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1964-02-15 第46回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十五日(土曜日)委員会におい て、次の通り分科員及び主査選任した。  第一分科会皇室費国会裁判所会計検査  院・内閣総理府経済企画庁を除く)・法務  省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外  の事項)    主査 植木庚子郎君       愛知 揆一君    青木  正君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    松野 頼三君       水田三喜男君    井手 以誠君       石田 宥全君    辻原 弘市君       横路 節雄君    今澄  勇君  第二分科会外務省文部省厚生省及び労働  省所管)    主査 相川 勝六君       荒木萬壽夫君    小川 半次君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       野田 卯一君    古井 喜實君       古川 丈吉君    石野 久男君       岡田 春夫君    河野  密君       山花 秀雄君    永末 英一君  第三分科会経済企画庁農林省及び通商産業  省所管)    主査 松浦周太郎君       荒舩清十郎君    安藤  覺君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       櫻内 義雄君    周東 英雄君       淡谷 悠藏君    加藤 清二君       川俣 清音君    多賀谷真稔君       小平  忠君  第四分科会運輸省郵政省建設省及び自治  省所管)    主査 稻葉  修君       井村 重雄君    今松 治郎君       江崎 真澄君    重政 誠之君       保科善四郎君    松澤 雄藏君       山本 勝市君    中井徳次郎君       五島 虎雄君    堂森 芳夫君       加藤  進君 ————————————————————— 昭和三十九年二月十五日(土曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 青木  正君 理事 櫻内 義雄君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井村 重雄君       稻葉  修君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    重政 誠之君       周東 英雄君    田村 良平君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       西岡 武夫君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    古川 丈吉君       松浦周太郎君    水田三喜男君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       加藤 清二君    角屋堅次郎君       五島 虎雄君    河野  密君       東海林 稔君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       中村 重光君    山花 秀雄君       今澄  勇君    小平  忠君       加藤  進君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 澄田  智君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  久宗  高君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   庄野五一郎君         通産事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君         通産事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通産事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         中小企業庁長官 中野 正一君         運輸事務官         (船舶局長)  藤野  淳君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  栄作君         建設事務官         (住宅局長)  前田 光嘉君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         総理府事務官         (臨時行政調査         会事務局長)  山口  酉君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十五日  委員江崎真澄君、田澤吉郎君、松浦周太郎君、  角屋堅次郎君、東海林稔君及び中村重光辞任  につき、その補欠として田村良平君、橋本龍太  郎君、西岡武夫君、河野密君、中井徳次郎君及  び石野久男君が議長指名委員選任された。 同日  委員田村良平君、西岡武夫君及び橋本龍太郎君  辞任につき、その補欠として江崎真澄君、松浦  周太郎君及び田澤吉郎君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置並びに分科員及び分科会主査選任  に関する件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を議題とし、審査を進めます。  この際、おはかりいたします。  昭和三十九年度予算審査のため、四個の分科会を設置することといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、分科会区分分科員配置及び主査選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。  よって、分科会区分は、従来のとおり、  第一分科会皇室費国会裁判所会計検査院、内閣総理府経済企画庁を除く)、法務省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外の事項  第二分科会外務省文部省厚生省及び労働省所管  第三分科会経済企画庁農林省及び通商産業省所管  第四分科会運輸省郵政省建設省及び自治省所管といたします。  次に、主査選任につきましては、   第一分科会主査  植木庚子郎君   第二分科会主査  相川 勝六君   第三分科会主査  松浦周太郎君   第四分科会主査  稻葉  修君 をそれぞれ指名いたします。  なお、分科員配置につきましては公報をもって報告することといたしますので、御了承願います。  なお、おはかりいたします。  委員の異動に伴う補欠委員分科会所属分科員辞任及びその補欠選任等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、辻原弘市君より議事進行に関し発言を求められておりますので、これを許します。辻原弘市君。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 議事進行発言でありますが、それは、去る二十九日、すなわち、本委員会審議を開始する冒頭に、わが党の川俣予算委員会理事から、特に委員長並びに政府に対して強く要求をいたしておる点が三点あります。それは、一つは、予算委員会審議を充実したスムーズなものたらしめるために、特に予算の各費目についての明細書をすみやかに当委員会提出をしていただきたい、いま一つは、営利企業就職等に対する承認の一覧表明細、これも提示をしていただきたいということ、最後にもう一つの重要な問題は、地方財政法三十条の二に基づく地方財政計画について、その内容をすみやかに当委員会提出せられたい、こういう要求であります。その後当委員会においてしばしば各委員発言にもありましたけれども、地方財政の最近の状況から、どうしても三十九年度地方財政計画提示されなければ委員会のスムーズな審議が困難である、したがって、政府は、すでに予算委員会が半ばに達し、また分科会が開始をされようという時期であるのに、一体これをいつ出してくるのか、また、すみやかに当委員会提示をして審議を充実ならしめるという気がまえが政府にはないのか、こういったことが、当委員会の、特にわが党委員の中から強く出ているわけであります。今後の委員会審議のためにも、この財政計画がいつ提示されるかということは重要な問題でありますから、この際政府に、その提出の時期、またその作業の進捗状況等を承り、あらためてすみやかに提出されんことを強く要求をするものであります。この点については委員長にも要求をいたしまして、委員長からも政府に対して善処するという確約を得ている問題でありますから、今後の審議状況に重大な影響を与える問題であるので、重ねて委員長にも要求いたしたいと思います。
  8. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの辻原君の発言につきまして、私からも意見を申し上げますが、実は本委員会の劈頭におきまして、ただいま辻原委員より発言せられました趣旨と同様の発言があったのでございます。審議の点に関しまして、辻原委員発言まことにごもっともだと思いますし、また当然国会としてやらなければならないことであり、また政府もそうお考えだと思いますが、これはすみやかに御提出を願い、審議に差しつかえのないようにお願いしたいと思いますが、ひとつ大蔵大臣から政府を代表して御答弁をお願いいたします。
  9. 田中角榮

    田中国務大臣 予算審議に必要な関係参考群類及び御要求書類に対しましては、可及的すみやかに作成の上、提出をいたします。
  10. 辻原弘市

    辻原委員 そういう程度のことは、あらためて伺わぬでも、大蔵大臣、それはわかっているわけです。予算委員会もあともうしばらくで分科会に入る。いわゆる後段に入ってしまう。われわれが要求をしたのは、予算委員会審議に差しつかえを来たさないようにということで、あらかじめ冒頭要求をしているわけです。すでに審議が開始されてから二週間になんなんとするのにいまだに出せないなんということは、これは政府は怠慢ですよ。われわれは、もしいま大蔵大臣の言われたような形で、ずるずると、ただ早急に提出をいたしますといったような程度でお茶を濁すなら、今後の審議については責任を持ちませんぞ。
  11. 田中角榮

    田中国務大臣 地方財政計画につきましては、来週初めに提出をいたしたいと存じます。
  12. 辻原弘市

    辻原委員 まあ大蔵大臣が来週初めということを確約されましたので、来週といいますると、月曜日、十七日であります。だから、十七日には……。
  13. 田中角榮

    田中国務大臣 十七、八日ぐらい。
  14. 辻原弘市

    辻原委員 十七、十八、この両日には必ず当委員会に出てくるものと了承してわれわれは審議の日程を組む、そういう考えでおりますから、さよう御承知委員長においてもお願いいたしたいと思います。  それから租税特別措置による昭和三十九年度の……。
  15. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。——辻原君に申し上げます。地方財政計画の例の提出書類は、十八日中に閣議を終えて提出するように予定されているようですが、おそくとも十九日までには出すということで御了承願えますか。——よろしゅうございますか。
  16. 辻原弘市

    辻原委員 はい。十九日、よろしいですね。
  17. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 大蔵大臣あるいは自治大臣はっきりしてもらわないと困りますから。——よろしゅうございますか。ちょっとお二人、よく聞いてください。十八日の閣議を経て、十八日中にはなるべく出してもらう、なお、もしなにがありましても、十九日中には出す、よろしゅうございますか。——それでは答弁してください。早川自治大臣
  18. 早川崇

    早川国務大臣 十八日中に出せると思いますが、万一印刷その他でおくれましても、十九日には出せると思います。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 その件は、十八日ないし十九日には必ず出せるということでありますから、さよう理解をいたしまして了承いたします。  なお、委員長、その他に各委員からそれぞれ各省に対して資料提示を求めておりますものが相当数あります。ところが、たとえば冒頭に、租税特別措置による本年度減税額は一体幾らになるかといったような資料についての提示も求めておりまするが、こういった資料提示もいまだに行なわれておりません。したがって、一括要求をいたしましたものはもちろん、各委員から委員会提示を求めた資料については、これもあわせて早急にひとつ御提出を願いたい。その点につきましても、委員長、御努力を願いたいと思います。
  20. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの要求せらるる資料、それらは政府におかれては責任を持ってすみやかに御提出を願うように、また審議に差しつかえのないように御配慮を願いたいと思いますが、政府を代表して、国務大臣田中角榮君。
  21. 田中角榮

    田中国務大臣 御要求書類は早急に取りそろえ提出いたします。     —————————————
  22. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次いで、これより質疑を続行いたします。  中村重光君。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 産炭地振興の問題について、大蔵自治労働大臣に一応お尋ねいたしますが、さらにまた、産炭地教育問題に対して文部大臣にお伺いしてみたいと思います。  石炭不況に付随しまして、各大臣承知のとおり、産炭地にはいろいろな問題が生じておるわけであります。中小企業は経営不振におちいっているし、農業は兼業化状態にある、さらにまた、地方自治体財政は全く破壊してしまっているという実情でございます。さらにまた、産炭地不況になってまいりますと、これに伴って、貧困に付随して起こってくるわけでありますけれども、青少年が非常に不良化している、そういう実に深刻な社会問題が発生をしつつあるわけであります。  石炭対策の問題に対しましては、御承知のとおりに、政府も前向きの姿勢をもって取り組んでまいったはずではございましょうけれども、現実にはスクラップの促進重点が置かれて、そうした石炭の山がなくなることにおいて完全に破壊されてしまう産炭地域の問題ということに対しましては、非常に消極的な取り組みをされておるということが言えると思うのであります。各産炭地地方自治体あるいは関係者から、そうした深刻な状態政府にも訴えてきておるはずであります。十分承知しておられると思いますが、これらの諸問題に対して関係大臣はどのような熱意を持って三十九年度に対処していこうとするのか、産炭地不況の問題を解決していこうとしておられるのか、まずそれらの点に対しまして、財政面から大蔵大臣地方自治体財政の問題に対しましては自治大臣産炭地中高年層労働問題もございますから、これらに対しましては労働大臣産炭地教育問題に対しましては灘尾文部大臣から、それぞれお答えを願いたいと思います。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 産炭地振興につきましては、政府も大いに熱意を持って対処いたしておるわけでございます。  三十九年度予算面におきましては、御承知のとおり、第一には、産炭地振興事業団に対し政府が二十億の出資を行ないますとともに、資金運用部から三十億円の貸し付けを行ない、自己資金二億円を加え、合計五十二億円の事業を実施することにいたしておるわけであります。  第二点としましては、産炭地域振興のために必要な諸施策の調査費といたしまして三千七百万円を計上いたして、調査促進をはかっておるわけであります。  第三点といたしましては、産炭地への企業進出促進をはかりますために、五大都市及び日本商工会議所の行なう企業進出のあっせん、調査等事務に必要な経費補助といたしまして八百万円、新たに計上いたしたわけであります。  第四点といたしましては、国土総合開発事業調整費のうちに、産炭地域産炭地域振興をはかりますために、調整費として計三億円の計上をいたしてございます。  それから第五点としましては、御承知の防衛庁の産炭地振興の観点に立つ陸上自衛隊の一部部隊の筑豊地区に対する移転ということで、五億八千百万円を計上いたしておるわけであります。  そのほか、御要求のございました日本専売公社田川地区におけるフィルター工場等は、年初早々操業を開始するというような考え方で一般会計財政投融資を通じましてできる限りの努力をいたしておるわけであります。  なおそのほかに、金融、徴税面の問題、地方財政等に対しても各般の配慮を行なっておるわけであります。
  25. 早川崇

    早川国務大臣 産炭地市町村財政が非常に逼迫してまいりましたので、自治省といたしましては、本質的には産炭地振興臨時措置法によりまして産炭地経済力をつけるというのが本筋でございます。そういう面から、われわれには、この振興計画を実施するために、企業誘致のための地方税課税免除または均一課税に伴う減収に対する補てん措置をまず講じております。  それから二番目には、産炭地域振興実施計画のもとで、市町村産業立地整備事業を行なっております。これに対しましては、地方債資金の格段の優遇措置を講じまして、充当配慮をいたしておるわけでございます。  なお、これは積極的にそういうものを起こしていくという方面でございまするが、財政の穴に対しましては、特に生活保護費失業対策事業費炭鉱離職者緊急就労対策事業費など、石炭合理化に伴って大幅にこれを増額された結果、市町村自治体負担が増大しております。この増大に対しましては、それを普通交付税に織り込むとか、あるいは地方債充当率を高めるとかいたしておりまするし、さらにその以外の面につきましては、特別交付税を特別に配分をいたしまして、大体二十億三十八年度はいたしましたが、本年度は、さらに配分につきましては実情に即して増額をいたしたいと考えております。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 産炭地離職者対策は、一昨年以来労働行政の最重点になっておることは御承知のとおりでございます。産炭地離職者につきましては、毎年計画を立てまして、そしてその再就職促進につとめてまいっておるのでございますが、御承知のように、昨年は当初の計画の後に予定以上に合理化促進されました関係上、離職者予定より上回る見込みが立ちましたので、年度中途におきまして再就職計画を変更して事態を収拾するにつとめてまいっておるような次第でございます。  明年度といたしましては、従来から産炭地離職者、ことに中高年齢者の再就職を容易ならしめまするために、離職者移転就職用住宅をつくっておりましたが、これを明年度におきましては大幅に増設いたすことにいたしておるのでございます。  また、産炭地職業安定所の職員は昨年一月増員をいたしておりますが、今年はさらに一般中高年齢者のために三百数十名全国を通じて増員することになっておるのでございまして、これの配置につきましても、産炭地実情十分考慮に入れ、産炭地事務促進をはかるようにいたしてまいりたいと存じております。   〔委員長退席青木委員長代理着席〕  また、昨年以来計画いたしておりました産炭地における職業訓練施設も、だんだん実際上開設の時期に相なっておりまして、相当なる収容をすでに見まして、業務を開始いたしておるような状況でございまして、大体この状況でまいりまするならば、産炭地の再就職問題につきましてはおおむね計画どおり遂行ができるものと確信をいたしておる次第でございます。
  27. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 産炭地教育につきましては、教育環境といたしましてもまことにむずかしいところでございますので、各教育委員会におきましても特に留意いたしておるところと存ずるのでありますが、ことに産炭地におきましては——ひとり産炭地だけの問題でもございませんけれども、特に少年非行化というような現象が目につくのであります。また、貧困児童が多いということも目についておる問題でございますので、文部省としましては、この少年非行化の問題は全国的に心配にたえない問題でございますけれども、特にそのような非行化少年の多い地域に対しましては、教育委員会の特別な留意を求めておるわけであります。また、生徒指導につきましても、その意味におきまして特に気をつけてやっていただくようにいたしておる次第でありますが、全体的に申しますというと、やはり生徒指導の充実という問題について今後格別な努力をしてまいらなければならないと存ずるのであります。  なおまた、御承知のように、今回学級編制あるいは教職員の定数の標準法が改正せられたわけでございますが、この改正せられました標準法運用にあたりましても、ただいま申し上げましたような非行化少年の多い地域でありますとか、こういうところに対しましては特に留意して教師の配置を行なうようにという話し合いをいたしておるわけでございます。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 各大臣から総括的なことを伺ったわけですが、具体的な問題に対してお尋ねをしてみたいと思います。  産炭地の不振によって地方自治体基準財政需要額がどの程度伸びているのか、また収入額はどの程度減っているのか、まずここ二、三年来の比率をひとつお示し願いたいと思います。
  29. 早川崇

    早川国務大臣 基準財政需要額は大幅にふえております。こまかい数字政府委員から答弁いたさせます。
  30. 柴田護

    柴田政府委員 総体的な数字はちょっと合計いたしておりませんが、三十七年度と三十八年度基準財政需要額で比較いたしますと、たとえば福岡県の産炭地市町村で申し上げますと、三十七年度基準財政需要額の総計が百三十五億に対しまして、三十八年度が百七十七億。基準財政収入額は、三十七年度が百十三億に対しまして、三十八年度が百三十二億。基準財政需要額伸びに対しまして、基準財政収入額伸びは非常に少ない。当然産炭地の情勢があらわれているわけでございます。  また、これを佐賀県について考えてみますと、佐賀県では、昭和三十七年度産炭地関係市町村基準財政需要額は十八億でありますが、これが三十八年度は二十一億。基準財政収入額は、三十七年度の七億四千万に対しまして、三十八年度は七億八千万、ほとんど伸びておりません。  大体いずれの産炭地関係市町村におきましても、いずれをとりましても、基準財政需要額は相当伸びておりますけれども、基準財政収入額はほとんど伸びていない、こういう情勢でございます。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 私が調査いたしておりますのでも、各年度わかっているのですが、三十八年度だけの基準財政需要額伸びは約五十億、正確には四十九億五千五百万円という数字になっておるわけであります。  先ほど自治大臣から、産炭地域における地方自治体財政を緩和するための措置がいろいろ明らかにされたわけでありますけれども、大臣が言われたようなことは、いつも対策としてそう措置するということが答弁されてきたのであります。ところが、現実にはなかなか大臣が答弁されたような形になっていない。そのことは、地方自治体財政が非常な不振の一途をたどっておるということが明らかであります。政府が統計をおとりになると、現実はもっとずっと進んできている、ずれてくるわけであります。そういうことから、手当てをしておるつもりではございましょうけれども、実際の実情に沿っていない、こういう形になるわけであります。  収入額としては、申し上げるまでもなく鉱産税が入ってこなくなりましょうし、さらには住民税、事業税その他の収入は減るわけであります。一方、生活保護費、あるいは失対、あるいは緊就その他、市町村財政負担は増加の一途をたどってきておる、こういうことになるわけであります。普通交付税の問題にいたしましても、ただいま大臣が答弁されたようなことでは、産炭地域実情に沿うことはできないのじゃないか。また、特別交付税をもちろん支給しておられるわけでありますけれども、それも先ほど私が申し上げましたようなことで、産炭地域財政の実態に沿っていない。こういうことになりますから、やはり行政措置だけではもう限界があるのじゃないか、私はこう考えるわけであります。  そこで、普通交付税の法制化、いわゆる算定の基準を変える、そういったような措置を講ずる必要があるのじゃないか。さらに、それで完全に補うことができないというものに対しては、特別交付税をもって完全にこれを補完するということが、もういまの段階では必要であると私は思う。それでなければ、いつも同じようなことばかり繰り返していくということになりますので、それらのことに対して具体的な考え方がないか、この際自治大臣考え方を聞かしていただきたい。
  32. 早川崇

    早川国務大臣 少し具体的に御説明申し上げますと、炭鉱離職者対策につきましては、地方負担額の六割に対しては起債を充当し、残る四割の地方負担額について特別交付税の対象といたしておるわけでありまして、しかも、その地方債の元利償還については二八・五%をこれまた特別交付税によって措置いたしておるわけでございます。  二番目は、大きい負担といたしまして生活保護費失業対策事業費の地元負担額でございます。これに対しましては、地方負担額から普通交付税基準財政需要額に算入した額を控除した残りを、これまた特別交付税によって措置いたしておるわけであります。  さらに、鉱害復旧事業についても地方負担額の八割については地方債充当し、残りの二割の地方負担額の八割を特別交付税の対象といたしておるわけでありまして、しかもその地方債の元利償還の五七%は特別交付税の対象としておる、こういう措置をとっておるわけでございます。  御指摘の線は、これだけでもまだ不十分ではないかという御指摘だと思うのであります。われわれといたしましては、普通交付税に何か新しい項目を設けるということは、普通交付税の性質上、産炭地以外のものにも当然需要額として入っていくものでありますから、むしろ起債あるいは特別交付税を増額するとか、そういった措置のほうが具体的で、産炭地に便乗してほかの地区まで財政が流れるということがないという意味において、私は普通交付税の改正というものは、そういう面では不適当ではなかろうかと思っておるわけでございます。何分にも実情は非常に逼迫いたしておりますので、産炭地市町村財政の補てんにつきましては、特別交付税配分の時期でもございますので、格別に配慮はいたしたいとは思っております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 大臣がいま答弁されたようなことで措置できないから、これを法制化をしろということが、これは私の主張でもありますけれども、産炭地地方自治体は強くそのことを望んでおる。大臣がいま御答弁になりましたように、絶対額がきまっている、その配分ということになってまいりますと、なかなか行政措置ということだけではだめなんです。だから、どうしても法律上普通交付税産炭地における算定基準を改めていく、そういうことが必要である。なお、それでも完全にいかないという点もありましょうし、普通交付税では困難な面も出てまいりますから、そこで特別交付税で措置するということを何かお考えにならなければ、同じようなことばかり繰り返していく。産炭地のあの深刻な状態自治大臣がお考えになるならば、いままでのようなことではだめだ、何か抜本的な対策を講じなくちゃならぬということをお気づきにならなければならぬと私は思う。もっと積極的な取り組みがあってしかるべきだと思うのでありますが、どうですか。
  34. 早川崇

    早川国務大臣 本質的には、産炭地の産業が非常に大きく革命的になくなってきたということでありまして、これは自治省あるいは地方行政ではどうにもならない問題でございます。さればこそ、産炭地振興臨時措置法というものをつくりまして、通産省その他が政府全体として産炭地経済力をつけ、補てんしていくという措置をとっておるわけであります。われわれといたしましては、自治体にできる限りの消極的な補てんということは措置をとっておるのでありますが、いま御指摘のように交付税法を改正して云々という問題は、多少技術的な面もございますので、財政局長からお答えさしたいと思います。
  35. 柴田護

