徒が狭い教室の中で教育を受けなければならないということから、非常に教育の効果が減少をする。それで、社会党のほうで文教委員会に公立高校の教職員の定数法の改正案を提案いたしましたが、これに対する文部大臣、大蔵大臣のお考えをお聞かせを願いたいと存ずるわけでございます。
  203. 田中角榮

    ○田中国務大臣 工業高校等につきましては、確かに補助をやっております。これは、御承知のとおり、所得倍増計画におきまして、技術家を八万五千人ばかり増員しなければどうにもならないというような現実的な問題もございますし、なお、この技術関係の学校は、御承知のとおり、いろいろな設備その他に多大の経費がかかるものでありますので、補助をいたしておるわけであります。その他一般高校につきましては、現在まで設置着負担という原則をとっておるわけでありますが、現在これを変えなければならないというような考え方には立っておりません。起債、交付税その他によって十分配慮をしてまいるつもりであります。  なお、高校比急増の問題につきましては、昭和三十五年に比べ百三十六万人でありますかを収容できるような計画を三十七、三十八、三十九ととっておるわけでありまして、この総額は六百十一億ということになるわけでありまして、補助金及び起債その他でありますが、これで何とかまかなっていけるのではないかというふうに考えます。しかも、すし詰めの問題が確かにあるわけでありますが、戦後のベビー・ブームといわれるような特殊な状態に基づく一つの措置でありまして、四十年を過ぎますと、また事態が変わってくるというような状態にもございますので、環境法の整備は確かに十分わかるわけでありますが、財政事情等もありますし、この計画の中でより合理的な教育が進められるようにこいねがっておるわけであります。
  204. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま私に対して、社会党のほうから今回提案しておられます法律案についての意見をお尋ねになったものと伺ったのであります。この法案については、十分私どもも検討いたしたいと存じておりますが、国の財政負担の問題を初めといたしまして、いろいろ研究しなければならない問題があるように存じますので、いま直ちに御賛成申し上げるわけにはいきかねる、かように考えておる次第でありまして、すなわち、公立高等学校の施設の整備につきましては、明三十九年度は相当な措置を講ずる予定でおりますこと、それから国の補助率を二分の一とするようにということでありますが、高等学校教育は、何と申しましても現在義務制でないのであります。義務制である小学校との比較におきましても、検討しなければならぬ点もあるように考えるわけであります。また、校地買収に要する経費を補助するということにつきましても、現在の義務教育諸学校についてもその措置がとられておらないのでありますから、そのようなことをいろいろ勘案いたしますと、にわかに結論は出しにくい、検討をしなければならぬ問題と思うのであります。  私立高等学校につきまして、公立高等学校の場合と同様の措置をとるということは、これは私学に対する国の助成方法といたしまして、一般的にも大いに検討を要する問題でございますが、この問題につきましては、やはりにわかに御賛成申し上げるわけにはまいらない、このように考えておる次第であります。
  205. 村山喜一

    村山(喜)委員 もう一点文部大臣、労働大臣にお尋ねをいたしたい点がございます。  それは参議院のほうから法七号で、議員提出法案として、高校の定時制教育及び通信教育振興法の改正案を提案いたしております。それは勤労青年を使用するものの義務として、その企業者に就学を妨げることを禁止するとともに、積極的に配慮しなければならない、こういうような訓示的な規定を入れることにいたしまして、現在当面をいたしております勤労青少年の教育振興をはかろうと考えているわけでございますが、これは別に財源負担を必要とする法律でもございません。しかし、今後やっていかなければならない重大な勤労青少年のための教育の方針であろうと思うのでありますが、これについては、文部大臣、労働大臣はどうお考えになりますか、お答え願いたいと思います。
  206. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、かねてから働く青少年が定時制高校に入りたいというような希望につきましては、これを満たしてやることのできるよう、使用者に特別の配慮を希望いたしておったところでございまして、現に年少労働者福祉員等を通じ、あるいは印刷物等によりまして、いろいろな機会に使用者に対してこの趣旨を啓発いたしておるところでございます。したがいまして、勤労青少年が定時制教育もしくは通信教育を受けるにあたって、使用者の配慮をお願いするということ自体は望ましいことと考えておるのでございますが、ただ、これを法的措置として、法律に使用者の義務として規定をいたすということに相なりますと、労働時間の問題であるとか、あるいは賃金の問題であるとか、いろいろあわせて検討すべき事項があるのではなかろうか、かように考えておりますし、かねて定時制満校の制度と、また労働省で所管いたしております職業訓練施設、これらの関連につきまして、いろいろ検討すべき問題もありますので、この辺を十分検討いたしてみたいと思っております。しかし、先ほど申し上げましたごとく、できるだけ青少年に進学の機会を与えるよう事業主の配慮をお願いするということ、そのことはけっこうなことだと存じております。
  207. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 勤労青少年をして高等学校で学びやすくいたしますためには、父兄のみならず、使用者の理解と協力を得なければならぬということは申すまでもないことと思うのであります。その意味におきまして、使用者側の理解ある配慮というものが私どもまことに望ましいこととは存じますけれども、しかし、青少年が高等学校に通学することについて、使用者に対しまして一定の規制を加えるとか、あるいは義務を課する、こういうことになりますと、ただいま労働大臣からお答えがありましたように、いろいろ関連して考えなければならない問題もあろうかと存じますので、慎重に検討しなければならない、かように考えております。
  208. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、いま大蔵大臣、文部大臣、労働大臣からいろいろお答えを聞いたのでありますが、この答弁に対しましてはきわめて不満であります。特に勤労青少年の問題につきましてこれを禁止する旨の訓示規定を入れるという程度の条項であります。決してこれを犯したから罰則を使用者に科するという考え方を立てているのではありません。そういうような点からいうならば、当然これは今後労働省なり文部省は積極的にそのような方針で指導をされるべきであって、これはいかなければならない正しい今後の方向であろうかと思うのです。いま労働大臣が言われた中で、定時制教育の問題もあるが、公共職業訓練所の問題等もある、企業訓練の問題もあるのでということの裏には、私はこの定時制教育というものを、現在行なわれている企業訓練、公共職業訓練所のような、そういうようなものに転化して、職業訓練機関というものを別な名前の高等学校にしていこうというお考えがあるのではなかろうかと思うのですが、その点はどうでありますか、労働大臣にその点だけお答え願いたいと思います。
  209. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御承知のとおり、公共職業訓練所、あるいは企業内の職業訓練所に入っております青少年労働者の間には、これらの訓練所の課程を修了した場合において、高等学校卒業の資格を得たいという熱烈なる希望があるわけでございます。これらの問題につきましては、定時制高等学校との関連におきましてその取り扱いを検討しなければならぬ、かように考えておるのでございまして、それ以上に、職業訓練所を定時制高等学校に変えようとか、あるいは定時制高等学校のかわりに職業訓練所をふやしていこうというような考えを持っておるわけではございません。
  210. 村山喜一

