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1964-02-11 第46回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十一日(火曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    天野 光晴君       荒木萬壽夫君    安藤  覺君       井出一太郎君    井村 重雄君       稻葉  修君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大石 八治君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    田澤 吉郎君       竹内 黎一君    武市 恭信君       塚田  徹君    中曽根康弘君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       水田三喜男君    湊  徹郎君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       石野 久男君    岡田 春夫君       加藤 清二君    五島 虎雄君       河野  密君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       山花 秀雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  石川 準吉君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 三輪 良雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (経理局長)  上田 克郎君         防衛庁参事官         (装備局長)  伊藤 三郎君         法務政務次官  天埜 良吉君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         中小企業庁長官 中野 正一君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  向井 重郷君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (大臣官房会計         課長)     吉兼 三郎君         建設事務官         (都市局長)  鶴海良一郎君         建 設 技 官         (道路局長) 尾之内由紀夫君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十一日  委員相川勝六君、安藤覺君、登坂重次郎君、保  科善四郎君、松野頼三君、山本勝市君、亘四郎  君、河野密君及び横路節雄辞任につき、その  補欠として湊徹郎君、天野光晴君、武市恭信君、  大石八治君、竹内黎一君、塚田徹君、稻葉修君、  中澤茂一君及び楢崎弥之助君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員天野光晴君、大石八治君、竹内黎一君、武  市恭信君、塚田徹君、湊徹郎君、中澤茂一君及  び楢崎弥之助辞任につき、その補欠として安  藤覺君、保科善四郎君、松野頼三君、登坂重次  郎君、山本勝市君、相川勝六君、河野密君及び  横路節雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)  昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)  昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  小平忠君。
  3. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、補正予算に関連いたしまして、池田総理をはじめ関係閣僚に若干の質問を行ないたいと思います。  まず最初に、第三次の補正予算の中で、私は、三十九年度の予算審議をされておりまするこの段階で、三十八年度の最終的な予算補正を行ないます意味も理解できるのでありますが、ただその中で、産投会計へ三百六十億繰り入れの問題につきましては、いささか疑問を持っております。その中で、本年度内に日本輸出入銀行出資する六十億円の補正措置については賛成できるのでありますが、残りの三百億につきましては、それをそっくり産投会計資金の中に備荒貯蓄的な形で置こうという案には賛成できないのであります。さしあたり特定の出資目標がないのに、とにかく余裕財源をここにプールしておこうという考え方でありますが、私は大蔵大臣にこの考え方を率直にお伺いいたしたい。なお、財政法第二十九条をどのように解釈されておられるのか、まずお伺いいたしたいのであります。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 御審議願っております三百六十億のうち六十億円は、ただいま御発言のとおり、輸出入銀行への出資でございます。なお、三百億円につきましては、OECDに対する正式の加盟、IMF八条国への移行というような新情勢に対処しまして、必要資金を確保せんとして産投会計資金繰り入れを行なおうとするものでございます。これらの問題につきましては、昭和三十一年度に三百億円、三十五年度に三百五十億円、三十七年度に三百五十億円、このたび三百億円の計千三百億円の繰り入れを行なうものでございます。  財政法二十九条の問題に対して当委員会でもいろいろ御発言がございましたので、昭和三十七年に二十九条の改正を行ないまして資金として入れることができるように道を開きましたので、新しい事態に対処しての資金繰り入れを必要とする、このような立場補正を御審議願っておるわけであります。
  5. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、ちょっと私は財政法第二十九条の法解釈趣旨中心に一お伺いしたがったのでありますが、この二十九条の趣旨はあくまでも余裕財源的な、あるいはブール的な、そういう形のものを補正しようという意味のものではないと思うのであります。しかもその出資先が、産投会計が毎年度ガリオア・エロア債務支払い百五十八億一千万を義務づけられているので、このための資金確保にあるのでありますが、私どもは日米間に協定されておりまする対米債務支払いをやめよというのではございません。ただ、第三次補正における唯一の政策的歳出補正が三十九年度、四十年度における対米債務支払い資金をプールしておこうということに私は問題があろうと思うのであります。現下の経済情勢の中で、昨年十二月以来の過酷な金融引き締めによって中小企業倒産整理不渡り手形の激増しておるという今日、私は、そのような財源があるならば、そのような方面に支出をして補正をするというのが政府のとるべき態度でなかろうかと思うのでありますが、もう一度承りたいと思います。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、財政法二十九条の改正によりまして、当該年度支出するものだけではなく、将来支出に充てるために資金として確保することが許されておるわけであります。なお、資金繰り入れる三百億は——資金とは、当該年度歳出に予定しないものを後年度に使用する目的をもって蓄積するものを資金とするように規定もあるわけであります。百五十八億にのぼるガリオア債務返済のために資金を確保するという御意見でございましたけれども、御承知のとおり、ガリオア債務産投会計の中で返済をするたてまえになっておりますけれども、開銀納付金等によりまして十分資金が確保せられております。御承知のように、今年度の納付金等による収入から百五十八億円を差し引きましても、なお五十一億円の財源が残るわけでありまして、これを一般財源として三十九年度支出に使用いたしてまいるのでありますから、今度の三百億の繰り入れガリオア・エロア債務償還のために財源として確保すべき意図に出るものでないということは御理解いただけるものと思います。
  7. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、政府の今次第三次補正措置の中で、どう判断いたしましても、産投会計の三百六十億の繰り入れの問題は適切なる補正措置、適切なる予算措置と判断できないのでありまして賛成できかねるのであります。この点は今後も十二分に政府当局におかれましては善処していただきたいと思うのであります。  次に私は、当面の最大の政治課題である外交問題の中で、中国並び台湾の問題に言及しまして総理並びに外務大臣の率直な意見を承りたいと思います。  実は中国台湾——今次の予算委員会あるいは今次国会が始まりまして、本会議委員会通じての論争を通じまして、私は率直に池田総理に承りたいと思いますことは、どうも総理の姿勢あるいは考え方は一応述べられておりますが、これは一貫して単なる中国に対する姿勢的な形であって、今後具体的にいかようにするかという政策的なものが表明されていないのは私はまことに遺憾に思うのであります。そのようなさ中に、今朝報ずる国府の対仏断交の報道は、これは全くわれわれの予期したとおりでありましたが、しかし、これによって一段と中国問題は世界の大きな関心事となり、わが国当面の大きな外交課題として、その前途に重要な問題が腹蔵してくると思うのでありますが、この国府の対仏断交が今後の日本外交路線の上に、あるいは中国を取り巻く世界情勢の上にどのような変化をもたらすか、率直に総理の所見を承りたいと思うのであります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 先般お答え申し上げましたごとく、ドゴール大統領中共との国交復活によりまする影響一つのあらわれでございましょう。しこうして、これは、台湾政府フランスと断交したということによって問題が終局的の状態にきたというわけじゃございません。ドゴールの投げた波紋が今後どう移り変わっていくかということは、これからの問題でございます。そして、日本政府がどういう政策をとるかということについて具体的に言ってほしいというお話のようでございますが、われわれは、先ほど来申し上げておりますごとく、これは日本だけの問題でなく、アジア並び世界の平和に重大な関係のある事柄でございますので、国連中心として合理的な適正な解決を得ることに努力いたしたいと思います。その場合に、日本がそのための具体的の行動あるいは政策をどういうふうに持っていくかということにつきましては、ただいま申し上げる段階に至っておりませんので、私は申し上げていないのであります。いままでどおり、この問題は国連中心として適正な解決ができるよう努力いたしたいと思っております。
  9. 小平忠

    小平(忠)委員 実は去る八日の午後吉田総理総理官邸にあなたを訪れられて、二時間に近いいろいろ一お話をされた結果、吉田さんが二十日以降を目途に台湾に行かれるということが報ぜられておるのでありますが、それは事実でございますか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 吉田総理は、多年蒋介石氏と親交の間柄にありますので、久しぶりにいろいろな問題を話してみ、そうして日本中華民国との国交をよりよくしたい、そしてまた、世界の問題につきましていろいろ話してみたいという御希望があるようでございます。私は、しごくけっこうなことでございまして、おいでになったほうがよかろうと思います、こういう答えをしました。
  11. 小平忠

    小平(忠)委員 それはどういう立場で、どういう資格で行かれるのでございますか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 個人資格で行かれます。政府代表でも何でもございません。
  13. 小平忠

    小平(忠)委員 聞くところによりますと、池田総理親書を持参されて行くとも伺っているのでございますが、そのようなことでございますか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 おいでになれば、いい機会でございますから、蒋介石氏あての私の手紙も持っていってもらおうかといま考えております。
  15. 小平忠

    小平(忠)委員 およそ一国の総理手紙を持参される、外交上よくあることでありますが、私は、もし池田総理親書を持参されるとするならば、それは少なくとも池田総理は一国の総理大臣である、そういう見地から、劈頭にも答えられた個人立場でというのと、総理親書を持参されるというのは、いささか混同されているように思うのであります。聞くところによりますと、まだ日にちもありますし、場合によれば特命全権大使のような形で行かれるというようなことも伺っておるのでありますが、そういうことはありませんか。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことは全然私も考えておりませんし、吉田さん自身もお考えになっていないと思います。これは、特命全権大使なんかを私が吉田さんに命ずることもおかしな話です。そういう関係でない、先ほど冒頭に申し上げましたごとく、蒋介石氏と吉田さんとは多年のおつき合いでございまして、高い次元でのいろいろないわゆる話であるのであります。政府代表とかなんとかいうことは毛頭考えておりません。
  17. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは全く政府とは全然関係なしに、個人の旅行のようなつもりで行かれるのでございますか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 さようでございます。そこに吉田さんのいいところがあると思うのであります。
  19. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、かつての吉田さんの中国大陸に対する考え方台湾というものに対する考え方吉田内閣時代外交政策を思い出して、いま吉田さんが行かれる気持ちもわからないわけではありません。しかし、今日世界的な外交問題として大きな渦中にあるこのときに吉田さんが行かれる、特に総理親書を持って行かれるということは、総理がいまお話しのような、全く個人的な立場で行かれるというように国民考えますか。私は、むしろこの際に、率直に日本の置かれている立場、そして激動する国際情勢に対処して、この台湾問題、中国問題を一歩でも前進するための具体的な話が進められてこそ、あなたの先輩として吉田さんが行かれることの意味があるのじゃなかろうか、このように思いますし、国民もまたそのように考えておられると思うのでありますが、しかし、国民の中には吉田さんの訪台を強く反対する向きもある。現に自民党の内部にもあるのじゃなかろうか。そういうさなかであるだけに、私は、もう少し今度の吉田さんの訪台については、国民の全部がいろいろ考えていることにこたえられるような御答弁をいただけたら幸いと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう重大な問題はあまり思い詰めて考えるべき問題ではないと思います。だから、私は、吉田さんが個人資格で、そして旧交をあたため、かつ日本中華民国との間の親善増進に寄与しようとされる吉田さんのお気持ちは、適当なお考えではないか、こういうので賛成いたしておるのであります。私は、いまこの機会政府代表としてどうこうという段階ではないと思います。
  21. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、最も大事なことは、大野さんが韓国に行かれたときも同じようなケース——中身は違ったにいたしましても、同じような角度から最近出ているのでありますが、私が総理に率直に承りたいことは、個人的資格で行くのに総理大臣親書を持参するということは、これはきわめて重大です。あなたが一たん親書を持参する、手紙を持っていってもらおうというからには、少なくともその親書内容がどういうものであるか、これは国民も聞きたいところであるし、総理としてはどういう親書吉田さんに持っていってもらおうとお考えなのか、率直に承りたいと思うのです。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 これはよくあることでございまして、私は、その親書内容は公表して差しつかえないと思います。いま案文その他につきましては考えておるのであります。
  23. 小平忠

