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1964-01-31 第46回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年一月三十一日(金曜日)    午前十時四分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    砂田 重民君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       松野 頼三君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       石野 久男君    岡田 春夫君       加藤 清二君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君  委員外出席者         専 門 員   大沢  実君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 中共問題については、昨日来いろいろと審議が行なわれました。私は、太平洋を隔ててはるかかなたにあるアメリカと、一衣帯水の日本では、フランス承認にからむ中共に対する態度については、多くの開きが出ることは当然だと思うのです。先般来の日米合同会議におきましては、政府側は、アメリカと違った立場において、いろいろと強力に主張をいたしたということをわれわれは承って、野党ではありますが、事外交については、ぜひひとつ政府を鞭撻し、日本側利益のあるような国民的立場でやってもらいたい、こう思います。  こういう建設的な立場に立って、私は、ラスク長官中共に対して述べた中共性格基本的な認識として、非常に好戦的であるとアメリカが言ったことは、新聞その他を通じてわれわれが読んでおるとおりでありますが、日本国政府池田総理中共に対する基本的認識中共好戦国家であるのか、中共は膨張を主とする国家であるのか、それとも中共は一体どういう国家であるのかという中共に対する認識が、やはり中共に対する日本外交基本になると思うのでありますから、ぜひひとつそれらの点について、総理から忌憚のない御回答を願っておきたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 シナ大陸日本との関係は、今澄君御承知のとおり、千年以上、あるいは二千年の関係を持ち、同文であり、同一人種に嘱する、経済的にも過去においては非常に重大な関係があった。一応戦争のためにとだえておりますが、シナ民族に対するわれわれの気持らは、アメリカ人と違っている点は御指摘のとおりでございます。しかし、いま共産主義中共政権に対しまして、われわれの考え方政治面においては違っておりますが、昔からのそういうことは、日本人はみないわゆる近親感を持っておるということはアメリカ人とは違う。ちょうどアメリカソ連との関係アメリカ中共との違いのごとく、われわれとしては、ソ連中共といえば、やはり中共のほうに歴史的近親感があるのであります。  しかし、いま中共のとっている政策に対してのアメリカ批判、これはアメリカとしては、朝鮮事変の問題、あるいは東南アジアの平和のために共産主義の侵略ということが非常に頭にきていると思います。しかし、われわれはそういう戦火とか責任を持っていない。だから、見方は違うと思います。しかし、アメリカはこう言ったが、日本政府中共に対して、中共政策をどう批判するかということは、私は、ここで申し上げるべき問題じゃない。ただ、民族民族としての関係につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。
  5. 今澄勇

    今澄委員 私は、日本中共外交を展開するにあたっては、中共が一体どういう国家であるか——きのうは、アメリカラスク長官見解総理はここで述べました。私は、そこで、中共平和国家であるか、これはこの前、前の総理大臣の岸さんのときにいろいろ議論があって、岡田春夫君の質問に答えて平和国家であると言った。私は、いろいろの見方はありましょう。だがしかし、日本中共外交をするにあたっては、中共という国家に対する見方が、アメリカと同じなのか、アメリカと違えばどういう点が違うのか、いまは好戦国家と見ておるが、将来はこうなるであろうという見通しがあるのか、そういう基本認識がなくしては、外交を展開することは困難だと思うのです。だから、この際、ひとつ国会において、池田さんは中共をどう見ておるか、ラスク見解が全く同じなのか、あるいはこういう点において違うとかという点をひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 今澄君は、アメリカ中共に対する考え方のみを議論しておられますが、私らが国連において、中共問題を、アジアはもちろん世界の平和に重大な関心があるとして国連の場において適正な結論を出そうとするゆえんのものは、アメリカ考え方に支配せられたということじゃない。日本立場から重要な問題だから、アメリカのみならず、ソ連あるいは自由国、主として自由国家郡等がどういう考えを持っておられるかということを見ながら結論を出したいというのであって、ラスク長官がどう言われたから、それについて日本がどうこうという問題じゃありません。それはアメリカ理事国一つでございますから、権を持っておりますが、同様に、世界各国の人の中共に対する考え方を集約して適正な結論を出すことが、アジアにおきましての重要な地位を持っておる日本としてとるべき策であると私は考えておるのであります。したがいまして、ここでラスク長官考え方のみによって中共批判をするなんということは、私は差し控えたいと思います。
  7. 今澄勇

    今澄委員 私が聞きたいのは、ラスク長官アメリカ外交責任者としてこういう見方、それから日本はこういう見方、いわゆる自主的な日本見方がなければならぬ。池田さん自身の見方を聞きたいのです。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 私の見方は、先ほど申し上げたとおり、いろいろな見方がございましょうが、われわれとしては中共とは昔からのいわゆる民族として、政権はいざ知らず、民族的のつながりは非常に深い。したがって、アジアの平和のために世界の人の適正な結論が出て、全部の世界の人々の適正な結論のもとに友好関係を将来持続していきたい。これは、私は、アメリカであっても、また中南米の国々であってもそうだと思います。  ただ、現実の問題をどう評価するかという問題、その評価のしかたは、アメリカは、いま言ったように朝鮮事変、その他インドの問題、あるいはベトナム等の問題で見方がございましょう。しかし、われわれは幸いにそういう場面にあっていない。しかし、その場面というものは、アメリカのみならず、世界の大多数の国が相当認識しているということがいまの実情であるのであります。
  9. 今澄勇

    今澄委員 どうもなかなか話が平行線ですが、日本の国から見れば、いまの総理答弁からすると、中共好戦国家であるというふうには総理は見ておらぬのではないか。なるほど中共が隣接の諸国といろいろ問題を起こして、膨張的な、将来に危険のあるような姿でこれまであったことはわれわれもこれを認めます。だがしかしながら、アメリカ日本との間には差がなくちゃならない。  そこで、総理中共に対するものの考え方中共を一体どういう国と見ておるのか、平和国家ではないが好戦国家でもない、まあこの状態ならば時日をかせば話し合いのできる国と見ておるのか、少なくとも日本総理大臣ですから、お隣の中国について自分はこういう見方をしておるというものが、予算委員会を通じて国民に語られなくては、私は政治にはならぬのではないかと思うがどうでしょう。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 日本中国とは、先ほど来申し上げますように、特別昔からの関係がありました。そうしてまた、いまのアジアにおける日本地位というものも戦後相当上がってきております。したがいまして、片一方では朝鮮事変の際における国連の、中共は好戦国なりという決議もまだ残っておる状態であります。そこで、私は、いま日本中共に対してこうだということをやって、世界の人が大多数こう思っているときに、同じことを言うか、違ったことを言うか、どちらにしても非常な影響がありますから、国連の第十七回において岡崎君をして言わしめたことも、日本は重大な関心を持っている、しかもこのことはアジアに対して非常に影響が多いから、皆さんどうぞ適正な判断を出されるように十分検討を願いたい、日本としてもやっている、検討しようと言っておるわけです。  いまそういう段階のときに、非常な影響力を持つ日本が、中共に対してこうだとか、ああだとか言うことは、これは外交上よいことでしょうか。それが日本国民のためになることでしょうか。私は、自分としての考えを持っております。自分としての考えを持っておるが、この重要問題をここでこうだ、ああだと言うことが国民利益になるかということを考えたい。私は、やはり大多数の人がこうあるべきだというほうに自分考えどおりに持っていくことを努力することはいたしておりますが、いまおれはこういうような方向にいくのだということをここで言うべき筋合いのものではないと思います。
  11. 今澄勇

    今澄委員 日本中共承認するということになれば、これこれこういう理由があるので承認する、日本中共承認しないということになれば、これこれこういう理由のために承認しない。いま池田さんは、この段階において中共承認すべきでないというこの委員会に対する答弁があった。しからば、その承認すべきでないという理由は一体何なのか、その一つに、私は中国基本的性格というものをこの委員会審議を通じて明らかにしたいと思いましたが、総理考えではどうも言うべきでないというお話でありましたが、しからば、いま中共を現段階において承認すべきでないという、中共承認できない積極的な理由は、一体何と何と何の理由によって日本中共承認すべきでないと判断されたか、その理由についてひとつ伺いたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申し上げておるごとく、われわれは一つ中国ということを前提にいたしております。そうして、一つ中国とは、日華条約によって認めておる中華民国中国と見ておるのであります、条約上、法律上。しこうして、二つ中国とか、一つ中国一つ台湾とかいうことをとやこう言っておりますが、日本政府はそういうことを一言も言ったことはありません、考えてもおりません。これが中共承認しない第一の理由でございます。  しこうしてまた、中共承認につきましての世界情勢というものは、御承知のとおり四十二対五十七ではございませんか。それはフランスのあれによっていろいろの問題が起こってきておりますが、これは一つの派生で、見守る必要はありますが、これによってすぐ日本結論を出さなければならぬといういまの情勢ではないのでございます。これが第二の理由でございます。  まだいろいろな理由がございますが、長くなりますから、その程度が二つの大きい理由でございます。
  13. 今澄勇

    今澄委員 いま二つ理由があげられました。きのうの答弁では、どうも中共好戦国家であるというようなお話がありましたが、きょうはそういうお話はないところを見ると、一歩これは前進したものだと思います。  私は、好戦国家であろうと平和愛好国家であろうと、国と国との国交を回復することは、そういう相手の状態のいかんにかかわらず、やはり近隣諸国とはいろいろつき合いはすべきだ、こういうたてまえでありますが、総理国連朝鮮事変のころの決議を述べられましたけれども、それは五一年のことなんで、それから三年して五三年に朝鮮事変が終わって、さらに、十年の歳月をけみしておる。十年一昔という一昔前のことなのですね。そういう国連決議がこうだったからというようなことは、十年前の話なのであって、その十年前の話が今日なお不承認理由であるというのはうなずけない。  それからもう一つは、中国を代表するものは一つであって、日華平和条約をもって日本が法的に国民政府承認しておるから、そういう法律的な立場の上に立つと、政府はどうしても国府だ、こういうことになりましょうが、現実には、しからばあなたが本会議で申しましたように、厳然と中国には六億、七億の住んでいる人がいるわけです。しかも、いま日本東洋において国家の安全を守ろうとすれば、一番関心を持たなければならぬのがこの中国なんです。そうしてその中国が、中共一つであるというような意見もどこかにありますようですが、それでは台湾政府としてはこれを承認するわけにいくまい。ところが、台湾一つであるということになれば、台湾政府中共全土の支配をするとは思われない。私は、ここで日本の平和を守るためにはいまの状態をこのまま固定する必要があるのではないか。だから、中共台湾を無視してこれを武力で解放するということになれば戦火が起こる。それから、台湾中共へ上陸して自分の版図を広げるのだ、おれが中国全部の代表者である、そういう考えになってくればここでは大きな紛争が起こる。  だから、総理は、台湾一つであるという見解は、しからばいまの国府が全部中国本土を支配しておる、そういうふうにお考えになるのか、それとも、現実的ないまの中国台湾状態をこのまま固定をして、そうして平和が保たれていくほうが現実日本立場から見て妥当なのであるか。この法律論現実とをながめて見ると大きく開きがあるが、一体実際にはどういうふうに考えておられるのでありますか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題は、施政方針演説で述べたとおりでございます。現実の問題としては中共政権というものがあります。しかし、法律的にはわれわれは中準民国とやっておる。それで二つ中国とかなんとかかんとかということもあるが、われわれはそういう考え方をとっていない。そしてまた、現実に存在する中共政権も、そして中華民国も、そういう考えを持っていないと聞いております。しこうして、われわれは、いまの現実の問題と昔からのたてまえとをどう調整すべきかということが重要問題だから、国連で相談しようじゃないか、こうきておるのであります。現実と過去の事実との違いをどうやっていくかというのが問題である。それを、いま日本だけで早く結論を出せとか、おれの考えはこうだからこれに従ええということは、少 し早過ぎると申し上げておるのであります。
  15. 今澄勇

    今澄委員 私は、いま言うその中共承認できないという理由がいろいろありましょう。あるいは中ソ友好同盟条約を結んでおるとか、あるいはいまあなたが言われる自由陣営の多くの国々が認めておらぬとか、いろいろ理由がありましょうが、しかし、自由陣営の中においてもイギリスも認めている、カナダも認めている、フランスも認めている。そうすると、アメリカを除いたほかの大きな国はもう三国も認めている。だから、自由陣営の中でも相当な国が認めておるとすれば、残っておるのは大きな国ではアメリカ日本イタリアぐらいではないか。しからば、その情勢を見るに、これはもう自由陣営大勢としては相当な多数がこれを認めておるということになるのであって、その点についても私は、総理のものの考え方がもうちょっと前向きな、世界情勢に合った、あなたが腹の中で考えておられる点をひとつ一ぺんこの委員会を通じて言ってもらわぬといかぬと思うのです。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 世界大勢は、いま国連の投票の結果を見ましても、まだ中共を認めるというところまでいっておりません。いまお話しカナダは、中共承認していないのでございます。そうしてまた、EECのうちにおきましても、いま言ったようにイタリアは認めていない、オランダは認めております。しかしベルギーは認めていない。最近フランスが認めたことによって、ちょうど来日中のスパーク外務大臣日本でどういうことを言われたか御存じと思います。これは、あなたのおっしゃるように、大国がみなやっているという状態ではまだないのであります。
  17. 今澄勇

    今澄委員 私は、この中国が、何せ核兵器装備もだんだんこれからやろうとしている。少なくとも台湾海峡紛争で、ソ連中共に対して核兵器応援等をしてアメリカと対決するような姿勢を示さなかったのが今日ソ連中共の確執の大きな原因であるから、やはり中共みずからも核兵器を持たねばならぬということで、だんだんと核装備のほうに向かっておるということも御愛知のとおりであります。しかも、中共が一千万人の大東亜戦争による損害、五百億ドルの賠償等周恩来が言っておったことも事実であります。そうすると、日本はこの東洋一角に位しておって、中国と国境を接しておって、そうして世界各国国連の加盟を認め、ザ・ラスト・ネーション、一番最後日本中共承認するというようなひより見的な態勢をもってして、日本の置かれておる地理的な状態から考えても、あるいは賠償問題等から考えても、私はいまの総理大臣としてはそういう将来の点に思いをいたすならば、この際中共の問題については、少なくも、アメリカと同じような態度で、法律的に国府を認めているからというので、それだけで押していくということでは、私は将来に対するおもんばかりを考えてみるとあんまりうまくないじゃないか、こう考えられるが、総理のひとつ御意見も聞いておきたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 いまお話しの点で、私ちょっと気にかかるのは、賠償間建てございますが、私はっきり申し上げておきます。日本中華民国戦争をし、中華民国平和条約を結び、その際に賠償請求権は放棄しておりますから、これははっきりここで申し上げておきます。将来中共賠償請求権があるないということを前提にしてのようなお話でございますから、私は政府考えをはっきり申し上げておきます。  次に、日本中共承認最後の国になるということは、将来の外交関係からいってよくないじゃないかというお話もございましょう。しかし、最後になる理由があれば最後になったっていい。しかし、最後にならずに日本が早くやっていく環境ができればそれでやっていくべきなんで、それは今後の情勢を見ながらやらなきゃいかぬということであるのでございまして、初めからラスト・ネーションになるのだというようなことは私は考えておりません。
  19. 今澄勇

    今澄委員 私が言っておるのは、もし中共重要事項指定等にならないで、ことしはあるいはだめかもわからない、あるいはことし通るかもしれぬが、来年においても中共承認が認められて、国際的に立場がきまったあとから中共が多くの主張をなすということになると、日本側は困るのではないか。私は、やっぱりこういう点は、いまさっき冒頭総理が言われたように、何せ国を並べておる長い間の歴史的な関係があるのであるから、その点からも中共問題については少なくとも柔軟性ある態度をとるべきであるということを私は主張しておるのです。  わが党は、今日の国際的な緊張を緩和し、そうして、日本国論を統一して、この中共の問題を超党派的に日本国民が一丸となって平和と安全を確保し得るような対策というものは、何といっても一つ中国、それから一つ台湾を認めることである。   〔委員長退席松澤委員長代理着席〕 その台湾帰属台湾住民意思によってきめるべきである、こういう態度を結党以来打ち出して今日に至っているわけであります。私は、そういう現実的解決以外にこの際日本東洋一角において中共外交を展開していく道はないではないか。なるほど中国は、中共側からは一つ中国であると言っている。蒋介石も一つ中国であると言っている。この二つ中国が、お互いが一つ中国であると、言って譲らざるところに台湾海峡をめぐる多くの危機と危険が存在しているのではないか。それが日本の安全と平和に重大な影響を及ぼしておると思うのです。  しからば、総理は、国府一つ中国であるということになれば、国府大陸上陸作戦でもやるということになれば、これを認めますか。あるいは中共台湾解放ということで武力をもって台湾を占領しようとしておることになると、これを認めますか。私は、一つ中国論の上に立てば、そのいずれの行動も認めなくてはならぬと思うのです。それが今日国際緊張の大きな問題だとすれば、ここに現実にある中共政権台湾政権とを認め、将来台湾政権台湾住民意思によってその帰属をきめるということが最も妥当であると、われわれはかように考えて、これでひとつ国論を統一してこの問題解決のために前向きの姿勢で進んだらどうかと思うが、総理はいかがですか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は前からも承っておりますし、ただいまとくと承りました。あなたのお気持ちは私は承っておくことにいたします。それに対しての私の判断は、いままでの私の答弁で御了承願いたいと思います。
  21. 今澄勇

    今澄委員 私はいまの総理のお答えを聞いてみると、この委員会現実的なこの問題処理についての総現の答弁はどうも得られそうにありません。だがしかし、国民はこの点について率直な内閣のものの考え方を聞きたいと、こう私は思っていると思います。ともかくも現実的ないまの状態を認めるということは、総理はいろいろ表現を使われましたけれども、私の解釈するところでは、言うならば現実的な日本態度というものは、中国大陸に現存する中共政権と、いまの条約を結んでいる台湾国民政府とのいずれをも大体認めて、一つ中共一つ台湾を認めてやっていくという形に現実としてはならざるを得ぬと思うのです。たとえば一例をあげると、福岡県北九州市の代表、県の代表が中国へ行きましていろいろの貿易の取りきめをいたしました。これは民間団体ではありません。これはやはり行政府一角をなしておる。それらの人々が行って取りきめた協定についても、私は池田内閣が前向きの姿勢をもってこれをじっと見ておられるということは、現実にはそういった一つ中共一つ台湾を認めるということに実はなっておると思うのです。だから、この点については総理立場もあって答弁がなかなかむずかしいということであろうから、私どもはそう解釈をしてひとつ次の問題に進みたいと思います。  その一つは、しからばこれから中共日本との国交の上に政府間の貿易協定を一体やる意思があるかどうか。未承認の国あるいは国府と国交を持っていないけれども、政府間の貿易協定を結んだのには一九五五年十二月のレバノン、これは政府間貿易協定、それからエジプト、これは中共承認前に貿易協定を結んでおります。こういう協定を通じてだんだんと中共との貿易その他をやっていこうという意思はありますかどうですか。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 昨日お答えしたかとも思いますが、ただいま政府間の貿易協定を結ぶ考えはございません。
  23. 今澄勇