    村山(喜)委員 労働大臣も御承知のように、その問題につきましては学校教育法の四十五条の二によりまして、技能教育の施設を指定をして、その技能教育施設が高等学校の教育に匹敵をするようなものについては、その間に履修をしたものの単位を通算をするという法律がもう制定されている。だから、労働大臣がそういうようなお考えをお持ちであるとするならば、当然職業訓練所等のそれぞれの施設の内容あるいは教授する人の内容、これを向上をさしていただいて、そこまで引き上げていくような形にしてもらわなければならないと思うのです。定時制の高校のレベルを職業訓練所のところまで引き下げるような考え方だけは今後絶対におとりにならないように要望申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで総理府、長官にお尋ねをいたしますが、今回青少年局という局を新設をされる。現在この機構等を見てみますと、いま二十名おるのを今度九名ほど増員をして二十九名で青少年局をつくるのだということになっておりますが、これは青少年の指導という立場から、最近の青少年不良化の問題等に対する総合調整の役割りを果たそうとされておるようであります。ところがこの二十九名で、予算を見てみましても、新しい予算費目といたしましてはわずかに少年補導センターの五千万円が予算に計上されているだけであります。こういうような総理府の所管する現在の予算規模あるいは人員、こういうようなものによって局として新設をされて、それで文部省あるいは法務省その他関係各省にまたがる青少年の問題についての調整的な機能としての役割りを果たし得るとお考えになっていらっしゃるのか、それだけの自信がおありかどうか、この際お答えを願いたいのであります。
  211. 野田武夫

    野田政府委員 ただいまのお尋ねの青少年局の新設でございますが、もとより多々ますます弁ずでございますから、陣容、予算、さらに大きなものができますことは非常にけっこうだと思います。しかし、御承知のとおり、総理府にあります中央青少年問題協議会というものは、従来の仕事の内容は、いまお話しのとおり、たくさんの行政官庁にまたがっております青少年対策を連絡調整する、こういう機関でございまして、今度新たにいま御審議を願っております青少年局というのは、従来の経験から申しましても、どうしてもその青少年問題協議会の事務を取り扱っている程度ではこの重大な青少年問題の解決にあたって非常に薄弱である、弱い。そこで、どうしてもこの重大な問題を前進させるためには、やはり強力な推進機関を設けなければならぬ。これは、お話しのとおり各省にまたがっておりますので、この今度できます青少年局では、つまり青少年対策の総合的な、しかも一貫した政策を樹立するということが一番大事な問題でございます。もとより各省にまたがっておりますことのほかに、独自の仕事もすることになっておりますが、大部分は各省にまたがっておりまして、その総合的な一貫性を持った青少年対策の政策の基本をつくって、そうして、その実施面は各官庁の行政事務に移す。こういうことでございますから、必ずしも膨大な組織がなくてもよろしいのでございます。したがって、今度九名の増員をお願いしておるのでございますが、一応私どもの考え方は、まあ人の数をふやすということよりも質のいい人材に入ってもらって、そうして総合的一貫性を持ったいわゆる青少年対策の基本をきめたい。こういうことで、いまお話しのとおり、九名の増資に基づく青少年局の新設についての御審議を願っておる次第でございます。
  212. 村山喜一

    村山(喜)委員 総理府長官の遠大なる理想はよく承りますが、問題は、私は今日の青少年の不良化傾向の原因というものをもう少し教育的な立場から探求をしてみる必要があるんじゃないかと思うのです。というのは、小学生の犯罪傾向の増加率というものが、昭和三十一年を一〇〇にいたしますと、小学生で三十七年度一八三%、中学生は二九、二%、高等学校の生徒が二五二%というように増加しております。しかもその中には、最近の傾向といたしましては、両親があって、生活程度は中流以上、これが多くなってきている。そこで、こういうような人間疎外の教育というものが私は行なわれているのではなかろうかと思うのは、最近の学校の教育の状態等を見てみますと、テスト、テストに明け暮れているという実情にある。もう学校では、テスト屋から買ったテストの資料を子供たちに渡して、それをやらせる。文部省は文部省で、毎年のように学力テストをやっている。あの学力テストというのも、そういう状態、教育条件を引き上げていくために学力テストをやるんだということで出発をした。にもかかわらず、毎年これを十年一日のごとく繰り返してやらなければならない。そういう教育的な配慮というものが私は欠けているのではないか。そして能力主義、選別主義、詰め込み主義というものが行なわれて、もういまやそういうようなものから落伍していく者が結局犯罪を犯していくというかつこうが止まれてきている。私は、今日の青少年の姿を見るときに、非常にかわいそうだという気がするのですよ。こういう問題は、もう少し検討を加えていただかなければならないかと思うのでありますが、その問題につきましては、他日に譲るといたしまして、次に文部大臣と大蔵大臣だけお尋ねをいたします。  あとの方はけっこうでございますが、時間が迫っておりますので、ただ一点だけお尋ねをいたしたいのは、国立大学の学科及び課程並びに講座及び学科目に関する省令が出ました。この省令を見ますと、いわゆる大学というのが、学科講座制大学、学科学科目制大学、さらに課程学科目制大学、この三つの種類にはっきりと区分をされておる。これは現在あります大学の格差というものを合法化していくかっこうになってきている。しかもその中身を見てみますと、学芸学部であるとか、あるいは教育学部というのはすべて課程制大学になっておるわけであります。この問題は、教員養成の問題と結びついておると私たちは見ているのでありますが、これらの問題について、省令を制定されるまで、国立学校設置法の改正につきましては、われわれ社会党も昨年は賛成をしている。ということは、文部省がこの省令をつくるときには、各大学の自主性、大学の研究の自由、学問の自由、そして教育体制をそれぞれ自主的に打ち立てていくということを尊重をしてやるんだという姿で、文部省はそれを取り上げてやるであろうということを期待をしたがために、それに賛成をしているわけです。ところが出てきたものは、大部分は賛成をされて、問題は他の学部においてはないと思います。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 しかし教育学部、学芸学部については、いまでも省令が制定をされても、なお釈然としない向きが全国的にあります。それについて一体文部省としては今後どのように対処されていくのかということをお尋ねをしたいわけですが、私は時間の関係がありますので、結論的に申し上げまするならば、これまで大学のそういう意向というものは十分組み入れながらやられたとは思うのでありますけれども、この内容を一拝見をいたしてみますと、免許法に基づくところの学科目制がここに羅列されているにすぎない。これは学問的な体系におけるところの学科目の姿ではないんじゃないかと私は思うのであります。その詳しいことにつきましては、また文教委員会等で申し上げてまいりたいと思いますけれども、そういう点から言いまして、この学科目の改定については、学問の進歩によりまして今後学科目の分化あるいは統合という問題は必然的に出てくると思うのであります。そうなった場合には、当然それらの学部の意見というものを十分に尊重をされて改定をされる必要があるのではなかろうかと思うのでありますが、そういう気持らがおありになるのかどうかということを、課程制大学ということになったがために、自分たちは学科目制の学科制大学よりも一段格が下がるのではないかという気持らを持っておる全国の教育学部、学芸学部の先生たちがおります。ということは、課程制と学科制の予算とか定員の上において差別をつけられることになるのではなかろうかということでございますので、これについては、予算とか定員については差別をつけないのだというお考えを明らかにしてもらいたいと思うのであります。さらに、授業科目は当然大学の自主性にまかせらるべきものだと思うのでありますが、そういうようなところまで規制をされるような気持ちは毛頭文部省にはないだろうと思いますけれども、その点も明らかにしていただいたほうが、全国の大学の関係者の人たちが安心をするかと思いますので、この際それらの点について大臣からお答えを願っておきたいと思うのであります。  それと同時に、国立学校特別会計が今回から始まります。これは説明をお聞きいたしますと、独立採算制は否定をされて、授業料の値上げはしないのだというお考えのようでございますが、これは大学の合理化ではなかろうかという受け取り方も出ているわけであります。といたしまするならば、今後のいわゆる剰余金の配分の問題、あるいは国有財産の処分をめぐる問題等による財源配分は、これを平等配分にせよという、財源収入の少ないところはそういう意見もあります。あるいは発生主義的にいわゆる能力に応じて分配をすべきだという、企業体をかかえているところにおいてはそういう意見もあります。それに対して、いわゆる大学協会のほうでありますか、これは歩合配分法によって不公平がないようにするのだという意見等もあるようであります。そういうところがら、この国立大学の特別会計の運用の問題についての文部省の方針、並びに大蔵省とされましては、今回こういう制度をつくられたわけでありますが、今後のいわゆる大学の合理化という問題と関連をして、先ほど省令化されましたこの学科目制が今後統制を強化されるのではなかろうかという心配をされておりますので、それに対してはそうでないということを明確にお答え願いたいと思うのでありますが、その点について文部大臣と大蔵大臣のお答えを願いたいと思うのであります。
  213. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 全問の省令の改正は、昨年成立いたしました法律の改正に基づくものでございまして、かなり長い期間それぞれの大学側と十分に打ち合わせを遂げましてきめましたものでございます。したがって、この省令に従って今後仕事を進めてまいりたいと存じております。  なお、その実施の状況によりまして、将来改正をする必要があれば、もちろんそのときに適当な改正をすることにやぶさかではございません。それから予算の配分について、教員養成学部に対して差別的な扱いをするかしないかということでありますが、やはり私は、それぞれ実情に即して予算の配分は行なうべきものと思います。特に差別するというふうなことは考えておりません。  また特別会計につきまして、授業料は、お話しのとおりに私どもこれを上げるつもりでこの特別会計を設置したのではございません。もっぱら大学の充実をはかりますために、また経理を明確にするためにこれをつくったわけでございます。運用上の問題につきましては、これは大学側とも十分協議を遂げまして、遺憾のないようにいたしたいと存じております。
  214. 田中角榮

