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1964-01-30 第46回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年一月三十日(木曜日)    午前十時四分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    砂田 重民君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松浦周太郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       五島 虎雄君    河野  密君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通 商産業大臣 福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局長官 林  修三君         総理府総務長官 野田 武夫君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         海上保安庁長官 辻  章男君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 一月三十日  委員田澤吉郎君辞任につき、その補欠として砂  田重民君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計予算  昭和三十九年度特別会計予算  昭和三十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題となし、質疑を行ないます。  横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 きょうは主として外交、防衛問題について池田総理大臣並びに関係大臣お尋ねをしたいと思います。  まず第一番目にお尋ねをしたい点は、池田総理の本会議での施政演説についてでございますが、こういうように述べておられるわけです。「昨年は、部分的核実験禁止条約成立に見られるとおり、世界緊張緩和に一歩を踏み出した年でありました。」、「一方、冷戦の意識から解放された各国が、それぞれ自国の利益を主張し、多元化方向にあることも事実であります。この新しい動向に対処して、われわれは、共存精神基礎としつつ、世界の平和と人類の繁栄のため、冷静な判断のもと、英知と勇気をもって、わが国の置かれた環境と地位にふさわしい役割りを積極的に果たすよう心がけねばなりません。」、こう言っておられるわけです。池田総理は、昨年の部分的核実験禁止条約成立を、まず世界緊張緩和に一歩踏み出した年である、こういう評価をしている。そこで、私があなたにお尋ねしたいのは、池田総理は、われわれは共存精神基礎としつつ、こう言われているが、池田総理の言われている共存精神というのは何なのか、その点についてひとつ御説明を承りたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 お互いに平和を守り、そうして繁栄を拡大していこう、こういうことでございます。
  5. 横路節雄

    横路委員 総理、そういう抽象的なことではだめです。あなたはこの前何とおっしゃったのです。あなたはこの前に、二年ほど前に何と言われたかというと、一平和共存共産主義諸国宣伝であります。あなたはこう言っているのです。あなたは二年前にそう言ったのですよ。しかし、あなたがいま言われているように、部分的核実験禁止条約成立世界緊張緩和に一歩を踏み出した、平和共存方向動き出した、だから、あなたの言う共存というのは、いわゆる平和共存精神だろうと思うが、その点はどうなんです。その点はひとつ明らかにしていただきたいのです。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 国際情勢変化によりまして、ことばが宣伝であったり、それが実効を生むようになることは、これは自然の趨勢でございます。平和共存ということが単なる宣伝であったか、あるいはそれがほんとうに実現していくかということは、時代の変化によってこれは評価しなければなりません。したがいまして、二年前平和共存ということにつきましては、かなりの疑いを持つ人が多かったということは事実でございます。しかし、だんだん世界情勢変化によりまして、やはりそういうふうな希望なり宣伝なりが実態にあらわれることは、これは変化と言うべきでございましょう。進歩と言うべきでありましょう。それを私は言っておるのであります。
  7. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまの総理お話は、二年前は、平和共存というのは、多くの疑いを持って、どうも共産主義諸国宣伝ではないかと思ったが、その後ここ二、三年来の趨勢を見て、平和共存というものは現実の問題として大勢はその方向に向いているということを総理は確信をされておるわけですね。その点をお聞きしたいのです。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 絶対にそうなって誤りないとは言えませんが、そういう機運になって、そうしてそれが一部の核実験停止協定ということになっていった。しかし、一部の核実験停止があったから、これは絶対に平和共存で、共産主義支配という気持ちはなくなったかというと、そうでもないということは、私は一般考え方だと思います。
  9. 横路節雄

    横路委員 総理、もちろん、平和共存というのは、異なった社会体制資本主義諸国共産主義諸国との間の平和共存、これは可能だ、こういう意味ですね。この点確かめておきたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 可能の機運に向かいつつあるということであります。
  11. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしたい次の点は、あなたはラスク国務長官との間に対中国問題についてどういう話し合いをされたのか。昨日の愛知委員質問に対するあなたのお答えを聞いていたのだけれども、その点はっきりしないわけです。せっかくの国会の論蔵を通じてあれだけあらゆる報道機関が真剣に報道せられており、国民はあなたとラスク国務長官との間の話は一体どうなったのか、どういう点の話をされたのか、知りたいと知っている。なお、私も、NHKにおける新聞記者ラスク国務長官との会見を詳細にお聞きをしていたのです。まず、総理ラスク国務長官との間に何を話をされたのか、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 私とラスク国務長官との会談のうちに、フランスのあの態度による変化につきましての話は一切出ませんでした。官房長官から発表したと思いますが、マレーシア問題あるいは東西問題等でございます。今回のドゴール声明によりまするその結果としての日中問題につきましては、おおむね、——おおむねではない、ほとんど全部外務大臣ラスクと話をしておるのであります。その報告を私は取っておりますので、しいてこの問題につきまして短い時間で外務大臣ラスクとの会談のことをより以上私がする必要もないし、また、時間的にほかの問題を話したわけであります。
  13. 横路節雄

    横路委員 きのうも池田総理愛知委員質問にそうお答えになっておる。私はこの池田総理態度が非常に不可解なんです。今日、フランス中国承認発表、対中国問題は世界の大問題であって、日本としては最大の関心事です。国民はあげて、政府はどういう態度に出るのか、またその見通しはどうなのか、アメリカ圧力はなかったのか、こういうことについてみんな心配しているのです。その点について、総理大臣のあなたか、ラスク国務長官との間にこの問題について何も触れなかったんだ、マレーシア問題なんだ、そのことは外務大臣にまかしてあるんだ、時間がなかったから話ができない、これはあなたの対中国問題というよりは外交に対する基本的な認識が欠けているのです。そう思いませんか。これだけ重大な問題を、おれは一つも話をしなかった、それでそうでないと言えますか。こういう問題は、私は、池田総理外交に対する基本的な方針認識というか、そういう点に根本的な誤りがあると思うのです。なぜみずから話をしないのです。全然話をしなかったのですか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう問題につきまして外務大臣が二回にわたって詳しく話をしております。そうして、その話のしかたも、また、それについての前もっての打ち合わせも、そうしてまた、したあとの結果も逐一報告を受けておりますので、その問題を蒸し返す必要はないと考えました。そうして、他の重要な問題につきまして彼等の考え方を聞いたのであります。決してこういう重大な問題に関心を持たぬというわけではございません。したがいまして、私の外交方針につきましては、昼めし会で相当長く私の基本的な考え方を話をいたしました。ラスク長官は、おせじもあったかもわかりませんが、非常にいい話を聞いた、あなたの考えがすっかりわかったということで、これはラスク長官ばかりでなく、ほかのホッジスその他の長官も言った。しかも、あの演説の草稿をくれ、そうして日本語で書いたものをもらいたい、しかも池田総理みずから署名したあの日本語文をくれないかという話ですから、渡しました。そこで、日中関係につきましても、外務大臣が、二時間にわたって二回話しておるし、そうして、私の根本的方針ははっきり書いておる。だから、ラスク長官は十分わかって、向こうから聞こうともしない。こっちも、わかったと思うから、話をせず、ほかの問題をやることが私は総理として適当な方法だと考えたのであります。これを、重要な問題なのに一切触れぬというのじゃない。触れて触れて、もう私との間には触れる必要のないほど向こうはわかっておると私は考えておるのであります。
  15. 横路節雄

    横路委員 それでは、いま昼食会であなたから言われたという対中国に対する基本的な方針ラスク長官にどういうように話をされたのですか。具体的にひとつお聞きをします。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、昼めし会で、対中国の問題だけではございません、日本外交としての基本的考え方を言った。外交はあくまでも自分の国の利益、自主的にやらなければならぬ、しかし、同盟国お互いに話し合って相反しないよう努力しなければいかぬ、また、アジアには、ことに東南アジアにつきましては、その長い歴史、文化あるいは環境等があるから、この環境を十分その他の国、先進国考えて、そうして東洋人気持ちを十分考えて、寛容と忍耐アジア問題を考えてもらいたい、こういうことを言っておるのであります。これも全文ほとんどの新聞に載っております。
  17. 横路節雄

    横路委員 いまあなたの御説明を聞いて、きのう愛知委員に御答弁になったように寛容と忍耐でやるのだという話。しかし、対中国に対する基本的な方針はどうなんです。ラスク長官はいろいろ言っているじゃありませんか。一体あなたはラスク長官に対中国について何を言ったのかと私は聞いているのです。また、これを通じて、この国会審議の場を通じて、あなたが何を言ったか、何を一対中国に対する基本的な方針として考えているかという点を明らかにしてもらいたい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 それは外務大臣より言っております。日本の対中国観につきましては言っておる。私は、先進国は、アジア、特に東南アジアにつきましては、寛容と忍耐気持ちで、アジア人気持ちを十分理解するよう努力して外交をやるべきだということを言っておるのであります。特に中国に対してこうやってくれということは、名ざしで言っておりません。先進国の、アジア、ことに東南アジアに対しての外交方針はこうあってほしいということを言っておるのであります。
  19. 横路節雄

    横路委員 そうすると、池田総理は、結論としては何も言わなかったわけですね。寛容と忍耐でやります。あと何がわかりますか。国民は何一つわからぬですよ。あなたのアジア政策については、寛容と忍耐でやるのだ、対中国について寛容と忍耐とはどうやるというのです。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 私が寛容と忍耐でやると言っているのではありませんよ。先進国は、アジア、ことに東南アジアに対しては、よくその民族の気持ち歴史環境考えて、先進国の人は短気を起こさずに寛容と忍耐外交アジアに対してやるべきだということを、先進国の一人のアメリカに育ったわけです。
  21. 横路節雄

    横路委員 なるほど、あなたの説明は、アメリカに寛容と忍耐でやりなさい、また短気を起こさないでやりなさい、しかし、日本はどうするのです。池田内閣の対中国に対する基本方針はそれじゃどうなんですか、お尋ねします。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび印しておりますとおり、われわれはいまの世界情勢から申して、また、日本の置かれた立場から言って、中華民国政府友好条約を結び、その関係にあるいまの立場としては、中共政権を認めずに、中共政権とはいわゆる政経分離のたてまえのもとに貿易その他を増進していこう、これは基本的の私の考え方でございます。
  23. 横路節雄

    横路委員 それでは、これから外務大臣に具体的にお尋ねをしますが、その前に池田総理に私からお話を申しておきます。今日の対中国問題が大きく非常に混乱をして困難な状態になった最大の原因は、今日の日本中華民国とのいわゆる平和条約にある。これはイーデンの回顧録でも明らかなように、当時、アメリカとイギリスの了解は、日本政府が北京における中華人民共和国あるいは台湾における国民政府どちらを選択してもよろしい、 こうなっていたものを、ダレス上院議員二名を伴って、もしも日華平和条約を承認しなければ上院の批准はできない、こう言ってやられた。ダレス圧力によって、今日の対中国政策というものが非常に混乱をし、今日の状態に至っている。私は、池田総理がもっと簡明率直に、ラスク国務長官に対して、対中国に対する日本の基本的な政策日本の基本的な立場を話しているのかと思ったら、何にも話をされていない。国民はひとしくがっかりしています。期待するほうが無理かもしれません、私はそのことを申し上げて、これから一々具体的にお尋ねします。  大平外務大臣お尋ねをしますが、総理は、先ほどから、ラスク国務長官との間における対中国問題はあなたがやったのだ、大平外務大臣がやったんだから大平外務大臣から詳細に聞いてくれ、こういうことでございますから、ラスク国務長官との間にどういう話をされたのか、まずアメリカ側はどういう話をされたか、それに対して日本の基本的な方針はどう話されたか、その点についてひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、ちょうどラスク長官が東京に参られた段階で、フランスの正式な対中共外交関係設定声明が出るという時期でございましたし、この問題についてのアメリカ側考え方評価というものを詳細に伺いました。それから、わが国といたしましては、先ほど総理から御説明がありましたとおり、ただいまわが国がとっておる政策というものを説明をいたしました。同時に、この問題を受けとめておる国内の状況というものにも触れておきました。それだけでございまして、どういう順序でどういう内容の話を詳細にしたかというようなことは、これはお互いの間の話でございまして、国会に私がその内容を公表するという自由は持っておりません。
  25. 横路節雄

    横路委員 大平外務大臣、あなたのいまのお話の中で、フランス中共承認に対してアメリカはどう評価したか、この点についてはいまあなたは外交上の話だからできないと言っておる。しかし、ラスク国務長官新聞記者との会見においては、ある程度具体的に話をしている。私はあなたに、ぜひここで、アメリカはどういう評価をしたか、そういう点について明らかにしてもらいたい。それから、必然、先ほど池田総理から言われたように、一本の立場についても話をされたはずなんです。その点についてやはり国会審議を通じて明らかにしていくということが私は大半だと思うのです。一方では新聞記者会見でどんどん言っており、一方ではあなたは全然言わない、そういうことで私は国会の場を通じての大半審議とは言えないと思うのです。この点ひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 これは横路さんも御了解いただけると思いますが、アメリカ政府が今度のフランス動きに対しましてどう評価しているかは、アメリカ政府説明することでございまして、アメリカ政府がどういう方法、どういう手段でどういう時期にどのように説明するかはアメリカ政府の問題であろうと思うのでございます。私は私の立場で、日本新聞その他国民に対しましてこの問題に対してどう説明するかということは、私の自由だと思うのでございます。問題は、アメリカ国務長官日本外務大臣の話というものがどうであったかということでございまするが、事外交のことは、お互いにそこで話し合ったことを国会その他で説明するんだという前提では、もうとても外交交渉というのは、これは横路さんも御了解いただけると思いますが、できるものでございませんで、お互いの信頼の上に立ちまして非常に用心深くやっておるわけでございますので、これをここで発表せよというのは、多少御無理な御注文じゃないかと思うのでございます。外交をきびきびと生きたものにしようと思えば、そういった点については十分の御理解を私はいただきたいと思います。
  27. 横路節雄

    横路委員 アメリカ立場についてはあなたは話すべきではない、こういうお話だが、しかし、日本立場説明されたわけですね。それはあなたここで言えますね。日本立場を話をされたことを言ってください。アメリカ立場アメリカで言うでしょう。しかし、日本立場については国会で言ってごらんなさい。それまで言えないということはないでしょう。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、先ほど総理が申し上げましたとおり、いまわが国かとっておる方針というものを説明をいたしました。それから、今回のフランスの新しい動きを意外に国民側では相当な衝撃として受け取っておる模様は、私の脳膜に映りました範囲においてお話はしておきました。
  29. 横路節雄

    横路委員 どうも聞いてよくわからないのです。わからないから、もう一度言ってもらいたいのです。日本立場はどう説明されたのですか、日本立場は。総理があなたに聞いてくれと言うから聞いているのですよ。総理が、大平外務大臣は二度にわたってやったのだから、だからあなたに聞いてくれと言うから、聞いているのです。だから、フランス中国承認以降におけるいろいろな問題について、日本の対中国政策の基本的な方針として何を話を、されたのか、話をしてくださいよ。総理はあなたに言わせると言っているのです。よほどわれわれのほうが寛容と忍耐で聞いているのですよ。いいですか。いやいや、外務大臣に言っているのですから。よほど寛容と忍耐が要りますよ。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉内容外務大臣からあなたに申し上げますとは言っておりませんよ。交渉ラスク外務大臣が二回にわたって長く話をした、その報告は受けた、こうういうことを言っておる。外務大臣は、知っております。外務大臣がその衝に当たったというだけであります。会談内容をここで発表しようとは私は言っておりません。外務大臣が言っておりますとおり、これは新聞に発表するとか国会で申し上げるという前提で話をしたのじゃない。機密外交としてお互いの所信を話し合ったのでございます。だから、ここで外交機密あるいはそのときの雰囲気を言うことは、私はいかがなものかと思います。したがって、ラスク国務長官も、新聞記者会見ではアメリカ立場を言っておるわけでありまして、交渉状況はこうだったと言っておりません。だから、外務大臣がここで言うということについては、外務大臣の話は私は適当だと思います。
  31. 横路節雄

    横路委員 総理、いま大平外務大臣が、アメリカアメリカ立場として言っていることは、私はとやかく言わないと言う。それは私もここであらためて追及しようと思わぬが、日本立場について何を話をされたのかということを言ってもらいたい。これは言えるわけでしょう。これは日本国会ですよ。こういうやり方国会審議を軽視しているのですよ。言ってごらんなさいよ、大平外務大臣
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、ただいま日本がとっておる政策、先ほど総理がお示しになりました政策、こういうものは当然御説明を申しました。
  33. 横路節雄

    横路委員 私は委員長希望を申し上げておきたいのですが、いまのようなやり方で私は当予算委員会が正常に運営されるとは思わないのです。これはやはり、委員長のほうからも閣僚に対して注意されて、やはり国会を通じて明らかにする点は明らかにしていかなければ私はまずいと思うのです。この点は委員長希望して、私は次の問題に移ります。しかし、非常に池田内閣のこういうやり方はいかぬです。これはいかぬですよ。  そこで、私は次にお尋ねをしますが、これは、池田総理お答えしていただけると思うのです。あなたの施政方針演説の中に「伝統的に親善関係にある中華民国政府との間に、最近紛議を生じたことはまことに遺憾であります。」、池田総理、御存じですか、遺憾というのは陳謝ですよ。外交上遺憾というのは陳謝の意を表明したことなんです。あなたは何を陳謝されたのですか。どうなんです。これは。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 遺憾とするということを陳謝とおりになるのは、これはいかがなものかと思います。私は、そういう事実が出たことは私の本意でないという意味を言っておるのであります。
  35. 横路節雄

    横路委員 それでは、いま池田総理はたいへん重要な発言をされたが、あなたの本意でないというのは、何が本意でなかったのですか。日本中華民国との間の今日の段階で何が本意でなかったのですか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 私の考え十分向こうに伝わらなくて誤解を生じておることを遺憾としておるのであります。
  37. 横路節雄

    横路委員 何が相手に誤解を与えたのです。そして何があなたの本意だったのですか。何か向こう誤解を与えて、何かあなたの本旨だったのですか。その点を明らかにしてもらいたい。これは本会議で言っていることだ。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、先ほど申し上げましたごとく、中共との経済交流を望んでおるのであります。しこうして、ビニロン・プラントにつきましては、多年の問題でございましたが、昭和三十二年から起こった問題でございますか、私の方針によりましてこれを認める、しかも他の国と同じ条件で認めるということは、私の中共に対する政策の実行でございます。しかるところ、台湾政府におきましては、これは経済援助だというふうにおとりになっておるようでございます。私はコマーシャルベースの考えで降りますが、経済援助と認められたことが私の考えと違っておることでございます。そういう考え方を台湾が起こされることは、残念で遺憾なことでございます。私の本意でありません。また、周鴻慶事件につきましても、本人が初め意思が決定しておりませんでしたが、その意思を決定した場合におきまして、その意思どおりにやることは、日本の法制から言って当然のことであると私は思います。しかし、それを、その意思決定の間についていろいろな策動が入ったやに誤解されておるということは、事実に反することであって、遺憾なことでございます。残念なことでございます。不本意でございます。これを言っておるのでございます。
  39. 横路節雄

    横路委員 私は、総理がいま不本意で残念ですと言うならば、本会議のことばはやはりそう使ってもらいたいのです。あなたは数字については非常に明るいです。しかし、日本の使うことばはやはり慎重に考慮してやってもらいたい。これは、残念なら残念ですと、こう言うべきなんです。あなただって政治家だからおわかりでないですか。たいへん申しわけないと言うときに、遺憾の意を表明しますと言うのです。外交上のことばとしては陳謝とは言えない。国の体面があるから。そのときは、遺憾であると、こう言うのです。そういう点はひとつ十分考えて使っていただきたいのであります。これはあなたそうあまり強がりしないほうがいいですよ、ほんとうに。  そこで私は、あなたに次にお尋ねをしたいのですが、「中華民国政府が、一日も早くわが国の真意を了解することを希望してやまないものであります。」ということをこの本会議施政演説で言われているが、それはいまの二つの点ですか。いわゆるビニロン・プラントに関するものは経済援助ではない、周鴻慶の問題については、われわれ日本の意志でやったので、他の力が加わっているのではない、その点を了解してくれということをここで言っているのですか。何を言っているのですか。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 日本中華民国との間の関係が、いま言ったような問題、——ほかにもあるかもわかりませんよ。向こう気持ちですから、どれどれという列挙をしたわけではないです。そういう問題が、いまの友好関係が非常にそこなわれたと世評に言われるような原因だと思います。ほかにあるか、向こうのことですからわかりませんか、しかし、私はそういう誤解が一日も早く解消することを望んでいる、こういうことでございます。  なお、遺憾ということばはどうこうと言っておられますが、私は、この問題につきましては閣議その他にもずっとはかっておりますし、あなたのような解釈は少し行き過ぎじゃないかと思います。
  41. 横路節雄

    横路委員 そこで、あなたについてお尋ねをしますが、いまの点、どうもはっきりしないのです。「中華民国政府が、一口も早くわが国の真意を了解することを希望してやまない」というのは、いまの二つの点のことをさしているのですね。周鴻慶事件とビニロン・プラントの輸出のことと、それだけのことなんですか。この二つのことについて真意を了解してくれというのですか。何を了解してくれと育っているのですか。本会議で言っているのですよ。一日も早くわが国の真意を了解してくれ、これは何を言っているのですか、具体的に言ってもらいたいのです。具体的に、何を了解してもらうのですか。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは友好増進の考え方でいっております。友好を増進しようという立場でいっておるのであります。したがいまして、向こう誤解しておる点はどういう点かわかりませんか、こういう問題で誤解を引き起こしておるとわれわれは聞いておるのであります。しかし、向こうが、まだほかにあるといえば、また言ってくるでしょうが、私のところでは、こういう問題がおもなる問題だと思っております。ほかにあるかないかということは、感情を害する原因はこれこれだと言ってきておりませんからわかりません。ただ、われわれの感じたところはそういうところじゃないかと思います。
  43. 横路節雄

