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○相川
委員 ただいま
報告を求められました第二
分科会における審議の経過並びに結果について御
報告いたします。
第二
分科会は、
昭和三十九年度
予算中外務省、文部省、厚生省及び労働省
所管に関するものであります。
審議は、二月十七日より昨二十六日まで、二十三日及び二十四日を除く八日間行なわれ、この間、分科員と
政府の間に
広範多岐にわたる
質疑応答がかわされました。
質疑応答の詳細は
会議録に譲り、簡単にその内容を御紹介することにいたします。
まず、外務省
所管について申し上げます。
原子力潜水艦寄港の問題につき、「一、米国が承認を求めているものはノーテラス型といわれてきたが、何型か。二、この寄港承認は安保条約に基づくものか。横須賀、佐世保の両港を特に指定してきた根拠は何か。三、放射性廃棄物の基準について、その後の折衝の経過はどうなっているか」との
質疑に対し、
政府は、「一、原子力潜水艦はポラリス型を除く攻撃型潜水艦である。二、原子力潜水艦の寄港は条約上当然の権利である。したがって、たてまえとしては、一般の軍艦同様、施設提供区域のほかいかなる港にも入港できる。また、横須賀、佐世保に入港する場合、通報の義務はないとも言えるが、米国の政治的判断から特に二つの港を指定し、また通報することになっている。三、放射性廃棄物の基準について、目下データを集め折衝中である」との
答弁があり、このほか、日韓漁業交渉における漁業専管水域の問題、
原爆投下の地裁
判決の問題、その他各般にわたる
質疑が行なわれました。
次に、文部省
所管について申し上げます。
僻地、産炭地における教育費の父兄
負担及び地方財政
負担の問題、特に産炭地における教材費等を全額国庫
負担できるように特別法制定の問題、ミルク給食の問題等が取り上げられ、これに対して
政府は、「辺地については、辺地起債の増額、小規模学校の教員定数、支給基準の引き上げ、特別交付税など特別に扱われているが、さらに努力する。産炭地については、実情調査の上検討したい。通学費については、市町村の持ち出しの実態を調査する。ミルク給食は来年度比乳四十万石を予定したが、この実績を見た上で恒久的な制度としたい。なお、父兄
負担はこれによって変えていないし、保護家庭はもちろん、準要保護家庭も無料であ一る」との
答弁がありました。また、私学振興問題に対して、
政府は、「来年度は一段と助成を強化したが、今後私学の学生
負担が重いという立場で、新たな検討を進めたい」との
答弁がありました。
次に、厚生省
所管について申し上げます。
一、医師、看護婦に対する待遇、労働条件の改善、養成制度の整備の問題、あるいは国立大学付属病院の無給職員処遇の問題、二、原爆被災者に対する援護法制定問題、三、公害基本法制定等の問題に対し、
政府は、「インターン制度は、四十年度の
予算編成期までに方針を確立する。国立大学付属病院の無給職員の実態は調査中である。被爆者援護法の制定については、なお結論を出していない。公害基本法の制定については検討したい」との
答弁がありました。
最後に、労働省
所管について申し上げます。
一、OECD加盟を控えて、労働基準法の改正及びILO第一号条約の批准の問題、二、業者間協定最低賃金制廃止と第二十六号条約批准の問題、三、最近激増してきた出かせぎ労働者対策などに対し、
政府は、「一、労働基準法は厳重な監督実施の時期にきており、来年度は基準監督官の増員をはかった。また、基準法の例外規定の取り扱いについては、基準
審査会の答申を得て、改正ができるよう準備を進めておる。二、業者間協定最低賃金については、特殊事情を踏まえながら、条約の精神に沿うよう調整したい。三、出かせぎ労働者の問題は、
政府の手が及んでいない問題が多い。安定所を中心とした積極的な措置を講ずる」以上の
答弁がありました。
昨二十六日
質疑は終了し、
質疑終了後、本
分科会の討論、採決は、慣例によりまして本
委員会に譲ることに決定した次第であります。
以上をもって第二
分科会における
報告といたします。(拍手)
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○松浦(周)
委員 第三
分科会における
審査の経過並びに結果を御
報告いたします。
本
分科会は、
昭和三十九年度総
予算中、
経済企画庁、農林省及び通商
産業省
所管につきまして、去る二月十七日各省庁当局より説明を聴取し、翌十八日から
質疑に入り、昨日まで、二十三、二十四の両日を除く八日間にわたって熱心に
審査を行なったのであります。
質疑の総時間は、通算いたしまして三十四時間、
質疑者は延べ人員で総数四十四人でありました。
質疑応答は、各省庁
所管の諸問題につきまして広範にわたって行なわれたのでありますが、その詳細は
会議録をごらん願うことといたしまして、時間の関係上、数点に限って簡単に御
報告いたしたいと存じます。
まず、
経済企画庁所管につきまして申し上げます。
質疑は、国民生活局の
設置、消費者物価の上昇、生鮮食料品流通機構の改善、管理価格、公共料金、物価構造、国際収支の改善、東北開発株式会社の再建、新
産業都市の建設、離島振興、飼料輸入等の諸問題について行なわれたのでありますが、物価問題につきまして、「消費者物価はここ四年間連続して八%ないしはそれ以上上昇しているが、三十九年度は予定どおり四・二%に抑えることができるのか。また、水道料金は一年間値上げしないのか」との
質疑に対しまして、
政府から、「ことしの三月は、前年度三月と対比して四%台でとどまる見通しであり、三十九年度は、公共料金の引き上げ停止等各般の処置をとっているので、
政府見通しの年度間上昇率四・二%は到達可能な目標である。水道料金は、値上げしないよう各地方公共団体に強く要請している」との
答弁がありました。
次に、農林省
所管について申し上げます。
質疑は、第三次農地改帯、土地改良、農地の細分化防止、開拓
農民、愛知用水、国有林の開放、林野労務者の雇用条件、木材の輸入に伴ういかだ輸送による水産物の被害補償、臨時食糧管理制度調査会の
設置、米価問題、米の需給状況、食糧事務所出張所の統廃合、農産物流通機構の改善、畜産振興、糖業政策、ノリの被害救済、韓国ノリの輸入、漁港の整備、穀用かます、僻地
農業対策、
農民の出かせぎ、農林統計等の諸問題について行なわれました。特に農地行政につきまして、「山林原野の活用による新しい土地づくり、
農業基盤づくりのため、第三次農地改革をする必要があるのではないか」との
質疑に対しまして、
政府から、「私有財産制度をそこなわないで農地問題をどういう方向に持っていくか検討しておる。当面は、圃場の整備を大々的にやって交換分合を進めていく。一般的に民有林を開放する考えは全然持っていない」との
答弁がありました。
最後に、通商
産業省の
所管について申し上げます。
質疑は、対共産圏貿易、対米貿易、沿岸貿易、中小輸出企業と金融対策、バナナ輸入、中小企業基本法の実施、
政府関係金融機関の歩積み、両建て、下請代金支払い遅延の防止対策、予約割賦販売、
産業公害、天然ガス、産炭地振興対策、炭鉱離職者対策、硫黄、飼料二法案、特許行政等の諸問題について行なわれたのであります。特に対中共貿易に関しては、「日中両国間の貿易事務を処理するために、相互に長期に駐在員を交換することについてどのような考えをしているか」との
質疑に対しまして、「民間貿易の必要に基づいて駐在員を置くことは差しつかえない、ただし、出入国等の問題は別途に考慮さるべきである」との
答弁がありました。
かくて、昨日
質疑を終了し、
分科会の討論、採決は本
委員会に譲ることに決定いたしました。
以上、御
報告申し上げます。(拍手)
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○稻葉
委員 第四
分科会における
審査の経過並びに結果について御
報告申し上げます。
審査の対象は、
昭和三十九年度
予算のうち自治、運輸、建設及び郵政の各省
所管の分でありまして、去る十七日から昨二十六日まで、二十三日(日曜日)、二十四日(月曜日)両日を除く八日間、連日慎重かつ熱心に
審査いたしました。
審査は各省ごとに行ない、それぞれ当局より説明を聴取した後
質疑を行ないましたが、これらの詳細につきましては
会議録に譲ることといたし、ここでは
質疑のおもな点についてのみ簡単に御
報告申し上げます。
初めに自治省について申し上げます。
質疑は、選挙の公明化と定数是正の問題、地方税制の改正に伴う減収補てんの問題、公共料金の値上げ抑制による地方公営企業の赤字対策の問題、その他清掃事業、広域行政、暴力取り締まり、消防行政等、地方行財政各般について行なわれました。
次に、運輸省
所管については、都市交通難の緩和対策、交通事故防止対策、日中航空機の相互乗り入れの問題、新国際空港選定の問題、国鉄の輸送増強と事故防止対策、その他列車サービスの改善、海運対策等の諸問題について熱心な
質疑がございました。
次に、建設省
所管につきましては、道路、住宅問題を中心に、東北縦貫自動車道、中央自動車道、その他有料高速自動車道の建設促進に関する問題、
産業労務者及び中小企業住宅の充実をはじめ、四十五年度までに一世帯一住宅の実現への基本的対策等、ほとんど道路と住宅問題についての
質疑が中心でありました。
最後に、郵政省
所管について申し上げます。
郵政省
所管につきましては、電話の加入積滞の解消、町村合併に伴う市外通話扱いの解消、郵便局舎建設の促進と郵便集配輸送の近代化、郵便物の事故防止対策、さらに、テレビの難視聴地域解消、その他簡保、郵便貯金、郵政事業、電電公社経営の近代化合理化等、諸般の問題について
委員各位より熱心な
質疑並びに要望がありました。
昨日
質疑終了後、
分科会の討論、採決は本
委員会に譲ることに決定いたしました。
以上、はなはだ簡単でございますが、
報告を申し上げます。(拍手)
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○
井手委員 ただいま第一
分科会の
主査から
報告がありました
ガソリン税についてお伺いをいたしたいと思います。
ガソリン税について
分科会で審議をいたしましたところ、租税上の重大疑義が明らかになってまいりましたので、あらためて大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。時間の制約を受けておりますので、議事進行に協力する意味におきまして、速記録で大臣の
答弁について確認を得たいと思っております。大臣にもいろいろ言い分はあると思いますが、それはあとでお伺いすることにいたしまして、まず速記録について確認をいたしたいと思います。
揮発油税の創設は、「揮発油の消費者は
担税力があるから、財政需要に応ずることができる」という提案の説明であった。この私の質問に対して大臣は、そのとおりでありますとおっしゃっておりますが、そのとおりですね。そのとおりなら、そのとおりだけでいいです。言い分はあとでいい。
-
○
田中国務大臣 当時の状況、制定当時はそのとおりだと思い、ます。
-
○
井手委員 農業の
担税力について、これは四ページですが、
農業の
所得は一人当たり年間十万円程度、非
農業に対して二九%でございます、その農村の
担税力はどうかということに対して、大蔵大臣は「相対的に見て
担税力が低いということは事実であります。」とおっしゃったが、そのとおりですね。
-
○
田中国務大臣 前回申し上げたとおりでございます。
-
-
○
田中国務大臣
揮発油税は、二十四年に一般財源として制定をせられた税でありますが、
昭和二十八年に、
道路整備費の財源等に関する臨時措置法が出ましたときに、当該年度の
ガソリン税収入相当額を
道路整備の財源にもらわなければならない、こう規定されたわけでありますから、
目的税に近い性格を持っておりますが、正確には
目的税ではないわけであります。しかし、
地方道路税及び軽油引取税は
目的税としております。
-
○
井手委員 続いて、
目的税に近いものや
目的税については、これは受益者
負担が正しいではないかという質問に対して――一ページ最後のほうに、大臣は「そのとおりであります。」とおっしゃっている。この発言はそのとおり確認なさるでしょう。
-
-
○
井手委員 続いて、
ガソリン税には
免税の規定があります。工業用、
航空機用は、これは税金の使用の目的から、
免税をされておりますことに対して、大臣は「工業に使うもの、またその後漁業川のものに対しても
免税をやっておるわけであります。」かようにお答えになっておりますが、これも確認なさいますね。そのとおりでしょう。
-
○
田中国務大臣
航空機用のものに対しては
免税をしておることは、御承知のとおりであります。漁業用の問題に対してお答えをしておりますが、その後調べましたところ、漁業用は
免税をしておらぬそうであります。
-
○
井手委員 私は、本日ここに
ガソリン税、
地方道路税、地方税中の軽油引取税の提案説明を全部持ってまいっております。国会の書類です。林さんについては、あなたの本を持ってまいっております。これは個人の著ではなくて、法制
局長官林修三と書いてあります。
そこで農林大臣にお伺いいたしましょう。あなたのほうの
農政局長はこう
答弁いたしております。圃場で使用されるガソリンでございますから、これはできれば
免税の措置を講じていただきたい、かように農林省の意向を表明なさっておりますが、大臣も同じ意向ですね。そのとおりとおっしゃっていただけばけっこうです。
-
-
○
井手委員 大蔵大臣は、私の重なる質問に対して、最後にこうおっしゃっておるのです。五ページ。「三十九年度はひとつ
政府が考えたことでお許しを賜わりたいと思います。」よくない税金だが、三十九年度はひとつお許しを願いたい、そうして今後は引き続き前向きで検討いたしたいと
答弁をなさっております。三十九年度はどうもいたし方がないが、四十年度は何とか解決をしたいという御
答弁でありますが、どういうふうなお考えでございますか、その点をお伺いいたします。
-
○
田中国務大臣
道路整備の必要性が非常に高いので、ある一定期間を限って暫定的にこれを
目的税とし、また道路財源に使っておるわけであります。道路の整備というものの重要性、また代替財源等、いろいろ広範な問題があると思いますけれども、私が御
答弁申し上げましたように、三十九年度の問題を解決しますときには、農林省の要求に対して、農林大臣との間に十分意見の交換をし、三十九年度は、いま御審議を願っておりますとおり決定をしたわけでございます。しかし、
農業用の問題につきましては議論の存するところでありますので、税制調査会の答申等をまちまして、前向きに対処したい、こう考えておるわけであります。
-
○
井手委員 法制
局長官にお伺いいたします。
あなたは、「例解立法技術」という法制
局長官林修三著にこういうことを書いている。――このガソリンの問題で、
ガソリン税においては、工業用その他については
免税をされております。それは道路に使用される理由から
免税をされております。しかし、
農業については
免税されておりません。一方、軽油引取税については、ここにある提案理由にこう書いてある。軽油引取税は
目的税であることから、道路との関連の有無を勘案して
免税の範囲を定めた。
農業用、林業用は
免税すると、提案説明に書いてあります。すなわち、同じような税金を、一方では
免税をし、一方では
免税をしないということ、この問題について、あなたはこう書いておる。「立法内容の統一整序の問題」という項目で、法律は
憲法を頂点として論理的に統一されねばならぬと書いてあるのです。最後のほうには、その間違ったことは、後法は前法をやぶるということであると書いてある。だから、あとでできた軽油引取税の
農業関係の
免税を行なう、これが正しいことであって、前の
ガソリン税で
免税をしなかった
農業の問題は、これは誤りであるということになるわけです。時間がありませんから、一々はお聞きしません。
そこで私は、もうわかった問題ですから、ここで詰めてお伺いいたしたいと思うのです。
ガソリン税の中に、工業用あるいは
航空機用は、その性質が違う、
道路整備の問題とは違うから、これは企業優遇の面からも
免税するとうたわれておる。軽油引取税においては、
農業用は道路との関係がないから
免税にすると番いてある。農村は
担税力が低いと大蔵大臣はおっしゃっておる。
負担の公平、これは租税政策上の鉄則であるはずであります。
ガソリン税が創設せられた当時においては、ガソリンを消費するものは
担税力が高いというので、一般財源として創設された。その後
目的税に変更された。一般財源としてならば、ことさら、農村に使う、たんぽに使う
農業機械に
ガソリン税を課税することはできないはずです。
目的税であるならば、たんぼに使うガソリンは、高速道路や国道や都道府県道の改修には関係がないはずです。事実、関係はないはずです。いかなる面から見ても、
農業用の機械については当然
免税されねばならぬと私は考えております。これはいかなる理屈をもってしても、また実態からいっても、これは
農業用のガソリンに課税させる理由はどこにもございません。大蔵大臣から重ねて、
免税しなくちゃならない
農業用の機械についてなぜ
免税されないのか、なぜ即時
免税されないのか。承りたい。このくらい不合理な
ガソリン税課税はございませんよ。これはわかり切ったことです。あなたも、大蔵大臣になられる前は、政調会長としてはこういう御意見をおっしゃっておったのです。立法技術の問題は、私は言いたいことはたくさんある。けれども、結論に近づいておりますから、聞かぬでもよろしい。必要なことだけお聞きします。租税公平の鉄則からいっても、
担税力の低い農村に百億の
ガソリン税をかける、一方、工業用、
航空機用は
免税にしておる、他面において、軽油引取税においては、
農業用の機械については
免税されておる、それにもかかわらず、
農業機械に対して百億にのぼる課税をすることは、これくらい不当なものはございません。大蔵大臣の所見を承っておきたいと思う。
-
○
田中国務大臣 先回の
分科会における御質問でもるる申し上げたわけでございます。確かに、あなたがいま御発言になられましたように、
ガソリン税制定当時、
担税力があるということで
ガソリン税が制定せられたわけでございます。しかし、
航空機用のガソリン等につきましては、航空機
産業が助成を必要とするという考え方、もう一つは、
航空機用のガソリンというものが他に流用されたり、いろいろ紛淆を起こすことがないという、
徴税技術上簡単に区分けができるというような面からも、これが
免税にせられたわけであります。それから軽油の問題に対しては、
目的税にします当時、
農業用におもに使われておるものに対しては
免税措置がとられております。同じような理屈から推して、いまの時点で申されると、一般的に比較をして
担税力の低い農村でありますし、
農業基本法等によって振興しなければならない事実に徴してみますと、これが
免税せられたほうがより好ましいという考え方は理解できます。また、最終的な
政府案の決定過程において、農林大臣のそのような申し出に対して、
政府部内で意見を十分戦わしたわけであります。なぜこれを三十九年度に
免税にしなかったかという理由を簡単にあげて申し上げますと、まず第一番目には、
道路整備の急ということであり、しかも道路が、いままでの観念のように都市と都市を結ぶというようなものだけではなく、地域開発や農村自体の向上を考えるためにも、道路計画というものと密接不可分の関係にあるということで、
農業用に使われるガソリンに対する税金が、
道路整備の財源に回され、しかも地方の道路の財源に回されることは利害相対立しない、一歩進めて考えれば、農村振興にも道路網の整備は不可欠なものであるという考えが一つであります。第二の問題としましては、この
農業用のガソリンが他に流用せられる、モーターバイクその他いろいろなものに流用せられるというものに対して、これを阻止する手段がない、こういう問題が一つございます。第三点の問題としましては、
農業用のガソリンの
免税もさることながら、一体、
農業の振興のために農道の整備とか林道の整備とか、その他
農業構造改善に必要な資金をどのように歳出の面でカバーできるかというような考えも比較検討しました結果、農道、林道その他を含めまして百四十六億数千万円、百四十七億に近い歳出を計上いたしておるわけであります。そうすることによって、
農業に対する
免税にならなくても十分目的が達成し得る、しかも、ある時間暫定的にこの法律がつくられております趣旨にかんがみまして、現在のような御審議を願っておる結論を出したわけでありますので、その間の事情は、ひとつ
昭和二十四年当時の提案理由、また三十二年法律制定当時の問題等だけでお考えにならないで、私からるる申し述べておりますような、合理的な、しかも実情に即して、また
農業側の主目的を達成するように十分配慮した結果であることを御理解賜わりたいと思います。
-
○
井手委員 断じて理解はできません。税金というものはそんなあいまいなことで課すべきものではございません。大臣も御存じでしょう。
憲法八十四条に何と書いてありますか。租税法定主義をはっきり書いてあるじゃありませんか。「法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と、租税法定主義をはっきりうたってあるじゃございませんか。租税法定主義とは、一番肝心なことは、租税の種類及び課税の根拠を明らかにすることですよ。課税の根拠を、国民に税金を課す以上は、正しい理由をもって国民に納得させねばならぬはずですよ。どこに納得ができますか。農村政策は別個の問題です。税金は税金で正しい根拠を持って国民に課さねばなりません。ほかに
農業の補助金を出すから、それでがまんしろというようなことでは、断じて許されません。私どもは立法機関ですよ。国権の最高機関ですよ。
担税力の低い農村に対して、
ガソリン税を創設した、今日かわって
目的税になっておるならば、受益者が
負担すべきである。たんぼに使う
農業機械から
ガソリン税を徴収する権利がありますか。こんな税金は断じて許しません。国民の納得するものでなくてはできません。こんな不公平なことはできません。私は、これが解決せぬ限り、これ以上審議に応じませんよ。
免税を言明してください。
農業用機械に対するガソリンは
免税、これをはっきりしてください。
-
○
田中国務大臣 井下さんの熱意も考え方も十分理解できます。理解できますが、私もそう理屈一方で申し上げるつもりはないのでありますが、税に対する基本的な考え方を御説明になりましたので、
政府も、租税法定主義の必要、いわゆる税に対してはよほど深刻な前提を持たなければならないという考えは同じでありますので、その間の事情を申し上げますと、御承知のとおり、二十四年に
ガソリン税が制定せられましたときには、一般財源として制定をせられたわけであります。その後、
道路整備の緊急性が認められまして、暫定法としての
道路整備費の財源等に関する法律、いわゆる
道路整備の臨時措置法がつくられたわけであります。その間だけはやむを得ず道路の整備のために
ガソリン税収入額相当額をもらわなければならないという法律が、二十八年に制定せられたわけであります。その後、
地方道路税の制度が採用されたわけでありますから、あくまでもこれらは暫定法でありまして、
道路整備の緊急性というものを主にして、ある一定期間を区切ってのものであるということを考えていただきたいと思います。でありますから、
道路整備がもし終わったと仮定しまして、この緊急の措置が必要でないとしたならば、
ガソリン税の本来の目的である一般財源として当然いけるわけであります。でありますから、ある一定期間を区切っての
道路整備の財源にこれを使用しておるという特別な問題がありますので、これらの問題もあわせて考えていただければ、いわゆる
目的税に近いものであるから、
目的税であるから、それと自動車のように密接不可分の損傷
負担、また利用者
負担というようなものほど密接な関係のない
農業用のガソリンからの税収を充ててはならないという御議論に対しましては、私のほうでも納得しないということではありません。あなたの言うことはよくわかるのです。ですから、研究も十分したのでありますが、
道路整備の緊急性もまたお認めになっておるのでありますから、しかも、その結果農村地帯の道路交通網の整備等も行なわれ、ひいては農山漁村の振興にも重大な基盤をなす仕事をするのでありますから、私は、現在
政府がやっておりますことで
昭和三十九年度は十分理解が賜われるものと信じます。
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○
井手委員 非常に苦しい御
答弁をなさっておりますが、それほど理屈に合わない税金ですよ。一般税であるならば、担税能力、分に応じた税金を納めるのがたてまえでしょう。
農業の
所得というのは、非
農業の三分の一以下、四分の一ですよ。一般財源としてはこれは絶対に不適格です。農村の
農業機械に
ガソリン税を課することの一般財、源は、これは最も不適当なものです。また
目的税から申しますならば、ここにはっきり書いてある。あなたの前の大蔵大臣の提案説明に、「
揮発油税が
道路整備財源に充当されている現状にかんがみ、」こういうものは
免税しますと、はっきり書いてあるじゃないですか。あなたの前の大蔵大臣の説明に、道路に充当するから
免税すると、はっきり書いてあるじゃないですか。なぜ
農業だけかけるのですか。これは
昭和三十二年三月八日の提案説明で大蔵大臣がやっております。これはほかのものと一緒にやっておる。「第五に、
揮発油税が
道路整備財源に充当されている現状にかんがみ、新たに工業用の揮発油のうち石油化学工業の原料に用いられる揮発油」、「
航空機用」こういったものは
免税しますと書いてある。なぜ
農業だけ
免税しないのですか。軽油引取税は
免税されておるではございませんか。軽油引取税については、道路の関係がございませんから
免税しますと書いてあるじゃございませんか。
免税しなさい。あなたが
免税を言明されない限り、私は絶対引きません。断じて引きません。
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○
田中国務大臣
井手さんの御発言になっておる考え方も思想もみなわかる、こう言っておるのです。わかりますが、いまあなたが言われました
ガソリン税の提案理由のときと、また軽油引取税のときに
農業用を
免税にしましたときは、道路の財源に使われておりますからということだけをしぼって申し上げておると思いますが、当時は、その
免税をしようという面を条文に明らかにしたいという考え方を端的にあらわしておるわけであります。
担税力が低いから、また
農業基本法等も制定しておるのだから、
農業に対して
免税をしなさいという気持ちはわかるのですが、これがいままでいろいろ述べたものに徴して違法であり、不当であるというような考え方になると、そのようなものではありません。少なくともこれはいろいろな政策に基づきまして、航空機企業というものをよくしようとするためには特例を開く、また軽油引取税の制定のときでも、
農業用に対してはよろしくない、また、よろしくないにウエートを置かなくて、
農業のためには進んでこの道を開くべきだという考え方を明らかにすることは、これはよろしいことであります。それと同じような考えで
ガソリン税に対してもやれというような御発言でありますが、違法とか不当とかいうことになりますと、ほかの税は一体どうなるかという問題が起こる。ガソリンは
目的税式なものであると考えられると同時に、税法上は消費税であります。消費税について、
担税力が少ないから、こういう考え方で
免税措置をとっておるものもあります。学童用のものとか、いろいろなものに対してありますけれども、これが一般税制論として、
担税力が少ないから、
政府が法律を出したときに、提案理由の説明の中に書いてあるこのような条項だけをたてにして、不当な措置である、こういうようなことはないのであります。これは一つの法律論としてはだれでもおわかりになる議論でありまして、
農業のためには
免税がより好ましいという考え方は私も理解できますが、税法上不当である、税理論の上で妥当性を欠くというような考え方は持っておらぬのであります。
〔「了解了解」と呼び、その他発言する者あり〕
-
○
井手委員 こんな問題で了解できるはずはないのですよ。これは
法理論からも政策論からも、このくらい不当なものはございません。不当ですよ。いやしくもこの
予算委員会にこれほど論議を呼んでおる問題、われわれは、こんなでたらめな、とにかく税金を取れるだけ取れというようなやみくもな課税のやり方に対しては、断じて許すわけにまいりません。一方においては
免税をしておる。一方においては、
道路整備に関係がないから、
航空機用や工業用は
免税にする。どうして
農業だけ
免税ができないのですか。このくらい不当なものはございません。そういうものは法の権威を乱すものであると、林法制
局長官はこの本に書いてある。
予算審議のこの途上で、私は国会の権威においてもこのまま通すわけにはまいりません。
免税を言明されぬ限り、私は引き下がりませんよ。このくらい不当なものはございません。これがたとえ半日、一日、何日かかっても私はやりますよ。
免税しなさいよ。もうはっきりしておる。
免税を言明してくださいよ。このままでは通しませんよ。こんなに不当なものはないのです。そう私も長くかけようとは思いません。しかし、あなたが言明されぬ限りは長くかかります。この国会の議場でこんな不当な課税がわかった以上は、そんな簡単にはできません。
-
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-
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○
井手委員 発言は先刻からいただいております。
どうです大臣、
免税の措置を言明してください。このままでは通しませんよ。こんな不当なものがどこにありますか。一方においては
道路整備には関係がないといって工業用は
免税にしておる。軽油引取税は
道路整備に関係がないといって
農業用機械は
免税しておるじゃございませんか。なぜ
ガソリン税だけに
農業用機械の
免税ができないのか。このくらい不当なものはございません。こんな不当なものがわかっておりながら国会がこれを通すというわけには絶対まいりません。
-
○林
政府委員 先ほどちょっと私の名前で書いた本についての御引用がございましたので、ちょっと一言言わしていただきます。
もちろん、これは実は一般論を書いてあるわけでございまして、この税の問題について書いたわけではないことは、井出先先よく御承知でございます。先ほど先法、後法のことをおっしゃいましたけれども、これは先法、後法という関係にはなりません、この
揮発油税と軽油引取税は。それから法律全体が一つの合理的な体系をつくるべきだ、これは、方針としてはそのとおりでございます。しかし、税に関しましては、それぞれの租税政策というものがあるわけでございまして、租税政策的に見てこれが妥当かどうかという点から議論すべきものでございまして、当然に一つの税と一つの税の内容が違うから、片一方が違法になって片一方が無効になる、そういうものではないことだけはひとつ御了解願いたいと思います。
-
○
田中国務大臣 御熱意のほどは十分理解いたしております。それから三十九年度は、すでにもうこうして国会に御提案を申し上げて、御審議をいただいておるのでありますので、今度の増収では
農業用関係約九億何千万円の増徴が行なわれるわけであります。これを機会に百億全廃しろということを前提にして御発言があるようでありますが、大きな歳入欠陥を生ずるものでありますので、三十九年度の
予算に対してこれを
免税を行なうというような意思は現在のところありません。しかし、将来の問題につきましては、年々減税等もやっておる問題でありますし、当時の財政事情等も十分勘案しながら税制調査会の答申を待って――かかる御発言とか国会における審議は税制調査会にも十分響くことでもありますし、あなたの御発言の内容は、税制調査会にもそのまま間違いなく申し上げますから、答申等を尊重してその段階において検討いたしたい、このように考えます。
-
○
井手委員 こんな不当な税金をそのままにしておくわけにはまいりませんよ。それではもう一回申し上げましょう。
揮発油税の提案説明にこう書いてある。「
揮発油税が
道路整備財源に充当されている現状にかんがみ、」工業用は
免税にすると書いてあるじゃございませんか。
道路整備財源に充当されておるから
農業も
免税してはどうですかと聞いているのです。工業用は
免税して
農業用はなぜ
免税できないのですか。
もう一つ、軽油引取税においては、本税は
目的税であるから道路との関連の有無を勘案して
免税の範囲を定めました――
農業及び林業用には
免税せいとちゃんと書いてある。これはあなたの提案説明、軽油引取税においては
農業用は
免税になっておる、道路の関係がないから
免税になっておる。
揮発油税については道路に関係がないから工業用は
免税されておる、そう大蔵大臣は説明されておる。それじゃ大臣は提案説明にうそを言ったのですか。なぜそれでは
農業用の
免税がてきないかと聞いているのです。
免税しなさい、
免税を。
-
○
田中国務大臣 いまお読みになられたものは、きっと当時の自治大臣が提案理由の説明で申されたと思います。自治大臣でも大蔵大臣と連帯して責任を負っているのでありますから当然であります。しかし、そういうふうに書いてありますから
農業用に
免税しないのは不当であり妥当性を欠く、こういう理論にはならぬのであります。その法律を提案しましたときには、御承知のとおり
免税をしよう、こういうことを定めたのであります。しかも、私がるる申し上げておることは徴税上の技術の問題もあるのです。徴税のコストの問題もあるのであります。こういう問題は専門家であるあなたがおわかりにならないはずはないのであります。理論の上と実際の問題を考えるときには、現行法よりも
免税にすることがより好ましいという理論は存在いたします。がしかし、いよいよ
免税をするときに、
徴税技術の問題上これが不可能に近いものである。またそうすることによって、目的としては非常にいいけれどもやった場合困るといったような取引高税もあったわけであります。理論上は正しいけれども、そんなことをやられたら商人が困るという問題もあるのであります。でありますから、私もこの過程において十分検討しましたら、先ほども申し上げましたように、
農業用のガソリンというけれども、これをバイクに使ったりいろいろなものに使うというけじめが一体どこでつくのかという問題が一つあります。もう一つは、切符制か何かにしてやったらどうか、こういう農林省の意見もありましたので、切符制になればやれるかなと思って検討しましたら、農林関係者は税務署はきらいだ、わずかな
ガソリン税をまけてもらうために税務署といろいろな連絡をとるのはたまらぬ、じゃ農協が一括して切符をやってはどうかという話をしたときに、それにしても税務署との縁は切れない、いろいろな問題があって、徴税コストの面では一体どうか、これを
免税する以上は明確な
免税にしなければなりません。そういう意味で実際できるのかというと、徴税コスト上非常にむずかしいというようなあらゆる問題を検討しまして、とにかく今年は農道その他に大いに――同じ国民の税金でありますから、これを出すことによってより合理的な解決ができる、こういうふうに結論が出たのでありますから、何も初めから考えないで、何もやらないで手をこまねいておったというのではないのでありますから、これらのことに対しては、国会における専門家である
井手さんには十分理解がいただけると、このように考えます。
-
○
井手委員 徴税技術については先般も申し上げましたように、切符制の採用や、配給ルートの新設でできるはずです。徴税上は心配要りません。あなたがいま御説明になったように、いかにこれが不当であるか明らかになった。これはもう明らかですよ。こんな不当なものはありません。こんな不当な課税を、
憲法八十四条の精神から考えてもこれをこのまま通すわけにはまいりません。
そこで私は結論的に大臣にお伺いいたしますが、こんな不当な