    今澄委員 一九六一年末にシリアが通商代表部を置いておりますが、政府は通商代表部についてはどうですか。きのうはなかったですよ。——日本が通商代表部を置くかどうか。向こうの代表をこっちに置く、日本も向こうへ出す……。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 通商代表部というものの定義がちょっとわかりませんのですが、私は、いまの中共承認する結果を来たす措置は、名称のいかんを問わずただいま考えておりません。事実上民間貿易、いわゆる政経分離のたてまえでの貿易促進の方途につきましては、これは認めるにやぶさかではない。承認につながるようなものは、名称のいかんを問わず認めない。ただ、そういうことにつながらない問題ならば、いわゆる政経分離のたてまえで貿易の交流は盛んにしていきたいと、こう考えております。
  25. 今澄勇

    今澄委員 ブラジルがいま国立銀行の支払い協定を中共との間に結んでおります。これは貿易の決済の上に政府一つの目安を与えるものであるが、日本はこの国立銀行の支払い協定等はどうです。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的の問題になりますから、事務当局をしてあれしてもよろしゅうございますが、この為替の支払い協定につきまして、たとえばロンドンの民間銀行を通じてやるとか、あるいは香港上海銀行を通じてやるということは、相手が中国銀行であって、そしてこちらが民間銀行であるならば、私はこれは承認につながらぬと思います。しこうして、いまブラジルが国立銀行を通しての支払いその他為替協定をやったということが外交上どうなるかということは、研究してからお答えすることにいたします。ただ問題は、具体的の問題をお聞きになりますが、政経分離のたてまえでやっていこう、それが承認につながるものでない以上におきましてはできるだけ広げていきたい、こういう考えでございます。
  27. 今澄勇

    今澄委員 通産大臣に聞いていろいろあれしたいと思いましたが、時間の関係もありまして、私はもっと前向きな具体的な政策を重ねていかないと通産大臣の所管するところも困るのではないか、こう実は思います。  さらにもう一つ、なおそのほかに政治的な色彩も何ぼかはありましょうが、文化協定、郵便協定、学術協定などのいわゆる民間協定を積み上げてだんだんとやってまいったらどうかという考え方も非常に多い。また現実にこれまで岸内閣もやってきた。岸内閣のときには通商代表部的なものを一度置こうとしたことがある。国旗の問題その他でいろいろこれも紛糾を生じましたが、私はそういうものをだんだんと積み上げていくということが、今日の日本の置かれておる立場からは当然なすべきことだと思うが、どうです。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、三年ぐらい前に、いま今澄さんの言われた気象、通信その他文化的の問題につきましては大いにやっていいじゃないかということを、本会議で、あるいはここで述べた記憶がございます。その点は私はけっこうだと思います。それから、たとえば見本市なんかも昨年開きました。今年も今度は日本で開く予定でございます。それから、岸内閣のときの通商代表部とかどうとかという問題がございますが、私は、見本市を開くために向こうの方々がこっちに来られて、そしておやりになるということはけっこうで、貿易通商関係につきましては前向きでやっているつもりでございます。したがいまして、いま日本中共との貿易額は、ドイツ、イタリアフランス、イギリスに比べまして日本が一番多く、また伸び率も一番多いということをつけ加えて申し上げておきます。
  29. 今澄勇

    今澄委員 私はいろいろ中共の問題について総理に聞きましたが、少なくとも中共性格というものは基本的な認識において日本中共をどう見ているのだ、だからこういうふうなことになっていくのだという点について総理の明快な答弁を聞くことができなかったことは、まことに残念であります。それから中共を不承認する積極的な理由について、私は国府外交関係を結んでおるからというこの一つ現実だけを述べて何ら具体的な問題が聞けなかったことも、まことに残念であります。それから少なくともこの東洋緊張する今日の世界情勢を前にして、私はこの問題を解決するために国内のいろいろ政党間の対立で政争の具に供するのでなしに、ほんとうに日本はこの際どうしなければならぬかという重要な問題についての腹を削った総理からの答弁がないことも、まことに残念に思います。少なくとも私どもはこういう外交しの問題については、われわれは党利党略を離れて、ほんとうに日本がこの重要な激動する東洋情勢の中でどうなければならないかということを、大筋については予算委員会、外務委員会等の審議を通じて総理国民にこれを訴えていく、国論を指導していくということが必要だと思います。そういう点について本日の総理のお答えはまことに残念でありますけれども、時間がありませんから、私は続いて日韓問題にひとつ問題を移していきたいと思います。  日韓問題でこれまで一番議論になっておりますのは、第一に李承晩ラインで、日本の漁船がしばしば拿捕せられるということ、しかも拿捕せられた漁船員の生命については保護がないということ、漁船をとられた船の持ち主についても何らの賠償、補償がないということ、命を落とした者は一片の電報が来るだけで、命を落としたことについての国の補償が全然ないということ、日本国憲法のもとにおいて一部の漁船員だけがそういう国の政治の不明確さから、あるいは拿捕せられあるいはこういう損害を受けたことに対して、まことに私は政府態度がはっきりしないと思うのです。李承晩ラインはいま現在すでに国が認めて出漁してよろしいということなんだから、しからばそこで拿捕せられた船の代金は全部政府が船主に補償するとか、いやその補償ができないから出動をしてこれが平和操業を国が責任を持って守ってやるとかというような根本的な対策が全然ないが、これらの点について一体どういうお考えであるか、私はまずこの問題からひとつ総理にお聞きをしておきたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 本予算委員会におきまして、今澄さんを通じて民社党の外交政策を承ることができましたことを非常に喜びとします。また、私の今後の外交政策一つの参考として承らしていただくことを非常にありがたく思います。それに加えて、私が私の所信あるいは外交政策をはっきり申し上げる段階に至ってないことで御不満のようでございます。これはしばらくお待ちを願います。いまに申し上げる機会がくることを祈念いたしております。  次に、日韓交渉の問題につきまして、李ラインのために被害を受けた漁民の方々に対しまする措置は全然やっていないというお話でございますが、私の記憶では、最近ある程度の補償をするようにしたかと思います。またこの問題につきましては、漁船保険制度を置きましてやっておるのでございます。またそういうことがございますから早く日韓交渉を妥結したいということで、これが一番の解決方策と思います。それまでにおける被害を受けられた方々に対しましては、できるだけのことはやっておりますし、今後もやっていきたいと思います。詳しいことは外務大臣その他関係大臣からお答えさせていただきます。
  31. 今澄勇

    今澄委員 私どももいまの日本の置かれておる——日韓問題というのは、漁船の拿捕一つ取り上げても、いまの日本政治的矛盾を集中的にあらわしておると思うのです。一昨日も漁船が拿捕されておる。日本はこれを武力をもって押えることもできない。漁船主の補償もやれない。生命も守れない。私どもはかような今日の日本政治の根幹的欠陥については、十分これを考えてみる必要があると思うのです。そこで、私どもも日韓会談については真正面からこれに反対である、これをたたきつぶさなければならないなどというような立場にはおりません。われわれは、なるほど不十分ではあるが朴政権というのは選挙によって選ばれた政権であるから、これを相手に交渉をするということは、今日日韓間の漁業問題その他の現状から見ても、一日も早き解決のため、利手にして交渉するのはやむを得ない、かように思います。  そこで、外務大臣にお尋ねをいたしますが、今日朴政権の代表する資格というのは、たとえば竹島においては朝鮮全土を代表して国連と云々というし、あるいは請求権については北鮮側は別個の保留をいたして及んでおらぬというし、非常にいわゆる性格があいまいでありますが、朴政権を相手として交渉しておる日本国政府は、朴政権が朝鮮全体についての代表として、ちょうど台湾と同じような立場において日本と折衝しておるのか、問題によっては別々なのか、そこらの点をひとつ外務大臣からはっきりと答弁願いたいと思います。
  32. 大平正芳

    ○大平国務大臣 韓国の政権が支配しておる領域を頭に置いてやっております。
  33. 今澄勇

    今澄委員 声が小さくてよくわからなかったのですが、朴政権性格ですね。私どもは曲がりなりにも選挙を受けて出たのだから、これは韓国を代表する相手として認めるべきだと思っておるが、その朴政権とたとえば請求権について北鮮の関係はどうなっているのか。朴政権と請求権の話がまとまれば北鮮側はいいのか、あるいは竹島も、もし国連提訴、司法裁判所提訴をやればこの問題はもうそれで解決するのか、それともあとへ幾らか残るのかどうかという点です。これは日韓会談に入る前の基本的な問題として外務大臣の見解をひとつ聞いておかなければいかぬと思うのです。
  34. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、韓国政権が支配しておる領域を問題としてやっておるわけでございまして、支配していない領域につきましては白紙でございます。
  35. 今澄勇

    今澄委員 わかりました。そうすると、これは北鮮にはすべての問題において及ばないということで、日本と韓国がいま会談を続けている。  そこで、まず会談の内容ですが、有償無償合わせて五億ドルの請求権に見合う日本からの金額、さらにそのほかに、あまり問題になっておらぬが、民間借款一億ドルの話し合いがまとまったとわれわれは聞いておる。そこへ今度漁業協力資金の一億七千八百万ドル、これも向こうからの要求と聞いている。私は大平・金会談で妥結しました五億ドルの有償無償供与のほかに、民間借款も含めて幾ら話が出ているのか、それから漁業協力資金はいま煮詰まってどういうことになっておるのか、大平さんからひとつ御回答いただきたいと思います。
  36. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いわゆる請求権問題は、今澄さんがいま御指摘になりました無償三億ドル、有償二億ドルを十年間に供与するということで、そういう形の将来に向かった経済協力を供与することによっていわゆる請求権問題は片づけるという方向で処置しようじゃないかというのが、ただいま一応再政府の間で合意いたしておることでございます。しかし、誤解のないようにお願いいたしたいのは、日韓交渉は、第一前提といたしましては一括解決でございまして、すべての問題は、全部の解決点が出まして一括して解決するわけでございまして、ただいま妥結というおことばがございましたが、妥結云々ということは、最終的に全部がまとまった場合に使うべきことばであろうと私どもは了承しております。それで、そういう形の経済協力はそれだけでございまして、それ以外に何ら約束はいたしておりません。いま民間借款一億ドル以上という表現がございました。私どもが話し合いの過程におきまして、韓国としてはこういう無償・有償の経済協力はありがたいけれども、もっともっとほしいのだ。それは、つまり日韓間の通常の民間の間の経済交流という形で未来永久にできるじゃないか。したがって、長期低利の、政府がコミットした経済協力はこれだけでございますということは、私どもも堅持いたしておりますし、先方もよくわかっておるはずでございます。したがって、いま御指摘の、民間レベルの一億ドル以上とか、あるいは漁業協力において一億七千八百万ドルを要請されているとかいう問題は、すなわち、政府がコミットしたそういう経済協力ではなくて、民間レベルにおいて行なわれるであろう輸出金融という形で供与される金額ということでございまして、政府がこれこれを約束してできるという性質のものではないのでございます。一つの予想といたしまして、日韓の間には、貿易が一億数千万ドル毎年ございますから、一徳ドル以上将来あるであろうというような見込みを立てて言われる方がございましょうが、それは御自由でございます。しかし、政府といたしましてコミットしておる金額は、いま申しました無償三億ドル、有償二億ドルに限るということを御了承いただきたいと思います。  漁業協力も同様でございまして、これは民間レベルにおける融資のことでございまして、政府が経済協力のような形で長期低利の資金を供与するというものではございません。
  37. 今澄勇

    今澄委員 そこで漁業問題ですが、韓国は、漁業専管水域を直線基線方式によって十二海里とすることを主張いたしておる。これと同時に、これを基礎とした約二十八海里の規制水域を設定しようとしておりますが、この点は、日本主張しておる領海十二海里と非常に大きな開きがある。特に、竹島であるとかそういったところから直線基線方式をとりますと、いまの李承晩ラインとほとんど変わるところがないというような実情に相なるので、われわれは領海十二海里説をぜひこの際貫いて、漁業問題においてはこちらの主張をぜひ確保する、そういうたてまえで政府にやってもらいたいと思っているが、この交渉はいまどういうことになっているか、見通しもひとつお聞かせを願いたいと思うのです。
  38. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本委員会におきましても、愛知委員の御質問等でお答えいたしておきましたが、日韓間の漁業問題といたしましては、大きく分けて三つの問題がある。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕 いま御指摘の、専管水域の問題と、専管水域外の漁業に対する共同規制の問題と、それから先ほどあなたが触れられた漁業協力の問題と、三つあるわけでございます。  第一の専管水域につきましては、私がるる申し上げておりますように、日韓両国とも国際的な基準というものはお互いの名誉において守ろうじゃないかということを申し上げておるわけでございます。したがって、これはひとり日韓間の問題でなくて、第三国との関係も出てまいりまするし、日韓交渉で適当に水域を割り出すなんということは、私はそういうことをやる自由は持っておりません。したがいまして、お互いの名誉において国際的基準を守ろうじゃないかということを先方に申し入れてございます。それから直線基線方式を云々というお話がございました。これは両政府の漁業専門家の間で、いま国際慣例に従いまして交渉しておることでございまして、微妙なことでございますので、ここで言明を避けさせていただきたいと思いますが、基本は、国際的な基準を守ろうじゃないかということ基本にしてやっております。  それから、その水域の外における共同規制の問題でございますが、御案内のように、朝鮮海域の資源状態というものは、自由に両国が漁獲をしていいという状態ではないようでございまして、適正な資源保護上、両国がそれぞれ自制をしていかなければ資源の保存ということができないし、長きにわたって両国の漁業者が利益を享受するという状態を保障できないと思います。この点につきましては両国とも認識が一致いたしております。問題は、それではどういう規制方法を講ずるかということでございまするが、私どもの主張は、この間愛知委員の御質問にも答えておきましたとおり、これは一つには、両国が平等に規制を受ける方式でなければいかぬ、一方だけにきつく規制が及ぶというものであっては困るということ、それから、規制を行なう以上は、実行可能な方法でやらなければならぬ、この二つの原則を基礎にいたしましてせっかく交渉をいたしておるわけです。これは、あくまでも資源を保存いたしまして、両国の漁業者の利益を長きにわたって保障していこう、こういう趣旨のものでございます。  漁業協力につきましては、伝えられる一億七千八百万ドル程度のものが漁業協力としてもらえないかという話がございましたことは事実でございまするが、これは、私どものほうも、融資能力というものも輸銀の能力を考えなければなりませんし、また、そういうプロジェクトを見まして、それが一体償還可能かどうかという点も吟味させていただかなければいけませんので、そういう観点から漁業協力というものは適正にきめなければならぬと思いまして、まだきめてはおりません。
  39. 今澄勇

    今澄委員 国際的な慣行は、何といっても、領海十二海里説なんで、この領海十二海里説をぜひ強力に主張するというのが日本政府のたてまえだと私は思うのです。この日韓問題は、五億ドルの金をやるほうは、どんぶり勘定で、計算の基礎がはっきりしない。これはいろいろ追及があるが、私はそのとおりだと思うのです。日本側はこの漁業においていかなる成果をあげるか。日本の得るほうのものについては非常に弱腰で、向こうの得るほうのものについては非常に向こうは強いということでは、この日韓間の会談はわがほうに有利な条件にならないと思うのです。だから、どんなに友好だとかなんとかいってみても、日本側の基礎的な主張は貫かなければいかぬ。領海十二海里説、さらにその外にできる共同水域、あるいは規制の問題は隻数で制限をする、日本側はやはり過去の実績の上に立つと、出漁隻数でこれを制限するというような、基本的な貫くべき態度については、はっきりとした態度で臨んでもらいたいと思いますが、見通しについて外務大臣からもう一度ひとつ…。
  40. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せごもっともでございまして、私どもといたしましても、両国の間の問題になっておりまする安全操業を保障しなければならぬという事実の要請を生かして何とかこの問題を解決いたしまして、保障しなければならぬ責任があることは当然でございますので、双方が一方的な主張をかってにやっておったのでは、究極の目的を果たし得ないことは十分承知いたしておりますけれども、しかし、専管水域その他の問題につきまして基本的な原則を譲るというようなことになりますことは、これは第三国の関係その他影響するところ甚大でございますので、基本的原則はあくまで堅持いたしまして、いまあなたがお示しのような方向で鋭意努力をいたしておる段階です。そして問題は、だんだんと理解が深まっておると私は思っております。
  41. 今澄勇

    今澄委員 総理もお聞きのように、日韓会談については、いま外務大臣報告のようにいろいろ進行をしておるようです。私は、この際ひとつぜひ日本側利益日本側主張すべきものは大いに主張をして、取るべきものはこれを取るということで臨んでもらいたいと思うのです。なお、いま行なわれておる予備会談をいりごろ正式会談に移していかれるつもりであるか。さらに、政治的な高級会談が、いろいろ向こうからも要求があるようであるが、行なわれる見込があるのであるか。しかも、これが妥結の目途は大体総理大臣としてはどの辺に大体の目安を置いておられるのであるか。総理からひとつ御答弁を願っておきたいと思います。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓国交正常化は、両国民大多数の望むところでございますので、できるだけ早く成立させたいと考えております。そのために政治会談とかいろんな計画があれば、両国の利益になるためなら、いかようなことにもこっちは応ずる考えでおります。
  43. 今澄勇