    横路委員 あなたに申し上げるまでもなく、あなたが、台湾の国民政府の大陸反攻、そんなことはできもしないと言ったとか、こういうことも一つ問題になっているそうで、その当時の台湾国民党の機関紙の中央日報ではこう言っておりますね。池田は忘恩の徒だ、目先の利益を追って大義を見失っておる、池田首相の姿勢は皮肉にも中立主義で、いまやそのブリッジを渡って共産陣営に走ろうとしている、これが向こうの批評です。よくあなたは中立主義についてとやかく言いますが、向こうではそう言っていますね。  そこで、あなたにお尋ねしたいのは、政経分離のもとで、民間ベースによる貿易を行なうことが池田内閣外交方針だと述べられておりますが、中華人民共和国との間の外交関係がいままでなぜ樹立がされないのか。中華人民共和国との間の外交関係がいまだもって樹立されないのはどういう理由なんですか。私はいままでずっと予算委員会、本会議で聞いているけれども、あなたのその立場が明らかになったことがないようですから、明らかにしてもらいたい。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、中葉民国を中国と見て講和条約を結び、そうしてこの外交関係をやっておるのであります。したがいまして、施政演説にも述べておるがごとく、大陸に政権のあることは事実であると言っておるのであります。しかし、これを承認し、これと外交関係を結ぶ考えはいまのところないのであります。
  45. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまのお話は、台湾における中華民国中国全体を支配している唯一合法的な正統政府である、だから必要はないんだ、こういうのですか。その点はどうなんです。どうもはっきりしないのですが、その点……。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 中華民国中国全体を支配しているとは思っておりません。したがいまして、六億余の民を擁して一つの政権が事実上あることは認識しております。しかし、これは、われわれは中国を代表するものが中華民国なりとしていままで条約を結んで友好関係にあります関係上、いま新たにできたと申しますか、大陸の中共政権外交関係を結ぶ気持ちはいまのところないのであります。
  47. 横路節雄

    横路委員 池田総理、それは違うのでないですか。台湾の中華民国との間の外交関係の樹立は、現に支配している台湾、澎湖島並びにその付属の島嶼と限定しているではないですか。これま地域を限定した承認ですよ。あなたのいまのお話、私のにもう一ぺん答えてもらいたい。台湾の中華民国中国を支配している唯一合法な正統政府なのか、どうなんです。私がお聞きをしているのは、中華民国とは、日華平和条約でも、現に支配している台湾、澎湖島並びにその付属島嶼、将来繰り入れられるかもしれない地域と限定しているじゃないですか。こういうのは世界にないのです。世界にないけれども、前の吉田内閣はやったわけです。これはあなたはどうなんですか。いまあなたの御説明で、台湾の中華民国を承認しているから、したがってできないのだ、そうすると、六億の民を現に統治しているその中華人民共和国というのは何なんですか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは中華民国政府中国を代表しておるものと考えておるのであります。しかし、中華民国の実際支配しておるのは、台湾、澎湖島、あるいは本土付属と申しますか、金門・馬和島、大陸の内部までには及んでおりませんが、これがわれわれは中国を代表するものと考えておるのでございます。したがいまして、事実上ほかに政権があるということは認めております。これは外交上認めておりませんが、そういう事実があることは認めております。しかし、われわれは、外交関係はいま結ばない、こう言っておるのであります。
  49. 横路節雄

    横路委員 これからまだ時間をかけてたくさんお尋ねをしたいのです。いまの特に日華平和条約については、さらにお尋ねをします。  そこで、私は立場を変えて次の点をお聞きをしたいのですが、池田内閣はどういう状態になったら中華人民共和国を承認なさるのですか。もう一度お聞きします。もう一度言いますよ。あなたは、池田内閣としてはどういうような状態が生まれてきたら中華人民共和国を承認なさるのかどうか、その点を聞いているのです。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、いろいろのことがあると思いますが、日本が中華人民共和国、中共を認めていいということは、日本自体が、中華人民共和国は平和を好み、隣邦としてりっぱであると認めると同時に、これがアジア並びに世界の平和に非常に関係がございますから、世界の世論として中共を認めるべきという情勢になったときに決断すべきだと思います。しこうして、われわれとしては、隣邦である関係上、中共がほんとうにりっぱな国家であり、平和を好み、侵略をしない、そうして世界の平和に進んで貢献するという気持ちがわかった場合におきましては、他の国々ともよくそういう事情を話し合って、世界の大多数、できれば世界全部が一致して中共を認めるような機運になることを念願しておるのであります。
  51. 横路節雄

    横路委員 いまあなたのお答えの中に、中共は平和を愛好する国になったならばと、こう言う。私はあなたにお尋ねをしたいのだが、中共はあれですか、平和愛好国ではないとおっしゃるのですか、どうなんです。その点は。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 朝鮮事変の起こったときに、国連では、中国は平和愛好国ではないと決議していると私は記憶いたしております。その決議はまだ取り消しになっていないことを知っておるのであります。私は、いま世界にそういう気持ちがまだ相当残っていると考えております。
  53. 横路節雄

    横路委員 しかし、総理、あなたは岸内閣当時よりは中共に対する見方はだいぶ後退したのですね。当時、安保条約で、平和愛好国というのが問題になりまして、私は中共は平和愛好国なのかそうでないのかと尋ねたら、岸総理は、そうではない、国連でいわゆる朝鮮事変に対する非難決議はあったけれども、しかし、今日の段階ではそうではない、こう答えておる。あれからもう五年もたっているんだが、あなたは、中共は平和愛好国ではない、侵略国だという規定に立っているとすれば、それはラスク国務長官と同じなんです。どうなんですか、その点は。あなたも将来中国との間に国交を回復しなければならぬのだから、ひとつその点は慎重に考えて答弁してもらいたい。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 国連のそういう過去の決議、あるいは最近でも中印紛争、どちらに道理があるかわかりませんが、そういう気持ち世界にある程度広がっておるということは事実じゃありますまいか。私は、自分がいまここで、中国は平和愛好国でないと断定することは差し控えますが、そういう機運世界にありますから、中共が、平和愛好国であり、好戦国でない、世界の平和に貢献する非常な熱意があるということを自他ともに世界が認めることを期待し、そうして、そういう情勢のもとに国連に入ることをわれわれは念願しているのであります。これはアメリカばかりじゃございますまい。ほかの国でも言っております。また、アメリカでもそういうことを言っておる。いつでも門戸を開く用意があるということを言っておるじゃありませんか。だから、私は、そういう世界情勢を見ながら、世界の人とともに、そうしてまた、日本の置かれた特別の立場考えながら、全体がスムーズにいくように努力しようとしておるのであります。
  55. 横路節雄

    横路委員 あなたの外交方針は、いつでも世界はどう見ているかという話なんです。日本はどう見ているかという自主性がないんです。だが、世界はどう見ていようと、あなたが言うように、ここにあるじゃないですか。「一衣帯水の地にあり、広大な国土に六億余の民を擁しておることは厳然たる事実であり」、この中華人民共和国をあなたはどう考えているのか。国連は、世界はそう思っているが、日本はどうなんだ。あなたは、世界が思っているのか、自分が思っているのか思っていないのか、はっきりしない。日本はどう思っているのです。あなたはどう思っているのです。中華人民共和国に対して。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 わが国固有の利益から申しまして、世界の人がどう思おうとも、世界の人がどんなに日本を非難しようとも、わが国利益がこうであるということならばやります。しかし、世界の人の大多数の意に反してやるということは、日本の基本的利益になるかならぬかということは常に考えなければならぬ問題であります。だから、てんびんにかけるということを人は悪く言うかもわかりませんが、外交や何かというものは、これはてんびんでどれが一番日本の国の利益になるかということを根本的に考えなければならぬ。私は、それが国を預かる総理としての立場だと思います。いろいろこれと仲よくしたいということを言っても、これと仲よくした場合に日本がどうなるかということを考えなければなりません。単なるイデオロギーの問題ではないと言うのであります。
  57. 横路節雄

    横路委員 池田総理、一つも具体的に話してないじゃないですか。中華人民共和国をどう見ているのかということを聞いているんですよ。池田総理はどう見ているかということを聞いているんですよ。世界のことを聞いているのでないんです。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 中共という国は、相当広い範囲においてたくさんの人口を持っている。しかし、中共がいま何を考えているか。ほんとうに平和共存で、戦争をしない、核兵器も持たない、そうして隣国を脅かさないという断定にまでまだいっておりません。なかなかむずかしい国だと思っております。しかし、むずかしい国だが、これとできるだけ早く仲よくすべきだということは考えております。そうして、仲よくするために、ほかの人にも中共気持ちを研究してもらうし、われわれも今後もっともっと中共の真意を探っていくよう努力しなければならぬ、こういうのがいまの私の中共に対する考え方であります。
  59. 横路節雄

    横路委員 それでは、あなたにお尋ねするが、世界における完全軍縮が達成されるためには、私は中共を除いた軍縮会議というものはないと思う。アジアにおける恒久平和を確立するためには、中国が正しく正常な地位を国連において得ることであると思う。そうして、アジアにおける日本の平和は、日本と中華人民共和国とのいわゆる外交関係が樹立されることであるとわれわれは思うが、あなたはどう考えていますか。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことは、世界の人ほとんど全部が考えておるんじゃありますまいか。ただ、そういう願いが実行できないことは、いま言ったように、中共の本心がわからない。ほんとうに世界の平和を守っていこう、そして仲よくしようということに、まだ世界の人がそこまでいっていないでしょう、いないんじゃありますまいか。私はそう思います。話し合いをしたらどうか。話し合いもしておるようです。われわれも、できれば話し合いをしたいと思います。いま民間においては話し合いをどんどんやっておる、アメリカ中共もやっておるようでございますが、なかなかうまくいかぬようでございます。
  61. 横路節雄

    横路委員 池田総理、あれですか。私が聞いたのは三つです。完全軍縮を達成するためには、軍縮会議中共が入らなければ意味がない。第二点は、ほんとうの恒久平和を確立するためには、中国が国連の場に参加をしなければならぬ。日本のこれも恒久平和を樹立するためには、日本と中華人民共和国とのいわゆる外交関係が正常に樹立されることだと思う。この点はどうかと三つ聞いたんです。お答えになってください。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 お答えいたします。そういう三つのことが早く実現するために、中共がほんとうの平和愛好国になり、隣国を脅かさないというふうなことを望んでおるということは、私は世界の大多数の人がそうだと思います。ただ、そういうことを念願しながらも、さあ実行できるかということになると、まだ中共のほんとうの真意がわからぬというのが実情じゃございますまいか。
  63. 横路節雄

    横路委員 私は、池田総理の対中国に対する考え方が端的にあらわれているのはここにあると思う。実は、衆議院の本会議で自民党代表の小坂善太郎君から、こういう発言があった。「日本の好まない全体主義下にある七億の中国民衆が、いつまでも今日のような窮乏をもたらす共産主義の体制下でがまんしているかどうかということは、中国民族がすぐれた素質を持っているだけに、いつかは変化がくるものと信じたいのであります。」、あなたは、それに対して何と言っているかというと、まことに同感でありますと言っております。大問題です。これがいま衆議院の本会議で問題になって、議長から、この点を削除するかどうかで問題になっておる。私は、非常に問題がありますから、——この点はラスク国務長官ではないが、中国政権がいつか変わるだろうという期待をしておる、ラジオにおける記者会見において。あなたこれと同じだ。もしも誤りであれば、この予算委員会で、はっきりとそういうことは考えてないということを訂正されたほうがいいですよ。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 よく速記録を見まして……。そして、私は、わが党の人でございますから、考え方が大体同じであると言ったのでありますが、個々の具体的の問題につきまして、私は中共の政権が変わるということを念願するとかなんということは思っておりません。そのまた政権が変わる変わらぬにかかわらず、われわれは、択捉、国後、——領土問題かなければ、ソ連とも平和条約を結びたいという考え方でありますので、先ほど来答えたのが私の本意でございます。
  65. 横路節雄

    横路委員 それじゃあなた取り消してください。池田総理はこう言っていますよ。「世界の社会主義国家におきまする経済政策についての御批判は、全く同感でございます。」ということを言って、いまの点について述べているのです。いわゆる全体主義のもとにおける国民、民衆がいつまでもそれに満足すべきものではない、必ず変わると思っておる、全く同感だと言っておる。そういうことは、あなたの厳たる事実というのと違うじゃありませんか。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 共産主義経済政策の失敗について小坂君が言っておる。ことに農業政策、たぶんこう言ったと思います。人民の四割ないし四割五分が農民であるソ連において、国民の一割しか占めていないアメリカの農産物を、そういう半分近いソ連に持っていって小麦を売る、これは共産政権の経済政策の失敗だ、こう言いますから、それは私も同感だ、こう言ったのでございます。だから、いまの取り消す取り潤さないの問題は、全体の速記を見て私はお答えしたいと思います。
  67. 横路節雄

    横路委員 次にお尋ねしたいのは、池田総理はこう言っています。「一方、中共政権に関する問題は、国連等の場における世界的な問題であります。」、こう言っていらっしゃる。そこで私はあなたにお尋ねしたいのだが、まず国連において、中華人民共和国の代表権問題が承認されれば、そうすれば日本は中華人民共和国との間に国交関係を樹立する、いわゆる中共を承認するのかどうか、その点ひとつお尋ねをしたいのです。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 いまフランス中共外交関係を樹立したことによりまして、国連におけるいろいろな予想投票と申しますか、議論せられております。私はそういう仮定の問題につきましては、いまお答えできません。
  69. 横路節雄

    横路委員 いや、何が仮定ですか。国連において中華人民共和国の代表権問題が解決されて、中国が国連に正式に代表権を持つようになった場合には、一体日本中共を承認するのかどうかということです。それを聞いておるのです。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 それが仮定の問題でございます。こういう場合においてどうするかというのが仮定の問題でございます。
  71. 横路節雄

    横路委員 それではあなたにお尋ねしますが、総理、国連総会において中国が代表権を持つことを池田内閣は望むのか、代表権問題が否決されることを望むのか、池田内閣態度はどうなんですか。これは仮定ではないですよ。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申したように、これはやはり世界的な問題であり、ことにアジアに位する日本としては非常に重要な問題だから、十六回以来の国連総会におきまして、日本立場ははっきり言っているのであります。これによりまして、世界の各国がどうするか、先般までは、この問題はいわゆる重要問題として取り扱われることに相なっておるのであります。私は、重要問題として取り扱われるその問題を、いまどうなったらどうだ、こうなったらこうだということについての自分の考え方は申し上げることを差し控えます。
  73. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねをしますが、いわゆる代表権問題について重要事項の指定は、これはどういうように池田内閣考えていらっしゃるのですか。一昨年の国連総会におけるあの決定は継続してなお効力を持っておるのかどうか、その点はどうなんですか。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 国連の表決というものは、なかなかむずかしいと聞いております。三分の二を要する決議が一応認められた、しかし、いま次の総会において過半数、二分の一以上できまった場合に、それを取り消すとか、あるいは中共承認を三分の二の決議を無視してやられたときに議長がどう出るかという問題があります。そこで議長がどう出た場合にどうするかということもまたあるわけです。だから、そういう問題は、私、日本総理がここで答えることは、どうも少し早過ぎるのではございますまいか。いままでの経過その他につきましては、これは国連局長あるいは外務当局から申し上げますが、三分の二の決議は継続性があるかどうか、ありとすればどういうことか、ない場合には議長の権限がどうだということは、国際的にいろいろ議論せられておるところだと私は聞いております。
  75. 横路節雄

    横路委員 それでは外務大臣お尋ねをしますが、いまの重要事項の指定は、これは憲章の条文でどこも継続して効力を持つとは何もきめられていない。したがって、これは新たなる問題として、代表権問題としてやられることができる。いま何か総理は、議長の見解であるとか取り扱いであるとか言っているが、この点については外務当局は、一昨年の秋の国連総会の重要事項の指定はそのとき限りの効力である、したがって、今度のこの秋の総会で二分の一の多数をもってやはり国連総会において決議が行なわれれば、代表権問題は解決する、こういうように考えておるか、その点はどうか。これを外務大臣からひとつ……。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 会期独立の原則が国連で貫かれておるかどうかは、いま横路さんがおっしゃったように規定上明文がないようでございますが、いままでの慣行上、これが継続性を持つかどうかという点は、お示しのように全然例外がないでもないようでございますが、原則として、継続性はないのではないかという解釈があるようでございます。
  77. 横路節雄

    横路委員 そうすると、まず重要事項の指定については、継続性がないという点が一つ明らかになりました。  それからもう一つ、これは外務当局が考えているわけではないが、安保理事会では、国府が拒否権を発動できるのではないか、たとえば中国代表権の問題で総会が決議を行なっても、安保理事会では国府が拒否権を発動できるのではないかというが、この点は新たに国家が加入する場合に、新しい国家の加入の場合に、憲章四条によって安保理事会の勧告に基づいて云々とあるから、そのときに新しい国家の加入は拒否権の発動ができるが、この中国代表権の問題はそうではないのだから、したがって安保理事会のいわゆる国府の拒否権の発動はできないと思うが、この点はどうなるか、外務大臣からひとつ……。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 安保理における拒否権の問題でございますが、これは総会の決議との優先性の問題等、めんどうな法理があるようでございますので、事務当局から説明させます。
  79. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、何ですか、それぐらいのことは。大問題ですよ、あなた。事務当局の問題ではないですよ。いま聞いているのは、中国代表権の問題は新しい国家の加入の問題ではないから、国連憲章四条にいうところの安保理事会の勧告に基づいてということにはならない、だから国府の拒否権はないではないか、この点について尋ねているのに、あなたは、私はわからぬから事務当局に話をさせるなんて、そんなばかな話はないですよ。まず、あなたはここで答弁しなさい。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 問題を限定いたしまして、新しい加盟の問題でないという前提の御質問でございますれば、仰せのとおりです。
  81. 横路節雄

    横路委員 それじゃそういうことで、新しい国家の加盟でなければいわゆる加盟でない場合においては、あなたの言うように国連憲章四条で安保理事会の拒否権は発動できない、したがって国府の拒否権の発動はできない。そのとおりなんです。そのとおりなら、そのとおりとはっきり言っておいたらいい。  次に私がお尋ねをしたい点は、一昨年の国連総会、三十六年十二月七日国連における岡崎代表の演説は、これを流れているものは二つの中国を認めるという立場なんです。これは、私はあなたのほうからこの全文をとった。これを流れている全文は、二つの中国を認めるという立場でこれを書いている。あなたのほうの事務当局も言っているのですよ。だれが言ったとは言わない。だれが言ったとは言わないが、この国連における岡崎代表の演説は、二つの中国を認めるという立場でこの演説の全文の草稿ができている。外務省と打ち合わせをしてやっている。この点はどうなんですか。大平外務大臣、私はここに演説全文をあなたのほうからもらって持っている。あなたの事務局は言っていますよ。だれが言ったとは言わない。この点はどうなんです。全文を流れているのはそうなんです。どうなんですか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 二つの中国というのは、これは戦後の国際状態というのは、これを規律する定立した国際的な慣行ないし法理というものがまだ確立しておりませんので、二つの中国というのはどういうことを意味するのか、国際的に通用する理論がないのでございますが、これは、常識的にいま横路さんは言われたのだろうと思うのでございますが、私が理解するところでは、岡崎さんが演説された趣旨は、そういう考え方基礎にしてとかというよりは、事実に即して問題を取り上げられたのではないかと思っております。
  83. 横路節雄

    横路委員 ここに全文がございまして、そうして事務当局は明らかに二つの中国を認めた立場でこれは書いてある。そこで外務大臣、実は一昨日共同通信の座談会で、わが党の勝間田議員と岡崎当時の国連大使との間に対談会をやった。もちろんいま岡崎氏はどういう地位にもないから、言ったことは無責任だと言えれば言えるでしょう。しかし私は、ここで彼が言ったことを国連代表演説関係があるから申し上げたい。  彼はこう言っているのです。岡崎氏ですよ。「国連で重要事項指定方式をきめたのは一昨年だったが、それは中共政府を加盟させるのに三分の二が必要というのではない。重要事項指定方式をきめたねらいは、中国の代表権問題がどうにもならなかったからだ。中共政府、国府の両国とも二つの中国を押しつけられることは絶対に認めないとがんばっている。二者択一にせざるを得ない。しかし多数の国は、六億の国民を持ち、広い土地を占めている大国を国連に入れないのはおかしいと思っている。二つの中国ということを両国に説得させる時間が必要だ。」時間かせぎのためにこの重要事項の指定をしたのである。こう言っているのです。もちろん岡崎氏はいまは別に政府の何ら官の位置にはない。しかし、この国連演説の原案をつくった外務当局と岡崎氏との間に、二つの中国を基本的に認めるという立場でこれをつくったんだ、しかも岡崎氏はここではっきりと何と言っているか、時間かせぎだ、二つの中国を両国に説得させることが必要なんだ、だからやったんだ、こう言っている。重要事項の指定とは何か、中共の加盟拒否のためではない、二つの中国を中華人民共和国と台湾の国民政府の両方に説得させるための時間かせぎのためにやったのである、こう言っている。この点について大平外務大臣の見解はどうですか。私はこの演説の草案を見て話を聞き、あわせてその新聞における対談会の記事録を詳細にとって、いまあなたに話をしている。この点はどうなんですか。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 岡崎国連代表の演説の草稿は、私が見て手を入れました。したがって、外務事務当局、一部の者がどう言おうとも、二つの中国前提として演説さした草稿ではございません。われわれは前から言っておるように、中国は一つということであるのであります。したがいまして、岡崎君がその演説後、あるいはまた一年たってから後のいろんな様子で、あの人の感想を述べたことは、政府の意向ではございません。
  85. 横路節雄