    ○田中国務大臣 大学の予算につきましては、文部省の意見を十分尊重してやってまいりたいと、このように考えます。
  215. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて村山喜一君の質疑は終了いたしました。  次に大原亨君。
  216. 大原亨

    大原委員 私はきょうは、昨年の十二月七日に出されました東京地裁の古関判決、原爆判決についてお尋ねいたします。この問題につきましては、国際的にも相当大きな反響があるわけでございます。したがって、今日までいろいろな機会に、戦後十八年間国会で論議をされてきたのですが、この十二月七日の東京地裁の古関判決は、私は一つの時期を画する問題であるというふうに考えるのでありまして、この判決文の内容等の問題点を中心といたしまして、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣、総務長官、官房長官、防衛庁長官、それぞれ順序よく質問いたしますので、ひとつ誠意のある簡潔な御答弁をいただきたいと存じます。  この十二月七日の原爆判決は、広島市中広町の下田さんはじめ、長崎の五人の被爆者が日本政府に対しまして、原爆の被爆による損害賠償の請求をいたしたのですが、判決文は、御承知のように原告の訴えを却下いたしました。しかし、判決文の中にはたくさんの問題点があるわけでございまして、原告の切々たる訴えと、判決文の中に示された諸問題を、被告の立場に立たれました法務大臣はお読みになったと思うのでありますが、法務大臣はこの判決をお読みになりまして、人間的にあるいは政治的に、法律的にどういうお考えをお持ちになったか、どういう感じをお持ちになったか、そういう点につきしまてまず最初に御所信のほどをお答えいただきたいと存じます。
  217. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまお話に出ましたあの訴訟についての判決でございますが、この内容につきましてはいろいろな点が盛られてあると思います。  その一つの点は、あの広島、長崎に対する原爆の投下は国際法違反であるかないかという問題でございまして、あの判決では国際法違反であるということであったかと思います。これにつきまして、ああいう原爆の投下などということがないことをこいねがう、これはもう日本一般の願いでございまして、もちろん政府も私もこいねがっております。ただ、冷静な法律論としまして、国際法違反であるかないかということは、違反であるという説の人もあり、そうでないという説の人もございます。御承知のように、原爆というのが新しい問題でありましたために、条約で禁止するものもなければ、また慣習法的に国際法で違反と認められたものもない。一方では、無防備都市の爆撃が国際法違反ということは、陸戦法規でございましたか、きまっておるわけでございましょう。その精神から推して違反であるという議論もあるが、しかし現実の規定もなく、それにそっくり該当すると思えないというので反対論もあり得まして、これはいろいろな説がございまして、あの判決のとおりであると、これは冷静な法律論としては私どもも同意いたしておらないところでございます。  それから、日本国民が直接にアメリカ政府と申しますか、大統領と申しますかに対して損害賠償の請求権はないのだということが一つ盛られております。これは、冷静な法律論としてそうではないかと思うのでございます。したがって、日本はああいう種類の請求権一切を桑港条約で放棄いたしております。しかし、日本政府のその放棄が権利があるものを放棄したという意味でないから、政府がアメリカ政府にかわってというふうな観念から原爆の被害者に対して補償をするという法律上の義務はない、おそらくそういうふうな判決だったと思いますが、これも法律論としては正しいのじゃないかと思います。  それからなお、裁判官の意見でございますが、現在のように日本が経済的にも回復したときに、戦争によって起こった原爆の被害者に対して相当な補償をするのがむしろ適当じゃないかというふうな意見もあったかと思います。この点に関しましては、私個人としては実に複雑な感情を持っておる次第でございます。私個人としまして、国民の一人として、あの原爆の被害に対してほんとうにお気の毒と言いますか、痛ましいことに対する絶大な同情はもちろんございます。しかし、私は実はその点については三重の感じを持っておるわけでございます。一つは、あの原爆の被害の起こりました当時の戦争開始を決定しました内閣の一員でございますし、私個人として、日本のうちにおいてあの戦争の与えた国民に対するいろいろな悪い、ほんとうに悲惨な、不幸と言いますか、こういうことに対して重大な責任を負っている一員だと思います。それで引き起こしました原爆問題でございますから、私は、その点についてほんとうに被爆者に対してたえがたい痛惜と申しますか、念を持っておる次第でございます。  それから、大原委員も広島県の御出身でございますが、私は広島市で生まれ、育ったものでございます。原爆のいわゆる落下の中心地点から一町余り、二町といわないところの家で生まれ、育った者でございます。むろん、その家屋などもこっぱみじんで、あともございません。死亡した親戚、知友等も多い次第でございます。そういう意味から非常に同情しまして、個人としましては、ほんとうに国家補償でもあれかしというような希望、感じを持っておる次第でございます。しかし、これは日本政府としてどう考ええるかということになりますと、単純に私の個人の感傷、感じで判断するわけにはいかないと思います。と申しますのは、補償をすれば、これは結局国民の負担において補償をされることになるわけでございます。それからまた、他にも戦争による被害と申しますか、いろいろ問題がございます。相当に原爆の被害者に施設がしてありますが、それ以上のことをすることになりますと、ほかのそういうものに対しての権衡を考え、その権衡を得るようにそれを一切やれば、またそこに大きな国民の負担も出てくるわけでありますから、政府というものは、別に財源を持っておってやるわけでもないのでございまして、そういう点から、いろいろ性質論やまた国の財政の点も考えてこれは結論を立てなければならぬ、こういう次第でございます。それではどうするかということになりますと、率直に申しまして、私は、政府の中においてそういう救済であるとか財政負担ということにつきましての直接の責任者ではないわけでありますから、政府でどうするかという感じについては、私の答弁は差し控えたほうが適当だと思います。ただ個人としては真に願わしいと思うような感傷を持っておるということだけは、個人の感じとして申し上げることができる、こういう次第でございます。
  218. 大原亨