    今澄委員 日韓会談の妥結が行なわれると、ここにも多くの資金が動く。インドネシアとの賠償がきまると、ここにも多くの日本からの暗償金が動く。私はいつかこの国会でも申し上げましたように、そういう賠償の動くところ、利権屋と政商のうごめくこと、これまたいつものとおりなんです。だから、私は、今度の日韓会談を通じても、日本のそういう利権商社等の動き、あるいはこれと政治家との関連等から、韓国側に足元を見られて、せっかく日本側の堂々たる主張が向こうでなめられて通らないということのないよう、総理大臣はそういう点を十分監督をされまして、ぜひひとつ日本側がこれならばという納得する成果をあげてもらいたいと思います。  なお、沖繩の問題をひとつお聞きをしておきたいと思うのです。  六一年の池田・ケネディ会談で、沖繩を県並み水準に引き上げるための日米協力関係が確立されて、米国は翌六二年、いわゆる沖繩新政策を鳴りもの入りで発表いたしましたことは、御承知のとおりであります。その新政策は、沖繩が日本本土の一部であるなどと述べておりますが、依然として米国の継続統治の意思を明らかにいたしております。ところが、最近の情勢を見ると、新政策はほごにされておって、まことにたよりない状態になっております。新政策は、県並みに水準を引き上げることをねらいとして、御承知のように、六つの措置を約束をいたしております。この措置のその後の経過を見ると、第一項のプライス法改正が、当初要請の二千五百万ドルからその半分以下の千二百万ドルに削られ、それにつれて、第二項の県並み水準への引き上げ計画として米国政府が策定したプランも立ち消えとなっております。第三項は、かろうじて、三年間千二百万ドルの長期借款が、余剰農産物の見返り資金で実現しているにすぎないという状態である。第四項の沖繩援助についての日米協議機関は、正式に日米交渉の場に上げられて一年と三カ月にもなるが、交換公文さえまだ取りかわしておらない状態であって、さらに、施政権の返還問題や自治権の拡大問題は、米側の意向に押されて、この委員会では取り上げないことになったといわれております。第五項について見ると、昨年秋に琉球霊力公社、琉球水道公社の総裁と副総裁に沖繩住民を起用することにしていたが、それにも増して、むしろそれに逆行するような事態があらわれておる。一つ一つこうして取り上げれば切りがありませんけれども、米民政府の指令で、金融機関や農業協同組合連合会に対する手入れ、すなわち業務ストップなど、高等弁務官所管という形で行なわれておる一連の直接干渉、放送事業に関する布令の改正で、従来沖繩住民である行政主席にゆだねられておった放送免許権を取り上げ、高等弁務官限りでどうにでもなるように改正をしておる。これらは一片の布告で言論の自由を封ずるものであるといって、沖繩では非常に憤慨をいたしております。  私は、そういう一つ一つの問題について、まず外務大臣から、沖繩におけるこれらの情勢はどういうわけでそういうことになったか、ひとつお聞きをいたしておきたいと思います。
  44. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御案内のように、平和条約を締結いたしました結果といたしまして、沖繩の施政権アメリカにゆだねたということになったわけでございます。したがって、沖繩の施政についての責任アメリカにあるわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、そのアメリカが、平和条約の文言から見ましても、その後のアメリカの累次の声明を見ましても、わが国の潜在主権を認めておるということ、さらに進んで、行く行くは日本に返すんだということを明らかにしておるということに重大な関心を持っておるわけでございます。そして、さらに進んで、そのためには、日本に復帰する場合の困難を減殺するために、いま御指摘のようないろいろ準備をしていこうじゃないかということにアメリカが決意しておるということにも、深甚な関心を持っておるものでございます。ただ、私ども日本人といたしまして、沖繩の同胞に数々の御苦労をかけ、そして、いま他国の施政下にあるという状況に対する深甚なる同情、これは今澄さんも私も同様に持っておるわけでございますが、この方々にどういう時期にどういう方法で御協力申し上げることがその方々のためになり、そして日本に施政権が返ってくる、日本に復帰することを容易ならしめるかということ、そういうことが有効であり適切であるかということに沖繩政策の眼目日をいつも置いて考えておるつもりでございます。  冒頭に申し上げましたように、施政権が先方にあります以上、これに対しまして、沖繩の個々の施政のやり口につきまして、施政権を手放した日本といたしまして、はしの上げ下げを一々干渉する立場にありませんので、私といたしましては、日本政府として一々の施政権者のやり口につきまして批判することは控えております。むしろ、本筋が、先ほど申しましたような手順で潜在主権を認め、復帰の日の困難を少なくし、そのために日米協力してやろうという基本的な線に乗って、比産的な建設的な仕事に鋭意やってまいるという方向に重点を置いてやっておるわけでございまして、一々のことについて介入し、それをあげつらうということは、かえって沖繩政策を混迷ならしめるおそれがありはしないかということで差し控えておるのがただいまの状況でございます。  それからまた、日本政府といたしましては、県並みに引き上げるという場合には、数次の調査団を出しまして、いろいろ、民政の実態につきまして、あるいは財政の実態につきまして、日本政府のすぐれた行政的な技術、能力、感覚というようなものでいろいろ取り上げて調べたことは事実でございます。それにつきまして、日本政府としては、こうもありたい、ああもありたいということをいろいろ持っておるわけでございまするが、施政権者側と呼吸が合って、うまくやっていかないといかぬわけでございまして、それはいいことであるが、実行に移すためにそれがまた逆効果にならぬようにしなければならぬという苦心があるわけでございます。はたからごらんになっておりますと隔靴掻痒の感があろうと思うのでございますけれども、私どもとしては非常に苦心をいたしておるつもりでございます。  いま最後に御指摘の協議委員会、技術協議委員会の設置がおくれたじゃないかという御指摘でございますが、それは御指摘のとおりでございます。これをどのような性格のものをつくるかということ、そして、それを日米の間でどういう申し合わせをしようかというワーディング、一語一語の問題なんでございまして、日本人の気持らをどのようにあらわそうかということ、向こうは施政権者としてどう筋を通そうかというところに、私どもが人知れぬ苦心をいたしておるわけでございますので、たいへん御不満な点はよくわかりますけれども、政府の苦心の存するところもまた御了解いただきたいと思います。
  45. 今澄勇

    今澄委員 なかなか長かったが、よくわからぬ答弁でしたけれども、まあいいです。  もう一つ、渡航制限その他いろいろ、池田さんがケネディ大統領とかつて大みえを切って話されたところから見ると、まことに実際は沖繩の人は気の毒ですね。もう一つ、戦略的なアメリカのポラリス潜水艦による軍事基地の価値がだんだん減少した。沖繩もアメリカのクィックリリース戦術で、四万も沖繩にアメリカ軍隊が必要であるかどうかは疑問になりましょう。結局、軍事基地を海外に求めてそこに飛行機も陸上部隊も置くというよりも、むしろ飛行機でどんどんいざというときに適時空輸する、それから、ポラリス潜水艦で水中からとにかく攻撃を加えるという戦術の変化は、沖繩の戦略的価値を非常に落としたと思うのです。その結果、いま現にクィックリリースが行なわれておるが、沖繩においてはいつ陸上部隊が引き揚げるか、あるいは基地としての価値が減ずるか、もう過去十幾年も基地経済ということで外貨収入一億ドル以上をかせいできた沖繩としては、この戦略の転換、アメリカの引き揚げに伴う問題が非常に大きく出て、民心を動揺さしておるわけです。だから、それらの点については、日本は一体どういう考え方で施策をとっていこうとするのか、総理からお答えを願いたいと思います。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 このアメリカの戦略上の変化は、やはり軍備の近代化と申しますか、それによってある程度変わることは私は当然のことと思います。しかし、それによりましていま直ちに沖繩の防衛上の力が、重要さが減ったとも私は考えません。そうしてまた、それによりまして沖繩が戦略地としての、車争基地としての重要性が少なくなり、続いて住民に非常に経済上の打撃を与えるとも私は考えていないのであります。もし沖繩にそういうことで経済上の打撃があるとすれば、これは日本も重大関心事でございます。また、アメリカにおきましても、それが対策を講ずることは当然であろうと思います。だから、そういうお話のような心配ごとが出てさましたら、出る以前でも、われわれはこれに対して対策を講じなければならないと思います。
  47. 今澄勇

    今澄委員 私は、沖繩に限らず、将来のアメリカの戦術の変化は、日本からも飛行機も引き揚げるだろう、韓国からも陸上部隊をそのうち引き揚げることになると思います。なお、これに関連して、台湾アメリカの前線基地としての戦略的価値も減るのではないか。だから、民主主義陣営における多くの戦術的な協議、あるいは防衛的な体制というものが大きく変わるのじゃないか。日本の102戦闘機の引き揚げのごときも、そういう一環から私はあらわれてきておると思うのです。だから、この際経済的な利益あるいは防衛的なその国の問題を背景にして国際外交というものはわれわれ火花を散らして展開をせられておることは、もう現にいま見るとおりなんで、私は日本の防衛の基本についてきょうは時間がないから長くは聞けませんが、いまアメリカと安保条約のもとに置かれておる日本のこの防衛は、ちょうどソ連中共台湾海峡の問題で核兵器その他のことについて仲たがいをして陣営が分裂するように、西欧陣営においても、一つの同盟の背景をなす核兵器、それがたとえば沖繩なら沖繩、台湾なら台湾日本なら日本を守るために、アメリカ全土の危険をかけても行なわれるかどうかということに非常に疑義の持たれるという情勢に相なってまいったと思うのです。だから、この沖繩の問題に関連して、もう一つ日本の防衛の基本的な姿勢、こういう世界情勢に対するわが国の基本的防衛方針、まあ、自主防衛と政府は言っておられますが、これについて総理からあわせて一言、どういう方針を日本はとっておるか、聞いておきたいと思います。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申し上げておりますとおり、いまの国連の力では全体の安全保障はむずかしいと考えますので、御承知日米安保条約によりまして、共同して日本を防衛する、このたてまえに変わりはございません。それで進んでいっておるのであります。
  49. 今澄勇

    今澄委員 そういうしゃくし定木の、まるで検事の論告のようなことしか言えないのでは、日本国民は非常に不安だと思うのです。私は機会をあらためてこの問題についてはひとつ御質問申し上げましょう。  以上、いまから台湾の問題を聞きますけれども、わが国の外交、いわゆる中共、韓国あるいは沖繩等のアジアの周辺をながめてみまして、政府は一貫したき然たる日本のこれが方針であるというものに欠けると思うのです。池田さんは、ひとつ沖繩の問題などは、もう一度アメリカとのトップ会談をおやりいただいて、取りきめたとおりになっておらないではないかということで念を押していくというふうにやっていただくように希望いたします。  次の問題は台湾でありますが、現在まで台湾中共政府との間にしばしば戦闘状態に陥ったので、台湾水域の近くにおける日本の漁船の被害も多かった。昭和二十六年、舟由列島沖大陳島付近において、国府側砲撃のため、日本の漁船が二十九隻被害を受けて、二十四名が死亡をいたしております。これが損害賠償のため、池田内閣は、当時小坂さんが外務大臣でありましたが、国民政府と交渉して、十年間に二億八千万の損害賠償支払いの協定を結ばれまして日本遠洋底曳網漁業協会の中に蓬莱漁業なる匿名組合を設立して、時の農林大臣でありました某氏がこの組合の代表者として、この漁船並びに死んだ人の賠償の実施に当たっておるといわれておりますが、外務大臣からでも、あるいは事務当局の局長さんからでも、この与件の概要とその交渉の経過、今日それがどういうふうになっておるかということを、ひとつこの委員会に御説明を願いたいと思います。
  50. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それでは、事務当局から答弁さしていただきます。
  51. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 交渉の内容につきましては、機微な点、中国側との話し合いによって発表しないことになっておりますが、その補償金の支払いにつきましては、いま御指摘のございました蓬莱漁業組合と被害者の代表者との間の話し合いによって分配がその後も進んでおると了承しております。
  52. 今澄勇

    今澄委員 砲撃されて日本の船が撃沈されて人が死んで、これが賠償は両国の申し合わせで発表することをしないようになっておるとは何事ですか、一体。そんなむちゃくちゃな話はない。昭和三十七年の三月三十日付けで外務省は国民政府外交部と正式に交換文書を取りかわしておるはずである。その交換文書の中には、支払いについての詳細な段取りがきめられております。その協定に基づいてできた蓬莱漁業なる匿名組合は、国府側、中国漁業公司の陳良氏という人との間に漁業提携の協約を結んでおります。しかも、蓬莱漁業というのは従業員が一人もおりません。私は、いまあなたがその秘密になっておると言うけれども、そういう船の撃沈されたものの賠償や死んだ人の見舞いをやるために、一体どうして中国漁業公司の陳良氏と日本の蓬莱漁業との間に漁業協約を結ばなければならないのか。この点について私はひとつもう少し明確な御答弁を願わなくちゃなりません。
  53. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 受け取りました金額というものが、実は十分各被害者の希望を満足するほどの額に交渉上いかなかった。それからまた、さっき申されました撃沈されました船のどの範囲をカバーするとか、そういうような点についてはっきり積み上げ的な解決にならずに、非常に政治的な解決になっておりまして、組合がすべて責任を引き受けまして、要するに、被害者の代表が集まりましたその組合の中で話し合いによって分配する。そういう非常に事務・法律的なかたい解決というよりか、政治的な解決になっておるわけでございます。
  54. 今澄勇

    今澄委員 私は、少なくとも、いろいろほかに本問題があるが、氷山の一角としてこの問題を一つ取り上げておるんですよ。三十七、三十八両年、この蓬莱漁業は金額にして一年に二千八百万円、計五千六百万円を入金をしておるが、外務省が向こうと打ち合わせをして、そういう賠償の金が入るなら現金で入らなくてはならぬ。パイナップルのかん諦めを三菱海事に持ってこさせて現場でこれを受け取っているというのは、為替管理法その他重大な諸問題をはらんでおる。政府が密貿易をいたしたと言われてもしようがない。アジア局長からそれらの経緯についてもう少し詳しくここで説明しなさい。
  55. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の問題につきまして、私は事務当局から経緯、現状等についての報告を怠慢にしてまだ受けておりませんので、よくこれを究明いたしまして報告いたします。
  56. 今澄勇

    今澄委員 私は、そんなに内閣が様子がわからぬなら、委員会を休憩して打ち合わして、その交換公文並びにその経緯について報告があるまで待ちますが、もう一つ言っておく。この蓬莱漁業は、その漁業協定に基づいて四百五十トン型の漁船二隻を公開入札をいたしておる。それを静岡の金指造船が落札をして建造に取りかかったところ、突如これがキャンセルがあって、金指造船は非常に困っておる。少なくとも現職の農林大臣が今日までずっとすわっておって、しかも公開入札をして引き受けたものを突如としてキャンセルする。それから、パイナップルのかん詰めなどで入った金の五千六百万円は、業者一人頭配った金額から見ると、非常に多くの金額が残るわけです。業者に金を配るときには、業者だけの申し合わせでなしに、確かに閣議にもこれは一応出ているわけです。それは賠償の金だから閣議で話が出たはずです。私はそういう台湾との間に不明朗なことをまさかアジア局長の独断においてやっているとは思われない。為替管理法に違反し、しかも非常に矛盾に満ちて、その金の使途もわからない。私は、これがやはり時の閣僚がこの匿名組合の責任者になって今日に至っておるところから見ても、この委員会で全貌を明らかにここに打ち合わせて報告を願いたい。これが報告を願えなければ、委員会を休憩して皆さんの御相談するのを私は待たざるを得ません。事実無根でないことは、ただいま局長がここでその一部を答弁したとおりです。
  57. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 答弁ありませんか。
  58. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、経緯と現状を調査いたしまして報告をいたします。
  59. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 午後の委員会開会のときにこの答弁をいたすことにいたしまして、質疑は続行いたします。もし発言がございませんければ、次は川崎君でございますから、順序に従ってやります。——後刻事実を調べて報告をさせます。審議は続行いたします。どうぞ発言を願います。
  60. 今澄勇

    今澄委員 いま外務大臣は全然様子がわからぬと言われましたが、様子がわからぬはずはないんだ。そんなら、そういうことを委員長が言うなら、私は昭和三十七年三月三十日付で国民政府と正式調印をいたいました覚え書きの写しも持っておるが、政府はその覚え書きの内容をひとつここに外務大臣から読み上げてもらいたい。外務省が外国と正式覚え書きを調印して、それを国会に報告ができないなどということはないでしょう。少なくともこれはラスク長官と会談したなどというものとは違うのだ。正式な文書を交換して、それに調印をしているのだから、外務省にあるはずだ。それをここで読み上げてください。(「だからお昼から答弁すると言っている」と呼ぶ者あり)いや、そんなことはない。答弁する義務がある。おれは国民代表だ。
  61. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま手元にございませんから、役所のほうへ取りにやっておりますから、こちらへ参りましたら御報告します。
  62. 今澄勇

    今澄委員 私は、もし外務大臣がこの報告を聞いてないとすれば、局長はまことに越権だと思うのですよ。だけども、この蓬莱漁業の役員の姿から見て、外務大臣が知らないはずは絶対にない。だから、その意味においては、少なくともここで事件の全貌と今日の状態答弁できるはずだ。  では、さらに質問を続けますが、国府側はその二隻の船をキャンセルしたのみならず、その覚え書きに書いてあります、これから十年間二千八百万円ずつの賠償をするというやつを、二年ほどはパイナップルでやったが、あとの二十九年度の分についてはこれをキャンセルする、将来の支払いについても応じない、二隻の船もキャンセルと言うてきたので、非常に困って、業者は、そういう国際間に取りきめた話がそのときそのときでネコの目のように変わるということはまことに奇怪であると申しておりますが、そういう国府側からの申し入れがあったのかどうか、局長さんひとつ御答弁を願いましょう。
  63. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 恐縮でございますが、いま関係記録がすぐここへ参りますので、それを見まして答えさせていただきます。
  64. 今澄勇

    今澄委員 だけど、委員長、それは群類に書いてあるわけじゃないのだ。国府側からそういうことを言うてきたかどうかということになると、言うてきたとか言うてこなかったとかいう答弁があるはずなんで、書類にそんなことを書いてあるわけがない。それを書類が来るまでできないということなら、これは当然休憩するよりしかたがないと思う。それは書類に害いてあるわけじゃない。
  65. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 後ほど調べて報告いたします。審議は続行願います。
  66. 今澄勇

    今澄委員 私がいま質問した点については、ぼくは書類に書いてあるなら待ちますよ。そういうことを国府側が申し入れてきたかどうかということは書類に書いてあるわけじゃない。聞いている人が知っているわけだ。
  67. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 後ほど報告をいたさせます。
  68. 今澄勇

    今澄委員 答弁ができなくちゃしょうがないよ。
  69. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 後ほど答弁をいたすことにいたします。どうぞ審議を続行願います。
  70. 今澄勇

    今澄委員 何だ、横暴じゃないか。
  71. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 横暴ではありません。審議を続行願います。——今澄君に申し上げます。いまの質問に対しましては後ほど答弁をいたしますから、他の御質疑を願います。午後の開会をいたしましたときに右の答弁をいたすことにいたします。審議は続行いたします。
  72. 今澄勇

    今澄委員 それでは、大蔵大臣に私は質問をして、午後再開の冒頭にいまの問題については委員長から計らっていただいて質問するということにいたします。
  73. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そのとおりいたします。
  74. 今澄勇

    今澄委員 それでは、大蔵大臣にお伺いをしますが、いま外貨は十九億ドルあるが、その危機が非常に叫ばれております。そこで、私は外貨準備高について大蔵大臣に聞きたいのだが、分類別に報告をしてもらいたい。その第一は、米国銀行よりの借款、これは農産物買い入れのためのもので、これが幾らあるか。第二番目は、日本政府より東京銀行への預託外貨これが幾らあるか。第三番目は、アメリカ市中銀行に対する日本政府日本銀行よりの定期預金、これが幾らあるか。アメリカ財務省発行の証券の所持、それからドル貨の当座預金、いわゆるユーロダラー、日本政府の金の保有高と、この六項目に分けて、十二月末でもいつでもよろしゅうございますから、一番最近の資料の中で近い分を、総計とその分類別をここへ御報告願いたいと思います。
  75. 田中角榮

    ○田中国務大臣 広範にわたる資料要求でございますので、いまの内容を筆記をしまして、調べてご報告いたします。
  76. 今澄勇

    今澄委員 もう何もかにも内容を調べてということになると……。これは外貨の保有高だから。
  77. 田中角榮

    ○田中国務大臣 突然相当膨大な資料でございますので、これを答えろといっても、なかなかむずかしいので、事務当局をして調べさせて、すぐ答えます。
  78. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの点も後ほど報告せしめます。
  79. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今澄さんに申し上げますが、ただいまの御質問の内容は、いままでこれを発表しない、こういうことになっております。
  80. 今澄勇

