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1964-02-03 第46回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月三日(月曜日)    午前十時六分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    川崎 秀二君       重政 誠之君    周東 英雄君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    西岡 武夫君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    山本 勝市君       渡辺美智雄君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       五島 虎雄君    河野  密君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一雄君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 英一君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  考君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         食糧庁長官   斎藤  誠君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君         中小企業庁長官 中野 正一君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月三日  委員江崎真澄君、仮谷忠男君、古井喜實君及び  羽田武嗣郎辞任につき、その補欠として渡辺  美智雄君、西岡武夫君、野呂恭一君及び登坂重  次郎君が議長の指名委員に選任された。 同日  委員西岡武夫君及び渡辺美智雄辞任につき、  その補欠として仮谷忠男君及び江崎真澄君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  石田宥全君
  3. 石田宥全

    石田(宥)委員 総理大臣にお尋ねしたいと思いますが、農業基本法が成立いたしまして第四年を迎えました。いわゆる農基法体制に対して大きな希望と期待を持っておりました農民も、このごろでは農業に対して何の魅力も希望も失いまして、その方途に迷って深刻に悩んでおるのであります。私は、本日この委員会を通じて、二千数百万のその方途に迷っておる農民に対して、その方向を明示されますることを希望いたしまして、以下各項にわたって質問をいたしたいと思うのであります。  まず最初に、農業基本法に対して、各方面から再検討の必要があるのではないかという意見が最近起こっておるのでありますが、総理大臣は、農業基本法に対して再検討をされるお考えはあるかないか、承りたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 名前は農業基本法でございますが、社会経済情勢は年とともに変化、進歩するのでございます。したがいまして、基本法精神に沿って、その移り変わる、進歩する社会に適応するような方途を講じなけりゃならぬことは、これは政治の当然の道でございます。しかし、私は、農業基本法の示す精神はやはり続けていかなけりゃならぬ。ただ、具体的な問題といたしまして、農業は、御承知のとおり、社会的に、経済的に、また自然的に非常に影響の及ぼす点が多いのでございます。そういうものの変化に応じて、基本法精神に従いながら改善、整備する必要があることは当然でございます。そういう意味においてのいわゆる検討を加える、しかし、精神自体に根本的に影響するような考え方はやるべきではないと思います。
  5. 石田宥全

    石田(宥)委員 基本法というのは宣言法的なものでありますから、その精神を体して施政を行なわれればよろしいと思うのであります。  それでは具体的な項目に入りたいと思うのでありますが、農業基本法目途とするところは、農業従事者所得が他産業従来者の所得に対して著しく低いのでありまして、所得格差是正をはかることを目途といたしておるのでありますが、ここ数年間、農業従事者所得は他産業従事者所得に近づいてまいっておるかどうか、いわゆる所得格差是正されましたかどうですか、承りたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のとおり、全般の国民所得ふえようは、第二次、第三次産業に従事している方のほうが多いのでございます。第二次、第三次産業というものは、所得倍増計画に示した予定よりもほとんど倍に近い上昇をみた年が三年間も続いたわけでございます。しかるに、農業所持それ自体のほうは、必ずしも飛躍的な第二次、第三次産業ほどいっておりません、それはいろいろな事情がございますから。したがいまして、農業生産性というものは——昭和三十四年、五年、六年は他の産業が飛躍的に、とにかく名日で二〇%か一八%いった、実質一四、五%いった、こういう三年間で比べますと、農業というものの生産性は他歴業と比較して落ちております。しかし、所得倍増計画が三十七年、三十八年とやはり六、七%、七、八%の上昇を見た場合におきましては、農業生産性格差が縮まるほどいっておるのであります。そこで、農業所得というものと農家所得というものは違えて考えなければいけません。農家所得というものは、いわゆる生産の増強あるいは価格の上昇で三十七、八年、ことに三十七年は相当上へ上がっている。ただ三十八年は麦やなたねの事情がございまして、伸びはちょっと落ちておりますが、しかし、所得としては上がっておることは農業白書にも、示しておるとおりでございます。その格差というものは、やはり一年だけを見てはいけない。また特定の事情の一、二年をとって言うべきものではない。だんだん趨勢としては、農業は、農業自体として生産性も、あるいは所得も上がっておるということは言えると思います。
  7. 石田宥全

    石田(宥)委員 他産業所得が急速に伸びたために、格差是正が思うようでなかったというお話でありますが、よく総理大臣がおっしゃるように、長い目で見た場合に、農業従事者所得というものは他産業従事者所得均衡のとれるような状態になるとお考えでございましょうか、どうでしょうか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 均衡のとれるような、そして格差が縮まる方法でいかなきゃいかぬというのが農業基本法精神でございます。長い目で見ていればそういうふうにいくように、いわゆる施策を講じなければいかぬ、これが一時に出るわけのものではございません。だから、われわれは、いわゆる生産規模拡大構造改善をやっていく、こういうことで進んで参ります。
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 お話でございますが、私は、農業というものの本質から言いまして、他の鉱工業所得均衡するということは非常に困難性があると思うのであります。だから基本法では、自然的、経済的、社会的な不利を補正して、所得均衡をとるようにということを特に規定をいたしておるのでありますが、政府は自然的、経済的、社会的な不利を補正するためにいかなる施策を講ぜられたでございましょうか。ほとんど見るべきものがないのではないかと考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 自然的、経済的、社会的、いわゆる条件を克服すべく、やはり規模拡大構造改善選択的拡大生産ということでやっていこう、これはあなたの専門が——承知のとおり、たとえば第二次、第三次産業のごとく、資本をつぎ込む、いわゆる設備を改良する設備資金を出すと、その六、七割が翌年出てくる、翌々年にはフルに働くというような、いわゆる製造工業その他のものと農業のようなものとはよほど違いますから、私は、工業が一、二年で出てくるなら農業は四、五年、五、六年かかる状態である、それがいわゆる自然的、社会的制約を受けることが多い、こういうことでございまして、他の産業がすぐ出るからといって、農業もすぐ出るとお考えになるのは、農業自体の持つそういう制約を度外視しての考えではないかと思います。だから、よほど時間はかかることを覚悟しなければならぬ、それだけやはり施策を強くやっていかなければいかぬことだと思います。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 総理大臣は先ほど、農業所得農家所得という点を巧みにかみ合わせてお話しになっておるのでありますで、農家経営農家所得というものは、その他の出かせぎなり日雇いなり、その他の所得によってまた別に考えなければならぬのでありますが、私は、農業経営というものは、資本主義経済の原則からいってこれはなかなか所得格差是正は困難なものであると実は考えておるのでありまして、したがいまして、私が指摘をいたしておりまするのは、農業所得、これを指摘いたしておるのでありまして、農家所得とは別でありますから、これをひとつ考え違いのないようにしていただきたいと思うのであります。以下私は具体的な項目に入りますから、この点だけを指摘をいたします。  次に、昭和三十五年の総選挙にあたりまして、また昭和三十六年に農業基本法を制定されるにあたりまして、政府は、農業人口が六〇%くらい減るようになるのではないかということを指摘されておりました。最近は、政府が言っておられるように相当農業人口は減ったようでありますが、ここで、これは農林大臣でけっこうでありますが、農業人口減少農家戸数減少状況がどういう動きを示しておるかを伺いたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御説のとおり、農業人口年率三%程度ずつ減ってきて一おります。三十七年度におきましては差し引き七十一万人ばかり減っています。それに比較いたしまして、農家戸数の減り方は年率約一%程度であります。農家戸数が減っておるということは非常に少ない現状でございます。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣のあげ足をとるようで悪いのですけれども、あなたのほうで出しておられまする農業白書でも、その他の政府の発行している文書でも、農家戸数減少は、三十年から三十七年まで平均して〇・三%しか減っておらないのです。これは何かのお間違いだろうと思うのですが、どうでしょうか。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう数字が出ていますけれども、平均的には約一%、こういうことになっております。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 まあまあいいでしょう。とにかくそういう数字は出ておるけれども、まあ一%というのは、これは聞こえません。納得できません。政府機関統計数字が三十年から三十七年まで〇・三%という数字が出ておるのに、まあまあ一%程度でございますという答弁は受け取れないのです。私は政府機関統計を示しておるのだから。それはまあいいでしょう。  そこで、それがために総理大臣が好んでお使いになったように、農業人口は激減いたしまして、年齢層若年層の流出で、農村労働力は著しく劣弱化しております。婦人老人に切りかえられておるのでありますが、総理大臣はこの傾向を好ましいものとお考えになりますか、どうですか、承りたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 これが好ましいか好ましくないかということは、これは農家の置かれたその地域的環境その他によって変わることだと思います。私は、いまの農業基本法を設けますとき、あるいは所得倍増計画を立てますときに、農家は大体四割くらい減るだろう、あるいは半分ぐらい減るかもわからぬ、こういうことを申し上げたのですが、そのときのいわゆる農家というのは、いまの統計に出る農家という意味じゃない。実際農業に従下し、農業を主たる仕事としてやられる農家です。だから、日本の置かれたこの環境から申しますと、そのときも言ったのですが、ドイツにはいわゆる日曜農家というのがある。これもやはり農家なんです。私の聞いたところによりますと、大体、アメリカイギリスフランスのように、背からいわゆる産業が非常に高度化する前に農業を整理したというか、この農家がずっと減っていったところではわりに専業農家が多い。そして戦後のドイツあるいは日本のように、廃墟になったあとに急に第二次、第三次産業が興るところにおきましては、農家戸数が減らぬけれども、いわゆる第一種、第二種兼業農家というものが非常に出てくる状況にあるのであります。だから、第一種、第二種兼業農家がふえることがいいか悪いかということは、私は一がいに言えぬのじゃないかと思う。理想的にいえば、やはり農家であっても、一反とか二反とか自分の主食をつくる程度、野菜をつくる程度農家で、主たる収入が第二種兼業のように他の分からくるという農家も、私は、国全体としては好ましい状態じゃないかと思います。しかしまた、アメリカイギリスのように、専業農家だけで他のものはやらぬというのが望ましい場合もありましょう。その点はその国の状況、いわゆる産業発達過程における一つの現象として、どれがいいか、どれが悪いかということは私は言えぬと思います。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、農業従事者老人婦人のように劣弱化して、そうしてしかも農家戸数が減らないということになりますと、ますますそういう傾向が深刻になってまいります。ますます深刻になってまいりますと、農業基本法に規定するところの自立経営農家育成協業の助長という健全な農業経営になっていかないのではないか。農家戸数が年々〇・三%ぐらいしか減らないで人口が激減するという姿では、これは自立経営農家育成も困難であるし、協業も困難であるのではないか、こう思うのですが、なぜ一体農業人口は激減するけれども、農家戸数が減らないのか、この点どうお考えになっておるでしょうか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 兼業農家がふえるということでいわゆる専業の大規模が阻害ざれるというわけのものではございません。現に統計の示すところでは、一町五反以上耕す農家が三十年に比べまして相当ふえておる。こういうところから見まして、しかもまた、政府施策のいわゆる規模拡大、あるいは選択的生産を進めるとか、構造改善をやるということになると、しょせん専業農家もふえ、そしてまた片一方では兼業農家もふえてくる。こういう両方ふえる事態が出てくることは、われわれ望んでおるのであります。現にそうなっていくでございましょう。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはおかしな議論でして、農家戸数が減らないで、そうして人口が激減するということは、非常に不健全な、やがて大きな社会問題にも発展しかねないところのものであって、将来の日本農業をどういう方向に持っていくかについては、これは非常にむずかしい問題で、学者の中でもいろいろな議論がございますけれども、少なくともいまのような情勢が続いたのでは、やはり農業従事者というものは老人婦人などに肩がわりされてしまって、非常に不健全なものになるのではないかということを指摘しておるのです。総理大臣はその点についてはどうお考えになるのか、もう一度承りたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 いま申し上げたように、その国の他の産業農業との発達過程を見まして、ドイツ日本におきましては、わりに兼業農家が多い。しかもまた、農業従事者でも婦人がわりに多いのでございます。こういう状態は、やはり兼業農家が、ドイツでいわれる日曜農家が多いということになる。しかし、それ自体は不健全だとは言えない。たとえば五反とか六反耕しておった専業農家兼業農家になって、そしてその半分とか七、八割を他の人に信託譲渡するか、あるいは売ってしまって、農業をそれだけ縮小する場合におきましては、専業農家もふえるし、兼業農家は減らぬということになるわけなんでございますよ。大体統計なんかを見ましても、農家といっても、兼業農家相当入っているわけなんです。農業に従事する人は、ではどういうふうな統計でとるかというと、ほとんど年に五十時間従事しておる人は農業従事者になるのじゃございませんか、私は正確なことは知りませんが。何千時間という働く時間を持っておるときに、年に五十時間働いたらこれが農業従事者になるような統計なんでございますから、だから私は、農家が減らぬ、したがってその規模拡大しないということは、これは数字の上のあれで、実際一町五反つくっているという人は、相当戸数でふえておりませんか、三十年に比べて八、九万戸ふえていると思いますよ。そして、二町五反以上のものもまたふえつつある。こういう状態が、片一方では専業農家規模拡大すると同時に、兼業農家がふえるという結果を来たすと思います。それは、やはり日本ドイツに行なわれて、フランスイギリスアメリカにはあまりそういう例がない。だから、それは国の置かれた経済の発展の過程において起こり得べきことであって、これを今後どう調整しようかという問題のときには、やはり規模拡大をはかって、農業をりっぱな企業として立ち行くような農業にすると同時に、兼業農家は、国民の保健の上からいっても、あるいは農村をりっぱにする上においても、これはいかぬというわけのものではないということを言っておるのであります。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこでこの問題についてはひとつ締めくくりをつけたいと思うのでありますが、農業基本法をつくります際に、私どもはこのことを非常に心配したわけであります。最近でも、老齢化のために、あるいは傷病のために、都市から農村へ還流する人たちの数が漸次激増しておりますね。いまの日本雇用関係というものは、若年労働者求人難であるけれども、中高年層就職難ですね。そのことから、老人になって、あるいは傷病関係などで、また農村に還流してくる。この状態が続く限り農家戸数は減らないでしょう。それは必ずしも健全な状態ではないということを私は言っておるのです。そこで私は農業基本法制定にあたって、こういう状態が想定されるから、将来の日本の国の政治考えた場合に、やはり完全雇用老人の福祉、老齢化してまた農村に舞い戻ってこなければならないようなことのないように、社会保障制度を確立しなければならないのではないかということを提起したのですけれども、総理大臣はそれは別の問題だと逃げておられたのでありますが、今日、この完全雇用社会保障制度というものが確立されない限り、私は健全な農村育成というものは困難であろうと考えますけれども、総理大臣の所信を伺いたい。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 高年齢層の力が社会保障制度が十分あれしてないから農村に帰ると、こういうことでございます。しかし、農村に帰ってその方が何をなさるかということは、また別問題でございます。しかし、それにもかかわらず、やはり日本農業としてはりっぱな企業として成り立つように構造改善あるいは基盤の強化、これをしなければならぬ。だから私は、前にも申し上げましたように、農業をりっぱな企業として片一方で打ち立てる。そしてまた、高年齢層の人がいままで住んだ都会に住み得るように社会保障制度厚生年金等々、これまたいろいろな施策をしていかなければならぬ。しかし、そういう場合におきましても、やはり生活環境からいって、自分の故郷に功成り名遂げて帰られる人もあるでしょう。しかし、それだからといって片一方農業基盤拡大してりっぱな企業にすることをおろそかにすべきじゃない。ますますやっていかなければならぬ。こういうことを私は言っているのであります。
  23. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、農林大臣労働大臣に伺いたいと思うのでありますが、いまいろいろ御質問申し上げておりまするように、最近出かせぎやその他の季節労務農村からの出かせぎが非常に多いのでありますが、中には一市町村千五百人も出ておるというようなところがある。東北地方などでは七、八カ月もうちを離れて、家庭生活としては非常に不自然な生活をやっている。新潟県のある地方農協青年部で、半年以上も出ておるような者には月に一回ぐらいは有給で家庭に帰れるような施策をしてもらいたいという決議を行なっておるところがあるわけであります。これは農村における重大な社会問題、風紀上の問題を含む大問題でございますが、この出かせぎ等に対する実態をどの程度に把握しておられますか。出て行くほうは農林省の所管であり、受け入れ側のほうは労働省の所管であると思うのでありますが、この実態をどのように把握しておられますか、農林大臣及び労働大臣答弁を願いたいと思います。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かにお説のように、季節労務に出ておることで、私のほうでも調査をいたしております。いまちょっとその実数につきまして——もう少し調べてから申し上げたいと思います。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 最近におきまする季節的移動労働者需給関係は、一般産業雇用の増加に伴いまして、どちらかと申しますと、求人難状況になっております。公共職業安定所で取り扱っております数も、三十七年には二十万五千人ということに相なっておりますが、その職種は、農耕、建設食料品製造加工などが多いようでございまして、そのうち最も多いのは建設業関係の九万九千人でございます。これらの季節的移動労働者につきましては、全国主要地区におきまして需給調整会議を開催し、労働条件改善等の指導をいたしまするとともに、求職者の把握及びその需給調整を行なっておるのでございます。今後さらにこれらの措置の推進をはかりまして、季節的移動労働者雇用条件改善について万全を期してまいりたい、かように思っております。  また、季節的移動労働者の賃金、労働条件などは、雇用先の産業企業実態によっていろいろ異なっておりますが、一般的には、公共職業安定所を通じて紹介された場合には、当該企業の一般労働者の賃金及び労働時間と同程度が行なわれておるような状況でございます。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業改善対策の適切な推進をはかる見地からも、農家労働力の就業状態を動的に把握したい、それは重要なことでありますので、昭和三十三年度から標本抽出調査によりまして、農林漁家就業動向調査を継続実施しておるわけであります。この調査におきましては、季節労務による労働力移動を含め、自力農家人口の動態及び他産業部門との間の労働力の交流状況につきまして統計的把握につとめているところであります。その調査でございますが、季節労務関係の流出状態は、性別とか、年齢、階層別、出身地域別及び就業地域別、就業先の産業種類等に集計をされております。御指摘の新潟県の北蒲原郡の調査も出ております。  なお、こまかい数字が出ておりますけれども、もし御必要でございますならば、事務当局からこまかい説明を申し上げます。
  27. 石田宥全

