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1964-02-07 第46回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月七日(金曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       田澤 吉郎君    中曽根康弘君       野呂 恭一君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       山本 勝市君    亘  四郎君       有馬 輝武君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       河野  密君    多賀谷真稔君       田中 武夫君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大 臣 福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局参事         官         (第三部長)  吉國 一郎君         総理府総務長官 野田 武夫君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (管財局長)  江守堅太郎君         大蔵事務官         (為替局長)  渡邊  誠君         厚生技官         (公衆衛生局         長)      若松 榮一君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (重工業局長) 森崎 久壽君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君         運輸事務官         (海運局長)  若狭 得治君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  榮作君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月六日  委員岡田春夫君及び山花秀雄辞任につき、そ  の補欠として有馬輝武君及び田中武夫君が議長  の指名委員に選任された。 同月七日  委員稻葉修君及び石野久男辞任につき、その  補欠として亘四郎君及び岡田春夫君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員有馬輝武君、石田宥全君加藤清二君、田  中武夫君及び堂森芳夫辞任につき、石野久男  君、久保三郎君、安井吉典君、山花秀雄君及び  柳田秀一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、審査を進めます。  これより一般質疑に入ります。  有馬輝武君。
  3. 有馬輝武

    有馬委員 私は、最初に、官房長官に、人つくり政策についてお伺いをいたしたいと思います。  一月二十一日の池田総理施政方針演説を承っておりましたけれども、具体的にどのような人間をどのようにしてつくろうとしておられるのか、きわめて不分明であります。この施政方針演説にずっと目を通しておられた官房長官でありまするから、当然その意図するところは明瞭にしておられると思います。で、私がお伺いしたいと思いますことは、ここに「国家民族繁栄をはかり、世界国民との協力提携を深めようとするわれわれの努力は、次代をになう青少年に受け継がれることによって一そうその成果が高められます。高い知性、豊かな情操、たくましい意思を身につけ、」云々というぐあいに書かれておるのでありますけれども、しかし、こういった抽象的な表現では、国民はどういう人間になればいいのだ、教育者はまたどういう人間をつくればいいのだというような点について、総理の意図するところはほとんどつかめないと思うのであります。   〔委員長退席青木委員長代理着席〕 まだ戦前は、たとえば二宮尊徳みたいな人間になれとか、あるいは西郷南洲みたいな人間を指向しろとか、それぞれ国民がすぐ抱き得るイメージというものは、人間としての一つ方向というものがはっきりいたしておりましたけれども、現在においては、池田さんが盛んに人つくりを言われましても、どういう人間になればいいのだ、特に青少年諸君は、人間形成についての目標というものを持っていないと思うのであります。そういう意味で、もちろん、新しい憲法下におきましては、池田総理の言われる人間というものにもおのずからのカテゴリーがあると思います。具体的に名前をあげて失礼かと思いますけれども、たとえば池田総理みたいな人間をつくろうとするのか、黒金官房長官みたいな人間をつくろうとするのか、あるいは経団連の石坂会長みたいな人を指向しておるのか、あるいは画家の岡本太郎さんみたいな人を指向しておるのか、どういう人間になればいいのだ、こういうことを国民に差し示して、その方向にあらゆる努力が払われなければならぬと思うのです。そういう点について官房長官からはっきりさせていただきたいと存じます。
  4. 黒金泰美

    黒金政府委員 有馬さんの御質問でありますが、いまここでお読み上げになりました点をお読み願えれば大体おわかり願えるのじゃないか。表現があまり上手でない点もあったかと思いますが、ここに書いておりますように、「高い知性、豊かな情操、たくましい意思を身につけ、それぞれその能力と個性を生かし、進んで国家繁栄と人類の福祉に奉仕せん、」こういう青年を養いたいのです。しかし、その人たちがどういうふうな人を自分の理想に描いてそれに精進するかというのは、個々人が御決定になることであって、政府がなし得ますことは、ここにも書いてございますように、青少年がこういう努力をなし縛る環境を整備して、そして適切な指導を行なうことがわれわれの施策でございます。私どもとしてはわかったつもりで書いておるのでございますが、いまおっしゃるように、二宮尊徳であるとか、池田勇人であるとか、こういう鋳型をわれわれつくりまして、それにみんなを持っていこう、こういう気持らは持っておりませんで、青少年のおのおのの方が自分個性自分の特色を生かして、そしていま言ったようなりっぱな青年になっていただきたい。これに対する環境を整備し、できるだけの指導をしていくことが、政府施策の根本でございます。こういう気持ちで書いておるわけでございます。
  5. 有馬輝武

    有馬委員 いま御答弁になりましたことは、総理なりあるいは黒金官房長官自分ではわかる。ただ、それが国民に向かっての呼びかけになり得るかどうか。現在の青少年諸君に、いま官房長官がお読みになったような、また先ほど私が読み始めましたようなことで、自分たちはこういう人間にならなければいけないのだという目標となり得るかどうかという点におきましては、これは総理黒金さんだけがおわかりになっておって、国民は、池田総理人つくりということを言われるけれども、はてと首をかしげておるのが実態ではないかと思うのであります。そういう点について具体的にどうこれを施策の中で生かしていかれるつもりなのか、その点について再度御答弁をいただきたいと存じます。
  6. 黒金泰美

    黒金政府委員 人つくりということば、概念を初めて所信表明で使いましたのは、御記憶かと思いますが、一昨年の八月、参議院の改選後でございます。あまり聞きなれないことばでありましたために、一昨年の秋冬にかけましては各方面で非常に論議の対象になりました。私どもが意図しておるような考え方でなくとられた向きもあったようでございます。たとえば、技術労働者をつくるのが目的ではないかとか、あるいはいまあなたがおっしゃっておったような、何か鋳型をつくってそれに政府がはめ込もうとするのじゃないかとか、いろいろ御論議がございましたが、大体一年間論議をされた結果、昨年の秋ごろからは、いま私どもが考え、またいろいろと御説明申し上げておるような気持ちに大体なってきたのじゃないか、御理解願えてきたのじゃないか、こんなふうに考えております。
  7. 有馬輝武

    有馬委員 私が地方を歩きましても、官房長官が、大体おわかりになったのじゃないだろうかというようなことばはちっとも出てこないですよ。ですから、いままだ文部大臣お見えになりませんが、具体的に教育の面では、いまおっしゃったような人間をつくるためにそのバックボーンをどこに求めようとしておられるのか、そこら辺についてこれは官房長官のほうからお聞かせ願いたいと思います。
  8. 黒金泰美

    黒金政府委員 先ほど御指摘になりましたことしの施政方針演説でも、「私は、この観点に立って、道徳教育家庭教育充実強化、文化、科学の振興を一段と進め、家庭学校社会のあらゆる場において」、こういうふうにいたしまして、子供さんが生まれてから、三つ子の魂百まで、ほんとう子供のときの御両親のしつけ、それから学校に入りまして、もちろん学校教育中心でございますが、卒業しても社会においてあらゆる場で自分を訓練できる、そういう場を提供いたしまして、青少年の方がほんとう自分をみがいていけるようにという施策に重点を置いておるわけでございます。
  9. 有馬輝武

    有馬委員 次に、外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  今度の一月二十七日、二十八日の日米経済合同委員会成果があったのかどうか、私、共同コミュニケを読みましても、はなはだ疑問に思うのであります。当初この委員会に臨むにあたりましても、政府はいろいろな懸案をかかえて、しかもその委員会の過程におきましては、それぞれの担当大臣が強力に折衝された趣につきましても新聞その他を通じてお伺いいたしましたが、さてその成果についてということになりますと、私たちは具体的なものをほとんど見出し得ないのであります。結局日米協調というかけ声だけに終わったのじゃないかという印象を国民の一人といたしまして強くいたしておるのでありますが、外務大臣は、今度の第三回日米合同委員会成果についてどのようなものを考えておられるのか、あったのかないのか、ここら辺について具体的にお聞かせをいただきたいと存じます。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 有馬委員の御案内のように、日米貿易経済委員会というのは具体的な問題を交渉する場でないということは、これが設けられた当初からの性格でございます。そういうことは在来の外交ルートでやることでございまして、私どものこの委員会を通じてねらいとするところは、日米貿易問題、経済問題、金融問題等々につきまして閣僚レベルで隔意のない話し合いをする、そして、それが両国理解に資する、したがって、そういう理解の基盤ができますると、具体的な問題が出てまいりました場合にそれの解決を容易にするということは想像にかたからぬことであります。この成果をどう判断するかということでございますが、これは、日米経済関係が全体としてどのような推移を見ておるかということを全体として御判断をしていただかなければならぬと思いまするし、今後日米貿易経済関係がどのように発展してまいるかということをごらんいただいて、総体的に評価していただくというほかに道はないのではないかと思うのでございます。   〔青木委員長代理退席委員長着席〕 もっとも、これは委員会に関することを申し上げておるわけでございまするが、委員会で集まりました閣僚が、閣僚レベルにおきまして個々の問題でネゴシエートするということはあり得ることでございます。いまお尋ねが委員会ということでございますので、委員会というのはこういう性格のものである、そしてその成果判断は、貿易経済関係全体の拡充進展というものをごらんいただいて、総体的に御評価をいただくということをお願いしたいものだということでございます。
  11. 有馬輝武

    有馬委員 外務大臣答弁でありましたけれども、少なくとも御答弁の趣旨は、今後の日米経済動向、またその他の全般的な動きを見てほしいということと、いま一つは、委員会に具体的な成果を期待すべきではないというぐあいに受け取れたのでありますけれども、私はそれにとどまらないと思うのです。せっかく、二十七日、二十八日、懸案の諸問題をかかえて個別にあるいは全体的に話し合いをされて、その議題も、現在の日本経済にとりまして、政治にとりまして重要な課題があったはずであります。ただ情報交換程度であるならば、私はこの経済合同委員会を持つ意味はなくなってしまうと思う。政府はそういうつもりで持たれたはずはないと思う。この経済合同委員会性格というものは、単なる情報交換程度のものであるというふうに政府としては考えておられるのですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 一堂に会しまして共通の問題について率直な討議を行ないまして、日米両国理解を深めるということ、それから各メンバーの個人的な信頼感友情感というものを深めてまいるということ、そういうことがねらいでありまして、特定の懸案について交渉するということ、そのように問題を限局してまいりますと、私は大きな成果は期待できないのではないかと思うわけでございまして、ただいままでのような運営方法でほぼ満足すべきものではないかと判断いたしております。
  13. 有馬輝武

    有馬委員 重ねてお伺いしますが、しつこいようでありますけれども、たとえば今度話し合いされた中で意見の一致した問題もあり、また相互に検討を約した問題もあり、そして双方の主張が平行線をたどったままの問題もあります。しかもそれらの重要な課題について真剣に討議をされて、その結果がいま外務大臣のおっしゃるようなことであるならば、私は、この委員会意味がなくなってしまう、やはり前進する一つの契機をつくり、ここに取り上げられました一つ一つ課題について今後の見通しをつけていく、あるいはそこで解決すべき問題は解決していくということで、初めてこの合同委員会の意義があると思うのですが、その点はどうなんですか。たとえば意見の一致した問題で、日米間で科学協力委員会を設置するとか、あるいは貿易産業問題に関する情報、資料を交換するとか、あるいは職業訓練指導者労組代表を交流するとか、こういう問題があるわけです。こういうことはねらいじゃなかったのですか。そこら辺の関連をいま一応お聞かせいただきたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘のような問題も、討議の結果として出てきた問題でございまして、それは通常の外交ルートを通じまして具体化してまいるわけでございます。私が申し上げているのは、そういうことをやるためにやっておるのでなくて、双方のフランクな討議を通じまして理解を深めるということが主たる目的でございまして、そういう討議を通じまして、いま御指摘のような副産物も出てまいるというように御理解いただきたいと思います。
  15. 有馬輝武

    有馬委員 合同委員会で取り上げられる課題はあくまで副産物だということなんですか。そこで何かの話し合い結論が出ましても、それは副産物であって、そのことを話し合って結論を出すということに主眼点があるのではなくて、あくまでフランクに話し合いをして、いろいろな問題について話し合うということだけに限定されるのですか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 自由かつ率直な討議が主たる目的でございます。
  17. 有馬輝武

    有馬委員 大蔵大臣がちょっとぐあいが悪いそうですから、先に、いまの問題に関連いたしまして通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。  具体的な問題といたしまして、対日輸入制限問題につきましても、いま外務大臣がお話しになりましたように、結局フランクに話し合ったという程度結論はなっておるようであります。私がお伺いいたしたいと存じますのは、福田さんがホッジス商務長官個別会談でASPの問題について相当突っ込んだ日本側要望をされたやに聞いております。またそのように報ぜられておりますが、この日本側の要請を実現するという方向で問題が前向きになっておるのじゃなくて、たとえば、この問題についてはケネディラウンドで一括取り扱うのだとかいうようなことで、まるっきり突っぱねられたような形になっておるやに聞いておるのでありますが、そこら辺について商務長官との交渉の経緯をお聞かせいただきたいと存じます。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの御質問は、自主規制等に関してのことと承ったのでありますが、実はホッジス長官とお会いいたしましたときに、いままでに日本自主規制をしておる品目について、なぜこういうような自主規制が行なわれるに至ったかという事情がみなあるわけであります。たとえば、向こう業界からの要望があったとか、あるいはまた、市場撹乱のおそれがあるから出てきたとか、いろいろそういう理由があるわけであります。その理由に基づいて、どういう理由でこういうことが出てきておるかという内容を明らかにいたしまして、それがこういう事情になっている、そうして、それが三〇%ないし四〇%にもなっているということでは、将来関税一括引き下げというようなことをやっても、こちらが自主規制をしているのでは、われわれは全然利益を受けることができないという事情等、いろいろこの問題を前向きで解決してもらいたいということをまず第一点に申し述べたのであります。それからもう一つは、いままで相当前からやっているものがあるので、その当時においては確かにそういうような市場撹乱的なことがあったかもしれぬが、今日においてはもはやその事情も変わってきておるものもあるから、そういうものは今後順次なくしていくようにしたい、その具体的な折衝を始めた場合には、あなたのほうも業界を納得さして、できるだけわれわれの希望を達成するように骨を折ってもらいたい、こういうことであります。  これはもう非常に案件が多いのですから、一つ一つの問題を三十分や一時間の個別会談でやれる道理もない。そういうことについてわれわれは申し入れをした。向こうもこちらの言うことは一応わかっておる。ただし、しからばなぜアメリカにおいてそういうようなことを要望しておったか、それはそれぞれみな理由があるのだ、また同時に、日本アメリカ側言い分をいれないでどんどん輸出をしておったならば、これはほんとうに法律でもってこれをシャットアウトするとか、あるいは行政措置によってこれをシャットアウトする、全然入れないような問題も起きることになるので、日本自主規制をしてくれたので、だんだん輸出が伸びるようになっている事情もあるのだ、これは向こうからの言い分であります。私はそれを全部否定する必要はないと思う。確かにそういう効果もないわけではありません。そこで、そこら辺の利害をあわせてだんだん解決していきましょう、こういうことで話をしたわけでありまして、私は個々の問題については、解決は何もこれがあったとは申し上げませんが、相互がそういう意味理解を深めたということは明らかであると思う。そのときにもホッジスさんが、言ったのだが、いや、私らはわかる、しかし国民にわからせるのはなかなかたいへんなんですよ、こういう話があった。これは、私は日本の場合においても同じであると思う。日本では、たとえばアメリカからこれだけ物を輸入しておるではないか、そうして輸出はこれだけだ、少ないからもっと輸出をしたらいいじゃないか、こう言われても、それにはそれだけの理由があるわけです。そういうことについては、国民はあまりよく理解をしていない人もある。そういうことをだんだん理解させるということも、私は、両国が密接な関係を保ちながら貿易を広げていくという意味では非常に効果があるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  19. 有馬輝武

    有馬委員 通産大臣の言われるように、個々の問題についてはもちろん結論をああいった形の中で出すことは困難だと思います。私がお伺いいたしておりますことは、向こう側国内産業の抵抗を排除して何とかやっていこうという前向きの姿勢じゃなくて、それは関税一括引き下げの際には何とかしようじゃないかということで逃げを張るだけに終わったのではないか、こういうぐあいにしか受け取れないのであります。そこら辺について、前向きになったその形がありましたならば、お聞かせをいただきたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 関税引き下げ交渉の問題に触れられましたので、私からちょっと念のために申し上げておきます。  ケネディラウンド中心にいたしまして、いま世界の主要な関税圏を構成しておる国々が具体的な交渉に入っておることは、御承知のとおりでございます。そのスポンサーがアメリカであるということも、御案内のとおりでございます。アメリカは現に百七十億ドルくらいの輸入をいたしておりまして、これはアメリカかけ声をかけるということだけではできないので、現実に百七十億ドルの輸入国であるという力、つまりギブ・アンド・テークでお互いに話し合っていかなければいかぬわけでございますから、その力が背景になって、アメリカがギブするもの、テークするもの、それが結局交渉内容になってくるわけでございます。その場合に、日本の主張するところは、いま福田通産大臣が言われましたように、もろもろの日本製品に対する輸入制限措置が事実上あるということは、関税率を引き下げるというだけでは利益を均等に受けることはできない道理だから、日本とEEC、あるいは日本アメリカ、あるいは日本と英国等関税圏との間の交渉におきましては、この点を頭において考えていただきたいということは、われわれは、アメリカばかりでなく、その他の国々にも主張いたしておるところでございます。で、冒頭に申しましたように、日本の主張をどういれるかにつきましては、これに対してどれだけの特例品目をケネディラウンドのフレームの中で認めさすかということに結局落ちついてくるわけでございますが、その場合に力になるのは、やはり輸入力を持った国がどれだけ譲歩をするかということにかかってくるわけでございます。したがって、私は、今度の貿易経済委員会ケネディラウンド交渉の事前の打ち合わせ会的な性格を持ってきたと思うのでございまして、そういう意味で、これは後進圏に対する貿易の問題、貿易会議の問題もそうでございますけれども日米が事前に十分に双方の立場、条件、事情、要求というものをお互いに知り尽くしておいて、そうしてできるならばユナイテッド・フロントをつくることができれば、これは非常にしあわせなことで、そこまでいかぬにいたしましても、お互いに十分の理解を持って臨むということは非常に大事なことだと思いまして、そこへ力点を置いて話し合ったということでございます。
  21. 有馬輝武

    有馬委員 さっき通産大臣にお伺いいたしました、たとえば具体的に対日輸入制限の問題等についてこちらの要望福田さんが強力に主張されると、向こうケネディラウンドに逃げ込んでしまうということで、その点については、いまの外務大臣の御答弁をうかがっておりますと、そういうものを話し合う一つの場をつくったというぐあいにすりかえられるので、そこら辺について明瞭にしていただきたいと思うのです。通産大臣はどうなんですか。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま外務大臣関税一括引き下げの問題について御答弁がありましたが、この問題については外務大臣が言われたとおりであります。あなたの言われる気持ちは、関税一括引き下げのときには考えてやるから、まあまあいまのことはがまんして待っていろ、こういうふうに向こうが逃げを打ったのではないか、こういうお話だと思うのです。私はそういうふうには理解しておりません。向こうも、なるほどものによっては少しは考えないといかぬかなという感じを持った、私はそういうふうに好意的に理解しております。しかし、たとえそうであっても、具体的に問題が起きてきてその話し合いに入ったのではないのでありまして、これはたくさんのことがあるのですから、ものによっては、これから関税一括引き下げの問題がどう進展しようとも、それにかかわらずわれわれとしてはこれはまた別の問題として自主規制というもの、あるいは輸入制限というものをやめさせてもらおう、やめてもらおう、こういう努力は続けていくべきだと思うのでありまして、そのことにつきましては向こうも納得する面はあったと思うのであります。ただ、これはわれわれ日本の、私が通産大臣といたしましても、やはり業界の考え方というものと、通産大臣として、世界の立場において貿易を公平に進めていくという立場において見たその意見というものとの間には、必ずしも私は一致があるとは限らないと思うのであります。やはりそれは若干どうしても食い違いがあります。業界はどうしても利益追求でありますから、自分のほうに都合がよければいいので、ほかのことはどうでもいいから、こちらは自分らの思うようにしてくれ、こういう気持ちは多分にある、これは当然なことなのであります。そういう場合において、われわれとしても、しかしここら辺でやはりしなければだめですよといって業界をなだめ、業界話し合いをしながら詰めていくことが必要になるわけでありますから、具体的な問題についてああいう会談のときに、そういううしろのほうを一つも振り返らないで、わかった、よしやりましょう、こうは言えない、これはわれわれも同じだと思うのです。しかしながら、そういうふうに認識を深めていくことによって、問題の解決が一歩前進をしたということだけは私は言えると思っているわけであります。
  23. 有馬輝武

    有馬委員 おっしゃることもわかるのです。しかし私がお尋ねしておるのは、向こう側国内産業の抵抗を押えて前向きになるんだというような姿勢を示したのかどうかということなんです。私にはそのような姿勢を示したとは受け取れない。もちろんあなたの背後には日本の産業がある、向こうにも背景がある。その背景を踏まえながらしかも前向きになることが、合同委員会における話し合い方向ではないかと思うのです。目的ではないかと思うのです。それがほんとうに前向きになった、そのように受け取られておるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 福田一

    福田(一)国務大臣 それは、ものによって私は違うと思うのでありますが、相当部分において前向きで解決していこう、ただし、そのときに解決しますよと言ったら、うしろのほうからまたいろいろ抗議が出てきたりしてかえって解決しない場合がある。私は、そこらにやっぱり商売をやっておる者の、またそれを担当しておる者の悩みというか苦しみがあるのだと思う。それを、そういうふうに前向きにやりますよとこう言ったときに、それがはたして前向きになるかどうか、私はものを言わなくて解決するほうがいい場合が多分にあると思う、こういうふうな感じでありまして、そのことば表現じゃなくて、気持ちを前向きにしておる、争ういうことではやはり私は効果があった、こういうふうに思っているわけであります。
  25. 有馬輝武

