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1964-02-14 第46回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十四日(金曜日)    午後一時七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    岡田 春夫君       岡本 隆一君    加藤 清二君       角屋堅次郎君    五島 虎雄君       河野  密君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大 臣 福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      西田  剛君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         防衛施設庁長官 小野  裕君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         郵政事務官         (貯金局長)  淺野 賢澄君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      田中 鎭雄君         建設事務官         (計画局長)  町田  充君         建設事務官         (都市局長)  鶴海良一郎君         建 設 技 官         (河川局長)  畑谷 正実君         建 設 技 官         (道路局長) 尾之内由紀夫君         建設事務官         (住宅局長)  前田 光嘉君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十四日  委員岡本隆一君、河野密君、中井徳次郎君及び  山中吾郎君辞任につき、その補欠として石田宥  全君、角屋堅次郎君、東海林稔君及び中村重光  君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を括して議題とし、審査を進めます。般質疑を続行いたします。  永末英一君。
  3. 永末英一

    永末委員 昨年の総選挙後の特別国会で私は、世界戦略情勢変化に伴う日本防衛方針について内閣国民に明らかにする必要があろうという質問をいたしましたところ、総理大臣は、大体その私の言っていることを了とされ、近い機会にそれを明らかにする、検討しようというお話がございました。私は今度の施政方針演説でおそらくは国民に対して池田内閣が、これに対して何らかの指針を明示するのではないかと期待をいたしておりましたが、ついに一言も日本の平和と安全に関して、特に防衛の問題について触れるところがございませんでした。防衛をあずかる防衛庁長官は、池田総理のあの施政方針演説について御満足ですかどうですか、伺いたい。
  4. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 総理施政方針演説の草案の討議の際に、閣議におきまして私は発言いたしました。ぜひ、防衛ということばについて非常に重要な意味があるから、入れていただきたい、表現はおまかせいたしたわけでありますが、御承知のとおり、国際緊張緩和の大きな背景は、自由国家群の確固たる防衛努力に大きく依存しておるということをうたわれたわけでございます。全然触れていないわけではございません。
  5. 永末英一

    永末委員 日本の外側はどう動いているだろうかというようなことは書いてございました。わが国は一体どうするのだということは、私は触れていなかったと思いますが、防衛庁長官は触れておったと思われますか。
  6. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 正確に申しますと、「安保体制下にあるわが国を含め、自由諸国の確固たる防衛努力」ということをはっきりうたっているわけでございます。
  7. 永末英一

    永末委員 ただいまの防衛庁長官の読み上げましたところは毎年触れているところであって、昭和三十九年度においてはいろいろな事態が変わっている。変わっておれば、それに対して新たな対処のしかたがあるではないかとわれわれは考えている。たとえば昨年以来、アメリカ日本に対する態度は変わってきております。すなわち、十一月十二日のアメリカ上院では無償軍事援助停止決議が行なわれている。さらにまた一月二十七日、アメリカ下院軍事委員会におきましては、マクナマラ国防長官が、日本に対して自主防衛能力が増大することを期待している旨の証言をいたしている。これを含んで、ことしの初めに日米経済閣僚会議が行なわれた。そういうことを考えましたときに、新たな問題としてこれを一体どう受けとめるか。昨年来これらを背景にしながら、自主防衛ということが言われている。ところが、これらの問題について私は総理大臣施政方針演説はこたえることがなかったと思うが、いかがですか。
  8. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御指摘の点は、総理お答えになりましたとおり、あらゆる角度から検討を続けるというお考えと私ども考え、したがいまして、具体的にこれに触れることがなかったのではないかと想像いたします。
  9. 永末英一

    永末委員 あなたは、防衛責任者として、口にされております自主防衛ということが一体どういう内容を持つと考えていま防衛方針考えておられるか伺いたい。
  10. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 従来しばしば使われております自主防衛ということば自体が、非常にむずかしい定義があると私は思います。私なりに、この自主防衛というのは、自主的な要素を強めていく防衛体制である、こう考えております。具体的に申しますならば、マップ削減でありますとか、あるいは対日軍事援助削減、これに対応するところの日本自体防衛努力による自主的要素を強める、こういうふうに考えております。
  11. 永末英一

    永末委員 いまお話にございましたように、マップすなわち対日無償軍事援助削減が、既定事実としてわれわれは迎えなくてはならぬ段階になっておる。それに対する対応のしかたが自主防衛だと、こういう御答弁でございますが、昭和三十七年度から始まっております第二次防衛力整備計画、これはそのときにアメリカ側援助期待しながらつくられた計画である。しかし、いまお話がございましたように、アメリカ側日本に対する対処のしかたが変わっておるとするならば、第二次防衛計画を改定しなくてはならぬとわれわれは考えるが、いかがですか。
  12. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御案内のとおり、昭和三十九年度は第二次防衛計画の第三年目にあたりまして、大体いままでのところ順調に計画も進行いたしておりますので、計画自体を変更する必要はないと考えております。
  13. 永末英一

    永末委員 第二次防衛計画は、この防衛計画で達成すべき内容と、この防衛計画に合わせて支出すべき金額と、二つの面があるわけである。ところがその金額の面については、対日無償軍事援助が打ち切られれば、その分だけ日本が負担しなければならぬ、これが論理的な帰結だとわれわれは考える。あなたは、いま支障なく進んでおる、こう言うのでありますが、それでは第一に、第二次防衛計画が始まってから対日軍事援助がどれだけあり、そしてあとどれぐらい残っておるか、これが一体消化されるものかどうか、お見通しを伺いたい。
  14. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 第二次防衛計画策定の当初におきましては、アメリカに対しまして約九百億を見込んでおったわけでございます。その後いろいろ単価の問題、あるいは数量の問題等がございまして、煮詰まった数字は約六百三十億であります。そのうち二百三十億がすでに承認済みでございますので、残る四百億について、今後対米折衝が、個々の品目あるいは装備等につきまして続けられる次第でございます。ただ、いま御指摘のとおり、昨年の対外援助法改正もありましたし、チャーチ修正案その他もありますので、見通しにつきましては相当きびしいものがあるのではないかとわれわれは考えております。
  15. 永末英一

    永末委員 昨年十一月の上院決議は、一九六三年七月以前に約束したものは除き、自後話のあるものはやらぬ、こういう決議になっておる、これが動くとお考えですか。
  16. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いま御指摘の七月以降の点は、私はそのとおりと思います。ただ、よく御案内のとおりに、アメリカ会計年度は仕組みが非常に複雑でございまして、同時にまた、対日援助の供与の問題につきましても、大体三十九年度に盛り込まれるものは昨年の三月ごろきめられる。非常に長い期間かかり、かつ継続的に期間がわたりますので、簡単にこれは打ち切られるとか、あるいは見通しはどうかということは言い切れないと思うわけであります。
  17. 永末英一

    永末委員 いまお話がございましたように、防衛計画は継続していかなければどうにもならぬ問題である。これが本質。いまあなたのお話によりますと、三十九年度だけはしようがないからこれでいいのだ、こういうお話ですが、あなたの先ほどの御答弁でも、最初計画した九百億程度の見込みが実質上大体六百三十億程度になった、その中で二百三十億円程度がすでに、今年度予算を含めて入っておる。それでは、四百億円程度が残っておるわけだ。これが一体どのくらい見込めるか、見込めない場合にそれを日本の中でつくっていかなくちゃならぬ問題かどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  18. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 今後残されました数字である四百億については、対米折衝にまかされるわけでありますが、この点につきましては、まだ具体的なこまかい点はいまから予想いたしかねるわけであります。ただ、昨年の改正案につきましても、経済先進国に対して適用されるわけでありますが、日本は当然これに含まれるわけであります。この場合に、先ほど申したとおり、相当きびしいことも考えられますので、その場合には、やはり有償援助あるいは国の予算で、これを国産でまかなう、こういう切りかえをする必要が出てくると存じます。
  19. 永末英一

    永末委員 そうしますと、最初無償援助を見込んで立てた第二次防衛計画は、今年度中には対米折衝と見合って手直しをしなければならぬとお考えですかどうですか、伺いたい。
  20. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 予算措置については、手直しとか、あるいは格段の別の努力が要求されておりますが、計画自体は私は修正する必要はない、こう考えております。
  21. 永末英一

    永末委員 計画自体に御執着のようでございますが、われわれが伝え聞くところによりますと、アメリカ側ドル防衛見地、さらにまた戦略の変更の見地から、日本に対して、日本が独自の経済力防衛に対する装備等について考えろということを話をしてきていると聞いております。外務大臣はそういうことを聞かれたことはございますか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの最近とられておりまする世界的規模における再配置の問題は、たびたび本委員会を通じて申し上げましたとおり、兵器の近代化に伴う措置でございまして、その在外部隊の持っておる軍事的能力が減殺するものではない、そういうことをアメリカ当局は繰り返し確信いたしておるわけでございますので、私どもといたしましてはそういう言明を信頼いたしております。
  23. 永末英一

    永末委員 外務大臣、私の伺っておるのは、アメリカ側の戦力の度合いがどうなっておるかということではなくて、日本経済力でこの日本列島線における防衛力についてもっと寄与をしてもらえないかというお話があちら側からあったかなかったかということを伺っておる。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、御案内のように、三十億ドル、四十億ドルと年々歳々国際収支の赤字に悩んでいるアメリカでございまするし、その主要原因軍事援助経済援助に基因するということも歴然たる事実でございます。したがって、ヨーロッパとか日本のように、経済が復興いたしまして経済力を高めてまいりました国々に対する援助は、漸次打ち切っていくという方向を要請することは考えられることでございまするし、また、そういう立場に置かれた米国といたしましては、日本をはじめ欧州の各国が自力において防衛負担をする方向に施策されるということを望んでおることは事実でございます。しかし、それをどう受けとめてどう具体化するかという問題は、あくまで日本の問題だと思います。
  25. 永末英一

    永末委員 なかなか外務大臣の御答弁は、慎重に聞いていないとわからぬところがありますが、ヨーロッパを含め日本も ——われわれというのは日本ですが、日本自力防衛負担をすることを望んでおることは事実だ、こういうお話がございました。外交交渉でこれがあったかなかったか、ことしの一月の閣僚会議のときにあったかなかったかつまびらかにいたしませんが、たとえばそういう話があった場合に、わが政府は、降伏をいたしましたときにポツダム宣言を受諾したことになっておりますが、この第十一項に、ポツダム宣言を締結した国々は「日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムル如キ産業ハ」許さぬのだ、こういうことを申し合わせをしておる。アメリカもその一つでございますが、こういうことについてお話し合ったことがございますか、伺いたい。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは一切聞いておりません。
  27. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官に伺いたいのですが、一つの流れとして、これは経済の量の問題ですから、援助がこなければだれかがやらなければならない。第二次防衛計画は変えない。援助がなければ、その防衛計画を変えずに埋めようとすれば、日本でつくらなければならぬ。そういうとを防衛庁長官日本産業界に対して御連絡をされたことはございますか。
  28. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 残りの対米期待四百億につきまして、まだこれからの努力にまつわけでありまして、具体的な数字なりあるいはデータもまだそろっていない今日におきまして、具体的に防衛産業その他につきまして連絡することはないわけであります。ただ、先般防衛産業懇談会がございまして、その席上では、今後アメリカからの無償援助は相当甘い考えではえらいことになる。削減方向ははっきりした見通しを持たざるを得ないので、われわれは、その場合には有償援助、あるいは日本経済力、また技術力の許す範囲で国産化をすることは当然のコースである、そういう場合には、ぜひ自主防衛という立場からもしっかりした国産化努力をお願いしたいという趣旨は申しておいたことがあります。
  29. 永末英一

    永末委員 二次防でもう一つ聞いておきたいのは、アメリカとの折衝内容が明らかになり、当初見込みました無償援助がないという判断に立った場合には、二次防は改定ということになりますか。
  30. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先ほどお答えしましたとおり、もしこちらの期待したものが無償援助で得られないという場合には、有償援助あるいは国の予算をふやしましてこれに充てるというわけでありますので、計画自体をいまのところ変更する考えは持っておりません。
  31. 永末英一

    永末委員 前提結論とが合わないのです。私どもは最初立て計画内容が変われば変わったというのですが、あなたのほうは、いまのところ変えるつもりはございません、どうも前提結論が食い違うように思いますが、一体防衛庁は毎年度毎年度どうやってやっていくかという計画をお立てになっているのですか。二次防というのは五年間を一期としてつくられた計画、しかし毎年毎年予算がきまってくるわけですから、年度年度計画はお立てですかどうか伺いたい。
  32. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 大体のめどをつけまして、御案内のとおり、五カ年間総額一兆一千五百億を中心にしまして、毎年度一応目安は立てております。ただ先ほど申し上げたとおり、アメリカ関係におきましては、その辺数字の変動は出てくるわけでございます。
  33. 永末英一

    永末委員 毎年立てておられるというのでありますが、それはどういうところで何を立てておるのか、われわれよくわからぬのでありますが、たとえば統幕年度防衛計画なるものを立案をしておるけれども、これは立てただけであってどこにも出ていない。そういうところをあちこち立てておったのではいかぬと思うので、年度年度めどをつけてやっておるなら、どこでどういう形でやっておられるか明らかにしていただきたい。
  34. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 細部につきましては、政府委員から答弁させます。
  35. 永末英一

    永末委員 私が伺っておるのは、政府委員じゃなくて、あなたが責任者として年度年度立ててやっておる、こう言っておるから、どこでどういう形でやっておるか知っているだろうと思うから、あなたに伺っておるのです。
  36. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 そういう基本的なものは、御案内のとおりに、各幕でいろいろ研究いたしまして、その結果を内局で統一いたしまして業務計画立てる、これが基本でございます。
  37. 永末英一

    永末委員 それでは年度計画というのは業務計画しかない、こういうことですか。
  38. 海原治

    海原政府委員 ただいまお尋ねにございました防衛庁における年度計画でございますが、これは先生もおっしゃいましたように、統幕中心としました年度統合防衛計画というのがございます。これは、その年度年度におきますところの各自衛隊能力前提にいたしまして、当該年度において万一の事態が発生した場合にはどういうふうな計画で、どういうように対処するか、いわば作戦計画でございますが、こういうものがございまして、これを受けまして各自衛隊では、それぞれ陸、海、空に分かれまして、その防衛計画をつくっております。そのほかに先ほど来お尋ねがございます。第二次防衛力整備計画を五カ年間にわたって実行してまいります過程の計画といたしましては、先ほど大臣からお答えいたしましたように、各年度業務計画というものをつくっております。これは、大蔵省に対しまして予算を要求いたします前提ともなるものでございまして、毎年八月ごろには翌年度業務計画というものにつきまして長官がその方針を御決定になりまして、これに従いまして翌年度予算を要求する、予算の確定とともにその必要部分を修正してまいる、こういうことで防衛庁はまいっております。
  39. 永末英一

    永末委員 いま承ったところによりますと、年度業務計画というのはいわば軍政的なものであり、年度統合防衛計画というものはいわば軍令的なものである、そう解釈してよろしいですか。
  40. 海原治

    海原政府委員 軍令と軍政ということの内容につきましては、先生案内のように、非常に微妙な点がございますので、なかなかはっきりときめますことはむずかしゅうございますが、一般的な感じといたしましてはそういうふうに御形釈いただいてけっこうだと存じます。
  41. 永末英一

    永末委員 私は、日本防衛庁がいわゆる文民優位、シビリアン・コントロールということをたてまえとしながら、その中身は実はミリタリー、軍令関係のほうがどういうかまえで一体かみ合っているかということを非常に不安に思うことがあるのございますが、それでは、そういう計画立てながら防衛業務をやっておられる上について、変化があった場合にどう考えているかということを伺いたいので、これから項目にわたって御質問いたします。  第一は空102が引き揚げることがきまりました。防衛庁長官はなぜF102を引き揚げることをアメリカ側は決定したとお考えですか、伺いたい。
  42. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 アメリカ側の意向につきまして私どもはっきりした判断を下しかねますが、日米共同発表でうたっておりますとおり、その102の撤退によって防空能力については減ずるものではないということを私ども考えておるわけであります。
  43. 永末英一

    永末委員 池田総理も、アメリカ側は何を考えているかは自分は知らぬ、自分日本のことだけ考えているのだということを、当委員会でこの前も御言明がございました。防衛庁長官も、F102がどうして引き揚げるかについては、アメリカ側の事情であって、日本側としてはそこまでつまびらかにわからぬという御答弁ですが、私どもは反対しておりますけれども安保条約のもとで、日本の空を共同防衛しているときに、その第一線要撃機が引き揚げるということの理由がわからぬでいいですか。
  44. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 102の能力並びに任務の問題でありますが、これは、私どものほうから三カ条のうちの一つとして申し入れをいたしまして、直ちに全部引き揚げられることは私ども反対である。板付の関係から申しましても、新田原に三月104を配置いたしまして、訓練に大体半年、十月ごろには力のある部隊に訓練できますまで、102は何かの形で勤務に服するようにアメリカ側に申し入れました。承諾を得て、御案内のとおり、横田の基地から数機、新田原のわがほうの104部隊十分力を発揮し得るまで、アメリカの費用においてその任務につくということを承諾してまいったわけでありまして、ただ漫然と向こうの言いなりと申しますか、申し出をそのままのんで防空上の欠陥を私どもは見のがしたわけではないわけでございます。
  45. 永末英一

    永末委員 いまのお答えによりましても、何ほどかやはりF102が果たしている役割を勘案しながら、やはり防衛庁長官日本の空のことを考えておいでだというぐあいにわれわれには聞こえるのです。  そこで、いまお話によりますと、F102がなくなればF104がそのあとを埋める、こういうお話でございますが、それでは一体F104というのは現在どれだけ生産され、そうしていま稼働しているのは幾らだということをお答え願いたい。
  46. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 現在までの生産の数は、F104並びにF104D合わせまして、両方で八十六機でございます。稼働率につきましては、永末委員もよく御案内のとおり、各国とも軍事機密といたしまして発表いたしておりません。
  47. 永末英一

    永末委員 軍事機密にもいろいろございまして、そのことが中外にわかればその国の防衛にとって非常に致命的なものだという軍事機密もございます。しかし、もう一つは、軍事機密を言うことによって、やらなくちゃならないことを怠っておることは、国民にわからぬ。私は先ほどシビリアン・コントロールの話をしましたが、日本防衛の問題は、憲法上あるいは法制上、国会がどの程度一体防衛の問題にタッチし得るか、法律上かっちりまだ固まってないと思うのです。しかしながら、日本国民日本防衛問題について聞く舞台はここしかないので、われわれは聞きたい。それを、軍事機密だと言って、言わぬというのは、私はよくわからないと思う。なぜかならば、われわれが懸念しているのは、アメリカが一方的な軍事戦略の変更——いまのお話からいくと、一方的ですよ。一方的な軍事戦略の変更をしてくる。われわれはその穴埋めをしなくちゃならぬ。それがどうなっているかは日本人にわからぬ。こんな不安な状態はないでしょう。稼働率くらいは言えぬですか。つくった八十六機のうちにはDJもあります。練習機ですから、これは問題外。実働機の中で一体何機が飛べるのか。その飛べる数が少なければ、一体それはどこに原因があるのか、人間に原因があるのか、機体に原因があるのか、そういうこともお聞かせ願わなければ、あとあとの問題もまた私は聞くわけに参らぬと思う。これが答えられませんか。
  48. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これはもう御専門の永末委員が一番御存じだと思いますが、各国とも稼働率は極秘にいたしまして発表いたしておりません。ただ申し上げられることは、きわめて抽象的で恐縮でございますが、いま104の日本の稼働率は、アメリカにはもちろん劣っておりますが、カナダ、西ドイツにやや劣る程度で、しかも毎月その稼働率は上昇いたしております。新しい機種ですから、どうしてもいろんな点で難点も出てまいりますし、いろいろな意味で最初は稼働率の低いことはやむを得ないことでありますが、私どもは一日も早くりっぱな稼働率に引き上げたいと非常に努力をいたしておるわけでございます。
  49. 永末英一

    永末委員 防衛の専門家は、福田さん、あなたであって、私、永末英一ではございません。その点はひとつはっきりとさしていただきたいと思うのです。われわれが心配をいたしておりますのは、百八十機生産をしていこうとし、いまの御説明でも、練習機を加えて八十六機生産できておるんだ。稼働率は言えない。しかもあちら側はともかく全部で七十、いま二十五機引き揚げるといい、将来もっと引き揚げようとしておる。一体どうなるのだろうと国民として心配するのは当然じゃないですか。いわんや、この前のこの委員会で、あなたは、F102をアメリカ側から売り込みたいという話があったかどうかという同僚議員の質問に対して、そういう話はあるが、合意に達しておりませんので、委員会で申し上げるわけにいかぬ、こういう話だ。F104が大騒ぎの末生産が決定をしてやっておる。それがまだ完了してない最中に、また新しい飛行機を買うか買うまいか、こういう話が出ておる。国民から見ますと、一体何をしておるのかという気になる。この辺のところをお聞かせ願いたい。
  50. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは、むしろ御質問がそのまま答弁になり得るのではないか。と申しますのは、アメリカの昨年末の申し入れがございまして、この件は双方とも合意に達するまでは両国とも発表いたさないということを特に付言いたしておりまして、その中に、102の問題で、もし日本側で希望があれば売ってもよろしいという話があるわけであります。しかし、御指摘のとおり、また先般お答えいたしましたとおり、性能の上からいいましてもずいぶん問題がございますし、特に104を目下生産中であります。第三次防衛にも大きな影響がある問題でありますので、まず、買うか買わないか、あるいは買うとすればどうかという根本問題を十分検討する必要があるわけであります。各部局に命じまして検討中でございまして、その点は御了解いただけると思います。
  51. 永末英一

    永末委員 報道によりますと、このF102を含め、マクドネルF4C、グラマンE2A等が同じレベルで次期戦闘機に日本自衛隊が採用するのではないかということがいわれておる。しかも片一方、104Jは本年度予算防衛庁は要求せられたが、予算に計上することなく、大蔵省査定で削られて、そのままになっておる。これはみな同じレベルですか、そこを伺いたい。同じレベルで防衛庁考えておられるかどうか。
  52. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 新聞報道によりますアメリカの三種の飛行機の問題につきましては、わがほうは検討もいたしておりません。全然事実に相違いたしております。また、104の予算の問題でございますが、ちょうど十二月の初旬に最終的な防衛庁としての結論が出ましたので、残念ながら時間的な余裕がなく、大蔵省との折衝が合意に達しません。予算化がおくれたわけでございます。したがって、いまのところ、第二次防の104に対する関係は、従来の考えどおり、昭和三十六年ないし七年ぐらいまでは、少なくとも104戦闘機七スコードロンを維持するという目標を立てておるわけであります。
  53. 永末英一

    永末委員 いまの防衛庁長官の三十六年か七年というのは、四十六年か七年の誤りだと思いますが、私は伺いたいのは、F102について合意に達するまでは言われない、こういう話だ。そうしますと、われわれが知らないうちに、合意に達すれば、買うという御決定をなさって議会に臨まれる、こういうことになりますか。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  54. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先ほどお答えしましたとおり、一体これを買うのが適当かどうか、それ自体がすでに問題でございまして、まだ検討中でございますので、私どもいま何も具体的にお答えすることができない段階でございます。
  55. 永末英一

    永末委員 新しい機種を買えば、それによってまたいろいろなものを付属的に設備をやらなければならぬことが起こってまいるのであって、その場合に、先ほどお話のように、本年度予算については104Jは打ち切りだ、こういうことになっておることは事実でありますが、それらと勘案をしながら、戦闘機の数——私は次期戦闘機なんて言いたくない。一体戦闘機というものは、これからどれくらい日本の空の守りについて有用かどうか、もっとほかに問題があると思います。ただ戦闘機の数をそろえる。数がどれだけ必要かわからぬ。なぜならば、あなたは稼働率を言わないから。稼働率を言わないということは、片一方、F104Jにいたしましても消耗率が上がっておるではありませんか。われわれが心配するのは、昭和四十六年、七年のときに104Jを百八十機つくることになっておるけれども、一体そのときに空を飛んでおる飛行機は何機だろうということを心配いたしておる。だから私は伺いたいのは、何か飛行機の数をそろえたいという場合に、いままでの経過にかんがみて、104Jの問題を含めて考えておる態度かどうかを伺いたい。
  56. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 二次防の目標であります二百機を生産しまして、減耗を補充する意味におきまして大体昨年十二月初旬に煮詰めました結論は、五十機程度の補充分が必要ではないかということと、並びにF86Dは、これは非常に古くなりましたので、おそらく昭和四十六年ごろにはなくなっていると存じます。ただ、86Fのほうはまだ依然としてイ有効な任務を遂行できるのではないか。したがいまして、先ほど申した104Jの七スコードロン、それからF86Fの四スコードロン、大体十一飛行隊というものを私ども考えておるわけであります。それを補うものは、日米安保体制下における米軍の飛行機ということに相なろうかと思います。
  57. 永末英一