    石田(宥)委員 労働大臣に伺いたいのでありますが、最近出かせぎが非常に多くなりまして、季節移動が激しくなりまして、おそらく農村から出ておる議員の皆さんのところに参っていると思うのでありますが、土建業などが何段階かの下請け、下請けまたその下請けというようで、末端へ参りますと責任の所在が明らかでなくなってしまう。私どものところへも数件持ち込まれておるのでありますが、中には、一カ月も働いて、そうして、一銭ももらえないで帰って行く。   〔委員長退席、松深委員長代理着席〕 この責任を追ってみると、全く無責任なものがすでにその賃金を受け取っておるというような状況なんでありますが、こういうものに対して、少なくとも公共事業に対しては、やはり元請けが賃金不払いに対しては何らかの形において責任をとらなければならないような措置を施すべきではないか。従来、ややもすると、土建業などでは、そういう何段階かの下請けで責任の所在が不明確になって、賃金不払いのままに泣き寝入りをしている者が非常に多い現状にかんがみまして、これらの点について何らかの対策をお考えになっておるかどうか。これは重要な問題でありますので、はっきり御答弁を願いたいと思います。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 建設業等におきましては、農閑期などを利用して臨時に雇われる労働者が相当あるのでございますが、ただいまお述べになりましたごとく、建設業の中には労働関係が近代化されていない事業場も少なくなく、この間に賃金不払いの事件も発生を見ておるのであります。労働省といたしましては、従来から建設業などの労働関係の近代化ということを行政の重点事項として取り上げまして、労働基準法に基づく監督指導の強化、労務管理の近代化指導などにつとめてまいっておるところであります。特にこの種の賃金不払い群件につきましては、建設現場が一時的のものが多く、当該労働者が季節労働者であります場合には、その者が国へ帰ってしまった結果、解決が困難となるというような事例もあります点などを考慮いたしまして、早期発見、早期解決につとめておるところでありますが、ただいま申されました責任関係を明確にするというようなことは確かに必要なことと思いまするので、今後は特にその問題につきまして研究さしていただきたい、かように存じます。
  29. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、農業基本法にいうところの自立経営農家育成協業の助長の問題について伺いたいと思うのでありますが、政府所得倍増計画の中で、二町五反規模農家を百万戸つくる、それは従事者三人ぐらいで粗収入百万円ぐらい、収益として六十万ないし七十万、こういうことを決定されておったのであります。最近これについてはいろいろな批判があるようでありますけれども、自立経営農家育成ということはどの程度に進んでおるか。総理大臣の先ほどのお話では、三十七年には一町五反くらいの規模農家が若干ふえた、だから自立経営農家育成は可能であるような答弁があったわけでありますが、これについてどうお考えになっておりますか。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど総理からも申し上げましたが、一町五反以上の農家相当ふえておる。ことに二町五反以上の農家も最近において十万戸ぐらいふえております。これはいい面でございます。しかし、目標といたしましては、やはり自立農家をそういう方向に持っていくということで進めておりますが、それ以下の小さい農家がございます。そういう農家は一体自立できるのかできないのかという問題でございますけれども、農業そのものだけでは困難な面があろうと思いますので、兼業農家として農業外の所得で補っていく。また、これが一面におきましては、所得の面では相当多い面もございます。  それから農業自体から申しますと、いわゆる選択的拡大と言いますか、果実方面とか畜産方面とかに、それだけの経営面積がなくとも、所得の面におきましては相当所得を増している、こういう、面も出ております。でありまするから、大きな目標といたしましては、私どもは、経営規模を大きくして健全な自立農家育成していく、こういうことにつとめておりますけれども、経営規模が大きくならないものであっても、やはり所得の面におきましては選択的拡大方向所得を増していく、こういう方向に指導しておるというか、引っぱっていっておるわけであります。
  31. 石田宥全

    石田(宥)委員 一町五反規模農家が若干ふえたので、二町五反規模農家百万戸つくるという計画が遂行されるような錯覚を与えるような答弁をしてはいけませんよ。二町五反規模農家が百万戸できる見込みがあるかないかということを聞いておる。二町五反でも、いま反当たり一万五千円の収益といたしますと三十七万五千円です。厚生省が示しておる国民の標準家族五人の最低生活費は四十七万円をこえておる。最低生活費四十七万円ですよ。ところが、二町五反規模で反当たり一万五千円の収益でも三十七万、五千円であって、これでは最低生活も保障されないのではないか。これは再検討をする必要があるとお考えになるかどうか、ひとつ伺いましょう。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 二町五反以上に拡大していくという、こういう方針は私は間違ってないと思います。それの見込みがあるかどうか、見通しがあるかどうか、こういうことでございますけれども、私どもはその見通しといいますか、その目標に向かっていろいろの農業政策を行なっておるわけでございます。申すまでもなく、土地をすべて管理しておるわけではございませんから、一挙にどうということはできませんけれども、たとえば土地基盤拡大等によりましてやっていく、あるいは構造改善等によってやっていきますとか、あるいはまた自作農資金といいますか、そういう資金を相当出しまして耕地面積の拡大に資するとか、そういう方面で少なくとも二町五反以上の農家をつくっていく、こういう目標でいろいろの農業政策を行なっておるわけでありまして、できるか、できないか、これは四十五年度までの計画でございますが、私は、そういうほうに向けていくことに最善の努力をいたしておる次第でございます。
  33. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう無責任な答弁をしてもらっては困るのです。できもしないことを、それは目標だからいいという、こういうわけにはいかないですよ。できる可能性はないのじゃないですか。これは基本法をつくるときにわれわれが何回も指摘したことなんです。大体農地が反当二十万円くらいでしょう。二十万円の金を借りて、そうして五分の利息でも一年一万円ですよ。それに償還金二万円で、普通の農業経営すら困難だというのに、償還金二万円、利息一万円で三万円よけいに支払ってどうして農業経営が立つのです。できもしないことを目標だなどと言って、何か農民希望を与えるような錯覚を起こさせるようなことを言うべきでないと私は考える。そんなことは困難なんです。できはしないですよ。だから、そういえ、点を私は明らかにしたいと実は思っておるのでありますが、同時にあわせて今度は、最近はいろいろな意見が出ておりまして、たとえば北海道大学のある教授は、これは三町五反以上でなければだめであろうと言っておる。ところが東大のある教授は、これは四町くらいの農家を百万戸つくる必要がある、こう言っておる。ところがある東大の教授は、十五町歩くらいの農家にしなければこれからの国際競争には太刀打ちできないのだ、こう言っておる。最も皮肉なことは、政府が二町五反規模農家を百万戸つくるということを打ち出すときに、一番参考とされた学者が——これは名前は言えませんけれどもおわかりでしょうが、二町五反規模農家を百万戸つくる必要があると言ったその人が、今度は四町歩ぐらいの農家を百万戸つくらなければならないと言っておるんだが、農林大臣は、それでもやはり二町五反規模農家を、できるかできないかわからないけれども、それを目途としてやるんだなどと、農業基本法ができる当時にすでにわれわれは、それはできないんだということを指摘したことを、まだ固執されますか、どうですか。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 おことばを返すようでございますが、二町五反でもできないじゃないか。それで、四町やれ、五町やれ、これはなおできないことでございます。しかし、私どもは、やっぱり所得倍増計画で計画いたしました二町五反平均、百万戸、労働力三人くらい、これはできない、できないと言うけれども、実際にふえておるのもあるのですから、できないからではなく、できるように努力するのが私どものつとめだと思うのでございまして、どうもせっかくですが、できないんじゃないか、やめちまえというわけにはまいりませんで、私は、その方向へ進めていくことが、農家のためでもあろうと思います。  それから、いろいろ四町、五町、これは、その説をなせばどういう説でもできると思います。大きくて少ない労働力でやるという予定といいますか、説をつくれば、いろいろな面からこれはできないことはないと思います。しかし、そこへ持っていくのにどういうふうにしたらいいかということが、私どもの問題でございますので、私どもといたしましては、いろいろ御説のような点もさらに検討いたしますけれども、平均二町五反、百万戸造成と、こういう方向へ努力していきたい、こう考えております。
  35. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで農林大臣、二町五反規模農家すらできないのに、いろいろな説をなすものがあるからといって、これはそういうものに取り合っておることはできないということでありますが、そうでしょう。そこで、二町五反規模自立経営農家育成できないということは、どこに原因があるとお考えですか。これは大きな原因があるのですが、それを承りましょう。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは、農家所得が全体としてそれほど多くないということに原因しておると思いますけれども、しかし、実際に、御承知のように、二町五反以上の経営農家がやっておりまするし、また所得の点におきましても、労働力を節約して機械化するとか、あるいは耕地を集団化するとか、あるいは選択的拡大方向に向けていくとか、こういう方向に持つていきまするならば、これはできないということは私はないと思います。そういう面におきまして、原因は農家全体の所得が少ないということ、所得の少ない原因は、農地の分散とか、あるいは近代化ができておらない、機械化も、小さい機械は入っておるけれども、大きい機械でやっていけない、こういういろいろの要素があろうと思います。要素があろうと思いますが、そういう障害を克服して近代化していこう、こういうことでせっかく進めておるような次第でございます。
  37. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、二町五反規模という問題がありますけれども、とにかく経営規模拡大しなければならないということには、これはだれも異存のないところだと思うのですが、一番大きな障害は、農地の価格が高過ぎるということだと思うのですよ。農地価格がこういうふうに高くては、諸外国のように濃密な施設に対する投資ができないんです。そこで、この農地価格に対して、一体どうお考えになっておるか。  それから、農地の流動化ということが盛んに、言われて、農林大臣は農地法改正について事務当局に検討を命じたといわれておるのでありますが、農地法の改正を行なえば、農地の流動が容易になるとお考えになっておるのかどうか、あわせてひとつ御答弁を願いたい。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 経営規模が大きくならないのは、土地価格が相当高い。したがって、土地を取得するのに困難だ、金が要る。まあそういう面で、実は今度の金融面などでも、さっきのお話と違って三分五厘の低利にいたしまして、土地取得ができるようにいたしましたが、それは余談というか、ほかのことでございますが、一面におきましては、さっきからお話がありましたが、たとえば兼業農家等におきましては、土地に対する執着もあるし、あるいはまた土地の価格が高ければ売ってもいい、こういうような面もあります。一がいに土地価格が商いから二町五反にならないんだということには言いかねますけれども、事実農地価格が高いということにつきましては、私は、これは高くあってはいけない、こう考えております。そこで、耕地の拡大ということにつきましては、土地改良あるいは圃場の整備、集団化ということも考え得られますけれども、同時に農地法の問題で障害があるかどうか、こういうお尋ねだと思います。この点につきましては、土地取得の上限といいますか、土地の取得を制限しておりました。制限しておったのを、三十七年にこれはやめまして、どういうふうに大きくして毛よろしいというふうに、上位の制限を撤廃いたしております。これは土地拡大の一つの障害を除いたと思います。同時に、農地法の関係で三十七年度に改正いたしましたように、農業法人をつくって経営していったらどうかという道を開いたのでございますけれども、これ、自家労働力が二分の一以内ということで、ほんとうの企業農業という面には触れていないわけであります。農地法といたしまして、こういう面はどうしようか、もっと拡大して自家労力以外にも相当労働力を入れてもいいという場合に、協業のための法人をつくることを進めてもよかろうかどうだろうか、まあ研究問題でございます。こういう問題がございます。  それから農地法の改正問題につきまして検討を命じております一つは、いまの流動化の問題でございますが、所有権の流動、所有権を移すということが必ずしもスムーズにいっていないような現状でございます。そこで所有権でなく、使用権といいますか、賃貸借といいますか、賃貸によって耕作面積を広げていくということがいいのかどうか、所有権木位でいくか、あるいは賃貸借で広げていく場合も考えていくべきじゃないか、こういう点も検討の一つにいたしております。そういうときに、一つの問題といたしましては、小作料の問題がございます。いま御承知のように、農協へ不在地主が農地を信託するという場合におきましても、はたしてこれがもとへ戻って自分が百姓する場合に、戻してもらえるのだろうかどうだろうかという不安が一つあります。同時に、小作料といいますか、賃貸料が安くてはどうだろうかという問題がございます。そういう面で、農協に対する信託の制度は開きましたが、現実に、御承知のように、十数件くらいしか実際には行なわれておりません。認可を受けてそういう方途を講じようという農協は約半分ありますけれども、実際に行なわれておるのは少ない。でございますから、所有面を移す、ばかりでなく、賃貸借で耕作面積をふやすという方法をどういうふうにこれをやっていったらいいか、これは検討事項でございますから、いま検討一項を申し上げておるのでございます。  それから、農地転換につきまして、いま許可をいたしております。これにつきましてもいろいろの問題が起きておりまして、宅地あるいは工場等については、あまりそういう制限をしないでもいいじゃないか、こういう議論もあります。また農業方面からいいまして、優良農地とか集団化している農地を自由に農地の転換を許すということになると、先ほどのお話のような集団化とか、あるいは近代化に支障を来たす場合がありはしないか、こういう農地転換の問題等もあります。こういう問題を含めまして、各方面の意見を聞きましたり、実態を調査いたしまして、農地法をどういうふうに持っていったらよかろうかということを検討いたしておる次第でございます。
  39. 石田宥全

    石田(宥)委員 この問題はいろいろ問題があるわけですけれども、時間の都合もありますから割愛いたしまして、とにかく農林大臣は、農地の価格が高ければ農業経営は困難になるということをお認めでありますから、この程度にいたしておきたいと思うのでありますが、河野建設大臣、居眠りなさてっているようでありますけれども、ひとつ伺いたいのであります。  一昨年の予算委員会で、河野建設大臣は、土地の価格が高過ぎるのではないか、これについて何らかの措置を講ずる必要があるのではないかと申し上げたところが、そういう意思は全くない、農地価格もその他の土地価格も高いほうがいいんだというような答弁をなさったのでありますが、いま、建設大臣として公共事業を進められるにあたって、あるいは農地価格等について、やはり当時のお考えと変わらない御意回であるかどうか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 建設専業を推進いたしますにつきまして、いわゆる川地が高いというのは、市街地、都市の川地は確かにお話のように非常な高値になりまして、ところによりますと、工事費の半額以上、はなはだしきは七割以上が川地というものもないわけでもございません。しかし、農村、農地は、おおむね工事費の一割前後、もしくはそれ以下というような程度でございまして、農地としては高いか安いか、これはまた別でございますが、公共事業を進めてまいります上におきまして、いま田畑の価格が高過ぎて、工事の進捗に——安いにこしたことはございませんけれども、支障があるというようなことは考えておりません。
  41. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、自治大臣に固定資産の評価がえの問題について伺いたいのでありますが、同定資産全体に対して、評価がえはするのか、しないのか。これをやれば、宅地、山林、農地等について、どの程度評価がえのために上がるのか。農地の固定資産税は据え置きにすると、言っておられるが、それはいかなる立法措置を講ぜられるのか、これを伺いたいと思います。
  42. 早川崇

    ○早川国務大臣 新しい評価基準によって評価をやっております。その結果を待って全体がどうなるかお答えできると思うのですが、農地につきましては、前の委員会で申し上げましたように、法律によりまして、三十八年度の固定資産税に超過する場合が出た場合には、三十八年度の固定資産税の額によるということを税法において法律で明記いたしまして、引き上げないということにいたすことにいたしております。
  43. 石田宥全

    石田(宥)委員 三十八年度より固定資産税は上がらないような立法措置をやるというお話でありますが、これは何年間くらい——承るところによると、時限立法で二年間ということですが、そのあとはどういう措置をされるか。それから農地の固定資産の評価がえにあたって、限界収益率というものはどれくらいにされるつもりか、その結果おおよそどれくらいになるか、この点を承りたい。
  44. 早川崇

    ○早川国務大臣 固定資産の再評価によりまする基本的な固定資産税の問題は、税制調査会で検討いたしていただいておるわけでありまして、それを待ちまして処置いたしたいと思っておりなすが、とりあえず農地につきましては、経過的措置といたしまして、次の評価時期、すなわち三年後までの経過措置といたしまして、三十八年度より上げないということに立法化するわけであります。  それから反当たり純収益額の限界収益額に対する比率は、五五%でございます。売買価格にそれを調整いたしまして評価する、こういうことになっております。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 この問題も実は問題がありますが、きょうは答弁になっておりませんけれども、先般の御答弁によると、農地については特例法で抑える、しかし山林、宅地についてはある程度の増税はやむを得ない、こういう答弁でございましたが、そのとおりでございましょうか。
  46. 早川崇