    有馬委員 外務大臣にお伺いします。これは経済企画庁長官や大蔵大臣がお見えになっておりませんので、質問が飛び飛びになりまして申しわけありませんけれども、この前の本会議におきますわが党の平岡委員質問に対しまして、OECDに関する総理答弁がきわめて不明瞭でありまして、それでお伺いをするのでありますが、OECD加盟によってわが国は具体的にいかなる利益を受けられるのか、開放経済体制下におきましてIMF八条国への移行、OECDの加盟ということは、もう既定のコースとしてどんどん進められておるのでありますけれども、私どもにはこのOECDに加盟することによってどんな利益が日本にあるのか、ここら辺が、むしろ要求されるものが日本の産業基盤の問題なり何なりに自主性をというか負担をしいるだけで、受ける利益というものについて私たちにはのみ込めない点があるわけであります。そういう点で外務大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 有馬さん御承知のように、日本経済のいまの実態は、OECDに加盟する条件、実態をほぼ備えておる、若干の留保をつけておりますが、これはわが国ばかりでなく、世界各国が日本はOECDのメンバーたり得る資格がある、そしてまた、それは歓迎すべきことであるという見解を持っておることは、御承知のとおりでございます。すなわちOECDというのは先進工業国のクラブでございまして、これは三つの目的を持っておりまして、これらの国々が経済の順便な成長を遂げていこうということ、そして、それらの国々の間の貿易の拡大をはかっていこうということ、そして相協調して後進国に対する経済援助を促通していこう、こういう三つの目的を持ってつくられたクラブでございます。ところがこの組織がつくられまして以来、OECDも漸次性格の変更を遂げてまいりまして、御案内のように、流動性にからみまして先進国の通貨政策上の協力という問題が大きな問題になる、あるいは価格政策あるいは運輸観光政策、その他このクラブで討議される問題がだんだん広範になってきておることも、御承知のとおりでございます。わが国といたしまして、世界全体が開放経済体制になってまいるその環境のもとにおいて、わが国の経済が生存権を主張してまいる上におきましては、十分これらの世界の動向につきまして知っていなければならないことも事実でございまするし、でき得るならば、こういう開放体制下における先進国の経済政策というものの作案の過程の中にわが国がメンバーとして入っておくこと、そのことはわが国の今後の経済政策を立案し運営していく場合に必須のことになってきたのじゃないかと政府判断いたしておるわけでございます。すなわち、こういうことによってどういう具体的な利益があるかと問われますと、これを貨幣価値に換算して、これこれの利益がございますと御答弁申し上げる自信はございませんが、しかし、わが国のただいまの国際信用を向上させていき、わが国の経済政策を立案していく場合におきましても、これは国際的視野に立たなければならぬことでございまするから、わが国は先進国の立案過程に十分深く踏み込んでおくことが必要だと思いますし、あわせてわが国の経済の実態について先進国によく知っておいてもらうということもまた必要になってまいったと思うのでございます。そういう角度から、私どもはOECDへの加盟をお願いいたしておるわけでございまして、これは先ほどの日米貿易経済委員会と同じように、大きな勘定で利益を評価していただくべき性質のものじゃないかと判断します。
  27. 有馬輝武

    有馬委員 また順序がまちまちになりまして申しわけございませんが、委員長の御要望によりまして文部大臣、農林大臣、自治大臣に先にお伺いいたしたいと思います。まず文部大臣、簡単ですから……。  先ほど私は官房長官に、今度の総理施政方針演説でうたわれました人つくり政策の基本となる、レールとなるものの考え方についてお伺いをいたしたのでありますが、官房長官総理施政方針演説を繰り返したにすぎませんでした。ああいったことでは国民は、自分たちがどのような目標を持って進むべきか、また青少年が指向する方向を差し示すにはあまりにも抽象的過ぎる。教育者の立場からも、あるいは父兄の立場からも、なかなか意図するところをつかみにくいと思うので、それを具体的にお示し願いたいということを官房長官にお尋ねしたのであります。いまの問題について、多くの問題で直接その任に当たられる文部大臣のこの点に関する考え方を明瞭にしていただきたいと存じます。
  28. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋の点は非常にむずかしい、お答えしにくい問題だと思うのでありますが、総理大臣が先般の施政演説におきまして、総理の所信として人つくりの問題に触れておられるわけでございます。総理大臣の所信として述べておられる事柄を、ことばとしてあらわしてまいりますと、やはり意を尽くせないというような点も出てくるのじゃないかと思うのでございます。一口に人つくりというものをどういうふうにやるのか、こういうお尋ねになりますと、まことにお答えしにくいわけであります。結局お話が抽象的にならざるを得ない。同時に、言い尽くせないというようなところもあろうかと思います。簡単に言えば、われわれの安心できる、将来をになうりっぱな日本人をつくりたいのだ、こういうことになるわけでありますが、それではもちろん御満足をいただける答弁というわけにはまいらぬと思うのであります。非常にむずかしい問題でございますが、その時代その時代において、人つくりの問題についても特に強調しなければならぬというふうなものもあろうかと思うのでありまして、総理大臣は現在は日本並びに国際関係のもとにおいて最も期待される人間というものはこういうふうにありたいという趣旨で言われたものと私は思うのであります。  文部省の立場から申しますと、もとよりその時代その時代においてお互い国民が特に期待をするような人をつくってほしい、またつくらなければならぬということになるわけでございますが、そのことはもちろんそうでありますけれども、結局私どもとしては、学校教育あるいは家庭教育あるいは社会教育というふうなものを通じまして、つくるということばは非常に語弊があろうかと思いますが、それぞれの人がりっぱな人間となるように心がけてもらいたい、またその努力をしてもらいたい、そのために必要な指導をするとか、あるいは環境を整備する、こういうことが私ども課題として努力いたしておるところでございます。御承知のように、教育目的につきましては、根本をいえば日本の憲法、またそれに基づいての教育基本法というもので目的ができておるわけであります。これもお尋ねがあるごとく、きわめて抽象的なものでございまして、おわかりにくい点もあるのでありますが、学校教育の、ことに義務教育の課程あるいは高等学校におきましては、それぞれ学習指導要領というものを示しまして、少なくともこのような程度教育はしてもらいたい、こういうようなことを示しておるわけであります。それに基づきまして学校の場において、各教師がそれぞれの教科課程を通じて、また近ごろでは御承知のように道徳という時間もございます。そういう時間において人間形成に必要な指導をいたしておるわけであります。日本国民として身につけておってほしいというふうないろいろな、何と申しますか、徳目ということばも用いられておりますけれども、いろいろないわゆる徳目というふうなものを示しまして、そうしてそれを児童生徒の年齢に応じ、学年に応じまして、適当な配分のもとに、また適当な内容をもって指導していこう、こういうやり方を現にいたしておるわけであります。もちろん教育のことでありますから、政府がこうしろ、ああしろと押しつける性質のものではない。やはりその児童化徒がだんだんとそういうことを自覚し、わきまえてくるように指導いたしておるわけでありますが、それの基準となる、あるいはそれの参考となるものを政府としては提供しておるのが現状でございます。最近の新聞にも出ておりますので、御承知のことと存じますが、現在道徳という時間を設けてやっておりますけれども、なかなか思うように効果があがってこない。また現場の教職員なんかも、何か参考になるものはないか、こういうような御注文もありますので、すでに示しております学習指導要領の線に沿いまして、さらにこれをやや具体化いたしまして、一年生の場合にはこういうふうなやり方でやったらどうかという参考案を示し、二年化の場合にはこうしたらどうかという参考案を示して、これを一そう徹底させたいというふうな考え方で準備をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、簡単なことばでもってこうだとかいうことになりますと、はなはだ申し上げにくいことになるわけでございますが、私どもといたしましては、個人としていわゆるりっぱな人間として通用するようなものを身につけた人をつくりたい。同時にまた、日本国民として日本の国を愛し、日本を発展させるために熱意を持つような人をつくりたい。同時にまた、それが今日の世界におきまして、どこにまいりましてもみなりっぱな日本人として十分通用するような人をつくってまいりたい。単に日本に片寄るだけでなく、やはり同時に世界の人として尊敬せられ、信頼せられるような人をつくりたいという大きな目標のもとに、個人として身につけなければならぬ、あるいは社会人として身につけなければならぬ、あるいは国民として身につけなければならぬような点を、年齢、学年に応じてだんだんと指導していこう。同時にまた、学校だけでは十分な成果をあげられないということも申すまでもないことであります。これは、何と申しましても、ことに小さいときは家庭における教育というものが非常に大きなウエートを持つものと考えます。学校でせっかくやりましても、家庭がそれに反しておるようなことでは効果はあがらぬわけでございますので、そういう家庭教育というふうな問題にもさらに一そう力こぶを入れようという考えのもとに、社会教育の面におきまして、従来からもやっておることではございますけれども、来年度からは新たに家庭学級というような仕組みを考えまして、いわゆる家庭教育をさらに徹底させ、また学校教育家庭教育との連携を一そう密にする、そういうふうな努力もいたしてまいりたいと考えておる次第であります。  文部省の施策といたしましては、結局文部省関係の仕事は全部人つくり関係がある。人つくりに必要な条件あるいは環境、こういうふうなものを整備すると同時に、教育内容の向上充実をはかりまして、一そういわゆる指導の徹底をはかってまいりたい、このように考えておる次第でありますから、どうも御満足のいくような答弁にはなりかねると思うのでありますが、御了承いただきたいと思うのであります。
  29. 有馬輝武

    有馬委員 文部大臣の御答弁を伺っておりましても、先ほどの官房長官の御答弁を伺っておりましても、ただ容器だけを与えられて、中身が入ってないというような感じがするわけであります。しかしこの問題については後日に譲るといたしまして、次に農林大臣にお尋ねをいたします。  この前の本委員会におきます石田委員と農林大臣との応答を伺っておりましても、池田総理が、高度成長のひずみを受けておる中小企業並びに農業に対して、ここ一両年の間にそのひずみを是正していくということで強調されておるのでありますが、具体的にどのようにしようとしておられるのか、この点について農林大臣の所見を伺いたいと思います。もちろん、たとえば農林漁業金融公庫の貸し出しのワクの問題なりあるいは方法の問題なり、金融一つ取り上げてみましても、農林大臣が努力しておられるあとはうかがえるのであります。がしかし、そういうことは当然中小企業なり農業なりが本来的に背負っておる、当然いままでに措置しなければならなかったことを後手後手と追っておるという感じしかしないのでありまして、総理の言う一両年のうちにひずみを直すというからには、新しいレールが敷かれなければならないはずです。それについて農林大臣の御見解を伺いたいと思います。
  30. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お答えいたします。  ひずみを直していかなければならぬと思っていますが、御承知のように農業は、単年度というか、年度年度に収穫等もあるわけでございますので、急激にとは私はなかなかむずかしい問題だと思います。しかしながら所得倍増計画の中間検討によりましても、あるいは国会に提出いたしておりまするところの農業白書ですか、それ等によりましても、他産業との格差縮小あるいは生活水準の向上ということはなかなかむずかしいという分析をいたしておるわけでございます。三十七年度におきましては経済成長の伸びが鈍化いたしましたので、他産業との生産性におきましても、あるいは農家の生活水準等におきましても、幾分縮小はいたしましたが、これはそのまま縮小するというわけにはまいらぬと思います。そういう見通しのもとで施策を行なっていかなくちゃならぬ。その施策につきましては、何といたしましても長期にわたるものでございますが、倍増計画からいえば四十五年度まででございますので、できるだけ格差を是正して縮小していきたい、生活水準を上げていきたい、こういうふうに施策を考えておるのでございます。そこで、農業を申し上げるまでもなく近代化する、近代化するといっておりまするけれども、近代化するという具体的方法は、やはり農業における労働力を省いて、農業人口も非常に少なくなっておりますが、省いて同時に機械化する、あるいは成長作物であるところの畜産とか果樹とか野菜等の方向に生産を指向していく、もちろん米等の生産をおろそかにするわけではございません。そういう面で進めていくのにこの手で——このことだけをやったならばその結果生産性の格差が縮小する、あるいは生活水準がよくなるという一つの手でというわけにはまいらぬと思います。そういう意味におきまして、農業政策全体としてお考え願いたいと思うのでございますし、またそれも御承知のことでございますが、たとえば機械化をするというようなことにいたしましても、あるいは畜産化するということにいたしましても、それを行なっていくところの基盤といいますか、大型機械なら大型機械を入れていくという基盤がまだ十分整っていないじゃないか、せっかくそのほうに指向しても基盤がよくできてなければだめじゃないか、こういう点から、ことしの予算等におきましても土地基盤の整備といいますか、ことに畜産方面に関連いたしましては草地の造成を大々的にやっていこうじゃないか、またその方向に向かって土地改良をやっていくということならば、土地の集団化とか大型の圃場整備とか、こういうことをやって、いまの指向する方面に合うような基盤をつくり上げなくらやならぬじゃないか、この基盤の造成は一、二年でというわけにはまいりませんから、これはそのことによって一両年の間に格差等が縮小されるというわけにはまいらぬかと思いますけれども、そういう基盤づくり——いま御指摘のようにおくればせではありますが、いままでも土地改良をやってまいりましたが、土地改良、草地造成等を含めて、あるいは大圃場をつくり上げていく、こういう方向にやっていくということが一つ方向でございます。もう一つは、何といたしましても生活水準を上げるという点から考えましても、総合的に構造改善をしていかなくちゃならないじゃないか、そういう意味で手をつけまして三年に相なっております。その成果は、いま申し上げるような段階までは残念ながらいっておりませんけれども、やはり農村の体質を改善して、少ない労働力でも、そう労働を使わないでもやっていける、そしてまた生産の方向も、畜産とか果樹とか、そういう方向へ向かうことのために体質改善をしていくべきじゃないかということで構造改善事業を三年ほど進めておりますが、これにつきましてもいろいろ問題がございます。そういう問題のあるところを直しながらこれを前進さしていきたい、あるいはまた、それに伴いまして国内的、国際的の問題からいいましても、流通あるいは価格対策ということが非常に問題になっております。こういう方面で流通価格対策を強化していかなければならぬじゃないか、あるいはいま御指摘がありましたような、せっかくそういうことをやっても、自己資金あるいは借りる金の利息が高かったり長期でなかったりするようなことでは、気持らはそういうふうな気持ちでも、実際に実行が伴わないじゃないか、こういうような関係から、融資方面等につきましても、お話のように、ワクとか金利とかあるいは期間とかを延ばして、そうしてその金でいわゆる近代化していこうじゃないか。こういうことでいろいろ施策を講じておるわけでありますけれども、実態も、御承知のように、また農業そのもののいわゆる自然性とか経済性とかいわれておるような面もございますので、なかなか率直にいいまして他産業との格差を縮小していく——三十七年度は幸いに少し縮小しましたが、非常に困難ではございますけれども、この方針をさらに前進するために、あるいは農家の生活水準を向上、前進させるために、総合的に全体としてやっておる次第でございます。  私は、これは他産業との関係もございますから、農業だけではなかなかいかぬと思いますけれども、しかし総理も申し上げておりましたように、経済成長がせっかくできておるわけでございます。でありますので、この経済成長によって、国民の税負担などもだんだんよくなるということでございますならば、その総力というのは、少しオーバーな表現でございますが、そういう面を弱体であるところの農業方面に回して、予算面等におきましても、そういう方面へ回して、目的であるところの格差の縮小とか、あるいは生活水準の向上とか、こういうことを前進さしていきたい。予算面等におきましても、あるいは財政投融資その他の金融面におきましても、十分とは私言えないと思います。しかし、現段階におきまして、予算編成前等の情勢から見まして、農林関係にはなかなか予算も回らぬじゃないか、食管会計などもあまり大きいんじゃないかというようなことで、予算面等におきましても非常にきびしい批判もあったのでございますけれども、私は十分とは申し上げられませんが、本年度といたしましては、御審議を願っておる予算をフルに動かして、そしていまの目的に一歩でも二歩でも数歩でも前進したい、こういう心がまえで農政に当たっておるわけでございます。
  31. 有馬輝武

    有馬委員 私は、農林大臣がみずから農村でその生涯を過ごしてこられ、農政の衝に当たられて、そして先ほど私が指摘しましたような、いまお話しになった予算の規模とかなんとかということ以前の状態に置かれておる事態について、農林大臣自体が苦悶しておられると思うのです。いまおっしゃたような農業基盤の整備とかなんとかという、それ以前の問題が山積しておる。ことしの正月私はテレビで見ておったのでありますが、岐阜県だったと思いますが、開拓の人たちが山をおりていく姿を私は非常に注意深く見守りました。また、これは何日ですか、今度の朝日ジャーナルに「急増する農村の出稼ぎ」ということで秋田県の実態を取り上げております。それはいま私が申し上げたような、また、いま農林大臣がお答えになった以前の問題を手がけなければどうともならない事態にきておる。それに対して抜本的にどのようなメスを入れようとされるのか、そのことをお伺いしておるわけであります。
  32. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 仰せのとおり、予算とか、表面にあらわれた問題以前の、まあ、ことばをかえて言えば、苦悩する農村といいますか、また変貌しつつある農村、また、変貌をいい方向に持っていかなくちゃならぬという農村の実態に触れて一、二御指摘があったようでございます。農業就業人口が減ってきて、年寄りやあるいは婦人の労働にたよっておる、これも相当重労働です。一方においては兼業農家が四割程度にふえておる。いろいろな面から見まして、非常に問題を含んでおる現状だと思います。そういう意味におきましては、私は、やはり近代化ということばが当たっているか当たっていないかわかりませんが、とにかく少ない労働力でも農業がやっていけて、そうして農業の生産を維持、発展させる。個人的の農家からいうならば、安定して農家が農業経営をやっていける、こういうような方向に持っていかなくちゃならぬと思いまするし、そういう意味におきましては、やはり自立経営農家育成という方針のために、農地を取得できるような機会を与えるとか、あるいはまた機械化とか、あるいは選択的拡大というような方向指導しなければならぬと思いますが、同時に兼業農家が四割程度出てきております。この兼業農家はいま分岐点に立っておると思います。兼業農家が土地を手放して、自立経営農家に協力するということでありますならば、またそれなりにいいのでございますが、兼業農家といたしましても、土地を手放してしまうことに対しての決断がつかない。なぜつかないかというと、御承知のように工場その他他の方面に就業いたしましても、はたしてそこに一生就業し、あるいはまたやめたあとの生活の保障があるのかどうか、こういう不安がありますから、農地を手放すというわけにもまいらないような現状だと思います。でございますので、やっぱり雇用あるいは社会保障制度の充実強化をはかって、兼業農家が他産業に就業した場合には、そういう点で安定をさせるということが必要だと思います。しかし、やはり農業自体としてやっていくというような形につきましては、これは経営技術の指導もございましょうし、あるいはまた協業といいますか、協業によってやっていくというような方面もございましょう。そういう方面から兼業農家というものに対する対策を講じていくというふうにも考えております。どうしたらばこの変貌しつつある農村がいい方面にいくかということにつきましては、非常に苦労も多いし、方策といたしましても、一つの方策だけでもできませんし、また非常に問題が多いと思います。まあ画一的に、土地問題等につきましても個人の所有権がある問題でございますから、これを国家管理してどうこうというような問題も、非常にむずかしい問題で、これはでき得るかどうか、非常にむずかしい問題だと思います。またそういうことをやっていいかどうかという問題もありましょう。そういう問題がありまして、実は、どうすればいいのだ、こういう御質問に対しましては、やっぱり総合的に実態を把握して、いままで進めてきた方向を強化していく。強化の前に、その実態をよく認識したらいいじゃないか、私もそう自分で考えております。そういうふうに考えておるだけで、この手あの手、いろいろな手によってやっていきたい、こう考えておる次第でございます。
  33. 有馬輝武

    有馬委員 結論づけて申し上げまするならば、毎年のグリーンレポートが差し示しておりますように、先ほど私が指摘しました、この苦悩するというよりも、もう完全に行き詰まった農村について、前に政府が手がけられました農業基本法、たとえばあの中の支持価格の問題なり何なり、こういったところをぴちっとしないと、ざる法ではどうともならないところになってきているわけです。これはまた、いずれ日を改めて論議をいたしたいと存じます。  それでは、自治大臣さっきからあれですから、先に簡単にお伺いいたします。  今度市町村民税の臨時減税補てん債について取り上げられておりますが、実は私は、これは結論的に申し上げまするならば、地方交付税の税率その他で根本的に解決しなければならない問題だと思いますけれども、これを年限を切ってあるが、その後はどうするおつもりたのか。いま私が申し上げました交付税それ自体で解決すべき問題ではなかったか。また、その補てん額は、全額国でやるとしても、見るべきではなかったか。こういう点について、自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
  34. 早川崇

    ○早川国務大臣 お答えいたします。五年間で補てんがなくなりますので、その間に自主財源の増収、自然増収、あるいは交付税の増収が期待されます。それによって、五年後は補てんなくして自立できるような見通しで、期限を五年といたしたわけであります。  それから、全額国でという御説でございますが、大蔵省との折衝で、三分の一は地方財政の負担で補てんしていく、こういうことになったわけであります。
  35. 有馬輝武

    有馬委員 時間がなくなってまいりましたので、先ほど外務大臣日米経済合同委員会の問題についてお伺いをしたのでありますが、簡単にお伺いをいたしますから、大蔵大臣も経企長官も簡単に御答弁をいただきたいと思います。金利平衡税の問題です。  大蔵大臣も、また経企長官も、ヘラー氏と、あるいはブリット氏と強力に折衝された。がしかし、これは結局一方的な主張に終わっておるのでありますが、この問題について、大蔵大臣として、また経企長官としての折衝の経緯と見通し——見通しといいますのは、大蔵大臣さっそくまたアメリカ側に代表を送って、この問題を折衝するというような含みもあるようでありますけれども、そこら辺についての御見解を伺わせていただきたいと思います。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 金利平衡税の問題につきましては、大平・ジロン合意書によりまして、両国の正式な意思は決定いたしております。しかし、財政当局者である私といたしましてはジロン財務長官との間に昨年九月のIMFに際しまして渡米いたしました際にお話しをして、意見交換をしてきた経緯もありますので、また財政的な立場から、これが通過をした後の特別免除の旨を強く要請しておるわけであります。ブリット財務次官補は訪韓を延ばしまして、一日よけいに大蔵事務当局とも相談をしておるわけでありますし、この問題については、三月の十五、六日ないしは二十日くらいには両脇を通るであろうという見通しを明らかにせられておりました。日米間の問題については、現地に相互事情を検討するために特別な連絡協議会がつくられておりますので、こちらからは山下公使を中心にして、日本事情を述べておるのであります。  私が特に強調しましたのは、金利平衡税法案というものが九月に通るとか、また十一月に通るとか、一月に通るとか、三月に通るとか、その間半年以上にわたってニューヨーク市場はオール・ストップになっておるという問題に対して、もうこの法案の成立の意義というものは達せられたのではないかというような問題に対しても、新しい立場で日本側意思を十分に通じておるわけであります。  なお、もう一つの新しい観点は、日本側としては、特に日本国民感情としては、カナダに特免条項をとられた以上、日本にも当然とってもらわないと、資本の面からの差別待遇を受けておるような国民感情があるので、かかる面に対しても十分の配慮を願いたいということを申しておるわけであります。  一部においては、金利平衡税などというものはもう通るのだから、幾ら政府が言ってもできない相談だというようなあきらめ式な話もありますが、日米間にはこの他まだ経済、財政、金融等に対してたくさんの問題があるのでありますから、広範な立場から、まず第一の問題としての金利平衡税については、あくまでも特免条項をまっこうから掲げて折衝を続けるという私の基本的な立場は変わっておりません。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大蔵大臣がただいま述べられたような現実的な理由から折衝をしておられるわけでございますし、私は、この利子平衡税法案というものは理論的に正しくないものである、非難されてしかるべきものであるということを言い続けておるわけであります。会議後も、朝野の人が来ますたびにそういうことを言い続けております。
  38. 有馬輝武