    横路委員 総理、いまあなたが外務大臣の答弁をとって、あれは私が手を入れたんだ——なお問題ですよ。何を言っていますか、ここに流れているものは明らかに二つの中国だ、あなたが手を入れただけ、なお問題だ。しかも重要事項の指定は本国政府の訓令を受けてやったではありませんか。そうして重要事項の指定は、中共の加盟を阻止するのではない、二つの中国を認めさせるための時間かせぎにやったんだ、こう言っている。なるほどいまは彼はそういう地位にはないでしょう。しかし総理、あなたは、あなたたちの一貫した方針でありませんか。これは昭和三十六年の二月でございましたが、サンフランシスコ平和条約の時の条約局長の西村氏が世界週報で書いている。「奇妙な台湾の法的地位」、ここで何と言っているのです。まず第一番目に、これが中国全体への承認ではない、台湾、澎湖島を限った限定承認である、将来中国本土を支配している政府との間に国交が回復されるときに妨げにならないように、吉田総理としては最大限の抵抗として、この日華平和条約については地域を限定して世界に例のない限定承認という形でやったのだ、こう言っているではないですか。これが歴代の保守党内閣の一貫しておるところです。将来中国全土を支配しておる中華人民共和国政府との間に国交関係が樹立されるためには、日華平和条約の障害を最小限に食いとめなければならぬ、そのために地域を限定した、世界に例のない限定承認だと言っているではないですか。これはあなたどうなんです。こういうことをあなたは御存じないですか。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 私はあなたの質問に対して、岡崎代表の言ったのが二つの中国前提としての演説ということについての質問に対して、そういう考えではございませんということを言っておるのであります。また西村君がそういうことをおっしゃったからといったって、それはあの人の考え方でございます。日本政府方針としてはそうございます。将来どんな場合が起こったときにどうだとかこうだとかいうことは、私は先ほど来申し上げておるように、いま言明の限りでないと言うのであります。
  87. 横路節雄

    横路委員 あなたは当時吉田内閣の大蔵大臣でなかったですか。ここに中国問題に関する吉田内閣総理大臣からダレス長官にあてた書簡及びダレス長官の返簡というので、こう書いてあるじゃありませんか。前文に、「日本政府は究極において日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和および通商関係を樹立することを希望するものであります」究極です。最後は。だからいわゆる日韓平和条約に対して吉田総理最大限の抵抗をしたそのあらわれがどこにあるかといえば、この書簡の前文において、「日本政府は究極において日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和および通商関係を樹立することを希望する」、しかしと言って、現状において中華民国希望するならば、と言っておる。そうしていまだかってない台湾、澎湖島に限った、いわゆる地域を限定した限定承認をしているのです。だから、この日華平和条約の根本を流れるのは、明らかにこの平和条約が将来中華人民共和国との間のいわゆる国交関係樹立に障害にならないようにという最低限というか、その条約であったのだ。あなたはそう思いませんか。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 そこの中国というのは、吉田さんに私は聞きただしておりませんが、私の考えではいわゆるチャイナということをを念願しておるのでございます。そうしてまた中華民国との条約は、いま限定のあれとかいうことを言っておられますが、私はそういうように考えておりません。平和条約のいろいろな点からいろいろの問題がいままで議論せられておりましたが、われわれは日本と戦った中兼民国を相手にし、そうして中華民国として条約を結んでおるのであります。前文にある中国というのは、理想的に広い意味でのいわゆるチャイナということを念願として言っておると思います。
  89. 横路節雄

    横路委員 あなたにひとつ聞いておきたいのですが、池田内閣は将来ともに中華人民共和国とは国交関係を樹立しないとは言わないのですね。池田内閣はこれから将来にわたって中華人民共和国との間には国交関係を樹立しないのだというのではなくて、世界の世論その他が変わればするのですね。この点はどうなんです。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 世界の人は、先ほど申したような状態が来れば、中華人民共和国を国連に入れ、正常な外交関係を持つことを望んでおると思います。ただ、いまの状態としてはなかなかむずかしい、こういうことでございます。
  91. 横路節雄

    横路委員 どうも池田さん、あなたは私の質問に答えてないですね。日本はどうするのですか。将来にわたって絶対に中華人民共和国を承認しないのか、中華人民共和国との間には正常な関係を樹立しないのかと聞いておるのです。その点一つも答えていない。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 はっきりしている。世界のほとんど全部はというのですから、一億の民を持っている日本もこれに同調することは当然です。そうしてまた、私は言っております。中共がほんとうに世界の人の信頼を受けて、入れたほうがいいという世論になれば、われわれはその世論をつくるのにもやぶさかではないということを言っておることは、先ほど来言っておるわけであります。世界の世論でございます。世界の人がそういうことになることを望む、それには中共というものが世界の信用を高めてもらうことが必要だ。だから、中共を非常に信頼していないというアメリカでも、やはりワルシャワ会談をやっておるじゃありませんか。ヒルズマンもああいうことを言っておるではありませんか。しかもラスク長官が言っておられることも、中共の非違を並べておられる。非違を並べるということは、そういうことをやめてもらいたいという気持ちだと私は思います。
  93. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いま総理お話で、あなたのいままでのお話からすれば、中国が平和に貢献する国である、その他について世界各国が認めて、そして国連に代表権を持つという事態が来れば認める、こういうことですね。結果的にはそうなんでしょう。長いこといろいろ言っておるけれども、どうなんです。世界はなんて言わないで、日本はとなぜ言えないのです。池田内閣はとなぜ言えないのです。何と情けないことですか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういうことのときは、日本は率先してやりたい、そういう機運をつくりたいということまで言っておるではありませんか。私は、もうとにかく隣邦と正常な関係に入ることは望むところだ、それがソ連であっても一それがソ連であってもと私は言いましょう、中共とは特別な関係がありますから。領土問題が解決すれば平和条約を結ぶのにやぶさかでない、進んでやりたい、ましてや中共なんかよりも。よその国が認めたり、りっぱな国になっているのにしないというふうな日本人はだれひとりもおりますまい。
  95. 横路節雄

    横路委員 初めて池田総理も中華人民共和国を承認する意向があるというお話だと聞いたわけであります。そこで台湾はどうなるのですか。そこで私はあなたにお聞きしたい。いいですか、いままであなたのお話、私との質疑で、中国がいわゆる平和的な政策をとり、国連の場において代表権を認められた、そういう事態が来れば、あなたは中国と正常な国交関係をする、しかしそれは世界といわず、日本が先に立ってやりたいのだ、あなたは基本的にはその事態に来れば中華人民共和国との間の承認は認めるということになった。その場合に台湾の国民政府は厳として存在している。厳として存在している、あなたの考えからすれば。これはいまここで長々とやったけれども、岡崎代表が国連で演説をし、もちろんいまは何の資格はないけれども、新聞社の対談会においてわが党の勝間田氏に対して、二つの中国を基本的に認めさせるための時間かせぎだと、そういうことと共通しているではありませんか。あなたは中国の将来起きる承認、二つの中国を絶対認めないのか認めるのか、その点どうなんでしょうか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、中共を承認するとは言っていないのですよ。(横路委員「いま言ったじゃないか」と呼ぶ)言っていない。いまは中華民国と友好関係にある。いまは中共を認めないのです。しかし将来、先ほど来申したような状況で、中共がほんとうに世界の人から信頼を受け、そして日本とも非常によくなるという、自信がついたときには認めると、こう言っておる。いま台湾政府日本とやっておるのであります。だから、将来起こるべき事実といまの厳然たる事実と一緒にしてどうするのかというのは、質問が早過ぎます。
  97. 横路節雄

    横路委員 しかし、これは何も質問が早いのではないのです。みんながこの問題について非常に憂慮しているからなんです。それは私はなぜこういう質問をするかというと、これも衆議院の本会議で民社党の代表の春日一幸君が本会議場の壇上で、民社党としては一つの中国、一つの台湾、これが正しいのだと言う。そのときにあなたは壇に立って、春日君の御意向はまことにごもっともですと言ったと思うのです。私はいまその速記を早く出すように言っているが、先ほどの小坂君の、いわゆる政権がいかにも崩壊するようなあの演説が問題になって出てこない。だから聞いている。何もいまの問題は早い問題ではない。現実の問題なんだ。  そうすると、もう一度重ねて聞きますが、将来にわたっては、いわゆる中共が、あなたの考えで言えば、平和的な政策を行ない、そうして国連に代表権が認められる。そういう場合には、日本は率先して承認するのですね、そうだったですね、もう一ぺん言ってもらいたい。そこが大事なんだから。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 国連に加入を認められ、そうしてまた、各国の大勢が中共を認めることになれば、私は、やはり国連の場において行なわれたことについては、日本は国連を尊重しておるのでございますから、やります。しかし、いまの問題としては、なかなかむずかしい。  それからまた、民社党の人がどうこう言ったと言われますが、われわれは、いま新聞には出ておりますように、一つの中国、一つの台湾、どういうことを言っているのか、両方ともきらっている。私は、そういうことが起こるのは、単なる念仏と申しますか、希望と言いますかならあるかもわかりません。いまのところでは、大体御本人も、中共とか台湾とかいうのは一切絶対反対だと言っておるでしょう。
  99. 横路節雄

    横路委員 しかし、総理の答弁は、私との間にだいぶ時間をかけて論議をしましたが、だいぶあなたの話はやはり変わっているのですよ。やはり進歩したのです。最初あなたは、仮定の問題にはお答えできないと言った。それがだんだん、いま新たに将来にわたって国連で代表権が認められた場合においては中共の承認はする、ここまであなたは出てきたのだから、やはり池田内閣外交方針は、この国会審議を通じて進歩したのです。しかし問題は、この台湾の国民政府はどうなるかということについては、非常に重大問題です。二つの中国は認めないというのが両方の立場なのだ。現実に、あなたはいま、中共が国連に加入、代表権が認められれば承認すると言った。これは将来の問題ではなしに、当然池田内閣としてはこの問題については考えておかなければならない。その点は、二つの中国については、ここでお聞きをしますが、何ともお答えができないのか、絶対反対なのか、どうなのか、その点だけひとつはっきりしておいてもらいたい。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、中華民国を正統政府としていま認め、友好の関係にあるのであります。そうして、片一方は承認しておりません。だから、こういう問題について、両方ともきらっている問題を、その隣の総理大臣が結論を言うことは、これは不見識だと思います。また言うべきではありません。
  101. 横路節雄

    横路委員 台湾、澎湖島は将来どこに帰属するのだったのですかね。台湾並びに澎湖島は将来どこに帰属するのですか、あれは。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題はむずかしい問題でございまして、カイロあるいはポツダム宣言におきましては、中国に入れるということに一応の話はなっておりますが、日本との平和条約では、日本は放棄したということだけで、どこに帰属するともきまっていないのが実情でございます。しかし、いま中華民国はあそこを実際上支配しているということは事実でございます。そうしてカイロ、ポツダム宣言の条項にあることもみんな認めているところであります。
  103. 横路節雄

    横路委員 私は、もう一ぺんこの問題についてお尋ねをしておきたいのですが、カイロ宣言並びにポツダム宣言——カイロ宣言を受けてポツダム宣言で降伏を受諾した、そうして台湾、澎湖島は中国に帰属すべきだ、この点は、基本的な方針は、池田内閣としてももちろん認めているわけですね。その点だけをひとつお答えいただきたいと思います。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 カイロ並びにポツダム宣言に、帰属すべきだという規定があることは認めております。しかし、平和条約におきましては、日本が放棄しただけで帰属はきめていないのがいまの条約上の解釈であるのであります。
  105. 横路節雄

    横路委員 次に、私は池田総理に同じく中国問題についてお尋ねをしたいわけですが、非常な急テンポで、総会までのわずか十カ月足らずの間に、国連代表権の問題その他が出てくるが、しかし、いまあなたが言う政経分離のたてまえからいっても、池田内閣としてはやれることがあるのではないですか。中華人民共和国との間に、政経分離だと言うが、やれることがあるではないですか。たとえば台湾の国民政府を承認している国でも、貿易で政府間貿易協定をやっているではありませんか、台湾の国民政府を認めている国でも通商代表部を置いているではありませんか、それぞれの国で。中共との間にこういう点については意思は全くないわけですか、その点はどうなんです。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 民間の分は貿易増進をはかるようにあれしますが、通商代表部を、あるいは政府の代表的のものを置く考えはございません。
  107. 横路節雄

    横路委員 大平外務大臣世界に例がたくさんございますね、国民政府を承認していながら、対中共との間に政府間の貿易協定をやっている、通商代表部を置いているところがございますね。二、三の例をあげてみてください。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん恐縮ですが、実例を存じませんから、事務当局から答弁いたさせます。
  109. 横路節雄

    横路委員 大平外務大臣、何をおっしゃる、何をおっしゃるのです。実例を存じないから事務当局から話をする一あなたのほうは政経分離でやっていると言っている。これが外交基本方針だと言っている。外交基本方針だと言っているが、やっているではないですか。それをあなたは全然知らないて——いや、御存じなら御存じでいいですよ、知っているけれども忘れたと、それならいいけれども、全然知らないで専務当局に答えさせるなんて、そういう手はありますか、その点どうなんです。——だれなんだ、一体。   〔「質問者は聞いていないぞ」と呼ぶ者あり〕
  110. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待てよ。   〔「アジア局長、名前も言われないのにどうして答弁するか」「委員長が指名していないじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 国府を承認している国で、北京に通商代表部を置いている国はないと承知いたしております。
  112. 横路節雄

    横路委員 貿易関係政府間の貿易協定はどうです。政府間の貿易協定はどうです。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 同様にないと承知しております。
  114. 横路節雄

    横路委員 レバノンは国民政府承認の国です。北京の中共政府との間に一九五五年十二月三十日に貿易協定をやっているではないか。やっているではないか、一体それは何です。いまやっていないなどと言うのはとんでもない話です。これはちょっと例は違うが、ブラジルは国府承認国だ。しかし、一九六一年八月二十一日に北京との関係では両方とも国立銀行間の支払い協定を結んでいる。レバノンはやっている。ところが、もう一つは、シリアは一九六一年末まで、この期間は国府を承認して、北京を承認していなかったが、その間はシリアに北京の代表部を置いていたのだ。レバノンは現にやっているではないか。そういうことを一体外務大臣、事務当局だけにおまかせになって、そうして池田総理政経分離とは、ただ物さえ売ればいいのだ、物に精神がないのがいまの欠点なんですよ、池田総理。いまの日本の、この社会不安というのは心がこもっていないのです。言うならば、北京政府との間のいわゆる政経分離、いわゆる物さえ売ればいいのだ、物さえ売ってもうかればいいのだという精神と相通ずるのです。私はこういう点についてははなはだ遺憾だと思う。  次に、私は中国問題について総理、あなたにぜひひとつお尋ねしておきたいことがあるわけです。ほんとうは貿易問題についてももう少しお尋ねをしたかったのだけれども、時間がありませんから……。  ただ、通産大臣に一つだけ、いわゆるビニロン・プラントの輸出については、何かあなたのほうで年間二千万ドルとか三千万ドルのワクを設けて、それ以上は許可しないというのが、今日のいわゆる日中貿易の最大な障害であるとみんな言っているのです。そういうワクを設けているのかどうか、その点明らかにして下さい。
  115. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、このビニロン・プラントの問題は、倉敷のビニロン・プラントを延べ払いで出すことを認めておるわけでありますが、そのほかに、プラントの問題で三つばかり話があることは事実であります。しかし、まだこれは政府のほうに正式に、どうしてくれ、こうしてくれという話は来ておりません。が、これは、この前の予算総会においても政府態度として申し上げておるのでありますが、低開発国との関係あるいは西欧との関係等におきまして、西欧より以上の条件でやることは好ましくない。同時にまた、低開発国からもそういうプラントの相当な申し込みがあります。そうすると、そういうものと比べてみて、あまり量が中共にばかり偏するというと、これはやはり低開発国等から、それじゃどうもわれわれのほうはどうしてくれるんだ、こういうような意見も出てくることもありますので、あまり一挙にふやすことはどうであろう。そうすると、去年が二千万ドルということであれば、まあ金額で、はっきり一ドルふえたからどうとかこうとかいうわけではありませんが、大体五割くらいふやした三千万ドル前後くらいで見ていってはどうだろうか、民間貿易の関係も見てみまして、まあそれくらいのところではどうだろうかという感触でおることは事実でありますが、はっきり一切これ以上はいけませんということにはしておりません。また、そういう金額で押えられないで、事実上、もっと有利な条件で貿易ができるということであれば、これはまた考えてみる必要はあるかと思うのであります。いまのところは、そういう感触でこの問題を見ておるわけであります。
  116. 横路節雄

    横路委員 池田総理お尋ねをしたいのですが、私は中国問題の最後にお尋ねをしたい点は、「私は、これらの認識のもとに、国民諸君とともに、現実的な政策を慎重に展開していきたいと思います。」と、あなたは最後にそう述べていらっしゃる。そこで私は、「国民諸君とともに」と言うが、国民の九九%までは中華人民共和国との間のいわゆる国交回復をみな望んでいる。あなたはそのことについて、はっきりどうも認識を誤っている。ここで現実的な政策を慎重に展開していくというが、何ら具体性はない。しかし、私は、これからあなたにわれわれの提案を申し上げたいのは、第一点は、本会議でわが党の河野議員から、あなたにお話しをしたように、この際、池田内閣としては、対中国問題は一挙に承認とまであなたの立場からいかないであろうが、これから動いてくる世界情勢に対応して、やはりアメリカとは違って、自主的な立場において中華人民共和国との間に国交関係外交関係を樹立しなければならぬ。そこでこの際、池田内閣としては特使を北京に派遣すべきだと思うが、どうか、重ねてお尋ねします。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は承っておきますが、私は、いま直ちにという考えは持っておりません。
  118. 横路節雄

    横路委員 いま池田総理から、池田内閣として特使を派遣する考えはないというお話でございますが、私のお尋ねをしておきたい第二の点は、あなたは、総理という立場であると同時に、自由民主党の総裁です。そこでこの際、自由民主党、社会党、その他各党の国会議員団の代表をもって、あなたは自由民主党の総裁として、各党から選ばれた国会議員をもって構成する国会議員の代表団を北京に派遣をして、そうして将来にわたる友好関係について十分話し合いをする、こういう点においてはどうですか。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、総裁としてお答えする場合におきましては、党の執行部にその点につきまして検討をしてもらうことにいたしましょう。
  120. 横路節雄

    横路委員 しかし、あなたは総裁なんですから、その点についてはどうなんですか、考えておくというのですか、どうなんですか。それとも全然考えには値しないというのですか。そういう点は非常に将来の両国間の外交関係樹立には役立つと思うが、その点はどうなんです。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 いまわが党が絶対多数を持っておりますし、しかも、私はいま政経分離方針で進んでおります。したがって、いま直ちに中共を認める考えはございません。この前提から申し上げまして、絶対多数をとっているわが党が、正式に党として中共へ行くことにつきましては、にわかに賛成しかねます。
  122. 横路節雄

    横路委員 いま私が言ったのは、あなたの党代表が単独で行けと言ったのではないのです。各党の代表をもって構成する国会議員団を派遣してはどうかという、その点には考慮する値があるのか、その点は全然拒否をするのか、その点明らかにしてもらいたい。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 直ちに総裁としての意見を言えとおっしゃれば、私は、公党として、しかも絶対多数をとっているものが党の決議による派遣ということにつきましては、賛成しかねます。ただ、任意に個人の資格で行かれるということにつきましては、従来も例がございますし、私は、それはやぶさかではございません。
  124. 横路節雄

    横路委員 どうも総理は、ちょっと私の質問を勘違いしていらっしゃるようだ。私は、任意に行けと言っているのではない。各党の代表をもって構成する国会議員団を派遣してはどうかと、その点を聞いているのですよ。あなたのほうで単独で行きなさいなんて言っているのではないのです。
  125. 池田勇人

    池田国務大臣 その点は、公党の決議として代表として派遣することは、私は賛成できない。
  126. 横路節雄

    横路委員 それでは、私は、中国問題について、最後に池田総理お話しをしておきたいのです。あなたは「国民諸君とともに、現実的な政策を慎重に展開していきたいと思います。」と言っているが、何もあなたは現実的な政策はさらにない。われわれの一切の提案も拒否をしている。しかし国民の九九%は、中華人民共和国との国交関係、正常な外交関係の樹立を望んでいる。反対しているのはだれかといえば、あなたの党内における一部の、極右的なそういう諸君だけです。それは台湾の国民政権ともつながり、日本の右翼ともつながっている。あなたがもしもほんとうに日本の将来の外交をあやまちがないように、恒久的な平和を念願しようとするならば、中国との間の国交回復は一日も早くやるべきだ。かつて当時の鳩山総理は、党内の半分の反対を押し切ってやった。もちろん、これは平和条約ではなくて、暫定協定という立場であったけれども、当時社会党は暫定協定やむを得ないというので、鳩山総理を激励して、今日の日ソの国交回復は開かれた。平和共存へ大きな動きを示した。私は非常に残念に思う。あなたには、せめて鳩山さんのごとく、将来にわたる日本の恒久平和、アジアにおける平和、日本中国との正常な外交関係の樹立をいましょうという前向きな姿勢については、私どもは十分見ることができなかった。あなたは、党内における七月における総裁公選だけが頭にあって、将来にわたるそういう大局の見通しを誤っているではありませんか。党内におけるそういう極右的な分子、右翼とのつながり、台湾政権とのつながりだけを見ているではありませんか。私は、池田内閣のいわゆる中国に対するそういう正常な国交関係が、われわれのこういう考え方をいれて、一日も早く樹立をするような方向に動いてもらいたいと思うが、この点どうです。一つだけ聞いておきたい。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたは、いまの状態において中共と直ちに外交関係を結べということは、わが党のうちでも大多数がそういう意見で、反対するものは一部だとおっしゃるが、それはあなたは言い過ぎであると思います。横路さん、それは言い過ぎであると思います。そういうことをおっしゃることは、私はいかがなものかと思うが、特に私に対して、総理は総裁公選しか、ほかに頭がないのだ、考えていないということは、少し言い過ぎじゃございませんか。それは、あなたの意見だからいいですけれども、そういうことをおっしゃって、ほんとうに腹を打ち割ってやろうと言ったって、そんな、総理はほかのことを考えない、総裁公選しか考えていないというような頭では、これはほんとうに議会の正常化も何もできぬ。私は、誠意をもって言っているつもりでございます。だから、事実をよく見てお話しくださいませ。それは、理想としては、われわれは前向きでこういう状態が現出することを願うが、いまの状態ではむずかしい、こう言っているんです。そういうむずかしい問題をどうやってやるかということについて、具体的な問題は申し上げられませんけれども、われわれとしては世界の平和と繁栄のために極力やっておるのであります。しかし、日本外交中共外交だけじゃない、それも重要な問題でございましょうけれども。そうしてまた、ソ連と日本とが暫定協定を結んだあのときの世界状態と、いまのこの中共問題が非常に重要な問題としてクローズ・アップされたときと、それを同じようにお考えになるということは、いかがなものかと思います。
  128. 横路節雄