    ○早川国務大臣 御承知のように、土地とかいろんな価格は、実際は上がっておるわけです。したがって、新評価制度によりまして、かなりの評価額の高騰というのは避けられないと思います。ただし、この前にも申し上げましたように、経過的措置といたしまして、固定資産税の激増を避けるために、農地以外の面につきましても、上がる部分につきましても最高一・二倍、それ以上こえる額になりました場合には、三十八年度の固定資産税に対する一・二倍の額までに引き下げる、こういう措置を立法でやりたいと考えております。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 総理大臣に伺いますが、総理大臣は、総選挙にあたりまして、その公約で、同定資産税は下げる、こういう演説をやっておられた。新潟へ来られたときも、そういう演説をやられた。これは選挙川でちょっとオーバーな表現だと一応受け取りましょう。ところが、国会では、昨年の十月二十三日に、固定資産税の増徴は全く考えておりません、こういうことを言っておる。そのほかでも言っておりますけれども、一体国会の本会議で、固定資産税は上げません、絶対に上げませんということを言っておいて、いまの自治大臣の答弁によると、一・二倍まではやむを得ないということであるが、そうすると、五〇%の増徴になるんじゃないか。これは選挙で少しオーバーな、言い方をしたということは見のがしておくとしても、国会の本会議で絶対に増徴いたしませんというのが、五〇%も上がったのでは、私は納得ができない。どういうことですか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 問題は、農地の問題でございますので、農地の問題につきましては増徴いたしませんと、こう言っておるのであります。他の地目につきましてのことを私は考えて答えたわけではありません。問題は、農地農地という問題がありましたので、言ったわけであります。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 農地ではないのですよ。これは国会の記録をとってあるのですが、固定資産税を増徴しようということは全然考えておりません。増徴いたしません、御安心ください、と胸を張っておるじゃないですか。それは速記録では、農地とは言っておらないのです。固定資産税はと、何回も言っておるのです。国会の本会議で約束したことをほごにするのかどうか。約束は守りなさい。うそは申しませんと言ったら、約束はちゃんと守りなさい。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、問題が農地の問題になっておりますから、農地の固定資産税は上げませんと、こういう意味でございます。前とうしろとをお考えくだされば、一体に各地目、宅地あるいはビルその他のものも全部上げないという意味ではなく、質問の要点に向かって答えているのでございます。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはそうではないのです。勝間田委員の質問に対しても、山花委員の質問に対しても、一回も農地とは言っていない。同定資産税と、ちゃんと言っているのです。これはあなたがうそをついたことは間違いないので、ここでうそはつかないということで、やはり固定資産税の五〇%の増強はいたしませんならいたしませんで、まだこれから間に合うのですから、これはひとつ間に合わせますかどうですか。うそをついたことにしますか。どうですか。——自治大臣に答弁を求めているのではない。総理大臣答弁を求めているのです。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、先ほど来申し上げておるように、農地の固定資産税の増高が問題になっておりますので、農地の固定資産税は上げませんと、こう言っておるわけでございます。これは、もう一般の常識で私はわかると思います。一問一答の場合とは違いますから、それなら宅地はどうするかと言われたときには、宅地の分は別に考えますと言ったでしょう。質問の趣旨は、農地をどうするかという問題じゃございませんか。そのときに、本会議で、農地のほうはやりませんかというのを、固定資産税はやりませんと言った。それならビルや宅地はどうするかというときには、これはまた別の答えようがあることは当然です。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは記録をお読みになれば、農地などとは一ぺんも言っていないわけです。固定資産税はと言い切っておるのですから、総理大臣がうそをついたことは、はっきり記録の中でいたしますから、これ以上追及いたしません。  そこで、次に総理大臣に伺いたいと思うのでありますが、旧地主の報償について、これは先般、三月中に調査が終了するので、その時点で考える、こう言っておられる。ところが自由民主党は、党議をもって、交付公債の準備費十億円を予備費から流用するときめておるのであります。そういたしますと、総則、大臣は、総理大臣であると同時に、これは総裁なんであります。党として党議できめれば、総裁は党議に従うと、せんだって本委員会答弁になったわけでありますが、きょうはここで総理大臣としての答弁を伺うわけであります。総裁としては党議に従うから、旧地主の報償は交付公債の準備費十億円を予備費から流用するときめれば、これは一体総理としてはどうお扱いになるおつもりですか。承りたいと思います。
  54. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 自治大臣から、先の質問に対して補足の答弁があります。
  55. 早川崇

    ○早川国務大臣 石田さんは一・五倍、五〇%と言っておりますが、それは誤りです。最高一・二と言ったので、一・五とは言いませんから……。それから、全体として固定資産税は二千億ありますが、自然増収分も含めて、住宅とか、下がるのもあるわけです。そういう意味で、前年度に比べて全体の固定資産税で大幅な増税をしない、こういうことでございますから、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 農地報償問題は、党と相談いたしまして、三月末までに調査を完了し、そうして措置すると言っておるのであります。予備費その他については、私は聞いておりません。
  57. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは党として決定しておることは、あらゆる新聞がすでにこれを報道しておる。しかし、まあこれはいいでしょう。  そこで今回、本年度予算では、政府は在外財産審議会の設置をし、調査費として二千万円を計上いたしましたが、なぜこの機会に、これは市外財産という、ものに限らないで、強制疎開や、沈没船舶や、貯金の封鎖令による犠牲者や、あるいは学徒動員などの、広範な国民の戦争被害の調査に踏み切らなかったのか。同じような性格のものが、一つやれば次々と全部出てしまいります。なぜ一体、全体を調査をすることに踏み切らなかったのか。一部の人が騒いだから、だからこれをやる。また別なものが騒いだからまたやる、こういうふうな態度は、はなはだ不見識なものといわなければならないが、総理大臣の所見を伺いたい。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 引揚者の方々につきましては、お気の毒の点が非常に多うございます。したがいまして、昭和三十二年度予算で五百億円の交付公債を一応いたしたのは、御承知のとおりでございます。その後におきましても、調査の要ありという声もありますし、私も調査する必要があると認めたからやったのであります。他の問題につきましては、まだそこまで考えておりません。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、農業構造改善事業について伺いたいのでありますが、当初農業構造改善事業は、パイロット地区は部落単位に、一般地区は市町村単位という決定であったのでありますが、最近の状況を見ておりますと、一般地区といわれるものが全部部落単位に行なわれておりますが、いつ、これをどういう即由で切りかえられたのですか、伺いたいのであります。
  60. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 パイロット地区、あるいは一般構造改善地区等によって構造改善を進めておりますが、パイロット地区につきましては、十分によくいっていない個所などもありますし、これは一般の構造改善地区に振りかえて進めていく、こういうことにいたしております。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕  それから一般構造改善事業でありますが、これは部落単位というよりも、一町村内におきまして、主産地形成その他の点から検討した結果、一カ所を指定といいますか、認めてやっておったというのが現状であります。しかし、本年度からは、それでは町村合併後の町村が非常に広いのでございまして、いまのお話のように、部落的になっては困るじゃないか。でありますので、熱意があり、そしてまた、その必要は当然あるのでございますから、そういう面をよく検討いたしまして、一町村に一つだけということでなく、これはふやしていこう、こういう方針で予算の措置などもとっておる次第でございます。
  61. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうなりますと、農林大臣、私どもは、一般地区というものは市町村の区域によるということで、希望を持ち、期待もいたしておったのでありますが、部落単位ということになりますと、この前に農林省が行なわれた新農村建設とあまり変わりのないものになって、最近では、おそらく専門家の間では、新版新農村建設事業ではないか、こういう批判が強くなっておるようでありますが、どうでしょうか。
  62. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 新農村建設は新農村建設として、相当の意義があったわけでございます。しかし、御承知のように、国内的の他室業との格差是正していこう、あるいはまた、開放経済下における農村の体力を改善していこうと、農業基本法等によりましても、あるいは近代化、機械化、あるいは畜産、酪農、果樹、こういう方血へ選択的拡大をしていこうと、こういうことでございますので、新農村建設相当似ておる点もございます。似ておる点もございますが、さらにこれを前進していこう。いまのような国内的、あるいは国際間における日本農業という関係から前進していこう、こういうことから構造善慈事業をやっておるのは御承知だと思いますが、そういう意味におきまして似た点もありますが、前進的意味におきまして構造改善事業を取り上げておるわけでございます。
  63. 石田宥全

    石田(宥)委員 この構造改善事業に対しては、総理大臣の施政方針演説の中にも、また、愛知委員のこの間の予算委員会における質問でも、構造改善事業を行なえば、日本農業の体質改善ができ、農業農民の姿が非常によくなるような印象を与えようとしておられるようでありますけれども、いま大臣から答弁がありましたように、市町村単位が合併で大きくはなっておるけれども、おおよそ二十部落くらいの中で二部落くらいしかやらないで、体農村の体質改善などと言えるかどうか。どうでしょうか。私のほうの金沢の農地事務局の局長の報告を見ると——これは農林省に報告しているのですよ。北陸農政局の管内では、一地区二千町歩くらいだが、構造改善事業の対象となるのはその五%くらいであるということを報告しておる。総理大臣、あなたは施政方針演説の中でも、しばしばそういうことをおっしゃるのですが、構造改善事業というものが、五%くらいの地域の構造改善して、それで一体農業の体質改善ができるなどと考えておられるのかどうか、よくひとつ考えてください。構造改善専業などと、何か非常にいいもののように、それでもうすっかりよくなるような幻想を与えないようにしてもらいたい。私は、あなたの奥さまが、畳二十枚敷いた部屋で、たった一枚骨を入れかえたから、これで骨を入れかえたとおっしゃるかどうか、ひとつ伺いたい。
  64. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 構造改善事業は、狭義に解釈すると——狭義というか、農林省等におきまして指定しているところだけに考えを持っていけば、そういう御意見もあろうかと思います。しかし、構造改善というのは、私は、これは全農村、漁村、山村等が構造改善しなくてはならぬ、これはお考えのとおりだと思います。何にいたしましても、先ほど申し上げましたように、農民所得等をほかと同じに持っていくということは非常に困難でございますが、格差をなくしていこう、あるいは開放経済下における日本の農山漁村の体力を強くしていこう、こういう点から考えますならば、指定するとしないとにかかわらず、日本農村構造改善といいますか、体質改善をせざるを得ない、変貌しつつあるところの農村が、変貌をしなくてはならぬ、こういう時期に際会いたしておると思います。でありますから、構造改善事業が指定されて、平均一億一千万、今度は二千万円の融資も合わせての一億三千万円ですか、事業をするということだけが私は構造改善じゃないと思います。そういう構造改善の推定は五%程度だということでありますが、それ以外におきましても、御承知のように新潟等におきましても、全国的におきましても、選択的拡大方向に沿うて、あるいは機械化ができるような方向に沿うて土地改良、その中でも圃場の整備とか、あるいは草地の造成とか、こういう面を強く取り上げております。これは、一つのやはり広い意味構造改善事業でございます。あるいはまた、その他のいろいろな農業施策等も、これは農業の体質を改善しようという施策で、非常に多くの予算を出しておる。ですから、構造改善指定の場所として一部落や二部落だけでは意味をなさないんじゃないか、こういうことでございますけれども、それはそれなりに、非常に強く、進み方を早くする意味におきまする構造改善の指定でございます。全体的に構造改善をしつつある。近代化ということばがよく使われておりますが、近代化の方向に沿うて構造改善を進めておる。こういう御認識がおありのはずですが、そういう意味におきましての構造改善というふうにお考えを願えれば幸いだと思います。
  65. 石田宥全

    石田(宥)委員 問題は、やはり予算の問題だと思うのです。三千百町村を十カ年でおやりになっても、三千億ちょっとなんです。三千億や四千億で日本農業の体質改善をはかるんだなどということが、おかしいと思うのです。豊住地区では、反当たりの基盤整備費が六万二千円かかるのです。三千町歩だと十二億以上かかる。そこへ一体構造改善事業の予算は、幾らおやりになるおつもりなんですか。
  66. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 豊住地区という具体的のところでどれくらいやろうかということは、事務当局から答弁いたさせます。ただ、構造改善事業そのものが、十年かかっても三億や四億じゃないか、こういうことでございますけれども、たとえば先ほど私から申し上げておりますように、近代化あるいは選択的拡大方向へ向けての土地改良等におきましては、ことしの予算だけでも八百億円くらいを計上しております。こういうものは、構造改善の大きなてこといいますか、あるいは構造改善そのものでございます。でありますから、指定したその地区だけでは、いまのような御批判もあろうかと思いますが、全体的に日本農業構造改善していくということにつきましては、相当私どもも心を用いて、予算の裏づけ等もいたしておる次第であります。
  67. 石田宥全

    石田(宥)委員 事務当局の答弁は要りません。そういうような状況でありまして、一億一千万円が標準ですね。大きいところで一億もあり、小さいところなら数千万円もあるけれども、それくらいのことで農業の体質改善構造改善ができるものでないということは、大臣おわかりだと思うのです。どうですか。
  68. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 構造改善がどういうところまでいくかという到着点の問題があろうかと思いますけれども、しかし私は、その指定した地区々々におきましては、地元の意向等もさらに弾力的に検討いたさせまして、そしてその目的に近づけるように進めていきたいと思います。完全にこれならもう変わった、こういう判断はなかなかむずかしかろうと思いますけれども、しかし、数歩か数十歩か前進させることにつきましては、私は非常に寄与していく、こういうふうに考えております。
  69. 石田宥全

    石田(宥)委員 政府構造改善事業の指導要領によりますと、ことごとくこの生産性を向上するという見地からだと思いますけれども、機械の導入に大きなウエートをかけております。機械化というものは生産性が上がるけれども、経済性がこれに伴っていない。私は、時間がありませんから、これに一々答弁を求めようと思いませんけれども、農林大臣並びに農林省の諸君に一言申し上げておきますが、構造改善事業におけるこの機械化のために、農民がどれくらい貧乏になっておるかということです。ここに一つ例をあげますが、これは東大の戸苅さんが指摘をしておりますが、反当たりの自動耕転機は大体一馬力が適当だ。ところが実際は能率の関係や、あるいは深耕しなければならない関係で五馬力くらい使っておる。そうすると、自動耕転機は大体八〇%のロスがあるんだ。こう言っておる。そうすると百五十万台で、一台二十万円でありますと、これは幾らのロスがあると計算されますか。ひとつ計算してみてください。
  70. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは、農業の近代化の意味におきまして機械を導入する。ことに大きな機械でやっていきたい、労力もはぶいていきたい、こういうことでございますが、経済的に見まするならば、他の産業で機械を使う場合と農業で機械を使う場合におきましては、非常にロス——ロスでもございませんが、能率が上がらないということは申すまでもございません。工業機械ならば年がら年じゅう機械を操作できますけれども、農業におきましては、ある時期だけに限られておりますから、機械の償却費等につきましても、工業において機械を使う場合と比べて相当不利な立場にあることは、申すまでもございません。しかし、いまの実例は別といたしまして、やはり農業労働力が非常に減っているということ、あるいはまた農民を重労働から解放していく、こういう意味におきましては、いまの小型機械ばかりでなく、大型機械も導入して、そうして農業の近代化をはかっていきたい、これは近代農業として当然なことだと思います。しかし、それを使う基盤というものが十分整備されておらない。土地の区画もまちまちでありまするし、所有形態、耕作形態から言いましても、一カ所に土地が集団しておらない。耕作、面積等も十分でない、こういういろいろな機械化に対する支障もございます。そういう面は、機械化をなお推進していく基盤をさらにつくっていきたい、こう考えております。  それから農業の機械でございますが、先ほど申し上げましたように、工業の機械なら年がら年じゅう稼働いたしますが、農業機械は、ある一時期だけしか稼働いたしませんから、同じ農業機械を買う、あるいは借りるといたしましても、採算上は非常に不利でございます。ことにまた日本の農機具、農業の機械等の輸入——大きい機械になると輸入が相当あります。これが実際農民といいますか、そういうところに、手に渡るときにはなかなか高いものになっておる。こういう面も農業機械化の一つの不利な点だ、進めにくい点だと思います。こういう点につきましては、国内の生産も進め、あるいは国内における価格をぜひ低くしたい、こういうことに尽力いたしておる次第でございます。  それから、御承知のように、機械を貰う近代化の資金等につきましても、低利の資金を回しまして機械化を進めていきたい。いろいろな支障はございますけれども、その支障を極力除いて、そうしてなお近代化を進めていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  71. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはたいへんな問題なんですよ。ことしの農林予算が三千三百五十五億だけれども、このうち食管繰り入れの一千二十六億を除きますと、二千三百億くらいなんです。ところが、これは農民の自動耕転機だけですよ、自動耕転機だけのロスが、全農林予算に匹敵するという現状なんです。そこでいま農林大臣がるるおっしゃったように、だからこの資本主義的な経済制度のもとでは、日本では農業というものはなかなか自立経営が困難なのではないか。だから私は、ほんとうに農業農民生活をよくする意思があるならば、ことしは政府は四十五億ばかり無利子の金を出しましたけれども、やはり無利子の、長期の資金をもっとつくらなければならないということと、基盤整備は全額国庫負担でこれをやる。総理大臣がよくおっしゃるところの国づくりの一つとしてこれをやることと、それから機械のための犠牲というものは実に深刻なんです。私はこれは前に農林省の役人にも指摘をしたのでありますが、最近ライス・センターなんというのは膨大な赤字をどこでも出しておる。だからこの機械貧乏からの解放のためには、機械は国と県がこれを持って、これを買ってやって、そうして農民に反当たり幾らというふうに使わせる以外に農業経営というものをよくすることはできないのではないか。これはいま農林大臣もちょっと触れられたんでありますが、どうでしょうか、ひとつ私は提案をしたいと思う。
  72. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 構造改善を国で全額持ってやったらいいじゃないか、あるいは機械は無利子の金で買わしたらいいじゃないか、そういう方向といいますか、御趣旨には私は異議があるわけではなく、非常にけっこうだと思います。しかし、やはり構造改善ということをよく考えますならば、やはり構造改善というものは、これは政府が非常に力を入れておりますけれども、構造改善自体はやはりみずからの問題でございます。農民自体の問題で、農民自体の体質を改善していこうということではないかと私は思います。そういう意味におきましては、日本は自由経済体制で、資本主義といえば資本主義でございます。そういう面からするならば、やはりみずから立つといいますか、自立的な気持ちに対して、その熱意に対して政府がこれを助成してその熱意を達成させる、こういう考え方、あり方のほうが私は当を得ておると思います。それから資本主義経済下における機械化というようなものはだめじゃないかといいますけれども、それは、御承知のソ連などにおきましても、いろいろな機械のステーションを設けたり、ソ連の農業政策におきましても、これは非常に苦しんでおるような状況だと私は思います。というのは、ああいう制度になれば、農民というものはなくて、これは国家に対する農業労働者といいますか、国に対する雇用、こういうような関係になるのでございまするけれども、そういうところにおきましても、機械をいろいろな点で考えてきたようでございますけれども、なかなか十分にいかぬという面があると思います。これは、農業自体に内在する問題で、資本主義だとか共産主義だとかいうことではないと思います。農業に対する機械化の問題が非常に困難だ、こういうことだと思います。そこで、無利子でやったらいいじゃないかというお考えも一応もっともでございますが、私どもといたしましても、農業というものが、他産業と比較いたしましてそう採算のとれるものではない、不利な点がございますから、農業の金融等につきましては、低利、長期の金融を回す、こういう方針で、これも御承知だと思いますが、無利子の面につきましては、改良資金の四十五億のワクの無利子の制度を設けました。その他制度金融といいますか、農林漁業金融公庫の貸し付けの段階が、御承知のように、いままで九段階ありました。その九段階ありましたのを簡素化して四段階にいたしまして、三分五厘と五分、六分五厘、七分、こういうふうにいたしまして、できるだけ三分五厘のワクのほうへ入れていきました。同時にまた、償還期限等も、理想的にいえば、長いほどいいのでございますけれども、しかし、これも相当延ばして、それで低利、長期の金融でまかなっていけるような方向へ持っていきまして、このワクも一千七十億ばかりのワクでございます。近代化資金は、御承知のように六百億、昨年あるいは以前からはずっとこういうところも改めてきたわけでございます。コストの点等もありまして、無利子というようなことは改良資金だけにいたしましたけれども、その他の点におきましても、低利、長期という方向はなお進めていきたいと考えております。
  73. 石田宥全