    今澄委員 少なくとも日本の外貨の保有高を国民に発表しないというような政府はないですよ。少なくとも何が何ぼあるかわからなくて、外貨の総計が幾らあるというようなことは言えないわけだ。いまのを内容別に私が調査してもわかっておるのだから。(「それでいいじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、それは政府が発表すべきだ。それを発表できないということは断じてないと思う。そんなばかな話はない。
  81. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知のとおり、十二月末の外貨じりは十八億七千八百万ドルでありまして、この中の十一月末におけるユーロ・ダラーの問題は、先般の御質問で三億五千万ドル余の数字は発表しております。しかし、いま御質問になられたような内訳を発表することがいいか悪いかということは、今澄さんも十分おわかりだと思います。どこの国でも、外貨準備のいま御質問になられた五項ないし六項にわたって発表しているという国はないと思いますし、政府もいままでそういたしておるのであります。
  82. 今澄勇

    今澄委員 私は、中共問題のラスク会見が報告できないというのなら、これは了承します。だかしかし、外貨の保有高が項目別にわからぬというようなことでは、これは質問にならぬですね。だから、これはとてもじゃないが、昼からにしよう。とても質問にならぬ。ちょっと理事会でもやってください。   〔発言する者あり〕
  83. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御静粛に願います。
  84. 田中角榮

    ○田中国務大臣 外貨の保有高がわからないというのではありません。外貨の内訳を公にすることが自国の貿易その他に対して一体得なのか不利益になるのかということは非常にむずかしい問題であって、長い過去におきましても、外貨じりに対しては総額を発表いたしておりますし、国会における質問に対しましても、ユーロダラーの動きとか、おおむね金の保有高等御説明しておるのでありまして、いまの御質問要求の全部を発表するというようなことはいままでもないのであります。
  85. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 今澄勇君。   〔「ちょっと待って。そういうことで質問を続けてはだめだ、はっきりさせなければだめだ。」、と呼ぶ者あり〕
  86. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 どうぞ今澄君、御発言を願います。こちらでよく話し合っておりますから。
  87. 今澄勇

    今澄委員 いやいや、理事会が終わるまでだめだ。
  88. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御質問のうち、いままで発表いたしておりますものを申し上げます。金は十二月来現在で二億八千九百万ドルであります。外貨じり十八億七千八百万ドルの内訳であります。金が二億八千九百万ドル、預金が約八億ドル、その他現金または財務省証券であります。
  89. 今澄勇

    今澄委員 いま大蔵大臣の言った総計では、十八億七千八百万ドルというのが七、八億しかならぬじゃないですか。少なくとも足したらば十八億七千何ぼにならなければ、何を基礎に政府は外貨が安定していると言うのか、計算が合わないじゃないか。   〔発言する者あり〕
  90. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まじめに御答弁を申し上げておるのですから、最終までお聞きになっていただけばわかるわけです。私がいま申し上げたのは、速記録を見るまでもなく、十八億余の内訳として、金が二億八千九百万ドル、預金が八億ドル、その他は現金または財務省証券であります、とこう答えているのであります。
  91. 今澄勇

    今澄委員 その他じゃだめだ。(「それ以上は幾らがんばったって、答えはできないのだからだめだよ」と呼ぶ者あり)私が質問したいのは、外貨が十八億七千八百万ドルと言うておるけれども、これは昭和三十八年においても五十五億ドルの輸出、五十七億ドルの輸入、三十九年度において六十二億ドルの輸出、六十二億ドルの輸入等の大きなそういう貿易の発展から見ると、その外貨の中でこげついて使えないものがうんとあったのでは、これは全然貿易政策は論じられないではないか。だから、政府はしきりと貿易も伸展しているし安定していると言うが、実は安定してない。安定してないから、私は少なくともその内訳を聞かしてもらいたい。しかも、これは政府は隠しておるかしらぬが、大かたあっちこっちに出ておって知れ渡っておる。私は、これが少なくとも予算を審議する国政審議予算委員会に時の大蔵省から発表できないなんというようなことで、一体国民の代表を何と心得ておるのかと思う。少なくとも私は、いま私が分けた項目をさらに分類別に聞かしてくれというのなら無理だと思うのです。だけれども、私が言った六つの項目に分けてこれを聞かしてもらいたいというのでしたら、これは御答弁を願いたいと思います。
  92. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今澄さんも、もう十分この間の国会審議の過程における外貨の内訳に対しては御承知だと思います。これは衆参両院における大蔵委員会でも、また予算委員会でも同じ面に対しての公表しかしておらぬのであります。御承知のとおり、外貨の内訳というものは、どこの国でもあなたがいま言った六項目全部公表するという国はありません。外国からの、日本の外貨準備の内訳を出すということによって及ぼす影響も非常に大きいのでありますし、それらのことはもう十分御承知におなりになっておりながらの御質問だと思いまして、私としては、これ以上にこまかく申し上げるというわけには現在の段階では参りません。
  93. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 今澄君にお尋ねしますが、ただいまの質問に対して保留の分を午後やることでよろしゅうございますか。
  94. 今澄勇

    今澄委員 とにかく私の質問に答えがないのだから、私は、一ぺんそれはもっと政府は相談してもらったらいいと思う。だから私は、ここで質問が続行できないから、休憩をしてもらわなくちゃ……。ただ一つならいいけれども、さっきのやつもだめ、今度のやつもだめ、二つともだめでは、それは無理というものだな。
  95. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 今澄君に申し上げます。ただいま大蔵大臣から外貨の問題で答弁がございましたが、政府はそれ以上の答弁はできないそうであります。御了承願います。  なお、外務省の先ほどの質疑に対しましては、後刻、午後の再開と同時にこれを答弁することにいたします。  続いて御質疑がございましたら、どうぞ進行を願います。今澄勇君。   「違う違う」と呼ぶ者あり〕
  96. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 違いません。——ただいまの今澄勇君の質疑は午後零時五十分より再開いたします。どうぞ政府におかれてはしっかりした答弁をお願いいたします。  では、暫時休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ————◇—————    午後零時五十七分開議
  97. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  今澄勇君。
  98. 今澄勇

    今澄委員 それでは先ほどに続いて大蔵大臣から御答弁を願いたいと思いますが、財政法第二十八条第十号において、「財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書類」、予算添付書類として、「国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならない。」国会法第百四条、「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」という規定がありまするから、私は、ぜひ大蔵大臣からこの委員会に、先ほど要求いたしました外貨の資料をひとつ報告してもらいたい。私が質問しようとしておるのは、いまの一番重大な問題は、何といっても物価の問題と貿易収支、日本の為替じりが一体どうなっておるかということが今日の最大問題でありまするから、それの質問に入るために大蔵当局に資料を求めたような次第でありますので、大蔵大臣の重ねての御答弁をひとつお願いいたします。
  99. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、十八億七千八百万ドルの十二月末現在の外貨準備の内訳については、金が一億八千九百万ドル、それから米国の市銀等に預金をしておりますものが約七億ドル余、米国財務省証券その他が七億余万ドルでありまして、ユーロダラーその他は外貨準備等には入れておりません。  なお、そのほかに米銀借款の問題とか東銀預金の問題とか、それから米ドル当座の問題とかの御質問がございましたけれども、このうち米銀の借款は、御承知のとおり三億二千五百万ドルの借款がありましたが、これは全部返済を終わっておりますので、米銀借款は、現在はゼロであります。これ以上の問題は、政府側として慎重に検討いたしましたが、発表をしないという在来のやり方を確認をいたしましたので、御了承願いたいと思います。  なお、あなたがいま御発言になられた財政法に関する規定には違反もいたしておりませんし、国会審議に必要な書類は十分提出をいたしておるわけであります。
  100. 今澄勇

    今澄委員 大蔵大臣から重ねてお答えがありました。私はこれ以上追及しようとは思いませんが、しかし、何といっても今日物価高をどうするか、それから国際貿易において日本はいかにして黒字を出し、資本収支も入れて外貨をどうするか、今後毎年六十億ドルを上回る貿易規模ということになれば、どうしても常時使える外貨が十一億ドルくらいはないことにはそれらの需要に応じ切れない。そういう意味において、私はこの為替の内訳を、たとえばアメリカの銀行に定期預金をしておる外貨などというものは、アメリカからの借款の見返りに入れてあるから、おそらく急に使うわけにはいかないでしょう。言うなれば、私は池田内閣の貿易についての楽観論はくずれたと思うのです。けれども、大蔵省の都合で御発表になれないと言うから、一番数字の好きな池田内閣がこの数字に限っては出せないということは、まことに大きな皮肉であります。私は、ぜひひとつ池田内閣の財政経済政策その他について御質問したいと思いましたが、いまの外貨の報告がありませんので、いずれ機会をあらためて御質問することとして、この外貨の問題については質問を終わります。
  101. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、午前中の今澄君の質疑に対しまして外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 午前中、今澄委員の御質問に関連して、資料が手元になかった関係で、たいへん予算委員会の進行を阻害いたしまして恐縮いたしております。その後調査いたしましたところ明らかになりましたことを御報告いたします。  本件は、終戦後から昭和二十七年日華平和条約締結当時までに中国政府によりまして拿捕、没収、徴用された日本漁船を対象とするものでございます。国民政府は、これら漁船の拿捕の理由といたしまして、占領軍の定めたマッカーサー・ラインを侵犯したことを理由にあげておりましたが、わがほうはこれに対しまして、マッカーサー・ライン侵犯の事実があったといたしましても、その違反漁船を日本側官憲に引き渡せば足りるのであって、これを没収、徴用するということは国際法違反であるというところから問題が提起されたわけでございます。その後、長い折衝の経過を経まして、昭和三十七年三月三十日に日華両国政府間で交換公文がかわされて、問題が解決いたしております。交換公文の内容は、先方から見舞い金並びに漁業合作という二つの方法によってこの問題を解決するということを内容としたものでございます。先ほどアジア局長は、この内容は両国政府の申し合わせで発表しないことにしておる、こういうことを申し上げたのは、特にその内容を外部に極秘にする理由ではなくて、むしろ当時対日賠償請求権を放棄したというような景況のもとにおきまして、賠償的なものを外に出すというようなことに対して政府側が懸念されて、積極的に発表しない、そういう趣旨のものでございまして、これを隠蔽する趣旨のものでは決してございません。  そうして、この上記のうち見舞い金と称するものは、あなたが言われたように現金ではなくて現物になっておりまして、交換公文もそうなっております。したがいまして、為替管理法違反というような問題ではないように私は思います。これは昨年の十月完了いたしております。  それから上記の被害者に対する分配金の分配の一切は、被害者の代表たる蓬莱漁業協会が責任を持ってやっておるということでございます。私ども政府立場では、この交換公文にありますように、この盛られた内容のものは誠実に実行されるようにお互いにモラリーに協力していこうということがうたわれてあるわけでございます。実行の実際は民間でやっておりまして、私ども、今後こういう問題が円滑に実施されていくように希望いたしておりますし、必要に応じて協力を措しまないつもりでおります。
  103. 今澄勇

    今澄委員 答弁のなかった金指造船に発注した四百五十トンの漁船二隻がキャンセルされたのは一体どういうわけであるか。それから、いま承ったように、そういう政府間の正式交換公文による決定であれば、今後もこれは実行されなくちゃならぬ。そのときの気分次第であれをやり、これをやらぬというようなことではどうにもならぬと思うのですが、その点はどうなっておりますか。
  104. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、いま言われた造船会社が漁船二隻の一番札の落札主であったことは事実でございます。ところがそれから所定の期間、二カ月でありますか、経過したあとでも、まだ契約ができない状態にあることも事実でございます。それがどういう理由に基づくのか、私どもよくわかりませんが、われわれの出先といたしましては、先方の漁業公司に対しまして督促はいたしておるようでございます。どういう理由によるか、先方の意図するところはさだかにはわかりません。
  105. 今澄勇

    今澄委員 まだ聞きますが、問題は漁業協定で船をつくって、それでその交換公文を見ると、とった魚の収益を賠償に使うことになっておるのですから、船ができなければ魚もとれない、品物も先は入らないということになれば、その船主と家族にはそのままおしまいになってしまう。せっかくの協定が違反ということになります。なお、その中で、普通の匿名組合ならば何をしようとかってであるが、台湾政府との協定に基づいてできた匿名組合が五千六百万の金を一体遺族に幾ら配って、船主には幾ら配ったのであるか。私の聞くところによると、十万円ずつ配ったということは聞いておりますが、その五千六百万の金がうんと残る勘定になってくるわけですね。そういう意味では、ただ単なる株式会社ではないのだから、外務省は監督をして、その残った金は一体どう使われておるのか、これは大事な問題だと思うのですが、お答えを願いたいと思います。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように漁業合作による収益金で補償に充てるということになっておるようでございまして、したがいまして、漁船ができなければ全体が完結しないことになることは仰せのとおりでございます。私どもも、できるだけ早く話がつきまして、円満に解決することを希望いたしておりまするし、要すれば可能な限り協力いたしたいと思います。ただ、先方がなぜいまに至るまで発注しないのか、そのあたりの事情はまだいまつまびらかにいたしておりません。  それから、見舞い金の配分の問題は、これは業者の方々でつくられた協会がやられておることでございまして、私どもタッチいたしておりません。
  107. 今澄勇

    今澄委員 とにかくこれは普通の民間会社だけでやったのではなしに、政府台湾政府の正式な約束に基づいてやられたわけであるから、私は、少なくとも外務省は責任があるので、船を注文したら向こうの都合でもうキャンセル、造船会社はまるきり泣いていてもそれきりというようなことはおかしいと思うのですよ。しかも、これに関係する船主がこの間集まって、台湾政府がキャンセルをするなら、これは日本国政府がこの条約に基づいて責任を負うて、その金額は出すべきではないか、国家が立てかえて一ぺん先に出さなくてはいかぬではないかという話し合いをしたと漏れ聞いておる。私も当然のことだと思うのです。それから、外務省はもう少し監督をして、何といったって時の農林大臣を責任者に据えて、しかもこれは自民党の大幹部なんだから、私は、少なくとも外務大臣とも十分連絡をとって、そういう配分やその他の点については、十分ひとつこれは気をつけてもらわなければいかぬと思うのです。それで外務大臣、もし中国側が履行しない際は、国家がこれを一時立てかえるか、あるいは中国側になりかわってこれらの損害を補償すべきであると思うが、その点はどうでしょう。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、本件が漁船発注のところで停滞いたしておるようでございますが、私どもといたしましては、この交換公文に盛られたような内容におきましてこの問題が終息を見るように期待いたしておりまするし、それに対してできるだけ協力をいたしたいと思っております。
  109. 今澄勇

    今澄委員 私が聞いておるところでは、すでにもう二十九年度の分についてもどうもだめなようだという話なので、もしこれが履行されないときは、政府がかわってやるかどうかということについて外務大臣の答弁を求めておる。これは少なくとも国と国との間に正式に取りきめた交換公文なんですから、私はそういう何となくやっていることが寝わざ式でぐあいが悪いと思うのです。私は、協定できまったらそのとおり政府は十分責任を負う、しかも来た金は全員に配る、こういうことではっきりしなければだめだと思うのです。もう一ぺんひとつ外務大臣に答弁を願いたいと思うのです。
  110. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私がいま申し上げましたとおり、私といたしましては、そういう交換公文に盛られた内容において事柄が終息するということをいまの段階では希望いたしておるわけで、それができないということはいま考えておりません。
  111. 今澄勇