    柴田政府委員 多少技術的にわたりますので、私からお答え申し上げます。  産炭地市町村だけに特別の算定をいたしていくということは、実は技術的に非常にむずかしい問題でございます。ただ、一般的に産炭地につきましては財政力が衰えてきておる、それをどういう形で反映していくかという問題が普通交付税を算定いたします場合には考えられる問題かと思います。来年度の交付税の算定にあたりまして、市町村分につきましても基準財政需要分の算定がだんだん合理的に、的確に把握できるようになってまいりましたので、一つは、基準財政収入額の七〇%方式を七五%方式に変えようといたしております。ということは、基準財政収入額につきまして、全体の市町村収入額を上げますので、貧弱市町村につきましてはそれだけ交付税が流れていくということになる、傾斜配分が強まるわけでございます。  もう一つは、市町村相互間の態容補正の割り落とし率というものをだんだんなくしてまいりましたが、三十九年度におきましても、この割り落とし率をなくする方向をさらに強めることにいたしております。  この二つの措置をとってまいりますと、需要面におきましては、従来の需要と収入との間差を考えますと、産炭地その他の貧弱市町村に対しまして交付税の交付額が多くなる、こういう措置が結果的に出てまいる。普通交付税の算定は機械的にやるものでございますから、特に産炭地だけをねらい撃ちにしてこうこうということは、実は非常にむずかしいのでございます。したがって、先ほどから大臣がお答え申し上げましたように、一部を起債で見て、その元利償還金を特別交付税で見ていく、こういう、非常に迂遠でございますけれども的確な措置をとってまいっておるわけでございます。いまのところの技術的なやり方では、私が先ほど申し上げましたようなことで、漸次その財政力の貧弱さというものを的確に反映していくという方法を強めてまいる以外にはないかと実は考えておりまして、そういう方向で一そう合理化につとめてまいりたい、かように考えております。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 ほかにいろいろお尋ねしなければならぬことがあるわけですから、この問題であまり時間をとりますと……。  ともかく技術的なことでむずかしい、現行法の中ではむずかしいからこれを改正すべきだということを私は主張しているわけです。できないことはない。やる気で取り組むならばこれはできるわけであります。だから、そのことを自治大臣に求めておるわけであります。  私は、先ほども申し上げたのでありますけれども、自治省が都道府県を通じて一つの統計をおとりになる。ところが、現実はそれよりもっと深刻に進んでいるのです。だから、ずれている。さらにまた、貧弱な市町村に対しては特別交付税等もそれだけ大幅に給付する形になるのだけれども、実際はなかなかそういっていない。やはり弱いものは発言力もどうしても弱くなってくるということがいまの姿なのだから、良心的にやっていらっしゃるつもりなんだろうけれども、実際はなかなかそういっていないのだ。だから、どうしても法改正をやって、算定基準を改めていくということにする必要がある、こう考えておりますから、そのことを強く要求しておる。このことに対しては特に検討していただきたい。実際の実情に沿うようにやっていただきたいということを強く要求いたしておきたい。  なおまた、国や県等の公共事業に対する負担率を大幅補助ということにするか、全額国庫負担にするか、何か実情に沿うようなやり方をしなければならぬと思いますが、これらのことについて検討されたことがあるか。まずこの点に対して伺ってみたい。大蔵大臣にもあわせてこの点に対してはお答えを願いたい。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 産炭地振興につきましては、先ほど申し上げたとおり、政府も各般の施策を行なっておるわけでございます。公共事業等に対して補助率を引き上げるということになりますと、これはいまの新産業都市の問題とか、低開発地の問題とか、いろいろな問題があります。補助率でいままで違うものは、北海道が太政官時代から全額負担ということできておりますが、これもできるだけ全国的に一律にしたいという方向でいま進んでおりますので、産炭地のような特殊な問題に対しては、特別交付税制度もありますので、地方財政の中で各般の施策を考うべきだというふうに考えております。しかし、国でも、先ほど申したようにいろいろな問題を考えておるのでありますから、前向きな施策をやっていることは御承知のとおりであります。
  38. 早川崇

    早川国務大臣 先ほどもお答えしましたように、公共事業なり生活保護費等の国庫補助率を引き上げるという措置はいたしておりませんが、実質上引き上げたと同じような措置を自治省としてはとっておるわけであります。すなわち、起債充当率を八割にする、さらに残った二割については特別交付税の対象にするというような措置をとりまして、実質上産炭地市町村は補助率が上がったと同じような、八割国庫補助くらいの程度まで措置をいたしておるということを御了承願いたいと思います。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 文部大臣にお尋ねします。  産炭地教育の問題に対しましては、先ほど片りんを伺ったわけであります。この産炭地域では、家庭が非常に貧困であるというところから起こってくると思うのでありますが、学童の長期欠席が激増しておる。短期欠席は言うまでもないわけでありますが、そういう状況はどらなのか。  それから、学力が非常に低下しており、低能児がふえてきておるというような状況にあるわけでありますが、これらの点に対して統計をおとりになっていらっしゃると思いますので、それらの点に対してお示し願いたい。
  40. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねになりました事柄について、詳細な資料を持っておりませんが、いまの、長期欠席の点については、御指摘のように、産炭地域における長期欠席の児童数は多いように思います。ここに持ち合わせておりますのは、五十日以上の長期欠席の生徒児童数であります。小学校の全国平均が〇・五八%でございます。これは福岡県の数字でございますが、〇・九%に達しておるようであります。また、中学校は、全国平均が一・二%でありますが、福岡県の産炭地の平均が一・三%になっておる。全国平均から見ますと、いずれも高い数字を示しておるようでございます。  そのほかの資料を実は持ち合わせておりませんので、お許しを願いたいと思いますが、   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 いずれにいたしましても、産炭地の児童の家庭がやはり貧困であるということは争えない事実であろうと思います。そういうことでありますので、貧困児童に対する政府の措置といたしましては、要保護児童、あるいは準要保護児童ということで、学用品その他の問題や、あるいは給食、こういうような問題につきましてはそれぞれ補助をいたしておりまして、その点はひとつ遺憾のないようにいたしたいと存じております。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま大臣がお答えになりましたことでも、産炭地域の学力というものは標準より非常に低下しておる、こういうことになるわけです。そうなってくると、これをそのまま放置するわけにいかないわけです。放置することができないとすると、どういう施策が考えられるか。学級編制の問題も考慮にのぼせなければならぬでありましょうし、それから学童の補導という問題も重視していかなければならぬ。そうなってくると、教職員の配置という問題も考えていかなければならぬ、こういうことになろうかと思いますが、それらの点に対して具体的な考え方があるか、まずその点についてお答えを願いたい。
  42. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生徒の補導がきわめて大事であるということは、先ほど申し上げましたとおり、私どももそのように心得ておるわけでございます。産炭地の学校の教師の諸君が、その意味におきましては非常に苦労しておられるということもお察しいたしておるわけであります。文部省としましては、近来の児童生徒の不良化の現象が著しいわけでございますので、いろいろな面を通じまして、生徒の補導につとめておるわけであります。特に明年度からは、生徒の補導に関する職員を地方に配置することにいたしております。同時にまた、学校の先生方に対する生徒補導についての指導もさらに徹底して行ないたい、このような計画を持っておるわけであります。おそまきながら努力いたしまして、この方面を充実してまいりたいとは考えております。なお、学級編成等のお話も出たのでございますが、産炭地からの御希望もわれわれ伺っております。今回の教職員定数の改正に際しまして、御承知のように、従来一学級五十人を最高とする、こういうような標準でもって教師の配当を行なってまいりました。これを漸次下げていく、五カ年計画でもって四十五人にまで下げようということでございます。これはただ最高を申しておるのでありまして、現実の各地方のそれぞれの学級につきまして考えますれば、三十人ないし四十人程度の学級数が多くなるのではなかろうか、かように考えておる次第であります。最高は五年間に四十五人にまで下げていこう、こういう標準のもとに教師の配当をいたしておるわけであります。そういうことでございますので、だんだんと一学級当たりの先生の指導力と申しますか、教育力というものは、従来よりもついていくのではなかろうか、このように期待をいたしており、また、その趣旨をもって法律の改正も行ないましたようなわけであります。この標準定数の問題について、産炭地の皆さん方から、一挙に四十五人に下げろ、こういう御要望もあるわけであります。現実がどういうことになりますか、いま申しましたように、必ずしもどこも四十五人という最高をきめましても、現実は三十人から四十人というふうなところが多くなる、このように私どもは思っておりますが、とにかく下げろということでありますから、この考え方につきましては、文部省としましてはにわかに御賛成申し上げるわけにいかない。つまり一学級当たりの生徒数、この標準は全国的に大体それぞれの足並みをそろえて進むのが適当ではないか。そこで、それぞれの学級における、ことに産炭地等における生徒補導の問題、生徒に対するお世話の問題、こういう問題について不十分でありますならば、学級編制の定数は全国一律にお願いしたいと思うのでありますけれども、なおその学校に対する教師の配当という問題についてくふうをしていったらいかがであろうか、このように思うのでありまして、これは、私は、政府の示しております基準に従って県全体の定数がきまるわけでありますから、その県全体できまりました定数の中から、各教育委員会において実情によっていろいろあんばいする余地はあると思います。産炭地におきましても、その程度の余地は私はあるものと思うのであります。したがって、各教育委員会におきまして、地方の実情に応じまして、各具体的な学校に対する教師の配当についてくふうを加えていただいたらいかがであろうか、このような趣旨でもって教育委員会にもお話はしておるわけでございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 いま大臣は、現実がどうなるか、その現実をひとつ見てから考えるという、率直に言ったら、極端に言ったらそういうことになるわけですが、私はそういうかまえではだめだと思います。産炭地の青少年が非常に不良化してきた、不良青少年が非常に激増しつつあるということは現実なんです。学力が低下している、これも実際なんです。だから、それならば、いま大臣が答弁されたように、学級編制がさきに成立した法律によって一名ずつ減ってくる、四十五名になる、そういうようなことはわかっておるんだ。ところが産炭地実情はそれじゃだめなんだ。ともかく補導もやらなければいけない、補填をやるということになってくると、勢い教職員は、一つのからだでそう多岐にわたる仕事はできないのだから、だからそれに対してどうするかということを、みずから進んで、中に入ってその実情と取り組んでいく、こういうかまえでなければならぬと思います。そこで四十名なら四十名にする必要はあるんじゃないか、四十名がいかなければ本則の四十五名に直ちに産炭地だけは直していくというような取り組み方をやって、実情と合わせていくというような形でなければならぬと私は思う。どうもいまの大百の答弁では、非常に消極的である。深刻なこの状態にそぐわないと思いますから、もう一回もっと積極的な取り組む態度をこの際明らかにしてもらいたい。
  44. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御趣旨はよくわかるのであります。ただ、現実の学級編制ということになりますと、それぞれの学校によって違うと思うのであります。現実にすでに四十人あるいは四十人以下の学級を持っている学校もあるのであります。必ずしも一様とはいえないのでありますから、したがって、やはりそれぞれの学校の実情というものは、その学校の生徒数によって学級編制が行なわれるわけでございますから、それによって考えていく以外にはないのではなかろうかと私は思うのであります。同時に、一つの教室内において何人の子供さんを扱うか、この問題は、私は、標準を立てるとすれば全国一様に考えてしかるべきものじゃなかろうかと思うのであります。四十五人あるいは五十人というものを、学校により県によりあまりバランスがとれないような扱い方は、標準としてはいかがであろうか、かように考えておる次第であります。  ただ問題は、学校の実情であります。いま仰せになりましたように、産炭地あたりの子供さんの非行化が著しい、あるいは先生の手が非常にかかってくる、指導にもよほど骨が折れるというような程度の差は学校によってあるだろうと思うのであります。そういうふうな実情に応じまして、教師の配当ということを教育委員会考えてもらったらいいのではないか、それをやるにつきましては、今回定めました法律に従って地方に配当いたしております教員の定数の範囲内でやりくりがつく問題ではないか、また県としても、学校の実情によって、この点を特に産炭地あたりについては考えていただきたい、こういうようなことを私ども申しておるわけでございますので、ひとつ御了承をいただきたいと思います。
  45. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 関連質問を一問だけ許します。多賀谷真稔君。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 文部大臣、県全体のワクで操作ができるような状態にはないわけです。産炭地というのは、その県においては少なくとも三分の一以上そういうような町村があり、学校がある。ですから、産炭地といいましても、全国的にその数が、ばらばらである、その県における比重がごく少ないというなら別ですよ。ところが長崎でも、佐賀でも、福岡でも、その県における比重というのは非常に大きいのですよ。しかも人口は半分くらいに減っておる。最近、御存じのように炭鉱は労働者が少ないから、組夫をあちらこちらから支度金を五万円とか十万円出して雇ってきておる。その子供は学籍簿を持たない。ただ学校へひょろひょろと一人、子供があらわれた、どこから来たかもさっぱりわからぬ。そこで先生が一生懸命さがして、前の学校に照会をする。やっと学籍簿がきたころには、また子供はいなくなる。家庭訪問をすれば、その間学童は自習をしなければならぬ。学校給食費が集まらない。集まらないから、先先が全部学校給食費を集めて回っておるのですよ。そういう状態で、おっしゃるように県で操作のできる状態ではないのです。少なくとも県における三分の一ぐらいが、そういう状態なんです。ですから、これは県全体のワクをきめるときに考慮していただかないと、県は普通にやりなさい、そのワク内で操作しなさい、配当でいきなさいというような簡単な問題では処理できない。でありますから、やはり産炭地については、それは一様にはいかないでしょう、実情がおのおの違いますから。しかし実情に応じて——その人口が減るところで、手間のかかる子供がよけい残っておるのです。ですからその点十分考慮をして、この定数についても配当についても考えていただかないと、問題は解決しないと思う。あなたのほうが五カ年計画で四十五名にするというのは、一つ教育の向上のためでしょう。もう一つは、学校の先先が余るという問題でしょう。それが両方とも集中的にこの産炭地には来ておるという状態です。ですから特例を設けて、この分だけは一律にいかないにしても、実情に相応した定数と配当の基準というのが必要ではないか、かように質問するわけです。
  47. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今度の標準法の改正の趣旨は、大体いまお述べになりましたとおりであります。一方におきましては教授力の充実をはかっていくということ、一方におきましては教師の激減といも問題に対応して調整をはかっていく、こういう考え方でできておるわけであります。   〔委員長退席松澤委員長代理着席〕 したがいまして、今回の標準法によりましても、現在すでに定数をオーバーしておるような県もあるわけでありますから、そういう県につきましても一挙にこれを減らすというようなことはしないで、だんだんと調整をはかっていくというような考え方をしておる。同時にまた、急に生徒の数が減っていくというのに相応しまして、急に先生の数を減らすということもいたさない。やはり定数基準からいえばオーバーしておるようなところにおきましても、先生は残しておく、こういう措置を講じておるわけでございます。したがいまして、たとえば現実の三十九年度の学校教師の定数というものは、基準どおりにやれば相当動くのでありますけれども、実際にはあまり動かさないで、調整をとりつつ進んでいこうということになっております。したがいまして、県によりましてもちろん事情が違いますけれども、ある県によりますと、従来よりも定数のふえる県もあると思います。またある県によりましては、若干は減りますけれども、しかし教員を整理するほどの数字にはならない、こういうふうなところが今度のねらいでございます。そのような意味から申しまして、現実の定数というものは、私は各県におきましてかなりあんばいのきく教師数を定数としては持ち得ると思っております。その定数を上手にあんばいしてもらうことによりまして、いまおっしゃったような心配のある学校に対しましては特別の考慮をする、こういうふうにやってまいりますればしのいでいけるのではなかろうか、かように考えておる次第であります。今後それぞれの学校の実情がどういうふうになってまいりますか、その実情によりましてはまた特別の考慮をしなければならぬということもあろうかと思いますけれども、さしあたりの私どもの考え方といたしましては、今回われわれが県に配当する定数の範囲内で、県の教育委員会実情に応じていろいろな措置を講ずる余地はある、こういう考え方をいたしておるわけであります。この際としては、ひとつそのように御了承いただきたいと思います。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 どうも大臣の答弁は一般的で実情にそぐわない。非常にかまえが弱いです。しかし、そのことに対してだけ時間をとってもしょうがありませんから、文教委員会等においてお尋ねしたい、こう思います。  企業誘致のことについて通産大臣にお尋ねします。産炭地振興事業団が土地造成をやって、企業誘致をやっております。土地造成をした地域に対しては企業がある程度入ってきておることは承知しておりますが、その実情はどうなんですか。それから産炭地振興事業団が土地造成をやった、その土地の地価はどの程度についているか、まずそれらの点についてお答えを願いたい。
  49. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 産炭地振興事業団の土地造成の問題でありますが、これは当初からいろいろの考え方はあるわけでありますけれども、いわゆるボタ山をくずして土地造成をやる、そして、その場合にどういうふうにして見ていくかということについては、われわれとしてもいろいろの考えをもって対処してきておるのでありますが、この間なかなかまだ未調整といいますか、われわれの考え方と必ずしも合わない部面もあるわけであります。これは、あなたがよく御存じだと思います。こういうことを何とかやはり前向きで解決をしていきませんと、ほんとうにボタ山取りくずしによるいわゆる産炭地振興というものは、なかなか私は本格的な能率をあげていくことはむずかしいだろう、こういうふうには感じておりますが、実際問題としては、でき上がった土地をどういうふうな値段で、どうして売ったらいいか、これは、具体的な問題になると、それぞれの土地についてお答えしなければわからなくなりますから、もし必要とあれば政府委員から答弁をいたさせますが、実際の価格とでき上がった価格とを比べてみると、でき上がった土地の価格のほうが逆に高くつくような場合もあるようであります。したがって、これを買うという人が、買い手が少ない、買い手が少ないということは、またそこへ工場が来たり、あるいは人が来たりすることがないということにも若干通じておる面がありますので、この間の問題をどういうふうにして調整していくかということを、いろいろいま話を詰めておるところであります。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 価格についてもお答え願いたいのですが、時間の関係がありますから質問を進めます。産炭地域にせっかく土地造成をやったが、なかなか企業がやってこない。それはどこに原因があるとお思いですか。
  51. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 土地造成をやった場合に企業がこない理由は、先ほど申し上げたのが一つの理由であろうかと思うのであります。もう一つは、その土地造成をやりましても、いわゆる公共投資といいますか、道路その他の面において、これに伴って道路ができてこないということであっては、交通関係が無理ならばできません。これがもう一つの理由でしょう。もう一つは、やはりそこに応じたい仕事があるかないかということが、かなり問題になるだろうと思う。補助をしてやるということならば幾らでも仕事がくるでありましょうけれども、まだ補助をしてまで産炭地へ仕事を持っていくというわけにはいかない。やはり企業の採算範囲でやってもらう、こういうことになりますから、急にはそうはいかないわけであります。しかし、それもやはり私は土地の値段にかかってくるだろうと思う。土地の値段が非常に安いということであれば、企業は採算が合いますからいくということが起こるのだと私は思っておるわけであります。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 大臣がお答えになったように、企業がこないというのは道路の問題、水の問題、そういうことがやはり相当隘路になっている。それから土地が高い。だからして、産炭地振興といろ立場から企業がくるようにやらなければいけない、現存の隘路を取り除かなければならない、こういうことになるのです。ならば、道路をつくるために、あるいは小規模ダムの建設ということに対しては、どうしても先行投資がなされなければならぬ。ところが、いまはそういう形になっていない。ここに問題があるわけです。産炭地振興事業団に対して多目的ダムを建設させるようになっていない。だから産炭地振興事業団に対して、業務範囲をもっと拡大して、そういう小規模ダムをつくらせるということも、これは一つの方法であるわけです。ですから、そういう道路をつくったり、ダムをつくったりするための先行投資をまずやることが私は必要であると思う。それらの点に対して、大蔵大臣はどうお考えになりますか。あなたのほうであまりきびしくさいふを締められるので、実際の実情に沿わない。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 ダムは、御承知のとおり、直轄でやったり、地力で公営ダムをやりましたり、また農業用のダムをやったり、いろいろする機構があるわけでありますが、産炭地振興事業団でダムをやることがいいかどらか。まだまだ市街地造成毛ありますし、土地造成もあるし、地方河川の改修等いろいろな問題もありますから、ダムのような大きなものをやることよりも、もう少し地元の利害に直接密着したもののほうがいいのではかないというふうに、私はいまオウム返しの御答弁を申し上げておるわけでありますが、しかし、産炭地事業団の事業の内容というものに対しては、検討する必要がある、このように考えます。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 検討する必要があることは当然なんです。ところがですよ、この産炭地振興事業団法を制定する際に、附帯決議をつけてある、業務範囲を大幅に拡大をいたしますと、その中には、いまの小規模、ダムの問題も入っておる。ところがなかなかおやりにならない。政府自体で検討されるということは、答弁としてほたさるけれども、実際はなかなかそのとおりおやりになっておられない。ましてや、国会における附帯決議等も尊重されない。こういうことではだめなんです。だから、いますぐ大臣はこれに取り組んで、ともかく、ダムは建設省がつくるんだというなわ張り争いかなんかしておったんでは、いつまでたっても産炭地振興の実はあがらない。だからして、これをとりはずさなければならないんだから、もっと、そういう一般的なお答えでなくて、いまの実情を十分調査して、そうしてそういう問題点を取り除く、こういうことで取り組まれる意思があるかどうか、はっきりしていただきたい。
  55. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、産炭地振興事業団をつくりますときにいろいろ考えたんです。特にこのような問題だけではなく、産炭地振興というものに対しては、あなたがいま言われるとおり、産炭地は水がないところです。これは、産炭地は抗内に水があって、その水をかい出さなきゃならぬというしろうと論を言っておりますけれども、産炭地は水のない地域であるということは、これは通説であります。でありますから、工業を誘致をするにしても、またいろいろな農業的な問題を解決するにしても、多目的ダム等をつくって水の問題を解決してやらなきゃならぬことは、これはもう私もわかっております。また、そのほかにセメントなどが、いま道路五カ年計画を改定いたしましたり、港湾とか、鉄道とか、いろいろな公共事業投資が新しい立場から再検討されておるときでありますから、交通ふくそらもありますので、セメントもやったらどうかというような考え方は、政府部内でもいろいろ出しておるんです。出しておるんですが、なかなかまとまらないというところでありますが、今度治水五カ年計画を、新たにまた来年度を目途として改定するということで、いま検討をいたしておりますから、そういう中で産炭地事業団が分担する治水、特に多目的ダム方式的なもの、小規模ダムのようなものが入れ得るのかという問題は、これら五カ年計画とも関連をさせながら、産炭地振興という問題に対しては積極的に取り組んでもおりますし、またこれからも積極的に取り組みます。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 それでは大臣に重ねてお尋ねしますが、先ほど通産大臣お答えのとおり、土地が高いです。どうして高いのか。それはですね、いろいろありますけれども、産炭地振興事業団の運営費を土地造成費でまかなうというやり方でやっておる。こういうことではだめなんです。さらにまた、土地造成にあたってはボタ山と並行してやる、危険ボタ山を取りくずして並行してやるというのだけれども、このボタ山取りくずしも半分は地元負担であるということになっておる。さらにまた、土地造成は炭鉱の離職者を吸収するということが原則になっているんだから、失対事業あるいは緊就というように、もっと高率補助を出さなければならない。こういうことも全く実情にそぐわない。まず、こういうことを改めなければならない。高率補助に直していくとか、あるいは国庫が全額負担するというようなやり方。危険ボタ山の処理もこれと並行してやるということになってくると、どうしても、もっと国が大幅の補助をしていくのでなければ、土地造成をするところまでボタ山から非常に距離が遠い、運賃が高いからということで、なかなかこれもうまくいかないんですよ。それらの問題を解決をしなければならないんですが、その点に対してのひとつ考え方を聞かしていただきたい。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 理想的に考えるとあなたのような議論になりますし、また、産炭地振興に対してはそのような前向きの姿勢で対処されなければならぬことは、政府考えておるのですが、御承知のとおり、産炭地だけではなく、低開発地開発促進、また地方開発、新産業都市、離島振興、非常にたくさんあるのです。そういう問題の中に、とにかく北海道開発ということに対しても、明治初年に太政官布告で全額国庫負担という道を開いた例もあります。またいまの道路法でも、国の産業開発のため必要な場合は全額国で負担することができる道も開いておりますけれども、地方開発というものに対しては応益負担、いわゆる受益負担ということがあるのでありますし、地方分権の制度の上からいっても、すべて何でも国が全額負担ということに直ちに踏み切ることに対しては、問題は確かにあるわけでありますが、しかし、事の緊要性から補助率を上げたり、また地方財政の中で特別交付税の制度もあるのでありますから、こういうものを全部かみ合わせながら、どうすれば一体一番いいのかといろ問題に対して、やはり検討していくべきだと思います。私も、あの事業団だけでもってすべての産炭地振興ができるとは考えておらなかった。少なくとも応急対策として緊急な仕事をやるのに対しては、産炭地事業団の設立が必要である、こういうことで踏み切ったわけでありますから、産炭地事業団がいま政策目的というものを追いながら独立採算的な考え方を強く押し出しておるということに、不合理性は確かにあります。あるけれども、これを無責任に撤廃するわけにはいかぬ。やはり国鉄の独立採算制に似たものでありまして、このうちに公共性、国が負担すべきウェートをどこに置くかという問題に帰着するわけでありますから、あなたの御発言などを契機にしながら、産炭地事業団の将来をどうするか、事業の規模をどうするか、事業の内容をどうするか、またいままでのボタ山整理の問題も、こういう問題が起きましたから産炭地事業団で取り上げようということになったのですが、ボタ山の整理は、従来企業者が企業の負担においてやるということが原則だったものが、この炭鉱事業に対して抜本的な考え方によっていろいろな施策をやっておるのですから、あなたの御発言等が、その過程における漸進的な、促進的な御意見として政府を鞭撻されるものだと思いますので、政府もこういうことを大いに参考にしながら前向きで対処いたします。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 どうも今の大臣の答弁は、ことば巧みに切り抜ける、そういうことでは、なるほど前向きな答弁のようであるが、こういうことに積極的に取り組むという何も私はつかめない。それじゃ満足できません。産炭地振興事業団の問題を、国鉄も公共性はありますけれども、そういうことを引用してこられることは自由なんだけれども、考え方は異なって考えてもらわなければだめだ。長崎県の江迎でボタ山がくずれたことは御記憶のとおりでありますが、あれにどれほどの国費を投じられましたか。ボタ山は非常に危険なのです。そのボタ山がくずれたということになってくると、たいへんな被害が生じてまいりますし、国の負担が大きくなるのですから、これは受益者が何だとか、そういうことでなしに、ともかくそれを除去する、それには国も高率補助をやっていくというような取り組みがなければなりません。せっかくそれをやるならば、土地造成をやるというような形で一石二鳥というようなやり方をとっていくことが必要なのです。ところがいまの法律の中におきましては、なかなか険路があってうまくいかないんだ。だからして、もっと積極的にそれに取り組んでいく。なるほど大臣の御答弁のとおり、産炭地振興事業団だけで問題がすべて解決するなんていうことは考えられません。しかし、もっと積極的にその内容を解剖して、実情に沿うようにやっていく必要があるということを私は申しておるわけです。その点に対して大臣にもう一度……。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたも私の言うことを十分理解されながら、現実があまりにもひどいので、現実に対処しての積極的なお考えを申し述べられておることは理解できます。まあ産炭地事業団がつくられたということは、これはどさくさで、とにかく緊急やむを得ざるものとしてつくられたもので、やはり、あなたの言われる考え方に対して、政府もそういう考えを持っておるのです。産炭地というものの将来を考えながら、炭鉱事業だけでもってやってきておったものでありますから、産炭地総合開発とでも高いますか、そういうやはり計画性を持った一つ計画を持ちながら、事業団で行なうものは幾ら、また公共投資を集中的に五カ年計画の中で行なうものはどう、地方が分担するものはどう、受益者が将来これを手に入れながら、国の投資に対して返還をするものが幾らというような、やはり東北地方開発とか、それから鹿児島の先の奄美大島総合開発というものがあるのですから、そういうふうな考え方に立って考える時期にきておる、もう第二の段階にきておるというふうに私も考えますので、あなたのただいまの発言等を十分体しまして、そういう方向に政府努力をいたしたいと思います。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 どうも時間がありません。残念ですが、またあらためて当該委員会等でお尋ねすることにいたします。ただ、申し上げておきますが、ともかく大臣も、先ほどいろいろ予算についてお話がありました。産炭地振興に対しては五十億——そういうのではだめなんですよ。炭鉱をつぶすのには思い切ってお金をお出しになるけれども、産炭地振興という点に対しては、なかなかさいふを締めてお出しにならない。もっとひとつ、いまの答弁のとおり、それを裏づけするというのにはどうしても金が必要なんだから、そういうことについての格段の配慮を強く求めておきたいと思います。さらにまた、産炭地域に若干企業が出てきておりますけれども、その企業がどういう労働者を雇っておるかというと、高卒、中卒といったような低賃金の若年労働者だけを雇うという企業がやってくる。中高年層労働者はなかなか雇用の機会がないということが実際の実情です。相当な中庸年層の労働者が滞留をしております。これらの点に対して——それはまあ、企業は私企業だ、採算ベースに乗らぬものはやらないということになりますが、これはやむを得ないのだということではなしに、産炭地振興事業団はどういう目的でできたのかということは私が申し上げるまでもないことでありますし、産炭地振興のために、企業誘致はどういう中身のものが必要であるかということも、これは申し上げるまでもないことですから、離職者対策というようなことを十分お考えになって、どうしたならば中高年労働者が雇用機会が与えられるかということにもっと重点を置いた取り組みをやっていただきたいということを、強く要望いたしておきたいと思います。  次に、中小企業の問題についてお尋ねしたいのですが、もう時間がございませんから、先に歩積み、両建ての問題に対して大蔵大臣にお尋ねをいたします。  大蔵大臣は、歩積み、両建ての問題に対しては積極的に取り組んでいるんだ、しっかりやっているんだ、こういうことをいつも御答弁になります。大蔵委員会あるいは本予算委員会等におきましても、しばしばお答えになっておるのでありますけれども、相当力を入れておるやに見えます。それではどういうことをおやりになっていらっしゃるか、その成果はあがっておるのかどうか、ひとつ具体的な点についてお答えを願いたい。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 歩積み、両建ての解消につきましては、総理大臣からも申し述べておりますとおり、大蔵省としましても積極的にいま行政指導を行なっておるわけであります。これに対しては相当実績があがっておるという確信を持っております。また、将来に対してはよりあげなければならぬ、こういう考えを持って営々努力をいたしておるわけであります。  具体的な考え方といたしましては、銀行検査を行なうということで随時監査を行なっておりますし、同時に相互銀行等に対しましては、歩積み、両建て解消の具体案を提出せしめておりまして、これが実効に対しては十分注視をしながら、行政指導もあわせて行なっておるわけであります。また都市銀行その他に対しましても、相互銀行方式等も参考にしながら、自発的にできるだけ歩積み、両建ての解消をはかるようにということをいたしておりますし、なお具体的な処置としましては、歩積み、両建て問題も兼ねながら、中小企業の金融の状態、手形サイトの実際、また倒産をした会社及び金融機関との関係というものに対しては、常時調査をして私のところへ報告をするような処置をいたしておりますので、歩積み、両建てに対しては相当強い決意を持って臨んでおりますし、また金融機関もこれにこたえておるというふうに考えております。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 歩積み、両建てに対して大臣が前向きのかまえであるということは、一応認めます。ところが実効というものは——歩積み、両建てが完全になくなるということは、信用上の問題もありますから、それは求めるほうが無理と思います。だがしかし、たとえば四〇%歩積みをしておるものが二〇%になるというように、そういう歩積みというものが減ってくるのでなければ、実効というものはあがったことになりません。  そこで具体的にお尋ねをしますが、各金融機関においていままで歩積みをやらしておる、それは大体どの程度であったのか、その比率であります。それから実効があがったとするならばどうなっているのか。さらにまた銀行は、自粛基準といいますか、自粛の措置をとっておるようでありますが、その金融機関が提示しておる自粛基準というものはどの程度なのか、まずその点についてお答えを願いたい。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 歩積み、両建てに対して私が非常に積極的にやっておりながら、どうもあなたのような御発言が出ることは——歯がゆいというお気持ちはよくわかります。歩積み、両建てというものはそういうものなのであります。非常にむずかしいのであります。御承知のとおり、銀行というものが、金融機関というものが預金を取り扱い、同時に同じ窓口から貸し付けるという制度の中にあるわけであります。でありますから、債務者預金というものは、当然借り入れたものを全部使うまでは預、金をしておる。ですから、債務者預金という普通の状態におけるものと、商慣習における歩積み、両建てというものと——問題になっておるものは、不当だと言われるほどに近い過当な歩積み要求、いわゆる借り主の意思に反して、また銀行、金融機関がその地位を利用しながら、貯蓄ということ、預金を目的にするために、千万円を貸せるけれども、三百万円積まなければ貸せませんよと、こういうことであったり、それから政府金融機関との協調融資をしながら、みずからの負担分に対しては歩積みにしておくというようなことが実質金利の非常な高さになり、中小企業や借り主の大きな負担になっておる。これは金融の正常化をはかるためにも障害になり、同時に、実質金利負担において国民に非常な迷惑をかけているということが問題になっておるのでありますから、債務者預金という正常なものと、それから借り主、いわゆる預金者の善意なものと、常識的な両建てというものと、もう一つは不当な、過当なというようなものとの見分けがなかなかむずかしいのであります。でありますから、この間もおしかりを受けましたが、相互銀行は何年間で二〇%にする——何年間たって二〇%にしかならぬのか、いま言ったように九〇%もやっているのかというのですが、そうはやっておらないわけであります。少なくとも問題になっておるのは、千万円の貸し出しに対して四百万円程度——というのは、前から積んでおるものがありますから、二百万円の歩積みをとり、二百万円の定期預金があれば四百万円ということになりますから、これを正常なもの、いわゆる債務者預金というものの中から、不当だ、過当だと思われるものを二〇%程度まで下げなければいかぬ。ここにむずかしさがあるわけであります。これも全然預金と貸し出しを別にして、郵便局のように、預かるだけである、使うのは大蔵省の財政投融資で理財局から使うということになれば、歩積み、両建てというものは存在しないのであります。でありますから、金融機関の特殊性からくるこれらの問題でありますので、やはり強い自覚に訴えながら、こちらも随時監査を行ない、いやしくも借り主の意思に反しての不当な歩積み、両建ては絶対的に排除しなければいかぬ、こういうことを考えておるのでありまして、少なくともここ半年ぐらいの間に歩積み、両建てというものは半減の傾向にある、私はこういうふうに認識をしておるのであります。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 どうも大臣は、自分で考えておられることが現実に行なわれていると思っていらっしゃる。残念ながら大臣の威令は、歩積み、両建てに対しては行なわれていない。あなたは中小企業の方々からいろいろお話をお聞きになっていらっしゃる。私どもも聞いておる。歩積み、両建てをやかましく言うようになってから、また銀行が自粛基準というものを政府提示しておるはずだが、そういうことをやってから幾らか変わりましたかと、こう尋ねると、一向変わりません、少しも減りません、新聞等で相当この問題については政府も真剣に取り組んでおるように見えるので、そのことを銀行に言うと、君のようにやかましく言うんだったら金は貸しません、拘束預金もあるが、これは取りくずして取ってしまいなさい、こういうことを言われるというので、実はもう痛しかゆしですということを言っています。だから、私がお尋ねしたのは、いままで歩積みはどういう程度であったのか、そこで銀行は自粛基準としてどうしようということを申し出ておるのか、その申し出に対して大蔵大臣はどうそれが適当であるとお考えになっておられるのか、まずそのことについてもっと具体的に数字でひとつ話をしましょう。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 数字はいま事務当局が持っておりますけれども、時間が長くなりますから、私がお答えいたします。  歩積み、岡建てというものに対して、今度は大蔵省は非常に積極的であるということだけは認めていただきたいと思います。この歩積み、両建ての解消というものに対しては、二つ理由があります。その一つは、歩積み、両建てが経営上必要であるということにあれば、これは問題であります。歩積み、両建てという制度をとらなければ現在の金融機関が維持できない、こうするならば、これは大問題であります。そういう問題に対して着目をしております。もう一つは、歩積み、両建てというものは、これは金融機関の公的性格を自覚をするかしないかの問題であります。これは、いやしくも免許企業であり、ある面においては独占企業だと言われている金融機関が、自己の地位を利用しながら、特殊性を利用しながら、適当な歩積み、両建てを要求しながらそれによってみずからの経費をまかなっておるとしたら、許しがたいことであります。でありますから、今度は中途はんぱな考えではないわけであります。ないわけでありますが、それだけに非常に慎重に対処しなければならぬということは、これまた当然なことであります。でありますから、今度は随時監査を行ないます。銀行局だけでなく、出先の財務局をしても検査をせしめますからと、こういう強い態度を持っておるのでありますから、少なくとも歩積み、両建てというものに対して相当実があがっておる。これは、数字をもってあらわせといっても、先ほど申し上げたとおり、歩積み、両建ての状態というものが捕捉しがたき状態でありますので、私は数字をつまびらかにいたすことを避けますが、私が考えております現段階においては、確かに相当の歩積み、両建ての排除ということが行なわれておる。また、これが行なわれておらないで、あなたが考えておられるとおりになれば、次の段階としては、公取は特殊指定をやるということを言っておるのであります。この公取法による指定になれば、当然今度は銀行法による大臣権限の発動も行なわれるわけでありますし、これは、もう大臣が幾らそんなに言っておっても捕捉しがたきものであるから、また、歩積み、両建てなど言っても、あなたの言うとおり、じゃあ取りくずしておさらばいたしましょう、こう言えばどうにもならないから、こんなものは表に出ないというようなたくまし過ぎる金融家というものは一掃されつつある、私はこういう自信を持っているわけであります。だが、しかしもう一歩進めて言えば、この間も銀行の合併論などが私の真意以上に伝わってはおりますけれども、これらに対しましても、金融機関の小さいものほど歩積み、両建てをやらなければならないという事実に徴して、ほんとうに歩積み、両建てを完全に押えた場合成り立たたないものであるならば、あなた方はみずからの道を考えなさいとさえ言っておるのでありますから、大蔵大臣としては相当手きびしい姿勢を出しているということは御理解いただけると思います。これに対して銀行や金融機関も、公取さんにお手数をかけなくても正常な金融をつくるために努力をいたします。計画も出します。こういっていま計画を作成中でありますし、また、相互銀行は歩積み、両建て排除の具体的な計画案をいま提示をし、大蔵省も大体これを承認するという段階になっておるわけでありますから、そのような方向で御協力をいただきたい、こう思います。金額はむずかしいから、これは言えないです。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 大臣は金額をおっしゃらないのですが、金融機関で自粛基準として申し出ておるのも言えないのですか。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 現在相互銀行から出ておりますものは、二年間で債務者預金を三〇%近くまで下げよう、こういうことを申し出ておりまして、大体私たちも相互銀行に対してはそのような方向でよろしかろうということを言っておるわけであります。また、都市銀行、地方銀行等につきましては、相互銀行のような例があるのでありますから、これよりもより積極的な方向で具体案の作成を依頼をいたしておるわけであります。
  68. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、いままでの相互銀行、それから都市銀行、地方銀行等、信用金庫、いろいろ伝えられているのですね。信用金庫が四〇%であるとか、相互銀行が四五ないし五〇%であるとか、地方銀行が三〇%であるとか、いろいろ伝えられておるのです。いままでの歩積み、両建ての実績は、大臣が把握しておられるのはどの程度になっていますか。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 私が確定的な数字を持たずして、また捕捉しがたい実情であるということを申し上げておりながらここで申し上げるということになると、全く憶測によって発言をするわけです。これは国会尊重の意味から言ってもどうかと思いますので、慎重な立場で、申し上げませんが、いずれにしても、二年間で債務者預金三〇%、まあ三〇%というのは、普通の世界の例から見ても債務者預金は二〇%程度ということでありますから、三〇%程度まで二年間で下げるというと、歩積み、両建て、少なくとも過当と言われる歩積み、両建てはすべて排除される、こういうふうに見ておるわけであります。ですから、現在債務者預金という名において歩積み、両建ても含みながら二〇%以上あるということだけは、これは事実であります。四〇%くらいある金融機関も存在する、このように見るべきだと思います。
  70. 中村重光