    有馬委員 いまの問題につきましてさっそく問題になってまいりますのは、本年度予定されておりました外債の問題があると思います。それはどうなりますか。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 一億二千五百万ドルの外債発行を計画いたしておるわけであります。そのうち、金利平衡税問題が出ない前に出ました七千二百五十万ドル——だと思いますが、数字が違っておればあとから訂正いたします。残余のものについて、金利平衡税問題が起きましたためにオール・ストップになっておるわけであります。一部においては、この問題、特に東京都債等に対しては、金融その他においてつなぎをしてはどうかというような議論もあります。また、この間のブリット財務次官補との会合においても、この問題に対して、帰国後早急にひとつ考えてもらいたい、いやしくも国会の審議を経ておるものでありますから、その後世銀等、その他またヨーロッパ市場等の起債もできたではないかというようなこととは別に、国会の議決を経ておるアメリカ市場を目標としての残余の問題に対しては、金利平衡税が三月の末までかかるということがもし仮定せられるならば、つなぎにどうするのかというような問題は、金融機関と日本政府だけの問題ではなく、日本政府アメリカ政府の問題として、高度の立場で考えて早急に結論を出してほしいということを申し入れてあります。
  40. 有馬輝武

    有馬委員 次に、税制について大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、厚生大臣が先ほどからあれしておりますので、先にお尋ねをいたします。  実は大蔵委員会におきましてたばこと肺ガンの問題について、また本委員会におきましても取り上げられております。専売公社の御意向とあなたのところの公衆衛生局長の意向というものは根本的に食い違っておるわけです。といいますのは、公衆衛生局長としては、害があるけれども、肺ガンの直接の原因であるかどうか、ここ四、五年の間に検討をいたしたいというようなことで、まるっきり、それまで肺ガンになって死んでしまうのはともかくとしてというふうにしか受け取れなかったのでありますが、専売公社のほうでは、たばこの宣伝もやめるわけにもいかないというようなことで、現状を続けていく。これは一応専売公社の阪田総裁としても、また公衆衛生局長としても、それぞれの立場からのお話としてはわからないでもないのでありますが、しかし、国民は専売公社の総裁から聞き、また厚生大臣から聞く、両方聞かなければ判断できない、両方聞くとなお判断できないという状態に置かれておるわけでありますが、政府としてこの問題に対する一本の御見解をこの際お聞かせを願いたいと思うのです。
  41. 小林武治

    ○小林国務大臣 この問題は、先般もこの席で申し上げたのでありますが、先般のアメリカの報告というのは、材料がアメリカとカナダ、イギリスに限定された資料をもとにしての推論である、結論である。この結論日本の専門の学者にも検討してもらったのでありますが、その資料に基づくものに限ってとにかく結論は大体正しいものと思われる、こういうことを言っておるのでございまして、日本の資料というものがこの中に全然入っておらなかった、こういうことであります。しかし、あの報告書自体は「たばこと肺ガン」という題ではなくて「喫煙と健康」、こういうことで、健康には、たとえば心臓、あるいは高血圧、こういうものについても相当な影響がある。常識的に申しても、日本ではたばこが健康にいい、こういうことはもう言っている者はありません。ただ、肺ガンの関係におきましては、日本にも相当の特殊性があるので、これは今後相当詳細に、またある程度期間をかけて検討いたしたい、こういうことでありまして、専売公社のほうとそれから厚生省のほうと言い方において多少の違いがあるが、そう差異はない。しかして、厚生省としましては、とにかく長期に、また大量の喫煙は健康上よくない、肺ガンに直接関係があるかどうかは、これは別問題として、健康上よろしくない。ことに日本は明治三十三年から未成年者の喫煙禁止法がある。この喫煙禁止法がどうも的確に励行されておらぬ、こういうふうに見えまするので、この際とにかく未成年者の喫煙禁止のこの法律が励行されるように、こういうふうなことで、地方に対してもその向きの勧告をし、注意を喚起する、こういうふうにいたしておるのでございます。  とにかく、喫煙が健康にいいということは、これは申されない。一般的な問題としても、そう常識的に考えられておるのではないか、こういうふうに思いまするし、またお話しの肺ガンの研究については、日本の特殊性もあり、今後の検討に待たなければならぬ。この際、これが直接的にどういう影響があるかというようなことは、いまのところは結論が出ない、こういろことになっております。なお、これはかなり専門的な問題でありまするので、この上のお尋ねがありますれば、また担当の衛生局長からお答えを申し上げます。
  42. 有馬輝武

    有馬委員 私がお伺いしておるのは、国民が吸ったほうがいいのか、吸わないほうがいいのかと簡単にお伺いしておるわけです。
  43. 小林武治

    ○小林国務大臣 それは、もう喫煙が健康上いいということは言われない、こういうことでおわかりになる、こういうふうに私は考えます。
  44. 有馬輝武

    有馬委員 次に、大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、健全均衡ということを今度の予算編成についても特に強調しておられるのでありますが、問題は、国民にとりましては、均衡しておるかどうかということが問題でないので、安い政府であるかどうか——安い政府というのは、国民の福祉のための歳出額まで、また歳入におきましても納得のいくものであるかどうか。特に租税においてもしかりでありますが、そういうことを考えておるわけでありますけれども、そういう意味での予算の性格というものについて、まず大蔵大臣からお聞きしたいと思います。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 有馬さんは大蔵委員のエキスパートでありますし、財政金融のことに対しては十分御承知の方でありますから、率直な意見を申し上げますと、開放経済に向かっておる日本の現状、それから、戦後、無資本の中から立ち上がってここまでようやく経済再建を行なってきた日本の現状、また、社会保障や文教の刷新、振興、科学技術の問題、特に社会資本が将来の日本国民の生活向上のために非常に不足をしておるという現状を考えまして、国民側から要求されておる財政の規模の適正な面から考えますと、三十九年度の一般会計及び財政投融資、税制改正案は妥当なもの、こういう考え方に立っておるわけでありますし、健全均衡という条項には完全に適合したものだという考えでおるわけであります。
  46. 有馬輝武

    有馬委員 そこでお尋ねしたいのでありますが、大蔵大臣も何かからだの調子が悪いようでありますので、どうもじくじとなるのでありますが、一番の問題点は、いまお触れになりました本年度の財政投融資の原資も、昨年の一兆一千九十七億円から一兆三千四百二億円というような形でふくれ上がっております。私は、その予算編成の基本的な態度というものが、当然一般会計でめんどうを見なければならないようなものについても、いわゆる財政投融資というような形で逃げ込んでいかなければならないところに、現在の予算編成における一つの大きな問題点があるのじゃないかと思うのでありますが、その点について大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計につきましては、もちろん国の負担ということで国会の御審議を願っておるものでありますし、財政投融資は、御承知のとおり、民間金融だけでは効率が上がらないし、また大きな国家社会的な目的を持つものであるし、一般会計で補助というような面でこれをこなしていくよりも、財政投融資という面で弾力的に、また民間の創意くふうも入れながら、そういう面から配慮することがより合理的だという考え方から、一般会計にあわせて財政投融資の制度ができたわけであります。  その意味において、今度の三十九年度の問題についても、一般会計で措置しなければならないものが財政投融資の中に逃げ込んでおる、政府が意図して財政投融資の中に追い込むことによって、一般会計の規模を圧縮しておるというようなものは全然ありません。明らかにいたしておきます。
  48. 有馬輝武

    有馬委員 次に、これは主税局長にお伺いしたいと思いますけれども、問題は自然増収の見込み額です。本年度も所得税において一千一百五十五億、それから法人税でも一千七百六十八億、揮発油税四百三十四意というような形で増収見込み額を立てておるのでありますが、ここ十年ぐらい、この見込み額が当たったためしがないのであります。しかも、ただ十億とか二十億というような食い違いであれば問題ないのでありますが、この歴年の見込み額の違いについては御承知のとおりでありまして、私はいまここに数字をあげることははばかりますけれども、しかし、これは常軌を逸しておると思うのであります。とにかく、たとえば昭和二十七年でも三千六百二十九億の増収、これは増収も含めてでありますが、それから最近では三十五年四千九百十三億、三十六年七千四百四十三億という形で、もういま申し上げたように常軌を逸しておると思うのです。これは単なる大蔵省の見込みのずさんさというようなものじゃないんで、意図的にやっておるか、苛斂誅求これきわめておるか、あげればこれは一つ一つ意図されたものであるとしか見れないのでありますが、なぜこのような非常に大きな食い違いを生じさせるのか。これは意識的に免じさせております。これについて大蔵大臣の御見解を述べていただきたい。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 当初の税収見通しというものと実際の決算額との間に相当大きな開きがあるという問題につきましては、御承知のとおり、所得倍増計画で年率七・二%平均と予定をいたしておりました日本経済成長が、一〇%になり、一三%になるというような高度の成長が行なわれましたので、その差が三十五年、三十六年、三十七年というふうに見込み額よりも決算額が大幅に上回ったということであります。今年度の歳入見積もりについては、これは一部においては、いままでのようにどうも自然増収が大きくなるから、政府は初めから意図して低く見積もっておるんだというようなことでは困るので、税収は全部見積もるべきであるという御意見がいままでありましたが、三十九年度の予算では、今度は少しよけいに見積もり過ぎたんじゃないかといわれておるくらいでありますので、大体税収見積もり名目九・七%成長率一ぱい、まあ適正な見積もりをしておるということを申し上げられるわけであります。  自然増収という問題に対して、私も大蔵大臣になりましてから考えておるんですが、自然増収というのは、読んで字のとおり自然増収でありますが、どうも自然増収というのは、大蔵省が考えておる税収見積もりよりもよけい取れるものが自然増収だというふうに一般的に間違ってとられやすいので、現行税法による当然増収、こういうふうに直したほうがいいかというふうに考えておるわけであります。どうも自然増収というそのことばの持つ意味が税制上の用語に適切であるかどうか、なかなか議論のあるところでありまして、この自然増収が六千八百億、——きっと御質問があると思いますが、六千八百億というと、一般大衆は、全く政府の考えておるよりも、自然に出るものを取るんだ、当然われわれに返すべきものであるというふうに考えられやすいのですが、現行税法でもって九・七%の成長率があって、そして国民所得がそれによってふえれば、当然税は、現行税法上、ことしはこれだけだったものが来年はこれだけになるんだ、その来年度ふえる分を自然増収と称する、こういうことをはっきり言わないと誤解があるようでありますから、これらの問題に対しては十分検討したいと思います。
  50. 有馬輝武

    有馬委員 私は近ごろ、現代用語辞典に一語新しく加えなければならぬじゃないかと考えておるのです。それは、当たらないもののあれに宮沢式数字なんというものを加えたほうがいいのじゃないかと思っておるんです。物価騰貴の見込みにいたしましても、経済成長率にいたしましても、当初の政府のあれが当たったことはないんで、勧銀なり日銀なりの見込みというものが大体似かよった線を出しております。  そして、いまの自然増収の問題にいたしましても、これは去年あるいはおととしがそうだったという問題じゃなく、もうここ十年来、二十六年からとりましても、先ほど申し上げたように毎年大きな食い違いを生じてきておるのでありますから、当然こういった二、三年の傾向から趨勢値というものは出てくるはずなんです。それをあえて、いまおっしゃったような形で、自然増収とはというようなことで、そういったことを隠れみのにして減税をサボる。中小企業なりあるいは勤労者に対する所得税の軽減なり何なりを押えていく、ここに現在の池田内閣の徴税に対する、税制に対する基本的態度というものが、露骨にあらわれているのではないか。これは租税特別措置の問題を抜きにいたしましても、当然こういう増徴が見込まれるならば、大幅なそういった所得税の減税なり何なりというものが考えらるべきなのに、それをやらない理由はどこなんですか。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 減税はできるだけやるべしである、これは政治の基本であるということは、いつも申し上げておるとおりであります。しかし、御承知のとおり、ただ税金を返すというだけではなく、税を納めない方々もあるのでありますから、これらの低所得者に対しても、一般会計で歳出の面でカバーをしなければならないという面がたくさんあるわけであります。でありますから、減税をする場合には、減税と財政投資の効率を十分考えながら、いかにすれば国民にプラスになるかということを考えながら減税政策は立てられるわけであります。  これは、外国の例をいうわけではありませんが、この間ブリット財務次官補が来まして、いま大幅減税をやるためにジロン財務長官は四分の三の時間をかけておるけれども、この減税法案は通らない。なぜかというと、アメリカの議会では、減税をすることがいいのか、その減税を何年間か延ばして歳出に充てて五%にのぼる失業者を吸収することがいいのかということに議論が集中し、白熱をしておって、減税法案が通らないのだ。にもかかわらず、池田内閣、日本の保守党政府は歴年これ減税をやっておって、今度のような大幅二千三百億に近いような減税をやっておって、すなおに通るのはどういうことでありましょう、こういう非常に奇異な発言があったわけであります。  これは、有馬さんも御承知のとおり、六千八百二十六億の当然増収というものを見ておりますが、しかし、三十八年の第二、第三の補正財源で見られるとおり、今年度の自然増収は二千億当該年度であるわけであります。この月算ベースでしますと、六千八百二十六億から二千億を引きますと四千八百億であります。四千八百億の中から国税だけで千三百億命の減税をしようというのでありますから、これは歳入財源になる金額に対して一七・一%になるので、一体こういう減税を過去にやったかというと、そういう例はないのであります。でありますから、三十二年以降、最高の率で歳入財源になる四千八百億のうち、千三百億平年度減税をやろうというのでありますから、戦後敗戦をした日本がこうしてたくましく伸びてきた現実に徴すると、政府も相当減税というものに対して思い切った措置をとっておる、こういうことはひとつお認めいただけるのではないかと思います。
  52. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 有馬君に申し上げます。だいぶ時間も過ぎておりますから、なるべく簡潔にお願いします。
  53. 有馬輝武

    有馬委員 委員長、きょうの経緯は御承知のとおりでありますから、ひとつ。
  54. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 大事なところを質問してください。
  55. 有馬輝武

    有馬委員 それでは全部はしょりまして、租税負担率の問題であります。  きのうでしたか、総理も大蔵委員会で、とにかくイギリスなり、フランスなり、あるいはアメリカなりに比べて、先進国としてはむしろ低いほうだ、池田総理よく数字のごまかしを言うのでありますが、これくらいまた最たるものはないと思うのであります。問題は、そういった形でこの租税負担率を取り上げるべきではなくて、やはり国民、人当たりの所得の立場から取り上げなければうそだと思うのです。また課税最低限度をどの程度にするかという立場から取り上げなければならぬはずです。総理が言われるアメリカ国民一人当たりの所得は、これは何年ですか、四年前で、ずいぶん古くなっておりますけれども、これは国会で出したあれですが、アメリカでは二千二百八十八ドル、それからフランスで九百六十一ドル、比較で出る最低のイタリアでも五百九ドル、日本はそれに比べて三百四十一ドルなんです。この傾向というものはやはり現在も続いておると思います。そうなった場合に、まるで中学校や高等学校の同窓会の会費ではあるまいし、お前はそうだけれどもというような形でこれを出すべき筋合いのものじゃないと思うのです。課税最低限と、いま減税とおっしゃったけれども、まず手がけなければならないことは、所得税なり何なり、こういったところにあるのじゃないか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 確かに、総理が言いました数字は、統計に基づいて申し上げておるわけであります。一九六一年度をとってみますと、地方税、国税をあわせまして日本は二二・二%でありますから、いま御審議を願っておる昭和三十九年度の税負担率と同額であります。それからアメリカは二七・六%、イギリスが三二・一%、フランスが三〇・五%、イタリアが二六・七%、西ドイツが三二・六%、確かにこういう数字が出ておりますが、アメリカ日本の三倍も四倍も所得があるじゃないか、物価も三倍半ないし四倍といわれますが、物価問題からいろいろなことを計算すると、なかなかそう簡単に統計の数字だけで言い得るものではありません。もちろん、先ほど申し上げたとおり、財政支出の面、国民に対する行政サービスという面からの国民の受くべき問題もいろいろな面から計算をしなければならぬわけであります。先ほどあなたが言われたとおり、対前年度比一四・二%のような非常に大きな予算を組んでおるということも、先進国にできるだけスライドしていくように、日本社会保障、文教その他の問題に対して歳出で増加をしておるわけであります。ところが、アメリカや先進国は六%、多くても九%というような予算の伸び率でありますから、行政サービス、歳出によるサービスは日本よりも非常にテンポが低いわけであります。また国民一人当たりの所得という面から考えますと、実際三万円必要であるという生計費の中からたとえ千円とられるものであっても、所得の低い人ほど税負担というものは重く感ずるものでありますから、こういう意味から、できるだけ早い機会に先進国並みにしたい、こういった考え方から所得倍増政策をやって、これはとにかく日本経済を大きくして完全雇用を行ない、われわれの所得を上げて、先進国並みに早くなりたい、こういう過程における生みの悩みを続けておるのでありますから、そういう面からもひとつ十分考えていただいて、課税最低限もだんだんと引き上げてまいりましたし、今般は家族五人で四十七万一千円、平年度四十八万五千円ということでありますが、これは五人家族の場合は一万四千円くらいしか最低生計費との間に差がないといいますけれども、三人、二人、独身者ということになると、生計費との間には五万円ないし六万円というような差も出てくるわけでありまして、これらはやはり一ぺんに——かつていろいろな植民地を持っておったり、原材料に対して関税のないような国々と同列に論じて結論を出すということは非常にむずかしいわけであります。しかし、政治の高い目標としては、一日も早く先進国並み、あるいはより以上に国民負担の軽減をはからなければならぬという理想に向かって漸進的努力を続けておるわけであります。
  57. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 もう一問だけ許します。時間がだいぶ延長しておりますから……。
  58. 有馬輝武

    有馬委員 もう一問だけということでありますから、締めくくって要点だけをお尋ねします。  いまの問題は、所得倍増は理想で、納税は現実だというところの、この食い違いに問題があるわけです。それから租税特別措置、利子配当の分離課税の問題等、とにかく大企業、高額所得者に対しては手厚い保護がどんどん次から次へと加えられていって、ほんとうに減税をやらなければならない人たちはそのままほったらかしにされておる。やるとしてもほんとうにスズメの涙、ここに納税者にとって一番合点のいかない点があるわけです。  いま一つは、納税人口の問題、これは議論になりますから申し上げませんが、さらに揮発油税なり地方道路税というものの性格から考えて、今度増税されるけれども、ここにも大きな問題があると思うのです。揮発油税なんというものは、一般大衆に大きくのしかかってくるわけです。  いま一つ、特にオリンピックを前にいたしまして、物品税なり、あるいはたばこについてもそうでありますが、酒についても税額表示をする考え方はないか。これは外国を回りますと、タックスを明示しているところがあります。そういったところからも、国民は、税額表示がしてあれば、納得がいく——納得いかぬでも、まあやむを得ないということになるのですが、いまはもうまるきりだまし討ちみたいになっているのです。そういった意味で、税額表示をする考え方はないかどうか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 ガソリン税の増徴等についての御質問がございましたが、これは毎度申し上げておりますとおり、道路五カ年計画の特別財源になっておるわけであります。ガソリン税を増徴することによって道路計画が行なわれ、そのために国民生活によりプラスになるかならないか、国民経済にどう影響するかは、これは十分検討しておる問題であります。その意味において、一面において二千百八十億という大幅減税を行ないながら、その反面、地方道路税及びガソリン税の増徴を行なったことは、相反するではないかという御質問だと思いますが、しかし、これは別な政策目標を達成するために、このほうが国民的に、また日本経済再建によりプラスになるという考え方でありますし、いま物価で公共料金を押えようという政府の決定をしておりながら、ガソリン税の増徴をしなければならぬということに政府があえて踏み切り、火中のクリを拾うような態度に出ましたのは、勇気が必要なのであります。こうすることによって、将来の日本国民的基盤をつくらなければならぬという考えによったものでありますから、御理解賜わりたいと思います。  物品税の問題につきまして、税額表示をしろということでありますが、これは法律に基づいて、民間の店舗等に対しては一部表示をしておるものもあります。しかし、あなたがいま言われたのは、酒とか、たばことか、特に肺ガン問題などのある財政専売式なものに対してやるべきだということであろうと思いますが、これはもうしなくとも、飲んでおる酒がどのくらい税金だ、のんでおるタバコがどのくらい税金だ、こういうことは国民各位も十分御承知のようでありますし、またこれを表示するということが世界的に全部行なわれておるわけではない。ただアメリカ等においては、今度の肺ガン説の問題に対して、このたばこをのむと肺ガンになるおそれがある、のまないよりも確かにそのおそれがあるという表示をしろ、こういうことを言っておりますが、これは財政専売でなく、民間企業でありますので、民間が非常に無理にたばこを売り込むということに対する一つの制約をしたものでありまして、この問題は、過去から何回も議論されておる問題でありますけれども、酒やたばこに対して税額表示をしなければならないという結論は、いま持っておりません。
  60. 有馬輝武

    有馬委員 最後に一回お伺いいたします。それは、昨年来日銀としては準備預金率の引き上げの問題、あるいは窓口規制、こういった金融引き締めの方向をたどって、国際収支の問題についても適時適切な措置をとっていきたい、こういう意向で、公定歩合の問題も俎上にのぼっておりますが、これをチェックしておるのは、大蔵大臣、たびたびのあなたの新聞記者会見その他のあれを見ておりますと、これをチェックしておる。少なくとも国際金利にさや寄せをしていきたいということは、昨年あたりまでは、金利に対するあなたの基本路線だ。ところが最近の動きを見ておりますと、どこに根があるのかわからなくなる。公定歩合の問題、この問題についての大蔵大臣のはっきりとした見解をお聞かせ願いたいと思います。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 公定歩合は、金融操作の一手段でありまして、これを大蔵大臣がチェックをしておるようなことはありません。将来もまたやりません。御承知のとおり、日銀の政策委員会が決定をし、大蔵大臣に届け出るということだと思います。そういうことで、日銀政策委員会で決定したものを大蔵大臣に持ってきましても、それを拒否した例はありませんし、いままでも公定歩合に対して大蔵大臣の意向を聞いたというような例もありません。また、皆さんから御質問がありますので、この間の経済閣僚会議の最後の段階において、公定歩合に私がストップをかけておるような誤解があるようでございますが、そういうことはございませんので、これは金融調節手段として日銀がお考えいただくことでありますので、誤解のないように念のために申し上げますと、こう言っておきましたら、いや、それはもう承知いたしておりますからと、こういうことでしたから、そういうことは全然ございません。  それから金利の問題に対して、国際金利にさや寄せするということと、昨年の末からの窓口規制、準備率の引き上げ、いろいろな問題とは、これは全く相反するじゃないかということ、これも有馬さん十分御承知で御質問だと思いますが、これはおおよその方向として、これから国際場裏に立って日本貿易によって立っていくというこの基本線が変わらないのでありますから、その意味においては、原材料を持っておる国と持たざる日本が国際競争をしなければならないのでありますので、いまのような高い国内金利がいいなどという考え方は、だれでもないわけであります。でありますから、方向としては、国際金利にさや寄せをして、できるだけ金利は低い合理的なもので国際競争力をつけなければならぬという方向は当然のことであります。しかし昨年の末とか今年行なわれた窓口規制その他の弾力的な金融操作は、これは時に応じて、機に応じて適時適切な施策としてやっているわけです。またそういう意味では、日銀等は国際収支の関係などで一部規制をしなければならないと言いながら、国会や政府の間では、しかし中小企業に対しては三百億の財政資金を投下して、また買いオペ二百五十億をやって、その上なお百億余に上る中小機関のワクもふやさなければいかぬ。買いオペをやって、民間金融機関に対しては銀行局通達を出して、中小企業にはめんどうを見なさいというのは、中小企業に金を貸しなさいということを言っておるのでありますから、これは相反しないのです。これこそきめのこまかい施策としてやらなければならないことでありますので、どうぞひとつそういうことを御理解賜わりたいと思います。
  62. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて有馬輝武君の質疑は終了いたしました。  午後は一時三十分から再開することといたします。  なお、午後の質疑者は井村重雄君、田中武夫君であります。井村君の要求大臣は、大蔵大臣、厚生大臣、通産大臣、労働大臣であります。田中君の要求大臣は大蔵大臣通産大臣、運輸大臣、経済企画庁長官及び総務長官であります。  暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後一時四十分開議
  63. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  井村重雄君。
  64. 井村重雄