    小平(忠)委員 吉田さんの訪台の問題につきましては、関連がありますので後刻に譲りたいと思います。  引き続きまして、私はこの機会総理に率直に中国問題と、さらに台湾問題について承りたいと思うわけでありますが、現在まで本委員会なりあるいは本会議で論議されてきたその結論は、ともすれば中国問題の結論として台湾問題をどうもおろそかにするきらいがあるのです。私は、中国大陸の問題を論ずるのに、台湾問題の方向を明確に論議しないで中国問題の解決はあり得ないと思う。これはみんながそう思っているわけです。  そこで、いままでの本委員会の論議を通じて明らかになってきている点は、総理は、日本として中国大陸を含めた、すなわち中国主人公台湾政府であるということを言ってきておられるのでありますが、反面また先般の施政方針演説の中では、中国大陸の六億余の巨大なる領土、人民、そして中共政府に言及されておるのであります。一体中国大陸を含めたこの主人公はだれなのか、この点を私はもう一度あらためてお伺いしたいと思うのであります。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは中華民国通商関係を結んでおりますので、いま中国、昔の中国と申しますか、中華民国というのが主人公考えております。ただ、現実の問題として中共政権があるという認識は持っております。主人公はだれかといえば中華民国でございます。
  25. 小平忠

    小平(忠)委員 台湾政府があくまでも主人公であるということが明確になりましたが、大陸に何らの発言権行政権も及ばないその台湾政府主人公であるというのはおかしいじゃありませんか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 おかしいといっても、これは現実じゃありませんか。やっぱり現実を見ていかざるを得ません。しこうしてわれわれは中華民国と戦い、中華民国平和条約を結び、そうして現に台湾政府が支配しているところと、支配者として話をしている。現実の問題としては、そういう中共政権大陸にあるということは認めておる。この不自然な状態をどうしていくかということがいまのわれわれの外交政策でございます。その点につきましては、国連の重要問題としていま検討しておる、こういうことでございます。
  27. 小平忠

    小平(忠)委員 そうすると、いつまでもこのままの形で、何にも大陸影響力を持たない、行政権を持たない台湾政府を相手にしていくということでございますか。およそこれほど非現実的な矛盾した考えはないと思うのですが、先般の社会党の横路さんや、わが党の今澄さんの質問の際にも、時期がくればというようなことをちょっとほのめかしておられます。私は、一体そのような態度でこの中国問題を扱うのが日本のほんとうの外交の姿かどうかということについては、どうしても理解できない。だから、この際そのような非現実的な矛盾する態度考え方をひとつ捨てられて、もう一歩具体的に前進されるお考えはないのでありますか。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう重大な問題だから、国連で討議しましょうと言っておるので、捨てておくわけではないのです。ただ、あなた方民社党のように、二つ中国論なんかを出そうものならたいへんなことになります。だから、そういうことはいまわれわれは考えを持っていないので、従来の方針どおりでいって、そうしてこの問題を国連解決しようとしておるのであります。
  29. 小平忠

    小平(忠)委員 われわれは二つ中国を認めようという考え方は持っていないのであります。  それでは総理に伺いますが、あなたの考え方一つ中国、それでは一つ中国を実現するのにどういう手段があるのですか。問題は北京政府台湾を占領するという場合が一つ考えられましょう。これはいわゆる武力行使であります。さらにもう一つは、逆に台湾政府大陸反攻を行なう、これも武力行使です。あなたのお考えは、すなわち台湾政府を支持する、蒋政権は今日依然として大陸を捨てていないのです。そうすると、総理に伺いますが、あなたの一つ中国論は、武力行使によってもやはり台湾政府を支持してやろうという考え方であるということに理解してよろしいのでございますか。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 一つ中国とか二つ中国とかいうことは、われわれは全然考えておりません。いまの現実は、中華民国とわれわれは国交を結んでおるのであります。しこうして大陸には、われわれもまだ認めておりません、また世界の大多数が認めていない中共政権というものがあることも現実でございます。その現実をいかに調整していくかということは、世界の重大問題だから国連において十分審議しよう、こういうたてまえで、二つ中国とか一つ中国とかいうことは考えておりません。
  31. 小平忠

    小平(忠)委員 世界の大多数の国々が認めていない中共じゃないのです。すでに自由主義陣営の中で英国もカナダも、さらに今次はフランスも、こういう大国が認めている。現実の姿というのは、それは総理考え認識とは違うのです。だから現在のような形で、結果的には、一番最後にアメリカの顔色を見ながら日本態度をきめるということは、もうこれは自主性のない外交の最たるものだ。私は、この際、日本政府としても、中共立場を率直に認めて、積極的に国連加盟を支持するという態度に出ることがひとつ。さらに、その場合に台湾問題をどうするかということについて、常にわが党が主張いたしておりまする、台湾問題は台湾人民自由意思によって、人民の自由なる投票によって決すべきである。台湾人民が独立すべきであるという結論が出ればそれもよかろうし、いな、最近において中共でも、また台湾でも一部主張されておる国共合作、すなわち台湾はもともと中国大陸同一民族であるから、結局われわれは大陸に所属するのであるという結論が出れば、それもよかろうし、ともあれ、台湾人民自由意思によって決せられる、このことが、一番民主的でもあり、またそういう考え方で、この複雑な、そして混迷せる中に今後の動向について非常に苦悶しておる台湾人民を救うのが、アジア善隣外交の最も正しい姿ではなかろうか、こう思うのであります。われわれは、決して二つ中国という考え方をとっているのではないのです。これは総理考え方をぜひ改めていただきたい。われわれは、やはり一つ中国、さらに一つ台湾というものが、結果的には最も現実的な姿ではなかろうかという考え方に立っているのです。率直に総理のお考えを承りたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は承っておきますが、私の外交政策は、先ほど来申し上げておるとおりでございます。
  33. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは一歩も前進をしないと思う。私は、現次元の領土を現状に固定化しておくという考え方解決の道だ、このように実は考えておるわけであります。  さらにそれでは総理に伺いますが、現在台湾の実情はどのようにあるか。台湾政府の実情であります。台湾人民の今日の大陸を含めたいろいろな問題に対する考え方、あるいは台湾日本に対する考え方、あるいは政治経済等の情勢について、どのような認識を持っておられるのか、承りたいと思います。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 台湾におきましては、蒋政権のもと、経済の復興、民生の安定に努力しておることを認めております。
  35. 小平忠

    小平(忠)委員 総理、それはあまりにも不まじめな御答弁じゃないでしょうか。もしほんとうにそのようにお考えだとするならば、それはたいへんです。私は失礼なことを申し上げたようでありますが、現状はそうではないからです。総理はそれを知っておられるのです。一九四七年の二・二八事件を契機としまして、台湾人民中共というものには、決定的なみぞができてしまった。二年後の一九四九年に蒋介石台湾に脱出して以来の台湾の現状というものは、あなた自身がよく知っておられるのです。大陸から来た軍隊をひっくるめて一千万人の台湾の人口が、ここ数年ものすごく激増しておる。すでにもう一千二百万をこえておるといわれておる。そのうち台湾人民が一千万で、大陸から来た軍隊並びに退役をした軍人や家族をひっくるめて一千二百万といわれておるのでありますが、そういう台湾人民中国軍、すなわち蒋介石直轄の軍隊との感情というものは、非常にデリケートだ。今日、蒋介石直轄の軍隊は五十三万といわれておりますが、その中身も、だんだんと台湾住民の軍隊がふえて、もう三分の二以上を占めておるのです。私は率直に申し上げて、台湾の現状はこのままに放置するならば、クーデターが起こらないとだれが保証しますか。それを、あなたがいまおっしゃられたような考え方で、蒋介石の統治のもとに政治、経済等非常にうまくいっているのだという認識は、これは根本的に誤りだと思いますが、どうですか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、そういう認識を持っております。誤りというのは、あなたの主観であります。
  37. 小平忠

    小平(忠)委員 吉田さんが近々行かれるのに、あまり総理自身が台湾の内政に関することをここで述べられても、苦しいお気持ちはよくわかります。しかし、国民がそういうような考え方だから、それを巧みに逃げて、そして責任を回避する、あるいは自分だけがいい子になるという考え方は、私は、日本のとるべき外交の姿ではないと考えるのであります。私は率直に申し上げまして、もうそろそろ台湾のほうにも日本立場を認めてもらいながら、北京政府との折衝を逐次持たれてはどうか。あなたは、施政方針演説の中で政経分離のことも触れておられます。中共立場も認められております。それならば、日本中共政府間レベルの話し合いを進める、そういう積み重ねということがそろそろ必要ではないか、このように考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは一国を預かっておるのでありますから、軽々しく今後の外交の具的方策をここで申し上げるわけにはまいりません。日本の一番利益になり、アジアの繁栄と平和がはかれるように、それが世界の平和に通ずるように、いろいろな考え方で検討は加えなければなりませんが、いまここでどうこう申し上げる段階ではございません。
  39. 小平忠