    中村(重)委員 大臣は、先ほど、公取が特殊指定をする、こういうことだということでしたが、公取の特殊指定に対しては大蔵省は難色を示しているということも伝えられている。その点に対してはどうですか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 公取は、御承知のとおり、侵すべからざる独立の権限を持つものでありますから、大蔵省がかかるものに対して異議を唱えるというようなことは絶対ありませんが、しかし、金融機関の行政は大蔵省ということを法律で命じられておるわけでありますので、大蔵省は、公取さんに御迷惑をかけないような状態で、まあいま率直に言いますと、公取さんが発動するというのだから、発動されるようなぶざまなことではなく、大蔵大臣の言うことを聞いて早く自粛しなさい、こう強い通達を出しているわけであります。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵省としては、公取が乗り出してくることは金融行政の二元化になる、そういったようないろいろなことから反対をしておるということが強く伝えられている。渡邊公取委員長は、この歩積み、両建ての問題に対しては非常な積極的な取り組みをしておられるようでありますけれども、大蔵大臣は、いまそこでそんなことはないとおっしゃったのですが、実効はあがっていないということからすると、そのこともなきにしもあらずという感じがするわけであります。  渡邊公取委員長にお尋ねをしますが、この歩積み、両建ての問題は、これはなかなか大蔵省の行政指導ということでは解決をしない。どうしてももっと強い態度で臨んでもらわなければならぬと思う。いろいろ言っても、金融機関が優越的な地位を利用して借り主に対して臨んでおるということは否定することのできない事実です。ですから、これに対して渡邊公取委員長の決意のほどを伺ってみたいと思います。
  73. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 お答えいたします。  特殊指定をするという問題について大蔵省が積極的な反対をしているという事実はございません。また、私のほうの権限からしますと、御反対がありましても、私のほうで必要があると認めれば、私はすべきものであるというふうに思っております。現在の状況におきましては、大蔵省は非常に熱心におやりくだすっている、これは、私は非常にけっこうなことだと思っております。ただ、問題がそう簡単なものではないということは、私も認識しております。したがいまして、私のほうとしましては、そうした大蔵省の努力と並行しまして、これは、やはり効果がないからそれからといった時期に事務を始めたのでは、それこそじんぜん日を過ごすだけになりますので、並行しながら、われわれのほうとしては、特殊指定をやるとすればどうやるかといったことを現在検討しております。銀行協会のほうから自粛の案が出ましたが、どうもいろいろまだあやふやな点が多うございますので、それでは自粛の対象にならない拘束性預金とは何かというのを書き出すように要請しまして、これが数日前に一応出てまいりました。いわば表と裏が出てきたわけであります。この表と裏を対照して見ながら、そこにかなりまだあいまいな部面が出てまいりますから、そのあいまいな部面をとこまで、——最後のぴったりした線が出るか出ないか、これは疑問ですが、あいまいな部面はできるだけ圧縮しまして、そしてぼやけた部分のないような基準をつくりたい、こういう仕事を別途やっております。もちろん、大蔵省の指導が効果をあげまして、その必要がないという事実が近い日にあれば、これは別ですが、なかなかむずかしい問題でございますので、必ずしもそういうことがそう期待できないのじゃないかという予想のもとに、いま言ったようなことをわれわれは考えております。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、大蔵大臣にお尋ねしますが、商工中金に対して、——これはあなたの威令が十分行なわれる機関です。私はあえて商工中金の歩積みと言います。これをもっと取りくずす必要があると思うのです。この点に対してはどうお考えですか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 商工中金に対しては、政府関係機関で、政府三機関でありますから、特に中小企業等の金が必要な中にもかかわらず、一定の歩積みを要求するというような原則的な考え方はやめるようにという強い行政指導を行なっております。ただ、三機関の中で商工中金だけは歩積みをやっていることはおかしいじゃないかということもありますが、しかし、これは組合金融、いわゆる組合系統金融でありますので、他の二機関とは違う性格のものであるということだけは事実であります。でありますから、資金源をふやすために、ある程度の歩積みというか、債務者預金を必要とするということは認められるわけでありますが、その特殊に認められておるものを利用しながら、それによって、三百万円貸すからそのうち百万円は商工中金債券を買ってくれとか、それから歩積みをやってくれとか、こういうことは言語道断というに近いことだと思っておりますので、私は、それに近い強硬なる行政指導をやっておりまして、近ごろは商工中金の歩積みは相当減っております。これは事実であります。でありますから、商工中金などは、いままで大蔵省も多少健全性で締め上げたということもあると思いますが、しかし、今度は三十億円の金を出してやるから利息も下げなさいというように、大蔵省もものわかりのいい態度をとっておりますし、商工中金も、もちろんそういうことであるならば私のほうでも自粛しましょう、こういうことで、これは非常によくなっておりますので、あなたのいま御心配になっておる、商工中金が系統金融の中で収奪をしておるというようなことはなくなると思います。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 商工中金の歩積みはいままでどの程度でしたか。それから、それをどの程度に減らそうというのですか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 普通の民間金融機関が三〇%というのでありますから、それよりも非常に少なくなければいかぬ、こういうことを考えておりますが、商工中金の将来の歩積みというか、債務者預金というか、両建て式なものがどの程度であればよいかというような問題、これは、私の所管だけではなく、通産大臣との共管でありますから、通産大臣とも十分合意を遂げながら、商工中金の将来はどうあるべきかということを検討して御報告をいたします。
  78. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣は商工中金にまで歩積みをさせようとは考えないでしょう。ともかく大蔵省がその点はやらせないようにお考えにならなければいけません。ともかく二五%内外だと私は思います。ところが、これは歩積みだけじゃない。まず組合員になるためには出資を要求されておる。それから、金を借りるときには、いわゆる歩積みと言われる預金を要求されておる。それから、商工債を買えと言われておる。こういうものをひっくるめると、相当な歩積み、いわゆる拘束預金にひとしきものが要求されておるのです。あなたの威令が十分行なわれる商工中金においてそういうことなんだ。それをあなたが抜本的に改めずして、利潤追求を中心とする民間金融機関に対して、歩積み、両建ての取りくずしをやれ、こう言っても、なかなかできません。その点に対しては、もっと積極的な取り組みをしてもらわなければならぬと私は思う。  同時に、商工中金の機構の問題。半官半民というのだけれども、理事を選ぶにしても、評議員を選ぶにしても、構成員は雅言権はありません。すべてこれは官選です。出資金をとられるときだけが半官半民です。この機構そのものにもメスを加えていくのでなければならぬと思います。これらの点について大蔵大臣はどうお考えになるか。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 商工中金が与えられておる権限以上に不当な歩積み等は絶対に、要求しないように措置いたします。  第二の、商工中金の機構の問題につきましては、御承知のとおり、商工中金は政府三機関であります。政府関係機関である、法律に基づく機関であるということで、どこまで民間の意思を反映するかということに対しては、これは法的制約もあるわけであります。しかし、民間の創意くふうをいれるということはいいことでありますので、そのような方向にだんだんといきつつあるということは、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  80. 中村重光

    中村(重)委員 商工中金の歩積み性預金ですね。それをなくすのを直ちに実行されますか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 不当なる歩積みをやってはならないということを言っておりますから、まだやるようであれば、行政的に処置いたします。
  82. 中村重光

    中村(重)委員 どうも大臣は、不当だとかなんとかいう、そういうことばばかりお使いになるが、不当か、過当か、適当かということは、なかなかむずかしいでしょう。ともかく、あなたの威令の行なわれる商工中金だけでも、そういう預金はやめさせることが私は適当だと思う。大体会員になるとき出資をさせられておりますよ。商工債も、商工中金のほうでは金を借りる側に全部引き受けさせるというわけではありません、それはいろいろな機関に消化してもらうんですということで答弁をなさるけれども、なかなか金を借りる音は弱いのです。そう答弁されるようには、現実は違うんですよ。そういうことをひとつ十分留意されて、いまの答弁をほんとうに実行に移すように、そのことを強く大臣に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  83. 松澤雄藏