    ○井村委員 私は、医療行政、厚生行政の面につきまして、厚生大臣に二、三の点につき、簡単にお伺いをいたしたいと存じます。  今日、池田内閣の重要施策として取り上げられておることは、いわゆる社会保障が非常な大きなウエートを占めておるのでありまして、その面において厚生行政を担当しておられる大臣の責任は、きわめて大きいものがあると存ずるのでございます。先般、この委員会において首相から、医療費は公共料金とは考えておらない。目下中央医療協に諮問をしてあるのだから、答申次第善処いたしたいという答弁がございました。また、厚生大臣は、医療費は緊急是正をする必要ありと認められて、諮問を中央医療協にしておられる状況であります。一度はっきりお答えをいただきたいのでありますが、医療費は安きに過ぎて、これを値上げする必要性は確認をいたしておられるのでございますか、御答弁をお願いいたします。
  65. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、昨年十二月の四日に、中央医療協議会に対しまして、高度経済成長に伴う医療費の緊急是正について意見を問う、こういうことでありまして、医療費を改定するには医療協議会の意見を聞く、こういうことに相なっておりまするが、この諮問を出したということは、医療費を上げる必要があるかどうか、また上げる必要がある、こういう答申が出れば、それに対処しなければならぬということがあって出したのでありまして、病院その他診療所等において経営に非常な困難を来たしておる事実もよく認知しておるのでありまして、繰り返して申し上げますれば、そういう事態も医療協の答申として予想し得る、こういうことで出したのでございます。
  66. 井村重雄

    ○井村委員 これは申すまでもなく御承知のことと存じますが、公的医療機関、あるいは市町村立の公営医療機関が非常に経営難におちいって、ある市町村のごときは、相当一般財源を食い込んでおる。ぜひ医療費を上げろという声が非常に大きいのであります。また、厚生大臣自体も上げろという答申が出れば、上げる必要があるというのだけれども、緊急是正の要ありとして諮問された以上は、やはり答申はもとより必要でありますけれども、上げる、上げなければならないということだけははっきり考えておられるのじゃございませんでしょうか。
  67. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは、ただいま申しましたように、そういう諮問をするということは、そういう事態がある、病院が非常に困っておる、赤字を出しておる、こういう事態も頭に置いて諮問をいたしておるのであります。
  68. 井村重雄

    ○井村委員 さような事態において、御存じのとおり、中央医療協はいろいろな問題でデッドロックに乗り上げておることは、御承知のとおりであります。いつ答申が出るかも、これはまだはっきりいたしておりませんが、巷間いろいろな新聞あるいは報道等で、何かしらぬ支払い者側と医療担当側が相対立しておることが、何か厚生省ではかえって喜ばしい現象じゃないか、この場合医師会が分裂することもかえってよいじゃないかというふうな記事も見受けられます。また、厚生大臣も、これは事実とは私は考えたくないのでありますが、ある場所において、政治的圧力に屈してはならないというふうなことを述べられたというような記事もありますが、私は、こういうふうなことは真実であってほしくないのであります。お互いに厚生行政をあずかっておられる以上は、その諮問機関がうまくいきまして、支払い者側も納得がいって、この負担を喜んでいただき、また受け取る側も、ある程度——私は再診料とかそういうことにこだわるのではございませんけれども、せっかく値上げをなさる以上は、受ける側の希望もある程度これをいれて、それを調和のとれたものにやはりコントロールをある程度していかれるということは、私は大臣の責務ではなかろうかと思うのでありまして、こうしたことが政治問題化するような様相のまま、じんぜん中央医療協の答申をじっと待っておられるということは、いかがなものかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  69. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、中央医療協がすみやかに適当の答申を出されることを心から希望しておるのでありまして、昨年末におきましても、ぜひひとつ十五日までに出してもらいたい、それがいけなければ二十日まで待つからぜひお願いしたいということを、強く私は会長にも希望を申し上げておるのでありまして、私は、医療協の話がまとまることを心から希望しておるものでありまして、いま冒頭にお話になったような事実はありません。これから後も、私は円満な話し合いがすみやかにつくことを期待しておるのでございます。ことに医療協には、支払い側と診療担当者側と、それにまた特にたんのうな中立の委員がおられるのでありまして、中立委員が適当のさばきをしていただくということを、いまでも心から期待をいたしておるものでございます。  なお、つけ加えて申し上げますれば、この一月二十五日に一応医療担当者側は声明を出した、こういうことでありまするが、会長は、引き続きぜひひとつ審議を続行したい、こういうことで、最近におきましても、また日をきめて、それぞれの構成員に至急に開きたい、こういうことで取り進めておられるようでありますので、早い機会を私は期待をいたしておるのであります。
  70. 井村重雄

    ○井村委員 いま、厚生大臣から答弁を承って安心をいたしておるものです。こうした国民の健康をあずかる医療問題が、何かしら労働争議めいた紛争になっていくということは、非常に私は残念なことだと思うのであります。また、これが社会の注目を浴びて、医療協の運営がうまくいかない。大臣そのものも、これらの答申がなければ何にもできないということで、逐次あなたの責任が重くなってくるということでは、私はたいへんだと思うのであります。どうかそういう心がまえであるようでしたら、できるだけ厚生行政の責任者として、すみやかに、積極的に、もう少し前向きに中央医療協その他とよく懇談されまして、これをコントロールして、すみやかにひとつ諮問が出るようなお取り計らいを御希望申し上げる次第であります。  次に、社会保険の問題でありまするが、御案内のとおり、現在の日本では、非常にたくさんの各種の社会保険制度が乱立いたしておるのであります。これはいまさら新しい議論ではございませんが、これはその時代時代の要求に応じて出たものでございます。特に戦前これが創立当時は、いわゆる救貧政策、プア・ロー的な性格を持って発足したことは事実でございますが、今日においては、さような意味ではなしに、医療保障という観点から、国民にひとしく高い医療を給付せなければならぬという状態に相なっておるのでございます。しかしながら、ここにありまするいろいろな各種保険に対する国家財政の援助、補助等も非常に大きい金になっておるのでございまするけれども、なお相当の混乱があるのでございます。たとえば、これはいつもわれわれが問題にするのでありまするが、請求書においても、十数種類の請求書を区別しなければならぬという事務的な繁雑さもさることながら、いろいろな給付においても格差があるのでございます。こうしたことをいつも議論をいたしておってもしかたがないのでありまするが、この際、厚生省は思い切って各種保険を統合する、そして国民に平等の医療を給付するという観点に立って、強力なとにかく調査研究機関を設ける御意思はございませんですか。また、一番先に政府みずから率先して、この各省別の共済保険組合——これらでも、給付が非常に単価が安くやっておるところもあれば、非常に高いところもあるのです。各省の共済組合は一番先に私はやり得ると思うのでありまするが、この見解を承りたいのであります。
  71. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまの井村委員の御意見は、私はまことに適切な御意見だと存じます。いまの国民健康保険、あるいは組合の健康保険、あるいは政府管掌保険、船員の保険、また日雇い保険、各種共済組合、こういうものがそのときどきの必要によってできてきた。したがって、その間には十分の連絡調整がとれておらない。また、給付あるいは負担等におきましてもいろいろの格差があることは、きわめて不都合な事実であるのでありまするが、何ぶんにも現在のところ、それぞれの給付に相当な差異がある。したがって、これらを将来の問題としてぜひ統合したい、かように考えておりますが、それに近づくためには、できるだけ給付の調整をする、こういうふうな必要がありますので、私どもも将来の問題として、今度御審議を願います社会保障研究所等におきましても、十分ひとつ基礎的な調査をしていただきたい、かように考えておるものであります。特に、このたび私どもがまた国民健康保険の家族の七割給付をお願いするのも、やはりそういうものに近づける一つの手段である、かように考えておりまするし、なお、国保と健保の給付の格差あるいは負担の格差等にとどまらず、健康保険自体の間におきましても、裕福な組合とそうでない組合といろいろありまして、実際上の給付にも格差がある、こういうことで、私どもは、できるだけ早い機会において組合の健康保険同士のあるいは資金のプールというようなことも考えてみたいと思っておるのでありまして、お話のように、将来の理想としましては、どうしても私どもは、医療給付というものは一本にしていくべき問題である、かように考えて、そういう方向に向かって政府としてもこれから検討をしていきたい、かように考えておるのでございます。   〔委員長退席青木委員長代理着席
  72. 井村重雄

    ○井村委員 そういうことは、近来かなり整備されてまいりました年金制度についても同様のことが言えると思うのでありますが、今回の厚生年金の一部改正の問題についても、かなり複雑な要素があると存じますが、こういう観点からも考えて、十分ひとつ御研究を願いたいのですが、これは今回の予算に出されておりまする社会保障研究所において、この問題を基礎的に調査すると解してよろしいのでございますか。
  73. 小林武治

    ○小林国務大臣 厚生年金の問題につきましては、これはもう昭和十六年に始まって、その後昭和二十九年に改正を施した。しかし、三十九年度が厚生年金の計算のしがえの時期に当たっておる、この際が改正をする最も適当なときである。ことに厚生年金の平均給付が月三千四百円、これでは老後の保障、所得保障の目的を達することはきわめて困難である。したがいまして、私どもは、この給付の改善ということが、この時期の課題である、かように考えまして、昭和四十年から給付をとにかく実質的に所得保障の役に立つような一万円年金にしたい、こういうことで、年金の改正をお願いをいたしておるのでございまして、とりあえず、とにかく厚生年金をさような姿にすることによって、国民年金もこれに近づける方途を講じたい。しかして厚生年金の内容につきましては、この委員会においてもお話がありましたが、これらを実現する上におきましては、いままだ相談中でありますが、いろいろの問題を内包しておるのでありまして、御意見をお聞きいたしまして適当な内容を盛りたい、かように考えておるものであります。
  74. 井村重雄

    ○井村委員 次に、生活保護費の問題でありまするが、厚生省は物価値上げその他を考えて、当初予算に一七%アップを要求されたのでありますが、最終段階において一三%の増高で落ちついたようであります。これは厚生大臣の必ずしも満足されるものでないと、私は解釈いたしておるのであります。なるほど九百余億の予算を要することでありまして、昨年度に比べましても百九十億近くの予算の増を見ておる状況でありますが、しかし、私は、やはりこうした生活保護を受けるような階層に、ぎりぎりの最低生活という意味合いも、よく生活保護法では存じておりますけれども、こういう階層にこそ、こういう経済成長のはなばなしくできているときに、多少の余裕のある値上げを見てあげるということが、ほんとうの親切ではなかろうかと思うのであります。このことは恩給生活者についても言われるのでありますが、今日恩給の受給者は約二百五、六十万の員数かと承知いたしておりまするが、これらも、かつての恩給という制度で年金を受けている方と、共済年金を受けておる方の間に、相当の開きのあることも事実であります。したがいまして、こうしたいろいろな年金に各断層のあることも、これは私はやむを得ないとは思うのでありますけれども、今日物価高の影響を最も痛切にはだ身に受ける者は、この最低生活をやっている生活保護者であり、また恩給で老後を、老夫婦二人でささやかに町裏に生活しておる人たちが、この物価高の影響を痛切に感ずるのだと思うのであります。したがいまして、この生活保護についても、私は厚生大臣にお願いしたいのは、また補正予算の時期でもあれば、何とかぜひこれを努力して予算を獲得いたして、この一七%、あるいはもう少しこれを上げて、経済成長の恩恵が、国家の政治の力によって私どもの身近にまでプレゼントされたという気持ちを起こせるように、お互いにあまりものも言われず、訴える力も持たない、かような弱い階層に対してこそ、われわれはやらなければならぬじゃないか、これがほんとうの政治であり、あたたかい行政ではないか。おまえたち食っていけ、これでは死なないのだ——また、こういうふうな生活保護とか、あるいは恩給を是正するというような予算というものは、地味なものでございます。けれども、やはりこういうところを忘れないでやることが政治の常道ではないかというふうに感ずるのでございまして、生活保護費の一三%というのは、私は、必ずしも厚生大臣の本意ではなかろうと存じます。また、恩給是正についても、一部手直しはされましたのでありますけれども、なお相当の断層がございます。今年度わずかながら調査費もついたはずでございまするから、これは私は大蔵大臣にもお願いをし、意見を述べようと思うのでありまするが、これらについてもすみやかに調査を終えられまして、実際にささやかに恩給で食べておるこれらに対して、ひとつすみやかなる是正を講ぜられんことを期待を申し上げるものであります。御答弁をお願いいたします。
  75. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまのお話はそのとおりでございまして、私どもも一三%、これは三十九年度の物価の伸びが四・二%、したがって、他の八%何がしかが生活水準の向上にあたる、こういうことに考えておりますが、これは、われわれも本意とするところではありません。ただ、生活保護の基準そのものが、他の一般の社会保障施設、社会福祉施設等のいろいろの基準になっておる大事な基礎的な問題でありますので、この数字に私どもは満足するわけではありませんが、全体の経費のあんばいでこれに一応了承をしたと、こういうことであります。しかして、この問題につきましては、御承知のように、三十八年度におきましても、結局また大きな予備費を出して、数十億に及ぶ生活保護費の補完をしておる、こういうふうなことでありまして、私どもは、これを今後も続いて考えてまいりたい。ただ、私は、ここで井村委員に一応申し上げておきたいのでありますが、どうも生活保護費の問題を他の予算と同じように要求することがはたして適正か、こういうことに私は非常に大きな疑問を持つものであります。生活保護そのものは生活そのものでありまして、この生活が、そう予算上伸びたり縮んだりすることは、非常に大きな疑問を残すのでありまして、私は、今後この問題につきまして、他の予算と同じしかたでやっていいかどうかということについては、これは社会保障審議会その他にもお話しをして、何らか別途方途を講じなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのであります。すなわち、生活そのものを伸びたり縮んだりせさる、こういうことは適当でないと、私はかように考えておるのであります。  なお、恩給の問題は、私の所管ではありませんが、厚生大臣に対する陳情等で一番多いのは、恩給生活者から、われわれは従来のような率の恩給では食べられない、こういう非常に切々たる苦情の申し出がありまして、私も内閣の一人としまして、ぜひひとつこれらの窮状というものは考えてあげなければならぬ、こういうことで、私もいろいろの機会において発言をいたしておるのでありまして、御期待に沿うような結果を得たいと、かように考えておるものであります。
  76. 野田武夫

    野田政府委員 ただいまの井村さんの恩給に関する問題について、お答え申し上げます。  全く御意見のとおりでございまして、特に考えねばならぬことは、恩給、扶助料、これだけに依存して生活される方は、まことにお気の毒でございます。しかし、今日まで政府がどうしておったかということは、御存じのとおり、事情の許す限りは政府もその改善をはかってまいっております。昭和三十七年度に、従来の恩給、扶助料を、一般のものにつきましては二〇%前後、公務傷病関係恩給、扶助につきましては三五%前後の増額をいたしたのでございます。その増額分が全部に完全に支給されますのは、実は本年の七月からでございまして、この額も、お話のとおり、一般のものにつきましては、昭和三十四年十月の在職公務員の俸給を基準としたものでございまして、また、公務傷病関係の恩給は、三十五年の十月の在職公務員の俸給を基準といたしておりますから、最近の退職者の共済年金を十年前の退職者の恩給、扶助料との間に相当金額の開きがあることは、これは事実でございます。しかし、この開きました理由といたしましては、いまお話もございましたが、三十四年に国家公務員に関する恩給制度が共済制度に移行いたしまして、それで公務員の掛け金の率が引き上げられましたのに伴いまして、年金算出率を引き上げました。したがって、在職公務員につきまして共済制度に移行した関係での差があるのが、理由一つでございます。しかも、その後昭和三十五年、三十六年、三十七年、三十八年と、御承知のように給与水準が年々引き上げられておりますので、その差がだんだんだんだん大きくなってきておるのでございます。この差をいま直ちに縮めるのは、いろいろ事情がございまして困難でございますが、この退職者の今日の生活状態を見まして、できるだけその処遇を改善することを目途にいたしまして、恩給、共済を通ずる問題の調査また研究に当たっております。したがって、総理府には公務員年金制度連絡協議会というのがございまして、協議会においても、その点を鋭意調査並びに検討いたしております。さらに、先ほどお示しのありました三十九年度には、恩給局に審議室を設けたのでございます。この審議室を設けました理由は、いま御指摘の問題その他を恩給局でも真剣に取り組んで検討したい、そうして、できるだけ処遇を改善したい、こういう目的でつくることにいたしたのでございますから、われわれも十分御意思のあるところは尊重いたしまして、今後対策を考えたいと思っております。
  77. 井村重雄

    ○井村委員 いろいろな事情、また作業上に困難のあることもよく了承いたしております。重ねて答弁は求めませんけれども、生活保護、また、老後ささやかな生活をしておる恩給受給者に対しまして、できるだけあたたかい気持ちですみやかに御処置をいただきたいと存ずるのであります。国家の予算も、いろいろな産業の発達等のためにはなばなしい面へ、あるいは社会資本の充実あるいはその他産業の開発等に多額のものを要することも、よく承知はいたしております。しかし、この面は最も大事な面であり、また、今後の政治、行政の指向方面はこういう点に進むべきではないかという考えを持っておりますので、重ねて御努力をお願い申し上げます。  次に、通産大臣にいろいろ御質疑申し上げたいと存ずるのでありますが、今日、いわゆる中小企業と農業の問題が、非常に大きく政治の表面へ浮かび上がってきたわけであります。これは、みんな叫んでおられることでありますけれども経済成長の裏にやはりある程度置き去られていったということが一つでありまして、今年度の予算編成においても、中小企業と農業の生産性の向上、近代化というふうなことが大きく取り上げられて、予算の面でもこれらが具体化されておる事実もあるのでございますけれども、これは見方によっては、数的に予算の額が多いとか少ないとかということを言えば、これは幾らでも私は言えると思うのであります。たとえば中小企業に関係する直接の百六十億という予算が、はたしてこれで何ができるのだと言えば、それまでのことでございましょう。しかしながら、今日、政府のいわゆる金融三機関に対する大幅な財政投融資とも考え合わせると、相当政府も苦心をしておられることは、私は考えられるのであります。特に今回創設された手形保証の問題は、非常に各方面から歓迎をされておるのでございまして、この面の指導に対し今後一そうの力を注いでいただきたいと考えるわけでございます。そこで、中小企業基本法というものを軸にしまして、これからの中小企業の近代化、生産性向上をやろうという考え方でできたのでございまして、昨年度はいわゆる中小企業近代化促進法、中小企業投資育成株式会社法、中小企業近代化資金助成法等の関連法案が出たのでございますけれども、私は、まだこれに関連して相当の付帯法案が整備されなければならぬと考えておるのでございますが、今国会で何か関連法案を出される用意はございますか。
  78. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業の問題については、額の問題についてはいろいろ見方はありますが、政府としても、この時点においてなさねばならないということについて、できるだけのことはいたしてまいったつもりであります。そこで御質問の趣旨は、中小企業基本法の精神に基づいて今国会に出されなければならない、なお補完しなければならない法案があるはずであるが、これについてどういうものを出すかということと思うのでありますが、ただいまのところ予定をいたしておりますのは、中小企業の定義の問題に関連をいたしましたものが数法案あるのであります。この前までは一千万円、一千人以下、業種によって相違はございますが、そういうような一応の基準によって行なわれておったのでありますが、これを五千万円ということに引き上げるというようなこと等は、いまやっております。そういう関係法案はいま予定をいたしておりまするが、おそらく御質問の趣旨は、そういうものではないので、もっと問題の根本に触れたものを予定をされて御質問があると思いますけれども、これについては、ただいまいろいろ検討をいたしておる段階でございます。
  79. 井村重雄

    ○井村委員 次いでお聞きしたいのは、中小企業近代化促進法で、二十二の業種が指定されておるわけであります。また、中小企業投資育成株式会社法では、三十四業種が指定されておるわけであります。ところが、昭和三十五年のときに業種別振興措置法というもので七十何種かの業種の実態調査をやっておられるはずでありますが、その経営規模、資本あるいはいろいろな状況の調査のあとで、何らかいろいろな振興なりあるいは近代化その他について政府指導、助成があるものと期待をいたしておるのでございまするが、現在、いま申しましたように、中小企業近代化促進法では二十二業種、中小企業投資育成会社法によれば二十四業種でありますが、これを逐次拡大いたしまして、非常に力の弱い零細企業にまで拡大する御意思はございますか。あるとするならば、今年度何業種ぐらい考えておられますか、お答えをいただきたいと存じます。
  80. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  御案内のように、中小企業近代化促進法では、国民経済上重要な業種がその対象業種の要件になっております。もちろん、いまお話がありましたように、業種別振興法によって実は七十九業種調べておるのでございますが、われわれといたしましては、国民経済上重要な業種ということで順次これをふやしていくという方針でやっておるのでありまして、昭和三十八年度においては二十業種を政令で指定いたしたわけであります。今後三十九年度以降においても、いま申し上げたような趣旨で業種の指定を順次追加していこう、こういう考えでございます。幾つということはいま申し上げる段階ではございませんが、そういう方針でやっておるのであります。また、それについての条件等もいろいろあるのでありますが、これはまた別の機会に申し述べさせていただきたいと思います。いずれにいたしましても、御説のような趣旨に基づいてこれは順次ふやしていく、こういう方向で検討いたしてまいりたい、かように考えております。
  81. 井村重雄

    ○井村委員 次に、中小企業基本法の第十九条に、中小企業がそれ以外のものから事業活動において不当なる侵害を受けたときには、これを保護しなければならないという規定があるわけでありますが、いろいろこれには複雑な問題があると思います。協同組合の問題もあります。デパートの問題もあります。また事実公取委員会のごやっかいにならねばならないような問題もあるわけでございます。たとえばある大会社が必要資材の売り渡しを制限したとか、価格を一方的に上げて中小企業が成り立たないような問題も生じてくるわけでありますが、これらについての紛争が起きておるのでありますけれども、そうした紛争の処理ということで何かお考えがございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  82. 福田一

