○五島
委員 私は、
日本社会党を
代表いたしまして、
昭和三十八年度
補正予算第3号、特第3号及び機第3号に対しまして、反対の
立場から討論を行なわんとするものであります。
昭和三十八年度の予算が成立いたしまして以来、わが国の経済は三つの深刻な矛盾に直面しているのであります。
その第一は、申すまでもなく、異常な物価騰貴であります。
池田総理就任以来急速に上がり始めました物価は、本年も依然として上がり続け、
総理府統計におきましても、
昭和三十五年度三・八%、三十六年度六・三%、三十七年度六・七%、さらに三十八年度の十二月には前年度同月比六・五%の値上がりを示しているのであります。このような事態に対して、ついに
政府も公共料金を一年間値上げをしないという方針をきめざるを得なくなったのであります。しかしながら、これだけでは何ら物価安定のための
政策にはなっていないと言わざるを得ません。現在
政府のなさなければならないことは、何よりも公共料金を値上げしないで済む具体的措置であり、さらに、公共料金引き上げをストップすることによって生ずる矛盾をどう解消していくかということであります。これを現状のまま放置するならば、
昭和三十九年度においても物価の値上がりは
政府の予測するところの四・二%をはるかにこえ、
国民生活をますます圧迫することは火を見るよりも明らかであります。
第二には、最近特に
中小企業の倒産がきわめて顕著になってきているということであります。一月中の企業倒産件数は、負債総額が一千万円以上のものだけで百九十八件にのぼっており、一月の倒産件数では戦後最大となっているのであります。この
状態で二月を推移いたしますならば、金融は一そう繁忙になり、三月は決済期ということとも相まちまして、金融はますます窮迫し、
中小企業の倒産、
不渡り手形の発生は日を追ってふえる見通しが強いといわれております。その主要な原因は、大会社の下請代金
支払いがますますおくれ、かつ銀行の大企業本位の選別融資の傾向が本格的になってきたことにあります。しかも、この倒産につきまして特徴的なことは、企業間信用がふくれ上がっているために、倒産企業の負債額がきわめて多く、一千万円以上の負債をかかえて倒産した企業の負債総額が一月だけでも二百八十億円に達しているのであります。百億円や二百億円の融資程度では、いまやとうてい現状を打破することは不可能であり、さらに、抜本的な
解決策を必要としている時期であります。
第三に、国際収支の悪化が著しくなっていることであります。
日本の経常収支は、
昭和三十八年一月から十二月まで、すべての月において赤字であります。一月の貿易収支につきましても一億三千万ドル以上の赤字が見込まれ、二月、三月にも改善のきざしは全くないのであります。
池田内閣はこうした国際収支の危機を一貫して外資への借金
政策でごまかしてきたのでありまするが、いまや、アメリカの金利平衡税だけでなく、欧州諸国の
金融引き締めをも考慮いたしまするならば、
情勢は、
政府の外資依存
政策が全く失敗であったことを示しているのであります。いわば
日本の経済は
池田内閣の経済
政策の失敗によってまさに危機に瀕していると言わなければならないのであります。
このような
状態に対しまして、
政府が緊急に対策を立てることこそ目下の最大の
課題なのでありまして、このことが
財政法の精神に沿った
補正のあり方だと言えるのであります。しかるに、今回の
補正予算は、何らこの役割りを果たそうとしていないのであります。今回の
補正を貫く基本的性格を
考えてみまするならば、このことは明らかであります。
まず第一に、
財源の問題であります。申すまでもなく、今回の
補正の
財源は、物価高に伴う名目的な所得増加により生じたところの租税の自然増収であります。いわば、
政府の失政とずさんな経済見通しの結果から、
国民の犠牲によって確保された税の取り過ぎなのであります。この自然増収を安易に新規
財源化することは、さなきだにインフレを助長するものであります。かかる
態度はこれを根本的に改めることこそ必要なのではありますまいか。したがって、今回の
補正は、本来的には、財政のインフレ的要因を除去するための大衆減税と、経済社会事情の急激な変化に見合って、効果的に編成されなければならないものなのであります。しかるに、今回の
補正の実体は、これらの
課題を完全に裏切るものであると言わなければなりません。
今回の
