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1964-02-10 第46回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十日(月曜日)    午前九時三十五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       今松 治郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君   小宮山重四郎君       重政 誠之君    周東 英雄君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    山本 勝市君       亘  四郎君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    五島 虎雄君       河野  密君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       藤田 高敏君    山花 秀雄君       今澄  勇君    小平  忠君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         法務事務君         (入国管理局         長)      小川清四郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (為替局長)  渡邊  誠君         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         水産庁長官   庄野五一郎君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道常         務理事     遠藤 鉄二君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      山際 正道君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十日  委員小坂善太郎君、古川丈吉君、久保三郎君、  安井吉典君及び柳田秀一辞任につき、その補  欠として小宮山重四郎君、橋本龍太郎君、石田  宥全君藤田高敏君及び堂森芳夫君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員小宮山重四郎君、橋本龍太郎君及び藤田高  敏君辞任につき、その補欠として小坂善太郎君、  古川丈吉君及び加藤清二君が議長の指名で委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公述人選定の件  昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)  昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)  昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)、以上三案を一括して議題とし、審査を行ないます。  提案趣旨はすでに聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手委員 本日は、補正予算関連して、当面の重大問題である漁業協定中心とする日韓会談、並びに経済の見通しと産投会計についてお伺いをいたしたいと思います。  まず総理大臣にお伺いをいたします。  総理大臣は、昨年の一月十八日の記者会見において、日韓漁業協定には大幅に譲歩する考えはないと言明をされております。同様なことは本委員会においても述べられておるのでございます。請求権においては譲歩したが、漁業協定においては譲歩すべきでないという国民の声に対して言明されたと思うのでありますが、そのお考えはいまもお変わりございませんか。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓会談につきましては、できるだけ早く妥結したいと思っておりまするが、われわれの主張を曲げてまでやろうということは考えておりません。われわれは誠意をもって両国が末長く繁栄の道をたどれるようなもとをつくろうとしておるのであります。
  5. 井手以誠

    井手委員 主張を曲げてまでということは、いわゆる国際慣行を曲げてまで、大幅に譲歩してまで急いで妥結する必要はないという意味でございますね。もう一回お答えを願います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 国際慣行並びに国際法上妥当とされておるいわゆる水域の問題につきましては、われわれはあくまで当初の主張を続けていくつもりでおります。
  7. 井手以誠

    井手委員 外務大臣にお伺いをいたします。日韓漁業協定については、李ライン撤廃前提であると考えるのであります。これが日韓会談の主眼であると考えるのであります。すでに漁業交渉については、専管水域の問題、さらに漁業規制の問題についてお話し合いが進められておるようでありますが、李ライン撤廃についてはすでに合意になりましたかどうか、撤廃について意見が一致したかどうか、その点をお伺いいたします。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、われわれは公海自由の原則の上に立ちまして交渉を進めておるわけでございまして、李ライン不当不法のものであるということは、日本国民の確信でございます。したがいまして、そういう方向で問題を処理いたしておりますことは、御案内のとおりでございます。ただ、われわれの交渉場面におきまして正式に妥結するところまで参っておりませんので、先方の最終的な意思を具体的な形で表明を受けるというところまでは至っておりません。
  9. 井手以誠

    井手委員 外務大臣、私どもは、李ライン撤廃前提である、かように考えております。それなくしては、具体的な漁業協定意味をなさぬと考えております。いまの説明によりますと、まだ合意に達していないということでありますが、漁業交渉については、まずこの撤廃意思があるかどうか、どんな形式で撤廃するかということに合意に達することが前提ではありますまいか。外務大臣は、その撤廃についてまず合意に達することを第一歩として交渉なさるお考えはないのかどうか、あらためてお伺いをいたします。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 井出さんがお触れになりました専管水域の問題、あるいは専管水域外共同規制の問題というものを両国交渉団の間で問題にいたしておるわけでございます。したがいまして、その交渉態度から御推測いただきまして、いま大前提と言われた問題につきまして彼我の考え方という点は御推測願えるかと思うのでございますが、ただ私が申し上げたのは、まだ交渉のさなかでございまして、最終的に具体的な形で先方意思が表明されていないということを申し上げたわけでございます。
  11. 井手以誠

    井手委員 それでは、専管水域共同規制のことに話し合いを進めておることは、李ライン撤廃を含みとするということでございますね。そういたしますと、もし専管水域共同規制についてかりに話し合いがついたとしても、李ライン撤廃について話し合いができなければ、この漁業協定は御破算になるわけですね。一番大事な点ですから、その点は強くひとつはっきりしておいてもらいたいのです。李ライン撤廃がなくしては漁業協定は成立しないということ、その点についてはっきり外務大臣言明をしていただきたい。これは国民が欲していることです。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことと思っています。
  13. 井手以誠

    井手委員 当然のことではあるけれども外務大臣から明確におっしゃっていただきたい。当然のことだけでは済みません。李ライン撤廃なくしては漁業協定はあり得ないということを明確にここにおっしゃっていただきたい。当然のことであるだけではいけません。どうぞもう一回遠慮なくおっしゃってください。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉は、御案内のように、日本国民の御納得がいくような合理的な解決という大方針で進んでおるわけでございまして、御納得いただけないような姿では進めない決意でいっております。
  15. 井手以誠

    井手委員 李ライン撤廃させますかどうですかと聞いているのです。合理的とかなんとかということばではございません。李ライン撤廃漁業協定中心であるということをはっきりおっしゃっていただきたい。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 その趣旨から申しまして、当然のことと心得ておりますということでございます。
  17. 井手以誠

    井手委員 それでは進んでお伺いをいたしますが、一昨々七日の韓国閣議において、韓国閣議国防ライン存続決定したと伝えておるのであります。外務大臣は、当然であるとおっしゃるけれども先方においては、李ライン名前を変えて、国防ラインとして存続するということを決定しております。そうなりますと、一番大事な漁業協定大前提になる季ラインについて、先方はこれを撤廃する意思のないことが明らかになりました。これに対する外務大臣のお考えを承っておきたいと思う。向こう撤廃意思がないとするならば、名前を変えて国防ライン存続するとするならば、この漁業協定については日本側考えを再検討すべきではないでしょうか。外務大臣のお考えを承っておきたい。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 伝えられておるような国防ライン設定の問題につきましては、私どもとの交渉場面先方から御提案がございませんから、私からとやかく言うべき性質のものではないと思っております。私どもは、国際慣行に従いました漁業協定の実体につきまして鋭意いま交渉中でございます。
  19. 井手以誠

    井手委員 外務大臣向こう閣議ではこういうことまで言われておる。一月の十三日の外務委員会で、韓国政府はこう説明をしておるのです。両国合意のもとに、従来の李ラインどおり国防線を設けるが、協定文には明記しないと説明をいたしておるのであります。大臣はいま、向こうから正式に提案がないから、まだ議題になっていない、話し合いをしていないとおっしゃる。向こう韓国においては、この国防ラインを存置することについては協定に明記しないと言っておる。そうなりますと、漁業協定については専管区域はどうである、共同規制はどうであるということはきまっても、李ラインにかわる国防ラインは一方的に依然として存置されるではないですか。重大な問題ですよ。あなたはこの間わが党の石野委員に答えて、関知しないとおっしゃる。関知しないでは済みませんよ。不法不当きわまる李ラインが依然として存続されるではないですか。こういう韓国態度に対して、依然として漁業協定をお進めになるお考えでございますか。関知しないのは外務大臣だけかもしれません。みんな知っていますよ。国防ラインが存置されるであろうことはみんな知っておる。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 先方政府でどのような御決定があったのか私は存じませんが、私どもは、朝鮮海域におきまして、日本並び韓国漁船国際慣行に従いました安全操業が確保されまして、両国漁業者が最大限の利益を長きにわたって享受できるような状況をどうつくるかということに腐心いたしておる次第でございます。国防ライン云々の問題はそれとは全然関係ございません。
  21. 井手以誠

    井手委員 国防ラインとは関係がないとおっしゃる。安全操業ができれば国防ライン関係ないとおっしゃる。そういたしますと、国防ラインが存置されても協定ができれば差しつかえないという意味ですか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、わが国がいま韓国との間に解決しようというもろもろの懸案というものを、国際慣行に従いまして合理的に解決していこうということをやっておるわけでございまして、伝えられる国防ラインというものの実態が私にはよくわかりませんが、かりに井出さんがおっしゃるようなものであって、何らかの規制を加えるということを意味するものであれば、そしてわが国との関連が出てくれば、私は検討してみたいと思いますけれども、私が関知しないと申し上げたのは、私どもに御提案がございませんし、いませっかく交渉中の漁業協定に何らの関係のないことでございますので、いま私はそれについてとやかく申し上げたくないと申し上げておるところです。
  23. 井手以誠

    井手委員 それでは、さらに進んで外務大臣にお伺いいたします。  先方考えておること、公海にかってな国防線を設けることのいかに不当であるかは申し上げるまでもございません。しかもその上に、韓国政府は、密輸スパイ行為を防ぐために国防ラインを設けると言っておるのであります。そうなりますと、朝鮮海峡における、公海における漁業者漁船その他が常に密輸スパイ行為の嫌疑で検問を受ける、逮捕されるという心配が出てくるのであります。そうなればいまの李承晩ラインと同じ結果になるでありましょう。こういう国防ラインは設くべきでないと私は考えておるのであります。それでは、こういう意味国防ラインが設けられることに対して、外務大臣撤廃をさせる御意思があるかどうか、そういう意味国防ライン公海の自由を脅かすような国防ライン存続をあなたはお許しになるお考えであるかどうか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことが事実として、あなたが言われるようなことが事実決定され、そしてそれが実行に移されてわが国との関連を持ってくるということになりますと、これはわれわれといたしましても無関心ではあり得ないわけでございまして、公海の中で臨検あるいはその他強制的な行動がとられるということは、国際法に照らして当然吟味し、検討しなければならぬことになるのは当然だと思います。
  25. 井手以誠

    井手委員 大臣のお考えは少しおかしいようですよ。そういうラインが設けられて実行に移される、迷惑をかける場合にはあらためて考えねばならぬとおっしゃる。しかし李ライン撤廃というのは国民の悲願ではないですか。これにかわる国防ラインを設けることについては、これは最初から撤廃さすべきではないですか。協定を済まし、実行に移してから、もし不安があるならば、それを問題であるとおっしゃる、そういう程度のものではございません。無関心であり得ないという程度のものではないですよ。まず最初から李ラインあるいはそれにかわる国防ラインは、これは撤廃さすべきであるという立場に立って漁業交渉を行なうのがわが国態度ではありませんか。はっきりした態度方針をおっしゃっていただきたい。李ラインはどうですか、国防ラインに対して撤廃させる意思があるかどうか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、私どもといたしましては、国際慣行に従いまして漁業安全操業というものを保障いたしたい、そういう状況をつくりたいということで苦心をいたしておるわけでございます。そのことから当然のことといたしまして、いわゆるいままで十カ年にわたりまして引かれておりました李ラインというものが、今度締結されるであろう漁業協定によりまして解消されるということは当然のこと、そうしなければまた安全操業を確保できないことは井出さんも御承知のとおりでございます。ただ、あなたがいま言われました国防ライン云々の問題は、韓国政府の部内にそういう動きがあるということでございまして、そういう動きがあるという段階におきまして他国政府がとやかくこれについて論評を加えるのはいささかプリメイチュアでないかということです。
  27. 井手以誠

    井手委員 論評を加える程度のものではないのですよ。国防ラインというのは李ライン名前を変えただけですよ。論評などと簡単におっしゃる程度のものではございません。向こうがかってに国防ラインを引いた場合にはどうなりますか。それはわれわれは関知しない、議題にはなっていないでは済まされません。現実には李ラインと同じような公海の自由に対して脅威を与えるのですよ。だからこういう国防ラインというものが向こうで強く叫ばれ、そして閣議決定したものに対してどういうお考えであるかと聞いておるのです。そういうのをお許しになるかどうかと聞いておるのです。もう多くは要りません。そういう意味国防ラインを引かれることに対して、李ラインと同じ位置に国防ラインが引かれることに対してわが国はこれに文句はありませんか。これを撤廃させる意思はございませんか。それだけでいいです。簡単でけっこうです。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 公海におきまして日本漁船ないし日本人が不当な干渉を受けるというようなことは許せません。
  29. 井手以誠

    井手委員 不当な干渉は許せないことはあたりまえ。そういうラインをつくることを日本政府お許しになるかどうかと聞いておるのです。そういう国防ライン、不当な脅威を与えるような国防ラインを設けられることに対して日本政府撤廃させるかどうかと聞いておるのです。それをはっきりおっしゃっていただきたい。李ラインにかわるようなもの、向こう名前を変えて李ライン存続すると決定しておる。その国防ラインをお認めになるかどうか、漁業交渉においてお認めになるかどうかを聞いておるのです。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもはいま交渉中の漁業協定というものによりまして安全操業を確保していこう、こういうことでございまして、それ以上の規制を受ける覚えはないわけでございまして、そういう心配は要りません。
  31. 井手以誠

    井手委員 外務大臣公海にかってに一方的に密輸であるとか、あるいはスパイ行為を防ぐという名前国防ラインのごときものを設けて差しつかえないのですか、これは。いいんですか。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 公海は自由でございまするから、そこで両国の間で特別な取りきめを行なわない限り、日本人はその特別な取りきめ以外に拘束を受けることにはならぬと思いますから、御心配要りません。
  33. 井手以誠

    井手委員 心配があるから申し上げておるんですよ。それではもう一回最初から念を押しておきたいと思いますが、李ライン撤廃させる、させる方法李承晩宣言を撤回させる方法でそれを撤廃させるのですか。どういうお考えですか。李承晩宣言を撤回させるという方法撤廃させるのですか、その方法をお伺いしておきたい。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 両国の間で合意をいたしまする漁業協定で、両国がそれぞれ国際慣行を尊重し、両国の取りきめを尊重する前提安全操業をしてまいるということによりまして、その結果、どういう名前であろうとも、いままで行なわれておった不当不法規制というものは解消になるわけでございます。
  35. 井手以誠

    井手委員 解消になるわけでございますということではなくして、昭和二十七年一月十八日大統領宣言によるあの李ライン宣言、これをどういうふうにして解消なさるのですかと聞いているのです。漁業協定ができれば自然に解消するというのですか。それとも宣言をなさいますか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 それは韓国政府が措置する問題でございます。
  37. 井手以誠

    井手委員 すみません、もう一回、大臣、おそれ入りますが……。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 それは韓国政府が措置すべき問題でございます。
  39. 井手以誠

    井手委員 韓国政府が措置すべき問題であるけれども、もししないような場合はどうなりますか。非常に大事な問題ですから、念には念を入れて私はお聞きしておきたいと思います。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことになりますればゆゆしい問題になりますので、私どもはそういうことを予想いたしておりません。
  41. 井手以誠

    井手委員 何を予想していないのですか、向こう撤廃するということを期待するのですか。話し合い撤廃させるようにいたしますか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 両国の間で漁業協定ができ上がりますれば、当然の結果として先方が措置されることと思います。
  43. 井手以誠

    井手委員 漁業協定の結果、当然韓国李承晩ライン撤廃すると思う、こういうお答えでございました。それでは同じような国防ラインについては、かってに向こう国防ラインを引いた場合はどういうふうになさいますか。もう簡単でけっこうです。何回もお聞きしましたから。あなたの結論だけをお聞きしておきたいと思います。何も関知せぬでほうっておきますか。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 公海上におきまして不当不法干渉を受けるというようなことは、日本政府としては許せません。
  45. 井手以誠

    井手委員 公海において、漁船その他に不安を与えるようなことは許せないとおっしゃる。そういう国防ライン、許せないような国防ラインを一方的に向こう存続する場合はどうなさいますか。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう事態を予想いたしておりませんので、先方で善処されると思います。
  47. 井手以誠

    井手委員 現に韓国政府閣議では決定いたしておりますから聞いております。予想されることです。必至の情勢です。この韓国閣議決定に対して、どういうお考えでございますか。予想すべきことである。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 私はたびたび申し上げましたように、公海におきましては特別な取りきめ以外に私どもは特別な規制他国から加えられるようなことは甘受できないわけでございます。これは当然、そういうことは仮定の問題で、されるかされぬかわかりませんけれども、あなたが言われるように、そういうことをされたとすれば、そういうことは当然先方の善処を求めなければならぬと思います。
  49. 井手以誠

    井手委員 この問題については、さらに別の機会を持ちたいと思いますが、仮定の問題であるとか、そのときはそのときであるなどと簡単に言える問題ではございません。ただ漁業協定を妥結に急ぐために、李ライン撤廃する、しかしそれにかわる国防ライン存続するということは、韓国の多くの意思ですよ。重大な問題になりますことを、あらかじめ警告をいたしておきます。  次にお伺いいたしますが、総理大臣が、先刻申し上げたように昨年の一月十八日の記者会見で、漁業協定では譲歩しないと言明をされた、その直前に出された日本側の案は、いかなる内容のものでございますか、外務大臣にお伺いをいたします。わからねば事務当局でけっこうですが、総理大臣が譲歩しないと言明されたその直前提案された日本側の案はいかなるものでございますか。すなわち、昭和三十七年十二月の五日に出された提案内容はどんなものでございますか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、本委員会におきましても私から御説明申し上げておりまするように、専管水域につきましては国際慣行によってやりましょうということ、それから専管水域外水域につきましては、資源の状況を見まして共同の規制を加えることにやぶさかでないが、その規制方法は、日韓両国平等に規制を受けるものでなければならぬということと、その方法はあいまいなものでなくて、実行可能な方法であるということにしようじゃございませんか、こういう提案はすでにいたしてございます。
  51. 井手以誠

    井手委員 外務大臣、それは少し違っておりますよ。昭和三十七年十二月五日提案には、共同規制区域については触れられていないはずです。ジュネーヴ協定についての原則を守るということで提案をされておるはずです。間違いではございませんか。あとは重大ですから、よく考えて御答弁願いたいと思う。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げたのは、専管水域外水域、それを共同規制水域と申し上げておるわけでございます。
  53. 井手以誠

    井手委員 三十七年十二月五日提案には——これにちゃんと書いてある。あなた方のほうで発行したものに書いてありますから、あとではっきりさせたいと思います。それには共同規制水域は載っておりません。ジュネーヴのあの海洋法会議の傾向を尊重する立場で提案したと書いてある。  それでは、この機会に私は漁業協定に関するわが国の基本方針を承りたいと思う。国際慣行を承りたいと思うのです。  その第一に、一九六〇年のジュネーヴにおける国際海洋法会議におけるわが国のとった態度、これがわが国の基本方針であると私は考えます。それをお示し願いたい。ジュネーヴの海洋法会議において、総会委員会でとったわが国態度、これは大多数で可決をされたけれども、三分の二の多数には達しておりません。けれどもこれが国際慣行中心であると私は考えますので、お伺いいたします。わが国のとった態度をお示し願いたいと思う。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 条約局長から報告させます。
  55. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま井手委員が御指摘になられましたとおり、一九六〇年の第二次ジュネーヴ海洋法会議におきまして日本代表が賛成いたしました案は、六海里・六海里合わせて十二海里の漁業専管区域認める米加共同提案、これに賛成したのであります。その内容といたしましては、初めの六海里は、要するにこれは領海とひとしいほんとうの専管区域であります。それからあとの六海里から十二海里までの間、これも漁業専管区域でありますが、この六海里−十二海里の問の分につきましては、ある程度第三国の既得権を認める、こういう内容になるわけでございます。なおこれらすべての提案の基礎になります考えといたしまして、いわゆる直線基線の考え方を採用するという考えがもとになっているものでございます。
  56. 井手以誠

    井手委員 総理大臣にお伺いをいたしますが、ジュネーヴの国際海洋会議においてとられた日本態度、これが大多数で総会委員会では可決されました。三分の二の多数には達しておりませんが、大多数は同様の意見でありました。これがわが国漁業協定に対する基本的態度である、同時にまた、これが国際慣行であると了解して差しつかえございませんか。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申しておりますごとく、われわれはジュネーヴ会議考え方、すなわち専管区域を十二海里ということで進んでおるのであります。
  58. 井手以誠

    井手委員 六海里プラス六海里、領海六海里の外側の六海里には入り会い権は認めるというのが国際慣行である、これはわが国態度である、これが国際的に尊重される慣行である、基準である、外務大臣、よろしゅうございますね。その基本的態度はよろしゅうございますか。大事な問題ですから、ごめんどうでしょうが、ひとつはっきりおっしゃっていただきたいと思う。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう国際的傾向を、あなたがおっしゃったように、賛成した国がまだ所定の数に達していませんけれども、そういう傾向並びにその後北大西洋におきましても、そういう傾向に準拠してとられた慣例もございますので、そういった点を尊重いたしまして処置いたしたいと思っております。
  60. 井手以誠

    井手委員 外務大臣、ひとつ端的にお答え願いたいと思うのですよ。いまあなたのほうの条約局長説明いたしましたジュネーヴの海洋会議内容わが国のとった態度と、それが世界大多数の国の意向であるということ、これが国際的基準であり、国際的慣行であり、わが国態度であるということは間違いございませんかと聞いているのです。そのとおりですね。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 さよう心得ています。
  62. 井手以誠

    井手委員 条約局長にお伺いをいたします。  その第二回のジュネーヴの海洋会議で示された韓国態度はどうでございましたか。六海里プスラ六海里に韓国は、若干の条件はあったが、留保条件ではあったけれども、賛成をしたと私は記憶いたしておりましたが、賛成であったか反対であったかお伺いいたします。
  63. 中川融

    ○中川政府委員 一九六〇年の会議におきます韓国代表の態度は、日本も賛成いたしましたいまの六海里、六海里の案、これには韓国も賛成いたしております。そのほかに、最後に総会で問題になりましたこの六海里、六海里案の修正案というのがございます。これは米カナダ案のほかに、南米諸国の同意を取りつけるために甘くした案でございますが、要するに六海里、六海里、十二海里以外にもその沖合いにおける沿岸国の漁業の優先権を認めるという条件が付加された案がございます。これにつきましては、韓国は賛成し、日本は反対しております。その点が日本と違う態度をとりました。
  64. 井手以誠

    井手委員 外務大臣にお伺いをいたします。  この条約局長が明らかにいたしました国際慣行わが国態度総理大臣からも言明がありました。日本態度は六海里プラス六海里、韓国もこれに賛成をした。そうであるならば、漁業協定の範囲というのも、大体この範囲に限定されるわけですね。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 漁業協定の範囲と申しますか、専管水域はそれを尊重してきめるべきものと思います。
  66. 井手以誠

    井手委員 次に、念のために条約局長にお伺いいたします。  この委員会でも若干混乱をしておるようですから、はっきりいたしたいと思いますが、領海は幾らになりますか。沿岸国内側の六海里が領海であると、かように理解していいのですか。わが国態度は従来三海里であったが、国際的傾向としてはこれを守るわけにはいかないようになったということは、いろいろなものに報道されております。現在は第二回のジュネーヴの海洋会議でとった日本態度、六海里をもって領海とすることに差しつかえないかどうか、同時に、その六海里だけが裁判権を含む管轄権であると考えてよろしいかどうか、この点をお伺いいたします。二点です。
  67. 中川融

    ○中川政府委員 第二次ジュネーヴ会議は、領海の範囲を定めるために開催された会議でございます。その際、領海は六海里とする、しかし、それ以外に六海里の漁業専管区域を設けるというのがこの案であったわけでございます。したがって、もしそのとおりの案が採択されておりますれば、この六海里、六海里、領海六海里というのに日本も賛成したわけでございますが、これは残念ながら、この総会では三分の二の多数を得る案がありませんために、会議はこの条約案を採択しないで終わったわけでございます。したがってその案はまだ実現しないわけでございますが、日本としては、そのときもしその条約ができれば、それに賛成しようと考えたわけでございます。条約ができないために、日本の領海に対する立場というものは依然として変わっておりません。われわれは領海は三海里であると、かように考えておるわけでございます。これは、その会議に参列したあらゆる国がみな同じような態度で、態度を留保しておりまして、おのおの自分の国の領海に関する立場はこれによって何ら変わらないということを留保しておると考えております。  なお、現在日本韓国との間に交渉しております案、いわゆる十二海里漁業専管区域案と申しますものにつきましては、領海の問題は触れていない、したがって、領海が幾らになるということは何もその交渉の中で言及していないのでございまして、領海は依然としてわれわれは従来どうりであると考えております。  なお、この漁業専管区域というものにおける裁判管轄権がどららにあるのか。領海における裁判管轄権は、沿岸国にあることもちろんでございますが、領海以外の漁業専管区域と称するものにおける裁判権が何であるかということにつきましては、ジュネーヴ会議でも詳しく論議が行なわれておりません。これは、いわば未解決になっておる分野でございますが、専管区域という思想からいいますと、どうも沿岸国に裁判権があるということを暗に認めたのではないかとも思われるのでございますが、要するに未解決になって残っておる。それからその後各国が漁業専管区域の条約をバイラテラルに二国間でつくっておる例がございますが、これらにおいても例はまちまちでございまして、たとえばイギリス、アイスランドの間の条約では、アイスランドの漁業専管区域における裁判管轄を事実上イギリスは認めておるようでございます。しかしまた、漁業専管区域でありましても裁判権を認めないということを特に書いてある、たとえばイギリス、ノルウェー間の条約のような例もございます。要するに漁業専管区域における裁判権というものは、必ずしも国際先例はきまっていない、こういうふうに考えていいのじゃないかと思います。
  68. 井手以誠