    松澤委員長代理 これにて中村重光君の質疑は終わりました。  午後は一時から再開することといたします。  午後の質疑者は、角屋堅次郎君、東海林稔君であります。角屋君の出席要求大臣は、外務大臣大蔵大臣文部大臣通商産業大臣、農林大臣、運輸大臣労働大臣及び行政管理庁長官であります。東海林君の出席要求大臣は、通商産業大臣、農林大臣であります。  暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後一時六分開議
  84. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度予算に対する質疑を続行いたします。  角屋堅次郎君。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、午前中の質問に引き続きまして、主として農林水産関係の問題に焦点を合わせながらお伺いいたしたいと思いますが、その前に、当面の問題であります春闘、あるいは三月をもって一応終了いたす予定になっております臨時、行政調査会等の問題をまずお尋ねをいたしまして、それから本論に入ってまいりたいというふうに考えております。  労働大臣がまだおいでにならぬようでありますので、最初に行政機構改革の問題について、臨時行政調査会並びに行政管理庁の長官から今後の方針について承りたいと思います。  御承知のとおり、臨時行政調査会が発足をいたしましてから今日まで、七人委員会が中心になりまして、行政機構の根本的な改革の問題について鋭意検討中でございます。通常であればこの荘月末をもって任期満了ということに相なるわけでありますが、承りますと、さらに六カ月の任期延長をもって任務の万全を期したい、こういう考え方のようでございます。と同時に、池田総理の過般の施政方針の中で行政機構改革の問題に触れられて見解が表明されておるわけでありますが、行政管理庁の長官とすれば、いま臨時行政調査会で本問題については鋭意検討中であるから、しばらく一服の姿だということではなかろうと思うのでありまして、やはり臨時行政調査会の審議の経過と並行しながら、中央地方を通じての行政機構の改革の問題についてはどういう方針で臨むかということはお考えであろうと思うのでありまして、この機会に政府の行政機構改革に対する基本的な考え方についてお伺いいたしたいと思います。
  86. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 お答え申し上げます。臨時行政調再会は、最初三月までの委員の方々の任期であったのでございまするが、このたび九月まで六カ月延長の法案を提案いたしておる次第でございます。しかし、この間におきまして臨時行政調査会の委員の方々は非常に真剣に行政機構の改善に対しまして取り組まれておりまして、ほとんど委員の方々は一週間に大体二日ないしは三日ぐらいの日にちを費やして御努力をされておる姿でございます。したがいまして、私どもはその答申を十分尊重する心がまえでおる次第でございまするが、たまたまこの臨調の発足が、実は最初国会関係がございまして、七カ月ほどおくれております。そういう点から、臨調の方々からも、できれば何カ月か延ばしてもらいたいという交渉がございましたので、いろいろ検討いたしました結果、この際六カ月を延長いたしまして、その間におきまして十分にひとつ御検討をいただき、そしてりっぱな答申をいただきたい所存のもとに法案を提出いたした次第でございます。もとよりこの答申の取り扱いに対しましては、先般の総理の施政方針における言明のとおり、十分これを尊重いたしまして、行政機構の改善の問題につきましては前向きの姿勢をもって取り組んでまいりたいつもりでございます。
  87. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この機会に臨時行政調査会のほうから、実はきょうは佐藤会長に直接御出席を願ってお伺いいたしたいと思いましたが、あまりこういう委員会等の出席の前例もないということでございましたので、まことに残念でありますけれども、直接の事務担当から現在の段階における臨時行政調査会の審議状況にというものについて簡潔にお答えを願いたいと思います。
  88. 山口酉

    ○山口説明員 お答えいたします。ただいま専門部会から出てまいりました報告を七人の委員の方々が分担いたしましてこれを検討し、本委員会にかけます原案をつくっておる段階でございますが、専門部会でつくりましたものが、実はかなり内容的にちぐはぐな点もございますので、その調整をするためにかなり骨を折っておる状況でございます。大体項目的な問題について今後一、二ヵ月十分な調整をはかりまして最終の取りまとめをいたしたい、かような考え方で進行いたしております。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さらに臨時行政調査会のほうにお伺いをいたしたいのでありますが、本年の一月早々に臨時行政調査会による機構の整理、統廃合素案、こういうものが新聞に発表をされました。いわゆる太田メモというふうに言われておるわけでありますが、これが非常に内外の反響を呼んでおるわけであります。もっとも、これはまだ事務局試案の段階でありまして、われわれの承知しておるところでも、各省との折衝等を続けた後に主査としての案ができ上がるというふうに承っておるわけでありますが、これらの問題の経緯についてさらに御説明を願いたいと思います。
  90. 山口酉

    ○山口説明員 ただいま御質問の事項につきましては、お話のように作業中途の問題でございます。こういう案を出します経緯といたしましては、専門部会あるいは本会議等で従来いろいろ論議のありましたものにつきまして、太田委員が独自の見解をもって検討をされたものと、それから従来審議会その他政府の機関で意見を出しましたものを材料といたしまして再検討をいたしましたもの、それから公聴会等を開きましたり、あるいはアンケートをとったりいたしました結果検討を要するというものにつきまして、ある程度調査員を使って調査しましたそういう結果を総合しまして、非常にまだやわらかい段階の一案をつくりまして、これをもって論議の基準として進めようということで各省とお打ち合わせをしておる段階でございます。これは、太田委員御自身のお考えによりましても、今後この問題に対する各方面の意見を十分聴取した上でさらに再検討して案を考えていきたい、かような方針で進められております。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 御承知のとおり臨時行政調査会の設置法案が議論される段階の中で、衆議院の内閣委員会においてもあるいは参議院の内閣委員会においても、与野党が、この法案の通過するにあたって、それぞれ附帯決議というものを付せられておるわけでございます。これは衆議院、参議院で文章の表現は違いますけれども、骨組みをなすものは、公務員の人員整理というものは行なわない、公務員の身分変更を行なわない、重要問題の審議については全会一致を原則とする、この衆参両院の院議の趣旨を前提にして、臨時行政調査会が強力な調査権を持ちながら、しかも国民世論も十分聞くたてまえで今日まで熱心にやってこられたと思うのであります。したがいまして、今後最終段階の答申をまとめるにあたっては、しかも七人委員会国会の承認を超党派的に認めるという立場で発足をしておるわけでありまするから、必要かつ現実的な答申というものがやはり出されることを期待しなければならぬかと思うのでありまして、これらの問題については、特に直接関係の深い行政管理庁の長官として、今後の最終段階、答申まとめの過程においては十分接触を保ちながらいかれると思うのでありますが、この際御見解を承っておきたいと思います。
  92. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ただいま御指摘のございました両院における附帯決議の尊重に関しましては、政府といたしましては、特に委員選任の面につきましての条件もございましたので、超党派的な立場におきましてこの委員選任いたした次第でございます。なお、この審議会の運営の内容でございますが、これは、もとより審議会の独自の立場においての御審議でございますので、政府からとやこういろいろと御注文申し上げるわけにはまいりません。しかし、この審議会におきましても、この両院の附帯決議を十分に尊重されておることと信ずる次第でございます。なお、この出ました答申に対しましては、あくまでも政府はこれを尊重しなければならないという法律の規定もございまするから、なるべくこれに対しまして実現の可能性のあるような答申を出していただきたいことは、これはだれでも望むところでございますが、しかし、これをとやこうといろいろ御注文申し上げるわけにはまいりません。そこで、ただいまのところ、先ほど御指摘の太田試案に対しましては、各省庁から実情を太田委員のほうに訴えるという形式のもとにおいて連絡をとりつつある現状でございます。その結果におきまして、必ずや七人委員会の正式の答申というものは、国民の期待する実現の可能性がある答申に近いものが止まれてまいるものと私どもは期待いたしておる次第でございます。
  93. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この際、特に農林大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、これは特に農政に関係するわれわれの立場として、いまの取り上げております太田試案の中身では、私ども承知しておるところでは、いわゆる農政の根幹になっておる食管の問題に関連する第一線の食糧事務所の問題、あるいは農業基本法下の農政を進めるにあたって重要な役割りを果たしつつある統計関係の問題、あるいは土地基盤整備のこれから本格的にやらなければならぬ農地局関係の問題、あるいは成長財の畜産、蚕糸各般にわたって、縮小あるいは地方委譲等の問題がメモとして出てきておる段階でありますが、これは非常に困難な条件の中で開放経済下における農政の前向きの前進をはからなければならぬ今後の重大な使命からして、この機構の問題についてはたいへん重大な問題だと思いますが、この機会に特に農林大臣から、これらの問題に対する今後の農政を推進する立場からの御見解を承っておきたいと思います。
  94. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 太田メモが農林省関係にどういう影響があるかということにつきましては、いまお話しのような農林対策を遂行する上において非常に関連する重大な問題がありますので、目下検討さしております。私のほうでお考えのような観点に立って検討の上、メモに対する回答をする、こういうことにいたしたいと思っております。
  95. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 臨時行政調査会の今後の審議問題あるいは行政機構の根本的な改革の問題については、これは行政全般の立場から見て非常に重要な問題でありまして、われわれは党の立場からいっても、合理的かつ現実的な、しかも、行政運営として大衆に密着をした機構の改革の方向というものについては、これは決して反対するものではありませんが、同時に、本法案の国会成立の経緯から見て、十分現実かつ実行性を考えた、そういう配慮をしながら最終的な段階にまとめられるように希望しておきたいと思います。  労働大臣がお見えになりましたので、きょうは二時から御用があるということでありましたが、これは農政上の問題については特に労働力の確保問題、これは農業たると、林業たると、漁業たるとを問わず、第一次産業としては最近非常に重大な問題でありまして、いろいろそれらの点についてお尋ねをいたしたいと思っておりましたが、所用があるということでありますので、問題の視点を変えまして、春闘に対する政府の態度という問題についてお伺いをいたしたいと思います。  御承知のとおり、ことしの春闘は池田内閣の所得倍増計画下におけるいろいろな労働者に対する悪条件、そういうことから生活を守る問題にいたしましても、あるいは過般の三井三池、鶴見等の事故からする安全あるいは生命を守る、こういう立場からする問題にいたしましても、いま与党内における取り扱いで非常に難航を伝えられておりますILOの今後の推移からいたしましても、それらの問題がそれぞれからみまして、ことしの春闘は相当激しい様相を呈するのじゃないか、こういうふうに予想されておるわけでございます。私どもは、言うまでもなく今年度は秋にはオリンピックを控えるというふうな年でもありますから、労働者の正当な要求というものを政府並びに経営陣が謙虚に受けて、なるべくスムーズな姿で問題が推移していくということを心から期待するわけでありますけれども、政府がかたくなな態度、あるいは経営者陣が労働者の正当な要求に対して非常に非科学的な態度でこれに臨むということになると、勢いのおもむくところ非常に激しい推移にならざるを得ない。こういうことも予想されるわけでありますが、やはり労働行政を預かる労働大臣として、いま激しさを予想されるように伝えられておる春闘問題に対する政府の方針について、この際率直にお伺いしておきたいと思います。
  96. 大橋武夫