    大原委員 御答弁をいただいわけですが、賀屋法務大臣は言うなればこの原爆訴訟の被告であり、また国務大臣である、こういう立場でいろいろと政府を代表しての法理上の問題や政策上の問題につきましても立ち入った御質問をいたしたい、こう思っておるわけですが、しかしこれが限界があることは承知いたしております。そこで各内閣の皆さん方に御理解いただくために、判決文でも取り上げておるわけですが、これは文章ですが、原告の下田隆一さんは当時四十七歳であった。広島市中広町に家族とともに居住して小さな自営業を営んでいた健康な男子であったが、被爆により長女レイ子(十六歳)、三男清(十二歳)、次女ユリ子(十歳)、三女和江(七歳)、四女利子(四歳)は爆死し、原告、その妻ヒナ(当時四十歳)及び四男克治(二歳)は爆風、熱線及び放射線によって障害を受けた。原告は、現在右手上膳部にケロイドを残して機能障害があり、また腹部から左背部にわたってケロイドがあり、毎年春暖の時節には化膿し、じん臓及び肝臓にも障害があって、現在全く職につくことができない。妻ヒナは全身倦怠感、脱力感、頭痛に悩み、四男克治は潜在的な原爆症状がときどきあらわれる。このような状態のため、一家は収入の道が全くなく、わずかにホノルル在住の原告の実姉から毎月少しずつ送金、送品による援助を受けて、かろうじて生命を保っている。ほか四人の原告のそれぞれの病状や生活実態につきましても、詳細に判決文の中に記録をいたしてあるわけであります。   いまの日本の経済状況の中において、政治の中において、これらの人々に対しまして、ばく大なる被爆者の数ではございますけれども、適切な措置ができないという理由はないのではないか。政治の公平という観点に立っても、政治の人道性という観点から見ても、これはないのではないか。そこでいろいろと議論になる問題点を私は逐次取り上げてまいるわけですが、究極においてはそういう対策を立てることが目標ですけれども、それらの対策を立てるためには、原爆判決はたくさんの示唆ある判決文の内容において問題点の提起をいたしておるのであります。したがって賀屋法務大臣の切々たる心情についてはわかるわけであります。当時、お話しのように東条内閣の大蔵大臣でございましたし、広島の大先輩でもありますし、そういう点からも私は十分の関心を持っておられるということを確信をいたすものでありますけれども、私は、現在の被爆者に対する救援措置は、判決文も指摘しておりますように、これは国の措置といたしましては不十分ではないか、こういうふうに考えるのであります。そういう点につきまして、あなたの施策責任ある政府の考え方をお聞きすることはできませんけれども、私はその問題につきまして、もう一度あなたのそういう点に集中しての御感想をお漏らしいただければ幸いであると存じます。
  219. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまのいろいろなお話でございますが、現在国が原爆の被爆者に対してどういう施設をしておるか。治療につきましては相当行き届いた点がある。原爆の被害の性質によりましていろいろな病気を被爆者が起こしました場合に、直接原爆による被害であろうが、あるいはそれによって身体全体が弱点を持っておるためにほかの病気にもかかるという問題があろうと、いまは一切の病気について国が治療しておる、こういうような状況でありますので、その辺はなんだと思いますが、ただ、私ども当時のことを聞きました関係からいうと、広島に親戚、知人を持っている者は、たいへんだというので、みんな見舞いに参りまして、何にも知らないものですから、ことに親戚、故旧がどうしているかというので、広島のいわゆる被爆地帯を歩き回り、十分に放射能を受けているわけです。それにつきまして、現在の規定では、救援に従事した者はなんだけれども、単純に見舞いに行った者は、まだ治療の恩典を受けていないのではないかと思うのでございます。そういう点につきましても、もう少し治療を受ける範囲を拡大する必要があるのではないか。それからまた、いまは前よりは改善されまして、被爆地点から三キロ以内の者はいろいろ受ける資格がございますが、これにつきましても、もう少しまた広げる必要があるのではないか。私どもの感情の面から見ますと、そういう希望を持っております。それから治療は受けるが、ほかの手当て、これにつきましていろいろ所得制限もございます。しかし、これは、いろんな国の施設に所得制限がございますから、一がいにも申せませんが、私どもの個人的の感傷からいえば、ああいうものだからもっと手厚くそういう点も考えたらいいのではないか。いろいろ全体の補償の問題とか、そういう点について感じは持っている次第でございますが、先ほど申し上げましたように、あらゆる観点から総合検討しなければならぬのでございますから、それをすぐ実現すべく努力するとまでも申し上げられませんが、関係の省において十分に検討されることを希望しておる次第でございます。
  220. 大原亨

    大原委員 次に厚生大臣にお尋ねいたしますが、原爆の投下はアメリカが投下いたしたものですから、やはりアメリカ自体の——広島、長崎の被爆者や、あるいは全国に散らばっていろんな生活上の問題を持っております被爆者がたくさんあるわけですが、そういうことの実態ができるだけ表面に出ることをアメリカの占領当局がきらったわけであります。事実上きらってきたわけであります。今日はまあそれほどまでではありませんけれども、ABCCという病院が広島、長崎にありますが、その調査統計の取り方、その他の問題に対しましても、非常にいろいろな憤激を買ったのであります。しかしながら、占領が終わりまして、平和条約が結ばれた後には、この問題は特にビキニの問題を中心にして、久保山さんが放射能でなくなられましてから爆発的に問題になってきたのでありまして、率直に言って、広島、長崎の原爆によって被爆をいたしました被害の実相というものの深刻さというようなものは、政府の機関においても逃げておったわけです。そういうことが十分政府機関において実態調査もなされていなかったわけです。私は、この問題は医療法の関係で、厚生大臣が窓口でいろいろと今日までやってきたわけですけれども、被爆の実態についてはどういうふうに把握をしておられるのだろうか、こういう点について、長い説明は省略していただいてよろしいのですが、広島、長崎におる人だけでなくて全国におるのであります。沖繩にも百人内外の被爆者の方々がおるわけです。ですから、私はそういう実態を把握することは、対策を立てる政府責任ではないか、こういう点で厚生大臣は被爆の実態についてどのように把握をしておられるか、その点を承りたい。
  221. 小林武治

    小林国務大臣 当時の原爆による死亡者あるいは被爆者、こういうふうな人的なものにつきましては、相当に調査がしてあるのでありまして、財産的のことは、これはまた別途の問題であるのでございまして、現在あの当時被爆した者が三十万人近くある。その者が全国に相当に転住をいたしまして居住をしておる。これらの方々につきましても、それぞれ調査は行き届いておる。こういうことで、現にいわゆる特別被爆者としての治療を受けておる者が十五万人、また原爆の直接障害の者が五千何百人、こういうふうなことはわかっておるのでございます。
  222. 大原亨

    大原委員 それで、これは政府委員からでもよろしいのですが、法務大臣はじめ私どもも、とかくそういう関係地方におりながらそういう点は不明なんですが、原爆というふうなものは、どういうふうに人体に影響を与えるものであるか、この点についてやはり明らかにしておきたいと思いますので、政府委員でもよろしいから御答弁をいただきたいと思います。
  223. 小林武治