補正予算八百二十六億円の
内容を見てみますと、義務的経費の不足補てんを除いては、
政策的な経費は産業投資特別会計及び同会計
資金への
繰り入れが
中心となっております。このうち六十億円は
輸出入銀行への
出資に充てられ、もっぱら大企業のために使われるものであります。また、残りの三百億円は
産投会計資金に
繰り入れられるものであって、将来の
出資需要の増大に対処して弾力的に運用をはかるものであると
政府は説明をしているのであります。これらの
資金は、いずれ開発銀行や
輸出入銀行などを通じて大企業を利するものにほかなりません。すなわち、
政府は、勤労大衆には実質的な増税を押しつけながら、大企業に対しては資本蓄積を援助することによって、
国民大衆の犠牲の上に相も変わらず誤れる所得倍増
政策を貫こうとしているのであります。つまり、
国民の税金を、緊急の対策に何ら使わないで、
産投会計という内ポケットに温存しておいて、ひそかに大企業のために弾力的に使おうというのが
補正予算のねらいであり、三十九年度予算の膨張的な破定をごまかすための
一つの手段と言うべきであります。かかることは断じて許すことができないばかりでなく、このまま放置するならば、物価の上昇、国際収支の悪化、
中小企業の倒産はとめどもなく進行し、
国民生活を破壊するに至るであろうことは明らかであります。したがいまして、われわれは、このような性格の本
補正予算案にはあくまで反対するとともに、次の方法で編成し直すべきが当然であることを主張いたします。
第一に、物価の安定をはかるための諸施策をとることであります。単に公共料金を一年間値上げしないということだけではなく、進んで公共料金の値上げはしなくて済むような
政策を実際に行なうことであります。特に、公営企業につきましては、料金値上げを押えるために生ずる矛盾を根本的に
解決するための財政上の措置を講ずることである。
政府は、地方公営企業がかかえている矛盾に対し一体どのような手を打ったでありましょうか。少なくとも、施設の償却期限を延長し、過重な金利負担から解放されるような財政措置を講ずることが必要であります。また、公立病院や医師、看護婦の養成までをも独立採算のワク内に押し込めないで、これらに必要な
資金は
政府が投下すべきであろうと思います。
第二に、国際収支悪化の根本的な原因である対米一辺倒の貿易構造を改め、自由諸国の貿易振興はもちろんのこと、
中国と正常な
国交樹立、社会主義諸国と平等互恵の
立場に立って経済
関係を発展させることであります。このためには、
中国貿易で延べ払い輸出を積極的に承認するとともに、それに必要な金融措置を拡大すべきであります。
中国と
フランスの
国交樹立が行なわれ、
国連加盟諸国の過半数が
中国と正常な
関係を結ぼうとしておる現在は、こうした方面に進むべき絶好のチャンスであるということを主張いたします。
第三に、
中小企業に対しましては、大企業の不当な圧迫をやめさせ、また連鎖反応的に起きる倒産を食いとめるために、積極的な財政及び金融措置を行なうべきであります。特に融資増とあわせて金利引き下げのための諸施策をとるべきであります。
第四点に、
池田内閣の
政策の犠牲となった
国民の諸階層に積極的な救済措置を行なうべきであります。たとえば、年金受給者や生活保護者の権利は物価の値上げによって大幅に縮小させられているのであります。少なくとも、さしあたりこの権利を回復するだけの措置は最小限財政面でとるべきであります。さらに、勤労者のための住宅対策に必要な財政措置を講ずることは、ますます緊要となってきているのであります。
財政法にいう
補正予算は、まさにこうした緊急な
課題に対してこたえるということを目的としているのであります。そうでなければ、
国民をごまかすために、当初予算は少なくして、
政府や大資本に都合のいい
補正を少しずつ水増しいたしまして、結局は過大な予算にすることも可能でありまして、今回の
補正における産業投資
資金繰り入ればまさにその欺瞞的性格をはっきりと示しているものであるということを指摘いたしておきます。
私は、こうした
意味で、今回の
補正予算案に強く反対するとともに、いま述べました四つの緊急対策に
政府が直ちに取り組むよう要求するとともに、
政府はかかる反
国民的な予算案はいさぎよく撤回されまして提出し直すべきであると、強く主張いたしまして、私の討論を終わるものであります。(拍手)