    福田(一)国務大臣 この問題は、実は基本法をつくりますときにも、非常に問題というか、われわれとしても検討もいたしましたし、御議論、御意見も承ったところなのであります。しかし、これはいま井村さんが仰せになったように、なかなか複雑な問題があって、一言で解決するとかなんとかいうようなものではないのでありまして、したがってわれわれとしては、さしあたりは中小企業団体組織法に基づく調停審議会や、小売商業調整特別措置法に基づくところの調停制度というものを活用して一応問題の処理をいたしておりますが、これで十分だというわけにはもちろんいかない。そこで、ただいま、これは何とか確たる方針をきめなければいけないというので、中小企業政策審議会でこの問題をどういうふうにしたらいいかということを、審議をしていただいておるのであります。なるべくすみやかに結論を得て、何とかこの問題の整備拡充も考えねばいけない、こういう考え方で臨んでおるわけでございます。
  83. 井村重雄

    ○井村委員 そこで一つお尋ねいたしますが、中小企業投資育成会社というもののができてからまだ日は浅いのでありますが、何かちょっとこれの事業概況を一言お聞きできればけっこうであります。
  84. 福田一

    福田(一)国務大臣 投資育成会社につきましては、すでに昨年七月初めに法案が通過をいたしまして、そこで東京、大阪、名古屋という三カ所にこれをつくることにいたしました。そうして、まず会社の機構を整備するという意味で、人事の人選を行ないまして、ただいまそれが全部三カ所ともでき上がりまして、いよいよいまその仕事に入ろうという段階で、まだそこまで具体的に活動をしておらないのは遺憾であります。しかし、だんだん準備も進んできましたので、早晩これの活動が御報告できる段階になると考えておるところでございます。
  85. 井村重雄

    ○井村委員 重ねてもう一回申し上げますが、大企業と中小企業との紛争の問題でありますが、これらの問題で公正取引委員会に取り上げられた問題は、昭和三十七年度が七十四件、それから三十八年は、四月から十月までの間に五十一件の紛争が出ておるわけでありまして、こうした問題が中小企業政策審議会で取り上げられると言われましたが、どうかひとつ、ぜひ弱い中小企業者に対して、何としてでもこれは考えていただかなければならぬ重要な問題でございますから、すみやかにひとつ権威のある機関をつくるようお願いを申し上げておきます。  次に、いろいろこの委員会で各委員から言われました手形の不渡りの問題、倒産の問題は、私は重ねて申し上げません。今日の倒産、また不渡りの金額その他についての問題、倒産会社の損害金の問題等もいろいろございますけれども、くどく申し上げません。大蔵大臣は、これらの問題に関して相当思い切った中小企業の融資をやろうということは、再三各委員会でも言われておると私どもは考えておりますが、特に中小企業基本法にある支払い遅延防止という建前から、非常に弱い中小企業家に長期の手形が出るということは、これは中小企業基本法の趣旨に反するのでありまして、これらについて、並びに金融措置について、どうか力強い言明をひとつお願いいたしたいと思います。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 昨年の末、日銀が準備率の引き上げを行ない、また今年一月に入りましてから、窓口規制等を行なっておるわけでございます。御承知のとおり、非常に生産も高く、また過去二、三年来の企業間の信用が非常に大きく膨張しておりますので、ここで画一律的な引き締めをやりますと、どうしても中小企業にしわが寄るということになりますので、政府としましては、前段申し上げましたように、経済企画庁及び通産省との間に下請代金支払遅延等防止法の改正案を考えておるわけであります。現在もうすでに三カ月、四カ月というような手形も出ておるようでありますし、中には六カ月以上の手形も出ておるというような実情もありますので、金融機関に対しては、中小企業の手形割引に対しても十分内容を検討しながら、親会社が倒産をしたということに対して、黒字倒産が起こらないように配慮してもらいたいというように、銀行局長通達をまず出しておりますし、それから支払遅延等防止法も、ある一定のもの以上に対しては、調査だけではなくて、報告義務を必要とするのではないかというような問題に対して、いま鋭意折衝中であります。それから第四・四半期の中小企業向け金融につきましては、御承知のとおり、昨年の暮れに三百億の財政資金を入れ、また百億の手持ち資金をもって四百億、中小一機関の貸し付けワクを広げ、同時に市中からの債券を二百五十億にわたって買い上げましたので、さしあたり六百五十億の手当てをいたしておるわけであります。三機関の融資ワクを見ますと、昨年に比べまして二七%余という大幅な手当てをいたしておるわけでありますが、なおいろいろな御質問もありましたし、また、これからの年度末、三月末までの中小企業の状態に対処するために、絶対的に必要であるという見通しに立っておるわけでありませんが、万全の態勢をとるということで、中小企業庁、通産大臣からの申し入れもありますので、両事務当局で鋭意折衝中でありますが、買いオペレーションとして百億程度、あと三機関に対して、財政資金も含めまして百億か百工、三十億、四十億になるかもしれませんが、その程度・の資金を追加して、昭和三十六、七年度——六年度と思いますが、最高千億に近い年末等の手当てをしたことがございますが、それに近い措置をとりながら万全の態勢をとりたいということであります。なお、市中金融機関につきましては、銀行局長通達を出し、同時に日銀総裁から各機関に対して、中小企業にしわが寄らないように格段の配慮をするようにという考え方を強く伝えておられるようでありますので、政府、金融機関、一体となって対処してまいりたいと思います。
  87. 井村重雄

    ○井村委員 今日よく言われることは、中小企業の近代化、高度化はもとより、さらに問題になっておるのは、中小企業の労働力の不足ということが非常に問題になっておるのでありまして、こういう観点から団地計画、あるいは店舗その他の協業化ということ、これがやはり一面経営の合理化と、また物価対策上、一面労働力の節減と申しますか、労働対策上も、これはきわめて有意義な事業だと私は考えておるのであります。しかるに、これはやはり金融の面あるいはその他の面でなかなかやりにくい点もあるのでございます。一部近代化に対して税法上の措置もとられておるのでありますけれども、今後広く、もう少し強力に、この協業あるいは近代化、高度化等にいわゆる金融措置をやられるというようなことと、税法上何か特殊の優遇をやらなければ、力の弱い中小企業が合併、協業をやった場合の、その後の固定費産税あるいはその他の税法上の負担が重くなるのであります。こういうことであわせて画竜点睛を欠く点もあるのではないかと思うのでありますから、税法上、金融上、もう少し余裕がとれないかどうかということが一つと、もう一つは、輸出産業が、ある点これは国家目的といいますか、国際収支の関係上、輸出重点でありまして、非常に優越されておるやに考えるのでありますけれども、中小企業といえどもやはりこれは輸出産業の一環でありまして、これらの優秀な下請工場がなければ、やはりいい輸出製品ができないのであります。したがいまして、これらの近代化のために、やはりある程度の金の制限がありまするから、利子補給とかいうふうなことを考えて、何かこれをすみやかに進めるというふうな方法はありませんかどうか。お考えがあったらお伺いいたしたいと思います。
  88. 福田一

    福田(一)国務大臣 団地化、高度化資金、あるいは近代化資金をもう少し積極的にやってみてはどうか、まず第一問はこういうおことばだと思うのであります。そこで、実はもう近代化のほうはずっといままで相当やっておりますが、この団地のほうは去年あたりから始めて、ことしは町ぐるみの団地をつくるというような、商業団地についても新しいやり方を踏み出してみたんですが、中小企業者のほうで、やはりいままでは認識があまりないものですから、実際問題として、予算だけ取ってみても、実際に申し込んでやらなければ何にもならない。そういうむだなこともできません。そういうことも考えまして、全国的にそういう要望があるかどうかというようなこともいろいろ調べた上で、一応予算要求をいたしました。いやしくもそういう要求があったものについては、大体これは措置できるような予算は取ったわけでございますけれど、しかし、いま仰せになったように、これをもう少し積極的にやってはどうか、こういうことについては今後もひとつ大いにつとめたいと思います。なお、その場合において、そういう税制上の恩典を何か与えてみる必要があるのではないかと、こういうことでございますが、これは一般の、たとえば工場を売って団地をつくるという場合ならば、工場を売ってこちらへ変わってくるんだから、その場合は、現在の税法上においても相当な、ある意味で優遇がされておると思いますが、しかし、団地をやるのをもう少し奨励するのなら特別の税制を考えてみたらどうか、これはお説でもございますので、ひとつ十分研究をしてみたい、こう考えるのであります。  なお、輸出産業の下請、特に下請の中小企業についての輸出産業について、一番困ることは何といっても金である。金ならば、輸出産業の下請企業が合理化され、出産性を増すということによって、その輸出産業と親企業との関連性においてもその輸出がどんどんうまくいくようになるんだから、そういう意味においては、もっと安い金利のものをやってもいいじゃないか。親企業の場合は低金利のものが使えるのに、下請のものだと低金利のものが使えない、これはお説ごもっともであると思っておるのであります。こういうものについては、いわゆる利子で補給するという制度がいいかどうかは別として、その種の明らかなものであれば、これは私は、利子をまけるような仕組みというものを考えることは、いわゆるひずみを直すという点で少しも理にそむくものではない、かように考えますので、これもひとつ今後大いに研究をさして、実現するように努力してまいりたい、かように思っております。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、昨年度の税制改正におきましては、いま通産大臣が述べましたとおり、中小企業が新しく工場設備をやりたいといっても、不動産の売買等によって高額な税金がかかるということがありましたので、大都会から疎開をする場合、また新しく不動産を売った場合、その範囲内において土地から土地へというだけではなく、売った代金で土地を買い、工場を建て、新しい機械設備をしても、圧縮記帳を認めるという画期的な制度を行なったわけであります。今年度は二千百八十億という平年度減税の中で、中小企業のために七百億にのぼる減税を行なうとともに、中小企業のもとである同族会社等に対しても、特別の配慮をいたしております。しかし、これからの中小企業の人手不足というようなものに対処して、オートメーション化や、設備の近代化や、特に協業化というようなものは当然必要でありますので、こういうものに対して、国税としても、また今年度はいま御審議を願っておるものでありますが、これから将来の税制上の問題としても考えていかなければならないと思いますし、国税だけではなく、地方税の中でも、特に中小企業の設備の近代化、改良団地化、協業化というようなものに対しては、特別の配慮が必要ではないかというふうにも考えておるわけであります。  金融制度に対しては、中小企業二機関が御承知のとおりの状態でありますが、これを拡充することはもちろんとして、より合理的であり、積極的な施策がとれるならばということで、中小企業に対しては、これはもう理屈ではなく、日本の持つ特殊な産業形態でありますし、またこれを強化せずして日本の産業機構が強化できないのでありますから、その意味で積極的な施策を将来ともとってまいりたい、こう考えております。
  90. 井村重雄

    ○井村委員 いま一つ問題になっておるのは事業税の問題でございまして、これはもとより地方税でございますけれども、よくこれが農民と中小企業者との対照になるのでありますが、何と申しましても、この事業税は二重課税のような性格に思われてならないのでございます。これらについてたびたび是正はなされましたけれども、この際、やはりある一定の事業主の大幅な基礎控除、あるいは専従家族に対する控除制度を考えられる御意思はございませんでしょうか。私どもいろいろ都市で見ますと、小さな企業者が、いろいろなこまかい帳簿等を整理いたしまして、不完全な記載に基づいて事業税を課せられておると、やはり農民と比べて何となく都会の中小企業者の負担が重いように思われますが、ぜひひとつこの専従者控除、あるいは事業主の基礎控除というものも、何かこの際少しごめんどうを見ていただけないかどうか。これは直接地方財政にも響くことではございますけれども、何かお考えがございましたら、どうぞお願いいたします。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 事業税につきましては、地方財政の一番大きな財源として、あるところでは五〇%にもなっておるということでありますので、これを全免するというようなことはむずかしいと思いますが、しかし、地域格差の解消というような問題から考えまして、地方税制度の状態がいまの状態で一体いいのかという問題に対しては、検討しなければならない問題であり、税制審査会にも、かかる本質的な問題に対しても検討をわずらわしておるわけであります。専従者控除の問題、それから事業主控除の検討は、今般の税制改正でも処置はしておりますけれども、こういう中小企業の特殊な状況にかんがみまして、やはり前向きでそのつど検討していくべきであるという考えに立っておるわけであります。
  92. 井村重雄

    ○井村委員 今日、中小企業の労働力確保という問題、また中小企業の振興のために、厚生年金の還元融資をやりまして、いろいろ中小企業者の福祉のために非常に寄与しておるのでありますが、これは非常に中小企業者から喜ばれ、非常に歓迎されております。ところが、どうもその原資がやはり思うにまかせないというのが現状でなかろうかと思うのであります。大蔵大臣には、これは非常に歓迎されており、中小企業に寄与する点が多いのでございますから、どうかその原資の確保ということについて、ひとつ十分な御理解をお願い申し上げたいと存じます。  次に、労働省関係でございますが、今日日本の労働関係で非常に問題になっている点は、結局労働力の不足という問題でございまして、これは各国とも共通の現象であろうとは存じますけれども、若年労働者が著しく不足をいたしておって、その反面中高年齢層の就業、就職がうまくまいらぬということでございます。こうした現象は各国の悩みであろうかと存じますが、日本でも、いままで農村がこの労働力の供給源と言いますか、供給基地になっておったような観念でございまするが、農村でも著しく労働力が枯渇をいたしてまいっております。先般、こうした労働問題について基本的な調査をやろうというので雇用審議会に諮問をされたのでありまして、私どもまことに時宜を得た施策と考えておるのでございますが、この際、労働大臣から承りたいことは、失業保険給付の離職率が一体どれくらいになっておるのか。また雇用人口と失業者の比率がどういうことになっておりますか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  93. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 失業保険の離職率は大体いま三%くらいになっております。
  94. 井村重雄

    ○井村委員 完全雇用ということをよく言われております。またアメリカ等においては失業率が非常に商いということを言われておりますが、私は、どういう数字の根拠で申し上げていいのかわかりませんけれども、もしもわかりましたら日本の失業率というものはどれくらいになっておりますか、ちょっとお聞かせをいただきたい。
  95. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府委員から申し上げます。
  96. 有馬元治

    有馬政府委員 数字にわたりますので、私からお答え申し上げます。  失業保険の受給率は、先ほど大臣から御答弁がありましたように三・二%でございますが、いわゆる完全失業者の率を見てみますと、〇・四%と非常に低いわけでございます。ごく最近の、十月現在の状態では二十八万人という数字で、非常に減っております。しかし、アメリカ等でいわれる失業率、これは五%から六%という数字が出ておりますが、これは日本の完全失業者のとらえ方と若干違っておりまして、日本の場合には非常に低い率しか出てこないのでございます。したがいまして、失業の問題を見ます場合には、この完全失業者の失業率というものをとらえてアメリカの失業率と比べると、非常に実態が違ってまいりますので、私どもとしましては失策保険の受給率、あるいは総理府統計局でやっておりまする不完全就業業者の実態調査、こういったものを総合的に検討しながら雇用、失業の情勢を判断してまいりたい、かように考えています。
  97. 井村重雄

    ○井村委員 それでは、日本の現在の状況から判断して、もう完全雇用の域に達しておると解釈してよろしゅうございますか。
  98. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたるごとく、わが国におきましては、いわゆる不完全就業者というのがたくさんにおるわけでございまして、その限りにおきまして、完全雇用にはまだ相当の距離があると認めるべきだと思います。
  99. 井村重雄

    ○井村委員 年々新しい就職人口、新卒者が非常に減少してまいって、今年は大体百四十万か百五十万程度と考えられますが、これが年々減少いたしまして、昭和四十四、五年が非常に急激に新卒が減る事態がくると思うのであります。しかも、一方において労働力の需要が逐年高まってくるのでありますが、これはかなり重要な問題だと思うのであります。欧州のEEC国内においては、労働者は自由に移動をいたしまして、これは国内の流動化でなしに、もう国境を越えて労働者が移動し得る立場にあるのでありまするけれども日本においてはなかなかそういうことは期待もできませず、また容易ならぬことだと思いますが、これはきわめて重要な問題であります。これについて大局的に労働大臣はいかように考えておられますか。
  100. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お説のとおり、若年労働力の不足ということは、日本の産業界にとりましては、まことに深刻な問題に相なっております。ただいまもお述べになりましたごとく、中学卒業者についてみますると、昭和三十八年度においては八十八万、これが三十九年度では八十三万、四十年度七十七万、続いて六十六万、五十七万、五十一万、四十五万、四十万と、昭和四十五年度におきましては、今年度八十三万の中学卒業者の就職がわずかに四十万という予想になっております。高校につきましては逆に上がっておりますが、しかし、全体といたしましては年年低下の傾向にあることは申すまでもございません。一方、これに対しまして、需要は逆に今後経済成長に伴いまして相当大幅に増加の傾向をたどるものと考えますると、数年後の労働の需給関係というものについては相当心配すべき状態が予想されるわけでございます。労働省といたしましては、どうも人口の趨勢からくる労働力の新規の供給の減少というものにつきましては、いかんともできないわけでございますので、せめて国内の労働力の流動化を促進することによりまして、できるだけ労務の需要に応ずるように全体の労働力を有効に使うということがまず必要なことだ、こういう考えを持っておるわけでございます。すなわち、労働力需給の地域間、産業間の不均衡というものをできるだけ緩和いたしまして、全国的な視野から労働力の需給の円滑な調整をはかっていくようにいたしたい。そのためには地域別、産業別の雇用計画というものを産業の実情に即して樹立をいたしまするとともに、   〔青木委員長代理退席委員長着席〕 労働市場センターを設置いたしまして、全国的に通信網を完備して、そうして必要な面に遊休な労働力が直ちに流動できるようにしなければなりません。同時に、最も流動化に必要な労働者用住宅の大量建設、さらに雇用促進のための、中小企業はもとより、各労働力の使用者のもとにおきまするいろいろな施設、雇用促進のための諸施設のための融資制度を拡大いたしまして、できるだけ労働力の移動をスムーズにしていきたい、これは一つの考え方でございます。その反面におきまして、中高年齢者によってこの若年労働力の不足をできるだけ補うことが必要である、かように考えまして、その方面につきましても施設の努力を怠らないようにいたす方針でございます。
  101. 井村重雄

    ○井村委員 そこで、次に、私は詳しい数字は要りませんが、失対事業、失業労務者に対しても年間国家予算だけでも五、六百億を年々費やしておる。これにプラス地方費を加えれば相当の金を使っておる。そして三十数万の失業労務者があるという現実の問題、これにあわして労働力の流動化対策としての昨年度の予算は約百九十億であったかと承知いたしております。今年はいわゆる労働力の流動化のためのセンターをつくる、あるいは各種の訓練所をつくって技能労働者を養成する、また常用雇用にこれを転職せしめる、また自立経営をさせる等々の予算を加えて三百数億の予算が計上されておるのでございまするが、これらの職業訓練、転職訓練、就職奨励手当制度、就職指導手当等々、また支度金制度等々、非常に多額の金を要しておるのでございますが、数字的には聞きませんが、これがはたして実効をあらわして、失業対策事業に従事しておる者は常用雇用に移っておるか、どれくらいの程度でこれが技能訓練を受けて効果をあらわしておるか、炭鉱離職者に対してもこれらがどれほど転職を見、あるいは自立をいたしておるか、とにかくこれらが効能、機能の発揮について御見解を承りたいと思います。一括でよろしゅうございます。
  102. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お話しのとおり、政府といたしましては、分不相応ともいうべき多額の資金をこの問題に投じております。しかし、これらの実績、効果はどうかという御質問でございまするが、まず炭鉱離職者につきましては、私どもは現在までのところ大体所期の効果をあげつつあると認めております。ただ一方におきまして、合理化の進みぐあいが予想以上に早かったために最近までにおける炭鉱離職者の発生が予想より増かいたしております。この分につきましては、完全に消化をし切っておりませんが、しかし、当初他へ転職せしめるという予想を立てておりましたものは、大体計画どおり処理いたしておるような実情でございます。  次に、失業者の問題、失対事業従事者のほうでございますが、このほうもいろいろ政府といたしましては計画を立てておる次第でございますが、御承知のように、このほうの関係は、昨年の十月以降に法律が施行に相なったのでございまして、実際上の訓練その他のいわゆる就職促進措置というものに入りましたのは大体年末くらいからでございます。したがいまして、目下せっかく訓練あるいは指導中に属する状況でございまするので、まだかくかく就職の実があがったということを御報告申し上げる段階に相なっておりません。しかし、私どもといたしましては、できるだけ努力をいたして所期の効果をあげたいと存じております。
  103. 井村重雄