    小平(忠)委員 軽々しく言及するわけにはいかない、ここでしゃべるわけにいかないとは、どこでしゃべるのですか。私は、あなたが外交問題について慎重なる態度をとっておられることも、理解できます。しかし、現実にもう一歩進んで、現時点においては、日本中共の大使間の話というようなことは、これはできていないのだからできないでしょう。しかし、現に最も批判的な、そして自由主義陣営の最大の国といわれるアメリカが、もう八年前からジュネーヴで中共との政府間の話し合いを進めておるじゃありませんか。それをさらにワルシャワに移されて、百二十回も会談を積み重ねている。そういうアメリカあたりの例を見ても、もう日本がそろそろそういう話し合いを進める時限に来ているんじゃなかろうか。一般の論調も、また政府部内も、与党内にも、そういう意見が出ておると思うのです。私は、何も、そのことがあえて台湾政府を刺激するというならば、今度せっかくあなたの手紙を持って吉田さんに行ってもらうんだから、そのことも前後して、無断でやったらぐあいが悪いんなら——おそらくあなたの今度持っていってもらう親書の中にも、そういうことを言及されておると私は判断するのですが、今日の時限において、そろそろいかがなんです。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろな動きを参考にいたしまして、施策をめぐらしておるのであります。私は、池田内閣ができまして以来、中共とのいわゆる貿易も進んできております。人の交流も相当ふえております。何も、全部つんぼさじきに置いて何にもしないというわけじゃないんであります。政経分離のもと、隣国としての貿易の発展その他につきましては、もう実績があらわれておるのであります。いまどういう具体的方策をとるかということにつきましては、ここで申し上げる段階に至っておりません。われわれは、隣国との関係を進めていこうということにつきましては、十分いままでも努力しておるのであります。
  41. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、近い適切な時期に、もっと具体的な話し合いを台湾政府ともする。また、並行して、中共北京政府とも、単なる経済交流のことだけでなく、政府間のなしくずし的な、段階的な話し合いも進めるんだ、こういう考え方はあるんだというように理解してよろしゅうございますか。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 政府間で承認するような話とかなんとかいうことをする考えはございません。われわれは、何が一番アジアの平和に貢献するかということを考えて、適当な措置をとっていきたい、こう思っておるのであります。
  43. 小平忠

    小平(忠)委員 本件について、最後に私は率直に承りたいのでありますが、けさの報道によって明らかなように、台湾が対仏断交を明らかにいたしております。こういう時限の中で、吉田さんが、あなたの親書を持って台湾に行かれるというようなことは、国民の多くの中にも、また、あなたの与党の内部にも、相当強い反対や批判があろうかと思いますが、これは新たなる事態として取り上げ、そういう中で、八日に吉田さんと会われました当時のこととの一つの変化に基づいて、吉田さんの訪台について何か変更をするような、あるいはまた、それについて再考をするようなことはございませんか。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 いままで申し上げたことで足りると思います。特につけ加えることもございません。また、吉田さんの台湾訪問を中止するというふうな考えは持っておりません。
  45. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、吉田さんは、既定方針どおり行かれる、それは政府代表でも何でもない、個人的で行く。そうすると、ビザはどういうような形で行かれるのでございますか。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 別にビザの関係はございますまい。吉田さんが台湾へ行かれる旅行につきましては、当然出すはずでございます。これが政府代表とか個人とかいうことでビザの関係はないと思います。
  47. 小平忠

    小平(忠)委員 そういうところに疑惑とまた問題が包蔵されておるのでありまして、これは池田内閣、池田外交の非常に明朗でない、不明朗的なそういう問題があるのでありまして、私は、率直にすみやかに、今度の吉田さんの訪台を契機に、もっと突き進んで台湾との話し合いもする、さらに、中共との話し合いもこれは英断をもって進めていくという腹こそが、あなたの常に口にされているところのアジア善隣外交の真の姿ではないかと思うので、私は、このことを強く要望しておきたいと思うわけであります。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕  次に、これは最近新聞でもだいぶ話題になっておりますが、内閣の今度の国会に提出される予定法案の中にもあるのでありますが、防衛庁設置法の一部改正の法案をいつごろお出しになる予定でございますか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 防衛庁設置法につきましては、近々出すつもりでおります。
  49. 小平忠

    小平(忠)委員 これは設置法の一部改正ですから、当然、昨年来総務会でも決定いたしておりまする防衛庁を国防省に昇格する法一部改正と解釈してよろしゅうございますか。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 防衛庁を国防省あるいは防衛省に改めるということにつきましては、ただいま政府でいろいろ検討を加えておるのでございまして、いま、いつ改正案を出すか、その分についてはまだきまっておりません。
  51. 小平忠

    小平(忠)委員 防衛庁の設置法一部改正というのは、そうすると、庁の省昇格以外にどういう内容があるのでありますか。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のとおり、定員の増加の点もございます。それから、南極探検の仕事の問題もございます。これが本来の防衛庁設置法改正考えで提出しようとしておる問題。それから、国防省あるいは防衛省という問題につきましては、これはいま別途に検討を続けておるのであります。
  53. 小平忠

    小平(忠)委員 それは率直に申し上げて、防衛庁の設置法一部改正に、省昇格というものを検討はしているけれども、総務会計の決定でもあり、これは今国会中に省昇格の法案も出すというように総理考えているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 出す予定で検討を加えております。いま最後の決定はいたしておりませんが、いろいろ法律上の問題もございますので、内閣におきましていま検討中であるのであります。これをいつ出すという決定は、まだいたしておりません。出すべく検討しておると……。
  55. 小平忠

    小平(忠)委員 それはそれでわかりました。出すべく検討しているということは、出すということでありますが、その場合、もちろん昨年の六月総務会で決定して、総務会のほうでも明確にこれを推進されているということでありますが、ただ問題は、これはそういう大きな問題をここに取り扱う場合、防衛庁というものを省に昇格する場合に、質的にどういうふうに変えようという、その質の問題ですね。名称だけでなく、やはり質の問題もあろうと思うのですが、その点はどういうことでありましょうか。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 その点が問題であるのであります。法律的にいろいろ考えなければならぬ問題、すなわち内閣総理大臣と防衛庁長官、もし改めれば防衛省大臣あるいは国防省大臣、この権限の問題があるので検討しておるのであります。
  57. 小平忠

    小平(忠)委員 その場合は、私は、最近最大の政治課題である憲法調査会の結論、さらに臨時行政調査会、あるいは国防会議、こういう一連の関係を有するものと協議をすべき、また意見を聞かなければならぬ点は、これは内閣としましても十分検討されておると思うのでありますが、問題は、臨時行政調査会は、今度若干延期されまして、これは九月まででございましたね、そうしますると、この問題については、すでに何回も本院を通じて、防衛庁を国防省等に昇格する場合は十分に臨時行政調査会の意見も聞いてやりたいということは、歴代の防衛庁長官が明確にこれは指摘されておるのでありますが、そういったようなことを考えますと、もう早くこれをきめないと、行政調査会の意見も、あるいは国防会議意見も聞かないできめるような結果になるというような事態が起きはしないかと思うのでありますが、そういうようなことをどのようにされるか、スケジュールとしまして、これは今国会の法案審議、いろいろなことも関連してくることでありますから、承りたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しに憲法調査会の答申もということでございましたが、憲法調査会との関係は、私はないと思います。ただ、臨時行政調査会がせっかくいま行政制度について検討せられておるのでありますから、ここには相談しなければならぬと思います。ただ、そこにいくまでに法律的にいろいろな問題もございますから、十分検討した上、腹が、方針が決定する場合におきましては、やはり臨時行政調査会の意見も参考として聞かなければならぬと思っております。また、国防に関する問題でありますから、要すれば国防会議も開くように相なることと思います。しかし、まだそこまで至っていないというのが現状でございます。
  59. 小平忠

    小平(忠)委員 そこまで至っていないとおっしゃっても、すでに総務会長の藤山さんが、この間官房長官にも会いまして、官房長官は、明確に、近々のうちに法案を出すようにいたしますから、時間的な問題だから待ってくれという話し合いもされておるのに、まだそんな不明確な点があるのでありますか。
  60. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 私の名が出ましたので、私から便宜お答えします。  時間を切って申し上げたのではございません。十分に慎重に答弁いたしたい、かようなことでお話しいたしております。
  61. 小平忠

    小平(忠)委員 これは承りますれば、政府部内にも、あるいは与党内部にも、相当な意見の対立がある問題です。ところが、いま総理は、憲法調査会の結局最終結論というか、そういう審議過程について何も関係ないとおっしゃいましたが、これは庁を省に昇格することによって、問題は質の問題になる。これは、当然憲法第九条との関連において、非常に重要な問題であります。同時に、現下の国際情勢下において、私は、これが一番政府部内においても、特に法制局あたりでも、問題にしておる点じゃなかろうか、こう思うのであります。ですから、私はいまの総理のようなあいまいな答弁では、これは非常に国民が迷惑すると思う。一日も早く本件については結論を私は出されることが望ましいと、実は思うのでありますが、ただ劈頭に総理考えを聞いて、これはもう方向は、現在の防衛庁を防衛省あるいは国防省に昇格するという総理の腹は、ここでわかりました。ただ具体的な検討をするのに少し時間をかせ、こういうことでありますが、これはほんとうに内外の情勢をよく見きわめて、憲法との関連もよく考えてやりませんと、重大な政治問題にもなろうし、また国民が大きな疑惑を抱く結果になりますので、私は慎重に扱っていただきたい、こう思うわけであります。  私は、今次予算審議を通じて、内政の経済問題等非常に重要な問題がたくさんあります。これからが、さらに公聴会やあるいは一般質問、分科会を通じて池田内閣の経済政策、三十九年度の予算等について明確になってくると思うのでありますが、その中で、特に池田総理は、過ぐる施政方針演説の中でも、農業の近代化、中小企業の近代化については革新的な農政、革新的な中小企業の近代化をはかるのだと強調されておるわけであります。しからば、そういう考え方に立って、三十九年度の予算、あるいは当面の日本農政のいわゆる考え方、どういう基本的な考え方で進められておるのか、率直に承りたいと思います。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 所得倍増計画におきまして最も注意しなければならぬ、また重点を置かなければならぬ問題は、農業と中小企業であるということは、計画を立てる当初から私は考えた問題でございます。したがいまして、離農する人が多くなる、その対策として、農業基本法を設けて、りっぱな企業として成り立つ農業を打ち立てなければいかぬということは、当初から私は申しておるとおりでございます。しかし、いかにも農業というものは自然的、経済的、社会的ないろいろなむずかしい条件がつきまとっておりますので、それに対しましては、やっぱり相当長い年月根気よくやらなければならない。三十九年度一年度でできる問題ではない。これは五年、十年、あるいは二十年かかる問題であるのであります。したがいまして、私は過去三カ年の倍増計画の結果を見まして、いままでより以上に力を入れなければいかぬ。そのスタートが三十九年度から出てきたのであります。前も相当の注意は払っております。これだけでは不十分だというので、革新的措置を講じなければならぬ。このしょっぱなが三十九年度で出ているわけでございます。すなわち、初めの農業基本法をもっと拡大的に、もっと地についたものにしようという考え方で、三十九年度の予算を編成したのであります。これが四十年度、四十一年度とずっと続いて拡大されることを私は期待しておるのであります。
  63. 小平忠