    石田(宥)委員 最後に、米の問題でちょっと伺いたいのでありますが、最近米の需要の状況が漸次高まっておるようでありますが、一人一カ年当たりの消費量のここ四、五年間の数字を簡単に示していただきたい。もう一つは、これも四年間ぐらいの米年度末の政府手持ちの数量、これをお示し願いたい。
  74. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私、こまかい数字をいま持っていませんから、事務当局のほうから答弁させていただきます。
  75. 斎藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お呼ねの一人当たりの米の消費量についてまずお答え申し上げます。これは政府全体、民間も通じての一人当たりの消費量でございますが、これにつきまして申し上げますと、最近の五年間で申し上げますと、三十四年度が百十。八キログラム、これは一人当たりの一年間の消費量でございます。二十五年度が百十二・九キログラム三十六年度が百十五・六キログラム、三十七年度が百十五・九キログラムということになっております。最近におきましては、大体横ばいの状態でありまして、人口構成等から見ますると、若干横ばいないしは減少ぎみではないかというふうに実質的には考えられます。  それから次に、政府の最近におきまする年度末の在庫量でございますが、三十八米穀年度におきましては、政府の在庫量は三百五十九万五千トンでございます。それから三十七米穀年度は三百六十二万一千トンでございます。三十六米穀年度は三百四十四万二千トンでございます。これは、いずれも精米トンに換算したものでございます。
  76. 石田宥全

    石田(宥)委員 この一人当たりの消費量は、長官間違っていませんか。一人当たりの消費量は三十五年度は百十二・九キログラム、三十六年度は百十六・五キログラム、三十七年度は百十七キログラムになるようですが、これは間違っておりませんか。もう一度……。
  77. 斎藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま申し上げましたのは、内地米の御質問かと思いまして、内地米の一人当たり消費量を申し上げたわけでございます。
  78. 石田宥全

    石田(宥)委員 わかりました。長官はいま米の消費量が若干増加または横ばい、こう言っておりますけれども、年度末の在庫数量からいうと、だいぶ大幅に減少しておるようであります。そこで、最近の受配の状況、かつては配給を受けるものが非常に少なかったのでありますが、最近はどの程度になっておりますか。これも長官でいいです。
  79. 斎藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。最近におきまする一般的な状況といたしましては、農家の都市への移動とか、あるいは生産者、消費者、やみ価格の動向等から見まして、政府の買い入れ量もふえる傾向にありますが、同時に、それにおいて売却量も増加するというふうな傾向になっております。全体としましては、いま申し上げましたようなことで、大体安定基調に立っておると思います。  い御質問の売却量について申し上げますと、三十四年度が一月当たり五・一キログラム、三十五年度が五・四キログラム、三十六年度が六・一キログラム、三十七年度が六・八キログラム、三十八年度になりまして若干減りまして、六・七キログラムというような状況に相なっております。
  80. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に三十九年度の買い入れの見込み量と需要量、主食用と業務用と酒米その他加工用の数字を、数字だけを簡単にお示し願いたい。
  81. 斎藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。三十九年度の需要といたしましては、前年度よりも若干増加を見込みまして、全体といたしましては五百八十三万二千トン、それに工業用を加えまして合計六百二十七万九千トンというように予定いたしております。昨年よりも若干増加を見込んでおります。
  82. 石田宥全

    石田(宥)委員 需要のほうは六百二十八万トン近くでありますが、買い入れの見込み量はどれくらいでしょうか。
  83. 斎藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 供給量といたしましては、先ほど申し上げましたような持ち越しと、それから買い入れ量を合計いたしまして、需要の六百二十七万九千トンに対しまして九百九十三万二千トンというふうに三十九米穀年度に予定いたしております。この買い入れ量は約四千六百万石を買い入れる、こういうことで見込みを立てておりまして、買い入れの進展状況から見ますると、ほぼそういう方向で着々といま成績を上げております。
  84. 石田宥全

    石田(宥)委員 かなり需給の関係が逼迫をいたしておるようでありますが、そこで食糧庁は三十九年の一月一日より配給要綱の改正を行なったのでありますが、どういう点をどういうふうに改正されたかの御答弁を願いたい。
  85. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この間の改正では、一人当たり十キロという配給の限度は改正していないわけであります。しかし、今回の配給要綱の改正によりまして、徳用米という米が御承知のようにございます。徳用米がいままではワクの外にあったのでございますけれども、三十八年産米は非常に品質もよくなかったわけであります。五等米が相当多かった、こういう関係でありますので、別ワクであった徳用米を配給のほうに入れておるわけでございます。なお消費者の実際に配給を受けている量は、平均七キロ以内でありまして、徳用米は十キロ配給のワクの中には入れましたが、それは二%、三%程度にすぎませんので、今回の措置によりまして消費者に影響はないものと考えて、こういうふうに改めました。別に配給量を減らしたわけではございません。
  86. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣の答弁の中では、配給量を減らしたのではないとおっしゃるけれども、特選米と普通米とで一カ月一人十キロであったのが、今度は徳用米と準内地米とを含めて、これは実際は八キロ程度にするようにいま配給業者に指示を与えておるじゃないですか。これはいいかげんな答弁をしちゃいけませんよ。もう一度はっきりした答弁を願いたい。
  87. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 重ねて申し上げますが、徳用米は十キロ配給のワク内に入っておったのではないのでございます。ですから、十キロ配給の方針には全然変わりがありません。十キロ配給の中に徳川米が二、三%入っている。実際の配給を受ける率、量でございますか、量は大体七キロくらいでございます。十キロのワクは決してくずしておりません。
  88. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは米の需給関係が逼迫をしてまいりまして、そうしていま左ではワク外であったいわゆる下等米のくず米をも含めて、そのほかに準内地米をも含めても、いままでのような十キロ配給が不可能になったので、業者に対しては、それらのくず米やあるいは準内地米をも含めて、なお十キロ配給は困難であるから、そのように操作をすべしという指導をやっておるじゃないですか。これは、いままでの徳用米も下等米であったけれども、もっとひどいくず米までも、しかも量を減らして配給をしなければならないような米の操作をやった食糧政策の政府の失敗がここにあらわれたのではないかと私どもは考えておるのでありますが、政府は三十九年度における準内地米の買い入れはどの程度予定をされておりますか。
  89. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政策の失敗ではございません。先ほど申し上げましたように、三十八年度は米の質がよくなかったわけでございます。したがいまして、それとは別に、政府買い入れ米は昨年よりも非常にふえているわけです。先ほど事務当局から申し上げたと思いますが、ふえているわけであります。でありますから、政府の配給する総量はふえておるのでございます。町が悪くなった、こういう意味でございます。  それからまた、政策の失敗じゃないか、こういうことは、米をつくることをあまり奨励しなくて怠っているのではないかという御意見かと思いますが、決して食糧の自給というものを捨てておるわけではございません。米は米として生産相当できるようにいたしておるので、政策面を変えたわけでもなし、また政策の失敗ということではございません。需給関係は、幾分は窮屈な点がありますが、それが配給に影響を及ぼすような需給関係ではございません。そういう点でございますから、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  90. 石田宥全

    石田(宥)委員 顧みて他を言うような答弁を避けてもらいたいのですが、一体準内地米の輸入の予定数量は幾らかということを聞いておるのです。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 専務当局から答弁させます。
  92. 斎藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。  三十九米穀年度におきまする準内地米の輸入予定といたしましては、十三万トンを予定いたしております。
  93. 石田宥全

    石田(宥)委員 こまかな議論は避けましょう。大体三十万トン近くを買い入れしなければ需給のバランスがとれないように私どもは計算をいたしておるのであります。  そこで最後に伺いたいのでありますけれども、農林漁業基本問題調査会の答申というものが、農業基本法制定にあたって一番大きな根拠になっておったわけであります。ところが基本問題調査会では、米の需要は減るであろうという観測をした。ところが先ほど数字を示されたように漸次上がってまいりまして、大幅にふえてまいりました。ただ三十七年度から八年度に少し停滞ぎみだというだけで、その間ずっと上がり通しに需要は上がってまいっておるのですね。米だけではございません。砂糖のごときも、政府がせっかく法案などをつくって自給度を高める政策を打ち出しながら、その後その政策遂行を怠っておったために、昨年は砂糖の非常な暴騰を来たしました。これは世界的に砂糖の需給状況が逼迫をしてまいったからです。こういう状況から見ると、国際的に見て食糧難という状況があらわれてきたのではないか、こう考えるのです。こういう見地から今度農政を考えてもらわなければならないと思うのであります。  そこで、最後に承りたいことは、昨年の六月ワシントンで開かれましたところの世界の食糧関係者の会議で、アメリカのフリーマン農務長官とトインビーというイギリスの代表との間で激論が戦わされたわけであります。これに対して農林大臣は一体どう判断をされるか、これをひとつ承っておきたい。
  94. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 フリーマンとトインビーとの激論の内容をよく私承知しておりませんが、多分自由化の問題と国内生産自給体制の問題とに関連をしているかと思いますが、どうぞその内容を少しお示しいただければ、私は答弁いたします。
  95. 石田宥全

    石田(宥)委員 きわめて簡単に申し上げますと、トインビーの主張は、科学技術の進歩をもってしても、食糧増帝政策をどんなにやっても、世界的な飢餓からの解放はできないであろう、世界人類の飢餓からの解放はできないであろう。フリーマンは、食糧増帝政策を積極的に進めれば飢餓からの解放はできるという論争です。トインビーは、幾ら食糧増殖政策をやっても、それによって飢餓からの解放はできないから、積極的な産見制限連動をやらなければならないということを主張し、それから、世界的に飢餓解放連動が行なわれ、日本においてもまた飢餓解放運動の機関が設立されておるのです。だから、そういうふうにいま国際的にも食糧難の時代に入ったといわれておるが、それに対する農林大臣の見解が明らかになり、それが基礎になって今後の農政というものが行なわれなければならないと考えるから、この点を承りたいというのであります。
  96. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 わかりました。世界的に飢餓にどうしても入るという見通しは、私は持っていません。世界の情勢から見ますると、資本主義国家は農産物の過剰でございます。共産国家は非常に減産で困っておる。中共にいたしましてもソ連にいたしましても、カナダあるいはアメリカから相当な小麦の輸入をいたしております。ですから、そういうものを含めれば、食糧が十分にいっていないという面はございましょうけれども、世界的に飢餓状態に入る、そのために産児制限をしなくちゃならぬという見解は、私はそういう見解にはちょっと賛成できかねると思います。食糧も世界的に間に合って、飢餓は脱出して、相当食糧の増産に世界的にも私は進んでおるのが現状だと思います。日本におきましても、そういう意味におきまして、食糧政策につきましては、できるだけ日本において生産できるような体制を進めていくことにつきましては、従来と変わりはございません。
  97. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは世界的な問題で、実はその認識のいかんがやはり日本の農政の姿勢と関連があるから、実はもう少し掘り下げたいと考えておりましたが、私の持ち時間が参ったようでありますけれども、従来の政府考え方は、安ければ外国の農産物に依存をしようという、外国農産物への依存度が非常に高くなってきておる。ところが、最近の豚肉のように、むしろ高いものまで輸入せざるを得ないというような状態になってまいっておることに対して、私は政府に反省を促さなければならないと思うのです。実は、本日、開放経済体制と日本農業の問題について、これは先般の日米貿易経済委員会の中に出てまいりましたいろいろな問題について御質疑を申し上げたいと思ったのでありますが、その機を得なかったわけでありますけれども、そういうやはり各般にわたっての、従来の選択的拡大というような、畜産物と果樹は成長作目だといって積極的に奨励をし援助をしながら、その畜産物と果樹を大量に輸入をして、日本農業を混乱におとしいれておる政府の責任も追及しなければならないと考えたのでありますが、この点はいずれ機会をあらためて詳しく御質疑を申し上げたいと思います。どうか、農林大臣も、いまの御答弁では非常に安易なお考えのようでありますが、なかなかそうでもないという面もはっきり出てまいっておりますから、ひとつ十分お考えになって、今後の日本農業の動向について、また農民の姿勢についてお考えを願いまして、私の質問を終わります。
  98. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて石田宥全君の質疑は終わりました。  午後は一時十分から再開いたします。午後の質疑者は加藤清二君であります。要求大臣は、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、通商難業大臣、運輸大臣、労働大臣建設大臣、経済企画庁長官、科学技術庁長官、防衛庁長官であります。  暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      ————◇—————    午後一時十七分開議
  99. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  加藤清二君。
  100. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、委員長の許可を得まして、特に与党の皆さんの御支援を得まして、質問をしたいと存じます。  一昨日の新聞が一斉に、潜水艦寄港につきましてアメリカの権威筋の表明を掲げております。すなわち、日本に圧力をかけない、こういうことでございます。そこで、私は、さきに河野議員が本会議で質問をし、また本委員会におきまして横路委員が質問いたしましたのに引き続きまして、本件について質問をしたいと存じます。  まず、しかくさようでありとすれば、米国政府日本に対していままでどんな圧力をかけていたか、こういうことでございます。
  101. 大平正芳

    ○大平国務大臣 別に圧力をかけられた覚えはありません。
  102. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理にお尋ねいたします。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣が答えたとおりであります。
  104. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからば、潜水艦の寄港ということは、これはアメリカの強い希望があったのでそうなったのか、それとも、日本政府の要請で問題になったのか、いずれでございますか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉の経過につきましては、外務大臣よりお話しさせます。こちらから寄港してくれと申し入れたことは、私はないと思います。そういう相談を受けておりませんから。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 補給、休養のために日本に寄港希望を持っておるが、日本政府の感触はどうか、こういう相談を受けておったわけでございます。
  107. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではやはり圧力と言われてもやむを得ぬわけですね。ところが、アメリカの寄港の目的は一体何でございましょうか。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 兵員の休養、補給でございます。
  109. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、寄港を承認することは、これは日本の安全と平和のためであるのか、それとも休養であるのかということでございますが、休養が目的であるということでございますと、休養と平和とは一体どういう関係があるのか、休養が平和と安全に沿うのか沿わないのか、その点をお尋ねいたします。
  110. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま問題になっております原子力を進推力とする潜水艦も米国の軍艦でございまして、日米共同で日本の安全を守っておる兵力の一部でございます。したがいまして、安保条約上日本に寄港することが許されておるわけでございまして、それは安保条約体制を通じまして日本の平和と安全に寄与しようということに連なるものであると思います。
  111. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 安全性の問題について原子力委員会の承認は得ておられますか、おられませんか。
  112. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もとより原子力委員会の方々の御意見も伺いまして、問題となる点につきましては、逐一日米間で折衝を続けておるというのが実情でございます。
  113. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、その安全性の問題について、原子力委員会、そこでいつごろ解決する見込みでございましょうか。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米間の照会が終わりまして、そうして科学技術庁のほうでも御検討いただいて、日本政府として安全性について責任が持てるという判断をする時期でございまして、すべて日米折衝が終わらなければ、いつごろと、いま日安を申し上げることはできません。
  115. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いつごろかということを聞いておるのでございます。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 したがいまして、いま申しましたように、安全性の解明について日米の折衝が終わって、その時点を踏まえなければ、あなたの言ういつかということは、いま目安を立てろといって毛無理でございます。
  117. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 安全性確保のめどもつかないようでは、当然、われわれの申し上げるとおり、これは延期すべき問題だと思いますが、その時期はほんとうにわからないのございますか。時期がわからずにやみくもにあなたは寄港を許そうとしていたのですか。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 安全性の解明について、先ほどから申しましたように、日米間で折衝しておるわけでございまして、それが終わらないといつごろということは申し上げられませんと申し上げているのです。
  119. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 科学技術庁長官、本件について……。
  120. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いま外務大臣からお答えしたように、外務省と私のほうで協力してやっておりますから。その結果はまだわかりませんし、いつになるかはっきりはいたしません。そのとおりです。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いつになるか皆目わからない。それでは、交渉の経過はいかがでございましょうか。
  122. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 交渉の経過は、大体において満足する方向に向かいつつあります。ただ、私のほうとアメリカ側との基準が違っておりますので、その表現のしかたが必ずしも同一でありませんので、それらの材料を十分調べておる、ただいまそういう段階でございます。
  123. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 基準と内容が異なっておるようでございます。したがって、折衝が長引くことは理解できますが、それは大体年内程度で終わるものでございますか、それとも来年度、予算審議のときにもう一度聞かなければならぬ問題でございますか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいままでのところでは、自然放射能に比較して、これと区別のできるような容量あるいは濃度、こういうものは許さないというのがアメリカ側の言い分でございます。したがいまして、まず早目にこの解決は出るものじゃないだろうか、まずそれでよろしい、こういうような気がいたしておりますけれども、もう少し表現のしかたを、当方が納得のいくような方法があるかどうかということでいろいろ話を詰めておる、そういう段階でございます。したがいまして、いま言われるように、いつというその時期はわかりませんけれども、そう長くこういう問題を引っぱるつもりはないのであります。
  125. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、本件に関して黒金官房長官にお尋ねしたいことがございます。あなたは三十八年八月十五日、各新聞社に対して本件について記者会見を行なっていらしゃいます。「原子力潜水艦寄港を前提の対策は立てていない、」これが見出しでございまして、あなたは社会党の情報を否定しておられるわけでございます。官房長官は、十五日午前十時三十分の記者会見で、政府は米国の原子力潜水艦の寄港を前提として事故が起こった際の退避方法につき対策を講じているとわが党が十四日に発表したのでございますが、これに対して、政府が寄港を前提に事故対策を準備していたような事実は全くないと、次のように語っておられます。すなわち、一つ、科学技術庁当局に十五日問い合わせてみたところ、環境調査と称する外洋汚染調査を農林省、海上保安庁など関係省庁と協力して二カ月前から調べていた事実はある。二つ、科学技術庁は、茨城県東海村の原子力研究所の、原子炉の事故が起こった場合のことを想定し、これに対する緊急対策要綱の未定稿草案をまとめ、先ごろ関係各省の担当官に配付した事実はある。その事実がここに載っているわけでございます。さて、これは事実でございますね。
  126. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 当時そういうようなことの話をしたことがあるように存じておりますが、現実の問題として、先ほどお話がありましたように、そういうような打ち合わせをしたことがあったように聞いておりますけれども、いまお話のありましたように、そういう検討の事実はございません、こう申した記憶がございます。
  127. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 科学技術庁の長官にお尋ねいたします。この事故対策は当然アメリカの原子力潜水艦の事故の場合に適用することができるわけですね。適用なさるわけですね。
  128. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 科学技術庁は、災害対策基本法に基づきまして、絶えずこういうものの対策をいたしております。すでに東海村には原子力研究所がございます。したがって、ここあたりの放射能、その他事故の場合にどういう退避をするか、こういうことは絶えず研究はしておりますものの、いま言われるようなもの、これは私どものほうの関係のものではございません。これははっきり申し上げます。私のほうではまだそこまでいっておりません。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)内々いろいろやっておりますが、これは、私が責任の地位においてそういうものはございませんとはっきり申し上げるので、ただいま、あるあると言われますが、何かそれは違いだろう、かように思います。これははっきり私は申し上げておきます。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本件に関してすでに事務当局は答弁をしておるのでございます。あなたの答弁と食い違っておるのでございます。いずれが正しいのですか。
  130. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この問題が起こりました際に、私も事務当局からいろいろ聴取いたしました。私のほうの専務当局は、責任を持って、さような会議を開いたこともありませんし、また、責任の地位にある者、そういう書類をつくったこともありませんとはっきり答えております。
  131. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 きのうの新聞がロイター通信として報道しておりまするように、危険をおかしてもよいほどの重大な利益があるとは見ていないとアメリカ側は語っているわけでございます。しかくさようとすれば、国民の不安を除くために、この際、潜水艦の寄港については、反対か、これを無期延期するか、天下に表明すべきチャンスだと思います。私どもは絶対反対でございまするが、総理の見解をお尋ねする次第でございます。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 いままで答えておりますとおり、私は方針を変える考えはございません。
  133. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、この際、時の問題としまして、オリンピックについてお尋ねしてみたいと存じます。  オリンピック道路が東京都内の交通に重大な支障を来たさしているようでございます。建設大臣にお尋ねしたいのでございまするが、はたしてこの計画に粗漏がありやいなや、一体オリンピックにこれが間に合うかどうか、計画と実施面についてお尋ねいたします。
  134. 河野一郎