    ○井村委員 この技能労働者の不足という問題にからんで訓練所が非常に優秀な機能を果たしておるというお考えでありますならば、現在総合訓練所は五カ所でございます。一般訓練所は約三百カ所くらいかと存じます。近ごろ私の聞くところでは、ようやくこれが地方では認識されまして、訓練所へ入りたい、何とか入所させてくれないかというふうな声も聞いてまいったのでございます。ところが、どうもこの訓練所が、失業というある程度暗い影といいますか、何かしら世をはばかるような考え方から、まだ一般青年に納得されない面があるのであります。私は、これを失業とか転職とかそういうことに結びつけないで、りっぱな技能者の養成所であるという考え方で、もう少しこれを一般にPRをして、進んで農村の青少年あたりがこの訓練所へ入るという気風をつくってもらいたい。そこでこういう訓練所という名前がいいのか、養成所という名前がいいのか、もう少し学校的なものに考え方を変えるのがいいのか、これはひとつこの際お考えをいただきたいと思うのであります。それでこれについての学級編制のしかたであります。中高年属とやはり若い未経験青年層とを学級を分けてやるというふうな制度も考えていただきたいと思うのであります。今日失業救済事業で中央地方を通じて一千億余りの国費を使っておるわけです。それで五百何円といういわゆる賃金で決して失対事業の労働者は満足してないのです。できるだけこういうふうな訓練所というものの機能を千分に比かして、早くこれを常用雇用に持っていくことが、私は必要でないかと思うのであります。  いま一つ、大臣が言われた住宅の問題でございます。これは流動化にセンターも必要でありましょうけれども、やはり住宅の問題が一番大切だと思うのであります。こういう点を建設省あたりの住宅建設とおのずから別建てで、大きな予算をもってやっていただけば、私は日本の労働力の問題もある程度解決の緒につくのじゃないひというふうに考えておるわけでございます。こうした年々消えていく金のほうがいいか、生きた建設的な予算をぐっと注ぎ込んで、だんだん失業者を減らしていくという積極的な面で解決するように、ひとつ御努力をいただきたいと存じます。時間がございませんからあえて答弁を求めませんが、要望申し上げておきます。  最後に大蔵大臣に一言だけ申し上げます。  今年度の予算は三兆二千五百億と聞いております。また財政投融資特別会計も加えれば相当膨大なものでございますが、歳入の九九%は印紙及び租税に求められておるわけでございます。また所得税、給与所得あるいは法人税等も相当、あるいは雇用の伸びを四%、法人税については一八%の伸び、また個人営業所得には一〇%の伸びと、相当きびしく見積もっておられるのでありまして、したがって、この場合においてもこれがぎりぎり一ぱい、満配予算でないか、万一これが年度内に災害でも起きた場合には行き詰まるのじゃないか。これは口を悪く申せば、大蔵大臣が力一ぱい力んだ予算じゃないか、一体これではどうなるのだという満配予算という考え方もあります。ここに相当の、いわゆる税の自然増収の伸びということも相当期待しておられるかどうか。また、これはまことに数字に基づかない俗な言い分でありますけれども、世間では、この予算では来年度からいろいろ五カ年計画とか、三カ年計画、住宅の問題、河川、道路の五カ年計画、住宅の七カ年計画、環境衛生の五カ年計画等、ぎりぎりこれをのんでおるから、来年度予算編成もこれらの既定計画の自然増、あるいは国民健康保険等の平年度化、減税の平年度化をもっていくと、もう石で手を詰めたような行き詰まった予算でないか。まあ、ことしオリンピックが済むと非常に不景気がくるのじゃないか、政府ももう予算編成で行き詰まっているのじゃないかというような印象が一般大衆、ことに庶民の中にあるのでありまして、この際政府が、ぎりぎりの予算じゃないのだ、まだまだ伸びるのだ、決してそういうふうな不況がくるというふうなことはないということをはっきりと誤解を解いておいていただかないと、私はせっかくの予算が死んでしまうと思うのであります。庶民の声というものはおそろしいものでございますから、どうかひとつこの点……。私は数字をあまり申し上げる力もございませんから、どうぞ御言明をお願いします。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 六千八百二十六億円の増収を見積もりましたことにつきましては前からるる申し述べておりますが、根っきり葉っきりのものであるということではございません。しかし同時に、じゃ余裕たっぷりのものであって、また大蔵省がいつも考えておるように相当内輪のものであるのか、こういうことでもございません。ちょうど適正な予算である、こういうふうな考え方でございます。  それから今度の六千八百億の自然増収の中で二千億減税をやっておるわけでありますから、来年度既定経費でもってどうにもならない梗塞予算になるか、こういう御質問でありますが、それは、今年度の予算に対しては七%実質、名目九・七%の成長率を見積もっておるのでありますが、御承知のとおり所得倍増計画では七・二%年率ということでありますので、経済が安定的成長に伸びていくということでありますから、来年度の税収が非常に少なくなったり、またことしきめたものの平年度化によって予算が硬直をするというようなことは考えておりません。ことしは六千八百二十六億でございますが、御承知のとおり、前年度剰余金が千八百億余減っておるわけであります。でありますから、使える金は四千九百億程度でございますが、四十年度になりますと、この前年度剰余金の千八百億というものの減収はないわけでありますし、そういう意味で今年度の新規政策が盛られておるのと、四十年度の経済成長率を考えるときに、均衡ある発展のもとに算定する税収というものは正常に伸びていくのでありまして、予算が完全梗塞を受けるというような懸念も全くないというふうにお考えいただいていいと思います。  それから災害が起きたような場合どうするかということでありますが、災害に対しましては百億の予備費を新たに計上いたしておりますし、その他の補正要因が出てきた場合を予測をしてということは、いま申し上げる段階ではないというふうに考えます。
  105. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて井村重雄君の質疑は終了いたしました。  次に田中武夫君の質疑を行ないます。田中武夫君。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 私は本日は私的独占禁止法を中心といたしまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず、最初に経済企画庁長官にお伺いいたしたいのですが、三十五年九月三十日の物価対策に関する閣議の了解事項というので、今後の物価対策には独禁法政策の強化の方針が定められております。自来この閣議の了解事項にのっとって独禁法の強化と言いますか、独禁法適用にあたってどのように反映をいたしてきたか、どういうような方法でやってきたか、お伺いいたします。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 詳しくは公取の委員長からお答えをしていただくことがよろしいかと思いますが、私どもといたしましては、端的に申しまして、大企業の中に少なくとも一部価格がやや硬直的である製品があるといったようなことは、その後常々申しておりまして、また公正取引委員会としても、そのうちでいわゆるカルテル的な共同行為があるかもしれないと考えられるものについては、そのつどお調べになっておるようでありますが、実際なかなかそれを証明するのが困難であるというような事態もあるように承知いたしております。しかし、全体としては、ことに昨今かなりそういう問題について疑いを持たれておる企業の側でも慎重になってきたようでございますし、きわめて最近では、そうではないかと思われるものにつきまして、自発的な価格の引き下げが行なわれたりしているようなこともございます。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 宮澤さん、そういうことじゃなしに、独禁法の運営はもちろん公正取引委員会がやるのだが、私は公正取引委員会がどうしたというのじゃなしに、政治の姿勢として、これは閣議了解事項ですから、そのときの了解事項を読んでみましょうか。「最近の一連の物価値上げの動きには、業者の価格申し合わせなどによるものも相当含まれていると思われるので、独禁法などの適正な運用により消費者物価の安定を図る。」これが去る三十五年九月の消費者物価対策に対する閣議の了解事項なのです。この閣議の了解事項、すなわち政府の方針としてこういうことがきまった。そして政府の方針として独禁法に対してどういう態度をとってきたか、こういうことを聞いておるわけなのです。これは総理が適当かもわかりませんが、総理おられませんので、経済の総合調整の任に当たるあなたが一番この五人の中では最適かと思いますので、あなたに伺っておるわけなのです。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、ただいまも申し上げましたとおりでございますが、独禁法が本来書かれました精神に基づいて、それらしい疑いのあるものについては絶えずその反省を促すなり、あるいは公正取引委員会において事実についてこれをお調べになるなり、そういうことでやってこられたことは、政府としてもまたそういう心組みで独禁法を運営してきた、具体的には先ほど申し上げたようなことだと思います。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 私の質問している点が若干のみ込めていないと思うのです。そこで角度を変えてお伺いするのですが、そういうように独禁法を強化する強化の方針、こういうことが閣議の了解事項できまりました。ところが、その後出される経済立法のほとんどは、全部とは申しません、大半はこの独禁法の除外を、いわゆるカルテル許容法です。さらに独禁法第九条では「持株会社は、これを設立してはならない。」こういう規定があります。ところが毎国会いわゆる特殊法人、特殊会社としての株式会社だけでなく、基金、事業団、いろいろの名目で、いわゆる特殊法人なるものがだいぶん出されてきておりますね。これはもちろん、われわれといたしましてもそのすべてを否定するものではありません。必要なものは認めてまいりました。  そこでお伺いいたしますが、現在独禁法除外法令、いわゆるカルテル許容の法律、一体いま何ぼほど法律があるか、この中で御承知の方ありますか。
  111. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。数にいたしまして十八ぐらいあるかと思います。一々読み上げましょうか——いいでしょう。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 十八というのはあなたの所管だけと違うんですよ。全部では四十以上あるのですよ。運輸大臣、あなたの所管でカルテル許容法、すなわち独禁法除外法が幾つあるか御存じですか。
  113. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私はよく存じませんから事務当局に調べさせてあとで御返事します。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 稲田大臣、十八と言われたけれども、これはあなたの関係だけですよ。そのほかに運輸省、農林省、厚生省、あらゆる所管にわたって独禁法緩和法があるのです。大体四十をこすと思います。中小企業関係を除きましてね。そこで法制局、長官も呼んでおったのだが見えていないようですが、法制局だれか見えていますか。——幾らほどあると思います。現在独禁法の除外法並びに独禁法九条の特殊法人設立の禁止にかかわらず、特別立法をもって設立せられた特殊法人法が幾らあるか。
  115. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外を定めている法律は幾つあるかというお話でございますが、その適用除外のいたし方も、その法律全体が独禁法の適用除外をいたすためにつくりましたものと、他の目的のために詳細な規定を設けまして、その一部において独禁法の適用除外規定を一条あるいは二条を設けておるというようなものもございまするが、その全部を包摂いたしまして何件の法律があるかということは、私ただいま数まではつまびらかにいたしておりませんが、いまお話のございましたように、四十件にとどまらない数に相なっておると思います。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 私の申しておるのは、独禁法の二十一条の本来独占固有の企業、こういうものを除いて、昭和三十五年九月に一応閣議了解事項としてそういうことがきめられておるのにかかわらず、その趣旨に反してカルテルを許す、緩和する、こういった法律が幾らあるか。
  117. 吉國一郎

    吉國政府委員 お答え申し上げる前にちょっと申し上げておきたいと思いますが、現在私的独占禁止法の適用除外立法を政府提案としていろいろ提案をいたしまして、過去数年にわたりまして相当数の適用除外立法を国会において御可決いただいて成立しておるわけでございます。それはそれぞれ必要な理由に基づきまして私的独占禁止法の最小限度の適用除外をきめておるものでございまして、その当時の閣議決定の趣旨も十分に念頭に置きながら適用除外を定めることが、わが国の現事態における社会経済情勢より妥当であるというふうに閣議において認定をいたしまして、内閣より法案を提出いたしまして、その認定が正当であるということを国会においてお認めいただいて法律になっておるものと私どもは考えております。そのような適用除外立法は、先ほど田中先生の仰せられましたように、およそ四十件にのぼると思っております。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 それはそれ相当な理由があればこそ単独立法で除外法をつくったと思うのです。しかし、そのことは結局は独禁法をあらゆる角度から骨抜きにし、くずしていく、あしたに一城を落とし、夕べに一塁を落とす、こういったかっこうで現実的に独禁法の骨抜き政策をとってきた、こういうことなんです。それが閣議了解事項に合うかどうか、これが保守党政府の政治のあり方である。このいまやっておる、大体四十あるのですが、これによって許されたカルテルが幾らありますか、御存じでしょうか。公取のほうへ届け出になったやつですから公取はよろしい。経済担当閣僚がこれだけ並んでおられまして、現在法によって許された各種各様のカルテルを合わして幾らあるかわかりませんか。
  119. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、実はいまそれにはお答えできませんが、調べてお答えをするよりいたし方がないと思いますが、そういうことは、ひとつあらかじめ御質問の趣旨を明らかにしておいていただければ調べてお答えできると思うのでありまして、適当な機会にお答えをさせていただきたいと思います。  それからこの機会に、田中さんのおっしゃる意味もよくわかりますが、しかし、私たちがこういう法律を出したのは、あなたも言われるように、それ相応の理由があって出しておるのでありまして、閣議了解事項を全然無視してやっておるというのではない、こういうふうに私たちは考えておるので、そこで、いまあなたは、独禁法にこれは穴をあけたことになるではないか。穴をあける目的でやったのではないか、あるいは穴をあけたことになるじゃないかということになりますと、これは議論の分かれるところ、あるいは意見の分かれるところになるのではないかと私は考えております。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 議論の分かれるところと言えば、それでしまいですが、私は、最近国会ごとに提出せられる、あにこれは通産省関係法案だけではございません。広い意味経済立法の大半が独禁法除外法であり、また先ほど申しました特殊法人をつくる、こういう特殊法人も必要なときはあるでしょう。またその特殊法人に、いつも問題になる官僚の天下り、そういうことはいまさら申し上げません。大臣諸公は独禁法について少し認識が不足ではなかろうかと思いますので、独禁法の沿革を申し上げましょう。  独禁法は昭和二十二年、いわゆる経済憲法として制定されました。それから大きな改正も数回ありました。ことに二十八年の改正でよいカルテルを認める、このよいカルテルというのがあるのかないのかは別問題といたしまして、いわゆる不況カルテルと合理化カルテルを認めてまいりました。岸内閣のときには、これを大きく根本的に変えようとして独禁法の改正案を出してまいりました。ところが、これは大きな国民世論の前についえ去ったのであります。そういたしますと、今度出てくるのが、これすべて単独立法において、いや何々は別だ、砂糖は別だ、いや石炭は別だ、繊維は別だ、こういうようなことで独禁法を事実上半身不随にしてしまったのであります。私は、そのいわゆる政府経済政策に対する態度をいま申し上げておるのであります。そこで、この独禁法の除外規定なるものはすべて臨時立法としてなされておる。これは臨時立法でなければ、独禁法に永久的に、恒久的に穴をあけることは許されない。そこで臨時立法とせられておるのです。ところが臨時立法が、その期限がきたからといって廃止になるのはおそらくないわけです。今度の国会でも、期限がきたやつを延長する、こういう法案がだいぶん出る予定になっております。そこで、いま通産省あり、運輸省あり、厚生省ありですが、それぞれの各省において、あるいは経済企画庁は、この調整の上に立って、これら四十に近い、あるいは中小企業関係を入れるとそれ以上になりますが、まず四十ばかりの独禁法除外特別立法に対して再検討を加える用意があるかどうかお伺いいたします。
  121. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、いま仰せになったように、大体時限立法になっておると承知いたしておりますが、いかなる場合でも、私たちはその法律が有効適切にその当時の経済情勢または経済の要請に応じておるかどうかということを検討すべき義務があるのでございますから、一般論で申しますれば、あなたのおっしゃるように常に検討をいたしておると申し上げなければなりません。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 検討しておるとおっしゃるが、期限がきて廃止にするとか、あるいはそれ以前に、緊急に必要であったからということで制定したそういう法律を、そういう事態が解消したからといって廃止をした例はないのですよ。たいてい五年の時限立法なら、また三年なり五年延ばしていく、こういうような方向がとられておるわけです。たとえば今度の国会で繊維産業臨時措置法が廃止になりますが、それにかわるべき恒久的なものとして出てくるわけです。  そこで、先ほどちょっと触れましたが、これは公取委員長は御承知だと思います、これは公取委員会に届けのあったカルテルですから。その数が現在千二あるのです。カルテル事項は二千九十八ある。それからカルテルの適用というのがある。その業種は二百十二あるのです。渡邊さん、数字違っていますか。
  123. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私のほうの調査による昭和三十八年三月現在の数字は、おっしゃるとおりであります。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 それぞれに理由はある、こうおっしゃると思いますが、いま申しました数字で、少し多いというような感じ受けられませんか。右を向いても左を向いてもカルテルです。  そこで私は、ここでカルテルなるものの体質をひとつ伺ってみたいと思うのです。カルテルとはどういうように理解しておられますか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも私もきわめて幼稚な知識しか持っておりませんが、まず法律的には定義は与えられていない由でございます。次に、経済学の上でカルテルというものをどう考えるかということであれば、おそらくは、あまり学問的なことに立ち入って申し上げる知識はありませんけれども、モノポリーの場合にはおそらく別だと思いますが、独占に続いて、二つ、デュオポリーということはあり得ると思います。それから寡占というオリゴポリーというようなことがまたあると思いますが、それらぐらいまではその間に共同行為を働かせることによって需給関係を左右することもできるし、したがって価格関係を左右することもできる、それらの行為を一般的にカルテルというのではないかと思いますが、どうもそれ以上あまり学問的なことは申し上げられません。
  126. 田中武夫

    田中(武)委員 うしろに経済学博士がおりますので、私は何も経済学教室におけるカルテル論議をやっているのではありません。私は、カルテルは麻薬であると言いたいのであります。カルテルの本質は、外に対しては伝播性を持つ、一つのカルテルは次に次にとカルテルをふやしていきます。企業の内に対しましては、いわゆる拘束力を強めていく。すなわち、まず不況カルテル、合理化カルテル、こうやってきまして、その上に今度は価格拘束のカルテル、最後にアウトサイダー規制、こういうように、外に対しては伝播性、内に対しては協力性と言いますか、やってまいります。まさに身体を麻薬がおかすように、一時的な救いとしてはきくでしょう。だが、一たんこれを用いますと、いま申しましたようにだんだん広くなる。ついには企業自体が自分の力で企業努力をやろうとしない。現に皆さん方が、私が、公取委員長は別といたしまして、これだけの経済閣僚の前で、独禁法除外カルテル許容の法律が幾らあるか、現在法によって認められたカルテルが幾らあるかと言っても、わからなかった。その数が千以上もあるということについて、そんなにあるのかという顔をしておられるが、まさにこれは中毒現象である、こう思うのであります。  そこで私は、いま一つ一つの法律をとりましてこれをどうといういとまもございません。また、やる必要があれば各委員会においてやりますが、四十に近い法律、ここに見えている通産大臣の所管では、十八のうちに中小企業の関係がありますが、これは本質的にカルテルかどうかは別といたしまして、あとが十一か二かあります。これの法律を再検討する用意があるか。それから運輸大臣のほうですが、これは十近くある。これを一つ一つ検討してできるだけ独禁法を自由に動かす。言うならば、麻薬を一時中断したときには禁断現象を起こすかもしれぬが、それは健全なる企業発展のために私はむしろ必要である、このように考えます。  それぞれの大臣の所感並びに総合調整をせられるところの宮澤さんの頭のいいところを伺いたいと思います。
  127. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はあなたのおっしゃるいわゆるそれによる弊害をなくさなければならないという意味で、非常に数字的にたくさんのカルテルがある、いわゆる競争、私たちは、実を言うとカルテルというのは、ただいま宮澤さんからもお答えがあったが、われわれは実質的に競争を制限するくらいの感じで、政治をやる者としてそれくらいの感じで見ればいいと思っておるのであります。しかし、私はその場合において、そういう競争を制限しなければならない経済事情というものが起きてくるということは、私は、経済の発展段階において特に多いと思うのです。特に日本は戦争に負けて、非常に低いスタートから急激にいま膨張過程に臨んでいく段階で、いわゆる経済の成長発展をやっておる。そういうときにおいては、やはりそういう意味において、ある程度いわゆる競争を実質的に制限しないと、かえってその産業が参ってしまう。あるいはその他の何らかの事情が起きて、どうしてもやはり競争を実質的に制限する必要があるというものが出てくると思うのです。だから、私たちが法案を四十幾つ出しておりますが、そのときそのときに応じて理由を皆さんに申し上げておる。その理由を申し上げておるが、それは意見が違うからといって御反対になったと思っておりますが、われわれの立場からいえば、こういう経済成長の過程においては、こういうことはどうしても必要でありますから、例外として認めていただきたい、こういう御説明をいたしておったと思うのであります。そして、それだけの法案が出ますと、実は数を知らないからといっておしかりを受けましたが、それに基づいて千にも及ぶようなカルテルができておるということでございます。しかし、私は数が多いからといって、それで何も私たちはひるむ必要もなければ、政策を変えなければならないとも思いません。それは、日本経済がそれだけ大きく発展しているという証拠でもある。そういうふうに発展していく段階においては、またそういう制限もどうしてもよけい加えなければならないことがあるのであって、一つ一つの問題で——これは私は数で言わないで、やはり田中さんのような専門家がそういうことを言われると、世間の者は、なるほど数が多いからこれはたいへんだ、いかにも私的独占禁止法を穴あけしているようなことばかりやっておるんだ、こういうふうな印象を受けるかもしれないので、私はむしろそうなれば、いまその問題であれば、私は一つ一つの法律について、なぜそういうことをしたのかということでお話し合いをすることが国民に誤解を与えないことになるのじゃないか、こういうふうに感ずるのでありますが、いかがでしょう。
  128. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣が逆に質問をするから……。参考人のときには質問はできぬことになっているが、大臣は質問してもいいのかもしれぬが、とにかく一つ一つに当たって論議をするいとまはありません。だがしかし、それはそのときは必要であった、したがってわれわれも賛成した法律もあります。しかし、それはあくまでもその場においてそうしなくてはならない、これに対して実は大臣が言うておられるかどうか知りませんが、刑法の緊急避難的だという、こういう考え方で通産省が説明されたこともあるわけなんです。ところが、五年といって五年で終わったことないのですよ。そこに麻薬性と同じものがある。したがって、いまどれをと申しませんが、ともかく一応いままでうっかりしておったがそんなにあるのか、こういうことでカルテル一つ一つということよりか、その基本になっている各法律を再検討する用意があるか、それだけを伺っておきたいのです。その必要は全然ないとおっしゃるなら次に進みます。
  129. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういう意味での御質問であれば研究してみてけっこうだと思います。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おそらく一般論として言いましたら、幾つかの種類のカルテルがあるわけだと思います。三つか四つ考えられるわけだと思いますが、不況カルテルの場合、あるいは合理化カルテルの場合、あるいは中小企業による特殊なカルテルがあると思います。最初の二つは、これは不況とか合理化とかということは、一つ目的を達するまでのことでありますし、そのためのものでありますから、それが達成されたというふうに客観的に考えられるならば、今度は逆に消費者の利益のためから、当然そういうカルテルというものはやめてもらわなければならないと思います。中小企業の場合には、もう少し問題が構造的で複雑であろうと思いますけれども、しかし、これも、ときとしてどうも消費者の利益に必ずしも合わない場合がございますので、その両者の勘案の問題だろうと思います。  それから、当分認めていくべきだと思いますのは、やはり輸出カルテルではないか。これは、国全体の利益という意味から輸出の値をくずさない、オーダリー・マーケッティングをやるという意味では必要なのではなかろうか。千余りカルテルがあると仰せられましたが、おそらくそのうちで半分くらいは中小企業のカルテルであろうと思います。それから輸出に関するカルテルが百や二百あるのじゃないか、そう思います。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 輸出関係のカルテルは、全輸出金額に対して四〇何%です。相当あります。われわれはいまカルテルを問題にする場合に、断わっておきますが、協定という、独禁法のことばから言えば入るかもしれませんが、いわゆる市場独占的カルテルという意味においては、中小企業等協同組合法等々によって定められておるところの協定は問題にしておりません。いわゆる市場を独占する、あるいは市場独占による価格維持、そういうことを問題といたしておるのであります。そこで、ともかく四十何ぼもあるのですから、私はもうそろそろ再検討してもいい法律もあると思うのです。だから一応再検討する。しかもこれは宮澤企画庁長官の、あなたの総合的な経済の調整という上に立っておやりになることを望むのですが、どうでしょうか。もしできぬというなら、一つ一つの法律を伺うことになるのですが……。
  132. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、ただいま一般論として申し上げましたように、特定の目的を独禁法の例外として定めまして、それが達成されたと考えられる場合には、法律そのものが要らなくなるはずでありますし、またそれがその中途の段階であるということであれば、その運用においてまた手かげんと申しますか、調整を加えなければならぬ。いずれにしても、目的が達成された度合いにおいてそれらは当然本則に返ってやめなければならないということは、その通りだと思います。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 言えばそのとおりなんですが、先ほど私が申しましたように、カルテルの麻薬性といいますか、これによってより強力なものを求めるものがカルテルの本質であります。したがって、じっとしておればますます強いカルテル、不況カルテルから合理化カルテル、価格カルテル、そうしてしまいにアウトサイダー規制、それに対する経済罰、こういったようなところへ発展するのです。いま申しましたように、カルテルは一時はいいかもしれない。しかし、麻薬と同様に長くやっておるとそれに麻痺してしまって、企業自体をむしばむという上に立って、ある時期においては思い切って消してしまう、こういうことが望ましいと思うのです。これは私の意見ですから、答弁があれば求めますが、賛成ですか反対ですか。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは多分にそういう要素があると私も思いますので、御趣旨としては私は概して賛成です。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 いま私が申しましたのはいわゆる法によるカルテル。ところがやみカルテルというものが幾らあるかわからない。そういうことについて、公取委員会はやみカルテルについて調べられたことがありますか。
  136. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 やみカルテルということばは、私は二様にとれると思いますが、一つの考え方としては、いわば勧告操短といったようなかっこうにおいて、これも法によっているものじゃありませんからやみカルテルと言えますが、それは別として、それ以外のやみカルテルといいますと、もしそれがあれば、私のほうとしてはさっそく問題にしなければならない問題でございます。われわれのほうとしては絶えず注意はしておりますが、現在までのところ、これがやみカルテルというらく印を押せるようなものがあるなら、すぐ私のほうで問題にしているわけですから、そういうものが絶対ないとも言い切れませんが、それが幾つあるという御答弁は、私としてはできません。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 法によって容認せられたカルテル、そうして隠れたるカルテル、さらに、行政カルテルといいますか、行政措置によるカルテル、私はこれを別に考えております。いま公取委員長がおっしゃいましたのは、私の言ういわゆる行政措置による行政カルテル、すなわち、広い意味における勧告操短、これは、鉄鋼等でやられている公開販売制、こういうものに通ずるわけですが、いわゆる行政措置によるカルテル、言うならば勧告操短、公開販売制、これは現在幾つあるか。通産大臣、これはあなたの命令ですが、御存じですか。
  138. 福田一