    井手委員 外務大臣、お聞きになったと思うんですが、領海六海里については決定に至っていない、したがって、わが国は領海三海里の方針を捨てていないという局長の説明でありました。よろしゅうございますね。それから、その外側にある漁業専管区域、これについてはいろいろ意見はあるが、これは沿岸国の裁判権は及ばないというお考えのようでありました。大事な問題ですから、よくお聞き願いたいと思う。外務大臣、それではこの漁業協定にあたって、わが国は領海はこの基本方針でお臨みになりますか。まずそれからお伺いいたしましょう。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 領海の問題、それから専管水域の裁判管轄権の問題という問題につきましては、まだ両国の間に折衝はいたしておりませんが、ただいま条約局長説明したようなわが国の従来の態度にまだ変改はございません。
  70. 井手以誠

    井手委員 どうも耳が悪いせいかどうか、はっきり語尾が聞き取れませんでしたが、領海の問題については、六海里という考え方が多いけれども、なおわが国は三海里説を捨てていないということで交渉なさいますね。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 さようです。
  72. 井手以誠

    井手委員 その領海の外側のいわゆる十二海里の以内、領海が六海里であれば、十二海里の以内の外側の六海里、領海の外側の六海里、この裁判権については、国際法によって属人主義で、いわゆる国際慣行によって交渉を進められますか。属人主義、日本人がもし専管区域に入って逮捕された場合は、それは日本の裁判所に回されることになりますね。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、その裁判管轄権の問題につきましては、まだ話を先方といたしておりません。したがって、ただいまいずれにするかという点について明確な御回答を申し上げる段階ではありません。ただいままでの経緯は、先ほど条約局長から御説明申し上げたとおりでございます。日韓間におきましては、まだこの問題は話をいたしておりません。
  74. 井手以誠

    井手委員 私が聞いておるのは、話し合いの進みぐあいじゃなくて、わが国の基本的態度をお伺いしておるんですよ。領海については大体わかりました。ジュネーヴの海洋会議でとられたわが国の立場、そこで包まれた国際慣行なり、あるいはわが国の基本的態度についてはわかりました。したがって、いまお聞きしているのは、漁業専管区域における裁判権は、国際慣行に従って、属人主義でおやりになるかどうかと聞いているんです。話し合い内容じゃございません。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 方向といたしましては、国際慣行を尊重してまいるという考え方でございます。したがいまして、専管水域につきましては、沿岸国の裁判管轄権を認めてはならないというほど、私どもはかたく考えておりません。まだ交渉に入っておりませんが、私どもといたしましては、ただいまの段階で申し上げられることは、国際的な傾向というものは尊重してまいりたい。そういう気持らです。
  76. 井手以誠

    井手委員 属人主義に対する国際的慣行は尊重していきたいということ、それでよろしゅうございます。  農林大臣にお伺いいたします。韓国側の主張する十二海里の専管区域の外側に要請しておる共同規制区域二十八海里、その線によりますと、どういうかっこうになりますか、李承晩ラインとほとんど変わらないと思いますが、十二海里プラス二十八海里、すなわち四十海里というのは、現在の李ラインとほとんど変わらない線になると考えられますが、どうですか。向こうの言い分、向こう主張です
  77. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 現在の李ラインに近寄っておるところもあります。同じようではございませんが、大体李ラインの、向こう側からいえば少し内側に入っておる線のように承知しております。
  78. 井手以誠

    井手委員 李ラインから、向こう側から言えば若干内側になるけれども、ほとんど変わらないということ、とんでもない話であります。  それでは話は戻りますが、農林大臣、領海の六海里——譲った場合ですよ。譲った場合に、領海六海里の外側の六海里における漁業専管区域、これに対してわが国の人。会い権はどうなりますか。話し行いはどうなりましたか、主張なさったですか、必要ないのですか、お伺いいたしたい。
  79. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 六海里の領海外の六海里、すなわち十二海理の専管区域内においては、漁業の点においては、私は入り会い権ということではなくて、向こう側の専管区域、こういうことになろうかと思います。
  80. 井手以誠

    井手委員 農林大臣、先刻までの質疑応答はお聞きになっておったですか。わが国がジュネーヴでとった態度、沿岸国から大海理までは領海である、領海の外側の六海里については、過去の実績に照らして、今後十年間の入り会い権を認めるということをわが国はきめておるじゃございませんか。これが国際慣行じゃございませんか。よく聞いてごらんなさい。長官によく聞いてから御返事ください。ようございますか。過去に実績を持った国は、わが国は、今後十年間外側の六海里については入り会い権があるというわが国の基本的態度、これはいわゆる国際慣行であります。これについてどういう農林省のお考えであるかと聞いておるのです。要りませんか。主張なさったですか。
  81. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどの十二海軍の内の外側の六海里については入り会い権はないというのは間違いでありまして、国際慣行から言いまするならば、入り会い権がある、こういう解釈でございます。
  82. 井手以誠

    井手委員 外務大臣、いま農林大臣は、専管区域、十二海里の内側の外になる六海里、これにはわが国は入り会い権があると言われました。これは外務大臣いかになさいますか。それは放棄なさいますか、あくまでも主張なさいますか、お伺いいたします。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいまその専管水域をどのように確定してまいるかというフレームの議論をやっておるところでございまして、いま井出さんが御指摘の、その内部における入り会い権の問題というところまで交渉はいっておりませんが、私は、先ほど申しましたように、全体の問題として国際慣行は尊重してまいるという基本方針を貫いてまいりたいということで御推察をいただきたいと思います。
  84. 井手以誠

    井手委員 外務大臣、私もしろうとですけれども、そのくらいのことはわかるんですよ。あなたは、ただいまそこまで話は進んでいないとおっしゃるけれども漁業規制区域というのは、領海、専管区域、その次に漁業規制区域というものに話が進んでいくわけですよ。あなたのほうのお話はもう先のほうに進んでしまっておる。手前の大事な点は、あなたのほうは抜かしてしまっておるのじゃございませんか。権利のある入り会い権というもの、過去の実績を持った国は、六海里については権利があるんじゃございませんか、それを主張しておるんじゃございませんか。それについてなぜ話し合いをなさいませんでしたかと聞いているんです。どうなさるんです。農林大臣は権利があるとおっしゃる。韓国の、沿岸国から六海里は領海ですから、これはいたし方ありません。その六海里の外側の六海里、合わせて十二海里になりますが、外側の六海里については入り会い権があると農林大臣は言っておるじゃございませんか。それをどうなさいますかと聞いている。それをきめずして漁業規制区域に入ることは、これは本末転倒ですよ。私は譲って六海里と言いましたけれども、あなたのほうは三海里の主張は依然として曲げていないとおっしゃる。それはそれでいいのです。大いに主張してもらいたい。その外側の一二海里であれば九海里です。六海里であれば外側の六海里の入り会い権はどうなさるのですか。これは大事な点ですよ。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、漁業問題として幾つかの問題がございますが、そういった問題につきまして、専管水域の範囲をどうするかとか、共同規制方法をどうするかとかいう大筋の議論をいまやっておる段階でございまして、その専管水域内の入り会い権をどうするかというところまで話が詰まっていないということを、交渉の事実の経過として申し上げたわけでございます。  ただ、赤城さんがいま言われたように、わが国といたしまして、国際慣行上入り会い権は主張すべきであるという御議論は私もよくわかります。したがいまして、わが国として共同規制水域が確定された場合に、その中にある入り会い権を主張してまいるということは当然のことと思います。
  86. 井手以誠

    井手委員 最後の末尾にあった、入り会い権を主張することは当然であるとおっしゃった。それはわかります。これこそ判然のことです。しかし、あなたの話し合いの進め方というのは、領海から漁業専管区域、これには入り会い権をどうするかという問題がきめられなくてはなりません。それがきまって初めて共同規制という問題が出てくるでしょう。ところが、あなたの交渉はどうですか。入り会い権などということは話は出さぬで、いきなり共同規制区域はどうするのだということに及んでいる。飛躍しているのですよ。だから、あなた方の交渉はもう一歩立ち戻ってから、領海、専管区域の入り会い権はどうするかということを固めてから共同規制に入るのがほんとうではございませんか。あなたのほうは逆になっておりますよ。話が飛び過ぎておりますよ。あまり漁業協定を急ごうとして、飛んでしまっておる。それじゃいけないから私は質問しておるのです。外務大臣、本筋に戻って、専管区域における入り会い権の交渉をすみやかになさるお考えがあるかどうか。共同規制区域の前段として交渉なさるお考えがあるかどうかをお伺いいたします。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 まず専管水域を固めて、その次に共同規制に入っていくというのが論理的な順序じゃないかという御指摘でございますが、それも一つの案だと思います。ただ、全体として漁業問題は相互に関連を持っておりますので、私どもといたしましては、全部の問題点につきましてまずこなしていくという方法をとっておるわけでございまして、それが交渉の手順として一がいに間違っておるというわけのものでもないと思います。ただ、井出さんがおっしゃるように、専管水域における入り会い権の主張は忘れないようにという御指摘につきましては、十分心得てやります。
  88. 井手以誠

    井手委員 私が特に漁業協定で念を入れておりますのは、これほど重大な日韓漁業問題が、国民や西日本、九州の直接関係するたくさんの漁民の意向を聞くことなしに、政治的解決が非常に急がれておるから私は申し上げておるのであります。漁業協定を急ごうという、妥結を急ぐのあまり、世に猟師山を見ずということわざがございますが、協定を急ぐために問題の急所が忘れられておる。全体がわからぬで進められておる場合がありますから私は申し上げておる。  農林大臣にお伺いいたします。  共同規制区域というのは——外務大臣が非常に熱意を入れられておる共同規制区域——これは魚族保存、資源保存。共同規制という意味は魚の種類によってきめねばならぬと私は考えるのであります。一定地区を限って魚を保存するために、資源を保存するために、お互いに遠慮しようじゃないかということについては、だれも了解いたすのであります。それは、しかし、十二海里の外側の二十八海里という膨大な線をずっと区域できめるものではなくして、海区といわれる小さな区域を限ってそういう規制が行なわれるのがほんとうじゃございますまいか。その点について、水産を担当される農林大臣、専門家的立場からひとつ御答弁を願いたい。この問題は決して政治的に解決される問題ではございません。魚族保存の立場であるならば、共同規制区域というのは局部局部に行なわるべきである。中には禁止区域もできるでしょう、あるいは調整区域もできるかもしれませんが、十二海里の外側の二十八海里を、朝鮮海峡を対馬近くまでずっと取り巻くような、そういう区域であってはならぬはずです。局部局部にそういうものができると思うのでありますが、農林大臣の見解を承っておきたい。
  89. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 共同規制区域のきめ方についてのお尋ねでございますが、魚種等につきまして、たとえば日本とソ連とのようにサケ、マスというふうに大体きまっておるところもありますし、あるいはカナダとの間に、そのほかにオヒョウというような問題もあります。でありますが、朝鮮海峡との間につきましては、魚種刑ということは非常に困難だと思います。魚の種類が非常に多いので、魚種別に共同規制区域をこまかく設けていくということは事実上むずかしかろうと思います。でありますので、やはり一定区域を含めて規制区域を設けるということが魚族の持続的保存という意味において適当であろうかと、こういうように考えております。
  90. 井手以誠

    井手委員 農林大臣もう一回。魚族保存の趣旨であるならば、三十八度線から、日本海から朝鮮海峡、黄海に向かって、広大な連続した共同規制区域というものは必要でないと私は思うのです。あなたのほうもその方針だと思う。したがって、魚族保存という立場であるならば、サケ、マスとかという種類別じゃできないかもしれませんけれども、局部々々にそういう規制区域が必要である。全体的の規制区域じゃなくて、全面的な規制区域じゃなくて、局部々々、海区々々の規制区域であると思うが、どうですか。その点をはっきり。
  91. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 局部、局部に、海区ごとにこまかくきめるというのは非常にむずかしいと思います。しかし、局部、局部に魚族の集まっておるようなものの調査もありますから、そういうところにつきましては重大な関心を持っておるわけでございますけれども、こまかく五つも六つもというふうにきめることは困難で、やはり一つの線を引いた中におきまして、そういう場所につきましては特に関心を持ちながら進めていくのが適当でないか、こう考えております。
  92. 井手以誠

    井手委員 農林大臣もう一回。十二海里の外側に韓国側は二十八海里、この広大な地域にわたって共同規制区域を設けようとしておるのです。そう主張しておるのです。しかし、公海における漁業は自由であります。ただ、魚族保存のためにある海区においてはこれを調整をする、それはわかるのでありますから、全面的な共同規制区域を設ける必要はないではないか。共同規制区域とは全面的なものではなくして、海区々々によってきめるべきではないか。そのほかの公海は自由に漁業ができるではないか、こういう趣旨で申し上げておるのです。その点に対して、共同規制区域に対する農林大臣のはっきりした方針を示してもらいたい。非常に混同するのですよ。十二海里の外側の二十八海里に全面的に共同規制区域を設けられますと、わが国漁業は非常に不利になる。公海自由の原則に反するのです。だから、魚族保存の立場であるならば、局部々々に何ヵ所かそういう調整区域を設けるのがほんとうではないか。それがわが国方針ではないかと聞いておるのです。
  93. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどからの、海区をこまかく切ってやるということは、両方の話し合いの上で非常に私はむずかしい話だと思います。でありますので、魚族の持続的保存という立場から、両国において公正に、また実施可能な範囲内で考えていくならば、漁区をそうこまかく分けなくても、ある程度全面的な規制区域をきめて、そうしてやっていくことも妥当であろう、こういうふうな考えを持っています。もちろんお話しのように、公海自由の原則というものは、これはもう放棄できるべき問題ではございませんけれども、一つの調整区域というような形でございますから、私は、そうこまかく魚種別に規制区域をやっていくということにこだわる必要はない、こういうふうに考えております。
  94. 井手以誠

    井手委員 この共同規制区域について、韓国側はトン数、わが国は隻数について主張し合って、意見が対立しておると報道されておる。そうなりますと、十二海里の外側の二十八海里に全面的に共同規制区域が敷かれることになるのじゃございませんか。いわゆる四十海里の範囲内において——もちろん対馬の近くは別です。それは二十何海里しかございませんから、四十海里になるわけはございませんが、わが国共同規制区域において隻数でいこう、韓国はトン数でいこうということで、対立をしておる。そうでありますならば、その話し合いは結局十二海里プラス二十八海里の線に全面的に共同規制区域を敷こうという意味ではございませんか。結論はそうなるのじゃございませんか。そうでしょう。
  95. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 十二海里の外に二十八海里ですか、二十八海里の線、その間に共同規制区域を設けよう、こういうわけでございます。そういうことで進めておるわけです。
  96. 井手以誠

    井手委員 農林大臣、これは重大な発言ですよ、あなたのは。十二海里の外側に二十八海里の共同規制区域を設ける、それはどういう結果になりますか。公海自由の原則と反するじゃございませんか。何ということですか、それは。その十二海里プラス二十八海里、四十海里の線に国防ラインを引くということであれば、現在の李ラインとどこに変わりがありますか。公海の自由の原則に反するじゃございませんか。絶対にそういうことは認めるわけにまいりません。  総理大臣、こういう交渉が進められておる。取り消しになれば、私はちょっと引き下がりますが……。それはたいへんですよ、そんなことをおっしゃると。そんなことでないはずですよ。水産当局はそんなことをおっしゃるはずはない。十二海里の外側に二十八海里を全面的に共同規制区域として認めるということは、これは絶対許すわけにまいりませんよ。もう一ぺんあなた、訂正なさるなら訂正なさい。違うはずです。それは。
  97. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 共同規制区域のきめ方というのは、いろいろあります。公海自由の原則だからといって、魚族資源保存のために制限をしないという例はございません。これは世界各国やっております。ソ連との関係もそうでございますし、日米加の関係も、規制区域というものは公海の中にあるわけでございます。これは魚族の資源保存のために両国話し合いできめておるのでございまして、そういう点ではきめておるわけでございます。  でありますから、十二海里の外に、日本韓国の間に魚族の持続的保存を進めていこう、こういう話し合いのために両国に平等に適用される共同規制区域を設けるということは、これは国際慣行でもありまするし、やり得ることでもございます。そういう意味におきまして、先ほどの私の申し上げたことは、外務当局で折衝いたしておるのでございますけれども、別に私の発言を取り消すこともございませんし、話の進め方はそういう進め方をしておる、こういうことを申し上げておるのでございます。
  98. 井手以誠

    井手委員 私は何も政府と野党の立場で申し上げておるのではないのですよ。わが国の重大な漁業問題です。よく聞いてくださいよ。この漁業協定というのは、請求権の問題で一千万ドルか五千万ドルよけい払うのと違うのですよ。一カ年間に五百億円といわれる朝鮮海峡漁業、これが今後永久にわたって規制を受けるのです。一回きりで一億円払うとか十億円払うとかという問題じゃございません。大体農林省には、あなたのほうには、三十七年の十二月五日には共同規制区域などというものは提案されていなかったはずです。認めていなかったはずですよ。いつそんなに譲歩いたしましたか。  そういたしますと、おっしゃるようになりますと、四十海里の線に国防ラインが引かれる。日本船は一定数を限って、あとは締め出しを食う。何のために日本の漁民は長い間苦労いたしましたか。何を悲願として訴えてまいりましたか。不法きわまる李承晩ライン、大事な海域に出漁ができないという訴え、それが依然として続くじゃございませんか。実績がどうのこうのとおっしゃる。その実績以上には進めない、出漁ができない。うまくいっても実績以上にはできないということになります。そうなりますと、自分も朝鮮海峡へ出漁したいという者が全然だめになってしまう。何のための漁業交渉ですか。何でそんなに大きな譲歩をしなくてはならぬのですか。  あらたまって総理大臣にお伺いいたします。もうよろしゅうございます。あなたは。そんな共同規制区域を認めるような大臣に対して私は聞きません。総理大臣にお伺いいたします。——総理大臣にお伺いをいたします。——発言者の意見を尊重していただきたい。
  99. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 いや、農林大臣が発言がある……。では、あとで許します。
  100. 井手以誠

    井手委員 総理大臣にお伺いいたしますが、総理大臣は冒頭に、大きな譲歩はしないとおっしゃった。お聞きのように、いままでの話を聞きますと、六海里プラス六海里が日本漁業協定に対する基本方針であるということがはっきりいたしました。それにもかかわらず、入り会い権の交渉はせぬで、十二海里の専管区域認める。その外側に韓国の言う二十八海里の共同規制区域を設ける。二十八海里そのままずばりではありませんけれども、でこぼこはありましょうけれども、全面的な共同規制区域を設けるということ、これは大幅過ぎる譲歩ではございませんか。この点をお伺いいたします。それでも譲歩でないとおっしゃいますか。総理大臣にお伺いいたします。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 漁業交渉というものは、やはり何と申しましても、その国の沿岸におきましてはその国の特殊権益を認むべきでございましょう。そしてまた、それを越えたいわゆる公海の自由の原則と言われますが、公海の自由の原則によって魚族保存を忘れたならば、これは全世界の損失でございます。われわれは、常に魚族の持続的保存ということを考えなければなりません。もう班に日本におきましても、近海漁業の不振というものは、とり過ぎるということであるのであります。これを保存するということは、お互いのために非常にいいことなんであります。だから、私は、専管区域の十二海里、そしてまた共同規制区域を設けるということは、当然なやり方であると考えておるのであります。何もこれは譲歩したというゆえんのものではございません。
  102. 井手以誠

    井手委員 何とおっしゃろうと、たいへんな譲歩です。私ども社会党も、何も共同規制が悪いとは申しておりません。魚族保存は当然です。しかし、いま農林大臣言明しましたように、十二海里の外側に広大な地域にわたって全面的な共同規制区域を設けるということは、これは重大な譲歩ですよ。入り会い権は交渉しなくて、十二海里そのままずばり向こう専管水域認めてしまう。そのほかに、全面的な共同規制区域、いわゆる二十八海里を全面的に認めようとすることは、これは重大な譲歩ですよ。なおそれでも譲歩ではないとおっしゃるのですか。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 専管区域の大海理、六海里、外側の六海里につきまして、既得権があるかどうかということは問題でございましょう。これは大いに議論しなければいけません。これを譲ったと外務大臣が言っておるわけではございません。そしてまた、その専管区域以外におきまして共同水域を設けること、そのこと自体にはあなたも反対ではないようでございます。私は、やはり魚族保存の意味からいって、共同規制区域を設けるということは当然だと思います。そうしなければ、世界で有数のこの魚族のおる朝鮮海峡、あのところで魚族が壊滅するようになったら、これは日本の非常な損であるということを考えなければなりません。したがいまして、この制限につきましては、やはり魚族のその後の状況等を常に調査いたしまして、そして規制のしかたにつきましては、今後私は考えなければならぬ問題だと思います。そうしてまた、その規制区域内においてどういう方法をとるか、これは私は専門家じゃございませんが、それはやはり専門家の間でやっておるのでございましょう。あなたのお話のように、魚の種類ごとにやるといっても、ああいう地域の狭いところでいろいろな魚族のおる場合には、なかなかむずかしいだろう。そこでトン数でいくか、隻数でいくか、網の目でいくか、いろいろな方法がございましょうが、それを考えておるのであります。そしてまた、その共同規制区域内において禁止区を設けるかどうか、こういう問題もありましょう。だから、それを一がいに漁獲禁止区域も何も考えずに全部同じようだということは、まだ結論が早いので、外務大臣の言うように、やはり専門家で十分実情に合うように、そして将来禍根を残さない、将来魚族がますますふえるような方法を講ずることが、これが漁民のためにいいのだ。三年や五年のことを考えてとってしまったならば、ちょうど近海漁業のようになってしまうことをわれわれは考えなければならぬ。十年、二十年、五十年先のことを考えながら、やはり魚族保存ということにつきましてお互いに誠意をもって交渉をすることが、 いまのわれわれの置かれた立場であるということを申し上げておきます。
  104. 井手以誠