農業用機械に対するガソリンの課税はおやめになる意思はないのですか。三十九年度においておやめになる意思はございませんか。あるいは今後においてどうなさるつもりですか、その一点でいいです。
-
○
田中国務大臣 先ほどからたびたび申し上げておりますとおり、三十九年度は、現在御審議を願っております
政府原案によって御賛成を賜わりたい。四十年以降におきましては、御発言もありますし、またわれわれも農林省との間に十分検討をいたしておる問題でありますので、かかる問題に対しては、その時点におけるまた将来の財政事情等も十分見きわめました上、税制調査会の結論等を待ちながら対処いたしたい、このような考えであります。
-
○
井手委員 それじゃ納得できません。こんな不当なものについて大蔵大臣ははっきりした態度を国民に示すべきですよ。これでは
農民は納得しませんよ。こんなでたらめな税金に納得されませんよ。私はこの不当な、どんな面から考えても不当なこの課税に対して黙認するわけにまいりません。
免税をしてください、
免税を。もうそれ以外にございません。これは水かけ論じゃないのです。こんな不当なものは減免してください、
免税してもらいたい。水かけ論じゃないんだ。これはかけてはならぬ問題ですよ。できません、できません、そんなことは。いまのような大蔵大臣の言明では。もう少し誠意をもって答えてください。
-
○
田中国務大臣 御趣旨の精神は十分体しまして、将来検討いたしたいと思いますが、
昭和三十九年度に関しましては
政府原案に御賛成を賜わりたい。
-
-
○
井手委員 きておることはわかっておるんですが、そのままじゃ済まされませんよ。今後において大蔵大臣、
免税の措置を考慮されますか。当然ですよ、考慮されることは。これを考慮されぬで大蔵大臣はつとまりません。租税公平の
原則からこれは反しておる。明らかに反しておる。
目的税の、一方では
免税して、
農業だけ
免税しないとは何事ですか。大蔵大臣として国民を納得させなければなりません。
免税を考慮なさるのですか。当然のことですよ、これは。
-
○
田中国務大臣 将来の歳入の減等に対して財政の責任者が軽々に言明できないということは、
井手さんも十分御了承のことであります。私も、御承知のとおり
農業国新潟県の出身者でありますし、しかも農山漁村振興に対しては、熱意に関し人後に落ちるものではありません。その意味においては、先ほどから申しましたとおり、あなたの御発言等を十分体して将来対処いたします、こう言っているのですから、ここらでひとつおおさめをいただきたい。
-
○
井手委員 将来対処する程度では、こんな不当な課税をこのまま
予算委員会で通すわけにはまいりませんよ。はっきりした態度を示すべきですよ。大蔵大臣という権威をもってお答えください。
免税の措置を講ずるなら講ずるということをはきっりおっしゃらぬのですか。それでなくては、税収入その他の財源関係は別ですよ。租税法定主義という
原則からいっても不当なものは直ちに
免税にすべきです。減免すべきです。その点について大蔵大臣は所信を明らかにすべきですよ。財政の都合をいろいろと、そんなことは理由になりません。
免税を考慮なさる用意があるかどうかを聞いている。それをはっきりおっしゃってください。
-
○
田中国務大臣 税制調査会の答申等を待ちながら対処いたしたいと思います。
-
○
井手委員 大蔵大臣は
免税の用意があるかどうかを聞いているのです。税制調査会のことを聞いておりません。私は大蔵大臣の権威で聞いておるのです。
田中大蔵大臣は
免税を考慮なさる用意があるかどうかと聞いているんですよ。それだけです。
免税の措置をお考えになりますか。
-
○
田中国務大臣
井手委員の熱意に共感を覚えます。そういう態度でひとつ検討いたします。
-
-
-
○
井手委員 このままじゃだめですよ。こんなことではだめです。この大事な課税問題で、不当な課税問題で、
免税するとかなんとかいう態度を明らかにしなければだめですよ。
-
-
○
井手委員 していない。
免税の措置を考慮するならばいいけれども、そうじゃないのです。
-
-
-
-
○
井手委員 私は審議に協力するつもりですから、時間を延ばそうとはさらさら考えておりません。だからあなたもはっきりおっしゃらぬか。これほど不当きわまる、これははっきりしておるんですよ。
免税の措置を考慮されるかどうかと聞いているんですよ。そのことは言えないはずはございません。ないはずですよ。言いなさい、はっきり。
-
-
○
田中国務大臣
井手さんの熱意にほだされまして申し上げます。御発言の問題につきましては、四十年度以降において発言の御趣旨を体して減免につき考慮いたしたいと存じます。
-
-
-
-
○
森本委員 質問の時間が限定をされておりますので、まず最初に申し上げておきたいことは、
政府側の
答弁はひとつ簡単にして、しかも要領よい
答弁をお願いしたいと思います。もし
政府側がそうでなかったならば、その時間は延長方を
委員長に先に申し上げておきます。
-
○
荒舩委員長 私は、一時間半のお約束でございますから、その範囲で、
理事会の決定どおりいたします。
-
○
森本委員 一時間半の約束を守ってやりますけれども、
政府側の
答弁がつまらぬ
答弁で長くなって、くどくどしい
答弁でありましたならば、それは私がいま申しましたような考え方でやりたい、こう思いますので、
委員長もあらかじめ御了承願っておきたいと思います。
-
-
○
森本委員 これはあとの問題もありますので、まず私は郵政大臣にお聞きしたいと思います。
二十一日の朝日新聞に、これは各新聞に全部載っておりますが、池田総理が、二十一日の閣議において、NHKのラジオの受信料についてもうそろそろ徴収をやめることにしたほうがいい、こういう発言をした。それに対して郵政大臣は、NHKのラジオ受信料の年間収入は十四億円程度であって、手数料その他を引いた場合には、実際には七億円から十億円程度になる、しかし東京オリンピック、その他の準備のためにNHKも金がかかるので、オリンピック終了後、来年一月をめどにして受信料の徴収をやめるように指導する方針である、こういう郵政大臣の発言があって、閣議はこれを了承したということが各新聞に報道せられておるわけでありますが、これはほんとうでありますか。
-
○古池国務大臣 お答えいたします。
記者会見におきまして私はお話をいたしました。ことしのオリンピック東京大会を控えまして、NHKにおきまして非常に経費がかかることは十分理解できるところであります。そこで、もう一方において難視聴地域解消のためにできる限り置局を促進してもらいたいという要望もいたしております。さようなわけで、今年内は無理なことはわかっておりまするが、来年にもなりましたならば、ラジオだけの受信料金の全廃という問題について考慮してもらいたいという希望を私は持っておるということを発言したのでございます。
なお、本年度内におけるラジオ受信料金の十四億という予定額については、数字はそのとおりでございます。
-
○
森本委員 いや、私が聞いておりますのは、この新聞報道によりますと、来年の一月をめどにしてラジオ受信料の徴収をやめるように指導したいということを郵政大臣が言って、閣議は了承した、こういう新聞報道が載っておりますが、それがほんとうかどうか。くどくどした
答弁は要りません。
-
○古池国務大臣 閣議了承ではございません。閣議の席においてその話が出たことは事実でございます。さらに、行政指導をすると申したことはございません。さようなことを希望すると申しました。
-
○
森本委員 それでは、各新聞の報道は全部うそである、こういうことですね。
-
○古池国務大臣 私は、ただいま申したとおりを発言いたしました。
-
○
森本委員 だから、この各新聞の報道はあなたの発言とは全然違った報道である、こう解釈をしてよろしいわけですか、朝日新聞、毎日、産経、読売、各新聞が全部そう報道しておりますが。
〔
委員長退席、青木
委員長代理着席〕
-
○古池国務大臣 各新聞によりましてそれぞれ表現が違うようでございます。それは記者諸君の感触の違いであろうと思います。
-
○
森本委員 そういたしますと、この受信料についてはこれを廃止をしたいということを大臣としては一応考えた、そういうことは言った、こういうことですか。
-
○古池国務大臣 私は、事情の許す限りできるだけ早い機会に料金の全廃ができればいい、そういう希望を持っておりまするから、そのことを申したのでございます。
-
○
森本委員 そういたしますと、できる限り早い機会に廃止をするというのはいつごろですか。
-
○古池国務大臣 事務的にもいま検討をいたしておりまするから、手続その他の関係、またNHKの財政等の事情も勘案いたしましてできるだけ早い機会ということでありますから、それは検討してみないとはっきりしたことは申し上げられません。
-
○
森本委員 できるだけ早い機会ということは、検討しなければわからぬという一あなたはけんか腰でものを言うけれども、できるだけ早い機会ということなら一応のめどがあるのだろうが。めどがなくてできるだけ早い機会ということがあるか。初めからけんか腰で
答弁するんだったら、こっちもけんか腰で質問するよ。
-
○古池国務大臣 先ほど
森本委員の御発言で、
答弁は簡明率直に、こういう御希望でありましたから、私はさような意味合いにおいて御
答弁をしておるのでありまして、むしろ
森本委員の御趣旨に沿うであろうと考えておりまするが、しかし、私の発言にもしも礼を失するようなことがありましたならば、私は、そういう点については十分に考慮いたしますけれども、現在までの御
答弁は、誠心誠意御
答弁申し上げておると思っております。
-
○
森本委員 だから、私が聞いておりますのは、要するにそういうふうな早期にやりたいというめどであるとするならば、そのめどというものが一応あると思う。だから、NHKの財政その他について検討しなければわからぬと言いますけれども、毎年度のNHKの財政その他の計画については郵政大臣は詳細にこれを検討しておるはずであります。そういたしますと、こういうふうに新聞に大きく報道せられておりまする以上は、一応いつごろにこれを行なうというめどはあるはずであります。だからそういういつごろ行なうというめどはいつごろでございますか、こういうことを聞いておるわけであります。
-
○古池国務大臣 ただいま申し上げましたが、今年内はとてもこれは無理だろうと思います。明年に入りまして、これはラジオの受信料金の全廃ということでありまするけれども、これがまたひいては公衆料金にも影響することがあるだろうと思います。そういう点も検討しなくらやなりませんし、さらにまた法律改正というようなことを考えてみますると、どんなに早くても二月、三月あるいは四月ということになるかとも思いまするが、その辺のところはもう少し事務的な検討を進めた上ではっきりさしたいと思いまするが、今日はその段階でございまして、はっきりといつごろからというところまでは言えないかと思っております。
-
○
森本委員 そういたしますと、二月、三月、四月というふうなことを考慮して考えていく、こういうことですか。
-
○古池国務大臣 国会審議の状況等も考慮に入れまして考えてまいりたい、こう存じております。
-
○
森本委員 いずれにいたしましても、それではNHKのラジオの受信料については廃止をしたいという考え方については間違いない、こういうことですか。
-
○古池国務大臣 その方向につきましては間違いございません。
-
○
森本委員 そういたしますと、その場合に放送法の三十二条の改正についてはどういうふうな考え方をもってこの受信料の廃止をするのですか。
-
○古池国務大臣 事務的な問題でありまするから、事務当局から御
答弁させます。
-
○
森本委員 これは事務的な問題ではございません。法律の問題であります。三十二条の法律によって、これは正確にきまっておるわけでありますから、三十二条の改正をしなければならぬわけでありまして、事務屋の問題ではございません。これはあくまでも国務大臣、郵政大臣として、そういう考え方であるとするならば、どういうふろにこれを改正していったならばできるかという
答弁をしなければならぬわけであります。
-
○古池国務大臣 お答えいたします。放送法の第三十二条「協会の放送を受信することのできる受信設備を
設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」こういう規定になっております。そこで、ラジオという受信することのできる受信設備を
設置した者は、当然この法文によって受信料を納めて契約をしなければならぬのでありますが、ラジオ料金を全廃するということになれば、この条項をやはり考慮しなければならぬだろう、改正の方向に向かって考慮せねばならぬ、かように考えております。
-
○
森本委員 いま放送界において一番問題になっておりますのは、このNHKの受信料の問題であります。だから大臣がああいうふうに、NHKのラジオの受信料を廃止をしたいということを閣議において言って、閣議も大体これを了承したような形が報道されておりますると、非常にこれは注目の的になってくるわけであります。そこで三十二条を改正しなければならぬということになるわけでありますが、その場合に三十二条をどういうふうに改正をせられるのか、その考え方の基本というものが、日本の放送界全般についても非常に大きな影響を来たすわけであります。そこで大臣がああいうような発言をせられておりますので、実際問題として三十二条の、「協会の放送を受信することのできる受信設備を
設置した」場合というものを、たとえばテレビとかそういうふうに変えるのか、あるいは受信料の基本的な問題を変えるのか、そういう問題が日本の放送界にとっては非常に重要な問題になってくるわけであります。そこで私が聞いたのは、三十二条を、NHKのラジオの受信料を廃止をするという場合には、一体大臣としてはどういうふうに変えていくことをお考えになっておるか、これを聞いておるわけであります。
-
○古池国務大臣 ただいまの問題は、お話のようにまことに大切な問題でありまするから、今後十分に研究をした上で決定をしていきたいと存じます。
-
○
森本委員 十分に研究した上でやらなければならぬものであったならば、一応人気取りのように受信料を一月から廃止をしたいなんということを言わぬほうがよろしい。もっと法律というものを研究をして、それから全般的なものを研究をして、きちんとした成果ができてから各新聞に発表すればいいのだ。われわれはNHKのラジオの受信料については、それは国民の
負担が軽くなるという点から賛成であります。賛成でありまするけれども、事法律においてきまっておることを簡単に、その法律をどういう改正をするということも研究せずに、思いつきにおいて閣議で発言をして、閣議が了承というような、全く権威のないやり方をしてもらいたくない。少なくともNHKの受信料を廃止したいということであるとするならば、その受信料を廃止する場合には放送法三十二条をどういうふうに改正をする、そうしてNHKの受信料については今後どういう方向に持っていく、そうして民放界のいま要望しておるところのいろいろの問題等についてもこれを解決をつける、そういう総合的な判断の上に立ってああいう発言はすべきものであって、単にNHKのラジオの受信料だけをぽこっと発言をするということは、きわめてこれは思いつきの発言であります。まことに、こういう点について私は遺憾千万である。郵政大臣としては軽率に過ぎる、こう思っておるわけでありますが、どうですか。おそらく隣におる大蔵大臣の
田中角榮氏が郵政大臣をやっておったときは、こんな発言はしなかったと思います。実にこれは軽率千万な発言であろうと私は思う。こういう重要な問題を発言する場合には、もっと慎重に検討して、それから発言をしてもらいたい。いま聞いてみると、三十二条の改正についても、さらにまた今後の受信料の問題についても、何らきまったような、あるいは結論づいたような、あるいは郵政省内におけるところの検討もなされておらぬ。ただ思いつきで来年の一月ごろから廃止をしたほうがよかろう、なるほどそれは値が下がるからよかろう、そういうことではこの法律問題を担当するところの郵政大臣としては非常に軽率である、私はこう思うわけでありますが、もう一ぺん重ねて御
答弁願いたい。この三十二条の問題等についてはまだ全然改正の準備がない、こういうことですね。
-
○古池国務大臣 御意見は承りましたが、私は、将来なるべく早い機会に受信料を低減したい、こういう希望を持っておりますから、その希望を申し上げたのであって、法律的な研究は今後やろう、これは当然のことであります。そういう希望を申し上げたからといって、それが軽率であるとおっしゃいまするけれども、その点は私は決して軽率ではないと考えております。
-
○
森本委員 それでは、軽率でないとするならば、あなたがさっきおっしゃったように、二月ないし三月、四月ごろをめどにして考えるということになるとするならば、もはや三十二条をどういうふうに改正するという原案がなければならぬはずであります。すでに三十九年度のNHK
予算は、郵政大臣の承認を得て国会に上程をせられております。これは来年の三月三十一日までの
予算であります。二月、三月にこれをやろうという希望を持っておるとするならば、ああいうふうな
予算案は出してはならぬはずであります。これが軽率でなくて何でありますか。来年の四月以降これを廃止する、そのときには来年の通常国会に放送法の改正も一緒に出します、こういうことなら話がわかる、しかし、三十九年度のNHKの
予算は現在のまま出しておいて、二月か三月ごろにできれば廃止をしたい、あるいはおそくなったら四月にしたいということであるとするならばきわめて軽率であります。だから私は、やはり郵政大臣という職務にある限りは、そういう条項、あるいはまた
予算の内容、事業の内容、そういうものを全部、一切がっさい含めて詳細に検討して、そうしてこういうふうに非常に各方面に影響のある問題については慎重な発言を要する、こういうことを言っておるわけであります。ただ思いつきでぽこっと言われたのでは困る。あなたは軽率でないと言っておるけれども、二月、三月にかりに廃止をするとするならば、あなたがいま提案しておりますところの三十九年度のNHKの
予算は、これはそのまま上程するということがおかしい、こういうことになるのじゃないですか。
-
○古池国務大臣 来年の春のことでありますから、大体一年先のことであります。したがって、そのころからラジオの料金の低減をしたいという私の心持ち、希望を申したのでありまして、一年間の間に十分に準備を整え、法律の改正についても詳細な検討を加えた上で国会に御相談を申し上げたい、こう考えておるわけでございます。
-
○
森本委員 まあ郵政大臣としては、とにかく思いつきで発言をした。ところが意外にこれは、考えてみると法律も改正しなければならぬ、あるいはまた放送法制調査会の結論も符なければならぬ、簡単にやれるものじゃない、あら、しもうた、えらいことを言うたと、こういま思っているけれども、そうは
答弁できませんから、これ以上この問題については追及いたしません。いずれにいたしましても、あなたは、軽率でございませんと、まじめくさったことを言っておりますけれども、あなたの下部機関に聞いてごらんなさい。大臣がきわめて軽率な発言をして困るといううわさが非常に多いのです。
次に私は聞きたいと思いますが、現在の日本に対する外国電波の中波の混信が非常に多いわけであります。その中でも北京放送、モスクワ放送、こういう方面からの中波放送の妨害も多いわけでありますが、この問題は別といたしまして、この前の日韓会談に関しまするこの
予算委員会における
質疑応答において、総理並びに外務大臣は、日韓交渉が妥結する場合については、すべての問題の懸案の解決をつける、こういうことをはっきりと言われておるわけでありますが、かりに日韓会談が妥結をし、解決をつけるということになった場合に、韓国と日本との中波放送の問題におけるところの解決も同時につけ得るかどうか、この点についてひとつ外務大臣にお聞きしておきたいと思います。
-
○古池国務大臣 お答えいたします。
国内標準放送波に対します外国電波の混信妨害のことは、ただいま御指摘になりましたとおりでございます。この中で、大体こちらで推測されますものは中共からの混信が十三局くらい、韓国からのものは十一局くらいと推定されておるのでございます。これらにつきまして、要するに御承知のようにITU、国際電気通信連合、これを通じてやはりこの解決ははかっていくことが必要であろう、かように私どもは考えております。
なお、非常に技術的な要素の多い問題でございまするから、ただいま申しました国際機関なり、あるいは主管官庁相互で詳細に話し合いをいたしまして、この混信妨害の解決ということをやってまいりたい、こう存じております。
-
○
森本委員 だから、私が聞いておりますのは、現在のITUを中心として韓国と日本がこの中波放送の、いわゆる周波数について留保条件を付しておるということは明らかであります。これは皆さん御承知のとおりでございます。ただ、私が言っておりますのは、外務大臣並びに総理大臣は日韓会談が妥結をする場合については、韓国との懸案事項についてはすべて解決をつける、こういうことを言っておりまするから、その際に、問題になっておりますところのいわゆる中波放送の周波数の問題についても解決をつけ得るのかどうか、つけるのかどうか。すべての問題ということになりますると、この韓国と日本の中波放送の問題もすべての問題に入るわけでありますから、この問題も解決がつかない限りは日韓会談も妥結をしない、こういうのかどうかということを聞いておるわけであります。これは、だから郵政大臣ではないのです。外務大臣に聞いておるわけです。
-
○大平国務大臣 一切の懸案を解決したい、一括して解決したいということを申し上げておりまする懸案というのは、韓国の独立に伴いまして、それに伴う懸案でございまして、その後出起してまいりましたいま御指摘のような案件、これは普通の国際間に起こる問題でございまして、普通の外交的なルートによりまして外交的に処理すべき問題でございます。私どもが申し上げておる意味の懸案は独立に伴う、それに牽連した懸案、請求権を主体といたしましたもろもろの懸案がございますから、それは一括して解決して正常化をはかりたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
-
○
森本委員 そうすると、いわゆる電波関係の問題については一括懸案の中に入らぬわけですか。
-
○大平国務大臣 その懸案というのは、いま申しましたように韓国が分離いたしました際のもろもろの懸案、それを言っておるわけでございまして、その後問題が生起してまいります場合に、それは国と国との間でございますから、いろいろな問題が出てくるわけでございますが、そういう問題は普通の外交的な問題として外交的に処理するということになろうと思います。
-
○
森本委員 これはいままでも韓国と日本との間の懸案事項でありますが、こういう懸案事項はそれじゃ今度の日韓会談のらち外、こういうことですか。長い間韓国と日本とが意見が対立をしておる問題であります。ちょうど漁業ラインの問題と同じように、この問題も日本と韓国との意見が対立をいたしておるのであります。これは普通の外交問題だから横へのけておく、こういうことですか。
-
○大平国務大臣 懸案の一括解決という意味の懸案の中には入らないと思います。
-
○
森本委員 そうすると、すべての懸案を解決をつけるということは、その懸案事項の中にもそれぞれ区別があるわけですか。すべての懸案事項の解決をつけたならば、日韓会談も妥結する、こういうことを言っておるわけですが、そのすべての懸案事項ということの中にも、懸案事項でも解決がつかない懸案事項、それから解決がつけ得る懸案事項ということになって、すべてのということはそれはうそだ、こういうことになりますか。
-
○大平国務大臣 これも当然の常識と心得て申し上げておるわけでございますが、韓国が分離、独立するに伴いまして、その時点において日本と韓国との間にありました懸案、そういう懸案を解決して正常化をはかろうというわけでございまして、その時点以後に生起してきた問題は、日韓会談の問題にはならないということでございます。
-
○
森本委員 いや、その時点以後ではないのですよ。これはすでにずっと前から日本と韓国がITUを中心として意見が合わないわけであります。意見が合わないから、韓国も日本もこれは留保条件を付しておるわけです。そうして両方がかってなことをやって混信をしておるわけです。いままで何回もこれはITUという国際舞台を中心として話をしておるわけです。そこでいままでの懸案事項の問題でありますから、総理は日韓会談については懸案事項はすべて解決をつけるということを言っておりまするから、この懸案事項も解決をつけるかどうか。解決がつかない、こういう懸案事項は、まだ懸案事項にも別々の懸案事項がある、これは別の懸案事項だから別だ、こう言うならそれはそれでいいわけですよ。いままでの懸案事項であることについては間違いないわけです。
-
○大平国務大臣 いま私どもが努力をいたしておりますのは、国交正常化の前提としての懸案の解決ということでございまして、いわば国交正常化の条件と申しますか、そういう懸案を解決することによって、国交正常化をもたらそうというそういう懸案でございまして、いまの
森本さんがおっしゃったような問題の解決がなければ、国交正常化はしないのだというようには私どもは考えていないわけでございます。日韓会談の過去の経緯から申しましても、そういう問題が会談の討議の対象になったことはないわけでございまして、これは普通起こってくるよくある外交案件でございまして、普通の国交正常化の条件としての会談によって解決するという性質のものでは私はないと思います。
-
○
森本委員 これは現在まででも当然交渉しなければならない問題でありますし、韓国と日本とが直接の交渉はいたしておりませんけれども、ITUという一つの舞台を中心としての韓国と日本との折衝はなされておるわけであります。これが日韓会談が正式に国交が正常化するということになれば、この問題も当然同時に解決をつけなければならないわけであります。これはやはり北京放送がああいうふうに妨害をいたしましても、あなた方が反対で日中国交回復をしておりませんからやむを得ません。しかし韓国との間にこの一応の国交回復がなされた場合においては、こういう中波放送の混信については、当然日本と韓国との話し合いにおいて解決をつけ得る問題であります。また、つけなければならない問題であります。だから、これは今日までも大きな懸案事項になっておるわけであります。ただ郵政大臣があまりやかましく言わないから外務大臣はあまり知らなかっただけのことであって、実際に迷惑をこうむっておりまするのは日本の国民で、ラジオを聞いておる者が迷惑をこうむっておる、こういうことであります。だからこういう問題についても、やはりこれは、従来の懸案事項として日韓会談を妥結をする場合には、私は同時に解決をつげるべき問題である、こういうふうに解釈をいたしておりますが、そうじゃないですか。
-
○大平国務大臣 日韓会談が妥結する前でも、そういう問題は解決できたほうがそれはいいわけでございますが、私が申し上げておるのは、そういう案件の妥結が国交正常化の前提と申しますか、条件というようには私ども考えていないということでございます。ただ国交正常化ができれば、そしてその問題が未解決のままであれば、その問題の解決を促進することになると私は思います。
-
○
森本委員 私は思うと言うたところで、あなたのほうはすべての懸案事項を解決をつけるということを言っておるわけでありますから、この問題についてもはっきりとやはりもし日韓会談が妥結するとするならば解決をつけるべきであります。すべての懸案事項というのは、これは大きな一つの懸案事項であります。日本の国民と韓国の国民に大きな影響のある問題でありますから、当然これは解決をつけなければならぬ問題であります。この問題は別だ、との問題はどうしても解決つけなければならぬ、こういうふうな懸案事項ではないと思う。だから、この問題については外務大臣はあまり詳しくないからそういうふうに言われるのはもっともであろうと思いますが、専門的な立場から見ると、この問題についてもやはり同時に解決をつけなければならぬ問題でありますから、この点については外務大臣と郵政大臣がひとつよく相談をして、将来前進をする方向に進んでもらいたい、私はこう思うわけでありますが、重ねて外務大臣の回答を願っておきたいと思う。
-
○大平国務大臣 仰せのような問題につきましては、鋭意解決に努力いたしたいと思います。
-
○
森本委員 それから次に、沖繩のマイクロ中継の問題でありますが、これは一昨年
内閣委員会にこの特別立法がかかりまして、そうして総務長官が提案をいたしましてわれわれは審議をいたしましてあの法律が通ったわけであります。その法律の通った後におきまして、昨年の十月ですか十一月ですか、すでに沖繩と日本とのマイクロが開通をいたしております。開通はいたしておりますけれども、その後三カ月間というものはこれが利用されておりません。せっかく日本
政府があの特別立法をつくって、国民の血税でもってマイクロウェーブを
設置をいたしたにもかかわりませず、これが現実にその間において使われておらぬということは、日本国民としてはまことに残念しごくでありますし、また沖繩の県民にいたしましても非常に残念であろうと思うわけであります。なぜ沖繩のマイクロウエーブが現在使われておらぬかということをひとつ総務長官のほうから御回答願いたいと思います。
-
○
野田政府委員 ただいまお話のとおり、昨年の十一月の末に設備が完成いたしまして、十二月の末に琉球の電電公社に日本からこれを譲渡いたしました。そこで、直ちに使用を開始するということは当然みんなの希望でございますが、実は日本電電公社と沖繩電電公社の間におきまして使用料につきましての話し合いがつかないのであります。われわれも一日も早くこの使用を開始したいと思って、これの促進方について希望を述べておりますが、今月の二十四日に日本電電公社の幹部が沖繩に参りまして、ちょうど目下琉球電電公社のほうとこの辺につきまして折衝中でございます。この折衝の結果をわれわれは非常に待っておるのでございますが、おそらく両者間に何らかの話し合いがまとまるのではないかということを期待いたしております。
-
○
森本委員 その具体的な金額の内容についてはどうなっておりますか。これは郵政省であろうと思いますが、要するに日本電電公社がどの程度いって、琉球電電がどの程度いっておりますか。どの程度の開きができておりますか。
-
○古池国務大臣 直接は公社のほうから
答弁すべき問題と思いますが、私が承知しております範囲内においては、日本と琉球間のマイクロ使用料の分収の問題が最後に残っておるようであります。大体の比率から申しますと、距離その他から考えて七、三という数字も出ておるようでありますが、
日本側として極力協力をいたしまして、その開きがだいぶ縮まってきておるというふうに聞いております。詳細は公社のほうからお聞き取りいただきたいと存じます。
-
○
大橋説明員 お答え申し上げます。
ただいま郵政大臣から御
答弁になったとおりでありますが、しかし、目下折衝中のことでありますから、内容についてこの際
答弁することは差し控えたほうがよかろうと考えておりますので、御了承願います。
-
○
森本委員 内容について差し控えておって、それで済むものならいいわけですが、とにかく十二月に開通しておって、一月、二月、これはもう二カ月遊ばしておるわけであります。だから一応概略の数字というものは、日本電電公社と琉球電電公社との間にどの程度差があるのかということを聞いておるわけであります。
-
○
大橋説明員 ただいま申し上げましたとおり、従来の経過から見ますと、料金についてまだはっきりきまらない点もありますけれども、およその妥結点にだいぶ近づいてはおるようでありますが、ただ分収の点につきましては、どうも話が両者対立の状態にある、こういうことでありますし、目下折衝中のことでありますから、この際あまり内容に触れることは差し控えたほうがよかろうかと思います。
-
○
森本委員 もし折衝中であって公開の席でいかぬということなら、
予算委員会を秘密会にして、秘密会の中でひとつ説明を願いたい。なぜかならば、この問題については一昨年特別立法で国会を通ってこの工事ができたわけであります。できたにもかかわらず、これを二カ月も三カ月もその料金問題において遊ばしておく、こういうことについてはどうしてもわれわれ国会としては納得がいきません。だから、もしあなたのほうで折衝中であるから、どうもこの内容について説明がしにくいということなら、これは私は、
委員長に要求して秘密会でも開いてもらって、そこで説明を願うということにしなければ納得ができません。だから、ある程度の数字というものを明らかにしてもらいたい、こう思うわけであります。
-
○
大橋説明員 先ほどから申し上げましたとおり、折衝中の案件でありますから、内容に触れてこの際申し上げることは御容赦を願いたいと思います。
-
○
森本委員 折衝中であるから内容については一声えないというならば、十二月にできるというなら、八月か九月から折衝して、開通と同時にこのマイクロウェーブが実際に使えて日本のテレビが沖繩ですぐ見えるようになぜしないのか、それを開通してからそういうことを交渉しておって、まだいま折衝中でありますからその内容については一声えぬなんということを国会で言って、それであなた通ると思うのですか。これは国民の血税でもって沖繩に移譲した問題であります。だから本来ならば、十二月に開通するということになるならば、もう開通するところのチャンネルというものはわかっておるわけでありますから、十二月に開通するということになるとするならば、大体九月ごろから折衝しておって、開通と同時にそのマイクロウェーブが使えるという方向にならなければならぬ。それを開通してから二カ月もほったらかしておいて、いまだ折衝中でありますからその内容については言えぬ、そんなことで国会が通ると思っておったら大間違いです。全く国民を愚弄するにもはなはだしい。
-
○
大橋説明員 決して今日までほったらかしておいたわけではございません。三回にわたって向こうからも来ていただいておりますし、こちらからも行って折衝を重ねたのでございますが、どうもはなはだ残念でありますが、まだ妥結に至らないのでございまして、さらに今度私のほうから
理事が向こうのほうへ参りまして、できるだけ早くこれを妥結したい、かように折衝中でございます。
-
○
森本委員 できるだけ早くやりたいといっても、それじゃ郵政大臣と総務長官に聞きます。まず総務長官に聞きますが、とにかくこれは
政府の不手ぎわであるということははっきり言えるですね。十二月に開通をしていまだにこれが実際に使えない。十二月に開通をするということであるとすれば、これは九月から折衝を始めて、開通と同時にこれが使える。こういうようにしなければならぬわけでしょう、どうですか総務長官。
-
○
野田政府委員 ただいま電電公社の総裁がお答えしましたとおり、折衝はできる前から、秋ごろから折衝しておったように聞いております。事実は、しかし総裁のほうにお聞き願いたいと思いますが、私も
森本さんと同じように、非常に遺憾に思っております。そこで、ただこの問題は、
政府が特別関与してやることではございませんで、つまり料金分収割合のことでございまして、これはいわゆる日本の電電公社と琉球の電電公社と営業的に話し合う。この料金につきまして、おそらく技術的の問題もございましょうし、また経営の問題もございましょう。いわゆるコマーシャル・ベースでやるというのが
原則になっておりますので、私どもは側面から、できるだけひとつ一日も早くこれは使用を開始したいというふうに非常に希望をいたしておりまして、その点はしばしばわれわれの意向を述べておりますが、今日までその実現を見ないのは、私どもといたしましても非常に遺憾に思っております。
-
○
森本委員 政府としては非常にこれは遺憾であるということを総務長官が表明せられましたが、われわれ国民としても、これはまことに遺憾千万な話であります。電電公社の総裁の
答弁では、どこに難点があるのか一つも、さっぱりわけがわからぬ
答弁でありますが、それが上手な
答弁かどうか知りませんけれども、いずれにいたしましてもこういうふうな不都合なことが行なわれておるということは、われわれは絶対に納得できません。