    小林国務大臣 公衆衛生局長から御説明申し上げます。
  224. 若松栄一

    ○若松政府委員 原爆自体の障害の経緯でございますが、もちろん放射能の影響でございますので、放射能の影響は放射能の受け方によってずいぶんいろいろあると思いますが、昔からレントゲンの事業に従事する者等は、皮膚その他にはっきり影響が出ております。しかし、現在では、原爆の場合は全身病でございますので、全身のすべての病状を十分に検討しながら原爆の被害であるかどうかということを精密に検査しておるわけでございます。
  225. 大原亨

    大原委員 あなたの答弁は全然不満でございます。そんな答弁はない。あなた専門家だけれども答弁にはなっていないじゃないですか。つまり原爆の威力、効力による影響で、人体にどういう被害を及ぼしておるのか。こういうことについては、私はもう少しきちっとしたそういう実態把握がなければ対策が立たないと思うのです。つまり判決文を読んでも、古関裁判長のほうが非常によく研究しておる。この裁判官のほうが非常に真摯に研究しておる。そのしておられる点については私ども感動するわけですけれども、つまり、爆風と数千万度の熱源と、それから放射能と、そういう全くいままで経験しなかった新しい原子爆弾の威力によって、人体に対しましてはやけどやその他——四キロも離れておるところでもやけどしておるということ、これは記録を見ればわかるけれども、判決文が非常にこの点は真摯に取り上げておる。そういう問題はともかくといたしまして、この問題に対しまして、私はひとつ論点を変えましてさらに申し上げておくわけですが、これは法務大臣にわずらわしたいのだが、少しなにしまして外務大臣にお聞きするわけです。きょうは一般質問で時間の関係がありますから端的に質問するわけです。判決文の中にたくさんの問題点がございますが、一つは広島、長崎に対する原爆投下は国際法に違反するかどうかという問題です。この問題は国際的に非常に大きな反響を及ぼしておるのですが、これに対しては二つの側面があると思うのです。兵器の側面から考えて違法性があるかどうか、あるいは軍事目標の点からどうか、こういう点を明快に分けて論議をいたしておりますが、この判決文の明快なる内容に対しまして、これは被告である法務大臣に聞きたいところだけれども、いろいろな事情があって、国際法がございますから外務大臣にお聞きしたいのですが、外務大臣はどのようにお考えになっておるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  226. 大平正芳

    ○大平国務大臣 原爆投下はきわめて悲惨な事件であり、遺憾な事件でございますが、これは国際法違反であるかどうかという判定につきましては、実定国際法が存在しないわけでございますので、これが国際法違反であると判定する根拠は、私は法律論としてはないと考えております。
  227. 大原亨

    大原委員 いまのあなたの意見は、鑑定人やその他学説からいうと、非常に少数意見なんですが、私が申し上げました第一の国際法に違反するという軍事目標の側面からの違法性、この問題につきましては、非常に判決文は明快に述べておるのであります。国際法による評価の中で「広島、長崎に投下された小規模のものであっても、従来のTNT爆弾二〇・〇〇〇トンに相当するエネルギーを放出する。このような破壊力をもつ原子爆弾が一度爆発すれば、軍事目標と非軍事目標との区別はおろか、中程度の規模の都市の一つが全滅するとほぼ同様の結果となることは明らかである。従って防守都市に対してはともかく、無防守都市に対する原子爆弾の投下行為は、盲目爆撃と同視すべきものであって、当時の国際法」の実定法「に違反する戦闘行為であるといわなければならない。」これはヘーグの陸戦法規の二十五条、海戦芽法規の第一条、それから空戦法規は、案ですけれども、慣例法として国際的に認められておる、定説になっておるところのその二十四条、それぞれの法規、慣例に違反する、こういうことをぴしゃりと明確に決断をしておる。東大の高野教授が鑑定人として出、京大の田畑教授も鑑定人として出席し、法大の安井教授も出席し、あるいは最近の寺沢教授の論文やその他一切をあげて、この点は非常に明快な判決である、こういうふうに支持をいたしておる。政府側が要請いたしました三人の鑑定人があげてこういう点は一致したのであります。これは国際法の実定法に明らかに違反をするのであります。いかがですか。
  228. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもの検討いたしましたところでは、先ほど申しましたように、これが国際法違反であると断定することは根拠はないと思っております。何となれば、それを規制する実定法、違反するという実定法というものはないからでございます。
  229. 大原亨

    大原委員 私があげました国際法規、慣例は実定法じゃありませんか。
  230. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたのあげましたものに該当するというように私どもは解釈できないという立場でございます。
  231. 大原亨

    大原委員 どこが該当しないのですか。
  232. 中川融

    ○中川政府委員 お答え申し上げます。  大原先生が御指摘になりましたヘーグの陸戦法規、これは陸戦に関する法規でございます。なお、御指摘になりました海戦法規、これは海に関する法規でございます。空戦法規は、条約案はできましたが、発効していないこと、これまた大原先生が御指摘になったとおりでございます。ヘーグの陸戦法規の、防備しない都市を爆撃あるいは砲撃してはいけないという規定がこの広島、長崎の空爆に適用があるかどうかということにつきましては、国際法学者の中でもいろいろ議論があることは、賀屋大臣が御指摘になったとおりでございまして、陸戦法規をそのまま新しい航空機による爆撃に適用することがむずかしいために、第一次大戦後に空戦法規というものをつくろうということになったのでございます。空戦でありますと、これは爆撃が主になります。したがって、ヘーグの陸戦法規当時の規定では、なかなか空戦というものを規制し得ないということから、またヘーグの陸戦の当時の規定そのものでは空戦を規定することが適当でないということから、この空戦法規をつくろうということになったのでありますが、せっかく条約案としてはできていながら、各国がこれを批准しなかったわけでございます。したがって、空戦については直接当てはまる法規が実は遺憾ながらない、ないままに今日まで来ておるのでございます。したがって、この前の東京地方裁判所の判決にあたっての国際法学者の鑑定書がいろいろございますが、これあたりも陸戦法規の規定を、いわばその精神から見て、これは防備しない都市に該当するのじゃないか、こういうような理論になっておるのでございまして、したがって、はっきりあの場合に適用する陸戦法規があったということは、やはり実定国際法上は言えない、かように考えるわけでございます。判決の趣旨におきましても、要するに、精神で考えるべきじゃないか、国際法においても必ずしも具体的な規定がなくても、その精神からいわば類推して適用すべきじゃないか、こういう趣旨で判決ができておることも御承知のとおりでございまして、外務大臣が言われました趣旨は、要するに、はっきり実走法にぴたりと該当するという規定が現在までの国際法にはない、かようなことでございます。
  233. 大原亨

    大原委員 判決文をあなたは読んでない。この判決文の中には——これはいろいろな論拠が最近雑誌等でたたかわされておるけれども、兵器の側面から見た違法性の問題は、この問題については議論が相当ある。しかしながら非軍事目標、非戦闘員に対する無差別爆撃、盲目爆撃は陸戦法規や海戦法規や、その上に立った空戦法規——これは案であって、批准されていないけれども、慣例法として学者の間に、国際的にも承認されている、その実定法に違反する。これは判決文にはっきりそう書いてある。この点外務大臣いかがですか。
  234. 大平正芳