    井手委員 総理大臣は、どうもことばをすりかえるのがなかなかうまいようです。魚族保存と全面的な共同規制区域とは違うのですよ。混同せぬでお考えをいただきたいと思う。私は、なお漁業問題については、さらに質問をする機会を持ちたいと思います。きょうはほかにも質問がございますので、これ以上多くは申し上げません。けれども、今日までの漁業交渉の段階において重大な譲歩を日本側がしたということを、私は残念ながらきょうは聞きました。そう譲歩すべきものではございません。これはあてっはならぬ、聞いてはならぬことでありますけれども関係漁民は何と言っておるですか。もしいまのような漁業交渉が妥結に向かいますならば、いまのままのほうがましだという声すらあるのですよ。漁業共同規制区域によって日本漁船が締め出しを食う。四十海里の線に国防ラインが依然として存置されるということになりますと、これは公海漁業脅威を受ける。何ら将来の李ラインと変わりがございません。ほとんどいままでと変わらないような漁業交渉は、再検討すべきであると私は主張したい。もう私は、これ以上漁業協定についてはあなたのほうから聞きません。再検討を願いたい。  そこで、せっかく農林大臣が発言を求められておりますのでお聞きしますが、今日まで韓国から交渉のたびごとに、交渉を有利にするためかどうか知りませんが、不法な拿捕が相次いで行なわれました。三百十七そうという数字が一昨年の暮れまでに出ておるようでありますが、この損害について、どういうようにお考えになりますか。これは賠償を要求なさいますか。あるいは日本政府がかわって払うのですか。いままで受けた漁民の被害に対して、どういう損害賠償をなさいますか。昨年でございましたか、三月十七日かの参議院の予算委員会では、一昨年の暮れまでに七十二億五千万円の損害があると当局も発表いたしておりますが、これはどうなさいますか。
  105. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから御答弁申し上げようと思っておったのですが、共同規制区域は、向こうだけで規制するというふうにお考えでございますが、これは交渉のことでございますから、わがほうの主張は強く主張するのでございまして、共同規制区域でございます。共同規制区域ができてから、いままでの李承晩ラインのように向こうでかってに規制区域内で規制するという立場については、私どもはもちろん同意できません。これは両方の話し合いで魚族資源保存のためにやるのでございますから、一方的に規制されるということはございません。  それから韓国に拿捕されている船あるいは乗組員等に対してどういう措置をとっておるか、これにつきましては、損害賠償請求権がありますので、損害賠償請求権につきましては、損害賠償はいまとっておりませんけれども、留保いたしております。これは日韓会談の過程におきまして、その点も当然考慮される問題だと思います。  それから、ではいま日本側ではどういう方法をとっているか。これは御承知だと思いますが、申し上げますと、昭和二十六年四月から拿捕等を保険事故とする特殊保険制度をつくりまして、また二十七年六月からは、事業主が行なう乗組員の抑留中の給与の支払い、これを保証するために漁船乗組員の給与保険制度を創設いたしております。そこで、特殊保険におきましては、昭和三十八年十月までで加入の累計が二万三千余件、事故累計が九十八件あります。支払い再保険金は、合計で七億三千八百余万円となっております。それから船員の給与保険につきましては、加入累計が一万六千余件、事故が千七百四十六件ございます。支払い再保険金は三億三千八百万円となっております。  それから第二に、抑留乗組員等に対する救済措置でございますが、抑留乗組員及びその留守家族のための救済対策といたしまして、昭和二十八年以降予備費から救済に必要な経費を支出してきましたが、昭和三十二年からは、朝鮮半島周辺海域における漁船安全操業の確保並びに抑留漁船の乗り組み員等に対する救済措置についての閣議決定、これによりまして、予備費支出で見舞い金の交付及び家族の差し入れ品の購入費等の補助を行なってきております。昭和二十八年以降の支出済み額は、見舞い金その他で合計二億五千六百万円であります。  なお、第三に、拿捕船の船主に対する措置でございますが、未帰還漁船の船主のうち、弱小漁業者でありまして、経済力が非常に微弱のため、特殊保険に加入できなかった船主の問題が引き続き起こっておったわけでございます。これに対する措置といたしましては、代船建造の補助金として、総額四千万円——これは三十八年度に予備費を利用することでございますが、交付することといたしまして、現在県を通じて事務手続をとって進めておる、こういう状況でございます。
  106. 井手以誠

    井手委員 せっかく大臣からそういう説明がありましたので、お伺いいたしますが、抑留されたための損害は、そればかりじゃないと思うのです。その期間における稼働できなかった損害は、莫大なものであると思うのです。水産業界の集計によりますと、いま八十億円にのぼるそうでありますが、これはどうなさるのですか。
  107. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 稼働できないということに対しましては、いま深く考えてはおりますけれども、その措置に対しましては、どういう措置をとるかということをいま考えてはおらないのでございます。研究いたしております。
  108. 井手以誠

    井手委員 その八十億円と言われる損害については、考えておるけれども、まだ措置の内容についてはきめていない、こういうことでございますね。おやりになる考えですか。
  109. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、ちょっとやるかやらないかは、なかなか問題であろうと思います。よく検討する必要があるかと存じます。
  110. 井手以誠

    井手委員 日韓会談の最後の問題で、例の焦げつき債権四千五百万ドル、あれはいつ発生したものですか。
  111. 田中角榮

    ○田中国務大臣 占領中からのオープン勘定の残額でありますが、発生した年月日その他に対しては、いま調べてお答えいたします。
  112. 井手以誠

    井手委員 昭和二十五年までの分です。間違いないですね。——そうしますと、その金は、どういうふうに経理なさっておりますか。オープン勘定——外為会計の資金からお出しになっておるわけじゃございませんでしょう。それは借り入れ金でまかないなさっているはずだと思いますが、どうですか。四千五百万ドルという焦げつき債権は、六分五厘の金利がつく借り入れ金でまかなっておられると思いますが、どうですか。
  113. 渡邊誠

    渡邊(誠)政府委員 ただいま御質問のありました韓国オープン勘定の残高は、四千五百万ドルちょっとこしておるわけでございます。これは一昨々年韓国交渉いたしまして……。
  114. 井手以誠

    井手委員 いきさつは要らぬ。結論だけ……。
  115. 渡邊誠

    渡邊(誠)政府委員 御質問の点でございますが、もちろん、これは外為会計の保有いたしております円を輸出者に払いまして、そのかわりに、政府が外為会計の債権として持っておるものでございます。
  116. 井手以誠

    井手委員 それは違うでしょう。外為会計の、いわゆる総理大臣がよく一般会計で使おうとおっしゃっておる外為資金は千六百億円、それはドルに変わっておるはずです。韓国の四千五百万ドルの焦げつき債権は、借り入れ金でまかなってあるはずですよ。そうでしょう。
  117. 渡邊誠

    渡邊(誠)政府委員 外為会計は、出資金と借り入れ金、外為証券によります借り入れ金並びに国庫の繰りかえ使用をもって円の原資としておるのでございまして、どの分が何になっておるという関係ではございません。
  118. 井手以誠

    井手委員 そう逃げぬでもよい。わかっている。大蔵大臣、一千六百億円の外為資金は、もうドルに変わっておるのです。いま運用されているのは、これは高くは言えませんけれども、余裕金の運用、あるいは日銀からの借り入れによってまかなってあるのです。四千五百万ドルという焦げつき債権は、六分五厘の金利がつく借り入れ金でまかなわれておるのです。もう十二年になりますが、どのくらい利子がつきますか、四千五百万ドルに、複利計算で。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 外為会計というものは、先ほど為替局長が申しましたごとく、政府の出資金あるいは借り入れ金あるいは国庫の余裕金運用でやっておるのであります。したがいまして、韓国に対します焦げつき債権に六分何ぼの利子がつくとお考えになるのは、これは早過ぎる。これはプール勘定でございますから、どれがどうなっているかわからないのであります。とにかく外為会計において、四千七百万ドルと私は記憶しておりましたが、それは焦げつきの債権としてとってあるのであります。しこうして、今度の日韓交渉におきまして、これをできるだけ早く返そう。この前のインドネシアとの交渉におきましては、一億七千五百万ドルを棒引きいたしましたが、今度はそういうことでなしに、別にこれの取り立てを交渉しているわけであります。
  120. 井手以誠

    井手委員 せっかく総理からお答えがございましたのでお伺いいたしますが、いずれにしても、外為会計は、そういう焦げつき債権で運用が非常に困難になってまいりますことは、当然です。言うまでもございません。そこで、その回収はなるべく早くしなくてはならぬと思いますが、その無償三億ドルの中に入る——別個に返してもらうという焦げつき債権の四千五百万ドル、これはどういうふうに返済を求められる御意向でございますか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 外為会計が非常に苦しいとおっしゃいますが、私の見るところでは、そう苦しくはございません。御承知のとおり、一般会計から相当繰り入れたお金もあります。また、アメリカの対日援助物資が資金になって繰り入れられた分もあります。もちろん、あれは、普通ならば全部借り入れ金でやってもよい筋合いのものであります。また、行く行くは、これは日本銀行が持つべきものでございます。苦しいとは私は考えておりません。しかし、いずれにいたしましても、オープン・アカウントの関係で、アルゼンチンとかブラジルとかいう毛のには焦げつき債権がある。韓国も同様であります。したがいまして、アルゼンチン、ブラジル等の昔のオープン・アカウントの分は、処理方法をきめていまやっております。十分にはいっていない国もございますが、とにかく一応めどがついている。そこで、韓国の四千七百万ドルも早くめどをつけたい、こういうことで、いませっかく交渉をしているのであります。三億の無償の中に入るか入らぬか、これは別個に考えているのであります。だから、三億の中に入れるとすれば、無償で出すものが二億五千数百万ドルということになります。私は、貨した金だから、別に取り立てるのが至当だという考えで進んでおるのであります。
  122. 井手以誠

    井手委員 次に、経済の見通しについてお伺いをいたします。企画庁長官にお伺いをいたします。私は、この「経済の見通しと経済運営の基本的態度」を中心にお伺いをいたしたいと思います。この説明によりますと、三十九年度の経済成長はいまのままで進むならば三十八年度をこえるであろうと書いてあります。そこで政府が特別の手を打たない、金融機関も何らの特別の手を打たない場合に、いまのいままで推移いたしますならば、どのくらい経済は成長する見込みですか、国際収支はどうなりますか、物価はどういうふうになりますか。この機会を通じて、政府が警告を発し国民に協力を求められるという意味で、いまのままの状態で推移するならば三十九年度の経済はどうなるかということを私は率直にお伺いをいたすのであります。すなおにお答えをいただきたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経済見通しを立てました十二月現在におきまして、鉱工業生産の水準が前年同期に対比して二割近い高さにございました。しかも他方で、前回も申し上げましたが、在庫がむしろふえておる、減っておらない。こういう状態が経済原則の問題としていつまで続くかということには問題がございましょうけれども、損益分岐点が高うございますから、かりにそういう状態が続くということになれば、それは非常に不自然ないびつな経済になる、こういうことを申したのであります。
  124. 井手以誠

    井手委員 昨年の十二月に経済の見通しを発表なさったときにはこういうことをおっしゃっておる。いまのままの状態で推移するならば物価は六%ないし七%上がるであろう、国際収支は四億ドルないし五億ドル赤字になるであろう、これではたいへんだから引き締めなくてはならぬということが言われておりまして。このまま推移いたしますならば、そのとおりでございますね。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは全く仮想の問題になるわけであります。在庫がふえ続けながら、生産が二〇%以上をこえる率で一体いつまで進行し得たであろうかということは全く仮定の問題であります。したがって、いま仰せられたような数字に達したかもしれませんし、あるいはそういう状態は長く続き得なかったかもしれない。これは全く仮定の問題でございますから、それについてお答えするだけの根拠もないわけでございます。
  126. 井手以誠

    井手委員 根拠がないとおっしゃいますが、この説明には「三十八年度を超えることにもなろう」と書いてある。それを聞いているのです。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 根拠がないと申し上げましたのは、そういう不自然な、経済原則に反したような現象が一体永久に続き得るものかどうかということになれば、それはそうではなかろうという意味で申し上げたのでございます。かりにそういうことを仮想いたしますと、三十八年度を上回ることになるであろうということはお説のとおりです。
  128. 井手以誠

    井手委員 三十九年度の経済の運営は、経済の成長が三十八年度を上回るかもしれないおそれがあるから、国際収支及び消費者物価の安定を期せねばならぬとここに書いてある。総理大臣にお伺いいたしますが、三十九年度における経済運営の中心はどこにありますか。いまの状態でいくならば三十九年度の経済は三十八年度を上回るであろう、したがってどうすればいいかということ、その点をお伺いいたしたい。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 いまの状態でいくならばという、そのいまのとりようでございます。それがなかなかむずかしいのでございます。だから昨年の五月から八月に至り、八月から十月、十一月の状況を見ますると、生産が非常な伸びで、前年に比べまして一五、六%、一六、七%いっております。だから前年に対して一五、六%の率でいくということになりますと、先ほどお話しのように三十八年度より上回る。しかし、それが日本の経済にどういう影響を与え、将来どういうふうになるかということを考えますると、これは少し行き過ぎでございますので、いわゆる適当な措置をとるべきだというので、金融でもとるし、財政方面の予算あるいは財政投融資でも望ましい姿を突貫七%、名目で八・数%、こういうところで立てたのでございます。これは見通しということよりも、経済運営がどういう姿であることが望ましいかといういわゆる運営の方針をきめたのが実質七%ということであるのであります。
  130. 井手以誠

    井手委員 そこでその三十八年度を上回るかもしれない経済の成長を押えるために、国際収支と消費者物価の安定が基本であると書いてある。これは当然です。それでは物価をどうして押えられますか。これはこの席でも何回も質問が出ましたが、明確な答弁がでておりません。当初二・八%の上昇の見込みが今日まで六・七%になり、三十八年度は七・二%になるという見通しであります。三十九年度はいままでの見通しよりもうんと高い四・二%、その高いものをどうして押えられますか?説明によりますと、財政金融政策の適切な運用、実効ある物価対策と書いてある。その具体的な内容を承りたいのであります。公共料金を押えてもなお四・二%上がろうという見通しいまの例から申しまするならば、あるいは一〇%も上がるかもしれません。二・八%の場合に三十八年度は七・二%上がっている。四・二%の見込みならば、あるいは実績は一〇%に達するかもしれない。それをどうして押えられようとするのか、それを具体的にお伺いいたします。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的な問題は企画庁長官からお答えさせますが、私の方針は、やはり財政が過大にならないように引き締め傾向でいくように、また金融もそういう引き締め傾向でいくように、そして消費者物価騰貴の主たる原因がやはり農業、中小企業の生産性の低いということ、また流通機構の欠陥ということ、そしてサービス業等につきましての過当なムードによる引き上げをさせないように等々、いろいろな物価対策十三項目をきめてこれを実行していく。そしていわゆる消費者物価の上昇というものは、おおむね、先ほど申し上げましたように生産性の低いところと、それからムード関係もございますので、公共料金の一年間ストップということをやったのであります。大体いまの状況では、消費者物価もある程度のぼり率が少なくなってきております。そして卸売り物価もそう上がらない、横ばいの状態を続けていくと思います。そうやってみますと、大体年間で三%というのでありますが、これは年度を通じてまいりますと、前の年の上がった分が翌年も傾向として響きますので、三十九年の三月と四十年の三月では大体三%、三十八年度と九年度では四・二%、そういう大体の傾向をとっていく。いままでは、こちらのこうあれかしと願っておったのがそのとおりいかないことは事実上証明されました。今度は大体いけるのではないかと思います。
  132. 井手以誠

    井手委員 企画庁長官お答えになる前にお伺いしておきますが、十三項目を実行して、なお四・二%上がるというんです。公共料金はもちろん織り込み済みのはずです。したがって、十三項目は完全に実行しても、なお四・三%上がるという計画です。これはいままでにない高い率の物価上昇の見通しですよ。四・二%以下に抑えることができないのですか、いまの池田内閣では、あなたでは。いままでは一・一%といい、二・八%といったものが三倍も四倍も上がってきた。ことしはそれだけ十三項目の政策を実行しても、なお四・二%上がる、おかしいじゃないですか。具体的な対策を、実効ある対策、あなたが書いておる実効ある対策を承りたい。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理が途中までお答えになりましたことを、その先の部分をちょっと申し上げておきますが、先ほど総理大臣は、昭和三十九年の三月と昭和四十年の三月との消費者物価の上がりを大体三%に押えよう、それが年度平均をしては四・一%になる、こういうことを御説明申し上げたわけであります。ところで、その三%に対比いたしますところの、三十九年の三月と、一年前の三十八年の三月、それがどのようになるかということを考えますと、ただいまのところ五・四%ということを想定しておるわけでございます。それが年度間の比較で七・二%になるわけでございます。ところで、つまり今年の三月には一年前にくらべて五・四上がるであろうと考えておりますそのことが、はたしてどの程度に事実であるかと申しますと、三月から十二月まで九カ月間で二・六%上がっております。したがって、これから三カ月の間に五・四まで実はかなり余裕がある。いろいろ事情がございますけれども、消費者物価が多少弱含みになっておりまして、おそらく五・四%までいかずに、四%台でおさまるのではないか、それが今年の三月までのところでございます。それを来年には三%に抑えようというのでございますから、四・二という数字はあまり非現実的な数字ではない。従来でしておりました二%とかなんとかいうものよりはかなり高く出しておるのではないかと仰せられますのは、そのとおりでありますけれども、それだけ私どもが問題に現実的に対処しようという、そういう心がまえを持ってきたというふうにでもひとつおとりいただいたらいかがかと思います。  では、四・二%いくのかと仰せになりますと、それは決していきたいわけではございませんけれども、あらゆる政策努力を結集いたしまして、しかし問題の基本にございますのは、やはり国の経済の低生産部門をどうやって直していくかということでございます。生鮮食料品などは、昨今はむしろ逆の現象が出てきて、それ自身また心配なことでございますが、やはり人件費が上がる、そうして低生産部門が改善されるのには相当の時間がかかる、このことは事実であろうと思われますので、いかに私どもが欲しましても、消費者物価の値上がりは全然ございませんというようなことは申すべきではないであろう、年間三%ぐらいのものは三十九年度にもあり得るのではないかと、こういったような気持ちのあらわれであります。
  134. 井手以誠

    井手委員 ことしだけはだいじょうぶですということは、もう聞きたくないのですよ。毎年そういう説明があっておりました。毎年、ことしは見通しとしてはだいじょうぶでしょうと、こうおっしゃる。ことしもおっしゃった。そして、よく数字をことしの三月末と来年の三月末は三%だとおっしゃる。しかし、いままでの答弁は、いつも年度間の平均でおっしゃった。説明の資料としてはいいかもしらぬけれども、答弁なさることはどうでしょうか。いま生産食料品のお話も出ましたが、暖冬異変というお天気相手で物価を論じてはならぬと思うのです。  それでは私は次に進みます。鉱工業生産でございますが、これは通産大臣、この説明によりますと、年率にして二〇%近い上昇を見ておる鉱工業生産、それがどうして来年は九%に押えることができるのですか。三十八年度の成長率は八・二%に対して十三・六%です。最近は年率二〇%に近い鉱工業生産の伸びがある。それを三十九年度になってどすっと七%、九%にどうして抑えることができますか。成長率は九%、成長率から申しますならば、八・二%のときに二・六%上がる。三十九年度は成長率が七%のときに鉱工業出産は九%しか上がらない、そんな器用なことができますか。この説明にもあるように、操業度を維持しなくてはならぬという企業の意欲、三十六年以降の設備投資がいよいよ実働化してまいりました。そのときに簡単に、今日までは、最近は一八%も上がっておる鉱工業土産を、どうして三十九年になって器用に九%に抑えることができますか。そんなことをしたら企業としてはやっていけませんよ。あなたのほうはもっと高く見ておったかもしれませんけれども池田総理がなお抑えたそうです。政治的な数字かもしれませんが、それはいいのです。きょうは実は問いません。しかし、三十八年度は、いや最近は一八%も鉱工業生産が伸びておるのに、さらに設備投資の圧力がかかる三十九年度にどうして九%に押えることができますか、それをおっしゃってください。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、確かに一つの問題になるポイントだと思うわけであります。しかしながら、鉱工業生産というものは、申し上げるまでもないことでございますが、ふえますとかなり在庫がふえていくわけでございます。それにもかかわらず、いつまでもふえ続けるということはないわけでございまして、経験的に見ましても、昭和三十年から今日まで成長率と鉱工業生産との間には相関関係、函数関係がないように思われます。その理由にはいろいろございますが、たとえば、鉱工業生産は、国の経済活動のうちで大体一次、二次、三次産業を考えまして、比率的にもほぼ三分の一くらいのウエートしか持っておらないということも一つであると思いますし、鉱工業土産の伸びが、設備投資が主専権を握って伸びました場合には、概して成長率もやはり高いといったようなこともございます。それから総体的に低いところから鉱工業年産がスタートいたしますと、その伸びに伴って成長奉が伸びる。しかし、高いところから伸びましても、あまり成長率は伸びないといったようないろいろの理由がございますが、ともかくも相関関係がないということをひとつ基本に置いて考えなければ——相関関係はございますが、函数関係をあらわし得ないということが一つ、これを考えておかなければならないと思います。それから損益分岐点が高くなっておりますことは、これは事実であります。それだけ経済全体が引き締まり基調でなければ生産というものは伸びやすい、これもそのとおりだと思います。ただ、他方で製品在庫、流通在庫が相当過度に高いということも事実でございますから、いつまでも生産が伸び続けるかといえば、むしろ自然現象としてはそうでないと考えることのほうが普通の常識にあっておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  136. 井手以誠

    井手委員 きょうは頭脳明晰な企画庁長官としてはえらいまずい御答弁でございます。そんな理屈はございませんよ。相関関係も十分あるのですよ。あなたの言うとおりに押えたならば、なぜ押えなのか、それは輸入がどんどんふえるからです。赤字はどんどん出るなら、これではまずいというので押えておるのですよ。書いてあるではございませんか。「鉱工業生産は年率二〇%近い趨勢で上昇し、」と書いてある。「このまま推移すれば、鉱工業生産は引き続き活発なのびをしめし、」と書いてある。はっきりあなたのほうで書いてあるじゃございませんか。通産大臣、一月の鉱工業生産の指数は幾らですか。
  137. 福田一

    福田(一)国務大臣 一月の鉱工業生産の指数は出ておりませんが、十二月は一七、八%の伸び率が若干鈍りまして一・一%減になっております。
  138. 井手以誠

    井手委員 指数は……。
  139. 福田一

    福田(一)国務大臣 指数は政府委員から答弁させます。減の数字だけ一・一%減ということでございます。
  140. 井手以誠

    井手委員 時間の関係がありますから、その答弁はよろしゅうございます。十二月は依然として前月よりも伸びておる。企画庁長官、各企業が操業度を維持するために鉱工業生産は活発になろうということは何回も書いてあるのですよ。これは当然の勢いですよ。しかも設備投資がどんどん実働化してまいります。年間四兆円というここ設備投資が、その六割五分か六割かわかりません、人によって計算は違いましょうが、その分が毎年実働化してくるのですよ。そういう企業の設備投資の圧迫がありますから、来年は鉱工業生産はこのままの状態を推移いたしますならば、どんどんのぼっていくのでございますよ。それをどうして五%に押えることができるか、あなたの言う、金融でやるとおっしゃればこれでもいいのですよ。これを押えるために金融を押えますとおっしゃれば、これでもいいのです。それはどうですか。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一二月の鉱工業生産が十一月より伸びたというのは、おそらくお間違いでございまして、通産大臣の答弁されましたように、多少落ちておるわけでございます。しかし、基調としては、やはり根強いものがあるではないかとおっしゃれば、私はそういう傾向はあると思います。ただ、そこでおことばを返すわけではありませんが、そうやって最後までどんどんふえまして、はたして企業家として生産をいつまでふやしていけるものでございましょうか。経済原則としては、それはいつまでもやっていけるものではないということは、自由経済でございますから明らかだと思います。それに加えまして、ある程度政府が経済の運営を引き締め基調でやるということになれば、もう鉱工業生産はどっかで落ちなければならないというふうに見るのがむしろ常識ではないか、それを申し上げておるわけでございます。
  142. 井手以誠

    井手委員 宮澤さん、そうしますと、生産過剰になってから、各企業がこれではいかぬというので生産を落とすであろう、それを見込んで九%に抑えたとおっしゃるのですね。そういうことになりますね。そんな甘い考えですか。そんな話はありませんよ。伸びるじゃありませんか。鉱工業生産の項目に書いてあるのですよ。何と書いてあるか、「設備圧力からくる企業の操業度維持の必要や金融面の支え等が考えられる」、だから、金融を抑えなければならぬと書いてあるのでしょう。あなたのように、生産過剰になって、これでは困るというので、企業も考え出して生産が落ちてくるであろうから、九%になるんだという説明は聞こえませんよ。そんなことはとり得べきことではございませんよ、政府としては。そういう不景気がきてからあとでまた景気になるであろうというようなことは、言うべきことではございませんよ。鉱工業生産というのは、経済の中心ですよ。これは経済成長の中心ですよ。それをそんな簡単な考えではいけませんよ。とんでもない上昇をしそうだから、金融面から押えます。その結果九%になることを期待していますというのがあなたのほうの方針ではないですか。どうですか。
  143. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初に申し上げましたように、一つの仮想の場合を考えれば、そういうことが起こり得るということは確かに申しております。しかし、つくりますのは、やはり売るためにつくるわけですから、それが現金化されない、代価が払われないといったような出産が一体いつまで続くかということになれば、それはおのずから限度があることでありましょうと思います。ただ、その際に、金融なり経済全体の情勢がかなり高いところまでそれをささえてやるというような態度に出れば、それはある程度まではなお伸び続けるでございましょうけれども、そういう態度は、基本的な運営の態度としてはとらないということを申しておるわけでございますから、おのずから終期があるであろうというところのものに対して、さらにそれをささえることはしない、むしろ引き締め基調に運営する、こういうことを申しておるわけでございます。
  144. 井手以誠

    井手委員 宮澤さんに特に申し上げておきたいのですが、生産過剰になる、不景気になるようになれば、企業も生産を抑制していくであろう、そういう見込みのときに、手をこまねいて政府がほっておくわけにはいきませんよ。予防的措置を講ずるのが政府ではございませんか。生産過剰になる場合には、年産が自然に抑えられてくるであろうということを、評論家のように言うべきものではございません。予防的措置を講ずるのが政府態度ではございまいせんか。  それでは通産大臣にお伺いいたしますが。十二月末における経常収支の赤字は幾らになっておりますか。
  145. 福田一