そこで聞きたいのは、電電公社と琉球電電との折衝ということでありますけれども、最終的にはその電電公社の料金を許可しあるいは認可するという形になりますのは郵政省ではございませんか。それから同時に琉球電電のほうの料金を認可し許可するというととは、キャラウェイ高等弁務官が最終的には承認をしなければならぬ、こういうふうな手続になるのじゃないですか。
-
○古池国務大臣 ただいま仰せのとおりになると存じます。
-
○
森本委員 そういたしますと、この間キャラウェイ高等弁務官が来日をいたしておりまするが、この問題について総務長官並びに外務大臣のほうで、早期にひとつ解決をつけるようにという話し合いがありましたかどうか、その点をお聞きしておきたいと思うのです。
-
○
野田政府委員 キャラウェイ高等弁務官が来日しました際に会いまして、私その点を、強く希望をキャラウェイに伝えておきました。
-
-
○
野田政府委員 キャラウェイ高等弁務官も、一日も早くこの使用を開始したい、しかし現に両者、いわゆる日本の電電公社と琉球電電公社において折衝中であって、これはいわゆるコマーシャル・ベースでやっていることであるから、その両者の話し合いがすみやかに成立するように希望するということを言いました。さらに私はつけ加えて、ちょうど電電公社の幹部が今度行かれる直前でございましたから、日本の電電公社の幹部が現地に行かれて折衝されることになっておるから、いろいろな点において何分の配慮を希望する、了承した、こういう話をいたしております。
-
○
森本委員 そういたしますと、日本の電電公社のほうが若干でも譲れば直ちにできる、こういうことですか。
-
○
野田政府委員 その点につきましては、私はやはり日本電電公社のお考えでなくちゃ――私としてはわかりません。
-
○
森本委員 いや、キャラウェイ高等弁務官の話では、
日本側が譲って、琉球電電側の言うとおりにすればすぐできる、こういうことですか。
-
○
野田政府委員 高等弁務官の話は、そういうことではございません。両者の話し合いをいたしておる、ことに、これはいわゆる営業上の話し合いであって、あくまでもコマーシャル・ベースで話し合うべきものだと思うから、両者の、いわゆる日本の電電公社、沖繩電電公社の話し合いが、両者の話し合いが一口も早く成立するように希望している、こういうことでございました。
-
○
森本委員 そういたしますと、重ねてくどいようでありますが、琉球電電と日本電電公社との間の営業用の話がつけば直ちにできますか。
-
○
野田政府委員 おそらく両者の話し合いがついて、これは私の観測でございまして……。
-
-
○
野田政府委員 いや、それは、高等弁務官の話は成立を希望する、できるだけ早く妥結を見たい、こう言っておりますから、私はおそらく妥結すれば、高等弁務官も相当考慮するであろう。これは、私の観測以外に、本人の意思でございますから、そこまで突っ込んでの腹はわかりませんが、私は、キャラウェイ高等弁務官も、早くひとつこれが使用を開始したいと非常に希望しておったことは間違いありません。
-
○
森本委員 だから私が聞いておるのは、日本
政府が、日本国民の税金において行なったこれはマイクロ・ウェーブでありますが、いま話を聞いておりますると、琉球電電とそれから日本電電公社との営業用のコマーシャル・ベースの問題で話が行き詰まっておる、こういうことでありまするから、その行き詰まっておる話が完全に成立をした場合には、直ちにこのマイクロ・ウェーブが使える、こういうことになるのかどうか。これは日本
政府として責任を持ってお答え願いたい、こう言っておるわけであります。
-
○
野田政府委員 日本の電電公社と琉球の電電公社の話し合いが成立しますれば、ほかに何も両者間に、また日本
政府と沖繩の
政府の関係とか、その他に何もほかにありません。使用料問題だけでございますから、おそらく成立すれば私は開始できる、こう見ております。
-
○
森本委員 そういたしますと、成立をいたしました場合に、実際問題としてこのマイクロ・ウェーブのテレビ・ルートは何ルートできますか。郵政省か、電電公社かどっちかだ、郵政大臣。
-
○古池国務大臣 ただいま承知しておりますところでは、テレビは一ルートできるようでございます。
-
○
森本委員 それはこちらからの下りの一ルートですか。
-
○古池国務大臣 そのとおりでございます。
-
○
森本委員 そこで琉球には民間放送が二局ありますが、日本にはキー・ステーションの民放が四局ありまして、NHKがさらに教育テレビとそれから総合テレビ、こうありますが、この一ルートの下りのルートをどういうふうにお使いになりますか、これは
政府委員でけっこうです。
-
○宮川
政府委員 一ルートの使い方につきましては、民間放送、NHK、そういうものが相談して使うこととなるかと思います。
-
○
森本委員 相談して使うことはわかっておるけれども、どういうふうな内訳になるかということを聞いておるわけであります。向こうが二つ民放局がありまするから、それに対するところの配分なんかはどうなるのか、それから日本の民放の配分がどうなるのか。それは十二月にすでに開通をするということになっておりまするから、もうそういう準備が完全にできておらなければならぬはずであります。だからそういうルートの使い方については、どういうふうになっておるか、こういうことであります。
-
○宮川
政府委員 NHKと民間放送との使い方の詳細については、私、承知しておりません。
-
○
森本委員 大臣、あなたにお聞きいたしますが、先ほど来言っておりますように、これは十二月の末に開通することになっておるわけであります、それから一昨年、
内閣委員会においてこの法律を審議するときに、沖繩には要するに民間放送局が二つある、日本には親局が四つある、さらにNHKと教育テレビと、これだけある、だからこれはもめることはわかっておるから、早くひとつそういうところの取りきめを行ないなさい、こういうことを言ったところが、もう早急にそれは取りきめを行ないます、そういう話はもう直ちに行ないます、こういう回答を
内閣委員会で、あなたの前の大臣でしたが、しております。大体、国会の
答弁というものを、その場限りのおざなりの
答弁でその場だけを濁したらいいという考え方でやってもらっちゃ困る。こういう問題なんかは、今言ったようにもうちゃんとできておらなくちゃならぬ、どこが何時間どういうように使って、どういうように配分をしていくかということは。いまの
電波監理局長の
答弁ではいまだにできておらぬ。この法律を審議してから、もう二年になります。しかもこの法律を審議するときに、私がくどいようにこれを言ってある。そうしたならばそれはもう早急に、この法律ができ上がると同時に直ちに検討し、でき得るように対処いたします、こういう回答を
電波監理局長と郵政大臣がいたしておるわけであります。ところが、いまだにその内容については承知いたしておりません、それでは一体郵政省は何をやっておるか、あなた、こういう監督をしておるか、郵政大臣として、こういうことを私は書いたくなるわけであります。ひとつこういう問題についてはもう少し、前の国会の速記録というものもよく読んでもらって、そうしてひとつ行政の資料にしてもらいたい。その場限り、その場限りでのがれていったらそれでいいというような考え方でやってもらっちゃ困る。その点、ひとつ大臣のはっきりした回答を願っておきたいと思うのです。
-
○古池国務大臣 お話のとおり、国会の
答弁をその場限りというような考えは、それはよくないことで、私はさような考えは持っておりません。ただ、御承知のように、ルートは一ルートしかない、しかも両方に複数の放送事業者があるわけでありまするから、その間はどうしても話し合いでいくしか方法はないと思います。
政府のほうで時間等について割り当てをつくって、これを命令するというようなわけにはまいりませんので、この関係業者の間の協議がすみやかにできまして、そうして、ただいまの料金問題等が解決されてこのマイクロが利用できるようになりましたら、さっそく沖繩のほうに電波、放送が送れるようなふうに早くしたいという観点から、私はすみやかに努力をいたしたいと存じております。
-
○
森本委員 現大臣として、私はその
答弁で一応やむを得ないと思いますが、ただ私が言っておりますことは、この法律を審議したときは二年前であります。二年前のときに、こういうことになるから、そのときから準備をしておけということを言っておるわけであります。そのときに、十分準備をして遺憾ないように善処いたします、こういう
答弁もしておるわけであります。あれから二年経過をしておるけれども、いま
電波監理局長の
答弁では、全然内容についてはまだできておらぬ、こういうことでありまするから、そういうふうな行政当局の怠慢では困る、こういうことを言っておるわけであります。あなたを責めても、前の大臣にも関係あることでありますからしかたがありませんけれども、とにかくあなたが大臣になってからでも、早急にこういう問題はやるべきであります。だから、そういう点について、私はおそらく大臣にもあまり詳しい
報告が下のほうの部下からないと思いますが、とにかくこういう問題については、おざなりの
答弁でその場その場を濁していくということでなしに、
答弁をしたことについては誠意を持って実行するということを、ひとつ約束しておいてもらいたい。特に今回の琉球のマイクロの問題については、これはひとつ早急に実施ができるように、これは総務長官とも、あなたとも連絡をしてひとつ善処願いたい、こう思うわけでありますが、重ねてこのマイクロの早期開始についての御
答弁を願っておきたいと思います。
-
○古池国務大臣 あらためて申すまでもありませんが、私は、国会
答弁については全く誠心誠意申し上げております。この間の逓信
委員会におきまして
森本委員から、この問題を至急総務長官と連絡をとるようにという御意見がございました。私は前々から十分な連絡はとっておりましたけれども、せっかくさような御意見でありましたので、その場で明言いたしましたとおり、
委員会が終わるなり総務長官に面会いたしまして、キャラウェー会見のことについても重ねて申し入れをする等、誠意を持ってやってきております。ただいまの御発言の要旨につきましても、さっそく誠意を持ってこの問題の処理に当たりたいと考えておりまするから、御了承いただきたいと思います。
-
○
森本委員 それで、次に自治大臣にお聞きしたいと思いますが、
昭和三十八年十二月の十三日に自由民主党幹事長前尾繁三郎の名前で、各都道府県知事に対して、「特定局舎の整備事業に対する地方債について」という文書を流しております。この文書では、要するに簡保転貸債の問題については、貴県におかれてはまだその県
会議においてその関係議案の審議が行なわれていない、こういうことについては遺憾千万であるから、ひとつ早くやるようにしてもらいたいというふうな文書を流しておるわけであります。私は自治大臣にお聞きしたいと思いますが、本来こういう文書を流すとするならば、これは自由民主党の幹事長がこういうふうな文書を流すというようなことでなしに、自治大臣がやはり自治大臣の権限においてやるべきものではないか。確かに政党でありまするから、社会党であれ自由民主党であれ、それぞれの政党の幹事長なり書記長が、それぞれ文書を出すということは一応かってはかってであります。しかし少なくとも行政機構に関与するような重要な問題について文書を流すということについては、少なくともこういう文書を政党の幹事長の名前で出すということよりか、そういう必要があるとするならば自治大臣が流すべきではないか。さらに自由民主党がそういう必要があるとするならば、現在は自由民主党の
内閣でありまするから、自由民主党の幹事長が、自由民主党から出ております自治大臣に相談をして、自治大臣が自治大臣として各都道府県知事にそういう文書を流すべきではないか、こういうように私は考えるわけでありますが、その点について自治大臣、どうですか。
-
○早川国務大臣 幹事長のあれも、私全然関知いたしておりませんし、政党は政党としてやられたことでありまして、
政府としては関知いたしておりません。
-
○
森本委員 それは確かに早川さんが言うように、関知いたしておりませんということにはなると思いますが、私が聞いておるのは、現在は政党
内閣であります、政党
内閣でありまするからあなたも自由民主党から出ておりまする閣僚であります、しかもこれは自治大臣としてのこれに対するところの資任と義務を持つ大臣であります。だから自由民主党のほうでそういうふうな要望があるとするならば、自由民主党から自治大臣にそういう相談をして、自治大臣がひとつ正規の文書を出すというのが普通のやり方ではないか。政党として何らかの
圧力をかけるような、しかも行政機構に関与し、行政機関に関与するというふうなやり方はあまりいいやり方ではないのではないか、こういうことを、私は自治大臣の意見を聞いておるわけであります。ほんとうはこれは自治大臣としてあなたの領分に関する問題を、自由民主党幹事長の名前で文書を出しておるわけであります。本来こういうことは、好ましくないのではないか。この内容のよしあしは別です、あとから論議しますから。どうですか。
-
○早川国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、政党活動の自由でやられたことでありますし、私は国民の
政府の国務大臣でありますから、政党のあれには関知いたしません。
-
○
森本委員 これは押し問答になりますからやめますけれども、国民の
政府であると言っておるけれども、一応あなたは自由民主党から出ておるところの閣僚であることは間違いないわけであって、そういう自由民主党の幹事長というような人が、都道府県の知事に対して用事があるとするならば、しかもこれが行政機構に関係する問題であります、そういう問題であるとするならば、少なくともこれは私は自治大臣が出すべき書類であろうというふうに考えるわけでありますけれども、まあそれはあなたも頭のいい自治大臣でありまするから、これ以上やっておりますと押し問答になりますからやめますけれども、とにかくこういうふうに今度の簡保の転貸債の問題は、どららかといえば自治大臣よりも自由民主党のほうが積極的にやっておる、自治大臣としてはしかたなしにやっておるというふうに、この文章をもって見るととられるわけであります。
そこで、大蔵大臣に聞きたいと思いますが、今度のこの簡保の転貸債の問題は、これははたしていいことであるかどうか、ひとつ大蔵大臣として、あなたは郵政大臣の経験もありまするから、ちょっと聞いておきたいと思いますが、大体あなたこれを知っておりますか、めくら判でなしにちゃんとこの内容を見て判をついたのですか。
-
○
田中国務大臣 はなはだ遺憾ながら、この問題は私はあまり内容をよく知らなかったのですが、自治省、郵政省、それから大蔵省の事務当局が円満に妥結をしたということで、大臣の決裁を受けるほどの大きな問題ではないように考えておりました。
-
○
森本委員 大臣の決裁を受けるほどの大きな問題でないということになりますと、それでは張本人は郵政省の事務官僚がやったということになるわけでありますが、これは要するに簡保積み立て金というものを、自治省を通して、各都道府県知事を通して、都道府県知事から特定郵便
局長の、いわゆる特定郵便局舎の持ち主にこれを貸す。低利で貸して、そうして郵便局舎を建てさす。こういうふうなやり方をやって、そして特定郵便
局長はこれを借りて何年かすればこれは完全に――そうして建てさせておいて、そうして今度はその建てた建物を郵政省が借料を出して借り上げる。借ったほうは、その借料で二十五年もすれば全部償還ができてただになる。これはまことに借るほうにとって都合のいいやり方であります。そこで、こういうふうなやり方については、世間でもこれはごうごうたる非難が出ております。たとえば読売新聞の社説あるいは論説等を見ましても、これは少し行き過ぎであるというふうなことが相当いわれておるわけでありますが、そうなりますと、この問題について重ねて聞いておきますが、郵政大臣としては、やはりこれは大臣が判をつかずに、事務次官だけでやったわけですか。
-
○古池国務大臣 実施面につきましては、次官の通達によりまして実施をやらせましたが、最終的に私が判をついて認めたわけでございます。
-
-
○古池国務大臣 日にちはいまは記憶しておりませんが、八月の上旬でなかったかと思っております。
-
○
森本委員 あなたはいつ大臣に就任せられましたか。
-
○古池国務大臣 私は七月十八日と記憶しております。
-
○
森本委員 七月の十八日に郵政大臣に就任をして八月に判をついたということになりますから、あなたみたいな慎重な人が、わずか半月くらいの間に判をついたということになりますが、そういたしますと、内容もあまりそう詳しくやらずに、めくら判をついたと言えば言い過ぎかわからぬが、とにかくそれに近いようなかっこうでなかろうかという気がするわけですが、そうじゃないんですか。
-
○古池国務大臣 手続等のこまかい点につきましては、私大体事務当局にまかせまして、大筋につきましては、私悪いことじゃないと考えて判を押したわけであります。
-
○
森本委員 この特定郵便局舎の問題については、長年この国会の逓信
委員会でも論議をせられまして、そして甲論乙駁でずっと論議をしてきております。しかし、いまだにこの今後の郵便局というものを、どういう方向に持っていったらいいかということは、与野党の間については結論を得ておりません。しかしこれは、将来やはり超党派的に結論を得なければならぬ問題であろうと思う。郵政事業だけが一般の技術革新その他に劣ったようなやり方をやっておったのでは、時代におくれる。この新しい時代に即応したところの郵政事業というものは、やはりこれは改革をしていかなければならぬということは、だれしも同様であります。ただし、その改革の方法については、それぞれ意見が分かれております。いまだに逓信
委員会あたりでも、与党野党がそれぞれ論議をいたしております。しかし、その論議の途中において、こういうふうないわゆるあと戻りをするような特定郵便局舎転貸債という問題を、一方的にあなた方がやるということについては、どうしてもわれわれとしては納得がいかぬわけであります。こういう点については、少なくとも与党野党を問わずある程度の納得の上においてこういう公共事業というものはやるべきである。それを一方的な党利党略において、しかも一事務次官が来年の参議院議員の全国候補に出るためにやるというふうなうわさまで飛んでおるようなやり方は、私は非常に遺憾千万であると考えておるわけでありますけれども、その問題はきょうはさておきますが、私は大臣にお聞きしたいと思いますることは、ちょうど私は当時逓信
委員会におりましたが、
昭和三十年七月十九日の第二十二国会で、当時まだ左派社会党と右派社会党、自由党、民主党の四つの政党でありますけれども、そのときに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案件というものが出ました。
〔青木
委員長代理退席、
委員長着席〕
そのときに四党が協議をいたしまして、そうして四党が満場一致で決議をいたしましたのが、「積立金の運用については、地方還元の趣旨を充分に徹底すること。郵便局舎の建設を図るため、来年度以降、毎年度積立金運用総額の百分の三を下らない金額を国に対して貸付けること。」これが満場一致で決議になっております。そういたしまして、当時その自由党、民主党、左右両派社会党、四つの政党が話し合いをいたしまして、この百分の三というものについての解釈、これを決議に盛るということになりまして、百分の三のうちの半分を特定郵便局舎の建築に回す、しかしそれは決議ではまずいから、当時の
委員長が代表して質問をする、その
委員長が代表して質問をするに際して松田国務大臣が郵政省を代表して
答弁をする、こういうことで、当時、そのときの
委員長が「郵便局舎の改善、建設のために必要なる資金として、少くとも当年度の積立金の百分の三程度を充当することについて、大臣はいかなる見解を持たれておりますか、お伺いいたしたいと思います。」これに対して「仰せのごとく三十年の積立金の百分の三程度の資金は、その方面に充当いたしたいと考えておる次第でございます。」こういう
答弁をしておるわけであります。さらに重ねて、四党の申し合わせによりまして、
委員長が、その百分の三の「半額程度は特定郵便局舎の建築に充当する意思が郵政大臣におありかどうかを伺いたいと存じます。」これに対しまして当時の大臣が「積立金の百分の三の資金中、少くともその半額程度は特定郵便局舎の建築に充当していきたいつもりでございます。」この
質疑応答は、四党でつくりまして、そうして
委員長が代表して質問をし、大臣が代表して
答弁をするということで当時終わっておるわけであります。この附帯決議とこの
委員長と大臣との
質疑応答ということを大臣は御承知ですか。
-
○古池国務大臣 承知しております。
-
○
森本委員 承知しておって、どういうわけでこういうことをやったのですか。
-
○古池国務大臣 三十九年度の簡易保険の積み立て金の運用総額は、御承知のように、千五百億になっております。したがって、その三%と申しますと四十五億でございます。それで、明年の局舎建設のための保険の運用金からの借り入れば四十七億でございまするから、総額においては大体その御趣旨に沿っておるわけと存じます。当時郵政大臣が御
答弁申し上げました金額は、特定局舎は年々八億程度新築、改築してまいりたい、こういう
答弁がなされておるようでありまするが、明年の予定額は八億円でございまして、ちょうどその
答弁に合っておると存じます。
-
○
森本委員 そのときの
答弁は、あなたのおっしゃったような特定局関係にも年平均約八億円ということでありますが、それではこの三十年から三十九年に至るまで、そういうふうに特定局舎は建築してきておりますか。
-
○古池国務大臣 お答え申し上げます。
三十九年度は八億でございますが、三十八年度は七億一千万、三十七年は六億、その前年は七億というわけで、大体ただいま申し上げましたようなことで、八億と申しましたのは、明年から八億ということでございます。
-
○
森本委員 笑ってごまかしてもいかぬのです。大体この
昭和三十年の決議のとおり百分の三のうちの半分をずっと特定郵便局舎の建築に回してきておったならば、こういうふうな、世間の非難を受けるような転貸債というインチキをやらなくてもできるはずであります。それを全然今日までやってこずして、急激にこういうふうなことをやるというふうなことは、まことにもって遺憾千万であります。これは暫定措置ですか、大臣。
-
○古池国務大臣 お説のとおり、暫定措置としていまやっております。
-
○
森本委員 暫定措置とするならば、一年か二年ぐらいでやめるのがほんとうじゃないですか。これをほんとうにやろうとするならば、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正をして、はっきりと特定郵便局舎の持ち主に貸すなら貸すというふうに法律を改正してやるのがほんとうじゃないですか。そういうふうな法律が国会に出たら国会を通らぬから、抜け道として、行政措置としてこういうことをやった。暫定措置としてやるのなら、一年か二年でやるのがほんとうじゃないですか。暫定措置に五カ年計画の暫定措置というような計画は、あまり聞いたことないですよ。
-
○古池国務大臣 そういう御意見もございますけれども、郵政事業は明治四年から始まっておりますし、今後も悠久に続くべきものでありますから、その中で五カ年間というのは、まず暫定緊急臨時の措置と考えて、さほど不当ではないと考えます。
-
○
森本委員 この簡易保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律というものは、御承知のとおりこの簡保積み立て金というものを貸し付けをするというところはちゃんときまっております。第三条において、一号から十三号まできまっておるわけであります。その中に地方公共団体ということが入っておるわけであります。地方債というのが入っておるわけであります。この項で今回は都道府県知事に貸しておるわけであります。その都道府県知事から、今度は特定郵便
局長に転貸をしておるわけであります。全く都道府県知事というものは通り抜けて、
政府の言うとおりやらなければならぬ、こういう形になっておるわけであります。本来ならば、それをどうしてもあなた方が貸し付けをしなければならぬということになるならば、この第三条を改正して、第十三号の次に第十四号を、一項目加えなけれ、ばならぬ。それが、法律改正案というものを国会に上程をしたならば、なかなかもめてこれが通らぬから、とりあえず暫定措置としてやったということであるとするならば、一年間くらいの暫定措置としては、反対ですけれども場合によってはやむを得ないと思います。しかし、三十九年度以降四カ年間で一年について五億、これを融資をするということにするならば、これはこの法律をはっきり改正をしてやらなければならぬと思うのでありますが、賢明なる大蔵大臣はどうお考えですか。
-
○
田中国務大臣 法律に明定をすればそれにこしたことはないのですが、現行法でも違法でもないし、妥当性あり、こういうのであれば、そこまでやることもないかもわかりません。
-
○
森本委員 あなたが郵政大臣のときに、私はこの問題を聞いた。あなたは忘れておるかもしれぬけれども、やはりそういうことをやるときには、改正してやったほうがよろしいという意味の御
答弁をあなたはしたことがある。もう昔のことだからあなたは忘れておるのだが、実際問題として法律論争とすれば、これはやるとするならばやはり第三条を改正すべきなんだ。暫定措置としてやるとするならば、これは一年くらいは間に合わなかったから緊急にやった、しかし三十九年度以降四カ年も五カ年もやるとするならば、通常国会にこの法律案件の改正を出すべきなんだ、それはそうでしょうが、大臣。
-
○古池国務大臣 法律を改正してやったらどうかということも、確かに御意見と思います。しかしながら法律を改正せぬでも、現行法規で十分できることがありますから、あえて法律改正をしなかった次節であります。
-
○
森本委員 そうすると、この四年間やったらやめるのですか。
-
○古池国務大臣 緊急暫定措置として行なっておりますから、その四年先、五年先の情勢次第であろうと思いまするが、私としましては、先ほどの御意見もございましたように、明年は八億でございますけれども、できるだけ今後国の費用によって建設を進めていくという方向に努力してまいりたい、かように考えております。
-
○
森本委員 国の建設へ努力するということは大いにやってもらいたいと思いますが、こういうふうに個人に金を貸し付けて、それをまた国が借り上げるなんというやり方をやっておるところはどこにもないのですよ。この借りた人はだだもうけなんですよ。はっきり言うて、これはほんとのところ税金どろぼうと言われてもしかたがないのですよ。その税金どろぼうを助けておるのは郵政官僚なんだ。しかもうわさによると、その郵政官僚の張本人が、来年の全国参議院議員に出るというようなうわさが飛んでおる。しかも全国の特定
局長会がそれを応援する、そのしり馬に乗って郵政大臣がしかたなしに判をついた、大蔵大臣と自治大臣は、これも知らぬで判をついたかどうか知らぬ、事務次官がついたかどうか知らぬが、とにかくそういうことになっておる。一事務官僚の意思によって
政府機関がそういう関係に動かされるということは、まことに私はこれは遺憾千万だと思う。だから実際にそれほどやりたければ、堂々と法律を改正してやるべきなんだ。暫定措置、暫定措置といって、法律にないことを暫定措置でやるとするならば、それは一年か二年ですよ。実際問題として五カ年計画の暫定措置なんというものはあり得ない。だからほんとうのところ三十八年度はもう済んだけれども、三十九年度以降もこれをほんとうにやろうとするならば、これはやはり法律を改正してやるというのが妥当な線ですよ。自治大臣どうですか。もう郵政大臣はがんこであきまへんわ。
-
○早川国務大臣 自治大臣といたしましては、地方公共団体の転貸債は合法でもありますし、郵政省の御要望に沿いまして三億ですか、許可したわけであります。
-
○
森本委員 三億の問題を私はいま言っておるわけではありません。三十八年が三億であります。ところがいまの計画が三十九年度以降四カ年計画、一年に五億円で二十億円になっておるわけであります。だからその問題について、三十九年度の問題については現在
予算が出されておりますから、あるいはそれを修正しろと言えば
予算修正という形になるかもしれません。これは財投の原資でありますから、そうはならぬかもしれませんけれども、現実の問題として少なくとも三十九年度、四十年度以降については、もしおやりになるとするならば、正規に法律を改正してやるというのがたてまえではないか。三十八年度に三億円というものを緊急的にやった、しかし三十九年度以降についてはもしやるとするならば法律を改正してやるべきが至当ではないか、こういう抜け穴的なことをやるということでは、
政府は何でもやれるということになる。そういうやり方は非常にまずい、こういうことを言っておるわけであります。だから私は自治大臣としても、何も郵政大臣の言うとおりやらなければならぬということにはならぬと思う。大蔵大臣においてもしかり。やはりこれは法律に基づいてわれわれはやるわけでありますから、その法律を改正したほうが一番いいわけであります。将来これを十年も五年も続けるということにするならば、これはどうしても法律を改正してやらなければならぬわけであります。だから三十八年度は別として、三十九年度以降については、法律改正案というものを出したらどうか。それでその法律案が通ればしかたがない。通らなかったらやめる。こういうことにすれば一番いいわけであります。どうですか、自治大臣。
-
○早川国務大臣 地方自治法によりますと、住民の福祉になるものには起債を認められるわけでありますが、
森本委員の御意見と私が根本的に違うのは、これは福祉になると府県知事が考えまして転貸債を要望しておるわけであります。これは福祉にならないということになれば、要望もしてまいらないわけでありまして、その点で見解が異なっておるのではないかとお聞きしておりました。現在の法律でもそういう道は開けておるわけでありますから、特に別の法律をつくってどうこうということは、私の主管じゃございませんが、必要ないのではないかと思います。
-
○
森本委員 いま私が言っておるのは、この簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の中の第三条第一項第二号で地方債というのがあるわけであります。この地方債というのは地方公共団体が、あなたがいま言ったように地方住民の福祉に使うために貸すわけであります。ところがその場合は、地方自治の精神にのっとってやるとするならば、都道府県知事が都道府県知事としての一つの権威をもって融資をするわけであります。ところが、今回の転貸債の場合は、別途に郵政事務次官の通達がいっておるわけであります。その郵政省の事務次官の通達のとおりに都道府県知事はやらなければならぬわけであります。そうであるとするならば、そういうしちめんどうくさいことをされずに、郵政事務次官の言うとおりやらなければならぬとするならば、この二号の地方債というものと別に、これは十三号左でありますから、その十三号のあとの十四号目に特定郵便局舎の持ち主に対しても貸し付けすることができ縛ると一条項入れればいいわけなんです。それは都道府県に貸して、都道府県知事が地方住民の福祉のために自分の意思によってある程度行なえるということになるとするならばいいんですよ。ところが実際の実施は全部郵政省の事務次官通達のとおりやらなければならぬ。こういうふうな変則的なやり方はないのではないか、こういうことを言っておるわけであります。それを自治大臣に聞いておるわけであります。
-
○早川国務大臣 少し誤解があるようですが、府県知事は、郵政省がそういってきましても、自分がやるかやらぬかの選択権は、自治体でありますから持っているわけです。ですから、いま御指摘のように回りくどいとかいうことでなくて、選択権は知事にあるのですから……。
-
○
森本委員 そういたしますと、郵政大臣にお聞きしますが、この場合郵政省としては木造の場合には十五年、それからいわゆる鉄筋ブロック建ての場合には二十年の賃貸契約を郵政省としなければならぬ、こういうことになっておるわけでありますが、それはどうなるのですか。
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○古池国務大臣 簡易保険の積み立て金を融資して、これによって建設するものにつきましては、ただいまお話しのように木造は十五年間、コンクリートブロック等は二十年間は必ず郵便局舎として国に提供する、国に貸す、こういう義務を負う契約を結ばねぱならぬ、こうなっております。
-
○
森本委員 結ばれなければならぬということを――先ほど自治大臣が言ったように都道府県知事がそういうことは必要ないということで、都道府県知事がこの転貸を受けて郵便局舎の持ち主に貸したらどうなるのですか。貸し主は都道府県知事ですからね。
-
○古池国務大臣 貸す貸さぬは、お話しのように都道府県知事の判断によると思いますが、貸すという判断をざれた場合には、ただいまの契約書によりまして、国と局舎の所有者とが十五年あるいは二十年間必ず国に提供しますという契約を見た上で知事が貸す、こういうことになっております。
-
○
森本委員 だから先ほど自治大臣が言いましたように、自治大臣の言っておるのは、都道府県は都道府県知事の判断においてやるわけでありますから、都道府県知事が貸す場合にはそういう十五年、二十年というような条件はつけていないわけであります。条件は、郵政省がその局舎の持ち主と賃貸借契約をする場合に、十五年と二十年ということになるわけであります。だから借りるのは、都道府県知事からその持ち主は借りるわけでありますから、都道府県知事からそれを借りて、それから今度は郵政省と契約をする場合に、おれは十五年契約はいやだ、こう言ったらどうなるかということを聞いている。
-
○古池国務大臣 都道府県知事は、その地方公共の福祉のために局舎が美しくなり、あるいは広くなり、改善されるということが望ましいという考えからこの資金を貸すわけでありますから、これは局舎として少なくとも十五年なり二十年なり利用されるということがなければ貸す理由はなくなるわけであります。したがって、その確約を得た上で、府県知事は貸すわけでありますから、その心配はないと思います。
-
○
森本委員 その心配はないと思いますと言うが、都道府県で貸しておるところの貸し付けの条件その他には、そういうことは入っておりませんよ。郵政省の事務次官通達に入っているだけのことであって、都道府県知事の融資細則、融資の条件には、そういうことは入っておりません。貸し主は郵政省じゃないのですからね。郵政省は都道府県知事に貸すわけでありまして、借り主は都道府県知事から借りるわけでありますから、十五年、二十年という契約は都道府県知事との間にするとすれば別として、郵政省と十五年、二十年ということをやらなければならぬという法的規制はなくなるわけであります。
-
○古池国務大臣 都道府県知事がこの融資申請者との間に契約をされまず場合には、その局舎のただいま申しました提供義務の契約を確認の上で貸す、こういうふうな事務手続を府県知事と、またわれわれのほうで事務的にいたしておりますから、その御心配はないと思います。
-
○
森本委員 そういう事務手続というのは、自治大臣から都道府県知事に対して何か通達がありますか。あなたのほうは都道府県知事に対してそんなことを指示する権限はないですよ。自治大臣でなければない。どこに権限があるのですか。
-
○古池国務大臣 これは権限とかいうものではなく、事務的な連絡でございます。
-
○
森本委員 ものごとは法律に基づいてやらなければならぬ。事務的な連絡とかなんとかいうことじゃない。法律、規則、準則、そういうものに基づいて行政はやっていかなければならぬ。そんな印し合わせとかなんとかいうことで行政をやられたらたまらぬ。だから私が言っているのは、あなたがいま言っておる十五年、二十年というような規制は、法律的にどこに準拠するのか。貸すのは都道府県知事が貸し主で貸すわけですから、契約は借りた郵政省と契約をするわけでありますから、義務は全然要らぬわけです。都道府県知事から借りて、都道府県知事がそういう条件を示してやれば別ですよ。都道府県知事はそういう条件を示してないわけであります。
-