    大橋国務大臣 総評、中立労連及び若干の中立労働組合で構成いたしまする春闘共闘委員会は、大幅賃上げ、最低賃金制の確立、労働時間の短縮、この三つの項目を中心要求といたし、これに安全問題等の要求を加え、さらに合理化反対、物価値上げ反対、ILO条約即時批准、その他の要求を結合して春闘を進めることといたしております。また、原子力潜水艦寄港反対、日韓会談反対、憲法改正反対などの要求につきましては、それぞれのカンパニア、たとえば護憲連合などにそれぞれ運動組織がございますが、これらのカンパニアの先頭に立って戦いを進めるという方針を立てておるのでございます。したがいまして、今年の要求におきましては、経済的要求が相当主要な部分を占めておるのでありますが、しかし、この経済的要求につきましては、現在までのところ、労使の強い態度から見まして、ある程度闘争が長引き、また一部において激化するであろうということは、当然予想されておるところでございます。  政府といたしましては、賃上げその他の経済的問題にかかる紛争議につきましては、もとより中立の立場に立ち、不介入の方針をもって臨みまして、当事者が国民経済の動向と企業の実態をお互いによく考え、良識を持って自在交渉により、また自主交渉による解決が困難な場合におきましては、労働委員会等の公正な第三者機関によりまして、できれば、平和的に、早期に解決されることを期待いたしておるのであります。不幸にして争議等の段階に入りました場合におきましても、できるだけ法規を順守して、正しく健全に行動されることを期待しておることはもちろんでございますが、しかし、これについて積極的に政府がただいまのところ介入しようという考えは持っておりません。またILO八十七号条約批准、労働災害防止法等の問題につきましては、国会に提案中でございまして、国会審議を待つことが民主的立場からいって当然であると考えておりますが、その他の日韓会議、原子力潜水艦寄港などの問題は、その性格上国会審議や政党の活動にまかせるべきでありまして、労働組合がこれらの主張を唱えられること自体は自由でございまするが、しかし、これを理由として実力行使に訴えられるようなことは、労働組合本来の任務と目的から考えましていかがであろうか、あくまでも労働上の紛争議は経済的な問題を中心にしていっていただきたいというふうにこいねがっておる次第でございます。
  97. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま労働大臣から春闘に対する政府の基本的な考え方について承りましたわけでありますが、労働大臣の時間の関係もありますが、私は冒頭に申し上げましたように、本来政府、経営陣といえども、労働組合といえども、ことさらに事をかまえるという気持ちはないと思います。やはり労働者の場合でいえば、労働者としての賃金の問題、労働条件の問題、その他基本的権利の問題についての正当な要求というものを実現をいたしたい、これを基本としながら春闘に立ち上がるということであって、これらの問題が正常状態において謙虚に政府並びに経営陣から受け入れられるという条件であるならば、春闘はきわめて円滑なうちに推移をするということも十分あり得ると思う。特に私は、深く入る時間的余裕もありませんけれども、ILOの問題が日韓の問題とからんで過般の四役会議では、会期を大幅に延長してもこれを通すという報道がなされておりまするけれども、しかし、本来ILOの問題については、すでに与野党の間で、少なくとも自民党と社会党の間では最低の接触点というものはやはりあるわけであって、したがって、これは早期に解決しようと思えば、自民党の党内の意見調整あるいは意見統一というものがわれわれの希望する一方向でいくならば、これはそう時間をかけずに解決することができる。これらの問題について、やはり労働者の納得しない形で事態が推移していくということになれば、やはりこれは春闘の今後の展開にも影響するだろう。こういう点については、政府の直接担当する部面については誠意を持って、しかも大衆の支持と理解を得られるような方向で今後処理をしてもらいたいと思う。特にこの際、ILO関係の問題は単に労働大臣の問題ばかりでなしに、国際外交の問題を取り扱っておる大平外務大臣としても、やはり今後のOECDの加盟問題あるいはIMF八条国移行の問題ともからんで国際的に非常に波及の多い問題だと思いますので、この際外務大臣から、これらの問題と関連をして外交的な立場から御見解を明らかにしてもらいたいと思います。
  98. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ILO結社の自由委員会といたしましては、わが国の八十七号条約批准遅延の事態にかんがみまして、当方に調査団派遣の議が一昨年あたりから台頭しておりましたことは御案内のとおりでございます。   〔委員長退席、桜内委員長代理着席〕 しかし、わが政府といたしましては、早期批准のたてまえで、その意思を先方に伝えまして、かかる事態にならぬように今日まで——今日に至ったわけでございますが、今度二月に行なわれます理事会におきまして、正式の議題に遺憾ながらなったわけでございます。したがって、政府としては遠からず、この調査団を受け入れるべきか、拒否すべきかという決断を迫られるこになるわけでございまして、これを拒否するというようなことになりますと、そのこと自体がわが国の国際信用から申しましてゆゆしいことでございまするし、またこれを受け入れるという事態になりましても、それ自体がまた国際信用上ゆゆしい事態になることをわれわれは憂慮いたしております。したがいまして、この事態に処する最善の道は、この条約がこの国会におきまして批准を終了いたしまして、この問題が解消するという事態を招来することが第一でございますので、私どもといたしましては、そういう方向に最善の努力を尽くしてまいりたいと存じておる次第でございます。
  99. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農政の本論に入りまして、農政関係の問題については、私のあとで同僚の東海林委員から触れられることになりますので、私は力点を水産問題に置いてお尋ねをいたしたいと思います。  まず前段として、御承知のとおり総選挙を通じ、あるいは総理の施政方針等を通じて所得倍増計画は第二ラウンドに入った。これからは農政と中小企業に本格的に力を入れるということを言われたその期待から見ますと、昭和三十九年度の農林予算、この内容は、他省所管分を含めましても三千三百六十億、これは昨年度の当初予算から比べると、八百二十九億の増加でありますけれども、御承知のとおり食管特別会計への繰り入れ、これが千二十六億あるわけでありますから、それらのものを勘案して実質的な農政費ということからいたしますと、必ずしも革命的な農政を推進する予算とは率直にいって言いがたい状況にございます。特に今度の予算を見て気のつくことは、一つは食管の赤字補てんというものが農林予算の三千三百六十億の約三分の一近くを占めておるという事実、なお前向きの問題といたしましては、農林金融の問題について前進の形をとろうとする、この点、さらに漁業関係では、漁業共済制度について、これを本格的に実施する芽が出たという点等があげられるかと思うのであります。しかしながら、出産の選択的拡大を唱えられておる畜産、果樹等の問題について関係予算の点を見ますと、必ずしも十分でありませんし、また今日物価対策として重視されております流通機構の改善問題、こういうような点から見ましても、いわゆる根本的改革にはほど遠い感じが率直にいって指摘できるわけであります。これでは開放経済体制に即応する革命的な農林予算、こういうことは言えないと思うのでありまして、特にこの点、予算の折衝に当たられ、そして農林予算の現実の姿を見ました農林大臣の所見を承っておきたいと思います。  特にこの場合に、食管問題の今後の問題とも関連いたしまして、生産者米価あるいは消費者米価の問題については、かねて本委員会を通じ、あるいは他の委員会を通じて、農林大臣の見解が表明されておるわけでありますけれども、しかしこの問題は、おそらく生産者米価の過程を通じ、またそのことの結果による消費者米価の問題等を通じて、相当に政治的な問題に発展する可能性を持っておると思いますが、これらの点については農林大臣として、あくまでも生産者米価は、生産費及び所得補償をするという原則で生産者米価をきめていく、消費者米価については、消費者家計を守るという立場においてあくまでも消費者米価を据え置く、こういう基本方針については、政治的ないろんな推移があろうとも、き然たる態度で貫く、こういうことであるかどうかということを明確にお答えを願いたいと思うのであります。  さらに、後ほど農政問題は東海林委員から触れられますが、特に近く飼料審議会が開かれることになっておりまして、その機会に飼料委員としていろいろお尋ねいたしたいと思いますが、特に最近の飼料の高騰状況から見まして、食管で保有しておる古麦等の緊急払い下げというものをこの際考えるべきじゃないかと思うわけでありますけれども、これらの点について農林大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  100. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農林予算が革命的というものでないじゃないか、こういう点は、私も革命的とは思っておりません。ただ、革命的、革新的という声が非常に強まりまして、農林関係に関心を非常に強めてきた。その結果、予算面におきましても、私十分とは申し上げられませんが、いまのような形で、前年度予算に比較いたしますれば三三%の増を見た。こういうことは、私は、ことしとしてはいろいろな面で新しい方向の芽が相当出てきた。でありますから、量的にはいささか不満でございますけれども、質的には相当前進した、こういうふうに考えております。しかし、その中で一千二十六億円の食管会計の赤字が予算の中に組んである、これは前向きじゃないじゃないか。確かに前向きではございません。しかしこの制度は、申し上げるまでもなく生産者の米価の支持、あるいは麦の価格の支持その他価格支持的な対策でございますし、あるいは消費者にとりましては、消費者米価をいまの家計の安定をそこなわないようにとどめておく、こういう機能を持っておることでございますので、私は、これもやはり政策としてはもちろん前向きではございませんけれども、政策の重要な要素だ、こう考えています。  ところで、生産者米価、消費者米価についてどんな考えを持っているか、生産者米価はすでに価格の決定方法がありまして、 生産費及び所得補償方式、こういう方式できめることになっておりますから、その方式は本年度におきましても踏襲いたすつもりでございます。消費者米価につきましては、消費者と言いますか、家計の安定をそこなわないように、そういう課題で消費者米価はきめる、こういうことになっていますので、この点もそういう観点から消費者米価はきめていきたい。値上げするのかしないのかという問題につきましては、再々お答え申し上げましたように、消費者米価はそういう方式がございますから、方式に従ってやっていく場合には、私は値上がりがあるとは思います。幅等につきましては、米価審議会のとき等においていろいろきまるし、そういう決定の時期にきまると思いますけれども、消費者米価につきましては、一年間これは据え置きにするという方針に変わりはございません。  それから飼料の問題でございますが、飼料の問題は、現在におきましては肥料の問題以上にウエートが多くなっておりまするし、そういう面でいろいろ検討を加えております。いま古麦の払い下げをするのかどうかということでございますが、これもそういう方向でもちろん検討いたしております。
  101. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この際、大蔵大臣に農林予算の問題で、特に農林金融に関する問題で簡潔にお答えを願いたいと思うのであります。  かねて農業基本法の議論の際に、池田総理大臣は、農業金融の問題に触れたときに、農業金融の性格である長期、低利という必要から、金利についても二分程度のものを近い機会に考えたい、こういう見解表明がございました。今回の農林金融の場合におきましても、逐次前進の過程をとり、しかも金利体系あるいは償還据え置き等の問題についても相当整備をされたことは歓迎すべきことだと思いますが、今後の開放経済下の農政の体質改善、根本的な近代化を考える場合には、もちろん必要な補助政策もやらなければなりませんが、同時に低廉かつ豊富な農林金融の投下というものは十分考えていかなければならぬかと思うのでありまして、そういう点で今回の是正に満足することなく、今後とも農林金融の問題については、その要請から見て、さらに明年度以降も改善をしていくのだというかまえであるかどうかということをお伺いいたしたいと思います。  なお、さっきの農林大臣の答弁とも関連をいたしまして、生産者米価、消費者米価の問題は、先ほど農林大臣が答えられた方向で大蔵大臣財政支出の問題を引き受けたということであろうと思いますが、これは非常に重要な問題でありますので、大蔵大臣の見解もあわせお答え願いたいと思います。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 農林漁業金融につきましては、御承知のとおり三十九年度でできる限り配慮をいたしたつもりでございますが、将来に対しましても前向きで施策を行なってまいりたい、このように考えます。それから米価の問題につきましては、これは政府が指示する価格の一つでありますので、一年間は上げないということをきめておりますので、農林大臣の発電と変わりありません。
  103. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次に、これは総括質問のときに川俣委員が触れられた問題でありまするけれども、近く政府は林業基本法を提案されるかと思いますが、そういう林業政策上の問題と関連をして、最近政治的な動きを顕著に示してまいりました問題に国有林開放問題がございます。この問題については、すでに昨年農林次官通牒も出ましたし、また本問題に関する中央森林審議会等での議論並びにそれに基づく答申というものもあったわけでありますが、私は率直にいって、国有林野開放の問題に対する最近の政治的な動き等を見ておりますと、日本の林業政策として、あるいは国有林野聖業の従来から持ってまいりました国土保全、資源開発というような重要な使命遂行上から見て、今後の取り扱いいかんを誤ると、農政上にも大きな支障がき、将来に禍根を残すことに相なるのではないか。したがって、これらの問題については、冷静に処理する必要があるというふうに考えておるわけであります。私どもは、もちろん日本の国土の七割を占める山の問題については、国土総合開発の観点から土地利用の総合的な調査を行ない、国有林たると、民有林たると、あるいは公有林たるとを問わず、林業以外に国土総合開発の観点から利用すべきであるという問題については、積極的に開発するということには、これは何ら反対はございません。しかし、最近の動きを見ておりますと、貴重な国有財産である林野の問題について、将来の林業政策として十分安心ができないという保証のない形の中で、山を山として払い下げてもらいたいという強い動き等もあるわけであります。問題は、こういう山を山として払い下げるというところに、国有林野開放の問題としては真剣に考えなければならぬ問題を含んでおると思うのでありまして、私は、国有林野事業の今後とも果たすべき重要な役割りから見て、第一線におけるところの動揺、混乱というものをなくする立場からも、農林大臣が今度慎重かつ将来を見通したき然たる態度で対処してもらいたいと思いますし、またこれと関連をして、第一次産業の中で農業にしろ、漁業にしろ、あるいは林業方面でも、いわゆる労働者の確保あるいは労働条件の改善、こういう問題は今後の農政推進上非常にも重要な問題でありますが、この際は国有林に働く労働者の労働条件の問題について、特に雇用の安定の問題について、私どもは党としても帰休制度の問題等についての法制化を鋭意準備中でありますけれども、これらの雇用の安定の問題について農林大臣としてどう対処するのか。これらの点についてもお考えを承りたいと思います。
  104. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国有林の売り渡し等につきましては、お話のような態度で進んでおるつもりでございます。また国有林等に働いておる労務者の待遇をどういうふうにするかということでございますが、国有林に働いている労務者が季節的であったり、あるいは時期的に制約されたり、あるいは地理的に制約されたりというような条件がございますので、働くほうも、また雇っているほうにもいろいろ無理もございます。でありますので、この待遇を改善していくということにつきましては、林業政策の諸般の面から、たとえば造林あるいは伐採等における機械化の方面とか、あるいは林道の開設とか、運搬の方面とか、いろいろな面で労働が過重にならないように、また、季節的でございますので、一つの季節のときに働いておって、あと働く期間がないというような場合もありますので、これを調整してほかの方面にも回して、年間を通じてなるたけ働けるようにと措置をいたしているわけでございます。その他、給与その他につきましても十分考えて対処していきたい、また対処しつつある点もございます。そういうふうに持っていきたいと思っております。
  105. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 国有林野事業の今後の問題につきましては、林業基本法等が提出されます際に十分議論する機会がありますから、後ほどの機会に譲りたいと思います。水産問題につきましては、水産関係の沿岸漁業等振興法に基づく政府のレポート等も出てまいりましたが、いずれこれは、そのレポートに基づく具体的な今後の水産政策という問題については他の機会に十分お聞きいたしたいと思います。  本日は特に具体的な問題を中心にお伺いをいたしたいわけでございますが、まずその第一は、本年度のノリの被害に対する災害対策の問題であります。これはすでに参議院の災害対策委員会あるいはその他の機会にも取り上げられて、政府の見解等も出てまいっておるわけでありますが、私は特に今度のノリ被害で関係の深い、しかも日本のノリ生産としては中枢をなしておる千葉のノリ被害の状況について現地調査に参りました。もともとノリに関係あります三重県でありますから、三重県の状況についてはよく承知しておりますけれども、千葉県の実態調査に行って実は驚いたわけであります。最初知事から状況を聞いたときに、十一月の中旬以降生産がゼロという説明がございました。本来暖冬でありましたけれども、その後相当に気象が寒くなりましたから、通常であれば生産回復ということもあるわけでありますけれども、現地調査をしてみて、なるほどそのとおりだということをまのあたり見たわけであります。つまり、ノリ網がもう全部陸地に引き揚げられてしまって、全くノリ生産をやってないという状況が、ずっと先のほうまで行っても同様の状態でございました。富津のところまで、最末端まで行きましたけれども同様の状況でありまして、これは天災融資法の発動を速急にやって緊急に対策を講じなければならぬ、その必要を痛感いたしましたし、同時に、現地でも現金は二月中にひとつぜひ渡るように、天災融資法の発動を積極的に進めるように努力を願いたい。と申しますのは、大体春になりまするというと沖等にも参るわけでありますが、いまはノリの生産が全くゼロでありますので、不特定な出かせぎに行かなければならぬという状況にございます。通常ノリの次の年の仕込みは七月から始まるわけでありますけれども、こういう仕事が全然不特定なときに、経営賃金を借りてそしてノリの準備をやっていきたい、そして春以降においては沖等に出て生活のかてを得ながら、ことしの冬にはノリでひとつ回復するように努力したい、こういう切々たる要請がございまして、私どもといたしましても、農林省大蔵省の折衝の中で、天災融資法の発動というものについては問題がない情勢にきておると承知しております。しかし、この天災融資法の発動の時期という問題については、ノリ被害の八県以外に、最近では中国、九州方面にもノリ被害の状況が出てまいっておりますけれども、それらの調査を待ってというのでは、特にすでに千葉等のように全然収穫皆無の状況の中で経営資金の支給を待っておるそういう零細漁民の要請にはこたえ得ないということもあるわけでありますが、この機会に、率直に、農林大臣から天災融資法の発動の時期はいつにするのか、第一線に現金はいつ渡せるということが言えるのか、この点を端的にお答えを願いたいと思う。私ども現地調査に行きましたところ、きょうは千葉関係からも関係者が来ておるわけでありまして、政府の誠意ある答弁というものを期待をしておるわけです。これはもう十一月の中旬以降は、ノリ関係については全然収穫皆無という状態で、すでに二月の半ばになっておるわけでありまするから、これらの問題について誠意ある御答弁を承りたいと思います。
  106. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かにお話しのようにノリの被害は非常にひどいものでございます。また範囲も東北から三重のほうまでにわたって、あるいは最近は九州、中国方面にも被害が出てきておるということが明らかになってきました。そこで天災融資法の適用につきましては、私ども早くから考えて、そうしなきゃいかぬじゃないか、こういうことで折衝を関係当局といたしております。この点につきましては、大体折衝がもうまとまる時期にきておりますので、そうおそくないというか、非常に近い機会に天災融資法の発動を適用する、こういう段階にきています。金はいつごろと、こういうことでございますが、これにつきましては、天災融資法が適用されましたらば、ごく間近に、できるだけ早く金が回るように私も督励いたしたいと思います。
  107. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 こういうさばきは大蔵大臣は非常に軽快にやられるわけでありますけれども、私ども、現地の災害の実情を見てまいった者からすると、法の適用その他については、関係の県も出てくれば、その被害の状況も見てということも一方においてはあるのですけれども、時期的に県としては被害がずれているわけです。最初に起こったところはすでに十一月中に起こっている。その後ゼロという状態、特にそういうところが、八十二億の被害のうちの五十数億というものが千葉という、一番生産も多いわけでありますけれども、中心部をなしておる。そういうところがほとんど一潮生産を上げた程度であって、あとはタンカーの重油でやられ、それから暖流でやられ、全く収穫はゼロだ、こういう状況にあるわけであります。したがって、農林大臣からも早い機会にと言っておりましたが、問題は金を握っておる大蔵省のほうで天災なりやいなやから検討が始まりまして、そうしてそれは天災だということには間違いがない。しかし、いままだ被害関係県もまた二、三県ある、それを見てということになると時期を失すると思う。そういう点と、もう一つは、天災融資法では通常の状態においては十五万円しか支給が出ない、しかし現地側の要請では最低限三十万円ほしい、特にこれは被害のひどいところ、激甚地においてはそういう要請が強いわけです。そうなるというと、激甚災の特例を適用するか、天災融資法の一部改正をするか、そういうことによってやはり要請にこたえていかなければならぬ。そういう問題も含めて、これは特に金を握っておられる大蔵大臣の勘のいい、さばきのいいところでひとつどうされるのかをお答え願いたいと思います。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 ノリの被害につきましては、農林省調査を待っておるわけであります。一説には十億枚、八十一億に上るというようなことも言われておるのでありまして、これが緊急融資については、系統金融機関を通じてやっておるわけであります。しかも、天災融資法の発動につきましては、結論も大体得ておりますので、農林省調査結果を待ちまして、いま御発言がありましたようなものも含めて、早急に発動したいという考え方でおります。しかし、激甚災の適用が必要でないかという問題もありますが、現在の状態では、私たちが関知するところでは、激甚災ということではなく、天災融資法の発動でいけるだろうというようなことを聞いておりますが、御発言もありましたので、農林省当局の意見を十分尊重してまいりたい、こう考えます。
  109. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 なお、ノリの問題に関連をいたしまして韓国ノリの輸入問題が一部新聞報道で取り上げられたわけでありますけれども、この点は農林大臣にお伺いをいたしたわけですが、本問題につきましては、昭和三十六年五月三十日の第三十八回国会におきまして、私が衆議院の農林水産委員会でこの問題を提案をいたしました。与野党満場一致で、韓国ノリの輸入の問題については一億万枚を限度として取り扱う、そしてこれから成長といわれておる養殖漁業の関係を保護していく、こういう決議をいたしたわけでありますが、特にことしのような不作の状況からいたしまして若干のノリの値上がり等もありますけれども、大体これは、農業の場合でも、あるいは漁業の場合でも、関係者の諸君が痛感をずることは、ちょっと値が上がると緊急対策とかなんとかいうことでたたかれる。ところが、最近の福岡その他で野菜スト等もありますけれども、そういう暴落状態になりますと、ほとんど放置状態に置かれる。これでは一番弱い条件にある農業者にしても、漁業者にしても、立つ瀬がないじゃありませんか、こういう切実な訴えを聞くわけでありまして、まことに私どもはそのとおりだと思います。したがいまして、消費者の立場も考えなければならぬという政治的配慮もありますけれども、しかし、韓国ノリの輸入の問題については、当面のところはこれはやはり差し控えるという基本方針が、特に被害を非常に受けた本年度の段階としては、私はとるべき正しい措置であろうかと思うのでありますが、これらの問題並びに今後日韓漁業交渉の問題もありますけれども、韓国ノリの輸入の問題についてどういうお考えで対処されようとするのか、あわせお答え願いたいと思います。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ノリの輸入につきましては、先ほどお話がありましたように、ノリの価格が上がっているので一億万枚の輸入の要請があります。要請がありますけれども、いま前半お話がありましたように、非常な被害をこうむっておる。そうしていまノリの出産期中でございます。こういうときでありますので、この輸入につきましては、私はいまそれを扱うということには慎重な態度をもって、輸入は現在、もしやるとしてもいま考えるべき時期ではない、こういうふうに考えて慎重に検討しております。
  111. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本年度のノリの災害対策の問題については、天災融資法の発動、その他各般の問題について、きょうは直接の責任者である大蔵大臣と農林大臣が御出席でありますが、先ほどの御答弁のように、速急に適切な措置を講ぜられるように強く要請をいたしておきます。  次に、このノリ被害の問題と関連をして、本年度政府が漁災制度の本格的な実施に踏み切られたわけでありますが、このこと自身は私どもとしても歓迎をするわけであります。特に昨年の総選挙後の特別国会の際に、池田総理は、本会議で赤路委員の質問に答えて、率直に言って三十九年度は無理だと思うという趣旨の御答弁をされましたけれども、赤城農林大臣が同じ引き続きの答弁の中で、この問題については鋭意実現する方向で関係当局とも折衝をしておる趣旨の答弁をされて、まあ赤城農林大臣の骨のあるところを見せたような感じを率直に言って持ったわけでありますが、大蔵大臣との折衝の中で、これが本格的実施に踏み切ったことは、歓迎すべきことだと思いますが、問題は、そういう経緯から見て、総予算も五億ちょっとこえる程度でありまするし、またいま伝えられるところによりますると、漁業災害補償法という名称がつくのかどうかさえなかなか問題になっておる。場合によると、漁業共済法になるんじゃないか、あるいは漁業災害補償制度の確立に関する法律案と、何かわけのわからぬような、そういう名前をつけるんじゃないかと、いろいろ伝えられるわけです。元来、今度レポートが出てまいりましたけれども、特に沿岸漁業の場合には、農業よりも条件が一般的に言って悪いと言われておる、そういう関係の漁業災害補償法を本格的にすべり出そうという段階の中で、片肺飛行ですべり出しをやるということは、これはいかがかと思うのです。特にそういう点では、やはり試行段階から本格的実施という点については、考え方によってはまだ時期的に十分態勢が整備しないという、そういう事情も若干あろうかと思いますけれども、しかし、一たん法律ができると、農災法の経緯を見ても、抜本改正ということは非常に至難であります。したがって、できるだけ発足の機会に、百点満点とは言わぬけれども、八十点、八十五点くらいの法律案を御提示願うことが、やはりこれからの漁業の発展を願う政治の立場だろう、こういうふうに思うわけでありますが、これらの問題について、漁災法の基本的々考え方について、農林大臣からお答えを願いたいと思います。
  112. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 漁業災害補償法案と、こう言われておりますが、これはまだ提出しておりませんが、至急まとめて提出いたしたいと思います。考え方については、各行とも違ってはおりません。ただ、条文が二百条以上になっておりますので、法制同等においていろいろ条文の整理をいたしております。そういう点でおくれていますが、今月中には政府案がまとまる、こういう見通しでございます。  それで、その内容でございますが、どういう内容であるかということでございますが、簡単に御説明を申し上げますと、都道府県及び全国の各段階に漁業共済団体を新たに設ける。その二段階の組織によりまして、漁業共済事業を行なう。こういうことが第一であります。それから漁業共済事業の種類は漁獲共済、それから養殖の共済及び漁具の共済とする。それから三番目には、漁業共済団体が共済金または再共済金を支払うのに必要な資金の供給を円滑にするため、政府、漁業共済団体等が出資する漁業共済基金を設置する。これは、伝えられていますように五億円でございます。なお、国は共済掛け金及び漁業共済団体の事務費に対しまして補助をするという態度で、案文、条文をいままとめております。名前をどうするかということにつきましては、まだ結論にきておりませんけれども、この法案がまとまるときには、名前ももちろんはっきりいたすはずでございますけれども、いろいろな情勢を私もよく聞いておりますので、名前等につきましても、適当な法案の名前にするというつもりではおります。
  113. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま若干の内容について触れられましたが、問題は、国の再保険というもののすべり出しを今回の法提出にあたって踏み切るのかどうかという問題が一つ。それからさらに、任意共済の問題をこの共済団体の関係で取り扱うのかどうかという問題がございます。特に再保険の問題については、私ども承知しておるところでは、十二月二十八日の予算折衝の際は、田中大蔵大臣と赤城農林大臣の間で、国の再保険の問題を積極的に検討するという状態の中で本格提出に踏み切った、こういうふうに承知をしておるわけでありますが、こういう問題が明確になりませんと、冒頭に申し上げましたように片肺飛行でスタートする、こういうことになって、両肺がつく状態はいつになるのかなかなかわからぬということになる危険性が強いと思うのでありますが、これらの点については、いわゆる明確なビジョンといいますか、そういうものを明らかにしてもらいたいと思います。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 漁業災害に関しての再保険の仕組みがないようだが、どうだろうか、こういうお尋ねかと思います。今度の制度におきましては、都道府県段階の共済団体が漁業共済の引き受けをいたしまして、全国段階の共済団体が再共済する、こういう形になりまして、全国的に危険の分散をはかる、こういうことを予定しております。その上にさらに政府が再保険措置を講ずるということは、現段階では考えておらないわけでございます。  なお、新制度では、これまでの試験実施の実績等を基礎として事業の仕組み及び掛け金率を定めるのでございますが、この掛け金にも補助いたしますが、漁業共済の事業収支は、特別の事情がない限り長期的には均衡することが予想されますが、さらに漁業共済団体の事業収支において、時期的に支出が収入を上回ることとなる場合に備えて、漁業共済団体が必要とする資金の供給を円滑にするため、漁業共済基金を設けて——先ほど申し上げました五億の基金を設けて、事業運営に支障ないようにいたしたい、こういうふうに考えまして、この再保険の問題は、この共済事業の進行によりましてさらに検討することにいたしまして、このたびにおきましては、国が再保険するということは考えておらずに進めておるわけであります。
  115. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁業災害補償法の問題は、いずれ成案を得て国会提示されてくるわけですが、私はやはり国会提示されるまでの間がたいへん重要だと思いまして、特にやはり沿岸漁業等の関係者の期待にこたえるように、漁業災害補償法として、名実ともに整備まではいかなくても、八十五点くらいのところで法案が提示できることを強く要請をいたしておきたいと思います。  次に、これは私の出身の地元で起こっておる問題で、特に科学技術庁のほうにお尋ねをいたしたいと思いますが、それは原子力発電所の問題であります。御承知かと思いますが、三重県の熊野灘方面に中部電力が三カ所の候補地を立てまして、そしてそこをボーリングしていろいろな調査を行なった結果、そのうちの適当な一カ所のところに原子力発電所、大体二十五万ないし三十万キロワットのものをつくりたい、こういうことで、二カ所についてはいまボーリング調査が始まっておりますが、一カ所は地元の強い反対でまだ調査段階にいっておりませんけれども、漁業関係者にせよ、第一線の人々にせよ、原子力発電所というものは、これは未知の世界でありまして、一体放射能の関係がどうなるんだろう、海上汚水の関係はどうなるんだろう、いろいろな点でたいへん不安が多いわけであります。また、現に日本の場合は、東海村に原子力発電株式会社の第一号が近くでき上がろうとしておる。さらに敦賀に第二号をつくろうとする。そのほかに、東電あるいは中部電力、関西電力で、それぞれ四十五年を目標に三十万キロワット前後のものをつくろうとする。そして当初目標にしておった四十五年に百万キロワット以上の原子力発電所がスタートするであろう、こういうふうにいわれておるわけでありますが、やはり第一線でこれらの問題を受けとめる側からいたしますと、原子力発電所の安全性というものは一体どうなのか。これは保健上から見ましても、あるいは産業、経済上から見ても、これをどう受けとめたらいいのか。特に三重県の場合は、御承知のとおり、伊勢湾台風等の大災害を受けたところであり、また古くさかのぼれば、南海地震というような地震の経験を経たところである。チリの災害等も、海岸地帯では経験しておる。いわゆる耐震、耐風、こういうものに対する安全性というものはどうなのか。また海水を冷却水に使いながら、それがまた逆に海に返っていく。これは高温のものが返っていくわけでありますが、毎秒二十五トンなり三十トンなりのものがコンスタントに海に流れていく。熊野灘方面は非常に優良漁場でありまして、こういうところにそういうものがコンスタントに流れる場合の、優良漁場に対する影響はどうなのか。そういうものは海水に含まないということが一部言われておりますけれども、学者の間には異論があるわけでありまして、それらの問題について、今日の時点で明確に見解が示されるならば、それらの問題も含めて明らかにしていただきたいと思います。この点については、きょうは佐藤長官に御出席を要望したのでありますが、オリンピック担当大臣として東京現地視察があるようでありますので、やむを得ませんから、事務当局から、これは第一線の問題でありまして、真剣な問題でありますから、責任のある答弁を承りたいと思います。
  116. 島村武久