    河野国務大臣 正確に申し上げます。年度末、つまり三月三十一日現在におきまして、放射四号線が九七%までできる、環状七号線が九六%、その他の道路が九〇%、なお、首都高速道路のうち、オリンピック関係の分は八三%、三月三十一日までにでかし上げるという報告を受けておりまして、なお、これらはオリンピック開催のよほど前に全部所定のものはでき上がるということになっておりますが、責任上、私といたしましては、来たる十五日の日に、民間の有識の方々をお願いしまして、すべてにわたってもう一ぺん、このとおり実際いっているかどうかという現地の調査を、佐藤大臣と同道で一つ一つ調査してみようということにいたしておるわけでございます。
  135. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 せっかくの努力によってぜひ間に合うようにしていただきたいものだと存じまするが、計画面におきましてお尋ねしたいことがございます。それは、破壊即建設ということは、これは共産党の用語だと思っておりました。にもかかわりませず、今日政府がそれを実行しているというのがこの道路の実情であるようでございます。大宮御所が削られている、千鳥が渕がこわされている、霞が関離宮の庭園はあとかたもなく消え去ってしまっておる、こういうことをして、これでほんとうに交通事故から選手あるいはこれに参加してくる参加者を守ることができればあきらめもつきましょうけれども、一体、こういうことをあえて強行して、はたしてなお交通事故から選手、参加者あるいは都民を守ることができるかできないのか、これについてオリンピック関係大臣にお尋ねいたします。
  136. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来建設大臣からお答えいたしましたように、道路の計画は予定どおり進んでおりますから、まずオリンピック、それには間に合うのではないか、かように思いますが、ただいまその工事を急いでおります際に、各方面でたいへん都民の方に御迷惑をかけておる、こういう声もありますが、この点は、いましばらくごしんぼう願って、でき上がった後を見ていただきたい、かように考えて、皆さん方の御協力をお願いしておるわけでございます。ただいま御指摘になりましたような地点、これの路線を選定いたします際の問題でありますが、その路線は、審議会におきましても協力を得てそれぞれの路線がきまり、したがって、今日私どもとしては、この工事が順調に進んで、できるだけ部民に迷惑を与えないように、そればかりを注意しておるような次第でございます。
  137. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう一つ、時の問題として、たばこと肺ガンについてお尋ねいたします。この問題がアメリカ国の調査報告が日本へ伝わりますると、これは核実験同様世界の人々に大きな衝撃を与えたわけでございまするが、なかんずく、私のような、たばこのすきな男、特にたばこ愛好者の要や子供に与えた衝撃は、これは重大でございます。これに対して総理及び厚生大臣の所見と対策を承りたい。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 新聞でアメリカの研究所からの発表を聞きました。これは、のみ方にもよりましょうし、体質にもよりましょうし、いろいろな関係がございますので、厚生大臣に一応の研究をお願いいたしておるのであります。聞くところによりますと、肺ガンの問題は、アメリカイギリスよりはよほど日本は少ないようであります。しかし、少ないからといって、安心して、油断はできません。したがいまして、対策その他につきましては、一応報告は聞いておりますが、厚生大臣より詳しくお答えし、そして、今後の対策も検討を続けていきたいと思います。
  139. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいま総理からお答えがありましたが、私どもも、あの報告が出ましてから、日本においても影響を調査したい、こういうことで、その道の専門家を委嘱しまして協議をしていただいたのでありまするが、あの報告につきましては、日本の資料は入っておらぬ。すなわち、大体カナダとアメリカイギリスの資料をもとにしてできておる、こういうことでありますが、私どもの日本では、肺ガンがこれらの国々に比べて非常に少ない。また死亡者も、たとえば日本イギリスの十分の一、アメリカの四分の一、こういうことでありまして、いまのところあの報告にあるような顕著な影響があるという結論は出ておりません。   〔委員、長退席、松澤委員長代理着席〕 しかし、いずれにしましても、最近肺ガンが日本でも増加の傾向にある、こういうことでありまして、引き続き調査しなければならぬ。ことに、未青年者の喫煙、あるいは多量にまた長期に喫煙をするということがある程度影響があろう、こういうことも考えておるのであります。なお、私ども聞きますれば、病理学的に見まして、英米等の肺ガンは表皮肺ガン、要するに煙の及ぶ面の肺ガンが多くて、日本の肺、ガンは内部の腺ガンというのでありまして、病理学的に非常に違う。したがって、腺ガンそのものは煙の影響によるものということは即断ができないので、これらのことも勘案しまして、あの報告書ほど日本にはさしむきのところ影響は大きくない、しかし、これらは今後の問題としてわれわれも十分注意をしてまいりたい、こういうことに考えております。
  140. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 なかなか学のあるところの片りんを見せていただいたわけなのですが、日本においては癌研の所長さんがガンで死んでいくというのが実態のようだから、特にクレープスの場合は早期発見、早期手術ということが今日の何よりものたよりだそうだ。そこで、早期発見、早期手術、それと同時に早期対策をあなたのところでしっかりと立てていただきまするよう、いずれ本件は分科会その他において詳細突っ込んでお尋ねしてみたいと存じます。  さて、もう一つのスモッグがございます。たばこのスモッグのほうは、自分の意思でのむわけでございます。しかし、自分の意思によらずしてのまされるスモッグがあるわけでございます。たとえば四日市のそれのごとく、せっかく誘致した工場を疎開させるか、ないしはい、ままであった住宅を集団疎開させなければこの工場の運営がな成る立たない、これが四日市の実情のようでございます。本件はただ四日市だけの問題ではございません。やがて行なわれるであろうところの新産業都市の誘致にも非常な影響があるわけでございます。したがって、今後都市を設定されるにあたっては、ちょうど個人に診断があり企業に診断があると同じように、部市診断をして、その許容量を基準としてあるいは法律的に規定することがいわゆる早期対策だと思いまするが、これについて厚生大臣と通産大臣の御所見を承りたい。
  141. 小林武治

    ○小林国務大臣 お話のとおり、煙の害というものが相当やかましい問題になってきております。したがいまして、私ども、四日中の問題といたしましては、四日市は、冬は海側に風が吹く、夏は陸側に風が吹くこういうことのために、重油の燃焼による亜硫酸ガスの被害が相当に認められておるのでありまして、この問題の根本的の調査といたしましては、三十八年度も三十九年度も政府で予算を取りまして、四日市にこれらの機械あるいは自動車等を配置して特別な調査をいたしたい、こういうふうに考えております。現在四日市にはまだばい煙の規制に対する法律が施行されておりませんから、私どもはいま調査をして、四月中ぐらいにはばい煙のこの指定地域にいたしたい、こういうふうに考えております。なお、亜硫酸ガスの空気中の混合率につきましては、現在東京都等におきましては〇・二二%、こういうふうなことにいたしておりますが、四日市地域では、その基準をもってしてもなお害が多いのではないかというふうな専門家の調査もありますので、指定につきましては、この条件をさらにからくする、こういうようなことも考えなければならぬと思っております。また、お話の今後の新産業都市の建設にあたりましては、従来ややもすれば経済開発というものに重点が置かれておるのでありまするが、生活を保護する、こういうたてまえから、私どもは社会開発もどうしでも並行してやらなければならぬ。したがいまして、新産業都市の促進法などにも、厚生大臣は要請大臣になっておりませんが、これを要請大臣にしてもらって、そうして公害等も含めた社会開発をぜひ並行してやってもらう、こういうふうにわれわれは強く要望し、そういうことが実現される、こういうふうに思っておりまするし、工場を建てるには、いま申したように、風のかげんによって害があったりなかったりする、こういうことでありますので、気象条件等も十分調査のしでもって計画を立てなければならぬ、こういうふうに考えております。
  142. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま厚生大臣がお答えしたとおりでございます。
  143. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、この際、中小企業を中心として日本経済の諸問題について二、三お尋ねしたいと存じます。  日銭の山際総裁がいみじくも今日の日本経済状態を端的に表現しておられるですね。今日の病状は、心臓が悪い、肝臓が悪いという特定の病気によるものではない、いわば全身の慢性病である、かように述べておられるわけでございますが、いずれにいたしましても、病人であることには間違いないようでございます。これについて池田さんの御所見を承りたい。総理の御所見でございます。
  144. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、日銀総裁のそういうことを言われたことを存じませんし、また、たとえそういうことを言われても総理として日銀総裁のことばに対しての批判は差し控えたいと思います。
  145. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 批判でなくて、それじゃあなたは、いま日本経済状態はきわめて健康的であると、かようにお考えでございますか。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 総体から申しまして健康的であると思います。
  147. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、どうもあなたのその強がりよりは山際さんのことばのほうが正直であると、かように受け取りたいのでございます。私が申し上げまするまでもなく、国際収支はすでに赤字でございます。物価は慢性的に騰貴の一途をたどっておるようでございます。生産上昇すれば会社の成績は上がり、さすれば株価は上昇しなければならぬのに、これが低迷の一途をたどっておるようでございます。アメリカ経済の影響を受けるという日本経済でありながら、アメリカにおいては目下株価が上昇の一途をたどっておりますにもかかわらず、この影響は日本にはどういうものか少ないようでございます。病気の症状のゆえんでございましょう。大企業の中に操短がございます。せっかくつくった設備を遊ばせなければならぬという、手足があっても動かないという、いえばこれは中気じゃござんせぬか。中小企業倒産が続出している。倒れている。これはまさに人間で言えば死でございます。これでも日本経済は病気じゃないでしょうか。農家はどうだ。豊作が十年も続いても、なお農村の青年は希望を失って都会へ走るという、豊作貧乏だ、三ちゃん農業だという。これでもはたして日本経済は健康状態と言い切ることができるでございましょうか。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 総体としてはやはり健康な歩みをしております。それはアメリカのように有史以来の好景気じゃございますまい。しかし、ずっと日本経済全体をしさいに見てみますると、行き過ぎた成長によってのひずみはある程度出てくるかもわかりませんが、全体としての歩みは健全な歩みをしております。ただ、そういうたくさんの中の一部のひずみに対しましては、これは対策を講ずることは必要でございますが、全体として日本経済が病気で、そしてどうもこうもならぬとか、そういうような気持ちは持っておりません。
  149. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、官房長官にお尋ねいたします。あなたは選挙前に、中小企業農民に対してはアフターケアをするとおっしゃったですね。アフターケアというのはどういうことでございますか。私は、病人に対する手当てだ、こう思っているのですが。
  150. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 ちょっと違うんじゃございますまいか。アフターケアというのは、私が使った用語でないように記憶していまして、私の記憶が間違いでなければ、宮澤企画庁長官じゃなかったかと思っております。
  151. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、宮津さん。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私もそのことばは注意して使わないようにいたしてはおりますけれども、本来アフターケアということばがほんとうにあることばであるかどうか、私もあまりつまびらかでございません。ただ、一般に通念として言われておることは、商品などを売りましたときに、そのあとの、つまり部品を補給するとかなんとかいうときに一般に言われる、(加藤(清)委員「それはアフターサービスだ」と呼、ぶ)そういう概念の一つとしていわれておるのではないかと思います。
  153. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はブロークンだから英語のことはよくわかりませんけれど、サービスとケアの区別くらいは、企画庁の長官、この際はっきりつけておいてもらわぬと困るわけですが、それじゃ、あなたのおっしゃいましたそのアフターケアがアフターサービスといまとたんに変わったとしてもいいですよ、それは内容は何ですか。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、こういうことでございます。経済の各要素が均衡を維持しておりますときには、申し上げるまでもなく単純再生産が行なわれるわけでございます。それは静態的な経済であると思います。わが国のように拡大生産が行なわれますときには、経済の各、要素の均衡が当然どこかで破れておるときでございます。そこで、過去何年かのわが国の経済の動きを見てまいりますと、拡大生産を続けておりますから、各要素が当然均衡しておるわけではないので、均衡しておりませんから拡大生産が可能なわけでございます。そこで、二年余りいわゆる所得倍増計画によりまして平均九%の成長をしてきた。そこで、わが国の経済の中で中小企業なり農業なりの生産性のおくれというものがお互い見るように出てまいりましたし、他方で、賃金格差の縮小などに伴いまして、新規労働者はことさらに得がたいという状況になっております。また、物価につきましても、さっき御指摘のように、消費者物価の高騰のかなり大きな部分は、そういう賃金の格差の解消、逆に申せば、中小企業農業等の生産性が相対的に低い、こういうところから出ておるのでございますから、そこで、それらに対してこの際格段の政策を講ずる必要がある、また、経済の発展を主軸になってささえてまいりました生産力その他が十分に伸びておりますから、そういうおくれた部門に手当てをするだけの力がわが国の経済に出てきた、そういうことを申しておるわけでございます。
  155. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理にお尋ねいたします。  中小企業及び農民に対しては革命的政策、これまたことばが途中から変化いたしまして、革新的政策、いずれでもけっこうです。これは一体何をさしていらっしゃるのか。同時に、先日の質問に対するお答えで、あなたは、予算よりも心がまえだ、心がまえが大事だ、こうおっしゃったのですが、その心がまえとは一体何でございましょうか。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 宮津企画庁長官が答えたように、日本経済における農業、中小企業の置かれた重要性から申しまして、そうしてまた、その産業形態の潜在的要因から申しまして、所得倍増計画のときに、こういう農業、中小企業に対しましてはできるだけの助成方策を一講じなければいかぬ、そういう考え方で、農業基本法、中小企業基本法を設けたことはすでに御承知のとおりでございます。しかし、予定以上に大企業あるいは第二次、第三次産業が進みました。そうして、おくれがちな分が、伸びてはおりますけれども、伸び方が他に比較して非常に少ない、こういうことで、これを何とか普通の考え以上にもっともっと強く施策を講じなければならぬというのが私の考え方でございます。そのために予算を増額いたしました。また、予算以外のいろんな措置もいたしましたり、また、中小企業におきましては、いままでにない大幅な減税をいたしております。こういう予算上、財政上とるべき措置も必要でございますが、やはりそれに向かって十分な手を伸ばしていこうという政治態勢が必要である。そうして、予算は今年限りでございますが、今後もふえた予算をもう少し進めていこうという心がまえが必要だと言っておるのであります。
  157. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 通産大臣にお尋ねいたしますが、中小企業関係の本年度予算はいかほどでございますか。
  158. 福田一

    福田(一)国務大臣 予算は昨年より四割増の百六十六億円であります。
  159. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 百億ちょっと余ですね。全体の予算は、みんなにいいよといって、三兆の余になっているのです。中小企業の占める産業構造の位置は、大蔵大臣御存じのとおり、いわゆる中小企業の範疇に属するところのものだけをとってみても、まさに企業数では九〇%、生産では六〇%、いわんや、その従業員を千人のところで、区切りますならば、ほとんどが中小企業の範疇なんです。それに対して、三兆円有余の予算の中でわずか百億ちょっと。これでその手当てができるのでございましょうか。あなたは本気でそう思っていらっしゃるのですか。あなたの郷里の中小企業はこれで助かると思っていらっしゃるのですか。お尋ねいたします。
  160. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中小企業の予算をふやさなければならないという考え方は、あなたと同じ考えであります。しかし、中小企業のいままでの予算が非常に少なかったわけでありますし、それから、中小企業の新しい施策というものに対しては、中小企業側から考えましても、税制とか金融とかの面については、いろいろの弾力的な、また革新的な前進的な施策があるわけでありますが、一般会計でまかなう中小企業対策というものに対しては、詰めてまいりますと、なかなか具体的な問題を取り上げにくいということで、いままでは確かに二兆八千五百億のうち百億ちょっと、三兆二千億になっても百六十億ということでありますが、しかし、対前年度比一四%の増加をしておる今年度の一般会計の中で四〇%余もふやしておるの外ありますから、政府が前向きであるということは理解できると思います。しかし、この予算をもって中小企業に対して万全であると考えておるわけではございません。しかも、先ほどから申し上げましたように、中小企業対策は、一般会計で施策を行なうよりも、あなたはもう専門家で、いつでも商工委員会などでも金融をやれ、税制をやれ、こう言われておることをそのまま申し上げるわけですが、いま総理が申し上げたとおり、六百億余にのぼる中小企業関係の減税を行なっておりますし、なお、金融については、政府関係三機関の資金量をふやすとか、また商工中金の金利を引き下げるとかいうだけではなく、開放経済体制に対処しながら中小企業がやっていけるような、また振興できるような方策を考えておるわけであります。
  161. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大蔵大臣の答弁は了としますけれども、私には不可解です。  そこで通産大臣にお尋ねいたしますが、中小企業の倒産がこの年末から正月にかけてずっとふえてきているようでございますね。それから去年一年、おととしは、これまたその前年と比較すると、非常にふえておるようでございます。池田さんが総理大臣のときにこんなにふえておるようでございます。そこでひとつ数字を明らかにしていただきたいと存じます。年次別の倒産数をまず……。
  162. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えいたします。何年くらいからやりますか。
  163. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 三十年ころからでけっこうでございます。
  164. 福田一