    永末委員 一スコードロン十八機とすれば、大体数は推定できるのでありますが、大体国民にどのくらい稼働率があるかどうかを知らさないことが軍事機密だなどという考え方はやめられたらどうです。昔の海軍航空隊時代でも、大体三分の一程度が実働機、あかぬときにはほとんど飛ばなかったこともあります。しかし、予算を求めて肉主防衛をしたいなんてあなたのほうが考えるんだったら、実態をやはり明らかにしなければ、なぜ大蔵大臣が104Jのあれを削ったか、これはわからない。大蔵大臣、この前ちょっと御答弁がございましたが、104Jは時間切れでやめてしまった、こういう話ですが、ほかに理由がございましたか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 104の継続生産につきましては、十二月に入ってから防衛庁当局からの概算要求がありましたが、何ぶんにもむずかしい問題でもありますし、時間的に間に合わないということで、三十九年度予算では継続生産をしない、こういう結論になったわけであります。
  59. 永末英一

    永末委員 この空の守りの数の話は、いまのように、やはり国民の前に明らかにする用意をひとつ私は要求しておきます。  もう一つの問題は、アメリカF102が緊急発進、スクランブル、わけのわからぬ飛行機がこっちを向いて飛んでくるときに飛んでいく。対応の仕方はそれであると思います。わが国の空の自衛隊も、スクランブルで飛んで上がります。一体アメリカの飛行機がいない場合に、所属不明の飛行機がわが領空のほうを向いて飛んでくるときに、あなたは一体何をせいと航空自衛隊に命ぜられておりますか。
  60. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 緊急発進のいわゆるスクランブルの問題でありますが、よく御案内のとおりに、航空自衛隊が管制任務に服しておるわけです。また、数十名の米軍の連絡者もおりますが、わがほうは、おおむね数干の人員をもちまして全国でレーダーサイトその他で監視をしております。したがいまして、領空侵犯があったような場合には、わがほうの航空自衛隊におきましてこれを捕捉し、そして適切な措置をとる一わけでございます。
  61. 永末英一

    永末委員 私がこれを聞いておりますのは、一昨年のキューバの事件のときに、要するに、ことばはちょっとおかしいのでありますが、日本の国の相手方、敵がもし外におるとして、それに見合った場合にどうするかということを最終的に決定するのは、これは総理大臣になっておる。その総理大臣の指揮を受けてあなたが命令することになっておる。ところが、キューバの問題のときには、午前四時半に第一線部隊がそれをアメリカ側から連絡を受けて、飛行機を飛ばそうという方針をとっておる。ところが、あなたが聞かれたのは午前十時、閣議が行なわれたのは午前十一時だ。その間、その第一線機が上がっておったとしても、一体何をしていいかわからないでしょう。自衛隊法八十四条でこういうぐあいにいっております。わが国の領域の上空から退去させる、あるいはまた、着陸させるため必要な措置を講ずる。必要な措置というものは、どこまでやっていいということを、飛行機に乗っておる人にちゃんと言うておられますか。
  62. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 御存じのとおり、十年前にはソ連機が数回北海道を侵犯してまいりました。その後幸い一回もわが領空上には侵犯してまいっておらない。当時、岡崎大臣からマーフィーあての書簡によりまして一応依頼した形になっておる。その後わがほうの警戒体制が逐次整備されております。いま指摘になりましたキューバにつきましては、いろいろな問題がございまして、私も長官就任以来、明確な一つの基準をつくる必要があると考え、大体四段階に分けましていま検討中でありまして、細部にわたりましては政府委員から答弁いたさせます。
  63. 海原治

    海原政府委員 ただいま大臣からお答えいたしました警戒待機に関しましての基準の問題でございますが、これは、現在は行動命令という形でもって航空自衛隊のほうに一応の任務付与をしてございます。これに基づきまして、航空自衛隊のほうにおきましては、大体現在訓令の形において準備をしておりますところの四つの態勢というものを定めております。しかし、これは先生が先ほどおっしゃいましたような飛行機が飛び上がれということではございませんで、領空侵犯に対処するため、航空自衛隊部隊におきましては常時二機程度の飛行機はすご発進できる態勢にございます。これをスクランブル態勢と申しておりますが、その状況によりましては、その二機のほかにさらに三十分後には二機出る、あるいは一時間後には四機出る、こういうことの準備態勢が逐次進んでまいりますことをきめておる次第でございます。キューバ事件のときにも関係委員会で御説明申し上げましたが、別に航空自衛隊としましては飛行機を飛び上がらせるということをやっておりません。当時の大臣から御説明申し上げましたように、万一の場合に備えて十分警戒をするようにということの指示をなされた次第でございまして、この点はそのようにひとつ御了解願いたいと存じます。
  64. 永末英一

    永末委員 いままでは目標がとらえられる。これから高い金を出してバッジをつくるでしょう。目標がわかる。その進行方向がわかる。いままではアメリカの飛行機が飛び上がっておる。七月までは、いま防衛庁長官お話だと、F102が飛び上がるでしょう。わが104Jは何をするですか。準備をするんだ、こう言う。準備するだけですか。飛び上がらせるでしょう。飛び上がった場合に、どこまで行かせるのですか、それをはっきりさせてありますか、この点をお答え願いたい。
  65. 海原治

    海原政府委員 ただいまの、どの程度までのことを定めてあるかということにつきましては、先ほど私が御説明申し上げましたスクランブルということにつきましては、御存じのように、日本の周辺を、一応、航空識別圏と申しまして、ADIZという一つの航空管制上の領域を設定してございます。これは各国とも監視所で実施しておりまして、日本の航空識別圏、ADIZのラインというものは外国とも知っております。このADIZのラインを越えて日本方向に入ってまいります飛行機につきましては、あらかじめその高度あるいは方向、目的等を通報しまして、日本の航空管制関係からの許可を求めて入ってくるようになっております。したがいまして、このADIZの線を通りますときに、そのフライトの通報がないものにつきましては、一応領空侵犯のおそれがあるものとして、各部隊では緊急発進をいたします。上空におきましてその目標に接触する間に、その目標からの連絡あるいは地上からの連絡等によりまして、これが別に領空侵犯のおそれないものということで帰ってくる場合もございますし、あるいは航路を間違えて入ってくる場合はこれを誘導した例もございます。こういうことをやっておりまして、現実には、先ほど大臣が申されましたように、岡崎・マーフィー書簡以来、日本の領空を侵犯した飛行機は一つもございません。ただ、先ほど申しましたように、領空侵犯のおそれあることに対してスクランブルをしておるわけでありまして、これに対しては、行動命令及びこの行動命令に基づきますところの幕僚長指示で十分各般の基準を定めてございます。
  66. 永末英一

    永末委員 領空侵犯のおそれある場合に、こちらの飛行機が上に上がっておる、その場合の責任者は、幕僚長ですか防衛庁長官ですか。
  67. 海原治

    海原政府委員 御存じのように、自衛隊法によりまして、指揮権は長官が持っておられます。幕僚長は長官の補佐機関でございますので、責任の所在は長官でございます。
  68. 永末英一

    永末委員 長官に責任があるのですから、この領空侵犯の問題については、一体何がどこまでできるかを十分にぴしゃっときめておいてください。いまのではなかなか不分明で、何のためにあるのかわからぬ。アメリカの飛行機はいなくなるのですから、いなくなったあとでわからぬような状態にしないようにしておいてください。そのころまたもう一ぺん聞きますから……。  もう一つの問題は、その飛行機がAAMを積んでおる。日本がいま持っているサイドワインダーというものは、全天候にききませんね。防衛庁長官、あらゆる天候でサイドワインダーは有効ですか。
  69. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 サイドワインダーは、御案内のとおり、密雲でありますとか霧にはなかなか効力を完全に発揮し得ないわけであります。その場合には、ロケットでありますとか機関砲、これによって補っているのが現状であります。
  70. 永末英一

    永末委員 サイドワインダーが全天候にきかないというせいか何か知りませんが、新聞の報道——前から国会でも問題となっておりましたが、イタリアのスタッキーニ社に対して空対空ロケットの発注をされて、これが手に入らなかった。そこで私が伺いたいのは、イタリアの裁判所の判決があった、しかし全額は返らない、保険会社側にも連絡をしてあった、こういうのでありますけれども、一体その保険会社を訴えて日本政府が勝てば何ぼもらえるのか、負けたら一体何ぼもらえないのか、もらえない場合の責任はだれが負うのか、三点を明らかにしていただきたい。
  71. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いわゆるスタッキーニの問題は、昭和三十二年に契約、三十三年になりまして会社が長い間のストライキで破産を宣告されました。ただちにわがほうとしてはスタッキーニの会社並びに保険会社に対しまして訴訟を提起したことは御承知のとおりであります。その後裁判の結果、会社側のほうの面につきましては和議が成立いたしまして、向こうに渡しました契約金の半分の二五%を四年年賦で支払うということになったわけでありますが、第一回は昨年参りまして、二回分の納入は本局末にくる予定でございます。なお、保険会社の面は、一応、期間その他の問題で破棄になった、いわばわがほうが負けた形になっておるのでありますが、その後幸いに在ローマ日本大使館の顧問弁護士からの連絡がございまして、契約期間後の保険金につきましてスタッキーニ会社から支払った形跡がある、いまその小切手の証拠を集めておるようでございまして、これができますれば、控訴期間は五月二十七日でございますので、いま大使館と連絡中でございまして、完全に残余の分を、もしそういう有力な証拠を入手した場合には勝訴し得るという弁護士の判断でございますので、在ローマ日本大使館側といま密接に連絡中でございます。
  72. 永末英一

    永末委員 事件の経過は別といたしまして、この責任はだれが負うのですか。つまり、日本防衛庁が外国の会社と契約をして、そうして契約見込み違いがあった、その見込み違いのために国民に対して迷惑をかけた、これはだれか責任をとらなければなりませんね。担当の課長がどっかへ行ってしまったということでは答弁にならないと思うのです。だれが責任を負うのですか、国民に明らかにしていただきたい。
  73. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ただいまお答えしましたとおり、場合によりましは勝訴いたしまして全額回収し得る見込みがございます。したがいまして、いま控訴するかしないか、また確実に勝ち縛るかどうかの段階でございまして、見通しのつく前に処分をどうするとか責任をどうするということは、適当でないと考えます。
  74. 永末英一

    永末委員 二千二百万円全額取れれば責任者がなし、取れなければ質任者が出る、このように解釈してよろしいか。
  75. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 当然そうなると思います。ただ、懲戒処分の問題で先般人事院と交渉中でございまして、一昨日回答がございました。その場合には、一般職に転勤した場合には懲戒処分権は及ばない、こういう回答がございました。
  76. 永末英一

    永末委員 ミサイルに関連して、昨年度からナイキ、ホークの導入をやっておるわけです。ナイキ・アジャックスはアメリカでは生産をもうしていないと聞いております。そこで、二次防がどんどん進んで、ナイキ・アジャックスの補充はきかなくなるというぐあいに私ども思うのですが、それでもやはり空の守りは万全だと防衛庁長官はお考えですか。
  77. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ナイキ・アジャックスにつきましては、一九六四年米会計年度末でアメリカ政府側の発注は打ち切るという情報は入手いたしております。しかし、ナイキのシステムとしての生産は打ち切るということはまだ聞いておりません。なお、御案内のとおりに、昨年の四月、日米間で交換公文がかわされまして、部品、装備に対しては十分補給の見込みは立っております。——失礼をいたしました。ナイキ・アジャックスの問題をいまホークのことと取り違えまして答えました訂正いたします。  ナイキ・アジャックスのほうは、二次防中のものは全部手配中でございまして、その補給には心配要りません。
  78. 永末英一

    永末委員 私もそう言うておる。二次防中はいいかもしれぬが、生産していないのだから、あと困まりますよ、こう言うておるわけで、そこはあとでお答え願いたい。  もう一つは、ナイキ・アジャックスを日本に置いておれば、いろいろ手直しをしなくてはならぬ。機械というものはこわれるわけです。その手直し等の部品等は一切日本でつくっていないと聞いておるが、ほんとうですか。
  79. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 部品につきましては、基礎研究は大体終わりまして、日本側国産し得る見通し立てております。
  80. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 補足して御説明いたしますが、ナイキ・アジャックス、ホーク、両方とも、維持部品につきましては、日米間の交換公文によりまして、有償援助で供与を受けることになっております。したがいまして、現在の段階では日本では生産をいたしておりませんが、将来の維持、補給を考慮いたしまして、国産化できるかどうかという点について調査研究をいたしております。
  81. 永末英一

    永末委員 調査研究しておる段階ですね。まだつくっていないですね。
  82. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 現在のところ、生産いたしておりません。
  83. 永末英一

    永末委員 兵器の話になると、なかなか詳しいことはわかりません。国民が苦労して予算を出して、防衛庁が持っておるいろいろな装備兵器がほんとうにいいか悪いか、なかなかわからない。聞いていくと、軍機だなんて言われますが、たとえば日本の海上自衛隊は、潜水艦に対する対処をこのごろ非常に大きな問題として取り上げておる。音波探知器なんか十分機能していますか。よくわかりますか。潜水艦が津軽海峡を走っても、ぴしゃっとわかりますか、わかりませんか、お答え願いたい。
  84. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先般行なわれました津軽海峡の演習等の報告を聞きましても、なかなか完全にキャッチし得るような性能はまだ持っておらぬようであります。
  85. 永末英一

    永末委員 潜水艦を見つけても、その潜水艦を沈めてしまうためには魚雷が必要だが、そういう魚雷も十分持っていますか。
  86. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 定数がきめられておりますが、定数に達しないものもございます。後日装備ということで、できるだけ早く装備いたしたいと考えております。
  87. 永末英一

    永末委員 国民はたくさん予算を出しておるのでありますが、いま伺いましたところによると、備えているものはなかなか能率の悪いものもあり、定数もそろっていないものもある、こういうことでございますが、たとえば今度の予算で新しい小銃をつくる。その新しい小銃の口径はNATO規格であるから、いままでの古い小銃と口径が違うわけである。第二次防計画によりますと、大体一カ月当たり弾薬は持っていることになっておりますが、しろうとが考えても小銃の口径が違ってくるのであるから、そうすると違うたまを用意しなくてはならぬ、こういう計算になる。一体たまが十分にある状態でこの予算が組まれたのですかどうですか、伺いたい。
  88. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 弾丸につきましては、御案内のとおり、初めアメリカから全部供与を受けまして、三十五年度から打ち切られたわけであります。したがって、小銃のお話が出ましたが、各弾丸につきましてのアンバランス、不均衡が出ておりまして、この点はこのたびも予算を要求して御審議を願っておるわけでありますが、一日も早く不均衡を是正して、所要の弾数も整備いたしたいと考えておるわけであります。
  89. 永末英一

    永末委員 そのお話を伺いますと、第二次防計画で一カ月という目標を立てておるけれども、目標は充足されておらぬ、このように聞こえますが、それでよろしいか。
  90. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 第二次防の最終の昭和四十一年度末に、大体ほぼ一カ月分備え得るような備蓄をいたしたい、その目標でやっております。
  91. 永末英一

    永末委員 私の伺っているのは、一カ月分といったっていろいろ状況があって、たくさん撃てばすぐなくなる。三十九年度では充足されておらぬということですね、それを伺いたい。
  92. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 三十九年度分の一カ年だけで従来のアンバランスを是正したり、あるいは一カ月分というわれわれの大体の目標には不十分だと考えております。
  93. 永末英一

    永末委員 陸上自衛隊の場合、人員充足率は八四%というぐあいに計算をしておられますけれども、八四%と計算をしなくてはならぬ理由は、防衛庁長官、どこにあるとお考えですか。
  94. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 陸上自衛隊の定員の充足の問題でございますが、八四%というのは——御承知のとおり毎年二士の数を二万五、六千名補充する必要があるわけでございます。したがいまして、その目標で地方連絡部その他最善を尽くしておるわけであります。
  95. 永末英一

    永末委員 最善を尽くしておるというのは、あなたが最善を尽くさなかったら尽くす人ないです。なぜ充足できないか、原因をどう思っているか聞いている。
  96. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 所要の充足数二万五、六千が、大体これもよく御案内と思いますが、大体二万程度補充できておるのが現実でございます。その理由でございますが、たとえば質を問わなければ、どうでもいいとなれば容易にこれは補充できるものと考えますが、長年勤務し得る、しかも良質な二士を募集するためにはどうしてもそのくらいの数が欠けるわけでございます。若年の問題、あるいは当時の経済状況、あるいはいろいろな要素がございまして、われわれの望む良質のものを十分補充できないのが現実でございます。
  97. 永末英一

    永末委員 一昨年、いろいろ論議がありましたが、国会は多数決で新しい師団編成を認めました。欠員が三万名もおるという場合に、一体あんなにして苦労してつくりました師団編成をどうしているのですか。どこかの師団が欠けているのか、全部無能力にしているのか、伺いたい。簡単に答弁してください、たくさん質問せなければいかぬから……。
  98. 海原治

    海原政府委員 師団につきましては、基幹要員を完全に充足するかっこうになっておりますので、おっしゃいました二万六千から三万人の欠員のしわ寄せが、第一線に参りますというと、士のところにおいてあらわれている。極端なときには、部隊の定員の四割程度欠けておるということもございます。しかし基幹要員につきましては、各師団、各部隊を充足いたしまして、いわゆる部隊としての運営、教育、訓練に支障のないように配意をいたしております。
  99. 永末英一

    永末委員 装備のほうもだいぶ不十分で、人のほうも不十分ということになったのですが、騒音対策はだいぶ十分のようでございまして、今度の予算で騒音対策費が盛られました。これは横田基地の分だと聞いております。F105のことを伺うのではないのですが、いままで事前に一体補償されたことあるですか。いままでは飛行機が来ると、やかましいといって問題になる。そこで問題になったあげくの果てが補償する、騒音防止対策をやる、こうです。今度は、まだ飛行機が姿を見せぬうちから問題になって予算が組まれておる。そういう例はございますか。
  100. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 横田基地周辺の防音対策の予算の問題でありますが、別にまだきまったわけではございません。大体各基地の予算別を比較いたしますと、横田基地は大体板付の約半分くらいの手当しかやっておらない。いわば全国的に見まして五番目くらいで、手おくれがございます。したがいまして、今度の105移駐に際しましては、格段の努力をいたさなければならぬと考えておりまして、いま調査中でございまして、まだ別に事前に予算をつけるといったような措置はとれるおけではございません。
  101. 永末英一

    永末委員 板付の場合にF105が来てやかましいというので、何とかしてくれろという話があった。ところが、あなたのほうで調査をされたところ、F102と比べても、たった一ホーンしかやかましくないので補償はやらないということで、やっていないと私は聞いておる。その同じ飛行機が横田へあらわれると、とたんに補償になるのですか、どうですか。
  102. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 板付に対しましては、従来は全国で一番最上位のほど各般の施策を講じ、また予算も投じておるわけであります。板付にやらないのを横田基地にやるというのは、事実に相違いたしております。
  103. 永末英一

    永末委員 横田基地も前からアメリカ軍の飛行機がおりました。このジェット機のやかましいというのは、ジェット機の進行方向に向けて前後が一番やかましいのであって、横はやかましくない。そこで防音対策とか騒音対策とかいう場合には、やはり物理的にやかましいところが対策が講ぜられるべきであって、物理的にやかましくないところが一律にそういう対策費なりがばらまかれるということであっては、私はならぬと考えますが、防衛庁長官は同意ですか。
  104. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは施設庁にそれぞれ専門家がおりまして、いわゆる騒音のホーンの問題、あるいは各般の条件等をしさいに内規に照らしまして、調査の上で決定するわけでございます。
  105. 永末英一

    永末委員 F105は横田基地のみならず、この前の御答弁によりますと、三沢にも行くことがある、水戸の射爆場にもトス・ボミングのために行くことがある。F105が行くところ必ず騒音対策をされますかどうか、伺いたい。
  106. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 戦闘機が常時配置されるものと、あるいは一時数機飛来するものとはおのずからそこに差が出てくると思います。
  107. 永末英一

    永末委員 大雨が降って家が一軒流れても、その人はたいへんなものです。その大雨のために家が千軒流れた、これは全部がたいへんです。少ししか行かないからといって、やかましさに変わりはないと私は思いますが、少しだったらやらぬ、しょっちゅうおればやる、こういう方針ですか。
  108. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 常時配置と、ただいまの一時演習といったようなものとおのずから差異が出て、いわば具体的な騒音の度に応じましてやはり手当ても違ってくる、また対策もおのずから色合いが変わってくる。これは当然のことと考えております。
  109. 永末英一

    永末委員 あとまだお聞きしたいことがございますので、もっと突き詰めたいのですが、この程度にしましても、いま防衛庁でやっておられる空、陸、海ともにいろいろの欠陥がまだあると思う。なぜ自衛隊に人が来ないか。もちろんほかの経済状況もございます。一番大きな問題は、当初申しましたとおり、総理大臣が、一体日本国民がどういうかまえで日本防衛考えるかどうかを一つも明らかにせぬことが一つ内容がまた一つもよくわかっていない、こういう点がはっきりしなければ、だれが一体防衛のことを考えますか。日本人が日本防衛考えるのですよ。そういう問題をさておいて、防衛庁を国防省にしたら全部問題が解決する、こういう考えがあっては私はならぬと思いますが、防衛庁長官はどういう状態のときに国防省ができると思うのですか。それを伺いたい。
  110. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 防衛庁の昇格の問題は昨年もいろいろと論議せられました。与党であるわが党におきましても正式機関で決定を見たわけでありますが、私といたしましても、今日の防衛機構の確立の問題並びに実態的に見た予算、人員等の現在の規模から申しましても、防衛省といたしまして総理府の外局からはずしまして責任ある体制をとることが正しいもの、適切であると私は考えております。
  111. 永末英一

    永末委員 法律上のかまえをする前に、国民の意思がそこにならなければできぬとあなたはお考えになりませんか。国民防衛の現状も知らさぬでおいて、法律だけを国会で変えようなんてできるものではないと私は思いますが、あなたは一体この点についてどう考えますか。あなたは何を努力しなくてはならぬと考えますか。
  112. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 もちろん防衛庁はわが祖国を守る重要な任務と性格を持っておりますので、国民各位の御理解と協力が当然その前提であり、背景であるべきものと考えます。したがいまして、私どもの庁として昇格することが適切である、その段階にきたと思う場合にも十分国民の方々に御納得いただけるようわれわれも今後啓蒙いたしたいと考えております。
  113. 永末英一

    永末委員 いま防衛庁長官は啓蒙などということばを使われましたが、われわれは蒙を開いてもらう必要はない。あなた方が事態を明らかにされればそれでよろしい。その辺のところを間違わないようにやってほしい。いまの状態で国防省なんかだれが賛成しますか、私は賛成しません。  防衛の問題をもっと聞きたいのですが、用意しましたあとの問題がございますので移ります。  戦後処理の問題を池田内閣は今度取り上げられまして、そのうちいろいろございますが、一つの問題に在外財産の問題で初めて調査費ができました。外務大臣に伺いたいのでございますが、日韓会談でいわゆる請求権問題といわれていることばについて、外務大臣はこの請求権ということばを避けておられると私は思いますが、あのことばをおきらいですね。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 好きとかきらいとかの問題でなくて、処理せにゃいけない問題だと思っております。
  115. 永末英一

