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門司亮君 私は、民社党を代表いたしまして、去る六月十一日午後三時七分といわれておりまする
昭和電工川崎工場における
爆発事件について、
政府の所信をただしたいと思うのでございます。(
拍手)
この
事件の御
質問を申し上げまする前に、十六名のなくなられた
方々に対しましては、心から
哀悼の意を表したいと思うのでございます。なお、三十一名の
重傷者、その他八十九名にのぼる
軽傷者の
方々に対しましても、一日もすみやかに全快されんことを心からお祈り申し上げるものでございます。
政府に対しましては、本日のこの
会議における
政府の御答弁は、いま申し上げましたような気持ちで私
質問をいたしますので、どうか
政府の答弁がなくなられた方の冥福を祈るに十分であり、
負傷者の
方々の慰安に値するものであるという心がまえにおいて、ぜひ御答弁をわずらわしたいと思うのでございます。
この
事件は、いろいろ
原因はございますが、いま取りざたされておりまする
原因は、二つである。
一つは、外部からの
引火によるもの、
一つは、作業工程の中で何らかの衝撃によって
爆発したのではないかという科学
技術の面からの問題でございます。しかし、いずれもこの問題は判明をいたしておりません。したがって、私は、この機会には、この二つの問題を一応想定いたしまして、以下、
総理大臣並びに
労働大臣、
通産大臣に御
質問を申し上げるものでございます。
まず最初に申し上げたいと思いますことは、
労務管理の面でございます。御承知のように、先ほどからもお話がございましたように、発注者が昭電であって、
工事の請負は
千代田化工になっております。この
千代田化工さんが、あらゆる
工事の面について、十幾つかの会社あるいは事業所にこれを
下請に出しております。したがって、ここで作業をいたしておりました人
たちは、これらの十幾つかの作業場あるいは
工場から参りました人
たちでございます。したがって、同じ
現場で働きながら、人と人との融和性は全くなかったと判断することができようかと思います。同時に、
保安その他の問題に対しましても、命令系統が区々まちまちであって、またこれ
徹底していなかったであろうことは、想像にかたくございません。したがって、危険
区域であって、火気厳禁と書かれておる場所で作業するにもかかわりませず、それらの
労務管理というものが完全でなかったということは私は言えると思う。したがって、これらの面について、
労務管理の面から
労働省は将来どういう見解を持っておるかということの所信を一応明らかにしてもらいたい。
その次には、この
爆発事故によって最も大きな被害を出したと
考えられますのは、この
現場のわずか四メートルの道路を離れて
下請工場の
現場事務所が並んでおったという事実でございます。この
現場事務所が
現場の近くにあるということは、作業工程の中から申しますならば、きわめて便利かもしれない。しかしながら、そうした
意味において、ここにたくさんの仮設の家屋があって、そこに多くの人
たちが働いておった、この人
たちが爆風と、さらに火炎による傷害お受けて、想像以上の
犠牲者を出したということは、いなめない事実でございます。私
どもは、こういう危険な個所において、ややともすればこの種の
惨事が起こりはしないかと
考えられるような場所でありますならば、できるだけ
現場事務所は遠ざかっておったならばこういう
惨事はなかったと
考える。しかし、事業をする者にとりましては、できるだけ安上がりのために、できるだけ
工事の都合のいいようにこういう便利な方法がとられたと
考えるが、これらの問題についても、
当局側はそれでよろしいというお
考えなのか、将来こういう問題に対しては十分の注意をするというお
考えなのか、その点をはっきりしてもらいたい。
その次に、私は通産省にお
伺いをいたしたいと思いますことは、先ほ
ども答弁がございましたように、
高圧ガスに対しては
取り締まりの法規がある。しかし、
低圧ガスに対しては
取り締まりの法規がない。ただ、
消防法規の中に、危険物に対します査察、あるいは注意を行なうことのために消防の
取り締まりを受けることができるようになっておる。ところが、この
現場を見てみますると、第一工程と申し上げても差しつかえないかと思いますが、そこは明らかに
高圧ガスである、第二工程の中は
低圧ガスである、第三工程はまた
高圧ガスになるという
危険性を持っておる。こういう作業工程の中であって、したがって、その査察を行ないます場合においても、これは官僚の悪い癖でありまするが、結局なわ張り争いができて、そうして高圧の部分は、いわゆる頭としっぽのほうは通産省が行なう、まん中は消防庁でよろしいというようなことで、一貫したこれに対する
取り締まりあるいは査察をするということが今日まで不可能であったのではないか。こういうことではこういう
事件の起こるということも
考えられますので、将来、これに対するいわゆる取りあえずの処置として、当然、共同というか、合同による査察を行なうという御意思があるかどうかということをお
伺いしておきたい。
さらに、私はもう
一つこの問題について
労働省にお
伺いをいたしておきたいと思いますことは、
労働省が昨年の三月二十日の省令で四月一日施行になっておりまする施行規則の中で、ボイラーその他これらの問題に対しますいわゆる
取り締まりの改正をなされておりまするが、その中に、不幸にして今回起こりました
事件の内容がはずれておるという事実がございます。私は、せっかく法規を改めて
災害の
防止に万全を期せられようとするならば、この点等についてもひとつ
労働省も
考えてもらいたい。
そう
考えてまいりますると、結論といたしましては、現在のこれらの
化学産業に対しまする、あるいは
石油化学産業に対しまする
取り締まり規則というようなものが、いまのように区々ばらばらであって、高圧は通産省であり、あるいは低圧、危険物は消防庁であり、さらに容器に対しては
労働省であるというような、こういう多岐多様にわたるようなことでなく、一貫してこれの
取り締まりが十分にできるように、総合的に全面的
法律の改正を行なう御意思があるかどうかということを聞いておきたいと思うのでございます。
最後に、私は、これらの
事件をずっと総合いたしてまいりますと、何と申し上げましても、池田
内閣のとってまいりました
高度経済成長政策というものが、あまりにも企業間の競争の激化を来たした結果、さらに利潤を追求する資本主義の必然の結果として起こりましたものが、安全あるいは
人命の
尊重というようなことがつい忘れられがちになって、今日のこの大
惨事を引き起こしたものであるということは、以上申し上げましたことを総合いたしてまいりましてもはっきり言えるかと思うのでございます。したがいまして、池田
内閣は、このあやまてる
高度成長政策を改める御意思があるか、そうしてあらゆる
産業に対して、将来ますます
発展しようと
考えられておりまする
化学産業、なかんずく
石油化学産業に対しまする一貫した
政府の所信をこの際
内閣総理大臣にお
伺いをいたしまして、本日の私の
質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
〔
国務大臣福田一君
登壇〕