    ○大平国務大臣 くどいようでございますが、たびたび御答弁申し上げておるとおりでございます。
  235. 大原亨

    大原委員 この判決文が出ましてから、いろいろ各方面で、学界で、討論になっておるのでありますが、政府のような意見は、どこかに少数意見としてあるかもしれないけれども、ほとんど発表されてないと思うのです。少数意見であることはあなたは認めますか。
  236. 中川融

    ○中川政府委員 日本におきまする国際法学者の多数意見は、大原先生御指摘のとおり、要するに、広島、長崎の原爆投下は国際法違反と断定してしかるべきものと思う、こういうことでございます。しかし、どの国際法学者も実定法がぴたりとあるということは言っていないのでございまして、いまの防備されない都市という規定は、ヘーグの陸戦法規にあるわけでございますが、広島、長崎が、もちろん非防備と申しましても、高射砲程度の防備はあるわけでございます。しかしながら、それが軍事目標に限定して爆撃する、要するに、そういう態様のもとで爆撃されなかった、数十万という市民を一度に爆撃する、こういうかっこうで行なわれる原子爆弾というものは、その態様から見て、無差別爆撃ということに当然なるがゆえに、これは違法と断定すべきである、かような御議論であるわけでございます。なお外国の学者につきましては、いろいろな説に分かれておるのでございまして、必ずしも日本の場合のように、多数説が原爆を違法である、かようには断定していないことは、これまた大原先生御承知のとおりだと思います。
  237. 大原亨

    大原委員 もう一つ、私は記録に残すために言っておくわけなんですが、兵器と側面ですけれども、ヘーグの陸戦法規の第二十三条には「不必要ノ苦痛ヲ與フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」こういうふうになっております。類推適用でなければ適用できない条文もありますが、これは明らかにはっきりいたしております。不必要な苦痛を与うべき、——原爆の正体がわかればそれははっきりいたしております。それで、私が言うのは、この広島に投下いたしました原子爆弾は、兵器というそういう国際法上の問題点を追及いたしましても、軍事的な必要性を越えた非人道的なる、国際法の原則に反する、そういう原爆は兵器である。これは若干一般論になりますけれども、私はそういうふうに考えますし、そうして鑑定人もそういう点を主張しておる点もあるし、判決文も引用されておりますが、この点はいかがですか、念のために聞いておきます。
  238. 中川融

    ○中川政府委員 ヘーグの陸戦法規に御指摘のような規定があることは事実でございます。不必要な苦痛を与えるような兵器は使用してはならないということになっておるわけでございます。原爆が異常な苦痛を与える、かつ、もしもそれによって先き残った人につきましても一生にわたってその放射能が残って苦しむということは、まさしくこの苦痛を与える兵器でありますが、これがまた、たとえば国際間の議論になった場合におきまして、おそらくこの爆撃をするほうは、これは、苦痛は認めるけれども、不必要と言えるかどうかという点で議論を展開すると思うのでございまして、要するに、不必要な苦痛という意味は、同じ結果を招来するのに必要でない、異常の苦痛を与えるような兵器はいけない。戦争でございますから、人を殺傷することは、これはまあ許されるわけでございます。同じ人を殺すにあたりましても、不必要な苦痛を与えて殺す必要はないじゃないか、こういう趣旨の規定でありますので、原爆というものがいかにも残虐なものではございますけれども、それが当然にこれに当たるということについては、やはり議論が分かれるところでございまして、これを実定国際法と断ずるためには、世界の大多数の国が、あるいは大多数の国際法学者が、原爆なるものをもって当然に不必要な苦痛を与える兵器である、かようにみなが考えるという事態になることが必要なわけでございまして、日本政府といたしまして、現在の段階におきまして、冷静な、客観的な、第三者的立場から見た場合において、そういう国際法がもうできておるということはやはり言えないのではないかと思うのでございます。しかし、これを国際法違反にすべきであるということについては異存はない、これはもちろんでございます。
  239. 大原亨

    大原委員 軍事目標の点からは、相当明確な答弁ですが、兵器につきましては、実定法がない。それは、新しい兵器は戦争ごとにどんどんできるのですから、実定法がないからといって、国際法に違反をしないというふうな、そういう断定はできないわけです。だから、やはり国際法の原則は、人道と戦争上の必要、軍事上の必要を調和する点にあるのですから、そういう点で国際法を解釈するならば、唯一の被爆国である日本は、どういうふうに原爆に対して解釈すべきか、こういう点は厳粛かつ正確に考えるべきである。これは総理大臣から聞きたいところだけれども、総理大臣はおられませんが、そういう態度を明確にしなければならぬと思う。官房長官にお尋ねいたします。
  240. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 ただいまお話のございます点、どういうふうであるべきかということと、現在各国民がどう理解しておるかということと、これは相違がございますので、私どもといたしましては、いまお話しのような核兵器を用いる戦争が起こらないように、全面的な禁止等によってこれをやめまして、しかも各国民が、全世界、全各国の者がそれと同調するようにぜひつとめてまいりたい、かように考えております。
  241. 大原亨

    大原委員 官房長官が原爆判決に対しまして政府を代表して意見を発表されたことは、これは私時間がないからですが、非常に問題がたくさんあるという点を指摘しておきます。  それでもう一つ、この点は大切ですからやっておくのですが、一九四五年八月十日に日本政府は、スイスを通じまして、アメリカに抗議文を出しております。そのときには、私が申し上げるように明快に、このアメリカが原爆を投下して非戦闘員に対して盲目爆撃をしたことはけしからぬ。新しい兵器に対しましても、そういう趣旨のはっきりいたしました、国際法上の原則に基づく主張をいたしておるのであります。そういう主張をいつ変えたのか。いつの時点においてその主張を変えましたか、一つの国が。その点だけをひとつ、これは外務大臣からでもよろしいがお聞きしたい。
  242. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国際法違反かどうかということの御質問でございましたので、冷ややかな法律論でお答えいたしたわけでございますが、スイスを通じて抗議したという精神、それは私ども依然として堅持いたしております。
  243. 大原亨