○古池国務大臣 申請者が府県から借り入れる前に提供義務の契約をいたします。そして、その提供義務の契約を知事は確認した上で申請者に貸す、その契約を結ぶということになります。
-
○
森本委員 そうすると、それは要するに郵政省と貸し主とが契約をしなければ、都道府県知事は貸さぬわけですか。
-
○古池国務大臣 その要件を確認した上で府県知事は貸すということになっております。
-
○
森本委員 だから、そういう約束をしなければ貸さぬわけですか。
-
○古池国務大臣 そのとおりであります。
-
○
森本委員 自治大臣にお聞きしますが、もしそういうことであるとするならば、地方自治法によるところの地方住民の福祉のために都道府県知事が独立をしてやるということはあり得ないということになるわけですね。郵政省の言うとおりでなければやれぬというわけです。
-
○早川国務大臣 自治省といたしましては、起債というもののワクの面は自治省が許可するわけであります。それをどう使うかという選択の自由は向こうにあるわけですから、その場合に、われわれとしては、自治省から、いま郵政大臣の言われましたような実施要領でこれは貸すようにという通達を出しておるわけであります。それに対して、県知事がそういうものは貸さないという選択の自由はもちろんあるわけであります。
-
○
森本委員 都道府県知事が選択の自由があるから、たとえば木造で五年、鉄筋で十年、こういうことになってもかまわぬわけでしょうが、郵政大臣、法律上は。それからまた、そういうものを五年も三年も貸さなきゃならぬということを言わなくてもかまわぬでしょうが。
-
○古池国務大臣 これは、地元住民の福利のためなんでありまするから、長期間にわたって局舎に提供されるというそのこと自体がその貸し付けの趣旨でありまするから、府県知事としてはそれを確認した上で貸すわけでございます。
-
○
森本委員 だから、知事が確認をした上で貸すということですが、確認しなかったらどうなるかと言っておるのだ、ぼくの言うのは。確認をしない場合には、確認をしなきゃならぬという法律が、規則がなければならぬでしょうが。ただ漫然と、そういう印し合わせとか連絡とかいうことで行政をやるものじゃない。行政というものは、一つの法律、準則、規律、そういうものにちゃんと基づいてやらなきゃならぬ。あなた方がやったら何するかわからぬ。だから、ちゃんと法律に基づいたやり方をしてもらいたい。法律上はそういう明句は一つもないでしょうが。だから、なければないでいいですよ、なければないと
答弁してもらったら。もう時間来たらやめますよ、
委員長に約束したとおり。
-
-
○古池国務大臣 これは、契約でありまするから、その契約の当事者が適当なりと認めれば貸すわけでございます。
-
○
森本委員 契約の当事者が適当でないと見ても、都道府県知事はあなたのほうとは関係ないわけですからね。都道府県知事は住民の福祉のために起債を仰いで金を借りてくるわけですから、その金を今度はその持ち主に貸すわけでありますから、その場合、都道府県知事が判断をして、あなたが言っておるように十五年とか二十年とかいうことは長い、五年と十年でいい、そういうように都道府県知事が判断してもいいわけだ。しかし、そういうことをあなたに何べん言ったところでわからぬから、それから、あなたはやめるつもりはないんだから、どっちにしたところで七月にあなたはやめるんだから、これ以上あなたに質問をしても何にもならないわけだ。ただ、私が言いたかったのは、こういうようなべらぼうな行政方法をやるような人物は、いずれ滅び去るであろうということをあなたにはっきり申し上げておいて、質問をやめます。
-
-
-
○阪上
委員 私は、きょうは地域開発の問題について質問をいたしたい、かように考えております。
御案内のように、最近地域開発は非常な問題点を発生いたしておるのであります。たとえば、最近のわが国の地域開発というものが非常に工業開発に偏向しておる、こういうことが如実にあらわれてきております。しかもその内容を見ますると、大拠点主義が重んじられて、そうして中拠点ないし小拠点、こういったものについての配慮が全然欠けておる、こういうような問題が一つ出てきております。それからまたそれと表裏一体のものでありますけれども、したがって住民福祉というものが非常に侵害されておる、こういう問題が出てきております。それから同時に、地域開発を進めていく場合に必要なところの財政の
負担ということが非常に不明確であって、しかも一方自治体の状態をながめてみますると、非常に昨年度あたりから再び財政的な危機があらわれてきておる、こういうことであります。それからいま一つは開発行政が非常に不統一である。道路行政にいたしましても、住宅行政にいたしましても、あるいは労働行政にいたしましても、こういった地域開発と有機的な関連性というものが欠けておる、こういうふうな問題であります。さらにまた、地域開発を進めていく場合に、投資計画というものが非常に不明確であり、不十分である、こういうようなことになってきております。そこで、こういったことから、
政府がほんとうに腹をきめて地域開発と取り組んでいくのかどうか、かりに地域開発と腰を入れて取り組んだといたしましても、工業立地が考えられているような方向に進んでいくかどうか、かりに工業立地が計画どおり進められたといたしましても、工業偏重でありますので、はたして住民の福祉を向上せしめることに役立つかどうか、こういうような問題が出てきておるわけであります。したがって、私は逐次そういった点につきまして質問を進めていきたいと思います。
最初にお伺いいたしたいのは、高度経済成長政策、これと地域開発との関係、これは一体どうなっておるのだろう。ことに高度経済成長政策がいろいろな理由から手直しされておる、そうして設備投資等について抑制をしておる、こういった現存の段階におきまして、地域開発計画そのものにも手直しが必要ではなかろうか、このように考えるわけでありますが、こういった関係につきまして企画庁、長官からひとつ説明を聞きたいと思います。
-
○宮澤国務大臣 成長政策と地域開発計画との関係は、二重の関係を持っておると考えます。すなわち、経済の成長が急速かつ高度に行なわれましたために、投資がいわゆる大都市を中心に行なわれやすかった、そうして、そこに過度に人口その他の経済力が密集した地帯ができるようになったわけでございます。そのことからいわゆる国土の総合的な開発利用という問題が広く世の注目を浴びるようになったわけであります。そこで、そういう結果問題が非常に人々の関心を呼ぶに至りまして、国土総合開発計画では国土の総合的な保全開発、あるいは利用ということを考え、そうして、その上で過度に人口その他が密集いたしました地域から地方に開発の拠点を求めて、そして人口、経済力の適正な分散をはかろう、それによってまた大都市と地方との
所得の格差の是正をはかっていこう、それによって福祉国家を全体として築いていこう、こういう関係であります。その結果といたしまして、中央から地方への企業の分散等を助けるために、財政でも金融でも、あるいは税制でもいろいろな措置を講じつつございます。
そこで、そういうふうな国土総合開発の結果、将来に向かってそれが成長政策とどういう関係にあるかと考えますと、私ども、たとえば端的に新事業都市の例をとって申しますと、たしか
昭和三十四、五年には国の工業出荷額の中で新
産業都市該当の十三地方がになっております割合はたぶん七%ぐらいであると思いますが、目標年次
昭和四十五年ごろにはそのパーセンテージが一割に近くなるというように、国の経済発展のいわばシェアを過度に密集しました都会地以外のところで背負ってもらう。そういう形で、これは新藤都市ばかりでなく、工業整備特別地域にいたしましても、あるいは低開発地域工業開発にいたしましてもさようでございますが、そういうふうにして経済を国全体に広げることによって、経済の成長も、また国民生活の格差の是正もはかってまいりたい。そのための拠点を求めるという方式が国土総合開発計画の基本であると思います。お尋ねの経済成長政策と国土の総合利用とはそのような二重の関係に立っておると思います。
〔
委員長退席、松澤
委員長代理着席〕
-
○阪上
委員 そこでお伺いいたしますが、いま現在工業立地の見通しということについて伺ってみたいと思うのであります。
聞くところによりますと、
昭和四十九年まで大体大企業、これはもうどこかの地区に張りついてしまっておる、こういうことだと私は思うのでありますけれども、そういたしますと、この間指定されたような地域にはたして工業がいま考えられているような状態で立地するかどうか、こういう問題だと思うのであります。こういった点で、新産都市の指定を受けたところばかりでなく、あらゆる地域開発と取り組んでいる場所において工業立地の可能性というものは非常に少なくなってきた。ことに低開発地域におきましてはほとんど見通しが立たぬ。やってきても何かつまらぬ工業ばかりが立地しておる。こういうふうなことを言われておるわけなのでありますが、この見通しは一体確実にそれが実現できるような方向にあるのかどうか、この点について伺いたい。
-
○宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりましたのは、指定と言われましたので、おそらく新
産業都市の地域を言われたと思いますが、具体的には建設基本計画が出てまいりまして、それを今度は
産業別に企業について進出の意図ありゃいなやということをもう一つ確かめませんと、きちんとしたお答えはできないわけでございます。しかし、考えてみますと、工業にもいろいろございますわけで、たとえばいわゆる装置
産業と申しますか、鉄鋼業でありますとか、あるいは石油化学でありますとか、こういったものは、臨海のそれも一定の条件のところへ出つつございます。これは、新産都市に指定を受けました地域でも、現に二つあるいは三つぐらいはあるわけであります。同じような装置
産業が必ず出ていかなければ工業ではないというようなふうには私ども考えません。ことに石油化学などになりますと、地方の労働の需要といったようなことが実はあまり多くないというような問題もございますから、そういうものばかりでなく、機械工業でございますとか、あるいは一般に内陸型の
産業でありますとか、そういうようなものはいろいろな観点から、たとえば労働の需給関係から地方にこれを置くことが経営上楽であるといったようなこともございます。いろいろな観点から、土地の取得が経質的に楽であるというようなことで、かなり地方に今後分散をしていくのではないか。それに一番大事な致命的な、要素は、やはりどれだけ交通路が確保されるか、陸上及び海上の輸送の問題であると思うのでございますが、これが解決されますと、むしろ地方に出ていけるものは自然に出ていくという傾向になるのではないだろうか。低開発地域の問題について御指摘がございましたが、お気づきのように、すでに大資本の集積地から国道沿いに下請の工場などは相当出ていっておるわけでございます。また食品加工業なども農村に入りつつございますから、これは、積極、消極両面からそういうことにむしろわが国の経済は動いていっておるのではないだろうか。現在までに張りついておるではないかと言われますのは、一部の鉄鋼業あるいは石油化学、いわゆる装置
産業をさして仰せのことと思いますけれども、それ以外にも幾らでもいわゆる工業といわれますものはあるのではないかというふうに思っております。
-
○阪上
委員 政府はほんとうに腹をきめてこの問題と取り組んでおるかどうかということが、いま問題になっておるのでありますけれども、一体工業立地に要するこの地域開発全体計画に要するところの総投資額はどのくらい見込んでおられるのですか。
-
○宮澤国務大臣 それは、ただいまの段階では数字をもってお答えいたせないわけであります。新
産業都市につきましては、全部の指定が終わりまして、建設基本計画を提出してもらいまして、
政府がこれを承認いたしますと、投資総額がきまります。したがって、その中における国費の
負担分がおのずから事業の種類によってきまってくるわけでございますけれども、まだ正直に申して計数的には海のものとも山のものとも、建設計画がいかなる形で出てくるかがわかりませんために、新産都市についてすら申し上げることができないわけでございます。
-
○阪上
委員 それはおかしいんじゃないですか。新産都市の場合にもわれわれはそれらの問題点を取り上げまして、やはりそういった建設
基本方針というものを明確にすべきであるということを主張をいたしておったのであります。その当時も御返答を承ることができなかったのであります。いずれそのうちにそういった計画を立てる、見通しをつける、こういうふうな話であったと思うのであります。いまだに新産都市ですらそういった見通しが全然つかない、こういうふうな御
答弁であります。それから同時に、新産都市以前に国土総合開発法に基づく全国計画、これはほとんど行なわれておりませんけれども、それにいたしましても、特定地域に対するところの計画は持っておられるはずなんであります。そういったものにつきましても投資の総額が全然わからぬ、見通しがつかぬ、そういうような状態でありますれば、これを実施していくところの自治体あたりは一体どういう建設計画を立てればいいのか、全然目標がきまらないということになるのではないでしょうか。いま開発関係の法律はどんどん出してまいるけれども、実際
政府はこれに本腰を入れてやってくれているかどうかわからぬ、こういうような心配が各所に起こってきているのじゃないかと私は思うのであります。どうしてその計画が立たないのでありましょうか。計画が立たないでもってどんどんやっていくというかっこうは出てこないのじゃないか、こういうふうに思うのでありますが……。
-
○宮澤国務大臣 あまり長くなるといけないと思いまして簡略に申し上げましたが、先月初めて五カ所新
産業都市の指定をいたしました。今月の、明日でございますか、五カ所をいたしまして、三月になりましてできれば残りをいたしたいと思っておる一わけでございます。そういたしますと、指定をいたしますとき、
政府から建設
基本方針というものを当該地方にお示しをいたします。その中には、速急に建設基本計画を提出してもらいたい、それについては地方の財政
負担等もよく勘案した計画にしてもらいたい、単に工業に片寄ることなく、全部の、環境衛生あるいは農村地帯、手足の整った計画を出してもらいたいということを申してございます。で、指定されたところから、い炭建設基本計画をその地方で練っておられます。地方としての利害調整に相当の時間がかかっておりますけれども、それがやがて建設基本計画として中央に出てまいります。そういたしますと、これは数字をもって出てくるわけでございます。関係要請名大臣が協議をいたしまして、その建設基本計画を、投資を予定されております企業の側の投資計画等も参酌しながら、つまり縦横に両方の可能性を見きわめました上で建設基本計画を最終的に決定いたします。そして、それを地方に渡すわけでございます。その段階ではっきり数字と事業の内容、年次割りとがほぼ出てまいります。そういたしますと、国の
負担が幾ら――国と申しましても、道路公団、住宅公団、国鉄、そういうもの、
政府機関もございますけれども、その
負担分と、それから地方、府県及び市町村の
負担分と、起債に上る分が幾らということがそのときに確定をいたしますわけで、ただいま世の中で言われておりますいろいろの数字は、県側が新産部市の申請をいたしますときにいわば一方的に希望的に考えました数字、これはいろいろございますけれども、最終的な投資の規模が幾らであるかということは、建設基本計画がおのおのの地方ごとに決定いたしましたときに初めてはっきりいたすわけで、それは、指定が行なわれました最初のものが先月でございます。最終のものは来月でございますから、その後にそういう計画が出てくることになっておりますわけでございます。
-
○阪上
委員 総投資額をきめることはなかなか困難であるということはわかりますけれども、おおよそのめどというものをやはりあらかじめ持っておられませんと、地方自治体開発地区が建設基本計画を立てる場合にも、めども何もつかないでただばく然と大きいほうがいいというような考え方でもって進んでいく。ところが上へ持ってきて、そしてこれがそういう計画ではわれわれのほうとしては十二分に財政措置なり金融措置ができないのだということになると、また下直しをしていくというような結果を繰り返すことになるのではないかと思います。ある程度のめどというものは、いま未指定のところに対しても、大体この程度でもってやれというような指示をしてやることが親切ではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。そういうような措置をできるだけひとつ講じていただきたい、かように考えるわけであります。
先ほどから宮澤長官は、地域開発は新産都市だけだというような考え方を持っておられるのではないかと思うような向きがございますけれども、地域開発というものはそんなものではないと私は思うのであります。そこで、多少これは基礎的な問題になりますけれども、
政府がいま持っておる地域開発の全体的な構想というものは一体どういう構想を持っておるのか。全国総合開発法に基づく開発もあれば、そうかと思えば議員立法でもって出てまいりました各ブロック開発促進法もあるし、その他水資源関係の法律もございましょうし、低開発地域工業開発促進法といったようなものも出てきておるし、そのほかに離島振興であるとか、あるいは産炭地の振興であるとかいうふうにして、現在の法体系を見ましてもごっちゃになってこの問題が取り上げられておる。こういうふうなことでもってほんとうにやっていけるのであるかどうか、
政府の考えておる地域開発の構想というものは一体どういう構想なのか。それからまた地域開発の目的ということが問題になってくると思うのであります。地域開発は、ただ単に工業開発でいいというような簡単なことで済まされる問題ではなかろうと思うのでありますが、そういった地域開発の目的なり、
政府がいま持っておる構想なり、現行法をあのままでもって各省がばらばらになって地域開発と取り組んでおる。こういった状態を一体どうしていくかというようなことについての構想をひとつ承りたいと思います。
-
○宮澤国務大臣 最初にちょっとお触れになりましたことでございますが、各地方で建設基本計画を具体的に作成いたしますと、これは港湾でございますとか、道路でございますとか、下水でございますとか、おのおの国庫の
負担率はきまっておりますので、したがって、どれだけの計画を組めば地方の
負担がどれだけになるということは、その段階で自動的に明確になってまいりますので、地方としてはすでにめどを持っておられるということでございます。国庫が特別に商い補助を考えるのならば別でございますけれども、ただいまそういう前提はございませんので、地方としては、作業をなさるめどはすでに現行法によって示されておるということだと思います。
それから後段の御質問でございますが、そのようなうらみはございます。そのようなうらみがございますのは、国土総合開発法が
昭和二十五年でございますかできました当時、やはり食糧増産というようなことを基本に考えておりました。その後、これは時代の要請も変わってまいりましたが、国土総合開発計画が長いことできずにおりましたうちに、議員立法その他により地方の開発促進法ができてしまった。母法とそれを具体化する法律とが逆の関係になりましたために、長い間そういう混乱を起こしておったわけでございます。昨年国土総合開発計画が初めて確定をされました。そして、ただいま各地方の開発計画をその母法の構想の上でつくり直しておるわけでございます。北陸、東北、中国、九州等の開発計画をつい一昨日決定いたしましたのも、国土総合開発計画の構想の上に乗っていたしたわけでございます。四国はすでにその上にのっとってできております。それらはいかにも抽象的なもので、隔靴掻痒の感は確かにいたしますけれども、観念的にはそのように統一することができました。で、その基本的な考え方は、やはり地方開発の拠点を置くということでございます。拠点とほ、工業地帯整備計画もそうでありますし、新産都市もそうでございますし、低開発地帯の工業開発も大小はございますが、みな拠点主義という考え方で貫こう、こういうふうにしておるわけでございます。なお、そのほかに離島の振興の問題、あるいは水資源の総合利用の問題というものが、その横の系列としてくっついておる。大体そういう考え方になっております。
-
-
○宮澤国務大臣 それは、先ほど申し上げましたように、国土総合開発法第一条に考えてございます国土の総合的な保全、利用、開発を考え、そうして地域格差の是正をはかりながら総合的な福祉社会をつくる、こういう考えが基本でございます。
-
○阪上
委員 いま拠点主義ということを言われましたが、われわれもやはり拠点主義でやっていくべきだと考えております。そうなりますと、大拠点、中拠点、小拠点、ことばは適当であるかどうかは知りませんが、そういったような考え方が出てくると思うのであります。そして大拠点の開発については、当然臨海性の地域が考えられる、そして基幹
産業をそこへ持ってくる、こういうことだと思うのであります。それから遠心的に中拠点、小拠点の方向に進めていく。求心的な方向をたどっておりますわが国の経済構造を逆に持っていこう、こういう考え方だと思うのであります。ただ問題になりますのは、そういった場合に、どうも
政府の考え方なり計画を見ますと、どちらかというと、そういった大拠点をまずつくっていくという考え方に立っておる。それから遠心的に中拠点、小拠点に伸びていくか、またその開発をやっていこう、そこまではいいのであります。ただ、問題は時間的な問題じゃないかと思います。そうして大拠点が終わってから中拠点に入り、中拠点が終わってから小拠点に入っていくというような考え方では、いま言われた目的の中にある地域間の格差是正というような問題が逆の方向をたどって、かえって時間的に地域間の格差を助長していくというようなことになりはしないか。したがって、やるとするならば、やはりこの三拠点を同時に開発していくという考え方に立たなければいけなかったのじゃないか。それを大拠点主義を主張いたしまして、主として臨海性の装置工業あたりを大拠点である臨海性のところに集中していこう、こういうことではほんとうの意味の地域開発の目的から逆行しているのじゃないかと思うのでありますが、この点についての見解はどうなのですか。
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○宮澤国務大臣 私どもが国土総合開発計画で大規模開発拠点と呼んでおりますものは、新
産業都市とは観念的には違うものでございます。つまり国土総合開発計画は工業開発だけを考えておるのではございませんので、政治、経済、文化、教育、行政全部のものを総合して、その地方の大規模の開発の拠点になる都市というのを求めるわけでございますから、たとえば北から申しますと、札幌、仙台、広島、福岡、この四つが大規模の地方開発の拠点でございます。そのほかに新
産業都市十三が指定されようとしておりまして、ただいまの四つの都市の中で重複いたしておりますものが一部あるわけでございます。そのほかに先刻申し上げましたような、これはもう少し経済熟度の高いところで、工業地帯特別整備地域というものが従前に引き続き考えられておりますし、また低開発地域の指定がある。
ただいま御質問の点は、拠点を設けると、どうしても拠点の周辺にまず投資の重点が置かれて、それ以外は一時的には逆に投資の上で潤わないことがあるのではないかという御疑念であろうと思います。私ども、拠点というものの考え方が正しいものであれば、ある程度経過的にはそういうことがどうしても起こってくるのではないか。したがって、建設基本計画をつくりますときに、これは決してその拠点の中心の工業開発だけを考えるのではなくて、先刻申し上げましたような周辺の地域を一体として、
農業も、工業も、また環境衛生も、教育、文化も手足のそろった計画をつくってもらいたい。また関係各省ができました計画を検討いたしますときにもそういう頭で検討いたすつもりであります。間々御指摘のようなことが起こりやすうございます。できるだけそういうことが起こりませんように、時間がかかりますと拠点から地方に、その周辺に広がってまいりますので、自然に誤解の解けることと思いますが、当初においてそういう誤解がありがちでございますから、建設基本計画はなるべくそういう誤解を止まないようなものをつくってもらいたい、こういうふうに要望をいたしておるわけでございます。
-
○阪上
委員 新産都市建設がいわゆる拠点主義によるところの大拠点とは考えていない、こういうことなんであります。そこで、しからば現在行なわれているような新帝都市のあの形態を見ますと、いまおっしゃったようにあらゆる部門をこれに集約いたしまして、そしてあの新産都市の中に大拠点、中拠点、小拠点があるのだ、こういう考え方に立っていいわけなんでありますか、企画庁の考え方はどうなんですか。
-
○宮澤国務大臣 そうではございませんで、多少くどいようになって恐縮でございますが、今後再開発を要する地域、すなわち過度の集中を排除すべき地域を関東、東海、近畿、この三つをそういう地域として認識をしております。したがって、これらにはただいまおっしゃいましたような、また私が申し上げましたようないずれもの拠点をも考えておりません。残った地域について新産都市を指定をいたしていくわけでございますが、これは何といってもやはり経済上の観点が勝っておりますから、それ以外の観点をも含めまして、当該地方に先刻申しましたような札幌、仙台、広島、福岡という大開発の、開発と申しますのは経済ばかりでない、総合的な意味でございますが、そういうものを考える。おわかりにくいかと思いますが、そういう考え方でございます。
-
○阪上
委員 新灘都市を大拠点と考え、それから低開発地域工業開発を中小拠点と考えるという考え方には立たない。そうしますと、この拠点主義の地域開発というのは一体どこで行なわれておるか、こういうことになると思うのであります。私は、端的に伺いたいと思いますのは、現在指定されている新産都市というものは、あれは都市という形の概念でいいかどうかということなのであります。まあ、名称はへんちくりんな名称をつけたのではないかと思うのでありますが、しかしながら、拠点主義に立つならば、やはり臨海性の装置工業なんというようなものをもっと小さな範囲内でもって計画していって、私の言うのは地域ですよ、工場の規模ではないのであります。そしてそれをやはり大拠点として考えていき、新産都市として考えていく。そしてその背後地の問題とからんで開発計画を中拠点、小拠点というようなかっこうで同時に取り上げていく、こういう形にいたしませんと、いまのような新産都市のあの地域はあまりにも広過ぎるのではないか、そして遠心的な効果を及ぼしていこうという考え方とは逆の考え方になっておるのではないか。もっと率直に言いますと、新産地域に指定されたあとの残余の部分を一体どうするかという問題と関連して私は申し上げているのであります。それに対してはもう何ら手は打たないのだというような結果になってしまうのではないか、こういうことを私は非常におそれるのであります。地域指定を受けたあの地域の背後にあるもの、取り残されたもの、たとえば岡山の県南の新帝都市、三十数カ町村を合併したような形でやっていこう、こう考えておるのでありますけれども、それから取り残された地域に対するところの配慮というものは全然行なわれていない。それならば国土総合開発に基づくところの特定地域の指定を受けておるところはどれだけあるか。岡山の場合につきましても、ごくわずかな、二カ町村くらいが指定されておる。そして残余のものというのは全然放置をされておる。こういう状態になっておりますが、これを一体どういうふうにこなしていくのですか。
-
○宮澤国務大臣 その点は、拠点主義というものの考え方が結果として誤りであるかないかということに私はやはりかかると思います。拠点というものは、やはりそこにある程度集中投資をして、それがその周辺に遠心的な効果を時間のたちますうちに及ぼすという考え方でございますので、ある程度これは重点主義であるということは、そのとおりであると思います。それに残された地域が直ちにその効果に均てんしないということも、これもある程度甲案であると思います。現に地方議会などでは、しきりにそういう議論があっておるわけでございますから。けれども、拠点という考え方が間違っておらない限り、その効果は年の経過とともに及ぶというふうに私どもは考えております。それから、なおそれを補完いたします意味では、低開発地域工業開発の指定をしておりますが、この考え方は、つまり新
産業都市に指定されましたような地域は、すでに相当力を持った、工業投資が行なわれ得る地域だ、こう考えておるわけですが、低開発地域はそこまでまいりませんで、ここで国税、地方税の軽減をするならば、まず最初のとっかかりといたしまして、中小の企業がまずそこへ税法上の恩典その他から来るであろう、まず減税によってそういう企業を呼んでみよう、それがその後にどういうふうに発展するか、その素地をまずつくろうではないかというのが低開発地域の考え方でございます。
-
○阪上
委員 次に新産都市について少し詳しく御質問申し上げたいと思います。
新産都市の目的は、御承知のように一つは地域間の格差是正がございますし、いま一つは大都市における人口と
産業の過度集中を排除していこうという考え方があります。それから同時に地域におけるところの雇用の安定というやはり目的を明確にいたしております。ところが、最近の新産都市の実態をながめてみますると、本指定を受けたところ、同時にまた内定したところ、こういうふうに十三カ所が指定されておりますけれども、これらの地域のいろいろな状態を見てまいりますると、まず第一番に、考えておったような工業立地が行なわれる見通しが非常に少ないということをいっております。岡山の県南であるとか、大分の鶴崎というようなところではほぼ見通しが立っておるようでございますけれども、しかしながら、その他の地域におきましてはほとんどそういった見通しが持てないということでもって、しかも一方において非常に県ないし市町村の財政
負担が増高しておって、この計画をこのままで進めていくならば財政破綻を来たすであろうというようなことから、一部には新産都市の指定を返上してはどうかというような声も出てきておるというふうに承っておりますが、新産都市十三地区に対してはたして工業立地が予定どおり行なわれるかどうか、こういうことについての見通しをひとつ承りたいと思います。
-
○宮澤国務大臣 新
産業都市についての世間的な関心が非常に高まりました結果、ともすれば非常に大きな夢が急速に実現されるというふうな考えを地方に与えましたことは申しわけないことだと思っております。現実の問題として考えますと、私どもは、新産都市というのは少なくとも六、七年先の経済効果を考えまして、それまでの間に公共投資を先行さしておこうという考えであったわけでございます。したがって、それより前に速急に企業が入ってきて資本投下をして、その果実がその地方に落ちると考えることはむしろ誤りである、これは、当時もずいぶん申したつもりでございますけれども、なかなか世間でそういうふうに考えてくださらなかった。ただいま御指摘の岡山県の県南と大分県の鶴崎は、むしろそういう意味では例外でございまして、この二つにはすでに資本の投下が相当進んでおります。また公共投資のほうもある程度進んでおりました。したがって、本来これが代表的な新
産業都市の構想に当てはまるものではなかったように私は考えておるわけでございます。むしろ、そういう地力は例外でありまして、その他の地方は六、七年先に本格的な企業の資本投下があるという前提で、これから公共投資をそれに先行さしていこう、こういう地方だ、それが本来の新
産業都市であるというふうに私は考えております。それらの多くのものが、当時提出されました計画を見ますと、装置
産業がくるというふうに考えておるようでありますが、これは国全体の廃業計画から言いまして、私は明らかに多くのものは誤りである、その期待は誤っておるというふうに思います。むしろ機械工業でありますとか、いわゆる内陸型の
産業がくるというふうに考えるべきなのではないか。でございますから、建設基本計画で、実は予定もないような装置
産業がくるような建設基本計画を考えることは明らかに誤りでございますから、そういうふうに申し上げてもございますし、また各省が建設基本計画を検討し最終的に決定いたしますまでには、その企業の意思をもよく確かめまして、そういう誤った期待というものは、直してまいらなければならない、こう思います。でございますから、いま持っておる地方の建設投資の総額が幾らであるということを申し上げましても、実はあまり実体的な意味がないというふうに思っておるわけでございます。
-
○阪上
委員 新産都市建設の場合において、いま財政の
負担ということが非常に大きな問題になってきておりますが、私の手元にある資料によりますると、大体新産都市指定地区にかかる総事業の内訳、これによりますると、総事業費といたしましては二兆八千五百四十一億というような数字が出てきております。そうして、これに対して国が直轄下乗として
負担する分というものはわずかに三千四百三十億というような程度にとどまっておる。同時に、県はどのくらい
負担するであろうかということになってまいりますると、九千八百三十三億も
負担しなければならぬ。それから地区内の関係市町村は六千四百一億円も
負担する、こういうような大体総事業費の内訳が出てきておりますが、もしそうだとすれば、もうこれはほとんど県や市町村というものは、この財政
負担にたえかねるということになると思うのであります。たとえば日向・延岡の例をとってまいりますると、あそこの市でもってたしか百二十何億かという
負担がおっかぶされてきておる、こういうことを言っております。延岡という都市はわずかに十一億くらいの
予算規模しか持っていない市であります。日向はわずかに五億くらい、四億から五億くらいの
予算規模しか持っていないところの都市であります。これがこういった比率でもって大きな
負担をかぶせられてくるということになったら、とてものことに私はそういう
負担にたえていくことができないんじゃないか、こう思うのであります。こういった国の
負担割合、国の直轄事業に対するところの
負担というものをもう少しぶつけてやらないと、どうにもならぬ状態に入ってくるのじゃないか、こういうふうに思いますが、そういった
負担区分についてどういうふうに宮澤さんはお考えになっておりますか。
-
○宮澤国務大臣 ただいまの二兆八千億という数字は、おそらく想像いたしますと、先刻申し上げましたように、各地方が自分のところの希望図を描きましたそのトータルであろうと思います。したがって、これがこれから打破しなければならないところのいろいろな夢の上に立っておるということは、先刻申し上げたところでございます。なお、それにいたしましても、その二兆八千億は、鉄道、道路公団、住宅公団等による
政府機関の投資をもおそらくは含めた数字であると考えます。そしてその二兆八千億の中で、ただいま国の
負担が三千億であると仰せられたと思いますが、そういうことは私はおそらくなかろうと思います。一割でございますか、とても一割なんというものでないことは明らかでございます。それは、公団等はもちろんそうでございますし、道路にいたしましても、港湾にいたしましても、あるいは環境衛生施設にいたしましても、公共事業の国庫の補助率はそれよりはるかに商うございますから、平均して一割であるということはあり得ないと考えます。それよりもはるかに高いものでございます。それにいたしましても、地方に相当の
負担はございますけれども、いずれにしても二兆八千億という数字は、そういうものの積み重ねでございますから、将来の投資規模を予測いたしますのに、その数字を用いることは私は適当でない。先刻申し上げましたような理由からそう考えております。
-
○阪上
委員 私の手元のこれを見ますと、先ほど申し上げたようなとおりでありまして、大体国の直轄が一二%程度しか考えられていない、県工市が三四%くらいになると思うのであります。
〔松津
委員長代理退席、櫻内
委員長代理着席〕
それから市町
村関係でもって、これは地方債をそれぞれ含んでおりますけれども、それにしても二二%、それからその他の地方開発公社がございます。あるいは開発事業団等もあります。それから国鉄、電電公社等が