    福田(一)国務大臣 五千六百万ドルでございます。
  146. 井手以誠

    井手委員 それは十二月だけです。十二月末までのと私は聞いておるのです。三十八年度の四月から十二月までの赤字は幾らかと聞いておるのです。四億三千幾らになっておるでしょう。
  147. 福田一

    福田(一)国務大臣 そのとおりで、四億三千万ドルでございます。
  148. 井手以誠

    井手委員 続いてお伺いいたします。一月の経常収支の赤字は幾らですか。
  149. 福田一

    福田(一)国務大臣 ちょっと数字がいまあれしておりますが、大体三千五百万ドルくらいかと思います。
  150. 井手以誠

    井手委員 単位が違うですよ、あなたのは。一月には三億ドルです。
  151. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは政府委員が答弁すべきだと思います。
  152. 山本重信

    山本(重)政府委員 お答えいたします。  一月の為替収支はまだ最終的な締めができておりませんですが、大体の見当で一億八千五百万見当かと推定されます。
  153. 井手以誠

    井手委員 貿易外収支を加えますと、三億ドル近くになるはずです。  企画庁長官、一月から三月までは輸入の多いときですか、輸出の多いときですか。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どちらかといえば輸入の多いときでございます。通関にいたしまして、五億ドルないし六億ドルの輸入があると考えてよろしいかと思います。
  155. 井手以誠

    井手委員 大蔵大臣にお伺いいたします。三月末における外貨は、幾らくらいになる見込みですか。いまの答弁で大体見当はつきました。十五億ドルくらいですか。
  156. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今年の三月末ですか、来年の三月末ですか。
  157. 井手以誠

    井手委員 昭和三十九年三月三十一日現在はどうかと聞いておるのです。
  158. 田中角榮

    ○田中国務大臣 十八億ドルを維持できるか、ちょっと割るかというところ、大体十八億ドルとこう見ていただけばいいと思います。
  159. 井手以誠

    井手委員 まあ、これはあとの機会に譲ります。そんな甘い数字ではございませんよ。一月だって二億ドル近い、いまの発表だけだって。たいへんですよ、これは。三月末には十五億ドルくらいに私はなると思うのです。  そこでこれはあとの機会に譲りまして、来年度、三十九年度の国際収支、鉱工業生産が——これは企画庁長官に聞きましょう、三十八年度は二三・六%上がった場合に、輸入は二五、五%ふえております。二倍近い輸入の増加ですよ。ところが三十九年度は、鉱工業生産は九%しかふえないのに、輸入は逆に七・八%増しになっておる。三十八年度は輸入が倍になっておるが、三十九年度は逆に鉱工業生産の伸びの九%よりも少なくなっているのはどういうわけですか。どうしてそんなに輸入が減ってまいりますか。それはこの数字の中には、いろいろな思惑もあると思うのです。しかし、こんな数字じゃ承知できませんよ。
  160. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、先ほど成長率と鉱工業生産との間に函数関係がないと申し上げましたのと同じように、通関の輸入量との間にも、やはり函数関係が基本的には発見されがたいということがもとにございます。  そこで次に申し上げますことは、確かに表面で申しますと、そういったようなことがございます。しかしながら、三十八年度の輸入を見ておりますと、その中にかなり特殊な原因に基づくもので、おそらく将来は繰り返さないであろうと考えられる要素が二つございます。一つは、わが国の長雨によるところの国内の農産物等の被害、それを反映いたしました輸入分で、この分が一億ドル近くございます。それから三十七年の輸入原材料の在庫水準がかなり低うございましたために、それを正常の在庫まで戻すための積み増しが行なわれた、こう考えられる部分がやはり数千万ドルございます。そのほかに砂糖あるいは羊毛などの異常な価格の高騰ということがございましたが、この部分は三十九年度に繰り返されないかと言えば、繰り返さないという保証はございませんから、この部分を入れて考えるわけにはまいりません。そこで、前に申しました二つの異常な要素を引いた上で、三十八年度と三十九年度を比較いたしますと、実際の輸入の増は一〇%をちょっと上回ったところになる、これが九%の鉱工業生産と見合うわけでございます。したがって、一つの面から言えば、鉱工業生産と通関輸入との間の函数関係がないということ、他面で申しますと、三十八年度の輸入の中に将来繰り返されないであろうと思われる要素がかなり大きくあること、この二つのことがお答えになると思うわけであります。
  161. 井手以誠

    井手委員 前の長官は相関関係があると言い、あなたはないとおっしゃる。適当に答弁もできるものだとあきれました。確かにあるのですよ、これは。  それでは通産大臣にお伺いいたします。よく在庫率の話がでるのですが、在庫率はいま幾らでございますか。一月末でいいです。
  162. 福田一

    福田(一)国務大臣 政府委員に答弁いたさせます。
  163. 井手以誠

    井手委員 輸入素原材料で……。
  164. 山本重信

    山本(重)政府委員 お答えいたします。輸入素原材料の在庫率指数でございますが、七七・一%になっております。
  165. 井手以誠

    井手委員 宮澤さん、よく聞いてください。一番基本になる輸入原材料の在庫率は、最近でいま一番低いのですよ。七七・一%といまおっしゃった。一昨年のいまごろは一〇・一%であったものが最近は七七%に落ちておる。そうすれば輸入はどんどんふえてくるじゃございませんか。たとい鉱工業生産が九%成長するといたしましても輸入はふえるはずです。あなたは、三十八年度の輸入で一番大きな問題、特質は何か、それは長雨による食料品の輸入だとおっしゃった。それは幾らふえているか。それは二千万ドルしかふえていないのですよ。私は政府が出した統計書をちゃんと持っているが、二千万ドルしかふえていない。あなたのおっしゃるのはそれは砂糖まで加えた分ですよ。砂糖の値上がりを加えた分が一億ドルです。長雨による麦の輸入でふえたものはわずかに二千万ドル。  そこで私は、時間をせかれておりますので、結論的に大蔵大臣にお伺いいたします。いろいろな経済の見通し等についてはまた別の機会にお伺いいたしたいと思いますが、この経済の見通し、財政その他の説明を拝見、拝聴いたしますと、すべては金融の適切なる指導によると書いてある。あなたは先日大蔵委員会において、財政は景気には中正である、中立であるとおっしゃった。景気刺激に非常に関係の深い公共投資の多い財政投融資は、大蔵省にまかせられてあるのですよ。その点は私は問いませんが、あなたのほうの政策一切を見てまいりますと、金融機関の適切なる指導にまつと書いてある。そのとおりですか。
  166. 田中角榮

    ○田中国務大臣 財政も景気刺激の要因になることを避けなければならないということで、毎度申し上げておりますように、三十九年度の財政につきましては、健全均衡中立予算を組んだわけであります。これからの正常な経済成長を推し進めながら、国際収支及び物価の問題に対処するということにつきましては、金融が一番大きなウェートを持つものであるということで、金融の正常化と協力を求めておるわけであります。
  167. 井手以誠

    井手委員 これで終わりますが、大体財政の膨張というのは経済の成長率に応じてやらねばならぬと思う。あなたは前年度よりも率が下がったとおっしゃるが、何とおっしゃろうがあまり大型の予算を組み過ぎた。経済を刺激しておるのです。そして一切がっさいが、国際収支にしろ物価にしろ、あるいは鉱工業生産にしろ、三十八年度を上回るであろうといわれておるものは来年度は低く押えておる。これは政治的な数字であると私は考える。しかしきょうはそれは問いません。そしてその押える方法は何か。それはすべて金融機関の適切なる指導にまかせられておる。責任を金融機関にまかせられておる。われわれは断じて承知できないのであります。これはあとで、午後日銀総裁に聞くことにいたしておりますが、なるほど理屈はいろいろ言いようがあるでしょう。なかなか大蔵大臣、近ごろは答弁がうまくなった。説明のしようはあるでしょう。どの大臣もそうです。あろうけれども、金融を引き締めなければならぬ。景気刺激をしてはならぬときに、このくらいの甘い考えでやっていけるものではないと私は思う。その点を警告いたしまして、質問を終わります。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは議論ではございませんで、記録に残りますので、申し上げておきますが、長雨による被害で小麦だけでも五千六百万ドル、そのほかになたね、トウモロコシ等がございます。
  169. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 井手以誠君の日銀総裁に対する質疑は、午後、中井徳次郎君の質疑のあとで行なうことにいたしますから、御了承願います。  午後は一時から再開することといたします。  午後の質疑者は中井徳次郎君であります。中井君の要求大臣は、総理大臣外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、運輸大臣及び自治大臣であります。  なお、外務大臣はニルソン・スエーデン外務大臣がおいでになっておりまして、会談する都合がありますので、二時三十分まででございますから、どうぞ御了承願います。暫時休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ————◇—————    午後一時五分開議
  170. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度補正予算に対する質疑を続行いたします。  中井徳次郎
  171. 中井徳次郎

    ○中井委員 私は、与えられました時間の中で、大体池田・ラスク会談に関連して外交問題をお尋ねし、次いで、本日議題になっておりまする補正予算そのものにつきまして、簡単に、これは疑問の点もないわけではありませんので、質問の形式でお尋ねをいたしたいし、時間がありましたら、厚生大臣に公害の問題についてお尋ねをいたし、さらに、最後に自治大臣に、交付税の問題やら、広域行政の問題やら、あるいは最近話題になっておりまする選挙の定足数、定員の改定の問題等についてお尋ねをいたしてみたいと思うのであります。しかしながら、時間がありませんでしたら、適当なところではしょるつもりでおりまするので、また、余りましたらさっさとやめますから、どうぞ、委員長さん、そういう気持ちでお願いをいたしたいと思います。
  172. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 承知しました。
  173. 中井徳次郎

    ○中井委員 総理は、さきに日米経済合同委員会に出席のために来日しましたラスク米国務長官と一月の二十八日に会談を行なっておられますが、その内容につきましては、中国問題で両国の見解を述べ合ったと発表されたわけでありまして、具体的に話し合った事柄については発表はなかったわけです。ここにおきましても、私どもの同僚がお尋ねをいたしまして、それについて外交上のことであるから差し控えるということでございましたが、あれから十数日たっておりますが、いかがでございますか。現在におきましても発表する自由はお持ち合わせないのでございましょうか、お尋ねいたします。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 ラスク長官と外務大臣が二回にわたって数時間一般外交問題について話をしておるのであります。それは逐一私は報告を受けております。私とラスク長官とは十数年来の非常に知己でございます。いろいろ話をいたしておりますが、特に外交問題でどうこう——日本中心とした外交問題ということでなしに、一般世界の情勢につきまして、中ソの問題とか、あるいは東南アジアの問題等々、いわゆる外交問題でないとは言えませんけれども、もっと奥まった友情の関係でいろいろ話し合っておるのであります。何と申しましても一時間程度の問題でございまして、私としては、ラスク長官の従来と同様のいわゆる日本に対する考え方、そしてアメリカの世界政策等を承りましたが、当面のいわゆる中共問題、日本と中共あるいは台湾の問題については話題にのらなかったことは、この前申し上げたとおりでございます。中ソ関係、東南アジア等の問題についていろいろ話をした次第でございます。
  175. 中井徳次郎

    ○中井委員 私はラスク・大平会談をお尋ねいたしておるのでありません。あなたとお会いになったことをお尋ねしておるのですが、中国問題で両国の見解を述べ合ったということは新聞等に発表されておるのですよ。  それで、私お尋ねいたしたいのは、それ以外にどういうことが話になったのか、そういうことをお尋ねいたしたい。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 新聞の発表はどうでございましたか、日本と中共との関係は主たる話題ではございません。従たる話題でもなかったと思います。やはり米ソ関係あるいは東南アジア等の問題でございまして、中共に対しましてのいろいろな意見は、外務大臣とラスクのところで十分話をされたことを私承知しておるものでございますから、その問題には、時間の制限もございましたし、また、外務大臣考え方、私の考え方は同じでございますから、繰り返さなかったのでございます。新聞にどうなっておりますか、中共問題で話し合ったということは、これは誤解を招くかもわかりませんが、そういう意味では、ここで答えたように、日本といわゆる中共問題というものは話題にのらなかった。ソ連と中共との話とか、これもまあ間接には日本に影響があるかもわかりません。それから東南アジアの問題等を話したのでございます。
  177. 中井徳次郎

    ○中井委員 私がこのことをお尋ねをいたしまするのは、実は、池田・ラスク会談においてこれこれのことが話題になった、中国問題、それから日韓会談の問題、早く妥結をするようにというふうな強い要請があったとか、あるいはまた防衛力の問題について相当ラスク長官から強い日本側に対する希望があったというふうなことを聞くわけであります。ところが、政府のほうは一向そういうことを発表されておりませんが、しかし、評判はずっと広まっておる。私は実は外交問題は別に専門といたしておる者ではありませんけれども、私のほうの耳にまで相当な信憑力をもってこういう話があった。しかし、総理は、この予算委員会においてはそういうことは発言なさっておらぬ。こういうところに私は今日お尋ねする理由があるわけなんでございます。特に、防衛力の増強の問題については、かなり具体的な数字をあげて要求があったということでありまするが、これについての御答弁を賜わりたいと思います。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓問題で強い要請があったと言いますが、これは全然うそでございます。日韓問題は一つも出ませんでした。  それから、防衛力の問題につきましても、向こうの方は、ことにラスクさんはあまり数字のことは申されません。ものごとの考え方というものは、私は、先ほど申し上げましたようによくわかっていることでございまして、具体的の問題等につきましては外務大臣がいろいろ話をしております。私には、とにかく根本的のアメリカの外交方針、そうして日本の根本的の考え方、しかも中共に対する問題はもういたしませんで、中ソの関係あるいは東南アジアのことについてやったのであります。  防衛問題については、いろいろあるがぐらいの話で、防衛力を増加しろとか、こういう押しつけのようなことは全然ございません。どうも想像をたくましくしていろいろなものが載るのでございますが、私とラスク長官との間には、もう長年の深い関係でございまして、そう一々外交交渉というようなことは、ほとんどないとお考え——ただ、日本の外交を預かっておる私でございますから、ラスク長官の根本的の外交の考え方につきましてはよく知っておりますけれども、情勢の変化の点なんかについて意見を聞いたことはございますけれども、いま新聞に出ておるような日韓問題とか防衛力の問題とか中共のあれとか、そういうことは話題にはのらぬと言っていいぐらいでございます。
  179. 中井徳次郎

    ○中井委員 話題にのらぬといっていい程度だとおっしゃいますが、特に、防衛力の問題については、国民所得に対して、いま日本の防衛費は一・三%か四%ですか、これをさらにあと一%くらいはどうも負担をかけたらどうだというふうな、かなり具体的な話があったというふうに私どもは聞いておるのですが、いかがですか。大平さん、いかがですか。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう数字のことなんか全然ございません。それはもう、何と言いますか、取り越しの誤まった批判、憶測でございます。それは、いまもニルソン・スウェーデン外務大臣と話をいたしましたが、日本の防衛力の問題はやはり出てきます。非常に少ないと。それで日本の経済が発展したんだろうと言う。世界の人は、日本の防衛力に対する出費が非常に少ないということはみな認めておる。アメリカも認めております。それがラスク長官と私との間で問題になりますほど差し迫った問題でもないし、もう両者ともよくわかっておることでございます。そうしてまた、日本としては、たびたび申しておりますように、国力の伸展、上昇に見合って最小限度の自衛力の増強をやるということは、アメリカも十分承知しておることでございまして、短い時間で、そういう何%をどうとかこうとかいうことは話題にならぬというのは、知った人は当然そう思うと私は考えておるのであります。
  181. 中井徳次郎

    ○中井委員 大平さん。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 ラスク長官と私との会談では、本委員会でも御報告申し上げましたとおり、第一は、中国問題につきまして、現在の段階におきましてアメリカ政府の責任者がどう考えられておるかということを詳しく拝聴いたしたわけでございます。と同時に、当方からも、わが政府がとっておる中国政策というものにつきまして御説明申し上げたわけです。で、得ました結論といたしましては、両国が、この中国問題というのは大きな問題でございまするし、フランスがとりました措置の影響というものにつきましても、まだ十分捕捉いたしかねておる段階でございますので、今後十分両国の間で協議をしていこうということに合意しただけが収穫でございました。  それから、防衛問題につきましては、会談の最終の段階におきまして一言触れられたことは触れられましたが、これは、要するに、最近のアメリカ軍の世界的な再配置と申しますか、計画が進んでおる、その一環として日本におきましても再調整が行なわれておるが、これにつきましては、何ら安保条約上の義務に影響があるべき性質のものではない、兵器の発達から当然輸送力がふえたために起こった現象であるということの簡単な解明がありましただけでございます。
  183. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういうことになりまするならばたいへんけっこうなことで、防衛力は、そういたしますると、日本といたしましては、何と言いますか、二元的な世界の情勢がだんだん多元的になってきた今日、世界情勢の変化に応じてどこでも軍備は縮小するという傾向にあるのでありまするから、日本におきましては拡張などということはまあ考えておらない、少なくとも現状またはその程度で持っていくというふうな気持ちでありまするのかどうか、その辺のところを伺ってみたいと思います。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のとおり、世界の人が不思議がるほど日本の防衛費は少ないのでございます。しかし、それを、憲法の問題から申しましても、わが国のいわゆる経済力の問題から申しましても、いろいろな点から総合的に考えなければならぬ問題でございます。したがいまして、日本は安保体制でアメリカと協力しておりまするが、日本の経済力がだんだん進んでいき、また、どうしてもこういう点は自分でやらなければいかぬという場合におきましては、経済の許す最小限におきまして防衛計画を立て、そうして自衛力の増強ということは、私はいま考えておるわけでございます。いかになっても、アメリカ、ソ連が減らしておるから日本もこれは減らすのだというふうには、すぐ考えるわけにはいかぬと思います。
  185. 中井徳次郎

    ○中井委員 自衛的な力につきましては、日本政府において主体的にあくまで判断をしていくということで、そういうふうに了解していいのですね。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 当然のことでございます。
  187. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうも、そういうことでもりまするならば、実はいろいろとうわさが出ております。あなた方はなかなかこの委員会においては口を開かれませんけれども、現実には、あなたの非常に側近の人たちから、防衛問題についてかなり具体的な話が出ておる。それは、先ほどのお話のように全く事実無根であるということでありまするならば、事実無根であるというふうにはっきりと取り消していただきたいと思うのですが、いかがでございますか。もう一度伺っておきます。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 いままでお答えしたとおりでございます。事実でないことは、私はここでの答弁で国民はおわかりいただけると思います。
  189. 中井徳次郎

    ○中井委員 次に、中国の問題でありますが、この間の総理の施政方針演説によりますと、中国には六億の人たちがおって、それは厳然たる事実である、そういうものに対しては慎重に検討をするというふうなことでありまして、一応何か前向きの姿勢であるように私は承ったのでありますが、その考え方につきましてはいかがでございましょうか。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 前向きとか、うしろ向きとか、いろいろな批判がございますが、施政演説で申しましたように、われわれは中華民国政府と友好な国交関係にあります。そうして、大陸には中共政権がおり、六億余りの国民に対して施政をしている、こういう事実も認めております。しかし、この問題は、アジアの重要問題であるばかりでなく、世界の非常な大きな問題でございますから、これを国連において十分審議して、そしてアジア並びに世界の平和と繁栄のためにりっぱな解決を得たい、こう考えて努力しておるのであります。
  191. 中井徳次郎

    ○中井委員 私、伺っておりまするのは、こういうフランスの中共承認その他に関連しまして世界が大きく動いておる中で、あなたのこれまでの態度、これを伺っておるのでありまして、安保条約後の、あなたが初めて内閣をおとりになったときの初めての施政方針演説、それを私はいま読み返してみますると、こういうことになっております。昭和三十六年の一月三十日の施政方針演説でありますが、共産圏諸国との友好関係の増進、なかんずく、日中関係の改善をはかることもきわめて重要である、中国大陸との関係改善、特に貿易の増進は歓迎するところであり、本年はこの問題への接近がわれわれの一つの課題であると思う、さらに、私は、日中双方が、かかる共通の認識に立って、相互の立場を尊重しつつ、与えられた条件のもとにおいて可能なる友好関係の樹立に努め、極東の平和と繁栄の確保をはかるべきものと考える、こう言って、かなり具体的にあなたは積極的な意図を出しておられるのです。ところが、この間の御演説は、中国大陸がわが国と一衣帯水の地にあり、広大な国土に六億余の民を擁しておることは厳然たる事実であり、一方中共政権に関する問題は、国連等の場における世界的な問題である、私はこれらの認識のもとに国民諸君とともに現実的な政策を慎重に展開していきたいと思うと、どうもちっとも進んでない。三年半何をしていらしたのかという感じを持つのであります。その間に、自民党の長老の松村さんが向こうへ行かれまして、あるいは高碕さんも行かれまして、また石橋さんも行かれて、いろんな往復はありまするけれども、ちっとも結論がでておらぬ。三年半ちっとも動いておらぬ。こういうことでいいのかどうか。この点を私は、まあ外交問題はこの程度にいたしておきますが、最後にお尋ねをいたしたいのでありまして、どうも、いつも、自由主義国家群からは信頼をされ、共産主義国家群からは畏敬をされる国なんとかいうふうな表現を用いられまするけれども、そういうような用い方も、現在の情勢におきましてはどんなものでございますか。私は、戦争前のあの時代においてさえ、一つの国に対しては信頼され、一つの国に対しては畏敬されというふうな外交用語を使ったのはあまり聞いてはおりません。やはり四海同胞とかなんとかいうふうなことでありましたので、どうも、アメリカには信頼をされただけで畏敬をされなくてもまあいい、中国、ソ連には信用されなくても畏敬されればいいと、何か初めから立場をきめていらっしゃる。もとよりあなたは日本は自由主義国家に属しておると言うのでありますから、その立場は何もそういう表現で説明しなくてもいいと私は思うのでありまするが、どうでございますか。いずれの国にも信頼され畏敬され、いずれの国とも仲よくするというのでないといけないと思うのでございます。初めから区別をつけて、そうして、都合のいいときには同文同種であるなどと言っておりまするけれども、畏敬なんていうことばは、これは英語に訳するとどういうことになるのですか。信頼と畏敬、大平さん、いかがでございますか。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 池田内閣になりまして、対中国政策というものは何も前進がないじゃないかというおとがめでございますが、私は、いま御引用されました総理の施政方針演説、そして今回の施政方針演説は脈々たる連絡があると思います。と申しますのは、あなたが御指摘になりました最初のほうの施政方針演説のときには、日中関係は貿易が一部の友好商社の間で細々と行なわれておるような変規的な状態でございましたが、そこに書いてあるとおり、与えられた条件のもとにおいて、相互は立場を尊重しながら正常化をやっていくという努力をその文言のとおり推進してまいりまして、ただいまあるような姿において日中貿易が止まれてきたわけでございます。それから、後段のほうの施政方針演説は、事政治的な関係でございまして、政治的な関係におきましては、日本の置かれた条件のもとから申しまして、また、中国問題を政治的に解決してまいりますには、アジアの平和のためにも世界の平和のためにも重大な問題であるからというようにちゃんと断わっておるわけでございまして、そういう脈絡をたどって御理解をいただければ、私どもの外交政策というものは御理解いただけると思うのでございます。  私は言語学者ではございませんので、畏敬とか信頼とかというようなことを英語に直しましてまた間違っちゃいけませんから、それはかんべんしていただきたいと思います。
  193. 中井徳次郎

    ○中井委員 どういうことなんですか、間違っちゃいかぬからというのは。どういう訳になりますかとお尋ねしておる。全段のことについてお尋ねしておったわけじゃありません。見当違いなお答えで、その二つだけ、あなたが何ならだれか事務当局でけっこうです。信頼と畏敬と、こう言うのですが、どうなんです。
  194. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 政府委員には言語学者がおりませんか。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、先ほどお断わり申し上げましたように、言語学者でございませんから、間違っておるかもしれませんが、英語に訳せよということでございますれば、畏敬というのはレスペクトということではないかと思います。
  196. 中井徳次郎