    福田(一)国務大臣 三十年が六百五件、三十一年が千百二十三件、三十二年が千七百三十六件、三十三年が千四百八十件、三十五年が千百七十二件、三十七年が千七百七十九件、三十八年が千七百二十八件、これは実は役所での調べではないのであります。しかし、あなたがおっしゃったように、引き締めをしたときには若干その件数がふえておることは事実であります。ただ、ちょっと誤解があるのじゃないかと思いますことは、昨年末からことしの初めへかけていろいろ倒産がありましたが、その倒産の原因が、金融引き締めによる倒産であるというふうに一般には替われておりますが、必ずしもそういう実情ではない。確かに金融引き締めが一つの原因にはなっておるかもしれませんが、ことしの初めにあたりに大府紡績とか、あなたが御承知のようないわゆる毛織物関係のところで、三十六億、四十億というような額の倒産内容を含む二件の問題が出て、それがかなり名古屋地方あたりには影響が大きいのでありますが、こういうことは、金融引き締めの直接のことではなく、また、毎年年末にはいつでも件数がふえておるという実情も、これはあなたのほうがよく御承知だと思う。それからまた、経済規模が大きくなりつつありますから、件数がふえたということだけで、非常に倒産が多くなったじゃないかということにはいかないと思うので、そういう比率もひとつ参考にしてみますと、いま言ったような金融引き締めが直接去年の暮れの倒産に、あるいはことしの初めの倒産におもな部分を占めておるかどうかということは、即断することは誤りじゃないかと思っております。
  165. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、あなたが何とここで弁護なさろうとも、中小企業の倒産が多いというその事実と、それが何で倒産するかといえば、ほとんどが、不渡り手形、金がもとである。税務署にやられて、それで倒れたというようなうちはほとんどない。銀行にやられたからほとんど倒れていくのです。銀行にやられたということは金融なんです。金なんです。  それはそれとして、この表で見てもおわかりのとおり、ただいまの御発表でも皆さんおわかりのとおり、金融の引き締めの年ないしはその翌年に倒産が急に増加するのでございます。池田さん御存じのとおり、戦後数回にわたってリセッションが行なわれました。そのつど方法手段として金融引き締めという手がとられました。そのつど倒産がふえるのでございます。これは歴史的事実でございます。たとえば三十年から三十一年にわたっては、倍ふえておる。前年六百五であったのが、翌年は千百二十三とふえておるのでございます。次に三十六年から三十七年にかけて、だんだんと引き締めが行なわれました。千百一が千七百七十九とふえておるのでございます。常に中小企業は金融のあらしにあえぐアシでございます。しかも、ここ十年の統計をとってみますると、昭和二十七年百七十八件であった、このころに中小企業の思惑倒産問題で当時の池田通産大臣は記憶に新たなことがあるでございましょうが、あの当時ああ言われても、なお百七十八件でございました。ところが三十八年、去年になりますると、これは千七百三十八件と、これこそまさに十倍増でございます。倒産がちょうどあなたのおっしゃる十年たったら十倍にふえておるのでございます。まさに倒産の所得倍増と言わなければならぬ。池田総理も大蔵大臣も常におっしゃる、企業資本蓄積が大事だからひとつ国民よしんぼうしてくれ、これはもうあなたの常套語になっておる。企業資本の蓄積が行なわれておったらこんなに倒れていくはずはない。あなたの企業とおっしゃるのは大企業だけのことでございますか、中小企業はまま子の扱いでございますか、大企業に倒れたのはほとんどありません。倒れていくのは中小企業だけです。大蔵大臣の所見を承りたい。
  166. 田中角榮

    ○田中国務大臣 倒産の状況はいま通産大臣とあなたが言われたとおりでありまして、昨年の十月百五十九件、十一月二百九件、十二月百九十四件、一月百九十八件、こういう数字でありますから、特に税制の改正にあたりましては、企業資本蓄積に対して抜本的な考え方をしないとたいへんなことになるという考え方を出しながら、税制改正に対しては、企業課税の減税をあえて行なったわけであります。一部においては税制調査会の答申にないものを行なったというような御批判がありますが、財政主管者としては当然かかる点に留意をしなければならないので、特に中小企業資本蓄積その他内容整備のために格段の減税政策を行なっておるわけであります。  それからこの倒産の状況に対しましては、いま数字であなたがお述べになりましたが、私もこれは数字相当大きくなっておるというので検討いたしており、ますが、昭和二十七年当時よりも企業数が非常に大きくなっておるということで、その比率はこのまま当てはまるも一のではありません。しかし、一件の倒産といえども十分検討しなければならないので、これは件数別に検討しております。一体どういう状態で倒産をするのかということでありますが、あなたも御承知のとおり、一つの例、大成物産の例を申し上げますと、資本金一億円であって、負債総額は四十億、はるかに資本金の二十倍をこしておるわけであります。しかもこの倒産の原因は、親企業が不良系列会社という判定のもとに投資及び金融の支援を打ち切ったという、こういう大きな問題があります。でありますので、かかる問題に対しては、もちろん健全な経営によって中小企業から大企業へとだんだんと脱却をしてもらいたい考えでありますし、事実大企業にだんだんとなっておりますが、この親会社との関係というものに対しては、もっと深く考えなければならぬということで、現在経済企画庁、通帳省、大蔵省等で協議をしながら、支払遅延防止法もありますけれども、実際かかる法律に対しては、親企業に対し下請企業の発言は非常に弱いという面もありますので、広範な意味で、親企業による金融梗塞等によって、黒字倒産が起きないように十分な配慮をしたいというふうに考えております。その意味で、この間も質問がありましたが、一体政府は何で公定歩合の引き上げとかその他をしないかという考え方に対しましても、このような事象に対して十分の自信を持たなければ、一律画一的な引き締めを行なうべきではないという政治的配慮を行なっておるわであります。
  167. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、あくまで池田さんは病気でないとおっしゃるのでございますから、去年の、去年というよりも今年度、三十八年の倒産の内訳をひとつ通産大臣から……。
  168. 福田一

    福田(一)国務大臣 その前に、先ほどの答弁で少し漏れておる点がありますから、申し上げておきます。  それは、三十年から確かに件数はふえております。ただ私は、やはり経済規模が大きくなったということも考えないと間違いを起こすということを申し上げたい、その数字を申し上げてみたいのでありますが、たとえば手形の、不渡り状況を見ましても、これはだんだんとふえてきてはおりますが、三十年には千六百二十三件、それが三十八年は二千五百九十五件です。しかし、これが対交換高の比率という点から見てみますと、三十年が一・二五%、三十一年が一・一一、三十二年が一・二五、それから三十三年が一・二六、三十四年が一・一五、三十五年が一・〇七、三十六年が〇・九六、三十七年が一・〇五、三十八年が一・一一でありますから、これは二十九年や三十年よりは状況がそういう意味ではよくなったと言えると思うのであります。  それから金額の面もずっとここに出ておりますが、全体の交換をいたしました金額のうちで、二十九年、三十年あたりは〇・五六%、〇・三七%というような高率でありますが、三十七年三十八年になると、〇・二八、〇・二九というふうに下がっております。全体との比率を僕は申し上げた。そういうふうに変わってきておるのでありまして、決してそれだからこれでもう安心だ、何も考える必要はない、そういうわけにはいかない。もちろんわれわれとしては十分気をつけていかなければならないと思いますが、いま言ったように、経済規模拡大ということを見ていただきますと、これはそれほど大きなカーブを描いてきたのではない、むしろ逆にカーブは下がっているということも御理解を賜わりたいと思うのであります。  それからいま仰せになったのは……。
  169. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私の質問に答えるようにひとつ頼みます。言いわけに専念して、私の質問を忘れてしまうというようなことでは困りますよ。言いわけをしたい気持はようわかる。わかるけれども、質問に答えてください。私の質問は、池田さんは病気でないとおっしゃるが、私は病気だと思う。そこで一体三十八年にどの程度の中小企業がぶっ倒れたのか、三十八年の内訳をひとつ……。さっきは二十七年から今日に至るまででしたが、今度は去年一年の分、それは池田さんの総理大臣のときの内訳でございます。
  170. 福田一

    福田(一)国務大臣 三一十八年ですね。
  171. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうです。トータルでけっこうですから……。
  172. 福田一

    福田(一)国務大臣 トータルは、一月が八十七件、二月が百三十五件、三月が百十件、四月が百十三件、、五月が百六十一件、六月が百四十一件、七月が百二十七件、八月が百五十九件、九月が百四十三件、十月が百五十九件、十一月が二百九件、十二月が百九十四件、合計して千七百三十八件でございます。
  173. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この数字によってもおわかりのとおり、もし金融が倒産の原因でないとなさるならば、これは普通のいわゆる景気で倒れていく。普通の景気で倒れるとするならば、繊維会社のごときは、三、六、九で倒れるのが過去の通例でございます。にもかかわりませず、この表で御存じのとおり、三十八年は、三、六、九以外の十一、十二と圧倒的にふえているのでございます。つまり年末に金がなくて首が回らなくて倒産。次にもう一つここで問題になりまする点は、三十八年の一月は八十七件でございました。ところが、ことし三十九年、これは一体どれだけ倒れております。中小企業庁の長官、そこで答えてください、そこでけっこうです。
  174. 中野正一

    ○中野政府委員 お答えいたします。ことしの一月は百九十八件、二百八十二億でございます。
  175. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのとおりです。まさに去年の、正月の二・二倍の倒産卒でございます。二・二倍でございます。なぜそうなったか。やっぱりこれ、金詰まりでございます。金詰まりが原因でございます。先ほどどなたか金でないとおっしゃったが、金である証拠には、おそらくや、この状況が続きまする限りは、ことしの三月、いわゆる景気の波と金融の波が一緒にそろうとき、このときには、この百九十八件よりももっともっと、私はあえて申し上げます。この二倍の数は必ず出ると思います。この状況が続けば。大蔵大臣の御所見承りたいところでございます。  もう一つ問題になりまする点は、先行きを見越しての話ですが、すでに金融機関ではそのことを察知しておる。そうして貸し付け残の引き揚げをいま行ないつつある。総理も御存じでございましょう。かてて加えて繊維設備制限法、これはやがて制限とくる。そこでその設備の権利に対して担保として貸していたところがまた引き揚げを始めておる。これが重なっていく。正月の二倍でおさまれば、私は、まあまあ小康で済んだと言わなければならぬ時期がくると思います。その次にまた六月がくる。三、六、九の六月、ここへ波が寄ります。その次が総理、七月のあなたの波だ、総理、これに対してどうなさる、やはり中小企業は倒れてもよろしゅうございますか。
  176. 田中角榮

    ○田中国務大臣 金融引き締めということに対していろいろ言われておりますが、昨年の十月、十一月、十二月と、特に中小企業の問題に対して配意をいたしてきたわけであります。特に手形の内容等を調べてみますと、御承知のとおり急激な企業間信用がふえておりますので、これを倒産に導かないように、正常な状態に収束をせしめたいというところにいろいろな施策を行なっておるわけであります。まず日銀が昨年の十二月から引き締め基調に入っておるわけでありますが、これは大企業の資金繰りを締めようということに重点を置いておるわけであります。特に中小企業の問題については、大企業の資金を締めると、直ちに大企業から下請企業に対する支払い代金が、大幅に手形期日が長くなるということで、都市銀行、地方銀行等を、通じまして、企業別に出しておる手形の期日というものに対しても調査を進めております。同時に、引き締め基調になってから、それらの大企業が一体どの程度期日を延ばしておるのか、また延ばしておるとしたら、その手形が落ちるまでの間に中小企業にどのようなつなぎ融資をしなければならないかというこまかい面まで配慮をしておるわけであります。なお、引き締め基調になっても、中小企業に対しての金融をできるだけ合理的に考えて、急激な引き締めによって倒産に導くというようなことは絶対に避けなければならないという考え方に立って、さる日に財務局長会議を招集をしまして、財務局から各金融機関の中小企業への企業別の融資の状況、また金繰りの状況等こまかく調査をいたしておりまして、大企業が手形期日を引き延ばすようなために中小企業にしわが寄らないように、この二、三カ月間非常に細心なこまかいところまで配慮をいたしておるわけであります。
  177. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう一つ、去年一年の統計を見て、われわれ自体が注意しなければならぬ問題がございます。それはほかでもございませんが、開放経済をすでに一年先、二年先に受けた部門にいま倒産が多いということでございます。一般の企業よりは一年前、二年前に開放経済の波をかぶった、つまり自由化させられたその部門に多いということでございます。それが過去と比較して多いということであります。私は数字を持っているから、ここで比較検討してみたいんだけれども、時間の関係上それは分科会で究明することにいたしまするが、特に繊維の流通部門はすでに開放経済の洗礼を受けているわけでございます。ところが、このことはただそれだけでは済みません。ことしの開放経済の洗礼を受ければ、やがてほとんどの産業は来年、再来年にそのしわが寄って、ついにこれに耐えかねて倒れていくというのでございます。これはまさしく政策の変更によるものでございます。いいか悪いかは別として、政策の変更がやがて中小企業にしわを害せるということでございます。総理大臣、先ほどの答弁はまだしてございません。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しの点は、出てきた数字をすぐそれのままにおとりになりまして……(加藤(清)委員「いや、私は具体的に持っている。」と呼ぶ)そして、その数字の下に、底辺に何があるかということをお考えいただきたいと思います。中小企業の危機ということが一番叫ばれたときは、昭和二十五年の三月危機でございます。それは、昭和二十四年のドッジ政策によりまして非常なインフレを急激にデフレ政策に持っていった結果であるのであります。昭和二十七年ではございません。昭和二十五年でございます。昭和二十七年ころはそうたいした問題はなかったと思います。そうしてまた、先ほど来数字をお並べになりましたが、昭和二十七年の百七十余に対していまが千七百何ぼだから、こうおっしゃいますが、大体破産をした、倒れたという会社の数はどうやってとるかということを見ますと、これは資本金じゃない、一千万円以上の負債で倒れたのを見ておるのであります。そうしますと、昭和二十七年に比べて十倍になったといっても、これは通産大臣が言っているように、実際の及ぼす影響は、不渡り手形の数でいけば——いま言ったように、割合からいけばそうふえていない。しかし、つけ加えましたように、こっちは決して油断はなりません。ただ、いまが昭和二十七年の十倍になっておると言っても、経済規模が変わったということを一応頭に置いていただきたい。これが第一点。  それから第二点は、昭和三十四、五、六と、これは件数が千百くらいであります。これは三十四、五、六は非常な好景気のときでございます。みんなの所得がふえたときでございます。そうして三十七年に千七百八十件、三十八年に千七百四十件、まあ少し減っているのですが、これはいわゆる景気の調整期であるのであります。景気を調整したら政策の変更じゃないか、これは、全体の日本経済を健康を続けさすための措置でございまして、やむを得ない措置。だから、倒れていく人の数はできるだけ少なくするようにいろいろな施策を講じなければなりませんが、経済の動きというものはそういうふうなものなんです。  そこで、巷聞伝えられるように、引き締めとか、公定歩合とか、いろいろなことを言っておりますが、経済実態を見て、そうして非常に倒産の起こらないようにほどほどに——前向きということでいくというのは、そういうことなんです。  そこで、あなたが御質問の、開放経済に向かっていくから、そういう政策をとるから中小企業の倒産が多くなった、こうおっしゃいますが、それは一つの手かもわかりません。しかし、開放経済は、これはわれわれとして当然日本全体のためにいかざるを得ない。だから、そこで破産を少なくすることは当然。あなた、はよく御存じと思いますが、こういう三月危機とかなんとかいうときに、どの業種が一番多いかというと、繊維関係が多いのでございます。なぜかというと、繊維関係はわりに思惑がしやすい。日本には非常に強い力を持っております十大紡、あるいは新紡、新々紡等、また化繊のほうにつきましても、世界超一流の力を持っております。超一流の力を持っておるだけ、それだけみんながやりやすい。思惑をするのは繊維に限ったとは申しません。わりに昔から繊維関係が多い。そこで、あなたの近くの名古屋方面にはそれが出ておるのですが、これは、開放経済に至ったからその当然の結果だと一がいに言えません。繊維関係はそれが多い。かてて加えて、暖冬異変というものを繊維関係が一番受けておるのであります。しかも、いま言ったように、一億円の会社で四十億円の借金というものは、これは中小企業と言い得るかどうか、なかなか問題でございます。しかも、大蔵大臣が言ったように、信用組織が非常に広がっておりますから、一犬ほえて万犬これにことうというふうなことになってまいります。そこでわれわれとしましては、そういう事情がございますから、景気調整その他につきましても、金利の問題につきましても、大蔵大臣は細心の注意を払ってやっておると思います。だから、十年前と数字だけを比べるよりも、実態をよく見ていただきたい。そこで私は、直接その衝に当たっておりませんが、繊維関係中心が多い。そうしてまた、開放経済に向かう場合に、相当の思惑があったと思います。これはやはり人間の欲でございます。そういう点は認めなければなりませんが、しかし、それを指導するのはだれかと申しますと、政府もさることでございますが、やはり金融機関が大切なんでございます。だから、私は大蔵大臣のことばを聞いて非常に安心しておるのですが、大体一億円の会社に四十億円も融資するというふうなことは、健全な銀行家としてのたてまえかどうか、しこうして、それがそういうことをやった場合において、いかないからといってすぐ手を引いてしまってあとは見捨てるということは、正常な、りっぱな金融象の態度であるかどうか、そういう点につきまして、十分これから調べるということを大蔵大臣は言っております。そのとおりのことでございまして、実態をよく調べまして、一々の数字とか一々の事象でなしに、何がこういうことをもたらすかということを十分検討いたしまして、対策を講じなければならぬと思います。
  179. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは、私の質問に対して、さっき心がまえは聞くことができませんでしたが、だんだんしゃべっていらっしゃるうち、答弁していらっしゃるうちに、あなたの中小企業に対する心がまえなるものがようわかってまいりました。  そこで申し上げまする。あなたのおっしゃったとおり、繊維会社の倒産が多い。その理由は思惑であるかもしれません。あるいは暖冬異変もこれに加わっているかもしれません。しかし、思惑は、それではあなたはいいとおっしゃるのですか、いけないとおっしゃるのですか。思惑をやるような中小企業は倒れてもよろしいと、あなたはかっておっしゃった。思惑はいいのですか、悪いのですか。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 人間には欲がございますから、ある程度の、いわゆる経済活動をする場合におきましての思惑は、やむを得ないでしょう。しかし、それが分にこえて他に迷惑を与えるような思惑は、私はやめてもらわなければなりません。自分だけの問題ならよろしゅうございます。しかし、それが思惑だからといって——そして、そこを十分に判断し、たとえ思惑であっても、再建できるようなものなら、親心で銀行なんかはいくべきじゃないか、こういうことでございます。
  181. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 同じ思惑にも、総理、二いろございます。おのれみずかがら好んで思惑をした場合と、好まざるにもかかわらず、のまされたという思惑があるのでございます。おのれみずから好んでやることを、あなたは三品市場において公に許していらっしゃる。糸へんの世界で一番思惑の大きいのは、二品市場でございます。そこで売った買ったのばくちが行なわれます。ギャンブルが行なわれます。それはあなたは許していらっしゃるじゃございませんか。許しておいて、これがいけないという手がありますか。どうです。その点は。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 三品取引所なんかにおきましても、それは取引でございますから、いろいろ先を見通してやることは、これはどこの国でもやっておることでございます。しかし、それが行き過ぎた場合には、解け合いの問題もありますし、注意をいたしております。したがいまして、三、四ヵ月前でございますか、人絹の思惑があったときには、通産大臣はこれが停止を命じ、是正をやっておるでございましょう。三品は思惑だからこれはやっちゃいかぬということは、角をためて牛を殺すの類でございます。やはりああいうものにつきましては、需給関係、相場関係の安定のために使うことは、各国の認めているところ、ただ行き過ぎた場合には、これを是正し、停止することは当然でございます。
  183. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それだったら、思慮思惑というて、倒産の原因を思惑に持ち込まぬようにしてもらいたい。あなたみずからが、法律によって三品市場の思惑を許していらっしゃる。社会党は、過去数回にわたって、これを制限すべき提案をしておる。にもかかわらず、そのつどあなたの党のほうが、これはよろしい、よろしいといってやらしておる。それがほんとうの思惑なんです。ところが、おのれの意思によらざるところの思惑がここにございます。どういう思惑か、通産大臣おわかりか。どうぞ。
  184. 福田一