負担すべき分もあるだろうと思うのであります。これがやはり三二%程度で、九千億程度のものは
負担しなければならぬ、こういうことになっております。しかし、いまそれは夢で描いたところの数字だ、こうおっしゃっているのですが、しかし、これは地方から希望して積み上げてきたところの数字ではないのでありますか、もしそうだとするならば、こういったことをやりたいと思って新産都市の指定を受けて、ああいったふうにして奔走したのでありますけれども、それではそういったことになりますと、その地方自治体の夢は全然つぶれてしまう、新産都市に対するところの希望も夢も何もなくなってしまう、こういう結果になるのですか。
-
○宮澤国務大臣 それらの夢は、先刻申し上げましたように、自分のところには鉄鋼業が来る、あるいは石油化学工業が来るというような前提の上に多くは立っておるわけでございます。しかし、それらの企業に具体的に当たった上でもございませんので、建設基本計画をきめる段階で具体的に当たれば、その多くはおそらくはそのようにはならない。また、わが国にそんなに小規模の装置
産業ができましたのでは、国際的には中小企業でございますから、そういう姿であってはならないと思いますし、企業の側でもそれは考えておらないと思います。したがって、こういう装置
産業が来るから、わが新産都市はかくのごとくのものであるといって考えておられるとすれば、その点は根本的に間違いであるということを指摘をしなければならない段階が建設基本計画を考えますときにはまいります。また、実は指定をいたしますときに、
昭和四十五年における工業出荷額はどのくらいであるかということだけは地方にお示しするわけでございますが、従来地方のやっておられましたのよりも、各省の計算でははるかに工業出荷額は小さくなる、これはやむを得ないことでございます。そうなりますので、やはり一度は現実に立ち返って考えていただいて、その上で投資をしていくということでなければならないと思います。
-
○阪上
委員 この新産都市の建設
基本方針を指示なさっておりますが、これを読んで見ますと、どうもどこの地域も大体同じような指示をしている。そしてその中で特に私遺憾に思いますのは、計画が、やはり
産業設備というような基盤の方向へ方針が示されておって、肝心の住民の福祉、環境整備というような問題についてはほとんど力が入っていないように思うのであります。いま、御承知のように公害問題も各所に起こっております。新産都市などというもの、あるいは地方開発というようなものは、究極の目的は、やはり人間尊重の立場に立って考えていかなければならないのにかかわらず、工業偏重ばかりでございまして、そしてこの計画を見ましても、ほとんどそういった環境整備につきましては力が入っていない。おそらくこんな建設基本計画に基づいて計画が立てられてまいりますと、地方自治体におきましては、この方針に基づいてそういった工業立地ばかりを頭に置いて、環境整備といったような肝心かなめの問題は忘れてしまう。そして開発の内容というものが総合開発的な内容を全然持たずに、もう全くの工業偏重の方向ばかりをたどっていくというきわめておそるべき問題がこの方針の中にあるのではないか、こういうように考えるのでありますが、こういった環境整備、いわゆる生活基盤の拡充、
産業基盤の拡充と同時に並行して生活基盤の拡充をやっていくという方向をなぜもっと強固に打ち出さないのか。こういった点についてさらに伺っておきたいと思います。
-
○宮澤国務大臣 その点は、私ども阪上
委員の仰せられますような点にずいぶん気を使って実は
基本方針を示しているつもりでございます。ただ工業地帯をつくるのではない。公害のことも考えてほしいし、地方の企業の育成、あるいは地方の労務をどうやって大事に、上手に使うかといったようなこと、また環境衛生、それから工業地帯の周辺にありますところの
農業地帯との調和的な発展、そういうことにずいぶん注意して
基本方針を書いているつもりでございます。なお、お読みになりまして、そういう重点の置き方が足りないではないかという感じが一般的にございましたら、あとでさらにそういうところを申し加えてもいいくらいに考えております。
実は、この法律の要請大臣には厚生大臣が入っておられませんので、法律はそういうふうにできておりますけれども、実際においては、その観点が非常に大切でございますから、指定及び建設
基本方針、基本計画の協議には事実上厚生大臣にもお入り願うことにいたして、そのように実際上行なっているくらいでございます。
なお、
基本方針がきわめて抽象的であるということにつきましては、どの地方をどうおやりなさいということをいまの段階で私どもはとうてい印し得ないのでありまして、そういうことを申しますと、たいへんな紛議を起こすことは実は明らかでございます。したがって、それは地方が具体的に建設基本計画を出してこられますまでの間に当該地方の責任において話し合いをして、調整をして出していただく以外に方法がない、こういうふうに考えます。
-
○阪上
委員 次に、建設大臣にお伺いいたします。
新
産業都市と直接の関係ということになりますと多少問題がずれるかもしれませんけれども、最近行なわれている公営住宅なりあるいはまた公団住宅なりの建設の状態をながめておりますと、何か地域開発といったものと無関係にそういう計画が立てられてくるという感じがいたすのであります。時間がありませんので要約して申し上げたいと思いますが、たとえば大阪の近郊の千里山というところにいわゆるニュータウンというのができております。各所にニュータウンと称するものが陸続とでき上がっておりますけれども、これは全く大都市のベッドタウンの性格しか持っていない。そして
産業経済等との結びつきというものはきわめて薄い状態にある。諸外国におけるところのニュータウン計画などというものは、ああいったちゃちなものではございませんで、御案内のように職場と住居を同時に与えていこうというような考え方に立ったニュータウン方式でございます。したがって、大都市への人口と
産業の過度集中を排除するという目的からニュータウンが行なわれておるということになりますれば、ああいった形のものでは何の役にも立たないと私は思うのです。せっかくあれだけのりっぱな町づくりをやるのでございますから、やはり大部市との間で遠距離隔離をする。日本の土地は狭いのでありますからそう理想的なことは言えませんでも、やはりある程度グリーンベルトを隔てて、多少の近距離隔離でもいいのですから、そういった考え方に立って、しかもそこに中小企業なりその他の工業を誘致いたしまして、職場と住居が同時に与えられていく。同時に、生鮮魚介類等でいま問題になっておりますような物価騰貴の問題とも関連いたしまして、やはりグリーンベルトを隔ててそういうものを持つ。ところが現在の行き方でありますと、大都市は無制限に地面の上を住宅でそのまま接続してどんどん伸びていくというような状態でございます。こういったことについて、ああいった住宅建設のあり方というものを根本的に考え直す必要があるのではなかろうかと私は思うのでありますが、御見解どうでございましょう。
-
○
河野国務大臣 お答えいたします。
私もお説のとおり考えておりますけれども、何さまこれまでの住宅政策と申しますか、住宅建設の方途は、現実に住宅に非常に困っていらっしゃる人に、しいて申せば質よりも量を与えるということが第一義に考えられてやってまいりました。でございますから、いまお話しのように当然これからはしていかなければならないというような意味におきまして、しいて申せば両建てというような意味におきまして、明年度の
予算の中には一部お願い申し上げておるのでございますが、東京周辺に四カ所ほどいまお話しのような都市をつくっていこうということを考えて、せっかく明日は首都隅の
委員の諸君に空中査察をしていただくというようなことも考えて準備を進めておるわけでございます。大阪についても同様な方途でいこうということにいたしておるわけでございます。
-
○阪上
委員 次に通産大臣にお伺いいたします。
先般実は産炭地方を回ってみたのでありますが、非常な地方財政の苦しい状態にございます。そして何とかして立ち直りをしようということで一生懸命に考えておるようでありますけれども、その考え方がやはり工業立地の考え方を持っておるということなんでございます。もちろん、ああいった場所でございますので臨海性の装置
産業なんてくるはずがないのでございます。したがって、主として中小企業団地を形成しなければならぬ場所だと思うのでございます。ところが、そういう方向に進んでいないのでありまして、各自治体がばらばらにあっちこっち走り回って、ばらばらに工場を引っぱってくるというような状態でございまして、そのことのために、せっかく工場はきたけれども、その工場から、考えておるところの利益を得ることができないような状態にある。そして利潤も上がらないような工場がきておる。へたすると妙な工場スラム街をつくってしまうような結果になる。こういうような状態にあるのでありますが、この地域開発関係と関連いたしまして、ああいった産炭地その他の低開発地域における中小企業団地の構成と言いますか、これをひとつ真剣に考えなければならぬ段階にきておると私は思うのでありますが、こういった点について何か施策をお持ちなのでございましょうか。
-
○
福田(一)国務大臣 中小企業団地の問題と地域開発の問題、それから席炭地振興の問題、これはいずれもやはり相関性を持っておるわけでありまして、地域開発と産炭地振興、また産炭地振興といわゆる中小企業団地というようなものについては、それぞれ計画があります場合においては、十分相関性を考えながらやらせるようにいたしておるわけでありますが、いま阪上
委員の仰せになった産炭地振興というたてまえになりますと、団地をつくらなければそこに中小企業、あるいは企業を持ってきてはいかぬというようなことになると、これは必ずしも相関性を絶対に認めていくというようなわけにはいかないかと思うのであります。やはり一つの企業として行っても、ある程度そこでりっぱに仕事ができて、人を雇い得るということであればこれは認める。こういうたてまえをとっておりますが、しかし、仰せのことは非常に重要な問題でございますので、団地の問題等が出ました場合、たとえば九州の筑豊関係において団地問題が出たような場合においては、そういういま仰せのよろなことも考え、あるいは北海道においてそういうことが出た場合、いまのところはまだございませんが、あるいは福島地区とか中国地方でもそういう問題があれば、十分その点は関連しながら考えていきたいと思っておるところであります。
-
○櫻内
委員長代理 阪上君に申し上げますが、申し合わせの時間がまいりましたので、お含みいただきたいと思います。
-
○阪上
委員 時間がありませんので、私の意見をもう少し申し上げておきますが、私の言っておるのは、ああいった立地条件の非常に悪いところはなかなか来ないのです。しかし、それをやらなければどうしても立っていけないというのが産炭地の市町村の実態なんです。そこで私の言いたいのは、あんな力もない、また立地条件もないところの市が一つだけ単独に行動して工場を持ってくるというような考え方に立っておるからなかなかいかないのだ、数カ市町村が一緒になって、そうして団地をつくっていくというような考え方に立たないとなかなか来ない、こういうことを私は申し上げておるのです。そういう面の配慮をひとつ通産大臣にお願いしたいということでございます。
それから最後に、大蔵大臣と自治大臣に伺いますが、もう多くを申し上げる必要はないと思います。御案内のように、先ほど申し上げましたように、新産都市を行なっていく場合に、非常に府県や市町村の
負担が大きい。夢の計画でなくて、少し縮小しても、やはりこの比率はあまり変わってこないのじゃないか、こういうふうに私は思うわけであります。そこで何らかの特別立法でもして、こういった財政
負担をなくしていこうという考え方を持たなければいけない、私はかように思うのであります。あるいはまた市町村が先行投資をやりましても、御案内のように工場がなかなか立地いたしませんので、網島のような――日向・延岡でありますか、ぺんぺん革がはえておるような状態がそのままになっておるというようなことも見のがせない事実だと私は思うのでありますが、いずれにいたしましても、こういった地方自治体の
負担というものを軽減いたしませんと、一般会計におきましても、企業会計におきましても、非常に苦しい状態に入ってきておりますので、これは何とかしてやらなければいけないと私は考えるわけであります。したがって、特別立法で傾斜配分をしていく何らかの措置が講ぜられないかどうか、こういうことなんであります。大蔵大臣と自治大臣、それぞれひとつ簡単でけっこうですから御
答弁願いたいと思います。やるかやらないかということです。
-
○
田中国務大臣 新
産業都市の建設の問題につきましては、地方の将来に向かっての経済発展を計画しながら投資を進めていくわけでありますから、現存の段階において国が特別の高卒な補助をしなければならないというような立場はとっておらないわけであります。
-
○早川国務大臣 地域開発の特に新帝都市の問題については、計画がまだはっきりいたしておりませんが、膨大な公共投資でございますので、これを自治省でこなし得るか、こなし得ない面については国でできるだけ財政
援助をしなければならぬと考えておるわけでありまして、目下この問題については検討中でございます。
〔櫻内
委員長代理退席、
委員長着席〕
-
○阪上
委員 最後に、宮澤さんにお伺いしますが、いま言ったような状態のもとで、現地に立地するところの企業に対してある程度私は受益者
負担をかけてもいいんではないかという考え方を持つわけであります。そうしませんと、地方自治体は先行投資でもってつぶれてしまうのではないか、このように思いますので、この点についての御意見を承っておきたい、かように存じます。
-
○宮澤国務大臣 投資の種類によりましては、たとえば港湾などはその一つかと思いますが、当然企業に対して受益者
負担を求めるべきものだと思います。
-
○阪上
委員 地方自治体に言わせると、財政
負担が非常に苦しいから何とか国で全額見てくれ、こう言うし、国で全額を見るにはあまりに私企業に対して片寄り過ぎていると私は思うのであります。したがって、国で多くを見てやれということは私も言いたいのであります。また、見てもらいたい。そうして地方の
負担というものを少なくしたいが、同時に、企業からも受益者
負担をとるという方途を皆さんでもって御検討を願いたい。このことを申し上げて、私の質問を終わります。
-
-
○
久保田(豊)
委員 時間がありませんから、私は主として二点について具体的な問題をお伺いいたしたいと思います。
まず企画庁長官にお伺いいたしますが、さっきのお答えで、すでに十二月に五つやった、近くまた五つの指定をやる、それからあと三つを近くやるということですが、工業整備地域の計画に対する認可もことしのうちにやるわけですか、承認もやるわけですか、この点はどうですか。
-
○宮澤国務大臣 工業整備特別地域につきましては、過般、閣議了解をもちまして、当該地方から出てきました計画を検討して、これを長期計画として決定をするということになっております。したがって、それは当然これから出てくるものと考えますし、もちろん年内には全部が出そろうだろうと考えております。
-
○
久保田(豊)
委員 いま阪上
委員からもいろいろとお尋ねをしたわけですが、一番心配になるのは、予定をしたような、ないしは地方で期待しているような工業立地はほとんど不可能だということであります。これをどう締めていくかということが問題だろうと思います。と申しますのは、私どもしろうと考えで不可能だと思います理由は、大きく言って三つあると思う。
一つは、この地方の期待しておるものがあまりに大き過ぎる。新産都市と工業開発の四十五年度の総生産額と工業の生産額を見ると、地力でいま計画しておるものは約十一兆であります。十一兆といいますと、いま
政府で立てておるいわゆる倍増計画の四十五年度の大体第二次
産業の付加価値総額が八兆ちょっとくらいになるかと思うのです。だから、これもかりに付加価値ですから倍としても十六兆くらいでしょう。そのうちの十一兆をこの十九カ地域でつくるということは、私は、あらゆる面から言って、現実的でない、こう思います。
それから、もう一つは、最近の傾向としてぼ、特に製鉄であるとか機械であるとかあるいは石油関係の企業規模といいますよりはむしろ生産規模が対外関係その他の競争上から非常に大きくなってきている。したがって、新しい小さなものをあっちこっちよけいつくろうなんということは企業は考えておりません。現在あるものを大きくしよう、こういうことになるのは必然であります。こういうふうな点で私はほとんどこの地方の計画というものは実現できないというふうに見て差しつかえないのではないかと思う。
特に、もう一つ、この十九カ地域の計画を見ると、そのうちの約十六が鉄ないしは石油関係のコンビナートをねらっているわけです。これは、さっきお話がありましたとおり、日本にこんなによけい鉄や石油コンビナートができたら運用に困ります。したがって、これをどう改編していくかということが当面の問題としては一番基本的な問題であろうと私は思う。これに対していままで
政府がこんなに十三に加えて十九なんということをやったからこんなことになったのでありまして、私はこの点で
政府は根本的な思想改造をやらなければだめだ、こう思うのです。
いろいろと夢はあっても、こういう地方に夢を持たしておいて、これからこれを切りさいなんでいこうという。しかも、これに対してあなたのほうはいままで五つの指定をしおりますね。大体五つの指定をしましたけれども、その指定の基本計画の内容を見ますと、ほとんどその五つ全部が鉄ないしは石油コンビナートを最後にねらっている。そのうち二つだけは認められている。あとの三つは、鉄、石油コンビナートは切って落としている。しかしながら、生産額についてはほとんど地方のものを少しずつ落としているだけだ。日向、延岡が少し落としたというだけであります。こういう態度で、これは基本で示してあるのだから、この調子でやったら、一応平均的に見てみますと、少なくとも九兆以上のものがこういう地域で新しく生産されることになる。そうしたら、そのときの日本の国民総生産というものは大ざっぱなあれで三十六、七兆になりはせぬかと思います。
政府の計画は二十六兆。四十五年度にこれを上回ることは明らかである。しかしながら、こういう食い違った計画をばらまいた
政府の責任というものは重大です。私は、したがって、これらに対して、さっきのお話のようないいかげんな、地方にばかり責任を持たして、お前のほうで夢を持ったのだからけしからぬ、それは直さなければならぬという態度ではなくて、
政府が誤った点はあやまって、はっきりとこういう計画を根本から再検討する、あるいは指定等についても再検討するぐらいの根性がなければとてもだめだと私は思うが、どうです。
-
○宮澤国務大臣 御指摘のような一般的な考え方、非常に水増しがあるということについては、先ほど阪上
委員にも申し上げましたように、これを改めていかなければならないということは私もそのように思いますが、ただいま十一兆という数字を仰せられました。これは、私ども、どういう根拠であるかつまびらかにわかりませんが、それは工業出荷額であろうと思います。そういたしますと、新
産業都市十三カ所のほかに工業整備特別地域六カ所の工業出荷額の総額が
昭和四十五年に十一兆あるかないかということになるわけです。それは少し私は多いと思います。少し多いと思いますが、
久保田委員の御指摘のように非常に過大だとは考えません。おそらく
昭和四十五年におけるわが国全体の工業出荷額というのは五十兆に近いだろうと思います。それは出荷額でございますから、付加価値とかGNPとかいうものではございませんで、出荷額全部ならばそのぐらいなものがあるであろうと思います。先ほど阪上
委員に、新
産業都市十三カ所の出荷額が
昭和三十五年度に七%程度、四十五年度には一割ぐらいになりますかと申し上げましたが、そのときには、大体新産都市だけで四兆から四兆五千億とか、そのぐらいの工業出荷額があるであろうと考えておったわけでございます。そこへ工業整備特別地域六地域が加わりまして、ちょっと十一兆にはなりかねると思いますけれども、ひどくけたのはずれた数字ではあるまい、まあ八兆とか九兆にはなりそうな感じがいたします。しかし、それは数字のことでありまして、基本的に、あっちこっちに製鉄所でありますとか石油化学工業ができたのでは、これはもう全く中小企業になってしまうわけでございますから、そういうことはいけませんし、また、企業としてもそういうことはいたさないであろう。おそらくは、先刻申し上げましたような機械工業あるいは内陸型一の
産業がおもにこれらの地域で出荷額をあげることになるであろうと思います。なお、新産都市と工業整備特別地域とを比べましたならば、工業整備特別地域のほうがはるかに
産業基盤としては成熟をいたしておりますので、ここらのほうが当面の伸びは早いであろうと考えております。
-
○
久保田(豊)
委員 いまの十一兆というのは、実は架空な数字じゃありませんで、各県の出荷額の四十五年度を見ますと、十三地区の新産都市が六兆六千三百六十七億、それから、工業整備地域が四兆二千十三億、こうなっていますから、合わせますと約十一兆になるわけです。その四十五年度に五十兆になるであろうというのは、どういう根拠からですか。付加価値から推定しますと、あれは生産額がよくわかりませんでしたが、付加価値は八兆何がしくらいにたしかなるはずであります。それから推算すると五十兆という数字はちょっと出てこないのではないかというふうに私は思うわけです。しかし、この点は、いずれにいたしましても、こういう膨大な計画、しかも、その大部分が、十九中の十五が、鉄ないしは石油コンビナートを目ざしているというのですから、これをどういうふうにさばいていくかという点が問題だと思う。いままで五つ示された中でも、まあ二つだけは鉄、石油コンビナートを認めているわけですね。あとの三つだけは県から出てきた計画を大体変えているわけです。これがどの程度県のほうで根拠があってやったことか、ここらも疑問であります。しかし、これはよほど国全体の経済の伸びなり何なりというものを十分地方へ徹底しないと、混乱を起こすではないか、こう思うのであります。したがって、私は、全体の計画としてはこの十九地域を全部このまま生かしていくとすれば、計画は所によって地方の考えているものと大きなそごを来たすのではないか。これをどう調整するかということは、いままで五つ出されましたこの基本計画の指示のしかたでは、私はこれは不十分ではないかというふうに思うのです。というのは、この五つの計画については、四十五年度においての生産額をほぼ見当をつけて指示されております。それをやってみますと、所によっては多少減っているのがありますが、ほぼ地方で出している数字の端数を切り捨てたぐらいのところ、大体において一割ないし二割ぐらいを切ったところを数学的に指示しております。こういうふうな機械的な態度でうまくいくかどうかという点を私は疑問に思うのですが、この点の御解明をいただきたいのと、それから、さっきもお話がありましたが、かりにもっとこれが縮小されたといたしましても、この誘致についてはだれが最後的な責任を負うのですか。国が負うのですか、あるいは県が負うのですか、市町村が負うのですか。私は、まさか市町村が負えるわけはないと思います。企業のほうは、さっき言いましたような事情と、景気不景気によって、行くといったものがやめてみたり、いろいろあります。そういう際に、片方では財政の問題がある。この点についてはあとで公共建設のほうのことをお聞きいたしますが、そういう場合に、先行投資をしたが、期待をしておった工業が来ない、あるいは非常にその時期がおくれるということになりましたら、まあさっきの坂上君の例示ほどではないにいたしましても、非常に金のかかった建設をやるわけですから、これの元利償却というものは、なおそれだけでも非常に地方を圧迫するわけです。そういう場合に、責任は最後にだれがとるのですか。国がとるのですか、地方がやったのだから地方がとれというのですか、どっちですか。この点を明確にすることが必要だと思いますが、どうですか。この点をお聞きしたい。
-
○宮澤国務大臣 五十兆と申し上げましたのは、何分にも七、八年先のことでございますから、ひどく根拠があって申し上げることではございません。しかし、やはり四十兆はこえるというような感じは私持っております。確かに、先ほどの十一兆という数字は、そういう根拠で仰せられたのであろうという想像は私もいたしましたので、六兆六千億というのが十三新暦都市の希望の数字でございますが、私どもは、それは少し過大であって、かなり強く見ても四兆と五兆の間ではないかというようなことを考えております。
そこで、先行投資をいたすわけでございますが、これは、これから数年かかっていたすことでございますから、全く企業側の動向を無視して、きまったものをきまっただけ突っ走るというようなことは、これはいたしてはならないことだと思います。同時に、しかし、先行させなければならないというのでございますから、おくれてはならぬということでもございます。その辺はよほど注意をしながらやっていかなければ、国費と地方の住民の
負担とを結果としてむだに使うということになりかねません。納税者の金でございますから、十分注意してまいらなければならないと思います。責任という意味が、どういう意味合いでございますか、新
産業都市十三カ所は、地方から希望が多々ございました中で、
政府がこの十三カ所について指定をするという意思を持つに一至ったわけでございますから、基本的には、やはり政治をいたします者のそういう選択の責任というものは私はあると思います。それから、もちろん、それに続いて一定の計画のもとにこれを推進しようとした地方にも責任を分かってもらわなければならないのは当然でございます。けれども、それだけ重大なことであり、先行投資というのは先を予測してのことでございますだけに、毎年これをやってまいります上で十分にこれからの企業の動向なども考えつつ進めなければならないことでありまして、一ぺんきめたから何でもかでもそれを突っ走るというようなことがあってはならないというふうに考えております。
-
○
久保田(豊)
委員 非常にわかったようなわからないようなお答えですが、いまの段階ではそんな程度しか言えないのかもしれませんけれども、要するに、そんなに、五年も六年も先に突っ走って先行投資をしなくてもいいわけでしょう。もちろんその間は非常に密接にみながやっていくのですが、いずれにいたしましても、この十九カ所全体の、いま地方で考えておりまする先行投資の総事業量というのは約四兆円です、工業整備地域を加えますと。片方が約二兆九千億、それにさらに工業整備の六カ所を入れて約四兆円であります。これは六カ年でかりにやるとすれば、一年間に七千何億というものの金を出していかなければならない。それをある程度調整をしながらやっていっても、うまく企業が来なければ、これは採算に合わぬわけ、であります。国の補助やなんかがある程度出ましても、採算が合わぬ。その際に一番困るのは、国は何とかできるでしょうが、地方の県や関係の市町村は全くお手あげになります。その際に国としてはどういうこれの始末をするのかという点を私は明確にしなければならぬと思う。それは、国も責任を負うが、地方がおもになるのだから、地方のほうがおもになって責任をとれということでは、これは処置がないと思うのであります。もともとの計画がこういうふわふわのいいかげんな計画から出発したのですから、私はこれに対する基本の責任というものは
政府がとるべきだと思うのですが、これについて、大蔵大臣に、そういう場合に地方財政がいまのような調子でいけば必ず行きづまるが、その場合国がどういうふうに責任をとるのか、この点を伺いたい。それと同時に自治大臣にお伺いしますが、そういうのは目に見えておるのですから、これに対してどういう措置をおとりになるのか、これをはっきり私はお聞かせをいただきたい、こう思うのです。
-
○
田中国務大臣 新
産業都市の建設、鉱工業地帯整備、低開発地の開発促進が非常に重要な問題であります。でありますから、一応新
産業都市の指定をやっておるわけでありますが、現実問題として、進めてまいる過程において、あなたがいま申されたような問題に対して解決していかなければならぬわけであります。現在の状態では、地方も非常に膨大な要求を出してきておりますし、これに対して、実際、
産業別、業種別に長期の見通しを立てて相当確実な計画を
政府も指定しておるわけではないわけであります。でありますから、現状の段階においては、地方の将来の
産業発展、地域発展というものに対する投資でありますから、
政府は、一般公共投資等に対しては、港湾、鉄道、道路等に対しては点的に投資をしておるわけでありますし、なお、土地の取得、造成等に対しましても、財政資金を使って開発銀行から融資の道を開いたり、また事業量によりましては起債の道を考えたり、また特別交付税等の措置もやるのでありますから、いまの段階では、率直に申し上げれば、最終的な責任は地方で負うのが正しい、こう申し上げなければならないと思うのです。がしかし、新
産業都市とか、低開発地の開発などというものは、一体国の責任ということはないのかということを考えますと、現在東京、大阪、名古屋、福岡というような四大拠点にあまりにも
産業、人口、文化が過度に集中をしておりまして、このままの投資を続けていくと投資効率が上がるというようなことも考えられませんので、新しい経済発展を考えるときには、当然この狭い土地を有効に利用開発をするという国の大きな目的もあるわけであります。でありますから、これから新
産業都市や低開発地の開発計画を進めてまいります過程において、
政府と地方財政との間に密接な連携をとりながら実行計画を進めていく、いまの段階において、国が補助率を上げるとか、また財政資金をもって地方開発を行なうとかいうようなことは言明できないし、また、そういう段階ではない、こういうふうに考えます。あなたがいま四兆円ということを言われましたが、私たちも新
産業都市の法律をつくるときに十分検討したわけでありますが、現在一年間の設備投資大体四兆円ということであります。これがほとんど東京、大阪というような過去の拠点に集中投資をされておりますので、その
産業自体としましては効率投資になるかもわかりませんが、そのために、水の問題とか港湾の問題とか交通の問題とか、国が財政的に負う
負担というものは非常に大きくなっておるわけであります。でありますから、新
産業都市や鉱工業地帯整備ということをやることと、重点的に現在のままで東京や大阪、名古屋、福岡というように集中的に投資をすることの利害というものも十分検討いたしておるわけでありますから、これらの問題は、いますぐ結論を出すことは非常にむずかしいと思いますが、国の重要性、政策的な重要度によって、分担の問題はおのずから将来私は一定の結論が出るものだと思っております。
-
○早川国務大臣 失敗した場合にどちらに責任があるのかという非常にむずかしい問題だと思います。新産都市の計画は、
政府の施策として言い出して、また、これに沿って国家的な立場で開発の分散、格差の是正という立場で出発した問題でございますので、そういう意味では国のほうも責任はある。しかし、これによって利益を受けるのは、新産都市を受けた自治体でございます。また、自治体住民でございます。そういう意味では、自治体のほうが誘致した責任もある、こういうわけでありますから、まあ両方とも責任があるというようなものではないだろうか。要は、堅実な実行不可能でないりっぱな計画を立て、それに沿ってりっぱな新産都市をつくるという方面について、自治大臣としては関係大臣とともに指導していきたい、かように考えております。
-
○
久保田(豊)
委員 時間がありませんから、建設大臣にお伺いいたします。
この道路五カ年計画とかあるいは住宅五カ年計画、港湾はあなたの
所管じゃないようでございますけれども、そういう新規のあの四兆一千億の五カ年計画の中にはこの新産都市内の道路の計画がどのくらい入っておるのかという点が一点。それから、本年度の道路計画の中には新産都市関係のものがどれだけ織り込まれておるのか、こういう点が一点。それから、この法律を通しますときに附帯決議が大体において十一項目ついているわけです。その中で、特に新帝都市内の――新産都市は一般に地域が非常に広うございます。したがって、主要な新しい地域内の幹線の道路、そういうものを、しかも非常に程度の高いものをつくらなければならぬ必要が非常に多いわけです。そういうふうなものについては、これは国道扱いにするとか、あるいはこれに対して特別な補助金を設けるとか、あるいは建設の単価を上げて国の補助率をよけいにするとか、こういういろいろな問題を考えてもらわなければとうていやれないということがここの四項と五項になっているわけであります。これらに対して現在建設省としてはどんなように検討を進めておるかという点。ひとつ建設大臣、この三点をお伺いいたしたいと思います。
あわせて、もう時間がありませんから、企画庁の長官にお伺いをいたしますが、本年度新産都市関係のいわゆる
予算というものは、あなたのほうの三十六億ですか、国土の総合開発の事業調整費ですか、これ以外に関係の各省
予算のうちにどれだけ入っているか、これをお示しいただきたいと思うのであります。あのときの
政府の
答弁では、はっきり新産都市関係のいわゆる公共投資というものは区別はしないが、各省の中でわかるようにしておく、こういうお話であったが、ことしの
予算案を見ても、そのうちでどれだけが新産都市関係のものやら何やらてんでわからない。これでは地方として自分で計画を立てる場合で毛進めようがないわけです。今後この点についてどういうような措置をとるのか、これがはっきりしなければ地方としては手がつかないわけであります。
それと、もう一つ伺いますが、ことしの地方の開発の公共投資が二百何億かありますね。これは新産都市向けのものかどうか。これは大蔵大臣に聞いたほうがいいかと思いますが、新産都市関係の割り当てがないということになりますと、新産都市は金を貸してつくるつくると言っているけれども、財政投融資のほうではほとんどこれが組んでないということです。これではますます地方は手のつけようがない、こういうことになりますので、これは大蔵大臣の御
所管かと思いますけれども、あるいは自治大臣かどっちかわかりませんが、地方開発の地方債の二百何億というのがあり便すね、この内容はどんなふうになっているのか、この点をお答えをいただきたいと思う。
-
○
河野国務大臣 建設省といたしましては、道路の
予算におきましておおむね百九十億ぐらい全体の新
産業都市として想定いたしております。河川で八十億という程度でございまして、これを今後の新産都市の計画その他と見合わしましてどういうふうにこれを割り当てるか、いわゆる個所づけはどうしていくかということは、これから作業していく、こういう程度でございまして、したがって、いまいろいろお尋ねでございますけれども、それらはいずれも宮澤さんから先ほどお答えがありましたとおり、あの線に沿って私のほうは裏づけをしていく、こういうつもりでおります。
-
○宮澤国務大臣 ちょっと恐縮でございますが、お答えいたします前に、先ほどの新
産業都市についての責任の問題につきまして、将来あるいは大きな問題かと思いますので、もう少しはっきりお答えをさせていただきますが、たくさんの申請希望の中から現在のところを指定いたしましたことは、これは
政府の責任でいたしたわけでございます。それから、希望者の中で選ばれました各地方がこれからこれを推進していくわけでございますが、これは、第一義的には、地方自治の精神から考えますと、むろん当該地方の責任であろうと思います。けれども、それに対して国が建設費本計画を承認いたしまして、これに対して国の公共投資を行なっていくという面では、そこへもう一つ国の責任が出てくる、法律的にはそういうふうに申し上げておくべきかと思います。
それから、ただいまのお尋ねでございますが、これは、いま建設大臣の吉われましたように、各地方からこれから建設基本計画が出てまいります。それを国が承認をいたしますと、関係各省が検討をして承認をするわけでございますが、各地方別に、国道はどうする、港湾はどうする、河川はどうする、下水道はどうするということがきちっときまってまいります。そういたしますと、それが今度はたとえば