    ○中井委員 訳よりも、私は、総理も言われるように、いわゆる同文なんですから、畏敬ということばを中国大陸の諸君がそれを読んでどんな気がするか、考えてみたいと思うのであります。私どもまだ中国大陸と戦争中なんでしょう。どうなんですか、法的には。まだ片づいておりません。私どもは勝ったのですか。勝ったのじゃありません。そして畏敬、なまいきなことを言うなというのが、私は中国の人たちの考えではなかろうかと思うのです。そういう使い分けをして得意になって、なかなかうまいことを言うなということではなくして、問題は、やはり中国大陸の政権と日本がどうするかというのは、もうきめなければならぬ時期に来ておると思う。二、三日前のどこかの新聞にありました。日本のジャーナリストとアメリカのジャーナリストが会談をして、やはりいまこそアメリカに向かって日本がはっきりものを言うときであるということを言うておる。アメリカの記者に言われるまでぐずぐずしている。あなたは政権をとってから三年半。今度はまた吉田さんが台湾へ行かれるそうな。何しに行かれるか知りませんが、言いわけか慰めか知りませんけれども、まあソウルのほうには大野伴睦さんがいらっしゃって、そうして、一国の元首を子供みたいななんて言って、それが東洋的だなんて、けしからぬ話だと思う。全く日本的な、日本だけ通用する浪花節、それで問題を起こしているだけ。松村さんが中国に行く。なかなか使い分けがうまいです。石橋さんも中国に行く。今度吉田さんがまた行く。何かやるのかといったら、ちっとも出てこない。私は、この間から、蒋介石さんの忘恩の話、あれはしょっちゅう出るのですが、そのとおりであると思いますが、あれは中国大陸における大統領の地位にあられたときの蒋介石氏の処置であります。公私混淆してもらっては私は困ると思うのであります。不肖私もあの放送を聞いた一人であります。私は北方で聞きました。蒋介石さんのことばは南方語でありますから、北方の人たちにはわからない。私は、そのあくる日に北方語に翻訳をして、そうして放送をする手伝いをいたしました自身であります。だからこそ言うのであります。蒋介石氏はその当時は六億の民の代表者でありました。あの演説がありまして、それが、中国は広いのでありますから、大陸全体に伝わるまでになかなか時日を要しましたし、また、伝わってもなかなか言うことをきかぬ人もたくさんありました。八路の軍隊はなかなかその当時はおとなしかったですよ。だから、どうも国民党だけがよくて八路が悪くてとか、非常に簡単にものを考えてしまうのは私は非常に危険だと思うのです。敗戦後のことでありますから、いろいろな苦しいこともありました。ソ連が進駐してまいりました。大体日本人が知っておるような状況でありました。しかし、それだけの、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、ずっと中国はアヘン戦争からのたいへんな動乱の中で、私どももちょっかいをかけたり、じゃまをしたり、迷惑をかけたり、そうして、向こうは、孫文、蒋介石、毛沢東と、こう来ておるのでしょう。数年前のあの飢饉につきましてもがんばり通した。政権はどうだ、いいか悪いかとか、好きかきらいかということは別であります。それをほっておいて、まだ戦争状態である。こういう形で、経済成長がどうのこうのといったところで、私は一国の総理としてはこれは心配で寝られないのじゃないかと思うのですが、案外のんきだなあと思っています。とにかく、保守党の長老の皆さんも、政界の野心といいますか、そういうものを捨てて、何か日本の将来というふうに考えていくと、やはり中国問題だというので、松村さんだって石橋さんだって行くのでしょう。皆さんどうなんですか。そういうふうなことは私は技術の問題じゃないと思うのですよ。手続の問題じゃないと思うのです。皆さんの腹のきめ方だと思うのですよ。外務省の手続でもってできるできぬの問題ではないと私は思うから、さっきからおとなしくお尋ねをいたしておる。おとなしく聞いたから、おとなしくそれによって返事しておけ、そういうものじゃなかろうと私は思うのです。これだけ申しておきます。
  197. 大平正芳

    大平国務大臣 外交をやる場合の心がまえとして中井さんが言われたこと、私は同感の節が多いのでございます。また、中国問題が単なる手続の問題、技術の問題でないという御意見、全く同感でございます。でありまするから、私どもといたしましてはきわめて慎重な態度をとっておることは、御了承いただきたいと思います。  それから、信頼、畏敬の問題でございますが、これは、外国に対して信頼をしてくれ、畏敬をしてくれと申しておるわけではないのでありまして、私ども、それに値する国民になろうじゃないかという、われわれ自身の戒めとして申し上げておるわけでございまして、これはディプロマシーの問題ではないと私は思っております。
  198. 中井徳次郎

    ○中井委員 ほかへ移るつもりでしたが、そういうお答えなら、またお尋ねしなければいかぬですけれども、外交の問題というものは、国内に発表したって、すぐそれは世界じゅうに広まるのですよ。畏敬をせい、戦争に負けて二十年もたたぬのに、国交も回復せぬに、なまいきなことを言いおって、この影響というものをお考えにならぬのですか。アメリカに信頼もされ畏敬もされる、西の諸国にも信頼もされ畏敬もされる、どこからも信頼もされ畏敬もされるというなら賛成でございます。アメリカには畏敬されぬでもかまへん、信頼されたらいい。憎口言わしてもらえば、西のほうにはどうせ信頼しやせぬのや、疑い深いんだから、もうかまへん、畏敬さえされたらいいんだという、こんなことは、国民に対する心がまえと言いますが、これは非常な問題だと思うのです。どうも、いままでも、第二次世界大戦の日本の敗戦ということについて、原因はどこにあったかということについて、何か事実の認識の足りないものがある。何か戦争に負けたんだというふうなことについて自覚が足りないのではないか。私は、そういうものじゃないと思うので、日本民族は優秀であるというのはいいです。あなたは国づくりとか人づくりとかおっしゃっておる。しかし、日本民族は優秀だから、ほかの民族は不優秀だとか、ほかの民族より一段上であるというふうなものの教育をしてもらっては困ると思うのです。そういう意味で、畏敬ということは私は気にかかるのです。大蔵大臣もノモンハンで戦われたんだ。戦いの経験を持っておられる。私も持っておる。どうも、そういう点で、いまの政府は少しそういう問題について安易に考えている。アジアにおける日本の地位というものはやはり考えてもらいたい。これは強く希望しておきます。もう信頼と畏敬なんということばは今後使わぬでください。もっとほかの表現にしてください。そう思います。  次に、きょうは補正予算の審議でありますから、予算委員会というのはどうも政治委員会で、数字のことは総理大臣にまかしちゃってあまり聞かないというのもいけませんから、補正予算のことについて、少し、まことに事務的なことになるかもしれませんが、予算委員会は予算をやるのですから、お尋ねをいたしてみたいと思うのであります。  今度の三十八年度補正予算第三号、特第三号及び機第三号というものの説明書を見ますと、「当面必要な最小限度の経費に限って補正措置を講ずることとし、」、こういうふうになっております。その総計は幾らだというと八百二十六億、こういうので、私は、勉強をするつもりでもって、皆さんから配付になった「昭和三十九年度予算の説明」というものの八十一ページの「歳出」、これを見てみました。そういたしますと、「義務的経費の不足補てん」とあるわけであります。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕 義務教育費国庫負担金千八百四億、これについて補正第2号で八十二億、説明を見ますと、給与負担金の不足額と、こうなっている。第2で八十二億やって、第3号でまたさらに六十二億、これはどういう内訳だといいますと、不足額が二十三億であって、今度は三十八年度成立予算計上額に生ずることが予想される不足見込み額、これが四十億入っている。こんな見込み額までどうして補正を組まなければならぬですか。補正予算は、きょうは二月の十日ですね。参議院に回っていつ通るか知りませんが、それは参議院の自主性。衆議院もいつ通るか私は知りませんが、いずれにしましても、あと五十日でしょう。田中さん、なぜこんなものを計上しなければならぬのですか。大体補正予算というのはどういうときに組むのですか。もう三十九年度の予算がすぐそこにあるのに、こういうものを計上する。まだありますよ。生活保護費、補正第2号に七百二十二億円というのが現予算であります。それに対して、わずかに三千八百六十九万五千円を補正第2号に組んでおられる。非常に正確ですな。七百二十二億の中の三千八百万円足らぬだけで、三千八百六十九万五千円という正確な数字を組んで、それから一カ月たたぬ間に今度は八十四億組んでいるんだ。八十四億三千八百万円。どういうずさんな計算なんですか。これは内訳をこう説明してあります。三十七年度の精算不足額は五億九千三百万円にすぎないんです。あとは予算に不足を生ずる見込みとあるんです。これはまた、皮肉に言いますと、こういうことは三十八年度の予算を組みます最初初からわかっておったんじゃないか。義務的経費は少し削っておけば、あとでまた補正できる、こういうんじゃないですか。この辺のところ、ちょっと説明を願いたいと思います。
  199. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知のとおり、財政法二十九条の規定に基づきまして、予算編成後の緊急な事態に対処して補正予算を提出いたしておるわけであります。ただいま御指摘がございました義務教育費国庫負担金の追加は何か、多額の精算分はいかなる理由によるものかということでございますが、補正第2号は選挙前に出したのでございますが、選挙の関係で後になったわけでございます。この内訳を見ますと、三十七年分の不足分が、旅費の増平均六千円が八千円になっておりますために五億六千百万円、それから、宿日直手当の増が千六百万円でございます。それから、給与の差額、単価の差額等が七億二千二百万円、退職手当、恩給費の増額が六億八千二百万円、それから、初任給調整手当、通勤手当単価等の増額がございましたので四億四百万円、教材費の残が五千百万円減っておりますので、二十三億三千四百万円ということになっておるのであります。これは、御承知の、教員の定数等が相当実数の見込みよりもふえておったという慕情があるわけであります。それから、生活保護費の問題につきまして番、三十七年度の精算不足分が五億九千三百万円、三十八年度の不足見込み額が七十八億四千六百万円でございます。これは、生活扶助費だとか、住宅扶助費、それから教育扶助費、医療扶助費、その他の扶助費等でございます。そういう意味で、三十八年度の末を予想いたしましてどうしても事務的に本年度中に補正を必要とするということで補正予算を御審議願っておるわけであります。
  200. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまのお話によりますと、補正予算というのは二十九条による、そういう御答弁でございましたけれども、非常に緊急であるということはいずれも補正予算にとって必要なことなんですが、この問題は緊急なんですか。私は、きのうでしたか、あなたと国鉄総裁のやりとりを聞いておりまして、三十九年度の予算を組むときに、国鉄総裁は、千八百億ですか千三百億ですか知りませんが、これだけないと仕事ができないと言う。大蔵省はそれを削ると言う。国鉄総裁はそれではおれはもう横にならなければしようがないというので総理大臣に直訴する。そういうことがあって、百億だけ補正予算に組んだ、こういってあなたは返事をする。そんなことではいかんじゃないですか。ふやすなら本予算でふやしなさい。三十九年度の予算不足を三十八年度の補正予算で組むとはどういうことですか。そういうことはいけません。きのうの問答はそうでございました。  時間がありませんから、私ははしょらざるを得ないのが残念ですけれども、いま聞いたのは義務的経費なんですから、なんというか、一番義務的な、ほんとうに必要なことなんです。いまの国鉄は三月三十一日までにどうしても百億要るという、それほど国鉄の会計というのは窮屈であるかどうか。それから、それを借り入れ金でやる、私はよくわからない。まあ順序として尋ねますが、オリンピックの五億円というのがありますな。柔道の何か建てる。これなど三十九年度に回してどうしていけないのですか。三十九年度の予算ができてから要るから今度は三十八年度の補正に組んでしまえというようなことは、財政法違反だと私は思うのです。どうです。この辺の見解は。  さらに、まだあります。一緒に聞きます。自衛隊の産炭地域への移駐経費なんというものがありますね。これは、現場におきましては何かほかの工場でも来てくれるといいがなかなか来ぬというようなことで、弱味につけ込んでこの自衛隊が行く、こういうことなんでしょうけれども、これとても、三月までにどうしてもということは、どうですか。まだありますわ。何か六十億の輸出入銀行への追加出資。どうも私は、この八百二十六億の内訳を見ますると、どうしても補正に組まねばならぬというふうなものはそうたくさんはない、こう思うのですが、いかがですか。
  201. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、義務教育の問題についでは、学校の先生の定員が予想よりもふえておったというような問題がありますし、それから、生活保護等の問題、失業対策のような問題は、産炭地の急激な実情に対処しなければならないという要請があるわけであります。  なおまた、五億円のオリンピック関係費につきましては、国会でも決議案が出まして、緊急やむを得ざるもの、いわゆる今年の十月ないし十一月のオリンピックに間に合わせよう、こういうことでありまして、これが四月から予算を組んで八月ないし九月までに工事をあげるということは、非常にむずかしいことであります。  自衛隊の問題につきましては、選挙後一体いつやるのか、こういう問題もありまして、専売公社のフィルター工場等をあわせまして、産炭地の振興のためには一ときも争うということでありますので、まさに緊急やむを得ぬということで計上いたしたわけであります。  そのほか、まだ、国会当局から、この会館等の建設費も計上するような御要求もございましたけれども、いずれにいたしましても、一日も早く国会の御審議を願いまして、三十九年度から仕事を始めて御期待に沿いたいということであります。  自衛隊の移駐費については、敷地の取得費でありますので、これでもまだ不足かとさえいう議論もあるのでありまして、事情御了解いただきたいと思います。  なお、輸出入銀行その他の問題につきましては、この百五十億の融資のワクの追加というものについては、その後船の輸出等が非常にふえまして、輸出が伸びたために、この程度で一体いいのかということでありますが、御承知のとおり、一般会計から六十億の出資を行ない、資金運用部から四十億、手持ち資金で五十億、計百五十億の融資ワクを追加をして、何とか今年度の輸出金融に対処できるという意味で御審議をお願いしているわけであります。
  202. 中井徳次郎

    ○中井委員 私のお尋ねしておることにつきまして簡単に返事をしてもらいたいと思います。私の言うておりまするのは、こういう内容は予算に計上しないでもいいということを言っているのじゃありません。三十九年度の予算に堂々と上げたらどうだ、なぜ補正予算を組んでいるのだ、毎年々々補正予算第2号とか第3号とかいって、手直しでしょう。その手直しの内容を見ますると、どうもかなり御都合主義な予算である、それを言っておるのであります。オリンピックの五億円は、三月三十一日までに支払わないとでき上がらないというのではありますまい。四月中だっていいでしょう。私は、そういうことについて、何か八百二十億というふうな数字、これがことしの三十九年度の本予算にもし入っていればどうなるか、計算してみました。三兆二千五百億で、昭和三十八年度の当初予算に比べてその伸びは一四・二ですか、どうですか、とにかく非常に少ないのだ、押えた、これでもって物価騰貴の傾向を押えるのだと、けさから井出さんとあなたのところの企画庁長官ですか、問答しておりました中に財政のことがありましたが、そう言っておる。さらにまた、説明書を見ましても、あなたも言っておるし、主計局長もそういうことを言って、得々といたしておる。しかしながら、実際の経済効果は三月、四月であります。この補正予算は、私の計算では、そのうち大体六百億ばかりはもう当然三十九年度に回していいもの。これを加える。そういたしますと、たちまち一六%くらいになる。どうもあなたは、フリードマン為替局長ですか、そういうものと会談をして、一五%以下に押えるなんということを言ったものだから、何とかしょうといったのが真相じゃないんですか。私はこんな組み方をいつもやっておってはいかぬと思いまするから申すのですがね。いかがです。来年はどうします。そうして、義務的経費を、こんなものを見通しつかぬというのは事務当局の怠慢ですよ。生活援護とかあるいは義務教育費国庫負担とかね。どうです。昭和三十九年の、暦年で言えば四十年のいまごろまた補正予算を出すのですか、同じようなことを。どういうことでございますか。それをお尋ねしたい。簡単に……。
  203. 田中角榮

    ○田中国務大臣 八月に予算要求を済ませて、十二月一ぱいで予算編成をするわけでありますが、特に市町村関係に委託をしている事務、市町村関係等で補助をしなければならないようなものについては、なかなか的確な、数字がひとつも違わないということは事実むずかしいわけであります。がしかし、三十九年度の予算編成をいたしますときには、かかる事態を十分考えましてやりましたので、一部大きな事務経費等のやむを得ざるものを除いては、補正を前提として予算を組んでおるわけではありません。
  204. 中井徳次郎

    ○中井委員 やむを得ないもの等があるということをお認めですから、また必ず補正予算を組むと思います。  ここで国鉄総裁がお見えになっておりますからちょっとお尋ねをいたしたいのですけれども、百億円ばかりの改良費の不足ということでありますが、あなたも経済界に長くいらして、国鉄総裁、公企業体の長として、池田総理などが財界人から出すのだといってずいぶん方々探されたが、なかなかうんと言わない、あんな責任だけ重いところで経営もままならぬというようなものをよく石田さんはお引き受けになったわけでありますが、おやりになって、官庁会計、こういう経理についてどういうふうな御感想をお持ちになりましたか。私は、この間から補正予算を質問しようと思いましてちょっと研究をしたのです。それで国鉄の政府予算というのですか、調べてみましたが、なかなかわかりにくい。石田さんは頭脳明晰であられるでしょうからおわかりだと思いますけれども、実際仕事をしていく上にああいう会計制度でいいのかと私は思うのですが、率直な御見解を伺いたいと思います。
  205. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、私は長年三井物産の仕事をしておりました。それが国鉄の総裁になって国鉄の世帯をまかなっていかねばならぬ、そのあれには非常に大きな差があるということは御想像のとおりだと思います。物産会社におれば、仕事をしたいと思えば、資金の問題などについてはほんとうに自由奔放にできるのだが、国鉄においてはなかなかそうはいかない。足かせ手かせ。ことに予算というような私にとってはきわめてむずかしい問題があるので、そこに非常に苦労しておるのでありますが、とにかく自分が国鉄総裁になった以上は、やはりそれだけのことをしなければならぬということでございます。ことに最近直面しておる問題は、第二次五カ年計画などというものは、三年を経過しておるにかかわらず、わずかに四割しか達成していない、あとの二年でもって六割を達成しなければならぬ。こういうことで予算を請求したのでありますが、国家の財政の大勢いかんともすべからず、だいぶ切られて、庭はなかなか悪戦苦闘しておる次第であります。しかし、これも国鉄人としてはこういう運命のもとに立たされておる、この間に何とか事故の起こらないように使命を達成するようにということで努力しておる次第であります。
  206. 中井徳次郎

    ○中井委員 私も、しろうとながら国鉄の予算をちょっと見ますと、昭和三十九年度、運賃収入は六千億、収入合計が六千二百億というふうな大きな収入であります。それでもって減価償却はどれくらいあるかなと思って見ましたところが六百八十五億、こうあります。しかし、これ何の減価償却であるか一向ここではわからない。方々探してその説明書を見ますと、どこかに国鉄の資産なんというものが出ておりました。いま国鉄の資産は幾らですか、それから資本金は幾らですか、ちょっとお尋ねします。これは大蔵大臣に、あなた監督しておられるので、ちょっとお尋ねしておきます。
  207. 田中角榮

    ○田中国務大臣 国鉄の資本金は八十九億であります。総資産は二兆円をこえていると思いますが、こまかい数字はあとからお答えします。
  208. 中井徳次郎

    ○中井委員 私は、国鉄の資本金が八十九億ということで実はちょっとびっくりしたのであります。借り入れ金の総計は幾らですか。
  209. 石田礼助

    石田説明員 詳しい数字は申し上げられませんが、六千億以上であります。
  210. 中井徳次郎

    ○中井委員 私が調べましたら全部で九千億ばかりあるようでございました。資本金は百億以下、八十九億、借り入れ金は九千億、固定資産は二兆円ですか、どうもおかしいですね。大蔵大臣日本銀行の資本金は幾らです。
  211. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日本銀行の資本金は一億円であります。
  212. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういう形のものをそのまま残しておいていいのですか、世界の三本の柱といって、総理どうです。日本銀行の資本金なんかどうでもいいという議論もあります。ありますけれども、現実の問題として、皆さん中小企業とは何ぞや、従業員三百人ですか、資本金三千万か五千万ですか、日本銀行が中小企業のような資本金、これは皆さんのはなはだ怠慢であるが、そういうことをほうっておくものの考え方というものについて皆さんにお尋ねしたいと思うのです。国鉄は経営が困難で赤字で何ともならぬ、救済策いかん、金貸してやろう、大蔵省預金部から利子のついた金を貸してやる、資本金はよう出さぬぞ、そういうこと、日銀は政策委員会で何か討論されておるはずです。大蔵大臣日本銀行が創立されたときの資本金は幾らか、一億円になったのはいつか、ちょっといま調べて返事してください。あまりに現状と離れ過ぎておる。国鉄は全部国家の投資でしょう。日本銀行はどうなっておるのですか、その辺のところ。——時間がありませんから、わからなければあとでいいですが、私の調べたところでは、何か明治十五年かに日本銀行ができたときは一千万円、一億円になったのは昭和十七年、これをほうっておいて、金融の総本山だ、日本銀行には手をつけませんと、資本金にも手をつけないのかもしれませんが、どうなんですか。これは増資をするときに問題が少しあるから、うるさいからほうっておけ、こうじゃないかと、これは邪推するんですよ、どうも池田内閣の非常に悪い癖だと思います。国鉄、どうですか。いま日本で一番大きな資本金のものは東京電力ですか、千二百億。国鉄は少なくとも二千億や三千億あっていいでしょう。もし九千億の借り入れ金にかわるに、二千億、三千億の資本金の国鉄でありますならば、こんな補正予算百億ばかり要りません。私は、どうも国家の財政が高利貸しじゃあるまいし、こういう公共企業体に投資をしたり援助をした場合には、もう少しそういう点も深く掘り下げて判断をしていく。要求は千八百億円、それを千三百億に抑えたり、五百億足らぬわ、それなら、やかましく言うから百億つけておけというふうな、そういう形で、資本金は幾らだ、八十九億円だ、日銀の資本金が一億円だ。そうして外に向かっては、どうも借り入れ金ばかりで会社を運営しておるとはけしからぬ、自己資本をしっかりふやさなければいかぬ、ふやさなければいかぬといってやかましく言うておきながら、金融の総本山、通貨の安定の拠点でありますところの日本銀行の資本金は一億円。いま日本銀行総裁が見えるそうですから、見えたら私は内訳などを聞いてみますが、どうもこういう点、もはや戦後じゃないとかなんとか言うておきながら、中国の問題はほうっておくし、財界の問題でも、内輪の問題はかくのごとき始末である。補正予算、ほら、まあ組んでおけというようなこと。特別会計は一体いま幾つありますか。資本金の問題は日銀総裁が来てからまたなにしますが、いま特別会計は幾つあるのですか。
  213. 田中角榮

    ○田中国務大臣 特別会計の数は四十三であります。  それから先ほど御質問の国有鉄道の問題を申し上げますが、確かに資本金は国有資本の四十九億、それから出資資本の四十億、計八十九億でありますが、そのほかに資本積み立て金、いわゆる固定資産再評価積み立て金等が一兆一千五百四十八億八千二百万円ありますので、これが資本でありますから……。
  214. 中井徳次郎

    ○中井委員 そんなことはみんな知っております。日本銀行が資本金が一億だけれども、保留金がうんとあることも知っていますし、政府への納付金も知っています。しかし、そうだからというて、資本金をほうっておいていいかというのが私の皆さんに対するお尋ねなんです。総理大臣、いかがですか。こういう問題は、これこそあなたは専門屋だ、何かさっそく政府のそういう機関について調査をして、妥当であるかどうか研究してもらいたいと私は思うが、いかがですか。
  215. 池田勇人

    池田国務大臣 一般の営利会社のような考え方でいくべきじゃないと思います。それは、お話のとおり一億円というのは、日本銀行のあれとして非常に少ないように見えますが、しからば日本銀行に資本金が要るか要らぬかという問題もあるわけでございます。資本金を持った場合にどっちの出資にするかという問題がありますので、私は、一般のあれのように考えるべきじゃない。たとえば政府関係機関でも、日本開発銀行などは出資金が二千億近かったかとも思います。こういうので、その会社の発生の状況から考えるべきであって、東電の会社が千二百億の資本金だから国鉄がどうとか、こういうことは、政府関係機関としては、私は民間の会社と同じような考え方でいくということはいかがなものかと思います。電電公社にいたしましても、専売公社にしても同じでございます。
  216. 中井徳次郎