    小平(忠)委員 総理大臣日本農政に対する一つ考え方、把握というものは、あなたの考え方がそのまま予算の上に、あるいは農政の上にあらわれておれば、これはそれでも問題がないし、それは大いに期待したいのですが、総理、全くこれが逆行しているのです。農林大臣が見えられましたから農林大臣に伺いますが、総理は革新的な農政、このことを主張されておるのであるが、しからば、これが三十九年度の予算なり現在の日本農政の上にどういう形になってあらわれているかということを、いま総理に率直に承りました。きわめて抽象的でありますが、主管大臣としてあなたのお考えを承りたいと思います。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 革命的ということばは少しオーバーだと私も思っておりますが、しかし、そういう気がまえで中小企業、農村対策をやっていこう、こういうことに御了解を願っておきたいと思うのでございますが、しからば、本年度の予算等に画期的とか、そういう面がどこに出ているか、こういうことでございます。予算面につきましても、前から話があったかもしれませんが、私は相当な伸びをいたしているように思います。食管の一千二十数億というものは、何か赤字会計でむだな費用のように言われる向きもございますけれども、これは大きな生産者米価の価格支持であるし、あるいは消費者米価の点につきましては、消費者がほんとうは払わなくてはならない価格を相当補償しているようなかっこうであるので、そういうものを含めて、やはり予算はいままでよりは相当伸びている。それから金融関係からいいまして、御承知のように制度金融の金融公庫、これなどは、いままでは九段階で、非常に複雑な段階でございました。これを三分五厘から五分、六分五厘、七分五厘の四段階にいたしまして、償還期限等も、諸外国と比較するとまだ短いのでございますけれども、現在の日本といたしましては、相当償還期限等も延ばして、ワク等におきましても、私申し上げるまでもなく御承知のように、金融公庫のワクが千七十億、あるいは近代化資金が六百億、あるいは無利子の改良資金が四十五億というふうに、ワク等も広げて、これによって相当農村の力づけといいますか、立ち上がりに寄与することと思います。あるいは土地改良等につきましても、従来の土地改良の観念を前進させまして、いわゆる選択的拡大の線に沿うた土地改良、草地造成、あるいは圃場の大々的整備、こういうことなども含めて方向を前進させておると思います。あるいはまた流通対策等につきましても、非常に問題がありましたので、流通対策等につきましても相当これに力を入れていく。価格対策でもそうでございます。そういう意味におきまして、文字どおり画期的とか革新的とかとは一声えなくても、この芽といいますか、方向といいますか、その方向については相当力を入れておると私は信じておるわけでございます。
  65. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは農林大臣に伺いますが、具体的に、三十九年度の予算に農林関係の予算がどういう形で伸びているか、一般会計全体の中に占める割合はどうなっておるのだということを、ちょっと承りたいと思います。
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農林予算の数字的な問題でございますが、昭和三十九年度の農林関係一般会計予算は、御承知のとおり三千三百六十億円、前年度の当初予算の二千五百三十一億円に比較いたしますと、三二%の増しでございます。また、先ほど申し上げました食糧管理特別会計繰り入れ額、これを除いた昭和三十九年度予算は二千三百三十四億円で、同じく前年度の一千九百九十六億円に比較いたしますと、一七%の増しでございます。こういうような率でございまして、一般の各省の伸びが一四・何%でございますから、食管会計を除いても一七%、食管会計を入れれば三三%の伸びであります。また、一般会計に占める率でございますが、昭和三十九年度及び三十八年度農林関係一般会計予算が国の当初総予算に占めている比率は、それぞれ一〇・三%及び八・九%でありまして、食糧管理特別会計繰り入れ額を除いた計算によると、それぞれ七・四%と七・一%、こういう比率になっております。
  67. 小平忠

    小平(忠)委員 問題はそこにあると思います。総理が革新的な日本農政の前進を、近代化を推進するとおっしゃいましたけれども、予算は具体的に伸びてないということなんです。現実に食管会計の赤字一千二十六億をぶち込んで予算が伸びた、伸びたと言ったって、そんなことを日本の農家は信頼できません。赤城さん、あなたは、最も日本農政について愛情を持っておられる方だと私は思う。三千三百億の中で約三割に近い一千二十六億の赤字を入れて、それで三千億でございますと言うが、一千二十六億引いたら二千億じゃありませんか。その実態から見ると、一般会計の占める割合というのはわずか七%、前年と同じですよ。いまあなたが数字を述べられたように、食管会計の赤字を除けば七%であり、またことしも七・一%、全然伸びていない。こういう形で、ほんとうに革新的な、革命的な日本農政の前進をすると言ったって、それはお題目だけに終わると私は思うのです。  私はこの機会総理に伺いますが、食管会計の赤字というものは、これは農林予算の中に入れて、そしてこれを革命的な予算だとか、革新的な予算になったとか、ふえたとかいうことをおっしゃるのは、ちょっと筋が違うと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 食管の赤字を農林予算に入れることがいいか悪いか、農林予算に組むことがいいか悪いかという問題と、そうして農業の革新的改善を講ずるということとは別問題でございます。ただ食管の赤字というものが農業政策の基本のにない手であるということは、これは農林大臣が言っているとおりである。私は、予算上の金額の点をどうこう言われますが、内容をごらんくださったならば、いままでの予算の組みようとは違っております。また、財政投融資関係もごらんいただければ、われわれの気持らがおわかりいただけると思います。
  69. 小平忠

    小平(忠)委員 いまの総理答弁では、食管の赤字ということについてのあなたの考え方が明確に出ていないのです。私の伺いたい点は、食管の赤字というものは、これは俗にいう農業振興のための予算と見ていいのかどうか。年々三千億に近い予算の中で食管の赤字が百億か二百億程度のものならば、これはまた問題にもならないのであります。ところが、一千億をこえるとなると、やはりこの考え方について政府がはっきりした態度を持って進みませんと、食管の赤字一千二十六億を入れて農林予算はふえたんだ、ふえたんだと政府与党が宣伝しても、これは私は当たらぬということを申し上げている。というのは、もともと食管の赤字というものは、これは今日の食管特別会計を創設して操作する、特に生産者米価と消費者米価の二重価格制をとる限りにおいては、これは当然出てくる赤字だろう。特に生産者米価については、いま農林大臣が何か価格支持のための農民に対する特別の施策のようにおっしゃったけれども、これは毎年々々米価審議会で生産者米価を政府はどういう態度できめているか、それは出産費・所得補償方式によってかくかくのものということを要求している、その農民の要求に満たない価格なんです、今日の一万三千円米価というものは。そういう価格を農民に押しつけておいて、そうして一方消費者米価を結局据え置きにしておくから、当然できる赤字じゃありませんか。本来ならば、二重価格制をとる場合に、生産者米価が上がった場合に消費者米価もこれに並行して上げる場合には、赤字はふえないでしょう。ストップしておくんだからできる赤字じゃありませんか。このストップしてできる赤字というものは、農民から商い価格で買い上げたからできた赤字というふうに解釈してはいけないと私は思う。これは当然全国の消費者大衆にストップする、据え置きされている安い価格で配給することによってできる赤字なんです。それをあなたは価格支持によって当然農民の農業政策の農林予算の中に繰り入れるべき金額だというふうに考えるのは、私はこれは誤りだと思う。そういう考え方をとっている限りにおいては、何年たったって、これは一般会計、国の予算規模がふえていく、それに比例して上がりはしないのです。総理大臣、よくいままでの経緯をごらんください。これは立法調査局で調べた数字ですから、間違いない。昭和二十八年以来の一般会計の中で農林予算の占める割合をごらんください。昭和二十八年は、何と一般会計一兆円に対して農林関係予算が千七百億ですから、占める割合は二八%ですよ。自来これを頂点にして農林予算はふえてないのです。農基法ができてからも一向に——一〇%台をさらに割って、九%から八%、今日三十九年度の一般会計の占める割合は一〇・三%とおっしゃるけれども、これは食管の赤字一千二十六億をぶち込んでの話なんです。これを取るとわずか七%になってしまう。これで政府が何で革新的な、革命的な農業近代化を進めると言えますか。私は総理自身に認識を改めていただきたい。あなたが特にこのことを常に主張される限りにおいては、具体的に農林予算の中にあらわれてこなければだめなんです。率直に承りたいと思います。
  70. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私の申し上げたことと小平さんのおっしゃっていることは、そう違いないと思います。私は、食管の繰り入れ千二十六億でございますが、これを赤字々々と、こういうふうに言っているのは、ちょっとあまり意に満たない。というのは、これは一つの会計法上、財政法上の問題でございまして、一般会計から特別会計の食管会計に繰り入れる額のものですから、世間では赤字々々と言っているけれども、しかし、実質は、いまおっしゃったように生産者に対しての米の価格の支持、あるいは麦の価格の支持、こういうことになっておる。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、その支持というものは、何もやったのではない、いまの生産費及び所得補償方式、これによってちゃんときまっているのだから、きまっているのだからといいますけれども、これは考え直して、こういう制度がないということにして、自由商品というような形にしたとするならば、こういう赤字と称せられるものは出ない。しかし、いまそういう食管制度というものがあって、その制度のもとでこういう金が特別会計へ繰り入れられておる。しかし、その実質はやはり米の生産者に対しまして価格を支持しているということは事実だと思います。自由放任でやれば、支持することはなくて、需要供給関係等によって価格が決定される、こういうことでございますが、そうでないのですから、私は、食管の出産者米価の算定方式は方式としてございますけれども、実質はやはり生産者に対する価格支持だと思います。これが十分でないという御意見はありましょう。ありましょうけれども、これは一つのそういう制度であり、消費者に対してもこれをカバーしておるといいますか、そういう制度が出てくる差額及び中間経費でございますから、やはり制度的に見れば、一つの農業政策の大きな柱になっております。しかし、この制度というものが農林省だけの制度であるか、あるいは、消費者全体にわたっているものですから、ほかのほうの会計に入れてもいいじゃないかというような考え方はあろうかと思います。しかし、このものが農業政策で全然ないということでは私はないと思います。そうでないような立場からこれは毎年々々出てくるのだから、それは除いて予算なども考えろというような御意見でございますが、私なども、これはいまの制度としての農業政策ではあるけれども、ほかの政策をなお前進させるためには、やはりほかのほうの予算で相当裏づけがないと、農業政策の前進ということには十分でないというふうに考えております。  そこで、今年度の予算でございますが、では、ほかのほうはどうだ、七%ちょっとしか増してないじゃないか。これは、量からいえばそういう面がございますけれども、質的には、私は相当強化されておると思います。また量の点につきましても、ちょっと申し上げますならば、近代化に関する経費でございますが、その中の農業基盤整備費では、前年度の六百五十五億円が七百七十二億円になっておりまするし、農業構造改善対策費でも、前年度の七十九億円を百三十六億円と、また農林畜産物の流通改善関係経費でも、前年度は二十五億円でありますが三十四億円に、それぞれ大幅に増額している。そのほか、先ほど申し上げました農林漁業金融につきましても、公庫の融資ワクを前年度の八百七十億円から千七十億円に増額した。金利等、貸し付け条件の改善をはかった。三分五厘の低利資金を飛躍的に増額した。あるいは農業近代化資金の融資ワクを前年度の五百二十億から六百億にした。無利子の農業改良資金の貸し付けワクについても、前年度の十八億から四十五億に増額した。こういう面では、私は、財政、金融両面を通じて農業の近代化を強力に推進するという方向に相当進めてきておるつもりでございます。しかし、十分でないとか、こういう点におきまして、私もこれで満足というわけではございません。しかし、新しい意味、新しい方向につきまして、質的に相当推進をしてきておるということだけは、ひとつ御了解を願っておきたい、こう考えております。
  71. 小平忠

