○
佐藤(一)
政府委員 大蔵大臣の御説明に対する補足を申し上げますが、便宜お手元にその説明の要旨を印刷してお配りしてあると思いますので、それをごらんになっていただきたいと思います。
最初に
予算規模でございますが、
昭和三十九年度
一般会計予算の規模は、三兆二千五百五十四億円でありまして、その二十八年度当初
予算に対する
伸び率一四・二%は、三十六、七年度当初
予算のそれぞれ前年度当初
予算に対する
伸び率二四・四%、二四・三%を大きく下回ることはもちろん、三十八年度当初
予算の三十七年度当初
予算に対する
伸び率一七・四%をもかなり下回っております。
次に、その三十九年度における
国民所得の
見込みに対する比率は、一六・四%でありまして、過去における当初
予算規模の
国民所得当初
見込みに対する比率と対比いたしますと、三十六年度における一、五・三%を若干上回りますものの、三十七年度における一七・〇%、三十八年度における一七・一%をそれぞれ下回っております。
なお、三十九年度の
予算で注目されますことは、前年度
剰余金受け入れが激減することでありまして、三十八年度に比べ、実に千八百六十六億円の減少になっております。前年度
剰余金受け入れば、過去の
蓄積資金の放出ということでありまして、これが少なくなりますことは、
財政資金の対
民間収支における散超幅がそれだけ減少する結果となりますので、この観点から見ましても、やや引き締まりぎみの
予算と称することができると存じます。
したがいまして、その規模から申しましても、その内容から申しましても、今回の
予算は、景気に対して刺激的効果を及ぼすというようなおそれのない健全均衡
予算であると信ずるのでありますが、なお、その運用にあたりましては、今後の経済の動向に留意しつつ、十分その弾力的運営につとめる所存であります。
次に内容でございますが、
社会保障関係費は、
総額四千三百七億円を計上いたしております。その三十八年度当初
予算に対する伸びは、六百九十二億円、一九・二%であり、
一般会計歳出
予算中に占める割合も、一三・二%と過去の最高を示しております。
三十九年度におきましては、
国民健康保険の世帯主七割給付、診療報酬の地域差の撤廃、
福祉年金額の引き上げ等三十八年度より新たに実施いたしました諸
施策の平年度化並びに単価上昇及び受給件数増に伴う医療費の増高等、いわば当然増的経費が相当額にのぼるのでありまして、この当然増的経費の増加傾向は、今後年とともに強まってまいると思われるのでありますが、
国民生活の均衡ある
向上と
社会福祉の
充実に資するため、引き続き
社会保障関係諸
施策の
改善、
充実をはかることといたしております。
まず、
生活保護費におきましては、被保護階層の生活内容の
向上に資するため、
生活扶助基準を一三%引き上げますほか、
教育扶助、出産扶助等の基準をそれぞれ引き上げております。
社会福祉費におきましては、特に重度の精神薄弱児をかかえた家庭に対する援護の
施策として、新たに重度精神薄弱児扶養手当を創設いたします等、児童保護、老人福祉を中心に
施策の
充実をはかることといたしております。
次に、
社会保険費におきましては、国民皆保険の中核をなします
国民健康保険につき、四十年一月より四カ年
計画をもちまして、
世帯員に対する
療養給付率を五割より七割に引き上げることといたしております。なお、かねてから給付水準引き上げの要望がありました厚生年金につきましては、四十年五月よりその画期的改正を行なうこととし、本年度におきましては、その準備のため必要な経費を計上いたしますとともに、関係法案の提出準備を急いでいる次第であります。
また、
国民年金費におきましては、
福祉年金につき、
扶養義務者の所得による支給停止基準額を六十万円から六十五万円に引き上げますほか、戦争公務による死亡等の場合におきます公的年金併給の限度額を七万円から八万円に引き上げます等の
改善措置を講じております。
失業対策費におきましては、失業対策
事業の賃金日額を一〇%近く引き上げまして、平均五百一円九十銭といたしますほか、最近における
雇用情勢にかんがみ、
労働力移動の
円滑化をはかりますため、日雇い労働者の就職支度金の引き上げ及び中高年齢失業者の就職促進に必要な諸手当の引き上げ等の
改善措置を行なっております。
文教及び
科学振興費は、
総額四千百三十六億円を計上いたしております。この増加額は三百九十億円、
伸び率は一〇・四%にとどまっておりますが、これは