    福田(一)国務大臣 いま仰せになった勧告操短、それから鉄鋼の公販制でございますが、勧告操短ということになりますと、御承知のように、繊維のうらでも綿糸とかスフとかあるいはまた梳毛、それから肥料の一部というようなものに勧告操短が残っておると思っております。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる行政カルテル、俗に言う勧告操短が十四、公販制が十六あるのです。それが、いまおっしゃいましたように、いわゆる繊維あるいは鉄鋼、紙、こういった基幹産業あるいは国民必需品にこういうカルテルがあるということが少し問題じゃなかろうかと思います。  そこで、お伺いいたしますが、この行政カルテルというものはいかなる権限において——法律的根拠がないわけなのですが、なされたかをお伺いいたします。
  140. 福田一

    福田(一)国務大臣 お話のように、これは何も法律的な基礎があってやっておるのではありません。ただ、通商産業省という立場から見まして、その産業をりっぱに育成していくという必要があり、また、その産業が国民経済の中で適当な位置を保ちつつ発展していかなければならないという事情がある、もしそれがうまくいかないというと国民経済自体に大きな悪影響を与える場合もあり得る、そういうような意味において、鉄鋼ですとか紙というようないわゆる一部基幹産業、あるいはまた衣服に関するような繊維産業というようなものについて、不況が起きた、あるいはまたこれを合理化をしていかなければ日本経済のためにならないというような場合におきまして、一応のめどを定めてこれをやっておるのであります。それは、そういうことを勧告をしておるわけであります。だから、あなたのおっしゃった法律的のあれはないじゃないかということはありますが、通産省の本来の目的というものから出て、そういうことをすることはまた違法ではない、こういうふうに考えてわれわれは処置をいたしておるのであります。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 そうおっしゃると、通産省設置法のどの権限に基づいたかということを聞かなければいけなくなるのですが、そればいいとして、この勧告操短、こういうものは法律的に根拠がないし、そうして、通産省の、私はあえて大臣がとは言いませんが、通産省の独禁法に対する実力行使である、さらに、カルテルを維持するために通産省の役人が監視機関として幅をきかす、こういうような性格を持つ、そうして勧告操短における最終的責任の所在が明らかでない、こういうように思うのですが、そういうような点についてはいかがですか。
  142. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほどの答弁のうちで繊維をちょっと入れましたが、繊維は法律に基づいておりますから除かせていただきます。  そこで、ただいまの御質問でございますが、通産省が何かそういうことによって業界ににらみをきかすとか、あるいは官僚的な統制的な意識でやろう、こういうことになりはしないかというような御懸念と思うのでありますが、私自身はそういうことを好んでもおりませんが、私は、通産省の官吏がみなやはり日本経済をどうしたらいいか、また国民生活をどうしたらいいかという正義的な立場からすべて問題の処理に当たっておったと思うのであります。ただ、しかし、そういうふうにやりましても、これはそういうことをやったためにかえって値が上がったというような場合があり得るのであります。そういうときには、いまのように、どんどん制限を撤廃する、操短の度合いを低めてきております。事実私自身が何度となく操短を緩和する措置をとってきておるのでありまして、なるべくこういうことなしに済めば、あなたのおっしゃるように、それは一番いいと私は思います。しかし、そのときそのときには少なくとも必要があってこれを実施してきたと思っております。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 いままで通産省は、この行政カルテルに対して、その根拠を通産省設置法あるいは緊急避難ということで言ってきたのです。大臣、そうおっしゃると思ったら言わないので、ひとつ論議をはずすことにいたします。しかし、いわゆる行政カルテル、操短、公開販売制度、これが、いま大きく問題になっておる管理価格が硬直しておるものに通じておるということは、御承知でしょうか。  ついでにもう一つ聞きます。最近大臣は鉄鋼業界に対して公販価格厳守を命じましたね。勧告しましたね。これはほうっておけば価格が下がるからということで勧告せられたのでしょう。そうすると、いまあなたがおっしゃることは逆になるのですよ。どうでしょう。
  144. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  鉄鋼関係の問題についていまお話がありましたが、私たちが公販価格をなるべく守ったらいいじゃないかということは、各製鉄会社の経営内容その他を調べてみて、資本金の関係あるいはまた負債の関係等々を見てずっと調べていきますと、やはり公販価格程度で売っていくのでなければ株主に対する配当もできないのではないかというようなことである。私は、やはりいまの日本経済で資本というものを軽視するわけにはいかないと思う。やはり資本というものが全然集まらないようなやり方で事業の経営というものはできるものではありません。そうすれば、資本をどの程度に擁護するかということになれば、少なくとも適正な利子とか配当というものが必要になってくるわけであります。こういう観点から見て、大体そこら辺のところがいいということで、実はああいう公販価格制度というものをとったわけでありますから、大体それに合っておるという意味で、あまりそう下げないで、できればそういう形でやってはどうか、こういうことを言ったわけであります。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、先ほどの大臣の答弁は修正しなければいかぬ。先ほど大臣は、いわゆる行政カルテルは必要があってやったのだ、しかし、それがあるために価格が上がって消費者に迷惑を与えるようなときには解くということ。ところが、もう一つその前に、資本というもの、企業というものを考えるということが出てきた。そう理解してよろしいですか。
  146. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、政治の窮極の目的は消費者を対象にしていかなければならないと思います。しかし、そういう場合において、いま公販価格の問題が例になりましたから、これで申し上げてみたいと思うのでありますが、それによって会社がつぶれる、日本の鉄鋼業が全部だめになる、そうして海外から高い鉄鋼を買わされる、また、それによって機械をつくらねばならない、こういう事態が起きたとした場合に、それがはたして国民経済全体に与える影響はどうであろうか、それがまた高いものを買わされる結果にも通じてくると思うのでありますが、これは、私が言わぬでもあなたのほうがよく御存じなんです。私は、そこら辺のことを考えてみると、やはり事業というものも成り立っていくようにしていかなければならない。そういう意味においてあの制度があったわけであります。だから、私は、決してこれは消費者を擁護するということと矛盾はしないと思います。いささかぐるぐる回っている、少し風が吹いたらおけ屋が喜んだというような議論になるじゃないかというお話になるかもしれませんが、やはり私は、鉄鋼事業というものを育成するということは、大きな意味において日本の消費者擁護に通じておると思います。しかし、不当にそれが、たとえば非常に金をもうけて高率配当をしたとか、あるいは社用費をむやみに使ったということであれば、これは問題だと思いますが、われわれとしては、調査の上で、そういうところまでは来ておらないという意味で、こういう制度をやっておる、こう御理解を願いたいのであります。
  147. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣の答弁、これは押し詰めていっても若干食い違いの点が出てくると思います。  そこで、私は一つの提案をしたいのです。大体、操短とか、あるいはそれと類似する公販制度、こういうのは業界不況のときに緊急的になされるものだと思います。その緊急性がなくなれば解除するのが当然だと思います。しかも、今日管理価格が問題になっているときに、やはりこの行政カルテルが一番問題になるわけなんです。そこで、緊急やむを得ないときには短期に発動するとしても、直ちにそれが独禁法が許している不況カルテル申請ということに切りかえはできないでしょうが、もしおっしゃるように不況の条件があり、合理化の条件があるならば、現に独禁法自体が二十四条の三、四において認めておるのですから、それに切りかえたらいいんですよ。いかがでしょう。一つの提案です。
  148. 福田一

    福田(一)国務大臣 これはあなたも御承知のように、たとえば、操短をしている場合に、何%いまやっている、そうすると、業界事情を見ながら、一月ごとに二%下げる、三%下げるといって行政的にやっていけば、私は非常に柔軟にできると思うのです。ところが、あなたのように、不況カルテルとして業界に認めてしまったら、業界は、おれらの権利だというので、いささか値が上がっても、まだ不況ですといって、むしろ逆に硬直的になるおそれがあるのじゃないかということを考えますので、あなたの御意見は参考にいたしますが、いまのやり方のほうがかえって柔軟にできはしないかと思います。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが八年間もその行政カルテルが動いている事例、あるいは数年間のはたくさんあるわけなんですよ。そうすると、大臣のおっしゃることがちょっと変わってくるのです。しかし、それはそれとして、私は、やはり法治国として、ことに法をたっとぶ池田内閣の閣僚として、法のあるところはなるべく法によるべきである、こう考えるので、いまのような提案をいたしましたので、ひとつ御検討願いたいと思います。どうでしょうか、私の議論は間違っていますか。
  150. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、あなたの御意見が間違っているとは思いません。しかし、やり方にはいろいろある、こう申し上げたのでございまして、法治国として法を重んずるというのも一つの行き方、法三章というのも一つの行き方、これはいろいろ考え方がある、これはわれわれひとつ研究さしていただきたいと思います。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 研究をするということで、引き分けにしておきましょう。  同じことに対して、公取委員長、どういう感じを持ちますか。
  152. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私は、どうも勧告操短というような行き方はあまり好ましい行き方ではない、どうしても必要な場合において短期的にこれをなさなければならぬ場合が絶対にないとは考えておりませんが、しかし、いわゆる勧告操短と独禁法との調整は、一応個々の業者に対して通産省が勧告するのであって、業界話し合いではないのだという格好を一応とって、独禁法との調整をとっておりますが、しかし、実態的には、おっしゃるように多分にそのカルテル的な色彩があるものですから、これはどこまでも短期的なものでなければならぬということは私は思っております。したがいまして、現在やっております勧告操短にしましてもだんだん減らしてきていることは御承知のとおりでございますけれども、現在あるものにつきましてもさらに検討していくべきだ、どうしてもやむを得なければ、まず不況カルテルでやるべきだ、かように考えております。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 福田大臣も公正取引委員長意見を聞くそうですから、よく相談して、あまり世間から騒がれるような行政カルテルは避けるように要望しておきます。  そこで、宮澤さんにお伺いいたしますが、去年の末、十二月九日に物価問題懇談会の報告書が出たことは御承知のとおりであり、それに対して、「当面行なうべき物価安定のための具体策について」として、本年一月十七日経済企画庁が出しておられるもの、これはもう御承知ですね。そこで、あなたのほうの書類の十一ページの(6)に、「勧告操短、設備制限、公販制限など、価格支持的効果をもつ措置について早急に再検討する」、こういうことになっている。そうして、たとえば通産省は、「勧告操短については、従来からも常時その再検討を行ない、逐次撤廃ないし緩和を行なってきたが、今後も強力に撤廃ないし緩和を図るものとする。」、以下ずっと各省の意見が述べられておりますが、これが実際どのように現在動いておるのか、お伺いいたします。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘の文章は一月二十四日に閣議了解をいたしたわけでございますが、それ以後、実はそれ以前からでもありますが、事務当局、各省次官が中心になりまして、こういう具体的な、ここに例示もいろいろしてございますが、これを具体化するために常時協議機関を持っておりまして、話を進めております。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、少し参考までに、生活に直結するというか、必需品に近いもので、どういう状態になっておるかということを一、二、例をとって申し上げたいと思います。  まずビールは、これは去年サントリーがビールを出す前の統計ですから、そのサントリーを除いて、それまでは三社で生産市場独占は九八・八%、そうして、昭和三十年の生産高が四十一万一千四百十九キロリットル、三十七年が百四十八万三千百三十キロリットル、この七年間に三・四倍近く生産が上がっております。ところが、価格はどうかというと、少しも下がっておりません。そのときビール一本が、いわゆる三十年が百二十五円、現在は百十五円です。その十円の違いは税金の減らされた分だけです。そうしますと、中身は何も変わっていない。すなわち三・四倍に生産が上がっておるが、下がるべきものが下がっていない。ナイロンを例にとりますと、これは三社で市場独占一〇〇%であります。そして、三十年と三十七年を比べますと、三十年が八千七十六トン、三十七年が五万七千七百十九トン、生産量は七・二倍になっておるのです。ところが、価格はトン当たり五千三百八十円が四千六百三十円、若干下がっておりますが、生産は七・二倍です。ガラス、これもいろいろありますが、家庭用の板ガラス二メートル平方のを一箱として計算いたします。それは二社で独占率九六・六%、そうして、生産が、三十年が五百八十二万五千箱、三十七年が千二百二十八万三千箱、価格が、三十年が二千八百五十円、そうして現在が二千七百三十円。生産は二倍さらに上がっておるのです。そういう中において、ほっておけば当然下がるべきもの、これが、いろいろそういった申し合わせ、——言うならば認められた以外のカルテルがそこに存在するかもしれません。そういうようなことで、下がるべきものが下がっていない。これをもっていわゆる管理価格と言っているのじゃないでしょうか。しかも、日銀の卸売物価指数によって物価指数の変遷を見ましたときに、ここ数年間全然価格が硬直をして動いていないもの、あるいは少しは動いているが大体硬直したもの、これを合わせると百何品目になるんです。  こういうことは、いわゆる消費者物価がいまぐんぐん上がっておる、あるいは生活が苦しい、こう言われている中で、このような独占率、あるいは生産が三倍、五倍になっているのにかかわらず、一向に値段が下がらないのは一体どういうわけなのか、そういうことに対してお考えがあればひとつ伺いたいと思うのです。私は、そこに隠れたるやみカルテルがある、このように考えるのですが、どうでしょうか。  また、われわれがやかましく言って、公正取引委員会が三つの品目について調査に入ろうとしたら、それだけ八年間板ガラスが下がらなかったのが、下がったじゃないですか。その一事を見ても、もう少し政府が姿勢を正して、消費者を守る、こういう立場に立って、経済憲法である独禁法、この運営をよろしくやるならば、物価高騰の抑制にも役立つ、すなわち、国民の福利厚生にマッチしていくと思うのですが、いかがでしょうか。
  156. 福田一

    福田(一)国務大臣 いまあなたのお話しになった大前提については、われわれも賛成でございます。ということは、そういうような管理価格的なものがあることはおもしろくない、いわゆる価格が硬直しておる、そうして、生産性が上がったのに消費者に還元されていないという実情は困るではないか、こういうおことばであれば、これはわれわれもそう考えますので、そういう趣旨で物価問題にも当たっておりますし、今後の施策もそうしてまいりたいと思っております。  ただ、しかし、ちょっと誤解といいますか、いまお示しになったうちで、われわれの関係といいますか、通産省関係で、たとえば板ガラスでございますが、われわれがいままで調べましたところによりますと、これは何もあまりそう硬直的とも言えないんじゃないか。ということは、三十年から三十七年の間に、並み板で五%から一九%、型板では八%、網入り板については一三%、それからみがき板というのは三五%も値が下がっております。だから、これはわれわれの調べでありますから、これが間違っておるということでありますれば、またわれわれとしても考えなければなりませんが、必ずしもそう硬直的ではない。しかし、こういうふうに値が下がったからといって、それでは十分に生産性の向上を消費者に返しているかということになると、必ずしもそうでもないということでございますれば、多々ますます弁ずでありますから、これは下げるようにしてやらなければなりません。したがって、この間そういう意味で板ガラスの値が下がったということは、あなた方が大いに大声疾呼されたこともその理由であったと思いますが、われわれも、そういうことでは困るではないかということでいろいろ調べ、まだ何とか処置ができるのではないかということで下がったということでございまして、与野党協力してこういうことが実現されたということは、まことにけっこうなことだと私は思っておるのであります。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕  それから、もう一つ、あなたはナイロンのことを仰せになりました。テトロン、ナイロンというような繊維類でございますが、こういうものも、実を言いますと、三十四年を平均一〇〇といたしますと、テトロンでは三十八年には七五、これは指数でございます。実際の値段は申し上げません。また、ナイロンでありますと、三十四年の下期を一〇〇といたしまして、三十七年には五五というふうに値が下がってきております。その後においてどうなっているかという調査は、いま明らかでありませんが、順次やはり大量生産によってこれは値が下がってきていることは事実でございます。  ただ、しかし、いまも申し上げたように、値がそこで下がっておるからそれで十分だというのではありません。私は、もっとこれが値が下がっても、生産性が上がってもうかっているものなら、もう少し下げるようにいたしたいというふうに思うのでありまして、いわゆる管理価格と言われるようなものについて、いわゆる疑惑のあるものについては、十分今後も行政的に指導もし、監視の目を光らしてまいりたいと思っております。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 少し通産省の統計と私の持っているのとは食い違っているかもしれません。日銀卸売物価指数中における硬直的価格の調査の中で、ナイロン、これは短繊維、長繊維入れて八年間変わっておりません。変動ゼロです。三十年から三十七年までの間ゼロです。それから、板ガラスは、一年について、これは大体横ばいというかっこうですが、二%の下がりを見ているだけです。参考までに申し上げますと、全く動かないもの、いわゆる硬直状態に全くあるものが二十五品目、ほぼ横ばいのものが二十六品目、上昇傾向を示したものが十一品目。こういうことでいきますと、百近いのがほとんど七年間、八年間硬直状態を続けてきているのです。
  158. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれも日銀の調査はみんな内容をとって調べておるのでありまして、それを基礎にして調べたわけであります。しかし、日銀の指数が必ずしも価格の実態を反映していない。実勢価格というのは、実はだんだん変わってきておるのであります。それは、たとえば、このナイロンをつくっているところから機屋さんにいく場合において、機屋さんへ渡る値段というものは下がってきております。こういうわけでありまして、市場の実勢価格、いわゆるリベートその他の面で下がってきているものがありますから、必ずしも日銀の調査だけを基準にして事を断ずるわけにはいかないかと思っております。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 統計というものはあくまで統計でありまして、それは絶対的にどっちが正しいとかいうことは言い得ないと思います。ただし、若干動いたというのと、全く硬直だということのニュアンスは違うのです。生産が上がった割には値段が下がっていないということはお認めになるでしょう。そうすると、そこに何らかの人為的な価格変動、すなわち価格が下がるのを人為的に操作していることがあるということが考えられませんか。
  160. 福田一

    福田(一)国務大臣 日銀の調査された数字、いわゆるその表面に出ておる数字は確かにあまり動いていないものがあっても、実際に取引されておる価格はずいぶん下がっておるものがございます。しかし、あなたのおっしゃるように、たとえ下がったといたしましても、それが十分に下がっておるかどうかということについては、これは大いにわれわれとしても勉強しなければならない。そして、それは指導をする必要がある、こういうふうに考えておるわけであります。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどあげました「当面行なうべき物価安定のための具体策について」の中で、これは通産省としても言っておられるのですが、価格が硬直している同価については価格決定機構を調査し、独禁法違反の行為があるときは措置をする、これはもちろん公取の仕事の一つでもあります。同時に通産省のやるべきことでもありましょう。これは通産、公正取引委員会、こういうことになっておりますので、これを言っておられるのですから、あまり言いわけというか、なさらずに、率直にこういうことを言っておられるのですから、やるということをおっしゃったほうがいいんじゃないですか。
  162. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、いまあなたが読み上げられた方針で行政をやっておることは事実でありますが、また、今後もやるつもりでありますから、あなたに反対するわけではないのであります。ただ、あなたが仰せになったのは、すべていわゆる管理価格と言われているものは全然数字が動いてないじゃないか、あるいはまた、その他百何品目というものがあるが、そういうものは動いてないものがある、こういうことでございますが、これは、場合によって誤解を生む場合もある。私は、やはり実態を明らかにしながら議論を進めていくことは、お互いに国民に疑惑も与えないし、正しい姿でもあろうかと思って実は申し上げておるのでありまして、あなたの基本的な考え方に反対する意味でそういうことを申し上げたのではないということを御理解を賜わりたい。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 だいぶんさびしそうにしておられますから、大蔵大臣、日銀の指数なんですが、これは信用していいんじゃないですか。どうですか。
  164. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀は非常にかたいところですから、信用していいと思います。ただ、いま通産大臣が言われたのは、あなたは日銀の発表指数だけを申されておりますが、実勢価格と日銀で取っておる統計数字との間には相当の開きがあります、こういうことを言っておるのですから、日銀が出しているものは信用していただいてけっこうです。
  165. 田中武夫

    田中(武)委員 日銀の指数が正確かどうか、あるいは、その指数だけで出した数字と、実際現況として動いている廃業を見た場合との若干のズレがあるかもわかりません。しかし、大体の方向はお認めになると思うのです。したがって、当面の物価対策で言われているような方法を厳に守り推進していただきたい、こう思いますが、それは異議ないでしょうな。
  166. 福田一

    福田(一)国務大臣 御趣旨には賛成でございます。
  167. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣貿易の自由化ということはどういうことです。
  168. 田中角榮

    田中国務大臣 貿易・為替の管理という、法律に基づいて制限をしていることを制限をしないようにすることが自由化ということであります。
  169. 田中武夫

    田中(武)委員 結局はそういうことでしょう。ところが、いま政府がやられようとしていることは、貿易自由化に関連をしてと銘打って、そのためにということで、片手において自由化の門をあけるとともに、他の手において門を閉ざそうとするような措置をとられておる。一例をあげれば、今国会で一つの大きな問題になろうと思いますが、特定産業振興臨時措置法。いま私は通産大臣との間にこの法律の内容論議しょうとは思っておりません。これはまたしかるべき当該委員会においてやるわけですから。しかし、考え方としてそうなりませんか。一方において開放の門をたたきながら、一方の手において、封鎖といいますか、そういう方向に動いておる。その一つが特振法である、こういうように理解いたしますが、いかがでしょうか。
  170. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれは、実はそうは解釈いたしておらないのでございまして、自由化をするということは、海外から品物を入れることを認めるという、実態的に言えばそうだと思うのであります。そこで、海外にある品物を入れることを認める場合に、どういうときに入ってくるかというと、海外の品物のほうが安い場合に入ってくるわけであります。これは、日本の品物のほうが安ければ海外から入る道理はございません。そこで、この場合において、私たちが、海外から入る品物が安い、だからこれは入れてもいい、こういうことにした場合に、当該産業がどういう影響を受けるであろうか。その産業がつぶれた場合のそれによって受ける影響、また、つぶれたこと自体から受ける直接の影響、それからまた、それが日本経済全体に与える影響、こういうことを考えてみると、やはり自由化をするにあたっては、日本の産業に不測の損害といいますか、非常な影響がないように考えながら日本経済を運営していくことが、大きな意味日本経済を育てていく意味である、こういう意味で私たちは特振法というものを考えておるわけでございます。
  171. 田中武夫