    小平(忠)委員 いま、具体的な財政投融資の面についてもあなたは触れられて指摘されました。赤城さんとして努力されているそのことは、私もよく理解できるのです。そういう面で、前年度対比、非常に努力の結果増額されている面もありますが、これだけ宣伝をしてやるのだから、現実にやらねばならぬ日本の政治に予算的、財政的裏づけをしなければならぬものが山積しておるにもかかわらず、その期待にこたえることができないというのは——結果的には予算の全体の面で裏づけとなる農林予算のワクである、それが結果的にはふえていないじゃありませんか。食管の赤字を除けば全く同率である、このことを私はもう一ぺん再確認したいのですが、結果的には食管の赤字を除くとふえていないということに認識を持ってよろしゅうございますか。
  72. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食管を除いての数字はそういうふうになりますけれども、私は、やはり先ほどから申し上げておりますように、食管の会計と食管制度というのは分けて考えたい。食管の赤字は出ておりますけれども、これは食管制度として農業政策の重要な一つの柱でございます。米麦の価格を支持していくというのは。こういうととでございますから、私は全体としてお考えを願いたい。しかし、そういう見方もありますので、私もその他の政策、予算等につきましてなお努力するつもりでございますが、ことしはまあ努力をしましてもこの程度であったということでございますが、決してこれで満足とか、そういう気持ちではございません。
  73. 小平忠

    小平(忠)委員 それはどうしてもやはりあなたに明確にこの際私は認識を新たにしていただきたい点が出てきた。それはやはり食管の赤字そのものに対する認識の問題です。食管特別会計という形において、財政法上あるいは国の予算措置上、これはやむを得ないのです。食管特別会計を置いて、それで赤字ができた場合に一般会計から繰り入れるという措置は、これは当然です。その計数的な、あるいは財政的な処置の問題、事務的処置の問題を私は言っているのではないのです。問題は、そういう食管の赤字が出た場合に、それを農林予算という判断に立ってあなたはいま指摘されたが、食管の赤字を除いたんではだめなんだ、それをやはり入れて総体で見てもらわなければならぬ、こう言うから問題になる。三千三百億の農林予算がほんとうに近代化のために使われる予算であるならば、問題はないのです。それでも、農基法の精神からいうと足らないのです。それを食管会計の赤字だから、一般会計から繰り入れて、これも農林予算だ、こうきて、トータルに入れて常にその上に立って判断するから、私は間違いだと言うのです。ことばをかえますならば、中にあってもかまわないから、それは別に解釈して、結局二千億から三千億というこの一千億の開きというものは、純粋に使える予算であるならば私はよろしい。もう一つはっきり申し上げたいのは、皆さん、この食管の赤字というものは、これは今日生産農民が満足している生産者米価でないのですよ。それを一万三千円米価が実現されたことによって、あたかもこれは価格支持で農民に潤わされているのだという一方的な解釈は、間違いだ、それがまだ満足されていない価格である。しかし、二重米価制をとっている限りにおいて、消費者米価を据え置きにするならば、一方、生産者米価を上げるならば赤字がふえるのは当然である。そのできた赤字なんですから、この赤字というものは、消費者大衆にそれだけ安い米が配給される結果になる、そのための赤字じゃありませんか。だから、ことばをかえますならば、消費者保護費、消費者助成費、換言すれば社会保障費的な性格でないかと私は思う。そういう考え方に、農林省の農業の血管大臣としてあなたは解釈できるかどうかという問題を、あらためてお伺いいたします。
  74. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 出産者の米価決定方式がありますので、それで決定されておりますが、それが生産農民にとって必ずしも満足すべきものではないと私も考えております。しかし、毎年の米価を見ますると、昨年度等も、一昨年に比較いたしまするならば、一千二十何円でしたか、一千円以上一石当たり上がっておる。かりにこういう制度がないということならば、やはり需給関係で非常に変動いたします。あるいは高くなる場合もあるし、あるいは低くなる場合もある、そういう点から見られるならば、やはり一つの価格支持制度である。それからまた消費者にとりましては、こういう制度がなくて、なまのままにして手放しにしておけば、やはり生産者の売り渡しの価格に中間経費等を加算して、そうして消費者の価格ということが決定されますから、いまのようなわけにいかないと思います。だから、これが御説のとおり消費者の生活をカバーしている制度でございますから、米価の面において、社会保障制度という厳格な意味にとれるかどうかは別でございますが、それに似たような性格といいますか、価格対策を通じてのそういう性格は持っておると思います。しかし、これが社会保障制度だと、こういうふうには見られません。それは、一般の消費者ですから、非常にふところ工合がいい人にも売り渡しの制度を持っておりますので、社会保障というような厳格な意味に該当するかしないかは別といたしましても、そういうようなニュアンスといいますか、意味を持っておると私も十分承知をしておるわけであります。決して考え方にはそう違いはないと思います。
  75. 小平忠

    小平(忠)委員 その点で最後に総理にお尋ねいたしますが、いま農林大臣は、今日食管制度を、二重米価制をとっている限りにおいて、生産者米価を一方において上げ、消費者米価を据え置きにしておいた場合に当然赤字が出る、その赤字は、これは消費者米価を据え置きにしておくことによってできる赤字である、したがって、その一般消費者大衆に対する助成的な補助的な性格、そういうものであるということも認識しておるといま主管大臣はおっしゃったわけです。私は、この食管制度の問題は、日本の過渡的な経済政策、さらに日本の経済が国際経済に伍して一人前になるまで、また、貿易自由化の拡大がなされまして、この底の浅い日本の経済が立ち直っていく、こういう現時限において、これは当然やむを得ない措置であろうと思う。一国の主食というものは、ある程度経済が安定いたしましても、先進地の英国でも、あるいはスウェーデンでも、およそ主食については二重価格制をとっているわけです。支持価格制をとっているわけです。だから、食管の赤字がそういうたてまえにおいて一千億のものが二千億になろうと、これは物価政策のたてまえから、経済の安定からなされるならば、私はこれは非常に当然のことであろうと思います。したがって、今後も、この食管の赤字については、いま農林大臣がおっしゃったように、単なる農政の、農林予算の一般的な予算とは違うものである、消費者に対する補助的な助成的な性格であるとこういうふうに総理大臣認識されているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 実は、私は、昭和二十六年でございましたか、食管制度をやめようとして相当努力してGHQに働きかけたことがあるのです。いまから考えますと、少しやはり若げの至りだったと思います。食管制度は、ただいまのところ必要でございます。何のために食管制度をやるかといったら、やっぱり農家の収入の大宗である農産物価格の安定、そうして生産の確保ということが主たる目的であるのであります。しからば、消費者のほうは全然考えぬのかといったら、消費者のほうは、農産物の増産、価格安定、農家の所得補償というたてまえの上で消費者のほうを考える面もある、この程度に私は考えておるわけです。消費者の米価を安くするための食管制度ではない。あくまで、たてまえは、やはり農家の生産費・所得補償ということが主たる目的であるのであります。結果として、消費者の家計費の安定等も、これは法律に書いてあるとおりに考えております。根本はやっぱり農家ということを私は主にしていくという考え方でおります。
  77. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、総理に、劈頭のことばもありますが、現在の食管制度をさらに堅持されていくというお考えか、あるいは、もうこういう時勢になってきたから、まあひとつ食管制度も改めて、あるいは廃止するというお考えなのか、どちらでございますか。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、先ほど申し上げましたように、やっぱり食管制度というものは、ただいまの状態では続けていくべきだと考えております。しかし、食管制度におきましても、時代の変遷によりましていろいろ改善すべき点はあると思います。したがいまして、たぶん調査会を置いて検討していただいておると思いますが、根本の方針としては、ただいまのところ、これを廃止するとかいうふうな気持らは持っておりません。
  79. 小平忠

    小平(忠)委員 農林大臣に伺いますが、消費者米価を一部では食管の赤字のことも関連して上げようという動きがある。また、現に、あなたの指示でそういう作業もしておるんだということが耳に入ってきますが、いかがでございましょうか。
  80. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 再三申し上げておりますように、消費者米価は一年間据え置き、こういう方針でおります。ただ、私は、出産者米価と消費者米価との関連が、これはある程度ありますけれども、もっと検討してみるようなことも必要じゃないか。これはあくまで消費者米価を上げないという前提でございます。一度この前に私が農林大臣のときにも、食管会計のどんぶり勘定というようなことで、一体生産者米価の中でどれくらいがほんとうに生産者米価として末端までつながっておるのか、中間の経費等が非常に多かったりなんかしたりする、整理する必要がある、こういうので、どんぶり勘定をやめて、食管会計の制度を改めたことがございます。これは、やはり政府で持つべきもの、消費者もいつまでも同じということでなくて、ある程度負担すべきものはこれくらいのものがあるのじゃないかというような検討ぐらいはしてもいいじゃないか、そういう検討はしてみろ、こういうふうに事務当局に命じておることも事実でございます。それは、あくまで消費者米価をことしは上げないという前提のもとで検討を命じておるのでございまして、その検討をして上げるんだというふうに取られると困りますが、そういう検討はしてみる必要があるのじゃないか、こういうことを命じております。
  81. 小平忠