国立学校特別会計の新設に伴い、学校病院収入、
授業料収入等を、同
特別会計に振りかえられるため等によるものでありまして、これらの点を調整いたしますと、その実質におきましては六百四十億円、一七・一%の増加と相なるのであります。
まず、最初に御説明すべきは、
国立学校の
管理運営の
円滑化、なかんずく施設、設備の
計画的
整備をはかるため、
国立学校特別会計を新設することといたしたのであります。三十九年度におきましては、その財源として、
一般会計からの繰入金これが千百四十億、及び付属病院収入、
授業料収入等固有の財源のほか、病院施設
整備のための
財政投融資資金の借り入れ、不用財産の売却収入等を
見込み、これによって国立文教施設、設備の
飛躍的拡充をはかることといたしております。
次に、義務
教育費国庫負担金におきましては、三十八年十二月に改正されましたいわゆる
改正標準法に基づき、学級編制及び教職員定数の
改善を行ない、小中学校における
教職員数の
充実をはかることといたしております。
公立文教施設費におきましては、公立小中学校校舎等に対します
補助基準坪数の算定基準を、現行の児童または生徒一人当たりの基準から学級単位基準に改めますとともに、構造比率の
改善、建築単価の引き上げ等を行ない、校舎等施設、設備の質量両面にわたる
整備を促進しております。
義務教育教科書につきましては、
昭和四十年度におきます小学校第一学年から第五学年の全児童にまで、その
無償給与の範囲を拡大いたしますとともに、
学校給食につきましても、生乳四十万石を取り入れる等、その
改善をはかり、また
理科教育及び
産業教育の
振興、学校保健対策にも遺憾なきを期しております。
さらに、
私立学校教育の
振興をはかるため、
私立学校振興会に対し十五億円を
追加出資いたしますとともに、
財政投融資計画におきましても、三十八年度に倍します四十億円の
資金運用部資金の投入を予定いたしております。
科学技術の
振興につきましては、宇宙開発推進本部、植物ウイルス研究所の新設等により、各省試験研究機関の試験研究体制を
整備強化し、原子力船の
開発等、原子力の
平和利用、国産新技術の開発、防災科学等、
重要研究を積極的に推進することといたしております。
公共投資の拡大による
社会資本の
充実につきましては、近年特に意を用いてまいったのであります。この結果、
一般会計予算に占める
公共事業関係費の割合は著しい上昇を示しております。これは三十三年度は二%くらいでしたが、三十九年度は二六・五%になっております。
公共投資の国民総生産に対する比率は、世界的に見て最も高い状態になっております。これも総生産に対して一一%以上になっております。
三十九年度の
公共事業関係費は
総額六千十一億円でありまして、三十八年度当初
予算に対し八百七十八億円、一七・一%の伸びとなっておりますが、三十八年度をもちましてほとんど
事業が完成する予定となっております伊勢湾高潮対策のための経費及び
災害復旧等
事業費を除きました一般
公共事業関係費で申しますと、三十八年度当初
予算に比べ九百三十九億円、二一・二%という高い伸びとなっております。
まず、
道路につきましては、新たに
昭和三十九年度を起点とする
総額四兆一千億にのぼる新五カ年
計画を策定することといたしております。その
事業区分は、一般公共
道路事業分二兆二千億、有料
道路事業分一兆一千億、及び
地方単独
事業分八千億となっておりますが、その着実な推進に必要な財源を確保いたしますため、キロリットル当たり、
揮発油税については二千二百円、
地方道路税については四百円、
軽油引取税については二千五百円、それぞれ一〇%並びに二〇%の引き上げを行なっております。
三十九年度におきましては、この新しい五カ年
計画の
初年度として、
一般会計におきまして、
税率引き上げに伴う増収分を含めまして、
揮発油税等特定財源二千三百十五億円、一般財源四百五十億円、合計三千七百六十五億円を計上いたしますとともに、
財政投融資計画におきましても、千百十七億円の
資金投入を予定いたしております。
次に、港湾につきましても、三百三十六億円を計上いたしまして、主要外国貿易港湾、
地域開発のための主要港湾等につき、その
重点的整備を促進いたしますとともに、
港湾貨物量の
増大等最近の
情勢変化に対処いたしますため、新たな五カ年
計画の策定を予定しております。