    ○中井委員 私は、政府のそういう機関が民間会社と違うということくらいは知っております。知っておりますが、これはいかにもひどいじゃありませんか。資本金なしでもいい——それは、日本銀行の中におります一理事の書きました書類等を私は調べてみました。保留がたくさんありますからこういうものはあまり重要でないかもしれないなどといって上手に逃げております。しかし、あなたの議論をもってすれば、明治十五年に一千万円であった日本銀行は、いまでも一千万円でもいいのですよ。やはり途中で変えております。どうですか総理、あまりにがんこにおっしゃらずに、こういう面はひとつ検討をし直して調整をして——国鉄や電電はいつも借り入れ金ばかりです。積み立て金はありましても、いろいろ問題があるからなにですが、償却の経費なんか見ますと、国鉄の償却は、最近経営が困難になると見えて、収入におきましては国鉄は六千二百億、電電公社は四千億くらいですけれども、償却のほうは電電公社のほうがうんと多い。どこでどういうふうにどうなっているか知りませんけれども、そういうようなことについてもっと私は検討してもらいたい。  さっきの、特別会計幾つだと聞いたら四十三だと言いましたが、多過ぎやしませんか。私どもは予算を見ましてもなかなかわかりにくいですね。いかがですか、イギリスやドイツあたりでは特別会計は幾つぐらいあるのでしょうか。あるいはアメリカの例等、大体わかってましたらこの際ちょっと御披露を願いたい。
  217. 田中角榮

    ○田中国務大臣 予算の立て方、仕組みが全然違いますので、事務当局でいま直ちに御質問にお答えできるような資料はないようでありますが、せっかくの御質問でありますから、調べてお答えをするようにいたしましょう。
  218. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうも、私の調べたところでは、非常に簡単な調査でありますけれども、イギリスあたりは、まあ形式は違いますが、あまりありませんね。四つか五つ、やはり予算は統一して出している。この特別会計も四十三あるというが、内輪を見ますと、たとえば保険会計だけで二十くらいあるのです。農林省所管、厚生省所管。これは法律がきまればあと事務で流れるはずじゃないかと思うのですが、こういうものを一本にまとめるとか、皆さんが何か新産都市とかなんとかいって、新しく郊外に都市をおつくりになるとかなんとかいっておるのですが、そういうようにまとめるとか、意欲的なことがないとだんだんふえるばかりです。文部大臣おられますか。何だか今度国立学校が特別会計になったといいますが、文部省はどうなんですか。それでけっこうという答弁でしょうけれども、これは非常にふえてきたのですが、国立学校をどうしてしたのか、その理由その他をちょっと聞かしてください。
  219. 八木徹雄

    ○八木政府委員 大臣が熱を出しておりますので、私がかわってお答え申し上げます。  国立学校の特別会計は、御存じのとおり戦前は明治以来ずっと特別会計であったわけでございますけれども、いまは一般会計になっておるのを、今度また特別会計に戻してもらうということであります。多くのことを言うことはないと思いますけれども、大学教育という場合に、一般行政事務と違った、ある程度経営的な面もありますわけでございますし、戦前そういうことでありましたので、国大協会のほうからも特別会計に戻してほしいというような要請も強うございますし、御案内のとおり四十一年度からは大学急増になるわけでございますので、そのためには相当な施設設備の整備をやらなければならぬということもございまして、しかし、そういっても一般会計に依存する度合いは一番多いわけでございますけれども、これをやることによって、たとえば演習林であるとか、あるいは不用財産の処分といったようなものが特別会計に回し得るという利点もできてまいります。それからまた、大学病院のごとく、現行制度の中では弾力的な運営ができませんので、実際に予算が縛られて動きにくいという面もございまして、これをやることによって歳入に見合う歳出が弾力的に運用できるという面もございます。それからまた、決算上の剰余金が特に病院の場合など多いわけでございますけれども、それを積み立て金に積み立てて施設設備の充実に充てることができるといったようなこと、それからまた、新たに、これは大学病院になるわけでございますけれども、長期借り入れ金制度が設けられて財投の金を使うことができるといったような利点もございますので、国立大学協会側の要請もございますし、時宜に適した措置じゃないかということでお願いをし、実現したといったような経緯でございます。
  220. 中井徳次郎

    ○中井委員 戦前は特別会計であった、戦後は一般会計にしたという。それにはそれの私は理由があったと思うのでありまして、教育のごときは、義務教育ではないとは言いながら、政府の施策そのものである。特別会計にすると収支が出てまいる、いま非常な赤字であることは御案内のとおりでありますが、やはり将来は、こういろ特別会計をつくっておきまするというと、授業料の値上げなどをするのにもどうも非常に都合がいいのじゃないかなんということを流布されておりまするが、大蔵大臣はそういうことについてどういう御見解でありますか。私はやはり学校などというもの、大学、高専、国立学校のそういうものはそれこそ一般会計で最後までめんどうを見ていくという、収入はもとよりありましょう、したがいまして病院会計なんかだけをまた特別会計にするのならばわかりますけれども、教育そのものまでということになりまするというと、何かいま演習林の話などありましたけれども、困ってくると、ちょっと演習林を売ろうかということになるのじゃないか。この点について、特にことし急にそんなことになりまして、特別会計をつくりました特別の原因でもありましたら伺わしていただきたい。どういう理由でことし急にああいうことになったのか伺いたいと思います。
  221. 田中角榮

    ○田中国務大臣 四十三の特別会計に対しては、いつも御議論があるところでございますが、御承知のとおり、一般会計の中では弾力性がないということ、もう一つは特別会計に移して借り入れ金の道を開いたりすることがより合理的であるということによって、事業会計に似たものとして特別会計制度がつくられておるわけでございます。しかし、一般会計と同じようにこうして国会の審議を受け、国会の決議に基づいてのみ予算が執行せられるわけでありますから、一般会計と異なるということは考えておりません。また今度の学校特別会計につきましては、いままでの一般会計の中において学校の整備等をはかっていくことが一体いいのかということに対して文部当風の意見も十分聞いたわけでありますが、まあ弾力性が十分発揮せられるならば、特別会計のほうがより合理的だという結論に達して特別会計にしたわけであります。まあ一つの例を申し上げますと東京大学、旧帝国大学でありますが、これは一体いま新しくつくるにはどのくらいかかるかといいますと、理想的につくれば一千億かかります。どんなに詰めても六百億ないし七百億かかる、こういう案が出ておるのであります。そうしますと、このようなものをより理想的な地域に、まあ一つの考え方としてでありますが、これはまだ全く仮定の問題でありますが、百万坪程度の土地を持って、それに相当の新しい施設を諸外国並みにやる場合に一体一般会計でできるのかという議論をしましたら、これはとても十年や二十年ではできないわけであります。そういう場合に土地の交換、等価交換その他特別会計によって弾力的に行なうことによれば、やる気になればできる、こういう大きな利点があるわけであります。でありますから、特別会計にしてから、ダム特別会計、治水特別会計、港湾特別会計、道路特別会計、これらが一般会計時代よりもどのように急速に国民の要請に応じたか、こういうことをひとつ比較していただけばわかるのでありまして、これによって授業料を上げようなどという考え方はいま全然持っておりません。
  222. 中井徳次郎

    ○中井委員 なかなか上手な御説明でありましたけれども、どうも四十三も特別会計がありまして、その総計は六兆一千二百六十四億というふうな膨大な金になって、一般会計の倍であります。政府機関の関係の予算はさらに二兆七千億、全部で十二兆というふうなことの中で、私どもは現実の問題といたしまして一般会計がいつも問題になっておるというふうな姿、私は何かこのままでいいのだろうかというふうな疑問を持つのであります。また、先ほども石田総裁にお尋ねをしましたように、何か会計がちょっと見まするというと、池田総理のごとく大蔵省に何十年おったくろうとは官庁会計のことはわかるかもしれぬが、一般国民にとりましては非常に官庁会計というのは最近わかりにくくなってきておる。減価償却幾らと出たって、そのもとがないというふうなことで、そういう一覧表のようなものから中へ入っていくのでしたら、資本金の八十九億なんということについてはやはりいろいろと議論が出るのだろうけれども、みんな忘れちゃってしまっておるというふうなところに、日本の予算の一つの盲点があると思うのであります。その盲点を逆用されるというと非常に困ると思うのでありまして、今度の一般会計三十九年度三兆二千五百億、こういうことでありますが、先ほど言いましたように補正予算八百二十億といいますが、どうしても出さなければならぬというものはせいぜい百億か二百億、いまの文部省の、今度は国立学校特別会計というようなものをことし新しくつくりまして、それでもって収支というわけじゃないでしょう、千三百億ばかりでありまするが、不足分は一般会計から出ておりまするけれども、収入の部分は二百億ばかりあります。病院の収入が百七十億ばかり、授業料収入は四十億とか何かありまして、二百億ある。それを加えまするというと、特別会計をつくらずに、補正予算を組まずにいきまするというと、ことしの予算は、三十九年度の予算は三兆三千五百億ということになりまして、あなた方が自慢をするところの一四・二%の伸びに抑えたというのは、どうも実はあまり抑えてないので、これを加えますると一七%になる。これによって物価騰貴をどうこうするのだといっても、数字は正直で現実でありまするから、やはり三%に抑えるの、何%に抑えるのと言うが、実際は今度の予算も相当膨張した予算である、膨張せざるを得ない予算になっている。そうして義務教育費的なものは、さっきも言いましたようにこれは延ばしらやって、また来年のいまごろ、こういうものは精算をいたしましたところが赤字になりましたというて入れる、ここに私は今度の予算の特徴的なものを実は見るのであります。特にこの際国鉄総裁あたりが、もっと国の予算と企業予算——それは一私営の株式会社じゃもちろんございません、ございませんけれども、こういうふうにせっかく三公社というものをつくってどんどん動いておるのでありますから、それに見合った予算にしていく。予算の執行の面におきましてどうですか、政府関係予算と一般予算と、何か非常に違うところはあるのですか、ちょっと伺います。
  223. 田中角榮

    ○田中国務大臣 政府関係予算は、国会の議決が終わりますと、国鉄に関しては国鉄総裁が自分のお考えで支出をいたします。しかし政府予算につきましては、四半期別に十分考えながら、大蔵省とも相談をしながら支出をいたすということであります。  それからさっきのこと、答えてよければですが、予算書の問題については、私も大蔵省へ参りましてから、少し専門的過ぎる、専門的というよりも、どうも昔からのやり方をそのまましておるということで、一つは予算書をもう少しわかりやすく、国民各位が見ても十分わかるように、民間企業等の書類も参考にしながら、より新しい立場でお願いをしたいということで、財政制度審議会に意見を申し述べ、検討いたしております。それから税法の問題についても、非常に専門的であり、むずかしい、取るほうはわかっても国民側はわからないということではいけないという立場で、より合理的な税法というような立場で検討を進めておるのであります。
  224. 中井徳次郎

    ○中井委員 執行の面においてだいぶん違うというふうなお話でありましたが、政府関係機関の予算の執行については、国の予算の執行の場合と実際上大差はない、ただ支払い計画に相当するものとして四半期ごとの資金計画を定めることになっている。政府関係機関の予算の執行職員についても、予算執行職員等の責任に関する法律が適用される。会計事務についても、会計法の適用はないが、別に内部において類似の会計規程を定めているのが通例である。国庫ではないので現金事務を日本銀行が扱うことは強制されないが、公社は実際上大部分の事務を日本銀行に依存をしておる。政府関係機関の会計については会計検査院が検査をする。どうも非常に違うようなお話でありますが、私は、先ほどから申しておりまするのは、職員が不正をするとかなんとかいうことでも申しておるのではありませんので、企業体が活発にその目的に向かって動き得るような形に衣がえをしたらどうだ、日本銀行の資本金も同じようなものの考え方であります。何か旧態依然で、問題なかったらほっとけというふうなことで、積極的な意欲がない。国鉄の職員が予算を組みまするときには、ほかの郵政省の職員やら建設省の職員やらとちっとも変わりはありませんで、運輸大臣の綾部さんの下僚のほうへ行って、そしてそれからまた一緒に大蔵省へ行って、大蔵省の主計局の熊田君というんですか、それに説明をする、手続は全然変わらない。そうしてやかましゅう言って、その熊田君が国鉄総裁みたいなことで、ぎゃんぎゃん言って要求しても、削っていく。もちろん大蔵大臣にも御連絡はありましょうけれども、私はどうもこういう形についても相当改める時期に達しておるのではないか、こういう気持らを持ちましてきょうはお尋ねをしたわけでありまして、そういう厳格なことをいたしましても、やろうと思えば何でもやれるという証拠が私は東海道新幹線だろうと思う。いかがですか、千九百五十億の予算、初めこれはやりたいから、予算技術でちょっと小さい金額を言うておけば、始まったらそのうち大きくなってもしょうがないわというので、とうとう三千八百億、私はずいぶんこれは調べてみましたが、ふしぎなことがたくさんございますよ。きょうは時間の関係で言いませんけれども、たとえば名古屋と大阪の間の今度の新幹線の一キロ当たりの建設費を計算してみました。大体六億円以上かかっております。同じように並行して、今度名神国道というのができるのですな。この名神国道は、路面の面積は国鉄の線路の建設の大かた倍ある。これはうんと安いのです。六億かからない。国鉄はレールが要るかもしれません。しかし、アスファルトとかセメントとか、あるいは高速道路にはなかなか土の質——まあ、国鉄にもそういうものは要りましょうけれども、どうもおかしいのです。国鉄のほうが非常に高い。また業者のことも調べてみました。自民党の参議院議員でおられる鹿島さんの名前の鹿島組が一番たくさん請け負っておられまして、この間に大体十六、七カ所を請け負うておられる。御専門でありましょうからけっこうでございましょうけれども、その次の十三、十二、十一と、だんだん請け負いの、ああこれだな、ああこれだなというのがどんどん出てまいりまして、それが、たとえば鹿島組はここだけを能率的にやるというふうになっているかと思いますと、違います。東京の管内、静岡の管内、名古屋の管内、大阪の管内、みんなに分かれて、適当に四つか五つずつ配分されておるとか、どうも土地の問題は、原案は百五十億円であったが六百億円になった。やかましゅう言われたので、物が値上がった、しかし四百五十億差ができても、まだまだ千八百億には差があります。設計の変更だと言う。私もよくあの沿線を通りますが、こんなところどうして橋げたのようなものでやっているんだというところが長く続いてみたり、あるいは堰堤になってみたり、何かしろうとには全然わからない。聞いてみると、住民がやかましゅう言うたから橋にしたんだというようなことやら、何か予算を取るまではなかなかむずかしい手続、しかし、いよいよ取ってしまえば結局同じことで、私は、そんなことよりも、もっと企業体に対して打つべき手はあるというふうに実は考えられる。私は東海道新幹線は非常に極端な例であろうと思いまして、具体的に何のだれべえが悪いことをしたとか、何のかんのということはありませんけれども、しかし、ずいぶんいまでも疑獄が起こっておりますね。何か出入りをいたします業者は一定にきまっておりまして、指定業者はきまっておりまして、なかなか審査が厳重であるようでありますが、通りますと予算と同じで、通ってしまえばこちらのものだというふうなことは案外あるのではないでしょうか。私は、やはりそういう面にむしろ国としましては十分力をいたさなければならぬ、かっこうだけついておればかまやせぬというふうなことはどんなものであろうと思いますので、国鉄、電電、その他政府関係機関のこの予算の形についても、もう一ぺん見直してもらいたいものであるということを要望をいたしておきます。  また、一般会計と特別会計、政府関係機関予算の総計が、いつも問題になるべきであろうと思うのでありまして、そういうことにつきましても、政府が予算説明に際しても、その辺のところから入っていただく。どうも予算の一体化というのがくずれておる。アメリカには、特別会計は百ほどあるということを言う人もありまするが、大きいのは八つしかありませんで、あとはもうほとんど問題にならぬことでありまして、それもちゃんとわかるようになっておるそうでございます。詳しいことは私も半しろうとでありまするからわかりませんが、どうも日本の予算は、予算一体化という面から見ると、はなはだわかりにくい。官僚御出身の御専門の人しかわからない。そこに私は一つの盲点があるように思いまするので、以上のことを特に重ねて要望をいたしまして、日本社会党は、補正予算に賛成か反対か、本予算にも反対したですから、おそらく反対でありましょうが……。(笑声)まあまあこういうような基本的なものをこの際とくと考えおきをいただきたいということを申し上げまして、次の問題に移りたいと思うのであります。
  225. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどの義務教育費等の問題について、わずか三、四カ月前に補正をしたのにまたという御質問がございました。これは御承知だと思いますが、前のものはベースアップの費用が非常に大きかったのでありまして、今度のものが事務的経費の精算をやったわけであります。念のために申し上げておきてます。
  226. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういう御答弁があると、私も言いたくなります。ベースアップなんというのは、毎年もうきまったことです。(「そうはいかない」と呼ぶ者あり)そうはいかないったって、毎年人事院の勧告がある。四月からのを十月にして、それを待って予算を組むなんというのは、まことに不見識だと思います。毎年毎年物価騰貴、人事院の勧告、ここ数年これは追っかけ合いをしている。そういうことを言いなさると、補正予算をたびたび組んで——終戦後のあのどさくさのときには、一年に十回組んだということも、私はよくわかります。物価もとにかく非常に上がって、われわれは猛烈に皆さんを攻撃しておるが、まあしかし、一割ぐらいでしょう。だから、どうもそういう言いのがれは困ります。第二次補正予算、これは三十九年度に入れても、ちっともかまわない。以上のことを申し上げて——要するにことしの予算と来年度の予算の比率を少なくして、何とかムードを抑えるために小細工をしたというふうに考えたくなるのであります。  次に、このごろ新聞紙上をにぎわしております公害の問題につきまして、私は、厚生大臣にちょっとお尋ねをいたしたいのであります。(「四日市の問題……」と呼ぶ者あり)一地域の問題ではありませんで、どうも至るところ、たとえば隅田川なんというのは、実は惨たんたる状況になっておりまするが、こういうものについて、いま法律といたしましては、どういう規制法といいますか、関連法案がありまするか、これをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  227. 小林武治

    ○小林国務大臣 公害の問題は、私は、行政の中でも一番おくれておる問題だ、こういうふうで、非常に遺憾に存じております。ただいまの公害に関する法律といたしましては、ばい煙の防止に関する法律、これは大気を汚染することを防ぐための法律。川の関係は、公共用水域の水質の保全に関する法律、これが川の汚濁を防ぐための法律、もう一つ川の関係で、工場の排水を規制する法律、この法律がありまして、大体この三つの法律が一応現在公害防止の関係の法律となっております。しかして、いまのばい煙の規制に関する法律は、いまのところ阪神と京浜と北九州、こういうところだけに実施されておりまするが、他の地域においても同様規制すべき地域があるということで、近く名古屋、四日市あるいは千葉等にこの法律を施行する準備を進めております。  また、いまの水の汚濁を防ぐ法律は、現在のところただ江戸川あるいは淀川、木曾川、石狩川、この四つしか施行されておりません。隅田川等も、あのような濁った状態を呈しておるが、これに適用されておらぬ。したがって、これらの地域、隅田川を含むあるいは大阪の寝屋川とか加古川とか、これらの地域にも近く指定をしたい、こういうふうに考えております。  なお、工場の排水関係は、工場を所管する各役所に、その規制の措置に対する所管が分属しておる、こういうことでありまして、この工場等の公害の防除に関する所管が、いまのところ、ひどいことばで言えば支離滅裂である、こういうことで、その間の連絡を心がけてはおるが、きわめて不十分な状態でありまして、こういう点について至急改善をいたさなければならぬ、かように考えております。
  228. 中井徳次郎

    ○中井委員 この公共用水域の水質の保全に関する法律、工場排水等の規制に関する法律、こういうものは、いま御説明によると、三十二年に公布をされたというのであります。もう六年たっておりますが、いま伺いますと、河川の指定というのはわずかに四カ所ですか、それはどういうことでおくれておるのでしょうか。あるいはまた、指定ということになれば、どういうことになるのでありますか。それを具体的に説明をしていただきたい。
  229. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの水質の保全に関する法律というのは、現在経済企画庁が所管官庁になって、他の関係省がこれに協力しておる、こういうことになっておりまして、これをやれば、その川の水の質の濃度といいますか、汚濁度といいますか、こういうものをきめる、こういうことになっておるのでありまして、経済企画庁に水質審議会というものを設けまして、それの選定あるいは汚濁度をきめる、こういうふうなことをいたしております。所管が経済企画庁に相なっておりますので、私も、その内容等につきまして、詳細はいまお答えをすることができないのでございますが……。
  230. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういうふうな一定の基準をきめて、そうして淀川なら淀川を規定をしたところで、さてその次に、そうしたらどういうことができるのですか。たとえば損害賠償の請求ができるかとか、あるいはそういう汚濁したものや汚水を流したような、その事業に対して、もうやめておけというふうな制限ができるのかとか、そういう面についていかがでございますか。ただ、現状はいろいろと御説明がありましたけれども、とにかくたいへんな状態でありますが、法律が幾ら六年前にできても、何か実施の効果が上がらなければ私は何にもならぬと思うのでありまするけれども、この辺のところはいかがでございます。たとえば、具体的に言いますと、損害賠償の規定があるのですか。
  231. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまの、水をこの程度以上のものを流していけないとか、いろいろの規定がありますが、その詳細につきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  232. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ただいま厚生大臣からお答え申し上げましたように、この水質汚濁の規制に関する所管は経済企画庁がいたしておるわけでございますが、この規定によりまして、ただいまお尋ねのような、水質を汚濁したことによって他に何らかの損害を与えた場合の補償の規定は、公共川水域の水質の保全に関する法律のほうに定められて、それに関して申請があった場合には、知事はその調停をいたさなければならない規定がございます。
  233. 中井徳次郎

    ○中井委員 そうしますと、実際の事務をやりますのは、いま企画庁の所管だとか厚生省の所管だとか言いましたが、知事ですか、いかがです。
  234. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お答え申し上げます。  国は諸種の基準を定めまして、実際の事務は、それに基づいて都道府県知事が監督をいたすことになるわけでございます。
  235. 中井徳次郎

    ○中井委員 隅田川の規制はいつやるのです。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの損害が起こりました場合の仲介というようなことの前に、水質の基準を決定をいたしますと、汚濁排水をいたします工場は、その水質の基準を守らなければならないことになりますので、したがって、一定以上に汚濁した排水を川に流してはならないということになります。その結果は、汚濁を、汚染を排除いたしますための設備をすることを義務づけられるわけでございます。つまり、たとえば隅田川の場合でございますと、水質の基準を決定いたしますと、そのまわりの工場は、すべて一定量の水質まで排水を薄めなければならぬ。これだけの設備をする義務を負うということになるわけでございます。そこで水質の基準というものが、したがってそういう利害関係がございましてなかなかきめにくいわけでありまして、技術的にも大体調査に一年以上を要しております。隅田川の場合、ただいま私ども年度内に水質の基準をきめようという努力をいたしておりますが、場合によりましては、年度を一、二カ月越すことがあるかもしれないと思いますが、ともかく隅田川の場合は、まず水質をきめようと、ただいま審議会等で各方面のある意味での利害調整をしておるというのが、実情でございます。
  237. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうも冒頭に、小林厚生大臣から、かぶとをぬいだような、非常におくれていますというようなお話がありまして、そのとおりだろうと思うのでありまするが、いまのは水質だけでありまするけれども、現実にそれではどの工場がどれだけ出して、どうするということを現実の場として調べるということになりますると、非常に困難な事態が多い。そうして大体わかっておりましても、いざどの工場が何時から何時までどういう排水を出したかということの証拠をあげるということになると、非常にむずかしい。したがってイギリスあたりでは、もうこの問題については無過失賠償の責任を法律でもって負わしておる。こういうことについてひとつ意見を伺いたい。  ついでに、ばい煙規制のほうのことでもありますが、先ほどから同僚委員からもありましたように、四日市の例でありまするけれども、調査調査調査調査といいまして、非常に調査に時間をかけておる。皆さんはデータをおとりになるのに必要かもしれませんけれども、現場は毎日病人がふえておる。だから、こういうものについては、まず指定をして、それから詳細な調査をするというふうな手を打つお考えはないのか。単にこれは四日前だけではありません。どの地区においてもそうである。千葉方面でもそうでございます。まず指定をして、調べてみて、解除してもいいのなら解除したらよろしい。本省においてデータがないから、調査をやる。選挙前になりますると、政府から調査団がたくさん来ます。調査団が来ると、その日は公害がふしぎにないので、風のぐあいかなと思っておるのですけれども、帰ってしまいますと、夜中の二時ごろになるとたいへんな臭気であるというふうに、原因がどうもくさいじゃないかというふうなことで、調査ばかりをして一向指定はない。たいしたことはないじゃないかと言って帰っていくと、またひどくなるというふうなことを繰り返しておる。隅田川も、正月には三日間みんな休みまするから、案外水がきれいになるというようなことでございまして、こういうことについて、あまり慎重な調査というよりも、拙速のほうがいいんじゃないですか。これこそ私は政治だと思うのですが、どうでござんす。四日市方面では、ちょっと申しますが、そういうものを防ぐ消防士が、消防の台の上におって、悪臭でもって、亜硫酸ガスでひつくり返ったり、ぜんそくの患者が何十倍とふえておるが、それは五倍であるか十倍であるかとか、それはほんとうにそういうことが原因であるかどうかとか、病院と連絡をして調査をする。病院に行くと、ぜんそくのベッドは、大いにやってますというが、四つしかない。小林厚生大臣も、この間視察に見えて、いろいろいいことを言うて帰られたが、まだ規制がない。何かどうも私は四日市市民がモルモットになっているんじゃないかと思うのです。厚生省や企画庁や、そういう人たちの書類をつくりまする理由をつくるモルモットになっている。現実にたくさんあるのです。非常に人為的なもののにおいがいたしますが、まず地域指定をされてから、慎重に検討なさる。これは逆じゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  238. 小林武治