    小平(忠)委員 どうも、あとのことばが非常に意味深でありまして、聞くところによれば、大蔵大臣も消費者米価は上げるべきだという考え方に立って、主計局その他で食糧庁のほうとも連絡をとって作業を始めているということも一、二耳に入ってまいりましたが、そんなようなことはございますか。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 政府は一年間公共料金及び政府が関与できるものに対しては上げないということをきめておるのでありますから、現在消費者米価を上げるというようなことは考えておりません。しかし、いま農林大臣が言われましたのは、食管制度の中で所得補償方式をとっておる生産者米価と消費者米価との関連性に対しては、上げないということと、絶えず関連性を検討しておるという問題とは、全然関連がないわけでありまして、現在の段階において消費者米価を上げるなどということは考えておりません。
  83. 小平忠

    小平(忠)委員 最後に、私は、政策全体を通じまして、やはり食管の赤字一千二十六億をぶち込んで、農林予算がふえたふえたというような宣伝は大きな迷惑です。結果的に、この食管の赤字千二十六億を除きますと、前年度と農林予算は一つもふえていない。かけ声だけ革命的な、あるいは革新的な農政。農業の近代化をやるというようなことははまらぬ。ですから、三十九年度の予算をただいま審議し、これから成案を得るについて、この点にもっとやはり政府・与党は真剣に取り組んでいただきたいということを最後につけ加えて、次に移りたいと思います。  その次は、実は青森から三重県に至る太平洋岸で海流の異変によってノリの被害がきわめて甚大であります。関係府県八県に及ぶのでありますが、その被害八十一億にも及びましてノリ養殖漁家の深刻なる問題が起きておるのでありますが、これに対して政府はいかなる処置をとられておるか、また、今後これに対してどういう対策、処置をとられるのか、承りたいのであります。
  84. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ノリの被害につきましては、私どももまことに心配しておるわけでございます。そこで、それぞれ融資等の対策を講じた県もありますけれども、さらに、天災融資法の適用をいたしまして、なおその天災融資法も激甚地という指定のもとに検討をいたして、ノリの再生産に差しつかえないような措置をとりたい。これは財政当局ともいま検討して、ごく近いうちにその方針で決定を見るという段階にまで進めております。
  85. 小平忠

    小平(忠)委員 これは新聞報道でございますが、去る二月四日の閣議の席上で、農林大臣がこのノリの被害について発言をされまして、天災融資法の適用を受けるようにいたしたい、さらにこの被害が激甚でありますから万般の処置をいたしたいという発言をされて、同席の大蔵大臣もそれを了承されたと報ぜられておりますが、閣議のいわゆる決定事項と解釈してよろしゅうございますか。
  86. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 閣議の決定事項というよりも、閣議でそういう方針をきめましたから、具体的にその実現といいますか、そのためにいま事務的といいますか、そういうことで進めております。
  87. 小平忠

    小平(忠)委員 この海流異変というのは、われわれが想像し得なかった問題であります。暖流と寒流とのいわゆる異変というものが、単に太平洋岸でなく、東京湾にまで入ってきたというようなことは、ちょっとまれなことであります。実情を承ればまさに深刻でありますから、私は、天災融資法はもちろんのこと、県並びに市町村に対する交付税の増額なり、あるいは失業対策事業の施行なり、さらに被害者、罹災者の国税の減免処置などにつきまして、政府は万遺憾のない処置を講じていただきたい、こう思うのであります。  時間がございませんから、少し進めていきたいと思います。  通産大臣にお伺いいたしますが、特に昨年来大きな政治問題として政府当局も多大の努力をされておりまする石炭産業の振興であります。これには離職者の対策や産炭地振興等々重要な問題が山積いたしております。そこで私は通産大臣に率直に伺いますが、当初政府の見込んでおりました年間五千五百万トンの出炭規模は、今日すでに、これが見通しの誤りというか、大きく変動を余儀なくされている。現に、この出炭規模というものは、現在すでに五千七百万トンの需要が出ている。逆に輸入炭がふえている。こういうようなことは、出炭を規制し、さらに今日の需要とマッチしない通産行政のあり方じゃないかと思うのでありますが、この点いかがでございましょう。
  88. 福田一

    福田(一)国務大臣 御説のとおり、雑炭を入れますと五千七百万トンになっておりますが、私たちが五千五百万トンと言っておりますのは、カロリーを五千九百で押えた場合においてこれを五千五百万トン、こう言っておるわけで、五千九百のカロリーで押えますと、ことしの出炭量は、現在大体五千三百二十万トンということになりまして、五千五百万トンに及ばないということになっております。なお、輸入の問題でございますが、これは、原料炭の問題でいささかこの年度の途中におきましていろいろな問題がありまして、その意味で輸入をいたしておるのであります。できるだけこれは抑えていきたい、こういう方針で考えているわけでございます。
  89. 小平忠

    小平(忠)委員 輸入を押えていきたいという、そのことは当然だろうと思うのですが、当初の五千五百万トンを六千万トンくらいに需要を確保をしていくという、そういう措置を講ぜられる考えはございませんか。
  90. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれとしては、できるならばそういうような方法で考えていきたいとは思っておりますが、現実の問題は、需要をふやしていくということが非常に困難でございます。むしろ需要が減りつつあるという状況でありますので、ことしは、小平委員も御存じのように、電源開発でもって火力発電も一応建設するというような予算も組みまして、いわゆる石炭の需要は一番電力業界が持っておりますので、電力業界が十分にその供給をこなし得るような措置という意味で、こういうこともいたしております。その他いろいろの方途を講じておるのでございまして、私たちとしては、いわゆる精炭での五千五百万トンというのを確保するということをまず第一の目標として、いま予算その他の措置をとっておるわけでございます。
  91. 小平忠

    小平(忠)委員 さらに、産炭地振興の具体的な施策として、政府当局も通産省当局も本腰を入れておられることはわかるのでありますが、しかし、現実に産炭地における今日の非常な不況から、市町村の財政等に大影響をもたらしておる。この現実の姿に対しまして、具体的に、産炭地振興のための当初計画された諸施策をもう少し積極的に推進することができないのか。私は、大まかでよろしいですから、現状と、さらに今後の産炭地振興に対する施策について承りたいと思います。
  92. 福田一

    福田(一)国務大臣 産炭地の振興については、お説のとおり、これはもう石炭問題を取り扱う上で、非常に大事でちります。そこで、われわれとしてもできるだけの措置をしなければならないという考え方で対処しておるのでありますが、何といっても、産炭地振興といえば、仕事がなくなったところへ仕事を持っていくということが一番大きなことになるわけでありまして、その仕事を持っていくのに、それでは政府のほうでやれる範囲はどの程度であるか、また、民間の仕事ができるだけいけるような状態をつくり出し、あるいはまた、そこへ持っていくようなくふうをするということで、いろいろやっておるわけであります。そういう意味から言いまして、産炭地振興に関する基本計画というのを去年つくりまして、それからまた実施計画も大体つくりまして、それに基づいていまだんだんこれを実施に移しておるわけであります。来年度の予算におきましても、産炭地振興事業団の予算を、事業規模を五十二億にいたしまして、そしてボタ山の処理その他いわゆる土地造成の問題で二十五億円くらい、それから一般の民間企業に対する貸し付けを二十七億というふうにふやして、できるだけこれをやっていくようにしよう。同時に、そういう産炭地が非常に道路その他の公共事業で立ちおくれをしておりまして、実際に仕事を持っていこうと思っても道路ができてないじゃしょうがないじゃないか、こういうこともございましたので、そういう意味での予算も、これは通産省関係ではございませんが、別途に企画庁のほうの予算で三億円ばかり取って、そしてこういう仕事も今後ますます推進していこう、こういう前向きの態勢をとっておるわけでございます。
  93. 小平忠

    小平(忠)委員 抽象的な点もありまするので、さらに一般質問、分科会等においてお伺いいたしたいと思いますが、最後に、昨年の三井三池の炭鉱爆発の事故は、まことに炭鉱爆発災害として歴史の上にもまれに見る大惨事でございました。災害は忘れたころにやってくる。今日、石炭行政の中でやはり問題になるのは、保安行政をどうしても一元化すべきでないか。それが通産省対労働省の中に依然として意見対立のままにここに来ておると思う。ですから、ほんとうに保安行政について完ぺきを期する意味からも、通産大臣としまして率直に、小さなことにこだわらないで、生命財産に影響する大きな問題でありますから、この際、炭鉱の保安行政の一元化ということについてあなたはどう考えておられるか。さらに、三井三池のあの爆発の原因はどこにあったのか。もう相当長期の期間をかけて調査も終わっていることと思うのでありますが、そういう点についてあなたの御所見を承りたいと思います。
  94. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり、三池でああいう事故が起きましたことは、われわれとしてもまことに遺憾でございまして、実はその原因等については、技術調査団を現地へ派遣いたしまして調査をいたしておる段階であります。これに関連をして、あなたは、いわゆる保安行政というものを労働省に一元化してやってみてはどうかと、こういうような御質問かと思うのでありますが、実を言いますと、この問題は、多年世界においてもある意味で議論されておったことがあるのであります。日本においてもずいぶん長くこれは議題になっておるわけでございまして、われわれとしても決して過去の実態にこだわってこの問題を処理しようとは思っておりません。しかし、やはり石炭産業におきまして生産と保安というものは一体的なものでございまして、ほかの産業とはいささか違っておる面もあるやにわれわれは見ておるのでございまして、いままでも労働省とは緊密な連絡をとってまいりました。また、今度の三池の鉱山再開にあたりましても、労働省と非常に連絡をいたしまして、相互連絡の上で問題の処理をはかってまいったわけであります。なお、これは御参考までに申し上げるのでありますが、世界の法制を見てみましても、労働省がやっておるところはインドだけでございまして、アメリカ、イギリスその他各国における石炭に関する保安行政は、日本と同じようにやはり通産省が——そのところによって名前は違いますが、いわゆる石炭の生産をやっておるところでやはり所管をしておるというのが実情でございます。しかし、今後ああいうような事件が起きないということを十分にわれわれとしても考えていかなければなりませんので、この問題は今後ともひとつ研究をさせていただきたいと思います。
  95. 小平忠