道路整備五カ年計画の中に織り込まれてくる、あるいは今年つくります港湾の新五カ年計画の中へ入ってくる、縦横でそこで合わさってくるわけでございます。したがって、これは公団につきましても全部そうでございますから、建設計画が全部出てきまして、それが計数的に確定いたしませんと、公共事業分は、何省で幾ら、何年間に幾らということが出てまいりません。で、したがって総量をいま申し上げるわけにいかないということになるわけでございます。
なお、そういう公共事業を推進する上で、私どもの役所が
昭和三十九年度に持っております調整費は十五億程度でございますが、これは調整の部分でございます。
-
○早川国務大臣 まだ具体的な計画が出ておりませんので、地方開発の財政投融資の地方債は五百十八億あるんです。それで、その中で臨海工業地帯の造成がいま御指摘の二百幾らの金額でありますが、これが特に新産と固定をしておるわけではないんで、地方開発のワクの中に入れて、もし具体化しましたら、そのワク内でいく、こういうことになっておるわけでございます。本年度はそういう計画が出ておりません。本格的には来年度、四十年度からそういった中へ入れてやらなければならぬと思っております。
-
○
荒舩委員長 久保田君に申し上げますが、だいぶ時間が経過しておりますので、どうぞ……。
-
○
久保田(豊)
委員 時間がないものですから、もう一歩突っ込んでお伺いしたいのが全部だめでありますから、いっか機会を求めまして別の機会にやることにして、きょうはこれでやめますけれども、いずれにしましても、これはもう少し
政府としてあらゆる点ではっきりしてくれなければ、地方ではこれは進められません。いまのどの話を聞いても雲を食ったような話で、最後になるときめ手はどこにもないというふうなことで、大きな夢ばかり持たして、そうしてやっておるというやり方では、これは必ず中途はんぱになって地方をあらゆる面で非常に苦しめるようになると思いますので、また別の機会に私はこまかく一つ一つの問題について申し上げたいと思いますが、ひとつ
政府におかれては、各省ともにもつと真剣にこれを具体的に詰めてお考えをいただきたいということを要望して、質問を終わります。
-
-
○
足鹿委員 私は、開放経済体制下における
農業、
農民保護政策を中心に、当面一しておる若干の問題についてこの機会に
政府の所見を承りたいと思います。
まず最初に、貿易自由化と
国内農業の保護との関係について伺いたいのでありますが、御承知のとおり、農林水産物の自由化率は、三十四年の四三%から三十八年八月末九二%と高まり、
政府管理の米麦を除いて、他の品目は全部大なり小なりの悪影響を受けておるのであります。
例を申し上げますと、トウモロコシの自由化に基づく畜産関係の飼料の海外依存が高まってまいりまして、三十二年五十五万トンのものが、三十七年は二百二十九万トン。羊肉の自由化によりまして、
国内の羊の飼育は激減をする。九十五万頭あったものが三十九万頭に減っておる。一方また、乳製品、飼料用の脱粉の輸入によって、
国内牛乳、またバター等の乳製品が非常な影響を受けておる。最近はまた外国資本との提携による豊年リバーの問題等、次々と貿易自由化の影響は深刻になりつつあるのであります。
この原因は、生産物の需給均衡に国が責任を持たないで自由放任化していこう、こういう態度をとるところにあろうかと思いますが、これをささえる価格政策に欠陥があると私は思うのであります。先般農林大臣は、不足払い制度等を通じてこれの対策を考えておるということでありますが、先日農林
委員会においてこれをただしましたところ、事務当局は何ら具体的に検討しておりません。大臣がそういう構想を漏らされたという程度でございますが、このような貿易自由化に悪影響を受けつつある日本
農業の保護対策に対して、基本構想として、不足払い制度等次々と示唆しておられますが、この際その構想の概要等について明らかにしてもらうと同時に、
予算的措置等もいつの機会にこれをなさる御所存でありますか、明らかにしていただきたい。
-
○赤城国務大臣 不足払いにつきましては、現在大豆とか、なたねについてとっておることは御承知のとおりでございます。そこで、自由化に対応して農産物に対してどういう対策を講ずるか、関税定率の調整とか、あるいはまた財政的な措置ということで従来もやってきておりまするし、また、今後もその点で進めていくという考えでございます。しかし、その財政的措置という中に、不足払いという考え方もひとつ検討してみる必要があるんじゃないか。イギリス等では非常にこの制度が拡充されておることは、御承知のとおりでございます。市場のきまった価格に対して標準価格等の差を補給するといいますか、不足払いをする。しかし、日本の農産物につきましては、零細農でございまするし、非常に農家の数も多い、生産物の種類もいろいろ多いのは御承知のとおりでございます。そういうことでございますから、にわかに、何年度からこれをやるとかというようなことは、いま申し上げる段階にはいっておりませんが、不足払いという制度も検討してみる必要があるんじゃないか、こういうことで、実は事務当局等に検討を命じておる次第でございますけれども、いま、いつごろからそれをやれるんだ、どの種目についてやれるんだというようなことを申し上げる段階には、残念でございますが至っておりません。
-
○
足鹿委員 所得倍増計画のアフターケアの
分科会の検討によりますと、自由化によって、各種農産物の価格水準は現行水準よりかなり大幅な低落を来たすと述べております。中でも、畜産物、牛乳は現行水準の五割ないし八割、肉牛は五割ないし九割程度まで下がり、場合によっては、いずれも現行の約二分の一程度になる可能性もあると言っておるのであります。いわゆる
所得倍増計画の中で一番おくれた
農業、中小企業、これのアフターケアの
分科会がこれをはっきり指摘しておる。しかも、これは現行関税率の場合のことでありまして、さらに関税が一括引き下げの体制になるといたしますと、影響は甚大になることは申し上げるまでもございません。アメリカにおいてすらも、酪農品をはじめといたしましてウエーバー方式をとっております。たとえば小麦とか綿花というようなものは、かつては永久にこれは保護をしております。いわゆる義務の免除規定というものを発動して、しかも二十数種類にわたって輸入制限等の措置を講じ、また、最近のヨーロッパのEECにおきましても課徴金方式を設けまして、CIFと国境価格との差額が倍程度になるような課徴金制度をとっておる国もあるのであります。こういう、あなた方が非常に模範としておられるアメリカのやり方を見ましても、EECの新しい無関税同盟の方向を見ましても、後進廃業としての
農業保護政策についてははっきりとした政策を立てておるのにもかかわらず、わが国においてはきわめてこれがルーズであると私は思います。
農業基本法第十三条は、必要があれば関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとすると規定しておるにもかかわりませず、
政府は次々と関税率の引き下げの方針をきめ、近く関税率の軽減に関する措置等も国会に提案をされると聞いておるのであります。私は必ずしもアメリカのウエーバー方式あるいはEECの課徴金方式をそのままおとりなさいとは言いませんが、これらの各国においてとられておるのにかんがみましても、少なくともこの際何らかの措置を講ずる段階が来ておるのではないか。それを、ただ単に、不足払い制度等についてもいまだ何ら具体化しておらないということは、これは、大臣がしばしば言明されたにもかかわらず、事務当局がこれの即応態勢を示しておらないということは、怠慢と言っても言い過ぎではないと思うのでありますが、この点について、必ずしも不足払い制度に限らず、いま述べたようなアメリカにとられておるウエーバー方式、あるいはEECに行なわれておる課徴金方式等を行なって、
国内農業を保護育成して、もっと国際競争力に対する培養財源にする、あるいは施策の財政的裏づけにするという基本的な検討をすべきだと思いますが、大臣のこれに対する基本的方針をこの際明らかにされたい。御所見があれば承りたいと思います。
-
○赤城国務大臣
所得倍増計画の中間検討におきまして、いまのままで国際価格と日本農産物の価格とを比較すると、いま御指摘のような結果が出ております。何らかの措置をとらなければそういうことになる。でありますので、自由化する場合には、いまの
農業基本法にありまするように、関税率あるいは財政的な面から措置を講じていかなければならぬと思います。その中におきまするやり方におきまして、ウエーバー方式とか、あるいは課徴金制度とか、いろいろございます。日本といたしましても、重要農産物につきましては、私は、輸入の制限をいたしまして、これを自由化するということは容易にやるべきものじゃない、米麦、酪農品、でん粉、こういうものにつきましてはそう考えております。でございますので、一面においては、そういうような財政的あるいは関税の税率の面におきまして措置をとって、日本の農産物が不測の損害を受けたり、あるいはまた日本の
農業がつぶれるようなことがないように措置をとりたいと思います。また、反面におきまして、やはり日本の農産物の生産コストというものは、確かに先ほどの御指摘のように高くもなっています。できるだけこの生産性を向上してコストを低下するということに対する
農業政策全般としての方途も講じていかなくちゃならぬ。両面から、日本の
農業が立ち行くように、自由化の波に洗われないような措置をとる、こういう方針を進めていくつもりでございます。
-
○
足鹿委員 ただいまの御言明にもかかわりませず、一例を申し上げますならば、最近、
政府が考えております果実の自由化問題の第一弾ともいうべきバナナの関税定率が引き下げられました。昨年の四月から自由化されましたが、一年間の輸入は二十七万トンに達し、前年実績の三倍半の多きに達しておるのであります。しかるに、最近
政府は、これを七〇%の関税から五〇%に引き下げるという方針をもって対処して、近く具体的にこれを関税定率法の改正として国会に提案をする、こういうことに聞いております。私は昨年の果実の暴落の実例から大臣に一つ申し上げておきますが、二十世紀ナシのごときは、昨年の九月十六日ごろから値下がりを始めまして、バナナの最盛期にぶつかりますや、正確に言って、大阪市場においては九月十六日から四賀目一箱、鳥取県のものでありますが、五百円を割っております。長雨その他で品質は低下して、粒は小さかったようでありますが、一箱五百円を割っておる。しかも、市場からはもう出荷をしなくてもよろしいという出荷差しとめの電報や電話が入るという始末で、大恐慌を来たしておる。これは確かにバナナの自由化に影響されたものであるということは疑う余地がない。また、リンゴにしろ、その他のものも大きく影響を受け、関係業界こぞっての関税定率五〇%への引き下げを思いとどまってほしいという切実な声は大臣の耳にも届いておるはずである。にもかかわらず、ただいまの、各種の方策を講じて日本
農業を保護するのだと言われる一方において、大蔵省はそういうことを次々とおやりになつておる。いわんや、農林省と何らの事前協議もなくして大蔵省が行なわれるはずもないと思うし、したがって、これは
政府の方針であろうかと思います。近く三月十八日は東京においてアメリカのフルーツショーが計画されておるということも不安の種でございます。今後この種の不安はちょうど黒雲のように
農民の上に、日本
農業の上に大きくおおいかぶさってきつつあると思うのでありますが、こういうふうに、おっしゃることは、質問に対してはただいま述べられたような御
答弁をされながら、事実おやりになることにおいてはその趣旨に反することを具体的にやっておられるのでありますが、この関税定率の問題については大蔵大臣に伺いますが、農林省と合議の上、このような日本の果樹
産業、特に選択的拡大として
政府が奨励をしておるものにそのような措置をおとりになることになったのでありますか。農林省も了承の上でおやりになったのでありますか。といたしますと、先ほどの農林大臣の御
答弁とは、私は御
答弁の中身が逆ではないか、このことを指摘したいのでありますが、両大臣からこの点について御所見があれば承りたいと思います。
-
○
田中国務大臣 自由化に対処しまして農畜産物の
国内保護という問題と、また、自由化をしなければならないという両面に対して十分な配慮をしなけれ、ばならぬことは言うを待たないわけであります。この農産物というものに対しては、西欧諸国でもたいへん問題があります。しかし、ガットにおいて低開発諸国は特に先進国に対し一次産品に対して関税の引き下げを強く求めておる事実も、御承知のとおりであります。しかも、低開発国につきましては、日本のような国は出超でありまして、片貿易というような状態でもありますので、これらの問題に対しても苦慮をしておるわけでございます。しかし、何分にも
国内の自由化に弱い農畜
産業に対しましては十分の方法を考えなければならぬということで、自由化に対しては、一括自由化というのではなく、品目別に十分事情を調査をしながらこれに対応する。国際競争力に対応できるような措置をとりながら、特に関税政策におきましては関税率の引き上げ等も行なっておるわけであります。同時に、しかし、この一次産品につきましては、国民生一活上、また物価の上でも重大な問題もありますので、一部においては関税率の引き下げも行なったり、引き上げ・引き下げに対しては弾力的に対処をいたしておるわけであります。
-
○
足鹿委員 私が聞いておりますのは、先ほど農林大臣は、
国内農業を保護していくための不足払い制度その他必要な措置を検討を進めておる、こういう御
答弁があったにもかかわりませず、関税定率法の改正が出されておるということは、その内容において不一致ではないかということです。つまり、あなた方は
国内農業の保護のためにたとえばウエーバー方式というものはガット二十五条の関係等で現在はなかなか困難な実情になっておる。そこで、ドイツのごときは残存輸入制限方式という方式をとって、事実上においては
国内農業の保護に懸命になっておる。日本の
農業の止血性をはるかに上回っておるヨーロッパ、あるいはアメリカその他においてすらも、やっておるのに、なぜ日本においては、この品目別に見た場合、バナナを一例にとって見た場合にも、農林大臣のおっしゃることとあなた方の関税定率の取り扱いとが不一致になるのかということです。その点を私は聞いておるのであります。
-
○
田中国務大臣 御承知のとおり、いま国会でお願いをしておりますものは、鶏肉、牛乳につきましては関税を引き上げる、それから、カリン、ツゲ、タガヤサン、バナナも入っておるのでありますが、関税を引き下げるということを、現下の諸情勢に対処してお願いをしておるわけであります。バナナにつきましては、御承知のとおり、もう半年、一年前からずっと問題になっておるわけでありまして、五〇%に引き下げるということでありましたものが、リンゴとの関係、またナシとの関係等もありましたので、急激に引き下げられないので、一応七〇%にし、めどをつけて、この時期が来たら五〇%にしようというような考え方で、漸減的な方法を
政府部内としては決定をいたしておりますので、今般、いろいろなものに対する影響等を十分勘案をしておりますが、その方針のもとに御審議をお願いしているわけであります。
-
○
足鹿委員 私はブロイラーその他については若干の定率を上げるという御
答弁について別に異議を持つ、ておるわけではありません。バナナは七〇から五〇にし、そうして最終は三〇にするという方針を
政府は出したのだ。御存じでしょう。現在これを五〇にして、そうしてさらに最終的には三〇にするということを御確認なさっておるが、いろいろと選択的拡大の関係、関係果樹業者、すべての国民の声から、あなた方もやむなくこれを漸減方式に切りかえておられる。これはたいへんなことになるのですよ。しかもそれは
政府が責任を持って選択的拡大で奨励をしておる果樹に致命的な打撃を与えようとしておるのでありますから、農林大臣の御
答弁と大蔵大臣のただいまの御
答弁は、中身において、いかに農林大臣が一般論的な構想を述べられても、中身が違うということを私は言っておるのであります。これをどう是正されるかということを私は農林大臣にさらに承りたい。いまお聞きのような状態がありますが、それをお認めになるのでありますか。アメリカその他ドイツの例を申し上げましたが、ガットに抵触しているという場合においては残存輸入方式すらもドイツにおいてとっておる。なぜ日本においてそういう保護政策がとれないのでありますか。おかしいですよ。
-
○赤城国務大臣 その保護政策をとりつついままでもやってきたのでございます。でございますから、今度もブロイラー等につきましては、関税率を上げるという方針でございます。バナナにつきましては、配慮が少しおそかったのでございます。おそかったけれども、結果的には私はいろいろ考えている面もございますので、私どもが考えておるよろな方向にこれからでもいきたい、やらしたいという気持らは持っておりますが、提案といたしましては、いままでの案のとおりに七〇から五〇、こういうふうに提案はされることだと思います。
-
○
足鹿委員 微妙な御発言をなさっておるようでありますが、私もそういう微妙な点は知らぬではありません。ここであえてぶちまこうとは思いませんが、そういう点を頭から知っておって、そしてこれを関税定率法で提案をしてくることに気がつくことがおそかったというような態度は、日本
農業の死活の問題に関係することについて、おそかったでは、農林大臣、少し軽過ぎるのではないかと思うのです。それは微妙な点で、今後に対処されなければならないと思う。われわれもそうあるべきだと思う。しかし、そういうことが品目別には行なわれつつある、そういう事態を私は問題にしておるのであります。はっきりここで御言明になってしかるべきだと思うのですが、今後考えるところがあるということでありますから、十分お考えになって、ただいまの御言明の裏づけが実現するように、今後も品目別に対策を練られ、そして
国内農業保護に遺憾なきを期せられたい、このことを強く申し上げておきます。
これに関連をしまして、生乳の取引紛争と
国内の酪農振興問題、これもこの際明らかにしておきたいと思いますが、選択的拡大の中心をなしておる問題であります。これは脱脂粉乳の問題等はすでに論議になっておりますから、あえて私はこれ以上申し上げませんが、乳価が下がる、しかも飼料は高い、こういうことから、最近の酪農事情の一端をこの際申し上げますと、全国の乳用牛、成畜でありますが、全国の居殺数は、三十七年度十月現在において二万二千六十七頭から、三十八年度は二万八千六百九十二頭となり、前年同月対比で一五四・九、すなわち五割四分九厘も屠殺数が激増しておるのであります。これは
政府の統計が示しておるのであります。この傾向はさらに本年に至って増大の一途をたどりつつあり、深刻な事態に立ち至っております。これはどこからこういう事態が起きたかと申しますと、一昨年の十一月明治、森永、協乳、雪の四大メーカーの乳価の一方的な引き下げが行なわれました。ただ通告によって行なわれた。国会の大問題になりまして、当
委員会でも私も追及をし、農林
委員会においても追及の結果、当時の
重政農林大臣が復元の言明をなされ、一応これが復元を見ました。ところが、これがまたもや昨年の十月から青森、岩手、秋田、群馬をはじめ、十県の都道府県において二円の値下げが一方的に通告され、現在に至っております。そこで各県は、生乳取引紛争に対しまして調停を申し立てました。
政府は東畑四郎、長谷川清、大月農林漁業金融公庫副総裁、この王氏を任命して、二月十一日から中央調停が始められました。これは日本の、この種の対策としては画期的な意義を持っておるとわれわれは注目しておったのでありますが、このような事態になったということは、関係者が申請をし、また中央調停が始まったということは、昨年の九月十日、全国酪
農民大会実行
委員会の代表者が、赤城農林大臣に衷情を訴えて面会をしてお願いをした際に、農林大臣の御勧奨によってなされたものだと聞いております。間違いないと思います。すなわち、大臣は、当時値下げは不当であるが、農林省が公式に生乳取引に介入するためには酪振法に基づき中央調停を申請してほしいと強くすすめられた事実に基づくものであると聞いておる。なおこれと相一致するように、九月十一日付をもって、農林省は調停申請の処理についてという
畜産局長通牒を各都道府県知事あてに発しております。これに基づいて、この勧奨に従って、前記四県の生産者団体から調停申請がなされました。そこで伺いたいのでありますが、調停の結果はどのようになりましたか。大臣はその実情を知っておられますならば、この際明らかにしていただきたい。
-
○赤城国務大臣 お話しのような経過のもとに、調停員三人がきょうもやっておるはずでございますが、連日当事者を呼びまして、調停を続けておるわけでございます。その前に、私どもといたしましても、業者を呼んで、私どもの意向は強く訴えておりましたが、いま調停にまかせておりますので、私どもいま介入はいたしておりませんが、連日夜おそくまで調停に奔走いたしております。解決の早からんことを、またいい解決が出ることを期待しておるところでございますが、調停員の手にかかっておるときでもありますので、私のほうではいま口を出すということはしておりません。
-
○
足鹿委員 この中央調停は、調停審議会でありまして、結論が出なければそれまでであります。何ら強制的に結論を出す権限を持っておらない。最終的には農林大臣の責任においてこれを始末されなければならぬことは申し上げるまでもありません。このような事態になったということは、農林省の行政上の不手ぎわ、また畜産事業団が、乳製品の成り行きが不十分な際に、機敏な機動力で、バター等の買い上げ発動をやらなかった、それがメーカー側の言い分となって、夏場奨励金の打ち切りという形で十府県に行なわれ、そして最後まで残って中央調停まで持ち込んだのが、前記四県である。でありますから、これは中央調停が行なわれておるが、それが結論を見なければわからぬということを大臣はおっしゃいますけれども、結論は、もうすでに本朝の新聞によると、ある程度メーカーのほうが先手を打って、四月から復元措置をとる、奨励金をことしの四月からことしの九月までは二円の復元をやろう、こういう趣旨のことをきめたと報道しております。一斉に新聞紙が報道しておる。そうすると、この調停は何を調停しておるのですか。これは御存じないはずはなかろうと思うのです。すでにそういうことになりますと、去年の十月ごろあるいは九月ごろに、乳製品の過剰ぎみのときに、畜産事業団をして買い発動をしておられましたならば、業者の言いがかりはなしに、こういう事態はなく、あるいは早期に解決がついたかもしれない。ところが、それを怠ったためにこのような事態が起きており、これが大きくクローズアップされかかって、業界のほうでもあわてて、四月を目途にしてまた夏場奨励金にかわるべき措置をとろうとしておる。しかも四月から九月までということでやろうとしておる。といたしますと、あなた方は調停者にどのような方針をもって調停せしめられておるのか。つまりことしの四月からでは、その間の位下げはお認めになるのでありますか。十県のうらには、自発的に協議がととのって解決がついたのもある。最後に残ったものはことしの四月からという、この四社が先手を打てば、その間の期間はどうなんですか、遡及して復元措置を勧告されるのでありますか、前
重政農林大臣の際にも、この問題が大きな問題になって、そして全期間の遡及は実現しませんでしたけれども、それに近い措置がとられたことは御存じのとおりであります。こういう手ぬるいことでは、あなた方の最終的な行政責任としては全きを期したとは言いがたいと思いますが、農林大臣のこれに対する御所信と対策がございますならば、承っておきたい。
-
○赤城国務大臣 申すまでもなく、両当事者といいますか、業者と生産者団体との基礎は、自由契約になっておるわけでございます。しかし、一方的に値下げを通告するというようなことは、これは当を得てない、こう私どもは考えておりましたから、その点につきまして、業者側に、早くから、そういうことは撤回するように口頭ではよく話をしておったわけでございます。ところが、それが聞かないというので、調停に持ち込まれておることは、いまお話のとおりでございます。そこで、畜産の事業団等のバターの買い入れ等がいささかおくれたというようなことは、これはあると思います。そういうふうに消費面を拡大して、あるいは市場からバター等を事業団に買い入れるというような、そういう措置をとって、そうして消費面の拡大をはかってきておるのでございますから、業者としても、私はそれに対応する、報いるといいますか、だけの措置をとるべきものだ、こういうように考えております。そこで調停にかかっておる問題につきまして、公平に調停する立場でございますから、調停の人々に対して、こうせい、ああせいというような指令を私どもから発するわけには参りませんから、指令は発しませんけれども、調停員も、諸般の事情を考えて、出産者の立場を相当考慮し、また業者としては、事業団のことがおくれたからどうだということではなくて、何か採算面等を非常に強調しておるようでございますけれども、そういう両者の間に立ちまして、生産者の面を相当伸ばしていかなければならぬじゃないか、こういう立場から私は調停をしておる、こういうふうに信じております。そういうことでございますから、調停の情勢をやはり見ませんと、私どもが一方的にこれをきめるというような法的根拠もございません。勧奨はいたしますけれども、調停の結果がどう出ますか、もっと成り行きを見まして、私どもも私どもの立場を強く打ち出していきたい、こう考えております。
-
○
足鹿委員 雪印乳業は、二十六日、全国各地の支店を通じまして、四月一日から九月三十日までの間、夏季牛乳増産奨励金として、現行の取引乳価一・八七五キログラム当たり――一升当たりでありますが、平均六十二円、つまり二円の加算通告を発したと伝えております。としますと、調停も手おくれだ。事業団のいわゆる買い発動が十二月になされたときには、もうメーカー側の布陣は少なくなったときだから、これは事実上メーカーの金融の裏づけをしてやったようなものであります。そういういつも手ぬるいことばかりやっておいでになる。意識しておやりになっておるのか、あるいは迅速にいかない何か隘路があってそうなるのか知りませんが、この乳価対策、畜産対策というものは、いつも後手後手である。ほんとうに選択的拡大に伴う対策が的確に行なわれたためしはないといっても言い過ぎでないと思います。でありますから、ここで明らかにしておきたいことは、このような通知をすでに発しておるのですから、そういう事実を前にして、何を調停されようとしておるのか。つまり、去年の九月から行なわれたところの一方的削減を遡及して復元するということを目標に調停をしておられるのか。もしそういう目標で調停されておったら、これが話がつかなかったとした場合には、大臣は勧告をされる用意があり、濃密な行政指導をされる御用意があるかどうかということを、私は御所信のほどを聞いておるのであります。すでに、手おくれなんでありますから、あとで畜産事業団の問題については触れますが、そういう点について、いわゆる行政上の不手ぎわからきた責任は、農林省が始末をされるのが私は当然だと思いますが、いかがでありますか。
-
○赤城国務大臣 私は、行政上の不手ぎわということではないと思います。買い上げ等が少しおくれたというようなことはありましても、行政上の不手ぎわではない。やはり利益関係で業者のほうで突っぱっている、こういうような実情だと思います。私どもは、県の調停にいく前から、事務当局におきましても、行政的に業者に対して強く要請をして復元を期待いたしておったのでございますが、その後きまらぬままでここまで来たということでありますから、行政的に怠慢だというふうには考えていません。目標は、やはり遡及して復元する、こういう目標のもとに私は調停を続けておる、こういうふうに確信いたしております。
-
○
足鹿委員 遡及復元を目標に調停を続けておるということでありますので、もしその目的が達成されなかったときは、御善処あってしかるべきだと思いますが、その点はあとであわせて畜産事業団の運営と一緒に御
答弁を願いたいと思います。
そこで、この際、私は畜産事業団の運営の問題についてお尋ねをしておきたい。先般も農地開発機械公団が一億の
政府出資の増額の際に問題が明らかになりまして、自乗行政管理庁のほうにおかれましても、しばしば公団、事業団等に対しては常に重大な関心を持たれ、あの当時農地開発機械公団の問題を取り上げたときにおきましても、人事の採用の基準あるいは退職規程等について検討すると農林大臣も言われ、当時の川島行政管理庁長官も
委員会において言明をしておられる。ところが、最近はまたまた鉄道建設公団をはじめ、各種の公団、事業団がどんどんでき、しかも実力者と称する人々が、その人事について公然と発言をしておられる。われわれはそれを見て、いまから二年前、
昭和三十七年の通常国会においてあれだけ指摘したにもかかわらず、ひとつもこれが改められない。先ほども述べましたように、行政上に手落らはないとおっしゃいますけれども、バターの同じ買い付けをなさるならば、十月ごろに買い付けをしておられれば、いわゆるメーカー側の言いがかりは少なくて済んだはずなんです。それが迅速にやられずして在庫量が減ってから買い発動されますから、効果があらわれずに、結局メーカーを利益せしめるような結果になっておる。大体現在の畜産振興事業団の人事につきましても、指導体系がたるんでおるのではないか、このことを私は申し上げたい。一例をあげますと、現在の蓮池
理事長は、東北興業株式会社の総裁から酪農振興基金の
理事長を経て現在の中業団の
理事長に就任をしておられる。ところが、ふかしぎ千万なことは、あれだけ農地開発機械公団のときに問題になり、行政管理庁長官にしても、人事採用についての基準あるいは退職金規程等についてのいわゆる規定の再検討等を約束されたにもかかわらず――まあ東北興業からおいでになったことは
政府の人事権でありますから、私はこの際とやかく言いません。しかし、同じ仕事をしておって、酪農振興基金の
理事長をしておって、それが事業団に吸収されてまた
理事長に就任をされた蓮池さんに、百分の六十五の退職金が支払われておる。一体東北から基金の
理事長になり、畜産振興事業団に発展をすると、
理事長が同じいすにすわっておって退職金をもらって、また次の月二十万円か――二十万円以上になろうかと思いますが、とにかく私は金額を問題にしておるのではない。同じいすにすわっておって、同じ事業をしておっても、機構が変われば、そのつど月額の百分の六十五が支払われるという制度は、検討されてしかるべきではないかということを、農地開発機械公団の際にも問題にし、行政管理庁においても、採用人事の基準、退職金規程の問題については検討すると言っておる。実にずさんきわまる人事が行なわれ、そして退職金等の交付が行なわれておる。一体このような、乱脈とは言いませんが、このようなことが平然と行なわれていいのでありますか。第一そのような安易な事業団の首脳人事が行なわれるところに、畜産事業団が、このような酪農の重大な危機にあっても、機敏な、それこそ迅速果敢な手当てができない理由があるのではないですか。農林大臣並びに、特に私は山村行政管理庁長官に、このようなことに対して伺いたい。
昭和三十七年にすでに問題になった。自来、公団、事業団のものはどんどんふえていく。私は、
政府特別会計主義がいいか、あるいは公団、事業団方式がいいか、大きな疑問を持っております。愛知用水の場合には、外資を導入していかなければならぬから、あのような事業団ができた。それが一つの皮切りになって、その後もうとにかくむやみやたらに公団、事業団ができ、そしてとにかくあまり明朗でないと思われるような人事がどんどん行なわれ、いま言ったような、同じ事業の席にすわりながら、機構が変われば百分の六十五の退職金をとってまた次へ行く、また次へ行くというようなことが行なわれていいのでありますか。私は、決して金をとやかく言いません。問題は、二、のような甘い人事では、いわゆる部下への示しにもなりますまい。したがって、現在畜産事業団にしょわされておる重大な責任と使命が果たされないような運営の基本になっておるのではないか、そのことを私は申し上げておるのであります。この点は、行政管理庁長官は、ことばの上で善処するというような
答弁ではなくして、この前からの経緯にかんがみて、今後このようなことを妥当とお認めになるかどうか。この際、公団、事業団の、機敏にして、真にその設立の目的に合致するような機動的な活動をするためにも、ぴりっとした態度が私は必要だと思いますが、いかがでありますか。
-
○山村国務大臣 お答え申し上げます。
御存じのように、公団、事業団等の設立に対する発言は、行政管理庁といたしましては来年度の
予算からでございます。しかし、その間におきまして、公団、事業団等の特殊法人に対するところのいろいろな御批判がありますることは、私ども耳にいたしておりますので、これにつきましては、十分注意を払っておった次第でございます。実は来年度の
予算の内容におきましては、大体二十二の特殊法人の設立要望があったのでございますが、このうち、巖選をいたしまして八つにしぼった次第でございます。これは、やはり公団、事業団等を乱立さすべきでないという世間の声に十分耳を傾けた結果であるのでございます。
なおまた、この公団、事業団等の人事問題につきまして、いろいろと御批判のありますのも事実でございますので、この問題については十分検討いたしておりまするが、この際、私は、やはり全般的な、いわゆる退職公務員をどうするかという問題等につきまして制度的に検討すべき段階が参っておるという個人的な意見を持っております。しかし、これは検討中でございます。いずれにいたしましても、でき上がりました公団、事業団というものは、要するに、
政府としてはできないこと、事業団になって、公団になって初めて能率的な、もっと効果的な仕事の成果があがるという目的のもとに設立されたものでございまするから、その目的に沿うような事業運営がなされなければならないと信ずる次第でござます。
なおまた、御指摘の畜産事業団の問題につきましては、多少いままで本省が関与し過ぎるという点等もございましたことを私どもといたしまして監察いたしまして、この結果を勧告いたしておる次第でございます。おそらく農林省におきましては、この勧告に基づきまして善処されておるものと信ずる次第でございます。
-
○
足鹿委員 農林大臣、ただいま私が述べたようなことに対して、御所見はいかがでありますか。私は、その金をとやかく言っておるのではありません。同じ仕事をして、
理事長という名目は違いましても、同じところにおるのですよ。そういう甘い運用というものは、改めてしかるべきものであろう。
〔
委員長退席、青木
委員長代理着席〕
しかも公団、事業団、
政府関係機関の職員、労働君の待遇が必ずしもいいとは言えない。これはひどいのです。
政府機関なるがゆえに、さらに公務員よりも非常に劣悪な労働条件や待遇に甘んじなければならない実情も知っております。数えあげれば何ぼでもありますよ。資料はたくさんあります。私は多くは申し上げませんが、少なくとも畜産事業団には、補助金までも
政府は交付の権限を与えておられます。いわゆる第二の畜産局といわれるぐらい――この法案審議のときに私どもは、厳正な運営について附帯決議を付して迫ったことを覚えておりますが、こういう運営が、酪農問題の根本の問題にやはり関連してくる。ほんとうに事業団
設置の目的に合致するような運営をされていくように、今後監督、指導、あらゆる面においてもっと積極的な対策をおとりになりますかどうか。
また山村さんにもう一応承っておきますが、ただいまの御
答弁は、いわゆる採用人事の基準、退職等については検討する旨が、前の
委員会において
河野前農林大臣と前長官から御言明になっておるのでありますから、これはその検討の結果を公表されてしかるべきであり、ないならば、今後いかにするかということについては、なるべく乱立を避けてこれを縮小したという御趣旨はわかりますが、必要があってつくられるものについては、私はとやかく言いません。問題は、その俸給、人事等が、ひもつき人事であったり、いま述べたようなあまり芳しからざるような退職金の支給のしかたであれば、相当考慮してしかるべきだと思います。この点を重ねて、くどいようでありますが、農林大臣並びに長官からも、この際、重要な問題でありますので、明らかにしていただきたいと思います。
-