    大原委員 それでは、私は、時間の関係で、問題を進めてまいりますが、原爆の投下は、具体的に広島、長崎に対する投下という時点をとらえてみると、これは国際法に違反をする。原爆違法——一般論についてはいろいろ議論がある。しかし国際法の精神に違反するということは、条約局長もその点はほのめかしている。精神。類推適用。そこで、そういう原爆の国際法に違反する行為によって被害を受けた国民は、これは戦勝国であれ、戦敗国であっても、人道の立場から国際法があるわけですから、この被害に対しましては私はこれは無視することはできない。そこで、問題となるのは、サンフランシスコ条約十九条によって、日本はアメリカに対する一切の請求権を放棄しているという問題があるわけですけれども、しかし放棄するにいたしましても、日本政府は、原爆の被爆者に対しまして当然に責任を明らかにすることが必要であって、この原爆判決の最終のほうにきわめてその点につきましては明快に述べておるわけですが、それは、「現に本件に関係するものとしては「原子爆弾被害者の医療等に関する法律」があるが、この程度のものでは、とうてい、原子爆弾による被害者に対する救済、救援にならないことは、明らかである。国家は自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。しかもその被害の甚大なことは、とうてい一般災害の比ではない。被告がこれに鑑み、十分な救済策を執るべきことは、多言を要しないであろう。しかしながら、それはもはや裁判所の職責ではなくて、立法府である国会及び行政府である内閣において果さなければならない職責である。しかも、そういう手続によってこそ、訴訟当事者だけでなく、原爆被害者全般に対する救済策を講ずることができるのであって、そこに立法及び立法に基く行政の存在理由がある。終戦後十数年を経て、高度の経済成長をとげたわが国において、国家財政上これが不可能であるとはとうてい考えられない。われわれは木訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである。」こういう裁判の判決文の末尾があるわけです。これをお聞きになっておりまして、ひとつだれに質問いたしましょうか、大蔵大臣のほうから、これに対する御所見を聞かしていただきたい。大蔵大臣、あなたが一番実力者みたいだから、ひとつ……。
  244. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この判決文を読むまでもなく、原爆の被爆者に対しましてはまことに同情を禁じ得ないわけであります。政府も、原爆被爆者が再起をされるように、また、健康保持の上でできるだけのことをいたしたいということで、三十九年度の予算では、御承知のとおり十三億一千百万円という予算を計上いたしておるわけであります。なお、この被爆者に対して別に援護の処置をとらなければならないという議論もございますし、私たちもこの問題に対しては十分検討いたしておるわけでありますが、他の犠牲者、いろいろな問題との権衡上の問題もありますので、三十九年度におきましては厚生大臣とも十分相談をいたしまして、以上申し上げたような措置にとどめたわけで一あります。
  245. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣と総務長、官に質問いたしますが、大蔵大臣は、社会党が年末におきまして、政審正副会長あるいは書記長等が予算に対する意見を持ってまいりました際に、きわめて協力的な、理解のあるお話があったということを聞いておるのであります。お話のように十三億円の医療費の問題は、若干の増加を見ましたけれども、しかし新しい分野において一歩でも前進しようという点は、ずばりと全部切られておる。大蔵大臣は昨年の予算国会におきまして、私の質問にお答えいただきまして、私は農地補償などというふうな問題につきまして、憲法上の疑義もないし一応問題が済んでおる、そういう問題につきまして二千八百億円を云々されるというふうなことから考えてみて、こういう原爆被爆者やあるいは遺族に対する問題点を放棄することはいかがなものであるか、この点に対して公平なる措置をすべきことを要請いたしましたところが、在外資産の問題等も関連しながら戦後処理の問題としてこれを総合的に公平に処理したい、こういう理解のある御答弁が昨年の記録に残っておるわけでありますが、しかしながらこの点につきましては、今後の問題を含めまして大蔵大臣の明快なお考えを伺わしていただきたい。
  246. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、また以前も申し上げたとおり、被爆者に対しては重大な関心を持っておるわけであります。でありますから、約二億円の金額を増額いたしまして十三億一千百万円の予算を計上いたしたわけであります。またこの問題に付随をいたしまして、現在の千円を二千円に上げたらどうかとか、また所得制限をはずしてはどうかとかいうような、いろいろな問題がございますけれども、他の戦争においてたいへんな災禍を得ております方々との権衡その他もありますし、そのような観点に立ちまして、いままで適用になっておらなかった被爆地三キロ以内というものに、当時死体を扱われたというような人たちまで範囲を広げるというような措置をいたしておるわけであります。なお、厚生省とも連絡をしまして、特に厚生大臣が要望せられて、この被爆者の治療に対してもっと広範な専門医を派遣をしたり、そのような措置をもとっておりますし、また学校等につきましても、原爆被爆者の病状等に対処できるような機関の拡充をはかるというようなことにとどめたわけであります。
  247. 大原亨

    大原委員 私はその自然増という形で本年度の予算が若干の増額をされているということは認めるわけですけれども、しかしやはり医療法を実施いたしまして、たくさんの問題点があるわけですから、たとえば国との間に特別権利関係はなくても、戦争未亡人に対しまして、私も賛成いたしましたが、一時金を出すというようなことはあったわけです。これは非常に気の毒だから、人道上放置できないということであったわけであります。私はそういう点でやはり原爆の判決は一つの契機だと思うのですけれども、ともかくも人道上の観点から放置できないというのが一貫いたしました判決文の精神でございますから、その精神をくんで、この際私は国といたしましての施策について一歩前進をされるように期待をいたしたい。その点に対しまして、重ねて大蔵大臣の御答弁をいただきたい。
  248. 田中角榮

    ○田中国務大臣 原爆被爆者等の犠牲に対しては、先ほどから申し上げておるとおり深い関心を持って、政府財政の許す範囲内において努力いたしておるわけであります。しかし医療給付のほかに、金銭的に何か援護の措置を講じなければならないということに対しても、与党である自由民主党でも検討いたし、強いそのような要望もあるわけでありますが、現在の時点におきましては、他の戦争犠牲者とのバランスの問題等もありまして、にわかに結論が出しにくいというような状態でございます。しかし、この原爆被爆者は全く歴史上新しい被害者でありますし、これらの問題に対しては深刻な気持ちでやはり考えていかなければならないだろうという考え方は申し上げられると思います。
  249. 大原亨

    大原委員 賀屋法務大臣からもやや積極的なる御意見があったわけでありますが、戦後処理の問題に関連いたしまして、野田総務長官、あなたは地主補償を請け負っておられますが、この戦後処理の問題といたしましては、これらの問題を勘案いたしまして、公平に、国民が納得できるように、財源上の問題について賀屋法務大臣はいろいろと言われた、国民の税金だということを言われたけれども、税金であるからこそ、被爆者は全国に散らばっているし、被爆者だけの問題ではない。私たちは被爆国の政治家としての責任の問題である。道義的な問題でもある。そういう点で、私は戦後処理の問題では、十分、戦後処理の窓口である総理府においても考えていただきたい。あなたいかがですか。
  250. 野田武夫

    野田政府委員 原爆被爆者の問題は、もうお話しのとおり、実に人道上の問題、何といいますか、人間としてもほんとうにこの問題は何とかできるだけの措置をすべきものだと思っております。ただいま大蔵大臣からも政府の方針を言っておりましたとおり、戦後処理の中でもきわめて肝要な、またなすべきことだと思っておりますから、私どもその問題に携わるときは、政府といたしましても、いま大原さんのお気持ちのように、できるだけの措置をすべきだと私も思っております。
  251. 大原亨

    大原委員 厚生大臣に質問いたします。  二つの点があるのですが、前の西村厚生大臣は、やはり予算委員会やその他の機会等におきまして、社会労働委員会等におきましてもそうですが、ぜひ広島にあるいは長崎に、あるいはその他千葉の稲毛の放医研その他において被爆者の実態をたずねて、まのあたり見て、一歩でも二歩でも前進できるような施策を進めたい、行ってみたい、こういうことを公式に言明しておられた。しかし、残念ながら厚生大臣はおやめになりました。小林厚生大臣がかわられたわけであります。言明しておいてはかわっていくわけでありますから、非常に困るわけであります。その点では厚生大臣も、西村厚生大臣がお話しになりましたような点につきまして、引き続いて努力をしていただけるかどうかという問題について一点。  もう一つは、前の国会におきまして、赤松委員辻原委員質問等に答えられて厚生大臣は、被爆の実態、被害者の実態、これらの実態を調査をして、対策を立てるためにやはり審議会等の設置運営等を検討してみる気持らはないか、原爆判決が出ました直後にこういう質問があったわけであります。これについては厚生大臣としては前向きの形で努力をしたいという、そういう言明が記録に残っておる。検討いたしたいという点が残っておる。この二つの点につきまして、厚生大臣の所見を明らかにしていただきたい。
  252. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのように、西村大臣がお話しになりましたように、私も実態に触れて、実感を持って事の処理に当たりたいという考えは持っておりますが、いまだその機会がなかった。これから適当な機会を得たい、かように考えておりますし、また前の国会の際に審議会等のお話もありましたが、これらも含めて検討をいたしたい。こういう私はお答えを申し上げておるのでありますが、いろいろ相談の結果、まだ結論が出ません。それで、審議会等を設けるにつきましては、どうしてもやり方として何がしかの踏み切りがなければ、ただ調査をするというようなことで設けることはいかがか、こういうふうに存じまして、何がしかの結論を得て、そしていまお話しのような前向きな何かの施策をとるべきだ、こういうふうな考え方を持たなければ、直ちに審議会を発足させるということはどうか、こういうふうに存じて、まだ結論を得ておりません。私どもこの問題を政府全体の問題として考えるべき問題である、それは先ほどからお話しのありましたように、他の戦災者等との権衡、こういうことで非常に大きな問題があるのでありまして、私の関する限りにおいて、いろいろ協議をいたしましたが、まだそのような結論が出ない、はなはだ遺憾なお答えでありますが、そういう状態でございます。
  253. 大原亨