    永末委員 平和条約によりますと、四条の(a)項で日本でも朝鮮でも両方とも請求権がある、その話は特別取りきめでやれ、ただし日本側の請求権は四条(b)項で日本政府がやめたということを約束をしている、こういう形になっている。そこで、いまの日韓会談ではいわゆる請求権問題は平和条約四条(a)項に基づく特別取りきめの問題としてお考えになっておるかどうかを外務大臣に伺いたい。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 特別取りきめの問題として取り上げております。
  117. 永末英一

    永末委員 四条の(b)項がなければ日本国民は当然に朝鮮にできる政府に対して請求権があるわけだ。ところが、日本政府は平和条約で(b)項を承認したために、日本国民は朝鮮の政府に対して請求権を行使することができない、こうなっている。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 残った問題は、日本国民が、そういうことを約束をしてきた日本政府に対して一体何かの要求ができるかできぬかという問題になっておる。今回予算で二千万円の調査費をおつくりになったのは、これができるというお見通し予算を請求されたと私は解しますが、総理長官いかがでしょう。
  118. 野田武夫

    野田政府委員 朝鮮の請求権のお話でございますが、いわゆる朝鮮とはいま国交正常化ができておりませんので、朝鮮問題についての私ども考え方は外務省とよく検討いたしまして処理したいと思っております。ただし、在外財産でございますから、その中に入るものだとは一応考えております。
  119. 永末英一

    永末委員 私が伺っておるのは、総理長官、いろいろ長い経緯がございましたが、今度予算をつけてこの問題を調査する、審議をすることになった。その調査は在外財産に対して補償するのだという方針がなければ二千万円もの金をあれする必要はない。調査をしてみた結果きめるのか、補償するというつもりで予算を要求したのか、この点を伺いたい。
  120. 野田武夫

    野田政府委員 今回御審議を願っております在外財産の審議会でございますが、政府といたしましては補償するという前提ではございません。すでに二十九年に一度審議会ができましたが、その際の結論においても、当然これは補償するという結論は出ておりません。したがいまして、その後いろいろ——御承知と思いますが、その際は援護措置として給付金を給付したのでございます。したがって、今回も同じように審議会におきまして、そういう補償すべきかどうかというような法的の解釈その他を審議したいと思いまして、その結論に応じて政府の態度をきめたいと思っております。
  121. 永末英一

    永末委員 補償ということばを使えば、法律用語ですからいろいろこだわりがあるでしょう。  郵政大臣に伺いますが、引き揚げ者がいままで引き揚げてきてから、たとえば簡易保険について台湾、樺太等から引き揚げた者に対しては支払い、朝鮮から引き揚げた者に対しては支払っていないということを聞いておりますが、それはどういう理由に基づくのか、お答えを願いたい。
  122. 古池信三

    ○古池国務大臣 お答え申し上げます。  朝鮮におきましては、本土の簡易保険と別の独立した保険をやっておりました。したがって、これは他の外地と別な扱いをしておるわけでございます。
  123. 永末英一

    永末委員 郵便貯金はいかがですか。
  124. 古池信三

    ○古池国務大臣 郵便貯金は朝鮮も他の外地も同じく本土の貯金局が扱っておったわけでございます。
  125. 永末英一

    永末委員 それで台湾に対しては支払い、朝鮮には払ってないのですか、払いましたか。
  126. 古池信三

    ○古池国務大臣 朝鮮の問題は、これは日韓の会談の中に含めて考うべきだと思っております。
  127. 永末英一

    永末委員 日韓の会談で請求権等の問題については特別取りきめでやるけれども、それは朝鮮だけの話が出ておって、日本側の話は平和条約上ないわけである。そこでいまお話しのように、郵便貯金にしろ簡易保険にしろ、同じ引き揚げ者であって朝鮮のほうがそのままになっておる、不公平な措置政府の行為としてとられておる、こういうことになったら一体どこでやるのですか、これをはっきりしてください。
  128. 古池信三

    ○古池国務大臣 ただいまお答えしましたのは朝鮮におられる人のことでございまして、向こうからもう内地に引き揚げてこられた方々に対しては支払いをいたしております。
  129. 永末英一

    永末委員 総理長官、郵便貯金という国民に対して政府が持っておる債権については朝鮮の引き揚げ者に支払われておる。簡易保険については当時の機構上、日本政府はあれは朝鮮が別個に簡易保険局をやっておったのだ、それで支払っていない、こういうような状況で問題が推移しておるわけです。あなたはこれから調査してどうかするかわからないと言うのですが、何を調査するのです。二千万円も金をかけて。
  130. 野田武夫

    野田政府委員 今後の調査はひとり朝鮮に限ったことではございませんで、この在外財産の問題はきわめて広範に各所に関連がございます。また各所にわたらない事項もございます。またさらに国外における調査と申しますか、たとえばドイツとかイタリアとかオーストリアなんか、すでにこと問題の処理をいたしているようでございますが、これらに対する法的措置の問題、その他国外、国内を通じて調査すべきものでございまして、おそらくこの審議会はきわめて広範な事項について審議が行なわれると思っております。
  131. 永末英一

    永末委員 総理長官、いつまでに調査を終わらせるお見込みですか。
  132. 野田武夫

    野田政府委員 この審議会が発足いたしますと、大体いつごろという予定はいたしておりませんが、できるだけ早く審議を終おりたいと思っております。
  133. 永末英一

    永末委員 引き揚げ者は、もう二十年たってかわいそうにどんどん死んでいっていますよ。やるんだたっら早くやってほしいし、ドイツやイタリアなんかのことは、わざわざここから調査をしに行かなくたってすぐわかりますよ。やるんなら早くやらなければいけませんよ。申しわけの政策なんかやっちゃいけませんよ。こういうものをごまかすものだから、防衛の根拠もわからぬし、外国に発展せいなんて、だれも行きはしません。筋を立ててはっきりしていただきたいと思います。  たくさん聞きたいのでありますが、あと二つまだお聞きしなければならぬので、次に移ります。  厚生大臣、医療費の問題は、いま支払い側が、中医協を開催してその意見を聞いてからやれと言い、三師会側が中医協を相手にせずして国会で——この意味はよくわかりませんけれども、何か結論に達したい、こう言って、違うことを言っておるようですが、予算の審議期間も非常に残り少なになっております。厚生大臣はこの間にあって、この問題に対してどういうお考えですか、伺いたい。
  134. 小林武治

    ○小林国務大臣 医療費の問題は、先般この委員会総理大臣お答えいたしましたが、この問題は中央医療協において協議されておる。しかして一月の二十五百に医師会側が退場した、こういう事実はありまするが、医療協の会長が引き続きこの問題を審議したいと再開の努力を傾けられておりますので、政府としてはこの答申の出ることを期待し、お待ちをしておる、その上で善処したい、こういうことになっております。
  135. 永末英一

    永末委員 この厚生大臣の諮問が、経済成長に伴ってということがあるので、中医協の中では、これは——経済成長というのは、大蔵大臣には耳が痛いかもしれぬけれども、物価が上がったことだ、だから何とかしなければいかぬ、こういう気持ちで審議が続けられている。そこで三師会側の主張が一つにしばられかかっておりますが、たとえば三師会の中にも、歯科医師会のごときは、経済成長だけではなくて、緊急に是正してくれろということで、あなたのほうに早くから要求しているものがある。それがこれに巻き込まれて、なかなか解決つかぬものであります。たとえば、歯科医師会側が要求しているものの中に、制限診療の撤廃がございます。あるいは乳幼児に対する特別の点の付加の問題もございます。こういうような問題もいまのデッドロックに乗り上げているような形が終わらなければ、厚生省としては何ら考える余地はないとお考えですか、考える余地ありとお考えですか、伺いたい。
  136. 小林武治

    ○小林国務大臣 ああいうことばでありますが、結局私どもは、現在の時点において緊急に何かをしなければならぬか、こういうことをお聞きしているのでありまして、この問題も含めて当然討議さるべき問題で、私ども内容等についてはいま制限をしておりません。医療協の自主的な御協議を願っておるのでありまして、私が考えまするに、いまのようなことも当然協議の対象になることであろう、こういうふうに考えております。
  137. 永末英一

    永末委員 厚生大臣の諮問されたことばに基づいて、デッドロックに乗り上げておる。これがこのままずっと続くことは、国民の健康にとって非常に迷惑だと私どもは思います。そこで、もし厚生大臣が諮問のしかたを変えることによって問題の解決が促進せられるとするならば、あなたはそういう用意があるかどうか伺いたい。
  138. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまおあげになりました問題等も、緊急是正の問題として御討議されることは一向差しつかえないことでありまして、現在のところ、この緊急是正、こういう問題についての諮問を変えるという意向は持っておりません。しかし、今後また適正化等の問題もありますので、次いで、またいろいろ諮問がされると存じますが、いまの段階においてはこれでひとつお答えを願いたい、こういうふうに考えております。
  139. 永末英一

    永末委員 時間がだいぶ迫りましたので、厚生大臣もうけっこうです。次に移ります。  中小企業の倒産が目に立ってまいりまして、政府は対策に苦慮をされておるようです。私は中小企業の中で、特に繊維に関係をしながら二、三伺いたいのでございますが、倒産の中でも、繊維の倒産は目に余るものがございます。これはいろいろの原因がございまして、私のおります京都でも、最近ある商社が十一億円の倒産をした結果、百十三の関連のものが迷惑をこうむり、すでにその中で十三が倒産をしておる、こういう事情が出ておりますが、これは全国的にそういう事情が出ておる。つまり私が申し上げたいのは、繊維の倒産について、通産大臣、昨年の六月に生糸の値段が暴騰したために、それぞれの繊維業者が化繊に生産を転向して、そのしわ寄せがいまあらわれてきておる、しかも暖冬である、こうなってきて、一体通産省は生糸の糸価安定というものに対して手を持っているのか持ってないのかを非常に不満に思っております。この点について通産大臣考えを伺いたい。
  140. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、繊維の倒産の問題については、別にほかにも理由があると思いますが、いま仰せになった生糸の問題については、通産省は権限がございません。農林省でございます。
  141. 永末英一

    永末委員 それでは通産関係の話を伺いますが、団体組織法ができましてから、これらの業者が簡工組合をつくり、それぞれ組合内部では調整規制をつくってやってまいりました。数量制限、設備制限、いろいろやってまいりましたが、全体としてみて、ある地域には過剰生産が行なわれるようなことが起こっておるわけです。それが今回の倒産になってあらわれておる。政府の見方からいうと、それは放漫経営だ、こういうのでありますが、一体、それぞれの織機等に証紙を張らして流通を制限するようにしておりながら、しかも一台について三万から七万というようなやみ権利金がついて動いておる、こういうことを通産省はどういうぐあいに一体指導してこられたのか、この辺ひとつ伺いたい。
  142. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、織機の問題はなかなか困難な問題でありまして、福井県とかあるいは石川県等においては、人絹の織機が多い、あるいは京都、丹後方面にはそれ相応のウールの問題が出てきておるというように、いろいろ方々に問題はありますが、これを全面的に全部調査して監督してというのは、実はなかなかむずかしい問題がありまして、やみ織機等の問題もありますが、通産省としては、そういうことのないように、できるだけの行政指導並びに監督はしてきておるつもりであります。
  143. 永末英一

    永末委員 織機が動きますと、あるものは地方官庁に届けられ、府県当局に届けられ、あるものはあなたのところの通産局に届けられる。通産省が所管するものなんです。あなたのほうがその気になれば、その動きはわかるとわれわれは見ておる。十分監督しておったならば、こんな問題は起こりませんよ、どうですか。
  144. 福田一

    福田(一)国務大臣 十分に監督しておければそういう問題は起きないはずでありますが、十分ということになると人をどれくらい使うかという問題が起きてくると思います。そこまで実はなかなか手が回っていないというのが実情だと思います。
  145. 永末英一

    永末委員 人がないのでできないというようなお話ですが、これはしっかりやるつもりですか。繊維行政としては重要な問題なんです。そのどうするのかということのあなたの意向のほどを伺いたい。
  146. 福田一

    福田(一)国務大臣 今度この問題に関連をいたしまして、繊維業法の改正をいたします。村区分をうんとはずして一歩この問題の前進をはかろう、こういう計画でございます。
  147. 永末英一

    永末委員 繊維業法がまだ国会に提案され成立したわけでも何でもございません。その間にもこの問題は進行するわけである。それまでどうされるのか、聞いておきたい。
  148. 福田一

    福田(一)国務大臣 もちろん繊維業法は紡績の問題でございますが、そのほかの問題についても監視は続けてやっておるのでありまして、できるだけそういうことのないようにしたいと思いますが、何しろ一台、二台の機屋さんから百台、二百台の機屋、実に千差万別と言っていいか、なかなか複雑なことは、おそらくあなたもおわかりだろうと思うのであります。したがって、これの監督というものはなかなかむずかしいのでありますが、監視制度を設けてできるだけ努力いたしておるところであります。
  149. 永末英一

    永末委員 通産省のほうが基本方針をはっきりさせなければ、地方庁も困る。できるだけじゃなくて、早急にひとつ方針をきめて、三月を迎えてばたばた倒産が出ないようにしっかりやってください。  通産省のほうが事前になかなかうまくやらぬものですから、しわ寄せは大蔵省に来る。大蔵大臣、あなたのところは通産省のいわばしりふきをやらなければならないような状態になっておるわけである。そこで、緊急に二百億の手当をするというのでありますけれども、融資百億、特別買いオペ百億というのですが、回収金も含めてやっておるのですから、実質は何ぼ出すのですか。まずこれを伺いたい。
  150. 田中角榮

    田中国務大臣 政府三機関に対する第四・四半期のワクは、御承知のとおり、先般財政資金三百億、それから余裕資金百億、計四百億、それに二百五十億の財政資金による買いオペレーションをやることを考えておりますので、六百五十億であります。それに今般なお三機関に対して百二十億、それに買いオペレーションを百億いたしますので、前段、後段合わせますと八百七十億になるわけでありまして、戦後三十六年の千億に次ぐ最大の措置を行なっておるわけであります。この百二十億の中では、五十億財政資金を支出をするということにしております。
  151. 永末英一

    永末委員 政府は、金融引き締めは大体短期にやって、その間ひとつこれで防ごうというのですが、いままでおっしゃったやつ、これは全部短期なんです。ところが、われわれが見ておるところ、通産省の態度がああいうことであるから、この繊維産業に対する不況はもう少し続いていくと見ておる。この政府が手当をする期間と繊維産業がこうむっておる不況の瞬間とはずれがあるわけですね。この点を一体どうしてくれるのかということを業者は非常に不安がっておるわけである。われわれもこれを不安だと思います。たとえば、窓口規制をやらしておると、いままでの借金を持続しようとしても、一割だけ切り下げろという命令を受けてやっておる。これでは、政府のほうがこれだけ金を出しましたと言っても、実際問題として窓口に行った場合に切り下げられる。切り下げさせない方法が何かありますか、大蔵大臣
  152. 田中角榮

    田中国務大臣 中小三機関につきましては、特に百二十億を第四・四半期に追加をするという政府の姿勢を出しておるのでありますから、三月までの年度末においてはできるだけ中小企業のめんどうを見るようにということは、三機関に対しても強く指示をいたしております。なお、民間金融機関に対しましても、年度末までの金融に対しましては各般の配慮をしてもらうように、銀行局長通達を、異例でありますが、出しておるような状況であります。特に日銀にも意思を通じまして、各金融機関が中小企業対策、特に地域的に問題のある繊維企業等に対しては特段の配慮をしてもらうようにという措置をとっておりますので、画一、一律的に一割切り下げるというような金融の引き締め方で何とかなるものが倒産をするというようなことは避けられると思いますし、避けるような方向で金融指導をしておるわけであります。
  153. 永末英一

    永末委員 とりあえず第四・四半期ということになると、三月一ぱいになってしまう。問題はそこなんです。これをもう少し別の方途で、われわれの見込みだったらもっと続くと思いますが、長くする計画はございませんか。御意見を伺いたい。
  154. 田中角榮

    田中国務大臣 第四・四半期の次には昭和三十九年の第一・四半期が来るのでありますから、もちろん政府の基本的な姿勢はそのまま進めていくのでありますので、四月以降の問題に対しても、事態対処しつつ適切なる措置をとります。
  155. 永末英一

    永末委員 大蔵委員会等で歩積み、両建ての問題が問題になっておりますが、これらの問題に関連しながら、政府の系統機関である商工中金、ここで、政府から財投資金は入れるけれども自己資金の努力をせよというととで百億ばかりぶっかけられて、そのために商工中金から金を借りてくると、預金をしろ、出資をしろということで、実質二割程度を削られている事例がございますが、大蔵大臣、こういう方法がいいと思いますか。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 商工中金は、組合金融、系統金融というような特殊なものでありますから、他の政府金融機関と同じように一律には言えません。しかし、歩積み、両建てがやかましい現在、商工中金などもそんなことやっちゃいかぬという政府の意思は十分通じてありますので、早急にこれらの問題は是正をせられております。そして、このごろの商工中金は、御承知のとおり、組合金融として預金も預かるかわりに貸し出しを行なう、こういうことでありますから、特異な存在ではありますけれども、あなたがいま言われたように、強制的に出資もさせられ、金融債も買わされ、そのほかに歩積み、両建てを要求されるということは行き過ぎがありますので、そういう指導はいたしません。
  157. 永末英一

    永末委員 二年前に、私は参議院におりましたときにもこれを申したら、やるんだ、こういうお話で、同じ答弁。目に見える形で国会で答弁するんじゃなくて、商工中金にも——弱いのは業者ですから、そうなっておると言ったって、やれと言われたらするわけです。わかる形で最近の機会に大蔵大臣の意向を表明してもらえますか。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、商工中金に対しては、もう去年からそういうことを言ってありますので、実効は相当あがっております。あがっておりますが、その状況等を報告の御要求があれば、いつの日にか申し上げます。
  159. 永末英一

    永末委員 やっているのですよ。大蔵省がどういう指導をしておられるかわからぬけれども、ちゃんと二つどんどんやっておる。その根本の原因は、あなたのほうが、商工中金に対し、自己資本の努力をしろ、こういうことを言っておる。自己資金の努力をしろ、これだ問題は。片一方で金を集めろと言っておいて、片方で両建てなんかせぬほうがよろしい、国会でうるさいからと言いましても、やはり努力をしなければぐあいが悪いから努力をする。この辺のことです。もう一ぺん伺いたい。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 永末さんの言うこと非常によくわかりますし、私も思想的にあなたと同じ思想でありますので、いままでのような考えではなく、相当手きびしくやっておりますし、また、政府機関に対しては、特にこの席でも申し上げておりますとおり、政府関係機関の窓口業務を行なっておる金融機関であって歩積み、両建て等を要求したものに対しては、その指定を取り消すとさえ強い態度を言っておるのでありますから、随時監査も行ないながら、あなたの意思に沿うような、また、この商工中金などの特殊性を逸脱した過当な歩積み、両建てに対しては、排除するように努力をします。
  161. 永末英一

    永末委員 手形の長期化が問題になって、下請代金支払遅延防止法についても大蔵大臣は罰則等の強化を考えられたように報道がございました。経企庁長官は現行法どおりでよろしい、——この辺の考え方をひとつ明らかにしていただきたいことと、税制上いまの税金の取り立てば発生主義をとっておる。したがって、受け取り手形があった場合には、これはちゃんと計上されるわけだ。ところが、現金がない。手形が長期化している場合に、この解決方法は、税金の延納のワクを大幅にし、期間を延ばすしか方法がないわけです。こういう御用意があるかどうか。二点伺います。
  162. 田中角榮

    田中国務大臣 手形の済度が非常に延びておるということに対しては、私もその事実を非常に懸念をいたしておりまして、昨年の末における地方財務局長会議に、手形の済度の問題、倒産の状況、倒産した会社に金を貸しておった金融機関はなぜ倒産の状態において金融をとめたかというような状態をこまかに要求しておるわけであります。報告を求めるようにしております。  それから、下請代金支払遅遠等防止法の問題につきましては、これは議員の発意によりまして政府が出し、第二回目は議員修正だったと思いますが、そういう商工委員会の強い意向がこの法律になったわけでありますが、魂が入っておるかどうかというと、なかなか下請企業と元請との特殊な関係上、この法律がほんとうに法律の額面どおり働くかどうかということに対してはいろいろ問題があるところでありますから、そういうことを知っておる以上、金融引き締めということに籍口して倍ぐらいに一挙に済度が伸びるというようなことが事実であるならば、やはり勇気を持ってこの法律の改正を行なわなければいかぬだろう、私はそういう強い考えを持っておるわけであります。  それから、もう一つは何でしたか。
  163. 永末英一

    永末委員 手形の済度が伸びる……。
  164. 田中角榮

    田中国務大臣 それは税法の問題。これは産炭地の問題等いろいろな特殊な事情のときには特に延納を認めたり弾力的に徴税上の執行を通達をいたしております。今度の繊維企業等の特殊性、また開放経済に向かっての中小企業の実態等に対処できるように、税当局とも十分話をしてみます。これは、しかし無制限にやるということになりますと乱れることであって非常にむずかしい問題ではありますが、事態対処して機に応じて善処いたします。
  165. 永末英一

    永末委員 私質問を終わりましたが、農林大臣が見えておりまして、生糸市価の安定について質問をしたままになっておりますから……。
  166. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 特に一問許します。
  167. 永末英一

    永末委員 繊維産業の倒産の原因の一つに、昨年の夏に生糸の市価が非常に暴騰いたしました。これは生糸の相場という毛のがこのごろ内容が非常に変わってきたことに原因があるとわれわれは考えております。ところが、生産者としては、生糸の値段が上がったために自分の生産の内容を生糸から化繊に切りかえる、このことによって膨大な切りかえが行なわれた結果、化繊部門において倒産がまた著しく出てきておるという状態が見えました。政府はこの生糸市価の安定について一体どういうことをやってこられたか、また、どうして安定をしていくつもりか、ここをひとつ伺いたい。
  168. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いままでの事情、お話のとおりでありますので、糸価安定法に基づく上限、下限の価格等が不適当であるということでございますので、これを是正して安定を保たせるべく、いま作業して、近いうちにそれを発表するといいますか、その下限を上げていくというようなことで検討していきたい、こう考えております。
  169. 永末英一

    永末委員 終わります。
  170. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  次に、山中吾郎君。
  171. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、文教政策あるいは人間形式の立場から、各大臣にそういう立場で御質問をいたしたいと思うのでありますが、文教政策の中の個々の政策の中における相当のアンバランスがあること、あるいは各省の事業と教育政策の中に断層がありアンバランスがあるので、そういう関係から、数名の大臣から相互にお聞きをいたしまして、全体として総合的な教育政策が前進するように、皆さんの御回答を得て、さらに常任委員会で掘り下げていきたい、こういう趣旨でございますから、私簡潔に御質問をいたしますので、大臣のほうでも簡潔にお答え願いたいと思うのであります。  まず第一に灘尾文部大臣にお聞きいたしたいと思いますが、これは実は岐阜県の教員組合に対する教育行政の点でございますが常識的に考えられないようなところまで、どうも教育行政が感情的になり偏向しておる。これは実際に私はその地域に行ってまいったのでありますけれども、岐阜県の日日新聞並びに朝日新聞等の記事に、組合脱退者を優遇するということが、四段がまえによって、教育委員会の高等学校組合に対する指導方針として記事に載っておる。それは、中身を見ますと、組合を脱退した者に対しては転任その他において優遇するというふうな、そういう大体の内容でありますけれども、この点については、新聞記者は、この記事については絶対責任を持つ、しかし、新聞記者の道義として、ニュース・ソースというものはいま言えないけれどもと言って、責任をもって答えておるのであります。大体の中身を見ますと、県高教組に加入しておる教頭、定時制主事については、学校の実情に応じて異動させるたてまえで、校長を通じて本人に異動するかもしれないことを伝える、任命制に切りかえた以前に職場選挙で選ばれた教頭、主事、主任も異動の対象として考える、一般教諭については組合脱退者は本人の希望に沿うよう努力して異動させるというふうな、文書で規定されたものを、新聞社に盗まれたといいますかそれが記事に載っておる。ここまでいきますと、これは組合についての批判でなくて教育行政自体が偏向してしまっているので、ここまでいくと、やはり日本の文教政策全体の問題として助言、指導の立場にある文部大臣においてもそのままに捨てておくわけにいかない、限界をこえているんじゃないか。この点について文部大臣の御意見をお聞きしておきたいと思うのであります。
  172. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 学校教師の身上の問題につきまして、すなわち人事を行なうに際しまして、組合員たるがゆえに不利益を与える、こういうことはあるべからざることと思うのでありまして、もしそういうことがあれば、それは間違った取り扱いであると言わざるを得ないのであります。ただいま御指摘になりました事柄につきまして、文部省の事務出局のほうもそういう話を聞きましたので、県の教育委員会と連絡いたしまして調査をいたしたのでありますが、その調査の結果によりますれば、新聞に出ておりますような方針をきめ、これを実施したことはない、こういうような回答に接しておるわけでございます。そのようにひとつ御了承をいただきたいと思うのであります。
  173. 山中吾郎