    横路委員 いまの池田総理のせっかくのおことばですが、私どもも、きょうの国会論議を通じて、やはり対中国問題については、池田内閣の前向きの姿勢を期待していたのです。その点について、あなたは、いわゆる自主的な日本外交、自主的な池田内閣外交ということについて、明確にお話をなさらないから、私はそういう点を指摘したのです。  次に、大平外務大臣に、私は、日韓会談について二つだけお聞きをしておきたいのです。  一つは、本会議における演説で、一括解決と、こういうように言っている。その一括解決で私が聞きたいのは、二つです。一つは、漁業権の問題、一つは竹島の問題です。漁業問題については、これだけ申し上げておきます。一つは専管水域十二海里というのは海岸線に沿うてのことだろうと思いますが、どうか。したがって、十二海里の外の共同水域二十八海里も、同様海岸線に沿うてのことだろうと思うが、その点はどうか。  第二の竹島問題については、竹島問題がどういうような処理のしかたになったときに、解決をしたといって、請求権その他の問題を入れて一括解決をしたと、こう言うのですか。この二つについてしぼって私はお尋ねをしておきたい。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 専管水域の線の引き方の問題につきましては、これは漁業専門家同士の間で話をいたしておるわけでございまして、どういう基点で線を引くかということにつきまして、鋭意折衝中でございます。  それから竹島問題につきましては、私どもといたしましては、国際司法裁判所に提訴し、向こうも応訴するという形を提案いたしておるわけでございますが、ただいままでのところ、先方は、それより前に第三国の調停を頼み、そしてそれが不調の場合に国際司法裁判所に提訴し、応訴するという手順はどうだろうかというような内意が漏らされております。しかしながら、いずれにいたしましても、竹島問題の解決、あるいはまた、少なくともどういう方法で解決すべきかということにつきましては、完全に合意しておく必要がある、そう考えております。
  130. 横路節雄

    横路委員 いまの竹島問題で、韓国側としては、第三国の調停、日本としてはいわゆる国際司法裁判所、池田内閣としては、どちらの場合に竹島問題について最終的な合意に達した、こういうことを言うのですか。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、両政府で合意しなければならぬわけでございます。私が申し上げますのは、私どもの提案のような趣旨で先方が同意していただくことを希望いたしますけれども、しかし、それがどういう結末になりますか、ただいまのところ私は軽々に判断できませんが、私が申し上げているのは、竹島問題はこういう方法で解決するんだということ、その方法は少なくとも完全に合意を見ておかなければいけないというのが、最後の線でございます。
  132. 横路節雄

    横路委員 外務大臣のいまの点は、はなはだあいまいです。あいまいですが、この点はあとで石野委員から詳細に御質問をいたしますので、私は、二つの問題の概括的なことだけをお尋ねしておきたいと思います。  次に、大平外務大臣お尋ねをしたいのですが、この間の南ベトナムのクーデターです。十一月一日。あのときに、日本の第七艦隊は事前に出動しておるわけです。こういう点については、あなたのほうでは、通告その他を受けておりますか、相談していますか、どうですか、お尋ねしたいのです。そういう南ベトナムのクーデターについて、アメリカ側から何か事前に話があったのか、あるいは事後に情勢報告があったのか、その点についてお尋ねします。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 日本に第七艦隊はございませんで、アメリカの第七艦隊の移動ということにつきましては、日本政府側は、所定の手続によりまして、その時々通報を受けておるはずでございます。
  134. 横路節雄

    横路委員 私が聞いておるのは、外務大臣、あの南ベトナムのクーデターのときに、何か事前に相談があったか、事後にでもあなたは外務大臣として報告を受けたかということを聞いておるのです。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 いまは確たる記憶は私にはありませんが、当時の記録を調べまして報告します。
  136. 横路節雄

    横路委員 これは外務大臣、記録を調べるというほど——調べなくてもわかるのです。私は、この際、池田総理並びに外務大臣、その他防衛庁の長官お話をしておきたい。このごろは、安保条約の運用というのはでたらめです。安保条約の第四条に何と響いてあるのです。「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」と、第四条では随時協議をうたっておるではありませんか。あなたのほうは、記録を調べなければわからないと言うのですが、全然やってないのです。十月八日には、アメリカは南ベトナムに対する経済援助の一時停止を確認、十月二十一日に、アメリカは南ベトナムの特殊部隊に対して財政援助の打ち切りを通告、十一月一日には、マクナマラ国防長官は、米軍の南ベトナム地域への移動を命令しておる。これは極東の地域ではありませんか。第四条において、極東の地域においていわゆる平和と安全が阻害されるような場合においては、いずれか一方がやるということになっているではありませんか。当時の新聞は何を報じているか。これは十一月二日、おくれてからの新聞ですが、政府筋の情報によると、横須賀を基地とするアメリカの第七鑑隊は、旗鑑プロビデンス、一万六千トン、空母コーラルシーなど、ほとんどの鑑隊は全部一週間以内に出動して、南ベトナムの海域に集結していると言っているではありませんか。これはどうなんです。しかも、私は、こういう新聞記事があるから調べた。申し上げますかね。当時、横須賀と佐世保には第七鑑隊は一隻もおらぬじゃないですか。全部南ベトナムの海域に出動しているではないですか。全部、早ければ十月の十八日、おそくても十月の二十八日から。そうして日本が承認をした十一月の八日以降に、逐次南ベトナムの海域から帰ってきているではありませんか。横須賀、佐世保に一隻もいないじゃないですか。こういう重大な問題について、この安保条約第四条について——安保条約の六条で日本の施設区域を提供している第七艦隊が、全部出動している。一体全然協議しなかったのですか。どうなんです。大平外務大臣。安保条約については、一つも運用していないじゃないですか。極東の平和と安全が阻害される場合には随時協議をするというが、一つもやっていないじゃないですか。これはどうです。知らないのでしょう。知らないなら知らないでもいいですよ、どうせ知らないのだから。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約に基づきまして、日米間に正当な手続のもとに軍艦の出入が行なわれておると思うのでございまして、第七艦隊の移動という米国艦隊の移動につきまして、私どもは協議する、私のレベルにおいて協議した、そういうことはございません。
  138. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、日米の安保条約がいかに一方的にアメリカによってやられているかということは、これでよく一わかる。私は、一つ、二つだけ指摘しておきたいのです。攻撃空母のコーラルシーというのは、六万三千四百トンです。この艦載機には全部核兵器を搭載しているです。しかも、これは明らかに南べトナム海域の戦闘作戦行動に出ている。いま外務大臣に聞いたが、一つもわからぬと言う。安保条約四条が何ら運用されていない。全くでたらめそのものです。このときは、アメリカの第七艦隊は横須賀、佐世保に一隻もいないですよ。十月の十九日ごろに出港して、おそくても十月二十九日ごろに出港して、日本が承認して初めて帰っている。あれだけの大きい問題です。安保条約は一つも運用されていない。いま外務大臣に聞いても、全然わからぬと言う。  外務大臣、もう一つあなたにお尋ねしたい。いま入った情報ですが、南ベトナムのクーデターが本日暁に起きたという情報がありまして、それについてはいろいろ問題がここにたくさんございますが、あなたのほうでは、そういう点について承知しているのかどうか。もしもこの点はあなたおわかりにならなければ、だれか外務省の情報当局から、もしもそういう情報が入っていれば知らしてもらいたい。いま私のところに、本日明け方南ベトナムでクーデターが行なわれたという情報があったが、こういう点はどうなんです。だれかあなたのほうから、それこそ今度は事務当局に答弁させていいです。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 けさ、サイゴンにおけるクーデターが勃発し、軍事革命委員会議長の邸宅を包囲し、そして内務大臣、参謀総長その他四名が逮捕されたということは、APその他各方面から私のところへきております。
  140. 横路節雄

    横路委員 いまの点は、安保四条に言う「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する」、この点については、いま総理はそういう情報を受けたというが、外務大臣は、アメリカ大使館に対して、それは、どうなんだとお聞きになりましたか。安保条約第四条というのは、そのことを言うのですよ。この点はどうなんです。全然聞いてないのですか。聞いてなければ、だれか——曾野局長でも聞いていたら、局長でも出して答弁させなさい。こういうときに事務当局を使うのですよ。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムが安保条約にいう極東の地域に入るか入らぬかの問題につきましては、私も若干疑問を持っておりますけれども、しかし、いずれにいたしましても、極東の地域に起こりました問題につきまして的確な情報をとることは、横路委員がおっしゃるとおりでございますので、極力努力いたしたいと思います。
  142. 横路節雄

    横路委員 私は、大平外務大臣のいまの答弁について、基本的にあなたは誤りがあると思う。いま、フランス中共承認は何か問題なんです。フランス中共承認は、このままではベトナムにおけるところのアメリカはどろ沼状態になる、インドシナ半島は将来ともに中立地帯にしなければならぬ、いろいろな考えがあってやったことなんです。いまアメリカが、中共は承認できないのだ、中共は好戦的な態度をとっておるというのは、何を言っておるかというと、この南ベトナムにおける戦闘を言っておるのです。ラスク長行が新聞記者会見で言っておるじゃありませんか。あそこの戦闘で、中共側だと思われる、残していった七トンの爆弾を拾ったとかなんとかと言っておるじゃありませんか。いま、対中国問題についてフランスは何を考えておるか。南べトナムでアメリカはどろ沼になっておるのだ、それを救ってやるのはおれたちしかないのだと言っておるじゃありませんか。いまあなたのお話で、南ベトナムが極東の範囲に入るかどうかわからぬなんということは、一体何を言うのですか。安保条約の、審議の中で、愛知委員がここにいるが、はっきりしておるじゃありませんか。安保条約の第四条で愛知委員が指摘したように、南ベトナムは初めから入っておる。これは入っておるのです。あなたはいま、アメリカ大使館に全然聞いてないですか。聞いてないならば、直ちに聞いて——ここでいま私が言っておるように、十一月一日の南べトナムのいわゆる第七艦隊の出動は、この第四条の違反ですよ。四条の違反なん、だ。あなたは答弁しなさいよ。しなければ、だれかいるでしょう。局長いるだろう。一体何をしているのだ。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、あなたが御指摘になるように、南ベトナムの事態につきましては、わが国としても重大な関心を持っておるわけでございまするから、ただいまそういう情報が入ったばかりでございますが、われわれのほうといたしましても極力真相を把握せなければなりませんし、その背景を究明しなければならぬことは当然でございます。ひとりアメリカ大使館ばかりではなくて、私どものルートを通じましてこの問題の究明に努力いたしたいと思います。
  144. 横路節雄

    横路委員 外務大臣に私、いまここで要求いたします。安保条約第四条に基づいて、南ベトナムでは国際の平和及び安全に脅威が生じた。したがって、いずれか一方の締約国の要請により協議するとなっている。だから、あなたは、直ちにこの委員会が休憩になったならば、アメリカ大使館との間にこの第四条に基づくところの協議をして、午後再開の本委員会に、この南ベトナムにおけるクーデターの状態、それが一体極東の平和と安全にどういう脅威を生ずるのかどうか、こういう点についてあなたはぜひひとつやって、午後再開劈頭の本委員会において、ぜひひとつ報告をしてもらいたい。どうですか。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 第四条に基づく協議、委員会を開くか開かぬかという問題もあわせて急いで検討さしていただきます。
  146. 横路節雄

    横路委員 それでは、委員長、ちょっと私から……。実はほんのあとわずかしか時間が残っておりませんが、私もそんなに時間をとらせませんから、できれば、大平外務大臣も、どういう状態になっているのか、それが一体どの程度極東の安全と平和に脅威を生ずるのか、アメリカ側と話をしてやりたいと言うのですから、ひとつこの際、あとわずかな時間しかございませんが、第七艦隊との関係で非常に重要ですから、ひとつ午後の壁頭に報告をしていただいて、残余私に少し——ほんの少しだけ質問するということにして、この際、せっかくいま南ベトナムの問題が出たのですから、委員長において、そういう取り扱いを、ぜひひとつしていただきたい、私からお願いをいたします。
  147. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  148. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 速記を始めて。  ただいまの横路節雄君の発言に対しまして、外務大臣より答弁をいたします。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 南べトナムに生起したと伝えられる事態につきましては、もっと、正確な情報を収集することと、それから安保条約との関連をいま御指摘でございますので、その点も究明いたしまして、午後の委員会で報告します。
  150. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま外務大臣より答弁がございましたが、再開後、この問題にのみ限って外務大臣より発言をいたしまして、横路君の質疑をこの点に限って許します。     —————————————
  151. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、内閣官房長官から、昨日の川俣君からの、要望に対しまして発言がございます。これを許します。内閣官房長官
  152. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 昨日川俣委員からお話のありました点、三つございましたが、各省所管の各日明細書につきましては、各省から国会に参考資料として提出いたしておるものでございますが、作成を促進いたしまして、二十九日中にすべて提出を終わっております。きのう終わりました。  それから第二には、地方財政計画でございますが、いま自治大臣のお手元で作成中でありますが、来月の上旬には提出をいたします。  また、予算関係の法案につきましては、各省それぞれいま鋭意作成中でございまして、来月の十五日までには必ず提出するようにいたしたいと思います。御了承願います。
  153. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 午後は一時より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後、零時六分休憩     —————————————    午後一時六分開議
  154. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度総予算に対する質疑を続行いたします。  この際、横路節雄君の質問に対しまして外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。  外務大臣大平正芳君。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 午前中の委員会で横路議員から御質疑がありました、南ベトナムにおいて今朝起こりましたクーデター事件につきまして御報告いたします。  十二時過ぎにようやく現地のわがほうの大使館と電話連絡がつきまして報告を受けましたところ、次のようでございます。昨二十九日の夜半から今朝にかけまして、第一軍管区のカーン中将、第二軍管区のティ中将、第四軍管区のコー少将がクーデターを企てたものと見られる。市内の様子は、戦車数台が出動しておるのみであって、銃声一つ聞かれず、三十日午前九時ごろには平静に復しておる。クーデター軍側はトー首相、スアン警察庁長官、キム参謀総長を留置し、ミン革命軍事評議会議長を自宅に軟禁しておる模様である。現在参謀本部内でクーデター指導者側と現政権首脳者との間で議論がかわされており、報道関係者が参謀本部を囲んでおる様子がうかがわれる。  なお、今次クーデターには米国は一切関与していないというのが現在一致した現地の観測である。これが先ほど現地大使館から電話で連絡がありました実相の報告でございます。  これに関連いたしまして、安保条約四条との関係について御質問がありましたので、政府側の見解をお答えいたしたいと思います。  ただいまのベトナムにおけるクーデターの事態は、現在までのところ真相が明らかでございませんけれども、安保条約第四条に申しまする日本国の安全、また極東における国際の平和と安全に対する脅威に当たるものとは考えられない。御承知のように、安保条約第四条の協議は、日米いずれか一方の当事者の要請によって開かれるものでございますが、ただいまのところ、政府は、この第四条の協議を行なうために米国側に申し入れる考えはございません。しかし、この事態には深い関心を持っておりますので、通常の外交経路を通じまして、情報の交換、在留邦人の保護等には万全をはかってまいるつもりでございます。現在までのところ、約六百人在留邦人が南ベトナムに在留いたしておりますが、安全でございます。なお、在京の米仏両大使館に連絡をいたしましたが、両大使館とも何らまだ公電に接していないということでございますし、在日米軍も何らの動きを一示しておりません。
  156. 横路節雄

    横路委員 十一月一日の南ベトナムにおけるクーデターとの関連で、さらにお尋ねをしたいと思うのです。いま外務大臣の御答弁によりますと、今回の南ベトナムのクーデターには、米軍は一切関係をしていない、こういうお話をされて、安保条約第四条にいう、いわゆる極東における国際の平和と安全に対する脅威が生じたという意味における一方の締約国の要請による協議はする必要がないと、こういうのであります。  それならばお尋ねをしたいのですが、昨年の十一月一日のクーデターは米軍が関与している。その一つはどういうことであるかというと、先ほど私が午前中に指摘しましたように、十月八日米当局は南ベトナムに対する経済援助一時停止、特に問題は、十月二十一日の南ベトナム特殊部隊に対して財政援助打ち切りの通告、これによっていわゆるクーデターが行なわれてきた。そして十一月一日にはいわゆる米軍の南ベトナム地域への移動をマクナマラ国防長官は命令をしている。これは統合参謀本部からフェルト太平洋軍司令官を通じてやっている。そして私が指摘しましたように、日本における横須賀、佐世保の、安保条約第六条によって日本の施設区域を利用している米軍第七艦隊は全部これに出動しているということになれば、十一月一日の時点においては、米軍が関係していることは明らかだ。そうすれば安保条約第四条にいう随時協議にたることは明らかだ。先ほど私が外務大臣お尋ねをしたら、記録を調べてみなければわからぬと言う。記録を調べてみなければわからぬ程度のものであれば、これはやっていないわけです。なぜならば、やる人数はあなたと防衛庁の長官アメリカの大使と軍司令官、その関係しかないのだから。十一月一日には米軍が関与している。この南ベトナムの地域におけるクーデター、この状態は、極東全体に対する安全に非常に脅威を与えておる。米軍は移動命令が出ている。これは極東の安全と平和の維持のために、日本の施設区域を提供するための第六条でいう米軍だ。あのときは安保国会でずいぶん論議をしたけれども、日本に入って、日本の施設区域を利用する限りは、日本の施設区域を利用しておるアメリカ軍隊、第六条にいういわゆる事前協議でないとしても、これは明らかに第四条にいう随時協議になる。第四条にいう随時協議をしていないのはなぜだ。あなたはいま米軍が関係していないから今回は第四条ではないと言われたが、前の十一月一日は明らかに関係している。どうしてやらなかったのです。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 今回の事件は、アメリカが関与していないということが現地の一般の観測であるということだけをつけ加えて申し上げたわけでございまして、それなるがゆえに協議をやらないのだということを申し上げておるわけでは決してないわけでございます。私どもとしては、今度の事件というものは、安保条約にうたわれておる極東の安全と平和に対する脅威ということには当たらないという見解で、こちらから要請するつもりはないということをすなおに考えておるということでございます。  十一月の事態につきましてなぜ協議しなかったかということでございますが、それより前に、私が記録を調べてみたいと申し上げました意味は、協議の記録ではなくて、それらに出動いたしました艦船が日本の施設をどのようにして離れたか、そういうことの記録が必要であればとりたいということを申し上げたわけでありまして、その当時協議会を開いてないことは私も記憶いたしておるので、はっきりいたしておるわけでございます。私は、その当時米軍がわが国におきましても声明を出しましたように、予防的な任務として東南アジアの水域に出るのだという趣旨の談話がたしか出ておったと思うのでございまして、今日起こりました事態と同様、南ベトナムのクーデターということそれ自体が、安保条約にうたわれておる極東の平和と安全につながる重大な——重大と申しましては語弊がありますが、それの脅威に当たるという判断ではなかったわけでありまして、したがいまして、協議会を要請することは私のほうもしませんでしたし、先方も私どものほうに要請がなかったということでございます。
  158. 横路節雄