    ○島村政府委員 お答え申し上げます。  中部電力株式会社が三重県下で数カ地点を選びましてボーリング、その他原子力発電所として適当な地点であるかどうかということの調査を始めましたということを会社自体で発表いたしておるそうでございまして、その件につきましては、私どものほうにも連絡があったそうでございまして、承知いたしております。それに関連いたします原子炉の安全性の問題でございますけれども、現在の段階におきましては、私どものほうといたしまして、具体的な計画として聞いておるわけではございませんので、とかく申し述べる筋ではないと考えております。ただ、一般的な意味におきまして、原子力発電というものは過去におきますよりはだんだんに理解されてまいりまして、日本におきましても、全国的に原子力発電所に対してむしろ誘致の機運等も出てまいっておるような状況でございます。私どもといたしましては、原子力に対する理解がだんだんにふえてきておるという意味において喜んでおるわけでございます。ただ、具体的な原子炉の安全性ということになりますと、いかなる型式の炉がいかに設計されて置かれるかという原子炉自体の問題と、それがどこに置かれるか、その土地がどのような状況にあるかということの精密な検討の結果判断されるものでなければならないわけであります。原子力発電のみならず、原子炉自体の安全性につきましては、非常に国民感情もございますし、慎重に検討しなければならぬ問題でございますので、内閣総理大臣が原子炉の設置を許可いたします場合には、原子力委員会の意見を聞かなければならないことになっております。原子力委員会といたしましては、法律上に定められました安全審査専門部会というところにかけまして、専門家のそのような検討を経て意見をまとめることになっております。御指摘の台風あるいは津波、地震その他各種の要件につきましては、そういうことが起こるおそれの少ない地点が選ばれることが望ましいのはもちろんでありますけれども、そのような現地の地点に関します詳細なデータというものがそろいまして、かつまた、そこに置かれる原子炉の構造、設計等が明らかになりました場合におきまして厳重に審査する。したがいまして、そのような厳重な審査を経てきめられましたものは、少なくとも現段階におきまして、地元の方々にも御安心いただけるものじゃないかと考えております。いずれにいたしましても、御指摘がありましたように、私どもといたしましては、それぞれの候補地点の地元の方々の十分な御理解、御納得の上で進めていかれるべきものであるし、そのことが非常に望ましいと考えておりますが、現段階において、手続としてそういうことになるということを申し上げる以外、具体的なその地点が安全であるというような言い方は、現在の段階においては差し控えるべきであると考えておるわけであります。
  117. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの原子力局長のお話を聞いておると、一般論、第三者的な見解のようであります。第一線にすると、非常に真剣な問題でありまして、なるほど学者のような見解からいけば、そういう一般論で済むのかもしれませんが、率直に言って、そういう感じがするわけであります。やはり国際的には、また原子力発電所というのはそう数が多いわけではありませんし、日本の場合には、東海村から始まって近く四基ばかりできようという段階でありますが、まだ数は少ないのでありますから、原子力局だけがこの問題に乗り出す仕事ではありませんけれども、原子力研究所の関係にしろ、あるいは電力行政とすれば通産省の関係になるでありましょうけれども、やはり三重県ばかりでなしに、いま俎上にのぼっておるものは、数少ないものが昭和四十五年を目ざしておるわけでありますから、十分関係省の間で連携をとって、そうしてやはり出てきた結果を審査をして慎重に、こういうのではなくて、前向きにやってもらわぬと、大衆との感情というものに非常にギャップがあるように私は思う。これは三重県の漁連の関係で、全漁連に呼びかけて、東京で過般関係各省も来ていただいて、いろいろお話を聞くという機会は持ったわけでありますが、みずから金をかけて、私も行きましたけれども、東海村へ多数連日のように行って見てきて、それでもなおかつわからぬものだから、この原子力発電の安全性の問題については、安全だと言う者と安全でないと言う者があるから、その学者は、だれとだれが安全だと言っておって、だれが安全でないと言っておるのかということを、われわれのところにしばしば聞きにくる。そういうことまでわれわれはわかるわけではないし、科学の問題は科学で判断するのだから、そういう見解がまっこうから対立するということもあるまいと言っておるのであるが、そういうことではなかなか納得をしてくれない。やはり私は、原子力発電所の問題は、原子力潜水艦の問題と違って、原子力の平和利用という問題についてわれわれは反対するものではない。しかし、大衆の安全性なり地域産業の問題に対する影響というものが、やはり悪い影響が出るのだということになったら、われわれとしては強い姿勢で反対せざるを得ないというところにくる。そういう点については、科学の問題はあくまで科学で判断しなければならぬということを、現地にも言っておるのであるけれども、そういう点では、科学技術庁ばかりではないかもしれませんが、関係省が、数少ない候補地の問題でありますから、もっとやはり積極的に前向きに出かけていくような気持でこの問題については対処せなければならぬと思います。この点は、担当大臣がおられませんので、電力行政をあずかる通産大臣がひとつ政府の見解としてお答え願いたい。  なおまた、通産大臣にはこれと開運して、原子力発電所がこれから四十五年を目途に百万キロ以上設置されるという問題で、現地側の受けとめ方の中には、要するに、いまのところまだコストが他の火力なりあるいはその他のものよりも高いということは通説でありますが、そういう場合に、そういう  コストの高いものを——これは九電力に分割したそれぞれの三つがやるわけでありますから、消費者に転嫁をしてくるんじゃないか。イギリスでありましたか、原子力発電所の今後の前向きの開発のために、そのコストの差というものについては国が価格差補給をするという、そういう対策を講じておるやに私は前に記録で見たことがあるのですけれども、そういうこれからの原子力発電所の問題に対する電力行政のあり方、そしてまた、これができてくる場合の料金問題等に対しての見解、こういうものを含めてひとつ政府側の御意見を承りたいと思います。
  118. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  原子力発電所の安全性の問題でございますが、これはもうイギリスでも——あるいはこの間フランスから来た工業大臣にも、その話をちょっとしてみたのです。君のほうではどうだ。相当うちなどでは心配しておる向きがあるが、平和利用の面でどうかということを聞いてみました。ところが、フランスの工業大臣が言うには、それはもう度合いの問題ということになるので、全然という問題になれば、それは言えないけれども、われわれの一応の常識の範囲で見ては、安全性はだいじょうぶなのだ、だから、フランスとしては三年間毎年一つずつつくっていって、あと三年たつと今度は二つずつ、二十五万キロから三十万キロのものをつくるつもりだ、こういうことを言うておりました。私は、いま角屋委員の言われるように、この問題は非常にみんな心配しておりますし、また現実の問題になったときは、これは大問題なのですから、われわれとして十分注意をしていかなければならないと思いますが、いままで私が聞いておる範囲においては、それほど心配なものではない。かなり厳重に、何といいますか、そういうような害が人体に及ぶとか、あるいはまた、それが流れ出て魚族に及ぶとかということがないような、実は施設とか方法を講じておるというふうに理解をいたしております。ということは、私のところは、いまあなたからも御指摘がありましたが、敦賀に——私は福井でございますから、敦賀に今度原子力発電所ができるというので、この問題を相当研究したことがあるのでありますが、やはりこれはいいということで、実はもうすでに敦賀では、民間の人たちも、地元の人も理解して、場所を提供して協力してやっております。そういう事情であります。  それからいま原子力発電ができた場合において、これが非常に高いコストであるために、地元に悪影響を与えないか、あるいは電気料金に悪影響を与えないかというお話でございましたが、これは結論から先に申し上げますと、私はほとんど悪影響はないと思っております。なぜかといいますと、いま水力発電が千二百万キロワットです。これはラウンド・ナンバーですが。それから火力発電が千三百万キロワットです。これが四十五年には、この千三百万キロワットの火力発電に対して、今度は原子力発電を含めて千九百万キロワットの火力発電をこれからつくる予定になっております。その千九百万キロワットをつくるうちで、百万キロワットが原子力発電、こういうことになるわけです。だから、比率から言うと、約二十分の一ということになります。それから今度はコストの面からいいますと、もう一、二年で原子力発電が、石炭火力のいわゆる一キロワットアワー三円ちょっとという、まあ大体そんなことになっておるのでありますが、それに近づくと思っております。したがって、四十五年ごろに完成される原子力発電というものは、おそらく三円前後になるだろう、こう思っておるのであります。したがって、もう火力発電とほとんど差がない。ただし、その時分においても、重油による火力発電というものがございますから、その分はいまでも二円五、六十銭と相当低コストでございますから、全然響かぬとは言えないと思うのでありますが、しかし、何といってもその比率が二十分の一である、しかも値段自体が二円六十銭と三円前後ということになれば、大体一割。一割高いものが二十分の一できるということでありまして、全然ないとは私は申し上げませんが、それほど響かない。また地元に響くといっても、これは中部電力が供給している区域であれば、中部電力全体としての火力にまざって出ていくわけでありますから、私は、その点もあまり御心配は要らないのではないか、こういうふうに考えております。
  119. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林大臣から、これは学者でないからお調べになってきたかどうかわかりませんけれども、いま与えられた条件の中で、温度の高い水が逆流してくる、また再び返ってくる、そういうことを通じての漁業に対する影響というものをどういうふうに見ておられますか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  120. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは原子力潜水艦の問題のときにもお答えしたのでございますが、放射能の漁業に対する影響とか、あるいは排水した水の温度に対してどういう影響があって、漁業にどんな影響があるか、こういう点等につきましては、私のほうにも技術面がありますので、私のほうでも検討はさせておりますけれども、なお、ほかの関係筋と検討をいたしております。その結果、どういうふうだということはまだ結論が出ておりませんけれども、検討はいたさせております。
  121. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 原子力発電所の今後の問題につきましては、先ほどもちょっと強く申しましたけれども、これからの問題であり、また、こういう問題については、これを予定されたところでは非常に真剣に考えまして、東海村あたりでも連日のようにたくさんの方々が、今日まで数カ月の間に行かれるという状態であります。私は東海村もたいへんだろうと思いますが、私ども行ったときもたいへん親切にしてもらいましたけれども、それはともかくとして、やはり直接行政をあずかるそれぞれの関係者としては、まだ数の少ない候補地の問題でございますから、できるだけ積極的にそれらの問題に答えができるように——科学技術庁の原子力局でも、まだ資料は十分ありませんがというようなことであったり、いろいろ、いまの段階ではそういう事情もわかりますけれども、今後、そういう問題については積極的に対処してもらいたいということを強く要請しておきます。  最後に、国際漁業の関係の問題についてお伺いをいたしたいのでありますが、日韓の漁業交渉の問題については、しばしば本委員会でも触れられましたし、また同時に、従来からも、これはもう日ソ漁業交渉のような百日交渉という類ではありませんでして、ずいぶん長い日程を要して続いておるわけでありますから、しばしば論じられてきておるわけであります。特に私は、この機会に、きのうでありましたか、自民党の四役会談で、会期を大幅に延長しても日韓の問題とILOの問題をやるのだ、こういういわゆる終着点を明らかにしたような一つの目安を立てられたわけでありますけれども、日韓の漁業交渉の問題というのは、私どもは、日韓交渉の問題とは切り離して、経済問題として話し合いを進めていくということについては了承できるわけでありますけれども、しかし、それを進める場合においては、しばしば外務大臣も言われておるように、国際海洋法に基づくところの漁業関係の国際的な原則、こういうものがやはり貫かれなければならぬ。それでないと、後ほど触れますけれども、日米加の漁業交渉の問題にしろ、あるいは明後年に控える日ソ漁業条約の改定問題にしろ、あるいは近くオブザーバーとしての出席を求められている北西大西洋の漁業条約に対する今後の条約加盟をどうするかという問題にいたしましても、レポートにもありますように、今日漁獲高では世界第一位を誇るという海洋日本の立場から見ても、いままでの不平等条約については、この機会に懸案事項をだんだんと正しく解決をしていく、こういう意味からいくと、日韓の当面進めておる漁業交渉の問題についても、やはり技術段階の専門家会議の中で、十分国際法上の原理原則に基づいての了解点を得ながら、いたずらに早まって政治会談ということで、場合によっては足して二で割るような従来の政治感覚でやるのではなしに、これは国際的な他の漁業条約にも影響がありますからして、そういう点では日韓の漁業交渉の問題は終着点そのものを示すことさえ不見識な点がありますけれども、これの直接交渉の責任にある外務大臣、農林大臣、こういう立場では、あくまでも、従来からいわれておるように、専門家会議における正当な了解点、われわれ自身も十分その点について了承し得る了解点、こういうものに基づいて話し合いの終着点をつける、こういうことであるのかどうか。いたずらに終着点をつけたいということで、そういう点の前提をなおざりにして政治会談でやるということになると、将来に大きな禍根を残すということに相なろうと思いますが、特にこの点については外務大臣から、今後の日韓の漁業交渉の進め方の基本的な考え方について承っておきたいと思います。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日韓の漁業交渉は、私どもとしては早期に妥結をいたしたい気持らでおるわけでございますが、いま角屋先生御指摘のように、この問題は国際慣行にのっとってやるべき性質のものでございまするし、資源の状況、両国の漁業者の利益というものを考えてまいらなければならないものでございますから、事が専門家レベルの会談であろうと、政治会談であろうと、そういう大綱を踏みはずして処理していい性質のものじゃないと思います。慎重にやるつもりでございます。
  123. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、これは赤城さんが農林大臣になられてから、日米加漁業交渉の問題では、アメリカに行かれたときにも、アメリカの高官との折衝等も持たれておるわけですが、御承知の、おそらく五月以降だろうと思いますが、カナダのオタワで日米加漁業交渉の第三回目の折衝が始まることが、予想されているわけです。この点は、私は、かねて衆議院の本会議でも、日米加漁業交渉の問題について触れたことがございますけれども、これはもう明らかに不平等条約でありまするから、政府自身も、従来から、アブステンションの問題についてはこれを撤廃するという強い姿勢で臨んでこられたことは、当然のことであります。ただしかし、昨年の十二月の東京における会議の推移からいたしますと、自発的抑止の原則の表現はとられましたけれども、いわゆる実績尊重という原則を今度はアメリカから修正案として主張してまいりました。むしろこのことは、自発的抑止原則よりも事実上きびしいものになる、十分検討するとこういうことの内容にさえなってまいるわけでありますが、日米加漁業交渉の今後の見通しについて、これは近く開催を控えておるわけでありますが、農林大臣の方針を聞いておきたいと思います。
  124. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまお話しのように、去年期限がきた条約は、抑止法則で貫いておるわけでございます。これは非常に不平等でございます。でありますので、引き続きずっと抑止方式をやめろということを言ってきまして、昨年の九月でしたか、抑止方式は一応案文の上からは除くということになりましたが、実際においては、抑止方式という字句は除いても、実質が抑止方式と同じようなことであっては、私のほうでは受け入れられない。向こうもまあ字句だけは折れたのでございますが、内容がまだ話し合いがついておりません。そういう意味で、オタワで近く会議が開かれますが、従来の方針どおりその点を強く主張して、そうしてこの条約ができるようなことにしたい、こういう方針で進めております。
  125. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さらに農林大臣にお伺いいたしますが、先ほど触れましたけれども、北西大西洋の漁業条約に基づく委員会が六月に開かれることになっておりまして、日本がオブザーバー出席を求められております。これはアメリカ、イギリス、ソ連等をはじめ、十数カ国がこれに参加をしておるわけでありますが、すでに日本といたしましても、御承知の北西大西洋方面は葵漁業あるいは大洋漁業の関係で試験操業をやっておる段階でありますけれども、政府はこれに対してオブザーバー派遣に応ずる、すでに資料提示しておられるようでありますが、さらに将来加盟の方向でいく、こういう御方針であるかどうかという問題と、すでに日ソ漁業交渉の代表団が他の会議関係もあって出発をしておりまするが、この問題は、特に今年度の場合は非常に難航が予想されておりまするけれども、しかし、農林大臣自身も、二年間の漁獲量の問題を去年の場合にはなし得なかった。今度の場合には、河野・イシコフ会談の際にも、両年にわたる漁獲量というものをきめる、こういうことの契約がありまして、これらの問題については、双方では原則的にそういうことで今後ともいこうということの意思は通じておるわけでありますが、それらの問題も含みますので、結局難航の段階では、農林大臣みずから行なってそれらの問題も含めて解決をしなければならぬという段階が来ようと予想されておりますが、それらの問題も含めて、端的にお答えを願いたいと思います。
  126. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 北西大西洋の漁業条約につきましては、多くの国々が条約に入っていますが、日本はいま二隻で試験操業をしている、こういう程度でございますので、条約に加盟するということは、まだきめておりません。それからオブザーバーの派遣につきましても、要請がありますので、これを検討いたしまして、深い関心を持ちながらこれに対処していきたい、こう思っています。  日ソの漁業問題でございますが、この問題につきましては、一昨年河野・イシコフ間の約束で、二年間、次年度まできめるということでございましたが、昨年の会議でことしの分をきめずに帰ってしまったわけでございます。でありますので、去年の九月でしたか、私もソ連へ行きまして、その約束を履行していかなければだめじゃないかということを強く要請して、実は十二月ならばモスクワで、一月ならば東京で専門家会議を開くということになっておったのでございますが、そのま延ばしに延ばされてきておるのが現状でございます。三月二日からオットセイの会議がありますので、政府関係の者も向こうへ行っております。その次に専門家会議が引き続き開かれますので、この二年間をきめていくということをさらに再確認さして、それを履行さしたい、こういうふうに思っております。
  127. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間終了の連絡を受けましたので、これで終わりたいと思いますが、本日は、第一次産業の労働力確保、後継者確保の関係で、教育問題の観点から灘尾文部大臣の御出席も求めていましたし、なお、漁船、汽船等の最近の遭難事故の多発状況から、海難防止ということで運輸大臣のほうの御出席も得ておりまして、たいへんお待たせをしたわけでありますけれども、時間の関係上御質問ができなくて、申しわけありませんでした。御了解を賜わりたいと思います。  特に、最後に触れました国際漁業の問題は、本年度は国際漁業の交渉に明け、交渉に暮れるというふうに、多くの重要な改定を含む漁業交渉がございますけれども、これは特に外務大臣、農林大臣は、やはりこれからの将来にわたっての国際漁業条約について禍根を残さないように、まあ双方ともに非常にき然たる態度で今日までやってこられたと私思いまするけれども、今後ともそういう姿勢でやはりねばり強くやっていただくことを強く要請いたしまして、質問を終わります。
  128. 櫻内義雄

    櫻内委員長代理 これにて角屋堅次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、東海林稔君。
  129. 東海林稔

    東海林委員 私は、農業問題につきまして、赤城農林大臣、通産大臣並びに建設当局に対してお伺いいたしたいと思うのでございます。  農業問題につきましては、すでに本委員会におきまして石田委員その他の委員からいろいろと質問があり、ただいま角屋委員からも質問がございましたので、つとめて重複を避けて御質問いたしたいと思いますが、若干重複するような点がありましても、御親切な答弁を賜わりますよう、まずもってお願いしたいと思います。  第一にお伺いいたしたいのは、現在の農政の基本法であります農業基本法について、農林大臣はどのような評価をされておるか、こういう点でございます。四年前、農業基本法の制定にあたりまして、私ども社会党は、政府考えておるような施策をもってしてはとうてい農村は救われない、基本法の目的に掲げてある農業の生産性を高めて、そして農業従事者と他産業従事者との所得格差をなくすることは不可能である、こういうような観点に立って、わが党独自の基本法を提案して対決いたしたのでございますが、当時、政府とわれわれの間で最も論議が分かれました点は、一つには、政府は、今後の農家のあるべき姿として二町五反程度以上の自立農家を中心とするという考え方に対して、われわれは、やはり中小農家も農政の対象として考え、その近代化のために共同化を進むべきであるという点、第二の点として、経営規模の拡大について、政府は、主として中小の離農していく農家の農地を大農家に吸収することによって拡大するという考え方に対して、私どもは、そういう消極的なことでは不可能である、すべからくもっと国土の高度利用という観点に立って、積極的に耕地の拡大をはかるべきであると主張した点、第三としては、農産物の価格政策でございますが、政府は、米麦を除いては需給均衡の方式によって価格の安定をはかろうと考えておるのに対して、われわれは、そういう消極的なことではとても価格の安定ははかれないという観点に立ちまして、主要農産物について生産費・所得補償方式をとるべきだと主張した点、こういうような点が主たる論争点であったわけでございます。あれから三カ年がたったわけでございますが、この経過の中で実情が示しておるものは、まさにわれわれ主張しておったとおりでございまして、政府の基本方針の政策の考え方のあやまちであることははっきりしてきたように、われわれは考えるわけでございます。先般の総選挙にあたって、池田首相は、ただいまお話のありましたように、農政の革命的あるいは革新的施策をするということを公約されました。これは、一つは選挙上の対策ではあったと思うのでありますが、私は、またある意味においてはこれは本音であったろうと考えておるのであります。というのは、現在のような農村のあり方をもってしてみますならば、池田内閣の最も中心的な政策である高度経済成長政策が行き詰まって、農家だけでなく、自民党の代表しておるいわゆる大企業の利益の立場からしても、これは行き詰まる、このままにしておけない、こういう点を池田さん自身が勘づかれたためであろうと思うわけでございます。三十九年度予算に出ております農林省の施策を見ましても、若干農政の方向転換についての苦悶のあとが出ておるように考えられますし、また、先般来の本委員会やあるいは他の委員会における赤城農相の発言等を聞きましても、これまでの農林大臣発言とはある程度ニュアンスが違う点があるように、われわれには感じられるのであります。率直に言いまして、私どもは、まさにこの際は農政の基本をなしておる基本法を再検討する点から出発しなければ、新しい農政の確立は困難であろう、こういう感じをいたしておるわけでありますが、こういう点についての、まず赤城農林大臣の見解をお伺いしたいと思うわけです。
  130. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、農業基本法の方向といいますか、ねらいというものは、決して間違っていないし、私はその方向でいいと思っています。ただ、その進み方が十分でないという点は、率直に私は認めざるを得ないと思います。でありますので、やはりこれを再検討するということよりも、農業基本法に盛られている方向に対しまして一そう推進するといいますか、力づける方法をもって進んでいくのが適当である、こういうふうに考えております。
  131. 東海林稔

    東海林委員 農林大臣は、基本法の指向する方向は間違っておらぬ、こういうようなお話でございました。ところで、現在の政府の基本法の柱となっておりますのは、御承知のように、一つは自立農家の育成であり、一つは選択的拡大であります。  そこでお尋ねしたいのでありますが、基本法制定当時の政府の説明では、十カ年間に百万戸程度の自立農家を育成する、こういう計画であるという説明であったわけでありますが、最近では、農林省もそういうことはあまり口にしなくなった。また、実際の情勢は、そういうようなことはとうてい不可能であるということを示しておるわけです。先般政府で農業白書を発表したのに対して、その直後、農林省の農業総合研究所の所長である神谷教授が、これに対する批判を新聞や雑誌等に発表されておるのを、私は興味深く拝見したのであります。教授によりますと、農林白書はきわめて皮相的な、上っつらの白書だ、こういうような表現のようでありまして、いろいろと、最近の日本全体の人口、その中における農業人口、さらには耕地の移動等の趨勢からいろいろ推算されて、南関東やそれから東海、近畿等の第一地帯と九州、東北、北海道等の第三地帯、さらにその他の第二地帯というふうに分けまして、将来の農村の姿、あるいは農業人口の形というようなものを算定されまして、非常に興味深く私は拝見したのでありますが、それ等を見ましても、たとえば第一の地帯等においては、少数の資本的にきわめて集約的な農家と同時に、多数の兼業農家が存続するだろう、こういうようなことが言われておるわけでありまして、私は、そういう点からして、とうてい自立農家の育成というようなことは、政府が当初考えておったようにいかないのではないか。農業基本法の二本の柱の一本である自立農家の点を考えてみても、当初のようにはいかないのではないかということを私は考えますし、また、農林省の総合研究所の所長自体の論文から見ても、そういう点が出ておるように思うわけであります。  そこで、お尋ねしたいのでありますが、現在、農林当局は今後の自立農家のあるべき数というものを、一体どのように想定されておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  132. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは一つの目安でございますから、いろいろの見方があろうと思います。たとえば、自立農家をやるにも、四町が適当だとか、あるいは五町が適当だとか。しかし、そういう計画は立てましても、実際なかなかそれへ到達するということが、諸般の事情からむずかしい場面もあるわけでございます。私どもといたしましては、やはり平均的に二町五反という規模が、現在指向しておる面からは適当な耕地面積だ、経営面積だ、こういうふうに考えて、それに近づけるように諸般の政策を進めておる次第でございます。
  133. 東海林稔

    東海林委員 私は、その面積の規模どうこうというようなことで自立農家を規制するということは、必ずしも妥当だとは思わないのですから、二町五反にこだわるわけではない。お尋ねしたいのは、一体当初十カ年計画で百万の自立農家育成ということを一つの大きい柱として掲げておったが、最近農林省ではそういうことをあまり言わなくなった。その点は一体どういうふうに考えておられるのか。そのことを聞いておるわけです。
  134. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自立農家の育成ということを最近言わなくなったがどうかというお尋ねでございますが、やはり自立農家を育成していくという……。
  135. 東海林稔

    東海林委員 育成でなしに、百万戸ということを言わなくなった……。
  136. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 百万戸、労働数が三人というようなことをあまり強調しなくなったのはどういうことかということでございますが、別にそれを引っ込めたおけでもございませんし、そういう目標に進めることが適当である、こう思っておるので、制定当時のように強く言わないというだけで、その方針は別に変えていないわけでございます。
  137. 東海林稔

    東海林委員 いまの問題と関連してお尋ねしたいのですが、兼業農家に対する考え方は、農林省が常に言っておることは、兼業農家というのは、自立農家の育成の立場からいえば好ましいことではないが、事実として存在するのだ。しかし、そういう兼業農家の方は、農業以外の収入が相当大きいのであるから、農業面でそうめんどうを見なくてもいいんじゃないかというような受け取り方もできるような言い方をされておるわけです。しかし、兼業農家と一口に申しましても、これはもう少し内容的に検討しなければならないと思うのです。たとえば東北のように、大部分の家族が農業には従事しているのだが、しかし、季節的に農閑期には各地方に出ていって、そうして他の職業で一時的に収入を縛るという農家もありますが、しかし、大都市付近においてはそうでなしに、農家家族の中で何人かは農業に従事するが、何人かは他産業に定着して従事している。こういうのが両方あると思う。しかし、現在のような社会保障あるいは現在のような労賃の状態からして、他から収入があるからそれでいいのだということではなくて、私は、兼業農家の経済が若干最近よくなっているとはいいながら、しかし他産業従事者に比べると、それでも非常に格差が多い。そういう面からいうて、農家自身の経済を自立するという意味からいっても、やはりその農業部面においても十分改善を施していかなければならぬし、同時にまた現存兼業農家が管理経営している農地というものが相当たくさんあるのでありますから、国全体の農業を発展させる点から見ましても、やはり兼業農家を農政の対象からはずして、他の収入があるからいいのじゃないかというような安易な考えでは間違いじゃないか、こう私は思うのですが、そういう点についてはどのようにお考えでございましょう。
  138. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 おっしゃるとおりで、第二種兼業農家が四割近く占めております。これをはずして農業対策といいますか、をするという考えは持っておりません。ただ、兼業農家の実態を見ますると、農業そのものの収入がそれほどでありませんので、他産業から収入を得てこれを補っている。中には農業専業よりも兼業しているために収入が多いという事実は、いまお話しのとおりでございます。そこで、やはり兼業農家対策といたしましては、これは二つの道があると思いますが、一つは、農業を離れて他産業に行ってもいいのだ、そういう考えを持っておる者も中にあると思います。しかし、他産業における雇用の安定とか雇用条件等が十分でないために、農地を離れて他産業に入り切りに入るということが困難な面もあろうと思いますから、そういう面はやっぱり受け入れ側の改善といいますか、安定的な制度を設けていくべきだと思いますが、一面におきましては、やはり農業というものを続けていきたいのだ、しかし農業の収入が十分得られないのだ、こういう面で兼業をしておる農家もあると思います。そういう農業をやっていきたいのだと言いながら、経営面積等も狭い、能率もあがらない、こういう方面につきましては、私は、いまの土地改良の問題でもあるいは選択的拡大の問題でもいろいろな政策がございますけれども、やはり一つの協業というようなほうを進めて、経営面積の少ないものもそういう面から農業がやっていける、こういうような方向へ向けていくのが適当であろう、こういうように考えております。
  139. 東海林稔