    山中(吾)委員 報告を求めればおそらくそういう答えになると思うのでありますが、そこで、新聞社のほうにおいては、この記事については責任を持つ、こういうことを明言をいたしております。そして、一月の七日と十八日に人事異動の会議を開いて、そのときに、七日に出席した者は教育長、次長、教職員課長以下関係課長、一月十八日には学校指導課長以下、こういうふうなことまで明確にされておるわけなので、おそらくその文書を盗まれたのじゃないか。表面の指導方針と内規的な人事指導方針があって、その内規的なものが新聞記者にとられたと私は思うので、この点については、ことばで論議をする問題でなくて、実際に真相を明らかにしていくべき問題であると思う。現在の組合そのものに対する、執行部に対する批判でなくて、職員団体、労働組合を完全に否定するそういう教育方針であれば、地方公務員法において認められておるところの教員組合あるいは憲法二十八条によって結成されておるその組合自体を否定する教育方針になるので、これは日本の教育行政全体の問題として重大な問題であると思います。いま文部大臣はそういうふうに報告を受けたというのでありますけれども、これだけではこの記事はそうだということにはならぬと思う。  そこで、自治大臣にお伺いいたしたいわけですが、地方公務員法の五十六条に、不利益取り扱いの規定がございますが、この地方公務員法によって規定される職員団体として、人事異動について組合を脱退した者を優遇するという、そういう教育行政を県の教育委員会が行なったときには、明らかに五十六条違反の問題であると思うのであります。これがもし事実とすれば、自治大臣は、この法律を忠実に執行せしめる職責を持った立場において何らかの処置をしなければならぬと思うのですが、この点についての御見解を承っておきたいと思います。
  174. 早川崇

    ○早川国務大臣 地公法五十六条の規定の不利益処分は、職員団体に加入または加入しないこと、または結成等の事由によって大事上不利益な措置をしてはならない、そのとおりでございます。したがって、そういう事実があれば、これに抵触することになるわけであります。
  175. 山中吾郎

    山中(吾)委員 見解だけでなしに、それに抵触するという事実があれば、この法律を忠実に執行せしめる責任のある自治大臣としては、何らかの措置をすべきではないかということなんですが、それについてはどうですか。
  176. 早川崇

    ○早川国務大臣 そういう処分を受けた人が公平委員会ですか、人事委員会ですかに向かって提訴する道があると思いますし、管理者に対しては、自治大臣としては、特に自治体のことでもありますから、何らかの処分とか、そういう権限は持っていないものと考えます。
  177. 山中吾郎

    山中(吾)委員 なお参考に自治大臣にお聞きしておきますが、この職員団体は、憲法上の性格から言うと、憲法二十八条の労働基本権に基づく——その争議権は制限されたものであるけれども、憲法二十八条に基づく制限をされた労働組合である、こういうふうに考えるべきであると思うのですが、その点の御意見を承っておきたいと思います。
  178. 早川崇

    ○早川国務大臣 憲法の解釈あるいは最高裁の判決によりますと、公務員も教員も、公共の福祉のために、たとえばストライキ権とかその他いろいろな制限がありますし、それを制限することは、最高裁判決では、憲法上合法ということになっております。したがって、それは憲法違反にならない。  それから、先ほどお尋ねがありましたが、自治大臣としては、そういう地公法五十六条違反の行為がありましたら、管理者に対して、その措置を取り消すとかいう助言、勧告の権限は、もちろんございます。
  179. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いまの御答弁によって、憲法二十八条による労働基本権は制限ができる、公務員の労働者であるから制限をして職員団体ができておるということは、反対解釈をすれば、二十八条に基づいた団体であって、その労働基本権の制限された労働組合であるという見解と一致するわけだと思いますが、それは間違いないかどうか。  それから、先ほどの、そういう不利益取り扱いをした者については、自治大臣としては、その処置を取り消さしめるとか、あるいは今度は、そういう教育委員会関係でありますから、文部大臣に対する関係において何か処理するとかいうふうなことが自治大臣の職責でないかと私思うので、その見解を聞くと同時に、もし事実こういうことがあれば自治大臣としては何らかの処置をしなければならぬのじゃないか、それをお聞きしているのです。
  180. 早川崇

    ○早川国務大臣 先ほど申しましたように、そういう措置をしないように助言をすることはできるわけであります。ただし、山中委員の言われておりますようなケースは私は聞いておりませんので、その場合のケースによりまして助言をする、こういうことになろうかと思います。
  181. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あとで事実が明らかになると思いますから、そのときにまた自治大臣に要望をいたしたいと思います。  そこで文部大臣にお聞きいた、しますが、これは単なるうわさではなくして、責任を持った記事として明言をしておる具体的な問題であるので、この後に文教、委員会においても参考人を呼ぶ、あるいは証人を呼んでも明確にしなければなりませんが、日本の教育行政が、そういう組合を批判をする立場をこえて組合を否定する文部行政、教育行政になっては、これはあらゆる法律を守れということを言っておる政府立場の中に法律無視を是認することになるので、この点は灘尾文部大臣もひとつ今後の推移については日本全体の教育行政の問題としてお考え願っておきたいと思うのです。ことに、つけ加えておきたいのは、岐阜県のその人事主管課長の教職員課長は、文部省の係長から向こうに行って課長になっている。そういたしますと、特にそういう指導を文部省がして、そうして実費上そこに人事主管課長を派遣したというふうに疑われても、これは何とも説明ができなくなる。そういうこともあるから、ただ報告はこうであったからということではなしに、文教委員会においてもなお私は、ここではそういう問題があることだけを明らかにして、掘り下げたいと思いますので、この点は文部大臣としてもよくお考え願っておきたい。私は、いろいろ問題がありますから、問題だけを提起いたしておきます。  次にお伺いいたしたいのは、文部大臣と厚生大臣にお伺いいたしたいわけであります。  幼稚園の振興については、新聞によって文部大臣がそれを強調することを発表されておる。この点については、数次にわたっていろいろの文教問題を灘尾文部大臣が発表されておるのは、現在の文教政策の陥没地帯というものを是正する意味において、私は適時適切なる着想であるということを認めたいと思うのでありますが、その幼児教育の振興のためには、これは厚生省の関係とお互いに考えないと問題は実現しない、不渡り手形になる、こういうふうに考えるのでお聞きいたしたいのでありますが、幼稚園と保育所の関係であります。この点については、貧しい家庭あるいは共かせぎの家庭の子供は保育所に収容する、いわゆる厚生省の社会保障政策の一環として行なわれておる。豊かな家庭、一般の家庭の子弟については幼稚園教育の対象としてそこに収容する。同じ日本人の、同じ日本民族の、しかも満四才と五才。これは教育の対象なら教育の施設に入れるべきである。また、教育すべき対象でなくて保育の対象ならば保育所に入れることはわかる。ところが、貧富の差によって、ある者は保育所で保育を主として収容する。他の者は教育を主として幼稚園に入れる。これはどう考えても文教政策の立場から言ってこの制度はまことに矛盾がある。この点について文部大臣及び厚生大臣は矛盾を感じておられると思いますが、これをどうするかということについて御見解をお聞きしておきたいと思うのです。
  182. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまのお話でありますが、御承知のように、保育所というのは教育だけが目的でなくて、要するに親が労働に従うとか、あるいは病気等のために子供の保育ができない、その保育に欠けておる乳幼児を入れる、ということが本旨でありまして、幼稚園教育は一日四時間以内、ところが、保育所のほうは親がうちにおらない、こういう関係で朝七、八時から夜七、八時までもお預かりをしなければならぬ。出発の目的が違っておるのでございます。したがいまして、いまのところ、私どもは文部大臣ともお話をいたしまして、教育につきましては保育所においても幼稚園教育の課程を授けられるようにしたい、そして、そのほかの保育、養育ということは、夕方まで子供をお預かりする、こういうことで、これからは、保母等につきましても、幼稚園教育等ができるような教育、教養を与える、あるいは資格を求める、こういうことにしておるのでありまして、現在におきましても、実は幼稚園というものは全国でもって七千五百四十九、保育所は一万四百七十、こういう数字になっておりまして、普及率もいま違っておるのであり、一応お互いの目的が違うから、今日の段階においては、それぞれの分野においてその普及をはかるということがまず第一の必要事である、こういうたてまえからいたしまして、ただいま申したように、文部省とも協定をいたしまして、保育園における教育については幼稚園のものを採用できるように、そして、とにかく一日十時間近くにも及ぶ保育、それから一日四時間の幼稚園教育、こういうものにはおのずからいまのところ一つの区別があり、目的が違っておる、こういうことで、両方でひとつ普及をさせたい、こういうことを考えておるのであります。
  183. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま厚生大臣からお答えになりましたとおりでありまして、文部省といたしましては、幼稚園の普及をさらにはかってまいりたい、充実もはかってまいりたいと考えておる次第でありますが、保育所と幼稚園との間にそごのないように、お互いに調整しながら発展をはかってまいりたいと思っておる次第であります。保育所と幼稚園との設立の目的は、それぞれあるわけでございますけれども、同じような年齢の子供が、あるいは保育所に、あるいは幼稚園におるわけでございます。その教育というふうな問題につきましては、保育所におきましても幼稚園の教育内容に準じて教育をしていただ、こういう方向で協力しながら進んでいこうということで、両省の間に話し合いがついておりまして、この方向で今後互いに協力しながら進んでまいりたいと存じております。
  184. 山中吾郎

    山中(吾)委員 厚生大臣は十分御理解願っておられないと思うのですが、ぼくの質問は、満四才、五才というのは教育の対象であるとするならば、憲法に保障されたように、同じように能力に応じて教育を受ける機会を与えなければならない。一方は、保育をするだけだということで、幼稚園の教員の免許状を持たない保母でただ保育を主としてやっている。そうすると差別待遇じゃないですか。幼稚園の場合についても、保育はもちろんそういう幼児でありますから兼ねてやらなければいかぬので、幼稚園の教員の免状は特別にあるわけである。しかし、一方では教育をする必要はないという思想であるから、保母が保育所におるということになるでしょう。そこで、この問題はそういうふうな便宜的に考える問題でなくて、満三才以下というものは当然保育の対象ですから保育所で厚生省は取り扱うけれども、四才と五才と同じ発達段階の児童に対しては教育を施すということは、幼児教育がいま必要だという文部大臣の諮問機関の答申もあり、しかも、人格形成の基礎であり、青少年の非行の原因はむしろ幼児教育にある、これを主張されて、一般の者は認めておるわけでありますから、貧しい家庭の子供といえども幼稚園教育を共通でしなければならぬ。なお、共かせぎでうちへ早く帰すわけにいかぬ者は、あとでその子供だけはその施設に残して保護するということはいいですけれども、いまの制度は全然その点については合わない。これはこのまま捨てておくわけにいかないので、いま申し上げておるわけです。したがって、特に保育の手当とか児童に対する教育手当が要るならば、その子供に対して手当を支給するということはすべきで、同一の施設に収容すべきではないか、こういうふうに私は考える。そういう考えでないと、厚生大臣と文部大臣が幾ら言っても、この幼児教育の振興は統一的にできないのではないかと思うので、もう一度大臣の御意見を聞いておきます。
  185. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、保育所においても、いまの三才以上の子供には幼稚園の教育に準じたものをする、こういうことで昨年十月文部省と一緒に通牒も出し、したがって、保母もその教育ができるように再教育その他によってやっていこう、こういうことで、教育自体は幼稚園教育に準じたものを保育の中においてやる、こういうことになっておるのであります。
  186. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは、説明をしても、そうなれば教育についての一定の知識と考え方を持っておる教育免許制の上に立った者を保育所の職員にしないと、これは大臣が言ってもうそになると思うんです。その点を明確に考えて、両省において検討していただきたいと思うのです。これはまた文教委員会で掘り下げます。  そこで、灘尾文部大臣に伺いますが、幼児教育の振興をはかると、それほど言われておるのですけれども、幼稚園の先生については非常に差別待遇がある。たとえば、育英資金を支給するについても、小中学校につとめた者については返還免除の制度がございます。現在の育英法では幼稚園につとめた者には免除を認めていない。ところが、幼児の教育なんというものは二十四時間教育で、最もそういう教育的、心理学的な知識と配慮が必要であり、小中学校の先生よりさらにめんどうなことがある。しかも、幼稚園の教諭は、月給なんというものを考えないで、その子供に献身的にやるという精神態度が非常に濃厚な人々なんです。小学校、中学校、高等学校につとめたのはいわゆる返還免除をすることにして、幼稚園につとめた幼稚園の教諭にはなぜ免除を認めていないのか、これはいかがですか。
  187. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 山中さん、よく御承知のことでありますが、小中学校の関係におきましては、いわゆる義務教育職員を確保しよう、こういう見地から、この返還金の免除というふうな制度も行なわれておるわけであります。お話のとおりに、現在幼稚園につきましてはそのような制度がまだ行なわれてはおらぬわけでありますが、幼稚園の整備、幼稚園の拡充は実はこれからの問題でございまして、施設につきましても、その内容につきましても、さらに検討をして改善充実をはかってまいらなければならぬと思っておりますが、いまの保母に対する奨学金の返還金免除、この制度もいろいろ検討すべき点もあろうかと思いますので、さらに十分研究いたしてまいりたいと思います。
  188. 山中吾郎

    山中(吾)委員 速急に検討していただきたいと思うのですが、いまの御説明に一つ矛盾があると思うので、義務教育とおっしゃいましたが、高等学校は義務教育じゃない。高等学校は免除している。幼稚園は免除するという思想に立たないと、幼児教育の振興を特に新聞に発表されてまで努力されておる文部大臣の論理が合わない。これは速急にしていただくべきだと思います。
  189. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘をいただきまして恐縮に存じますが、私の答弁は、高等学校に関する限りにおきまして訂正をいたします。幼稚園の問題につきましては、今後の問題として検討さしていただきたいと思います。
  190. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これに関連して大蔵大臣にお聞きいたします。地財法の交付金の算出の基礎である単位費用について、高等学校、小学校、中学校については独立に費目があるのですが、その他の教育の中に幼稚園の教諭についての給与その他の交付金の算定の基礎が入ってしまっておる。非常に少ないわけです。したがって、幼稚園の教諭の給与は正当な免状を持っておっても低くされておる。これもいま政府が幼児教育を特に強調されておる場合については矛盾であるので、速急にこの点は改正すべきだと思うんですが、この点いかがですか。
  191. 田中角榮

    田中国務大臣 幼児教育の重要性は文部大臣から申されたとおりでありまして、私もそのように考えておりますけれども、幼稚園を義務教育とするのか、義務教育と幼稚園制度との関係その他によって現行のとおりになっておるわけでありますが、幼児教育というもののだんだんこれからの重要性ということによって、いままでのような区別がなくなるというような方向になれば、まあそういう方向で漸次解決をしていくわけであります。しかし、制度上に解決がつかなければやらぬのかということであれば、そうではなく、地方財政の状態を十分考えながら、文部省の意見も聞きながら、文部、自治、大蔵省等で検討していくべきものであると思います。
  192. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣答弁にも一つ間違いがあるのです。義務教育ということをおっしゃいましたが、高等学校は単位費用は独立の費用としてあるのですから、義務教育だからじゃないんですよ。幼稚園教育はあるのですから、義務教育にしなければという、そういうことではやはり延びると思うんです。そうでなくて、いま幼児教育というものは青少年問題も含んで強調されておるときなんで、幼稚園の教育は軽視されておるという、この点についてはどこか間違いがあるんですね、政治思想に。そうでなくて、検討されないといかぬと思うのです。おわかりですか。
  193. 田中角榮

    田中国務大臣 私もあなたの御質問に応じてお答えをしてあるわけです。実際上は幼児教育というものが必要である、だんだん拡充していかなければならないということで、いま御質問のような問題に対しても政府部内でも十分検討してまいります。こう言っておるので、じゃ現在の段階でどうして一体差があるのか、こういうことを申し上げると、小学校以上は義務教育であるしというようなことで差がついておると思います。こういうことを申し上げたので、とれからの問題に対しては、前向きで対処する、このような考え方であります。
  194. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、貴重な時間ですから、ほかに移っていきたいと思います。  次に、医学教育についてお聞きいたしたいのですが、いまインターンが非常に矛盾をきわめておるので相当に騒いでおるようでありますが、これは、医学教育制度そのものから言っても、厚生行政の立場から言っても、このまま捨ておけば捨ておくほど矛盾が拡大して、あとで始末がつかなくなるのじゃないかというふうに私は考えるのですが、現在の医学教育は、六カ年の大学教育をして、あと一年インターンを置いて医師の免許資格を与えるというふうなことになっておるわけでありますけれども、実態を調べてみますと、無給の労働力を病院が使うためにインターンを置いている。したがって、実習するという教育目的というものはほとんど行なわれていない。さらに、おまけに、診断その他を実際にやるから、医師法違反である。そうして、貧乏人の秀才は、インターンをやる間に収入がない。学生でもないし、公務員でもないし、医師でもない。インターンということは自体私はわからない。どういうことなのか。そういうためにアルバイトをしておる。疲労するだけである。研究はできない。実習というものの中にむしろ医師に対するイメージがこわれてしまっておる。あらゆる矛盾が重なっておるように思うのですが、この点について、厚生大臣から、おそらく何らかのこれは対策をしなければならぬと思っておられると思うのですが、御意見をお聞きしておきたいと思います。
  195. 小林武治

    ○小林国務大臣 インターンにつきましては、御指摘のようなきわめてあいまいな性格を持っておるのでありまして、私どもも、この制度の活用のためには、どうしてもこの身分、待遇等につきましてしかるべき措置をとらなければなるまい、こういうふうに考えておるのでありまして、ことしの予算編成等にあたりましても、インターンを預かる施設に対する各種の補助あるいはインターンの宿舎あるいはインターンに対する経費の貸し付け、こういうふうなことをいろいろ協議をしたのでありますが、来年度の段階におきましては、結局、国立病院等においてインターンの宿舎の用意をする、また、これを受け入れるその他の施設に対して若干の補助の増額をした、こういうことで、インターン自身の収入につきましてはことしは手当てをすることができなかった、こういう状態でありまして、この状態はきわめて遺憾な状態である、こういうふうに私ども考え、この問題につきまして、最近、インターンの身分、待遇あるいは医学教育、こういう問題につきまして根本的にひとつ検討してもらいたいということで、関係者の文部省、厚生省あるいはその他の学識経験者等にお集まりを願って、この問題を早急に結論を出していただいて、そうして次の予算編成期には適当な措置をいたしたい、こういうことで、ともかく、いまのようなあいまいな状態でなくて、お話のように、身分、待遇等につきましてもひとつしかるべき措置をとりたい、かようにいま考えております。
  196. 山中吾郎

    山中(吾)委員 おそらくそれでは解決はできないだろうと私は思うのですが、大学教育六カ年をして、そうして卒業と同時に国原試験を受けて医師の免状を取り、あと一年実地実習をやるといえば、そこに収入の道も出ると思うのですが、一体、六カ年医学を勉強して、一年間、何の身分も与えず、学生でもない。そこの何というのですか、医者でもない。何でもない。そこからは給与というものは出てこないと思うのですが、これは、医学教育制度そのものとして、六カ年の大学教育を受けたならば直ちに国家試験を受けて、あとで実習をするという制度にする以外に解決はないと思うのですが、それはどうですか。文部大臣ももと厚生大臣をされたのですが、制度的な解決をしなければ解決の道がない。全国のインターンはインターンを拒否すると言っておるが、これは私は無理がないと思うのです。七〇%の人がみなアルバイトをしておる。そして、それは医師法違反で、医師の免状なしに医師と同じことをしておる。この現実は、政府は捨てておくわけにいかない。いまのように少し補助を多くするとかいうようなことでは足りない。何か大学の学生に対する奨学金は月三千円貸与を受けることができるそうでありますけれども、これは貸与ですね。司法試験を通れば研修所に入って公務員の初任給と同じものをもらって二ヵ年間勉強できるのです。だから、その答弁ではどうにもならない。あと大蔵大臣にもお聞きしたいのですが、その点はどうです。
  197. 小林武治

    ○小林国務大臣 いま一言われましたように、四年を終わったら国家試験を受ける、あるいは受けさせる、こういうふうな御議論が相当ありますので、これらの問題も含めてひとつ至急に検討し、てまいりたい。この問題の解決が非常におくれておったことは私ども非常に遺憾に考えておりまして、お話のようなことも含めて検討していただく、こういうことになっております。
  198. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在のインターンに関する問題につきましては、厚生大臣からお答えいたしましたように、厚生省におかれましても根本的に検討せられるということに相なっておるわけであります。また、文部省のほうといたしましても十分御協力をいたしたいと考えておる次第であります。現在の大学教育は、御承知のように、これを卒業した者が一年間、医師試験を受ける受験資格としてインターンをする、こういうふうなたてまえのもとに大学教育のあり方がきまっておるわけであります。今度の根本的検討の進行状況とにらみ合わせまして、大学教育のあり方につきまして、われわれといたしましても検討させていただきたいと思います。
  199. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは、厚生省としても、医学教育制度の問題として、少なくとも来年度あたりから改正するということを前提とされないと、これはどうにもならないのじゃないかと思うので、文教委員会においてさらにまた厚生大臣に来てもらったりして、解決の道をひとつ定めていただきたい。  それから、同時に、今度は大蔵省の財政問題になると思うのですが、医科大学を出てそのときに国家試験を受ける。国家試験は合格した。ただしあと一年は実地をやらなければならぬ。実際は見習いのような医師になると思うのですが、そうすると、現実の病院で勤務し診断をしても医師法違反にならない。これは法制のたてまえからそうしなければならぬと思うのですが、そうしますと、おそらく司法官の例の試補のように初任給程度の給与が要ると思うのです。全国で平均三千人くらいはインターンが出るそうですが、月二、三万にすると六、七億は要るのじゃないかと思うのです。二兆何ぼの予算の中で、それくらいの財政措置は、現実に、まっこうから医師法違反のような状態で、貧家の秀才が人間の生命を預かるための一番大事な実地の研究をする場合に、アルバイトその他のことで疲れ切ってほとんどやれないという状況なんですから、私はそれはやれると思うのですが、その点の心がまえを大蔵大臣にお聞きしておきたいと思います。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうことに対しましては、まだ厚生大臣からの予算要求もありませんし、全く白紙の問題で、私がインターンの問題に対してお答えをすることはどうかと思います。私個人としてはこの問題に対して意見はありますけれども、やはり厚生大臣、文部大臣の御答弁でひとつ御了解を賜わりたいと思います。
  201. 山中吾郎