空港につきましては、引き続き、東京、大阪の両国際空港及びローカル空港の
整備を推進いたしますとともに、新東京国際空港の建設に備え、
所要の調査費を計上いたしまして、準備の
充実を期しております。
なお、工業用水道
事業につきましては、東京城北地区ほか七地区の
事業につき補助率の改定を行なうことといたしております。
住宅対策費といたしましては、公営
住宅等の建設のため三百億円の
予算を計上いたしておりますが、これは三十八年度
予算に比べ五十三億円、二一・六%の増加となっております。これにより各種の質的
改善をはかるとともに、公営
住宅、改良
住宅を合わせて六万四千五百戸の建設を行なうことといたしております。
このほか、
政府の
住宅施策といたしましては、
住宅金融公庫による融資、
日本住宅公団による
住宅建設、厚生年金の還元融資による建設等がありますが、三十九年度におきましては、
昭和四十五年度におきます一世帯一
住宅を目標といたしまして、三十一万七千戸の
政府施策住宅の建設を予定いたしますとともに、民間自力建設の推進に資するため、固定資産税、不動産取得税の
減税及び新築貸家
住宅の特別償却制度を
拡充することといたしております。
次に、環境衛生対策につきましては、環境衛生対策費及び
公共事業関係費の中の下水道
事業費におきまして、合わせて百七十六億円を計上いたしましたが、これは三十八年度に比べ五十四億円、四四・七%の増加となっております。なお、
財政投融資計画におきましても、
地方債を大幅に増額いたしまして、その
積極的整備を促進することといたしております。
貿易
振興及び
経済協力費といたしましては、三十八年度当初
予算を二五・二%上回ります百七億円の
予算を計上いたしましたほか、
財政投融資計画におきましても、
日本輸出入銀行に対し、
産業投資特別会計からの出
資金二百二十五億円を含めまして、九百三十七億円の
財政資金を投入して、これによりまして、その貸付ワクを千三百億円から千六百億円へ大幅に拡大いたしますとともに、
国際競争力の
強化等に資するための
税制改正を予定しております。
また、
貿易外収支の
改善に資するため、
海運業の
体質改善と
外航船腹の
拡充、
国際航空事業の
育成強化、
国際観光事業の
振興等につきましても、
予算及び
財政投融資を通じ、格段の配慮を加えております。
このうち、海運対策費について御説明いたしますと、
海運業再建
整備臨時措置法に基づき、集約化を実行いたしまして
企業に対しまして、日本開発銀行がその支払いを猶予いたしました利子相当額を日本開発銀行に交付するための経費を七十億円新たに計上いたしますほか、従来からの三国間輸送助成費及び外航船舶建造融資利子補給につきましても、
予算の増額を行なっております。特に、三国間輸送助成費につきましては、三十八年度
予算の四億六千万円から九億六千万円へと大幅に増額いたしております。
中小企業対策は、本来金融を主体としつつ、税制並びに歳出
予算両面での諸
施策を総合的に展開すべきものと考えるのであります。
まず、金融対策といたしましては、
手形割引保証の飛躍的な
拡充、付保限度の引上げ等、
中小企業信用保険公庫による
信用補完制度の
改善充実をはかることとし、同公庫の融資基金に充てるため、
一般会計より四十五億円を
追加出資することといたしております。
また、
財政投融資計画におきましても、国民金融公庫、
中小企業金融公庫、
商工組合中央金庫の
貸し付けワクを大幅に拡大するため、千五百十七億円の
財政資金を投入いたしますとともに、新たに、
中小企業金融公庫につき
債券発行による
資金調達の道を開いたわけであります。なお、
商工組合中央金庫につきましては、貸し出し利率を引き下げるため、
産業投資特別会計より三十億円を出資することといたしております。
次に、
一般会計の
中小企業対策費としましては、さきに述べました
中小企業信用保険公庫への出資を含めまして、三十八年度
予算額を三九・八%も上回る百六十六億円を計上しております。
その最重点は、
中小企業の
高度化、
近代化でありまして、三十八年度に新設いたしました
中小企業筒度化
資金融通
特別会計への
繰り入れ額を三十八年度の二十三億円から四十四億円に増額し、新たに融資の対象
事業として追加することとなりました商店街
近代化事業を含めまして、
中小企業の集団化、協業化を促進することとしております。また、
設備近代化補助につきましても四億円を増額しております。
なお、