    今澄委員 私は、いろいろの問題があるが、池田内閣ももう政権の座にあること長いです。私は、やはり政治というのは国民に疑惑を持たれたり、あるいはいろいろと腐敗をしておってはいかぬと思うのです。まあ氷山の一角としてこの問題を取り上げました。私の担当の時間が参ったようでありまするから、私はこの問題については深追いをしませんが、いずれ証券政策の問題、あるいは日本の、さっき政府は外貨を報告をしなかったが、日本の通貨の発行高も年々ふえて、三年間に倍になっている。いわゆる通貨が増発されて、非常なこれは一種のインフレである。しかも、こういう通貨の増発のもとにおいて非常に企業も借金政策で、銀行は貸し出し過剰、日本銀行がそのしりを見ているというような状態なんです。そうして、株式市場の気配がいいときはそういう会社が増資をして、五百円も六百円もでどんどんこれを売りさばく。会社の首脳部は、いずれ二三年先になればうまくいかないだろうということがわかっておって売りさばくから、買った人があとで会社がつぶれてゼロになるという、大衆が非常な迷惑を受けている。こういう問題が各所にありまして、私は、政治姿勢をひとつ正さなければいかぬと思っております。きょうは時間がないからこの程度で私は質問をやめますが、十分ひとつ池田内閣はそれらの綱紀の点についても留意されて政治をやってもらいたい、かように思います。  これで終わります。
  112. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて今澄君の質疑は終了いたしました。  次に川崎秀二君の発言を許します。  川崎秀二君。
  113. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 今度の国会が始まりまして、衆参両院の本会議あるいは予算委員会におきまする質問の最大重点は、中共問題にまず集中せらているように感ぜられるのであります。現に終戦以来多くの外交問題が論ぜられまして、そしてその論議の上に立って各党は態度を決定をし、相当の外交問題が終結を見ておりますけれども、未解決でなお世界政治の上に深い影を落としておるのが中国問題であり、またわが国にとっては全然未解決であると思っておるのであります。池田首相は、フランス中共承認問題に関連して起こりました新たな事態につきまして、各党の代表者から質問があり、さらにラスク池田会談というものをされまして多くの情報を持たれ、それを基礎にされまして御意見がございました。  そこで第一に、この自主的解決ということを言われておりますが、この自主性の発揮ということは、つまり日本中国本土との長い歴史的な関係が第一。第二は、施政方針演説の中にありました中国本土には六億余の民衆が存在しておるという厳然たる事実ということばを使われておりますが、そのことを深く認識されて、さらに将来にわたっての長い展望のもとに自主的態度をとって進まれる、こういうふうに私は解釈いたすわけでございますが、総理のまずこの点に対する、自主的態度ということに対する御所見を承っておきたいと思うのであります。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 やはり外交はわが国の利益国民の福祉増進ということを考えてやらなければならぬことは当然でございます。それをあくまで発揮する。そのわが国の利益はどういう態度をとったらいわゆる世界的に妥当と認められ、そしてまたわが国にも非常な利益になるか、これを考えなければなりません。しこうしてわが国の利益ということは、その当座のことだけでなしに、将来長きにわたっての利益ということを考えなきゃならぬと思います。それが、私が今後進めていこうという外交の本質でございます。一人よがりという意味ではございません、自主的ということは。しかし、やはり平和共存の立場、そうして自由主義国家群の一員としての広い、高い、強い意味の利益ということを考えなきゃならぬと思います。
  115. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 たいへんいいお話を承ったのは、長期にわたる見通しのもとにわが国の利益をはかるということでございます。もとよりこの中国問題を考えるにあたりまして、われわれは国民政府の存在というものを無視してかかるわけにはまいりません。わが党は主軸となり、またわが国は中国の正統政府として一応国民政府との外交関係を認めて今日に至っております。愛知委員が御質問をされ、また種々御意見のあったとおりでございます。しかしながら、いま焦点となっておる問題は、中国本土に存在する政権との関係をどうするかということになってきたと私は思うのであります。中共政府が朝鮮戦争において侵略者としてらく印を押され、その後におきましても、ラスク長官などはしばしば好戦的な態度をとったということを指摘されまして、先般来お話がありましたが、中印国境における紛争といい、その他の事件といい、それらを裏づける要素はございます。けれども、この強硬なる共産外交の上に立っておる中共政府ではございますけれども、また異端的な立場であることもわれわれは承知しておりますけれども、中国本土において十五年に近い歳月をけみしてなお民衆を支配をしておる。しかも政権に転覆の可能性というものがないということはわれわれも認めなきゃならぬのでありまして、フランス政府のとった態度はきわめて現実的な態度である。私は、フランス中共問題で投げた石は決して世界大勢を引きずるには至っておらぬ。しかし、石を投げたことだけは間違いがなくして、本年を一つの転回点、ターニング・ポイントとして中共問題は国際政治における最大の問題になってくると認識しておるのであります。これはやはり米中関係というものを将来打開しなければ世界の平和はないという認識が私にもあるわけでありまして、その意味で総理にお伺いしたいのは、今後世界の主要各国アメリカソ連は申すに及ばず、イギリス及びその連邦、特にとりわけ日本は、世界各国政治の中において中共に対する態度をどうするかということに世界は注目をしておると思う。そういう点の御認識はいかがでございましょうか。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 今回のドゴール大統領の中共承認は、お話しのとおり一石を投じたことは事実でございます。しかし、これが世界外交の上におきまして一大転機をもたらすかもたらさないかということは、まだ結論はちょっと出にくいと思います。一石を投じたことは確かでございます。そこで、この問題に対しましてのヨーロッパ諸国の状況を見ますと、必ずしも大勢はドゴール大統領の措置に賛成していないほうが多いのではないかと思います。たとえばEECで申しましても、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク——まあベルギーとルクセンブルグは一体でございます。西ドイツを入れますと、そういうことがうかがわれるのであります。他のオランダはすでに認めております。そうしてまた、お話のイギリスの態度につきましても、明確な点はまだあらわれておりません。それは、イギリスはもう承認しているという関係がございます。しこうしてイギリスの問題は、フランス承認したということよりも、これが世界のいままでの東西関係、南北関係にどういう影響があるかということを深甚な態度で見ておるのがそのありさまだと思います。そしてまた、われわれが考えなければならぬアメリカは、お話のとおりでございます。韓国、台湾を除きまして、フィリピン、タイ、マレーシア、あるいはオーストラリア、ニュージーランド等はまだはっきりしておりませんが、必ずしも適時適策を講じたとこういう国々が思っていないのじゃないかと想像される節があります、はっきり言っておりませんが。その他の国におきましては、大体まだ静かにしておるようでございます。一石は投じられましたが、これが大転機になるかならぬかということは、いましばらく情勢を見守る必要があると思います。私は、そういう意味において今回のフランスの措置、そしてそれに続いての中華民国政府のこれに対する態度、そしてブラザビルその他のAA諸国の動向は十分注意しながらこれを考えていって、わが国の政策に参考にいたしたいと思っております。
  117. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 私は、国連総会などにおきます世界各国の動きというものを見る上においては、これはもうイギリスの態度というものは非常に重大な影響を投げると思っております。けれども、まずその前にイギリスの態度につきましていろいろと大平外務大臣にもお伺いいたしたいと思っておりますが、その前に、やはり、自主的態度ということでございますから、したがって自主的態度をとるには、国際情勢の動きにもよりますけれども、わが国は長期の見通しのもとに確固たる方針を立てて、そしてそのもとにおける流動せる情勢に焦点を合わせての具体的措置というものは私は望ましいと逆に考えております。長期的見通しというものが第一。第二は、それぞれの段階における態度ということになってくると思うのですが、実はこのようなフランスの動きについていろいろと取りざたをされる前に、当然日本総理大臣とされましては、従来アメリカとの間に長期にわたる中国政策あるいは中国問題というものに対する御検討があってしかるべきではなかったのではないのかというふうに私は思うのであります。ジョンソン大統領はかわられたばかりでありますから、まだ十分のお打ち合わせもないかもしれないけれども、ケネディ故大統領との間には、中国問題について相当突っ込んだお話があってしかるべきであった。またそうだったと私は思うのです。それで、長期、短期のそれぞれの見通しのもとに中国問題を処理してまいらないと、慎重な態度をもって臨まれるといっても、国民はどの方向にいくかということはわからない。したがって総理の御見解を伺いたいのは、米国との間に長期の見通しについての中国政策の検討というものがあったかどうかということでございます。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 長期の見通し——私、先ほど長期と申しましたのは、日本利益が長きにわたって、という意味でございまして、中共を中心とした世界情勢につきましては、これは長期、短期ということは私は考えておりません。これは焦眉の問題であり、そしてまた努力しましてもなかなか長くかかる問題であると思います。それで、第十六回国連総会からこの問題を取り上げまして世界関心を集め、日本の根本的態度国連の場で言っておるのであります。そしてアメリカの意向も知っております。アメリカ考え方もわかっておる。われわれの考え方も外務大臣から申し出ております。しこうしてこの問題は、アメリカ日本のみならず、私はやはり先ほど申し上げました隣邦諸国、西太平洋の諸国等のことも、これは考えていかなければならぬ。アメリカ日本だけの問題じゃございません。西太平洋、これは非常な重要な緊密関係があります。こういう問題を、やはりフランスがこういう一石を投じた機会をとらえると申しますか、一つの機会であると思いますので、中共対策につきましては、わが国の考え方を一そう固めると同時に、自由国家群、特に隣邦あるいはアメリカ等とも私は十分話し合っていくべきときだと考えております。
  119. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 御答弁にあわせまして大平外務大臣に一つ伺っておきたいと思うのですけれども、ただいま西太平洋の諸国の向背ということも大切である、イギリスの態度も非常に重要だ、こういうことでございます。国際世論を見て自主的に決定するというのはそういう意味であると解釈いたしますが、一昨日以来、カナダのジーフェンベーカー首相は何か新しい見解を述べておるように伝えられておる。新聞紙上だけで拝見しておるので十分なことは知りませんが、外務大臣は何費情報をお持ちでございますか。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 フランスが北京と外交関係を持つに至ったということに関連して、カナダ政府が北京に対してどういう態度をとるかということにつきましては何らただいままでのところ伺っておりません。先方の政府は何も申しておりません。
  121. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 もう一度伺いますが、それは政府からは何も通告もないし、政府の公式表明がないということでしょう。新聞紙上では、中共をいま直ちに承認することには賛成しがたい、けれども、国連総会における中共の加盟には積極的に賛成して動かなければならぬ、こういうことを言われたように聞いておるのです。それはどうでしょうか。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうことは政府筋から伺っておりません。
  123. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 それは新聞報道だけでありますが、さらに大平外務大臣に伺いますが、何かイギリスでは、保守党も労働党もすでに次の総選挙を目ざして外交政策の整備をしておる。これに関連して何か中共問題に関する新しい動きはありませんか。
  124. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいままで、各国の状況はできるだけとっておるつもりでございますが、イギリスのほうからは、まだいまお申し出のようなことについて、私どもデータをとるに至っておりません。
  125. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 どうも大平外務大臣、これは与党の質問ですからね、ちっとは情報があれば知らして——われわれは自分だけで情報をとって、そしてこれを質問せざるを得ないけれども……。総理大臣も聞いていただきたいのですが、昨年の十月の二日です。次の総選挙を目ざしてイギリスの労働党では、外交政策の第一項に、国連強化を通じて将来の世界政府の樹立というものに邁進する。その項目の中に中共承認ということが非常に大きく出てきておるのです。中共はもちろんイギリスによって承認されておるけれども、国連の舞台ではアメリカとの協調ということが第一で、今日保守党政府というものは表決にあたってはきわめて穏健な態度をとっておる。対米協調というものを主として今日に至った。しかし労働党では、今日の世界情勢からして中共承認ということを実現化されなければいかぬ、そこで綱領の中に中共承認を筆頭とする全独立国の国連加盟による国連の全世界化ということをうたっておるのです。いま大平外務大臣見ておられるけれども、必ずそのニュースに相違ない。こういう考えを同じくするグループを国連の中につくってイニシアチブをとろうということを労働党は言っておるのです。御存じのように今日のイギリスの政界の情勢は総選挙寸前である。三月か五月か、どちらかである。もちろん総選挙のことですからどっちが勝つかわからぬが、今日の世界の見ておる情勢では、やはり労働党優勢ということが伝えられておるわけですから、したがって、ここに次の国連総会あるいは新情勢に対する大きな転機になるものは、イギリスの国連における中共問題の動きということにかかってくる可能性があるのであります。保守党政府でもこれに歩み寄りをして新しい政策を樹立しようとしておる動きがある。いまは静かにしておるけれども、しかしその静けさは私は次の手ではないかというふうにも見ておるのであります。その意味で大平国務大臣並びに総理大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  126. 大平正芳