    福田(一)国務大臣 御質問の趣旨はよくわかりませんが、私の考えでは、思惑をやった人の手形が不渡りになったために受けるあれではないかと思います。
  185. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 通帳大臣のおっしゃったとおり、それもございまする。しかし、期ぜずして、自分が志向せずして思惑という結果を受けなければならぬ問題がございます。それが三月危機です。総理、あなたはさっき、三月危機は思惑だとおっしゃった。そのとおりです。よ。しかし、それは自分の意思じゃないのです。なぜかならば、はっきりここで申し上げましょうか。繊維関係がぶつ倒れていくというのは、何でぶつ倒れるかといったら、冬物が売れなくて返ってくるからなんです。デパートから返ってくるからなんです。売れ残りだというて。そこへ手形が落ちてくるわけなんです。現品では勝負ができないわけなんです。この現品は思惑は禁止されておる。やろうと思ってもできない。ところが、買い方のほうでは、デパートにしても、あるいはその他にしてもですが、メーカーに対しては、これだけつくれといって注文するわけなんです。注文してとっておいて、売れなかった、からというて、季節はずれになったらこれを返してくる。これを許してよろしゅうござ、いますか。その結果、メーカーと総エージェントのところが、思惑だったということになるわけです。それを紡績に持っていくわけにはいかぬのだ、紡績はこれを受けてくれないのだから。そこでとめなければならぬ。とめるから、ここで押し流されて、これが倒れてくるのです。自分で好んでやり得る機場や中小企業がありますか。思惑をやらされているのですよ。これに対して、総理、どうします。思惑はいかぬとおっしゃるなら、これを禁止してもらいたい。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 それが思惑のうちに属するかどうか、私のいう思惑のうちにはそういうものはございません。たとえば設備を不当に力以上に拡張し、注文が少なかったとか、あるいは仕込みをたくさんし過ぎて、その値下がりでいく。いまのように、通常な契約によって通常な商売をしたときには、これは思惑じゃない。先ほどのは暖冬異変ということの結果でございまして、これは思惑とはいえぬでしょう。しかし、そういう取引形態がいいか悪いかということなんです。日本の取引形態の根本的の問題でございますから、これは考えなければいかぬでしょう。いまのデパートが委托販売というかっこうをとる場合におきまして、そういう制度を存続するか、あるいはいまのようなことが起こるから今後はどういうふうな方向をとるかということは、これはやはり通産省その他で考えていかなければなりますまい。私の言うのは、そういう通常の取引によって特定のことが起こった、暖冬異変、そうしてまた、そういう契約をしているということが直ちに私の言う思惑に入るということは、私は考えておりません。
  187. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それ以外に、中小企業は思惑をやろうと思ってもやれません。なぜやれないか。それは金融機関がそんなことを詐させぬからです。そんな思惑をやらせるような金を貸さぬからです。  ところで公取委員長、こういう不公平な取引、これはいわゆる独禁法に違反すると思うが、どうなんです。
  188. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 いま例示されました百貨店の取引関係につきましては、百貨店に関する特殊指定というのがございまして、不当返品とか、そういう場合におきましては、特殊指定にすぐ抵触するわけでございます。したがいまして、いまの御例示が特殊指定にすぐそのまま抵触するものか、あるいはそれ以外の形をとっているものか、それは具体的な年例を伺いました上でわれわれのほうでは判断したいと思っております。
  189. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 公取委員長、いまの不当返品は、たとえばというてデパートを出したのでありますが、決してデハートだけではございませんですよ。繊維の流通部門は、全部そういうことになっておるんです。ですから、よく御調査して処置をしていただきたい。  次に承りたいことは、大蔵大臣、このようにして倒れていく中小企業を救うには、何といっても特効薬は政府資金であると思うんですが、中小企業の資金需要に対して、政府資金は一体どの程度出ておるのでございましょうか。
  190. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知のとおり、昨年末におきましては、政府関係三公庫に三百億、それから買いオペによって二百五十億の資金手当をしておりますが、三十九年度の予算につきましては、御承知のとおり、三公庫には前年対比一二%ないし二三%という大幅な貸し付けの増ワクをやっております。いまあなたが申された中小企業の問題につきましては、この間からも御質問がありますけれども、私は、画一、一律的な引き締めということよりも、いわゆる開放経済に向かって、中小企業もますます内容をよくして開放経流に対処できる力をつちかわなければならないという考えから、非常にこまかい意味で、昨年から不渡りの内容、倒産会社の事情、一体どうしてこれを食いとめることができなかったのか、またどうすれば将来かかるものが排除できるかという問題に対しては、十分な施策をいま考えておるのであります。特にあなたが先ほど言われたものに関連をして申し上げますと、四つ、五つの例をいま持っております。親会社からの資金供給がとまった場合とか、それから親会社がつぶれたために子会社、というよりも兄弟会社がそのままつぶれておる、そういうものの資本金と取引量の状態を調査をしますと、二千万円ないし四千万円の資本金のものが、十一億ないし十二億の負債総額で倒産しておる。また、それが負債総額と年間の取引量は一体どうかというと、年間八億くらいのものが十四、五億の負債を持っておる。これで政府考えなければならぬのは、いま企業閥の信用が膨張しておりますし、手形が非常によけい出ておるものを、これを画一、一律的な引き締めをすれば、もう将棋倒しというようになります。そういう意味で、正常な企業の発展というものに対しては幾らでも政府が金のめんどうを見る、また、金融機関が需要に対して幾らでも供給するということでは、正常な中小企業の発展はできないのであって、政府が三十九年度の経済成長は九・七%、実質七%と言っておるのでありますから、少なくとも政府考える九・七%の倍額、一五、六%くらいの考え方で経済成長を続けておる企業には、倒産はないのであります。私は率直にいって、いま融手とほんとうの手形との見分けがつきませんから、あえてそういうものには言及しませんが、私が先ほど申し上げたように、倒産会社の内容を十分大蔵省としても検討しなければならない。また、金融機関にも特に検討を命じ、報告を要求しておりますのは、そういう事情を申し上げておるのであって、正常な企業の発展に移り得るまでは、画一、一律的な引き締めを行なわない、こういう考え方で配慮しておるわけです。
  191. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 きわめて懇切丁寧な御答弁でありがとうございますが、もう時間が迫ってきておりますから、なるべく質問に答えるようにしていただきたい。言いわけはようくわかります。大蔵大臣の苦しい胸中はよくわかりますから。  そこで、あなたにお尋ねしますが、中小企業に対して、必要資金のどの程度政府資金を供給したら適当だとお考えでございますか。
  192. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常にむずかしい問題であります。輸出入銀行の例をとればおわかりになりますが、輸出、輸入の総額に対して、輸出入銀行がとっておるものは約二〇%ということでありますが、この程度のものが中小企業に当てはまるかどうか、そのような例では解決できないと思います。
  193. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いみじくもおっしゃった、二〇%とね。これはもうここで金融論を論じようとは思いませんから、追及はいたしませんけれども、政府がめんどうを見るパーセントは、全体必要量の二〇%程度が適当である。総理はどうなんですか。専門家にお尋ねいたします。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 多々ますます弁ずでございます。金にも限度がありますし、信用にも限度がございますから、中小企業の必要資金は何%ということは、世界の人だれも、神さま以外には答えにくいでしよう。
  195. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 神さま以外にはわからぬ。しかし、実際行なっていらっしゃるのはどうか。上に厚く下に薄く行なわれておるようですが、この上に厚く下に薄くというのは、これが神さまでない池田経済哲学のやり方でございますか。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 上に厚く下に薄くということは、何を基準として言っておられるのか。やはり相互銀行とか信用金庫なんかは、非常に下に厚いのです。そうして、地方銀行なんかはそれほどではございませんが、大企業よりも下のほうに厚くするように政府としては指導をしております。また、大銀行、都市銀行につきましても、中小企業に一定のワクを持つよう昔はやっておりました。いまはどういうような指導をしておりますか、その精神に変わりはないと思います。ただ、政府の財政投融資の関係はと申しますと、下に厚く上に薄くということにいたしております。
  197. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 政府の投融資が、下に厚く上に薄いとおっしゃった。それが現実であれば、私はこういう質問をする必要がなかったはずです。たとえば、金融機関の別の中小企業向け融資の推移をながめてみますと、政府資金はだんだんだんだん減っておるのでございます。しかもそれは、三〇%あったので、だんだん二〇%に近づけたというなら話がわかる、それは、二〇%が理想だとおっしゃるから。ところがそうじゃないんですよ。中小企業のオール需要に対して政府が与えているところの政府資金量は、昭和三十五年九・二%ありました。次の三十六年の三月には八・七%と下がってきた。三十七年三月には八・九%、ちょっと上がったけれども、また、八年の三月には、八・八%と下がっちゃったのです。しかも、なお三十八年九月、このときには七・六%に下がっちゃった。上に厚く下に薄い、その逆をあなたはおっしゃったね。下に厚いというのがこのことなんです。七・六%で、あなた厚いと思っていらっしゃるのですか。大蔵大臣は二〇%が適当だと、こう言っておる。適当な二〇%を、厚いとおっしゃる。そうすると、まだこれよりも少のうしたほうがいいとおっしゃるのですか、池田さんは。総理、どうなんです。  もう一つ、具体的な実例を申し上げましょうか。百万円の資本金を持っておるものならば、大体百万円しか貸してもらえないのです。一千万円のものなら、二千万円ぐらいは貸してもらえるんです。一億を持てば、腕によって五億、六億は借りられるわけなんです。ところが、十億持てば百億ぐらい借りられる。二十五億を持つというと、三百六十億も借りられるのです。これが実態なんです。あなたは、上に厚く下に薄くが、反対で、下に厚く上に薄いとおっしゃった。ところがどうです。開発銀行はどうなっているのです。地方を開発させるのだ、格差是正するのだ、だから開発銀行に金をやるのだ、中小企業に貸すのだというところですが、機械工業振興法の予算は一体幾らある。百億あります。ところが、それが中小企業に貸された金額はわずか四億しかないじゃないか。その金はどこへいったのです。大蔵大臣、これでも上に厚く下に暫くじゃないのか。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 田中角榮

    ○田中国務大臣 加藤さん、数字を御自分の立場から御批判されておるようでありますが、御承知のとおり、三十九年度の財投計画は、三機関について見ましても、三十八年度の千二百八十三億が千六百十七億と二三・何%もふえておるわけであります。伸び率二六%ということであります。あなたは、いまの数字は財投でもって見ておる、政府関係の各機関、開発銀行及び輸銀等も含めて言われておると思いますが、それには二つの問題があります。一つは、中小企業がだんだんと大きくなって、日本経済成長に伴いまして、中小企業の規範から脱しながら一般企業になっておるということがあります。もう一つは、輸出入銀行の業務は、御承知のとおりブラント輸出でありますから、これをやっておる企業が結果的に見て大企業がほとんど九十何%だということは、これはもう輸出入銀行の制度上の問題であります。また、開発銀行につきましては、今度は新しく法律改正をお願いしておりますが、新産業都市や地方開発の資金は、中小企業におおむね重点的に投資をせられるということを目標にして法改正をお願いしておりますが、開発銀行そのものが設備の近代化、設備投資ということでありますので、現在貸し付けられておる貸し付け総ワクのうちほとんどが大企業であるということは、これは除いて考えなければならないことでありまして、国民金融公庫、中小公庫、商工中金等、中小企業に対する資金に対しては、予算で二〇%しか伸びて、おらないものに対して二六%というふうに、中小企業に対して重点を置いた施策を行なっておることは御承知のとおりです。
  199. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 要するに、中小企業に対する政府資金は二階から目薬かスズメの涙で、どんどん倒れていくというのにカンフル注射も打てない、こういうことなんです。そのほか、三公庫に対するところの問題がございます。金利が高いとか、手続が長いことかかるとか、資金源が金融債だから金利が高いとか、もういろいろございまするけれども、それはいずれ後ほどにするとして、市中金融についてお尋ねいたします。  中小企業の資金需要の九〇%以上は、市中金融にたよらざるを得ない状況でございます。しかし、その市中金融が引き締めをいたしまして、引き締め基調を宣伝なさいますると、次々とそれ以上にプラス・アルファをつけて引き締めをやられるわけでございます。その結果は、たよる先がないので、町の金融がいま大はやりになっております。たとえば頼母子講であるとか、たとえば工場内銀行であるとか、あるいはやみ金融であるとか、これが横行し、高利貸し的存在が一そう倒産に拍車をかけている。これが現在の実情でございます。これは大蔵大臣御存じのとおり。そこで、せめて公に認められ、法律で認められておりまする市中金融、これの内容についてお尋ねをいたしまするが、これがまた大企業にはきわめて丁重でございまするけれども、中小企業に対してはきわめて冷酷である。第一番は歩積み、第二番目は両建て、この結果、金利は公定金利、きめられた金利よりははるかに高い。二倍近い金利が行なわれている具体的実例がたくさんあります。これについて、大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  200. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中小企業につきましては、政府関係機関、いわゆる三機関、及び地方銀行、都市銀行等のおおむね三〇%程度を中小企業に貸し付けるようにと、また中小企業金融専門機関としての相互銀行、それから信用金庫、信用組合等も、中小企業の資金需要に対してはできるだけの配慮をいたしておるわけであります。ただし、実際の状況を見ますと、歩積み、両建てということで、実質金利が非常に高いということは事実であります。この問題につきましては、前の国会から申し上げておりますとおり、歩積み、両建てということは、できるだけ早い機会に全廃をしなければ、金融の正常化はできない、こういう考え方に立っておりますので、政府としましては、政府関係機関の窓口をしておる金融機関で歩積み、両建てを要求したものに対しては、指定を取り消す、こういう強い通達を出しておるわけでありますし、またそのような姿勢をとっております。同時に歩積み、両建てにつきましては、いま金融機関で、これがいつどのようなことで、どういう計画でもって歩積み、両建ての解消をするのかということに対して鋭意検討を進めておりますし、相互銀行等につきましては、もうすでに御承知のとおりの歩積み、両建て解消具体案ができておるわけであります。他の金融機関についても、強い態度で歩積み、両建ての解消ということを進めておりますし、なお公取でも、かかる問題に対しては権限の発動を行なおうという態勢にあることは、御承知のとおりであります。
  201. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 池田総理大臣、歩積み、両建てについてお尋ねいたします。数字だけじゃいけぬとおっしゃいましたので、私は具体的実例をここに持っておりまするから申し上げまするが、金融機関から——あえて名前だけは伏せますが、一千万円を借りる。だから、これは相当な中小企業です。一千万円を借りる。四百万円は積んでおきなさいと、こう言う。六百万円手に受け取るだけなんです。ところが、金利は一千万円払わなければならないのですね。そしてこれを一年契約で借ります。十カ月月賦で月々返済しろ、こう言う。それはかなわぬと言ったら、途中で切りかえればいいから、まあそれでやりなさい。こういうことなんです。それでだんだん返していきました。半年たちました。そうしますると、中小企業の金は一千万円、銀行にあるはずです。そういう勘定が出てくるわけです。全部自分に借りた金は返しちゃったことになる。にもかかわりませず、一年たってもなおその金は借りたことになっている。担保は解除してもらえない。担保を解除しようとしたらどうするか。あなたに今度は成績がいいから追加して二千万円を貸してあげます。いや、もう金は要りません、そんな金は要りませんと言ったら、いや、貸してあげる、金は要らないなら積んどきなさいと、こう来た。二千万円貸していただいて、直ちに二千万円積まされたわけです。金利の利ざやだけでもたいしたことでございます。具体的実例でございます。こういう金融が、国家が許しておる正常な金融機関で平気で行なわれておる。どの銀行もほとんどなんです。これは銀行が支店にノルマ、を課するから、運転手にノルマを課したらこれが殺人事件を起こし、交通事故を起こすと同じように、本店の常務や頭取が支店長にノルマ、を課したしたら、これは中小企業倒産の基をつくってくるわけです。しかもこの担保は永久凍結なんです。こういう問題に対して総理ぼどうお考えですか。しかし片やどうなっているか。帳じりはオーバーローンときておる。一体どこへオーバーしていくのか、これほど中小企業を引き締めておきながらどこへオーバーしていくのか。それは大企業の過重投資、系列会社に対しては、自分とこの、重役の先輩が会社へ入っているものだから、やむなくそこへそこへと余分に流れる。それがオーバーローンの原因になっておる。歩積み、両建て、担保凍結、片やオーバーローン、総理の見解を承りたい。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたのおっしゃることは、大体よろしゅうございます。千万円借りて四百万円という例はないとは申しません。通常は、やはり初めは三割か二割五分のようでございます。私は、このことはもう前から存じております。これを一番初め、七、八年前に言い始めたのは私でしょう。私は昭和二十五年にアメリカへ参りましたときに、アメリカ統計は非常によくできている、情憑すべきものだが、歩積み、両建てはどうだということを聞いたことがございます。いや、これはなかなかむずかしいのだが、トレッシングは、ある程度はやっているかもわからない。しかし、これは日本のような押しつけ的なものはもちろんない。そこで、私は、銀行家にはきらわれることでありますが、この問題を前から言っておる。厳重に大蔵大臣にも指令しております。ただ問題は、いまのように、一ぺんに直す必要があるのですけれども、しかしこれを強行しますと、また中小企業も困る場面もなきにしもあらずでございますから、とにかく急いで、そうして摩擦の起こらないようにやれということは、もうぼくはきつく、言っておることはあなたも御承知と思います。大体あなたのお考え方向に行っております。ただ問題は、歩積みとオーバーローンとが一緒だということはちょっと私は……。(加藤(清)委員「片や、と言っておる」と呼ぶ)片やといっても、片やオーバーローン、片や歩積みというのでは、これはちょっと比較が違う。比較ができない問題だと思います。オーバーローンの問題も、御承知のとおりその原因は、大会社にたくさん貸すということが直接の原因ということよりも、日本の金融制度で社債あるいは国債、公債が経済の割合に非常に小さ過ぎるから、いわゆる債券を日銀が持つというかわりに貸し付けということになるのがすオーバーローンの原因でございまして、歩積み、両建てとは、これは観念が違うことでございます。したがいまして、われわれは、日銀のあり方として、窓口規制もさることながら、オペレーションでやれるように公社債市場を設け、これの拡大をはかるべきだということを言っておりますから、このごろ貸し出しが相当減ってきております。昨年の同じ日に比べまして準備貯金は千六百億円もふえておりますが、貸し出しは、千億円ばかり、このごろで、二、三日前で、減っておる。オーバーローンは五、六年前のときとはよほど変わってきております。しかし、オーバーローンはだんだん解消しますが、歩積み、両建ては解消しないから、左とか右とかいう問題ではなしに、本質的に片一方はぜひ早急に改めなければならぬ問題だ、しかしオーバーローンの分は、いまの公社債市場の育成発展によりまして随時解消していくことと考えております。
  203. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 公取委員長に、本件に関していままで調査されました結果と将来の対策についてお尋ねします。
  204. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 この問題につきましては、すでに御承知かと思いますが、昨年の四月に私のほうとしましては警告を出しまして、同時にそのときに、おそらく大蔵省も関連していると思いますが、銀行協会のほうで自粛基準というのを一応出しております。われわれのほうとしましては、その自粛基準に一応基礎を置きまして、効果がなかった場合は、特殊指定をしようということで準備を進めてまいってきたのでありますが、昨年の暮れに、一応協会のほうから私のほうへ、この程度の自粛ができていると持ってきた数字を見ますと、どうも向こうで一、言っている自粛基準が、はたして特殊指定のものさしにふさわしいかふさわしくないかという点について、実は私、多分に疑問を持ってきたわけです。したがいまして、いま拘束性預金と一応言われているものの中で、向こうで自粛対象にしているものはこれこれだ、これはわかっていますが、では自粛対象にしていないものは何か、これをいま書き出させております。なかなか出てまいりません。しかし、早晩出てくると思っております。その二つを一応にらみ合いました上で、はたして、われわれのほうとして自粛基準がそのまま大体その線に沿って考えられるものか、あるいはもう少し、もう一歩進んで考え方をさらに進めていくべきものか、これをいま検討しております。いずれ関係の官庁ともよく相談しますし、銀行協会の意見もよく聞いてみたい、かように思っています。
  205. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大蔵大臣にお尋ねします。  大蔵大臣も、池田総理も、すでに本件につきましては再三いろいろな会合で御答弁なさっていらっしゃいます。歩積み、両建て、担保凍結、ともにいけないから、中小企業の敵だから、これは自粛しなさいというと、銀行側は自粛いたしますと言うて、紙きれに書いて流す。それが壁に張ってある。ところがこれが一向に直らない。ほとんど直っていない。議員の虚礼廃止と同じだ(笑声)とは言いませんけれども、ほとんど直っていない。これが実情なんです。これに対して、大蔵大臣は、行政措置としていかなる手を打とうとなさっていらっしゃるのか。
  206. 田中角榮