税制面におきましても、法人税の軽
減税率の適用限度の引き上げ等、国税・
地方税を通じまして平年度
総額六百億円をこえる
中小企業者に対する
減税が行なわれることになっております。
次に、
農林漁業でありますが、三十九年度におきましては、
農林漁業の
近代化を強力に推進するため、農林関係
予算として、
食糧管理特別会計への
繰り入れを含めまして三千三百六十億円、
食糧管理特別会計への
繰り入れを除きまして二千三百三十四億円の
予算を計上いたしております。それぞれの三十八年度当初
予算に対します
伸び率は、三二・八%、食管を除いたところで一六・九%でありまして、
一般会計規模の伸び一四・二%をかなり上回っております。
まず、
農業基盤整備事業につきましては、七百七十二億円を計上しまして、かんがい排水その他の土地改良
事業を中心に、その
事業を推進いたしますとともに、
農業構造改善事業につきましては、百三十六億円を計上しまして、継続
事業の進捗をはかるほか、新たに四百地域において
事業に着手することといたしております。
それからまた、最近における消費者物価の動向にかんがみ、生鮮食料品の合理的な価格形成に資するため、新たに東京都に二十カ所の食料品小売市場を建設いたしますほか、主要都市における中央卸売市場の
整備を促進する等、生鮮食料品の流通
改善対策には特に意を用いております。
最後になりましたが、三十九年度における
農林漁業関係諸
施策の大きな特色は、
農林漁業金融を画期的に
拡充改善し、これを通じ農業経営の
近代化を推進しようとしていることであります。
すなわち、系統
資金を活用するための
農業近代化資金につきましては、五百二十億円から六百億円に、また無利子の
農業改良資金につきましては、十八億円から四十五億円にと、それぞれ融資ワクを拡大することといたしております。
また、
農林漁業金融公庫につきましては、
新規貸し付け計画額を三十八年度の八百七十億円から千七十億円へと拡大いたしますとともに、その貸し付け条件を簡素合理化いたしますため、
財政投融資計画におきまして、
産業投資特別会計からの出資二百九十億円を含めて、七百五十五億円の
財政資金を投入することといたしております。
次に、
特別会計への
繰り入れでございますが、
食糧管理特別会計への
繰り入れは、千二十六億円もの巨額となって、おります。その内訳は、食糧管理勘定の損失
見込み、調整
資金の残額等を勘案して
調整勘定へ
繰り入れられますところの九百九十億円と、輸入飼料の売買に伴う損失を補てんするため、新設されました
輸入飼料勘定へ
繰り入れられる三十六億円であります。
次に、
産業投資特別会計への
繰り入れとしまして五百七十二億円を計上いたしておりますが、これは三十八年度に対し七十五億円の増額となっております。
産業投資特別会計は、この五百七十二億円と同
会計資金よりの
受け入れ百八十九億円等を財源としまして、
日本輸出入銀行、
住宅金融公庫、
日本住宅公団、
農林漁業金融公庫、
商工組合中央金庫、日本航空株式会社その他八機関に対し、
総額八百十二億円の出資を行なう予定となっております。
予備費につきましては、三十八年度
予算に比べ百億円を増額し、三百億円を計上しております。
災害復旧に要する経費等、最近における予備費使用の状況を勘案して増額いたしたものでございます。
次に、
昭和三十八年度
補正予算(第3号、特第3号及び機第3号)でございます。
まず、
一般会計補正予算の規模は八百二十六億円でありまして、これにより、
昭和三十八年度
一般会計予算の規模は三兆五百六十八億円と相なるわけであります。
次に、歳出追加のうち、
産業投資特別会計と同
会計資金への繰入れにつき御説明いたします。
産業投資特別会計への
繰り入れ六十億円は、船舶輸出の急増を中心に
日本輸出入銀行の貸し付けが当初千三百億と予定しておりました
計画を大幅に上回り、同行の
所要資金に不足を免ずる
見込みとなりましたので、
資金運用部資金四十億円とあわせまして、
産業投資特別会計より六十億円の出資を行なうこととなり、その、
所要財源を
繰り入れるものであります。
産業投資特別会計資金への
繰り入れ三百億円は、開放経済体制への移行を目前に控え、
出資需要の一そうの増大に対処いたしますとともに、今後の
産業投資を
経済情勢に応じて弾力的に行ない得るよう、同
会計の
資金を
充実するため
繰り入れたものでございます。
簡単でございますが、これで終わります。