    ○大平国務大臣 フランスの今度の態度につきましての反応という点から、私先ほど申し上げたわけでございます。ただ、しいて申し上げますれば、一月二十七日にイギリスの外務省のスポークスマンが申しておるのはこういうことでございます。フランス中共承認について、問題はフランス政府のきめることで、英国にかかわりないとのみ発言しております。英国の労働党の問題につきましての言及でございますが、私どもは、英国の政府を相手に外交をいたしておるわけでございまして、英国の労働党云々ということについて、英国の政府を差しおいて日本政府立場でいろいろコメントすることはいかがかと思うのでございます。その点はお許しをいただきたいと思います。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のとおり、イギリスでは総選挙近きにありということで、保守党、労働党、いろいろ政策を出しておられるようです。しかし、その政策の最たるものが、やはり外交問題よりもいわゆる経済政策、ことに長い目で見ての教育政策が中心になっておるようでございます。ウィルソン並びにヒュームの政策も、イギリスの外交というものは、お話のとおり、この中共問題につきましては、もう労働党内閣のときに承認し、また保守党がこれを受け継いでおるわけでざごいます。一般の外交政策においてあまり変わりがない、あるいはそれ以上に中共政策について変わりがない。それで、国連における態度と申しましては、やはり中共承認したという態度を堅持しながら、やはりアメリカその他自由国家群との協調ということを非常にやっておる。その協調の度合いが保守党と労働党とどう違うかという、そのニュアンスの問題がある程度の違いはあると思いますが、基本方針には私は変わりはないと思う。国連中心にしていこう。しこうして過去の事実もさることながら、自由国家群、ことにアメリカとの協調を主にしでいこうということは私は変わりないと思います。今度のフランスの問題が自由国家群の結束を乱すのではないかということは、自由国家群お互いにみな心配しておるようでございます。これによって結束を乱さないように、自由国家群の結束に支障を来たさないよう努力しようということは、私は一つの事実であると思う。今後それがどういうふうな程度に進んでいくかということは問題があると思いますが、イギリスの選挙の結果において、イギリスの根本的外交政策がどうこうということは見られません。イギリスは中共承認したという過去の事実と、自由国家群、ことにアメリカとの協調ということを相当考えておる。この二つの間で私は進んでいくのではないかと思います。
  128. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 総理大臣から、労働党と保守党では、総選挙の結果によるけれども基調は変わらぬ、これはそのとおりでございます。けれども、元来主張は確実に中共承認ということを両党とも出しているわけですから、国連総会における手法、やり方については相当に変化してくると思うのであります。その点について、ただいま総理からきわめて現実的なお話をいただいたわけですけれども、大平外務大臣、情報がありましたら、少しは役人かたぎでなしに話してもらわぬと困るですな。いまの一月二十七日の話の前に、北大西洋の外相会議で、いまのバトラー外務大臣、これは保守党ですな、それが言うておることは、どこの国でも自由の繁栄、自国の利益ということが一番目標ですから、イギリスでは一番大きな問題は、自分の国を繁栄させるためには、将来EECに入りたい。あるいはヨーロッパ政治統合というものに一番関心を持っておる。中共承認などは、ずいぶん古い話です。しかし、ヨーロッパ政治統合の中に最初から入りたいと、バトラーは、言うておるですな。これは急所です。というのは、英仏は将来妥協する機運がある。フランス中共承認をした。イギリスはヨーロッパの政治統合に、最初から話し合いに入りたい、EECにも入りたい、こういうことを言っておるが、それに対してフランスの外務大臣は、その席上では、ドゴールの拒否権は続いているのだと答えたわけです。しかし、その次に中共承認の問題についてフランスがみんなの承認を求めたら、だれも何も言わなかったというのです。それは反対の者も相当いるでしょう。いるけれども、そこは議長のバトラー外務大臣というものは、相当な将来の遠謀的な政策を持っておるのじゃないか。これは私個人の推測ですけれども、そういうような観点に立つと、ヨーロッパの政治統合あるいはEECの加盟という問題に立って多くの同調国を得ようとするイギリスの外交は、一方において、中共承認というものと符節を合わして、自国の利益を守るためにヨーロッパ政治統合というものに重点を置いた政策をとるとともに、中共承認ということで妥協する可能性がある。私どもの考え方では、それはアメリカフランスとの間にイギリスは割り込んで入ってくる。また入ってこなければ、イギリスの将来性というものはないと思っておる。そういう意味で、いろいろな情報を集められつつ国際世論の推移を見て自主的に解決されるというなら、私は自主的解決ということがまず第一だと思うんですけれども、しかし、国際世論を見て解決するという大平外務大臣のたびたびの御言明が主ならば、国際世論についてもっと注意を払ったいろいろな御見解を述べていただきたい、こう思うんです。基本的にどうです。
  129. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、国際世論の動きに非常に敏感でなければならぬことは当然ですし、あらゆる機能を動員いたしましてその収集に努力し、その分析、評価に誤りがないようにするのが私のつとめでございます。仰せのとおりでございます。ただ、お断わり申し上げておきたいのは、役人かたぎでこれをとめておるのではなくて、私の立場でよその国のことを述べる場合には、向こうの政府責任を持って発表したことしか言うべきじゃないと私は思っておるわけでございまして、いろいろ何でもかんでもここで私がかりに言ったとすれば、川崎先生必ずおしかりをされるだろうと思います。
  130. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 先ほど自主的態度ということにつきまして、もっと突っ込んだお話をいただきたかったのでございますが、今度のラスク国務長官との会談におきまして、また日米経済合同会議でございますか、その席におきまする総理大臣お話の中に、非常にパートナーシップということばが出てまいったように思っております。このパートナーシップというものは、もちろん、アメリカとの協調なくしてはこの問題を解決するわけにまいらぬという意味でのお話だろうと思うのですが、パートナーであれば、やはりパートナーに対する助言も必要であるし、ときには積極的にこれを引きずる強力な意思を表明しなければならぬと思うのです。やはり日本中国との関係、それからアメリカ中国との関係を見ますると、これは多くの委員の方々によっても言い伝えられてきたことですけれども、歴史的背景というものが違う。われわれの生活の中、文化の中には、中国影響というものが何千年来しみ込んでおるのであって、もとよりアメリカも二百数十年のおつき合いはあろうかもしれぬけれども、それとは雲泥の差であり、相当な距離の差があるわけだ。距離感というものもあり、歴史観の違いもあるわけです。その意味で、アジア政策の最近におけるアメリカの各地における失敗を見ると、あるいはアジア政策というものがアメリカ政策の中で一番盲点であって、欠点である、弱点であるということを言い得るのではないか。そういう意味で、アジアの問題を最も知っておるものは、ことに大東亜戦争あるいはその前にさかのぼってのあらゆる機会における政策において、いやというほどわれわれは悲痛な経験もしてきたし、そういう意味での分析、歴史的見通しというものについてアメリカ側にほんとうに話をしなければならぬ段階に今日は来ておるのではないかというふうに思うのですけれども、このパートナーシップの生かし方ということが、これから先の日本外交についての一番きめ手ではないか。総理大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ大統領の教書に、アメリカと西欧とのパートナーシップの観念はずっと以前からも出ておりましたが、ヨーロッパとアメリカのパートナーシップのみならず、アジアにおける日本とのパートナーシップを大統領が公式の場で声明したのは、去年からでございます。私は、日本国民の努力による日本の国力、世界地位の上昇が、こういうことばが出るようなもとをなしたと思う。パートナーシップということは、私は、日本国民によく考えてもらわなければならぬことは、いつまでもアメリカ一辺倒一辺倒と、一辺倒ならパートナーシップではない。そうしてまた、アメリカ自体も占領下の日本というふうなことをお考えにならず、パートナーシップというものは、お互い対等の場で相談し合う、助け合うということがパートナーシップだ。これは日本人として自信を持ってもらいたい、こう私は考えておるのであります。決してアメリカ一辺倒ではありません。向こうもそうではないと言っておる。そうあっちゃ困ると言っておる。お互いに対等の立場で手を握り合わしていこう。そこで私は、日米間におきまして、ことにラスク長官中共問題を取り上げて言うことよりも、パートナーシップというものはこういうものだということを昼飯の会で言ったわけです。パートナーシップというものは、やはりお互いが自主的に自分判断できめる。しかし、このアメリカ日本というものは、最近の状況からいってお互いに違った考え方があっても、対立したり孤立しないようにしていくことがパートナーシップなんだ。そこで、私はこの機会に言うが、先進諸国は得てしてアジア人の気持ちが十分わかりにくいところがあるのじゃないか。それがアメリカの失敗と私は書いておりません。それはやはり外交政策上今後考えてもらいたい。アジア人のいわゆる歴史、文化、思想、風習ということを十分頭に入れて外交政策をやってもらわなければいかぬ、こういうことを、少し言い過ぎたかと思ったら、非常に感心しまして、原稿を日本文でくれと言っておりました。私は、これがパートナーシップだ、その方向で行きます。ラスク長官、また並びいるアメリカ人も全部わかったようで、これがパートナーシップだ。あくまで自主的にやっていきますが、パートナーシップという以上は、対立したりあるいは相反してはいかぬ、あくまでもそれは同じ根のもとにやっていかなければいかぬ、こういうこと。しかし、常に一緒の結論を出さなければならぬという意味のものじゃございません。これは、やはりその国の置かれた立場でどれが一番利益になるかということ、しかし、少なくとも十分意見を交換し、お互いに相並び立つという考え方でいかなければならぬ、こういうことを言っておるので、私は、アメリカの識者も、日本人も全部がこれをわかっていただけると思って、いま中共問題で話をしなかったといってちょっとありましたが、私は、そういう問題は外務大臣にまかせ、パートナーシップの根本的理念ということが必要だと思って言ったわけなのであります。
  132. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 いまのお話で、大体首相の目ざされているものは私には相当わかってきた気がします。パートナーシップというものは大切である。孤立してはならぬ。しかし、最後には必ずしも同一の結論が出ない場合もある。こういうようなことから見ますると、これは私の独断ではいけませんけれども、私はそのことばをそのまま受け取ってさらに御質問申し上げたいと思うのですが、私は、今日の世界の平和共存ムードというものは、これは一昨年の十月のキューバ異変の際におけるケネディ大統領の、自由と平和を守るためには断固たる決意をするということで始まって、そしてそのせとぎわぎりぎりの決着の考え方が、かえって世界の平和を呼ぶ状態になったのではないかというふうに思うのです。その後、とにかくモスクワの核停交渉というものは成立をしましたので——もとよりまだいろいろな小事件あるいは大事件に至らざる問題は、方々に突発をしております。アメリカの飛行機が東独を侵犯したとか、あるいはいろいろな紛争は起こっておりますけれども、米ソの間に大きな理解ができたということだけは事実でありまして、そうしてそれならばその後における世界の不安は何であるか。これは、何としても中国を国際場裏の外へほっぽり出しておるという問題であります。私は、もとより自由民主党の党員であるから、反共主義者だ。けれども、世界各国のうらで、反共の態度をとって、しかも非常に激しく中印紛争などをしておるインドでも、やはり中国はあれだけの民衆を支配しておるのだから認めなければならぬとし、こういう意味で、中共世界の孤児にしてはならない、孤児にすればなお危険性があるという考え方は、かなりの世界の良識ある人々に広がっておるのだし、率直に言って世界の民衆の個人個人の考え方というものは、大体そういうふうに傾いておると思う。政府の権力あるいは政府に直接つながっておる人々については、それぞれの国々立場は違いましょうけれども、私は、中国に数百万の陸軍精鋭部隊が今日、数百万ではない、千万近いでしょう、そういうものを放置しておいて、ジュネーブで軍縮会議を幾らやってみたところで、それは全く一介のナンセンスである。何としても中共というものを国連の舞台に乗せて、アトリー元英首相に言わせれば、無法者を世界の常識の軌道に乗せるということが、今日の一番大切なことではないかというふうに私は考えておるのです。そういう意味で、この米ソ和平に次ぐ世界の最大問題というのは、米中の融和というものに向かって世界各国が力を合わせるということでなければならないと思う。もとより中共の好戦的姿勢というものについては、何も中共を入れることにばかり努力をするのではなくし、反省を求めなければならぬ点は多々あるでしょう。しかし、これはやはり打てば響く、あるいはたたけよ、さらば開かれん、ということばがある。やはり双方の間に立つ世界の大国というものが心を合わせなければならぬので、その意味で、日本の役割というものは、私は、非常に重大な局面へきつつあると、こう思っておるのであります。そういう意味で、この米中和解あるいは米中融和というものについて、総理大臣はどうお考えでございましょうか。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 世界各国が平和であり、共存の立場をとることは、私は、いずれの国も願っておると思います。したがって、米国と中共との問題がお話のとおり最大の問題であるということも、私は認めます。そうしてまた、両国がワルシャワにおきまして百数十回——百回以上、百六、七回がこの前でございましたが、やっておられることも聞いております。しこうして、問題の四人の俘虜の問題がまだ片づかない。四人の俘虜の問題、大きい問題であるかのごとく、また小さい問題であるかのごとくあるのですが、これがなかなか片づかない。そこで打てば響く、開けば通ずるというところまでなかなかいきにくいということも、一つ現実の事実でございます。そういう問題のときに、重要問題だからといって、そうしてまた日本中共と歴史的、地理的関係があるからといって、おいそれというふうに飛び立つこともまたいかがなものかと思います。だから、私は世界全体的にそういうムードをつくられることを望むし、そしてまた、国連におきましてこの問題が論議されるということも私は望ましいことだと考えておるのであります。いずれにいたしましても大問題でございまして、アメリカ中共のみならず、世界各国が非常な関心を持って解決に向かって進むべきものだと考えておるのであります。ただ、たびたび申し上げておりますごとく、日本フランスとかあるいはイタリアとかとは別の、中華民国承認という一つの大きいあれを持っておりますので、日本立場が重大であるがごとく、また日本にも相当のいままでの歴史というものがあることをつけ加えておきます。
  134. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 防衛大臣にお伺いいたしたいと思います。  先日もお話は申し上げておいたのですが、中共が原爆を保有するかどうか、将来持つかということについては、たしか三年くらい前に志賀防衛庁長官のときに、二年あるいは三年の後に持つようになるかもしれぬという防衛庁長官談話というものが発表されたように私は記憶しておる。その後、防衛庁では、これらのことにつきまして、何か情報はございませんか。
  135. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 中共の核爆発の問題でございますが、いろいろの推測が行なわれておりまして、結論的に申しますと、大体一、二年以内に核爆発が行なわれるのではないか。この問題につきましては、昨年の七月のラスク国務長官、その後のヒルズマン国務次官補、さらにまた中国の陳毅外相、最近におきましては周恩来首相のカイロの談話等々を見ましても、一貫した表現はございません。したがって、大体一、二年以内に核爆発が行なわれるであろう。ただし、これが装備として核装備に至るまでには、英国、フランス等の先例を調べましても、なお相当の年月がかかるのではないか。御参考までに申しますと、英国あたりでも、実験用の原子炉が始動いたしましてから核装備までに七年かかっておる。フランスは約十五年かかっておる。こういう例を見ましても、たとえ実験いたしましても、核装備するまでには相当の年月がかかるだろうというのが、大体専門家の一致した考えのようでございます。
  136. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 防衛庁長官にもう一問。  そのフランス中共の今度の問題には、おそらく原爆の問題についてどうこうということはなかったかもしれませんが、きのう毎日新聞に、ガロワという評論家が、相当将来にわたってのアメリカ並びにフランスの極東戦略、あるいは中共の将来の核保有の可能性などについても書いておる。軍事評論家でもあり、ドゴール大統領の相当信頼をしておる、将来の政車両略における顧問みたいな立場にもおられるというわけですから、これはかなり相当な人だろうと思うのです。そういう人のいろいろずっと書いておるものを見ておると、フランス中共との間にも、相当な、核を移譲したとかなんとかいうことは別にして、相当知識の交換というものも行なわれておるのではないかというふうに私は見ておるのですが、これは何か情報はありませんか。
  137. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 中共ソ連の確執並びに技術協定の破棄によりまして、核問題についての中共のいろいろな研究開発につきましてスローダウンしたということは、大体一般に考えられておりますが、いま御指摘のフランス中共における核情報の交換その他につきましては、何ら情報を得ておりません。
  138. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 大平外務大臣、この米中関係の打開について、いろいろと総理大臣にお伺いしておりましたのですが、何か民間ベースにしても、米中関係というものは打開をされるという徴候は一つもございませんか。たとえば一昨日の新聞によると、ヒルズマン国務次官補のお話では、新聞記者を交換したいということを中共に申し入れたら断わられた、こういうようなこともあります。しかし、米国では、やはり中国状態をしっかり認識したいという希望が官辺にも出てきておるということが、一つの変化の徴候であります、あらわれであると私は見ておる。それと同じように、日本の民間に対して、経済関係の交流をしたいというようなことが、アメリカ側から言うてきておる状況はございませんか。これらの問題についてお伺いいたします。
  139. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどのワルシャワ米中会談では、先ほど総理がお触れになりました俘虜の返還の問題プラス新聞記者の交換ということが問題になっておるということを承知いたしておりますが、これは、ただいままでのところ話がついていないということを承知いたしておりますが、アメリカ側は希望しておるということでございます。しかし、まだ話がきまっていないということでございます。それから民間側の接触のルートを持ちたいということについて、こちらに接触があるかということでございますが、そういうことはございません。
  140. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 私は、中共問題に対する質問は、本日は総理大臣がいろいろ申されましたことで、かなり将来にわたってのお考えの片鱗を伺いましたので、これ以上深く申し上げることはいかがかと思いますが、最後に、申し上げれば、私は、日本政治家たちが諸外国を旅行しまして一番聞かれるものは、日本経済がどうしてこんなに発展したかということをよく聞かれます。それと一番開かれるのは、やはり中共問題に対する君たちの考え方はどうなんだ、よその国の考え方よりも、一番近くにいる有力なる工業国家としての日本見解はどうなのだということを聞かれて、個人としては言えるけれども、大きな政党としての立場、あるいは日本国民の動向というものを察しての答えは、なかなか今日までは出ない。だんだんこれが具現化する今日は傾向にあると思うのですけれども、われわれ日本というものの今日までのずっと長い三十年間、四十年間の歴史を見てみると、ほとんど歴代の内閣というものは、対支問題の解決ということで戦前まで頭を悩まし、そして最後には軍部に強圧をされた結果、ああいう悲惨な戦争に発展し、無謀な大東亜戦争まで至った。こういう経過であります。世論の動きは別として、記録などを見てみると、策議院の本会議で、対支緊急質問というものが十数回繰り返されておる。その外交問題の中の比率は、半分以上ですな。決議案も、十二外交決議案があって、そのうち五つは対支問題である。いろいろな過程を経てきて、そうして支那事変の最中になって、われわれの先輩である齋藤隆一夫氏が、支那事変処理の、聖戦の美名に隠れてという演説をして、それ以来というものは全く言論封殺、こういうことになったのです。そういうことをずっと調べてみると、われわれは、やはり日本の歴史というものは中国問題に始まって中国問題に返ってきたという感じをしておるのです。というのは、未解決であったもがこれだけなんです。ほとんどの問題を終戦以来解決をしてきた。その功績者の第一は、吉田総理だったと私は思っておる。思うけれども、今日の時点に立って、日本は開放経済の時代に入り、そうして世界の中における日本としてのほんとうの独立を確保しなければならぬということになるならば、中国問題では、私は、時にはアメリカをリードすることがパートナーシップのアメリカに対する儀礼ではないかということをすら感ずるのでございます。これは先ほど申し上げましたように、東西の関係が非常に違う。アメリカは南ベトナムでああいう大失敗をした。これから先長いこと見てみないとわかりませんけれども、今日までのところを見ると、やはりアジアの大地から生ずる、また伝統から生ずる環境というものについて、十分に御存じない。アメリカは二世紀前から勃然としてエネルギーを発揮してきた文明国家であります。新興機械文明国家であります。それが、このアジアのことがなかなかわかるわけがない。端的な表現を使えば、日本アメリカの差は、天平の甍とチァイナタウンの差があると私は思っておる。この問題に関する限りは、それだけ自負していいのです。しかし、世界政策とかあるいは対国連政策というものについては、アメリカは全般を見渡して今日まできておるのですから、ことに対ソ外交は、ケネディ大統領の英断によって成功した。けれども、中国外交という問題に対しては、最後にはやはり日本がリードの立場に立たなければならぬのではないかということを私はつくづく感ずるのでございますが、この点に対しての総理大臣の御見解を承って、中共問題に対する質問を終わりたいと思うのでありまま。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 なかなかごりっぱな御意見でございまして、私は、同志のあなたとしての意見を十分頭に入れて今後処理したいと思います。お話のとおりにはいかないかもわかりませんが、同志の意見でございますから、十分考慮いたしたいと思います。
  142. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 次に、御苦労を願っておりまするマレーシア紛争に対する政府の御見解と、これからのごあっせんの方針を承っておきたいと思うのです。これはとにかくマレーシア紛争に手をつける、あるいは話し合いを三国でさせることのきっかけをつくったのは池田総理大臣だと思っておるので、これは非常な御苦労を願って、最初は日本のジャーナリズムあたりはひやかしたものが多かったけれども、これは最近における外交の非常に大きな功績だと思っております。  しかし、問題は二つあるのです。一つは、マレーシア問題というものは、インドネシアの側から見ると、あれはイギリスが背後にあって糸をあやつっておる。シンガポールがだんだん左翼化したものだから、ひとつシンガポールを容共的政府ができる前にかかえておかなければならぬというので打った手である。あるいは植民地政策の延長だという考え方もあります。それはいろいろの要素はあると思うけれども、しかしマラヤ民族というものは、いままでのマラヤ連邦、それからシンガポールあるいはサラワク、ボルネオにわたって相当の数がある。過半数はそうでございます。そういう民族が一緒になって高い文明国家というものをあの辺に形成しようと考えたラーマンの考え方というものは、マラヤ民族の大同団結というきわめて純粋なものであって、彼はイギリスの大学に学んだかしらぬけれども、ロンドンに行っても、相当イギリスに反省を求めるような言辞もいままではしておるような人であります。したがって、マレーシア紛争を調停するにあたっては、そういう角度でまずいろいろなごあっせんを、いただかなければならぬ。そうでなければ、日本がマレーシアを承認した線は出てまいりません。それが基調である。基調はこれが第一だと私は思うのですが、総理はいかがお考えですか。
  143. 池田勇人

    池田国務大臣 やはりマラヤ民族がいまのような状態であるよりも、マラヤ連邦、いわゆる三国が緊密な関係にあってお互いの繁栄を来たすよう、われわれとしては犬馬の労をとりたいという気持ちでございます。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 なかなか三国とも、いろいろ自国の立場があります。また民衆の意向もございます。困難な問題でございますが、ぜひ成功いたさなければならぬ問題と私は考えております。
  144. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 それからまた一方において、インドネシアの側から考えてみると、一つの問題点は、先ほど私が指摘したような問題もございますが、スカルノの考えておりまする点が非常にいい考え方は、もう一つ大きな構想を進めて、東南アジアに安定的な共栄の立場を持ちたいという考え方が出ておる点であります。スカルノ大統領というのは、政治的にはいろいろと食言の多い人でありまして、まあこれは私がかってに言っておる、総理大臣は聞いておればけっこうでございますが、あまり信用できないと言う人もかなりある。けれども、やはり国内向けと国外向けというものは非常に考えて、国外に出ておるときには、非常に協調的態度でおる。いわゆるあなたがよく言うムシャワラというのですかムシャワラの精神でやっておることも事実でありまするし、私はやはりインドネシアの将来を考えると、日本は、長期にわたっての日本の発展という意味で、インドネシアというものは無視することのできない大きな存在である。インドネシアに力をかしてやらなければならぬ。そのスカルノの考え方は、ひとりマレーシア連邦でなしに、将来はマフィリンド——フィリピン、インドネシアを入れての、いま直ちに連邦ではないけれども、そういう経済的交流、それから人種の交流というものが行なわれてしかるべきだという考え方を持っております。もちろん、マフィリンドになればインドシアの比重は大きくなるわけですから、いまこれを持ち出してどうこうというわけではございませんでしょうけれども、そういうものを描きつつマレーシア連邦というものの調停に当たらないと、この問題は失敗するのではないかというふうにも私は感ずるのであります。これはケネディ司法長官らはどういう線で御奔走になったかしらぬけれども、ワシントンに帰られて、やはりとにかく会談中の武力停止ということでまとめ上げたけれども、なかなか前途多難だ。その意味で、池田総理大臣の側面からする、これを何とかこわさないでまとめ上げようとする努力に期待するだけに、マレーシア連邦と同時に、マフィリンド構想というものも、スカルノの言い分に徴して、相当高く買ってあげてしかるべきじゃないかというのが、私の考え方なんですが、いかがお考えでしょうか。
  145. 池田勇人

    池田国務大臣 この三つの国が、共同体と申しますか、緊密な関係に立つといういわゆるマフィリンドの思想は、私は、あなたがお考えになった以上に、マカパガルにしても、スカルノ大統領にしても考えておると思います。マフィリンドをぜひ打ち立てたい、これはトンクーを合わせて三人とも同じ考えだと思う。それだから、マニラ会談が成功したわけなんです。またマニラ会談の前提としまして、トンクー首相並びにスカルノが東京に来られたわけであります。私は、これは非常に三巨頭とも願っておると思います。ただ問題は、その国の政治情勢と申しますか、また、国際的にいろいろな疑惑と申しますか、それが真実かどうか、またその程度もわからないのですが、マレーシアのほうにはイギリスがついておるとか、いろいろなことがあるもんですから——そうしてまた領土的にも、北ボルネオの帰属等々こまかい問題はございますけれども、マフィリンドの思想でいこうという気持は、三者とも私は相当高まっておると思います。
  146. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 だんだん話が広がってまいりますけれども、ぜひ今日の世界平和とそれから悠久なる将来へのビジョンという意味で、いろいろお伺いしておきたいと思うのです。大平外務大臣、いまこうずっと世界各国に起こっております動きを見ておりますると、もういまは世界じゅうが、この経済共同連係体、連帯意識というものが非常に強くなりつつある。日本のことばでいう地域連邦というものは、世界一つの傾向のように思うのであります。それはやっぱり人類の求めておる方向に進んでおる。マレーシア連邦ばかりでなく、アラブ連合がシリアを吸収しよう、あるいは連邦になろうと思って失敗はしましたが、またさらに新しい動きがある。アフリカでも、近く東アフリカ連邦というものが、タンガニーカとかあるいはウガンダ、さらにケニアというものを合併してできようとしておる。世界中の連帯意識運動というものは、いわゆる昔のことばでいうとブロック連邦化、今日のことばでは地域連邦化の傾向にこれは動きつつあると思うのですが、そういう傾向についてどうお考えになるか、まずその点を伺っておきたい。
  147. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、地域的な経済共同市場あるいは共同体的動きというものは、EECとかEFTAとかいう形で現実に結成され、そうして相当の実績をおさめたし、おさめつつあるし、また相当の未来を持っておるということも私は認めます。ただ、これはメンバー各国の経済状態が共同市場を住むに値する構造、条件というようなものに恵まれた場合に成功するわけでございまして、単なる同一地域にある国々が集まって共同市場をつくればいいというものでないことは、これは川崎委員もよく御承知のことと思うのでございます。  もう一つの傾向といたしまして、世界的には、たとえばケネディ・ラウンドとか、あるいは低開発貿易会議とか、一つの連帯的な二国間の問題も結局そういうフォーラムにおいて解決しよう、そういうような傾向が見られます。そして、そういう問題はまた地域的な仕組みを通じて解決するほうがいい、また、能率的であるという場面も見られます。したがいまして、いま御指摘の地域的な共同市場という問題をアジアにおいて考える場合には、そういう条件というものを精細に吟味していかなければなりませんし、特に日本の場合は、御承知のように非常に東南アジア地帯に輸出超過の国でございますし、日本の農業問題その他非常に腰の重い問題をかかえておりますので、この問題に対する接近はよほど用心深くやらなければならぬのではないかと思っています。
  148. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 質問の焦点とは違った問題までお答えいただいて、それでけっこうです。  大平外務大臣、これはあなたの問題ですからぜひお考えを願いたいと思うのは、国連中心の外交を推進する、それには当然国連の強化ということが問題になっておると思うのですが、国連を強化するということについて、日本政府としてはいまどういう具体的な提案を持っておられますか。
  149. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国連強化の前提といたしまして、国連というものを各国が平和維持機構として尊重するという気風ができなければなりませんし、国連に喜んで参集し、問題を国連に持ち上げるような気風が醸成されることが大事でございますので、   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 日本といたしましては、国連政策の第一は、国連において公正な意見を述べる、つまり、ここを宣伝の場としたり、国連を何かの目的に利用するのでなくて、国連というものに中正穏健かつ公正な意見を各メンバー国が自由に述べられるという雰囲気をつくるように、日本は率先して公正な意見国連中心に、国連を育成するという気持ちで述べるという基本的な態度でいくことが第一だと思います。  それから、第二の問題といたしましては、機構問題といたしまして、いま百十三加盟国がございまして、経済社会理事会、これはわが国は常任理事国になっております。安保理事には入っておりませんが、いずれにいたしましても、非常に加盟国がふえましたので、現在そういう国連機構がこのままで各加盟国の意向を十分反映できて、発言の機会が十分に与えられて保障されておるかというと、そうも言えませんので、したがって、去年の総会からこの機構問題というものに手を染めまして、各国と非常に建設的な協力をいたしておるわけでございまして、相当この問題が実質的な前進を見つつあるということは、御承知のとおりでございます。  第三の問題といたしまして、国連はやはり財政体でございますから、国連財政が充実せられねばなりませんので、いままで一般の分担金につきましては、わが国は協力をしてまいりましたけれども、コンゴ経費その他の経費につきまして、いままで遠慮がちでございましたけれども、大蔵省にもだんだん御奮発いただきまして、正当な分担をする、こういう考え方を逐次具現しつつあるわけでございます。
  150. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 相当長くお話しになりましたけれども、もっと重要な問題があってしかるべきであり、また、提案されてしかるべきだと思うのです。これは各国がだんだんそういう提案をしてくるだろうと思っておりますが、第一は、国連の権威を高めるためには、世界で起こるところの紛争、それから小規模なる戦争状態に対して、国連の警察軍というものを強くしよう。いまは臨時突発的に徴集をしておるけれども、これを常駐をしようではないか、国連警察部隊というものをつくろうではないかという考え方一つあるわけです。おそらくこれから二、三年の後には、国連警察部隊の常設ということについては結論が出る可能性が私はあると思う。ソビエト・ロシアでもそのことに否定的な考え方を持っておらぬというのです。アメリカはもちろん、イギリスはむしろ提案者であります。こういうことになってくると、日本の憲法との関係も出てまいりますが、国連警察部隊の中核を編成するということの考え方に賛成であるかどうか。あるいはこの国際的機構に対して、先ほどお述べになりましたケネディ・ラウンドもそうですか、あるいは中南米におけるところのいろいろな経済連帯機関というようなものを有効に活用して、今後の十年間というものは国連にとって非常に大事な期間だから、その間には世界の経済開発をもっと効率的にやろうじゃないか、国連の中に世界開発機構というものを創設しようじゃないかということで、いまその萌芽はいろいろな機関にあります。芽はあるけれども、世界開発機構というような考え方、これは非常に、重要な考え方で、これはきっと国連の中に登場してくると思うのですけれども、これらの点について、大平外務大臣のお考えを承り、総理大臣のお考えを承りたい、こう思います。
  151. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お考えとして、また将来国連にに対して描くビジョンとして、非常に私は拝聴しておりますが、ただ、問題は、コンゴ派遣の経費にいたしましても、これの分担を通じてここ二、三年たいへん難航を来たしておることは川崎さん御承知のとおりでありまして、いま御指摘のソ連にいたしましても、まだ分担していないような状況でございまして、問題は、こういったいま現に起っておる問題を正当に国連憲章の線に沿うて解決していくという努力が、当面私どもに課せられた任務じゃないかと思うのでございまして、そういった点をだんだん固めてまいりまして、さらにあなたが御指摘のような方向に実質的な歩武を進めることができたらと思うわけでございます。実際外交立場から見ると、私はそういう感じがいたします。
  152. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 総理大臣、いかがでしょうか。
  153. 池田勇人