    横路委員 いまの外務大臣の御答弁は、予防的な措置としてその海域に出動するということは談話として出ておった、こういうことです。予防的な措置として——いまそういう御答弁でございました。これは一体、いまあなたが第四条にいういわゆる随時協議の対象にならないと言うのは、南ベトナムが極東の範囲でないというのか、十一月一日の状態がいわゆる極東の平和と安全に対する脅威を生じたとは考えられないからそう言うのか、その点はどうなんですか。  そこで、時間もありませんから私の意見を先に言っておきますから、外務大臣お聞きになってください。あなたがいま南ベトナムがかりに極東の範囲ではないなどと答弁したら——三十五年二月二十六日、安保の委員会で当時の岸総理大臣からあらためて極東の地域に対する統一解釈としてここで統一的な見解を発表されて、それに愛知委員質問された。第四条にいう極東、第六条にいう極東の範囲は明確にしてある。第四条にいう極東の範囲とは、南ベトナムも含まれておるということで当時の岸総理も言っておるし、特に愛知委員は指摘をして、岸総理はそれに答弁しておる。だから、南ベトナムがいわゆる第四条にいう極東の範囲ではないなどということにはならない。これはあなたがそれを調べられたらいい。絶対にならない。第二の点は、十一月一日の状態は、横須賀、佐世保における第七艦隊は全部出動しておる。見てごらんなさい。当時横須賀、佐世保にはアメリカの第七艦隊は一隻もいないじゃないですか。全部出ておる。しかも明かに作戦行動に準じて出ておる。先ほどからの私と池田総理の問題の中で、何が問題になっておるかというと、今日一番極東における紛争の種は何か、それは南ベトナムである、南ベトナムに対して中共が攻勢的な態度をとっておるというのが今日アメリカ中共を絶対に容認できないというところでしょう。アジアにおいては、南ベトナムこそいわゆる脅威を生ずるいま最大の焦点なんです。これほど重大な問題なのに、十一月一日の段階で、これは安保条約第四条にいういわゆる随時協議の対象にならないなどと言うのは、私は外務省の怠慢だと思う。まず極東の範囲においてしかりだ。十一月一日南ベトナムにおいて行なわれた状態においてしかりだ。今日のアメリカ中共が一番緊迫した状態というのは、それをいっておる。何で一体しないんですか。怠慢と言うよりほかない。あなた知っていますか、横須賀と佐世保に一隻もいなかったのですよ。みんな十一月一日の一週間前に全部集結しているんですよ。艦載機には当然作戦行動だから全部いわゆる核装備のものは核装備、普通火薬のものは普通火薬で作戦行動に従事をしている。こういう重大な問題なのになぜおやりにならないのですか。もう一ぺんその第四条にいう極東の範囲についての外務省の考え方、それと十一月一日の事態がどうなのか、その点について、いまの答弁ではだめです。もっとはっきりやってごらんなさい。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどの午前中の私の答弁の中に、南ベトナムが極東の範囲に入るか入らないか、若干の疑問があるという趣旨のことを申し上げましたが、これはいま横路さんが御指摘のように、従来いろいろ国会で精力的な究明があった問題でございますので、私といたしましても、十分従来の記録を調べまして、はっきりさせておかなければならぬ問題だと心得ております。しかし、今日私が答弁申し上げておる、つまり協議会を開くか開かないかの判断といたしまして、私はそれにかかわりなく、南ベトナムに起こった十一月の事態が、安保条約にいう日本の安全、または極東の安全と平和に対する脅威と私どもは判断しなかったと申し上げておるわけでございます。それが怠慢であるか、認識不足であるかという御批判はあろうかと思いますけれども、私どもはそういう判断に基づいて協議会は開かなかったということを御答弁申し上げたわけです。
  160. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、いまあなたの前段の答弁はたいへんですよ。あなたは、いまこう言っているでしょう。極東の範囲については若干の疑問がある、記録を調べた上で明らかにしたい、何を調べますか。極東の範囲が、あの安保条約において非常な問題になって、二月から最終的な五月まで二、三、四、五と約四カ月これをやっている。岸総理も何べんか変化をした下、二月二十六日の安保特別委員会において統一解釈としてやっているのです。第四条にいう極東、随時協議の場合における極東は、その場合には南ベトナムは入るのです。はっきりしている。それをいまさら記録を調べてみなければわからぬなんと言うならば、たいへん恐縮だけれども、またここで委員長にお願いして、この委員会を暫時休憩してもらって調べてもらう以外にないのですよ。そういうことを言うならば、記録を調べてと言うならばたいへんですよ。安保条約の四条できまっているじゃないですか。なぜそういうことをいまさら繰り返すのです。それならばまた委員長にお願いして、暫時休憩してもらって、あなたのほうでそのときの記録——私も記録を持ってきますから、何ページのどこにあるかがはっきりしているのだから、どうしてそういうことをおっしゃるのです。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへんことばが足りないので恐縮ですが、私が午前中に申し上げたのは、横路さんが指摘されるように、日本政府としての統一見解を、けさ私が正確に私の頭で理解しておらなかったということを申し上げたのでございまして、政府側にそういう統一見解がないと言ったわけじゃ決してないのです。その点は、私がよく勉強しておきますということを申し上げたのでありまして、ただいまの事案については、そういう極東の範囲の問題にかかわりなく、この問題につきましては、こういう判断でございますということをお答えしたわけです。
  162. 横路節雄

    横路委員 これは外務大臣、たいへん恐縮ですけれども、安保条約において一番問題のあったところです。いいですか、第六条にいうところの戦闘作戦行動に出る場合の、事前協議の場合の極東の範囲と、第四条にいう随時協議の場合とは——明確に話をしておる。いま何と言ったって条約を運用するのは外務大臣なんですから、私はあなたの見解を聞いておる。しかしながらあなたは、政府としての統一見解ははっきりしているだろうが、私が外務大臣として不勉強であったであろうから、したがって第四条については云々ということになればたいへんなことなんです。そういう意味で、もう一ぺん外務大臣に——いや、待って、長官にも聞きますから、まず当面の条約を運用するのは外務大臣なん、だから、そうでしょう、その外務大臣があいまいではだめです。もう一ぺんひとつ外務大臣
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムの陸上に起こった事件も、極東の平和と安全にかかわる、脅威に連なる問題である性質を持っておるというように政府の統一見解で最後的になったということを、私はこの委員会の休憩中に経緯を伺ったわけでございます。したがって、そういった点につきまして、私が不勉強のために十分精通していなかったことをおわびいたします。私がきよう申し上げておりますのは、十一月一日の事態というものの評価は、先ほど申し上げましたような認識に基づいたものでございますということでございます。
  164. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまの外務大臣の答弁で、安保条約にいう第四条の、このベトナムの陸上に起こったものの事態いかんによっては、極東の平和と安全につながるものである、こういうことについてはいまの答弁でお認めになったわけですね。それなら最初からそう言っていただければよかったのです。だから私はさっきから聞いておる。南ベトナムの陸上に起こった事件、それは海上も同じだ。そういう事件が極東の平和と安全に脅威を与えるおそれがあれば、当然協議すべきではないですか。そのために日本が安保条約六条で許して施設区域を提供しておる横須賀、佐世保から、第七艦隊が全部出動しておる。しかも作戦行動によって出たんだから、全部戦時武装で出ておる。核兵器も搭載しておる。それになぜしないかという問題が起きる。だから、私はそのことは外務省の怠慢であると思う。  そこで、もう一つあなたにお聞きしたいのは、これはいま入りました情報です。先ほどあなたが言われた、きのうからけさ明け方にかけてのクーデターについて、やはりアメリカ大使との間に十分、第四条にいういわゆる協議をする必要がある。いまあなたから御指摘になったカーン少将、中将とあなたはおっしゃったが、新聞では少将となっておるが、これはこう言っておるのです。「クーデターはラオス式の中立を押しつけられることから南ベトナムを救うためである。逮捕された四人は、フランス政府の出先と協力して、南ベトナムを中立の方向に向けようと企てていた。このような中立主義者の陰謀はフランス中共承認とも関連して、また対ベトコン政府、南北ベトナムの中立化で解決しようというドゴール提案に同調したものである。」こう言っておる。あなたのほうにそういう情報が入っておるかどうかわからぬが、これはやはりここ数日来において急激にベトナムに変化してきた情勢フランス中共承認と相まってやったことだ。これはあれですか、先ほどあなたはアメリカ大使に会ったのだけれども、いたのかいなかったのか知らぬけれども、この点は第四条にいう協議をする意図はないのか、私は絶対にすべきだと思う。そして十一月一日の時点においてもすべきものをしていないから、重ねて今度起きているクーデターだ。だから、当然私は第四条でいうそれをすべきだと思う。その点についてもう一ぺんひとつあなたにお尋ねしたい。条約の適用はいいかげんですよ。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは、そのことで協議を要請するつもりはありません。
  166. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私はあなたにお尋ねするが、いま、あなたは協議する必要はないと言っているが、安保条約の適用はでたらめですよ。でたらめです。第七艦隊について別府を使用させているのはどういう理由です。この第七艦隊を、ほとんど航空母艦その他について別府を使用させているのはどういう意味です。安保条約の第五条、交換公文、地位協定、合意議事録、何にもないですよ、そんなものは。なんで使用させているんです。いいですか。御存じですか。あなたは、もしもわかっていたら答弁してください。何によって使用させているのです。第七艦隊に対して全部根こそぎ別府を使用させているではありませんか。これは何によってやらせているのです。安保条約の六条のどこにあるのです。地位協定のどこにあるのです。合意議事録のどこにあるのです。どこにもないじゃありませんか。何でやっているのです。そういうのを。安保条約について全然でたらめきわまるそういう運用をしているから私は指摘しているのです。何か政府のほうで言い分はありますか。私はこれで終わりたいと思うのだけれども、委員長から注意されているから終わりたいと思うのですが、政府のほうで言い分があって答弁すれば、私もお尋ねしなければならぬ。どうですか。(「おかしい」と呼ぶ者あり)いや、おかしくない。これは重大な問題だ。
  167. 林修三

    ○林政府委員 これは、もう横路先生はよく御承知のことだと思いますが、安保条約に基づきます。いわゆる地位協定の第五条に港の出入国のことが書いてございます。そこで、港に入れるようになっておりますが、その場合の港は、合意議事録で通常開港をいうとなっております。通常開港をいうということで、結局不開港につきましても、日本側としてそれは差しつかえない場合にはできるということだと思います。
  168. 横路節雄

    横路委員 それは法制局長官、たいへんですよ。あなた、何を言うのです。それでは安保条約の第六条並びに地位協定並びに合意議事録によって使用させているのですか。そうなんですか。それは合意議事録のどこにあるのです。ないじゃないですか。私はあのとき、あなたも記憶があるでしょう、ここでやったのを。いいですか。私が、三十五年五月の十九日です。長官、一番あなたは知っておるから……。条約局長はあのときいないのだからだめだ。あなたは、ちゃんと聞いていた。長官、あなたはここで私の最後の質問に言っておるじゃないか。いいですね。通常開港が使用できるということになれば、——ちょっと、その途中から話をするのをやめろ。いいですか。私はあのときもこう聞いているのです。通常開港は第六条のいういわゆる施設区域ではない。したがって、これは事前協議の対象にはならない。通常開港を利用しての戦闘作戦行動は、事前協議の対象にはならないですよ。いいですか。なぜならば、第六条にいうのは、施設区域を提供した。それを利用しての戦闘作戦行動は事前協議の対象になる。しかし、通常開港を利用しての戦闘作戦行動は、それは事前協議の対象にならぬじゃないかと言ったら、あなたは、そのとおりだ、そうしておそらくアメリカはそんなことはしないでしょう。こういうんですよ。あなたがそのときには開港をいうので、不開港については安保条約の地位協定で許しているのですか。許している条項がどこにあるのです。合意議事録のどこにあるのです。
  169. 林修三

    ○林政府委員 普通の港に入ってきた場合に、その港に入ったから直ちにいわゆる地位協定による施設区域になるものではないということは、それはお答えしたとおりでございます。それはいま横路委員のおっしゃるとおりでございます。それは港に入っているという状況でございます。その港は、いまおっしゃったように、あるいは合意議事録では通常開港をいうんだということが書いてございます。通常開港をいう。したがって、それは常にあらゆる場合に開港に限るとまでは書いてないわけでございます。そういう意味で、そのときそのときのこれは港湾当局、あるいは外務省当局、あるいは防衛庁当局等の判断でやっておるものと私は考えております。
  170. 横路節雄

    横路委員 法制局長官、何を言うんです。去年私は辻原委員の関連質問だったからわずかだったけれども、あのときに当時の和田海上保安庁長官は何と言っているのです。いわゆる開港でない不開港に入ってくる、開港でないところに入ってくる場合には、安保条約、地位協定、合意議事録ではなくて、いわゆるソ連だとか、イギリスだとか、オランダとか、その他外交上の慣例に基づいて、そのときそのときイエス、ノーを言っているのだ。あなたはいま何と言っておる。あなたはいま合意議事録でやっておると言っているじゃないか、どちらが正しいんだ。
  171. 林修三

    ○林政府委員 私の答弁をあとでまたお読み下さればわかると思いますが、要するに安保条約では、あるいは地位協定、合意議事録では、開港に限るとは言っておらないわけでございます。不開港でよろしいということを当然には書いてございません。したがいまして、それは去年海上保安庁長官お答えしたとおりに、いわゆる外交儀礼として、国際儀礼として、そのほかの国の軍艦と同じように扱っておる、こういうことでございます。
  172. 横路節雄

    横路委員 それでは法制局長官、いわゆる安保条約や地位協定や合意議事録ではなくて、他のソ連だとか、イギリスだとか、オランダなどというのは普通の外交上の慣例に従ってやっておる、こういうわけですね。この点、はっきりしてください。
  173. 林修三

    ○林政府委員 さっき申しましたように、安保条約なり地位協定において、開港に限るとはどこにも書いてないわけでございます。いわゆる通常開港をいう、したがって開港ならざるところに入ることももちろん暗黙には認めております。しかし、その実際の手続は、いわゆる安保条約上の問題ではなくて、去年海上保安庁が申しましたとおりに、いわゆるほかの国の軍艦等との慣例によってやっているのだ、こういうことで、それは実際上そのとおりですから、そうだろうと私は思います。
  174. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 横路君に申し上げます。一つが幾つにもなっているようですが、どうか一つでやめてください。
  175. 横路節雄

    横路委員 もう一つだけ。長官、あなたのは違う。あなたは合意議事録で通常開港をいう。開港以外を使う場合はどうなっているのです。合意議事録で。何にもなっていないのですか。合意議事録で、開港以外を使う場合はどういう場合に使うとなっているのです。
  176. 林修三

    ○林政府委員 これはおっしゃるとおりで、合意議事録には、通常開港をいうとしか書いてないわけでございまして、それ以外のことは書いてございません。したがいまして、それはもちろんあの地位協定に基づく合同委員会の部会等で取り上げれば取り上げていい問題でございます。しかし、実際はさっきから申しますとおりに、海上保安庁はほかの国の軍艦と同様に扱っておる、不開港の場合は。そういうことでございます。
  177. 横路節雄

    横路委員 私は一つだけ聞いてこれでやめます。法制局長官、あなたの話もうそなんです。私は去年はたいへん疑問に思ったから、今度運輸省の海上保安庁から議事録をとったわけです。出せと。今度見ましたら、去年の外交上の慣例によって入ってくる、そういう手続ではないのです。いいですか。去年、和田海上保安庁長官は、外交上の手続だという。今度はこれは私は正式に要求した資料で持ってきたわけです。外国軍艦等入港通報系統図というのでございまして、そうしてこれは明らかにこのアメリカ軍艦についての不開港の場合は、あげて合意議事録によってやっておる。ここで問題になっているのは、何と言いますか、待避とか、避難とかいうこと。しかし別府に第七艦隊が根こそぎ入ってくるのは何の待避なんでしょう。何の避難でしょう。熱海に入ってくるのは何なんでしょう。別府には全部入っておるではありませんか。そうして去年の委員会で質問したことと、ことしの委員会で質問したことと、一年たったからおそらく前のことは知らないだろう、こう思っていらっしゃるかもしらないが、私が指摘をしたいのは、この安保条約の第六条あるいは事前協議、あるいは地位協定、合意議事録というものはまことに運営はずさんきわまるものなり、だから私は第四条の問題も取り上げたんです。これはほんとうは時間があれば運輸大臣海上保安庁長官等にも聞きたいのだけれども、しかし、これは正式に私に出してきた書類だから、外交上の慣例ではない。全部安保条約の地位協定、合意議事録でやっている。私はこれで終わりますが、外務大臣、どう考えたって南ベトナムの問題はアジアの平和に直接関連する問題です。アメリカ中国の一番の接触点です。今日代表権をアメリカが認めない最大の問題もこれでしょう。このベトナムにおける情勢日本の防衛力増強その他に直ちに関連をしてくる。これほど大事な問題について第四条にいう随時協議をしないというのは、て私は言いますが、条約運用に関して怠慢そのものだと思うのです。  私はこれで終わります。(拍手)
  178. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて横路節雄君の質疑は終わりました。  次に、堂森芳夫君。
  179. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、日本社会党を代表しまして、池田総理はじめ各閣僚に主として物価の問題と減税の問題につきまして質問をいたさんとするものであります。  まず最初に、池田総理お尋ねをいたしますが、これはすでにたびたびの機会にわれわれの同僚から質問をいたしておりますが、所得倍増政策というものについての質問に対して、総理は、これはほぼ所期の目的を達しておる、このように答弁を繰り返しておられますが、重ねてお尋ねしますが、そのようでございますか。御答弁を願いたいと思います。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび答えておるとおりでございます。ほぼ目的を達しつつあります。
  181. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたが昭和三十五年の秋に内閣を組織されまして、また、昭和三十六年度の予算を編成されまして、この予算委員会で申されましたことは、この所得倍増政策を推進といいますか進めていくならば、国の経済が非常な成長を遂げていく、そしていろいろな企業間の格差は縮まっていくんだ、あるいは、個人的な格差といいますか、職業による格差とか、そういうものはなくなっていくんだ、こういうように言っておられたのでありますが、そのとおりでございますか。重ねて御答弁を願いたいと思います。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 そのとおりございます。十年後といいますか、昭和四十五年には、所得倍増計画なしにそのままほうっておいたときに比べて、格差が縮まっていく。また、これは途中におきまして、いろいろの問題がございましょうけれども、ことに第二次、第三次産業のごときは、大企業その他が非常に予定以上に私の想像を越えて伸びております。そして、いつも言っているように、農林、中小企業のほうは、伸びてはおりますが、他の伸び方ほどいっておりません。しかし、格差が拡大したとは言えない情勢、縮小の度が少ないと私は見ておるのであります。これは全般的の問題でございますよ。個々に一々特別の人をとれば別でございます。大体の方向としてはそういうふうにいっていると思います。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕
  183. 堂森芳夫

    堂森委員 企画庁長官お尋ねいたしますが、あなたは、昨年の十月ごろであったかと思いますが、いままでは大企業に重点を置き過ぎてきた、——まあ、あなたの言葉どおりかどうかはこれは別でありますが、重点が置かれてきた、これは第一ラウンドであった、これからは中小企業や農業に重点を置いていかなければならぬ、これが第二ラウンドである、そうして、経済企画庁は、いろいろな新しい標語といいますか、つくるのがなかなかおじょうずでありまして、かつて、すれ違いの経済だとか、あるいはまたアフターケアであるとか、いろいろなことばをよくおつくりになるようでありますが、これから、所得倍増政策といいますか、これのアフターケアの政策が必要なんだ、こういうことを言っておられたと思うのですが、そのとおりでございますか。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の四月から、所得倍増計画の過ぎました三年につきましての中間検討を、各界の識者に集まってもらいましていたしました。その結論が一応昨年の末に出たわけでございますが、その作業の中間の過程におきまして、これからのわが国の経済は、これだけ成長を遂げましたし、また貸金格差も非常に縮まってまいりましたし、したがって、いわゆる二重構造の下部機構と言われております中小企業あるいは農業の生産性を高めるような、そういう経済政策の運営が特に望ましい、そのことは、問題となっております物価問題の基本的な解決もまた同じような方向を差し示しておる、こういうことを申しました。
  185. 堂森芳夫

    堂森委員 企画庁長官、私ことばじりをとらえるわけではないですが、あなたは当時アフターケアのような政策が必要だというようなことを言っておられたのではないですか。言っておられなかったのですか。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アフターケアという俗語がどこから出ましたか、私はつまびらかでございません。私自身はなるべく使わないように注意をしておったつもりでございます。
  187. 堂森芳夫

    堂森委員 言った言わないと申しましても、水かけ論になりますが、やはり、あなたは、アフターケアということばをいま言ったか言わないか別にしまして、大企業中心であって、中小企業や農業との間の格差が縮まらぬ、こういう結果になってきたから、したがって、第二期と言いますか、中期の所得倍増計画というものの検討に入る、これはもう先般そういう諮問が発せられたわけであります。従来の所得倍増政策ですか、これが、いかに総理が言われましても、ほぼ所期の目的を達しつつある、こういうふうには私は言えぬと思うのであります。総理は、それでも、言えるのだ、こうおっしゃるでありましょうが、私は、そうは言えない、こういうふうに思うのであります。  そこで、総理に進んでお尋ねしますが、消費者物価でけっこうでありますが、物価が今日上がってきた。その原因はいろいろあると思いますが、総理は、どこに原因があるのか、どういうふうにお考えになっておるのか、この点について答弁を願いたい、こう思います。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 人間の労働の価値が上がってくる、その上がり方につきましては、設備の近代化・合理化等に伴う上がり方と、そうして、設備の近代化・合理化、生産性の向上が伴わなくても、社会・経済環境によっていわゆる人間の労賃の上がりがある。これがいいか悪いかは別問題でありますが、労賃の格差が締まるのはやむを得ぬことであります。したがいまして、これを平易に申しますと、生産性の向上に伴い労賃が上がれは、物価は上がりません。しかし、生産性の上昇以上に賃金が上がりますと、それがどこへいくかというと、いわゆる物価の値上がりへいくわけなんです。しこうして、日本の実情は、消費が非常に伸びております。あるいは中小企業関係、あるいは農村関係の分につきましては、消費が非常に伸びておる。その伸びによって、生産性がそれにマッチするようにいけばいいが、それまでいってない。そういうところの差が、経済原則によって、消費者物価の上昇ということになる。また、直接の生産とつなぎのないサービスその他の関係につきましても、他の原因によりまして、賃金の上昇、所得の増加ということから、サービス料金の上昇ということが物価の上昇の原因になるわけです。  そこで、実際問題といたしましては、日本状況から申しますと、生産性が相当伸びておる場合におきまして、やはり賃金が相当伸びていくということがついてきておりますが、生産性の伸び方が少ないと、たとえそれが伸びても伸び方が少ないと、いわゆる物価の下落、所得の上昇の鈍化ということがあるわけです。そこで、通常の状態、七%程度ならよろしゅうございますが、いま言ったように、名目で二〇%、一五%といき、実質に一四、五%、一五、六%いくようになってきますと、その点が非常に消費者物価の上昇に出てくる。これが日本の実例でございます。したがいまして、過度の上昇というものを押えて適正な上昇によってやっていく。そしてまた、消費の伸びもそれに合ったような適度な伸び。とにかく、一年に一五%も消費が伸びるということは、普通の状態ではございません。
  189. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、総理の答弁を聞いておりまして、後ほど順次総理の御答弁になったことについてお尋ねしますが、その物価の上昇の責任は、池田内閣政策にある、こういうふうにわれわれは確信しておるわけでありますが、あたかも、自分がやってきた政策には、物価が異常な上がり方をしてきたということについて何にもそうした責任がないような、人ごとのような答弁である、こういうふうに私は考えるのでありますが、そこで、質問を進めてまいりたいと思います。  先般、内閣では、経済閣僚懇談会を、十八日でありますか、十七日でありますか、開かれまして、物価の上昇を二両年にこれを安定させるという総理の解散前の臨時国会等の演説等もございまして、まあそうした総理国民に対する公約からも、いろいろな物価対策というものをおきめになったわけであります。そこで、私は総理お尋ねをしたいのでありますが、公共料金というものを一年間これをストップさせるのだ、こういうことが閣僚懇談会できめられました。そこで、私はお尋ねいたしたいのでありますが、この公共料金の一年間ストップということは、ほんとうにこれを——もっとも、公共料金とは何であるか、まあいろいろ定義もございましょうが、一応政府が言っておる公共料金というものを一年間厳重な意味でストップさせることができる、こういうふうに総理は確信しておられますか。この点をまずお尋ねしたいと思います。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 公共料金並びに政府の規制し得るものにつきましては、原則としてストップする、この方針をきめました。ただ、例外のものがあるかということになりますと、実は、中小企業と零細企業での公共料金にある。それが非常な経営困難な、しかもこれを例外的に上げたからといって物価にも影響しないし、いわゆるムードを押えるためのストップに影響がないというふうな場合には例外的に考え得るということは、これは経済閣僚会議で言っておるのであります。しかし、問題になっておるバス料金とかいうようなものにつきましては、これはもちろんストップいたします。
  191. 堂森芳夫