    ○小林国務大臣 お話のような向きがないとも限らぬ。しかして四日市等の問題につきましては、早急に指定をいたす、おそくとも年度内にはしたい、私はかように考えております。
  239. 中井徳次郎

    ○中井委員 四日市の現状を申しますと、市役所などは、毎日毎日新産都市から調査にばかり来まして、あんたのところはどうや、あんたのところはどうや、応接に忙殺をされる、それだのに、政府は一向進展を見せない。会社は会社で、まあこれは私の推察でありまするけれども、早く規制をされるというと少し困る。なるべくおそいほうがいい。そのためには、電気洗たく機を移動用自動車の中に乗せて、ただで洗たくしてあげますというようなことでサービスをいたしておりまするが、どうも非常にふぬけたような施策であって、これは一刻も早く、いま小林大臣は三月中と言いましたが、二月中にでもやってもらいたいものだと思います。公害のことにつきましては、日本の将来、これから各地で起こる問題でありまするから、いまのようなテンポで一々調査をされておっては、間に合わない。隅田川は、別に調べてみなくてもいいでしょう。私は、そういうことについてまず幾らときめて、少な過ぎれば多くすればいい。三%か二%にきめてやってみる、そういうことが皆さんのお仕事じゃないかと思うので、時間もありませんからこの程度にしますが、特に皆さんにもつとはっきりとやってもらいたいと切望しておきます。  最後に、自治大臣に二、三お尋ねをいたしますが、大臣が就任されましてから、府県の統合の問題を言い出されました。その現状はいかがでございますか。府県の統合ということについて、現状をちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  240. 早川崇

    ○早川国務大臣 阪奈和三県、東海三県の財界筋から合併連動が起こっておるということは聞いておりますが、これに対して、奈良県あるいは岐阜県が難色を示しておるわけであります。まだ十分機が熟しておるとはいえません。
  241. 中井徳次郎

    ○中井委員 したがいまして、あなたはそういう合併を慫慂なさる気持ちはもう全然ないのですか。それをちょっとお伺いしたい。
  242. 早川崇

    ○早川国務大臣 自治省といたしましては、一挙に合併できるところはいまでもできるわけであります。しかしながら、現状がいろいろな面で困難な面もございますので、府県連合といいますか、各府県の議会の政治的独立性をそのままに保持して、広域的な問題を処理するのに首長の知事さんなんかによる理事会形式をとる立法を目下検討いたしておるわけでありまして、いずれ国会に提案して御審議を願う段階にこようかと思っております。
  243. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまの府県連合などという構想でありますが、こんなものは屋上屋じゃないですか。こういうものでこれまで成功したものは、明治以来あまり聞きません。あなたは、府県の統合を言い出されて——私は府県の統合について、賛成だとか反対だとか言っておるのではありません。やるのならば、中途はんぱなことをせずに、十分住民の意思にまかしてやっていく。そんな財界の人が、言い出したからどうこうということじゃなくて、それはもう農民の団体も、中小企業の団体も、婦人会も、いわんや政党の各地方の意向も、そういうものの機の熟するのを待ってやるべきであって、何か府県の統合を言い出したらちょっと困難であるので、今度は連合会でちょっとお茶を濁そうかというふうなことは、きれいきっぱりと男らしくあきらめて、そんなことはやめられたらどうですか。しばらく時期の来るのをお待ちになったらどうですか。私も、実は結論は出ておりませんけれども、どうも大阪と奈良なんというものを考えてみますると、あまり開きが多過ぎまするから、なかなかおもしいなと思って聞いておりました。ところが、これは町村の合併と同じようなもので、ほんとうに自治省は県民の意思というものを聞いておらぬですね。一部の執行機関だとか、議会の意向によって、すぐあきらめたり変わったりする。和歌山県は非常に熱心だというふうなことも聞いております。東海三県のこともそうでありまするし、あるいは中国のほう、東北から北海道にかけましては、地域の問題もありましょうし、私は、東京の北のほうは相当これからの開発を待つ地域が多いのでありまするから、一律にはいかないが、個々のケースとしては考えていったらどうだというふうなことを考えてみたいのです。   そこで、あなたの構想については、自治大臣になられたときに、早川君は若いからなかなかおもしろいことを言うたなというわけで大いに期待をいたしておりましたが、何かしりつぼみになって——おやりになるなら、もっと基礎を固めて、ほんとうに住民の盛り上がる意思といいますか、そういうものにPRなさる。一部の財界人の能率本位のものの考え方、それだけでは反発を買う。そういうふうな感じでござ  います。したがいまして、府県連合などということは、まあじわじわやっていこうというのも考え方ではありましょうけれども、何か屋上屋を架すような感じがいたしますが、いかがですか。
  244. 早川崇

    ○早川国務大臣 八十年来の府県の、区域を越えて、経済が高度発展をしてきております。したがって、広域的に処理する道をつくってやらなければいかぬ。水はあふれ出ているのです。それから、各市町村におきましても、町村会その他の強い要望で合併はできたけれども、さらに広域的に市町村連合をつくるという決議まで出ておるわけでありまして、この社会、経済の要請、時代の要請に目をつぶるわけにはまいりません。そこで、それに水路をつけるというのが、府県なり市町村の連合法案でありまして、これは何も強制するのではない。自治体が、その水路に水を流すということは御自由であります。したがって、そういう道をつける。そうして自治の発屋を時代の要請にマッチさせていく。これは当然自治省としてやらなければならない最小限度の立法措置だと考えておるわけであります。
  245. 中井徳次郎

    ○中井委員 早川大臣考えておられることは、よくわかりました。満ちあふれておるという、そういう点も十分私もわかります。だからこそ、ああいうものをつくるということは、かえってどんなものであろうか。現実の面において、もう少し時期を待って、やるのならば一挙に統合という形のほうが——二府県の統合ということになりますと、法律を必要とするだろうと思うのですが、手続はどういうことになりますか、ちょっと伺っておきます。
  246. 早川崇

    ○早川国務大臣 現在の法律でも、住民投票の方法があるわけごもりまして、いま関西や中京の財界の諸君の言われるのは、県会の議決でやるとか、いろいろ簡素化をしろ、交付税はそれによって要らないようにしろ、こういう意味でございまして、現在でも、住民が圧倒的にこれを望めば、合併の道は開かれるわけでありまして、それをわれわれは拒否するためでもありませんし、これは自治体自身でできる次第であります。
  247. 中井徳次郎

    ○中井委員 時間でたいへん申しわけありませんが、日銀裁総お見えでございますか——先ほどから総裁がお見えになる前に、日銀の資本金のことが問題になりまして、一億円だということでありますが、そういうことでいいのかどうか。あるいはまた株主が、大株主はどんなことでありますか。その点だけお伺いしたいと思います。
  248. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 申し上げます。日本銀行総裁山際正道君が参考人として御出席でございますので、これより質疑を行ないますが、午前中に井手以誠君が保留されました質疑を行なうことになっております。ただし、ただいま中井徳次郎君から御質問がございますから、これをお答えを願います。  参考人山際日銀総裁に申し上げます。御多忙中お繰り合わせ御出席を願いましてまことにありがとうございます。お礼を申し上げます。  なお委員各位に申し上げますが、山際日本銀行総裁の御意見は、委員会の質疑に対する答弁の形で承ることにいたします。御了承願います。山際日銀総裁。
  249. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまのお話に対しましてお答えを申し上げます。  第一点は、資本金額の問題でございます。お話のとおり一億円でございまするが、今日の日本銀行の資本金として一億円で足りるかという点が御質問の要旨ではないかと存じます。この点は、御承知のように、日本銀行は、その信用を、国家の持っておりまする一種の、何と申しまするか、通貨発行権を背後におきましての仕事でございまするので、その意味から申しますると、必ずしも資本金の大小がその信用を決定するわけのものではないだろうと思うのでございます。ただ、現在の日本銀行法は、昭和十七年の制定でございまするが、その当時の論議といたしましては、やはり何がしかの資本金を置いたほうが一つの銀行の形態として適当であろうということで、一億円というものを設定されたように了承いたしておるのでございます。  第二のお尋ねは、いかなる人々がその資本を持っておるのであろうかというお尋ねでございました。十七年の現行日本銀行法によりますると、その以前の日本銀行条例の場合と違いまして、現在の出資者は、その以前における株主の地位は全然持っておりません。したがって、総会もございませんし、また議決権もないのでございます。ある一定限度の率において出資の配当にあずかる権利は認められておりまするけれども、それ以上の権限は与えられておりません。したがいまして、株主組織とはよほど態様を異にするものに相なっております。したがって、また日本銀行の経営の実態から申しまして、その業況の繁閑によって配当率が上下するというわけのものでもございませんしいたしまするので、まことにそれは一種の利殖運用の投資物件といたしましては、興味の少ない出資金に相なっておりますのであります。したがいまして、現在のところでは、わりあいに広く分散はされておりまするけれども、特にこれはという財力のある方々が一種のかたまった出資者としてあらわれておるということの構成にはなっておりませんでございます。
  250. 中井徳次郎

    ○中井委員 もう一点だけ伺いますが、一億円の内訳を、この席でなくてもけっこうでございます。どういう内訳であるか、御報告賜わりたいと思います。その点、関係の人から回答賜わりたいと思います。  それから、早川さん、いろいろ府県の統合の問題でもっと聞きたいのだが、時間がありませんから最後ですが、選挙の定員の改正の問題であります。これにつきまして、この国会で定員の改正法をお出しになるのかどうか。それから、その内容については、どの程度の増加になるのか。私見でありまするけれども、中途はんぱなことをやりまするよりも、日本の人口はちょうどいま一億でございます。国会議員二十万に一人というふうな関係から、新聞に伝えられておりまするような数ではなくて、もう十人ばかりふやすことによって、不公平というような問題はなくなり、今後十年、二十年、もう改正をする必要はない。しかし、十名とか十五名とかいうことになりますると、また今度問題になるというふうなことを実はおそれるのであります。したがいまして、こういう点についてのあなたのお考えを、時間の関係で質問を一緒にいたしますが、お聞きしたい。さらにまた、定員をふやすべきでないという議論も、相当ございます。いまの国会のあんな代議士の数を何ぼふやしても同じじゃないかというような酷評さえ、選挙制度調査会の中でも言われたというふうなことを私は伺っておるんだが、しかしながら、イギリスあたりに比べますると、やはり十万に一人とか、フランスでもそのようなことで、西ドイツあたりもそのようなことでありまするから、やはりこの際、改めるならば相当大幅に改めていったらというのが私の考え方でございますが、関連をいたして、最後に政府の、その方面に対する自治大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  251. 早川崇

    ○早川国務大臣 当委員会総理大臣お答えされましたように、今国会で定数是正をやるという政府方針に変わりはございません。目下その案を検討して、近く御審議願う段階になろうかと思います。いま中井委員の御指摘のように、もっと思い切って人口に比例したような大幅な増員をやれ、こういう御指摘でございますが、実は当国会で御決定いただきました選挙制度審議会というものが、十九名増という答申を出しておるわけであります。しかも、それを尊重しなければならぬという法律になっておりまするので、一挙に人口にバランスしてということは、現在のところ考えておらないわけで、この答申の線に沿いまして、定員一人二十万を上下七万ずつという程度の是正をやることによって、大体現在の世論の要望というものに沿い得るものだ、こう考えておるわけでありまして、そういう線に沿いまして立法化を急いでおります。なお、社会党からもすみやかに提案しろという御要望がございました。今国会で必ず定数是正はやる所存でございます。御了承願います。
  252. 中井徳次郎

    ○中井委員 これで質問を終わりますが、いつごろお出しになるのです。いつお出しになるのです。
  253. 早川崇

    ○早川国務大臣 近く提案するつもりでございます。
  254. 中井徳次郎

    ○中井委員 私どもの党としての考え方もありますから、近くじゃいけない。どうですか、たとえば二十日までになんとか、その辺のところはどうです。二月中とか、いかがですか。
  255. 早川崇

    ○早川国務大臣 現在の見通しでは、もちろん二月中に提案するつもりであります。
  256. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて中井徳次郎君の質疑は終了いたしました。  井手以誠君井手君に申し上げますが、午前中保留されました日銀総裁に対する質疑をこれより行ないますが、お待ち遠さまでございました。
  257. 井手以誠

    井手委員 日銀総裁、御苦労さまでございます。  金融政策について若干お伺いをいたしたいと思います。前段は、日銀総裁として今後の経済の見通しをお聞きいたしたい。あとでは、その対策をお伺いしたいのであります。  一国の中央銀行の総裁として、政府に行き過ぎがあるならば、これを押えるだけの勇気が必要であると私は考えております。昨年の秋以来、総裁は何回となく、経済の行き過ぎに警告をなさいました。そばには大蔵大臣もいらっしゃいます。企画庁長官もいらっしゃいますが、この予算委員会の席上を通じて、国民に警告を発するものは発し、そうして協力を求めるということが非常に大事だと存じますので、端的にひとつお答えをいただきたいと思います。  総裁は、一月の二十二日に、金融引き締めの効果はまだ判断するのは早い、経済は昨年暮れと変わらず、国際収支、物価はまだ警戒を要すると、記者団に発表されております。現在の輸入が、非常に、どんどんふえておる現在の状態、物価が上がっておる、鉱工業生産は依然として上昇しておる、この事態に対して、日本の経済に対して、どういうお見通しでございますか、お聞かせ願いたいと思います。
  258. 山際正道

    ○山際参考人 お答えを申し上げます。  欧米の先進国に対しましてわが国国民所得の水準がいまだ及ばざる現段階におきまして、国民といたしまして勉励努力の結果なるべく早くそういう域に到達したいということを念願いたしまして努力することは、もとより自然のことであろうと考えます。しかしながら、御承知のように、経済が発達をいたしまするためには、諸般の要素が均衡を保ちまして、いわゆる経済の安定性を確保しながら前進するということが最も大事なことであろうと思うのでございます。この観点からいたしますると、最近の事態におきましては、ただいま御指摘のごとく国際収支の問題、それからまた物価の問題等においていわゆる成長のひずみが生じまして、なるべくすみやかにこれを手当てしなければならぬという情勢に立ち至っておることは、私も同様に考えております。したがいまして、来たるべき会計年度における経済の運営といたしましては、やはりこれらの点に留意いたしまして、私は国際収支均衡とか物価安定とかを第一義として考えまして、これによって経済の成長する基盤をしっかりしたものにつくり上げまして、その上に望ましい成長を遂げていくという段取りにすることが非常に大事だろうと思うのでございます。この意味におきまして、むろん高い成長は望むところでありますけれども、いま申し上げました経済の安定性を確保する意味におきまして、たとえば、来年度におきましては国際収支均衡を第一義と考えて、そしてこれに必要なるためのいろんな調整措置を講じ、その許す範囲においてのできるだけの成長を達成してまいるという態度で前進するのがよろしいのではないかと考えております。この意味から申しますると、すでに調整を要するただいまの国際収支の状況とか、物価の状態とから申しまして、いろいろなすべきことが多かろうと思うのでありまして、私は、中央銀行の立場におきまして、その与えられました措置を通じまして、これらの問題を、まず安定を確保するという見地から解決してまいりたいというふうに考えております。
  259. 井手以誠

    井手委員 景気が回復いたしましてから一年足らずで、また調整をしなければならぬという段階になりました。これは、日銀の金融政策が甘かったのではないか、今日までの景気、不景気の循環から考えまして、一年足らずで再び重ねて金融の引き締めをしなければならぬということは、金融政策に欠くるところはなかったのか、その点について総裁はどうお考えになりますか。
  260. 山際正道

    ○山際参考人 御指摘のように、金融引き締めを解除いたしましてから一年して再び引き締めに転じなければならぬということは、国民経済の安定的な発展の上から申しますると残念なことに存じております。それにつきまして、その原因は何であったかということをしさいに検討いたしまするのに、ただいま金融政策の見地からの御批判もございましたが、私の考えておりまするところでは、何分にもその以前における設備投資が非常な額にのぼりまして、そしてこれを景気調整の結果、その操業を落としてまいりますると、いわゆる資本費の増高と、一面においては物価その他の関係における生産費の増高からいたしまして、なかなかその操業度を落としてまいるということは、企業経営上むずかしい状態になってきていると思うのでございます。そこで、何と申しまするか、多少の通常でない手段をとりましても、ある程度に企業の操業度を維持するということが、企業家としては最も考えられる点でございますので、総じて、もし私が端的に表現をいたしますならば、大体において現在の経済状態は設備過剰であって、それに伴う過剰生産が行なわれがちである状態ではないかと思うのでございます。そこで私どもといたしましては、たとえば実際の輸出であるとか、実際の購買力の伴った市場とかをこえての出産をいたしてまいりますると、どうしてもそこに無理が生ずる、現在の状態は、ややその無理を通してきている状態ではないかと思う。そのことはどうしてできるかと申しますと、率直に申しまして、私は銀行の貸し出しの増大と、一面においてはいわゆる企業間信用の増大という二つの点にささえられまして、どうやらそれが続けられてまいったように思うのでございます。ところが、御承知のように、銀行の貸し出しの増大というものも、過般来の引き締め措置によりましてだんだんそのワクも小さくなり、あるいは企業間信用というものも無限に増大してまいるものではございませんので、ここでそれらの点について再び調整に入らぬと、何と申しますか、安定のある企業経営というものは続行しにくい状態にまいったわけであると思うのでございます。しからば、昨年の当時において、なぜ早く金融引き締めを解除したかというお尋ねがあるのだろうと思いまするが、この点は、私はその当時もしばしば申しましたと思いまするが、経済界の自律的な調整を信じまして——確かにその前芽はあったわけでありまするので、その自律的調整にゆだねるために、いまや金融の外ワクから締めつけなくても、経済界は安定した程度において操業を続けられるであろうという観点から、引き締めを解除いたしたのでございまして、この点はしばしば申しておったのでございます。  ところが、話は前後いたしまするが、いまのような事情で、どうしても企業としてはある程度の操業度を維持して、その経営を継続しなければならぬというところから、いま申しましたような方法において生産が増強いたしてまいって、その結果が、いま申しましたように銀行貸し出しなり、あるいは企業間信用の膨張をある程度におさめてまいらねばならぬという事態にまいっておるという、これが現在の段階でございまして、その当時といたしましては、私は顧みまして、その当時においてとるべき、許さるべき政策はとってまいったように思うのでございます。
  261. 井手以誠

    井手委員 今後日銀としてとらねばならぬ態度についてお伺いをいたします。  政府の三十九年度の経済見通しと経済運営の基本的態度並びに今日までの総理大臣、大蔵大臣の答弁によりますと、鉱工業生産の上昇を抑える、物価の上昇を押えるのはあげて金融機関の適切なる指導にまつということになっておるのであります。裏を返しまするならば、全部責任は日銀にかけられておるということになるのでありまして、きわめて重大であります。そこで、いま御説明になりましたところから質問に入ってまいりますが、企業設備が、設備投資が行き過ぎておる。過剰生産になっておる。その企業は次に操業度を維持するために非常に経済が拡大してまいった。そうでありますならば、設備投資に対して一段の調整を行なわねばならぬではないか。三十八年度においては三兆五千億円の設備投資という予想が三兆九千八百億円、おそらく四兆円をこえるでありましょう。その企業設備の圧力が輸入を増大しておることは申すまでもないのであります。この操業度を維持しようとするこの企業の設備投資に対して、今後どうしてこれを抑えようとお考えなさっておりますか。これが大事だと思うのであります。今後の過剰生産を考えますと、来年度は四兆円をこえる設備投資に対して、これをどう抑えようとお考えになりますか。
  262. 山際正道

    ○山際参考人 現在の段階におきましては、私どもは設備投資はわりあいにその意欲が鎮静をいたしておると見ております。むしろ問題は、過去に投下いたしました膨大な設備投資に対して相当高度の操業を維持するというところから、いろいろな問題が派出しておるというふうに考えておるのでございます。銀行の資金の融通状況を見ましても、設備資金の融通は、現在の段階においてはわりあいに少うございまして、むしろ増産のためのいろいろな運転資金等の形においての需要が多いのでございます。しかして、それらの操業を高度に維持いたしまするためには、その原材料としてどうしても輸入の依存が相当強いのでありまするから、そこで、最近における貿易収支の模様を考えまするのに、その原材料たるべき輸入が相当急激に増高いたしてまいっておるのでございます。どうしてもこれは生産を調整いたしまして、わりあいにこの生産を、何と申しますか、水準的に申しますればいま少しく鎮静させまして、輸入原材料の使用というものを少なくいたしませんことには全体のつじつまが合わない、こういうことに相なろうかと思うのでございます。そこで、これにつきましては、御承知のように、昨年の暮れに準備預金の利率を引き上げまして、銀行全体というものが利用し得ます資金量をまず規制をいたしました。次に、続いて本年に入りまして、一月には各銀行の貸し出し限度についての規制をいたしました。大体この限度において貸し出しは実行してもらいたいということを、標準を示しました。現存は、これらの金融機関は、示しました制限の範囲内におきましてその運営をいたしてまいっておるのでございます。その経過等を見ますると、やはり設備資金需要というものは比較的鎮静をいたしておりまするが、その既往の設備を採算点において動かすために必要な原材料の輸入というものが、相当増高してきておる。したがって、それらに必要な資金の冠を押えますれば、自然その輸入のほうにも相当の影響をもたらし得るのだ、かかる考え方で進んでおります。
  263. 井手以誠

    井手委員 設備投資の旺盛であるかどうかについては、私は別な意見を持っておりますが、きょうは意見を多くは申し上げません。依然として旺盛だと思っております。来年度は政府の見込みは四兆円をこえております。三十八年度は三兆五千億円の見込みが、四兆円になっておりまするから、依然として旺盛であります。それではこの原材料の輸入を押える、出産を鎮静させる、これは企業の立場に立ちますならば、いわゆる借り入れ金の圧力、あるいは操短による経営の悪化等々から私は簡単にいけないと思うのです。少々のかけ声ぐらいでは、私はきき目はないと思う。それでは総裁は昨年から公定歩合の引き締めが金融引き締めの本命であると何回もおっしゃっておる。どうも先日の発表によりますと、いままでの勢いはどこへやら、もう公定歩合の引き上げは必要でないかのごとき発言をなさっておる。どうも日銀総裁は、政府から押えられて、へなへなになったんじゃないかといううわさが立っております。私は、そういう人ではないと信じております。なかなかたいへんですよ、いまの輸入状態から考えますと。先日の新聞に、二、三日前の新聞では、一月の入超、これは通関ペースですが、入超は三億ドルをこえている。二月も三月も例年のとおり輸入が旺盛になるでしょう。これらはいろいろ考えてまいりますると楽観すべき状態ではないのです。そこで一番大事な公定歩合については、もうこの段階では必要ではないとお考えになっておりますか。なお必要であるとお考えになっておりますか。  なお一言加えさせていただきますが、来年は経済成長を押える。輸入は昨年は、三十八年度は経済成長に対して倍になっておる。来年は輸入は経済成長よりもむしろ下がっておるのです。非常に少なく少なくと政府は見積っておるのです。これが政治的であるかどうか私は申し上げません。そこで、こういう非常に重大な微妙なときに、日銀総裁としては公定歩合の引き上げをどうお考えでございますか。警告する意味においてもこれは重大でございますから、横に田中さんがいらっしゃってもかまいません。あなたの所信をひとつ披瀝願いたい。
  264. 山際正道