    大原委員 池田総理大臣は、かつて本委員会において民社党の田中幾三郎君の質問に答えまして、ガリオア、エロアのときでありましたが、広島、長崎に原爆を投下されて被害を受けた、そういうことは、いろいろな債務の話し合いをする際においては非常に大きな問題となっておる、こういう問題となって、そういう金額の決定、債務額の決定等においては、大きな担保というか、そういうふうになっておる、こういうことで、決してむだ死にではないというふうなことです。しかしながら、その点は原爆判決で被告の、政府側の主張にもちょいちょい見られるわけですけれども、そうすれば、広島や長崎やあるいはその他ビキニ等の問題もあるけれども、そういう原爆を受けた人の立場は一体どうなるのか、こういう問題があるわけであります。ですから、そういう問題についてはひとつ真剣な御配慮をいただきたいという点で、そういう問題と一緒に直ちに当面できる問題があるわけです。たとえば認定被爆者と特別被爆者という医療法の中に制度があるわけですが、認定被爆者はわずか四千九百人です。これは原爆の投下と病気との間において因果関係がある人であります。その際、白血病というのは血液のガンだといわれておる。細胞がこわれて、白血病はこれは血液のガンだ。一般のガンについても、二、三のガンの名前を指摘するだけであって、全体のガンがすでにこれは放射能の影響によるのだということを、たとえば広島、長崎の原爆病院の病院長等も言っているわけです。だから、この悪性腫瘍の範囲を全ガンの患者に拡大をする、被爆した人々に拡大をするということ等もあるわけです。あるいは医療手当の増額等をはかっていって、大蔵大臣にも厚生省からも話があったはずですが、所得制限を撤廃いたしまして、傷病手当的なもので、医療をする際における生活の裏づけがないから、なかなかいろいろな問題が起きておるわけですから、就労能力がない、生活能力がない、働く能力がない、収入が少ないというそういう問題点に対して、四千九百名の認定被爆者を中心にいたしまして認定被爆者、特別被爆者の対策を立てるということでありますから、これは具体的に考えてまいりますと、いまの医療法を改善するという方向においても、私はたくさんやっていただく点があると思うのであります。そういう点につきましても総合的な対策を考えると一緒に、そういうきめのこまかい改善策についても十分——この特別被爆者の範囲等の問題もございますし、大蔵大臣がお話しになった問題等ございますが、そういう点を含めて、とにかく前進をするようにしてもらいたい。抜本的には、実態訓育をいたしまして、それらの調査審議会を設ける等、戦後補償の問題で公平に処理してもらいたい。こういう当面喫緊の対策と総合的な対策、その二つの点につきまして、厚生大臣の所見を聞かしていただきたい。
  254. 小林武治

    小林国務大臣 生活援護という広範な問題を別にしまして、いまお話しのようなことは十分考えなければならぬ。来年度の予算編成にもいろいろ問題を出したということは御承知のとおりでありまして、われわれの要望が十分果たされておらなかったということは、私どもも残念に存じております。すなわち、いまの治療の問題、あるいは医療手当の問題、あるいは場合によれば、通院の手当とか、いろいろな問題がありますので、こういうふうな限定された問題につきましては、十分熱意を持って対処したいと考えております。
  255. 大原亨

    大原委員 時間が参ったようですが、原爆被爆者の救援の問題は、いままでの被爆者を守っていく問題ですが、これからも原爆は一切人類の上に落としてはならぬということは、核兵器やそういうふうなものの禁止の問題であります。したがって、これらは私どもが原子爆弾、水素爆弾に対するそういう政治的な態度を決定する問題といたしましては、それは一貫した一つの問題であると存じます。したがって、これは広島、長崎の一部の被爆者の問題だというふうに考えることは間違いであって、東京にも数千人の方々がいるわけであります。沖繩にも百名内外の方々がいるわけであります。総理府を通じて調査いたしましたが、私別の資料をとってみますと、六十数人という人が明確にわかっておる。日本では医療法の恩恵を受けておるけれども、沖繩においては受けていない、こういう実態等もあるわけであります。もちろん社会保障において格差やアンバランスがあるわけでありますけれども、こういう問題についても、総理府といたしましては、十分将来配慮をしていただきたいと思いますが、その点に対しましては、人数はきわめて少数ですけれども、きわめて大切な問題だと存じますから、沖繩全体の問題は一応おくといたしまして、そういう問題につきましても十分御調査いただきまして、そして国内において立てておる対策をまずやる、こういうことから進めまして御配慮いただきたい、こう存じますが、いかがですか。
  256. 野田武夫

    野田政府委員 今年一月に、沖繩の原爆禁止協議会から被爆者の要請がございました。その要請によりますと、原爆が投下された当時広島と長崎に居住した人が、約六十名沖繩に住んでおられる。その六十名の中には、いろいろの症状があらわれてきておる人もある、すみやかに救援してくれ、こういう御趣旨でございました。これは、事態を見ました場合に、ただほうっておくことができませんことでございますが、政府にはいままで的確な資料がないものでございますから、直ちにアメリカ側、また硫球側に実態の調査をお願いいたしまして、その対策を進められておりまして、いま関係省と打ち合わせております。その結果に基づきまして、お話のとおり実態を把握しますれば、症状があらわれておる方々のごときは、できるだけ内地においで願って、そして医療法に基づいて内地で療養していただきたい、こういう考え方を持っております。
  257. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて大原亨君の質疑は終了いたしました。  次会は明二十九日午前十時から開会いたします。  なお、理事会の決定に基づき、明日は、午前に五島虎雄君一時間三十分の質疑を行ない、これをもって一般質疑を終了、引き続き締めくくりの総括質疑に入ることになっておりますので、御了承願います。  なお、念のため申し上げますが、理事会において決定した締めくくりの総括質疑者の氏名及び質疑の順序は、日本社会党岡田秤夫君二時間、民主社会党鈴木一君一時間三十分、日本社会党辻原弘市君二時間であります。以上でありますから御了承願います。  五島君の出席要求大臣は、外務大臣、大蔵大臣、運輸大臣、労働大臣、防衛庁長官及び経済企画庁長官であります。  なお、明日の理事会の開会時刻は、公報をもってお知らせをいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会