    山中(吾)委員 厚生大臣はどうも答弁と違ってだいぶ熱意がないようですね。大蔵大臣が何の認識もないというのでは、私は厚生大臣の責任だと思う。いまからでもおそくないので、大いに認識を深めて、大蔵大臣が私にも意見があると言っているのは、言外に肯定しておるのだと思いますから、これは一年以内に解決すべき問題だと思うので、さらにこの問題について認識を深めておく必要があると思うのです。大体、医科大学の入学金は、私学の場合は入学するときに最低五十万円要る。多いところはいろいろの名目で百五十万くらい要る。そこで、貧家の秀才は昔のようにお医者さんにはなれない。絶対になれないのです。そこまでいっておると思うのです。それで、いなかの開業医の子弟は、その設備が子供を医科大学に入れなければむだになるから、五百万出しても医科大学に裏から入っておる。しかし、われわれの生命を担当するところの医師が、これは少し言い方によっては誤解をされるかもしれないが、あまりできない子供が医者になることができて、できる子供が医者になる教育の機会が喪失されておる。ここまで来ると、私は日本の医学教育の根本問題にさかのぼって検討すべき問題があるのじゃないかと思っておるのです。しかも、卒業すると一年間無給のインターンをして、またアルバイトをするので、だんだんと医学に入る者の質が低下してくる。今年の大学の入学率をお調べになるとわかりますが、医学部の受験率というものは、ほかの学部より少なくなっておる。昔より多くなっていない。世界に高い医学水準を誇っておる日本の医学が、そういう制度の欠陥の中からずっと低下してきておるという現実をもっと深刻にお考え願って、この問題を政治的答弁に終わらないようにしていただきたい。また、一方で、いなかの保健所のようなものをつくっても、そこに行く医者がないというふうな問題も含めて、医学教育と、それから全体の日本の保健制度を含めて検討すべき根本問題があるので申し上げておるわけでありますから、この点は一年間の間に何とか目鼻をおつけ願いたいと思います。  と同時に、それに関連をして文部大臣と大蔵大臣にお聞きいたしたいのですが、医科大学はたしか百万くらい要るだろうと思いますが、そうでなくとも私立大学に入るときには、一番低くて六、万くらいの一時金が要る。普通二、三十万は要る。したがって、月々の学資の貸与を受けて、そうして半分くらいは親が支給するとか、半分くらいはアルバイトをして大学に行くということは可能でありますが、入学金が多いので、これはどうにもならないという子弟、家庭が非常に多いと思うのであります。農家の場合は、牛一頭売って入学金の準備をして受験をする。あるいは入学金、寄付金を含めて十万円くらいは最低要るので、牛を売ったりして次三男を大学に入れておる。しかし、だんだんと多くなると、月々送るということはできても、一時金は出ない。そのために現実に大学への進学の機会を剥奪しておる事実があると思うのです。そこで、育英制度の中で、月々の学資補給の貸与でなくして、一方に医学の制度については文部大臣が言うように再検討すべきものがあるけれども、同時に、現実に即応するために、育英資金の中で入学金を一時貸与する、この制度を一応考えてやらないと、私は現実に正当な教育の機会均等というものは失われておると思うのでありますが、その点はいかがですか。これは文部大臣と大蔵大臣にお聞きしておきたいと思います。
  202. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 入学金を一時立てかえると申しますか、貸与するということも一つのお考えであろうかと思います。ただ、これにはやはりその貸与したものの返還という問題がついてくるだろうと思います。現在のような入学金であります場合には、なかなか考えなければならぬ点もあるのじゃなかろうかと思いますので、にわかに結論を出すわけにはまいらないと思うのでありますが、ただ一般的なこととして考えましたときに、だんだんと入学金が高くなってくるということは、私どもとしましてもよほど気をつけなければならぬ問題であろうかと思うのであります。この問題は、結局現在の私学というものと政府との関係という問題にも帰着するわけであろうと思いますが、従来、御承知のように、私学につきましてはあくまでもその自主性を尊重する、つくることについて格別の制限もいたしておりませんけれども、またその経営の内容等につきまして立ち入った干渉もいたしておらない、いわば自由にまかしたような形になっておるわけでございますが、その間やはり日本の教育水準を向上する、あるいはまた私学の振興をはかっていくというので、御承知のように私学振興会を通じての援助でありますとか、あるいは特殊のものに対する補助でありますとか、あるいはわずかながらでも税の軽減というような措置も講じてまいっておるわけでありますが、一般的に私学の経営について援助するかどうか、こういうふうな問題にもなってくるわけでございます。私は、私学と政府との関係という問題につきましては、このような意味において真剣に考えなければならぬ時期がきておるのじゃなかろうか、このままの状態で、ただ私学に対する教育費がかさむばかりというふうなことでは、学校の立場はともかくといたしまして、国民立場におきましてこれでは適当でないのではないか、こういう考え方もいたすわけであります。私学の助成につきましては、もとより従来からやっております方式を、さらに大蔵大臣の御協力もいただきまして、もっと進めていくということも考えなければなりません。同時に、私学と国との財政面等における関係を今後どうするかという問題についても、ひとつ研究してみたい、かように考えておる次第であります。
  203. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あわせて大蔵大臣にお伺いする前に、つけ加えて御意見を聞いておきたいのですが、いま文部大臣が私学振興の話をされた。根本的に検討するには、自主性と国の補助を増大することにおける国家の立場ということで、自主性と公共性に矛盾が出るので、これは速急にというわけにはいかない、検討すべきものがあるわけです。それに矛盾のない範囲内においては補助でなくて融資ですね、思い切って融資を増額するとか、それから私学に対する寄付についての免税ですね、法人税にしても相続税にしても完全に免税にするくらいのことは大蔵大臣は決意をされないと、いま言ったような入学のときには一時に何十万という金が要るので、どんな秀才でもこれは入れない。月一万ずつ出すというなら親は工面をするけれども、数十万ということになればそうはいかないと思うのですよ。したがって、そういう育英制度における入学金の問題あるいは私学についての個人または法人が寄付する場合については、これはいろいろの制限を加えないで免税を思い切ってしてやる。私立学校に関する寄付についての特別法でもつくられて、その辺は考えていかないと、補助の問題になるというと、これはまた別な問題があるので、この点は私は検討していただきたいと思うのです。大蔵大臣が施政演説で教育のことについて非常に深く触れておられるので、私は本会議で敬意を表して実は聞いておったわけですが、教育の機会均等を確保するための育英制度、私立学校の助成その他項目をあげて伸展をはかることについて明言をされておられるのでありますし、文教関係についての御理解についてに敬意を表しておるわけですが、できるものは、特にこれは国家財政に影響は大してない問題でありますから、その点は御検討願いたいと思うのですが、いかがです。
  204. 田中角榮

    田中国務大臣 本会議で述べましたとおり、教育は人づくりの政策の根本をなすものでありますから、これに対して熱意を持っておることは申し上げたとおりであります。  それから現行の育英奨学制度は経常的な支出の不足を補う、こういうたてまえをとっておりまして、その内容及び対象人員を広げるというのが急務であります。でありますから、現在のところ一時的に支出をする入学金等に対して、これを含めた奨学育英制度にしようという考え方はないわけであります。しかも、一時金を奨学制度だけでもって全部含めて処理しなければならないかという問題に対しては、まだ広範な立場考える必要があると思いまして、この中で全部含めることがいいのかどうかという問題に対しては慎重でなければならぬという態度であります。  それから、この機会でありますから申し上げますが、学校の寄付金等に対しては、大蔵省は相当考慮をいたしておるわけであります。これを申し上げますと、公益法人等に対しまして財産が贈与された場合には、原則として譲渡がなかったものとしてやっておりますので、一般親子の間における贈与というような問題よりもよく見ておるわけであります。第二点におきましては、私立学校に対する寄付金は、いままでは所得の三%相当額をこえる場合には、所得の一〇%を限度として、その金額の二〇%相当額を納付する税額から控除するということでありましたが、一〇%を二〇%に上げ、二〇%を三〇%に引き上げておる。こういうことを三十九年度の税制改正でやっておるわけであります。なお、私立学校等が大蔵大臣の指定を受けて寄付を集めるという場合には、法人等の寄付に対しては、一定の限度額を別ワクとして全額損金算入を認めておるということであります。それから相続税等の場合、これを学校法人に寄付をした場合等は相続税を非課税とする、こういう各般の処置をとっておりますので、私もあなたがいま言われたように——私も私学に関係をしておりますし、私自身も大学へ行かなかったという経歴がありますので、学校がいかに大切かということに対しては真剣に考えておりますが、国家財政の立場もありますので、いまのように非常にむずかしい事態においても、三十九年度の税制改正においては相当前向きに対処しておるという事実だけはひとつ御理解いただけると思います。
  205. 山中吾郎

    山中(吾)委員 免税を全然無条件に、私学に寄付した場合には免税するというところまでいけないかということを申し上げておるのです。補助制度になると、経常費の補助までいま私学団体その他が大運動しておる時代でありますから、その点から国が協力するということはもっと大胆にすべきではないかと私思うので申し上げておるわけです。ことに現在の国立と私立の関係を見ると、国民からいうと私は二重課税だと思うのです。それは国立大学の運営に年々一千億円くらい国費が出ておる。おそらく一人の学生の教育費に六十万から九十万までの間で、学部によって違いますけれども、国の税金を使っておるわけです。ところが、現在国立大学に入る家庭の子供はむしろ中流階級以上である。私学に入るのはむしろ貧しい農村の家庭の者が多いのですね。家庭教師も持てない、いろいろの教育環境がまずい。そうして自分の税金は、自分の子供が入らない国立の大学の運営に使い、自分の子供は別に何倍か国立より多い学費を出して、そうして子供を教育しておるのは実質的にいうと二重課税じゃないか、そこまで思い詰めてみなければ現代の矛盾は深刻に考えられないと思うのです。そういうことを考えると、せめて篤志家が相続財産をあるいは自分の財産を私学の教育に提供するという場合に、税金をかけるという思想はとるべきじゃない。そういうふうな最低限度の考え方について、私はもう少し大蔵大臣も深刻に考えていただいて御検討願いたい、こういうことです。
  206. 田中角榮

    田中国務大臣 この問題は、いつも問題になる問題でありますし、私もアメリカのように、諸外国のようにそういう制度も一つのやり方だとは考えますが、御承知のとおり憲法上の問題がありまして、(山中(吾)委員「解消しておるはずだ」と呼ぶ)いや、解消してないのです。それは私学の問題だけではなく、宗教に対してもあるわけであります。でありますから、いままでの国会の、戦後十八年間のお話をずっと見ていただきますとわかるとおり、私学振興会というものを通して融資の道を講ずる、私学振興に対して補助をする、こういうようなことになっているわけですが、しかし、国会の議決で新しい法律ができたようなものに対しては、徐々に教育の重要性ということに対して相当な除外例を開いておるわけであります。でありますが、全然税金を取らないということになると、憲法で言っておりますように、国が特別な援助をするということと相当競合してくる。特にいま問題になっております宗教法人との関係を見ますと、宗教法人に対しては非常に厳密にこれを適用しておるわけであります。しかし、私学に対しては相当なワクを広げて、私がただいま申し上げたように、税制上の措置もやっておるのでありまして、国家財政の事情ともにらみ合わせながら、一律の均衡論よりも、教育は重要だというのでいろいろに特例を開いておるのでありますから、現在の段階において免税にできるということになると、議論は相当あるのではないかと、このように考えております。
  207. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その点の憲法解釈は大蔵大臣と私の解釈は少し違うわけですが、宗教法人は何ら公の支配を受けないのです。完全に。しかしいろいろと論議の結果、憲法の関係は私立学校法を設定することによって解決したんじゃない、ですか。その第一条にその公共性を説いて、私立学校だけは解決しているはずであります。ところが、税法の改正を見ますと、教育、福祉事業、慈善というふうな並べ方をして、そうして改正をしておるから、十ぱ一からげでそういうことはできないという錯覚があるんじゃないか。私立学校に関する免税の特別措置法を出すのならば私はできる、憲法の解釈については私学については解決している、私立学校法の設定で……。それはいかがですか。
  208. 田中角榮

    田中国務大臣 この問題に対しては、与野党一致の見解がすでに成立をしておりますから、あえて議論をすることもないと思いますが、妥当性のある行為でありますから、国が国民の権利を制約するという方向に向かっておるわけではありませんので、このような憲法解釈をして、いろいろなその後の法律ができておりますけれども、やはり憲法にある条章というものに対してはきびしい解釈も存在するわけでありますから、私は、現存の状況においていろいろな学校に関係する法律等で解決しておるものもありますけれども、いまの税等に対して、国有財産を無償でやっておるという道と同じように、私学に対しては非常に安い特別な代償で国有財産を払い下げておりますが、公立学校と同じように無償にするということと同じ例であり、同じ状態である税を免税にするということまでいけるのかどうかという問題に対しては、割り切った考えにはなれないということを申し上げておるわけであります。しかし、いま申し上げたように一〇%の限度額を二〇%にし、二〇%を三〇%に上げておるのでありますから、政府が私学振興に対して非常に前向きであるということだけは理解いただけると思います。
  209. 山中吾郎

    山中(吾)委員 重ねて大蔵大臣にお聞きしますが、文教委員会に幾ら大蔵大臣を呼んでも来てくれないから、こういう機会しかないので特に大蔵大臣に質問するのです。  いま、国立の場合は寄付しても全部無税であるが、私学についてはそうはいかないとまだ割り切っておられない。しかし現在の国立、私立は、教育基本法という法律のもとに同一にコントロールされておる。昔は私学はそういう意味の教育基本法というものがなかったから、同一の国立、公立、私立にかかわらず、日本の教育の基本方針のもとにある学校でなかった。その点については割り切ってしかるべきではないですか。しかも私学の卒業生は国立の卒業生に比べて何倍か多い。国会議員だって、国会議員の大部分を占めておるものは私学の出身である。そこまで国家、社会のために活動しておる現実もあわせて、法律的に差別するということはあり得ないので、その割り切ることができないということについては、もう少し学校の政策を掘り下げていただかないと、それで法改正が壁になっておるのならば大蔵大臣考え方を私はもう少し掘り下げていただきたい。いかがですか。
  210. 田中角榮

    田中国務大臣 法人に関しましては、私学及び官学に寄付をした場合は同等に考えております。が、個人が私学に寄付をした場合、全額無税という問題になると、純法理論としては確かに何かあると思います。
  211. 山中吾郎

    山中(吾)委員 個人が寄付をしたときは割り切れないというのは私はわからないのです。自分の財産を学校に寄付するという個人はさらに敬意を表すべきで、それを免税にするのは割り切れない、法人ならばいいというのはどこに論理的根拠があるのですか。何か大蔵省の役人のものの考え方の中に現実の戦後の学校教育制度についてマッチしない伝統的な考え方があるのじゃないか。いま大蔵大臣に耳打ちをされたような思想があるのだと思うので、その点大蔵大臣は、戦後の学校制度は戦前の行政概念で支配できない新しい制度である、これは確認をしていただきたい。いま耳打ちをした局長なら局長答弁願ってもけっこうです。
  212. 田中角榮

    田中国務大臣 私も戦前の私学にも通いましたし、戦後の私学の経営もやっておりますから、あなたと同じような立場でもって検討もいたしておるわけでございます。まあいろいろな議論があればここでひとつ申し上げます。財政上の事情等もありますので、あなたの考えるように非常に前向きで対処したいということで、年々減税法案を通しますときに、私学に対する寄付金に対してはその幅を広げておりまするけれども、一朝一夕に無税まではいかない現状である、こういうふうにはっきり申し上げておきます。
  213. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これは文教委員会でまた論議をしたいので、大蔵省関係を私のほうで呼びましたら大蔵大臣、ひとつ局長を督励してよこしていただきたい。いつでも壁は大蔵省ですから。その点を希望しておきます。  次に、青少年問題についてお聞きをいたしたいわけでありますが、現在の青少年犯罪について、一々説明はお受けしなくてもこれは万人が認識をして寒心にたえない状況にあるので、そういう御説明は私は求めません。ただ高等学校、中学生というものの犯罪が多くなっておるので、公安委員会関係ばかりでなくて、文部省の問題にもなり、総理府の問題にもなり、あらゆる問題に関係をしてきておるので、青少年問題については総合的な立場で検討しなければならぬ段階にきておると私は認識をしておるのです。そういう立場でお聞きをいたしたいのでありますが、公安委員長がおられるのでお聞きいたしたいのです。現在の青少年犯罪のおもなる原因は一体どこにあるか。これについて公安委員長並びに総理長官がおられますが、この原因についての認識が違えば対策もまた違ってくると私は思うのでお聞きしておきたいと思います。
  214. 早川崇

    ○早川国務大臣 非常にむずかしい問題で、一言にしては申し上げられませんが、大きく分けますと、第一は急激な民主主義、人権尊重という戦後の革命的な制度の変革に伴って、学校教育あるいはその他ではっきりした道徳あるいは人生観というものの確立ができない混乱時期がございました。最近になりまして、文部当局が指導して道徳教育という面に非常に力を入れておられるわけであります。そういう面の教育の問題。二番目には、やはり大都市化の情勢、これは世界共通の問題でありまして、大都市化に伴う諸般の消費の刺激の過剰ということが原因だろうと思います。それから三番目には、それに伴いまして青少年の不良化する環境が、営業の自由、言論の自由という憲法の自由を乱用して青少年を悪に持っていく大きい要素であろうかと思います。最後におとなが悪い。いわゆる暴力組織、暴力団、そういった組織が相当多くありまして、そういった面で不良化という誘因になっておることもいなめない事実でありまして、そういった問題は一警察の問題のみならず、政治全般の問題である。かように考えております。
  215. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総理府総務長官、どうですか。
  216. 野田武夫

    野田政府委員 理由につきましては、ただいま自治大臣から大体お答えいたしましたので尽きておりますが、いま申しましたとおり、家庭教育、社会環境と申しますか、それからいまお話のありました出版とか映画とかテレビとかのマスコミ関係、並びに従来と違って特に一つあげられるのは、青少年のからだの発達と申しますか、これが非常にからだと精神的な不均衡な点に、教育なんかの目をつけるところがあるのじゃないか。その他申し上げなくても、すでにたくさんの理由は十分もう御存じだと思います。  それからまた、一面、社会還境のうちで、いわゆる成年も相当姿勢を正さなければならない点もある。これはどれが理由の一番基本か、まだまだあげましたならば相当いろいろ出てくると思いますが、いま自治大臣から申し上げましたとおり、大体大要は同じでございます。
  217. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部大臣からもその原因について伺いたいのです。
  218. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 自治大臣並びに総務長官お答えになりましたと大体同様の考え方をいたしております。
  219. 山中吾郎

    山中(吾)委員 常識的におのおのお考えになっておられるようであるが、原因についてもう少し見きわめて対策をお立てにならないと、どうにもならないと私は思うので参考にお聞きしたわけです。それはそれとして、家庭がうまくいっていない、親が自信を喪失したとか、教師が怠慢であるとか、あるいは社会環境がどうだという常識的なものが、検察庁の資料にしても、青少年協議会の資料にしても、どこの資料にしても書いてございます。しかし、そういう考え方だけからはどうにもならないのじゃないか。もちろん、どこの時代、どこの国においても、病理現象として何%かの非行少年は出る。これはどうにもならない問題でありますけれども、世相を反映してそれ以外の青少年の問題が出ると思うのです。その場合、私はあらゆるケースをずっと見てみますと、劣等感というものを、日本のいろいろな社会の仕組みの中で持たしめるというところがあって、そういう問題が非行に走らせておるということに、一番具体的には検討すべき問題があると思うので、日本のいろいろな社会の仕組みの中に、文教政策その他の中でも劣等感を解消する政策というものを総合的に盛っていかなければ、この非行少年その他日本人全体の体質改善ができないのではないかというふうに私は思うのであります。この点について、どうして政府がそういう方面に着眼を持たないのか、わりあいに厚生省関係の白書その他を見ますと、そういう点についても一応考えておる節はございますけれども、案外文部省のほうにはそういうことについての感覚が少ないのじゃないかと私は思うのです。学校の小中学校の場合には非行のいろいろ刺激はありますけれども、いわゆる学業の劣等感というものがほとんど多いというふうなことが、家庭裁判所あたりの実際の事例を担当しておる人たちの共通したものである。そこでそういう立場について文教政策その他の政策について私はお聞きいたしたいと思うのですが、現在高等学校の入学試験並びに三年後には大学がまた大へんな問題になる。そういうときに文部省のほうにおいてはテストが非常に好きで、テストによって全体の学業を見ると言っておりますけれども日本の伝統的な優越感と劣等感が重なり合うような日本人の考え方を助長するような方向に、この政策が進められておるのではないか。そういう点をもっと掘り下げて検討する問題があると思うのですが、高等学校の入学問題についても、わざわざ昨年から、ある高等学校の定員に希望者が満たない場合でも試験をするという制度を出された。こういうふうに学業の劣等感をつくっていく政策だけがむしろ進められておるように思うのですが、この点はいかがですか。文部大臣に聞きたいと思うのです。
  220. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 青少年の問題につきまして、先ほど自治大臣、総務長官と同じような考え方だということを私申し上げました。この問題は、大きく言えば先ほど申し上げたとおりで、いろいろな理由があると思うのですが、こさいに考えますれば、それぞれの青少年自身についていろいろな原因が私はあると思うのであります。したがって、それに対応して、何と申しますか、一種のケース・ワークというふうなものが行なわれ、個別指導というものが行なわれなければならないと考えておる次第でありますが、いまの青少年の非行化と言いますか、それの原因の中に、いわゆる劣等感というものがかなり作用してはいないか、私はそういうこともあろうかと思います。そういうことのないように育てていかなければならないものでありまして、これにつきましては、文部省の関係としましてはやはり学校教育、家庭教育、あるいは社会教育を通じまして、そのようなことのないように、それぞれ関係の向きがやっていく。こういうふうにやっていかなければならぬと思うのでありますが、お尋ねの高等学校の入学試験の問題でありますが、高等学校の入学試験につきまして、山中さんすでに御指摘になりましたように、昨年入学試験を行なうようにという通知を出しております。この趣旨は、御承知のように、現在全国の高等学校の入学者の選抜につきましては、大体ほとんど全部と申し上げてよろしいと思うのでありますが、学力検査を含む入学者選抜を行なっておるわけであります。この実態の上に立ちまして、ただいま申し上げましたような省令の改正を行ない、また通知もいたしておるわけでありますが、その趣旨は、高等学校は義務教育と大学教育との間にはさまれた年齢層を対象にしております。この高等学校を卒業した人は、大学に進む人もおりますし、それからまたすぐに社会に出て産業経済界に活動していく人たちもおるわけであります。大学にいたしましても、また産業経済界にいたしましても、相当な水準を持った人を要請いたしておるわけであります。したがって、これに対応するように現在の高等学校の教育内容というものが定められておると思うのであります。この現在定めております高等学校教育を、学校に入りましてこれに耐えて勉強することができる人を入れなければなりません。これをやるだけの力のない人が入りましても、学校も困りましょうし、御本人も困る問題でありまして、このような人たちに対しましては、やはりその人相応の教養の道を考えていかなければならないのではないかと思うのであります。現実から申しますと、山中さんよく御承知のように、昨年の四月の実績から見ましても、高等学校を志望する者のほとんど全部に近い者がどこかの高等学校教育を受けておるというふうな状況でございますが、たてまえといたしましては、やはりできるだけ多くの人に、教育の機会均等の精神にのっとりまして、教育を受ける機会を与えたい。この努力をなすことは当然でございますが、たてまえとしましては、やはりある程度勉強ができる能力を持った人を入れるということが必要ではないかと思いますので、そのような心持ちを持ちまして省令を改正し、また通達をいたしたわけでありまして、特に狭い門にするというような心持ちでいたしておるわけではございませんけれども、ある程度の高等学校の教育水準というものは維持しなけりゃならぬだろう、このような考え方でやったわけでございますので、これはひとつ御了承いただきたいと思うのであります。それに関連いたしまして、いろいろ劣等感を生ずるというふうなことがもしありとしますならば、まことに残念なことであります。これについては、家庭なり学校なりで、やはり本人にもよく理解させ、指導をするということも必要ではないかと私は考えます。
  221. 山中吾郎