    堂森委員 公共料金の値上げを一年間中止すべきである、こういうことを、わが党は、かつて特別国会におきましても、院議をもって決議をすべきである、こういう主張をいたしたのでございますが、この公共料金の一年間ストップが実施されて、政府の責任においてこれが行なわれていく。しからば、一年後には一体どうしようというのでありますか、この点について総理の意見を伺いたいと思います。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 一年間ストップということになると、一年後には逆に言えばもうストップしないということになる。ストップしないといったらすぐ値上げを認めるかということになりますと、これはやはり低物価政策。ことに、低物価政策というようなことばは語弊がありますが、物価の急激な上昇をとめる。経済の健全な発達の点から考えて、その不健全な程度の上昇をとめるという原則は常に持っておかなければなりません。だから、一年間押えて、それが済んだらすぐ全部上げていいというわけじゃございません。実態を見ながら物価の上昇を押えるという基本の立場で、いろいろ申請につきまして検討を加える、そのときの情勢で検討を加える、こういうことでございます。
  193. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、総理、私後ほど個別的にお尋ねしますが、いまストップされたのでは企業自体が持っていけない、これはバスなんかもそうであります。民間のバス会社もそうであります。また、地方の、あるいは東京都がやっておる都電というふうな公営の交通機関においてもそういう事態が起きておるのであります。また、東京のバス会社でありますか、民間のバス会社は、行政訴訟まで起こす、こう言っておるのでありまして、そうすると、一年間ストップしたとしても、一年後にはどうしても値上げをしなければいかぬ、こういう事態はあるいはもっと早く起きてくる場合もあると私は思うのであります。そうすると、これは政府が幾ら国民に約束したとしましても、政府の言うことは当てにならぬ、こういうことになりまして、公共料金のストップというこの措置によって物価値上がりのムードを押えていこうという効果というものは、ますますなくなってしまうと私は思うのであります。一年後には上げるということではないと言ったって、総理は他の機会にもよく言っておられますように、公共料金というものは元来原価主義であるべきである。バス会社だって、道路運送法でちゃんと原価計算をして適正な利潤というものは保障されるということが法律にきめられておるわけであります。そういうことで実際に一年後にはどうなるかわからぬ、こういうことで物価を安定さしていくという目的は達せられるでありましょうか。私は非常に怪しいと思うのでありますが、いかがでありましょう。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 物価値上がりムードの行なわれておりますときには、ある程度強力な一年間ストップという方策をとることはやむを得ないんではないかと私は思いまして、決定したわけでございます。しかし、大体の考え方も、その方向で、とにかくムードを押えるためにその方策をとるべきではないかという世論もありますので、やっておるのであります。
  195. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、運輸大臣お尋ねをいたしますが、この公共料金の一年間ストップ、こういう問題が閣僚懇談会できめられた。これに対しまして、あなたはバスの値上げというものに対して一年間これを貫いていくというふうに確信をお持ちでございますか、いかがでありますか。まず御答弁を願いたいと思います。
  196. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 はなはだ恐縮ですが、いまの質問の要旨が私にのみ込めないのですが……。
  197. 堂森芳夫

    堂森委員 こういうことなんです。公共料金を一年間ストップさしていく、こういう決定がなされたわけですが、あなたはバスの料金の一年間の値上げストップをやり得る確信がありますかどうか、こういうことなんです。
  198. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  むずかしいことはむずかしいけれども、一年間はストップするという確信を持っております。
  199. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたは一月の十四日にこういうことをしゃべっておるのです。綾部運輸相は十四日の閣議後の記者会見で、これは私新聞を見て言うのですが、バス料金値上げは妥当だと思う、バス料金については、ガソリン税、軽油引取税、損害保険料率の引き上げなど、上がる要因が重なっておる、現行料金では公営、民営バスともに赤字がふえるばかりだ、オリンピックを控え、このままでは車体の改造、増車なども不可能で、交通の混乱も起こりかねない、こう言っている。これはたいへんであります。バス料金値上げによる家計への影響は少ないから、一方道路運送法にも適正利潤を与えることがうたわれておるのから見て、バス料金は値上げしてしかるべきだと思う、政府の公共料金引き上げストップ方針があるので、値上げはむずかしいが、計数整理の上、十七日の経済閣僚懇談会において発言する意向である、こう言って、あなたはなかなかむずかしいと言って発言されたということも聞いておるのであります。さらにまた、この十七日の閣僚懇談会があったあと、あなたは記者会見でこういうことを言っておられます。これも新聞の記事でありますが、十七日の経済閣僚懇談会のあと、バス料金の値上げ問題について、大手筋の値上げは事実上一年間見送りとなったと次のように語った、政府の公共料金の一年間値上げストップ方針により、バス料金の値上げも原則として認められないことになった、六大都市の公営バスや東京都内の民間バスなど大手筋は倒産のおそれが出てこない限り値上げはできない、しかし、今後一年以内でも値上げを認めてよいと解釈しており、こう言っておるのです。経営状態を見た上で認可する方針だ、これは私は新聞記事で読んでおるわけであります。あなたはいま確信があると言っておられますけれども、初めからおれは無理だと思っておる、しかもまた一年以内でも上げることは可能性があるんだ、こういうようなことも閣僚談会のあとで発言をしておられる。これは記事がうそだとおっしゃればやむを得ません。それでもあなたは確信がおありでございますか。この談話はこのとおりでございますか。もう一度御答弁を願いたと思います。
  200. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 十四日の記者会見で私の申したことは、そのとおりでございます。少し違っておるところもありますが、大筋においてさように考えております。が、しかし、六大都市の公私営のバスにつきましては、閣議の方針に従いまして、一年間はやらないということにきまりましたからして、それは採算その他で非常に苦しいことは、十四日の閣議で申しましたように、私はそう思っておりますが、閣議できまった以上、それに従いまして行政指導をしていきまして、忍びがたきを忍んで企業者の諸君にも協力してもらうという意味におきまして、私は確信を持っておると申したのであります。
  201. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたは十四日に、このまま放置しておけば新車の購入もできない、そして交通機関の混乱も起りかねない、こういうことを言っておられる。これは非常に重大だと思うのです。大切な国民の生命を預かる交通機関であります。これに対して、交通混乱も起こるかもしらぬ、こういうことがあるわけです。一方、耐えがたきを忍んでやっていくんだ、こういうことでありますが、これでできるでしょうか。そういうふうな、何か近代戦争で竹やりで向かうような、そんな態度でできるでしょうか。くどいようでありますが、もう一度答弁願いたい。
  202. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  さっき申しましたように、公私営のバスに対しまして忍びがたきを忍んで政府の物価対策に協力してもらう、ただし、あの経済閣僚懇談会の席でも私は申したのでありますが、値を上げないで、具体的の問題が起こった場合には、財政当局なりその他金融機関の協力を得て、交通混乱を起こさしめないようにするということについて私は申し上げたのでありまして、その具体的の事実が起こった場合に、私はそれについて善処いたしたい、かように考えております。
  203. 堂森芳夫

    堂森委員 それじゃ、重ねて念を押しておきますが、今後一年間は値上げはしない、ただし、大切な交通機関のことであるから、財政的な措置等も講じて、そして値上げはしない、これは全国の中小バスも大体においてすべてそういう方針で臨まれるのでありますか。もう一度お尋ねしておきたいと思います。
  204. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  全国の中小バスは、いわゆる中小企業に大部分が入ります。九〇%以上がそうである。たしか一千万円以上のものとそれ以下に分けると、もう大部分が中小企業でございますからして、経済閣僚懇談会のただし書きにもあるように、中小企業に対しては別途考えるということになっておりまするからして、実際に中小企業が倒産し、あるいはその地方の交通の足をとめるというようなことのありました場合には、あのただし書きの適用を受けまして、経済閣僚懇談会に事実を申しまして、善処いたすつもりでございます。
  205. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、この公共料金の一年間ストップという非常措置といいますか、そういうものにももうすでにバス料金というものについて例外が出てくる可能性がある、こういうことだと私は考えるのでありますが、そうでございましょうね。
  206. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 さっき申しましたように、中小企業者であるバスにつきましては、あのただし書きにもあるように、その実情がどうしてもやっていけぬという場合には別途考えるということでございます。
  207. 堂森芳夫

    堂森委員 港湾の荷役料の値上げ、これはやはり公共料金といえるかどうか議論の余地はあると思う。しかし、運輸大臣がこれは認可をされる問題であります。これはやはりいろいろな意味で経済界等にも大きな影響のある問題でありますが、ただいまあなたのほうに、値上げをしてくれ、はしけ、回漕、沿岸荷役の港湾荷役料金を平均二、三〇%は値上げをしてもらわないと困る、こういう意味で運輸省のほうに申請が出ているということが新聞に報道されておるわけであります。一方経済界は広く、これはたいへんであるということで、いろいろこれに対する政府の善処方を要望しておる、こういうことが新聞に報道されておりまするが、運輸大臣はどのような処置をやっていかれますか、この点を伺っておきたいと思います。
  208. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 はしけ、沿岸荷役の料金については、お説のように、どうしてもやっていけないからして二割八分ないし二割五分の値上げの申請があることは事実でございます。この問題につきましては、しばらくしんぼうするように行政指導をいたしております。ただし、さっき申しましたように、これもまた大部分が中小企業者でございまして、どうしてもやっていけないという実情、それがまた日本経済の上に非常な混乱を起こすという——ことに荷役、はしけの労務というのは特殊業務でございますからして、そういう危険があった場合にはあらためて考慮いたしたいと考えておりまして、ちょうど普通の水道料金その他のように、厳格な意味において公共料金かどうかの議論はありますが、われわれはやはり公共料金に準ずるものとして、そういうことについては自粛して政府の物価対策に協力してもらうよう、各業者に対しまして行政指導のやり方を通達いたして協力を求めております。
  209. 堂森芳夫

    堂森委員 いまの問題につきましても、行政指導をして値上げをしていかない、こういうふうな方針であるということでございましたから、了承します。  そこで農林大臣お尋ねをいたしますが、消費者米価というものが消費者の物価指数に大きな影響を及ぼすものでありますことは当然のことであります。消費者米価が公共料金であるかどうかということについては、これはもちろん厳密なと言いますか、厳重に申しますと問題があると思うのでありますが、閣僚懇談会において消費者米価は一年間絶対に据え置くのだ、こういうふうにきめられたというふうに報道されておるのでありますが、そのようでございますか、御答弁願いたいと思います。
  210. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御説のとおりでございます。
  211. 堂森芳夫

    堂森委員 しかし、あなたはこういうことを言っておられますよ。一月の七日の新聞でありますが、農林大臣は初閣議後の記者会見で、「消費者米価を引き上げるかどうかという問題と公共料金の一年間抑制方針は別の問題だ」こう語り、次のように言っておられる。「消費者米価は公共料金で生産者米価はそうでないと区別するのはおかしな考え方だ。生産者米価はことしもいくらか上がるだろう。消費者米価を引き上げるかどうかは政治的、経済的にみて政策課題として取り上げるべきである。公共料金の一年間ストップ方針と同一に取り扱うのは間違いである。」しかし、いまのところ値上げは考えていない、こう言っておられますが、公共料金の一年間ストップと同一に取り扱うのは間違いであるというふうにやはりお考えでございますか。もう一度答弁を願いたいと思います。
  212. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 米価は公共料金の範疇に入らぬと思いますが、しかし政府が規制する価格のほうになりますので、公共料金と同じように一年間消費者米価は上げない、こういう方針でございます。いまお話に出ましたように、米価の中には生産者米価もありますし、消費者米価もあるわけであります。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕 そこで生産者米価につきましては、相当その算出のこまかい方程式みたいなのがありますし、堂森さんも米価審議会の委員であったかと思いますが、そういう関係で、これはその方式からいうと上がらざるを得ないのではないか。たいへん上がったということになって、生産者まで政府にみんな米を売り渡してしまって、そして配給を受けるというか、買ったほうがいいというような逆ざやが非常に大きくなるという場合には、消費者米価を上げるか上げないかは問題といたしましても、その点につきましてはなお検討しなくちゃならぬと思います。そういう研究はいたしたいと思っております。しかし、だからといって、いま消費者米価を上げぬという方針を変更するという考えは持っておりません。
  213. 堂森芳夫

    堂森委員 しかし、あなたは閣僚懇談会が行なわれたあとでも、記者会見で、生産者米価が上がれば消費者米価の変更も考えなければいかぬだろう、こういう意味のことを言っておられると思うのです。ただいま一年間上げないのだ、こうおっしゃいましたが、きょうはこの予算委員会の席上で、あらためて消費者米価は一年間上げない、こういうことをもう一度はっきりと確答してもらいたいと思うのですが、もう一度御答弁願いたいと思います。
  214. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのお話のように、消費者米価は一年間上げない方針で進めていきます。
  215. 堂森芳夫

    堂森委員 郵政大臣お尋ねいたします。郵政大臣は二十八日でありますか、三十日の郵政審議会に、料金体系の大幅改正を含めた郵政事業の合理化を諮問したい、これは郵便料金というものがずっと長い間据え置きになっておることは私もよく知っておるところでありますが、公共料金を一年間はストップさせるのだ、こういう決定が閣議でなされながら、そしてこれは答申が出るのはもちろん一年後かあるいは二年後かもわかりませんが、郵政大臣がこうした諮問を発せられたということは、すでに公共料金というものの一つである郵便料の値上げを意図されましてそうした諮問を発せられた、こう私は解釈するのですが、いかがでありますか、御答弁願いたいと思います。
  216. 古池信三

    ○古池国務大臣 お答えいたします。お話しのごとく郵政審議会に対しまして、私は、郵政事業の経営の近代化について、こういう問題について諮問をいたしました。その趣旨を申し上げますと、御承知のように、郵便事業はすでに九十年以上の歴史を持っておりますが、その間、時代の要求に応じてたびたび改正をやってまいりました。しかし、最近における日本の社会情勢、経済情勢は非常な進展を見せておりますので、この進展に即応して、郵政事業におきましても、やはり時代におくれないように近代化をはかって、事業にもしむだがあればこれを省き、またさらに合理化、能率化を進めていってこの時代の要請にこたえたい、こういうつもりから今回郵政事業全般について郵政審議会に諮問をいたしたわけであります。すなわちその内容は、あるいは制度そのものについて、あるいは機構について、また経営管理というような面につきまして、あらゆる分野にわたって最も適切な案を出していただきたいということで諮問をしたわけであります。したがって、料金の問題ももちろんその中には含まれておるわけでありまするが、これは直ちに料金の値上げとか、そういう意図ではなく、今日の料金の体系がはたして時代に即しておるかどうか、そういうような点、あるいはまた郵便物の規格化というような問題についてはどういうふうに今後具体的な処理を進めていったらいいかというような、あらゆる点からの問題でございまするので、ただいま御心配になりましたように、いま料金を値上げするかどうかというような問題を端的に諮問したわけではございません。したがって、これらの基本的な大幅な問題でありまするから、その答申も短時日で出るものとは私も期待しておりません。おそらく一年二年、あるいは問題によってはそれ以上の年月を要するものがあるかもしれませんが、この機会に内外の資料をできるだけ集めまして、そうして最も理想に近い郵政事業を打ち立てるために努力したい、こういう意図でございまするから、さように御了承いただきたいと思います。
  217. 堂森芳夫

    堂森委員 私はやはり、公共料金の一年間値上げストップ、中止、こういう決定は、物価値上げを押えていこうというムードをつくっていこう、こういう意義が非常に大きいことはよく了承しておるのであります。こういうときに、郵便料金も値上げになるんだ、こういうような印象を与えるようなそういう措置はいかがなものか、こういうふうに考えまして、郵政大臣お尋ねをしたわけであります。  そこでまたかえまして、自治大臣来ておられますね、お尋ねしたいのですが、この閣議決定がなされました直後に、新聞にも報道されました、たとえば千葉県の水道料金が上げられるようになった、そしてこれが物価ストップの政府方針に水道の水が何か冷や水をかけておるのだ、こういうような意味の報道がありました。私はこの報道——値上げになることは事実にしましても、直接政府に許可権というものがないことぐらいのことは、 もちろん知っております。しかし、行政指導であるとか、あるいはそうした物価値上げムードを押えていくような当然の措置をとる責任は、やっぱり政府にあると思うのであります。そういう決定をした以上、政府が、いろんな消費者物価に影響を与えるような公共料金、あるいは公共料金に準ずるようなものの値段が上がっていくことは、やはりこれを押えていくと言いますか、値上げにならないような指導方針をとっていくことは当然の義務であります。自治省の大臣としてはどういうような、こうした今後もまだ続々と、地方の公営といいますか、市町村営の水道料金の上がる傾向にあることは事実でありますから、千葉県に対してどういう措置をとられたのでありますか、あるいはその他のいろんな、各地でどういう状況になっているかも、この際答弁を願いたい、こう思います。
  218. 早川崇

    ○早川国務大臣 お答えいたします。  実は公共料金のストップの閣議了解が一月二十四日になされました。千葉県の場合には、昨年の十二月から利用者、学識経験者を加えまして、水道料金をどうしても上げなければならぬということで、昨年の十二月二十一日ごろ県議会で条例を議決いたしまして公布いたしたわけでありまして、閣議決定以前の問題でございますので、ああいうことになったのでありますが、閣議了解の線に沿いまして、自治省といたしましては、各都道府県市町村に対しまして公共料金の一年据え置きの趣旨に協力力通知を出したわけであります。それ以後は、神奈川県営の水道も値上げするという動きもありましたが、これもとまっております。現在のところ、そういった自治省の指導、協力要請に対して協力をしておるような姿になっておりますので、今後ともそういうことで指導してまいりたいと思っております。
  219. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、早川さん、千葉県の水道料金の値上げは同意されたのですね。同意と言うか、何と言いますか、許可権はないわけですが、やむを得ぬということで了承された。今後の他の地域については、ただ指導しておる、こうおっしゃいますが、どういう方針で臨まれるのでありますか。これももう一ぺん御答弁を願いたいと思います。
  220. 早川崇

    ○早川国務大臣 水道料金につきましては、県議会なり市町村の議会で条例で値上げすることが法律上認められておりますので、政府がこれをあくまで押えるという権限はありません。しかし、御承知のように、現在自治体と自治省とはいろいろな面で密接な協力をしておりますので、指導に協力してくれるものという考え方で、自治次官から各都道府県に政府の物価安定のための具体策についての協力要請をいたしておるわけでありまして、今後それにもかかわらずかってに値上げするというような自治体が出たらどうするかという御質問だと思いますが、そういうケースが起こっておりませんので、起こってくるようなことを事前に察知できましたならば、自治省としては十分指導して、政府の協力要請どおり一年間料金をストップしていただくように努力いたしたいと思っておるわけであります。
  221. 堂森芳夫

    堂森委員 文部大臣おられますね、文部大臣に伺いますが、消費者物価の指数に大きな影響を与えておるものの一つは雑費であります。この雑費の中には教育費というものが大きく影響することは事実でありますが、私の調べたところでは、全国の各地で公立、県立の学校で来年度から授業料の値上げをしなければならない、したいという学校も相当出てきておるということであります。また、私立の学校においては、もちろん右にならえでぜひともやりたい、こういうところが続出しておるということがいわれております。こういう情勢に対して文部大臣はどういうふうにお考えでございましょう。どういう措置をおとりでございましょう。お尋ねをしたいと思います。
  222. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。  物価の推移等も関係のあることと存じますが、各学校の経営の上にだんだん窮屈な事情もできておるように思うのであります。したがいまして、現在主として私立の学校だと思いますが、明年度から授業料の引き上げを行ないたい、こういう空気はかなり濃厚のように伺っております。しさいなことは私どもよく承知いたしませんけれども、そのような空気にあるようでございます。公立のほうも若干そういうふうな気分でおるところもあるやに聞いておりますが、詳細なことは私承知いたしておりません。国立のほうにおきましては、学校の運営につきましての予算については、事情の推移に応じまして予算の増額等のことも考慮してまいりたいと思っております。授業料を上げるというふうな考えは全然いたしておりません。  この授業料の問題につきましては、いろいろ御議論もあろうかと思うのでありますが、文部省といたしましては、今回のいわゆる公共料金というふうな範疇の中では考えておらないつもりでおります。どうしても上げなければならない事情にあるものは、これはやむを得ないというふうな考え方をいたしております。ことに私立の学校については、われわれもちろん授業料がどんどん上がることを望むものではございませんけれども、学校の運営上やむを得ないという場合には、これはいかんともしがたい、かような気持ちでおるような次第でございます。
  223. 堂森芳夫