    池田国務大臣 お考えとしては非常に調子の商いお考えで、また各国にもそういうような議論があること私は承知いたしております。方向としてはなかなかけっこうだと思いますが、現実の問題としては、国連警察軍の創設強化ということはなかなかむずかしいのではないか。  次の低開発国の資源開発の考え方、これは今度国連の貿易開発会議も開かれるようでありますが、いまの情勢としましては、やはりOECD関係とか、いろいろな機構でやったほうがまとまりいいのではないか。この問題は、低開発国のうちにおきましても、ブロック別、また国別にいろいろな点がございますので、今度会議が開かれますが、方向としては、やはりOECDのDACとか、あるいはIMFとか、既存の分の活動をもっと強化して多角化したほうが現実的じゃないか。しかし、それだといって、貿易開発会議というものを否定するものではございません。大いにやらなければいけません。それだけではなかなかまとまりにくいので、OECDとかIMFとかいう両方からいくべき問題ではなかろうかと思います。
  154. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 非常に現実的なお考えであり、また、その背景に理想も持っておられることは、いまのお話でわかりましたが、しかし、アメリカの大統領が、もうすでに、今度の大統領教書の筆頭に、今後十年間は世界が繁栄する十年間にしなければならぬということで、破滅という文字は一つもないけれども、その裏には破滅という文字もあるのです。この米ソ融和の期間に世界の恒久平和体制を築く努力をしようではないか、こういうことを言うておられます。しかし、私はこれはジョンソン大統領の創始とは思わぬ。むしろ、なくなったケネディ大統領の考え方がジョンソン大統領に受け継がれたのであり、やはり格調の高い考え方を出したのはケネディだと思うのです。ケネディ大統領が就任の演説でこういうことを、言われたのであります。もう御記憶であろうけれども、もし私が世界協調の橋頭堡を疑惑のジャングルの一角に築くことができたら、今度は次の仕事に取りかかろう、それは新しい力の世界主義的な支配である、こういうことを言われております。それはやっぱり世界法による世界の支配ということがわれわれの目的でなければならぬ。それでないと、ほんとうの恒久平和体制にはならないという考え方が出てきておると思う。ケネディ大統領はその途中においてなくなられましたが、確かに、この疑惑のジャングルの一角を切り開いたのは、やっぱり米ソ対立というものを切り開いた。しかし、それだけでは足りないから、将来新しい世界法というものをつくらなければならぬ。その法的権威によって世界を支配をして、恒久平和体制に持っていこうということは、これは世界連邦以外にないわけですね。やはり、世界の未来図というものを考えると、地域連邦と国連の強化は、自然に将来あるものを求めて動いておると私には判断されるのであります。  今日、われわれは間違いなく干和の中に生きている。しかし、今日の平和というものは、核停交渉の成立であるとか、あるいは一部の不戦条約という細い線で維持されておるので、人によっては、これはあぶない綱渡りである、サーカスならば綱渡りからおっこったってかまわぬけれども、しかし、世界の平和は、綱渡りから落ちるようなことがあれば、われわれ人類にとっては非常な不幸が見舞ってくるのであって、国連世界平和のともしびではあるけれども、完全な保障制度ではないというのが今日のわれわれ人類にとっての不安であります。であるから、国連の強化を通じて、将来世界政府の樹立に向かって理想の前進をしよう。これは日本ではないのです。アメリカがそういうことを今日はほんとうに思い出しておる。ソビエト・ロシアの中にもそういう思想が次第に目ざめてきておるのでございまして、その意味で、イギリスの労働党と言わず、保守党と、言わず、やはり世界政府の樹立ということが最終目標だ、そのために国連を強化しよう。苦は、世界連邦なんと言うと、気違いだと言われた。日本では、尾崎咢堂が三十年くらい前に言ったときには、これは逗子の気違いじじいが何というかということであった。よろしゅうございますか。それから、ジョン・ウェルズ、これは何といっても世界史的には世界連邦の考え方の創始であります。しかし、それが今日だんだん現実の問題になりつつある。少なくとも国連というものを強化しようということではわれわれは一致しておるのじゃないかということになるならば、こういうことに向かっての前進というものをはからなければならない、こう思うのですが、大平外務大臣、まずどうですか。
  155. 大平正芳

    ○大平国務大臣 世界連邦ということばを通じて描くイメージというものは、私どもの理解では、これを主唱されておる方々の中に完全に帰一しておるかというと、そうでもないというように——特にいま御指摘のように、国連を通じてやるのか、あるいは国連を抜きにしてやるのか、そういった点が私どもにはっきりしなかったのでございますが、ただいま川崎先生の御説明を通じまして、世界大勢としては国連強化ということをパイプにして、世界連邦実現への手がかりにしようというような方向に動いている、それが主流であるということを伺いまして、たいへん啓発されたことをお礼を申し上げます。  それで、私どもといたしましては、これは、いま各国で、御指摘のように、熱心な支持者もございまするし、研究者もあるようでございますから、政府といたしましても、いろいろデータをちょうだいいたしまして、この上とも検討をしてまいりたいと思います。
  156. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 総理大臣答弁も伺っておきたい。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣と大同小異でございます。
  158. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 実は、去年世界連邦の世界大会をやったときに、外務省はどうも冷ややかだったのですよ。私は世界連邦大会の推進者としてずいぶん大平外務大臣のところへお百度参りをしたし、まあ非常に同調していただいた点もあるけれども、あなたの部下には、世界連邦運動などというものは日本の憲法を否定するものだ、主権を制限する運動に助力をするわけにいかぬというような官僚式な話をして、あなたはそれをやはり制御できなかったことだけは事実であります。外務大臣は出てこないし、世界連邦の大会をやったら福田防衛庁長官と早川自治大臣が出てきて非常に激励していただいたのはありがたかったけれども、あとで各国の代表がわれわれに向かって言うのには、世界連邦の大会に外務大臣が出てこないで防衛大臣が出てくるとはどういうわけだ、こういうお話があったから、私は、日本では防衛大臣といえども平和思想を持っておる、防衛大臣が出てきたところに今度の世界連邦大会の日本における開催の意義があるのだといって言うておいたのです。ほんとうにとっさに出た知恵だ。けれども、ほんとうに去年はいろいろ党のほうではめんどうを見ていただいたのでけっこうでしたけれども、そういうわけでございますが、やはり世界連邦の国会委員会というものがこの中にもあります。清瀬前衆議院議長が生涯の仕事として自分はやりたいということを言うておられまするし、強力なものになって発展する可能性はあるわけでございます。したがって、ひとつ外務省では、国連局の中へでも、どこでもよろしゅうございますから、世界連邦課あるいは世界連邦係というものを置いて、ほんとうに研究してみる考えがあるか。また、国会議員の多数がおそらくこれはだんだんそういう傾向になると思う。現在、日本では、自治体が、都道府県で十九、市町村二百五十という多数が、世界平和宣言、世界連邦政府宣言というものをしておるのです。そういうことになる機運は醸成されているわけですから、将来国家宣言まで持っていくという意図をわれわれは持っておる。そうすることが日本の将来の道であると考えて、これは超党派的に、民主社会党は党の綱領にうたっておるし、社会党の諸君も、自民党はもっと熱心だ、こういうことですから、そういうことを考えて外務省の中に研究機関を置かれるかどうかということをこの際伺っておきたいと思う。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 とくと検討させていただきます。
  160. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 そこで、これらの外交問題を通じまして、最後総理大臣にお尋ねをいたし、またお勧めも申し上げたいのは、超党派外交という問題でございます。  先ほど総理大臣お話によれば、イギリスには超党派外交という一つの線があって、労働党が政権をとっても保守党の政策とそう違いないだろう、かりにニュアンスが違い手法が違っても英米基調というものがくずれることはないというような話も伺いました。それならば、もちろん日本の今日の状態ではなかなか無理のような隣の表情でございますけれども、たとえば、日韓問題については、民主社会党は、やり方その他についてはいろいろ問題点がございましょうけれども、日韓交渉を進めることにおいて、前提としては賛成しておられる。超党派外交は両党の間ではまず可能である。あるいは、中共問題についても、自民党が将来新たなる方策に出るというようなことになるならば、それぞれの党派の間におきまして、十分な話し合いもできて、そして国論を大きく分裂することなしにわが国は外交進路をとることができる。超党派外交というのは、やはり議会政治における各党協調の一つの場になる可能性があると私は思うのですが、総理大臣はどうお考えであるか、ぜひお伺いいたしておきます。
  161. 池田勇人

    池田国務大臣 外交は、内政ももちろんそうでございますが、特に外交国民全体の利益を追求すべきものでございます、外国に向かって。だから、私は、本来の性質上超党派であるべきと考えております。しかし、まだ遺憾ながらそこまでいっていないことを残念に思っておる次第でございます。
  162. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 外交問題に対する質問を一応終わりまして、文教政策あるいは福祉問題というのは実は愛知さんとお話をした私の分担でもありますので、そのうちの重要な諸点につきまして、文部大臣なり、厚生大臣なり、あるいは建設大臣のお考えを伺っておきたいと思います。  建設大臣、だいぶ手持ちぶさたのようでございますが、たいへん精力的に仕事をされておりますけれども、この建設行政のうち、道路行政というものは今後どういう点を主体にしていかれるのか。たとえば地方開発道路というものに重点を置かれていかれるのか、あるいは大都市の隘路道路というものを打開されるのか、いろいろ考え方はございましょうけれども、今日、国民の大多数というものは、やはりオリンピック大会を一つの基点にして、地方開発というものに主力を置いていただきたい、こういう考え方が支配的のように私は思うのです。建設大臣のお考えを承りたい。
  163. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。  御承知のように、わが国の道路は、道路法によりまして一定の制限を受け、これをまた基盤にいたしまして建設を進めてまいっております。ところが、私考えますのに、これだけ予算を飛躍的に増加して大幅な建設をしてまいろうということになりますと、従来の道路法そのままでは多少遺憾な点があるように考えまして、なるべく早く道路法の整備をこの国会を通じてひとつお願いいたしたいと考えておりますが、それと相関連いたしまして、従来の地方のこれら道路建設、その他のものもそうでございますが、終戦以来非常に各府県の行政内容、経済、財政内容が違いまして、また、県によりまして、地方自治の強化されました結果、知事、県会等の考えによりまして、非常にこれに熱心な県もあれば、また比較的疎外されておる県もあるというような従来の経緯がございます。ところが、最近とみに予算が増加いたしてまいりまして、国として積極的に道路計画を進めてまいります際に、たとえば今年度、つまり私昨年建設大臣になりまして、今年度の道路建設方針を申し上げますと、従来の各府県の予算に対してある一定の数字をかけまして、たとえば一〇%増とか一五%増とかいうようなものをもちまして各府県に大まかなまず道路予算の分賦をいたしております。したがいまして、これまですでに非常にたくさんの道路予算を使っておりまする県には比較的道路予算がたくさんいく。これまであまりはかばかしくやっていなかったところには急激に予算をやるということになっておりません。それが必ずしも実情に合うかどうかと申しますと、だんだん格差が大きくなりまして、都市と地方府県との格差が非常に多くなっています。こういうことでは必ずしも適当でなかろうというような意味におきまして、明年度からは、この弊を除去するために、根本的に道路予算その他の建設予算の各府県割りをひとつ変えていってみたらどうだろうか。変える場合に、どういう基準によって変えたらよろしいか。人口、県の面積、もしくは県の財政、その他考えられます条件を勘案いたしまして、新たに各府県割りを明年度予算から直していきたい。そういうことによりまして、いまお話しのように、オリンピックを目当てに東京に非常に道路予算が集中いたしておりますが、これを平年度予算に戻しまして、明年からの各府県割合を直そう。それをひとつ鋭意勉強いたしまして、明年からそれを直していくということにいたしまして、そういう予算の各府県割りの数字を持ちつつ、いまお話しのように都市と地方との格差を是正し、地方の道路の開発予算等も充足する。つまり、従来の予算は都市と都市を結ぶ道路でありましたものを、その中で地方開発ということに重点を置いた道路法の改正を行ないつつ、いま申し上げたような意味合いにおいてやっていきたい、こう考えております。
  164. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 河野建設大臣、もう一問だけ伺いますが、そういたしますと、オリンピックを一つの展開点といいますか、基点にいたしまして、地方道路開発というものに相当な力を入れたいということでございます。そうあるべきだと当然思いますが、道路の通る府県によりましては、いろいろ財政負担の関係もあって、有料道路を希望したり、公共道路を希望したりするようなところが相当にございますが、やはり、今日の状態といたしまして、東京と名古屋を結ぶ東名国道だとか、あるいは名神国道だとかいうところは、有料道路というものは非常に必要だと思うのですが、その他の地域は、やはり地方の公共性という意味で、公共道路ということに大体の主眼を置いて開発をいただくことがその地方の発展になると思う。名阪国道などはその一例でありましょうけれども、建設大臣としての御見解を承っておけばしあわせであります。
  165. 河野一郎