    田中(武)委員 あえて私も日本国内産業が自由化の嵐の前に吹っ飛ぶことを望んでおるのじゃありません。しかし、貿易の自由化、いわゆる為替・貿易の制限撤廃、こういうことは、自由なる制度、自由なる経済を土台としておるのでしょう。ところが、一方において特振法においてカルテルを求める。あるいは協調方式とか、誘導方式とか言われておるが、ともかくそうやっていくということ、これはやはり自由ということに逆行する。もちろん、国内産業を守る意味において、ある程度の措置は必要である、関税の問題その他も必要であろうと思いますが、あえて特振法というものを出す必要はないじゃないか、私はそう考えておる。そこで、これ以上の論議をするとこの法律の具体的なところに入るのですが、やむを得ませんから一通り聞きますが、第九条に一号から六号までカルテルについて書いてありますね。この中で現在の独禁法でできないのはどれですか。——ちょっと追加します。独禁法だけでなく、先ほど私が問題にいたしましたいわゆる四十に余るところの除外法、これをもってしてもできないのはどれですか。
  172. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、その四十に余る法律というものとの直接関係においていまここにお答えをするわけではないということを御理解を賜わりたいと思います。われわれの理解いたしますところでは、この共同行為という面では、御案内のように、一から六までございますが、そのうちで、多くのものは、たとえば一、「品種又は生産方式の制限」、これは独禁法の二十四条の四項で大体できる。それから、二の「品種別又は生産方式別の生産数量の制限」、これはわれわれとしては入れておいたほうがいいと思ったのですが、実際は、立法の過程においては、公取ではこんなものは拡張解釈でもできるじゃないかという意見があったことも、これまた事実でございます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、こういう法律というものは、こういうのをやはり明らかにしておくほうが私はいいと思うのであります。みんな国民にわかりやすくしておくということも大事なことだと思うのでありまして、こういう意味で入れたわけであります。それから、「生産の設備の制限又は処理」というのでございますが、これは、私的独占禁止法と若干相反するといいますか、それではできないものが入っておると思います。これは、詳しいことはまたその法案のときにひとつ説明さしていただきたい。それから、四の「部品の購入方法」、これは、機械工業振興法にもうすでにありますから、それを引用しておる。それから、「生産、保管又は運送の施設の利用」という五でございます。これは、独禁法二十四条で保管と運送のほうは規定しておりますが、生産のほうはございません。これは新しく入るわけでございます。それから、「事業の廃止に伴う調整金の授受」、これになりますと、前例はございません。前例はございませんので、やはりここに入れておる、こういうことでありますが、これは、詳しいことはまた別の機会にあなたといろいろ御相談をさしていただきたいと思うのでありますが、私たちとしては、独禁法というものとこの特振法というものとは、やはり経済のこういうような事情の変更に伴って明らかにしておいて、そして、政府も、また金融界も、また業界も、みんなが協力しながら、日本の産業が海外の産業と太刀打ちができるようにしていこうという目的で、これを出しておいたほうがいいんじゃないかということからわれわれは出しておるということを御理解賜わりたい。
  173. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上は論議は具体的な場でやりたいと思うのですが、私の感じでいくと、六号以外は全部できる。独禁法及び特例法によってできる。それから、もう一つは、いままで私が最初に申しましたように、そのつどにあたって、いわゆる独禁法というものは経済憲法、したがって、緊急やむを得ない場合、こういうことで、そのときにあたって臨時措置法をつくってきたわけだ。そうでしょう。ところが、今度は総括的にきめようということは、いままでの通産省等のやり方とは違った法案になっておる、こういう感じがする。いわゆる逆行しておる。独禁法がある。それを、不況だとか、いや貿易の自由化だ、なんとかだというときに、緊急の必要なら、その一つの産業、これをとらえて除外例をつくってきたわけです。その方向ならまだ論議はできると思います。これはいい。法律によって二、三はきめておるが、最後は政令でぱっと網をかぶせておるわけですね。そういう行き方に対して大きな疑問を持っておる。これは、いままでの通産省の行き方に対して、違った、矛盾した態度を出してきた、そういう理解をしております。議論はいたしません。感じがあったら言うてください。
  174. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かに、あなたのおっしゃったように、特別に名前をあげた以外に政令指定ができるというやり方をすることは、これはいままでのやり方とは違っておるところであります。ただ、そういうふうにしておかないと、単独法でやっていきますというと、間に合わないものがある。だから、そういう場合においては、あらかじめ包括的なワクをかけておいて、そして事態に応じてこれを適用できるようにしたほうがいいではないか。これも一つの考え方だと思う。しかし、これは、あなたの説もありますとおり、単独法の除外といいますか、独禁法に例外をつくるのであれば、できるだけ少なくする、あるいはもっと明確にしていくべきだという御意見もあると思うのでありまして、これは、われわれとしても十分考えてみていいと思っておるところであります。
  175. 田中武夫

    田中(武)委員 その問題はその程度にいたします。またあらためて当該委員会において御意見を聞きたい、こう思っております。  大蔵大臣、お伺いいたしますが、相互銀行法二十一条で、銀行法の二十三条を準用いたしております。それには、いわゆる法令違反の事項に対して、銀行の業務の停止、あるいは役員の解任を命ずることができる。その法令違反の中に、主務大臣の命令という項が入っておるが、銀行法二十三条、相互銀行法二十一条、これのいわゆる主務大臣命令というのはどういう性格のものです。
  176. 田中角榮

    田中国務大臣 銀行法、相互銀行法等に基づいて主務大臣としての大蔵大臣が発しなければならない命令、すなわち法律で制限をしておるものがあります。こういうものに対しての命令に背反をしたり、また法律違反をした場合というふうに解しております。
  177. 田中武夫

    田中(武)委員 それには、いわゆる通達、通牒は入りませんか。
  178. 田中角榮

    田中国務大臣 通達ということは、法律に基づいて通達を出しておるわけでありますけれども、通達の中には、歩積み、両建ての自粛というようなものも通達として出ておりますので、これが法律で明定をしておる事項の違反として処分ができるかということを考えますと、通達、——まあ一片の通達というとまたあれですが、いわゆる通し達だけでは、解職の処分というような、この銀行法、相互銀行法の条文適用はしないというのが常識的だと思います。
  179. 田中武夫

    田中(武)委員 もう少し聞いてから、中小企業の製品の価格形成に大きな影響を与えておる金融機関の歩積み、両建ての制度、これは何回か当委員会においても取り上げられておりまして、そこへ持っていきたいと思ったが、途中であなた気がついたようです。さすがに勘がよろしい。  そこで、お伺いしますが、一片の通牒はどうも主務大臣の命令には入らない、こういう解釈のようですが、大蔵省は、十数回にわたって不当なる歩積み、両建て制度をやめるようにという通牒を出しておられます。今日なお改まらないということに対しまして、いままでの銀行局長通牒が、いわゆる銀行法二十二条、相互銀行法二十一条に該当しないとするならば、それを改めさすために、二十三条ないし二十一条に該当する主務大臣命令を出す用意があるか、いかがか、お伺いいたします。
  180. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、大蔵省の業務の中に、大蔵大臣通達、次官通達、それから国税庁長官通達、局長通達、こういうことがありまして、大体非常に厳密に守られております。しかし、この歩積み、両建てに対する通達でありますが、これはなかなか守られないということは、この歩積み、両建てというものが制度的に非常に広範なものがあり、たいへんむずかしいものであるということにも由来をしておると思います。これは、一つの商習慣ということで、良識を持った普通の歩積み、両建ては何ら問題にすべきではありませんが、預金者の意に反して不利益になるようなことを銀行当局が預金獲得その他の名において行なう、特に中小企業に関係があるような歩積み、両建てというものは悪質なものでありますから、こういうものは徹底的に排除したいということで、相互銀行は自主的に歩積み、両建ての排除の具体案を提示をしてまいり、現在実行中でありますし、都市銀行を含む各金融機関も早急に歩積み、両建て排除の手段について立案中でありますので、現在直ちに銀行法及び相互銀行法の規定に基づいてとか、その法律の条文をもう一ぺん修正、改正をして、歩積み、両建てを明記して処罰をするというようなところまでは考えておらないわけであります。
  181. 田中武夫

    田中(武)委員 銀行法改正の必要はないのです。これは時間がないので法律論はやめますが、主務大臣の命令、いわゆる銀行法二十三条ないし相互銀行法二十一条でいうところの主務大臣命令を、歩積み、両建てに対して十数回も大蔵省が通牒を出したり通達を出したにかかわらず改まらないならば、それを出したらどうか、こういう提案なのです。これに対しましていろいろ言いたいのですが、時間がないからまとめて申します。いままで、きのう大蔵委員会でも大臣はそういう答弁をなされたようですが、この不当なる歩積み、両建ては、いわゆる不公正な取引として現在公正取引委員会の告示十一号によって一般指定になっておる。それを、いま公正取引委員会は特殊指定をやろうかどうかという調査をしておると聞いておる。それに対して、大蔵大臣は、特殊指定はやりますと、きのう答えられたようです。そういう方面からする公正取引としての見方が一つ。それよりか、私は、いままでだれも言わなかった、銀行を監督する、金融機関を監督する大蔵省として十数回通牒を出して改まらないものならば、どんぴしゃいけるところ大臣命令を出して、どうです、田中大蔵大臣のひとつ威厳を示したらいかがですか。
  182. 田中角榮

    田中国務大臣 銀行法に定める命令は、預金者保護及び財産保全というような面に対して命令が出せるのでありまして、歩積み、両建ての排除というような問題に対しては、命令は出せないようであります。  もう一つ申し上げますと、歩積み、両建てに対していろいろの——三点に分けて申し上げます。いま申し上げたのが一点。  第二点は、歩積み、両建てに対して通牒を出しておりますけれども、この歩積み、両建てというものは、悪意のものと善意のものと、商習慣上のものとの区分けがなかなかむずかしいのであります。ここに一つ問題があります。(「強制的なものが多いんです。」と呼ぶ者あり)でありますから、強制的なものをひとつ排除しよう、こういうことで、いまいろいろ知恵をしぼっておるのでありまして、そういう意味で区分けが非常にむずかしいというのが第二点であります。  第三点は、あなたの御質問の主点であります、公正取引委員会が特殊に認定をした場合、これに対して違反をするという場合になれば、当然公取で処罰をするわけでありますし、そういう問題になれば、そういう問題にならないように、また公取から特殊指定を受けないでも、金融機関は早く自主的にかかる悪弊を排除してもらいたい。排除するためには、銀行監査も行なうし、検査も行なうし、今度地方の財務局をして随時監査もやるし、こういうことまでいっておるのでありますから、いま田中さんの言われておると同じような考えで、中小企業の圧迫になっておるような歩積み、両建ての悪弊は、早急に排除したいという熱意を持つものであるということだけ申し上げます。
  183. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど、大蔵省が銀行を監督する、これは預金者保護だろうと思うのです。しかし、二十三条がそれだけかどうかということについては、法律上もっと法制局長官の意見も聞き、私は討論したい。しかし、時間がありませんので、あらためて大蔵委員会かどっかでやりたいと思います。  そこで、公正取引委員長は、不当な、こう上につけておきましょう、歩積み、両建て制度については、特殊指定をいま調査している、研究している、こういうことですが、特殊指定を行なう用意があるかどうかということを聞いておきましょう。
  184. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 この問題につきましては、私のほうといたしましては、銀行が片方では、せっかく自粛するから特殊指定を待ってほしいというようなことは言っておりますが、それでほんとうに実が上がるならけっこうだと思っておりますが、しかし、上がらないという問題が非常に予想されますので、したがってそれと並行しながら特殊指定をするという用意をしております。  実は、私ももうちょっと言わしていただきますと、自粛基準というものをもとにして特殊指定をつくる出発点にしたらいいじゃないかと思って、仕事を始めたのですが、先日銀行協会のほうから出してきた数字を見てみますと、どうもいわゆる自粛基準というやつが非常にあいまいであって、特殊指定のあの文章を多少法律的にこね回しただけで、特殊指定をしたとすると、どうも非常に何というか、あいまいなところが残って、底抜けになるのじゃないかという心配があるものですから、したがって、拘束預金の中で自粛さるべきものはこれだ、これは書き出してあります。では、自粛の対象にならぬものは何か、これを一ぺん書き出してみてくれ、こういうような点で実は詰めておるわけであります。したがいまして、多少そこにまだ時間をかけておりますが、早急にその仕事を続けていくつもりでおります。
  185. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣も何かの機会に触れられたように記憶しておりますが、一番許せないのは政府資金、これをいわゆる代理窓口として貸すときに、自分の資金じゃなくて政府資金を貸すとき、たとえば中小企業金融公庫の窓口業務としてやる場合、これら三公庫、こういうものに対してすら歩積み、両建てを行なっておるというけしからぬ状態がある。そういうことに対しては、断固窓口業務を停止する用意がありますか。
  186. 田中角榮

    田中国務大臣 政府関係三機関の窓口業務を行なっておるものであって、しかもその貸し付けにかかる貸し出しに対して歩積み、両建て等を強要したものに対しては、その指定を取り消す、こういう決定をいたして、通達済みであります。
  187. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がないようですから急ぎますが、やはり不公正取引の一つの形として、親企業と下請企業との関係があります。その下請に対して手形による支払いがどういう状態であるかというと、三十六年が五一%、三十七年が六三%、それから三十八年が六〇%、その手形のサイトの百二十日以上のものが、三十六年では四三%、七年では五〇%、三十八年には五二%と、こういうように、手形による支払い、またその手形のサイトが長いものにだんだんなりつつあります。これに対して、先日当委員会における加藤委員質問に答えられ、あるいはそのあとで、手形法に対して刑罰を考えるとか、あるいは下請代金支払遅延等防止法の改正を考える、こういうように言われたのですが、もう一度ここではっきりと、どういう構想か聞かせていただきたい。  さらに、手形の不渡りに対して刑罰を科するというが、どういう刑罰にするのか。たとえば西ドイツでは詐欺罪ということだ。詐欺罪ということは、いま特別な法律がなくてもいけるんじゃないかという感じがいたしますが、それはともかくといたしまして、どういうことを考えておられるか明らかにいたしていただきたい。
  188. 田中角榮

    田中国務大臣 近時企業間信用が非常に膨脹しておることは、事実であります。手形のサイト期間も延びつつあるということも、御指摘のとおりであります。そういう意味で、金融の正常化をはかる過程におきまして、手形法の問題、小切手法の問題その他に対しても新しい角度から検討する必要がありはしないかということを考えることは、当然だと思います。いままで銀行法とか手形法とか小切手法とかということを言うことだけでもタブーだ、こういう考えもあったようでありますが、こういう変転きわまりない国際経済情勢に際して、日本が開放体制に向かおうというときでありますから、私は、正しい姿勢でこれらの問題に対しても目を向けることは必要なことだ、こういうふうに考えておるわけであります。特に私が手形法の問題を考えましたのは、このごろ非常に問題になっております税法の問題で——税法では体罰規定がありまして、手形及び小切手に対しては体罰規定がない。しかも現在の情勢を調べてみますと、融通手形というものと普通の商業手形との区別がつかない。いろいろな事件の起きておりますのは、融通手形の問題であります。こういうことを事実として知りながら何らかの処置をとらないということに対しては、これは責任者としてはまじめな立場で指弾さるべきだと思いますので、いますぐ解決をする、改正をするという考え方ではありませんが、いずれにしてもこういう問題に対して前向きな姿勢で対処し、積極的に検討を進めることは当然だろうということで、事務当局に対しては、これらの問題に対して検討を指示してあります。事務当局からは、中間的な問題でありますが、世界各国、特に先進国は、手形法や小切手の取り扱いの規定に対しては非常に峻厳であるという事例は、報告を受けております。特にこれから経済が大きくなりますと、手形決済というものは、ほとんどかつて現金決済をやっておったと同じようなものになることを想定しますと、特に正しておかなければならぬのではないか、こう考えたわけであります。  もう一つの下請代金支払遅延等防止法、この問題に対しては、法律は確かにできました。しかも、これは議員提案であったと思うのですが、この下請代金支払遅延等防止法なるものをつくるときには、議員は相当努力をしてつくり、改正をしたわけでありますが、実際から考えますと——私は商工委員長だったかもしれません。しかし、これは実際下請代金というものに対しては特殊な事情があって、この法律が正常に運行されるかどうかということに対しては危惧もあったわけですが、実際的な問題として、大企業に対しての下請の弱さから、この法律が適正に運用せられない、こういうことが事実であります。そういう意味において、まあはれものにさわるような考えではいけないという考え方で、大蔵省、通産大臣、特に経済企画庁を中心にしまして、この問題をひとつ早急に取り上げよう、こういう姿勢をとらなければ対処できないとしたならば勇気を持って取り上げようというので、経済企画庁長官を中心にして、私も福田通産大臣も前向きでこの問題をひとつ処理をしたい、こういう考え方であります。
  189. 田中武夫

    田中(武)委員 約束を守る社会党として、時間がきたからこれで終わります。いまの問題等について議論をいたしたい。しかし、時間もないのでやめたいと思うのですが、あの下請代金支払遅延防止法を政府が提案せられたときに、わが日本社会党が下請関係調整法という法律を出した。それを多数決でほうむったのは、あなたが委員長のときでした。したがいまして、いまその運営が十分になされない、無理がある、そういうことについて、大蔵大臣なり、通産大臣経済企画庁長官、みなそろって前向きで検討するというときですから、社会党の下請代金調整法案をもう一度読み直してもらいたい。もしなかったら私のところへおいでになればレクチュアをいたします。  これは予算委員会でありますので、予算に触れないと都合が悪いと思いますので、最後に予算の数字に触れたいと思います。いままでいわゆる独禁政策を中心質問してまいりました。そうして独禁法を守ることによって経済の姿勢を正す、消費者を保護していく、こういうことで公正取引委員会の使命の重大なことは認識願ったと思います。また最近不当表示不当景品防止法というような法律もできております。したがって、公取委員会を強化していかねばならない。そのことに対しては、大蔵大臣通産大臣も、あるいは総務長官も異論はないと思います。異論があれば伺いたいのです。  そこで本年度の予算を見ると、公正取引委員会関係では三千三百三十五万円が前年度よりふえておるだけなんです。そのうち三千三十四万九千円というのがいわゆる給与アップの当然の増であります。そうするとふえたのは三百万一千円であります。そうして今度これは政府提案として出ておりますが、公取委員会の機構の拡充として札幌地方事務所を新設するというのが出てきております。しかし、このようなことではまだまだ十分なる運営ができないと思うのです。そこで、先ほど申しましたようないわゆる違法なカルテル、あるいは不当表示不当景品防止法、独禁法の円滑なる運営のためには、もっと公正取引委員会を強化せねばならぬ。そのこと自体が消費者を守る。あるいは無理な経済運用というか、巨大産業の無理をチェックしていく、こういうことでありますので、ことしは予算は、内容ではわずか三百万一千円しか上がっていない。こういうことに対して、今後どのようにして公取強化のために予算をつけ、人員をふやしていくか、そのことに対して大蔵大臣。それからせっかく来てもらって出番がなかったのでお気の毒ですから、ついでに総務長官。それから最後に、このような予算でほんとう公正取引委員会としての任務がつとまるかどうか。憲法に対して——憲法の番人は最高裁だといわれている。経済憲法といわれる私的独占禁止法の番人は公正取引委員会であります。あなたは、端的に、この程度でなければ十分機能が発揮できないということがあったら、ここではっきりと言ってもらいたいと思います。  以上申し上げまして終わります。答弁願います。
  190. 田中角榮

    田中国務大臣 公正取引委員会の持つ任務の重要性は十分認識をしております。なお、公正取引委員会の所要経費、機構の拡充等につきましては、政府は従来とも配慮をしてまいったわけであります。なお、それにつきましては田中さんも御承知のとおり、公取委員長の給与引き上げというときには、単独法を出してるる公取委員会の重要任務を申し上げたとおり、そのように考えております。  三十九年度の予算につきましては、三十八年度一億八千九百万円でありましたものを二億二千二百万円に、三千三百万円の増額をいたしたわけでございます。  なお、機構につきましては、本局に取引部を設置をいたしまして、札幌に地方事務所を新設をいたしました。  なお、業務量の増加、消費行政の推進をはかる見地から、定員十五名を増員いたしました。  そのほか独禁法施行事務費、下請代金支払遅延等防止法の施行事務費及び不公正な取引方法等の規制に必要な経費、職員の旅費、庁費、謝金等につきまして二百七十二万二千円の増額をはかっておるわけであります。これで御努力をしていただき、将来また格段の配慮をいたしたいと考えます。
  191. 野田武夫

    野田政府委員 ただいま大蔵大臣からお答えいたしましたとおりの内容でございますが、公正取引委員の非常な責任の重大な点はわれわれ十分痛感いたしておりますから、今後できるだけ強化したいと思っております。  なお、地方事務所を、今回は札幌だけでございましたが、将来は東北、北陸、中国、四国と、ぜひひとつそういうものを設置して、さらに強化したい、こう思っておりますから御了承願います。   〔発言する者あり〕
  192. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 私語を許しません。渡邊公取委員長答弁を求めます。
  193. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 非常に御激励にあずかりまして、どうも恐縮しておりますが、予算の関係からしまして、われわれのほうの要求はもっと大きかったのですが、これは各省同じような事情がございまして、われわれのほうとしましても、一応御承知のように、一昨年までは増員がなかった、昨年は六人、ことしは十五人、きわめて微々たるものでありますが、まあ従来のことから考えますと、かなり力を入れてくれたのじゃないか。同時に公取としましては、現在の内部陣容というものをさらに考えていきまして、内容的に充実する面もあるのじゃないか、余地もあるのじゃないか、かように考えております。したがいまして、与えられた予算を十分活用いたしまして、独禁法の一応の執行機関としての万全を期したいというのが私の覚悟でございます。
  194. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて田中武夫君の質疑は終了いたしました。  次会は明八日午前十時より開会いたします。  明日の質疑者は、午前は柳田秀一君、午後は安井吉典君、続いて久保三郎君であります。  柳田君の出席要求大臣は、大蔵大臣文部大臣、厚生大臣、自治大臣であります。  安井君の出席要求大臣は、大蔵大臣文部大臣、農林大臣、自治大臣であります。  久保君の出席要求大臣は、外務大臣大蔵大臣、厚生大臣、通産大臣、運輸大臣、労働大臣、自治大臣、経済企画庁長官であります。  なお、本日委員会散会後直ちに理事会を開きますから、理事の方は第二委員室に御参集願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会