    堂森委員 総理立たれましたから、企画庁長官、物価問題のあれですからお答え願いたいのですが、公共料金の一年間ストップ、こういう措置をきめられたわけですが、これはやはり国民に与える心理的な影響は大きいと思うのであります。しかし、いまお聞きしておりましても、これはもちろん政府に認可権はない、ほんとうの意味で公共料金ではないが、たとえば学校の授業料等も、あるいは地方の水道、あるいはバス会社等にしても、中小のバス会社についてはやむを得ぬだろう、こういうふうに次々と例外というものが出てくると思うのであります。そうすると、政府がきめられた公共料金のストップ、こういうことの意義が私は非常に薄れていくと思うのでありますが、この点いかがでありますか、企画庁長官お尋ねいたします。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 冒頭に総理大臣からお答えがございましたように、政府のこの問題についての基本的な政治的な決心を示すということが一番の効果であるというふうに考えております。もちろん、具体的にそれをくぐるようなものが出てくるということは極力防がなければならないと思います。ただ、一般的に経済原則からいえば、相当にむずかしい問題があることをやっていこうとしておるわけでございますから、私どもで権限のございますものは、これは先刻総理説明いたしました例外以外のものは許可はいたさない、私どもに直接権限のないものにつきましては、できるだけいろいろな方法で勧奨をし、あるいは指導をしていく、そういう基本方針でやってまいりたいと思っております。
  225. 堂森芳夫

    堂森委員 できるだけ例外を少なくしてというお話でありますが、これは既定方針からいけはないというのが——私はそこまで厳重な意味のことを言っておるのじゃない。しかし、国民一般に与えるこの物価の値上がりを抑制するのだという効果から見ましたならば、例外をできるだけ少なくすることが、そうした心理的な影響といいますか、ムードといいますか、そういうものをつくっていく上に非常に重要なことだと思うのであります。こういうふうに公共料金のことを二、三あるいはこれに準ずるものについて二、三お尋ねしてみたわけですが、公共料金の一年間ストップというものもあまり政府は熱意を持ってないのじゃないか、それは二、三のものはどうしてもやっていくのだ、こうは言っておられます。例外が次々とつくられていってこの原則はくずされていかざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでありますが、この点、政府にこの方針をできるだけ厳重に守っていくような態度をとってもらいたい、私はこういうふうに申し上げまして、次の問題に移たりたいと思います。  そこで政府は、閣僚懇談会あるいは閣議で、この消費者物価の値上がりの大きな原因の一つは流通機構が非常に古いからだ、複雑なんだ、それでこれを近代化することが必要である、こういうふうなことも言っておられるのであります。そこで農林大臣お尋ねしますが、生鮮食料品の値上がりというものが消費者物価の値上がりに大きな寄与率を持っておるわけでありますが、具体的にどういう措置を流通機構の近代化に、生鮮食料品等について実行されていくのか、これについて具体的に御答弁を願いたいと思います。
  226. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 当然流通機構そのものも改善していかなくちゃなりませんが、生産、流通、配給といいますか、関連した問題でございます。何といたしましても、需要がふえましたので、野菜等については価格が上がってきましたが、最近はまた、暖冬異変でございますか、そういう関係で下がりかけております。どうしても安定さしたい、こう考えまして、産地におきましては、やはり出荷の調整等にさらに一段の力を入れたいと思います。それから指定産地等がありますので、これは東京ばかりでなく、大阪、名古屋方面にも指定産地を拡大していく、こういう方面で出荷の調整というか、計画性を持たしていきたい。あるいは食肉等につきましても、従来、枝肉のために食肉センターとかあるいは食肉の加工設備等も設けて推進しておったのでございますが、そういう面、あるいは鶏につきましても、共同加工処理設備をつくっていく。中心になっておりますのが市場でございます。中央市場の増設、新設あるいは拡大、あるいはまた取引の簡易化といいますか、近代化といいますか、昨年手数料等を下げさせましたが、そういう面におきまして、その方面の費用を節約して、中間費用を節約さしていく。それから末端の方面におきましては、小売り関係でございますが、小売り関係等につきましても、東京等におきましては、二十カ所ほどの総合小売り場といいますか、こういうものを政府あるいは都と協同して二十カ所ばかりきめていく。特に団地方面等を選びまして、そういうものを設けて、小売りの価格を合理化するといいますか、あるいは簡便化するといいますか、そういう方面にも手をつけております。従来とも非常に苦心をいたしておるのでございますけれども、何といたしましても、一つの統制経済ではなおおかしくなりますし、自由経済のもとで価格を安定していくということは、非常に骨の折れる問題でございますから、いまのように生産、流通、それから配給の末端方面につきまして、こまかくいろいろな方法を講じていきたいと思います。  魚等につきましても、貯蔵等につきましては、なお一そう力を入れていく。予算の裏づけをもちまして、十分とは申し上げられませんが、それぞれこまかい手を打って対策を講じていきたい、こういうふうに考えております。
  227. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま私、もっと具体的な答弁をほしかったのですが、たとえば、私からお尋ねいたしましょう。そこで、東京その他各地に中央卸売り市場ですか、そういうものをつくっていこう、あるいはいま申されましたように、小売り市場を全国につくっていこう、あるいは東京には二十カ所と言われましたが、つくっていこう、いろいろなことを申されましたが、私の知っておるところでは、農林省、政府考えておる方法というのは、従来あった仲買い人とか卸売り人とか、あるいは小売り人とか、そういう諸君を集めて、そして市場、そういうところをつくっていこう、こういう計画のようでありますが、従来からのそういう人たちを集めた新しい機構をつくっていって、実際に消費者物価が下がっていくという効果が出てくるでしょうか。その点お考えを伺いたいと思います。私は非常にむずかしいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  228. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 市場の問題で具体的に申し上げますと、築地の魚市場のほうは相当広いのでございますが、青果のほうの神田の市場のほうは、非常に狭いのでございます。それからまた、荷受け人等が非常に多い。ある程度は、荷受け人が自由競争的なことをやるのはあるいは認められる面もありますけれども、非常に多過ぎる、こういうことでございますから、荷受け人の合併といいますか、こういうのも勧奨いたしております。そういう点、それから手数料の問題は先ほど申し上げた次第です。それから交通の事情、集荷の事情もありますので、たとえば東京でありますなら、東京の周辺にも、いまの中央市場のほかに相当の個所の市場を設けまして、地方から出てきたものをそこへ集める。問題は、市場で扱うものが全部というわけにはいっておりませんので、できるだけ市場を通じて、しかも市場に対する経費が少なくなるような方法で中間経費を省いていこうじゃないか、こういうことでございます。  なお、いろいろこまかいことはあるのでございますが、一々こまかいことは私もよく記憶しておりませんけれども、それぞれの手を打ちたいと思っております。
  229. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、政府が意図しておりますことは、新しく卸売り市場あるいは小売り市場等を何カ年計画かでつくっていくというような、わりあいのんびりした話であります。はたしてこれで政府が目的としておる、普通の市価よりは一割ぐらいは下げていくんだ、こういうふうなことは、なかなかそう簡単ではないのではないか、こういうふうに考えますので、政府の善処を要望しまして、次の問題に移っていきたい、こう思います。  そこで、農業や中小企業と大企業との間に格差がある、生産性の上昇が非常におそい、大企業よりはおくれておる、こういうところに物価が上がった原因の一つがあるのだから、したがって、そういうふうな中小企業、農業等の生産性向上のために大いにやるのだ、こういうふうな予算の編成方針である。あるいは総理の答弁等を聞きましても、そのようなことであります。そこで私はお尋ねをいたしたいのでありますが、私は、政府が組んでおる予算内容というものを見まして、これくらいのことでは、たとえば中小企業の近代化ということは非常にむずかしいのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。たとえば近年、年々設備投資が行なわれておりまして、四兆円前後の資金が投入されておりますが、中小企業方面の毎年の資金増を見ましても、いろいろな金融機関の貸し出し増を見てみましても、一兆円をこえる資金の貸し出し増があるわけです。こういうふうに見てまいりますと、今回一般会計等で百六十数億でありますか、あるいはまた財政投融資で千六百億くらいでありますか、一般会計の十倍のものを使っておるのだ、こういうふうにして政府は中小企業の近代化が行なわれるのだ、こう言っておられますが、福田通産大臣に伺いますが、こういうことで物価の値上がりの大きな原因の一つである中小企業の生産性の向上というものに、そんなに大きな効果があるとほんとうに考えておられるかどうか、私は伺いたいと思います。
  230. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業の問題でございますが、これは今度の予算で組んでおりまする方針も、中小企業の生産性を向上させる、そして、それがひいては物価に大きく影響するようにしようということでありますが、私は、中小企業の問題を取り上げるときに、これは堂森さんもよく御存じだと思いますが、補助政策というのをやっておるわけではないので、中小企業がそういう意欲を持って近代化をし、あるいは生産性を上げるというようなことにする場合には、国としてできるだけの措置をいたしましょう、こういうのが中小企業基本法の目的でございます。もちろん、この基本法の精神自体がいいか悪いかということについては御議論があると思いますが、できました基本法は、そういうところに立脚をいたしております。そこで、そういう観点から、私たちといたしましては、中小企業の人たちがそういう気持ちになってやられる場合においてはできるだけこれを助成しよう。金融の面におきましても、あるいは税制の面におきましてもそうであります。ただ、税の面になりますと、これは国が関係するのでありますから、これはわれわれとしては相当程度税制の問題について——大蔵大臣は中小企業向けに六百億円の減税をしておるということをしばしば御説明をいたしておるのでありますが、そういう減税もいたし、また零細企業の面についても、これはこまかくはあなたが御承知のことと思いますから申し上げませんけれども、いろいろ配慮をいたしてやっておる。そこで、その近代化をやる場合において、いわゆる補助ではございませんから、近代化するとか、協業化をさせるとか、そういうようなことをさせていく経費でありますから、経費自体は百六十六億円という小さいものでありますが、しかし、金融の面は非常に大きいのであります。そこで、ことしは千六百十七億円、二七%増というような大幅なあれをいたしております。しかし、これは政府関係した金融問題でございまして、これは堂森さんもよく御案内でありますが、金融の問題は、中小企業に政府機関が貸しておるのは九%くらい、民間が九一%貸し付けておるのでありますから、民間銀行がどの程度にいわゆる金融をしていくかという問題が出てくるわけであります。こういうときにあたっては、やはり民間銀行でひとつ大いにそういうことを意識してやっていただきたいと思うのでありますが、われわれの聞いておるところでは、銀行が金を貸す場合には、事業に金を貸すよりは人に金を貸すんだ、本気でやるような人ならばひとつ金を貸しましょうというのが、民間銀行でも考えておるところだと聞いておるところであります。しかし、一方においては、営利会社でありますから、大きい金融のほうが小さい金を貸すよりは全般において得だということもございますので、そういうことではなくやっていただくように、銀行側にも大いに御協力願わなければならぬ。同時にまた、歩積み両建てなんというのは、どんどん廃止してもらうようにやっていただきたい、こう思っておるのでありまして、私は、こういう政策がやはり物価の引き下げに大きく影響するものであると思います。黙って何もしないでおいたら、これはますますそういう不均衡が是正されないのであります。近年の四、五年の間の大企業と中小企業との、たとえば四人から五人までくらいの人とか、これが五十人になった場合とか、あるいは百人になった場合とか、それ以上というようなことで、数字も全部とっております。生産性が上がったとか、どのぐらいに上がってきているだろうかというようなこともあります。これはもし必要ならば事務のほうから御説明をさせたいと思いますが、われわれとしては、これでやはりかなりの効果をあげ得るものである、こういうふうに考えておるわけであります。
  231. 堂森芳夫

    堂森委員 福田通産大臣のせっかくの答弁でありますが、私は、あなたがおっしゃるように、そんなに大きな効果はないという判断をするのであります。これは、あなたは意見の相違だ、こうおっしゃるかもしれません。  そこで、近代化の資金の融資対象でありますが、これは昨年国会で通過しました近代化促進法に基づきまして指定せられました二十二の業種でありますが、これに融資の対象がしぼられておると思うのであります。この業種を一々調べてみますると、これは多くは——全部とは申しません、その多くは、やはり大企業の下請け企業というものに集中されておる。せっかく政府が、あなたがおっしゃるような千六百億というような金を設備近代化等にいろいろ使っていく、こうおっしゃいましても、私は、やはりその重点は大企業の下請けをしておる企業に集中されていくという危険が多いと思うのであります。そして指定業種は二十であります。もっとも厳密に言えば二十二になるわけでありますが、これに対して、実際に消費者物価に影響のあるような中小企業というものをもっと広めていく、こういう方法がとられなければ、あるいはそういう方面に重点を置いて貸していけ、こういう指導方針政府によってとられなければ、これは選別融資をしていく、そして大企業に保証してもらうような下請け企業がよくなっていく。これは実際は、消費財でなしに生産財をつくるような企業に集中していく、私はこういう可能性が非常に多いと思うのでありますが、具体的に答弁を願いたい、こう思います。
  232. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり、そういうふうに運用をしていかなければなりませんので、実は今度は業種を追加するようにいまやっておるわけでありまして、お説のような趣旨に基づいて運用の範囲を広めていきたい、かように考えておるところであります。  なお、いまお話がございましたけれども、中小企業の問題は、中小企業向けに近代化資金を使っておることは、いままででも、ほとんど九割以上が百人以下、五百万円以下のところに貸すということにしておりまして、九割以上がそういうことになっておりますし、そしてまた人を二十人以下使っておるところを四割くらい充てておるようであります。しかし、いまのあなたのお説の趣旨に従って今後は大いに運営をいたしてまいりたい、かように考えるところであります。
  233. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで私は、福田通産大臣の答弁でありましたから、その点はあなたを信用しまして了承しますが、総理大臣お尋ねをいたします。  先般来、昨年の臨時国会、解散国会の際に、革命的な農業、中小企業の対策を考えていくのだ、こういうことを——革命的ということははともかくとして、革新的ですか、そういう意味演説をしておられるわけです。そこで、従来から私は、一体革新的な中小企業、農業対策というものがよくわからぬのです。たびたび答弁はしておられますが、私はよくわからぬのです。ただ金がよけいふえたのだ、融資額がふえたのだ、あるいは補助がふえたのだ、そういうことだけでは、革新ということは言えぬのではないか。抽象的なことばになりますが、やはり革新となると、何か質的な変化がないと、私はやはり革新じゃないと思うのです。金をよけい貸すのだ、補助はよけいやるのだ、それじゃやはり革新じゃないと思うのですが、もう一度ここでそういう意味で御答弁を願いたいと思います。
  234. 池田勇人

    池田国務大臣 いま審議しております予算の上、それから数字の問題になりますと、しょせん金額とか制度ということになりましょう。しかし、われわれは、行政をやっていく上において、ただそれが予算の数字にあらわれたものだけという意味じゃないのであります。財政面が非常に財源に余裕があってふやすということと、財源が少なくとも特にふやすという場合もありましょう。これはやはり心がまえの問題です。だから、いろいろな点から予算上の問題、それからまた制度の問題といたしまして——機構の問題でございますね、こういうところでも新しい施策を講じております。だから、心がまえとしてもそういう心がまえでいこうということ、そうして一たん具体的に見れば、予算上にふえておる。そうしてまた、同じ金額にしても、民間の資金を吸収するとか、いろいろな方法でやる。あるいは農業につきましても、いままで無利子というものはなかったですけれども、無利子でやるということは、金額の上では少のうございますけれども、気持ちの上では非常に革新的なんです。いままでの農業政策ではなかったことなんです。それは、その金額が少ないといっても、そういうものじゃない。気持ちの問題だ。だから、いままでの中小企業や農業に対しておったことと同じようなことをやっても、心がまえが違っておるということは、予算上出てくると思います。そうして、今後の農林省あるいは通産省の仕事のやり方も違ってくる、こういうことが政治だと思います。
  235. 堂森芳夫

    堂森委員 それは総理、せっかくの答弁ですが、ただ予算上は幾らかふやした、しかし、実は予算上のふやし方は少ないかもしらぬが、気持ちが違うんだ、こういう御答弁のようでありますが、私は、それは少しも革新的じゃないと思うのですがね。やっぱり国民が要求しておるものは、農民が要求しておるものは、あるいは中小企業者が要求しておるものは、幾ら気持ちが変わったんだ、こう言われましても、そんなものはぴんとこないんですよ。たとえばあなたが、あなたの党の一萬田さんですか、にも何か相談をされて、無担保でひとつ金を貸していくというような道も開こうじゃないか、あるいはきわめて長期な融資というようなものも考えていくべきではないかというようなことを言ったようでありますが、もうすでに西欧諸国では、農業方面の融資というのは、百年というものは幾らでもありますよ。土地改良あるいは土地開拓、こういうふうな融資については、無利子あるいはきわめて長期というのもあります。ここまでいくと、私は一つの革新的な政策とも言えると思うのですが、ただちょっと金をふやして、気持ちは非常に変わったんだ、これでは、私はどうも革新的な政策とは言えぬと思うのであります。総理は、いま処女のようなそういう答弁でなしに、大いに雄大な、革新的な政策、こうやっていくんだということをもう少し具体的に答弁をしてもらいたいと思います。
  236. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、予算面その他で金額の問題は多きを望みますが、しかし、いままでの農業に対する考え方、たとえば五階級、六階級になった金利を非常に低目のところに階級を少なくして持っていくとか、無利子を置くとかという問題でございます。それから、いろいろな問題もこれから出てくると思います。自作農の創設なんかの分が三分五厘とか四分というのも、これはイタリアなんか一分くらいになっておりますから、こういうことで、私は無担保にも無利子にも踏み切ったわけであります。これは金額は少ないかもわかりません。しかし、これはもう革新的なんだ。それから、たとえば中小企業等も、いままで商工中金と中小企業金融公庫、いろいろございました。まだまだあるようです。私から言わしむれば、中小企業金融公庫の資金が、単なる財政資金によってやられるということでなしに、民間資金を大いに導入する必要がある、こういう考えのもとに、中小企業金融公庫の債券の発行をやった。しかも、これは政府保証の債券です。これをもっと今度は進んで、長期信用銀行あるいは興銀がやっているように、一般金融機関から資金を中小企業公庫が集める方法を講じたらどうか、単に政府保証債ということでなしに。しかし、それをやろうとすると、片一方の商工中金とのいざこざもまたありますので、いまようやく政府保証債の百億円の発行ということになっておりますが、これは今後中小企業公庫の向かうべき非常な革新的な資金集めの方法なんです。いままでこしらえて十年近く、政府の財政資金、郵便貯金、簡易保険、財政投融資しかなかった。そういうことじゃほんとうの働きが中小企業公庫はできないということで、自己債券の発行、その自己債券の発行も、政府保証債だから百億に限られておりますが、これは考えてごらんなさい、十年前にできた日本長期信用銀行は、預金を集めずに、これは二百億円くらいに持っておりますが、五千数百億円の債券を発行したということは、いかに日本の長期信用のために尽くしたかということがわかる。これを政府の持っておる中小企業金融公庫がなぜできないかということで、私は、これは外国へ行っておるときからも言ったわけなんでありますが、それで一応自己の債券を発行することになった。今度これをもっと長期信用銀行のようにやっていくのも一つの方法だと思います。しかし、そうすると、商工中金の組合金融との関係にいざこざが起こるというので、一時いろいろな反対もあったやに聞いておりますが、これだけは政府方針、党の方針というより、私、自分で書き入れてやってもらったわけであります。また、商工中金のほうにおきましても、今度は金利を引き下げるとか、あるいは政府の出資をふやすとか——三年も五年もかかってようやく金利を引き下げるというのを、今度は相当金利を引き下げ、出資をふやし、そうして融資のワクをふやしていこう、こういうことは、やはり中小企業政策で、金額の面から言うとあれかもわからぬが、考え方としては、私は革新的だと思います。したがいまして、きのうも、わが党の愛知君も、新聞にもそういうふうに出ていると言って同意の意見を表されたような次第であります。
  237. 堂森芳夫

    堂森委員 総理の長々の答弁でありますが、私は、総理の革新的な農業あるいは中小企業の政策というものは、われわれが期待しているようなものではないというふうに、こういうふうに考えざるを得ないのであります。  そこで、時間がございませんので先を急ぎますが、政府は、懇談会で、管理価格というものに大いに関心を持って、これに手をつけていく、こういうことを物価対策懇談会で発表しておられるのであります。総理は、たしか昨年の総選挙中だと思いますが、私、当時新聞を読んだのですが、福島県の遊説先で、公取委員長に管理価格についての調査を命ずるのだ、たしかそういうことを福島県下の遊説先であったと思いますが、命ぜられた、こういうふうに読んだのですが、その事実はともかくとして、公取委員長にどういう命令を下しておられるのでありますか、管理価格、カルテル等につきまして……。御答弁を願いたいと思います。あるいはしていなければ、していないでけっこうであります。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、公取委員長にこうしろ、ああしろという命令権はございません。しかし、自分は財政経済の責任者といたしまして、こうやってほしいという自分の意見を官房長官一般に知れるようにすることは、一つの政治でございます。命令権はございません。しかし、これは私の命令はないのでございますが、公取委員長は、私が最も望んでおる歩積み、両建ての早急廃止、あるいは管理価格についてのいわゆる物価引き下げの方法考えておられるやに聞いております。非常にありがたいことだと思っております。
  239. 堂森芳夫