    ○山際参考人 金融引き締めの具体的方策として、いろいろのものがございまするけれども、公定歩合の引き上げということが相当需要を鎮静させまする意味において重要であることは、私もそのとおりに考えております。現在の段階を見ますると、先ほども申し上げましたとおり、企業の操業度、いわゆる生産の水準はしかるべき実勢以上に、言葉は悪うございますけれども、多少の無理をしてでも高く持続されていると私は考えておる。そのために銀行の貸し出しが勢いふえざるを得ないし、また企業間信用、いわゆる売り掛け、買い掛けの問題が大きくならざるを得ないことになっていると思うのでございます。この段階においていかなる方策をとりますのが全体の需要を鎮静させる上において有効であるかということにつきましては、これはもとより非常に重要な問題でございまするので、私どもは、十分慎重に情勢の推移を見ながら考えております。私が、現在の段階において、新聞等に申しておりまする、経済基盤にやや弱いところがあるために、多少の時間はかかってもなかなか急カーブは切りにくいということを表現いたしましたが、その意味は、いま申し上げましたような無理な貸し出しであるとか、あるいは企業間信用というものが非常に深く食い合わさっておりまする結果、何と申しまするか、へたをいたしますると一波万波を呼ぶ、いわゆる連鎖反応を生じやすいような状況に相なっておるのでございます。したがいまして、そういう情勢をいろいろと政策によって曲げてまいりまする場合には、いろいろよって起こるべき現象についてまで十分に考えをいたし、多少の時間はかかりましても、結局できるだけの犠牲なり摩擦なりを少なくいたしましてその目的を達する方法をとるというのが、私は経済政策としては適当であろうと考えましたために、この段階においては、昨年来とりあえず銀行の預金準備率を引き上げ、続いてまた貸し出し額の規制をするということで、いましばらくその効果を見きわめた上で、また情勢によってはいかなる措置をも考えていきたい、かように考えておりまするので、これをやったからあとやる必要は何もないのだとか、その他の手を考える必要はなくなったとかというようなことは、私は毛頭考えておりません。実際のところにおきまして、今後なおかつどの程度の措置を必要とするという見通しは、計画的に立っているわけではございませんで、毎日々々の情勢をつぶさに審査しながら、目的達成のために必要なる措置をつけ加えていきたいというのが現在の態度でございます。
  265. 井手以誠

    井手委員 大体わかりました。現在面らにやる意思はないが、今後の情勢を見て新たな手段を、方法考えたい。  そこで総裁にお伺いいたしますが、現在の日本のこの経済の状態、物価にしても、輸入にいたしましても、国際収支にいたしましても、三十二年、三十六年の状態とは様子を異にしておると思う。総裁もそうおっしゃっておる。これは構造的なものであると考えます。  そこでお伺いいたしますのは、その構造的な基本的な問題があるかどうかという点が一つ。いま一つは、総裁が先刻説明になりました、いま一番大事なことは国際収支の均衡である。輸入を押えることである。かねがね総裁は、経常収支によって国際収支は均衡しなくてはならぬとおっしゃっております。その国際収支が均衡するところに経済成長のめどを置くのが正しいのではないか、輸出輸入がバランスするところに経済成長の目標を置く、あるいは五%といい、八%といい、その経済の成長率のめどを置くことが私は正しいのではないかと考えておりますが、この二点についてお伺いをいたします。
  266. 山際正道

    ○山際参考人 経済の運営について、現在の段階においては、国際収支均衡をめどとして運営するのがよろしくはないかというお尋ねに対しましては、私は、本年度の経済運営の態度としては、それが第一義であると考えるものでございます。その結果といたしまして、いろいろ方策は講じまするけれども、その結果としていろいろな数字において政府が見積もられたり、その他の方面において計算されておるとおりの数字があるいは出ないかもしれませんし、あるいはそれを過ぎるかもしれません。私は、どっちかと申しますると、三十九年度に関する限りは、これは第二義的なものと考えておりますので、あまりその見積もりの数字にこだわることは適当でなかろうと思いますので、すべての経済政策の主眼を、国際収支の均衡を改善するという点に履いて集中していくのがよろしかろうかと考えております。
  267. 井手以誠

    井手委員 質問のしかたが悪かったかもしれませんが、今日の物価の上昇、消費者物価の上昇が卸売り物価に反映し、輸出に悪い影響を与えておる。輸入においても、単に一時的な現象ではなくして、日本経済の持っておる構造的なものがありはしないのか、その点をお伺いしておるのが第一点であります。  第二点は、いまもちょっとお答えになりましたが、実際のめどを、経常収支のバランスを均衡するところに経済の目標を置くことが正しくはないか、これをお伺いしておるのでありますから、第二点については重ねて端的にお答えいただきたいと思います。
  268. 山際正道

    ○山際参考人 第一の構造上の問題に関しましては、私はやはり各種の経済条件が非常に変わってまいっておりまする現在の段階においての構造上の問題は、いろいろあろうかと考えます。あるいは大きな産業におきましても、石炭の問題であるとか、海運の問題であるとか、その他いろいろの問題があろうかと存じますし、また企業の規模から申しましても、大企業と中小企業間の格差の解消であるとか、あるいは合理化の比較的おくれており、中産性の上昇があまり十分でない方面の産業についての特別の配意をするというようなこともあろうかと考えておりますので、それらがやはり今日の物価問題やその他の経済上の指標に対しまして相当な影響を持っておるということは、私も思わざるを得ないのでございます。むろん、これは構造変革を十分に改善することは必要でございまするけれども、前段にも申し上げましたとおり、これに対しましていろいろ付随する環境を整備してかかりませんと、そこについひずみが出てまいります。そのひずみがだんだん大きくなりますると、かえって経済の成長を妨げまするので、常時それに注意をいたしまして、小まめに手直ししていくということがやはり大事になってまいるだろうと考えております。  それから、第二のお尋ねでございました国際収支均衡のめどをどこに置くかという問題につきましては、私も、御説のとおり、経常収支の均衡に置くのが本旨でなければならぬと考えております。ただ御承知のように、実際問題といたしますると、貿易収支のみならず、貿易外収支の問題におきまして日本はまだ相当な赤字を背負っておりますので、これを改善しなければならぬことは当然でありまするけれども、やや時間を要すると私は見ております。しかしながら、これらを通じまして経常収支をどこまでも改善するということに第一義を置きまして進めることは、結局、国際収支均衡を第一義として政策を遂行するということの本領でなければならぬと思いますので、その点は、御指摘のとおりだと考えております。
  269. 井手以誠

    井手委員 質問はいたしませんが、大蔵大臣もお聞きでしょう。経常収支の均衡が経済成長のめどであるということ、これはきわめて重大な点でありまして、来年度は輸出も六十二億ドル、輸入も六十二億ドルと、ふしぎにも一致したものだと思っておりますが、七%の経済成長のときに輸出入は一応均衡しても、貿易外の赤字がある、それを加えた経常収支で均衡しなくてはならぬということになりますと、経済成長率というものは七%では商過ぎる、行き過ぎておるといわねばならぬのであります。これは私は答弁は求めません。  そこで重ねて総裁にお伺いいたしますが、いままでのお話を承っておりますと、構造的な問題から考えても、いわゆる貿易外の赤字を加えた経常収支を均衡させるためにも、ほんとうに日本経済の安定、成長をはかるためには、金融の引き締めは、強い弱いは別にいたしまして、今後相当長期間を要するのではなかろうか、ほんとうにしっかりした日本の経済の安定、成長基盤をつくり上げるには、総裁がいままでお話しになったような意味の基盤を強固にするためには、金融の引き締め、この点はかなり長期にわたるのではなかろうかと考えるのでありますが、いかがでございますか。
  270. 山際正道

    ○山際参考人 私は、今回の引き締めは、ただいまお話がございましたとおり、比較的長期間を要するものと考えております。私といたしましては、じっくり腰を据えまして、目的達成に至りますまでは引き締め体制を続けねばならぬと考えておるのでございます。ただ、むろん、その間におきまして派生するいろいろな問題につきましては、周到なる配意を怠らず、全体として経済のバランスをとりつつ目的を達成するという配意は必要でございますけれども、じっくり腰を据えてかかってまいることが必要であろうと考えております。
  271. 井手以誠

    井手委員 引き締めの強い弱いは刑にいたしまして、あなたのおっしゃる経常収支が均衡するまでということになりますと、かなり長期間を要すると思うのです。そういう意味の長期間と理解してよろしゅうございますね。
  272. 山際正道

    ○山際参考人 私は、その意味におきましては、やはり経過的には外資の導入ということがその目的を達成するのに相当有用な手段になるだろうと考えております。御承知のように、外資は、入れるときは非常によろしゅうございますけれども、返すものでありますから、年々その元利払いがかさむという点がございますので、それらの計算をとりましても、なお外資によって貿易外収支の改善をはかるとか、あるいは国際収支全体のそろばんが立っていくということであるならば、しばらくその種の健全な外資の助けをかりるということが必要なことであろうと思います。何分にもやや長期を要する問題でありますから、しばらくの間はそういう長期資金の導入によりまして、その欠を補うということも必要であろうかと考えております。
  273. 井手以誠

    井手委員 今後かなり長期にわたって金融引き締めをやらなくてはならぬということがわかりました。  なお、関連質問もあるようでございますから、あと一点お伺いをいたしておきます。政府筋から銀行の合併が盛んに唱えられております。従来の一県一行主義、それは各地域の経済開発という意味で、非常に重要性を持ってまいりましたが、今後はブロック単位にしなくてはならぬという考え方から、銀行の合併が一部で唱えられております。これはきわめて重大な問題でございますので、日銀総裁として、ほんとうにそれが必要であるかそううでないか、明確にひとつお答えをいただきたいと思っております。
  274. 山際正道

    ○山際参考人 日本の経済の発展の様相からいたしまして、ことに最近における交通、通信の発展等にかんがみますならば、経済の単位として必ずしも現在の地方制度は適当でないという意見はちょいちょいございます。その一つの考え方といたしまして、経済単位としては、少なくともブロック別ぐらいのところまで拡大して考えるほうが能率的であり、かつ種々の弊害を伴わずしていいのではないかという考え方は、私は実は一つの考え方だろうと考えております。ただ、御承知のように、現実の問題といたしますと、ただ、いまも御指摘がございましたとおり、一つの金融機関等は、特に地方制度と緊密な関係を持っております。でありますから、その両者はやはり並行いたしまして、その間に均衡をとりながら発展きせるという考え方のほうが実際的ではないかと実は考えております。そういう進歩的な考え方は、将来の目標といたしまして尊重されるかと考えておりますけれども、現存の段階におきましては、私は、銀行のみならず、各種の合併等におきましては、やはり当事者の意向というものを十分に尊重することが必要だろうと考えますので、その当事者の意向がそういう進歩した段階における要請と合致いたします場合は、それはけっこうありますけれども、しいて無理をしてまでやるべきことではなかろう。もっとも私は、制度の問題につきましては、実はそれほど深く研究をいたしておりません。日本銀行の関係関心を持って調査いたしておりますことは、まあその単位のいかんにかかわらず、およそ金融機関というものはいかなる心がまえで、いかなる態様で運営せられねばならぬかという点にもっぱら重点を置いて考えておりますので、あるいは十分のお答えを申し上げかねるかと存じますけれども、現在の段階ではその程度にしか考えておりません。
  275. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、辻原弘市君より関連質疑の申し出があります。これを許します。辻原弘市君。
  276. 辻原弘市

    ○辻原委員 山際総裁にめったにお尋ねをする機会がございませんので、ごくかいつまんで二、三の重要な問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  最初に、これは総裁と、それから委員長にも私が御希望を申し上げるのでありますが、実はこの予算委員会の中で、やはり日銀総裁の御見解というものが予算審議にとってきわめて重大であるという私どもの認識なり、個々の委員の希望によりまして、再三総裁の御出席をお願い申し上げたわけであります。ところが、いろいろの御都合によりまして、本日の井手委員の御質問に対して、午後でなければお出ましがない、こういう窮屈な時間に相なったわけであります。もちろん、お忙しいことも非常によくわかりますし、また、総裁がここに御出席をいただくというのは、政府機関とは違いまして、政府委員という資格ではございませんから、何らわれわれが強制をすべ寺、法的に云々すべき筋合いのものではありませんけれども、しかしながら、特に昨今のように財政運用と金融というものがそれぞれ相まって検討をされなければならない、重要な予算審議にあたっては、われわれはできるだけ政府の意見と、それから日銀御当局の意見というものを承りつつ審議を進めるということで、これは国政運営上きわめて重大な、また必要にして欠くべからざる方法であろうと考えておるのであります。したがって、お尋ねもいたしたいし、またなお予算審議はようやく半ばでありますから、今後も御出席をお願いをする場合があります。そういうときは、どうぞひとつむしろ積極的にお出ましをいただくというような御見解をお持ちになって、御努力を賜わりますと、われわれも非常に幸いでありますから、その点について、ちょっと総裁からお話をいただきたいし、委員長にもこのことはお願いをいたしておきます。
  277. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 私に質問がございましたが、辻原君の意見と全く同じでございます。どうか日銀総裁におかれましても、お忙しいと思いますが、この予算委員会の重要性をお認め願って、どうぞお願いしたいと思います。
  278. 山際正道

    ○山際参考人 ただいまの御希望は、とくと承りました。私も、できるだけは差し繰りまして御希望に応ずるように進めることにいたしたいと考えます。
  279. 辻原弘市

    ○辻原委員 本論に入りますが、先ほども井手委員から指摘をいたしまして、本年度の財政規模あるいは貿易収支の動向、物価あるいは在庫投資、諸般の事情から、あげて財政の健全化というものは金融に譲られてきておるのではないか、そこにしわが寄せられてきているのではないか、それに対する見解を井手委員から求めたのでありますが、私にはまだはっきり受け取りかねる点がございますので、いま一度念のために見解を承っておきたいと思います。  新聞紙上等では、若干定例会見その他で承っておりますが、委員会の公式の席上で承ることは初めてでありますから、特にお尋ねをいたしますが、本年度の予算全体を通じて私どもが批判をいたしておりますのは、一つには、いろいろ大蔵大臣もおられて御釈明がございますけれども、何といっても三兆二千五百億という財政規模は、現在のわが国の財政という面から考えてみて大に過ぎるではないか。同時に、それと並行して金融上重大な影響を及ぼす財政投融資にいたしましても、一兆三千億、合わせて五兆というものが財政運用によって経済に刺激を与える、こういった形の予算がいよいよ執行の段階になるということに相なりますと、せっかく昨秋から行なわれておるいわゆる引き締め政策というものが、この財政運用の波に押されて、引き締め効果というものが著しく減殺されるのではなかろうか。そうすると、先ほども井手委員から話がありましたけれども、一年たつやたたない間に引き締め政策に変転を来たし、若干、最近の貿易収支の動向から、政府においてはこれ以上の引き締め強化は必要ではないんじゃないかという安易論も止まれておる。ところが、そういう推移をしてまいると、いよいよいわゆる財政による実効の上がる段階に入ってくれば、またぞろ景気刺激の徴候が強くあらわれてきて、一段ときびしいものを行なわなければならぬのじゃないか、こういうふうに、国民にとっては、この金融と財政の問題について、一体どういうような方向において実際の経済運用というものを考えていけばいいのか、これは非常に懸念をされておるところであります。一体私ども考えておるように、この程度の予算規模、この程度の財政投融資、また予算編成の方針実行においては、決して日銀としては引き締めの効果というものは減殺はしないんだ、こういうお考えに今日立っておられるのか。したがって、先般も大蔵大臣がここで非常にデリケートな発言をされておったわけでありまして、私は注目をして聞いたということは、もちろん来たるべき公定歩合の第二次引き上げということには触れておりませんけれども、しかし、政府が一貫してここで強調されておることは、決して予算規模、それから財政投融資は過大ではない。引き締めの効果については、決してそれを減殺するようなことはない。したがって、この政府の見解をあなたも了とせられて、おそらく今後の金融措置をとられるであろう。これは受け取るものによっては、いま問題になっておる第二次公定歩合の引き上げは、これは政府はそれを希望しない、そのことを日銀も了とせられておるやに受け取られるのであります。もちろん、非常に重要な問題でありますから、軽々な御発言ということは慎まれるでありましょうけれども、しかし、何がしかやはり姿勢というものを国民の前に明らかにしていただかないと、非常に混迷をすると思うのであります。したがって、この機会に、そういった財政金融を通じて、いま一度率直な御意見をおっしゃっていただきたいと思います。
  280. 山際正道

    ○山際参考人 日本経済自体におきましていろいろな構造的な問題を控えておりますことは、御了承のとおりであります。あるいはまた社会資本の投下が立ちおくれておって、経済全体の均衡を回復するためにはある程度これを積極的に行なわねばならぬという事情もあるかと考えます。これら経済、社会的に要求せられる各般の事情を総合いたして考えますと、この際においてある程度財政が膨張の勢いをとるということは、またやむを得ざる点もなきにしもあらずと実は考えております。私は、今日の段階においては、政府原案の予算の規模自体よりも、これを運営してまいる態度なりやり方に非常に大きな関心を払わざるを得ないのでございます。予算編成の方針を拝見いたしますと、むろんこれは極力いわゆる景気刺激的な運用にならぬように心がけて予算を執行するという御方針に承っておりまして、これはまさにそうあっていただきたいと思うのでございます。運用の実際において、景気刺激を避け、金融引き締め効果を減殺するような運営をなさらずにいき得るならば、私はそういう方途はあろうかと考えますが、それはそれで一つの財政のいき方だと私は考えております。ただ、必要なことは、常時財政、金融緊密に連絡をいたしまして、そのときの経済情勢の起伏に伴いまして、いま申し上上げましたような刺激的運用を避けていただくというような緊密な連絡は、今後非常に必要になってまいるかと実は考えております。  それから、そういう事態のもとにおいては、経済を安定的に発展せしめるために金融の負う任務は非常に重大ではないかという御指摘は、まさにそのとおりでございまして、私は、いよいよその責任の重きを感じておるのでございます。したがいまして、日本銀行に許されておりまするあらゆる方法は、経済の実態の推移に応じまして、私は必ずとっていきたいと思っております。私は、この方法はやるけれどもこれはやらぬ、これはもう必要がなくなったとか、これはまだ必要があるとかいうことは、全然申しておりません。一にかかってこれは客観情勢がきめる問題と答えておりますので、時を逸せず、情勢の推移に応じまして、あらゆる与えられた方法をとりまして、いま申し上げておりますような経済発展の目的を達成いたしたいと考えておるのでございます。
  281. 辻原弘市

    ○辻原委員 突っ込んでお尋ねもいたしたいのですが、時間もございません。そこで、いま総裁がおっしゃったような、財政、金融両々相まっての適切な運営ということで今後推移をするにいたしましても、金融引き締めの効果、同時に、金融引き締めによる悪影響というものがどうしても弱い面にあらわれてまいります。特に、私の考えるところでは、三、四、五月等における揚げ超は一段ときびしいものがあると思います。中小企業一千万以上の負債額を持つものについて、その倒産件数というものは、昨年十一月は約二百件を上回っておりまするし、年を越して一月という普通比較的平穏に過ぎるときでも、百九十八件でありますから、約三百件に近い。ほとんど年末も年始も変わっておらない倒産の状況があらわれてきております。さらに、最近村当大口の黒字倒産の傾向すらあります。それが、三、四、五、こういった揚げ超期にぶつかりました場合においては、さらに一段とそれが拡大するのではないかという心配があります。これらに対する具体的な救済措置というものは、何といいましても、ささたる政府の中小企業振興策といったようなものでは急場は救っていけないことは論をまちません。政府機関金融等においても、これを救済していくということは事実上なかなか困難である。ひっくるめて考えた場合には、何といっても全般的ないわゆる金融調整という問題にこれをゆだねなければならぬ、こう思うのでありますが、それらに対処するに、現在日銀としてはどういうような具体的な対策というものをお持ちになっておられるか、これを伺っておきたいと思います。
  282. 山際正道

    ○山際参考人 幾たびかの金融引き締めの経験におきましても、これによって生ずる摩擦なり犠牲なりを極力最小限度にとどめましてその目的を達成したいということは、常に留意いたしておる点でございます。今回の引き締めにあたりましても、つとにその点は十分に配意をいたしておりまして、実際問題といたしましては、たとえば各種金融機関にその趣旨を伝えまして、十分な協力を求めますると同時に、各所在の支店長等を動員いたしまして、常に中小企業なりあるいは中小企業金融機関なりの相談相手となって、最も平穏にその金融引き締めの措置が貫き得るようにあらかじめ手を打ち、あるいは事が起こりましたならばそれに対する善後策を相談するといったような緊密な連絡のもとに、最も円満なる遂行をいたしたいということで万全の注意を払っておるところでございまして、私は、何ら経営者に罪なくして全く巻きぞえを食って倒産する者があるというようなことはもう絶対に出さぬ覚悟でもって、いま周密なる配慮のもとに各地の支店長等と相談を重ねておりまするし、金融機関にもそのように伝達をいたしております。現に、過般起こりました一、二の実例におきましても、つとにその趣旨において、所在の債権者なり金融機関なりが、私どもの支店長あっせんのもとにいろいろと相談をいたしまして、幸いにそのメーカーのほうは操業を停止することなく済み得る実例もすでにできております。非常にきめのこまかい話になりますけれども、周密なる配慮のもとにできるだけ摩擦なく進めたい考えでやっております。
  283. 辻原弘市

    ○辻原委員 最後に一言。きめのこまかい配慮をしつつ今後の対策に処したいというお話、まことにけっこうであります。  そこで、これはごく具体的な問題でありますが、いま日銀としてお考えになっておる買いオペ、それから売りオペの計画について御発表願えればひとつおっしゃっていただきたいと思うのであります。
  284. 山際正道

    ○山際参考人 現在やっておりまするのは、三月をどうするかという問題でございます。三月は、御承知のとおり、なかなか揚げ超も強く、節季末でありまして、資金の需要も強いのでございます。金融機関の動員し得る資金を計量いたしまして、これを最も有効に使いましてもなお相当の資金不足を生ずる見込みでございまするので、金融引き締めをくずさない範囲において最小限度の買いオペレーションをやらざるを得ないかと考えております。大体、いまの計算では、まだ確定はいたしておりませんけれども、千億円程度は必要かと考えております。
  285. 辻原弘市

    ○辻原委員 終わります。
  286. 井手以誠

    井手委員 では、結論だけ。これで終わりにいたしますが、来年度の経済見通しについては、鉱工業生産は九%、物価は四・二%、輸入は二五・五%の三十八年の上昇に対して来年度は七・八%しか見込んでないのでありまして、これをあげて金融機関の適切な指導にゆだねられておりますが、よほどの決意がなくてはならぬのであります。日銀総裁もこの政府の期待するものにこたえるためには相当の決意でいると存じますので、最後にその点の決意を承っておきたいと存じます。
  287. 山際正道

    ○山際参考人 三十九年度の問題といたしましては、私は、先ほども申し上げましたとおり、国際収支均衡を目ざして諸般の金融操作を集中してまいるのがよろしかろうかと考えております。したがいまして、想定いたしました輸入の規模に応じ得る程度の水準に生産を維持していく、そのために必要な金融措置もとっていくということで、その方面に力を入れて考えてまいる必要があろうかと実は思っておりますので、その結果として、御計画はむろん尊重をいたしまするけれども、あるいはその他の数字において多少見積もりと違った数字が結果として出るかもしれませんけれども、私は、来年度の特性といたしましては、それにあまりこだわらぬでいくことのほうが、日本経済を安定的に発展せしめるゆえんではないかと考えております。
  288. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて井手以誠君の質疑は終了いたしました。  この際、山際日銀総裁にお礼を申し上げます。総裁には、参考人として出席をいただき、長時間にわたり答弁をいただき、ありがとうございました。お礼を申し上げます。  次会は明十一日午前十時より開会いたします。  明日の質疑者は小平忠君であります。要求大臣は、総理大臣外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣、自治大臣、佐藤国務大臣、防衛庁長官、行政管理庁長官であります。  この際、委員各位にお願いを申し上げますが、本院においても、参議院におきましても、各種委員会が開かれておりますので、政府委員の出席等につきましてはかなりのやりくりを必要とするのでございますが、委員長にこの点おまかせを願いたいと思います。  この際、公聴会について御報告申し上げます。  昭和三十九年度総予算についての公聴会は、来たる十二日及び十三日の両日開会することになっております。御了承願います。  なお、公述人の選定につきましては、委員長に御一任願っておりますが、理事諸君と協議の上、次のとおり決定いたしました。  十二日午前の公述人は、東京教育大学教授美濃部亮吉君、国井社会保障研究所所長國井國長君、午後の公述人は、全国銀行協会連合会会長、第一銀行頭取井上薫君、経済同友会幹事会副議長、明治生命保険相互会社常務取締役山中宏君。  十三日午前の公述人は、成蹊大学教授肥後和夫君、全国農業協同組合中央会常務理事一楽照雄君、午後の公述人社会主義研究会議事務局長和田耕作君、以上八名でございますので、御報告いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十二分散会