○
東海林委員 確かにお話のように、昨年秋の国際絹業協会の
理事会等の見解でも五%
程度需要は増すだろう。しかしそれには価格安定という大きな条件があるわけです。ところが、御
承知のように、これまでの日本における生糸の価格については、しばしばこの価格の安定ということを外国からも
要求され、国内でもそういう議論がありながら、ちっともそれが政策として実施されていないところに問題があると私は思うわけです。特に昨年の実例を
考えてもよくおわかりだと思います。生糸が一番高いときには、群馬県の例でたしかキロ四十八万円くらいにも上がったが、その後は二十四万円にも下がった。したがって繭について見ましても、養蚕の一番商いときは貫三千七百円もした。ところが夏秋蚕になると二千四百円
程度、晩秋になると二千百五十円、こんなふうな価格の変動がされておるわけです。
政府が
国会に出している
昭和三十九
年度において講じようとする農業施策の養蚕
関係を私はいろいろと見たのでありますが、確かに技術面についてのいろいろな施策は
考えられておるようです。特に自然上簇その他による省力飼育という点については
考えてもおられますし、また、これまでの養蚕技術面における研究進歩というものは、農業の各部門において最もその進歩が顕著である、また農業のほかの部分で行なわれていない共同化ということも、養蚕の面においては相当これが普及されておるという点については、私は技術者の研究なり指導に対して敬意を表しておるわけであります。ところが、価格安定政策という、
農林省なり通産省の
大臣みずからが本気になって
考えなければならぬようなことが、さっぱり
考えられていない。ただいまも指摘しましたように、昨年のごときは一〇〇%も値段が上がり下がりしている。こういうような事態に対して、そういう問題をどういうふうに根本的に解決しようとしておるのか。この農業政策を見ますると、いままでの取引所の公正な取引を指導するとか、そういう抽象的なことは書いてあるけれども、何ら具体的な政策はないのです。こういう抽象的な政策では、これまでもこのために
努力したはずだけれども、さらに実効が上がっていない。そういう点を、今後はこうやるんだということを具体的にはっきりと示さずに、ただ増産をされましても、なかなか農家は、はいさようでございますかと安心するわけにいかない。私は、この間群馬の私の知っておるある大きい養蚕農家に行って話を聞きましたら、昨年約三百貫とったという農家がございました。その農家の話に、実は三十四
年度政府が桑園の作付転換を指導しだしたので、これでようやく繭価は安定するだろうというので、従来五反歩しかなかった桑園を八反歩ふやして一町三反にした、おかげで非常に助かりましたと言っておりました。当時私も農村に行って、一体
東海林さん、
政府では減反せいと言っておるが、どうしたもんでしょうかという相談をしばしば受けまして、そのとき私も若干の研究をしておりまして、あわてなさんなということを言いまして、あとでよかったということになった。実はこれはまぐれ当たりでしたが、そういう例があるわけですが、養蚕に関する限りは、大体
政府の反対をやればいいということがいま常識になっておるわけです。したがってそういう場合に、特に私が指摘したような価格
対策等については明確な施策なしに、漫然と、ただ世界の需要がふえそうだから、こういうようなことでこれをやったのでは、また逆戻りせざるを得ない、これまでの轍を踏むようなことになるのではないかと私はおそれるわけですが、その他の価格安定
対策についてお伺いしたいわけです。特にいま世間では、結局生糸の値段というものは、横浜や神戸の生糸の取引所できめられる。あるいは乾繭の値段は前橋や豊橋できめられたのだが、そこではきわめて投機的な取引がされているではないか。いま日本の生糸の生産量は、御
承知のように、三十三万俵
程度でございますが、化糸取引所で取引されている量は大体二百万俵をこえておるといわれております。前橋の乾繭取引所の例等から見ますと、実物の取引が実際に行なわれるのは、取引量のわずか三ないし四%
程度だ。これが現在の生糸なり繭の価格を非常に変動させておる元凶だから、ああいうものは若干の機能はあるにしても、むしろ弊害が多いからやめたほうがいいというような議論まで出ているわけでございます。そういう取引所の改善等を含めて、この繭糸価格の安定についてどういうふうに
考えておられるか、この点はひとつ農林
大臣並びに通産
大臣の御所見を承りたいと思います。