    東海林委員 いまの赤城大臣の答弁の中からも、若干まあいままでの農林大臣考え方と違うような点が出ておるので、そういう意味でも農業基本法の再検討ということを、大臣自身は腹の中である程度考えておるのだろうけれども、なかなかはっきり言えないという点があるのじゃないかというような気が私はしますが、しかしこの問題は別な機会にこまかくひとつ質疑をいたしたいと思います。  そこで、この問題の総括的な意味でお尋ねするわけですが、赤城農林大臣は、しからばいまの農業基本法を中心とする農政の進め方によって、基本法の目的とする農業従事者と他産業従事者との所得の格差はなくすることができるという確信を持って農政を進めておられるのか、それともその目標というものは、一つ努力目標という程度考えていまの農政を進めておられるのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  140. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業の持っておるところの自然的といいますか、経済的といいますか、いろいろな面から他産業との格差を全くなくしていく、同じにしていく、これは私は日本ばかりでなく、世界でもなかなかできないと思います。よけいなことを言っては失礼でございますが、ソ連の農業のように、農業を自家経営でなくて農業労働者として、賃金労働者としてやってしまえば、これはほかの勤労者と同じようなところまで持っていける場合もあろうと思いますが、農業という一つの経営をしておるばあいには、これは絶対に同じように持っていくということは、私はこれは確信もありませんし、なかなか困難だと思います。ただ格差が非常に多いのでございますから、その生産性につきましても、あるいは生活水準等におきましても、格差を縮小していく、これはぜひやらなくちゃならぬと思います。しかし、同じレベルまでにというのは、率直に申し上げて私は非常に困難じゃないか、こう思っております。
  141. 東海林稔

    東海林委員 はからずも赤城さんから、資本主義の経済を進める限り、農業と他室業従事者との所得格差の完全なる解消ということは困難だ、こういうことを伺ったわけでございまして、私どもの立場がはっきりしたと思うわけでございますので、この問題はひとつこの程度にしまして、次に移りたいと思います。  そこで伺いたいのは、農家の後継者の問題であります。先ほど角屋委員も質問の予定だったそうですが、時間がなくて省略されたようでございますので、この点をお伺いしたいと思います。自立農家を育成するにいたしましても、大事なあと取りがすでに農村にとどまらない、とどまりたがらないのが大部分だというような現状においては、そういう点からも、私は、基本法の自立農家育成という考え方がくずれていきつつあるというふうに思うわけです。そこでお伺いしたいのは、この農家の後継者問題についてどのような認識を持ち、これが根本的な対策として一体どういう考えを持っておられるか、このことをお伺いしたいと思います。
  142. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 後継者はどうしても必要でございます。農業そのものが荒廃するということは、やはり工業面におきましてもその他の業態におきましても、これは非常なマイナスだと思います。やはり日本の農業というものの基盤が確立しておればこそ、ほかの産業もやっていけるということでございますから、そのためには何といたしましても土地と人でございます。その人が農村から出ていくということは、非常にこれは憂うべき問題でございますが、特に後継者としての農業者が残らぬというようなことになりまするならば、非常にこれは憂うべき問題だと思います。事実御承知の白書等にありますように、非常に流出が多いのでございます。そこで、やはり後継者が農村にとどまっていくような、こういう政策を行なっていかなくちゃならぬと思います。そのためには、それ自体に直結してのこともありましょう。しかし、農業政策全体といたしまして、たとえば私が土地改良などでも特に申し上げておりますのは、選択的拡大の方向に沿うてそういうものがやれるような基盤にするとか、あるいは耕地、圃場の整理をして集団化するとか、あるいは土地改良の過程において耕地面積を拡大できるような方法とか、こういうようなことも一つだと思います。そうしてその上に機械を使い得る、こういうことでありまするならば、労力を節約いたしてもやっていける、こういうようなこと、あるいはその社会環境といいますか、文化的、経済面の社会環境というものをやはりつくり上げていかなければ、後継者も外へ出ていくということもありましょう。そういう面で、農業政策そのものが実は農業を荒廃させないで農業を進めていこうということでございますから、後継者づくりといいますか、後継者が残っていくこととこれはすべて連係があるのでございます。しかし、特に後継者づくりについて、何か直結するような対策があるかということでございます。強力な対策ではございませんが、やはり後継者として農業をやっていく人が、自己の責任において農業というものの将来を考えながらやっていけるというような立場をつくってやることも必要だ。一つの例といたしましては、自分で養鶏をやってみたい、あるいは畜産をやってみたい。ところが親がかりで、どうもそういう面をやろうとしても、自己の責任と、あるいは自己の収入との関連がないというようなこともあると思います。そういう面につきましては、すでにお話し申し上げましたように、いまの無利子の改良資金等によってそういう資金を調達して、責任と、また収益という面において責任を持って青年が先に進んでいくような対策を講じていく。あるいはまた教育等の問題もあろうと思います。近代化に適応するような教育というものが欠けておるとは申しませんが、幾ぶんそういう方面におきまして十分でなかった。教育の面におきまして、高等学校の教育等におきましても、あるいは伝習農場等もありますが、そういう内容もそういう方面に向けて、そうして希望が持てるのだというような技術あるいは経営方面の習得、あるいは習得ばかりでなく、そういうことができるような態勢を整えていく、こういう諸般の問題があろうと思います。しかし、だんだん後継者まで農村を離れるということは、まことに憂うべきことでございまして、これに対しましては強い関心を持ってその対策を講じていきたいと思っております。   〔桜内委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 東海林稔

    東海林委員 ただいま大臣からお話しがありましたように、若い青年たちが農村を離れるのは、単に経済の問題だけではなしに、いわゆる近代的な生活を楽しむための農村におけるいろいろな環境の問題、あるいはさらには農村のいまでも残っておる村自体の封建性、あるいは家庭内における世帯主を中心とする封建性、そういうものがあるので、なかなかむずかしい問題で、それらを総合的にやっていかなければとうていこの問題は簡単に解決しないということについては、私も全く同意見であります。  そこでお伺いしたいのは、環境整備とでも申しましょうか、生活改善とでも申しましょうか、その問題と関連して非常に重大な問題に農村の住宅の問題があると思うのです。そこで新年度予算を見ますと、建設省関係住宅金融公庫からの農村に対するワクが、改築あるいは改修のワクが若干ふえておる程度でございまして、さらにそのほかに、ただいま大臣もちょっと触れましたように、四十五億でございますか、無利子の資金融資の中にも、若干そういう後継者向きの家屋の改造というようなことも考えておられるというふうには見るのでありますが、そういうような住宅対策が、きわめて軽く見られておるような感じがするわけでございますが、それにつきまして、農林大臣並びに、建設大臣はきょうはどうしてもおいでになることができないということでございますので、建設省責任ある方から、両方の御見解を承りたいと思います。
  144. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 住宅対策につきましては、私のほうといたしましては、生活改善問題から住宅の改善ということにつきましてはいろいろな指導をいたしておるわけでございますが、さらにいまお話が出ましたように、住宅金融公庫において、住宅の新築及び改修についての農村向けの特別のワクが設けてあるのでございますけれども、これが農村地方では一般的にあまり認識されておらないようでございます。これは、農村住宅対策としては非常に適当な資金だと思いますので、年々拡大をはかっていきたい、こういうふうに考えております。この住宅の問題等につきましては、いま特に農林省として大きな対策は持っておりませんけれども、生活改善方面からのいろいろな調査もございまするし、あるいは現状等も認識しておりますので、一そう力を入れていかなければならぬ問題だ、こういうふうに考えております。
  145. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 建設省におきましても、農家住宅の改善につきましては、かねてから力をいたしておりましたが、三十九年度におきましても、この方針に基づきまして相当改善をいたしております。  まず住宅金融公庫の農山漁村向けの貸し付けにつきましては、年間五千五百戸を予定しておりまして、特に最近の農家の実態に応ずるために貸し付けの規模を増加いたしまして、平均十八坪、一定の場合には二十坪まで貸し得るようにいたしまして、農家の建設の促進をはかる予定でございます。そのほかに農村における住宅が老朽化住宅が多く、改修することによりまして生活水準が向上いたしますので、昨年度より建設省住宅金融公庫におきまして特に改修融資をすることにし、本年度、三十九年度におきましては、さらにこれを増額し、一件当たり二十五万円を限度とする改修貸し付けをする予定にしております。さらにそのほかに、最近の農家におきましては、作業の共同化に伴いまして、住宅も共同化する要望もございますので、公営住宅等の建設につきましては、連合した集合住宅をつくりまして、新しい農家生活に資するようにいたしております。  なお、そのほかに、農村におきましては特に住まい方あるいは生活改善という点につきまして、積極的な指導をする必要がございますので、都道府県を中心にいたしまして、関係の部局あるいは学界等一体となりまして、農山漁村の住宅改善推進協議会というものを設けまして、農村における住生活の改善のために努力をいたしておる状況でございます。
  146. 東海林稔

    東海林委員 従来の建設省の農村向けの住宅のワクでありますが、ここ数年はどうかこうかワクが大体消化されるような状態でありますけれども、その以前にはあまり利用されていなかった。ただいま農林大臣からも認識が不十分だというような話があったのですが、実は認識が不十分ではなしに、規格その他においてなかなか農村の実情に合わない点があるように私は思うわけです。最近私は、農村の若い青年たちとこの住宅問題で議論して非常に感心したことがございますので、ひとつ参考に申し上げたいのですが、それは一言で言えば、新しい農村ではいわゆる労働の場所と生活の場所を区別したいという青年たちの欲望でございます。これまでは田畑に出てどろだらけになって働いた。うちに帰れば、作業場か住宅かわからないようなところに、ちょっと足を洗って食事をして寝た。そういうようなことが、青年たちを都会に走らせた一番大きい理由であるようです。しかしいま技術の非常な改善によって、そういうようなことではなしに、労働と生活を切り離すような条件が可能になってきておる。私は群馬でありますが、たとえば群馬の住宅は、従来は養蚕をやるということで非常に大きい住宅、作業場が主であるような住宅であった。しかしいまは、屋外条桑飼育が普及して、そういうものは必要でなくなった。そういう点からして、やはり農村の住宅というものも大体月給取りと同じような住宅でいいんじゃないか。そのかわりある程度の作業場が必要である。こういうようなことで、青年が一様にそういうことを要求しておるわけです。ところがこれまでの農村民の住宅に対する考え方というものは、そうではなかった、そこに問題があると思うのです。一つの例でありますが、生活改善として四、五年前までは改良かまどの普及を農林省は一生懸命にやった。現在農家にいって改良かまどなんか使っておる家は一軒もありません。それと同じようなことが住宅問題でも言えるのではないか。そういう点の実情調査もやっておるようでありますから、ほんとうに農村の実情を、また特に若い青年たちのそういう要求というものを十分正しく把握されて、それにマッチするような住宅対策を立てるのでなければ、ただ予算を幾らかふやしたというようなことだけではこの問題は解決しない、こういうふうに思いますので、この点を特に申し上げて、今後の善処をお願いしたい、こう思うわけでございます。  次に、農地構造改善事業の問題について大臣にお伺いしたいのでありますが、新しい年度計画を見ますると、従来とは若干方針が変わっておるようでございまして、四百地区の指定のうち五十個所は再指定ということになっておるようでございます。そこでお伺いいたしたいのでありますが、この事業の発足当初は、七カ年間に今風の農村的な市町村三千百町村を指定して三カ年継続でやるから、十カ年間には一応全国全部に行き渡るということで発足したはずです。その計画ですと、三十九年度は五百カ所程度再指定でなしに指定しなければならぬということになると思うのですが、この四百カ所のうち五十カ所の再指定ということになりますと、この全体的な計画としてはどういうことになるのか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  147. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 計画が三千百町村ということになっていることは御指摘のとおりでございます。今年度一町村でも二カ所というような方向を持っておりますが、しかしこういう実績、熱意のある——どういう実績があるか、まだ指定もいたしておりませんので、実績を見てなお検討いたしてみたいと思いますけれども、目標は、いま目標として三千百という目標を置いておいて差しつかえないのじゃないか、こう思っております。
  148. 東海林稔

    東海林委員 そういたしますと、今後においては予算上の実施個所というものが、五百カ所よりも相当大幅にふえていくというふうに理解していいわけでございますか。
  149. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、経緯を見ましてやっていきたいと思っています。私は、根本的に考えれば、話はそれますが、構造改善事業というのは、指定をされるされないにかかわらず、やらざるを得ないものだというふうに考えております。数の問題で指定との関係がございますが、推移を見ましていろいろ検討いたしてみたい、こう思っております。
  150. 東海林稔

    東海林委員 いまのその再指定をするという新しい考え方と関連してお伺いしたいのでありますが、従来は、御承知のように、一市町村平均一億一千万、今度融資分を一千万ふやしておりますが、そういたしますと、従来耕地面積、農家戸数等から勘案して、下部町村の一カ所の事業量というようなものを非常に厳格にやっておったわけです。しかし再指定をして、二度も指定してやるということであれば、この事業量の限度をきめるということは、私はあまり意味がなくなったんじゃないか、こう思うわけです。むしろそういうことでありますならば、各町村の自主性に基づいて、これは無限に認めるというわけにはいかないにいたしましても、適切な計画であるならば、その限度というようなことをはずして、できるならなるべく一緒にやるべきじゃないか。実情を見ますと、御案内とは思いますが、現在合併した町村においてこの計画を立てる際に、ごく少数の地域にだけこれをやる。そうすると町村のいわゆる少ない費用を、ある一地域にだけに投資するということについて、非常に議論が出るわけです。そういう問題を解消する意味におきましても、再指定ということを考えるくらいならば、事業量のワクというものをもっとはずして拡大すべきじゃないかというようなことを考えるわけでございますが、そういう点につきましてはどうでございますか。
  151. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいま、一市町村に二つの指定をするというようなことに今度あらためる、熱意がある場合に指定するということに改めましたが、そうなると、同じことを二回繰り返すようなことじゃないかとか、あるいは町なら町全体、村なら村全体としてどこにも行きわたっておらないので、その辺でいろいろ村や町難局に問題がある、こういう御指摘でございます。ただ私どもは、やはり進捗の程度もございますし、一気にやるということがはたして適当かどうか。ことに旧町村で一つぐらいずつ取り上げておるのが現状でございますから、ほかの旧町村でまた一つ取り上げる、その間において構造改善の内容等におきまして、大体は似ておっても、違う面も地域的にあろうと思います。そういう意味でございますから、これを一括して、その町村全体にやっていくということよりも、やはり熱意のある町村内の一カ所、あるいは今度は二カ所になる場合もあります。逐次進めていったほうがいいんじゃないか、こう考えております。ただそういうことになれば、いまのお話のように二つを一緒にして、事業のワク等も一緒にしてやってしまったほうがいいんじゃないかということも一つ考え方と思いますけれども、やはり実情に沿うて段階的に進めていく、こういうのがいいんじゃないか、そういうことでありますならば、やはりいまの助成及び融資ワク等をきらんとして、これは一つの平均でございますから、そういうものを基準としてこの事業を進めていく、こういうことがいま適当ではないかと思っておりますけれども、なお推移によりまして考えますが、まあ町村のやり方に対しまして弾力的でありたいということは、私どもも指導いたしております。あまり画一的で、せっかくやろうというのに熱意をそいでしまったり、あるいは紛争など起きるというようなことであっては困る。弾力的には考えておりますけれども、二つの場合にそれを合併させていく、あるいは町村全体をやっていく、そういう期待は持っておりますけれども、いま全体にまで広げるとか、こういうことは、いろいろ助成面や資金面から、ちょっとできかねると思います。
  152. 東海林稔

    東海林委員 いまの問題に関連してもう一つお伺いしたいのですが、今度融資面では一千万ふやすということになるのですが、補助対象の事業量としては従来どおり、こうなりますと、最近の資材とか労賃の値上がりから見ますと、実質的にはこの補助部面がむしろ縮小されている。その面では後退するというふうにわれわれには理解されざるを得ないのですが、その点は大臣はいかに考えておられるのでございましょうか。
  153. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは三年目の終了どきに、調整費といいますか、調整する対策がありますので、その調整の範囲内におきましてやっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  154. 東海林稔

    東海林委員 次に養蚕の問題、生糸の問題に移りたいと思うわけですが、これまでの政府の蚕糸業に対する政策というものは、きわめて一貫性を欠いておる。これは多くを申し上げるまでもないと思う。あるときは増産を奨励した。三十四年、三十五年のごときに、養蚕業は斜陽産業だというので、政府が補助金まで出して桑園の転換を指導した。農業基本法の制定の際に、私は養蚕はどうなるかと質問したら、これは現状維持だ、増産も奨励はしないが、といって減産も指導しないのだ、こういうお答えであったわけです。ところが今回の予算を見ますと、今度は増産ということが出ておるわけでございます。そこでまず、養蚕に対して新たに増産政策をとることになったその根拠を、どういうふうに一体考えてそういうことになったのか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  155. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かに数年前に桑畑の抜き取りなどをやらせましたが、そういう時代においての需給関係というものが不安定であって、そういう対策を講じたこともあります。しかし現在におきましては、需給関係から見まして、消費の面が国内的にも国際的にも、ことに国際的に非常に伸びてきております。その伸び方も、見方によりますけれども、三%から五%ぐらい年率伸びていくのじゃないか、こういう面が出てきております。これは、一面は国内的には経済成長政策の余波もあるかと思いますけれども、国際的に特にそういう伸びを見込まれるような状態でございます。そういうことでございますならば、やはりこれは安定的に増産していく、こういうことが必要であろう、こういう見通しのもとに、本年度等におきましても蚕業対策予算を相当計上いたしまして、その方向へ持っていくことにいたしておる次第でございます。
  156. 東海林稔

    東海林委員 農林省の統計を見ますると、確かに生糸の需要は、内需関係は三十四年以降少しずつ増加して、現在約二十万俵程度を横ばいしておるというような形でございます。しかし輸出生糸、これは製品を含めての統計でございますが、三十四年の十七万七千九百三十一俵というのが最高で、その後は年々漸減傾向をとって、三十七年度は十万八千六十二俵というふうにずっと下がってきておるわけです。ただいま大臣のお話では、内需も伸びておるし、世界全体の傾向としても需要がふえておるから増産するのだ、こういうことでございますが、かりに世界の需要が増加しているにしましても、現実にいろいろな欠陥があって、日本の輸出がむしろ減少しているという傾向にあるときに、簡単に世界的に需要が増しているのだから増産するのだというだけでは、ちょっと納得できないのでありますが、この輸出の減少している傾向と関連して、いまの点、もう一度はっきり御説明を願いたいと思います。内需に期待するというのか、外需に期待するというのか。外需に期待するとすれば、こういう減少傾向をどういうふうにして打開してこれをふやしていくという考えなのか、そういう点をもう少しはっきりとお答えを願いたいと思います。
  157. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 輸出の面では、ほかの国との競合等もありまして、比較をしていきますと、日本の輸出のほうが少しずつ減っているといいますか、パーセンテージからいうと減っているようでございます。しかし需要の年率から見ますると、先ほど申し上げましたように、三%から五%が増す、これは長期的にそういうふうに展望をされると思います。それに対して供給のほうでございますが、供給のほうは、増産は私は可能だと思いますけれども、きわめて困難だ、こういうことでございますので、やはりいまの需要を考えますならば、やはり供給の方面で増産するということが適当であろう、こういうふうに見ておるわけでございます。
  158. 東海林稔

    東海林委員 いま輸出のほうは、他国と比べてパーセンテージで減っておるというような話だが、パーセンテージでなしに、実数として、私がいま指摘したように、農林省の統計では減っておるのですよ。パーセンテージだけでないのです。そういう点ははっきりわかっておらないと、そんな考えで増産に踏み切るなんというのでは、非常に不安なんですが、その点はどうでしょうか。
  159. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、輸出はそういうふうな数字で減っているかと思いますけれども、この間の国際絹業協会理事会等に来た諸外国の代表等、あるいはまたその他の方面からの調査によりまするならば、輸出は増していける。需要そのものがふえる傾向にありまするから、輸出は増していける。しかしそう大きくは考えませんけれども、増していけるという見通しは持てるのではないか、こういうふうに思っております。
  160. 東海林稔

    東海林委員 確かにお話のように、昨年秋の国際絹業協会の理事会等の見解でも五%程度需要は増すだろう。しかしそれには価格安定という大きな条件があるわけです。ところが、御承知のように、これまでの日本における生糸の価格については、しばしばこの価格の安定ということを外国からも要求され、国内でもそういう議論がありながら、ちっともそれが政策として実施されていないところに問題があると私は思うわけです。特に昨年の実例を考えてもよくおわかりだと思います。生糸が一番高いときには、群馬県の例でたしかキロ四十八万円くらいにも上がったが、その後は二十四万円にも下がった。したがって繭について見ましても、養蚕の一番商いときは貫三千七百円もした。ところが夏秋蚕になると二千四百円程度、晩秋になると二千百五十円、こんなふうな価格の変動がされておるわけです。政府国会に出している昭和三十九年度において講じようとする農業施策の養蚕関係を私はいろいろと見たのでありますが、確かに技術面についてのいろいろな施策は考えられておるようです。特に自然上簇その他による省力飼育という点については考えてもおられますし、また、これまでの養蚕技術面における研究進歩というものは、農業の各部門において最もその進歩が顕著である、また農業のほかの部分で行なわれていない共同化ということも、養蚕の面においては相当これが普及されておるという点については、私は技術者の研究なり指導に対して敬意を表しておるわけであります。ところが、価格安定政策という、農林省なり通産省の大臣みずからが本気になって考えなければならぬようなことが、さっぱり考えられていない。ただいまも指摘しましたように、昨年のごときは一〇〇%も値段が上がり下がりしている。こういうような事態に対して、そういう問題をどういうふうに根本的に解決しようとしておるのか。この農業政策を見ますると、いままでの取引所の公正な取引を指導するとか、そういう抽象的なことは書いてあるけれども、何ら具体的な政策はないのです。こういう抽象的な政策では、これまでもこのために努力したはずだけれども、さらに実効が上がっていない。そういう点を、今後はこうやるんだということを具体的にはっきりと示さずに、ただ増産をされましても、なかなか農家は、はいさようでございますかと安心するわけにいかない。私は、この間群馬の私の知っておるある大きい養蚕農家に行って話を聞きましたら、昨年約三百貫とったという農家がございました。その農家の話に、実は三十四年度政府が桑園の作付転換を指導しだしたので、これでようやく繭価は安定するだろうというので、従来五反歩しかなかった桑園を八反歩ふやして一町三反にした、おかげで非常に助かりましたと言っておりました。当時私も農村に行って、一体東海林さん、政府では減反せいと言っておるが、どうしたもんでしょうかという相談をしばしば受けまして、そのとき私も若干の研究をしておりまして、あわてなさんなということを言いまして、あとでよかったということになった。実はこれはまぐれ当たりでしたが、そういう例があるわけですが、養蚕に関する限りは、大体政府の反対をやればいいということがいま常識になっておるわけです。したがってそういう場合に、特に私が指摘したような価格対策等については明確な施策なしに、漫然と、ただ世界の需要がふえそうだから、こういうようなことでこれをやったのでは、また逆戻りせざるを得ない、これまでの轍を踏むようなことになるのではないかと私はおそれるわけですが、その他の価格安定対策についてお伺いしたいわけです。特にいま世間では、結局生糸の値段というものは、横浜や神戸の生糸の取引所できめられる。あるいは乾繭の値段は前橋や豊橋できめられたのだが、そこではきわめて投機的な取引がされているではないか。いま日本の生糸の生産量は、御承知のように、三十三万俵程度でございますが、化糸取引所で取引されている量は大体二百万俵をこえておるといわれております。前橋の乾繭取引所の例等から見ますと、実物の取引が実際に行なわれるのは、取引量のわずか三ないし四%程度だ。これが現在の生糸なり繭の価格を非常に変動させておる元凶だから、ああいうものは若干の機能はあるにしても、むしろ弊害が多いからやめたほうがいいというような議論まで出ているわけでございます。そういう取引所の改善等を含めて、この繭糸価格の安定についてどういうふうに考えておられるか、この点はひとつ農林大臣並びに通産大臣の御所見を承りたいと思います。
  161. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 昨年六月限を中心とした生糸需給の逼迫に乗じて、一部仕手の買い占めによっていまお話しのように生糸価格が暴騰した、まことに遺憾でございました。私どもはそういう遺憾な事態もよく分析いたしまして、今後このような事態が発生しないように、法令、規則等の厳守を励行させるほか——これは取引所等にでございます。政府の指導のもとに横浜及び神戸生糸取引所が策定した、両建て証拠金が自動的に預託されて、生糸取引の過当投機化を未然に防止することを内容とする異常時における対策措置、こういうものをきめておりますが、これも御承知のとおりだと思います。そういうことで対処いたしていきたいと思います。すなわち、取引所あるいは乾繭取引所等につきまして、いわゆる投機的なことが起こらないように対策を講じていく。もう一つは、もうすでに従来からありまする繭糸安定の法律によりまして、この価格の安定をはかっていきたい、こういう対策を講じていきたい、こう思っております。
  162. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 生糸の問題につきましては農林大臣所管でございますので、農林省において措置をされておるのでありますが、私のほうから見ました場合といいますか、貿易の関係から見ますと、確かにあなたのおっしゃるように、価格が暴騰したり暴落したりすることが非常な悪影響を与えておる。したがって、向こうで輸入商が買っても、すぐそのあとで値が下がってしまう、安心して買えない、こういうような状況があるのでありまして、こいねがわくは一定の大体安定した値段であることが、貿易関係からいえば非常に望ましいと考えられております。ただしかし、取引所というものは、特に日本の場合におきましては、過当競争、投機性が非常に強い。値段の上がり下がりが強いのでありまして、私の所管しております人絹その他綿糸、あるいは毛糸その他いろいろな問題においても、ままそういう例があるのでありますが、そういう場合においては取引所法の認めるところにより、また行政指導等を通じまして、できるだけその種のことがないようにいままで指導してまいりました。事実人絹の場合等は、暴騰したとき一時立ち会い停止を命じたこともあります。そういう措置をとったこともございますが、これは二百二、三十円くらいのものが三百二、三十円くらいまで、去年の七月に実は生糸と同じような問題が起きまして、そのときは当限の立ち会いを一博行政指導によりまして、取引所が停止をいたしました。そしてある程度は解け合いをさせるような形でこの問題を処理したこともございます。  いずれにしても、こういうことになるというのは、証拠金が少なくてむやみに売ったり買ったりするというところが一つは大きな原因にもなっておりますし、その他そういうような、その種のいわゆる投機的といいますか、ばくちといいますか、そういうようなことのないような、そういうことをあまりしないで、ほんとうに公正な値段が生まれるような取引所の機能を十分に発揮させる方法という意味で、いま農林大臣が言われましたような施策をわれわれのほうにおいてもとって、御要望のような措置を考えてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  163. 東海林稔