    ○河野国務大臣 実は、御承知のように、名阪国道を考えましたのは、一方名神国道が必ずしも大阪の東南部地方もしくは大阪と名古屋を直結する最短距離でないというので、名古屋、四日市方面と大阪の南部のほうとを直結する最短距離を結ぶ道路が必要であるという意味合いから、名阪国道の企画を始めました。ところが、本来でございますれば、ここに相当の道路があるべきでございますのに、川崎さんの郷里の伊賀の上野付近になりますと、全く道路らしい道路はございません。ですから、新しい道路を一本ここにつけますと、この道路は公共でやっていいか、有料でやっていいかということが非常に問題になります。本来ならば、一方は有料道路でやり、さらに公共の道路も十分整備してくれというのが地方の要望でございますが、しかし、いま申し上げますように、公共道路もろくな道路らしいものがない。そこへ初めて一本道路ができるということになりますから、いまたいへん地方で両論相錯綜しておるようでございますが、結論として、私は、まず公共道路を整備して、そして有料道路ということが本筋であろうという意味におきまして、いま企画いたしておりますものは、既定方針どおり公共道路でこれを完成するということにきめております。
  166. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 文教行政の問題につきまして、私は国際競争力という立場でひとつ文部大臣にぜひ所見を伺うとともに、たな上げの問題について質問してみたいと思うのです。  それは、日本の大学というものは、今日六・三制というものが一つの基礎になって、そして戦後四年教育というもので過ごしてまいりました。六・三制についてはいろいろな批判がありますけれども、これが一つ日本の教育の機会均等というものに対して筋金を入れたことは間違いない。その意味で、文部省が教育白書で言われておるように、とにかく文盲率というものが世界で一番少なくなった、また、大学の数としても、人口比に対して非常な高さを示してきたこと、これは御同慶の至りであります。けれども、雨後のタケノコのようにできてきた大学、大学ではあるけれども、真に国際レベルにおいて大学の名にふさわしいかどうか、これは相当な疑問もあります。また、池田総理大臣などは旧高校の時代を非常に郷愁を持ってなつかしがられておるという記車を三、四回にわたってわれわれは散見しておる。この意味において、今日の大学というものに対するレベル・アップというものは相当に考えなければならぬ問題になってきておるのではないか。つまり、社会知識、一般の教養知識においては非常に広くなってきておるけれども、専門知識については、政経学部にしても、法学部にしても、あるいはその他の学部にしてもレベル低下ということが相当に指摘をされております。そこで、大学の管理令に、大学院大学という非常に長い名前ですけれども、そういうようなものをつくろうじゃないかということで、構想がたしか中教審のあれで出て、そのままになっておる。これに手をつける意思はないのか。そのことと同時に、文部大臣の率直な御見解を承りたい。
  167. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。  戦後新しい教育制度がしかれまして相当な年数を経たわけであります。したがって、この制度についてもいろいろな検討すべき問題もあるかと思うのであります。いまお尋ねの大学院大学のことでございますが、これはさきに今日の大学制度の改善について中央教育審議会に文部大臣から諮問をいたしました。その諮問に対する答申をいろいろいただいたのでありますが、その中にこの大学院大学という構想が盛り込まれておるわけでありまして、これは、現在の高等教育機関を、大学院大学、それから大学、それから高等専門学校、短期大学、この種のものに分ける。そして、大学院大学は、高度の学術研究を行ないますと同時に、また高い程度の専門職業教育をやるところ、こういうふうな趣旨でもって考えられておるのであります。現在、大学の学部の上に博士課程を持った大学院をつくっております。そういう総合大学をつくったらどうか、こういうような構想でございます。私は、この大学院大学、それから大学、高等専門学校、短期大学、こういうふうに高等教育機関を分けまして、それぞれの充実をはかっていこうという考え方は大いにとるべきものがあるように考えておるのであります。しかし、教育制度の非常に大きな問題であります。一面においては社会の需要にこたえるために怠慢であってはならぬわけであります。同時にまた、これを改正するとかという問題につきましては、また慎重を期さなければならぬ点もございますので、まずもってわれわれといたしましては、この大学院あるいは大学の問題を取り上げまして、その教育内容について再検討を加えるために、現在用いております各種の基準等についても再検討をしなければならぬと考えまして、いませっかくその問題について検討をわずらわしているところでありますが、りっぱな答申をいただきましたならば、これによってさらに改善をはかってまいりたい。御趣旨につきましては、私は全く同感でございます。
  168. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 それから、もう二、三年もたちますると、たくさんの高校生が大学に進む。去年からことしにかけてはまず高校急増対策ですが、本会議で小坂議員の質問にありましたように、私立学校に対する援助を相当しなければ、私立大学へ入学する学生は数が非常に多くなってきて、これを収容する能力がないじゃないかというような御質問で、ちょうど本会議のあとを追うわけでございますけれども、ぜひお考えいただきたいことは、私立学校教育に対する補助はわずかに八十六億円くらい。融資も入れてでございます。国立は、当然なことでございますけれども、千二百億以上ということで、今日の日本の教育行政から見ると全くバランスのとれない状態である。そういう面からして、私立学校を援助することに対する積極的な方針というものが必要ではないか。これはいままでの三法ではまかない切れない状態に立ち至っておるということは、しばしば文教部会の方々から御決議もあるわけでございます。党の文教部会のほうからも推進をされておると思うのですが、そういう点に対しまする文部大臣の明快なる御答弁と、何べんも立ち上がっていただくのは恐縮でありますから、もう一つお尋ねしたい点は、東南アジアの学生などで日本へ留学したいという者が非常にふえてきておるのです。これはインドネシア、マラヤへ行きましても常に言われることです。一昔前まではロンドンへ行って法律を勉強して帰ってくるとえらくなれるからというので英国留学あるいはアメリカ留学というものが非常に希望が多かったけれども、インドネシアなんかでは、昨年の卒業生のうち、これはスカルノが親日的だという点もあるけれども、九三%まで日本留学を希望しておる。ところが、何もスカラシップというものがない、あっても細々であるというので、日本の工業国家の発展に瞠目しつつも行かれないというのが今日の現状であります。しかるに、私立大学なんかでは、早稲田では国際部というものを国際学部に昇格させて、アメリカの学化だけではなしに、東南アジアその他の者も入れて大いにやりたい。それから、慶応でもそうです。日本大学でもそうであったと思うのでありますが、私立学校でそういうものを計画しておるものに対する——これは国家的な仕事です。そしてやはり日本の大学を国際間に知らせる非常に大きな意義も持っておると思うのですが、そういうことに対する積極的施策はありますか。
  169. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 東南アジア方面からの留学生につきましては、御承知のように、これまでも取り扱ってきたわけでございますか、国費でもって留学生を引き受ける、あるいはまた、インドネシアとの関係におきましては、賠償関係の実行方法としての留学生もございます。この留学生の問題につきましては、もっともっと積極的にやらなければならないということは、政府考え、同時にまた与党である自由民主党も非常に強い政策としてこれを推進してこられたのであります。まだ十分とは申しがたいのでありますけれども、来年度はかなり大きく留学生の問題を取り扱うようになってまいったと思うのでありますが、さらに積極的に進めてまいらなければなりません。同時に、ただ数ばかりたくさんにいたしましても、受け入れが十分に参りませんと、結果は決してよくはないと思いますので、それとにらみ合わせて進めてまいらなければなるまいかと思うのであります。  なお、ただいまお話のございました、現に早稲田大学が、昨年の四月からと思いますが、国際部というものを設けられまして、外国の学生を入れて、そうして日本あるいはアジアの研究等に当たっておられる、こういう施設がございますし、また慶応のほうでもそのような計画があるやに伺っておるのでございます。私は、詳細なことはまだつまびらかにいたしておりませんが、その趣旨においては非常にけっこうな施設であると思うのでありますが、いま直ちにこれを政府として助成するとか、援助をするというだけの用意もございませんけれども、十分ひとつ実情も調べ、実積も調べまして検討させていただきたいと思っております。
  170. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 厚生大臣にも質問があったのでございますが、割愛さしていただきまして、国際収支の問題で若干御質問をいたします。  本会議委員会で質問がされ、そして答弁をされたものを集約しますと、第一には、輸出はどんどんふえておるけれども、輸入の需要が多くて黒字の幅というものが少なくなり、ときには、本年はとんとん、そういうような傾向になってきておる。それから貿易外収支はここ数年来赤字である。この解消のために海運の体質改善とかその他に非常に努力しておる。総理は四年くらいでこの赤字を解消するよう本会議答弁されたと私は思う。それから第三には、資本収支は最近著しい輸入超過を示しておるので、これにたよっておる。大体三つに要約されると思う。ところが、この資本収支をもって赤字をカバ一するということがだんだんできなくなる可能性もあるので、このままの状態をもって進むと、非常に危険な状態がある。経済企画庁の予算書の説明の中にも、非常に危険だけれども、政策を講ずれば本年度は一億五千万ドルの赤字でいけるというようなことを言っておるのです、やはりこれは本質の、つまり輸出強化ということに問題は帰ってくる、重点はそこにしぼらなければならぬ。こうわれわれは思うのですが、輸出強化に対する具体的な政策——もちろん今度の歳出項目を見ると、実にうまく対策が練られておる。私は今度の予算は、この間愛知さんが指摘をされたように、歳出項目の周到配慮をきわめたということは、これは自民党の政調会が総選挙後の作業としては実に念を入れて編成大綱を組まれたと思う。予算の最終決定に対するやり方については私は相当批判があります。批判があるけれども、この予算の歳出の方面について実に配慮された点であり、同時に輸出対策についてもかなり慎重に考慮された余地はあるけれども、もう一ついろいろな考えも出ないではないのじゃないか。たとえば、御答弁の前に言えば、国民に対する貿易の重大性のPRというのがきかない。ここらで国際収支の議論をしたって、国際収支というのは国民には実にむずかしいことばで、何のことやら一般国民はわからぬ。そこで問題は、PRの問題にしても、あるいは新しい案出というものがわりあいに少なかったというふうに考えるのですが、輸出強化政策に対する具体的な御見解をいただきたい。
  171. 田中角榮

    ○田中国務大臣 国際収支の今年度及び来年度にわたる見通しにつきましては、申し上げておるわけでありますが、確かに国際収支と言っても、国際収支の重要性ということに対して政府もPRが足らないと言われますが、まさにそのとおりだと思います。これは、ちょうどいいときですから少し申し上げますと、簡単に言えば、日本が明治初年から今日になったのは一体何でよくなったのかというと、貿易をして外貨をかせいだのが今日の日本をこしらえたわけであります。戦いに破れたのは一体どうかといっても、これも外貨がなかったということに極言できるわけであります。戦後二十五年当時まで貿易を許されなかった日本人の生活程度と比べて、貿易ができるるようになってから今日までの日本の経済及びわれわれの生活がよくなったというのは、あげて貿易の結果であります。そういう意味で、貿易依存度の高い国というよりも、貿易によって生きている国だということでありますので、貿易を伸長させなければならぬことはもう言うをまたないわけであります。私は、ある意味においては、すべてのものに優先をして貿易伸長政策はとるべきだとさえ考えておるのであります。しかし、御承知のガットの制約等がありまして、今度三月三十一日で輸出所得控除制度等が全部廃止になるわけでありますが、今年度はガットの許す範囲内において、また諸外国がやっておる事例等に参照しまして、輸出振興のためにとり得る最大の努力を傾けました。その一つは税制上の問題、二百三十五億の三月三十一日に切れるものを、別な角度から税制上の優遇をいたしましたり、また、輸銀の資金等を大幅にふやしましたり、なお電気ガス税の軽減等によりまして、企業の体質改善と国際競争力をつけるということを政策の最重点にしておるわけでありまして、これからも絶えず毎日のように、一体どうすれば諸外国の理解を得ながら、ガットに違反をしないで日本の貿易伸長政策がとれるかということを考えながら推進をしてまいりたいという考えであります。
  172. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 時間の制約がありますので端的に御質問します。あぶない点を二、三申し上げたい。  第一は、EEC諸国が近く閣僚理事会などで日本の、ダンピング輸入措置というものに対する防遏政策をやろうというような徴候があることです。これは昨年の十二月からそういう風説が流れておったのですが、現実の問題としてあらわれつつあります。それは結局、香港や、あるいは共産圏から流れるやつもあるとは思うのですけれども、鉄鋼、カメラ、オートバイ、日本の非常に重要な品目についてそういう措置をとられれば、これはえらいことになるので、その点に対するあなたの今日のお考えはどうか。これは至急対策協議会を設けられてやるかというような点。  それから、もう時間がないものですから、具体的に建設的な問題でお話しします。  国際収支をずっと地域別に見ていくと、何といったってアメリカを中心とする太平洋貿易というものが今日以後重大なものであります。日米経済会議が非常な効果をあげておる。日本カナダ閣僚会議というものも効果をあげておる。やってみたら非常に大きな効果ですね。私は一歩進めて、太平洋経済機構、コンモンマーケットまでいかなくても、太平洋経済会議というようなものを定例的に開いて、日本の輸出を高めるくふうをすべきではないか。豪州、ニュージーランド、カナダ、これは全くの片貿易ですね。これを是正していくことがこれからの行き方で、カナダやオーストラリアはこれから相当な工業国として発展する可能性もある。そういう構想に対してどうか。これはあるいは通産大臣の部面かもしれませんけれども、大蔵大臣に伺っておきます。  それから、アジア開発銀行という構想もありますね。これは低開発地域の開発について非常に重要な問題です。近くテヘランで何か会議がある。これは民間ベースの話ですが、そういう諸問題についてやはり積極的に輸出政策を高めるということの構想が練られてしかるべきだ。非常に建設的にお話しを申し上げておるのです。
  173. 田中角榮

    ○田中国務大臣 第一の輸出ダンピングの問題につきましては、前にも御答弁申し上げましたが、西欧諸国で一部議論がありますことは承知をいたしております。しかし、この問題に対して極端な影響がないように、OECDの加盟等をいま急いでおりますのは、そういう意味で十分に日本の実情を説明をしたり、かかる急激な問題に対処できるようにしたいというふうに考えております。一つは、国内においても、輸出ダンピングという問題に対しては、輸出秩序の確立ということがなければ開放経済には対処できないのでありますから、国内産業の輸出業者の面におきましても、そういう問題に対して十分姿勢を正せるように、また特に海外で誤解をしておる面については、十分実情の理解を求めるという考え方でおるわけであります。それから片貿易であるといわれるカナダに対しましては、日加経済閣僚会議で対処いたしておりますし、ニュージーランド、豪州の問題でありますが、ニュージーランドは片貿易ということではなくて、大体バランスがとれております。豪州に対しましては、羊毛の輸入という特殊な事情がありますが、相当の片貿易であるということは事実であります。これらの問題に対しても、アジア経済機構をつくるかということになると、まだ時期的には問題があると思いますが、これは特にEECとか、そういう機構をつくれるようではなく、どうも日本からの輸出が非常に片貿易、というのは、日本からアジア諸国にはよけい出ておるという特殊な事情がありまずし、特にこれはアジア諸国から、経済協力とか、特別な問題に対して日本に要請が多いという問題でありますので、特にいまアジア経済協力会議ができるとは考えておりませんが、しかし豪州、ニュージーランドというような問題とは……。
  174. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 太平洋ですよ、カナダと……。
  175. 田中角榮

    ○田中国務大臣 アメリカ等を含めた太平洋の問題につきましては、日米経済閣僚会議、それから日加経済閣僚会議等を通じまして調整をやっていこうということで、現在アジア全域、太平洋全域での経済機構ができるかどうかという問題に対しては即答できません。  それから第三のアジア開発銀行、これは経団連等も言っておりますし、こういう問題もありますし、検討もしてみましたが、いま申し上げたように、アジア諸国だけということになりますと、日本が一方的に金を貸せるということになる事情がありますので、現在のところ、この設立をしなければならないというふうには考えておりません。
  176. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 田中国務大臣、だいぶ私が急ピッチで話をしたものだから、問題を混同されたけれども、民度の高い、それから生活程度の高い太平洋経済機構とアジアとは全然別の問題だったのです。ですから、それはこれでやめますけれども、アジア開発銀行というのは民間ベースの話、それから太平洋経済機構というものは、できれば将来政府も入れての話、こういうことですから、また御検討を願っておきます。私は最後に、この予算の規模などにつきましても、いろいろお話をいたし、また御答弁を承りたいと思っているのです。私は、歳出項目のことについては、政府の予算は万全を期したものと思っております。ただ予算の規模がはたして適正であるかどうか、これはこれから先の予算委員会で相当な議論になると思います。現に昭和十年以来の一般会計予算の規模というものを大蔵省から材料を出させてみたら、これはなかなか相当な問題を含んでいるのです。それから諸外国との対比、諸外国は日本より進んでおるからということを言うけれども、このごろずっと動いておらぬ。日本は大動きです。それは発展途上だから。これは池田総理大臣ならば、私いろいろ質問しても全部お答えいただくけれども、あなたはどうだかわからぬ。きょうはそこまではいかないですが、そこでよく御検討おきを願いたい。現に昭和三十五年から予算の規模は倍増になっておる。一兆五千六百九十億が三兆二千五百五十億。所得倍増を待たずして予算は中間年において三兆二千五百五十四億、これはみんなにいいよといっているけれども、これは関係者みんなに非常にいい予算。けれども、国民一般にいい予算になるかどうかは、物価が上がらないかということに対するめどがはっきりしない限り保証はできない。アメリカの予算は九百七十九億ドル。これは苦労をなくするという予算だそうです。そんなことはアメリカでは言わないだろうけれども、私はそう見ておる。こっちは一般三兆三千五百五十四億で、みんなにいいよという、これはその下に三千八百万というのがついて、これはさんざん八百長したという予算でもある。歳出項目については私は賛成である、こういうことであります。  私は最後に、政治家の倫理観あるいは道徳観、使命感について首相の信念を承って私の質問を終わりたいと思うのであります。池田内閣は、発足以来所得倍増計画を発表しまして、物価問題を除いてはおおむね順調に推移をし、国民の生活は確かに向上してきたのであります。首相は、その間数回の外遊をされまして、ヨーロッパ訪問や東南アジア訪問においては相当な成果をあげられました。現在話題の人であるドゴール首相は、池田総理大臣を評してトランジスターの商人などと批評したですが、私は、これは決して皮肉ばかりとはとらぬ。むしろヨーロッパにおいては首相の経済的な識見というものに対して相当な評価がある。その意味で自信を持って今後邁進していただくとともに、所得倍増政策の結果流れつつある風潮は何かというと、これはどうしても物質本位に落ちつかざるを符ないから、したがって、世間にはいろいろな悪の物質偏重の思想も横溢してきておると思うのです。小坂君が指摘されたように、青年の非行であるとか、チンピラであるとか、あるいはぐれん隊、極端な行動者の暴力的な行為とかが頻発する可能性がある。私は、中共問題が登場するとともに相当危険な様相をも呈するのではないかと実は心配をいたしておるのでありますが、そういうようなときに、やはり政治家の使命観というか、政治家の倫理観というものが非常に大切である。この前の国会の本会議の質問演説の際に、佐々木良作君が指摘されたことは、私は非常に深い傾聴をもって聞きました。政治家がまず反省せよ、過ぐる総選挙におけるところの状態はどうであったか、正しからざる者にわれわれは頭を下げようという傾向はありはしないかということを言われた。これからいよいよ池田内閣がさらに日本の経済をにない、また政治をになって伸長させていく上には、いままでなかった面が出てこなければ国民は信頼を高めるわけにはいかない。総理大臣になられてからの総理の御決心は非常に私どもの胸を打つものがございます。どうかその姿勢をもっと高められて、政治家の倫理観、使命観というものを徹底をされることが必要ではないか。その点に対する総理大臣の御言明を承って本日の顧問を終わりたいと思います。
  177. 池田勇人

    池田国務大臣 人間生活は物質のみで満足できるものではない。私は、物質以上に精神的の面がよくなければならぬと思います。しかし、敗戦後の日本の状況を見まして、どうしてもわれわれの生活水準を上げつつ、精神面におきましての研さんを積まなきゃならぬ、こういうのでまず所得倍増ということを申し出しました。その翌年から人づくり、国づくりということを言っておるのであります。文教その他に力を入れており、また社会保障制度にも画期的に努力しておるゆえんもここにあるのであります。やはりそれには、われわれ政治家が、国民の先頭に立つ人が高度の倫理観を持っていかなければいかぬ。議会政治の運営におきましても、私はさきの国会におきまして、政治家はその政党のいかんを問わず、やはり国家国民の幸福のために奉仕する気持ちでなければいかぬ。国家国民のために政治家が進んで奉仕する精神のもとに行動しなければいかぬ。こういうことを考えますと、やはり国会において、いたずらに憎悪や闘争の気持ちであってはいかぬ。やはり公正な論議を尽くして、そうして勇断をもって事に当たる、これが必要であるということを、私はさきの施政演説で申し上げておきました。そうして今回の施政方針演説でも、やはり国の政治にあずかるわれわれ政党としては、高い倫理観のもとに政党を近代化して、そうして倫理性を持った議会の運営、政党のあり方を考えなければいかぬと言っておるのであります。微力、まだ十分目的を果たすどころか、中途のところまでもいっていないことを残念に思いますが、皆さん方とともに、さきの国会、また今国会で申し上げました私の政治家としての倫理観、これを早く、うまく実現していくよう御協力をお願いいたしまして、私も精進をこれから続けていきたいと思います。
  178. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて川崎秀二君の質疑は終了いたしました。  次会は明二月一日午前十時より開会いたします。  明日の質疑者は、午前中は石野久男君、午後は多賀谷真稔君であります。  なお、石野君の要求大臣は、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、通産大臣、自治大臣、科学技術庁長官、また多賀谷君の要求大臣は、総理大臣、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、労働大臣、自治大臣、経済企画庁長官であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十二分散会