○赤城国務大臣 同じような仕事に移ったのに退職金をとっておるというようなことは、私は聞いておりませんが、そういうことは芳しいことじゃないと思います。それとは別といたしまして、畜産振興事業団がその機能を十分に発揮しているかしていないかということにつきましては、私も疑問を持っています。その発揮させないのが私どもの責任であるということも、これは感ずる次第でございますけれども、人によるのか、機構によるのか、あるいは資金面等によるのか、いろいろ問題があると思います。しかし、いまのような形では、私は全く満足どころか、不満でございます。大いに督励して、事業団の本来の使命をより以上達成し、活動できるように私は一そう督励、監督するつもりでございます。
-
○山村国務大臣 お答え申し上げます。
畜産事業団の内容並びにその運営等の問題は、これは私の
所管よりは農林大臣の
所管でございますので、お答え願ったとおりと考えます。ただ、全般的ないわゆる特殊法人のあり方につきまして
足鹿委員が御指摘になった問題等は、十分検討に値すべき問題だと考えまして、行管といたしましては今後十分善処をいたすつもりでございます。
-
○
足鹿委員 もっといろいろ事例をあげて申し上げたいのでありますが、こういう問題で時間を費やしておると、先の問題がやれませんので、別な機会に譲りますが、十分ただいまの御言明を具体化されることを要望しておきます。
旧地主補償問題について、官房長官並びに関係閣僚にお尋ねをいたしたいと思います。歴代の自民党
内閣は、農地補償は行なわないと言明をされてきております。ところが、池田
内閣は、補償とは実質的に同一である報償という名目のもとに行なおうとしておる。しかも本日の新聞によりますと、自民党三役の
基本方針は、農地報償関係は今国会で成立をせしめるということを決定したように新聞紙は報道しております。
昭和三十七年四月二十五日の自民党両院議員総会において、池田首相は総会の動議として報償措置、立法措置化が出されました際に、農地問題についてはここ数年来の懸案であったが、最近における各位のたいへんなる熱意の結果、案を出されたことは、愛国の情のほどが思われ、心から敬意を表します、先ほどの決議は、
政府として責任を持ってこれを行ないますので、党員各位に御配慮を願いたいと述べ、暗に報償の実施を約束したかのごとき御言明になっておることと相一致しておるのであります。いわゆる法律に基づいて、適性な対価をもって国が買収し、耕作
農民にこれが解放されたことが、最高裁の判例においても、適法措置として異議のないところであり、なお当時の実情を一応申し上げますと、一般解放者は、当時買収代金のほかに、報償金として田においては反当たり二百三十円――いまでいうと二百三十円でありますが、当時の価格としては相当なものであります。畑で百三十円の追加払いを受けておる事実もございます。これは報償金ですよ。そうすると、また第二次、第三次と報償をなさるのでありますか。要請があれば、二千八百億に達する巨額な報償措置を自民党の党議において今国会において出すということが、今朝の新聞に発表されておりますが、
政府はそのような大きな措置をおやりになる。どうして準備費やその他のものを措置されようとしておるのでありますか。おそらく交付公債等でおやりになりますから、本年度の
予算とは直接このものは関連はありますまい。しかし、準備措置等はいかようになさっておるのでありますか。官房長官の御
答弁をわずらわしておきたいと思います。
-
○黒金
政府委員 御承知のとおりに、本年度の
予算におきましては、農地被買収者の問題についていろいろと調査を行ない、その調査の結果を見ようというわけで、調査費を組んで、いま一比懸命調査をいたしております。したがいまして、来年度の問題といたしましては、格別の
予算措置をいたしておりませんで、その調査の結果出てまいります結論を待ちまして、何らか報償等の措置をする必要がございますれば、それを実行するに必要な
予算措置を講ずる考えでおります。
-
○
足鹿委員 昭和三十五年、法律によって設けられた農地被買収者問題調査会が調査した一万五千戸について、一般の農家よりその調査状態はよいという結論を得ておりますし、三十四年ごろに行なわれました自民党の調査でも、七千三百人のうち、生活保護家庭は一%、母子福祉年金の適用者は〇・二%と発表されております。また
政府は、法律に基づく調査会の答申がなされたにもかかわりませず、これは報償を必要としない、ただ生活困窮者や、またその家庭の玉のような英才を埋めることはよろしくないというので、育英資金対策等の国民金融公庫に二十億のワクを拡大し、生業資金並びに育英資金を出すという法案は、毎国会に提出をされ、現在まで未成立に至っております。こういう調査会の答申があり、それに基づく金融措置が一方において発案をされ、法律として制定をあなた方は望んでおいでになる一方、さらにまた二千八百億の交付公債を出すという基準を与党の自民党から迫られております。着々準備をしつつあるということでありますが、臨時農地等被買収者問題調査室を
設置して、実態調査、世論調査を行なわせられたそうでありますが、その結果はどういう結果でありますか。資料はできておるはずであります。この政令によりますと、
昭和三十八年四月六日政令第百十九号、
総理府水府組織令の一部を改正する政令、臨時農地等被買収者問題調査室を設け、調査会法が二カ年間の時限立法でこれが切れたにかわる措置として、あなた方は政令でもって調査を始められた。その調査を始められたその個票は、このような個票であります。農地被買収者実態調査票というものを各都道府県、市町村を通じて申告をせしめたのが、これであります。これを見ますと、全部は申告をしておらない、相当未申告のものがあるというふうに私は聞いております。このものの総トータルをしたものや、また世論調査をおやりになっておりますが、それらの資料をお出しを願いたい。当然これは国民の前にそれを明らかにして批判を受ける筋のものだと思いますし、今日までこれらの調査は、県や
農業委員会を使っておやりになり、今後もおやりになろうとしておりますが、
農業委員会にはどの条項に基づいて――農地法の番人としての仕事は
農業委員会法に明記されておりますが、農地被買収者の報償調査等についての職務規定は、私は
農業委員会法にはないと思います。なるがゆえに、農林省の
所管でやれという、やらないという、
総理府の
所管にこれを移すという、農林省へ持っていけという、現在さんざんもめておるということでありますが、今後このような出しっぱなしの調査票に基づいて、だれが、その正否を確かめることもしないで、そしていわゆる二千八百億にわたる交付公債を内容とする報償措置を講じられようとするのか。またその報償は、先ほど指摘したように、第一回の報償金は支払われておる。これらを含めて対価は正当であると認められておるにもかかわらず、これをおやりになろうと準備を進めておるということは、何事でありますか。どういう根拠に基づいて官房長官はさような御準備をなさるのでありますか、承っておきたい。
-
○黒金
政府委員 御承知のとおりに、本年度におきまして
総理府に調査室を設けまして、実態調査、世論調査あるいは基本調査、これを
予算をちょうだいして実行いたしておることは事実でございます。その中で、実態調査はおおむねできておりますので、その結果は御
報告申し上げてけっこうでございます。ただ基本調査なりあるいは世論調査なりは、実はこの年度一ばいかかって行ないますので、年度内に完結することもなかなか、容易でないようでございますが、ぜひこの年度内に、来年に繰り越さずに結末を得たいというので、鋭意調査を続けております。これもできましたら、ひとつ皆さまに差し上げて御批判を受けたいと存じております。
それから、その次に申し上げたいことは、いま申し上げましたように、ことしは調査の段階でありまして、何らか報償等の措置を講じなければならないんじゃないか、こういうことで調査をいたしておりますが、調査が全体整った上で結論を出して、その結論が出ました場合に、実行する必要があれば何らかの手段をしなければならない、かような考えでいま仕事を進めておるような次第でございます。
調査にあたりまして、
農業委員会にお願いいたしましたが、これは、いま御指摘のとおりに、何ら権限があり、こちらが指揮監督するような関係はございません。事実上お願いいたしまして、事実上お引き受け願ってお手伝いを願ったような次第でありますが、今後成案を得ました上で、一体どういうことになるのか、いろいろいま御指摘がありましたように、どこで主管したらいいのか、主任大臣についていろいろ議論もございましたが、いままでせっかくに調査を進めておりますので、調査をしておる
総理府、これを窓口にして
内閣総理大臣を主任大臣にするのが適当であろうと、
内閣の中の意見を一応取りまとめたところでございまして、どういう仕事をするのかということは、いま調査中でございますから、調査が整った上で十分慎重に検討いたす考えでございます。
-
○
足鹿委員 現在の調査及び世論調査は追って出すということでありますが、これはいままで行なった世論調査、その他の必要な調査でありまして、来年度の
予算の中に準備を進めていくという先ほどの長官の
答弁でありますが、どの項目に、そのような準備費は幾ら計上されておりますか。
-
○黒金
政府委員 先ほど申し上げたところが誤解があるようでございますから、いま申し上げましたように、これから調査の結果、どういう報償等の措置を講ずる必要があるか、これを結論を出しまして、必要があれば、そこから初めて仕事が始まるわけでございます。したがいまして、準備費は来年の
予算に計上いたしておりません。
-
○
足鹿委員 私どもの聞くところによりますと、三十九年度
予算編成にあたって、自民党と
政府は、十二月二十九日、総理、副総裁、大蔵大臣、官房長官、政調会長が次のような申し合わせを行なったと聞いております。
政府は、農地報償問題につき、三十九年三月末日までに調査を完了し、その結果に基づき措置することをきめ、この席上、四十年度実施のために三十九年度
予算の予備興から十億円を支出することと申し合わせられたと伝えられておりますが、大蔵大臣に伺いますが、そのような会合にあなたはおいでになったのでありますか。予備費から十億円の支出を要請された事実がございますか。その会合におられた方は、いまここでは官房長官と大蔵大臣二人のようでありますが、いかがでありますか。
-
○
田中国務大臣 与党との
予算に関する最終折衝段階であったと思います。そのような顔触れだったと思います。その前段のほうは、おおむねそのような決定をいたしたと思いますが、後段に対しては、決定はありません。
-
○
足鹿委員 官房長官に伺いますが、先ほどあなたは、これからいわゆる準備調査を進めるんだ、現在のは予備調査であり、これから行なうのは準備調査だというふうに御
答弁になったと思います。そうしますと、もう三月三十一日は近い。三月三十一日までに調査結果や世論調査のものが出るのを待たずして、自民党が昨日の三役の
基本方針できめて、そしてこの国会に報償措置の立法措置を提出することをきめたといわれる。そういたしますと、今度は、私どもはこれに絶対反対をするものでありますが、問題は、このような大問題が、ただいままで行なわれた予備調査や世論調査に基づいて、簡単に二千八百億の交付公債を交付していく、その過程にあって、から手でできるものではない。だから、その主管官庁問題をめぐってもめたし、また農林大臣も一応は拒否されたが、現にこの調査室は、農林省から出向しておる。今後も、主管省は
総理府にきめられても、農林省からおそらく出向されるでありましょう。そうしますと、表向きは、うしろ向きの姿勢の政策には自分たちは参画しがたいといっておきながら、事実しにおいてその方面のエキスパートでなけらねばこのような仕事はできないということになりますと、これは
総理府の
予算の中でそのようなものが使われるのか、あるいは相当膨大な十億円と私は申しましたが、相当の準備費を必要とすることは、これは疑いをいれない事実であろうと思う。人件費あるいはその他調査万般に関する準備をするということになりますと、これはたいへんな問題だろうと思うのです。本年度
予算において、どこからそれを処理されようとしておるのか、無処理のままにされようとしておるのか、その点いかがでありますか。
-
○黒金
政府委員 再々申し上げますように、現在調査中でございまして、その調査が終わった上で、何らか報償等の措置を講ずる必要があるかどうか、この結論を出さなければ、いまおっしゃるように、一体どこに
予算を組むのか、どんな
予算を組むのかということをお尋ねになりましても、まだ結論が出ていない段階でございます。私どもは、いま調査を一生懸命やりまして、この年度末までにぜひ結論を得たい、かように考えておりますので、御了承願います。
-
○
足鹿委員 党のほうでそうきめた、
政府はまだこれから年度一ばいかかって調査をするんだということでありますから、これ以上私は申し上げませんが、この際、先ほど申し上げました資料をひとつ御提出を願いたいことをお願いします。
農地改革の際の買収及び売り渡し農家の規模別、都道府県別総数(物納を含む)、金額、農地証券の処理状況。在村、不在村別とその現況等。二、被買収者問題調査会の答申及び調査の内容、
総理府調査室の実態調査、世論調査等の内容。三、自民党農地問題懇談会及び同財源小
委員会に提出した
政府の資料(国有農地の売り渡し、貴金属売り払い、国有林野売り払い、一般国有財産売り払いの現在額)。四、全国農地解放者同盟の役員、顧問、参与、都道府県の役員、都道府県別会員数、会費の徴収状況、以上の資料を御提示願いたいと思います。あとでこれは差し上げますから、正確に御提出を願いたいと思いますが、私は、いまの官房長官の御
答弁は、
内閣の大番頭として、これだけの問題をただ調査に籍口してこの際を切り抜けられることは、いささかうなずけない態度であろうと思う。どうせこれは予備費に依存をされるか、あるいは他に何らかの措置を講ずる方法に出られるであろうと思う。もし予備費を組んでおるといたしますならば、
憲法にも規定がありますように、予見し得ざる経費を予備費に計上するがごときは、
憲法は認めておりません。したがって、このようなことは、いわゆる党と一体の政党
内閣のもとにあって、意思を通じておきながら、この際の切り抜けのために先ほどのような御
答弁をなさったことに対して、私はきわめて遺憾の意を表して、一応先を急ぎますから次へ移ります。
-
○黒金
政府委員 ただいま
足鹿委員からの御要望の資料でございますが、
総理府におきまして調査しておりますものもございますが、全然調査してないものがございます。したがいまして、
政府部内の各方面にいろいろお願いはいたしてみますけれども、全部が全部出せるかどうかわかりませんので、その点はどうか御了承願います。
-
○
足鹿委員 経済企画庁長官に承りたいのでありますが、これは農林省とも関連がございます。地域開発の問題について、先ほど阪上
委員、
久保田委員等からも
質疑がありました。これに関連をいたしまして、私も具体的な点についてお尋ねをいたしますが、地域開発の先行投資として行なわれております農地、
農業用水等の開発とその多目的利用についての
政府の統一見解を、私はこの際明らかにしていただきたい。
私は、抽象論ではなくして、事実をもって長官の御
答弁を願いたいのでありますが、一例をあげますと、新年度
予算には六億七千万円の
予算が計上されております鳥取、島根にまたがる中海干拓淡水化事業の国営事業でありますが、これは八年間百三十六億の巨費を投じて、本年度を初年度として着工されることになっておる。この中海干拓淡水化事業は、中国地方開発促進法に基づいて中国地方開発審議会の答申した開発計画の中にも、干拓淡水化が定められ、答申をされております。この審議会は、企画庁に属して、二月の八日に答申がなされ、私どももそれを読みました。ところがこの中海干拓淡水化聖業について、
経済企画庁から委嘱をされて地元に調査に訪れた日本経済研究所
理事長根津知好たる人物が、中海干拓淡水化事業はやめたほうがよいと、重大な発言を現地で行なっておる。事業の着工を目前に控え、しかも法律に基づく審議会の答申まで受けながら、
経済企画庁が派遣をした目的は何であったか知りませんが、事業の二本の柱のうちの一本とも言うべき淡水化はやめたほうがいいということを言っておる。農林省側は、これに対して、運輸、建設、経済企画の関係各省との了解の上で計画されたことであって、そういうことはできないと言っておる。そして現地に無用の摩擦と混乱を起こしておるのであります。一体
政府が六億七千万の
予算を計上しており、その
予算の審議が行なわれておるさなかに、調整官庁であるべき
経済企画庁の委嘱した人物が現地に行って、正式の審議会の答申を否定し、国策を否定するがごとき発言をするようなことは、許されていいのでありますか。去年も来ております。
経済企画庁は、どのような目的でもって、どのような資格で派遣し、そしてそのような現地に波乱を起こすような発言に対して、どのような責任を持たれる御所存でありますか、この点を承りたい。
-
○宮澤国務大臣 根津とおっしゃいましたか、根津とか申す人物を私は存じません。その人が
経済企画庁の正式の委嘱によって現地に行きましたものかどうかも存じません。いずれにいたしても、
経済企画庁の方針は私が申すのが必然でございますから、私はそういうことを印したことはございません。
-
○
足鹿委員 あなたが申されたとは、私は言っておらぬのであります。要するに、調整官庁としての重大な責任を持たれておるあなたの指揮下にある人物の一人であることは間違いない。これは鳥取県の知事も、その人物に会っておる。
経済企画庁の委嘱をされた中海地区総合開発のための調査をしに来た人である。でありますから、あなたがそういうことを言ったと私は言っていない。
経済企画庁が、いわゆる
予算の審議中にあたって、このような一方的な発言をするような人物を派遣をされる、しかもそのこと自体重大な内容を持った発言をされるということは、不謹慎ではないか。むしろ総合調整のために、現地の知識の足らない人々に対してあたたかい指導を行なうならば、これはある程度わかりますが、そのような国の計画に乗り、開発審議会の答申にもあるものに対して、
予算の審議中に、現地に派遣してそのような放言をせしめる責任を問うておるのです。いまの御
答弁は、あまりにも官僚的じゃありませんか。あなたは、それについて、調査をして、そしてその結果をまた別な機会に
報告するという、そういう御
答弁があってしかるべきではありませんか。あなたが御存じないならば、部下もたくさんおるでしょうから、よくお打ち合わせになって、確かめて御
答弁を願いたい。いまのような態度は、不謹慎ではありませんか。
-
○宮澤国務大臣 それは調査をいたしてみます。しかし、私の申したことは少しも不謹慎ではないので、かりに調査を委託いたしましても――いたしたかどうか知りませんが、調査する軒がそういうことを言えるはずがないので、
経済企画庁の最終の意思は、私が申します。したがって、私がそういうことを申し上げておらない限り、そういうことは
経済企画庁の現益の意思ではないということは、先ほどの
答弁でおわかりのはずであります。
-
○
足鹿委員 この場のやりとりとしては、それで済むでありましょう。しかし、
経済企画庁の委嘱として現地へ行って、それがマスコミの新聞やテレビに出ておるのです。ですから、それはあなたの直接の責任だとはここで言っておるわけではありませんが、
予算の審議中にそういう人物を派遣するということ自体について、しかも、最終的にはだれが何と言おうともおれがきめるのだ、これは確かにそうでありましょう。このような者の発育によって国策が一々ひっくり返ると思いませんが、無用の混乱を現地に与え、しかも農林省と重大な見解の対立を示すような、国策を批判するような態度は、許しがたいのであります。十分御調査になって、このような事例の絶滅を期していただきたいと思いますが、いかがでありますか。
-
○宮澤国務大臣 それで真意がおわかり願えましたから、けっこうだと思います。なおそういうことがかりにございまして、それが役所の正式の委嘱を受けたものであるといたしますれば、厳重に注意をいたします。調査をいたしまして、この点はそういう事実があれば御
報告をいたします。
-
○
足鹿委員 それでは農林大臣及び自治省大臣にこの問題に関連をして伺いますが、農林省が行なうこの種の国営事業は、特定土地改良特別会計法及び土地改良法等によって行なわれるのであります。したがって農地、
農業用水の確保が目的であって、当然これは
農民負担を伴います。しかし、最近の
農業情勢からいたしまして、先行きの不安を抱いておる
農民は、みずから
負担をしてまでも
農業用水は要らないのだ、こういう気持ちもございますし、その
負担にたえかねている。これは愛知用水の実例におきましても、私どもは現地をしばしば見ましたが、事実であります。こういう場合に、二年間同町によって塩水を淡水化して、そして工業用水としてこれの利用の道を開く、あるいは埋め立て、干拓を行なって、将来低開発地域に指定して、開発促進法の適用を受けた地帯とか、あるいは新産都市の指定を受けておる地帯等はもちろんのことでありますが、しょせんは工業用地あるいは関連施設用地として転用されていくことは必至であります。またそれを拒む何ものもないと思います。といたしますならば、このような先行投資に対しまして、地元
負担をせしめることの可否、しょせんは多目的利用になることが明らかであるといたしますならば、当然多目的利用による収入等を予想して、一時国または地方公共団体が肩がわりをし、受益者たる
農民にかわってこれを
負担して、事業のスムーズな進行に努めるべきではないか。たとえばこの種の事業を行なっていく場合には、先行投資でありますから、土地改良法による三分の二の署名調印が必要であります。ところが事業の性質上、相田長期の展望のもとに行なわれるものでありますから、直ちに利益を得ない
農民は、なかなか土地改良法による調印ということが難航する。しかも
負担がこれに伴うということになりますと、いよいよもって難航する。そうした場合に、新産都市の指定も受けず、低開発地域の工業開発促進法の指定も受けない地域等において行なわれるこの種の先行投資に対しましては、
農民の
負担によるのではなくして、国または地方公共団体が府がわりをしていく措置が当然必要になってきやしないか。このことを、何らかの措置として、そういう
基本方針で農林省は対処されるかどうか。また、自治省はそういう点について関心を持ち、そういう方向に対処される御用意はございませんか。この点をお伺いいたしておきたい。
-
○赤城国務大臣 農林省で行なっておりますのは、初めから
農業用地として干拓なら干拓をいたしておりますので、初めからほかに
負担をさして工業川地として使うというようなことを考えるわけには参りません。しかし、いまの状況からいいまして、その過程においてそういう事情が出てきます。いま御指摘の愛知用水なども、工業用水に使うというようなことに相当話ができまして、
農民の
負担を肩がわりをするということで、自治団体等によりましてその
負担をする、こういう例は愛知用水等にもございます。でありますので、初めから
負担を軽減するためにほかに肩がわりをするということは、ちょっと無理でございますけれども、経過、状況等によりまして、行政的にいろいろ協議をして肩がわりをするようなことも進めてみる必要がある、こう思います。
-
○早川国務大臣
足鹿委員の御指摘のものは国営事業であると思うのですが、国営の事業でございますか。――これについては、地方団体が
負担をするということはできません。したがって、それに関連する
農業関連事業の補助分がついたようなかんがい、あるいは用水事業、これにつきましては、自治省といたしましても起債を見ておるわけでありまして、今後ともそういうことはやっていきたいと思っております。
-
○
足鹿委員 私の言わんとするのは、多目的利用が当然予想される、そういう場合に、いわゆる
農民負担を伴うこのような農地、
農業用水等の先行投資をしていくことには、少し無理があるのではないか。多目的利用を考えるならば、当然それにふさわしい
農民負担の軽減措置等を講ずるか、あるいは早川大臣がおっしゃいましたが、国営、県営たるとを問わず、現在の土地基盤整備あるいはその他の関連の
農業出産基盤、あるいは用水関係につきましては、構造改善事業といえども七割の補助しかありません。団体営においては、普通の土地改良においては四割五分しかありません。ですから県費をもってこれをまかないましても、あとに二割ないし三割は当然これは地方
農民が受益者
負担という形で負わなければならぬ。ところが、現実においてはその償却が、今度の農林漁業金融公庫法及び金融体系の整備によって一部改正はできましたが、償還期間の延長あるいはワクの拡大等は行なわれましたけれども、肝心な基盤整備については利率の引き下げが行なわれておりません。したがって、私は一例をただいまの事例に申し上げましたけれども、これを総括的に申し上げますならば、土地基盤整備あるいはただいま述べましたような国営の先行投資事業というようなものについて、地元
負担を地方公共団体が肩がわりをする、肩がわりをしたものに対しましては、国が利子補給の措置等を講ずることによって、急送に
農業近代化の基礎条件を整備せずして、私は日に
農業近代化を言いましても、これは実現できない。また、農林省がいかように土地改良法及び特定土地改良法等によってこれを進めようといたしましても、事実上において随所にそういう障害にぶつかって難航しておる。でありますから、当然そういう措置が、農林省、自治省、大蔵省等が一体となって総合的に進められない限り、日本
農業の体質を近代的に変えていく基礎条件は、いつまでたっても整備できないのではないかということを申し上げておるのであります。その必要をお認めになるのかならないのか、このことを私はお尋ねしておるのであります。農林大臣にも早川自治大臣からも、いま一応これについての具体的なことを、直ちにとは申しませんが、構想の一端でもありましたならば、この際明らかにしていただきたい、このことを申しておるのであります。
-
○赤城国務大臣 先ほど十分申し上げずに足らなかったかと思いますが、御承知のように国営等は国で仕事をいたしまして、あとから
農民に
負担をかけるわけでございます。でありますので、あとで
農民に
負担をかける場合におきまして、そういう工業用その他になった場合のことを勘案いたしまして、例を申し上げましたが、愛知用水のようなものは
農民の
負担を減らしていっておる。こういう関係の事情がございます。そういうふうに、これからも
農民負担の軽減は、あとでやる場合に調整いたしていきたい、こう考えております。
-
○早川国務大臣
農業の構造改善をはじめ、
農業行政全般につきましては、これを重視いたしまして、三十九年度は交付税の
農業関係の需要をさらに百二十億円ほど増加をいたしております。また、それに伴う起債につきましては、一般、単独事業債九十五億円の中から
農業のそういった基盤整備構造改善につきましては三十九年度も措置してまいる考えでありまして、
足鹿委員の御希望の線に沿ってかなりの投資をしておるということは御了承願いたいと思います。
-
○
足鹿委員 どうも時間がありませんので、まだ農畜水産物の流通対策及びもっと突っ込んだ兼業農家対策、肥料二法執行後の措置としての
農業政策としての肥料対策等々、いろいろと伺いたいことはございますが、与えられた時間がまいりましたので、以上は別な機会に譲ることといたしまして、私の
質疑を打ち切ります。
-
○青木
委員長代理 これにて、
足鹿覺君の
質疑は終了いたしました。
次に、山本勝市君。
-
○山本(勝)
委員 だいぶ時間がおそくなりまして、皆さんに御迷惑なことは重々承知しておりますが、しかし私も
予算委員としてぜひともただしておきたいという問題を持っておりまして、時間がおくれたからもうそれでやめてしまうというような無責任なこともできませんので、まことに恐縮ですけれども、しばらく御容赦を願いたいのであります。もちろん大臣、
政府にお伺いするのでありますから、ほかの
委員諸君その他お忙しい方は、どうか御自由にお帰り願ってけっこうであります。
それで私がお伺いしたいことは、大体三点にしぼるつもりであります。
一つは高度の福祉国家ということが
政府の大きな目標になっておりますけれども、この高度の福祉国家というのは一体どういう内容のものなのか、その高度の福祉国家の非常に明かるい面、輝かしい面と同時に、暗い面があると思うのでありますけれども、どういう点に暗い面というものを考えておられるかという点がまず第一点であります。
それから第二は、物価と国際収支の問題であります。
第三は、経済成長の結果として必然に免じてくる自由社会の危機に関してであります。
しかし農林大臣がほかにどうしても出られる用があって、時間がないようでありますから、農林大臣に最初にお伺いいたします。それは第三点に関するものであります。かいつまんで申しますと、経済は成長政策を取らざるを得ない。国民
所得はできるだけ高くしたい。ところが経済成長が進むにつれて、
農民とか中小企業者の数はだんだん減っていく。絶対数は減らなくとも、総体的に全就業労働者の中で、
農民及び中小企業者の数は減っていく。逆にサラリーマンあるいは賃金労働者と呼ばれておる、人に雇われて賃金あるいは俸給をもらって、人の計画した仕事を監督を受けながら仕事をして、その労働報酬を得て生活をするいわゆる人に雇われておる人々の数が、だんだんとふえてまいります。ところが、その人に雇われておる人と人に雇われないでみずから計画しみずから責任を持って仕事をする
農民とか中小企業者とは生活の様式が違うものですから、人に雇われて生活をする人はまず労働組合を結成いたします。労働組合というものは、これは自然の傾向でありますけれども、現に今日わが国におきましては、いわゆる革新政党あるいは革命政党を支持する、今日世界が二つに分かれておるように、
国内におきましても重要な問題になりますと、百八十度の絶対反対という態度をとる二つの――三つありますけれども、大きく分けて二つの政党に分かれておることも事実であります。そうしてわれわれ保守党の立場から申しますと、歴史とか伝統とか、あるいは義理とか人情とかいうものを非常に尊重しまして、そうしてそういう歴史や伝統の上に立っていく生活が健康な生活である。また隣近所の義理人情をよくわきまえていく者が健康な人間である。こういうふうに考えて保守政党として立っておるわけでございますが、経済の成長政策をとればとるほど、
農民や中小企業者がだんだん減っていって、そうしてわれわれが健康と考えていない立場をとっておる支持者がだんだんふえていくということは、これは私は単に保守政党にとっての重大な問題であるだけではなくて、健康とわれわれが考える社会を維持するために、非常に重大な問題だと思うのであります。そこで、どうしてそれなら、経済成長政策はとらざるを得ない、しかもその必然の結果として生じてくるこの組織労働者というものを、やはり歴史を尊重し、伝統を尊重し、そうしてわれわれが考えてみて健康だという人たちにすることができるか、そうして政党としてもわれわれ保守党を支持することができるようにすることができるかということが、私は、今日保守政治家に与えられた最大の課題だと思うのであります。
そういう立場で、実はいろいろなところに、各省に関係がしてくるわけでありますが、農林省の農林関係に関係したことで、赤城農林大臣にお伺いするのですけれども、急激な経済成長、急激な工業化というものが土地の地価を急激に高めてまいりました。私は、この都市近郊における
農業というものは、これまでのような田畑をつくるという
農業は成り立たぬと思います。いかに機械を使いましても、あるいはいかに努力してみましても、これだけ地価が上がってきたときに採算を考える
農業は少なくとも成り立たない。それが成り立つのなら、東京の日本橋や大阪の御堂筋でジャガイモ畑をつくってみるとよいと思う。どんなに機械を使い、資本を投じてみましても、日本橋のまん中でジャガイモ畑は成り立たない。程度は違いましても、一反歩二百万、三百万となった土地を基礎に置いて、そうして他の
産業と格差のないような、そういうそろばんで置いた
農業というものは成り立たないと思うのであります。しかし
農民がだんだん減っていくということは、
所得がかりにふえていきましても、大問題であります。ですから、私は、われわれの政党の柱となっておる
農民の数をできるだけ減らさないように、われわれが最も健康な国民だと考えておる、生活をしておる人を減らさないで、しかも
所得の増加、生活の向上をはかっていくにはどうしたらいいか、こういうことを考えてほしいということであります。
農民の数を減らすことによって、そうして一人で大規模な経営をすることによって、それで残った
農民は三けた
農業になる、四けた
農業になるというのでは――それは一つの方法ではありましょう。方法ではありますけれども、健康な国民がわれわれがあまり健康でないと考えているところへ移っていくという場合には、まず第一に、
農民の数を減らさずに、
農民の生活向上をはかるという方策を考えなければならぬと思うのです。それはどうしたらいいかということでありますが、いまここで私は、お忙しい中なので、
答弁を求めません。時間もありませんし、求めませんが、これは一つの大きな課題でありますから、それには急激な工業化というのは避けないと、二年や三年の間に地価が五倍にも六倍にも上がるといったような、そういう急激な工業化は、
所得は増加いたしますけれども、一方そういうわれわれの自由社会にとっては、重大な償うことのできないような一つの暗い面を持ってくるから、
所得一本で格差をなくしようというようなことで、あるいは国民
所得の成長の高いことをただ喜んでやるということは、少なくとも
農業政策といいますか、
農民の政策の立場からは考えねばならぬのではないか。まあこれは問題としてひとつ考えていただきたいということで、農林大臣お忙しいところ引き止めて相済まぬのですが、何か御感想があれば、伺っておきたいと思います。
-
○赤城国務大臣 たいへん大きな問題でございます。私は、
農民、中小企業だけが保守党であって、ほかはそうでないというような――傾向はありますけれども、たとえばアメリカのような国では、やはり
農民の数は少ない。しかし、共和党、民主党いずれも保守系でやっておる。やはり
農民の生活を豊かにするというようなこと、あるいは全国民の生活を豊かにするということが問題の解決だと思っています。そういう意味におきまして、いま工業化が非常に進んできていますが、急速に工業化を進めるということは、
農業に対していろいろ好ましからざる影響もあります。たとえば人の出ていくこともこのためだと思います。地価が高くなっているのもこのためだと思います。豊かにしなくてはなりませんが、急激な工業化ということにつきましては、私どももあまり好ましくない。やはり徐々にといいますか、計画的に工業化していくことが望ましい姿と思います。そのほかいろいろ有益なるお話を承りましたが、深く検討してみたいと思います。
-
○山本(勝)
委員 できるだけ
農民の数を減らさぬようにやることを、ひとつ考えてもらいたい。
それで今度は同じ立場から、農林大臣でなしに、
科学技術庁長官、通産大臣がおられないので、
田中政務次官に申し上げます。
中小企業対策でありますが、これまで
政府がやってまいりました中小企業政策は、大体金融をつけるということと、税金を安くしていく、この二つの柱でやっておったようでありますが、一体中小企業の振興というのは、中小企業のままで振興させるのか、あるいは中小の小は中に、中は大にというふうに、いろいろ金融その他のめんどうを見て、中小企業者を救うのに、中小企業者でないところへ成長さしていくというのか、その辺が私は少しはっきりしていないところがあると思うのです。大体私の質問は、政策目標がはっきりしてない点をはっきりしてもらいたいということが重点になるわけでありますが、中小企業対策は、中小企業のままでりっぱにやっていけるようにするのが、ほんとうの中小企業対策だと私は思います。しかしいままでのままでは、これは税金の問題は私は異論はありませんけれども、
政府がいろいろ金融をつけて中小企業を振興するというほうは、実は中小企業または中小企業者全体が栄えるのではなくて、中小企業者の中の何の何がしという、比較的普通の銀行へ行っても相手にしてくれそうな程度のものを、さらに金融を