    東海林委員 農林大臣は、この生糸の価格が非常に変動する場合には、それに非常措置をとる考えだと言われたのですが、御承知のように繭糸価格安定法第十条には、価格が非常に騰貴したような場合には禁止価格を定めて、これを抑制するというようなことが規定されておるわけです。私は寡聞にして、昨年の六月のああいう変動期はまさにこの条文が適用さるべきときであったと思うのですが、これが適用されているというふうには聞いていないのですが、一体どうしてああいうものを農林省としては放置しておったのか、この点をはっきり伺いたいと思うのです。
  164. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまお話しのように、確かに繭糸価格安定法の中にそういう規定があったわけでございますが、その規定の発動をしなかったわけでございます。どういう理由かということでございますが、糸価の上がり下がりは必ずしも不当な利得を目的とする買い占め等の過当投機によるためとのみは限られませんでしたが、近年のように需要が旺盛で供給が即応できない、こういう経済の実勢にささえられまして、糸価が上界する場合もあります。また取引所の適切な運営のためには、取引所の自主的判断にまかせて行なうことが最善であろうということ等もありますが、法規違反と、著しい弊害の行為が発生している場合に限って行政庁は介入するたてまえ、こういうふうになっております。そこで、取引所の売買取引につきまして、行政庁の不用意な介入が売買両当事者の一方の味方をするということになりかねない。そういう悪影響が生じては正常な取引に支障を来たすのではないか、こういう場合もあります。そういういろいろな観点から、昨年六月のような場合に、禁止価格制度の発動等を、行政庁が介入すべき事態であったとは考えておるのでございますが、その後に整備いたしましたような異常時における規制のルールがあらかじめ確立されていなかったので、行政庁が介入した場合には、前に申し上げましたような事態を招くおそれもある、その混乱がさらに続くのではないか、こういうふうな観点から、実はそういう規定があったのでございますけれども禁止規定の発動をしなかった、こういう事情にあるわけでございます。
  165. 東海林稔

    東海林委員 先ほど通産大臣から、生糸の貿易の問題についてお話がございましたが、その点で少しお伺いしたいのですが、御承知のように、日本の生糸は、生産量でいけば世界の約六〇%も占めておる。それに次ぐのは中共の二三%、あるいはその他中近東が十何%、こうなっておるわけです。大体過半数を占めておるわけです。アメリカの生糸や製品の需要から見ましても、その供給先は日本が七八%を占めておる。こういう点から見まして、私は普通の形でありますならば、日本の生糸というものは世界市場を十分支配する力があるべきはずだ。それが、実際問題としては、二三%程度の中共の生糸に往々にして引きずり回される、こういうような状態は、私は、要するに輸出の機構に非常な問題があるのではないか。御承知のように、中共は生産農家に対しては生産費・所得を補償する値段で買い上げる、そうして、輸出については完全な国家管理のもとに貿易全体の総合的な見地からバーター貿易をやっておる。ところが日本は、商社の自由ないわゆる利益追求の経済行為にまかせておる。そういうようなところに問題があろうと思うわけです。中共のようにいかないということは、それはわかりますが、少なくとももう少しこういう点について機構的に整備するということがぜひ必要ではないかと思うわけですが、そういう点についての御見解を承りたいと思います。
  166. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 輸出のことでありますから、輸出秩序を確立する、あるいはまた一手輸出の指貫を何かとるというようなことも確かに大事なことだとわれわれは思っておりますが、しかしも日本がずっといままでにアメリカと生糸の取引をやってきた実績から見ても、アメリカへ行って一番われわれが文句を言われるのは、価格の変動がひど過ぎるということなんであって、これをやられたのではとうていわれわれは買えませんよ、日本が生産の大部分を占めておるところで、むちゃくちゃに上げたり下げたりされたのでは安心して買えないじゃありませんか、こういうことなんであります。だから、私は、先ほども申し上げたように、繭の価格にしても生糸の価格にしても、上下の幅はあっても、あんまり動かないような何かことをする。あんまり下がれば、今度は農家が困る、あんまり上がれば輸出が困る、そこを勘案した措置がとられたいものだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  167. 東海林稔

    東海林委員 通産大臣もいま言われましたように、価格の問題が一番中心なんですが、先ほど来の農林大臣の御答弁では、その点が私にはきわめて不安に感ぜられてならないわけです。しかし、時間がございませんので、その問題は一応この程度でやめまして、ともかく、価格の安定なり輸出機構の整備ということについて、増産を指導する以上、政府としては責任を持って対処すべきだ、そういう観点に対して、ぜひひとつこれは慎重な御検討をわずらわしたい、こういうことをお願いいたします。  そこで、さしあたっての応急対策であります。先ほど大臣が言われたように、本来であれば需要が伸びるという形である程度化糸価格なわ繭糸価格というものは上がっていけばいいんだが、最近は非常に暴落しておるというような形が出ているわけです。そこで、これは単に養蚕家のみならず製糸家からも応急対策として要求されておることは、昭和三十九年度のこの生糸年度の安定価格をぜひ適正なものにきめていただき、それをほんとうに安定するようなふうに御努力を願いたいということが一つと、それから、もう一つは、現在管理会社において輸出適格化糸の買い上げができるようになっているわけですが、このワクをもっとふやしていただいて、そうしてこれをやはり実施していただきたい、こういう点がひとしく要望されている点だと思うのでありますが、応急対策としてのこの点についての御所見をひとつ承りたいと思います。
  168. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 繭糸価の安定法に基づいて安定価格を至急決定しろということでございますが、そのとおりに考えまして、長期的観点、あるいは養蚕家の立場、所得の安定等考えまして、最低価格を適正な基準に引き上げる方向でただいま検討いたしております。  それから、輸出先糸保管会社で買い入れのワクを増加する考えがないか、こういうことでございますが、これは慎重に検討いたしてみたいと思います。
  169. 東海林稔

    東海林委員 次に、畜産の問題について少しお伺いしたいのですが、畜産の問題はたくさんあるのですけれども、時間がございませんので、ごく数点に限ってお伺いしたいと思います。  一つは乳価の問題でございます。御承知のように、政府の選択的拡大の中で一番力を入れて酪農を奨励されたわけでありますが、しかし、これもまた、一昨年来の乳価騒動からして、酪農民がずいぶんと政府に対する信頼を失い、いや気がさしたと申すのでありましょうか、私の群馬などは、従来は一カ月大体成牛の屠殺というものは百頭前後だったものが、このごろ五百頭にも月にふえておる。農林省の統計を見ましても、昨年の十月の統計は前年度に比べて五十何%も屠殺が増加しておる、こういうようなことになっておるわけです。これはもう非常に重大な問題だと思います。これはいまの選択的拡大で奨励している果樹についても蔬菜についても同じような現象が出ているわけでありますが、特にこの酪農の問題は非常に深刻だと私は思うわけです。そこで、一昨年のメーカーの一方的な値下げ通告については、前重政大臣が業者からだいぶきらわれながら、私どももずいぶんお願いして、積極的な介入をやってある程度解決したという問題がございました。昨年のこの値下げの問題については、今度は各生産者母体から各県外事に酪振法に基づき紛争調停の即し立てがあって、いろいろと調停されたけれども、なかなかこれが解決に至っておらない。そこで、一時農林省では、法律に基づく農林大臣の中央調停について、これを敬遠するような態度でもあったようでありますが、最近新聞報道によりますと、青森、岩手、秋田、群馬等からの調停をいよいよ引き受けた、こういうような報道がされておるわけです。最近、メーカー側からは、何とかしてこの調停を粉砕しようというふうなことで、現地ではいろいろ策動をやっておる。たとえば、同じ県内においても、農林大臣の調停申し立てをしないでいるところについては春からある程度上げるというような密約をしながら、申し立てをしているところには上げないというような意地悪なこともやっているわけです。そこで、この問題の農林大臣としての処理は非常に慎重にかつ適切でなければならぬと私は考えるわけですが、現在農林省ではどういう調停の段階になっておるか、また、これを処理するにあだって農林大臣としてはどのような決意をもって当たろうとしておられるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  170. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のような実情でございます。そういう実情から、各県から中央調停に上がってきているのが数件ございます。そこで、調停員が三人ございますので、調停員の手元で連日調停にいま当たっておるようなわけでございます。できるだけ早くその結論を待ちたいと私は思っております。ただ、私の気持ちはもう言わないでもおわかりかと思うのでございますが、どうも、まだ調停中でございますので、私からあまりはっきりした私の意向を言うことは、これはちょっと差しさわりがあると思いますので、申し上げませんが、できるだけ生産者の立場を擁護していきたいという気持ちであることは申すまでもないと思います。
  171. 東海林稔

    東海林委員 次に、この乳価の問題と関連する問題で、輸入飼料の価格の問題でございます。今年度予算書を拝見しますと、政府の輸入ふすまの売却代金が昨年に比べてキロあたり二十三円上がることになっておりますし、専増産ふすまがキロあたり四十八円上がることになっているわけです。先般の内閣総理大臣の施政演説でも、公共料金は一カ年は上げない、それから政府の規制し得る価格は上げない、こういうことをはっきりと言明されているわけですが、この政府の売る輸入飼料の値段は上げるという予算になっていることとの関連はどうなのか。予算にはそういうふうに書いてあるけれども、実際に総理大臣が議会で言明しているように、また政府がしばしばいろいろな機会に言明しているように、これは上げないんだ、こういうふうにはっきり言明していただければけっこうなんでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  172. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、管理価格でもございませんし、あるいは政府の規制するという部類にも入っておりませんで、一般の価格の決定の方式として、昨年度、大豆かすとかその他との関係と比例をとりましてきめました。ピーターソン方式と申しますか、そういう方式できめてきておりますので、そういう方式に従ってきめていこうということで、予算価格も幾分上がっている、こういうことでございまして、政府の規制するものというふうには私ども考えておりませんので、こういう措置をとっていきたい、こう思っているわけであります。
  173. 東海林稔

    東海林委員 まことにいまの答弁は心外でございますが、政府の規制する価格どころか、これは政府が売る価格ですよ。何か勘違いされているんじゃないですか。その点と、もう一つは、ただいま、大臣も御承知のように乳価はむしろ値上がりするという場合に、政府が売る飼料の値段を上げる、そうして反面酪農は選択的拡大のトップで指導するのだ、こんな支離滅裂な政策というものが一体あるかどうか。私はいまのあれにはどうしても納得できません。第一飼料需給安定法を読んでもらえばいいと思うんですが、第五条の第三項にはこう書いてある。「第一項の規定により輸入飼料の売渡をする場合の予定価格は、当該飼料の原価にかかわらず、」と書いてある。もとの価格にかかわらず、「国内の飼料の市価その他の経済事業を参しやくし」、それはいいが、その次の、「畜産業の経営を安定せしめることを旨として定める」、こういうふうに書いてあるのですよ。もう一度はっきりした御答弁を願いたいと思います。いまの答弁じゃ絶対承服できません。
  174. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 たとえば、政府の規制するというようなことを例にとれば、売るほうのことばかりでありますが、たとえば生産者の米価、今度は買うほうでございますけれども、これも政府で買うのでございますから、それじゃその規制するものに入るかというと、やはり、生産者米価は規制する方面に入らない、こういう観点から、これはストップというわけにはまいらぬ。いまの飼料、えさの問題でございますが、政府で売るのでございますけれども、最末端まで政府が規制して、幾ら幾らでというような規制はいたしておらないと思います。そういう意味におきまして、政策として御議論なさるならば御議論としてもっともな点もございますけれども、規制するものに入るか入らないかという面から言いますると、規制に入らないという立場でございます。しかし、政策として、たとえば牛乳は下げられたままで、それを何とも手をつけられないでいるというのはけしからぬじゃないか、飼料のほうは反面高く売るというような形ではまずいじゃないか、こういう政策面からおっしゃられますと、まさにそのとおりでございますが、牛乳の点におきましては、先ほど申し上げましたように、酪振法による調停の段階でございますから、できるだけ消費面も多くしたり、そういう価格の面も考えていくということでございまするし、えさのほうは、いまの飼料需給安定法の規定のように、「原価にはかかわらず、」、こうありますけれども、輸入のフレートなどは非常に高くなってきております。しかし、それにかかわりないといたしましても、やはりほかの大豆かすとかその他と比例をとってきめていくというのが昨年度の方式でございましたので、そういうふうに、比例価格といいますか、均衡価格から予算面における値上がりというものを予定しておる、こういうことに申し上げる次第でございます。
  175. 東海林稔

    東海林委員 私は、その消費者に渡る末端価格云々を言うておるのではなしに、政府の払い下げる価格を聞いておるんですよ。予算面政府が払い下げるのが上がっているじゃないか、こういうことを、言っておるわけです。先ほど、消費者米価についての角屋委員の質問に対して、これは国民生活の安定という意味からして引き上げないのだということをはっきり御答弁になりました。ふすまは、酪農家にとっては消費者米価と同じわけです。したがって、法律にも、消費者米価は国民生活の安定のためということが書いてあるわけです。それと同じように、「畜産業の経営を安定せしめることを旨として定め」なければならぬ、こういうことになっているわけです。まあピーターソン方式とかなんとかという、しろうとにわからぬようなことばをよく畜産局長も使うのでありますが、しかし、そういうごまかしでなしに、昨年そうやったからまたやるのだ、そういうようなことでは、これは決して酪農民は納得しないばかりでなしに、法律の規定から言うても、これは非常におかしいと思うのです。第一、ピーターソン方式なんかとることがすでにこれ間違いだと思うのです。そういう点、もっとはっきりしていただきたい。消費者米価に対する考え方とちっともこれは変わらないはずの法律規定になっておるわけです。規制価格どころか、政府自身が売る価格なんですよ。政府自身が売る価格。しかも、いまのお話のように畜産物価格は決して上がっていないのです。その点はどうもはっきりしませんよ。
  176. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この「飼料の売渡」の第五条によりますと、政府の売るものでございますけれども、売り方についてはこういうふうな規定がございます。「政府は、飼料需給計画に基づき、その保管する輸入飼料を売り渡すものとする。」、「前項の規定による輸入飼料の売渡は、入札の方法による一般競争契約によらなければならない。但し、政令で定める特別の事由があるときは、指名競争契約又は随意契約によることができる。」、「第一項の規定により輸入飼料の売渡をする場合の予定価格は、」これは、いま東海林さんがおっしゃったようなことで、「当該飼料の原価にかかわらず、国内の飼料の市価その他の経済事情を参しやくし、畜産業の経営を安定せしめることを旨として定める。」、こういう規定がございます。でありますから、政府が売るというものであっても、これは売り方は原則として一般競争入札で売るということでございますから、ほかの規制するものとは私は違うと思います。
  177. 東海林稔

    東海林委員 しかし、予算に響いてあることは、こういう予定価格でもって売ろうということになっておるでしょう。競争入札でなんぼになるということはわからないのですから、そういうことを、なんぼになるということを予定して予算を書いてあるわけではないと思うのです。その点、消費者米価とどういうふうに違うというふうに理解したらいいのですか。私はちっとも変わらないと思うのですが。
  178. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 消費者米価は、御承知のように、最末端まで統制いたしておりまして、一キロ幾らだ、こういうふうなきめがあるわけでございます。しかし、このえさにつきましては、そういう最末端まで統制をしておるわけではございません。輸入飼料を原則としては競争入札で売る、その売る予定価格でございまするから、その予定につきましての一つの基準によって予定価格を算定してやる、こういうことであります。
  179. 東海林稔

    東海林委員 この点はどうも少し専門的になって、大臣少し勉強が足りぬような点がありますから、また別の機会にやりますが、もっとこの点は真剣にひとつ考えて、選択的な拡大の第一点にあげている酪農を政府みずからつぶすようなやり方だけは絶対にしないようにしていただきたい、こう思います。  それから、もう一つ伺いますが、計画を見ますと、輸入大麦を今度はよけいふやすようなことになっています。一方では、飼料の政策を見ますと、飼料の国内自給度を高めるのだということを飼料政策の大きい柱にあげておきながら、大麦の輸入をふやす、ふすまは従来どおり、しかも麦については国内では減産を指導しておるわけです。この辺にも政府の飼料政策の支離滅裂が出ているように思うのですが、この点は一体どういうふうに大臣はお考えになっておるのですか。
  180. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 数字的にはよく私も承知していませんが、やはり、飼料の需給計画から言って、輸入すべき大麦というものがふえているということに相なっておると思います。一方、しかし、そういうことでもまずいから、国内のほうもやっぱり飼料のほうをふやす、こういう考え方に立っておると思います。両方関連はございますが、一つ計画性からそういう数字が出ておる、こういうふうに思います。
  181. 東海林稔

    東海林委員 計画性からというのですが、全く計画性と反対なんですよ。たとえば、国内の大麦の減産を指導していますね。私は、その大麦の作付転換が完全に行なわれて、そのあと地が有効に利用されておるならば、こういう考え方も一応成り立つと思うのです。しかし、この間も議論がありましたように、大麦の転換したあとは利用されずに空閑にされておるのが多いのです。そういう状態に国内で放置しておきながら、国外から大麦の輸入を増加するという考え方、これは決して計画性があるとも言えないし、飼料政策の一貫性があるとも言えないと思うのです。これまた、大臣、この点この程度にとどめておきますから、もう少し勉強されて、はっきりした統一された政策をぜひ立ててもらいたい、こう思います。  それから、もう一つ予算を見ますると、今度新たに食管会計の中で輸入飼料勘定というのを別途に設けて計算するということになっておるようでありますが、その中に予備費として六十億というものが計上されておるのです。これは予備費としてはなかなか大きい額だと思うのでありますか、どういう観点に立ってこのような多額の六十億という予備費を計上されたのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  182. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 飼料勘定を新たに設けましたが、その中に予備費がある、その予備費は何に使うのか、こういうことですが、これは、一般会計におきましても、災害があった場合に備えて、災害予備費というようなものを設けましたが、飼料勘定等におきましても、災害等があって飼料が非常に不足する、こういう場合に使うべき予備費として計上されておるわけでございます。
  183. 東海林稔

    東海林委員 時間がありませんので次に移りますが、もう一つ伺いたいのは、たしか二月八日に農林省では豚肉や牛肉についての今後の方針を決定したということが翌日の新聞に出ておるわけであります。その中に、豚の価格は従来は需給均衡方式または実勢方式によったが、今後は生産費を基準として安定価格帯の中心価格をきめることに方針をきめた、こういうふうに出ているのでありますが、この新聞報道は事実でございましょうかどうか、お伺いします。
  184. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、農林省としての態度を発表したわけではございませんので、そういうことではございません。ですから、事実農林省考えていることではない、こういうことでございます。
  185. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、いまの新聞報道は事実と反する、こういうことでございますか。
  186. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事実でないということでございます。
  187. 東海林稔

    東海林委員 時間がもうなくなったので、これで終わりたいと思うのですが、主として農林大臣に伺ったわけですけれども、しかし、私は、たとえば養蚕に関連しての繭糸価格の安定についての対策あるいは輸入飼料の価格、こういう点についてはどうしてもきょうの御答弁だけでは了承できない点があるわけです。それと、当初も申し上げましたように、赤城大臣の御答弁を承っておる中では、少なくとも、従来の農政に満足されずに、ある程度の方向転換を考え、苦悶されているというような感じを私は率直に受けるわけです。そういう点では私ども敬意を表したいと思うわけでございますが、この間の選挙の公約にもありましたように、また先般の首相の施政方針演説にもありましたように、農政について、初めは革命的、それから革新的、この間は画期的と、ことばではだいぶ後退しておるのですが、ことばの表現は別といたしましても、非常にこの際根本的な方向転換をしなければ、現在の農村はどうにもならないというところに来ておるということは、大臣がよく御認識のとおりでございますので、農業基本法を根本的に改めるということを簡単には言うわけにはいかないとも思いますけれども、そういう点も含めて、ぜひひとつほんとうに日本の農業が基本法の目的に書いておるような方向に進むことができるように格段の御努力を切にお願いしたい、こういうことを御要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  188. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて東海林稔君の質疑は終了いたしました。  この際、御報告いたします。理事会の決定に基づき、来たる十七日月曜日午前十時から昭和三十九年度予算について分科会審査に入ることにいたします。右御了承願います。  なお、この機会におはかりいたしますが、分科会審査において最高裁判所当局から出席、発言要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会