    山中(吾)委員 お答えよくわかりましたが、そうすると、入学試験でなくて高等学校に入学することができる能力を認定するというなら、資格試験にされて、これだけの勉強ができておるならばどこにでもはいれるんだという試験に全部されることは、私は劣等感をつくることにならぬと思うのです。ところが、同じ競争試験ということでしていけば、そういう青少年の学業劣等感をつくる日本の伝統的な政策が助長されるだけだと思うのです。三年後に今度はこの高校急増で飛び出て大学に入る学生が年々五十万ずつぐらい、もっとふえるのでしたか、ふえるので、大学入学難でまた社会問題が出ることが明らかなんであるが、その場合についても、文部省に高等教育研究会とかつくられてその対策にいま苦心されておられるというのは、三年後の問題に対する対処として、文部省としては珍しくどろなわ式でなく苦心をされておるということには敬意を表しますけれども、同じように大学の試験を競争試験にして有名校にざっと押し寄せていく、そういうふうな関係で優越感と劣等感をつくる制度を再吟味しない限りにおいては、この問題は解決しない。だからもっと入学試験の性格そのものを変えて、これは大学に入学する能力があるという認定をすれば、資格試験として、はいれない場合は一年でも二年でも猶予して、三年後でもはいれるのだ、進学できる試験という試験ならば、努力すれば、次に資格を取れば、あとアルバイトで三年つとめても、三年後に学資が積み重なったならば入学できるという、そこまでいけば劣等感はつくらないと私は思う。全部競争試験だ、そして試験だ、試験だというふうな政策を文部省がおとりになっておるのは、青少年不良化を助長する政策になる。人間尊重の精神を特にうたっておられるのですから、道徳教育を——文章は非常にりっぱだと思う。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕 ところが、政策は逆になっている。そしてすぐ青少年不良化の問題が出たときは、道徳教育を強調して愛国心教育を持ってこられるが、愛国心教育というのは、一方に優越感をつくる間違いの愛国心教育になって、同時に裏には劣等感をつくる。だから、この問題を吟味をしない限りについては、常識的にすぐ道徳教育に飛び込んだり、愛国心を強調したり、教育基本法は日本的性格がないから変えるとか、そういう常識的な素朴な考え方に、日本の文部行政がすぐに飛びついてはいかぬのじゃないか。もっと具体的な政策から吟味すべきだと思うのです。池田総理大臣が大国意識を強調されるのは、大国だというのは、私はやはり優越感と劣等感の重なり合った日本人の共通した弊害を持っていると思うのです。東南アジアに行けば大国意識を感じてくる。アメリカへ行けば必要以上に劣等感を持って、外交の自主性をなくしてしまう。だから人づくりの人間像は池田さんのようにと私は言えない。ああいうふうな意識を持たないところに、いわゆる人間尊重の精神の中に新しい憲法と基本法に基づいた新しい人間像を考えるべきだ。まことに私は遺憾に思う。大野伴睦氏が韓国の大統領に対しても、何か親子関係のようだと言って、外交上何だかんだと言われておる。どこかに優越感と劣等感の重なり合った日本人の人間的な欠点がある。そういうことをもっと掘り下げて、この問題を真剣に論議をしていかなければ、すぐ党派性を持って道徳教育だ、愛国心だ何だというふうなことでは、私は黙っておれない。その点について文部大臣のもう少し掘り下げた見解を聞きたいと思うのです。
  222. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの山中さんのお話でございますが、どうも池田総理の大国意識でありますとか、あるいは大野さんのお話でありますとか、あるいは愛国心でありますとか、あるいは道徳教育でありますとか、この御議論は、よくお話を伺いませんというと、うけがいかなるものがあるような気がするのであります。いずれその機会もあろうかと思うのであります。  入学試験の問題ということについてのお尋ねに対しましてお答えを申し上げたいと存じます。私ども、何もいまやっております入学試験の制度が最善のものと申しますか、完璧なものというふうには考えておりません。ただ現実は入学試験をやらざるを得ないような状態があるということ、また先ほど高等学校の資格試験で申しましたように、学校の教育の必要からいたしまして、ある程度の学力を持った人に入ってもらうようにするためには、何らかの方法をとらなければならぬということになるわけであります。いまお話しになりましたお考え一つのお考えであろうかと思いますけれども、そのテストを受けた結果というものをもって一種の資格を与える。資格を与えたあとが一体どうなるのかというふうな問題もあろうかと思います。現在の、いいことか悪いことかしばらくおきまして、現実問題といたしまして、資格を与えられる人が指定する学校にみんな行くというふうなたてまえならこれは別でありますけれども、やはり東京の人は東京の学校に行きたい、京都の人は京都の学校に行きたいという人もおりましょうし、京都の人が東京の学校に行きたいという人も出てくるわけであります。そういうふうないろいろな関係が入り組んでまいりますので、いまお話しになりましたようなお考え方も、これは実施に移すということになれば、お互いになお検討してみる必要があろうかと思うのであります。いずれにしましても、私は現在の苛烈ないわゆる入学難という問題につきましては、何とか改善する方法を考えなければならぬということは申すまでもないことであります。ほんとうに名案というものが生まれてくれば、これを採用するに決してやぶさかじゃない。いまのような状態をそのまま続けていっていいというふうな考え方もいたしておりません。文部省としましても、その意味におきまして、入学試験制度の改善ということについては、いろいろ検討もいたしておるところでございますけれども、なかなか名案が生まれてこないということが文部当局の非常に大きな悩みでございますが、今後ともに十分ひとつ研究を進めてまいりたいと思います。
  223. 山中吾郎

    山中(吾)委員 三年後に出てくる大学の入学難を含んでの御答弁でありましたが、この問題はきっと名案が出ないと思うのです。大学は教授もいま速成教育はできないし、拡大するというふうな性格のものでもないし、だから入学試験そのものを資格試験というふうに転換せしめる以外におそらく解決はないんじゃないか。ことし受けた者は、入学試験じゃなくて大学にはいれるという資格を与えておけば、ことしはいる者もあり、一年延ばして、あるいは二年延ばしてもはいれるという希望を持っていればこれは不良化しない。浪人そして予備校というような、一体学校教育のどこにあるかわからぬようなものが、変態的な学校が存在するというそういう社会も出ない。あるいは高等学校三年ならば、予備校に入って親が非常な負担を受けるぐらいならば、高等学校の別科をつくって、一年ぐらいはその中で高等学校が責任を持ってさらに力をつけてやるという制度とか、もっと角度を変えた検討をされない限りは、名案は出ないと思うのです。根本的に日本のものの考え方の欠点を掘り下げた上で御検討願いたい。これは時間がございませんので、文教委員会でまた掘り下げたいと思うのです。  同じ角度で、私は劣等感解消政策という立場で青少年問題を統一して対策を立てなければならぬと思うのでお聞きしますが、成人式の関係はどこのなにか知りませんけれども、いまの成人式は、女性の場合には大体十万ぐらいかかるような着物を着て、そしてお互いにその華美を競うというような式になっておる。これは何の意味もないので、一方に十四歳を立春式として、どこか民間のものが発意をしてやろうとしておりますが、ああいうところに私は一つの啓蒙的、教育的な意味があると思うのですが、成人式はやはり劣等感と優越感をつくる機会にしかなっていない。こういう問題も私はやめて、むしろ十四歳を機会に、これから責任と自由を立てていく。刑法では十四歳になれば刑事責任が出るわけですから、その辺に変えなければ、こういう青少年問題の対策にはならない。この主管は公安委員会ですか、文部大臣、社会教育ですか、あるいは総理府の長官ですが、そういうことを総合的に考えないと、青少年局などをつくっても、連絡調整だけして何も名案が出ないと思うのですが、御意見をお伺いしておきたい。何となれば、日本の法律でほとんど守れない、守れないことが常識になっている法律が三つあると思うのです。未成年飲酒禁止法と未成年喫煙禁止法と選挙法だと思うのですね。守らないことが当然、まもったら非常識になる。そういうふうなものをただ——公安委員会の資料を見ますと、未成年禁酒法違反者、禁煙法違反者の統計だけが出ておる。非常に少ない。そうすると、これは違反者が少ないから守っておるというのではなくて、全部飲んでおるのですね。そういう法律問題も、守られないような法律なら再検討するというふうなことも含んで解決すべき問題があるので申し上げておるのですが、野田長官のほうからひとつその辺の見解を聞いておきたいと思います。
  224. 野田武夫

    野田政府委員 成人式の内容についての御批判でございましたが、これは、別にきれいな着物を着てこいという指導とか、服装に対するというようなことは、実は私のほうでは一向その点まで何も関与いたしておりません。ただ運営について、いろいろ役所や学校から御相談があったことはあったようでございますが、いまの田中さんのお示しの点は全く同感の点がございます。また十四歳で昔男の子は元服というようなことは先般の中央青少年問題協議会で委員の方からそういうお示しがあって、ひとつ考えないかという発言がございました。それについても、今後議題としてひとつ取り扱ってみたいということになっております。その他まだいまのところ何も特別きまっておりませんから、お答えいたしません。
  225. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この問題は、時間がないのでまた次の機会にいたしますが、農林大臣にわざわざ来てもらっておるので、一言だけひとつ御答弁願っておきたいと思います。  農業改善事業といういろいろ政策を出しておるけれども、農業教育という教育政策とはバランスがとれていないということが私はいつも問題になると思うので、この農民の教育政策と農政の問題というものを一貫をした問題として、文部省と私は連絡を緊密にしてもらいたいと思うのですが、現代の農業改善事業なんというものを進めるについては、農民にとっては相当の能力が必要である。少なくとも農業高等学校卒業程度のものでないと私は消化能力は出ないと思うのです。ところが、現代の農業高等学校の卒業生はほとんど農業経営者にならない。三割五分ぐらいである。全部ほかの仕事についておるというふうな現実であるので、実際に農業経営者というものは、これこそ私は農業高等学校だけは全入制度にすべきだと思うのですが、文部省のほうには、三十九年度農業自営者の農業高等学校五カ所ですか、設置されたということで、私は文部省にも大蔵省にも敬意を表したいと思うのですけれども、これを全面的に——あるいは池田総理大臣は、農業の革命的何とか言っておるならば、むしろ教育を革命的に変えなければならぬじゃないか、そういうふうに思うのです。ことに実業界から要求される日の当たる工業教育については国立高専をつくっておる。ほんとうは貧乏でどうにもならぬのは国が責任を持って、国立農専とか国立水産専門をつくって、そうしてそのものが相当の知的水準を持って、現代の農業水産の近代化を経営者がしょって立てるような教育制度を考えるべきだ。工業高等専門学校などはつくる必要はない。これは大学で基礎教育をすれば、あとは企業が企業の予算において直接企業に必要な技術を与えるべきである。それを国の税金で、文教行政の中でそういうものに金を出すのはこれも二重課税である。企業の予算でやるべき問題まで国が文教政策で負担をすべきものでなくて、基礎教育をして、あと五カ月、六カ月その企業に必要なものは企業の予算ですべきだと思う。そういうものだけを国の費用で使って、水産、農業のように貧乏でどうにもならぬものを国が取り上げない。国立商工専などは次にして、国立農専、国立水産専をつくるならまだわかる。そういうところに文教政策がいろいろの企業その他から押されて、企業に従属する教育にならないで、未来に応用能力を持った、創造能力を持った人間をつくるのが文教政策の限界である、私はこういう持論を持っておるわけなんですが、そういう意味において農業政策についても、補助金を多く出すとか、融資を多くしても、それを完全に消化するよう農民の教育水準を高める考慮がなければ、税金のロスになるのだということを私は思うわけなんで、そういう意味において私は文部省と農林大臣のほうには、農業基本法ができたのでありまして、国が教育、研究に責任を持つ条文もあるのだから、具体的にそういう機構を持って推進していただいて、その両者によって大蔵省に対しても農業教育の革命的な変革をするくらいななにを持ってもらいたい。具体的にそういう問題を含んで、当座の問題として農民の再教育……
  226. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 山中吾郎君に申し上げますが、申し合わせの時間はすでに経過しております。だから、演説はあと回しにして、簡潔にお願いして、結論を頼みます。
  227. 山中吾郎

    山中(吾)委員 再教育をする機会をもっと、文部省の関係における基礎教育と農民の再教育機関の有機的連関を考えていただきたい。演説をするつもりじゃないのですが、農林大臣についても、そういう観点からこの機会に認識をしておいてもらわないと、機会がないので申し上げておるのですが、時間がないようでありますから、その点私の希望を含んで農林大臣の御答弁をいただいて、私の質問は終わりたいと思います。
  228. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御説、御趣旨、全く同感でございます。ただ、それについての具体的な方法として農業高等専門学校をつくったらどうか、こういうことでございますが、これは検討してみたいと思います。水産のほうには国立の水産専門学校のようなものがございます。下関にあります。  それから、いまの先決問題としては、文部省ともよく協議いたしまして、いまお話しのように高等学校五校を置くことにいたしまして、圃場を持たせるとか、機械を設備するとかして、ほんとうに後継者づくりをしていきたい、こういう考えで進めておりますから、これは、ぜひ私は各県に一つぐらいずつ農業高等学校を設けていくような方向に持っていきたい、こういうふうに考えております。御趣旨等につきましては十分頭に入れて、農業教育の重大性というのは私も考えてないわけではないのでございますが、一そう深く考えて、その方面の措置もとりたいと思います。
  229. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 これにて山中吾郎君の質疑は終わりました。  次に、岡本隆一君。
  230. 岡本隆一

    岡本委員 きょうは建設関係の諸問題について、日ごろ建設委員会に来ていただけない関係閣僚にいろいろの問題についてお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  最初に住宅問題からお伺いいたそうと思います。先般委員会のほうへ公営住宅三カ年計画を御提案になりましたが、その提案理由説明の中に、すべての世帯が安正した住生活を営むことができるように一世帯一住宅を実現するのだというふうな表現がございます。すべての世帯が安定した住生活というのは、具体的に申しますと一世帯一住宅が実現すれば住生活が安定するという意味なのか、あるいはまたもう少し別な意味が含まれているのか、そういう問題をまず建設大臣からお伺いいたしたいと思います。
  231. 河野密

    河野国務大臣 岡本さんの御質問のように質問をされますと、一世帯一住宅といってもどんな住宅でもいいのかということになってくると、どうも話がめんどうになってきまして、そこらのところはほどほどのところでひとつ御了承願います。これは、社会党さんのほうでも一世帯一住宅というスローガンで選挙にお臨みになりましたように、私のほうもそういうことでやったのでございますから、そこの一世帯とは、一住宅とはということになりますと、だいぶ話がむずかしくなります。あなたはその道の大家で、専門家でいらっしゃられますので……。大体私たちもできるだけ不燃性で、なるべく坪数も一世帯当たり広いやつでいこうという考えは持っておりますけれども、数も多いことでございますし、資金もかかることでございますから、なかなか思うにまかせませんが、理想とするところは、あくまでも不燃性で、一戸当たり一世帯当たりの坪数もなるべく広くして、家賃の低いところでいくという期待は持っておりますけれども、そこにいくにはなかなか困難と思いますので、一応めどとして一世帯一住宅ということを考えておるわけであります。
  232. 岡本隆一

    岡本委員 そういうことでありますと、われわれの理解に近いのでございますけれども、とにかく住生活の安定を目標として施策を急いではおるが、当面一世帯一住宅を実現したい、こういうふうな意味のように御答弁を承っておきます。  ところで、現在住宅難世帯は二百万世帯といわれております。昭和三十五年の調査によりますと、九畳未満の住宅に住んでおる者が三百二十万、専用便所のない住宅というのが百六十万、専用の炊事場のない住宅、これが百十万といわれております。こういうふうな専用便所のないもの、あるいはまた専用炊事場のないもの、こういうものは当然住宅難世帯の中に加えなければならないと思うのです。そこでいま住宅難世帯を所得階層別に調べてみますと、これは総理府の統計に基づいたものでございますが、一万二千円以下の収入の人たちが住宅難世帯の中の一一%を占めておる。また二万円以下一万二千円以上の人が三八%、合わせますと四九・四%が二万円以下の収入の人たちです。これは第二種の公営住宅の入居基準に入っているわけでございます。それから第一種の入居基準に入っている人は三四・四%、つまり二万円から三万六千円の間の人たちが三四・四%、合わせますと約八五%に近い人たち——住宅難世帯の中に占めるところの八五%に近い人たちが公営住宅に入る資格を持っておる。ところが、今度政府のほうで出してこられましたところの公営住宅三カ年計画、これは二十万戸、第一種を八方、第二種を十二万、合わせて二十万戸です。そうすると二百万あるいはそれ以上をこえるわけであります。九畳未満の人というふうな定義を当てはめていきますと、三百二十万ある。三百万住宅難世帯があって、その中の八五%と申しますと、二百万をこえます。その二百万をこえる住宅難世帯に対しまして、公営住宅わずかに二十万というふうなことになっておるのでございますが、これではあまり二階から目薬のような感じがするのでございますが、建設大臣のお考えを承りたい思うのです。
  233. 河野密

    河野国務大臣 お示しのような数字になっておりまして、何とかこれを解決しなきゃならぬというように鋭意努力いたしておるのでございますが、その意味におきまして、私といたしましては、大蔵大臣、自治大臣等のせっかく御理解ある御協力も得て、努力しておるわけであります。  具体的に申し上げますと、なるべく民間におきまして、会社の社宅等をひとつ十分活発につくっていただきまして、そして、これら低所得者の諸君の期待にこたえるようにしてもらいたい。従来でございましたならば、金融公庫からの貸付金にいたしましても、百億以上の会社に融資いたしましたものが御承知のとおり非常に多かったのでございますが、私はこれらを中小企業の方面に極力回すことにいたしまして、大資本の会社におきましては、自己資金というものにおいてまかなうようにしてもらうことを第一に奨励をし、さらに第二におきましては、これは大蔵大臣のほうから御説明していただいたらどうかと思いますが、今後、なるべく民間の会社で税制その他の面においてこれを誘掖して、そして民間住宅建設をなるべく刺激をする。それから高層建築の方面において、不動産取得税を下げるとか、固定資産税を下げるとかいうようなこと等についても御研究願って、この方面の民間住宅建設をひとつ盛んにするようにしていただく。それで官民一致して、政府施策は二十万戸にいたしましても、民間のほうにおきましても少なくとも二十万以上三十万、合わせて五十万以上のものを意図いたしまして、そしてこれらにこたえていくということにしていきたいと思っておるわけであります。
  234. 岡本隆一

    岡本委員 七カ年計画七百八十万戸という数字を出しておられますが、その七カ年計画七百八十万戸のうち、公営住宅はどれだけお建てになるおつもりですか。
  235. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 七カ年の公営住宅の正確な数字はまだきめておりませんけれども、初期の三カ年で二十万戸、あと残りました四年間におきましては、三十万戸ないし四十万戸程度を建てようと考えております。
  236. 岡本隆一

    岡本委員 公営住宅当面二十万戸、そしてあとの後期に三十万戸ということでございますが、それでは公庫住宅、それから公団住宅、それから給与住宅、そういうふうなものはどれくらい予想しておられますか。それから一種二種の区別も言ってください。
  237. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 七カ年計画におきましては、政府施策住宅を三百万戸以上と考えておりまして、そのうち、公営住宅につきましていま申し上げました数字考えておりますが、あとの分につきましては、あるいは住宅金融公庫、住宅公団、あるいは厚生年金の還元住宅等、いろいろ項目がございますので、具体的な区別はいたしておりません。全体として三百万戸以上考えております。  それから一種と二種の区別でございますが、現在六割を二種にいたしておりまして、大体この割合で七カ年はいって妥当ではないかと考えております。
  238. 岡本隆一

    岡本委員 そうすると、七百八十万戸のうち五十万戸は公営住宅である、そういうことですね。それから政府施策住宅は何ぼですか。
  239. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 全体を合わせまして、三百万戸以上を考えております。
  240. 岡本隆一

    岡本委員 大体住宅難世帯の入り掛る住宅というのは、やはり低家賃住宅でなければならないです。低家賃住宅というものは、公営住宅とそれから給与住宅であります。改良住宅はほんのわずかです。ところで、どの給与住宅それから公営住宅とをはずしたところのものですね、その一部分の中に、低所得者の入っていく民間自力があると思うのです。その低所得者の入っていくところの民間建設というものを、それではどれくらい見込んでおられますか。
  241. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 民間作宅は約四百八十万戸程度を予定しておりますが、その中は、民間の実態によりましてどの程度が低家賃であり、あるいはどの程度自分の持ち家かということはわかりませんが、かなりの部分が貸し家としても建設されるものと考えております。
  242. 岡本隆一

    岡本委員 民間自力建設が四百八十万戸、そして今日大体その半数が貸し家というふうに建設の状況を聞いておりますが、これから後もそういうふうな見込みを持っていられるのですか。
  243. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 民間建設の中で、最近は貸し家が増加する傾向にありますので、今後の七カ年の傾向でございますから確かに申せませんけれども、相当部分が貸し家としても提供できるだろうと考えております。
  244. 岡本隆一

    岡本委員 昭和三十六年の貸し家の建築の状況を承りますと、民間の状態は、東京では大体五〇%、大阪では六六%が貸し家の建設であったということです。その貸し家建築の中で、今度は三十七年の実績を建設省から出していただいたのですが、貸し家建設のうち九五%が木造、だからほとんど全部が木造といってもいいのです。しかもその木造の中で、七四%がアパートづくりであるということです。これは私は、いまの日本の住宅建設の非常に憂うべき状態であると思います。住宅は建っていく。しかしながら、その半ば以上は個人が建てないで、貸し家に投資する人が出てきた。投資する人が出てきたのはけっこうです。しかしながら、その投資されていくところの建物が、アパートづくりの、われわれがはたから見ていても、見るからに何か非常な危険を感じます。また事実、あのアパートづくりの中で、火災のときに逃げおくれて老人が死んだり子供が死んだり、いろいろ悲惨な事実が出ております。もしああいうものがどんどん建ち並んでいって、その上に今度震災でも起こるというふうなことがあったら、その災害というものはもう想像に絶するものがあると思うのです。だから、日本の住宅建設というものの傾向というものを、これはここで何とか方向転換をやっていかないと、先ほど一世帯一住宅ということを申しておられますけれども、しかしながら、その一世帯一住宅というものが、どんどんどんどんアパートづくりの中に入っていって、それでもって住宅難世帯の再生産をやっておる。これが今日の住宅建設の実情でございますが、これはこのままでいいのか、まず建設大臣からお考えを承りたいと思います。
  245. 河野密

    河野国務大臣 お答えいたしますが、先ほども申し上げましたとおりに、なるべく不燃性のものにしていきたい、それを奨励していきたいと考えておりますけれども、何ぶん単価の関係もございまして、十分というわけにはいきかねますけれども、役所として奨励するのはなるべくそういう方向にいくように鋭意努力いたしておることは、御承知のとおりでございます。
  246. 岡本隆一

    岡本委員 お答えが少し的が違うようですが、私が申しておりますのは、公営住宅のことではないのです。民間自力建設のことを申しておるのです。政府は非常に多くのものを、民間自力建設に期待しておられます。大体住宅計画の中で六割を民間自力建設に政府期待しておられる。さらにまた、その民間自力建設の中の半ば以上が貸し家である。相当数の貸し家が建築されている。その貸し家のほとんどがアパートづくりだ。貸し家建設の七四%ですから、四分の三です。四分の三近くのものがアパートづくりだということです。だから、言いかえますなれば、ああいう建物は、数年たつともう古くなって、がたがたになってきます。スラムです。スラムづくりをいまどんどんしているのです。だから、こういうふうなスラムづくりというものは、何らかの形で政府のほうで考えて手を打っていかなければ、どんどん危険性宅がふえる、こういうことになるわけです。それをどういうふうにお考えになりますかと聞いている。
  247. 河野密

    河野国務大臣 でございますから、たとえば税制の上におきまして、高層のアパートについては、大蔵大臣が言うておりますように、特別に税の面でこれを奨励するようにしていこう。とりわけ宅地が最近のように高うございますので、勢い住宅がアパートづくりになってまいるのでございますから、そういう面についても、特殊の不動産取得税とか固定資産税とか、もしくは会社等が寮を建てる場合に、これを会社経理の面において何らか税制の上で考える手はないだろうかというような点を、せっかく御検討を願って奨励してまいりたい、こう考えておるのであります。
  248. 岡本隆一

    岡本委員 それでは大蔵大臣にお伺いをしますが、いまどんどんつくられていくアパートづくり、しかもそれは大体六畳プラス三畳程度、それがまあ上等のほうです。そういうふうなアパートがどんどんできていく。それに対して税制的な優遇、あるいはその他どのような財政的な援助があるのか知りませんが、そういうふうなものを期待して、建設大臣はもっと住宅の質の向上をはかろう、こういうふうにおっしゃっておられますが、大蔵大臣は、それではどういうふうな協力をされますか。
  249. 田中角榮