援助してやるということになる。したがって競争関係にあるもの、猛烈な競争関係に立っておる中小企業者同士の間で、一方は
政府のめんどうを見てもらって、比較的有利な金利で仕事ができる。この人はいいんですけれども、そうでなしに、そのめんどうを見てもらえない人々にとっては、
政府の施策はかえってマイナスの影響を及ぼしてくる。競争をしている一方にハンディキャップをつけるということは、マイナスの影響を及ぼしておると思うのであります。しかしこれも政治問題として、いま私はすぐやめよというわけでもなし、またそれはそれで能力のある者を育てていくということは、ちょうど育英資金を出すようなものですから、それは非常なプラスの面もあるわけでありますから、問題にしませんが、しかし中小企業を中小企業のままで栄えさせていくために、一つ盲点があると思うのです。もし
政府がいろいろなめんどうを見ましても、技術の発達で大規模経営をすることによってコストが下がる、経営が大きいほどコストが下がる。技術が発達する場合には、いかに努力をしましても、私は中小企業は大経営のためにやられてしまう。現に企画庁あたりから出しておる文書を見ましても、だんだんと生産体は大きくなってきて、というふうに書いておりますが、確かにその傾向はありますが、大きい規模なるがゆえに小さいよりも能率が上がるんだという、そういう事実が存在する限り、私は中小企業というものは、政治的な考慮から振興するのは別ですけれども、実際に中小企業のままで大企業に負けぬようにしていくためには、小さな規模で能率の上がる技術を
政府がつくり出していく必要があると思うのです。
科学技術庁といいますが、私の考えでは科学と技術は性格が違うと思う。科学というのは――科学、技術と別に言っておるのですから、
政府のほうでも分けて考えておるのだと思いますが、科学のほうは私はあまり実用ということを考えないほうが、実は結果において人類に大きく貢献すると思いますけれども、技術はそうではなくて、必要は発明の母ということわざがあるように、必要があって刺激をすれば技術は発達する。だから戦争の場合に人を殺す道具が必要だということで、全力をあげて刺激をすれば、驚くほどの兵器が発達するのは、その一例であります。ですから、
政府が、中小企業の小さい経営のままで能率が上がる技術を意識的に養成していけば、私はそれは発達すると思う。現に農村におきましても、昔は思いも寄らなかった小さな耕うん機ができたということが――もちろんまだ十分ではなくても、
農業というものの生産性の小さな規模でも、能率が上がるようにしたと思うのです。ですから私はたとえば、これは私がいま言ったことでなしに、何年も前から
委員会でも言っておるのですけれども、なかなか言うだけで実際にはあらわれないのですけれども、たとえば特許庁でいま受付順に
審査をしておるということでありますけれども、ほんとうに中小企業を救うというのなら、小さな規模で能率が上がるような発明を申請してきたときには、これを優先的に取り上げて、そうしてそれに対しては、税金の面その他の面で
援助、つまり刺激を与えていけば、小さな規模のままで能率の上がる機械はどんどん私は発達すると思うのです。能率さえ上げれば、大きな規模でもいい。間接費がなくなるから大規模ほどコストが安いというのは、一般の常識ですけれども、しかし必ずしもそうではない。
科学技術庁長官として、中小企業対策について――通産大臣はおられないのですけれども、こういう考え方を入れる余地がないものかどうかひとつ伺いたいと思います。
-
○
佐藤国務大臣 先ほど来、中小企業対策としての金融あるいは税のお話も出ましたが、私は、私の立場から申しまして、
産業は大であろうが中小企業であろうが、あらゆる面において近代的な科学技術を採用することだと思うのです。これを普及し徹底さすことが最も
産業の本質を改善するゆえんだ、かように私考えております。したがいまして、ただいま御指摘のような発明、資金が足らなくて発明を実用化ができないとか、こういうものに対しましては、私どもも補助金まで出しております。また地方の発明センターなども、そういう意味において十分これを利用していただきたい、かように考えます。ただいまお話しのものは、商業のほうは別でございますが、製造業の面であれば、ただいままでの中小企業は多く部品のメーカーであるとかでありまして、こういう場合には部品専門の発明というものはあるだろうと思います。そういうものを十分取り入れるようにしていただくこと、これが体質改善のゆえんだろうと思います。お説のとおりであります。
-
○山本(勝)
委員 最初に私が申しましたように、
農民と中小企業者がわれわれ保守党の大きなささえ柱であります。
農民もできるだけ、これはできるだけというよりほかありませんが、急激に減らぬように、中小企業も、ただ大きな生産体になって、極端に申しますと、私は全国の
産業が幾つかの数えるほどの大経営になって、国民の大多数がそこへ行って、賃金をもらい、サラリーをもらって働く、そうして
所得は高い、消費も高い、生活は楽だということになった場合に、はたして――保守党なとは飛んでいくかもしれませんが、保守党の運命は別にして、私は自由社会というものが維持されるかどうかに疑問を持つのであります。ですから、中小企業者も中小企業のままで、むしろ小さな規模ほど能率が上がるというふうにして数をふやしていく。それには技術の面で、意識的に中小経営向け技術の振興に努力をする必要があるという点であります。
それから同じ立場でありますけれども、経済が成長し、
所得がふえていくにつれて、国民の総生産がふえていきますと、先ほど申しましたとおり、独立して経済をやる中小経営者や
農民の数が比較的減っていく、人に雇われて、人の仕事を、賃金をもらって暮らす人々の数がふえていく。これはもう必然の勢いでありますが、そうすると第三に、必然に生まれてくるこの労働者は労働組合を組織することは必然であります。しかし、その労働組合を組織した雇われた人々が、われわれと百八十度の考え方の違いを持っておる政党を必ず支持するなんていうことではなくて、全部が全部とはいかぬまでも、経済が成長するにつれて、ますます歴史を尊重し、伝統を尊重し、堅実なそういう国民になるようにするにはどうしたらよいかという問題であります。この問題を解決しなければなりません。労働大臣に、実はただ失業者をどうするとか就業率をどうするとかいうだけでなくて、私はこの問題を労働大臣の大きな課題にしてもらいたいと思ったのですけれども、労働大臣は、きょうはどうしてもやむを得ぬ御用で出られないそうでありますから、お伺いをすることはできませんけれども、私はその場合にこういうことが一つ大事ではないかと思うのです。
それは
所得よりも財産というひとつ頭の切りかえが必要ではないか、たくさんもうけてたくさん消費する、そして人生をエンジョイするということは、人間の本能でありましょうけれども、同時にわれわれが、ブルジョアをつくるというのではありませんけれども、少なくとも財産を持ちたいという意欲があって、そうして少なくとも自分の家、自分の屋敷、それに幾らかの菜園がついたような家を持った場合の労働組合員と、そうではなくて都市の周辺のアパートやごみごみした長屋に集団生活を送っておる場合とでは、私は非常に違うと思うのです。もし保守党が十年計画、二十年計画あるいは三十年計画でもいいですから、全国の世帯に、サラリーマンも労働者も菜園づきの自分の自家住宅を持たせるという住宅政策を立てて、そうして着々その目標に向かって進むということであったら、私はサラリーマンや賃金労働者がことごとくわれわれと反対の政党に走っていくということはないのではないかと思います。
先般建設
委員会で建設大臣に伺ったのですけれども、四十五年までに一世帯一住宅という目標で
政府はやっておるというから、その住宅というのはどういう住宅ですかと言ったら、まあ二間に、三間ですか、安もののアパートであるが、みなその数の中に入れているそうですけれども、そうではなくて、私は住宅政策における一つの所有形態というものが、これが人間の精神に非常な影響を及ぼす。借家に住んだ場合、土地は人のものだけれども、家だけ自分の家である場合、土地も家も自分のものである場合には、幾ら小さくても自分のものである。大きなホテルは、決して小さな自家住宅の代用物にはならない。どんなにきれいな、どんなに大きな公園でも、自分のうちの庭の代用物にはならない。店で買うてきたどんなうまいお菓子でも、だんごでも、草もちでも、母親がつくってくれた草もちの代用にはならない。こういう点を考えて、住宅政策においては、私は、自家所有の住宅を何年までに全国民に提供するというようにやっていくという考えを持つべきじゃないか。その場合に、何といってもたくさんもうけてたくさん使いたいというだけでなくて、財産を持ちたいという意欲がなければ問題になりません。
そこで、私は文部大臣に伺いたいのですけれども、今日義務教育の課程において、おそらく自由とか責任とかいういろんなことを教えておるものと思いますが、財産というものに対してどういう扱い方をしておられるか。私が心配をするのは、財産といえばすぐブルジョアを想像して、財産を軽べつするような考え方がむしろ一般に行なわれておるのじゃなかろうか、むしろ財産を持ちたい、
所得は少なくても蓄積をして、そうして自分の家屋敷を持ちたいという意欲を起こさす必要があるが、今日義務教育の課程で財産というものに対してどういう扱いをしておられるか伺いたいと思います。
〔青木
委員長代理退席、
委員長着席〕
-
○
灘尾国務大臣 非常に示唆に富んだ御意見と伺ったのであります。義務教育の課程におきましては、何しろ年齢の低い子供のことでありますから、あまりむずかしいことを教えるわけにもまいらぬと思うのであります。年齢に応じ、
学年に応じまして、いろいろと先生が手がけておるわけでございますが、やはりものを大事にするとか、あるいはこれを有効に活用するとか、そういうふうなことは常に教育の課程において指導いたしておるところでありますが、そのほかに、あるいは勤労を尊重する精神でありますとか、あるいは明るい家庭、こういうふうないろいろなことを教えておるわけでございますので、これが総合的に考えてみますと、大体あなたのおっしゃるような、あるいは期待せられておるような人間づくりができるのではないかと思うのであります。ただものを持てというだけの指導はいたしておりませんけれども、いま申し上げましたようないろいろな要素を子供のうちに身につけさせることによりまして、しっかり働いて楽しい家庭をつくっていく、自分でひとつ家もつくって明るく暮らしていく、こういう心持ちが起こってくるものと考えまして、そのような指導をいたしておるわけでございます。
-
○山本(勝)
委員 これはイギリスの話ですけれども、戦争中にアンケ-トをとった。戦争が済んで国に帰ったらどうしたいかというアンケートに対して、ほとんど大部分の者が、戦争が済んで帰ったら、小さくても自分のうちに住みたい、小さな庭でもついておるうちに住みたいという結果が出たということであります。これは重大な点ですから、ひとつそういうエンジョイするというよりも、財産を持って安定した健全な生活を送りたいという意欲を子供の時代から持たせる必要があると思います。もし自分の小さい家に住みまして、隣も自分の家ということになりますと、一月や二月、あるいは一年や二年一緒におるのではなくて、子供の代になっても隣同士ということになりますから、そこに近所隣のつき合いをしなければならぬという気持ちも起こります。しかし、今日の日本のアパート、あの高層アパートがことにそうだと思いますが、同じ階段から一階、二階、三階、四階と上がる。同じ階段の者は、新聞をとりに行ったりするときときどき顔を合わすことはありますけれども、隣の階段の者とは全然顔も会わせないし、あいさつもしない。親はいなかで生まれてきておりますから、歴史や伝統や人情をわきまえて大きくなってきておりますけれども、そこに生まれてそこに育った場合に、はたしてほんとうにわれわれが健康という人間ができるかどうか。これは、七年前には実は
予算委員会でそのことを言ったのです。そうしたら、女子大学であったか、団地の少年の心理に及ぼす影響という論文が二つ出たということを、ある新聞が私の質問に関連して書いておりましたけれども、これはただ家というようなものは寝るところだ、そこでめしを食うだけだというふうに簡単に考えないで、保守党の運命というか、自由社会の運命にも関係するほどに大きな影響を持つということを私は申し上げたいわけであります。
そのついでに、
佐藤大臣、おいそがしいようですから、ちょっと申しますが、これはいまの話にも関連するのですけれども、東海村の原子力研究所に非常にたくさんの共産党員が入っておるということであります。これは、私、ここに材料がありますが、いまあまり申しません。とにかく原子炉のそばに共産党の班があり、たくさんの者がおるということは、これは重大なことだ。それだけ申し上げて、これはひとつ御研究を願いたいと思います。ほんとうの
農民とか、自分の家屋敷を持っておる中小企業者、われわれの保守党を絶対に支持するような人にはそういうことはあまりないと思いますけれども、生活様式が人に使われて、人の命令で仕事をしておる人は、どんなに努力しましても、常に上と下との緊張関係に置かれておりますから、
政府を攻撃し、雇い主を攻撃する政党を自分たちの味方と考えるのは、自然の勢いであります。そうして、それがやがて今日の事情になっておるのですけれども、しかし私は、道はないではない。いま言ったように、自分の家屋敷が持てるのだというような政策をもし保守党が掲げるなら、様子は変わってくる。現に東京や東京近郊の電電公社の組合員と、栃木や群馬の電電公社につとめておる組合員とでは、同じ組合でありながらまるで思想状況が違うということを、この間私は現地で聞きました。いなかでは、子供ができたとかお祝いがあったとかいえば、
局長のところへ招きもするし、おだんごができたといっては持ってくる。もう草加や東京の郊外では絶対にドライになって、そんなことはありません。やはり自分の家に住み、自分の家から通っておるということが、私は重大な影響を持つと思う。それだけで大臣けっこうですから……。
そこで、福祉国家について、これは、厚生大臣いらっしゃいますか。――まあほんとうは文部大臣、私は最後まですわっておっていただきたい。これはほんとうに重大問題だから、ほかにやむを得ぬ用があれば別です。しかし、聞くだけでも聞いておいてもらいたい。御承知のとおり、高度の福祉国家の建設が高く掲げられておりますが、福祉国家というのは一体どういうことを意味しておるのか、厚生大臣にまず伺いたいと思います。
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小林国務大臣 これは、私どもはごく卑近に申しておるのでありますが、福祉国家というのは、住民の一人一人が物心ともに豊かな暮らしのできるような社会が福祉国家だというふうに考えております。
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○山本(勝)
委員 おそらく厚生大臣のみならず、総理大臣も大蔵大臣も、皆さんが大体そういうふうに解釈しておられるんだと思います。国民の福祉をできるだけ高く、豊かな生活を送らせたい、幸福な生活を送らせたいということであろうと思います。しかし、特に福祉国家ということばは、もともとこれは日本語じゃありません。厚生省のあなたの部下たちの解釈は違いますよ。福祉国家というのは、英語のウェルフェア・ステート、ドイツ語のヴォールファールト・シュタートの翻訳と考えております。簡単に申しますと、社会保障が徹底した国、この一番大きな柱を申しますと、社会保障の充実した国家、それをウェルフェア・ステートということばで言われておるのでありますが、もちろん日本の現状では、私は社会保障というものをもっと進めていかなければならぬと思います。しかし、これに対しては非常に暗い面、警戒すべき点がある。この点でも、私は七年前にここで堀木厚生大臣に、自由社会における社会保障の限界は何かという質問をいたしたのであります。今日なお私はその憂いを持たざるを得ないのでありますが、反動と言われちゃ困りますから、ドイツの総理大臣のエアハルトが、この福祉国家というものをいかに痛烈に批判しておるかということを、ここでまずちょっと簡単に申します。これはエアハルトだけではないのです。およそ今日最も新しいすぐれたドイツの経済のささえ柱になっておるような経済学者たらの共通な考え方であります。エアハルトはこう言っておる。もし社会保障という集団保障、これがだんだん進んでいくと、人のポケットヘみんな手を突っ込んでおるような国になる。あなたの世話はこちらでするから、おれの世話はあなたのほうでしてくれということになる。そうして、自分の将来におけるいろいろな困った場合の備え、自己で備えをするという精神が、これがある程度以上に進みますと弱まってくる。自分の親は子供がめんどうを見にやならぬ、あるいは自分の妻子は自分がめんどうを見にやならぬという精神は、自由社会における貴重な精神である。自分で責任をとる。しかし、どうしても不幸にしてそれをとり得ない者が出てくる、それを国でめんどうを見る、公的扶助をするというのが限界である。もし個人の備えを国で肩がわりをするんだという考えになったら、これは、自由社会というものは維持できない、こう言っておる。自由と責任は裏表でありますから、自分で妻をもらい、職業を選ぶことは自由、そのかわりその結果は自分で責任をとる。この大
原則がくずれてくるような、程度を越えたところに限界があるというのが私の考えであります。これはエアハルトもそう言っておる。それを、もう福祉国家という考え方でどんどん進んでおるけれども、それは惰弱な人間をつくる。この間、森戸辰男氏と近藤日出造氏との対談を、あの読売新聞の漫画で見たんですけれども、森戸辰男氏が、社会保障の最も進んだ、福祉国家の進んだスエーデンの青年と、貧乏で女まで兵隊になっておるイスラエルの青年と比べたら、イスラエルの青年のほうがずっとしっかりしておる、こういうことを森戸さんにして言っておるのです。また、これもある本で読んだんですが、数年前のことでありますけれども、イギリスの下院である婦人代議士がとうとうとして福祉国家を論じた。イギリスの福祉国家はきわめて不十分であるということを主張する例として、老人年金が少ないために、自分のおとうさんはいかにみじめな生活をしておるかということをとうとうとして述べた。そうしたら、ある男の代議士が、あなたは代議士までしておって、もし、あなたのおとうさんが娘さんのあなたによって十分に扶助されないということであったらば、あなたが恥ずかしいと思わねばならぬのですよと、こういう注意をしたという。そのことを書いたある学者は、この婦人代議士が父親を例に引いて、そうして
政府に迫った態度というのは、イギリスの社会保障、福祉国家が非常に不完全である、少ないという論証ではなくて、これが進んでいくと、いかに人間の自然の感情というものがなくなっていくかということの論証だ。子供が親に孝行し、親のめんどうを見るというのは自然の感情である。貧乏人ほど親孝行である。だから、それは、
所得がふえていきまして、社会保障が進んでいきまして、そういう自然の感情が弱まってきたという証拠であるということを言っておりますが、私は、日本においても、いま現在そこまでいっておるとは申しませんけれども、しかし、高度の福祉国家ということを政策目標として立てていくときには、いつでもその限界はどこにあるか、自分の生活、あるいは自分の親の生活、兄弟の生活のめんどうを見るという精神が弱まる程度まで程度を越えてやったら、これは人つくりにもならないし、健全な国家にはならないのじゃないか。それをちゃんと頭に置いてやっていかないと、大臣は心配ないと思いますが、いまの福祉国家、社会保障を言っておる人々は、多々ますます弁ずで、所縁さえ多ければ幾らでも増していくという考え方があるのですよ。現に、月に百万円も月給をとっておる人に年金を与えるという制度ができております。われわれ代議士に幾らの年金がつくのか皆さん知らんでしょうけど、皆つくのです、国民全部につくのですから。あの国民皆年金ができるときに、私は実は厚生大臣にも言い、党の中でも言ったのですけれども、そういう五十万も百万も月給をとっておる人になぜわずかの年金をやらなければならぬのか。そんなところへやる金があるのなら、わずかでも因った人のところへやるべきじゃないか。それを、そういう国民皆年金、皆保険という「皆」という字に魅力を持っているのがいまの福祉国家、集団保障の考え方であります。そういう点で、どういうふうに厚生大臣はお考えになっておるか、伺いたいと思います。
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○
小林国務大臣 私も山本先生の御意見は非常に共鳴するところがあるのでございまして、社会保障というものは、決して惰民をつくるとか、あるいは自立精神をそこなう、あるいは個人の創造力あるいはくふうを妨げる、こういうものであってはならない。このことはあくまでも政治家としては考えなければならぬ、かように考えておるのでありまして、まだ日本では、不幸にして限界を論ずるような時代がいつ来るかというようなことは、相当先の問題でありますが、考え方として、社会保障というものはあくまでもやはり自立精神を生かす、個人のくふう、創造力を生かす、個人の責任を生かす、こういうふうなたてまえでいくべきものである、こういうことであります。ただ、何ぶんにも世間でいわゆるマイナスをカバーする、あるいは身体の障害、精神の障害、あるいは病気、または働けない、こういう者をやることは当然であるのでございますが、要するに、あなたのお考えのようなことは十分これは頭に置いて考えなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。
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○山本(勝)
委員 皆さん、だいぶん時間がたってもじもじしておるようですが、八時十二分までということなんですけれども、幾らかは私は縮めます。しかし、まだ七時半でありますから、用でお困りの方はどんどんお帰り願ってけっこうですが、もう三十分だけいただきたいと思う。
物価問題に移ります。これは、企画庁の長官、大蔵大臣が主になりますが、私は、
政府のいろんな説明やら番いたものを読んでおって、消費者物価と、それから一つ一つの物の価格、それから一般の物価、つまり通貨価値を反映する一般すべての物価の平均をあらわす物価と、この三つのものを区別して書いておるようでもあるし、混同しておるようでもあるし、どうもそこがはっきりしないと思うのですがね。なぜ私がそれを申すかといいますと、一般の物価の安定をねらっておるのか、消費者物価の安定をねらっておるのか、あるいは一つ一つの豚や野菜の価格の安定をねらっておるのか、そこがどうも混淆しておるが、一つ一つの価格やそのグループとしての消費者価格、これは局部的な価格であります。それと全体の平均である物価とは決定される事情が違う。性格が違うのですから、性格が違うものをはっきり区別しないでは有効な対策が出てこないと思う。企画庁の長官に物価と消費者物価と個々の価格とをはっきり分けておられるのかどうか、お伺いいたします。
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○宮澤国務大臣 観念としては分けて考えておるつもりでございます。
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○山本(勝)
委員 それでは、大蔵大臣にもひとつ伺いたいのです、が、成長安定ということを盛んに言っております。その成長安定というのは、私の理解するところでは、これは企画庁の方々の解釈は違うようですけれども、私は一般の世界の常識に従って、物価の安定のもとで経済の成長政策をとる、こういうふうに実は理解しておるわけなんです。ところが、世界には大体三つの見解があると思います。成長政策をとるときには物価はどうしても上がっていくし、幾らかずつ上がっていくのが望ましいのだという考え方が一つ。急激にたくさん上がっては困るが、二%や三%ぐらいずつならだんだん物価が上がっていくほうが刺激になって好ましいという考えが一つ。もう一つは、好ましくはないけれども、成長政策をとる以上は避けられないのだ、必要悪だという考え方が一つ。もう一つは、そうではなくて、物価が安定しておるほうが長い目で見て成長政策に好ましいのだ、上がったり下がったりするよりも、長い目で見ると、経済成長は物価水準が安定しておるほうがいいんだという、安定と成長が両立するという考え方であります。アメリカの上院、下院の合同
委員会の研究の結論は、この第三の見地だと思います。物価は安定しておるほうが成長政策にも好ましい。OECDも私は同じ考えの上に立っておると思うのですが、いまの
政府はこの三つの考え、物価と成長との関係においていずれの上に立っておるのか、それを大蔵大臣にひとつ伺いたい。
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○
田中国務大臣 現実問題としましては、成長政策をとっておりますときには、物価が多少上がりぎみである、好ましいことではないけれども、事実そういう傾向にあるということは事実であります。が、しかし、成長政策と物価の安定ということは両立しないのかといいますと、私は、両立をする、また両立をさせなければならない、こういう考えに立っておるのであります。
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○山本(勝)
委員 そこで、先ほど来
足鹿さんの議論にもだいぶ出てきましたけれども、一つ一つの価格は、これは私は安定さすことができないものだし、安定さしてはならぬものだと思う。それは、生産が自由であり、消費が自由である、いわゆる供給が自由であり、需要が自由であるということ、生産が自由であり、消費が自由である以上は、ニンジンをつくるか、大根をつくるかは自由です。ニンジンを食うか大根を食うかも自由です。この二つの関係できまってくるのがその価格、その価格だけを安定さすという方法はない。だから、農家の方がいろいろ自分たちがつくるものの値段を安定さしてくれと言うのは、これは無理もない、素朴な要求を持っております。それから消費者が豚の値段を安定さしてくれというのも、これも無理はないと思う。しかし、
政府はそういう安定、足らぬでも上がらぬ、余っても下がらぬなんというふうに、値段をいわゆる安定さしたら、これは市場経済というものは動きがとれなくなってしまう。足らぬときは上がるがよし、余るときは下がるがいい。足らぬとか余るとかいう現象は、出産が自由であり消費が自由である限りは必ず免れない。だから、価格は安定さすべきものでもなし、さすこともできないということを、大蔵大臣は承認されますか。
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○
田中国務大臣 私も大体そういう考えであります。しかし、この物価問題と個別の価格安定策というものと、いつでも議論はぶつかるのでありますが、特に与党である自由民主党の所属議員は、この問題でいつでも頭を悩ますわけであります。確かにあなたが言うように、価格というものは、自由経済のもとにおいては、需要と供給の結論として出てくるものが自由経済機構のもとにおける価格であります。しかし、日本に二つの議論があると思うのですが、戦前、戦後の非常に物資の乏しい時代に多数の国民が乏しい物資を分け合わなければならなかったというような状態で自由になっておるのでありますが、ある意味において名目は協同化でありますが、その業種が、業界で相当強い統制経済時代と同じような価格をきめておるということは、これは事実であります。そういう問題はあります。それからもう一つの議論は、農産品であるとかいうことで、どうしてもその業種を政策として育成をしていかなければいかぬ。ある一定の水準規模まで達するまでは、やはり一定の支持価格をきめて価格を安定せしめていかないとその経営基盤がゆるむということで、なるべく自由であるべき価格というものに対してある一定の安定度を持たして、いわゆるかんぬきを入れておる。これが行き過ぎると、余っておっても野菜は下がらないとか、いろいろな問題が出てきて、あなたのさっきの社会保障論と同じ問題が起きるわけであります。実社会においてそういうような状態を起こしてはならないということを十分考えてはおりますが、なかなかめんどうな問題であります。しかし、私は、いまの情勢上、物価も安定させなければいかぬ、また、価格安定ということも、ある時期ある業種においては必要である、これをいかにうまく調和をさせるかというところにいまの一番むずかしい問題があるのだと思います。
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○山本(勝)
委員 ここであまり議論しても、時間もないのでありますが、価格が上がる、いろいろなストップ令をかけたり、あるいは豚を輸入して安定さすというのでいろいろやっておりますけれども、いわゆる
政府の発表したものには二つのものがありますよ。一般物価を安定さすという通貨信用政策と、個別対策といって一つ一つの品物をいろいろいじくるやっと二つある。ところが、かりにある品物が上がるのを何らかの方法で押えたとします。そうすると、今度は押えたことによって購買力の余力ができてきます。その余力は必ずどこかほかのものへ突き上げてくる、ほかの消費財に突き上げてきますよ。ですから、物価水準がかりに安定しておるとしましても、あるものは足らぬから上がっておるやつを押えたら――それは力で押えることはできましょう、何らかの方法で抑えることはできましょうが、押えたら、そこでできた余裕は、今度はほかの購買力として、需要として向いてきますから、突き上げてきますから、結局一つ一つの品物の値段を押えることによって全体の物価水準を押えようという考え方は錯覚だというのです。たとえば、水面に一つの木の葉が浮いておった場合、これがこう上がっていくという中には、波がきて上がった分と潮が満ちてきて上がった分と二つを含んでいる。下がったときにも、波で下がった場合、潮が引いて下がった場合、それからそれが混淆した場合があります。この潮の満ち干の原因と、それから波で上り下がりするのとは理由が違う。何か相対的に需要供給のバランスで――
政府の発表にありますように、資源の配分がひずみを生じて、そうして、あるものは高過ぎる、あるものは安過ぎる、こういう相対的な問題は、これは市場経済を自由にして、独占をなくして競争を確保すれば直ります。しかし、いかに競争が行なわれる市場経済といえどもインフレを防ぐことはできない、インフレは別な原因から出ますから。もし
政府がどんどん通貨を出し、銀行が信用通貨をどんどん出して、物がふえる以上に金をよけい出していけば、物価水準は上がっていきます。だから、相対的な価格は市場の機能で調節できますけれども、全体の物価水準が上がるのを上がらぬように安定さすというのは、これは、どうしたって通貨政策以外に方法はない。
政府は通貨政策に、まあこれはがらがらと経済界に大影響がきたら因るという理由で――これは、もちろんパニックを生じさせてはいけませんけれども、しかし、全体の物価水準を安定さすといいながら、一つ一つの品物を押えれば安定できるのだという考え方は検討を要する。これは、経済審議会の物価
分科会の
報告を私は読んで、あの
報告の中でも、さすがに日本銀行の調査
局長の意見だけがその点を強く言っておるが、ほかの人は、全部、下から積み上げていって、個々の物価をいじくって全体の物価水準を安定さそうという考え方になっておるようです。時間がありませんから、もうこの辺でおきますけれども、とにかく問題は別なんだ。物価水準の安定をはかろうとするならば、個々の品物をいじくったらかえって経済は混乱するばかだ。むしろ
政府として自由経済をとるのなら、
政府としてやるべきことは大きな柱が二つある。それは、独占禁止法を公正に適用して、公正な競争を確保する、公正な競争をじゃましておるものを取り除いていくということによってバランスはとります。いまは確かに大臣がおっしゃったように、あちらにもこちらにも堤防ができておって、普通健全に動いておるからだなら、おしりに注射しても肩に注射してもももに注射しても全部に回るのです。ところが、いまは、しりに注射したらしりだけにぽこっと薬が残ってしまって、よほどもまないとなかなかからだに回らぬようになっておる。だから、その注射したものがすぐ回る、もし血をとれば、すぐ全部平均に減ってくるというふうに機能障害をなおすことが一つ。しかし、それをなおしただけではいかぬので、やはり物全体に対する通貨量、これは日本銀行の発行券だけではありません、銀行が出す信用通貨、さらに、私は、個人が出す手形なんかも、あるものはそれに属するものがあると思いますが、主として日本銀行券と信用通貨ですけれども、しかし、信用通貨は、なかなか
政府で取り締まうといったって取り締まれません。やれるのは日本銀行の通貨の調節だけです。これは、
政府と日本銀行が腹をきめればやれます。そうして、日本銀行の通貨がふえれば、やはり銀行の信用通貨もふえるし、日本銀行で収縮すれぱ銀行の信用通貨も減りますから、調節する場合は
政府自身でできるわけで、自分が握っておるせんをよほど適当に――慎重にやらなければいけませんけれども、それを動かせばいいのであって、何百万という国民がそれぞれ自分の採算で、事情を異にする人々が自分の採算によって仕事をやっておる。ものをつくったり、買うたり売ったりしておるものを、
政府が直接出ていってこいつを安くしてやるとか、これをふやしてやるとかいうようなことは、私はむしろ混乱を免じるばかりだ。うまくいけばいいけれども、これが、いかぬから、われわれは市場経済というか、自由経済の上に立って、そうして自由陣営に属して命がけで計画経済と戦っておるわけです。ですから、われわれが命がけで安全保障までやって守っておるこの市場経済を守ろうとするのならば、私は市場経済の機能というものをよく考え、それから物価安定に努力する、こういうことにひとつやってもらいたいと思います。それを、労賃が上がったから物価が上がるとか、運賃が上がるから物価が上がるとか、バス代が上がれば物価が上がるとか、そんなことは全部間違いです。そんなものは幾ら上がっても、全体の総需要と総供給――総需要というのは、貨幣経済においては金の量ですよ。金がない需要というのは、欲望であっても需要にならぬのですから、総供給と総需要、総供給は国民がめいめいやっておるのですから、これはなかなかわからぬです。しかし、総需要のほうの金だけは、
政府で一つの元のせんを握っておるのですから、それさえ調節をとっておれば、いかに労賃の引き上げ要求をしましても、それに応じて銀行が貸し出す、銀行に対して日本銀行が貸し出すということで通貨が膨張していくから全体が上がっておるだけであって、幾ら要求したって払えなければ払えやしませんからね。あまり大きな声して相済まぬけれども、また非常におそくまで皆さんにはどうも相すまなかったが、ひとつごかんべんを願いたいと思います。
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○
荒舩委員長 これにて山本勝市君の
質疑は終了いたしました。
次会は明二十八日午前十時より開会いたします。
明日は
玉置一徳君、
山田長司君、
村山喜一君、
大原亨君の順序で一般
質疑を続行いたします。
玉置君及び山田君の
質疑時間は、それぞれ
理事会で決定したとおり一時間三十分であり、村山君及び大原君の
質疑時間は、それぞれ一時間でございます。
玉置君の出席要求大臣は、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣及び労働大臣であります。
山田君の出席要求大臣は、大蔵大臣、
防衛庁長官及び
経済企画庁長官であります。
村山君の出席要求大臣は、大蔵大臣、文部大臣、労働大臣及び自治大臣であります。
大原君の出席要求大臣は、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣及び
防衛庁長官であります。
なお、明日は
理事会を開きますが、開会の時刻につきましては、公報をもってお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後七時五十一分散会