    堂森委員 公取委員長、おられますね。公取委員長は、昨年の暮れ以来、これからの公取の仕事の重要なものの一つは物価問題と関連がある。管理価格ということ、あるいはカルテル、あるいは公販制、いろいろなものについて調査をしていく。そしてこれが調査をしていって、独禁法に違反する、明らかに違反している、こういうものについては、どしどし独禁法の発動をしていく。また、現在の独禁法ではどうにもならぬものは新しい法律を制定して、そして物価の安定に寄与させるように、そうした管理価格というものに対して臨んでいく、こういうことを記者会見でも言っておられますが、どういう調査をしてこられたか、どういうものが管理価格といえるのか、そういうものについて具体的に答弁願いたいと思います。
  240. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 いまの私の発言は、大体おっしゃるとおりでございますが、一ところだけ私が言わなかったことがあります。といいますのは、法律の改正という問題は私は言っておりません。その他のことは、全部私言っております。  それで、いままで私のほうでやってまいりました調査は、一つは日銀の物価指数を構成している品目が全体で四百三十六品目あります。もっともこれは、三十八年に物価指数の内容を変えましたので、最近はもっとふえておりますが、その四百三十六品目の中で、昭和三十年から三十七年までをずっと調べておりますと、全く動かないか、ほとんど動いていない品目が二十六品目、ほぼ横ばい状態のものが二十七品目、段階状で一年に一回くらい上がっていくものが十一品目、それから下がってはおりますが、一年に一回くらい階段状で下がっていくものが十二品目、それから三十四年または三十五年までは通常の市場価格のようにフラクチュエートしていましたが、それ以降、いわば硬直的になっているものが三十品目、全部で百六品目一応抜き出しました。その中で、統計のとり方でもってこういう姿になっているものも幾つかあるのじゃないかということが考えられましたので、現在、実際の市場価格がそういう硬直をしているのか、あるいは統計のとり方だけでなっているのかというのを区別さしております。問題になるのは、実際の市場価格がいま育ったような硬直しているものというわけでございますが、そうすると、その硬直しているのはなぜ硬直しているかということが問題になるわけでありまして、特にその生産している企業の数が少ない、あるいはその品物については、ほかのほうの資料から見ますと、生産性が非常に上がっている、コスト・ダウンになっているというふうなことが察知されるのに値段が下がらないというものがある場合におきまして、これは、やはり何かその更に問題がありはせぬか。それで、まあ考えられますのは、あるいはその間にカルテル契約があるかないか、これはあるとわかれば、すぐつかまえますが、あるいは暗黙のうちにそういう問題がありはせぬか、要するにそういったような関係で、プライス・リーダーがあってそれにくっついていく、そういったようなものも考えられますが、とにかくこうした硬直した値段の特色は、需要と供給できまらないで、値段がむしろ先にきまっていて、それに合わせて販売なり生産なりを統制していくというところに特色があるわけですから、そこに独禁法違反の問題がありはせぬか、こういったことを考えているわけであります。ただ、そういうふうに全般的にやっていくだけではやはり時間が相当かかりますので、とりあえず現在特に私のほうで身を入れてやっておりますのは、三つほど品物があります。一つは板ガラス、それから珪素鋼板、ブリキ、これを特に取り上げております。珪素鋼板というのは、私も最近勉強しましたが、モーターなどの中に使うものらしくて、最近家地庭電機製品などができていますが、コストの中にはこれが相当のウエートを占めているようです。ブリキの中心は、御承知ようにカン詰めの材料であります。これらはやはりいま言ったような硬直的な値段を持っていますし、生産者の数も少のうございますし、しかも片方では生産がどんどん伸びてきている、こういったものがなぜ値段が下がらないかという点を、もっとわれわれのほうでは突っ込んで考えていきたい。板ガラスにつきましても同じような関係ですが、最近旭ガラスがプライス・リーダーになりましたか何か知りませんが、とにかく若干下げたということはご承知のとおりであります。
  241. 堂森芳夫

    堂森委員 管理価格の対策について、公取に向かっていろいろと質問をしたいのでありますが、私は時間がありません。そこで、今後公販制あるいはカルテルあるいは管理価格、広くいって管理価格と申しますか、そうしたものに対して厳重なる調査及び公取の権限というものを発動していってもらうように私は要望いたしておきます。  そこで私は総理お尋ねをしますがいろいろな方法政府によってきめられました。そして物価の値上がりというものを押えていこう、安定さしていくのだ、こういう態度で臨んでおられるのであります。ところが、私は考えるのでありますが、三十五年の秋、池田さんが総理になられましてから——それまではわりあいに消費者物価は落ちついておったと思うのであります。何がしかは上がっておるのであります。しかし、あなたが総理になられてから、やはり急激に消費者物価は上昇しておるということ、これは事実であります。これはだれも否定し得ない。そうしますと、私は何かそこに、あなたの政策によって物価を上げるような力がやはり裏にあるような、そういう政策を続けておられるということは、これはばく然と私は言い得ることだと思うのです。試みにあなたが政権をおとりになってから、予算は大規模に拡大をしてまいりました。もちろん経済の成長も、三十五年、三十六年というのは非常な伸び力をしておることを私は否定するものではありません。したがって、ただ予算が大きいから、それで需要がふえて、そして物価は上がっていく、そういう単純なことを申しておるわけではないのですが、しかし、あなたが政権をとられてから異常な消費者物価の上昇がきていることは確かであります。そしてあなたは、解散のための臨時国会の際にも、一両年中に物価の安定をはかる、こういう演説をしておられるのであります。しかし、従来、あなたはいつでも、経済が成長すれば物価の少々の値上がりはやむを得ないのだ、こういうふうに言っておられました。私もある程度はそれを否定するものではありません。しかしながら、異常な上昇がきているということは、三十八年度においては、八%も、あるいは東京都においてはもっと消費者物価が上昇しておる。こういう点から考えまして、私はやはりあなたの財政というものに対する考え方、これはやはり私は、あなたが何と言われましても、予算の規模というものが大きく拡大してき、そして需要というものがどんどん拡大してきておる、そしてそこにいろんな矛盾というものが出てきた、そうだからこそ、ゆがみができたから中期の所得倍増計画をやるんだ、こういうふうになったと思うのでありますが、こういうことはお認めになりませんか、もう一度私は伺っておきたい、こう思います。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 そこが、私の高度福祉国家の実現のための所得倍増計画からくる結果であるのであります。ただ、たびたび申し上げましたごとく、私の七%あるいは九%程度の分ならば、こういうことは起こらなかったでしょう。そこで過去の状況を見ましても、昭和三十年、三十一年ごろの状況は、大体政府の見込みの数字よりもそう実績が三倍にもなるようなことはなかったわけであります。三十二年なんかは生産もあまり伸びませんから、大体政府の見込みどうりにいっております。しかし、三十三年にいったら、政府の見込みどうりにいった上に、その政府の見込みが三%前後の見込みだったから、三%の実績はあげましたけれども、しかし物価は、卸も小売りも下がっております。そうして失業者もふえております。そうして格差は依然として拡大の方向に向かっていきました、普通の三・四%の状態では。これではいけないのです。そこで、昭和三十四年ごろからだんだんのぼってきて、三十四年、三十五年、三十六年は政府の見込みの三倍くらいにいったわけなんです。しかも結果において、三十年ごろから一般組織労働者の賃金は上がってきておりましたが、他の組織労働者以外の所得は上がっておりません。しかし、公務員の給与も、三十六年だったか、十二%も上がるというふうに、三十五年ごろから毎年ずっと公務員の給与も上がり、そうして中小企業に遊んでおった中学卒業生で四千円から四千五百円の月給も、一躍一万円になった。こういうことで非常に格差が減ってまいりました。これは高度成長の結果でございます。  しこうして、国民消費も、従来は総生産の五〇%程度だったのでございます。よその国に比べまして、生産に対して国民消費が非常に少なかった。みな設備投資、在庫投資にいったわけです。それが、在庫投資、設備投資にもいきましたが、最近におきまして国民の消費が非常にふえてきました。総生産の五五・六%くらいまでいっているでしょう。しかも、ふえ方が世界に例のない、前年に対して一五%をこえるのが二、三年続いておる。こういうことで、全般の国民生活が非常に向上した。それだから三十六、七、八年と消費者物価が上がったけれども、それ以上に所得がふえております。そうして社会保障その他も、三十六年ごろから従来よりも特別にいっております。こういう長い十年間の倍増計画のうちの、予定よりも行き過ぎたところの分が来ておりますから、いま行き過ぎないように七・八%、九%程度で維持しようとしておるのであります。だから、長い目で見てくれというのは、十年間で見てくださいというのです。  だからずっと振り返ってみると、昭和二十七、八年ごろからの歩みを見ながら、いまちょっとふくれているときなのですが、だんだんこれが落ちついてくる。そうして、それには政府としても二五%の国民消費を二一・二%にしてもらいたい。こういうふうなことで、私は、ここの行き過ぎたのを押えようというのです。実際の国民生活その他におきましては、私は歴史が証明すると思いますが、かなり自信を持って私の計画を進めていこう。国民も、それはいろいろ具体的にはある一部には不平もございましょうが、大体において倍増計画はいって、そうして国民の消費水準も上がり、生活もよくなり、全体的に社会保障制度も相当遊んでいきつつある、こう私は考えておるのであります。
  243. 堂森芳夫

    堂森委員 総理は長々と宣伝ばかりしていらっしゃいますが、あなたがそういうことをおっしゃいますならば、私は幾らでも反論できるのです。しかし、アンバランスがなくなってきたと言うけれども、逆の方向だってたくさんあるわけです。それでいいなら、なぜ物価を安定させるとおっしゃるのですか。それは議論をすれば幾らでもありますが、これに時間もありませんから——あなたの財政政策というもので物価は異常な上昇を示しておる。そうして国民から強い批判が出てきたからこそ、あなたはやむを得ず物価安定だ、こう言いだしたのだと私思うのであります。この点についてはいずれ他の機会に追及したいと思います。  時間がございませんので、税制につきまして、大蔵大臣お尋ねをしたいと思います  三十九年度から実施されます減税に関連してでありますが、来年度は自然増収は中央、地方を通じまして大体どれくらいあるのでありましょうか、まず伺っておきたいと思います。
  244. 田中角榮

    ○田中国大臣 地方税収の問題につきましては、自治大臣からお答えすると思いますが、国税につきましては六千八百億という数字を示してございます。
  245. 堂森芳夫

    堂森委員 大蔵大臣ともあろうものが、地方税の自然増収くらいはお知りになっておるというのは当然の常識だと私は思うのですが、やむを得ませんから自治大臣から御答弁を願いたいと思います。
  246. 早川崇

    ○早川国務大臣 大体二千二百億円、交付税で八百十一億円程度だと思っておりします。
  247. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、三十九年度は中央地方を通じますと、約九千億前後の自然増収があるわけです。そうして選挙の公約であります二千億減税でありますが、この減税は、もちろん厳密な意味ではガソリン税を増徴しておられる、あるいはまた軽油引取税の増徴があるというふうに、一方では増税をやり、一方では減税をやっておられるわけですが、三十九年度から実施せられるこの減税によって租税の負担率は一体どれくらいになるのでありましょうか。
  248. 田中角榮

    ○田中国大臣 現行税法で参りますと、二二・八%になるわけでありますか、今度の税制改正によりまして二二・二%と推定されます。
  249. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは重ねてお尋ねしますが、本年度と同じくらいの負担率にすると、減税は四千億くらいしなければならぬ計算になってまいると思うのであります。来年度の税の負担率を今年度と同じくらいにしていこう、来年度は非常に上がるのですから。私は、この膨大な自然増収がありながら、しかも租税の負担率というものは非常に高いものである、こういうことで、実際減税とは言えぬと思うのであります。なるほど税法上の減税である、こうおっしゃるでありましょう。私はそうとは思わぬのであります。  そこで私は総理に伺いますが、こういう程度の減税の政府の案で、税制調査会の答申というものを尊重したとお考えでありましょうか。いかがでありましょうか。あまり尊重していないのだとお考えでありましょうか。
  250. 池田勇人

    池田国務大臣 大体当初減税額は、大蔵大臣、事務当局の考えでは、平年度千七百五十億ぐらいのようでした。私は、それをもっと多くはできないか、こういうので、二千億近く、二千億というところまでこない千七百億ぐらいの減税のときに、一応税制調査会の腹案が出たと思います。私は大体この程度ならいいのじゃないかと見ておりましたところ、あとから所得税を中心として九十億円余りの二次減税案と申しますか、答申は一つになっているが、二次的の分が加わってきたわけです。その加わってきた内容を見ますと、私は、これでいくよりも、住民税をやったほうがいい、こういうことになりまして、とにかく平年度二千百八十億円の減税のうち、税制調査会と違っておるところは、九十四億円の減税を入れなかったわけです。しこうして税制調査会の九十四億円の分を入れなかったが、税制調査会で答申のなかったてんにつきまして、政府自身五、六十億円を入れております。そうしますと、平年度二千百八十億円のうちで、税制調査会との違いが、二千億円余りで三、四十億ということになると、大体方針を尊重したと言い得るんじゃないか。私は、もし個人的に言わしむれば、あとから出たいわゆる給与所得控除の限度を十四万円を十五万円とか十六万円にする案とか、あるいは区切りを七十万円にする案等につきましては、私は、将来はやっていきたいけれども、いまやるということにはちょっと議論があると思いまして、せっかくの答申でございましたが、大体のところを聞いて、私の所信で立案してもらうことにいたしたのであります。だから、私は尊重したということは言い得ると思います。
  251. 堂森芳夫

    堂森委員 総理は、今月の十八日ですか、ちょうど国会が再開される前々日でありますか、総理官邸で記者会児をやっておられます。私もテレビを見ておったのであります。そのときに、あなたは、こういう意味のことを言っておられるわけです。読んでみます。私は聞いておったのですが、「日本でも配当を損金として認めてはどうかという意見は相当にあり、前から考えている。いまの制度だと増資をやるより、利子が損金として認められる借入金で資金をまかなったほうが有利で、これはおかしい。税制調査会も所得税のことばかり考えず、そういう根本のことをやってほしい。」これは新聞の記事でありますが、私も聞いておりました。そしてあなたは、この税制調査会は所得減税のことばかり考えておる。これはおかしいんで、もっと企業減税というものについて考えなければいかぬのだ、これが根本なのだ、こう言っておられたように私は聞いておったのです。これは、私は、あなたが幾ら数字ではこれくらいの差しかないから、まあほぼ尊重したのだ、こうおっしゃいましても、やはり内容を検討しまするならば、あの答申と政府の要綱を見ますると、一目瞭然です。少しく所得の減税のほうを削って、そしてこれを企業減税のほうに回しておる。これは明らかなことであります。そして利子所得の分離課税というものは相変わらず認めていく。これは田中大蔵大臣の大いに主張されておるところでありますが……。そういうふうに、所得減税というものばかりいじっておるのはけしからぬ、こういう話をあなたは言っておられた。私はテレビで見ておったのですから。そういうお考えは私はどうかと思うのですが、やはりそういうお考えでございますか。
  252. 池田勇人

    池田国務大臣 私が申し上げたのは、昨年にいたしましても、今年の分にいたしましても、所得税の減税につきましては、割に早く結論が出るのでございます。事務当局、大蔵省主税局で計算しまして、これだけ控除をふやしたらどれだけの減税になるということはすぐできるわけなんです。もちろん税制調査会でお考え願わなければならぬことなんです。しかし、いま日本の税制で何が一番重大な問題かといったならば、企業課税をどうやっていくかという問題でございますよ。これは減税とか減税でないとかいうことを離れてでございます。御承知のとおり、この問題を三年くらい前に審議いたしまして、法人税の税率三八%のものを、このままでおっては企業の財務比率がよくないから、法人税の配当分を損金にしたならば増資もできやすいから、法人税の配当分を損金にしたらどうかという議論があったわけなんです。しかし一ぺんにやりますと、負担が非常に変わってくるから、まず第一、三八%というものを二八%にしよう、こういうので一度手をつけた。段階的にやろうとした。この問題は非常に重要な問題だから、これは十分検討願いたい、減税とかなんとかいう問題を離れて、税制の上から私は非常に願っているわけです。そこで、私は、今回におきましても、企業の財務比率、企業負担、あるいは国際競争力等を考えまして、二八の税率を二六に下げたと思いますが、これは非常に重要な問題なんです。私は、財界、知識経験者から出ておる問題、この問題について、ひとつ三年ないし四年でやろうというのが、いま一時とまっておるのです。これをもっと研究してもらいたい。もちろん所得税についても研究願いたいが、われわれの、少なくとも池田内閣が税制調査会に期待するものは、こういうところがあるんだということを、これは非常に大きい問題でございますから、減税を離れて私は言ったわけなのです。企業減税をやるためにというわけではございません。企業の体質改善、国際競争力をあれして、いたずらに会社の事業設備を税金のたてまえから借入金にたよるという制度を改める方法はないかという、いわゆる企業減税でなしに、企業課税を、現代経済界に即応するような法人の税の取り方を考えてもらいたいということを言ったわけなのでございます。企業減税の問題とは違っておりますから、範疇が違うのですから、その点御了承願います。
  253. 堂森芳夫

    堂森委員 しかし総理は、所得減税にのみやっておらずに——こういう考え方は、私は、やはりあなたは給与所得者に対してはきわめて冷淡であるという印象を、あのテレビから、聞いておったら受けますですよ。  ま、それはそうとしまして、時間がありませんから、そこで大蔵大臣に伺いますが、今回の改正によって、給与所得の最低限というものが算出されております。そうしますと、標準家族、子供三人と夫婦、五人家族で、現行でありますと、最低限は四十二万八千円ぐらい、今度の改正で四十七万一千円、これは初年度分です。平年度分は四十八万円何がし。この最低限というものには非常に大きな不満を持つのです。ということは、われわれは、給与所得は六十万以下は免税しろ、こういう主張をしていることは御承知のとおり。これは党の主張ですから、あなた方とは違うわけです。そこで大蔵省が課税の最低限の基準を出すのに、何か国立栄養研究所から、二千五百カロリーぐらいの、あまり激しくないような程度の労働をやるのに必要なカロリーです。それをとって、最低生活費を計算しますると、これは三十八年度でやっておるわけですが、これによりますと、大体四十七万何がしかになると思うのです。大体よく似たものです。ところが、来年、三十九年度はまた物価が上がるのですよ。政府の見込みでも四・何%か上がります。おそらく民間のいろいろな機関が報告しておる数字を見ますと、四コンマ前後で落ちつくなんという、こういう民間の調査機関は一つもありませんよ。みんなもっと高く見ております。そうしますと、最低限が四十七万円何がしということは、これは食い込むことになります。しかも、この調査の基礎資料の軽度の労働が営める程度の食費の四十七万円何がしという最低生活閥というものは、食費が一日幾らになるというのですか。一人百二十円ぐらいです。百二十円で一日の食費をやって、五人家族で最低生活をしていくというのは、ぎりぎりで四十七万円くらいです。とにかく最低限はやはり四十七万円です。物価は上がっておる。これではやはり私は減税とはならぬと思うのですが、大蔵大臣、いかがですか。どういうわけでこういうものをきめられたのですか。
  254. 田中角榮

    ○田中国大臣 算定のこまかい基準についは政府委員から答弁せしめますが、現在の計算では、夫婦、子供三人で四十七万一千円ということになるわけであります。今度の税制改正で四十八万五千円まで限度を引き上げましたので、一万四千円の差があると、こういう見方をしておるわけであります。  それから、先ほど御質問のありました税制調査会の問題についてちょっと付言をいたしたいと思いますが、税制調査会の答申は、御承知のとおり、二千三百八十八億ということでございますが、この数字と政府が今度出しております二千百八十億というものの差でございますが、この答申の中には、輸出所得控除の廃止に伴う増加分二百三十五億を引いておりませんが、政府案では引いております。でありますから、二千百八十億円は税制調査会の答申よりも国税において五十三億円よけい減税をしておる、こういうことであります。  それから、増収に対して非常に減額は少ないということでありますが、六千八百二十六億の自然増収のうち、前年度剰余金の減が千八百億余ありまして、四千八百億の歳入財源に対し、三十九年度、四十年を通じまして、三十二年以後の減税比率は一番高いということであります。これらの正しい数字の計算をしますと、政府が、当初企図しておりました二千億に近い減税というよりもはるかに積極的なものでありますし、それから九九%というよりも、税制調査会の答申は一〇〇%尊重しておる、こういう考えであります。
  255. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 堂森君に申し上げますが、時間はすでに超過しておりますので、簡単にお願いいたします。
  256. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの田中大蔵大臣のせっかくの答弁でありますが、私は了承できません。企業減税に重点を置いて、そして所得減税を軽く見る、これは私は絶対そう主張したいのであります。  その他いろいろお尋ねしたいのですが、もう時間がありませんので終わりますが、物価を安定させると言いながら、ガソリン税は上げる、あるいは軽油引取税は上げる、そして一方バスの料金は上げさせない、いろいろ矛盾撞着した政策をやっていかれる。私は、そういう意味で、政府はこうした国民に約束したことをほんとうに行ない得るかどうか、非常に疑問を持つものでありますが、きょうは時間もございませんから、これをもって私の質問を終わります。ありがとうございました。
  257. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて堂森芳夫君の質疑は終了いたしました。  次会は明三十一日午前十時から開会することといたしますが、明三十一日午前中の要求大臣は、総理大臣外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、労働大臣、科学技術庁長官、防衛庁長官、経済企画庁長官でございまして、今澄君が質疑を行ないます。午後は川崎秀二君が質疑をいたしますが、総理大臣外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣、建設大臣、経済企画庁長官に対して質疑がございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会