    田中国務大臣 今年度五十四万戸の民間住宅建設を予想いたしておるわけでありますが、確かにお説のように、絶対量が少ないというので、その過半がアパートになっておるという事実は承知いたしております。こういう考え方自体をどこかで是正をしなければならなかったわけでありますが、戦後住宅が非常に払底をしておりましたので、とにかく安かろう悪かろう、量が先だということでまいったわけでありますけれども、公営住宅につきましては、だんだんと不燃高層率を上げてきておるわけであります。同時に、民間の住宅に対してもそのような政策を進めなければならないということは、御説のとおりであります。西ドイツも同じように爆撃を受けたのですが、量のことを言わないで、やはり将来の質のことを考えながらやったところにハンブルグの建設があったわけでありますから、そういう意味では、日本の住宅政策に対しては過去においてまだ改むべきものはあった、こういう考えであります。でありますから、今年度は、国税におきましても、地方税におきましても、将来の住宅政策を考えまして、地価問題とも合わせて解決をするために、高層不燃化、しかも十二坪、十三坪というよりも、二十坪、二十五坪というように上げて、三十年、五十年の将来のためにも、国の財産として残るような措置をいたしておるわけであります。でありますから、三階と四階に対しては五カ年間固定資産税二分の一、五階以上に対しては十カ年間二分の一、この政策まだまだ——イタリアなどは二十五年間無税という方法もやって、現在の労務者住宅の高層化をはかっておるのでありますから、これらの例にも徴しながら、より積極的な税制面の施策も行なうべきだというふうに考えます。
  250. 岡本隆一

    岡本委員 西ドイツのお話が出ましたが、私も、西ドイツの住宅政策と日本のいままでの住宅政策というものを比べて、あまりにもひどい開きがあるのに驚いておるわけです。大体戦後の日本政府の住宅投資というものは、あまりにも貧弱であった。最近ある雑誌を読んでおりましたら、イギリスと日本の行政投資と住宅投資との対比を出しております。そうしますと、イギリスのほうでは、昭和三十五年以来三十八年まで、この四年間、大体引き続いて行政投資の中の三〇%を政府資金で住宅に投資しているのです。ところが、比較的住宅投資が高まってきた三十五年以降四カ年間、日本の行政投資と住宅投資とを比較してみますと、それが五%を切れているのです。イギリスは日本のように戦災を受けておりません。ところどころ爆撃は受けましても、あまり大きな住宅の損失はなかったのです。しかも、あちらの家というものはみな不燃性のコンクリートの建物です。いまでは逆に、住んでいる人たちが、古い、煙突の何本も立ったアパートに住んで、それを中央にまとめた暖房装置に切りかえるのにかえって不便で困っておるというふうな実情です。百年、二百年前の父祖の代からの住宅に、イギリスの国民は住んでいる。そういうふうな住宅事情が非常にいいイギリスですら、三〇%の住宅投資をしている。ところが、住宅が木造でどんどん損耗していく、三十年か五十年すれば建てかえなければならぬ、しかも戦災で住居をうんと焼かれてしまった、そういうふうな日本での住宅投資、しかも、けさも建設委員会河野建設大臣からいろいろ御意見を承っておったのですが、今日の住宅難事情は、単に戦後の問題だけではない。いま住宅問題は、経済成長に対応した人口の移動というものを考えて、そういう見地からの住宅問題ということを考えなければならぬというふうな御意向が出ておりました。確かにそれも一つの大きな理由だと思うのです。そうしますと、戦後処理に加えて、さらにまたそのような経済の激動期という時期において、日本政府の住宅投資がわずかに五%を切っておるというふうなことは、あまりにもこれは差があり過ぎると思うのです。イギリス政府ができる努力、またドイツも同じようにしている大きな努力、イタリアもしておりますが、そういうような国々でできる努力政府がやっておる努力を、どうして日本でやれないのか。私は大蔵大臣に、その点来年からは飛躍的な住宅投資をひとつ考えましょうと、こういうような御意見をきょうは出していただきたいと思うのですが、 いかがでしょうか。
  251. 田中角榮

    田中国務大臣 住宅問題に対しては、いつもいまあなたが言われたような問題と対比されるわけであります。このイギリスが非常に大きいというのは、イギリスは、御承知のとおり、戦後ニュータウン法をつくりまして、都市の疎開ということで、国の財政力の主力を注いで住宅対策をやっておるわけであります。でありますから、これは新しい政策、いわゆるロンドンの八百五十万戸のうち、二百五十万戸を疎開させようというような大きな政策がありますので、その数字が直ちに住宅だけのものであるというふうには蓄えないと思いますが、しかし、イタリアや西ドイツが、戦後同じような状態でありながら、不燃化の高層のりっぱな建物をつくったということに対しては、日本も過去を振り返りながらこれからの財政投資の面でもどう考えなければならぬかということは、これは当然考えなければならぬことだと思います。ただ、イタリアとか西ドイツでは、非常に強い法律がありまして、戦前からもう三十年くらい、一般の住宅は四階、十一メートルというような規格をつくっておるわけであります。でありますから、ファーニチュアでも、それからサッシでも、あらゆるものが規格製品で間に合うということで、非常に建築単価も安いということもあります。そういう意味で、日本においては、自分が個人的に創意くふうによっていろいろな形のものを、三角のものや六角のものをつくり、このころは特にそうでありますが、設計にだけとらわれておって、実際的な改造等に支障のある戦後建築が非常に多いわけであります。イタリア等は、私も今度の税制改正で十分勉強したのですが、非常に長いこと、生命保険会社とか損保とか、そういうものに対して国有地を無償で提供するとか、二十五年間も税制上無税にするとか、そういう抜本的な施策を行なっておるわけであります。ところが日本は、公営住宅法をつくるときにおいても、議員提案をもってつくらなければならなかった。こういうような住宅に対しては民間でつくるべきだという長い伝統がありまして、公営住宅に対しては、一般の国民の税金を使ってつくるものであるから、これは引揚者とか爆撃後の緊急収容とか、また厚生住宅式なものとか、そういうものに限るべきだという議論が戦後十年ばかり非常に強かったわけであります。学者の間においても、そういう議論があったわけであります。でありますから、民間の住宅施策に対しても、中途はんぱであり、また、公営住宅式なものに対してもいろいろな制約があったというようなことが、今日の住宅政策の現状をつくったのだと思います。私の率直な意見でありますが、こういう問題はやはり割り切って、将来五十年、百年のことを考えながら、住宅の長期政策は立てるべきだということで考えておるわけでありますから、千万戸計画というのは、一時選挙政策じゃないかと言われたものでありますけれども、これにまっこうから取り組んで、年間一〇%ずつの伸びを見て堅実な計画を進めておるのでありますから、今度は量よりも質の問題であらゆる施策をやらなければならぬ。また政府も、財政的にもこれに対処してまいりたい、こう考えます。
  252. 岡本隆一

    岡本委員 そうすると、いまの大蔵大臣の御説明を承りますと、日本の戦後十カ年の考え方は、住宅は自分でつくるべきものだというふうな考え方であった。これは政府自民党の考え方であったかもしれません。しかし、一般国民の方は、そうは考えてはおらなかったのです。やはり住宅投資をうんと政府にやらせて、それでもって公営住宅を建てよという要求が強かった。しかし、とにかくそういう議論は刑としまして、それでは、最近は政府考え方は、やはり住宅というものは自分で建てるべきものだという考え方から、国が責任を負うて国民の住居というものに対して大きくめんどうを見ていくべきだというふうな考え方に転換してきた、こういうふうな御意向ですか。
  253. 田中角榮

    田中国務大臣 もう御承知の御質問でありますから、率直に申し上げますが、やはり住宅は、一般の税金で建てるというものにはおのずから限界があります。住宅というものは、これは当然自力建設を主とするものであることは、将来も変わらないことであります。でありますが、自力建設といった思想しの考え方だけで考えておりますと、いま言うように、安かろう悪かろうということができるのでありますから、今度は、民間の自力建設にゆだぬべきではありますが、実際にはスラム街の解消とか、低家賃住宅とか、国家が当然めんどうを見なければならない、公営住宅でやらなければならない面は、十分拡充をしてまいりますし、また、中堅層以上の入る公団等の住宅に対しましても、質の改良をはかっておりますし、同時に、それより一歩を進めて、大多数の民間建築というものに対しても、税制上の優遇を行なうというような考え方になっておるのでありますから、あなたの今日の御発言などは、こういうことを契機にしまして、やはり過去を振り返りながら将来に向かっての大きな踏み出しをするということで、有意義なことだと思います。また、政府も、そのような考え方で対処しておるのであります。
  254. 岡本隆一

    岡本委員 住宅復興が、日本は非常におくれている。同じように戦災を受けたところの西ドイツで、住宅復興が非常にすばらしい、大体、もう今明年あたりで住宅難がなくなる、こういうようなことをわれわれは聞いておるのでありますけれども、それはやはり戦後の住宅復興というものを国の問題としてとらないで、社会住宅と申しますか、とにかく相当な政府資金の援助をもって住宅復興をやってきた。そしてまた、西ドイツでは、私が聞いている範囲では、民間の貸し家建設にもやはり財政援助政府がしております。こういうふうな非常に粗悪な住宅をどんどん建てさすのなら、いまからでも西ドイツの例にならって、もう数年か十年余りたてばスラムになってしまう、そういうようなところへ投資をさすよりも、それにもう同額程度のものを足せば、かなり質のいいものが建つわけなんです。だから、低家賃住宅政策の一つとして、今日公営住宅を地方公共団体で建てる場合には、あなたのほうで財政援助をしております。それと同じ形の財政援助を、民間でもって建設しようという者に、ある規制の中で——家賃とかその他いろいろ条件があると思うのですが、ある規制の中で、やはりそのスラム化を防ぐために、投資に恒久的効果をもたらすというか、そういうようなことのためにある程度の財政支出というものをされてもよいではないか。また、そうすることによって日本の住宅の質の改善ということをやっていかなければ、今日のひどいスラムの製造というもの、これを放置することは、道義的にも許されないのです。これは、もう建設省でもそういうふうなお考えがあるかないか存じませんけれども、しかしながら、民間の個人の資産に政府が金を出すということ、これはおかしいというような考え方がないでもありません。しかしながら、外国ではやっているのです。日本が急速に住宅事情をよくしようと思えば、そういうような財政投資も私はする必要があるではないか、こういうように思うのですが、大蔵大臣、いかがですか。
  255. 田中角榮

    田中国務大臣 西ドイツが戦後相当急速に復興しまして、いまもう最終段階にあるということは事実であります。これは、どこに一体そういう開きがあったのか。端的に言えば、マーシャルプランによる援助費をもって戦後住宅対策につぎ込んだというのが、西ドイツの例でございますし、日本は、そのころ対日援助の問題に対しては、みな食ってしまった。こういう大きな差があるわけであります。しかし、ほかの国の状況を見ますと、確かに住宅に対しては、限界を設けながらも、相当な施策をやっております。しかし、日本では、やはり住宅は民間で建てるべきものであって、財政資金を出す場合には公営住宅に限るのだという狭義の解釈のほうが民間でも強いようであります。しかし、このころは、各金融機関が、道路と住宅は非常に重要なものである、個人の力だけにまかしておけないという考え方に立って、独自に住宅に対する貸し付けを始めたようであります。前は勧業銀行のような不動産投資銀行がございましたけれども、戦後は全部コマーシャル・バンクになってしまった、不動産銀行というような新しいものがつくられたけれども、これは非常に不動産銀行としては小さいもので、とても民間の住宅資金に流れるものではない。では何でやるのか、こういうことで、いままでは特に不動産業者などは金融の対象にならないということで、甲乙丙というときには丙にもならないというようなことが、今日になったのでしょう。ですから、ここらで金融機関が住宅施策に本腰を入れることは、私は好ましいことだと思いますが、しかし、金融政策上から見ますと、悪かろう安かろうというものに拍車をかけては困るというので、やはり一定の基準というものをつくって、将来の住宅計画の質ということを考えながら、金融指導をすべきだと思います。財政資金というものを出せるようには法律はなっております。耐火建築促進法いうものが、いまから十何年も前に議員提案でつくられた。今日こうなるぞと言いながらその法律はできたのでありますけれども、個人の住宅に財政資金はよろしくない、それよりも減税が先だという議論が制圧をして、今日この法律はほとんど動いていない。年に二億か三億か出しておると思いますけれども、この程度のものである。ですから、議員の中にも、今日を考えながら、将来の住宅政策に財政資金の一部を出してもこれは違反ではない、そううすべきだという考え方もあったわけでありますから、あなたの御発言等が契機になって、住宅政策にほんとうに勇気を持って取り組める、また取り組なければならない時期だろうというふうには考えておるわけであります。
  256. 岡本隆一

    岡本委員 これは個人も法人も同じだと思うのです。私的な企業とか、私的な団体、あるいは個人、そういうふうなものに、政府の資金は現実に出ているわけでしょう。たとえば計画造船の場合ですね。船をつくるのには金を出す。今度は海運業が非常に重要だからというので、利息まで補給しているでしょう。船会社は営利団体ですよ。景気のいいときにはどんどんふところへ利潤を入れるのですよ。景気が悪くなれば、ひとつ利息をお願いします。こういうことになるのです。住宅問題というのは、今日の国民にとって、船会社の海運の問題どころの問題じゃないのですよ。海運以上に住宅の問題のほうが、私は重大だと思うのです。海運業に政府の財政資金が出せて、国民がこれだけ困っておる住宅問題に対して、政府は個人であるとか、あるいは法人へやれぬことはないのです。とにかくそういう私企業に対して財政援助ができないという理由は、どこにありますか。
  257. 田中角榮

    田中国務大臣 出しておらぬわけではないのです。開発銀行を通じまして各私企業に出ておると同じように、住宅公庫を通じて出ておるわけであります。出ておりますけれども、あなたの御発言は、それよりも一歩進めて、財政資金そのものを出したり、もっと住宅建設に対して財政上施策はないか、こういうふうに言われますので、やはり住宅公庫の貸し出し利息を下げたり、または資金量を拡大したり、いままでのようなものではなく、もっと計画的に住宅公庫以外にも不動産金融機関というものが必要でないかということに対しては、検討すべき問題だと思います。
  258. 岡本隆一

    岡本委員 なるほど年金の住宅だとか、あるいはその他の給与住宅には出ております。しかしながら、私が申しておるのは、一方で非常に小さな、ああいう零細な狭小過密住宅が建っていくときに、その資金をもっと有効利用して、恒久的な効果を持たせるような努力政府はすべきだ、だから、今後住宅対策としてはそういう方向考えてもらいたい、こういうことを申しておるのです。これ以上は、時間もないし、議論になりますから、次に進みたいと思います。  その次には、住宅対策の中の一番大きな問題は、土地の問題だと思う。だから、土地の問題について少しお伺いしておきたいと思います。今日、土地の暴騰の原因は幾つかあると思う。たとえば産業と人口が都市に非常に集中してきておるということ、あるいは企業がどんどん工場用地を買い占めておるということ、あるいは公共事業がどんどん土地を必要としておるということ、さらにそれに加えるのに、土地の投機的な買い占めがいま非常に盛んであるということ、だから、私たちは、この土地の問題と取り組むのには——公共事業のために必要なものはどうすることもできません。しかしながら、ほかの三点についてはある程度の規制を加えなければ、この土地の暴騰というものを解決することはできないと思うのですが、まず建設大臣から御意見を承りたいと思いますが、これに対して政府として何か具体的な対策を立てておられますか。
  259. 河野密

    河野国務大臣 お話しになりましたとおりに、原因、事情はいろいろあると思います。しかし、問題は需要供給の関係が一番大きなものではなかろうかと私は思います。需給の関係で需要が多いという見解から、そこにさらに思惑が、仮需要が起こってきて、これがいたずらに刺激して騰貴せしめておる。これはひとり宅地だけでなしに、工場団地の場合にも言われますし、さらにまたオリンピックを目ざして非常に公共投資が時間的に迫られまして、十分に交渉しておりますと間に合わぬというので、土地を比較的割り高な価格で買っておる場合も、例があるようでございます。こういったものが合わさって全国的に土地の値上がりが非常に問題になるようになっておるのでございますが、そこでこれの対策としては、一朝一夕でこれを解決することはとうていできない。土地収用法をもっと簡易にして、完ぺきなものにしたらどうだという御意見もございます。それからそのほかに、公共の用地にする場合には、一般国民諸君の協力をもう少し求めるようにしたらどうだというような御意見もございます。しかし、いずれにしましても、この方策一つで片がつくことはなかなかむずかしい。ことに、土地に一定の価格、これ以上上げさせないというようなことを考えたらどうだと言う人もございますが、これとても、とうていそういうことは不可能でございましょうと私は思います。問題は宅地が一番主になっておりますので、宅地、工場敷地等について、これが供給を増すということに重点を置くべきだ。これを増すにはどうするかといえば、やはり利用の面積、利用のでき得る可能の土地をふやすことであって、交通上、道路とか鉄道とかいうものを必要なところに新たに入れまして、そして土地の利用可能の地域を拡大するということだと思うのでございます。私は、建設大臣として、新たに宅地として利用さるべき可能な地方に新たな道路を開設いたしまして、そして少なくともここ二、三年の間には相当広範囲な宅地もしくは工場としての利用適地を増しまして、そして、これが一般から認識をされるようになり、利用されるようになりますれば、いまの土地の暴騰は一時逆になるのではないか、相当広範囲に利用できる場所があるのでございますから。現に、東京を中心に関東一円のところが、いずれも道路さえ、もしくは電車、鉄道さえ敷設されれば、りっぱに利用できるのでございまして、東京都内におるのも時間的にそう違わないで行かれるんだというようなことが可能になるのでございますから、要は公共投資をすみやかにして、利用できる土地の供給を増大するということで解決いたしたいというのが、私がいま考えておる考え方でございます。
  260. 岡本隆一

    岡本委員 けさの委員会で同じような御意見を承ったのでございますけれども、とにかく道路その他の公共投資をやって、土地を開拓していこう、それでもって供給をうんと増すことによってこの土地問題と取り組んでいこう、こういうふうな御意向でございますけれども、しかしながら、それでは、そんなことが二、三年の間にどうして可能なのか。道路をつくっただけで、それでもってその周辺の土地というものが宅地としてそんなに簡単に提供されるものであるかどうか、私はそのような簡単なわけにはいかないと思います。きのうも新聞を見ておったのですが、そういうふうな形で開拓していこうとされた、たとえば首都圏の中に学園都市をつくったり、あるいはまた工業都市をつくったりというふうなことで、百万都市あるいは三十万都市というふうな計画をされております。しかし、そういう計画を発表されますと、すぐその辺の地価がぱっと上がりまして、学園都市も、地価がはね上がったのと、ブロ−カーの暗躍のために、どうやらもうおじゃんになりそうだというふうな新聞記事が出ております。事実、またいま政策地価ということばが出てまいっております。政府が何かそういうふうなことを発表すると、もうすぐにその地方の地主もそういう気持ちになって、うんと十地がいい値になるんだ、だから、持っていればうんと上がるんだしいうことで、まず第一に売り惜しみをする。売るときには、もう自分の生活の安定というものをまず考えて、相当な高値でないと手放さない。また、その値上がりを予想して、ブローカーが暗躍する、買い占めをする者が出てくるということで、今日、もう土地問題というのは、一切の公共施設に非常に大きな障害になってきておる。いま東京は非常な公害に悩んでおります。交通戦争であるとか、あるいはスモッグであるとか、さまざまな公害に悩んでおる。だから、これを解決するのにも、単に住宅難の問題であるとか交通難の問題だけでなしに、やはり日本国民化活というものの環境を改善するためにも、東京の町を疎開していかなければならぬというのは、大きな命題です。これはひとり東京だけでなしに、大阪も九州もそうだと思うのです。こういうふうな命題と取り組んでいくのに、いま日本は非常に大きな土地問題というものがクローズアップしてきておる。それを供給だけで、そのうちにうんと大量に供給しますから、こういうふうなお話だけで——あるいはまた事実それを施策に進めていただいても、その施策が逆に地価をつり上げるというふうなことになって、解決しないと思うのです。これはもっと抜本的なことをやらなければならぬ、こう思います。そのためには、宅地制度審議会というものをつくって審議していただいております。たしか二年近くになると思う。しかし、まだ結論が出ないのです。小田原評定をいつまでやっていても、これは私は解決しないと思う。ここらで思い切った政策をぽんと打ち出すべきではないかと思うのですが、建設大臣、いかがでしょう。
  261. 河野密

    河野国務大臣 お説のような点を否定するものではございません。否定するものではございませんけれども、たとえば学園都市にしましても、学園都市を指定した、いけなければ、すぐわきにどこへでもどんどん変えていけるような場所ができてくれば、それは私はいけると思うのです。ただ、実行がなかなか伴っていきませんために、おくれておる。いま追っかけられる面が非常に多いものですから、公共投資がわりあい少ないものですから、期待どおりにまいりません。そうは申しながらも、新しい道路ができることによってある程度解決しておる面もないことはないと思います。現に、御承知のとおりに、名神国道の開通、それだけでも相当のものを解決しておると私は思うのです。ひとり土地問題とは申しません。したがって、いま予定されておるようなものが、すべてこれ一つで解決ができぬとは思いますけれども、いま申しますように、東京を中心にしていま着手しようとしております。ここ三年間にできる道路も、相当の道路ができます。この道路ができることによって、利用半径は相当に広がります。広がることによって、たとえば宅地の問題だけじゃない、野菜ものも下がるでしょうし、それからその他の需要供給の関係にも響いてくると思います。こういうことは、いま計画もしくは着手の過程においてなかなか期待どおり——そういうことをやったから上がったじゃないかとお小言を受けるかもしれませんが、現実にこれが利用されることになれば、必ず私は相当の効果を上げるものだと期待いたしておるのでございまして、それが思うように進まないところに問題がある。これを進めさえすれば効果は必ず上がるものだと思うのでございまして、それはそれだけでいけると、最初から申し上げるように、申しておりませんが、とにかく建設大臣としては、こういう面で最大のスピードアップをしてやるべきだというふうに私は考えておるわけであります。
  262. 岡本隆一

    岡本委員 名神ができて、いまの段階では名神のインターチェンジの周辺のものすごい地価の暴騰だけでございますが、これはまだ開通いたしておりませんし、さらにまた首都高速にいたしましても、その他の道路計画にいたしましても、まだ序の口でございます。それを楽しみに待っていろとおっしゃる大臣お話も、わからぬではございません。しかしながら、一面ではそれとともにどんどん地価が上がっていく。同時にまた公共事業が地価をつり上げていく。現実に、名神道路はものすごくあの近辺の地価をつり上げました。名神ができたために、ものすごく上がりました。だから、他に道路計画ができてまいりましたら、やはり同様な現象がなきにしもあらずだと思うのです。また、そういうふうな用地買収費が高騰するために、公共事業がより一そう困難になります。だから、しばらくたったら道路網ができて土地がたくさん提供できるから待ってくれ、こうおっしゃいますが、その公共用地の取得そのものが困難になって、何ぼでもその実現が先に延ばされていく、向こうへ向こうへいく、より一そう土地が上がる、こういうふうな悪循環が出ないとも限らないと私は思うのです。だから、やはりここらで政府のほうで手を打たなければだめだと思う。早くから出ておる声がありますね。空閑地税の問題、あるいはまた土地増価税の問題、現に昨年ですか、イタリアでは増価税をきめたですね。ものすごい増価税です。じっと手に持っていられないほどものすごい増価税をイタリアはやっております。それから三年ほど前ですが、ドイツで空閑地税。現実に日本ほど土地問題住宅問題がいわれておらないドイツ、イタリアですでにそのような問題と取り組んで、しかも実施しているのです。それ以上土地問題や住宅問題に悩んでおる日本が、なぜそれと真剣に取り組まないのか、私はこういうふうなことは、いたずらに——その背景にどういうなにがあるか知りませんが、いろいろな不動産を持っている人たちの勢力があるのかもしれませんけれども、これはやはりもうここらで踏み切るときではないか、また踏み切るための努力政府はすべきときではないか、こういうふうに思うのですが、これは建設大臣と同時に大蔵大臣からも御意見を承りたい。
  263. 河野密

