○
灘尾国務大臣 お尋の点は非常にむずかしい、お答えしにくい問題だと思うのでありますが、
総理大臣が先般の施政演説におきまして、
総理の所信として
人つくりの問題に触れておられるわけでございます。
総理大臣の所信として述べておられる事柄を、
ことばとしてあらわしてまいりますと、やはり意を尽くせないというような点も出てくるのじゃないかと思うのでございます。一口に
人つくりというものをどういうふうにやるのか、こういうお尋ねになりますと、まことにお答えしにくいわけであります。結局お話が抽象的にならざるを得ない。同時に、言い尽くせないというようなところもあろうかと思います。簡単に言えば、われわれの安心できる、将来をになうりっぱな
日本人をつくりたいのだ、こういうことになるわけでありますが、それではもちろん御満足をいただける
答弁というわけにはまいらぬと思うのであります。非常にむずかしい問題でございますが、その時代その時代において、
人つくりの問題についても特に強調しなければならぬというふうなものもあろうかと思うのでありまして、
総理大臣は現在は
日本並びに国際
関係のもとにおいて最も期待される
人間というものはこういうふうにありたいという趣旨で言われたものと私は思うのであります。
文部省の立場から申しますと、もとよりその時代その時代においてお互い
国民が特に期待をするような人をつくってほしい、またつくらなければならぬということになるわけでございますが、そのことはもちろんそうでありますけれ
ども、結局私
どもとしては、
学校教育あるいは
家庭教育あるいは
社会教育というふうなものを通じまして、つくるという
ことばは非常に語弊があろうかと思いますが、それぞれの人がりっぱな
人間となるように心がけてもらいたい、またその
努力をしてもらいたい、そのために必要な
指導をするとか、あるいは
環境を整備する、こういうことが私
どもの
課題として
努力いたしておるところでございます。御承知のように、
教育の
目的につきましては、根本をいえば
日本の憲法、またそれに基づいての
教育基本法というもので
目的ができておるわけであります。これもお尋ねがあるごとく、きわめて抽象的なものでございまして、おわかりにくい点もあるのでありますが、
学校教育の、ことに義務
教育の課程あるいは高等
学校におきましては、それぞれ学習
指導要領というものを示しまして、少なくともこのような
程度の
教育はしてもらいたい、こういうようなことを示しておるわけであります。それに基づきまして
学校の場において、各教師がそれぞれの教科課程を通じて、また近ごろでは御承知のように道徳という時間もございます。そういう時間において
人間形成に必要な
指導をいたしておるわけであります。
日本国民として身につけておってほしいというふうないろいろな、何と申しますか、徳目という
ことばも用いられておりますけれ
ども、いろいろないわゆる徳目というふうなものを示しまして、そうしてそれを児童生徒の年齢に応じ、学年に応じまして、適当な配分のもとに、また適当な
内容をもって
指導していこう、こういうやり方を現にいたしておるわけであります。もちろん
教育のことでありますから、
政府がこうしろ、ああしろと押しつける性質のものではない。やはりその児童化徒がだんだんとそういうことを自覚し、わきまえてくるように
指導いたしておるわけでありますが、それの基準となる、あるいはそれの参考となるものを
政府としては提供しておるのが現状でございます。最近の新聞にも出ておりますので、御承知のことと存じますが、現在道徳という時間を設けてやっておりますけれ
ども、なかなか思うように
効果があがってこない。また現場の教職員なんかも、何か参考になるものはないか、こういうような御注文もありますので、すでに示しております学習
指導要領の線に沿いまして、さらにこれをやや具体化いたしまして、一年生の場合にはこういうふうなやり方でやったらどうかという参考案を示し、二年化の場合にはこうしたらどうかという参考案を示して、これを一そう徹底させたいというふうな考え方で準備をいたしておるところでございます。
いずれにいたしましても、簡単な
ことばでもってこうだとかいうことになりますと、はなはだ申し上げにくいことになるわけでございますが、私
どもといたしましては、個人としていわゆるりっぱな
人間として通用するようなものを身につけた人をつくりたい。同時にまた、
日本の
国民として
日本の国を愛し、
日本を発展させるために熱意を持つような人をつくりたい。同時にまた、それが今日の
世界におきまして、どこにまいりましてもみなりっぱな
日本人として十分通用するような人をつくってまいりたい。単に
日本に片寄るだけでなく、やはり同時に
世界の人として尊敬せられ、信頼せられるような人をつくりたいという大きな
目標のもとに、個人として身につけなければならぬ、あるいは
社会人として身につけなければならぬ、あるいは
国民として身につけなければならぬような点を、年齢、学年に応じてだんだんと
指導していこう。同時にまた、
学校だけでは十分な
成果をあげられないということも申すまでもないことであります。これは、何と申しましても、ことに小さいときは
家庭における
教育というものが非常に大きなウエートを持つものと考えます。
学校でせっかくやりましても、
家庭がそれに反しておるようなことでは
効果はあがらぬわけでございますので、そういう
家庭教育というふうな問題にもさらに一そう力こぶを入れようという考えのもとに、
社会教育の面におきまして、従来からもやっておることではございますけれ
ども、来年度からは新たに
家庭学級というような仕組みを考えまして、いわゆる
家庭教育をさらに徹底させ、また
学校教育と
家庭教育との連携を一そう密にする、そういうふうな
努力もいたしてまいりたいと考えておる次第であります。
文部省の
施策といたしましては、結局文部省
関係の仕事は全部
人つくりに
関係がある。
人つくりに必要な条件あるいは
環境、こういうふうなものを整備すると同時に、
教育内容の向上充実をはかりまして、一そういわゆる
指導の徹底をはかってまいりたい、このように考えておる次第でありますから、どうも御満足のいくような
答弁にはなりかねると思うのでありますが、御了承いただきたいと思うのであります。