    ○田中国務大臣 歩積み、両建てにつきましては、総理大臣からもときどき言われておりますし、私もこれとまつこうから取り組んでおるのであります。先ほどの御質問の中で、担保凍結という問題がありましたが、あなたの言われるようなものがないとは言いませんが、習慣として長期に継続融資をする場合には、そのようなことがありますけれども、これは本人が要求をすれば、当然担保解除をするのが当然でありまして、商習慣以上にやってはならないということは言うを待たないわけであります。しかし、実際の問題として、あなたの言われているようなことが中小の金融機関で行なわれておるという事例を承知いたしております。でありますから、こういう問題に対しても、銀行局から相当手きびしい措置をするということを考えております。  それから、なぜ歩積み、両建てが一体できるのかという問題をしさいに検討いたしておりますが、これは、一つには貯金競争であります。もう一つは、企業が小さいということです。でありますから、この問から世上議論になっております金融機関の統合などという合理化の線を打ち出したのも、そういうこともあわせて行なわなければ、金融機関は歩積み、両建てというものを商習慣の名において、あなたがいま希望しておられるような線に早急に到達することは、なかなかむずかしいという考え方で、銀行行政の面からも歩積み、両建てが早期に解消できるような措置をいろいろ考えておるわけでありまして、今日の段階では、大蔵省としては銀行局が銀行検査を随時やるということでありましたが、銀行局だけでは人員の配置上むずかしいというので、先ほどちょっと申し上げましたが、倒産の状況とか手形の状況とかという名をもって地方財務局をして調査も行なわしめる、こういう措置をもうとっておるのでありますから、大蔵省としては、この問題には相当強い態度で対処しておるという考え方を御理解いただきたいと思います。
  207. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 相当強い態度だけでは相手が聞きませんよ。ことばだけではね。この金融の逼迫に対しては買いオぺで操作するといま総理は助け舟をひとつ出しなさった。今度あなたのところでせっかくそうやってつくっていただいたそのものが、悪用されては困るのでございますから、大蔵省のほうで具体的に、先ほどあなたは政府資金の融資を停止させるとおっしゃった、それはほんとうにおやりになりますか。確かに行政措置だ、歩積み、両建て、普通一般と常識にはずれたことをやった場合には政府資金を停止させるとおっしゃった、それはほんとうにおやりになりますか。
  208. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは、通産大臣とも合議の上、通産大臣もやると思いますが、政府関係機関の窓口業務を行なっている金融機関であって、しかも、この貸し付けの事案に対して歩積み、両建て等を要求したものに対しては、これが指定を取り消すという政府の方針はもうきまって、通達済みでございますから、そのような事案があれば当然措置いたします。
  209. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 通産大臣、本件についてどうなさる。
  210. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま大蔵大臣からもるる御説明がありましたが、歩積み、両建ての問題、これは私は非常に大問題だと思って、私も閣議でしばしば発言をいたしております。今後もそういう意味で強力に歩積み、両建ての問題解決に向かって努力をいたしたいと思っております。
  211. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に、もう一つその中小企業の倒れる原因がございます。金融だけ責め苦にあっております。それは手形の問題でございます。いわゆる決済の方法、親企業から品代金、加工賃、これをいただくときの決済の方法、手形でございます。  公取委員長、不公正と言われる取引は、手形では一体幾日を基準にいたしておりますか。
  212. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 具体的な法令としましては、下請代金支払遅延等防止法というのがございまして、そこに一応二カ月ということになっております。
  213. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのとおり、二カ月でございます。六十日手形までは許している。しかし、それは最町限度であって、それ以下で支払えということに相なっております。しかし現実ほどうです。通産大臣にお尋ねする。現実はどうなっているか、どのように把握してみえるか。
  214. 福田一

    福田(一)国務大臣 法律のとおり必ずしも行なわれておらないと思っております。
  215. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 法律のとおりになっていない、そのとおりだ。大蔵大臣、御存じでございましょうが、台風手形ということば御存じでしょう。台風、二百十日なんです。二カ月と違って。お産手形、これは十月十日たたないというと顔が拝めぬというやつなんです。七夕手形、三百六十五日先でないというと会えないというやつなんです。これがはやりことばになるほど支払いが延期されているわけなんです。その延期された結果は割引料、すなわち期日以前にこれを現金化すれば、その金利は全部下請が負担しなければならない、これが実情でございます。台風からお産、七夕、これについて一体これでよろしいとおっしゃるのかどうなのか、総理に承りたい。
  216. 池田勇人

    池田国務大臣 これは商売の原則でございまして、たとえばある業種におきましても、Aという会社は売り掛け代金が一カ月足らずで入ります。大体同じような業態で、日本で一番有名な三つ四つの会社であっても、それがやはり売れ行きのいい分と悪い分とでは、一カ月以内の手形でも回収できる売り力もありますし、三カ月かかるのもある。経済実態に沿って強弱の観念があらわれるのであります。理想は二カ月でございます。それからまた、いまお産手形とか台風手形と申しましても、これは受け取った人がすぐ銀行に持っていくのでなく、間にまた中間があるのでございます。ですから、その会社の信用によりまして期間も違いますし、それからまた、利子負担もある程度見込んで商売をしておるのであります。理想はあなたのおっしゃるとおりに二カ月にこしたことはありません。あるいは一カ月にこしたことはございませんが、しかし、そういうものを一ぺんに直せと言ったって、これはなかなかむずかしいことなのであります。理想は、やはり潤沢に資本の蓄積ができまして、そうして自分の力に余裕を持ちながら商売をしていくとそうなってくるのですが、いまのところなかなかそういうことはできにくい。しかし、一時よりはよほどよくなってきたと思います。おととしの暮れから去年の初めにかけまして、信用の補強と申しますか、一人がとまりますと全部とまりますので、その間の循環をよくするようにやりまして、最近は一年半前ほどその声を聞かぬようになりましたが、しかし、実態はまだ五、六カ月、六、七カ月の手形があるということも私聞いております。
  217. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 このようにして政府金融はスズメの涙、市中銀行は歩積み、両建て、親企業は子に対してはお産手形、台風手形と延期させている。この三重の責め苦にあって倒産が次々と続出をしておるのでございます。この結果は、これが少数であれば問題はございませんけれども、山にカラスのかあと鳴かない日はあっても、町に中小企業の倒産しない日はないのですから、去年あたりは平均一日五人ずつですから、五件ずつ……。(「オーバー」だと呼ぶ者あり)どうしてオーバーだ、数字に現われているじゃないか、それは千八百件もあるじゃないか。
  218. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 こちらを向いて、こちらを向いて……。(笑声)
  219. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 千八百件もある。どうしてオーバーだ。毎日のように倒産が続いている。この実態を大蔵省当局はどう考えているのか。しかも、三月危機に向かっていくにあたって、なお続出する要件は備わっている。ところが問題はどうです。きのう、おとといの新聞には、大蔵省の考え方と通産省の考え方がまるきり食い違っているところの記事が出ている。  もう時間がございませんので、私はここは簡単に結びまするが、中小金融に対して大蔵省の見解は、いま模様ながめのときである、したがって貸す必要はないんだ、ふやす必要はないんだ、かように答えているわけでございます。しかもなお中小企業倒産の理由をあくまで思惑だ、こう言っている。そういう局長さんたち、ここへ出て来て反対論を述べていただきたい。具体的実例でやり合いますから……。雲の上にいると実態がわからないんだ。銀行へ局長が行けば、銀行は招待はするかもしれないけれども、実態は話さないんだ、話す支店長はおりません。招待はたくさんするでしょう。そこで聞いてみたことがほんとうであるなどと思って、それで行政措置をされてはたまったものじゃない。切なる具体的実例、この声を、ほんとうの民の声と聞いて対策を講じていただきたいものである。それについてお尋ねする。金融引き締めの場合、十ぱ一からげにやりますると、必ず系列はゆるめて、そのしわを中小企業に寄せるのが銀行のやり方です。したがって金融引き締めを、あなたやるかやらないか、もしやるとすれば、罪もない中小企業にしわが寄らないようにすることができるのかできぬのか。なぜかならば、金融引き締めの原因は何であるか。中小企業がよけい投資したからではない。所得倍増計画、高度成長に従って大企業がどんどん投資したからなんだ。過重投資をやったからなんです。そこで帳じりが赤になっちゃった。その帳じりの赤を直すために金融を引き締める、そのしわを中小企業が受けるとなると、罪をつくったものには罰が当たらぬと、罪をつくらざる中小企業に罰が食わされるということになる。こんなばかな話は小説の中にもないことなんです。したがって、ぜひあなたは、もし金融引き締めをやるとするならば、罪のないものに罰が当たらないようにしなければならぬと思う。大蔵大臣、いかがです。
  220. 田中角榮

    ○田中国務大臣 本会議における財政演説でも申し述べておりますとおり、金融は随時引き締めの場合もあり得ると思いますが、しかし、中小企業の金融に対しては万全の態勢をとりますと、こう政府の所信を明らかにいたしておるわけであります。今度は公定歩合というよりも、日銀もきめこまかな施策を行なっておりますのは、かかることを十分考えながら、大企業の資金量に対しての引き締めを昨年十二月から行なっておるわけであります。しかし、大企業の金融を引き締めると、あなたが先ほど言われたとおり、手形の期日が無制限に延びていく。また、現在そのような兆候もないわけではありませんので、先ほど申し上げたとおり、地方財務局をして、倒産会社の内容とか、また金融機関が預かっておる手形の内容等に対して調査させて報告を求めておるわけであります。それだけではなく、いま経済企画庁長官とも、また通産大臣とも話をしながら、支払い遅延防止法の改正案を考えなければならないときではないかとも考えておりますし、もう一つ重要な発言でありますが、御承知の融通手形の問題がありますが、倒産をしておる会社等に対して、かかるものの影響も皆無ではないわけであります。このような面から、手形法が現在のままで一体いいのかというような問題に対して、アメリカ、またヨーロッパ諸国等は、かかる問題に対しては体罰を規定いたしておりますが、非常に古い法律で現在の事態に対処できるかどうかというような面まで検討を進めておるのでありますから、中小企業対策に対しては遺憾のないようにしたいと考えます。
  221. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。それでもなお公地歩合は引きしけられますか。
  222. 田中角榮

    ○田中国務大臣 金融政策は、適時適切に行なうべきでありまして、公定歩合の操作の権限は、中立性を持った中央銀行たる日銀が行なうのでありまして、かかる事態がこないことを望みますが、しかし場合によってやるとしても、日銀政策委員が各般の事情を十分検討して行なうべきであります。しかし、こうしてあなたの発言もありますし、私の発言もありますので、非常に慎重におやりになるだろうということは看取されるわけであります。
  223. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 最後に、もうこれで質問はいたしません、時間のようでございます。長い間皆さんに御苦労をかけました。  それで池田さんに一言だけ申し上げたい。私は、吉田さんのころには、ずいぶん吉田さんにやじを飛ばしたもんです。しかし、憎たらしいからではない。いまもなお池田さんにはやじを飛ばします。それは、池田さんの命の続く限りやじを飛ばします。ところが、私たちは非難し合うために国民に選ばれてきたわけではない。私は吉田さんを当代一流の政治家だと思っているわけでございます。吉田さんは、とにかくこの国の平和の基礎を築かれたわけなんです。あなたは、ほんとうに経済が専門だ専門だと言うていらっしゃる。ところが、まかせろまかせろとおっしゃった、まかせてみたら病気になっちまっておる。この病気は、国際収支の赤は五年ぐらいたたぬとなおらぬとか、あるいは物価は二年もたたなければなおらない、こう言うておられるようですが、これは、二年も三年も中小企業は続くもんじゃございません。国民は待てるもんじゃございません。その前に手を打たなければ倒れていっちゃうのです。ぜひひとつ後世の歴史家に、ほんとうに吉田は新日本の平和の基礎を築いた、その弟子の池田は新日本に繁栄の土台をもたらした、こう言われるようなりっぱな政策を打ち出してもらいたいものだと思う。あなたの庭石をめでられる心は、私はほんとうに敬意を表する。しかしその庭石は自分の庭石だけであって、霞が関離宮あとの庭石の中のあのりっぱな化石や、あのりっぱな庭木がどこへやら行方不明になってしまうようなことでは、これは後世の歴史家は、あなたをりっぱな人とはあがめないでございましょう。ぜひりっぱな当代一流の政治家になるために手を打ってもらいたい。  以上。
  224. 池田勇人

    池田国務大臣 国際収支は五年たたなければいかぬ、こういうようにおっしゃるといかないのでございます。貿易外収支の黒字は、やはり船腹、借金利子その他がありますので、五年間ぐらいはかかるというので、国際収支は、私は全体においてあまり大きい赤字のないように、できるだけ黒字にしていくようにするのであります。また中小企業につきましても、二年、三年で中小企業が楽にいく。そうじゃない。中小企業は、日本の置かれた立場からいって、何百年も何千年もとにかく安泰であることを望むのでございます。どうぞ、そういう意味におきまして、心を広く、寛容な気持ちで十分ごらんいただきたいと思います。
  225. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて加藤清二君の質疑は終了いたしました。  次会は明四日午前十時より開会いたします。  明日の質疑者は、午前は淡谷悠藏君、午後は志賀義雄君であります。志賀義雄君の質疑の時間は、理事会の申し合わせにより、一時間でありますので、御了承を願います。  なお、淡谷君の要求大臣は、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣通商産業大臣労働大臣、防衛庁長官であります。  また、志賀君の要求大臣は、総理大臣、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣建設大臣、防衛庁長官、経済企画庁長官、国家公安委員長であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会