    小平(忠)委員 非常に重要な点でございますが、時間の都合で次回に譲りたいと思います。  次に、河野建設大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、いよいよ本年のオリンピックを前にいたしまして、東京を中心に、あなたの強力なる政治力によってオリンピック道路をはじめ、高速道路、いわゆる自動車専用道路、こういうようなものが画期的に進められておることはまことに同慶にたえませんが、ただ、なかなかこういった交通ひんぱんなところで行なわれる道路の整備というものは予定どおりいかないという点もあるのであります。この歴史的な国際行事オリンピックを前にして、どのような見通しをお立てになっておるのか、そういうことについて率直に現状と完成の見通しを伺いたいのと、さらに、これはオリンピック道路とは関係ございませんが、あなたの多年の主張である全国的な道路網の整備、縦貫道路、それは南は九州から北は北海道まで大体どのような計画を立てておられるのか、この機会に私は承りたいと思うわけであります。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお尋ねになりました各道路の進歩状況を御説明申し上げます。  首都高速道路一号線、都心から羽田に参ります道路でございます。これは現在八九%くらい進行しておりますので、当然オリンピックまでには十分に間に合います。なお、四号線、都心から新宿に参りますもの、これは八四%できております。なお、二号線、三号線は七三%、放射四号線は九七%、環状七号線は九六%、その他の道路はおおむね九〇%くらい進捗いたしておりますので、オリンピック開催の大体前月くらいまでにいずれも完成することに相なっております。その予定で進んでおりますし、用地等につきましても、あまりめんどうなものは少のうございますから、大体その予定どおりに進んでおる、また、やらなければならぬという心がまえでやっております。  なお、お尋ねになりました全国的な道路について簡単に申し上げますと、神戸から名古屋に参りますいわゆる名神国道につきましては、現に滋賀県の栗東まで開通いたしておりますが、この栗東まで参っておりますものが、四月の十日前後までに大垣までおおむね開通する予定でございます。引き続いて九月十日前後に尾張一宮まで開通をいたしますことにいたしております。尾張一宮から名古屋までは、現に八〇%ぐらい完成しておりますバイパスがありますので、これによって名古屋−尾張一宮間は連続することにいたしまして、したがって、九月の十日前後に名古屋−神戸間の全線を開通する予定で努力をいたしております。  名古屋−東京間は、御承知のとおり、ようやく測量、事業認定ができましたところでございまして、用地の交渉にこれから入っていくのでございまして、なるべく早くこれもやりたいという考えで、予算の面は一応めどはついておりますが、事業を竣工いたしますのにおおむね四十二年度一ぱいぐらいかかるのじゃないかという予定でございます。  それから、次には、名古屋から三重、奈良、大阪といういわゆる阪名をやることにして準備中でございますが、これも昭和四十年の十二月の終わりまでに三重県の関から奈良県の天理までの間を完成することにいたしまして、天理−大阪閥は有料道路で、いまどの路線を通るかということを鋭意調査中であり、なお、関から名古屋に参ります区間は、山手を通りまして名古屋に延長することを五カ年計画で取り入れたいというつもりでございます。  その他にもいろいろ計画をしておりますものが東京を中心にございますけれども、これらも順調に進めておりますが、何分経費が非常にかさみますので、いま予算にお願いいたしておりまする今後の五カ年計画、四兆一千億をもっていたしましても、ただいまお示しになりました高速道路で青森から鹿児島まで、もしくは裏日本と表日本を結ぶ道路というようなわけにはなかなかまいりかねます。したがって、将来第三次五カ年計画をあらためて考えなければならぬ。そうして、どうしても青森から鹿児島までの間に高速道路を通すということにいたさなければならないと考えておりますが、まだそこまでは手順がなかなか進んでおりません。  ただ、この機会に申し上げて御参考に供し、また御批判を賜わりたいと考えますことは、従来の道路計画とこれから計画いたしまする道路網との間には大きな変革を考えなければならぬのじゃなかろうか。たとえて申しますると、ただいま申しまするような大阪−東京間の道路にいたしましても、従来の国道とは全然別のところを通行いたします。つまり、なるべく早く、そして工事が楽にできる場所を選びます。さらにまた、地方の開発を意図して道路を開設いたします。そういう関係からして、従来の国道、いわゆる都市と都市とを結ぶというような感覚よりも、産業立地、産業開発等において必要なところに道路網を完備していく。日本の将来の産業構造のあり方がどういうふうになっていくだろうかということを一応想定いたしまして、二十年先には大体こういったような日本の産業関係がこういうふうな見通しになるのじゃなかろうか、また、産業の分布等もこういうふうなことに変わっていくのじゃなかろうか、たとえば、経済が公開されました関係から、世界経済と日本経済の結びつきからして相当に変わっていくだろう、そういったようなことを考えつつ、二十カ年のまあ夢のようなものでございますけれども、一応の青写真をいま検討いたしております。素案はできておりますけれども、そういうものを十分各方面の権威者によって御設計をいただきまして、それを基盤に置いて、それをなるべく完遂していくような方向で、これからつくる道路が将来むだな道路にならないように、じゃまな道路にならないようにしたいという一つの基本線を持ちつつ、その基本線に合わせて道路を順次仕上げていく方向で考えておるのでございます。  なお、詳しいことはいずれ分科会等で御説明申し上げます。
  97. 小平忠

    小平(忠)委員 約束の時間がまいりましたので、私の質問をこれで終わりたいと思います。  ただ、当面重要な問題につきまして、私はさらに関係閣僚質問の通告をいたしておったのでありますが、時間がなくなりましてできなくなったことを深くおわびいたします。しかし、このことは次回におきまして十分政府の所信をただし、本予算の審議についても私は最善を尽くしたいと思うのでありますが、最後に、池田総理に、あなたは三百名という絶対多数の与党の上に今日内閣首班として各般の問題に四つに取り組んでおられるのでありますが、そういう絶対多数の力を背景にしておられるあなたはもっと自信と勇気を持って、当面する外交問題やあるいは内政問題に善処していただきたいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  98. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて小平忠君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和三十八年度補正予算三案に対する質疑は全部終局いたしました。     —————————————
  99. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより昭和三十八年度補正予算三案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。  五島虎雄君。
  100. 五島虎雄