    河野国務大臣 政府におきましても、御説のような点を留意いたしまして、岡本さん御承知の審議会にこれを御審議いただきました。いただきまして、各方面の権威者の方々の結論といたしましては、日本において空閑地税等はまだ早かろう。第一に、空閑地を措定するのに、どういうものを空閑地として措定するかというような点についても困難じゃないかというような議論が出まして、その委員会の私に対する答申は、空閑地税は答申がないのでございます。決して放てきしておるわけではないのでございまして、そういうふうな問題については、それぞれの権威者の意見を聞いて、実は社会の方向等も見ながらやっておるのでございまして、結論は出ないのでございます。
  264. 田中角榮

    田中国務大臣 建設大臣お答えになられましたとおり、私も、空閑地税とそれから土地増価税は好ましくない、こういうふうに考えております。それじゃ一体何があるのか、こういうことでありますが、何ら無策で政府は国会に臨んでおるわけではないわけでございます。一体、地価が上がるというのは、世界的な趨勢ではあります。しかし、日本のようにこんなに上がるところはありません。また、同時に、マンハッタンのように、非常に狭いところに人のおるニューヨークの地価はなぜ上がらないんだ、こういう問題は、すぐ比較されるわけでございます。これは、日本のように人口が多いとか、土地が少ないとかという一般論もありますのと、それから日本人が土地に対する執着が非常に強い、こういう問題が原則的にあるわけであります。でありますから、新しい事態対処してどのようなことをしなければならぬかということは、やはり掘り下げて考えてみて、そういうものを一つずつ排除していくような方法でなければ、地価の抑制は言い得て抑制できないという結論になるわけであります。でありますから、各国が一体どうして地価の抑制をしたかという例もありますので、そういうものも考えながら、ことしの税制の改正で三つばかりやっております。その一つは、学園都市などと言って、政府がこういうところを指定すると、すぐ地価は三倍になるというようなことではいけませんので、現在の不動産屋さんの譲渡所得に対しまして、いままで特例で、二百万円の帳簿価格のものが千万円で売れた場合には、残りの八百万円に対して十五万円を控除して二分の一課税、こう計算すればいいと思います。大体そのような特例を認めておったわけでございますが、今度は商売で金もうけのために土地を売っても、そういう特例は認めないという思い切った処置を一つやったわけであります。もう一つは、やはり空間の利用ということで、立体化を進めていかなければ、どこまででも土地造成ができるわけではないし、平面都市がどんどん拡張していきますと、今度は公共投資が何倍もかかるのでありますから、そういう意味で、立体化をはかるために、先ほど申し上げたように五階建て以上の住宅、に対しては、固定費産税を十カ年間二分の一にする、また新築住宅及び新築住宅用の土地に対する不動産取得税の控除額をそれぞれ百工十万円に引き上げる、こういう画期的なことをやったわけであります。でありますから、都市の立体化ということを考えないで、いまのままでもって地価の抑制をしようということになると、これは非常にむずかしい問題だと思います。  それからもう一つ、いまの法律で先ほど申し上げた耐火建築促進法をやりましたときに、これは議員提案でありまして、社会党と時の自由党と民主党がやりましたときに、地価が将来上がるから、ここでひとつ抜本的な施策をやろうというので、一条にこういうのがあったのです。不燃建築を行なって、しかも住宅の用に供する場合には、三分の一の隣接地を収用できる、こういう規定が原案にはあったわけです。ところが、憲法問題とか、いろいろまあ私権制限ということで、ついにそれは成立の過程において削られてしまったわけです。これはほかの国ではみなやっておるのです。これが日本でやられるとしたならば、地価の抑制はできます。これは私ははっきり言える。これは、あらゆる国の地価抑制の歴史にそういうことがあるのでありますから、ただ、それが私権制限になるということでついに日の目を見なかったところに、非常に都市のビルとビルとの間に小さなうちがあってどうにもならない、例の鍛冶橋の前に一軒ありますが、あれさえも動かせないというところに、日本の地価が抑制できないという問題があるので、やはり国会としても十分御検討をいただきたい、こう思います。
  265. 岡本隆一

    岡本委員 土地の私有権の問題は、われわれが土地の私有権があるということは、これは土地を有効に利用することが第一の所有者の義務でなければならない。その義務を怠っておる、現実に使っている一軒の土地そのもの、現実に使っておるものはしようがないのですけれども、駅前の土地を広く遊ばしておるとか、あるいは道路がりっぱにできておる、ガス、水道だけでなしに下水道もできておる、そこへ広い農地がある、そこには電話も通じておるし、いろんな一切の都市としての公共施設ができておる、そのそばが非常に広い範囲で遊んでおるというようなことは、杉並区であるとか、あるいは練馬へ行かれたら、あなたはごらんになると思います。だから、そういうところは、ドイツでは住宅熟地といいますか、そういう表現をしておりますが、住宅熟地となったところは、やはり遊ばしては非常に高い固定資産税がかかるというふうな形で、熟地の指定をやったところを早く高度利用させるようにというふうな趣旨でもって空閑地税ができておるわけです。だから、日本だって、東京都内のようなところは、やはり有効利用させるような方法を講じなければ、なかなか簡単に、都市の立体化だけ言っておられても、これは私はできないと思うのです。  これ以上は議論になりますから、私は希望として、要望として申しておきますが、政府のほうもまじめに、せっかくさまざまな公共投資をやる、これから先、共同溝まで河野さんはつくるのだといってがんばっておられる。共同溝ができておるそのそばで、非常に広い面積にネギが植えてある、菜っぱが植えてあるというふうなことでは、あまりにも公共投資が死んでしまっておるではないか。だから、政府のほうも、そういう点についてはまじめに、せっかく都市としてりっぱな形態をつくったところは、そこは有効利用しなければいかぬというところの義務を土地の所有者に課する、これは私はどうしてもやらなければならない問題だと思いますから、ひとつそういう問題について真剣に御検討を願いたいと思います。  もう一つ、これは都市対策の問題として、思惑買いを禁止したり、売り惜しみを避ける問題のほかに、やはり都市の疎開の問題があると思うのです。ことに産業とそれから人口の疎開の問題があると思うのです。企画庁では、いまそういう問題をどういうふうに取り上げておられますか。単に首都圏の問題で、衛星都市をつくれば、自然にこちらへ有利だからというふうにやってくるものだというふうに考えておられるのですか。あるいは東京都内であるとか、あるいは大阪であるとか、地盤沈下がひどい、あるいはいろいろな公害がある、こういうようなところからは、産業を何とか疎開さすような努力をしておられますか。
  266. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと一つ。先ほど答弁漏れがありましたから申し上げますと、いまの都市から疎開するものに対しては、税制上、昨年でありますか、都市内から部市外に出る場合には、いままで税金がよけいかかったということで、なかなか出られなかったので、これらに対しては圧縮記帳を認めて、その税対象にしないという画期的な措置をとっております。
  267. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どものところは、そういう意味では企画官庁でございますから、考え方を抽象的に申し上げるわけでございますが、全国総合開発計画というものを基本に置きまして、そして、その中で関東、東海及び近畿地方をいわゆる開発地域以外の地域というふうに考えておるわけであります。そうして、それ以外の地域に向かって公共投資等を重点的に行なって開発をはかろう。それは、具体的には、御承知のように、新産業都市でありますとか、あるいは工業地帯特別整備地域でありますとかいうものでございます。これらは、各公共投資の長期計画において、工業整備特別地域は比較的近い将来、新産都市は十年くらいの先でございますけれども、そういう企業、その他いわゆるそれに伴います人口の受け入れをつくっておこう。この公共投資の中には、産業直接関連ばかりでなく、環境整備等も含むわけでございますけれども、そういう構想でおるわけでございます。  それから、もう一つは、さらに、その両者に該当いたしません、もう少し狭い地域で、しかも中あるいは小の工場が来るきざしがあるというところは、低開発地帯といたしまして、税金、国税、地方税等の減免をやっておるわけであります。そういうように、全国的にそういった配置をいたしまして、そして、税法としては、先ほど大蔵大臣の言われましたように、昨年臨時租税特別措置法の改正をいたしまして、地方に企業が出やすいようにいたしましたし、金融といたしましては、開発銀行の地方開発融資、あるいは北海道東北開発公庫による開発融資、こういったようなものをそういう地域に特に重点的にいたすというふうにしておるわけであります。
  268. 岡本隆一

    岡本委員 その問題でもう少しいろいろ御意見をかわしたいと思ったのですが、時間がありませんので……。ただ、私希望だけ申しておきますと、とにかく産業がある程度大都市の中にいることが不利なようないろいろ条件をつくっていかなければ、なかなか出ていってくれないと思うのですね。たとえば水の問題にいたしましてもそれも通産大臣ときょうは議論しようと思ったのですが、水の問題にしましても、ビル規制は六平方センチである。ところが、工業用水は二十一平方センチですか、工業用水に対しては制限が非常にゆるいです。だから、新たにこれからパイプを掘るのにいたしましても、工業用水だったら、二十センチ以下のものは井戸を掘れる。ビル用水だったら、六センチ以上のものは掘れない。そういうような点で、たとえばビル用水と工業用水との間に非常に開きがございます。だから、工業が新たに水が必要になっても、地盤沈下するところに何ぼでもパイプを掘れるのです。だから、そういう条件そのものが、新たに水が要るようになればよそに出て行くよりしかたがない、こういうふうないろいろな条件で規制をしなければ、東京の疎開というものはできないと思うのです。だから、そういう点をひとつ今後お考え願うように、希望だけ申しておきまして、また別な機会に御意見を承りたいと思うのです。  きょうは電電公社から来ていただいておりますので、住宅問題について一点お伺いしておきたいと思います。  昨年の建設委員会で、団地に電話をとる問題について総裁にお願いいたしまして、赤羽団地と西新井団地等には団地電話をつくっていただきました。非常に感謝しております。ところが、その後、たとえば私のほうの近くにも団地がございます。それからまた公団の団地でなくて、労働金庫なんかがつくっておる団地の大きなのがございます。数百戸の集団の団地がございます。そういうところは非常に電話が不便でございますので、大阪の支社のほうにお願いに参りましたら、団地電話をつくるのはもうとりやめた、こういうような御意向なんです。せっかくそういうふうな団地ができ、しかもそれが都市から非常に離れた不便なところに行っておる。そこに住んでおる人たちは、今日、日本の社会では中堅的な人です。そういう中堅サラリーマンが住んでおる、非常に重要な社会的な役割りをしておる人たちが住んでおるところに電話がないということは、非常に不便なんです。だから、これは早急に電話をつけていただかなければならないと思うのでございますが、電電公社のほうとしてはどういう方針を持っておられるのですか、お伺いいたしたいと思います。
  269. 大橋八郎

    ○大橋説明員 ただいま御指摘の団地のことでございますが、御承知のとおり、近年大都市に近い、大都市とほとんど一体と思われるような地区に非常に大きな団地ができてまいりまして、その居住者の方から電話がほしいという御希望が盛んに申し出られたのであります。もちろん、これは公社といたしましては、一般の電話としてこれにつけることは当然のことでありますが、何ぶん団地が急に勃興いたしましたので、予算等の関係、いろいろの関係で、直ちにこれに応ずることができませんので、応急的の臨時の措置といたしまして、たしか三十四年の十二月でありますから、団地の居住者が組合をつくりまして、比較的安い、手動式の交換機を備えまして、その交換機に局からの線を何本か入れまして、それで一応の電話の用を足すという、比較的簡便なやり方で試験的にこれを始めたのでございます。その後任、四年その方法でやってまいりましたが、一部にはたいへん喜ばれておるのでありますが、同時にまた、その後の経験によりますと、かれこれ欠点も実はあらわれてまいりました。御承知のとおり、最近の社会活動のスピード化に伴いまして、できるだけ従来の手動式ではなしに、自動交換の、しかも、即時通話という進歩した方法をとるという希望が非常に盛んになってまいりましたので、公社といたしましても、できるだけ早くその希望に応ずるために、全般的にその方針で進んでおります。東京と全国の県庁所在地との間の市外通話も、三十九年度中には、自動で、しかも即時でやるということができるように考えております。さようなときになってまいりますと、東京とか大阪とかいう主要都市のほとんど一部ともいうべき団地の電話が、いつまでも手動式の古い型の電話であることは、サービスの面においてもたいへんよろしくないということが感ぜられますので、でき得るならば、これはやはり同じ団地をやるにいたしましても、自動式の団地電話をやらなければならない。そこで、それを従来の組合式のものでなしに、公社みずからの直営の団地電話として、自動式のものをやろうという考えに近ごろ考えがまとまってまいりましたので、でき得るだけ早く自動式の団地電話にする、かように考えておりますので、今後の新しい申し込みに対しては、自動式団地電話の供給に応じていきたい、かように考えておるわけであります。
  270. 岡本隆一

    岡本委員 総裁、自動式にやってもらいたいという要望があるのでというふうなお話でございますけれども、しかし、実際は、手動式でもいいから、そんな自動交換機でなくても、赤電話でもいいから、あるいは普通の自働電話でもいいからつけてほしいというふうな要望がある。ところが、その自働電話ですらなかなかつかない。地域によっては回線が一ぱいだからというふうなことで自働電話もつかない。赤電話も、何かいろいろ管理の問題なんかでつきにくい。へんぴなところの団地の要望というのは、そのようなささいなものですらあるのです。だから、自動交換式にしてくれなんということは、私は団地のどこからも聞いたことがございません。公社のほうがそういうことをおっしゃっておるのです。だから、そういうふうな御答弁は誠意がないと思うのです。とにかく、いまの、不便かもしれませんが手動式の共電式の交換機でもいいからつけてくれ、こういう要望がたくさん行っているのでしょう。あなたのほうで申請を押さえておられるのがずいぶんあるですよ。現在十以上の申請を抑えておられます。非常にたくさんの申請を押えておって、それでそういうふうなことをおっしゃるのは、私は誠意のないお話だと思うのです。  そこで、自動交換式のものをつけるとあなたはおっしゃいますが、それは一体いつごろになるのですか。それの時期によったら自動交換式をお願いしたいのです。たとえば、もう三カ月待って下さい、せめてもう半年待って下さいということですか。私のほうへ来ているなにでは団地が十三ございます。いまあなたのほうへ申請が行っているが、待たされているのが十三あります。この十三の中には、一年、二年前から申請しているのがあるのです。そういうようなところに対して、あなたのほうでは、それでは半年待って下さい、半年後には必ず全部自動交換式のものをつけますということをお約束できますか。
  271. 大橋八郎

    ○大橋説明員 ただいま考えております自動式の団地電話につきましては、関係方面と大体話し合いも進んでおりますので、でき得るだけ早くつけるつもりでおります。まあ来年度の初めごろにでも実はやりたいと考えておる次第でございます。
  272. 岡本隆一

    岡本委員 でき得るだけ早くというのでは御答弁にならないと思うのです。一体その自動交換式というのがいつごろできるのですか。私が承った範囲では、いま試作中でございます。いま試験をやっております。こういうふうなことで、まだ実用化しているようには聞かなかったのです。だから、そういうふうな、よそからかかってきたのが自動的に各室にとっととっとと入っていく、そういう自動交換式の電話機というのは現存あるのかないのか。あるいは外国にはあるのかもしれませんが、日本製であるのかないのか。あるのならすぐつけられるはずですね。ないのならいつごろそれが完成する見込みなのか。これは公社のほうでおわかりだろうと思うのです。
  273. 大橋八郎

    ○大橋説明員 公社のほうの技術的研究はすでに完成いたしまして、実用にも適するようにできているわけであります。したがいまして、この制度を設けるということについて関係方面との話し合いが完全につき、細部まで話し合いがつきますれば、直ちにやれることに技術的にはすでにできてております。その点は御安心いただいてよかろうと思います。
  274. 岡本隆一

    岡本委員 時期についてはまだあなたのほうからいつごろというふうな何がありませんから、これ以上くどく申し上げるのもなにですから、おりを見て建設委員会なりで御意見を承りたいと思います。  それから、時間がありませんので、もう一つだけ大蔵大臣と通産大臣お尋ねいたします。それは、住宅対策の中で大きな役割りを占めておるものに建て売り住宅の問題がございます。私は最近こういう経験をしました。道路の用地になりまして疎開をしなければいけない。そこで、いろいろ補償の問題なんかにも私は相談に乗りまして、とにかく、散髪屋でございますから、一町以内程度のところで営業ができるようにしてもらいたいというふうなことでございますので、ずいぶん骨を折って土地を確保してやりまして、そこへ移れるようにしてやった。家を建てなければなりません。ところが、その家が疎開になるということがわかったもんでございますから、ある月賦建築会社から、ひとつ入ってもらいたい、あなたのほうが疎開しなければならぬときが来たら建てますから、こういうことで加入した。六カ月ほどでいよいよその時期がやってまいりました。そこで、建ててもらえないか、こういうふうに申し入れましたところが、あなたのほうはまだ契約額の三分の一払い込んでないから、それを一挙に払い込んでもらいたい、こういうふうなことなんです。ところが、強制で立ちのかなければならぬのだし、金の用意はそうありません。公庫から金は借りてきてありました。しかしながら、あとは住宅会社におんぶするつもりできておったのに、ところがその払い込みが足りない。どうしても三分の一を積み立てろ、それができなければ解約だと言う。解約しますと契約金に対する四・五%かの違約金を払わなければならぬというふうなことで、その違約金を取られた。私は、住宅を立ちのかなければならぬ、しかも公共の目的のために立ちのかなければならぬというふうな状態になった住民がそのような目にあうということは、非常にかわいそうだと思うのです。だから、ああいう月賦の住宅販売会社、建築会社といいますか、こういうものに対してはある程度の法的な規制をする必要がある、私はこういうふうに思うのです。いろいろ調べますと、日本住宅無尽とかいうのがある。それは無尽法で取り締まられている。大蔵省の所管だそうです。だから、それはわりあいいいそうです。しかしながら、他の大手三社と言われる太平住宅、日本電建、それからもう一つございましたが、その三社については、どうもいろいろなうわさを聞きます。だから、大蔵省はその無尽会社と同様な形で契約その他について不公正なことがないように取り締まることができないものか、まず大蔵大臣からお伺いしたい。
  275. 田中角榮

    田中国務大臣 月賦、割賦住宅会社は大蔵省の所管ではございません。これは建設大臣のほうだと思いますが、しかし、私も前にそういうことに関係したこともありますから、そう木で鼻をくくったような御答弁を申し上げるつもりはありません。これは非常に問題があると私は思いまして、前からも建設委員会でも議員提案にしようかというようなことで御検討になっておるようでありますが、やはり非常に大きな組織になっておりますし、いまあなたが申された日本信販とか、このごろまたたくさん割賦土地会社等もできておりますので、こういうものをどういうふうにして規制をするのか、どういう準拠法が必要なのかという問題に対しては、建設省の住宅局でとにかく検討しておるようであります。しかし、先ほどもちょっと申し上げましたように、今度一般金融機関が、五〇%の預金をすれば五〇%を貸し付ける、こういう新しい大きなものが出てまいりましたので、割賦建築会社というようなものがいままでのような状態でずっとやり得るのか。しかし、非常にたくさんの人たちが加入をいたしておるものでありますから、無尽が無尽の法律によって規制を受けますように、何らかの規制が必要であろうということだけは申し上げられると思います。
  276. 岡本隆一

    岡本委員 それでは通産大臣にお伺いしますが、やはりあれは一種の割賦販売ですね。ただ割賦販売の中であの政令の中には住宅というのが入ってないのです。それは金額の大きいこと、簡単に動かせないこと、そういうようなことが一つ理由であろうと思うのです。しかしながら、やはり割賦販売的なというよりも、商行為としては割賦販売そのものなんです。しかも相当前に金を取っている。だから今度引き渡すときには、商品だったら、でき上がったものを運ぶのですから、すぐですから、それから後払い始めるのですから、現物をもらった後に金を払うのです。だから粗悪なものを渡すとかなんとかいうことはないはずです。点検してから受け取りますから。住宅の場合にはある程度払い込んでおいて、三分の一払い込むのです。三分の一払い込んでから建物が建つのです。そのときになって、いや保証人が不十分だとか、あるいはまた手を抜くとか、いろいろなことをやられても、もう払ってある金が惜しいから泣き寝入りになる。そういう例もたくさんあるのです。調べますと、ずいぶん悪らつなことをしています。そういうふうなことを——現に私は銀座にある、ある会社に二へん行きました。足を運びました。あまりかわいそうだから足を運びました。ある建設大臣をしておった、いま国会に出ていますよね。その人が顧問をしているのです。その人の秘書という人にも会いました。私のところに来ましたよ。いろいろ話をして、君のところこんな商売をしたらいかぬじゃないか、と忠告もいたしました。金を返すと言いました。ところが金を返さないのです。やはり四・五%だけは、これは契約どおりいただきますということで、それだけはどうしても返さなかったのです。だから、契約が履行できないのなら、入れるときには、あなたのところが立ちのくときにはちゃんと建てますということを勧誘員が言うものだから、約款は十分読まずにその人は契約した。約款を読まなかったということがうかつだといえば言えます。しかし、それだけのことで、その人の過失のゆえをもって、それは立ちのかなければならぬ、わずかの金でも必要な人から十数万円の金をもぎ取るような取り方をするということは、これはまことに悪らつな商行為だと思うのです。そういう商行為をやることをあなたのほうは、やはりぼくは通産大臣として取り締まる必要があると思うのですが、御所見を承りたい。
  277. 福田一

    福田(一)国務大臣 あなたのおっしゃるような問題、私も実はぶつかったことがありますから、事情はよくわかっております。ただ割賦販売法という法律は、法律をつくりますときに、商品というものはどういうものかというので、いろいろ法制局との間にも問答があったのでありますが、不動産は含まないことにする、こういうことになっておりますので、まことに残念なことではありますが、あなたの御趣旨に沿うように法律を、何と言いますか、動かして問題を解決するわけにはなかなかいかぬ。むしろこれは、先ほど大蔵大臣も言われましたが、ひとつ建設省でこの問題を取り上げられて、割賦販売法の改正をされてもいいし、あるいは新法をお起こしになってもいいと思いますが、何かそういう措置をとられるのが解決の一つになりはしないかと思います。  いずれにしても、住宅問題を解決するということは、何といっても政治の一番大事な——衣食住と言いますが、やはり住宅ができるようになると、初めて何か落ちついたような気になるのですから、そういう意味で、だれにでも住宅が与えられるようにするという施策、そういう施策に必要な法律というものは十分今後考えていいんじゃないかという意味で、私はあなたの御趣旨には賛成をいたします。ただ、遺憾ながら、いま申し上げましたとおり、あなたから御質問もあったので、あの法律を適用しようとしていろいろ研究してみたのでありますが、どうしても法案をつくったときのあれがそういうふうになっておらない、こういうことでありますので、御了解を願いたいと思います。
  278. 岡本隆一

    岡本委員 いま大蔵大臣からも、これはおれのほうの知ったことじゃない、こういうふうな何ですし、それからまた通産大臣も、私のほうの所管ではないということでございますから、それで私は、幸いちょうどいま自民党のほうから宅建業法の改正案が出ようとしております。それが出てまいりましたら、その中で私はこの問題を解決したいと思います。そのときには大蔵省や通産省から横やりを入れぬように、それだけはしかとお願いをいたしておきたいと思います。  それでは、きょうは時間がございませんので、これで質問を終わります。
  279. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。  次会は明十五日午前十時から開会いたします。  明日の質疑者は、午前中は中村重光君、午後は角屋堅次郎君、東海林稔君であります。  中村君の出席要求大臣は、大蔵大臣、文部大臣通商産業大臣、労働大臣及び自治大臣であります。角屋君の出席要求大臣は、外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、農林大臣通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、行政管理庁長官であります。東海林君の出席要求大臣は、農林大臣通商産業大臣及び建設大臣であります。  なお、本日委員会散会後直ちに理事会を開きますから、理事の力は委員長控室にお集まりをお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十八分散会