    ○五島委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和三十八年度補正予算第3号、特第3号及び機第3号に対しまして、反対の立場から討論を行なわんとするものであります。  昭和三十八年度の予算が成立いたしまして以来、わが国の経済は三つの深刻な矛盾に直面しているのであります。  その第一は、申すまでもなく、異常な物価騰貴であります。池田総理就任以来急速に上がり始めました物価は、本年も依然として上がり続け、総理府統計におきましても、昭和三十五年度三・八%、三十六年度六・三%、三十七年度六・七%、さらに三十八年度の十二月には前年度同月比六・五%の値上がりを示しているのであります。このような事態に対して、ついに政府も公共料金を一年間値上げをしないという方針をきめざるを得なくなったのであります。しかしながら、これだけでは何ら物価安定のための政策にはなっていないと言わざるを得ません。現在政府のなさなければならないことは、何よりも公共料金を値上げしないで済む具体的措置であり、さらに、公共料金引き上げをストップすることによって生ずる矛盾をどう解消していくかということであります。これを現状のまま放置するならば、昭和三十九年度においても物価の値上がりは政府の予測するところの四・二%をはるかにこえ、国民生活をますます圧迫することは火を見るよりも明らかであります。  第二には、最近特に中小企業の倒産がきわめて顕著になってきているということであります。一月中の企業倒産件数は、負債総額が一千万円以上のものだけで百九十八件にのぼっており、一月の倒産件数では戦後最大となっているのであります。この状態で二月を推移いたしますならば、金融は一そう繁忙になり、三月は決済期ということとも相まちまして、金融はますます窮迫し、中小企業の倒産、不渡り手形の発生は日を追ってふえる見通しが強いといわれております。その主要な原因は、大会社の下請代金支払いがますますおくれ、かつ銀行の大企業本位の選別融資の傾向が本格的になってきたことにあります。しかも、この倒産につきまして特徴的なことは、企業間信用がふくれ上がっているために、倒産企業の負債額がきわめて多く、一千万円以上の負債をかかえて倒産した企業の負債総額が一月だけでも二百八十億円に達しているのであります。百億円や二百億円の融資程度では、いまやとうてい現状を打破することは不可能であり、さらに、抜本的な解決策を必要としている時期であります。  第三に、国際収支の悪化が著しくなっていることであります。日本の経常収支は、昭和三十八年一月から十二月まで、すべての月において赤字であります。一月の貿易収支につきましても一億三千万ドル以上の赤字が見込まれ、二月、三月にも改善のきざしは全くないのであります。池田内閣はこうした国際収支の危機を一貫して外資への借金政策でごまかしてきたのでありまするが、いまや、アメリカの金利平衡税だけでなく、欧州諸国の金融引き締めをも考慮いたしまするならば、情勢は、政府の外資依存政策が全く失敗であったことを示しているのであります。いわば日本の経済は池田内閣の経済政策の失敗によってまさに危機に瀕していると言わなければならないのであります。  このような状態に対しまして、政府が緊急に対策を立てることこそ目下の最大の課題なのでありまして、このことが財政法の精神に沿った補正のあり方だと言えるのであります。しかるに、今回の補正予算は、何らこの役割りを果たそうとしていないのであります。今回の補正を貫く基本的性格を考えてみまするならば、このことは明らかであります。  まず第一に、財源の問題であります。申すまでもなく、今回の補正財源は、物価高に伴う名目的な所得増加により生じたところの租税の自然増収であります。いわば、政府の失政とずさんな経済見通しの結果から、国民の犠牲によって確保された税の取り過ぎなのであります。この自然増収を安易に新規財源化することは、さなきだにインフレを助長するものであります。かかる態度はこれを根本的に改めることこそ必要なのではありますまいか。したがって、今回の補正は、本来的には、財政のインフレ的要因を除去するための大衆減税と、経済社会事情の急激な変化に見合って、効果的に編成されなければならないものなのであります。しかるに、今回の補正の実体は、これらの課題を完全に裏切るものであると言わなければなりません。  今回の補正予算八百二十六億円の内容を見てみますと、義務的経費の不足補てんを除いては、政策的な経費は産業投資特別会計及び同会計資金への繰り入れ中心となっております。このうち六十億円は輸出入銀行への出資に充てられ、もっぱら大企業のために使われるものであります。また、残りの三百億円は産投会計資金繰り入れられるものであって、将来の出資需要の増大に対処して弾力的に運用をはかるものであると政府は説明をしているのであります。これらの資金は、いずれ開発銀行や輸出入銀行などを通じて大企業を利するものにほかなりません。すなわち、政府は、勤労大衆には実質的な増税を押しつけながら、大企業に対しては資本蓄積を援助することによって、国民大衆の犠牲の上に相も変わらず誤れる所得倍増政策を貫こうとしているのであります。つまり、国民の税金を、緊急の対策に何ら使わないで、産投会計という内ポケットに温存しておいて、ひそかに大企業のために弾力的に使おうというのが補正予算のねらいであり、三十九年度予算の膨張的な破定をごまかすための一つの手段と言うべきであります。かかることは断じて許すことができないばかりでなく、このまま放置するならば、物価の上昇、国際収支の悪化、中小企業の倒産はとめどもなく進行し、国民生活を破壊するに至るであろうことは明らかであります。したがいまして、われわれは、このような性格の本補正予算案にはあくまで反対するとともに、次の方法で編成し直すべきが当然であることを主張いたします。  第一に、物価の安定をはかるための諸施策をとることであります。単に公共料金を一年間値上げしないということだけではなく、進んで公共料金の値上げはしなくて済むような政策を実際に行なうことであります。特に、公営企業につきましては、料金値上げを押えるために生ずる矛盾を根本的に解決するための財政上の措置を講ずることである。政府は、地方公営企業がかかえている矛盾に対し一体どのような手を打ったでありましょうか。少なくとも、施設の償却期限を延長し、過重な金利負担から解放されるような財政措置を講ずることが必要であります。また、公立病院や医師、看護婦の養成までをも独立採算のワク内に押し込めないで、これらに必要な資金政府が投下すべきであろうと思います。  第二に、国際収支悪化の根本的な原因である対米一辺倒の貿易構造を改め、自由諸国の貿易振興はもちろんのこと、中国と正常な国交樹立、社会主義諸国と平等互恵の立場に立って経済関係を発展させることであります。このためには、中国貿易で延べ払い輸出を積極的に承認するとともに、それに必要な金融措置を拡大すべきであります。中国フランス国交樹立が行なわれ、国連加盟諸国の過半数が中国と正常な関係を結ぼうとしておる現在は、こうした方面に進むべき絶好のチャンスであるということを主張いたします。  第三に、中小企業に対しましては、大企業の不当な圧迫をやめさせ、また連鎖反応的に起きる倒産を食いとめるために、積極的な財政及び金融措置を行なうべきであります。特に融資増とあわせて金利引き下げのための諸施策をとるべきであります。  第四点に、池田内閣の政策の犠牲となった国民の諸階層に積極的な救済措置を行なうべきであります。たとえば、年金受給者や生活保護者の権利は物価の値上げによって大幅に縮小させられているのであります。少なくとも、さしあたりこの権利を回復するだけの措置は最小限財政面でとるべきであります。さらに、勤労者のための住宅対策に必要な財政措置を講ずることは、ますます緊要となってきているのであります。  財政法にいう補正予算は、まさにこうした緊急な課題に対してこたえるということを目的としているのであります。そうでなければ、国民をごまかすために、当初予算は少なくして、政府や大資本に都合のいい補正を少しずつ水増しいたしまして、結局は過大な予算にすることも可能でありまして、今回の補正における産業投資資金繰り入ればまさにその欺瞞的性格をはっきりと示しているものであるということを指摘いたしておきます。  私は、こうした意味で、今回の補正予算案に強く反対するとともに、いま述べました四つの緊急対策に政府が直ちに取り組むよう要求するとともに、政府はかかる反国民的な予算案はいさぎよく撤回されまして提出し直すべきであると、強く主張いたしまして、私の討論を終わるものであります。(拍手)
  101. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に櫻内義雄君。
  102. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十八年度補正予算第3号、特第3号及び機第3号の三案に対しまして賛成の意を表明するものであります。  右三案の内容につきましては、さきに大蔵大臣から御説明がありましたとおり、産業投資特別会計及び同特別会計資金への繰り入れ、義務教育国庫負担金等義務的経費の不足補てん、地方交付税交付金の増額等を内容とするもので、一般会計歳出追加額は八百二十六億円余と相なっており、本年度予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった諸経費が計上せられているのでございまして、何ら異存のないところでございます。  ただ、この際、産業投資特別会計資金への繰り入れ三百億円について反対論がありますので、一言私どもの見解を申し述べたいと存じます。わが国経済が目下開放体制への移行に直面し、産業基盤の整備、輸出の振興等について一そうの推進をはからなければならない要請に迫られている際、同会計の原資にこの程度の額を補充し、その資金を確保しておくことは、今後の経済情勢に弾力的に対処し得るものとして、時宜を得た妥当な措置であると信ずる次第であります。  反対論によれば、この三百億円を中小企業に対する金融対策として使用すべきとか、また、公営住宅対策費に充てるべきとか申されておりますが、中小企業への年度末金融については、政府ではその重要性を考慮し、目下具体的に検討されておりますし、また、住宅対策につきましては、府政は従来とも大幅な改善措置を講じており、特に明年度からは一世帯一住宅を目標として予算及び財政投融資を通じ画期的施策を講ぜんといたしておるのであります。  以上、簡単ながら所見の一端を申し述べ、本三案に賛成をいたす次第であります。(拍手)
  103. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次いで永末英一君。
  104. 永末英一

    ○永末委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十八年度予算第三次補正の三案について反対の意を明らかにいたします。  前回の補正は、主として、公務員給与の引き上げ、食管会計と農業共済会計への繰り入れ、災害復旧費の追加並びに国鉄と電電公社に対する追加融資等、政策的な歳出補正でありましたが、今回の補正は、義務的経費や既定経費の不足補てん、政策補正としては産投会計へ三百六十億円の繰り入れ並びに国鉄に対する融資を行なっております。  わが党は、政府案の一般会計予算補正のうち、義務的経費十二項目、既定経費の不足補てん並びに不用額の削減  一項目については、これを是とするものであります。年度末にあたってこのような予算補正を行なうのは行政当局として当然の措置だからであります。しかしながら、わが党は、歳出補正のうち、産投会計へ三百六十億円繰り入れ政策上の補正については、遺憾ながら承認することができません。  財政法第二十九条の規定によりまして、補正予算の編成は、第一に経費不足の補てん、第二に当初予算作成後に免じた事由に基づく経費の支出または追加、または追加以外の予算の変更の場合に行なうことができます。したがって、補正予算の編成は、単に経費不足の補てんにとどまるのではなく、財源の余裕は積極的に当初予算編成後の新たなる政策上の必要に基づく補正予算を編成すべきであります。私ども民社党は、財政法第二十九条の精神がここにあると確信をいたしておるものであります。  この見地に立って見ますとき、政府案の産投会計へ三百六十億円の繰り入れについて、私どもは大きな疑義を持たざるを得ません。私どもは、三蔵六十億円繰り入れのうち、日本輸出入銀行出資する分は別といたしましても、その大部分の三百億円をそっくり産投会計資金の中にいわば備荒貯蓄しておこう、すなわち、さしあたり特定の出資目標はないが、とにかく余裕財源をここにプールしておこうというような政府考えには賛成できません。このような措置は、財政法で規定するところの「歳出とは、一会計年度における一切の支出をいう。」という規定のおよそ無理な拡大解釈であり、単年度制財政制度の自分かってな破壊であります。  なぜこんなことをやらねばならないか。その原因は、産投会計が毎年度ガリオア、エロアの債務支払い百五十八億一千万円を義務づけられているところにあります。私どもは、日米間に協定された対米債務支払いをやめよと言うのではありません。債務支払いの窓口は、しかしながら、会計上明確にすべきであるとこれまで主張してまいりました。ところが、第三次補正における唯一の政策的歳出補正が、三十九年度、四十年度における対米債務支払い資金をプールしておくことに限定されておるというのでは、まことに目をおおうべき政策の貧困と言わざるを得ないのであります。  第三次補正案が提案されている現在は、経済情勢といたしましては、昨年十二月以来の苛烈な金融引き締めによって、中小企業の倒産、内整理、不渡り手形の発行が激増しているときであります。一月の東京における不渡り手形の枚数は六万枚余、前年一月より二割増であります。倒産件数は百九十八件、前年一月の二倍、負債金額は二百八十二億円で、戦後の最高を記録しております。政府は、この情勢に対して、資金運用部資金百億円の融資、市中に対する特別買いオペ百億円の対策を用意すると公表いたしておるようでありますが、この双方とも短期融資方針であります。政府金融引き締めが相当に長期にわたることが必至になっておる現在、このような短期融資で中小企業の金融難が糊塗され得ないことは、だれの目にも明らかであります。いわゆる中小企業の三月危機は、この程度の政府の方針で救済し得ないことは明らかではありませんか。今回の補正措置のうちで、中小企業に対する財政投融資が計上されていないのは、まことに不可解千万と言わなければなりません。政府の言う中小企業に対する革新的施策などは、まことに羊頭狗肉のたぐいであります。  また、政府は、首相の施政方針演説において、高度福祉国家建設を声高く主張しているのでありますが、国民福祉の最低必要条件ともいうべき住宅、上下水道、し尿、じんあい等の清掃施設についての予算額があまりに不十分であることは、政府自体がすでに認めているところであります。この程度の狭い範囲を一べつしただけでも、第三次補正において余裕財源のすべてを投入して果たすべき歳出補正項目は山積しているではありませんか。民社党は、現在における国の施策としても、かつまた財政法に規定する補正予算編成の制度論といたしましても、政府案が全くうしろ向きである点をはなはだ遺憾と考えます。  わが党は、ここで政府に対して要求したい点は、第一、産投会計資金への三百億円繰り入れを中止し、このうち百五十億円を公営住宅建設費とし、残りの百五十億円を国民金融公庫に対する出資に切りかえること、第二、本年度の郵便貯金、簡保資金の伸びに見合って、資金運用部資金よりの融資追加を行なうことは可能とわれわれは考えます。この際、中小企業金融公庫に三百億円、商工中金に百億円の財政融資を追加すること、右の二点について政府案は修正されるべきであるとわれわれは考えております。この修正案を考えない政府案に対しては、わが党は断じて反対であります。  補正予算の編成は単なる行政上の事務であってはなりません。血の通った政治の全力投球でなければならないのであります。政府補正予算編成態度には、との気魄が全く見られないことは、きわめて遺憾であります。  これをもって私の反対討論を終わります。(拍手)
  105. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(第3号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  106. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立多数。よって、昭和三十八年度補正予算はいずれも原案のとおり可決いたしました。(拍手)  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕
  108. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次会は明十二日午前十時から開会し、昭和三十九年度総予算についての公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十一分散会